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川崎委員 社会保障費がふえておるということでありますが、これは実質的にはそんなにふえておらない。大体がだでもですが、
世界を回
つて来る者の
日本が一番遅れておると感ずるものは何か、これは道路と社会保障であります。道路の方は
吉田総理大臣のお好みである。
従つて道路
政策はなかなか進捗しておるようである。もつとも自分の大磯に行く道や、箱根の街道ばかり直してもら
つたのでは困る。それから
総理大臣が大磯に行くというと電休日がなくなる。そういう阿諛迎合の
政治をとられては、実に困るとわれわれは思うのであります。
さて道路の方はけつこうですが、これは外観に触れるからみなにわかる。もつと切実に、地味ではあるが、今後
政府が一番力を入れてやらなければならなぬものは、社会保障制度である。一体厚生大臣は、新任間もなくであるけれ
ども、社会事業家であると私は聞いておる。そこでこの際
伺いたいが、この社会保障というのは、今日ではイギリスの専売特許ではないのですよ。イギリスに始ま
つたわけではない。第二次大戦後はこれを完成したのはイギリスであるが、すでにイギリスの植民地の方があるいは自治領の方が、はるかに多くの額を国家の
予算に盛
つて、営々として社会保障の実をあげておる。ニュージーランドやオーストラリア――ニュージーランドでは三八・六%という国家
予算の歳出総額に対する費用を計上しておる。三十六億ふえたというけれ
ども、そんなものは去年の
予算とのパーセンテージをとるときにはあべこべに減
つておる。去年はたしか八・七%、今年ば七・五%か七・五二%という
ところだ、こういう数字が出ておるのであります。防衛力の費用というものがふえれば、それに比例して社会保障費というものがふえなければならぬ。そうしてむしろ他の経費を削減して行かなければならぬというのが、今日の
世界の傾向だと私は思う。試みに数字をあげて申すならば、今日歳出
予算に対する比率は、イギリスが一七・一%、西ドイツが二〇%、スエーデンが二七%、イタリアが一一・七%に対して、
日本が七・五%ということはしよつちゆういわれておる。
ところがもつとわれわれが切実に論じなければならぬのは、これは単に国庫負担の率だけで論じてはいけない。社会保障の現状を論ずるには、国庫負担及び保険料を総括して、さらに地方公共団体が受持つ
ところの社会保障費を総合して、それと
国民所得に対する比率を見て行けば、国がいかに社会保障に対して力を入れておるかということをそれが端的に最も正しく物語るものだと思う。これによ
つて見ると、イギリスは一二%、アメリカは六%、アメリカは非常に少いけれ
ども、アメリカは社会保障のあまり必要のない国なんです。フランスは一三%、西ドイツが一八%、
日本が四・三%という極端な低いパーセントにな
つておる。これはインターナショナル・レーバー・レヴュー、国際労働局の一九五二年の統計であるから間違いがない。大砲かバターかということがしきりにいわれるが、私は
世界各国の傾向を見ておると、スエーデンやイギリスではこれに自衛力も拡充するし、また同時に社会保障もやる、大砲もバターもやる。
吉田首相も大砲もバターもと言われておるけれ
ども、数字から来ておる
ところはどうか。大砲はやや
機関銃くらいにな
つて来た。
ところがバターはおせんべい以下だ。数字はこれを雄弁に物語
つておるのであ
つて、こういうような程度に社会保障をくぎづけにしておくということは、今後大きな社会問題を私は起して来る
ところの原因になろうと思う。そこであなたに聞きたい点は、一度でもとにかく社会保障費の国庫負担率を下げて、市町村に転嫁して――今
大蔵大臣に聞くと濫費があるという。しかし生活保護法というものは何か。生活保護法というものは最低生活に呻吟しておる者に対して、国家が最終的
責任を持つというのでできた。市町村扶助ではないのです。国でみなまかなう。ナショナル・アシスタント、公的扶助、国家扶助といわれておる。決して市町村扶助ではない。その
考え方から来るならば、断じて国庫負担の率を引下げるというような
考え方が出て来るわけがない。それを
考えてもらいたいと私は思うのでありまして、これらの問題を総括して、新任厚生大臣の
意見を聞きたいと思うのであります。