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1954-08-05 第19回国会 衆議院 法務委員会上訴制度に関する調査小委員会及び違憲訴訟に関する小委員会連合会 第9号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十九年八月五日(木曜日) 午前十一時五分
開議
出席小委員
上訴制度
に関する
調査小委員会
小
委員長
小林かなえ
君
佐瀬
昌三
君 林 信雄君 高橋 禎一君 井伊 誠一君
違憲訴訟
に関する小
委員会
小
委員長
佐瀬
昌三
君 押谷 富三君
小林かなえ
君 吉田 安君 猪俣 浩三君 小
委員外
の
出席者
専 門 員 村 教三君 専 門 員
小木
貞一君 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した
事件
上訴制度
及び
違憲訴訟
に関する件 ――
―――――――――――
〔
小林上訴制度
に関する
調査小委員会
小
委員
長、
委員長席
に着く〕
小林錡
1
○
小林委員長
これより
上訴制度
に関する
調査小委員会
、及び
違憲訴訟
に関する小
委員会連合会
を開会いたします。 先月五日より昨日に至るまで二十一名の
参考人
より各界それぞれの
意見
を聴取いたしたのでありますが、これらの
意見
を
参考
として、これから小
委員会
の
意見
をまとめて、立案の
程度
に進むようにしたいと
考え
ております。それに先だちまして、これらの
意見
を聞いた全体的の問題の重
要点等
について
区分わけ
をしてまとめたものが作成されましたから、それについて一応の御
説明
を申し上げたいと思います。
専門員
からこの点の
説明
を願うことにいたします。
小木専門員
。
小木貞一
2
○
小木専門員
それでは
説明
申し上げます。お
手元
にあります
違憲訴訟
、
上訴制度連合小委員会資料
というのがございますから、まずそれについてお話をいたします。この
資料
は論点を大まかに整理しまして、そういう点についてこれから
要綱等
をつくる
参考資料
にという意図のものにこれを整理してみたのであります。第一はいわゆる
憲法裁判所設置
の可否についての
参考諸説
とな
つて
おりますが、これはいわゆる現在の
最高裁判所
以外に
憲法裁判所
というようなものを設けるかどうかという問題についての
参考
の
意見
になりますと同時に、現在の
最高裁判所
にいわゆる
違憲審査権等
広い
憲法裁判
的な
裁判
、つまり
一般法令審査
、
違憲
の
審査
ができるかどうかという点までをも
考え
る
参考資料
にという
意味
でこれは整理してあるのであります。 それで書いてありますようにいわゆる
憲法裁判
は
現行憲法
上可能であるかどうかという問題につきましては、ここの一番上の欄に
積極説
というのが書いてあります。これは現在ではここに書いてあります
通り
、敬称を略しますが、
佐々木惣一
、
中谷敬寿
、この二人の方ができるのだという
考え
をと
つて
おられるのであります。それからその次に
消極説
というのがありますが、これはできないのだという
考え方
でありまして、これもここに書いてあります
通り
に、これは第一に現在の
最高裁判所
の
判例
がこの
考え
に立
つて
おるわけでありまして、
学者
では
兼子一
、
清宮四郎
、
渡辺宗太郎
、
鵜飼信成
、
美濃部達吉宮沢俊義共著
、
法学協会
、
中田淳一
、
沼田稲次郎星野安三郎岡本輔共著
、これができないという
考え方
であります。三番目に
可能説
と書いてありますが、これは
わけ方
はどうにもなりますがこれは理論的には
憲法裁判
もできるのだという
考え方
でありまして、できるのだがこれは
立法措置
がいるのだ、
裁判所法
の
改正
がいるのだという
考え方
であります。これを一応
可能説
というようなものにしておいたのでありますが、この
考え方
はこの三にありますように、
宮沢俊義
、
入江俊郎
、
小野清一郎
、
海野晋吉
、
長野国助
――昨日のは整理しておりませんが、今までのところそういうことにな
つて
おります。これで大体いわゆる
憲法裁判所
なりあるいは
憲法裁判
の
機能
を
憲法
上現在の
最高裁判所
に持たせることができるかどうかという問題が、一応これで
諸説
がわかると思います。 それからその次の欄に
方法
としてありますが、これは
ちよ
つとさき触れましたが、
可能説
という中で、理論的にできるのだ、その
方法
はどうすればよいか、
裁判所法
の
改正
である、こういうことであります。
積極説
ではもちろん当然できるという
考え方
かあるいは
最高裁判所
の
規則
でできるという
考え方
か、この点はよくわかりません。
消極説
はもちろん否定しておりますから問題にならぬと思います。 その次の欄に
違憲裁判
の
効力
という欄がありますが、これもいろいろわかれております。そこの欄にありますように、
兼子
氏は
最高裁判所
の
憲法裁判
についての
効力
は一般的なものである。しかし
下級裁判所
がやつた場合にはその
事件
限りの
効力
しか持たないのだ、
下級裁判所
で
憲法違反
の
判断
までして、それが確定したというような場合を想定しておるわけでありますが、その場合には
一般的効力
はない、こういうことを言
つて
おるわけであります。それから
可能説
のところに、この
効力
の問題で
宮沢
さんは
一般的効力
がある、これは
改正
して
行つた
場合だと思います。それから
入江
さんが、これは個別的な
効力
しかない、しかし
法律
の
改正
によ
つて
一般的な
効力
も持たせることができるとこういうふうに言
つて
おるわけであります。 それから一応ざつと進みまして、第二の問題は、
違憲
の問題のある
事件
の
移送
についてどうすればいいかという問題でありますが、これは1から8までありますが、事実
関係
かあるいは事実の
資料
が
下級審
でもう十分に出てお
つて
、その点では問題がない、いわゆるこれは熟しておるという段階にな
つて
から
最高裁判所
が直接
事件
を取上げて
違憲
の
裁判
をする、こういう
考え方
、これは
兼子
氏がそこに書いてありますようにこの前の
公述
で言
つて
いるわけです。 それから二番目の
考え方
は
入江
さんでありますが、
高等裁判所
の第二
審裁判
に対する
上告
は、
憲法
問題である場合は
最高裁
へ
移送
して、
最高裁
はその点だけの
審理
、
裁判
をして宣告する、
上告裁判所
または
東京高裁
の
上告
はその他の点について残つた問題の
審理
、
裁判
の宣告をする、こういう
考え方
で、
事件
全体ということではないわけであります。 三番目は
海野
さんの
考え方
でありますが、個人の
権利関係
の変更を生ずる
憲法違反
の
法令
もしくは
処分
のあつた場合は、それについて
中間判決
をして、
中間判決
に対して
飛躍上告
を許すということにしたらどうかというわけであります。 四番目は
坂野
さんの
考え
でありますが、
東京高等裁判所
の
上告部
が
最高裁判所
でやるのが適当であるとするものを
移送
する、それは次のような場合、イロハニまであります。イでは、
法律
、
命令
、
規則
、または
処分
が
憲法
に適合するかしないかの
判断
をしなければならないとき、ロは、
憲法
その他の
法令
の
解釈適用
についての
意見
が前に
最高裁
がした
裁判
に反するとき、ハは
事件
が重要であ
つて最高裁判所
が処理するのが適当と認めたとき、ニは、右のほかに、
最高裁
は必要と認めたときは、いつでも、
高裁
その他
下級裁判所
に係属している
事件
を送致させることができる。その場合
最高裁
は七名か九名で
裁判
すればよろしいというのであります。 その次の
小野
さんの
考え方
――五番目でありますが、
具体的事件
の
訴訟遅延防止策
として、
下級裁判所
から
最高裁
が
事件
の送致を求めて、みずから審判する。これは
人身保護法
第二十二条と同じような
方法
を主としてやつたらどうかということであります。 六番目は、これは
下飯坂
さんでありますが、
最高裁判所
は
最高裁
が
憲法
問題の
事件
を取上げる、または訴願させる、この場合には判事は――
裁判官
は七名ないし九名で
裁判
したらいいではないかというわけであります。 それから七番目に、これは
小林一郎
さんですが、
人身保護法
と同じように送致させたらどうかということを簡単に言
つて
おります。 一番
最後
に烏田さんが、
最高裁
が
違憲事件
を取上げてやることにしたらどうかというのであります。
移送等
につきましては一応こういうふうな
意見
が出ておるわけであります。 それから第三の
上告制度
についてでありますが、
民事上告
、
刑事上告理由
の
調整
――現在
民事
と
刑事
と
上告理由
が幅において広い狭いがありますし、
上告理由
も違
つて
おりますし、この点も
調整
という問題があるわけでありますが、これにつきまして今までの
公述人等
の
意見
を整理してみますと、これは1から5までありますが、最初に
兼子
氏のでありますが、
上告理由
は
現行刑訴
の線でよい、要するに
憲法違反
と
判例抵触
というようなことになるわけでございます。それから次は
小野精一郎
さんので、
上告理由
は
改正民訴
の線とした方がよい、こういうわけであります。 これは1と2の説がまさに対照的にな
つて
おるわけであります。
改正民訴
の場合はこの前の
国会
で審議いたしましたように、
上告理由
は
判決
に影響を及ぼす明らかな
法令違反
ということにな
つて
、
刑事
のように
憲法違反
、
判例牴触
ということとは違うわけであります。三は、
民刑訴とも
に
改正民訴
の線がいいんだという、これは
長野国助
、
島田武夫
、
坂野千里
氏の説で、2と結局近い
考え方
であります。4は
斎藤朔郎
氏で、
刑事
について
法令違反
は、
刑事訴訟法
の四百六条
事件受理申立
のような
方法
で許した方がいい。五番目は、
法務省刑事局
から出ている
意見
で、われわれがこういう
考え方
じやないだろうかと思
つて
書いたのでありますが、これは要するに
現行刑事上訴
の
改革
についてはどうも
消極的意見
、
改正
しない方がいいんじやないかという
意見
じやないかと思
つて
書いてみましたが、あるいは
間違
つて
いるかもしれませんから、あした
刑事局
の人に来てもらいますから確かめてみていただきたいと思います。 それから第四の問題は、
最高裁判所
の
機構改革
の問題であります。これも1、2、3と三つあ
つて
、その中がまた幾つにもわかれているわけでありますが、1は
増員論
であります。これは
裁判官
の
増員
と同時に
調査官
も
増員
すべきである。これは
海野晋吉
氏が言
つて
いる
意見
であります。その次の
長野
さんと
島田
さんの
意見
は、同じく
裁判官
の
増員論
でありますが、
調査官
の
増員
は誤りでありますからプリントを御訂正願います。4は
小野清一郎
氏の
考え方
であります。三十人くらいに
裁判官
を
増員
する。そして大
法廷
は九人でやり、
憲法
問題だけを扱う。小
法廷
はおのおの三人として
民事
と
刑事
とにわける。そして大
法廷
を構成する
裁判官
も小
法廷
の
裁判官
として
民事
なり
刑事
なりの
裁判
をすべきである。五番目に
岩田
さんは、これは
増員論
であります。それから二として員数を減らす
減員論
で、
裁判
の
会議
は七名ないし九名が適当である、
坂野
さんのお
考え方
。小
法廷
をやめて
最高裁
は
憲法
問題についてのみ処理するところとする。その他の
上告事件
のためには
東京高裁
に
上告部
を設ける。
上告
はすべて
上告
都に提出してその中の
憲法
問題だけを
最高裁
へ
移送
する。次に同じ
減員論
の中でありますが、九人に減員して
違憲審査
のみを扱う。
一般法令違反
は
高等裁判所
に旧
大審院
のような部を設ける。これは
小林一郎
さんの
考え
であります。三番目に
裁判
の数を減員して
憲法
問題のみ
裁判
する。
上告
は制限した方がいい。もし制限しないとするならば、
東京高裁
に
上告部
を設けることがよい、これは
宮沢俊義
氏の
考え方
であります。四番目に
裁判官
の数を七人ないし九人に減員して
憲法
問題だけをやる、
東京高裁
に
上告部
を設け、
上告
はそこでやる。
下飯坂
さんの
考え方
であります。
機構
の第三番目には、その他の問題でありますが、そのうちで、小
法廷
を三人ずつ五つにしたらどうかということを
兼子
さんが言
つて
おりました。それからその二番目に
入江
さんでありますが、
機構改革
は時期尚早ではないか、一年ぐらい経過を見て、
上告事件
が増加して
最高裁
の
負担
が多くな
つて
来れば、その上で考慮していいではないか。それから考慮する案としては、
最高裁
は
憲法
問題だけを扱う、
一般上告
は、
上告裁判所
を新しくつくるか、あるいは
東京高裁
に
上告部
を設けることにしたらどうかというのであります。その次の三番目は、
斎藤朔郎
氏の
考え方
でありますが、当分情勢を見きわめてから、
最高裁
の
負担
が多くなるような場合は、
増員
を考慮するほかはない、しかしその場合に
裁判官
を
Aクラス
の
裁判官
と
Bクラス
の
裁判官
というように
二つ
の種類にわけて行くことには
反対
であるという
考え方
であります。
最後
の4が
垂水
さんの
意見
でありますが、いろいろな案が
考え
られるが、結局
上告裁判所
を
東京
に設ける
方法
しか
考え
られないのだ、こういうふうな御
意見
であります。 以上であります。
小林錡
3
○
小林委員長
次に
村専門員
の御
意見
を承りたいと思います。
村教三
4
○
村専門員
お
手元
へ
資料
二というので、
違憲訴訟
及び
上訴制度
に関する
参考人
の
意見
の
分類細目
というのが行
つて
おりますので、それについて簡単に
説明
さしていただきます。 この項目の
わけ方
につきましては、ただいま
資料
一の方で申し上げましたのと大同小異でありまして、多少
表現
の違うところはございますが、内容的にはまつたく同一であると信じております。ただいまこの三十ページもあるものを全部読むわけにはもとより参りませんので、その代表の説を
一つ
だけ申し上げまして、そういうところにまるでもつけていただきまして、ただいま
小木専門員
の申しましたあの整理の
理由
としてはこれが一番いい
理由
だというようなところにマルでもつけていただきましたならば効果的だと思います。それからもう
一つ人数
の上から
ちよ
つと私
分類
してみました結果、昨日まで二十一人おられますので、大体この説は何人おられるかということもあわせて申し上げてみたいと思
つて
おります。 それで第一款の
最高裁判所
の性格は何か、ここは問題を提起しただけで別にお読みくださればもうおわかりのことだと思
つて
おります。 それでニページへ参りまして、第一項
違憲審査権
の範囲、
憲法
八十一条の
解釈
のところでありまするが、第
一目
の
具体的訴訟審理説
、この
考え方
を積極的に
はつ
きり申しておられる方が五人おられます。その代表的なものといたしましては、その第二に
学者側
とありまして、一、
憲法
は
裁判所
が
具体的事件
を
司法裁判所
で
審理
することを保障しておる。
最高裁判所
に抽象的に
法律
を
違憲
とする権能なしと見るのが正当であろう。
宮沢教授
の説でありますが、こういうところが一応
具体的訴訟審理説
の代表的なものだと思
つて
おります。 それから四ベージへ参りまして、抽象的に
法令審査説
といたしましては、この説を積極的に
はつ
きり述べておりまするのが二人でありまして、その代表的なものは第一の
弁護士側
、一、
最高裁判所
には一般的、抽象的に
法律命令等
の
違憲
を
審査
する
権限
がある。
憲法
を
改正
しなくてもある。もつとも
裁判所
は
司法裁判所
であるから、
具体的事件
を通すべきであるとの
意見
は強いが、それでは
行政事件
の場合はどうか。私が主張する根拠は八十一条の
文理解釈
にある。この条文には
具体的事件
を主題として書いてない。
終審といつて
も客観的に
最後的処分
をするとの
意味
である。結局
審級制度
に関する
裁判所法
第七条その他を
改正
すれば、
現行憲法
の
解釈
としても抽象的に
法令
の無効を
裁判
することができる。こういうところで察していただきます。 それから六ページへ参りまして、第二項の
憲法裁判所的機能
の発揮、これは先ほどのところでは、いわゆる
憲法裁判所
が
現行法
上可能であるか、あの問題に相当するものでありまして、
表現
の違いだけであります。 第
一目
、
可能説
は四人おられまして、一、
最高裁判所
に
裁判所法等
の
改正
により
憲法裁判所的機能
を持たせることは可能である。
法令等
につき
違憲訴訟
の
審査
を抽象的にすることを
憲法
は禁止していない。ゆえに
立法論
としては
法律改正
により
憲法裁判所
の
機能
を持たせることはできる。
宮沢
さんも
小野
さんも同じような説でありまして、七月中にはこの
可能説
でありましたが、八月に入りましてから
不可能説
が二人出て来たわけでありまして、
金森
さんも
佐藤
さんも
現行憲法
上
裁判所法等
の
改正
によ
つて
は
憲法裁判所的機能
を発揮することができないという見解をあらためて発表しておられますので、その点ひとつ特に御注意願いたいと思
つて
おります。むしろ第二目として
不可能説
、
金森
、
佐藤功
氏説を出すべきだと思
つて
おります。 第二目については、妥当ならざるの説、可能ではあるが妥当ではないという説、この
考え方
は五人おられましてその
一つ
といたしまして、
最高裁判所
に対し
立法
により
憲法裁判所的機能
を持たせることが妥当かいなかについては慎重に考慮しなくてはならない。その
理由
として
イ憲法裁判所
によ
つて
、
憲法
を守ろうとする
考え
に賛成しない。
国民自身
の
憲法意識
を高めて
最高裁判所
にあまりたよらない方がよい。
ロ民主国
の英、米、
仏等
に
憲法
、
裁判所
の先例がなく、かえ
つて
憲法裁判所
を設けている西ドイツ、
オーストリア等
は
独裁主義国
であつた事例もあ
つて
、
国際的立法例
において
憲法裁判所
の
設置
がよいとの通説がない。これが非
妥当説
の代表的なものだと思います。 それから八ページの方へ参りまして、
違憲判決
の
効力
といたしましては
一般的効力説
がありますが、これは三人ほどおられまして、
兼子
さんは
折衷説
でありますが、これはむしろ
兼子
さんの方も
一般的効力説
の方に入れるべきだと思
つて
おります。一、
違憲
の
判決
があるとかりに、
個別的効力
がないと
解釈
しても、実際問題としてそのままにしておくことは公正を欠く結果を生ずるので、あたかも客観的に
効力
を
失つた
結果が生ずると思う。
一般的効力説
の方が
はつ
きりしていて、実際上便利である。ここで
違憲
の
法令といつて
も
法令
全部と限らず、問題の
規定
とその他の
規定
とにわけられた場合はその問題の
規定
だけは失効するわけである。 第二目の
個別的効力説
の方は四人ありまして、
入江裁判官
の説を申しますと、
憲法
八十一条の
解釈
については、
具体的事件説
をとるから、
違憲
の
判決
は
当該訴訟関与者
のみに
効力
を有し、
国会
、
政府
に対して
拘束力
を及ぼさないと解する。もつとも
違憲判決
があれば、
政府
も
国会
もいろいろの
方法
でその
判決
を尊重することであろう。 次は第四項の
違憲事件
の
移送
でありますが、これは今
小木専門員
の方から申した
通り
でありまして、
賛成者
は十人、
反対者
は一人もございません。特にこの点は申し上げることはございません。代表的な説といたしましては、十ページの四、
坂野弁護士
の相当詳しく
考え
られました、次の場合には、
東京高等裁判所
は
最高裁判
に
事件
を
移送
する、これをお
考え
くださればおわかりだと思
つて
おります。 次に十一ページに参りまして、第五項の
憲法解釈
につき
意見要求
、
勧告的意見
の問題でありまして、これにつきましては
賛成者
はございません。
みな反対論
ばかりであります。もつとも
宮沢
さんがやや特定の例外をおいて賛成しておられますが、もちろん代表的な
意見
といたしましては、十二ページの方へ参りまして、二、
政府
または
国会
が
最高裁
に諮問してその
意見
を求めることは、
裁判所
をして将来の公の
意見
を先に発表してしまうわけであるから、
司法権
の行使から見ておもしろくない。 第二款の方に参りまして、
最高裁判所
の
裁判
は
遅延
しているか。もとより
遅延
していないという人は一人もいないわけですが、どの
程度
にということを一応問題に提起した形で、ここに一、二、三、四というぐあいにして、
遅延
に対する
考え方
を述べただけでありまして、これはお読みくださればわかることだと思います。 十四ページへ参りまして、
上告制度
、その点の
わけ方
は、実は非常にむずかしくて、私も
分類
がきわめて正確に行
つて
おるとは思
つて
おりません。と申します
意味
は、
上告制度そのもの
の性質から参りまして、
最高裁判所
の方の
権限
が上の方できまり、中央の第一審の
権限
がまたきま
つて
、サンドウイツチのように両方から攻めつけられているようなかつこうにな
つて
おりまして、基本的な
上告制度
からなかなかむずかしく、総体的に実情に応じてきめるというところにいろいろな
考え方
が出て来るのだと思
つて
おります。この点は
わけ方
も私自信があまりないのでありますが、一応再度の考案というような
考え方
、
検事上告
というような
考え方
、
事前審査
という
考え方
、それから
上告
を許可するという
考え方
、これに対する
賛否両論
を一応わけてみた
程度
でございまして、このあたりは再検討してやる必要があるのじやないかと私は思
つて
おります。もつとも、大きくわけまして、
上告制限
と
上告拡大
の
二つ
の大きな線にわけられます。
上告制限
の方を主張されました方が八名であります。それから
上告拡大
を主張されました方が六名であります。一応ここはこの
程度
にしておきまして十九ページへ参ります。 第二項の
最高裁判所
の
機構改革
、第
一目現状維持説
、この
考え方
を
はつ
きり主張されました方が、四人おられます。その代表的なものとして
裁判所側
の意向を申しますと、一、
最高裁判所
の
機構改革
は時期が早い。もし将来
上告事件
が増加するときはそのときに
改革
すればよい。
最高裁判所
を昔の
大審院
のごとくにすることは絶対
反対
である。その
理由
は
イ憲法
は
最高裁判官
に対し高度の
資格
を要求している。
憲法
八十一条の
裁判
をする者の
大幅増員
は適当でない。
ロ最高裁判官
中に
権限
を異にする数種の
裁判官
ができると、
国民審査
を受けない
認証官
でない
裁判官
や、大
法廷
に参加しない
裁判官
ができて、これは
憲法
七十九条、八十一条の趣旨に違反する。
ハ一般
の
上告
の
事件
に忙殺されると結局
違憲審査権
の慎重周到を阻害する結果になる。 それから二十ページの
増員説
の方に参りまして、
増員説
は八人ございます。
名前
を特に申し上げますと、八人の方は
海野
、
長野
、
小野
、
島田
、
小林
、
岩田
、安平、
金森-佐藤功
氏が
ちよ
つと中途はんぱな
折衷案
のような
考え
でありますが、一応この人を除きましてただいま申しました
増員説
の方が八名おられます。この代表的なものは、
小野
さんの言われたところがそれかと思うのでありますが、二十一ページの三、私は
最高裁判官
を三十人に
増員
を主張する。大
法廷
九人、小
法廷
三人とし、
民事
、
刑事等
にわける。
裁判所
内の
事務分配
は
規則
で定める。大
法廷
と小
法廷
との
裁判官
を区別しないことにする。少くとも
民刑事
のできる小
法廷裁判官
でなければならぬ。
増員説
に対する
反対論
として
イ資格者
が多くないというが、各方面に十五人いないことはない。
ロ憲法違反事件
の
合歳
に参加しなかつたり、大
法廷
に参加しない
裁判官
を
増員
するのは
憲法違反
というけれども、
憲法
には別に
規定
がない。
増員説
に対する
反対事由
は、
認証官国民審査
、
違憲訴訟不参加
の問題にあるようである。
認証官
のことは
裁判所法
を
改正
すればよく、
国民憲査
は
バツテン
をつけるだけで
人数
が多くな
つて
も問題でない。
違憲訴訟事件
の
合議不参加
が実質的の
反対理由
であろう。しかし
最高裁判所
の
判決
においては小
法廷
の
判決
がそのまま
最高裁判所
の
判決
にな
つて
いるではないか。これは
実体法
上の
裁判所
と
手続法
上の
裁判所
とで異なるだけである。 議論の当否はともかくとして、これが有力なものだと思
つて
おります。 それから
減員説
の方は、二十三ぺ一ジの方へ参りまして、
減員説
は問題を同時に裏返しをすれば
中二階案
――つまり
高等裁判所
に
上告部
を
設置
するという案と裏表をなすわけであります。
減員説
としての代表的なものは
下飯坂
さんの
考え方
であります。むしろ
最高裁判官
を減員して別に
東京高裁
に
上告部
を設けるを可とする。
最高裁部長裁判官
だけの大
法廷
で
違憲訴訟
を審判することはむずかしいし、かつ忙がし過ぎる。現在
最高裁
の
最大欠点
は大
法廷
の
合議
が早くまとまらぬことである。大切な事項の
判断
には七人か九人の
裁判官
の方がよい。 それから第四目の
最高裁判官
の
任命方法
でありますが、これはいずれもみな
詮衡委員会
を設くべしという
意見
でありまして、五人の方が賛成し、一人の方が
反対
に近いものだと思
つて
おります。これは特別に申し上げることはございません。 それから二十五ページへ参りまして、第三項の
上告裁判所新設
か、
東京高裁
に
上告部
か。ここは五人おられまして、この五人の方の
名前
を特に申し上げますと、
入江
さん、
垂水
さん、
下飯坂
さん、
宮沢
さん、
坂野
さん、この方が積極的に
中二階案
を主張されたわけであります。この
中二階案
にはどちらでもいいという
意味
で、第
一目
の中二階説、
入江
さんの説を申し上げますと、結論として
イ上告裁判所
を
設置
するか、または
ロ東京高裁
に
上告部
を
設置
することである。右の場合に四
審級
になることを避けて
下級裁判所
より
違憲訴訟事件
のみを
最高裁
に
移送
するようにする。
一般事件
の
上告
は
上告裁判所
または
東京高等裁判所
にて設けた
上告部
で
審理
する。このように事項別により
審級
を別にすることは
最高裁
規則
にも先例がある。これはどつちでもいいという
考え方
であります。 その裏に参りまして二十六ページ、
上告裁判所
を新設すべきであるという
垂水
さんの
考え方
であります。二十六ページの最初の一、賛成論、結局私は
高等裁判所
の上級審にして
最高裁判所
の下に新しく
上告裁判所
を
東京
に
一つ
だけ設ける。
上告裁判所
の支部は各
高等裁判所
の所在地などに設けないことにする。
憲法違反
、
判例抵触
または重要なる
法律
命令
に違反するものはこれを
最高裁判所
に
上告
し、それ以外の一般の
上告事件
をすべてこの
上告裁判所
に
上告
することにする。これは
東京高裁
の長官である点に特に注目すべき点があるからと思
つて
おります。 それから第三番目の
東京高裁
に
上告部
を設けるという説でありまして、この
考え方
は三人おられます。代表的なものといたしまして、二十七ページの
下飯坂
さんの説を申し上げます。二、賛成論、
上告事件
を制限しないとすれば、
最高裁判所
は
事件
をさばき切れない。それで
上告裁判所
でなく、
東京高裁
に
上告部
を設けて
法令違反
事件
を審議するのがよい。しかるに
東京高裁
に
上告部
を設けると
最高裁
が浮き上るとの
反対論
がある。しかし
違憲訴訟事件
も少くないし、また重要
事件
であれば職権による
移送
を命ずることもできるし、司法行政事務の中心が
最高裁
にある限り、
最高裁
は浮き上ることはない。さらにまた四
審級
にて
遅延
するとの
反対論
がある。しかし四
審級
にな
つて
事件
がおそくなるか、早くなるかは、
東京高裁
に
上告部
を
設置
した後の実績を見てからにすべきであろう。元の
大審院
時代には十日間で一
判決
するくらいに早かつた。これなら四
審級
にな
つて
もおそくはならぬ。こういう
考え方
であります。 あとは司法行政事務でありますからこれは
立法
事項としてあまり大事でございませんので、ひとつごらんを願いまして、私の
説明
はこれで終ります。
小林錡
5
○
小林委員長
質疑はありませんか。
猪俣浩三
6
○猪俣
委員
さつき
小木
君の
説明
されました第一のいわゆる
憲法裁判所
は
現行憲法
上可能かという論題には
二つ
の
意味
があ
つて
、
憲法裁判所
を新たに設けることが可能であるかどうかという議論と、現行の
最高裁判所
に抽象的な
憲法裁判
をやらせることは
憲法
上認められるということと、
二つ
意味
が含ま
つて
おるという
説明
があつたのですが、この
積極説
というて出ております佐々木、中谷という人は
憲法裁判所
を別に新たに今の
最高裁判所
のほかに設けることが現行の
憲法
上可能であるという、この
考え方
を
積極説
と言つたのですか、どうですか。
小木貞一
7
○
小木専門員
お答えしますが、そうじやありません。これは現在の
最高裁判所
で抽象的な
憲法違反
の
違憲審査
ができるかという
考え方
については、これはできるのだ、こういう
考え方
で、いわゆる
憲法裁判所
というものについての
考え方
ではないと思いますね。私が言つたのは
説明
がまずかつたかもしれませんが、これはこういうことを
考え
て書いたわけです。少し不明確な点があると思いますが、われわれがかりに
一つ
の
違憲
の問題について要綱を
考え
る場合に、いわゆる大陸法的な
憲法裁判所
というものを現在の
裁判所
以外に
設置
すべきであるかどうかという問題と、もう
一つ
は、現在の
最高裁判所
に
憲法裁判
的な
裁判
、つまり
憲法違反
の抽象的な
法令
の無効宣言というような、いわゆる
憲法裁判
ができる
機能
を持たせることがいいかどうか、この
二つ
の問題を想定して、こういうふうに整理したものですから、そこのところが少し
説明
がわかりにくかつたと思いますけれども……。
猪俣浩三
8
○猪俣
委員
それはさつき
専門員
の
説明
でわかつたのですけれども、私がお尋ねするのは、この
積極説
というのが
憲法裁判所
を別に設けるという主張を言うたのであるかどうか、それをお尋ねしたわけです。
小木貞一
9
○
小木専門員
そうではありません。
猪俣浩三
10
○猪俣
委員
この
委員会
において別に
憲法裁判所
というものを設けるかどうかということが
一つ
の論題になると思うのです。その
意味
においてお尋ねしておるのです。 それからこれは希望でありますが、
委員会
において
参考
書なんかをとりそろえていただきたいことがあるのです。たとえば今
憲法裁判所
を持
つて
おる国はオーストリアとドイツでありますが、このオーストリアの
憲法裁判
の手続の詳細が美濃部達吉博士の論文で国家学会雑誌の第四十四巻上というものに書いてあります。これはオーストリアの
憲法裁判
手続を詳細に書いている唯一の文献ではないかと思うので、古いものでありますが、この雑誌を探して法務
委員会
に備えつけていただきたいと思うのです。
小木貞一
11
○
小木専門員
今の猪俣
委員
のお話のオーストリアの
憲法
でございますが、これは私が調べたところによりますと、オーストリア
憲法
は一九二〇年の
憲法
と一九三四年の
憲法
がありまして、その一九三四年の
憲法
の方が非常に詳しくな
つて
おるように思います。これは美濃部先生ではなくて柳瀬良幹氏が同じく国家学会雑誌の四十九巻の二号と四号にこの
憲法
の
関係
部分の翻訳を載せておるのが、抜萃でありますが、私の
手元
に入
つて
おります。それで調査の上で美濃部博士のと、それから柳瀬氏のも調べて、この
委員会
なり
専門員
室に
資料
を整えることにいたしたいと思います。 それからなおついででありますが、今の
積極説
のところにありました
佐々木惣一
博士の公法雑誌の第十一巻の一号でありますが、これはとりそろえまして近日中にお
手元
に御配付する用意を今整えておりますことを申し添えておきます。
猪俣浩三
12
○猪俣
委員
もう一点。そうすると
佐々木惣一
博士が非常な異説を唱えておられる唯一の人のようですが、この
佐々木惣一
博士の
憲法
八十一条に関する見解、これは公法雑誌の昭和二十五年一月号に載
つて
おるのですが、これはあなたのおつしやつた十一巻一号というのと同じものですか。
小木貞一
13
○
小木専門員
同じだそうであります。
猪俣浩三
14
○猪俣
委員
いま
一つ
お願いは、このオーストリアの
憲法裁判
なりあるいは西ドイツの
憲法裁判
なりのただ冷やかな
法律
の内容だけでなしに、実際の運用がどういうふうにされておるかということを実際知
つて
おる
学者
なり、あるいはまた外交官でもいいが、その
説明
を一応聞きたいと思うのです。私も去年西ドイツのボンで
ちよ
つと聞いては来たのですが、詳しく聞くひまがなかつた。どうも実際と
法律
とがあまりマッチしていないように聞いて来たのですが、その実際についてどういう人が詳しいか御研究願
つて
、その人の
意見
も聞いてみたいと思うのです。
小林錡
15
○
小林委員長
それは
委員長
から――ひとつよく調査しまして、適当な人がありましたら来てもら
つて
意見
を聞くことにいたします。
小木貞一
16
○
小木専門員
今の点でありますが、実はこれは学界の方で
憲法
学者
が世界各国の
憲法
の翻訳の仕事に携わ
つて
おられるということを聞きまして、早稲田の大西教授のところまで行
つて
聞いたのでありますが、なかなかその翻訳が進んでいない。それで幸いに学術
会議
の方で代表として早稲田大学の中村宗雄教授が今般ヨーロッパの方へ行かれましたので、衆議院の法務
委員会
として中村教授に大陸の方の
憲法裁判所
の文献の収集と、それから実際に今どういう実績を上げているかという点の運用の実際問題、成績等についての調査を依頼してございます。これは先ほど
村専門員
から
宮沢教授
のいわゆる
憲法裁判所
の
機能
のところで御
説明
いたしましたように、理論的には大陸的な
憲法裁判所
というものがいいのだが、その実績はだれも証明していない、また反面にはあまりよくないから民主主義の進んでいる英米
仏等
では
憲法裁判所
というものを置いていない、こういうふうなものの見方もあるものですから、今の実績の点等は非常に重要な問題で、これはぜひ調査しなければならぬと私どもも
考え
ておりますので、その準備をしたいと思います。
猪俣浩三
17
○猪俣
委員
いま
一つ
お願いしておきます。本件に関します各
参考人
の陳述を一応私ども読みたいと思うのですが、われわれが研究するひまのあるように、特に
委員長
から速記課にお願いして、迅速にこしらえてもらいたいと思います。
小林錡
18
○
小林委員長
昨日以外の分はみなできているということで、各自のお
手元
に届いていると思いますからお調べ願います。 それでは速記をとめて懇談に入ります。 ――
―――――――――――
午後零時三分懇談会に入る 〔午後零時五十二分懇談会を終る〕 ――
―――――――――――
小林錡
19
○
小林委員長
それでは懇談はこの
程度
にとどめます。 明日午前十時より開会することとして、これにて散会いたします。 午後零時五十三分散会 ――
―――――――――――