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1954-05-28 第19回国会 衆議院 法務委員会 第64号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十八日(金曜日)     午後一時四十九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       花村 四郎君    山下 春江君       吉田  安君    猪俣 浩三君       神近 市子君    木原津與志君       木下  郁君    堤 ツルヨ君  委員外出席者         議     員 戸叶 里子君         参  考  人         (宗教家)   瀬川八十雄君         参  考  人         (作家)    平林たい子君         参  考  人         (横須賀環境浄         化連絡委員)  平田 義弘君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 五月二十八日  委員三木武夫君辞任につき、その補欠として山  下春江君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十七日  売春禁止法制定に関する請願(井出一太郎君紹  介)(第五一一六号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  売春等処罰法案堤ツルヨ君外十一名提出、衆  法第三四号)     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  本日は売春等処罰法案、すなわち堤ツルヨ君外十一名より提出にかかわる法案につきまして、各参考人より御意見を聴取することといたします。  本日出席予定参考人方々は、宗教家瀬川八十雄君、横須賀環境浄化連絡委員平田義弘君、作家平林たい子君の各位であります。参考人各位には、本日はまことに御多用中にもかかわらず、わざわざ御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  本法案は、いわゆる売春をした者及びその相手方となった者または周旋、勧誘、場所を供与した者等を健全なる性道徳を破壊する者または婦女子の基本的人権を無視する等の行為とし、これらを処罰せんとする法案でございまして、世間相当議論のあるところでございす。本日われわれは、各位からその御意見を伺いまして審議の上に参考にいたしたいと存じますから、各参考人におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見または御存じの実態について十分お述べをいただければ、まことに幸いでありまして、本委員会といたしましては幸甚に存ずる次第でございます。  それではこれより参考人各位からの御意見の御開陳を願いますが、委員よりの御質疑は、参考人の御意見開陳の後に一人々々について許したいと存じますから、さよう御了承を願います。  なお念のために参考人各位に申し上げておきますが、参考の御発言は大体二十分ぐらいの範囲といたしまして、御発言の最初に姓名、御職業をお述べいただきたいと存じます。なお委員各位よりは質疑ができますが、参考人よりは委員質疑ができないことになっておりますから、さよう御了承願います。それではまず瀬川八十雄君より御意見の御開陳を願います。瀬川君には、全般についてお述べを願うのでありますが、救世軍事業として収容施設を経営しておられると伺っておりますが、戦後の実情をひとつ説明していただければたいへんけっこうだと存じます。その際にどんな原因によって収容施設に入って来るか、またどんな理由によって収容施設をきらって逃げ出すかというような点についてもあわせて御説明を願いたいと思います。今回の法案には御承知のようにまだ更生施設の裏づけの案は出ておりませんので、大体罰則規定でありますが、このままでさしつかえないものであるかというような点についても、ひとつこれまでの御経験や御識見の上から忌憚のない御意見を述べていただきたいと思います。それでは瀬川君にお願いいたします。瀬川八十雄君。
  3. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 私は救世軍本営におり、かたがた救世軍婦人寮事業に従事しておりまする瀬川八十雄と申すものでございます。  救世軍だけのことを申し上げまして、はなはだ恐縮でございまするが、救世軍のいわゆる特殊婦人事業といたしましては、札幌に一箇所、東京に二箇所、大阪に一箇所と、その四箇所を当局の御委託によりまして経営の任に当らしていただいておるわけでございます。  始めましたのは多少の相違がございますけれども、大体昭和二十二年をもつて始めたのであります。もっとも救世軍は明治三十三年から当時の公娼制度のために奮闘いたしておったのであります。終戦後は特殊の婦人働きに従事することになって参ったのであります。私はこのたびの売春等処罰法案につきましては、これは一日も早くこの法案が成立いたしましてこれが実施される日の近からんことを心から願うてやまぬものでございます。  実際にそういう婦人たちを引取りましていろいろの経験またすのでございまするが、何としましても、この婦人たちがいたしております行為は、実に恥ずべきことであり、またこれは美に悪いことであり、それがいかなるほかの理由があり、また言訳ができたにいたしましても、これは実に悪いことであるというその反省をまず第一にしてもらうことが、何としても必要であるということを痛感してやまぬのであります。  収容されましたその理由につきましては、家庭の不和であるとか、生活苦でありますとか、誘惑でありますとか、好奇心でありますとか、いろいろの理由があるのでありまするけれども、しかし根本としてそれらの婦人たちが、この行為は悪いことであるということをまず知ってもらう、その反省が何としても必要であり、それが根本であるのであります。  それで多くの婦人たちがその筋の手によって検挙されるという場合に、ほとんど一様に申しますることは、私は運悪くつかまった、こういうふうに申すのでありまして、自分のやっておりますることのよろしくないということを責める前に、その運命、運を責めるということが先だつような状態でありまして、この点につきましては、収容の実際に当っておる者としましては、日夜反省の志を促すように努めておるのであって、その運がどうの、運命がどうのという前に、自分のやっておりましたことは、これは実に悪いことであるというその反省、これがまことに必要であるということを思うのであります。  そこでその反省をするというようなことにつきましては、どうもはなはだ乱暴な言い方かもしれませんけれども、ただ一応の道理を説くということもけっこうでありまするけれども、実際に自分が痛い目にあうということになって来れば、よけいにその反省の志を促すのに助けになるやに見受けるのであります。そこでここに罰則がいろいろ出ておるのでありまするが、これによりまして、なるほど自分にはこういうことのために多少でもしかられもすれば、つらい目にもあうということが、かわいそうではありまするが、反省を促す助けとなり、それがかえって将来の幸福の基になるということがあり得るだろうというふうに考える次第であります。また実際にその局に当つておる私どもにとりましては、どうもこれが自由だけの考えで相対ずくでは何としても力の足りぬことを覚えるのでありまして、われわれの言うおることは、ただ多少のおせつかいぐらいで言つておるのではなくて、これはもう真に日本の国家が、悪いということをこの通りこれこれに言うておるのであるからという立場から行かなければ、ほんとうに頭の中へしつかり打込むことができるかどうかということについては、ずいぶん苦労をして今日に至つておるような次第でありまして、その点だけから申しましても、どうぞこの法案の一日も早く通過されるように願うてやまぬのでございます。  それから収容されるに至りましたその理由ということでありますが、これはずいぶん複雑でありまして、先ほど申しました四つ五つばかりの理由も確かにそれであります。婦人たち学校教育は例外を除きましては、これはもうずいぶん低い方が多いようでありますし、また社会教育といえば、ずいぶん世間にもまれまして悪い手本も見ておるのでありますから、社会教育はむしろ悪い方が多いのであります。家庭教育もずいぶん申し分があるのでありますから、その点に行きますと実に気の毒な婦人たちでありまして、そういう婦人たちが何かの理由によりまして反省をするとか、あるいはまた検挙されるとかいうようなことによりましてわれわれに連絡があり、また私どもが出かけて行つて、これらを探しまして連れて来るというようなことになつておるのであります。理由と申しますと、ここに短かい時間で申し上げることはなかなか困難なことおりますが、ざつときわめて簡単に申せば先ほどのような理由になるわけであります。  またそのきらう理由ということでございましたが、これは残念ながらこれをきらう者が実際はずいぶんおるのであります。一つの理由としましては、現在日本全国に十七箇所の収容所があるのでありまして、いろいろの団体の方々当局の委託によつてこれを経営しておられるのであります。残念ながらその寮の存在、あるいはまたその内容ということになりますと、こういう婦人たちにまではつきりわかつているという程度にまでまだ行つていないようでありまして、この点私どもまことに自分らの働きの足りないことを申訳なく感じておるのでありますが、この点はもつともつと広く一般に宣伝をする必要があると思うのであります。また何分今まで何ともはずかしいああいう仕事に身をゆだねておつたものでありますから、従つて生活もじだらくになつてしまいまして、普遍一般のことがすなわちきゆうくつというふうに深く頭に入つておるようでありまして、内容のほどはあまりはつきり知らないうちにああいうきゆうくつなところへは行くことがいやであるというふうによく申すのであります。たとえば寮へ参りまして時間でもつけてその生活をする、何時に起きて何時に寝る、何時に昼飯を食べる、何時にどうするというふうに時間ぎめでやられることがそもそもきゆうくつであつて、すきなときに起きてすきなときに寝てすきなときに食べる、そもそも食事をするのにいや九時だの十二時だの六時だのと時間をきめて、時間に束縛されることすらがきゆうくつであるという、これは極端な例でありましようけれども、そういつたようなふうなことにされてしまつておるのであります。その点から行きますと、今までやつております生活は、もう昼飯だか朝飯だかわからぬものを食べて、そうして日のうちはパチンコをやるか映画を見るかして、そうして夕飯を食べてそれから街頭に出るといつたようなことになつておるものでありますから、ありふれたことすらもきゆうくつに覚えるというようなわけであります。中はそんなにきゆうくつでなく、ずいぶん自由にしてあると思いますけども、誤解もずいぶんあるようであります。それでたとえば警察署におかれまして検挙された者をお調べになる、私そこに始終出かけて参りましてその御様子を拝見いたしまして、まことに御苦労なことであるというふうに感ずるのであります。そこで誓約書を書かして、これを釈放して身柄引受人に渡そうという場合に、いつそ寮に入つたらどうかと言えばいやということになつてしまう。いやだと言えま当局こおかれましても無理にやるわけには行かぬ。そこかどうも私は歯がゆいところでありまして、もつと厳格なところがあればよほど婦人助けるのに都合がよかろうと思うのでありますけれども、一言いやだと言えば、どんなに利益が目の前に横たわつてつてもこれをどうすることができないという、まことに私どもとしてはもう涙の出るほど歯がゆい経験をするような次第であります。私ども十七箇所のそれぞれの収容施設を引受けさせてもらつております者は、苦労ならどんな苦労でもする、しかし上げたこぶしをおろしようがない、てこの置きどころもないような働きであり、どんな苦労でもどんなことでもする、命の捨てどころはここだというふうに考えておりますけれども、悲しいかなこの法律がないものでありますから、歯ぎしりかんで多くの婦人たちを救いそこねるということを、目のあたり残念ながら見過しに見殺しにせざるを得ないというような情ない状態になつておるのであります。その他ボスがおつてじやまする者もおるようでありますし、理由としてはそういうふうなこまかいことを申し上げればきりのないほどたくさんあると思うのであります。  私はこういう婦人たちを救うには骨の折れることではありますけれども、考えてみればこういうふうな学校教育を受けて、こういうふうな家庭教育を受け、社会教育を受けたこの婦人たちがこういうところに沈滞しておる、私がもしその境遇におつたとすれば、そういうところへ必ず落ちないでおるに違いないといえるかどうかということになつて来れば、はなはだ心もとなく思うのであります。そうしてこの婦人たちに会えば、もう家庭を相手にしない、世間は白い目でもつて見る、またからだは虫ばまれておるということになつて来れば、将来の望みを失つてしまつておるのであつて、若い婦人が将来の望みを失つておるほどかわいそうなものはない。私ども働きとしては結核療養所をやつておりますが、これはいずれ全快しましたら捲土重来でやろうと考えておる。不良児施設もやつておりますが、今に勉強して優等生になつて、それで電気の技師になろう、何になろうということを考えておる子供がおる。いずれも望みがありますから現在の不自由に耐えておるのでありますけれども法律のないがためにみすみす見殺しにしてそういう見込みのない人間をつくり、これを男がもてあそんでおるというに至つては、これを坐視しているというわけにはとうてい行かないのでありまして、これは何としてもやらなければならぬのであります。どうか一刀両断、この法律が不完全であろうと何であろうとともかく一刻も早く通過させる。明治維新のときにはずいぶん困難もたくさんあつたでありましようし、侍もずいぶん失業したでありましようけれども、しかしながら断固としてやつたのでありますから、これはやりたいものであります。  新憲法におきまして日本戦争を放棄したのでありますが、ついでのことに日本売春を放棄したということを世界に発表すれば、どんなにりつぱな日本がここにでき上つて来て、三百年来公娼制度があつたということで外国からかれこれ非難されて恥をかかなければならぬというようなことも救われるに違いないと私は思うのであります。  長いこと時間をとりましてまことに恐縮でありましたが、ざつと今自分の胸に浮ぶところを申し上げれば大体こういうようなことでありまして、くれぐれも諸君の御好意によりまして、この法律が不完全であろうが何であろうが、ともかくも通すということをやつていただきたいものと、血をもつて、涙をもつてこれを心からお願いしてやまぬ次第であります。
  4. 小林錡

    小林委員長 それでは次に作家平林たい子さんにお願いいたします。平林さんには、もとより一般の御意見を伺うのでありますが、家庭の主婦として、また作家として、戦後の売春問題をどのように考えておられますか、その点を特にお聞きいたし、また政府売春対策協議会委員になつておられるように聞いておりますが、おさしつかえない範囲内においてこの協議会の経過、様子等についてもお述べくださればけつこうだと思います。どうぞお願いいたします。
  5. 平林たい子

    平林参考人 私はただいま御紹介にあずかりましたように、内閣売春問題対策協議会委員の一人でございます。きようはここに立ちまして、委員として個人の意見を申し上げることにいたします。  御承知のように、売春問題対策協議会はことしの二月に発足いたしましたけれども、遅々として協議が進まず、今日に至りましてもまだ、こういうことを禁止することについての法案をつくるということはきまりまして、条文の基礎となるべき思想についてはだんだん意見の一致を見て来たのでございますが、まだいつ法案ができるかという見通しはないのでございます。しかし考えてみますと、こういうふうに長くかかつて考えてみたところで、でき上つた法案というものはただいまここにかかつております法案と大して違わないのができるだろうということは当然なんでございまして、問題は深刻でありますけれども、三月から今まで長くかかつて考えなければならないというような、そういう問題ではないと思うのでございまして、この内閣協議会はいささか引延ばし戦術にかかつたのではないかと思つているのでございます。こういうときに婦人代議士方からこういう法案提出されたということは非常にうれしいことでございまして、私は自分のできるだけの力をもつてこの法案を支持したいと思うのでございます。  しいてこの法案について感想を言いますと、ただいま初めて法案を拝見したのでございますが、第七条のいわゆる業者を罰する罰の量はあまりに軽過ぎると私は思つております。懲役五年あるいは罰金二十万円というのは、現在の業者経済状態から申しますと、二十万円払つてこういう商売ができるならうまいものだというわけでございますし、懲役五年というのも、自分の子分みたいな人を身がわりに立てて、その人を監獄に入れ、二年も入つていれば何んとかかんとかごまかして出て来られるというような因果を含めてやれるというような裏道がたくさんあるのでございまして、二十万円に五年という罰は少し軽過ぎるのではないかと思つております。しかしそのほか業者に金融した人を罰するということはなかなかいい思いつきでございまして、私どもも考えなかつたことなのでございます。私はこの法案について、実は業者に会いまして業者意見、あるいは某代議士業者と、何といいますか非常に心を通じております人の意見を附いたのでございますが、この案で主犯であるはずの売春者周旋をした者の罰の量が同じだということは不当だ、そんなばかな話はない、幇助者主犯とが同じだ、そんなばかな話はないというようなことを言つておりましたけれども、これはそう言つている方がずいぶんばかなことだと思うのでございます。きつと婦人代議士の方も私と同じ意見だと思うのでございますけれども、現在においては売春というのはひとつの企業でございまして、売春した女の人ももちろんその中に含まれておりますけれども、今日のこの目に余る繁栄を来したもとは、小は部屋を貸してお金をとるところの人から、大は大廈高楼を建ててたくさんの女をそこに住まわせてたくさんの客を吸収するという業者に至るまで、多かれ少かれひとつの企業の性質を持つているのであります。われわれが罰しなければならないのはこの企業でございまして、むしろその中に働かされている哀れな売春婦犯罪の場合でいえば、主犯というよりも、教唆あるいは何かの脅迫などによつてその犯罪を実行させられた下手人というような、私は法律のことを知らないのでおかしい言葉かもしれませんが、そういうふうなものでありまして、この犯罪の場合に売春婦主犯であるというような考え方自体が私はおかしいと思うのでございます。  それからこの売春禁止法売春は決してなくならぬという説が新聞などに盛んに横行しておるのでございますが、それならば私は聞いてみたいのでございます。どろぼうをとめてある法律はたくさんありますけれども、どろぼうはなくならぬ、どろぼうがなくならないなら、どろぼうをとめる法律意味ないからやめろと言う人があるでしようか。これと同じでありまして、売春はもちろんこの法律だけで全部なくなるとはだれも思つておりません。しかしともかくも売春を認めないということは売春をなくする第一歩でございまして、認めないという建前を立てずになくならぬと言つているのはおかしな話であります。私は一昨年フランスに参りまして、売春の本場といわれるフランスに案外売春婦が少いので不思議に思いまして開きましたところが、戦争中にフランスでは非常な取締りがあつた。その取締りの仕方は、売春婦がすわつているカフェーを罰する、あるいは売春婦が立ち入つた宿屋を罰するというようなことで、ある程度に売春婦は少くなつて行く。もちろん瀬川さんもおつしやいましたが、社会売春婦更生あるいは転落防止を一緒に考えなければ売春はなくならぬという説は、もちろんその通りでございまして、もちろんこの法律のほかにそういう法律が出ることは望ましいし、あとからそういう法律が出ることになろうと思うのでありますけれども、とにかく売春を認めないという建前を立てることによつて、ある程度売春婦がなくなるということを私は信じておるのでございます。  それからめかけオンリーをこの中に包含しなければ意味ないという説もあるのでございます。もちろんめかけオンリー売春婦なのでございます。しかし御承知のように、今のこの法律でさえ、新聞なんかで見ますと非常に抵抗が大きいのでございまして、はたして通るか通らないか、外から見ておりましても非常に心配なのでございます。この上にめかけオンリーが包含されていましたら、めかけを持つている男の方はもちろんのこと、そのおめかけももちろんのこと、その他そういうものをよしとしている人までがこの抵抗の方にまわりまして、おそらくこの法案は非常に大きな抵抗を受けて通らなくなつてしまうだろうと思うのでございます。そこでもちろんめかけオンリーは、皆さんもお認めなさらないに違いないのですけれども、一応この法案の中からそういうものをのけたということは、非常に賢明なことなんでございまして、いずれこの法案通りますと、めかけオンリーを罰する次の法律を用意しなくても、そういう社会通念が行き渡れば、そういうものを罰しなくてもだんだん少くなるという世の中になつて行くであろうと思うのでございます。  それから売春の相子方を罰するということについて、これもなかなか議論のあるところで、あるいは修正されるのではないかと心肥しているのでございますけれども、御承知のように日本の男性の間には売春婦を買うというようなことについて、何でもない日常茶飯事のように考えている思想が昔からあるのでございまして、これは悪いことだということを教えるためにも相手方を罰する。それはもちろん売る者があるから買う者があるのでありまして、売つた人と同じに罰しろとは申しませんけれども、とにかく売春婦を買うということもよくないことだと教えるためにある種の罰則は必要であろうと思うのでございます。それに外国では、日本売春を憎む思想がないかのように言つている人があるのでございまして、外国の軍人さんにも日本には売春を憎む思想もあり法律もあるのだということを一度は見せてあげたいと私は願つておるのでございます。  以上のような理由によりまして、私はこの法案が一日も早く成立することを願つているのでございます。
  6. 小林錡

    小林委員長 それでは次に横須賀環境浄化連絡委員平田義弘君にお願いいたします。平田君には軍事基地売春関係について大分御調査になつておられると承つておりますので、横須賀を中心として、関東地区その他においても、そういう方面の実態その他についての御意見を伺いたいと思います。
  7. 平田義弘

    平田参考人 私はただいま御紹介をいただきました平田というものでありまして、現在横須賀におきまして環境浄化対策協議会委員をいたしておるものであります。各基地におきます風紀問題の発生原因は、すでに御案内の通り皆様承知のことと存じます。またこの詳細につきましては、二十七年二月、売春等処罰法案に関する上申書をもちまして、衆参両院議長に私から上申書提出してあるのであります。つきましては、現在各基地におきまして、現行地方条例において十分に売春が取締れるかどうか、こういう点を具体的に申し上げてみたいと思うのであります。  各基地におきましては、第二国会以来、政府が提案をなさるというので待つてつたのでありますが、第一次法案が流れ、その後音さたがないものですから、三十三年七月六日、宮城県の地方条例を皮切りといたしまして、各地に地方条例が制定され、現在七十五の都市町村におきまして条例があるのであります。横須賀の例を申し上げますと、横須賀におきましては、御承知通り朝鮮事変を契機といたしまして、非常な勢いで兵隊が横須賀に流れて参りまして、そこに必然的に風紀の問題が起つて来たのであります。やむを得ず二十六年の十二月一日に、四月につくりました条例を強化し、今日に至つておるのでございますが、御承知通り、各自治体におきましては予算がないものですから、十分な取締りができないのでございます。たとえば横須賀において、汐入というところが一番風紀のやかましいところでございますが、横須賀警察署における年間の取締りの費用というものは、わずか二百五十万でございます。第二防犯がこれに当つておりますが、その専門の警察官はわずかに十五名でありまして、そのうち甲、乙にわけまして、毎日取締り行つておりますが、係長と非番を除きました四人の警察官では、一年中まわつておりましても、とうてい横須賀の風紀というものは解決ができないのであります。従いましてこういう意味からも、横須賀におきましては一日も早く国会において法律が制定されることを心から望んでおるのであります。  次に、こうした現況でございますので、皆さんも御承知通り横須賀のEMクラブの近くにあります汐入の小学校は、昨日横須賀の教育委員会におきまして、環境に負けない子供がはたして周囲のハウスに囲まれてできるだろうかどうか、もしできないとするならば、小学校を他に引越さなければならないという、非常に悲惨な状況に追い込まれておるのであります。私は日本再建をになう青少年を教育するところの小学校が、この風紀の問題において他に学校を移転するがごときことは、日本の文化の上からもまことに恥ずべきことであると思うのであります。横須賀の下町はそういう皆さん御承知実態でありますが、さらに最近の事例といたしましては、武山に約二万五千の駐留兵が来ることになつております。すでに一万に近い兵隊が来ておるということでありますが、現在武山地区においては、新設部隊に生ずるところの風紀の問題につきまして、実は頭を悩ましておるのであります。さらに追浜におきましては、ヘリコプターの基地となりまして、連日ここのところ主婦の方あるいは教育側の人が寄り合いまして、これが対策に苦心しておるのであります。しかしながら横須賀の現在の条例及び自治体警察の予算をもちましては、とうていこれを防ぐことはできないのであります。こうした面からも、強く今回の法令が一日も早く制定されることを望んでおるのであります。  次に海軍当局の考え方について、少しく申し上げたいと思います。このことにつきましては、昨年婦人朝日主催によりまして、ここにおいでになります神近先生、私とも  座談会に出まして、その結論を極東軍司令部にアンケートを出したところが、向うから返事が来たのであります。それによりますと、米軍はいやしくも正しい性行為というものは、妻以外にはしないという回答が来ておるのであります。もしそうであるならば、各基地におけるところの風紀の問題というものは起り得ようがないのであります。このことにつきまして、二、三日前に、米軍の首脳部と私が会談いたしまして、米軍が日本に民主主義を教えたというならば、売春婦を背徳者とあなた方が言うと同時に、またこの背徳の売春婦を買うあなた方買い手も背徳者ではなかろうか、こういうことでは日本にほんとうの民主主義を吹き込むこともできないのだ、今度の法令を見ると、相手方も罰するとあるが、あなた方はどうかと言つて聞いたところが、MPの隊長も大いに賛成で、どうかわれわれの手では負えないからやつてくれということを、向う側から言つておるのであります。私はこの法案が一日も早く通過することを希望いたしますが、現在再軍備その他の問題で基地が設定されております。われわれ地方側から言いますと、国の都合で基地が設定されておるのであります。従いまして、基地設定によつて起るところの風紀の問題というものは、よろしく国が本腰になつてこの対策を立てるべきではないかと私は想うのであります。この点を強く私は主張したいのでございます。  ただいま申し上げた衛生の問題でありますが、現在二十八年の統計を見ますと、約七千名の海軍の兵隊が性病にかかつております。表向き七千でありますが、実際を見ますと、約一万から一万二千と推定できるのであります。月に千名でございます。それで米軍は風紀の問題よりも衛生の問題に重点を置いて対策を練つております。この衛生の対策について向うから六項目の要望が出ておりますが、これらの点については後ほど御質問の際に詳しく申し上げたいと思います。  次に、性病の問題を申し上げましたが、それよりも横須賀で今大問題となつておりますのは、麻薬、ヒロポンの中毒患者の問題であります。環境の悪いところでは当然夜遅くまで起きておりますので、ヒロポンを注射する。それが現在ではヒロポンを買うために、ヒロポンの金をつくるために売春婦に落ちて行くというのが現在の実態でありまして、以前とはまつたく主客転倒しておるのであります。新聞によりますれば、一昨日の参議院においても、この法律が強化されたということを伺いまして、私ども基地外におる者も非常に喜んでおるものでございます。  次に特殊婦人更生について一点だけ御参考に供したいと思います。洋娼ははたして更生でき得るかどうか、もしでき得るとすればどういう方法があるかという点につきましては、北海道民生部の委嘱によりまして、北大の教授の方々が詳しい調査の資料をつくられたでありますが、これによりますと特殊婦人は知能的にもその他にも非常な欠陥があるから特殊な対策を持たなければならないという結論が出ておるのであります。私も現地におきまして特殊婦人更生対策に苦心いたしまして、あるときは宗教家をお呼びし、あるときはまたいろいろな教養の面を高める講座一をいたしました。けれども、多少の貢献はあつたのでありますが、最後に九人の特殊婦人を選びまして、音楽による更生を考えたのであります。御承知と思いますが、TY楽団と申しまして、この九人の人が今まではじだらくな生活をしておつたのでありますが、真剣に、まつたくわれわれもはたで見ておりまして涙ぐましい努力をいたしましたおかげで曲目も数十曲ひけるようになりまして、先般フランスのダミアが日本に参りましたときも、私、日比谷公会堂まで連れて行きまして、ダミアからも激励されたのであります。ようやく期待できてこれらの人が成功できるかと思つてつたのでありますが、むろん私たちの微力の点もございましたが、九人のうち三人は足を洗いまして堅気の人と結婚いたしました。あとの二人は楽団の技術を買われまして、それによつて更生して行つたのであります。しかしながら残りました四人の人は、これを世間の人がささえてくれるならば何とか更生する道もあつたのでありましようが、不幸にしてこの最後の四人の人は再転落を余儀なくされたのであります。これは今後この種婦人更生をして行く上において、どうぞ諸先生方の御理解ある御後援と御配慮を私はお願いしたいと思うのであります。  次に赤線について申します。現在散娼の人たちが取締りによりまして警察に行きましても、自分たちは運が悪いからつかまつたのだという観念でございます。これは目の前に赤線地区がありまして、そこでは堂々とやつておる。にもかかわらず自分たちも同じことをやつていてつかまるのは、これは悪いのではなくて運が悪いのだというのでございます。従つてほんとうにこの売春問題を解決しようとするならば、私はこの法案もさることでありますが、この赤線問題をいかにするかということが先決問題ではなかろうかと思うのであります。  最後に法案について一言いたしますと、第一条に「もつて健全な社会秩序の維持に寄与する」とありますが、今度提案されました堤先生方のお考えを伺いますと、婦女の基本的人権の擁護ということを主眼とされております。もしそうでありますならば、婦女の基本的人権の擁護ということと健全な社会秩序の維持ということは同格であるべきだと私は思います。従つて「もつて」という言葉を入れますと、「もつて」以下の健全な社会秩序の維持に寄与するために婦人基本的人権ということが一つの仮定になると思いますので、この点はひとつ御配慮をいただければけつこうと思います。  次に定義でございますが、これはたいへんむずかしい問題であります。一応売春を買う人、売る人、あるいはそれをやつておる人、言うならば世間ではそういう職業についておる人は一番下等だと世間では言つておる。そうであるならば、ひつきようするところこの問題は道義の高揚であると私は思います。それならば国民に最も範を示すべき国会の立法者がまず国民に模範を示していただかなければならないと思います。先日この法案が出ましたときも、特定のいわゆるセカンド、オンリーはいいのだということが公然と新聞に出ていたのであります。一方においてはセカンドを囲える者は罰せられないで、貧しい者が、いわゆる金のゆたかでないものが遊びに行つたときに罰せられるという思想が、私はこの法案を施行する上において隘路となるのではないかと思うのであります。この点は先ほど平林先生のおつしやつたように一応売春というものを重点に置くということで除外をするというならば、別な政府の方針としてそういうことを明確に規定すべきではなかろうかと思うのであります。  第三条以下は、現在の地方条例でみますると施設を持つた人には重いのでありますが、売春婦には所によりますれば、この法律の方が処罰が軽くなつておる点も見受けられるのであります。  最後に一言いたしたいことは、とにかくこの問題はソビエトとか中共のような社会主義全体国は別といたしまして、日本と同じ機構を持つデンマーク、ノールウェーの北欧を見ましても、最後はやはり生活の安定ということが根本になつておると思うのであります。つきましては売春をしなくても、努力をすれば自分たちも食つて行ける、そういう明るい社会政治をやつていただきたいということを心から念願いたしまして、私のお話を終りたいと思います。
  8. 小林錡

    小林委員長 以上をもつて参考人各位の公述は終了いたしました。三参考人に対する質疑の通告がありますから、順次これを許します。むずかしい時間の制限をするつもりはありませんが、質問者が割に多いようでありますから、多少延びたりするのはかまいませんが、できるだけ簡潔に大体二十分くらいでお願いいたします。堤ツルヨ君。
  9. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 どうも御苦労さまでございました。順番から申しましたら瀬川さんに御質問申し上げるのが順番でございますけれども平林先生非常にお急ぎなんでございましようか。――じや先にやらしていただきます。  第一点にお伺いいたしたいのは、女性であつて今回の売春対策協議会に籍を置いておられる平林さんといたしまして、この法律が国会を通過いたしましたあとに対策協議会はどうあるべきかということを委員の一人としてどうお考えになつておるか。と申しますのはこの間から問答を――平林さんは御存じじやございませんけれども、いろいろと私たちが質疑をいたします過程において政府が答えましたのは、何分にも売春対策協議会をもつてその結論によつて何とか対策を講じたいと思い、また立法も考えておつたのだから、一にかかつて対策協議会の結論にあるのだ。従つて今出ておるところの議員提案というものは、政府の対策協議会の結論をまつよりも先に出されたものだから、なお考える余地があるということをしばしばおるのでございます。私はこういう点からしまして、議員提案が先に出てしまつた、そのあとにおいて、対策協議会というものはどうあるべきかということを委員の一人としてどうお考えになつておるかを先にお伺いいたします。
  10. 平林たい子

    平林参考人 私はこう思つております。自由党ももちろんこの法案には賛成でなくてはなるまいと思います。売春対策協議会協議の状況については、あまり具体的なことは申し上げられませんけれども、しかし大体法案をつくるべしだということ、それからどういう法案をつくるかということもおよそきまりまして、非常にこの案に近いものでございます。先ほど言いましたように金融した人を罰するということには気がつかなかつたのであります。そのほかの点では非常に共通しておりますから、政府の方が売春対策協議会の結論をまつて、とこの法案から逃げることはできないはずでございます。もちろん自由党も賛成だろうと私は思つております。従つてこの法案が通過いたしまして私どもがやらなければならないことは、もう一つの転落防止あるいはすでに転落した人をどうして更生させるかということについての法案をつくることだろうと私は考えております。
  11. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 非常に委員としてけつこうな御答弁をいただいてありがとうございます。対策協議会と国会とができるだけ力を合して、さらに今後よりよい階段を踏み上つて行くように御協力願います。  それからもう一つお尋ねいたしたいのは、平林さんは著名な作家であると同時に家庭の主婦であり、それから妻の座にある人であり、また子女をかかえた母の立場にあると思うのであります。子女をかかえた妻の立場、母の立場、主婦の立場から今日の社会、こうした売春を中心とする社会の現象に対してどういうふうにお考えになつておるか、少し説明が足りなかつたようでございますが、もう少しく承りたいと思います。
  12. 平林たい子

    平林参考人 私は中野のスタツケードのそばに住んでおりまして、非常に売春婦が横行することが多いのでございます。私の娘はことし十三になりますけれども、すでにもう一昨年あたりからいわゆるシヨルダー・バックを肩にかけて歩くかつこうをやつてみたりなんかして、私がギヨツとすることがあるのでありまして、非常に困つたことなんでございます。もちろんこういうものが目の前から消えてなくなることが母親としても妻としても非常に切実な願いなんでございます。
  13. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ちよつとお触れになりましたが、めかけという言葉がございますが、二号といわれる人、それから白色の外国の軍人を相手にしておるところのいわゆるオンリーといわれておる人、この人たちをこの法案の中に包含するかしないかということは非常に大きな問題でございますし、大切な問題だと思います。おそらく妻の座にある者、家庭の主婦の立場にある人たちの中には、この際売春婦の列の中に、この二号だとかオンリーという人たち、めかけといわれる人たちを入れてもらわなければ売春絶滅への法案としての意義はないというような考えを持つておる人が非常に多いのじやないか。従つて提案いたします前に衆参婦人議員団といたしましても全国民の支持を得、ことに婦人議員団あたりといたしましては、妻だとか母の座にある人たちの共鳴を得たい。二号やめかけを持たれることは非常に耐え忍びがたい。時たま売春婦を買われることはしんぼうして来たあの悲しい日本の女性の習性と申しますか、強要されたあの 立場というものは徹底的に清算しなければ、女としては浮ばれないのでござ います。こういう立場から最大公約数が許すならば、二号、オンリーもこの中に入れたいというので、第二条の定義をすいぶん考えておりました。そうしてあなたがおつしやいましたようにできれば、通過するならばそれを入れたいという婦人議員のお意見も非常に多いのでございますが、このめかけといわれる人たち、二号といわれる人たち、オンリーといわれる人たちをこの法案に是が非でもやはりこの際入れろ、と先ほど平田さんなどはおつしやつたわけでございますが、第二段階としてどういうような方法をもつてめかけ、一号といわれる人たちを扱つたらいいか、具体的にどういう方法でやつたらよかろうかという案を持つておいででしようか。もし持つておいででしたら、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  14. 平林たい子

    平林参考人 具体的な意見ではございませんけれども、とにかく売春は恥ずべきものだという原則が立ちましたならば、二号、オンリーも考えるだろうと思うのでございます。二号、オンリーを罰する法律を今つくるのは私は適当でないと思います。そうしないと、この法案は通らなくなつてしまいますから、その点で私は入れない方がいいというふうに考えております。
  15. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 瀬川さんにお伺いいたします。先ほどのお話では、現在の収容施設十七箇所、救世軍の四箇所には売春婦として転落した人々がどのくらいの人数、どういう状態収容されておるのかというような具体的な説明がなかつたのでございますが、これを少し詳しく御説明願いたいと思います。
  16. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 ただいま十七箇所におりまする婦人たちは、すでに転落したものあり、また転落に瀕しておつた者あり、またそうでなくても、これはもう転落するほかはないとこちらで重わるる者、その他も多少ありまするが、大体から申せば、そういう婦人たちがおるのでございまして、それでそこにおりまして精神訓練を受け、あるいはまた生活の訓練を受ける、あるいはまた職業の補導を受ける、一言に申せば大体そんなふうにしておりまして、正常生活を取り戻すように努めております。
  17. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 現在あなたは十七箇所にどのくらいの人が入つてると思つておられますか、概数でけつこうですから。
  18. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 概略七百人余、八百人に足らぬ程度であります。
  19. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 変なことをお尋ねいたしますが、今日その施設の中におる七百人の人たちは健康なからだであつて、これからも売春をやつて生きて行けるからだの持主でございましようか、それとももうヒロポンでからだをやられ、性病でからだをいためつけてしまつて、心身ともに疲れ果てて、もう売春婦としては役に立たないという方が多いでございましようか、そこをちよつとお聞かせ願いたいと思います。
  20. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 これは各収容所によつて内容が多少違うところがありまするが、概略的に申せば、もう売春婦としては勤めができないというふうな者は少いと思います。
  21. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それではそういう施設へ入りましてもすぐに出たがる、来たくないというのは、これからまだ売春をやれる人たちなんでございますね。そうすると、売春で疲れ果ててほとんど廃人になつたような人たちが、あなたの万のような施設にやむなくおるというような解釈をしてもよろしゆうございますか。
  22. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 先ほど入りたくない理由は何かというふうなお尋ねが最初にありましたので、ざつと申し上げたのでありますが、現在収容されておりまする者のうちに、それは中には脱走する者もないことはございません。それからもう廃人になつてしまつたという者もないこともありませんが、大体から申せば、私の見るところでは、まだ健康はある程度までは持つておるのでありまして、それならばこそこれに生活の指導も与え、また職業の補導もいたしておるのでありまして、そうしてその結果としては成績見るべきものがあります。
  23. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 取締り当局は、家出娘だとか転落した人たちを積極的にあなたの方へ連れて来て、保護してくれという態度に今まで出ておるように考えられますか。それとも取締り当局は、あなた方のお考えでは、冷淡といつたらおかしゆうございますけれども、やりつぱなしであつて、あなた方の施設なんかに連れて来て、そうして親切にこの人たちをほんとうに保護更生させようというような意図で常に連絡をとつておりますでしようか、その辺あなたの目からごらんになつた取締り当局について少しお聞きいたしたいと思います。
  24. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 大分むずかしい御質問でありまするが、大体から申しますれば、取締り当局も地方にもよりましようが、私の見ておりまするところでは、中にはまだ十分当局においてそこらのところの意義のおわかりにならぬ方が幾らかあるように思われますので、これは私どもとしてはもつともつと理解を得るように骨を折らなければならぬと思つております。しかしわかつてさえくだされば、それはもう私の方へ始終電話なりその他の方法で連絡がありまして、中にはずいぶん親切な当局方々がありまして、その結果がどうなつたかというふうにお尋ねなさる方もあり、またこちらから取締り当局の方方のところへお礼に行く者もあるというような状態であります。
  25. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 平田さんにお尋ねいたしますが、平田さんがただいま法案の順序を追うて御批判になりましたが、二号の定義をどういうふうに書いたら、めかけといわれる人、二号といわれる人、オンリーといわれる人たちをこの法の中に同居させることができるとお考えになりますか。定義をどういうふうに考えたら入れることができるということを、もしお考えになつたことがありましたら、定義はなかなかむずかしいのでありますが、御一案がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  26. 平田義弘

    平田参考人 実は先般堤先生方によつて発案されました法案内容というものは新聞によつて拝見しまして、今日初めて法案の全文をいただいたわけです。従つてこの点は議員の方々の中にも御専門の方がおられますので、私としては今のところ法律は専門でないものですから、そういう希望をお願いしておきたいと思う程度で、これがもし法案の主語がなければ成文にならないかどうかわからないのですが、今私がここでお答えできるのは、「不特定」という言葉をむしろ入れないで、特定の者も不特定の者も、売春婦もしくは相手方となつた者が罰せられるというふうにしたらいかがかと思うのです。これは専門的には異議があると思うのですが、まあそういうふうに今は考えております。
  27. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 あなたは横須賀実態を非常によく御存じだと思うのでございますが、ヒポロンと売春というものは切つても切れないものだというふうに考えておりますけれども横須賀あたりでヒロポンの密造、密売などをやつておる人たちはどういう人たちが多いか。こんは職業的に種類を承るというよりも、むしろ私は第三国人の方なんかが非常に多いのじやないかという予想をしているものでありますからこういうことを申し上げるのですが、ヒロポンの密造、密売業者について実態をひとつお知らせ願いたいと思います。
  28. 平田義弘

    平田参考人 詳細につきましては横須賀市警本部の「昭和二十八年度中に於ける覚醒剤取締違反の取締状況」という資料を持つておりますが、現在横須賀では約二千人のヒロポン患者がおります。ただいまお尋ねのいわゆる人種と申しますか、密売者は大体七五%が朝鮮の人であります。それから密造者はほとんど朝鮮の人でございます。それからこれを買う方の者は、遺憾ながら日本人の先ほど申し上げたような環境の悪いところにおる者でありまして、昔は夜おそくまで売春などをやりまして起きていたために打つのが、今ではヒロポンを打つ金をつくるために売春をずるずるとやつている。二、三日前にも、これはやはり二十一になる特殊婦人の人でありますが、警察から電報を打ちましても親元からだれも来ないで、さびしく一人であたら青春を病院の一隅で散つてつたというようなことが最近は目立つてふえて来ております。
  29. 山下春江

    ○山下(春)委員 関連して。ただいま堤委員からヒロポンの話が出ました。これはちよつと本法案からそれるようでございますが、非常に大切なことでございますので、私の了承している点を申し上げておきたいと思います。  ただいまヒロポンは厚生省が正式に許可しております製薬会社は二会社だけでありまして、その製造いたしておる数量はほんの少量でございます。これが実験用などに必要なためにただいままだ政府は禁止をいたしておりませんが、ただいま仰せられました通り、ヒロポンの密造、密売はほとんど朝鮮人でございまして、特に北鮮系朝鮮人の方々と了承しております。従いましてこの罪悪は、少くともこういう環境の悪い売春婦その他の横行する町にもむろんございますけれども、その他の日本の青少年、はなはだしきは十三才、十四、五才というような日本の少年たちがこれに冒されて、すでに中毒患者とおぼしき者が百五十万人ぐらいを数えられておるのです。しかも朝鮮人が非常にたくさん日本に住んでおりますけれども、朝鮮の少年にはこのヒロポン中毒にかかつておる患者を発見しないのです。そういう点から考えてみましても、これは日本売春行為をだらしなくしておりますこの情勢と相まちまして、私どもは戦慄すべき一つの謀略を感ぜざるを得ないのです。従いまして、厚生委員会におきましては、今会期中に、このわずかに許可しておりました二会社も必要があればいつでもつくれるのでありまして、これらの大きな会社は設備その他完備いたしておりますけれども、市中に売られております密造、密売品にはいろいろな混雑物等もあり、非常に脳細胞を破壊する、従いまして、殺人、強盗等によるあの少年の犯罪の大部分がヒロポン患者であることはよくわかつております。私は本来厚生委員でございますから、この点につきましては、本会期中に間に合いますようにヒロポンの製造を禁止する法律を出すつもりであります。その点、私が了承している点を申し添え、なおその点につきましては、あなたのお職掌柄その地域におけるヒロポン使用者を厳重にお取締りをいただきたいと存じておる次第であります。
  30. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 平林さんに最後に一つ聞き落したことがありますから伺います。芸者の世界でもやはり売春を許してはならないと思います。私浅い知識ではごまますけれども、いろいろな観点から研究したところによりますれば、今全国に六万近くの芸者といわれる人がございます。この芸者の四分の三くらいは同時に売春をやつているのではないだろうかという見方が非常に有力になつて来ておるのであります。六万でございましたら、それの四分の三でございますね。これが猛者をやつておるというふうな見方をしている人が非常に強いのでありますが、女の立場、ことに作家立場から、芸者の置屋制度、それから検番というものに対してどういうお考えを日ごろから持つておいでになるか、また将来どうあるべきかというようなお考えがありましたら、お漏らしを願いたいと思います。
  31. 平林たい子

    平林参考人 私はもちろん芸者もこの法案の対象になるものと思つております。新聞に、芸者のことがうたつてないのは片手落ちだというようなことが書いてございましたけれども売春婦という以上は、売春している者は何でも入るのでありまして、芸者である、ないは問いません。芸者置屋、検番の制度については、私は詳しいことを存じませんのでここで意見を申し述べることはできないのでございますけれども、もし芸者置屋の主人がその芸者にだれか客をとらせて、百万円のうち二十万円とつたとかなんとかいうことになりますと、もちろんこれはこの法律の中の何かにひつかかるのでありまして、それ以外のことは私は何も言うことがないのであります。要するに、売春をすればだれでもひつかかるのだということなのでございます。
  32. 小林錡

    小林委員長 神近市子君。
  33. 神近市子

    ○神近委員 私は瀬川先生にちよつとお伺いいたしたいことがございます。この法案ができましていろいろ御批評いただく点は、処罰ばかりで保護措置がしてないのではないかということです。この法案をつくりますときには、私どもむろんそういうことはたびたび協議したのでございます。ただ処罰法と保護規定とが一本の法案にならないという不便がございまして、こういう処罰一本のものになつたのでございますが、私ども委員会でそういう私どもの希望あるいは期待をまだ開陳する機会に恵まれておりませんので、決して処罰のしつぱなしではないのでございます。それで実施規則あるいは施行規則というようなもので、各省にわたつていろいろ御考慮願いたいと考えているわけでございます。先ほど先生がお漏らしになりました外国の進んだ制度、長くかかつて発展して来た制度を見ますと、ある部分矯正の分子が入つているのでございます。昨日も人権擁護局長と、そういう転落して正常の生活の習慣を失つた人たちを更正させるためには、どうしてもある程度曲つたところを直す――たとえば背骨が曲りそうなときに板を当てて病人を寝かすように、ある程度の善意な矯正が必要じやないかということをきのうは論議したのでございますが、先生は実際の衝にお当りになりまして、ある部分矯正的なものが入らなければどうしてもやれないというふうにお考えになつているように伺つたんですけれど、その点はいかがでございますか、はつきり伺つておきたいと思います。
  34. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 私は今神近先生のおつしやる通りのことを考えているのであります。願わくはこの法律に矯正の面も伴うようにということを考えているのでございます。しかしながら今それもこれも一緒にということはなかなか困難でありましようから、まずこの法案漢案の罰則の方、それが男であろうと業者であろうと何であろうと、ひつくるめてまずこの法案を通過させるように何とかお骨折りを願いたい。もしもこれが通過されれば、必ずそれに伴うて保護の方面が起つて来るに違いないのでありまするから、まず何はさておいてもこれを通過させていただきたい。少年法の場合において、これを行う少年たちをどうしようかというお話も多分あつたろうと思うのであります。何はともあれ少年法を先に通過さしてしまおうというふうにお考えになつたやうに覚えているのでありますが、そういう寸法で大急ぎでお運びを願いたいと思うのであります。今矯正ということでございましたが、これは十七箇所、ことに東京のものは矯風会なり、救世軍なり、あるいは山田ワカ先生の方なり、また聖友ホームなり、あるいはついでに横浜の方面へも寄つていただきたいということを考えております。それで矯正の問題が論議された場合にもただちに御返事のできるように、ただいま私どもは私どもとして、至らぬ者でございまするけれども、それを考えている最中でございまして、たとえばまず更正寮というわけで、最初に更生寮、これは精神指導――それが宗教的方面であろうと何であろうと、精神指導、生活の訓練をする、職業の補導をやる、そしてどうも性格異常であるとか、精神薄弱であるとかいうふうな長期にわたるものに至つては、ことによつたら強制収界の必要があるかもしれませんが、そういうふうな多少長期にわたる施設、それから今度は更生寮から進んで、かりに婦人寮という名前ですが、指導監督をすると一緒に住宅の提供という意味合いの色彩の濃いものというような、大体三通りにして行つたらばよかろうというふうなぐあいで、当局ともわれわれかねかね御相談をしている最中でございます。幸いにしまして、十七箇所の施設をざつと見ますると、非常に高い標準は別ですが、われわれの方から見て、半分以上はこれは更生したなというふうなことがはつきり甘えると思うのであります。そういうことを私どもは考えておりますから、どうぞそのお考えでお願いしたいのです。ですから、何はともあれ、不完全であろうが何であろうが、この法律案は何としても一日も早く通過させていただきたい。更生の方はあとから必ずできましようから、まず大急ぎで今議会にやつていただきたい、どうぞお願いいたします。
  35. 神近市子

    ○神近委員 瀬川先生の御意見よくわかりました。私どももこれを立案して提出いたしましたときに、婦人議員団が今の先生と同じような考えでいたわけでございます。そして私どもはアメリカの五月法の発足から今日のいろいろの教護施設更生施設ができて来たということをよく知つておりますので、それを法務省に一生懸命に吹き込んで、法務省のお考えをたたいている次第でございまして、大体私どもはその点ではよくわかりました。  それで年齢のことについてさつきから提言からもいろいろお尋ねがありましたけれども、年齢層とあそこに収容されている平均期間、それからもう一つ、今五十五万くらいこういう営業の御婦人がおるということで、あすからでもそれを収容しなければならぬ。私どもが非難を受けますときには、どうするのだ、どこへ入れるのだということをしきりに言われるのですが、私どもは、更生するために、あるいは営業不可能であるからといつて、一時に収容所に来る人はそれだけの人数のごく一部だと思つているのです。自由廃業あるいは明治の解放のとき施設に来た人たち、それから、これが厳禁されれば勤労生活に入る人が相当のパーセンテージ出ると考えております。そういうことを実証する文献か、あるいは御経験を持つていないでしようか。その三点を伺いたいと思います。
  36. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 年齢のことでございますが、これはずいぶんまちまちでありまして、おのおの寮によつ違うようでありますけれども、一番少いところでは十三、四才というのすらもある。これなどは児童の養護施設へは送るわけに行かない。なぜならば、せつかく養護施設経験者の方々が大事々々に育てておられるところへ、何もかも知つているのが一人入つたら、これはたいへんなことになつてしまうのであります。それですから、養護施設へ入れるべき年齢であるにもかかわらず、護施設としてはそれを受入れることができないという状態でありますから、そういう年若いのもここへ入つて来るということにならざるを得ぬ状態であります。三十才近くの者もありますけれども、大体からいえば二十才前後あるいは二十才ちよつと過ぎたばかりという状態であります。一番ものを覚えやすいときに、一番だらしのないことを教わつて、あるいはさせられてというような状態でありますから、実際もしも自分の娘がこういうことになつたら、これは火の中、水の中をくぐつても救い出さなければならぬというような燃ゆるがごとき思いをもつてこれを感じておるような次第であります。それで貞操の観念、これも自由自在にかつてにやつてこれを享楽しているか、させられるかしているような状態になつておる。こういう婦人たちは実際労働意欲は失つてしまいますし、恥の精神はなくなつてしまいます。義務の観念はなくなつてしまうし、約束もなくなつてしまう。女としてのみならず、人間として持つべきはずのよいところは、ことごとく失つてしまうと言つていいくらい、実にこれはヒロポン同様恐ろしいことでありますから、私はこの法案はのんきなことを言つてはおられぬと思うのであります。余談に移りますけれども、そんなふうになつてしまう。今小学校の義務数奇に従事しておられる五十何万の先生方が清貧に甘んじて夜を日に継いで教育しておられるにもかかわらず、それと似た数の売春婦あるいはそれにつきまとつておるボス連中がおるということになつて来ると、これは一体どうしたらいいだろうか、どんなにしても教育に専心せられるくらいであつたら、義務教育卒業生を保護するがためにどんなにしてもこの保護施設なり社会教育なりはやつて行かなければ、何をやつておるかわからぬことになつてしまう。教育のためにあれだけ金を使うのであつたら、なぜ卒業生を保護するがために金を使わぬかということになつて来るのであります。従つてこの期間は、そういう性質の婦人に――全部はそうでないにしても、そういうのがおるのでございますから、これを矯正するというのにそれは一月や二月というわけにはとても行きません。早いほどよろしい、転落の期間の短かいほどがよろしいのであります。それですからこの期間もあるいは半年あるいは一年、二年ということになつて来ますが、平均したらやはり一年内外ということになるだろうと私は見当をつけておるのであります。  さて、この婦人たちを今御心配になりました明日から一体どうするか、この婦人たちが一体どこへどうなるかということになるのでありますが、御心配はごもつともであります。しかしながら私どもこうして見てみますと、脱走したとはいうものの、それがただ脱走しきつてしまつて転落してまた元へもどつちやつたというばかりではないようでありまして、中には久しぶりに会うてみると結婚しておるのがあつてみたり、あるいは私が地方へ行つてみると、偶然ちやんとした家庭を回つて労働をしておるというような婦人を見てみたり、これなどはもう成績の中へちつとも入つていない、脱走しきりになつておる。半面そういうのもおるのでありますから、今一ぺんにこれを解放するということになれば、幾分はそういう者もできて来るだろうと思われます。  それからまた幸いにしまして、たとい不十分だとかなんとかいうものの、今日万をもつて数えるところの民生委員がある、あるいはまた福祉事務所があります。その他そういつた方面のとりはからいがありますから、もう一ぺん活を入れるといつては失礼でありますけれども、そういうふうにして行くならばよほどのところまでやつて行けるに違いないと思うのであります。もちろんこの婦人たちは一向骨折りもせぬでもつて思わぬ収入が入る、こういうことはいつまでもやつているべきものではないということは、それは知つております。知らぬのもおるかもしれませんが、知つております。それですから一方においてこの法律が通過するということになつて来れば、自然にそういういろいろの今までの方面が大いに活躍されることになつて来るに違いないのでありまして、そうしておるうちにだんだんみんな総がかりになつて来るに違いないのでありますから、よほどの点までは私は防げるというふうに思つておるのでありますし、どうなるだろうかしら、こうなるだろうかしらという問題でなくて、これは何とでもしなければならぬという覚悟が私どもに必要である、そうしてまたそれはできることだと思います。
  37. 神近市子

    ○神近委員 平田さんにちよつとお伺いいたしたいのでございます。どうももうかるということがその仕事をやめさせるのに一番むずかしい点らしいのでございますが、いつか一度横須賀に参りましたときに、汐入の辺を歩きまして、私は驚いて帰つたのでございます。あの辺は民家があるのでございますが、あの商売屋と並べてどういうふうな比例になつておりますか。子供もいたようで、壁ひとえ隣りで営業しているという状態で、私は心を寒くして帰つて来たのですけれど、あの辺は民家と商売屋とどういうふうな割合になつているでしようか。
  38. 平田義弘

    平田参考人 ただいまお尋ねの汐入の業者と、それから普通の住居との関係でございますが、たまたま横須賀におきましては汐入の二丁目、三丁目、五丁目、主として五丁目が十二月十八日に米軍から性病の理由をもつてオフ・リミツトになつたのでございます。そのときの市警本部の調査によりますと、ハウスの数が百十三軒、売春婦が二百二十七人、うちオンリーが五十人でございます。それからそのほかの地区が本年の二月一日にオフ・リミットになりまして、四月の二十五日に解除になつております。その地区が大体世帯数を御参考に申し上げますと、百九十七世帯、人口が九百十人、その中に街娼婦が九十人、それでその百九十七の世帯の中にハウスが大体六十五軒でございます。特に二丁目、三丁目というところは軒並に売春宿に取囲まれている。その中でも二丁目は汐入小学校がございまして、その小学校の付近にも現在なお三十軒ばかりやつておるのです。それであまりひどいものですから、昨年四月にPTAの会長から学校周辺百メートルは断じて取締りを強行して一軒もなくしてくれという請願が出ておつたのですが、ようやく昨年の八月ころそれが通りまして、委員会で可決になつたのでありますが、いろいろ商店との関係、それから市会との関係でいまなおこの学校周辺を取巻いている三十数軒のものが、依然としてやつてるという、われわれ横須賀におる者としてはまことに恥ずべき事態になつております。それがため、先ほど申し上げたように横須賀教育委員会でもこれを強行させるために汐入小学校と公郷の小学校の二つがモデル・ケースに選ばれまして、けさは早くから校長先生方が職員を集めましてこの問題を討議しておるのでございます。神近先生からお尋ねの普通の人家との割合もさることながら、まず学校周辺にあるこれらの業者は断じて一掃しなければならないと思うのでございます。そういう意味からもこの法案が一日も早く通ることを私どもは望んでおります。それからちよつと余談になりますが、実は第一次の法案が流れまして、たまなか二十七年のころから第二次の法案が出るのだということが新聞に出たのです。そのときに汐入周辺におる四百人の売春婦の人たちに、今度こういう法案が国会で通る、通つたらあなた方はどうするのだというアンケートを出したわけです。それが当時四百人で、法案が出ても続けてやるんだというのが八〇%、それから取締りがきつくなればゆるいところへ逃げて行くというのが一〇%で五十人、それから即座に転向すると答えた者が五人です。それからそのときになつてみないとわからないというのが四十五人で九%でございます。これは過去のことでありますが、ただいま委員の皆さんから発議になつておる今度の処罰法案は、非常に婦人議員の方あるいは婦人団体の方が熱意を持つておられますので――横須賀でも一時日出町という赤線で三千円の地代が五万円にはねた時代もあつたのでございます。これは二十六年の朝鮮事変後の最高潮のときでございます。ところがこの法案がちらほら新聞に出ましてから一応値段もとまりまして、最近に漸次下りまして、売りに出てもこの処罰法案のめどがつかなければ買うわけに行かないというので非常な成果を収めております。それからこれは二、三日前に百人の女の子について法案についてのアンケートを出したのでございます。で、根本的に言いますと、横須賀基地があるから外人との風紀の問題が起りますけれども、じやあ基地がなくなつたらどうかという問題になりますと、いわゆる西洋かぶれのした女の子たちはもう外人がいなくなればやめるんだ、これは三〇%おります。しかし外人がいなくなつたら全部の横須賀における売春婦がなくなるかどうかという問題です。これは立川の例を見ますと、最近オンリーや何かでも非常にもらうお金が少いものですから、三日外人を相手にいたしますと、あと三日は立川の予備隊さんと、ちやんぽんにやつているという状態もあるのでございます。こういう点から見ますと、横須賀の一部洋娼は船越の方の警備隊の方へ流れて行つている者もあるので、三〇%は確かに外人基地がなくなればすぐ転向するけれども、本質的にはなくならないんだということは言えると思います。そこで今百人について申し上げますと、この法案が今度出れば相当――そう言つちやあれですけれども一塩さんとか神近先生のような猛者が今度はやつているのだから、今度はただごとでないからやめようというのが三〇%です。それからそのうちに転向しようというのが四〇%です。あとの三〇%は本貫的にはどうしても金がいるのだ、これをやれるところまでやらなければならないという、ほんとうに同情に値する者もこの三〇%のうちには一〇%ぐらいはおります。あとの二〇%はもう酢でもこんにやくでも、どうわれわれが説明しても話も聞かない。これは最後には、申訳ないんですが、瀬川先生の施設の方にやがてどうしてもやつかいにならなければならない。ですから処罰法案更生施設との並行はむろん理想ではございますが、今の国家予算からいつてできないとすれば、やはり一応処罰法案を先行いたしまして、そうすれば今の六〇%の婦人はそれぞれ転向して行くと思うのです。問題は残る三〇%の人の一〇%は、これは民生委員なりあるいは社会連帯性で何とか考えなければならない。これは根本的に言えば転落でなくて転落防止の問題に入つて行くのではなかろうかと思うのです。ただいま神近先生からのお話に関連しまして、ちよつと長くなりましたけれども申し上げたわけです。  それからもう一つは、オフ・リミツトをやりました場合に、ちようどその地区だけは処罰法案が通つたと同じような形状を呈したわけです。ところが隣の地区に――たとえば横須賀でいいますと、武山に部隊がいて、その一つ隣は葉山、逗子ですが、葉山、逗子は現在風紀条例がないから、一歩外に、出てそこへ兵隊を持つて行けば治外法権的なんです。横須賀でかりに二百五十万の取締りの予算をもつてやりまして――昨日も所長に聞きましたら、年間一千万予算がとれれば、理想的な取締りをやつてみせると言うのですが、かりに横須賀をやつたにしても、そういう葉山なり逗子に逃げて行く場合には、やはり日本の総体の数は減らないということなんです。ここに私は処罰法案が一応基本法案として打立てられる必要を感ずるものでございます。
  39. 神近市子

    ○神近委員 大体わかりました。条例で間に合わないということが処罰方の必要を感じさせたということもお説の通りでございます。  私ばかり長くお尋ねするころはいけないと思いますから、最後に一点伺いたいのは、学校周辺の取払いをきめたのは市会でございますか。それから、何がじやまになつてそれが実行に移せないのか。もう一つ、オフ・リミツトになりました場合には、この範囲内のおみやげ店がたいへん売れて、売春婦に使われるとほとんど同一のお金がおみやげ店に流れるという実態が報告されたのを私ども一度見たことがございますが、それは事実でございますかどうか、ちよつと伺わせていただきたいと思います。
  40. 平田義弘

    平田参考人 第一点の学校周辺の取締り横須賀の市議会で、いわゆる治安常任委員会通りました。それで学校周辺の業者がやや自粛しておりましたために、警察でも手がないので、そのままで今日に至つたわけであります。それでは困るので、今度われわれ風紀対策協議会の方から、あるいは地元のPTAの人たちから、学校周辺だけは即刻手を入れてもらうように今警察へ鋭意折衝中でございます。ただ問題は、その予算がないために警察としては非常に困つているということだけは事実でございます。  それから第二点の、オフ・リミツトになつた場合には、そういう水商売を相手にしているおすし屋さんとか喫茶店とかいう人たちは、確かに収入は減つたわけでございます。それがどのくらい正業者の、たとえばスーヴェニアさんなんかに流れたかは、昨日のスーヴェニアの方の会長と会いましたけれども、大体二、三割はふえたけれども、オフ・リミットになつたためにその地区のお金が全部スーヴェニアの方に流れて来たということは言つておらないのでございます。そこで、多分ほかの地区へ――さつき申し上げた逗子とか葉山の方へ、そういう期間中流れて行つたのではなかろうかと思うのです。ただ、これは先生の御質問にはずれるかもわかりませんけれども横須賀で一番問題なのは先生のお尋ねの経済の問題です。あの混乱の時代は、われわれもまあ自粛ということを考えておりましたけれども、もはや自粛の段階を過ぎて更生の段階へ来ていると思います。横須賀も家がないものですから、東京近くで勤める人が家を探そうと思つても――売春婦やハウスに貸しますと、一畳大体八百円から千円くらいの割合で払うのです。それで、三部屋の家でも一万円くらいですから、普通の勤め人ではとても借りられない。それから物価は、汐入のそういう方面では特に魚屋さんとか八百屋さんに至るまで、普通のところよりも二割から三割高いのです。これをちよつと比較いたしますと、横須賀線では鎌倉逗子といいますと高級地なんですが、その鎌倉の物価よりも汐入のそういう方面では一割五分ないし二割も高いということなんでございます。これが日本の再建を乱し、勤労者の方々の勤労意欲を非常にそこねているということは、私は見のがせない重大な事実だろうと思うのでございます。
  41. 小林錡

    小林委員長 鍛冶良作君。
  42. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はまず瀬川先生に伺いたい。先ほど来参考意見を承つておりますと、この点に対する御熱意のほどがうかがわれて、われわれ敬意を表します。そこで、なるほどこういう法案をつくつて、できるだけかようなものをなくするようにせいということの御意見は十分わかりますが、あなた方のほんとうの目的は、現在出ておる者を取締る、またこれを更生させるということにもありますが、それよりも、根本はかような者のない世界をできるだけつくろう、この点にあるのではなかろうかと思います。けれども、この点はいかがですか。
  43. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 御説ごもつともでありまして、こういう状態にならぬような社会の来ることを望みます。
  44. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで、あなたの方でおやりになつております婦人寮に、先ほど承りますれば七百人余り八百人足らずの者がおるということでありましたが、これは大体どういうことをやらしておいでになつておるものか、それから更生の率は――先ほど抽象的には大分承りましたが、どれほど更生して、大体どういう結果になつておるか、大まかでよろしゆうございますからその点を伺いたい。
  45. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 どういうことをさせておるかというお尋ねに対しましては、その寮内におきまして、精神的な訓練あるいは宗教の指導また生活の指導それから授産の補導などをやつておりまして軽易な、内職に類するものをさせ、あるいはまた、それが進めば相当注文も受けるというところまで行つているところもあります。それがためには、洋装の先生に来てもらうというようなこともあります、あるいはまたその寮から工場に通うとか、あるいは店員になつておるとか、あるいはそこでさらに編みものなり洋裁なりを教わつておるとかいうふうにしまして、どうかこれが横道にそれないように、通つている者に対しては始終勤務先と連絡をとりましてこれを指導いたしておりまするし、屋内におる者に対してはもとよりのことであります。更生しました率ということにつきましては、これはどの程度までを更生と言うか言わぬかということによつてよほど違うところもあり得るのでありますけれども、まず世間の概念から言うて、更生しておるという者は先ほど申し上げたように半分ははるかに越しておるのであります。なお婦人福祉事業の要覧というものを、私ども十七箇所の施設が持ち寄りでつくりまして、法務委員方々なり厚生委員方々なりにお配りしてあるはずでありまするが、この中に寮内においてどういう授産をやつているか、どういう方針でやつているか、更生した者はどういう結果になつているか、また残念ながら更生できなかつた者はどういう理由によるかという実例、並びにその他の統計がここに響いてあります。それでもし委員長におかせられましておさしつかえないということでありましたら、これをお帰りのときにお持帰りくださつてけつこうでありまして、この中にずいぶん詳しく書いてございますから、御参考になつたら幸いと思つております。
  46. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほど来あなたの御意見を承つておりますと、処罰そのものが目的でない、強制するものがなくてはなかなかこれを押えることができないからという御意見でございました。さらにまた進んで承つておりますると、今あなた方が婦人寮でやつておられるようなことで感化せしめることがよろしいという意見のように承りました。これは重大な問題であります。もちろんかような転落した者を救い上げなければならぬ、その救い上げるにはどうした方がいいか、処罰がよろしいか。感化方法がよろしいか、この点が重大だと思いまするが、どうもあなたの先ほどの御論議を聞いておりますと、感化の方で行かなければならぬ。われわれの方へ引取ろうと思つても引取るわけに行かない、要するに刑務所に入れるよりか、あなた方のやつておいでになるような保護教育施設がよろしいというように私は承つたのでありまするが、その点は間違いございませんでしようか。
  47. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 従来ここで御質問をちようだいいたしましたのは、感化保護はどういうふうにやつているかという内容のことについてのお話が多うございましたから、自然その方に片寄つてお話をするようになつたのはやむを得ぬことと御了承を願いたいと思うのであります。これは感化ばかりではいけませんので、やはり法の罰と感化と両両よろしきを相またなければならぬと思うのであります。しかし先ほども申し上げたようなわけで、私の考えるところでは今その二つを一ぺんにやろうということは、これはたいへんに大きな問題でありますから、何はともあれ、不十分であつても何であつても、この法を先に通過させていただいて、それで道徳の低下を防ぐなり、あるいはまた場所を提供した者をどうするとか、相手方をどうするとか、そこまで行くようにしていただいて、それで罰と感化と両々よろしきを相まつて行かなければなりませんし、また御当局におきましてもそこのところは非常に御心配になつておられますから、両々相まつて行くことは必ずでき得ると私はかたく信じております。
  48. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはわれわれ専門だがら、私の質問がおわかりにならなかつたようですが、法を用いるということと刑罰に処するということは違うのです。強制してやらせるということと刑罰を科するということ、これは違います。その点私はあなたに、どの点を主限にしておいでになるか、こういうとを聞いたわけであります。  それから、少しりくつばりますが、先ほどあなたのお言葉で、少し酷なようだがやはり懲らしめなければならぬというお言葉がありました。懲らしめるということはどういう意味か、法律的にいうと重大なことですが、これは少し考えていただきたいと思う。われわれは今日の刑罰といえども、懲らしめが目的でない、教育刑といつております。いわんやこれらの点に関しまして、あなたの先ほどから温情のある限をもつて臨んでおられるところを見ますると、懲らしめどころでない、刑罰でもない。保護教育というところに置くということがよろしいのではないか、こう思って私は承るが、この点は私の考えに対してどうお考えになりますか、承りたいと思います。
  49. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 私の考えますところは、刑罰をいうておるのであります。刑罰と保護と両々相またなければならぬと思っております。
  50. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言うのは刑罰とはどういうものかということですが、これはあなたに今ここで言っても無理でありますが、もう一つ聞きたい。あなたのおっしゃった通り、まことにかようなことはよろしくないことである、害悪である、無知である、これは何人といえどもこの点は争いません。しかしこれは道徳に反する罪悪であるか、法律に反する罪悪であるか、これは私は断定いたしません。あなた方にとくと考えていただきたい。刑罰に価する法律上の罪悪というものは、われわれは一般常識の上に法観念というものがあって、その法観念を犯していることが、これが法律上の罪悪。それからそれ以外に、かようなことがあってはいかぬ、また人にさようなことは大びらに言えることでない、そういうことをも犯す者がある。これは法律の外にありますならば、道徳上の害悪と甘えましよう。これらの点に関しまして、これはもちろん禁止しなければならぬのでありますが、これがどの害悪であるか、それとも法律上の罪悪として刑罰に処するのか、こういうことをひとつお考え願いたいと思う。道徳上の害悪であるとするならば、やはり道徳上に対する道義の向上及び教育が主でなければならぬ。法律上の罪悪というならば、これはまたそのような教育の仕方をしなければならぬ。これに対する御所見があれば伺いたい。
  51. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 ただいまのお話、よくお考えを願いたいというお言葉でありましたが、まことにありがとうございます。しかし私はこの法案は、私は法律の専門家ではございませんから、言いまわし方がはなはだ下手でありますけれども、この法律の中にはやはり道徳というものを全然無視して、それを除外しているものとは私は考えていないのであります。法律は道徳の非常に高いところを社会にはめようとはしていないでありましよう。しかしながらこれならという程度のところは織り込んでおられるものと、私は一向知識はございませんけれども、そんなふうに考えております。
  52. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは平林先生に伺いたい。先ほどあなたは、なるほどりくつはそうだが、処罰規定をこさえても売春がなくならぬというので反対するのは、どろぼうも刑罰法規があってもなくならぬと同じじゃないかと言われたが、私はそこにちよつと違いがあるように思います。いかがでありましようか。私が瀬川先生に承ったと同様の観念で、どろぼうとこれとはちよつと違う。ことに観念が違うというよりか、これを改俊せしめる、この害悪をしてはいかぬという観念、その教育の仕方において、どろぼうに対するやり方とこれらのものに対するやり方とは、おのずから異なるのじやないかと思いますが、この点いかがですか。
  53. 平林たい子

    平林参考人 それは犯罪の性質によっていろいろ違うと思います。それで売春犯罪であるかないかということについて議論なさろうと思っていらっしゃるのだろうと思うのですけれども、今日このように売春というものが都会に氾濫して、人心を頽廃せしめているということは、当事者二人だけの性的関係が金銭で売買されたというふうな、小さいことにとどまらない大きな害悪になっておると思います。それにいわゆる業者というものが目に余る店を張りまして、たくさんの女を擁して、肉体を売らしておるというようなこと自体、世界にはずかしいことでもありますし、女の人権を無視したことでもありますし、いわゆる民主主義の時代にこういうことが公々然と行われておるということは、許すべからざることなのでございまして、これは犯罪というよりしかたがないと私は思っております。
  54. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はもっと聞きたいのですが、時間がありませんから平田さんに聞きますが、先ほど横須賀の実例をおあげになりまして、この点に関する取締りの警官は十五名しかおらぬ、そして予算が足りないんだから、こういうお話でした。これはあなたから見ても、はなはだどうも不都合だろうと思うのですが、ほかに警察官は横須賀にはずいぶんおるだろうと思うのです。なぜこの方面へ十五名しかやらないのでしょう。この点に対して実際をお考えになったことはございますか。
  55. 平田義弘

    平田参考人 まことにごもっともな御質問だと思います。現行の範囲では、やはり自治体の弱体と申しましようか、予算の面が足りないので、そういうような配置になるわけです。実は二十六年の十月三十日に、時の米海軍基地司令官から、二十四時間以内に街娼を一掃しなければ、全市をオフ・リミットにすると言われた。そのときは予算の問題でなくて、いろいろ市の面子その他を勘案いたしまして、全警察員を動員して取締りを強化したことがある。そうしますと、一箇月にもう四、五百万くらい使ってしまうのですね。それで市議会の方から文句が出まして、それにはいろいろ業者の方からそういう面で市会議員の方へ圧力をかけたという点もあったかと思いますが、それは別といたしまして、とにかく予算がないので、予算の範囲内で最善の取締りをやって行く。これではいけないというので、実は地方行政委員の方へお願いしまして、平衡交付金について市長それから市議会側、それから警察当局からも懇談してお願いしたのですが、遂に国会の方からそういう予算がおりなかったのです。もしこの処罰法案が通れば、――通るようにわれわれも期待しておりますが、それまでの間でも、もし鍛冶先生がそういう点で御心配いただければ、取締りがもっとできるように、平衡交付金の増額等にぜひ御尽力を私の方からお願いしたいと思うわけでございます。
  56. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほど赤線区域の話が出ましたが、新しい法律ができませんでも、いわゆる勅令第九号が法律にかわって、一昨年法律になった。これでやろうと思えば、赤線に対する取締りは私は十分できると思います。あの法律を通すときも、もちろんわれわれはかようなものははなはだ目に余るものであるから、法律をもつて取締るということはよいが、赤線区域というものはいわば半公認のものである。その半公認をしておきながら、いつでも取締れる、こういう法律をこさえておるが、これで一体両立するのか。片一方は半公認にしておる。それで法律をつくればやめなければならぬ。やみに公認しておるものを弾圧できる。こういう法律は両立しないわけである。私はその点を押した。ところが今後はできるだけさようなことのないよう、両立させますというようなことを言っておりましたが、いまだにそのままです。あなた方の目から見れば、もちろんいろいろの面から考えなければなりませんが、新しいものをこさえるよりも、現在の法律でもつてやればやれるし、あなた方としてはぜひやらなければならぬものと思っておられると思います。それに対してあなた方は厳重な要求をせられたことがありますか。またしてもできなかった、できないとすればどういうわけでできなかったのか、この点をひとつ実際面からお答え願いたい。
  57. 平田義弘

    平田参考人 横須賀ではいわゆる公娼と従来いわれたところは、柏木田と皆ヶ作というところと二箇所あったわけです。安浦は私娼、いわゆる半公認の形で残ったわけでございます。今私が質問を受けておりますのは、主として基地の赤線であります。いわゆる外人相手の地区をさして申し上げておるのでございます。二十六年の十月三十日の司令部のいわゆる指令によりまして、当時の市長は日出町というところに赤線地区を設定したのであります。今鍛冶先生のおっしゃるように、それをとりやめるように、あるいはそれを廃止するようにしたかどうかという点でございますが、先ほど申し上げたように、横須賀では二十六年四月、さらに十二月一日に横須賀市風紀条例というものを設定してあるのでございます。その風紀条例を見ますと、売春というものを禁じております。これを一口にいえば横須賀の風紀条例は絶娼主義をとつておるのでございます。従つて市会で決定した絶娼主義のいわゆる風紀条例に対して、一方の措置として赤線をつくるということ自体が矛盾でありますので、この点を私どもは反対していたのでございます。ところがいつの間にか、われわれの力が足りなかつたせいもありますが、できたのであります。その裏には御承知のように新潟の人身売買のときにはつきり世上に出て来たのでありますが、国が二十一年十一月に、いわゆる次官会議において赤線というものを認めておるのでございます。従つて国が認めておるので、地方もこれに右へならえをして、あえて条例が絶娼主義をとつて禁止しておるにもかかわらず、国がそういう態度というか、方策をとつておるので、地方もそれに右へならえをした。こういうふうにわれわれは逃げられたのであります。従つて先生の御指摘のように、現行においてやれとおつしやるならば、この次官通牒というものを即時撤廃しなければならない。しかし根本的には先ほど瀬川先生、平林先生、私も申し上げましたように、これは国の基本法として一本、売春処罰法というものを制定しなければならない、こういうふうに考えております。しかし根本的には、もしそういう売春をしなくてもいいという社会になるならば、あえて処罰法をつくる必要は実はないのです。しかし今の社会にはどうしてもそういう盲点がある。その盲一点をわれわれがいろいろな角度で今までやつて来たけれども、どうしてもそれがうまくできないのです。ですから国としての基本線をはつきり出してもらいたい。こういう考えでございます。
  58. 花村四郎

    ○花村委員 鍛冶君の質問に牽連して、簡単に三人のお方のどなたでもよろしゆうございますからお尋ねをいたしたいと思います。売春行為のなき世の中をつくり出さなければならないという問題に対しましては、おそらく何人も反対はあるまいと思います。この問題はただにわれわれ日本人ばかりでなくて、世界のすべての人もその気持は同じである、こう申し上げてよろしいと思う。しかしこの理想を実現するにはどうしたらばよろしいか。こういう問題に対しては、歴史も古く、しかも多くの人たちがあらゆる知恵をしぼつて今日までこの問題にあたつて来ておることも疑いのないところでございます。そこでこの種行為に対して法律の制裁をもつてはたしてとめることができるかどうか。ただいま参考人の方方はこの法律はぜひひとつすぐにでも通してもらいたい、そうしてこの法律が通るならば、この売春行為はなくなるともお考えになりますまいが、相当減つて行くのではないだろうかというようなお考えを持つておられるように考えるのでございます。しかしはたしてあなた方の考えるような結果になるかどうか。今日まで世界の各国においても売春行為を禁止する法令が出て、そうしてこれが取締りをやつておりますが、今日なおかつ世界のどこの国に参りましても、やはり依然として売春行為が行われておる。わが国においてもまたしかり。地方の条例においてあるいは勅令においてこの種行為を禁止してそうして処罰をいたしておるのでございます。しかるにもかかわらずなおかつこれが減ることなしに、むしろ増加の一途をたどつておるというこの現実を心静かにながめてみる場合に、はたしてあなた方が今お考えになつておられるように、この法律ができさえすれば、これが何とかなるかどうか。なるほど法律をつくることもけつこうであります。法律の効果がただちに上らずとも、やはりある種の法律をつくるということは必ずしも無益ではございません。たとえば一つの例を申し上げますならば、立小便をやると軽犯法によつて処罰をされるということになつております。けれどもこれはほとんど適用されておらない。あるいはたんつばを吐いた場合には処罰をされるという法令ができている。ところがこれもほとんど適用されておらない。してみますると、そういう結果から見ればこういう法令ができても無益のように考えられるのでありますけれども、しかし一歩しりぞいて静かに考えてみますると、なるほど適附されないでもそういう法令はある方がいいと思う。たとえば立小便を十回やるのに、法令を思い出してまあ三回くらいでやめておこうというようなことにもならぬ限りでもない。でありまするから法令が適用されぬから法律は必要ではないという断定を下すことについては疑問があり。しかしての種法律ができたからというて、はたしてあなた方の言われるようにその法律効果が現われて来るかどうか私は大いに考えなければならぬと思います。第一売春行為そのものをやるということはだれがそうさせたのであるか、それを私は考えてみる必要があると思います。だれがそうさせるのであるか、本人が好んでしたいというものもありましようが、おそらくそれはほんのわずかでありましよう。性欲の関係からいうて希望する人もないとは申せませんが、そういう者はほんの微々たるものである。多くはやはり経済的に、あるいはまた先ほど平林さんかどなたかも言われたように、ヒロポン注射をやるためにどうしても売春行為をやらなければならぬというもの、その他の事情もあるでありましよう。それを好むと好まざるとにかかわらずやらなければならないというそこに事情がある。この事情を除去せずしてただ刑罰だけで押えつけようとしても、そうは簡単に参らない。犯罪の窃盗、ならばその人の性行というものが相当に原因をなしておりまするから、その性行をためるという意味における刑の処罰も意味をなすでありましようけれども売春行為はむしろ本人そのものから出ずして、その人の環境がそうさせるという現実を見るときにおいて、法律で処罰してはたしてあなた方が考えられるような効果が上りましようかどうか。今日まででも法令で処罰をして取締りをやつておりますことは皆様も御承知通り、ぼくらもよく見てもおり、また頼まれて交渉に行くこともあつてよく知つておりまするが、しかしこの種行為はむしろ処罰の方面からこれを是正するというよりも、そのよつて来る原因、その行為をなす人の環境をよりよく導くことによつてこの極行為をなくするという方向にまず頭を置かなければならぬのじやないか。そこにこの種行為の禁止に関する重大さとむずかしいことがあると申し上げてよろしいと思うが、その点はどうお考えになりましようか。
  59. 平田義弘

    平田参考人 私の考え方を申し上げます。日本が新憲法によつて定められた高度の文化国家をつくつて世界の平和に寄与するということは日本千年の大方針であり、行手であると私は思います。高度の文化国家とは、申し上げるまでもなく売春のない日本国家の建設でございます。日本があれだけの莫大な費用を失つて得たものは民主主義であり、民主主義とは男女平等であり、婦人の解放そのものにほかならないのであります。従つて今先生からの御質問ですが、第一に売春施設をしている業者があるという今の社会の盲点をわれわれはまずつかねばらないと思うのです。根本的には、そういう女の人があるかどうかという問題になる場合には、やはり婦人更生という観点からこれを考えて行くならば私は法律はぜひ必要であると思います。しかしデンマークの例にもありますように野放しではとうてい百年河清を待つてもできないので、まず法律を打立てて、そして議員の皆様、特に政府の今後に出て来るいろいろな決意と相まつて私はできると確信しております。
  60. 平林たい子

    平林参考人 今のにお答えします。私、花村さんの選挙区の人間でございますが、花村さんがこんな不勉強な代議士だとは思わなかつたのであります。売春がどんどんふえて行く超勢にあるということは何の根拠でおつしやるのですか。永井荷風の「あめりか物語」をお読みになつたと思いますが、あのころアメリカにはあんなすさまじい売春があつたのでございます。クープリンの「ヤーマ」という小説のように、やはり日本のような魔窟があつたのであります。今はそれが物語になつておりまして、もう外国にはこんなことはないのでございます。私は一昨年走りまわるようにヨーロツパを歩いたのでございますけれども、この大戦の直後にはイタリアや、ドイツにもフランスにも売春婦がたくさん一時現われたそうでございます。しかし現在は非常に日本よりもきびしい取締りにあつてほとんどアメリカ兵は一人で歩いております。日本のように日本の女と手をつないで歩くようなことはヨーロツパでは絶対にしておりません。これは日本にこういうことを取締る法律がないことを甘く見ているのでございます。  これだけでございます。
  61. 花村四郎

    ○花村委員 不勉強であるというおしかりでしたが、私も実はこの問題に対しましては古くから関心を持つております。かつて私が委員長やをつておるときもこの売春法が問題になつたというようなことで、日本売春に関する歴史を私も調べております。であるからここで述べろと言えば二、三時間にわたつて詳細に申し上げます。(笑声)しかし皆さんの質問が待つておりますから、私は今言つたように関連笠間でありますことを遺憾に思うのですが、いずれ機会を見てその詳細はひとつ発表をいたしたいと思うのでございます。  それで発港行為によつて転落した人をどう救うかというような問題は、これはこの問題と牽連性はありますけれども、要するにこれは後の問題なんです。まず第一に転落する人を出さないという方向にひつぱつて行くということを考えなければいけないと思うのであります。もちろん私は法律を出すことにまつこうから反対だという意味ではありませんけれども、しかしただいま参考人の言われるお話を承りますと、この法案はすぐにも出してもらいたい、出しさえすればその効果はてきめんに現われて来るがごときお話であつたので、はたしてそういう考えがこの重大なる売春行為の絶滅に向つて振うべき唯一のメスであるかどうかということに対して私は大きな疑いを持つておるという意味で実は質問をいたした次第でありますが、処罰をすることは先ほども申し上げましたように今日までやつておる。また処罰ができる、売春行為をやつた本人はもちろんのこと、またそれをやらした人、あるいは仲介の労をとつた人、すべて処罰の対象になつておるのでありますけれども、かりにそういう行為があつたとしても、今日の警察行政の上から申しまして、そこまで手が届かぬといううらみもある。でありますからこの法律を出して厳重に適用するということでありますならば、これはやはり警察行政の方面におけるこれが取締り検挙に関する事柄も考えなければならぬでしよう。予算の面からも十分に考慮する必要がありましようけれども、この法案が通つたからといつてただちに警察の予算を増し、あるいは警察の人員を増してこの種取締りに向つて行くというようなことは、これはわれわれは想像ができぬと申し上げてよろしいと思う。してみると、かりにこの法律が出たにいたしましても、あなた方も思われておられるがごとく、ただちにその効果が現われるとは私は思わない。でありますからただこの法律をつくることにのみ専念せずして、やはりよつて来る原因をためて、これを絶滅する方向に持つて行くということも本法律制定よりもより以上の熱意と創点くふうをもつて考えなければならぬのじやないか、またそういう点に対するあたたかき手を国家財政の上から延べてやるということでなければ、この根本的な問題は解決ができないのじやないか、私はこう思うのであります。でありますからこの点を最後にお伺いしておくということと、ただいま欧州にはない――少くなつたという意味ですか、ないというような意味のお話もありましたが、これはわれわれも欧州各国の実情を見て来たのでありますが、手を引いてはおりませんが、ストリート・ガールというのはどこに行つてもおります。平林さんはそこまで調べられたかどうか、そこはやはり私の方が先輩だと思う。(笑声)そういう意味でこの点はあなたが私に一歩を譲られても私はいいと思うのですが、そういう意味で、決してなくなつてはおりません。ことに戦後敗戦国におけるこの種行為の多いことは、これはすでに歴史の物語るところであり、現実が示すところでありますから、あなたのような楽観論には私は賛成はできぬと思う。そういう意味においてもう少し深く掘り下げて考えていただく必要があろうと思うが、いかがでしようか。これをもつて私の質問は終ります。
  62. 平田義弘

    平田参考人 簡単にお答えいたします。転落を防止させるためにも私は処罰法案の制定は必要であると思います。それから現在条例が七十五ございますが、その風紀に悩んでいる各県知事、市長、町長、村長さんも実は一日も早く国で法律を制定してくれることを望んでおるのでございます。ところが、第一次法案以来、出る出ると言いながら、国が制定しないものですから、実は横須賀でもさつき申し上げた通り、やろうとしてもいろいろな事情で現在の地方条例ではできないから、ああいうような醜態が繰返されておるのでございます。私をして言わしめるならば、国が出すと言うから各地方では、該当市町村では、実は待つておるのでございます。これが遅れておるために、出ないならば――極端に言えばもう初めから出ないのだときまれば、各市町村でももつとやるのでしようけれども、何といつても各自治体でできないから、国の法律を望んでおるわけでございます。従つて私は現在の地方の風紀が乱れておるのも、この処罰法案が遅れているからだ、こういうふうに申し上げたいと思います。
  63. 小林錡

    小林委員長 古屋貞雄君。
  64. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 私はまず平林さんにお尋ねしたいのですが、実は政府はこの法案に対して、処罰規定だけあつて、その他の関係が足りない、総合的な研究をしておるということをおつしやつておる。しかも売春問題対策協議会の結果を見てからというようなことを言うておるのです。従つて法案には容易に賛成しかねるということを法務大臣が言つておるのですが、そこで私は特に政府といえども、あるいは社会人といえども、世の父であり母であり、特に日本人でありまするならば、この問題をどうかして早く解決をしなければならぬという非常に強い要望があることは確信いたしております。しかしながらこの法案がここに提案されるに至つた経緯は、あなたも御存じの通り、どうしても政府がやらない、ただいまの対策協議会で案を出さない、見通しがつかないというので、しびれを切らしてお出しになられたことは、これはもう御承知通りでございます。そこで私は前回政府に向つてその点を追究したのですが、政府の努力が足りない、政府はほんとうにやる意思があるかないか疑われる、こういうように申し上げて大分追究した結果、幸い本日は先生がいらつしやいましたので承りたいのですが、ただいまの御意見によると、対策協議会では結論が出ない、見通しがついていない、しかも社会の現状というもはのそれを待つているわけには行かない、こういう御意見がございましたが、その見通しがつかないあるいは結論が得られないというその盲点、難点は、一体政府に熟慮がない、やる意思がないというお考えなのか、それともただいまの対策協議会において非常に研究が足りない、資料が足りないという点でございましようか、あるいは非常に大きな問題であつて拙速よりも、相当期間が経過いたしましても、完全なものをつくりたいというようなお考えでやられておるのか、その点が、私ども非常にお尋ねしたいのですが、本法案をどうするかということについて重大な問題なのです。私ども、他の委員から御質問がありましたように、本法案だけでこの問題が解決するとは毛頭考えておりません。特に根本を申しまするならば、ただいまの花村委員のおつしやられたように、これは明らかなことで、国の政治を根本から改める、国民の道義心を高めることが根本なんです。従いましてだれが好んで売春婦になるかということは、言わずと知れた明らかな事実でありまして、予算の面などについても重大な関係を持つ。しかしながら現状は軍事基地周辺における学校の問題、あるいはその他の子女の問題――絶対に婦人の解放と人権尊重の立場から考えまするならば、私どもは即時にこの法案が必要だと考えておるのですが、平林さんにお尋ねしたいのはその盲点ですね、どうしても見通しがつかない、結論が出ないだろうという御意見を述べられた根拠、それを具体的にひとつ率直に御遠慮なく言つてもらいたいと思いますのは、それがこの法案を通過させるかさせないかの重要な点だと思いますので、その点を率直にひとつお述べ願います。
  65. 平林たい子

    平林参考人 結論が出ないというように、私が申し上げたことをおとりになつたとするならば、それは間違いでございます。売春問題対策協議会は最近結論を出しました。それは売春禁止の単独法をつくるべきである、その内容はどういうものであるかと申しますと、ほぼこの法案と非常に似たもの、刑の量というようなものについては、法務省におまかせしますから出ておりませんけれども、ほぼ精神はこの法案と非常に似たものでございます。ですから、政府売春問題対策協議会にまかしてあるからというのは逃げ口上なんでございまして、それはお信じにならない方がよろしいのじやないかと私は思つております。売春問題対策協議会は基本的な線を出しまして、あとは今小委員会にまかせておりますけれども、それが出ましたら法案をつくるのは法務省の方にまかせて、あとはさつき申し上げましたように、転落防止だとか、あるいは更生施設をどうするか、そういう法案をつくるかつくらないか、もちろん私どもはつくらなければならないと思うのですが、そういうことの方に行くはずなんでございまして、ほぼ基本線は出ておるのでございますから、その点もし政府がわれわれの対策協議会をそれほど信頼していらつしやるのならば、もちろんこの法案に賛成すべきだと私は思つております。
  66. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 その点は非常に私安心いたしました。実はもし政府がほんとうにやる意思があるならば、この法案に欠陥があるならば、政府が代案をつくるなり、これを修正するくらいの熱意を示すことが国民に対する義務じやないか、こういうことを私はつつ込んだのです。ところが平林さんの今のお話で、政府が二枚舌を使つておることがはつきりわかつた。どうしてもこれではだめなんだ。今のお話によると、これが似通つたものである、処罰単独法規をつくるという結論が出たのだということになれば、大臣の言つたことはでたらめなんです。でたらめではない、むしろ私どもは二枚舌を使つておるということを追究しなければならぬことになるのですが、それで問題は、こういうことを政府は言つておるわけなんです。処罰だけではいけないのだ、他の施設が伴わなければいけない、これは子供でもわかることなんで、少くとも多少売春の問題を弊害があるから早くなくさなければならぬというお考えを積極的に持つ方々は、それだけのことはばかでもわかつておることなんです。それを繰返して御答弁しておるわけなんです。  そこで私はもう一つ承つておきたいことは、処罰法規というものは、御承知通り下からはえて来まする芽をつむだけなんです。根本の培養されておる根をとつてしまわなければだめなんです。これははつきりよくわかる理論なんです。ところがむしろ政府は、議員から議員立法をされ、対策協議会でさような結論が出ておるにかかわらず、しかも根本となるべき問題、処罰法規をつくることはもう当然やるべきだと思いますが、さらに更生施設、保護施設、こういう問題につきましては、ことに軍事基地売春の問題などから考えするならば、われわれは政府は予算の問題が相当大きな問題だろうと思う。ところが今のような政府では私どもはとうていこういう問題を解決する能力はないと思う。ということは、何を好んでこの原水爆時代に再軍備か。本年の予算などはふやしておる。ところが社会事業の点については七百七十億というわずかな予算しか組んでない、こういう立場なんです。そこで私どもはむしろ法務大臣の答弁と、あなたからただいま承りましたかような事実を総合すると、政府はほんとうにやる意思はないのだという結論にどうも私はこれは少しひねくれて考えたかもしれぬけれども、国民の立場から考えざるを得ないのです。そこでこの協議会におきまして、政府の出席されておる委員の方たちの中に、根本的にこの問題解決に対する社会施設更生の問題、保護の問題、さらにこういうような方たちの自分に対する自覚のない、人間性の自覚を持たない、こういう方たちに対する訓育と申しますか、考え直させること――多くの人たちは大体自暴自棄に陥つて、どうでもなれという投げやりだと思う。尊い人生を、自分を。この点については相当政府は責任を持つてこの更生指導に対する設備というものは相当予算をかけてでも私はやるべきだと思う。先刻この教育の問題について瀬川さんから承つたのですが、一生懸命政府は教育に金をかけている、教育はしているんだが、最後に完成する面においての大事なところで予算がない予算がないで、こういう問題の転落婦人などに対する施設がない、足りないという御意見がございましたが、まことにその通りなんです。政府委員の中にはこういう面について特に強い意思をもつてやらなければならぬというような御主張あるいは計画がさような会議においてあつたかどうか。それに対してもしありとすればどのくらいの予算で大体やれるかという見通しの御意見があつたかどうか。これは私どもから承りますと非常に大きな問題であつて、予算が伴わなければ、いかにこういう問題に対して処罰法ができましても、処罰法規をカバーする根本になるべき、原因を培養する者を取締るところの関係が重大になつて来る。この点についてはさような主張があつたかどうか、念のために伺つておきたいと思います。
  67. 平林たい子

    平林参考人 予算措置が必要だという話になりましたときに、各省を代表する次官の方がこもぐ立ちまして、自分の省には予算がない予算がないということをまず第一に表明なさつたのでございます。しかたがありませんから、私どもはなるべく金をかけない方法で何とか効果のある措置ができないものかということを今非常に考えているわけなんでございまして、大いに舞えていただきたいのでございます。
  68. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 なお一点伺いますが、私はその委員の方たちも子の父であり母である。日本の民族の将来を考えますと、非常に重大な問題で、今の緊縮予算の中で、予算がないからというような安易な考え方でこれを葬むるということは重大な問題だと思います。従いまして私どもはこの委員の行動に対しても考えさせられる、国会議員といたしまして。私どもは安易な考えでこの問題ととつ組んだのではとうてい所期の目的を達し得られないと飼う。その点についての平林さんのお考えだけ簡単でけつこうでございますから一言だけ承つておきたいと思います。後々の当委員における本法案審議の過程において重大な関係になると思いますので、簡単にひとつ……。
  69. 平林たい子

    平林参考人 それにつきましては民間委員は割合に熱心なんでございまして、欠席者も少いし、時間も絶対に生つておりまして、非常に熱心なんでございます。お役所の人でも必ずしも全部がこの法律ができることには反対ではないのでありまして、良心的な方正賛成ではないかと思われるお役所もあります。ですからとにかく、おかしな言葉ですが、なだめたりすかしたりして、とにかくどこかの岸にこぎつけようと努力しているわけであります。
  70. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 瀬川先生に承りたいのですが、瀬川先生は長くこの仕事にお携わりになつておられますので、戦争前の事情もよく御存じだろうと思います。私は結論から先に申し上げて承りますが、私はこの法案が幸いに皆さんの努力で通過いたしましても、それだけでは現在の警察にまかしたのでは所期の目的を達成しないという考えを私自身が持つているわけであります。従いましてこれが取締りにつきましても、従来のような単なる訓練をされた警察官にまかしたのでは目的が達せられない。従つてこれに対する特殊な法規の実践についての訓練について方法を講じなければならぬと私は考える。ただいまあります勅令第九号の問題にいたしましても、第一線のこれを実際に取扱うものは警察でございます。警察には、私警察の悪口を言うのじやありませんけれども、予算がないために、その外郭団体に防犯協会がありますが、防犯協会に行つてみると、大体金をうんと出して非常に防犯協会で警察に協力するという姿を見せている有力者というのは、大体がばくち打ちの親分と淫売屋の親方なんです。私どもは長い間の経験でこう考えている。こういう人たちは金を出しておいて取締りに関する世話をいたしますから、過去の戦争前に取締りをいたしたような場合においても、その取締られ処罰されるものは大体売春婦ではみじめな売れない妓で金の準備ができない警察につけ届けのできないような売春婦であり経営者が多かつた。こういうことは私ども苦い体験を持つている。私どもとしましてはこの法案が通過した場合に、何かこのほかに特殊な運営方法を講じなければならぬと思うのです。それについて長い御体験からできました御意見がありましたら、それについて承つておきたいと思います。
  71. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 とつさのことでありますからあとからさらにいい知恵が出るかもしれませんが、この法案が通過するとなれば、これはどんな警察だつて今のままではとうているわけにはいけなくなつて来るに違いありません。また私どもも及ばずながら大いにせつつくでありましよう。そうすればこういう大きな問題ですから一ぺんにそう何もかも行きませんでしようけれども、しかし根本法律がどうかこうか通過せぬことには、今警察に私が言つてみたところでどうすることもできない。まつたく力がない。ただ意気込んでいるだけの話になつてしまつて、くたびれるだけの話であります。この法律が通過するならば必ず警察も捨ててはおかぬでしようし、われわれも大いに肉迫するでありましようし、従つてまたこの法律ができればたとえばソ連邦ができたゆえにいろいろな団体ができたと同じようなわけで、おのずから天下に志のある人たちは必ず寄つてこれを襲うるに違いない。必ずそうなるに違いないと思つております。そうすればここに公私ともに一丸としたりつばな協議会もできるだろうし、骨をおることもできるだろうし、それによつてわれわれもわれわれの理想とするところにますます進んで行くだろうと思うのであります。それにしても根本がないことには、これはただ意気込んでばかりおつてもどうにもならぬことであります。そんなことになると私は信じております。
  72. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 もう一つ非常に大事なことの教えをいただきたいのです。売春取締りを理想的にある程度効果をあらしめるには、本人の自覚だということを非常に言われましたが、まことに私どもそうだと思うのです。いわゆる売春は悪いことだというこの本人の自覚が必要だという御意見と承りました。そうしてたとえば世の中には、非常に環境によつて不遇になつている、従つてかようなところに転落して来た、もうすでにみずから人生を捨ててしまつて自暴自棄に陥つている方が相当いるという御意見もありましたが、一方平田さんの御意見を承りますと、音楽団の組織をしてその中から更生した方が出たというようなことも承つているのですが、従来手にかけられた多数の転落婦女子の中で、あなたがどういう方法でどういうところに重点を置かれたのが、これらの人たちに売春をやめさせてそれであらためて更生させるのに効果的であつたかという、体験に基く結論を承れますればけつこうと思うのですが、その点いかがでしようか。
  73. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 先ほどその原因を除去しなければならぬ、そしてそれが第一に経済の問題であるやに私はそういう印象を受けたのでありますが、それは確かにそうではないとは言いませんけれども、だれがそうさせたかと言えば、これは何よりもかによりも男が悪いのです。つまりは男が悪い。何といつたつて男が悪い。これは男がみな集まつて罪を天下に謝せぬといかぬ。男からして反省せぬといかぬ。片方がどういつたつてしようがないのであります。そこでその法律ができれば、これはどうもえらいことになつたと男も反省せざるを得なくなつて来るに違いないのであります。それでどうも実際に婦人たちに接触してみますと、経済も確かにありますけれども、しかしながらどうも誘惑が多かつたり、自分家庭が不和で、それで家を飛び出したのが原因であつたりというわけで、精神的な面がずいぶん多いことを忘れてはならぬと思うのであります。経済の問題だけだということになつて来ますと、除去するといつたつて容易なことではないのであつて、たとえば日本には木造の家ばかりで火事が多くてどうにもならぬ、こんなことでは困るからみんな石造にしなければならぬ、それが理想だ、こう言つて木造の家の焼けるのはあとまわしだ、石造の方を先に急ぐ、そうは言つておられないで、やはり木造が火事になつたら火を消さなければならないのでありますから、経済の問題の、よつて来る原因を除去するという気長なことは言つておられない。今そこに火がついておるのを、先のことを考えてほつておくわけには行かないのでありますから、これは何としても急がなければならぬ。せつかちなことを言いますけれども、実際に当つておる者は、またしても婦人が転落した――たとえば私は東北のある県に行きまして身売りをする者をそう出してはいかぬじやないかと言うて県庁の婦人児童課長に迫つた、そうしたらその課長が言いますのに、君のところの足元、東京には赤線区域というのがあつて穴が明いておるじやないか、穴をふさがないで落ちた者をいかぬぞいかぬぞと言つてもしようがないから、その穴ふさぎをしてからもう一度言つて来てくれというから、私もごもつともと言つて来た。そういう点もあつて、いなかの経済の問題もありますけれども、片一方に穴を明けておいて根本を除去しろくといつても、穴をふさぐのがまつ先ではありませんか。それからおもむろにやつたらいいと考えておるわけであります。そこでそういう婦人たちをどうしたらいいかということになつて来れば、人を見て法を説けで、いろいろ人によつて違ます。違いますが、根本からいえば、これを助けてやるとか、保護してやるとか、どうしてくれてやるというよりも、どうしてもわれわれそのものを彼らに与えるというところから出発するので、高いところからやつたのでは二階から目薬の方が多くなりやすくなつて来るのであつて、彼らの境遇に自分たちが身をほうり込んで、彼らに奉仕してやるというか、彼らに仕えるというか、つまり親が子供を何とかよくしようと思つて、しかりもすれば罰もやります。けれども根本はといえば、親は、自分はどうなつてもかまわぬから子供を何とかよくしようと思う。そうやるからその子供もよくなつて行き得ると思う。そうしてみればこんなしようがない娘だと思うけれども、これが身分の子供であつてみたら、妹であつてみたら、さてどうするかということを考えて――お前そんなことができるかと言われるかもしれませんけれども、その精神でやつて行くということになれば、これはまつたく道徳の働きであり、精神的の働きであり、宗教的の働き、こういうことになつて来ざるを得ぬのであります。でありますからどの点が一番効果があつたかということになりますと、一体その効果を目当にすることがよいかどうかということです。効果を目当にすれば、効果がなくなつたら捨ててしまう、やめてしまうということになる。ですから一体効果が自分の目に見えるのか、あるいはまた見えないところにほんとうの効果があるのか、そこらの点は私どもは全然脱却して、このために自分をなくしてしまうということでないと、それがためにどうしてやった、こうしてやったということになれば、これだけ骨を折っておるのにかかわらず、なぜわからぬかという小言も出て来れば、なぜ進歩せぬかといううらみも出て来るということになるのでありますから、根本はどうしてもそこから抜け出る必要があろうと思うのであって、その結果として、それは歌を教えて導くということも必要でしようし、あるいは一緒になってお掃除をしてやることも必要でありましよう。要するに心の問題を持って行けば、方法なり問題なりはおのずからそこにわき出て来ると思うので、私はこれが一番大事だと思います。
  74. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 神様のようなお話で、まことにけっこうだと思いますし、その通りだと思います。しかし私どもがこれを立法化して、なるべく少い努力で大きな効果を得たいのも、今われわれとして願わなければならにことだと思います。  なおさっき鍛冶委員から、瀬川さんがある純度強制をし、力を加えなければいけないと言われることと、一方において人権を尊重することとの矛盾、調和の問題はどうかという御質問があったようでありました。それに対して、これまた瀬川さんのお話の中から、私どもはかようにとったのです。子供を愛する母親のような態度――盲愛しておったのではいけない、溺愛しておったのではいけない、たまには真に子供を愛するがために強い力も加わる、こういう気持でやれば効果があるのだ、こういう御趣旨だと承ってよろしゅうございますか。
  75. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 けっこうであります。
  76. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 もう一点私どもの承りたいのは、なるほど本人の人間性に対する自覚というものが根本になると思いますけれども、これらの人を誘惑し、あるいは利用し、脅迫しております業者そのもの、これらに対して厳罰と申しましようか、これに対する強い制裁を加えて行かなければならぬということを私ども考えておるわけなのです。もちろん根本はあなたのおっしゃるように本人の人間性の自覚である。しかし今の日本の状況でもつと重大に考えることは、さようなことをして暴利をむさぼり、そのために相当なボスを動員しておるという姿、そのものを社会としては考えなければならぬと思う。こういう点についてもやはり本法案が必要なのだと私は考えておるのですがその点もいかがでしようか。
  77. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 今お話の後で操っておる人間でありますが、これは私は捨て置けぬと思います。これは何としても憎いです。うまいことを言ってだますのであります。弱味につけ込んでだまして行くのであって、これを自由自在にさせておくということはどうしても許せませんから、これはぜひ何とかやっていただきたいと思います。
  78. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 一つだけ伺います。先刻売春婦の方たちを楽団を組織して、音楽によって更生さしたというような話がございました。この点については私どもの今までかつて考えていなかったことを教えられたわけなのですが、こういう組織指導を相当やつて参りますならば、特に若い御婦人などは音楽に対する一つの魅力と申しましようか人間性をそれを通じて考えられると思うのですが、相当な費用がいりますか。たとえば九人で組織されたとおっしゃっていますが、これに対する費用などはどれくらいなものでございましようか。これは参考に……。それが一つと、それからもしもアメリカが軍事基地を撤退してしまって、アメリカの人々がおらなくなるならば、三〇%ぐらいの人々があの商売から商売がえするというような。パーセンテージの御発表がございましたが、それは全国的にこの処罰が行われるようなことになればということの前提でございましようか。それともただいまのように個個の各県で条例をもつて罰するところもあるし、罰せないところもある。従って甲の地区で非常にやかましく取締りますならば、乙のところに移動してなお同じような仕事がやり得る現在の状況において、ただいまの三〇%というものが生れて来たのか、この点どうなのでしょうか。
  79. 平田義弘

    平田参考人 第一点の音楽でございますが、根本的には瀬川先生がおっしゃるように、宗教あるいは社会教育という問題があると思うのです。ところがあの人たちの環境から一つのよい習慣を得るための手がかりといたしまして、音楽は――日本人相手の人たちはあるいは三味線がいいかもわかりません。しかし外人相手の洋娼といわれる人たちの一つの手がかりには、音楽は私がやった中では一番適している。それで今お尋ねのように楽団で将来更生して行こうという人もこれは技術ですからまれだと思います。しかし更生して行く第一歩のステツピング・ストーンとしては、今庄ですさんでいたその気持が音楽を聞いたり、また自分がやっているうちに人間のほんとうの姿に返る、その気がついたときから今度始まつて行くという上において、私は音楽がいいように思うのです。この費用は楽器を買いますと大体二十五万から三十万ぐらいでございます。それから第二点のもし処罰法案ができれば三〇%はもうやめるという点でございますが、今の条例でも各町村によっていわゆる重いところと弱いところがございますが、あの人たちももうそろそろやめたいというふうにみんな思って来ております。ただその時期とふんぎりなのでございますが、処罰法案が国法できまれば甲から乙へ行っても同じことですから、はっきり私はふんぎりがっくと思います。ただ現状では先ほど申し上げたように、横須賀取締りが強化されれば、一時葉山から逗子へ避難するということはあるのです。また業者の人にも昨日聞いてみましたら、二十六年時代はたとえば取締り摘発を受けて警察へ行って罰金を払っても、いわゆる税金のように考えていた。しかしもう世間が許さなくなったし、昔ほどもうからない。それにもうからだを張って客ことがばかばかしい。だから自分もぶらぶらしているけれども、そういうのが出たら業者の人もやめようというのがもう大分ふえて参りました。
  80. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで承りたいのですが、政府が相当な受入れ施設をつくつて、言いかえますならば相当な予算と相当な企画のもとに、政府が一方ではただいま提案されているような処罰規定が施行され、一方ではこれに対するところの売春婦の受入れ態務というものが、相当の予算で相当な施設をつくられて態勢が整われて受入れるというようなことになれば、先刻あなたが述べられたような大体一〇%ぐらいは困難かもしれぬけれども、その他の九〇%ぐらいのものはこの受入れ態勢の――もちろん施設にもよりましようし、方法にもよりましようし、本法案の運営の方法にもよりましようけれども、大体われわれが社会通念から考えた立場で大体九〇%ぐらいは救い得られる、やめさせられる、こういうようなお風通しがつけられるでしょうか。
  81. 平田義弘

    平田参考人 パーセンテージは私大体八〇%と申し上げたのでございますが、二〇形は今御指摘のように、いわゆるどうにも手に負えないという人が二〇%、あとの八〇傷は施設ができれば、それはけっこうでございます。中共のやり方を見ましても、施設へ全部入れまして、そうして授産して更生させているように参議院の調査の中に書いてありましたが、今の日本のように社会保障費なんかが少いところでは、まずそれよりも先ほど瀬川先生も御指摘のように、今あるところの――いわゆる片手間と申しますか、何か名誉職でやっている民生委員のあの姿では困りますけれども施設に入る前に、まずそういう人たちの窓口と申しますか、相談所が必要だと思うのでございます。これは現に神奈川県の横浜の駅の前で高橋芙容さんが非常に苦心しておられますが、あの人たちに真心を込めて、愛情を持って接して、その人の向く、たとえばタイプをやりたい、あるいはタイプができたら就職も世話して行くというような、施設よりも先にそういう相談所が必要のように思うのです。そうして施設とずつとマッチして行けば、急激にはできませんけれども、最初の三〇%、さらに三〇%、最後には今言うように全部更生して行けると思つております。
  82. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうするとやはりこの法案を通過させることが第一要件であるとともに、これに対する受入れ態勢をつくることが必要である。そうすれば八〇%くらいは救い得る、そのあとはどうも遺憾ながら瀬川先生の方に最後に御世話になるように考えられるのですが、そういうことになるわけですね。
  83. 平田義弘

    平田参考人 さようでございます。
  84. 小林錡

    小林委員長 この際お諮りいたすことがあります。戸叶里子議員より委員外発言を求められておりますが、これを許可することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 小林錡

    小林委員長 御異議なければさようとりはからいます。戸叶里子君。
  86. 戸叶里子

    戸叶里子君 すでに他の委員から御発言がありましたし、私は委員外ですから、ごく簡単に一、二点だけお伺いいたしたいと思います。  ただいままでの皆さんの御意見を伺つておりましても、結局この法案を通しても、あとのこれをカバーする更生施設が必要だということになつて参りましたが、そこで瀬川さんにお伺いいたしたいのですが、東京、札幌、大阪などに史生施設をお持ちになつていらつしやるようですけれども、大体でけうでございますが、そこにどのくらいの費用をかけていらつしやるか参考までに伺いたいと思います。それはこのあとすぐに更生施設のための予算を考えなくてはならないと思いますので、その参考にさせていただきたいと思います。
  87. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 ただいま四箇所と申し上げましたが、これは十七箇所も同様でありますが、いずれも当局からの御委託をいただいておるのでありまして、それで事務費というのと、収容費というのと両方にわけて一人頭幾らというふうに、いわゆる委託費というのをちようだいをしているのです。事務費につきましては、五十二円何がし、それから事業費、あるいは収容費と言つておりますが、それが七十一円幾ら、これは東京の話でありますが、大体その程度をちようだいしておりまして、一日合計百二十円余りを受けまして、それで経営いたしております。
  88. 戸叶里子

    戸叶里子君 大体一箇所に三十名くらいの収容と聞いておりますが、そうでございましようか。
  89. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 これはいろいろでございまして、多分お手元にあるかと思いますが、その要覧によく書いてございますが、少くとも三十名、四十名、五十名、あるいは六十名というところもありますが、建物の関係もありますし、また委託費の予算の関係もありますから、大体その程度のことになつております。もつとも札幌の方は少し数が少うございます。これは市の方からの御委託を受けております。その他は都道府県からということになつております。もちろんそのもとは厚生省であります。
  90. 戸叶里子

    戸叶里子君 更生施設ができましても、一度じだらくになつた人はなかなか直りにくいというようなこともよくいわれることなんですけれども、今までの御経験を通してごらんになりまして、お手にかけた方で更生された方と、それからまた恵び転落された方との。パーセンテージはどちらの方が多いか、おわかりになりましたらちよつとお知らせいただきたい。
  91. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 ちよつとそこまで私覚えておりませんけれども、再び落ちたのは確かにあります。たとえば救世軍が浅草で始終路傍説教を公園のまん中でやつているのですが、そこに集まつて来る婦人のうちで手にかけた者というのはおるにはおりますが、しかし欲目かもしれませんけれども、再び落ちたというのはどうも少いようです。何とか片がついたという方が多いのです。初めは十人に一人ぐらい更生したらいいだろうというので、昭和二十二年に始めた、確かにそうだと私どもつておりましたが、これは当局の御指導もあり、また多くの方々の御奨励もありまして、私どもとしても予想外の成績を収めておる、手前みそのようでありますけれども実際そう思つておるのです。
  92. 戸叶里子

    戸叶里子君 多少の転落者はしかたがないにしましても、そういうふうに更生された人が多いということを伺いまして、私ども非常に意を強くして喜んでいる次第でございます。と申しますのは、よくこの法案の通過などに反対の方が申しますことは、社会施設をよくしてもあるいは更生施設をよくしてもだめなんだというようなことをよく言われますので、それの裏づけどもなるお言葉を聞いて安心したわけでございます。  それから今度は平田さんにお伺いしたいのですが、横須賀の辺は非常に駐留軍関係の売春が多いと思いますけれども、先ほどの御意見を伺つておりましても、アメリカの人たちは大体衛生ということを非常に重んじるようなんです。そこで立川などで前にあつたことですけれども、一人の保菌者がいたために、近くのオフィスに勤めている人などまで検診したというようなことを聞かされておりますが、そういうことがございませんでしたでしようか、それを伺いたい。なぜかと申しますと、昨日の法務委員会で人権擁護局長と他の委員との間にそういつた問題がかわされておりまして、善良な人と非善良な人の人権擁護のいろいろな程度の問題が討議されたものですから、それの参考までに伺いたいと思います。
  93. 平田義弘

    平田参考人 ただいま御指摘の点は、実は日本が独立する前でございます。そのときにはそういうことがしばしばあつたように見受けられますが、現在は昨年七月に私の方の市長がかわりましてから、現在の市長は非常に民族意識の強い人でございまして、米軍といえどもくつにおいては一歩も譲らない、従つて向うに不合理な点があれば市の衛生部を通しまして向うと交渉しておるのでございます。今はそういうことはほとんど聞いておりませんが、その対象となるのは、たとえばキャバレーに働いている女の子については、一応グレードAをとらなければ外人が入らないのでございます。従つて向う側の要請としてグレードAを持つているキャバレーの従業婦は健康診断を――性病というとちよつとさしつかえがありますから、健康診断という何か妥協のような言葉で検診を現在いたしております。その際に身に覚えのない者は当然拒否できるのでございますが、その拒否権は現在そこの主人から衛生部の方へ申出があれば、いわゆる主人の裁量によつて検診はやらなくてもいいという程度まで現在横須賀では来ております。
  94. 戸叶里子

    戸叶里子君 もう一点お伺いしたいのですが、先ほどの御説明の中にありましたように、アメリカの軍の方でのアンケートに対して、正しい性交というものは妻以外にはあり得ないとみな答えたというお話でございました。その考え方に基きますならば米軍にサービスする日本売春婦というものは、アメリカ側は当然認めないはずにもかかわらず、黙認の形に置かれているために、結局そうした売春婦がたくさんいるというふうな結果になると思います。そこで先ほどのお話によりますと、米軍の主眼としておりますところは風紀よりも衛生ということに主として注意している、こういうお話でございましたが、そうしますとこの法案が通ることによりまして、米軍の方でも態度をかえて衛生というよりもこういうことはいけないのだというふうな指令を内部に通達させるというようなことで、だんだん駐留軍あいての売春婦に対してもいい影響を与えなくなつて来る、こういうふうに私どもは考えますが、そういうふうに了承してもよろしゆうございますか。
  95. 平田義弘

    平田参考人 四、五日前に米海軍MP隊長とそれからシエバードソンと――これは向うの公衆衛生部長でございます、一緒に会談いたしましたときに、MPの隊長は現在日本法律がそういうのがないのだ、横須賀の条例にも相子方を取締るという規定がないために、われ  は自分の方からこうしなさいということは干渉になるからと――これはまあ向うの逃げ口かもわかりません、しかしMPの隊長は、われわれも困るからぜひ男女両罰をつくったらどうですというふうに向うから言っております。従って私どもは男なのですが、よくこの問題を鳥と卵の話をする方がございますけれども、この本質的な問題はそうでなくて、原爆まぐろのようにいくらまぐろを食べたいと思っても、これが原爆かと思われますと、買手がなければ魚屋も店先からひつ込めるというのと同じで、これからただいまの法案のように相手方を処罰すると、横須賀でいう相手方とは駐留軍兵士を指すのでございますが、この一項がはっきりいたして来れば、買う方がぐんと少くなる、これは絶対ないとはいえませんが、かりに五回行くところが、もしもへたまごついて行けば日本の豚箱に入るのだからやめよう、こういうことになりますので、これが制定されれば非常な成果が上ると思っております。
  96. 戸叶里子

    戸叶里子君 ありがとうございました。
  97. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 瀬川さんにちよつとお伺いしたいと思います。これははなはだとっぴなあれですが、「雨に濡れた欲情」という映画をごらんになりましたか。
  98. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 見ませんです。
  99. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 これは最近のアメリカ映画で売春婦と牧師のいろいろなトラブルを映画化したものです。その中にわれわれが法律家としてことにこの法案に関連して考えてみた問題があるのでありますが、その中に売春婦に対する追放処分があるのです。これは売春犯罪であるかどうかは別として、追放というものは妥当であるということが大いに主張されておる。それで日本に少年法という法律がありまして、少年については犯罪をせぬでも、たとえば自己または人の徳性を害するようなおそれのある者に対しては、保護処分を加えることができるというふうになっております。刑法はだんだん進歩しておりまして、刑罰の少きことをもって理想としておる。ソ連の刑法でさえも刑罰を適用すべきものはだんだんと少くして、いわゆる社会防衛処分に席を譲っておる。世界各国の少年に対する刑罰立法も、今申し上げた日本の少年法のごとくに非常にかわっております。そこで私ども売春行為に対する刑罰立法を考えるにあたりましては、はたしてこういう刑法の趨勢に逆行するようなことがいいか悪いかということが根本問題であると同時に、売春行為が何ゆえに悪いか、刑法がそれに妥当するかどうか、刑罰をもつて臨むことが当然であるかどうかというようなことに対する一つの価値的な判断がそこに必要になります。先ほど心の問題を非常に説かれまして、私も大いに敬服したのでありますが、まさにその通りでありまして、道徳あるいは宗教の問題の以前に、私どもはそういう意味で刑法の中にこれを取入れることがはたして妥当であるかどうかということを冷静に考えてみなければならぬと思うのでありますが、宗教家としてのこれに対する御感想、同時にまた社会評論家としての平林先生にも、その点に対する御感想を承っておきたいと思います。
  100. 瀬川八十雄

    瀬川参考人 私は法律のことについてはまことに暗い者でありますから、申し上げることもずいぶんしろうとじみた乱暴なことを申し上げるかもしれませんが、今の少年の問題につきましては、最初に罰があって、それがだんだんそうでない方がいいというふうにかわって行ったというお話でございます。つきましては、やはりこの売春の問題も、まずこの程度のものを出しておいて、それでやってみて、これはいずれば刑を軽くした方がいいというふうなところへ行くのではないかと思いますが、まずここらあたりからやってみて、おもむろに考えた方がよかろうかしら、こんなふうに考えます。
  101. 平林たい子

    平林参考人 私先ほども一度申し上げたのですけれども売春というものが、一人の男と一人の女がひそかにどこかで肉体的な行動を行ってひそかにお金を渡すというような、非常に社会の例外的なことでありましたら、あるいはこれは犯罪でないと言えるかもしれません。しかし、現在の日本のように社会の表面にそれが現われて、目をおおう状態になっておりまして、一方ではそれが企業化して、たくさんの資本が投ぜられて、売春宿がもうかる、あるいは部屋を貸しても莫大なお金がとれる、百姓屋までが納屋を改造してパンパン・ガールに貸すというふうな状態になりますと、これは非常に社会の人心を破壊するものでありまして、目に見える物質的な破壊が犯罪であるならば、これほど人間の心を腐らせるのも犯罪と言えるのであります。これはひそかに行われている例外的な売春と同じように考えるわけには行かないのでありまして、まさに犯罪であると私は考えるのであります。
  102. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこの程度にとどめておきます。  参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は皆さん御多忙のところを長いこと貴重な時間をお割きくださってけっこうな御意見を聞かせていただきまして、まことにありがたく、委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  明日は午前十時から理事会、十時半から委員会を開くことにいたします。なお明日の委員会においては請願等の審査をいたしたいと思いますから、そのおつもりでお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十五分散会