○伊藤好道君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、総理大臣以下
関係閣僚に対しまして、その施政方針について若干の
質問をいたしたいと存じます。
私は、まず
政府のいわゆる再
軍備政策に関しまして、率直、端的にお尋ねいたしたいのでございますが、近ごろ総理大臣は、戦力なき軍隊という、われわれの常識をも
つては理解することのできない珍妙なる新語を発明されまして、保安隊ないし新たにつくろうと
計画されておる自衛隊の特徴を表現されているようであります。他方では、
吉田内閣は、自衛隊漸増の原則を依然としてと
つておりまして、今度のいわゆる
緊縮予算におきましても、実に
世界の例を脱して、
防衛関係費のみは明らかに増加しておるありさまであります。(
拍手)そこで、いわゆる自衛力の漸増によりまして、
政府は今後、このいわゆる戦力なき軍隊をば戦力のある軍隊、すなわち憲法に
政府といえ
ども抵触すると認めざるを得ないところまで増強しようとしておるのではないかという点であります。
吉田内閣の意図は明らかに憲法の改正をその意味においては企図しているものと断ぜざるを得ないのでありまして、しかもその企図する程度は、乱暴な
緊縮予算の中で
軍事費だけが膨脹させられておるところを見ましても、その時期、どういうふうに改正するかについても一定の
見通しを持
つておるものとわれわれは信ぜざるを得ません。従いまして、この際その点に対する総理の御見解をお尋ねいたしたいと思います。
第二に、この自衛力漸増の方針をここで本格的にするために、
政府は過般来いわゆる
MSA条約による
援助を
アメリカから得ようとされまして、目下東京において日米間に
交渉を行い、しかも昨日の施政方針
演説におきましては、外務大臣は九分通り両国の意見が一致したと述べておられますが、しかし、その実体、すなわち
MSA援助による
防衛計画はいかなるものであるか。何箇年間に陸海空の三軍——三軍などというものは、どうもわれわれ平和憲法のもとでは、抵触しないという
政府の心臓の強さに実にあきれかえる次第でございますが、とにかくそれはどの程度のをつくろうとするのか。それに対する
アメリカの
援助はいかなる金額に上り、いかなる種類のものであるか。軍事
援助のほかに、いかなる種類の
経済援助がどれほどあるのであるか。最近のランドール報告などによれば、正常
貿易による以外にほとんど
考えられないのでございますが、いかなる
援助がどれほど期待できるか。その約束はすでにできておるのかどうか。これに関しまして、一般的な
MSA条約の適用域外に、日米間に何らか特別の条約もしくは条約の中に特別の条項が挿入されるのかどうか。さらに
防衛金の分担は今後はどうなるのか等の諸点につきまして、私はできるだけ詳細かつ具体的にお尋ねいたしたいと存じます。これは今後の
日本の
財政の全体を決定する重要な問題でございますりで、本議場ににおいてこの際明らかにされたいのであります。
さらに、私は外交問題につきまして一、二お伺いいたしますが、総理も外務大臣も、
アジアのうちで特に自由国家群との親交を強調されております。この
アジアにおける自由国家群とは一体いかなる国々をさすのでございましようか。インドも、ビルマも、インドネシアも、米ソの両陣営の対立に巻き込まれないで、
世界の平和を維持するために第三の中立的
立場をと
つております。従いまして、もしこれを除外するといたしますならば、李承晩の韓国か、蒋介石の台湾か、フイリピン、タイあたりしかありませんが、それとの国交の特殊の親交がいかなる意味を持
つておるのでありましようか。われわれは、こうした
政府の施政方針の言葉の陰に、どうもこれらの諸国との間に新しい同盟
関係、さらに進んでは、
政府は知らないと言われますが、世間で伝えられておる太平洋軍事同盟の火薬のにおいをかがざるを得ないのでありますが、
政府の真の意図、具体的な方針は、はたしてどこにあるのであるか、総理並びに外務大臣にお尋ねいたします。
またこの際、これに関連して、
政府はなぜに最も近い、古い歴史を持つ隣の大国、中ソ両国に対する国交の回復、親善について施政方針において述べておらんないのでありましようか。ベルリンの四大国外相
会議が目下開催されております。原子力についても米ソ会談がワシントンで行われるような
状態でございます。その結果いかんは別といたしまして、
政府はこの際、こういう両国との国交の積極的な
打開について、具体的は一歩前進をはかるべきであろうと信ずるのでございますが、これに対する
政府の
所信をお伺いいたします。
さらに
政府は、最近再
軍備に関連いたしまして、一般的な
防衛機密保護法あるいはまた
MSA援助兵器に関する秘密保護の単独法を制定するかのような説が伝えらおておりますが、これは、われわれによれば、か
つての軍国主義時代の国家機密保護法の復活と同断でありまして、われわれは絶対に反対せざるを得ませんが、この間における
政府の意図、具体的な措置はいかように進んでおるのであるか、この点についてお伺いいたします。(
拍手)
また、最近警察法の改正、教員の
政治活動の禁止、地方行
財政の中央集権的な改正、知事の官選問題、公労法その他労働
関係法規の大幅な改正など、憲法違反の疑惑を犯してまでも、
政府は、行政の能率化とか、教育の中立性だとか、あるいは占領行政の行き過ぎの是正などという名前のもとに、戦後の民主主義的法規の改悪をあえて犯さんとしておりますが、私は、これらの問題につきましては、これから同僚議員の成田、高津の諸君が具体的に詳細に
質問されるはずでございますので、ただ一点総理大臣にお伺いいたしたいのであります。
総理はワン・マンと言われておられるようで、自由党内ではそれで通るかもしれませんが、
日本の公の
政治においては、われわれは断じてそれは許されないと思う。これらの民主的な法規の存在は、総理の独善的な、官僚的な行政にはじやまになり、御不便かもしれませんが、これは
日本の民主
政治の基本的な条件であります。その改悪を意図する総理のほんとうの心持はどこにあるのか、私はその
所信を伺いたいのであります。
私は、次に、本年における
日本における最大の問題である
経済財政の問題につきまして、さらに
国民生活の問題に関しまして、若干の緊要なる点に限
つて御
質問をいたしたいと存じます。
私のこの点に関して
質問申し上げたい第一の点は、今日
日本の
国民がみんな心配し苦しんでおりまする
日本経済の
現状、特に
インフレーシヨンの問題でございます。
政府も、
日本の
インフレにつきましては非常に苦心されているようでございまして、そのために一兆円以内の
予算、こういう説を唱えられております。しかし、これは、今日の
日本の
インフレの特別の性質について、私はまつたく認識を欠いた
態度であると思うのであります。
インフレが恐ろしいからとい
つて、
政府は緊縮、引締めだと騒いでおられますが、他方では、もうすでにことしは
デフレの年だ、
物価が下方景気が悪くなるだろうという
空気が
国民一般に蔓延しております。
不渡り手形の激増、倒産者の続出、
失業者の大量増加がすでに
現実の事実とな
つておるのであります。その点では、
インフレどころか
デフレなんだというのが、みんなの恐れおののいておる
現実であります。それなのに、
政府はこれに追打ちをかけまして、大蔵大臣、通産大臣は
物価は五%ないし一〇%下ると言
つておられる。労働省当局の談話として、
失業者は五割の増加を見るであろうと伝えられておる。ある
閣僚は、新聞によれば、
政治家の百人や二百人は殺されてもよろしい、こういうことを言
つておられるのであります。しかしながら、今日の
日本の
経済の
現状は、そんな簡単な問題でございましようか。私はそんな簡単ではないと思う。もしわが国の
経済が単に
インフレの危機にありますたら、
デフレ政策もしくはデイス・
インフレ政策をとればこれは直りましよう。また反対に
デフレの危機にある、こういうのでありますならば、逆に若干のリフレーシヨン
政策をとれば、ある程度の対策になりましよう。しかし、
日本の
現状は、そういうなまやさしい危機にあるのではないと思う。
根本的に言えば、
日本の円は下りそうであります。
国際収支の悪化に直面して下ろうとしておるのであります。しかしながら、それを食いとめるために緊縮
財政、
金融引締め
政策をとろうとすれば、逆に
デフレのさんたんたる状況が現出して来るというのが偽りのない
現状であります。私はそこに深刻な事態があると信ずるのでありますが、
政府は、この重大な時局に対して、この重大な
経済財政の事態に対して、十分な、はつきりした認識をはたして持
つておられるのであるかどうか、この点につきまして、私は総理以下
関係大臣にお尋ねいたしたいのであります。
この
根本的な
インフレの危機は、通産大臣も言われるように、私もただいま指摘いたしましたように、まず円の下落の危機とし確かにわれわれの眼前に現われて来ております。これは、申し上げるまでもなく、昨年より
国際収支がいよいよ悪化いたしまして、そうして広義の
特需をも含めて二十八年度の
国際収支はおそらく二億四千万ドルの赤字になるであろうと見られるに至つた事実の上に立ちまして、昭和二十九年度におきまして、
政府としては、最近収支とんとんであるとか、あるいはまた一方では一億ドル以内の赤字であるとかいうお話があるようでございますが、専門家によれば、三億ドル以上の赤字が出るのではないかと憂慮されておるのであります。従いまして、
日本の国際
貿易に必要な運転
資本を除けば、二十九年の三月には
日本の
外貨はゼロにひとしい
状態になるのではないか、そういう事態になりまして、そうして一般的に円為替の切下げが通説のように広く伝わ
つておるという事事があります。もちろん、こうした事態が現出いたしましたことについては、昨年の冷災害による食糧輸入の増加、あるいはポンド圏の
貿易が悪く
なつたとか、それぞれ特殊の事情もございましよう。ただ、しかしながら、それらを共通して、一般的に
日本経済に内在する
根本的な
原因がそこに横たわ
つておるということは、これは何人も否定することのできない事態だと私は思うのであります。従いまして、
政府自身が御存じのように、一兆円
予算をとり、あるいはあれこれいろいろ対策を
考えられておるのであります。
しかしながら、私が第一にお尋ね申し上げたいことは、
政府はこの事態の重要性に対して認識することがおそ過ぎた、あるいはまたそれを軽視し過ぎた点に対する
政治的
責任であります。私はここで
政府当局のその都度の言葉じりを一々とらえようとは思いません。具体的な
政策をと
つてみましても、
朝鮮動乱が起きまして、
世界が買手市場となり、原料の不足、
物価の騰貴が憂慮されたときにとられました輸入奨励的な輸入に対する
政府の
政策、これは実に昨年十月に
至つて初めてそれを幾分改める
政策がとられ始めたのであります。いやしくも多少とも前塗を見通すならば、一年間は優に
政府の施策は私は遅滞していたと思うのであります。(
拍手)しかも、いまなおわれわれは、たとえば硫安をとりますならば、内地のお百姓には高く売り、それによ
つて外国には安く
輸出し、そうしてその硫安のかわりに何が入
つて来るかというと、輸入業者の損失を埋めるためにわざわぎ高い台湾のバナナがわれわれの手に入るという、こういう
状態であります。(
拍手)こういうべらぼうな輸入
政策は今日もとられておるのであります。
政府はこんなでたらめな施策をしていて、はたしてこの重大なる円の危機、この重大なる
国際収支の悪化の事態に対して、ほんとうに認識しておられるとわれわれは信用することができましようか、私は断じてできないと思うのであります。(
拍手)
そこで、私が
質問いたしたい
一つは
通貨制度に関する問題であります。普通の
金本位制ならば、申し上げるまでもなく、
外貨が減れば
通貨は収縮し、
物価は下
つて、そこから
輸出増進の基礎条件が生れて参ります。しかし、
日本の今日は、
金本位制がとれるはずけもとよりございません。ただ、しかしながら、現在の
日本に起りましたる事態は、
外貨は減りつつある、それにもかかわらず輸入はふえる、そうして
物価が騰貴しているという、まつたくさか立ちした事態が展開されたということでございます。
従つて、私は、現行の
管理通貨制度のもとにおいて、たとえば保証発行制度などの問題につきまして、現在の
通貨制度に対して
改善をはかる意思があるかどうか。これについて
政府の
所信をお尋ねいたします。
第二には、私は輸入の抑圧の問題について申し上げます。
政府は、きのうも承
つておれば、たとえば原料の羊毛、綿花などの輸入を削減する、そうすると国内の製品の値段は上
つて、かえ
つて物価政策上まずい、こういうようなお話のようでございます。これは但し、輸入についても非常に野放しな
政策をやるということを前提として、初めて答えが出て来る問題でございます。しかしながら、
日本の二十八年度の
国際収支の悪化、輸入の悪化は、輸入の異常な増大によるところが大きいことは事実であります。
従つて、われわれは、これに対してもつと直接的かつ
計画的な抑制
政策をとらなければならないと信じますが、
政府は、二十九年度において、単に一般的なわれわれの承つただけの漠然たる
政策によ
つて、輸入の抑圧をはたしてできるものと
考えられるかどうか、特に
外貨資金が欠乏して参りまして、そういう
状態のもとで
貿易政策をとれば、見越し輸入の問題が起きて参りまして、ますます
物価、
国際収支に対して悪い
影響を与えると思うのでございますが、この点について、
政府はもつと直接的、
計画的な輸入に対する規制を行う意思はないか、そういう方針についてお尋ねいたします。
第三に、私は
輸出の振興
政策についてお尋ねいたしたいのでございます。
輸出の振興は今日だれでも叫んでおります。従いまして、この
輸出の振興それ自体についてはだれも異存はございません。
政府は、承
つておれば、
輸出市場の不案内あるいは
貿易商社の問題、あるいは
輸出品の品質、規格の問題、体裁の問題、あるいは在外公館の少いというような幾多の事例をあげて、何かこれをばらばらに直して行けぱ幾らか
輸出がふえるかのような
印象をわれわれに与えられておりますが、実際は、一番大きな
原因は、これは
政府も認めざるを得ない
輸出品の価格の高いこと、しかもその高さは少くとも二〇%あるいは三〇%に上るだろうという事実であります。従いまして、その差を今後の
国際物価の下落り
世界的な
傾向の中でどうして埋めて行くかということは重大な問題であります。よほど従来と異
なつた新しい
政策がここでとられなければ、私
どもは国際価格のハンデイをなくするということはできないと思う。(
拍手)こういう事態を認識いたしまして、そうしてその事態の上に立
つていかなる
政策が必要であるか。
政府によりますならば、
物価は五%ないし一〇%下ると言われる。しかし、その間に
世界の
物価が五%ないし一〇%下つたらどうなりましよう。格差は依然として残るのであります。むしろ、
日本には、電気あるいは運賃などの公共的な価格、あるいはまた消費税の増徴が行われておるのでございまして、これらの特殊の事情を見ますならば、われわれは、一時的にはともかく、年度末までかけて大勢的にどのような
物価の事態が現出して来るかについては非常な問題があると思うのでございますが、
政府は、はたしてどういう経過をたど
つて、どの程度の
物価の引下げを今年の
日本経済に期待することができるか、しかもそれが
輸出振興にどのように響いて来るか、こういう点につきまして、私は重大な問題でございますので、具体的に正確に御答弁をお願い申し上げます。(
拍手)これに大使われわれの
考えるところによりますれば、
輸出品価格の切下げは、もつと特殊的な、もつと具体的な、急所をついた端的な方針をとらなければならないと思うのであります。
設備の
近代化、あるいはまた
産業の
合理化が必要であると言われておりますが、しかし、その結果は今日どのような事態にな
つておりましよう。たとえば鉄をと
つてみますならば、二十六年、二十七年、二十八年にわた
つて、一千億円を越える巨額の投資が行われておりますが、
設備の
近代化はわずかに半分以下のようであります。しかも、私は、鉄の値段が下つたという話を一向聞かないのであります。鉄鋼業におきましては、さらに今後三年間に一千五百億円の投資を行うという
計画があるようであります。しかし、その結果も、われわれの今までの事例から見れば見えすいております。電気はいかがでございましよう。電源開発によ
つて電力はふえそうでございますが、電気料金はまさに値上げ必至の事態に今日あるのであります。(
拍手)これは一体何でありましよう。造船いたしましても、国家が利子補給をして初めてやりくりをしておる
状態でございます。従いまして、われわれは、今日の
日本におきましては、新しい
設備を投入いたしましても、決して生産費や製品コストは下らない、そういう事態に立
つておるのであります。
これは、申し上げるまでもなく、新規投資には巨額の
資本がいりますが、古い
設備を持つた償却済みの大きな会社におきましては、その新しい
資本は高くつきますので、従いまして、投入しつつも古い
設備とプールいたしまして、そうして経営を営んでおる結果でございます。従いまして、われわれとしては、この際どうしても
設備の
近代化、生産
設備の要するに新規投入を試みますと、ただいたずらに生産がふえ、結局は二重投資、過剰投資となり、そうして今日多くの重要
産業、過去数箇年間にわたりまして
政府が鋭意心血を注いでや
つて参りました重要
産業がほとんど軒並に過剰生産であります。国家
国民の莫大なる
資本がそこでむだ使いされておるのであります。(
拍手)
従つて、これをどうするかということは非常に重要な問題でありまして、この点に対して、ただ
財政の緊縮あるいは
金融の引締めによる一般
物価の若干の値下りの予想、それでは私は絶対に対策にならないと信ずるのでございます。(
拍手)すなわち、この際は、古い
設備資本を切り捨てまして、そうしてその古い
設備資本を切り捨てることによ
つて財政投資や利子補給金も必要な際にはやる、こういう建前になれば、個人の
資本家、個人の
経営者ではだめであります。古い
企業はつぶれてしまいます。従いまして、私は、重要な基幹
産業、たとえば鉄、電力のごときにおきましては、これを国家管理、国有、もしくは何らかの公共的な規制を施すことによりまして、国家の新しい
資本の投入と古い
設備の切捨てを行う、われわれの言う社会主義的
政策こそが一番
現実にぴつたりします。(
拍手)この際、これが、どうしてもわれわれが
日本経済更生のためにとらなければならない重要
産業に対する基本的
政策であると思うのでございますが、
政府はこの点についていかなる御見解であるか。そういうことをしないで、しかも資産の再
評価を強制的に行わないで、何らかの障害を除去するというようなそういう方式で、この一年間にどれだけ
輸出品の単価が下り、どれだけ
輸出規模が国際競争の激化するさ中において実現できるというお
見通しであるか、この点についてもお伺いいたしたいのであります。(
拍手)
輸出振興に関する次の大きな
政策は、申し上げるまでもなく市場を
転換することでございます。すなわち、これを
意識的、
計画的に行うことであります。
政府の方針をお聞きいたしましても、
東南アジア方面に対してはいろいろ
努力するということを言
つておられますが、しかし、ただいま申し上げましたように、その市場の意義、重要性は限定されておるのでございます。従いまして、この際、思想やあるいは
政策、方針を離れて、
経済の実態の上から、
政府が中共
貿易あるいはソ連に対する
貿易、東西
貿易の問題に対して、もつと積極的に出なければならない
現実の必要に迫られておる、こういう事態が今日われわれの直面しておる事態であると信じます。総理は、よく、これらの諸国が、相手が敵と見ているのだからやりようがない、こういうような御表現で平然としておられます。しかしながら、
日本のことしの
貿易は、そんななまやさしい、武士は食わねど高楊子式のやり方では、絶対に私は
打開できないと思うのでございます。しかも、
政府は、今日この事態に何の確たる前途に対する
見通しもなく、初めてことしから再
軍備費用が本格的に増加しで、そこから新しい
インフレの要因がはらまれようとするこの際において、われわれは重大なる円価の下落の危機に見舞われておるのであります。この事態において、維新の三傑のお孫さんである総理としては食べなくてもよいかもしれませんが、八千五百万人の
国民はたまつたものではないということを、国会を通じて訴えたいと思うのであります。(
拍手)
従つて、
政府はこの際中共あるいはソ連に対して積極的、具体的な増進
政策をとるべきであろうと思うが、この点についてお伺いいたします。
なお、ポンド圏問題あるいはフランスとの
貿易の問題も、去年重要なフアクターとして、
貿易悪化の
原因でございますが、これらの通商外交の点については、幾分昨日外務大臣もお触れでございますが、大体
希望的な観測が多くて、ことしすでに
見通しを誤
つて失敗しておるのであります。従いまして、この際あらためて振り返
つて、ほんとうにまじめに自分の立脚点に立つたそういう
輸出振興の御
計画と御方針を承りたいと思うのであります。
私はさらに進んで
財政の問題について若干
質問いたしたいと存じます。
政府は、毎度のように、今年度の一般会計の
予算は一兆円以下に編入したということをも
つて御自慢のように見受けられます。
吉田総理もしばしば一兆円一兆円と言
つておられるようでございますが、この一兆円という数字には、われわれがそんなにありがたがらなければならない、ふしぎな魅力があるのでございましようか。私はそういうことを強調される総理自身のお口を通じて承りたいと存じます。私
どもの見るところでは、この一兆円
予算は、少しく検討いたしますならば、連合国財産補償費その他四つほどの項目を一般会計からはずした結果、数字的のあやをも
つて出て来た数字でございまして、それらを加算すれば一兆四百億円に上るのが実際の今年度の一般会計の
予算でございます。
そこで、これは改進党の三木さんからも御
質問が出ましたが、私は、
補正予算について、あらためて大蔵大臣に大きな声でひとつ言明していただきたいのであります。それは、われわれの見るところによりましては、すでに
政府の租税見積り収入は数百億円もしくは一千億円近い少い見積りでございます。
MSA交渉の結果、どういう再
軍備の
計画が出て来て、一般
予算に対して
補正予算が出て来ないか。さらに下期以降、いわゆる
政府の
デフレ政策が施行されまして、
国民経済が非常なあぶない
状態にな
つて来た場合に、
政府はあらためて
補正予算を組まざるを得ないはめに陥るのではないかということを、われわれは、
日本の
財政史から、そして今日の実情から推断するのでございますが、これに対して大蔵大臣はあらためてもう一度言明をお願いしたいと思うのであります。(
拍手)
私
どもは、
インフレの危険については非常に重要視するものでございます。従いまして、一般的に
財政をいたずらに膨脹させるということにはもちろん反対でございます。しかしながら、今度の
予算のように突然として一兆円という線が出て来た。先国会においては、大蔵大臣は一兆円を数百億円越えるであろうと
現実に言明されておつた。それにもかかわらず、無方針、無
計画に、突如として、数字の表面的なあやではございますが、一兆円
予算を組み、さらにそれについて
金融の引締め
政策までおつかぶせて行こうというのでございます。しかし、その過程において、要するにこの縮小して行つた
経済は、そのままがいくら何でも自由党の
吉田内閣の理想ではないと私は思う。いつかはこれが拡大して、つり合いのとれた
日本の
自立経済を目ざして行かれると思う。従いまして、いついかなる過程を経てそういう拡大された均衡が実現されるというお
見通しであるか、この点につきまして、私は具体的に承りたい。またそのためにはどういう施策を行うつもりであるか、こういう点につきましても、あらためて私は
政府にお伺いいたしたいのであります。
私は
予算の内容につきましては
予算委員会にお譲りいたしたいと思いますが、ただ二点だけ私は申し上げたいと思います。それは、この
予算によりますと、農業、
中小企業のさんたんたる苦境、また
日本の基礎
産業に対する投
融資の突如たる打切りによる再建の不能、あるいは文教費の大幅な削減など、いわゆる
経済の困難
打開、進んでの再建等、
国民生活の安定あるいは民主的教育の実行、こういう問題がすべて全面的に削減されておることでございます。これは本
予算の一大特徴でございます。
従つて、その結果、はたしてどういうことになるでありましようか。私は申し上げます。単純なる
デフレではございません。こういろ商売の方、百姓の方、あるいはまた
労働者の方々は、賃金や収入が減ります。あるいはふえません。その上にもし円価の下落があるならば、幾分の程度において漸次全面的に及びますが。それぞれに応じて貨幣価値の低下が参るのであります。従いまして、収入なり賃金の値打は一段とそこで下るのでございまして、この二軍の圧迫に対して、これらの業者、これらの
国民がどういう
状態になるかということは、これはだれでも明白に推定できると思う。だからこそ、労働省当局でさえ、
失業者は五割ふえると言うのであります。農業、すなわち長期にわた
つて計画的にわれわれが
努力を積み重ねて行かなければならないところの農業はどうなりましようか。冷水害の対策さえ、むだ使いされている、あるいは誇張されているというようなことをいい口実にして打切られております。ことし災害がないという保証は、だれができましようか。(
拍手)こういう事態、また
中小企業に対して、通産大臣は信用保証協会の育成というようなお言葉を言われる。しかし、信用保証協会の保証によ
つて銀行から金の借りられる人はまだいい方である。保証協会がどう保証しようとも、あるいはまた保証協会も保証しないようなそういう人々は、一体どうして金の融通をつけられるのであるか。こういう点について、真に苦しんでいるこういう諸君の
立場に立
つて、私はまじめな御答弁をお願い申し上げたいと存ずるのであります。
さらに
失業者の問題。
政府は
失業保険などの金額を大体前年並に押えたことをも
つて自慢されておる。しかし、
政府でも、一方では五割ふえると言う。
現状維持であれば五割足りなくなる。すでにこの前でも足りないのであります。
従つて、ここではふやすべきものが、せいぜい
現状維持か、減らされておる。これが今度の
予算の一大特徴でございまして、私はそういう点において第一の問題として指摘したいのであります。
私は次の問題に入ります。われわれは、いまさらここで戦力なき軍隊などという問題には立ち返ろうとは思いません。それだけの時間の余裕がございません。ただ、今日
世界の諸国において、
財政を圧縮しあるいは減税を行うという場合に、どこの国でもまず第一に手をつけられるのは、申し上げるまでもなく
軍事費であります。(
拍手)
国民生活がゆたかであ
つて、ちよつとした数字を見ても、
日本の十五倍か二十倍の高い生活
水準を維持している
アメリカ合衆国におきましても、本年大統領は
軍事費及び
経済対外
援助の費用を削減しておるではありませんか。これはイギリスその他
世界万国共通した今日の
財政の基本
政策でございます。ところが、
日本におきましては、それに加うるに、この
インフレの危機の問題がございますから、
従つて財政を膨脹させる大きな
原因であると同時に、特別に
インフレを直接に刺激するところの
軍事費、これを押えつけることは絶対に必要である。われわれの党の再
軍備反対の
立場を離れても、いやしくも常識のある
政治家ならば、今日
軍事費を減らすということは、これは
政治の常識であると私は信じて疑いません。(
拍手)
政府は、この国際的な大勢、
政治経済の常識に反しまして、
インフレを阻止するという金看板を上げられながら、
軍事費を増加しておられる。これは一体いかなる理由によるのであるか。私は総理大臣にこの点をお伺いしたい。
総理大臣は、常に、国際的には確かに冷戦はある、但し平和の
希望、平和の
傾向はふえて来ておると、たびたび言明されておるのである。それを、何を好んで、われわれ同胞のさんたんたる苦痛を押えて、何がゆえに
軍事費だけを大幅に、ことしの残を入れれば相当大幅にふやさなければならない特別の理由を私はお伺いしたいと思うのであります。しかも、今日言葉の遊戯を離れまして、いわゆる実質論に入りまするならば、
日本の
予算は、昨年度においても相当大きな
防衛関係の費用を盛
つておるのであります。従いまして、言葉の遊戯を離れて実質的に言えば、
日本には要するに軍隊はおるという遺憾なる実情でございます。従いまして、私は、
独立国だから云々などという言葉は、この際全部御遠慮申し上げたい。こういう答弁では私は納得いたしません。もつと具体的に、そして具体的な必要を私は
政府によ
つて説明してもらいたいと思う。われわれは、
独立国だと言われておるが、
独立国の
財政のあり方はこういうあり方ではないと思う。(
拍手)ただいま申し上げましたように、まず
軍事費を減らし、不急不要のものから削
つて行
つて、不景気によ
つて倒れる者、苦しむ者に対して、あたたかい情のある
政治をするのが
独立国としての建前であります。従いまして、こまかい文献を渉猟するまでもなく、私はこれは明らかに
日本の
吉田内閣が
アメリカから強要されてつくつたという
印象を強く受けざるを得ない。要するに
MSA受入れの再
軍備予算であると、理論ではありません、具体的な事実によ
つてわれわれは断定いたしたいのであります。(
拍手)
昭和の初め、金
輸出再禁止が行われましたときに、金の価値の騰貴を見越しまして三井財閥が莫大なドル買いを行いまして、一世の輿論の非難を浴びました。二十余年後の今日、
吉田総理の
緊縮予算をめぐる
物価下落論、不景気論と関連いたしまして、あるいは関連しないかもしれませんが、兜町界隈ではどうも売方を
援助しているのではないかというようなうわさが伝わ
つているようであります。(
拍手)私はそういうことは信じたくはございませんが、そういうデマの出て来るのは、明らかに筋の通らない、科学的根拠のない、ある意味において乱暴しごくの
緊縮予算、すなわち
MSA軍事
予算がつくられた結果であると私は断定いたしたいのであります。小笠原
国務大臣の言葉をかりれば、私は本年度の
予算は
日本の国家の存亡と八千五百万の民族の運命に関する重大な問題であると信じまするがゆえに、国会を通じまして、民主的に広く全
国民諸君に対し、
政府の施策の本質、その目的と結果がどのようにして出て来るかに対する
見通しにつきまして、この際詳細かつ具体的に明らかにしていただきたいと存ずるのであります。
最後に、私は一言申し上げておきたい。すでに司直の手に渡
つておりますので、私は詳しい具体的なことは申しません。いわゆる造船汚職事件が起きておるようであります。(
拍手)これは私は内容については一言も申し上げませんが、故意か偶然か、きのうの
政府施政方針には、今までの一枚看板であつた綱紀の粛正という五字が抜けておるようでございます。(
拍手)しかしながら、それにもかかわらず、この問題の
政治的
責任は、最近のいろいろな世上伝えられる問題と関連いたしまして、綱紀の粛正に対しまして国会に重大な決意を促すものがあるとわれわれは信じます。率直に
政府の綱紀粛正に対する
所信をただしまして、私の
質問演説を終ることにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇〕