○長戸
説明員 ただいまお尋ねになりました
印紙犯罪の概要、それから公判の審理状況につきまして概略御
説明申し上げます。
いわゆる
印紙犯罪事件は、警視庁刑事部捜査第三課に対して、全太烈等が薬品を使
つて収入
印紙の消印を除去しておるというような投書がございました。それに基いて捜査を進めて、
昭和二十七年三月二十五日、全太烈外三名の朝鮮人を逮捕しまして取
調べた結果、その使用済みの
印紙の出所、販売元が判明いたしました、爾後これに関連して広範囲の捜査が開始されたのであります。同事件は東京地方検察庁を初め、横浜、浦和、千葉、水戸、宇都宮、長野、新潟、大阪、神戸、津、岐阜、山口、鹿児島、秋田、札幌、こういうような各地方検察庁において処理して参つたのでございます。検挙者は合計約七百名を越えまして、うち現在までに起訴された者は三百人を越えております。不正
印紙の額面総額は五千万円を越えております。これは立証のできたものだけでございますから、実際はもつと多いかと思いますが、この立証は非常に困難でございまして、立証のできたものだけが五千万円を越えております。そのうち実際に登記等に不正使用せられました
印紙の額面総額は約三千二百万円に上
つております。不正
印紙の出所は通商産業省、東京通商産業局、特許庁、農林省及び水産庁がほとんど大部分を占めておりまして、検挙された被疑者を職業別に見ますと、
印紙ブローカーと見られる者が約半数近くでございますが、司法書士、法務事務官、それから
印紙売り
さばき人、この
印紙売り
さばき人は東京で十名の
程度でございますが、ほかの地方でも若干名あろうかと思います。
会社登記係、通産事務官及び技官、農林事務官及び同雇、
郵政事務官、この
郵政事務官は東京地検で扱いました者は七名でございます。その他特定
郵便局長等を含めますと約十名
程度かと思いますが、はつきりいたしません。それから弁理士等の順位にな
つております。起訴の罪名は事案の
内容によりまして、
印紙犯罪処罰法違反、窃盗臓物罪等種々であります。これは役所から持出すというのが多うございまして、結局窃盗になるということであります。
印紙犯罪処罰法違反が最も多数に上
つております。なお不正
印紙の入手使用等に関連いたしまして、贈収賄罪で起訴されておる者が東京地検管内だけで八名ございます。
現在の公判の審理状況につきましては、各地検とも順調に進捗いたしておりますが、特に東京地検におきましては百七十一名起訴を見ておりますが、現在までにすでに四十名について第一審の判決の言い渡しがございまして、そのうち二名を除いて全部有罪の言い渡しがなされております。有罪の言い渡しのあつた者のうち、十三名につきましては、最高懲役四年六箇月から最低懲役八箇月の実刑が言い渡されております。無罪の言い渡しを受けた二名につきましては、判決を慎重に検討した結果、いずれも検察官において控訴を申し立て、現在東京高裁に係属中であります。他の地検において起訴された事件についても、逐次判決の言い渡しがなされておりますが、その刑の最も重いものは懲役四年、最低は四箇月の実刑の言い渡しを受けております。検察庁でも事案の
性質にかんがみまして、審理促進について万全の配慮をしておるわけでございますが、東京におきましては、当事件に対する専任の立会い検察官をきめておる、裁判所においても全事件を
一つの裁判部で集中して審理をしておるという状況でございます。
こういうふうな
印紙犯罪につきましては、非常に不正か行われましたので、法務省におきましても、本事件の発生と同時に、消印の厳格な励行方をあらためて通牒いたしました。引続き各種
印紙の見本を全国の各法務局に配付すると同時に、
印紙の真偽の鑑別方法についても通達をいたしております。さらに真偽の鑑別機械を若干
買いまして、主要の法務局に設置し、監察を強化する等、不正事犯の発生を未然に防止することに努めておるわけでございます。本年になりましてからは、日本橋の法務局等特に主要な法務局、要するに
印紙などをたくさん扱う法務局におきまして現金納付の方法、現金を日本銀行に納めて、その領収証をも
つて納入する方法を採用して、
印紙による犯罪の防遏の助けにいたしておるわけでございます。また御承知のように法的にはこれは
大蔵省所管でございますが、昨年の八月一日に
登録税法の一部を
改正いたしたわけでございますが、第十七条の二を新たに追加して、登記所で
登録税を免れるため、偽造、変造または消印除去の
印紙を使用したものを発見した場合には、所轄の税務署に通知いたしまして、その通知を受けた税務署長は、その免れた
登録税額をただちに現金で徴収すべきことを規定しておる、こういうふうな法的な措置もいたしておるわけでございます。