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1954-04-30 第19回国会 衆議院 法務委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月三十日(金曜日)    午前十一時二十一分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 林  信雄君 理事 高橋 禎一君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    高橋 英吉君       花村 四郎君    猪俣 浩三君       神近 市子君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 加藤鐐五郎君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 四月三十日  委員神近市子辞任につき、その補欠として福  田昌子君が議長指名委員に選任された。 同日  委員福田昌子辞任につき、その補欠として神  近市子君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員長及び小委員の選任  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案(吉  田安君外三名提出、第十六回国会衆法第八二  号)  検察行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから、順次これを許します。佐竹晴記君。
  3. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 冒頭法務大臣に要望いたしておきたいことは、法務大臣はこの法務委員会を通じて重要なる法案をたくさんお出しになつておる。この重要なる法案審議通過のためには、所管大臣として全努力を払うべきである。しかるに過日来この法務委員会の要望に対しましては、なかなか時間をおさきになりません。他の委員会などよりしきりに呼ばれると言つて、この法務委員会を軽視するかのごとき状態を呈しております。願わくは、この法務委員会を通じて出しておる重要なる法律案通過に御熱心ならば、この法務委員会を重視されんことを前もつて要望いたしておきます。  私は過日の委員会において時間が少かつたために、ほんの項目だけをあげてお尋ねをいたしておきましたが、要領を得なかつたのであります。そこで本日はややこまかに承つてみたいと存じます。  問題になつております前法務大臣検察庁法十四条に基く指揮権発動について、あなたは前の大臣のやつたことを踏襲してこれに変更を加える考えがないとおつしやつたのでありますが、前犬養法務大臣がこの指揮権発動について理由としてあげておるところのものは、事件法律的性格重要法案審議にかんがみて、国際的、国家的重要法案通過見通しのつくまで延期するとおつしやつたのでありますが、あなたもその通り考えになりますか。
  4. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 佐竹君の御質問にお答えいたします。  私が先般法務委員会出席してもわずかの時間でほかの方へ出ておるというお話でございますが、私参議院の会合その他給与に関する問題を担当いたしておりますので、一時にいろいろの委員会が殺到いたしまして、つい御無礼をいたしたわけでございますが、決して本法務委員会を蔑視したとか、軽視したとかいう考えは毛頭ないのでございます。この点は御承知のことと存じますが、一時に殺到いたした場合はやむを得ぬのでありまして、あしからず御了承おきを願いたいと思います。  そこで次に、前犬養法務大臣のとられたる十四条の問題につきましては、私も犬養君同様の考えを持つておる次第でございます。
  5. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 重ねてお聞きいたしますが、犬養さんは、今度の事件法律的性格重要法案審議にかんがみて、国際的、国家的重要法案通過する見通しのつくまで延期する、こうおつしやつたのでありますが、これにも同様にお考えでございますか。
  6. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 同様に考えます。
  7. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それならお尋ねをいたしたいのでありますが、今回の事件法律的性格にかんがみというのは、どういうお考えでございますか。
  8. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これは第三者収賄罪の問題であります。
  9. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それならば、普通収賄罪ならばただちに逮捕請求をする、第三者収賄罪であるから延期をしなければならぬという御考慮でございますか。
  10. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 その問題、その他国家的重要法律案審議のため、こういうことでございます。
  11. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それならば重要法律案通過見通しのつくまででよろしい。特に法律的性格の問題をあげたわけは一体どこにありますか。
  12. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 この法律的性格というのは、ただいまの第三者収賄罪の問題もあるし、国家の重要問題もある、こう認めたのでございまして、一つではない。そういう複雑な法律的解釈の問題もあるし、重要法案もある、こういうのでございまして、端的に一つのためとしたわけではないのであります。
  13. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それならばあわせて一本というのでありましようか。この法律的性格の問題もあわせて一本の一つであつて、少くも二分の一の理由を持つておると考えます。それじやその二分の一に値する法律的性格の問題について、まずそれに何らの理由がなかつたならばあわせて一本としてこれはとらない。その法律的性格の問題が、お考え間違いであつたということがわかるならば、あなたは逮捕請求延期を撤回する御意思がありますか。
  14. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 法律的性格ということもございますし、重要法案ということもありまして、それが半分であるか、三分の一であるかどうかということははつきりわかりませんが、私自身重要法案通過見通しということがおもなる理由であると考えるのであります。
  15. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 少くともあなたも第三者収賄罪の問題が問題になるとお認めになつておる。ところが法律問題なら論議を尽せば結論がすぐに出るのです。現に検察首脳部会議においては結論を出して逮捕請求をなさつておる。重要法案が通るまで待たなければ結論を得られないという問題ではございません。ところが法相はしろうとである。専門家検察官会議で一致の結果によつて結論を得たことを、今度また法相法律的性格の問題も重要なりとしてあなたがこれを取上げるについては、法相また独自の考えからそこに何かお考えがなければ理由をなさぬと思います。いかがでございますか。
  16. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私がただいま申しましたことは、それも一つでありますが、私は犬養君がこの措置をなされたことは、非常にいろいろな点を考慮された結果、やむを得ざる措置としてとられたものだと信じます。どれが主であり、どれが従であるということでなくして、犬養君が考慮考慮を重ねられた結果、ここに結論が出たのでありますがゆえに、私もただいまのように個々の問題でなくして全体としてこれは取消す必要はなかろう、それを踏襲いたしたい、こう考えるのであります。
  17. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それほど、重要法案通過にのみほとんどかかつておるほどその点を重視せられておるなら、何も法律的性格にかんがみとかおつしやる必要もないし、またそれをあなたが踏襲するとお認めになる必要もない。それは犬養さんがどう考えていたかわからぬけれども、私としてはそれはとにかく、重要法案通過の点を重視するのだ、それだけで十分だと思います。あなたは踏襲するとおつしやつた。あなたが最初大臣としてお出になつた第一回の答弁のときから、常にあなたは、犬養法相が何と言われておろうとも、一も二もない、犬養さんの言う通りにこれをうのみになさるお考えのもとに、すでに大臣お引受けなつたとしか見られない状態でありました。なぜ私がそれを言うかといえば、最初あなたに御出席を求めた。ところがあなたはあいさつ程度のものだろうといつてそわそわとしてその席をお立ちになつた。少くともあなたは法務大臣引受けたのだから腹はできておるはずだと思う。前の大臣のやつたことを踏襲する考えであるかどうかくらいの腹はわかつておるだろうし、引継ぎも受けたはずである。少くとも引継ぎは受けぬといたしましても、あなたは長い間代議士をなさつておられる。従つて国会における空気大臣の進退のことぐらいはわからぬはずはない、あなたはよくわかつておるはずである。しこうして犬養さんがいわばせつぱ詰まつてどうにもならずに結局おやめになつ事情もあなたはよくおわかりの通りである。それであなたはお引受けなつた。だからあなたは十分にその間の気持が理解されていて御答弁いただけると思つたところ、あなたはそわそわとして出て行かれた。それはあなたが参議院会議出席するからだということであつた。だからわれわれは三時から午後の六時半ごろまで待つた。待つたところがわれわれに一言のあいさつなしにあなたは法務省帰つている。電話をかけてみると、今秘書課長か次官かを呼んで答弁の打合せをしておるということであつた。私は何たることだと思つた。すでに大臣引受けようというときにはそれだけの腹がなくては引受けられるものではありません。ただ大臣肩書ほしさに、何でもいいから行きつきばつたりだ、出たとこ勝負だ、何でもいいから法務大臣肩書がほしいなどというあなたではなかろうと思う。前後の関係は十分承知せられていたはずだ、しかるにこれから委員会出席して答弁しなければならないというときに、私どもを多数待たしておいて、参議院会議が済んだらすぐ来るかと思えば来もせず、あいさつもなしに法務省帰つて、今度督促してみると、今これから答弁をしようと思つて相談中だという。私どもはあきれざるを得なかつた。私はそのときの状況から見て、あなたにはまだ腹ができておらぬ。一体この問題をいかに理解し、検察当局がどう考え行つて、そして、犬養さんがどういう板ばさみになつて、どういう政治情勢のもとに前の大臣がやめて、自分がこの難局に立たなければならぬ状態になつておるかということは、あなたも理解しておらなければならなかつたはずなのが、理解しておるものとは思われない、そういう情勢である。私ははなはだ遺憾に考える。あなたはこの法律的性格の問題を最初には踏襲するかのごとく言つてみて、だんだんこれを堀り下げて聞いてみると、どうもその点では答弁しにくいから、今度は重要法案の問題のみがきわめて重要な問題として、それが取上げられたものであると言わんばかりの御答弁であります。あなたは信念々々とおつしやるが、一体どういう信念お引受けなつたか。これは前へさかのぼつてはなはだ前後いたしますけれども、もう一度あなたの法務大臣引受けた――いかに善処する信念を持つてあなたはお引受けなつたか、これをひとつ明らかに願いたいと思います。
  18. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 多年国会に籍を持たれる佐竹君のよく御承知のことと存じますが、私は法務大臣の命を受けましてから、その場合にここへ出たのでございますがゆえに、あいさつそこそこと仰せになりますが、一面その場合参議院で本会議がこの十四条の問題で開かれておりますがゆえに、そこへ私が参りまして、そこで何時間でありましたか、時間を過ぎまして、いろいろこちらの方のことをお聞きいたしたところが、――手違いがあつたと存じますけれども答弁調査行つたとか何とかいう意味ではございませんで、その手違いのあつたことは深くおわびをいたしますけれども、私がごあいさつを申し上げて早々に引上げたということは、決してこの法務委員会を蔑視いたし、ことに佐竹君なんかに礼を失したという悪意のことではございませんで、これは佐竹君も長く国会の生活をして知つておられる通り大臣がその当時どのくらいせわしいかということは御了察を願えることと信ずる次第であります。私はただいま法律的性格ということで御質問がありましたから申しましたが、私は犬養法相新聞に発表されたことをもつて答弁をいたして、これを踏襲いたしますとこういうのでありまして、どちらが重いかどちらが軽いか、それが何分の一だというような意味でお答えいたしたのではないのでありまして、全部を総括いたしまして私は犬養君の声明を支持いたしたい、こう思つているのでございます。手続上の点において失礼の点がありました点は私は深くおわびをいたしますが、全体としての声明を支持したいと私は思つている次第であります。
  19. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私は儀礼の点をいささかも聞いているのではございません。あなたは三時に引継ぎを済ませされて当委員会においでになつている。あなたが大臣引受けるだけの腹構えができていたならば――前大臣がどういうわけでやめて、自分はどういう難関に逢着しているか、しかしてこれをいかにさばいて行くかの腹構えというものがなしにあなたが引受けられるわけはない、そのあなたの信念を聞いている。しかしお答えにならなければそれでよろしい。  次いで、重要法案審議にかんがみて、国際的、国家的にその重要法案見通しのつくまで延期をするという趣旨だそうでありますが、じやあなたがお考えつている重要法案通過というのは、一体どういう法案をお見通しになつておられますか。
  20. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 重要法案は、ただいま国会に提出されているのは百六十か七十ありましようが、そのうちで御承知通り四、五はきわめて重要法案でありまして、一例を申し上げますれば、教育法案警察法案など、重要の法案というのは五、六あろうと思いますが、これは佐竹君は大体御承知であると思います。ことごとくの法案という意味ではございませんで、全体の法案はどれも重要なものでございますが、そのうち通俗的に重要法案というものは、われわれが常識考え、また現内閣といたしまして全力を傾倒しておる四、五の法案でございます。
  21. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 犬養さんが新聞に発表せられ、そうしてあなたは新聞を見てそれを了承したとおつしやるが、新聞にはどう書いてありますか。MSAの問題と保安庁法の改正と教育法案と、三つあるのじやないか。これがだんだん広がつて、百六つもの法案のうちの五つ六つと言うし、その五つ六つも通るとみなこれもこれも重要だ、そうして会期を延長して三月も四月もかかつて行く、遂にひつぱることもできぬような状態に追い込まれはしないかと思うのですが、一体どの件どの件に区切りを立てて、そうしてどの程度になれば通るか通らぬかの見通しというものが、つまり国際的、国家的見地に立つてその重要法案見通しのつくまで延期というのは一体どの辺の見通しでございますか。
  22. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 いつ通過するかという御質問でございますか。
  23. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 その重要法案見通しのつくまで延期とおつしやるが、それは一体いつごろまでにその通過見通しがつくという御見解であるか。
  24. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私どもは非常に急いでおりまして、できるならば会期中と考えたのでありますが、御承知のごとく来月に入りますと休みの日が多うございますし、それでそれがどうかと思います。国会で御審議なさる日を私が何日ということにきめるわけにも参りませんが、なるべくすみやかなる機会において皆様のお力によつて審議を願えれば、そう長くはなかろうと思つておる次第でございます。これは審議状態に関することで、私からここでかれこれ申しませんが、われわれの国会常識から言えば、そうむやみに長いものでないと思つております。
  25. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私はそんなことを聞いておるのじやないのです。まるつきり小学生と問答しているような状態は遺憾千万であります。いつごろ通過見通しを持つか。一生懸命やつておるのだとおつしやるけれども、しかし開店休業状態ではありませんか。あの問題で検察庁法の十四条発動以来というものは、各委員会とももう開店休業状態であつたり、最近の情勢は何とかしてむしろ引延ばそうという空気すらも見られておる。これはあなたの責任ではありませんが、審議促進々々とおつしやるけれども審議はなかなか促進されておらぬ。それで休みがたいへん重なるとおつしやるけれども、これは休まぬでもいいじやありませんか。毎日おやりになつたらいい。ところが休みに籍口いたしまして会期がすぐ来る、とてもその問には済まされない、延期だ、また延期延期を重ねるような空気も出ております。それはどつちにいたしましようとも、少くともどの法案とどの法案とどの法案通過をすれば、法務大臣より検察当局へ申し入れた延期をするようにとの指令を撤回なさるお考えであるのか。重要法案と仰せられるのは、少くとも私は重要法案具体的題名だけでもお示しを願うと同時に、それはいつごろまでに大体通る見込みか、その後は通らぬでももうしかたがない、大体の見通しというものがつかなければならぬものと思われますが、どうですか。
  26. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 お答えいたします。休みに薙口するという御質問でございますが、さようなことは私も考えておりません。休みでも国会において審議をしていただくことは私ども好ましいことであるのでありまして、休みに薙口して時をかせげばいいなどという考えは毛頭持つておらないことを申し上げます。重要法案につきましては、私がただいま考えますのは警察法案あるいは防衛二法案教育法案のごときでありまして、その他なお一、二あると思いまするけれども、私が今重要法案と信ずるのはただいま申しました法案のごときをいうのでございます。
  27. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 警察法案は何とお考えになつておりますか。その範疇に入るとお考えになりますか。
  28. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 現内閣としては重要法案の最もおもなるものの一つであると信じます。
  29. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 警察法は衆議院でもすぐに上ろうとは思いません。会期中どうかとさえも思います。それでは相当延期延期を重ね、もし警察法案などが原案通り通らぬということになると、通るまでひつぱるおそれがないとも限らない。それまでは佐藤をどうしても逮捕させない、そういつたようなお考えですか。
  30. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私は警察法案のごときは、国会審議を進めていただきますればすみやかなる機会において通過するものなりと確信して、これを熱望してやまないのでございます。
  31. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 佐藤さんをひつぱつたらそういう法律案審議に支障があるとおつしやるのは、一体どういうところに根拠を置かれるのですか。
  32. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 佐藤君は党の幹事長でございまするがゆえに、党運営の上におきまして特殊の存在であると思うからでございます。
  33. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 犯罪容疑者を何も幹事長にいただいておかぬで、とりかえたらどうです。
  34. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これはいろいろの見方でありまして、われわれはきわめて重要なる、欠くべからざる地位である、こう思います。
  35. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 重要なる存在だからその人を何としても置いておかなければならぬ、検察陣においてそれを逮捕しようといたしましても、一政党の特別な事情に基いてどうもぐあいが悪いといつたことで国政の運営を左右するということになれば、あるいは検察庁の行動を制約するということになれば、一政党の利害のために検察権というものが制肘を受けるという結果になると思うのでありますが、どうですか。
  36. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 半面党略のためにするではないかという御質問のようでございますが、そういうわけでなくして、犬養声明にありましたことく、重要なる法案通過せしめるために必要だという見地から来たのであります。
  37. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 佐藤さんがそのまま行けばそれではきれいに通る、ほかの人がかわつては通らぬというお見通しですか。
  38. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 そう的確に申すわけには参りませんが、いろいろ見方もありまして、われわれとしては今新党の問題もありますし、その他いろいろ重要なる問題がありますがゆえに、この場合ひとまず逮捕だけは延期してもらいたいというのでございます。
  39. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 少々本音が出て参りましたが、新党問題などで必要だ、だからどうも逮捕されてはぐあいが悪い、法務大臣、あなたの口からそんなことを言つていいですか。
  40. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これは今御承知のごとく、国会情勢によりまして、新党問題というと党略問題のようにお聞きになつたかもしれませんが、私どもはそういう意味で申したのではないのでありまして、やはり国家的大局の立場からと、こういう意味にほかならぬのであります。
  41. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 自由党から見れば、幹事長であることも、政調会長のあり方についても、それから先に行けばもうあるいは委員長からあるいは理事に至るまで、それは国家的に非常に重要なる役目をおのおのやつておるかもわかりません。がしかし、新党工作のためになくてはならぬ人であるとか、あるいはこの人がなくてはこの法律案がどうも通りにくいとか、あるいは通りやすいとか、そんなことの考慮のために検察権を抑えるというがごときは、私は筋が立たないと思います。法律案の通るか通らないかは、政治力が足りるか足りないかという問題です。佐藤幹事長がひつばられたら通らぬ。ひつばられなければむろん通るといつた問題ではなかろうと思う。佐藤さんが何人とかわらうとも、おそらく今日の情勢においては通るものは通る、通らぬものは通らぬ。私が申し上げるまでもなく、佐藤さんがおるかおらぬかによつて、たとえば参議院なら参議院緑風会を、それじやどれだけ動かし得るか得ないか。かりに動かし得るとか得ないとかいつても、そんなことのためにひつぱる、ひつぱらぬを決すべき問題ではないと考えますが、大臣、いかがでございますか。
  42. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいまの御質問は、幹事長も、政調会長も、その他の委員長も同様ではないかという御質問でありましたが、政党役員にもそれぞれ軽重があるのでありまして、幹事長地位は決して各委員会委員長及びその他の役員と同様に見てはならないのでございます。最も重要なる党運営のために必要だと思つておるのでございます。
  43. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私はこの際法務大臣に特に聞いておきたいが、憲法十四条には、すべて国民は法のもとには平等であると規定しており、社会的身分のために何も差別されないと書いてある。いかにもあなたのやり方は、相手方の社会的身分、その他の関係においてひつぱるかひつぱらぬかを決するのに、差別を設けるというようですが、憲法十四条違反ではございませんか。
  44. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私はこの法のもとには平等であると思いますが、これはその通りでございます。
  45. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 法のもとに平等ならば、あなたの政治的感覚から見れば、なるほど佐藤さんという幹事長と、たとえば委員長との間にはおのずから政治的地位において軽重差別はありましよう。ありましようが、幹部をひつぱるかひつぱらぬかという検察当局考え方と、それを監督する法務大臣としてのあなたの考え方からすれば、軽電を置くべき筋合いのものじやないではありませんか。法のもとには平等である。もし偉い人ならば、時局多端なる折から、あの人をひつぱることは国家のためにどうも都合が悪いなというときになると、これはそうなりますと、大臣などというものは決してひつぱることはできないでしよう大臣なつたらどんな悪いことをしてもひつぱられない。一国民がやつたらすぐひつぱられる。そんなことを法務大臣自身が公然と法務委員会の席でお認めになるようなことでありましたならば、それは国家全体の秩序を破る。そのことはより国家のために重大であると思うが、どうか。
  46. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私が申した言葉が足りなかつたかもしれませんが、法のもとには平等でありますがゆえに、大臣であれば縛らぬ、普通の者であれば縛る、そういう意味で申したのではないのでありまして、お示しのごとく法のもとには平等でありますが、今回の検察庁法第十四条を発動いたしましたのは、別の意味におきまして、そういう偉い人であるがゆえに縛る、縛らぬということではなくして、これはしばしばどこかの委員会においても申しましたごとく、異例措置ではあるけれども、国の情勢が今重要なる法案通過させなければならぬという異例の場合でもありますがゆえに、こういう措置をとつたものであると信ずるのであります。でありますがゆえにこれをいついかなるときでも、偉い人であるならばこの十四条の指揮権発動するという意味ではないのでありまして、この点は私はよく御了承おき願いたいと思います。
  47. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 佐藤さんが現職にとどまらなければ各種重要法案通過が困難であるという、そういう異常なる異例によつて、それを認めなければならぬほど、そこに佐藤さんを特に認めなければならぬ特別の理由というものを、ここにひとつはつきりしていただきたい。
  48. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これはその地位幹事長という地位でありまして、与党としてはきわめて重要な地位であり、ことに先刻来申し上げましたごとく、重要法案が山積いたしておりますがゆえに、これを通過さすことが国の大局、高所大所から見て必要であるという考えのもとにこの発動をいたした次第であります。
  49. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 そうではなくして、佐藤さんがひつぱられ、池田さんがやられるということになると、もはやそうなつたら内閣が総辞職するよりしようがない、それでは重要なる法律案通過しないので、内閣はつぶれなければならぬような運命になる。そういう趣旨ではないのでありますか。
  50. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 それはいろいろ御批判はあるであろうと思いますので、御批判はやむを得ませんが、私どもとしてはそういう意味は持つておらないのであります。
  51. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 先ほど新党工作の問題もちよぴり言つておられたが、この間に処して新党工作をやつて、すねにきず持つ連中をこの際ひとつ清算をして、そこできずを持たないところの保守陣営の人たちによつて新党をここにぶつ立つて、そこで新政権によつて政局を担当して行こう、それまでにいきなり内閣がつぶれてしまうと、こんなに重要なる法律案がくずれてしまうから、これは困る。これは今日新聞その他でわれわれの得ておる情報によつてもそうとしか考えられない。あなたのおつしやるような、個人的に、佐藤という者が幹事長であつて、それが重要な役目である、その一点張りだといたしまするならば、佐藤さんは犯罪容疑者であるから、何もこんな者を置かないでもよろしい、とりかえたらよろしい。けれどもとりかえるにとりかえられないところの、そこに党内におけるところの特殊事情があるためであろうと思う。その特殊事情のために、検察庁法第十四条を発動するということは、一党一派の党利党略のための検察庁法第十四条発動としか見るのほかはないと思う。あなたは少くとも国務大臣として、この疑惑を国民の前に解く義務があると思う。しからずんばあなたが心配をして配慮していることより以上に、国家にとつて悲しむべき重大なる不幸事が他にかもされつつあることを私は憂える。大臣としてその疑惑を解くべき義務があると思いますが、いかがでございましようか。
  52. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 いろいろ御批判もあるであろうと思いますが、この国家の今の重要なる問題をよく話しますれば、適当な機会においては国民もよく了承することなりと私は信じて疑いません。
  53. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 話せばよくわかるということを言うし、国民もある時期になればよく了解するだろうとおつしやいますが、一体どう説こうというのですか。何を話せばわかるというのですか。どういう心境によつて、どういうことを話せば理解するであろうか、ひとつ具体的にお話願いたい。少くとも国民を代表する私を納得せしめる程度のお話を願いたい。
  54. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 こういう問題につきまして、まつたく所見を異にしておる方を説き伏せるということは、これは容易ならざることであると思います。問題によりまして、ある法案に初めより反対をしている絶対反対の方を、いかなる人が説きつけましても説き伏せることはなかなか困難で――不可能であるとは申しませんが困難であろうと思います。国民は汚職の問題に対しまして、非常に憤慨しておることであろうと思います。その場合に、ある幹事長を特にしばらく逮捕延期せよというようなことを申したときに、事情がよくわからぬ場合におきましては、これは一時憤激するは私は当然のことであろうと思います。しかしただいま申しましたごとく、国家の重要なる法案を通適さすことが現下わが国において一番重大な問題である。これは捜査を打切つたのではない、あれの逮捕をやめさせたことではない、ひつぱることをやめさせたのではない、この場合この重要法案通過さすためには、やむを得ず異例ではあるけれどもそういう措置をとつた。これはあとでこういうことであるとよく説明をいたしますれば、私は大部分の国民は、今犬養君がとられたる措置をなるほどと了承し得ることなりと確信いたしておる次第でございます。
  55. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 立場を異にする、私ども最初から反対の立場に立つておるとおつしやるけれども、私は何もここに具体的な案があつて、それに反対の立場に立つておるのではないのです。何もここに議題は出ておらぬ。ただ検察行政の点について、検察官と法務大臣とが衝突をして、反対的立場がここに問題になつておるから、それを私は聞いておるのです。これは委員としての私とあなたの衝突ではございません。あなたの部下であるところの検察官が、どうしても佐藤逮捕しなければならぬと主張するのに、監督者であるあなたがこれを説得せしめることができない、そこで説得の行かぬままに強権を発動した、そこで部内でもたいへんな問題になつておる、これを問題にしているのです。話せばわかると言うけれども、どうですか、今あなたのおつしやる通り、今この状態においては、少くとも検察官に対して何か話せばわかるとおつしやるが、一体何を話し、また話そうとしたのか。またあなたが説得を続けて来たと言うが、それではあなたが法務大臣になつて以来、検察当局に対していかに説得したか、検察当局はいかに納まつているか。またあなたが法務大臣になつて以来の検察当局との間におけるところのあなたの努力の状態をひとつ承りたい。
  56. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私が適当な機会国民が了承することであろうと申しましたことは、あなたの先刻来の御質問は、国民が不可解な念を持つのであるというお話でございましたがゆえに、国民は適当な機会になれば政府がこうやつたこと、犬養法相措置も了承し得るものなりと答えたのでありまして、また、ことにあなたが、法案が出ておらぬのにおれは反対もしておらぬではないかということであるが、私はあなたのことを言うたわけ合いではないのであります。一般通念上、絶対に反対する方は、これはもういくら説いてもだめであるが、そうでない方は御理解を願えるであろうという意味を申した次第であるのでございます。それから犬養君のこの発動につきましては、先刻も申し上げましたごとく、犬養君としてはあらゆる観点から――いろいろな道行きはあつたでしようが、あらゆる観点から考慮考慮を重ね、苦心に苦心を重ねた結果この結論が出たのでありまして、私もその結論に対しては踏襲すると、こういうのでございます。
  57. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私とあなたとの間における衝突の問題でなしに、検察官対監督官としての法務大臣との間に意見の衝突があつて、あなたの前任との間に意見の衝突があつた。前法相は遂に監督権を発動して、強権を発動いたしましてこれを押えた。あなたはそれを踏襲した。これでは国民が納得すまいと思う。その国民を代表する私をして納得せしむるだけの説明がほしい、こう私は問うたのであります。従つて検察官対犬養法相の強権発動を踏襲いたしておるあなたとの間において、話せばわかるとあるが、その後いかなる説得をいたして参つたかどうか、了解をしておるかどうか、このことを私は聞いたのであります。しかもさようにすることによつて捜査陣営は志気沮喪し、ないし捜査の上に非常に障害を生ずるようなおそれがあると思うので、少くともこのことは検察官の職務として当然のことでありますので、その検察官のとるべき態度に対してあなたが説得をせられないわけはありません。ところが今あなたの御答弁によれば、逮捕をやめさしたということは捜査をやめよという趣旨ではないから、このことを話せば後日国民が了解するであろうとおつしやるけれども、私はそんなことでは了解いたしません。反対の立場にあるがゆえに了解しないのではありません。少くとも政党政派における反対党にあらずして、あなたの部下である検察官が何としても逮捕しなければならぬというのに、あなたがそれを阻止なさつたことについて、あなたが検察官に対して話せばわかると言つたが、いかに説得をし、いかに了解を得ているか、しこうして逮捕をやめよというのは捜査をやめよという意味ではない、捜査はお続けなさいと言つたときに、それでは困るという声が出ると思いますが、逮捕をやめて捜査は続けなさいということだけで検察官が治まつておりますか。またそんなことで了解の行く問題ではないと思いますが、いかがでございましようか。
  58. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私は検察当局が正義感に立脚して汚職の摘発に臨んでおることについて、これをかれこれ申しておるわけではないのでありまして、このことはまことにけつこうなことだと思つております。ただ私が申しましたことは、これはむしろ佐竹君の方が御専門でよく御承知のことであると思いますが、捜査をやめさしたのではないのであります。これは継続しておられることであります。それで、それが御不便であるということは私も考えます。けれども絶対にやめさしたというわけではないのが犬養君の趣旨でありましたがゆえに、捜査及びいろいろの喚問はいたしております。  それから、部内の問題はどうしておるかということでありますが、私からも内部にいろいろ話しておりまして、意気沮喪することのないように、私としては十分の手をとりつつあるのでございます。
  59. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私はこんなことではまだとても満足できません。もつと掘り下げて、さらに具体的にお聞きをしなければなりませんが、他に質問者もあるようでありますし、私が一人で多くの時間をとることは恐縮でございますから、いま一点お尋ねをいたしまして、本日はこの程度にいたしておきますが、しかし私はこれで満足はいたしませんので、なおさらに適当な機会に時間をお与え願いたいと思います。  検察当局が何としても逮捕をしてもらわなければならぬと要求しておる際に、逮捕をやめろ、こういう命令をした。検察官といたしましては、少くともこの事件に関しては逮捕しなければ真実をつかむことができないし、かつもしこれを逮捕することなしに野放しで調べたならば、必ず他の関係人との間のいろいろの話合いその他によつて証拠を隠滅せられるおそれがあるので、逮捕を必要とするということで、前法務大臣の横やりにかかわらず、最高検察官会議において何としても逮捕の請求をしてもらいたいという最後の決意を強硬に法務大臣に伝えたものと思う。しかるに前法務大臣は、それを納得せしめるに足るだけの説得をしないで強権を発動して、この逮捕延期しろと言つた。そこで私の考えるのは、その状態のもとにおいては、捜査上著しく困難な状態を惹起いたしまして、検察当局の捜査にはなはだしく障害を来す事態が起きておるではないかということでありますが、これに対して大臣はいかにお考えであるか。
  60. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これも先刻申し上げましたごとく捜査の上からいえば、いやしくも疑いある者は全部拘束いたしまして、調べるのが一番よかろうと存ずるのでありまして、これをこういう指揮権発動いたしましたことが捜査上不便のあることは――不便ではあろうが、いわゆる重要法案通過させるためにはやむを得ざる措置であつた、こう申すのでありまして、不便であるということは私も存じておる次第であります。その比較の問題であります。国策全体の上から見まして、国家の大所より見ましてやむを得ざる措置である、こう思うのであります。
  61. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 比較研究などとおつしやいますけれども、刑事訴訟法を少しお調べになつたらわかりますが、この逮捕、身柄の拘束ということが真実発見の上にいかに重大なる問題であり、そのことがまた人権蹂躙とどのような関係にあるかということが、ほとんど問題の全部であるといつてもさしつかえないのであります。少々不便であるとか、比較研究の問題などということではありません。かりにあなたが検察官になつてごらんなさい。だれかを調べてみる。お前は贈賄を受けはしなかつたか。いたしません。はい、さようか。帰れ。それでどうして真実の発見ができるか。これは私が多く申し上げずとも、あなたも御理解が行くでしよう。しこうして、いよいよこれを逮捕しなければ、どうしても真実が発見できぬということは、お医者さんの立場におけるあなたが、メスを振つてその患部を切らなければ病気がなおらぬと同様に、その病気をなおすためにこれはやむを得ずとらなければならぬメスである。そこであなたが、いや、メスをとらぬでもまあよろしい、薬を塗つてもまたなおる方法がある。メスを用いることもこれはたいへんいい方法であるし、またこれは絶対的療法ではあるけれども、しかしまた、そのメスを用いなければ不便ではあるが、しかし必ずしもメスを用いないでも、あるいは薬によつてなおるかもわからぬなどといつて、だれかが横やりを入れると、あなたはとろうとしたところのメスをやめて、しこうしてそれによつて重大な結果をかもそうとも、あなたがそのメスをとることをやめるというほど、それほど良心のないお医者さんではありませんでしよう。そのとるべきメス、検察官会議において振うべきメス、振うべき逮捕の請求は絶対に必要である。そのことなくしてはその病根を断つことができぬと請求しておる。それを、しろうとであるあなたがその必要なしとおつしやるためには、もつと深刻なものがなければならぬはずであり、それがわれわれをして、国民をして、あるいはあなたの部下をして納得せしむるものでなければならぬと考えます。私はこのお答えがどうなりましようとも、本日はこれだけにいたしておきます。他日さらに時間をお与えいただきまして、この問題はもとより重大な問題でありますがゆえに、私はさらにもつと専門的見地に立つてお聞きをいたしたいと存じますから、大臣においてもさらによく御検討くださることをお願い申し上げておきたいと存じます。
  62. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま佐竹君からいろいろ御質問がありましたが、私は国家全体の上より見てということを主眼として犬養君がこの措置をとられたと思います。  ただいま病気のお話がありました。それについてはごもつともでありますが、ひとつお答えいたしたいと思います。たとえてみますと、国家全体というのは体全体の健康を保持し、増進するということでありまして、検察陣の諸君は、ある病気のできものをとる、正義のために、汚職摘発のために、政界の革新のためにやられる。つまり腹の中のあるできものを療治する、とるということに懸命の努力をそそがれるのでありまして、これはまことにけつこうなことでありまするが、そのできものをとるためにからだが死んでしまいましては何の役にも立ちません。全体はからだの健康を増進することでありまして、そのできものをとるということは、健康を保持し、丈夫にするという目的のためにとるのでありまして、そのためにからだ全体が死んでしまつては役に立ちませんがゆえに、私はこうやく張りをせよというのではない、健康がが増進して、そういう手術するをに耐えるときまでしばらく待つたらどうかという趣意で、犬養君がこの十四条の指揮権発動したことなりと、こう思つておるのでありまして、いずれももつともでありますが、それを摘発し、それを拘束して、この犯罪を確実にしたという熱意も私は了といたしますが、犬養君の措置は、あくまで国家の大所高所より見てということでありまして、からだが耐えるか耐えぬか、できものをとつてしまつても死んでしまつては意義が立たぬから、しばらく待てという意義であつたのでありまして、あくまで大所高所より見てという趣旨のもとにこの指揮権考慮の上考慮をして発動されたことなりと信ずるのでございます。
  63. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 犬養さんはしろうとであつて、検察官は専門家です。たとえばあなたは病院の経営者であつて、あなたはしろうとである。それから科長は専門家であつて、今これを手術しなければ、だんだん衰弱して腐り果てる。今切つて今うみを出さなければ、健康が回復されぬ。今ちようど手術のいい時機だ。そこでその科長がメスをとつておるところへ今度経営者がやつて来て、あるいは入院料が十分出ないかもわからぬから、科長それはひとつ手をゆるめたらどうだ、こんなことを言われたら、その科長が良心のある者であつたならば、何をおつしやるかと言つて、医者としての良心からやはり手術は手術でするでしよう。そこで今逮捕しなければそのききめがない。今ちようど逮捕にいいときである。時機を失してはできません。そうしてその逮捕の一番ききめのいいときなんだ。これより以外にない。それは医者にひとしい専門家の検察官がそう言つておる、一番いい時機なんだ。手術に一番適当な時期なんだ。そうしてメスを振おうという。それをしろうとが、いやそうせぬでも、大局から、今の健康状態ではなどといつて、今度は国家全体を殺しちやう、そんなやぶ医者によつて支配されるようなことになつては、これは大臣なんかない方がよろしい。私はそういつたことは専門家にまかしたらどうか。そういう特別の事情がない限り、法務大臣専門家の意見を聞いて、そうしてなるほどそうであろうといつて、それに従順であつてしかるべきではないかと私は言うのであります。
  64. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 まことに医者の問題のみに終始するようで済みませんが、わかりがいいので申しますが、犬養君は経営者ではないのでありまして、からだ全体をあずかつておる医者なんであります。病人を見るときに、からだ全体をあずかつておる者と、ある特殊の専門のものを持つて、たとえば外科の人はその療治をすることに専心しておるが、犬養君はからだ全体を見ておる主治医なんでありまして、経営者ではないのであります。しろうとではない、全体を見るということについてはくろうとである。(「大違いだ、やぶ医者だ」と呼ぶ者あり)国家の大所、大局より見て今手術をすると死んでしまうから、この手術は健康の回復するまでしばらく待つて手術をした方がいいではないかということである、こう思いますので、医者の問題のみではなはだ相済みませんが、御質問がありまして、わかりのいい話で御答弁をいたした次第であります。
  65. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 よろしゆうございます。あとにいたします。
  66. 小林錡

    小林委員長 高橋禎一君。
  67. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 時間の関係もありますので、この際特に明らかにしておきたい二、三の点について法務大臣質問いたします。第一には、法務大臣検察権の運用について民意を尊重する意思があるかどうか、この点であります。申し上げるまでもなく、憲法政治は国民の意思による政治でなければならないはずであります。立法においても、行政においても、あるいはまた司法、裁判においても同様であると私は考えておるのであります。そこで先ほど来問題になりました犬養法務大臣検察庁法第十四条の発動に関連してでありますが、国民は現在の政治の状態を見て、政界の粛正をしなければならない、政界は腐敗しておるからこれを改めて、そうして正しい、清新のものの間にりつぱな政策を打立てて日本再建の道を進まなければならぬ、こう考えておるわけです。これには法務大臣も異存はないと思います。そうするとこの汚職事件について一体国民はどう考えるかといいますと、これは徹底的に事案の真相を究明してそれぞれ適当な措置を講ぜられたい、これが国民の意思です。こういう意思を尊重して検察権を運用されるかどうかということです。ところが犬養法務大臣のなされた検察庁法第十四条に基く佐藤自由党幹事長処置の問題については、少くとも国民の意思に非常に反したやり方であると私は思うのであります。従つてあれは民意を尊重された、国民の意思を反映された措置でないのだ、いわゆる憲法政治の建前からいいますと、憲法の精神を蹂躙した措置である、こう思うのでありますが、それについての所見を伺いたい。  次に検察当局といたしましては――これは加藤法務大臣国家の大局に立つてとおつしやるのですが、腐敗したこの政界を粛正しなければ、そんな大局大局といつても問題は解決しない、腐つた上にいろいろなものを築き上げたところでそれは価値なきものであります。従つて政界の粛正ということをするためには、この種の事件は徹底的に追究して行こう、これが検察庁の意図であると私は思う。こまかいものはそれぞれ相当の取調べを受けて参りました。それについては国民も一応納得しておると思う。しかし検察は呑舟の魚を免れしめて、いたずらに細鱗に網するということは邪道である。いわゆる一罰百戒という精神を徹底するためにも、いたずらに小さい魚を追いまわすのではなくて、呑舟の魚を処置したければ、これはとても国家の治安というものは維持できないのです。いよいよこれからほんとうの仕事をするというときに至つて、この検察庁法十四冬が発動されたことについて、検察当局も非常に不満に考えておるに違いないと思う。それは新聞等にもよく報道されたところであります。すなわち政府のなされたあの検察庁法十四条の発動は、国民の意思を無視し、しかもそれを専門に責任をもつてつておる検察当局の意思を無視してなされた、これでは私は真に検察権運用についての責任を持つておる政府の態度ではないと思うのであります。その点をはつきりさしていただきたい。  第二には、やはり民意尊重の問題でありますが、新聞の報道するところによりますと、岡崎外務大臣、あの人に選挙違反があつて、しかも検察当局はこれを不起訴にした。ところが横浜の検察審査会においては、これは起訴するのが相当である、こういう意見を出して検事正にも通達した、こういうのです。検察審査会の法律はいわゆる国民の意思を検察権運用の上に反映するということの理想のために設けられた制度であります。だからこれを法務大臣はどのようにお取扱いになるおつもりであるか。民意を尊重するというのであれば、これは起訴しなければならないと思うのです。すなわち加藤新法務大臣検察権運用に関して民意を尊重する意思ありやいなや、そして佐藤問題についてとられた処置がはたしてそれに合致するかどうかという問題と、岡崎外務大臣に対する横浜の検察審査会の意思を尊重するかどうか、これについて御答弁を願いたいと思います。
  68. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 高橋君の民意を尊重するかという御質問でございまするが、もちろん民意を尊重することは申すまでもないのでありまして、民意はお話のごとく、政界の粛正と申しまするか、政界の革新と申しまするか、国会の信用威信を高める上からいたしましても、民意はそれを望んでおりまするがゆえに、その方に努力せなければならぬことは申すまでもないことでございます。ただ今回の問題にあたりまして、国民の大多数というものは、こういうことではいかぬという憎悪と申しまするか、究明を熱望しておることであろうとこう思うのでありまして、これは一面においては国民が、一時的のまじめな意味の感情の突発もあるであろうと思いますし、またそうでない人もあるであろうと思いますが、そういう場合におきまして、先刻しばしば申しましたごとく、国家の大局の上より見てただちに――民意を尊重せぬという意味ではありませんが、一時的の興奮と申しまするか、言葉は少し表現の仕方が悪うございますが、それに乗じてやることはどうか、国家の大局の上より見てこの方がいいと思いましたときに、犬養君はこの措置をとつたのでございまして、決して国民の民意を尊重せぬという意味ではないのであります。これは尊重せなければならぬが、この場合はやむを得ざる措置であると、こういうことに御了承を願いたいと思います。  それかしら岡崎外務大臣の問題については、他の政府委員より御答弁いたします。
  69. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今の岡崎外務大臣の問題について、こまかい点は別といたしまして、事情を聞こうというのではないのです。そういう結論の出たことは、これは加藤法務大臣もよく御存じのはずなんです。だから民意を尊重しようとする法務大臣は、検察審査会の方にもちやんと――これは国民の意思、すなわち民意を、検察権運用の上に反映するために設けられた制度だ、こうなつておるのですから、もう争いはない。民意を尊重される立場に立つ法務大臣としては、民意がそこにはつきり制度上わかつておるのですから、だからそれについてどういうお考えをお持ちであるか、それをまずお聞きして、それから井本刑事局長からこまかい事情はお聞きすることといたしましよう。
  70. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 岡崎外務大臣を不起訴にしたとかせぬとかいう――不起訴にしたということは新聞紙上に伝えられておりまするけれども、いまだ正確な内容については報告が来ておらぬのでございます。その報告をまつて善処いたしたいと思つておる次第でございます。ただ返す返すも、一般論といたしましては民意を尊重するということ、これは申すまでもないことでございます。
  71. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今報告が来ていないとおつしやつたのは、横浜の検察審査会でもつて、岡崎外務大臣の選挙法違反事件については起訴が相当であるという結論が出たという報告が来ておらぬ、 こういう御趣旨ですか。
  72. 井本台吉

    ○井本政府委員 技術的な問題でございますから、私からお答えいたします。新聞紙上に検察審査会で岡崎外務大臣の選挙違反は起訴が相当であるという決定をした旨の報道がなされたのでございますが、私どもさつそく電話で問い合せましたところ、横浜の地方検察庁にはまだ正式に横浜の検察審査会からさような意見が付せられたことはないということを聞いております。従つてどもといたしまては、正式に意見が来ましてから、この問題について検討したい、こう考えておる次第でございます。
  73. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今の問題に関連して加藤法務大臣の御答弁をいただきたいわけでありますが、検察審査会法は検察権運用に関して民意を尊重するために設けられた制度である。従つてその審査会の出した結論というものは、憲法政治の立場から考えましても尊重しなければならないと思うのです。加藤法務大臣も、民意はどこまでも尊重しなければならないと言つておられるわけですから、おそらく私は、まだ報告等の手続は遅れておるかもしれませんけれども、大新聞にあのように発表されたところを見ると、審査会ではそういう結論を出したのだと、こう確信いたしておるのでありますが、もしそういう報告書が参りましたならば、法務大臣は民意を尊重して――起訴が相当だというのが制度の上から見て最も権威のある民意なんで、それを尊重されますかどうか、それをなお伺つておきます。
  74. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 一般論といたしましては、尊重せなければならぬことは申すまでもないのでありますが、その報告もまだ来ておりませんから、具体的にここでお答えすることは遠慮いたしたいと存じます。
  75. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 犬養法務大臣の発せられた検察庁法十四条の指揮権の問題に関連して、先ほど加藤法務大臣は、いかにも国民が一時的興奮によつて佐藤逮捕すべし、こういうふうに考えておる、すなわち民意はそうだけれども、それは一時的の興奮だ、こういうふうなお言葉でありました。だから興奮がさめればわかるのだ、こういうふうなお話なんです。私はそうは思わないのであります。と申しますのは、その指揮権発動されますたしか三日ほど前に、犬養法務行政に専従するというので、警察担当の事務を解かれて、法務大臣として専念されることになりました。ところがそういう措置をとられましたときに、すでに国民国会においても非常な疑惑を持つたわけです。いわゆる造船疑獄の問題が漸次発展いたしまして、池田、佐藤逮捕近しという声が高くなりましたときに、こういう措置がとられたわけです。ところが政府はこれはきわめて事務的なものであると、こういうふうに答弁をされました。ところがそのときは、ちようど空間の一点を通る直線が無数にあるといわれるように、これはただ一つ措置でありましたから、政府としてはとやかくと数々の理由をあげて、何も政治的に検察当局を圧迫するものではないのだというふうな説明がございました。ところが日ならずして、たしか三日ぐらいたつて犬養法務大臣が、あのこれまで前例を見ないような、有名な、そして検察史上一大汚点を残すような、将来の歴史に残るでしようが、そういうふうな、国民を驚かせるような指揮権発動があつたわけなんです。国民はいよいよこれだなと思つた。空間の二点を通る直線はただ一つしかない、最初つておつたことはやはりわれわれの疑つた通りだという、その結論が出たような感じがいたすのであります。造船疑獄がいよいよ自由党の大幹部の身近に迫つたときに法務大臣を専従にして、そうして三日ほどたつてあの発動をして、国民は、警察権の圧迫である、政治的圧力を加えたものである、捜査の妨害をするものである、こういう結論を出して、これは正しい、こう考えておるのが現在の状態なんです。私は造船疑獄事件の捜査から今日までの状態を見て、国民が何も理由なくして一時的興奮によつて間違つた結論を出しておるのではないと思うのであります。政界の腐敗、官紀の弛緩等々、国民としては何とかこれを改めなければ日本の将来が思いやられる、こう思つておるのです。これは加藤国務大臣もほんとうの良心的な御答弁があるなら認められるに違いないと思うのです。決して一時的の興奮ではないのです。私は正しい国民の意思であると思うのですけれども、その国民の意思は、今や蹂躙された形になつておるわけです。次に検察当局が一時的の興奮でなかつたことに加藤法務大臣もお認めにならなければならぬだろうと思うのです。あなたの新しい部下ですから、これが一時的興奮にかられてあのような捜査をやつた、あるいは法務大臣が困られるような申出をしたなんということはよもや言われないと思うのです。専門的に責任のある立場の者が冷静に――検察当局は冷静でなければならぬ。冷静に諸般の事情から考えてこれを明らかにすることが国家的立場に立つて国民の意思にも合致し、自分たちの見識から見てもこれこそがまず先決問題である、これが大局の上から見てどこまでも究明されなければならぬという考えでやつておるのです。それを蹂躙したということについて、単なる一時の興奮だから時がたつて冷静になればわかる、われわれが説けばわかる、そう簡単なものではないと私は確信いたすのでありますが、法務大臣はなお先ほどのような御答弁をお繰返しになるかどうか、念のためさらに伺つておきたい。
  76. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私が先ほど一時的興奮という言葉を用いましたのは、これは言葉の表現の仕方が悪いかもしれぬと申しましたが、今回犬養法相が十四条の指揮権発動いたしたことに対しまして、国民の憎悪と申しますか怒りと申しますか、そういうもののあることは私も事実と認めるのでありますが、そのうちにはまだほんとうの事情を了承しておりませんがゆえに一時的興奮の部分もあるからと、こう申した意味であつたのであります。そういうことは国家の大局より見てやむを得ざる措置である、こういうことが漸時わかりまして、時を経て冷静になりますれば、ことごとくの国民とは申しませんけれども、大体の国民はこれもやむを得ざる措置であるということが、ある適当なときには了承してもらえることであると思つておる次第でございまして、また私どもは大局の上に立つて国民にさように了承してもらえる、こう信じておる次第でございます。
  77. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今の問題に関連するわけですが、その前に伺つておきたいのは、犬養法務大臣のとられた措置というのは新聞に出ておる通りだ、こういうような法務大臣の御答弁があつたきりです。そして犬養君も非常に苦しい立場に立つて、長い間考え考えやつたことだから、それで犬養法務大臣のとつた処置を踏襲する、こうおつしやつたのですが、犬養法務大臣から加藤法務大臣引継ぎを受けられるときに――引継ぎを受けられましたでしよう。引継ぎを受けられるときにこの佐藤問題に関連して、自分はこれこれの事構でこういうふうな確信の上に立つてこの措置をとつたものであるという点の、この問題に関連する引継ぎは一体どういう引継ぎを具体的になさつたか、それをお伺いしたい。
  78. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 いろいろお話がありましたけれども結論はこの新聞声明に尽きておりますので、私はいろいろ道行きのお話は別にここで申し上げる必要はないと思うのであります。結局考慮考慮を重ねられたということは、いろいろな点を考察された結果であると存じますので、その結論新聞声明発表に明らかでありますが、これを私が引継いだわけであります。
  79. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 結論新聞を見てよくわかつておりますが、その結論の出る根拠となつ事情、条件といいますか、資料といいますか、それが私どもは聞きたい。国民もはつきりしてもらいたい。どうしてああいう結論ができたか。結論を正しいと思つていないのです。こういう事情があるからそれでこういう結論ができた。その引継ぎをされたときに、あなたがお考えなつたのではないのですから、犬養法務大臣考えたことですから、その具体的ないろいろの事情国民の前につまびらかにしなければ、国民は納得するはずはないのです。国民結論は正しくないと思つているのですから。あるいは佐竹委員も先ほどおつしやつたことに関連するわけですが、こういう事情だから――ただ国家の大局に立つて言つて国民にはわからない。国民はこう思つており、検察当局もぜひやらなければならぬと思つているときに、これこれの事情があつてこれは国家の大局に立てば、この汚職事件をこの際すみやかに解決するよりは、逮捕しないでおいて、検察当局がときに捜査の妨害だと感じ、あるいは腰を折るかもしれないけれども、なおかつそういう措置に出なければならなかつたという納得すべき事情がなければならぬ。それは引継ぎがあつたと思う。その引継ぎがなかつたならば、加藤法務大臣は確信を持つてその結論を支持されることはできないと思うのです。ただ自由党内閣で、犬養も自由党員であり、自分も自由党員であつて、吉田総理から示されているのだから、よかろうが悪かろうが、とにかく結論を支持すればよろしいのだ、そういうことでは国民は納得しない。そういう無責任なことは加藤法務大臣もなさらないと思いますから、当時あなたが、引継がれた具体的な事情、資料というものをこの際はつきりと承りたいと思うのであります。
  80. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 どこまで申し上げますか。私もその概要はお話を承つたのでありますが、いろいろ考えた結果自分はこういう結論が出た、こういうのでありまして、道行きのことは新聞紙で御承知のこともありましようけれども、違つていることもずいぶんありましようけれども、それをここで一々申し上げることはひとつ差控えさしていただきたいと思います。
  81. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務大臣それはどうも無責任ですよ。あなたは犬養は神様のようなもので絶対に間違いをやるような男ではないのだ、こう言うて、理由ははつきりわからぬけれども結論はこうだというのでその結論は正しいというのならば、あなただけは話がわかるのですが、国民は何も犬養法務大臣を神様だと思つていないのです。いろいろあやまちもある。むしろそれを怪しいなと思つている人があるくらいですから、理由をあげなければ、具体的なその事情がわからなければ、それが国家の大局にどう響くかということはわからない。これからいろいろ経験されることでしようが、裁判にも注文があり理由がある。理由と主文が齟齬しておれば、その裁判は価値なきものとして破棄される。あなたはちようど破棄されるような、主文だけを言つておられる。理由はどうでもいいから自分は主文を信用する、それじやだめなんです。やはり国民はその理由が知りたい。国民はしつかりとした証拠、理由に基いて出た結論によつて、それならばというて初めて納得するわけです。ただ結論だけ出して、これが国家の大局だなんという、そういうおそまつな考え法務大臣の職責を果そうと思つておられたら、国民はついて参りません。私は加藤法務大臣法務大臣としての成功を祈るあまり、しかも新しい法務大臣ですから、その出発点においてそういうあいまいな態度をとられることは、法務大臣自身にとつてもよろしくないことですから、この際つまびらかにしていただきたいと思うのであります。
  82. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 犬養君は引継ぎの際に、国家の大局より見て私はこうすることがきわめて適当であると思うという、その立場で申されたのでありまして、こまかいことと申しますと、どこまでがこまかいことか、詭弁を弄するわけではありませんが、自分はこういうふうにいたしたのである、そういう説明をされたのでありまして、それ以上こまかいことを――こまかいことも程度がありますが、御承知のごとく政治をやる者は、こまかいことを聞かなくても大方針、大目的がきまつておればいいのであつて、私もそれで了承いたした次第でございます。
  83. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務大臣が実際とぼけて言われるなら、それも話はわかるのですよ。しかし法務大臣はとぼけては勤まらぬと思うから、はつきりしなければならぬのですが、こまかいこととか大きいこととかいうのではなくて、結論だけではだめなんです。こういうふうな事情から、国家の大局に照してこういう結論が出た、国民はその事情を聞いて、国家の大局に立つて、これは下相当なやり方であつて、むしろ検察当局が主張しておるような措置をとることが正しい、こういう結論を下すかもしれない。ところが、その理由をはつきりされなければ、結論は出ないのです。そんなことで国民は納得するわけでもなく、あなた自身も、もしも言葉通りだとしたならば、何のことはない、ふらふらと法務大臣なつたようなことになるでしよう。国民が責めようが、検察当局が責めようが、国会が責めようが、ばかといわれようが何といわれようが、ただほおかむりして、同じことを繰返してそれでいいというなら、それも一つの行き方かもしれませんが、そういうふうだから、国会の信頼が国民からだんだん薄らいで行く、国全体の力が弱くなつて行く。   〔委員長退席、古屋(貞)委員長代理着席〕われわれはここでしつかりと日本再建の方策を講じなければならぬ、政府も国会も真剣でなければならぬ、こう思うのです。だから今の英雄を聞かなければ――ないならないでいい、ほかのことは聞かなかつた、聞いたけれども覚えていないと言われるならそれもわかるが、理由を示さないで、ただ結論だけ出して、それで答弁が済んだ、こう思われることは国会においては断じて許すべきものでないと私はかたく信じておりますから、了解のできるような御答弁を願いたいと思うのであります。
  84. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 たびたび申しますが、今の国会状態においてこういう十四条の指揮権発動することはやむを得ないと思う、それでこういうふうに指揮権発動いたしたのであります。こう国の現状を説明されたのでありまして、それ以上の道行きのこまかいことを――そう聞く必要はないとは申しませんが、時間がないものですから……。それだけで、捜査上のこまかいことを、犬養君が御承知か御承知でないか、それも知りませんが、専門外の私が聞きましたところが……。捜査手続がどうだとかこうだとかいうような話は、私は聞く必要がないのでありまして、犬養君がなぜこの十四条の指揮権を行使したかという根本の問題、すなわち国家の現状の立場よりいたしまして、これは逮捕しないでほかの方法によつてせられた方がよいと自分は信じた、こう言うのですから、それ以上追究する必要はない、それで私は事務を引継いだわけでございます。今後は私の判断によつて、これを取消すか踏襲するかという問題に移つて参るのでありまして、今後の問題としては、私は犬養君と同意見で、重要法案通過見通しのつくまではこれはこのまま坂消さぬ方がよかろう、これを踏襲する、こういう決意をいたして引継ぎをいたしたのでありまして、おもしろ半分とか上調子でおるのではありません。
  85. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それでは答弁しやすいようにこちらからまず分析してお尋ねをいたしましよう。検察当局がいわゆる首脳部会議を開いて強い申出をされた、その申出については、どういう理由でこれをこうしなければならぬ、ただ手続上の問題だけでなくて、国家の大局に立つてこれはやらなければならぬということがあるはずなんですが、それについてはどういう申出があつたという話が、前法務大臣から引継ぎをされるときにあつたか、その点をまず承りたい。
  86. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 いろいろ御質問がありますと、そのときにどうしただれがどうだとかいうことまでもしまいには入ると思いますが、ただいま申し上げましたことでひとつ全部お許しを願いたいと思います。
  87. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 こまかく入らないのですよ。検察当局から申し出た、これは重要なことでしよう。前法務大臣犬養さんが非常に慎重に考えたというのですから、検察当局からこういう理由によつてこういう申出がある、それを基礎にして考えられるわけでしようから、それについてはどういうお話があつたか、それはこまかい問題じやない、まず第一に基礎になる問題です。その引継ぎがなければ、法務大臣としてこの問題を引継いで確信に基いてやつておるなんと言われることが何だかおかしくなつてしまうのです。ただ漫然と引継がれたのじやないかという疑いをさらに新しく持つことになる。それでは国民は納得しませんでしよう、御答弁を願いたい。
  88. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 犬養君は、そういう問題についていろいろ意味はあつたけれども私はこういうふうにしたと言われたのでありまして、あとは政治常識で考うることであります。それで私はそのこまかいことを――こまかいことと申すとまたおしかりを受けるかもしれませんが、そういう経過のいろいろのことをここで申し上げる必要はないと思います。
  89. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 必要があるかないかは、こちらでお尋ねするのですから、あなたによつてきまるべき問題じやないのです。またそういうことであつたのでは、国民国会もこの問題について了解するはずがない。しかし答えないというなら、強制力を用いるわけに行かぬからしかたがないですけれども、私はこういうことをお尋ねします。国会でこれまでこの問題に関連して助藤法務大臣のお話になつたこと以外には引継ぎがなかつたのですか。どうもそういうふうにも思えるのですが、それはどうなのです。
  90. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員長代理 高橋さん、法務大臣はちよつと今何か急用があるらしくお忙しいので、準備されて午後の委員会で今の質問に対して御答弁を願うことにしてはどうですか。
  91. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 けつこうです。
  92. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員長代理 それでは今の高橋さんの御質問は、検察庁逮捕に必要な理由犬養法相に述べたという点の御質問のようですから、その点は刑事局長ともよく御相談なさつて、午後それについての御答弁を願えるように御準備なさることを法務大臣委員長からお願いいたします。     ―――――――――――――
  93. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員長代理 それではこの際、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。すなわち民事訴訟法等の一部を改正する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案及び民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案を審査するために、民事訴訟法等の一部を改正する法律案外二件審査小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員長代理 御異議がないと認めます。さよう決定いたします。  次にただいま設置することに決定いたしました小委員会の小委員の員数、小委員及び小委員長の選任についてお諮りいたします。小委員の数はこれを十一名とし、小委員及び小委員長委員長において御指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員長代理 御異議がないものと認め、小委員の数はこれを十一名とし、小委員には、   鍛冶 良作君  小林  郁君   佐瀬 昌三君  田嶋 好文君   林  信雄君  高橋 禎一君   古田  安君  猪俣 浩三君   井伊 誠一君  木下  郁君 並びに私を加えて十一名を小委員指名いたします。小委員長に林信雄君を御指名いたします。  なおこの小委員会は来る六日午後に開会いたしたいと存じておりますから、さよう御了承をお願いいたします。  それでは午前の会議はこの程度にとどめておきます。午後は二時から開会することにいたします。これにて休憩いたします。    午後一時四分休憩      ――――◇―――――    午後三時九分開議
  96. 小林錡

    小林委員長 休息前に引続き会議を開きます。  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案を議題といたします。この際、田嶋好文君外三名の自由党理事諸君から、本案に対する修正案が提出されておりますから、その趣旨説明をまず聴取した後、原案並びに修正案を一括して質疑を行うことといたします。  それでは修正案の趣旨説明を求めます。佐瀬昌三君。
  97. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 ただいま議題となりました接収不動産に関する借地借家臨時処理法案に対する修正案の提案理由を説明いたします。ただその前に、接収不動産に関する借地借家臨時処理法案は第十六国会に提案されて引続き本国会まで継続審議なつたものでありますから、各位にはその内容につき記憶が明瞭でない方もあられると思うので、この法案の提案理由とその内容とを申し上げてみたいと存じます。  終戦直後旧連合国占領軍はわが国に進駐するやただちに不動産の接収を開始いたしました。この不動産の接収は戦後の非常措置であつたにかかわらず、日本国政府は土地工作物使用令のほかは特別の法律を設けませんでした。これがために民法の賃貸借の規定や借地借家法の規定では接収解除後の不動産に関する権利者間の紛争は処理し得ないのであります。すでに平和条約発効後駐留軍に対する不動産の提供については、行政協定に基く土地収用等の法律により不動産の提供が根拠法となつております。従いまして占領中との対比からも、接収地に対する権利調整のために何らかの臨時特別法による解決が必要であります。  以上が提案理由の要旨であります。  次にこの法案の内容を申し上げます。  第一に接収当時借地をしていた者は接収解除後その借地の優先借受けをすることができる。また接収当時借家していた者はその場所に建築された建築物につき優先借受けができる。  第二に、接収当時の土地建物の所有者は、接収解除後自己使用する場合や、すでに権原により自己または第三者が使用している場合は接収当時の賃借人の優先借受けの申入れを拒否することができます。  第三に、その他の規定の多くは互いに利害の相反する賃借人と所有者との権利関係を調整した規定であります。  第四に、強制疎開地にして後に接収せられた地域には、この法案の重要な規定を適用することになつております。以上が法案の内容のおもなる点であります。  さて今回提案いたしました接収不動産に関する借地借家臨時処理法案に対する修正案の内容は次の通りであります。すなわち   接収不動産に関する借地借家臨時処理法案の一部を次のように修正する。   第十二条及び第十三条を削る。   第十四条を次のように改める。   (接収地が疎開建物の敷地である場合の土地優先賃借権及び借地権優先譲受権)  第十二条 第三条(第二項を除く。)、   第四条(第二項を除く。)及び第五条から第七条までの規定は、罹災都市借地借家臨時処理法(昭和二十一年法律第十三号)第九条の疎開建物の敷地の借地権者であつて、昭和二十三年九月十四日現在において当該疎開建物の敷地が接収中であつた者に準用する。但し、同日までに同法第九条において準用する同法第二条の規定による賃借の申出又は同法第九条において準用する同法第三条の規定による借地権の譲渡の申出をした者については、この限りでない。   第十五条を削る。   第十六条に見出しとして「(接収建物の賃借権者の建物優先賃借権)」を附し、同条を第十三条とし、第十七条を第十四条とする。   第十八条中「第十七条」を「第十四条」に改め、同条を第十五条とする。   第十九条中「若しくは第十二条(第十四条において準用する場合を含む。)」を「(第十二条において準用する場合を含む。)」に、「若しくは第十三条(第十四条において準用する場合を含む。)」を「(第十二条において準用する場合を含む。)」に改め、同条を第十六条とする。   第二十条中「若しくは第十二条(第十四条において準用する場合を含む。)」を「(第十二条において準用する場合を含む。)」に、「第十五条若しくは第十六条」を「第十三条」に、「若しくは第十三条(第十四条において準用する場合を含む。)」を「(第十二条において準用する場合を含む。)」に改め、同条を第十七条とする。   第二十一条第一項中「、第十二条(第十四条において準用する場合を含む。)、第十五条若しくは第十六条」を「(第十二条において準用する場合を含む。)若しくは第十三条」に、「若しくは第十三条(第十四条において準用する場合を含む。)」を「(第十二条において準用する場合を含む。)」に改め、同条を第十八条とする。   第二十二条及び第二十三条中「第二十条」を「第十七条」に改め、これらの規定をそれぞれ第十九条及び第二十条とする。   第二十四条から第二十六条まで中「第二十条又は第二十一条」を「第十七条又は第十八条」に改め、これらの規定をそれぞれ第二十一条、第二十二条及び第二十三条とする。   第二十七条を二十四条とする。  修正案の提案理由は次の通りであります。  第一に、この法案において最も評判の悪かつた規定三箇条を削除しようとするものであります。すなわち本条第十二条、第十三条においては、接収当時の建物賃借人が接収解除後その敷地に対し優先借受けすることができることになつております。これは建物の借受人が土地の借受けができることを意味し、理論上不当であるのみならず、現状においてはその敷地の新取得者との間に紛議を生ずるおそれもありますので、削除しようとするわけであります。つまりこの法案に対し、土地の所有者が最も不満とするところを削るわけであります。  第二に、この法案の主たる目標を借地人の保護に置き、借家人の保護は第三者に対する対抗力など、わずかの範囲にとどめようとするものであります。思うに終戦後八年数箇月を経過したる今日においては、建築事業は昔日の比ではなく、建築物の賃貸借については自由契約によるのが妥当であり、ただ借地については土地は絶対的に不足しているので、社会政策的見地からは今日もなお法律により土地の賃借人を保護するの必要があるとの見解によるものであります。  第三に、新事態として接収地において借地人と借家人との間に示談が進行いたし、借地人が家屋建築義務を負い、借家人がこれを借り受けるとの予約などの成立している事例があります。これは接収地の一部分の現象ではありますが、ともかくも借地の保護がやがて借家の保護によい影響を与える事例と思われるのであります。  以上修正案の提案理由を申し上げた次第であります。
  98. 小林錡

    小林委員長 これにて趣旨説明は終りました。原案及び修正案について御質疑はありませんか。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 小林錡

    小林委員長 御質疑がなければ本案については本日はこの程度にとどめておきます。  なおかねてから地方行政委員会に申し入れてありました警察法案についての連台審査会は地方行政委員長と協議の上、来る五月六日午前十時三十分より開会することといたしましたのでさようお含みおきを願います。  なお本委員会といたしましては同じく六日の午後一時より民事訴訟法等の一部を改正する法律案外二件の審査小委員会を、午後二時より委員会を開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十四分散会