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1954-03-31 第19回国会 衆議院 法務委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月三十一日(水曜日)     午前十一時二十一分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君    理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君    理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    林  信雄君       牧野 寛索君    猪俣 浩三君       木下  郁君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行理         事)      舟山 正吉君         参  考  人         (大蔵省銀行局         総務課長)   大月  高君         参  考  人         (全国金融業団         体連合会会長) 篠塚長太郎君         参  考  人         (東北大学名誉         教授法学博士・         弁護士)    勝本 正晃君         参  考  人         (全国相互銀行         協会業務部長) 森川 僚三君         参  考  人         (第三信用組合         組合長)    佐々田三郎君         参  考  人         (東京商工会議         所理事)    八坂 雅二君         参  考  人         (ダイヤモンド         社会長)    石山 賢吉君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  利息制限法案について参考人より意見聴取     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  本日は利息制限法案を議題とし、各参考人より意見を聴取することにいたします。  本日出席の予定になつておる参考人は、日銀理事舟山正吉君、大蔵省銀行局総務課長大月高君、東北大学名誉教授法学博士勝本正晃君、全国相互銀行協会森川僚三君ダイヤモンド社会長石山賢吉君、東京商工会議所理事八坂雅二君、第三信用組合長佐々田三郎君、三菱倉庫社長大住達雄君、融業団体連合会会長篠塚長太郎君の諸君であります。  この際、委員長といたしまして、参考人各位に一言申し上げたいと存じます。本日は御多用中を当委員会に御出席くださいましてありがとうございます。今回提出されました、利息制限法案は、現行利息制限法施行後の経済情勢の変遷にかんがみ、金銭目的とする消費貸借上の利息制限を調整する等の必要があるとの趣旨のもとに提出されたのでありますが、本案が各界に及ぼすところの影響はきわめて大なるものがあると考え、参考人各位よりそれぞれの立場からの御意見を承つた上で慎重に本案審議をいたし、本委員会としては誤りない態度を決定いたしたいと存じておるのであります。参考人各位におかれましてもこの趣旨をよく御了承くださいまして、忌憚のない御意見を開陳され、われわれ法務委員に御協力くださいますよう特にお願いする次第であります。  それではただいまより利息制限法案について参考人より御意見を承ることにいたしますが、その前に念のために申し上げたいことがございます。それは参考人が発言しようとするときは、委員長の許可を受けることになつており、またその発言は、意見を聞こうとする事件の範囲を越えてはならないことになつております。また参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになつておりますから、御了承願います。  なお時間等の関係から、参考人におかれましては、大体十五分程度に御意見をおまとめ願えれば幸いだと存じます。  それではこれより順次御意見の開陳を願うことにいたします。  最初日銀理事舟山正吉君にお願いいたします。あなたは金融政策立場からひとつ御論じを願いたいと思いますが、ことに暴利あるいは不法の利息ということに対してどういう標準を持つておられるか、また事業資金金融生活費金融についてどういう区別を立て、生活費金融についてはどういう対策をとるのが正当だとお考えになつておりますか、これらの点に触れてその他一般の御意見を聞かしていただければ幸いであります。
  3. 舟山正吉

    舟山参考人 このたび利息制限法改正について御審議の趣でありますが、日本銀行におきましては、法務省提案改正案はおおむね妥当なものと考えておる次第でございます。この法律改正の眼目は、申し上げるまでもないのでございますが、利息制限最高限度現行法より高めようというのでございます。そこでどの程度に高めたならばよろしいかということが問題になるのでございますが、この際金利を扱います日本銀行といたしましては、率直に申しますとどの程度利息制限上の最高限度としてよろしいかということの判定はなかなかむずかしいのでございます。ただ結論的に申し上げまして、原案にあります程度の引上げは、現在の金融機関の実際行つております金利の点から見て、おおむね妥当ではないかと考える次第でございます。金利にも、市中の私人間の自由的な契約に基くもの、それから政府において公認いたしますところの金融機関の実際扱います金利というようなもの、その他いろいろあるわけでございますが、日本銀行立場といたしましては、各種の金融機関の実際の金利、これは別途法律がございまして、臨時金利調整法によつて規制を行つております。この臨時金利調整法金利は、金融政策その他各般の見地からおおむね妥当なところに落ちつかしてあるわけでありますが、利息制限法におきましても、この金利を尊重して行くということは、適当なことであろうと考える次第であります。  最近の金利情勢について見ますと、金融機関貸出金利は、銀行の場合、平均日歩二銭五厘程度年利に換算いたしまして九分一厘くらい、最高のものは日歩三銭六厘程度年利に換算いたしますと年一割三分程度でございます。その他の金融機関はこれより若干高くなつております。たとえば相互銀行の貸出しについて見ますと、平均は三銭、年利一割九毛、最高は三銭五厘、年利に換算いたしますと一割二分七厘程度であります。また相互銀行の掛金の契約最高利率というものは、年一割八分三厘くらい、それから信用金庫の金利は、日歩四銭五厘、年利に換算いたしまして一割六分四厘程度信用協同組合金利日歩五銭、年利に換算いたしまして一割八分二厘程度というふうになつておるのでございます。これらの金利は、資金需給状態からも考え、さらに金融機関健全経営をはからしめますための資金コストというような点から考えまして、この点におちつかしめたものでございまして、経済の進んでおります諸外国金利に比べますと、あるいは高いかもしれませんけれども、わが国の経済事情あるいは資金需給関係から、この程度は一応やむを得ざるものと考えておるのでございます。金融機関金利としては、この程度が現在の情勢下においては妥当ではないかと考えておる次第でありまして、これを臨時金利調整法あるいは金融機関業務方法書認可等にあたりまして、この程度までは認めておる次第でございます。そこで今度利息制限法改正にあたりましても、大体の標準をこれら公認されております金利の近くまで持つて行くことが適当であり、ある意味におきましては必要ではないかと考えるのであります。すなわち現行利息制限法制限は久しく以前に制定せられましたもので、先ほど来申し上げております、現に行われておる金利から見ますと、若干低い。そこで公正証書を作成する場合に、実際行われておる金利をそのまま公正証書面に記載することができない等の不都合を生じておりますので、この際利息制限法最高限度を実際に近いところまで改正するということが、適当ではないかと考えておる次第であります。  委員長お尋ねに、事業資金関係金利、あるいは生活資金融に対する金利等の関連についてのお尋ねもございましたけれども、日本銀行といたしましては、やはり正規金融機関金利というものを主たる対象として考えて、結論を出した次第でございます。
  4. 小林錡

    小林委員長 次に大月高さんにお願いいたします。金利政策一般についての御説明を願いたいと思いますが、また保全経済会のようないわゆる町の利殖機関に対する取締り利息制限法との関係などは、どういうふうに見ておられるかというような点にも触れていただきたいと思います。大月高君。
  5. 大月高

    大月参考人 今般の利息制限法改正金利政策関係につきましては、日本銀行の方からもお話があつたと存じますが、一般金融機関金利関係につきましては、臨時金利調整法によりまして、臨時金利調整審議会にはかりまして、日本銀行政策委員会で決定を願つて、これを大蔵大臣が告示をするという手続を踏んで、具体的の最高金利をきめておるわけでございますが、この点につきましては、利息制限法別個立場におきまして、行政的に金融機関金利というものはかくあるべきものだという規制をいたしておるわけであります。利息制限法別個立場におきまして、あらゆる金銭上の消費貸借につきまして規制いたしておるわけでございます。大体の考え方といたしましては、金融機関金利というものは、一般日本金利が諸外国金利に比べて高いということから、大蔵省あるいは政府といたしましては、原則としていわゆる低金利政策というものをとつております。できるだけ国際的な金利に近づけたいということをもつて指導理念といたしておるわけでございますが、そういう観点からいたしまして、現在金利調整法にきめられております金利は、一般に行われております金融機関以外の金利に比べましては、相当低いものであると考えております。しかしながら現在の利息制限法におきましては、最高金利原則として一割ということになつておりまして、それとの関係から申し上げますと、現在日本興業銀行日本長期信用銀行等において貸し出しております最高金利は一割一分程度になつております。これは現に現在の利息制限法の規定から申しますと、それを越えておるわけでございまして、現実障害といたしましては、これを越えた部分については、公正証書の作成ができないということもあります。それから正規金融機関といたしまして、少くとも利息制限法裁判上の効果を規定いたしておるものでありますけれども、しかし国の政策としてこの程度がよかろうということをきめられておる金利を越えて、正規金融機関金利をとつておることは、やはり妥当でないという観点もございますので、今般の利息制限法改正案によりまして、最高を年二割とし、百万円以上について年一割五分とするということになりますれば、そういうような不都合も実際的にはなくなる。こういう意味におきまして、むしろ実情に近づけるという意味において歓迎すべきことだと考えております。反対の面から申しますれば、現在の利息制限法におきましては、最高が一割となつておるものが一割五分になるということであります。その点におきまして、最初に申し上げました、できるだけ金利は下げて行きたいという気持にまた逆行するような印象があるわけでありまして、金融行政立場からいたしますと、必ずしも好ましいものではないと考えるわけであります。しかしながら利息制限法自体趣旨は、現在の一般に行われておる金利につきまして、現実に合わないところを合わすというところに目標があるわけでございまして、金融機関自体金利が、この利息制限法改正によつてむしろ引上げられる傾向になるかどうかということにつきましては、別途金利調整法によつて規制して行くことによつて、そういう弊害は生ずることがないであろう、むしろ利息制限法はいわゆる民事上の効果を規定いたしたものでありまして、金利調整法関係は、金融機関の直接の金利規制をやるという意味において、別個立場において規制いたして参りますれば、金融政策の面と矛盾することはない。こういう意味におきまして、特に障害は生じないという見解を持つております。  なお利息制限法の具体的な条文に関しましては、事前に法務省民事局とよくお打合せをいたしたのでありまして、実情からいたしまして、この程度金利で適当なんじやないかと考えております。  なお委員長お尋ねの、いわゆる町の利殖機関につきましては、二つの面がございます。一つは、たとえば最近問題になつておりますような保全経済会その他のいわゆる匿名組合方式等によるものにつきましては、これを一般金利の概念をもつて律することは適当でないと考えております。これは出資に対する配当の観念をもつて考えるべきでございまして、この利息制限法の直接の対象にはならない、こういうように考えておるわけであります。なおその他のいわゆる株主相互金融というような方式につきましては、この貸出し自体は現在では貸金業法による規制をいたしておるわけでございまして、この最高金利現実には五十銭ということになつておるわけでありますが、これは改正前の利息制限法あるいは今般定められます利息制限法制限にはいずれもかかると存じます。しかしこの問題につきましてはお互いが承知の上で任意に支払いをする分、任意に受領する分については特に制限をされる趣旨ではないわけでございまして、裁判上に問題が持ち込まれて初めてこの効果が判定されるものでございますから、一般的な障害としては考えられないであろう、かように考えておるわけであります。  なお今般出資の受入れ、預り金制限、それから高金利取締り等に関する法律が別途大蔵委員会にかかつておるわけでございますが、その法案によりますと、最高日歩三十銭以上の高利とつたものに対しましては体刑が科せられることになつております。その取締りはむしろ社会的な観点すなわちこれは絶対に禁止すべき金利だという面から行きまして、この利息制限法による民事上の効果を規定いたしました法律とまた別個立場において取締りが行われることになりますので、金融機関の面をあわせて考えますと、臨時金利調整法という金融機関金利、それから利息制限法による民事上の効果による、国による規制、それから最終的には罰則をもつて取締るべきいわゆる高金利、こういう三段階の金利体系ができるわけでございまして、三本合せて考えてみまして妥当な、現状合つた体系になるのではないか、かように考えております。
  6. 小林錡

    小林委員長 それでは全国金融業団体連合会会長篠塚長太郎さんにお願いいたします。
  7. 篠塚長太郎

    篠塚参考人 私、全国金融業団体連合会篠塚でございます。  今回法務委員会におきまして利息制限改正法案について御審議をいただいておりますが、法務省提案条文利率改正の点につきましては、私ども業界全国をあげて賛意を表する次第でございます。しかしこれ以外の条文は、一応結論から先に申し上げますと、現在の法律六十六号そのままに存置していただきたい。さらに商法施行法百十七条もあわせてそのまま存置していただきたいということを私ども全国業界はひたすらお願いする次第でございます。  ではどういうわけでそういうお願いをしておるかと申しますと、現在の利息制限法条文は過去七十八年の間、特に国民生活を脅かしたり、不安に導いたりしたようなことがなかつた。これで十分事足りておりました。さらに賠償金のごときにおきましては、特に不当に高いものは裁判上これを減額することができるということは、ドイツ法律等を見ましても、日本法律においてもその通りでございますし、またその他現在までの慣例でそういうふうになつておりますので、これをもつて商法施行法百十七条を存置していただきたいと思います。  次に利息の問題になりますと、しばしば各方面で貸金業界利息銀行等金融機関金利を比較対照されるようでありますが、この点は慎重に十分御審議を願いたいと思うのであります。実は貸金業界依存して来る中小企業並びに零細融資需要者である庶民大衆は、まことに少額な、無担保質草もないような金融依存をする方々で、銀行等金融機関にはまつたく依存ができない、いわゆる有産階級でない、資産もない、ほんとうの零細需要者でございますので、これらの方々に対して貸金業者が取扱つております金利の面につきまして、銀行金利と比較することははなはだどうかと考える次第であります。銀行は一応無利息預金として全国で三千三百七十億円からの金をお預かりになつておる。東京だけで七千五百八十一億という預金がある。そのうち当座預金が二千二百二十五億円、また別段預金であるとか、為替であるとかいうものを加えますと、全国で三千三百億からの金が無利息である。これらの無利息預金を合計できる、資金の交流の自由な金融機関、さらに低利資金の受入れあり、政府保証もあり、あるいはその他の特典を有する銀行と、預り金貸金業法第七条によつて禁止され、かつ低利資金の導入は永久にできそうもない、また政府の保護も受けないという貸金業の、いわゆる自己資本金融業界金融と混同することはいかがかと思います。さらにまた私ども利息制限法検討につきましては、一応貸金業者立場というよりは、むしろ働けない方々――国民大衆の中にいる若くても働けない、あるいは老若男女の方々、やむなく恩給とか退職金であるとか多少の財産資金化して、それによつて生活の足し前を得るために、四百三十三種類の企業者のいずれかに出資をいたしまして、その金利をもつて生活する方々等のために、今回の利息制限法の条項はあまりに苛酷なものではないかと思います。たとえば徳川時代にははなはだ無理な法律がありましたが、だんだん進化するに従つて寛大なる方針になるべきものが、明治十年の法律よりは今回の方が国民全体にとりましてはなはだむずかしい条文なのであります。これを債務者のために最も万能なものとすれば、足利時代借金棒引法のごとく、棒引にしてしまえばこれは事足りるのではないかということになるのでありますが、当時の反対論としては、国民道義観念がはなはだ頽廃してしまう、怠惰遊蕩児が出てしまつて、いくら借金してもいいというのでは商業道徳なり経済観念がなくなつてしまう、道義がなくなつてしまうということをおそれられたと聞いておりますが、また再び利息制限法改正によつて貸借上の道義観念が失墜するのではないか、こういうふうに考えるのであります。さらにまた賠償金等におきましては、先ほど申し上げました通り貸金業界金利は、アメリカ等にも州法等がありまして、利息制限法以外の法律で相当考えるべきであると思つておりますが、賠償金が単に貸金業あるいは金銭目的とする消費貸借上以外の商行為貸金業以外の商行為である点をひとつ検討願わないと、日本中小金融業者商行為はまつたくとざされてしまつて、今や銀行政府等財政緊縮あるいは資金引揚げ等政策上からいつて、私ははなはだ将来を憂慮するものであります。満州戦争直前のような経済情勢が来たときには、むしろ私は借りられない、銀行等依存のできない国民大衆のために、しばらく法律六十六号の条文をそのまま存置し、商法施行法百十七条もあわせて存置していただいて、利率改訂にのみとどめていただきたいと思います。もう一回重ねて申しますれば、国民大衆の働けない人、たとえば小資本財産の少い方か大きな財産家に融資している面がたくさんございますことを、あわせてひとつ審議、御検討を願いたいと思いまして、今回の利息制限法改正にあたりましては、ぜひ利率改訂にのみとどめていただきたいと思います。
  8. 小林錡

    小林委員長 次に東北大学名誉教授法学博士勝本正晃君にお願いいたします。あなたには学界代表として利息制限法についての御意見をお願いしたいのですが、特に利息制限法性格につき市民法としての金利国民道徳のごときものであるかということ、あるいは高利貸しに苦しむ困窮者に対する社会政策的立法であるかどうか、ドイツ民法立法例などもお伺いをしたいと思います。また金銭消費貸借債務不履行の場合の損害賠償額の予約につき、その額は裁判所も変更できないという見解もあるし、あるいは利息制限と同じと見る見解もあります。この点について特に触れてひとつ意見を聞かしていただきたいと思います。勝本正晃君。
  9. 勝本正晃

    勝本参考人 利息制限法性格いかんという問題に関しまして、私の意見を述べろというお話でありますが、沿革的に申しますと、利息というものは昔はとつてはならない――ことに旧約聖書なんかにおきましてはとらない、コーラン、マヌー法典それからプラトーなんかも利息をとつてはいけないという思想でございますが、宗教上におきましては高利は弱い者いじめであるという点から、特に利息をとつてはならないという趣旨であつたのであります。トーマス・アクイナスに至りまして、金を貸した場合に、期限に至つて返さない場合には利息をとつてよろしいということを言い出しまして、なるほど利息をとつては悪いけれども、期限に至つて返さないやつには、これは利息をとつてもしかるべきであるということを言い出しまして、その結果かえつて金銭債務履行期契約上短縮して、結局利息をとるというような傾向を助長したものであります。その後英国のベンサムが、近代資本主義的な立場から利息の正当であることを主張しまして、その後経済界においては利息をとるという慣習が自然に行われるようになつたのであります。しかしながら一面において、やはり高利をとつて弱い者をいじめるという立場から、利息法定制限をしようという機運が起りまして、フランス民法では千九百七条というのがありまして、法律の禁止なき限り、法定利率民事年四分、商事年五分を越える約定利率を有効としているが、その後改訂されて民事五分、商事六分となり、これ以上のものを受領した債権者は返還すべきものとしていたのであります。なお高利常習者には刑罰をもつてそれを制裁しておるというのがフランス現状であります。今度の立案の中に高利とつた場合には、受取つてしまえば返さなくてもいいというようなことが書いてあるのであります。これは民法の七百八条と関連しまして従来非常に問題となつたところであります。日本のこれまでの利息制限法では、その点は法律解釈に一任していたわけでありますが、フランス民法受取つた場合にも返さなければならぬとしているのと比べまして、日本民法は一歩譲つていると申しますか、当事者の解釈に一任している点において、むしろ進んでおるといわれたのであります。ドイツ民法では原則として高利を許しておりまするけれども、もし年六分以上の利息を約した場合には、六箇月以後においてさらに六箇月の解約期間を定めて、元本債務を解約することができるという条文が二百四十七条にあります。さらに別な条文におきまして、債務者困窮、軽率、無経験に乗じて不相当な利得をなさんとする行為を、一般に無効とするに至り、なおスイス債務法七十三条も同様な趣旨を規定しておるのであります。英国におきましては、一八五四年に至り利息制限を廃止しまして、質屋における質営業における金銭消費貸借に関して利息制限を設けたのであります。ハウン・ブローカーズ・アクト、一八七二年の法律でありますが、さらに一九〇〇年のマネー・レンダーズ・アクトによりまして、金貸し業者の締結する消費貸借契約につきまして不当なる条件がある場合には、ハーシ・アンド・アンコンシヤナブルな条件ある場合には、裁判所がこれを適当に軽減し得ることを認めるに至つたのであります。最近のソビエトロシヤ民法二百十二条以下には、約定利率に関する制限はございません。  これら一般立法例を背景として考えますと、利息制限法というものの性格は二重性格でありまして、それは消費貸借というものが今日二重性格を持つていることに基因するのであります。消費貸借――金を借りる場合には非常に困窮によつて、病気であるとか、それから家が焼けたとかいう非生産的な目的のために、困窮のために金を借りる場合、こういう場合には本来利息をとるということははなはだ不合理である。またそういう場合に金を貸すというのは、たとえば自分の恩人であるとか、従来やつかいになつた人とかであつて、別に一般の人がそういう人を助ける義務はない。そういうやむを得ず困窮に陥つて金を借りる場合には、本来利息というものははなはだ苛酷な性格を持つておるのであります。しかし一面において、大きな事業を営んで五割も、六割も、十割ももうける仕事をする、その資金を借りるという場合には、利息を払うのはむしろ当然です。その利益の一部分を債権者に与えることはどう見ても合理的であります。資本主義経済が発達するにつれまして、利息というものがだんだん合理化され、かつそれは需要供給の自然なる勢いにまかせて、高くもなり、安くもなりして行つたのであります。ところが一面において非生産的な消費貸借というものはどうなつておるかというと、それもやはり経済組織の進展に巻き込まれまして、そんな困窮をしてから金を借りる場合とか、事業をやるために金を借りるというような区別はしないで、一切資本を借りる場合と同じ取扱いになりまして、従つて利息というものをとるのは、いかなる場合でも、金を貸す場合にはあたりまえであるという思想が醸成されたのであります。しかし内面におきましては、非生産的な消費貸借と生産的な消費貸借というものは、これは明らかに区別しなければならぬ。しかしその区別は立証方法としてはなはだ不明確でありまして、明らかな場合もありますけれども、大体はその区別がなし得ない。でありますからどちらかに吸収される。その場合にはやはり資本を借りるという面にどうしても吸収されがちであります。そこでドイツ民法などは、利息制限を認めないという原則に近くなつています。そうしておいて一面に貧困者の弱点につけ込んで暴利をむさぼろうとする場合には、それを制限する。人の貧困に乗じて不当な利益を得ようとする行為――日本でも暴利取締令というのがございましたが、ああいうもので押えようといたしたのであります。そうして利息は、当時者間の自由に一任する。その極端なものは、今言つた暴利取締りの思想によつてこれを押えて行こうというので、これが今日の大体の立法の傾向じやないかと私は考えるのであります。  利息制限法性格いかんという問題につきましては、今申したように、消費貸借というものが常に二面の性格を持つておる。利息を合理的ならしむる消費貸借もあれば、非常に非合理的ならしむる消費貸借もある。それを一緒に規定するところに非常に無理がある。そこで妥協しなければならぬ。妥協は、従来利息制限法というものによつて、百円以下の場合には年一割五分とか、千円以下の場合には一割二分、それ以上の場合は一割ということになつてつたのであります。なぜそういう制限をつくつたかということは、おそらく当時の経済状態を背景としまして、現にその程度利息ならば国民に支払い能力があると認めるのが正当であろうというところにあつたと思います。従つて今日の状態においては、百円という額はまず二百倍といたしますと、二万円までは一割五分ならばどうかということになろうと思うのでありますが、今回はさらにそれが引上げられて二割でありますか、非常に高くなつております。これは今日の金融状態から見ますと、もつともだと思う。私はその利率をいかにすべきかということは、金融方面の方の実際の御経験なり、実際にどういうふうに行われているかということを標準にして、その利率の正当性をきめて行くべきだと思います。しかし大体におきまして昔の利息制限法よりも高くなりつつあるということは言えると思います。何分昔の利息制限法というものは非常に古い法律でありまして、今日から見ればもう時代遅れの法律であると言われているのであります。時代遅れの法律であるとわれわれが言つているのは、むしろドイツ法的に暴利を取締るべきであつて、あとの点は貸借当事者の合意に一任すべきであるという点から考えられるべきものであると思うのであります。しかしまた実情から申しますと、利息制限法というものがあるために、一般高利をとつてはならぬという思想を国民に知らしめるということになりまして、精神的にある圧迫を感ぜしめるという効果は大いにあると思います。実際上の効果がどういうふうにあるかということとは違つて、ただそういう精神上の圧迫を加え、一般の人に高利をとつてはならぬという思想をつくり上げるというところに、その存在の意義があるかと思います。  御承知のように道徳観念といいましても、今日は左、右の思想に胚胎するの人ならず、その他経済的な階級に応じ、あるいは自分の職域に応じまして、道徳観念が非常に違うのでありまして、昔のように道徳というものを簡単に考えるわけには行きません。フランスのある学者のごときは、法律でもつて道徳をつくるのである。従来の道徳は一応支離滅裂となり、人の主観によつて非常に違うものになつた。昔のように宗教によつて統一されたり、封建制度のもとに統一された時代の道徳と、今日の資本主義社会においての道徳とは非常に違う。また思想混乱の時代においては各自において道徳の標準が違うのであつて、道徳というものが大きな基礎になり得ない。法律という国家によつてつくられるものが新しい道徳の基礎にならなければならぬと言われているくらいでありますから、利息制限法というものがありますれば、国民一般がその経済生活を行う根本原則をやはりつくることができる。そういう意味において存在の意義があると思うのであります。  さてこれが実際にどう運用されているかと申しますと、これはいろいろな面においてくぐる方法があつて、ほとんど有名無実に帰するというのが現状でありまして、実際上の経済上の需要供給を一片の法律によつて左右することはできないのであります。だからこういうものをつくりましても、どれだけこれが行えるかということは、はなはだ疑問であります。その点において利息制限法性格というものが、昔は実際にこれをもつて高利貸しを取締ろうとしたところにあるのでありますが、今日においてはむしろ国民生活のよつてつて向う基準を法律でもつて示すというところに基礎があるのではないか。もしつくるならばそういうところに基礎があるのではないかと思うのであります。  それから金銭消費貸借債務不履行による損害賠償額の予定について御質問がございました。金銭債務にだけ利息制限法をつくるという立法上の根拠は具体的にどこにあるかというと、これは金銭債務は四百十九条によつて不可抗力をもつて抗弁なし得ないというところに立法上の根拠がある。金銭債務以外の債務は不可抗力をもつて抗弁なし得る。債務者を救い得る。しかし金銭債務は金融資本主義の社会においては、債務者は絶体絶命、これを履行しなければならぬ。履行しないと強制執行をやられる。誠心誠意働いて、金ができなくても、やはり徹底的に強制執行を受ける。これが金銭債務の性格であります。でありますからかわいそうである。従つて保護の法もつくつておかなければならぬというところに利息制限という思想に結びつくのであります。でありますから、金銭債務について利息制限法を認め、金銭債務以外のものについては認めないということは、立法上根拠があるのであります。ただ米であるとか、麦であるとか、油であるとかいうようなもの、この消費貸借はどうかというと、これは金銭債務ではありませんから、利息制限法の規定の適用は排除されるわけでありますが、実際上こういう債務はやはり債務としてほとんど不可抗力をもつて抗弁なし得ないということと同じように、市場に品物がございますれば、債務者は履行しなければならぬのでありますから、それに及ぼすかどうかということは、立法問題として一考の余地があると思うのでありますが、一応金銭債務については四百十九条の関係から、この利息制限して債務者を保護するという面をつくつておかれたい。こういうことが一応言われるわけであります。  さてこの金銭債務の債務不履行による損害賠償の予定、これは今度の法案利率の倍だけは予定額を約定し得るという、この立案の文章によりますと、そういうふうにうかがわれるのでありますが、本来この利息というものは、利息の沿革から申しましたときにも、債務不履行の場合に、損害賠償としてとる利息が合理性があるという、あの思想に基いて、本来発達した思想なのでありまして、そこから申しますと、この債務不履行の場合だから、もつと利息をとるというようなことは、これはその点から見るとどうかと思われるのでありますが、しかし債務不履行の場合に、当然法定利息による損害賠償が発生し、また約定利息がそれよりも高い場合は、その約定利息によつて払うのでありますが、そのほかに当事者が債務不履行による損害賠償を約定し得るかどうか。元来損害賠償額の予定というものはどういう性格を持つておるかというと、これは実際の損害の算定が困難であるから、実際の損害の算定のめんどうを省くために、当事者があらかじめ契約でもつて損害賠償額の予定をするわけであります。ドイツ民法によりますと、そういう場合に、裁判所が、それがあまり高過ぎると思うと、しんしやくできる。日本民法では一旦きめた損害賠償額の予定はしんしゃくできないということになつております。ドイツ民法によりますと、どこまでもこれは損害賠償額の予定であるから実際の損害がわかれば、なるべくその損害に近いものを払わせる。それがあまり高ければ削つてもいいのだ、これは損害賠償額をかりに算定したものであるから、実際の損害がわかりました場合には、その実際の損害によつてこれを直すべきだというのが、ドイツ民法の立法理由であります。日本民法は、その実際のめんどうを省くために予定賠償額を定めているのであつて、これを実損害に比してしんしやくし得るということだと、実損害を計算するということになり、当事者が実損害の計算はめんどうであるからそれを省こうという趣旨が没却される。だから一旦賠償額の予定を定めた以上は、実損害の計算は許さない、実損害のいかんによつてこれは左右されない、裁判所はこれをしんしやくすることを得ず、こういう規定になつておるのであります。それが日本の立法理由であります。  そこで金銭債務でありますが、金銭債務における損害賠償というものは、民法上年五分の法定利息と規定するのが、これが民法原則であります。但し約定がある場合は約定、すなわち約定利息が法定利息より高い場合には約定利息による。そういうふうに損害の額か明らかである――明らかであるというよりも、法律が推定しているそれ以上の損害賠償額の予定をまた認める。しかも法定利息の倍を認める。かように利息制限法制限の倍のものを損害賠償額として予定し得るということが立法化される場合には、おそらくすべての消費貸借において不履行のときは利息を倍とするということを書くようになりはしないか、私はむしろその方をおそれるのであります。  それから立法上の理論的の不備といたしましては、金銭債務不履行の損害賠償というものは法律によつて額がきまつておる。額を計算するのに少しもめんどうでないものに、さらに損害賠償額の予定を当事者に許すということは、弊害があるけれども実際上の効果がなかろう。むしろ金銭債務については利息制限法利息による、それを限度とするということの方が金銭債務の性格としてはよろしい。そのほかに違約金、これは罰則でありますから、払わない場合に違約金を払うということはよろしいと思います。しかし今度の立案によりますと、違約金は損害賠償額の予定とみなすという規定になつております。民法の規定によると、違約金は損害賠償額の予定と推定するということになつておりますが、今度はみなすということになつておりまして、反証をあげ得ない。そこで違約金なるものの性格損害賠償額の予定になつたもの。結論といたしましては私は、損害賠償額の予定でなくて違約金とみなすというならば法律上とる根拠があると思うのであります。ところが結果においては、その違約金を損害賠償額の予定とみなすという法律になりますと、それが当然損害賠償額の予定の中に含まれるわけでありますから、結果においてはそれでもいいわけでありますが、ものの考え方であります、ものの考え方においては、どこまでも違約金ならよろしいけれども、損害賠償額の予定というものは金銭債務については本来不合理であります。当然これは法律の規定によつて約定利息あるいは利息制限法最高価額の利息が予定されるものであると私は存ずるのであります。結論的に申しますと、私の考えと大差ないと思いますから、私はあえてどうのこうの言うのではありません。  もう一つ注意を促さなければならぬ点は、この利息制限法が従来効果がなかつたというのは、これをくぐる方法がたくさんあつた。そのくぐる方法として天引きということが行われる。天引きというのは、先に利息を差引いて残金を与えて行く。あたかも差引かない金を与えて、それに利息をつけるという形をとる。利息を天引きしてしまう。なぜこういう方法が行われたかというと、七百八条に、不法の原因によつて給付したるものは返還を請求することはできないという規定がある。そこにまた但書がありまして、但し不法の原因がその相手方にのみある場合はこの限りにあらず、こういう規定になつております。そこで一旦とつてしまうと、もう返さなくてもよい。不法の原因によつて給付したものだから、もう返還する義務はない。だからこの利息制限法に反する利息は、早くとつてしまえば、あとは問題にならない、こういうことになる。今度の法律でも、利息制限法に反する利息を払つてしまえば、もうとりもどせないということになつております。ところが先に差引くものが非常に弊害があるのでありまして、それについて今度の法律は、先に差引いた場合は、それは元本の弁済に充てる、つまりそれだけ差引いたものが貸されたということになるわけです。これは私なんかもう二十年前に主張いたしましたところと結果において軌を一にする。私なんかが考えましたものは、この利息制限法に反する利息を天引きした場合の法律効果として、従来三つないし四つの学説がございました。一つは、そういうものをとつてしまえば、もう返す必要はないという説、一つは、利息制限法を読みますと、利息制限法に反する利息とつた場合には、裁判上は無効であるとありますから、裁判所で受理してもこれは無効である。ある人は、どうもそれは結果において悪いから、これは返してもらえる。返してもらえる根拠は、七百八条の但書によつて高利貸の方が悪い、不法の原因がもつぱら高利貸にあるのであるから、これは返してもらえる、こういう説があつたのでありますが、消費貸借というものは金銭の移転を要する。でありますから、天引きして渡した場合には、その渡したものがつまり消費貸借目的となるということを申しまして、天引きの場合には、天引きして渡したものが元金になるということを私は主張したのでありますが、今度の立案においては結局そういうことになるのでありまして、天引きしたものは元金の弁済に充当する、こういう趣旨でございますから、結局元金が天引きしただけ減るわけです。しかしりくつを言いますと、金銭消費貸借は、金銭を相手方に引渡しをしなければ発生しないというのが民法の建前でありますから、やはりそういう場合には、その天引きしたものについては本来消費貸借が成立していない。つまりこれは元金を払つたことにならない。元金そのものは、その天引きしたものを差引いたものについて成立したのである。そういうふうに私は考えますから、その点において多少理論的の矛盾はありますけれども、結論においては私は賛成いたします。大体この辺で……。
  10. 小林錡

    小林委員長 ただいままでに御発言になつ参考人に対して御質疑はありませんか。なお――午後また一時から始めたいと思いますから、御質疑はきわめて簡単にお願いいたします。
  11. 林信雄

    ○林(信)委員 委員長の御意見もありますので、簡単にお尋ねいたします。まず御発言のありました順序に従い舟山さんに伺うのでありますが、舟山さんは、御説明の中にいろいろと日本金融界の金利の状態をお話になりました。そのうちに、信用金庫あるいは信用組合金利が、今政府提案制限額以上のものが認められておるということを、これらの関係も御承知の上で結論としておおむねこの法案には御賛成だというのですが、それは簡単に言いますと、行政的にお取扱いになつております今までの考え方、御態度と幾らか矛盾するような感じがするのであります。それはどういうことなんでありましようか。それが一点と、続いてその御説明に関連いたしまして、日本金利外国より高いということをはつきりお認めなんです。これはわれわれも大ざつぱにはさように承つて来ておるのでありまして、それは事実といたしまして、その原因、これも正直に言いましてある程度の推察はいたしておる。続いて、しからばその開きのありますものを、同様の水準まで持つて行く、つまり金利を引下げるということの経済的、政治的対策というものはどういうふうに考えられるものでありましようか、これを権威ある舟山さんから御説明を承れれば仕合せであります。
  12. 舟山正吉

    舟山参考人 私先ほど申し上げました点は、正規金融機関につきまして、現在臨時金利調整法によりまして、貸出金利につきましてはできるだけ低いように押えておるけれども、しかもなお日本金利水準というものは、諸外国、特に経済力の発達しております国に比べますと高い。しかしこの現状を基礎といたしまして利息制限法利息最高限度制限を見ますと、そこにギヤツプがあるから、この際といたしましては、利息制限法最高限度をお示しになりましたような原案程度まで引上げることはやむを得なかろう。そういたしませんと、事務上支障を来している現状である、こう申し上げたのでございますが、しからば日本の現在の金利水準をこのままで認めていいということを考えているわけでは決してございませんので、事業の負担を軽減し、あるいは消費者の利益を擁護いたしますために、貸出金利につきましては、できるだけ低金利に持つて行かなければならぬということは、何らの異論もないところでございます。  そこで日本金利が、経済的に発達しております外国に比べまして、どうして高水準にあるかということでありますけれども、経済が発達いたしませんために、資本の蓄積が少い。つまり需要に比べて供給が足りないという資金の需給関係から、勢い金利が高くなるのであろうと考えております。これにつきましてこれまでのところは金利が非常に高くなることを押えるということで努められたのでありますが、今後はさらに資本の蓄積と相まちまして金利を下げる方向に持つて行かなければならぬじやないかと考えておる次第でございます。  そこで利息制限法利息最高限の改正につきましても、現状においては原案程度の修正はやむを得ないのであるけれども、しかし一面利息制限法利息最高限が高くなつたから、政府あるいは金融当局において高金利を認めるのであるといつたような印象を与えることは、極力避けなければなりませんので、けだし今般の利息最高限の改正はやむを得ざる措置と申し上げなければならぬと存じます。今後金融情勢の安定、変化に伴いまして、この利息制限法最高限も、むしろそれ自体において再検討すべきものであるかと考えます。この点は先ほどちよつと申し落しましたので、補足させていただきたいと思います。  それから信用協同組合現行金利につきましては、これは大蔵省におきまして信用協同組合の事業報告書を認可する際の、その内容となつておる点でございますので、これは大蔵省側の参考人から御説明いただきたいと思います。
  13. 大月高

    大月参考人 ただいまの信用金庫あるいは信用組合金利とこの利息制限法関係でございますが、現実には信用金庫、信用組合に対しましては、法律の規定によりまして業務報告書を大蔵省に提出さしておるわけでございます。業務報告書には金利の限度も記載させることになつておりまして、その具体的な制限といたしましては、現実に受領いたします場合に、信用金庫につきましては、貸付については日歩四銭五厘以内、割引については四銭以内、信用組合につきましては日歩五銭以内、こういうようにいたしておるわけであります。具体的に四銭五厘という数字は、年一割六分四厘であります。日歩五銭は、年に一割八分二厘でございます。従いまして最低の十万円未満の場合におきましては全部二割以内に入つておりますので、全然問題ないわけでありますが、一部金額の大きいものにつきましては、五銭については一割八分を年に二厘だけ越えますし、四銭五厘につきましては、一割五分に比較いたしますと一分四厘だけ越える、最高としてはこういう事態が生じ得るわけであります。ただ現実の貸付の金利から申しますと、大部分が新しく提案になつております利息制限の中に入る実情であります。もちろん一部につきましては越えるものがありますが、それは件数におきましても金額におきましても非常に小さい割合になつております。具体的な事例について調べましたところでは、信用金庫につきまして一割八分五厘を越えるものは〇・〇五%、一割六分五厘を越えておりますものが〇・二%、それ以外は全部それ以下になつておるような実情であります。法律的にはこの利息制限法の限度を越えておるものが若干あるわけであります。現状におきましては現行利息制限法をかりにそのままにいたしておきますれば、大部分がこの制限にかかつておる。しかしながらこの新しい改正法によりまして大部分が限度内に入るという事態になりますので、一層事態の改善に資し得ると考えるわけであります。なお今後の方針といたしましては、新しい利息制限法金利を一応の標準といたしまして、行政指導によつて事実上この中に持つて行くように努力したいと思つております。
  14. 林信雄

    ○林(信)委員 そうしますとこの法案法律となりますと、この制限以上の金利で貸出しをしておりますものに対しては、その程度に押えられる何か行政的な措置がとられることになるのでありますか。比率において非常に少いとはいいながらも、少くともこの法案制限以上の貸出しをいたしておるところを私は存じておるのでありますが、一般的に大蔵省としてそれを容認せられておるというのは、やはり地方的に見まして――先刻どなたかからも御説明がありましたように、利息関係というものは需要供給である、基本的なものはそれでしよう。今具体的にここで申し上げますれば、地方の実情によつてやむを得ないものもあつたからこういうところで認められておるのではないか。そこでこの法案が通過いたしますと、これは実情に合わないある部分の地方ができて来ると思うのですが、これは御予定になつてつたのでありましようか。お話のようであれば何とか適当に処置されるというようなことを言われますが、それを必要とする地方の信用組合においては大分影響を受けるのではないかと思うのであります。重ねてその点を伺つておきたいと存じます。  なおついでにお伺いいたしますが、この法案利息制限を引上げたのでありますが、御承知のように今政府の方針としては、予算の関係におきましても緊縮財政がとられており、諸般の政策としても低物価政策をとられますときに、この制限額の引上げはどういうふうに影響するのでありましようか。またそのコントロールについてはどういうようにお考えになつておるのでしようか。あわせて伺いたい。
  15. 大月高

    大月参考人 第一点は改正後の利息制限法によります金利と、現にそれを越えております信用金庫なり信用組合金利をどういうふうに調整して行くのかというお尋ねでありますが、これは先ほど申し上げましたように、新しく設定されます利息制限法金利を目標にいたしまして行政指導をやつて行きたい、こういうことであります。ただその意味は、この法律施行と同時にその措置をとるということではないわけでありまして、行政の一つの目標として逐次そこへ持つて行くように努力したい。その期間はどのくらいになるか、これは具体的にやつてみないとわからないわけでありますが、情勢をにらみ合せながら一つの目標として、いわゆる目途としてやるということであります。ただ現在の利息制限法における制限をしておいた場合と、この改正案ができました場合とを比較して考えてみますと、現在の利息制限法金利にまでは行政の指導によりましても、あるいは諸情勢の判断によりましてもとうてい持つて行けない、あるいは長い将来を考えますれば可能かもわかりませんが、少くとも今見通し得る限りにおいては、ただちに持つて行ける可能性はないというようような低い金利でございます。新しく設定されようとする金利におきましては、そう遠くない将来におきまして、そこを目途といたしましても行政上そう無理を生じないような金利であろう、これだけ意味が違つておると存じます。この利息制限法施行と同時に、ただちにその二割なりあるいは一割八分というところにまで下げてしまうという強制的な意図を持つているわけでございませんので、ここを目途として逐次行政的に指導いたして参りたい、こういう意味でございます。  第二の現在金利をできるだけ低くしようとしておるときに逆に上げるというようなかつこうの法案はおかしいのではないかというお尋ねにつきましては、金融機関金利につきましては、別に臨時金利調整法によつて規制いたすことにいたしておりまして、これはもつぱら金融政策の面から実施してきめて参りたいと存じております。利息制限法関係は私法上の効果を規定いたしておるわけでありまして、これは金融機関以外の一般消費貸借に適用があるのでございますので、これは実際に世の中に行われております金利につきまして、私法上どういうような効果を与えたらいいかという観点からきめるべきものだと考えております。もちろん気持の上から申しますれば、やはり従来の利息制限法の一割が一割五分に上つたということは事実でございますが、これをもつてすぐに金融機関金利もまた上るかということになりますと、別途臨時金利調整法によつてこれを規制するということによつて金融政策面からは別途措置し得るということにおいて特に障害はないもの、こういうように考えておる次第でございます。
  16. 小林錡

    小林委員長 午後MSA協定が本会議に上程されますし、また午後五人おりますからひとつ簡単にお願いします。
  17. 林信雄

    ○林(信)委員 簡単に大月さんにいま一点。今お話のような金利政策は諸外国でもやはりとつておられるだろうと思うのですが、特に日本でも考えてみたいといつたような、適当なと思われるような政策を何か御存じでしたらお示し願いたいと思います。具体的にこういつた利息制限をするといつたような直接のこういう立法も諸外国ではやはり同様のものがあるのでございましようか。似たようなものがあるのでしようか。簡単にお伺いいたしたいと思います。
  18. 大月高

    大月参考人 利息制限の規定は各国とも持つております。それはやはり民法上の効果として規定いたしておるというような性格のものもございますし、臨時金利調整法的な民間の金融機関金利を行政的に規制いたしておるという種類のものもございます。アメリカにおきましても、具体的なケースはただいま手元に持つておりませんが、最高金利金融機関については法律できめておる、こういうことでございます。ドイツにおきましても金融機関金利につきましては、原則として各金融機関の協定にまかしておるわけでございますが、それを大蔵大臣の方において公認することによつて最高金利にする、こういう措置をとつておるわけでございます。民事上の最高制限につきましては、具体的に今資料を持つておりませんが、先刻勝本さんからもお話がございましたように、各国とも利息制限というような点については非常に重大な関心を払つておりますので、それぞれの立法があると思つております。
  19. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 簡単に大月さんと勝本さんにお尋ねしたいのですが、利息制限法性格目的債権者の保護もしくは債務者の保護というよりかは、本質的には金融上の経済秩序の確立ということにあると私は考えるのであります。その建前から見て行くと、正規金融機関による消費貸借利率に関する規定と、個人間における消費貸借利率の規定とやはり同一に考えておく必要があるのではないか。これを別個の法体系に納めるということは不合理じやないかという疑問を持つのでありますが、この点はただいま大月さんからも多少それに触れた説明があつたようでございますが、その点は時間もございませんので抜きにいたしまして、なおそういう観点から見ると、現在政府が立法体系として考えられている利息制限法と、貸金業者取締法とも、また同様に合一した立法措置をして行くという方がより合理的ではないか、こう考えるので、この点に対する御見解を承りたい。同時にもう一つは、当面の利害当事者は債権者であり債務者でありますから、この両者の利害調節というものもきわめて重要であることはもちろんでありますが、そういう点を強調して参りますと、私はドイツのように利息制限というものを大体はずして行くということも一つではあるかもしれませんが、正常な金融秩序の確立という意味からいうと、また債権者を保護して行くということも非常に重要ではないかと考えるのであります。先般日殖事件とか、あるいは保全経済会等の問題を通じて見ましても、あるいはいわゆる匿名組合に仮装された内部的な消費貸借の問題とか、あるいはまた事業投資の問題いろいろありますけれども、ああいう場合にも無数の質権者、言いかえれば債権者が、悪く見れば一種の取込み詐欺にあつたようなものである。ああいう場合に、あれを保護する立法というものは非常に重要になつて来るのでありますが、そういう面から見て私は利息制限法と、それを兼ね合せた法律というものがこの際考えられていいと思うのでありますが、その点に対する諸外国立法例、あるいは政府の方針なりをここで簡単に承りたい。
  20. 大月高

    大月参考人 今の貸金業者金利は非常に高いものである。実際から申しまして、三十銭前後に現在なつておるかと思います。それは今般の改正によります利息制限法に比べましても、相当程度高いものであることは事実でございます。それから現在貸金業法によつて認めております業務方法書による最高金利は五十銭ということになつておりまして、これはなおさら高いものになつております。この御提案になつております金利とは実質的にも違う、程度の高いものでございます。現に、五十銭と申しますと、年十八割程度になろうかと思つております。それほど高いものでございます。それでこの金利に関する措置といたしまして、今般御提案になつておりますいわゆる民事的な効果と並行いたしまして、現に出資の受入れの制限等に関する法律大蔵委員会にかかつておるわけでございますが、その法案によりますと、貸金業法はこれを廃止するという方針にいたしております。そうして同時に最高金利日歩三十銭といたしまして、この日歩三十銭を越える金利につきましては刑罰をもつて取締るという方針をとつておるわけでございます。先ほど申し上げました臨時金利調整法による金融機関金利とこう三本並べて考えてみますと、最も低いところは金融機関でございますので、預金を受入れて金を貸すというのが最も典型的なかつこうになりますので、その預金の実質上のコストを考え、どの程度まで下げられるかという観点から、できるだけ低い方をよしとするという建前で、金融機関金利規制いたしておるわけでございまして、三本の法律の中で、臨時金利調整法による金利が当然最も低かるべきものだと、こういうように考えるわけであります。利息制限法関係はそれに対しまして民事上の効果をねらつておるわけでございますので、しかもその対象金融機関も含めて一般人の貸借に関係いたしますので、国といたしまして私法上これ以上は保護しないのだという金利がその次にあつてもいいのではなかろうか、しかしそれは道義的な観念から申しまして、特に取締るというほどのことではない。しかし国の経済の秩序の面から行きまして、これ以上は国で保護しない、お互いの間の貸借関係では適当にやつたらよかろうという金利があつてもいいかと思つております。  第三には、そういう個人間の貸借にまかせておいては、道義上の面から申しましても、いわゆる暴利の観念から申しましても、あるいは弱者を保護するという社会秩序の面から申しましても、それは行き過ぎである、そういう面については、これは刑罰をもつても取締る、こういうような三段階の考えかあつてしかるべきだ、こういうことで、今般の貸金業法の廃止と並行いたしまして、三段の構えができる、こういうように考えておるわけであります。全体のそういうような三段構えの考え方につきまして、各国どうなつておるかということにつきましては、それぞれの国の金利に対する考え方が非常に違つておると思います。具体的にはたとえばキリスト教国におきましては、先ほどもお話のありましたように、金利は一切とるべきではないというような徳義的な考えから、実情に応じた取締りがそれぞれ行われておると存じますので、少くとも刑罰による規制、それから私法上の規制、それから金融機関に対する規制、こういう三本は、どういうかつこうかわかりませんが、その中の一部分を取入れ、あるいはその全部を取入れるというようなかつこうで、それぞれ各国で行われておるように存じております。
  21. 小林錡

    小林委員長 木下郁君。
  22. 木下郁

    ○木下委員 大月さんにちよつと伺いたいと思いますが、先ほどのお話の中に、利息制限法を超過した場合には公正証書をつくるのに困るからというようなお話がありましたが、これは公正証書という法定のものだから、形式だけを整える意味で、困るというような意味でありますか。何かほかに特別な意味があるのでございましようか。
  23. 大月高

    大月参考人 公正証書の問題につきましては、正規金融機関でございますので、本来公正証書をもつくれないようなかつこうで金を貸すということを別の金利調整法なりほかの行政的な法規で認めておるということが社会の通念からいつておかしい、こういう点が主でございます。もちろん公正証書がつくれないということによりまして、ただちに強制執行ができないという不便はもちろんあるわけでございますし、もちろん裁判にかりにかかりました場合には、現在の利息制限法制限を越えた金利は、当然裁判所によつて否認される、こういうことになるわけでございます。現に金融機関と取引のある債務者が、金を借りておいていざ返す場合において、もうこれ以上の金利は払わないというようなことをすれば、その後の取引はしてもらえないということになるので、実際上そういう無理なことを言う債務者はないと思いますが、法律的にはやはり公正証書もつくれないというようなかつこうで、正規金融機関が業務をやる、これも個々の貸借でなしに、本来認められた正規の営業としてやる上において不便があるということは非常に支障がある、こういう意味でございます。
  24. 小林錡

    小林委員長 木下君、ちよつと御相談しますが、大月総務課長政府当局としてここへ来て、また政府意見を伺つていいと思いますから、そこでもう一人佐々田さんが今出ていただけたのですが、私は食事せぬでも続けますけれども、一時から本会議で、MSAが上程されるのが三時ごろだそうですから、どうでしよう、佐々田さんについでにひとつお願いしましようか。
  25. 木下郁

    ○木下委員 私はちよつと一つだけ、今のお活の中で、簡単なことで、大月さんではなく、勝本さんでも舟山さんでも……。今までの話の中に、保全経済会の問題が出ましたが、われわれ考えておるのに、銀行預金に対する利息があまりに低過ぎる。言いかえれば、銀行を保護し過ぎておる。銀行金利が安過ぎるから保全経済会みたいなものにひつかかることが起つて来るのである。また現に経済常識的に見ても、これはおのおの見解もあるかと思いますけれども、私は銀行というような直接生産に寄与するという面からいうならば、ほかの生産に寄与する事業とは経済的には重さが違う。その銀行が近ころはたいへん勢いがいいというようなのは変則だと思いますが、その銀行の方で預かる金に対しては非常な保護を受けて、年六分くらいで押えつけてしまう。ところが実際世間の要求ではまた実際高金利でまわつておるという事実を知つているものだから、それで一般の人が保全経済会みたいなものにひつかかるという点が多分にあると思う。だから銀行の預かる金の金利の率と、今度は、先ほど伺えば利息制限法を三倍も越えたものが行政的には許されておる、そこにかなり大きな矛盾がある。それからもう一つは、この利息制限法というものがあるぞ――法律の基本的な建前としては、こういう法律があるのだということを一般大衆は知らない、これを知らせる方法というようなものを、金利の面におる日本銀行あたりの人があまり努力していない。手をつけぬ方がかつこうがいいというような気分があるのじやないかというふうに私は考えておるのです。その二点についてはどんなふうにお考えになつておりますか、ちよつと伺つてみたいと思います。
  26. 舟山正吉

    舟山参考人 預金利率につきましては、ここ数年来金利水準の高騰に伴いまして、少しずつでも上つておると思います。それからなお預金利子課税の問題もあるのでありますが、これも資本蓄積促進の意味から次第に軽減されておるわけでございます。これ以上金融機関としてさらに今の預金利率を引上げ得るかどうかということはいろいろ見方もあるかと思いますけれども、ただいま御指摘になりました点につきましては、一般大衆というものが資産の運用をあまりあせり過ぎるという面があるのではないか、世間の常識から考えまして、いわゆる町の金融機関等の誇大な宣伝に迷わされておるのではないかというふうにも考えられるのでございます。金融機関につきましては、できる限り預金利率を上げまして資金の吸収に努むべきではありますけれども、こういうような経済の不安定な状態におきましては、金融機関が内部の留保に努めまして、貸金の不測の損害にも備えるというような必要もございますので、資金を集める、大衆の利便をはかるという見地だけで預金利率を引上げるということにつきましては、いろいろ限度があるのではないかと考えております。  それから利息制限法の存在というものがあまり周知されておらぬ、もつと周知さすように努むべきであるという御意見はまことにごもつともと思うのであります。これは一般法律の遵守というようなこととあわせて当面非常に考えるべき問題じやないかという点につきましては御同感でございます。
  27. 勝本正晃

    勝本参考人 今利息制限法がどうも一般民衆に徹底していないというようなお話がございましたが、その法律一般に周知せしめる方法につきましては、これはまた別にお考えいただくことといたしまして、ただ、今度の利息制限法の案によりますと「債務者は、前項の超過部分を任意に支払つたときは、」こうあるのでありますが、この任意という意味は、こういう制限があることを知らずに払つた場合も含むか、知りながらそれでも払うのだという場合をも含むか、この利息制限法というのははなはだ一般に徹底しておりませんという状況のもとにおいては、これをどういうふうに解釈するか、私は先ほどからこの任意意味について非常に疑問を持つておるのであります。これは強制ということの反対かと思いますが、先ほど申し上げた民法の七百八条の規定によりますと、ここにはやはり不法原因給付は返してもらえないということがあるので、やはりこの任意というのは不法に支払つたような場合にはということになるのでありますが、この任意という意味は必ずしも不法に支払つた場合ではないのでありますから、その七百八条との関連がここに問題になる、かつ任意ということと善意ということとの差が解釈上なかなか問題になるのじやないかと思うのであります。この任意という文字は、第四条の第二項の中にも任意という文字が現われております。  なお先ほど公正証書のところで少し問題がありましたが、こういう超過部分に関する債務について公正証書をつくることができるかどうかという場合に、第一条の第二項だけについて申しますと、それは自然債務であるから証書をつくつても一向かまわない、ただ払うか払わないかが重要であつて、債務はあるのだというふうに解されるのであります。そういうふうな考え方にすべきであるか、あるいは債務そのものが存在しない、それを払つた場合にこれは不法原因給付として返還請求ができないという意味であるというふうに解釈すべきであるか、債務はあるけれども、その債務は自然債務で払つても払わなくてもいい、自発的に払つたものはそれも返還は請求することができないものであるか、債務の無返還を認めたものであるかどうか、われわれ解釈に携わつておる者から見ますと、いろいろな疑問が起るのでありまして、それはわれわれとしては解釈の線はどうせ発見はいたしますけれども、疑問の多い条文であるということはひとつお考え願いたいと思うのであります。
  28. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 勝本先生にお尋ねいたしたいのですが、私は今の法案を見まして一番疑問を持ちますのは、第四条の賠償額の予定を利率の二倍にする、この点です。この点については先生からお話がございましたが、どうもこの法案の立案者は第四条の三項でうかがえるように、「違約金は、賠償額の予定とみなす」という表現はしておりますけれども、実際は、立案者の考えは、賠償額の予定というのは、もう制裁的な違約金だというふうな考えがひそんでおるのではないか、こう思えるわけでありまして、先ほどのお話もございましたが、一体この賠償額の予定を利率の二倍にするということの合理性と申しますか、妥当性と申しますか、これについての先生の御所見をいま一度お伺いいたしておきたいと思うのであります。一体債務不履行という場合に、これはまれには制裁的なものをもつて臨む必要があるものもあるかもしれませんけれども、今の一般経済実情金融の状態、特に資産のない人たちの一般国民生活実情という点から考えますと、債務不履行のときにいろいろ同情すべき面が非常に多くて、これに制裁的な考えをもつて臨むということは、社会一般道義観念に反するし、常識にも反するものが多い、こう思うのですが、これらの事情をも十分加味されまして、この点について御意見を伺いたいと思います。
  29. 勝本正晃

    勝本参考人 この四条につきましては、私の先ほど申し上げた趣旨は、損害賠償額の予定というものは、実は金銭債務ではないほかの債務なんかについては損害賠償の額の算定が非常にめんどうである。そこで損害賠償額の予定というのが自然行われ、それをきめた場合には、裁判所はしんしやくできないということになつております。金銭債務のような場合には、法律でも損害賠償額というものを、年五歩の遅延利息というものを規定しておりますし、また約定利息がそれ以上であります場合には、従来当然その約定利息によるという規定があるのでありますから、金銭債務の損害賠償額というものは一応法律から出て来るわけであります。そういうことと損害賠償額を予定するということは矛盾するのではないか。そういうことができない場合に損害賠償額を予定することが、本来損害賠償額の予定の趣旨である。損害賠償額がわからぬからそれを予定する。ところが金銭債務においてはその損害額が法律上一応わかつておりますから、予定ということは矛盾する。だからこの予定は違約金という意味ならば解釈し得る、こう私は申し上げたので、そこでこの違約金は損害賠償額の予定とみなす、こうあるのでありますから、この損害賠償額の予定の中には当然違約金が含まれておる。いな、これはすべて違約金の性質を持つておるものと解釈することによつてこの規定の合理性が一応認められる、こう私は申し上げたのであります。  さてその率でありますが、機械的に倍である、二割が今度は四割であるということにいたしますと、一応遅延利息は四割、約定利息は二割という観念一般の人に与えるということになりはしないか、またそういう契約をえて高利貸等が当然のこととしてやるようになりはしないか、その点が利息制限法趣旨に反しやしないか、というのは、先ほど利息制限法性格として、これは金融界の経済的な秩序を維持するのであるというふうなまことにごもつともな話でありますが、この利息制限法最初にできたときは、これはどこまでも債務者、弱者保護の趣旨でできておるのであります。従つて今日でもやはりその基調は存在すると思うのでありまして、利息制限法は第一次には債務者を保護する、兼ねて社会の経済秩序を維持するということにあるかと思うであります。遅延利息というものは、ことに金銭債務においては不履行という状況がもう日常茶飯事であつて一般の債務について時効という問題もありますが、このごろは履行期が非常に短かいのであります。これはこういう制度と非常に関連があります。商事なんかは五年で時効になりますから、履行期もそういうことに関連するのでありますが、非常に履行期が近ごろは短かい。従つてそれに関連して不履行ということが非常に起りやすい。従つて遅延利息が発生する場合が非常に多いのであります。また賠償額の予定として一挙に二割から四割というふうに形式的に定めるところにはたして合理性があるかどうか、そこを私は非常に疑問に思うわけであります。ただ違約金という面から見ますと、君の借金を払つてもらえると思つて、当てにしてこの家を買つた、ところが金を払わないからといつて家の売買契約を解除されたというような場合には、実損害が相当出て来るわけであります。これは明らかに違約金として高くとつてよろしい。それは最高限、つまり二割の倍で四割でありますが、十万円以下ならば四割まではとれる。この法律を違約金を制限するという面に採用すればよろしいが、反対に不履行の場合には通常制限率の倍とれるということが原則のようになつては、利息制限法趣旨に反する。違約金を制限するという方に採用しないで、逆効果を及ぼすというところに私は考えるべきものがあるのではないかと思います。
  30. 小林錡

    小林委員長 それではこれまで御意見を述べていただきました参考人の方方にはまことに御多忙中ありがとうございました。たいへん参考になりました。お帰りくださつてけつこうであります。  次に佐々田参考人より意見を聴取することにいたします。大体十五分くらいの時間でお願いをいたします。佐々田三郎君。
  31. 佐々田三郎

    ○佐々田参考人 今度の利息制限法の案を拝見いたしまして、気づいたところを二、三申し上げてみたいと思います。  まず第一条についてであります。第一条第一項の後段に、元本が十万円未満の場合年二割、元本が十万円以上百万円未満の場合年一割八分、元本が百万円以上の場合年一割五分、こういう規定になつているのでありますが、私どもの考えといたしましては、十万円未満というのは零細企業者に対する貸出しであるのでありますので、そういうことを考えますと、特に二割というふうに高くするというのはどうか。これはむしろその次の十万円以上百万円未満というのと一緒にしまして、百万円未満の場合と一括した方がよくはないか。そうしてここに百万円未満の場合年一割八分となつておりますけれども、今日金利を計算する場合には、日歩何銭というようなことが普通であるのでありますので――実は信用組合日歩最高五銭ということをもつて業務方法書をつくつて、監督官庁の認可を得て現在事業を行つているのでありますが、日歩五銭ということは、年にしますと、一割八歩二厘何毛かということになりますので、非常に変な数字になるのであります。ここは日歩五銭というふうな規定にしていただいたらばどうか、こう考えます。そうしてその次の元本が百万円以上の場合も、やはり日歩四銭五厘とか、四銭何厘、あるいは四銭という日歩の勘定にしていただいた方がよろしいのではないかと思います。  次に、第二条でありますが、第二条に「利息を天引した場合において、天引額が債務者の受領額を元本として前条第一項に規定する利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分は、元本の支払に充てたものとみなす。」この規定は私どもから見るとずいぶん変なのでありまして、たとえば百万円なら百万円の手形を割引く場合については、やはり金利を五銭なら五銭として割引いて、そして残金をお渡しするというのが普通の行き方でありますので、この第二条の規定は実際実務を取扱う上からいうと、どうも非常に不便なものではないか。もつとも高利貸というような仕事をやつている人では、どういうことになつているかわかりませんが、正規金融業、それは銀行にしましても、信用金庫にしても信用組合にしても同様だと思いますが、これは何かふに落ちない規定と感ずるのでありますので、これはむしろ削除していただいた方がよくはないかと私どもは考えております。  それから先ほどもちよつと話が出たようでありますが、第四条の第一項に「金銭目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条第一項に規定する率の二倍をこえるときは、その超過部分につき無効とする。」つまり債務不履行によつて、あるいは非常に遅延した場合というようなときに、その過怠金といいますか延滞日歩というか、そういうものを最初の割引料率の二倍まではこれを認めるという規定のようであります。これは私どもからいうとしごくもつともでありますので、こういう債権はやはりこれだけの人を使い、かつあるいは電話その他通信費あるいは出張旅費、交通費、いろいろの費用もかかりますので、詳しく原価計算はできませんが、まず二倍くらいならば大体よくはないかというような漠然たる考えから、この規定はこのまま置いていただいた方がよいように私は考えるのであります。以上私のつまらない意見でありますが、簡単に申し上げて御参考に供した次第であります。
  32. 小林錡

    小林委員長 次に全国相互銀行協会業務部長森川僚三君にお願いいたします。
  33. 森川僚三

    森川参考人 相互銀行協会の業務部長の森川でございます。本日利息制限法案についての参考人として呼ばれたのでありますが、今度のこの法案を拝見いたしますと、相互銀行としては大体において業務運営上支障がないのであります。法案第三条におきまして、「前二条の規定の適用については、金銭目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他何らの名義をもつてするを問わず、利息とみなす。但し、契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りでない。」こうあるのでありますが、現在相互銀行の方におきましては、全国で一期間で一億百万円の調査料を徴収しております。これはもちろん全部の相互銀行が調査料を徴収しておるというわけではありませんが、実際調査するのに要した費用を債務者に負担せしめておるのでありまして、それが利息とみなされるかどうかという点が非常に気がかりになる点であります。御参考までに申し上げますが、昭和二十八年四月から九月、つまり二十八年の上半期におきまして、新規貸出件数は百二十九万八千件、金額においては二百三十一億六千七百万円、そういたしまして一件当りは十五万六千円でありますが、調査料は、先ほど申し上げました通り一億百万円も受入れておりますので、一件当りとしますれば大体七十八円であります。大体金額の〇・〇五%というものか手数料になつておるのであります。さらにその条に関しまして、担書の「契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りでない。」という中に、今申し上げました調査費の実費とか、あるいは証書作成のための印紙、用紙、認証料、抵当権設定、損害保険料、保証料、信用保険料といつたようなものは含まれると一応考えられるのでありますが、それ以外の条項につきましては、冒頭に申し述べました通り、われわれといたしましてはこれでよろしかろうかと存じております。簡単でありますが、以上御参考までに申し上げます。
  34. 小林錡

    小林委員長 御質疑はありませんか。――林君。
  35. 林信雄

    ○林(信)委員 佐々田さんは法案の天引きの規定が無理だとお考えのようでありますが、この法案の第一条の第一項の利息の大引きは問題ではないが、それ以上を越えてということに御異存があるという考え方は、結局第一条の第一項のこの制限が無理だというお考えなのでしようか、まだ低いという考え方なのでしようか。
  36. 佐々田三郎

    ○佐々田参考人 これは私どもの考え方としては、普通の割引料を割引くというのはあたりまえで、それ以上割引くことはないのですから、私どもとしてはこの規定がふに落ちないという意味なんです。そのほかに何か割引くということは、普通の金融機関にはないと思います。
  37. 林信雄

    ○林(信)委員 手形の割引でしたら、割引料として期間内の利息をまずおとりなるということはわかるのですけれども、そのとおりになるものが制限額の以内でありますれば、この規定の適用は全然あなた方はお考えになる必要はないと思うのです。それを何か特に御懸念になりまするのに、先刻他の参考人に承りますと、元本百万円以上の場合になりますと、現在信用組合関係ではこれ以上のものが実は利息として認められているらしいのです。そうすると、これが出ると、そういうものがすぐにひつかかるというところから、この制限額以上に割引く場合に当然天引きされる。そこでこの規定は迷惑だというような具体的な問題からなのでしようか。おわかりでしたら、伺いたいと思います。
  38. 佐々田三郎

    ○佐々田参考人 別にこの規定があつて迷惑ということもないのですが、どういうわけでこういう規定が設けられるのかという根本がよくわからないのであります。利息以外に何を天引きするのか、信用組合ではないと私どもは思つております。たとえば私の方で今日歩五銭でもつて計算いたしますが、その金利を割引くということは普通やつています。それ以上に何か天引きをするということはちよつとないのですね。
  39. 林信雄

    ○林(信)委員 それならいいのですよ。これはこの法案ができましたら、その以内であれば、そんな場合も想像されないというあなた方の業態からそうおつしやるので、この法案自体はあなた方の業態と違つて実際はそれ以上のものを約束しまして、それを貸付のとき天引きする。そうすると、正規制限以内の利息以上のものは、その場でとられるものでありますから、それはちよつと債務者保護の上からこうしてやろうという法案のねらいなんです。あなた方が全然予定がないというお考えなら、それでよろしいのであります。何か一般的に基本的な反対理由があればと思つてお尋ねしたわけなんです。
  40. 小林錡

    小林委員長 それではあとまだ三人おられまして、二時からということになつておりますので、二時まで休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十六分開議
  41. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  利息制限法案を議題とし、参考人より意見を聴取することにいたします。午後出席予定の参考人は、東京商工会議所理事八坂雅二君、ダイヤモンド社会長石山賢吉君であります。なおこのほかに財界代表を一名予定しておりますので、出席されればあわせて意見を聞くことにいたしたいと存じます。  参考人にはまことに御多用中にもかかわらず御出席くださいましてありがとうございます。今回提案になりました利息制限法案は、現行利息制限法施行後の経済情勢の変遷にかんがみ、金銭目的とする消費貸借上の利息制限を調整する等の必要があるとの理由で提案されたのでありますが、本案が各方面に及ぼす影響はきわめて甚大なものがあると考え、参考人各位よりそれぞれの立場から御意見を承り、もつて委員会としては本案に対する誤りのない態度をとりたいと考えております。この趣旨をお含みの上御協力を願いたいと存じます。  それではただいまより参考人より意見の開陳を願うことにいたします。八坂君に対しましては、高利貸などの実情や、遅延利息、違約金、損害賠償の予約、おどり金融、天引き利息などについても、これに関連した御意見を伺えればまことにけつこうだと思つております。大体十五分くらいの予定でありますが、多少の延長はけつこうであります。東京商工会議所理事八坂雅二君。
  42. 八坂雅二

    八坂参考人 原案程度利息の引上げは――実際中小企業者が利用する町の金融機関利息は大体日歩十銭、高いところで十五銭、つまり月に直しますと三分ないし四分五厘くらいのものを相当利用しておる。大体の形式は手形を用いておりますので、手形の期限が来て決済ができないときにいろいろの罰則を設けて、さらにそれにかなり高利金利をとつておる。この法律で申します中小企業、つまり一千万円以下、常時三百人を使用しておる工場とそれ以上の大企業との間、たとえば五千万円とか三千万円あるいは一億円くらいの会社が、つなぎ資金として相当高い金利、月五分くらいのものを利用しておるというのがときどき新聞にも出て、御承知と思います。そういうふうなものがある実情であります。これは銀行方面でそれがわかると、金融をさしとめておつて、そういうことが原因になつて今日破産をしておるというのが相当多く出ておるようであります。おどり金融とか日掛とか、ごく小さいものに出ておるように思います。そういう状態でありますから、この利息制限――もつとも第二項でもつて借りた方が承諾すれば返還を請求することができないということになつておりまして、この利息制限される逃げ道がここにあるのじやないかと思います。しかし今申し上げたように、そういうふうな高い金利を借りて、無理な経営をやつておるところが全国の商工業者に相当あるのであります。ことに町の金融が非常に跋扈しておるこの際、こういう御改正を願うことは、われわれ商工業者としては望むところであります。ただこれは非常に古いので、この程度まで上げるといつても、この取締りがあまり実行されぬということになると、これが改善されないのではないかという点を非常に心配します。  それからもう一つは、またこれをあまりきつくしたために、銀行方面も引締めをしておりますので、町の金融がとまつて、そうでなくても今倒産者が続々出ております今日、これに拍車をかけることにならないかということ、これは政治的の問題でありましようが、この点を御注意願いたいと思います。  それから太政官令がこれによつて廃止されるというように考えますが、この太政官令第三条に法定利子が現在年六分となつております。このことはこの範囲内でありますから、別に特別法をもつて設けられるとすれば別問題であります。これが往々にして非常に善良な債権者を害することがあります。なるべく裁判に持ち込んで二、三年ひつぱつておいて、その利子は年六歩ということになると、銀行利子の半分で済みますから、そういうことを悪用するものがあるようでございます。この法定利子もはなはだしい罰則的な金利でないまでも、少くとも銀行金利同額以上のものにこの法定利子をお改め願わないと、こういう法の欠陥を利用して、悪徳なことが行われるということを御考慮に入れておいていただきたいと思います。これは基本法ですから、銀行利息制限令は別に大蔵省告示等で出されるものと考えておりますが、そういうことであればこの原案でけつこうだと思います。  ほかに御質問があつたらお答えします。
  43. 林信雄

    ○林(信)委員 そうしますと御意見としては、全体として利息制限額を引上げるということはおおむね賛成なんですか。業者としては賛成なんですか。
  44. 八坂雅二

    八坂参考人 はい。
  45. 林信雄

    ○林(信)委員 御意見を承つておりますと、むしろ賛成でなくて、金融が非常に逼迫しておるのだから一般金融業者以外の非常な高金利の業者の金を商工業者が使わんとしていよいよ利用して来るようになるだろう、その場合にこう制限額が引上げられておりますと、一層金利の上昇を来しはしないか、何となれば、一条二項によつて任意に支払つた者はその返還の請求はできないというわけです。そこまではこのケースでは立ち入らないのですから、商工業者で利用するものはさらに一層高金利になつて参りまして、もしそれ相当の大企業の商工業者がさつきからお述べになりましたように、人員三百人以上あるいは一千万円以上の資本ですか、そういうものですらそれを使う場合が万一わかつたら一般金融業者は取引を停止してそのために非常な苦境に陥つてつぶれる商工業者があるかのような御説明だつた。そういうことになりますと、これはそう簡単に賛成できない御趣旨のようにも承れるのですが、おおむね賛成ということに承つておけばよろしいのでございますか。
  46. 八坂雅二

    八坂参考人 私の説明がまずかつたと思いますが、実際の町の金融というものはこういう程度のものでなくて、月に三分あるいは五分というようなものを中小企業で利用しておるものが相当おるわけです。でありますから、このくらいの法律的の引上げということはけつこうである。むしろこれより以上の金を使つておる。だから私はこれはあるいは場合によつてはこれから上になつてもさしつかえない。しかし今言うように月五分とか日歩十銭以上のものを使うということは、実際まじめな商工業では立ち行かぬわけであります。これは年二割ですから、月にしますと一分六厘六毛、実際に大して高くないとして中小企業あたりが使つておる日歩十銭に比べて、半分ぐらいである。だからもつと高くても取締りが厳重にできれば、二割が三割になつてもさしつかえない、原案のこの程度ならば決して反対ではありません。こういうことであります。このくらいになつたために市中金融がそのために高くなつて商工業者が打撃をこうむるということはないと思います。現在太政官令など、あるいは前の法律があるにかかわらず、これをくぐつてつておる実情は決してこんなものではない、もつとひどいものであります。  それでまた何か足らぬ点がありましたら……。
  47. 小林錡

    小林委員長 それではダイヤモンド社会長石山賢吉君にお願いいたします。忌憚なく御批評をお願いいたします。
  48. 石山賢吉

    石山参考人 古い法律改正して時代に適した新しいものにするという御趣旨には賛成であります。しかしここに盛り込まれておりまする金利の率は反対でありまして、高過ぎると思います。  終戦後日本金利は非常に高くなりまして、その実情から見ますれば、この法律案に盛り込まれている金利の率は無理のないというところかとも思いまするけれども、今日の経済界はまだ変態の域を脱しませんで、先行き平常状態に復して行くことを見ますると、ここの制限率は高きに失しています。もつと引下げる方がよろしいと考えます。金利の高いことは産業の発展をはなはだしく阻害しておりまして、私どもは何とかして日本金利をもつと下げたいと考えておる折からに、旧法を改正して金利をさらに引上げておることについては、はなはだおもしろからざる趣旨だと思います。従いまして私は、この法律案に盛り込まれておりまする金利には反対であります。  それから幾つもあつて、少々こまか過ぎるように思います。十万円未満が二割、それから一割八分、一割五分となつておりますが、私は、百万円以下と百万円以上くらいの二口にわけまして、百万円以下一割五分、それ以上一割二分くらいのところが至当じやないかと考えます。しかもこの率はまだ暫定的なものでありまして、将来日本金融事情が変化したならば、もつと引下げて、金の少い困る人の弱点に乗ずる不当な資本報酬をむさぼるというようなことをやめたいと思います。以上が私の意見であります。
  49. 八坂雅二

    八坂参考人 今石山さんの、金利を下げるということには私も同感でありますが、これは銀行金利と市中の高利貸の金利と混同されておるのじやないか。銀行金利としてはもちろんそうなんです。私は、先刻申し上げたように、銀行金利は、大蔵省令で今別に定められておる銀行金利を引上げるということについては、私も石山さんと同様反対であります。ただ町の高利貸とかこういうものは、数倍、はなはだしいのは月一割というような金利をとつて、現存銀行の融資対象にならない営業所とかあるいは住宅を担保にして貸している。こういうものを対象として先刻私は意見を申し上げたのであつて銀行金利がこういうようになるということであれば、もちろん私は石山さんの説と同じであります。
  50. 石山賢吉

    石山参考人 高利貸しのごときは変態的なものでありまして、それをもつて法律の基準を定むべきものでない。私は普通貸借に対することを言つておるのであります。
  51. 林信雄

    ○林(信)委員 金利が産業経済に重大な影響があるということはもちろんであります。しかしこの法のねらつておりまするものは、一応金利調整法によつて調整せられるものを特段にねらつておるのではなく、その他の高利貸の面も入りまするし、しからざる金銭の貸借を業とし、あるいはしからざるもの、その他一括いたしまして、社会立法として、この法案のみならず、従来も利息制限法というものはあつたと思うのであります。一部意見が出ますように、一般金利を引下げるということは賛成だが、その他のものは実社会においてそうでなく慣行されているので、その実情からすれば、大して影響のある問題でない、そういう意見もあろうと思うのであります。しかしながら社会は生きものでありまして、実情はそうであるからといつて、それに法制が引きずられて参りますると、さらに法律がまた追随し、あるいはかけ足で追い越さんとして、いたちごつこのごとくして事態が進んで行くことも思わなければなりません。言いかえますれば、法律のかわることによりまして関係の者に及ぼす心理的な影響よりいたしまして、この利息制限額の引上げは、やはり一般産業の業者の利用いたしておる金融面に相当影響を持つと思うのであります。従いまして必ずしもこの問題は小さな問題でないと私自身思つておるのでありますが、この法案の成立することによつて石山さんにおかれましては、やはり一般金融界、ひいて産業面にまで影響あるもののようにお考えでございましようか、それほどのものではないとお考えでございましようか。ただいまこの制限はむしろ高きに過ぎるという御意見を承りまして、簡単な問題でないというふうに御解釈のようにも存じますが、あらためて御説明願えれば、幸いだと思います。
  52. 石山賢吉

    石山参考人 一般産業にも影響することがあると思いまして、引上げには賛成いたしかねると思つております。
  53. 小林錡

    小林委員長 お忙しいととろを御苦労さまでした。  それでは本日はこの程度にとどめておきます。次会は来る四月二日午前十時より開会し、裁判所法の一部を改正する法律案及び民事訴訟法等の一部を改正する法律案等について参考人より意見を聴取することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十一分散会