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1954-11-27 第19回国会 衆議院 郵政委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月二十七日(土曜日)     午後二時二分開議  出席委員    委員長 田中織之進君    理事 羽田武嗣郎君 理事 船越  弘君    理事 大高  康君 理事 濱地 文平君    理事 山花 秀雄君       飯塚 定輔君    河原田稼吉君       坂田 英一君    石田 博英君       櫻内 義雄君    佐藤觀次郎君       淺沼稻次郎君  委員外出席者         郵政事務官         (大臣官房人事         部長)     宮本 武夫君         郵政事務官         (郵務局長)  松井 一郎君         郵政事務官         (経理局長)  八藤 東禧君         専  門  員 稲田  穣君         専  門  員 山戸 利生君     ————————————— 十一月二十六日  委員片島港君辞任につき、その補欠として足鹿  覺君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員足鹿覺辞任につき、その補欠として佐藤  觀次郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人招致の件  郵政従業員賃金改訂に関する問題等に関する  件     —————————————
  2. 田中織之進

    田中委員長 これより郵政委員会を開会いたします。  前会に引続き、郵政従業員賃金改訂問題について調査を進めたいと存じます。参考人が出席されるまで、郵政当局質議を行いたいと思います。まず人事部長委員長からお伺いをいたしますが、今回の調停の主文の第一項に関連をいたしまして、目下郵政職員現行賃金体系改訂に関連して、組合及び当局の両者間で検討が進められておるということが理由書の中にも入つておるわけでありますが、現行賃金体系を大体どういうような線で改訂されようとするのか。その改訂の話合いの方向が、すでに団体交渉運びになつておれば、ある程度省側の御方針もきまつておるのではないかと思うのですが、その点についておさしつかえなければひとつ御説明願えませんか。
  3. 宮本武夫

    宮本説明員 ただいまのお尋ねの件でございますが、新しく賃金体系改訂したいという考えのもとに、ただいま団交を継続中でございます。目下進捗状況は、先般、これは確定案ではございませんが、大体の骨子を示しました案を組合側に示しまして、これに対する説明を一応終つたわけであります。なお具体的な紬目的なものにつきましては、順次これに追加して出すということになつております。組合の方といたしましては、官側のこの説明を一応聞かれまして、今のところはその説明を聞いただけにとどまつております。今後さらに団交は、目下専門委員会でこれをやつておりますが、継続してやつて行きたいというように考えております。その案の大要でございますが、こまかしい点は別にいたしまして、その骨子とでも申し上ぐべき点は、従来御承知通り俸給表は、各郵政職員につきまして、その職務内容が違うのであります。あるいは管理職なり、あるいは現業にしましても内勤あるいは外勤、さらに守衛雑務手あるいは運転手といつたような職種の者、さらに医療関係、病院あるいは診療所におりますところの医者看護婦等関係、あるいは研修所教官等いろいろありますが、これにつきまして現在は俸給表が画一的に同じでありまして、あらゆる職種を通じて一つ俸給表というものが定められておるのであります。  まず第一に私ども考えておりますところは、やはり俸給表というものは、その職種別にその職務実態と申しますか、内容にふさわしい俸給表をつくるのが妥当ではないか、こういうふうな見解のもとに、ただいまのところは大体七つ八つ程度職種にわけまして、職種別俸給表をつくりたい、こういう考えが第一であります。その俸給表考えます場合に、従来は生活給という面が非常に大きく取上げられておると思うのですが、これに対して職務給と申しますか、各職種職員が従事しておるその職務内容と申しますか、責任と申しますか、職務給の点を加味して考えて行きたいということであります。さらにまた昇給の問題にいたしましても、従来はその職種のいかんを問わず、一律平等な昇給方法であります。これもはたしてこれが妥当かどうかということにつきまして、私ども大いに考えさせられるものがあるのでありまして、その昇給方法につきましても、各職種につきまして異なつた昇給の率あるいは昇給期間を定めて参りたいと考えておる次第であります。その昇給方法を定めます場合につきましても、最初の段階においては大体同じようでありますが、私ども考えました点は、年齢その他経歴から見まして働き盛りといいますか、最も能率を発揮し得る時期、その辺のところに昇給が十分多くできるというふうにも考慮いたしておる次第であります。こまかしい点はいろいろありますが、大体そういうふうに俸給職種別にわけまして、その職種仕事内容その他に適応しました俸給表を定める。またそれに応じて昇給方法を定めて行きたい。大体以上申し上げたようなことが骨子となつております。
  4. 田中織之進

    田中委員長 大体七つないし八つ職種別俸給を作成されるということでありますが、それはこの郵政事業郵便貯金保険、電信、電話等の大きな業務種類による別がありますか。それは別に考慮されないでいわゆる職種一業種の関係職種との間はわけた考え方で行つておるのでしようか。それとも郵便貯金保険その他の部門というように、これはそれぐやはり仕事内容が違つておるのでありますが、それは一本の考え方で、ただ職務内容に基いて七つなり八つなりにわけよう、こういう考えでありますか、どうですか。
  5. 宮本武夫

    宮本説明員 その点につきましては先ほどちよつと御説明申し上げましたが、郵便貯金保険という業務別区別はいたしておりません。そういう区別でなくして、先ほど申し上げました通り管理職、これは郵便局長あるいは課長というような管理者の地位にある者、それから各業務を通じまして内勤に従事する内務者と申しますか、そういう者、また各業務を通じまして外勤に従事する外勤者、大体その三種類にわけたいというふうに考えております。但し先ほど申し上げました通り医者看護婦というような者、あるいはまた研究所の教官というような者、それからまた先ほど申し上げました運転手守衛雑務手その他もございますが、こういうものは業務別と申しますか、その従事しております仕事内容によりまして特色がありますから、それはそういうふうに区別いたして行く、大体さようなことであります。
  6. 田中織之進

    田中委員長 そういたしますと、これが今後の——今回はべース・アツプはやらないという調停案になつているわけでありますが、これに影響を持つて来るわけなんですけれども、従来の生活給基本としたものに職務給を加味するということになりますと、現行のべースは、全体の総わくはべース・アツプをやらないとすれば、ほとんどかわりがないことになると思うのでありますが、その基本賃金の点では現在より変化を来して来るのでしようか、どうでしようか。
  7. 宮本武夫

    宮本説明員 基本賃金につきましては、これを切りかえます場合には、現在のもらつておりますところの給料でもつて切りかえたい、こういうふうに考えております。ただ先ほど申し上げました通りに、昇給方法というようなものが従来とかわつて来る部面がございます。その程度でございます。
  8. 田中織之進

    田中委員長 そこで経理局長にお伺いをいたしますが、今回の調停案基本ベース改訂しないという調停が出ているわけなんですが、それは郵政事業業務上のいわゆる収益増大関係についてどの程度検討をやつたかということは、これは後ほど参考人が来たとき説明を聞いてみないとわからぬのでありますが、先般中村委員長に来ていただいて検討の過程について説明を聴取したときにも、業務量増大は認めるのであるが、それがただちに収益増加となつて数字的に現われて来るかどうかという点の捕捉ができないところに調停委員会として、これだけの業務量増大に伴う収益増があるから、これを企業努力にこたえる意味労働者に還元しなければならぬ、こういう考え方ではつきり数字的につかむことができないというところに、作業というか、調停案の作成の困難を感じていたようでありますから、その点から見て現在の郵政省のとつておる、これは郵便その他の関係でありますけれども料金の問題、それから貯金会計特殊性というような関係から見た業務量増大収益増との関係経理上把握するということについて、何か検討を加えておられるかどうか、この点を経理局長から伺いたいと思います。
  9. 八藤東禧

    ○八藤説明員 私は中村委員長のさような御答弁につきましては、私自身伺いしたわけでないので、御趣旨がどこにあつたか明白でないのでありますけれども、私ども予算を立てます場合におきまして、やはり何といたしましても特別会計建前から、すべて予定収入を立てますのには、業務量が大体どういうふうに動くかということを、大ざつぱではございますけれども過去の実勢等に照し合せまして、それぞれ算出基準というものを、一応各事業当局と打合せましてやつておるのであります。ただおそらくは、中村委員長がどういうふうなお言葉を使われましたかわかりませんけれども、たとえば物数それ自体がふえたといたしましても、それをはがきと封書でもつて考えますと、両方合せまして非常にふえた、全体の数字はふえたけれども、従来第一種であつたものが第二種に移行して行く、最近そういう趨勢が見えるのであります。そうすると封書にいたしましても、その物数増加いたしましてもその間十円のものが五円のものに移行するということになりますと、物数増加それ自身が、必ずしも料金の正比例を保つたところの増収にならないというようなことはもちろんあり得るわけであります。しかしいずれにいたしましても郵便なら郵便におきましても、前年度上げましたところの収入に対して、明年度どのくらい上るかということは、物数を基礎として算定しておることには間違いないのであります。またたとえば保険等におきましても、御承知のように郵政特別会計には簡易保険特別会計から業務特別会計に関する費用を繰入れてもらつておりますが、その際におきましてもたとえば保険募集目標がどれだけで、推定件数はどれだけであるといういろいろなデータを集めまして、これに要するところの人件費であるとかあるいは諸手当あるいは物件費というものを算定して行くのでありまして、この場合におきましても一応の目安は、業務取扱い量とあわせて考えておる次第であります。以下その他十幾つかの各会計からの繰入金につきましても、それぞれ単金を設定いたしまして、その単金にかける物数取扱い数というものによつて繰入金を予定する、こういうことにいたしておるのであります。
  10. 田中織之進

    田中委員長 私のお伺いしたいのは、郵政料金政策において、料金の決定については公共性を加味して、必ずしも独立採算的な立場で原価をカバーしておるかどうかという点には問題があろうかと思います。しかし現実には従業員企業努力によつて、それが数字的に出て来るか、出て来ないかは別問題として、私は事業収益増大ということは認めなければならぬと思います。従つて数字的に収益増大が出て来なくても、端的にいえばそれをベース・アツプなり——かりにベース・アツプができないといたしましても一時金、賞与的な性格を持つような形ででも、企業努力に報いるという形の給付がなければならぬのは、これは私は賃金実態だろうと思うのです。そういう点で郵政事業経理面においては、そういう純経済的な動きというものがすぐ数字に現われて来ないような完全でない面があると思うのですが、そういう点を経理当局としては検討されておるかどうか、こういう意味合いです。いかがでしよう。
  11. 八藤東禧

    ○八藤説明員 一つ企業でその収入増加する増加しない、売上高がふえたかふえないか、ふえたとして、経費を落したあとの収益がふえたかふえないか、ふえたところの収益は、はたして企業努力によるか、技術の改良によるか、あるいは市場価格の変動によるか。なるほど委員長の御質疑の通り売上げ総額につきましても、あるいは収益それ自体についても、いろいろの要素が入つているのだろうと思います。まあこれもまた各種の産業によつて非常に複雑な考え方をするのだろうと思いますが、郵政省事業について考えてみまして、郵便料金収入というものがある。物数がふえた。そしてその物数がふえたといたしまして、もしもかりに全然人員がふえていなくて、現在人員だけでもつてそれをまかなつた、そして異常に物数がふえて、その結果収益上つた、こういう場合におきましては、従事員企業努力によつてふえた物数を処理したとい5ことは間違いないでありましようし、従つてその限りにおいて、政府としても従事員努力にこたえなければならぬということは当然だろうと思います。それが型のごとくではございますが、毎年度予算総則等においてうたつておりますところの弾力条項発動というものであり、あるいはまた勤勉手当等の制度の創設というあたりにも、そういうものは含まれておるのであろうと思います。従つてども経理当局として、収益がどれほど上つた、それはどれほどの部分がはたして従事員企業努力によつたかということは、計算器的に算定することはむずかしいのでありまして、もとよりただいまいたしておりません。しかしながら弾力条項発動というような点とか、そういう点につきましては、極力従事員企業努力に報いるように、収益上つた場合にはこれにこたえる。たとえば増収対策手当についても考えるということについて努力はしている次第であります。
  12. 田中織之進

    田中委員長 もつと端的にお伺いいたしますと、最近デフレ経済の中で、従事員努力によつて貯蓄目標をはるかに越えるように増大して来ていると思います。貯金業務という点から見れば、私はやはり貯蓄金額が、しかも零細な貯蓄を集積したものが増大するということは、それだけ収益増加しておらなければならないと思う、のです。ところが現実貯金会計の面から見ますと、一般会計からということになるのでございますから、資金運用部から郵政省の窓口を通じて集められて来る貯金額に対する経費の支弁というようなものは、今年は六分三厘でありますか、そういうものに限定されて来ておる。これが純粋に従事員努力によつて貯金目標を突破して増大して行くということに伴う収皆増が、ただちに経理面にはね返つて来ない郵政経理面における特性だと思います。そういう面をつかまえて、結局物価水準が上つておらないから賃金を上げないという考え方もあるでしようけれども一つには、そういう面で収益が上つておるということがわかれば、もうかつておる部分を出せばよいのだというわかりやすい考え方が、どうも取上げられない一つの原因になつておるように思うのです。端的に申し上げれば、そういう意味貯金増大伴つて、その貯金運用することによつて出る収益増というものがあるのでありますから、それが一般会計からの繰入れということに現実になつておるとするならば、この繰入れを増大せしめることによつて、この給与を引上げて行く原資がそこに確保できるわけです。現在これは予算できまつておるから、その金を一般会計からさらに繰入れさせることは困難だから、給与を上げることはできないということでは、企業努力というものを強制することはできない、こういうふうに私は考えるのですが、そういう点については、むしろ一般会計からの繰入れを、特に貯金会計等の場合には大蔵省折衝するだけの熱意が郵政当局にあるかどうか、割つて伺いすればそこまでのところを聞きたいのです。
  13. 八藤東禧

    ○八藤説明員 貯金関係において、貯金取扱い高増加とか、あるいは預金現在高の増加、それに対してどういうふうに従事員企業努力を反映させるかということになりますと、これは労務政策といいますか、給与政策と申しますか、あるいは郵便貯金事業経営政策になりますので、私からこれくしかじかと申し上げる立場にもございませんし、またそれはお許し願いたいと思うのであります。  お尋ねの最後の点でございますが、御承知のように郵便貯金会計というものがきわめて苦しい経営状態にあることは、二十八年度の決算におきましても、すでに数十億のいわゆるバランスシート上の欠損額が存在しておること、あるいは二十九年度の予算におきましても、四十数億円の繰入金というものを、普通の大蔵省との間の利率協定以上に計上しておるということで明らかでございます。この点につきまして、これはかねがね私ども内部におきましてもいろいろと考えており、また大蔵省その他各方面からも批判、検討をいただいておる次第でございますが、郵便貯金の場合におきまして、それでは一体赤字経営なのかどうかという点は、一概に言えないのであります。簡易生命保険のように運用募集経営というものが一体になつております場合においては、一応まとまつた観察をすることができるのでありますが、郵便貯金の場合におきましては、受信と授信、この二つの部面が分離しておりますので、これを一本に考えて、金融機関としてこれの経営バランスシートがどうであるか、あるいは企業経営の仕方がどうであるかということは、なかなか一概には批判できないところであります。しかしいずれにいたしましても、ただいま申しました巨額な経費が必要とされておるのでございます。これは申すまでもなく毎年大蔵省方面折衝いたしまして、必要な経費の繰入れには全力をあげてやつておる次第でございます。また三十年度予算におきましても、先般本委員会において御報告申し上げました通り昭和二十九年度の四十六億円に対しまして、八十億円を上まわる特別の経費を予定しておる。しかもこれはうちうちの割つてのお話でございますが、そのうち法律によつて授信をつかさどつておる預金部、これの剰余金というものは全額でおそらく八十億円くらいになるだろうと思いますが、そうするとたとえば五十億円くらいしかないとするならば、残る三十数億円というものは一般会計、言いかえるならば国民の税金負担において事業費を満たして行かなければならないという点において、ただいま大蔵省に対しまして、このような巨額の繰入れについて鋭意折衝努力を重ねておる次第でございます。
  14. 田中織之進

    田中委員長 なおその点について伺いたいのですが、後ほど調停委員会の方の関係が参りましたら関連してお伺いすることにいたします。  ちようど郵務局長がお見えくださつたそうでありますから、昨日の閣議でも問題になつたように伺つているのですけれども、例の韓国竹島とおぼしき島を取材した郵便切手の問題について、これを添付して来た郵便物を返戻するとか、あるいは配達をしないとかいうような意見が、非公式のようでありますが出ておるように新聞紙を通じて伺つておるのであります。この取扱いについては万国郵便条約との関係もあつて、もちろん日本領土であるということについて、こちらから国際司法裁判所へ提訴するということで、現に外交的な問題に移されている紛争の島を取材したところに問題があるのだろうと思いますが、この韓国切手取扱いの問題について郵政当局見解を伺つておきたい。
  15. 松井一郎

    松井(一)説明員 韓国日本海の中にある竹島、これは韓国の方では独島と言つておりますが、これを取材した切手を三種類最近において発行しておることは事実でございます。御承知のようにこの竹島については、日本側日本側領土権を主張し、また韓国側はこれに対して反対のことを言つて、現在国際的に紛争中のものでございます。一体こういうものを切手の取材に取上げることは——郵便切手というものが本来世界の郵便をお互いに協力して円滑に、主義、主張を越えて流通せしめるという趣旨から見て、たいへんこれはけしからぬ行為でございます。相手国を非難したり、相手国に対する特別な宣伝の意図を持つということは、万国郵便条約基本的な精神からしても、なすべからざることであることは申すまでもないところであります。しかしときどきこういう問題が起きております。古くは一九〇〇年に、パラグアイとウルグアイでしたかの間における領土の係争問題中に、ある部分切手図案にしてこれを発行したということが紛争の端緒になつて、とうとう両方の国で戦争まで始めた歴史があります。また最近におきましても、ユーゴスラビアにおいて、隣接国ユーゴスラビアの国策に反するようなことをプロテスト的に抗議するような切手を出したということについて、ユーゴスラビアはこれを否認すると同時に、この切手張つた郵便物は全部これをつつ返すということを宣言しております。普通常識的にはそういうことは起り得べからざるものと考えるが、ときどき起るのであります。韓国の例もまさにその例であろうと思います。しこうしてこれを郵便物取扱いいかようにするかということについて、私ども見解を次に申し述べておきたいと思います。  万国郵便条約は多数国が締結しておる条約でございまして、特に条約文内部において、こういう場合は郵便物取扱いを拒否してもよいということが認められない限り、原則として郵便軸は配達する義務を持つておるということは言うまでもございません。そこで郵便条約上、外国から来た郵便物取扱いを拒否するのは、一体いかなる場合であるかと申しますと、これはいおゆる郵便禁制品という場合に規定されておるわけであります。郵便禁制品は、常識的なものといたしましては、あるいは爆発物であるとか、風俗壊乱物であるとか、あるいは著しく不道徳なものであるといつたような典型的な例をあげているほかに、名あて国において輸入または頒布を禁止せられたものを取上げております。これは各国各国にそれぞれ主権があり、また各国国内情勢も違うというところで、その国の内国法制輸入または頒布を禁止せられたものは、当然に万国郵便条約郵便禁制品としての取扱いを受ける、かような建前になつております。ところで一体今、日本国内において輸入を禁止するとか頒布を押えるといつたような法律がどこにあるかということになりますと、現行法といたしましては、関税定率法にございます。御承知のように関税定率法において、公安を害し、または風俗を乱すおそれがあるといつたようなものに対しては、これの輸入を禁止するという措置が当然なされるわけであります。そこで竹島図案にし、韓国郵便というものを表面にした切手は、現に一箇月約三万通くらい参つております。これを張つたものは日本公安を害すという認定がなされますならば、当然郵便禁制品ということに条約上なる。従つて条約に基きましてこれを送り返すことは当然できるのであります。しかしその公安を乱すかどうかということの認定になりますと、これは郵政省あるいは私ども郵便関係者だけが簡単に認定するわけには行かない。これは結局一つの事実の認定問題として、時の行政府最高責任者において認定さるべきものだろうと私は思つております。少くとも現在における法律上の直接の権限を持つている大蔵大臣——もちろん大蔵大臣といえども、これは一個において簡単にきめられるべきものではなくして、当然閣議においてそういう認定がさるべき性質のものであろうと私は思つております。これが認定されない限り、これを禁制品として送り返す理由は持たないのであります。先ごろ来いろいろ新聞紙上では報道されているのでありますが、ただいま現在までのところ、閣議として正式に関税定率法に基き公安を乱すという認定を下した段階にまで、ちよつと行つておらないように伺つております。そこで私どもも、この問題についての日本政府の最終の意図を至急に決定していただきたい。それまでは実は郵便の当務者としては、これを送り返すとか何とかいう手出しができない状況に置かれておるので、今関係方面といろいろ連絡折衝中でございます。
  16. 田中織之進

    田中委員長 そういたしますと、郵務当局としてはこの問題について行政府の最終決定を待つ、事務的な手続は現にとりつつある段階だ、こういうように理解してよいわけですか。
  17. 松井一郎

    松井(一)説明員 私どもといたしましては、もしも公安を害すということで、関税定率法に該当するものであるということにでもなれば、すぐにでもこれの措置に移る準備はしております。しかし最終の決定を見ておらないので、まだ正式な発動はしておりません。
  18. 田中織之進

    田中委員長 もう一度伺います。それが関税定率法に抵触するかどうかというようなことについて判断を求める手続をとるのは、最終的には内閣ということになるのですが、やはり当該の郵務当局ということになるのですか、それとも関税関係の大蔵当局なのですか、その点はどうなんですか。
  19. 松井一郎

    松井(一)説明員 その問題に関与するところなら、郵政大臣でも大蔵大臣でも、こういう問題があるが、これは関税定率法に該当するのではないかということを申し出ることはいいと思います。
  20. 田中織之進

    田中委員長 なお切手図案なり意匠なりについて、相手方の独立を否認するとか、そういう関係のものはやつてはならない。これは一種の国際道義的なものですけれども、そういう概括的な規定は条約の中にはないのでしようか。
  21. 松井一郎

    松井(一)説明員 現在の条約にはございません。ということは、そういうことを一、二回提案された時代もあつたのでありますが、いやしくもUPUに入つている各郵政庁が、そういうUPUの基本精神を無視したような郵便切手を発行するなんということは、現実においてはほとんどあり得ないのではないかという意見から、これを成文化しておらないという意味でありまして、決してこれを自由にすることがUPUとして当然許容されているといつたようなものではございません。
  22. 田中織之進

    田中委員長 関連して御質問ございませんか。——この問題は、竹島の帰属の問題についての国民感情の問題もあると思うのです。しかし国民感情的な問題から、ただ国内的立場だけで処理するということになると、将来こつちがどんなミスをやらぬとも限らぬ場合に、報復的に処置されるというようなことも——これは万国郵便条約を批准して参加しておる日本の国の立場から見れば、一面慎重な態度をとらなければなりませんし、また現に国際司法裁判所へこちらが提訴したが、向うが応訴しないというようなことで、実力で解決するわけにも行かないし、それかといつて外交的に裁判的に話合いをつけるということについて相手方が応じないというような、端的に言えばきわめて困つた立場に置かれておる問題だけに、取扱いについてはひとつ慎重にやつていただきたいということを、委員長として希望だけを申し述べておきます。
  23. 田中織之進

    田中委員長 なお調停委員会の高木委員長なり中村委員長は、本日はおいで願えないといたしましても、第二小委員会労働者委員の山崎委員に御出席を願つて、一応山崎委員も本調停案の作成及び決定に参画しておる立場で、参考意見を聴取いたしたいと思いましたが、ただいま調停委員会の近藤事務局長が参りまして、山崎委員も本日どうしても出席をいたしかねるという連絡がありました。今回の調停案の問題の出し方については、調停委員会の態度そのものについても、率直に申し上げると委員長としてもいろいろ不満を持つておるわけでありますが、現に紛争が続いておるだけに、調停委員会としての任務もあつて、本委員会に出席を願うことを希望いたしておつたのでありますが、ただいま重ねて月曜日に中村第二小委員長の出席を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 田中織之進

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決します。  調停委員会側から責任ある説明を得られない以上、本件についてこれ以上の調査を進めることは、調査の目的にも合致しないかとも思いますので、月曜日に引続き調停委員会側の出席を求めて審議を続行することにして、本日はこの程度でとりやめたいと思います。なお二十九日は臨時国会召集前日で、御多忙中ではありましようが、午前十時より開会いたしたいと思いますから、御出席のほどをお願いしておきます。  本日はこれで散会いたします。    午後二時四十六分散会