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1954-01-29 第19回国会 衆議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年一月二十九日(金曜日)  議事日程 第五号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  土地調整委員会委員任命につき同意の件  国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     午後一時五十七分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) お諮りいたします。内閣から、土地調整委員会委員諸橋襄君を任命するため、本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて同意するに決しました。      ————◇—————
  5. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。中曽根康弘君。     〔中曽根康弘君登壇〕
  6. 中曽根康弘

    中曽根康弘君 私の質問は三点であります。第一は国防の問題であります。第二は国際収支危機に関する問題であります。第三は憲法に関する問題であります。ただいまより質問をいたします。  昭和二十九年の今日は、独立第二回目の新春であります。形式的には独立第二回目の春を迎えたとは言え、この日本に必ずしも完全な独立国としての資格を持つた政府が存在するかいなかは、遺憾ながら疑問とするところであります。(拍手独立後の政府施策を見ると、あたかもいまだ麻酔剤からさめ切らないうちに病院から退院した患者のごとく、もうろうたるうちに政治経済も漂流し続けている感じを禁じ得ないのであります。しかしながら、近来に至つて国民の中にはこのような政府態度にあきたらず、かつて世界五大強国の一に列した優秀民族であつたとの自覚がかすかに記憶の中によみがえりつつあり、占領政策の再検討の機運がとみに上つて来たことは御同慶の至りであります。しかし、最も重要な政府の国策については、このような独立国政府としての自覚の欠如から、わが民族の命運に暗澹たる影を投げかけておる憂うべき事態が起つておるのであります。(拍手)この点につきまず御質問いたしたいと存じます。それは国防国際収支危機に関する政府政策であります。  まず、国防に関する政府の近来の施策を検討してみますと、政府態度は、MSA焦点を合せながら政治を移動させているということが言えます。言いかえれば、MSAの波の間に間に日本の最も重要な国防及び外交に関する政治がただようているということであります。(拍手)このことは、わが民族独立と名誉に関し見のがすべからざる問題であるのであります。政府は当初において国家自衛権を否定するがごとき言辞を弄したのであります。しかるに、平和条約安全保障条約の締結に際しては、集団的及び個別的自衛権を認むるに転じ、次いでMSA交渉が開始せられるや、ここに三度転換して、防衛計画の策定から、進んでいわゆる戦力なき軍隊にまで発展いたしました。一体この態度の変化は何に基くのでありましようか。すべて太平洋のかなたから来ておるのであります。近くはまたMSA放射能の作用であります。国防に関する政治スイツチ米国が常に切つておる。政府は切られた方向にあなたまかせで移動しておるのみであります。マツカーサー元帥によりつくられた警察予備隊から戦力なき軍隊に至るまで、アメリカの風にただよいつつ、みずからは積極的に何らなすこともなく、この間に国家の重要な機能であるところの防衛米国のイニシアチーヴにより政府に与えられつつある現実であります。(拍手)  ここで吉田総理大臣にお尋ねいたします。一体、吉田総理大臣国防本質を何と考えておられるのでありますか。MSAにスポツト・ライトを合せることが国防であるとお思いになつておるのでありますか。有事の際みずから国の総力を結集して国土を守り、かつ平常からこれに備えるのが国防であります。しかるに、今日の政府態度は、みずからのためにみずからを守るという凛然たる精神が全然ありません。総理は、その施政方針演説の中で、一昨日、米国艇財政緊縮方針に基き駐留軍漸減の希望あるに対し、また自由諸国共同防衛体制の樹立に寄与するために防衛体制をつくると言つておる。これでは、今日の政府国防政策は、米国に調子を合せるための国防であつて、断じて日本国民国防ではありません。(拍手)  ここで一言申し上げたいのは、国防に関するドイツ総理大臣態度であります。アデナウアー首相は、ドイツ統一促進防衛のためにEDC条約に入り、自衛軍建設を行うことを決意しました。しかし、ドイツ建軍は、EDC条約においてフランス側から強硬なる制限が加えられております。すなわち、飛行機や大砲のごどき重兵器ドイツ国内においては生産し得ず、パウダー・ラインと称して、独仏国境から四十マイル以上離れたところには火薬工場を建設し得ないことになつておる。このような苛烈な条件にもかかわらず、アデナウアーは勇敢に国民に訴えた。かような条件のもとで国民諸君自衛軍建設を要請することは、諸君に苦難をしいることはよく知つておる。しかしながら、この苦難を突破しなければドイツ統一ドイツの再建はできないのであるから、国民諸君協力してくれ。この老宰相の熱烈たる愛国の気魄国民の胸を打つたのであります。かくて先般の選挙において彼は圧倒的に大勝いたしたのでありまするが、さらに驚くべきことは、前回の総選挙のときより新たに有権者となつ青年の票の行方であります。新しき青年の票六百万票のうち実に五百万票は彼に、銃を持たせんとするアデナウアーに投票し、わずかに百万票が反対の社会党に投ぜられたにすぎないのであります。これがドイツ総理大臣であります。何ゆえ吉田首相ドイツ総理大臣のごとき気魄をもつて国民に訴えないのでありますか。(拍手)このような日本政府のもとに保安隊の士気は沮喪し、たとえば、最近各地に頻発する幹部の汚職事件、隊員の米麦盗み出し事件、あるいは保安大学の一部学生が赤色勢力の中枢たる全学連へ加盟を要請するがごとき不祥事件の続出となつているのであります。一体政府は、国防力をつくらんとしておるのか、また赤色革命軍を養成しようとしておるのか国民的名誉も与えられず、郷土の後援も得られず、冷たい世評の中で黙黙として勤務に志した若き保安隊員の純情は、かく政府の無定見に蹂躪され、このように歪曲されているではありませんか。問題は予算の多寡でもない。国防本質に関する政府認識決意にかかつておるのである。八百億の血のにじむ税金を、このような弛緩した雑軍のごときものに浪費してよいのでありますか。役所の名前を防衛庁とかえても、駆逐艦を何隻もらつても、総理大臣根性が直らないうちは、断じて同一の事態であります。いな、害はさらに大きくなるのである。総理大臣国防本質を何と考えておるか、ここで御答弁願いたいと思うのであります。  第二に、その自覚に立つて政府保安庁法の改正をいかに行おうとしておるか、この点については、自由党とわが党との間に一部妥結、了解したものもあります。ここで明らかに政府所信を確認いたしたいのであります。もし政府所見妥結ラインをはずれるようなことがあれば、今後の事態責任は一切政府にあると私は思うのであります。まず防衛基本方針として、第一、文民優位ということはいかなることであるか。保安政務次官答弁によると、文民優位とは保安庁局課長が制服でないことが文民優位であると答えられておる。はたしてこの通りであるか。第二に、政権交代による国防安定性を確保するために、国防会議機能三軍統合方策をいかに具体化する。第三番目に、米国長期的アジア防衛計画を知悉して日本国防計画を策定しているかどうか。しかりとすれば、米国日本の年次的及び任務上の分担範囲はいかなることになるか。第四に、最近における世界及び米国戦略戦術兵器の発達を認識した上で計画を樹立しておるか。来るべき日本自衛軍は、戦前のごとき人力にたよつた竹やり部隊であつてはならないのです。また米国廃兵器の捨て場であつても断じてならないのであります。科学力を中心にした少数精鋭機械化部隊でなければならない。政府はこの点についていかに思われるか。  次に、法律上の改正事項として、三派折衝委員会の従来の妥結点は、政府はこれを全面的に了承するかどうか、ここで明確に御答弁願いたい。  さらに、防衛計画の原則として、まず五箇年計画を採用するかどうか。五箇年間に米軍兵力と交代し得る兵力の整備を目標としておるかどうか。さらに五箇年計画整備終了最終目標は、陸海空おのおのどれくらいの規模を予想しておるか。次に、初度装備費は、MSA援助に期待して、国家財政経営費を支弁するごとく措置するか。防衛費財政上の年間限度を幾らを適当と考えているか。最後に、わが方自衛軍の増強に応じて分担金の逓減はいかなるペースで実現して行くか。  次に、最も重大な点である米軍撤退の問題に関して政府決意を伺いたいと思います。政府側の表現によれば、米軍撤退に即応してという表現が常に用意されております。このことはまつたく誤つた亡国思想の現われであります。自衛軍はみずから米軍撤退せしめるためにつくるものであつて米軍撤退するからその穴埋めとしてつくらるべきものでは断じてないのであります。政府意思表示によれば、政府日本外国軍隊駐屯していることを永久に希望しているがごとくである。このように怠惰な、無気力な、外国軍隊駐屯とそれによる保護を日本民族の恥辱とも悲しみとも考えないこの堕落した態度こそ、今日最も糾弾されなければならないのであります。インドでも、インドネシアでも、戦前の中華民国でも、その国民政治指導者が血の犠牲をもつて闘つたものは、それは独立の回復と外国軍隊撤退であつた。そこに崇高なる独立国民精神の根源が存在しているのである。かくのごとき外国軍隊駐屯に浩然たる吉田内閣態度こそ、日本アジアの歴史の名誉のために断じて抹殺されなければならない態度であります。(拍手)  アメリカ国務長官ダレス氏は、かのサンフランシスコの平和条約締結に際して、この条約は和解と信頼の条約であると述べた。和解と信頼とはいかなることであるか。それは、お互いが過去を水に流し合つて、将来親睦、提携することであります。日本はかの広島、長崎の原子爆弾の残虐ですら条約上水に流したではないか。(拍手)しかるに、何ゆえ今日八百人の戦犯がいまだに巣鴨につながれておるのであるか。何ゆえ沖繩、小笠原諸島の返還を強く堂々と内閣は要求できないのか。これは悲しくも日本が保護されているからであります。かくて、真の独立は、自衛軍創設による米軍撤退からスタートする。それはまた、わが失われた国権を回復して、民族平和的生存権世界に要請するスタートでもあるのであります。(拍手自衛軍本質はこのように純粋でなければならない。しかるに、政府の一部には、特需ほしさ外国軍隊駐屯を永続的に希望するという卑しい根性があるのではないか。主権の回復や血の純潔の保持のごとき第一義の問題と、かかる経済問題と混淆して考える者がもし政府の中にありとすれば、これこそまさに下劣なるユダヤ的思想と言わなければならない。(拍手)この点に関する政府考えを伺いたいのであります。  われわれは、戦争に負け、国を破滅に陥れた責任ある現代の日本国民であります。このわれわれが、現在いかなる苦難にあおうが、いかなる屈辱にさらされようが、もとより忍ばなければならない。しかし、われわれの子や孫の時代に至るまで外国軍隊日本駐屯し、数百の軍事基地日本を制圧し、混血児とパンパンとが横行するごとき日本を彼らに引渡すことは、われわれの忍び得るところでありましようか。あえて政府自覚と奮起を促す次第であります。(拍手)  このように、政府国防及び外交政策MSA焦点を合せながら漂流しておる。太平洋のかなたから来る放射能によつて政府の行動は初めて起されておるのであります。もし政府がこの態度を持つてさらに漂流し続けるならば、われわれは日本国の運命について暗澹たらざるを得ないのであります。それは、隣国における歴史の現実がそれを示している。中国の国民政府が台湾に逃亡を余儀なくされたのも、かかる態度からでありました。米軍は、国府軍を強化するために援助を与え、いわゆる機械化部隊を編制した。国民政府は、国民とともに国を守るという決意を捨てて、米国と国を守る決意にかわつた。政府の顔は大陸に向わずして太平洋のかなたに向つた。このような態度のもとにできた機械化部隊は、米軍の指揮のもとに運用されたがゆえに、一たび中共軍の重囲に陥るや、友軍はこれを米国のとらの子部隊と称して救援しなかつた。かくて、すべてそれは中共軍に押収され、たくましき中共の革命的民族精神に駆使され、遂に台湾亡命の末路となつたのであります。今日の吉田内閣外交国防政策は、その本質において、かつて国民政府のそれとどこに違うところがありましようか。(拍手保安隊上層部に醜聞の疑いがあり、末端には汚職の続出あり、総理大臣国防計画をばかげたものと冷笑しておる。しかも、国民の血税八百億円は、この冷笑と弛緩の中に浪費されようとしておるではありませんか。(拍手)一体、国民は何のために働き、何のために税金を納めているのでありましようか。祖国の運命はいかなるところに流れつつあるのでありますか。あえて政府の深甚なる反省を求め、その所信を伺う次第であります。(拍手)  現下の第二の重大問題は国際収支の均衡の問題であります。正直に言つて、われわれも国民も一昨日の各大臣演説を聞いて唖然といたしました。ふたをあけてみたら、日本経済の実情は何と保全経済会のそれと酷似しておつた。監督すべき大蔵大臣が監督さるべき伊藤斗福と同様の措置国家経済について行つていたとは、何と驚くべきことではありませんか。(拍手政府は、昨年一月の今日においては、日本経済は生産も消費も上り、国民鼓腹撃壤はわが党内閣の功績であると誇示いたしました。しかるに、今日寝耳に水のごとく、あぶないあぶないと叫び出した。しからば、何ゆえ、昨年度年度進行——国会を二回もやつた昨年度の進行中に、外貨予算その他について国民に周知せしむるとともに、強硬なる措置をとつて政策の転換を行わなかつたのであるか。一昨日の大臣演説は、道義的にも、同一内閣でやり得る演説でありますか。後継内閣でやるべき演説ではありませんか。あえて私は吉田総理大臣以下各大臣責任について伺いたいのであります。(拍手)もつとも、古語に、人のまさに死なんとするやその声やよしという言葉がある。大蔵大臣経審長官演説の中には、いささか良心のおののきがうかが身る。しかるに、総理大臣演説は何事でありますか。この問題に最も関連している自由党の公約、外資導入の金看板はいつの間にかはずされておる。さらに、綱紀粛正の言葉まで削除されてある。しかも、経済大臣が声を振りしぼつて強調した国際収支危機については、一言も総理大臣は触れておらないのであります。経済大臣昭和二十九年の今日の位置にいるけれども、総理大臣は昨年——昭和二十八年正月の座席にいまだ眠つている状態ではありませんか。(拍手)一体、国民はどちらの演説を信用したらいいのでありますか。もつとも、総理大臣が言い出したら国民が動揺するから、七十何人目かの大臣に言わせておけば安全だというのでありますか。また、その程度事態で済んでいるのでありましようか。この内閣の国政の基本に関する不統一責任をいかにとられるか、重ねて伺いたいのであります。  次に、重大なことは、今回突如国際収支危機を公開して、国民に協力を求められておりますが、その中にすらまだ重大なる欺瞞を意識的にやつている節があるのであります。  それは、昭和二十八年度と二十九年度国際収支逆調の額であります。まず、政府の発表によれば、昭和二十八年度国際収支は約一億九千万ドルの逆調であると言つているが、はたして正しいか。政府の発表している事項以外に、逆調要因として、三月までに国際通貨基金に対して払い込むべき五千万ドルがまずあります。さらに綿花借款の残額約四千万ドルの支払いがあります。これが隠されている。これを合すれば、本年度の赤字は実に二億八千万ドルに上る予想であるのであります。政府の、このようなことを欺瞞した国会対策的な演説には、断じてわれわれは承服し得ないのである。(拍手)これでどうして国民の協力が求め得られましようか。この点に関する正確なる数字を示されたいのであります。  第二は、昭和二十九年度逆調見通しであります。政府は二十九年度逆調をいかなる数字に算定しているか示されたい。経審長官演説草稿には約一億ドルと書かれてありますが、これが消されている。おそらくこの辺の前後と算定しているのでありましよう。しかし、われわれの調査によれば、支払いべースにおいて明年度三月までに約二億ドルの赤字は必至と見られております。政府日英会談成立によるポンド貿易飛躍的伸長を期待しているようでありますが、しからば、いかなる交易量のわくと実行の見通しを持つておるか。外電の伝えるところによれば、二億一千一百万ポンド、すなわち五億二千万ドルのわくが設定されると予測しておる。本年度におけるポンド圏への輸出見込みは大体三億五千万ドル程度であつて、たとい先般のポンドに対するレート切下げ行つても、三億ドルが五億ドルににわかに上昇するとは考えられない。そこで、二十九年度におけるドル地域ポンド地域、オープン・アカウント、その他各項目輸出輸入予測額数字をもつて示されたいのであります。  二十九年度逆調の第二の理由は、特需及び域外買付の現象であります。たとえば、先般のアメリカランドール委員会の報告を見ても、この項目についての減少はもう必至の勢いであります。第三は、物価政府の期待するごとく五%ないし一〇%下落して輸出増大に作用すると見られることはきわめて甘い。この希望と現実を混淆しておるのである。この希望と現実を混淆している態度こそ、現在の政府政策で最も危険なポイントであるのであります。さらに、国際通商戦の激化と海外市場物価低落の趨勢は、日本価格下落の力を減殺せしむる十分な力を持つておるのであつて政府の見方は楽観に過ぎると思うのでありますが、いかに政府はお考えになりますか。もしかりに、政府の唱える五%ないし一〇%の下落が確実に見通されるならば、それを成立せしめるに足る経済の諸標を数字をあげて示されたいのである。たとえば、本年度一般会計予算を見ると、財政投融資の減は昨年度に比して約五百億円、この乗数効果をかりに三と見ても、年間のデフレ・ギヤツプ一般会計から千五百億円、国民所得六兆に対しでわずかこの程度、二%のデフレ・ギヤツプがどの程度きき目を発するか、おのずから明らかであります。特別会計地方財政あるいは金融上の係数がどの程度であるかは、政府は明らかにしていない。そこで、これらを含めた諸要因の係数を私はお伺いいたしておるのであります。  一体、生産や輸入が昨年と同じ程度である、他の係数が大体昨年と同じである、物価は五%ないし一〇%低落するというそのときに、国民所得のみが六兆という昨年の水準を維持するというのは何事でありますか。これがまずふしぎであります。私の調査したところでは、政府物価の低落を五%ないし一〇%と経済計算をしているようであるが、実際はしていない。おそらく一%ないし二%であります。国民所得の六兆の予想も実はここから来ておる。またさらに、その関係から、新年度予算において約七百億円から一千億円の含み財源政府は隠しておるとわれわれは考えるのであります。現に大蔵大臣は、昨年十二月、一兆億予算下における昭和二十九年度財源として一兆七百億円の数字予算委員会において説明した。今度の態度の急変はいかなる理由によるのでありますか。国民に対するデフレを強調するための心理的攻勢を意味する政治的数字をもつてわれわれに示す以外の何ものでもないではありませんか。民に信なくして政治は成立しない。ここにも今次予算における欺瞞がはしなくも露呈しておる。政府の明確なる答弁を求むるものであります。  さらに、二十八年度収支における逆調の原因は、おびただしい物資の輸入激増でありました。昨年一—九月の輸入数量は、前年同期に比して、綿花が三割、羊毛が五割、麻類が六割、レーヨン・パルプが十一割、砂糖五割、外国自動車至つては七割の激増であります。これが外貨を枯渇せしめている。これらの項目は再輸出に転ずるものではありません。このような濫費経済外貨の犠牲において何ゆえ放任して行つたのか。年度進行中何ゆえ緊急措置を行わなかつたのであるか。この乱脈を見れば、なるほど政治資金の源泉がこの辺にあると巷間うわさされているのも無理ではないと思うのであります。(拍手)  さらに重大なことは、この放漫乱脈が本年度予算編成に重大な支障を来しておる。すなわち、昨年末における公務員のべース・アツプである。このために、一般会計における給与費の純増は四百八十億であり、特別会計を合算すれば八百億円の増額である。かくて、本年度一般会計における人件費は三千百八十億円、一兆億予算の三分の一が人件費であります。まさに給与のための予算であります。この事実に恐縮して、政府はにわかに行政整理をやろうといつて、ばつを合せておりますが、しからば、本年度何人の出血整理を敢行して、幾らの経費を実質的に節約するのであるか、ここに数字をもつて示されたいのである。(拍手)  最後の点は、輸出促進に対する対策であります。昭和二十九年度において政府がこの一兆億の予算を組んだ趣旨は、この予算によつて国民経済を圧縮する、そこに出て来る余剰能力をいかにして輸出チヤネルにつなぐかということにかかつておるのであります。その具体的方策がなければ、国民に耐乏をしい、予算を圧縮した意味はなくなるのである。そこで、この収縮した余剰能力をいかに輸出チヤネルに導かんとしておるか、その具体策を伺いたい。遺憾ながら、このような予算を組んだことに対応する本年度の通産省の施策を見ると、そのような自覚も積極的な配慮も方策も何にもないではありませんか。(拍手)特に最近激化して来た国際通商戦に備えるためにも、たとえば輸出振興対策費のごときは、食糧増産対策費に対応して独立計上すべき性格を持つておるのである。政府所見はいかがでありますか、お尋ねいたしたいのであります。  最後に、現在の国際収支危機に対する政府認識について伺いたい。現在の日本ドル貨の保有は幾万でありますか。焦げついて役に立たない分を除いて、実勢力は内閣は一体幾ら持つておるとお考えでありますか。私の調査によれば、インドネシア、韓国に対する焦げつき債権一億三千万ドルを除けば、手持ちはわずかに七億七千万ドルであります。この中から、さらに昭和二十八年度において最小見積つても二億五千万ドルの赤がある。二十九年においては二億ドルの赤は必至である。これが流出すると、来年三月には日本のドルの保有高は三億二千万ドルであります。現在の貿易量を維持するためにすら約五億ドルを必要としておる。十二億の輸出と二十一億の輸入運転資金で五億ドルが必要である、これがわずかに三億二千万ドルに激減した場合には、信用状は開かれません。日本は必然的に米国にひざを屈して援助を求めざるを得ざるに至るであろう。もし貿易の運転資金までも米国援助を仰ぐに至るならば、日本米国金融的植民地に転落せざるを得ないのであります。もし万一このような趨勢に近づけば、外貨割当統制に始まる統制の波は一波万波を呼んで、戦時中のごとき動脈硬化なつ経済に再び移行せざるを得ないのであります。今日において外貨規制をにわかに行い出じたのもこのゆえでしようが、約一年遅れた感がある。外貨規制のごときは実力九億程度の保有をもつて初めて有効円滑に行い得るのであつて、このように減少し、先細りの今日外貨規制を強硬に行えば、思惑と投機を誘発し、国民経済は撹乱される憂いを残すのであつて、現にその徴候が出ておるではありませんか。この政府対策の遅れは、かかるがゆえに厳に私は国民の一人として責任を追究すべきものなのであります。もし昭和二十九年度における経済政策が不幸にして成功しなければ、遂に政府MSAのパイプにすがつて国民経済を調節せざるを得ないのであります。そのときば、かつてのマツカーサー司令部権力下の統制のごとく、アメリカ大使館の事実上の支配下の統制に日本経済は移行せざるを得ないのであります。(拍手)このような民族独立国家百年の将来を憂えて、政府ははたして対策に万全を期しておるか。政府が現在の安易な施策を続行するにとどまるならば、国防政策におけるごとく、日本経済政策また米国焦点を合せて、経済もまた漂流せざるを得ざるに至るは必至であります。ここに今日の国防経済、国政の源泉に存する危機の実相があるのであります。吉田内閣のもとの国家憂患の本源が存するのであります。政府は、かかる潜在的危機に対して、特に民族の完全独立保持の見地より、いかなる決意と抜本的対策をもつて対処せんとしておるか、完全独立を熱願する全国民の名において、私は政府の明確なる御答弁を伺いたいのであります。  最後に、憲法の全面的改正の問題についてお伺いいたしたいと思います。およそ憲法はその国存立の神聖なる根本的規範であつて、その国民のために、その国民の完全なる自由意思によつて創定すべきものであります。しかるに、現行日本国憲法は、占領下自由意思なきときにつくられ、外国の承認を経て成立したものであつて、すでにその成立の手続においてすら真に憲法と呼ぶにふさわしくないものがあるのであります。およそ憲法が存立するときには、少くとも国民過半数は死を賭してその憲法を守るという決意が込められたものでなければなりません。しかるに、かくのごとき条件下につくられた現在の憲法を死を賭して守らんとする日本国民は何人ありますか。自由意思のないところには、道義もなければ勇気も生れて来ないのは当然であります。かかる見地からすれば、現在の憲法はまさにマツカーサー元帥占領政策基本法ともいうべきものであつて、自由意思すなわち道徳性の根拠のない根本的規範は、まことに血の通わざる死体にひとしいのであります。そこで、自由意思を回復した今日においては、当然新たなる憲法を創定して、占領下の憲法を廃止することが最も民主主義的措置であると思うのであります。(拍手)ここに真の日本の民主主義が誕生するのであります。さらに、現憲法は、その後数年にわたる実施の経験にかんがみても、国際的、国内的諸般の情勢に即応せず、将来にわたつてわが日本民族のあり方を恒久的に規定すべき基本法として必ずしも適当でないのであります。しかるに、今日平和憲法擁護国民連合なるものが結成され、現憲法を永久に擁護するがごとき実践運動が展開されておるのは、いかにも独立国民として奇怪しごくに存ずるものであります。(拍手)与えられた憲法の内容の一部を是なりとして、その憲法の全体の合理性、制定手続に関する検討を故意に看過して盲目的に擁護せんとする態度は、被告の行為の一部に善行ありとして、婦女に対する暴行の罪を全面的に看過する態度と同じであります。しかも、かくのごとき運動は、占領軍によつて与えられた現状をそのまま墨守せんとする、まさに保守反動の行為であります。(「憲法を擁護するのが悪いのか」と呼び、その他発言する者多し)マツカーサー元帥は現在においてすらも憲法の改正には反対であると伝えられております。占領政策責任者である元帥の立場としては、さもあることでありましよう。しかしながら、日本国民にして今日なおいわゆるマツカーサー憲法を盲目的に墨守せんとする諸君は、まさにマツカーサー元帥の忠良なる臣民であつて、断じて日本国民ではないのであります。(発言する者多し)かかる観点より、政府は、憲法の全面的改正と、かかる国民連合の運動に対して、いかなる見解を有するか、国民の前に明確にしていただきたいのであります。(拍手)  時代は刻々と動きつつあります。ニクソン副大統領は、昨年アイゼンハウアー大統領の特使として日本に来り、一九四六年米国日本に憲法を強制し軍を解体したことは誤りであつたと声明したことは、われわれの側から言えば何を意味するか。それはマツカーサー元帥占領政策の根底が完全にくずれたことを意味するものであります。(拍手日本国憲法制定の基礎が失われたことを意味するものであります。かくて、われわれ完全に独立自由の立場に立つて、みずからの憲法を制定すべき跳躍台に立つに至つたと言わなければならないのであります。(拍手)今や、駸々として進み脈々として流れる民族の生命力を一人の個人がふさいではならない内外からの情勢がここに来たのであります。かくて、日本は、今やこの偉大なる昭和民族的体験を経て、敢然として戦前の旧陋を脱却し、戦後の積弊を一掃して、真にわれらのためのわれらの憲法を創定し、新しき国家発展、国民福祉増進の基を開くべきとき至れりと確信するものであります。  われわれは、現在いわゆるマツカーサー憲法を改正しようとするのでもない。明治憲法を改正しようとするのでもない。これはいずれも過去の所産であります。まつたくの白紙の立場に立つて、わが民族の歴史に照し、わが民族の発展のためのあり方を恒久的に規定すべく、根本的規範を確立し、偉大なる明治憲法の発展になぞろうべく、果敢なる昭和の躍進を用意せんとするものであります。(拍手)もとより、敗戦、被占領の悲運の中にわが国民が確立した平和主義、民主主義、進歩主義、国際協調主義の諸原理は、人類不変の原理であつて、あくまで堅持せられるべきものと信じます。かくして、かかる諸原理を中心にして、民間在野に新憲法草案の策定が勃然として起ることはきわめて望ましいと感ぜられ、これは民主主義を本質的に打立てるべき基本的条件と思われるのでありまするが、政府はこれに対していかなる見解を抱くか、お尋ねいたしたいのであります。  さらに、伝えられるところによれば、吉田首相は、政府の部局に対し、現行憲法の検討をすでに命ぜられておる由でありますが、首相はいかなる意図をもつて、いかなる諸点の検討を命ぜられたか、御答弁願いたいのであります。試みに、私見によれば、全面的改正に際しては、前述の長所を十分存続せしめつつ、一応全文にわたつて、現在の訳文臭を脱して真実の日本語調に書き改むべきものであると考えます。しかして、たとえば天皇の地位については、大赦、特赦、栄典授与等は内閣の助言に基く天皇の行為となすも、政治の実権には干与されることなく、主権在民、国民主権のもとに元首の地位が維持せらるべきものと信じます。このことは国民的信念に合するのみならず、アメリカ大統領もフランス大統領も主権在民下の元首であつて、これらの元首より大公使の信任状を捧呈せられる天皇は、当然国際的規範に従つても元首であるべきであると信ずるのであります。そのほか、内閣制度については、英米法雑居の現状を改め、日本的民主制度を確立する必要があります。自衛軍創設に伴う文民優位の確立も重要なる点であります。さらに、解散権の明確化、黙秘権、最高裁判所国民審査に関する条項、公共的慈善、教育、博愛団体に対する政府支出の禁止条項等は大いに検討を要する部面であると信ずるのであります。しかしながら、たとえば、平和の確保と国際紛争を平和的に解決することに対する確固たる保障、基本的人権の尊重に関する事項、男女の平等、婦人参政権に関する事項、地方自治の尊重に関する事項等は、あくまで堅持存続さるべきものと信ずるのであります。政府は、かくのごとき私見に対して、いかなる所信を有せられるや、御回答願いたいのであります。  最後に、この憲法の全面的改正の事業は、まさに超党派の国民的立場をもつて行うべく、一党一派の手によるべきでないと信じます。よつて、これが改正手続は、いずれ適当なときに、国民の最高の知識と各層の輿論を反映した代表により、全国民の協力による草案を調査策定するため、憲法改正調査審議会法を制定し、発議権者たる国会の付属機関としてかかる審議会を設置し、草案策定後一定期間国民の理解と批判にさらし、しかる後所定の改正手続に移行すべきものと信ずるのであります。政府はこの見解に対しいかなる御所見を有せられるや、お尋ねいたします。  最後に一言申し上げます。吉田総理大臣は、おそらく、近来、日夜この憲法問題の処理に苦慮されておられるであろうと想像いたします。それは現憲法制定責任者として当然であります。吉田首相の政治生涯において、かの平和条約の締結とともに、この憲法問題の処理こそ老首相が身命を賭して行わねばならぬ最後の事柄であると信じます。時代は駸々として流れてやまない。老首相最後国家への卸奉公は、新憲法創定のための偉大なる次の歴史的舞台を用意し、みずからは静かにおりる幕とともに舞台の外へ消え去ることに存すると信ずるものであります。(拍手)そのときこそ、全日本国民は、歴史的使命を果して消えて行く民族の指導者に対し無限の愛惜を惜しまぬであろうと思うのであります。(拍手)私はここに電ねて総理大臣の御心境を伺い、以上をもつて私の質問をとずるものであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  7. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。  日本国防日本国の国力の増進に従つて漸増するということは基本方針であります。これはしばしば申した通りであります。従つてまた、米国政府日本における駐屯軍を漸減いたしたいということも、日米皮全保障条約に明記いたしておるところであります。この米国の権利あるいは日本としての義務と申しますか、米国軍の駐屯を漸減いたしたいこと、日本としては国防の充実を国力に従つて漸増するということは、これは日米安全保障条約の規定であります。この規定に従うことが米国依存ではないのであります。この条約の規定を遵奉して、この条約上の義務を果すことは、日本としては名誉と考えるべきものであります。これをもつて米国依存の政治なりということは、そうお考えになつて、ひが目をもつて見られるのは、御自身がそういう傾向があるからではないかと私は心配いたすのであります。(拍手)  また、日本国防保安庁法改正は、これは改進党との間の約束によつて、その線に従つて改正いたしたいと考えるものであります。(拍手)これは決して米国の要請によるわけでもなければ、またMSA援助を請うために出されたものでもないのであります。あたかもMSA援助を受くるために日本の自衛力を漸増しようという考えを持つておるかのごとくに想像せられるのは、これは全然虚構な想像であると言わざるを得ないのであります。  また、国際収支については、しばしば申す通力、現在の収支ははなはだバランスを得ておらないことをまことに遺憾といたしますから、ゆえ政府は、これに対処するために、これに善処するために、均衡予算及び耐乏予算を編成いたしたのであります。この事実を目の前にして何らの措置を講じないとすれば政府の怠慢でありますが、この国際収支を合せるために、バランスを回復するために、耐乏予算、均衡予算を編成いたしたのであります。政府責任として何ら欠くるところはないと信ずるのであります。(拍手)  外資導入、これはしばしば申しておりますが、漸次日本に対して外資は入つております。今後ますます入るということを確信いたします。  綱紀粛正の問題は、これはしばしば申す通り、もし綱紀にして粛正すべきものがあれば断じて粛正いたしますことを再びここに声明いたします。  憲法改正の問題についてお答えをいたしますが、憲法の渕源は何であろうが、これはマツカーサーの憲法であろうがなかろうが、これは国民として考慮に置く必要はないのであります。すでに憲法として成立いたした以上、憲法としてこれを尊重するのが遵法糟神のよつて来るところであります。(拍手)これをいかに改正するか、これは国民の国論によるところであり、国論が改正すべきものであると考えるならば、政府は喜んでこの輿論に従つて改正の手段をとります。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  8. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) いろいろお尋ねがございましたが、この防衛予算の増額につきましては、日本の国力、経済力に伴つて自衛力の漸増をする方針でこういうふうに計上いたした次第であります。  さらに、国際収支の状況につきましては、お話のような点もございまして、昭和二十五年、六年、七年の三箇年、それぞれ三億ドル以上ずつも受取勘定があつたものが、二十八年から悪化いたして参りましたので、これに対する対策を講じたわけであります。なお、数字的にお話がございましたが、二十八年の見込みは一億九千万ドルばかりの赤字でありましたが、二十八年度は二億四千万ドルばかりになります。なお二十九年度は、この施行によりまして大体九千万ドルくらいの一応の見込みを立てておりますが、なおこれをできるだけ圧縮いたしたいと考えております。物価政策についていろいろお話がございまして傾聴いたしましたが、これは私どもは、申し上げました通り、予算の緊縮を根幹といたしまして、財政の面のほか、金融の引締め、産業の合理化、あるいは輸入の抑制、輸出の増進、外貨予算の運用等、総合的施策によりまして所期の目的を達し、しこうして日本商品の国際競争力を力づけて貿易の伸長に資したいと考えておる次第でございます。  歳入について七百億円か千億円ぐらい含み資産があるのではないかというお話がございましたが、政府におきましては、この二十九年度の緊縮予算及びこれが実行、さらに金融その他の諸施策を行う結果、適実なる収入を見込む必要がありますので、この程度といたした次第で、私どもは余裕ありとは考えておりません。  さらに、一般会計人件費は三千億も使つておるじやないかと仰せになりましたが、これは何かお間違いで、実は千二百九十六億、大体千三百億でございます。  それから、行政整理についてのお話がございまして、これは、御指摘もございましたが、初年度は退職金の支払いがあつて、大体とんとんかと思います。しかし、平年度になりますと、一般会計で約七十億円の減少となりますほか、警察関係で、今度の立法措置で八十三億円浮いて来ることになつております。  なお、外貨予算につきましては、これは中曽根さんもよく御承知の通りでありまして、私どもも、この運用をきわめて厳正に行い、一方には奢侈品等の輸入を厳に取締るほか、不要不急品については大幅のなたを振い、さらに輸出全体の面から見まして、たとえば日本の生活必需品とか、あるいはまた鉱工業生産品の原材料等のものもありますが、これらにつきましても、やはり現在立てておる一つの方針、物価引下げを目当てとしておる総合対策の方針に基きましてこれを処理いたしたい、つまり、私どもの言葉では、その点で外貨の調整をいたしたいと申しておる次第でございますから、さよう御了承を願います。(拍手)     〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
  9. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 簡単にお答え申し上げます。五年前に比べますれば、御承知のように、産業活動は二倍半から三倍近くも上昇いたしております。消費水準も、都市、農村を通ずれば一〇五前後まで回復をいたしました、問題は、昨日も申しましたように、この消費と生産の増加が国際収支の関係とアンバランスになつておるというところが問題でありますから、ここまで回復して来ておりまするところの日本経済を基盤にして、より一層堅実にいたしますように、ここで国際収支の改善に大努力をしよう、これが基本的の考えでございます。従来からの政策と一貫して私は考え得るものと確信いたします。かくすることによりまして、昨日も申し上げましたように、鉱工業の生産指数で申しますならば一五二、輸出は十三億七千五百万ドル輸入は二十一億四千万ドルというような姿になると思いますし、また方面をかえて、農林、水産の生産指数で申しますならば、二十九年度は大体平年作になるとするならば、一一一程度回復をする。これらのことを総合いたしまして、いわゆる分配国民所得は五兆九千八百億円ということに相なるわけでございます。
  10. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 中曽根君、答弁はこの程度でよろしゆうございますか。  高津正道君。     〔高津正道君登壇〕
  11. 高津正道

    ○高津正道君 私は、日本社会党を代表いたしまして、内閣総理大臣、小笠原大蔵大臣、石井運輸大臣、岡崎外務大臣、木村国務大臣、犬養法務大臣、大達文相、保利農相、これらの諸君に、緊急にして重要なる質問をいたそうと思うものでございます。(拍手)各大臣の御答弁は、改進党には懇切丁寧に、右派社会党にはやや親切らしく、左派に対しては簡単冷淡であるのを常とするのでありますが、本日は詳細に率直に、諸大臣より御答弁をされんことを特にお願いしておきます。(拍手)休会明けの本国会において、だれか大いに質問して、何かやつてくれということが国民大衆の最も望んでいるところであると私は信ずるからであります。しかし、一人の老記者から、その問題に触れると政治的生命を断つぞと言つた者があるという注意があつたのでありましたが、私は議員たる者の重き職責にかんがみまして、それらの問題にやはりあえて触れてみようと思います。  今、官界、政界、財界は、大疑獄事件の続発によつて国民大衆の目には疑惑の雲に包まれた存在として映じ、そのさまは、詩人の心にはわが民族の廃頽あるいは衰頽と受取られることでありましよう。いずれにもせよ、この状態は、千八百万の生徒、学童にとつては教育上悪環境を与えることになります。上層部の腐敗の及ぼす悪影響が甚大であることは、大達文部大臣が、これさえあれば大仕事ができると、鬼の首のように喜ばれる山口県の日記の影響に比べるとき、私は冷静な知性をもつて、それは千倍であると、はつきり、ただちに申し上げたいのであります。(拍手)  次々と重要問題に入つて行くのでありますが、初めに文部省について申しますと、日本全国の宗教団体等を所管しているのは、現在の機構では一宗務課長でありますが、その責任者たる何某課長は、町の新興宗教、あの赤い羽の浄財をごまかし、日本円の下落するときに、昨年のころドル買いまでして今起訴されている霊友会会長の小谷某女からひどく多額の金を収賄し、その金を総選挙にばらまいたのでありました。ここには、官界の腐敗が宗教の腐敗と結合型で一つの模様を見せておるのであります。  鉄道会館事件を取扱つた委員会の議事録には、長崎国鉄総裁がその会社の株を二十何万株持つておるとか、あるいは切符の売上げが十数億円あるが、それが交通公社から国鉄会計に未払いのままになつておるとか、国鉄幹部と国鉄の外廓団体とが結んで、うまいしるを吸つておるさまが浮彫りになつておるのであります。  保安庁汚職事件至つては、最近人々の目をみはらせた東京練馬部隊の集団による何十俵という糧食持出し事件とか、糧食、被服その他物資購入に関する贈収賄事件とかが次々に新聞に報道され、その乱脈ぶりは極端に達し、その底は見えないといわれ、保安庁第一幕僚監部の吉田第一管区総監の辞職まで見たのであります。木村保安庁長官御自身にさえ、赤い羽の霊友会から国宝の名刀をもらつたとか、二十五年の十月から二十七年末までに前後数百万円の献金を受けたとか、とにかく栗田英男代議士から告訴をされたのであります。もつとも、その告訴は、御承知の通り、同代議士がなぜか取下げにしましたけれども、その取下げの裏に三百万円の金が動いたとかいう問題もあつたことは、これも諸君の御存じの通りであります。(拍手)  さて、一方木村長官は、それなのに、国民大衆の疑惑に包まれたまま簡単に不起訴となつたのであります。木村長官のお気持では、今は陸海空軍の再建のための礎石を置く、いわば創業期であつて、その部隊は士気旺盛、軍律厳正、みずからも身をもつて率先垂範しようと考えておられるものと拝察します。それにもかかわらず、今日保安庁といえば、人々は、厖大な予算を持つておるところだ、さぞ乱暴に金が費されておるだろう、木村篤太郎長官の年収は幾らくらいだろうと見ておるのではないでしようか。端然と大臣席に座する木村長官の、その突き上げたような、かど張つた二つの肩の上にかかる責任たるや、この際きわめて重大であると思われるのであります。  また、数日前伊藤斗福理事長が逮捕され、目下いわゆる保全旋風が巻き起つております。これでは、一昨年、昨年と政治献金が九十余名にばらまかれ、そのうち確認された人はまだ数名でありますけれども、残る約九十名の名前と金額が明るみに出るのは遠いことではないと申されます。もしこれが天下に公表されることになりますと、さきの十月総選挙のころ、国会議員あての例の無署名の同文の手紙が参りまして、その中には、当時の自由党首脳部が、伊藤理事長らの保全経済会的町の金融機関の法制化の要請を正式に取上げることを条件に、多額の政治献金を伊藤理事長に求めたと書いてあるのでありますが、それらの事実の真偽もそれによつて明白になつて来ると思います。保全経済会に出資した全国十五万の人々の中には、発狂した人もあるし、そのために路頭に迷うに至つた人もあり、自己の事業に破綻を見るなど、実に全国的に数々の悲劇を生んだのでありました。また、十月二十四日、保全経済会が休業を宣言して以来、出資金総額では実に一千億円と称せられるそれら多くの同種の町の金融機関が、そのあおりを食つて次から次へ休業に入り、庶民の金融逼迫を一層はなはだしくしていること、これも諸君の御存じの通りであります。  私の見解を申しますと、伊藤斗福という人物が、四十五億円、最盛時には実に六十億円までも金を集め得たところのその原因は何でありましたでしよう。もちろん彼の金もうけの才能もさることながら、天下の名士が自己の名前を貸せることによつて、この半島生れの三十幾才のいわば青年に背後から大いなる信用を付与してやつたという事実、これも確かにその原因の一つであります。しかし、またこのような町の金融機関が最後に行き詰まつて、聞くも哀れな悲劇や莫大な損失を引起すことが識者に予見されていたのに、四年も五年も保全経済会の活動を黙過したということは、銀行局長、大蔵大臣、従つてその期間政権の座にあつた内閣全体の一大失態であつたといわねばなりません。(拍手政府当局の国会での弁明は、保全経済会は匿名組合でないとは言えない、それを知つて加入していたのだから、その結果に対して政府は関知しないというような、冷静をきわめた意見でありましたが、加入者の受取る配当金に二割の源泉課税をあのように行うようにしたのでありまして、その処置のために、かえつて加入者としましては政府がとの種の配当金のよつて来る根拠に対しこれを認めるに至つたものと解釈して、二割の税を差引かれて、それだけ損ではありながら、保全経済会に対して一層の安心感を抱くに至つていたのでありました。私は、この事実から見ましても、現に次々と休業しつつある同種の庶民金融機関の加入者数十万人あるいは百敷十万人が、自己の不明を反省し、あるいは当該理事長、社長を恨むよりも、むしろ政府当局や諸名士に対して不信の念や反感を抱くに至つているその心事に対して、一種の同情を禁じ得ないものであります。(拍手)それは、元労働大臣鈴木正文君のごとき天下知名の現役政治家が顧問をしていられる同種金融機関も、ごく最近に至り休業したものの一つでありますが、それを信用された人々の心情を思うとき、私たち国会に議席を持つ者全体も一様にある程度恨まれていやしないかと、そこまで憂えられる次第であります。そうして、さらに最大の痛恨事は、ちまたの大衆が、町のこれら金融業者が政界、官界にいわゆる政治献金をばらまいて、その人々の政治勢力でこの種の営業が多年継続できたのだと解釈しているその事実であります。このとき、われらは何をなすべきか。  思うに、昨年の衆議院の決算委員会は、次から次へ会計検査院から送り込んで来る官庁の経理に見える浪費とか乱脈、土木事業の不正等々を非常にたくさん扱い、ひどいものは行政監察特別委員会でも取扱つております。古い話になりますと、五井産業事件、二重煙突事件等、これは時間的には近年のできごとでありますけれども、あまりにもわれわれの記憶から薄れてしまつたほどたくさんの事件が最近次々と起つてつております。文部省近くの土地は、月の借賃は坪二千円といわれるのに、そこにある相当の広さの国有地が、何人のあつせんによつたか、驚くなかれ、これも御存じでしようが、坪五円十銭という安い値段で貸し下げられており、借主は例のフオード自動車の修理、販売、サービスを業とするニユーエンパイヤモータース株式会社でありまして、社長は日本人何がし、しかるところ、━━━━━━━━━━━━━━━━━代議士が同社から自動車の提供を受けて乗りまわしているという事実が浮んで、(拍手)これは同社の顧問になつていたからだと言い、いや、社長は━━顧問就任の事情を知らなかつたと言うなど、(「それがどうしたというのだ」と呼ぶ者あり)この種の委員会の速記録はおもしろく読まれるのであります。  私は小笠原蔵相に尋ねるのでありましが、八億円という金を払つて、そして食糧庁がこんな袋を三百万ほど買い入れたのであります。(袋を示す、拍手)それは昭和二十六年の八月、外国米輸入のために日本の麻関係の小泉製麻外二社から買い入れたのでありますが、三百万枚を一枚当り二百九十円で購入し、八億七千万円を支払つたのであります。ところが、タイ米の輸入については、当然輸出先の方からこういうものがくつついて来るのでありますから、自然不必要となつて、未使用のまま三井倉庫外四社に有料で保管しているのであります。しかるに、二十七年九月までにまた二千五百万円も支払い——それは保管料金でありますが、今度また五百万袋を購入したのでありまして、その金額は実に驚くべきものであつて、みな書類は集まつておるのであります。農林大臣は、食糧庁関係において、こういうむだ、めちやめちやなことが行われておるということは、もちろんよく御存じでありましようが、これらのことに対して、将来どういうような方策を持つて行かれるか、承りたいと思うのであります。(拍手)  また、山田長司君が決算委員会において現在大いに問題にしているのでありますが、緑風会の、前食糧庁長官の片柳眞吉君が、日本糧穀株式会社なるいわゆるトンネル会社をこしらえておりまして、そこで六億—八億というもうけを一年間余りの間にやつているのであります。これは一体どういうことでありましようか。会計検査院の第三局長である小峰氏が、政府を代表して、十二月八日に次のように答弁をしております。二十六年度に買いました黄変米が九千三百八十七トンであります。買入れ価格が五億二百万円、これを二億九千二百万円でその会社が売り渡したわけであります。差引二億一千万円の損と申しますか、損というのは政府の側に立つから損と、こう言つているのです。それから、二十七年度分は一万三千百七十二トンの黄変米がありまして、そのうち一万三千百六十トンを政府が売つておるわけであります。その一万三千百六十トン分について、買入れ価格、売り値を検討いたしますと、この買入れが九億七千三百万円であります。これを三億四千百万円で売りまして、その差が六億三千二百万円、これを前のと合せると八億四千二百万円ということになつておるのであります。共産党では秘密党員という言葉がありますが、緑風会で片柳眞吉氏の立場は何党に属しておるのでありましようか。どういう政党にその資金が流れておるのでありましようか。こういう問題がありながら、ちつともその裁判が進んで来ない。  私は、現内閣の打倒をなし得る人間が東京に少くとも三人いるという話を聞いたのであります。一人は、おからだにさわるからおやめなさいとお父さんに言えばやめる、そういう立場にある女性であります。(笑声)もう一人は、今収容されておる伊藤斗福理事長でありまして、あの人がぺらぺらみんなしやべつたならば内閣は打倒されるといわれます。(拍手)しかし、それよりももつと大事なことは、地検の次検と申します東京地方検察庁の次席検事であります。そこへすべての大きい疑獄事件は集まつて参りますから、担当の人人はその目色、顔色をうかがつて仕事をいたす。そちらはあまり触れないがいいとその人がせんをすれば、そちらの方が助かつてしまい、こらちが被害を甚大に受けることになる。そんなことを言えば、現在の最高検察庁の次長検事は、広島高等検察庁からこちらへ栄転された人でありますが、わが県の池田勇人君の大いに奔走せられたところでありまして、(拍手)東京地方検察庁の次席検事がこちらの方を掘れと言えば、こちらが被害甚大になるというように、ちまたがそう言うのでありますから、確かにその人を握つておれば内閣は安全である。掘つておるとは申しませんけれども、私は、現在このように疑獄が続出する場合に、こういう検察庁当局はきわめて公平でなければならないと思うのであります。  それで元へもどりまして、国有地とか、国有林とか、およそ国有財産の払下げ、貸下げ等には利権が伴いがちでありまして、今日において国有財産を虫に食われないように、有効適切な何らかの措置を講じておくことは、国家国民のために絶対的に必要だと存じます。この必要性については、全国有権者のうち九九%まで賛成であろうと存じます。現在の政府は、かかる明確な主張に対しましてどのような認識を持ち、どのような反応を示されるか。これを一つの質問として、小笠原蔵相の御答弁をいただいておきたいと存じます。  造船疑獄は今を盛りと燃え広がり行くまつ最中でございますが、運輸省の壷井官房長は逮捕され、元運輸省局長、現経済審議庁今井田審議官は逮捕される今日までの経過でも十二分にわかる通り、贈賄、収賄その他幾多の汚職的運動の上に、昨年度国家財政の補助で第九次計画造船割当が行われたであろうと、ちやんとみんなそういうふうに見ておるのであります。中小企業金融公庫から最も困つておる人に融資するところの金利が、むろん長期金融でありますが、一年一割であります。しかるに、この造船方面に出されておる金は五分五厘、それを二分か二分五厘減らして、現在は三分あるいは三分五厘になつておるかと存じます。しかるに、第六次造船までさかのぼつて国家がその引下げた分だけをただでくれてやつておるのであります。日本郵船が五億円、大阪商船が四億円、社長、専務、課長連が続々逮捕されつつある山下汽船や、同じく日本海運などが、それぞれ二億円をもらつた、そのように記憶いたしますが、日本郵船の元社長寺井久信氏の最近の著書「潮の満ち干」というのを読んでみますと、その中に、「赤坂の某料亭前から赤坂見附、さては青山通りまで供待の高級車が整列してる。之が毎夜のことだから驚く。しかもこの料亭は海運業者がヒイキにするところであるから更に驚く。」このように書いておるのであります。(拍手)ところで、造船疑獄中には、計画造船の各社年々の争い、奪い合いの運動と、昨年の四月選挙後の国会での利子補給金獲得運動の両方が含まれておるものと思いますが、現内閣が国会に提出された厖大な昭和二十九年度予算書をめくつて、本年このような船会社に現政府はどれだけやるつもりであるか、この数字をくつてみますと、三十七億五千二百六万二千円ということになつております。  大蔵大臣、ここからあなたへの第二の質問の要点になりますが、この憎むべき造船疑獄の発展がいかような広さ大きさのものとなろうとも、議会外の国民大衆がいかように受取ろうとも、これだけは船会社に届けてやらなければと、この三十七億五千二百六万二千円を船会社に、例により、ただでお与えになるつもりであるか、それとも、本年この分だけはそうも行くまい、院外大衆の納得する常識、良識兼ね備わる態度で全額削除でしようか、考慮するとでも答えられるでしようか、鳴りひびくいつもの声で、はつきりお答え願いたい。(拍手)  次には、トンネル会社日本糧穀株式会社をつくり、片柳眞吉氏がいかにやつたかということはさきに触れましたが、とにかく買い受けた人は、やみ米として、大量にその黄変米——何でもないものも黄変米として買い取り、それを横流ししたために検挙されて、その事件のその部分のところを取調べ中の検事異動の問題、これを犬養法務相に質問いたします。担当の東京地検の木村治検事は、昨年六月にこれを調べておつて転任になりました。富田検事があとを継いだが九月に転任、そのあとを継いだ吉川検事が、今度はすぐ十一月に転任です。(拍手)このひんぴんたる転任はどうしたことでしようか。わが党の山田長司君が尋ねると、政府当局はあくまで、あれは内部的事情との回答でありましたが、大臣を信ずれば内部的事情、しかし国民はそうは受取らず、政治的圧迫がこの事件に加えられていると解釈するのであります。(拍手)天に口なし人をして語らしむといいましようか、私がさつき言つた三人の中で、だれがこの内閣を早く倒すのでありましようか。  この際、私は総理大臣に対して、やはり重要なる質問をいたしたいと思います。私は、総理大臣はあまりこまかいことに腹を立てられないで、大きな問題、たとえば日本をめぐるところの中華民国、朝鮮、そうしてロシヤの盛衰興亡の歴史、しかもそれらの政権が倒れ行くさまを御研究になると、国家のためにも得るところが少くないかと思うのであります。(拍手)李太王の夫人で閔妃という女性がございましたが、あの閔妃は非常にダンスなどがすきで、大いにおどり、めちやめちやに腐敗したために、宮中に何百とおる女たちが、まず白衣の、着物のままで高い宮殿から町に飛びおりて、次々と死んでそれに抗議をした。そうして国民大衆が革命約様相を呈するに至つたのであります。そのとき日本などが行つて国をとつたようなわけであります。もらつたようなわけであります。中華民国が倒れた原因は、蒋介石について申しますが、それは、われわれの研究によれば、第一にはおごりであり、そうして政府高官の腐敗堕落であります。第二は、リヤンピヤオ——リンピヨーと読みましようか、あの林彪将軍がソ連の軍官学校から帰つて参りまして、それに、日本軍が満州で武器をとられたのがみな林彪将軍の手に渡つたので、すぐにその場でもう満州を平定し、一年後には長江の南に進んで行つたのであります。すなわち、倒れる前には疑獄事件がいつぱい起る。そうしてぜいたくをするという、こういう、まあ最大公約数が現われて来て——ロシヤの場合も同じようなものであります。専制政治をやつて、大衆の苦しみをまるで見ない、そうしてこれらの国の政権は滅びて行つたのでありますが、眼をつぶつて心静かに考えます場合、私は、日本の現在の様相は似ているところが相当多いように思うのであります。(拍手)  私は、短い時間に、まだ吉田首相にもう一点たださなければならぬ。あなたは、いつもいつも一枚看板のように、いわゆる最近は耐乏生活、ずつと前の言葉で申すならば綱紀粛正、しかるに今度の施政方針演説の中にはそれがまつたくない、ほんの色合いぐらいであります。そうして、そのスローガンを投げると、あなたのぜいたくな生活は何だといつて大衆が非常に非難をするものでありますから、これを入れては損だと考えられて——しかるところ、二十五日の開会式のいわゆるお言葉、昔で言えば勅語を読んでみると、あらゆる困苦、そうしてもう一つは、耐乏のうちにというスローガンを、天皇お一人に、何と言うのですか、持つてもらうようなことをしておられるが、臣茂と言われるあなたが、不人気のそのスローガンを——憲法の規定によれば、天皇の行うところの行事はすべて内閣の——天皇の行為は内閣の助言と承認を要することになつておりますから、それら大事な文句の一々は全部総理責任であつて、みずから不人気でもてあましたものを天皇の方に押しやつているということは、一体どういう結果を生ずるのでありましようか。これは重大な問題であると思う。私にとつてではない、あなたにとつて重大な問題であるから、総理自身から明快なるその理由の解明をお願いする次第であります。  大達文部大臣に御質問いたしますが、今度のMSAの池田・ロバートソン会談の中に、日本は愛国心を涵養すべきであるが、自衛の精神を持たなければならぬというようなことが一項目書かれてあるのであります。アメリカ人はワン・マンでありまして、資源はあるし、資本はあるし、そうして原爆は持つておるし、自信満々でありますから、そんなことを書き込んで、それを日本人が読んだ場合にはどういう感じを持つであらうかなど、そういう思いやりは全然ありませんから、ただ書きさえすればよいというので、あの確認書の中に書き込んだのであります。池田さんはMSAをもらいたい一念でありますから、もちろん気がつかずにそれを書き込んでサインをしてしまう。しかし、われわれ識者から見る場合には……(笑声)これは、われわれや、あるいは一般の尊敬すべき識者が見れば、日本の教育をアメリカに担保に入れたものであります。そういう径路から、今度の教員から政治的自由を剥奪する法案が国会に提出されるようになつたのでありまして、私は物事の背景を十分見ておく必要があろうと思うのであります。およそ文部大臣は、教育を愛し、教育を守る当面の第一の責任者でありますから、日本の教育が、そういう外国からの、こつそり、忍び足ではなく、堂々と内政干渉が行われておるように見えますので、これを防衛するのが大達国務大臣責任であろうと思うのでありますが、大達文部大臣のそれに対する御見解を承りたいと思います。岡崎外務大臣も、それらの情報を初めにキヤツチされるのでありますから、そういう場合には、文部大臣と、この問題について、どうして教育をこの条件からはずそうというような御協議があるべきはずであり、ないならば非常に妙な感覚であると思いますので、御協議があつたかなかつたか、その点をもあわせて岡崎外務大臣から承りたいと思います。(拍手)  自由党内閣の文教政策を見ておりますと、大学生が保守政党には票を入れない、これは実にけしからぬ、大学生の居住地は、学資を送付して来るその親のところが生活の根拠地であつて選挙権はそこにあるというようなむちやを一言い出されたのでありますが、東京の代議士が二十七名、そのうち十四名は社会党両派がとつてつて、あとの十三名をその他の党派がとるというように、首都の大学生、インテリの票が自分の党に来ないからといつて、そういう選挙法を押しつけることは無理だという輿論が国会でも叫ばれ、現在三箇月を確認する、かえつて大学生に有利なる法律案を政府は提出しなければならないような実情になつたのであります。五十万の教職員の中で、四、五万がいわゆる全国高等学校教員組合に出ておりますが、この第二組合が、わが高等学校を優待せよと叫んでおるので、それをわが手に入れようというので、一号俸だけ高等学校の教師に対して待遇の改善をやつたところが、どういう結果になつたかといいますと、その方法が悪かつたために、高等学校も満足せず、全国の四十数万の小学校、中学校の先生は、われわれの教育をどうするのだ、われわれの待遇はそのままでどうするのだという運動が起きて、反自由党的空気が非常に高まつたのであります。
  12. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 高津君に申し上げます。打合ぜの時間が経過いたしましたから簡単に願います。
  13. 高津正道

    ○高津正道君(続) 議長のお言葉に従いまして、簡単に最後の結びをつけて降壇いたします。  大達文相は、学校の中の教育の内容、教え方の中立性を取締ろうとするのであるか、あるいは外部から学校に働きかける、あるいは日教組の運動を取締ろう、あるいはブレーキをかけよう、そういう考えでおられるのか、それを明らかに聞いておきたいと思います。  また、警察法の改正などを企てておりますが、これは説明を抜きにして、明らかに警察国家に逆もどりをするものであります。(拍手)そうして、三年以下の懲役などというようなものが今度制定される法律案に現われるそうでありますが、いわゆる教育委員会が審査するわけに行くまいし、文部省がやるのでもあるまいし、結局裁判所がやる。裁判所は、その手先の巡査が動くのでありますから、今後の学校教育はまつたくまるつぶれになつてしまうのであります。私は、こういう意味で、あなたはやるならやれという強気で、どんどん次から次へと、そういうように教員及び教育に対して攻撃を加えて来られるが、教育というものは、そのように法律や力でもつてやるべきものではないのでありまして、悔を十年の後に、あるいは二、三年後の選挙に悔を残さないように、政府諸君は十分御留意せられるように希望いたします。これは大臣に対する質問になるのでありますが、質問がずいぶん残つておりますので、委員会において、私はできる限り、根限り、このような言論の自由を抑圧し、思想の自由を抑圧しようとする法律に対して、徹底的に、老骨にむちうつて闘うつもりであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  14. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。私の施政方針演説の中に官紀粛正があろうがなかろうが、現内閣の存続する限り、官紀の粛正はあくまでも根本政策として厳守いたします。     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  15. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 保全経済会についてのお尋ねでございましたが、これは金融機関でなくて、株式、不動産等の投資機関だつたことは、御承知の通りであります。従いまして、大蔵省としては、何ら取締るべき筋合いのものではございません。けれども、かかる法の盲点に乗じて、かようなことが行われたことは遺憾でございますので、法務省とも打合せの上、今国会に適当な法案を出したいと考えております。  さらに、麻袋の問題であります。麻袋について大蔵大臣に御質問がございましたが、大蔵省は麻袋を買うところではございません。これは何か農林省の間違いであろうと存じます。  さらに、二十九年度の外航船舶の造船融資の問題でございますが、これは誤解があつてはならぬから、少し詳しく申上げておきます。この利子補給額は、御承知のごとくに、三十七億五千二百余万円となつておりますが、これは前年度に比べてふえておるのは、主として前年度の分の平年度化によるものであります。すなわち、前年度においては、利子補給制度の実施日たる二十八年八月十五日から金融機関の上半期の末日たる九月の終りまでの期間の利子補給額でありましたが、二十九年度においては、二十八年度の下半期から二十九年度の上半期に至る一年分の利子補給額を計上するので、かように相なるのであります。現在日本の国が当面しておる国際収支改善の必要と、その重要な一翼をになう海運業の基礎がなお脆弱である現状を勘案しますれば、現在程度の助成はなおしばらく継続すべきものと考えております。     〔国務大臣犬養健君登壇〕
  16. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えをいたします。  保全経済会あるいは造船融資に関する、いわゆる汚職事件というような問題は、ただいま東京地方検察庁で捜査中でございますが、政治的圧迫などを加えたことは毛頭ございません。私は一年間法務委員会に出ておりまして、その中には社会党の委員の諸君もおられましたが、私の法務省における仕事に対する心持は十分御存じと思いますから、その方々にお聞きの上、さらに御質問を願いたいと思います。  それから黄変米のことでございますが、黄変米の犯罪容疑事件を扱つておりますのは、直接には和歌山地方検察庁でありまして、東京地検ではございません。東京地検で、いかにも木村検事と富田検事と吉川検事がそれぞれ部属がかわりましたが、東京地検内において、あるいはメーデー公判が忙しいときに、公判に詳しい人を特捜から公判にまわす、あるいは研修所の教官にするとかいうことをいたしましたが、毛頭事件に関係はございません。はつきり申し上げておきます。     〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
  17. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 簡単にお答え申し上げます。  ロバートソン氏が油田さんと会われてどういう話をされたか、私は存じませんが、日本の文教方針、文教政策には、ロバートソン氏は何も関係はありません。いろいろ気をまわしてのお尋ねでありますが、どういうわけで日本の文教とロバートソン氏との話が関係があるか、私の方からそのりくつを伺いたいくらいなものであります。  それからその次のお尋ねでありますが、今私どもが成案を念いでおります法律案は、学校の教室の内部における教育の政治的中立性を守りたい、これを維持したいという考え方であります。これに必要なる立法措置考えたい、かように考えております。     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  18. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 教員の政治活動禁止というような問題は、池田・ロバートソン会談の中にはありません。また、そのような問題は、日米間の他のいずれの話合いにも出たことはありません。従いまして、この問題について外務大臣が文部大臣と協議すべき何ものもありません。     〔国務大臣保利茂君登壇〕
  19. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 第一の問題は麻袋の問題でございますが、昭和二十六年のころ、日本輸入いたしますタイ国で——タイ国の麻袋は多くインドから買付をされておつたものが、インドとパキスタンとでもんちやくがあつたためにその買付ができないため、日本で米がほしいならば、そのいれものを持つて来いと言われたために、大量の麻袋を用意した。これが問題のようでありますが、この麻袋は、今日におきましてはごくわずか残つております。そのわずか残つておりますものは政府の倉庫の中にあります。さらに、その大部分は、御承知のように、大麦、小麦等を大量に裸で入れておりますので、そのいれものに使つて、ほぼ今年の三月までには一枚もなくなります。しかし、この扱い方につきましては、私としてはさらに調査もいたしておるわけであります。  黄変米の問題は、大体皆様御承知の通り、二十七年末ころから二十八年の初めにかけて入りました中に、御指摘の程度の黄変米が入つてつた。今日は、御承知のように、供給力の方が強くなつて来ておりますから、いわゆる買手市場にかわつて来ておりますから、こういう心配はないのでございますけれども、その当時はいわゆる売手市場でありまして、売手が非常に強かつたために、こういうものが入つて来ても、それを断つて返すことができなかつた。そういう関係から、昨年ビルマとの輸入調印をいたしました節に、この種のものが今後一%以上入つて来た場合にはこれを日本は受入れないという協定ができて、こういう不始末は再び起さないであろうということにいたしております。いずれにいたしましても、食糧庁は年間三百万トンの外地食糧及び内地食糧を相当大量に買い入れておりますから、従つて、この中における経理その他の運営については最も注意をいたさなければならぬということで、私は責任を持つていたしております。     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  20. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 高津君が私の身上のことについて言及されたが、私は俯仰天地に恥じない。すでに栗田事件については、公正なる検察庁の詳細なる調べによつて、告発状に記載されたような事実はないということが明白になつたのであります。栗田君がこの告発を取下げたのは、さような事実のないことが明白になつたから取下げたものと私は考えておる。この間に金銭の動きがあつたようなことは断じてないということを私は確言しておきたい。  また保安庁汚職事件については、まことに私は遺憾と考えておる。しかし、これもまた検察庁において処分すべきものは処分いたし、しこうしてその違反行為の程度によつて厳重なる懲戒処分をしておるのであります。今後十分に戒飭いたして、再びかような事件のないように慎重に考慮いたしたいと考えております。
  21. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 佐竹新市君。     〔佐竹新市君登壇〕
  22. 佐竹新市

    ○佐竹新市君 私は、日本社会党を代表いたしまして、吉田内閣経済政策、特に農業及び食糧問題について、政府の明確なる所信を問わんとするものでございます。(拍手)  昭和二十九年の年頭にあたり、昨年のわが国の農林水産界の実情を顧みますと、まことに恐るべき難問題が前途に横たわつておることを痛感し、慄然たるものがあるのでございます。五月、六月の西日本、近畿地方を襲つた風水害、七月、八月にわたつた日本の冷害、さらに十三号台風、これらはいずれもわが国の農漁村を絶望のどん底に陥れたばかりでなく、かくのごとき災害と凶作は、昭和九年以来繰返し食糧危機を招いて来たのであります。のみならず、この農業の危機に加うるに、水産においても、新たに李承晩ラインを中心に国際紛争が起き、これがもたらした犠牲は漁船、漁夫の拿捕、漁業の不能となり、わが国の経済に甚大なる打撃を与えたのでございます。  御承知のように、わが国の国土はあまりにも狭小であり、人口はきわめて過大でございます。自立再建を達成するには、これらの事実を前提といたさなければならないのでございます。従つて、自立再建のためには、国家国民もよほどの決意を持つてかからなければならないのでございます。それには、まず食糧の自給自足の方策を定め、国民の食生活の安定を打立てることが絶対条件とならなければなりません。しかるに、吉田内閣の示して来た食糧政策は、管理制度におきましても、増産対策におきましても、一貫した方針がございません。その場限りのものでありますために、生産者たる農民をも、消費者たる国民をも、ともに混迷に陥れておる状態でございます。(拍手)この不安のために、自立再建に対する方策、体制は、今日に至るもなお整備されるに至つていないのでございます。  私は、まずここに、米の管理制度に立ち、この方針を踏襲しつつある吉田首相に対して、その基本ともいうべき米の供出方法をどのように実践しておられるかを明らかならしめるために、あえてこの質問をいたす次第でございます。政府は、米の供出のために、早場米奨励金、超過供出奨励金、供出完遂奨励金、特別加算、凶作加算等の奨励方式を押し並べておるのでありますが、それはあたかも戦争中に東条内閣が行つた勲章政策のようなものでございます。政府かくのごとき拙劣なる手段を弄して供出量を確保しておるのでありますが、これは明らかに食糧管理の本義を無視し、合理的供出の方途を誤つたやり方であると言わなければなりません。(拍手)聞くところによりますと、この二重価格的な供出方法を行うために、食糧管理特別会計の資金三百億円さえも消耗され尽していると言われております。これがはたして賢明なる政治と言えるでありましようか。奨励金というえさで農民をつつて無理な供出を行わせる結果は、そこに経済的悪循環が生れ、その犠牲は農民が負担し、一方消費勤労者が高い米を買わなければならないということになるのであります。(拍手政府及び自由党が常に米の統制撤廃を主張するゆえんは、その真意がはたして那辺にあるのでございましようか、私は疑わざるを得ないのでございます。  また、保利農林大臣は、かくのごとき情勢にあわてられたか、内閣に食糧対策協議会なるものを急に設けられまして、二十六名の委員を任命して、管理制度の再検討を行う準備を進めておられるようでございますが、これは政府や与党の多年にわたりまするところの農業政策の失敗を隠蔽するためであるとしか思われないのであります。(拍手)この委員会には、生産者、いわゆる農民の代表と申しますものを、申訳的に、たつた四名しか入れておりません。あとは学者であつてみたり、あるいは大きな財界の者であつてみたりして、ほんとうに米をつくる百姓の代表は四名しか入れていない。これを見ても、この内閣がいかに増産に熱意がないかということがうかがわれるのでございます。(拍手)吉田首相は、はたして管理制度を撤廃いたしまして、米価の統制をおやめになるつもりでありますか。思うに、統制を廃止すれば、当然米価ははね上り、その負担は消費者たる国民の生活に転嫁されまして、かく日本の産業の基本たる労働賃金に及ぼすことは必然でございます。吉田首相は、それでもなお統制撤廃をおやりになる御意思があるのであるかどうか。なお食糧増産対策との関連におきまして、どのようにお考えになつておられるか。この点だけは特に吉田首相からの御答弁をわずらわしたいのでございます。(拍手)  次に、保利農林大臣は、前に申し述べましたように、管理制度の再検討をねらつて食糧対策協議会を成立させたのでございますが、そのねらいは、今までやつて来られた管理方式がすべて中途半端な統制方法であつたという考え方のもとに、すみやかにそのあやまちを正して、計画生産、自主供出、計画配給制度にもどし、もつて農民を安心させ、消費者に向つて不安なき食生活のできる基礎を定めようとするお考えなのでありますか。それとも、政府及び自由党の申すように、統制撤廃を断行するに必要なる準備機関としての対策か、この協議会の真意が伺いたいのでございます。  最近、政府は、匿名供出にかわる代表者供出制度というものをもつて供出に全力を傾倒し、二千百万石の供出を確保すると言われておりますが、はたしてその自信がおありでございましようか。もし自信のほどがあるなれば、保利農相はその内容をお示し願いたいのでございます。もし二千百万石の供出確保ができなかつたときは、食糧の自給計画にどのような影響があるか、今日のごとき食生活に不安の増しつつあるときに、確固たる所信を保利農相は国民の前に明確にしてもらいたいのでございます。(拍手)  次に、昨年は最大な自然災害をこうむつたのでございます。春の凍霜害、冷害、風水害等々、相次いでの強襲は農地を荒廃いたしまして、まつた生産者は無価値なる所有権の存在となつたのでございます。この厳粛なる事実を前にいたしまして、政府の今年度の食糧対策を見るに、アメリカ援助を織り込んだ小麦の輸入増加の実現を唯一の対策とする感が深いのでございます。農民はもちろん、国民全般は、今年こそは独立国らしい食糧対策が生れて来るものと期待していたのであります。しかるに、予算構成に現われましたる食糧対策には、何らそれらしいものが現われておりません。  さきに政府は食糧増産五箇年計画を打立てられまして、本年はその実施二年目であることは、農林大臣も十分御承知のはずと思うのでございます。この計画に基きますれば、昭和二十九年度におきましては、農地の改良費は財政支出並びに融資を含めて八百三十六億円でございます。増産目標はおよそ二百六十万石程度とされておるのであります。しかるに、本予算では、これに必要とする予算をわずか二百六十四億円として、予定の三分の一にすぎないのでございます。まことに驚き入つた次第でございまして、これはおそらく、政府が、よほどりつぱな計算器を手に入れられての魔術か、あるいは今後の所要経費の値下りを予想して、経費は三分の一で実収は二百六十万石の増産という結論を出しておられるのでありましようが、あまりにも極端なこの予算の削減は、その結論に至つた理論根拠を数字的に明確にお示しを願わなければならないのであります。私の考えでは、この予算では辛うじて百万石以下の増産しかできないと思うのであります。  年ごとに増加する人口の必要見込み食糧を含めて、二百六十万石の国内増産に加するになお百五十万石の食糧を輸入しなければ、わが国の食糧の安定は期せられぬのであります。従つて、自国の増産力を旺盛にいたしまして、輸入量を漸減するためにも、食糧増産対策予算構成の第一義にあげなければならないのであります。政府がいかにも食糧対策らしい表現で織り込んだアメリカからの小麦の輸入は、それはあくまでも一時的な便法にすぎないのでありまして、これをもつて食糧対策にかえられるものではありません。かかる欺瞞手段を繰返すなれば、遂には農民の生産意欲を抑制いたしまして、ひいては国民経済を破綻に導く原因をつくるものと言わなければなりません。(拍手)この意味において、本予算は明らかに増産対策を無視した欺瞞予算と断ぜざるを得ないのであります。  この事実は、増産効果に最も明瞭なる団体営の灌漑、排水、小規模の土地改良のごとき緊迫したものに対しても三〇%の予算を削減しておるのを見ましても明らかであります。また、吉田首相のお声がかりだと聞いておりますところの、大いに促進するかに思われました干拓事業においても、中規模の干拓事業のごときは実に半減のうき目を見ております。継続事業あるいは小規模のもの、一切の新規の土地改良等は、完全に予算の面から抹殺されてしまつておるのでございます。のみならず、全国で四百万石以上の被害をこうむるところの、百姓にとつては一番困る、いもち、うんか、二化螟虫等の病虫害駆除費のごときも大幅に削減してしまつておるのであります。  以上の事実について見るに、吉田内閣は、自立経済は呼び声だけであつて、大切なる農政関係に無関心ではないかと私は考えるのであります。(拍手)保利農林大臣は、本年初頭における農林委員会の席上において、食糧増産をはばむこんな予算処置については、自分は重大な決意をしなければならないと言明されたのでございます。本予算を見るに、以上のごとき大幅な削減を見ながら、漫然として大臣席にすわつておられますのは、自衛隊を中心としたる予算に屈伏されたのか。すなわち重大決意とはいかなることか、保利農相には国民の前に納得のできるような御答弁をいただきたいのであります。  次に、私は政府の災害対策について、特に農林、大蔵大臣から説明が願いたいのでございます。前質問とは別に御答弁を願いたいのであります。  昨年度の相次ぐ風水害におきまして、農地、農業施設に甚大なる被害を生じたことは御承知の通りでございます。農民は災害復旧の一日も早からんことを心の底から祈つております。しかるに、災害復旧費を見まするに、過年度災害二百二十億円に対しましては四十八億、二十八年度発生災害には、五百億に対しましてたつた百五億を計上しているにすぎないのであります。また二十八年度の補正予算においては一〇%程度を計上されたのでございます。そこで、昨年自由、改進及び日自——その当時の鳩自でございますが、三派の協定によりまして、復旧率を二十八年度三、二十九年度五、三十年度二の割合を定めたのであります。これを二十九年度に換算しますると、およそ七〇%の復旧費を計上する勘定になるのでございます。金額にして三百五十億を計上しなければならないはずであります。政府は今後いかなる方針で災害復旧に当られるのか。大蔵当局は、被害額にはどうも水増しが多過ぎるという見解に立つて予算削減を意図しておられるようでございまするが、削減するために被害額の再調査を行うつもりか。もし行うとなれば、いかなる方法で行うつもりでありますか。災害対策は一日もゆるがせにすることのできない重大な問題でございます。災害対策に対して、あらためて大蔵大臣に、予算の上から見た御方針をはつきりと伺いたいのであります。(拍手)  次に、もう一度大蔵大臣に御質問をいたします。昨年の十二月十五日の本会議の議場におきまして、食糧増産並びに国民食生活改善に関する決議案が満場一致で可決されたことは、すでに御承知のことと思います。その決議は、食糧増産政策の徹底を期するとともに、国民食生活の改善指導をはかつて自立経済の確立、国民生活の安定を期するとなつておるのでございます。その具体策として、農地の拡張及び改良に要する経費並びに耕種改善に要する経費を増額すること、以下五項目が掲げられて決議になつておるのでございます。ところが、本予算の構成では、食糧増額はほとんどたな上げの形となつておる。農業予算はことごとく大幅な削限となつておるのでございます。これは、政府アメリカから小麦を買つて間に合すから食糧増産等の費用は削つてもよろしいという便宜主義と打算によつて国民自力の食糧増産政策を放棄したもののごとく解されるのでありますが、かくては、一国の財政政策上、農業収益を無視した予算の編成と思われますが、大蔵大臣としての所信が承りたいのでございます。(拍手)  さらに、二十九年度の食管予算の内容では、百六十九万三千トンの小麦の輸入を計上されておる。うち三十万トンはMSA援助によるものと思うのであります。その総計額は、ドルに換算いたして二千五百三十五万ドルになるのでございます。この輸入による特別会計の差益金は二十六億円との予定であります。計画配給に織り込むものとするなれば、この差益金は当然消費者価格引下げに役立たし、かつ国内の食糧増産及び農業振興等に振り向けられるのか、それとも政府は例によつてアメリカとの秘密協定でもあつて、この差益金を純然たる軍事費として、大砲や戦闘機をつくる方にまわす所存であるのか、これは国民の疑惑を深めておることでありますから、十分なる御答弁を、特に外務大臣からお願いしたいのでございます。(拍手)  なお補助金制度についてでございますが、本年度予算を見ますると、その補助金制度というものを避けております。融資に切りかえる方法をとつております。しかしながら、その結果としては、農業委員会の書記、改良普及員、蚕糸技術員——これは小さいような問題でございますが、農業改良普及員、蚕糸の技術員、あるいは農業委員会書記等、末端の農民の中で仕事をして、日本の食糧増産、日本の農業技術を高めて行くという、このいわゆる各技術員等に対する設置の補助費は、一律に大幅な削減をされております。日本のような零細農業には、その補助的政策が絶対必要でございますが、二十九年度の農林漁業公庫の資金計画を見まするに、前年の二百六十九億に対しまして、二百二十五億に減じられております。さらにその内容を見まするに、一般会計からの投資を減じまして、資金コストの高い運用部資金を増加するというのでありますが、これではたして公庫の約束している長期低利融資が確保できるかどうか、あわせて御答弁を願うのであります。(拍手)  なお、私は現行法と予算編成権との関係につきまして大蔵大臣にお尋ねしたいのでございます。今回の予算案は、法律的にも幾多の疑問を残しております。私は、その一例として、農業技術改良の基本法となつておりまする農業改良助長法をあげてみますると、同法の第二条の第二号に「農業改良研突貫の設置につき、都道府県の要する経費について、その三分の二」を政府より交付する旨の規定が、一点の疑義もなく掲げてあるのでございます。しかるに、政府は、これを一方的に三分の一に切り下げておるのであります。これは明らかに議会で決議された国家の法律を無視する法律違反と言わなければなりません。(拍手)もし今会期中に法律改正ができなかつたとすれば、大蔵大臣一体いかにして事態を収拾される御所存でございますか。補正予算を組まれるつもりであるのか。また専門技術員及び改良普及員の設置費等についても、法の精神を無視して、都道府県の現在の負担率三分の一をかつてに引上げ、二分の一を強制するような予算の組み方をいたしておるのでありますが、改良普及ということは重大な問題でございまするので、今日かような処置は、まことに私は遺憾なことであると考えるのであります。政府は、今二十九年度予算におきまして、他国のさしずとは言われないかもしれませんが、一兆円予算を厳守するの余り、幾多の法律違反を犯してもなお本予算を強行する意思があるかどうか、大蔵大臣の御答弁をお願いする次第でございます。(拍手)  次に肥料問題でありますが、農民は安い米価に高い肥料という不合理な現況を忍んで食糧増産にいそしんでおるのでございます。すでに明らかであります通り、輸出肥料は安い国際価格で輸出し、国内用の肥料は輸出価格をはるかに上まわる価格で農民に渡されておるのであります。これでは肥料会社は安定するでありましよう、肥料資本家は安定するでありましようが、農民の食糧増産に対する意欲はとうてい向上させるわけには参らぬのでございます。食糧増産を高めるための肥料のごときは、一資本家の独占による生産にまかせることなく、むしろこれを国家管理などの方式による計画生産によつて、でき得る限り安い品物を農民に使用させ、農民の負担を極力少くすべきであると私は思うのであります。(拍手)農民が首を長くして待つておりますのは、何をさておきましても肥料の安くなることでございます。十六国会以来、これがために継続審議といたしまして、目下硫安関係法案が審議中でありますが、最近肥料価格が、国会でこの肥料法案を扱うことによりまして、やや下り目になつてつたのでございます。農民も明るい見通しになるのではないかと思つてつたのでございます。ところが、突如として電気料金の引上げによる肥料価格へのはね返りが予想され、さらに交通運搬関係がこういうようになつて参りますと、電力会社の申し用ておるごとくであれば、肥料は二五%の値上りが必至となるのではないかと考えられます、これに対して通産大臣はいかようなる処置を講ずるお考えを持つておられますか。食糧増産と肥料は切つても切り離すことのできない問題でございますから、この際親切な御答弁を農民のために願います。(拍手)  私は漁業問題について簡単に農林大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。今日、日本経済実態、各種産業の状態を観察いたしまするに、国際的に世界各国に対して対抗し得るものは、ただ一つ水産業であると思うのでございます。また水産物の日本貿易輸出面に占めるウエートが大きなことは、いまさら私が申し上げるまでもないのでございます。政府におきましても、貿易振興による日本経済の健全自立を呼称しておるのでありますが、およそ呼称するのとは逆に、漁業を閉塞せしめるがごとき予算措置をなしておるので、農林大臣はこれでよろしいとお考えになりますか。たとえば、政府が常に一枚看板のように言つております、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へということは、錯綜混乱せる沿岸漁業及び沖合い漁業の調整転換による漁船大型化でありますが、その裏づけとしての融資の処置が子供だましのごとき額にしか達しておりません。また漁港整備の五箇年計画も、現況の状態では、二十年たつても第一次特定整備漁港の完成すらもできないと思うのでございます。政府のいう水産行政とは、かくのごとくシヨーウインドーにたなざらしされた陳列品のようでございます。現在の水産行政は、死物にもひとしい、生きた水産行政ではなくなつてもるのでございます。農林大臣は、今日沿岸及び沖合い漁業が入会紛争、密漁等に異常な混乱をしておる実態を十分に御承知と思います。このことは、今までは、より利潤を上げたいという面に争いがあつたのでございます。しかし、本年は、食うために、生きるためにという深刻なる争いの危険性が多分に内包されて参りました。この際農林大臣の水産行政に帰する信念のほどをお伺いしたいのでございます。  さらに、この零細漁民に対し、農村には災害補償費というものがございますが、漁民に対して漁業災害補償法というような法律をおつくりになつて、零細漁民の生活を守つて安定さす方法をお考えになつておるかどうか、この際御答弁が願いたいのでございます。(拍手)  最後に、この予算は、要するに防衛予算という軍事費に主力を置き、自主再建の根底をなす国土総合開発、民生安定の基調をなす食糧増産等の予算は徹底的にこれを無視したものと断ぜざるを得ないのでございまして、まことに憤激にたえません。もしかくのごとくにして増産計画を放棄し、災害復旧対策等を遅延せしむるにおいては、農村経済の破綻は申すに及ばず、問題の農村の次男、三男等の過剰人員を完全なる失業状態に追い込むのでございます。(拍手)その結果は、自衛隊に入隊というような、やむなき道を選ばざるを得なくなるではありませんか。  さらに、最近の風潮は、政府、政党、官僚の一部において、自己の地位を利用して悪質不正なる行為を行い、たとえば、現在問題になつております造船疑獄、あるいは決算委員会におきまして一方的な多数をもつて押し切りました国鉄会館の問題、あるいは国有財産の払下げの問題、これらはいずれも政財界と関係を持つものとして、幾多の疑問を投じておるのであります。淳朴なる農村民の憤激を高めておるのでございます。しかるに、今までの経過から見まするなれば、これら政財界の大物に火がつきましたる場合におきましては、必ず裏面からのもみ消し運動が効を奏するのでございます。従つて事件は雲散霧消になるのでございます。そこで、全国の農村の農民諸君あるいは漁民諸君が、この苛酷なる予算の前に食糧増産にいそしまんといたしておられまするので、犬養法務相に対して、犬養法相はみずから検察陣の陣頭に立つて綱紀の粛正をし、国民の純正なる道義にこたえられることを私は強く要望してやまないのでございます。(拍手)この意味におきまして、特に犬養法相の親切なる御答弁をお願いいたしまして、私の質問にかえる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  23. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 食糧管理につきましては、政府は十分なる準備を整えて撤廃いたしたいと考えますが、その理由は具体的成案を得たときに述べます。(拍手)     〔国務大臣保利茂君登壇〕
  24. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 予算上の問題につきましては、予算委員会において十分御審議を願いたいと思います。但し、食糧増産対策事業費につきましては、大蔵大臣も先日申し述べておりまするように、土地改良費を中心といたしまして、少くとも前年度に劣らざる計上をいたすべく最善の努力をいたしたのでございますが、土地改良におきましては、おおむね昨年並の仕事ができるようになつております。但し、食糧増産対策事業の実施につきましては、皆様からも相当御批判もありまするように、総花主義に堕して、いつでき上るかもわからないところに金をたくさん使つておるという非難の当る節もあるのでありますから、従つて、この予算ではございますけれども、重責的に効率的に目的を達するように十分配慮をして参るつもりであります。  食糧問題につきましては、私は特に生産者、消費者両面において、生産者が消費者の立場、消費者が生産者の立場を十分に了解し合つた上でなければ解決することはできないと思います。すなわち米の問題につきましては、今日農家の経済をささえている中心物資は米であります。従つて、内地農家の経済を維持して参りまするためには、相当内地米の価格は高いものであるということについて、消費者各位の深い認識を求めなければならぬと思います。今日すでに二十九年度予算案が示しておりまするように、食糧管理に関しまして、これ以上財政負担をいたす余裕ば財政上ない。しかも食糧管理会計内におきましても、これを操作するだけの余裕がない。従つて、内地米に対する消費者各位の認識を新たにすることによつて、内地米は高い米であるという認識を持つていただいて、その上に立つての食糧問題の解決をはかつて行くことが、私は最も妥当であると存ずるのであります。(拍手)しかしながら、食生活の確保、改善につきましては、同時に今日国内外の供給力が非常に大きくなつて来ておる麦を使うことによりまして、あるいは麺食、粉食等、これにはむろん畜産の振興、酪農の振興がうらはらではありますが、この畜産、酪農の振興をいたしつつ、そうして麦の消費によつて大衆家計の食生活を合理化して行くという方向に行かなければ、私は日本の食糧問題は断じて解決しない、さように考えております。(拍手)  なお、植物防疫、肥料あるいは電気の問題、この電気料金の問題については、なるほどお話のように、私どもも肥料価格に悪影響を及ぼさざるよう、これは特別の措置を講ずるよう、ただいま政府内部においても、万一電気料金を引上げるの余儀なきに至りました節には、そういう特別の措置をとらなければならぬと、ただいま協議をいたしているところでございます。  なお、農林委員会におきまして、私が農林予算の関係で重大な決意をいたしたというお話でございますが、これは佐竹さんの何かの間違いで、私は、農林委員会には、まだことしになつて出ておりませんから、何かの間違いであるかと存じます。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  25. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。  食糧増産対策費についてでございますが、これは今日の日本財政経済の置かれたる事情にかんがみ、私どもとしては、昭和二十九年度におけるこの対策費は、前年度に比し若干増額いたしているくらいでありまして、それで意のあるところはよく御了承願えると思うのであります。ただ、食糧増産対策費をあとう限り重点的かつ効率的に使われるということで農民の生産意欲を奨励するがごとき結果をもたらすようお願いをいたしたいと思つております。  その次には災害復旧費の問題でありますが、災害復旧ということは、これはまことに容易ならぬことでございまするけれども、二十八年度につきましては、すでに補正予算で緊急復旧に努める三百八億円を計上しておりまするし、二十九年度におきましても、二十八年災の復旧分として二百七十八億円を計上しておるのであります。被害額にあるいは水増しが多いという見解につきましては、補正予算編成の際には明確な計数把握ができませんでしたが、その後の大蔵省の調査及び監査の結果によりますると、相当大幅に削減し得る見込みでありまして、今後さらに再査定をいたしますれば、事業費約千四百億円、国の負担額で千二百億円程度に圧縮できる見込みであります。従いまして、二十八年度予算によつて二十八年災は約六割復旧可能でありますので、これも重点的に、集中的に施工することによつて、再災害等のおそれなきよう措置いたしたいと考えておるのであります。  政府の補助金の問題についてでありますが、これは今回の緊縮予算におきまして、一般的に補助金を大幅に整理するという考え方のもとに各種の補助金を検討して整理いたしたのでありまして、特に一部の補助金につきましては、零細で効果の薄い所よりこれを整理いたしたものがございます。(「法律を無視しておるぞ」と呼ぶ者あり)なお、法律の無視すべからざることはもとよりでありまして、従つて、今回この二十九年度予算の実行にあたつては、法的措置として近く補助金等の整理に関する件を提案いたしまするので、何ら予算が法律にそむいておるのでないということは御了承を願えると思うのであります。  食糧増産に対する御決議の趣意は、これは十分尊重いたして参る所存でございまするが、今日の日本財政の置かれたる実情によりして、あとう限りの最善を尽す、これ以外に道はないので、さよう御了承を願います。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  26. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 外国から安い農産物を買つて来て、その差額で大砲などつくるんじやないかというお話でありますが、外国から輸入する農産物をできるだけ安くすることは、もちろんわれわれは当然いたしますが、その経理は全部食管特別会計で処理されておるのでありますから、お話のようなことはとうてい考えられないことであります。(拍手)     〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
  27. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 電力料金の問題は、引上げを申請した会社側のこれを必要としておりまする事情と、引上げの各産業界、農業界、国民生活に与える影響等を総合的に検討し、一方公聴会を開いて各方面の意見を十分聞きました上に、これに対処する態度方策とをきめるべく、目下慎重に研究をしておる次第でございます。     〔国務大臣犬養健君登壇〕
  28. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えを申し上げます。いろいろの疑獄事件に対して政治的なもみ消し運動があるのではないかということでございますが、それはございません。また、総理大臣の特に綱紀粛正に対しての厳格な気分が反映しておりまして、私もそういうことについては十分注意しておるつもりでございますから御了承願います。(拍手
  29. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 町村金五君。     〔町村金五君登壇〕
  30. 町村金五

    ○町村金五君 私は、改進党を代表いたしまして、この際国民意識の高揚、治安、労働、文教等の諸問題につきまして、総理大臣初め各関係大臣に御質問をいたしたいと存じます。  わが国は、戦後すでに八年半、独立いたしましてからまさに二箇年になんなんとする歳月を経たのでありますが、表面的にはともかくも、政治的にも経済的にも文化的にも依然として沈滞をきわめ、復興と再建の実はいまだ遅々としてあがつておりません。復興と再建に対する国民の熱意と気魄もまたいずこにも見出しがたく、戦後歳月を経過するに従い、かえつてますます憂慮すべき様相が露骨に現われて来ておるのであります。去る昭和二十五年の第八臨時国会におきまして、吉田首相は愛国心の振起ということを強調せられたのであります。しかしながら、その後四箇年、今日なおわが国には個人主義ないし利己主義的風潮がはなはだしく、正しい意味での国民意識、国家意識はほとんど影をひそめているのであります。最近とみに顕著となつて参りました中央、地方各行政機関の責任回避と財政紊乱ぶりを初め、巷間伝えられておりまするところの社用族の顰蹙すべき不行跡の数々や、労働の生産性を上げることなく、賃上げ運動を年中行事とする労働組合の闘争至上主義の蔓延、パチンコ、麻雀等、射倖的遊戯の隆盛等、いずれの現象をとつてみましても、悪い意味での利己主義的情弊が露骨にうかがわれるのでありまして、国民的協同意識に基く建設的、生産的な意欲をいずこにもうかがうことができないのであります。私は、この憂慮すべき事態を生むに至つた根本原因は占領政治にあつたものと考えるのであります。  かつて約七年の長きにわたつて行われました占領政治は、その名目は何であれ、わが国の政治的、経済的弱体化政策精神的無力化政策によつて貫かれ、わが国が再び世界の列強に伍して行くことをはばもうとする意図をもつて行われたことは、もはや今日では疑う余地のない事実であります。彼らは、民主主義、自由主義の美名のもとに、日本人を無国籍化、無道徳化することに努めるとともに、あらゆる分野における力の分裂と対立激化の政策を推進して来たのであります。これが今日随所に見られる分裂と混乱に満ちた無政府的状態を生み出すに至つた原因であります。しかし、いまさら彼らの非を鳴らしてみてもいたし方ありません。ここで私は政府に申したいことは、一昨年四月独立国なつた際、何ゆえ政府は、占領政治独立政治との間に明確に一線を画し、国政全般にわたり再建と復興のための一貫した大方針を立てて、国民に対して国家の進むべき道を明らかに示さなかつたのであるか。政府がその道を明らかにし、国民の総力をこれに結集するための努力を払わなかつたゆえに、今日国民は自己の保身に専念する利己主義に走り、権利を主張するも責任を顧みぬという悲しむべき風潮がとみにはなはだしくなつたのであります。首相は、この現状を打破し、日本人すべてが正しい国家意識と国民協同体意識をとりもどし、独立国民としてみずから奮起するの機運を醸成するためいかなる方策を持つておられるかをお伺いいたしたいのであります。(拍手)  次に、政府は、昭和二十九年度予算案編成にあたりまして、緊縮財政方針を樹立し、国民に対し声を大にして耐乏生活の必要を力説せられております。しかしながら、わが国を今日のごとき憂慮にたえない事態に追い込んだ責任の大半は、政府独立後無定見な施策を続けて来たことに基因しておることを虚心坦懐に反省される必要があるのであります。(拍手)この緊縮財政が強行せられまするならば、一時的にもせよ、各種の産業や国民生活に多大の影響が起るのであります。従つて国民大衆の納得による協力がない限り、政府のみがいかに力んでみましても、所期の目的を達成することは絶対に不可能であります。  そこで、この難事業に対する国民協力をかち得るため特に大切なことは綱紀の粛正であると存ずるのであります。(拍手)単刀直入に申しますと、国民に対し耐乏の倫理を説く前に、政府みずから紊乱せる綱紀を粛正し、国民にその範をたれなければなりません。けだし、官界腐敗の病根は深く広く蔓延しており、これを一挙に粛正することは難事中の難事であります。しかも、この粛正が徹底せられない限り、国民政府信頼協力せんとの気持になることはできません。よつて政府は、かつてイギリスの保守党が耐乏予算をつくつたとき、あの烈々たる勇猛心と毅然たる態度をもつて難事業を完遂したるがごとく、総理を初め全閣僚が公私を問わず質実にして清廉なる生活態度に徹し、国家国民に奉ずる耐乏の倫理を率先躬行せらるることが絶対必要であります。この点に関し、政府決意とお覚悟のほどを伺つておきたいと存じます。  次に、今やわが国の基本政治原理である民主主義の一大脅威ともなり、国家民族運命をむしばみつつある共産主義勢力の実体につき、政府の重大なる注意を喚起いたしますとともに、その対策につき所信のほどをお伺いいたしたいと思います。  内外共産主義勢力ぶわが国に対して暴力革命を企図しておることは、もはや疑いをいれざる事実でありまするが、近時彼らの戦術はきわめて巧妙となり、いわゆる平和攻勢を主軸とする内部掩乱工作はわが国の各階層に奥深く浸透し、その影響たるやまことに深刻なるものがあります。従つて、昨今彼らの活動が表面的に静穏となり、いわば鳴りをひそめた状態にありますとしても、これに安んじて彼らの脅威を過小評価し、その対策を怠りまするならば、遠からずしてわが国家機構は根底よりくつがえされることは明らかであると存じます。ましてや、今日のわが国は、経済的にも思想的にも暴力革命達成の好個の条件を備えておるとさえも言われておるような状態であります。  日本共産党は、昨年の十一月以来、中間綱領ともいうべき「再び情勢と任務について」と題する論文をひそかに下部の組織に流し、その中で、従来の極左的偏向を自己批判した後、現在はまだ権力の奪取を日程に上すべき時期でないから、味方の力を強化する民族解放、民主統一戦線の発展強化の方策をときべきであるとし、広汎なる反米、反吉田、反再軍備の統一戦線へ労働組合、学生、婦人、文化人などを広く組合しようとして活動を続けております。もしこの戦術が功を奏するような場合には、従来の気違いじみた戦術とは異なり、多数の善良な国民が意識せずして彼らのために利用せられるであろうことは明らかであります。現に、平和擁護運動や人権擁護闘争の旗じるしのもとに「教育者や婦人、学生、文化人がそれぞれ組合されつつある事実や、基地反対運動や、水害、災害復旧対策を利用して、市町村長や多数の農民の関心を買いつつありまする事実などは、その顕著なるものでありまして、われわれの危惧することが現実に起りつつあるのであります。  今や、ヨーロツパと言わず、アジアと言わず、民主主義陣営に属する諸国は、いずれもこれに対し細心なる用意を持つて対抗策を講じ、着々としてその効果をあげております。しかるに、ひとりわが国のみは、これに対してまつたく無防備の情勢であると言つても過言ではございません。政府は、今日日本人の中に、一党専制の全体主義イデオロギーにささえられた独裁思想であり、人間の自由と権利を保障する民主主義政治の敵であろ共産主義思想を民主主義思想の一種であるかのごとき錯覚にとらわれておる者が多数存在する事実を、何とお考えになつておるのであるか。(拍手)私は、学者、労働運動指導者の多くが、マルクス、レーニン流の思想に眩惑せられ、純真な学生や青年、労働者の思想をむしばみつつある事実を見て、その影響きわめて大なることを思い、まことに憂慮にたえないのであります。(拍手)しかも、最近のベリヤの粛清事件のごとき、共産主義国家の非人間性と鉄の規律の冷酷さを眼前にしながら、なおかつ共産主義が民主主義の一種であるかのごとき錯覚を完全に払拭し切れない青年や労働者が多数あるのであります。そこで、私は、独立を見た今日、政府があらためてみずからの手により国民に対して真の民主主義思想の何たるかを知らしめるとともに、共産主義のとるべからざることを納得せしめ、共産主義からみずからを守るの決意を固めしめるために、一大啓蒙運動と適切かつ強力なる施策をとられる必要が断じてあると信ずるのであります。(拍手)これに対する政府の御所見を伺つておきたいと思うのであります。  さらに、一昨日総理大臣は、わが国の治安確保のために警察法改正を行う旨言明せられました。戦後弱体化した治安機構を再整備せられることはもとより当然のことと存ずるのでありまするが、私見をもつてすれば、今日の困難なる治安の確保は、とうてい一警察法の改正をもつてその目的を達成できるものではございません。思うに、治安の要諦は国民生活の安定にあります。これなくしては、いかに共産主義の脅威を呼号しても、治安の維持は望みがたいのであります。さらにまた、国民全体が共産党に乗せられぬだけの心の武装を固めない限り、民生の安定ありといえども、国際的背景を持つた巧妙なる彼らの革命的企図を完全に排除することはできないのであります。しこうして、さらに肝要なることは、政府はもちろんのこと、一般治安関係者が、治安はみずからの双肩にあるという重大なる責任自覚し、強固な信念と確固たる勇気をもつて国家の法秩序維持のために專念する気概なくしては、治安の維持は絶対に期しがたいのであります。(拍手)  占領下にあつては、治安の最終の責任は占領軍当局にあつたため、政府も治安関係者も、今日に至るもなお国家の治安を人ごとのように考える、すこぶる安易な気持に陥つておることは、争いがたい事実であります。事実、昨今警察官、検察官等の法秩序維持の責任者が著しく自信と責任観念を喪失し、集団的な暴力的行為に対する公正な取締りを回避しておることが伝えられておるのであります。しかも、裁判官また共産党の脅迫行為に牽制されるという事実が頻出しておるとさえ言われておるのであります。まさに法治国の面目いずこにありやと言わなければなりません。今こそ、政府は、警察法の改正のみをもつて事足れりとするような甘い考え方を捨てて、わが国を将来にわたつて共産主義の脅威から守り、民主国家として繁栄せしむるため、強力なる総合的治安対策を講ずべきときであります。政府の治安確保に関する根本方策をお伺いいたしたいのであります。  なお、この機会に、在日朝鮮人問題につき一言触れたいと存じます。現在わが国には約百万人に近い朝鮮人が在住いたしておりまするために、各地において種々の問題が頻発いたしておるのであります。もちろん、その大多数は善良な日本人になり切つておるのでありますが、中には、わが国の治安を乱し、あるいは共産党の軍事行動を行い、あるいはまた最近各地で問題になつておる生活保護費の集団的獲得闘争のごとく、決して看過することのできない重大問題が起つておるのであります。しかるに、今日まで在日朝鮮人の問題を総合的に処理する官庁もなく、その方針はまつたく一貫性がございません。かくて、いたずらに日本人の間に朝鮮人を嫌悪する風潮を生み、反面善良な朝鮮人を悪化させておることは、元来密接不可分の関係にある日韓両国のために不幸きわまりないことと言わなければなりません。政府は、すみやかに在日朝鮮人に関する諸問題の解決をはかるために、急速に総合的な対策を確立すべきであると信じます。政府所見をただしたいと存じます。  次に、労働政策について政府所見を伺いたいと存じます。戦後労働組合が急激な発展を遂げ、わが国民主主義育成の上に多大の貢献をいたしましたことは、われわれもまた深くこれを多とするものであります。わが国力の発展向上は労働者と資本家双方のたゆまぬ協力によつてのみ初めて実現し得るものでありますから、われわれは労働組合が今後とも健全なる発展を遂げることを心より念願するものであります。しかるに、近時わが国の労働運動を大観いたしまするとき、総評を中心とする一部労働組合の動向にはすこぶる憂慮にたえないものがあります。(拍手)すなわち、彼らは、組合員の経済条件改善という組合本来の使命を逸脱し、事ごとに政治闘争に持ち込まんとする極左的偏向を公然と打出すに至つておる事実であります。(拍手)われわれは、いわゆる社用族と呼ばれるような財界人の不行跡に対しては鼓を鳴らしてその非違を糾弾するものでありますが、さればとて、かような労働組合の極左的偏向を黙過しておくことは断じてできないのであります。現に、最近の争議に際しましては、昭電や日鋼において起りましたような、会社の経営権を掌中に収めんとするごとき生産管理闘争や、少数の経営者に対する暴力的な不法監禁事件、また国鉄において見られたような、遵法闘争に名をかる列車運行の妨害事件、あるいはピケ・ラインを張り、組合員域外の者まで暴力によつて争議に参加せしめる不当なる行為など、法治国では絶対に許しがたい、きわめて悪質な争議行為が長期にわたつて頻発いたしておるのであります。(拍手)また、伝えられるところによりますと、今後は一工場が争議に入れば、付近の農民、学生、中小商工業者などをも動員して、いわゆる人民共闘の形に持つて行こうとしておるとも言われ、まさに暴力革命の予行演習に入つたかのごとき観があるのであります。昨年七月の総評大会は、容共的な運動方針を打出しました際には、一昨年以来共産党が執拗に続けて参りました総評へのなだれ込み戦術が功を奏しましたものとして、識者の指弾を受けたのでありますが、これら生産管理闘争や遵法闘争もまた共産党の指導によるものであることは明瞭でありまして、多数の善意なる労働者が、ほんの一部の極左的な指導者によつて扇動され、あるいは強制されている事実を、われわれは看過することができないのであります。  かくのごとく、いよいよ悪質の度を加え、かつ年中行事となつてつたわが国のストライキ現象を今にして解消せしめ、労働運動を正しい軌道に乗せない限り、賃金と物価の悪循環を断ち切ることはできず、産業活動は麻痺状態に陥り、遂に国家の治安も根底よりくつがえされることは必至でございます。(拍手)しかも、かかる不当な争議行為を処置すべき会社経営者は、保身のためか、あるいは暴力を恐れるためか、争議に屈する場合がきわめて多く、国鉄の場合のごときも、列車の運行を確保して国民の便益をはかるための熱意がはなはだしく欠けていたのであります。また、治安当局にいたしましても、リンチや不法監禁、あるいは就業せんとする意思のある者に対して暴力をもつてこれを阻止せんとする不法なピケ・ラインの横行に対しても傍観の態度をとり、取締りを怠つている事例が少くないのであります。今日このように労働争議が悪質になりました原因は、わが国の労働者が正しい労働運動のあり方に対し十分に認識を持つていないところにあることはもちろんでありますが、他面、政府の信念のない労働政策の貧困がかかる事態を招来したのであり、政府責任はまさに重大であると存じます。(拍手)よつて、私は、左の事項につき責任ある答弁を要求するものであります。  政府は、今日の労働運動の極左的偏向をいかに観察し、かつ将来これを正常な姿に復帰せしめるためにいかなる対策をとらんとしておられるか。また、遵法闘争、ピケライン戦術の横行や、つるし上げ、不法監禁等によつて見られるよろな法律運用ないし法律違反行為が労働争議の慣習たらんとする事態に対し、今後いかなる措置をとる所存であるか。さらに、労使双方の自覚を振起し、労使協力による産業平和確立のための具体的方策があらば、率直にこれをお示し願いたいのであります。(拍手)  最後に、私は文教問題に関し政府の御所見を伺いたいと存じます。わが国の文教諸制度は、戦後占領軍の指令に基き根本的な改廃が加えられ、義務教育の年限の延長、大学の増設など、少くとも形の上から見れば教育の体系や施設は画期的に改善されたのでありますが、一方その内容に至つては必ずしもわが国情に合致せず、青少年に対して日本国民としての自覚を促すにきわめて不十分であり、また一般的に学生の学力が著しく低下するに至るなど、重大な欠陥を露呈するに至つておりますことは、わが民族の将来を思い、はなはだ深憂を禁じ得ないところであります。(拍手)すなわち、教育行政民主化の名のもとに、高等学校以下の文教行政の権限と責任はあげて地方の教育委員会に委譲せられましたため、本来ならば、一国の文教方針を策定し、その運営にあたつて最高の職責をになうべき文部省は、今や単なる法令の制定とか、予算措置とか、学校施設の設計とかを行うにすぎない、まことに無力な行政府に粗なつたのであります。  しかも、このような文部省の権限減退に伴つて生じた間隙を縫いまして、日本教職員組合が非常な力で進出いたし、今日わが国の高校以下の教育は文部省のを離れて日教組に掌握されているという、まことに驚くべき事実が起つているのであります。(拍手)すなわち、教育委員会は公選制であり、概して府県教育委員会においては日教組の出身者または被推薦者が委員となつておりますため、必然的にこの日教組の流す教育上の指令が文教行政の当事者たる教育委員会に影響を与えているわけであります。従つて、今日、見ようによつては、文部省はいたずらに虚位を擁するのみであつて日本の文教方針は実質的には日教組において策定せられ、実行せられておるとも言い得るのであります。もちろん、日教組が中正公平なる立場に立つて真剣に次代の日本人を育成し、正しい民主主義の実践者を養成することに専心しておられるのであれば、われらは彼らに全幅の信頼を捧げるに決してやぶさかなるものではございません。(拍手)しかしながら、今日、日教組はすでに総評の傘下の有力な団体であります。しかして、彼らがへんぱな階級的世界観に立脚して、特定の政党のみを支持し、かつ教壇から純白なる生徒に対し片寄つた政治教育を行つておりますことは、正しい民主主義を守るためにも、日本民族の繁栄をはかりますためにも、断じて黙過することができないと考えるのであります。(拍手)  しかるに、今日まで政府が日教組の政治的偏向の是正のためにとつて来た方策は、きわめて姑息であり、かつおざなりなものにすぎず、事態を今日のごとく悪化せしめた原因は、むしろ政府の無為無策に帰せざるを得ません。(拍手政府は、子供を学校に送つている全国牧千万の父兄が現在の学校教育の政治的偏向にいかに心を痛めているか、その声に耳を傾くべきであります。しかしてまた、全国大多数の教職員は、決して日教組の指導方針を喜ぶものでなく、ただ組合の規律に縛られ、人事権を事実上握られているために、やむを得ずこれに従つているという事実もまた見のがすことができないのであります。このたび政府は教員の政治的偏向是正について法的措置をとられるやに仄聞をしているのでありますが、私は、政府としては、この数千万の父兄の心をみずからの心とし、全国数十万の教員に対し、彼らが教育者として当然あるべき姿に立ちもどり、たつとい天職に生きるよう、誠心誠意を尽し反省を求めることが必要であると思います。(拍手)この努力なくしては、たとい法的措置を講じても、教育の中立性は絶対に維持されないことは、政府は特に銘記せらるべきであると思います。  以上、私は若干の点につきまして政府の御所見を伺いたいと存じます。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  31. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 町村君にお答えをいたします。  日本の現状が、利己的風潮が瀰漫し、また健全なる国家意識が欠如しているという状態について、私もまことに同感であります。これはことごとく占領政策に基因するというのは少しく酷であるかとも考えますが、いずれにいたしましても、敗戦の日本として国民がその自信を失い、一種の、何と申ますか、虚無的傾向の生じたことも事実であります。この欠陥から、遂に現在のような——かつては愛国心に最も富んだ日本が、逆に愛国心の片楮も見られないような事態を生ずることもあり得るのは、これは私は、日本国民としては一種の一時の現象であつて、国情がだんだん治まつて来、国情がだん静謐に帰して来て、しかりしこうして日本国民あるいは日本国自身の姿が国民の眼に映ずるようになり、また意識するようになつて、ここに初めて国家意識が生じ、国民の愛国心が生ずるのであつて政府の一時の政策等をもつて左右することは、これはあまり急ぎ過ぎた結果、かえつて結果はよろしくないと思います。私は、国民が静かに日本国の状態、日本国の置かれた現状及び日本国の将来について十分意識するに至つて、ここに国家意識なるものが発生するものと考えます。私は、政府の一時の政策等に信頼することなく、国民を静かに日本の国情あるいは日本の姿が目に映るように指導することが、政治家がまさに努むべきことと考えるのであります。  次に耐乏財政についてでありますが、これまた一時の耐乏財政をとつたからといつて、この日本の現在の財政経済の現状が救わるものとは考えません。今年、来年、さらに再来年、年々耐乏経済をとるという覚悟があつて、ここに初めて日本経済が自立経済の基礎に置かるると思います。  しこうして、民主主義と共産主義についてのお話もごもつともであります。民主主義は、近年において、むしろ民主主義に対する真意が国民の間に了解をせられ、また了解せらるるとともに、共産主義に対する認識が漸次深まりつつあり、深まりつつある結果は、総選挙ごとに共産主義者の勢力が衰退を来たしておることは、投票の上において現われて参つておりすす。  また、日本の治安についてもお示しの通りでありますが、日本の治安は一に警際法をもつて治安を維持しようというような考えはないのであります。この治安なるものも同じく、国民が治安全体についての意識を完全に持つに至つて真に治安が生ずるのであつて、一法律等によつて治安を維持しようと考えることは、むしろこれは政府としてとるべきことではなく、短見な、まことに近眼的の処置と考えまするので、警察法の改正も一つの手段でありますが、しかし、国民みずからが、日本の治安をみずからの責任において完成する気持になつてもらいたいと考えるのであります。  教育その他の問題については主管大臣からお答えいたさせます。(拍手)     〔国務大臣犬養健君登壇〕
  32. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えをいたします。  共産党が、最近、ことに昨年の後半期に至りまして、中間綱領等に見られますように、平和闘争に戦術を転換いたしましたことは、野村さんの御指摘の通りでございます。すなわち、反米、反吉田、反再軍備の内閣をつくれというスローガンから、平和と民主主義を守る国民統一戦線をつくれ、統一運動をやろう、言いかえれば、御指摘のように、民主解放、民主統一戦線をつくるというふうに政策を転換いたしたのでございます。このよつて来るところは、国際、国内の諸情勢を判断いたしまして、彼らの革命達成のためにはまだまだ長期かつ困難な道をたどらなければならないということを自覚いたしまして、今度は合法的な諸団体と提携し、特に御指摘がありましたように、婦人、青年あるいは知識層と手を組んで、一見、火炎びん騒ぎのような、はでな、過激な運動は影をひそめましたが、きわめてじみに、歩一歩と革命達成の方に行こうというのでありまして、これは当局といたしましても、よほど重大な関心を持つている次第でございます。しかし、一歩その底流をつつ込んで分析いたしますと、ただいまこれも御指摘がございましたが、依然として暴力革命を目ざすことに、こうの変化もないのでありまして、軍事組織については緻密な用意をしておるようにいろいろな情報、証拠品からうかがわれるのでございます。  そこで、これに対する対策でございますが、これも町村さんが御指摘にたりましたように、かつ総理大臣が今申されましたように、もちろん、同時多発的な、全国同時に数箇所に起る騒擾事件に処するために、警察法の改正というようなことも必要でありますが、それだけでもう足れりということでは、まことに浅薄なことになると思います。それで、治安関係の役所といたしましては、今御指摘がありましたように、国民生活の安定ということが、これはどうしても表裏一体のものとかりますので、厚生省、労働省と常に連絡をいたしまして、厚生対策、労働対策予算等については、両省と連絡して発言をし、計画を立てておる次第でございます。  それから次に、共産主義の実態についてもつと国民に広く知らせろ、共産主義の白書というようなものを政府考えたらどうかということでございまして、このお考えも、しごくごもつともと思います。従来、当局といたしましては、共産党あるいは共産主義者が戦術を転換いたしますごとに、報道機関などにその実相を知るような処置をしておつたのでございますが、ある場合には非常によく報道され、ある場合には、当局の立場から見ると物足りないというようなこともあつたわけでございます。そこで、政府みずからが、今申し上げましたような共産主義白書というようなものを試みようではないかということになりまして、実は目下これを作成しておるのでございます。ただ、それが手間取つておる原因は二つほどございます。一つは、はたして政府の御用的な報告というようなことで国民がよく読むかどうか、もし発表すれば、国民がこれこそ冷静にして中立性を保つた、ほんとうの白書であるというように思つてくれなければ何にもなりませんので、そのような態度でつくりておりますために手間取つております。もう一つは、経済白書のように、何でもかんでも国民にさらけ出すというのと、共産主義の実態を国民に知らせる報告書とは少し質を異にいたしまして、場合によりましては、当局の捜査方針を暗示するようなことになつてもいかがかと思いますので、その辺のぐあいが非常にむずかしゆうございまして、目下文章に時間がかかつておる次第でございます。  次に、朝鮮の人の問題でございます。現在外国人登録法によりまして登録されております朝鮮の人は、昨年末の調査だと五十五万三千人余でございますが、その後少しふえておると思います。密入国者を含んで毎月一千名くらいの自然増を一時来しておりました。今は少くなつております。この密入国者は、今でも検挙する数は毎月やはり二百名くらいあるのでございますが、これについて、もちろん密入国ということは日本としてまことに迷惑千万でありますので、事情を調べました上、強制送還の処置をとつておりますけれども、中には事情どうしてもお気の毒だというような人に対しては特に措置をし、また強制送還しなければならない場合も、できるだけその人の一人一人の事情を聞きまして、日本が隣の国の国民に対して十分相かわらざる友情を持つておるというふうに思つてくれるように、一つ一つ丁重に扱つておるつもりでございます。ただ、北鮮系の人と思われる人が四十万以上おります。四十二万以上おるように思うのでありまして、これらの人が、いろいろ内地の騒がしい事件、あるいは麻薬等の事件に関係するという場合の多いのは、まことに隣国人として遺憾にたえません。こういう違法者に対しては、それぞれ法に照して厳重にやつておりまするが、しかし、一方それだけになおさら、日本がほんとうにすきだ、日本に永住したいという朝鮮の人に対しては、十分に心持がくんでもらえるように、厳重に私は所管の局に対して話をしている次第でございます。  以上お答えを申し上げます。(拍手)     〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
  33. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 町村議員の憂国の言辞に深く傾聴いたしました。(拍手)  労働組合の一部が少数幹部の指導によりまして政治的偏向を強くし、あるいは違法行為の発生を見ておることがありますることは、きわめて遺憾に存じます。しかしながら、こういうものは、主として組合内部におきまする民主主義の未消化のために起るものでありまして、労働組合員多数の良識と国民の批判によりまして、これらの政治的偏向は逐次是正されるよう、またそういう点についての労働教育を徹底いたしたいと思います。また違法なる行為に対しましては、法の厳正なる施行によりまして、必要にして適切なる措置を講ずる考えであります。(拍手)  さらに、政府といたしましては、従来は労働問題は労使だけの問題と考えておつた向きもありましたが、これらは国民全体の問題として取上げるべきである、こう申しておるのであります。関係者が国民経済の現状と世論に対するところの良識を持つて日本経済の自主性を阻害する、自立を阻害するような、年中行事的な、ベース・アツプの名のもとに行われまする名目賃金引上げ闘争はこれを排撃いたしまして、労使協力して生産性の向上と実質賃金の確保をはかりまする態勢を確立するよう期待いたしておるのであります。また、その基礎となるような労働経済の実態を知らしむるに必要な諸資料を積極的に公表しておる次第でございます。  また、争議によりまする労働損失日数は、昨日も申し上げましたが、一昨年に比べまして昨年は著しく減少をいたしております。また今後、今年におきましても、ころした労使協調の実が上りまするよう期待しておる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
  34. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 戦後根本的にかわりました、いわゆる新しい教育制度、そのことにつきましては、その教育の内容につきましても、また学校運営のいわゆる行政機構の点につきましても、十分検討を加えて、その改むべきは改め、もつてわが国今後の健全なる教育制度を確立しなければならぬ、これは非常に重大なことと考えておりますので、私ども不断の努力をもつて検討を加えておるのであります。先ほど来町村議員の仰せられましたことは、私は大体ことごとく同感でありまして、ことに学校についてお話になりました以外の点におきましても、あるいは社会教育その他の関係におきまして、文教の責任者としての私に関係することが非常に多いと思うのであります。申し上げるまでもないのでありますが、今日のわが国が内外の山積するところの幾多の困難を克服して、そうして国運を切り開いて行かなければならぬ、この現状から見ますと、何といつても、国民のおのおのが、町村君の言われる国家意識を高揚すると申しますか、あるいは愛国心を振起すると申しますか、それぞれの職場、それぞれの立場において、国家再建のために刻苦精励する、努力するということが基礎であると思うのであります。私どもの立場におきましても、従来何とかしてこの愛国心を振起する、この点については不断に実は苦慮しておるのでありまして、これがためにできるだけの施策を講じて参つておるのであります。ただ、私が非常に残念に思いますことは、長い間の占領行政で、飼いならされたと申しますか、とにかく国民がみずから頼み、みずから持し、みずから立つという、そういう民族としての自意識を失つたかの感があるのであります。ことにはななだ奇怪に思いますことは、愛国心を振起するということが、何か悪いことであり、反動であり、逆コースだ、これはけしからぬことだというような世論があるということであります。これくらい私はわからぬことはないと思うのでありますが、しかし、かような議論が世間に横行しておるほど、今日の日本人がその民族としての自意識を失つておるように思うのであります。これは何としても、それぞれの面から一日も早くわが民族が自意識をとりもどすようにして行きたい、かように考えておるのであります。  それから学校教育の問題でありますが、この学校の教育は……(「簡単簡単」と呼び、その他発言する者多し)とにかく義務教育について言いますと、国家が法律をもつて義務として子供を預かつておるのであります。従つて、父兄は義務として子供を学校に預けておるのでありますから、国家の側から言えば、この子供を、個人としても、あるいは社会人としても、国民としても、りつぱな人間に仕立てるという義務があるのであります。従つて、私は、学校における教育がどういうふうにあるかということについては、むろん至大の関心を持たざるを得ないのでございます。(拍手)しかるに、今日学校における教育が、先生の主観によつて、先生の考え方で、かつてほうだいな、片寄つた教育が行われておるという事実を認むるのであります。少くともその危険を私は認めておるのであります。これをこのまま放置するということは、これは国家運命に暗影を投ずるおそれがある、かように確信をしておるのであります。(拍手)これにつきましては、近く法律案を提出いたしまして御審議を願いたい。その法案提出の趣旨は、ただいま申し上げますように、学校の教育を正常な軌道に乗せなければならぬ、かような考え方で、今せつかく検討しておる次第であります。(拍手)     —————————————
  35. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明三十日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  36. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十九分散会