○吉川久衛君
農業協同組合法の一部を
改正するという問題は、
農業委員会法の一部を
改正する問題と一連の
関係を持たせて、
農業団体再編成の別称をも
つて、前二回の
国会にそれぞれ政府
提出議案として上程
審議されたことは、
委員長の
報告の通りでございます。
農業団体の系統
組織の
整備をはかり、も
つてその
事業運営を刷新強化して、不振の
農村経済の振興を期さんとするものであ
つたのであります。しかるに、
提案者である政府当局、ことに担当責任者である保利農相の不熱心と、一部には
農業団体は根本的に
整理すべきであるとの強い
意見等もありまして、遂に二回とも
審議未了に
なつたものであります。
最近の政府の大資本に偏向する自由放任の経済政策の結果は、ようやく中小企業や
農村にしわが寄せられる結果となり、不況の徴候が顕著にな
つて来たことは、諸君の樹案内の通りであります。今にしてその対策を樹立するにあらざれば、手のつけられない事態に追い込まれるおそれが強く感ぜられるので、そこでこの
機会に、
農民生活を改善し、立ち遅れたる
農村経済を助長育成するところの
農業団体の
整備強化の問題が今日
国会の課題として検討ざれることは、むしろ当然と申さねばなりません。(
拍手)
農業団体の
整備の問題に関しましては、わが国ほど
農民のためという
団体の多い国は世界にその比を見ないのでありまして、それが完全に
農民、
農村のために奉仕しているかというと、必ずしもそうばかりとは申されない現実があるのであります。そこで、理想を申せば、
農村の
民主化のためにも、
農村、
農民の生活はあくまでも彼らみずからの力によ
つて成長、
発展がくふうされなければならないことは言うまでもないのであります。しかしながら、敗戦によ
つて日本は四割五分の国土を失い、資源は戦争のために使い果し、言うべきほどのものを持
つておりません。しかるに、人口はといえば、戦前六千九百万台のものが、今日では八千七百万を越えております。この狭隘なる国土に厖大なる人口をかかえ、持たざる国の悲哀を身にしみて感ずるとき、貿易不振による国際収支の逆調は日を追
つて深刻とな
つておる。しかも、世界の景気後退の徴候は、国際経済の一環として存在するわが国経済に影響しないわけには参りません。ここにデフレ政策となり、
計画性を持たない現政府の政策は遂に場当りのその日暮しの政治となり、破綻を招来するは理の当然と申さなければならないのであります。すなわち、これを防遏せんがために、もつぱら金融引締め
措置にのみたよ
つて、購買力を抑制し、消費の節約を行い、輸出貿易の振興を企図していたのでありますが、朝鮮動乱による特需、新特需によ
つて資本の蓄積もしくはこれを活用して企業の合理化をはかるべきであ
つたものを、あえてこれをなさず、無為無策に終
つた結果が、今日わが国の物価が国際価格を上まわり、輸出は思うにまかせず、国内の市場も日に悪化の一途をたどり、中小企業の倒産となり、失業者は日に累増の傾向にございます。(
拍手)
それのみならず、年々増加する数十万の新たなる就業希望者に与えらるべき職はなく、
農村のかかえる顕在失業者は、
内閣統計局の調査によれば百七十一万余人といわれております。零細なること世界的特徴を持つわが国
農業経営者が、この失業者をかかえて、その日の生活に希望を失いつつある
現状でございます。一方、
農民の生産するものの主たる米穀は、その価格、供出数量、供出の時期まで一方的に決定されたものが押しつけられている。しかも、その購買する生活必需物資から
農業生産資材に至るまで、すでに統制は撤廃され、買うものは高く、売るものは安い、いわゆるシエーレのために
農民の生活はますます窮地に追い込まれております。自由放任の無
計画の経済施策の行われる社会においては、これは必然の帰結であると申さねばならないのであります。(
拍手)そこで、当分の間わが国
農民はしよせん独自の力をも
つて立
つて行けないことは、零細企業者や未
組織勤労大衆とともに、政治の格別の配慮がなされなければならない、すなわち社会保障の一環としての
農業保護政策が採用されなければならないのであります。
わが国
農業政策の中における最も重要な地位を占める
農業協同組合のあり方についても、その本来の性格はあくまでも民主自立のものでなくてはならないことは私の申すまでもないところでありますが、
農業協同組合法が
制定されましでから今日まで五年有余、諸種の悪
条件と闘いながら、
農業生産力の増強と
農民の経済的、社会的地位の向上をはかり、あおせて
国民経済の
発展に寄与するために努力して来ていることは、これを認めるにやぶさかではないのであります。しかしながら、前にも申しました通り、恵まれない基盤の上に立ち、はげしい経済的、社会的変動と、その間に処する主体的
条件の不十分のために経営不振の状態に陥
つた組合も少くないのでありまして、そのままで放置しがたいものには
整備促進の
措置を講じて来たのでありますが、それにもかかわらず、
組合の
組織、
事業及び経営の現況はなお一層の
整備強化を必要とする部面が少くないので、特に
組合の
指導体制を
確立し、
組合の総合的
指導を行うために、
全国及び
都道府県の区域に
協同組合中央会を設置し、
会員である
組合のために
指導教育を
全国的規模において統一的かつ効果的に行わんとすることは、今日まで
組合の
指導組織として
全国及び
都道府県を区域とする
指導農業協同組合連合会等がありまして、主として
会員たる
組合のために
指導教育事業を
行つて来たものが、法制上の性格、
組織、
事業及び財務の状況から見まして十分でなく、
農業協同組合系統
組織の
全国的な
組織活動に必要であるところの統一性と機動性を確保し、十分に
組合事業の振興と経営の刷新及び安定をはかり得るような
指導教育を行うことが困難であ
つたからであります。従いまして、この点は今回の
改正によりまして相当な効果を期待することができると信ずるものであります。
前述しました通り、わが国
農業はその基盤きわめて脆弱でありますので、自主独立でなくてはならない
農業協同組合も、少くともその
指導機関に関する限り、特段の財政援助の方策を期待することは、またやむを得ないことと考えるものであります。従
つて、
都道府県中央会に
加入することは自由であるが、
加入すると同時に
全国中央会の
会員とな
つて、
法律上の保護、便益を受けることは当然でありまして、民主主義に反するがごとき説をなす者のあることは、ま
つたくその真意を解せざるものと申さなければなりません。(
拍手)
農村の
実情に即応して、
農民のほかに
農民の
組織する
団体が
組合員として
加入することができるとか、
組合員と同一の世帯に属する者とか営利を
目的としない
法人の貯金や
定期積金の受入れができるようにしたことも、
組合の
事業分量の拡大をはかり、経営の健全化策として、まことに適切なる
措置と申すべきであると思います。
昨今とみに
農村の金が都市に集中する傾向が強くな
つて参りました。零細なる
農民の金は、何らかの形において、大都市に、大金融機関に集中され、その金は多くはイージー・ゴーイングの道が選ばれ、大企業もしくは比較的大きな企業、しかもそれが非
農業的方面に流用されて、
農村に還元されるものは少いのであります。昨年の救農
国会において政府は低利な営農資金の融資を
行つたとはいえ、その大部分は、何ぞ知らん、
農民みずからが預けた金を随喜の涙で借り受けているのであります。
そこで、
共済事業としての火災、生命等の保険
事業を行い、
農民みずからの生活の安定を期すると同時に、資本の蓄積を行い、自立自営の基礎をつちかい、相互扶助の、共存共栄の
農村社会の健全化をはからんとするものであります。従いまして、
行政庁の
監督規定を設けるとともに、
役員の責任の明確化がとられたことはこれまた当然であります。ただ、
役員の
組合に対する忠実義務を明文化した点は適切であると思うのでありますが、
組合に対する任務を怠
つた場合における
組合及び第三者に対する連帯損害賠償責任に関する
規定において、任務を怠
つた程度、故意もしくは重大なる過失の判定等に慎重な考慮を要する点が必ずしも明確でないのでありまして、これは、他の営利
法人等の場合と異なり、その運用の辛きに過ぎれば、
役員になり手がなくなり、
組合の運営に支障を来すことになることをおそれるのであります。むしろ、この点は、今後少数精鋭主義をとり、常勤
役員の兼職禁止の方途を講じ、待遇改善等の
措置をとるべきではないかと私は思考するのであります。
組合の監督権は本来好ましくないのでありますが、
組合の
実情はいたずらに形式的な
自主性のみを尊重することを許さないものがありますので、当分の間やむを得ないものと考える次第であります。
佐藤洋之助君の提案になる
修正案は、本
法律案の補完をなすもので、きわめて適当なものであり、社会党左の
足鹿覺君の
修正案は、同案中の第七項は行政権の認可の
取消しまたは
解散を命ずる問題でありまして、ただいま
芳賀貢君が
説明された問題でございますが、これは佐藤君の
修正案に盛られておりますし、その他の部分は観念的な理想論として傾聴に値しますけれども、現実はこれをいれるにあまりに懸隔のあることは、はなはだ遺憾とするところであります。(
拍手)
農業委員会法の
改正案に関しましても、国の助成
団体としては、
農民の利益
団体としての農政活動を行わしめることは矛盾するというのでありますが、
農村の
現状は、食糧調整の問題、農地改革の成果の維持等の
農業委員会本来の
使命を達成せしめつつ、
農民の経済的地位の向上と
農民の
民主化を
促進する農政活動をあわせ行わなければならない
実情を考察いたしますとき、時の権力者に助成されるのではなく、制度としての助成の方式を立てることは、現段階としてはやむを得ないものと考えざるを得ないのであります。
社会党の諸君の申されるように根本に触れた
改正をわれわれも企図したこともないわけではありませんが、一挙に踏み切ることは今日の
農村における諸般の現実がこれを許さないので、
本案は、ベスト案とは申せませんが、
現行制度に対してベターであると信ずることができるのでありまして、よりよき方向への一歩前進である
本案に、改進党を代表して賛成の意を表するものであります。(
拍手)
なお、この際特につけ加えさせていただきますが、
日本自由党の安藤覺君が、連日にわたる各党間の
意見の調整にあたり、本二
法案の
委員会通過に尽されたる御努力に対し、心から感謝の意を表する次第でございます。(
拍手)