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1954-02-06 第19回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月六日(土曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    有田 二郎君       岡田 五郎君    尾崎 末吉君       尾関 義一君    黒金 泰美君       迫水 久常君    庄司 一郎君       瀬戸山三男君    高橋圓三郎君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       濱地 文平君    福田 赳夫君       船越  弘君    堀川 恭平君       本間 俊一君    持永 義夫君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    稻葉  修君       小山倉之助君    河野 金昇君       河本 敏夫君    中曽根康弘君       古井 喜實君    三木 武夫君       足鹿  覺君    伊藤 好道君       滝井 義高君    武藤運十郎君       山花 秀雄君    横路 節雄君       川島 金次君    河野  密君       小平  忠君    堤 ツルヨ君       西村 榮一君    吉川 兼光君       辻  政信君    河野 一郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  愛知 揆一君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月六日  委員小林絹治君、庄司一郎君、富田健治君、中  村清君、灘尾弘吉君、原健三郎君及び三浦一雄  君辞任につき、その補欠として有田二郎君、持  永義夫君、堀川恭平君、瀬戸山三男君、濱地文  平君、黒金泰美君及び三木武夫君か議長の指名  で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算外二案を一括議題といたします。  この際三木武夫君より議事進行に関する発言を求められております。これを許します。三木武夫君。
  3. 三木武夫

    三木(武)委員 私は昨日議員澄勇君の発言に関して、私自身の立場を弁明するというよりか、国会権威のために議事進行発言をいたしたいと思うのであります。  議員澄勇君は昨日の予算総会において、私を日本殖産金庫の顧問であるという御発表をされ申した。さような事実は絶対にございません。本日の日本経済新聞にも警視庁の淡として、さような事実はないという記事も私のことに関して出ておるのでございます。  終戦後地緩した道義をまず政界から確立するという意味において、政治徹底的粛正を期するということについては、私も大賛成であります。そのための暴露けつこうだと思うのであります。しかしながら暴露をする中にありましても、お互い虚貝の名誉、人格についてはこれを厳粛に守るということが、暴露する者の責務であると考えるのでございます。言論の自由の府とは申しましても、その義務を履行せないでは、国会発言に対して権威な保持されるわけばないのであります。お互い議員ば名誉と人格の信用の上に立つておるのであります。それを一方的に、事実の根拠に基かないで、議員の名誉を国会の席上において蹂躙されて、それを是正するの機会がないとするならば、まことに国会言論というものは権威を欠くものであります。(拍手)  私は近来、国会においてお互い議員の名誉というものが、いとも手軽に蹂躙される傾向に対して義憤を感じておる一人であります。(拍手)政党は違いましても敵国人同士ではないのでございますから、その間お互い議員同士の名誉を保持し、人格お互いに尊重し、また情誼をお互いに持つということは、議会政治の根底をなすものなりと信ずるものであります。(拍手)  こういう意味から私は、他にも私と同様に今澄君の発言に迷惑を感じておられる議員か多いことと信じます。従つてこの予算総会における発言権威のために、私は委員長に対して今澄君の発言の取消しを要求すると同時に、かかる傾向に対して、委員長は善処されんことを要望するものでございます。(拍手
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまの三木武夫君の御発言は、議員の名誉のため、ひいては国会権威のため、きわめて重大であると存じます。よつて委員長は後刻理事会を開いて、適当に善処いたしたいと存じます。  これより質疑を継続いたします。辻政信君。
  5. 辻政信

    ○辻(政)委員 私は憲法改正と、防衛問題につきましてお尋ねいたしたいと思います。政府は今般保安隊自衛隊に改められまして、直接侵略に対しても国土を守るということを、御決意なさつたようでありますが、もし日本外敵侵略を受けた場合に、自衛隊といたしまして、これに打ちかつて撃退することを目標にしてお育てになるつもりであるか、それともまた勝てない程度に抵抗することを目標としてお育てになりますか、その点について木村長官からお伺いしたいのであります。
  6. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。保安隊自衛隊に切りかえた場合にば、もちろん外敵侵入に対して、これに対処することになることは当然のことであります。従いまして不当に外敵日本侵入したような場合には、これはもちろん撃退すべきことは当然であろうと考えております。
  7. 辻政信

    ○辻(政)委員 当然の御答弁であろうと思います。国民もまた七百八十八億の予算を出すのでありますから、外敵侵略を受けたときに、負けるような軍隊に出す道理がない。そういたしますれば、日本侵略する国がどこであるかということを一応検討しますというと、常識的に考えましても、それはソ連、朝鮮もしくは中共、これはもちろん大臣立場で言明なさることば、国際上の関係かございますから困難でありましようが、ごく常識的に考えて、そういうふうに見えるのであります。これらの国々はそれぞれ近代戦に合格した試験済み軍隊を持つておりますから、自衛隊がそれを防ぐためには、当然近代戦遂行の力を持つことが、その目標になると考えるのであります。従いましてそれは政府憲法解釈によりましても当然戦力である。その戦力になるということを自衛隊目的とする以上、この保安庁法改正は明らかに憲法第九条の戦力を保持してはならないという条項に違反する。それにそむくことを目的とし、それを意図した出発考えられますが、この点につきまして、保安隊もしくは自衛隊最高責任者たる吉田総理大臣の御見解を承りたいのであります。
  8. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。そこでわれわれといたしましては、独立国家たる以上は当然みずからの力で、不幸にして外敵侵入があつた場合に、これを撃退し得るだけの力は持ちたいのであります。しかしながら現段階におきまして、日本財政力その他一般要素を勘案いたしますと、ただいまのところではとうていさような力を打つことはできかねます。従つてやむを得ずアメリカとの間に安保条約を締結いたしまして、アメリカの力を借りて、これに今度自衛隊が組織されますれば自衛隊と協力して、外敵の不当な侵入に当ろうという考えであります。もとよりアメリカ駐留軍実勢は、私はよく存じておりません。しかしながらアメリカ駐留軍が全部引揚げて、日本自衛隊かこれにかわるというような場合になりますしれば、今仰せになりますような憲法第九条第二項の戦力に該当しはしないかと思つております。そのような力を持とうとするに至りますれば、もとより憲法改正段階に至るべきものと、私は考えております。
  9. 辻政信

    ○辻(政)委員 人を殺すことを目的とした予備行為は、殺人予備罪として処罰されるのであります。しかるに憲法に違反するというその予備行為政治家に許されるかどうか、この点が一つであります。理想から申し上げますれば、憲法改正独立と同時になさるべきであつたでしようが、その時機を失いまして、ごまかし通して来られましたが、今度は最後のチャンスであります。保安庁法改正は、当然憲法改正の決意を明示せずしては絶対に許されないと思いますが、この点は吉田総理大臣から、どうぞお答えを願いたいと思います。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 かわつてお答えいたします。憲法改正問題でありますが、これは総理からもしばしば申し上げた通り、いわゆる日本基本法である憲法を、そうやすやすとかえるべきものではないことは、当然であります。しかし周囲の情勢からいたしまして、国民憲法改正しなければならぬという、そういう精神が盛り上りますれば、もとより政府といたしましても、この国民の気持に基いて憲法改正する段階には、私は至るべきものだろうと考えます。しかしながら基本法である憲法を軽々しく改正するということは、よほど慎重に考えなければいけないものでありまして、現段階におきましては、ただちに憲法改正するところには、私は行つていないのじやないかと思つておる次第であります。
  11. 辻政信

    ○辻(政)委員 米軍撤退をし、川全に自力でもつて守れるようになり、戦力に達したならばそれな改正するというお言葉は、これは客観的な説としては、一応うなずけるのでありますけれども、それは憲法を事実によつて完全に蹂躙して、憲法を空文に帰してしまつてから改めるということにもなるのであります。これほど憲法軽視の思想がどこにあるか。政府が率先して国家基本法を無視される態度こそ、今日のように国民遵法精神を麻痺させまして、汚職と腐敗と疑獄のできる原因となつているのではないか。この点について政府の御見解を承りたい。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。政府は決して憲法を蹂躙しておるものではありません。現在保安隊にいたしましても、また今度われわれが考えておる自衛隊にいたしましても、いわゆる戦力に達せざる範囲において、われわればこれを実行いたしたいと考えておる次第であります。汚職問題と憲法改正とは、私は全然別個のものと考えております。
  13. 辻政信

    ○辻(政)委員 戦力に価しない範囲において自衛隊育てるということは、直接侵略を受けた場合に、近代戦遂行の力のない範囲において育てるということになります。先ほどのあなたの御答弁と根本的に違つております。そればいかがでございますか。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 日本が、駐留軍引揚げてそれにかわるような大きな実力部隊を持つことになれば、もとより私はこれは戦力に至るものと考えております。しかし現段階におきましては、さような大きな実力部隊は、とうてい日本情勢として持ち得ないのであります。やむを得ず漸増的にこれを増加して、最終目的は、もとより独立国家といたしましては、みずからの手によつてみずからの国を守るだけの武力自体は持たなければなりません。そういうことになりますれば、われわれとしても憲法改正することは考えなくちやならないと考えておるのでありますが、現段階におきましては、いわゆる漸増方式をもつ、アメリカ駐留軍と相まつて日本防衛をして行こう、こう考えておる次第であります。
  15. 辻政信

    ○辻(政)委員 ただいまの答弁は、いわゆる客観的な解釈ということに基礎を置かれているようでございますが、保安庁法改正しまして、直接戦力たることを目標にされている。これは明らかにその出発点において、憲法第九条に違反するということを意識しての改正でなければならぬのであります。私はその段階においてどうこうせよというのではない、出発点においてであります。それをどうお考えになるか。またいま一つ総理国民が納得して大多数が改正を希望するように至るならば改めてもよろしい、こうい、りようなことをお述べになつておるのであります。この点から見ますと、いかにも民主的な政治態度というように見えますか、しからば何ゆえに今度の施政方針において、国民の大部分が納得しないにかかわらず、あえて耐乏生活の大号令を下されたか、一方において国民意思を尊重するような態度をとりなから、この耐乏に関しては国民意思に反して政府が強行しなければならない。これは内外情勢を判断されて決意されたものであり、私もその点には同意するのであります。同意するのでありますが、惜しむらくは行動が伴つておらない。今日のような汚職疑獄の連発する状況をもつて、はたして国民耐乏生活を要求する資格があるかどうか、耐乏生活を要求されるからには、政府みずから自粛され、国会もまた国民に対して疑惑を解く、その上においてなされねばならぬのであり、この点につきましては、昨日も改進党の稲葉委員が述べられましたように、総理チャーチル首相に見習われて、大臣国会議員が俸給の三割を引下げて国民に範を示したならば、国民は文句なしについて来ると思います。この点について総理大臣の御見解を承りたいのであります。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。耐乏予算耐乏生活国民輿論に反しているものではないのみなら、ず、むしろ政府としては国民の要望に従つて緊縮予算耐乏予算を組んだわけであります。決して憲法違反というようなお話のことは当らぬと思います。
  17. 辻政信

    ○辻(政)委員 別の観点からもう一点お伺いいたしますが、現在の憲法は多分に条約的な性格を持つております。なぜならばその前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こう述べてあるのでありまして、戦争を放棄し武装を解いたのは、この前提の上に立つて結論でありますが、今日日本をめぐる世界各国は、はたして公正と信義を守りつつあるか。李承晩ラインの問題といい、竹島の問題といい、歯舞の問題といい、あるいはアラフラ海の問題といい、さらに進んではアメリカ沖繩小笠原永久保持を宣言する、こういうような点から見ますと、日本をめぐる世界各国は、日本にこの憲法を押しつけたときの条件を無視している。前提がくずれた以上、その結論を改めるのは当然じやないかと考えます。この点についての総理大臣の御見解を承りたいと思うのであります。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。しばしば申すようでありますが、憲法は公式の手続によつて国会協賛を経て成立いたしたものであります。その淵源はわれわれは問わないのであります。また決してこれは条約同様なものではなくて、国民の正式の代表である立法府の協賛を経てできたものでありますから、これを条約なりとお考えになつても、私は承知ができません。
  19. 辻政信

    ○辻(政)委員 条約ではなくて、条約的な性格を持つと申し上げたのであります。そこでまた別の観点から申し上げてみます。ただいまのお話によりますと、適当でない点があつたにしても国会で議決したものでありますから、あくまで守らねはならぬというような意味に拝聴したのでありますが、私は憲法は神聖なるべきものであるがゆえに、その間には一点の疑惑も持たれてはならない。憲法を重視するがゆえに、疑惑を持たれた現在の憲法は、一刻も早く改正すべきものと考えるのであります。今日革新陣営の皆さんが、憲法擁護国民運動を起されておる。これは決して憲法そのもの理想とお考えになつておるのではなくして、むしろアメリカヘのつら当てとして、アメリカの要求する軍備に反対するための古証文として利用しようとしておる。こういうのが相当あるのであります。しかしながらこれらの人は、この憲法の改悪には反対していますが、憲法改善にはどなたも反対なさらない。そこで総現は、信念を持つて憲法改善ということを、御決意なさる時期ではないかと思いますが、いかがでありますか。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は、辻君にお願いいたしますが、国会における言論については、相当対外的影響がありますから、ことに辻君のごとき方、有力というか何というか(笑声)地位にあられる方としては、あまり外国日本に対して不愉快に思うような、あるいはまた日本に対して疑惑を生ずるような言葉をお使いにならぬことを希望いたします。  そこで今の憲法でありますが、これは平和憲法として当時、私はしばしば説明いたしますが、あの憲法を押しつけたというのは言葉は悪うございますが、事実はそうであるかもしれないが、とにかくその当時においては、日本軍国主義、辻君などの御指導によつて軍国主義の国と、世界——世界と申しますか、少くともアメリカ考えておつたのであります。日本軍国主義の国ではないのであります。平和を愛好する国であるということを示すためにも、従来の日本に対する疑惑を一掃するためにも、かくのごとき憲法をつくることがいいと確信して、こういう憲法をつくることを希望いたしたのだろうと思います。押しつけたとは言わない、希望いたしたと思います。それで、その当時においては、私はけつこうな憲法だと思いました。今日においていかん、これは政治は日々発達するものでありますから、国の内外の事情に応じて、法制もつくらなければならないが、しかしたといしかりといえども、よほど慎重に審議をして、万世不易とまでは申しませんけれども、相当の間基本法として国民が納得し、遵奉するようなものをつくらなければいけない。そのためには国民の、これはなるほどこうしなければならぬ、改めた方がけつこうである、改めなければならないという輿論の一致を見え、そこで政府はおもむろに考えるべきであつて政府が先に立つて遵法精神でもつて指導するということは、これは百害があると思います。でありますがゆえに、私はしばしば申すのでありますが、軽々しく憲法改正いたすべきものではない、こういうふうに考えております。
  21. 辻政信

    ○辻(政)委員 非常に御懇切な御説明をいただいたのでありますが、それでは私は別の観点からもう一つお伺いいたします。  それは憲法改正戦力問答をめぐつて、第九条に議論の焦点が向けられておるのであります。単に防衛上の見地のみから見ましても、これだけでは不十分でありまして、私はイタリヤの憲法を調べてみましたところが、その第五十二条の第一項には、国家防衛イタリア国民の神聖なる義務であると述べられております。またソ連憲法の第百三十三条には、国家防衛することは、ソ連邦国民の神聖なる義務であると明記されております。日本の民族のみが祖国防衛義務を負わない道理はない。この意味から申しましても、改善するのは当然であり、国民全体がその義務を負わないで、ただ自衛隊だけに直接侵略の矢面に立ちなさいと言いましても、これはとうてい自衛隊士気の上るゆえんではないのであります。その点につきまして、日本防衛責任日本国民の神聖なる義務であるということを、この憲法にうたうということが、保安隊自衛隊士気を上げる根本ではないかと思われますが、木村長官のお考えはいかがでありますか。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私は独立国家として日本の国を守るということは、憲法の条文のいかんにかかわらず、国民義務であろうと考えております。従いまして、われわれは日本の歴史をつらつらひも解いてみましても、不幸にして一たび外国から侵略を受けたような場合においては、国民はこぞつてこれに対してあるいは銃をとり、あるいはくわをとつてでも戦うことは、当然であろうと私は考えております。しかしながら、さようなはつきりした明文を、今後日本において憲法改正の場合に置くべきかどうかということになりますと、相当考慮の余地があろうと私は考えております。
  23. 辻政信

    ○辻(政)委員 次に、憲法改正の時期について、総理大臣木村長官の御見解にギャップがあるように思います。それは、木村長官せんだつて自由党本間委員質問に対して、自衛隊米軍に肩がわりして、独力で日本を守り得るようになればそれは戦力である、こういうふうに述べられております。それを裏返しますと、米軍が完全に日本から撤退しない限り戦力には達しない、従つて憲法改正の要なしということになつて、これは重大な発言であります。憲法改正の時期は、米軍撤退という条件に左右される、日本の一方的意思では解決できない、こういうことにもとれるのでありますが、総理のお考えは、国民が納得すればやる、これは明らかに日本人が自主的にその時期を選定できることを意味する。そこでお二人の間に少し開きがあると思いますが、長官は少し御訂正なさる御意思がありませか。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私の申し上げたのは、アメリカ駐留軍実勢は私はわからない、しかしながらアメリカ駐留軍にかわつて日本がさような大きな実力部隊を持つということになれば、これは憲法第九条第二項の戦力に至るであろう、さような場合になれば憲法改正しなければ、当然実力部隊と言えないのだということで説明したのであります。従いまして、アメリカ駐留軍撤退いかんにかかわらず、万一日本戦力を持こういうことになければ、当然憲法改正しなければならぬのであります。
  25. 辻政信

    ○辻(政)委員 それで誤解がはつきり解けました。各方面からお尋ねいたしましたが、容易に答えを得られないのですが、これは私の質問がまだ戦力に達しないためでありまして、やむを得ないのであります。(笑声)  しからば最後に、とどめを刺す矢がまだ一本残つております。それは何かといいますと、この前の開会式における陛下のお言葉の中に、それが現われております。第四国会から第十七国会に至る十四回連続の開会式のお言葉の中には、例外なしに、「永遠の平和を念願する日本国憲法精神を堅持し、」というお言葉が明示されておるにかかわらず、第十八、第十九国会のお言葉の中かられ、こを明瞭に削除されておるという事実があります。憲法第三条に、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」と明示されておる以上は、この言葉から憲法云々を削除されたことは、さだめし慎重な審議と重大な含みを持つものであり、おそらく福永官房長官が、総理大臣の意図を受けられて起案をされ、閣議によつて決定されたものと信ずるのであります。この国会において国民の聞かんとする最大の問題は、憲法改正するかどうかという点にあります。総理が依然として憲法改正しないという態度る堅持される以上は、本国会こそ過去の十数回のいずれの国会よりも、この精神をお言葉の中に明示される必要があるのではないか。総理は、私の質問には明答を避けておられますが、総理の御性格上、陛下を欺き得ないというお方であり、その御良心がここに反映しておるものと私は推察するのであります。総理は、軽々には改正しないとおつしやつておりますが、この総理のお言葉を私は拡張解釈いたしまして、慎重には改正すると解したいのであります。慎重には改正する、願わくはそうあつてほしいと望むものでありますが、起案責任者であり、総理の側近にあつて、最も信頼されておる福永官房長官から、総理にかわつて、この辺の微妙な経緯をはつきり承りたいのであります。
  26. 福永健司

    福永政府委員 開会式におけるお言葉につきましては、御指摘のように、憲法という言葉は、確かに十八国会開会式のお言葉及び十九国会開会式のお言葉にはございません。辻さんすでにお調べになつていらつしやいます通り、過去におきましてそうした言葉がずつと入つておりましたこともございますが、初めのころには入つておりません。これは吉田内閣であつたときも、そうでなかつたときにも、そういう言葉が入つていなかつたときもあるわけでございますが、もともとこの開会式におけるお言葉と申しますものは、その国会の開会における陛下のお言葉としてふさわしいものを盛り込まなければならぬことは、申すまでもないところでございます。ただ、ああしたあまり長くないお言葉の中でございますので、すベてのことを盛り込むというわけにも参らない次第でございます。十八国会は、御承知の通り、災害と関連する国会でございまして、従いまして、災害に関することにお言葉が及んであります。今度の場合におきましても、耐乏というようなことにお言葉が及んでおるわけでございますが、十八、十九両国会におきまして、憲法のことに触れておりませんということは、ただいま辻さんがおつしやつたような、そういう意図があるがゆえにということではないのでございます。憲法に関しましては、従来幾たびか重ねて言つて来られたので、この際この言葉がぜひなければならぬとまでには、われわれの方では考えなかつた次第でございます。もとより、先ほど御指摘のごとく国会の開会の言葉にどういう言葉を入れるかということにつきましては、私どもは常に慎重に善処をいたしておるわけでございます。なお、先ほど憲法にいわゆる国事というように御指摘がございましたが、私どもの法律的な見解におきましては、憲法にいわゆる国事とは考えておりません。天皇の公の行為ではございますけれども、憲法に言つておりまする直接の国事ではないわけでございます。ではございまするが、政府といたしましては、このことにつきましては非常に重大視いたしまして、先ほども御指摘の通り慎重な態度で善処をいたしておるわけでございます。
  27. 辻政信

    ○辻(政)委員 お言葉と申しますのは、昔で言いますと勅語でございますから、総理施政方針演説よりもさらに大事なものであります。国民はそれる聞こうとしておる。しかも今日ほど憲法問題について国民の関心の高い時期は絶対ないのであります。ほかの国会はいざ知らず、今度の国会においてこそ、総理が、改正しないというならば、しないという態度をはつきりお示しになるべきではないか。それを抜かれたということは、いかようにも御答弁ができましようが、国民の全体は納得しない。割切れないものを残して、今国会審議を見守つておる状況でございます。しかし、これ以上申し上げましても結論を得ませんでしようから、私は質問を転じまして、防御問題に移りたいと思います。  第一に、総理施政方針の演説において、「米国が財政緊縮方針に基きその駐留軍漸減の希望あるに対し、来年度において国家財政を勘案し保安隊を増強する考えであります。」こういうふうにお述べになつております。米国が漸減の希望があるから日本はやるのであるという響きを受ますが、これは日本自体の必要に基くというよりも、米国の希望に沿うことが漸増の目的のように聞えまして、今でさえ傭兵的な性格を非難されておるのに、ますます国民疑惑を深からしめる。総理の御真意ではありますまいが、まことにこれは上手ではない表現と考えられます。この点につきましていかがでございましよう。
  28. 吉田茂

    吉田国務大臣 安全保障条約には、アメリカは駐屯軍を漸減すると書いてあります。また日本側としては、保安隊を漸増するということを約束いたしておるのであります。ゆえに、アメリカ側が、財政上の理由から漸減したいと、こう言えば、それは困る、相ならぬということは言えない立場にあります。また、漸減するという以上は、保安隊は漸増しなければならぬ結論になりますので、事実を申し述べたのであります。言い方はまずいかもしれませんが、事実は右の通りであります。
  29. 辻政信

    ○辻(政)委員 確かにそういう誤解を国民に与えますが、ただいまの御答弁によつてそれが解けたようでありますから、次の問題に移りまして、木村長官にお尋ねいたします。  防衛計画を立てるにあたりまして……。   〔発言する者あり〕
  30. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。委員外発言を許しておりません。
  31. 辻政信

    ○辻(政)委員 内外の客覚的情勢をいかに判断したか。それに対抗するには、当面現在の客観情勢におきまして、保安隊を自御隊に切りかえられるその根本の情勢判断をいかにされているか、これを伺いたいのであります。
  32. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。申すまでもなく、最近の国際情勢は多少緩和されたような気持をわれわれは受取られるのであります。しかしながら、これを深く掘り下げてみますと、米ソの対立ということは、とにかくまだ完全に冷却し切つているわけではありません。いわゆる対立関係はあるのであります。この間にありましてソビエトはどういう態度をとつておるかと申しますと、御承知の通り、ソビエトの一貫せる世界共産主義化というものは、これは放棄しているわけではありません。機会を見てはその方向に持つて行こうとしているというふうに見受けられるのであります。その流れといたしまして、あるいは平和攻勢だとか、軍縮の提案だとか、あるいは日本におきましての反米思想の宣伝だとか、こういうような一連の動きはそこに見受けられるのであります。しかして、われわれといたしましては、この日本周辺におきまするいわゆる軍事情勢というものを終始勘案いたしますと、日本というものは、この間にあつて独立態勢をとる上に、ぜひとも相当のいわゆる自衛体制を整えて行かなければならぬということは、当然であろうと思つておるのであります。われわれは、すべての国際情勢の見通しと、それから日本周辺における軍事情勢等を終始勘案いたしまして、いわゆる日本の自衛力の漸増をどういう方向に持つて行くということについて、終始研究をしておる次第であります。
  33. 辻政信

    ○辻(政)委員 今のはやや的確を欠くのでございますが、具体的に申しますというと、米ソの本格的武力戦は当分遠のいた、しかし冷戦は依然として続くであろう、こういうふうに判断をしてもよろしゆうございますか。
  34. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まさにその通りであります。
  35. 辻政信

    ○辻(政)委員 そういたしますと、今度の自衛隊の漸増計画の中には、第一に、数年後に予期する直接侵略に対して日本をいかに守るかという、この性格と、第二には、ことし中にも起るかもしれない内乱に対していかに対処するか、この二つの性格を当然はつきりと持たねばならぬと思いますが、現在政府考えておられる漸増計画にそれがあるかどうか、その点を伺います。
  36. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。保安隊自衛隊となりましても、もとより内地の平和と秩序を維持するところの任務は、ぜひとも取入れられるべきだとわれわれは考えております。しかして内地における情勢判断でありますが、われわれは終始いろいろの情報を収集いたしましてこれに対処することを考えております。そこで、今辻委員の仰せになりました直接侵略に対するものと、いわゆる内地の大きな暴動とか反乱とかに対しての対処方法を、どう考えておるかという御質問でありますが、もとより、保安隊あるいは自衛隊性格といたしましても、この両方に対して対処し得るように、ふだんから用意すべきは当然の義務であろうと考えております。しかしながら、私の考えでは、内地においての事変に対しては、でき得る限り国警その他の力によつてこれは処置すべきものであつて、軽々しく自衛隊なりあるいは保安隊が、これに出動すべきものではないという建前をとつて行きたいと思います。しかし、大きなことに対してはもとより出動いたさねばなりません。いわゆる警察力ではとうてい対処し得ないような事柄に対しては、出動するのが当然でありまして、その際に対してのふだんからの訓練その他、これはぜひともやつておかなくちやならぬと考えております。前国会においても辻委員からその点について指摘されましたが、私は、これは当然のことと考えております。その点につきましては、ふだんから十分訓練するようにわれわれは心がけておる次第でございます。
  37. 辻政信

    ○辻(政)委員 その任務の中に間接侵略に対しても対応する任務があるからいいというように御答弁がありましたが、それではぐあいが悪いのでありまして、端的に申し上げますと、地理的に直接侵略を受ける可能性のある北海道もしくは九州方面、この方面には精鋭な兵器を持つた近代的な正規の師団を若干配置をして、直接侵略に対して守る態勢を整え、その他の方面におきましてはむしろ内乱を鎮圧するための措置としまして、民衆組織と直結した民兵師団、これをおとりになる方か非常にいいのではないか、この二本建で行くほかに、さらに十年後における科学の革命的変化に備えまして、科学技術の研究機関というものにしつかり重点を置かれて、この三本建の軍備でなければ、現状に合わないという感じがするのであります。そこで内乱の様相というものを考えますと、これは悪性のストライキから、産業を実力でもつて占領する、それから産業麻痺の状態、交通麻痺の状態、食糧の配給ができない状態になつて、大都会には食糧暴動が起る、電源を破壊されて暗黒になる。これらの社会的不安に乗じましてのいわゆる日共と朝鮮共産党あたりの合併した暴力団体が蜂起をする、こういう経過をたどるものと考えねばならぬのであります。そういたしますと、内乱の様相は多分にゲリラ的な性格を持つて来る。この経験は日本軍にはなく、アメリカ軍にもないのであります。従いまして日本の直面する情勢に処して治安を維持するためには、過去においてなかつた、米軍にもなかつた独創的な方法をお考えになるべきであり、民兵師団については真剣に御研究になる必要があると思います。それをどの程度に研究されておるかについて承りたいのであります。
  38. 木村篤太郎

    木村国務大臣 先刻申し上げました通り、われわれといたしましては直接侵略と間接侵略と双方に対して対処すべきことを、ふだんから用意しなければならぬと考えております。直接侵略に対しては今御指摘のありましたように、北海道、九州に重点を置くべきことは、これまた私の言を要せぬことと考えております。そこで内地のさような反乱、暴動に対しての対処すべき民兵組織をどうするかという御質問でありますが、われわれは部隊の編成につきまして今考えておるのでありますが、いわゆる軽師団というようなものを置いてはどうかというようなことを考えております。それで民兵組織の問題でありますが、これは私はぜひとも将来考慮する必要があるのじやないかと考えております。特に将来のかような事変に対処するのには、国民の盛り上る力とわれわれはやはりたよらなければならぬと考えております。それにはただいま率直に申しますると、消防団、これは団員約二百万から持つておる。しかもこの間にあつて団員は新兵器訓練は受けておりませんが、団体訓練はされておるのであります。かような団体と一連の連繋をとりまして、ふだんから事変に対処するように心がけるべきであろうと考えております。その点につきましては、われわれは相当つつ込んで研究いたしたい、こう考えております。
  39. 辻政信

    ○辻(政)委員 ただいま長官から非常に当を得た御答弁を承つたのであります。この消防団というものは私もかねがね考えておりましたが、今おつしやつた通りでありまして、半数以上は歴戦の経験を持つておる。共産党が入つていない。各部落、各職場の末端にまで組織を持つている。これを集めまして、短期訓練をする。各府県に教育の基幹大負だけを常置しまして、一年に約一箇月くらいの短期間に順番に召集をして訓練をする、こう仮定いたしますと、その経費は一人一年に一箇月訓練するものとして三万円あればできる。そうしますと、一県で一年に述べ一万人の消防団員を教育する費用は三億で済みます。全国で百三十八億あれば四十六万の消防員が短期訓練を受けることが可能である、これを郷土ごと、職場ごとに組織をしておくことが、間接侵略、内乱に対して最も強い一つの力を持つということを信じておりますが、ただい京御研究が進んでおるようでありますから、ぜひともこの問題について、吉田総理大臣以下ほんとうに御研究になつていただきたいと思うのであります。  次は、保安隊もしくは自衛隊の装備の最大弱点は何であるか、私はこの点を見て非常に憂慮にたえないのは、自衛兵器の日給ができない、自分の国を守るべき兵器を日本で製造することができないという点に、非常な弱点があるのであります。李承晩の軍隊が休戦に反対しまして三十八度線を突破するというけはいがあつたときに、米軍は韓国軍に対する弾薬と燃料の補給を抑えた。そうしますと、たつた一日しか戦闘できないのであります。四十五万、十六個師団の朝鮮の軍隊が燃料と弾薬を押えられたために、アメリカの命令を聞かない限りは、戦闘不可能な状態になつた。将来日本自衛隊がこうなつたらたいへんでありますから、私は日本自衛隊の自主性を保持する意味においても、絶対に白術兵器の国内自給ということについて、深刻に考えていただきたいと思うのであります。その点につきましてどのようなお考えを持つておられるか、簡単に御答弁をお願いし、なす。
  40. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まことに御同感であります。兵器をいくら持つてつても、これを補給すべきものがなければ何も役に立たぬのであります。日本が独自で国を守ろうとする建前を将来とる以上は、どうしても日本みずからこれを補給する手段を講じなければならぬと考えております。そこで兵器生産の問題でありますが、日本の兵器生産は将来大いに発煙させるべきものであろうと私は考えております。
  41. 辻政信

    ○辻(政)委員 次に、保安隊ないし自衛隊の訓練につきまして、第十六国会において私の質問に対し、長官は率直に欠陥を是認されて、修正するということをお約束になつたのであります。その後保安隊のあり方を見ておりますが、なかく徹底しておらないように思いますので、御参考までに一、二の例を申し上げてみたい。過日の保安大学の学生に会つて聞いたところが、その学生が昨年常士のすそ野に野外演習に行つた。そこで実弾射撃をやつたのであります。そうしますとたまが相当たくさん余りまして残弾ができた。その残弾を学校の当局幹部は目標を見ずに、ただ山にめちやくちやに撃つて浪費してしまつた、むだづかいをしたのであります。これを見た学生は非常に憤慨した。何ともつたいないことをするか、そうすると幹部のいわく、いやこれは全部撃つてしまわなければ、余すとこの姿アメリカ軍がわれわれにくれるたまがそれだけ減らされるのだ、だからやむを得ずこれをむだづかいするんだということを言つた。それを聞いた学生はかんかんに怒つたのであります。まつたく傭兵じやないか、しかしながらそれに対して幹部は何ら自責の念を狩つていない。一方学生自治会の中においては全学連に加盟しようとする動きである。共産党の目標は保安大学に集中されておるのであります。保安庁の首脳部はこの大学の性格をどうするか、日本の幹部をつくるのか、アメリカの海兵的幹部をつくるのか、それとも赤い幹部をつくるのか、この学校の教育が保安隊全体の縮図である。指導精神が確立されておらない。幹部に信念がない。教育者の人選を誤誤つておる。私はこの状態を見て非常な不安を感ずるのであります。思い切つた粛正をひとつお願いしたいと思います。
  42. 木村篤太郎

    木村国務大臣 保安大学は御承知の通り将来の日本自衛隊の幹部を養育するところであります。ここにわれわれは教育の重点を置くのは当然であろうと考えております。そこでわれわれも持々保安大学に行つて直接学生と接触しておるのでありますが、大体私の見通しでは、学生は相当しつかりした気持を持つてつておると考えております。今富士のすそ野における事例をお話になり米したが、私はその事実は知りません。よく調査いたします。と同町に、私はこの保安大学校の学生たちに対して国民は自眼視していただきたくないのであります。これは将来日本のいわゆる国防の第一線に立つべき幹部を養成するところなのである。これに対して同情の眼をもつて見ていただきたいということです。学生も真剣にやつているのであります。どうか悪いところは悪いと率直に言つていただきたい。われわれもまた反省すべきものは反省して、いいものを育てて行きたい、こう考えております。
  43. 辻政信

    ○辻(政)委員 次に、時間がありませんからごく簡単に要点を申し上げますが、昨年の秋北海道を防衛の見地から約二週間視察して参りましたが、総括的所見として、北海道の行政は社会党がやつておる、建設は自由党がやつておる、防衛は無所属である、このように感じたのであります。このような支離減裂な態勢であの重要な北海道の防衛政府は確信が持てるか。大野国務大臣が今度長官になられたようでありますが、この開発と行政と防衛というものを、少くとも北海道においては一元的にしない限り、過去の満州に相当すべき、あの最も重要な拠点がくずれると私は思う。それに対して吉田総理大臣はどうお考えになつておりますか。ほんとうにこれはあぶないのです。
  44. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。社会党の知事は、これは公選で選出された人でありますので、いかんともできませんが、政府としては北海道の開拓を決しておろそかにいたしておらない一つの証拠としても、最近大野国務大臣を北海道開発の主管大臣にいたしたような次第であります。また日本の開拓といいますか、食糧自給の関係から見ても、また過剰人口を配置する一つのはけ口としても北海道は考えられるので、決して北海道を粗略に考えてはおりません。また保安隊は保安庁の主管のもとにありますが、これは行政制度上いたし方がないのであつて、要は政府が北海道を粗略にいたしておるかいたしておらないか、これは粗略にいたさない決心であり、またその措置を講じておるつもりであります。政府の意のあるところはよく御了承願いたい。決して粗略にいたしておりません。のみならず制度はわかれておりますが、政府部内においては統一された精神のもとに行政その他の措置を講じております。
  45. 辻政信

    ○辻(政)委員 その意味におきましても、私は北海道知事の公選は間違いである、あれは官選にされるべきである、従つて憲法改正、そこまで考えなければならぬと思うのであります。  次に二幕の問題について申し上げます。最近第二幕僚監部の船舶発注事件につきまして、第二のシーメンス事件のようなうわさが出ております。百四十四億の予算をもつて十数隻の船をつくるのに、基本設計図もつくらないで随契でやるといううわさが立つておる。これは初歩の常識から考えられても絶対に許されないことであります。艦船に具備する性能、装備、それをきめて綿密な基本設計図をまずつくり、過去の経験と技術陣と現在の設備能力を考慮されまして、一流のメーカーを指名されて入札しなければならない。造船疑獄がやかましく言われておる今日、また保安庁の内部に第二のシーメンス事件といううわさが立つておる。保安庁の名誉にかけても、どうかこの第一線の疑惑を解いていただきたいのであります。どういうふうに長官はお考えになつておるか、伺いたいと思います。
  46. 木村篤太郎

    木村国務大臣 国民の血税によつてつくるわけであります。一銭一厘といえども不正があつては相ならぬと考えております。そこでこの造船計画については、ただいま基本設計をやらしております。まだ完成いたしておりません。厳重にまた慎重に考慮してこれに当ろうと考えております。従つて世の中にどのような批判があろうとも、あえて私は受けます。しかし不正は断固として出さないつもりであります。
  47. 辻政信

    ○辻(政)委員 そうしますと、基本設計図ができて、それに基いて、随契ではなしに、指名入札の方式を決意されておるわけでありますか。
  48. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま基本設計はせつかく作成中であります。そこで御承知の通り、船舶の建造ということについては、いろいろな観点からこれを検討しなくちやならぬ。建前といたしましては競争入札がいいでありましよう。しかし競争入札のためにいたずらに価格をせり合つて、くだらぬものをつくられてはまことに相済まぬ話であります。そこで随意契約にしていいか、あるいは競争入札に付していいか、各種のところからこれを慎重に考慮して最後に決定いたしたいと考えております。まだ何も考えておりません。
  49. 辻政信

    ○辻(政)委員 今こういううわさが流布されております。名前は申し上げません。某船会社の重役が保安庁の高級幕僚を買収した、こういうことが巷間にいわれておるのであります。随契のためにそういう疑惑を受けておるということをよくお考えになつて、これは政府の名誉のためにも、保安庁の名誉のためにも、絶対に随契はならない。基本設計図をまずつくつて、それに基いて一流メーカーの指名入札、この方式を決意していただきたいのであります。  時間がありませんので、綱記の粛正問題に移ります。昨年の参議院の予算委員会において、中田吉雄委員から、増原次長の一身上の問題について重大な質問が行われております。これはまことに増原次長の名誉のためにも惜しむ発言であります。それは次長の夫人の実家が綿布の問屋であつて、それを保安庁に納めて莫大な利益を受けておる。こういうことを公式の席上で議員がはつきり話をしたのであります。もし増原次長が、そういう事実がないならば、ただいま三木委員がおつしやつたと同じような態度をもつて、この議員に対してなぜ誣告罪をもつて訴えないのか。それは単に増原個人の名誉問題ではない。こういうことがうわさされるということは、保安隊自体に対する大きな名誉毀損であります。国会議院の言動において間違いがあつたならば、堂々と誣告罪をもつて増原次長は争うべきであります。その決意があるか承りたい。
  50. 増原恵吉

    ○増原政府委員 参議院におきまする中田議員質問に対しましては、当時保安庁長官よりさような事実はないというお答えがありました。越えて次の会期かのときにも、またそういう問題に触れられたことがあつたように聞いておりますが、そのときにも長官より、さような事実は認めないというお答えがあり、そのとき中田委員の重ねての発言は、増原次長にそういうことがないと自分も思うが、そういううわさがあるのだというお話であつたわけであります。私はこの問題については、事実なしということが了承されておるものと考えております。
  51. 辻政信

    ○辻(政)委員 対絶事実にございませんか。増原次長、事実絶対にないのですか。
  52. 増原恵吉

    ○増原政府委員 莫大なものを納めて利益を得ておるという事実は絶対にございません。
  53. 辻政信

    ○辻(政)委員 莫大でなくても、ある程度はあるのか。これは私はあえて個人の名誉を云々しようとするものでありますが、フィリピンのマグサイサイ新大統領が、かつて国防大臣のときに、彼は自分の身辺の縁故関係者を全部国防音から遠ざけまして、世の中の一切の疑惑を排除して、きわめて厳粛な統制をやり、フク団を討伐して今日の地位を築いたのであります。いやしくも保安庁に職を奉じておる者が、大なり小なりその身辺においてかくのごとき疑惑を持たれることは、増原次長個人のためにも、保安隊自体のためにも、断じてとるべきではない、私はそう信ずるものであります。  次に、内閣委員会において、幾多の汚職事件を昨年の秋以来追究いたしました。それに対しまして木村長官は、徹底的に粛正するというお言葉でありましたが、これはまことに遺憾なことでありますけれども、あの久里浜事件の調査に当つた一幕の監察課の主任——名前を申します。武田二正、これがその容疑者の取調べに対し、今度の事件は旧職業軍人が文官出身者を排除するための陰謀であり、この次の国会で保安庁が辻代議士に答弁を行うから、それが済めばあとはあいまいのうちに葬つてしまう、こういうことを主任のものがはつきり述べている事実があります。こういう態度でもつてはたして徹底的な粛正ができるのか。また私の質問に対し、まことに木村長官は真剣にお考えになつているようですけれども、この保安庁汚職のことを警告しましたか昨年の春、今から一年前であります。それにかかわらず、増原次長以下の幕僚は、このことを直接の木村長官に報告していない。ねこばばをきめ、ほおかむりをして、容疑者を次から次と転任させて行つた。お互い悪をかばい合うような姑息な手段、これが今日のあの汚職事件を大にした根本原因であります。木村長官は、このような態度の幕僚をもつて、あなたがおつしやる粛正がほんとうにできるとお考えになるかどうか、その御決意を最後に承りたいのであります。
  54. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。汚職事件、まことに私は申訳ないことと思います。それ以来私は、まず第一に私の最も人格的に信頼しております第一幕僚長林君と十分に連絡をとりまして、いわゆる綱紀粛正をやらなくちやならぬというので、綱紀粛正機関を設けまして、現に私はやつているつもりであります。その後だんだん調査いたしますと、これは昔のものもずいぶんあるようであります。まだ私の就任前のものもあります。就任後のものもあります。私はこれを摘発いたしますと同時に、刑事処分に付すべきものは、検事局と連絡をとりまして刑事処分に付します。また行政処分に付すべきものは行政処分に付しております。しかし世の中の新聞なんかに伝えられるところと大分様相が違うのです。私は驚いたことは、きのうでありますか、何かまた保安隊員が隊のものを質屋に入れてどうした云々というので、厳重に調べさせましたところ、今申しました綱紀粛正機関においてずつと粛正の幹部をまわして各質屋を、そういう事実がないかということを自発的に取調べさせている。その取調べさせていることが、あつたかのごとくこれを新聞に報道されている。取調べるためにやつていることを、あつたから取調べているように書かれている、まことに迷惑している次第あります。しかしこの綱紀の粛正ということはぜひやらなくちやならぬ。私は自分の直属の綱紀粛正部というようなものを設けまして全国に徹底いたしたい、こう考えて今種々構想を練つている次第であります。
  55. 辻政信

    ○辻(政)委員 その決意をどうかそのまま実行に移していただきたい。私はこの問題を取上げてから、保安庁の首悩部からは、これは保安隊士気関係するから、あまりやかましく追究してくれるなという御勧告をたびたび受けております。   〔委員長退師、小峰委員長代理着席〕 また保安庁の内部の某幕僚は、某有力新聞の幹部を招いて、三箇月間保安庁の汚職事件に関する記事掲載を禁止してもらいたい、こういう申入れをしている事実がある。しかしながら、保安庁内部におけるまじめな青年たちは、この通り私に手紙をよこしている。どうかこの機会に徹底的に粛正して、われわれ正しい保安隊員の名誉のためにお願いするという手紙が、匿名でなしに来ているのであります。私は決して保安隊の悪口を言つておるのではない。今直接侵略に対して出発しようという保安隊が、現状のごとく腐つた状態で、その上に増築してどうなるか。正しい自衛隊の発足というものは、保安隊の内部にひそんでいる悪の根源を一掃されて、メタンガスが出ないようにされてからおやりにならないと、後害を残すということを申し上げて私の質問を終ります。(拍手
  56. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 河野一郎君。
  57. 河野一郎

    河野(一)委員 私は時間があまりありませんので、ごく要約してお尋ねいたしたいと思いますから、主として総理大臣からお答えをいただきたいと思うのであります。  最初にお尋ねいたしたいと思いますことは、古いことは存じませんが、ごく最近の事実で申しますと、総理大臣内閣の諸公に対して、しばしば個々の問題について御指示に相なつておるようであります。私たいへんけつこうなことだと思うのであります。けつこうなことだと思うのでありますけれども、その総理大臣の指令されますることが、そのときどきの思いつきでおやりになるようなことが非常に多い。基本的に国政をおつかみになつて、大局から御指導になるならばけつこうでございますけれども、そうでない場合が多いように思うのです。しかも総理大臣の御意図でございますから、閣僚はこれを拳々服膺して、何らの批判もなしに実行に移される場合がある。なぜ私がこういうことを申し上げるかと申しますと、たとえば、くだらぬことでございますが、人造米の問題がその一番大きな例であります。総理大臣が人造米を非常に奨励された。そのために農林大臣は、人造米の特許権を三千万円も四千万円も出してこれを買い上げようとする。開発銀行は、人造米の製造設備のために多額の国家資金を振り出てようとする。そうして大騒ぎをしてどういう結論になつたかと申しますと、今度の議会で総理大臣施政方針の演説を聞きますと、人造米というような固形な食糧は跡形もなく、粉食の奨励をしきりに御演説になつておる。そのためかどうか、今日市中には人造米という声は、全然跡形もなくなつております。そういうことがひとりこの例だけではないのでございまして、各方面にそういう場合が見られる。外部には現われませんから、わかりませんけれども、一昨年の暮れに石炭の争議が起つた。そのために市中には石炭がなくなつた。そうすると重油ボイラーに切りかえて産業設備の更改をするようになつた。ところが一年たつて昨年になりますと、今度は重油の輸入を非常にきゆうくつにして、今度は石炭に切りかえなければならぬということになつておる。これも総理の御命令かどうかは存じませんが、往々にして、現内閣のやるところ、急角度に施策がかわるのであります。こういうことでありますから、政治に対する信頼感というものは非常に薄いと思う。そこで私はあらためて、この機会に総理から国政に対する二、三の問題についての基本方針を承つて、そうしてこれは絶対かえないのだ、間違わないのだということを国民に明示していただきたいという意味から、二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。  質問に入るに先だちまして、前回私がこの予算委員会で質問いたしました当時から、宿題になつております対米債権の問題でありますが、これは時間をとることを避けますから、ごく簡単に、その後の経過はどうなつているかというを、これはほかの方でけつこうでございますが、御説明願いたいと思います。
  58. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 対米債権と申しますのは、例の四千七百万ドルの朝鮮に対する残のことであろうと考えますが、これにつきましては、一般の平和条約に規定しております債権放棄の原則がありますが、これとは違う商業的の性質でありますので、別個に取扱う方針で爾来交渉もいたしております。しかしながら米国側におきましては、債権としては確定しておらないけれども、米国側としてのガリオア、イロア等の請求分もある、こういう主張でありまして、この問題の片づきまするときには、四千七百万ドルの問題も同時に片づく、こういう態度で現在来ております。ただいままだ交渉中であります。
  59. 河野一郎

    河野(一)委員 前回の委員会におきましては、アメリカのような非常に財政のゆたかな国と、日本のような財政の窮迫しておる、たとえば耐乏生活をして予算を切り詰めて行かなければならぬような国家とは、同一の立場におらぬでもいいじやないか。まずこちらから頼んでも立てかえた分は出してもらつてはどうかということをお願いしたのであります。それは今の外務大臣の御答弁、非常に私は満足いたしません、この前あれだけやかましく問題にしたのでございますから。しかもそのときに外務大臣は、非常に熱心に交渉中であるということを、この議場で御答弁になつております。ところが今日はあたかも忘れたるかのごとき態度で臨まれるというとは、私はあまり熱意がないと思う。そういうことだから、当時私が申し上げましたように、それに関する参考資料等がまつたく放擲されて、そうしてどこにどう行つておるかわからぬようなことになる、これは困るということを申し上げたのですが。しかしそれと明らかに関連いたしまして、ただいま御答弁になりました御答弁のうちに、これは総理からも御答弁いただきたいと思うのでありますが、総理はしばしば今外務大臣の御答弁にもありましたように、アメリカからガリオア、イロア等の援助を受けた、これに対する債務がこちらにある、これはわれわれ国民の名誉にかけても払わなければいけないということをおつしやております。払いたいものだということをおつしやつておりますが、それはどういう程度の金額であるか、どういうふうなお考えでそういうように話しておられるのか、これをひとつ総理からお答えいただきたいと思います。
  60. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。やがてこの問題は日米の間の交渉問題となるはずであります。交渉が妥結いたした場合には、金額も定まり、またこれが債権となるか債務となるかということも、自然きまるわけであります。
  61. 河野一郎

    河野(一)委員 その交渉に臨まれる際に、日本政府としてどれを債務とお考えになつておるか、どの程度の債務を持つておるとお考えになつておるか。あなたは、払わなければいけない、払うことは日本人の名誉だということを、しばしばおつしやつておられる。それはけつこうであります。向う側の好意でもつて、たとえばドイツの場合のように、ある程度棒引きをしてもらうというようなことになれば、これもけつこうであります。しかしこちらの方で払う必要のないものを、棒を引いてもらうというようなことは迷惑であります。そこで、どれだけのものはこちらでもつて払わなければならぬと、あなた自身がお考えになつておるかということを、承りたいのであります。
  62. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府は不必要なものは払う理由はありません。いかなるものを払うかということは、今後の交渉によるわけであります。
  63. 河野一郎

    河野(一)委員 交渉に入られる腹づもりとして、日本政府並びに日本国民は、いかなる債務をアメリカに持つておるかということを、お考えになつておるか。交渉してそれを負けてもらうとか負けてもらわぬとか、こちらでは払わせてもらうといつて、向うでは払つてもらわぬという反対主張をしておるということを、私は承つておるのではない。こちらの腹づもりは、一体どれとどれはこちらでもつて債務と考えなければならないと考えておるかということを、承りたいのであります。
  64. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは交渉の内容に属するものであります。いかなるものをするかということは、向うの希望もあるでしよう。要求もあるでしよう。そうして両方の間の交渉の結果、これが債務であり、これが債務でないということがきまるのであつて、いずれその債務ときまつたものは、議会に提出して諸君の御協議を経ますから、そのときに……。
  65. 河野一郎

    河野(一)委員 そういうことはないと私は思う。向うかうガリオア、イロアということで、こちらへ物資が来ておる。これは事実であります。その来ておる物資の金額は、向うでは二十億九千万ドルあると言つておる。これも事実なんです。現にあなたの政府の役人に聞けば、そういう統計を持つておる。これを一体考えておるのかおらぬのか。内容的に申せば、それをただ交渉の結果きまるのだ——無理に負けてもらうというのはまた別であります。こちらの義務はこちらの義務として考えるのは、一体どれを義務として考えるのか、決して私は交渉の内容を承ろうというのではない。もう一ぺんお答を願います。
  66. 吉田茂

    吉田国務大臣 何が義務であるかということは、交渉の結果きまるのであります。   〔「はつきりしているじやないか」と呼ぶ者あり〕
  67. 河野一郎

    河野(一)委員 何がはつきりしておるか。あなた今の答弁がわかりますか。   〔発言する者多し〕
  68. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 静粛に願います。静粛に願います。
  69. 河野一郎

    河野(一)委員 もう一度お尋ねいたしますが、交渉の結果きまるのだ——そういうものですか。交渉の結果きまるのだ。向うからこつちへ物資が来ておることは来ておる。来ておる物資をどれが一体交渉の結果——これは当然こちらで払うべきものだ、これは払わなくてもいいものだということは、きまつているじやないですか。それはどれが一体払うべきものであり、どれが払うべからざるものかということが、交渉によつてきまるのじやない。それはどうですか。   〔発言する者多し〕
  70. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 静粛に願います。
  71. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまのお話のうちで、大体全額につきましても、二十一億ドル余りという説もあり、二十億ドル余りという説もあり、それから十八億ドル余りという説もあるのであります。これは昭和二十四年以後のことは御承知のようにはつきりわかつておりますが、前のことは、ことに終戦直後のような場合は、わからない部分がまだあります。またわれわれの考えでは、その総額は別としまして、そのうちのあるものは、初めのうちは日本沖繩が同様に取扱われておりますから、沖繩に行つておる部分がある。こういう点もありますので、これはこちらの資料も十分とは言えませんが、相当程度の資料はあるわけであります。しかし向うの持つておる資料とつき合せなければ、はつきりしない部分も相当あると思います。従いまして総額につきましては、かりに日本に来た援助を、ほんとうに日本に来た援助という部分がどれくらいあるかということは、これは先方と交渉してみなければわからないと思いますが、ドイツの例に見ましても、数億ドルのものは除外された例もありますから、その点は考慮しなければならぬと考えておりますそれからドイツの例はかりあげるわじやありませんが、ドイツの例によりますと、総額がまずきまりまして、支払いの額はその約三分の一程度になつております。そうしてそれがある程度猶予機関がありまして、利子は払いますが、猶予期間のあとで払う。そういうわけでありますから、腹づもりとおつしまいますと、そういう条件は、われわれの腹づもりは持つておるわけであります。その意味で、ただいま資料を整備して今後の交渉に備えよう、こういうことになつております。
  72. 河野一郎

    河野(一)委員 外務大臣の御答弁ですと、幾らか私も質問が進むのであります。総理も今の外務大臣の御答弁を聞いていらつしやつて、交渉によつて金額がきまる——金額の最後の決定は、交渉によつて条件はきまるでしようが、それに臨む日本政府の腹づもりというものを、私は明確にしたいと思う。これはただいたずらにアメリカの恩恵にわれわれ依存したくない。恩恵は恩恵でこれはもう喜んで受けなければならぬ。しかし払う必要のないものを恩恵であるかのごとくされることは、私は不愉快なんだ。そこで明瞭にしておきたいというのです。だから今の総理のように、初めに条件国民に明確にしておくことが、アメリカの恩恵か何であるかということが同時に明瞭になり、日米親善もここから発足すべきものであつて、いたずらに親善を押しつけることはよろしくないと思う。  そこで次の質問に移りますが、これは外務大臣総理双方からお答えを願いたい。   〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕  ただいま外務大臣は、二十一億何千万ドルともいい、二十億何千万ドルといい、十八億何千万ドルともいう。それは政府の持つておる数字はそういうことになつておる。一体これだけの金額、これだけの物資が日本に来て、そうしてこれを今債務として支払いをしけなればならない、その交渉をしなければならない、恩恵に依存もしなければならぬというときに確固たる数字が得られない。しかも今外務大臣お話のように二十四年以後のものはわかつておる。これは私もそう了承しております。しかし二十四年以前に十一億何千万ドルというものが向うから来ておるという。ところがこれは全然日本の方には数字がない。あるというならある数字を私は見せていただきたい。これは占領軍司令部の管轄でやつておつたことであるから一方的につけておつたか、日本政府はどういうことか知らぬ。これはわからない。十一億何千万ドルというこれほど多額のものが、数字的根拠もなければはつきりした帳面もない。これをとりまとめて、ガリオア、イロアはわが国のアメリカに対する債務である債務であると、総理は言われるが、私は総理の反省を促したい。どれだけが債務なのだ。どれだけがどうだということをはつきり自覚なすつて、そうして日本人の名誉において、国家の名誉において、アメリカに対して、この債務を弁償するという気持にならなければいかぬ。アメリカの援助は援助だ、好意は好意だ、こういうふうに明確にいたしませんと——基本的にすべてが明確になつた上で、親善は生れて来る。交渉じやない。基礎がないものに交渉ができるか。その書類があるなら出してもらいたい。現に政府のどの役人に聞いてもないというじやありませんか。私は何もこの場で政府を問い詰めて、どうこうしようというような考えを持つているのじやない。政府の局長、課長さんにしばしば会つて、徹底的に調べてもらつておりますが、調べたところが政府はわからないという。しかもこれだけの多額の金額が——ガリオア、イロアによつて物資が来た、その金は一体どういうふうにしてどこに消えてしまつた。この金は何に消えているのだ。当時の貿易の帳じりで消えてしまつたと、こういうじやないか。   〔「片山内閣も芦田内閣も一緒だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  73. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  74. 河野一郎

    河野(一)委員 これに対してどういうふうに総理は交渉され、どういう腹づもりでおやりになるかということを明瞭にしてもらいたい。これを支払う場合にはこれからの国民負担において払わなければならぬので、この点を明瞭にしていただきたい。
  75. 吉田茂

    吉田国務大臣 あなたのお話は当然の話であります。書類もなければ証拠書類もないものを、政府としては払う義務はありません。
  76. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 補足いたしておきます。大体政府の方で調べておるところには、御承知のごとくに日本経済統計、JESと称するものによれば、一方的に受けておるものが大体二十億九千万ドルになつておる。向うから直接受けておる物資及びオフショア・プロキュアメントによつてよその方からかわつて来たものを合計すると、そういうものになつております。ところでこれについてはどれだけのことかということを今調べておるが、御承知のごとくに、二十四年四月以前は占領下で、向うが一方的につけておる帳面であるから、はたしてこれが正しいか正しくないものかわからないので、今度これを確かめるために、わずかながら予算を計上いたしまして、この調査をすることに相なつております。それではこの金が何に使われたかといいますと、これは河野議員も御承知のごとくに、あの時分は一様に事実行為として物が入つて来ておつたが、これを売るのに公定価格で売つておる。また外国から輸入するのにすべて高く買上げておる、こういうことになつておるので、いわば輸出入物資の価格調整金というものに使われたのが大部分であると思います。しかしこまかい数字は今のところ私持ち合せておりませんから、今後予算に計上してこれを調べよう、こういたしておるのであります。  それから二十四年四月以降の分が、河野議員が言われる八億四千数百万ドル、これははつきりいたしております。
  77. 河野一郎

    河野(一)委員 ただいま総理のおつしやいましたように、書類のないものは払う必要はないのだということになりますと、今申す通り八億四千七百万ドル、これはわが方のアメリカに対する債務としてわれわれは確認する、その他のものは確認しない、総理はこういう御決意だということに一応了承いたしますが、そういう方途でアメリカに交渉するということに了承してよろしゆうございますか、外務大臣
  78. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 書類がどの程度完備しているか、それについては、総理の今おつしやつたのは書類が全然ないものについては債務の負いようがない、こういうことだと思います。従いまして書類がありますものについては、これは慎重に考慮しなければならぬと思います。なお今おつしやつた昭和二十四年以後においては、これだけのものがある、こういうふうに考えれば、常識から見て、終戦以来昭和二十四年までの間、これは何もなかつたということは言えないと思います。しかしながら額等につきましてはドイツの例もあり、いろいろの関係がありますから十分考慮をいたします。
  79. 河野一郎

    河野(一)委員 今申し上げますように、昭和二十四年までは総司令部の所管で、今大蔵大臣のおつしやるようにやつておつたから、日本政府の方にはそれに対する記載がない。今総理の言われるのは、書類があるとかないとかいうが、アメリカの書類は日本政府の書類ではないから、これは認めないということに私は了承した。書類があるとかないとかいうが、日本政府に書類のないものは払わない、こういうことだろうと思う。しかしガリオア、イロアの総額ならば、これは今言う通り十八億がほんとうか、二十億がほんとうか、二十一億がほんとうか、どういつてもともかくあれだけの物資が入つて、少くとも今大蔵大臣の言うように昭和二十四年以降ば八億四千万ドル、二十四年以前は十一億何千万ドル入つておる。これは大蔵大臣の言うことも違う。売るものは公定価格で売つた。買うものは全部やみで高く買つたということになつてしまう。そこはその間に非常に変なことがあるということが出て来るから、当時の記録を調べまして——あなたも記録をお持ちでしようが、私も持つておる、これによれば輸出入の金額でいえば大して違わない。違わないのに十一億ドルのものが消えてなくなつてしまつたということでは断じて判断ができない。だからその間にいろいろな不正とか不当な処置が行われた。しかしこれは当時の総司令部の所管で主としてやつておつたことであるから、これに対しては責任は負わないと言われる。私は次の質問を急ぎますから結論的に申し上げますが、総理にこの際はつきり聞いておいていただきたい。アメリカの兵隊さんが来て占領直後であつたから、一方的に行政をして指導をして十一億何千万ドルのガリオア、イロアの物資は持つて来たけれども、これはそのときの行政上の失政から帳簿もなければ、日本政府責任を負う必要もないような形態でこれがなくなつてしまつておる。だからこれに対して交渉するというけれども、交渉は一方的にやつただけだというよりほかにしかたがない。それ以後の八億何千万ドルについては、わが方は責任を負うべき義務があるが、この点を国会を通じて明確にしておいてもらいたい。これを明確にしておいて、アメリカ側にはアメリカ側の言い分がありましようから、それに対してこちらは十分書類を整えて、交渉される、これは正しい行き方と思うが、その点について、ただむやみに無条件アメリカが持つて来たという、当時は非常にありがたかつたという、表面上非常にありがたいが、裏面においてどういうことがあつたかについては、われわれ国民として知らなければならぬということを、この機会に明瞭にしておきたいというのが私の意図であります。
  80. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の言うのは、アメリカの書類であろうが、日本の書類であろうが、検査をして、いやしくも日本政府義務に属すべきもの、日本が正当に払うべきものは払うべきだと思います。しかしそれは今後の交渉に属するわけだということであります。
  81. 河野一郎

    河野(一)委員 その結論は今総理のおつしやる通りであります。結論はそういうふうにして交渉によつてきめるべきものだ、これはその通りでけつこうですが、その前に大蔵大臣から調査費を計上して調査するという話でございますから、その調査の結果を待ちます。待ちますが、そういうふうなわれわれ民間人には意見がある。あまりアメリカがやり過ぎた、やり過ぎたものまで責任を負うというようなことはよろしくない。また同時に占領直後において、その間に非常に不正、不当があつたというようなこともわれわれは見のがすことができない事実だと思う。だからそれらのものについてすみやかに明確なる資料をおつくりになつて、そしてわれわれ国民義務義務としてお出しになる必要があると思う。無条件でガリオア、イロアはわが方が受けた債務だということを言われるのは困る。こういうことでありますから、その点をひとつ明確に銘記していただきたいと思う。  次に総理にお尋ねしたいと思いますことは、先ほども一言触れましたが、現在耐乏生活を要望せられ、物価の引下げを意図せられておるのでありますけれども、この道に進むために一番労働者の生活等におきましても強く考えなければならぬことは、食糧生活の問題だと思います。ところがこの食生活について、総理施政方針演説の中に粉食を奨励するというようなことがありましたが、これは人口問題にも関連いたしましようし、産業の問題にも関連いたしましようし、総括的にこれらの問題に対して総理はどういうお考えを持つて臨んでおられるのか承りたいと思うのであります。これは農林大臣の御答弁ではいけません。私は総理大臣の基本的なお考えを承りたいと思います。なければないでよろしゆうございますから承りたいと思います。
  82. 吉田茂

    吉田国務大臣 主管大臣からお答えします。
  83. 河野一郎

    河野(一)委員 いりません。農林大臣けつこうであります。農林大臣のお考えは承つて私は承知しておりますから、この機会に時間がないからよろしい。総理大臣がこの重大な問題をこの機会に宣明されないということは、総理大臣としてはなはだ遺憾であります。そこで議会で粉食を奨励して行くんだというておられるが、しからばどういう立場でこれを奨励されるのか。この予算を見ましても、粉食を奨励するというようなことは、学校給食をどうするとか、ごくささいなことであつて、これは国民全体に当面するところの今年度の、政府耐乏生活を要望するための施策とは考えられない。こういうものを掲げて、そうして総理国民全体の食糧問題に対して議会の施政方針演説をやられたというような内容が、この予算の中には見当らない。わずかに学校給食の金をふやしておるとか、畜産貧の金がふえておるとかいうような程度のものであつて、これは将来の粉食奨励にはなるでしよう、何十年先のことにはいいでしよう。いいでしようが、当面する食糧問題解決のために粉食々奨励してやるというような施策には全然あつておらぬ。のみならず政府のお考えを率直にここで私は逆の点を申し上げてみる。しからばなぜ総理大臣は議会で粉食の奨励を口にいたしながら、外国から買つて来る麦を輸入値段よりも上げて高く売つて、これで米の方をまかなつているじやないか。それでは粉食の奨励にあらずして、粉の値段、麦の値段を外国から安いものを来るのを高くつり上げて払い下げをして、そして粉食を困難ならしめているじやないか。これでしかもなおかつ粉食の奨励をするということを総理国会で演説ができるか。やつておることと、しやべることとは別じやないか。この点についてこれは所管大臣から事実をここでお話つてそれに対する総理大臣の所見を承りたい。
  84. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。耐乏生活だから食生活の改善をしなければならない、麦食を奨励するという考えは私は毛頭持ちません。ただ日本の食糧問題を解決して行ますためには、どうしても米食のみに依存して行くという長い習慣から脱却して、麦食に大きく依存して、行くような食生活を打立てられなければ食糧問題の解決は困難である、こういう点から食生活の改善を強く総理大臣からも国民に訴えていただいているわけであります。そこでしからば今日外麦の値段が安くなつている、外麦はそれで入つて来ている、それを安く、あるいはそれよりも安く提供をするということにすれば麦食の奨励になる。それはまつたくその通りでございます。従つて私どもも昨年来麦は間接統制にし、今日では自由にいたしておりますが、麦の価格をできるだけ安いところに置くというための努力は、今日まで払つてつております。同時に考えますのは、内地の農家の——私は今後はやがて米にも及んで来ると思いますが、内地の農家経済を保つて参りますためには、農家経済を立てて行く麦の値段、米の値段というものが必要になる。これはどうしても守つてやらなければならぬ。そういう上からおのずからここに消費者に提供する麦の価格というものは内外総合した価格において安定をはかつて行くということが私は正しい行き方じやないか、こういうふうな考えで現行の運用をいたしている次第であります。
  85. 河野一郎

    河野(一)委員 総理大臣の所感を聞いてください。
  86. 倉石忠雄

    倉石委員長 答弁がないようでありますから……。
  87. 河野一郎

    河野(一)委員 農林大臣の御答弁はいらないのでありますけれども、私の聞いたのは、外国から幾らで麦を買つて幾らで払下げしております、その間で幾らもうかつております、これをこのほかの方面にどういうふうに使つておりますという事実をあなたから承りたかつた。そしてそれを承つて総理大臣にあなたの言つていることをどうだということを聞きたかつた。  次の段階に進みますが、今の農林大臣の言うことでも非常に遺憾な点がある。それはここで労働大臣なり大蔵大臣にも関連して参りますが、今政府はすみやかに明年度内に五分ないし一割の物価の引下げをして、輸出入のバランスを合せるようにして行くことが、今回の予算編成の基本方針だということを総理大臣以下しばしば述べておられる。そういうことであれば、一番大衆の生活の基礎である食糧の問題はどういうことになるか。食糧の価格の問題はどういうことになるか。これが一番大きな問題だと私は思う。そこで今農林大臣のお述べになりましたように、将来永遠の日本の食生活の変更がどうだこうだというゆつくりしたことを今私は議論しているのじやない。この予算と相並行して、この予算を運用することによつて、そうして物価を引下げをする、生産費を下げる、労働者の生活状態をよくして行きますためには一番大事なことは、食糧問題じやないかということで私は承つているのです。であるにもかかわらず、今申すように麦の価格を米の方に置きかえをしているというようなことで、ただ予算を一兆を越えないというようなことや、そういうことにばかり専念をして、内容的にそういうことについては、ほとんど数字の入れかえやそういうふうなことで、悪く言えばごまかしているじやないか、そういうことを私は遺憾に思うのであります。そういう意味でこの際所見をただしたいのであります。総理が答えなければ大蔵大臣にお答えを願いたい。
  88. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 食糧につきましては、二十九年度予算では一切価格を上げるという政策をとつておりません。そのほかのものにつきましても、政策の力の及ぶものについての価格は、極力これを上げないように努力しておることは御承知の通りであります。従つて運賃等につきましても、やむを得ざる一、二等の旅客に対して二割というくらいで、あとは上げないような措置をとつております。  物価引下げの問題につきましては、これは総合施策でやらなければならないことは、河野さん御承知の通りで、私どもは一切の総合施策で今力を傾けておる次第であります。そして実質的な収入、実質的な賃金をふやして行きたいという政策をとつております。
  89. 河野一郎

    河野(一)委員 私は明年度食糧の価格の引上げをしないということはわかつております。わかつておりますが、そういうふうに物価の引下げをやり、労働賃金がだんだん減つて来るだろうというようなときに、引上げをしないでは済まない。ほかのものに対しては下げるような施策をとるのだと言いながら、自分でやるものはそのままにしておくのだということは、逆にいえば上つているのと同じことだと私は思うのです。政府は物価の引下げを意図するのだというのなら、自分でやるものからまず始めて行くということが必要だと思うのです。そうすれば一般民間はそれにつれて下つて行くが、自分でやるものはそのままにしておいて、人にばかり下げることを要望するということは正しくないと思う。ことに今申し上げるように、米を上げようとしておりませんとかなんとか言うが、これはただそこでつじつまを合わすということをしておるだけである。そして上げないために今のように外麦の安く入つて来るものを置きかえをして数字を合せているじやないか。安いものが入つて来るなら、安いものを安く食わしたらいいじやないか。前回の委員会の際にも私が申し上げた通り、外国の労働者諸君が食べる食糧というものはどんどん下つて行きます。現に下つて来た、もつと下ります。外国の労働者諸君の食うものはどんどん下るが、日本の労働者諸君は、その安いものを買つて来て、高く上げて食わされておる、それで外国と同じバランスに持つて行こうとしても無理じやないか。そういう点において政府はほんとうの施策がなければいけないじやないか。総理大臣そういうことについてはつきりした臣ことを承りたい。さらに申せば政府は昨年の暮れに現在の食糧管理制度がよろしくない、こういう管理制度をやつてつてはいけないからということで、予算通過の際に三党の申合せによつて政府から今の食管制度については格木的に改めましようというお話だつた。改められるのかと思えば、今ごろ委員会をつくつてふらふら研究をして、そして今年の秋までにやればよかろうというようなことを言う。一体いつまで内閣をやつておいでになるつもりなのか。当面の問題にお困りになるじやありませんか。今の食管制度を根本からかえるということをなさらなければ、大蔵大臣予算を組むのに一番お困りになると思う。たとえばこれはほかの諸君からは反対されるかもしれませんが、総理が先般九州で、知事の民選はよろしくないということをおつしやつた。これには私は大賛成であります。現在の食糧管理制度を持続する限りにおいては、知事の公選では絶対にいけません。知事の公選を支持されるならば、食糧管理制度に放擲されなければいけない。この両者択一でなければ運営できません。できないという現実の事実として今年の割当はどうでありますか。昨年の暮れから今年にかけて、政府は供出米の割当をした。この割当のいかにずさんであり、いかにでたらめであり、いかに国費を濫費したかという現実の事実は、各地に統計として現われておる。これに対して何ら知事が恥じるでもなければ、うまく政府をだましてやつて得をしたというような態度をとつておる。また政府もだまされて、みずからの責任を負おうとする人もない。しかしこれをすみやかにかえなければ国家の財政は持たぬと思う。にもかかわらずこれに対しては全然積極的に推進しようという熱意がない。であるから私はこの問題を特に取上げて、総理から確固たる信念を承りたいと思う。この問題を持ち出したのはこのゆえんであります。東北のある県では割当をするときには米がないないと言つて、割当を受けて持つて帰つたら、割当の倍も供出をしておる、そういうでたらめなことをやつておる。そうして国費を濫費せしめておる。こういうばかなことをそのまま政府はだまされてやつてつて、それでよろしいとお考えになるのか、一体このままでどういうことになるとあなた方はお考えになつておるのか。ただその場その場でその日が過ぎて行けばよいのだということよりほかには何らお考えになつてはおらないのじやないかとさえ思う。時間がありませんから、この問題は全部まとめて申し上げておく。  さらに外米、外麦の輸入についてもそうだ。三十も四十もの輸入商社を依然として整理もしなければ、銀行に多大の負債を持ち、基礎もなければ根拠もないような輸入会社に、実績割当だとかなんとかいうことでは、日本の大蔵大臣がいかに貿易を振興なさろうとしても、現在のような基礎薄弱な貿易業者が市中にうろうろしておつて、これがあらゆる権力者とつがりを持つてつておつたのでは、断じて正常な貿易はできぬと私は思う。その一番大きなものは何だといえば、外米、外麦の輸入なんだ。これを政府が断固として処置されて、少くとも五社ないし十社の輸入業者に整理されれば、これによつて日本の貿易は正常に発達して行くと思う。こういう点についても何で時局に即応するような施策をとらぬか。そういうことをうろうろしておるから疑獄が起り、不正事件が起つて来るのだ。ほんとうに国民耐乏生活を迫り、庶政を一新してやろうとするならば、まずみずからのできる範囲のことを全部整える必要がある。自分でやることは何にもやらぬでおいて、ただその日暮しで、総理施政方針演説で述べたことを、ここでもつてあらためて詳細に所見を述べろと言つたならば、所管大臣に述べさせる。積極的に機会を与えても、自分で一言でも述べるといつた熱意もない。そういうことでほんとうのことができるとお考えになるのかと私は思う。この機会に総理が言われれば総理から伺いたいが、総理にはまたあとで聞くことがありますから、この問題については大蔵大臣から所見をただしておきたいと思う。
  90. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この席上でもたしか前会であつたと思いますが、現在の食管制度は非常に欠陥が多い。これを根本的に改むべきであるということを私は率直に申し述べておいたのであります。また今河野委員が言われるように財政的見地から見まして、いつまでも生産者本位のみの——もともと食管制度は、消費者本位でできたように思われるものであるのに、今日では生産者本位のみの食管制度になつておる。この点はまことに遺憾な点が多い。従つて根本的にこれをかえるべきであるということを、私は率直に申し述べたのであります。現在内閣総理大臣のもとに今度の委員制度ができ、各方面の権威者を網羅しておりますから、それらの結論を得た上で至急にやりたいと思いまするが、何しろ食糧問題というものは農業政策、あるいは全国民の経済生活に密接な影響があるのでいくら急ぐからといつて、今ここでその結論をまたずにやることは困難なので、その結論をまつという次第であります。  なお今の輸入商社の問題については、私どもは商社の強化がきわめて必要であると考えて、この点は通商産業省あたりとも打合せして、是正措置もとるけれども、商社の強化策をとらなければいかぬのじやないかということで、漸次具体化して参ることと考えております。  大蔵省の所管については、私どもは別に価格を上げるというようなことはいたしておりません。できるだけ引下げの方針で進んでおります。
  91. 河野一郎

    河野(一)委員 時間がありませんから次の質問に移りますが、その移るに先立つて、これは特にお答えを要しませんから、総理大臣に聞いておいていただきたいと思う。今大蔵大臣からもお述べになりましたが、食糧政策の上において一番お考えをいただかなければなりませんことは、農村救済と食糧政策と混淆して考える悪弊があることであります。食糧問題は八千五百万全国民の問題であつて、農村問題はその一部の問題であります。それを農村の振興、農村の救済のために食糧問題を非常に重く考えられることは間違いだ。この点を総理大臣は銘記しておいていただきたいと思いまするし、なお御意見があれば承れればけつこうでありますが、これは銘記しておいていただきたいと思う。従つて今後の食糧問題、食管問題等をお考えになります際には、その点を十分に考慮して、そうして米か不作であつたらば、農村振興費としてこれはおとりになるべきだ、農村救済費として考えらるべきであつて、ただちに米価を引上げることによつてこの問題を解決する、引上げた米価はただちに勤労大衆に転嫁されるということは絶対に間違いだ。農村の救済振興は農村の救済振興として国家的に考えるべきであつて、これを個人の負担に転嫁することは間違いだということをよくお考えおきを願いたいと思う。  次に私はその問題はそれらにいたしまして、これから少し最近政界議会で問題になつております犢職事件について意見を述べて総理の御意見をただしたいと思うのであります。  申し上げるまでもなく、今国会当初以来一般国民に政界に対する不平と不満で非常に大きくなつて来たことは、見のがすべからざる事実であります。われわれ議会人はもとより、政府におきましても、これら国民疑惑と不満を一婦することに努力をいたさなければならぬ当然の責任があると私は思います。近時、特に今朝の新聞等を見ますると、これは同僚先輩のことを申し上げて恐縮でございますが、こういう問題を議会が取上げるということは、いたずらに疑惑を増すのみでよろしくない、こういうことは議会がやらぬ方がよろしいというような意見を述べておられる人もあります。しかし私は非常にこれは間違いだと思います。なぜなれば、かかる国民的な疑惑や不満を議会が取上げずしてだれが取上げますか。これはただ単に司法当局に一任しておけばよろしい問題では断じてありません。たとえば司法当局の対象にならざる問題は、政治家政府は何をしてもよろしいということではないのであります。政治的、道徳的責任は別でございます。政治的、道徳的責任に対しては断固として議会はこれを追究しなければならぬのであります。それを免れて恥なき態度をとるに至つては、断じてわれわれは容赦するわけには参りません。これを先般の総理の御答弁のように、事理が明日になつたらば云々というがごときは、まつたく私のとらざるところであります。進んでこれらの問題に対しては理非を明らかにして、司法権が取上げなければ何をしてもよろしいのだ、どういうことがあつてもよろしいのだというようなことでは断じてならない。この点をまず最初に私は明瞭にいたしたいと思うのでありますが、私の考えが間違つておるかどうか、総理の御所見をただしたいのであります。
  92. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府考えはしばしば申し上げました通り、司法の手によつて問題の全貌が明らかになつた場合に、政府は適当な処置をいたします。
  93. 河野一郎

    河野(一)委員 司法権の追究を受けておる問題はもちろんその通りであります。司法権の追究を受ける対象に、刑事事件としての刑法の対象にならない問題であつても、政治家としては当然政治信義、道徳において負わなければならぬ義務がある問題が私はあると思う。こういうことに対してはどういうお考えか。刑法の対象になるようなことをしなければ、犯罪の事実を構成しなければ、政治家は何をしてもよろしいというお考えであるのかどうか、これを私は総理に承りたい。あなたの御答弁によりますと、今現に検事当局が取調べしておる、警視庁が取調べしておるから、その結果を見て何とかすればよろしいのだ、こういうことになりますと、犯罪にならなければ一切の責任はとらぬでもよろしいのだということになるが、それではたして国民は納得ができるか、国民の不平や不満は買わずにおれるかどうかということを承りたい。これに対して私はそれはいかぬもんだ、これはよろしく議会としてはそういう問題を取上げて、われわれは、深く反省すべきは反省し、追究すべきは追究し、またそれが政府の一部にあれば、糾弾すべきは糾弾することが議会に課せられたる当然の使命であると思うが、この考えは間違つておるか、これに対して総理の所見をただしたい、こう申し上げた。
  94. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申しましたことは前言の通りであります。事件の全貌がわかつた上で、決して刑事上の責任ばかりではない、道徳上の責任政治上の責任も本件の問題の真相がわかつた上に政府は善処する。
  95. 河野一郎

    河野(一)委員 総理は本件々々と申しますが、あなたの言う本件とは一体何なんですか。本件などとおつしやるが、あなたはここで何をお聞きになつたか、新聞をごらんになつたのかしらぬが、私の申し上げているのは、ただ単に保全経済会の問題とか、造船疑獄の問題とかいう限られたことを言つているのではない。世間で言われていることはたくさんあるのです(「みんな出せばいいじやないか」と呼ぶ者あり)出すことがいいか悪いか今総理と問答しているところなんだ。そういうことを追究するのがいいのか、悪いのか。総理の方では裁判でわかつたらそこで責任をとるということでありますが、そういうことについてあなたは今本件本件とおつしやるが、あなたのおつしやる本件以外にたくさんある、こういうことを私は申し上げている。そういうものについてはあなたはどういうことをお考えになりますか、こう申し上げている。
  96. 吉田茂

    吉田国務大臣 本件という言葉が悪ければ、あなたの御指摘になつた汚職事件一般を言うのであります。
  97. 河野一郎

    河野(一)委員 あなたのおつしやる汚職事件全般と申しますと、それは全部検事局で告発をして、検事局が白い黒いをつけて、その白い黒いがきまらなければ責任をおとりにならないし、政治家責任をとる必要はない、こういうお考えですか。
  98. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申すのは、事態の真相が、全貌がわかつた上に処置をする。
  99. 河野一郎

    河野(一)委員 わかるということは、検事局もしくは司直の手によつて決定したらわかるのだ、こういうことなんです。ところが国民の不満や疑惑はそういうことではない。それならば順次申し上げます。私は実は本日はわれわれの同志と相談をいたしまして、この問題の取扱いについては特に慎重を期するように、さらにまたこの問題の取扱いは結論に入らぬようにという先輩同志の御注意を受けて参りましたので、その心づもりでこの質問をしようとするのでありますが、あまり答弁がかえつて世上疑惑心を持つようなことになれば、好ましくないことまでもここで一応批判を受けなければならぬと思うのであります。(拍子)  第一に私が申し上げたいと思いますことは、これは大蔵大臣にひとつ御答弁を願えばけつこうだと思うのであります。今日全国民は、言葉が不適当であるかもしれませんが、おそらくいかにして税金を要領よく払おうか——脱税という言葉を避けます、要領よく払おうかということで、二重帳簿をつけてみたり、つまらぬ遊興をしてみたりすることが全国民の風習だと私は思う。おそらく一流会社であつても、ほんとうに公正妥当なかつて戦争前に国民考えておつたような納税観念というものは、およそかわつておると思いまするが、これに対する大蔵大臣の御所見はいかがでありますか。
  100. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 多少納税観念の低下の見受けられます面のあることは、まことに遺憾に存じます。
  101. 河野一郎

    河野(一)委員 そういうことのために、国税庁がしばしば政府の意図のもとに、つまみ食いのようにいろいろな会社の脱税事件の調査をしておるということが、非常に国民の間に疑惑を持たれております。この国税庁の各会社に対する調査は、一定の基準があつておやりになつておるのか、どういう標準でこの国税庁の調査をおやりになるのか、これを承りたい。
  102. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 基準等については国税庁長官から申した方がはつきりするかと思いますが、ただはなはだしいことを耳にした分についていたしますとか、あるいはまたほかとの振合い上これをやるというような分はあるように承知しております。こまかい標準等については政府委員から答弁させます。
  103. 倉石忠雄

    倉石委員長 後ほど答弁を申し上げることにいたします。
  104. 河野一郎

    河野(一)委員 これは総理はよく聞いておいていただきたいと思う。私がこの質問をあえていたしますゆえは、国税庁を使嗾して政界の有力者が脱税の調査をさせる、そしてある程度まで進んだときに、逆に裏にまわつてもみ消し運動の方に向つておるという事実が各方面にうわさされております。一例をあげれば日本通運の問題のごとき、その尤たるものであります。これについては某党の非常な有力幹部が関係をしておられると世間では言うております。しかも昨年の前国会等において、この事件の内容が非常に大きくて複雑であるし、しかも相当の資料が当時われわれにあつたのでありますからこの問題を特に決算委員会で取上げて取調べをするようにということを、現決算委員長の田中彰治君にわれわれはわが党の同志として要求したのであります。ところが委員長が自由党にかわられましてから、この問題をお取上げになることを阻止しておられると承つております。かくのごときはいたずらに疑惑を増すのみであります。もし必要があれば私はここに書類を持つておりますから、これを朗読してもよろしい。そういうことで、今申し上げるように、税金に対して二重帳簿をつくつたり、いかにして脱税しようかというような国民全体の弊風がある。これは税制が妥当でないからだと私は思う。税金をとるのは、脱税をしないでもみんなでもつて気持よく出せるようなつぼにはまつた税制の改革になつて来れば、その金額を出すのに二重帳簿をつけないで、出すだけのものは出すというように国民との間がぴつたりして来れば、そういうことはなくなる、いたずらに国税庁が横行してみたり、でたらめなことはやらなくなる。現に国税庁の脱税の問題を自由党の多数派工作のときにも使つたやにうわさされておるということもあります。(有田委員「うわさだよ」と呼ぶ)ほんとうのところはやつているんだ、ただうわさにしておくだけだ。——かくのごときに至つては断じてわれわれは承服できない。これについてすみやかに税制を改正するということも必要でございましようし、これは総理その他政府の各大臣特に大蔵大臣等は、当然決算委員会で白い黒いをはつきりおつけになつた方がよろしい、この点を私は特に申し上げておく。  次に、造船の問題について申し上げます。この機会に総理大臣御列席の上で率直に運輸大臣からお答えを願いたい。今日の世上伝えられておりますような造船疑獄は、起るべくして起つたのだということを運輸大臣としてお考えになりますかどうか。たとえばあなたは先般の運輸委員会において、今度は監査委員か監査官、監査の役人を置いて各会社の内容を十分に調べるようにしたからこれからは厳重にやりますと御答弁になつておる。こういう答弁をされることが私はいかぬと思う。なぜいけないか。新聞で読みますと、今度は真剣に調べるぞという感じを与える。また運輸大臣が、下僚から今度は調べるから大丈夫でございますと、報告をされて、それで満足しておるならばとんでもない間違いなんだ。なぜならば、あれだけ広汎に及んであれだけの天下の大会社を調べるのに、何人の人間で調べておいでになるか、その監査をする人間は一体何人ある。私の聞くところでは、わずか十五人か十六人だというじやないか。十五人や十六人の人間を置いて、これでもつて船会社を全部調べるから、これからは間違いがないというようなことを言うことは、とんでもないことなんだ。私に言わせれば強盗がかぎを持つたようなものなんで、調べに行つて逆に変なことをつかまえてまたおどすくらいのものなんだ。なぜ調べるならば徹底的に調べるだけの組織をおつくりにならないのか、それを置かないで、表面上わずかばかりの十五人や十六人の人間を置いて、それで船会社の帳面は全部監査するからこれからは不正はなくなるというようなことを答弁して、それで世の中を通つて行こうといつても、そういう心組だからあとからあとから造船の不正が出て来る。あまりそういうことを言うと有田君がやじるから、ひとつ具体的なことの内容を申し上げてみましよう。だれにも関係のないことで申し上げれば、たとえば山下汽船、これは問題になつている会社だから言うてよいと思う。山下汽船一社が今までに使つた金、政治の金もありましようし、いろいろな飲み食いもありましようが、いわゆる不生産的に使つた金だけで五億といわれております。でありますから、この問題に関係しておる六十何社の船屋ではまず全体で百億は使つているだろう、これが世間の常識なんだ。これは全部国家資金もしくは国家の補償する金じやありませんか。それが現に山下だけで五億使われておるといわれている。こういうでたらめなことで、これをわれわれが議会で問題にせずしていられますか。総理大臣のように司直の決定を待つてから云々するというようなふざけたことを言つてつて、それで今年の予算にこういう補助金が組んであつて、何で一体われわれが黙つて通せますか。なぜならば、この点を運輸大臣から承りたいが、現在基準航路たるニューヨークに船が一航海行つて来たならば幾ら欠損になるか御承知ですか。
  105. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 さつき監査の問題についてお言葉がありましたから、お答えをいたします。  監査制度は利子補給というものが法律化し具体化した後に設けられた制度でございます。それまではいろいろなこまかい問題について、会社の経理に立ち入つて報告をとり、実地監査等をすることができない建前だつたとわれわれは了承しております。利子補給法が出ましたので、それによつて私どもは監査をしつかりやりたい、こう思うのであります。御承知のように非常に人数は少うございます。定員の問題やいろいろありまして、その中でいろいろやりくりいたしまして現在は十五名ほどで報告をとり、それを調べておるわけでございます。だんだんやつておるうちに、またそれを基礎といたしまして実地検査等もやるつもりでございます。また今中で話をいたしておりましても、もう少し人のやりくりをして人数をふやし、少しでもりつぱな監査ができて、そして間違いを未然に防ぐような状況に持つて行きたいということが私どもの念願でございます。  それからもう一つは、どれだけニューヨーク航路で損があるかということについて、私詳しくはまだ承知いたしておりませんが、今日の場合たいへん競争な状態は御承知の通りでありまして、一航海に償却費を含みまして二千万円くらいな損失があるということを聞いております。これはニューヨーク航路だけでありませんが、そのほかの定期航路におけるはげしい競争の問題も、何とかしてここでスムーズに持つて行こうということで絶えずいろいろな面から注意を与え、勧告もしておりますが、御承知のような状態になつておるのであります。
  106. 河野一郎

    河野(一)委員 今運輸大臣のお答えになりました通り、一航海標準航路のニューヨーク航路を行つて来ると二千万円損が行く。二千万円損の行くことがわかつてつて非常に競争がはげしいとかなんとかおつしやいますけれども、これはあたりまえなんです。そこで一航海行つて来れば二千万円損の行くその船を、三倍も五倍もつくりたがるのは一体どういうわけか。ここに問題が起つて来る。われわれの常識では割切れない。ニューヨーク航路一航海行つて来れば二千万円損なのだ。これが特別の異常状態じやない。現在の状態はあたりまえの状態なんです。あたりまえの、平常の状態で一航海ニューヨーク航路を行つて来れば二千万円の損が行く。これでは船屋さんは、いくらあつても身上が足りないから利子補給をするのだ。一方で利子補給をするのだといつて政府は補給する。ところが一方においては、その割当の倍も三倍も申込みがある。この事実は何を物語つておるか。正常な商売ならば損が行くけれども、割当をもらえばもうかるから、割当の方には非常に申込みが多い。このくらいのことは私が言わなくても、大蔵大臣でも、運輸大臣でもおわかりだろうと思う。だから現に今申し上げたたとえば山下汽船の例をとつてみても、運転資金ということになつておるそうでありますが、これは洗つてみれば欠損なのだ。欠損がすでに十五億もあるといわれておる。それが事件の対象になつてああいうことになつておるという状態で、現在のこの海運に対する政府の処置では当然疑獄事件が起るべくして起つておるのであつて、起るような要素を見のがしておいて予算を組んでおるというふうに私は思うのですが、そういう点に最も明敏な大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  107. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この予算の計上は御承知のごとく二つありますが、一つはいわゆる造船資金の方を開発銀行を経て出す、この関係であります。この分を昨年より減額いたしておりますのは、これは財政投融資が減つた関係でやむを得なかつたのであります。大体高速船、中速船を半々と見ますれば、十何万トンぐらいはこれで行けることになつておりますが、造船は御承知のごとく造船五箇年計画で年三十万トンやるのが、今度は十何万トンというふうに見ておるのであります。  それからもう一つは利子補給の問題であります。利子補給の点は、実は御承知のように世界各国とも、大体三分五厘くらいの金になつておるのであります。私どもも日本の国際的に働く船が、金利の点でよそと差別待遇があるのはまことに遺憾だから、日本だけは高げたをはかぬように、よそと同じように三分五厘のくつをはかそうというので補給をしておることは御承知の通であります。それならばどういうわけで一航海二千万円も損するのに船をつくるのだろうか、これに御疑惑を持つのは当然と思いますが、これは河野さんもよく御承知の通り、船というものは十年に一ぺん当ればいいとかなんとかいうことを昔から言われておりまして、十年間に一、二年好況期があります。一、二年の好況期がありますと、それであとの七、八箇年の部分をとりかえすのが従来の例になつておるので、そこで損を覚悟してもやつておるのではないか、どうもそういうふうに私どもは聞いておるのであります。
  108. 倉石忠雄

    倉石委員長 河野君に申し上げますが、お持ちの時間が切迫して来ました。
  109. 河野一郎

    河野(一)委員 なるべく早くやります。今小笠原さんからもその片鱗をお漏らしになつたが、そういうばくち打ちのような金を国民の負担にされては困る。十年に一ぺん当ればいい、十年に一ぺん来るだろうということで出されることは困る。そうでなくして、行政は当然合理化すべき点は徹底的に合理化し、そうして国内の海運、造船について根本的にメスを入れるべき点は入れて、現在のように何もしないで政府の割当、割もどし金だけをとつて、そうして遊んでおるような船屋を濫造してしまつた、この責任が——私はいけないと言うのだ。それをいつまでも育成しておくことがいけない。そういう船屋をなぜ一体整理ができないのか。そんなものがあるからいたずらな競争が起る。造船所にしてもまたしかり。この裏にはみな有力なる政治家のひもがついているからできないのではないか。ここに疑獄が胚胎するのではないか。これをはつきりしなければ金を出してはいけないのじやないか。いくらあなたが今のようなことがお出しになつても、出した金は裏へ抜けるのではないか。これが政治家に対する背信、不徳、疑惑のもとになるのだ。今のような事態において、まだ平気な顔をして金を出して行く、それ自体が当然疑獄を生むような温床をつくりつつ、知らぬ顔をしていることになるのではないか。これを私は言いたい。この点を議会としては、世間で何と言おうがまず第一に深く反省をして、そういう点について、政府はすみやかに除去しなければいかぬではないか。そういうものにたとえば大臣関係しておられる人があれば、その大臣は、アメリカの例をとつてもそういう会社からどんどんおやめになつて関係をお断ちになつて疑惑のなくなるようになさらなければいかぬではないか。そうしてそういうことをきちんとしてしまつて、これで議会はもうりつぱでございます、きれいでございますと言うようでなければいかぬではないか。こういうことは、何も吉田総理の言うように司直の手にまたなくても、当然なすべきことではないか。なすべきことをなさないから、われわれはいろいろなことを言わなければならない。言うてもなおかつ、そういうことで、もつれるようになるのである。早くそういうことになさらなければ絶対にいかぬと私は思う。  さらに申し上げる。たとえば国有財産の処分の問題についても私はお考えを願いたいと思う。委員長から御注意がありましたから、これはごく大ざつぱに申し上げる。たとえば昨年われわれ同志が強く問題にいたしました鉄道会館の問題、さらにまた四日市燃料廠の問題、これらは最も多く世上にうわさされている問題であります。そういうように一々国有財産処分に関する問題を拾い上げてみれば枚挙にいとまがない。こういう問題について、なぜ世間の疑惑を一掃するようにしないのか。一部の財界人や一部の政界人が一緒になつて、これらに暗躍するという事実が刻々に出て来る。こういうことを明るみへ出して、そうしてはつきりと処分をするようなことにおきめになつたらどうだということを——これらについてこれだけ社会に疑惑と不平が起つた以上は、今までのやり方が悪いのだということを政府はすみやかに反省しなければいかぬと私は思う。そういう点についてこの内閣は何ら反省がない。であるからそういう問題が起つて来る。航空機製造事業法に関係する問題でも、非常に大きなうわさが飛んでいる。その他ドルの割当の問題についてもうわさが飛んでいる。ただ単に保全経済会の伊藤君がやみドルのことでもつて——民間の一私人ならばやみドルのことで警視庁へひつぱつて行く。ほかの人はどうですか。今日有力な人でやみドル関係者はたくさんおるでしよう。それらは警視庁は何ら手をつけない。こういうことで国民が納得できますか。通産省でも大蔵省でもドルの割当についてどうですか。朝鮮ののりを輸入するときに、このドルについて自由党の某幹部に対して、ドルの不正な割当をしたといううわさも立つておる。バナナの輸入について、自由党の某幹部が関係しておるといううわさも立つておる。そういうことは枚挙にいとまがない。これらはいずれも法の欠陥です。そうして日銀でガラポンをやるべからざる日に内緒でもつてガラポンで当つたような顔をしてドルの割当をしたり、そんなことはちやんとわかるんです。そういうことを一々ここで上げれば枚挙にいとまがありませんが、しかし私は、これを要約して、政界が今日のような状態ではいけない、深くわれわれは反省をしなければいけない、それには政府は率先垂範して、みずから反省して、直すべき点は根本的に直したらどうです。直さぬで、今のような予算を、そのまま施行し、そのまま行政を続けることは妥当ではないじやないか、にもかかわらず吉田総理のごとく、ああいう態度は私はいかぬと思う。それからさらにまた議院運営委員会で、委員会で取上げることは待とうじやないか、こういうふうな態度でどうして国民が納得できるか、これでは民主政治の否認になるじやないかとさえ私は思う。であるからこの点を強く言うのであつて、これについて深き政界の反省と、政府のこれに対する厳格なる態度がないならば、私はこの信念はまげませんから、あらためて機会を得て——きようは反省を促しておきます。あらためて私は私自身の信念で、徹底的に糾明をいたします。この程度で質問をやめます。
  110. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにて暫時休憩いたします。    午後一時二分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかつた〕