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1954-02-02 第19回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    高橋圓三郎君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       福田 赳夫君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       稻葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       中曽根康弘君    中村三之丞君       古井 喜實君    三浦 一雄君       足鹿  覺君    滝井 義高君       武藤運十郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    稲富 稜人君       河野  密君    小平  忠君       堤 ツルヨ君    西村 榮一君       黒田 寿男君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  愛知 揆一君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 加藤鐐五郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         保安政務次官  前田 正男君         大蔵事務官   森永貞一郎君         (主計局長)         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算ほか二案を一括議題といたします。質疑を継続いたします。川崎秀二君。
  3. 川崎秀二

    川崎委員 私は予算質問に入りまする前に、国家国民にとつて、はなはだ不祥なる事態が惹起されようとしておるその問題について、総理大臣に対し所信を伺いたいのであります。  昨夜のラジオを聞き、また本日の新聞を見まして、国民政治に対する痛憤は、非常に高まつておると思うのであります。すなわち、今国会開会前より、あるいは造船疑獄の問題といい、保全経済会に対するところの問題といい、国民は非常なる関心を持つて、この事態をながめておつたのであります。政府は第一次吉田内閣成立当初から、綱紀粛正看板として来た。来る国会も、来る国会も、総理大臣施政方針演説冒頭綱紀粛正、官紀の粛正をうたつて来られたのであります。しかるに今回の施政方針演説の中には、何ゆえかこの重大なる一項目が抜けていた。時あたかも保全経済会の問題について、衆議院行政監察委員会審査が開始をされまして、昨日平押力三氏の証言に及んで、重大な事実が暴露をされた。はたしてこれが真実であるやいなやは、今後の法務機関の検査、並びに行政監察委員会の推移にまたなければならぬのでありますが、平野氏のごとき一党の有力なる人物政界の表に立つておる人物が、かかる評言をしたことはきわめて重大であつて、これがもし真なりとするならば、政党政治に対する不信議会政治に対するところ不信は、国民の間に勃然として起つて来ると私は思うのであります。保全経済会出資者は実に十五万人、その多くは恩給生活者、あるいは婦人、農民であります。庶民階級がへそくりを出して甚大なる迷惑をこうむつたという事実は、これは否完了すべくもない。これらの人々は、今日泣くに泣かれない心境にあるのであつて、かかる存在を許しておつた政府態度というものは、私は今後いかなる事能が起ろうとも、糾弾されなければならぬ本質を含んでおると思うのであります。従つてこの際、最高政治責任者たる吉田総理大臣は、保全経済会の問題にしても、あるいは造船疑獄の問題にしても、秋霜烈日たる態度をもつてとれに臨むよう、法務機関を督励しなければならぬと私は思う。これらの問題に対して、吉田総理大臣基本的なお考えを承つておきたいと思うのであります。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをします。  私の施政演説の中に、綱紀粛正の問題を含んでおらないからと言われて責められるけれども、すべての問題を怖政演説の中に織り込むということは不可能のことであります。とれゆえに、年々そのときの問題に従つて、重大な問題と考えるもののみを取上げて、怖政の演説に織り込むことにいたしておるのであります。ゆえに、織り込まなかつたからがゆえに、この問題を軽視しておるわけではありません。  それから保全経済会の問題は、これは現に司法司直の手にかかつておりますから、その黒白がわかつた場合には、政府は法に従つて厳然たる処置をいたします。
  5. 川崎秀二

    川崎委員 政府施政方針演説にはいろいろ重大問題があつて、ときには織り込まない場合があると言われるが、われわれはこのときであるから織り込まなければならぬということの必要を説いているのであります。現に、国会開会前において造船疑獄の問題は勃発した、保全経済会の問題は、昨年の九月から火がついているのであります。そういう重大な疑獄問題に対するところ疑惑が、国民の中にうん醸しているときにこそ、綱紀粛正を一枚看板とするところ吉田内閣は、先頭に掲げてこれをやらなければならぬ。しかるにこれをなぜあとまわしにしましたか。私は総理大臣にそのことを聞きたい。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、綱紀粛正が一枚看板ではありません。いろいろな問題があります。
  7. 川崎秀二

    川崎委員 どうも吉田総理大臣の今の態度を見ていると、われわれは非常な疑惑を持つ、ことにこの問題には各党とも重大な人物関連があるのであつて、あなたのところでは現在の幹事長、あるいはあなたの代理者として渡米したところの、吉田身がわり人物までが、これに関連があるとうわさされている。そのことの真偽は、今後の経過を見なければわからないけれども、このような事実が起つて来まして、綱紀粛正に対して積極的な活動をしなければならぬ重大な転機であると私は思う。この際吉田総理大臣に特に注文をいたしたいと思うけれども、このような事件が起つて、各政党に対する不信が問われており、ことに露骨に言つて、保守党に対する不信がきわめて濃厚である。われわれはこの疑惑を一掃してもらいたいと思うのである。このときにあたつて法相地位に立つ者、すなわち法務総裁地位に立つ者は、きわめて人格高潔、政党色を持たず、純粋なる立場に立つて、断を下される者でなければ、この仕事をやるととはできないと思う。そこでこれらのことを一掃するために、むしろこの際総理大臣は率先して法相更迭、新しい法相のもとにこの大事件を解決してもらいたいと思うのであります。この注文に対して吉田総理大臣はどういうふうに考えるか。また吉田総理大臣の今後の政治責任というものは断じて残ると私は思う。かりに吉田総理大臣その人あるいはその側近は関係しないにしても、これらの不祥事件が起つて来たのは、あなたの内閣のもとにおいて起つております。こういう抜け穴があつたということ自身が、現在の行政に大きなミスがあるということをわれわれは言わざるを得ない。これを何とかしてあなたが粛正するのでなければ……。私はあなたがまずこの政治責任というものをどう解釈をしておるか、特にお伺いをいたしたいのであります。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま申した通り司法の手にかかつておりますから、司法審査決定をまつて政府は善処いたします。
  9. 川崎秀二

    川崎委員 もし前閣僚にこの問題の関連著が出たときは、政治責任をとりますか。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 仮定の問題についてはお答えはしません。
  11. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎秀二君の御発言に関しまして、関連質問を求められております。この際これを許します。佐藤観槻次郎君。
  12. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど川崎君が言われたと同じように、昨日の行政監察委員会におきまして、前の農林大臣であつた平野氏か重大なる発言がされました。吉田内閣は、特に吉田首相は先日の本会議の席上におきまして、綱紀粛正を断じてやるという大きな明言をされましたが、一体今度の証言によりますと、自由党の中にも相当大物の方がいろいろ金をとつておられるということがはつきり言われました。今日御承知のように保全経済界では十六万の人間と六十億の金が、今膠着いたしております。御承知のように、こういうような、重大な問題が、保守政党の中、特に現在与党である自由党の幹部の諸君の中にあるとするならば、吉田首相は何とここでわれわれに答弁をされるのか。われわれに対しあるい国民に対して、綱紀粛正の問題について何とお考えになるのかということを、はつきり明言を願いたいと思うのであります。  なお犬養法務大臣に御質問しますが、この問題については今検察庁の問題になつて一おります。この問題を徹底的におやりになる意思があるかどうか、この際国務大臣としてはつきりとした答弁をお願いします。
  13. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。もちろん法に照して、違法の者に対しては断固取締るつもりでおります。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えは前言をもつて尽きておると考えます。
  15. 倉石忠雄

  16. 今澄勇

    今澄勇君 私はこの機会犬養法務大臣にお聞きをいたしますが、この保全経済会の問題で、過ぐる昨年の七月から三回にわたつて、この予算委員会で、私は法務大臣質問をいたしております。そのときに法務大臣は、この検挙ができないのは一にかかつて私の詐欺罪かどうかという判定についての責任である。将来私の責任が追求せられるときは、私は責任をとるつもりであると、十二月の予算委員会はつきり言われております。ところがわれわれの調査によると、保全経済会顧問松下幸徳氏は元検事であり、東京地検のいろいろの検事の方々と関連がある。そこで最高検がこの保全経済会の問題を追求しようとしたときに、東京地検見解対立をして、本問題に検挙の手の下されなかつた事情は、法務大臣がよく御承知であると私は思います。この検察関係の中における対立も、保全経済会における顧問松下幸徳氏という元検事の方の働きであると、私どもは情報を集めておるのであります。  なお行政監察委員会保全経済会だけしかやっておりませんが、われわれは今後これに類似する匿名組合株主相互金融を併置しておりまする町の金融機関約千に近いものの中から拾い上げてみるならば、東洋勧業経済会顧問は石橋堪氏である。富士総合投資経済会顧問益谷秀次氏であります。なお大阪相互投資金庫顧問には一松定吉氏がおられます。われわれは千余に上るこれらの保全経済会と類似の団体の顧問並びにこれにつながる政治家を、もし行政監察委員会において取調べるならば、かかるやみ金融に関する全貌は明らかとなり、日本政治家とこれらの顧問並びに関係者を通ずるわが国政界粛正は、断固として行われると私は思います。今の保全経済会はかようなものの一端であるにすぎないので、行政観察委員会は、この事務局でも、委員長でも、何ら保全経済会だけしか取調べておらぬけれども、私どもは爾余のこれらの政治家顧問をいたしておりまするあらゆる機関をこれから取調べて、徹底追究の決意であります。私ども社会党は不幸にして平野顧問を送つておりまするけれども、(笑声)党の総意として、かような一切の問題をこれから追究する決心でありますが、これに対する法務大臣の、少くとも検察責任者としての今後の見解東京地検並びに最高検との対立に対するあなたの見解並びに、私が質問した際にあなたが言われました責任を回避するものではないという、速記録に残つた明らかなあなたの答弁について、どのようなお考えでありまするか、ひとつ私はこの機会にぜひ承つておきたいのであります。
  17. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。まず第一に、先ほど川崎君の御質問に答えましたように、法に照して、違反する者は容赦なく検挙いたしたいと思います。  それから御指摘の、保全経済会以外の、(「政治責任はどうする、道義置任はどうする。」と呼ぶ者あり)あとで言います。ほかの正規の受信行為をやっているいわゆるやみ金融も、すでに新聞で御承知のように、検察庁では捜査を開始いたしております。  それからただいまお話のありましたことは、速記録をごらんくださるとおわかりと思いますが、よく御承知のように、多少趣旨が違うのでありまして、大蔵委員会並びに予算委員会において、こういうやみ金融が跋扈しておるのに、なぜ当局立法措置を怠つたか、今澄さん自身も、たびたび注意したではないか、こういう御質疑に対してお答えしたのでありまして、当時実情を申せば、大蔵委員会などでは、法務省は非常にそれを促進していたが、大蔵省は云々というお話がありましたので、これは国務大臣責任共同でございますので、立法化が遅れたのは大蔵省ばかりでなく、法務省にも責任があります。その点について私は責任を回避いたしませんと、こう申し上げたわけでございます。どうぞ御了承を願いたいと思います。
  18. 今澄勇

    今澄委員 それでは、時間が五分ということに限られておりますから、速記録についてはあと十分法務大臣も御検討を願い、私も次の機会に詳細御質問を申上げますが、ただ一点、総理大臣に申し上げておきますことは、総理大臣はこの前、私の当委員会における質問に対して、閣僚のうちあるいはその他に、もしこれらの問題に関する関連者が出た際は、厳重処置するとともに、自分が総理大臣としての進退をきめるかどうかということは、そのときの事情に応じて進退を考慮すると、速記録によるとあなたは答弁をいたされております。私はここで、もし行政観察委員会なり司直の手が延びて、伝えられる池田、廣川氏等の、あるいは閣僚に関するこれらの問題が明らかになつたときは、あなたはどのような責任をおとりになるつもりであるか。なおもう一つは、かような下重大な事件を、総理大臣としてはいかなる態勢をもつてこれらの疑惑を明らかにするための努力をなさいますか、この二点について私はお伺いをいたします。
  19. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の答弁は、先ほど申した通り司法当局決定をまつて政府は善処いたします。
  20. 川崎秀二

    川崎委員 これより予算委員会予算質問を開始するわけでありますが、どうか本会議における抽象的な答弁、あるいは答弁によりましてはどちらともとれるようなあいまいなものでなしに、正確に御答弁をいただいて、国民施政の向わんとするところを闡明していただきたいのであります。  今回提出されました予算案は、緊縮予算案であります。総理大臣も強調され、大蔵大臣財政演説冒頭にずばりとこの点を明確にされました。ところわが国経済政策は、昭和二十四年ドッヂ氏が日本へ来訪して超均衡財政を説き、当時占領下ではありましたが、政治的制約を受けまして、非常にはげしいデフレ政策が行われたのであります。その犠牲になつたものは中小企業者農民であつて、この弱肉強食政策に対しては、当時も多くの批判はありましたけれども、ともかくインフレを克服し、経済は安定の段階へ進み、二十五、六年度はデイスインフレ政策というものがとられて来たと、記憶をいたしておるのであります。しかるに朝鮮事変が勃発いたしますると、非常な特需の利潤に潤いを受けまして、その後の吉田内閣政策は、二十七年の予算編成方針にあるように、安定から復興予算へと変化をいたしました。二十八年には向井財政幅一ぱい均衡財政、こういう標題をうたいまして、生産的支出の多い総花財政を組んだことは皆さん御承知通りであります。経済放棄基本が常に不安と動揺を続けて来たことは、まぎれもない事実、予算を出すごとに蔵相の言う標題が違うのが、吉田内閣の常であります。標題が違うのは、時の移るにつれて当然ではありますが、また蔵相の趣味でもあろうと私は思うが、その目ざすところが、昨年はインフレぎみ予算であり、本年は極端なるデフレ予算であるというような、極端な変化というものが行われていいものであろうかということが、私がまず伺いたい重大な今度の予算に対する質問の点であります。去年はしきりと復興政策を命じておいて、今年になつて急に緊縮政策を目標とするのでは、国民はその帰趨に困る。まずわれわれは吉田内閣財政政策は、何ゆえにこのように急転をしたのか、その理由吉田総理大臣からお伺いをいたしたいと思うのでございます。
  21. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。いろいろ御議論はとにかくとして、政府予算案編成方針は、本年はいわゆる消費生産とがアンバランスである、あるいは物価騰貴のために国際収支アンバランスである、このアンバランスを調整するということが、日本自立経済のため最も必要であるという観点から、その方針でもつて予算編成いたしたのであります。何がゆえにかえたか、かえたという理由は今の通りであります。年々政治というものは動いておるものであり、国際情勢というものも動いておるものであるから、一定不変政策をとれということは、とれと言われる方が変であると私は思います。
  22. 川崎秀二

    川崎委員 たいへん初めから挑戦的でありますが、静かにお聞きとりを願いたいと思うのであります。  ただいま総理大臣お話では、わが国自立経済の達成のためには、今日見るがごとき国際収支アンバランスというものは克服をしなければならぬ、また均衡財政基本だということであります。これはわかつております。ところが一昨年あるいは昨年の予算編成に現われた方針、あるいはまたその根底をなすところ財政経済政策というものは、そうではなかつたのであります。もし吉田総理大臣の言うことが、昨年も通用することであつたならば、まず卑近な例から申し上げるが、昨年の暮れ、第二次補正予算を出して、官公吏のベース・アップをした、また消費者米価をつり上げた。この政策は明らかに物価つり上げ政策であり、国際収支に対して悪い影響の出て来るところのものであることは間違いない。このために今度の予算が非常な膨脹をして、そのために他の積極的な産業政策の経費が、完全にノック・アウトされておるということは、予算面を見ればだれでもわかります。われわれは、すでに国際収支が悪化し、世界経済の傾向、つまり世界物価なら物価というものが、じりじりと下つておるときに、日本だけが物価騰貴をする、これでは世界日本経済の波長が合わない。そのことは自然貿易においててきめんに、日本商品の輸出不振となつて来るわけです。その結果貿易によつて立つところ日本が、国内の経済問題のしわを貿易面、こういうものにしわ寄せすることになつて、かくては日本自立が失われるから、ここで政策を転換しなければならぬということを申し上げ、低物価政策を堅持するために、昨年われわれは勤労所得税を軽減してべース・アップはやめろと言つた消費物価をつり上げることもおやめなさいと申し上げた、名目賃金を上げることばかりが能ではない、勤労大衆を守るのは、低物価政策を貫くことだということを申し上げたのに、政府腹の中ではその意見に賛成していたが、年末の労働攻勢あるいは国会の見通しを誤つたのか、消費者米価をつり上げた。そのために今日予算は厖大なる人件費膨脹になつて現われて来ておる。誤つた基礎の上に立つて、この予算を提出して来たことは明らかじやないか。もし吉田総理大臣の言うように、国際収支アンバランスを克服するということに気がついておるならば、なぜ昨年これらの政策をやらなかつたか、われわれはそのことを吉田総理大臣にお尋ねをいたしたいのであります。
  23. 吉田茂

    吉田国務大臣 担当大臣からお答えをします。
  24. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今の川崎氏の御意見には御同感の点もありますが、この点は、たとえば昨年の予算編成をするときに、今御指摘になつたース・アップの問題について言つてみると、ベース・アップの問題は当時人事院の勧告等もあり、また民間の給与との振合いその他の関係から、べース・アップを行うことが適当であるという世論の支持と、また国会における多数の意見で通つたものであることは、御承知通りであります。さらに米の問題も御指摘になつたが、米価はもちろん上げたくないのであるけれども、しかし個々の物価を上げる方が、全体に大きな赤字予算を組んで国債の発行をするよりも、インフレに持つて行かない効果があるという点から、個別的の物価上つた。こういうことのあつたことは、当時詳しく御説明申し上げて、御了承くださつたことと思つておるのであります。しからばわれわれの現在ねらつておるところはどうかといいますと、これはもちろんその後朝鮮事変終つて、毎年いわゆる三億ドル以上ずつの外貨収入というものが、今度は逆にかわつて来て、いわゆる赤字収入になるという情勢に置かれておるので、この際どうしても日本国際収支を合せて行かなければならぬ。また国際収支均衡を目指して自立経済を達成するためには、今度の方策が必要であるという点から、この予算を組んだ次第でありまして、総理のお言葉で言えば、一定不変ではない、時に応じて最も適切な機宜の予算を組んだものである。今度の予算については川崎委員も、との予算は賛成だと大体腹の中では仰せになつておる。腹の中のことは言わぬが、あなたの腹の中もこの一兆円予算を穏当と認められているのは、これが時宜に適する予算であると思われるからであります。
  25. 川崎秀二

    川崎委員 そんな聞きもしないことを、人の態度をそんたくをして、先まわりして話をするものじやありません。  それからあなたは今ベース・アップの問題、消費者米価の問題、いろいろ言われたが、ベース・アップの問題は、今までの自由党の性格からいえば、池田大蔵大臣のときもそうだつた向井大蔵大臣のときもそうだつた、もつと輿論がやかましいときにも、国家財政はこれを許さないのであります、しばしばこういうことを言つて来た。去年の末になつてああいうことになつたのは、年末の労働攻勢よりも、むしろ国会の乗切りに改進党の腹を見そこなつというところにあることは、世間の知るところである。しかし今さらこれを繰返えすこともない。大体一つ内閣が五年の間に財経政策基本について、二度ならず三度も方針をかえるということは、元来ならば許さるべきものでないのであります。朝鮮事変以来、インフレを手放しで助長しておいてたとえば先般も三木武夫氏が指摘した通り、アメリカの卸売物価指数は昨年一五%、西ドイツは二〇%、こういう前後を往来をしているのに、ひとり日本卸売物価指数は六〇%という程度にまで上昇せしめておいて、そして昨年の消費上昇額は実に六千億、米貨にして十七億ドルであります。かような急激な物価騰貴過剰物資をそのままにしておけば、貿易逆調になるのはあたりまえであります。これは自明の理である。こうして二十八年度末、この三月には一億九千万ドルの国際収支赤字が現われるや、デフレ現れると予見されるや、急にデフレ政策緊縮財政、さては金融の引締めを下るというのは、そして国民に耐乏生活を説いても、今までにこのような野放図な経済方針をやつておいて、急にカーブを切ろうとしても、国民は一体何のこのやらわからない。はとに豆鉄砲ということはこういうことです。吉田首相は旅先では、政府の今度の経済政策が成功しなければ国民の罪だと言つている。あべこべを言つている。この経済危機は天からふつたものでも地からわいたものでもない。朝鮮事変以来、漫然と自由放任経済をもつて過して来て、そのときにこそ、すなわち自由経済達成のために計画的な経済を立てて、従来総合的な施策をやらなかつた政府の方に、私は責任があるとあえて申したいと思うのであります。きのうはインフレきようはデフレ、これだけの大政策の転換を同じ人がやるということは、日本政治史始まつて以来の珍現象だ。濱口財政は緊縮財政、高橋財政は積極財政、ちやんと一内閣には一つの大きな政策というものがある。吉田首相は、こうも急激に国家の財政政策のコースを一ぺんにかえるような政策を同一人がとつて、いいと思いますか。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としては、そのときの事情に善処することが政府責任であると思います。私はそう考えます。
  27. 川崎秀二

    川崎委員 冗談でなしに聞いてもらいたい。一体このような急激な政策の変更を同一内閣がやるということは許すべきものじやない。これは子供でも熱いうどんを食つて、そのあとにアイスキャンデーを食えば腹をこわす。吉田内閣はまるで甘酒をやつたり、アイスキャンデーをやつたり、国民は四年の間に地下の冷蔵庫から温室に入れられて、また冷房装置の中にひきもどされようとしている。国民をおもちやにするものではありません。  それでは具体的な問題に入ります。大蔵大臣伺いたい。あなたは昨年暮れの第二次補正予算臨時国会において、われわれが討議をしておつた最中に、野党側から来年度の骨格予算を示せと提議したことがある、骨格予算すなわち予算規模の輪郭、それから各項目にわたるところの大体予定されるところの経費を出せということをわれわれが言つたとき、あなたは何と言つたか。来年度の予算の規模は一兆七百億、あるいはそれ以下に圧縮したいけれども、まず一兆三百億以下には圧縮はできないでしよう。そうしたら野党の方から一体これはこういうようなことになつたインフレになりはしないかと言つたら、あなたは何と言つたか。国民所得がふえるから財政の規模が若干ふえてもよいのだ、こういう話をした。ここ数年間あなた方はそれを言つて来たんです。逆に今度かわつた。これは数字をとつてごらんなさい。吉田内閣は財政規模の増大を少しも考慮しておらない。財政規模は二十六年は七千九百三十七億円、二十七年度は九千三百二十五億円、二十八年度は当初予算は九千六百億である。二回の補正予算があつて全部を合計して一兆二百七十二億円にはなつておりますが、当初はそうだ。二十九年は九千九百九十五億。だんだんふえて来ている。そのたびごとにインフレの危険が来るのではないかという質問に対して、政府は、国民所得はふえ、生産力がふえて来ているから心配はない、こう言つて来た。一年や二年も先の話じやないのです。去年の暮れ、あなたがそういうことを言つて来て野党側に明示しておいて、そうして今度はこういうような予算を出して来たというのは、どういうわけでありますか。遅まきながら政府が気がついたというなら、それはわれわれも許してやつてもいいかもしらぬけれども、そういうような政策の転換をしているということは、まつた政治責任がないということではないか。あなたの正直な答弁を聞きたいと思います。
  28. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 昨年の第二次補正予算の場合には、一応の見通しとして骨格予算の説明をする際に、さように申し上げたことはなお記憶いたしております。しかしながら事情がその後非常に違つている。すなわちその当時においては、たとえば今の状態が続くならば、いわゆる国民所得は六兆二千億ぐらいになるであろう、それで本年のごとき、たとえば収入を見込めば大体一兆六、七百億の収入が見込めるであろう、それによつて均衡予算を組むならば一兆六、七百億になるが、しかし一兆二、三百億にしたいものだということは当時私も述べた。このことは御指摘通りであります。しかしながらその後私どもが見ている日本事情は、私の見方が少し甘かつた、こういうことを感ずるのであつて、私はその点を率直に今度の演説でも申し上げている。御承知のごとくに日本の二十五年以後行われておつた財政政策というものは、占領下に行われた財政政策で、二十七年のみが独立国としての初めての予算が組まれた。そこで占領行政から解放されて、あるいは今までの幾らか足らぬところを補おうというような、多少の気のゆるみもあつたかと思われるが、それがいわゆる弾力性のある、あなたの言葉で言うと、幅一ぱい均衡予算ということで、幅一ぱいに出たいわゆる弾力性のある予算編成をされた。そしてこの二十八年の予算を組む当時は、なお一年に三億ドルからの外貨収入があつた。しかるにその後の情勢が、もう反対に、たとえば昭和二十八年だけについて見ても、一億九千万ドルからの外貨が赤字になるという状況です。これは国内での米の不作その他の凶作等で、各種の問題が起つておる。また災害その他が起つて来たから、予算面ではあのときも一兆を越しておるけれども、災害予算等を差引いてみれば、はるかに一兆以下になつておる、しかしその後の情勢等が、情勢といいますのは、今のベース・アップの問題がある、あるいは恩給を平年度化する問題がある、あるいは若干の防衛予算をふやさなければならぬ等の問題がある、こういう点から一応のことを申し上げたのだが、しかし今の日本をそういうことで持つてつてはいかぬから、そこで私どもは今度はつきり均衡であり、緊縮予算であるものを打立てて、今度の予算案編成いたして、現在の国情に沿つて、そうして日本の永遠のための策を立てておる次第で、従つてこういう点について申し上げるならば、この予算こそが実情に合つておるのであつて、静かにお互いに、あなたの方も、これも率直に言わしてもらえば、歳出額をふやすように御修正になつた時代もある。やはりお互いに、つまり心が多少ゆるんでおつた点もあるが、しかしそれではいけないから、ここではつきりと……。   〔発言する者多し〕
  29. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  30. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 反省しなければならぬ、こういうのが今度の予算編成の趣意であつて、それで日本をいわゆる経済自立に持つて行かなければならぬ、こういう趣旨から出ておるのだから、そのことを申し上げておる。
  31. 川崎秀二

    川崎委員 お互いに反省しなければならぬと言つて、こつちにしりを持つて来られてははなはだ迷惑だ。あなた方の時代なんで、まだわれわれは野党だ。そこで今あなたはそういうことを言われたから申し上げるけれども、改進党は去年の第十六国会予算の修正をしたということでしよう。それは予算額は幾らも与えてやしないじやないですか。行政費を大ざつぱに減らして、ことに百五十億からの行政官庁費を減らして、二重米価を断行したじやないか。農村と都会との非常な陥没がある、農民に対するところの給付をもう少し引上げなければならぬ、こういう考え方からわれわれはやつただけの話である。冗談じやない。そこで、ことに今国際収支の問題をいろいろ言われたけれども、これらの問題についてはあとで申し上げることにして、吉田総理大臣は先日衆議院の本会議で、三木武夫氏の長期の計画経済を樹立せよという質問に答えて、こういう答弁をされておる。これは今日良識ある国民から非常に疑われておるから、私は総理大臣に訂正をしてもらいたいという意味での質問をいたすのである。「今日長期計画をよく立てる国は、ソビエト、共産主義国のようであります。共産主義国においては五年計画であるとか三年計画であるとかいうものを立てますが、その計画ができなかつた場合には、常にその計画の立案者を追放もしくは処刑いたしておるのであります。もちを絵に描いて、そしてこれが長期計画なりと言うことは、国民をあやまるものであると私は考えるのであります。」と言い、さらに二回目の質問に対しても、長期計画経済に賛成はできないと言われておる。これは総理大臣は何か感違いをされておるのではないか、あるいは質問の意味するところを、はつきりとおつかみになつておらないのではないかということで、この際さらに質問をいたしたいと思うのであります。善意に解釈をして質問をしたい。なるぼど計画経済ということは、レーニン歿後、スターリンが一九二七、八年にソビエト・ロシヤの五箇年建設計画をもつて、一国社会主義を完成しようとしたことに、源を発しておることだけは事実であつて、共産主義を連想するということはわかります。ちようどそのころ外務次官からイギリス大使の職にあつた吉田首相のことであり、ときどき日本帝国はというような言葉を使われるのですから、従つてこの首相にこういう先入観念があるということは、これはやむを得ないことであると私は思う。しかしこれをもつて今日を律するということは、私はたいへんな間違いであろうかと思うのであります。すなわち三木氏の指摘するあるいはわれわれの考えておる長期計画経済というのは、今日のような日本経済は十年にわたる戦争経済の逆行によつて、蓄積資本の七〇%を喪失しておる。敗戦によつて領土と経済勢力圏を失つておる。この基盤に立つて日本経済自立を速成するためには、総合的な長期経済計画を立てる必要があるということを言つておるのであります。今日どこの国でも、経済条件の悪い国は長期計画をやつておる。条件のいい国でも経済の計画化を断行しておる。ことに資金も資材も潤沢にない、これを有効適切に経済復興に役立たせるためには、総合的なプランが必要であります。現にこの吉田内閣の中にでも、農林省には食糧増産五箇年計画というものがある。しかしそれを達成するためには、裏づけたるところの資金も必要ではないか、資金だけではない、あらゆる面にわたつて、たとえば産業、金融貿易あるいは消費規正、労働、社会保障、税制というような各般にわたつての総合的な計画が立たなければならないということを申しておるのであります。それでなければこの耐乏予算なんというものは、断じて実行することはできないですよ。それは資本主義のもとにおいても社会主義のもとにおいても、立てなければならぬ政策であると私は思う。日本は特にその必要がある、こういう意味で三木さんは言つておられる。そういうことに対して吉田総理大臣はどうお考えになるのですか。
  32. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答え申し上げます。長期計画とか総合計画経済とかいうふうになると、自然共産主義国の長期計画を思い出さざるを得ない。なるほどお話のように、総合計画がなかつたら、その年の予算計画もできないはずであります。その意味において私もやはり異論はありませんが、しかし共産主義国がいたしておるような何年長期計画ということは、私の賛成しないところであります。
  33. 川崎秀二

    川崎委員 大分歩み寄つたようですけれども、しかしそれは一年きりの計画だというので、年次計画も立たなければ長期にわたつての計画は立たないというのですから、まあ中期計画ということになる。御承知のように今日西ドイツの復興は、何人も認めているように第二次大戦後の世界の驚異であります。彼が敗戦から今日見るがごとき貿易の伸長、生産の向上あるいは国内生活水準の向上に至つた原因は、現在のアデナウアー内閣の長期にわたる経済の計画化が大きな功を奏した、エルハルト経済相の再建経済のプランが大きく響いて来たと、私は思つておるのであります。ところが、ドイツへ行つてみるとCDUキリスト教民主同盟の幹部は、これは自由経済の原則に立ちながら、長期の総合計画をやつたおかげだ、こういうことを言つておる。昨年もこの予算委員会でわれわれはこのことを警告をして来た。私は大蔵大臣伺いたいが、今日ただいま私が申しておるように、世界のいずれの国でも、自由競争を経済の建前としている国家でも、長期の計画経済を樹立して、政治経済の運行に誤りなからしめようとしておる。これをやつているからして恐慌というものが未然に防げる、あるいは突発的な経済異変を押えることができると思うのであります。昨年朝鮮事変が休戦になつて、特需が休止した瞬間から計画経済の樹立ということが、財界からも要望されるようになつた、資本主義の番頭である経団連が言い出して来た。ここが私は問題だと思う。これが一年後の今日では一層適切であつて、耐乏生活、ことに耐乏予算を説かれるならば、この点が重大な問題になつて来やしないか、その必要がありはしないかというのである。われわれは耐乏生活を要求すればするほど長期の計画、年次計画、来年はどうなる、三年後にはどういう形になつて行くのだということが、明らかに青写真によつて示されなければならないと思う。こういう意味での長期計画をわれわれは言つて来ておるのですが、大蔵大臣はどうお考えになるか、これは適切にお答えを願いたいと思うのであります。
  34. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それは自由主義の国でも、やはりみなそれぞれ計画は持つております。ただ計画経済というものと計画とは非常に違うのでありまして、計画経済というのは、これはロシヤなどで行われておるものであつて、私どもは計画経済考え方ではないが、すべて計画は持つておるのであります。ただいまちようどあなたがおつしやつたように、食糧についても、あるいは畜産についても、あるいは製鉄についても、造船についても、電源開発についても、みなそれぞれ一定の計画を持つてつておることは、これはもう御承知通りであります。従いまして、私どもが今度予算に現わしておるのは、本年度それを実行するものでありまするので、これをたとえば総合的に言う物価価について言えば、五分ないし一割という線を打出しておるのでありますが、その際にも申し上げましたごとくに、五分ないし一割の値下げをもつて国際収支ところで、国際競争力が十分なりとは言えないから、私どもはやはり国際的な水準に近づけるということに持つて行かなければならないと思う。しかしこれは一年でなし得るものでないことは申し上げておる通りであります。しからばここで青写真を一枚出してずつと何は何、何は何ということでここに計画を出して、さらに総合的な計画をここへひとつ出せ、示せと、こういうことでありますならば、私どもは今日のような国際事情変転常なきときにおきましては、計画は持つてつても、これを出して、総理の言葉で言う責任をとつていろいろすべき問題ではない。われわれはその目標に向つて最も実際的な政治をやつて参らなければならぬと思うのであります。まあどれについても計画は持つております。
  35. 川崎秀二

    川崎委員 変転常なき国際情勢、国際経済と言われるが、変転常ないのは国際経済ではなくして日本経済だ。日本財政方針です。今度の予算の特徴として見のがしてはならないのは、人件費膨脹ということであります。これは人件費と項目的に明らかでなく、物件費の中にも隠れておる。給与、労賃といつたものの比較的増加が見られる。先ほども指摘した通り、昨年末における公務員のベース・アップが本年の予算にふえて来たのは、一般会計だけでも、これは四百四十億、もつとも政府はこれを警察法の改正にからんで特別会計の方にまわしたりして、百数十億しか与えていないということを言つておるが、これはそうは思わない。特別会計、政府関係機関予算を入れれば莫大な予算である。また軍人恩給というものは人的経費で、これは百八十八億何千万円かふえて、さらに文官恩給の増というものを合せると一千億円に近い数学になつておることが、今度の予算一つの大きな特徴ではないかと私は考えるのであります。これらを総合すると、人件費は実にこの総額においては三千百八十億円に上つておる。実に予算の三分の一に相当する額であります。世上防衛費が民生安定費を圧迫しておるという。私は確かに防衛費がふえたことは事実であつて、それが民生安定の方に食い込んで来ておるということを否定するものではない。防衛費についても多くの批判がある。ことに保安庁の経費の使い方、あるいは防衛分担金の削減問題については、われわれ多く論じなければならぬものがあるが、自衛力漸増というのであれば、多少の増加はやむを得ないと思う。そのうち不必要なる経費というものは、われわれはあくまでも監査をしてこれを削減したい、防衛費がこんなにふえる一方において、社会保障費が非常に圧縮をされておるような現状を見のがすことはできないが、しかし実際のこの予算面をしつかり見て行くときに、むしろこの人的経費の増加、それは他の民生安定費、社会保障費、食糧増産費を脅威しておる大きな数字であるが、これを大蔵大臣は認められますか。一体このように人的経費の多いことは、それだけ人は動いても物は動かぬ。産業を萎縮させる大きな根源になりはしないかと私は思う。世界各国の予算を見ると、なるほど世界各国の予算も人的経費がなかなか多いですよ。多いけれども、彼らはいずれも安定した財政の規模に立つておるから、予算は人的経費が相当大幅に占めてもさしつかえないが、日本は違う。日本予算を通じてもやはり産業を育成し、食糧増産をし、社会保障をしなければならぬという面が非常に多いのであるから、このように人的経費が多いということは、ある意味ではこれが予算を食いつぶして、日本の財政をにつちもさつちも行かぬようにするところの原因になりはしないかということを私はおそれるのである。大蔵大臣見解を聞きたい。数字をあげて論じていただきたいと思うのである。
  36. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御指摘人件費の多いことは、ことに昨年のベース・アップその他も原因いたしまして、今年、四百四十億ばかり増加しておることは仰せの通りであります。ただ一般会計で申しますると、この一般会計の人件費は、千二百九十六億円だけでありますが、特別会計、関係機関等を合しますれば、相当な数字に上ることと思つておりますし、この人件費が多いことは、私もあなたと大体感を同じうしておる。しかしてそれが行政整理を徹底的にやつてもらいたい、こういうことを常に念願しておる元なのであります。ただお話の中に、軍人の遺族の分まで、これを百何十億ふえたのは云々と仰せられましたが、これは遺族が大部分でございまして、人件費と見るべきものではない。むしろ社会保障費と見るべきものなんです。ちよつと軍人という名前が上に乗つかつておるから、何かこれは軍人に与えるように思われるかもしれないが、これはお調べくださればよくわかりますが、社会保障と見るべきものなんです。むしろ遺族にやつている分が大部分であります。防衛費でも何でもありません。従つてこれはよくお考えいただきたいと思います。まあ行政整理は、御承知のように退職金等がありますから、初年度でははあまり予算面には現われておりませんが、しかし来年度においては、警察その他を合せると百五十三億ばかり出て参ります。一般会計の方では、来年度は七十三億円少くなつて参りますが、行政整理のことは、今後とも大いにやるべきものである。これは私も人件費が国費の割合いから見て多いという事実は認めまするとともに、今後とも行政整理を徹底してやるべきものであると考えております。
  37. 川崎秀二

    川崎委員 なかなか親切な答弁をされるとともに、ときどき逆襲をされるから、この問題はこの際はつきり議論しておきたいと思う。あなたが今軍人恩給は遺家族のことであり、しかしてこれは社会保障費であると言われたが、これは純粋な社会保障費ではありません。世界各国の社会保障制度を推進しているところで、これは軍人恩給とか戦争犠牲者保障金あるいは軍人生残り保障とか、いろいろな言葉をもつて言われておるけれども、それらは社会保障とは違う。社会保障の経費ではない。勝間田清一君に言わせれば、これは軍備費だという。私は軍備費だとは思わない。思わないが、純粋な社会保障費でないことは間違いないのであつて、私が今申し上げたのは、人件費――人件費というと、いかにも人件費という項目に従つてつておるようだが、人的経費ではないか。つまり物的経費ではない。食糧増産というような、あるいはその他の経費のような産業振興に直接役立つものではない。やはり人的経費の系列に入ることは間違いないのであつてそんなごまかしの答弁というものは、私は許すことはできない。  それからもう一つ行政整理、あなたは行政整理をやつてくれと言うけれども、これはやつてくれというのではなしに、あなたの力でやらなければならぬ。昨年の三党の予算折衝のときに、日本自由党は、これはわずか八名であるが、これが賛成投票にまわつたのはどういうことか、行政整理を一割やれということである。それをやつていないじやないか。これは明らかに三党協定に対する背反だ、あなたはどう思いますか。
  38. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 またちよつと違うかもしれませんが、これは軍人遺族でありまして、子供その他を含んでおるのであります。むしろ婦人、子供が多いのであります。そういうものは人件費とは普通には言わないので、これはむしろ社会保障費とも見るべきものだ、とも見るべきもの、こう申し上げたことは御承知通りであります。社会保障費だとば思つておりません。ともと申し上げた次次第であります。  そそれから行政整理の問題についてのお話は、本年当初予期のごとくには行かなかつたが、六万からの整理をすることに相なつております。しかしながら行政整理は、もつと徹底すべきであると私は考えております。
  39. 川崎秀二

    川崎委員 いろいろ質問もありますので、話題を進展させて行きたいと思います。昨年の十二月二十八日、大蔵省の原案が発表されたとき、社会保障費は大幅に削減された。生活保護法、児童福祉法等の国庫負担率が減少された際、われわれは政府政治感覚というものを疑つたのであります。一兆円の予算のわくについては、これを一兆、という数字の中にとどめたことは成功であると、当時の新聞も世評も言いました。われわれもこれは世間の偽らざる感情であるということを肯定をするものであります。ところが中身が悪い、あとが悪いのです。今日輿論の非常にはげしい反対、あるいは日雇い労務者等の陳情、あるいは自由党内部にも反対がある。われわれも政党から社会保障費の削減については反対であるという協力な表明をしておいた、そうしてようやくこの社会保障費の削減問題は、今日ではその中心問題は解決したかに見えるのでありますが、なお多くの問題を残しておる。私はこの際吉田総理大臣の社会保障制度に対する御認識を伺つておきたいと思うのであります。  社会保障制度の確立は、第二次大戦後の世界政治一つの大きな指標であります。第一次大戦からヨーロッパにおいて労働権の確立がなされたことは、世界の歴史における大きなできごとであると言われおてりますが、これが第二次大戦後の産物だとするならば、第二次大戦後の世界各国の努力は、国によつて違いますが、大体自衛力を強化すること、社会保障を進めることに集中され、特に社会保障の前進は、今日では後進国家をも覚醒させる大きな潮であることを指摘しなければならないのであります。そこで私は社会保障に対する考え方については、まず社会保障をもつて自由主義社会を貫く原理に修正を加えて、個人の営利活動の自由はこれを温存しながら、社会が個々人の生活に対する無責任性を改めることが、社会保障の哲理であると思う。しこうして社会の責任において、終局的には強力な組織である国家の責任において、個々人の生活を保障するということが、社会保障の原理でなければならないと考えておるのであります。この考え方に立つて、現在の憲法第二十五条というものもつくられておるのであろうと思う。健康にして文化的な最低生活を営む権利をすべての国民は有するということの考え方の基礎は、ここにあるのであつて、憲法の改正がいろいろ問題になつておるが、現在の憲法の最大の傑作、長所は何かといえば、二十五条が最もすぐれたものであるとさえ言う人があるのであります。従つて社会保障制度には慈善事業的な感覚というものは、今後一切払拭をしなければいけない。また経済が不安であればあるほど、国家補助をもつて最低生活を保障し、同時に社会保険をもつて経済の不安から来る脅威を除こうというのが、社会保障の考え方の中心になつて行かなければならないと私は思う。その考え方がもし政府にあるならば、一厘にもせよ、日本が一番遅れておる社会保障制度というものに手をつける、その予算を削減するという政治感覚が生れて来るわけはない。ここに重大な問題があり、現内閣の後進性あるいは反動性というものが、ひそんでおるのではないかというふうに考えるのである。吉田総理大臣は社会保障の根本的な考え方について、どうお考えになつておるか、一度ぜひ伺つておきたいと思います。
  40. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府も社会保障制度の重要性を認めて、当初予算の中にも、相当の金額を織り込んでおるのであります。
  41. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 社会保障費の問題でありますが、これは当初におきましては、社会保障を実施する地方に対する補助金を、たとえば八割出すものについていうと、中央において二分の一出す、あとのものについてはこれを地方へ平衡交付金等でまわすことになつてつて予算面では当初から社会保障に対する費用を何ら減らしておつたものではないのであります。むしろ社会保障に対する実施の方面で、実施する地方団体がどちらかというと効率的でなくやつておる。あるいはややもすればいくらか濫費的だと言われておるようなものがあつたので、実情に即するように地方に責任を持たすために、国の出す金はかわりはないが、直接これに出すものは、たとえば八割のものも二分の一にとどめて、そのほかの残余のものはこれを補給金の形でやる。こういうことにいたしたのでありまして、これに対する反対がかれこれ出たのであります。その点が川崎委員の言われる政治感覚という問題になるのかとも思うのでありますが、そういうことであるなら同じ出す金であるからというので、今度はやはり二元通り国が出すことにいたしたのは御承知通りであります。しかも本年の社会保障諸費は、今の厳格な意味での社会保障諸費も、乏しい予算の中で、前年よりもさらに三十八億円増加しておることも御承知通りであります。
  42. 川崎秀二

    川崎委員 われわれは予算問題でありますし、きわめて地味に、かつ中心の問題に対して、あまりやたらに政府を攻撃せず、とにかく中心問題でやつておる。吉田総理大臣の今の社会保障に対する御答弁は何ですか。そういうことで一体円満なる議事運営というものができますか。委員長から注意しなさい。この委員会の中に入つたら、あなたは吉田総理大臣に対しても指揮権を持つておるのだ。注意しなさい。
  43. 倉石忠雄

    倉石委員長 御進行を願います。
  44. 川崎秀二

    川崎委員 社会保障費がふえておるということでありますが、これは実質的にはそんなにふえておらない。大体がだでもですが、世界を回つて来る者の日本が一番遅れておると感ずるものは何か、これは道路と社会保障であります。道路の方は吉田総理大臣のお好みである。従つて道路政策はなかなか進捗しておるようである。もつとも自分の大磯に行く道や、箱根の街道ばかり直してもらつたのでは困る。それから総理大臣が大磯に行くというと電休日がなくなる。そういう阿諛迎合の政治をとられては、実に困るとわれわれは思うのであります。  さて道路の方はけつこうですが、これは外観に触れるからみなにわかる。もつと切実に、地味ではあるが、今後政府が一番力を入れてやらなければならなぬものは、社会保障制度である。一体厚生大臣は、新任間もなくであるけれども、社会事業家であると私は聞いておる。そこでこの際伺いたいが、この社会保障というのは、今日ではイギリスの専売特許ではないのですよ。イギリスに始まつたわけではない。第二次大戦後はこれを完成したのはイギリスであるが、すでにイギリスの植民地の方があるいは自治領の方が、はるかに多くの額を国家の予算に盛つて、営々として社会保障の実をあげておる。ニュージーランドやオーストラリア――ニュージーランドでは三八・六%という国家予算の歳出総額に対する費用を計上しておる。三十六億ふえたというけれども、そんなものは去年の予算とのパーセンテージをとるときにはあべこべに減つておる。去年はたしか八・七%、今年ば七・五%か七・五二%というところだ、こういう数字が出ておるのであります。防衛力の費用というものがふえれば、それに比例して社会保障費というものがふえなければならぬ。そうしてむしろ他の経費を削減して行かなければならぬというのが、今日の世界の傾向だと私は思う。試みに数字をあげて申すならば、今日歳出予算に対する比率は、イギリスが一七・一%、西ドイツが二〇%、スエーデンが二七%、イタリアが一一・七%に対して、日本が七・五%ということはしよつちゆういわれておる。ところがもつとわれわれが切実に論じなければならぬのは、これは単に国庫負担の率だけで論じてはいけない。社会保障の現状を論ずるには、国庫負担及び保険料を総括して、さらに地方公共団体が受持つところの社会保障費を総合して、それと国民所得に対する比率を見て行けば、国がいかに社会保障に対して力を入れておるかということをそれが端的に最も正しく物語るものだと思う。これによつて見ると、イギリスは一二%、アメリカは六%、アメリカは非常に少いけれども、アメリカは社会保障のあまり必要のない国なんです。フランスは一三%、西ドイツが一八%、日本が四・三%という極端な低いパーセントになつておる。これはインターナショナル・レーバー・レヴュー、国際労働局の一九五二年の統計であるから間違いがない。大砲かバターかということがしきりにいわれるが、私は世界各国の傾向を見ておると、スエーデンやイギリスではこれに自衛力も拡充するし、また同時に社会保障もやる、大砲もバターもやる。吉田首相も大砲もバターもと言われておるけれども、数字から来ておるところはどうか。大砲はやや機関銃くらいになつて来た。ところがバターはおせんべい以下だ。数字はこれを雄弁に物語つておるのであつて、こういうような程度に社会保障をくぎづけにしておくということは、今後大きな社会問題を私は起して来るところの原因になろうと思う。そこであなたに聞きたい点は、一度でもとにかく社会保障費の国庫負担率を下げて、市町村に転嫁して――今大蔵大臣に聞くと濫費があるという。しかし生活保護法というものは何か。生活保護法というものは最低生活に呻吟しておる者に対して、国家が最終的責任を持つというのでできた。市町村扶助ではないのです。国でみなまかなう。ナショナル・アシスタント、公的扶助、国家扶助といわれておる。決して市町村扶助ではない。その考え方から来るならば、断じて国庫負担の率を引下げるというような考え方が出て来るわけがない。それを考えてもらいたいと私は思うのでありまして、これらの問題を総括して、新任厚生大臣の意見を聞きたいと思うのであります。
  45. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 お話のように、生活保護の総合的なパーセントは、五二年の統計ではお話通りだと思います。最近では全体の各国の比率が少しふえておる。しかしふえておりましても、全体から申しますとなお少い状態であります。しかし本年度の予算におきまして、先ほど来だんだんお話がありましたが、また総理からも、社会保障には力を注いでおる。今後におきまして一層社会保障には力を注ぎながら、いわゆる近代的な生活の体形を安心してなされるように進めて参りたいと存じております。
  46. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 何かちよつと川崎さんは思い違いをなさつていると思います。言葉だけのものでありますが、前年よりパーセンテージが減つているというお話がありましたが、前年の予算は一兆二百七十二億で、七百三十六億ですから約七分二厘ほどにしかついておりません。今年度の予算は一兆予算で七百七十四億、七分七厘五毛ぐらいになつているのであります。この点思い違いをなさつているようですから、ちよつと申し上げます。
  47. 川崎秀二

    川崎委員 当切予算では八・七%になつている。災害復旧費だとか修正が行われたから七・二%になつたので、私は当初予算との比較を言つているのです。今年また災害があつて災害予算を組んだら、これよりまだ減るということになるのではないですか。そんな詭弁はやめなさい。  そこで厚生大臣にお伺いいたしますが、本年度に生活保護法の赤字が相当出て来るように思われる。末端の東京都その他は非常に困つているが、これは一体どのくらいの赤字になりますか。
  48. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 生活保護の赤字という問題でございますが、生活保健法は御承知のように四半期ごとにおよその金を前渡しをいたします。大体予想される程度の扶助を開始いたしまして、その四半期ごとの集計をいたしまして、さらに最後になりますと、年度末に実際に扶助に使つた額を決算をいたしまして、三月三十一日で締め切つたのを、翌年度四月以降に決算として払うのであります。大体の予算から考えますと、十二月までに一応考えられます予算的な考え方で、三十億余りがずれて、来ない。しかしこれははつきりとわかります。はつきりわかるのは三月三十一日以降でないとわかりませんが、私どもの手元で集計いたしておりますと、あるいはその程度になりはしないか。従つてここで急いで一月分をすでに二十日に支給をいたしましたが、十一月分でなお不足分が相当あると考えまして、先般予備費から十二億支出をするということにいたして、これでとりあえずは行けると存じます。今申し上げましたように、最後の締切りば三月でございませんと現在はわからぬのでございます。御了承を願います。
  49. 川崎秀二

    川崎委員 とりあえず十二億だけ赤字を予備費から補填をする、こういうことですね。三月末にはまだもつとふえるかもしれぬ。そのときの財政措置はどういうふうに要求されますか。
  50. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 これは予算の範囲内において一月、二月、三月分の前渡しを一月二十日にいたしまして、その範囲において使いまして、なおその結果が不足しますときには、三月以降におきまして処置をいたしたいと存じます。
  51. 川崎秀二

    川崎委員 時間の関係がありますから、まとめて御答弁を願いたいと思います。第一は保健婦、保健所に対するところの国庫補助の問題であります。第二は住宅政策の問題であります。第三は厚生年金の問題であります。これをとりまとめて御答弁を願いたい。  復活された社会保障費ではありますけれども、これはただただずれ行こうとする社会保障制度の中核を一応食いとめたにすぎないのであつて、われわれは今度の予算からすれば、社会保障費は、もつと前進しなければならないということを強力に主張するものであります。ことに保健婦に対する国庫補助というものは四分の三から三分の二に切り下つておるというようなことになりますと、これは地方においても非常に大きな問題になります。これに対してあなたはどういうふうにお考えになつておるか。  第二は、今厚生年金保険法というものが非常に大きな問題になつておる。社会保障制度を推進して行く上において、これは重要なる一つの翼であります。現在のわが国の年金制度は、きわめて複雑かつ不均衡でありまして、これらの矛盾を是正して行かなければならぬ。これは終局的には国民年金制度というものに総合しして、恩給あるいはその他のものを包含した新しい年金制度というものを打ち立てることが、私は理想であると思う。社会保障制度審議会が打ち出したところの構想は、今後政府がその答申案勧告の線に沿つて行くべき一つの理想を示したものと思うが、とりあえずこの厚生年金については、特に関心を深めるものがあるのであります。すでに厚生省の中では改正法案ができておるという、その改正法案をめぐつて、被保険者と事業主側が対立をしておる。そうして社会保険審議会の答申案さえできないというような状態である。これは労働組合と日経連の考え方が対立しておるからです。しかもあれは日経連の考え方には相当な無理が今日ではありはしないか、最低二千円で押えようというのでしよう、そんなことが今日できるでしようか、われわれはそんな意味合いから厚生年金はむしろ原案に近い線で出て来なければいけないと思う。厚生大臣はどのくらいの熱意を持つて、この問題を推進されておるかということを伺いたい。  第三の点は、住宅政策である。これは厚生大臣に伺うことでなしに、今日では建設大臣の管轄の範囲でありますけれども世界各国の社会保障制度を見て行くと、住宅というものは社会福祉政策と非常な関係があつて、どこの国、どこの都市でも大体社会保障省、ミニストリー・オブ・ソシアル・ウェルフェアの方に入つておると思う。将来行政改革をやつて、やはり住宅の問題は建設省から切り離して、当然社会福祉の一環として強力に推進することが、世界政治の方向だと私は思うが、これは行政機構の改革についてはまだ今度の案はできておらないが、これは塚田さんなどどういうふうにお考えになつておるか、また厚生大臣の考え方も聞いておきたい、かように存ずるのであります。問題の論点は三点あります。
  52. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 保健所の従来の経常費を、保健婦の関係におきます三分の一を四分の一にしたことに対する問題でありますが、これは全般的にそういう方針をとつたのでありますけれども、従来保健所におきます保健婦は、相当活動をいたしております。また成績も上げております。そうして地方におきましても相当の負担をいたしております。従つてこれはむしろ地方を中心にいたしました保健婦の活動を、一瞬活発にすることにおいて、多額の費用を補助するだけではなしに、その地方に適応した仕事をするように仕向ける方がいいので、こういうふうにいたしたのであります。保健所全体にいたしますれば、相当増設を計画いたしております。従いまして相当進展をすると考えております。  それから第二の問題の厚生年金保険の改正問題、これは予算にも従来一般の方は国権負担が一割でございましたのを一割五分にいたしまして、従つて給付額を相当大幅に改正して、御趣旨のような点に沿う予定をいたしております。現在社会保険審議会におきまして、その案の内容をつぶさに連日連夜検討いたしております。その検討の途上におけるお話が出ましたが、これは私は相当程度まとまるものだと考える。まとまりません場合には、十分に検討いたしたいと存じます。  住宅政策につきましては、従来はお話通りに来ておりましたが、最近はただいまお話になつたような現状になつております。しかしこれは関係者とよく打ち合せまして進めて参りたいと思います。
  53. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 機構改革の方は、まだ全体的に結論に到達しておりませんが、確かに御指摘のような問題点があるということで検討いたしております。なお今後検討して結論を得たいと存じます。
  54. 川崎秀二

    川崎委員 非常に不満足でありますが、問題を一転しまして、吉田総理大臣の最も得意の問題に入らしていただきたいと思うのであります。  吉田総理大臣に対し、国際情勢に対する見通しと、東南アジア外交に対する推進の方途について、お伺いをいたしたいと思います。総理大臣演説にもあります通り、本年は国際緊張の緩和の面が見られるけれども、本質的に相いれない民主共産両陣営における冷戦の対立は緩和しないだろう、こういう考え方がとられておる。昨年の暮れ、バーミューダにおける三国の首相の会議、これに続いてチャーチル首相等の努力もあつて、ベルリン四国外相会議が行われるに至つたのは、少くとも両陣営の話合いの基礎ができることにおいて、世界平和のためにも私は喜ばしいことであろうと思うのであります。これを機会世界の恒久平和へのきざしが見えるということがありますならば、非常に幸いでありますが、しかし今度の外相会議の推移を見ますると、当局のこのドイツ統一問題あるいはオーストリア講和条約等そのものにも、非常な難航を示しており、モロトフソ連外相の五大国会議招集の提案で、一層問題は複雑になつて来たかの感がするのであります。こうした国際政局の大きな動きにおいて、吉田首相はどういう見通しを持つてこれに対処されておるか。私の認識するところでは、本年初頭のアメリカ大統領の教書は、世界平和の理想を大きく掲げておりまするけれども、なおかつ力による平和の維持を建前に、非常に強者の地位に立つて政策を進めようとしておる。そこでたとえば従来までは優位に立つ対共産圏包囲攻略というものを中心にしておつたが、今後は原子力というものを使つて、もし共産側が攻撃を加えたときには、ただちにこれに報復の態度を講ずると言明するに至つておるのであつて、いわゆる力によるところの平和態勢確立ということに対しては、アメリカは一歩前進しておると思われる、こういう世界情勢であります。しこうして外務大臣の演説にもありましたが、世界全体の情勢では、自由主義陣営は結束を強化しつつある、しかしアジアにおいては共産主義陣営の方が結束を強化して、自由主義陣営は何らなすところなしという状態であるということを、端的に外務大臣は言われておる、これは吉田総理も同じ認識に立つておると思うが、それならば一体今後日本は、このアジアにおいてどういう政策をとつて行こうとするのか、認識ばかり正確であつても、それに対するところの対策がなければならぬと思うけれども吉田総理大臣国際情勢の見通しと、それからアジア外交というか、東南アジアにおける自由主義陣営の団結について、どういうお考えを持つておるか、お伺いをいたしたいのでございます。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをします。私の見通しなるものは――見通しと申すか、現在の状態についての考え方は、施政演説の中にも申しておる通りでありまして、漸次緊張は緩和されておりますが、しかしながらこれがために冷戦状態が続く、こう考えるよりほかいたしかたないと考えます。なぜならば大きな戦争があつたあとにおいて、当分平和の確立ということには時間がとれるということは、歴史の証明するところでありますから、冷戦状態その他の、平和確立まで至らない一種の事態が生ずることもいたしかたない、これは常に大戦のあとに生ずる状態でありますから、現在においてもそうであると思います。さて日本としてどうするか、これはしばしば申す通り、自由国家との間に十分の連絡をとり、ことに近隣の中国との間においては、最も親善な関係に入りたい、そのために政府は努力いたしております。
  56. 川崎秀二

    川崎委員 外務大臣の施政演説は、私は静かに伺つてみて、はなはだ異色のある演説だというふうに見ました。これは紋切型でなく、深く情勢を分析して、あなたが一つの外交演説の型を打ち出したものと思つておる。ところ情勢分析ばかり、かりにすぐれておるにしても、実際に自由主義陣営がアジア外交においてどう団結して結束をして行くのか、そういうことに対する方策というものが一つもない。また日本が、今日タイを除いたほかの国と、そう深い親善関係に着々として入つておるというところの証左は一つもない。そこでわれわれは岡崎外務大臣に伺いたいが、東南アジアにおけるところのいろいろな緒施策、ことに韓国との外交は、今後どういうふうに展開をされて行くか伺つておきたいと思うのであります。
  57. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 実際の政策になりますと、われわれ実際見て考えていると、やはりどうしても過去の経験といいますか、過去に起つたことが現在にも影響しておりますから、たとえば今言われたように、われわれとしては東南アジアとの間をできるだけ親密にして行きたいと思つて、こちらばかりそれをやりましても、相手方はやはり疑惑を持つたり、過去の経験で躊躇したりいたすことが、どうしてもまだ時間の十分たつていないせいかあるわけであります。そのために思うようにいろいろの施策が進んでないことは事実であります。しかし私が実際やろうとしていることは、この間の演説にも言つてあります通り、方角だけははつきりしたつもりでおります。たとえば賠償の問題にしましても、その他経済協力の問題にしましても、また貿易を推進ずるために三つの手段を講ずる、こういうことは事実おそいけれども、やつておるのであります。具対策がないかけじやないけれども、やはり戦争あるいはそれ以前の経験からして、そう急に進まないことは、はなはだ残念であります。  それから韓国の問題でありますが、これも初めは私は、日韓両国の間だから、よその国に手助けをしてもらわないでやりたいということを、しばしば言つてつたのであります。それでも一向はかどりませんから、この間はアメリカなりその他の国のあつせんを得てでも早く解決したい、こう思つて直接にもいろいろ話をいたしておりまするし、また間接にもそういう方法で話をいたしておりますが、まだこれは目鼻がついておりません。
  58. 川崎秀二

    川崎委員 日韓関係については目鼻がつかない、これははなはだ憂慮すべき現象だと思う。現に読売新聞に載つておる報道が事実とすれば、非常に重大な問題である。一昨日の読売新聞には、日韓会談はアメリカ側のあつせんにもかかわらず、依然再開の見通しは困難となつている、しかるに最近に至り武内在ワシントン公使は、アメリカ統合参謀本部某高官が「日韓関係日本がMSA援助により国力を充実すること、李承晩政権が変化を見ること以外打開の道はない」とまで、電報を打つて来たということがあるが、これは事実ですか。
  59. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その点は全然事実じやありません。そういうことは言つて来ておりません。
  60. 川崎秀二

    川崎委員 ぽちぽち岡崎外務大臣に伺いたい。日韓関係は外交面だけではなく、経済面の連携というものが非常に重要な問題だということは、これは何人も認める。まず大蔵大臣にお伺いしますが、二十九年度の特需全体の見通しは、昨日経済諸指標というものをもつていただき七億六千万ドル、このうち韓国の特需はどのくらいになりますか。時間がかかれば持つてもいい、ちよつと調べてください。
  61. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと数字を今記憶しておりません。
  62. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎君、それでは答弁あとにして……。
  63. 川崎秀二

    川崎委員 ちよつとそれは聞いておきたい。おおよそでいい。
  64. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 六百万ドルぐらいというふうに一応言われているが、的確な数字を持ち合せませんから、後刻取調べまして御返事を申し上げます。
  65. 川崎秀二

    川崎委員 六百万ドルで間違いないですか。ちよつとけたが違うのではないか。しかし六百万ドルなら六百万ドルでもよろしい。二十四億程度ですが、そんなことはないと思う。その基礎はむろんわからないですな。こういうことになつて来るとわからぬと思う。それならば岡崎外務大臣にお伺いしますが、最近アメリカの対外活動本部FOA並びにアンクラ国際連合朝鮮再建局、これが、対韓国援助資金による朝鮮復興特需に対する調達を、今まで米国政府または国連当局の発注機関によつてつていたものが、今後は韓国政府またはその代行機関に調達の権限を委任したという情報がある。これは外務大臣御承知ですか。
  66. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう報道は聞いておりますが、私の承知しておるところでは、まだそういうところまで行つておらぬと思います。
  67. 川崎秀二

    川崎委員 このことが事実か事実でないかということを、あなたは今さだかでないと言われるけれども、これはもうすでに一部新聞にもちよつと出た。しもこれは、われわれの聞くところによると、相当な秘密協定であると言われておる。それとわれわれが今ここに大きな問題にしなければならぬ問題は、この協定ないしはとりきめというものが行われると、昨年の暮れから李承晩大統領は、日本に対して今後一切物を買いつけないということを言明しておる。またこれは昨年の十二月、元という企画処長が、朝鮮復興特需は今後日本からはしないということを声明しておる。ここで朝鮮復興に対する特需の調達権を朝鮮側にゆだねるということは、日本にとつて重大な危機を意味するのであります。これを放置しておいて、あなたはただ情報があつたように記憶するけれども、そこまでは行つておらぬと言う。そうではない、行つておるはずである。外務省はこの問題について先方に対して――これは国際法上何でも秘密協定とか条約というものができると、それに対して問合せができないそうだが、国にはできないけれども機関にはできるということで、何か電報を打つたことはないですか。どういう対策を講ぜられておるか、その点を伺いたい。
  68. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 川崎君は朝鮮側の発表だけを聞こうとしておられるようですが、その当時新聞に出たところでは、米国の方では、そういうことはないという発表をいたしております。多分同じころに出ております。そうして実際上は、これはいろいろの種類のものがあるようでありまして、そのある一部は韓国を通じて調達することもありましようけれども、全部がそうなるとは私は考えておりません。
  69. 川崎秀二

    川崎委員 これはいろいろのものがあることは事実です。従つてその総和で、日本側がもし従来のような米軍を置いて、あるいは米軍の代理調達機関を置いて参加すれば、今六百万ドルなどと言われておる数字ではないと私は思う。これはどうしたつて千万ドルあるいはそれ以上の数字であるということは間違いない。一説には四千万ドルないし五千万ドルということをいわれておる。大蔵省はどういうふうに見積つておるのか知らぬけれども、こういうことになつて来ると、米軍が今まで中に入つて日本にとつてはすこぶる好都合であつたが、これがなくなつた。外交関係の円滑でない今日、かりに国際入札でもあるということになると、これは日本経済にとつての非常に重大な一断面が現われたといわなければならぬのであります。それだけじやない。もしこれが三千万ドル、四千万ドルという数字ならば、日本経済に非常に大きな影響を与えるだけでなしに、今出て来ておる予算書に対して、われわれは予算面そのものに、直接ではないけれども、その裏にあるところの重大な関連を持つているものに対して、非常に違つた角度から審議をしなければならぬということになるのであります。これは非常に重大な問題である。あなたはただ情報があると言つたり、アメリカ側はまだそこまで言明しておらぬと言うけれども、実際には、外務省はあわてているのじやないでしようか。ちやんと質問書を出しておるのじやないですか。ちよつとそれを答弁してください。
  70. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外務省がいろいろ必要の措置を各種の場合にとりますことはありますが、この問題についてはお答えすることを差控えます。しかしこういうふうにお考えになつたらいいと思う。アメリカ側が各種の援助資金を韓国側に出しておる。その援助資金が有効に使われることは、アメリカ側で最も希望するところであつて、その同じ金で高いものを買うために、量が少なかつたり、悪かつたりするものを韓国側が手に入れることの好ましくないことは、これは当然であります。従いまして日本生産品が他国に比べて良質であり、廉価であるならば、その点は御心配に及ばぬと私は君えます。
  71. 川崎秀二

    川崎委員 今われわれが言つておるのは、何かの対策を講じて、これに対する問合せを発しておるのじやないか、そのことはどうなのですか。肯定しておるのですか。
  72. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外務省としては、今の問題についていろいろ必要の場合は措置をとつております。しかしこの問題についてどうしたかということはお答えすることを差控えたい。
  73. 川崎秀二

    川崎委員 それは驚くべき秘密外交じやないか。しかも予算関係のある問題であります。今大蔵省のいうような六百万ドルという小さな額であつて、二十数億でとまればいいが、そうじやない。もつと大きな額だと私は思う。そのことはことしの特需の見通しに影響して来る。予算と非常に重大な関連がある。あなたはなぜそういうものに対する交渉は発表することはできないと言うのか。国会軽視じやないか。
  74. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 予算と重要な関係がある場合もありましよう。そこでそういう問題がうまく行かなければ予算関係がある、この場合いろいろなことを申し上げ、かえつて結果が悪くなると予算関係あるから差控えたい。しかしながら、方針はわれわれとしてどういうことを、どういう国と、どういうふうに話をしたということを申し上げることは、国際的にさしつかえがあるであろうと思いますから、それでその点は差控える、こう申しました。
  75. 川崎秀二

    川崎委員 私はそのような趣旨の外務大臣の答弁に満足することはできない。ことし一番大きな問題になつているのは国際収支ですぞ。ほかの問題じやない、国際収支で、特需の問題も非常に大きな問題です。特需がなくなつたからわが国経済は方向転換をしなければならぬ。耐乏予算を組まなければならぬ、緊縮予算をしなければならぬといつておる。その特需がまだうんと減りそうだということになれば、われわれは予算の審議について重大な支障があるといわなければならぬ。しかもその情報はかなり的確であつて、すでに何らかの措置をしておる。それをなぜ国会で言うことができないのか、ぜひ答弁願いたい。
  76. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 各国との話合いがまだ進行中の場合もありまして、そういうことを一々発表することは国際的に支障がある場合もあると思います。
  77. 川崎秀二

    川崎委員 くどいようですけれども、これは予算と重大な関連のある問題であります。しこうして、今日の中心点の問題である。国際収支アンバランスがあるから、今日はこういう緊縮予算を組まなければならぬのだと吉田総理大臣は一時間前にわれわれに言明しておる。一番の重点はそに置いておる。しかもその特需が今日七億六千万ドルに下つて来ておる。さらに相当の額が減つて来るということになれば、われわれは予算を見直さなければならぬ。この予算書を、あるいは経済の諸指標というものをあてにして審議することはできないじやないか。その方がはるかに重大だ、国際間にいろいろな問題があるという。事は一億や二億の問題なら別だけれども、相当大きな額に響いて来る問題でありますから、われわれはもしあなたが許すならば、ここではつきり内容を明示してもらいたいと思うのであります。ぜひ明示してもらいたい、それでなければ予算の審議に非常な影響がある。
  78. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私がいろいろやつておるかもしれませんが、それは何も特需の額が幾ら日本に入るか入らぬかということを研究しておるのじやない、あなたの言われるようなそういう情報があるから、それを確かめたり、そういうことが一体どの程度に行われるかということを確かめつつあるのであつて、そういうことに対して韓国側のいろいろな反響もありましよう。従いまして今申し上げるような段階に来ておらないから、そこでただいまは申し上げることを差控える、こう言つておるのであります。
  79. 川崎秀二

    川崎委員 それはあなたは予算関係がないから、関係のないことだと言うのだ、ところが事実は予算関係があることなんです。今俎上に上つておるのは外交政策ではないのです。予算案なんです。予算案関連のあることであるから、われわれは予算を重点にして審議をしておる。そうするとこの復興特需というものに対して、もしこれが全部打切られたというようなことになれば、ここに出して来ておるところ予算書というものはうそだということになる、非常に重大な問題です。あなたは直接予算関係ないかもしれません。しかし内閣の一員として連帯の責任がやはりある、閣議でこのことを議しておるには相違ない、予算のことは大蔵大臣のことだ、われわれは外交政策、そんな言いのがれを聞いてわれわれは黙つておられますか。これは予算審議に非常に重大な影響があるから、その内容を発表しろということを言つておる。
  80. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は予算関係がないとはちつとも言つていない、しかしながらそういうことは韓国側にもいろいろ反響があることだし、今ただちに私が確かめたところを申し上げても、特需が幾ら入るのだという結論をここで申し上げるような段階にはなつていない、これは将来のことなのです。しかも私の見るところは、大蔵省の見積られるような特需というものは、おそらく当然あるであろう、それは小さく見積つておられるくらいじやないかと思うのでありまして、これは先のことであるからわかりませんが、その程度のことは、あなたの言われるように、何千万かあるかもしれないと言われておるくらいであつて、今大蔵省考えておられる程度は当然私はあると考えております。
  81. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎君。   〔中曽根委員「議事進行」と呼ぶ〕
  82. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎君に発言を許します。適当な時期に議事進行は許します。川崎君、御進行願います。
  83. 川崎秀二

    川崎委員 再来年のことではない。来年度予算なんだ。来年度予算のことは現実の課題じやないか。それをわれわれは審議しておるのに、それに重大な支障を来す問題が起つておれば、われわれはそのことを聞かなければ、予算の審議を促進することはできないじやないか。
  84. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の申し上げたことは今の通りで、特需というものは過去においても初めからこれだけあるという約束でもつてつておるときはないのであります。だんだん必要が起るに従つて、年度が進むに従つて特需の額はふえて来るのであつて、今ここで幾らあるということがきまるわけはない。これはやはり大蔵省の方でも来年度の見通しを言つておる。従つて私としてもその点について幾らだということを言えるわけがない。   〔中曽根委員「議事進行」と呼ぶ〕
  85. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際中曽根康弘君から議事進行について発言を求められております。これを許します。
  86. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいまの川崎委員質問と外務大臣の答弁を聞いておりますと、非常に重要な問題にぶつかつたように思います。政府国際収支の危機を訴えておるのであつて、しかも本年度においては、特需は昨年から比べれば減ると言つておる。約七億ドルにとれが減つて来ておる。その特需の中で一つの有力なものは、朝鮮事変に基因するいわゆる特需というものである。ところが現在大蔵大臣及び外務大臣の答弁を聞いてみると、今までは朝鮮政府の相当分は、アメリカの指導のもとに、日本に好意的に処罰せられて来た。従つて日本もある程度の期待を持つて特需生産を行うことができた。しかるに今日の日韓関係を見ると、韓国側は日本にきわめて冷淡であります。まだ国際関係が成立しない関係もあつてきわめて冷淡であります。そこで韓国側の言明を見ると、日本には発注しないというような言明をしばしばしておつた。もしアメリカの手を離れるということになつたならば、この事態はいかなることになるかわからない。これは日本の産業に量大な影響を持つ。それは単に符号の問題だけではなくて、日韓の外交関係にも影響を及ぼすであろうし、今後の一般国交回復の問題についても、相当深刻な問題を呼んで来るはずであります。現に李承晩ラインでもあれだけのことが騒がれておるのであつて、その特需関係日本に響いて来れば、さらに日韓関係は悪化せざるを符ない。こういう重大な問題であるから、外務大臣の一通り答弁ではこれは済まされる問題ではありません。現に外務大臣の御答弁によりますと、何らか交渉は准行しているやにも考えられる、ある措置を請うぜられておるやにも考えられる。これらの事態はこの予算委員会において明瞭にすべきであります。特需の内容や見通しというものは今年度の一番重要な問題であり、内閣総理大臣も、大蔵大臣も、経審長官もここでしばしば言明されたところであつて予算委員会の議題の焦点の一つであります。そういう意味からして外務大臣の答弁にわれわれは満足し得ない。われわれはただいま野党各派と協力いたしまして外務大臣の責任ある、われわれを納得させる答弁があるまでは、この問題を進めることはできない、もし答弁がこれ以上延びないというならば、暫時休憩でもして、外務大臣の答弁を整えてもらつて、そうして正式の答弁を求めるように、議事進行上以上のように要求いたします。
  87. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の申し上げることは、川崎君の言われたような韓国側の発表といいますか、発言承知しておるので、日本の特需が減少したいようにいろいろ善処をしておる、こういうことを申し上げたのであります。
  88. 川崎秀二

    川崎委員 あなたがきのう各省と連絡をして、そうして発した質問書というものがここにある。これはしかし発表してそんなに本日の政府を不利にならしめるというものではない。当然あなたは言つてしかるべきだ。疑点をただしておる。しかもこれは確かにアメリカと韓国との間に、ある協約というものが結ばれたことは事実である。李承晩大統領は昨年末からの捕虜交渉の経過にかんがみて、北鮮側との融和をはかるために、北鮮側との妥結をほかるために、李承晩大統領としてはたのむぺからざるものをたのんだ形跡がある。そのかわりには韓国の特需に関しては今後は支配権を持つということを要求した結果、これが成立したものだと推定せざるを得ない。これは世界政治につながる非常に重大問題であるわけです。そのことはわが国の今日の予算に重大な問題なのであるから、これはあなたは大蔵省の計算の、間違いだ、もつとあるだろうと言つたのはその通りである。いろいろなものを合せれば四十万ドルないし五千万ドルに上ると思います。そのことは今日の予算の部面に非常に大きな関係があるのである。これを納得行かないで質問を続けるわけには行かないじやないですか。どう見たつて国際収支の中心である。誠実に、あなたはこの文書通りでなくてよいから、それに近いことを発したと言いなさい。秘密外交だからいけない。いろいろ言いのがればかりするけれども、言いのがれがうまいことだけは認めてあげるけれども、それだけでは日本政治は成り立たない。しかも一昨日読売新聞に載つたのはうそだと言う。うそか何か知らぬけれども、火のたいところに煙は立たない。やはりこういう方向に動きつつあるということは事実であつて、日韓外交交渉というものか決裂の状態に立至る。この打電によれば、李承晩政権の変動か、あるいは日本が軍備を持つたときと書いてあるが、吉田内閣がやめるという場合もある。これを武内公使は、そういうことは言えなかつたから書かなかつたかもしれない。しかし今私が論じておるのはその問題ではない。今この予算と非常に重要な関係ある箇所であるから、あなたの今日までとつて来た措置並びに発した質問書の内容を国民の前に明らかにすることが民生的外交方針ではないか。それをやらなければ国会は納得して審議を進めることができないじやないかということを私は申し上げておるのであります。
  89. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は今までずつと間処して来たつもりでありますが、結論が出ましたときは申し上げます。
  90. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 委員長、今の質問関連して一問……。
  91. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎君が御進行中でありますから、ひとつ川崎君にお願いいたします。   〔川崎委員長「納得できない」と呼ぶ〕
  92. 倉石忠雄

    倉石委員長 では中曽根君、間単に願います。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 岡崎外務大臣は先ほど、日本物価が安く、生産費が安くて品物がよければ、日本に落ちるだろうと予測をお述べになつた。はたしてそういう保証があるかどうか。今までは米国が政治的に日本に対して特需を落すように工作して来てくれた。それが韓国の手に移つて、独立国としてかつてにやるということになつたら、はたして今まで米国が好意的にやつた保証を韓国から得られるかどうか、その得られるかどうかを御答弁願いたい。得られるならそれでよろしい。これで質問を打切つてよい。しかしあなたの言明が得られない以上は、私はあくまでこれを追求しなければならない。御答弁を願いたい。
  94. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一に中曽根君に申し上げますが、今まで米国は政治的に高いものでも日本のものを買うということはないのであります。これは注文してからでき上るまでの時期期の早さ、おそさによります。それからもちろん価格や品質にもよりますが、ことに早く手に入るかどうかという固定もありますから、場合によつては高いものを手に入れなければならぬ場合もありますが、政治的に悪いものを韓国に押しつけたような事例は今まで全然ないのであります。政治的に考慮したということはないのであります。今夜も同様であつて、私は今までと何らかわりがないと思います。
  95. 川崎秀二

    川崎委員 先ほどから論議しておることは、少しも進んでおらぬ、つまり予算関係のある朝鮮特需の関係というものを大蔵省がここに数字を明示することが一つ。それからこの特需は今や朝鮮側の態度によつて非常な座礁をしようとしておる。態度だけじやない、その裏には米韓秘密協定というものがある。そのことによつて、今年の特需というものは非常な大きさ影響を受けるのだから、岡崎外務大臣が発したる対策ならびに質問書というものの大要を、国民の前に明らかにすることが、今日予算審議を円滑にして行き、国民に財政と外交との関係を明瞭にするところのキー・。ポイントではないか。この二つが解決されない限り予算審議はできないという質問を続けておるのに、これをあいまいに過そうというのは、予算委員をばかにしたしうちではないか。そんなことではわれわれは承服することはできません。
  96. 倉石忠雄

    倉石委員長 それではこの際暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――    午後二時二分開議
  97. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑表紙続いたします。川崎秀二君。
  98. 川崎秀二

    川崎委員 そちらから先に話があるのじやないですか。
  99. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほどの川崎君の御質問に対して、あるいは十分言葉が足りなくて誤解を招いたかもしれませんが、問題はこういうことであります。あなたのおつしやつたような、つまりウソクラその他の方面の今後の買付が朝鮮の方に移されるのじやないか、こういう情報は新聞その他によつて私外務省の方でも聞いておりますので、これにつきましては、はたしてそれが真実であるかどうか、あるいは今後の日本の特需等が減らないような努力をいたして善処中であります。ただ先ほどおつしやつたような、何か書類のようなものをお見せになつてつたが、これは思い当りがないので、外務省をさつそく調べてみましたが、外務省にはそういう書類がないのでありますから、あるいはことによるとそれはごく最近に、通産省から外務省の方に、こういうことを聞いてくれということの要求のあつた書類ではないかと思うのであります。もしそうであるとしますれば、そういうことはもういろいろの方法で真偽等確かめつつありますので、その書類に基いての措置は今のところつておりません。真相はそれだけであります。
  100. 川崎秀二

    川崎委員 それでは一点伺いたいと思いますが、それらの問い合せばFOA、すなわちアメリカの対外活動本部に対して行われておるのですか。
  101. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろの意味から、そういう場合の方法やつおりますから、そういう場合ももちろんあり得ると思います。しかしこれは大使館は大使館でその裁量でもつて適当の方法をとつております。外務省としてはまた外務省で適当の方法をとつておるわけであります。まだしかしはつきりした結果までは出て来ておりませんが、大使館としてはどういうふうな方法でやつておりますか、確かめ中でありますが、あるいはそういうこともやつておるかもしれません。
  102. 川崎秀二

    川崎委員 まだそれでははなはだ不満足ではありますが、これらの問題は同僚諸君からまたさらにいろいろと論及のあることと思います。問題は日韓交渉と言うものが一つ政治的にも軌道に垂ることが一つ、それから韓国に関する特需ば、先ほど大蔵大臣が答えた数字は全然間違いで、われわれの調べたところによると少くとも五千万ドルを下らない、一けた間違えたということが休憩時間中にも飛んでおる。私の考え方もそうであります。七億六千万ドルの特需の基礎ということについて、適当な機会大蔵省は発表をしていただきたいと思う。これらはいずれも重要な外交問題でありまするから、ぜひ隣国との関係を打開するために御努力を願うことが一つと、アメリカ側に対してこのような決定をしたり秘密協定をしたりするというようなことをなるべくやめてもらつて日本に対するところ復興特需を続けて行かれるように、外務大臣並びに大蔵大臣、これを引締めて行く総理大臣は、十分に今後の対韓交渉というものをお考えを願いたいと思うのであります。  それでは時間が非常に制約されておりますので、少しく急いで質問を続けたいと思います。MSAに対する最後のとりきめは一体いつごろになるか、昨年以来非常にもうじきだ、もうじきだと、だんだん延ばされておる。どういう点に問題が残つておるのか、こういうことをこの際外務大臣の口から私は聞きたい。
  103. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 昨年から、いつごろできるかというお問合せに対しては、これは相手もあることだしするから、申し上げることは困難であるということを繰返し申したのでありますが、それでも、お前の責任は問わないから、大体の見こみを言え言えというから、それで一ぺんも言つたの、でありますが、今のところ目標ば二月の半ばごろと思つて、今いろいろやつておりますが、これとてもはたして二月半ばに行くか多少走れるか、これはまだわかりません。遅れておりまするいろいろの原因には、初めのうちはもちろん協定文の各条項、それからそれに付属する付属書に盛らるべき、いわゆるマーグといいますか、顧問団等の性格とか費用とか、いろいろなものがありますが、大体今は片づいておりますから、多分目標に近いところで話がつくのじやないか、こう考えております。
  104. 川崎秀二

    川崎委員 農林大臣はおりませんか。通産大臣もいない。これはもう通告してあるのですが……。このMSAの援助で入つて来る余剰農産物の小麦の値段について、これは外務大臣は知らぬだろうと思うのですが、一トンどのくらいで入つて来るか、御承知のある閣僚から御答弁願いたい。
  105. 倉石忠雄

    倉石委員長 通産、農林両大臣は委員会に出ておりますので、すぐこちらに出席するそうです。
  106. 川崎秀二

    川崎委員 それで遅れた分はどうなりますか。時間が非常に制約されておるのに、みんないないのでは困ります。
  107. 倉石忠雄

    倉石委員長 ほかの方をどうぞ…。
  108. 川崎秀二

    川崎委員 それではその問題はあとまわしにします。  それでは大蔵大臣質問いたします。国際収支の改善は今日の緊縮予算を招来した最大の問題であります。そこでお伺いしたい点は、政府の発表した数字によると昭和二十八年の国際収入は約一億九千万ドルの逆超となつております。この三月末です。この数字ははたして正しいものか、政府の発表している事項以外に三月の末までに国際通貨基金に対して払い込むべき五千万ドルというのがあるのじやないか。さらに綿花借款の残額約四千万ドルの支払いがあるように思うのであります。それが一億九千万ドルの逆超には入つておるかどうか明確にしてもらいたい点が第一点。  それからまた二十九年度の見通しであります。これは国際収支の受取り勘定において二十四億七千五百万ドル、こういうことになつておりますが、この計算は私は甘いのじやないかと思う。そのわけは、政府は先般成立した日英会談の結果、それを期待しておる。昨年度二十三億四千七百万ドルから一億二千八百万ドルも伸びた根拠、これは大体日英会談のわくが広がつたからだというふうに御説明になるかもしらぬけれども、それをぜひ伺いたいと思う。その根拠を数字で示してもらいたい。二十九年度におけるドル、ポンド、オープン・アカウント、これらを地域別に、輸出、輸入、国際収支支払い勘定を、項目をわけて出していただきたいと思います。
  109. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 一億九千万ドルと申しますのは、暦年の二十八年の見込みであります。二十八年度中つまり三月末におきましてですと、三億四千万ドルの見込みであります。暦年の二十八年が一億九千万ドルの赤字の見込みでありまして、二十八年度末、つまり三月末日ですと、大体一億四千万ドルの見込みであります。これは一切のものが織り込んでございます。  それから二十九年度の分につきましては、大体今お話になつたように、貿易が昨年よりも少し――十三億七千万ドルばかり実は輸出を見ておるのでありますが、この点おもなものは、何と申しましても今のポンド地域、スターリング・エリアに対する分でありまして、今度の協定に基いて今までよりも約一億数千万ドル与えます。今度はこの前と違いまして――この前のときは話はついておつたが、現実の問題の輸出ができなかつた。それには輸入制限その他の問題が先方にございましたが、今度は各域にわたつて相当詳しく相談をしたので、あるいは新聞で御承知かもしれませんが、最初二億一千百万ポンドと出たのがその後百五十万ポンドばかり減つておるのは、アフリカ地域の方でどうもこれだけのものは輸入が困難だというような実情等から、百五十万ポンド減つた数字が今度の協定になつたような次第であります。従いまして、もちろん価格その他の問題もありますし、あるいは支払い条件等の問題もありまするので、私どもが的確にこれを見通すことは困難ですけれども、大体この数字は本年は出るものと、こういうふうに私どもは予想いたしております。のみならず、大体の政策として、五分ないし一割の価格引下げを行いまするし、そたから今度は輸出その他に対して税制その他でもいろいろな措置をとりましたことは御承知通りであり、商社の強化等もやつておりまするので、まあこれくらいは見込み得ると、かように見ております。それで大体九千万ドルという二十九年度末の赤字を見越しておる、こういう次第でございますが、これもでき得ればなるべく赤字なくやつて参りたい、こういうふうに努力いたしておるような次第であります。
  110. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの見通しはいろいろな楽観材料ばかり並べられておつて、非常に私は甘いと思う。今度の日英会議でイギリスは交渉の当初、輸入制限によつて日本貿易が停頓しているのではない。日本の商品がコストが高くて品質が適正でないから入らない、こういうことを言つておる。かりに五億二千万ドル、二億一千万ポンド、そのわくが設けられたとしても、その限度までに実際拡張して品物が入つて行くかどうかということは非常に問題であります。本年度におけるポンド圏への輸出見込みは大体三億五千万ドル程度、それがいかに日英会談で伸びても、イギリスが言つているように自治領やインドに対して本国の押えがきくがどうか。アフリカは訂正したかもしらぬけれどもほかの地域ほどうだろう、そういう意味でこの五億一千五百万ドルというものは過大な見積りのように思えるのですが、もう一度お答え願いたい。
  111. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは私の方の大蔵省でも最近為替局長が参つて折衝に当つておりまして、これの見通しに基いて、それから過去の数字からそれらの見通しを立てる、さらにまた通商産業省におきましても、通商局長が向うに行つておりまして、これについて数を出す、それから経済審議庁の方で統括していろいろな面から出した数字、ですから、私どもはこれを一応信ずべきものとしてすべての施策を立てておる次第でございます。
  112. 川崎秀二

    川崎委員 二十八年度の国際収支における逆超のもう一つの原因は、おびただしい消費物資の輸入激増にあつたと私は思うのであります。昨年一月から九月までの輸入数量は、前年同期に比し棉花が三割、羊毛が五割、麻類が六割、砂糖が五割、これはいずれも増である。乗用車に至つては、実に七割の増加であります。これらの消費物資をおびただしく入れておいて、外貨を犠牲にして、これを放置して責任というものは、私は相当追求されなければならぬと思う。今日に至つて政府は、国産品を奨励することを通産大臣も言つておる。しかし国産品を奨励するなら、閣僚みずから率先してこういうものをやめなければならぬ。総理大臣の葉巻などはまず第一にやめてもらわなければならぬ。もとより洋服までやめろとは言わない。買い込んだものはしかたがない。ドイツではあのアメリカの大型自動車に乗つておる者は少い。ホルクスワーゲンというわずか三十九万円の自動車がベルリンやフランクフルトの道路を走つておる。目日本の東京の狭い道路をアメリカのぜいたくなカーを使つて、ガソリンを使つて、一体どうしておるのかとドイツ人がみな言つておる。こういうような政策が今とられるということについて私は非常に不審に思う。去年あれだけおびただしいぜいたく品を入れなかつたならば、こんな逆超というものはなかつたのではないかと私は思う。なぜ緊急措置をあの当時とらなかつたか、こういうことに対して、大蔵大臣はどう考えられますか。
  113. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちようど今綿花のお話が出ましたが、御承知のように昨年晩夏といいますか、初秋といいますか、そのころ綿糸の非常な思惑等がありまして暴騰しました。従つてこれを押えて行かなければ、この点からインフレに火がつきやすいと思つて綿花を相当多量に輸入することにして、同時に価格が暴落したことは御承知通りであります。そのほかのものについてこれは一般約に言うと、だんだん外貨がきゆうくつになるであろうというような思惑から、これは川崎委員もよく御承知ですが、自動承認制に基くものは一ぱい使つてしまうというような空気がだんだん出て来たので、その後若干の制限を必要とするというようなところまで参つたのであります。そういうことで、あるいは原料の輸入等も相当巨額に行われた。そこへ何と申しましても不作による米、麦等の輸入が増加した、これが大きな原因と思うのであります。それで私どもとしてもこのままにしがたいから、今度のようなことをやつておるのでありますが、同時に以前外貨の割当を四半期ごとにやつてつたことは御承知通りでありますが、それを大体毎月さらに入れるものについての審査を加えるというので相当厳選して、最近におきましていわゆる不要不急物資、あるいは奢侈品等が入らぬことは、これは川崎委員もよく御承知のことと思いまするそれでも相当おそくなつたのではないかと言われればしかたがございませんけれども、できるだけのことは実はいたしておつたのでございます。今後今の外貨事情にかんがみまして、一層この方法を徹底することにいたしております。従いまして大体今後はただいま申し上げた二十九年度に九千万ドルくらいの赤字であろうと思つております。  なお先ほどお尋ねになつた点で手元に数字がありませんでしたから御返事をいたしませんでしたが、二十八年度の実績と二十九年度の見通しというものをちよつと仰せになつたように、ドル、ポンド、オープン・アカウント地域にわけて申しあげますと、二十八年度の実績、ドルで四億八千百万ドルが二十九年度では四億四千五百万ドル、こういうふうに見ております。それから。ポンド地域が三億一千四百万ドルでありましたものを五億一千百万ドルと見ておる。オープン・アカウント地域で三億六千百万ドルであつたのを四億一千九百万ドル、従いまして二十八年度実績十一億五千六百万ドルであつたのを十三億七千五百万ドル、こう輸出を見ておる次第であります。このポンド地域につきましては、大体今のFOB価格で出しますと、その数年がちようど三億一千百万円になりますので、この程度は行けるだろう、こういうふうに見ておる。CIFですと、五億一千百万ドルになります。あとはさつきお話いたしましたが、これは日本の品物をよくして、できるだけ出せるように値段も下げて行くということが必要であろうと思います。なおオープン・アカウント地域がふえておりますが、これはあなたもお聞き及びになつておると思いますが、最近相当プラント輸出の話がととのつて来ております。従いましてオープン・アカウント地域の分は現在でもこれくらいは見通して少しも誤りがないと私ども考えておるのであります。一番努力を要する点はお話のポンド地域だろうと存じております。
  114. 川崎秀二

    川崎委員 ただいま数字が発表されまして、いよいよポンド地域の数字が飛躍的な数字になつておる。これはだれしも不審の点であります。しかし一応大蔵大臣の言うことでありますから、それはそれとして聞いておきます。  続いて国際収支の改善と相まつてここに問題になつて来るのは、国為替専門銀行の設置の問題であります。これはいろいろ質問しようと思いましたけれども、時間が制約されておりますので、整理をしまして申し上げてみたいと思うのであります。伝えられるごとく、政府は去る一月二十五日の臨時金融懇談会の答申で、いよいよ近く国会に提案をするというこの外国為替専門銀行の構想でありますが、私の意見を申すならば、これをつくらなければならぬ最大の根拠は、いわゆる為替の自主権回復というところになければならない。現在日本の銀行で海外に支店を出しておるものは六行、十二店でありますが、そのうちニューヨークとロンドンには三店ずつあつて、他はわずか六箇所であります。これでは世界各国にまたがる為替取引などできるはずはないのであつて、戦前、もとより満州、中国等と取引のあつた当時ではありますが、四十箇所も出しておつたときと異なり、このような状態では大部分の国との外国為替取引は外国の銀行に依頼しなければならない。さすればわが国貿易業者には外貨金融その他の面で永久に外国商社より不利な立場に置かれることになるのであります。そういう意味の外国為替専門銀行というものをつくるということについては、われわれはその趣旨には賛成でありますが、これをここに持つて来たところのいろいろな経緯を見てみると、市中銀行との間に大きな摩擦を起す、日本銀行政策委員会は一月二十六日緊急の総会を開いて、政府に対して反対の意見を陳情しておるというような状態である。一萬田総裁の態度がどつちについておるのかわけがわからぬということではありまするけれども、とにかくこういう市中銀行との摩擦、あるいはもとよりこれは財閥の大きな背景に立つての反対であるから、われわれは、これを意とするところではないけれども、しかし外国為替専門銀行をつくるのには、こういう趣旨でつくるのだという大蔵省側の中正なる態度というものが、今後この問題の解決のキー・ポイントになるのであつて、そういう意味であなたの構想と、今後これらの摩擦をいかにして解消して行くかについて、お伺いをいたしたいと思うのであります。
  115. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 外国為替銀行のことはちようど臨時金融懇談会に三回かけまして、いろいろ各方面の意見を聴取することにいたしました。多数は大体政府考え方に賛成でありましたが、今お話になつた一部の財閥銀行の中には相当反対もありました。従つてこの案を出すについては、反対の中に盛られた考え方についても相当しんしやくを加えたい、実はかように考えておるのであります。しからばどういうことを考えておるかと申しますと、御承知のように、今日の為替銀行というものは、もう片手間ではいけません。財閥銀行が別に片手間でやつているとあえて言うわけでもございませんけれども、さればといつて仕事が片手間になつていることは実情ごらんの通りであります。従いまして私どもは高度の、いわゆる為替に対する知識と経験とを有し、また世界的に支店網を持ち、情報綱を持つて為替を操縦し得るもの、こういうものがどうしても必要であり、それにはある程度の専門銀行でなければ――言いかえれば自分の運命をそこへかける。そうして国家のために尽すというのでなければ、十分な機能を発揮しにくいのではないか、かように考えておりますので、そういう点から一方為替専門銀行にそういう機能を果させ、国際的に見ても、よその国と太刀打ちのできるような為替銀行をつくりたい。そうして日本の現在置かれている金融為替等の不利を避けたい。川崎さんも御承知のように、普通銀行の預金コストは七分以上についてありますが、そういう金を持つて為替をやつているのでは、二分やそこらの資金を抱いてやつている外国人とは競争ができません。そういう点から為替専門銀行は必要である。しかし今ありますよその銀行に刺激を与えたり、あるいはそれに不利を与えたり、そういうことは一切したくないので、そういうふうにはたから言われた意見は十分盛り込んでつくりたい、かように考えておる次第でございます。
  116. 川崎秀二

    川崎委員 災害復旧費の削減の問題については、昨日森永主計局長から説明があつた通りであります。しかしながらこの災害復旧については実際被害を受けたるところの各県においては今日非常に困窮の状態にある。昨年災害が起つてかなりの便乗があることも事実であります。あるいは二重申請というものがあつて、厳重な監査を要しなければならぬということも、行政上当然の処置だと思う。従つてこれはかなりきびしく監査をして行く必要があるとは思いますけれども、実際被害を受けた県では昨年三党協定によつて成立した、つまり災害総額を昭和二十八年度三、二十九年度五、三十年度二というあの比率は厳格に守つてもらわなければならぬ。この点については櫻内委員が党を代表して質問をしたのに対し、昭和二十八年度予算では補助費は二であるけれども、しかし融資の百六十九億をもつてまかなうのだということは言明をされている。利子補給もやるのだということを言つております。そういう最も災害を受けた、たとえば福岡県であるとか、三重県であるとか、あるいは熊本県であるとかいうような、災害地に対するところの利子補給並びに融資というものに対しては、これは万全を期してもらいたいと思うのでありますが、その通りやられるのであるかどうか、この際御言明を願いたいと思います。
  117. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 災害復旧の急がなければならぬことは私もしごく同感であります。但し現在のところ、今お話のありましたように、私どもの方でも約数千箇所について厳密な調べをいたしましたが、その結果は大体まず国の出す予算としては、千百億か二百億に圧縮し得るのではないかという見通しであります。従いましてすでに二十八年度災害についてはもう御協賛になつた補正予算でも出しておりますし、また新しく計上いたしておりますから、これで大体六割のものをやり得るだろう、そうして重点的にこれを施行すれば、再災害防止等には役立つ、こういうふうに私ども考えておるのであります。なおひとり災害に限らず、治山治水、あるいは食糧増産、公共事業等々一体として、やはり関係しておる部分が相当多いので、そういつた考え方も一つ考慮に入れまして、今度の予算の御審議をお願い申しておる次第であります。何も災害地を軽んずるとかいう意思は毛頭持つておりません。十分なことをいたしておりますが、しかしあのときに計上された千五百六十五億の五割というものは、これは今日私ども考えておりません。大体千二百億以内、千百億ぐらいのところに現実査定をすればなつて来るのではないかと見ておりますので、これに基いて今の予算を計上したような次第でございます。
  118. 川崎秀二

    川崎委員 全体の数字は減つても、災害のひどかつたところには、その既定方針に沿つてやるということを聞いておるのです。
  119. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 特に災害のひどい愛知、三重、あるいは福岡、こういつた地方につきましては、これはもちろん再災害防止の見地に立ちまして、十分これを措置する考えでおります。
  120. 川崎秀二

    川崎委員 MSAの問題並びにさつきの小麦の問題については、重大な問題がひそんでおるのですが、これは時間の制約もありますから、一般質問の際に譲ります。保安庁の経費の内容についても次回に譲りたいと思うのであります。  私は次に憲法尾改正についての総理大臣の率直なる御意見を承りたい。もとより憲法は国の不磨の大典といわずとも、一たび制定された後は、軽々にこれを改正することは避けるべきものでありまして、改正を要することがあつても、その方法と手段はきわめて慎重にこれを行わねばならぬことはもとよりであります。総理大臣責任において、吉田首相が遵法の精神を説かれる気持は当然だと私は思います。しかしながらこの憲法は、御承知通り占領間の連合国の強大なる圧力によつてその原案ができたことに間違いがない。マッカーサー麾下のハッシーという大佐がニューギニアの戦線でその原案の草稿を起したことが始まりであつて、当時の日本国民は自由なる意見発言というものを失つてつた。もとよりあらゆる経緯を経て一応日本国民の意思としてまとまつたものではありますけれども、最後には極東委員会十一筒国の承認を受けてつくられたものであることもまた明らかであります。現に自衛権の一つの問題をとつてみても、憲法解釈について世上幾多の疑惑があることは御承知通りであります。かりに新たに生れる防衛隊が合憲的であるにしても、自衛力の漸増が高まれば高まるほど、国民のこの問題に対する疑惑は一層深まるのであつて、私はこの際もし自衛力を漸増し、再軍備の方向に行くとすれば、正直にすなおに憲法を改正することが、政治の大道ではないかと思うのでございます。もとよりこれはマッカーサー元帥の占領基本法ともいうべきものでありまして、民主正義といえ、当時の連合国の圧力によつてできておる。中には平和主義、進歩主義の精神が脈々として打つておるものがあるが、日本を無力化そうという考え方がその中にひそんでおらないわけではない。この憲法を制定するときに、もしわれわれにもつと勇気があつたならば、アデナウアー首相のごとく占領基本はつくれ、憲法はドイツ国民の子孫にまで影響をもたらすものであるから、断じてこれをつくらないという勇気ある態度に出るべきであつたのである。しかし今日、自由意思を取返した現在は、なおこの憲法をもつて私は永久不磨の大典と考えることはないのでありまして、われわれは正直に国民の意思を受取り、また国民を導いて、この憲法改正に進むのが吉田首相のほんとうの腹でなければならぬと思うのであります。自衛軍の問題以外でも、参議院の制度、あるいは最高裁判所の国民審査の問題、地方自治の問題、あるいは衆議院の官制問題などで現実に問題を惹起しておる。最高裁判所の国民審査問題など、一体国民が投票によつて最高裁判所の判事を、だれがよいなどということを投票する知識を持つておるかどうかということについて私は非常な疑いをはさむものであります。現に首相自身この憲法を蹂躙するがごとき官選知事論などというものを吐いておる。私は総理大臣伺いたいのは、憲法はこれらの点よりして当然改正をされてしかるべきであると思うし、首相が自由党の総裁として党内に憲法調査会を設けたのも、改正の方向を包蔵しつつ調査会を設けたものと思うのでありますが、これらの問題に対して総理大臣の明確なる答弁伺いたいのであります。
  121. 吉田茂

    吉田国務大臣 憲法改正の問題については、しばしば私は所見を述べておりますが、大体御了解の通りであります。私はその憲法がいかなる渕源に基き、いかなる原因から、あるいはいかなる国の指示を受けたかともかくとして、とにかく日本基本法として憲法が成立いたした以上は、これを軽々に改正する考えをいたすべきではない、軽々に改正の処置をいたすべきでないと私は確信するのであります。ゆえに現在の憲法がいかなる欠点があるか、また将来、議会においてどう改正するかということは慎重に考慮するとともに、また輿諭の趨向がどこにあるか、輿諭の傾向はどこにあるかということを十分察してするのでなければ、国民としてからに憲法の改正の意味合いがわからなくなるでありましよう。また憲法が改正せられる場合、つまり新憲法等が真に国の基本法になるためには、国民が十分の理解とまた知識とを持たねばなりませんから、ゆえに軽々に改正する考えはありません。  また自由党に憲法調査会を設けたゆえんは、憲法なるものは国の基本法としてこれをいかに運用するか、これを将来どう改正するとしても、現在の憲法のあり方はどこにあるか、あるいは国の現在の内外の事情からして、憲法の運用あるいはその将来等についてはどういうふうにあるべきかということは、政党として絶えず研究すべきものであるという考えから、憲法調査会を設けたわけであります。
  122. 川崎秀二

    川崎委員 吉田総理大臣のこの答弁を聞いてみますと、多少含みのある答弁のようではあります。しかしどうも今までのやり方は、既成事実をつくり上げておいて、事実はない、事実はない、いよいよ完全になるとようやく本音を吐く、そうしてこれを真の事実にしてしまうというのが、これが吉田首相の今までのやり方である。ちようど満州事変を起して既成事実をつくり上げて行つた関東軍と同じであります。現にそうではないか、保安隊が軍隊ではない、警察の強化にすぎない、直接侵略に対抗するものではないことは国会で数十回あるいは数百回言つたかもしれないが、昨年の吉田・重光会談で直接侵略にも対抗することになつた。元来直接侵略に対抗する任務はあつたのだ。保安隊は逃げられるものではないなどという答弁にかわつて来ておるのであつて、私は吉田総理大臣が憲法改正をしないということをほんとうに信用するわけには行かない。しかし私はここにあらためて申すならば、あなたはその憲法をつくつた人、その同じ人が、憲法をつくつた責任者が憲法を改正するということは、政治責任としても私は言えないものだと思うのだ。あなたの在任中にこの憲法の改正ということがありますかどうですか。私は当然憲法改正が輿論になつて来るときは、吉田総理大臣は引責辞職をするということの段階に立ち至るであろうと思う。吉田総理大臣の明快なる答弁伺いたいのであります。
  123. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の所見はただいま申した通りであります。この所見を信用するかしないかはあなたの御自由であります。(笑声)
  124. 川崎秀二

    川崎委員 最後に私は議会政治に対する首相の信念を一言聞いて私の質問を終りたいと思います。  総理大臣は国を思い国家の前途を憂うることは人後に落ちない。私らも当代における国士的存在であると尊敬をしておる。しかしそのことはりつぱな議会政治家ということと違うのであります。首相の国会軽視は、議員に対する侮辱は今に始まつたことではない。今の答弁でもまつすぐに議員の顔を見て、正しくそうして真に民主政治家としてやつたことでないと私は思う。天下のよく知るところであります。  そこで議会政治に対するあなたの信念を聞きたいのは、今日の議会政治には多くの欠陥がある。従つて国会自身反省すべき多くのものを持つておるのでありまするが、それがために、今各党の幹事長あるいは国会対策委員長などは、率先して自粛の実をあげようと努力中であります。しかし今日世界の民主制度の柱である議会政治そのものを否定するような動きに日本情勢を持つてつたらば、これはたいへんであります。戦前、既成政党の腐敗に応じて軍部の抬頭となり、政党解消、議会政治否認の恐るべき風潮が生れ、遂にわが国世界の大勢をわきまえず、米英を相手に戦争した結果、今日のさんたんたる境涯に立ち至つたことは、あえて説くまでもないのであります。これがためには、国会の自粛とともに、国を率いて立つ総理大臣が、心から議会を愛さなければいかぬ。これが粛正、是正を、みずからそのうちに飛び込んで議員とともに育成するの熱情がなくして、何で終戦後の複雑なる議会政治というものがよくなるであろうかと私は思いたい。しかるに吉田首相態度はどうか。この議会よりはあたも一段高いところにいつもいて、そうして議会政治をひやかしたり、愚弄したり、国会を傷つけているのは、赤いじゆうたんだけじやない。吉田首相が赤いじゆうたんやあるいは日曜娯楽版のユーモアを裏から裏づけておるから、国民国会の存在そのものに対する非難や疑惑を抱くのである。端的に問題を言いましよう。議員立法の問題に対する首相の態度――議員立法には多くの問題がある。利権法案が出たり、あるいは好ましくない問題が起つたり、予算のわくを越えて立案されたりするようなこともある。そこで警告を発せられるならいいけれども、しかしよく振り返つてごらんなさい。これは絶対多数に近い与党さえ完全に統制することができたなら、このような矛盾した議員立法が何十種類も生れて来るわけはない。昭和二十六年以来いかなる種類の議員立法ができたか。それはたとい野党が反対しても、自由党が入つておらない、自由党を除外してつくられた法律というものは一件もないのです。政策の問題だから、自由党政調会長と言いたいところだが、自由党総裁が真に健在であるなら、弊害のあるような議員立法が生れて来ることはないのであつて、みずからを省みずして、あたかも天から俗界を批判するがごとき一言辞をもつて国会の存在そのものさえ漸次否定されるがごとき風雲をかもしつつあるのは、吉田茂その人だと私はあえて言いたいのであります。このことにおいて吉田総理大臣は、議会多数党の総裁である見地から、まじめな立場で国会の再建、議会政治の発展に努めなければならぬと思うが、あなたの議会政治に対する真骨頂をこの際明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  125. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本の議員政治の円満なる、理想的な発達については、私は心から念願いたしております。しかし私自身態度については弁明はいたしません。
  126. 倉石忠雄

  127. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は日本社会党を代表いたしまして、これから吉田首相並びに関係大臣に対して質問をいたします。なお労働問題、農業問題、財政問題などにつきましては、後刻わが党の山花、足鹿佐藤その他の諸君が質問をいたしますので、私は主として綱紀粛正の問題、MSAの問題、防衛計画の問題、教員の政治活動禁止に関する問題、警察法改正の問題、社会保障に関する問題、国鉄首切り、公労法改正の問題というような、主要な問題について順次質問をいたしたいと思います。  先ほど綱紀粛正の問題につきまして各党代表から質問がありました。これに対する吉田首相答弁は、断固として綱紀を粛正するという決意に欠けておるようであります。われわれは吉田首相が綱紀を粛正する決意があるかどうかということを疑わざるを得ない。そこでもう一度私は念を押しまして、吉田首相の綱紀問題に対する決意を伺いたいと思うのであります。  先ほど来問題になりましたように、造船融資の問題、あるいは保全経済会の問題、さきには保安庁の疑獄がございます。このようにしていろいろな疑獄が起つている。しかもこれらはおそらく氷山の一角ではないかというふうに言われておるのでありまして、その裏面における腐敗というものは、相当はなはだしいものであるとわれわれは想像せざるを得ない。そこで私は吉田首相伺いたいのでありますけれども、先ほど吉田首相お答えになつたのは、今まで綱紀粛正ということを施政方針演説の中に入れておいたが、今度それを除いたのは、重要な問題が多いからこれは除いたのだというようなお答えであつたように思います。そこで伺いますが、それならば吉田首相は、このいろいろな疑獄が表に出ようとしている段階におきまして、なおこれは重大な問題ではないというふうにお考えになつているのかどうか、この点を伺いたいと思うのであります。   〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  128. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、重要な問題をことごとく施政方針の中に入れることはできないので、それで政府としては、さしあたり処置すべき問題について施政方針の中に織り込んだのであります。その以外に重大な問題なしというわけではないのであります。
  129. 武藤運十郎

    ○武藤委員 重ねて伺いますが、それならば吉田総理は、現在綱紀はそれほど粛正しなくてもよいというふうにお考えになつているのか、それとも綱紀はすでに粛正されて、必要がないといわれるのか、一体どの程度にお考えなのか、あらためて伺いたいと思います。
  130. 吉田茂

    吉田国務大臣 綱紀は常に粛正せなければならぬのであります。油断をしてはならないのであります。ゆえ政府としては、今日において綱紀粛正の要ありと考えたことは一度もありません。
  131. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私ども考えところによりますと、一つ政党が相当長期間にわたつて政権を持ちますと、必ず腐敗が起る。おそらく吉田政府というものは五年以上続いております。こういうことが腐敗の起る最も大きな原因だと思うのです。そこで綱紀を粛正し、政界を明朗にしなければならぬということは、これは至上命令である、民主主義政治としてあたりまえである、そういう意味においてこの際吉田政府はこのようないろいろな疑獄について責任を負い、そうして退陣する意思がないかどうかということを伺いたい。
  132. 吉田茂

    吉田国務大臣 腐敗は政権担当の期間によつて生ずるものではありません。わが党内閣はなお政局を担当する決心であります。
  133. 武藤運十郎

    ○武藤委員 その次に私は予算編成基本方針について、吉田首相並びに大蔵大臣の御意見伺いたいと思います。大蔵大臣の説明によりますと、今度の予算は緊縮予算である、こういうことを一番初めに言われておる。なるほど一兆に押えたという点は緊縮予算かもしれません。しかし私どもの見るところでは、今度の予算はまつたく軍事費に重点を置いた、自主性のない予算であると考える。また言いかえますならば、軍事費のために国民生活を犠牲にする予算であると考える。たとえば先ほど来言われておるように、軍事費というものが、一兆億の中におきまして、むしろ昨年よりもふえております。たとえば軍事費と考えられるものの一番大きな保安庁費を見ましても、百七十五億円も増額されておる。しかも公共事業費、食糧増産費、文教施設費、住宅対策費、出資、投資、こういうような国民生活に最も重要な関係のあるものは、軒並減額をされておるのであります。社会保障諸費につきましては、大蔵省原案は減額をしておりましたが、非常な反対にあいまして、かろうじて今年度並に持つて来たというような実情でありまして、その数字を見まするならば、軍事予算というものが大きくあぐらをかいて、そのほかの国民生活を安定させなければならぬ予算というものは、小さくなつておるという実情であります。とういう点から考えまするたらば、むしろ今度の予算というものは、財政規模の圧縮予算というよりも、国民生活を圧縮する予算であると申しても、決して過言ではあるまいと思うのであります。そういう意味において、ただ単に緊縮予算というような美名によつて、この予算を通過させようとしておりますけれども、私どもは、先ほど申しましたように、軍事費に重点を置いた自主性のない予算である、軍事費のために国民生活を犠牲にする予算であるというふうに考えざるを得ないのでありますけれども、この点に関する吉田首相並びに大蔵大臣のお考え伺いたいと思うのであります。
  134. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今度の予算につきまして、なぜこの予算を組まなければならなかつたかということで詳しく申し上げました通り、私どもはこの予算によつて日本経済自立に早く持つて行こうということを念願しておるのであつて従つてねらつておるところはどこにあるかと言えば、国際的の日本商品の競争力を持たせるために、五分ないし一割程度の物価引下げが主眼になつておるのであります。しからばそれをやるときに、なぜ保安庁費のみをふやしたか、いわゆる防衛予算をふやしたかという問題でありますが、これは防衛予算は合計しまして千三百七十三億でありますから、いかにも百四十億円の増加に相なつております。しかしこの百四十億の増加は、日本経済的にも自立して行かなければならぬが、やはり自分の国は自分の力で守つて行くという、この国防態勢に一歩を進めるためには、私どもはこれは必要な予算であると考えておるのであります。しかもその数字から申しましてもおわかりになりますように、予算の一分三厘七毛にしかすぎません。そうしてまた国民所得を政府の発表のごとくに、五兆九千八百億と見まするならば、わずかに二分四厘ほどでございまして、これはどこの国に比べても最も少いことは、武藤議員がよく御承知通りであります、それじや何を減しておるじやないかと言われますが、一兆円で日本物価をそういうふうに持つて行くということは、これはあなたも同様にお考えになつておる、どうしてもこれは日本が正常なる経済に持つて行かなければならぬ、正常なる貿易によつて、やはり国際収支はとるように持つて行かなければならぬ、そういうことのためにどうしても予算を緊縮するので、その緊縮する中で、配分方についての問題が残されておるのでありますが、私どもはそのうちからでも、この予算が及ぼす影響等を考えて、今の社会保障費等には若干ながらも増額をしておる。あるいは治山治水であるとか、道路であるとか、特殊のものにも増額をしておる。食糧増産対策にもわずかな増額をしておるというような状態でありまして、私どもはこの配分方についての御批判は受けますが、しかし私どもとしては最善を尽したものである。但し乏しいものであるから、なぜこれにもつとよけい出さぬかと仰せになりましても、これは出し得ないことは、結局その配分に対するお考え方の相違というところから来るものではないかと考えております。
  135. 武藤運十郎

    ○武藤委員 今大蔵大臣からるる伺いましたが、防衛費をふやしたのは、これはみずから自分の国を守るためである、これはやむを得ないんだということを言われております。それならば、なぜ大蔵省原案が閣議にかかる前に、あんなに難航して長い間かかつたか。MSAというような、アメリカの援助ということ、アメリカの意見というものがはつきりしなかつたために、だんだん延びたことは、私は争うべからざる事実だと思う。何もアメリカの考え方、アメリカの援助、そういうものに影響をされて、自分の国を自分で守らなければならぬという予算が、なかなかでき上らないということはないはずだと私は思う。なぜそれならばもつと早くできなかつたか。これはやはりMSAというようなアメリカの影響、アメリカの圧力、それに押されてこういうような予算を組まざるを得なかつたのじやないかということを、私は聞きたいと思うのであります。
  136. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 MSAの問題は、交渉されまして、ほぼもう妥結の点に行つておることは、御承知通りであります。しかしながら、この予算編成にあたつて、その問題のために、あるいはアメリカのために左右されたとか、遅れたという事実は全然ございません。この点につきましては、まつたく私どもは自主的に日本予算編成したものでありまして、その点は私は詳しくこの間どうした予算編成したかというところで申し上げておいたので、おわかり願つておることと思うのでありますが、全然よその国の事情にいたされて、こういう緊縮予算を組んだものでない、このことだけは私は確言申し上げておきます。なお若干遅れました千三百七十三億のうち、たとえば五十二億八十万円でしたか、二十四億八千万円というようなものについての問題がありましたが、これは向うの分担金の関係ですからこれは向うとも打合せを要することは当然であります。そういうことはありましたけれども、全体の予算のわくで、何らそれがために少しも遅れたものでないということは、よく御承知通りだと思います。私どもはむしろ各省の要求のために、いろいろ十分に話合わぬといかないので、省内内輪の話合いのために、若干遅れておつたというのが事実だということを申し上げておきます。
  137. 武藤運十郎

    ○武藤委員 いやしくも日本大蔵大臣ですから、アメリカのために遅れたということを言うわけには行かないでしよう。苦衷をお察ししまして、その程度でこのことは打切ります。  その次に私はMSAの問題についてお伺いをしたい。先ほど川崎委員質問に対しまして岡崎外務大臣は、大体MSAの交渉は、二月半ばころには何とかきまりがつくのじやないかというようなお説でありましたが、それは二月半ばごろには調印を終るというような御趣旨でしようか。
  138. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 通例話合いが終りましてから、条文の整理その他がありますから、普通は三、四日それからかかるのが通例であります。
  139. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで私は伺いたいのでありますが、申すまでもなくMSAの援助を受ける――政府方針でありますが、受けるということは、これは日本における再軍備がまつたく本格化するということであろうと思います。非常に日本の運命に対して、民族千年の運命に対して大きな影響を及ぼすと思う。そこで私はMSAの話合いがかりに、われわれ賛成ではありませんけれども、妥結をいたしました場合には、その調印をする前に国会に提出をして、国会る承認を得るべきものではないか。これが憲法の原則でもあり、今まで秘密外交というようなそしりを受けておつた、この点をそそぐゆえんではないかと思います。ことにこのMSAの問題について官僚が交渉をし、大体話ができたから調印をする。そうしてでき上つたものについて国会に出すというようなことは、国会の論議に合せるというようなこととは、およそ違うと思う。そういう意味で、私は国会の権威のためにも、自由党議員を含めて、調印前に国会に出して十分な論議を尽さすべきではないか、承認を求めるならば求めるべきではないかというふうに考えますが、この点についてはどういう方針をとつておられますか。岡崎さんに伺いたい。
  140. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は憲法学者じやありませんが、従来の政府見解は、批准条項をつけ得る条約等につきましては、調印してから国会に提出して承認を得る。批准条項がついていなくて、調印と同時に効力を発生すべきものは、調印前に国会に提出してその承認を求める、その方法で従来も来ておりますし、また日本の憲法の解釈はそういう趣旨になるべきものだと了解しております。今回のMSAの協定は、批准条項を日本については付すことになると考えておりますから、調印したら国会に提出して承認を求める、そのつもりでおります。
  141. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 武藤君、ちよつと。法務委員会から法務大臣を数分借りたいというのですが、よろしいですか。
  142. 武藤運十郎

    ○武藤委員 よろしゆうございます。  今の岡崎外務大臣のお答えは、批准条項がおそらくMSA協定にはつくであろうから、批准が条約の最終的な効力を発生する。批准前には効力がない。従つて憲法におきましての事前に提出をするということに合致をするのだということではないかと考えます。しかし調印をしてしまつてから国会に出したのでは、国会ではイエスかノーしかない。それを認めるか否認をするかしないのだ。国会がその内容を検討いたしまして、国民の代表として国民の意思をそこに盛り込む機会というものは全然与えられない。それでは国会がこれを審議するという意味は大半失なわれるだろうと私は思う。ことに一般の解釈から申しますると、条約というものは憲法に優先をするのだという解釈が多いようであります。そうなりますると、このMSAの条約というものは、実質的には日本に再軍備をするという内容を持つものであろうと思います。ところ日本に再軍備をするのには憲法を改正しなければならない。これはもう政府もそう言つている。憲法を改正するには国会の三分の二の議決を必要としますし、また国民投票というようないろいろな手数を必要といたします。これはなかなか困難である。ところ日本に再軍備をするような内容を打つところのMSA条約というものが、調印がされており、ほとんどでき上つたものが国会に出される。国会の過半数だけでこれが通過をするということになりますと、条約によつて憲法を改正してしまう。実質的には条約によつて憲法の改正がなされてしまうというようなことにならざるを得ないと私は考える。そういうふうに見て参りまするならば、これはどうしても調印前に国会に出しまして、十分国会の審議を経なければならぬものと私は考えます。この点についてもう一度、ただ単に憲法論ではありません。憲法論からいいまするならば、三百的解釈をして、それはもう調印後であつても、批准前ならば事前ではないか、憲法の条項に合致するということを言うかもしれませんけれども政治的に、またこの憲法のできた趣旨から考えまするならば、どうしてもこれは調印前に内容を示して、国会の論議を経なければなるまいと思いますが、この点についてもう一度御意見伺いたい。
  143. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府は、憲法は最も重大なる法典と考えておりまして、これに対して三百的な解釈などはしようはずがありません。憲法の規定するところが、ただいま政府の申したような解釈と私は信じております。なお政府としては、条約をつくつて憲法を改正するなどということは、全然考えておりません。あくまでも憲法の趣旨に従つて条約をつくるものであるということは再々申しておりまして、裏道を通つて条約で憲法を改正するがごときことは、毛頭考えておりません。
  144. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私の言うことは、口の上で条約で憲法を改正するつもりはないということを伺うのではありません。あるいは仄聞するところによりますと、MSAの協定の中には、両方の憲法に抵触しないとか、これを尊重するとかいうような趣旨の文句が入るということでございます。しかしそういうことを言つているのではない。人権の蹂躙はしないという規定をしても、人権の蹂躙というものが現実に行われる実情がある。私は憲法を改正しないとか、憲法に抵触しないとか、憲法に反する条約を結ばないと言つても、実質的にMSAの条約によつて日本の再軍備というものが行われるならば、それは憲法の改正になるではないかということを伺つているのであります。ことに今は国会開会中であります。あらためて臨時国会を召集して、その内容を審議してもらうというような必要はない。現に国会は開会中であり、そうしてMSAの交渉が進行しているとするならば、もうどうしても国会に出してその承認を求めなければならないと思う。しかしながら、これは法律論というふうなことで、水かけ論のようなことになつてしまいますが、そういう国会の承認をあらかじめ求めるか求めないかということは第二の問題としましても、MSAの話合いという重要な問題、これは自由党といえども反対をしない重要な問題であると私は思う。この重要な問題について、すでに二月半ばには成案を得られるであろうというようなところまで来ておる。もう残つている問題は非常に少いと言われている。そういうことが言われておるならば、この際事前に承認を求める求めないということは第二の問題として、政府はすべからく国会にこれを報告して――中間報告でもよい、中間報告で、こういう問題についてこの程度まで来ておりますということを言わなければならぬと私は思う。これこそはこの予算審議にも重要な影響を持つものであると考えますが、政府は、岡崎さんはそれをここで報告する考えはありませんかどうか、伺いたいと思うのであります。
  145. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は、中間報告はこの前の国会でもいたしておりますから、中間報告をすることについて別に依存はありません。しかしながら、ただいまおつしやつたような議論は、私は全然反対に考えておりまして、現在の憲法の規定を正しく解釈するならば、調印と同時に効力を発生するものでなくして、批准条項を付してあるものは、調印を待つて国会に提出して承認を求める、それが批准になる、こう考えております。
  146. 武藤運十郎

    ○武藤委員 たいへんわかる話を伺つたのですが、法律論は別として、中間報告をこの前もしたからすることにやぶさかでないというお言葉は、たいへん見上げたものだと思う。そこでこの前報告をされてから大分期間がたつております。数箇月たつております。その後非常に進捗を示しておるようでありまして、先ほど申しましたように、もう今月の半ばには成案を得るというところまで来ておると言われたのだからして、この際ひとつ中間報告といいますか何といいますか知りませんが、今までの経過を御報告していただきたいと思います。
  147. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今ここで材料なしに報告すると、いろいろこまかい点で十分でない点があるかもしれませんから、これは材料を整えてから、もし国会に御意思がありますならば報告いたします。
  148. 武藤運十郎

    ○武藤委員 いやしくも外務大臣が、現に進行しておるMSAの問題について、今材料を持つていないから、これから整えて適当の時間に報告をするなんということは、この予算委員会を侮辱するものであると私は思います。大体予算というものは一番重要なものだ。この予算を定めるところ予算委員会に臨むにあたつて、現に進行しておるところのMSAの内容について資料の持合せがないというようなことは、まことにもつて奇怪しごくな話だ。われわれはこういうような外務大臣の意見におきましては、予箕の審議というものは、しばらくこれを中止せざるを得ないというふうに考えます。委員長、この点について、ひとつ外務大臣に注意を与えてもらいたい。
  149. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 外務大臣、お聞き及びの通りであります。
  150. 横路節雄

    ○横路委員 私はこの際動議を提出いたしたいと思います。ただいま外務大臣の答弁にありましたように、今度の二十九年度の予算に関しましては、防衛支出金並びに保安庁経費等との関連におきまして、いわゆるMSA援助によるところの、その交渉の成果というものは、本予算の審議上非常に重大な点があるわけであります。外務大臣は、今、さきに六月二十六日に中間報告をやつたのだから、報告することは何らさしつかえがない、ただ具体的な資料がないからできないというのですから、従つて、私どもは、防衛支出金並びに保安庁経費等との関連において、ぜひひとつ外務大臣から詳細にMSA援助に関する中間報告を、この際本委員会にすみやかにされたい。なおそれがされた後において、武藤委員質問は継続されるように、この際ぜひひとつこの動議について、とりはからつていただきたいと思います。
  151. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ただいまの横路君からの動議につきましては、御趣旨に沿うように、理事会を開いて相談いたしたいと思います。武藤君、どうぞそれを除いて質問を続けていただきたいと思います。   〔「動議が出ているのだから今理事会をやれ」と呼ぶ者あり〕
  152. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ちよつとこのままで御相談申し上げます。理事の方、お集まりください。  外務大臣に申し上げますが、ただいま理事会の申合わせで、資料をととのえて、明朝でも経過の御報告を願いたいと思います。  それでは武藤君、どうぞ質問を継続願います。
  153. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、明朝必らず外務大臣から経過の報告がありまして、そのあと私がMSAに関する限りにおいての質問を継続するということで、確認をしてよろしゆうございますか。
  154. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 さようにはからいたいと思います。
  155. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで私は第二には、先ほど来の日本の国は日本で守るというお話についての防衛計画、これについてその内容を伺いたいと思います。  まず、一体防衛計画をする以上は、これはことしだけということはないと思うのです。日本がこれから防衛力を漸増するといわれるその漸増ということは、おそらく一年限りということじやないと思う。相当長期間にわたつて計画をするということに解釈すべきものだと思います。また、日本経済の実情からいつても、一ぺんにはできないということを言つておられるのでありますから、やはり政府には防衛計画というものがあるはずである。二十九年度における防衛計画と同時に、三年なり五年なりにわたるところの防衛計画というものが必ずあるべきであるし、なければならぬと思う。あるのはあたりまえだと思います。そういう点から申しまして、一体どういう防衛計画を政府は持つておるのか。またアメリカにどういうふうな防衛計画というものを、MSAに関係して提示しておるのか。この点について伺いたいと思います。
  156. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。われわれの考えておるのは、要するに自衛力の漸増計画であります。申すまでもなく、日本の防衛ということになりますと、ただいまの段階においては、独自でとうていやり得ないところであります。従いまして、アメリカ駐留軍と日本の保安隊と相まつて日本の防衛の任に当つておる。日本の独自の防衛計画を立てるということは、これはただいまのところではできかねるのであります。ことに、武藤君も御承知通り、兵器の発達というものは、時々刻々変化しております。まつたく予測がつかぬ。御承知通り、われわれは去年の夏ごろはあまり考えていなかつた電波兵器のごときは、今非常な発達を遂げておるのであります。これらの点からにらみ合せまして、将来の長期の日本の防衛計画などというものは、今立てる余地がないのであります。ことに財政計画なんかが不安定なときに、長期の防衛計画などということは立て得る余地はないと私は考えている。そこでやむを得ず日本の現段階においては、いわゆる漸増計画、少くとも二十九年度においてはどうあるべきかというぐあいにふやしたい、この計画であるのであります。長期の防衛計画というのは、今申し上げまするようになかなか立たぬ、立ちようがないのであります。それで、われわれは、さしあたり二十九年度においてどれだけのものを漸増すべきか、この計画を二十九年度予算に盛り込んで、予算の審議を願わんとしているわけであります。
  157. 武藤運十郎

    ○武藤委員 驚き入つたる話であります。いやしくも一千数百億の予算を使いまして、日本の防衛をみずからの手でやるということを呼号している政府が、今その長期計画を――長期といつても三年か五年だ、この計画を聞かれたならば、全然そういうことはできるはずがないものだと言うということは、これは実に無責任きわまるものでありまして、国民の税金をまつたくそのときばつたりの方針で使おうという、投げやりな考え方であろうと私は考える。私は、電波兵器の発達とか、あるいは科学兵器の発達とか、あるいは原爆の問題とか、そういうようなものが年々発達するということについては異議はありません。異議はありませんが、かようなことは、ただ日本がその傾向に制約されるということではなくて、世界各国ともみな制約をされる事実だろうと思うのであります。そういうふうな科学兵器の発達というような制約の上に立つて、なお各国とも一定の防衛計画というものを立てているのだと思う。木村長官が、防衛計画を立てなければならぬ、防衛力を漸増なければならぬということを言われているということは、これは、そういうことを前提として、なお防衛計画というものは相当長期にわたつて立て得るものであり、立てなければならぬものであると思うが、この点について重ねて木村長官のお話伺いたいと思うのであります。
  158. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいま申し上げました通りであります。確定的の長期の防衛計画などということは、日本の今の段階においては立て得るべきものじやないと私は考えております。また諸外国においても、おそらく、長期の防御計画というものは、現段階においては立て得るものではない、こう私は推察いたします。アメリカにおいても、御承知通り、大艦巨砲主義で行こうか、あるいは航空母艦主義で行こうかというように、海軍においてすらも議論があるのであります。今申し上げました通り、電波兵器の発達にはきわめて著しいものがあります。いわゆるGM戦といわれるような状態が将来来るのではないか、そういうようなことをあわせ考えてみますと、日本のような財政力の貧弱な国において、確定的の長期の防衛計画を立てるということはできぬと私は思う。そこで、御承知通り、二十九年度においては、アメリカの駐留軍のある部分が引揚げたい、それに即応して日本の自衛力も漸増して行こう、こういうことであるのであります。そこで、日本のこの自衛力の漸増のあり方は、どうであろうかということにわれわれは細心に苦心をいたしましてその計画を立てておるわけであります。
  159. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それでは伺いますが、アメリカと防衛計画について折価をなされた――これはMSAにも関連しておりましようが、それ以外にもアメリカ駐留軍の問題、漸減の問題等について話合いがあつたと思う。その場合に、アメリカから二年度以降の長期計画、三年ンなり五年なりについて、日本の保安隊ですか、今度は自衛隊ですが、これについてどのくらいに増強をしてもらいたいとか、しなければいけないとか、こういうことについて要請があつたかないか、こういうことを伺いたい。
  160. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私はアメリカから少しも要請を受けておりません。またアメリカからの相談も受けておりません。われわれは独自の見解でもつてつておるわけであります。
  161. 武藤運十郎

    ○武藤委員 その独自の見解伺いたいのですが、その長期計画についてはあるにきまつておりますが、しばらくおきまして、基本構想というようなものについて、何でも木村長官の話では、三軍均衡方式といいますか、そういうことを考えておられるそうだ、アメリカの方では地上軍に重点を置いたものにしたいというような意向に対して、木村さんは陸、海、空三軍の均衡方式というものをお考えになつておるそうでありますが、この点について御意見を聞きたい。
  162. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。日本の自衛力漸増方式におきましても、私はただ地上部隊だけの増加ではいけない、地上部隊においてもこれと連絡あるべき航空部隊も設置しなければならぬ、また海上の警備の増強もいたさなければならぬ、この方面から考えて、私は航空部隊の設置は当然いたすべきものであろう、こう考えて、本年度予算においても航空部隊の設置の予算を組んだわけであります。
  163. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、そのような陸、海、空の三軍の均衡した増強方針ということであるそうでありますが、二十九年度の防衛計画の概略を説明してもらいたい。
  164. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 申し上げます。自衛力漸増として、二十九年度における計画は人員が陸上関係において制服二万人、一般職員八十七百名、海上関係の増員が制服五千四百八十五名、一般職員が二百十九名、航空関係の新設、制服が六千二百八十七名、これはレーダー要員も含んでおるのであります。一般職員が四百七十八名、これでもつてどういう編制を行おうかといたしますと、陸上においては現在の四管区隊、一管区隊一万五千人を一管区隊一万二千名として六管区隊を置こう、他に特科団に特車大隊が一、対空特科群が一、施設群が一、とれを増設いたしたいと考えております。海上においては、われわれの希望いたしまして、アメリカから相当の船舶の贈与を受けたいと思つておりますが、今明細でありません。航空関係においては、これははなはだ貧弱なものであるのでありますが、ただいまのところ財政上いたしかたありません。航空機において二十九年度で増そうと思うのは常用機にして九十機、補用機が二十九機、こういうことになつておるのであります。
  165. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 武藤君の質問関連しまして、稻葉君から関連質問がありますので、ひとつ簡潔に願います。稻葉君。
  166. 稻葉修

    ○稻葉委員 ただいまの武藤運十郎君の質問に対する木村保安庁長官の当初の御答弁中、長期防衛計画は立ち得べくもなし、立てる意思もないと明言されたようでありますが、われわれにとつてきわめて重大な事柄であります。この点はもう一度確認なさいますか。その通りでよろしゆうございますか。
  167. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 申し上げます。その通りであります。およそ一国の基本的な防衛計画を立てるといたしましては、その国の兵器生産能力あるいは鉄道運輸能力、あるいは食糧関係、あらゆる観点からこれを総合判断いたし、財政面からもこれを研究いたさなければならぬ。また兵器の発達面も、これをいずれに重点を置くべきかということを詳細に検討いたして、総合的にこれを立てるべきものであろうと考えております。日本の現段階においては、そういうことはとうてい立て得ないと私は考えております。そこでわれわれといたしましては、さしあたりこの漸増計画を立てて、日本のアメリカ駐留軍との関係においていかにあるべきかということに重点を置いてやつておる次第であります。
  168. 稻葉修

    ○稻葉委員 はつきり答弁なさつたようでありますが、将来もし予算委員会におきまして、ただいまの御確言を翻されるような場合には重大な責任を生じますが、それでもよろしゆうございますか。
  169. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は長期の基本的な防衛計画というものは立て得ないものと考えております。漸増計画のめどは立てるべきでありますが、長期の防衛計画の基本的なものは立て得ないと考えております。
  170. 武藤運十郎

    ○武藤委員 防衛計画に関連しまして、予備役制度というものをつくるそうですが、それは一体どういうものですか、簡単に説明してもらいたい。
  171. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 予備役制度は、これはなかなか容易ならぬ問題だと思つておりますが、ぜひともある程度のことはやつてみたいと考えております。しかし御承知通りこれは強調すべきものではありません。従いまして、勇退した人たちの同意を得なくてはならない。その同意を得た上において、昔の予備役に相当するような考え方で運営をして行く、どうして行くかということについては目下しきりに検討中であります。しかしわれわれといたしましては、どうしても除隊した人の将来の活用を考えて行くべきである、こう考えております。
  172. 武藤運十郎

    ○武藤委員 除隊をした人の活用を考えるということで、予備役というものをつくろうというような考えでありますけれども、これはなかなか容易ならぬことであつて、除隊後においてもなおその自由をある程度拘束をする。一定の期間、あるいは年間拘束をするということであつて、憲法違反というような疑いもないではないと思うのでありますが、そういう点についてはどういう構想をもつてやろうとするのか、重ねて伺いたのであります。
  173. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。決して強制的にこれをやろうとしておるわけではありません。志願制度、今申し上げました本人の承諾のもとに、これを何かの運営をして行きたいと考えております。
  174. 武藤運十郎

    ○武藤委員 木村長官にもう一つ聞きたい。木村長官はこの防衛計画に関連をし、MSAに関連をしまして、秘密保証法というようなものを立法しようとしておるがごとく聞いております。一体秘密保護法というのはどういうことであるのか、それはその内容において、MSA関係の兵器その他について、保安庁職員その他の隊員などの秘密を守ろうとするものか、それとも広く自衛隊の作戦計画なり、特定部隊の行動、装備なり、配置なり、あるいは特定物質の生産計画、研究状況、輸入状況、保存箇所そういうふうな広範囲のものについて広く一般人を対象とする取締法をつくろうとするのか、その構想を聞きたいと思うのであります。
  175. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。将来MSA援助においてアメリカから贈与を受ける秘密兵器、これらのものについてはぜひ何らかの秘密保持の手段をとらなければならぬと考えております。そこでそれ以外にも、日本の自衛力漸増計画において、将来やはり日本で独自の秘密兵器なんかを発明し、これを利用すべきことを考えなければならぬ。その場合において、これらのものを秘密に保持すべき必要は当然あるべきものと私は考えております。いわゆる人の秘密もあると同時に、国家においても、重要欠くべからざる秘密があるのであります。これを国家の手において保護すべきは当然の義務であろう。しかしながら、事国民の自由を束縛するようなことはあつては相ならぬ、これは厳に慎むべきことであります。その範囲内においてわれわれは必要欠くべからざる限度において、将来この問題をどう取扱つて行こうか、この法規の原案作成にあたりましては、慎重に考慮を要すべきものと考えて、目下慎重にこれを検討中であります。
  176. 武藤運十郎

    ○武藤委員 今承りますると、ただ単にアメリカから持つて来る兵器の秘密のみならず、日本における防衛力の漸増に関連をして、日本の兵器の秘密についてもこれを取締るというようなお考えのようであります。こういうふうな広汎な秘密保護法と申しますか、取締法というものは、過去における軍国主義時代の軍機保護法ともいうべきものであると私は思う。長官は今その取締り法規によつて、いやしくも国民の自由を束縛するがごときことのないようにしなければならない、慎重な態度をとるというようなお話でございましたけれども、われわれは過去におきまして、軍国主義時代におきまして、いかにこの軍機保護法というものに苦しめられたか、軍機保護法によつて一般人民の自由というものが拘束を受けたかということについて、なまなましい記憶を持つておるのでおります。聞くところによりますと、木村長官は、世界各国軍隊のあるところに保護法のないところはないというようなことを公言しておらるる由でありまするけれども、私は今の日本に軍隊はないという建前をとつておるのでありまするから、このような秘密を保護するという名前によつて、広汎な国民の自由を拘束する法律というものはつくる必要はないじやないか、またつくるべきところの筋合いというもの、名目は立たないのじやないかと思いますが、もう一度木村長官からこの点についての御見解伺いたいと思います。
  177. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。もとよりわれわれは広汎な国民の自由を束縛するなんというような考えは毛頭もありません。御説の通り、旧軍閥下における軍機保護法によつて国民が非常に自由を圧迫された苦き経験を有しておるのであります。このようなことを再び繰返すようなことは、断じて慎しむべきことと私は考えております。最小限度においてやむを得ざる限度にこれをとどめて、軍機の秘密を守りたい、こう考えておる次第であります。
  178. 武藤運十郎

    ○武藤委員 なおこの防衛計画については、MSAにも関連を持ちまするので、明日関連をして質問をいたしたいと思います。  第三には、私はまず吉田首相伺いたい。こたは教員の政治活動禁止に関する問題についてであります。吉田首相は去る二十七日の施政演説におきまして、こういうことを言つておる。「一部極端なる傾向が教育界に現われつつある事実もまた政府として見のがし得ざるところであります。学校教育は心身の発達の未熟な生徒児童を対象とするものであり、従つて特定の政党政派の主義主張を刻印するがごとき教育を施すことは厳に戒めるべきであります。しかるに、現状においては、学校教育の政治的中立性が侵されんとする危険性が少くないので、政府は、これに対し所要の立法措置を講じ、国の将来のため正常な学校教育の運営を保障したい」こういう趣旨のことを施政方針演説の中で述べられておるのであります。これを要約しますると、要するに教員が学校内において未熟な頭の児童に一党一派の主義主張を刻印する、注入するがごとき教育というものはよろしくない、これは政治的な中立ではないんだから取締らなければいかぬ、適当な措置をとらなければならぬ、こういうことを言われておることだと思います。それならば、私は教育の場としての学校内における教員にそのような不都合がもしありとするならば、これを取締れば必要にして十分なのでありまして、学校外における個人としての、公民としての、市民権を持つところの教員としての政治行動を取締る必要は全然ないのではないかというふうに考えるのでありますけれども、必要な立法措置をとらなければならないという吉田首相の御見解は、学校内における教員の政治活動を何とか是正をしなければならないというのか、それとも、聞くところによりますと、広汎に学校外におけるところの教員の政治活動を禁止する、制限をするところの法律をつくらんとする様子が文部大臣から放送をされて、新聞にも報道をされておりますが、一体どういうお考えなのか。この施政方針演説に盛られた御意見について、取締り立法をしようとするそれとの関連を承りたいと思います。
  179. 吉田茂

    吉田国務大臣 主管大臣からお答えをいたします。
  180. 武藤運十郎

    ○武藤委員 主管大臣に聞いておるのではない。総理大臣に聞いておるんだ。あなたのはあとで聞く。   〔「総理大臣総理大臣」と呼び、その他発言する者多し〕
  181. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 静粛に願います。総理大臣から、主管大臣に答弁させますとのお言葉がありました。
  182. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それはあとで聞く。施設演説について伺つておるんだから……。
  183. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 文部大臣が答弁してからなお伺います。
  184. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 ただいま総理大臣から、主管大臣をして答弁をせしめるというお言葉がありました。でありまするから、私の答えますことを総理大臣お答えと御了承願います。   〔「そんなことあるかい」「そんな卑怯な話あるかい」と呼び、その他発言する者多し〕
  185. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 静粛に願います。――静粛に願います。答弁を聞いてから……。
  186. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 お尋ねの立法措置については、ただいま私の手元で鋭意検討しております。これはできるだけ早く提案をいたしまして御審議を願いたい、こういうつもりでおりますので、不日国会に提出する運びになろうと存じます。従つてその内容につきましては、今はつきりしたことを申し上げ得るところまで参つておりませんが、ただいまお尋ねになりました教員の政治活動の制限、つまり学校外における政治活動の制限、これをやはり立法措置をする、その考えをもつてただいま立案中であります。
  187. 武藤運十郎

    ○武藤委員 今の文相の答えは、問いに対する答えになつておらぬ。よろしい、文部大臣が首相のかわりだと言われるのだから、一応首相のお答えあとまわしにしますけれども、この首相の施政方針演説というものは、先ほど私が朗読しましたように、学校内において未熟な児童に一党一派の主義主張を注入することがよくないということであろうと思う。ならば、学校内における教員の政治活動を禁止すればよいのであつて、学校外における教員の政治活動までもこれを禁止する必要はないのではないか。今文部大臣からお話がありましたけれども、その点を近く今度の国会に出したいといわれるところの案におきましては、それならば、この首相の施政力針演説従つて、学校内だけにおける教員の政治活動を禁止することでいいのであつて、学校外における政治活動、あるいは第三者の組織を通じての政治活動というものを禁止する必要はない建前になるであろうと私は思いますけれども、案の内容についてそうでありますかどうか、文相に伺いたい。
  188. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 お答えします。ただいま私の申し上げましたのはお答えにならぬということでありますが、お尋ねは学校内におけるいわゆる教育の中立性を守るためには、学校内の活動を対象とすればいい、しかるに学校以外における政治活動を制限するというようなふうに聞くが、はたしてそうであるかというお尋ねであつたから、その通りであります、そういうつもりでおりますと、こういうことをお答えしたわけであります。今私ども考えておるのは、学校外において教員が政治的にあまり片寄つた立場をとらない、そのことによつて学校内における教育の中立性を保障したい、かような考えで立案しておるわけであります。
  189. 武藤運十郎

    ○武藤委員 何か非常な詭弁でありまして、学校内における政治活動を禁止するためには、学校外における政治活動をもこれを禁止する必要があるというようなお答えであると思います。そこで、私はこの提出をしようとする法律案、改正案になりますか、あるいは二本建になるというふうな話でございますけれども、大体の輪郭を伺いたいと思います。
  190. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 お答えします。先ほど申し上げましたように、今検討を重ねておりまして、まだはつきりしたまとまつた完結をいたしておりません。従つてただいまその内容について、ここで説明をする時期でありません。先ほど申し上げました点は、学校の先生と申しましても、公務員たる教職員に限つて政治活動を禁止するという考え方で今検討しております。私立学校の先生はかわりありません。一体公務員というものはひとり学校の教員だけでありませんが、その公務を適正公平に執行するために政治活動の制限を要求せられておるのであります。現行法はすべての国家公務員並びに地方公務員に対して政治活動の制限をしておる。それは、その公務が適正に行われることをこれによつて担保するためであると私は思います。御承知通り行政政治の接触点で、どうしてもやむを得ないきわめて少数の公務員、いわゆる特別職の公務員については、政治活動の制限はしてありません。これは要するに例外でありまして、その以外のすべての公務員に対しては現に政治活動の制限がしてあるのでありまして、この点は教員について特別な新規な立法をしなくてよい、こういうものではないと思います。
  191. 武藤運十郎

    ○武藤委員 内容はもう少しはつきりわかつておるはずです。すでに新聞にも発表されておるわけでありますから、もつと詳しく答弁ができなければならぬはずである。大体こういうことではないかと思いますが、確かめてみたいと思います。文部省の考え方というのは、二本建にしまして、第一には教育公務員特例法を改正する。その改正案という方法によつて国家公務員法百二条、地方公務員法三十六条の二というようなものによつて、教員の特定の政治目的を持つた特定の政治的行為は禁止をするということにするか、あるいは人事院規則の一四-七に従つて、全国的に教員の政治活動を国家公務員並に禁止をするという方法によるつもりではないか、それに対して罰則をつけまして、とれに違反した者は三年以下の懲役あるいは十万円以下の罰金ということにすることが、教員個人の政治活動を禁止をする方法として考えられておるようであります。   〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕  第二には、第三者の教唆扇動ということを禁止するために、第三者が団体、たとえば日教組のようなものを通じて教員に対して教唆扇動をした場合にこれを禁止して、同じく三年以下の懲役、十万円以下の罰金に処する、こういう二本建で今度教員の政治活動を禁止しようという考え方のようでありますけれども、大体の構想はこの通りであるかどうか、確かめてみたいと思います。
  192. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 新聞には私の方からは何も発表したものはありません。先ほど来申し上げましたように、政府部内における関係各省との間に意見の調整を必要とする点もありまして、今せつかく検討しておるのであります。問題が相当世間の注目を引いております関係上、新聞方面においていろいろこれを観望して推測の記事を書いておるのであります。従つて新聞に発表しておるのではありません。それからただいまお話になりました二本建と申しますか、ただいま検討しております考え方ば、大体において今武藤委員のおつしやつた線で検討しております。ただ、具体的にその対象になる教職員の範囲あるいは学校の種類、その他重要にしてしかもいろいろこまかい点につきましてはまだ結論を得ておりません。従つて今ここではつきりしたことをお答えする段階ではないことは先ほど申し上げた通り、いずれ提案の上で十分に御審議をいただきたい、かように考えております。
  193. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は今私の確認を求めたことについて、大体その方向であるという御趣旨の答弁を得たのでありますけれども、もしそうであるとするならば、先ほど申しました首相の施政演説に盛られたところの、学校内における教員の政治活動を制限をしなければならないということとは全然かけ離れておる。これはもうまつたく学校外における教員の政治活動というものを根本的に禁止しようという考え方であることは明らかであります。これは学校内における政治活動を禁止するためには、学校外における教員の政治活動をも制限しなければならぬというようなものではない。おそらく教員の選挙活動をも禁止しようという目的に立つておるのではないかと想像されます。そこで伺いますが、施政演説に現われたところの見のがし得ない一部極端な傾向があるとか、特定の政党政派の主義主張を、未熟な生徒児童に刻印するがごとき教育があるということがうたわれておりますけれども、具体的にはどこにどういうことがどれくらい起つておるか、これを伺いたいと思います。
  194. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 現実に学校における教育の中立性が侵害されておる、もしくは侵害されるような危険にさらされておる、こういう事例につきましては、実は相当調査としては困難な実情があります。しかしながら、たとえば今日表に現われて、この問題をめぐつて教育委員会と学校教職員との間、もしくは父兄と学校との間、あるいは生徒、児童と学校、教育委員会との間、そういう間において現に紛争を起しておる事例が相当あります。これは新聞にも載つております表面に現われた例でありまして、現在トラブルを続けておる事例も四、五件あると記憶しております。そのほか私どもの手元で調べた範囲で承知しておる事例は、数十件に上つておるのであります。
  195. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は問題がそれほどたくさん起つておるとは考えません。新聞に報道されたようなことも一、二はあるかもしれませんが、これほど厳重な法律をつくつて、教員を取締らなければならないような事実というものはないと思います。おそらくこれは予防立法とでも呼ばれるものではないかと思う。要するに今の文部大臣のお考えというものは、そういうことを口実にしまして、全然教員の政治活動を手も足も出ないように縛つてしまおうという考えではないかと思う。いわゆる予防立法であつて、人を見たらどろぼうと思え、教員は初めから悪いことをするものだという前提の上に立つて、この法案をつくろうとするがごとき印象を与えるのであります。教員の政治活動というものは、すでに非常に制約をされておる。たとえば国家公務員法の百二条、地方公務員法の三十六条の二項、教育基本法の八条の二項、公職選挙法の百三十七条、一々条文は読みませんけれども、こういうものによつて教員の政治活動というものは、非常な制限を受けておるのであります。なおこの上にさらに教員の政治活動を禁止しなければならない理由はないと思います。これでもつて十分ではないか、私はこういう制限をすることは不服でございますけれども、かりに何か問題があるとしても、これだけの網の目を張りめぐらしておれば、これでたくさんではないか、こういうふうに考えます。もし教員の一部に行き過ぎがあるならば、今申し上げました現行法を適用することによつて必要にして十分である。しかも他の地方公務員とわけまして、教員だけの政治活動を禁止して行かなければならないという理由はないではないかと思いますが、この点についてなおこういう厳重な法律をつくらなければならない理由はどこにあるか、今私が伺つたような事実だけでは、絶対に承服することができないのであります。
  196. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 教員の政治活動の制限の範囲といいますか、程度といいますか、これにつきましては立案を終つて、具体案として提案をいたしました上で、それについて十分御検討をいただきたいと思います。非常にきびしい制限をする、非常に極端な禁止をするというようなことを前提にして、非常に御心配のようでありますが、私どもは決して必要の限度を越えて行き過ぎた立法をする気持は毛頭ございません。ことに私ども文教に責任を持つ者といたしましては、教壇における教育の中立性、これは非常に重大なことと考えておるのでありまして、これを口実というか、それに藉口して他の目的をもつて、教育職員の活動を押えて行く、そういうような意図は毛頭持つておりません。また必要の限度を越えた制限をするという気持もありません。その程度、内容につきましては御提案の上で、とくと御批判御審議をいただきたいと思います。
  197. 武藤運十郎

    ○武藤委員 行き過ぎたことをするつもりはないと言われますが、考えられるところの法案の内容を見ますと、はなはだしい行き過ぎだと思う。ことに教育基本法の前文、あるいは一、二、八、十条等を見ましても、また憲法に規定されておりますところ基本的人権の問題についても、憲法十一、十三、十四、十九、二十一、二十三条、それから九十七条等を見ますると、どうしても基本的人権というものは保障をし、守つて行かなければならぬということが、厳として規定をされておる。しかるに今度の教員の政治活動を禁止する法案というものが、もし私が考えるような、また新聞に発表をされ、そして大達文相が大体において肯定をされるような内容で提案されるとしまするならば、これは明らかに憲法違反である。ほとんど教員というものは手も足も出ない。教員に許されておる自由というものは、ただ選挙のときに投票所に行つて一票を投ずるという以外に何もできない。口をきくこともできない。またわれわれ政治家が教員の前で、吉田内閣は再軍備をして不都合だと行うこともできない。こういう実情に追い込まれると思います。これは明らかに憲法違反であると考えますが、いかがであるか。
  198. 犬養健

    犬養国務大臣 憲法律反の法律案を提出するなどということは、とんでもないことでありまして、これはあり得ないことであります。よろしく内容をごらんの上で、憲法に違反しておるか、違反していないか、ひとつおつしやつていただきたい、出ないうちから、これは憲法違反なりとする議論には、私は賛成できません。
  199. 武藤運十郎

    ○武藤委員 初めから憲法違反の法律を提案するということを言うはずはあるまいと思いますが、なおこれはいずれ法案が出るでありましようから、それぞれの委員会において究明することにいたしまして、ここではこの程度で打切りたいと思います。  次に私は警察法の改正について伺いたい。政府は去る国会におきまして警察法改正案というものを用意されましたが、結局これはわれわれの反響にあいまして成立をしなかつた。これを今度も警察法の改正として、さらに出し直すような話でございますが、改正の骨子として伝えられるところを見ますと、まず第一に自治体警察は全部廃止してしまう、国家警察一本にするということが第一であります。第二には任免権が、総理大臣、警察庁長官、都警察長、都道府県警察庁それからその職員というふうに、まつたく一本の系統によりまして人事権というものを、総理大臣、時の政府が握つてしまう、国家公安委員会というものはあるにはありますが、その長は国務大臣をもつて充てる、国家公安委員会とか都道府県公安委員会というものは、置くのは置くけれども、ただ意見を述べる、あるいは勧告をするというようなものでありまして、警察制度の根本から申しますると、まつたくさしみのつまのようなもの、さしみのつまにもならぬくらいのものである。要するに今度の改正案として考えられるものは、国家警察一本にしまして、ボタンを一つ押しますと、日本中の警察が時の政府のために、動員がきくというような警察制度になるようでありますけれども、この点は憲法並びに自治法に規定されており、また警察法にも規定されておりまするところの、警察を民主主義の基礎の上に置こうという民主主義的な警察制度の考え方とは、根本的に相いれないものであるというふうに考えますが、案の内容というものは、大体この通りのもの、でありますかどうか、伺いたいと思います。
  200. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。警察法改正の理由とか骨子はどうかという御質問を受けたのでございますが、御承知のように、現行の警察法は占領政策の一環として制定されたものでありまして、もちろんこの中にはよいところもございます。たとえば国民に新しみやすい警官ができたというような点は、確かにそのよい特徴でございますが、他方今の社会情勢に照しまして、どうも不適当だとわれわれが考える点もございますので、この点を改正いたしたいと思つておる次第でございます。今いろいろ御意見伺いましたが、多少要綱について誤解の向きがあるのではないかと思いますので、率直は私どもの趣旨を申し上げてみたいと思います。  骨子の第一は、何といいますか、警察管理について民主的な保障というものは残さなければならない。言いかえれば、国民から見て警察管理に何かの関与が、つながりがあるということにしておかなければならない。この意味で公安委員制度というものは存置いたすことにしたのでありますが、武藤さんのおつしやるように、これはもうせみの脱けがらみたいなものだということについては、残念ながら少し意見が違うのでありまして、何となれば、公安委員は、警察庁の長官あるいは都道府県の警察隊長が、もしも警察国家的な横暴なふるまいがありましたならば、懲戒罷免の勧告権を持つことができるようになつておるのでありまして、この点で、警察にとつて、ふだんは親密な協力者であると同時に、煙い監理者でもある、こういう味を残したのでございまして、これは私どもとしては、ボタン一つ押せばみんな言うことを聞いて、あとはロボットだという警察をつくる気は毛頭ございません。この点は御了解を願いたいと思います。  第二に、現在の国家、自警の二本建を廃しまして府県警察にいたすのでありまして、今のお話でございますと、自治警だけ廃して国警一本にするというようなお話でございましたが、これは何かのお読み違いじやないかと思います。もちろん元の都道府県の自治警の大部分の形を残しておりますから、警察国家ということにはならないし、都道府県の公安委員会は、今申し上げましたように、警察隊長の懲戒罷免の勧告権を持つておりますから、もしもふらちなことがあつたら、たちまちえらい目にあう、新聞にも出ることになると思うのでございます。  第三には、お話のように、責任の明確化、最近お正月などにもいろいろ事件が起りましたが、率直に申しまして、責任の不明確あるいは複雑な点があるのでございまして、いやしくも事件が起りましたとさは、責任の所在が明確になるようにいたしたい、こういう趣旨から、自由党以外の意見ども徴しまして、お話のように、国家公安委員長国務大臣をもつて充てるのでございますが、これが何でもかんでもかつてにやるということがないように、その表決権について何かの制限を加えたい、これは今そういうような考えで進んでおるのでございます。これを要するに、いろいろの御忠告もありましたけれども、そういう警察国家をつくつてわれわれが堪能するというような気持は毛頭ございません。この点は御了解を願いたいと思います。
  201. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私の了解するところは決して私は誤解ではないと思う。そこで法務大臣に重ねて伺いますが、国家公安委員とか都道府県公安委員とかいうのは残しておく。そこでふらちな行動があれば懲戒罷免を勧告することができる。これはそういうふうな趣旨に何つております。それならば、公安委員が、あれはどうもよくないという意見を勧告した場合に、それに基いて必ず警察庁長官なり都道府県警察長なりは、罷免をしなければならないという規定があるかどうか、おそらくないと思う。ただ勧告をすることができるということになるのであつて、勧告をしても、その勧告したものについて罷免をするかいなかの自由というものは、それは警察長なり警察庁長官なりにあるのである。必ず罷免をしなければならないという規定をつくりますかどうか。これを伺いたい。  それからもう一つは、警察庁長なり警察長を任命する場合に、国家公務員会なり都道府県公安委員会なりの意見を聞くそうでありますけれども、この人は不適当だという意見が出ました場合には、必ずその意見従つてその者を任命しないかどうか、こういうことが伺いたいのであります。もし、その意見通りに罷免をし、あるいは任命をしないということが必ず義務として規定をされるならば、犬養さんの言われるように、私は民主的な要素が警察制度の中に流れ込む余地があると思う。ところが、そうではなくして、意見があつても、それはただ聞くだけだ、勧告があつても、その勧告は聞くだけだ、あとの罷免をするかしないか、任命をするかしないかということは、政府の息のかかつた警察庁長官あるいは都道府警察以外の自由であるということになりますれば、民主的な要素はほとんど入らない。これは、私が先ほど申しましたように、さしみのつまほどにもならないじやないかということを聞いておる。その点についての構想を伺いたい。
  202. 犬養健

    犬養国務大臣 これはなかなか大事な点でございますから、できるだけ率直に申し上げたいと思います。御意見と私ども考え方と多少違うところがありますから、それもあわせて明確に申し上げたいと思います。  都道府県公安委員会があの警察隊長はどうもよくないという場合、必ずそれを罷免するというふうには規定しておりません。と申しますのは、かりに都道府県公安委員会の会員がこぞつて、どうもけしからぬということを意思表示をすればこれは相当輿論の背景があるものと見なければならない。そういう場合には、多くの場合、中央では慎重に考慮すると思います。しかし、こういう場合もあると思うのであります。地方の事情になじみ過ぎておる事情から、その警察隊長を罷免するという場合には、おいそれとそれをすぐ取上げることは、はたして民生的であるかどうか。これはよほど考えなければならぬ思います。それでは当てにならぬじやたいか、こういう御意見になるのじやないかと思いますが、そこは一私はやはり輿論というものがありまして、盲千人と申しますが、目明きも千人おるのでありまして、その場合は輿論の動向というものを公正冷静に判断することが大切だと思うのでございます。また任命のときもそうでありまして、都道府県の公安委員会が、どうもあれは評判が非常に悪いやつだ、あんな者を持つて来ては困るということが、圧倒的な多数であるならば、そういう人をそこの都通府県の警察隊長にしてもうまく行くはずがございません。その罷免懲戒の勧告の議の起る状態、あるいは任命のときに、あれは困るという抗議を申し込んで来た個々の状態に照して、もう一つ大切なことは、その際の輿論というものを冷静に見て判断するととが必要でありまして、一人でも言つたら、もう機械的にそれをやめてしまうということは考えておらないのでございます。
  203. 武藤運十郎

    ○武藤委員 犬養さんは盛んに輿論の背景で、どうかとか、あるいは新聞に書かれるからどうかとかいうことを言われます。なるほどそれに従う政府ならばいいですけれども吉田政府のごときは輿論は聞かない、新聞が何と、言おうとも聞かない、国会は軽視してかまわないというような政府なんです。これは犬養さんは別かもしれませんけれども、大体そうだ。(発言する者多し)そういう反動的な政府である限り、輿論がどうするとか、新がどうするとかいうようなことを、言われましても、これは実際問題としてはなかなか行われない。むしろこれはちようど、もとの警察制度みたいなものである。戦争前にありましたところの一番能率がいいといわれた警察によつて、人権の蹟躍が平気で行われておる。われわれは苦い体験を持つておる。大衆運動や労働争議が政府の力によつて弾圧されておる。選挙干渉が次々に行われておる。内閣がかわると警視総監や警保局長もみんなかわつてしまうというような、いわゆる警察の政党化、中央集権化、政府の権限強化というふうなことが行われておつたのであります。そういうことが、もしこの警察法ができることになりますと必ずできて来ると思う。ことに自由党のようなワン・マンといわれる吉田首相をいただく政府がこの法律を打ちますと、気違いが刃物を持つたようである。(「委員長、注意したまえ」と呼ぶ者あり)これは御承知通り、憲法では国務大臣の罷免権を持つておる。陸海空軍を指揮することになりましよう。国会の解散権を持つておる。さらに加えて警察権を首相が握るということになりますと、もうアメリカの大綱領以上の権限を日本総理大臣が特つことになるのであります。これは恐るべきことだと私は思う。こういうことは日本の再軍備促進と関連しまして、この警察法の改正なり、あるいは教員の政治的中立を名前とするところ政治活動の禁止なり、いろいろな法律がつくられようとしておりますけれども、これは日本中の再軍備を促進ずるところの一環として理解されなければならぬと思う。こういうふうな危険がないと犬養さんは断言ができますかどうか、伺つておきたいと思います。
  204. 犬養健

    犬養国務大臣 大事な点でございますから、十分お答えをいたしたいと思います。  冒頭に申し上げたいのでありますが、吉田内閣は輿論を聞かない内閣であるという御断定のもとにお互いに議論するのではとても話になりませんから、それは私は承服できないということを申し上げて、その次の段階から申し上げたいと思います。武藤さんの御心配はわれわれも心配する点でございます。しかしよく考えてみますると、警察隊長というのは一町の中国の官吏のように一族郎党を連れて行つて官につかせるわけではないのであつて、大海の中へぽつんと入るように見知らぬ他郷に行つてそうして事務をとるのですから、これはうまが合わなければうまく行かないにきまつておるのでございます。従つて輿論の制約というものは相当大きいと私は思います。その上、現在でも国警の人事におきましては、たとえば大学生の多い都会においては学生の気分のわかる隊長を選ぶ、あるいは前にどこそこで人気が悪かつた隊長は、よほどこの次の人事のときには気をつける、やはりそういう点で細心に輿論の反映というものに気をつけておるのでありまして、御心配の点は、私も心配を旨としなければならぬことは十分承知しておりますが、そういう心配のないように行けるという感じを持つておるのでございます。  それから中央の警察長官が地方を指揮いたしますのは、国家的な規模の騒擾、主としてそういう事件でありまして、大仕掛な詐欺事件というようなものもありますが、主として暴力主義的破壊活動もしくはそれに類似した騒擾事件、ことに同町に数県あるいは数箇所に起る場合、一県々々が自分の県だけ平穏に守ろうということでは、うまく行かない従来の体験にかんがみまして、中央が指揮するのでありまして、いわゆる音通犯罪はこれをあげて普通の今の都道府県の自治警察の担当にまかせるのであります。大きいところだけ国家的な指揮をする、こういう考えでございますので、御心配の点はよく私どもわかりますが、決してそういうことのないようにやつて行けるというふうに私は考えておる次第でございます。
  205. 武藤運十郎

    ○武藤委員 犬養さんが永久にひとつ法務大臣でおられることを希望いたします。この質問はこれで打切りまして、なおあしたMSAの問題に関連をして質問を残しておきます。それからなお時間がありますれば、最初に申し上げましたような社会保障の問題、国鉄首切りの問題にも触れたいと思いますが、本日の質問は、私はこれで一応打切つておきます。
  206. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明三日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会