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1954-03-13 第19回国会 衆議院 本会議 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十三日(土曜日)  議事日程 第十八号     午後一時開議  一 防衛庁設置法案内閣提出)及び自衛隊法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑(前会の続)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  防衛庁設置法案内閣提出)及び自衛隊法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑(前会の続)     午後一時十九分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 防衛庁設置法案及び自衛隊法案趣旨説明に対する質疑を継続いたします。床次徳二君。     〔床次徳二登壇
  4. 床次徳二

    床次徳二君 私は、今回提出せられました防衛庁設置法自衛隊法に関し、改進党を代表して質疑を行いたいと存じます。  その前に、簡単にこの二法案の制定に関与いたしました改進党の立場見解を申し述べまして、質疑趣旨を明らかにいたしたいと存じます。  わが改進党は、二年前その立党のときから、国力に相応した自衛軍備創設を主張して今日に至りましたことは、諸君承知通りであります。もとより、われわれは、悲惨な戦争体験に基き、絶対の平和を欲することは何人にも劣らぬところであります。しかし、われわれは、この平和は今日の国際社会では単なる無防備や非武装中立といつた観念的な態度ではとうてい確保できるとは考えておらぬのであります。現在、わが国の安全は、日米安全保障条約により、米国軍隊の手によつて保持されております。しかし、独立した国家が一国の安全をあげて外国軍隊にゆだねるということは、きわめて不自然なことであります。よつて、わが党は、一日も早く必要な最小限度軍備を備えて米国軍隊の撤退をはかるべきであると主張して参つたのであります。  元来、独立国家自衛権を有し、これを行使するため戦力を保持し、軍備を持つということは、独立国の当然の権利であります。かつ、日本国憲法の前文の世界平和の理想も、また第九条の侵略戦争禁止のための条章も、この自衛軍備の保持を禁止するものではないと確信するものであります。従つて、本法案自衛隊のごとく、外国侵略に対して国家防衛する自衛軍備を持つことは、独立国家として一日も早く実現すべきところであり、むしろ今日までこれが実現を見なかつたことを遺憾といたして参つたものであります。(拍手)  これに対し、政府は、従来、直接侵略には日米安全保障条約によつて米国軍隊がこれに当り、わが国保安隊警備隊間接侵略その他の治安維持任務に当るものであり、現行憲法わが国経済事情のもとでは、自衛のための軍備といえどもこれを保持する意思はないという、われわれと異なる態度をとつて来たのであります。しかるところ、政府は、昨年夏MSA援助の交渉を開始するにあたり、にわかにその態度を改めてわれわれの主張に同調し、ここに従来の治安維持を主任務とするところの自衛隊に切りかえることになつたのであります。すなわち、昨年九月鎌倉において行われましたところの重光・吉田会談がこれであります。これに基き、わが党は、国家防衛の問題は一党一派を越えたところの民族的、国家的な重要問題であり、しかも一日も急なるを要するものと考えましたため、しばらく政府の政策の転換の責任を問うことを避け、あえて本法案の作成に協力をいたしたのであります。このような立場から、私は総理大臣及び保安庁長官に対し数点の質問をいたしたいと存ずるのであります。  まず私が総理大臣に伺いたいことは、この二法案実施に関し政府はいかにして国民理解納得とを得んとするのであるかということであります。今日の運びになつたことは、一に国民独立意識の高揚と、国力の回復と、さらに国際情勢の急転に基くものでありまするが、真にその目的を達するためには、背後に国民全体の十分なる協力国民みずからの強い自覚と深い理解が必要であると信ずるのであります。現下、わが国民は、自由民主主義共産主義の両陣営の中間にありまして、直接、間接にその著しい影響を受けておるのであります。しかも、直接戦争の悲惨なる体験をしたわれわれ国民であります。憲法の上から見ましても、政治外交の上にも、あるいは経済財政上にも、また直接日常生活に、いわゆる大砲かバターかの問題といたしまして、きわめて切実な問題に直面いたしておるのであります。それだけ深刻な悩みをいたしておるのであります。  しこうして、この疑問と悩みに拍車をかけましたのが、遺憾ながら政府見解であつたと存じます。すなわち、憲法第九条の解釈を初めといたしまして、ジェット機、原子爆弾等近代装備を有せぬから戦力でない、戦力を有せぬ軍隊とか、あるいは戦力に至らざる軍隊等々のいわゆる戦力問答を初めといたしまして、あるいは国力が許せば再軍備をするとか、あるいはわが国の安全は米国に依存せば可なりとか、あるいは現在わが国にはその経済力なしとか、あるいはわが経済力回復せば戦前のごとき軍備を保有せんとするがごとき、政府の真意はまことにとらえがたく、詭弁をもつて法の解釈を糊塗し、既成事実のもとに憲法改正を行わんとするがごとき印象を与えまして、国民疑惑誤解を生ぜしめたのであります。政府わが国防に関する情勢判断はまつた見当違いであり、政府所信のあいまいで明確を欠いたことは、今日において本法案円満実施につき著しい困難を生ずるおもな原因となつているのであります。これに対し、政府はいかにその責任を感ずるか、総理大臣はいかにしてこの国民に与えた疑惑誤解を一掃し、真に国民に対しその理解協力とを得んといたすのでありましようか、またいかにして真に祖国防衛任ずる自衛隊を育成せんといたすのでありましようか、その対策と決意を伺いたいと存ずるのであります。(拍手)  次に、総理大臣は、政治軍事優先と文民優位に関しいかなる所信を有するか、承りたいのであります。わが国が過去において政治優先原則を守り得なかつたために遂に敗戦の悲劇にまで立ち至つたことは、いまさら申し述べるまでもないのでありますが、自由と民主政治とを保障するためには、軍人権力を適当に制限することが必要であります。このためには、本法案では、自衛隊に関する重要事項はあげて国民を代表する立法機関である国会権限とし、最高指揮命令権力国民から選ばれて執行権を有する総理大臣に与えられており、文官たる保安庁長官がこれを補佐しているのであります。現在の保安庁法では、いわゆる文官優先とし、武官に当る制服職員任用範囲が著しく限定されておつたのでありまするが、私どもは、特に必要と認められる内局におけるところの一定の部局、たとえば装備局長教育局長等にはこれを緩和すべきことを主張して参つたのであります。しかるに、本案におきましては、この制限がまつたく廃止せられたのであります。人事において、制度の運用において、この政治優先原則をいかにして確保せんとするか、伺いたいのであります(拍手)  次に、政治優先の反面におきまして、総理大臣権力集中するの結果、総理専制に陥るおそれなきやについて伺いたいと思います。わが国総理大臣は、内閣を代表する地位にあり、閣僚の罷免権を通じて行政各部を支配する上に、多数党の首領として国会指導し、その上憲法第七条の解散権を持つて常に国会に臨め得るのであります。さらに、法務大臣を通じて警察権を掌握し、加うるに今回は警察法をも改正し、警察権をもその権限のもとに収めんとしているのであります。今新たに自衛隊最高指揮権を掌握するにおいては、その権限は各国の元首、大統領をはるかにしのぎ、他にその例を見ないのであります。一人に権力集中し過ぎるとき、ここに専制への道が開かれるおそれなしとせぬのであります。かかる権力集中を抑制し、民主政治を守るためには、総理はいかなる決意を有せられるのでありましようか、お伺いいたしたいのであります。われわれは、この趣旨をもつて国防会議設置を提唱し、法案中にも織り込まれておるのでありますが、これに関し政府見解を伺いたいのであります。  次にお尋ねいたしたいのは、防衛省設置についてであります。わが改進党は、かねてより国防に関する独立の省を設置することを主張して参つたものであります。現在の保安庁も、今度の防衛庁も、法案に明らかなように、総理府の外局にすぎずして、長官国務大臣ではありまするが、長官としては総理大臣の一下僚にすぎないのであります。われわれが省への昇格を主張するのは、一に国家防衛重要性によるのであります。防衛行政長官は、その組織の長たる地位において、当然内閣に列し、その責任を負うべきでありますとともに、行政組織としても、このような厖大機構総理府に属していることは適切でないと考えるのであります。また、内閣総理大臣自衛隊最高指揮監督権を持つだけでも重要なる任務でありますが、この上に行政長官として軍政命令権を行使することは、権力集中が過度に過ぎると考えるからであります。政府は近き将来においてこの防衛庁防衛省に昇格せしめられる意向があるかどうか、伺いたいのであります。  最後に、政府は、自衛隊の建設にあたつて、いかなる方針のもとにこれを行わんとせられるか、伺いたいのであります。自衛隊は、過去の保安隊とその本質を異にいたしまして、国土防衛を主たる任務とするにかんがみまして、真に祖国防衛使命に徹したる隊員を必要とし、国家社会も右にふさわしいところの栄誉と待遇とを保証すべきではないかと思うのであります。いたずらに保安隊隊員をそのまま引継ぐことなく、新使命に邁進することを宣誓するところの優秀なる者のみを選抜し、たとい人員の減少を見ましても、少数精鋭主義により、将来の自衛隊の基幹として信頼し得る人物をもつて組織すべきであると信ずるのであります。特に保安隊は近来数次の汚職問題等も発生していることはまことに遺憾であるのみならず、幹部養成機関であるところの保安大学の学生の一部さえもすでに左傾し、戦意なき将校が戦力なき軍隊とともにつくり出されているとの批判を聞くのでありますが、この際過去を一新し、魂ある軍隊自衛隊とすべきであると信ずるが、その所信を伺いたいのであります。すなわち、今日は自衛隊の新設の段階であります。隊員基本的精神訓練から再出発を要するのでありまして、新たに教育局を設けましたのもこの趣旨であります。しこうして、今後の拡充は、いたずらに量にとらわれず、人員装備ともに質を旨といたしまして、十分計画性をもつて行うべきものであります。常に国民生活を確保しながら、一は国家財政の見地より、他は防衛産業の育成までを考慮いたしましたところの総合的施策を必要とするのでありまするが、政府長期防衛計画につきいかなる考慮をなしておるのであるか、あおせて答えられたいのであります。  以上をもちまして私の質疑を終りますが、総理大臣並びに木村国務大臣答弁をお願いする次第であります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  5. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  政府国力に応じて自衛力を漸増せんとする方針を今日まで一貫して保持して参つておるのでございます。みずからの手によつてみずからの国を守ることは当然の責務であると考えるのが、その根本の方針であります。また、憲法自衛権は否定していないのでありまして、戦力にあらざる程度の実力を保持することは、憲法上さしつかえないと解しております。この政府方針については、いかにしてこれを国民理解させるかという御質問でありましたが、政府といたしましては、国会論議を通して国民の十分な納得が得られるものと信じております。その意味におきまして、国会論議は特に意義が多いと考えるのでございます。  次に、保安庁法による内局任用次格制限を全部撤廃したのはどういうわけか。政府といたしましては、政治軍事に優位するこの原則は絶対にかえぬつもりであります。ただいまも御指摘がありましたように、旧憲法のもとにおきまして、統帥権独立をいたして、政治が必ずしも軍事の上に優位していなかつたために、太平洋戦争のような悲惨事を現出するに至つたのであります。従いまして、政府といたしましては、新憲法のもとに政治軍事に優位するということは、これはどこまでもこの方針を堅持して、かえぬつもりであります。しかしながら、それと文民の優位ということは、おのずから異なるのでありまして、この旧軍人というものを今回の保安隊に用いなければ別でありますが、用いまする以上、その間に差別を設けずに、おのおの十分にその能力を発揮せしむることが、保安隊あるいは自衛隊を今後発展せしめる上にも最も重要なことであると考えまして、この間の差別は撤廃をいたしたい、そういう考えをとるに至つた次第であります。それだけに、今後この保安大学その他の教育は特に重要性を持つて参るのでありまして、過去における軍人教育が一種のかたわの教育であつた、そのために大戦前事態を引起したところに大きな考うべきものがありますので、特に今後の保安大学その他の専門教育について注意を払わなければならぬと覚悟いたしております。  それから第三に、総理は各種の権力を一身に集中することになるが、この専制を防止する方法を考えているかということであります。これは、御指摘のように、まことに、政治上におきましても、また防衛力関係におきましても、総理大臣が非常に大きな権力を持ちますことは、御意見の通りでありますが、しかしながら、これはおのずから専制独裁者とは違うのでありまして、民主主義のもとにおきましては、すべては国会監督を受けております。この衆議院、参議院に任期が憲法によつて規定されておりますことは御承知通りでありまして、いかなる大きな権力を持ちましようとも、その選挙によりましておのずから政界の分野がかわつて参る、そこに独裁者的な権力を振うことを防止し得る限界がおのずからあるのでありまして、その点は御安心ができると思いますし、また民主主義のもとにおいて、それ以上に強い制度はない。それだけに、国会の権威を高めることが一層必要になつて参るのであります。  防衛庁を将来省に昇格せしむる考えはないかどうかという御質問であります。防衛庁を省に昇格させることは、国家行政組織全体と関連する問題でありまして、今後自衛隊の増強とともに慎重に検討して参りたいと考えております。  爾余の質問に対しましては所管大臣から御答弁申し上げます。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎登壇
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 魂のある自衛隊をつくり上げる、まことに同感であります。魂のない自衛隊をつくつては、これはたいへんであります。われわれも魂のある自衛隊をどこまでもつくり上げたいと考えております。しかしながら、精神教育につきましては、上からの、形式的に型にはまつたような指導は、私はすべきものじやないと思います。いわゆる隊員がみずから盛り上つたところに初めてりつぱな精神ができ上ると確信しておるのであります。そこで、われわれは、自衛隊に向つては、常に自衛隊は国の平和と独立を維持する崇高な任務を帯びているのであるということを深く自覚し、この自覚のもとにすべての訓練その他の教育を施しておる次第であります。この使命に徹すれば、必ずや魂のある自衛隊ができ上るものと確信して疑いません。それと同時に、自衛隊員は、いわゆる国民の信頼を得なければならぬのでありますから、一個の社会人としてもりつぱな人格を積み上げるように、ふだんから修養すべきであるとわれわれは確信いたして、この面からも十分なる研鑚を遂げさせておる次第であります。私は、来るべき自衛隊員は、おのずからりつぱな精神を持つた、すなわち今床次君の言われるような魂の入つた自衛隊員ができ上るものと信じておる次第であります。なお、今度の保安隊自衛隊に切りかえる際におきましては、これは自衛隊法に基きまして宣誓をさせます。宣誓をさせて、この宣誓に基いてすべての方針がきまるわけでありますが、この宣誓に応じない者は喜んで隊を去つてもらうつもりであります。ここにおいて初めてりつぱな自衛隊がつくり得るものと確信しております。  なお、長期防衛計画につきましては、私はしばしば申し上げました通り、これはなかなか容易に計画が立つものじやありませんが、さらばといつて、これをこれなりにおいてはいかぬと思つております。われわれは慎重に考慮いたしまして、なるべく早急に長期防衛計画を立てたい、こう考えておる次第であまりす。(拍手
  7. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 下川儀太郎君。     〔下川儀太郎登壇
  8. 下川儀太郎

    下川儀太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、自衛隊並び防衛庁設置法案に対して、いささか質問を試みるものでございます。  かつて漫画家近藤日出造君が吉田内閣を諷して、かえるががまになり、がまが戦車となつて、その上に吉田総理指揮をとつているの図が描かれておりましたが、まことに描き得で妙、この法案こそその露骨なる姿であると喝破するものでございます。(拍手)  しかも、本案は、表面保安庁法改正のごとく言われておりますが、その内容を一瞥いたしますと、むしろ陸海空にわたる機構性格はまさに軍隊であり、憲法改悪にひとしい重大なる法案と言うことができます。(拍手)なをかつ、MSA並び国連参加とともに当然海外出兵考えられ、この法案は空文化され、露骨なる憲法違反がわれわれの前に展開されると考えられます。(拍手)今日、政府は、みずからの犠牲なくして国民耐乏生活をしい、汚職事件に対する自己反省もなく、政府に対する国民的感情批判——教員諸君政治活動禁止首切り行政改革等弾圧法によつてほこ先をそむけ、その上に民主的警察権力化し、防衛に名をかりて昔日の軍隊に返らんとするこの二法案は、まさにフアシズムヘの前進であります。(拍手民主政治への暴力的行為として、断固われわれは反対するものでございます。同時に、われわれは、この二つの再軍備的法案は、MSA援助につながるアメリカヘの忠誠であり、誓いであり、逆に、大衆の側から見るならば、国民生活を破壊し、国土民族アメリカの防波堤とし、人柱とする、恐るべき性格を内蔵する、いわゆる屈辱的法案と断ぜざるを得ません。(拍手)  しかも、今日、自衛隊防衛庁として塗りかえられる保安庁の現状を見てみるときに、これまた汚職の伏魔殿と言われ、新聞紙上をにぎわした事件は数十に達しております。そのために、遂に第一管区吉田総監は辞任をしておる。われわれは、保安隊の数々の汚職や、保安庁のルーズきわまる入札の実態を見ると、これらの一切が国民の血税によつてあがなわれておることを思うと、われわれははげしい怒りを感ずるものであります。いわんや、それらの疑惑を一掃せずして、厖大予算をもつて軍備計画の第一歩を踏み出すなどは、議会と国民を侮辱する最たるものと言わざるを得ないのであります。(拍手)しこうして、この二法案裏づけ予算は、二十八年度の繰越しと合して九百六十三億でございますが、一兆円の緊縮予算の約一割が汚職と腐敗の防衛費の中に投げ込まれるとするならば、どこに日本の平和と独立が約束されるでありましようか。(拍手)  私は、かかる観点に立つて本二法案に強く対決するとともに、若干その根本問題に触れ、詳細は委員会に譲りたいと考えます。  質問の第一点は、しばしば予算委員会において論争されました防衛定義とその限界についてであります。今日までの近代国家軍隊歴史をひもといても、侵略という名においてつくられたためしはございません。民族と国の防衛の名のもとにつくられ、それがま支配者のエゴイズムと資本主義矛盾の中に侵略にかり立てられたことは、すでに諸君のよく承知しておるところであります。日本に例をとつてみても、満州事変、あるいは日支事変世界戦争歴史はこれを如実に物語つております。しかも、今つくられつつある日本自衛軍は、安保条約行政協定MSA協定の鉄則のもとに、アメリカ要請いかんによつて左右され、みずからを守るのではなくして、アメリカを守るためのとりでとなり犠牲となるにおいては、かつて日本が支配していた満州国軍隊のごとく、まつた奴隷軍のそしりを全世界から受けなければなりません。(拍手従つて、文字通り自衛隊防衛庁日本独立と平和を守るためと解しても、その本質現実はあまりにも隔たりのある姿と言わざるを得ません。よしんばMSA援助を受けておつたとしても、国土に七百有余の軍事基地を提供し、貿易の制限を受け、アメリカ指導のもとに置かれるというような自主性のない国家は一つもないと考えられます。(拍手従つて自衛隊防衛庁創設は、むしろ独立と平和を守るものではなく、その厖大予算と、アメリカに約束づけられた性格は、国民大衆に飢餓と窮乏を与え、ひいては民族最大の不幸をもたらすことを衷心より憂うるものでございます。(拍手)  昔から、日本には、攻撃最大の防備であるという言葉があります。それが真珠湾攻撃ともなつたのであります。それを推し進めて行くと、自衛隊の行動も、現実には侵略に備えるとありますが、やがては攻撃に発展して、過去の軍閥の犯した罪をそのまま受けなければなりません。日本が好むと好まざるとを問わず、アメリカ要請によつて一歩攻撃参戦すれば、自衛は勢い侵略に一転いたします。また、国連加盟MSA受諾伴つて国際紛争の場合、当然日本参戦の義務を負わされるでしよう。いかに憲法において武力行使を禁じてあつても、また自衛隊出動を直接侵略に限られていても、しよせんは共同防衛の名のもとに海外派兵受諾せざるを得なくなるでございましよう。この場合に、自衛隊軍隊ではないと否定し、参戦を拒んでも、国連はこれを見のがしません。同時に、自衛隊性格は、自衛を飛躍して、はるかに日本憲法のらち外に転落いたすでしよう。従つて、かかる見えすいた矛盾、すなわち自衛隊軍隊でないと国民を偽つて増強し、平和運動を抑制しつつ国民感情を再軍備にあおり、憲法を改悪することによつて自衛隊を合法化せんとするところに吉田内閣の恐るべき陰謀があると私は考えるのであります。(拍手)やがてその馬脚を現わすとしても、現実にこの二法案に含まれた政府の意図する防衛とは一体何ぞ。その定義限界について、また国連加盟並びにMSA受諾の場合とあわせて、明確なる答弁関係大臣に求める次第でございます。(拍手)  第二点は、憲法との関係であります。言うまでもなく、憲法第九条においては武力行使を禁じてあります。しかるに、自衛隊法案の直接侵略に対しては、武力行使を規定づけております。言うまでもなく、自衛隊武力行使をするときは、おそらく国際紛争のさ中である。しかるに、憲法においては国際紛争を解決する手段として武力行使を禁じ、自衛隊法案においては武力行使を認めている。明らかなる憲法無視であり違反であると思うが、提案者並び関係大臣はいかなる見解を持つておるか。同時に、憲法に禁じられている武力行使本案に規定づけられた武力行使とは一体どう違うのか。また、政府のいう武力とはいかなることをさすのか。第一の質問と関連して、明確なる答弁をお願いいたします。  第三点は、自衛隊指揮監督に関する問題であります。本案は、最高指揮権総理大臣となつております。かつまた、緊急の場合は国会の承認はあとでもいいことになつておる。これほど危険きわまる規定はありません。たとい国会が不承認の場合は出動部隊は後退しなければならないとしても、もしかりに国民生活と生命を無視するような総理大臣がその指揮監督権を握つた場合、その独善と封建性は、おそらく、東條内閣と同じように、国会を無視し、掌握した軍隊警察権力によつていかなる事態を引起すかわかりません。(拍手)われわれは、第二次世界戦争において、すでに苦い経験と犠牲をなめさせられております。すなわち、自衛隊指揮監督権いかんは、日本の運命と民族の興廃を決すべき重大な問題がお互いの上に背負わされていることを知らなければなりません。もし政府がかかる無謀なる法案を押し進められて行くとするならば、あえて私は言いたい。本案こそ、吉田内閣MSAと引きかえに八千六百万の民族の生命と財産をアメリカにゆだねるにひとしいものでございます。(拍手)いわんや、アメリカの傭兵的自衛隊指揮権がアメリカ一辺倒の吉田内閣にあるとき、おそらくアメリカの意のままに自衛隊は運営されるでしよう。いつも犠牲にされるのは国民であり、もしかりに指揮権、監督権ありとせば、それは国民のものであり、国民会議のもとに誤らざる運営こそが平和と独立を守る民主主義政治のあり方と私は考えます。(拍手)この点に関し、総理及び関係大臣答弁をお願いいたします。  第四点は、前項に関連して、緊急という名において国会の不承認のまま自衛隊出動し、その結果国土の破壊と民族の滅亡を招来したとき、国会が不承認だといつて撤退しても遅いのであります。過去の戦争ならいざ知らず、今日の原爆、水爆の科学戦の中において、あえて戦火に巻き込まれること自体が愚の骨頂であり、賢明な為政者のとらざるところであります。従つて国会の承認なくして出動せしめる等はもつてのほかであり、万が一そのために国際紛争と科学戦の中に追い込まれて国土民族の大多数が犠牲なつたとき、一体たれがその全責任を負うことでしようか。(拍手)その責任を追究し論議する者すらこの地上から消え去るほど今の戦争は恐ろしいものでございます。七十の老宰相吉田さんは、老い先が短かいから、あえて気にならないかもしれないが、か弱い五千三百万の婦女子の生命財産と日本の前途を思うとき、軽々とかかる法案を出すべきではない。この点に関して、吉田総理の御意見並びに関係大臣の意見を伺いたい。  第五点は、共同防衛の場合における指揮監督権の問題であります。本案には何らそれが規定されておらない。ただ、本問題に関して、行政協定第二十四条に「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」とあるきりで、きわめて巧妙にぼかされております。かりに共同防衛する場合、日本区域ならば当然指揮権は日本として規定されなければなら  ない。これを明確化されていないのはいかなる理由か。それとも、日本自衛隊は常にアメリカ軍の隷属下に置かれておるのか。また、日本区域とはいかなる領域をさすのか。すなわち、常識的には日本の領域であつても、防衛を広義に解釈いたしますと、アメリカから見た日本区域とは、中国を含めたアジア全域にわたるかもしれません。しからば、日本はみずからアジアの孤児となり、アメリカ帝国主義の手先となつて、アジアの平和の撹乱者と言われなければならないのであります。(拍  手)自衛隊出動指揮監督に関連して、日本区域とはどの程度をさすのか、提案者並びに岡崎外相の明確なる答弁を要求いたします。  第六点は、国内治安と自衛隊出動についてであります。すなわち、自衛隊が国内治安のために出動するのは災害と暴動のときと考えられます。前者はともかくとして、後者の場合、その認識と行動を誤ると、大衆への圧迫となり、人権蹂躙ともなることでございましよう。治安に名をかりて出動する場合、一体治安の限度をどこに置くか。今日、労働組合や農民組合、中小企業者が生活権擁護のために各所でデモや大会を持たれておる場合、往々にして感情のおもむくままに警官隊と小ぜり合いをすることもあります。しかし、今日までの情勢は、警官隊さえ静かであるならば、決して暴動化しておりません。しかし、自衛隊指揮権が反動的政治家並びに資本家にあるときは、治安に名をかりれば自衛隊出動は可能となつて参ります。すなわち、自衛隊の濫用によつて、労働運動を威嚇し、ひいては政治活動を圧迫することにならぬとも限りません。まさにフアシズムの姿でございます。一体、政府は、国内治安に関し自衛隊をいかに使用せんとするのか、その見解限界点を示していただきたい。  なお、国内治安を武力行使によつて治めんとするがごときは、真の為政者のとらざるところであります。すなわち、治安の乱れや暴動の根源は政治の貧困であり、再軍備を知つて国民の窮乏を顧みざる不明の政治家の罪でございます。(拍手)もし吉田総理が知性と愛情のすぐれた政治家ならば、ここに思いをはせ、今からでもおそくないのであります、再軍備をやめて国民生活の安定のために全予算を投ずることが最大の治安の道であると考えますが、総理及び提案者の説明を願いたい。(拍手)  最後に、本案に関連して、自衛憲法にまたがる問題として、特に明確にしていただきたいことがあります。すなわち、今までの私の質問に対して、おそらく答弁は、必ず、憲法違反ではない、アメリカに左右されない、自衛隊はあくまで直接侵略にのみ出動するとお答えになるでしよう。しかしながら、すでにして、自衛隊創設以前において、吉田政府アメリカ要請に基いて国憲を侵し、国際紛争に介入し、あたら無辜の青年たちを死傷せしめた事実が明らかにされております。すなわち、昭和二十五年十月、マツカーサー元帥の要請に基いて、日本の海上保安隊の掃海艇が、朝鮮戦乱のさ中に、アメリカ軍の元山敵前上陸作戦に参加していることであります。これによつて、数隻の掃海艇は機雷に触れて沈没し、死傷者十数名を出しております。これは、その犠牲者の一人の碑が殉職者顕彰碑として、吉田総理の揮毫により、四国の金比羅神社境内に現在建設されております。今日まで政府はこの事実をなぜか隠蔽されているが、最近に至つて新聞、雑誌等において明らかにされ、当のアメリカにおいても一時センセーシヨンを起しております。当時の遺族や戦友の口を封じ、なぜ国民にその真相を伝えなかつたか。問題はここにございます。すなわち、日本憲法第九条を犯してアメリカの作戦に参加した件、ポツダム宣言受諾中の日本が、あえて一特定国に参加し、国際紛争に介入した件等々が輿論の攻撃を受けることを恐れたからでございます。当時の総理は吉田さんであり、官房長官は現在の岡崎外相であります。いずれも現内閣最高指導者でありますが、もしこれらの人々が事実この作戦に間接的にも参画しておつたとするならば、まさに憲法違反者であり、今日国政の指導者たるの資格はないものと私は考えます。(拍手)なかんずく、岡崎外相は、昨年春の予算委員会において、さようなことなしと、まつこうから否定されておりましたが、新聞、雑誌は、その当時の遺族の写真まで添えてその真実を伝えております。また、マツカーサー元帥も、アメリカの新聞にその事実を証明しております。問題は、今回の自衛隊の運営に関連する重大な問題でありまするので、この際その真相をつまびらかにしていただきたい。同時に、本事件が事実ならば、当時関係せる吉田総理並びに岡崎外相はいかなる責任をとるでしようか。(拍手)それぞれ関係大臣の明確なる答弁を要望いたしまして、はなはだ簡単ながら、私の質問を終ることといたします。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  9. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 下川君の御質疑は、われわれと立場を根底的に異にしておりますために、やむを得ないかと考えますが、たとえば、MSAと引きかえに今回の防衛庁あるいは自衛隊をつくるのではないかとか、あるいはこれによつて日本防衛力アメリカの傭兵になるのではないかというような御心配は、国会と申しますか、あなた方がみずから侮るもはなはだしいという以外の何ものでもありません。(拍手)私は、民主主義のもとにおきましては、すべてのかぎは国民の代表機関である国会にあるのでありまして、その国会の権威が高く、機能が十分に発揮されます以上、今御心配のようなことは断じてあり得ないと考えるのであります。(拍手総理大臣権限についての御意見もまたしかりであります。  次に、憲法第九条において武力行使を禁じ、自衛隊法はこれを認めておるが、この矛盾をどう考えるかという御質疑でありますが、憲法第九条は、国際紛争を解決すると手段として武力の行使を禁じておるものでありまして、自衛隊をして国際紛争解決のために武力行使を行わしめることは全然考えていない。自衛隊は、わが国に対する外部からの侵略に対して自国を守るために、国の自衛権に基いて行動するものであります。従いまして、何ら憲法に反するものではない。  ほかの御質疑に対しましては保安庁長官からお答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  10. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えをいたしますが、下川君は国際連合憲章に対する理解を欠いておられるように思うのであります。国際連合憲章によりますれば、国連加盟国といえども自動的に兵力提供の義務を負つておるのではないのでありまして、国連憲章第四十三条を見れば明らかであります通り国連加盟国といえども、国連と特別の協定を結ぶにあらざれば兵力提供の義務を負わないのであります。現在かかる特別協定を結んでおる国は、一つもないのであります。いわんや、MSA協定のどこを見ましても——これは自衛力を増強するために必要な兵器、装備を援助しようという趣旨でありまして、海外派兵のごときことは全然含まれておりません。  次に、行政協定に言います日本区域と申しますのは、今日本の主権はありましても、まだ完全に統治の権力を及ぼしておらない地域がありますものですから、かかる字句を使つたのでありますが、外国の領土をさして日本区域と言うことは全然ございません。  また第三は、日本の掃海艇がかつて掃海に従事したことはもちろんありますが、朝鮮の敵前上陸作戦等に参加したような事実は全然ございません。(拍手
  11. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 岡良一君。     〔岡良一君登壇
  12. 岡良一

    ○岡良一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま御提案の自衛隊法案、それに伴う防衛庁設置法案について、内閣総理大臣、外務大臣並びに保安庁長官に、根本的な二、三の点の質疑をいたしたいと思つておりまするが、遺憾なことには、吉田首相が一昨日に引続いて今日もお見えになつておりません。与党、野党を問わず、この問題については、われわれは国家の主権と憲法にかかわる問題を提示いたしまして政府の所見を求めておるにもかかわらず、これに対して首相が責任ある答弁を回避されるということは、これは、国会を軽視するというよりも、わが国憲法と主権に対する確信に欠けておるものと言わなければならぬのである。(拍手)このことをはつきり申し上げて、以下、首相にかかわる部分については、緒方副総理責任ある御答弁を求めたいのであります。  まず、私は、質問の第一点といたしまして、政府は近き将来において憲法改正を予定してこの両案を提出したものではないか、さらに、このような政策が強行されたあかつきにおいては、結局太平洋諸国を加えたるわれわれの言う太平洋軍事同盟に参加する布告となるのではないか、この二点についてお伺いをいたします。  この両案を検討いたしまするに、その任務を直接侵略に対する武力の行使にまで拡大をいたし、陸海空三軍の均衡方式に踏み出し、また三軍にわたるところの旧参謀本部ともいうべき統合幕僚会議を設け、しかも任用制限を撤廃いたしまして、部内においては旧軍国主義者の活動を手放しで認めようとしております。別に国防会議を設け、国防止の重要事項については内閣総理大臣の諮問に応ずるなど、まつたアメリカ国防体制の日本版である。(拍手)ただ異なるところは——異なるところは、防衛出動時における最高指揮権の所在が明確にされておらない。心ある者が見るならば、いざまさかのときには、アメリカ軍司令官にこの最高指揮権をゆだねる余地を残しておるとしか考えられないのである。(拍手)その訓練も、アメリカ軍事顧問団を迎えてこれに当らしめるという。これでは、政府がいかに強弁をされようとも、国民はこの周到にして巧妙に仕組まれたところのやみの再軍備傭兵政策には唖然とせざるを得ないのである。(拍手)  朝鮮動乱の勃発直後、マッカーサー元帥の一片の書簡によつて設置された七万五千名の警察予備隊が、二年後には十二万の保安隊となり、今度は十六万になんなんとする三軍を兼ねた自衛隊となる。昨年の秋、吉田・重光会談に端を発した保守三派の諸君防衛折衝は、あるいは戦力に至らざる軍隊と言い、あるいは憲法のわく内で自衛軍備は持ち得ると称し、憲法解釈をめぐつて堂々めぐりをしながら、結局ここに事実上の軍隊をつくることに成功いたしたのである。昨年秋の総選挙において、西ドイツのアデナウアー総理大臣は、欧州防衛軍参加については公然と国民の審判を求め、国会の三分の二の多数をもつて憲法改正を断行しておる。これは、主権者たる国民にはひた隠しに隠し、国民を偽ることによつて民主主義のルールをまつこうから否定せんとする吉田政府に対する生きた教訓であると言わねばならぬ。(拍手)緒方副総理は、一昨日の答弁において、現在の段階では憲法改正の意思はないと申しておられるが、それでは政府は、この両案をもつて憲法改正の前提とするものではない、憲法改正を予定するものではないと、この際はつきり誓われるかいなかをお聞きいたしたいのである。  さらにまた、この法案の経過を見るに、平和条約第五条の米軍駐留に関する内容はこれを安保条約に譲り、安保条約はその具体的内容を行政協定に譲り、この協定によつて、不覚にも日本全土をおおうところの米軍の巨大なる特権をのんだのである。そして、わずか二年を経て、このたびは、MSA協定の調印と時を同じくして、日本は、アメリカより軍事援助を受けるかわりに、その代価として過重な軍事義務を負うこととなつている。平和条約よりMSA警察予備隊より自衛隊というこの三段跳びの過程を考えるとき、軍事と外交は決して偶然なものではなく、実にワシントン政府と吉田政府が巧妙に演出をしたところの日本軍備劇であると申さねばならないのである。(拍手)  占領中、対日理事会の英連邦代表であり、最もその識見が公正とされておつたマクマホーン氏は、アメリカの対日政策の骨子は、日本をしてアメリカの安全のため反共の防壁たらしめんとすることにありと指摘している。このことはまた、伝えられるアメリカの上院において、日本日本の若者の生命を多量にかつ安上りに提供することができるという、その討論によつても明白なように、わが国防衛努力というものはアメリカに奉仕する傭兵の政策であるということは、客観的事実を見ても疑いないではないか。(拍手)しかも、MSAは一九五六年には打切りになろうとしている。従つてアメリカとしては、その期限までには一応諸国に軍事援助を与えてその防衛力を強化し、そこで日本、韓国、フイリピン、台湾その他アンザス協定など、現在のアジア太平洋地域におけるところのこの個別的な安全保障体系を、日本の再軍備を待つて名実ともに横断的な安全保障体制、われわれの言う太平洋軍事同盟に転化し得る公算がきわめて大である。このことは、決して根拠のない仮定ではなく、ヨーロツパにおいてのマーシャル・プランからNATO、EDCというアメリカのヨーロツパ政策に見ても容易にうかがうことができるのである。このようにして、自衛隊設置は、憲法改正し、アジア太平洋地域におけるこの軍事同盟に参加せんとする布石と見らるるのであるが、政府は、この両案はこのような布石ではないと断言をし得られるのであるか、この点を明確に承りたいのである。(拍手)  次に、外務大臣に対して、この両法案わが国の外交の基本的な政策との関連についてお伺いをいたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、今日世界の動向は、一言にして尽せば、各国はいわゆる話合いによる冷戦の緩和のために懸命の努力を傾けておる。このことは、吉田総理も、すでにその答弁において、この努力はある程度成功しておるとも認めておられるのである。ベルリン会議はもとより、やがて四月下旬には、ジユネーヴにおいて、アジアにおける平和の回復を議題とする会議が中華人民共和国さえも加えて開催されようとしておる。昨年十二月のアイク大統領の原子力の平和利用に関するあの全世界への声明も、実に全世界の理性が平和に向つて力強く具体的に目ざめつつあることを物語つておる。アジアにおいても、先般インドのネール首相は、パキスタンに対する武器援助の対価としてインドにも軍事援助を与えるというアメリカの申出に対し、これはアジアの平和をそこなうものであるという理由をもつて、きつぱりと拒絶をいたしておる。この英断こそは、アメリカに対するよりも、わが吉田政府に対する最も時宜に適した教訓と申さねばならない。  朝鮮の政治会議も間近に迫る今日、アジアの冷戦の一つの中心である、しかも日本がその当事国となり、中ソと日米が互いに仮想敵国として対峙しておるというこの不幸な事実に対し、これを緩和するどころか、かえつてアメリカの庇護のもとに自己の防衛力を強化し、求めて火中のくりを拾わんとする。このことについては、アメリカ国内においても、有名な軍事評論家のボールドウイン氏やオルソツプ氏が、日本のこのたびの再軍備を目して、アジアにおける戦争の潜在的危険は増大するものであると言つておる。このような世論の中で、今や世界が折衝によつて冷戦を緩和せんと努力しておるとき、世界の輿論から孤立し、防衛力を増強することが、はたして憲法にいうところの諸国民の公正と信義に信頼する日本民族の姿であつていいのであろうか。信義と公正に信頼するどころか、憲法の平和への理想にまつこうから挑戦をするものと言わざるを得ないのである。(拍手)  われわれは、この今日の国際情勢こそ、われわれに与えられた好機として、独立の完成という目標に向つて全努力を傾注いたすべきであり、それは、主権を傷つけ、国民に無理な犠牲を強要して防衛力に急ぐのではなく、いまだ残された未講和の国々との間に正常な外交関係を樹立するために最大の努力を尽さねばならない、今こそその好機と言わねばならないのである。しかるに、岡崎外務大臣は、先般のこの答弁において、自由諸国の防衛力の強化が冷戦の緩和に貢献し、従つて日本防衛力の強化も、ひつきようは世界の平和に役立つものであると解されるような言辞を弄しておられる。今日の原子兵器時代こ、政府みずからも戦力ではないと卑下するような弱体な防衛力をもつて色界の平和に役立ち得るなどとは、まつたく児戯にひとしいナンセンスと申さねばならない。(拍手)また、外務大臣はしばしば、日本も自由諸国の一員としてと申しておる。しかし、日本が自由陣営に参加することは、必ずしも日本アメリカの意を迎えるに汲々たることを意味するものではないのである。(拍手)  イギリスにおいても、フランスにおいても、アメリカに対する非難はすでにおおいがたいものがあるのは事実である。アメリカの大マツカーシズムに対し、日本が極東の小マツカーシズムを気取るというような、このようなちやちな態度こそは、実に岡崎外務大臣の国際情勢の判断の重大なる誤謬に発していると思うのであるが、私は、この意味において、政府今回の措置は、日本独立と平和に名をかりて、かえつてわが国の主権を傷つけ、独立の完成を困難に導くものと言わなければならないのであるが、あえて外務大臣の所見を承りたいのである。(拍手)  第三点として、いささか内容にわたりますけれども、この法案において憲法違反の疑義がある点を多々見出しまするので、この点について木村保安庁長官責任ある御答弁を求めたいと思います。  まず、この自衛隊法第五章第三十六条、また第四十条等の規定であるが、第三十六条第五項について言えば、任用期間がきまつているにもかかわらず、退職が重大なる支障を来すと認める場合には、強制的に、本人の意思に反して任用期間の延長ができることとなつておる。これは明らかに憲法第二十二条の違反と私は思うのである。本法のごとく志願制を採用する限り、たとえば外部からの直接侵略がある場合でも、本人の意思に反して強制的に任用期間の延長をすることはできないはずである。いわんや、外部からの直接侵略のおそれがある場合と称するが、何をもつておそれがあると断じ得るのであるか。国際情勢の不安な場合には、何年でもこの理由で任用期間を延長する口実となつてしまう。これは職業自由の権利否認を一歩進めて、権力をもつて人身の自由を拘束するものと言わなければならない。  また、本案第八章の雑則に属する諸条章を見ても、これまた明らかに憲法第二十九条に違反の体を示している。その第百三条、防衛出動時における物資の収用に関する規定は戦時中における国家総動員法第十条総動員物資の項に、本法第百三条、第百四条、第百五条、第百七条は、それぞれ国家総動員浅第十三条、第十四条、第六条に適応し、特に第百八条においては労働三法の適用除外を規定しておる。国家総動員法に「戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ」とあるのを、本案においてはわずかに「自衛隊任務遂行上必要があると認めるときは」と読みかえておるのであつて、その内容は何らかわつておらない。実に厚顔無恥な政府は、国民を再び戦争の恐怖と不安の中にたたき込まんとしておるのであると言われても口があかないと思う。(拍手)  戦争中の公然たる権利の侵害、あの苦痛を再び政府は再現しようとしておる。しかも、政府は、この場合、災雲散助法によつて財産権を収用するというが、災害救助法にいう「非常災害」とは、天災地変を原因とし、政府及び国民の不可抗力に由来する災害に限るものであり、これは憲法にいう公共の使用には該当するかもしれないが、戦争を放棄したわが憲法において、自衛防衛のために財産権が権力によつて収用されるということは、われわれは断じて理解もできないし、容認することもできない。(拍手)本法第五章第三十六条、第四十条あるいは本法第百三条その他の条章は、明らかに憲法の第二十二条並びに第二十九条の違反であつて、人権並びに財産権に対する侵害となるものであると思うのであるが、木村長官責任ある解釈を承りたい。  次にはまた、防衛出動が発令されたあかつきにおいて、一体何人が最高指揮権をとるかの問題である。言うまでもなく、日本区域に不幸にして直接侵略が加えられたとき、わが方の自衛隊は、この侵略を意図する外国軍隊と、国土内あるいは近接する海域において武力を行使する建前となつておる。しかし、かかる事態となれば、当然このような侵略部隊の発進基地、すなわち他国に所在する海軍基地や空軍基地に対して先制攻撃が加えられることなしには、わが国自衛隊はいたずらに犠牲のみ多くして、本来の防衛の目的を達することができないことは言うまでもない。このような非常の事態については、行政協定第二十四条において「日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」ととりきめられている。最近の答弁においても、木村長官は、アメリカ軍とわが方の自衛隊の共同はあり得ると申されておる。共同と言おうが、共同措置と言おうが、言葉のあやは別として、国民常識からするならば、直接侵略の排除を唯一の目的として、日本自衛隊アメリカの海空軍を主力とするアメリカ軍隊が共同作戦を遂行することとなるのである。しかして、近代戦の性格から見れば、このような共同作戦は、あるいは相手の出方に先行し、また即応し、最も機動的に行われなければならないのであつて、このためには、当然に日米両国の軍隊は一本の指揮権によつて掌握されねばならないこととなる。一体、このような場合において、アメリカ日本のいずれがこの作戦の行動の指揮権をとるかという問題である。  われわれの知る限りにおいては、自衛隊は、装備においても、これらの作戦の主導性においても、アメリカ軍に比しはるかに劣勢であり、かつまた、憲法の規定によつても、文民たる内閣総理大臣防衛庁長官がこの指揮権に当ることは妥当ではない。従つて、この指揮権がアメリカ軍司令官によつて掌握された場合、アメリカの作戦遂行の行為は、もはや国際法上自衛の行為とは言えないのである。このように、自衛ではないところの、純然たる交戦権を行使するアメリカ軍司令官の指揮に基いて、交戦権を放棄したわが国自衛隊武力を行使することは、主観的な、また独善的なる解釈はいかようにもあれ、客観的には明らかに交戦権そのものの行使ではないか。(拍手)一方、その装備のいかんにかかわらず、共同作戦軍の一翼として戦力を提供することになるのである。これは明らかに憲法第九条第一項並びに第二項に対するまつたくの違反と申さねばならぬ。  そのようにして、本法は、その内容においても、その実施にあたつても、憲法第九条、二十二条、二十九条に違反するところの疑義がきわめて大である。おそらく、木村長官は、本法の御提案にあたつては十分にこの点を御検討のことと思うが、この機会に責任ある御答弁を要求いたす次第である。  最後に、私は、いよいよわが国防衛出動が発令されるに至つた事態において、内閣総理大臣に付与される巨大なる権力が、わが国民主主義を脅威するに至るのではないか、一党専制、フアシズムの道を開くに至るのではないかという点について、副総理の所見をただしたい。すなわち、万一にもこのような不幸な事態至つたとき、警察法第六十二条以下に規定されておる国家非常事態の布告が発せられることは当然である。従つて警察法改正されたあかつきには、全日本警察力はいよいよ内閣総理大臣指揮下に統率され、治安維持任務につく自衛隊は言うまでもなく内閣総理大臣がこれを掌握する。しこうして、前にも述べたことく、国家総動員法を再現して、国民の権利や財産や、ときには生命に対しても縦横に采配を振うことができる立場に立つ。われわれは、あの戦争が済んで十年を経ずして再びこのような事態を想定し、このような事態に処すべき方途を論議しなければならないという——歴史は繰返さずというにもかかわらず、歴史を繰返さしめんとするこの反動的逆コースに対しては、平和を愛するすべての国民の名において断じて許すことはできないのである。(拍手)  今や、ピストルとこん棒の治安力を右手に、ジェット機や榴弾砲や二十トン戦車の自衛力を左手に、しこうしてこの両者を指揮命令する巨大な権力内閣総理大臣集中されんとしておるのである。諸君の言う臣茂は、今や文武の大権を掌握して、半永久的な大統領の地位にのし上らんとしておるではないか。(拍手)一九三一年、国会に多数を制したアドルフ・ヒトラーとその徒党が、次々とこのような非常立法をあえてし、遂にみずから総統の地位につき、あの無謀な戦争に全世界をかり立てたヒトラーの道、東條の道は、諸君とこの両法案によつて開かれんとしているのである。これは、日本国民を再び戦争の恐怖にたたき込まんとし、日本民主主義を破壊せんとするフアシズムの再現と言わねばならぬ。総理大臣がこの巨大なる権力を駆使して、自分みずからの意図においてフアシズムの道を行かんとするならば、実質的にこれを拘束することはできないのである。  今ほども、緒方副総理は、これまた憲法や法律の条章においてこれを規制すると申されるが、総理大臣がみずからこの意図に立つたとき、国会自衛隊出動の可否を問うといつても、無謀なる解散権の前には、国会の意思はまつたくくつがえされ得るのである。国防会議といえども、総理大臣によつて罷免権を握られておる関係大臣を中心とする限り、決して内閣総理大臣を制することはできないと思う。一体、政府は、このような予測し得る権力の濫用と、それによる専制フアツシヨから、主権者たる国民の権利、また国会の権威をいかにして守らんとするのであるか。言葉の上の文民優位、政治優位が一朝にして吹き飛ぼうとするような事態である。朝鮮動乱に対し、李承晩大統領がいかなる権力を行使したか。われわれは他山の石として学ばなければならない。緒方副総理に、国民が聞かんとするこの重大なる疑惑に対し責任ある答弁を求める次第である。  また、この法案と呼応するかのごとくに、日本の資本家陣営は、公然と、本案に盛られた国防会議と結んで、一九五六年までにはジエツト機、誘導弾、戦車その他の高級兵器を建造することのできる体制をつくり上げると堂堂と公表しておる。この事実は、諸君のこの再軍備政策がダレスの威嚇とニクソンの懐柔に屈したるのみならず、実に日本の資本家、日本のデス・マーチヤントに奉仕せんとするものであることを明確に立証しておるのである。(拍手本案は、明らかに、わが国の主権を冒涜せんとするのみならず、実に勤労大衆に再び白紙と賃金停止と長時間労働の犠牲を行い得るような道を開かんとしておるのである。このように、世界とアジアの平和に挑戦し、日本国憲法を無視し、その主権を危うくし、日本民主主義を破壊し、勤労大衆生活に危機を導かんとするこの両案を、政府はいさぎよく撤回すべきものであると信ずるが、政府の所見を伺いたい。この点、緒方副総理よりの答弁を求める次第である。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  13. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  MSA受諾は結局日本を反共の防壁たらしめんとするアメリカの対日政策に屈従したものである、これでは将来憲法改正、また太平洋同盟への突入ということになるのではないかという第一の御質問でありますが、わが国の外交方針は、国連協力いたしまして、米国初め自由主義諸国と緊密な提携をはかりますとともに、集団安全保障の理念の実現を期し、もつて世界の平和に寄与するにあるのであります。今次のMSA協定は、この方針の一つの現われにすぎません。また政府は、自衛力の漸増の方針でありますが、再軍備というような大きな意図は持つておりません。(笑声)MSA援助を受ければ当然再軍備憲法改正、さらに太平洋軍事同盟等へ発展するとお考えになるのは思い過ぎであると考えます。こういう意味から、この段階において憲法改正をする意思はないという昨日以来の答弁を重ねて繰返します。  次に、国際情勢に逆行して自衛軍備を意図することは憲法の理想を裏切るものではないかという御意見でございますが、憲法自衛権は決して放棄していないのでありまして、わが国独立国として国力に即応した自衛力を持つことは当然のことであり、むしろ国際的信頼を高めるものと政府では考えております。  最後に、総理権力集中することは日本をフアツシヨ化するものでないかという御質問でございましたが、それは、政治軍事に優位し、旧憲法のもとにおけるような統帥権国会のほかに独立するようなことがなければ、絶対にその心配はございません。国会には不信任案を提出する権能がありますし、また衆議院には任期があります。従いまして、いかなる権力総理大臣集中せられましようとも、それによつて日本民主主義がフアツシヨ化するということは絶対にないと確信いたしております。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  14. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今日の国際情勢が昨年初頭に比すれば相当緩和しているということは、累次御説明をいたした通りであります。この点は御同感でありますが、しかし、いまだ東西両陣営の間には根本的対立状態が継続していることも否定できないのであります。そして、自由主義諸国のうちには、すでにこの情勢を見て軍備縮小というような声も聞えるのでありまするが、共産圏側におきましては、まだそのような傾向は認められておりませんし、さらに逆に軍備拡大の傾向も見られるのであります。かかる情勢のもとにおりまして、日本を全然無防備の状態に置きますれば、無責任な軍国主義の行動を挑発するおそれもあるのみならず、米国駐留軍の撤退を予想することも困難であります。従いまして、MSA協定等によりまして、政治上、経済上可能な範囲の自衛力の漸増を行うことは、国際的信頼を受けることはありましても、失うことは決してないと確信いたしております。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎登壇
  15. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。  日米共同して日本防衛に当る場合におきましては、日米がそれぞれ対等の立場においてその処置をするのであります。しこうして、自衛隊の行動はすべて総理大臣保安庁長官、幕僚長を通じてこれをやるのでありまするから、決してその間岡君の言われるような御心配の点はありません。  しこうして、次の問題でありまするが、職員並びに自衛隊員の任期延長は、これは、おのおのその承認を得て、言いかえれば、採用するときに承諾のもとにこれをやるのでありまするから、決して憲法違反ではありません。  また、出動時におきまする物資の収用等につきましては、これは、憲法第二十九条第三項に明らかなことく、正当なる補償のもとに、公共のためにこれを使用することができるのであります。従つて憲法違反ではありません。  また、日米共同して作戦をする場合に、それは戦力になるのじやないかということを申されるが、これは、しばしば申し上げたことく、憲法第九条第二項は、日本独自の所有する部隊の内容を言うのであつて、さような共同してこれを計算するものではないということをはつきり申し上げます。(拍手
  16. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 辻政信君。     〔辻政信君登壇
  17. 辻政信

    ○辻政信君 防衛法案に関連いたしまして、防衛計画の根本問題についてお尋ねいたします。  第一に内閣総理大臣にお伺いすることは、日本防衛態勢を、アメリカに依存した、かたわの姿にするか、それとも、一人歩きのできる均整のとれた形にされるかという点であります。安保条約によつて日本の安全を保障する方針を継続する限りにおきましては、当然の義務といたしまして、アメリカに基地を与え、集団防衛の一翼を担任し、その結果、最悪の場合には日本戦争の渦中に投ずることを予期しなければならないのであります。この方針に基く防衛態勢は、日本国力から見まして、経費の比較的かからない陸上自衛隊に重点を置き、海軍及び空軍は米国に依存する性格となりまして、そこに防衛自主性が失われるのであります。これに反し、いかなる場合においても日本戦争の渦中に投入しないということを将来の方針とされるならば、みずからの力で日本を守るべきであり、それに基く防衛態勢は、航空自衛隊を主とし、陸海自衛隊を従とする均整のとれた性格たらしむべきものであります。そのいずれをとるかによつて、新しく発足すべき自衛隊の方向に重大なる変化があるのであります。この点はきわめて重大でありますから、緒方副総理から明確にお答えを願いたいのであります。  第二の質問は、MSA協定民族防衛意識を鈍らせるのではないか、こういう感じがするのであります。防衛力の増強は独立国家としての当然の権利でありますが、協定の内容は、米国援助に対する義務なるかのごとき印象を抱かせることはまことに残念であります。ことに、六百五十名の軍事顧問団は、アメリカ大使の指揮監督のもとに、MSA協定に基いて供与される装備、資材及び役務に関するアメリカ合衆国の責務を日本国の領域に遂行し、その進捗状況を観察することを任務としておるのであります。それは明らかに米国の行政行為でありまするから、それに必要な行政事務費は米国が出すべきにかかわらず、日本の負担にされているということは、いかなる理由でありますか。経費は三十五億円にすぎませんが、このような筋の通らない負担は、断然拒否するか、しからずんば、人件費、事務費等の全額を日本が負担いたしまして、顧問団の身分を日本政府の傭人とすべきであると考えるのであります。国家の権威と民族の誇りを一千万ドルの小麦と交換することは断じて許されません。この点についての御見解を承りたい。  次に、木村長官に対する質問の第一点は、自衛隊が新任務を達成するにあたり、防衛の対象となるべき直接侵略及び間接侵略はいかような形で現われ、それに対し防衛計画の上にいかなる考慮が払われているかという点であります。日本の戦略的立場は、両陣営の決戦正面ではありませんから、万一米ソ戦争が起つた場合にも、米ソ両国ともに日本に大なる兵力をさき得ないことは明らかであります。率直に述べますと、米ソ戦争に付随して生ずる日本への第一の脅威は、大陸に根拠を持つた空軍の爆撃であり、第二の脅威は、その空軍に支援された若干の兵団が空艇または船舶により進攻することであり、第三の脅威は、その直接侵略に呼応する共産党の武装蜂起であります。  最近の世界情勢は、米ソ戦争が遠のいたように観察されますが、反面において冷戦はますます激化すべく、ことに、日本におきましては、十万の共産党員が全国的に軍事組織を整え、虎視たんたんとして政界の混乱と経済崩壊のチヤンスをねらつているということを重視しなければならぬのであります。従いまして、このような情勢に対処すべき防衛計画は、現実の問題としては、内乱に対する国内治安の確保が第一であります。将来の問題といたしましては、空軍を主体とする防衛力の強化を必要と考えますが、現在の保安隊は将来戦のためには時代遅れであり、国内治安の維持には不適当と考えるのであります。すみやかにその編成、装備、訓練日本的に改め、将来の直接侵略に対する防衛に備えるとともに、それと並行いたしまして、国内の治安維持に適する日本的民兵制度を採用すべきものと考えるのであります。アメリカにおきましては、独立戦争の初めから、自己の生命と財産を守るために近隣相結ぶ自衛組織が生れ、それが民兵として制度化されまして今日に至り、アメリカ国防力の主体をなしておるのであります。貧乏な日本アメリカに学ぶべき点あるとするならば、ぜいたくな正規軍ではなくして、まさにこの民兵制度であろうと考えるのであります。その点につきまして、長官は近い将来においてこの制度を真剣に研究、採用するお考えがあるかどうかということを承ります。  次に、質問の第二点は、陸上自衛隊の増強において、技術部隊にさらに重点を置く必要がないかという点であります。普通科部隊、すなわち歩兵は、短期速成の訓練で補充が可能でありますから、平時の定員は極力減少いたしまして、むしろ鉄道、通信、電気、建設等の技術部隊にしつかりした重点を置き、平時はその全力をあげて国内の開発と生産と建設に協力することによりまして訓練の目的を達成し、場合によつては悪質のストライキに備えて民衆の利益を守る等、一石三鳥の効果をねらわなければならぬのであります。  質問の第三点は、科学と技術の研究をさらに重視する必要がないかという点であります。原子力と電波兵器の発達は、十年を出ずして軍備の内容に革命的変化を見ることは明らかであります。しかるに、技術研究所に充てられました二十九年度の予算はわずかに七億六百一万八千円にすぎないのであります。今かりに陸上自衛隊員一万人の増加を押えたならば、年間九十三億五千万円を節約できるのであります。この財源をもつて技術研究所を充実することが有利と考えますが、長官の御見解を承わたいのであります。米国の中古兵器によつて頭数だけをふやす軍隊は有害であるということを申し上げたいのであります。  このほか、自衛隊法案憲法との関係、陸海空自衛隊の統合に関する問題等重要な意見がありますが、私に与えられました十分間を厳守いたしまして質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  18. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  日本防衛を、アメリカにおんぶして、びつこにするのではないかという意味の御質問と承つたのでありまするが、航空部隊の充実につきましては特に力を入れて参りたいという根本的な考え方は持つております。しかし、航空隊のみに片寄つて、かえつてびつこにならないような配慮もまた必要ではないかと考えております。これを要しまするに、今日兵器が飛躍的に進歩しておりまする際、はたして自主性の非常に高い軍備を備えることができるかどうかということに一抹の不安がありまするが、国力の増強とともに十分慎重な検討を遂げて参りたいと考えております。  それから、MSA協定は自主的の防衛意識を鈍らすのではないかという御質問、また顧問団についての御質問がありましたが、MSA協定が自主的な防衛意識を鈍らすものであるとは考えておりません。政府防衛力を漸増いたす方針であり、MSA協定もその線に沿つたものと信じております。  顧問団の費用につきましては、この費用の負担はわが国だけのことではなく、ほかの国でも類似のやり方をとつております。また、顧問団は米国の行政事務のみを取扱うものと考えるのは、顧問団が援助実施、特に供与兵器の操縦訓練に寄与するという意味から見まして正しい見方でないのではないかと考えております。  以上お答えいたします。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎登壇
  19. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。  辻君の御質問中特に重要なのは、直接侵略間接侵略が同時的に起る心配があるではないか。これはごもつともた御議論であろうと思います。おそらく、将来不幸にして起り得るのは、直接侵略間接侵略とが、同時的に起るということであります。これに対して自衛隊はどうするか、その訓練はどうしておるかという御質問でありますが、御承知通り、今度の改正法案におきましても、直接侵略に対して備えると同時に、内地に起りまするいわゆる暴動その他の不祥事に対して対処し得るように手当を加えておるのであります。それに対する訓練等につきましては遺憾なきを期して、目下着々とこれをやつております。  民兵制度につきましては、これはごもつともなことと思います。いわゆる経済的、能率的にやるということについては、民兵制度も考うべきだと考えております。従いまして、われわれといたしまては目下慎重にこれを研究中であります。まだ結論は得ておりません。  次に技術部隊の増設でありますが、二十九年度におきましても、この技術部隊を私は増加いたしたいと考えまして、ただいま編成、装備について研究中であります。  次に技術研究の点であります。これはしごく私は同感であります。将来兵器の進歩は著しいものがあろうと思います。御承知通り、電波兵器が盛んに今研究されて、すでにこれが実行に移されておるやに聞いておるのであり手。われわれとしても、遅れをとらぬように、十分にこれを研究して行かなくちやいかぬと考えております。御承知通り、二十九年度予算におきまして約五億円をこの研究に使用することになつておりますので、われわれといたしましては、十分この点に留意をいたしたいと、こう考えております。(拍手
  20. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 松永東君。     〔松永東君登壇
  21. 松永東

    ○松永東君 私は、日本自由党を代表して、きわめて簡潔に二、三の質問を特に総理大臣に試みたかつたのであります。ところが、病気のゆえをもつて本日御欠席になつた。幸い緒方副総理がおいでになつておりますので、副総理にかわつて答弁を願いたい。  先年保安隊の創立以来、憲法第九条の規定にその保安隊違反するかどうかという問題は、その当時から、国会においても、学者においても、民間に勢いても議論が帰一しないところであります。一昨日も本日も、同僚議員と政府との間に幾多の質疑応答がとりかわされましたが、しかし私は、今もつて政府答弁をもつてしては何としても納得することができません。私は、小数党でありますので、本案については、最後のしんがり役として、今までの政府の御答弁を総括判断して、いささか質疑を試みたいと存ずるのであります。  第一に、一昨日なり本日の政府答弁では、自衛隊創設、漸増は憲法第九条の戦力ではない、従つて現在の段階では憲法違反ではない、しかし後日戦力となるに至つたときに憲法改正する、こういう答弁をしておられるようであります。もしそのお気持であるとすれば、そのいわゆる戦力なつたかどうかということは一体だれが判断するのです。何人が判断するのです。吉田政府が判断するのでありますか、国民が判断するのであろうか、学者が判断するのであろうか、われわれにはこれはわからぬ。  一体、今日までの政府戦力に対する考え方も人によつて異なつておる。木村保安庁長官は、昨年でありましたか、たしか六月であつたと思いますが、各新聞夕刊所載によりますと、いわゆる防衛五箇年計画についての談話を試みられておる。その中に、自衛のための戦力は許される、すなわち、憲法第九条が所持を禁止しておるのは、戦力一般ではなくして、侵略戦争をするための戦力であつて自衛のための戦力禁止されていない、こう述べておられます。ところが、吉田首相は、あべこべに、自衛のためでも戦力を持つことは許されない、自衛のためでも戦力を持つには憲法改正が必要である、こう述べられておる。一昨日、岡崎外務大臣の答弁は、大体これと同様に、近代戦の実力を有するものを戦力と言う、従つて、現在の保安隊または漸増する自衛隊憲法のいわゆる戦力ではない、こう言つておられる。もしこの言のことしとすれば、近代戦の実力とは一体どんな実力を言うのであるか、はなはだ明確を欠いておる。私はお伺いしたい。戦力なりやいなやの判断をどこに置くつもりだ。  その区別の方法もいろいろございましよう。主観的な目的いかんによつて区別するのであるか。そういたしますと、すなわち、侵略戦争を目的とするか、自衛戦争を目的とするかによつて区別せられるのでありましよう。前述の木村保安庁長官見解は、この主観説で言つておられる。自衛のためなら持てると言つておる。しかし、この区別の方法は、学者は全部反対しておる。けだし、侵略を目的として軍備をしておる国は世界に一国もありません。すべて自国を防衛するために軍備をしておるのである。従つて、この説をもつていたしますと、世界に一国たりとも戦力を持つ国はない、こういうことになつて参ります。こんなばかな議論が成り立とうはずがございません。もし主観的な目的によつて定めることをいけないとするならば、客観的な装備、人員、編成のいかんによつてきめるべきであろうか。一昨日の岡崎外相の答弁によりますと、この説に依拠しておられるようであります。しかし、岡崎外相の言われる近代戦の実力を有するのが戦力だとするなら、近代戦の実力とは原爆やジエツト機を有するのをさすでありましよう。もしそうであるとすれぼ、米ソ以外の国は戦力を有しない国である、こういうことになつて来る。かような説は、われわれの常識判断からいつても首肯することは断じてできません。  そこで、私は政府にお尋ねしたい。わが国保安隊、今度改称される自衛隊が、一体いつ、いかなる段階に達すれば戦力を持つたと判断せられるのか、その判断は一体だれがするんだ、こういう点、これをひとつお伺いしたい。  さらに、第二点として、政府は、現に議論の中心となつておりまする保安隊もしくは自衛隊憲法違反なりと判断せられたときに、一体いかなる措置をおとりになるという御決心であるか、その責任はいかにして御負担なさる御所存であるか、これをお伺いしたい。  本法案においては、自衛隊の主たる任務を、直接侵略に対してわが国防衛するとともに、その任務遂行のため隊員その他の者に対して秘密保持、出動の義務、任意退職の制限等の義務を課し、その基本的人権を制限する規定を認けられておる。そうして、この義務違反には重い刑罰をもつて臨まれておる。もしそれ自衛隊並びMSA協定のいわゆる防衛力憲法のいわゆる戦力であるとすれば、この自衛隊法憲法違反の法律となつて、前述の義務違反者に対して何の裁判も何の判決もできなくなるでしよう。いやいや、それどころではない。もつと大きな問題が起つて参る。すなわち、昭和二十九年度予算は、前年度の予算の繰越しとを合せて千七十億円と言われておるが、その予算の施行も、いな、その本城である自衛隊そのものも破棄せんけりやならぬようになりましよう。重大問題でございましよう。  そこで私はお伺いしたい。政府は、自衛隊問題が憲法違反であるかいなかは何人が判断するとお考えになつておるか。この判定者は、吉田内閣でもなければ、もちろんアメリカでもござりますまい。また国民の多数意見でもござりますまい。それは、一切の法律、命令、処分が憲法に適合するかいなかということを決定する、憲法の番人でありまするところの裁判所であります。なかんずく最高裁判所でなければなりません。吉田内閣のひとりよがりの議論や、ごまかしの議論では済まされますまい。いまにたいへんな問題にならぬとも限りませんぞ。論より証拠、一昨年八月のいわゆるやみ打ち解散が違憲なりとして改進党の苫米地君の提起しました訴訟が、東京地方裁判所において、違憲なりとして吉田内閣の敗訴となつたことは、たつた半年足らずの今日でありますから、よもやお忘れになつておりますまい。これが四国や九州、北海道の端くれの裁判所でござりますならともかく、東京のどまん中の裁判所で憲法違反の烙印を押されたのであります。このような結果となつたとき、政府はいかに善処せんとせられるか。さらに、その責任はいかにして国民に負われる所存でございますか。そのときになつて、べそをかいたつて、手遅れです。駟馬もまた及ばぬ。首相の御決心のほどを承りたい。首相がおられぬから、緒方副総理から承りたい。  もしそれ、岡崎外相の一昨日の答弁のように、戦力になるようになつたときには憲法改正する、こういうような説はまつたくお話になりません。一体、憲法は、きよう改正を企てて、明日改正ができますか。少くともこの憲法改正をするのには数年の歳月を要することは常識です。それであるとするなら、戦力なつたと判断したとき、その瞬間から憲法改正が達成するまでは憲法違反が継続する。そんな憲法違反を継続されるおつもりであなた方はおられるんですか。それが私は承りたい。  さらに私はお伺いしたい。上述のように、本法案並びに自衛隊問題は憲法上非常に疑問の多い案件です。従つて、今日から憲法改正の意図のあることを、この際この議場を通して、国民に関知せしめ、この問題に関する国民の関心を高め、おのおのその準備に着手せしめる必要があろうと私は信ずるのであります。これに対する吉田首畑のお考えをお伺いしたい。  さらに、第三の質問といたしまして、木村長官にお伺いをいたしたい。本法案の第九十六条によりますと、「自衛官のうち、部内の秩序維持の職務に専従する者は、」左の犯罪につき「司法警察職員として職務を行う。」隊員の犯した犯罪、職務に従事中の隊員に対する犯罪、その他隊員の職務に関し隊員以外の者の犯した犯罪、自衛隊の使用する施設内における犯罪、自衛隊の物件に対する犯罪、こう規定しておる。そこで疑問となるのは、右の秩序維持の職務に専従する者は、終戦前にわれわれ民衆が今思い起しても身の毛のよだつように恐れておりましたあの憲兵制度の復活にはならないかという、この点であります。すなわち、隊内の犯罪検挙、捜査は、あげて右の専従しておりますところの秩序維持官がやつておるのである。外部警察では全然手が出せなくなるのは当然です。従つて、昨今のごとく汚職事件頻発する時代にあつて、隊内の名誉や世評を恐れて、いわゆる臭いものにふたをして、捜査や公訴提起を躊躇するようなことがありはせぬか、そういうおそれも多分にあると思う。かくのごとき場合に、もちろん検事が外部から指揮権を発動せしむることは、それは法律上できましよう。が、しかし、隊内の秩序維持官がこの命令に従わなかつたときの処置については何らの規定がない。これに対して長官はどんなふうに考えておられるか。
  22. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 松永君、申合せの時間が参りましたから、なるべく簡単にお願い申し上げます。
  23. 松永東

    ○松永東君(続) すなわち、要約すれば、昔の憲兵化するおそれはないかということです。一般検察官の指揮権との関係はどうかということです。  さらに、第四点の質問として木村長官にお伺いしたい。本法案によりますと、隊内に学校を置いて、「隊員に対しその職務を遂行するに必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練を行うとともに、」云々と規定してある。もちろん職務遂行に必要な知識、技能の修得は当然のことです。学生ばかりではない。全隊員に対して一貫せる指導精神がなければなりますまい。長官はいかなる指導精神、指導方針を持つておられるか、それを承りたい。私どもの承知しておるところでは、終戦前軍隊では、その是非善悪は別といたしましても、軍人勅諭、戦陣訓等によつて指導指針としておつたようであります。しかも、その当時の青年は、小学校教育当時から厳粛な教育勅語につちかわれて来ておるのであります。現在の青年は右のような一貫せる指導のもとに教育されていない。小学校時代から道義の基盤であるところの修身を教えられていない。民族を守れと号令しても、われわれの民族の祖先の歩んで来た歴史を教えられていない。祖国を守れと言つても、この小さな四つの島の地理さえ教えられていない。昨年の暮れの話でありますが、新聞に、北海道の小学校の六年生でありましたか、富士山は北海道のどこにあるのだ、こう言つて先生に質問したということが掲載されておつた。この基礎教育のもとに育てられて来た青年隊員であります。一旦緩急あつたときに、おのれを犠牲にしても民族を守るという尊き民族魂をどうして隊員の精神にたたき込もうとしておられるか、すなわち、隊員にどういう筋金を入れようとお考えになつておるか、こういうことをお伺いしたいのであります。  先年から巷間伝えられた、保安隊員は失業青年が給料のために奉職しておるのだ、あるいは退職金六万円を目途としておるのだ、こう言われておる。特に、先般新聞紙の伝うみところによれば、久里浜の保安大学の学生が、学校当局に対して、自分らが全学連に加盟することを承認しろ、もしこれを認めなければ同盟休校するとまで騒いだということが新聞に載つてつた。私は隊員全部がさようであるとは信じない。しかし、数年来頻々として起つた隊内の疑獄事件、相当な官職にある高給者が食糧のピンはねをやつたり、横流しをやつた、欺詐をやつた等々、まことに保安隊スキャンダルの記事の出ない日はその当時はなかつたくらいである。もとより、私は、木村長官を青年時代からよく承知しておる。厳格な性格、廉潔の士であるということは、私はよく承知いたしておる。しかし、あなたも、あんな不祥事件の続出するのは、紀律が乱れておるのは、一貫せる指導精神、いわゆる筋金が入つていないからであるとお気づきにはなりませんか。(拍手)筋金の入つていない、民族守護の気魄を持たない隊員をいくら増員しましても、かかしに兵器をかつがせるのと同様じや。筋金の入つていないかかしを本年度五万人も増員するより、むしろ国民の信頼できる少数にとどめて、余剰の金を生活苦に悩んでおる民族の厚生資金にまわすのがあたりまえじやなかろうか。(拍手)私はそのくらいにすら考えておる。  さらに、とくと御考慮願わなければならぬことは、保安隊員中の大部分は——これは大部分ですよ。われわれこそは日本を守る軍隊である、民族のための守護者である、国家の干城である軍人であると覚悟していると思う。     〔「時間々々」と呼ぶ者あり〕
  24. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 松永君、申合せ時間をずいぶん過ぎておりますから、結論を願います。
  25. 松永東

    ○松永東君(続) もうすぐです。——しかし、木村長官考えてごらんなさい。若い隊員は右のような気魄に燃えて連日訓練にいそしんでいるのに、吉田首相初めあなた方は、軍隊にあらず、彼らは一個の俸給生活者だと表現しておられるので、ここに大きな精神上のギヤツプを来している。張り切つた自負心も雲散霧消してしまう。木村長官はいかなる指針のもとに隊員自衛精神を涵養せんとするお考えであるか、この点を承りたい。  私はまだお伺いしたい点がたくさんございまするけれども、しかし時間がありませんから、以上の諸点について、関係閣僚諸公の、ごまかしのない、ほんとうの、率直な御答弁を要求いたしまして、私の質問を終る次第でございます。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  26. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  自衛力が漸増して戦力に至れば、当然に憲法改正すべきではないか。それは、政府といたしましても、さように考えております。自衛カ漸増の結果戦力に立ち至るようなことになるならば、当然憲法改正さるべきであると考えております。しかし、自衛隊の増強につきまして、現在政府はそこまでは考えておりません。戦力であるかどうかということは、これは兵器の進歩または国際的の環境、そういうもので客観的にきまつて来るものであると考えているのであります。(「それはたれがきめるのだ」と呼ぶ者あり)  しからば、たれが憲法改正の時期であるかどうかということをきめるかということでございますが、それは、私は結局国民がきめるものであると考えております。政府が、防衛力を増強して、憲法改正を必要とするということを判断する時期があります。それは政府の主観であります。その政府の主観が、両院の裏づけによりまして、憲法改正の発議がされました後におきまして国民がそれを判断いたしまして、この防衛力の段階において憲法改正すべきであるかどうかということは、これは私は、最後的に国民が判断して、投票して決定すべきものであると考えております。その手続の上にもし誤りがあれば、それは最高裁判所の問題であろうと考えておるのであります。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎登壇
  27. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 松永君にお答えする前にまず申し上げたいのであります。松永君のお話中に、私が自衛のためなら戦力を持つてもいいということを言つたように御発言でありましたが、全然間違いであります。私は終始客観説をとつております。自衛のためといわず、いかなる目的といわず、任務のためといわず、戦力に至らざる程度のものと、こういうふうに申し上げたのであります。それで、前に申したのは、さような主観説もある、いわゆる芦田理論もある、これほしかし傾聴するに値すべき議論であるが、自分のとらざるところだ、ころ申したのであります。これだけを申したのであります。誤解であります。  それから、部内の秩序維持の問題でありまするが、これは、部内において庁舎あるいは船のうち、施設のうち、それらに対する犯罪につきましては、ある種の保安隊員をもつてこれに当らしめるものでありまして、決して昔の憲兵を再出するものではないと考えております。  次に、これから創設されます自衛隊の志気の問題でありますが、この教育方針といたしましては、およそ民主主義において何が一番必要であるか、これは自由であります。人間の自由であります。自由なきところ、いかにパンがあつても人間生活はないとわれわれ考える。この自由の維持のためには、われわれは渾身の力を出してこれを防止しなくちやならぬ。しこうして、一国において何が一番必要であるか。いわゆるその国の自由、安全、平和であります。この自由と平和と安全を第一に守り抜くものはすなわち自衛隊員であります。この自衛隊員がその力をもつて防止するということにほんとうの職責があるということを自覚すれば、おのずからその間に渾然たる一体をなして日本防衛の任に当ることができて来るのであります。この尊さを自衛隊員によく了解せしめることが私は第一義と考えておるのであります。幸いに現在の保安隊員は十分にこの意を了して訓練にいそしんでおるということは、前もつて申し上げた通りであります。決して御心配はいりません。保安隊の中に不届きな者があつたことは事実であります。しかしながら、十数万の数に達するこの大勢の中に多少の者のあることはお許しを願いたい。(発言する者あり)今後私は力を入れて、さようなことの再びないように、渾身の力を注いでやりたいと思つております。  また、保安大学校においての問題でありますが、保安大学校で今申されたような事実はありません。私は十分に取調べたのでありまするが、自治会に加入したいなんというような動きは少しもないということを、ここにはつきり申し上げたいのであります。
  28. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十四分散会