○春日一幸君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりましたしやし
繊維品の
課税に関する
法律案並びにこれに関連する重要なる事柄について、次の諸点について
政府の
所見をたださんとするものであります。
まず最初に、繊維
課税の創設を初めとし、ここに税制の大改革を行わんとする
政府は、一体
国民の租税負担能力をいかに見ておるか、この点について
政府の
見解をお伺いいたしたいのであります。各種国税の滞納は今や
国民の各階層に及び、その滞納総額は実に件数八百四十万六千件、金額一千二十六億を越えたのでありまするが、かくのごときは実にわが国租税制度始ま
つて以来の最悪の記録であります。(
拍手)一体、
政府は、この
国民各階層の税金滞納の原因をどのように理解しておるのであるか。
世論は、これに対し、
国民の納税意欲の著しき減退をその最大の
理由なりと指摘し、さらには現行徴税制度がすでに
国民の担税力をはるかに越えたものであることを強調しておるが、
政府は、これらの輿論に対し、いかなる検討を行つたのであるか。今や
吉田内閣の
権威は各種
疑獄の泥棒の中に没し去ろうとしておる。国鉄会館、交通公社をめぐる国鉄
疑獄、黄変米の払下げ、原糖割当をめぐる農林
疑獄、さらに保全
疑獄、やみ金融
疑獄等、腐臭ますます発展し、遂に造船大
疑獄に至
つて、
吉田内閣はここに収賄汚職による
疑獄の摩天楼を築き上げるに至つたのである。(
拍手)この
疑獄の摩天楼は政道の光をさえぎ
つて国民の心を暗くしたが、同時にこの
疑獄の摩天楼は政界の中天にそびえて、今や
国民のだれ一人としてこれを憤激せぬ者はないのである。熱汗労苦をしぼ
つて納めた税金の行方をこの
疑獄の摩天楼の中に仰ぎ見て、納税者たちは暗然としても思案に暮れる。ここに納税意欲が減退することは当然ではないか。古来、その国のまさに滅びんとするや、まずその
政府の官吏が腐敗すると言う。
疑獄は次々と暴露し、前
閣僚、現
閣僚の身辺も幾多の
疑惑にさらされておるが、まさに亡国の兆候である。
政府はいかにして信を
国民につなぐ所存であるか。
吉田内閣の存亡は民族の些事であるが、
日本国の存亡は民族の大事である。えりを正し、国家民族のために出所進退を決すべきときは今であると思うがここに、
国民の納税義務観念の挽回のために、吉田
内閣総理大臣の有する決意のほどを承りたいのであります。
次に、
国民の超税力について
政府の
見解をお伺いいたしたい。本日
国民の租税負担の能力がすでにその限界を越えたものにな
つておることは、税制
調査会の答申書においても明らかな通り、これはもはや天下の公説である。
政府はこの答申の大綱を是認するのであるか否認するのであるか。もし是認するとあらば、いやしくも新税の創設や生活物資への増税などはできるはずはないのである。しかるに、
政府は、今次税制改正によ
つて繊維
課税を創設し、ここに八十五億の新規
課税を行わんとし、また砂糖消費税において五十七億、揮発油税三十一億、酒税三十八億、印紙税五十五億、その他増税総額は二百七十六億に及び、これにタバコ値上げによる増徴分八十八億を加えて、今次税制改革を通じ、実に間接税において三百六十四億の新規大増徴を企てておるが、かくのごときはすでに担税力を越えた負担にさらに苛酷をしうるものであるが、大蔵
大臣は、すでに塗炭にあえぐ大衆の生活にこの間接税大増税の与える影響を一体どのように理解しておるのであるか、この機会に誠意ある御答弁をお願いする。
なお、この際、
政府がしたり顔に宣伝しておる直接税の減税案なるものについて
質問する。二十九年度所得税収入見込額は二千八百七十六億である。これは二十八年度の当初
予算額二千上百五十億を越えること二百三十億で止る。これは庶民階級の負担がこの額だけ加わるものであることは絶対間違いがないところである。
政府は、二十九年度は
国民所得が増加するので、その結果現行税法によれば前年度に比して五百余億の増徴となるが、特に今次の減税措置によ
つて二百七十五億を減ずるから、その結果差引二百億の増徴にとどめ得たと言うのであるが、
政府は、今日デフレ景気にあえぐ庶民大衆が、昨年度に加えてさらに二百数十億を越える直接税の加重に、はたして耐え得ると思
つておるのであるか。ここに今年度の所得税の見込額の基礎をなすものは
政府の
国民所得の推定であるが、およそ複雑多岐な経済上の諸要素を机上の加減乗除によ
つて算出した五兆九千八百億というような天文学的計数の中から
国民担税力の限界点を導き出すというようなことは、あたかも霊友会の御託宣の、ごときものであ
つて、(笑声、
拍手)かくのごときはその道の
関係者だけしか信用し得ないものである。たとえば、賃金ペースは一部に引上げられはしたが、生活費はまさしくそれ以上に高騰し、加えて消費米価の値上げがあり、さらには間接税のこの三百六十何億の大増徴がある。さらにまた電力料金の値上げ、あの売国的火力借款の保証
条件として、これはさきにアメリカに誓約したところであるから、これまた本年度の生活コスト、托産コストの中に重き負担とな
つて加わ
つて来ることは必至である。輸出は頓挫して、経済恐慌はまさにまのあたりである。かくて景気はいよいよ悪化し、逆に生活費はだんだんと高騰するこの情勢下において、ここに所得税
関係の庶民大衆は前年度に比してさらに二百数十億を越える所得税を増徴されんとしております。
国民所得の机上の推算は何とあろうとも、かかる徴税は苛敬謙求まさにその度を越えるものと思うが、大蔵
大臣並びに経審長官は、これらの関連性をいかに分析し理解しておるのであるか、この機会にその御
見解を承
つておきとたい。(
拍手)
ここに税制
調査会の答申によれば、所得税について一年の勤労所得二十四万円までを無税とすることはすでに常識化し、決して過大の
要求とは言えない、かくのごとくに断定しておる。これはまさしく的確にわが党従来の
主張の妥当性を裏づけたものである。(
拍手)まことにこの税制
調査会こそは吉田
内閣総理大臣の委嘱選任した
政府の
機関であるが、かくのごとき
政府の
機関によ
つて反対党たる社会党の政策がかくも明確に支持されたことに対し、
政府は何ら政治的屈辱を感ずるところはないか。この際、所得税については、せめてこの税制
調査会の答申のレベルまで、すなわちその基礎控除額を八万円に引上げ、給与所得控除の限摩を七万五千円にまで引上げる意思はないかどうか。この点、吉田
総理の
政治家的潜持に訴えて、その
見解を伺
つておきたい。
かくて、この繊維
課税の本筋に入
つて質問をするが、まず最初に、不潔きわまる経緯をたどり、全
国民の
疑惑の充満したかくのごとき繊維
課税は、
国会の尊厳と政道の
権威のために、
国会は断然
審議すべきものではないと思うが、私はこの際、われわれ
審議の府にある者が、この税法に対し、かくのごとく触るのも汚らわしいほどの嫌悪の情に燃えておる
理由について二、三申し述べて答弁を求めたい。
思うに、この繊維
課税の
立法ほど
国民を愚弄し、不潔な経緯をたどつた
法律案はないであろう。それはまるでユダヤ商人の押売り行脚に似て、たとえば、この税制は、最初原糸の門をたたいて手ひどく締め出され、次いで小売の店をゆすつたが、罵倒とともに追い返された。(
拍手)その後機屋、織元にすわり込んだが、またたちまちはじき出されて、最後に中間問屋を弱そうな相手とにらんで、遂に強引にここに居すわつたのであるが、これが
政府の繊維
課税押しつけのための暗夜行路、ユダニズムの実態である。この法案は腐臭にまみれて、
国民はまさに嘔吐を催すばかりである。
吉田内閣の特質は、ただいま
同僚加藤君も言つたが、強い者には弱く、弱い者に強いことは、まさに天下の通説であるが、
吉田内閣は、今回この繊維税法の取扱いにおいて、最も端的にその性格を露出した。かくのごとく弱い者いじめの不公正、没義道な
法律案に対しては、さすがに反動
政府、反動与党の、中においてすら、この悪法
反対の同調者多数を数え得るほどである。(
拍手)これは、悪税法粉砕のための、われわれのいささか便宜とするところである。
そこでお伺いをいたしたいことは、
政府は、当初税制
調査会の答申に基いて原糸に
課税すると発表しながら、幾ばくもなくしてこれを引込めたのであるが、その
理由は一体何であるか。さらにはまた、その後小売屋の店頭に
課税するとの方針を発表しながら、これまた旬日を出ずその方針を変更したのであるが、その真相について、この際大蔵
大臣より
国民の納得できるような御
説明を願いたいものである。(
拍手)情報は紛々として、ちまたの話題をにぎわしておる。その代表的なものとして、二月十五日付の某新聞は、
政府の
課税対象流転の真相として、次のごとき事柄を報道している。すなわち、「二億円注ぎ込む、大メーカーから
自由党へ」、この大見出しのもとに、その記事の中に次のごときことが報道されている。すなわち、その冒頭に、
政府自由党と犬メーカーとのやみ結託の消息を伝えつつ、次いで「十九日ごろ、紡織協会
委員長、東洋紡社長阿部孝次郎氏、羊毛紡績会長、大東紡社長吉田初二郎氏その他が、
自由党釜谷総務会長、前尾政調会副会長と築地の某料亭で懇談し、その席上三千万円が渡された。そして、原糸
課税によ
つて負担をうける大小のメーカーから
自由党につぎこまれた金は合計二億円に達するという」(
拍手)「これらのことについては、福永官房長官が片倉製糸出身であり、池田政調会長は川角東洋繊維社長と同郷、同窓であることもみのがせない」云々。この新聞記事の信憑性をただすことは次の機会に譲るが、かかる報道が当該法案
審議のさ中において公然発表せられたことは重大である。
政府は、すべからく国政の
権威のため、検察権を発動して真相を糾明すべきであると思うが、本件に関する
犬養法務大臣の
所見を承りたい。
まことにこの織物奢侈税ほどその
立法の目的があいまいで、その性格の不明朗な
法律案は、まさに類例に乏しいところである。ぜいたくな消費を押えるというならば、ぜいたくな消費財は別して織物ばかりではないはずである。
政府は本税による八十五億の財源の必要性をことさらに強調しておるが、しよせんそれは執拗に面子に拘泥する頑固者の姿である。かかる八十五億程度の財政操作が二十九年度一兆円
予算の規模の中で処理できないはずは断じてない。(
拍手)なおまた、
政府は、二十九年度の一般会計の歳入総額は九千九百九十五億と計上し、二十九年度はこの額以上は自然増収はないものと断定している。しこうして、昭和二十九年度は
予算の補正は絶対行わない旨、
政府は本
会議においてしばしば言明したところである。そこでお伺いいたしたいことは、もし、一、歳入に例年のごとく自然増収を見た場合、しかもその額がわずか八十五億に至つた場合、この繊維
課税の税収分は明らかに使い道のない余分の収入となるのであるが、かくも
国民一般の熾烈な
反対を押し
切つて新税創設を強行せんとする
政府は、その場合いかなる
政治的責任をとるものであるか、この点に関し吉田
総理より明確なる御答弁を伺
つておく。
いずれにしても、この税法案は
法律の体をなしてはいない。問屋で徴税するというが、問屋には元売り問屋があり、中間問屋があり、切売り問屋、小売兼業の問屋がある。なおまた店舗を有せざるお得意専門の問屋な
どもあるであろう。本税法は、納税したい希望者だけが納税するというだけのものならいざ知らず、
法律をも
つてこの複雑微妙な業態を拘束するということは、まつたく不可能である。これを強行することは、しよせんは
国民に対し脱税、脱法の
犯罪をしいる結果となるものである。かくのごときは、まさに政治悪の極致なりと断ぜざるを得ない。
法律はあいまいであ
つてはならないのである。
法律は
国民の何人もが遵守するの
権威を持ち、また遵守できるだけの体をなしたものでなければならない。ここに本
法律案は、その
立法の過程において政略に翻弄されてすでに腐敗し、この各条章は、業界の暗躍によ
つて、もはや原形をとどめぬまでにゆがめられてしまつたものである。
政府はこの際虚心に猛顧反省し、広く行財政に一段と再検討を加え、この際この繊維税法案は撤回すべきであると思うが、
政府にその意思ありやいなや、大蔵
大臣より誠意ある答弁をお願いする。(
拍手)
なお、この
法律案に関連をして最も重要なる事柄として、入場税国管の問題について簡単に
質問いたしたい。そもそもこの入場税国管の事柄は、これまた税制
調査会の答申に基くものであろうが、その答申書が入場税を終始遊興飲食税と一本のものとして取扱
つておるのである。しこうして、
政府もまた、今次税制改革の要綱を決した十二月当初は、入場税取び遊興飲食税を一体のものとして国税移管の方針を
決定したのである。しかるところ、その後幾ばくならずしてその方針は変貌改憲されて、本日ここに見るがごとく、遊興飲食税は地方税としてすえ置かれ、入場税だけが分離されて国税に移されんとしておるのである。ここに全国の料飲店が
反対のためにいかなる運動を
政府並びに与党に試みたか。その中味の事柄はわれわれのよくこれを知るところではないが、われわれといえ
ども、その
反対運動が、あのように、いともあつさりと、しかも端的に成功し、たことから推して、それらの運動と交渉の中味がどんなものであつたか、あらましの想像のつかないわけではない。(
拍手)
およそ今次税制改革案をめぐる
政府のやり方というものは、即興的であり、思いつきである。まず
課税する対象を選んでは、そのものに白羽の矢を打ち立てる。矢を立てられた業者は、あわてふためいて
政府と与党にかけつける。そこで、
政府と与党は、しさいありげに、かつ神妙にその嘆願にうなずいて、現金にその矢を抜くのである。繊維
課税の
立法の経緯に見ても、入場税国管のいきさつをながめても、この種の批判が起ることは当然ではないか。かくのごときは、まさに無定見、無節操の域を越えた、悪質、非道の政治と言わなければならぬ。
政府は一体いかなる
理由によ
つて同種同根の入場税と遊興飲食税とを、かくも簡単に、しかも瞬間のうちに分離してしまつたのであるか、この機会に、大蔵
大臣より、そのいきさつを明らかにいたされたい。
政府は、入場税の国管を
理由づけて、地方財源の偏在を是正するためと言
つているが、大都市を含む地方
行政にはまた、ひとしく欠くべからざる大都市的支出のあることを見のがしてはならないのである。
憲法第八章の地方自治の本旨を
政府は一体どのように解しておるか。民主政治の高揚は地方自治の確立にあり、地方自治の確立は地方
行政に
独立財源を
確保することにある。もしそれ、今回
政府が言うがごとく、地方財源偏在調整のことを入場税国管の
理由とするならば、現に遊興飲食税も事業税もひとしく大都市を含む大府県に偏在しておるから、
従つてこれら地方税一切のものはやがて国管にされるものと見るべきであるが、それでよいのであるか。さすれば地方の
独立財源は全部なくな
つてしま
つて、ここに地方自治は終息し、民主政治はその息の根をとどめるのであるが、
政府のねらいは、ほんとうはここに定められておるのではないか。
数日前、警察法改正の
質問に答えて、塚田
国務大臣は知事官選のことを提唱した。中央集権的官僚警察組織がえの大作業は、幾多民論に抗してすでに着手されつつある。地方財源偏在調整の名のもとに、ここに企てられておることは、地方財源の中央奪還のことではないか。ここに知事を奪いとり、警察を奪いとり、地方税、この三つのものを剥奪して、再び中央集権的官僚国家の復元をたくらんでおることは、もはやおおうべきもない現実とな
つて現われておる。まことにはだにあわを生ずる反動政治への出発である。