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1954-02-02 第19回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二日(火曜日)     午前十一時四十四分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 吉田  安君    理事 古屋 貞雄君       野田 卯一君    林  信雄君       牧野 寛索君    高橋 禎一君       中村三之丞君    猪俣 浩三君       木下  郁君    佐竹 晴記君       久保田 豊君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         運 輸 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君  委員外出席者         検 事 総 長 佐藤 藤佐君         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 一月二十五日  委員田嶋好文辞任につき、その補欠として山  中貞則君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員大橋武夫辞任につき、その補欠として保  利茂君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員鈴木幹雄辞任につき、その補欠として高  橋禎一君が議長指名委員に選任された。 二月二日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 一月二十一日  戦災火災等による滅失戸籍及び除籍  複本再製費国庫補助に関する請願高橋禎一君  紹介)(第四六号)  同(高津正道紹介)(第四七号)  岐阜保護観察所高山支部設置に関する請願(岡  村利右衞門紹介)(第四八号)  中頓別簡易裁判所新築に関する請願松浦周太  郎君紹介)(第四九号)  旭川地方法務局羽幌出張所改築に関する請願(  玉置信一紹介)(第五〇号)  谷地町に検察庁設置請願牧野寛索紹介)  (第五一号)  谷地町に簡易裁判所設置請願牧野寛索君紹  介)(第五二号)  印章法並び印刻師法制定に関する請願(山口  好一君紹介)(第五三号)  同(押谷富三紹介)(第五四号)  戦犯者釈放に関する請願吉武惠市君外四名紹  介)(第五五号)  同(細野三千雄紹介)(第五六号)  同(田渕光一紹介)(第五七号)  同(岸信介紹介)(第五八号)  戦犯者釈放等に関する請願外二件(岸田正記君  紹介)(第五九号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十日  戦犯受刑者釈放等に関する陳情書外一件  (第一九号)  同  (第二〇号)  同(第二  一号)  同(第二二号)  同(第二三  号)  同  (第二四号)  同(第二五号)  同(第二六  号)  同  (第二七号)  戦争受刑者釈放並びに戦犯刑死者及び獄死者  遺族公的援護に関する陳情書  (第  二八号)  同(第二九号)  戦犯者岩沼次男釈放に関する陳情書外一件  (第三〇  号)  株式会社法改正に関する陳情書  (第七八号) 同月二十九日  戦犯受刑者釈放等に関する陳情書  (  第一二五号)  同(第  一二六号)  戦争受刑者釈放並びに戦犯刑死者及び獄死者  遺族公的援護に関する陳情書  (第一二七号)  戦火災等による滅失戸籍複本再製経費国庫負担  の陳情書外一件  (第一二八号)  岡崎刑務支所少年収容施設として復活の陳情  書  (第一二九号)  福岡高等裁判所並びに同高等検察庁支部を鹿児  島市に設置陳情書  (第一三〇号)  戦犯受刑者田中末太釈放に関する陳情書  (第一  三一号)  東京拘置所における人種的差別待遇廃止に関す  る陳情書  (第一三二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  検察行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  検察行政に関する件について調査を進めます。本日は、本件のうち、現在問題になつております造船関係汚職事件につき、各関係当局より実情を聴取するとともに、その見解をただすことにいたします。  なお、この際お諮りいたします。本件につきましては、警視総監田中榮一君には参考人として発言を願うことにいたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。ただいま石井運輸大臣岡田海運局長が出席しておられます。犬養法務大臣もただいま出席されました。田中警視総監もすぐに来られますが、佐藤検事総長は後ほど来られることになつております。  それではまず政府より本件について一応実情説明を聴取いたします。
  4. 犬養健

    犬養国務大臣 いわゆる造船疑獄事件について、現在どうなつているか、現在までの御報告をいたしたいと思います。  そもそも、捜査の端緒といたしましては、本年の八月二十八日に東京地方検察庁に対して森脇将光――これは江戸橋商事株式会社の事実上の総轄主宰者であります。その森脇から江戸橋商事株式会社代表取締役志賀米平日本特殊産業株式会社取締役社長猪股功の両人に対して詐欺、商法違反等の告訴がありました。その捜査中に、日本特殊産業株式会社が、日本海運株式会社及び山下汽船株式会社、並びに日本通運株式会社等から多額融資を受けて、これを焦げつかせていることが判明したのであります。そこで東京地検におきましては、第一に、日本海運関係について、一月七日社長塩次鉄雄、続いて専務取締役佐藤裕信を逮捕いたしまして、塩次について一月二十七日に商法違反として、昭和二十七年七月十六日ごろから同年の八月十五日ごろまでの間に、前後七回にわたつて日本特殊産業株式会社に対して手形金額合計一千百八十三万五千円の不正貸付をなした事実について公判の請求をいたしました。第二に、山下汽船関係につきましては、一月七日に山下汽船専務取締役吉田二郎並びに監査役菅朝太郎、続いて社長横田愛三郎を逮捕いたしまして、吉田と管とを一月二十七日商法違反として、吉田、管が社長横田と共謀の上、昭和二十七年一月十九日ごろから同年四月十日ごろまでの間に、約二十九回にわたりまして、約束手形等をもつて合計約一億三千五百万円の不正貸付をなした事実について公判を請求いたしました。第三に、日本通運関係につきましては、一月十二日、日本通運東京支社総務部長古屋良平、続いて同主計課長早瀬大介並びに東京支社長近藤順二を逮捕いたしまして、なお今後引続きこれらについて捜査を続行いたして行く予定でございます。その他山下汽船の前に申し上げました不正貸付事件捜査中に、運輸省官房長壷井玄剛に対し同会社から相当多額の金員が贈られていることが発覚いたしましたので、一月二十五日壷井収賄容疑として逮捕いたしました。さらに日本海運が前に申し上げましたように日本特殊産業株式会社に対して不正貸付をなしました際、経済審議庁審議官井田研二郎がこれに関与したことが発覚いたしましたので、同月二十七日今井田商法違反の共犯として逮捕いたしていずれも現在取調べ中でございます。
  5. 小林錡

  6. 石井光次郎

    石井国務大臣 私の方の監督下にあります船会社に、ただいま法務大臣から申し上げましたような幾つかの事件が起つておるのでございますが、事件内容捜査中でございまして、全然私どもにはわかりません。私の方の関係といたしまして直接関係ありますのは、運輸省官房長が、ただいまもお話のありましたように、今検察当局取調べを受けておるのでございます。どういう内容でどういう状態かということも私どもは一向存じておりませんが、ただいま法務大臣の言われたような線の取調べだと思つております。この法務関係において今検察当局で調べられております壷井君の問題は、もう少し事件はつきりいたしましたときに、しかるべく私ども事件の処置を講じなければならないというふうに考えております。
  7. 小林錡

  8. 田中榮一

    田中参考人 ただいま問題になつております海運関係汚職事件につきましては、これは現在東京地方検察庁におきまして、もつぱら事件捜査をされております。警視庁としては全然事件につきましては関係しておりませんので、私から申し上げる事項は全然ございません。
  9. 小林錡

    小林委員長 発言の通告がありますから、順次これを許します。高橋禎一君。
  10. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 石井運輸大臣お尋ねをいたしたいと思います。私は、従来国会における大臣答弁というものがどうも徹底を欠き、ときにはその誠意すら疑われるというような非常に不親切な不明快な答弁のあることを日本議会政治の将来のために非常に憂慮しておるものの一人でございます。これからお尋ねいたしますことは、いわゆる刑事事件に関連してのことでございまして、私どもはどこまでも事案の真相を明らかにし、刑罰法令の適用を公正にして、真に官界あるいは政界の粛正等に寄与いたさなければならない問題であると考えておりますので、大臣においてはこの委員会において宣誓をなさつたつもりで真実答弁をなされるよう、まず第一に要望するものでございます。  そこでお尋ねをいたしますことは、ただいまも御説明がありました通りに、運輸大臣部下であるところの運輸省官房長壷井氏及びかつて運輸省に勤務しておられ現在は経審審議官である今井田氏、この両名が逮捕せられて、涜職事件あるいは商法違反等取調べを受けているというのであります。ところが石井運輸大臣検察庁において目下取調べ中であつてその事件内容はほとんど知らない、ただその成行きを傍観しておるというような趣旨の御説明であつたと承つたのでありますが、大臣も御存じの通り部下監督する立場としては、一体その取調べを受けつつある人あるいはその他にもこれら事件に関連しておる者がいるのかどうかということを十分調査をして行くことが行政首長たる者責任である。しかも新聞等の報道によりますと、そしてまた先ほど犬養法務大臣の御説明にもありましたように、これは造船疑獄と世間では申しており、当局もまたそう言われるような造船関係している事件であるのであります。そういたしますと、日本の将来の造船という点から考えましても、責任者たる運輸大臣は、どこまでもその真相自分責任においてつまびらかにし、そうして造船関係の法規の運用、行政において万全を期さなければならぬということになるわけでありまして、検察庁で調べておるんだから、自分事件内容はいささかも知らない、検察庁にまかせきりであるというような態度、この態度責任大臣としては、あまりにも無責任態度であると思えるのであります。法律によりますと、公務員が犯罪ありということを知つた場合には、これを告発しなければならないという責任まで加えられておるというのは、やはりそういうところに根拠があると私は考えるのであります。  そこで運輸大臣は、現在は何も知らぬというふうにおつしやいますが、これから部内の、少くとも造船関係仕事を取扱つておる人たちの間に、こういうふうな犯罪の疑いのあるような行為があるかどうかということを十分調査なさつて、そうして得たる資料を検察当局に提供をして、すなわちあるいはもみ消したり、あるいは証拠を隠滅したり、あるいは虚偽の陳述をするというようなことを打合せするということでなくして、免れようとするというのではなくして、真実を明らかにするために協力をして行く、こういうふうな御決意がおありになるかいなか、その点を第一にお尋ねいたしたいのであります。
  11. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えいたします。壷井君の事件は、私も寝耳に水で、まことに遺憾に存ずる次第であります。同時にこれは昨年の計画造船利子補給問題が議会に議せられたときから、いろいろな声も聞いておりましたし、私どもといたしましては、できるだけそういうふうな渦中に巻き込まれることのないようにということは当然として考え、また当然その覚悟をみんな持つてつたわけだと思うのでございます。私といたしましては、検事仕事を妨害するとか何とかいうことはもちろん考えてもおりません。さつき検事局におまかせしておると言つたのは、その意味のことを申したわけであります。ただ海運仕事は、こういうふうな問題が起りましても造船計画的にどんどん進めて行かなければならないし、また日本海運業が世界に伍して競争して行くための援助というようなことも続けて、日本海運保護に当らなければならぬという大きな使命を私どもつております。この使命のためにはあらゆる努力を今後も続けて行かなくてはなりません。同時に、今おつしやつたような疑惑を持たれるというようなことのないように部下をよく戒飭いたしまして、そうして今後とも海運界のために役所としてのすべきことを一生懸命やつて行くというような意味において、みんなをよく指導して行きたいと思つております。  この問題に関連して、海運造船の方の関係者に何かあやまちがあつたというような問題については、これは個人の私行上の問題になりますから、私どもそこまで今度のことも一向わからなかつたのでございまして、どういう内容かも知らぬわけでございますが、そういうことに何か私ども気づくものがありましたら、もちろんそれの言うことを隠し立てするようなことは一切いたすつもりはございません。
  12. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 ただいま石井運輸大臣は、計画船云々というお言葉がありました。この小さい領土の国に八千七百万人、政府の将来の見通しとして昭和二十九年はそれが八千八百万を越すだろう、こういうふうな見通しでありますが、そういうたくさんな人口の日本、これはどうしても貿易を促進して行かなければならぬというのはもう国論であります。ところが貿易収支のバランスは最近に至つて逆調の傾向がある。輸出を促進するためには、どうしても資源の少い日本においては船をつくらなければならない、また優秀な機械を整備しなければならない、また労働問題を解決しなければならない、こういう大きな問題があることは大臣も御承知の通りでありますが、その中でも造船ということは大きな政策の一つとして取上げられなければならず、またその方向に向つて進んで行つておるわけであります。そこで過般制定されました外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法においては、造船に関して国家は非常なる助長策を講じておるわけであります。国民の苦しい中からの血税を非常に多額にこれに使いましてそうして造船計画を立て、これを保護育成するために大きな犠牲を払つておるわけです。ところがその法律が実施されて間のない今日、その問題に関連して疑獄事件が起つて参るということは、これは税に苦しんでおる国民立場から、また祖国日本の再建を念願してやまない国民立場から申しますと、泣くにも泣かれない思いがいたすと私は思うのであります。ところがその責任者はだれかといいますと、内閣においてはすなわち石井運輸大臣あなたがまず第一の責任者なんだ。そしてそのおひざ元に、先ほどお尋ねいたしました、また大臣からも説明のあつたように、もうすでに二人の罪犯被疑者が検挙されて、しかもその事件は将来非常に発展するだろうということが言われておるわけであります。新聞の伝えるところによりますと、東京地方検察庁においては多数の優秀なる検事を動員して、しかも海運関係及びその他の関係として受持の分野まではつきりきめて、この事件真相を明らかにしようとして努力しておられるわけである。これはすなわち国民の要望にこたえようとされる検察庁の姿であると思うのです。ところが当の責任者が、おひざ元からそういう被疑者が出て取調べを受けておるにもかかわらず、その事件については自分はよく知らない、あるいはまたその他のものについても一体そういう不行跡の者がいるかいないかわからないというようなお答えであつたのでは、一体大臣部下を、少くともこの造船関係において今日まで一体どのように指導をし監督をしておのれの職責を果して、国民の期待に沿おうというように努力をされたかどうか。私は先ほどの答弁では、その点をはなはだ疑うわけです。一体造船に関する重大なる責任者立場に立つて部下指導監督して行こうとされる大臣の先ほどの答弁は、きわめて私は誠意のない答弁であると思うのです。ただそれが答弁だけでなくして、事実がそうであつたといたしましては、私ども大臣のいわゆる造船に関する責任者としての地位に非常な不満を感ずるわけでございますが、先ほどお尋ねいたしましたような線に沿うて真にこれから調査をされてそしてあやまちのあるところはこれを是正して行くという、ほんとう熱意がおありになるのかどうか。通り一ぺんの御答弁というのでなくして、ほんとう日本の行き詰まらんとする経済自立のために、一大勇猛心を振い起して、自分責任を全うしようという熱意がおありになるのかどうか。そしてこの問題について、将来どう御処理になるか。もう一度はつきり答弁を願いたいと思うのであります。
  13. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えいたします。もし運輸省内にいろいろなスキャンダルがあつて、私がそれを知つてつて見のがしておつたならば、それは私はおかしいと思うのであります。かりに何か問題があるならば、私はそれをそのままほつておかないで、ものによりましては戒飭するなりあるいはやめさせるなり、その他の方法も当然私としてはとるべきだと思つております。その責任は私が当然持たなければならぬものであります。残念ながら、私はこの事件のようなことを知りません。また仕事の上におきましては、今お話になりました造船の問題につきましては、私も一生懸命、どんなにして日本海運界を復興させるかということについて考えておりまするし、部下もその仕事においては、皆十分いろいろ私を助けてその線に沿うてやつてくれておるということを信じておるのでございます。今後といえども、私の方の仕事の上に、また仕事に関連して何かおかしな問題がある、おかしな行き方があるというようなこと等がありますれば、当然私としてはそれを改めしめる。またそれが改まるとか改まらぬとかいう以上の問題であるならば処分をするというようなことは、私としては必ずやつて行くべきものでありまして、これは私の責任だと思つております。
  14. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 先ほど大臣は、壷井官房長事件が起つたの寝耳に水だとおつしやつた寝耳に水で自分は知らなかつたのだからどうにもならなかつたというような御答弁では、われわれ満足できないのです。と申しますのは、そういう事態が起らないように、あなたは十分部下指導監督しなければならない立場にある。私はこういう事件が起つて、しかもそれが日本にとつてきわめて重大な政策の遂行の面において起つたということをお知りになつたならば、それこそ罪を国民に謝すという気持におなりにならなければならぬと思うのです。それはあなたが責任者なんですから。そこをどういうふうにお思いなつたか。そして今日からただちに、今までの指導なり監督なりのやり方が悪かつたとするならば、それを改めて、これから自分はこの造船関係の問題についてこういうふうに指導をし、こういうふうに監督をして、再びあやまちを起さないようにするという考えを、具体的な方策があればそれをひとつ承りたい。
  15. 石井光次郎

    石井国務大臣 根本は、日本の国策であります造船海運の発展ということに万全の力をいたしたいということが、私の考えでございます。その線に沿いまして部下指導して行くことは私の責任でありまするし、今度のような問題が起りましたことは、まことに残念でありますが、これを他山の石といたしまして、部内の綱紀の粛正、そうして国民の私どもにまかされました仕事疑惑の持たれないように皆がガラス張りの中で仕事をして行く、今までも私どもはそうだと思うておりましたが、不幸にして残念ながら問題が起つたのでありますから、今後は一層皆を督励いたしまして、りつぱな仕事をするように指導して行こうと思つております。私もその責任を感じて、一生懸命に部内の者に仕事一本に没頭して、かりにも疑いの起るようなことに関与しないように、ぜひやつて行きたいと思つております。
  16. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 まずこの造船計画に対しての補助の具体的な問題についてお答えを願いたいと思いますが、第一次ないし第九次までの造船計画について、一体融資をどのくらいしたものであるか、また今日まで利子補給なり、あるいは損失補給は幾らしたか、それをまず御説明願います。
  17. 石井光次郎

    石井国務大臣 海運局長からお答え申し上げます。
  18. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 一次から四次までの財政融資の額は、今手元に持つておりませんから、後ほどお届けいたします。それから第五次以降外航船を建造するようになりましたが、これが四次までは、大体七割を船舶公団あとの三割を船主が自己調達するという建前でございます。但し建前はそうでございますが、そのときの船主選考方法が、財政資金をできるだけ少く使う者から入札制できめて行く、こういうことでございますので、実際は財政資金が七割も出ておりません。五次以降外航船を見返り資金でつくるようになりまして、大体五割を見返り資金から出す。あとの五割を船主市中銀行から調達して来る、こういうことになつております。それで大体八次までやつて参りまして九次から――九次というのは二十八年度の建造船でありますが、これから財政資金を七割、三割を市中資金、その三割の市中資金に対して六分の利子補給、こういう建前なつております。  そこで今まで、五次の昭和二十四年度の建造船から今まで出しました金ですが、昭和二十四年度に新造船四十二隻であります。それに対して大体六十億、それから戦時中つくりました一万トンの戦標船、これを外航に使えるように改造いたしておるのであります。これが二十八隻で、これに対して二十億、その他多少出しておりまして、大体二十四年度に八十三億というものを見返り資金で出しております。それから二十五年度には、二十四年度の工事に対する継続費用として六十四億、それから二十五年度に新造いたしましたのが三十隻、それからただいま申しました改造が二隻、その他多少の工事がありますが、それに対して六十四億というものを出しております。それから二十六年度におきましては、二十四年度にいたしました工事に対する継続費として九億八千万、それから二十五年度の工事に対する継続費として五十二億、それから二十六年度の新規事業といたしまして新造船四十五隻、それから戦標船改造二十三隻、これに対しまして百五十二億というものを融資いたしております。それから二十七年度におきましては、今までの継続費としまして七十五億、それから二十七年度の新規事業として新造船が四十三隻、これに対して百三十一億、それから二十八年度に対しましては、それまでの継続費といたしまして五十七億、それから新造船三十隻に対しまして百五十二億、合計いたしまして、大体八百四十八億というものがこの外航船に対する財政支出でございます。  先ほどちよつと正確な数字はわからないと申しましたが、一次から四次までの新造に対する大体の財政支出は、百二十億程度ではないか、かように考えております。これが今までの財政支出の総額でございます。  それから利子補給でございますが、これは二十八年度に入りまして、その前に成立した法律によりまして、大体新規造船に対するもの、すなわち二十八年度の新造船に対して三分八厘だけの利子補給をする、これが当初の案でございます。この三分八厘の利子補給を四月から九月までに、実際に市中銀行から借りた金に対して支給する、こういうことになつておりまして、その額はちよつと正確な数字はわかりませんが、一億以内と思います。  それから八月十五日以降本年の三月末日まで、これが今度の利子補給によつて市中銀行に対しては六分の利子開発銀行に対しては一分五厘の利子、こういうふうになるのですが、この利子補給によりまして、私どもで申しておりますいわゆる第六次船までさかのぼつて利子補給をするということに相なりまして、この半年間の利子補給をする額が約十億程度だつたかと思います。但しこれは実はまだ大蔵省と利子補給契約の約款でいろいろ折衝中でございまして、まだ一文もその利子補給額は支給されておりません。その利子補給額は船会社のふところに入るのではございませんでして、それを融資した市中銀行にその利子補給を出す。従つて市中銀行は、その補給された額だけ低い利率で船会社に貸す、こういうものでありまして、この間成立いたしました利子補給法による補給額は、まだ現実には銀行に支給していないという状況でございます。
  19. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それでは運輸大臣にこの点をひとつ要求いたしておきます。第一次ないし第九次までの造船計画に関連しての融資あるいは利子補給損失補償等について、船主造船所、契約の額、融資額、その他利子補給額、損失補償額というものを個別に調査して表にして委員会に報告していただきたいと思います。  そこでお尋ねいたしますが、先ほど犬養法務大臣のこの事件関係の報告の中にありました日本海運株式会会社山下汽船株式会社日本通運株式会社、これらの会社に対して、いわゆる政府計画造船関係融資損失補償、利子補給等の関係がどのようになつているか、これを具体的にひとつ御説明を願いたいと思います。現実に出ておらないものでも、契約が締結されたものがあれば、それもあわせて御説明を願いたいと思います。
  20. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 私からお答え申し上げます。日本海運は、この財政融資を受けて新造するような船をつくつておりません。従つて計画造船には全然関係がない船会社でございます。  山下汽船会社でございますが、今までに計画造船として七隻ほどつくつております。これに対する財政資金、それから利子補給額は、今ここに資料を持つておりませんので、ただちに調査いたしましてお届けいたしたいと思います。
  21. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 石井運輸大臣お尋ねいたしたいのでありますが、巷間伝えるところによりますと、船主造船業者に船の建造を注文して、その船ができ上つてその代金を受取ると、そのうちの一割程度を造船業者から船主に対してリベートする、こういうことがいわれているのでありますが、これはやはり造船計画遂行の責任である運輸大臣は十分御存じたけらねばならないと思うのでありますが、こういう点について御調査なつたことがおそらくおありだと思うのですが、それはいかがでございますか、お答えを願いたい。
  22. 石井光次郎

    石井国務大臣 それは昔からそういうふうな風習が、どれだけか知りませんが、幾らかリベートを出すようなことはあつたこともあるそうでありますが、この利子補給をするような今日の計画造船の状態になりましてから、そういうことは一切やることは認められないということで、それだけのものがあるなら船価を下げるべきだという線において、運輸省の方から絶えず忠告しておる状態であります。
  23. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 正確に御調査なつたことがあるのかないのか、あるいはそういう事実があるのかないのか、どうもありそうだという漠然たることでありますが、それではどうもやはり大臣ほんとう責任を果したということにならぬと思うのですが、ひとつ正確に調査して、そうしてそれは法規上よろしくないということは大臣もお考えなんですから、そういうことのないようになさらなければならぬと思うのですが、そういう熱意はおありになるかどうか、それをひとつお答え願いたい。  続いて、この計画造船の場合の船主の選考方法並びに現実に一体公正な選考をなさつたかどうか、それらについて御説明願いたい。この二点をお伺いいたします。
  24. 石井光次郎

    石井国務大臣 第一点は、運輸省としてはそういうことをやつてはいかぬということを言い渡してある状態でございます。それから先どういう状態であるかは知りませんが、私どもとしては、それだけの分を船価引下げの方にまわしてくれることを要望いたしておるような状態であります。実際上個々にどうなつておるかということについては、調査いたしたことはございません。  それから計画造船をきめる場合、まず第一番目には、造船合理化審議会というものがございまして、これに大体の方針を伺うのであります。そうしてそれによつて立てられました方針に従いまして、みんな造船をしたい人から希望を申し出させまして、その一個一個につきまして、運輸省、それから金融を一番強く扱つておりまする開発銀行において、それぞれ各船会社について調査をいたします。これは年々の造船の場合にやり方は違つておるようでありますが、私が関与いたしました今度の造船の場合はどういうふうにしたかと申しますと、今申しますように、開発銀行でもそれぞれ調べる、運輸省もそれぞれの調べをする。初めは市中銀行が参加して、市中銀行も調べて、この三者一緒にして話をつけようじやないか、それが一番確かなところになるのじやないかということで話を進めておりましたが、市中銀行はあれをいいとかあれを悪いとかいう意見をはつきり出すことは、なかなか取引の関係上喜ばれないのであります。われわれの方から意見を開けばそれに答えをするという程度の話でございまして、運輸省運輸省造船所の経営状態を詳細に調べ上げる、開発銀行開発銀行で、担保力その他について詳細な調べをいたしまして、それを持ち寄りまして話をつけたのでございます。大体は造船を申し出た船会社が適当でありやいなやということと、それからもう一つは、造船所の状況ということが強く加味されました。というのは、造船所が相当たくさんありまして、中以上のものも、造船能力は八十万トンから年にあるのでありまするが、それが日本造船の三十万トン、外国からの十万トンの注文、要するに四十万トン、まあ半分くらいしか造船が完全に行つておらないという状態でございますから、大きい造船所にばかり行くようなことになりますと、中くらい、また要するに外航船をつくり得るような造船所でも倒れるような状態になつてはならない、なるべくそういうものにもまわるようにすべきじやないか、なるべく造船所も立ち、そこの労務者も仕事にありつけるようにという点もあわせ考慮いたしまして選考いたしたわけであります。
  25. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 過般成立しました外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の成立に関して船主あるいは造船家等から運輸大臣のとこにいろいろと運動があつた、こういうことが世間で伝えられておるのでありますが、そういう事実があつたのかないのか。また船主選考の場合においても、同様の運動が行われたということであるが、そういうことがあつたのかないのか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  26. 石井光次郎

    石井国務大臣 それは造船所も船主も、そういうふうな、自分のところを使わしてくれという希望は、ほとんど全造船業者と申しますか、申し込んでいる人たちから陳情がありました。どれだけの人に会つたか知りません。その後役所の方におりますと、よくいろいろ陳情がありました。しかしこの問題は、いくらたくさん申し込んで来たつて、できる数がきまつておるのであります。私どもは結局さき申しました、どうすれば一番りつぱな方法でやれるかということ以外には考えることができないので、ひとつもそういう陳情というものは結論的には問題にならないのであります。
  27. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 先ほどからの質問あるいは大臣お答え等によつて明らかになりましたように、船をつくることが日本にとつては喫緊の事柄である。しかも国民政府は耐乏生活を強く要望しなければならない今日、しかも国民は税金の負担に苦しんでおる今日、この造船関係において、あるいは造船家から船主に対してリベートするとか、あるいはここに出ておるだけでも、山下汽船のごとき造船計画保護を受けておる会社が、一億三千数百万円というような不正の貸付をしたり、あるいはまたその汽船会社関係の公務員に対して多額の金員を贈賄する、こういうふうなことが行われておるわけであります。そういたしますと、せつかく国民が苦しんで税を納めて、国家としても正しく造船計画を遂行しなければならぬという間において、その国家の保護を受けておる、特別な助成を受けておるところの会社が、何だかその辺に金がだぶついておるような感じがしてならない。それらの金をすべてあげて造船ということに振り向けなければならない。遊ばせておいたりあるいは不正にその辺に流しておる金はあるべきはずはないと思うのです。それをそういうふうに仕向けて行くということは、石井運輸大臣の大きな政治的責任だ。その責任を果すための構想と申しますか、それをいま一度はつきりお答えを願いたいと思います。
  28. 石井光次郎

    石井国務大臣 山下がどういうふうに金を流したか、時期等の問題もいろいろあると思いますが、私内容がどういうようになつているか詳細に知ることができないのでありますが、二十七年ころまでは海運界が御承知のように朝鮮ブームのあおりを受けていたころであります。あるいはそのころはみな金も余裕があつたと思うのでありますが、二十八年、二十九年とだんだんこのころになつて来るにつれまして非常に金詰まりの状態でありまして、おそらく今ごろはそういうふうな金を貸し得るような余裕はないじやないか。さように思うのでありますが、今後私どもとして考えなくちやならぬ問題は、今のように利子補給を受けながらその本来の仕事以外に金が使われるというようなことがあつてはならぬことは当然でありますが、私どもも昨年からこの利子補給が強化されましたので、いろいろな報告書を出させることにいたしております。これによりまして私ども監督し得る範囲においては、今のような資金の流用等のないようにぜひして行かなければなりませんが、利子補給をいたしますこと、それから考えましても、計算書を見ますると、本年は、この間の期においてはどの会社も一つも利益配当ができない。タンカー会社などというものは去年の春ころまでまだ余裕があつたのでありますが、世界の市況の非常な圧迫を受けまして、もう暮れの配当はできなかつたという状態でございますから、私どもといたしましては、それを厳重に数字の上の報告を十分とれるようになつておるので、今のようなおかしなことのないように今後とも一層注意をさせて行きたいと思います。
  29. 小林錡

    小林委員長 古屋貞雄君。
  30. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 運輸大臣お尋ねいたしたいのですが、大体運輸省のこの問題は、ただいま法務大臣から御報告がございましたように捜査中であつてまだ全貌ははつきりしないと申しておりますが、私ども調査いたしました関係からいたしますと、新聞で書いていただきましたような壷井さん、今井田さんの問題は単なる氷山の一角であつて、多々ますます関係が出て来る、かように考えておりますることと、新聞に報道されている事実から言いますと、国民の中には、一方においては非常に生活に窮迫しておるし、しかも国民生活に必要な予算が削られておるにもかかわらず、海運業者に対しては莫大な金を補給しあるいは損害の填補をしておる。しかもそれがいろいろの疑惑を持たれまして、捜査線上この問題が摘発されておる。かような関係がありますので、運輸大臣から私は明確に御答弁を願いたいことは、時間の関係がございますから、大体私は三つに集約いたしまして御質問申し上げます。  第一は、第十六国会で、通過いたしすした外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の最初の原案であります。運輸省の原案に対して、自由党並びに改進党、それに当時の分自党の三派修正案というものができまして、その三派修正案が通過いたしておる。そして今の法律から考えますと、船会社は一文も金を出さなくても船がつくれるような状況になつておると私どもは承知するのであります。従いましてそこにわれわれといたしましては納得の行かない疑惑を持つのであります。それで政府原案と当時の三派修正との相違点を運輸大臣から結論だけお述べいただきたい。どういう点に相違があつたか。その結果第十六国会を通過いたしました予算面にどういう変化を来したか。もつと具体的に申しますならば、原案でありましたならば、幾ばくの予算で済んだのであるけれども、修正されました修正案が通過いたしました結果、予算がどのくらい増額されなければならないことになつたのか、その点、まず第一点として御質問申し上げます。御答弁願います。
  31. 石井光次郎

    石井国務大臣 初め私どもが出しました利子補給政府部内での私どもの案といたしましては、実際上の利子を五分にするまで補給をするという案でございました。それは一昨年の暮れでございましたが、初めて造船に対する利子補給というものが政府案として出しまして通りましたときは、七分五厘まで利子補給をするということでございました。そのとき私ども五分までやつてやらないと、どうも困るのではないかと思つたのですが、政府部内の話合いで一応七分五厘ということになりました。それで情勢を見ますと、大体海運業界が世界的に苦しい状態になつて参りました一半の関係は何かというと、金利問題なんです。外国の船会社は自己資金もありますが、金を借りる場合においては三分か三分五厘で借りておるのが、日本では利子補給をして、なお七分五厘。今お話なつたようにほとんど全額借金なんです。なぜそういうことになつたのかと申しますと、御承知かと思いますが、戦時中に船がすつかり沈められてしまつた。船舶運営会で借り上げて使つておりましたが、みんな沈んでしまつた。本来ならばこれは補償すべきであると思いますが、占領治下の決定で一文も船の補償がなかつた。今の金にすれば、おそらく何千億円という金になるであろうと思うくらいの金であると思いますが、それが一文も補償されなかつた状態でありますから、船会社はどうしても借金で船をこしらえるより仕方がない。国策としても船をこしらえなければならないというので、初めは少なかつたのが、だんだんだんだん船会社に対する政府資金の金融がふえて来たわけですが、そうやつて船をこしらえたために、日本海運業者は利子払いにみんな追われてしまつて、どうしても世界の競争に耐えない。そこで本来からいえば、世界の先進国と同じくらいな利子程度、たとえば三分とか、三分五厘とかいうように日本利子が下れば一番いいのですが、そこまではなかなか日本全体の経済状態からして下らない。ですから、まず七分五厘、その次には五分、できればもう一つある階段を経たならば三分五厘というようなことを私ども考えておりましたが、一ぺんにそこまで行くということは、なかなかむずかしいのじやないかということを考えまして、案としては五分ということを考えております。ところが今お話のように、市中の利子は五分、それから開銀から融資します分は三分五厘まで利子補給するということに決定したわけでございます。
  32. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その結果、政府の予算にどういう変動を来したかということをお尋ねいたします。
  33. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 これも手元に資料を持つておりませんので、正確な数字を申し上げることはできませんが、当初の七分五厘になるまでの利子補給契約におきましては、大体これは八箇年間に利子補給する総額でありますが、これが大体十六億程度だつたかと思います。それが五分まで利子補給をする、結局政府から補給するのは六分でございますが、それで大体八年間で百六十八億程度になると思います。
  34. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで第二段の問題になるのですが、一体政府の船舶造船計画というものは、政府において原案をつくられて、それを船会社に割当てるのか、それとも船会社の方から造船計画をいたしましてそうして申込を政府にいたしまして、政府においてこれを割当てて決定するのか、その処置はどうなさつておりましようか。
  35. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 ただいまの御質問の計画造船の割当でございますが、一番初めに、なぜ計画造船をやるのかという御疑問があるだろうと思いますが、これは結局、今船主が船をつくりますのに、全部自分の金でつくつて行くという力は全然ございません。従つてその五割なり七割――最近は七割ですが、財政資金を出してやる、こういうことで船をつくらせるわけです。ところが財政資金が非常にきゆうくつなものでございますから、それに対して船会社が殺到する、こういうことに相なりまして、自然その殺到した船会社の中からどれかを選ぶということをどこかがやらなければならない。それを運輸省が今までやつてつた。これはいろいろ事情もございますが、今まで私どもはこの割当に対してどんなに苦労して来たかという、これまでの方法をお聞き願えれば、御了解願えるんじやないかと思います。とにかく運輸省以外にやるべきところがない、それで運輸省がやつておる。それをやります場合に、船会社から、大体本年度は五千トン以上で、速力十三ノットなら、十三ノット以上の船をつくる、従つてこういう船の建造を希望するものは申し出て来いという要綱をつくりまして、船主に出します。船主はそれに対して運輸省に申し込む。その申し込んで来た者に対して、先ほど運輸大臣が申しましたように、造船合理化審議会で選考の基準というものをこしらえて、その選考の基準によつて、前年度までは運輸省がやつてつた。本年度からは開発銀行ができて、開発銀行でこの造船に対する融資をすることになりましたので、開発銀行は金融の面、運輸省は航路政策造船政策の面からそれぞれ検討して行く、両者突き合せて最終決定をする、こういうふうにやつておるのでございます。もしお時間がございますれば、少し今までの選考方法の経緯を御説明させていただければ、非常にけつこうかと思いますが、いかがでございましようか。
  36. 小林錡

    小林委員長 どうぞ……。
  37. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 私どもこの船主の選考につきましては、世間から疑惑の目をもつて見られておるということで、こういう計画造船を始めました最初から細心の注意を払つてつたのです。必ずこういう疑惑の目を向けて来るだろうということを私どもは十分に承知しておりました。そこで、船舶公団時分には、先ほど言いましたように船舶公団で大体七割程度の財政資金を持ち、あと三割は船主自分で集めるということでやつた。そしてそのときとりましたのが入札制であります。自己資金を少しでもたくさんつけた船主から選んで行くということで第四次までやつたのです。ところがだんだん入札でやつて行きますと、政府がせつかく七割の財政資金をつけてやつておるのに、船主が非常に競争します結果、それが五割になり、あるいはもつと下り、せつかく財政資金を厚くしてつぶれかかつておる日本海運を助けてやろうという政府の意図に反するような結果になつて来た。もう一つは、自己資金が百万円でも多ければ、たとえば名もない今出ておりますような日本海運のようなものが新造船をやつて日本郵船のようなものが落ちるというような不公平が出て来た。それで見返り資金を使うようになつた第五次から、海運業者、造船業者それから中立、私どもで約二十人くらいの委員をこしらえまして、その委員運輸省でつくりました詳細なデータを渡しまして、そうしてそのデータによつて希望船主に対し記名で採点をしたわけであります。それで一定点数以上のものには無条件でやる、一定点数以下のものは抽籤でやる。これに対しましては記名で採点をいたしましたが、私どもこれは正確にあまり言うことはできませんが、民間の方は船会社、造船会社みなひもつきがあるのです。従つて記名採点でありますが、必ずしも公平な結果が得られておらない。それから一定点数以下のものは抽籤できめるということが、非常に悪平等になるという批判があり、欠点があつた。これは第五次であつたわけです。しかし官民合同の審査ということも一つの方法じやないかというふうな気持でおつたわけです。ところが、六次になりまして、その六次は二回にわけてやりましたが、その最初のときは、これはいろいろのいきさつがありまして、銀行側が船主を選んだ。と申しますのは二十二、三万トンくらいつくる予定でありましたが、銀行側が財政資金五割ではあとの五割を出すことができない、七割まで財政資金を上げてもらいたい、こういうことでGHQに盛んに運動した。これは一万田総裁が先頭に立つて運動した。ところがGHQがどうしても七割まで財政資金を引上げることをがえんじなかつたというので、そこで市中銀行は、自分で今まで運動した建前上、どうしても予定のトン数以内に収めなければならないというので、大きな銀行筋が集まつて、二十二、三万トンでありましたかつくる予定のものを十五、六万トンに押えてしまつた。従つて銀行が融資するということを認めた船会社だけがつくるということになつた。そこで運輸省は銀行が船会社融資するものだけを見てやるということになつた。これに対しまして、銀行が船をつくるみたいだ、運輸省は何をしておるのかというような非難が非常に起つた。また銀行側からも、いろいろ得意先関係が輻湊しておるのに銀行が船主を選ぶ責任を負うのはまつぴらだ、もう今度限りにしてもらいたいというふうな意見が出たのであります。そこで六次の後期に参りまして、それでは前の官民合同の審査委員会を使おうかというときに、GHQから、民間側の上に立つて割当をしたり何かするようなことに参加する、そういう委員会を設けちやならぬ、こういう指令が出た。従つて、先ほどの審査委員会というものを使うことができない。そこで考えましたのが、アメリカあたりでもよくやつております聴聞会というやつであります。この聴聞会をやりますのも、直接船会社関係している者がやつたのでは先入観がある。そこで船会社と比較的関係の薄い官房長あるいは船員局の課長、船舶局の課長、それから私どもの方の課長でも比較的関係の薄い者がやる。こういうことで、各申込みの船会社を一応全部呼びまして、そうして各船会社のいろいろな事情を聞いた中で、共通の一つの基準を出し、その基準をもちまして――これはいつもやつておる方法ですが、一人がとか、あるいはごく少数の者が決定するということをしませんで、いつも大臣の前で両次官、関係の局長、関係の課長、それから事務を担当しておる補佐官、こういう者が全部集まりまして――これは六次の後期、七次の前期もそうですが、比較的関係の薄い者が聞いた事情、その基準、こういうものをいろいろ大臣の前で説明をいたしまして、そこでみんなが討議をしてきめる、大体こういうのが六次の後期と七次の前期でやつた方法でございます。それからさらに、それでも運輸省の者だけでやつているではないかという批判があつた。そこで造船合理化審議会というものがございまするので、そこで選考の基準をきめてもらつて、その選考の基準に当てはめて船会社を選ぶということを七次の後期までやつております。ところが八次になりましてなおそれでも選考基準に非常に幅がある。そこで私どもは、その船主を選ぶ民間側の選考委員というものを設けたらいいということを造船合理化審議会に提案したのです。ところがそのときは、いろいろ議事録も残つておりますが、これは運輸省がやつた方がいいという意見が大多数でした。これは、船のことを知つている人は船会社や造船会社のひもがついておる。知らない人は全然わからない。だからそんな選考委員会で選ぶよりも運輸省で選んだ方が、公正だ、こういう意見で、小委員会で、われわれの方が選考委員を置いてくださいということを提案しておるのに対して一ぺん否決をされたことがあります。しかし私どもは、こういうものを運輸省だけでやるのはいろいろ批判の余地がある。従つてぜひ置いてもらいたいということで、さらに押し返して選考委員を置いてもらつた。そのときはやはり詳細なデータをこしらえまして選考委員は石川一郎さんとか、村田省蔵さん、あるいは工藤昭四郎さんとか、あるいは当時の銀行協会の会長、こういう人たち、それから造船協会の会長、船主協会の会長、こういう人たちを選んでいただきました。その前に詳細なるデータをとつたのであります。私どもの方は大臣、次官、関係の局部課長全部出席してそこでいろいろ審査を進めた、こういうことであります。それで第九次からは開銀ができまして、先ほど言いましたように、運輸省は航路計画造船計画、それから市銀方面から聞いた各社の資産、信用、大体こういうものを中心にして、大臣の前で次官、関係の局長、課長全部集まつてつた。開銀は開銀の方でそれぞれやつて、それを両者が一緒に打合せる、こういうふうにいたしまして、私どもとしては、今まで私ども考え得る最良の方法を尽した、こういう考えを持つております。しかしこれに対しましてもいろいろの目で世間が見ておられるようでありますが、私としてはほんとうに批判の余地のない、いい方法があればどんな方法でもとりたいという気持を持つておる次第でございます。私どもがこれに対していかに戒心し、注意してその方法考えて来たかということを申し上げておきます。
  38. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいまの御説明を承りますと、だんだん変遷して来ているらしいのでありますが、そうすると、造船合理化審議会というものが最後の決定権を持つのですか。最後の決定権はどこで持つているのですか。現在第九次造船の場合どこで最後の決定権を持つているか。開銀と運輸省だけの合議できめるのか、どこできめるのか。
  39. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 造船合理化審議会は諮問機関でございまして、現在は選考基準をきめており、融資の決定は開銀がする。しかしその融資の決定と同時に、建造許可について、運輸省がしなければならぬ許可は運輸省がする。従つて融資の決定と建造許可が食い違いまして非常にへんなことが起りますと、両者が相談して結論を出す、こういうことになつております。
  40. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 現在刑事問題が起きておりますから私は聞くのでありますが、私どもが承つておりますと、石井運輸大臣はあまり御存じないことを高橋委員答弁しております。私どもは昨年ごろから国会の終りに、もうほとんど半公然と船会社の運動員がおつて、事務所を持つて料理屋に出入りして、そうして今の融資並びに許可をとる運動をしておつたということを聞いておるのであります。そこでさらに質問を進めて申し上げたい。先刻石井運輸大臣からも第六次船までさかのぼつて利子補給をした、こういう御答弁がございましたが、その理由はどこにあるのか、どういうわけで第六次船までさかのぼらなければならぬかということが一つと、それから第六次船という限界をいかなる理由できめたのか、この点を明確に御答弁願いたい。石井運輸大臣からお願いいたします。
  41. 石井光次郎

    石井国務大臣 海運局長が詳しく承知しておりますから、まず海運局長からお答え申し上げます。
  42. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 これは各年度につくりました船の関係でありますので、私から申し上げます。  外航船をつくりかけましたのは主として五次船からでございますが、五次船のときはまだ物価が上つておりませんで非常に安くできた。それから、そのときにつくりました船はやはり朝鮮ブームにあつておりまして、市中から借りた金をほとんど返しておるわけであります。ところが六次でつくりました船は相当船価が上つておる。それから朝鮮ブームの恩恵もほとんど受けていない。従つて市中から借りた金もあまり返していない。採算を比べますと六次以降非常に悪くなつている。この利子補給法案は議員提案でございますが、その前に私どもとしても、日本海運が国際競争に耐えて行くためにはどうしてもその利子補給を強化しなければならぬ。その利子補給を強化する目標をどこに置くかというと、少くとも金利だけは払えるようにしてやりたい。元金は市中銀行も、造船所その他いろいろな関係で貸したものだから貸した方にも罪がある。従つて元金の焦げつきは市中銀行にもがまんしてもらえるが、金利も払えぬというのでは困る。だから金利だけは払えるようなところまで持つて行きたいというのがこの利子補給のねらいであります。それがちようど五次船と六次船を考える場合に、五次船は先ほど申しましたように朝鮮ブームの恩恵を受けて市中銀行の借りも返している。六次船はその恩恵を受けておらない。船価も高いというので六次船以後をやることにしたのであります。
  43. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それは大体わかりました。さらに、これは私どもの承知しておる事実でございますが、船会社船主との間の契約の問題であります。大体七割までの融資をし、莫大な利子補給がされ、三割の損害補償がされるという状況に置かれておりますのにかかわらず、船会社造船関係者との間に水増しの価格の契約をいたしましてそれを運輸省に持つて参りまして許可を受け、開銀から融資をする、かように私どもは承つておるのです。言いかえますると、一割の割もどしをする、こういうきれいな言葉で言われておるのですが、私どもから考えまするならば、むしろ船会社造船関係者との間に虚偽の契約をつくつて、そうして運輸省へ申し込んで許可を受け、それによつて開銀から金を借り、そのうちの一割を割もどす。そうしますと七割の融資があり、三割の損害補填があり、その他ただいま御説明を受けました最近の利子補給だけでも、数百億になんなんとするような予算が組まれておる。従いまして運輸省といたしましては、慎重にお考えになり、先刻運輸大臣の御説明では、いろいろと疑惑を持たれておるので、相当慎重にやられておるという御答弁がございましたが、そういうぐあいに行われておる事実に対する調査大臣はなさつたかどうか。あるいはそういう点に疑惑を持たれて、何らかの適当な処置をしたかどうか。これは国民の血の出るような税金でありまするから、重大な問題だと思うのでありまするが、さような点についての御答弁を願いたい。と同時に、すでにその問題について刑事事件が具体的に起きております。この点について納得の行く御説明を願いたいと思います。
  44. 石井光次郎

    石井国務大臣 船会社造船業者の間に割もどしの話をされたということでありますが、私はこの利子補給問題に入つてそういうことをすることはいかぬということを言うておりまするし、また事実船の値段というものは、鋼材の利子をいろいろな点で下げてもらいましたために、平均いたしますと、一割か一割六分くらい下つておるのであります。私どもは、そういうふうな一割のリベートがあるなどということは、一向承知もいたしておりません。それをごまかして二重船価をこしらえておるということは、私どもは承知いたしておりません。
  45. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 なお運輸省といたしましては、船の材料を安く買い込ませようという配慮から、製鉄会社が銀行から借りておりまする利子補給あるいは補填をしてあげて、一トンについて一万円くらいの材料の値下げをやらしておる、かようなことを承つておりまするが、さような事実があるかどうか。あるとすれば、一方では利子補給がされ、あるいは損害補填がされ、さらに材料についてさような配慮をいたす必要がどういうところにあるか。なるほど戦争によつて打ちこわされました日本の船舶、それに対する復興を考え海運政策から考えまして、まことに政府態度としましては、私ども日本海運界の発達のためには、相当これを援助し、助長されることは必要だとは考えております。しかしながらその過程において、ただいまのような国民の納得の行かない不正な金が別の方面に使われておることになりますると、われわれとしましては、どうしても納得ができないのであります。その材料を一トンについて一万円くらいは値下げをさせる処置をしたというならば、むしろ利子補給をしたり損害補填をするその方法において、何らか援助は一本にしていただきたい。さような複雑な援助方法を講ずる必要はないと私ども思うのであります。さような点にいろいろな利権が伴うのだということをわれわれは考えまするが、さようにする理由はどこにあつたかを御説明願いたい。
  46. 石井光次郎

    石井国務大臣 造船の面から見ましてどこが日本の非常に苦しい点か、世界の造船界に比べて苦しいかという問題になりますと、鋼材が非常に高いということであります。特殊鋼材がいりますが、これはイギリスなどではほとんど普通の鉄と同じ値段でやれるそうでありますけれども日本の方はまだ技術が幼稚なせいでありまするか、造船用の特殊な規格に合うようにするには約一万円ほど高くついておるのでございます。これは世界並のところに持つて行くには、特殊な規格の鉄だけはトンにつき一万円はどうかして下げなければならぬ。そういたしますると、これは国内の造船問題だけではなく、船のプラトン輸出の面においても競争力が出て来るのではないか。そこで、世界の市況に比べまして、引渡しの期日が早いとか、あるいは日本の技術の優秀とかいうことはありまするけれども、なおだんだん造船の注文が少くなるのはそこらにがんがありましたので、これに対しまして、開銀、それから日銀の外貨貸出しですか、そういうものの利子を、金額にしますと七、八千万円くらいの見当の引下げができるだろうと思いますが、これによつて造船は本年約十万トンくらい外国の注文を受けることができるようになつたと思うのであります。これは造船の面の問題でありまして、利子補給の方は、船をつくり、同時にそれを運航し、競争して行く上において、その船会社の負担が、金利の面において、さつき申しますように非常に苦しいということに対して補給するものでありまして、一本にせずに造船の面と海運の面と両立させて行かなければならぬと考えております。
  47. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 大臣お尋ねしたいのです。もう至れり尽せりのあらゆる方面の援助をやつて参りましたが、それがしかも今回のような刑事事件が起きたりしたのでありますから、私ども大臣国民に対して相当責任を感じなければならぬと思います。ことに昨年の暮れなどは、政府に予算がないという理由で、官公労の諸君のベース・アップの問題につきましても、あるいは年末の越冬資金の問題につきましても、裁定が行われて政府が債務を負つているにかかわらず、これをけつ飛ばした。日本の勤労大衆から憲法に定められた権利を奪つて、しかも仲裁裁定の債務を政府が負つておりながらこれを支払わなかつた。さような重大な関係に置かれているにかかわらず、一方にでは船会社に対する至れり尽せりのただいま御説明のありましたような援助をしておる。しかもその援助の反面には不正な問題が摘発され、目下検察当局捜査の線上に浮び上つておる。かような状況に置かれておりますならば、先刻石井大臣の御説明のように、相当注意もし、いろいろやつておるというような御誠意もどうも私ども納得が行かないが、これに対して一体石井大臣はいかなる責任を負うか。私どもから申しますならば、国民に対してこれに対する責任を相当負つていただかなければならぬと思うのでありますが、その決意を承りたい。
  48. 石井光次郎

    石井国務大臣 私といたしましては、私どもの方の関係の職員の問題だけではなく、監督下にあります船会社にいろいろな問題が起つておることをまことに遺憾に存じます。同時に私といたしましては、そういうことが今後起らないように、ほんとう日本海運の健全な発達のために、それのみに邁進するような動きに、造船のこと海運のことにつきましても、私どもあらゆる努力を尽して行かなければならないと考えております。
  49. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 最後でございますが……。非常にりつぱな御態度でございまして、私ども敬服するのですが、しからば今後起きまする本件疑惑に対しましては、運輸省は積極的に検察陣に協力いたしまして、事実を事実としてこの問題の解決に御努力を賜わらんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  50. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ちよつと関連して……。先ほどから船主の選定について御説明がありましたが、造船会社の選定事情について御説明願いたいと思います。
  51. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 船主を選定いたします場合に、同時に船主の事情とあわせて造船所の事情を考える。造船所の事情といたしましては造船所の能力、そして現在持つております注文量、従つて幾らアイドルが出ておるか、こういうものを考えまして、もしその造船所に仕事が行かなければその造船所がまつたくつぶれて失業状態、あるいは下請の中小企業の非常に大きな赤字になる、そういうふうな面を特にやる。さらに造船所の技術だとか、あるいはそういう面もあわせて考える、主として造船所のアイドルの状態を根本に頭に置いて考えるわけでございます。
  52. 小林錡

    小林委員長 それでは午前はこの程度にとどめて、午後二時半から再開いたすことにいたします。     午後一時二十三分休憩      ――――◇―――――    午後二時五十二分開議
  53. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  検察行政に関する件中、造船関係汚職事件について質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから順次これを許します。猪俣浩三君。
  54. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 この造船疑獄に関しまする問題は、ただいま検察当同において調査中でありますので、私どもあまり具体的の質問にわたりまして捜査の妨害に相なりましてもいかがと存じますので、当委員会におきましてはあまり具体的な問題に触れないという方針をとつておるのであります。先ほど新聞記者諸君からも、どうも午前中の質問では何だかなまぬるいじやないかというお尋ねがありましたが、われわれの申合せはさように相なつております。但しさればと言うて、この事件をうやむやにするようなことは断じて許さぬことは、当委員会の一致した意見なんで、各党委員から熱烈なるそれが要望となつておるのでありますがゆえに、その前提の上に立ちまして、抽象的な議論になるかも存じませんが、私は一、二お尋ねしたいと思う。  まず第一に、検事総長及びここに警視総監もおいでになりまするが、一体この造船疑獄なるものに対しまして、世間の人は、どう考えておるかというところから、あなた方の責任が重大であることを御自覚くださいまして、徹底的にやつてもらいたい。今一月七日付の週刊朝日か出ておりますが、実にここに一般の大衆が言わんとする心持が現われております。それは「億万長者になる方法」こういう見出しであります。「無一文から確実に億万長者になれる方法がある。」それは何かと言えば、運輸省が公募しておるいわゆる外国航路の船に応募することだ。ここに応募して適格者とみなされるならば、一銭の金も出さずして相当の金が握れる仕掛になつておるということが詳細に書いてあります。長いから一々今読み上げませんが、どうぞ検事総長も警視総監も、これを一冊買つて読んでいただきたい。なるほどここに書いてあることはうそじやありません。昨年の七月国会を通過いたしましたるこの外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法なるものの内容はここに書いてある通りなんです。そこで本件の原因は結局この法律にあるのでありまして、この法律は国会でつくつた。国会の修正案が通過した。そこで私、政府並びに官庁の方々だけ責めるわけに参らぬ。捕えてみればわが子なりで、われわれの責任が重大であります。ですからあなた方を、あるいは運輸大臣だけをぼくらは責めておれぬと思う。政府の原案よりも驚くべく船主に有利な法案が実にあつという間にでき上つてしまつた。これは私は運輸大臣に質問したいと思うのでありますが、昨年のこの法案の審議ぶり、衆議院の運輸委員会における審議ぶりというものは実に奇怪しごくであります。ここに私は相当の政治的取引、黒い影が動いたであろうことは常識ある者がこれを判定しなければならぬ。これは天の声であります。輿論であります。どうかそこから検察庁は十二分なる目を光らしていただきたい。われわれ同僚といえども、わが民主政治完成のために、腐敗分子に対しましては徹底的な粛正をやらなければならぬと存じまするので、どうかその気魄をもつて検察庁は当つていただきたい。根源は実にそこにある。しかもこの内容は、先ほども委員各氏から申されましたから省略いたしますけれども、とにかく一年に一割以上の利益を上げなければ、この融資を受けたものに対しては返済しなくてもよろしい。しかも一割以上の利益があつたかどうかは、その会社自身の経理の報告に基いて決定するというようなことに相なつておる。これは何ということなんだ。まるでこれはただでくれてしまう。国民の血税をかような資本家どもにただでくれてしまうような法案であります。実に資本主義制度の、保守政党の悪弊が典型的にここに現われておる。これをつくことが最も資本主義の悪弊を除去する重大なる任務だと私は考えます。今の検察庁がそれだけの任務に耐えられるか、どうか。私は検事総長の決意を促さずにはおれぬのであります。これは前提でありますが、そこで検事総長にお願いいたしたいことは、国会議員がある船会社、あるいはある団体の利益になる法案を通すために、その人たちがあるいは饗応を受けるるいは政治資金をもらつたというならば、これは刑法の収賄罪になるのかならぬのか。抽象論でありますが、かようなことがありとするならば、検事総長はいかにこれを判定されますか、それを第一にお聞きいたします。
  55. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 ただいま問題になりました新聞に伝うるいわゆる造船疑獄事件でございますが、この事件捜査の端緒、また捜査の経過につきましては、おそらく法務省当局から御説明があつたことと存じます。この事件の具体的な内容あるいは今後の見通し等につきましては、御説のように捜査中でございますから、この点は申し上げかねるのであります。ただこの事件を処理するにあたつて検察当局はどういう心構えでおるか、決心でおるかというお尋ねでございまするが、これは他の事件についても同様でありまするが、検察当局は常に具体的な事件について公正に適切な処理をすることを旨としておるのでありまして、この造船疑獄事件につきましても、もし将来犯罪の嫌疑が濃厚でありますならば、どこまでも厳正公平にこの事件を追究し、また処置して行きたいと思つております。  さらに、公務員が職務に関して金品を受取る、あるいは饗応を受けた場合には、刑法上の犯罪になるかどうかという抽象的なお尋ねでありまするが、これはもちろん刑法上涜職罪が成立するものと考えております。
  56. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 昨年の運輸委員会におきまする外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の審議ぶりは、天下公知の事実である。そうして政府の原案よりも著しく船主に不当と思われるほど保護を厚くしておる。この間にいろいろの画策があつたことは、すでに運輸省官房長が検挙されたというようなことに一端を現わしておりますが、もし検事総長がただいまの答弁のごとく、いわゆる運輸委員という国会議員である公務員、これが船主協会あるいはその他の船に関する資本家たちの要請によつて、何らかの金品の授受あるいは饗応等によりまして、かような法案をつくつたことが犯罪であるとするならば、その嫌疑は実に濃厚だと思う。あなたは昨年のこの委員会の審議ぶりに徴し、その後の世評に対しまして、ここに一大疑獄が伏在しているという嫌疑をお持ちであるかどうか。これはもう幼稚園の生徒でもわかる。この審議ぶりを見ますならば、何者かが動いておることは明らかである、なお運輸省のある局長と、あるいは運輸委員その他の船舶議員連盟の委員の中に、血族関係のある者もあるというようなことからして、何事かこの間に行われたということは、十分に推察できるのであるが、これに対して検察庁は、もちろんまだあなたにその有罪無罪を言えというのではないが、嫌疑ありとしてこれを徹底的に調査する意思ありやいなや、それをお尋ねいたします。
  57. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 運輸省の官吏について犯罪の嫌疑濃厚な者については、すでに捜査を進め、すでに処分した事例もございまするが、ただいまお尋ねのように、運輸委員に対する関係につきましては、まだ内偵中でありまして、嫌疑の程度がどうかということは申し上げる段階になつてないのであります。
  58. 小林錡

    小林委員長 ちよつと猪俣君に御注意しますが、法務大臣は予算委員会におられたのを無理に来てもらいました。五、六分という約束ですから、法務大臣に対する質問をお願いいたします。
  59. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それでは法務大臣に、同じことでありますから、簡単にお尋ねいたします。  法務大臣はことに政党政治家であられるので、民の声というものを重視されると思います。私はある雑誌のちようちん持ちをするようではなはだ遺憾でありますけれども、この二月七日号の週刊朝日に「億万長者になる方法」ということで、この造船汚職事件真相が書いてある。私はここに今この内容を一々申し上げる時間がありませんが、これをぜひひとつお読みになつていただきたい。これは国民の直であり、われわれの憤懣おくあたわざるところであります。昨年できましたる船舶利子補給法並びに損失補償法、これらの法律が今回の造船疑獄の根本になつておるのでありますが、この法律内容というものは、まさにこの週刊朝日に書いてありまする通りであつて、一銭の金も支出せずして数億円の金もうけができる方法なつておる。これをよく検討していただきたい。そこで私は今検事総長に要望いたしましたが、昨年の運輸委員会における審議ぶりというものは、実に私ども驚くにたえたる方法ではないか。政府の原案よりも驚くべき船主に有利なる修正案が保守三党から提出されて、これがろくたま討議もされず二、三日で可決されてしまつた。その内容たるや驚くべきものがある。まさに週刊朝日が指摘している通り、ぬれ手にあわのつかみどりである。ここに私は多大の疑惑があり、国会を浄化せずんば、日本の民主政治というものが破壊せられることは申すまでもありません。近時はなはだ時代の風潮が逆コースをたどりまして、国会の醜聞が相次ぐとともに、右翼フアツシヨ団体の台頭が著しく、私はまた昔の軍閥官僚時代に返るのじやないかという心配が多大にあります。法務大臣は軍閥官僚時代のあの空気がどういうものであるかは体験せられたはずでありますが、この国会が国民の指弾の的に相なりまするならば、好むと好まざるとにかかわらず、民主政治が破壊せられることを思うと、私どもは実に深憂にたえない。相次ぐこの汚職事件、国会の腐敗事件、政党の腐敗堕落の事件、これを粛正せずんばわが国は滅びます。ちようど中共政権にとつてかわられる直前の蒋介石政権のごとき状態を呈して来ている。私はこれを粛正するのが、官庁にありましては法務省、国会内においては当法務委員会以外にないと考える。そこで私どもは昨日も各党の理事会を開きましたが、与党たると野党たるとを問わず、徹底的にこれを究明しようというのが、法務委員会の諸君の腹の底から出ている気持であります。そこで私どもは、具体的事実の内容にわたりましては、捜査陣の妨害になりまするがゆえにこれを慎んで、ただ検察当局の決意を促したいと存ずるのでありますが、事が国会の問題になりますと、これは政府検察庁におかれてもやつかいなことであつて、至難なことと存じまするが、これを断行せずんばとても日本の民主政治は完成いたしません。法務大臣も政党人であられるがゆえに、非常に御苦痛であろうと存じますけれども、この汚職の原因である立法当時のことにさかのぼりまして、ここに活躍せられた官僚と国会議員の醜類どもを一掃しなければこの本体の大掃除ができません。私はあなたの覚悟を実はお聞きしたい。そうしてもしあなたがその御決意がおありになるならば、当法務委員会は、与党野党一致してどこまでも法務省を支持いたしまして、政界の浄化をいたしたいかたい決意を持つておるのであります。今表面に現われましたる一官僚、一船会社、さようなものはこれは微々たるものであります。その根元にさかのぼつて大なたを振つてもらいたい。  そこできようお聞きいたしたい一点は、犬養大臣はいかなる圧迫があつてもこの真相国民の前に明らかになさる意思ありやいなや。もうすでに昨年の七月のこの法律が異常な法律であることは天下周知の事実であります。これにさかのぼつてその当時の委員会の動いた模様、これに関連する人たちに対しまして調査を断行する意思ありやいなや。今検事総長の答弁によれば、国会議員がその職に関しまして、こういう船会社に便利な法律をつくるために饗応を受けたり、あるいは金をもらつたりしたとするならば、これは収賄罪であると断定せられておる。しかもその嫌疑はすでに濃厚であります。別に客観的な材料が出なくても、昨年の委員会の運営の状態を見るならばそれはもう明白である。ですから相当嫌疑が濃厚な現状であると思います。この濃厚なる現状において、これに対して調査を進める意思ありやいなや、それをお尋ねいたします。
  60. 犬養健

    犬養国務大臣 猪俣さんのるるお述べになつたことつつしんで承りました。冒頭に右翼の台頭と政治に関するお話がございましたが、私はこの前の国会で参議院の予算委員会における質問に答えまして、相当長くこれについての見解を述べまして、当時新聞にも割合に長く記事に載つておりましたので、ここではあえて繰返しませんが、私の考えのほどを御推察願いたいと存じます。  今検事総長の申しましたように、表面に現われている点では一、二の官吏の汚職事件でありまして、すでにこれは検挙いたしておりますが、その他いろいろのうわさは聞いております。ただいま検事総長が申しましたようにこれは内偵中でありまして、捜査中のことで、ここに明らかに考えを申し上げる段階ではございませんけれども、少くも私は、これらの検察陣の決意に対して不当な政治的圧迫を加える意思もなし、また今までにごうも圧迫を加えたことはございません。  さらに国務大臣の一人としましても、こういう問題が起きますそのよつて起る淵源というものに対しては、謙虚な気持で、日本の政治を長い目で見て、りつぱなものにするということをほんとうにここまで静かに考え直すときが来ておると思つております、こういう心持で本事件を扱いたいと思つておりますから御了承願いたいと思います。
  61. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 いま一点、これをもつて私の法務大臣に対する質問は、いろいろ御都合がございましようから一旦打切りますが、それは、先ほど警視総監から、本件に関しては自分たちはあまり関係しておらないというような御答弁があつたのであります。柱間伝うるところによれば、どうも検察庁と警視庁の意見が対立しておるのか、さつぱり強調的でない、こういう説を聞くのであります。御存じの通り検察庁は手足が非常に少いので、警察がこれに全面的に協力しないと、かかる大疑獄の徹底的検挙はむずかしいのじやないか。法務大臣は、ちようど法務大臣であるとともに警察の主任の大臣でもあられるので、この事件に対しまする捜査について、警察と検察庁を一体いかに協力させるのであるか、その御方針を承りたいと思います。
  62. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。これはもちろん仰せのように、検察、警察というものは犯罪捜査に一心同体となつて心持の上でも相融和してやつて行かなければとうていうまく行くものではございません。どういう事情でそういうお話がありましたか、私予算委員会に出席しまして、後刻さつそくその点について忌憚のない意見を警視総監からも伺いたいと思います。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私の法務大臣に対する、質問はこれで打切りまして、佐藤検事総長にいま一点お尋ねいたします。先ほどの委員諸君の質問に対し運輸大臣もこれを肯定せられておりましたが、船主がその規格に合格して割当をもらうと造船会社に注文をする、そうしてその価格の一割に当るものをリベートとしてもらい受けるという慣習があるということをある程度肯定せられておるのでありますが、一体国の費用によりましてこういう補助を受けてやつております場合におきまして、かような水増しの諸資金額を提出し、注文主にひそかに割もどしをするというようなことは私は犯罪行為であると考える。こういう点がもし事実であるとするならば、よろしく検察庁は摘発しなければならぬと思いますが、検事総長はかような悪習に対しましていかなる判定を下されておるか、お尋ねいたします。
  64. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 お尋ねのように、船会社造船所に船を注文いたしまして、その価格の一部分を贈与を受けるというような事例があるといたしますれば、それがどういう犯罪を構成するかという点につきましては、とくと研究しなければはつきりしたことは申し上げかねるのでありますが、もしそういう事実があるとすれば、それは何らかの犯罪を構成するのではないかという考えを持つております。  なおこの際猪俣委員につけ加えて申し上げたいのでありますが、先ほど法務大臣に対して造船関係事件捜査に当つて検察当局と警視庁との間に何らか意見の違いがあるのではないかというような御質問のように承つたのでありますが、さような事実はまつたくないのであります。従来東京地方検察庁と警視庁との関係はしごく円満に協調的な態度をもつて捜査に当つておるのでありまして、この点は他の地方と比較しましても模範的によく行つておるものと私は聞いております。この事件についてなぜ警視庁の方で捜査の初めに関与しなかつたのかと申し上げますと、東京地方検察庁に詐欺の告訴事件がありました。その告訴事件を調べている間に被害者の立場に立つ者が会社の金を任務にそむいて使つたといういわゆる特別背任、商法違反の問題が発生して来たのでありまして、最初から東京地方検察庁でいわゆる直告事件として自分の手で捜査を進めておつたのであります。その関係でこの事件捜査には警視庁の協力を得ないで済んだのでありまするが、今後事件の発展のぐあいでは、とうてい検察当局だけの手では処理しかれるような場合ができますれば、もちろん警視庁の応援を求めなければならぬと考えております。
  65. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今の説明によりまして一応了解をいたしましたけれども検察庁が警視庁に連絡せずして本件の検挙に当つたその原因は、警視庁にある程度の信用を置けない状態があつたというふうに私どもは聞かされたのであります。さようなことがなければ幸いでありますが、あとまたこれは警視総監に御質問いたしますけれども、この森脇将光なる者の述べたことから申しますと、警視庁の内部におきまして相当疑問がある。私はその意味において検察庁が単独の見解のもとに事を進められたというふうにも考えられるのでありますが、今の御説明でさようじやないという御答弁であるのでありまして、これはまた警視総監お尋ねしなければならぬと存じます。  そこでなおせつかく検事総長がおいでになつておりますので、法律上の見解につきましてお尋ねしたいのでありますが、それは例の保全経済会等に政界の名士が顧問なる名前によつて活動せられておる。今この中心人物である伊藤何がしは詐欺の疑いで検挙せられておりますが、相当名前の売れておる人たちが顧問と称して名を連ね、またそういう会合にちやんとあいさつをしておるという場合におきまして、しかもそのやり方はもうほんとうにまじめに考えればインチキであることはすぐわかる。保全経済会なんというのは本法務委員会で先般調べたのですが、われわれみたいに経済にまつたく無知な人間でもインチキであることはすぐわかる。三月ごとに解約をして元利金をそのまま返すなんということはあり得べからざることです。かようなことがまつたく民心に投じまして、四十億、六十億の金が集まつた、ところがこれをインチキと考えずして、つられた原因の中には、こういう政界の名士が顧問と称して関係しているがゆえに、かように単純にそのインチキ性を見破られる運営のやり方に対しましてそれを黙認し、貸すに名前をもつてし、集会にも列席してあいさつするがごときことは、もし伊藤が詐欺であるならば、詐欺の共犯あるいは幇助であると私は考えるのでありますが、検事総長はいかにこれをお考えになりますか。
  66. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 ただいまお尋ねのようにある人が詐欺の嫌疑を受けておる事件がありまして、その事件の運営についてさらに他の者が顧問の名前をもつてその事業に関与しておるというようなことがありましたならば、その顧問がその詐欺事件についてあるいは幇説のように詐欺の共犯あるいは幇助というような嫌疑が一応生ずるのであります。しかしながら御承知のように詐欺の嫌疑ということはなかなか証拠の収集上困難なのでありまして、捜査を進めなければ的確に詐欺嫌疑、共犯の嫌疑ありということができるかどうか断じがたいのでありますが、一応嫌疑はかかると思います。
  67. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 しからばこの顧問なる名前を出した連中に対して一応の嫌疑があるという御見解でありますが、それならばこれに対して捜査を進められておるかどうか。結局この問題に対しまして検察庁はいわゆるその人たち責任に対してある程度の捜査をし、責任があるならばこれを追究する御意思があるかどうかあらためてお尋ねいたします。
  68. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 ただいま申し上げましたように、顧問の名義だけで詐欺の嫌疑がかかるかどうかということは相当捜査を進めなければわからないのでありまして、お尋ねのような伊藤某の詐欺事件につきましては、その被疑者自身に対する取調べがまだ捜査に入つたばかりでありまして、さらにその事業の顧問たる役目の人に対しましては、まだ内偵も進めておりません。従つてその顧問に対して詐欺の共犯あるいは幇助の嫌疑がかかるかどうか今のところまつたくわかりません。
  69. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 申すまでもなく保全経済会なんというのは実に幾多の悲劇を各地方に起しておりまして、自殺した者もあれば離縁した者もある、実にさんたんたる状況を呈しておる。そういうことに対しまする一半の責任が私はその顧問と称してちようちんを持つていた人たちにあると存じます。ただこれが政治家であるとするとなかなか困難な問題が発生し、検察庁で遅疑逡巡される傾向があるじやないかと思いますけれども、どうか先ほど申し上げましたように、日本の民主政治完成という重大任務を自覚せられまして、いやしくも嫌疑のあるものに対しては徹底的に捜査していただきたい。これは実に毎夜々々泣いておりまする一般の被害者の念願であります。この被害者の声をどうぞ心にとめていただきまして、こういう人たちに対しましては断固たる態度をとつていただきたいことを強く要望いたします。  なお委員長、私は続けて警視総監お尋ねしたいのですが。
  70. 小林錡

    小林委員長 出て来ておられますから簡単に続けてください。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 警視総監お尋ねいたします。これも巷間伝うるところでありまするがゆえに、真偽のほどはわかりませんし、おそらくさようなことはないと存じまするが、警視庁の内部には二つの意見があつて、この造船疑獄のごときもの、あるいは保全経済会のごときものを徹底的に追究すべしという議論と、それをもみ消さんとする一派の勢力が動いているというように聞いているのでありますが、なお造船疑獄につきましては、先ほど申しましたように、どうも警視庁では、検察庁から協力を求められないのか知りませんが、さつきあなたが答弁したように、こういう大疑獄に対してあまり手をつけておらぬ。何かここに私どもは割切れないものがある。そこであなたにお尋ねいたしますが、この森脇何がしを中心といたします本件造船疑獄の端緒になりました事件につきましては、警視庁で相当関係がおありでありますか。中にはどうも疑惑を持たれるような一、二の警察官もあるやに新聞は伝えておるのでありますが、しかしさようなことがあろうがなかろうが、警視総監としては、この保全経済会の問題なり造船疑獄の問題なりを、検事と協力して徹底的におやりになる意思ありやいなや。なおこれも巷間の言うところでありますが、どうも警視総監は近ごろ非常に政治的に出ていられて、将来東京都長官になるなどという含みがあつて、あまり政府的な疑獄には手心をするのじやないかと心配する、これはばかものだと思いますが、(笑声)そういう者もあるのでありますので、私は警視総監が当委員会において断固たる決意を表明せられんことを希望して質問するのであります。あなたの御覚悟を承りたいと存じます。
  72. 田中榮一

    田中参考人 先ほどの法務大臣への御質問の中にございました、警視庁内にいわゆる造船疑獄に何か関係した警察官があるのではないかというような意味の御質問のように聞いたのでありまするが、これは実は私自身も新聞で初めてそういつたような記事を見まして、非常に驚いて内部的に事情を調査せよということを命令してございます。これはいずれ内部的に調査いたしますので、判明することと考えておりますが、ただ聞くところによりますと、当時森脇某の詐欺事件捜査いたしました捜査官の措置について、森脇氏個人が非常に遺恨を抱いておる、かような関係から、先般森脇氏が新聞紙に発表しました手記の中にも、何かそういつたことを暗示したようなことも書いておるのでありまして、かような点で、私どもとしましては違法行為があろうとは考えておりませんが、あるいは当時捜査した警察官の措置について不適当な措置があつたのではないかと、かような点につきまして内々今内部的な調査を進めておりまするので、やがてこれは判明することと考えております。ただ警察官に何か汚職のような問題があるのじやないかというような問題は、私はないと考ええております。  それから造船疑獄というこのような大きな問題で、警視庁が全然無関係であることはおかしいじやないかというのはごもつともな御質問でありますが、この問題は先ほど検事総長から御説明がありましたごとくに、たまたまある詐欺事件検察庁の方へ直接告訴が出まして、その告訴事件捜査している間にこうした大きな問題が発生いたしたのでございます。かようなことは従来もしばしばあるのでございまして、直接検察庁に告訴されました事件は、当然告訴事件として検察庁御自身がこれを処理しなければならない建前なつておりまするので、従来も警視庁ではなくて直接検察庁の方へ告訴事件が多数提出されておりまして、これは検察庁自体として御処理なされておることが多数あるのでございます。われわれももちろんこうした汚職事件はまことに遺憾にたえないと考えておりますので、検察庁側からもし御協力の要請がありまするならば、当然これは最善の努力をして御協力申し上げねばならないと考えております。従いまして、現在東京地検と警視庁の間に何かみぞがあるのではないかというようなお話でありまするが、絶対にさようなことはございません。今日まで非常によく緊密なる連絡をとり、相協調して、いろいろと事件の解決に当つてつた次第でございます。  それから、この問題及び現在社会的に大きな問題になつておりまする保全経済会の処理につきまして、庁内に二つの意見がある、一つはやるべしという意見と、一つはやらない方がよかろうという意見が二つあるというお話でありまするが、これは絶対にさようなことはございません。ことに保全経済会の問題につきましては、私自身昭和二十七年の三、四月ごろ、保全経済会きわめてはなやかなりしころから、いろいろな伊藤理事長のやつておりまする虚偽もしくは誇大の宣伝広告等から察しまして、またその利殖機関としまして毎月当時五分程度の配当をやつておりましたが、そういう点からいたしまして、私自身もそれぞれ専門的な金融家あるいは経済方面に非常に詳しい方々にいろいろ意見を聞きまして、いかにうまく内容をからくりをやつて経営いたしましても、月五分の配当をやる利殖機関というものはとうてい永続するものではないという意見も聞きまして、常識的に考えて、かような利殖機関が永続さるべきものでもないと考えまして、昭和二十七年の三月ごろ、すでに刑事部長にこの保全経済会合を内偵しろという命令を出しました。その後捜査官が非常な苦心さんたんの結果、あらゆる資料を集め、また経営の内容等も視察内偵をいたしておつたのでありまするが、先ほど検事総長のお話のごとくに、かかる利殖機関というものは、それが運営されている間は、ちようど自転車のようなものでありまして、とにかく一応言いのがれのできるような経営状態でございますし、また一般の出資者からも何ら告訴告発のようなものもございませんし、警視庁側としましては、非常に苦心さんたんの結果、この二年間というもの視察内偵で努力して参つたのでありまするが、たまたま昨年の秋休業の宣告をいたしまして以来、警視庁といたしましては、かかるときにこそ鋭くメスを入れたいという考えから、いろいろ検察庁側とも協議を申し上げておつたのでありまするが、ただ何分にも全国的にまたがる問題でもございまするし、その及ぼす影響も非常に甚大でありまするので、きわめて慎重なる態度をもつて今日までいろいろ事前捜査をいたしまして、今回最高検の指揮により、伊藤斗福以下幹部を逮捕いたしますと同時に、全国的に営業所、支所等を一斉家宅捜査をいたしまして、証拠物件を全部押収いたしまして、今後証拠隠滅のおそれなきようにいたしまして、この事件を徹底的に究明いたしたい、かような決意をもつて現在進んでおる次第でございます。従いまして今お話のように、本件を政治的に取扱うとか、さような意図は毛頭ございません。あくまで司法警察職員としてその任務を忠実に遂行いたしたい、かように考えて現在捜査に最善の努力をいたしているような次第でございますので、この点御了解を願いたいと思います。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 最後に今検事総長並びに警視総監の決意のほどを伺いまして、はなはだ安心いたしました。ことに検事総長は官僚の非常にいい点をたくさんお持ちになつていられる方でありまして、これは定評のある方であります。政党出身の大臣は非常に困難な立場にしばしば陥るのでありますが、これをしやんと立て直してやるのはやはり検事総長の立場じやないかと存じます。今後この造船疑獄にしろあるいは保全経済会の問題にしろ相田困難な政治的な圧力と直面する事態が起つて来るのではないかと私ども予感いたしますが、どうぞ佐藤総長におきましては、敢然としてそれを突破、日本の政界浄化のため、御貢献くださることを切にお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  74. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 警視総監お尋ねしたいのですが、警視総監造船の疑獄に対してはあまり知らないとおつしやつていますが、先刻検事総長がおつしやられましたように、この疑獄事件はかりて警視庁で森脇が調べるれて、その調べられたあとの始末が問題になりまして、それが森脇の告訴になつたわけでありますが、その告訴が進展いたしまして、本件の問題になつております疑獄になつたわけであります。そこで森脇が公文書不実記載の嫌疑を受けて昨年の七月二十八日に検挙されまして、ここにどういう取調べを受け、どういう結末になつたかを警視総監はもちろん御存じと思います。この問題を知つておらなければならぬというのは、森脇の手記の中に、森脇が十九日間検挙されております間に、森脇会社であります江戸橋商事、これは高利貸の会社でありますが、その会社の代表責任者取締役は志賀米平という今検挙されて起訴されておりますのが一人と、別に茂木忠雄というのが一人、それからこの森脇の三人が共同代表権を持つておる会社であります。これは三人を警視庁の第二捜査課の永里という警部補が調べて、どういう権限が森脇にあるかということは明白になつているはずであります。森脇を処罰するかしないかという捜査をした。しかるに森脇がひつぱられています間に、森脇の債務者でありまする造船疑獄の中心になつて活躍をしていました猪股功という特殊産業株式会社社長、これが森脇に一億数千万円の借金がございまして、一億余の株券を担保に入れている。その担保に入れました株券を森脇がひつぱられています間に、債務者の猪股功社長という名義になつています志賀米平との間に陰謀いたしまして、二人の間に和解書をつくつて、一切の債権を棒引きにする、但し猪股功は五百万円だけを江戸橋商事に渡すという示談書をつくりまして、これが警視総監の手元に写しが出ているということを言つていますが、さような事実があつたかどうか。それから森脇が出て参りまして、そして嫌疑になつておりました事件以外の、ただいまの証拠物件以外の株券その他の森脇個人の当時嫌疑を受けました事件関係のない有価証券などが、相当の価格、一億数千万円のものが警視庁に捜査されて押収されていたのでありますが、その主任であります。永用という警部補が、これを森脇が反対をいたしまして返しては困りますと言うのにかかわらず、あえて社長という名義を志賀米平が持つているからそれに渡すのだ、こうしてこれを拒否するにかかわらず、これを渡してしまつたというのが一つ。第二は、さように一方におきましては係主にの永里という警部補が、実権者である森脇が返しては困るというのに数千万円の物件を返しているにかかわらず、今度はそのあと森脇自身の何ら事件関係のないみずからの株券その他倉庫証券、その倉庫証券を下げてもらつてそうしてそれによつて家族の生活をしなければならぬからという嘆願をいたしたにかかわらず、これを渡さなかつたのみならず、それを写さしてくれないか、――と申しますのは一切の財産をさようにして有価証券を奪われてあとに残つた会社の社員に森脇が月給を払えない、金がない。自分が十九日間ひつぱられている間に一切の会社の財産は社長名義のこの志賀という男にごまかされてしまつて金がない。せめて警視庁に押収されておりますみずからの株券と倉庫証券があれば何とか金策ができる。社員の月給も払える。だからもう事件は一切片づいてしまつているのだからそれを返してもらいたい、しかも事件関係のないものだから返してもらいたいと言うたけれども、永里警部補はこれを返さなかつたという事実があるように私ども森脇の手記で承知しているのですが、永里警部補は一切これは警視総監の指揮に上つて自分はやつているんだ、こういうことを言うて森脇に拒否したということが森脇の手記にございますが、さような事実を警視総監は御存じであつたかどうか。この点承りたい。
  75. 田中榮一

    田中参考人 本件昭和二十七年八、九月ごろの事件かと考えておりますが、御承知のように警視庁に毎日多数の告訴事件その他取扱い事件がございまして、一々こうした事件につきまして総監の指揮を受けることはいたしません。大体におきしましてこの程度の事件はあるいは捜査二課長もしくは刑事部長のところにおいて適当に指揮をすることでございます。ただこの問題につきましては、私も当時森脇という者が逮捕せられて、取調べを受けているということは大体内々は知つてつたのでありますが、事件内容がどういうものであるかという詳しい具体的な事件につきましては私は全然関知しておりませんでした。従いまして今お話の和解書とか何とかいうものが警視総監の手元に写しが出ているというお話でございますが、私自身はそういうものを見たこともございませんし、また受取つた覚えもございません。多分それは下の捜査課の手元の方に出されて処置されたものかと思います。それからそのほかお話の押収されておつた有価証券を他の志賀という社長に渡したという点、そのほかいろいろな証拠物件を他の者に渡してしまつたということも、これも森脇氏の手記により私も読みましたし、またそういつたことも最近他からそういう御注意がありましたので、かかる点につきまして先ほどお話申し上げましたごとくに内部的に事実を十分にひとつ調査いたしたい、かように考えて目下調査中でございますので、その点あしからず御了承願いたいと思います。
  76. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま調査中であるということでありますが、それならばひとつ御注文を申し上げたいのは、実は造船疑獄の基本となりました検察庁で出されました森脇の告訴状の控えを私持つておるのであります。それによりますと、単なる森脇の手記だけではなくて、それを織り込んだ告訴状になつておるわけであります。そうして永里という警部補は一昨日か一昨々日の新聞に、自分はそんなことは知らないというようなことを言われたのが出ておりますけれども、この点は厳重に事実は事実としてお調べを願いたい。これは猪俣委員からも御質問があつたようですが、警視庁が三つにわかれておるのだというようなうわさは、こういう点に原因があるのではないかと私承知するのであります。森脇自身の言つております手記をそのまま私ども信用いたしませんけれども、かようなことが事実あつたといたしますならば、相当問題になると思うのであります。なお森脇は、最初からこれは政治的に計画をされて、自分の犯罪にならないことが前提にわかつておりながら、みずからを理由をつけて捜査させ、逮捕させて、その間に一億数千の金を巻き上げてしまつた、こういうようなことを考えておられるようでありますが、かような考えも、ある点からは、一応納得の行くような筋書でありますので、この点を十分御調査を願つて、その当時の実情をこの法務委員会お答えを願いたいと思います。さように要望を申し上げておきます。  あと検事総長でございます。実は検事総長今の問題でございますが、森脇の告訴状――三つばかりございますが、相当政党の幹部の方に対する被疑事件、告訴事件があるようでございますが、さような方たちをお調べになつた事実があつたかどうか。それからなおただいま猪俣委員からもお話がございました保全会の問題でもございまするが、伊藤理事長が出資者から出資という名目で金を出させて、その金を莫大な額を政党献金をし、政党献金をいたしますあつせんをするということになりますと、そのあつせん者は――伊藤は背任罪であり、そのあつせん者は背任の幇助か、いずれにしても共犯になると私ども考えておりますが、さような点について検事総長の御意見を承りたい点が一つ。昨日平野君は宣誓をされた上で、相当政党人に金が行つておるだろう、そういうことを伊藤から直接聞いたというようなことを言つたと、けさの新聞に堂々と書いております。私ども平野君の言つたことに満幅の信用を持つわけではございませんが、さような関係がございました場合に、一体検事総長に断固として捜査をお願いすることができるかどうか。ただいま猪俣委員からも申し上げましたように、当法務委員会はたといいかなる政党のきず者が出ようとも、国会の信用のために、政党の国民に対する信頼を落さないために、徹底的に捜査をお願いすることに協力するという決議をしておるのでありますが、その点につきまして、まず第一に検事総長から、背任罪の犯罪が成立するあるいは共犯が成立するというあなたの御見解であるかどうか、さような考えで積極的に犯罪になるという御見解であるならば、すみやかに大々的に御捜査をしていただけるかどうか、この点を御答弁願いたい。
  77. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 保全経済会の理事長である伊藤某に対しましては、詐欺の嫌疑を持つて捜査を進めているのでございます。この詐欺事件捜査の途中において、お尋ねのような政界との関係が現われて来るかどうか、見通しは私どもにはまだわからないのであります。ただ新聞において、そういう関係があるのじやなかろうかということが想像されるだけであります。捜査の段階としてはまだそこまで進んでおりません。詐欺の本体の捜査を今進めている途中でございます。従つてもし政界との関係があつたといたしましても、その関係が職務に関するいわゆる涜職関係になるのか、あるいは詐欺事件そのものの共謀関係の嫌疑が出て来るか、あるいは選挙に際する政治献金として、公職選挙法違反の嫌疑が生れて来るか、この点は今のところまつたく予想ができないのであります。
  78. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 どうも私納得が行かないのですが、伊藤斗福は新聞にも書いておりますのみならず、国会の大蔵委員会に参りましても、政府の立法処置をしてもらえるということを言明しております。さらに当法務委員会であの問題を取上げてから後に、全国の預金者と申しますか、出資者大会の席上でも立法処置をしてもらえる、こういうようなことを公然とみずから発表されている。新聞に出たことは総長も御存知の通りであります。従つて昨日の平野君の行政監察特別委員会における証言とこれと総合して考えますならば、当然にここに犯罪の嫌疑ありという疑い捜査官としてはお持ちになければならぬと私は思うのであります。検事総長はそれでも、まだそういう疑いをお持ちにならぬのでしようか。その点を承りたい。
  79. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 保全経済会の事件につきましては、昨年の秋三箇月間の期限を限つて休業いたしまてしから、間もなく全国数箇所において詐欺あるいは背任等の告訴が出資者の方からございまして、その出資者からの告訴事件捜査は進めております。と同時に全国に組織を持つておりますので、全国的に内偵を進めておつたのでありますが、先般いよいよ犯罪の嫌疑が現われて参りましたので、本格的な捜査を進めておるであります。先ほど申し上げましたように、その詐欺被疑事件につきましては、詐欺の事実があるかどうかという点の証拠固めの段階に今ありますので、その会社の経理から政治献金の方に流れているかどうかというところまでは、まだ捜査が進んでおらないのであります。本日の新聞紙上に伝えるところによりますれば、いかにも保全経済会と政界と何らかのつながりがあるように見えますけれども捜査官としてまだ犯罪の捜査に着手する程度には至つておらないのであります。しかし内偵はいたしております。
  80. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 せつかく検事総長が御努力つておりまするので、これ以上私の方から申し上げますると、あるいはおじやまになるということになるかもしれませんので、遠慮はいたしまするけれども、要望だけはいたしたいと思うのであります。大体行政監察特別委員会でお調べになりました調書によりましても、相当莫大な金が政界に流れておるということになつておるようであります。それからなお私どもが承知しております面におきましても、その金が相当流れておるということを承知しております。なおこれはいずれ私個人といたしましても証拠を出せと言いますならば出したいと思つておりますけれども、相当有力な政党の幹部の方から、投資銀行法をつくつてもらえるという確証を伊藤がもらつておるという確証を現認した人間もありますので、この点特に私どもは御協力申し上げることを検事総長に申し上げます。ぜひこの問題は日本の政界浄化のためと議会制度信用維持のためにも徹底的に御捜査願いまして、検察庁に対する国民の信頼を一層高めていただきたい。要望申し上げます。
  81. 小林錡

    小林委員長 鍛冶良作君。
  82. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私もこれに関連して、まず検事総長に伺いたいのです。たいへん大きな経済上の波紋を来しましただけではなくて、今日となつては政界にとつて信用を失墜せしめることおびただしいと思うのであります。従つてああいうことがほんとうにあるならば徹底的にやつてもらいたい。もしないのにああいうことが流布されるとすれば、いたずらに国会の信用を失墜せしめるだけであつて、まことに遺憾千万だと思います。この意味において私はすみやかにこの点を捜査せられまして、世上明白にされんことをまずもつて前提としてお願いいたしておきます。  そこで私らはあの事件に対してこれはほうつておけぬ、やらなければならぬと考えましたのは、どうも先ほど検事総長も言われたように、ああいうやり方をして一体やつて行かれるかどうか、これは預けたものはきつとなくなるに違いない、こういうことがわかるとすれば、たいへんな弊害が起るが、何か犯罪が起らぬことはないだろう、こういうことはわれわれが第一に着眼したところです。その次に捨てておけないと思つたのは、法制化される、われわれは国会で十分保護をしてもらえる、心配するなということを豪語しておる。これはどうも聞き捨てならぬことだ。かようなことを世上に流布されることは国会の信用のためにもおもしろくないし、またかようなことを信じておるとすれば一日ほつておけば一日だけ――月に二、三千万円の人件費を食つているんですから、それだけ財産がなくなることはわかつている、これは一日も早くやらなければならぬというので、われわれとしても相当努力したつもりであります。そこでわれわれが調べた結果は、決してああいうものは匿名組合ではないのだ、匿名組合と称して預金をとつておるが、これはまつたく詐欺である、こういうことをわれわれは断定いたしまして、そうしてあなた方の方で早く着手せられることを待つてつたわけであります。  その次は、法制化するということはあり得ることではない、詐欺でとつたものを法制化してこれを正当化するような法律ができたら世の中はひつくり返る、さようなことはない、こういうことを流布してやるということはたいへんだから、この三点をあなた方に明白にしてもらおうと思つてわれわれは努力したつもりであります。幸いにしてここに着手せられたのでありますが、ただいま承りますと、詐欺の点は調べておるが法制化の点についてまだ調べておらぬ、また政治献金についてそこまで行つておらぬと言つておられるが、私はそこがふに落ちない。あれだけわれわれが明瞭にやつておるのに、よもや調べずにはおらないと思うのですが、まだ発表する段階ではないとおつしやるならどうか知りませんが、法制化するということはあり得べきことではない、これはだれに聞いたつてわかる。いわんやそれに対して法制化してやるということを約束して政治家に金をやつた、国会議員に金をやつたということになれば、これほど明白な涜職はないのですから、これは調べるも調べないもありません。そのために金が行つておるか行つておらないか調べればすぐわかると思いますが、その点はいかがです。
  83. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 保全経済会の詐欺嫌疑の事件につきましては、ただいま申し上げましたように、詐欺事件の本体を今捜査中でありまして、今の段階において保全経済会を合法化するための立法運動と申しますか、かような関係で政界とのつながりがあるだろうということが新聞紙上報ぜられておるのでありまするけれども捜査当局といたしましてはその方面の調査にはまだ着手しておりません。伊藤自身を逮捕したのもつい数日前でありまして、詐欺事件の本体の捜査が今進行中でありますので、この捜査の進展によりましては、たとえば経理の状態を明確にするというようになれば、自然もし政界とのつながりがあれば、資金の支出について追究して行かなければならぬ事態が生ずるのではないかというふうに考えられるのでありまするけれども、まだその点の捜査には着手いたしておりません。
  84. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は同様のことをひとつ警視総監にもお聞きしたい。警視庁でもお調べになつていると思う。われわれはあれだけここでやかましく言つた、一体法制化などということはあり得べきことではない、何を法制化しようというのか、それに対していろいろ手を打つておるということはどんな手を打つておるのでありましようか、こういうことをやかましく言つたが、あなた方の方では相当長い間調べておられるし、そしてまた金銭の出入りも調べておいでになることでありますから、このくらいのことは一目瞭然だ。法制化するために政治家に金をやる、立法府の議員に金をやつておるというのは明瞭なる涜職罪であるのですから、そんな捜査に対して手間はいらぬと思いますが、それらに対してお調べになつておらぬでありましようか、どうでしようか。まだ発表する段階でないというなら私はあえて言いませんが……。
  85. 田中榮一

    田中参考人 今回保全経済会の伊藤理事長を逮捕いたしました理由といたしましては、二つございます。  一つは、保全経済会なる名称のもとに、本店を東京に置き、全国に約二百箇所の支店、出張所等を設け、一般大衆から三箇月または六箇月間にて現金なら一万円以上で月二分の、株券なら百株単位に月一分五厘の配当金を支払う約束のもとに投資を募つたということ。それから実際においては新規投資者よりの投資金をもつて旧投資者に対する元本及び配当金の支払いに充当する等、いつ行き詰まりを来しこれらの支払いに窮するかもしれないような、きわめて不安定な営業方法をとつていたにかかわらず、これを取得いたしましてラジオまたはパンフレット等にて、当会は専門家の周到綿密なる調査、科学的な研究に基いて皆様から投資された巨大な資本を、株式及び不動産に投資し、安全確実有利に運営し、間違いなく現金ならば月二分、株券ならば月一分五厘の配当金、及び契約満期には元本を支払うというような、きわめて虚偽の宣伝を行いまして、一般大衆をして誤信せしめて、一般大衆に非常に大きな迷惑をかけた、いわゆるたこ配当と虚偽誇大の宣伝ということが詐欺事実に該当する。かような点と、それからいま一つは、このさきに伊藤理事長が、昭和三十六年十月二十五日、潜在希望期間五十日の渡米計画を立てたのでありまするが、その際にやみドルを収得いたしまして、これによるいわゆる外国為替管理の違反と、この二つの点を容疑事実としてこれを逮捕いたしたのであります。従いまして現在捜査の段階におきましては、右二つの事実につきまして専心捜査をいたしておりまして、捜査二課ほとんど全農がこれにかかつておるというような状況であります。何分にも全国的にわたつておる問題でございまするので、まず捜査の筋といたしましては、この被疑事実を一応固めまして、その上で出て来るべき――今お話の立法化について相当自信のあるようなことを言つておりまするし、またそれに関して相当な経費が出ているだろうという疑いは、われわれも十分持つております。従いましてこの点も、決してわれわれといたしましては等閑視をいたしておりません。ただ捜査の筋といたしましては、この容疑事実をまず固めまして、それとともに今お話のような点につきまして徹底的なる捜査をいたしまして、とにかくこうした事実がうやむやのうちにあることは非常に不明朗なことでもございまするので、できればなるべく早くこの捜査事実を固めました上で、右の点につきましても徹底的な捜査を進めてみたい。かような方針で、現在着々捜査を進めておるような次第でございますので、その点ひとつ御了解願いたいと思います。
  86. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなた方の仕事の内部ですから、われわれはこれから先、あれをやりなさい、これをやりなさいということは言わぬですけれども、もしも立法化のために政党なり議員に金をやつたということになりますれば、これは問題も何もない。出ておるという事実があればすぐやれることだ。これをやられぬということは、国会の名誉のために惜しんであまりある。一日も早くやつてもらいたい。私はきのうの行政監察委員会において、平野君の述べられた言をけさ新聞でつまびらかに読みましたが、いやしくも日本の一流の政治家ともあろうものが、あんなものを立法化するということを条件に金をとろうということは、私の常識から言うたらあり得べきことでないということを確信いたします。ことに平町君は、伊藤理事長から聞いたという。伊藤なる者の性格から考えて、あるいはああいうことを言うかもしれぬ、言わぬとも限りません。誇大なる広告をして民衆をだましてとにかく六十億からの金を集める腕を持つておる人間だから、何を言うかわからぬ。ああいうことを流布して――われわれはそんなことはある道理がないと思うけれども、一般大衆があの新聞記事を読んだときに、政党というものはこういうことをやつておるのか、こんな金をとつておるのかという印象を与える。これは政党の品位を失墜するだけならば、まだがまんもしましようが、日本国立法府の品位を失墜することおびただしいものだと思うのであります。このゆえにあなた方は、まだその段階に至らぬなどということは言わぬで、きようただちに、これは調べればすぐわかることでありますから、私はこのことをお願いしておきます。しこうしてあるならば、これは徹底してやつてもらわなければならぬが、そうでないのにああいうことを流布したとしたならば、私は流布した人の責任重大であるということを考えるのであります。ことに伊藤という者の性格を人以上に知つておる平野君が、伊藤から聞いたなどと言つて天下に報道せられるということは重大だと思いますので、この点は一日も早くあなたの方で調べてもらつて、それによつてわれわれはわれわれとしてなすべきことをなさねばならぬと考えます。  そこで私は承りたいのだが、議員が国会において述べることは、いわゆる憲法に保障された言論の自由はありまするが、きのうの平野君の証言は、証人として宣誓の上述べている。あそこで述べることは、国会議員ではありますけれども、国会議員としての地位において述べたのではなくて、国会における証人という地位で述べたものと考えるのでありますが、それでも国会議員という資格を持つておれば、議院で述べたことは憲法上保障せられたるものとして、外部に対して責任はないものとあなた方はお考えなつているかどうか、これは今後において重大なことでありますから、ここにひとつ法律上の御見解を承りたい。
  87. 佐藤藤佐

    佐藤説明員 国会議員の身分ある者が国会法に基いて証人として述べた場合には、国会議員としての言論自由の保障が与えられるかどうかという御質問のように承つたのでありますが、国会法に基いて証人として述べる以上は、証人としての責任があるものと私は解釈いたしております。
  88. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私もそう思うのです。国会議員であつても、宣誓してあそこで述べたものは、国会議員として、聞かれているのでない、証人として聞かれている。それが人の名誉を失墜するものであれば、これは私は名誉毀損で訴えられたら責任あるものと思う。いずれにいたしましても、平野君が無責任なことを言つて、国会議員の品位を傷つけたということであれば、それによつて処断される。また言うことがほんとうだとすれば、受取つた人を一日も早く処断してもらわなければならぬ。重大な岐路に立つておると考えますから、これはもうきよう帰つたらすぐこの点を調べてもらいたい。そうして明白にしてもらわぬと、これは一日遅れれば遅れるだけ国会の品位を傷つけること大なるものがありますから、この点を私は特に御両氏にお願いいたしておきます。警視庁でもこの通り調べたと――今まで調べているから、もうたいてい金の出し入ればわかつているだろうと思うが、この点はぜひとも一日も早く調べていただいて、次の機会にこの委員会へ御報告願い、それによつてわれわれとしてとるべき手段に出たければならぬと思いますから、この点を十分お願いして私の質問はきようは終ります。
  89. 木下郁

    ○木下委員 保全経済会の事件造船疑獄事件、これは根本的に粛正して、徹底してやつていただかなければならぬことは、すでに猪俣、古屋両君、鍛冶君からも、るる述べられました。これを徹底的にやらぬようなことでは、日本の再建も何もあつたものではない。耐乏生活なんか言つておりましても、そんなものは、これを日本の司法部がはつきもやり得ないような態度であつては何にもならぬということを、しみじみと感ずる次第であります。ただ今のお話、私平野君を弁護する意思は毛頭ありませんが、平野君がいろいろのことを昨日証人として言つております。それが平野君が偽証の責任あるやいなやは別問題であります。ただあれだけの経歴を持つ平野君、しかも保全経済会の顧問として保全経済会の伊藤が少し腹の中で怪しくなつて心配になつておつたころから立法というような問題で関係した人とは違います。端的に言えば、保全経済会創業のときからこれに関係した内輪の人である。その内輪の人があれだけのことを言うたのでありますから、今警視総監も大体疑いを持たれる相当の材料は上るというようなお答えがありましたが、これは国民全部の前に明らかにしなければならぬ。外国為替管理法の違反とかあるいは詐欺とかというようなことも、それはそれでお調べになることはけつこうです。だがそれで追究しつつある際に、あれだけの材料がもうすでに出ているのであります。その点をやはりしつかりと追究して糾明していただきたいということを特にお願いする次第であります。
  90. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこの程度にとどめ、明日午後一時から理事会、一時半から委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会