○戸田
政府委員 事件の
内容についてはまだ具体的に調査いたしておらないのでありますが、ただいま申し上げましたように、とりあえずどういう
事件であつたかということで刑事局に照会いたしたのであります。ところが新聞によりますと、昨年の五月練馬署で外国車専門の窃盗団を検挙したが、一味が数十台に上る盗品の外車をハイヤー業者などに売りさばいた際に使用したナンバー・プレートや登録証を偽造した中心人物として松原甚之助氏が浮び上り、八月十九日心臓弁膜症で麻布共済病院に入院中の同氏を逮捕した。当時
弁護人側は勾留に耐えないと医師の診断書を添えて勾留の執行停止を
警察側に交渉したが、同署では
証拠隠滅のおそれがあるとしてこれを拒否した。
事件はさらに拡大して検挙者四十八名に及んだが、ほとんどが保釈などにより帰宅しているのに、松原氏だけは留置され、六箇月にわたる取調べを受けていた。たまたま去る五日主任
弁護人の遠山丙市氏が、
警察医中井繁穀氏から松原氏の死期が近いと聞き、十九日勾留判事の東京地裁緑川判事や
高橋勉係
検事、練馬署小林捜査主任らと交渉した結果、二十二日
釈放することにな
つていた、ところが二十日の午後四時三十分ごろ松原氏は同署保護室で心臓発作を起し、中井氏が手当をしたが、約三十分後に死亡したものであるという新聞の報告であります。ところが刑事局に照会した
事情によりますと事実が大分違
つておりまして、
事件の捜査の端緒となりましたのは、昨年の初夏のころで、米軍のグランド・ハイツ・モーター・プールから窃取された高級自動車を関西に販売する途次静岡で検挙されて発覚したというのが
事件の端緒であります。そこでその
事件の端緒から松原氏が主犯らしいというので松原氏を逮捕することに
なつたのでありますが、当時松原氏は目黒の共済組合病院に心臓病のため入院しておつたので、
裁判所を通じて逮捕状を発付されたのでありますが、執行を見合せたのであります。ところが九月の初句ごろにな
つて退院したというので、共済組合病院の医師に問い合せたところ、勾留してもさしつかえないだろうという回答があつたというので、右の逮捕状を執行したのでありますが、その際も本人の任意出頭を求めて、練馬署で
警察医の中井繁穀に診断させて、留置してもさしつかえない健康状態であるというので同署に留置したと言
つておるのであります。その後
弁護人から保釈の
請求が数回なされております。第一回の保釈の
請求は、第一回の
起訴直後遠山
弁護人からなされたのでありますが、
検察官は不
相当の
意見として
裁判所はこの
釈放を却下いたしたのであります。その後
弁護人からさらに保釈の
請求がありまして、第二回の保釈
請求は今年の二月十三日ごろに遠山
弁護人からなされたのでありますが、その
理由には、前回も第二回目にも健康による
理由というものは一つも書いておらない、健康上の
理由による保釈
請求でなくなされたのでありますが、
検察官は不
相当の
意見をつけたのでありますが、
裁判所側ではこれは
事情はわかりませんが、おそらく保釈が長くな
つておつたからであろう――これは私の想像なんですが、
検察官と
弁護人を呼びまして
事情を聞いたのであります。遠山
弁護人は保釈人との
関係もありましたので、すぐできるかどうかということで、何か特にあれしてくれという強い
意見がなかつたと言われておるのですけれども、これは私も調べておりませんからわかりませんが、さようなことで
検察官は
証拠隠滅のおそれがあるというようなことで、この二回目の保釈も却下せられたのであります。そこで第三回の保釈
請求がさらになされました。そのころ
弁護人として中村又一弁護士がつきまして、二月の十六、七日ごろなされたのでありますが、これについても健康上の
理由というものは述べられなかつた、ところが二月の十九日、土曜日でありますが、中村
弁護人から本人の健康状態がよくないからというので、これは口頭であつたと思いますが、
裁判所に申し出たのであります。
裁判官は中井氏に照会しましたところ、保釈
相当の
意見だというのでさつそく保釈することになりました。これが二十二日に保釈するということに
なつたのでありますが、その二日前の二十日の日に、本人の呼吸が困難に
なつたという
事情を聞きまして、
検察官は病院に手配いたしまして、
裁判所側に勾留執行停止を至、急するようにということを促したのであります。それによ
つて裁判所は執行停止をすることになりまして、その謄本を練馬署に届けることに
なつたのでありますが、届けますうちに、午後四時本人が死亡したということにな
つております。その真相はまだ私の方で調べておりませんが、ただいま申し上げたように、刑事局の照会による事実と、新聞に報道されております事実との間には非常に大きな開きがございますので、これは十分に調査しなければならぬものだと考えておりますので、今後慎重に調査いたしたいと考えております。