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1954-05-10 第19回国会 衆議院 本会議 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十日(月曜日)  議事日程 第四十三号     午後一時開議  第一 港湾法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第二 日本国との平和条約効力発生及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う道路運送法等特例に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出)  第三 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 農林省関係法令整理に関する法律案内閣提出)  第五 硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案(第十六回国会内閣提出)  第六 軍事郵便貯金等特別処理法案内閣提出)  第七 日本放送協会昭和二十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書     ————————————— ●本日の会議に付した事件  中小企業倒産に関する緊急質問春日一幸提出)  飼料需給安定審議会委員の選挙  中央建設業審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件  中央更生保護審査会委員任命につき同意の件  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律案内閣提出参議院回付)  日程第一 港湾法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第二 日本国との平和条約効力発生及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う道路運送法等特例に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 農林省関係法令整理に関する法律案内閣提出)  日程第五 硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案(第十六回国会内閣提出)  日程第六 軍事郵便貯金等特別処理法案内閣提出)  日程第七 日本放送協会昭和二十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書  壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案内閣提出)  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う公衆電気通信法等特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案(第十六回国吉田安君外三名提出)  国際連合の軍隊に関する民事特別法の適用に関する法律案内閣提出)     午後三時十七分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわちこの際、春日一幸提出中小企業倒産に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
  4. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  中小企業倒産に関する緊急質問を許可いたします。春日一幸君。     〔春日一幸登壇
  6. 春日一幸

    春日一幸君 私は、日本社会党を代表いたしまして、この中小企業危局に対し、政府はいかなる対策を講ぜんとするものであるか、この際次の諸点について緊急質問を行わんとするものであります。  今や、中小企業の窮迫は日とともに激化し、破産倒産全国各種業態に続出いたしまして、事態はまさに恐るべき段階に至つたと思われるのであります。このときにあたり、政府は、健全財政健全金融を呼号して、いよいよデフレ経済を強行せんとしておるのであります。私どもの最も深憂にたえないことは、この画期的な政策の転換期に際し、吉田内閣中小企業立場を決定的に無視し、加えてその存立をも危うくせんとしておる事柄についてであります。たとえば、過ぐる五月六日、政府融資規制方針通達金融機関に発しましたが、この通達の中には、中小企業への貸出しについては一言隻句も触れることなきのみならず、逆に、融資基幹産業重要産業に重点を置けと指令して、暗に中小企業への資金導入を阻止せんとしておるのでありますが、これが金融難を泣訴してやまぬ中小企業者に対する政府の回答であるのでありましようか。  今や、中小企業の行き詰まりは、すでに不況の度を越えて、全面的破綻直前危機にあると思われるのであります。(拍手)すなわち、東京手形交換所不渡り手形件数は、昨年十月以来次第に激増し、本年度に入り平均一千五百枚を越えておりますが、これはすでに窮乏を唱えた昨年同期の倍の数でありまして、さらにこれは五月六日に至つて一挙に一日で三千六百七十五件という、まさにそれはなだれのごとき絶望的な最悪の様相を呈するに至つておるのであります。手形不渡りすることは、まさに資金操作が万策尽きた姿でありまして、すなわちこれは正比例して賃金における遅欠配の増大を物語るものであります。  中小企業従業員数は一千万人と称せられておりますが、かくて家族を含め数千万にわたる国民の生活が恐るべき危機にさらされておる。このことは政府によつて最も重視されなければ相ならぬと思うのであります。(拍手)現に新聞は借金苦に血塗られた一家心中の悲報を伝え、夜逃げや一家離散の哀話は、ちまたの随所に人の涙をそそつているのであります。一方、税金の滞納は、この窮状をそのままに反映して、本年三月末現在において滞納件数は八百九十三万件、この額は一千百五十八億と、これまたわが国租税制度始まつて以来の最悪の記録を打立てております。まことに中小企業危機はここにきわまれりと称すべく、荏苒今にしてその救済を怠るならば、やがては、その連鎖的共倒れの波及するところ、これは中小企業のゼネラル・パニックヘ、さらに国民経済全面的破綻へと突入することは必至の事柄であります。(拍手)すなわち、わが国の当面するこの中小企業問題こそは、ただに中小企業政策問題たるにとどまらず、国民思想を左右する防衛問題であり、さらに深く救いなく転落して行く人々に対する人道問題であろうと思うのであります。政府は、すべからくこの事態を直視して、政治施策を集中し、もつて中小企業救済補強することは緊急焦眉のことと思うが、政府はこの点に関しいかなる方針をとらんとするものであるか、この際副総理より決意のあるところをまずもつて御明示願いたいと思うのであります。  次に、中小企業金融対策について、大蔵大臣より次の諸点について御答弁を願いたい。  現在政府市中銀行集中融資に対して何らの規制を行つていないのであるが、これは銀行と大企業とのやみ結託による集中融資を助長するものであつて、これは金融機関公共性を聖断し、かつ預金者を危険にさらすものであるから、これが規制を行うことは最も緊急を要すると思うが、本日まであえてこの規制を行わない理由は何であるか、まずこの点について大臣の御所見をお伺いいたしたいのであります。(拍手)  わが党の調査によれば、富士銀行は、日本毛織に対し、単名割引融資十六億、これに商手割引を加えて、その自己資本の三〇%を越える偏向貸出しを行い、三井銀行は、東洋棉花に対し、単名貸出し十三億、その他商手割引を加え、これまた自己資本の三〇%を越える集中貸出しを行つている。第一、三菱、三和、住友を初め、市中銀行は、おおむね、かかる手法によつて、特定の大企業と結託して、ひとしく偏向融資をしてあえてはばからないのであるが、特にC銀行のごときは、日平産業に三億七千万円という実にその銀行自己資本の一〇〇%になんなんとする偏向融資を行つておるのである。現に二十七年度銀行局年報によれば、銀行自己資本の一〇%を越える集中融資は全貸出し額の三〇%を占め、さらに銀行自己資本の二五%を越える集中融資は全貸出し額の一七%を占めるということを報告しておる。すなわち、これは、金融機関の総貸出し額を二兆五千億と見れば、その三〇%、七千五百億は、銀行と結託せる大企業によつて、情実による独占的な系列融資が横行しておるということを明白に物語るものであつてかくのごときはまさに金融政府状態なりと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)およそ集中融資偏向融資規制する事柄は、預金者保護のためにも、金融公共性を貫くためにも不可欠の条件であつて、現に、相互銀行法においても、信用金庫法においても、法律によつて同一企業への集中融資限度率規制を行つておるのであるが、また資本主義本山合衆国政府においてすら、市中銀行に対するこの趣旨規制は決して、怠つてはいないのである。  金融引締めのしわは、今や中小企業へ圧縮されつつある。かかる情勢下において、なおかつ市中銀行の貸出しに対し何らの規制を行わず、これを銀行と大企業の欲するがままに野放しに放任するということは、ひとり中小企業者立場のみならず、預金者の安全を守るためにも断じて看過すべき事柄ではないでありましよう。(拍手)しかるに、五月六日付大蔵省金融機関あて融資規制方針の示達によれば、一企業に対する貸出し自己資本の五割を越える等の偏向貸出しは改めよなどと示指しておるのであるが、これは五割以下ならばさしつかえないという意味であるのであろうか。世論は三割を越える偏向融資に憤激し、一割を越える集中融資にきびしく非難を浴せておるが、天下刮目の中に発せられたこの通達が五割を越える貸出しを云々するなど、まことにさたの限りである。かくのごときは、金融機関から閉め出されつつある中小企業の怨嗟をしり目に、さらに銀行と大企業とを密着せしめるものであつて、かかる通達銀行が現に行つておる集中融資の抑制には何ら役立つものでないと思うが、大蔵大臣はこの銀行局長通達にはたして目を通しておられるであろうか。政府は、二十九年度予算において、国民金融公庫と中小企業金融公庫に対し何がしかの財政投融資を行つたが、この程度のものは、しよせんはすずめの涙であり、焼石への水でしかあり得ない。政府は、中小企業への資金導入促進助長するために、今こそ銀行手ヰにあるこの二兆数千億の資金対象として、この際少くとも偏向融資を是正するため適切な立法措置もしくは強力なる行政措置を講ずる意思はないか。大蔵大臣より責任ある御答弁を願いたい。  次に、同様趣旨にのつとり、銀行中小企業向け融資促進させるために、中小全業向け貸出しに対し税法上特別の優遇措置を講ずる意思はないかどうか。すなわち、中小企業への貸倒れ準備金損金算入限度額をこの際特に引上げるべきであると思うが、大蔵大臣はこの点に関しいかなる見解をお持ちであろうか。現行法人税法施行規則第十四条によれば、貸倒れ準備金として損金への繰入れを認められておる額は一律に貸出額の千分の十であつて、ここに貸出し対象、貸出し金額の多寡について何らの差異を認めていないことはこの際特に考慮を要する点である。由来、中小企業への貸出しは、一件金額が低く、かつその信用調査に手数と費用を伴い、従つて銀行といえども、それが営利事業である限り、しよせんは採算上不利な中小企業金融を忌避して、一件金額の巨大な大企業融資に傾倒することは自然の趣向であつて、これが政策によるてこ入れを必要とするゆえんである。政府は、この際、中小企業金融梗塞激化窮状にかんがみ、当該規則を改正して、特に中小企業向げ融資に対しては貸倒れ準備金損金算入限度率を千分の二十程度に引上げ、もつて中小企業金融を助長すべきであると思うが、大蔵大臣はこの点に関しいかなる見解をお持ちであろうか、切に善処を要望して御答弁を求める。(拍手)  次に、政府中小企業金融機関あて指定預金に関してお伺いをいたしたい。昨年十月、政府健全財政を標倍して、突如として金融引締めに着手したのであるが、爾来政府並びに日銀による金融引締めの成果は、実に次のごとき奇怪なものである。すなわち、昨年十月における内地金融機関に対する政府指定預金預託高は四百二十一億九千九百万円であつたものが、その後逐次回収せられて、本年四月末に至つて七十一億九千万円を残し、この間実に三百六十億が引揚げられてしまつたのである。しかるに、一方日銀市中銀行あて貸出し残高は、これに逆行して、昨年十月三千四百九十五億であつたものが、本年四月においては三千八百億に膨脹し、この同期間において実に三百億の貸出し増が行われているのである。政府並びに日銀は、金融引締めを呼号してはおるが、それは、この計数が明確に示す通り中小企業から引揚げた資金をそのまま大企業への増額融資に充当したのであつて金融引締めの痛棒は、ただひとり中小企業にのみ無慈悲に加えられたにすぎないのである。(拍手)ここに、中小企業はこの痛打を受けて続々と葬られて行くが、大企業は、そのしかばねの腐肉を食らつて、いよいよ繁栄しておるのである。かかるへんぱな、かかる不公正な政治民主憲法のもとに許されてよいであろうか。  さきに、本院の大蔵委員会は、この事態を重視して、特に委員会決議をもつて政府指定預金預託を促し、さらに金融難打開のための緊急措置を講ぜよと政府に申し入れたところである。しかるに、本決議政府に申し入れられて、爾来すでに二箇月を経過した。この決議の中に指摘した不渡り手形の激増と中小企業倒産の続出は、はたして激化の一途をたどつておるが、政府は、今もつてこの決議が求めておる指定預金新規預託を行わず、また必要なる臨機の適切なる施策も何ら講じてはいないのである。今や中小企業金融機関の貸出し資金源は極度に枯渇し、現に相互銀行信用金庫支払い準備金はその基準率二〇%を割つて十六、七パーセントにまで食い入り、まことに危険な貸出しを行つておるのである。政府は、この時にこそ、委員会決議にこたえて、中小企業への資金供与のため、すみやかに中小企業金融機関新規預託をなすべきであると思うが、大蔵大臣の御決意はどうであるか、責任ある御答弁をお願いする。  次に、二十九年度金融債の各金融機関あて配分について、この際政府方針を御明示願いたい。この金融債の総わくは、昨二十八年度は三百億であつたものが、本年度は一躍百九十億に圧縮せられたのであるが、このわく内に占める商工中金債への割当高こそは、今や中小企業者の重大なる関心事である。今や、商工中金は、ここに中小企業全面的不況が因果相応じて、特に貸出し資金源に悩んでおる。国家財政による大幅の救援を要すること、まことに切なるものがある。政府は、すべからく、この百九十億のわく内操作においても、中小企業資金充足のため、特に商工中金に対し最大限の資金供与の方途を講ずべきであると思うが、本件に関する大蔵大臣の御所見を承りたい。  次に、中小企業貸倒れ債権並びに回収不能債権に対しては、税法上この際格別の措置を必要とすると思うが、政府はこれに対しいかなる方針を有するものであるか、次の諸点についてお伺いする。たとえば、現行税法による貸倒れ債権損失算入は、民法による破産の宣告、その地会社更生法に基く債権たな上げの決定等、はなはだしく迂遠の証明を必要とするものであつて、これは手形不渡り倒産が続出する現下の経済情勢中小企業の現状にはなはだしく合致しないものである。政府は、この際、税法を改正し、貸倒れ認定基準緩和して、実際の損害と帳簿上の架空の利益との間に介在する税法上の矛盾を是正すべきであると思うが、大蔵大臣見解はどうであるか。さらにまた、貸倒れに至らない不良債権保持者並びに大企業支払い遅延により経営困難となつているものに対しては、租税の無利息かつ長期り延納を認める等、中小企業の当面せる不当かつ不合理な租税の重圧をすみやかに軽減すべきであると思うが、本件に関し、あわせて大蔵大臣の御所見を承りたい。(拍手)  次に、大企業下請企業への代金支払い促進対策は、国会において累次にわたつて強調されたところであるが、いまだ的確な成果を収め得ざるのみならず、この傾向はさらに内証悪化傾向にあることは、まことに遺憾にたえないところである。中小企業困窮の素因の一部がこの大企業の横暴なる支払い遅延に基因することを政府は特に重視すべきである。本件に関し、公正取引委員会は、この下請代金支払い遅延に関する不公正取引認定基準を規定したとのことであるが、本日いまだその成果のあがらざるは、その認定基準がなまぬるいためか、もしくは公取がその機能を発動していないかであると思われるが、この際横田公正取引委員長から、本件に関する行政管理の状況について権威ある御答弁をお願いする。さらにまた、通産大臣本件に関しいかなる行政指導を行つているか、あわせて御答弁をお願いする。  最後に、わが国経済の趨勢にかんがみ、この際、政府会計並びに政府関係機関需品購入は、その一定の歩合を規制して、これを中小企業へ発注せしめるの立法措置を講ずべきであると思うが、これに対する政府見解についてお伺いする。思うに、一般会計特別会計を初め、公社関係その他の政府関係機関物件費購入高は優に年間一兆円を越える巨額に上るものと思うが、これらの購入によつて中小企業有効需要を確保することはきわめて適切な施策なりと確信する。現に、アメリカ国防省予算においては、同様の趣旨にのつとり、中小企業への発注割合規制しているほどであつて、かかる提唱の行われるのはすでにおそきに失するとさえ思われるのである。ここに海外輸出の急速なる進展の望み得ない現在、その有効需要を確保するために、政府並びにその関係機関需品は当然国産品を限つて採用し、かつその定割合中小企業に発注することは、けだし当然にして不可欠の案件である。政府はこの種の法的規制を行うの意思はないかどうか。さらにまた、この趣旨にのつとり、予算決算及び会計令を改正して、中小企業協同組合に対し、農協の場合と同様に、政府との売買契約にあたり、随意契約を結び得るよう適切なる措置を講ずべきであると思うが、この点に関し、緒方総理より高い政治的視野に立つた御答弁を承りたい。  以上を中小企業危局救済のために速効ある緊急の政策として、政府の御方針をお伺いした次第である。  なおこの際申し述べておきたいことは、今やわが国全域にみなぎるこの中小企業危局は実に吉田内閣六箇年の治績の所産であるが、これに反し、為替管理による輸入原料独占の制度は、現にパルプ原料を独占せしめて人絹工業六社を太らし、綿花を独占せしめて紡績工業十社をこやし、羊毛を独占せしめて紡毛産業五社を繁栄せしめ、塩を独占せしめてソーダ工業に巨富を与え、原糖を独占せしめて精糖工業六社を肥満せしめる等、さらにMSA援助の小麦の取扱いをめぐつて一部業者の暗躍跳梁を許さんとしている。まことに中小企業困窮をよそに、外貨九億六千万ドルの基礎物資輸入を通じ、これら一部少数の大企業は時を得顔に驚くべき大繁昌を続けているのである。また、造船疑獄のごとき悪逆の手法が講ぜられて、基幹産業への財政投融資は必要にして十分なる額が供給されておる。さらにまた、庶民大衆に対しては、昭和二十九年度において、間接税増徴三百六十四億、所得税増徴二百三十億、計六百億の大増税が行われておるが、一方、大企業に対しては、価格変動準備金貸倒れ準備金の損失繰入れを初め、十数項目の租税特別減免措置によつて、実に六百億の大減税がなされておるのである。一体、政府は、かかる従来の方針をさらに堅持し、将来にわたつてもこれを推進するの方針であるのであろうか。救いなき絶望者たちは、過日本院傍聴席からビラを放ち、先日は総理暗殺の目的を持つた一テロリストが総理邸に侵入した。人は天を恐れ、政府国民を恐れるをもつてとうとしとする。ほうはいとして潮の満ちるがごとく、国民の怒りは全域をおおつて高まりつつある。政府がその行きがかりの一切を捨てて、祖国と民族のために深く決するの時は今である。  願わくば、深甚なる反省と検討を加えられて、わが国経済の原動力である中小企業危機と、これに携わる数千万国民の安危のために、以上質問せる諸点に対し、政府はいがなる施策をもつて臨まんとするのであるか、誠意ある御答弁を期待して、私の緊急質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  7. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  昨今の沖小企業状態に対しましては、政府は重大な関心を持つておるものであります。政府としては、元来中小企業産業上、社会上に占める位置の重要性にかんがみ、各般の施策を今後一段と推進して参りまして、その地位の安定と強化をはかりたい。これがためには、中小企業金融難緩和のための措置を講じまするとともに、中小企業組織化の拡大及び充実に努め、また設備の近代化等による合理化促進をはかつて参りたい、さように考えております。  それから、政府物件需品中小企業より購入するように立法化したらどうかという御意見でありますが、これも一つの御意見とは存じまするけれども、国の経費の使い方としては、需品購入につきましては、公平性と申しますか、国に有利な使い方をするという点を考うべきであると考えております。会計法規では競争を原則といたしておるのは御承知通りであります。この会計原則をくずすことは、政府としては望ましくないと考えております。(拍手)     〔国務大臣小笠原九郎登壇
  8. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 中小企業金融については、政府においても、予算その他においてもあとう限りの措置を講じており、今後ともこれを怠らざることはもちろんであります。  市中銀行集中融資に対して何か法的規制をする意思はないかとい、りことでございましたが、法的に規制する意思は持つておりませんけれども、できるだけ実情に即して中小企業に貸し出すよう配慮をいたしたいと考えております。融資方針としては、資金高利的使用を除く意味で先ごろ法案出したのでございますが、自己資本の二分の一以上の貸出しを戒めたのも、銀行集中融資を抑制する趣旨から出たものであります。  税法における貸倒れ準備金については、中小企業に対して厳に優遇措置を講ぜよということでございますが、現在の千分の十を千分の二十にして中小企業に交付すべきであるとの御意見一つの構想だと考えるのでありますが、しかし、中小企業との分界線及び手続上の諸問題等もありますので、とくと研究してみたいと考えております。  さらに、指定預金は現在八十三億二千九百万円に上つておりますが、しかし、これも実情に即して今後考えてみます。  ざらに、金融債商工債券に多く割当てよということでありますが、この点は考慮いたしますけれども、本年は金融債の総額が非常に減少いたしておることは御承知通りでございますので、従つて多くの割当は事実上困難ではないかと考えておるのであります。  さらに、税法を改正して、税制における貸倒れ債権不良債権認定緩和せよということでありますが“この貸倒れ債権不良債権についての認定は、実情に即してこれをやつておることは御承知通りであります。しかし、それがなお実情に合わぬという点があるなら、よく実情を調べた上で、これが緩和に努める所存であります。(拍手)     〔国務大臣愛知揆一君登壇
  9. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) お答えいたします。私に対します御質疑は、大企業下請支払い促進具体策でありますが、親企業下請支払いの不当な遅延は、政府といたしましては、これを独禁法第十九条の不公正取引の一態様といたしまして、同法により取締ることの方針を確立いたしたわけでございます。すなわち、過般公正取引委員会におきまして、機械、兵器等下請に依存する程度の多い産業におきまして、下請からの納品後適当な日時を経過するもなお支払いを行わない場合におきましては、支払い不当遅延であるという認定基準を明らかにいたしまして、公表をいたしたわけでございます。これに基きまして、目下、通産省と公取委員会とが相協力いたしまして、大企業下請支払い実情を鋭意調査いたしております。その不当なるものは、独禁法に基きまして、公正取引委員会において勧告または審判等を行うことにいたしておるわけでございます。(拍手)      ————◇—————
  10. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) この際飼料需給安定審議会委員の選挙を行います。
  11. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 飼料需給安定審議会委員の選挙については、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
  12. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。議長は、飼料需給安定審議会委員に    遠藤 三郎君  山口喜久一郎君    金子與重郎君  山本 幸一君    中村 時雄君を指名いたします。      ————◇—————
  14. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) お諮りいたします。内閣から、中央建設業審議会委員に参議院議員鹿島守之助君を任命するため議決を得たいとの申出がありました。右申出の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。      ————◇—————
  16. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 次に、内閣から、中央更生保護審査会委員に坂野千里君及び金沢次郎君を任命するため本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて同意するに決しました。      ————◇—————
  18. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) お諮りいたします。参議院から、内閣提出日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律案が回付されております。この際議事日程に追加して右回付案を議題之するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  右回付案を議題といたします。
  20. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  21. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立多数。よつて参議院の修正に同意するに決しました。      ————◇—————
  22. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第一、港湾法の一部を改正する法律案日程第二、日本国との平和条約効力発生及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う道路運送法等特例に関する法律等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員会理事山崎岩男君。     〔山崎岩男君登壇
  23. 山崎岩男

    ○山崎岩男君 ただいま議題となりました二法案につき、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、港湾法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案の内容は、港湾施設の範囲の拡大、港務局の業務の整備、港湾区域内等における工事等に対する規制の簡素化をはかるとともに、入港料の徴収手続及び公用負担に対する規定を整備いたそうとするものであります。  本法案は去る三月二十日予備審査のため本委員会に付託され、二十三日政府より提案理由の説明を聴取し、四月二十八日正式に本委員会に付託され、去る七日質疑、討論を省略し、ただちに採決の結果、本法案は起立総員をもつて原案通り可決すべきものと議決いたしました。  次に、日本国との平和条約効力発生及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う道路運送法等特例に関する法律等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案趣旨を簡単に申し上げますと、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定によりまして日本国内にある国際連合の軍隊に与えられる待遇は、日米安全保障条約により日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊に与えられているものと同程度であることを原則としておりますので、この原則に基き、国際連合の軍隊に対する道路運送法、道路運送車両法、水先法及び航空法の適用につき、アメリカ合衆国の軍隊に対すると同様の特例を定めることとし、関係特例法に所要の改正をしようとするものであります。  本法案は四月十九日運輸委員会に付託され、翌二十日政府より提案理由の説明を聴取し、去る七日質疑を省略、討論に入りましたところ、日本社会党を代表し、楯兼次郎君は本法案に反対の意思を表明されました。  かくて、討論を終局、採決の結果、起立多数をもつて法案は原案の通り可決すべきものと議決いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  24. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) まず、日程第一につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。  次に、日程第二につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  26. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  27. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第三、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案日程第四、農林省関係法令整理に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員会理事小枝一雄君。   [小枝一雄君登壇
  28. 小枝一雄

    ○小枝一雄君 ただいま議題と相なりました、内閣提出農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案農林省関係法令整理に関する法律案の二法案につきまして、農林委員会におきまする審議の経過並びに結果の大要を御報告いたします。  まず、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  農地、農業用施設、林業用施設並びに漁港施設等、農林水産業の基本的施設が災害をこうむりましたる場合、すみやかにこれが復旧を行い、もつて農林水産業生産力の維持とその経営の安定を期する必要がございます。この目的達成のため、去る昭和二十五年第七国会において成立いたしましたる現行法に基きまして、国は個々の災害復旧事業を行う者に対し直接補助をいたして参つたのであります。しかるに、年年累増する災害の事業量、件数等からいたしまして、国が個々の災害復旧事業施行者に直接補助金を交付し、末端の事務に至るまで直接の責任を負うことは事実上不可能であり、また補助指令は国が行つているにもかかわらず、その支払いは都道府県に委任している等、複雑な制度の結果、権限にも不明確な点があり、これらがまた不正不当事項発生の一大原因をなしているとも考えられますので、これらの関係を整理いたし、大規模のものは直接国が全責任をもつて復旧に当り、小規模のものについては都道府県が責任を持ち、国はこれに対する補助と監督に当ることといたしまして、国と地方との権限を明確にいたす等所要の改正を施し、もつて災害復旧事業の円滑かつ公正なる遂行に資さんといたし、本法案提出されたのであります。  本法案は去る四月二十人目付託となり、同日提案理由の説明を聴取の上審査に付し、改進党金子委員、社会党足鹿、井手両委員、同じく社会党川俣委員の各委員から御発言があり、特に本法案と密接な関係にあり、目下大蔵委員会において審議中の補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律案にも言及せられたのでありますが、詳細は速記録に譲りたいと存じます。  本月七日質疑を終了後、討論を省略、採決の結果、全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。  次に、農林省関係法令整理に関する法律案について申し上げます。  行政事務の簡素化、行政事務運営の改善につきましては、各方面に強い要望がございますので、政府におきましても、この要望にこたえますため、現行法令の整備改廃につき検討を加えて参りましたる結果、農林省関係法令中、とりあえず整理を要するものにつき廃止または改正をいたす目的をもちまして、ここに本法案提出されたのであります。すなわち、明治初期の太政官布告以下農林省関係法令ですでに死文化している入法令を廃止いたしますとともに、蚕糸業法につきましては桑園の登録制度を、また家畜改良増殖法につきましては家畜人工授精師の届出義務を廃止することを内容といたしたものであります。  本法案は去る四月三十日付託となり、五月六日保利農林大臣より提案理由の説明を聴取いたし、次いで七日質疑を行い、社会党川俣委員から行政事務の簡素化及び行政事務運営の改善に関する基本方針等について御発言がございました。  本法案は、趣旨、内容とも明瞭簡単で、各委員とも異論がございませんので、これをもつて質疑を終了、ただちに討論を省略、採決の結果、全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。  以上をもつて御報告を終ります。(拍手
  29. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  30. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  31. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第五、硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。通商産業委員長大西禎夫君。     〔大西禎夫君登壇
  32. 大西禎夫

    ○大西禎夫君 ただいま議題となりました硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案の通商産業委員会における審議の経過並びに結果につき御報告申し上げます。  硫安が化学肥料の大宗として食糧生産上最も重要な生産資材であるとともに好個の輸出商品であることは申すまでもないところであります。しかるに、最近西欧諸国より割安の硫安がアジア諸国の市場に進出して参りましたため、国際競争は一段とはげしくなつておるのであります。事態をこのまま放置するとき、わが国硫安生産業者は、輸出を断念するのみならず、生産をも縮小せねばならなくなると思われるのでありまして、かくつては、硫安の生産原価は一層高騰し、ために、消費者である農民にも現在以上の高価で硫安を販売せざるを得なくなるとともに、従来の輸出市場を永久に喪失する結果となります。かくのごときは、わが国経済の自立達成上大いに寒心すべきものと言わねばなりません。従いまして、このような事態を一刻も早く除去するためには、硫安工業の合理化を急速に行いまして、国際的に割高なわが国硫安の生産コストを国際的水準にまで引下げ、輸出条件を有利ならしむるため、何らかの法的規制を必要とするのであります。  次に本法案の要旨を申し上げますと、第一に、政府は、硫安工業の合理化促進するため、生産業者に対し合理化の勧告を行うとともに、これに必要な資金の融通のあつせん、その他適切な措置を講じようとするものであります。第二に、臨時肥料需給安定法に定める需給計画に基いて、硫安を買い入れ、これを輸出するため、硫安生産業者の出資による日本硫安輸出株式会社を設立しようとするもの等であります。  本法案昭和二十八年七月二十五日通商産業委員会に付託されましたので、同年七月二十七日政府委員より提案理由を聴取いたしました。本法案の審議は、昨年七月二十人目より本年五月七日まで八回にわたり行われました。なお、本法案と一体不可分の関係にあります臨時肥料需給安定法案をも議題として、農林委員会と三回にわたり連合審査会を行いましたが、審議の詳細は会議録に譲ります。  五月七日本法案に対する質疑は全部終了いたしましたので、ただちに討論採決を行うつもりでおりましたところ、同日小川平二君外十六名より修正案が提出されましたので、修正案及び原案を一括して討論に入りました。自由党を代表して福田一君、改進党を代表して山手滿男君はそれぞれ賛成の討論をされ言したが、日本社会党の加藤清二君、日本社会党の加藤鐐造君はそれぞれ反対されました。採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案は多数をもつて可決すべきものと修正議決されたのであります。  なお、修正案の内容は、さきに本院において修正議決された臨時肥料需給安定法案の修正に伴うものでありますので、その説明を省略し、会議録に譲りたいと思います。  以上で御報告を終ります。(拍手
  33. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。永井勝次郎君。     〔永井勝次郎君登壇
  34. 永井勝次郎

    ○永井勝次郎君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題となりました硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案に対しまして反対をいたすものであります。(拍手)  本法案は、一つ硫安工業合理化対策であり、一つは硫安価格調整対策としての輸出会社法案であります。前者は、合理化の名によつて二百三十余億円の融資を確保せしめんとするものであり、後者は、実質的の二重価格を合法化し、あるいは将来における赤字補填の補助金をねらおうとするものでありまして、ともにわれわれの許容し得ないところであります。  反対理由の第一は、硫安工業合理化対策諸点についてであります。政府は、硫安工業の合理化について、必要に応じ生産業者に勧告することができる、必要な資金の融通をあつせんするものとするとなつておるのでありまするが、合理化の内容と目標とそのプログラムは明らかではなく、いたずらに海外から機械の輸入を急ぎ、過剰生産となり、出血輸出となり、国内農民への赤字転嫁となる悪循環を繰返しているの感がいたすのであります。いやしくも合理化と言うからには、企業に対する正確な診断が基礎にならなければならない。合理化の推進にあたつては、他産業との関連と総合性を用意されなければならない。しかるに、そういう基礎的条件は何ら整えられておらないのであります。合理化の中心課題は生産コストでありますが、政府は、有権的に調整する方法がないという理由によつて、あいまいのうちに、ほおかむりをしておるにすぎないのであります。また、現内閣の自由放任経済政策の中から硫安工業だけを引出し合理化を独走させようとしておるのでありますが、たとえば、電解法工場では、電力不足のため稼働率は設備能力の五五%内外であり、電力料金の値上げはただちにコストに大きく響いて来るのであります。ガス法工場におきましては、稼働率は九〇%内外でありますが、石炭コークスの問題、あるいは重油ガス化についても、重油の輸入量に左右されるなど、独立しては合理化は推進し得ないのであります。さらに、政府合理化対象を全メーカーに置いているのでありますが、コストを二割近く切下げ、国際市場において競争力をつちかおうということは、しかく安易なものではないのでありまして、網羅主義ではその実を収めることはできないのであります。  アジア地帯は、肥料生産において世界の真空地帯と言われております。アジアの農耕地は世界の三〇%を占めており、消費する窒素質肥料は、日本を除いて三百五十万トン、その生産は、日本を除いて、インドその他においてわずかに二十万トン、地理的立場から言いましても、経済的条件から考えましても、まさにわが国の硫安工業を飛躍的に伸張せしむべき機会でありまして、外交的にはもちろんのこと、経済的には総合的、計画的施策を推進することが肝要であろうと考えるのであります。しかるに、常に政府の援助に期待するか、あるいは二重価格によつて国内農民の搾取にあぐらをかき、価格の協定によつて独占利潤をむさぼるに汲々としておるような硫安業者の現状におきましては、この機会を正しく生かす力とはなつて現われて来ないのでありまして、その意味において、合理化の名によつて資金二百三十余億円を融通するにとどまり、根本的な合理化の解決の追求をしない本法案につきましては反対せざるを得ないのであります。  反対理由の第二は輸出会社法案であります。輸出会社は、資本金五億円程度、硫安生産者の出資で創設いたします。輸出は一本に統制する、輸出価格は国内価格に転嫁しない、出血輸出で生じた赤字は輸出会社に積み立てておいて、やがて合理化促進によるコスト引下げによつて、そこから生ずべき黒字によつて赤字を消して行く、独禁法の適用を除外するというのでありまするが、一見して明瞭でありまするように、子供だぼしのごまかしにすぎないのであります。競争は相対的なものでありますから、こちらだけ合理化ができて、世界の相手国が足踏みをしているというような、うまいわけには行かないのであります。国際市場における価格差二割余を引下げて黒字を出すということは容易なことで塗ありません。それを、赤字を積み上げておいて、この黒字で消して行くというようなことは、計算的には全然つじつまが合わないのでありまして、また国内においては国内価格の公定がなされるわけでありまするが、生産原価が明らかでない以上、はたして適正な価格であるかどうかの判断は困難であります。従来においても輸出価格には転嫁されていないのかどうか明らかにはされていないままに見送られて来ておるのであります。しかし、出血輸出で騒いだ昭和二十七年、二十八年におきましても、硫安生産業者は、多い者は二億数千万円、少い者でも二千万円程度の利益をあげておるのであります。輸出が出血でないか、あるいは国内農民への転嫁か、そのいずれかであることは明らかであります。国内の農民は、米価については統制を行い海外価格よりずつと安い価格に抑制され、硫安は海外農民には安く国内農民には高く、いかにしても納得し得ないという叫びが本法案提出せしめるに至つた原因にもなつておるのでありますが、農民の要望にこたえる案としては、あまりに誠意のない、あまりにごまかしに満ちた内容であると言わなければならぬのであります。(拍手)最近の硫安価格は一かます八百五十三円、会社側の発表しております生産原価は最低七百六十四円、最高八百六十円で、協定価格は最高のコストを基準にとつておるのであります。これらの事情から推察いたしましても、輸出会社案は赤字分を積み上げて行くというどころではなく、農民への転嫁を合法化するものであると言わなければならないのでありまして、われわれは断じて認めることができないものであります。(拍手)  反対理由の第三は、本法案の方向を決定すべき吉田内閣の経済政策についてであります。吉田内閣は、農民や中小企業や勤労者をしぼり上げて、大企業への財政投資、集中融資を行つておるのであります。貿易においては為替管理を行つて、国際経済から日本経済を遮断し、国内独占企業の独占利潤を擁護して来ておるのであります。従つて、国内においては原料高の製品安となり、輸出面においては出血輸出による国内価格への転嫁、すなわち二重価格として広く行われておるのであります。こうした経済政策の中における硫安工業合理化の性格がいかなるものであるかは、ここに喋々するの要はないのであります。合理化の重点課題である生産原価をあいまいにして、今後の公定価格に手かげんを加える余地を保留し、事実をごまかしてまかり通ろうとたくらむがごときは、農民の立場からも国民経済立場からも断じて許せないところでありまして、われわれはこの法案に対して断固反対をいたすものであります。  特に、吉田内閣は、疑獄と汚職に、醜を天下にさらしておるのであります。海を行けば造船疑獄、陸を行けば陸運疑獄、里を行けば保全汚職、地下を行けば地下鉄汚職、今や日本は汚職の泥沼と化しておるのであります。(拍手)この責任への反省もなく、利権的臭味の濃い、かくのごとき法案を通そうとすることは、方面をかえた汚職の店開きとも見られるのでありまして、ここにわれわれは断固この法案に反対の意を表明するものであります。(拍手
  35. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 中村時雄君。     〔中村時雄君登壇
  36. 中村時雄

    ○中村時雄君 私は、ただいま上程されました硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案に対し、日本社会党を代表して反対の理由を申し述べんとするものであります。(拍手)  本法案は、さきに衆議院を通過して目下参議院において審議中の臨時肥料需給安定法案とともに、一昨年秋、いわゆる硫安の出血輸出として全国農民に特に深刻なる衝撃を与えました国際価格と国内価格のいわゆる二重価格の問題を契機として法制化されたものであります。この二法案が、不当に高い硫安の国内価格を引下げる手段として、硫安工事の合理だを促進するとともに、農民のために一定の数量を確保し、最高価格を設定することによつて価格の安定をはからんとする趣旨については、われわれは原則的に何らの異議もないのでありますが、しかし、両法案とも、その内容並びに実施上予想される成果について検討してみますと、所期の効果を収めるためにはきわめて不徹底の感を免れないのみならず、多くの疑惑を抱かざるを得ないのであります。臨時肥料需給安定法案については、幸い同僚農林委員諸兄の努力によつて相当の修正が行われた結果、原案におけるある程度の不安を除去することができましたので、われわれはこれに消極的ながら賛成の意を表した次第であります。しかるに、これに最も関連の深いこの硫安工業合理化に関する法案においては、依然としてなお多くの疑問を持つものでありまして、今ここにこの二、三の点を明らかにして、遺憾ながらこれに反対せざるを得ないという理由を表明したいと思う次第であります。(拍手)  まず、価格の引下げを行わんとすることでありますが、これらの内容においては、このような合理化の行われるべき計画性も、また当事者たるメーカに対する義務づけも、この法案では何ら行われていないということであります。すなわち、政府の説明によれば、五年間に百六十億の合理化資金を供給することによつて、一トン当り五ドルないし六ドルの価格引下げを行うというのでありますが、このように価格を規定する以上、これに基く根拠がなくてはならないと思うのであります。しかるに、先般各メーカーより、秘密文書といたしまして、開発銀行にこの金の借入れをしたときに提出しました生産費を見てみますと、先ほど永井委員も申しましたように、この項目すべてに隔たりがあるということは、各会社の合理化に対する熱意の不定を物語つており、単に各会社に有利な生産費を計上しておるということであります。このような基礎の薄弱な、かつ不明確な生産費をこのまま見のがして、政府が無条件に認めるということは、政府がこれら会社に対して、ただ単にできるだけ融資をしてやろうというにすぎないと思うのであります。しかも、メーカー自身はこの目標を達成するために何ら積極的な義務を負うことにならないことを意味するものであります。このことは、現在の自由党政府の中途半端な経済政策に原因するものであつて、完全な計画経済は行われず、そのため政府は十分な責任ある保障を与えることもできず、また業者もその成果について十分の責任を持たないという結果を招来して来るのであります。従つて、本法の実施によつて、ただいたずらに肥料資本家の思うつぼとなり、単なる資本家の救済に終るということは、私ははなはだ遺憾と思うのでございます。(拍手)  さらに、融資の面を見ますと、その半額以上は開発銀行を通じて政府の財政資金に依存せざるを得ないというのであります。しかるに、MSA援助受入れ後の日本経済は、兵器産業が中心となり、食糧増産を含む平和産業は今後一層縮減されるであろうということは、多くの実例が示すように、火を見るよりも明らかなのでございます。すなわち、この法案は通過しても、かんじんの裏づけとなるところの資金は十分にできないこともほぼ確実でありまして、この意味からいたしましても、本法案が資本家の救済となる公算大なりと言おざるを得ないのでございます。(拍手)  次に、反対の第二の理由は、硫安輸出会社の性格とその経営上の問題であります。硫安輸出会社設立の趣旨としては、第一に、生産と輸出とを一応切り離すことによつて、輸出上の損失がただちに硫安の国内価格に影響することのないようにしたことであり、第二に、輸入国との取引において、わが国の輸出を一元化することによつて業者の地位を強化すること、第三に、肥料の需給計画に基いて輸出の計画的実施を行うこと等により、無計画性による需給並びに価格上の不安を除表することにあろうと思うのであります。しかしながら、第一の生産と輸出とを経理上切り離すところの措置はあくまで一時的のものであります。リンク制による輸入を認めることによつて輸出による損失をカバーする措置を考えられぬこともありませんが、かかるリンク輸入制は往々にして不急不要物資の輸入を招くか、あるいは現在問題になつておる砂糖問題に起つたことく一般消費者に転嫁さすことになり、個々の業者が行う場合と違つて、輸出会社が行うには、おのずからそこに一定の限度が生れて来るのでございます。このことはどういうことかといえば、国際価格との差を償うに足る利益をあげることは、この法案通りではとうてい想像もできないということを意味するものでございます。そうすれば、一体政府の言う、五年後において輸出会社の買入れ価格との差から生ずる赤字はいかにして処理されるのでありましようか。会社の自己負担と口で言いながら、結局は、長い期間においては、国内価格に転嫁するか、あるいは政策上の理由によつて国庫が負担するかであり、結局国民全体がこれを負担せざるを得ないという結果が出て来ると推測できるのでございます。(拍手)  私は、会社の真の目標は、合理化によるコストの引下げが着々進行し、国際市場における競争にも優位を占め、輸出も十分伸びて、業者自身の正当なる利益によつて後年清算されるということでなければならないと思うのでございます。そのためには、先に申し上げました通り、将来のコスト引下げに関する何らかの保障もし、またメーカー自身に対してこれを義務づける政策的考慮を払わなければ、このよろなことは残念ながらとうてい望み得ないのでございます。しかるに、本法案に最も重要なこの規定が何ら盛られてないということは、私はこの法案が一時しのぎの糊塗的な政策であると断ぜぎるを得ないのでございます。(拍手)  さらに輸出会社に対する第二点として指摘されますことは、輸出業務の一元化並びに計画化によつて輸出の合理的発展を行わんとするということであります。これもあくまで肥料生産の合理化や輸出の順調な発展が行われてのみ初めて期待されるものであります。しかるに、これらの点に対する保障は河一りありません。かえつて、順調に行かない場合、輸出会社の実現により硫安資本のカルテル化がこの一角より促進せられ、たとえば、国際市況が悪化すれば、自由経済のもとに器いて当然国内価格の引下げとなつて現われ、あるいは逆に国内価格をつくり上げようとする業者の発言権を強化する手段となることは、火を見るよりも明らかでございます。さらに重大なことは、輸出会社がメーカーの出資会社であるということであります。このことは政府並びに肥料審議会の監督権を非常に弱め、肥料資本家の独善性のもとに農民が隷属的取扱いをされるということは、過去に行われた事実からいつても、私一人の心配ではなかろうと思うのでございます。  以上申し述べましたように、この法案は十分なものとは言えないのであります。もし、かりにこの会社が肥料輸出の促進また輸出価格と国内価格のさや寄せという国策的使命に基いて出発するならば、これが業務の適正を期するために、国家が最大の関心を払つて法案の目的達成に援助すべきであり、これがためには、いわゆる国策会社もしくは公社に準ずる組織上の考慮を払つてこそその目的は達成されるのであつて、この点、本法案はきわめて不徹底のそしりを免れないと思うのでございます。(拍手)  この法案に対しまして、われわれは、ただ単に反対のための反対ではなく、十分なる検討のもとに修正を行うべきであろうと思うのであります。すなわち、政府の考えている硫安をつくらないことが硫安の合理化であるという考え方を是正し、肥料需給安定法の関連からして、この硫安のみにとらわれず、肥料全般の肥料政策としてこれを取上げ、カリあるいは燐鉱石の輸入肥料も加味いたしまして、輸出入会社としてこれは取上げるべきものであろうと思うのであります。しかるに、この検討を要する時間が十分にないことを私はまことに遺憾と思う次第でございます。  肥料の需給と価格に関して最大の関心を払いつつある農民にとつては、もちろん将来性あるわが国肥料工業の健全なる発展を望む立場よりしましても、本法案がきわめて期待はずれの内容を持ち、依然として肥料資本家の利益に奉仕せんとする精神に貫かれておるということを、私は現在明らかにしたつもりであります。(拍手)だが、しかし、もしもあくまでかような法案を多数の無定見の力で押し通さんとするなれば、今般の与党内における汚職、疑獄問題がこの法案の裏面にも起り得る可能性を十分はらんでいるということを御注意申し上げる。(拍手)  この意味において、最後に私は吉田総理に一言申し上げたいのであります。吉田総理は権力あるものを最高のものと考えていらつしやるかもしれませんが、ことわざにもあるように、非は理に勝たず、理は法に勝たず、法は権に勝たず、権は天に勝たずと言いますが、今般の汚職、疑獄事件は、指揮権の発動によつて法律が権力に屈した実例をわれわれはまざまざと見せつけられたのであります。(拍手)だが、しかし、この反面、このことは吉田内閣が全国民を敵として戦いをいどんで来たと言つても私は過言でないと思うのでございます。(拍手)しかも、この罪の結果を恐れた吉田総理を取巻く一連の人たちは、これを糊塗せんとして新党結成を指示されたことくであります。この新党といろ美名のもとに、方法論として政策をたてにし、その実は、側近をバツク・ボーンに、総理の選挙という目標を掲げて、選挙の結果多数をもつて再び吉田総理をその上に居すわらさんとする魂胆であります。(拍手)しかし、現実はどうでありましよう。家の子郎党たる自由党内部においてすら吉田総理たな上げを叫ぶ者が予想以上に多いため、現在では驚きの余りこれに水をささんとしておるのが真実の姿でありましよう。大衆の声は天の声であります。よく聞いてごらんなさい。すなわち正義の叫びであります。このような欺隔に満ちた権力を打破せんとして、全国民が津々浦々において今まさに立ち上らんとするあけぼのでございます。  私は一言注意を申し上げ、私の反対討論を終る次第であります。(拍手
  37. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   [賛成者起立]
  38. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。      ————◇—————
  39. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第六、軍事郵便貯金等特別処理法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。郵政委員会理事山花秀雄君。   [山花秀雄君登壇
  40. 山花秀雄

    ○山花秀雄君 ただいま議題となりました軍事郵便貯金等特別処理法案につきまして、郵政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず本法律案提出の理由でありますが、旧野戦郵便局または旧海軍軍事郵便所で取扱われた軍事郵便貯金及び軍事郵便為替並びに旧外地等の郵便局で取扱われた外地郵便貯金、外地郵便為替及び外地郵便振替貯金につきましては、現在までそれぞれ一定の条件のもとで支払いの制限が行われて来た次第であります。軍事郵便貯金に例をとりますれば、昭和二十年八月十六日以降の預入金のうち千五百円を越える部分につきまして支払いを留保する等、それぞれ支払いの制限が行われていたのでありますが、この支払いの制限につきましては従来預金者や受取人等からその解除方を強く要望されて来た関係もあり、かつ今回同様に支払いが停止されておつた一般の在外金融機関の取扱いに関する送金為替及び預貯金について支払い措置がとられることになつたので、政府軍事郵便貯金等に対しましても、在外財産問題調査会に諮問の結果、これらとともに支払い措置を講ずる必要を認め、軍事郵便貯金等の支払いをなすにあたつて必要な特別処理の規定を設けようとして本法律案提出するに至つたものであります。  しかして、その内容とするところは次の通りであります。  第一点は、貯金通帳等に表示されている金額を一定の換算率によつて換算することであります。軍事郵便貯金の預入金等が終戦後の価値の下落した現地通貨等によつて受入れられている部分のある事情を考慮し、この点につきましても、右調査会の答申に基きまして、その取扱い機関及び表示金額等に応じ、一般金融機関の取扱いの例にのつとり、その換算率を適用して支払い金額を換算しようとするものであります。  第二点は、軍事及び外地郵便貯金の取扱いの制限であります。前述のごとく軍事郵便貯金等の金額は換算して支払わわれることとなりますので、取扱いの整一をはかり、事務上の混乱を防止するため、右預金通帳は一般の通常郵便貯金の通帳と引きかえることにいたしまして、軍事郵便貯金等のままでは、払いもどし証書による全部払いもどしのほか、窓口における即時払いや一部払いもどし等の取扱いは行わないように制限しようとするものであります。  第三点は、払いもどし証書等の有効期間の特例についてであります。貯金の払いもどし証書、為替証書及び振替貯金の払出し証書にはそれぞれ有効期間が設けられており、その期間経過の後三年間証書の再交付の請求をしないでおるときには、払いもどし金等を受取る権利が消滅することになつておるのでありますが、終戦当時旧外地等にあつて権利を行使する機会が与えられないまま期間を経過したものにつきましてはこれを救済する要がありますので、これらのものに対しましては、この法律施行の日にその払いもどし証書等が発行されたものとみなし、その権利の存続をはかろうとするものであります。  以上をもちまして、本法律案の提案理由、内容の説明を終つたのでありますが、四月二十四日本法案の付託を受けました本委員会は、数次にわたり会議を開き、まず政府より提案の理由、内容の説明を聴取した後、政府との間に、本法案による支払いに必要な資金の決済関係、特に臨時軍事費特別会計と郵便貯金特別会計との関係、軍事郵便貯金が在外資産なりやいなやの点、本法に規定する貯金の現在高等に適用する換算率設定の根拠等、各般にわたり質疑応答を重ね、慎重審議を尽したのであります。それらの詳細は会議録に譲ることといたしまして、ここでは以下二、三につき御報告するにとどめたいと存じます。  すなわち、貯金等の支払いに対し、預け入れ当時の現地の実情にかんがみ、換算率を適用すると同一の理由により、終戦後の貨幣価値の変動をも参酌するのが至当ではないか、長期間にわたり貯金引出しの自由を有しなかつた預金者等の実情を考慮する必要はないかという質疑に対しましては、その点まことに同情すべき事情があると思うが、終戦後直接資金の受入れが皆無であつた実情と、他の戦争被害者との振合い等の点から見てやむを得ない措置と思う旨の答弁があり、貯金等の支払いが国の債務とすれば、このような特別立法の措置は不必要で、国家補償的支払いのゆえにこの措置が必要となるのではないかという質疑に対しましては、資金関係の限度においては補償的性格を否定し去ることはできないかもしれないが、郵便貯金法の建前からは、引揚者の援護というべきものではなく、まつたく国の債務であつて、これをそのまま支払うのであれば別に立法措置の必要はない、ただ支払いにおいて一定の貨幣の換算率を適用する関係で立法措置が必要となる旨の答弁がありましたほか、最終的には臨時軍事費特別会計等と決済するとしても、この種立法をなすにあたつては、当初において引当て財源の措置方を明確にすべきではないかという疑点につきまし、て政府所見をただすところがあつたのであります。  かくて、委員会は五月六日質疑を終了、越えて五月六日討論に入つたのであります。その際、日本社会党を代表して山花委員より、原案に賛成の意見とともに、支払い金額が貯金等の全額に及ばなかつたことは遺憾である、またこの支払いの原資については一応確保されておるが、最終的な予算措置をすみやかに完了すべきである旨の意見を述べられ、次に日本社会党を代表して吉田委員より、本法案に関してはあらかじめ必要な予算措置を講ずること、あるいは支払い金額が確定しないときには、支払い総額等限度を定めて予算総則において一般会計で負担する旨を明示すべきが原則である、また終戦後の貨幣価値の変動をも考慮すべきであると思うが、木郵便貯金等の性格にかんがみて原案に賛成する旨の意見を述べられたのであります。  次いで、本法案につき採決の結果、全会一致をもつて原案通り可決すべきものと議決いたしたのであります。  次に、各党を代表して羽田委員より提出の  本法実施に伴い支払に要した資金については将来政府一般会計よりこの全額を補填するよう善処すべきで  ある。  旨の附帯決議案を上程、その賛否を諮りましたところ、同じく全会一致をもつて原案通り可決を見た次第であります。  以上御報告を申し上げます。
  41. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  43. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、日程第七とともに、内閣提出壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う公衆電気通信法等特例に関する法律の一部を改正する法律案の両案を追加して一二件を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  44. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  日程第七、日本放送協会昭和二十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う公衆電気通信法等特例に関する法律の一部を改正する法律案、右三件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。電気通信委員会理事原茂君。     〔原茂君登壇
  46. 原茂

    ○原茂君 ただいま一括議題となりました、日本放送協会昭和二十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案並びに日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う公衆電気通信法等特例に関する法律の一部を改正する法律案に関し、電気通信委員会における審議の経過並びに結果を順次御報告申し上げます。  まず、日本放送協会昭和二十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書でありますが、その内容を要約いたしますると、日本放送協会の昭和二十七年度の損益計算は、事業収入としてラジオ関係六十三億七千百余万円、テレビジヨン関係、これは開始後二箇月分でありまして四十六万円、事業支出として、ラジオ関係六十一億三千八百余万円、テレビジヨン関係三千七百余万円となつているのでありまして、差引ラジオ関係では一億六千四百余万円の剰余を、テレビジヨン関係では三千九百余万円の欠損を示すものであります。協会の昭和二十七年度末現在における資産は四十七億八千余万円、負債は二十三億三千八百余万円、差引資本計上額二十四億四千百万円余となつているのであります。なお本件に添付されてありまする会計検査院の検査結果といたしまして、会計検査院においては、特に記述すべき意見はない旨を記載してあるのであります。  電気通信委員会においては、政府及び協会に対し質疑を行い、慎重審議を遂げた結果、本月八日質疑を打切り、討論を省略し、採決の結果、全会一致をもつて本件については異議なきものと議決いたした次第であります。  次に、壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案は、電報の全国均一料金制を壱岐、対馬に及ぼすために、今より六十数年前に制定されましたこの法律が、すでにその使命を果し、実効を失つておりますので、法令整理上これを廃止しようとするものであります。  次に、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う公衆電気通信法等特例に関する法律の一部を改正する法律案は、日本国における国際連合り軍隊の地位に関する協定の実施に伴い、電気通信関係において、国際連合の軍隊をアメリカ合衆国の軍隊と同等に取扱おうとするものであります。すなわち、電信電話料金については公衆電気通信法の適用を排し、有線電気通信設備の設置及び使用等については有線電気通信法の適用を排して、それぞれ日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の定めるところによることとし、さらに電話設備費については、電話設備費負担臨時措置法の規定にかかわらず、その負担を要しないこととするのでありまして、その適用を、料金及び設備費の負担については平和条約発効の日に、有線設備については有線電気通信法施行の日に遡及さぜようとするものであります。  電気通信委員会においては、張る四月十四日、以上両議案の付託を受けまして、数回の会議を開き、政府の説明を聴取し、質疑を行い、慎重審議いたしたのでありますが、その詳細は会議録に譲ります。  かくして、委員会は、両議案につき本日質疑を打切り、討論を省略し、採決の結果、壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案については全会一致をもつて原案を可決し、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う公衆電気通信法等特例に関する法律の一部を改正する法律案については多数をもつて原案を可決いたした次第であります。  以上をもつて報告を終ります。(拍手
  47. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) まず、日程第七について採決いたします。委員会においては異議がないと決したものであります。本件は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本件は委員長報告の通り決しました。  次に、壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。  次に、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う公衆電気通信法等特例に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  50. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  51. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、吉田安君外五名提出接収不動産に関する借地借家臨時処理法案内閣提出国際連合の軍隊に関する民事特別法の適用に関する法律案、右両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  52. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案国際連合の軍隊に関する民事特別法の適用に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員会理事林信雄君。     〔林信雄君登壇
  54. 林信雄

    ○林信雄君 かなり煩瑣な法案に関するものでありますが、できるだけ要約して申し上げます。  ただいま議題となりました接収不動産に関する借地借家臨時処理法案及び国際連合の軍隊に関する民事特別法の適用に関する法律案について、提案の要旨及び委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案は、一言にして申し上げますと、終戦直後旧連合国占領軍の開始した接収不動産につき、接収解除後の権利者間の紛争を臨時的に処理しようとするものであります。すなわち、旧連合国占領軍の不動産接収は、戦後の非常処置であつたにもかかわらず、日本国政府は土地工作物使用令のほかに特別の法律を設けませんでした。これがため、民法の賃貸借や借地借家法の規定では、接収解除後の不動産に関する権利者間の紛争を処理できないのであります。別に平和条約発効後の駐留軍に対する不動産の提供については行政協定に基く土地使用等の法律が制定され、また、すでに戦災地に対しては罹災都市借地借家臨時処理法も制定されております。これら両法律に対する均衡からも、この際接収不動産につき何らかの臨時特例法による解決が必要でありまして、これがため接収不動産の処理を原則的に罹災都市借地借家臨時処理法の規定によつて解決することを目的として本法案提出せられたのであります。  さて、法務委員会におきましてこの法案が問題となりましたのは張る第十三回国会でありましたが、昨年十六回国会において、改進党及び左右両派社会党より提案の運びになりました。しかしながら、不動産所有者と賃借人との利害調整につき議が合おず、第十八回国会まで継続審議となつて今日に及んだのであります。今国会においては、継続審議の法案であるため、委員会における質疑も大してなく、所有権者と賃借権者間の利害調節も結論に達しまして、四月三十日自由党より修正案が提出されました。この修正案の内容は、借家人関係の三箇条を削除することであります。その理由として、接収地における借地権はこの法律により保護する必要があるが、借家権は、建物事情の好転したる今日においては、自由契約にまかすのが適当であるとの見解が述べられました。  かくて、本日すべての質疑を終了し、討論を省略の上採決に入りました。まず、自由党提出の修正案を採決いたしましたところ、全会一致で可決せられました。次いで修正部分を除く原案を採決いたしましたところ、これまた全会一致をもつて可決せられました。すなわち接収不動産に関する借地借家臨時処理法案は修正議決せられた次第であります。  次に、国際連合の軍隊に関する民事特別法の適用に関する法律案につきまして申し上げます。  本法律案は、去る二月十九日日本国及び関係国政府によつて署名されました、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定及び日本国における合衆国軍隊及び国際連合の軍隊の共同の作為又は不作為から生ずる請求権に関する議定書の発効に備え、その実施のため国内法の制定を必要とする事項のうち、民事に関するものについて所要の定めをしようとするものであります。  法案の要旨は二点ありまして、第一は、去る第十三回国会において制定されました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う民事特別法の適用範囲を拡張し、国連軍は同法にいう合衆国の駐留軍とみなし、また国連軍の構成員、軍属及びこれらの者の家族は、行政協定にいう合衆国軍隊の構成員、軍属及びこれらの者の家族とみなすこととしたこと。第二は、合衆国の駐留軍または国連軍の行動に基因する事故の被害者が国連軍のいずれかの派遣国またはアメリカ合衆国であるときは、日本国には損害賠償の責任がないこととしたこと。なお、前述の協定及び議定書には遡及適用の規定がありますので、本案においても、これに対応して、附則で所要の経過規定を設けたこと。以上が政府提案の要旨であります。  さて、当委員会の審議におきましては、おもなる質疑は、日米行政協定に伴う民事特別法の施行状況、特に損害賠償の実績いかんという点にありましたが、政府答弁その他審議の内容は会議録に譲ります。  かくて、五月十日、すなわち本日質疑を終了し、討論省略の上採決いたしましたところ、本法案は全会一致をもつて政府原案通り可決した次第であります。以上御報告申し上げます。(拍手
  55. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 両案を一括して採決いたします。両案中、接収不動産に関する借地借家臨時処理法案の委員長の報告は修正でありまして、他の一条の委員長の報告は可決であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十五分散会