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古屋菊男君 ただいま
議題となりました
精神衛生法の一部を改正する
法律案及び
覚せい剤取締法の一部を改正する
法律案につきまして、厚生委員会における審査の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。
まず、
精神衛生法の一部を改正する
法律案につきまして申し上げます。
御承知の
通り、戦後覚醒剤、麻薬または阿片の濫用による慢性中毒者が多数発生し、その中毒のために心身を害し、ひいては
精神障害者になりつつありますことは、
国民の保健
衛生上まことに重大な問題であると存ずるのであります。このような覚醒剤等の慢性中毒者の瀰漫の状況にかんがみ、その者に適正な医療を施す等の保護を加え、これらの者が
精神障害者に陥ることなく、正常な生活にもどらしめようとするのが本案
提出の
理由であります。
本
法案の内容を申し上げますれば、まず第一に、慢性中毒者については、その症状とその特殊な事情により、
精神病院に入院し治療せしむることが不可欠でありますが、国及び都道府県立
精神病院が現状において非常に少い実情にかんがみ、非営利法人立の
精神病院に対しても設置費及び運営費の一部を補助することができることとしたことであります。
第二は、覚醒剤、麻薬及び阿片の慢性中毒者、またはその疑いのある者について、
精神障害者に関する保護義務者、保護の申請及び通報、
精神衛生鑑定医の診察、知事による入院措置、保護義務者の同意入院、入院者の行動制限、退院手続、訪問指導及び保護拘束等に関する規定を準用することによ
つて、慢性中毒者を入院せしめて医療及び保護を行わなければならない場合、知事が入院措置をとることができることとし、また保護義務者による同意入院の道を開き、さらに退院後は訪問指導を行う等、中毒者の医療及び保護等に関する措置を講じたことであります。
覚醒剤の問題に関しては、本委員会においてきわめて熱心なる研究が行われて参つたのでありますが、その結果、各派共同による本
法案の
提出と
なつた次第であります。
本
法案は五月二十九
日本委員会に付託せられ、同日
提出者山口シヅエ君より提案
理由の説明を聴取した後、ただちに審査に入り、質疑終了の後、
討論を省略して採決に入りましたところ、本
法案は全会一致可決すべきものと議決した次第であります。
次に、
覚せい剤取締法の一部を改正する
法律案について申し上げます。
覚せい剤取締法は第十回
国会で
制定されましたものでありますが、本法施行鳳来の実績に徴しまするに、覚醒剤の濫用による弊害は一層はなはだしいものがあり、覚醒剤の常用者は百万ないし百五十万人であるといわれています。注意すべきことは、これらの常用者は、多く直接、間接に犯罪とつながりを持つものであり、かつ、その多くは次代の
日本を背負うべき青少年であることであります。このような覚醒剤の濫用による弊害を防止するには、この弊害を各種の啓蒙運動により一般に周知させることも必要でありますが、現在一般に流通している覚醒剤が密造品であることからしまして、まず覚醒剤の密造を取去ることが必要であります。よ
つて、罰則の強化を中心として、取締法施行以来運用上に支障のある諸点を改正し、最近の状況に即応せんとしたのが、この
法案提出の
目的であります。
本法のおもなる内容を御説明申し上げますれば、第一に、この
法律の適用を受ける覚醒剤の範囲を拡張したことであります。第二は、罰則を強化し、密造、密売買、不法所持及び不法使用を行つた者は五年以下の懲役または十万円以下の罰金に処し、さらに、営利の
目的で、または常習としてこれらの違法行為を行つた者は、七年以下の懲役に処し、なお情状により七年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処することとし、これらの場合において、犯人が所有しまたは所持する覚醒剤は没収することができることとしたことであります。第三は、覚醒剤研究者が、研究のため、厚生大臣の許可を受けた場合に限り、他人に対して覚醒剤を施用し、または覚醒剤を製造することができることとしたことであります。第四は、覚醒剤を保管し得る場所として覚醒剤保管営業所を認め、それに応じた覚醒剤の移動を認めたことであります。第五は、覚醒剤の廃棄について厳重な規定を設けたことであります。
本
法案は五月二十七
日本委員会に予備審査のため付託せられ、二十八
日本付託となり、
提出者参議院
議員高野一夫君より提案
理由の説明を聴取した後、きわめて熱心なる審査が行われたのでありますが、二十九日質疑を終了し、
討論に入りましたところ、
自由党を代表して松永委員、改進党を代表して
古屋委員より、それぞれ希望を述べて賛成意見の開陳があつたのであります。
なお、松永委員より次の附帯決議を付すべき旨の
動議が
提出されました。附帯決議を朗読いたします。
附帯決議
覚せい剤による慢性中毒が青少年等の心身を害しつつある現状にかんがみ、
政府は覚せい剤の製造、施用等の禁止につき速かに万全の措置を講ずべきである。
次いで採決に入りましたところ、全会一致原案の
通り可決すべきものと議決いたし、また附帯決議についても全会一致で付すべきものと決した次第でございます。
以上御報告申し上げます。(
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