○
犬養国務大臣 御
注意ありがとうございます。
佐竹さんのような
意見を持
つておられれば当然そういう御
質疑があるのが当然でございます。私も病中から一度
お答えを申し上げたいと思
つてお
つたことであります。かつまた非常に礼儀を尽された御
質問で、その点は深く敬意を表しておる次第であります。ただ
弁解がましいことはきらいでありますが、こういう
委員会というのは事の真相をお互いに究明する場所でございますから、私も事の真相を申し上げたいと存じます。
正月十日に山下汽船
会社の会長の山下太郎君が秘書官室を通じて面会を求めて来たことは事実でございます。もし何かやましい相談なら、いくらもそれこそ
料亭や何か使えばいいわけでありまして、秘書官室を通じて、
新聞人などの大勢いる部屋を通じて来るということは、別に双方とも何の欲も持たず、やましい観念を持
つていない証拠だと、私はこういうように解釈いたしておりますが、これは御
了解を得るかどうかわかりません。そこでや
つて参りまして、自分の
会社の重役の一部が浮貸しと言われましたか、そういう
類似の言葉であります、よく覚えておりませんが、それで焦げついてしま
つた事件が起
つている。そこで私は古屋さんには申し上げたことがあると思いますが、山下太郎君の
会社における地位を申さなければなりません。私は先代の亀三郎氏とは中国問題で深い同志でございまして、日華事変の際の対
蒋介石氏との停戦協定の下地の原文を書く命令を
政府から受けまして仏印に行くときに、参謀本部から交渉してもらいまして、無償で山下汽船の船を借りたことがあるのでございます。その縁で山下氏が上海にうちを持ちまして、そこで和平問題などについて真剣にたびたびの議論をいたした
関係がございます。太郎氏はたいへん内気な性質で、そういう
政治問題はきらいでした。しかし親の子ですから、おやじが私を招くときにはそこにいて話を黙
つて聞いているというような
関係もあり、かつ同年でありますから前から心やすくしてお
つたわけでありますが、先代亀三郎氏が死ぬと同時に、いろいろここで一々申し上げるのは枝葉ですから省きますが、不本意なことがありまして、会長にまつり上げられまして、事実は社務を見ないというような条件でも
つてな
つているわけであります。従
つて山下太郎氏の主観から言えば、今の韓部が自分に言わずにいろいろのことをすることに対しては相当厳正な批判を持
つておりまして、正月十日に私のところに来たときも、自分の知らない問題でけしからぬことがあるというようなことが口吻のすべてに現われていたわけであります。従
つて私はむしろ陳情を受けるというよりも慰める意味で、君がたな上げされていることはむしろいい証明にな
つていいじやないか。これはふらちなことをした人はふらちなことをした結末をつける方がいいのだ、従
つてぼくはきようは聞きおくだけにすると申したわけであります。
そこで
要点に触れるのでありますが、もしも私がそのときにここにおります
刑事局長あるいは秘書課長を通じて山下の焦げつき
事件を何とかしてやらないかと申せば、なるほど
料亭の玄関で会
つて新年の乾杯をしたことは確かにこれは違法でなくとも道徳上相当
考えなければならぬ問題だ、
法務大臣として相当これは批判を受けてしかるべきだと思います。しかるに今申し上げましたように、まあたな上げされて、これをこういうことにした現幹部がこういうことをしたとうようなことが口吻のすべてでありまして、私は山下太郎君に何の
関係もない、むしろ山下太郎君の心中は大体わか
つておりますので――というのは、人が悪くないから快哉は叫ばないにしても、相当厳正な批判を持
つてお
つたと思いますので、この問題は山下太郎君にと
つて非常な不幸な
事件であると私は思
つておりません。従
つてもみ消す気もありませんし御当人もないわけでございます。
そこで、御
指摘の、かつ御
注意の
料亭の玄関でありますが、お前は冷たいものと言
つたけれ
ども、根が正直でとうとう良心の呵責に耐えかねて酒を飲んだと言
つたじやないかという非常に好意のある御
質問でございますが、これは私のくせとして申し上げるのでありますが、私は
日本酒をことに寒中飲むと気持の悪くなるたちでありまして、私と一席飲んで歓談した人は皆さんが知
つておりますが、普通人よりはるかに薄いウイスキー・ソーダをわがまま言
つてごめんこうむ
つて飲んでおるものなんであります。六時ごろときたま三、四はいの
日本酒を差出されて飲むことはありますが、これは実は閉口なんでありまして、早く冷たいものに切りかえる口実を探すのが常でございます。従
つて山下太郎君が玄関に出て来て何をしているのか、実はこういう用で立
つておるのだ、それは外からも見られるし、一ぱい飲んで
行つたらどうか、君は何をしていると言
つたら正月の祝儀を置きに来た、祝儀は山下君の方から置きに来たという意味であります。それならばちよつと冷たいものでもいただきますか、というのは私はウイスキー・ソーダのわけでありまして、ウイスキー・ソーダをついでもら
つて手をあげて乾杯してわかれたわけであります。従
つて御
注意でありますが、冷たいものを酒に切りかえたというのではないのでありまして、私の習性としてウイスキー・ソーダを飲んだ程度でございます。これはよけいなことでありますが、御
質問でございますし、かつ非常に寛大な言い方で、お前は人間がいいからとうとうどろを吐いたじやないかという御
質問に答えなければなりませんので、申し上げた次第でございます。
そこでかんじんなことにもどりますが、右様の次第でございますから、山下太郎をたな上げした一部重役の焦げつき
事件、それだけが当時の――いな当日のみならず数日あるいは十日以後においてもそれだけが
事件にな
つていたのでありまして、ここにおります
刑事局長あるいはその他の者からも、山下
会社の
事件がいわゆる造船
汚職、
政治家との連関における造船
汚職に発展しておるという話になりましたのは、大分
あとなのであります。従
つて古屋さんには多少礼を失したかもしれませんが、神様でなければわからないという多少礼を失することを申したのは、そういう真相を申し上げた次第であります。従
つて当時はその程度、むしろ山下をなめた一部の重役の焦げつき
事件ということであります。そして先代以来ーー先代のような積極的な人ではなく、内気な非常に気の弱い守勢の人でありますし、長い
友人でありますから、新年のさかずきをあげるくらいのことは、
友人として慰める意味においてしてあげても、人間としてちつともさしつかえない、こういうふうに
考えて、乾杯してわかれた次第でございます。しかしその後
佐竹さんの立場から言えば、問題が発展していわゆる造船
汚職に
なつた今日から見れば気をつけなければならぬじやないか、そういう意味での御
注意でありますならば、これは十分傾聴いたしたいと存じます。
また何か御
質問がありますならば、追加して御
答弁いたしたいと思います。