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平田参考人 私はただいま御
紹介をいただきました
平田というものでありまして、現在
横須賀におきまして
環境浄化対策協議会の
委員をいたしておるものであります。各
基地におきます風紀問題の
発生原因は、すでに御案内の
通り皆様御
承知のことと存じます。またこの詳細につきましては、二十七年二月、
売春等処罰法案に関する
上申書をもちまして、
衆参両院議長に私から
上申書を
提出してあるのであります。つきましては、現在各
基地におきまして、
現行地方条例において十分に
売春が取締れるかどうか、こういう点を具体的に申し上げてみたいと思うのであります。
各
基地におきましては、第二国会以来、
政府が提案をなさるというので待
つてお
つたのでありますが、第一次
法案が流れ、その後音さたがないものですから、三十三年七月六日、宮城県の地方条例を皮切りといたしまして、各地に地方条例が制定され、現在七十五の都市町村におきまして条例があるのであります。
横須賀の例を申し上げますと、
横須賀におきましては、御
承知の
通り朝鮮事変を契機といたしまして、非常な勢いで兵隊が
横須賀に流れて参りまして、そこに必然的に風紀の問題が起
つて来たのであります。やむを得ず二十六年の十二月一日に、四月につくりました条例を強化し、今日に
至つておるのでございますが、御
承知の
通り、各自治体におきましては予算がないものですから、十分な
取締りができないのでございます。たとえば
横須賀において、汐入というところが一番風紀のやかましいところでございますが、
横須賀警察署における年間の
取締りの費用というものは、わずか二百五十万でございます。第二防犯がこれに当
つておりますが、その専門の警察官はわずかに十五名でありまして、そのうち甲、乙にわけまして、毎日
取締りを
行つておりますが、係長と非番を除きました四人の警察官では、一年中まわ
つておりましても、とうてい
横須賀の風紀というものは解決ができないのであります。従いましてこういう
意味からも、
横須賀におきましては一日も早く国会において
法律が制定されることを心から望んでおるのであります。
次に、こうした現況でございますので、皆さんも御
承知の
通り、
横須賀のEMクラブの近くにあります汐入の小学校は、昨日
横須賀の教育
委員会におきまして、環境に負けない子供がはたして周囲のハウスに囲まれてできるだろうかどうか、もしできないとするならば、小学校を他に引越さなければならないという、非常に悲惨な状況に追い込まれておるのであります。私は
日本再建をになう青少年を教育するところの小学校が、この風紀の問題において他に学校を移転するがごときことは、
日本の文化の上からもまことに恥ずべきことであると思うのであります。
横須賀の下町はそういう皆さん御
承知の
実態でありますが、さらに最近の事例といたしましては、武山に約二万五千の駐留兵が来ることにな
つております。すでに一万に近い兵隊が来ておるということでありますが、現在武山地区においては、新設部隊に生ずるところの風紀の問題につきまして、実は頭を悩ましておるのであります。さらに追浜におきましては、ヘリコプターの
基地となりまして、連日ここのところ主婦の方あるいは教育側の人が寄り合いまして、これが対策に苦心しておるのであります。しかしながら
横須賀の現在の条例及び自治体警察の予算をもちましては、とうていこれを防ぐことはできないのであります。こうした面からも、強く今回の法令が一日も早く制定されることを望んでおるのであります。
次に海軍
当局の考え方について、少しく申し上げたいと思います。このことにつきましては、昨年
婦人朝日主催によりまして、ここにおいでになります神近先生、私とも 座談会に出まして、その結論を極東軍司令部にアンケートを出したところが、向うから返事が来たのであります。それによりますと、米軍はいやしくも正しい性
行為というものは、妻以外にはしないという回答が来ておるのであります。もしそうであるならば、各
基地におけるところの風紀の問題というものは起り得ようがないのであります。このことにつきまして、二、三日前に、米軍の首脳部と私が会談いたしまして、米軍が
日本に民主主義を教えたというならば、
売春婦を背徳者とあなた方が言うと同時に、またこの背徳の
売春婦を買うあなた方買い手も背徳者ではなかろうか、こういうことでは
日本にほんとうの民主主義を吹き込むこともできないのだ、今度の法令を見ると、
相手方も罰するとあるが、あなた方はどうかと言
つて聞いたところが、MPの隊長も大いに賛成で、どうかわれわれの手では負えないからや
つてくれということを、向う側から言
つておるのであります。私はこの
法案が一日も早く通過することを希望いたしますが、現在再軍備その他の問題で
基地が設定されております。われわれ地方側から言いますと、国の都合で
基地が設定されておるのであります。従いまして、
基地設定によ
つて起るところの風紀の問題というものは、よろしく国が本腰にな
つてこの対策を立てるべきではないかと私は想うのであります。この点を強く私は主張したいのでございます。
ただいま申し上げた衛生の問題でありますが、現在二十八年の統計を見ますと、約七千名の海軍の兵隊が性病にかか
つております。表向き七千でありますが、実際を見ますと、約一万から一万二千と推定できるのであります。月に千名でございます。それで米軍は風紀の問題よりも衛生の問題に重点を置いて対策を練
つております。この衛生の対策について向うから六項目の要望が出ておりますが、これらの点については後ほど御質問の際に詳しく申し上げたいと思います。
次に、性病の問題を申し上げましたが、それよりも
横須賀で今大問題とな
つておりますのは、麻薬、ヒロポンの中毒患者の問題であります。環境の悪いところでは当然夜遅くまで起きておりますので、ヒロポンを注射する。それが現在ではヒロポンを買うために、ヒロポンの金をつくるために
売春婦に落ちて行くというのが現在の
実態でありまして、以前とはま
つたく主客転倒しておるのであります。
新聞によりますれば、一昨日の参議院においても、この
法律が強化されたということを伺いまして、私
ども基地外におる者も非常に喜んでおるものでございます。
次に
特殊婦人の
更生について一点だけ御
参考に供したいと思います。洋娼ははたして
更生でき得るかどうか、もしでき得るとすればどういう方法があるかという点につきましては、北海道民生部の委嘱によりまして、北大の教授の
方々が詳しい調査の資料をつくられたでありますが、これによりますと
特殊婦人は知能的にもその他にも非常な欠陥があるから特殊な対策を持たなければならないという結論が出ておるのであります。私も現地におきまして
特殊婦人の
更生対策に苦心いたしまして、あるときは
宗教家をお呼びし、あるときはまたいろいろな教養の面を高める講座一をいたしました。けれ
ども、多少の貢献はあ
つたのでありますが、最後に九人の
特殊婦人を選びまして、音楽による
更生を考えたのであります。御
承知と思いますが、TY楽団と申しまして、この九人の人が今まではじだらくな
生活をしてお
つたのでありますが、真剣に、ま
つたくわれわれもはたで見ておりまして涙ぐましい努力をいたしましたおかげで曲目も数十曲ひけるようになりまして、先般
フランスのダミアが
日本に参りましたときも、私、日比谷公会堂まで連れて行きまして、ダミアからも激励されたのであります。ようやく期待できてこれらの人が成功できるかと思
つてお
つたのでありますが、むろん私たちの微力の点もございましたが、九人のうち三人は足を洗いまして堅気の人と結婚いたしました。あとの二人は楽団の技術を買われまして、それによ
つて更生して行
つたのであります。しかしながら残りました四人の人は、これを
世間の人がささえてくれるならば何とか
更生する道もあ
つたのでありましようが、不幸にしてこの最後の四人の人は再転落を余儀なくされたのであります。これは今後この種
婦人が
更生をして行く上において、どうぞ諸先生方の御理解ある御後援と御配慮を私はお願いしたいと思うのであります。
次に赤線について申します。現在散娼の人たちが
取締りによりまして警察に行きましても、
自分たちは運が悪いからつかま
つたのだという観念でございます。これは目の前に赤線地区がありまして、そこでは堂々とや
つておる。にもかかわらず
自分たちも同じことをや
つていてつかまるのは、これは悪いのではなくて運が悪いのだというのでございます。従
つてほんとうにこの
売春問題を解決しようとするならば、私はこの
法案もさることでありますが、この赤線問題をいかにするかということが先決問題ではなかろうかと思うのであります。
最後に
法案について一言いたしますと、第一条に「も
つて健全な
社会秩序の維持に寄与する」とありますが、今度提案されました堤先生方のお考えを伺いますと、婦女の
基本的人権の擁護ということを主眼とされております。もしそうでありますならば、婦女の
基本的人権の擁護ということと健全な
社会秩序の維持ということは同格であるべきだと私は思います。従
つて「も
つて」という言葉を入れますと、「も
つて」以下の健全な
社会秩序の維持に寄与するために
婦人の
基本的人権ということが一つの仮定になると思いますので、この点はひとつ御配慮をいただければけつこうと思います。
次に定義でございますが、これはたいへんむずかしい問題であります。一応
売春を買う人、売る人、あるいはそれをや
つておる人、言うならば
世間ではそういう職業についておる人は一番下等だと
世間では言
つておる。そうであるならば、ひつきようするところこの問題は道義の高揚であると私は思います。それならば国民に最も範を示すべき国会の立法者がまず国民に模範を示していただかなければならないと思います。先日この
法案が出ましたときも、特定のいわゆるセカンド、
オンリーはいいのだということが公然と
新聞に出ていたのであります。一方においてはセカンドを囲える者は罰せられないで、貧しい者が、いわゆる金のゆたかでないものが遊びに行
つたときに罰せられるという
思想が、私はこの
法案を施行する上において隘路となるのではないかと思うのであります。この点は先ほど
平林先生のおつしや
つたように一応
売春というものを重点に置くということで除外をするというならば、別な
政府の方針としてそういうことを明確に規定すべきではなかろうかと思うのであります。
第三条以下は、現在の地方条例でみますると
施設を持
つた人には重いのでありますが、
売春婦には所によりますれば、この
法律の方が処罰が軽くな
つておる点も見受けられるのであります。
最後に一言いたしたいことは、とにかくこの問題はソビエトとか中共のような
社会主義全体国は別といたしまして、
日本と同じ機構を持つデンマーク、ノールウェーの北欧を見ましても、最後はやはり
生活の安定ということが
根本にな
つておると思うのであります。つきましては
売春をしなくても、努力をすれば
自分たちも食
つて行ける、そういう明るい
社会政治をや
つていただきたいということを心から念願いたしまして、私のお話を終りたいと思います。