運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-09-02 第19回国会 衆議院 法務委員会外国人の出入国に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月二日(木曜日)     午前十一時九分開議  出席小委員    小委員長 花村 四郎君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       林  信雄君    神近 市子君       辻  文雄君  小委員外出席者         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         法務事務官         (入国管理局総         務課長)    武野 義治君         法務事務官         (入国管理局審         判課長)    高杉  登君         検     事         (入国管理局警         備課長)    中村 正夫君         法務事務官         (入国管理局登         録課長)    豊島  中君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 九月二日  辻文雄君七月二十七日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員に補欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  外国人出入国に関する件     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより法務委員会外国人出入国に関する小委員会を開会いたします。  本日御出席入国管理局の方は、入国管理局長内田藤雄君、総務課長武野義治君、審判課長高杉登君、警備課長中村正夫君、登録課長豊島中君であります。  この際内田入国管理局長より発言を求められておりますからこれを許します。内田入国管理局長
  3. 内田藤雄

    内田説明員 私先月の十七日付をもちまして、入国管理局長に就任いたしました内出藤雄でございます。一属僚にすぎませんので、ただ政府の方針に従つてわれわれの任務を忠実に果したいと考えております以外に格別なことはございません。それに目下就任早々でございますので、私自身がせつかく勉強中というわけでございまして、皆様の御指導、御後援によりましてわれわれの任務の達成にあやまちなきを期したいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
  4. 花村四郎

    花村委員長 次に辻文雄君より発言の通告がありますからこれを許します。辻文雄
  5. 辻文雄

    ○辻(文)委員 時間を節約する必要もありますし、単刀直入に簡単ですけれども率直にお伺い申し上げますが、去る七月十四日に当小委員会全会一致でもつて別紙の通り、ということはこれから御質問申し上げることですが、外国人不法入国者の取扱いについて決議いたしましたが、その決議事項の中でも在留許可緩和基準保証関係などについてお伺いしたいと存じます。  率直に申し上げますが、私の経験から具体的に申し上げると時間がかかりますので、御質問の過程において必要があれば申し上げることにいたしますが、第一に今日まで私が小委員会出席いたしまして受けました印象から、と同時に私は長崎県の方ですが、大村収容所その他の問題を調べたりいたしました結果、こういう者は出してもいいんじやないかとか、こういう者は収容しなくてもいいんじやないかとか、われわれの常識から考えた場合は思われるようなことがありますけれども、御当局ではそういう場合にどういう審査をしてどういう基準でやつておられるかはつきり私どもはつかめない場合が非常に多かつたということでございます。そこで現行の三審制というようなものは一応私どもが具体的にはつきりつかむことができない、何というのですか、微妙なものがあると思いますので、さようなことをはつきりとひとつ御説明願いたい。  第二に、審判会議の模様は採点でやつておいでになるようです。たとえば何才以下はどうであるとか、あるいは何年の人はどうだとか十分にそういう検討をなすつておられると私は思いますが、さような採点基準をどういうところに置いておられるかというようなことをはつきり指示して教えていただきたい、こういうふうに存じます。まだあとに残つておりますけれども、逐次申し上げないと混同いたすおそれがありますので、まずその二点をぜひお伺いいたします。お答え願う方はいずれの方でもけつこうでございます。
  6. 内田藤雄

    内田説明員 決議の問題でございますが、こういう決議がなされましたということは私も聞いておりました。しかしはなはだりくつつぽいことを申すようでございますけれども、法務省の方へまだ正式に御照会をいただいていないというようなことでございまして、今日まだこれに対して的確な御意見を申し上げるまでの準備をいたしておりません。しかしいずれあとお話が出るかと思いますが、われわれ自身がどういう基準でやつておるということにつきましては、御説明申し上げる機会があろうかと存じます。その第二の点の採点云々ということでございますが、そういうことをやつてつた時代もあるようでございますが、現在はやつておりませんということだけをお答え申し上げます。
  7. 辻文雄

    ○辻(文)委員 そういたしますと、今まで伺つたようなこととほぼ同じで、私どもからすると何ら内容をのぞけない。非常に抽象的な推察以外にはできない。実例ちよつと申し上げると、私の土地なんかではたとえば新局長はまだそういうことをおわかりになつておらぬかもしれませんけれども、むろんこれは密入国者でありますが、みずから逮捕されないうちに自首をしておつた。そういうことで特殊の職能を持つてつて、遊んでおらずに、それらが外国人洗濯業をやつておるところで働く。その場合に語学とかあるいは外交の手腕というようなものが、御存じのように華僑なんか、なかなかうまいものですから、日本人がやつてはとれないものをそれらが行けば、とれるということで直接外貨獲得というようなものを年間想像以上の——数字などは書いて出しておりますから申し上げませんが、そういうことでやつてつた現実には何らの違反というようなものをやつておらぬ。しかも一つの組合のようなことになつており、そうして向う人たちが団体的にそれをちやんと見守つて悪さをさせないようにやつておる。けれどもその中でちよつとでも悪い人があればむしろそういう人は進んで収容してもらうというようなことが、一、二あつたことを私は知つております。こういう場合に私ども常識の判断からいたしますと、むろん密入国ということに対しては、これは法令がありますので、当然その法令によつて皆さんが取扱わなければならぬとは思いますけれども、たとえばそれが憲法の三十一条というようなものを私が今さらここで三十一条はどんなものかということは申し上げなくてもいいと思いますけれども、たとえば「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」こういうことがある。また出入国管理令の二十四条では正規手続をふまず本邦に入国した者とか旅券在留期間が経過した者とかあるいは貧困者とかあるいは売淫行為をしたとかあるいはそれに携わるとかあるいはまた精神病者とかいう場合に、出入国管理令で、法律の定める手続によらなければということには合致するあるいはそれでやつてもよろしい、こういうことを考えますけれども、たとえば私どもアメリカ一辺倒外交政策というようなことを考えずに、今後——あるいは共産主義とかいうようなものは別問題でありまして、私どもは思想上では大いに考えなければならぬことがあるけれども、今日の経済の上から申し上げても、どうしても貿易ぐらいはお互いにもつと広汎に、東南アジア初め、でき得れば中ソとでもやらなければならぬというくらいな考え方を持つております。そういうお互い外交のときに、私が前述いたしましたような姿で働いておる、またそれ以外に日本人に害毒を流さない、こういうような人たちに対して、その場合に先ほど申し上げるように、自由を奪われることがどんなになるかということを深く思索してみると、やはり考えてみなければならぬところがあるんじやないか、こういうふうに考えられるので、私はでき得べくんばと申し上げるけれども、少くとも私ども最高立法機関の一人だということになりますと、あなた方がさような場合にどういうものを収容するとか、どういうものはまず収容せずにおいてよろしいとか、あるいは永久に許可をするとか、こういうようなことを私どもはつきり知つておりませんと、もしそういう人たちが私どもに陳情に参りましたりなんかしましたときに、われわれが今申し上げたような気持の上でそれをどうするということはできません。従つてその場合に、私どももこれならできるとか、これならやつてやれないとか、最初からそこをはつきりして受付けるべきだというような感じを深く持ちますから、でき得れば私どもには——まず私どもを尊重してくださいといばるわけではありませんが、そういう意味ででも、御当局はどういうことでそれをやつておられるかというのは、抽象的じやなしに、はつきり具体的にお示し願いたい。こういうことで申し上げたのですから、局長が新しくておわかりにならぬというとはなはだ失礼な話ですけれども、先ほどのごあいさつのこともございましたので、たとえば担当の課長の方からでもけつこうでございますし、もし局長がその程度はと思われるなら、率直に御答弁を願いたい。
  8. 内田藤雄

    内田説明員 私でまだ不十分でございましたならば、長くそういう関係に携わつておられます中村警備課長にでもあと補充していただくことにしまして、今までほとんど傍聴的な立場ではございましたが、議論を通じて私自身が大体こうなんだなと感じておりますことを御紹介申し上げます。  はなはだ素朴な常識論から始めまして恐縮でございますが、一応今の日本といたしまして、人口問題とかいろいろな考慮から、外国人を移住させることを歓迎すべき立場にはいないということが、ごく平凡な常識として一つございます。それから御承知のごとく国際間における入国等につきましては、国際的にイスタブリツシユされた旅券並びに査証の供与というような制度が国際的に確立されておりますことは御承知通りであります。従いまして、原則としてはそういう成規手続によつたものでなければ、入国はお断りしたいというのが大原則であると存じます。しかしながらここで当然考えなければなりませんことは、朝鮮とか台湾というのは従来日本の領土であつたし、朝鮮人台湾人というのは日本人として日本に長く居住しておつた、しかもその際に、日本に居住するに至つた理由等が、日本自体がむしろ責任を負わなければならない場合も多々あることは、われわれも十分承知しております。従いましてこれらを国際関係の変化に伴いまして、ただちにほかの外国人と同等に取扱うというようなことはとうていなし得べきことではないと考えております。従いまして長く日本に居留しておる者に対しては、その事実を十分われわれは尊重しなければならない。これはやはり国際的な角度からそうあるべきだと思いますし、また人道的に考えましても当然のことだと考えております。ただ先ほどお話の出ましたように、新しいそういつた人との連関なしに行われました不法入国者というものは、やはり先ほどの原則にもどるようなかつこうで、できれば帰つてもらいたいということになるわけでございます。但しその場合に、しからば不法入国した者であるならば、ことに、新しく不法入国した者ならば、全部を全部返すか、こうまた反対の御質問を受けますと、不法入国者であつても、その後の閲歴が非常に長くて、これを何年で切るかとかなんとかいうことはちよつと申し上げにくいのでございますが、ともかくこちらに生活の根拠があつて、たとえば日本の婦人と結婚して子供ができておるとか、その辺の考慮すべき要素はいろいろあると存じますが、とにかく生活本拠がこつちに移つてしまつておる。これをいまさら妻子と切り離して本人だけを帰すということは、とにかく人道上忍びないという場合には、またそつちの方考慮からこれの在留を許しておるという例もあると思います。  そこでなるべく具体的に御説明申し上げたいのでございますが、まず返さなければいけないけれどもというネガテイヴ要素から始まつて、こういうポジテイヴ要素があるから残してやつてもいいのじやないか。ところがまた先に行つてどうかというとネガテイヴポジテイヴ両方が現われる。あるいはネガテイヴ要素が強いということでポジテイヴ要素が消されて行くというようなことになつてちよつと表面上の形態だけではあまり差異がないようでも、ある場合には許可になつたり、ある場合にはやはり帰つてもらおう、こういうことになるわけなんでございます。その間にわれわれとしまして、ことにこれは当然のことでございますが、いわゆる不公平なことのないように、えこひいきのないようにわれわれとしては非常に注意いたしておるつもりでございまして、責任はもちろん私がとるわけでございますが、たまたまこれは人情としましてやむを得ないのでございますが、話を聞きますとやはり情か移るわけでごごいまして、これは気の毒だと思うことが多いのであります。たまたま私が話を聞いて気の毒だと思つたために在留許可するということになつては、ほかの方にはなはだ申訳ないことでございますから、私が話を聞きました場合でも、必ず全課長会議によつて、なるべく客観的な意見に従いまして処理して参つておるわけでございます。それであとから順次補充の御説明で、もつと具体化していただけるかと思いますが、実際の実情を申し上げますと、確かに非常なボーダー・ラインのケースで、これはどつちにするかという頭をひねるケースもないではございませんが、私から先ほど申しました、置いてやつてもいい、やはりこれは帰さなければいけないという要素の組合せは、自然に各人の頭にできて参つておりまして、確かに非常に困るケースもないではございませんが、大体はそういう基準で、全会一致とは申しかねますが、大体これは帰さなければいけないな、これは許可していいなということはほぼ一致して行われておるというのが実情でございます。あとちよつと中村課長から補充説明をしていただくことがあつたら……。
  9. 中村正夫

    中村説明員 補充ではございませんが、ちようど在留許可基準という問題は、刑事事件におきまして検事の起訴の基準それから裁判官の執行猶予基準、これがどこにあるかというのとまたつく同じやないかと思うのです。というのはいろいろの要素考慮いたしますので、抽象的に申し上げれば本人性格、年齢とか、日本における在日経歴、学歴、資産状況というようなものを考慮いたしますので、それをそれではどの程度に見るかと申し上げると、言葉では表わせないのでございますが、大体そういうような年が若いかまたは逆に非常に老人であるかどうか。つまりまた帰しても向う生活ができるかできないかというような点、それから性格につきましても、これがまじめな人であるかどうか。健康状況につきましても病弱であるかどうであるか。あるいは在日経歴の長い点、かつて日本にいたことがある人であるかどうか。あるいは日本にその人の家族、親なり子供、妻、夫がいるかいないか。ある意味ではむしろその人たち生活本拠日本にあるのかないのかというような、あらゆる要素をかみ合せまして、先ほど局長が申し上げました通り、まず原則論としては帰つてもらうのであるけれども、こういう情状のある場合には、ということになるのではないか。従いまして、その許可基準を示せとおつしやられましても、言葉はちよつと申上げかねる点がございまして、これは決して不誠意で申し上げておるのではございませんで、申し上げる表わし方がないと言わなければならないと思います。そしてここに基準1、2、3、4、というような許可緩和基準というものがございますが、もちろんこれらの要素も考えているわけでございます。今申上げたようなそれ以外の要素ももちろん入つておるわけであります。私どもとしてはこういうのを表面に出しておる場合に、この前も宮下次長が申し上げたかと思いますが、こういう点はむしろ正規の面で考慮すべきものではないか、かように考えておるわけであります。
  10. 辻文雄

    ○辻(文)委員 中村課長から大分詳しくお話がありましたので、少し見当がついて参りました。そこでちよつと中村課長にお尋ねいたしますが、大村収容所お互いにあそこへ行つて見て参りましたけれども、大体現実はわかつておりますが、韓国人とか中国人とかみんな合せてどれくらい収容されておりますか。
  11. 中村正夫

    中村説明員 現在中国人が百六十五名くらいでございます。韓国人が七百六十四、五名でございます。
  12. 辻文雄

    ○辻(文)委員 そうすると、まだ千人には達していないわけでございますね。大体あそこは約千人くらいの収容力があると思います。しかし今お話を伺つていることからよく考えますと、私の知り得た知識と合致さして、その程度でならばもつと収容しなければならぬという結論になりはせぬかと私は思う。たとえばわれわれが知らぬ範囲でももつと収容しなければならぬというようなことになるのじやないか、もしそう仮定いたしますれば、これはおそらく千人の収容力のあるところではちよつとむずかしい。そういう場合には、横浜なんかも、皆さんのお立場からでも今あるところではだめだと思うところがありますので、あとちよつと申し上げたいと思いますが、大村だけを考えましても、あそこは非常に重要で、大きくて完備しておりまして、一番いい収容所だと私は見せていただいた範囲では思いますが、今申し上げるようなことになると、もし万一収容し得ない場合はどういう処置にお出になるか、これは局長の方に伺つた方がいいと思います。
  13. 内田藤雄

    内田説明員 実はその問題はわれわれ自身が現在頭を悩ましておる問題でございます。それで先ほどの基準の問題と関連いたすのですが、実はわれわれができれば帰したいと思いましても、そういつた事情のために、日韓間の交渉の開けるのを期待しつつ、やむを得ず一年の期限付と申しますか、条件付在留を認めているような例は決して少くございません。しかしながら、同時にわれわれといたしましては、いろいろ予算上の問題などもございますが、今御承知のように韓国側ではいろいろな理由を申しておりますが、結局のところ引取らないという建前に立つておるものでございますから、端的に申し上げれば、現状が続く限りたまる一方ということになるわけでございます。そこで今申しましたように、日韓間の交渉の打開を期待しつつ、しかしながらそれが開けない場合に対する処置も相当考えております。これは今まだ準備中でございますが、浜松の刑務所の未決の分でしたか、何か一画割合に離れて別棟になつているのがあるのだそうでございまして、それを臨時に収容所にいたそうと思いまして、しかしそれには多少いろいろ準備がございますので、万一ある程度詰まる状態が起つても処して行けるような準備を現在いたしております。
  14. 辻文雄

    ○辻(文)委員 今浜松お話が出て、私もそれは仄聞いたしておりますけれども、その場合に、大村御存じ通り娯楽場まで設けて、日本政府があんな金を使つて、一人に約一万幾らくらいは最小限度かかるのです。それにああぶらぶらさしておつてはいかぬからということで、私は調べるときに、花村委員長にもおいでいただいたのですが、何かむしろなんかをやつているということですから、これをもつと械機でも購入してやらしたらどうか、そうすれば中でがちやがちや言わないで、仕事をさした上にいくらかそれでまぎれて、金もとれるのじやないかということを言つたくらいです。しかし浜松はやはり普通の刑罰、いわゆる法を犯した人たちを入れるというようなところと私どもは考えなければならぬ。その場合に、さつき申し上げるように外国との問題で密入国の悪いことはわかつているのです。あなたがおつしやる通り、われわれもわかつておる。しかし密入国するについては、私が現実に知つておる本人たちから聞いたところでも、率直に申し上げれば、元戦時中に日本に加勢しておつた。それにその家族とか何かの因縁があるのです。私が知つた範囲でですよ。全部ではございません。その場合に、どうも自分たちは悪いことをしているというようなことも心から考えておらぬような面があるのです。そういう場合に、もし国交が回復したというようなときも、そういうところへ入れたじやないか、かりにある程度の設備をされるとしても、そういう印象を受けて、国交回復した場合でも、あるいはせぬ場合も、何かの場合に、向うにわれわれは虐待されているのだというようなことを言つた場合は、私はどうもこれは非常に考えなければならぬ問題だと考えるのです。  そこで私がお願いしたいと思うのは、むろん向う受入れ態勢がその後どんなことになつておるかということはお尋ねしなければならぬけれども、これは略すといたしまして、できていればできているとあとでおつしやつていただけばよろしゆうございますが、現実に私が知つておる範囲では、韓国はすでにあの通り、ところが中国にしても台湾本土にしても、それでは受取りましようということを言わぬですね。それで皆さんのお手数ばかりかけてはいかぬ実情もございましたので、私いろいろ苦労して、みずからそういう知つた人とか、あるいは交友のある人とか、あるいは交友のある人を通じて、何とか帰つた場合の受入れをうまくやつてもらえぬとか、そして帰ることを承知してもらえぬかというようなことも個人的にも動いてみたのですが、なかなかそう行きません。本人が、帰つたらおれは何をされるか知れぬということをこわがるばかりでなく、向うさんの政府自体が、中国でも台湾政府でも、ごく特殊じやないとそれをまだ受入れようとしないのですが、御当局ではその後そういう受入れ態勢がでぎているかどうか、これを承りたいと思います。そしてまたお話を申し上げたいと思います。
  15. 中村正夫

    中村説明員 中国関係を申し上げますと、台湾政府の方は、本人自費出国をしたいという者につきましては、領事館を通じて入国許可手続をいたしまして、大体一箇月ないし二箇月で入国許可が参ります。これによつて帰つておるようでございます。  それから韓国との関係につきましては、現在御承知のように先方としては密入国者は受取らぬとは申しておりません。十分に調査するという理由で受取つておらない状況でございます。これもまた自分が帰りたいという者については、手続を進めているような次第でございます。現在はさような状況になつております。  中共関係につきましては、これは外交交渉がございませんので、私どもとしてのものではございませんで、本人が何らかの手段によつて許可をとれば、私どもとしてはいいんではないか、ただ行く船、出て行く方法等に入管以外の問題もございますので、具体化していない状況でございますが、実例としては、前回の引揚げの際に、引揚げと同時に自費出国という形で十六名と記憶しておりますが、帰つております。  それから香港関係につきましても、香港家族がある場合には、向うから入国許可参つて帰つた実例もございます。詳しい数字は覚えておりませんが、大体台湾帰つた方が約六十名、香港に帰られた方が、数字は覚えておりませんが、十名前後と思つております。
  16. 辻文雄

    ○辻(文)委員 大体わかりましたけれども、今申し上げるように、香港なんかから来ております者に対しても、個人的に帰るということをやりますには、非常に至難に思われる点が多かつた。こういうことで苦労いたしております。そうするとさつき申し上げるように、だんだんこれが多くなる場合に、今申し上げるように、いつ帰すか、いつ帰れるようになるかわからぬ。いつまでも収容しておかなければならぬから、だんだんふえて来る。こういうことで、私は、日本の世論の上からいつてもそうなんですが、どう取扱うかという一つ原則がなければならないと思う。その場合に、局長あるいは中村課長から御説明願つたように、そういう審判の仕方の問題になると思う。その間帰つていいと思う者は何らかの保証をして出す。こういう結論になると思います。従つて韓国人とか中国人台湾人などの国籍による審判の体制というものも、必然的にお考え願わなければならぬと思うのです。そういう意味の御考慮の点がどういうところにあるか、お伺いしたいと思います。
  17. 内田藤雄

    内田説明員 先ほど申しました通り、この点はわれわれも非常に頭を悩ましておる問題でございまして、その問題が非常にはつきり行き詰まる状態になりますれば、確かに何かの考慮を加えざるを得ないかと思つております。ただ今日まだはつきり申し上げる段階ではございませんが、日韓間の交渉全般の問題と離れまして、ただいま中村課長からも申し上げましたように、向うも、不法入国者原則としては受取ると申しておるわけでございますが、ただいろいろな口実を設けまして、それを引延ばしておる。その根本が、向うの申しますところによりますと、大村のいわゆる長期にわたる拘禁というようなことを申しておるわけなのでございますが、それで目下外務省の方ともいろいろ打合せもしておりますし、われわれの内部でも、それじやどういう基準でどういうものをするかというようなこと、またその場合に原則ははたしてどうするかというようなことにつきまして、目下研究しておりますので、あるいは近い将来に、向うとしてもある程度のめる——のめると申しますのは、向うの言うことを全部受入れるという意味では毛頭ございませんけれども向うの顔も立てるような何らかの方法が発見されまして、送還が順調に開始されるかもしれない——かもしれないというよりは、もう少し強い意味で、そういうふうになることを期待しておる兆候が現在のところ見えて来ております。それをやつてみましてなおかつだめである、どうにもこうにもスムースな送還というものが果し得ないという場合になりましたら、これはお説のようにわれわれとしても相当考え直さなければならぬと思つております。しかし現在のところは、まだそこまでは行つておりません。
  18. 辻文雄

    ○辻(文)委員 そこで少しつつ込まなければならぬような形になつて来るのですが、大体お二人の御答弁で了解を得ておるようでございますけれども、最後までそういう世話をしている私ども同志としては、考えられるのは、密入国者が、戦後の場合何かそこに一連の差別待遇が実情としてあるんじやないかと考えられたり、あるいは密入国者が波打際で現行犯としてつかまつたものと、親とかさつきいろいろお話のようなことがあつた場合に、確かにそうであつても、それがどうかされて、われわれが陳情を皆さんに申し上げた場合——こちらでも陳情申し上げるのは、個人的にも相当検討してからでなければ、責任がありますから、陳情申し上げないことにしておりますけれども、そんな場合に、当局は具体的なことがよくわからぬものだから、調べられるといつてもどこまでやられるか、きよう大体の趣旨はわかつたんですが、もう少し何とかなるんじやないかということが考えられるんです。この点今後の局長の心構えと申しますか、くどいようですが、お聞きいたしたいと存じます。そういうことになりますと、出入国管理令というものは現在のままでよろしいかということも考えられます。そういう場合に、この改正についてどう考えておられるか。もう一つ、これは私の調査と申しますか仄聞と申しますか、本日ははつきり申し上げられる段階でないからそれを申し上げることは遠慮いたしますけれども、そういう場合に同令の五十四条の三号にある法務大臣の特別許可という場合の基準はどんなものか、たとえば公安調査庁というようなものの支持、ないしはわれわれが保証して、これが日本のためになるんだということである場合は、公案調査庁がやることですから、どんな人間であるか、どんな考え方を持つているかということは申し上げるまでもない。そんなときに何の文句なしに在留を許したり、あるいは収容されたものを出所させたりするということはないのかということを伺いたい。局長がおわかりでなかつたら、他の担当課長の方でもいいですが、お教えいただきたいと思います。
  19. 内田藤雄

    内田説明員 前段の方だけ私からお答え申し上げます。この入管の改正問題は、私が引継ぎました事項にも研究課題として入つております。私も今後この問題と取組まなければならないと思つておりますが、はたして最近の機会に国会の方に提出いたすようになりますかどうか、まだ今日申し上げかねるわけであります。  それから公案調査庁との関係につきましては、ひとつ中村課長から御説明願います。
  20. 中村正夫

    中村説明員 密入国者在留許可につきましては、各種のところから証明等が出て参ることがございます。しかし私どもとしては、いずれも情状につきましては、十分に裏づけと申しますか、単にある人がこう言つたからこれは間違いないというようには考えておりません。はなはだ失礼な申出でございますが、公安調査庁であれ、警察であれあるいは議員の方でも、これはおれが保証するとおつしやつても、われわれとしては、もう一ぺんわれわれとして自信のある資料を得なければやつていません。ただ一応有力な者が、たとえば議員さんが保証しておられるなら間違いない、公安調査庁が間違いないと言うなら、その点は間違いないであろうということには見ているわけでございまして、無条件とかそういうことは一切申しません。
  21. 辻文雄

    ○辻(文)委員 それで大体私もわかりました。ここで申し上げておきたいのは、関連してどなたからか御質問があるかもしれないけれども、今後の国際関係意味から申しましても、日本経済の自立から申しましても、各多面的の総合的の観点から、むろん食糧のない今日でありますから、むやみに無制限に入つて来てもらうことは、阻止しなければならぬことは絶対阻止しなければならぬでしようし、絶対正規手続をふんで来たことは断れないことは当然なんです。今後密入国ということについては、十分警戒しなければならぬことは当然でありますけれども現実に来ている人たちに対して、局長あるいは課長あたりの御答弁のように、これは日本のためにも害毒にならぬ、むしろプラスになる面がある、しかも本人もこちらに住んでおりたいという者に対しては、十分御同情ある措置をお願いいたしたいと思います。  それから指紋の問題に移りますけれども、ここに一応資料をちようだいしておりますが、なお反対者があつたり何かするようなことも聞いておりますから、お伺いしたいと思います。これについて大体どういうように準備されておるかということを、ここにも書いてあるようでありますけれども、さらに教えていただければと思います。私ら市町村でありますと、摩擦があるとかないとかいうことが重点になりますから、お伺いいたします。
  22. 豊島中

    豊島説明員 指紋の問題は、登録法が昭和二十七年四月二十八日に公布されまして、二回延期されまして、結局三十年の四月二十八日までに定める日から実施するということになつております。われわれ事務当局といたしましては、法律にあります通り、四月二十八日までに実施しようということで準備を進めております。それにつきましては、今般の地方長官会議、知事会議に、法務大臣から、今度の切りかえの問題と並んで、来年の四月二十八日までに定める日に実施するということを表明しましたので、各地方府県の議会その他の会議におきましてもこれを支持することになつて、私どもその準備を進めております。これは府県を通じて、市町村の方にも伝わつております。ただ外部に出ておりますのは、三箇月ばかり前の市町村会議のときに、大臣の訓示の中にも切りかえ指紋のことを説明いたしまして、それが日本タイムスに指紋を実施するということで出ております。その前、数箇月前に、毎日新聞に指紋をとるという記事が出まして、毎日新聞で世論調査をしました結果、大体英文毎日を読んでいる方の側は外国人も大体それはやむを得ない、各国でもやつていることであるということになつております。ただ全般的に見まして、市町村の窓口の困難なことは、私らも十分想像しているわけでありまして、各方面から来る話も相当耳に入つております。そこでこの指紋ということは、大体登録法を公布したことによつて、十指指紋というのが普通でありまして、一指指紋でこの指紋制度を実施するという制度はあまりないのであります。しかし私ども市町村の窓口の困難と、一般の反対の多かつたことや、いろいろ研究しました結果、十指指紋が登録法上の偽造登録、虚偽登録あるいは二重登録その他を防止し得るという自信がついたのですが、各方面の困難を考えた結果、一指指紋ということで御承認を願つて、一年延期して実施するということにしたのであります。これをもう少し詳しく申しますと、従来十指指紋は、ゼロから九まで分類しまして、その番号で整理するのでありますが、一指指紋の場合は、私の今まで考えておりましたところでは、指紋をとる対象が四十万ばかりございますので、三百種類ばかりにわけまして、あとは姓名別その他の関係、年齢別の関係で一区切りができますので、登録法上の偽造登録、虚偽登録、二重登録その他を防止できると思います。指紋がどうしても必要だということは、この前の指紋の実施期間を一年延期するということでありましたが、結局三年以内と改正したときもいろいろ御説明しましたが、何と申しましても二重登録、虚偽登録されますと、現在の写真、その他年齢、姓名、男女別事で区別しただけでは、はつきりした個人差を出すことはどうしてもできませんので、最小限度一指紋で現在やりたいと考えております。ただ外部に対する宣伝というものは、先ほど申しました以上に積極的にやつておりません理由は、実はこの九月末ごろから始まります切りかえの問題がありますので、その切りかえの最中にさらに指紋ということを出すことは、非常に不得策であるというので、その切りかえの実施の山が見えましてから、あとで、十一月ごろから指紋ということを積極的に外部にも宣伝して、啓蒙しようと思つております。切りかえそのものについては、今度の切りかえは、一昨年の法律改正によりますと、三年間の登録証明書有効期間を縮めて二年とし、登録法が施行されてから六箇月以内に切りかえることとしたために、今大量に切りかえが実施されている最中に、切りかえに対する反対が相当あろうと予想されるところに指紋を実施することを特に宣伝することはいかがかと思つて控えておりますが、内部の事務といたしましては政令案も一応考え、予算もことしは何とか得たいということで考えております。ただお答えしたいことは、この政令案と省令案は私の管内で、局では見ていただいてありますけれども、ほんとうの案にすぎないのですから、そのつもりで……。その内容を申し上げますと、大体新規の登録につきましては一指指紋をとります。ただ引替交付と再交付でございますが、引替交付というのはあまりないのであります。これは登録証明書が汚損したり、あるいは破れたりした場合に引きかえをするので、それは非常に少いのです。現在登録証明書は非常にりつばにできておりますので、あまりないのでありますが、再交付というのが非常に問題なのであります。これは御承知かもしれませんが、再交付する場合は、紛失したとか盗難にかかつたとかというのでありますけれども、この盗難したのか紛失かということは全然わからないのでありまして、ただその間それをチエツクするために警察署に出頭して届け出たという証明をもらうということになつておりますので、これも届け出れば拒否するわけに行かない、調べるわけに行かないということになつておりますが、実情は一年間に再交付というのが一万五千くらいになつておるかと思いますが、それが非常に登録証明書の悪用される原因になつておるようであります。これは実例も出ておりますが、紛失したと称してこれを他人に譲渡し、自分は再交付を受けるということになりますと、多少私ども、いやがらせでもありますが、また交付を申請する方もこれについては反対もいたしませんので、再交付、引替交付は十指指紋、新規登録は一指指紋ということになります。  指紋の実施の時間についての点でございますが、ことしの三月二十八日から実施するとすれば、切りかえの問題と指紋の問題がぶつかりますが、三十年度から実施するとしますれば、一指指紋というのは新規登録あるいは大量切りかえにあたらない。二十七年の四月から新規に入国した人の切りかえというだけで済みますので、移動も非常に少いし、ぼつぼつ出て来ますので、それで既成事実として一年経過しまして、翌年の十月前後に大量切りかえになりますと、その間一年半の時をかせぎますので、時期としては、もし実施するとすれば三十年の七月からするのが、経費の面からいいましても一番適当な時期ではないか、こう思つております。
  23. 辻文雄

    ○辻(文)委員 よくわかりました。これは予算もないときですから、なるべく人間は少くしなければならぬということは原則ですけれども、もう少し親心を申すと、今のようなお話を承ると、これはできるだけ人間のする仕事ですから、どこからどこまで神様のようにやるというわけには行かぬのだけれども、理想に近く、これを完璧に近いようにやるという場合に、ここに人員配置のようなものを先ほどちようだいいたしましたが計四十一名の雇員、技官、事務官になつておりますが、それで最小限度におやりになれますか。
  24. 豊島中

    豊島説明員 これは三十年度の定員でありまして、三十年度にぼつぼつやる分には、これで十分だと思つております。
  25. 辻文雄

    ○辻(文)委員 大分長くなりましたけれども、実は去る七月の十日に当小委員会から、主として欧州人を収容する本邦唯一の収容所であるという横浜入国収容所を視察いたして参りましたが、あの収容所の建物は元キヤバレーの建物を買収したものだそうですね。その周囲の環境というものがはなはだおもしろくないのです。こういうようなことが考えられておりますと同時に、それは三階建で鉄筋コンークリートで六十坪あつて収容能力四十五名ということになつておりますが、はなはだ狭いということです。経理士からも、いずれの面から見ても、私どもからいわせれば適当とは言えないのです。先ほどからのいろいろなお答えの中から出しても、だんだんそういうことになるんじやないかという気がいたしますし、これは検討の上で、どうしてもそういう考える点が多いので、三十年度の予算において川崎市の埋立地に移転の予定をされておるそうでありまするけれども、これはどうしてもそういうふうにでもしてやらなければならぬと私ども思うのですが、大蔵省とどういう御交渉をなすつておるか、その過程をひとつお聞かせ願えればけつこうだと思います。
  26. 武野義治

    武野説明員 七月十日においでいただきまして逐一御視察をいただきまして、御同情ある御発言がありました。ありがたく存ずる次第でありますが、まずその川崎の土地につきましては、七月三十一日に法務省の経理部長から関東財務局長宛に国有財産の土地の無償所管がえにつきまして一万坪を申請したわけでございまして、これは現地の横浜の財務局も関東財務局長の方も非常に好意的に考えていただいております。特に川崎市が非常に川崎市独自の計画その他から相当難色を示しておりましたことも事実でございますが、私どもの前局長、次長、前三浦政務次官、また現地のわれわれの代表も川崎市長に累次お願いいたしまして交渉を進めて参りました結果、去る二十一日に三浦政務次官に対しまして川崎市長は、もしこの川崎市の土地に建てるというのならば、国際立場からりつぱな収容所を設置するならば反対はいたしません、こういう条件で、この川崎市長の異議もないものと考えております。土地もそのようにして一応具体的に考慮に入れることができるならば、今度は予算の問題でございますが、一兆円のわく、その他のことを考えまして、ぜひとも最小限度、この程度というものを私どもは算定いたしまして、法務省といたしましても、入管の建物として営繕関係において最優位に考えてもらうということにきまつております。その予算も、来年度、再来年度にわけまして、来年はいろいろの関係から百名を収容する、そして職員も大した増員の要求はしないというようなことで、建物の方の予算関係というものも法務省としては上まで御了解を得ておる状態でございます。来年度の予算要求といたしましては八千三百万円でございます。これは建物を建てる費用であります。若干維持費だとか、また初度調弁費というようなことはございますが、大した金額にはならないと思いますが、大体一億以下で来年度の予算として計上してあります。われわれの方といたしましては、御承知のようにあのキヤバレーの建物は、国際的にも、また入つている人たちにもはなはだ迷惑なわけでございまして、川崎にできるような場合には、たとえば国籍別とか言葉の別、あるいは風俗、習慣というようなことにも意を用いまして、できるだけはずかしくないものを考えたい、こう思つております。
  27. 辻文雄

    ○辻(文)委員 当然当局は今の御答弁のように御努力願つておると思いますが、各委員の皆様も十分これはおわかりだと思いますので、ぜひ協力して御努力願いたいと思います。ことに花村委員長にはぜひそういうことが急速に成りますように御努力くだされんことを切にお願い申し上げておきます。  実はこれで質問を打切りますけれども、はなはだ細部のことで恐縮ですが、これは私の体験の上からちよつと中村課長にお伺いしなければならぬと思うことは、大村収容所のごとき場合、あるいは警備課の課長というような人、そういうような人たちが、たとえば本省から何日に出してもよろしいというような指令が出た場合に、警備課の方で意見書をつけなければならぬとか、その他の理由で長期にわたれば一週間とか、早くても三日間、こういうものを警備課独自で、所長も向うにおるような場合に、出さないというようなことができるように、機構あるいは規則がなつておるかをちよつと伺いたいと思います。
  28. 中村正夫

    中村説明員 仮放免の権限は主任審査官にございます。従いまして、大村においては大村の所長が主任審査官になつておりますので、大村の所長が仮放免をいたすのであります。本省からのは一種のサゼスチヨンとでも申しますか、そういうような意味と、行政全般の監督という意味で仮放免がいいのではないかということを伝えるのでございまして、結局権限は主任審査官にございます。そういたしますと、その仮放免の手続には本人から仮放免の願い書を出させるとか、書面をつくる。それについては仮放免についての警備課の意見をつける。そしてそれによつて所長が仮放免を許可する。許可した場合に、またそれによつて身柄の出し入れ、領置品を出すとかいういろいろな手続がございますので、即時に出るというような場合もありましようし、二、三日遅れるということもあり得るのではないか。それはもちろん主任審査官が許可した以上、その日になるべく出すのが当然のことと思いますが、夜分にわたつたというような場合、むしろ翌日の朝の方がいいのじやないかという場合もございます。
  29. 辻文雄

    ○辻(文)委員 私もほぼそんなことと心得ておりますが、実情において、そういう場合に意見書というものがまだ今日もできない、明日もできないというようなことで、——私はこういう公開のときにまだ言う段階じやないと思いますけれども、一応やはり申上げておかなければならぬのは、そういう場合に、所長の意見と警備担当主任の上層の人との意見の相違というようなものが何らか生れるというような場合に、どうしても警備課の方でそういうようなことに不賛成というような、こういう大きなことがあつた場合に、そういうことができるかということです。今日はただ課長に御意見を伺つているのですから、あるいは私が今度帰りまして実情調査をして——もつとひどいことが私に昨晩電話がかかつて来た。というのは、入所者がすべてそういうことはわかつてつて、そこには何ら妙なことが起らぬはずなのに——但し今申し上げるのは速記をとつておりますから私ははつきり申し上げておきますけれども、ただそういうことが私に言われたということで、私が実際に調査しておりませんから、その点は前もつてお断り申し上げておきますが、ひどい話が私の耳に入つて来ておる。お前たちはそれでよろしいかというようなことを、むしろ警備課のある人が残つておる人に示唆をして、そうして何らかの姿で、騒動とまでは行かぬでしようけれども、不平を言わしてやるというようなことがあるかに昨晩私に電話がかかつて来た。だから考えてみると、そういうようなことだつたから、私はどこに隘路があるか、ただそれをここになぜ私が持ち出したかというのは、この前病人の場合があつて、そうしてこちらからは出してよろしいということを言つた。そのときにちようど私も在郷中でしたから、向うにおりました。ところが警備課の方でいろいろのことを言われて、ちようど二日あと——これは具体的に申し上げられますけれども、今日はちよつと言えません。帰つてからはつきりやろうと思つております。こういう場合のことが、帰りましてから私が調査をする参考にもなると思います。本省の課長が、むろんこれは局長の問題ですけれども、直接担当の課長であられるから、課長がどういうふうなお考えであるか聞いておれば、行き過ぎであれば、行き過ぎのところを私からも言えるだろうというような感じがいたしますので、私が言うのは、そういう妙なことをせずに、やはりきれいに、収容されている者でも、勧告でも何でも同じですけれども、われわれもでき得るだけ、さつきるる申し上げたようなことで、保証のでき、また間違いのない、これは人間のやることですから、朝から晩までついておりませんが、それについておる責任者にも十分責任を持たしておりますけれども、どんな万一の誤りがないとは申し上げられませんが、少くともわれわれが保証できるというような者であればまたお願いをするような場合があるかもしれない。けれども、その期間でも収容されている者が妙なことを言つたり、騒いだりせぬようにお願いをする。一方には私ども責任を持つて、ことに地元に近い者があれば心がけておらなければならぬと思います。そういう意味においてのお尋ねですから誤解のないように、ひとつ御意見をさらに伺わしておいていただけたらけつこうであります。
  30. 中村正夫

    中村説明員 病人等、仮放免する場合、大村の場合におきましては、一応本省に病人であるかどうかというような指揮と申しますか、それを求めて参りますのに、私どもはすぐよろしいというような返事はいたしておりません。それが仮放免しなければならないような病状ならばよろしい、こういうような条件付と申しますか、慎重に取扱つておる次第でございます。従いまして、かりに病人がございました場合に、まずお医者さんの意見が第一番だろうと思います。次には実際に取扱つておるところの警備官が、はたしてお医者さんの意見は収容に耐え得るか耐えないかということになれば、大部分があそこには病室もございますので、いわゆる耐える、耐えないというような点につきましてはむしろお医者さんの意見よりも実際にいろいろ取扱つている警備官の意見等も相当大きいのではないかと考える次第でございますが、それらの意見を参酌いたしまして所長が主任審査官の立場でおきめになる。従いまして警備官の意見とその監督者である所長の意見が対立するというようなことは考えられないわけでございまして、最後の決定権というものが主任審査官にございますので、ただそれまでに行くまでに部下としての意見を申し上げるという意味でございます。ですから対立ということはございませんで、下から補佐的な意味意見を申し上げるということでございますので、決定されるのに慎重に取扱われることはあり得たとしても、上と下が対立するというふうには私ども考えておりません。従いまして意見をつけるのにある程度、警備課としては警備課の幹部の人が集まつて相談する場合もあり得るのではないか。そういたしますと意見がその日につけられないということも、必ずしもこれはお前きようつけなかつたからけしかぬと私ども監督者の立場として言うわけに行きません。そういうようなことで一日か二日遅れる場合があつてもやむを得ないのではないか。それから手続上で先ほど申し落しましたが、必ず保証金がいるのでございます。この保証金の受入れ等、私、詳しい手続はよくわかりませんですが、日本銀行との関係もございますので、時間的な制約もあり得る、こういうことで遅れることもあると考えております。
  31. 辻文雄

    ○辻(文)委員 それは大体私も向うの話でわかつておりますが、今日はこれで打切りたいと思いますので、私の質問はこれで終らしていただきます。
  32. 内田藤雄

    内田説明員 補充的に説明させていただきたいと思います。ただいま伺いましたような、もし万一にもそこに不正のようなことがございましたら、もちろんわれわれの方も十分に調査いたしますが、御遠慮なしにお申出をいたきたいと思います。それから先ほどいろいろの御意見の中で、ちよつと私今までの経験から一言補充的に申さしていただきたいことがございます。実は私着任いたしましてからも大分いろいろなお申出をいただいて——これは議員さんの方に限りません、いただいておるのですが、御承知のようにわれわれの方の平続というものは、ある程度きまつてしまいますと、非常にやりにくくなりますので、これはここで皆様に申し上げましても、皆様自体のところに持つて来る時期が遅れてしまつてはしようがないわけでございますが、非常に時期を失しておるというか、時期が遅れておりますためにまつたく今まで予想しなかつた新たな事実ということがあれば格別でごいますけれどもちよつと動かしがたいというようなケースもないではございませんので、何だ同じようなケースなのにどうだということを伺いましても、もう少し早くそういうことを伺つておけばというようなこともないではございませんので、その点ひとつ御了承いただきたいと思うのです。  それからもう一つは、先ほど中村警備課長が申し上げましたことと多少関連いたすのでございますが、ごく抽象的に自分保証するという、もつと端的に申し上げますと、本人の書いております供述をそのままうのみにされているような保証だと、われわれの方でそのままいただきかねるということもございますので、何かポイントポイントに関してだけでもよろしゆうございますから、裁判上の証明とまでは行きませんでも、いわゆる疏明の程度でもよろしいのでございますが、たとえば在日期間がほんとうに長い、現に昭和二十何年にこれこれの会社に勤めているという書類があるじやないかというような、何か疏明資料といつたようなものをおつけいただけますと、大分われわれの方の扱い方もかわり得るのじやないかと思いますので、ちよつと補充いたしまして一言申し上げます。
  33. 辻文雄

    ○辻(文)委員 委員長ちよと速記をとめて……。
  34. 花村四郎

    花村委員長 ちよつと速記をとめてください。   〔速記中止〕   〔委員長退席佐瀬委員長代理着席〕
  35. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員長代理 速記を始めてください。
  36. 林信雄

    ○林(信)委員 外国人出入国に関する制度は終戦後特にクローズ・アツプされた問題だと思いますが、やや年月は経過したと存じますけれども、なお古い年月の間に練られた来た制度とは言い得ないと思うのであります。従いましていろいろな問題が問題として考えられ、すでに辻さんからいろいろ意見がありましたが、われわれといたしましていろいろの点があるのであります。特に外国人出入国に関する小委員会、すなわち本委員会のできました趣旨は、すでに辻委員より触れました問題があり、なお局長におかせられて当初において触れられた問題であり、最後にまた述べられた点である在留許可に関する問題なんです。この問題が特にこの法務委員会の関心を呼びまして、この小委員会ができたことは御承知のことだと思います。実は率直に申しまして、本日のこの小委員会の開催も、それらの点が重点として開くに至つておりますことも御了知願いたいと思うのです。この問題は非常にうるさい問題であるとは存じまするが、内政的にも、事外交面におきましてもきわめて重要な問題であると存じますので、過去における小委員会の審議の経過もこの点に次第に重点を置くことになつて参りました。さきに小委員会といたしまして中間報告を試みましたことは、これも国政審議に熱意と関心を持つておられまする当局とされましても御承知通りであります。さらにそれを機会といたしまして、先々月七月十四日開催いたしました小委員会におきましても全会一致在留許可緩和基準あるいは保証関係等について決議をいたしまして、ことにこの決議当局に対しまして善処方を強く要望申し上げる趣旨でありますので、その意味の要望を申し上げた次第であるのであります。しかしながらその経過についてまだ詳細に御存じのない局長はそれといたしましても、かような審議の経過あるいは要望等については何らかの形式で当局のお考えを進んで、かような委員会の開催をまつまでもなくお示しをいただければ、まことに気持のいい話であると思うのでありますが、遺憾ながらそのことはなかつたようであります。しかしながら本日いろいろと辻さんの質問の流れを聞いて参りますと、おおむねわれわれの企図いたしておりますような、こういうことは、言われるまでもなくすでに一つ基準として考えらるべきものであつて、すでにやつているのだ、言うまでもないことだ。こういうふうな御趣旨であつたように存じます。たとえば局長の御意見にありましたように、在来日本人であつた者の人国に際し、さらに永住を希望しておる者に対する処置方を十分配慮しなければならぬといつたようなお考え、あるいは中村警備課長のこれらの基準以外にも基準が考えられ、それは具体的事案に対しておのずから違つて来るけれども、大体はかようなことは当然のことであるというような趣旨に承つておりまするけれども、実は辻さんも触れましたように、実際問題になりますと、必ずしもそう行つておらない。これは事情があるのだ。こう言われるのであろうと存じまするけれども、今われわれが考えてもこういう基準が考えられます。その基準というものは、一応その他の事情を勘案いたします場合に、相当これは根本的な問題として重要視してもらわなければならないものを、よく言われます不法入国は波打際から帰すのだ、これは原則だ、ただ上つて来たからそこで審議しなければならぬから審議するようなものだが、いわばなるべくなら来たやつは全部帰してしまう。事情はくむとはいいながら、実際上くむことはないのだと考えておられるのじやないかというふうに伺えると、これが問題として実はこの小委員会も生れ、かように当局意見を伺つておる次第であるのであります。たとえば七月十四日の決議におきまして、終戦前に相当期間日本に居住しておる。戦争末期に強制疎開その他の事情によつて朝鮮あるいは台湾に、疎開その他の事情で帰つておりました者が、終戦後日本の旧居住に原状回復をしようとするような場合、これは局長の触れられた第一のものでありまして、これは問題ない程度のものが、そのケースだけでなかなか受入れられておらないという事情、あるいは箒二として掲げました現に日本に居住する夫婦、親子、兄弟、姉妹等近親関係の一方が他方を朝鮮台湾から呼び寄せた、呼び寄せたと言わなくとも米ましたものを受入れることを承諾したという場合も同断でありましようが、かようなものも、これを重要な事情、重要な条件として取つておられないのではないかという取扱いの結論をわれわれ委員はなまなましく見せつけられておるということなんだ。あるいはその述べました一、二の事情が競合しておるような場合ももちろん多いのであります。中村課長は、かようなことは常識基準的なものとして一応考えられる、当然だというふうにおつしやいますけれども、今言つたようなものは、あるいは後に申しまするものについては比較的重視しておられるかもしれませんが、たとえば四に示しておりまする日韓、日台、日中関係の事業に従事している者、及び技術、芸能、学問研究を志望している者で相当の実績を収めている場合というようなことで、特殊目的をもつておるもの等に対するもの等は実際上重要視されておらないのではないか、なかんずくこれらの基準の条件に関連いたしまして、本人の人格的なもの、善良な市民であつて生活能力も有し、国内における自然犯的な犯罪等を犯したこともない、ことに日本人の信ずべき、信用のある身元引受けのあるといつたような者も、これは実際においてどれだけの価値を認められて審査の結論を出されておるのか、率直に言つて、私は多数の委員諸君が疑いを持つておるということを申上げたいのです。歯に衣を着せていつまで行きましても、同じことですから、思うだけのことをぶちまけて言いますが、問題はそういうところにあると思うのです。たとえば相当期間日本に在住しておつた者が帰つて参りました事例、しかもその本人はある県の自動車の運転手として働き、若い者でありましたために、終戦末期において応召しまして戦地に向つた。当時の日本を守るべく、外敵のたまの盾になつて働いた男なんだ。たまたまそれがそのまますつと帰つて来ずに、部隊長が、お前はもう第三国人になつたから朝鮮にとどまれというので、たまたま朝鮮におつて、そのままいたという一事で、疎関どころの問題でなく、強制的に送り出された。日本のしこの御盾となつた男が帰つて来ても、これを帰つちやいけないと締め出している、御説明は当然のことのように考えられております。そのことが必ずしも受入れられておらないのであります。あるいはその他の事柄を書いておりましたものに証明が足るとか足らないとかいつたようなものがあつたかもしれませんが、根本の問題は、日本人であつた者が、やむを得ない事情で、しかも日本国家の要請に基いて日本を離れた者が、帰つて来るものを帰さないという、そういうことであつて、波打際から帰すのだつたら、これはもう出入国管理令はいらないものだと思う。そこに事情あるものは許さなければならぬ。許すという建前において、特に丁重に、司法制度ではないと存じまするけれども、一審、二審、三審というようなことで、異議の申立てがあれば調べる。それ以外にも特別の事情があれば法務大臣はこれを許すというような適当な手続がきめられ、適当な制度があるにかかわらず、かような根本的なものがはねられておる。あるいは子供朝鮮におつて母親が死んだので、父親を頼つて来た。ところがそれも帰す在留許可は許されない。一体そういう子供帰つてはたして生きて行けるのか行けないのか、行ける行けぬは別にして、人心の大道からながめまして、父親を慕つて来ました者、その父親はかわいい子供を手元において育てたい。一緒に暮したいという熱意は、国境を越えた問題でありまして、すぐにわかる問題であり、これらのことが七月十四日の決議として緩和基準の第二にあげておるのでありまするが、実際の問題についてそれが行われておらぬということになりますと、今お答えになりましたようなことと実際は食い違つておる。それは事案がいろいろだからと言われるかもしれませんが、この根本の問題以外にどういう事情があるならば、具体的の場合においてやむを得ずこれを不許可にしておられるのでありましようか。管理令にあげてありますようなたくさんの数がありますが、そういうものは私らの知つた範囲でないものについて特に不許可になつておるのでありまして、法律の欠格条項といつたようなもの以外に、何か入国管理局ではお考えになつておるところがあるのじやないかと思うのでありますが、あるならばそれをひとつぶちまけていただきたいと思うのです。それが納得すべきことであればわれわれも納得するのでありますけれども、どうも具体的な事例の結果をながめておりますと納得ができないのであります。まず私はこの点をお伺いしたいのであります。
  37. 内田藤雄

    内田説明員 先ほど私申しましたとき、ちよつとその点触れませんで申し落しましたが、まつたく同じような態様であつても、確かに帰す場合がございます。それは過去において少くともそうであつたのは、やはり波打際においてつかまつた、いわゆる現行犯的な場合でございますね。これは遺憾ながら非常に事情が気の毒でも帰すことに決定している例が相当多いと思います。と申しますのは、りくつはいろいろつけようがございますが、一旦入つてしまいまして、そこに親子あるいは夫婦の居住状態がある程度できてしまつておる。それを引裂くのはいかにも気の毒じやないかということで、片一方ではそれを許している場合があり、片一方ではほとんど実態は同じであつても、これは本人にとつてははなはだ気の毒な話でありますが、波打際で、ことに集団密航して来てその集団密航で一緒につかまつてしまつた、こういうような場合には、それが許されたということになりますと、そのケースそのものは別といたしまして、そういうことは非常に早く伝わるのだそうでございまして、密航というものを結果においてあたかも奨励するような結果になつてしまう、これをわれわれの方としては非常に恐れておるわけでございまして、現行犯でつかまりました場合には、非常に本人に気の毒な場合でも不許可にいたしておる例がございます。それからたとえば二の点でございますが、夫婦、親子、兄弟、姉妹等の問題は、人道的に考えまして確かに非常に考慮しなければならぬとわれわれも思つております。たとえて申し上げますならば、ある一人の男がまずおる。そのときにいろいろな事情からその本人はやむを得ない、一応こつちに居住することを認めてやろう、しかし細君や子供を呼ぶことは困るぜといつて念を押しておる場合が少くないのでございます。それでそれほど家族生活を一緒にしたいならば、あなたが帰つてもらいたい、奥さんや子供をこつちへ呼び寄せて家族生浩をすることは困る、こういうような意味合いで一人の男の居住を認めております場合には、遺憾ながらその細君なり子供なりが来た場合に、その在住を許可しないという場合が確かにございます。ここにあげられておりますことは、われわれとしては先ほどちよつと申しましたように一つポジテイヴな、在留許可してもよいじのやないかという理由にわれわれはすでに考慮しておると信じておりますが、またそのほかにそれを打消すような要素があつた場合に、それであつても不許可になつておるというような場合が確かにあると思いますし、現在のところはそれもやむを得ないではなかろうか、こう考えておるわけであります。
  38. 林信雄

    ○林(信)委員 繰返すようでありますが、七月十四日の決議は尊重されておりながら、それを打消すような事情のある場合というようなことであるのであります。それは一体どんな重要なことであるであろうか、それを伺いたいと思うのでありますが、一つはお述べになつた。波打際で、いわゆる現行犯的に捕えた者はこれは帰してしまはなければしようがない。しかしそれが波打際で発見せられずに、夫婦生活をし、親子生活をし、一つの既成事実になつておるときは情においてどうか、こう言われるのでありますが、これは議論でなくして、すぐだれも納得される問題であります。親子というものは、親子のできたときに起る情愛であります。決してそれが家の下におるから、おらないからの情愛ではないと思います。現行犯でつかまつたからといつて、親が何にも知らないうちなら、それは父母の血をくんでおります子供だけは残念に思つて帰るかもしれません。しかしすでに不法入国して来たということで親が知りますれば、相互にその情はすでに起つておる。いな実際面になりますと、子供のような場合、女房の場合でも、古くから在留いたしております者は一生懸命になつて事情を証明し、なすべき手続はなして行くのであります。これは時の経過によつては私は異なるのじないかと思うのであります。しかしそれが異なるというならこれもちよつとおかしくなるので、すぐわかつた者は悪いけれども——言葉の表現は悪いかもしれませんが、すぐわかつた者は悪いから帰してしまう、うまくのがれて既成事実ができたらこれはよい方になるのだ、これでは私は天下の大義というものは甄別できないのじやないか、こういうふうに思われます。これは局長さんが今言われるだけでなく、そういうことを今まで言われておつたということを私は伝え聞いておるのでありますけれども、これはどうかと思うのであります。  それからもう一つ申し添えますが、波打際で現行犯を発見して、既成事実の起らぬような者は帰すのだ、それならその制度に早く切りかえてしまえばこれははつきりする。ところがそれもなさらない。いな、そうすることは国家のためではない、あまりにも非人道的でありますので、今いろいろ事情を審査されて、許すべき者は許す、ここまではよいと思うのであります。でありまするから、実際問題としてそういう者が事情によつて今まで許されて来ておるのですが、この問題を簡単にそう言われてしまいますと、今までの事例を全部あげていただいて、どういう事情でいけなかつたのだ、どういう事情でよかつたのだと、こう言つていただかなければわれわれは納得できないのでありまして、現に今まで事情ある者は許されて来ておるのであります。現行犯で波打際でつかまつた者が必ずしも帰されてはいないのであります。それはよいと思うのであります。その取扱いの実際があまりにもほんとうの事実、真相に合致しておらないというところに問題があると思うのであります。しかしそれらの点についても、先刻来局長さんは親心というか、人情味から事実を証明するなら何らかその他の証明を加えろ、こういう御意見ごもつともであります。そういうものもずいぶんそろえて出しておりますが、幾らかの懸念を持たれる。それは人間ですから懸念を持たれることもいいのです。懸念を持たれるならば、その懸念を右であるか左であるか、白であるか黒であるかということをお確かめになるかと思えばそうじやない。ただ何となく信じられない、疑わしい、だからだめだ、こう扱われているんじやないかと私は思う。なるほど現地の管理事務所で一応の調査もなさり、照会すべきものは警察署等に照会された書類が来ておるでしようが、さて本庁まで参りまして最後の断が下されるときに、この点だけはもう一ぺん確かめてみたらという御親切がはたしてあつたでありましようか。絶無ではないかもしれませんが、不敏にして私は知りません。先刻のような御意見でございますならば、それだけのことを関係者に通じて調べて、ものははつきりして、許可、不許可をなさつたらいかがかと思うのであります。繰返しますが、局長さんの言われるように、波打際の現行犯は全部いかぬということではなくて、実際はやつてもらつているのですから、この気持を中心にやつておられて、いけないところはどこであるのか、もう少しはつきりした考えがありますならばお示しを願いたいと思います。私の想像しておりますような、どうも事実がちよつと疑わしいとか、やや信ぜられないとかいうことでおはねになることは、不親切じやないかと思われるのでありますが、実際上のお取扱いはどういうふうにお考えになつてつておられますか伺いたいと思います。
  39. 内田藤雄

    内田説明員 私は先ほど、波打際でつかまえた者は、原則として帰すのがわれわれの建前だということを申し上げましたので、確かにお説のように波打際でつかまつても許しているのがあると存じます。しからばお前の言つていることはうそじやないか、こういうことに一応なるのでございますが、その場合、波打際でつかまつて表面上まつたく同じようにお父さんを頼つて来ておるという例でありましても、その家族子供を帰したときの影響、その結果がどうであるかとか、あるいはその呼び寄せている本人状況とかいうことも確かに勘案しておると存じます。それで、先ほどから繰返し申し上げますように、一応はいけないけれども、またこれは何かよい方の要素がありはせぬかということで、それを比較考量いたしました結果、また認めてやろうというふうになつている場合も確かにあるのじやないかと私も存じますが、しからば具体的にお前はどういうときにそれはいかぬと言い、よいと言つておるのかということになりますと、先ほどから申し上げましたより以上に具体的にはちよつと申し上げかねるのでございますが、呼び寄せている親の方の事情、それから子供がかつて日本で育つた子供であつたかどうか、あるいは本国の韓国における家族、親族の状況、そういうことによつてその原則がまたくつがえされる場合もあるのではなかろうかと思います。
  40. 中村正夫

    中村説明員 二、三の考え方を補足させていただきたいと思います。たとえば疎開という問題でございますが、疎開あるいは帰国の時期、つまり終戦前に帰つたのか終戦後に帰つたのかということ、これはわれわれは調べられる限り調べております。と申しますのは、御承知と思いますが、帰国ということになりますと、終戦後に朝鮮人たち日本政府の引揚船で帰つてもらつた、何か帰国の手当も上げたというようなことがございますが、残念ながら当時の混乱のためにその名簿が正確になつていないので、これは帰国であるか疎開であるかという調査がなかなかむずかしいのでございまして、一応は本人の話とある程度の疏明でそれを知る、また、朝鮮の動乱関係がございますので、自分は母と帰つたが母が死んだと申し立てる、そういうのも、はたして母がなくなつたのかなくなつていないのか、実は私どもにはわからないのであります。これはいわゆる心証とでも申しましようか、これで定める以外にはないのでございますが、残念なことには私ども何回もそれでだまされていると言つては誤弊がございますけれども、死んだという母親が入つて来た例がございますし、夫が死んだということで片一方を許可すると、また今度は夫が入つて来る実例がございまして、必ずしも母親が死んだ、夫が死んだということも信用できない、残念ながらこれは心証できめざるを得ないのでありまして、心証が得られないということになればたとえば向うにいる父親が死んだ、母親が死んだということは考慮範囲に入れないということできめざるを得ないのじやないか。信じる信じないの問題は、疏明資料がない限りは何ともしようがない、ただ本人の申立て以外にはないわけでありますので、非常に困つた問題であります。たとえば、かつて手紙でも来ておつて、こちらの家族の人に、親類からその母親が死んだという通知があつたというようなことでもあればけつこうでございますが、そういう点でなかなかわかりにくいために、疏明資料のない者は、死んだのがほんとうらしいのになぜそういうふうに考えないのかとおつしやられても、私どもとしては考えられない場合もあり得るのじやないかと考えます。それからまた呼び寄せという問題になりますと、これは非常にブローカーが介在しております。ブローカーだけは何とか根絶やししたいと考えておりますが、ブローカーを通じてやつたのではないかと思われる者が、これはよいということになりますと、ますますブローカーを繁昌せしめる結果にもなると思います。これもわかる問題ではありませんので、心証で、どうもブローカーがいるらしいということになりますと、やはり悪い例になりがちなのでございます。また、一般論として申し上げますと、一の問題でございますが、終戦後、前にこちらにおつてその後に帰つて来た者はみなよいのじやないか、これだけさえあれば全部許したらどうかというお話でございますけれども、これ全部を許すということになれば、現在さようなケースの人が、数字はわかりませんが、おそらく万は越えるのではないかと思うのでございます。かような人たちが、正規手続日本に入りたいというパスポートで入国許可を申請したとしても入れてない現状でございますので、さような者は全部入れるのだ、一万なり二万なりの帰つた人たちは全部いいんだという結論が出れば別問題と思いますが、現に正規な面では、かような人は全部申請しても、先ほど局長が申し上げた通り、一緒になりたいのなら婦つたらどうかという線を維持しているわけでございます。こういう事情の人は、許可する条件に入るということは申し上げることができるとは思いますけれども、この一項の理由だけで許すというわけにはいかないのではないか。そのほかにいろいろと、先ほど申し上げた通り小さい子供だとか、あるいは日本にいる家族の人が相当資産も信用もある人だとか、さようないろいろな事情、つまりこの一項だけの理由でなくて、その他年齢とか健康状態等いろいろな条件を入れて初めて許可になるのではないか、その程度でなければ、今一項だけをすぐそのままのむことはむずかしいのではないか、かように考えているわけであります。
  41. 林信雄

    ○林(信)委員 もちろん私申し上げるまでもなく、入つて来ました者を区別することなくこの決議のような条件であればみんな入れなければならぬ、こういうふうに申し上げておるわけじやありません。それ以外の悪質な者はもちろん、これらの条件をバツク・ボーンとする者といたしましても、特に事情ある者、基本的なものには——基本とか基準とか条件とかいうものは考えられないといいますけれども、私から申し上げるまでもございませんが、執行猶予にしましたつて、条件はあるし、犯罪の情状酌量すべき者もいるわけなんです。起訴猶予にするのも、やはりこういつたものに準拠じた大体のものはあるわけです。実際の事案を取扱つて来られました皆さんの間では、すでにその経験率からいたしまして、ある挫度のものが生れて来ておると思う。しかし、それを存じないわれわれとしては、特に取上げて人情的に考えて、あまりかわいそうじやないか、常識から考えてあまり当然じやないかというものがはねられておるという点について疑問を持ちまするがゆえに、何かそのほかのものがあるのじやないか、こうお聞きしたくなつておるのであります。そこで伺いますが、母親が死んで、日本に父親がおるからといつて、幼い子供、あるいは非常な老人が、たよつて来た場合に、母親が生きておるかもわからない。これは、しいて懸念を持たなくたつて、特別にその事実を証明するものがなければ、だれも一応は疑う。そうすると、その証明がなければ、全然だめだということと同じになつてしまいますが、それでも人情上よろしゆうございますか。子供たちはおつかちやんが死んじやつた。風のたよりにおとつちやんがここにいるからといつて知らせてくれた者があるので、たよつてつて来たという。この死んだということは子供たちが言つたことを一応信じなければならない。死なないということの方が、むしろこれは疑うだけで根拠は何もないと思うのですが、それでも私はだまされるなら、一ぺんだまされてやるべきじやないか。もしもそれがだまされたのでなくて、ほんとうだつたらどうなるか。これは国内政治といいますか、日本の裁判面なんかで、間違つてだまされれ、九十九人の有罪の人を放つても、一人の無罪の人を罰してはいけないと言います。これは格言ですから、実際問題になると、そんなばかなことはないとは言えるかもしれませんが、これは考えなければならぬ問題だと思う。それを第六感か何かで、どうも怪しいというだけではねますと、だますのでなくて、真実の場合があつたとするならば——するならばでなくて、確かにある、その場合において、私は非常に非人情的になると思う。それは事実が証明された場合に許しておるということと比較いたしまして、あの場合は許し、この場合は許さなかつた——事実は同じであります。ただこつちがピンと来たか来ないかで、そうなるのでありますから、私は無理な場合ができると思う。むしろ、そういう場合に、どうしても許すことが困難であるならば、仮放免の制度であるとか、あるいは条件付許可をするという制度を新しくつくるとか、何とか考えてやらないと、あまりに簡単明瞭に右か左か、白か黒かをきめ過ぎると、私はどうかと思うのです。これは議論になるか、あるいは意見の違いかもしれません。御意思はわかりましたが、私はそう思います。  そこで具体的な場合ですが、先刻ちよつと触れましたが、ある若い者が兵隊に行つたということは証明されておる。また係官の方におきましてもお認めになつておる場合、終戦後やや日がたつてつた者は、許さるべきでありましようか。許されざるべきでありましようか。断つておきまするが、その他の悪い条件はないといたします。これは具体的事例でなく仮定でありすす。仮定的に、ある青年が日本において応召しまして、戦地に行つた。そうして終戦になつて、何かの事情によつて、ただちに日本に帰来しなかつた。しかし今日に至つて帰つてきたいという場合は、これは許さるべきでありましようか。許されざるべきでありましようか。
  42. 内田藤雄

    内田説明員 私はここで結論的に許されるか許されないかということを、ちよつと申し上げかねますが、ここに、ほかの不利な要素が、全然ないといたしますれば、本人にとつて許されるための非常にいい一条件であると考えます。
  43. 林信雄

    ○林(信)委員 もう一つつておきますが、先刻来問題になつておりますような母親の死亡の場合でありますが、かりにここに三人の子供が父親をたよつてつたといたします。そうした場合にその三人は、朝鮮ではもう生活ができないので父親をたよつて来たといたします。そういう場合に、その他の悪条件、たとえば父が非常に不信用である、あるいは資産がない、あるいは昔から日本にいた者でないというような特殊の悪い条件、いな常識的にも悪条件と思われるものがない場合は、これは許さるべきでありましようか。及びその三人の子供のうち一人が、波打際からいずれかへ行方不明になつたといたします。そういうことは、この二人の在留許可許可許可関係を持つ事柄でありましようか。そうでないのでありましようか。関係のある、なし、そういう仮定をいたしまして、そういう事実の場合をどういうふうになさるお考えでありましようか。
  44. 内田藤雄

    内田説明員 ただいまの御質問の例は、これも仮定で申し上げますならば、確かに許されるべきであるという結論の一条件であろうと存じます。おそらく、それと類似のケース——あるいはそのケースを指しておるのかどうか存じませんが、その類似のケースの場合は、たしか波打際で集団的につかまつたケースだと思います。一人確かに逃げ込んだのでございますが、船に同乗して来た者はほとんど全部一括してつかまつてしまつた。その中に今のような子供がおつて、その子供の兄弟が一人うまく逃げ込んだ。そのケースを指しておるのだといたしますれば、先ほど申し上げましたように、本人たちには、はなはだお気の毒でございますが、中村課長も申しましたように、集団密航で、いかにもそこにブローカーが介在してやつておるのじやなかろうかという推定が、非常に強く出ておつたんじやないかと思います。まそういう場合に、それの一部を認めまして、一部を帰すということは非常に困難でございますので、本人たちには非常にお気の毒でも、一括して認めないことにしようということになつたように、私記憶いたしておりますが、理由は多分そういうところにあつたと存じます。
  45. 林信雄

    ○林(信)委員 本日はあまり多くの待間を費さず大体われわれのの考えておることを当局においても了承賜わつたかと存じますから、あとは御迷惑でもプライヴエートな意見の交換でも願いたいと存じます。  私今までお尋ねしておつて、率直に申しまして局長さんのお考えは、私たちの考えとそう遠くないように存じます。さような点からもそう思いますが、そうでなくもたびたび申しますように、今まで少しから過ぎない、から過ぎるということでなくても、どうも親切なところまではまだ行つておらないと存じます。局長さんの来られましたこの機会にひとつ皆さんと御懇談を願いまして、当然のことでありますがよくお聞きくだすつて、ひとつ視切な手続にしていただきたい。辻さんも百いましたが、われわれ関係したからそれを信じろというような僣越な考えは全然持つておりません。ただこういうことなんだから、君これはどうだと言つていただけは、これはお互いにその関係の申請している者の利益でなくて、口幅つたいことですが、いなやをきめることに御協力申し上げたわけなんです。どうぞ十分その辺の御調査を願つて、もし私らと同感のところがありましたならば、十分その辺を強調願うよう希望申し上げまして、時間の関係もございますので本日は一応これで終ります。
  46. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員長代理 他に御質疑はございませんか——。なければ本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後一時十二分散会