○佐竹(晴)
委員 わずかに十分でやれというのでありますから、一問一答の形ではすぐに時間が参ります。従いまして、
質問の要点を全部申し上げますから、
緒方副
総理、
加藤法務大臣御両人はメモをなさ
つておかれまして、各適当に
お答えを願いたいと存じます。
加藤法務大臣は、新任に際して
検察陣と話し合津て行く、
犬養のお父さんのおつしや
つたように、話せばわかる、それで行くと語
つた旨、二十三日の朝日新聞に載
つております。
政府と
検察陣が深刻に対立して、ピストルを突きつけられた場面であることを、
法務大臣も直感なさ
つておられるのであります。一体これをどうさばいて行かれる御決心であるのか、またどう腹をきめられて
法務大臣をお引受けにな
つたのか、私はこの際これを承
つておきたい。
第二には、話せばわかると言うけれども、問題は誤解を解くとか、法の解釈の相違を調整するとい
つたような問題ではありません。佐藤を
逮捕するかどうかという現実の問題であります。
検察首脳部はいまだか
つてない長い時間の間討議を重ねて、しかも前
法務大臣の数次にわたる横やりにもかかわらず、
逮捕のほかなしと
検察陣においては一致決定をいたしておるのであります。この根本問題を解決しない限り治まるものではございません。この深刻なる対立下に、話せばわかるなどということをおつしやいますと、言下に問答無用とはねつけられてしまいはすまいか、はたして
検察陣を納得せしむるだけの決心があるのか、またいかに納得せしめるような説得をするだけの用意がここにあるのか、これをまず第一点として承
つておきます。
第二点は、
犬養法務大臣は
検察庁法第十四条に基いて
逮捕許諾請求の延期を指令なさいました。当
委員会における
法務大臣の答弁を聞いておりますと、これを踏襲する御決心であることがきわめて明白であります。しかしおよそこの
検察庁法十四条というのは
法務大臣の政務であります。正常に行われておる
検察当局の公訴権の
行使に、制肘を加えるために与えられた権利ではありません。法の解釈や、起訴すべき事案であるかどうか、犯罪構成事実を満たしておるかどうか、その
捜査をどうするか、
逮捕すべきであるかとい
つたことは、いずれもこれは事務的に決定すべき
検察官の事務であります。その事務的監督の頂点が
検事総長でございます。しこうしてこの
検事総長の
指揮監督のもとに一致の
意見をも
つて事務的に決定いたしましたことに対して、政務を扱うところの
法務大臣がこれに容喙をするということは、公訴権の侵害ではないかと思うのであります。もちろん公訴権の
行使についても、この十四条に定めるところによ
つて政治的考慮が払わるべきものであることは当然でありますが、それは基本的人権の侵害があ
つてはならない、また公共の福祉を守らなければならぬという大所高所に立
つて、正規を逸脱した公訴権の
行使を排除するために与えられた権利であります。一体今回の十四条の
行使というものは、はたしてこれに該当しておるかといえば、断じてそうではありません。今回の件は何人が何と言おうとも、
佐藤幹事長の
逮捕が
内閣の運命にかかわるということを心配いたしまして――これは
犬養大臣の
言葉のうちにも表われておる。その
内閣の延命工作並びに新党工作に深い関係のあることは否定することのできない事実であります。この事由でも
つて神聖なる公訴権の
行使を左右するがごときは断じて許されないと
考えますが、はたしていかがでありましよう。
第三点は、
犬養法相が
逮捕許諾請求延期の指令を発したその理由は、
事件の
法律的性格と
重要法案の
審議にかんがみて国際的、
国家的
重要法案の
通過の見通しのつくまで延期するというのでありますが、このような理由は正当なものと思えましようか。少くとも
検察庁法第十四条の指令を発する根拠として正しいものと言えるでありましようか。
まず第一に、
事件の
法律的性格にかんがみてとありますが、しかし第三者収賄論に関する
法律問題に疑義を生じたからのようであります。しかし
事件の
法律的性格のために、延期しなければならぬという理由は毫末もございません。
法律問題ならば、論議を尽せばすぐに結論が出ます。現に
検察首脳
会議においては、結論を出しておるのであります。しこうして
逮捕請求をなすべしというのであります。重要なる
法律案の通るまで得たねば結論が得られないというものではありません。
法律的性格にかんがみて延期しようというのは、
犬養前
大臣の
意見を踏襲する新
大臣として、一体いかなる根拠をも
つてこれを説明なさるのか。次いで
法務大臣は
しろうとであります。専門家の
検察官会議で一致の決議によ
つて結論の得ておることを、
しろうとの
法務大臣の一存でも
つて左右することができるということなれば、これはま
つたく法相の独善独裁であります。かくのごときは断じて許さるべきことではないと思います。これに対する所見を承りたい。
次いで第二に、
重要法案の
審議にかんがみて国際的、
国家的
重要法案の見通しのつくまで延期するようにというのでありますが、
重要法案というのは一体何を指さしておるのか。
犬養氏の言うところによるとMSA、保安庁法
改正法案、教育二
法案などの
通過を指さしておるようでありますが、はたして新
大臣もさようにお
考えであるか。もしそうだとするならば、その
法律案は一体
通過の見通しがありますか。いつ
通過するとお
考えですか。最近はあたかも開店休業の
状態ではありませんか。この
委員会でも、今日に至るまで三日も四日もや
つておる。昨日ちよつぴり五分ばかりおいでにな
つて、逃げるように帰
つてしま
つた。きようここでや
つておると、われわれに十分間でやれ、あとはこれからほかの
委員会に行かなければならぬとおつしやいます。
総理も病気と称して一向出て来ない。まるきり
政府は何も
審議促進をしないでいて、そうして
法案審議のために佐藤の
逮捕はいけないのだ、
政府としてこれは言われることですか。この
状態下で佐藤を
逮捕したとてしないとて、一体どうかわるのでありますか。佐藤を
逮捕しなか
つたならばそんなに無事に、そして早く通るというお見通しですか。一体ひつぱ
つたならばいつまで通らない、今度そのひつぱることを延期したためにいつごろまでに通るお見通しなのか、その比較をはつきりここに明示されたい。
次いで四として申し上げたいのは、
法案の通らないのは
政治力が足りないからであります。
佐藤幹事長がひつぱられたら通る、通らぬという問題ではありません。また佐藤氏が
逮捕されてしまえば、自由党ではすぐ
幹事長をおかえに
なつたらよろしい。何も
国家に迷惑を及ぼすことはない。それだけの
政治力すらも、自由党内における
総理、副
総理にはありませんか。犯罪容疑者を庇護し温存することによ
つて、
国会の最高
運営に当らす、あるいは新党工作に専念させるがために、その
逮捕を延期しなければならぬというがごときことが、
検察庁法第十四条の
指揮権発動の根拠に一体なるとお
考えですか。
第五に申し上げたいことは、先ほど
法務大臣は
犯罪摘発には善処したい。十四条
発動は
逮捕を延期したというだけであ
つて、
捜査は熱心に努力してもらう
考えであると述べ、かつ副
総理は
捜査の
内容や処分に干渉するものではないとおつしや
つた。だがこれは
しろうとのおつしやることだ、だだいまの猪俣君の
質問にも現われております通り、これが関係ないとどうして言われましようか。関連をいたしておりまする数人の被疑者というものは、おのおの
検察当局では計画を立てて、だれを調べたらだれを調べる、どういう証拠を抑えたならば、これをどういう証言に照し合わせると、順序と手順をも
つてや
つておるのです。しこうして十のものが九まで来ておるが、一がきまらぬために全部がどうすることもできぬという段階にある。龍を描いて目を欠くがごとく、十のものが九つまで調べ上げてあるが、
佐藤幹事長を調べることによ
つてここで全き
捜査というものができ上
つて、起訴、不起訴が決定することができる段階に来ておる。そうして最後のその一点を
政府の力によ津て阻止しようとしている。
検事総長は何とい
つておるか。こんな
状態では今までひつぱ
つておる者もみな放してしまわなければなりませんと言
つておる、われわれの代表者が行
つたときにはつきりとそのことを言
つておる。こうなると今度の造船疑獄などの問題は、もうこれ以上どうにもなりません。あたかも打切りを命ぜられたにひとしい結果になることを
検察当局は憂えている。
国家百年の恐るべき事態というものが歴史の上に残されることになる。一体まじめに、
法務大臣は十四条
発動というものは、
逮捕の延期をするだけであ
つて捜査に何にも干渉するものでないと、そんなことが平気で言われることですか。あるいはおつしやるかもわかりません、
逮捕しないでも
捜査はできるのだ、これは副
総理も身をも
つて御体験なす
つたことであるし、
加藤さんにおいてもよくその辺のことはわかるでありましよう。実際なかなか――この
委員会その他においてこういうことがありませんかと言
つても、私は犯罪を犯しておりましたとか、や
つておりましたという者は一人もありません。百人中百人ありません。これは当然です。
従つて刑法においても明確にこれが認められて、犯人及び親戚の者なんかが、かりに犯罪を隠秘しても、証拠を隠滅しても、その刑を免除することができることにな
つておるし、
刑事訴訟法の上においては黙秘権を
行使することができるということにな
つておる。
法律までこれを認めている。犯人はうそを言うということが
法律の上に明定されている。
従つてあたりまえに不
逮捕でも
つて調べようとしても、本人が本音は吐かないということは天下に通るところの事理であります。
従つてある程度他との交通を排除し、またこの者を調べたときに他の関係人と品を合せることがないようにして調べなければ、あの池田さんと西郷さんの問題のごとくに宙に消えてしまうおそれがあるから、
捜査に……。