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高橋(一)
政府委員 お答えいたします。現在の
右翼の
動向につきましては、
猪俣さんが仰せられた
通り私
どもも憂慮すべき
傾向があるというふうに
考えておるのであります。それで現在の
情勢というものを、特に
昭和五年の
右翼の
テロが連続的に行われ始めたその最初のころに比較いたしまして、この
法務委員会におきまして、二月十七日にかなり詳しく申し上げた次第であります。それで本日はその点については深く触れることは、控えさせていただきたいと思
つておるのでありますが、第一に
公安調査庁の
態度といたしましては、
左翼の
政治的無力というものとま
つたく同様に、
右翼の
政治的
暴力というものを対象として
考えております。ただ私
どもはどこまでも
破壊活動防止法の観点からこれを見見ておりますので、現実に
右翼のどの
団体が、
破壊活動防止法のいわゆる破壊的
団体としての疑いがある
団体であるというふうには、現在の
段階では具体化しておりません。その点がやや
左翼の方とは趣を異にする点であります。しかし先ほど申し上げた
ように、一般
動向としては決してこれを軽視しておるのではございません。それで現在の
右翼の一般的な
動向を示すものといたしまして、今月の二日から四日までの間に、救国運動全国協議会結成準備全国連絡委員会というものが開かれております。大体その中心にな
つて動いておると見られます維新運動関東協議会が、「救国運動」という機関紙を出しておるのであります。その四月二十五日号の主張において、この「全国連絡
会議開催の意義について」という論説を出しておるのであります。その中にいわゆる
右翼の
テロというものに関連する部分がございますから、ちよつとそれを読んでみます。「恥を知らぬ悪徳
吉田内閣に対する
国民の憤慨は、今や頂点に達している。かかる
吉田内閣の命脈を一時的に断絶せしめることは簡単である。
吉田ワンマンをこの地上から葬り去るか、或は二度と再び足腰立たぬ健康
状態に陥し入れれば事足りる。
嘗
つて血盟団、五一五
事件等はそうした事象の現れであ
つた。しかし、それで
汚職政界やその不健全な社会的基盤が刷新されるものではない。
かかるとき、かかる機会に、われわれは全国協議会結成準備のための全国連絡
会議を催すものである。若しわれわれの
会議が、所謂「
右翼」の大同団結にとどまり、或は小数グループの自己満足的な集合に終るならば、
歴史的、時代的意義を担うことはおぼつかない。現在
国民大衆の渇望し祖国の危機打開に望ましいものは、広汎な
国民的
政治力に他ならない。故にその要望に応え得る
ような運動の推進、
方針、組織について、既往に囚われるごとない
内容の会合たらしめねばならない。」という
ようなことを申しております。この場合にも一応戦前のいわゆる
右翼の
テロ行為というものを
考えて、それを否定するという表現を使
つておるのであります。一概に
右翼と申しましても、その掲げる政策、綱領、あるいはそれを達成する手段という観点から見まして、種々雑多と申してよいのでありますが、しかしその一般的、組織的
動向というものは大観して、ほぼこの辺に現在の
段階では要約できるのではないかというふうに
考えておるのであります。従
つてこの
ような
右翼の
テロというものを
考える分子が、中には絶無、とは言えないと思うのでありますが、全体としては、その
ような戦前の旧式なやり方では、
右翼といえ
ども目的を達成することはできないという
ような反省の結果、結局
国民の間の思想啓蒙ということを掲げまして、それの
政治的な結集をはかるというふうに
方向は向いておると思うのであります。しかし先ほど申し上げた
ように、いろいろな分子がございますから、われわれの方としては実は一刻もゆだんはしておらないのでありまして、微力でありますけれ
ども始終いろいろな
動向を注意して見ており、もし
破壊活動防止法に申します特定の
政治的な目的をも
つてする殺人、放火その他の
暴力行為を手段とする
ような
団体の疑いがあるということになりますれば、正式に
破壊活動防止法による
調査の対象といたすつもりであります。