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河野(密)
委員 私の解釈と違います。その点は違いますけれ
ども、なお
MSAの
協定の問題について、もう一点
岡崎外務大臣に承りたいと思います。
そこで私は、
憲法並びに自衛の問題に関する
質疑を一応ここでやめておいて、次に総理大臣に綱紀粛正の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
本国会が開かれましてから、連日ほとんど綱紀粛正の問題が取上げられまして、政界に対する国民の関心と申しますか、疑惑の念きわめて顕著なるものがあると
考えられますので、私はここにあえて一党一派の立場を離れて、国会の権威を高める意味において、率直に総理大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。
そもそも吉田内閣が成立をいたしまして、自由党が過半数を獲得して、数箇年にわたる政権を担当するに至りましたその最初は、
昭和二十三年における昭出事件その他のいわゆる不祥事件が頻発をしたことに基因しておると思うのであります。その当時吉田内閣、吉田自由党が綱紀の粛正を掲げられたことに対して、国民は翕然として自由党に向
つて援助をしたと思うのであります。しかるに、吉田内閣が成立して以来数年間になりますが、その間にどれだけ綱紀粛正の実があがつたか。法務省からいただきました資料によりますと、
昭和二十一年から
昭和二十七年に至る公務員の汚職事件は、次のごとき驚くべき数字に上が
つておるのであります。
昭和二十一年が五千九百三十五人、
昭和二十二年が六千六百三十五人、二十三年は一万四千六百三十人、二十四年は一万二千六百八十二人、
昭和二十五年は一万七千八百五人、
昭和二十六年一万五千六十人、
昭和二十七年一万二千八十六人、こういうように、吉田内閣が成立をいたしました
昭和二十四年以来、少しも綱紀粛正の実はあが
つておらないのであります。吉田自由党内閣の一枚看板でありました綱紀粛正というものは、何らの
効果を収めておらないと思うのであります。
しかも本国会におきまして、御承知のように昨年の十月二十四日に休業をいたしました保全経済会の問題が起りましてから、この問題をめぐ
つて国会内において盛んなる
質疑が行われておりますことは御承知の通りであります。この保全経済会が休業をいたしました当時において、早くも保全経済会と政界の
関係が喧伝され、怪文書は横行し、心ある人々をして大いにひん蹙せしめたのであります。しかもその間にあ
つて、
理事長伊藤斗福なるものは、政治献金を呼称して傲然たる態度を示し、われわれは政界の知名の士を知
つておるということを鼻にかけるかのごときことを、新聞に宣伝をいたしまして、私たちは政界の名誉のために切歯扼腕したのであり求すが、何ゆえに検察当局は、かかる事態に対して断固たる処断をとり得なかつたのであるか。しかも当局のなまぬるい態度の陰には、伊藤をして豪語せしむる何ものかがあるのではないかという疑いを、国民に抱かしめたのであります。幸いなことに、最近に至
つて司直の手が、この伏魔殿の上に加えられるに及んだのでありますが、われわれは進んでこの問題を白日のもとにさらして、も
つて政界全体に降りかか
つておる火の粉を払わねばならぬと決意をいたしたのであります。
一昨
日本院の行政監察
委員会は、証人を喚問して本件の真相の糾明に当つたのでありますが、たまたま証人として喚問せられました平野力三君の証言によ
つて、はしなくもかねてうわさとして巷間に伝聞されていたことが、必ずしも虚構にあらずとの疑惑を一層深めるがごとき事実だが、次々に現われて参つたのであります。さらにこれと対決すべく喚問された広川弘禅君の証言は、一応平野証言を打消しておるもののごとくでありますが、この間に動いた人物、場所、時日等は、符節を合するがごとくに一致して、ただ金銭的
関係のみが否定されておるにすぎないのであります。私はまだ糾明途上にあり、事件の半ばにあるこれらの問題に対して軽々しく結論を出し、これによ
つて総理大臣に
質問をしようとするものでは毛頭ございません。また不確定な事実をも
つて、個人々々の責任を問おうとするものでも毛頭ございません。しかし私たちが深く
考えさせられる点は、前職の大臣あるいは現職の大臣というがごとき、国民から見て師表とも仰ぐべきところの大宮がいとも軽軽しくこれらの事件の渦中におど
つておるという事実であります。瓜田にくつを入れず、李下に冠を正さずの古語とは逆に、求めて疑惑の渦中に投ずるがごときことが頻々として行われておる。最近の政界の風潮というものが、かくのごときものであるとするならば、実に慨嘆すべき限りであるといわなければならないのであります。もしまたこれらの問題の陰に、伝えられるがごとき何らかの汚職があるといたしますならば、われわれは断々固として政界の粛正のために乗り出さなければならないと存ずるのであります。
かかる見地において、私はえりを正して吉田首相にお尋ねをするのでありますが、簡明直蔵に吉田総理大臣の所信を承りたいのであります。首相は昨日の閣議において、保全経済会の問題を徹底的に糾明せよと言われたとのことでありますが、何人が見てもやみ金融機関としか
考えられない保全経済会のごときものが、どうして取締られなかつたのであるか。その
理事長と
政府要路の大官とが、爾汝の交わりをなすというがごとき事態に対して、総理大臣は何と
考えられておるのであるか。かかる。かかる人々が首相の側近にあつたという事実について、首相は何と
考えられるのであるか。私はその点についての総理大臣の率直なる御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。さらに
政府は昨年の十月二十四日、保全経済会が休業をして以来、ごうごうたる世間の指弾の声にもかかわらず、何ゆえに今日までこれを放置しておいたのでありますか。この点について答弁をお願い申し上げたいのであります。
私のところにも、いろいろな気の毒な人々から手紙その他をも
つて訴えて参ります。それらの人々の言うところによりますと――名前をあげることは差控えますが、われわれが見てもこの人ならばと信頼するような人々が、こういう人々の会合に出て、利殖の道は保全経済会のごときものに金を預けることだということを、大衆の前で堂々とあいさつをしておる人も少くないのであります。われわれはこういう事実を
考える場合において、政界全体の粛正のために、戦後においての国
会議員その他に加えられておる国民の疑惑の目を一掃する意味においても、断々固たる態度をも
つて臨まなければならないと存ずるのでありますが、総理大臣のこの点に対するほんとうに率直なる答弁を、えりを正してお願いしたいと存ずるのであります。