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1954-05-20 第19回国会 衆議院 法務委員会 第58号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十日(木曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君    理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君    理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    花村 四郎君       猪俣 浩三君    木下  郁君       佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 加藤鐐五郎君  出席政府委員         国家地方警察本         部警視長         (刑事部長)  中川 董治君         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法務行政及び人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから順次これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 井本局長お尋ねいたしますが、先般私当委員会におきまして、広島地検事件を質問いたしておつたのであります。調査くださると御答弁がありましたが、その後附加して申し上げてみたいから、それをひつくるめてお答えいただきたい。  私のところへ参りました告訴いたした本人手紙によりますと、広島地検は、いわゆる前広島地積検事でありました中田氏の名義で広島銀行預金されておるという事実、これは贈賄者だと思われる塙坂文子という人に対して、広島自治体警察贈賄罪告訴したのだそうであります。その告訴状の中には中田検事名前はない。そういう告訴状自治体警察に出て、警察調べ地検へ送達された。そうすると地検ではその告訴本人取調べまして、非常に峻烈なる取調べをした。高坂浪子という婦人でありますが、これを三日間連続的取調べをしまして、三日目には脳貧血を起してぶつたおれて入院したのであります。私のところへ参りました手紙は十五日日付で本人が退院して参りまして、この手紙を書いた。私は何々悪いことをしたか、お前はまつたくの謹告罪の罪人だと言われて調べられた。実に憤慨して、いても立つてもたまらぬで自殺しようと思うくらいであるというごとき激烈なる手紙をよこして参りました。私は実に不可解であります。たとい謹告罪であるというふうに断定を下されても、他人のことならいざ知らず、自分の部内のことに対しまして、さような態度をおとりになるということは検察官として不適当だと思う。これは広島地検の次席が主として調べられた。ところがどうも預金関係は否認なさつておらぬようであります。しかしだれが贈つたかわからぬじやないか、あるいは中田検事自身のためた金であるかもしれぬじやないかということで責められておるそうであります。なぜ中田検事告訴の相手として名前を書かないかということで責められておるそうであります。私はこれははなはだ不都合なことだと思うのであります。そこでこういう事件はあまり委員会で査問を申し上げることは私も好まぬのでありますけれども、どうも広島検察庁のやることなすことが私のふに落ちない。今病院から診断書を取寄せておりますが、告訴した人を病院に入院するくらい検事がいじめ抜くということはどういう事情であるか、私どもははなはだ理解に苦しむ。それはそれといたしまして、この事実は法務省としてもお調べなつたはずでありますが、中田という検事名前広島銀行預金がしてあるのかないのか、その事情はどうなつておりますか。お調べの状態をお知らせ願いたいと思います。
  4. 井本台吉

    井本政府委員 お答えいたします。中田検事谷郷検事名前広島銀行本店に二百万円の預金があるというお話でございましたので、この点につきましては私どもの方でも非常に関心を持つておりますから、厳重に取調べをいたしました。現在までの状況ではさような預金は全然ございません。ただいままでの調べ状況を簡単に申し上げますと、それではなぜかような疑惑が生じたかということで、告訴状にもありまする吉田哲郎という方が国森亀次郎氏に、二百万円の銀行預金中田検事外一名の名前広島銀行になされておるということを申されたということでありますので、この吉田氏にその点につきましては、別途にまたいろいろ調べましたのですが、吉田氏はさような事実を言うた覚えは全然ない、また自分は、広島銀行に勤めておるが、中田氏がさような銀行預金を持つておることもなく、また取引関係も全然ない、従つて自分がさようなことを言うはずがないということを申しておりますので、この点についてははたして言つたのか言わないのか、聞いた人があるというのでなお引続き取調べ中でございます。廣島検察庁といたしましては、廣島銀行本店につきまして直接取調べをしておりますが、その調べによりましても、現在のところはさような預金はございません。  それから高坂浪子という方が、調べ中に脳貧血を起して倒れたという事実でございますが、これは私どものところに参つておる報告書によりますと、五月の十二日午後一時から約三時間ほどにわたりまして、東城町の警察署におきまして、ほかの関係者と一緒に、広島地方検察庁坂木検事波山検事と二人でこの告訴状状況その他を調べたようでございます。私ども調べでは別にそう手荒な調べをしたのではなくて、非常に懇切丁寧に調べたように聞いております。ただこの調べの最後にもしこの二百万円の金がほんとう銀行預金もなくまた贈賄でもないのに、さような贈賄したとか銀行預金があるというふうに間違つた告訴をした場合には、これは誣告罪の成立もあるかもしれないのであるということを申し添えましたところ、脳貧血を起して倒れたそうでございます。そこですぐに医者を呼びまして、医者に見せたところが、これは本人の持病であつて、また精神的のシヨツクもあつたと思いますが、そう大したこともなく回復したというように聞いております。以上のような事情でありまして、この二百万円の問題につきましては、なお引続き取調べを進めておる次第であります。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 どうも地元の諸君の本省に対する報告というものは、実に巧妙をきわめておると思います。もちろん私はいずれが真偽であるか今断定するものではありません。私にも詳細に関係人から手紙が来ておりますが、非常に事情が違います。ことに広島銀行預金云々は、これは相当の圧迫が出て来たということが報告されております。吉田某国森とは親戚関係であります。電車の中で話をした。まつたく予想もしないことを聞かせられたのであつて、その吉田某というのは広島銀行銀行員のために、銀行側から圧迫せられたことははつきりしております。これは警察調べにおきましても、私は今あなたが割切つたようなことじやないと思います。それは検察庁報告でしよう。そこでこれは非常に疑点があるのでありまして、まああなたの方もまだお調べになると言いますから、お調べ願いたいが、私も国会が終了いたしましたら法務委員会から調査に行きたいと思つておりました。この事件のみならず、実に奇怪なことが多々あつた。そうして町長や何かの明らかな文書偽造の点があるのであります。一切が何だかうやむやに葬られておる。その中心が今の中田検事になつておる。これは私は軽々に見のがすことができない事件であると思います。そこであなた方の方から至急調査していただいて、大体の事実があるなしにかかわらず、検察官適格審査会を開いていただきたい。私きのう牧野委員長に会いました。そうしたら事実の有無にかかわらず、調べが済んだら開こうという御意思であります。そこで今も自由党から出ている押谷委員に聞きましたら、自分もまだ一日も出たことがないし、どこに事務所があるのやらわからぬというような答弁でありました。先般あなたの答弁によつてその点はつきりいたしましたが、私はこの事件が事実であると、およそ前代未聞の話じやないかと思います。ただ今は時間がありませんので詳しくは申し上げられませんけれども、私自身としては非常に疑惑を持つておる。検事さんにそんなばかなことはないと思つて頭から取上げなかつた。今から二箇月も前からの話です。ところがどうも奇怪なことが多い。ですからただ一片の報告だけでなしに、最高検あたり、あるいは法務省あたりから特別に委員を派遣して調査してもらいたい。当法務委員会にもお願いして閉会になつたら岡もなく調査に行つてもらいたいと思つておりますので、今はこれだけにとどめておきますけれども、あなたに要求したいことは、これは牧野委員長言つておりましたが、こういうことは最高検がやることになつておる。そこで私も昨日検事総長にお願いして参りましたけれども、あなたの方からも最高検に要請して、事実をもつと的確にお調べいただきたい。それからある程度わかつたら、検察官適格審査会を開いていただきたいということをお願いして、これだけにとどめておきます。
  6. 井本台吉

    井本政府委員 もちろん私どもといたしましても、十分取調べを続けて行きたいと考えております。
  7. 小林錡

  8. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務大臣お尋ねをいたしたいと思います。時間の関係もありますので率直なお尋ねをしたいのでありますが、法務大臣検察官指揮監督について、その法律的な根拠とその内容をどういうふうに考えておられるか。それについて法務大臣の御所見を伺いたいのであります。
  9. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 法務省設置法検察庁法に基いて五つておるものと存じます。
  10. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務省設置法の第何条、検察庁法の第何条という、法律的な根拠をお示しになつて説明が願いたい。
  11. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 政府委員貝より説明いたさせます。
  12. 井本台吉

    井本政府委員 法務省設置法第一条、第二条、第三条、第七条。それから検察庁法の四条、六条、十四条などでございます。
  13. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 その指揮監督内容と申しますか、範囲と言いますか、これは政府委員からでもけつこうですから、それを一応御説明を願つておきたい。
  14. 井本台吉

    井本政府委員 検察庁法の第四条、六条には「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。」「検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。」「検察官と他の法令により捜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる。」それから十四条、「法務大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」これが検察庁法でございます。法務省設置法第一条には、「国家行政組織法第一秦第二項の規定に基いて、法務省を設置する。」「法務省の長は、法務大臣とする。第二条に「法務省は、左に掲げる国の行政事務を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。「一 検察に関する事項」その他十、項目ございますが、これらの条文によりまして検察庁に関する法務大臣指揮監督権はおのずから明らかであると存じます。
  15. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 これは昨日刑事局長からも、法務大臣検察官に対する指揮監督内容限界等について意見を述べられたところでありますが、法務省設置法検察庁法等を総合的に考えてみますと、結局法務大臣検察官指揮監督する具体的な規定としては、検察庁法第十四条が定めておるところであります。すなわち検察官全体に対しては一般的な指揮ができ、検事総長に対しては、そのほかに特に個々事件についても指揮することができる、こういうことになつて、しかも指揮することができるというこの法律の表現によれば、大体検察事務については検察庁法によつて検察官にまかせてあつてただ特に例外的と申しますか、きわめて消極的な関係において、検察庁法第十四条がこういう場合にはこういうことができるという規定をしておるんだ、こういうふうに思えるのですが、その点について法務大臣はどのようにお考えなんでしようか。
  16. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいまお述べになりました通りと心得ております。
  17. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そうしますと、検察庁法第十四条によつて法務大臣指揮監督するということはきわめて消極的なものであつて、やたらに検察官に対し、検察事務に対して、容喙しないというのが法律精神であり、しかも検察権の運用に関しては長い伝統がある、こういうふうに思えるのです。もちろん法務大臣はそういう態度で、その精神を生かしてこれから行かれるということは間違いないと思いますが、その点についてどのようにお考えですか、所信を承つて、おきたいと思います。
  18. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま御質問の意味を尊重して行きたいと思つております。
  19. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そこで検察官は、犯罪があり、かつみずからこれを捜査しようと考える場合には、これを捜査しなければならない、捜査する権限があることは御存じの通りなんです。そうしてその捜査をするに当つて任意捜査によつて目的を達し得る場合もありましようし、任意捜査では目的が達成されない、どうしても強制力を用いる、すなわち被疑者の身柄についてはこれを逮捕勾留する等の処置に出なければ、検察庁法及び刑事訴訟法精神従つて捜査目的を達成し得ないというように、検察官すなわち検事総長初め直接捜査に当つておる班場検事においてもその必要を認めるときに、法務大臣は、その捜査をしてはならないとか、あるいは勾留してはならぬ、逮捕してはならぬというようなことが言い得るものであるかどうか、この点をはつきりとお答え願いたいと思います。
  20. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 原則といたしましては、検察庁法十四条で個々事件取調べまたは処分することについて検事総長指揮することができるのでございますが、普通の場合はこの但書を発動いたしておりません。
  21. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 もう一度繰返しますが、検察官犯罪があるときには法律上これを捜査しなければならないのです。捜査する義務がある、その権限があるわけです。検察官犯罪ありと思料してこれを捜査しようと考えておるときに、その捜査勾留あるいは逮捕という措置がぜひとも必要である、そうしなければ検察官としての職責を果し得ない、検察庁法により、あるいはまた刑事訴訟法によつて、ある事件について被疑者逮捕勾留しなければその目的が達成できない、こう考えておる場合に、法務大臣がそういうことはいかぬ、捜査してはならない、逮捕してはならない、勾留してはならないというのでは、検察庁法やあるいは刑事訴訟法の定めておる精神を生かして行くことはできない、その法律従つてその職責を果し得ない、こういうことになるのですが、一体検察庁法第十四条の法務大臣検事総長個々事件について指揮するとき、そういうふうに、法律の命ずるところ、検察官良心の命ずるところに従つてこれをこうしなければならぬというものを阻止することが、法務大臣としての権限の中にあるのかないのか、私はそういうことはないと思うのですが、その点についてはどうなんです。
  22. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 場合によつてあり得るのでありますが、普通の場合は申出をそのままさせておるわけであります。それが当然であります。
  23. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 その場合によつてということをお伺いしたいのです。法律がこうしなければならないとちやんと定めてあつて検察官が真に誠実に良心従つてこうしなければ法律に従うことができない、こうしなければ自分たち職責を果し得ないと確信しておるときに、法務大臣としては、そういこ捜査をしてはならぬ、そういう取調べをしてはならぬ、そういう措置をしてはならぬということは、法律精神を蹂躙し、検察官良心を蹂躙することになるのですが、それをなし得る場合というのは一体どういう場合であるか、それを明確にお答え願いたいのです。
  24. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 具体的に申しますれば、今回の犬養君の十四条の指揮権発動したごときものでございます。
  25. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 いや、それはわかつておるのです、十四条の指揮権発動によらなければそういうことができないのですから、これはもう法務大臣がおつしやらなくても法律にちやんと出ておる。個々事件について検事総長指揮することができる、取調べ及び処分について指揮することができるということは、検察官をして法律従つてほんとうにその職責を全うせしむるように、取調べあるいは処分指揮をなさるわけなんでしよう。ところが、法律精神を蹂躙し、検察官良心を蹂躙して検察庁法第十四条によつて法務大臣がそういう取調べをしてはならぬ、そういう逮捕勾留等をしてはならぬということを言うということは、まつたく法律精神を蹂躪したことになるのですが、そういうことが一体できるのですか、どういう場合にできるか、それを聞きたい。
  26. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私はあえてあなたを反駁するわけではありませんが、高橋君は先日の本委員会において、そういうことをなし得るということを御力説は相なつたのでありまして、今日とは少しく御意見が違うように存じますが、それは別といたしまして、国家の重要なる問題につきましては発動し得る、私はこう思つておるのでありまして、いろいろ御批判はあるでありましよう、見解を異にする場合はあるでありましようが、私はそういう場合があり得ると思います。
  27. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私のこれまでの委員会において述べたところは意味が違うのです。私は、こういう場合にはできるということを知つておりますけれども、今ここでは言つてない。できる場合もあるのです。全然十四条の発動はできぬと言つておるのじやないのです。ただ法務大臣は、今お尋ねしたようなことについて、どういう場合にでき、どういう場合にできないのか、できる場合をこの席で具体的に明らかにさるべきだということを要求しておるわけです。私はこれまで委員会で申し上げたことと何も矛盾ししおることを言つておるのじやないのです。そういうあさはかな、軽率な答弁をされては困る。そういうことで逆襲したなんと思つていたらとんでもない間違いです。法務大臣は、こういう場合においは、これはできるんだという、そのできる場合を具体的に言つてもらいたいのです。
  28. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私は駁撃するつもりでも何でもありませんで、そう思いましたがゆえに、さようにお答えをいたしたことでございますが、具体的に申しますれば、事実の問題としては、犬養君がさきにいたしましたような、国家的重要なる立場においてという法案通過の見通しなどは、具体的の事実でございます。
  29. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 犬養法務大臣がなさつたことが合法的なものであるときめてかかつてのような答弁でなくして、一般的に法務大臣が十四条の指揮権発動して、捜査をしてはならないとか、あるいは逮捕勾留等をしてはならないということが言えるのは、一体どういう場合か、その標準を示してもらいたい。言える場合と言えない場合との標準を、あなたはどういうものさしでなさろうとするのか、その点をお答え願いたい。
  30. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これも申し上げたように、国家的重要なる場合に発動することもありますし、また検察官行き過ぎなどの場合にもあり得ると思います。
  31. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 その検察官行き過ぎというのは、どういうことをおつしやるのであるかということ。それから国家的重要ということの意味が実に不明確なんです。と申しますのは、社会の秩序を維持するために、犯罪があるときには、これを検挙し、捜査し、そしてそれに対し適当なる措置を講ずるということが、国家的大きな目的なんです。ところがそれを犠牲にしてでも、捜査をしない、あるいは逮捕をしない、勾留しないということをなし得るのは、今の犯罪捜査という国家的な目的と比較してみて、どういう場合に言えるのか。今お尋ねした二つの点について具体的に御説明願いたいのです。
  32. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私は国家的重大なる立場に立つて考える場合、これも同じような意味にも含まれますが、国際問題等におきまして、検事としては起訴相当と思うものでも、法務大臣としては検事総長指揮し、これを中止せしむることもできると思います。
  33. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今のは答弁になつていないのです。検察官行き過ぎの場合とおつしやつたが、検察官行き過ぎというのは、どういうことをお考えになつておるのであるかということ。それから犯罪捜査して、これを適当に処分するということも、国家的大きな目的があるわけなんです。ところが一方、国家的見地に立つてそれを犠牲にしなければならぬという場合は、一体どういうことを標準にして決定されるのであるか。この二つをいま少しわかりやすく、納得の行くように御説明願いたい。
  34. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 たとえばただいま申しましたように、国際的問題が起きましたときに、検事自分考えよりいたしまして、こうした方がいいというやり方もあるのでございますが、高所大所より見てこれはとめた方がよかろうという場合があり得ると思いまして、そういう場合には指揮権発動いたしてさしつかえない、かように考えます。すなわち一面において、国家的の高所大所より見ると同時に、また刑事政策の上より見ましても、そうすることが適当であると法務大臣考えましたときに、指揮権発動し得る、かように考えます。
  35. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 検察官行き過ぎということについての説明もありませんし、それから国家的立場に立つてということは、ものさしにも何にもならぬと私は考えますが、一人で押問答をしておつても、解決のつかない問題ですから、また別の機会に譲りましよう。  次にお尋ねをいたしたいのは、昨日初めて犬養法務大臣のとられた処置についての理由を、法務大臣文書に基いてお読上げになりましたが、その中に法律的性格云々ということがございました。あの法律的性格というのはどういうことを言うのですか。それを御説明願いたい。
  36. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これは主として第三者収賄罪ども含めてでございます。
  37. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 検察庁におきましては、検事総長初め捜査に直接関係しておる人及びその中間の多数の幹部が会議をして、熟議熟議を凝らして、この犯罪ならこれは犯罪容疑が十分である。この犯罪捜査するには逮捕勾留しなければならない。こういう意見なのですね。専門家が長い間の経験に基いて、そうして衆知を集めてそういう結論が出た。ところがそれを一法務大臣法律的性格によつてそんなものは逮捕勾留する価値なし、今は逮捕勾留すべきでないのだという結論を出した。それがどうも国民納得が行かないのです。法務大臣はそうまで法律的知識があるとは思われない。法律的性格について、逮捕すべきでない、あるいは勾留すべきでないという結論が出るほど、国民としては、犬養法務大臣がそうまで法律的性格について専門的知識をお持ちになつておるとは思わない。国民から見れば、やはり長い間検事として習練を積んだ検事総長なり、次長検事なり、検事長なり、次席検事なり、検事正なりをやつた人たち意見の方が正しいと思つておる。法務大臣は、犬養法務大臣法律的性格についてああいう処置をとつたことついて、いろいろ引継ぎもあつたでありましよう。御意見も聞き、その後、御研究にもなつたと思いますが、検察出法律的性格に関する見解が、間違いで、法務大臣の方が正しいということをお示し願いたい。
  38. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 犬養君のとられましたことについての批判は、私は一切避けたいと思います。犬養君は、あなたのお説によりますと、専門家でない。専門的にめしを食つて来た者がこうであるというのに、しろうとの法務大臣がかような指揮をするのはけしからぬという御意見であります。そういう批判は避けますが、犬養君の主としたる問題は、国家的立場より重要法案の見通しがつくまでということでありまして、そういう法律的性格の問題もあるでしようが、一番の重要な問題は重要法案の通過の見通しがつくということだと私は思つております。
  39. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それはどういうところからそう思われるか知りませんけれども、読み上げた文書によりますと、何か法律的性格ということが第一に書いてあるでしよう。おもなるものをあとにまわして、軽いものを先に書いた。こういうわけですか。法律的性格ということを第一に掲げてある。しかも法律的性格というもとの、その他重要法案の問題について軽重があるというような表現ではないが、むしろ法律的性格という方を重要のもののごとく常識的には表現しておると思うのです。なぜ加藤法務大臣は、初めの法律的性格ということはそう大した問題ではなく、あとの重要法案が問題になるというふうにお考えになるのですか。それはちよつと逃げ口上じやないのですか、法律的性格という問題については、国民の輿論は決してこれに納得しないであろう、承服しないであろうというので、法律的性格ということはあまり御議論なさらないで、重要法案など国家的見地といつて、あいまいにしておいた方がぼかすのによいと思うから、そういう御答弁をなされるのじやないのですか。その点を伺います。
  40. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 あなたのお聞き間違いであるとは私は申しませんが、これには「稟請案件は事件の性格と、防衛関係教育関係国家的重要法案」とありまして、法律的性格ということは犬養君の新聞に発表されたる発表にあるのでありまして、それの中にはあるでございましようが、その法律的性格ということは昨日読んでおりません。
  41. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法律的性格ということは、これは新聞にあつたことと、私がその事件の性格ということは法律的性格だというふうに考えておつたところから出たわけでありまするし、加藤法務大臣も先ほど、法律的性格とは第三者収賄をいうのである、こうお答えになつたところからすれば、事件の性格ということは事件法律的性格であるということには間違いがないと思うのです。だから法律的ということが書いてあろうがなかろうが、そんなことは大した問題でないと思うのです。もつと大きいところから、事件の性格というのはそれでは法律的性格じやないとおつしやるのですか。そうもおつしやるわけに行かないでしよう。法律的性格ということがさつき出ておるでしよう。事件の性格というのは事件法律的性格ということだと思うのですが、加藤法務大臣もそう思つていらつしやるでしよう。第三者収賄というものは、被疑者勾留あるいは逮捕するのに、なぜそのときは不適当であるということになるのですか。それも一つの条件になつておるのですから、それを御説明願いたいのです。
  42. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私は高橋君のごとき専門家でございませんが、私が最も犬養君の指揮権発動を踏襲するゆえんのものは、そういう法律問題もあるのでございまするが、重要法案というこの問題、私が犬養君の指揮権発動をさしとめないで踏襲する主なる眼目はここにあるのでございます。
  43. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういたしますと犬養さんは、事件の性格、すなわち第三者収賄であるから今ただちに逮捕勾留すべきものでない、こういう意見でされた。それも一つの条件になつておる。しかし加藤法務大臣は、そんなことは別として、やはり重要案件の云々ということが重点である、こういうふうにお考えになるような趣旨のようでしたが、それでは犬養法務大臣事件の性格ということを条件の一つに考えたということは間違いだ、こういうふうにお考えになるのですかどうですか、そこをお尋ねいたします。
  44. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私は犬養君のやつたことに対して批判をいたしません。間違いであるとも間違いでないとも、さようなことは私は申しません。
  45. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 将来一般的に、検察官法律に従い良心従つて被疑者勾留逮捕しなければならぬと思つているときに、事件法律的性格なんというようなことで検察官意見を拒否するというようなことはよろしくないというふうに法務大臣はお考えなんですか。
  46. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私はしばしばお答えいたしましたように、犬養君のなし士したる声明に対しての批判は一切避けます。
  47. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それは私の質問をよくお聞きにならなかつた答弁だと思うのです。私は犬養さんのことを言つておるのじやないのです。将来法務大臣検察庁法第十四条に従つて指揮権発動せられるような場合に、事件の性格等によつてそういうことはさるべきものでないのだというふうにお考えであるかどうか、それを聞いておるわけです。
  48. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 将来の問題に至りましては、その事件が出て来ました具体的事実について私の判断を下したいと思います。
  49. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 こういうことで時間を空費するのもどうかと思いますから、次にお尋をいたします。  重要法案の審議に関してあの段階においては逮捕勾留すべきものでないのだ、こういうお話なんですが、昨日の御答弁では、衆議院議員としてでなく党の幹事長ということを考えてだ、こういうお話でした。政府が法案を提出されたときには、しかもそれが重要だと考えるときには、ぜひともそれを週過さすように努力しなければならない、党の幹事長はそれがために重要た地位にあるから、それでそういう措置をとつたのだ、こういうふうな趣旨であつたと思いますが、そういうことになりますと、重要法案が審議されておるときに、それがしかも政府とは反対の立場ある政党の幹事長というものは、政府から見れば重要法案の通過に対して反対するのですからいわば障害になるわけですが、この種の事件に関して法務大臣は、重要案件が通過するのにぐあいが悪いからというようなことで、野党の幹事長等をむしろ今度は逆に逮捕あるいは勾留することが都合がいい、いうようなときには、そういうこともされるのじやないかという危険を感ずるのです。重要法案、重要法案ということになるとそういうことになるのですが、それについては法務大臣はどういうふうにお考えなんですか。自分の方に都合の悪いときには幹事長を逮捕してはたいへんだということになれば、野党の方の幹事長は、犯罪があるなら少々軽微でもこれを逮捕した方が都合がいい、これが国家的見地だということになると、検察権の運用というものは不公平しごくになるのですが、そこのところはどうお考えになるのですか。ただ口先だけでなくて心から御答弁願いたい。国民はそういうことを疑つているのです。検察権の不公平な行使ということを心配しているので、その心配がないということの保障のつき得るような御答弁を願いたい。
  50. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 さような御心配はないということは、今その場のがれに私は言うのではありません。野党の場合でもあるいは逮捕を延ばすというふうなこともあり得る。ないとは申し上げないのでありまして、そういう問題はその当時の環境及びその当時の実情の具体的な事実について見なければならぬのでありまして、不公平にひとり与党にのみで野党にどうとかいうことは、私は考えておりません。
  51. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 ところが法務大臣ひとつ冷静にお考え願いたい。国家的見地に立つて重要法案を政府が出しておつて、しかもそれが通過しなければならぬからというので、検察庁法刑事訴訟法に基き、あるいは検察官良心、良識に従つて、ぜひとも捜査目的を完遂するにはこの人を逮捕勾留しなければならないというにもかかわらず、それを犠牲にして、政府与党はどうしてもこの法律を通過しなければならぬという国家的見地、こうあなたはおつしやるのだが、それに立つてやるとすれば、今度は反対の立場に立つておる野党の幹事長などは、これを逮捕しておいた方が都合がいいでしよう。与党側の国家的見地ということになれば、むしろそういう重要法案の審議を阻止するような分子はおらない方がいいということになるから、犯罪は少々軽微であつてもまあこれはひとつ勾留しておいた方がいい、逮捕しておいた方がいいということになる。これは専制政治の時代によくあることなんです。のみならず民主主義国においても、よほど政府が公平な立場に立つておらなければそういうことになりがちなんですが、ちようどそういうことを思わせるようなことの一面をなさつたというのが、このたびの処置ではないかと私は思うのです。もう野党も与党も同じように取扱うというのは国家的見地ですが、あなたのおつしやる考え方の国家的見地はおかしいと思う。幹事長を今逮捕されたのでは重要法案が通りにくいということになると、野党の幹事長をむしろ逮捕勾留しておいた方が重要法案が通りやすいというときには、犯罪のないときにまでやるとは思いませんが、これは少々軽微であるというようなことでもやるのではないかという危険を国民が感じておる。それが重大問題であると思うのです。だから国家的見地だとか重要法案とかいうようなことでもつて、そういう漠然とした話でもつて、この検察庁法第十四条の指揮権発動をしたというというところに、私は大きな問題があると思う。国民はとても納得しないのです。もう一ぺんお答えください。
  52. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私より専門家高橋君の方が、よく御承知のことだろうと思いますが、今度の問題のときは、表に出て大いなる問題になりましたが、指揮権発動するということは、以前においてもときどきあつたことであると聞いておるのでありまして、今度のごときは、政治的問題になりましたがゆえに、これが問題になつたのであります。私といたしましては、その場限りによいかげんなことを言つてお答えをいたすつもりはないのでありまして、今後もこういう問題には、公正に対して行きたいと思いまするが、今度は異例の場合でございます。犬養君が職を賭してその信念に生きんとする立場においてこれをやつたという、相当の確信をもつてやつたことなりと私は信ずるのでございます。
  53. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 これは私のお尋ねに対しての答弁にはなつていないのです。今おつしやつたことは、まあぼやかしておつしやるのではどうにもしかたがないのですが、もしまじめにお答えくださるのでしたら、こういうことを聞いておるのです。検察庁法第十四条の発動をされたことは、今までもあるからよく知つておるだろう、こうおつしやるのですが、それはあつたことは事実だと思います。しかし検察庁があげて主張したところと異なつて、しかも国民のとうてい了解することのできないような関係において法務大臣指揮権発動があつたということは、私はこのたびが初めてであると思つておる。そこで事件法律的性格ということについては、これも明確な御答弁ができないのです。のみならず、加藤法務大臣は、そういうことよりも、むしろ重要法案審議ということに重点を置いてやるのだとこうおつしやる。ところが政府が重要法案であるとし、与党がこれを支持して通過させようというときには、与党の幹事長を逮捕したり勾留したりすることは都合が悪い。これは国家的な立場に立つてこうすることがいいのだとこうおつしやる。そういう考え方は、重要法案の審議を阻害するといいますか、重要法案の通過が困難なような場合においては、反対の立場にある野党の幹事長なり野党の党の要職にある人たちを、今度は逆に国家的立場に立つて、重要法案審議の都合上、その通過をはかるがために、これを逮捕したり勾留したりするようなことをやる危険がある。これは常識上考えられる。国民もそう思い、その点を検察権の正しい発展のために国民はこぞつて憂えておるのです。ところが加藤法務大臣は、この点についてはさつぱり御答弁がないのです。全然ほかのことについてのお話があるのですが、これはこの検察庁法十四条に関連しての法務大臣指揮権発動の重大な問題なんです。検察権運用に政党が加入してはならない。政党政治である場合にはよほど検察権を正しく育て発展さすということを念ずる法務大臣でなければ資格がないと言われるのはそこなんです。与党に都合のいいことは、国家的見地でこうしたというときには、野党に対する弾圧ということをまた反面考えなければならぬ。国家的立場において、大局に立つてこうするのだということでは、これはたいへんなことになるのです。それをひとつほんとうに加藤法務大臣良心をぶちまけてわれわれが納得できるような御答弁をいただきたい。そこにしつかりとした標準がなければ国民は心配するというゆえんがあるわけです。かつてに内分たちだけで、国家的立場だとか、重要法案通過のためなどと言つたのでは、答弁にはなつていないということを自覚していただきたいと思うのであります。
  54. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 高橋君の御質問を伺つておりますると、すべて不公平なりという見地からの御意見御質問のように思うのでございまするが、私はさように考えておりませんので、今後は――これは異例の場合でございましたが、今後は検察庁立場を尊重して行くことは申すまでもないのでございます。この点は御安心を願いたいと思います。
  55. 小林錡

    小林委員長 高橋君、四十分になりましたから、結論をひとつ……。
  56. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それではこの問題は、また他の同僚議員からも御質問があるでしようし、きわめて重大な検察権の生命に関する問題ですから、後日に留保いたしまして、この際刑事局長の方がよくおわかりと思いますから、お尋ねしますが、法務大臣に対する事件の稟請ということの中には、政党の幹事長というのは入つておるのですか、入つていないのですか、及び稟請事項というのは大体どういうことになつておるのか、御説明が願いたいと思います。
  57. 井本台吉

    井本政府委員 終戦前におきましては、高橋さんのよく御承知の通り、請訓事項というものは非常に多くなつていたのでございますが、現在ではこれはずつと減らしまして、なるべく第一線の地方検察庁限りで処置をさせ、やむを得ないものでも、高等検察庁あるいは最高検察庁どまりにするのが実情でございます。現在では正式に請訓を仰いでおるのは、行政協定十七条の改訂に伴うアメリカ軍の兵隊さんの犯罪事件、これにつきましては国際的な問題もありますので、全部一つ一つにつきましてこれは法務大臣指揮を仰ぐようにいたしております。そのほかの事件につきましては、一線の検事なりあるいは高検、最高検検事が、自分の方でこれは上司の指揮を受けた方がいいという判断をして特に指揮を仰いで来るものにつきましては指揮をしておるというのが大体の実情でございます。
  58. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういたしますと、国会議員であるからとか、あるいは政党の幹部、ことに幹事長等であるから、その事件についてはぜひとも現場の検事はその処置について稟請しなければならぬということにはなつておらないと承つていいですか。
  59. 井本台吉

    井本政府委員 一般的にはさようでございます。特別に、たとえば国会開会中は議員の逮捕請求につきましては、国会の答弁の都合その他もあるから特に稟請をせよというふうな命令を出しておけば、これはその都度その稟請の手続がとられるのでありまして、一般的にはさようなことであります。
  60. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 国会開会中にはもちろん逮捕請求をすれば、国会議員の場合は、裁判所からそれについし国会の許諾を求めるということになるから、あらかじめその稟請をするということも相当だと考えられるのですが、国会開会中国会議員、について逮捕の請求をするような場合には稟請をすべきものであるということを法務大臣から検事総長なりあるいは一般検察官に指令してあるのかどうか、それも一応念のために伺つておきたい。
  61. 井本台吉

    井本政府委員 特別な書面で指令したことはございません。しかし口頭でさような処置をとるようにということの指令が出ております。
  62. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務大臣お尋ねしたいのですが、国会議員とか、あるいは党の幹事長その他幹部等について、いわゆる検察官に対してはその勾留なり逮捕なり処分等について特別に法務大臣指揮を仰ぐようにということの指令は明確に出ていないように今承つたのですが、たとえば国会議員あるいは政党の幹部等に対して、今後法務大臣のいわゆる検察庁法十四条による指揮権発動に、先般の問題に関連してどうも検察庁の常識と合致しない、検察庁法あるいは刑事訴訟法精神に合致しない指揮をする危険があるというので、現場限りで法務大臣指揮を受けないでそういう処置をとることがあり得ると思うのです。すなわち命令をしていないのですから、法務大臣指揮を仰がないでそういう処置をとるようなことがあるかもしれないのですが、それらについて法務大臣はどういうふうにお考えなんですか。必ずこういうものについては指揮を仰ぐようにしろという態度であるが、それらは全部現場の良識にまかしておくというお考えであるか、それをお伺いしたい。
  63. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私としてそういう命令を出したことはないのでありますが、おそらくは重要なる問題については、良識から私の指揮を仰ぎに来るものだろう、こう考えております。現にただいまアメリカ兵のいろいろの問題につきましては、私の指揮を仰いでおります。
  64. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そうしますと仰げば仰いだとき、仰がなければ仰がなくてもいい、大体そういうようなお考え、すなわち国会議員とか幹事長等については、指揮を仰いで来れば指揮をするし、仰いで来なければ検察庁側にまかしておく、そういう態度と承つてよろしいのですか。
  65. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これは検察陣の常識とまつほかいたし方がありませんが、その問題自体について種々違うことであろうと思います。私自身はいまだ何も命じておりませんが、思うに重要なる問題については指揮を仰ぐことだろこと信じております。
  66. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 きようは時間の約束をしておりましたから、また次会に留保しておきます。
  67. 小林錡

    小林委員長 古屋委員
  68. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 大臣もよくお聞きください。これとちようど逆の捜査、人権蹂躙問題があるのです。井本刑事局長お尋ねしますが、例の横浜の郵便自動車ギヤング事件につきまして、捜査がどうなつておりますか、この点承りたいと思います。
  69. 井本台吉

    井本政府委員 これは被告人の神崎輝雄、吉田栄三郎、山本茂、この五名につきまして今月の十五日に横浜地方裁判所に強盗罪として公判請求をしておりまて捜査をいたした。一体詐欺事件でそういう大捜査を今まで国警がやつておつたかどうかということを承りたい。いわゆる重大なる難件でなければやらないように思う。告訴のない、告発のない詐欺事件について、国警は従来でも捜査本部を被告の住んでおる村の役場に置いて、数十人の人が捜査に当たるというようなことをやつた事実があつたかどうか。それからもう一つ、四十八時間以内に捜査が終りまして、検察庁に身柄をお引渡しになつたと思うのでありますが、その後国警がその身柄を正当なるところの刑務所に留置せず、転々として他の警察に留置して、しかも警察官の宿舎でこの二人に対して手錠をはめたまま数時間にわたつて取調べをした、こういうようなあるまじきことを国警は従来やつておつたかどうか、この点ひとつ御答弁願います。
  70. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 まず第一点の御質問についてお答えいたしますが、詐欺という犯罪の事実につきまして、捜査本部を設けて、まあ言葉は大げさであるかもしれませんが、大々的にやる、そういう事例は私の記憶ではございません。お示しのように富浜村におきまして捜査本部を設けたことも事実でございます。富浜村におきまして役場を拝借いたしまして捜査本部を設けました理由は、横浜の郵便車ギヤング事件のときに用いられました自動車が富浜村に乗り捨ててあつた、こういう事実を土地の警察が発見いたしたのであります。それで横浜のギヤング事件に用いられた自動車であるということが大体確認できましたので、この横浜のギヤング、すなわち強盗の被疑者捜査ということについては、犯罪地でありますところの横浜におきましても捜査本部を設け、相当専従者を設けまして捜査に努めました。それと同時に、その犯罪に用いられました自動車が発見された地域にも、この容疑者の発見については相当緻密にやる必要がございますので、強盗事件捜査本部を富浜村の役場に設けたのであります。そしていろいろ自動車のここへ来た経路の状況関係者から聴取もいたしましたし、それに関連していろいろな強盗被疑事件につきましての関係資料の収集をやつてつたのであります。お尋ねの渡瀬被疑者、紺野被疑者につきましては、その富浜村における捜査本部の材料によりましては、強盗の被疑者ということでありませんでした。ところが別に山梨県におきまして捜査しておりました詐欺事件について、両名の被疑者について強制捜査を進めることになりまして、その被疑者について、他面強盗被疑事件捜査本部の聞込み等の状況から、これもあるいは強盗事件に関連して相当な容疑の点も認められましたので、そういつたことの事情を聞く必要を認めまして、横浜市警と共同捜査をしておりました富浜村の捜査本部員が、この渡瀬及び紺野両被疑者につきましても、取調べをいたしたことは事実でございます。従いまして、繰返しますが、捜査本部を設けましたのは、強盗被疑事件についての捜査本部でございます。そうして渡瀬及び紺野両被疑者につきましては、別の詐欺事件で現地の山梨県において捜査中の人物であつたのでありますが、その捜査本部の関係者が、この両被疑者につきましても取調べをいたしたことはわれわれ報告を受けております。  それから第二点のお尋ねでございますが、この詐欺事件被疑者として、渡瀬及び紺野両被疑者につきましては、刑事訴訟法の定むるところに従いまして、身柄付で検察庁に送致いたしたのであります。その後勾留に相なりまして、勾留の場所等につきましては、たまたまその強盗被疑事件につきまして相当騒々しい関係等もごさいましたので、検察庁の方とも十分連絡をいたしまして、その富浜村の捜査本部とは比較的遠いところであり、しかも本詐欺事件被疑者から申しますと、その住所地から比較的近いと思われるところの富浜村を管轄しない隣の地区署で勾留が行われたのであります。勾留につきましては古屋委員御案内の通り警察署勾留される例が非常に多いのでありますけれども、特異な例といたしましては警察署の代用監獄へ勾留される例もあるのでございまして、これは一般の他の例と同じように警察署の代用監獄といたしまして、この富浜村を管轄しない隣接の地区署を代用監獄として勾留せられたのであります。その間の取調べは、警察官が補助いたしましていろいろ事情を聞き、ただいま申しましたように、強盗被疑事件等につきましても事情を聴取する必要がございますので、関係警察官が事情を聞いたことは事実であります。  それから手錠の問題等も、私もちよつと手錠をはめてやつたのではないかということを相当聞き込みましたので、そういうことがあつては不穏当だと思いまして、事情を聴取いたしたのでありますが、手錠につきましては留置場所から別の場所に護送と申しますか、移る場合におきまして、手錠を用いて逃走の防止に努めたことは事案でございますが、被疑者取調べている最中に手錠を用いたことはない、こういう事情を現地から報告して参つたのであります。
  71. 小林錡

    小林委員長 古屋君、大臣に対する質問はもうよろしゆうございますか。
  72. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 これは相当重大な問題ですから、お聞きを願いたい。偉い人はひつぱらぬでいい。下つ端の者は、嫌疑がなくてもひつぱつてしまうという関係がありますから、ぜひお聞きを願いたいと思います。  そこでただいまの答弁によつてさらに承りますが、渡瀬と紺野が調べられたのは、詐欺要件としては、ほとんど十分の一です。あとは全部ギヤング事件なんです。だからギヤング事件捜査の便宜のために、かつて逮捕状を出させて、そうして詐欺事件というものをでつち上げたようなことを言つておいて、これを調べたというのが、本件の真相なんです。  それでもう少し詳しく承りますが、一体今の代用監獄であるとか、ほかのところへ持つてつて勾留するとおつしやいますが、富浜村の管轄は、谷村でございますが、ただいまの小笠原というのは、同じ山梨県の十里も離れたところです。のみならず私が承りたいのは、一体勾留をいたしまして、検事さんの方に身柄が行つておる場合には、甲府刑務所というちやんと勾留する場所があります。検事さんに身柄が行つており、証拠が行つておるにもかかわらず、その人間を小笠原署という署へ連れて行つて、それからまたそこから引出して、国警の甲府地区署の出張所である竜王村の竜王出張所、建物の内部からまだけつこうでございますけれども、その署員の宿舎の中で一日錠前をはめて調べたという事実があるから聞いておるのです。そういうことをあなたの方では従来もおやりになつたかどうか、その点を聞いておるのです。
  73. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 事実関係をさらに詳しく申しますが、富浜村を管轄いたします地区署は、お示しの通り谷村地区警察署であります。谷村地区警察署におきましては勾留せられなかつたのであります。隣のただいまお示しの小笠原地区署に勾留されておるのであります。これは検察庁勾留の段階になりましてからのことでございますが、この場合にいろいろ検察官は御意見を申し上げて、隣の地区署に勾留されまし理由につきましては、当時この富浜村におきましては、先ほど私が御説明いたしましたごとく、強盗被疑事件捜査本部を開設しておりまして、強盗被疑事件関係者状況等を調査しておつたわけでございますが、その強盗被疑事件のうわさが非常に多くて、人の出入りその他によつてもいろいろ取調べ上不便を感じますし、そこで取調べることによつてますます周知される形跡もございましたので、隣の地区署に留置することに相なつたわけであります。  それからその取調べでございますが、その隣の地区署で取調べるのも一つの方法でございますけれども、これがたまたま強盗被疑事件捜査中であつたものですから、いろいろ住民の方方、報道関係の方々が、この詐欺事件逮捕しておる両名が強盗被疑者であるごとく相当うわさされまして――いろいろ出入りが多いものでございますので、なるべく人目を避けて事情を聞いて、詐欺事件内容を明らかにし、あわせて強盗につきましても若干事情を聞きたい点もよく調べたいという趣旨のもとに、お示しのごとく龍王の部長派出所におきまして、留置はいたしませんが、昼の時間にそこで取調べたことは事実であります。その際、派出所へ護送の途中におきまして手錠を用いたことは報告を受けておりますが、取調べの最中におきましては手錠を用いていない、こういう報告になつております。派出所で調べたことが適当か不適当かという御意見でございますけれども被疑者についていろいろ事情を聞く場所はなるべく被疑者にも迷惑をかけず、便利なところでもあり、しかも人目につきにくいところがよかろう、同時に比較的役所と申しますか公務所が適当と思いますので、派出所で取調べたのでございます。私新聞等で家族がおる部屋で調べたということを見まして、ふしぎに思いまして聞いてみたのでありますが、あの派出所は部長派出所でございます。部長派出所でございますので――派出所という公務所が同時に職員の住宅になつているのは、全国の各派出所の例でございます。この龍王の部長派出所につきましては、家族はそこに同居しておりませんで、部長は単身そこで居住しておりますので、家族等の面前で調べたという状況はないのでございます。派出所の建物自体が家族も住めるような構造になつていることは、全国の冬部長派出所の現状でございますけれども、当該被疑者調べる場合におきまして、その派出所を用いたことは事実でございますが、この部長派出所にはたまたま家族が同居しておりませんので、部長派出所の一室において調べたということが、家族持ちの場合におきましては、そこに家族が住むべくつくられている建物でございますので、家族と一緒に調べたという誤解を生んだ原因がここにあるのでなかろうかと私は考えておるのでございます。
  74. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで承りますが、一体捜査本部を富浜村に置き、最初に二人がひつぼられて行つたときには逮捕状を見せていない。そのときにはすでに新聞記者が二十人も来ておる。渡瀬は新聞記者から最初に尋ねられた。国警の警察官も来ておる。一体何ですか。告発も告訴もないのです。そうして詐欺事件に新聞記者が警察と一緒に二十人もつけて来るということはあり得ることですか。われわれはそんなことは考えられない。初めからギヤング事件という名目をつくつて、強要して本人を出させよう、こういう筋でやつたのじやないでしようか。その点が問題なのです。  なおただいま御答弁がございましたけれども、手錠をはめられてやられた人間が本日ここに来ておる。こういう問題は、そういう報告だけで確信が持てますか。確信を持つて答弁ができるというならいいのですが、本人がここへ来てはつきり朝から晩まで家族の住んでおるところで手錠をかけられて取調べられたと言つておる。それで、あとからこれは刑事局長に承りますが、検事のところへ身柄が行つておる。検事さんがそれをかつてに――どういうわけか知らぬけれども警察がほかへ連れ出して、ほかのところへ勾留しておいて調べられた。だから私は聞いている。九分九厘まではギヤング事件調査、これは調書を見ても新聞を見てもわかるのですが、畔柳という埼玉県の男と三人でやつたのだと、アメリカのヘラルド・トリビユーンにまで書かれている。二人の青年はもう世間に顔を出すことができなくなつて、問題になつているから聞いているのですが、そういうような単なる報告書をもつて、あなたの方で確信をもつてさようなことが事実だということを言い得るかどうか、それを承りたい。それが一つ。  それから捜査本部を富浜村に置いて、最初からお前はギヤング事件被疑者だと言つて逮捕状も出していないのに調べられている。逮捕状を出しておらなくともやり得る場合もございます。その点はいいのですが、本人ら二人から何の事件か、逮捕状をお示し願いたいということを強要されておるにかかわらず、いや持つて来てないというので二人をひつぱつて行く。しかも富浜村の中では村会が決議をして捜査本部の立ちのき強要までした。というのは青年団百三十人おる中の大部分をギヤング事件調べた。その事実はどうですか。日まで申しましよう。それは七日の日の、みんなが調べられたときから続いて数十人が、ギヤング事件のために渡瀬、紺野の被疑者の証人、参考人として調べを受けた、こういうことはどうでしよう。
  75. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 まず第一の御質問の私がここで申し上げる根拠でございますが、実を申しますと、御案内の通りこの事件は新聞にも出ましたし、この取扱い等について新聞で私見ましたので、全国の刑事事件をことごとく私が承知しておるわけではないけれども、これを見ましたので非常に関心を持ちまして、ことに人権の尊重という見地から関心を持つて現地の山梨県の警察隊長に照会を発しました。そしてその問の状況を聴取したわけであります。聴取したことに基きまして、御質問に対してお答えしたいのでございます。私が聞きました根拠は古屋委員と同様の見地でございまして、人権尊重という見地からいろいろ電話で聴取した内容に基いてお答えしたのでありますので、私が聞き違いをしておつたり、また向うが言い間違いをしておつたということは大体ないと思い、自信を持つて申し上げておるのでありますが、関係者について一々当りまして、その内容を確認してないことは確かに事実でございますが、電話等において状況を聞きました見地においては、著しく関係者の権利その他を侵害したことはないように私は了承しておるのであります。  以下、内容について申し上げますが、この富浜村におきまして、ただいま古屋委員からお示しのごとく、新聞報道関係者も相当ついて来ておられましたし、関係住民等も郵便自動準強盗事件に関心が高まつておつたことは確かに事実でございます。その強盗事件捜査のために、富浜村の村役場の二階を拝借いたしましてそこを捜査本部といたしまして、横浜から出張して来た職員と、地元の山梨県の職員とが合同で強盗被疑事件捜査をやつておつたことは事実でございます。従いまして強盗被疑事件被疑者を割出すために関係者の供述を聞き、関係者からいろいろ事情を聴取いたしましたことも確かに事実でございます。それで御質問の要点は、強盗被疑事件の容疑が、渡瀬被疑者、紺野被疑者であつたにかかわらず、強盗被疑事件でなしに、詐欺事件逮捕状を出したのがけしからぬじやないか、こういう御趣旨だと思うのであります。その点は私も同様に考えておるのでございますが、この強盗被疑事件について容疑をだんだん内偵することは警察の職務でございます。その強盗被疑事件捜査するということは、これは別でございますが、たまたま渡瀬及び紺野両被疑者につきましては詐欺事件の容疑が――応援の関係でなしに、山梨県の本来の警察活動によりまして、容疑が一応認められましたので、この事件につきまして捜査をいたしてたまたまほかの捜査本部の関係で両被疑者につきまして強盗被疑事件についても事情を聴取する必要を認めまして、関係警察官が両被疑者につきまして強盗事件取調べをいたしたことも率実でございます。その強盗被疑事件の便益のために、詐欺被疑事件を用いるということは、まことに適当でないと私も考えておるのでございますけれども、他の事件捜査中の被疑者につきまして、他の犯罪、この場合は強盗被疑犯罪でございますが、他の容疑事実につきまして聴取することは、必ずしも全面的に禁止されているものではない、こういうふうに私は了解しておるのでございますが、この点はいろいろ御意見も拝聴いたしたいと思うのであります。  それからこの両被疑者逮捕に向いましたときに、新聞報道関係者がたくさん一緒にいらつしやつた、その点につきましては詳しくは電話で開きませんでしたけれども、大体この場合におきましては、富浜村に捜査本部を設け、ギヤング事件捜査をやつておるということが新聞報道関係にも知られておりますので、ほかのいろいろな意味での警察活動も含めての警察活動のすべてが、報道関係者から見れば強盗被疑事件のごとく考えられるということもあつたのじやなかろうか。それで当時山梨県の北都留郡の警察活動は、強盗被疑事件捜査も十分やつておりましたけれども、その他の犯罪捜査ももちろんやつておつたわけでありますが、そのすべての捜査活動について何と申しましても、その当時乗り捨ててあつた自動車がそこに発見された関係から、報道関係者すべてが、現地の警察活動すべてが強盗被疑事件捜査である、こういうふうに考えられまして、いろいろ取材活動をなされておつたのであろうことが想像にかたくございませんので、何罪の被疑者であろうと、強盗の関係者でなかろうかと報道関係者がごらんになつた、こういうことも考えられるのでございまして、お示しのようなこともあつたのでなかろうかと想像いたすのでございます。同時にまた、私が申し上げましたごとく、この両被疑者につきましては詐欺事件捜査を進めたのでございますが、他に聞込みによりまして、この被疑者の方々が自動車売買に関連して申込みを受けた、こういう申込みを受けた方からの事情聴取もいたしましたので、盗強被疑事件につきましても、この被疑者につきまして事情を聴取いたしておりますので、ますますそういつた点がうわさが大きくなつて来た、こういう点はそうであろうと思うのであります。私ども犯罪被疑事実を内偵し、捜査するという点につきましては、捜査の必要上からもなるべく秘密を重んじなければならぬと同時に、ことに被疑者の名誉を保持するという見地からも、そういつた捜査活動が外部に漏れないことに非常に努力するのでございますけれども、取材活動はいろいろごくふうなさいまして、被疑者がどこに行つているかというようなことにつきまして非常な関心をお持ちでございますので、この方々が何事件被疑者であるとか、強盗事件被疑者であるとか、詐欺事件被疑者であるという捜査状況につきましては、捜査上の必要と、被疑者の名誉保持の両目的のために秘匿しておつたことがかえつて災いをなしまして、この方々がギヤング事件被疑者のごとく報道された、こういうことになつたのじやなかろうかと思いまして、この点まことに被疑者の方々にお気の毒であると思つておるのであります。
  76. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そういう答弁はどうも納得が行かないのです。まずそれでけ逮捕状はどういう理由で出されたか御承知でしようか。一体二人の身分は、よく御存じだと思いますが、渡瀬はあそこの村の有力な方であつて、駅の真裏に並んでいるうちです。しかも渡瀬の父親は、食糧関係の専務理事をやつている。紺野の父は、かつて技師であつて、繊維関係の権威者である。二人とも前科はない青年である。それで告訴も告発もないのに初めから逮捕状を出すという例は、われわれ聞いたことはない。逮捕状を持つて来なくて二人を一番最初に取調べたのは、ギヤング事件調べている。しかもそのときには二十人の新聞記者がついて来ている。人権を尊重し、しかも二人の名誉を尊重すると言うが、逮捕状を持つて来てない。内容は何にも示していない。新聞記者が二十人もついて来た。一番最初に、渡瀬でありますという本人の確認は、刑事の前におつた新聞記看がやつた。しかもこのくらいの、かりに詐欺事件だといたしましても、県の捜査本部から出て来て、地区署の関係の係はすつぽかされておつて、県の捜査本部の主任が二人来て初めから調べるという捜査をやつている。こういうことは私ども今まで聞いたことはない。従いまして、どんなにあなたが答弁いたしましても、ギヤング事件の嫌疑で調べるのだけれども逮捕するところの方法がないから、詐欺事件に名をかりてやつたということをお認めにならないか。あなたががんばつてこれを御否認なさるなら、関係調書を全部検察庁にとつていただけば、どれほどギヤング事件調べ、どれほど詐欺事件調べたかということがはつきもわかる。全然詐欺事件は初めから聞いたことはない。ギヤング事件をやつている。しかも捜査本部を置くと同時にこの二人はアリバイをしている。あの事件の起きました三月一日の午後九時ごろには渡瀬と会つているということを村長がちやんと証明している。しかもこれは駅の真裏の米屋さんです。被疑者は父親とともに米屋をやつている。三月一日の晩におつたということは、村長、並びに村の人たちが数人ふろを借りに来ておつて、アリバイをしている。紺野におきましては、紺野の親戚の千葉の人間と東京の人間が、紺野のうちに三日ばかりたまたまそのとき来合せてとまつてつて、はつきり捜査本部の方にアリバイをした。アリバイがはつきり出ているのに、この人間を逮捕状で持つて行つた。逮捕状の内容は、私調べましたけれども、天野刑事という人のうちに行つて、二人が日本刀を詐欺したという逮捕状の事実なんです。渡瀬はそんなうちへ行つたことは生れてから今までない。こういうでたらめの逮捕状である。初めから不起訴になるのはあたりまえです。それで承りたいことは、こういう場合に一体国警はいつまでも逮捕状を出すのですか。それでわれわれ法務委員会でも問題にした。やたら逮捕状を出されたのでは困るというので、刑事訴訟法のときに、刑事局長もいらつしやるけれども、われわれは反対した。この点ですよ。告訴も告発もなく、二人の身分ははつきりした村の有力者だ、逃走のおそれもない、そういうものに初めから逮捕状をお出しになるのですか。私はこういうような逮捕状を出した判事さんに文句を言いたいけれども、あなたはそういうことをやりますか、その点明確な答弁を願います。
  77. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 逮捕状の濫発という点につきましては、まことにお説の通りでございまして、そういつた点がないようにいろいろ訓練いたしておるのでありますが、本来この事件につきましては、お示しの通り、日本刀に関連する詐欺事件につきまして大体疏明が出て、しかもこの場合早く逃走のおそれ等も認められましたので、逮捕状を請求したのでありますが、その逮捕状請求の措置等につきまして、日本刀の詐欺事件につきましては、こういう逮捕をしなくても調べられたのではなかろうかという点につきましては、これは十分検討の要がある問題でありまして、この点必要性の有無等については現地で十分考えたこととは存じますけれども、これは私どもといたしましては、ただちにこのこと自体がよかつたと賛成しかねる点もございますので、さらによく事情を検討してみたいと思いますが、現地の状況を私が承知した関係におきましては、詐欺容疑事実が被害者の状況供述等によつて疏明せられて、しかも逃亡のおそれがあると認めたので、裁判官の令状の発行を得た。それで執行の場合におきましては、確かに刑事訴訟法第七十三条の三項の準用によつて事は処理しておりますけれども、容疑事実を告げ、また令状の発行されている旨を告げて逮捕した、こういうふうに私は電話で聞いたのであります。この点につきましては御意見の点もよくわかりますので、今後の問題といたしましては十分注意をして参りたいと思うのでございます。  今回のこのギヤング事件についての捜査をたまたまそこで大々的三つておりましたので、乗り捨てた自動車に関連して事情調べているという関係につきましては、各方面に刑事を派しまして事情を聴取いたしました関係上、いろいろデータも出て来たのであります。この谷村ギヤング事件捜査の活動内容のみをもつてしては、だれが被疑者であるということを割出し得なかつた。そういうデータを一生懸命集めておつた。しかも詐欺事件の両被疑者につきましても、自動車の売買等に関連して事情を聴取する必要を認めましたので、渡瀬君及び紺野君等につきましても、ギヤング事件関係につきまして相当事情を詳しく取調べたことがある、こういうことは、私確かに聞きましたし、この両被疑者については詐欺事件調べたけれども、強盗被疑事実の点につきましても、十分事情を聞きました、こういう現地の報告を受けたのであります。この点先ほども申しましたごとく、詐欺容疑事件捜査中の被疑者につきまして、他の犯罪容疑事実、たとえばこの場合は強盗被疑事実でございますが、強盗被疑事実につきまして、あわせて事情を聴取するために取調べをするということは、私は非合法でないと思うのでありますけれども、それが度を過ぎるとよくないと思つております。目的と手段とが逆になるのはよくないことであるということは、まつたく同感でございます。
  78. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 谷村署に一度連れて行つてから、夜中に甲府へ連れて行つております。夜中の十一時ころですよ。谷村を出発して甲府まで行きますと、あそこは峠を越すのですから、三時間から四時間くらいかかります。その晩のうちに国警の太田町地区署に連れて行つて、さらにその晩そこから小笠原へ行つた。向うに着いたのが二時過ぎです。こういう夜中に被疑者をあちらこちらに連れ歩くということは、人権蹂躙になると思うのですが、これはどうなんですか。谷村の警察署においてお取調べを願えば、このくらいの詐欺事件は片づくのです。詐欺事件としては被害者は谷村の人なんです。被害者のおる谷村を離れて、峠を越して、そして夜中に二人を護送して、しかも甲府の地区署から今度は小笠原といこ所へ、二時過ぎまでかかつて護送して行つた。それを翌日連れ出して、ただいま申し上げましたように、手錠をかけたまま、竜王の地区署の派出所で調べた。こういう経過になつておるのですが、こういうことを国警としてやりました場合には、これは人権蹂躙になり、権利の濫用になると私は思う。護送する必要があれば、翌日汽車ででも、自動車ででも連れて行かれる。この二人を連れて歩いたという事実はどうですか。あちらに着いたのは二時半です。甲府地区署に一度連れて行つて、そこで車に乗りかえさせて、またそこから数里離れた小笠原署へ連れて行き、そして留置をした。この事実はどうでしよう。
  79. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 申し上げます。この両被疑者につきましてまず逮捕いたしましたのが三月七日の午後十一時でございます。まず逮捕した時期が比較的におそいということはあまり適当な方法でないと、私東京におりまして感じたのでありますがいろいろな関係上なるべく早く逮捕して事情を聴取する必要があると現地では考えて、その処置をとつたのではなかろうかと思うのであります。この関係で四十八時間が御承知の通り逮捕時間でございますので、逮捕時間を過ぎますと検察庁に送致する必要がございます。その四十八時間を過ぎた三月七日午後八時二十分に、身柄付検察庁に送致した。その関係は、ただいまちようど古屋委員の仰せのようになりますので、午後八時二十分に谷村地区警察署から検察庁へ身柄付送致をした。それが夜そういうことになつたわけであります。そうして送致して、検察官の何を受けまして、それから今度は留置場所が逮捕場所と違う――これは甲府の検察庁べ送致してからは、谷村地区署の方が遠く小笠原地区署の方が近いというので、そこを代用監獄にいたしまして、小笠原地区署に送致後そこに留置した、こういう関係になりますので、送致時間がおそかつた。送致し、護送し、それから留置場所に行く。谷村に帰つて参りますとおそくなりますので、小笠原地、区で留置してもらうということにし、検察官と相談してとりはからつたことだと思うのであります。従いまして送致後の留置する関係等によりまして、この時刻が午後八時二十分に送致しておりますので、谷村から甲府検察庁に持つて行き、甲府に対しては、谷村より近いとはいえ、小笠原地区署は甲府より若干あろうと思いますので、比較的深夜にわたつたことになつたと思いますが、この点あまり私適当なことと思いませんけれども、その送致時刻が四十八時間の関係から、よく警察調べておつて、だんだん見当がついて、検察庁に送致する時刻がたまたま午後八時二十分になつた。こういう関係から比較的おそい時刻に検察庁に送致することになり、留置場所に行くことになつた。時間の関係を今までちよつと確かめましたけれども、おそくなつておるということは被疑者処置上あまり適当でなかつたが、送致時刻の関係上やむを得なかつた点ではないかと思つておるのであります。
  80. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それでは私納得が行かないのです。谷村の検察庁の管轄は一体どこですか。谷村に支部がございますのに甲府へ連れて行く。これは管轄ではございませんよ。そういうでたらめを言つては困る。こんなかすのような誰欺事件は谷村検察庁の何でやれる。谷村が管轄なんです。しかも関係者は谷村におる。関係者が谷村におるのを、わざわざ向うへ夜中に連れて行くというのはどういうことですか。これが無理をしてギヤング事件にこの詐欺事件を利用したという証明じやありませんか。管轄は甲府検察庁谷村支部です。それをわざわざここへ持つて行つたということが一つ。これは御答弁をいただかなくても、はつきりわかつておる。それから身柄を検察庁に送致したというが、その送致した検察官は一体何という検察官ですか。身柄と証拠の行つておるのを、全然検察庁の人間が調べずに、遠くへ持つてつて、国警がかりてにやつたかつてにやつたつたかどうか知りませんが、お調べになつておるということは、どういう関係でやつておるのですか。検察庁の了解を得てやつたのか、得てやらなければできないと思います。了解を得てやらなかつたら責任問題です。何の被疑事件で、どこどこへ持つてつて調べるからということは、あなたの方から申出をしなければ、検察官は承諾しない。身柄を渡すはずがない。承諾したのは何という検察官か。それはいつであるか。どういうわけで身柄を護送したのか。この点承りたい。
  81. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま管轄の問題につきまして私もそこまで事情をつまびらかにしておりませんので、管轄の問題につきましては、さらに調べましてお答えいたしたいと思います。私が承知いたしております点を申し上げますと、この詐欺事件につきまして、普通の例は、この場合で申しますと、たとえば勾留の段階などにおきましても、検察庁と連絡のもとに谷村地区署で引続き勾留される例が非常に多いのでございます。ところがこの場合なぜ逮捕時間だけ谷村地区署に置いておいて、勾留の段階になつて小笠原地区署に持つて行つたかという点につきましては、私も普通の例と違いますので不審を抱きましたので聞きました。その点を申し上げます。その点は谷村地区署にその身柄を置いておりますと、たまたま強盗事件捜査本部ができて、そこで強盗被疑事件内容捜査しておる関係もあつて、世間ではこの二人が強盗被疑事件のごとくいろいろ取材活動も行われ、正しい意味捜査をすることも困難であるし、しかもなるべくそういう強盗被疑事件で騒がしくない別の場所が相当であると認めまして、検察庁とよく相談の上、隣の地区署へ持つて行つた、こういうことを私は、この点は聞きとらした結果お答えする次第でございます。  それから第二点の逮捕時間が済みまして、勾留の段階になりましての関係でございますが、これは一般的に古屋委員も御了得いただけると思うのでありますが、送致されましたらもちろん検察官指揮をいたすことは当然でございますけれども、相当多くの事件警察官が検察官の了解のもとに指揮を受けまして、いろいろ取調べるという事例は、ひとりこの事件に限りませず、相当多くの事件にございますので、これもその場合と同様に措置したものであると私は了解しておりますが、さらに詳細な点、また検察官の氏名の点は、ただいま電話で私聞きただしませんでしたので、取調べまして申し上げます。
  82. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 その点は、そういう妙なことをやること自体がすでに人権蹂躙、権利の濫用です。ほかの事件調べられている人間を調べることは、便宜上やつておるというお考えを持つておること自体が、すでに人権蹂躙です。その点はつきり申し上げておきます。だから私どもこの法務委員会でも問題にしたのだ。  もう一つお伺いしておきますが、この新聞を拝見しますと、全部これは書いておりますが、その中で畔柳時雄というのが、その当時やはりひつぱられておる。これは畔柳というのは逮捕されたけれども、たまたまその事件が起きました三月一日の晩に友人の警部補さんのところに行つたというアリバイがついたから、これはすぐ帰したはずです。これはいつ調べて、いつ帰したか、その点どうです。私それを承るのは、この人間と三人でやつたということになつておる嫌疑だ。それでこの人間をアリバイがついて帰してから後に、またこの渡瀬と紺野をこのギヤング事件調べておるから、そこのところを追究するのですが、一体畔柳時雄はいつ勾留して、いつアリバイがついて、いつ帰したか、これは、どうですか。
  83. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ちよつと申し上げますけれども、私実はこういう問題がありまして、両被疑者につき」まして、できるだけ詳しく瓶詰で聞いたのでありますが、もう一人の方の時刻その他につきまして正確に聞きませんでしたので、ちよつと正確にお答えできませんので、後ほどお答えいたします。
  84. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それはあなた方新聞をごらんになつてよくわかつておるはずであります。毎日書いております。三人の被疑者で、その中の畔柳の方は二、三日の勾留でアリバイがついたからすぐ帰された。それで、共犯だという二人をその後もその詐欺事件だけで調べてお帰しになるのなら、私お尋ねしない。ギヤング事件でまた調べて送致されて調書をとられて、十何日か勾留されておるからお尋ねしておるのです。この点は十分お調べになつてからお答えを願いたいと思うのです。  そこで私は刑事局長に承りますが、一体この事件のこういう捜査の仕方、つまり告訴も告発もない、不起訴になるような何でもない事件逮捕状を出されるということ、これ自体が適当であるかどうか、しかもこの捜査にあたりまして、管轄の検察庁は谷村でございます、これは間違いない。詐欺事件関係者は谷村地区の管轄におるのに、わざわざ数里も離れた所に夜の夜中に護送して、別の所に持つてつて調べをする。しかも検察官の承認がなければ身柄は連れて歩けないと思いますが、検察官がそういう承認をされておることが適当であるかどうか、これを承りたいと思います。
  85. 井本台吉

    井本政府委員 当該の事件については、これは捜査の失敗でございますから、それについて批判は避けますが、一般問題といたしまして、逮捕勾留に際して別罪を調べるということは別に禁止してはおりません。調べ中に余罪が出て来れば調べるわけでございますから、その点は別に禁止しておりません。それから夜中の護送のことにつきましては、いろいろ事情があろうと思います。私当時の状況をつまびらかにしておりませんので、これが適当であつたかどうか、ここで抽象的に申し上げかねる次第でございます。
  86. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今禁止しておらぬと害われますけれども逮捕状を出した主たる事件を放任しておいて、ほかのことを、疑いがあつたからといつてあとを調べてしまつておるということ、これはまつたく濫用だと思うのですが、この点はどうでしよう。両方相ともに捜査するならけつこうですけれども、全然それはたな上げしておいて、ほかの事件だけを調べておるという、この場合はどうでしよう。
  87. 井本台吉

    井本政府委員 具体的事例につきまして申し上げることは適当でないと思いますが、抽象的に申し上げますと、別事件について逮捕勾留中に、その方はもう調べが済んで、なお勾留の手持ちがあるので、その他の事件について調べるということにつきましては、ただいま申し上げましたように、別にこれはさしとめる事項ではございませんので、放任しております。ただ実際問題としまして、今度の造船関係の汚職事件等におきましては、当該事件だけ調べて、その他の事件については、もし調べるなら別に逮捕勾留すべきだというような裁判官の意見もありまして、この点についてはまだ確定的な結論に達しておりません。裁判官によつては、余罪を調べる必要があれば、相当期間勾留を認めて保釈などしないで調べるという方もございますし、その事件々々ごとに勾留を切つてしまう、もし必要があれば別罪でもつて、また逮捕請求をすべきだ、そのために逮捕請求が二回にも三回にもなる事例もございましたが、この点についての実際の運用につきましては確定的な結論は出ていない次第でございます。
  88. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 中川さん、富浜村で青年団の数十名をギヤング事件の参考人あるいは渡瀬と紺野の参考人、証人として調べた、この事実はどうですか。
  89. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 青年団の諸君を調べた具体的な概況は電話で聞きませんでしたけれども、富浜村に強盗被疑事件捜査本部が開かれましたので、強盗被疑事件関係につきまして、いろいろな人からいろいろ事情を聞いておつたであろうということは想像にかたくございませんので、青年団の方々云々の問題についても、具体的に聞いてからお答えいたしますけれども、大体そういう方々を強盗被疑事件関係について事情を聴取したことがあつたであろうということは想像にかたくございませんので、あつたであろうということを申し上げます。
  90. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで富浜村では、その騒動のために村民が戦々きようきようとして、村民から文句が出、ごうごうたる非難が出て、臨時村会を開いて捜査本部の撤去を要求したという状況にあつたということはいかがでしよう。これは重大問題なんです。こういう見込み捜査をやられて、その村の住民が平穏な生活ができない、戦々きようきようとして、臨時村会まで開いて村の役場の中にある捜査本部に撤去してほかに移つてもらいたいというような抗議を申し込んだということは、おそらく今まで聞いたことがないです。地方自治体の協力する立場にある者がこういうことをした。一体捜査本部に対して臨時村会の決議をもつて、ほかへ移つてもらいたいという要求を受けた事実はどうなんですか。
  91. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 そこに強盗被疑事件の自動車がございましたので、そこに捜査本部を設けるにいたしましても、適当な場所がございませんので、村役場にお願いいたしまして、村役場の二階を横浜市警の職員と地元山型県側の職員とが拝借して、捜査しておりました。そういう関係で青年団の方にもお附きいたしましたでしようし、いろいろ関係者と強盗被疑事件捜査について仕事をやつておつたと思います。それにつきまして、役場では村会を開く関係等もあつて、なるべく撤去してもらいたい、こういう要望もあつたということは、私聞きました。それでその要望に従いまして、――要望があつたのは大分お調べなつた後でございまして、要望があつたときには、まことに御迷惑をかけておる点を陳謝し、あわせてある程度富浜村の捜査本部の捜査活動も目的を達しましたので、要望通り撤去いたしたのであります。繰返し申し上げますが、たまたまそこに自動車が発見されたことに伴いまして、富浜村の村民の方々、役場の方々、村会の方々に御迷惑をかけたということは、まことに申訳ないと思つております。
  92. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 時間がございませんので、あとはこの次に調べられた後に御答弁願いたいと思います。そこで法務大臣、お聞きめ通りなんです。一般住民に対しましては詐欺事件は不起訴になつておる。こういうような状況でございますので、これは法務大臣に御参考にお聞きを願つてつたのです。人権擁護局長もここにいらつしやいますけれども、本日は本会議が一時半から始まるそうでございますから、これをもつて一応本日は打切りまして、次会に十分お調べを願つて承りたい。擁護局長にも、これは今お聞きの通り、これは臨時村会も開いた事件であり、普通の人権擁護問題ではなかつたのですから、十分お調べを願いまして次会に御答弁を願いたいと思います。時間がございませんから、私はこの程度で打切つておきます。
  93. 小林錡

    小林委員長 本日は一時半から本会議が開かれることになつておりますから、これをもつて終りといたします。次会は明日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開くことといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十三分散会