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1954-02-05 第19回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月五日(金曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    高橋圓三郎君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       福田 赳夫君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       稻葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       中曽根康弘君    古井 喜實君       足鹿  覺君    伊藤 好道君       滝井 義高君    武藤運十郎君       山花 秀雄君    横路 節雄君       川島 金次君    河野  密君       小平  忠君    堤 ツルヨ君       西村 榮一君    吉川 兼光君       辻  政信君    河野 一郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  愛知 揆一君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員          法制局長官  佐藤 達夫君          保安政務次官 前田 正男君          大蔵事務次官          (主計局長) 森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算外三案を一括議題といたします。質疑を継続いたします。稲葉修君。
  3. 稻葉修

    稻葉委員 私のこれから政府に問わんとするところは三点であります。第一は憲法改正に関する問題、第二は民主主義政治議会政治擁護に関する諸問題、第三は予算内容についての二、三重要な点に関して質問をいたします。  まず憲法上重要な問題である防衛問題について、一昨々日野党の武藤運十郎議員の質問に対し、政府長期防衛計画については、この変転流動きわまりない世相の上からして立てられるものではない、また立てる感恩もない、こういう木村保安庁長官の御答弁がありました。私は、これはきわめて事業大であると感じましたので、委員長から関連笠間の了解を得て再び念を押しましたところ、あくまでも長期防衛計画は立てないのだ、こういう郷答弁でありました。昨年の九月二十七日、古山総理は突如鎌倉に重光改党総裁を訪れて、両者間の会談の一致した意見として公表せられたるものは、駐留軍の漸減に即応し、自有力を増強して長期防衛計画を樹立するとはつきり書いてある。そうするとこの二人の会談の結果、爾来会を重ねること十四回、三党の防衛協定というものは進んで来ている。しかるに長期防衛計画は樹立しないのだということになりますと、重光吉田会談は御破算になり、三党防衛協定はこれより継続する必要はないということになるが、それでもよろしいか総理大臣の御所見を承りたいと存じます。    〔発言する者あり〕
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 木村保安庁長官が先に答弁をいたします。
  5. 木村篤太郎

    木村国務大臣 武藤君の質問に対して、稲葉君より関連質問の点についてただいま御質問がありましたから、お答えいたしたいと思います。  武藤君に対しての私の答弁は、防衛計画というものは、長期の根本のものは容易に立てられ得べきものではないという趣旨を申したのであります。と申しますのは、もちろん一国が独立国家となり、また外敵の侵入に対処すべき自衛隊ができる場合においては、防衛計画というものは立てるべきであると私は考えています。ところで根本的の防衛計画と申しますと、ただ兵力量だけではいかぬのでありまして、いわゆる総動員的の、あるいは輸送面からも、あるいは備蓄の面からも、あるいは兵器生産能力の点からも、あらゆる角度から総合して立てられなければならぬ。そういたしますと、なかなか容易なものじやない、十分な研究をしなければ容易に立てられるものではないのだ、こういう趣旨で私は申したのであります。決して防衛計画を立てないとは申しておりません。そこで政府といたしましては、せつかく自由党、改進党諸氏の間において、ただいま防衛計画について御検討になつているはずと承つております。それらの結論を得ますれば、それを十分にわれわれは考慮に入れまして、いわゆる年次計画と申しましようか、とにかくわが国のあるべき防衛計画はどんな姿かという点について、十分検討して作成したい、こういうことを考えている次第であります。
  6. 稻葉修

    稻葉委員 私が一昨々日念を押しましたのは、長期防衛計画を樹立する意見もないと言うに至つては、きわめて重大であるが、意志があるのかないのか、こうお尋ねしたところ、重ねて木村保安庁長官は、意思はありませんと、こうはつきりおつしやつている。きよう承ると、立つべきものだとは思う、むずかしいけれども、長期防衛計画というものは立つべきものだと思う、こうおつしやるところを見ると、意思はあると、こう御変更になつたように思う。そうすると、保安庁長官の一昨々日の頭ときようの頭とは、かわつたのですか。
  7. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私はかわつたと思つておりません。私は立てないと申した覚えはないつもりであります。速記録を見なければわかりませんが、もしもそういうことを私が申したとすれば、それは誤りであります。立て得べきものでない、容易に立てられないものなんだ、こう申したのであります。
  8. 稻葉修

    稻葉委員 そうすると、私が意思があるのかないのかはつきりしてくださいと言つたのに対して、意思もないのだとおつしやつているのですが、もし速記録を見た結果、その点について食い違いがあつたら、当委員会に対し、あるいは国会に対し、どういう御処置をおとりになりますか。
  9. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はそういうふうに申した記憶がないのであります。万一それが私の口から出て速記録に載つておるといたしますと、まつたく私の言葉誤りであります。今申した通り、一国が独立国家として生きて行く以上は、やはり立つべきものである、ただ容易にそういう長期の総合的の防衛計画は立て得ないものだと、こういうことを申したつもりであります。
  10. 稻葉修

    稻葉委員 それでは、ただいまの御答弁では満足はできませんが、とにかく速記録を見た上でなければ、証拠がないと言われてはやむを得ませんから、この点に関する責任の追究につきましては、速記録を見た上まで留保いたします。  次に保安庁法改正の問題につきまして、いささか所見を問いたいと思うのは、とにかく総理大臣は、戦力は持たない、憲法改正しない、保安隊軍隊といつてもいいけれども、それは戦力にまで至つていないからいいのだ、しかしながらあくまでも、戦力なき軍隊でも軍隊という以上は、保安庁名称をかえる場合には、軍隊国防をいたすものでありますから、その名称国防庁でなければならぬと思うが、保安庁長官でもよろしい、総理大臣でもよろしいが、その点についての御所見を承りましよう。
  11. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私は保安庁を改めて防衛庁にしようと、あるいはそのほか自衛庁としようと、その名称は別にこだわる必要はないと考えております。
  12. 稻葉修

    稻葉委員 さらにお尋ねしたいのは、MSA等の援助によつて日本駆逐艦国際法上明確に持つことになりますが、これは駆逐船とでもいうのですか。それはあくまでも軍隊であつて駆逐艦である以上は私は戦力だと思うのですがどうですか。
  13. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。アメリカではやはり駆逐艦と申しておるようであります。またこれはいわゆる一つ兵器でありますから、駆逐艦そのもの一つの力には相違ないのでありますが、駆逐艦を持つたらすぐこれは戦力だということは、私は言えないと思う。戦力の問題は、御承知通り、しばしば申し上げました通りに、憲法第九条第二項において用いられたる言葉で、戦う力ということはいささか違うと私は思います。駆逐艦は、なるほど戦う力でありましようが、これを持つたから、ただちに九条第二項の戦力になるということは言えない、私はこう考えます。
  14. 稻葉修

    稻葉委員 この問題につきましてあまり時間を費しますことは、他の質問にさしつかえますから、後に憲法問題にからんでもう一度はつきりお答え願いたいと思います。  私の第一の質問憲法改正に関する問題についてお尋ねをいたします。今国会における本会議あるいは予算委員会を通じて、憲法改正する意思なきやありやについてお尋ねをいたしましたところ、総理大臣のこれに対する答弁は、あるいは遵法精神を説き、あるいは悪法も法であるというような表現をなされ、あるいは国民の動向をまつてやる、軽々しく改正すべきでない、こういう点を総合して考えますと、改正意思なきやにも見える。われわれは一月二十日年次大会を開きまして、改進党は、民主主義進歩主義平和主義国際協調主義の現憲法美点はあくまでもこれを堅持しつつ、前面的な再検討改正に乗り出すという立場を明らかにいたしました。この立場によつて私は以下総理大臣に御質問を申し上げます。  まず第一に、日本国憲法はその成立過程において、憲法制定権力者たる国民意思を問うことなく、きわめて非民主主義的に、高圧的につくられたものであるということは、お認めになりますかどうですか、総理大臣の御所見いかん
  15. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは国会を通過した憲法であります。
  16. 稻葉修

    稻葉委員 私の聞いていることは、この憲法成立過程において、民主主義とはおよそかけ離れた経過をたどつているということを申し上げた。事実をもつて申し上げれば、昭和二十年十月四日、近衛マッカーサー第二次会談において、憲法改正すべきことを命ぜられ、二十年十月八日、アチソン・近衛会談において、旧憲法の全面にわたり変革を要請され、二十年十月十一日、天皇の近衛氏に対する調査命令佐々木惣一博士内大臣御用掛となつて憲法改正の考査を命ぜられた。幣原内閣は、初め旧憲法改正する意思なく、これを運用することによつてポツダム宣言の要綱に適合する措置がいくらもとれるということでありましたが、そういうことはできる相談ではなく、十月二十七日には遂に政府憲法問題調査委員会の発足をなすに至りました。民間の諸草案の発表はこれに相次ぎまして、一方政府松本烝治氏を国務相として、いわゆる松本案を完成いたしました。ところがこれを司令部に提出いたしましたところ、マッカーサー司令部からこれを全面的に拒否された。そしてこれをやれといつて差出されたものは、アメリカ語で書かれた憲法草案でありました。これは昭和二十年六月十八日のことであります。大急ぎで政府はこれを翻訳し、議会論議を通じましても、その修正には一々司令部承認を得なければ審議が進まないという状態でありましたことは御承知通りであります。吉田内閣、あなたの内閣のときにこの憲法は遂に議会通り、あなたの今おつしやつたように議会通つて、それだけでは効力を発生しなくて、極東委員会戦勝国承認をまつて、初めて日本国憲法として発足したものでありますから、いわばワシントン憲法東京版であります。形式的な人民の意思の自由な表明はあつたかもしれない、総理も今おつしやつたように。国会承認を得たという以上は。しかしながら民主主義憲法の一番重大なことは、憲法制定権力者たる国民意見に基いてつくられたという憲法でなければなりませんが、この成立過程を見ますと、どうしてもそうは受取れません。これは憲法改正したいとか、あるいはしたくないとかいう立場を離れて、事実でありますから、争う余地はありませんが、この点は総理は認められますか、どうです。
  17. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。当時日本占領下にあつたのであつて、そうして降伏条項その他においてそれだけの手続きをとることが、日本政府義務であつたのであります。その義務従つてとるべき処置をとつた、そうして国会が遂にこれを承認した、可決した、これが事実であります。
  18. 稻葉修

    稻葉委員 今日本国憲法成立過程を申し上げましたが、同じくわが国敗戦の運命をになつた西ドイツにおいては、占領下であるがゆえに憲法というものをつくらないで、特に基本法と名前までも違えて、しかもその前文には、これはドイツ人のつくつた憲法であるけれども、しばしば司令部の干渉が入つて国民の自由な意思表明に基くものではないから、真の憲法ではない、従つて独立あかつきには、これを改正するのだということを明らかにしておる、国民自主性がはつきりいたしております。ですから経済自立についても、はつきり自主性を持つております。同じ敗戦国でありながら、日本はやはり経済自立もまだできない。急に緊縮予算をこういうふうに転換して組まなければいかぬというような状態でありますから、ドイツのあの復興の状態に比べますと、格段の違いである。そのドイツ日本の差は、やはりこういうところに端を発しておると私は思うが、総理大臣はどう思いますか。   〔委員長退席小峰委員長代理着席
  19. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。ドイツドイツであります。日本日本であります。日本の国情に従つて日本憲法の、国会のもとに協賛を経て、そうしていわゆる正式の手続によつてできた憲法は、憲法と認めるべきであるというのが私の意見であります。その経過等については、成立した以上は、個々の渕源を問う必要はない。かりに必要があつたところが、われわれはただちにその渕源承認することはできない。
  20. 稻葉修

    稻葉委員 そういうものを無条件にうのみをするところに、自主性のないということを私は申し上げる、まあいいでしよう。そういうお考えならまたこつちにも考えがある。私は、こういう過程でありますから、憲法九十六条には、将来この憲法改正する場合には国民投票に付するとさえも言つているのですから、その民主主義的な精神をくんで、講和条約成立独立完成のときに、少くとも国民投票に付するくらいのことはやつてしかるべきことだと思うし、またこの憲法自体に、経過規定として、独立のときには国民投票に付するというような規定がなかつたということも、一つの大きなこの憲法欠陥であると思う。その点について法制局長官意見をお伺いいたしましよう。
  21. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 さつきから総理大臣お答え申し上げておりますように、当時の帝国議会におきましての憲法審議結論は、結局ごく少数の方々を除いて、ほとんど全会一致に近い形で両院を通過しておるわけであります。ただいまお示しのような修正案、あるいは改正案——改正案というよりは修正案と申し上げた方が正確でありましようが、そういう修正案が出ようとした動きも、私当時から関係いたしておりましたが、全然ありませんでございました。また司令部国会との関係におきましては、これをこのまま可決せよ、あるいは否決してはならない、そういうような形の指令というものは、私は全然記憶いたしておりませんので、従いまして、この憲法成立過程そのものから申しますと、やはり日本国民を代表された当時の帝国議会で、ほとんど満場一致に近い形でできたというふうに見るほかはないと考えております。
  22. 稻葉修

    稻葉委員 先ほどの総理の御答弁では、当時の状態としてはこれを承認せざるを得なかつた。できたものはしようがない。しかも国会承認を得たのだから、しようがない、こう言つておられる。しようがない、しようがない——ときどき悪法もまた法だ、こういう御発言もある。そうすると総理は今、このできた現在の現行憲法悪法だと思つていらつしやるのですか。いいと思つていらつしやるのか、悪いと思つていらつしやるのか。悪いなら悪い、いいならいい、どちらですか、御答弁を承りたい。
  23. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はいまだ改正する決心がないのであります。ゆえにこの憲法は容易に改正いたすべきものではないと思う。すなわちいいと思つております。
  24. 稻葉修

    稻葉委員 それならば私は悪いという証明をしつつ御所見を承ります。私は総理施政演説を聞き、外務大臣外交演説を承りまして、自由アジア諸国との提携であるとか、国際協調であるとかいうことをるる述べられておることを聞きました。すなわち国際協調主義ということでありますが、そこで承りたいのは、国連という国際共同団体がある。日本は未加盟国であるが、国連憲章の再審議は明年行われんとしております。これに対する総理大臣の御抱負、御準備、御意見はどういうふうになつておりますか。あるいは外務大臣でもよろしい。
  25. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。国連憲章については、いまだ日本は入つておりません。ゆえにこれに対してかれこれ批評することを差控えます。
  26. 稻葉修

    稻葉委員 来年国連憲章改正せられるというので、各国政治家は非常にこの点を重要視しておる。アメリカでは八月二十六日、全米法律家協会においてダレス国務長官が演説している。来年は国連憲章改正せられる、ということは再審査がある、これは重大なことであり、皆さんも大いに研究してもらいたいということを言つておる。民主、共和両党の有力メンバーからなる八名の共同委員会すら成立しております。これはしかしながら総理は、アメリカ国連に入つているのだからやるのだ、日本国連にまだ加盟していないのだから、入つてからやるのだ、今はやる必要はないのだ、こういうことになるかもしれぬ。しかしながら十月十八日、国連第八回総会においては、この国連憲章改正にあたつては、未加盟国意見が尊重され、歓迎されなければならないという決議をしておる。そうすると、日本は未加盟国だから知らない、そんなのんきな答弁では、総理大臣としての責任は尽せないと思う。あなたは加盟国でないからどうでもいいと言つた総理どうですか。あなたは未加盟国だからどうでもいいと言つたのですが、未加盟国意見を尊重し歓迎すると国連総会では決議しておる。
  27. 吉田茂

    吉田国務大臣 外務大臣からお答えいたさせます。
  28. 稻葉修

    稻葉委員 総理に聞いておる。総理大臣として意見がないというのですか。意見を差控えるというのですか。それならしようがない、意見を差控えるというなら……。
  29. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この国連憲章改正の案は、いろいろ出ております。外務省としても、従来から政府としては、国連憲章にのつとつて対外政策等も規整するつもりで来ておりますから、この改正いろいろの案については、もちろん研究もいたしております。ただこの改正の案というものは、多くの場合に安全保障理事会の決定を要するのでありまして、その場合拒否権の問題もありますので、はたしてどうなるかもちろんわかりません。われわれの方としては研究はいたしておりますが、まだどの提案が基礎になるかということも、はつきりいたしておりません。ただいま研究を続けておる次第であります。
  30. 稻葉修

    稻葉委員 この国際協調主義の上からいつてわが国利害休戚にきわめて重大な関係があるこういう問題について、今の御答弁を承ると、政府には熱意のないことがわかりましたから、それでよろしゆうございます。  次に集団安全保障主権制限規定欠除について承りたい。現在の世界憲法趨勢を見ますと、一国が一国だけを武装してその国を守り切る段階ではないがゆえに、集団的な安全保障体制に入るために、各国憲法はたいてい次のごとき規定を置いております。つまり将来より高次国際機構、組織ができた場合に、その国の主権の一部をこの高次国際機構に委譲することができる、こういう規定があります。フランス国憲法にも、イタリア国憲法にも、昨年の六月六日改正されたばかりのデンマーク憲法二十条にも、そう書いてある。西ドイツでは一九四九年の憲法にもそういうふうに書いてある。そういうように国際間に協力を保つて人類平和を維持して行こうという趨勢にある。総理大臣外務大臣演説等において、国際協調主義ということを非常に主張しておられる。改進党の憲法改正を打出す場合にも、国際協調主義という美点を堅持しつつ改正する、こういうのでありますから、積極的にそういう国際協力義務、そういう主権制限規定をこの憲法が持つていないということは、平和のために一つ欠陥ではないですか。総理大臣はいい憲法だと言つたが、あまりよくない憲法だ。あなたの言われる国際協力上はあまり健全でない憲法です。どうですか、御意見を承ります。
  31. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は日本憲法はあくまでもいい憲法だと思つております。しかして今のお話のような協力をするについては、武力を持つておらない日本は、他国とともに軍事同盟に入るような考えはいたしておりません。
  32. 稻葉修

    稻葉委員 続けてお尋ねを申し上げます。この見地から憲法第九条第二項につきましては、あるいは自衛権説であるとか、あるいは政府のとつておられる戦力説であるとか、御議論はあります。いろいろあるけれども、少くともこういう点については総理の所信を承つておきたいのです。従来保安隊違憲論に対して総理大臣答弁については変遷がある。その変遷の仕方も無理である、こういうことが言えると思うのです。何となれば、第十六国会における答弁はこうでありました。保安隊国内治安間接侵略防衛のためのものである、直接侵略には当らないことは、保安庁法によつて明らかなのだから、軍隊でも戦力でもない、従つて憲法改正する必要はない。こう言い通されて来られたのですが、九月二十七日の吉田重光会談によつてこれがぐるつとかわつて、つまり国会論議においては言つていないことを、両党の総裁の間において別なことをとりきめられた。保安庁法改正して、直接侵略に当る任務をこれに加えることとする、こうなると、これは従来とつて来た国内治安に当るのだから軍隊ではない、戦力ではないというりくつから見ると大きな変革で、今度は戦力説になつておる。その戦力説単独近代戦争を遂行する能力だと言うのだから、相当厖大なものが予想される。一方吉田総理保安隊を増強して、遂に単独近代戦争遂行能力ができるという状態になれば、憲法違反になるから、そのときは憲法改正しなければならぬ、それまでは改正しない、こういうことになる。そういうことをして将来憲法改正するあかつきには、従つて吉田総理の言によれば、既成事実として厖大なるものができておる。こういうことになりますが、そう理解してよろしゆうございますか。これは今までの集約です。
  33. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 政府のこれまでの考え方の骨子は、先国会木村長官からお答えいたしましたように、あくまでも客観説で貫いております。戦力の限界ということに重点を置いておつたのであります。これはおそらく第十三回国会以来、参議院の方ではお答えしておつたと思いますが、その客観説によつて貫いておるわけでございます。ただその際その際の説明におきましては、御承知通り、世間には目的論を加味してお考えになつている方も多数いらつしやると思います。従いましてただいままでの保安隊あるいは警察予備隊に関します限りにおいては、目的論からおつしやいましても、今のような任務のものであるから問題はございませんという趣旨で、そのことを添えて申し上げておつたことは、私は事実だろうと思います。しかし政府の根本の考え方は、あくまでも客観的に貫いて来ておると思います。
  34. 稻葉修

    稻葉委員 客観説によつて一貫してはいないのです。最初は目的論であつた。それが吉田重光会談になつて客観説にかわつたのであります。それは事実と違う。とにかく解釈論ではもうすでに無理だという段階に来ているのではないかと私は思うのです。少くとも私は違反状態に近づきつつあると思う。そして近代戦争遂行の態力といういうことが戦力の意味だということも、あの解釈としては常識上無理です。こうやつて無理な解釈によつて、大砲財政をだんだん膨脹させて行くということが、私の心配するところであります。私どもは国力相応の自衛軍を創設する、こういうことを明らかにし、各国憲法並に改正いたしまして、同時にはつきりした、士気の上る——戦力でないのだというようなことでは士気は上りません。あなたは保安隊に行つて、お前たちは戦力でないんだなどと言つては、少数精鋭の軍として士気の上るはずはないです。しかしながら財政的な厖大化は極力憲法上これを規制する、こういう態度をもつて進むのが、現在の国情にぴつたりした、しかも日本国民にも幸福をもたらすゆえんではありませんか。そういうふうにお考えになりますかどうか。
  35. 吉田茂

    吉田国務大臣 不幸にしてあなたのように考えられないということをはつきり申し上げます。私の話は絶えず同じことを申し上げておるのであります。日本防衛日本安全保障条約によつて防衛をする、また防衛計画を立てておる。しかるにアメリカ側は条約によつて漸減を方針としておつて、またこれは財政上の意味からでしようが、漸減を期待しておる。そうすれば漸増をして結果を見なければならぬ。それで保安隊は漸増、何は何といたしましても漸増する。そうしてその結果あるいは直接防衛にも当らなければならぬ。一体保安隊といえども、間接防衛にのみ重点を置いて、あるいは治安の維持とかなんとかいつても、直接の攻撃を受けた場合には逃げ出す理由はないのである。保安隊であろうが、何であろうが、国民である以上は直接防衛に当るのでありますが、しかしながら保安隊の性格というものについてはこれを明らかにした方がよい。漸増して米国側の漸減に対する補充をするという場合には、明らかにした方がよいというので、保安庁法改正になつたのであります。保安隊の士気を高揚せしめるのには、国民あるいはその他によつても、保安隊というものはりつぱなものである、真に直接防衛にも当り得るのだ、戦力戦力だといつて、無理に戦力にならしめるよりも、保安隊に理想の念を持たしめた方が、最も士気を高揚するゆえんと考えます。
  36. 稻葉修

    稻葉委員 それでは、この前の議会で、世間及び改進党がこれを軍隊と仰せられるならば、それでもよろしゆうございますと、松村幹事長にお答えになりました。しかし戦力には至らないのだ、憲法改正をする必要はない、憲法戦力を禁じておる。こうした御答弁であります。それでは戦力でない軍隊と申してもよろしゆうございますねと念を押したら、まあそうお考え願います。そうおつしやつた。ところが今は戦力でないように保安隊員に誤解を与えることはおもしろくない。それでは従来の戦力でない軍隊と言つたことは士気を沮喪せしめて悪かつた。こうおつしやいますか。
  37. 吉田茂

    吉田国務大臣 いわゆる戦力というものは、憲法の中に書いてある戦力を意味しておるのであります。戦力のない軍隊というものはだれが言つたか知らない。私は言つた覚えはない。戦力がない軍隊などということを言うことはよくないと思う。いわゆる私の言う戦力なるものは、憲法規定しておる陸海空等の戦力ということを言つておるわけであります。
  38. 稻葉修

    稻葉委員 どうも前にはつきり言つたことに責任を持たないのであるから、これではしようがない。  さらに続けてお尋ねいたします。憲法の前文には、われらは正義と秩序に基く国際平和を誠実に希求するものである、われらの生存と安全とは平和を愛好する諸国民の公正と信義にゆだねると書いてある。こういうことは現在の、まだ人類文化が武装平和時代において守り通せるか。理想としてはよいが、あまり理想過ぎて、現実とマッチしない欠陥がありはしないか、従つて悪いところではないか。総理大臣はあくまでもよいと言い張りますかどうか。
  39. 吉田茂

    吉田国務大臣 もう一度質問の極意を言つてください。
  40. 稻葉修

    稻葉委員 なけなしの時間でありますから、よく聞いておいてもらいたい。時間に制限がありますから、御注意を申し上げます。  憲法の前文に、われらの生存と安全とは、あげて平和を愛好する各国の公正と信義にゆだねる——全面的に信を人の腹中に置いて、防衛なんていうものは必要がないように見えるが、こういう誤解を生む文言は、これはあまりに現実離れをして、理想は崇高かもしれぬけれども、どうも欠陥があるように思うがどうですか。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は前文の通りでさしつかえないと考えております。
  42. 稻葉修

    稻葉委員 それでよろしいというなら総理大臣をやめて、あなたは平和憲法擁護連盟の会計にでもおなりになつたらいい。三党防衛協定にも重大に影響する問題だから念を押しているのです。  次に憲法の各条章にわたつていかに不合理があるか申し上げたいのですが、時間も相当経過いたしましたから、たつた二点お尋ねいたします。解散権の所在についても不明確でしよう。そうして昭和二十七年八月二十八日、あなたは突然抜き打ち解散をなすつた。これは違憲訴訟が起きて、地方裁判所におきましては提訴者の全面的勝訴とは行かないかもしれないけれども、とにかく無効という判決さえ来ているのです。こういう点も解散権がどこにあるかということは重大な問題であつて、解釈が両論あるがごとき不明確は直さなければいかぬと私は思う。第九十六条憲法改正に関する発議権の問題について規定してありますが、聞くところによれば、最近閣議におきまして政府はこの提案権について、内閣側にもあるという御決定をなすつたようでありますが、真実ですかどうですか。
  43. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 解散権と憲法改正の提案権の御質疑ですが、解散権の方は地方裁判所の判決としては、今お言葉にありましたようなことは確かに出ております。しかしそれに対する学界の批判等をわれわれは逐一見ておりますが、大体学界の定説というものも、これを承認する方向へ、この間の解散のように内閣に解散権がある。これは不信任決議の場合に限られるものではないという方向の考え方が、むしろ普遍的になつておるのじやないかと考えております。但ししいて不明確であるというならば、これは憲法改正の際のお考えによることであります。   〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕  それから第二点の改正の提案権の問題は、別に閣議で決定したということではございません。ただわれわれとしては、憲法九十六条の解釈として、これは当然のことである。また国会議員の皆様がいろいろの御質疑の際伺つておりましても、政府改正意思はないかというようなことをお尋ねになつておりますので、国会議員の方のお立場からいつても、政府に提案権をお認めになつているのじやないかというように考えますので、これは大体間違いのない解釈であろうと考えております。
  44. 稻葉修

    稻葉委員 この点についてはいろいろ争いのある問題でありまして、現在国会改正の議が起つておりますが、その際いずれ詳しく論議を進めて行くこととして、そのほか憲法には幾多の欠陥があります。五十三条の問題、四十六条の参議院の問題、五十六条の定足数の問題、四十一条と七十二条との関係とかいろいろ疑義がある。最高裁判所の問題、ことにその資格審査国民投票のごときは、ばかげておるというようなことは圧倒的である。総理大臣は輿論の動向に従つて憲法改正するというが、この圧倒的輿論の動向をどう思われますか。しいて御答弁はいただきませんが、以上申し上げたように多くの欠陥がある。これでもきわめていい憲法であつて、あくまでも守り抜く、こういうふうに仰せられるのであろうか。承りますれば、自由党内にも憲法調査会ができております。これは何のためにつくられたものであるか。一昨日の河野密氏の質問に対して、改正のためにつくつた調査会ではない、これは研究のためだ、こうおつしやつておられますが、その通りですか。
  45. 吉田茂

    吉田国務大臣 前言の通りであります。
  46. 稻葉修

    稻葉委員 そういたしますと、昨年末鳩山自由党を合併されるときに、鳩山さんはその報告にこういうことを言つておる。これは友情からの合併ではなくて、政策が一致したからであつた。私情によるのではない。そうしますと、鳩山自由党の掲げた政策の一番大きなものは憲法改正であると思う。その合併後政策の一致によつて憲法調査会をつくつたのですから、憲法改正の目的の調査会であるというふうに世間もとるし、私もとつておる。ひとり総理はそうではないとおつしやるのです。あなたの親友の鳩山さんのおつしやつたことはうそですか、うそならばうそ、ほんとうならばほんとうとはつきりお答え願いたい。
  47. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は鳩山君が何と言われたか、承知いたしておりません。私の考え方は、ただいま申し上げた通り
  48. 稻葉修

    稻葉委員 憲法の諸問題につきましては、時間の都合で質問を次に移します。  第二の点は、わが国民主主義政治議会政治確保のための質問であります。承るところによると、総理大臣は去る日九州に遊説をされて、公選知事を官選にするということを御演説なさつたそうであります。これは明確なる事実である、みんな聞いておるのですから。この点は、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接の投票できめるという憲法規定に違反するように思う。もし官選をやるということになれば、この憲法はじやまになりますね。悪い憲法ですね。御改正になることは必要はないのですか。
  49. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 知事の官選の問題につきましては、かつてこの委員会においてお答え申し上げたと思いますが……(「総理大臣はどうした」「引込め」と呼ぶ者あり)憲法の問題でございますからお答えしておるわけですが……。   〔発言する者多し〕
  50. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  51. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただちにこれをもつて府県あるいは市町村というようなことを意味しておるかどうかという点に問題があるのでありますが、われわれといたしましては……。   〔発言する者多し〕
  52. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  53. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ……決して市町村というようなものを離したものではないのであります。言いかえれば、地方公共団体は二階建でなければならない、あるいは三階建でなければならないということを憲法として要望しておるものではないと考えますから、憲法上は必ずしも不可能なことではないと考えておるわけであります。  それから先ほど実は重大な間違いを申し上げましたので取消させていただきますが、解散権の問題について、稲葉先生の御質問につり込まれましてお答えしたのですが、地方裁判所の判決の理由書では、解散権の所在については、政府と実は同じ結論を述べております。この点訂正させていただきます。
  54. 稻葉修

    稻葉委員 そういう法律論も大事でありますが、政治論として私は次にこういうことを伺いたい。東京都の区長を任命制にするときに、政府答弁はどうでありましたか。野党の議員の大石君とそれから野村専太郎君の質問に対しまして、当時の地方行政委員会における岡野国務大臣の答弁は、知事を官選などにする伏線ではありませんと言つております。そういうことは毛頭考えておりません。ずいぶん御丁寧に、「知事の公選を廃止して、任命制にするということは、どこからうわさが出たか私は存じませんが、そういううわさもないと存じます。また私の考えといたしましても、知事の公選をとりやめて任命制にする考えはありません。区長の任命制と知事の公選を廃止して、知事も任命制とするというようなことは、まつたく関連のないことであります。これだけはよく御承知を願います」。こう速記録に載つていました。そういう従来の明確なる内閣の態度と、総理大臣の遊説における態度はまつたく豹変し、不信行為であると思いますが、どうですか。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 心境の変化は何もありません。かつまた私が九州において演説をしたことはないのであります。知事を官選にするかしないかなどということを問題にして演説はしておりません。ただ新聞記者が私に問うから、一応そういうふうにしたらよかろうということは言いました。
  56. 稻葉修

    稻葉委員 私に誤解がありましたから、その点は謝罪をいたします。演説をしたかと思つたのです。新聞記者に発表された、しかし新聞記者に発表されたことにおいても、やはり知事を官選にするという御意思には間違いないのです。官選にするということは、それは従来の内閣の態度と豹変している不信行為である。こういう点はやはりどうにもいたし方ありませんね。答弁のしようがありませんな。  次に、私は警察法の問題についてお尋ねをいたします。警察法改正要綱案によりますと、この改正の目的は、はつきりいたしております。それは責任の明確化ということに帰着すると思うが、それでよろしゆうございますか。法務大臣に御意見を承ります。
  57. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。責任の明確化も改正の原因の一つでございますが、稲葉さんよく御承知のように、国家的規模にわたる大きな騒擾事件などに備えまして、警察の機能力を有機的にしたいということも原因の一つでございます。
  58. 稻葉修

    稻葉委員 この改正要綱案によりますと、国家公案委員会委員長は、国務大臣をもつてこれに充てる、こういうことになると、警察が政党化するおそれはありませんか。
  59. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。仰せのように、国家公安委員長は国務大臣をもつて充てますが、私どもの考えといたしましては、これは表決権を持ちません。委員間の賛否同数のときだけ採決をするというふうにいたしまして、国務大臣たる公安委員長は、かつてなことができないような制約をしております。
  60. 稻葉修

    稻葉委員 今度の改正はその国家公安委員会の構成をもかえようというのですね。従来の国家公安委員の構成には、同一政党から多数の公安委員が出ないように、ちやんと制限規定を設けているのですが、その制限規定をはずしてしまうという改正も同時にやつておられる。そこに政党化の重大なる危惧の念を抱くのは当然であります。どうですか。
  61. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。国家公安委員の顔ぶれ、内容に変化を与える意思はございません。
  62. 稻葉修

    稻葉委員 それは答弁が少しおかしいのじやないですか。今まではどんなことをやりましても、同一政党から三人以上の公安委員を国家公安委員会に送ることはできないということによつて、政党化に偏することを防いでおる。その制限を今度ははずそうという改正案ですから、それは、公安委員長を国務大臣とするという規定と相まつて、政党化の危険がきわめて濃厚になつて来るがどう思うかということを聞いておるのです。政府の案はそういうことになつておると思うのですが、それは私の誤解でしようか。
  63. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。国家公安委員会の構成については、委員長を国務大臣とする以外に、委員の顔ぶれあるいは構成を変更するという意思はございません。ただ資格が非常にきゆうくつな点がありますので、それを若干ゆるめるというのであつて、政党色を強くするというようなことは寸毫も考えておりません。
  64. 稻葉修

    稻葉委員 その点意思がはつきりしてけつこうでした。いずれ改正案が具体的に出て参りましよう。  次は、総理大臣はしばしば、議員立法がふえて来て、そうして予算の面においても厖大化しておるのはけしからぬというような談話を発表されます。立法権は元来国会にある。この議員立法を法的に制限するということは、政府の越権であると思うが、いかがですか。
  65. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は立法権を制限しようというような考えは持つておりません。これは国会自身が自粛すべきものではないかと思います。
  66. 稻葉修

    稻葉委員 それはその通り。その意思もはつきりしてよかつた。  以上、本国会に提出を予定されておる諸般の法律案について、その中の数個の改正法律案、これは占領政策の是正という点である程度賛成であるけれども、何でもかでも法律で軽率に自由を押えたり、国民主権をゆがめたり、あるいは権力集中主義に還元したりする傾向は慎むべきであると私は思う。できたものを民主主義的に運用して育てるという努力をしないで、投げてしまつて、気短かにぼんぼん反動的なやり方に返つて行くということは、吉田内閣の傾向のようであるけれども、私はどうもその点危惧の念にたえないが、こういう私の心配は杞憂ですか。
  67. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。杞憂であります。
  68. 稻葉修

    稻葉委員 これは少しく言葉が過ぎるかもしれませんが、民主政治を擁護し、議会政治が今危殆に瀕しておるときに、これを擁護したい一念から申し上げるのですから、どうか冷静にお聞き願いたいのであります。あなたの親友であられる鳩山さんは、吉田民主主義には適せぬ男だ、こう言われておる。しかしいまさらその頭をかえようとしてもできないから、制度として外交委員会を党内に置き、秘密外交を廃止し、憲法改正委員会をつくつて、われわれの意図するところを実現するよりしようがない、こういうことを言つておられます。それは人の見るところはかつてだと総理はおつしやるかもしれないけれども、われわれも短かい議会生活において、あなたの議会に対してとつて来られた態度とこれを思い合せて、なるほどそういうことかなあと思い当る節がたくさんあるのです。二十四年の総選挙の直後、吉田犬養総裁のあのやり方によつて民主党は分裂をいたしましたが、その当時二人でマッカーサー司令部を訪れて、いかにも司令部の命令でもあるかのごとく装いをしたり、また二十八年三月の鳩山自由党の分裂を意味するものは何でありましようか。これは秘密外交、側近政治、非民主的政治に対する反撃であつた吉田重光会談はどうですか。国会においてはあくまでも、保安隊は直接侵略には当らないのだ、戦力ではないのだと言いながら、戦力にする、直接侵略に当らせるということを二人でくるつときめてしまう。これでは議会はいりませんよ、何でも二人できめるということなら……。これは議会を無視するものだ。  さらに私は、小さい問題ではあるかもしらぬけれども、今国会における国会法蹂躙の事例を一つ申し上げてみたい。国会法第三十条には、国会の役員は院の許可を受けてその職を辞任することができる、閉会中は議長の許可を受けてこれをなすことができる、こう書いてある。昨年の暮れにあなたは内閣を改造なさいました。そして当時参議院の常任委員長であつた——これが国会の役員であることは国会法の明記するところです。この役員を、院の許諾なくして辞任せしめて、厚生大臣に任命なさつた。これは明確なる国会法第三十条違反であります。これは答弁を要しないです。あまりにも明確です。こういうことは、従来あなたのとつて来られた議会に対する態度からいつて、何という軽率なことだと言つてしまえばそれだけかもしれないけれども、心持それ自体に、国会法などはどうでもいいという考えがあるからだ。これは見のがし得ない重大な責任であると思うが、総理大臣の御答弁をお願いします。
  69. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の心持あるいは態度等についての御批評は御自由であります。しかしながら、今御指摘の点は、参議院の委員長を辞任せしめたことについての御指摘であろうと思いますが、これは当時相当な手続をとつたはずであります。
  70. 稻葉修

    稻葉委員 相当な、と言うけれども、事実は国会法を蹂躙して相当な手続をとつたにすぎない。  さらに、これはお笑いになるかもしれないけれども、私は笑いごとじやない重大なことだと思うが、私はこの一月一日にラジオを聞いておりました。あなたと徳川夢声氏との対談を聞いておりました。談たまたま動物園の話……。(笑声)手長ざるとか尾長ざるであるとか、いろんなさるの話が出ました。そして、どこの動物園にはどういう珍しいさるがいるとかいう話が出たときに、あなたは酔つていらつしやつたかもしれないけれども、さるなぞはわざわざ動物園へ行かなくとも、国会議事堂へ行けばたくさんいる、とおつしやつた。(笑声、拍手)これは委員長、笑いごとじやないから、みんなに注意しなさい。
  71. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。   〔「重大問題だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  72. 稻葉修

    稻葉委員 これは全国の国民にラジオで放送されております。週刊朝日にさえ載つておる。一体われわれをあなたはさるだと思つておるのか。(笑声)たくさんおるというから、人間もおるかもわからない。あなたも国会議員で、国会議事堂に出入りなさる人です。あなた御自身はさるの部類にお入りになるのか、人間の部類にお入りになるのか。(笑声)そんなことはどうでもよいけれども、これは国会軽視、さらに国会侮辱もはなはだしい。今ここで、この公の予算委員会を通じて国民の代表に謝罪される意思はありませんか。(拍手)謝罪される意思があるならばある、そんな必要がないならばないと、こう御返答願いたい。
  73. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は徳川君との話にそういうことを申したか、申さないか、はつきり記憶はありませんが、少くとも私においては、国会議員を侮辱するような意思は毛頭ありません。
  74. 稻葉修

    稻葉委員 国会議員を侮辱する意思はないから、何を言つてもよいのですか。あんたはさるであるとか、あんたは犬であるとかいうこと、そうしておれはあなたを侮辱する意思はないと言つたつて通りませんね。(拍手)謝罪なさい。謝罪されたらどうです。謝罪を要求します。
  75. 吉田茂

    吉田国務大臣 遠慮します。意思がないからそういうことを言つた覚えがない、こう申しておるのであります。
  76. 稻葉修

    稻葉委員 いやいや、それならば、これはだれでも聞いておることなんですよ。私は子供の前で聞いたのです。そして子供に、お父さんさるかいと言われたんだ。(笑声)  最後にお尋ねをいたします。この緊縮予算は、時間がないから、ほんとうは内容を一々大蔵大臣に問い、その他の大臣に問うたならば、いかに重大な、国民の苦しむ予算であるかということが、はつきりして来るのでありますが、それはいいとして、とにかく耐乏予算である、緊縮予算である。一月二十七日参議院においては苫米地義三氏、衆議院においては三木武夫氏、さらに本委員会におきましては川崎秀二氏等が相次いで、これだけの緊縮予算をやるには、政府みずからが範を示して緊縮の実をあげよという質問をしたのに対し、総理大臣は、緊縮の熱意はある、耐乏の熱意は政府にもある、この予算を見ればわかる、私生活については答弁の限りでありません。こう御答弁なすつておられるのであります。そこで耐乏予算とか耐乏生活ということは、一体どういうことですか。これは消費を節約して生産を増強するということも一つの大きなポイントなんだから、結局は国民の私生活を慎むということになつて来る。国民の私生活において消費を節約すべきであるということを詰めて行く予算である以上、この予算を遂行する政府としては、みずからが耐乏の実を示すということがあたりまえであるにもかかわらず、私生活についてはおれは知らぬ、国民は耐乏せよ、こういう行き方は、大丈夫の態度ではありませんな。大丈夫人を責めること緩にして、おのれを責めること厳なるべしとある。そういう点においてお心構えが違つていやしませんか。どうです。
  77. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申す耐乏予算というのは、生産と消費との間のアンバランスを訂正するということに主眼を置いて言つておるわけであります。各個人の私生活については、国会その他において責めるはずもなし、また答弁するべきものでもないから答弁しない。
  78. 稻葉修

    稻葉委員 よろしゆうございます。私生活を責めるなどという考えは私にもないところで吉田総理は、演説において、よくイギリス国民を見習えということをおつしやつたようなことも新聞で承りますが、一九五二年十月三十日チャーチル内閣発足の第一回の閣議におきましてどういうことを決定したか。チャーチル保守党内閣の最初の閣議で、イギリス経済自立の根本をつちかうため国の自粛を決議いたしまして、まず第一に総理大臣の年俸一万ポンドを七千ポンドに、閣僚の年俸六千ポンドを四千ポンドに下げ、官庁自動車を廃止するということを決議いたしました。去る一月二十三日ヴェトナム内閣は官庁の高級自動車三分の二を競売に付して、その売上金は貧民の救済に充てることを議決いたしております。耐乏予算を国民にしいて行くこの段階におきましては、民衆の苦痛を察して政府みずからが耐乏の範を示すこと各国においてはかくのごとし。ひとりわが吉田内閣においてそういう耐乏の実を示された事例を聞きませんが、これははなはだ遺憾であります。しいて御答弁は求めません。こういうやり方によつてこそ、ウイスキーも全部輸出、新型の自動車も全部輸出、輸出増強、消費節約、経済自立の実をあげたのがイギリス経済。日本にはそういう心構えがありませんから、今日まで資本を食いつぶし、今日急転をしてこの緊縮予算国民にしいなければならぬ段階になつた。しかもチャーチルは大衆の前に立つてこういう演説を平気でする。余の公の生活においても私的な生活においても何か民衆諸君と違つた。かけ離れたぜいたくでもあるなら批判してもらいたい。こういう演説が総理大臣においてできてこそ、国民は耐乏生活にもついて行けるのだ。(拍手)私生活については答弁の限りでありませんというあなたには、民衆の前に立つてこういう演説はできますかできませんか。しいて御答弁は求めません。私はそういう点においてこの耐乏生活を遂行する当初のこの国会においてあなたの態度がもう少し——過去においてはいろいろなことがあつたかもしれぬけれども、今度はしつかりやるのだというくらいの御答弁はあつてしかるべきだと思うが、こういう総理大臣を持つたということは、日本の不幸であると私は思う。(拍手)  以上第三の予算内容につきましては、いろいろ質問したい点がありますけれども、すでに時間も経過しておりますから、第三の質問につきましては保留して、後日機会を与えられましたら行いたいと存じます。私はこれで質問を終ります。
  79. 倉石忠雄

    倉石委員長 稻葉君の御発言に関連いたしまして、中曽根君より発言を求められております。この際これを許しますが、なるべく簡明に願います。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 吉田総理大臣及び木村保安庁長官国防計画の問題についてお尋ねをいたします。  現在三党の防衛折衝は、先日の総理大臣及び保安庁長官の御答弁によつて暗礁に乗り上げて、決裂せんとしております。それは従来自由党及び内閣が言明したことは重大な食い違いがあるからであります。そこできようの御答弁の状況によりましては、三党防衛折衝は全然打切らなければならない事態に立ち至るかもしれません。もしそういうことになれば、自由党側と政府との不一致によるのでありまして、責任はすべてあなた方にあるということをここでまず申し上げたいと思います。  吉田総理大臣は私の本会議質問に対しまして、三党防御折衝で話し合つたことは、そのまま政府が守ると御言明なさいました。そこで総理大臣及び木村保安庁長官お尋ねいたしますが、三党防衛折衝においては防衛計画の内容まで話をしました。そして自由党側委員の案として提示されたのがあります。その内容は、まず第一に防衛計画は五箇年計画であるということであります。第二は五箇年内に米軍に交替する兵力をろくり上げるということであります。第三番目が陸海空おのおの均整な兵力をつくるのだ。そうして数字までわれわれに提示した。陸軍は十八万、海軍は十五万トン、空軍は一千機、これを五箇年の最終目標に整備する。第四番目はその財政負担でありますが、初度装備費はこれをアメリカのMSAに期待する。われわれがこれから負担するのは毎年度の維持費、金額にして一兆四千億円程度である。これが第四です。第五番目は防衛分担金は漸次逓減して行く。右の構想に基いて保安庁法改正も行う。このように水田委員から自由党側委員の案としてわれわれに提示された。それに対してこの間のあなた方の考えによりますと、防衛計画すら否定するがごとき言辞弄しておる。この水田委員が提示した自由党側委員の提案というものを否定なさるのか否定なさらないのか。もし否定なさるとすれば、それは吉田総理大臣がこの間本会議で言明したことと、まつたく逆のことを言うということになります。少くとも責任はそちらにあると断定して、防衛折衝に対する態度をきめなければなりません。まず総理大臣より御答弁を願います。
  81. 倉石忠雄

    倉石委員長 木村国務大臣から先に……。
  82. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。先刻稻葉君の御質問に対して私が答弁いたしたように、保安庁といたしましては、これは独立国家なつた以上は、やはり独自の防衛計画は立てべきものであると考えておる。しかしながら、いわゆる総合的のわが国独自の防衛計画というのは、兵力量ばかりではなく、あるいは兵器生産能力あるいは備蓄の面、財政的の面、いろいろな面から総合的に研究しなければならぬ、これは容易に立つべきものではない。しかしながら今中曽根委員の仰せになつたように、アメリカ駐留軍の漸次の引揚げに対処すべき一種の漸増計画というものは立てなければならぬ、その点については、われわれは十分考慮を払つて研究中であります。しこうして自由党と改進党の委員の諸君たちの御研究になつておるその計画については、われわれ成案を得られたあかつきにおいては、十分にこれを尊重してわれわれの計画に組み込んで行きたい、こう考えておる次第であります。決して委員の案を無視するものではありません。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 自由党の水田委員が提示した自由党委員の案を、政府承認するかしないか、承認しないというならば、今までの防衛折衝は全部御破算であります。承認するというならば防衛折衝は継続するものであります。
  84. 木村篤太郎

    木村国務大臣 重ねて申し上げます。その水田君の提示されました案というものをわれわれ見ますと、もちろんそれを尊重してその線に沿つて行きたいと思つておるのであります。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もう少しはつきりしなければいけません。尊重して行くと言われましたが、これは自由党側の委員が協議されて、自由党委員の考えとしてわれわれに正式に提示したものです。それによつて二十九年度の予算の額というものが出て来る、従つて尊重して行くとかなんとかいう言葉ではわれわれ承服できません、これを承認するかしないかということを御答弁願いたい。   〔「何を言つておるか」「注意しろ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  86. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います——静粛に願います、委員外諸君の発言を許しません。
  87. 木村篤太郎

    木村国務大臣 重ねて申し上げます。私はまだこの交渉の結果を承つておりませんが、その結果に基いてわれわれはこれを考慮いたしましてその線に沿つてやろう、こう申しておるのであります。
  88. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 われわれが木村保安庁長官の御答弁を求めておるのは、要するに自由党の考え政府考えとでは一体になつておらなければならぬ、そこで、自由党委員が御提示なすつた案を承認するかしないか、そこに問題がある。そのあなた方自由党側の委員が提示されたことを基礎として、来年度予算に対するわれわれの態度をきめるというので、案として提示されたのであります。従つて当然政府承認すべきものだと思う。それによつて大体の話ができておる。従つて今後われわれと自由党がつくり上げて行くものを承認するというのではありません。自由党が提示したものを承認するかしないか、それがまず基礎にならなければならない。
  89. 木村篤太郎

    木村国務大臣 もちろん自由党ではあらゆる点から考慮して計画を立てられて、あなた方に示されたものと私は了承いたしております。従つてその線に沿つてわれわれはやるということは十分御了解を得るものと考えております。
  90. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいま木村長官の言明によりますと、自由党側が提示した線に沿つてわれわれはやるとおつしやいました。それで私は了承いたします。
  91. 倉石忠雄

    倉石委員長 山花秀雄君。
  92. 山花秀雄

    ○山花委員 私は二十九年度予算案の性格と、一般労働問題及び綱紀粛正の三点について、総理大臣並びに関係各省大臣に質問をいたすものであります。  大蔵大臣は、二十九年度の予算編成に関して、一般会計の予算総額を一兆円未満に縮減することを目途として、九千九百九十五億円というまことにきわどい線でとどめ、昭和二十五年度より逐年膨脹し来つたインフレ傾向にひとまず終止符を打つたと説明され、二十九年度の予算性格を明らかにされたのであります。二十九年度の予算は、明らかにデフレ予算と見られますが、その内容を一瞥いたしますと、きわめて不生産的な防衛関係費は前年度に比して相当大幅に引上げられ、生産力拡充の基礎となるべき財政投融資、公共事業、食糧増産対策、電源開発、貿易振興対策、民生安定関係等々については、前年度に比べて見るべき施策の裏づけたる予算に少しも考慮が払われていないが、はたしてこのような予算内容で、政府の希望するインフレ傾向より離脱することができるものであるか、また国家の経済の再建を達成することができるものであるか、この問題に関してあなたの所見をまず承りたいのであります。
  93. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 二十九年度予算を一兆円以内に圧縮して、しかもこれが緊縮予算であることは御承知通りであります。この限られた国費の配分がどうかということが議論の存するところでございまするが、私どもとしては今の千三百七十三億になつて、昨年より百四十億だけ増加しておるこの防衛予算というものは、日本独立——自分の国は自分が守らなければならぬという態勢に一歩を進めるものとしては、これは当然とらなければならぬ措置であると考えるのでありまして、この点はあなたの方とちよつと立場が違うので、どうもやむを得ぬことと思うのであります。その他の予算はごらんくださるとわかるように、その範囲におきまして割振つておるものとしては、私どもきわめて均衡がとれておるものであると考えておるのであります。さらに私どもはこの予算がねらつておる物価の五分ないし一割の引下げで日本国際収支の均衡を早からしめることが、この予算のみで達成するとは考えておりませんので、過日来申し上げましたごとくに、やはり金融の引締めを強化するとか、あるいは生産の合理化その他によつてコストの引下げをはかるとか、あるいは各種の措置をとることによりまして、総合的にこの予算がねらつておる目的を達したい、かように考えておる次第でございます。
  94. 山花秀雄

    ○山花委員 私は健全財政を築いて、国家経済の自立再建をはかるためには、一兆円という数字にあまりこだわる必要はないと思うのであります。要は、予算に現われた政策の内容であります。世界中どこの国でも軍備拡充を行つてわが国でばこれを防衛力漸増と表現しておりますが、軍備でも防衛力でも、ともに不生産的な費用であることには間違いございません。不生産的費用の増大を行つてインフレを抑止した国があるとは、いまだ私は寡聞にして聞いたことがございません。博学な大蔵大臣より、もしさような実例を示した国がありましたならば、ひとまずお知らせを願いたいのであります。
  95. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この点は私ども仰せの通り考えます。しかしながら非常に防衛予算を増大してとおつしやいますが、この防衛予算は、御承知のごとく、日本の二十九年度予算の面から見れば、一割三分強にしかついておりません。さらにまた日本国民所得の面から見まするならば、かりに経審が発表しておる一応の見込み五兆九千八百億としまするならば、わずか二分四厘にしかついておりません。かようなことは、つまりあなたも御承知の、財政は程度問題でございまして、この程度のことは、たとえば三割二分にも上つておるようなよその国のインフレ要因となるというような事柄とは、全然事情が違うことはよくおわかりが願えることと思うのであります。
  96. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま大蔵大臣よりいろいろ説明がございましたが、よその国の財政とわが国の財政を同一に混同して私は議論をしようとは考えておりません。格段の相違があることは、すべての人々が認めておるところでございます。私は政府防衛力拡充の政策を変更しない限り、絶対にインフレの防止はできないと確信するものであります。必ずや補正予算を計上するはめになるであろうと、ただいまの予算内容からながめてみますと、そう言うことができるのでございます。政府はその場合に責任をとられる決意で、二十九年度の予算を国会審議にゆだねられたか、また確固不動の確信をもつていられるでしようか。政府の所信を聞くと同時に、首班者である吉田総理大臣に伺いたい。将来補正予算を組まない確信があるかどうか、もし組むような場合には、どういう責任をとられるかという点につきまして、吉田総理大臣及び大蔵大臣から国民が安心できるような御答弁をお願いするものであります。
  97. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この予算の実行と金融引締め強化その他の対策によつて、私どもは日本のインフレを遮断するかたい決意を持つており、日本の物価の引下げ等の目的を達したいと考えております。従いましてそういう補正予算等で歳出がふえて来るということになるということでは、この予算の企図しておることと全然背馳することになりますので、私どもは補正予算は厳にこれを避けるという強い決意を持つておることをここにはつきり申し上げておきます。
  98. 山花秀雄

    ○山花委員 この問題は非常に重要な問題でございますから、首班者の総理大臣より答弁を要求したのであります。確信をもつてこの予算をわれわれの審議にゆだねて、そうしてそのうちにまたこれがぐらつくようなことがありました場合に、政治的な責任をとられるかどうかということを、首班者の総理大臣から明確に御答弁を要求するものであります。
  99. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま大蔵大臣の言われた通りであります。
  100. 山花秀雄

    ○山花委員 たいへん確信のある御答弁でございましたが、ぐらつきましたときには、あらためてひとつ政治的責任をとつていただくように私ども追究して参りたいと思います。  大蔵大臣は一月の二十七日の政府施政演説のうち、財政演説をなすつて、「財政の緊縮、経済の正常化に伴う失業等の摩擦に対処するため、民生安定のための社会福祉関係経費についても、これを重点的に確保いたしました。」こう言われておるのであります。この問題については、特に大きな声で重点的と言われておりますが、どの程度重点的に扱われましたか。抽象論でなく、ひとつ具体的にお示しを願いたいと思うのであります。
  101. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この点は先ほども申し上げました通り、今の一兆円以内の限られた財源の範囲でこれをとりはからうのでございまするから、その配分を重点的に扱う、こういうことにいたしたのであります。大体におきまして、二十八年度よりも規模を小さくしておるのでありまするが、社会保障費関係の分は特に三十八億円を増額してやつておる、この点に重点があるということを申した次第でございます。
  102. 山花秀雄

    ○山花委員 三十数億円の増額で、声を大にして重点的と言われておるのでありますが、それでは民生安定のうちの一つである失業問題に関しまして、一般労働問題に関連しつつ労働大臣にその所見お尋ねしたいのであります。  今日の失業問題が最も大きな社会問題であることは、何人も否定することはできません。しかして現在における失業は、きわめて小数の一部を除き、その大部分は本人の責任というのでなく、誤れる戦争の犠牲であり、また政府の経済政策の不手ぎわから生じたものといえるのであります。政府はよろしく失業問題解決のために積極的な施策を行うべきであります。大蔵大臣の失業対策に関する予算説明によりますと、二十八年度は百九十四億七千九百五十七万円であるが、二十九年度は二百五億一千八百万円で、約十億円余の増加を行つたことで、いかにも失業対策については熱意を示されたごとく説明されたのであります。このうち失業対策事業補助は、二十八年度の百億八千万円を、二十九年には百十一億円と、十億二千万円の増加を示しておりますが、二十九年度は、政府が行わんとする行政整理や緊縮予算によつて、二十八年度より失業者が多く出ると存じておるのでありますが、まずこの点について、労働大臣はいかように考えておられるや、お答えを願いたいのであります。
  103. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたします。今お示しのように、失業関係の諸経費、たとえば失業保険の経費にいたしましても、九十一億五千万円、失業対策費としまして百十億円と、それぞれ項目別にしてみますと、保険費の方で一割、対策費の方にして五%増加しておるのであります。しかし大蔵大臣も言われましたように、全般的に緊縮をいたしましたる際でございまするから、その緊縮のわくにもかかわりませずこれをふやして行つたということは、これは主観的相違はあるかもしれませんが、熱意を傾けたものと御了解願いたいのであります。  失業の実勢でございますが、これはたびたび申しておりまするように、昨年の三月六十一万へというのが最高でありまして、それ以来漸次減つておるのでございます。昨年の十一月には三十七万人と減つておりますし、失業保険の給付を受けております人数も減つております。しかし今後においては、そういう今御指摘のような行政整理その他によつて失業者が出るのではないか、こういう御懸念もございましよう。しかし私ども統計的に見て参りますると、昭和二十四年のドッジ安定計画の際にいたしましても、非常に失業の激化が予想されたにかかわらず、割合摩擦的失業という段階にまで至らない。御承知のように、今の労働力人口からいいますると、三十七万人という程度ですと〇・九%です。そこでビヴアリッジを持ち出すまでもありませんが、三%以下というのは摩擦的失業でないということがいわれておりますが、この数からいたしますと、日本の失業の実勢というものはそう声を大にするほどのものではないのであります。しかし転職を希望する、いわゆる潜在という言葉でもいわれておるような失業者は相当ある、こういう御議論もあるのではないか。しかし私どもの考え方からいたしまして、転職を希望する者を入れまして、三百五十万ないし四百万程度ではなかろうかと見ております。そこで日本の産業的構造のいわゆる弾力性が作用するのでありまして、イギリスなどでは、御承知のように、九一%が雇用労働者であるのであります。ですからこの場合の失業というものは社会問題として非常に強く出て来るのでありますが、日本の場合は三十六、七パーセント程度が雇用労働者でありますので、農業なり中小企業なりというような大きな消化的な階層があるのであります。こういう階層が今なお相当余力——余力と言いますと、いろいろ御議論があると思いますが、ある程度そういう失業者を消化して行く力がある。しかしこの力というものはそういつまでもあるものでないと私は思います。この力があるうちに日本の企業の健全性を回復して、国際競争裡に立つて自立し得る日本の経済体制を確立する必要がある。そこで私はこの日本の予算というものは、そうした大きな目から見たところのどうしても必要な線を打出したものである、かように考えておるのであります。
  104. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま労働大臣は、お答えを願つた失業者の数あるいは雇用のいろいろな関係につきましては、情勢に対してたいへん甘い見解を持つておられると思うのであります。数についてもずいぶん開いておるのであります。先ほど私が申し上げましたように、今後輸出の増加を期待する要因としては、英連邦諸国の輸入制限の緩和であるとか、中共向け輸出禁止品目の緩和が考えられますが、国際市場における輸出競争力に対するわが国商品の依然たる割高を勘案すれば、これはあまり期待できないことは、政府当局も認めておられる通りであります。また特需についても、二十八年七月は米国会計年度更新による多量受注がありましたが、八月以降はこれが急激に減少いたしまして、特需に関連する産業部門に多量の人員整理が行われておることは、すべての人々が周知のことであります。これは労働大臣もよく知つておられると思うのであります。  二十八年度の企業整理について、これはあとの質問にも関係がございますから、ちよつと数字を読み上げてみたいと思います。一月には一万二百二十一人、二月は七千四百五十二人、三月は五千八百六十八人、四月は一万四千八百三十三人、五月は二万七千五十九人、六月は一万九千七百十九人、七月は一万八千四百二十六人、八月は二万三百三十四人、九月は二万七千百二十三人。この期間が最も顕著なものは、石炭鉱業と特需等の整理でありますが、二十九年度においては行政整理による中央、地方公務員、緊縮財政実施に基く公共事業その他の企業整備による整理人員が増加して来ると考えられますが、政府がおつしやつているように、防衛力の漸増と同じように、失業者の数が漸増することは避け得ないのであります。労働大臣は私のこの考え方に同意をされますか、または違つた見解を持たれるか、ひとつ所信を承りたいのであります。
  105. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 山花さんよく御承知のことでありまするが、日本の全産業労働者、いわゆる労働力人口と称しておるものは四千万でございます。そのうちの自営業種というものが約一千万、それから家族従業者が千五百万、雇用労働者が千四百万ということになつておるのであります。先ほども申し上げましたように、雇用労働者というものの全体の労働力人口に占める比重というものが、諸外国に比して非常に少いのであります。そこでこの出て来まする、たとえば行政整理があれば、当然失業者が出るのでありまするが、こういう方々を他に転換するということについては、全国にございまする職業安定所の第一線に十分活動してもらいまして、この職業転換についてごあつせんを申し上げたいと考えておるのであります。この職安関係の経費等につきましても、大蔵省において特に配慮してもらいました。行政整理においても、あるいは予算面においても、特別の配慮をしてもらつておりまするので、志気大いに上つております。そこでいろいろな各産業におきまする特殊性等も十分現地において考慮して、この就職あつせんに遺憾なきを期して行く考えでございます。また今いわゆる緊縮予算即失業という関係は、そう直接には出て来ないと思うのであります。先ほど申し上げましたような、予算の増額を予想せられる後半期において重点的に使用することによつて、十分御心配をかけないで済むのではないかとかように考えておる次第であります。
  106. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまのお答えでは私は納得できません。特に先ほど労働大臣は、わが国では失業者の消化階層がある、これはおもに農村とか中小企業、特に家族制度に関連する意味のことをさしておられると思うのであります。農村関係におきましても、中小企業関係におきましても、失業者を消化しえる余地はもう全然ない状態に陥つておることは、これは労働大にもよく御承知だろうと思うのであります。政府は失業対策の予算書に示しておられるように、二十九年度は約五%増しの十六万三千人を対象にしてこの予算を組んでおられるのでありますが、従来は月二十一日就労が緊急失対に基く政府の方針でありました。お示しの予算で一月から若干の賃上げも実行されておるので、なお二十一日の就労方針が可能でありますやいなや、ひとつ労働大臣の所見を承りたいのであります。
  107. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 従来と同一の方針で参る主義にしております。
  108. 山花秀雄

    ○山花委員 さも確信ありげに従来と同一と言われましたが、もし二十一日就労の線がくずれたらどのような処置をとられますか。但し二十一日就労を守るために、私の見解によりますと、当然これは失対費に関する補正予算の計上を大蔵大臣に進言しなくちやならぬはめに陥るだろうと思うのであります。また大蔵大臣はこの場合補正予算を行う意思がございますか、これは労働大臣、大蔵大臣お二人にひとつその所見お尋ねしたいと思うのであります。
  109. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほども申し上げましたように、昨年の上半期において考えましたときよりも、失業者の実数が減つておるのであります。なお今後において失業者が予想せられるとおつしやいますが、先ほども申し上げたように、そう直接的、瞬間的に出て来るものとは私は考えておりません。従つて二十一日就労はよかろうというふうに申しておるのでありまして、まあ私としてはそういうことがあるまい、こういうふうに考えておるわけであります。
  110. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えしますが、失業対策費も人員五%の増加などを見込んでおりますので、私どもも今労働大臣のお答え通りに、さようなことはない、かように信じております。
  111. 山花秀雄

    ○山花委員 両方の大臣は実に甘い見方をやつておられると思うのであります。予算を一兆円以内にとどめるこの財政緊縮予算のもとで、そのような甘い考え方では、私はあなたたちの政策は破綻を来すだろうと考えるのでありまして、何も反対党であるからどうこうというわけでなく、議論のうちからこの問題に対処する結論を生み出して行きたいという熱意で質問をしておるのでございます。  次に失業保険でありますが、二十八年度は九十一億三千九百五十七万円計上されておりましたのが、二十九年度は、九十一億五千八百万円と前年度に比べてわずか一千八百四十三万円の増加になつておるのであります。被給付人員は、二十八年度、前半度の実績の五%増し三十七万四千八百人という数字を明らかにされておるのでございます。先ほど私が政府考えが甘い甘いということを申し上げましたのは、私が一月から九月までの人員整理の数字を読み上げましたが、これによりましても、今日また総理府で完全失業の統計をよく出しておられますが、これに昨年度は平均四十八万人と記載されておるのであります。二十七年度は四十六万人であります。二十八年度を見ても四十八万人となつておりますが、二十八年度前半期の失業手当給付実績は三十五万人強となつておるのであります。これは全部失業保険給付人員対象とはなりませんが、完全失業をしたということは、これは明らかな事実であります。約十三万人ほどが農村関係その他にいわゆる食い込んで行つておる、すなわち収容されておる。農村はますますこのことによつて疲弊すると私どもは考えておるのでございます。そこで労働大臣並びに大蔵大臣の情勢判断のあやまちは、前年前半期の失業保険給付人員から割出したとすれば、先ほど私が申し上げたように、一月から九月までの企業整備による人員月別の統計によりましても、前半の一月から六月までは一月平均一万三千百四十二人であります。後半前期の七月から九月までは一月平均二万一千九百六十一人であります。すなわち約六割強前半より後半の方が増加しております。しかるに十二分の一の五%増しというのはあまりにも実情無視の数字と思いますが、労働大臣は、率直に失業人員数の御訂正をなされる意思があるかどうかという点について、お伺いしたいのであります。
  112. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 いろいろ数字をあげてお話でございますが、私ども実際失業保険の支払われております実態を見ておる者から申しますと、実は失業保険の受給者はそうふえておらない。のみならずこの八月あたりを頂点といたしまして、支払いは減つて来ておるのであります。先般財政緊縮をいたしましたる際も、不用額まで立てておる状況でございまして、私は楽観をいたさずまた悲観もいたしておりませんが、これは実態に即してやつて行く以外にない、数字からのみ割出されるものでもなかろうかというふうに考えておるのであります。ただ山花さんもよく御承知のことと存じますけれども、失業関係のものは幾ら失業が出るから幾ら予算を組むというふうに、非常に大ますではかりまして予算を組んでおるという体形は、むしろ体形としておかしいのじやないかと思います。私どもは現在考えられる諸要素を総合いたしまして、この程度でよかろうと考えておるのであります。
  113. 山花秀雄

    ○山花委員 失業者がちまたにあふれて参りますと、世相はますます険悪になり、そういう対策を誤つて参りますと、犯罪事項もふえて社会不安が助長されるということは、これは私が申すまでもなく関係各大臣はよく御承知通りであります。そこで私のただいま申し上げました数字は、これは労働省が、ざつくばらんに申しますと、極秘というような形で関係各省に配つた書類による統計で、後半前期が六割増しということが明らかにされておるのでございます。ところが極秘と銘打つて関係各省に配られたるこの統計を、あなたはただいま否定をされるような言説をなされましたが、これでよろしゆうございますか。
  114. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それはあとでまた拝見してもよろしゆうございますが、私はそういうものを配つた覚えはございません。  そこで私は先ほどから申し上げておるように、失業保険の金額にしますれば、実支給額というものが問題であります。実支給額がどうなつておるか、そういうことに基いて来るべき年の計画を立てる、これが筋道ではないか、決して楽観しておるわけでもないし、また悲観しておるわけでもないことを特に申し添えておきます。
  115. 山花秀雄

    ○山花委員 今すぐこの失業対策、特にその対象となる人員の御訂正といつても、あるいは無理かもしれませんが、労働省の使命が他の役所と違い、労働者のサービス省として創設されたことをよくお考えを願つて、失業対策、失業問題、この解決のために一段の努力を払われんことを希望いたしまして、これら失業問題に関しては後日詳細にただすことにいたしまして、行政機構改革問題に関して、特に労働関係につきお尋ねをいたしたいのであります。  伝えられるところによりますと、労働省婦人少年局を廃止し、当該局の事務を厚生省児童局の一部の事務等を統合し、総理府内に一機関を設ける案がうわさされ、しかして婦人少年室は都道府県に移管するとのことでありますが、これは事実でございましようか、ひとつお尋ねをしたいのであります。
  116. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます前に、先ほどの数字の点でいろいろお話がありましたが、私は数字をあげてはつきり申し上げておきます。失業保険の実支給額は月二十億円でございます。それの一割増の二十二億になりますから、なお若干予備費もございますし、その点は絶対に御心配はございません。なお労働関係の福祉関係につきましても、御承知と思いまするが、労災病院につきまして前年度四億四千万円でありましたものを十一億円にする、あるいは失業対策費においての厚生福祉施設も一億一千万円でありましたものが四億円になる、あるいはまた労働者の住宅が前年度二十億円であつたものが、ことしは三十五億円を投じて一万戸の労働者住宅を建設するというように、大蔵大臣の重点的と言われる意味を私から解説させていただけば、非常に意を用いているわけであります。  なお婦人少年局関係のことでございますが、婦人少年局廃止ということは実は自由党の方からも一度も伺つたことはございません。私どもも考えたことはない。ところが地方へ行つてみると、婦人少年局を廃止するのだそうだがけしからぬと言われる。私は実は戸惑いしておるので、局長に、そういう根拠のないうわさというものがどこから出たか、うわさでそういうことを心配しておるという人がかりにあるとすれば、これは虚構のうわさにすぎないのだから絶対に心配するなということを申しておるのでございます。  なお機構関係のことでございますが、地方委譲ということは私は考えたことはないのであります。しかし先般来自由党の方でもいろいろお考えになりまして、ひとつ労働関係のものは一応現地の知事の意見も徴したらどうかというようなことで、労政、基準、婦人少年、職安そうした関係を全部一本にまとめて機関委任をするということを考えてはどうかというような御意見もございますが、私としましてはこういうものはやはりその県の特殊性によつていろいろわかれることが望ましくないのじやないかと思いますので、機関委任ということをどういうふうに解するか、いろいろ意見もございまするが、とにかく御心配のような委譲という考えはないのでありまするから、虚構な事実に基いて反対をせられるという向きがありましたら、山花さんからよくその事実にあらざる旨を御説明願いたいと思うのであります。
  117. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま婦人少年局の廃止をしないという明確な御答弁を願つて、私どもたいへん安心したのでありますが、それに関連いたしまして基準局、基準監督署あるいは地方職業安定所行政についても労働大臣から御答弁がございましたが、これは私もお尋ねしたいと思いましたが、御答弁がございましたからこれをやめにいたしまして、労働大臣は最近統計調査部にて各種資料を収集して、各種業態別賃金制度いわゆる標準賃金制度の原案を作成したと伝えられ、近々労使並びに一般の意見を徴する準備をしておるといわれておりますが、その構想をお尋ねしたい。また政府の経済政策がもしインフレ防止に確信を持つておられるようでございましたら、標準賃金制度というような一種のくぎづけ賃金体系を築くよりも、この際思い切つて最低賃金法をお考えなつたらいかがかと思いますが、この点について労働大臣の御所見を承りたいのであります。
  118. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私どもの申しておりますいわゆる標準賃金ということは、これは業態別あるいは職種別、年齢別、経験別、性別というようなもので、日本の賃金のあり方がどこにあるかということを、詳細に統計的に調査してみよう、こういうことなのでございまして、一部に誤解があるようですが、官僚的な賃金統制ということは実は考えていません。自由党としましてはそうした官僚統制というものをはずすという方向に来ておるのでありまして、そういうことは考えていないのであります。ただ日本の経済の実態から申しまして、賃金の居どころというものが、大体物価が安定して来るところに、賃金が上つて参りますれば物価を呼び上げることになる、いわゆる悪循環が起るので、経済も安定させ、日本の経済基盤を確立させようという際に、名目的な、一般的な賃上げは避けてもらいたい、こう考えております。やはり賃金というものは能率により実態によつて支給さるべきものであるから、そうした賃金体系を確立するように考えたらどうか、こういうような趣旨でございます。しこうして最低賃金のお話がございましたが、私どもは最低賃金ということにつきましては、実は率直に申しまして、これは無理じやないかと思つております。かりに中小企業等で最低賃金を保障するということになるならば、中小企業自身を国家保障しなければならぬ、そういう国家統制的な、国家管理的な、あるいは中小企業を国営にするというような考え方は私どもとしてとらざるところでございますので、中小企業の最低賃金ということは現段階においては不可能であろう、こう考えております。
  119. 山花秀雄

    ○山花委員 若干労働関係質問も残つておりますし、また綱紀粛正の問題についても質問いたしたいと思いますが、理事会の申合せもございますので、質問は午後に譲りまして、一応私の質問を打切ります。
  120. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは午後一時四十分より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  121. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  質疑を継続いたします。山花秀雄君。
  122. 山花秀雄

    ○山花委員 労働関係立法についての点について、一、二引続いて労働大臣にお尋ねしたいと思います。公労法、地公労法については、労働省では一応の案を作成し、一月二十八日に労使双方の意見をお聞きになられたそうでありますが、今国会に提案いたされる意思があるかどうかという点についてお答えを願います。
  123. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたします。公労法、地公労法の関係につきましては、いろいろな御意見があります。たとえば、公企体自身についてどう考えるかとか、あるいは、公労法自体についても、運用にいろいろ問題があるのじやないかというような御意見がありますので、労働省としましては、いろいろ研究しておるのであります。その試案のようなものをもちまして、一応各方面の御意見を伺つておりますが、政府としての考えは何らまとまつておりません。従つて、これをどうするかというようなことについても、何ら決定をしておりません。
  124. 山花秀雄

    ○山花委員 労働基準法関係または国鉄職員の首切りに関する件、または駐留軍労働者の法的措置の件、いろいろお尋ねしたい点がたくさんございますが、時間の制約がございますので、これらの問題は後日に譲りまして、綱紀粛正問題に関して質疑を続けて行きたいと思います。  吉田内閣は、しばしば国会軽視に関して物議をかもし、批判をされているのでありますが、政治の衝に当られる責任者は、その言説、行動にたとい刑法に触れるようなことがなくとも、道義的責任をとる態度を鮮明にしなければなりません。そうでないと信を国民より失い、ひいては政党不信を高め、民主政治の危機を招来すると叫びたいのであります。私は、昨今世をあげて論難されておる綱紀粛正に関して、保利農林大臣及び犬養法務大臣の所見をただしたいと思うのであります。この問題は、内閣の首班者たる吉田総理大臣もよくお聞きを願いたいのであります。  去る一月二十九日の本会議場における政府の施政方針演説に対するわが党代表高津正道君の綱紀粛正に関する質問に対し、保利農林大臣は麻袋問題に関し、犬養法務大臣は黄変米に関連するその取調べの衝に当つている検事異動問題に関し、まことに無責任きわまる答弁を行つているのであります。その場さえのがれれば何とかなるであろうという安易な考え方で、一切を処理せんとしている態度は、明らかに国会軽視の態度と思いますが、両大臣よりひとつお答えを願いたいのであります。
  125. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいまお話の、本会議場で高津議員の御質問に対してお答えいたしました麻袋の件に関しましては、本会議でございますから、詳細に申し上げることもできませんでしたが、これは昭和二十六年の八月に百キロ入りの麻袋三百万枚の調達をいたしておるのが一つの問題、その三百万枚を購入いたしましたのは大体外米の輸出地におきまして、麻袋に入れて輸出をしてくれる。ちようどこの件はタイの輸入米に関することでありますが、タイの麻袋調達が、供給地でありますインドから麻袋の供給を受けられないような事情になつておる。原料産地のパキスタンとインドの葛藤があつて、麻袋をタイ国で入手することが困難である。そのために日本の方で麻袋を調達して、三十万トンのタイ米の輸入をはかろうというような必要に迫られて、三百万枚の調達をいたしております。ところがその後タイ国において入手ができるようになつた。これは非常に複雑ないきさつがあつたようでございますが、タイ国では、その後になりまして、タイ国の方で調達をした麻袋を日本に買えと言つて来た。ところが食糧庁の方ではすでに三百万枚の調達の契約をいたしておりますから、その方はひとつ精米業者にそちらで払下げをしていただくようにということを交渉いたして、遂にその交渉が十二月に至つてやつと片がついた。従つてタイ米の輸入につきましては、この三百万枚がその目的のためには使われないのである。これが会計検査院の検査によつて批難を受けておるわけでございます。そういうふうに使わないで三百万枚を持つてつて、さらに翌年の十二月に六十キロ入りの麻袋を五百万枚発注をいたした。その五百万枚は、三百万枚の新しい百キロ入りの麻袋を一枚も使わずにおつて、何の必要があつて五百万枚を調達したか。これは御承知のように、日本で取扱います分としましては、せいぜい六十キロ入りぐらいが、その持扱いに一番適当でありますから、普通六十キロ入りを使つておるわけでございます。当時の食糧事情からいたしまして、大麦、小麦等の輸入を相当大幅に拡大いたした、それに大麦、小麦は裸で来る。それで港においてこれを袋に詰める。従つてその港で麻袋の用意をしなければならぬ。それの輸入計画と麻袋の手持ち状況からいたしまして、五百万枚の調達をしても、なお見通しとしては不足するような麻袋の需給関係にあつたと、私も調べまして確認をいたしております。しかしながら結果においては、三百万枚というタイ米の輸入の目的でもつて調達されたものがそれに使われず、しかも三百万枚がまだ一枚も使われぬうちに五百万枚も注文をいたした。これは職員が善意で運営をいたしましたにいたしましても、結果からいたしますと、非常にむだをやつているのじやないかという感じは免れ得ないのであります。ただ、しかと三百万枚といい、五百万枚と申しますけれども、今日外麦の年間輸入は、ほぼ三百万トンでございます。三百万トンと申しますれば、六十キロ入りにいたしまして、五千万袋でございまして、従つて年二回の回転——麻袋の回転率は二・八くらいの割合で回転をいたしておるようでございます。それにいたしましても、やはり二千万枚から二千五百万枚の麻袋がなければ、今日の輸入食糧を動かして行くということはできない事情になつております。非常に大きな数字でございますから、だれでも奇異に感じますけれども、今日の輸入食糧から申しますと、このくらいの手当は必要であつたろうと思いますけれども、これの動かし方につきましては、確かに善意であつても結果においてはむだがあつたじやないかというおしかりを受けましても、これはやむを得ないところである。そこで私どもとしましては、何さまかような厖大なものを取扱うことでございますから、かようなことは、何かと既往のこういう経験にかんがみまして、将来かくのごときむだと思われるようなことをしなくとも済む方途がないものか、一番端的に、ざつくばらんに申しますれば、輸入業者に調達の能力があれば、これは一番けつこうでございます。その能力なしと見られます今日の状態においても、何らか改善の方途を考えなければならぬ。ただいま食糧庁を督励いたして、この改善策を講じておるわけでございまして、かような会計検査院から批難をせられる事態を引起しておりますことにつきましては、私としてもきわめて遺憾に存じております。
  126. 山花秀雄

    ○山花委員 質問の持ち時間が制約されておりますので、本会議でおつしやつたことを重複することはお避け願つて、端的にひとつ御答弁を願いたいと思います。  ただいま農林大臣のお話によりますと、八百万袋を一応つくつた、ところが私の知り得るところによりますと、なお六百五十万袋ほどを今日持ちあぐんでおるという状態であります。ところが本会議の席上において、本年の三月までこれを使つてしまうから御安心願いたい、こういう答弁をなさつておるのであります。六百万袋を三月までに使つてしまうから、そう懸念することないと言われたこの答弁は、そのまま実行でき得る見通しを持つておられるかどうか。なおこの大量の麻袋の倉庫保管料のために、毎月三百万円の金を払つておる。今日までに千四百万円の金を払つておる。これは明らかに国の財政に与えた大きな冗費である。見通しが違つてまことに相済まぬということだけでは、なかなか私は許されない行為であろうと思うのでありますが、これらにつきまして、政治的にはどういう責任を感じておられるか、農林大臣の御答弁を願いたいと思います。
  127. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。三百万枚につきましては、三月で二、三十万枚は残ろうかと思います。しかし麻袋が一つもなくなるというような状態では、またこの食糧管理ができませんから、相当のストックと申しますか用意をしておらなければならぬということは、これは申すまでもないことでありまして、すつからかんでは船が着いても麦を入れられぬということになりますから、これがなくなればなくなつたで、新たにまた調達をして行かなければならぬということになります。  それから保管上政府倉庫があるにかかわらず、民間倉庫に一年も使わないでただ保管をさしておつた、そのために保管料を相当むだにした、これはもうその通りでございます。しかし物は輸入食糧に使うものでございますから、できれば港の倉庫に持つていてもらわなければならぬ。そこに政府倉庫がない、そういうわけで港の民間営業倉庫に頼みました。しかしそれは経済的にあるいは不経済であつても、官庁の仕事でございますから、一方に多少距離の不便があつて政府倉庫がある限りにおいては、政府倉庫を用うべきであるというように存じまして、あとの分は政府倉庫に入れておるわけでございます。このことにかんがみまして、今後かかる事態を起さないように、私自身厳重に当つて責任を果して参りたい、かように考えておるわけでございます。
  128. 山花秀雄

    ○山花委員 黄変米の不当価格による払い下げ問題について、あなたは当時農林大臣でなかつたから、あるいは責任は別ではないかと存じますが、当時片柳食糧庁長官だけの一人舞台とは、ちよつと考えられないと私どもは考えるのであります。必ずや農林省内に相棒があつたと思われますが、こういう不潔な公務員を追究し、処置される態度に出なかつたのですが、おそまきではございますが、ただいまその意思がありますか、あわせてお尋ねをしておきたいと思うのであります。そしてこれらの問題に関して、現在のあなたの御心境を承りたいと同時に、なお注意までに申し上げたいと思いますが、昨年十二月八日の本院決算委員会においては、小峰会計検査院説明員より明確に八億四千万円の損害を国家財政に与えたと証言されておるのであります。これらの責任追究を農林大臣としてはなされますかどうかという点についてお伺いしたいのであります。
  129. 保利茂

    ○保利国務大臣 黄変米の問題につきましては、これは私は単なるそういつたような不正的な事件としてだけでなしに、少し広く認識をする必要があるのじやないかと思います。黄変米は昨年のFOA、世界農業機構会議でございますかにも持ち出しましたが、ヨーロッパでは黄変米を少しもいやがらぬで買つておる、今日でも依然として買つておる、そして食糧に供しておる。むしろそれはゴールデン・カラーとかいつていいじやないか、日本がやかましく言うのがわからぬというような性質のものなのであります。しかし日本の食品衛生法で、厚生省の栄養研究所か何かで有毒だ、こういうことでそういうものが扱えなくなつた。この黄変米につきましては、ただいまの麻袋に関する問題と同様に、今日まで私といたしましては、その当時の実際の扱いの事情をきわめまして、責任を問うべきところがあれば断じて問うという態度をもつて調べて参つております。いろいろの見方はあると存じますけれども、食糧庁の職員において少くとも悪意を持つて、こういう扱いをしたものでないということだけは、私は十分認めておりますので、事務的な責任追究を、今後また別途の問題が出て来ますればこれは別でございますけれども、ただいままで調査いたしましたところでは、その必要を認めていないのでございます。しかし取扱い方につきましては、ただいま御指摘の片柳某というようなお話は、黄変米払下げに関して、日本糧穀会社が介在したというところに、見方によれば非常な疑いの目がかかるわけであります。食糧庁の扱いとしては、今後は実需者に対して払下げ処分をして行く、中間を通さないという原則の上に、間違いの起らないようにやつて行きたい。しかし事態の糾明につきましては、どこまでも糾明をして行くことに、私は躊躇するものでないことだけを申し上げておきます。
  130. 山花秀雄

    ○山花委員 犬養法務大臣にお伺いしたいのですが、一月二十九日の本会議におけるわが党代表高津正道君の、黄変米にからむ不正被疑事件に関し取調べの衝に当つていた東京地検の木村、富田、吉川の諸検事異動は、その裏には政治的においがあるという質問に対して、高津君は感違いをしておる、これら東京地検の検事の異動は、メーデー事件その他の重要事件が山積しておるので、その方を担当してもらうためであつて、不正事件の関係は和歌山検事局において取扱つた、東京地検ではありませんと答弁をなさつたが、東京地検の木村検事は当時黄変米から糸を引いた事件で、有動一夫なる人物を取調べ中であつたことは、お知りになつておるはずであろうと私は考えておるのであります。お知りになつてかまた知らずにあのような答弁をなさつたかいなかを、ひとつお尋ねをしたいのであります。
  131. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。有動一夫という者が起訴されておることは存じております。承知の上で申し上げた次第でございます。それはどういう事件かと申しますと、山花さんよく御承知と思いますが、これは黄変米の払下げを受けました東洋醸造株式会社が、払下げを受けるに際しまして、日本販売農業協同組合連合会の農林部長の地位にあつた有動一夫が払下げ手続に関する委託を受けて、その際入札保証金の一部二百四十万円を、日本販売農業協同組合連合会において負担して納入いたしました。その後保証金が有効に帰つて来たにかかわらず、その男がかつてに使つてしまつた、こういう問題でありまして、糸を引くといえば糸を引くと申し得ると思いますが、黄変米と違う事件、それに派生した別の金銭使い込み事件だ、こういう意味で申し上げた次第でございます。
  132. 山花秀雄

    ○山花委員 この事件に関しましては、犬養法務大臣はただいま御説明のありましたようによく御存じのことでございます。当院におきましても農林委員会や、決算委員会で問題になつておりますし、私自身も昨年十一月四日本会議場において、公労法に基き、国会の議決を求める件の政府の説明に質疑を行つた際にも、片柳眞吉君がトンネル会社をつくつて黄変米の払下げを受けて、多額の金銭を受けておることを申し上げたのであります。法務大臣がよく知つておられるのに、何ゆえか明らかにいたしませんゆえに、この際私から明らかにして法務当局の決断を促すものであります。それは当時片柳眞吉君は日本糧穀株式会社をつくり、黄変米の払下げを受け、その数量は五百五十トンと言われているのであります。石当り一万四百円の買入れ価格を四千六百円で払い下げられ、石当り五千八百円なりの損失を国家財政が受けておるのであります。先ほど農林大臣も申されましたごとく決算委員会においては八億四千万円の損失を国家財政に与えられたことは明らかにされておるのでございます。日本糧穀はこれを東洋醸造会社に売り渡し、その名目はアルコールの製造用としてありますが、アルコールは政府の専売専業であります。何を好んでまわりくどい民間トンネル会社を通ずる必要がありましようかと、私は言いたいのでございます。東洋醸造はこれを大阪、京都、和歌山、兵庫、広島、愛媛の二府四県にわたる食糧事務所にこれを売り渡し、今日和歌山県のみが刑事事件となり、有罪判決の行われたことは、これは法務大臣よく御承知通りでございます。和歌山県に売り渡されたのは百トンであります。残余の四百五十トンの行方は、残る二府三県に関係しているということは明らかであります。何ゆえに和歌山県のみ事件を審理され、その他の府県は不問に付されておるのか、また和歌山の事件を担当した外村検事は、この事件終了後ただちに大阪に転任せしめられておるのであります。これらのいきさつを国民がながめたとき、いくら犬養法務大臣が司法権の独立を叫ばれても、司法権の威厳は保たれるものではないと、私どもは考えておるのでございます。司法権の威厳のために、犬養法務大臣の所見を、この際一段と明らかにしてお答えを願いたいと思うのであります。
  133. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。司法権の威厳のために、御迷惑でごさいましようが、詳細にお答えを申し上げたいと思います。最初の黄変米の刑事事件でございますが、和歌山地検におきまして、これを捜査を遂げまして、現在公判係属中であるということは申し上げたと存じます。そのほかに横浜に二件起つております。このことを御報告申し上げておきます。というのは横浜市警あるいは横浜地検におきましても、黄変米の横流し事件を捜査中でありまして、これが御質問にあります他県にも及んでいるということの中の一つだと思います。これはどういう事件かと申しますと、横浜地検において、昨年の十二月七日以降現在までに、横浜市警本部から館良太郎という男外七名に対する食糧管理法違反被疑事件として扱つておるのであります。というのは、詳細に申し上げて恐縮でありますが、神奈川県の餅類工業協同組合の理事長の吉沢始という男が、昨年の八月の中旬にもちをつくる原料として払下げを受けました黄変米等約二百トンを宇田川俊春という男を介しまして、米穀小売商青木喜七外二名に横流しした事件、もう一つは神奈川の米菓業協同組合理事長の小宮四九という男が、やはり同じ月の中旬ごろに、お米を使う菓子の原料として払下げを受けた黄変米約百九十九トンのうち、五十トンほどを横流しした、こういう事件でありまして、これは今捜査中でございます。ほかに二、三件あるというお話を漏れ承りましたが、至急調査しておりますが、現在この横浜の二件以外には手元に報告が来ておりません。  それから検事の異動でたびたび御質問を受けて恐縮でございますが、たいへんよい折でございますから、これも御迷惑かと存じますが、詳細に申し上げたいと思います。当初木村検事が取扱つて捜査を進めておつたのでありますが、御指摘のようにいかにも富田、吉川両検事がこれと引継いで捜査をいたしたものでございます。木村検事は昭和二十七年の一月一日から東京地検の特捜部に属しておりまして、この捜査をやつてつたのでありますが、地検の方針いな全検察庁の方針としまして、木村君のようなちようど中堅に当る検事というのはいろいろな方面で実学問をさせているのが人事異動のときの方針でございまして、木村君はまだ公判部の経験がありませんので、あの年ごろに一ぺん公判部の苦労をさした方がいいというので、特捜部に行つてからちようど一年三箇月後に、定期異動によつて配置がえをいたしたわけでございます。これはいつもやつていることでありますし、特に申し上げたいのは、法務大臣がかつてにやるという習慣をとつておりません。大きい異動のときには約一箇月以上、二十回ぐらいにわたつて部内のいろいろな意見を聞きまして、最後に結論を出すのでありまして、独断的な人事は一度もやつたことはございません。それから富田検事でございますがこれは二十八年四月六日から特捜部に属しておりました。富田検事がそのあとで捜査をやつてつたのでありますが、二十八年の十一月九日御承知のように大異動をやりまして、そのときに法務研修所から懇望されまして教官に移つたのであります。それはなぜかと申しますと、よく新聞雑誌に名前の出ます出射検事が名古屋高等検察庁の次席検事に栄転いたしまして、教官陣が少し手薄になりました。富田君はそういう方面の才能がありますので、懇望されてその教官に転じたものでございます。そのあとを吉川検事がやつているというわけで、別に黄変米もしくはただいま申し上げた金銭の使い込み事件に都合が悪いから、臭いものにふたをしたいというようなことでやつたあとは寸毫もございません。また御承知だと思いますが、東京地検の各検事一人当りの事件担当の数は、年間七百件ぐらいあるのであります。一々さしさわりがあるからといつてどけていた日には、とてもおつつかないようなわけでございます。またもう一つの角度から申しまして、これらの中堅検事はそのまま置いたら政府に都合が悪いというようなことは、一つもないわけなのでありまして、どこから見ましてもわざとかえるという理由はまつたくございませんから、なお十分に御調査の上、御教示を願いたいと思つております。
  134. 山花秀雄

    ○山花委員 まことに詳細な御答弁で、私ども非常に満足をするのでございますけれども、何分時間が制約されておりますので、他にたくさん綱紀粛正に関する質疑の要点がございますが、あと一点だけをお聞きして、残余の分はまた後ほどの委員会でお聞きしたいと思います。  昨今問題になつております造船融資問題や、また保全経済会の問題の発展は、多くの政治家連中に献金が行われ、かつまた政党へも多数の献金が行われたと流布されておるのでございます。最近この種の政治献金について、政治資金規正法が発動されたということは聞いていないのであります。政治献金が明確になりました節は、政治資金規正法の発動をされますやいなや、法務大臣の見解をこの際卒直にお述べを願いたいと思います。
  135. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。どんな種類にしろ違法の事件については、厳正に取扱つております。また御指摘の政治資金規正法適用の問題は、ついこの間の総選挙のあとにも、これによつて起訴した件数は相当ございます。このように御承知を願います。
  136. 山花秀雄

    ○山花委員 犬養法務大臣のただいまの言明を私ども信用をいたします。全貌が明らかになりましたならば、仮借なき法律の発動によつて、政界を明朗にするように一段の努力をお願いするものでございます。  次に、いろいろ質問したい点がたくさんございますが、予定の時間も来ておりますので、ただ一点だけ木村保安庁長官質問をして、私の質問を大体終りたいと思います。  防衛力の五箇年計画の問題でございますが、わが党の武藤委員の質問に対しては、二十九年度の計画を明らかにされました。右派社会党の河野密君の質問に対しては、三十年度の全貌を明らかにされました。三十一年、二年、三年、これらの年度内においては、どの程度の防衛力を漸増せしめる計画を持つておられるか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  137. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。二十九年度は予算に盛り込んでおりますから御承知通りであります。三十年度については、大体この程度に目標を置いてということで、われわれは計画を立てておるのであります。これも確定的のものではありません。その後のことについはいろいろの情勢の変化もありますから、今研究中でありまして、何ら成案を得ておらない次第であります。
  138. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまのお答えによりますと、三十年度までは一応考えておるけれども、三十一年度から先は今のところ何ら考えがない、こういうふうな御答弁でございましたが、そのように理解してさしつかえありませんか。
  139. 木村篤太郎

    木村国務大臣 目下検討中であります。
  140. 倉石忠雄

    倉石委員長 山花君の御発言に関連いたしまして、横路節雄君から発言を求められております。これを許します。横路節雄君。
  141. 横路節雄

    ○横路委員 私は木村保安庁長官お尋ねをしたいのですが、先ほど午前中の、稲葉委員の質問に関連いたしまして、中曽根委員から質問があつたわけであります。私は木村保安庁長官答弁につきまして、実は速記を調べたのでありますが、中曽根委員の質問に対して、最初保安庁長官は、水田君の提示した案というものをわれわれが見ると、もちろんそれを尊重して行く、こういう答弁でありましたが、中曽根委員は改進党側としては、今後自由党と改進党との折衝の結果によつてやるというのでなしに、改進党側に提示された自由党の水田案というものに対して承認するのかどうかという点について、重ねて質問をされているのであります。この点は速記によつて明確になつているのであります。中曽根君は、今後われわれと自由党がつくり上げて行くのを承認するというのではありません。自由党が提示したものを承認するかしないか、それがまず基礎でなければなりません。こう言つている。これに対して木村保安庁長官は、この点につきましては明確に自由党が提示されたものに対して了承いたします。従つてわれわれはその点についてやるということは、十分御了解を得るものと考えております。最後に中曽根君はこの点について、ただいま木村保安庁長官の言明によりますと、自由党側が提示した線に沿つてやるというので、改進党としては了承するということで終つているのであります。従つて保安庁長官は、ただいま山花委員の質問に答えて、昭和三十一年、三十二年、三十三年については計画はないと言うけれども、先ほど明確に中曽根君はこの点については、五箇年計画があるのだ、水田案によつて陸軍十八万、海軍十五万、航空機一千機、なおこれに対しては一兆四千億を予定していると言つているのであります。この点につきましては、明らかに保安庁長官は先はどの本委員会で、自由党が改進党に提示した案については了承したと言明されたのですから、従つて保安庁長官——一体自由党が提案したというものはわれわれは新聞でしかわからぬ。たとえば自由党側では五箇年計画として、陸上は二十六万五千の防衛計画を出したという中曽根君の言と符合するように、五箇年間に一兆四千億、そのうちいわゆるMSA援助には四割三分の六千億を予定していると言つている。さらに増原次長は一月十四日に自由党の総務会に出て、陸上五年後の目標は制服隊員十八万、文官二万、合計二十万、海軍については五年後の目標は十五万五千トン、航空機については五年後は、練習機を含めて千三百機とする、こういうようなものを発表しているではありませんか。明らかにこの委員会において自由党が提示した改進党の案について、保安庁長官はこれを了承したと言つている。これは自由党と改進党との会合ではない。ぜひひとつ明らかにしていただきたい。
  142. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。いろいろの案がありましよう。しかし保安庁としてはまだ確定案は持つておりません。申すまでもなくこういう計画を立てるについては、きわめて慎重な態度を要するのであります。われわれは慎重に考慮中であります。水田案けつこうです。しかしわれわれは存じておりません。これは十分に検討いたしまして、最後的の案を立てたいとわれわれは思います。
  143. 横路節雄

    ○横路委員 私は保安庁長官に重ねてお尋ねしますが、保安庁長官がここで改進党の中曽根委員に対して、私は自由党のいわゆる改進党側に提示した五箇年計画については了承したのですと言わなければ、私は聞かないのです。ところが自由党案については了承したと言つている。三十一年、三十二年、三十三年については詳細な案はないかもしれないけれども、明らかに増原次長は自由党の総務会に出て、五年後の兵力について述べているではありませんか。しかもここであなたはそれを了承したのですから、それならば私はあなたにお尋ねしたいのだが、自由党の案について、あなたが改進党の中曽根君に対して了承したという案について、発表してもらいたい。
  144. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。水田案については、まだ私は知つておりません。その案については委員会に提出されたことを了承したから、その案に基いて検討しよう、こういう意味であります。   〔発言する者多し〕
  145. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  146. 木村篤太郎

    木村国務大臣 また増原次長がどういうことを言つたか知りませんが、これは断じて保安庁で確定した案ではございません。
  147. 倉石忠雄

    倉石委員長 今澄勇君。
  148. 今澄勇

    今澄委員 私は先般総理大臣が静岡の遊説で述べておられる言葉の中に、英国の経済は耐乏生活を続けた結果、昨年二月から隔世の感ある復興ぶりを示した。これと比較して乏しい日本の外貨は、予算事情の悪化がこのまま続けば、間もなく食いつぶしてしまう危険な状態である。外国政府から親切な忠告を受けているような始末で、二十九年度予算案は幸いに一兆円以内に抑えることができた。しかし国民が耐乏生活に甘んじる覚悟をいたさなければ、すぐに補正予算を組まねばならない事態となるということを演説で言つておられる。ところがこの演説は本予算案を審議する上に、いろいろな重大な意味を持つておるけれども、私は総理に指摘をいたしたいのは、まず第一番にイギリスのこの成功は、社会保障制度によつて最低生活が保障せられておるということを、総理はお考えになつておらぬ。イギリスのバトラーがとつた政策には、まことに今の日本考えなければならぬ問題が多々あります。一九五二年当時バトラーは、英蘭銀行の公定利率を一九五一年の二分五厘から四分に引上げておる、株式会社の配当を抑制した、投機資金を抑制して輸出産業に重点を賢く資金の質的統制を行つておる、賃金の引上げ抑制を労働組合に訴えた、四十五億ポンドに上る四箇年再軍備計画をスロー・ダウンして軍事費を削減しておる、低額所得税を大幅に減税しておる、輸入制限を根幹とする長期経済計画を立てておる。以上のようなバトラーの政策と英国全体の長期計画によつて、今日二十五億ドルの金をイギリスが保有するに充つておることは、すでに御承知通りであります。私はもしほんとうにこの予算審議にあたつて政府国際収支の改善と物価の引下げをやつて、国国民の心からなる耐乏生活の協力を求めようとすれば、まず第一に社会保障費を拡充し、資金の質的統制を行う、間接税の引上げを中止する、電燈料金その他を初め公共事業料金の引上げを中止する等々の、行わなければならぬ問題が多々あると思うのであるが、今まで総理からかかる具体的な問題についての決心は、予算審議過程において一度も聞いておらぬのであります。私はこの際バトラーの耐乏予算を説かれた総理に、これらの問題についての御見解をまず承つておきたいと思います。
  149. 吉田茂

    吉田国務大臣 私がバトラー氏の予算案について申したことは、結局輸入を抑制した、輸入が輸出を越えてアンバランスになつた場合には、恐るべき結果があることをバトラー大蔵大臣は信じて、輸入を非常に抑制したという点について私は賞讃いたしたのであります。
  150. 今澄勇

    今澄委員 今の私の申し上げたこの計画を、経済審議庁の長官として、これらのものと関連する今後の審議庁の方針並びにこの予算案で、貿易の中心をなす外貨予算ですが、割当を削減すれば砂糖のように物価が上るでしよう。といつて削減しなければ手持ち外貨が減少する、だから私は今の問題と関連して、この外貨の割当を一体どうするか、政府は削減するとおつしやつた、だが削減するとすれば不要不急のものから削減をするわけだが、しからば具体的にはどのような品目を削減し、どのような品目をふやし、どういうふうな方針で臨まれるかということを、経審長官兼通産大臣から伺いたいと思います。
  151. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。今回の予算を初め一連の政策は、国際耐収支の改善ということを第一の眼目にいたしておりますから、その観点から外貨予算の編成もいたさなければならぬことは申すまでもございません。しかしながら私どもといたしましては、いわゆる一兆円予算と国内の今後の産業の活動、国民所得ということと、総合的な見通しをつけまして、輸入の計画をいたさなければならないわけでありますが、一口に申しますと川内の生産活動を維持いたしますために必要な原材料、あるいは食糧というような重要物資につきましては、大体二十八年度と同和度のものを考えております。申すまでもなく不妊、不急品、特に奢侈的な輸入品については、これを削減する方針で参りたいと思いますが、外貨予算の編成につきましては、そういう方向で現在鋭意検討いたしております。来年度の分は各品目について詳細にお答えするまでには、まだ至つておりません。
  152. 今澄勇

    今澄委員 かような予算編成に伴う経済上のいろいろな観点からであつたと思うが、先般総理大臣は藤山愛一郎氏と御会見になつておる。私は日本商工会議所等のこれらの責任者の方と総理大臣が、こういつた経済的な問題について、お打合せになることはけつこうであると思うが、それらのいろいろな問題が検討されたのかどうか、私は総理大臣にお伺いをいたしてみたいと思います。
  153. 吉田茂

    吉田国務大臣 藤山一君と会いましたことは、個人々々の間の関係でありますから内容は申しませんが、しかしお話のようなことは、その当時話題に上つておりません。
  154. 今澄勇

    今澄委員 そこで藤山君とあなたとお会いになつたことははつきりいたしましたが、少くとも今まで日本航空の社長の問題をめぐり、吉田総理とはまつたく対立の関係にある藤山君との個人的な会見ではあるが、会見の席上において、日本航空法案、国家の出資金三十億、これが国会を通るときのいろいろないきさつについても、私どもは疑惑を持つておる。さらに造船疑獄、保全経済会問題、いろいろの問題があつて、財界の一方に吉田さんに対する反対勢力があるということは非常にまずいから、政党献金その他の問題についても、藤山さんからあなたに意見が述べられたということであるが、もしさしつかえなければお伺いをいたしたいと思います。
  155. 吉田茂

    吉田国務大臣 そんな話は全然ありません。
  156. 今澄勇

    今澄委員 総理は全然ありませんとおつしやるが、この予算案の審議の中心である耐乏生活ということを国民にしいるからには、少くとも国民の信頼し得る清廉潔白な政治家の出所進退というものが必要だと思います。しかるに平野証言による保全経済会の問題は、この予算審議過程において、最も重大な耐乏生活をしている国民に、大きな疑惑の念を抱かしたことは事実であります。  そこで私はまず保全経済会の問題から、時間があれば造船の問題を伺いたいのでありますが、この保全経済会の問題は、単なるスキャンダルといつて片づけるわけに行かない、思想、宗教、政治、経済、言論等の各界にわたり重大な問題を含んでおると私は思います。まず第一番に無名の朝鮮生れの伊藤君が、大谷瑩潤氏を通じて宗教界に、三浦、児玉の両氏を通じて右翼思想団体の方面に、電通木原、新夕刊山崎氏等を通じて一部の言論界に、さらにはまた腐敗せる政界の現状と射倖的な国民心理を利用して、政治経済を牛耳らんとしたその規模と構想は、今日失敗に終つたとはいいながら、われわれ政治家に徹底的な反省と粛正を求めておると、私は確信をいたします。しかもなおこれと類似の匿名組合の数は約千三百、匿名組合並びに株主相互金融を合せると、驚くなかれ千三百の大きな数に上つて、しかもその出資願は一千億円を越えておるのであります。被害を受けた出資者の数が約三十五万人、衆参両院議員にしてこれらの会社の顧問と相なつた者、営業案内と新聞広告に出ておるこれら機関の商標をつけた者が五十数人、これは結局詐欺横領、贈収賄、政治資金規正法違反、公職選挙法違反等の法律的な罪は、まだきまつておらぬのだから、私は総理に伺いはいたしませんけれども、政治権力の中心たる内閣総理大臣に、この保全経済会の問題というものは、かような大きな問題を背景に持つておるということを、私は申し上げておかなければならぬのであります。私は十二月五日の本委員会において、吉田総理にこの実情を指摘して、あなたの答弁を求めたのでありますが、責任ある答弁はございませんでした。だがしかし保全経済会の問題というのは、こういういろいろの問題を含んでおるということを前提として、政治権力の中心である総理大臣としての御所信を、私はまず伺つておきたいと思います。
  157. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答え申しますが、しばしば私は申しております通り事態の真相は明瞭でなく、現に司法当局の調査のもとにただいまあるもので、その問題の真相が明らかになつた場合には政府は断然善処いたしますから、御心配なきようお願いいたします。
  158. 今澄勇

    今澄委員 まあ少しどうかと思いますが、もう一つ続けてひとつお伺いしておきましよう。保全の投資会社に日動商事というのがあつて、これの傘下の所有建物に殉国青年隊総本部というものがあり、右翼思想の青年が活発に行動しておる。これは三浦義一、児玉誉士夫氏等を通じて右翼中心勢力と連なり、封建独裁への政治的な謀略に通ずるものと私どもは見ておる。保全経済会が無この大衆を欺いた金でかかる右翼思想団体と緊密な関係を持つておるという事実は、半面に耐乏生活をしいられておる国民大衆が、伝えられるところのいわゆる本年三月の共産党の三月革命、これに思わずも同調して行くような風潮を今わが国に起しつつあるということは不実であります。保全経済会の問題はかように重大な問題を含んでおるが、この保全経済会を放置しておつたことがかような社会不安の一原因をもなしておると同時に、しかも下気味なこれらの右翼テロ的圧力をもつて本件の徹底的追究が妨害されておると伝えられていることは、まつたく新憲法のもとにおける主国家の姿ではないといわなければなりません。私はこれらの問題について、重ねてもう一度総理大臣に御答弁を願いたいと思います。
  159. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の答弁は前言の通りであります。事態の真相が明らかになつた場合に政府は善処します。
  160. 今澄勇

    今澄委員 今私が申し上げたことは、衆議院の行政監察委員会保全経済小委員会で調査の結果明らかになつた事実についてあなたにお伺いしておるのである。これは明らかになつておることであるから、この明らになつただけの事態を中心にして、もう一度総理の御答弁を願いたいと思います。
  161. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の答弁は前言の通りであります。
  162. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は、今吉田総理に御質問申し上げた事態について、重ねて犬養法務大臣からひとつ御答弁願いたいと思います。
  163. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。ただいまの御笠間中、保全経済会について捜査がどうも長くかかり過ぎた、怠つたという結果になるのじやないかという御指摘がございましたが、それについて申し上げたいと思います。なるほど外部からごらんになるといかにも長くかかり、またがつてあなたから御注意のあつたことも記憶しておるのでありますが、一方たとえば外国為替法違反というようなことで逮捕することはわけないのでありますが、それでは輿論にこたえる道にもなりません。結局無知の多くの純朴なへの零細な金を集めて、それに対して不正なことをしていたことで詐欺容疑ということになりますと、十分な根拠をつかんで捜査し逮捕しませんと公訴の維持がむずかしいという、これこそ国民の期待にそむく結果になりますので、外部からごらんになるとそういうお感じを持つたろうと思うのでありますが、今日から見ますると、日をかけたことについて、私は東京地検のやり方是認いたしているものでございます。今後鋭意こういう忌まわしい犯罪については究明いたしたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
  164. 今澄勇

    今澄委員 そこで伊藤斗福君の取調べの状況はときどき新聞に報道せられておるが、犬養法務大臣から、その取調べは詐欺の段階を終つたのか、次の段階に入つたのか、どういう状態であるか、ひとつここでお答えを願いたいと思います。
  165. 犬養健

    犬養国務大臣 詳しいことを申し上げるのは、相手が相手でございまして、情報収集に狂奔しておるといううわさがございますので、あまりつつ込んで申し上げられませんですが、当局といたしましては、詐欺の容疑について的確な証拠を収集中でございます。
  166. 今澄勇

    今澄委員 私どもが最高検察の責任者に昨日承りましたところでは、伊藤斗福の調査については非常に順調に進んでおるが、これを審査の後起訴することは間違いなさそうだ、だがしかし、その後放置して仮釈放することは、本人のためにもいろいろ生命的な危険もあろうから、留置することにしたというようなお話を聞いたのであります。このことは、今のこの伊藤斗福の事件にいわゆる右翼テロ的な一つの圧力が加わつておるということを、私ははつきりと申し上げておかなければなりませんので、東京警視庁と三浦、児玉町氏等の右翼中心へ物と緊密な連絡があると私どもは存じておるのであります。法務大臣は知つておるかどうか。なお本件の拡大防止について、三浦義一氏が警視庁に働きかけたと思われる節があり、なおかかる右翼団体の中心人物と民主的警察との接触というものは、第一線警官の士気の上に大きな影響をもたらすのである。私はこの保全経流会事件というものが政界あるいは、日本政治家に対する大きな国定の疑惑の極であるから、断固として本問題の真相と、その意味するところをこの委員会を通じてこれからお聞きをしたいと思うのであるが、まずこの警視庁と三浦、児玉両氏等の関連について、犬養さんの知られるだけの御見解を聞いておきたいと思います。
  167. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。どうもせつかくの御質問でありますが、個人の名誉にも関係しますので、だれそれがどういう関係にあるということは御容赦を願いたいと思いますが、原則論を申し上げたいと思います。もともとこの問題についていささか配慮しておることがございますところへ、昨日あなた方からの御注意もありましたので、昨夜さつそく手配をいたしたわけであります。それは伊藤斗福に対して万が一にも身辺の危険がないように、また俗にいう一服盛られて、どうも事件がどこかへ行つてしまつたというようなことがあつては重大責任でございますから、そういうことのないように万全の手配を昨夜終了しておりますから、これを御報告しておきます。
  168. 今澄勇

    今澄委員 一応法務大臣の御答弁は了として、私は大蔵大臣に二、三、ちよつと時間の都合があるそうですから繰上げてお伺いしておきます。まず保全経済会の取締りに関して、吉田内閣の閣内において心見の対立があつたことは、法務、大蔵両委員会における二人の方の答弁を比較検討すれば明らかであります。すなわち大蔵省は匿名組合なりと断じ、法務省は不特定多数人からの出資行為は匿名組合の範囲を逸脱したものとの見解をとり、この意見は真正面から対立をしておるのである。私は、匿名組合なりとの見解から、何らの取締りをしなかつた大蔵省の責任というものは、今日の段階になつてみると断固として追究せられなければならぬと思います。二十八年の七月十四日、本委員会における私の質問に対して、大蔵大臣は、匿名組合の盲点をついた不健全金融は断固として取締るという答弁をしておる。しかるにその後何らの対策も講じないで荏苒四箇月を過されて、十一月二日同趣旨の私の笠間に対して大蔵大臣は、次期国会に取締り法案を提出して、断固その弊害を取締ると答えておるのである。しかるにそれからさらに一箇月後の十二月五日の第十八国会においても、かような取締りの法律は出ておらぬ。そこで第十八国会の本委員会において、警視庁捜査二課青木警部補から大蔵省の関係官に捜査にあたつての予備知識を求めた際は、大蔵省としては依然としてこれは匿名組合なりとして扱つておるということを答えただけであつて、捜査の上に非常に困難を来しておるのである。私は何らの取締りの立法を提案をしなかつた大蔵省、しかも私の質問に対する大蔵大臣の御答弁は、いつもいつもこの次はこの次はといつて荏苒ここに七、八箇月の時間を経過しておるということ、私が今日の破局を今から七箇月も前に大蔵大臣に警告しておるにもかかわらず、無為無策に七箇月間を過して、むしろ保全を野放しにして、その営業を保護したとさえ大蔵省の態度は認められるのである。私はこの政治的責任というものは重大であると思いますが、この国会の本会議場における高津議員の笠間に対して、本会議においてすらなお大蔵大臣は、それは匿名組合として取扱つておるという答弁があつて、あなたの方の田渕議員から痛烈なおしかりがあつたことも、私の目の前で行われたところである。私はこの経過にかんがみて、大蔵省の本保全経済会に対する考え方、一体それは何が根拠でかように延びてこういうふうになつたのかということを、大蔵大臣からひとつお伺いいたしたいと思います。
  169. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 保全経済公の問題は、今澄君もよく御承知のごとくに、これは貸金業とか預金業とか、そういうものではなくて、金融機関ではございません。このことはよく御存じです。金融機関ではなくて、不動産とか株式とかいうものに投資している投資機関である。従つて株式を持つとか、あるいは不動産に投資しているとかいうものは、大蔵省が知つておることではない。また匿名組合と私どもは見ておつて、この点について、不特定多数の人云々という事柄についての解釈等は、それはその後に出て来た事柄であつて、何ら法務省との間に意見の会い違いがあつたわけではありません。しかし私どもはたといこれがそういうことであつても、大蔵省が直接管理しておる金融の問題でもなく、貸金業法の問題でもなく、預金の問題でなくとも、世間にそういうことがあつて、こういう被害者が出て来るということはまことに遺憾であるから、何らかの立法措置をとりたい、こういうことでいろいろ法務省とも話を進めて参つたのであります。それがようやく——アメリカの方に青空法、ゾルー・スカイ・ローというものがあつて、ちようどこれが当てはまるのじやないかというふうに考えたので、言いかえますと、誇大の広告をする、あるいは月二分ずつ配当する、こういう約束をする、こういうようなこと等に対する取締りができるということをやつておる実例等もありましたので、今度そういうこと等を参考といたしまして、本国会には、法務省とも打合せの上に取締り法規が出せる、こういうことで、本国会に近く提案するのであります。きよう要綱が新聞なんかに出ておつたのはそれであります。  なお何か田渕議員からしかられたということですが、私はどこでもしかられたことはないので、それは何かのお間違いじやないかと思います。私どもがそういうぐあいに法的措置をとるということは、田渕議員もよく了解している次第であつて、このことは法務省ともよく打合せ済みであります。言いかえますと、何ら金融機関でもない、貸金業や預金業を扱つておるものでもなく、大蔵省としては直接の関係がないものだが、しかし疑いがあるようなものについては何かの取締りを必要とするので、不特定多数の者から受信行為を受けて各種のことをやるものについては、今の青空法にならつたような十分な取締りをしたい、これは近く本国会に提出したいと考えております。
  170. 今澄勇

    今澄委員 いつも本国会々々々で延びて来たのであるが、あなたのところに本会議の席上で田渕議員がかけつけて、卓をたたいて怒つてつたことは事実であります。聞いてごらんなさい。それはなぜかというと、衆議院行政監察特別委員会において、松本信次顧問は、保全経済会の顧問として、しかも法律学君として、あの人の体験と法典論的根拠から、保全経済会は、またかかる業務を行うものは、匿名組合にあらずとの詳しい理論的な陳述が行われておるのである。しかも法務大臣は法務委員会において、これはやはり匿名組合と認めがたいという見解を述べております。しかるに大蔵省だけがなぜ匿名組合だと今日までこれを主張し、しかもその主張をこの国会の本会議答弁に至るまでも続けておつたかということを、私は追究しているのであつて、今のあなたの答弁は少し筋違いであります。匿名組合だと認めて、これを放置したということは、見方をかえて言えば、取締りをやらないで保護したということと同点であります。私は何も小笠原大蔵大臣がどうだこうだというのではありません。私はあなたの清廉潔白を信じております。しかしわれわれの調査によると、事務当局あるいは大蔵省の銀行局長等に第三者の政治的な大きな強い圧力があつたのではないかというふうに思われるので、私は聞いているのである。   〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 かように解釈する以外には、保全経済会の法理論的解釈では、大蔵省が匿名組合であるということを主張して来たことは、まつたく法の盲点をくぐつたこれらの団体を保護したものとしか思われない。かような判断の上に立つと、私はどうしてもさように考えられる。この点を大蔵大臣に重ねてもう一度お伺いしておきます。
  171. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 先ほど御答弁申し上げた通り、つまり貸金業者でもなく、貯金を扱つているものでもないので、金融業者ではない。この点よく御理解が願いたい。金融業者でない、町で不動産を買つている人間がある、それを一々大蔵省が取締る、これはできることでございません。しかしそういう法の盲点とでもいうべきものがあつて、不特定多数の人に迷惑をかけてはいかぬから、今のように取締り法規を研究した上で今度出すことにいたした次第であります。今まで出さなかつたのは、ほんの数日の国会でそういうことか間に合わなかつたことは、御承知通りであります。  さらに今のお話の中に、あるいは大蔵省の官吏または銀行局長等が圧迫によつてどうこうというような意味のお話がございましたが、私は断じてさようなことはないということを確言いたしておきます。
  172. 今澄勇

    今澄委員 ここが保全経済会の問題の第一のポイントであると私は思うのであります。さきに中野証言においては、池田勇人氏が米国から電話をかけたというようなお話がありましたが、私は調査の結果、二十八年十月三十一日読売新聞本社と池田氏との国際電話の内容を御参考までに読み上げます。読売新聞本社「国会の予算問題についてはどうみていますか。」これに対して池田氏の答弁「こちらでも皆見ています。」何も読売から保全経済会のことは一つも育つておらぬのに、それに続いて「それに驚いたことは保全経済会が倒れた。あれがイギリスから電報が入つた。ニューヨークにおりましたから、どうなるのですか、保全経済会の問題は……。一連でも話が出たのですから日本の信用にかかわる問題です。」これに対して読売本社「そういうことを向うで注目しているわけですね。」池田氏「経済上のことはみんな注目しています。」読売本社「中共貿易のことについても大分話されたようですが。」池田氏「大体原則は認められますよ。」ずつとありますが、大体池田氏は読売本社との電話の中で、ともあれ、だれも附いておらぬのに、保全経済会のことを実に心配しておるということは事実である。なおもう一つ、さらに私の調査によれば、その前昨年十月十日、ロンドンから池田氏は、保全問題に関して内国に対して連絡の電報を打電をいたしておるわけであります。私はこのようないろいろの保全の問題について、大蔵大臣はいろいろの会合その他において池田勇人氏から何らかの御連絡なり、あるいは人を介していろいろと御忠告なりをお受けになつたことがあるかどうかということを、もう一度ここで重ねて聞いておきたいのであります。
  173. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私は池田勇人氏から、保全経済会のことについて何も聞いたことはございません。またそのことについての話もいたしたこともございません。
  174. 今澄勇

    今澄委員 それでは大蔵大臣に対する質問はこれでありませんから、けつこうであります。  そこで私はさつきの続きで、今度は法務大臣にお伺いをいたしたいのであります。法務大臣は当予算委員会における昨年十一月二日私の質問に対して、かように答えているわけであります。「仰せの通り最上の手段はまさに加入人員を制限して、文字通り本来の匿名組合の出発点の精神のように、気心の知れた者が一緒にもうけ仕事をするというところに立ちもどらねばならぬと思います。」「法務省としましては不正規の受信業務全体を取締るだけの取締り法をつくつてはどうかというので、」それから「実は連日このことについて寄り合い会議をやつておる次第でございます。」というのが、十一月二日の法務大臣、あなたの私に対する速記録に残つておる答弁であります。この答弁から見ると、何らかの取締り法律を応急対策として出すか、それができなければ、保全経済会への調査なり検挙なりが何らか行われなければならぬと私は思つていたのに、連日会議をやつてから四箇月間も荏苒時が経過しておることは、私は検察当局としてはまことに怠慢であつたと思いますが、何ゆえ十一月二日私にかような連日会議をしておるというようなことがあつてから、今日の検挙まで四箇月間の期間がかかつたのかという、その間の遷延した理由について、ひとつ法務大臣から聞かしていただきたいと思います。
  175. 犬養健

    犬養国務大臣 速記録の点ですが、連日会議を開いたというのは、二つやつていたと思うのであります。一つは、大蔵省の方と、広く不正規の受信業務に対して、どういうふうに法網の目をくぐつて行くことを食いとめるか、こういうことで、これも非常に時間がかかりました。御指摘の通りでありますが、時間をかけて丁重に立法をやつておりました。今大蔵大臣が申されましたように、私もその草案を読んでおります。これならば一通りの取締りはできるというところまで来ておると思います。もう一つは、東京地検の捜査が遅れたじやないか、こういう御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、外部からごらんになると、いかにものろいようでございますが、事柄が詐欺容疑ということになりますと、結局保全経済会の業務が上向きでない、つまりまずくなつて行くにかかわらず、なおかつうまく行つているような顔をして、新規加入を募集するとかいうところが重点になるのであります。そうしますると、いつからまずくなつたかというようなことは、ただ犯罪の容疑があるという程度では手入れはできません。また一方から申しまして、保全経済会の内容がだんだん悪くなつたというについては、帳簿を押収しなければならぬ。帳簿を押収するには、相当犯罪の容疑が明らかでないと、これまた人権問題になりますので、いろいろそこに苦心の跡がありまして、最後にもうよしというときに、初めて断を下したのであります。この点については御批評もございましようが、しかし私は今あとから振り返りまして、報告を開いた上、東京地検の処置はまことによかつた、こういうふうに確信いたしておるものでございます。  もう一つ質問は、何か保全経済会に手をつけるのは、検察陣として気が進まなかつたのじやないかというような意味合いも、おありなんじやないかと思いますが、これは全然反対でありまして、たとえば法務省の人事についても、伊藤斗福なる者は、おれの方に手をつけた某局長は、すぐ地方に左遷されたとか、いろいろまことに心外なことを申しておりますので、法務省の権威に対しても、政界の信用に対しても、捨てておけないという気持を、私は最も熱烈に持つてつた一人でありまして、委員会においてもその汗の発言をしたように記憶しております。
  176. 今澄勇

    今澄委員 そこで昨年の最高検の佐藤検事総長、岸本議長らの見解は、大体最初から保全の組織というのは成り立たぬ企業と承知しながら、投資者をあやつつて血の出るような零細資金を取込んだのだから、一種の詐欺である、国民をして法の権威を疑わしめる結果になるという見解で、これには早急手を入れたいというか最高検察庁の見解になかなか従わなかつたのは、東京地検の馬場検事正と、いろいろその間に立つてあつせんをされたのが、犬養法務総裁であるというふうに、私どもは調査をし、考えておるのであります。そこでこの東京地検の馬場検事正と、平野証言による渦中の人物である池田勇人氏とは、五高時代の学友にして竹馬の友であることは、周知の事実である。なおいま一つ、この対立が最もはげしかつた昨年の九月、保全経済会弁護士元検事松下孝徳氏は、二百八十万円の金を伊藤から支給せられておることも、行政監察小委員会における調査の結果明らかである。かような事実というものは、国民の前に、東京地検というものの態度が、その後最高検と見解が一致して、手入れということになつたことは、まことに私は敵意を払いますが、その間のこういういきさつから考えてみると、非常に疑惑に包まれておるものといわなければなりません。私は政治家の一人として、あえて火中のくりを拾わんとしてかかることを申し上げておるゆえんのものは、本事件に対する国民の疑惑を一掃し、徹底的な捜査と、その結果を白日のもとにさらしたいという熱意と情熱以外の何ものでもございません。私はこの際東京地検の馬場検事正を更迭して、かような関係の全然なき人々によつて、この捜査をさらにやり直して追究して行くということはどうであろうかと思つておりますが、犬養法務大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  177. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。御激励の意味でいろいろおつしやつたことと思つて、つつしんで伺いますが、御激励の方便として、いろいろ馬場検事正の話が出ました。これは検察陣の名誉のためにも一応弁明さしていただきたいと思います。最高検と東京地検が、保全経済会の事件について、断固摘発しようという根本方針について、一度も食い違つたことはございません。ただ私が想像いたすのに、最高検の最高指令を一番有用に活用するについて、どういうステップを踏んで、あとでしつぽを逃がさないでつかまえるかという現実の技術、これは地検にまかされておることでありまして、その点で外部から見ると、食い違いがあるように見えますが、私は現に部内におる者として、一度も食い違いのないことを申し上げておきたいと思います。  また馬場検事正が池田勇人氏と、小さい時分か、青年のころか、同級生であつたかどうか知りませんが、しかしただいまそういうことで行き来のないことは、馬場検事正も誓言いたしておる次第でありまして、私は馬場君の清廉潔白を最も信じておる一人でございます。従つていろいろ御心配のあまり、御激励の意味で、地検の検事正の更迭について御忠告もありましたが、さようなわけで、私は馬場君をもつて今の忌まわしい事件の担当者として最も適任である、こう信じておるものでございます。
  178. 今澄勇

    今澄委員 そこで私はもう一つ法務大臣に伺わなければならぬのは、昨年の九月、保全経済会の経理部長望月京一の発案になると思われる怪文書が、衆参両院議員に一人残らず配付になりました。この怪文書の内容は、衆参両院議員、自由党、改進党、右派社会党に至るまで、それぞれの要求に応じて献金を承諾し、その総額は本年春の総選挙の分を合せて——これは昭和二十七年の十月と二十八年の四月、一億六千万円の巨額に上る、こういうことが書いてあつて、その衆参両院議員の数は九十数名である。政治献金の事実を天下に公表する捨て身の覚悟を固めておる。これらの立法措置を早くとれというのが、この怪文書の趣旨である。この趣旨で、私は十二月五日の本委員会質問をした。あなたはそのときに、こういう答弁をしておる。「私もその不愉快きわまる怪文書を読みました。大体政界をなめた、はなはだ不愉快な態度だと思つております。たびたび私は予算委員会、あるいは法務委員会で、当局は断固として臨むということを申しておるのでありまして、この点は政治界の信用のためにもはつきりいたしたいと思つております。またいろいろ投書などがありまして、うわさにいろいろ上る点もありますが、私は国警長官を呼びまして、これらのことについて情報収集と内偵を命じております。」こういうのがあなたの答弁であります。この怪文書が出てから今日まですでに時間の経過五箇月、私はここで犬養法務大臣にお尋ねしたいが、この怪文書はあなたが国警長官に命じて情報収集の結果、われわれ国会議員の信義とわれわれの面目に関することであるが、まさにこの怪文書は事実無限の荒唐無稽なるものとの結論に達したか、それともこの怪文書は、何らかの事実を含んでいるものとの結論に達したか。ここにあなたは読まれたのであるから、法務大臣の明確なる答弁国会の権威のために求めたいと思います。
  179. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。怪文書を読んだ所感は、あの当時申し上げたことと寸毫もかわりはございません。まことに政治家をなめ切つたけしからぬ文書だと思つております。今の捜査の段階をこまかく申し上げることはさしさわりますから御遠慮申し上げますが、私の想像では外国為替法違反、これはもう始末したと思います。ただいまやつていることは詐欺の問題であろうと思います。それに集中していると思うのでありますが、怪文書に盛られた内容について、そこまで捜査の手が伸びた、伸びるだけの余裕ができた、すなわち第三段階に移る余裕ができたという報告はまだ受けておりません。  それから松下元検事のことでございますが、松下氏個人がどうということは、やはり個人の名誉に関しますから申しませんが、原則論として、元検察庁に勤めていた者が、その勤めていたということをひけらかして、検察庁に来て何事か策動すれば、必ず反動的な空気が起るということを申し上げておきたいと思います。
  180. 今澄勇

    今澄委員 あれから五箇月もたつておるのに、国会議員九十数名という人数まであげて、参衆両院議員全部に配られて、しかも犬養法務大臣みずからもこれをながめているのに、今日まだ捜査の手も伸びなくて、真偽のほどは相わからぬという答弁は、検察陣営あつてなきがごとき状態といわなければなりません。私は少くとも政界の浄化と綱紀粛正のために——この保全経済会だけではない、立法の要求を国会にしたものは、いわゆる匿名組合、株主相互金融組織全部を通じて千数百ある。だから千数百のこれらの団体が参衆両院議員九十何名に、そういういろいろなコネクションをつけたということをこの怪文書はうたつておるのである。そこでもう一度法務大臣に聞きますが、それではあなたのところではこの怪文書が事実無根であるとも、ある程度事実を含んでおるとも、まだ全然わからぬ、五里霧中だということですね。
  181. 犬養健

    犬養国務大臣 御激励の意味でだんだん御追究でございまして、その点は感謝いたすわけでございますが、事実を申し上げますとお察しを願えると思うのでありますが、担当の検事は、毎朝六時半ごろまで起きて、ちよつと寝て、八時半ごろに登庁している、そういうようなことで全員不眠不休で、ほかからも応援を求めてやつているというようなことで、第一段階、第二段階、第三段階ときつちりときめて行きませんと、最後の公訴事実というものがごちやごちやになりましたら、まことにみつともないことであるのみならず、国民の期待にも申訳ないことであります。的確に段階々々をつけて固めて行く、いわゆる、いやな言葉でありますが、固めて行くわけであります。仰せのようなお言葉、臭いものにふたをしたいというわけでは寸毫もございませんけれども、今の段階では伊藤斗福個人の詐欺事件を固めなければならない段階でありまして、それ以上に十分余裕があつて、私に報告するに足る段階に立ち至つているという報告はまだ受けていない、こういうわけでございます。   〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕
  182. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は、これはまことに申し上げにくいことであるけれども、その怪文書が指摘した九十何名という人々は、おそらくはこれらの匿名組合、株主相互金融等がいろいろな法律を——あるいは千葉試案もあろうし、何もあろうが、それらのいろいろな法律をつくつてもらうべく運動した、これらの関係者を言うたものであろうと私は類推する。あなたは国警長官に調べさせてから五箇月にもなるのに、国警の方からもわからぬということは変な話だが、われわれの調査を申し上げれば、まずこれらの保全経済会、株主相互金融で、政治家にしてその顧問を依頼している者を、時間がないから二十名ばかり読み上げますが、とにかくこれは新聞等によれば少くともこれらの会社の顧問をして、責任を負うている人々であります。まず勧業経済株式会社の顧問泉山三六氏、日本殖産金庫顧問三木武夫氏、小川平次氏、中央勧業経済会顧問伊能繁次郎氏、仏教相互理財会顧問植原悦二郎氏、南條徳男氏、帝国勧業金庫顧問広川弘弾氏、顧問鈴木仙八氏、昭和理財会顧問山本勝市氏、東洋勧業投資株式会社顧問石橋湛山氏、小畑虎之助氏、それから富士相互投資金庫顧問益谷秀次氏、安藤正純氏、日本相互投資金庫顧問森幸太郎氏、東洋拓殖経済会顧問前田房之助氏、勧業保全株式会社顧問鈴木正文氏、日本相互殖産株式会社——これは解散しておりますが、顧問泉山三六氏、日本勧業経済会顧問楢橋渡氏、富士保全金庫顧問薄田美朝元警視総監。このほかにも約九十人近くありますが、私は時間の関係で申し上げませんが、少くともこれらの……(発言する君あり)少くともこれらの類似匿名組合、株主相互金融の中で、保全経済会よりもなおその犯罪規模が大きいように思われるところのものが三つ四つあるのであります。私は、保全経済会に目を集中して、これらの他の保全経済会類似団体の犯罪なり、迷惑というものを放擲することは許されないと思うが、国警長官その他から犬養大臣のところに何らかの連絡があつたかどうか。他の類似団体がそれらの問題について検挙せられておるようでありますが、この際御報告を願いたいと思うのであります。
  183. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。保全経済会以外の類似金融について内容の不正なものは、ただいま御指摘もあつたように思いますが、三、四件起訴しております。それから今いろいろ名前をお読み上げになりましたが、司法当局というものはあくまで厳正公平にやらなければならぬことはもちろんでございまして、つまり名前が出たからあいつは怪しいというようなことをしましたら、それこそまた人権擁護運動のほこ先にかかるわけでありまして、そこは中傭を得て行きたいと思つております。いやしくも違法であれば断固としてやるが、ただ読み上げられたからあいつは怪しいのだという態度は、私はどうもとりたくない、こういうふうに思つております。
  184. 今澄勇

    今澄委員 私がともあれ決意をしてこれらの問題を提起しているのは、その怪文書が九十数名という政治家をあげておるからであります。国会の名誉のために、ひとつこれらの人々は嫌疑があるならある、ないならない、われわれは明らかであるということをこの際明確にしなければならぬ。これは日本の国家と民族に関する、政界の浄化に対する重大問題であると思つて私は読み上げたのだが、なおこの中で問題の会社は、第一番が勧業経済株式会社、これの社長は元保全会の幹部である鈴木春一という人で、顧問は自由党の泉山三六氏、集めた債務は二十七億、債権者五万、十二月十四日破産の宣告を受けておるが、これから政治献金がはたしてなかつたかどうか。日本殖産金庫株式会社社長下ノ村勗、これは改進党京都支部顧問現職ということを外務省に対しての渡航証明願に明らかに書いてある。顧問は改進党の三木武夫氏である。これは十二月七日休業しておりまして、出資者の代表が管理しておる。二月一日経理部長藤谷一郎が逮捕せられておる。組合員の出資金が四十五億円。日本勧業経済会社長が脇谷卓男、出資金が二十億、十二月に支払いを延期して、二月十五日再開の予定といわれておるが、これまた大きな迷惑を及ぼしておる。千代田経済株式会社社長樋渡茂治、これは出資金十五億で二万人が入つており、十二月一日から支払い停止をしております。この現実、大蔵大臣も、法務大臣もお考えを願いたいことは、とにかく無この大衆から金を集めてはひまわり運転をして、しかもみな、こんなに数多く政治家関係しておつて、つぶれて迷惑をかけておるのである。私はこれらの問題について犬養さんからもつと正確な、もつとこれらのものに対する情熱のある、しかも国民の疑惑を解く検察庁としての精細な——これはこれら捜査の上に何も影響がない。こういう問題も御答弁が願えないということになれば——御激励の意味、御激励の意味と言われておつたけれども、これは御激励の意味ではなくて、断じて検察の責任であり、私は法務大臣の責任を追究しなければならぬと思うが、ひとつ御答弁願いたい。
  185. 犬養健

    犬養国務大臣 それでは類似金融について一応御報告申し上げます。保全経済会以外の類似金融について摘発いたしたものを御報告申し上げます。  株式相互金融方式の利殖機関については、東京地検におきまして、この種類のもののうちで、日本勧業振興株式会社、朝日商事株式会社、国民相互株式会社、国民相互金融株式会社、この四社について、昨年の六月二十六日及び七月八日の二回にわたつて、貸金業等の取締に関する法律第七条違反の容疑で、右四社の各代表取締役を逮捕いたしました。その後身柄を釈放の上、多数団体員等の取調べを慎重に進めておりましたが、同法違反の事実が明らかになりましたので、この二月一日、まず日本勧業振興株式会社及び同社の代表取締役篠原賢吉について、約四億四千五百万円を預り金いたした事実、また朝日商事株式会社及び同社代表取締役岩崎和吉については、約三億二千三百万を預り金いたした事実、また国民相互株式会社及び同社代表取締役大西静雄については、約九千五百万円を預り金いたした事実でそれぞれ起訴いたしました。国民相互金融株式会社につきましては現在なお取調べ中でございます。なお日本勧業振興株式会社については、東北地方検察庁においても昨年十二月以降、同社東北支社における支社長等の業務上横領事件の捜査中でございまして、これは社員一名を現在起訴しております。  次に、日本殖産株式会社は、株式相互金融方式と匿名組合方式とを併用している利殖機関でございますが、東京地検においては、本年一月十八日同社庶務係長松本昭生、また一月二十六日には同社保険課係長宮田唯男を、いずれも業務上横領容疑で逮捕いたしました。取調べの結果、さらに同社の業務部長下ノ村典昭及び同社経理部次長祐川浩、これはいずれも社長の肉身でありますが、これが関係している事実が判明いたしましたので、一月二十一五日に下ノ村、一月二十九日に祐川を、いずれも業務上横領容疑で逮捕いたしまして、目下取調べ中でございますが、あわせて同社の営業についても詐欺の容疑がございますので捜査中でございます。  保全経済会のように匿名組合方式による利殖機関のうち、日本積財会というのがございますが、これについては、前橋地方検察庁において昨年の十二月十日、同会群馬支部次長等より、同会に対する詐欺横領の告訴がありましたのを機会にいたしまして、捜査を開始しまして、関係人の取調べ、押収物件等検討の結果、詐欺の容疑が濃厚になりましたので、この二月二十二日に同会理事長北野正一及び同合理事の伊藤国雄を逮捕いたしまして、目下取調べ中でございます。  手形による借入金方式の利殖機関がございますが、そのうち親立総本社というのがあります。これについては、大阪地方検察庁において昨年十二月二十一日、その子会社であります親立運送株式会社取締役等より、同本社における私文書偽造の告訴がありました。私文書偽造と同行使の告訴がありましたが、その後内偵の結果詐欺の容疑が濃厚になりましたので、この一月九日同社の取締役経理部長横田正安を、また翌日同社の社長揚妻玉明を、いずれも詐欺の容疑で逮捕いたしますと同時に、同本社ほか十五箇所の支社、営業所を捜査いたしまして、一月三十日右両名を起訴して、なお余罪について目下取調べ中でございます。  各種利殖機関で現在捜査中のものは右以外にもなお多数ございますが、匿名組合方式による利殖機関にかかわるもので、昨年中に検挙いたしましたものは二十件、うち起訴いたしましたものは七件、株式相互金融方式による利殖機関にかかわるもので、昨年中に検挙いたしましたものは実に二百五十八件ありまして、うち起訴したものが八十六件ございます。その他の利殖機関にかかわるもので、昨年中に検挙いたしましたものは実に五百四件ありまして、そのうち起訴したものは二百三件でございます。
  186. 今澄勇

    今澄委員 どうせここまで追い込んで来たからには……(笑声)やはり捜査の便宜の上にも、あるいはまたいろいろな国民の疑惑を晴らす意味合いにおいても、われわれの資料、情報等を断固申し上げてひとつ御参考に供したい、かように考えております。  まず第一番に、保全経済会の献金については、本人は何ら関係もないけれども、取次いだだけの人もありましようし、いささか精神状態に異常の認められる伊藤斗福の言も常に動揺するでしよう。平野氏の証言必ずしも全部が正しいとも私は思いません。ただ私が政府の皆さん方に申し上げたいのは、まず献金なら献金ということになると、良心的な政治家、検察陣の良心は、あるいは捜査の確実——おのおの日本政界の将来に対して真心から、中にはみずからその事実を打明けたいと思つておられる方もおられるでありましよう。あえて私は、ここで名前をあげては失礼であるが、たとえば二十七年十月の選挙の前に、石橋湛山、三木武吉の両氏に、井上秘書課長が書き残して行きましたメモによると、おのおの一千万円ずつの献金を渡したということになつておりますが、そういうことでは問題になるから、石橋湛山氏の東洋経済、これに年間五百万円の割合で広告を載せるということで、広告料ということでとろうとしたが、三浦鉄太郎という東洋経済のがんこなおやじから、そういうことはまかりならぬということでけとばされて、そうしてこれが直接献金をしたのであるが、この人たちに行つたのではなくて、またそれから、そのほかのところに行つておるのである。それをばらすと自分の身辺も危いというので——井上秘書課長がさような言葉を残して行つた事実もあるのである。私はここでその井上秘書課長が書き残して行つたというこれらのメモについては、その一部はすでに身体検査を通じて検察庁の検事の手元に証拠として入つておるものと思うから、この際これを申し上げて、これが事実であるかどうか、その筆跡鑑定その他のものをやられるならば、この問題は明らかになると思います。そのメモによると、自由党に対しては人を介して三千万円、広川弘禅個人については一千万円、増田甲子七氏については百万円、丹羽喬四郎氏については百万円。なお改進党は、駒井重次氏については百万円、三木、石橋氏については先ほど申した通りに相なつております。なお、記載せられておつても、真偽いまだ明らかならざるものとわれわれが認定するものについては発表を差控えておきます。なお伊藤個人が検察庁にあげられて、その家宅捜索その他身体検査のときに、五千万円程度の個人のいわゆる心覚えのメモもあがつておるのではないかと私どもは思うのである。ただ、この問題でテロも動き、あるいはここで質問をした私に対しても、非難あればいろいろありましよう。私はあえて一切のものに甘んじて、少くとも国会の権威のためにこれらの問題を明らかにしていただくとともに、検察陣営の動きいかんによつては、私どもはなおその他の物的証拠を固めて、われわれの方から、ひとつ告訴をいたしたい、かように考えておるのであります。どうか犬養法務大臣は、かようないろいろの問題を十分御勘案願つて、本保全経済会その他類似の団体を氷山の一角として、日本の政党政治が、政友、民政両党が三井、三菱の金とのつながりによつて滅びて行つたつての歴史を繰返さないために、決然たる態度をもつて臨んでもらいたいと思うが、あなたの決意とその態度はまことに軟弱である。(笑声、拍手)どうかひとつ犬養さんは決意を新たにしておやり願いたいと思うが、これについて御答弁を願いたい。
  187. 犬養健

    犬養国務大臣 私はこの問題に対して軟弱であるとは思つておりません。とにかく、いろいろの表現による御激励と思つてつておきます。(笑声)また、日本の検察陣は今なお健在なり、これは固く信じておりますから、これを申し上げておきたいと思います。
  188. 倉石忠雄

    倉石委員長 先ほど来小山倉之助君より法務大臣に対して関連質問を求められております。この際お許しをいたしますが、簡明にお願いいたします。
  189. 小山倉之助

    ○小山委員 私のは今澄君とは違いまして、保全経済会の問題よりはもつと重大な、国家に関連のある問題であります。それは御承知通りロシヤのスパイ、ラストボロフの、最近ニッポン・タイムズに二日間にわたつて暴露された事件であります。また日本の読売新聞、朝日新聞にも発表をされております。そこで私の疑問は、日本国防は外敵に対してはアメリカ軍隊が守つてくれておるが、警察陣、検察陣だけは、日本はその独立の実を示しておるだろうと考えておつたのでありますが、この発表によりますると、日本の検察陣もまたアメリカに付属しておるのではないか。ここに発表された大きな問題は、ラストボロフは日本の官界に深く入り込んでおる、政府の高官が共産党の共謀者としてたくさんおる、そんなことはないであろうと思うならば日本政府はばかばかしいものだ。もしこの事件が発表されて明るみに出されたならば、日本政府ばかりじやなくロシヤの政府もまた驚くであろうと、ここにうたつておるのであります。日本の警察はほとんどアメリカの付属みたいなように見えるのですが、まず第一にどういう権限を持つてこういう事件を発表されたのか、日本政府を通して発表をさるべきものではなかろうか、かように思うのでありますが、総理大臣の御意見を伺い、同時に法務大臣の御意見を伺いたい。
  190. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 事実の問題だけを申し上げますが、今おつしやつたようなことを外国の官憲が発表したということは、われわれは全然承知しておりません。新聞のニュースだけでございます。従いまして、今何か日本政府を通じて発表すべきものだというお話でありますが、これは新聞報道は私も承知いたしておりますが、外国政府が発表したり、あるいは何かそういうことをしたという事実は全然ない。
  191. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。外務大臣からお答えがありましたように、これはアメリカ政府の発表ではございません。私の記憶が正しければAP電だと思います。ラストボロフに関しましては、失踪者としての捜査願が出ております。すなわちこれは言いかえますならば、御見解と正反対でありまして、日本の警察の独立権を認めた結果、捜査願を出しておるものと思います。しかし小山さんの御心配はごもつともでありまして、実はあからさまに申し上げますと、私もあの新聞記事を読みまして、昨夜とけさときようの昼間と三度にわたりまして、公安調在庁、国警方面に何か心当りのことがあるかということを厳重に督促して調査させておりますが、どうもそれに該当する事実の報告がまだ来ておりません。そういうふうに思われる節がないという中間報告でございます。しかしこれは最終報告ではありませんから、いずれ私の方から報告を申し上げることもあろうかと思います。
  192. 小山倉之助

    ○小山委員 そうすればAPの記者は、これらの事件について詳細に、共産党の非常にきらいな吉田総理大臣に、その調査の結果を報告すると書いておりますが、吉田総理にはまだその報告がないのでありますか。
  193. 吉田茂

    吉田国務大臣 何らの報告もありません。
  194. 小山倉之助

    ○小山委員 そこでこのロシヤの計画は、御承知通り日本における米国の軍事力並びに空軍の基地に対してあとう限り緻密な監視を行うということが目的らしい。第二に日本における共産党の権力把握への道を開くためにはあらゆる努力をなすと同時に、たとえば政府が共産主義に対してあとう限り寛容な態度をとつて、共産党の働きをなるべく自由にさせるというような目的もあるようであります。また中共やソ連との通商貿易の承諾をさせることや、あるいは特に日本の再軍備を防止せしめんとすることが目的である。こういうことは私どももしばしば聞いておる問題でありますが、しかし日本の軍備が——吉田総理大臣は軍備じやない、自衛隊だと申すのでありますが、自衛隊が強化される趨勢になつて来ますると、ますますこれに対する反対の議論が起つて来つつあります。議会においてはこの軍備の不必要なり、あるいは軍備をつくらないというような議論も非常に広い。同時にまたロシヤとの通商あるいは中共との貿易というような議論も非常に起つております。吉田総理大臣はこれに対してはある程度あいまいな態度、消極的な態度をとつておる。そこで私の非常におそれますことは、私はおそらくはこのAPの通信というものはもつと明確にわかる時期があるだろうと思う。APはこんなうそをいうわけはないと思つております。こういう事実がある。すでにラストボロフは逮捕されておるのでありまして、共産党の勢力を防止するために沖繩において協力しておるといわれておる。こういうことが詳細にわかつて来るだろうと思う。この共産党並びに共産党を謳歌するものの論戦が非常に盛んになつておる際に、吉田総理大臣は自衛力を強化するのだかしないのだか、いつやるのだか、そういうあいまいな態度をとつて来ておるし、これについては憲法改正というものがやがて行わるべき、その立場におるにかかわらず、なお憲法改正しない、憲法改正する必要はない、りつぱな憲法だとおつしやつて、反対論が強ければ強いだけそれを裏書きするような政府の態度に対して、私は非常な不安を感ずると同時に不満を感ずるのでありまして、共産思想の防止——いわんや政府の中にはあるいは代議士の中にもIとかKとかいう人があるとも伝えられておる。そういう際には、もつと明白な態度をもつて、もつと強い態度をもつて共産思想並びに運動に対抗せられることを私はひとえに希望するのであります。政府の御所見はいかがでございますか、その点だけお伺いいたしたい。
  195. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。政府の反共的政策は最も明瞭であると私は考えます。しこうして今後といえどもますます反共政策は強化いたします。しかしながらそのために憲法改正する必要は考えません。
  196. 倉石忠雄

    倉石委員長 今澄君、持合せの時間が来ておりますから……。
  197. 今澄勇

    今澄委員 関連質問で時間がたちましたが、私は今の関連質問は保全問題であるかと思つてつたが、違つておりましたので保全問題にもどして——しかし保全でなくとも、これが法務大臣に対する一つ責任の問題であることについては同じような関連であります。  私は法務大臣に一言聞いておきますが、もし本件の捜査上最高検察関係からあなたに、開会中といえども議員の逮捕の相談があつた際は、この前の昭電事件のときは、時の鈴木法務大臣が同意をして、開会中といえども議員を調べたのであるが、今回はこの捜査の進展いかんによつてはそういうことにも相なりましよう。その心構えを犬養さんに聞いておきますが、あなたは一体どういうふうな御処置をおとりになりますか、ひとつここで明らかに答えておいてもらいたいと思います。
  198. 犬養健

    犬養国務大臣 御質問精神とせられるところは、法務大臣がかつてに臭いものにふたをするかしないかということであろうと思いますが、いたしません。ただただいまのような問題は具体的に上つてからでないと、法務大臣としては責任が重大でございますから、ただちに具体的にお答えのできない段階であります。御了承願います。
  199. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は、時間もありませんが、十二月五日本委員会においての私の質問に対する法務大臣の答弁をここにひとつ読み上げます。「御指摘のように、保全経済会の経理が悪く傾きました後は、もしも勧誘のいかんによつては、取込み詐欺の嫌疑の濃厚な場合もあり得ると思つております。それじやどうしてはかばかしく行かないかということになりますと、大体これまで検察当局のとつて参りました態度は、内偵なのでございます。そこで帳簿その他を調べますと経理がわかるのでありまして、従つて経理状態がはなはだしく悪化しておるにかかわらず、新しい募集をした場合は、取込み詐欺の嫌疑が濃厚になるわけでありますが、帳簿を押えて検査するというのは、御承知のように、犯罪の嫌疑が明瞭になつた場合でありまして、従つてそういう断定を下すことがいいか悪いかということについては、慎重な態度をとつたわけであります。その慎重な態度の半面に、怠慢であつたのではないかというおしかりもあると思います。その点については、私は法務大臣とし、責任を回避いたしません。ただ内偵の程度では、疑いが濃厚だという状態でもつて相当長い期間参つたということは、私は率直に申し上げたいと思います。これについても、政治的責任があれば、ひとえに私の責任でございますから、これは明瞭にお答え申し上げます。」と書いてあるが、事態が今日の状態まで進展して来たということは、私は検察の手入れあるいはその他の問題に対する大きな怠慢と遅滞であつて、私はこの際犬養法務大臣はこの速記録にこたえるがごとく、自分の政治的な責任については回避いたしませんということに相なるならば、いかなる責任を感じられ、いかなる態度をおとりになるかということを私は質問をいたします。
  200. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。その通りであります。当時私は東京地検に直接手を触れることは精神上どうかと思いますので、検事総長を通じて保全経済会の捜査段階と所要日数というものを聞いたわけでありますが、相当長くかかる、そのかかるゆえんのものを私は是なりとしたのでございまして、従つて当時——申しかねますが、もしのろくかかつたことについて他日検挙ができなかつた場合は、いさぎよく責任をとると自信をもつて申し上げましたのは、いくらゆるくかかつてもやがて的確に捜査が完了し、検挙の日が来ることを確信して申し上げた次第でございますから、さよう御了承願いたいと思います。
  201. 今澄勇

    今澄委員 そこで総理大臣は、この保全経済会事件の全貌については、率直に申して御承知にならなかつたろうと私は思います。少くともあなたの側近としては、そういうことは絶対にないという一点張りで来ておると存じますが、これらの問題が将来もし明らかになつて来て、かような政界とのつながりも、保全経済会のみならず、その他の団体を通じてあつた際は、その責任は実に重大だと私は思いますが、総理はこれが検察の途中においても厳重に監視を願われ、激励、叱咤、追究せられるとともに、もしこれが明らかになつて来た際は、吉田内閣内閣総理大臣自体が責任を負うて退陣をすべきものと思います。私はこれらの問題について、総理から責任ある御答弁を要求しておきたいと思います。
  202. 吉田茂

    吉田国務大臣 私のお答えは同じことであります、事態の全貌がわかつたときに政府は善処いたします。
  203. 今澄勇

    今澄委員 そういうような答弁では私は納得できない。これは少くとも国民全体が期待をしておる重大な問題であります。現段階において責任をとるということではない、将来……。   〔発言する者、離席する者多く議場騒然〕
  204. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います、委員外の発言は許しません。
  205. 今澄勇

    今澄委員 将来結末がついて、これらのものが事実であつた際は、総理はどういう責任をとるかということについて、そういう答弁は断じてあり得べからざるものであつて、私は断じて承服できません。もう一度御答弁をお願いいたします。
  206. 倉石忠雄

    倉石委員長 答弁はないようであります。
  207. 今澄勇

    今澄委員 答弁を求めます。   〔「何を言つておるのだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  208. 倉石忠雄

    倉石委員長 答弁がありません。今澄——今澄君、御進行願います。   〔「答弁がなければしようがない」と呼ぶ者あり〕
  209. 今澄勇

    今澄委員 答弁を願います。
  210. 倉石忠雄

    倉石委員長 明確になつたら善処しますというので答弁なつたじやないですか。
  211. 今澄勇

    今澄委員 政治責任のあることは事実だから……。
  212. 倉石忠雄

    倉石委員長 全貌が明らかになつたら政府は善処しますという以外に御答弁がないのでありますから、私はそれで明確であると思います。御進行を願います。時間がありませんよ。御答弁がありません。
  213. 今澄勇

    今澄委員 もう一ぺん答弁を……。
  214. 倉石忠雄

    倉石委員長 ありません。御進行願います。   〔尾崎委員「一通り答弁が済んだときに、これ以上のべらぼうな質問があるか。予算委員会にこんなものを持ち出すそのことが委員会を侮辱するものだ。」と呼び、その他発言する者多し〕
  215. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。今澄君発言ありますか。
  216. 今澄勇

    今澄委員 私が総理大臣に聞いておるのは、この事件は捜査をしなければわからぬけれども、普通の問題とは違つて、耐乏生活を国民にしいる政府としては明らかにしなければならない問題である。もしかような事実が明らかになつた際は、内閣総理大臣としても当然責任があるが、どのような責任をおとりになるかということを私は聞いておるのであるから、私にあなたの信念と考え方をひとつ御答弁願いたいと思う。
  217. 倉石忠雄

    倉石委員長 今澄君、全貌が明かになつたならば善処をいたしますという総理大臣答弁であります。
  218. 今澄勇

    今澄委員 休憩してください。
  219. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩はしません。今澄君、お持合せの時間が来ているのでありますからこれ以上休憩はいたしません。   〔尾崎委員「一通り答弁が済んだのを、それ以上答弁をやれと強要する者がどこにある。」と呼び。「休憩しようじやないか。」「質問者をかえろ、時間が来ている。」「進行々々。」と呼ぶ者あり〕
  220. 倉石忠雄

  221. 今澄勇

    今澄委員 それでは私は総理に対して答弁をこの際留保いたしておきます。
  222. 倉石忠雄

    倉石委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会