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1954-03-17 第19回国会 衆議院 文部委員会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十七日(水曜日)     午後三時十五分開議     —————————————  文部委員会  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 相川 勝六君 理事 竹尾  弌君    理事 長谷川 峻君 理事 町村 金五君    理事 野原  覺君 理事 松平 忠久君       伊藤 郷一君    岸田 正記君       熊谷 憲一君    坂田 道太君       始関 伊平君    原田  憲君       山中 貞則君    亘  四郎君       田中 久雄君    高津 正道君       辻原 弘市君    山崎 始男君       小林  進君    前田榮之助君  労働委員会  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 鈴木 正文君    理事 丹羽喬四郎君 理事 持永 義夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 井堀 繁雄君       倉石 忠雄君    黒澤 幸一君       島上善五郎君    大西 正道君       日野 吉夫君    中原 健次君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         文部事務官         (調査局長)  小林 行雄君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君         労働事務官         (労政局長)  中西  実君  委員外出席者         文部委員会専門         員       石井つとむ君         文部委員会専門         員      横田重左衛門君         労働委員会専門         員       浜口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  義務教育学校における教育政治的中立の確  保に関する法律案内閣提出第四〇号)  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四一号)     —————————————
  2. 辻寛一

    ○辻委員長 これより文部委員会労働委員会連合審査会を開会いたします。  義務教育学校における教育政治的中立確保に関する法律案及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 辻寛一

    ○辻委員長 通告順に質疑を許します。多賀谷真稔君。
  4. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は労働委員といたしまして、現在かかつておりますこの両案について、主として団結権あるいは他の労働組合との関連において、さらに若干の法律論についてお尋ねいたしたいと思うのでございます。  まず第一に、われわれしろうとがこの法案を読みます場合に、何か学校先生というものは、一足す二は三になり、まりはまるくて四角は四角だ、犬が西に向けばしつぽは東を向く、こういつたようなことしか教えられないのではないか、こういうような危惧を持つものであります。現在社会科学指導要領にいたしましても、現実直視態度とかあるいは社会を進展させる態度というような要項がございます。従来の専制時代の場合と異なりまして、現在はよらしむべし知らしむべからずの政治ではないと思います。民主政治というものはやはり高いレベルの意識を求めておる。この上に立つて初めて民主政治は確立されると思うのでありますが、こういつた民主政治の再出発を決意した日本におきまして、教育基本法の第一条がすでにそれをうたつており、第八条の一項はそれに基いて規定されていると思うのですが、一体政府はこの法案提出して愚民政策をとろうとしておるのではなかろうか。それに対してまず第一に文部大臣の御所見を承りたいと思います。
  5. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育基本法第八条一項によりましても、明らかにわが国の教育におきましては良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えることを基本として考えておる、この点は疑いをいれぬところであります。従つて政治あるいは思想の問題につきましても、十分これを批判判断する、さような教養を身につけさせるということはきわめて大切なことでありますが、ただ特定政党を支持したり、特定政党反対したりするような教育、その場合においてそういう教育があつてはならぬということは、八条の二項に規定しておるところであります。今回提出をいたしました法律案におきましても、その八条二項のわくの中で最もテイピカルな、典型的なものにつきましてそれを教唆扇動する行為を取締る、こういうことでありますから、従来の教育方針に何らの改訂を加えておるものでなくて、むしろ従来の教育方針のその精神確保するために必要なる法律案として提出したわけであります。
  6. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 教育基本法の第一条は申すまでもなく教育は人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならぬ、そのように書いておりますが、これはやはり正常な主義政策というものをある程度批判的に行わなければ、この目的を完遂することはできないと思うのであります。そこで必然的に政党を支持し、または反対するに至らしめるに足る、こういう問題、さらに制約事項といたしまして「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度をこえて」、ここに非常に問題があろうかと思うのですが、一体これはどういうように反対をするのか、これは恣意的に判断をされる可能性がある、かように考えるのですが、文部大臣はどういうようなお考えであるか、お答えを願いたいと思います。
  7. 大達茂雄

    大達国務大臣 もちろん政治上のゆたかな知識、あるいは批判力判断力を与える、これはきわめて重要なことであります。しかるにそれをまだ義務教育学校でありますから、いわば判断力のない小さい子供であります。その子供に一方的な主張だけを植えつけて、特定政党を支持せざるを得ないような教育をする、これは良識ある公民たるに必要なる政治的教養を破壊するものであります。批判の能力を失わせて、そして一方づける、こういうことでありますから、その意味において政治的教育を与える限度を越え、これは逸脱しとお読みになつてもいいのでありますが、むしろ逆に、その公民たる良識を破壊するような一方的な教育をすることはいけない、そういうことをさせないための立法であります。
  8. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは事実問題として、限度を的確に判断するということがきわめてむずかしいと考えるのであります。許容と禁止の限界がはなはだしく不明確でございます。ここに私はこの行為教唆扇動し、それに対して処罰するということは罪刑法定主義に違反しはしないか、この点に対する文部大臣の御所見を承りたいと思います。
  9. 大達茂雄

    大達国務大臣 罪刑法定主義法律規定のないものを犯罪とし、あるいはまた法律に準拠せずして刑罰を科してはいけない、罰は罰、刑は刑として法律によらざるべからずという趣旨であると思う。何らこれはその主義に違反するものでないことは明瞭であります。
  10. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 犯罪が構成する場合には、その犯罪を行わんとするものは違法論認識がかなり必要でございます。そこでこれはいまさら申すまでもないことでございますが、一七八九年のフランス宣言に発しておる、さらにその源はイギリスの大憲章に流れをくんでおるわけですが、近代刑法の歴史をながめてみますと、これを破つた国には二つの国がある、二つ政府がある、一つソビエト連邦であり、もう一つナチス刑法であります。すなわちソビエト刑法の第十六条は、「社会的に危険なる行為にして、本法に直接其の規定なきものに付ては、本法中性質当該行為に類似せる犯罪に付規定せる条項に準拠して、其の責任基礎及範囲を定む」こういつてきわめて濫用しやすい類推解釈規定を認めておる。さらにナチス刑法はやはり旧ドイツ刑法の二条を改正して次のように書いておるのであります。「法律上罰すべきものとして、規定せられたる行為、又は刑罰法規基礎観念及健全なる国民感想に依り処罰に値する行為は之を罰す。行為に直接適用すべき刑罰法規なき場合に於ては、当該行為基礎観念が之に最もよく適合する法規に依て之を罰す」こういうことを書いておるわけであります。私は今度の法案提出に際しましていろいろなことが言われており、また政府から出されました資料によつて事実無根なことが資料として流されておるということを聞いております。  そこで私は思い起すわけですが、一九三三年一月二十八日にシュライヘル内閣が崩壊いたしました。ヒトラーその他は連立政権をつくりました。その際に三月五日に総選挙が始まるということになりました。そこでヒトラーは何とかして共産党を弾圧して総選挙に臨もうとした。そこでオランダのならず者の元共産党員のフアン・デル・ルッペという人間を雇つて来て、国会議事堂に放火させておるのであります。従来ドイツでは国会議事堂に放火させても終身刑であつて死刑ではなかつた。この大逆罪に対しまして一九三三年内閣をとり、三月二十九日に遡及をして大逆罪死刑に採用し、この男を死刑に処しております。そうして総選挙に臨んで二百八十の議席をとつてかようなことをし、ワイマール共和国憲法を蹂躪した。私はこういう歴史的な陰謀の事実を見るときに、ここに政府が出しておりますところの資料の中には、高知山田高校の問題、岩手県の一関小学校、愛知県渥美郡神戸村田原小学校高知県の須崎高等学校、岐阜県の恵那郡内の小中学校、こういうところの報告が全然無根である、こういうことを聞いておる。しかも田原小学校のごときはこういう学校がない、こういうことを聞いておるのですが、一体こういうないような学校資料を出して、そうしてこういう法律をつくるというのはナチスのやつたのと同じだ、私はかように考える。これに対して罪刑法定主義をどういうように考えられておるか、お尋ねいたしたい。
  11. 大達茂雄

    大達国務大臣 なるほど今のナチス立法罪刑法定主義に反しておるようであります。この法律は何にも関係がない、何をもつてそれと同様なんと言われるか、明瞭におつしやつていただきたい。
  12. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は罪刑法定主義精神を蹂躪しておる。こういう点において同じである。しかも事実なき資料を持つて来て法案審議資料にしておるということは、これは政治的陰謀であると考える。これに対して文部大臣の御所見を承りたい。
  13. 大達茂雄

    大達国務大臣 あなたのお話罪刑法定主義お話であるか、事実にない資料を出したことについてのお話であるか明瞭でございません。罪刑法定主義についてただいま申し上げた通り、何をもつてこれが罪刑法定主義に反しておる立法であるか、私はあなたとは考えが違うのであります。  次に資料についてこれを事実無根なりとあなたは断定せられておりますが、何をもつてさような断定をされますか。
  14. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では田原小学校という学校がございますか。
  15. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは委員会においても申し上げました。ミスプリントであります。田原東部小学校というミスプリントであります。
  16. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 高知県の高等学校先生方文部大臣に会われたときに、資料が間違つておれば訂正するということは、間違つた資料があつたということを事実裏書きされておると思いますが、そういう事実はなかつたかどうか。
  17. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は裏書きは一向してない。もし私が事実無根であつたということを確認すれば、それは何どきでもそれを訂正するにやぶさかでないということを言つて、それを言つたからといつてなぜそのことが事実無根と是認したとおつしやるか。
  18. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この審議は十分時間のある文部委員会でやつていただきたい。  私はさらに次の法律論に入りたいと思いますが、まず第一にこの法律目的犯であると考えるのですが、では未必的な故意についてどういうような関係があるかお尋ねいたしたい。
  19. 大達茂雄

    大達国務大臣 目的故意とは違います。故意は単純なる犯罪事実に対する認識であります。ただ認識する以上にその故意特定目的をもつてする場合に、目的罪として成立するのであります。
  20. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣が直接答えられなくてもいいですが、大臣の答弁は的はずれでございます。実は普通一般故意でなくては、故意の中に未必的故意が入つておる。ですけれどもこれは目的犯であるから未必的故意が入らないというのが普通の解釈であります。でありますからこれに対してどういうようにお考えであるか、これをお尋ねしておるわけであります。
  21. 大達茂雄

    大達国務大臣 未必の故意という意味でありましたか、それは私、聞き違いでございました。目的犯だから多くの場合に未必の故意というものはこの場合にはない場合が多いと思います。しかしかりにその目的をもつていたしましても、未必の故意というものはあり得ると思う。しかしこれは刑法上の問題でありますから、それぞれその方面の専門の人の説明があろうと思いますが、多くの場合に未必の故意というものはこの場合には存在しないのが普通であると思います。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣でなくても政府委員でもけつこうですが、多くの場合とか何というのではない。これは非常に重大なる問題であります。犯罪になるかならぬかという問題であります。でございますから、これは事務当局でもけつこうですが、お答え願いたいと思います。従来一般犯罪未必の故意は入つておる。ところが目的犯というのは、未必の故意は入らぬというのが通説であります。でありますから、そういうように解してよいかどうか。私は興奮して言つておるのではないのでありますから、ひとつ冷静にお答えを願いたい。
  23. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいま申し上げましたように、未必の故意目的犯の場合には通常存在しない、あなたがおつしやつたと同じことを申し上げる。
  24. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私がお問いした通り確認してよろしいですか。——では次にお尋ねいたしたいと思いますのは、教唆とは何であるか、教唆扇動との区別教唆実行行為決意を必要とするかどうか。この点をお尋ねいたしたい。
  25. 緒方信一

    緒方政府委員 決意を生じたことは必要といたしません。教唆一定行為実行の決定を生ぜしめるに足りる行為でございまして、現実決意を生じたことは必要としないと解釈をいたしております。
  26. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その点はきわめて問題があると思うのです。それは行為は着手しなくても、教唆犯従属犯ではなく、独立犯ですから、これはわかる。ところが、独立犯としてこの実行決意を生ずる場合——生じなければ、私はこれは独立犯としての教唆犯実行の着手はないと考えるわけです。ですからこれについてどういうようなお考えであるかお尋ねをいたしたい。
  27. 緒方信一

    緒方政府委員 ここに申します教唆は、その意思表示相手方に到達することは必要でございます。それだけでもつて十分でございまして、相手方決意を生ずるということは必要でないというふうに解釈いたしております。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは文部省だけでなく、政府としての全般的な考え方でしようか。
  29. 緒方信一

    緒方政府委員 さようでございます。
  30. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、扇動教唆との区別をどこに求められておるかお尋ねいたしたい。
  31. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま申しましたように、一定行為実行決意を生せしめるに足りる行為でございまして、通常特定少数人に対して行われる場合でございます。扇動は、一定行為実行決意を生じさせ、またすでに生じております決意を助長するような勢いのある刺激を与えることと解釈いたしております。そういたしまして、通常特定または多数の人に対して行われる、かような場合を指しております。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 扇動の場合は不特定多数、こういうことですが、私はむしろ、実行決意をなしたかどうか、その必要があるかどうかというところに、教唆扇動というものが区別されるべき類型があるのではないかと考えるわけでありまして、これは刑法従属犯が本人の実行を必要としない、そうすると、決意を必要としないということは、これは日本刑法上飛び離れた議論であろうと思うのです。これは私だけの考えでなくて、学者がみな言つておるのですが、これに対して十分な研究をされてそういうようにお話になつておるのか、お尋ねをいたしたい。
  33. 大達茂雄

    大達国務大臣 この点は法務省との間にも事務当局の間で打合せが済んでおりますし、その他教唆扇動独立罪として規定した場合においては、従来とてもその解釈政府としては参つておるのであります。従属犯としての教唆は、なるほど正犯が未遂であつても成立しない場合には、従属犯というものは生じない。従つて教唆に基いて決意を生ぜしめたという事実がなければ、その場合従属犯についての教唆というものは成立しないはずです。しかしこの場合は教唆それ自身をもつて独立罪規定しておるのでありますから、その教唆の内容を持つた意思表示相手方に到達すれば、相手方決意を生ずるかどうかそれはかまわない。それで犯罪としては成立する。かように考えておるのであります。従属犯としての教唆の場合と独立罪として教唆規定した場合、そこにそれだけの違いがあると考えておるのであります。
  34. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 もちろん私も従属犯独立犯との教唆は違うと思うのです。それは当然ですが、実行決意ということまで不必要とするという観念は、どうも納得できません。これは非常にこまかい問題ですけれども、事実問題としてはかなり大きい問題であろうと思うのです。きようは時間がないので、別の機会にぜひひとつ徹底的に検討してみたいと思います。  次に具体的な事例お尋ねいたしたいと思います。それはこの前公述を私が聞いておりましたところ、何か今度の教育政治的中立確保に関する法律案は、日教組対象にしていないのではないかというようなお話がありましたが、私はどうしても日教組をどちらからも対象として考えておると思うのであります。そこでお尋ねいたしたいのですが、ある人が日教組という団体を通じて今規定をされているような教唆扇動行つた、こういう場合におきまして、日教組自体は事実問題としてかからないかどうかお尋ねいたしたいと思います。
  35. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは具体的な事例について判断するほかはないと思いますが、しかし抽象的に言えば、日教組は何らそれについて関知するところなく、何人かが日教組というものを利用して、さような教唆扇動をした、こういう場合には日教組関係者には関係ないと思います。ことに日教組のそれに関係を持つた人々が、目的罪でありますから、さような目的を持たない場合には、やはりその点からも該当はしない、こういうことになろうと思います。
  36. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この独立犯たる教唆扇動犯に対して共犯がございますでしようか。
  37. 大達茂雄

    大達国務大臣 教唆扇動という行為自体犯罪として考えておるのでありますから、その教唆扇動関係をして、またさらにそれを教唆したり、あるいは共同したり、そうすれば当然共犯というものはあり得るわけです。
  38. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこでお尋ねいたしたいのですか、一応日教組でも何でもよいのですが、そういう団体を通じて活動をするということになりますと、やはりその団体構成員世話をするとか、人を集めるとか、何かやつているわけです。そうすると、これが本法によつて独立犯たる教唆扇動犯が成立するということにたりますと、その世話をした人は従犯になる、共同正犯にならなくても、従犯になるでしよう。そういうことになつて結局この法律にかかるときには日教組を通ずるのだから、必ず日教組はその独立犯たる教唆犯従犯あるいは共同正犯に問われる。大体普通の場合には日教組団体を通ずれば、必ず日教組共犯にかかる、こういうことになりはしないかと思いますが、どうでしようか。
  39. 大達茂雄

    大達国務大臣 多くの場合、これは日教組のそれに関係している人が共犯関係が成立する場合が多かろうと思います。その意味においてはもちろん共犯が成立するわけであります。
  40. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 でありますから、私はこの法律はどう見ても日教組を通ずるという行為によつて、やはり日教組が知らぬ顔をしておつたといつても、その中の構成員が人を連れて来たりするのですから、日教組というものが共犯でやられる、こういうことになると考える。ここに私はこれは恐るべき法律であると考えるわけです。それで私はさらに日教組だけでなくして、一般労働組合との関係について申し上げたい。MSA反対とか、あるいはいろいろなことが、それがどう認識をされるか別ですけれども、一応こういう事項に該当する、こういうことになると、むしろ「何人」というのは、私は他の労働組合の方が実際問題として非常に多いのではないかと考えるのですが、その点についてはどういう認識であるか、これは労働省にもお尋ねいたしたいと思います。
  41. 大達茂雄

    大達国務大臣 他の労働組合が多いと言われるのは、他の労働組合を通じて……。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 日教組を通じてです。
  43. 大達茂雄

    大達国務大臣 これはだれが多いか、この法律を立案する場合にそういう点は考えておりません。この法律はそういう教壇に向つて不当の影響力を与えようとするその行為処罰対象として考えているのでありまして、この場合に日教組を通ずる場合が多いと思うから、従つてこれは日教組を非常に困らせることで、恐るべき法律である。これは自教組が困るか困らぬか、日教組を必ずしも対象としてはいないのでありますが、しかし日教組が、これは非常に困るということであれば、これはやむを得ないことであつて日教組が困ろうがだれが困ろうが、そういう邪悪な行為はこれを禁止したいというのかこの法律精神であつて日教組が困るから恐るべき法律とは思つておりません。
  44. 中西実

    中西政府委員 これは学校の職員を主たる構成員とする団体組織または活動を利用する場合でございますので、一般労働組合には大して関係はないのじやないかと考えます。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働省がそういう認識では非常に困るのです。これは歴史的なものであろうと思う。私はこの日教組を孤立化せんとする分断政策、これは現在の政府労働政策である、かように断言したいのですけれども、そこには御議論があろうと思いますが、これは歴史的なものである。すなわち一九二六年のあの英国のゼネスト後にやはりこういう法律が一九二七年にできております。これは日教組だけでないのですが、公務員は他の労働組合一緒に加盟することはできない、公務員だけの労働組合ならこれは結成することもできるけれども、公務員が他の労働組合一緒になつて、そのような組織をつくつてはならないという法律が一九二七年にできた。その法律は天下の悪法であるといわれて、一九四七年に廃止されてなくなつている。そのときに次のように言つている。(「直つたからだ」と呼ぶ者あり)直つたからじやない、よくなつたのでもない。この法律は結局どういう効果があつたかというと、そのときは一九二六年の二月十二日、下院で検事総長のハートレー・シヨークロスという人が次のように言つている。結局この法律効果のあつたのは、法律労働大衆の不利益になるように復讐的につくられている、法廷というものは労働大衆に対抗しているという感情しかこの法律は与えなかつた、であるからこの法律は廃止をするんだ。これは直つたのでも何でもない、そういうふうにこれは訴えておるのであります。そういう点について、私はこの法律日教組分断政策ではないかと考えるのですが、労働省並びに文部大臣はどうお考えであるか、お尋ねいたしたい。
  46. 大達茂雄

    大達国務大臣 これはその団結する組合に対して何らの制肘を加えるものではないと思います。これは日教組に限らず、この法律に書いてありますように、「何人も」とあるのでありますから、何人たりとも特殊な政治目的をもつて教壇を蹂躪しようとするようなことをする者があればそれを取締る、こういうのでありますから、その規定ができたために日教組が分断されるとか、あるいは組合活動ができなくなるとか、そういうことは当然にそこから来る帰結ではありません。日教組教唆扇動しなければとうてい成り立たないのだというなら、これは話は別であります。
  47. 中西実

    中西政府委員 この法律は結局は義務教育における政治の申立を確保するという趣旨に出ておると思いますので、組合の分裂政策その他とは別個の問題であるというふうに考えております。
  48. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働省としては、そういう全般の労働行政というものを考えて、あらゆる法案にタツチさるべきである。文部省も自分のことだけ考えれば、よそはどうでもいい、こういう態度はやはり国務大臣として十分考慮していただきたいと考えるのであります。これは孤立化するおそれがある、私はかように考えるわけであります。そこで私はお尋ねいたしたいのですが、文部大臣はやはり文部委員会のこの席で、日にちは忘れましたが、日教組政治団体である、こういうような答弁が町村さんの質問に対してあつた文部大臣としては現在のところそう思う、こういうふうに言われましたが、そこでお尋ねいたしたいと思いますが、この法律に書いてある「特定政党その他の政治団体」というのは、日教組を含むものであるかどうかお尋ねいたしたい。
  49. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は実質的には政治団体と同じものだと思うと、これは日教組の実体についての話でありましたから、そういうふうにお答えしたのであります。今日の法律解釈の上で、これが政治団体として取扱われるものかどうか、これはおのずから別個の問題であります。言うまでもなく刑罰法令はいやしくも拡張解釈を許されないのでありますから、最も厳重に解釈したければならぬ。日教組政治団体であるかどうかということを一般的に認定をすることは、少くとも文部省の役ではありません。これは実質的に政治団体であるから、従つてこの法律にいうところの政治団体というものに該当するかどうかということは、日教組一般的に政治団体であるかどうかということを認定する役所もありましようし、また実際の問題としては、これが裁判に係属した場合には、裁判官の判定によつてきまるものであると思う。私はただ日教組がその実体において政治団体、むしろ進んで政党とほとんど選ぶところなき団体であると、こういう日教組の実体、動向についての意見を言つたたけであります。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはきはめて重大な発言であると思う。今われわれが政治団体とはどういうものか、こういうことを審議している際に、日教組政治団体だ、私は文部大臣としてそう思う、こう言われたのでは、これは別の機関といわれますけれども、教育委員会あるいは学長が請求権を持つている。あなたはこれらに対する指揮監督権はないと思いますが、文部省の意向というものは事実問題としてこれに非常に影響があるわけです。あるいは検察庁が考える、こういうことにも問題があると思う。いやしくも政府です。検察庁というものは政府ですから、私は行政解釈として政府が流すならば、当然政府の意見は検察庁の意向である、こういうように、現在の刑罰法規の状態からいえば、考えられるのです。そうすれば、文部大臣であるあなたが、政治団体であるという認定をされることは、私は、それは別個の機関がおやりになるからということでは済まされたいと思う。でありますから、私はこれを十分お聞きしておかなければならぬが、この法律では政治団体考えられないと私は解釈するのですが、どうですか。
  51. 大達茂雄

    大達国務大臣 今日政治団体であるかどうかということは、当該団体の届出の有無によつて、一切の取扱いが行われているようであります。その実体というよりも、政治団体としての届があれば政治団体、届出がなければ政治団体として扱われておらぬというのが、実情でありましよう。私は政治団体対象として何らかの法制がしかれる場合には、当該団体が自発的に届出をするかせぬかということによつて解釈が二、三になるようなことなくして、その実質に基いて認定をされる、実質に基いて団体として扱われるかどうかということがきまるということを希望しておるのであります。
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも不明確ですが、私は届出によつて単にきまるものではないと思う。こういう形式的な論議をする観念は持たない。こういう御意思であろうと思う。そうすると実質的にきまる。その実質は自分は政治団体であると思うのだ。こういうことになりますと、日教組という職員団体が、いわゆる職員団体の勢力拡張のためにだれか入らぬかとか言つて行う行為が、この第三条違反の行為になる、こういうようにあなたの立論からいえば考えられるのですが、これはたいへんな問題だと思うのです。どういうようにお考えですか。
  53. 大達茂雄

    大達国務大臣 この法律は、御承知のように義務教育学校子供特定政党その他の政治団体を支持し、または反対させる教育を行うことを教唆扇動するのを禁ずるのであります。でありますから、日教組がかりに政治団体であろうとも、その政治団体としての組合員の加入を勧誘するとか、そういうようなことは、何も教育政治的中立確保に関する法律案の関するところではございません。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 加入を勧誘するという私の言葉じりをとられましたが、そういうことだけでなくて、日教組というのは団結権を持つて、そうしてこの団結権があれば、労働条件が非常に増すのだと考える。そういうことで、自分の先生たちの団体を支持する、そういうことがいけないということになるとたいへんなことである。これは団結権の侵害である。憲法二十八条の侵害である。あなたは法理論として、この政治団体というものを日教組考える、現在の気持はこうだと言われるならば、この法律案は根本的に考え直さるべきだと思う。これは憲法二十八条の団結権の保障ができていない。かように考えるのですがどうですか。
  55. 大達茂雄

    大達国務大臣 日教組は何も法的の根拠のない任意団体であると私は思つております。
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは労働組合品法上の根拠はありません。しかしそれは違うんです。団結権というのは、何も労働組合法上の根拠だけではない。公企労法の職員団体つてある。公務員の職員団体つてある。地方公務員法に職員団体という規定がある。これはやはり憲法の二十八条の規定から渕源がある。ですから私は労働組合とは言つておりません。当然日教組は二十八条の団結権の保障によつて職員団体というものが認められ、団結権が認められておると考える。であるからそういうお話をされるならば、これは団結権の侵害ではないかと考えるわけです。
  57. 大達茂雄

    大達国務大臣 何も団結権を侵害するとか何とかいう問題ではない。子供一定教育をしてはいけない。そういうことを教唆扇動してはいけない。こういう規定でありまして、日教組団結権とは、かりにありとしても何らの関係はないと私は思います。
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 日教組政治一体であるということになりますと、これは日教組先生方が教壇から教えること——これは日教組構成員ですから、日教組政治団体が直接自分の団体を通じて教えるというのですから、これは二つ一つになつておるのですから、あらゆる行動が全部第三条にかかる、かように考えられるわけです。主体と客体とが一つになるとお話になつておるわけです。両方とも政治一体です。ですから、ここでいう政治団体というのが日教組であるというならば、その次の構成する団体日教組ですから、当然教壇から教える行為は、ほとんどこの三条に違反すると考えるのですが、そこであなたは自分の言つた政治団体は、第三条の政治団体意味ではないということをはつきりおつしやつていただきたい。そうしなければ重大問題が起ると思うのです。
  59. 大達茂雄

    大達国務大臣 学校先生は、共産党の人もありましようし、自由党の人もありましようし、改進党の人もあるだろうと思う。それがあるからといつて学校先生がかりに共産党員であつたら、当然にその学校における教育は共産党的教育をし、またそうしなければたらない、そうするのがあたりまえだ、こういうふうなことを前提にしてのお話のようであります。日教組組合員であるからといつて子供日教組の主張しておる政治的主張をつぎ込むということはいけないことであります。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は共産党員社会党員、自由党員ということを言つておるのではないのです。政治団体というのが日教組であると言われるならば、何人も——何人といつて先生ですが、先生教育を利用し、特定政党というのは日教組ですから、日教組政治的勢力の伸張または宣伝に資する目的をもつて日教組組織または活動を利用して云々となるわけであります。ですから、共産党とか社会党とか、自由党とか、これは問題は別です。日教組のこと自体を宣伝すること、このことが私はもうすでに第三条違反になると思うのです。
  61. 大達茂雄

    大達国務大臣 日教組政治団体なりとして、その日教組を支持し、また反対することを何で子供に教える必要がありましようか。それは困るのであります。
  62. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうして困るのですか法律で保障された団結権、それに基いた職員団体のことを支持させるというのが困るというのはどういうわけですか。
  63. 大達茂雄

    大達国務大臣 各政党とも合法政党である限りは法律上の存在であります。しかしながらこの法律は、また基本法第八条二項は、それが合法的であるからといつて子供にこれを注入してもいいとは言つていない。片寄つてはいけないということを言つておる。これは教育から来る特殊の関係からそうなるのであります。日教組が合法的団体であろうとも、あるいは憲法の上で団結が保障されておろうとも、それがゆえに子供日教組の一方的な主張を教え込んでいいというりくつはつかないのであります。
  64. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政治的主張でなくとも、労働条件を向上する意味における職員団体の主張をしても、それはこの法律に違反するという考え方になるわけですか。
  65. 大達茂雄

    大達国務大臣 日教組政治団体なりやいなやという認定の場合に一番問題になるのは、それが労働団体、職員団体としての面を持つておるということ、並びにそういうことをまたさらに離れて、いわゆる教育者のアソシエーシヨンであるという面を持つておる。そういうことが判定の上にいろいろ議論のある点だと思います。この法律は、政治的な偏向を教育の面に、教室にもたらさないことを目的とする法律であります。従つて日教組の経済的な団体としての活動、そういうものについて説明をいたしましても、少くともこの法律のねらつておるところとは違うのでありまして、さような教唆扇動を罰しようということは、少くともこの法律の趣旨ではありません。
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それはむしろそうおつしやるのならば、政治体としては考えられない、こうおつしやつた方が私は妥当であると思う、どうも大臣はえらくしぶつておられるのですが、今審議をしておるときに、これは日教組政治団体と言われれば、その次の構成するものも日教組であるということになれば、たいへんな法律である。ですから日教組は非合法団体であるから取締るといつた方が早いと思うのですが、いかがですか。
  67. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは私の当時の速記録をよくごらんになればわかるのですが、日教組の実態はどうかという質問に対して、これは本会議でも言つたのですが、日教組はその実質においてほとんど政治団体と選ぶところないものである。こういう実態を言つたのであつて、何もこの法律日教組に適用するのだと私は言うのではないのです。そこは誤解のないようにしていただきたい。
  68. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それでは次のように了承いたしたいと思います。この第三条の政治団体とは、日教組は含まないのだ、そういう意味を言つたのではなくて、政治的発言をしたのだ、こういう意味に了承して、次の質問に移りたいと思います。  次に私は、職員団体の問題を申し上げたいと思う。(発言する者多し)今どこからか、それは団結権じやないと言われましたけれども、これは明らかに団結権である。労働組合法に掲げられている労働組合だけが団結権を保障されているのではありません。その他地公労法あるいは公労法、あるいはさらに地方公務員法等に掲げてあります職員団体も、団結権から来ていると思います。この場合に、今度は地方公務員法の適用を受けないで、国家公務員法の適用を受けるということになりますと、例の人事院規則の政治行為の中の五項の七号で、地方自治に対して条例の制定もしくは改廃、そういうものの請求を成立させまたは成立させないこと、これは禁止になつておる。御存じのように、教師の給与は地方自治体の給与条例によつて定められているのでありますが、この改廃その他の運動は、当然国家公務員法の関係になりますから、違反ということになる。しかし、これはむしろ地方団体に対して、国家公務員が国家権力を利用し、公的な権力を利用してそういうことをしてはならぬという意味であつて、本来地方公務員であるものは、国家公務員法の適用を受けることになりましても、第七号あたりは当然適用外であると考えるのですが、大臣はどういうようにお考えであるか、御答弁願いたい。
  69. 緒方信一

    緒方政府委員 教育公務員特例法の改正法によりまして、ただいまお話のように、公立学校の教員でありまする地方公務員は、国立学校教育公務員と同様に取扱つて参りますので、当然国家公務員法百二条の規定を受けまして、これに基きまして人事院規則の適用を受けることになります。従いまして、ただいまお述べになりました人事院規則の第七号、これは目的でございますが、その目的に基きまして、別に次の順に掲げてあります政治行為をいたしました場合には、当然規制を受ける、かような解釈になるわけであります。
  70. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、自分の給与に関する条例その他の改廃の運動はできない、こういうことになるわけですか。
  71. 緒方信一

    緒方政府委員 運動ができないというお話でございますが、かような掲げました目的をもちまして、人事院規則に定めておりまする行為をしてはいけない、こういうことであります。従いまして、意見を述べるとかいうふうなことは一向さしつかえないことでありまして、ここに禁止されておりまする政治行為はいけない、こういうことであります。
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 自分の給与を上げるという運動に署名してはいけないというが、主体は自分でありますから、自分がやらなければならない。人はいいが自分はいけないという考え方はどこからも出て来ないと思うのですが、そういう点はいかがですか。この点は、あなた方が法文を書くときのミスですか。
  73. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま申し上げましたように、この政治行為の方は、よくごらんいただきますと、全部いけないということではございません。ただいまお述べになりました、署名をするというようなことは、一向さしつかえないのであります。署名運動を企画し、主宰し、指導し、その他これに積極的に参与することはいけない。署名することはさしつかえない。さように解釈しております。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 五項の七号ですよ。「地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ又は成立させないこと。」これはいけない、とこういうのでしよう。
  75. 緒方信一

    緒方政府委員 それは繰返して申し上げますように、そういう目的をもつて次にあります政治行為をしてはいけない、かような規定でございます。今お話になりましたのは目的でございます。そういう目的をもつてつてはいけない、こういうことです。
  76. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこでその次の十三になるわけです。次のような行為をしてはならぬ、こういうことになる。ですから、単に国家公務員政治活動を適用さすということだけでは、実体が国家公務員ではないのですから、これはきわめて不合理な面が出て来ると思う。地方公務員であるものを、国家公務員法の適用をさすといつて、地方自治に関する問題を削除しないでそのまま残しておく、こういうことに私は問題があると思うのです。これは十分考慮願いたい。  二時間にうち一時間ここでやつちやつて時間がないので、一言だけ質問いたしたいと思います。独立犯たる教唆犯行つた場合、本犯と言うと語弊がありますが、教員がそういう行為をした場合には、その人はどういう処罰になるのか、こういう状態になるのかお尋ねいたします。
  77. 緒方信一

    緒方政府委員 本法においては、処罰対象になりません
  78. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 本法を言つたのではなく、法律全般の体系から——日本法律体系の中でどういう状態になるのかということをお尋ねしておるわけです。
  79. 緒方信一

    緒方政府委員 処罰対象にならぬと思います。
  80. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 処罰対象にならないのですか。
  81. 緒方信一

    緒方政府委員 それは行政処分の対象にはなり得るのでございます。現在の教育基本法第八条二項に違反した者が、全体の奉仕者としてふさわしくないと認定された場合には懲戒の対象になり得ます。そういう意味におきまして、行政処分の対象にはなり得ます。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 行政処分の対象にはなるけれども、いわゆる刑事罰の対象にはならない、こう理解してよいわけですね。これは非常に重要な問題であり、将来も残る問題ですから、再度お尋ねいたしたい。
  83. 緒方信一

    緒方政府委員 その通りでございます。
  84. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実はまだ問題が非常に残つておるのです。法律問題といたしまして、今私が申しましたことだけでも必ずしも解明されていない。今の話だつてそうです。本人は犯罪にならぬが、教唆した方が犯罪になるというのか第一おかしい。また政治行為がいろいろ列挙されているが、あなたはそう言われても、後になつて裁判所で、いや、これはこれにかかるよ、ということが出て来ないとも限らない。私はあえて指摘しません。しませんけれども、そういうことにならぬとも限らない。こういう非常に重要な問題を含む。また文部大臣は、国務大臣として一般的な労働行政に対して十分認識がない。この法案で、日教組だけを考えて行けばよいとかそういう問題ではないと思う。全般の法律体系の中で考えなければならぬ。こういう問題がありますが、本委員会ではしかたがありませんから、大臣に対しましては質問を保留いたしまして、この質問を打切ります。
  85. 辻寛一

    ○辻委員長 井堀繁雄君。
  86. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この二つ法律案は、労働問題ときわめて重大な関連あるものと思われます。と申しますのは、教育関係する公務員の生活を守る道は、今日の場合、団体行動を通じあるいは団結権の上に立つてのみその生活が保持できるということは、残念ながら今日の日本の労働法規の中から考えましても、その他の生活権と関連する法律を選びましても、合法的な道はその二つ以外にありません。ところかこの法案の内容を拝見いたしますと、この二つ行為が、教育の中立化という目的をあまりに追い過ぎますために、これらの職員の生活権を脅威し、もしくはその道を断つようなおそれがあると私は思うのであります。こういう点についてお尋ねをいたそうとするのでありますが、どうぞ率直にお答えを願いたいと思うのであります。  この法案の内容を検討いたしてみますると、教育政治的中立関係いたします条項の中で、たとえば第一条で教育基本法を引用しておりますが、私どももこの趣旨にはまつたく同感であります。従いまして、教育がその中立性を失うようなことがあつてならぬことは、これはひとしく念願するものでありますが、その教育の中立性をどうして保持して行くかということが問題であると思うのであります。この場合、ただ機械的に教育政治的に中立であることを願う道はいろいろあると思います。しかしながら教職員といえども今日の社会構成の中におつて生活を営みながらその公務を行使して行くのでありますから、そう一方的に強制をされるということは、ひとり教職員に限らず一般の労働力で奉仕して生活を営む者にとりましては、いずれもこれはその自由を拘束してならぬことは申すまでもないのであります。ところがこの内容の中で一番懸念いたされますものは、第三条の中でいろいろいかがわしいと思われる文字が採用されております。たとえば第三条は「教育を利用し」という言葉が前提になりまして、そして「政治的勢力の伸長又は減退に資する目的をもつて」という言葉が用いられておるわけであります。こういう言葉の内容というものが、団結権の上に立つて生活を守つて行こうとする先生方に対して非常に重大な脅威を感せしめることは言うまでもありません。この点について認識が欠けておるのではないかと思うので、これから質問をいたして行くのであります。  そこで第一に問題になつて来まするのは、一体教育をどのようにお考えになつておるかということである。教育というものをまつたく機械的に把握することができるのであればとにかくてありますが、教育の仕事は教員の良識と意思に問うところが非常に広くて深いのであります。ところが先生の生活を動揺させ、食えないような状態に置いてその良識を求めるということが、政治家のとるべき態度でないことは言うまでもない。政府はこのような法案を出そうとする前に、今日の学校教育に奉仕しております教員の生常の実態をどのように把握しておるかということを考えていなければならぬはずである。これは御案内のように、今日年中行事のように官公庁の公務員を初めこれらの人々がベース・アップの運動に血みどろの努力をしておるという姿は、一方的に見ますと気違いざたのように言う向きがありますが、まじめに民主主義のもとにあつて正常な努力と合法的な道を選んで生活権を求めようとすれば、今日の場合においてはどうしてもこのような団体行動に訴えて生活を守る以外に道がないと私は思う。もし大達文部大臣がこのような法律をつくる前に——いろいろ言われておりますような、教育的な立場にある者が政治的な中立性をややともすれば失うという、そういう事実について私は否定はいたしません。しかしたまたまそういう事実が起つて来た原因を究明してみますと、問題はもつぱら生活の脅威に出発しておるということを忘れてはならぬのである。ことに教育に関連して中立性を保持しようとすれば、思想的な問題が取上げられて来るわけだ。思想というものは偶然的に発生するものではありません。生活環境に支配されることは申すまでもないわけであります。昔の言葉に衣食足りて礼節を知るというのがあるのと同じ意味でありまして、今日の公務員に限らず、敗戦日本の勤労大衆にとりましては、同様のことが言えるかもしれません。憲法が保障するような生活はまだ十分に望めないということはわれわれも承知しているわけであります。その望めない中にあつて、どうして均衡をはかつて行くか。これは団結権団体行動の上にのみその目的が遂行されるということは何人も否定できないと思うのです。この点について文部大臣の見解をただして、この法案との関係を逐次お尋ねしようと思いますが、前提になりますところの、今日の学校教職員の生活が団体行動と団結権を離れて改善の道があるということをあなたはお考えになつておるかどうかを、まず承りたいと思うのであります。
  87. 大達茂雄

    大達国務大臣 教職員全般についてその待遇が改善をせられるということは非常に大切たことでありまして、私どももその点においてとにかく努力をして参つておるのであります。しかしながらそのこととこの法律考えておるような、教壇において特定の片寄つた事柄を子供に教えるということとは、私は直接関係はないことであろうと思います。なるほど教員の境遇が御指摘のようであるとすれば、その教員の方々かいずれかの政党に入る、また団結権を強固にして組合運動を熱心におやりになる、こういうことはあり得るでありましよう、しかしながら、であるからして子供に対して自分の考え方、あるいは片寄つた特定政党の主張をつぎ込まなければならぬという必然の関係は、私は起る筋合いはないと思うのであります。いわんやこの法律は先ほども説明がありましたように、個個の先生教育それ自身を対象としておるのではありません。教員というよりはこの教員に教唆扇動という働きかけをして、さような教育をさせようというその行為対象としてこれを取締りたい、こういうことであるのでありまして、お話の点はごもつともとは思いますけれども、これはこの法律案とは直接関係はないと私は思つておるのであります。
  88. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この法律関係がないとおつしやられたのでありますが、それでは具体的にお尋ねすることによつて明らかになると思います。この法律規定に従いますとさつき申し上げたその先に「主たる構成員とする団体を含む。」というふうに団体の説明が括弧の中にあつて、そうして「団体組織又は活動を利用し、」云々とございます。そうして教育の中立性を期待する内容になつておりますが、問題があるのはここであります。もしこの組織というものが私どものような見解であれば問題は別でありますが、話を進めます意味において、ここに書いてある組織とは憲法の団結権団体行動権を意味するものであると私は思いますが、その辺の解釈を明らかにしていただきたい。
  89. 緒方信一

    緒方政府委員 「職員を主たる構成員とする団体組織又は活動を利用し、」というふうに規定いたしておりますが、職員を主たる構成員とする団体でありますから、学校の職員がその構成員の過半数を占める団体、かように解釈いたしております。その組織を利用すると申しますことは、その組織でいろいろと意思の伝達をいたす場合があると思いますが、そういう伝達の系統等を利用して、外部から働きかけて教唆扇動する、そういうふうな意味解釈しております。
  90. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それで解釈がはつきりいたしました。この組織または活動を利用しということは、申すまでもなく今日教職員が団結し、団体行動を意味することで、言いかえれば教員組合あるいは何々労働団体といつたような意味であろうと思うのであります。そこでこういう団体をつくるということは、先ほど来申し上げておりますように、今日の時代にあつてはこの道以外にこれらの人人の生活を守る道がございません。そこでこういう道はどういう法律をもつてしても、この基本的なものを奪うことは許されぬわけであります。それをもし奪おうとするときには、それにかわるべき生活の保障の道が的確である場合でたければならぬはずであります。これはひとりこの法案だけに限つたことではありません。今日の公務員法にいたしましても、公企労法にいたしまして、も、やかましく論議されたところであります。こういう関係をぽつんと出して来ておる。今大達大臣の御答弁によりますと、これとあれとは別だ、こうおつしやられますが、そういう器用なことはできるものではございません。先生が自分の生活を守るために、たとえばデモンストレーシヨンをやつております。ああいうことは教員としては決して好む行為ではありますまいと思う。しかしああいう行為をあえて許すという現実が問題なのでありまして、そういう現象が解消してなおかつああいうことをやるなら、これは取締つたり、あるいは非難攻撃されてもしかたがないでありましようが、ここが大事なところである。政治というものと切り離して、こういう問題を考える場合は別です。技術屋であれば、とにかく法律のかつこうをなせばいいのですが、しかし生きた事実であります。ことに教育というものはどうお考えになつておるかしりませんが、ここに刑罰主義で、これに反した場合には一年以下の懲役に付する。体刑処分をもつてこういうものを取締ろうという考え方は、この前の問題を十分検討してからでなければならぬはずである。たびたび申し上げておりますように、教育政治的な偏向を一体どうして阻止するかということは、これはひとり学校だけではありません。労働団体の中にあつても熾烈に闘われている問題なのであります。それを法律や制度で縛り上げることが不可能だということは、民主主義のおきてであります。すなわち個々人の良識にまたなければ、団体行動、組織活動というものは、決して合理的な民主的な成長をとげることのできないことは、労働問題に多少でも関心をお持ちになり、政治問題に頭をつつ込まれる人でありますならば、このことをお考えにならないはずはないのであります。この基本的な考え方が十分政府当局において検討されて、こういう法案が出て来たのでありますならば、私が今お尋ねしようとすることに対して、明確な見解が述べていただけると思う。そこで私は政治的な立場をとられるところの大臣の見解を伺いたいと思うのであります。
  91. 大達茂雄

    大達国務大臣 この法律は教職員団体組織ないしその活動に対して、何ら制肘を加え、これを否定するものではないのであります。教職員団体がその団体としてあるいはデモンストレーシヨンをおやりになつても、この法律の関知するところではないのであります。この法律の結果、日教組団体としての活動ができなくなる。その組織か破壊される。こういうことは全然ないのでありまして、ただ何人かがこの組織なり活動を利用して、特定の内容を有する行為教唆扇動をする、その行為を取締つておるのでありまして、これは何ら団体制肘上、団体組織を否定し、その活動を制約するものではありません。
  92. 井堀繁雄

    ○井堀委員 たいへん議論の焦点が明らかになつて参りましたが、一体大臣は教職員の団体行動というものを機械的にお考えになつておりはせぬか。ということは、これは民間労働者の場合ならばきわめて明確であります。腹が減つて夜も日もわからないという言葉かございます。うちに帰れば家賃や米代でせきたてられていて満足な仕事ができるはずはありません。筋肉労働でさえそうだ、ましてやこういう頭脳労働を、しかもその求めるところは非常に高いものであります。私もこの法律の一部が要請しておりまするように、教育政治的な中立性が維持されることを念願しておる一人である。ところがその中立を維持しようとするためには、さつき申し上げたように、現在の教員諸君の生活の基盤というものが問題になるわけであります。大達文部大臣はこういう運動をこの法律で何も牽制するものではないと言つておりますが、そこが問題になる。明らかにこれは牽制されるのであります。牽制どころではなくて致命的な打撃を受ける、これがわからなかつたらとの法案審議したことは意味をなさなくなると思うのであります。そこで具体的にお尋ねする方がよかろうと思いますが、ここで問題になりますのは、さつきお尋ねいたしました組織活動を利用してという言葉はきわめて簡単なものであります。しかし組織というものをどうお考えになつておるか、私お尋ねしようといたします組織ということは、少くとも烏合の衆であつてはならないわけである。一つ目的を明らかにして集まつておる団体であるわけであります。その目的は言うまでもなく今日の教員組合の姿を見てもわかるように、生活の維持改善が主要な目的であることは争い得ないのであります。でありますから、そういう団体に外部から教育はこうなければならぬということはいい、しかしその教育がこうなければならぬということは基本法の示すところで十分であります。それを守らなければ縛るぞ、しかも組織を通じ、あるいは組織的な活動を通じてこの種のものに対して動きがあつたときには罰するぞということになりますと、言うまでもなく教職という職業の内容がこの中のすべてであります。そのすべてのものを、こうしてはいかぬ、ああしてはいかぬという恫喝的な意味がありましては、これは決して正常な組織活動や自由な団体行動というものはあり得ぬのであります。これは私が説明するまでもなく大達大臣労働組合法の第一条をお読みになつておいでになると思う、労働組合法の第一条は労働者の団体行動あるいは団体交渉、こういうものの自由を保護するために、それらの行動は刑法刑罰にも、あるいはその他の取締り法規からも救済されることをわざわざ規定しておるのであります。このことはなぜか、それは労働者の良識にまてばいいはずのものを、こういうことを規定してあるということは日本の歴史があるわけであります。遺憾ながら日本の歴史は、諸外国の民主主義の歴史と異なりまして、きわめて封建的な時代に、日本の民主主義運動があつたことは事実であるけれども、日の目を見なかつた、ところが敗戦という、こういう皮肉な事実の後に、いわば与えられた民主主義である。決して人民の意思によつて斗いとつたものでないことたけは明らかである、与えられたものでありますから、そこには不十分なものがあることはやむを得ぬのであります。でありますから、こういう不十分はどこから発生して来るかということは、言うまでもなく団体訓練、あるいは組織的な訓練が不足し欠如しておるからであります。民主主義はある学者によれば経験主義とも言つておるわけであります。その経験を尊重し、あるいはその主義を育成して行くことこそが、ここに使われておる組織であるとか、あるいは組織を通じてとかいう意味になるべきものでありまして、むしろこれを刑罰のために通ずるような条文にするということは逆コースというよりは、角をためて牛を殺す恐るべき結果になるのではないか、この法律学校教職員というものが完全に政治的な中立を守るということを、あなた保証できますか。私は逆だと思う。人間の意思や思想というものは法律や制度によつて縛ることはできない、この点に対する見解を、くどいようでありまするが、明らかにしておきたいと思います。
  93. 大達茂雄

    大達国務大臣 繰返して申しますが、日教組が職員団体として、その団体構成員の経済的な事情を向上させる、その関係において、この法律は何も日教組組織あるいは活動に干渉するところはないのであります。これは不可分のもののようにおつしやいますが、私はそういうことは考えられないと思うのであります。これは繰返して言うようで悪いですけれども、日教組団体組織活動を利用する何ものか、そういう行為対象としておるのでありますから、日教組が、この規定があるために、賃上げ斗争ができなくなるとか、あるいはいろいろな労働団体としてのデモンストレーシヨンが行えなくなるとか、生活権を守つて行くことができなくなるとか、そういうことはこの法律のどこからも出て来ないと思うのであります。何ゆえにそういうふうにおつしやるか、私にはわからない。いかなる労働団体といえども、その労働団体組織を利用して、たとえば刑法その他に規定してある犯罪教唆をする、扇動をする、あるいはその刑法に掲げられておる各種の犯罪というものが、その形においてその組織を通じて利用して行われるとすれば、それは当然に規制せらるべきことであつて、それは組合本来の団体活動ではないと私は考えております。
  94. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは大臣の今のお言葉で非常に私はふに落ちぬことが一つありました。それはこういうことで決して労働団体を拘束することでないということを主張されるために、あえて用いた言葉だと思いますが、少くとも今日の時代に政権を担当されまする政府の閣僚の一人として、今のような不用意な言葉は私はどうかと思うのであります。というのは、この法案は、またいろいろ御説明をされると思いますが、たとえば第三条の中にありまするように、「教育を利用し」というその「利用し」は、だれが利用したかしないかを判断する立場は、この法律からいうと決して教員自身にはないのです。その判断するのは、申すまでもなくこれはそれぞれの教員を雇用するもしくは監督する立場にあるわけです。だから労働問題でいいますと、雇い主と被雇い人の関係にある雇い主側の立場を代表する人がその認定をするわけであります。でありますから、もうこの言葉を持つて来て縛れば、教員の自由というものはどつちからでも——私がその立場に立つてこの法律を握るならば、教員の団体行動を縛ることは自由にやれます。私にこれを与えますならは……。それかおわかりにならぬことはなくて、とぼけておいでになるのではないか。(笑声)それほど今まで過去の経歴からいつて、そういうことはいやというほど承知しておられる。たとえて申しましよう。あなたの時代のときのことを申し上げたがよかろうと思う。私はきつい経験を持つておるのであります。それは暴力行為等取締規則という法律が、たしかあなたのときじやなかつたかと思うのでありますが、制定されたことがあるのであります。暴力行為等取締規則という法律は、当時の議会の提案の趣旨弁明を見ましても、あるいは討論の際における政府側の答弁を見ましても、一致して言つておることは、これは労働運動やあるいは農民運動を取締るものでは断じてない、すなわち刑法でいう脅迫の罪や暴行の罪が規定されておるのに、多衆を仮装しもしくは多衆の威力を背景にして行つた脅迫あるいは暴行の罪は一段と重い刑罰を科するという特別刑罰主義であります。こういう法律が一番懸念されるのは労働運動や農民運動という、団体行動を伴わなければにつちもさつちも行動のできない団体に、これがややもすると悪用されるおそれがあるが、そういうことはないかということを、何回も繰返して尋ねておるのであります。決してそういう心配は微塵もないということを弁明しておきながら、実はこの法律ができてからその後の実績を見ればおわかりのように、労働争議に飛び出して来ております。私もこのために六箇月の刑を受けたことがあるわけであります。そのときの言葉はこうであります。これが法律になつて流れて来て、検察当局がそれを判断して告訴をし、裁判所がこれに判断を加える場合に、たとえば労働組合でありまするから、いろいろ——今のように公然たる労働運動の許される時代ではありませんから、争議団、労働者の組織団結を維持して行くために、罷業団から脱落して行く者を阻止するために、今で言うならば何でもないピケライン及び戸別訪問をやるわけですが、そうしたときに、お前仲間に入つていなければいけないぞ、仲間を裏切ると、支部の大勢の諸君が、あるいは争議団の多数の人が、あるいはひどいのになると、おれたちという、たちという言繋が複数を意味するというので、暴力行為等取締規則にひつかけて、刑罰を受けておる、こういう苦い体験をわれわれは持つておるのであります。でありまするから、それよりもこの法律はもつと危険なのであります。その危険なことがお気づきにならぬとするならば、大問題でありまして、むしろ逆にお気づきになつて、こういう法案で特殊の行動をする者を取締ろうとしておるのではないかとすら、私は疑いを持つのであります。それは疑えば疑えぬことはありません。なるほど、今日の日本の労働団体のすべてを言うことができるのでありまするが、中には矯激過激なる思想を持ち、あるいは直接行動によつて政権を奪取しようとする意図を持ち、あるいはそういう思想を背景とする人々が、団体の中に勢力を扶植し、あわよく行けば、その団体を牛耳つて目的を達する手段にしようとする動きのあることは、これはもう世界共通の事実であります。しかしこれを法律で縛り制度で縛ろうという愚かを繰返しておる国は、フアツシヨかもしくは一党独裁をとる国以外には考えられないことであります。民主主義の国といたしましては、私はそういう愚を繰返すことはおそらくなかろうと思うので、こういうしつこい質問をいたしておるわけであります。でありますから、もし教育が一部の人によつてゆがめられておるということが問題になるならば、それはどうして解決をすればいいかということは、それこそあなたがおつしやるように、おのずから問題は別になるわけであります。あなたの言質をとるわけではありませんが、この法律によつて教育の正しい方向を求めるということと、これによつて団体行動をするところの教職員の行動を牽制し、もしくは縛ることは別個だとおつしやいましたが、そういう器用なことはできるものでないことを、よもやあなたがわからないで答弁をしておると私は思わぬのであります。そこであなたのはつきりした見解を聞こうと思うのでありますが、今教員組合の諸君が労働組合を運営いたしますために、いろいろな議論がなされております。そういうことは十分御調査になつたと思うのでありますが、その中には、あるいは共産主義を奉ずる人々の意見が議案になり意見になつて出ておるかもしれない。あるいは民主的な意見を持つ人々の主張も多く出ておる。あるいはもつと保守的な立場をとつて、労働運動としては相いれないような見解に基くような議論も出て来ておるのであります。そういう意見が民主的に総合されて、正しい方向を推し進めて行くというのが、今日団体行動であり組織活動であります。もしそのほかに組織活動があるというならば伺いたいのであります。すなわち組織活動を行うということは、組織というものは機械ではありません。意思がある。意思のない組織などというものはありません。でありますから、今日民主主義時代における組織とか団体行動というものについては、人格が尊重されて来るのであります。その人格は個々の人格ではなくて、総合された人格を意味するのであります。これまで申し上げれば  今とぼけておいでにならぬとするならば、私はあなたに教えるほどの立場ではございませんが、こういう組織のあり方というものを正しく認識されておりまするならば、この第三条の規定と労働運動とが何らの摩擦も起さなければ、それによつて被害をこうむるものでないという御議論をなさるのでありますならば、これは一々労働運動に対する見解についてたださなければならなくなるのでありまして、そういうことでありますと数時間を要するかと思うのでありまして、迷惑を避けたいと思うので、あなたの良識に訴えて御答弁を願つておるわけであります。全然そういう懸念がないと言い切るとするならば、私どもはこの問題をもう少し掘り下げて討議しなければならない。その懸念があるとすれば、この辺に対してどういう割り切り方を持つているかをお答えを聞かなければならぬわけであります。くどいようでありますが、もう一度その点に対して歯にきぬを着せないで率直な意見をお聞かせいただきたいと思います。
  95. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは私は決してことさらいいかげんなことを申し上げておるのではないのでありまして、日教組の労働団体としての組合活動というものを制肘するという意図は全然ないわけであります。これはしかし法律の案をごらんくださればその点はおわかりにならぬはずはないと私は思う。これはどこにも日教組組合としての組織なり活動に対して制肘を加えておるものではありません。しかもあなたは非常に純粋に労働組合として考えて労働運動としてのことをお考えになつておるようでありますが、しかしその点については、たとえば賃上げ闘争にしましてもどういうことでありましても、この法律は何にも関知するところではないのです。日教組労働組合であるとして、その組合活動に何らの制肘を加えるということは意図しておりませんし、またこの法文から見ても、どこからもそれは出て来ないと私は思う。またそういう意図も全然ないのであります。表題にすでに掲げてありますように、ただ教育政治的な中立性を確保するという見地から、これを破壊しようとする行為対象として取締りの規定を設けておるのであります。ただその場合に誤解が起りますのは、教職員団体を通じて、その組織または活動を通じてという言葉をそこに使つておりますので、いかにも組合活動制肘を加えるというふうにお考えになるのではないかと思うのでありますが、これは教職員団体が現状最も教職員に対して強い影響力を持つておりますので、その場合に限つて、その強い影響力のあるというそれだけに限つてこういう取締り規定を設けた。すべての場合に通じてこの規定を設けたのでは、場合によつて行き過ぎの場合が非常に起り得ると考えますので、事実上教員に対して強い影響力を持つておる方法に限つてこれを取締りの対象にしようということで、組合組織または活動という字が出て来たのでありまして、組合活動自体に対しては何らの制肘を加えるという意図は毛頭ないのであります。
  96. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは善意に解釈いたしまして、そういう意図がないということでありますならば、法律の欠陥をつかなければならないと思います。ここで私の気のついたところだけを申し上げますと、この第三条の適用を受けられる具体的な事実をここで、仮定的でありますが、考えてみることがいいと思います。今ベース・アップの問題が御案内のようにございます。これはもうすでに前国会から続いて来て——仮定はいけませんから、事実をあげましよう。教員組合の場合は困難でありますが、国鉄の労組の問題をあげてみましよう。あるいはその他七現業庁の問題を考えてみましよう。御案内のように、意思決定をするときにはどうしても政党が出て来る。討議できめるものでありますから、社会党両派その他の小会派の人たちが協力をされて、そうして仲裁裁定は一月からという原案に対して少くとも裁定の下つた八月からこれを行え、こういう二つ政党もしくはその他の小会派の意思が働く、それから政府を支持しておるところの自由党は政府案を支持する、こういうことになりますと、国鉄の従業員にとりましてはたいへんな問題なんです、それは理由がどこにあるにかかわらず、そういう場合に斗いがどう起つて来るかということは——武器はありませんあなたは団結とか団体行動というものをどういうふうにお考えになつておるか知りませんが、団結とか団体行動というものの威力がなければ鳥合の衆になるわけであります。そこで目的を達するための行動が起つて来るわけであります。政治戦力の問題にもなります。そういう場合にこれが一番先に飛び出すのです。内務大臣をおやりになつたくらいですからわかるでしよ
  97. 大達茂雄

    大達国務大臣 多分そういう点を御心配になつているのではないかと私は先ほどから考えておつたのですが、それは何にもさしつかえない。この法律には決して関係ない。それは心配なくお願いいたします。
  98. 井堀繁雄

    ○井堀委員 先ほど私が例をあげましたように、暴力行為等の取締りの法律のときの御答弁と同じことを聞くわけであります。時代がかわつておるわけであります。時代がかわつてわれわれ初め国務大臣国民のために奉仕する立場にかわつております。内務大臣と今日の文部大臣の地位は非常にかわつておるわけであります。その辺の切りかえが行われておらないと、私は今の議論は納得してもらえないと思う。ここのところか大事ですからくその点に対する御答弁をもう一回お願いします。
  99. 大達茂雄

    大達国務大臣 あなたは前の経験でそういうふうにお考えになる。決して御無理とは思いません。思いませんが、これはベース・アップの問題とかこういう問題はもちろんのこと、相当今日のやかましい政治の問題に関係しましてもこの対象にはなつておらぬのであります。これはしばしば説明しているわけなんですが、つまり特定政党の党派的勢力を伸長——これはむずかしい字ですか、一口に言えば党勢拡張をする、あるいはよその政党のじやまをする、いういう党勢拡張ということを目的として、そういう目的を持つて、そうして学校先生に生徒に対してどういう政党を支持させなければいかぬ、どの政党には反対させる、こういうことを教えるようにけしかけるといいますか、そういうことをする、その行為を取締る、こういうことであります、その場合事実上学校先生に強い影響力を持つている関係から、あらゆる場合にそれをとめるということでは行き過ぎの場合が起るから、これをたとえていえば、ある新聞が新聞の論説で、教職員の諸君に望む、学校における教育はかくのごとくならざるべからず、こういう社説を書く、そういう場合でもその内容が特定政党を支持させる、もしくは反対させるというような内容であり、その書いた人が党勢拡張の目的を持つてつたような場合には、これもひつかかるおそれがある、それでは実情を無視してあまりに行き過ぎの場合が起り得るから、そこで学校先生に対して最も強い影響力を持つている教職員の団体——これは必ずしも日教組とは限りません。信濃教育会といいますか、ああいうのを教員過半数をもつてつくつておれば、それは要するに学校先生に強い影響力を持つているから、そういうものを利用して行われるという場合に限つて、これを取締るということでありまして、組合活動自体に、ことに組合が正常なる組合活動をする場合にそれを取締るなんということは、これは全然われわれの考えているところではありません。またこの法律から来るところでもない。先生方が自分の待遇の向上のためにいろいろ運動をする、今お話になりましたような多数による運動をする、これは当然だろうと思います。それを何も取締るという意味ではない。ただ学校子供にある特定政党を支持せよ、こういうことを教えることをやめてもらう、それをけしかけるのをやめてもらう。先生自身ではないのですよ。そういうことを先生にけしかけるようなことをするのは不都合だから、それを取締りの対象にして、教室内における政治的教育の中立を確保したい、こういう意味でありますから、そこのところは決して誤解のないように願いたい。決して組合活動に対して何らの制肘を加えない。ことにこれは組合として当然のことであり、職員団体としてその団体員の経済的地位の向上をするという立場からする、いわゆる正常なる組合活動に対しては何らの制肘を加える意味は毛頭ありませんから、その辺は御了承をいただきたい。
  100. 井堀繁雄

    ○井堀委員 かなり白いものを黒いように聞かせようとしておるように聞えてしようがありませんが、それは私のひがみかもしれません。  そこで、第三条に「何人も、教育を利用し、特定政党その他の政治団体政治的勢力の伸長又は減退に資する目的をもつて、」とありますが、なるほど何々政党の宣伝活動をやるということは、もちろん今だつてつていないと思う。巧妙にやると思う。ところが、法律ができても、この点は巧妙にやると思います。そこで政治勢力の仲長という言葉が問題になる。それは、さつき私が例を求めましたように、自分の待遇を改善しようとするときには、自分に都合のいいような政治勢力の伸長、これは合法的だと思いますが、その点は、どうお考えになりますか。教員が自分のベース・アップのために自分の政治勢力を扶植して行こう、そのための組織活動をやる、あるいは運動が展開される、これに対する見解を伺つておきたい。
  101. 大達茂雄

    大達国務大臣 その政治勢力というのは、教員自身の政治勢力という意味ですか。——ここにいうのは、政党政治勢力、むずかしい言葉を使つてありますが、一口に言えば、党勢拡張の目的を持つ、こういうふうにお読みいただきたい。
  102. 井堀繁雄

    ○井堀委員 政治勢力の伸長ということは、党勢の拡張であるとあなたは言いましたが、党勢拡張と政治勢力の伸長とは逢います。ここに問題があるのです。政党でもよいのですか、そこで政党の、自由党の宣伝活動じやない、社会党の党勢拡張ではない。しかし、その意図するところのベース・アップの問題、あるいは自分たちの主義主張というものが、帰せずして社会党の政策と一致した場合には、結果から見れば、社会党のためにお前ら拡張運動をやつておるじやないか。こういう解釈はどういうふうになりますか。
  103. 大達茂雄

    大達国務大臣 今の党勢拡張というのは、平たく申せばそう言えるというのであつて、ここにあまりむずかしい字ばかり使つてあるから、そういうふうな意味でお考えくださればよかろう、こういう意味であります。これは法律語ではありませんから、一口に党勢拡張と言つたのであります。そこで、ベース・アップの問題なら問題について、社会党の政策とほぼ一致をした。社会党と一致する場合もあるし、そのほかの政党も同じことを主張しておる場合もある。従つてその場合には、その目的を持つと同時に、この内容としては特定政党を支持させもしくは反対させる教育、これが行為の内容であります。それで今申したのは目的であります。行為自体ではない。そういう目的をもつてそういう特定行為特定教育子供にすることを教唆扇動と、実にまわりくどい話でありますが、そういう意味であります。従つて、先ほどここで申し上げたかどうか知りませんが、三本建に反対、そのための組合活動というものをいろいろやる、これも何らさしつかえない。個個の政党がありましても、政党の政策というものは、そのときの国内の情勢、いろいろな関係から打出されるものでありますから、その個々の政策を支持したり反対したりすることが、ただちに特定政党を支持するとか反対をするというところには行きません。私は行かぬと思う。今日再軍備をしてはいいとか、悪いとかいうことを言つてみたところで、これがすぐ特定政党を支持するということには、私はならぬと思う。そういう意味ではないのでありまして、ここに結局眼目とするところは、特定政党を支持しまたは反対するような教育子供に行うことを教唆扇動する、これが行為の内容であります。でありますから、今設例のような場合は、一切この法律とは関係のないことでありまして、その点は御心配のないように、決して白を黒と言つておるわけではない。
  104. 井堀繁雄

    ○井堀委員 心配をするなということでありますが、私はまつたく心配にたえないのであります。というのは、今も答弁が非常にあいまいに聞こえるのであります。あなたは非常にはつきり言つおられるのですが、われわれにとつては非常にあいまいに聞こえる。というのは、政党の宣伝拡張をやつてはならぬ、それはもう常識です。ところが結果から見て宣伝拡張と同じ結論が出るかもしれません。その目的を持つてつたかいないかということは、一体だれがその意思を見破るのですか、その思想をだれが判定するのですか。今日そういう科学はありません。その判定はだれがなさつて、どういう方法でやられるかということをお聞きいたしたい。
  105. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは実際の場合における立証の問題であります。各種の刑罰法令において、いわゆる目的罪として、その一定目的犯罪の成立要件としておる例はたくさんあります。従つてこれは立証に非常に困難な場合がありますから、目的罪であると実際はなかなかつかまらぬということはありますけれども、そういう立法例はたくさんあるのであります。それは各個の場合について立証されなければならぬ、かように考えております。
  106. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それではもう一歩つつ込んでお伺いいたしてみますが、そこでそういうつかまりにくいかもしれぬという法律についてこんなに輿論を刺激し、関係団体もしくは多くの国民が心配をしているわけであります。そういう心配を押し切つて、そういう効果の薄い、きわめて把握の困難な事態を取締ろう、もしくは防止しようという法案を出すことは、どういうところに目的があるのかということは、この文章に明らかになつているように、あなたが繰返しおつしやつたように、私もよくのみ込んでおるわけです。学校先生が無邪気な生徒に向つて特定政党に導くようなやり万は、これは良識ある人々はことごとく否定すると思う。また否定すべきであると思います。にもかかわらずそういう傾向があるということは事実であります。だからそれを阻止することをこの法律がねらつているというのでありますが、ところがそれがねらいにならない。私はその逆になると思う。なぜかというと、そういう意思を持つているのであればうつるのです。白紙のものに向つて字を書くのですから、赤の鉛筆を使えば赤と出る。墨を使えば黒と出る。持つているのは先生であります。一体だれが監督するのか。一人の先生に一人の監督者がついていなければ、子供に対して赤い教育をしたか白い教育をしたかわからない。こういうもので判定をしたり、あるいは措置すべきではないということが、どだい根本にならなければならぬ。民主主義の世の中にあつては、国民の良識を引上げて行くという政治活動でなければならぬ。そこで労働運動と関連して来るわけであります。あなたもたびたび繰返しているように、労働組合運動の活動は職場を離れれば自由であるわけであります。ところがその自由な天地が一番先生教育の基礎を養う場所であるということも否定できない。これはいかに切り離したくても切り離せない事実であります。そうであるならば、あなたが言う通りに答弁を真に受けるなら、先生がどういうイデオロギーを製造しようと、そういうことについては関係しません。しかし自分が赤いものを持つていて、白を出せなどという無理な注文をつけることは、私は難題だと思うのであります。どうしてこの法律でそういうことができますか。これは何もこういうところで議論をしなくても、幾多の生きた事実があります。だからそういう点ではまつた目的には合わない法律だから、これは大達さん初め吉田政府としては、ねらうところはどこかほかじやないかという考え方が一般に起つて来ているのも、私だけじやないと思うので、その点を明らかにする義務が政府にはあるし、われわれにもありますから、くどく伺つているわけであります。だからもしあなたが腹に一物持つてつて、ここで手練手管を使つて答弁をしようということなら、何回やつて意味がないと思う。それほど悪党じやないとあなたを信用しているわけであります。今だんだん具体的になつて来たので、あなたも言われるように、もしそういうものを取締ろうとするのなら、行き方は別にあるのじやありませんか。それは今の教員組合学校教職員の行き方として適当でないという輿論の非難もありましよう、輿論を無視して労働運動なんかが成長することはないぐらいのことは、教員組合の諸君は御存じである。しかし一部の策動や陰謀というものは、これは団体行動をやるときにあつては——人間社会において刑務所が必要たということはやむを得ぬことであります。それをこういう立場がかわつたところから持つて来てやるよりは、教員自身の自主的な努力にまつという法律に持つて行く方が私は正しいと思う。だから今の大臣の答弁はどつちつかぬということになるものですから、納得が行かぬので繰返し聞いておるわけであります。そこでさつき申し上げましたようにこの法律の「政治的勢力の伸長」という言葉は、あなたが答弁したこととはまるつきり違うことであると思う。これが自由党あるいはその他の政党の党勢拡張を禁止するという文字でないことは言うまでもない。これは何回も読みますけれども、「政党その他の政治団体」ですよ。「その他の政治団体」と入れたところに私はくせものがあると思う。そしてそれの「政治的勢力」です。でありますからあなたがさつき他の委員に答弁されたように、日本教職員組合がその政治活動をするための手続は、届けを出して簡単にできるわけです。そうした場合にはその他の政治団体ということになるわけです。そうしたらさつき私が質問したように教員組合団体は一方には政治活動を意図するために、そういう手続をしてその態勢をつくるかもしれぬ、しかしその主体のありどころというものは、言うまでもなく学校先生方の生活を守るための団体であることは動かぬ事実であります。そうするとあなたが答弁したように結局干渉しないと言うけれども、これが政治団体の手続をした場合には、ただちにこの団体に対しておおいかかつて来ることはいなめない事実ではありませんか。一方にはそういう政治結社の自由を憲法で認める、こういう根本的な問題がここにあるわけであります。私は時間を節約する意味で勘どころでお話を伺つておるのでありますが、あなたが一貫してそういうことを言おうとすればこれは別ですけれども、そういうものに対する十分な配慮が足りないのか、あるいはしかを追う者山を見ずというきらいがここに出て来ておるのかもしれません。しかし抜本的な立場からやはりこういう問題は考えなければならぬと思うので、くどいようですけれども何回もその点を伺つておるわけです。
  107. 大達茂雄

    大達国務大臣 この法律案は、あなたが今おつしやいましたように、先生方の自粛にまつて、そうしてこの八条の二項の精神が維持されることを主眼としておるのであります。従つて先生方自身に対して刑罰をもつては臨まないのであります。それは先生自身の自粛と良識にまちたいという考え方を持つておるのであります。そこでただその場合に、あなたの言葉をもつてすれば赤いチヨークを使え使えということを先生方に呼びかける、そういう行為があるとするならば、それは先生方のじやまになる。先生方が良心に基いて、自分の責任において良識に訴えてする教育を、横合いからまぜ返すということですから、その行為を禁ずる、こういう趣旨でありまして、決して教員自身に対して刑罰をもつて圧迫を加えるという考え方ではないのであります。  それから今の日教組政治団体として届出をした場合には、当然この日教組政治勢力の伸長というものを目的とした場合はこの目的のうちに該当するではないか、しかもそれはすべて合法的なものである、それにもかかわらずそういうことをするのはどうか。今日は御存じのように非合法政党というものはありません。政党であろうとあるいは政治団体であろうとも、非合法のものは今日ないのであります。ひとしく憲法にいう結社の自由によつて組織されておるものであります。それを非とするわけでは一つもない。共産党がいけないから、共産党を非とするがゆえにこの法律をこしらえたわけではないのです。問題はただ学校の場を通じて、子供はそのまましみ込むものですから、子供特定政党——これは非合法であろうと合法であろうとも、特定政党というものの先入観を与えて、その子供が生長のあかつきに思想的に、あるいは政治的にこれを方向づけるということがいけない。これがつまり政治の中立性を破るものであるから、それをしたくないということでありまして、その政党なり政治団体が合法であるとか、合法でないとかいうことは関係がない。合法政党であつても、その子供の頭に片方だけをしみ込ませるのが困る。ただ教育を守るという見地からの立法でありまして、決して労働団体に対して、その組織あるいは活動に対して制肘を加えたり、圧迫をするという気持は毛頭ないのでありまして、結局腹に一物あつてそういうことを言つておるわけではありません。ただいまお話になりましたようにこれを目的罪としますると、実際においては該当する立証が非常に困難であります。しかしながらこれは先ほどから申し上げますように、この法律がいやしくも行き過ぎにならないためにそういう配慮をしたわけであります。決して何か胸に一物あつて、ねらいをどこかほかへつけてこの法律をつくつたという気持は全然ありませんから、そこはひとつ誤解のないように願いたい。
  108. 井堀繁雄

    ○井堀委員 どうも何回聞いても納得が行きませんので、まことに残念であります。そこでこの問題は労働問題全体とも関連が非常に深いということだけは、今の大臣の答弁でますます私どもの危惧しておることがよりはつきりして来ましたので、いずれ労働委員会でもこの問題を議題に供して十分協議をしますから、その節は出席をしてぜひ御答弁を願いたいと思つております。きようは連合審査でありますので他の方に迷惑をかけると思いますから、専門的に関係することはこの程度にいたします。  次にいま一つ明らかにいたしておきたいと思いますことは、この中立法の第五条にあります処罰の請求権ですが、その請求権の中で学長、教育委員会、知事と三つにわかれております。そこで今までの討論で明らかになりましたように、教育的中立を保持しようと念願して発足したことはとにかくといたしまして、御案内ように知事の立場は今日公選知事で、おおむね政党に所属しておるものである。むしろこの法律ができることによつて教職員に政治的な色彩——まだ民主主義が成長しておりませんから、力に屈服するような事大主義が非常に強い。この法律は逆に政治的な色彩を教員に植えつける作用だけが残つて来る。すなわち知事の場合は知事です。あるいは教育委員会もまだ民主化されておりません。教育委員会もその制度としては民主的な制度になつておりますけれども、その人選その他に対しては、残存的な勢力の背景の上に逐次努力して民主的なものになろうとしていることは認めるのであります。でありますからこういうような刑罰を必要とする場合に、こういうところに無理が出て来ると思うのであります。だから首尾一貫しないということになるわけであります。もしこういうものが政治的な中立を期待するというのでありますならば、刑罰をもつて報いるべきものでないんじやないか。刑罰をつけるとするならば、道義的なものでなければこの法の精神とはつり合わなくなる。ことに先生がどういう教育をするかということは、この法の通りに解釈しますと、文部大臣了しては、この先生がほんとうに公正な立場で教育をしているかどうかということをそれではどういう方法で指摘されるか、あるいは犯罪として取上げる場合に、どういう立場で認定を下して行くか、問題になつて来たときには、それはなるほど教育委員会もよろしいでしよう。あるいは知事が処罰の請求をするということもいいでしよう。そういう事実をどこで発見するか。校長先生がその学校においてやるかもしれない。校長自身がそうだつたらどうするのです。一体どこにそういう問題を正しく運営する道があるかをお尋ねしてみたいと思う。
  109. 大達茂雄

    大達国務大臣 いわゆる請求をまつて罪を論ずるということは、これはただちに司直の手が直接動いて行くということになれば、世間でよく言われるように、警察官が学校の中に入つて来るとか、いろいろな問題が起り得る。できるだけ学内の静詮を維持するという見地から、こういうふうに側からやかましくやられては困る。そういうことで、その責任者である公の機関の認定にまち、その請求によつて司直の手が動く。これはなるべくこの点においても行き過ぎの起らないようにということを配慮した結果であります。監督庁は、御存じのように教育委員会である場合もありますし、それから私立学校については、現状は知事がその地位に立つて監督をしておる。こういうことで、公の機関でないとおかしいから、それで私立学校の場合は知事が請求をする。ちようど教育委員会と同じ立場に立つわけであります。むろん知事は、公選である以上は政党に所属する人もおります。教育委員会でもやはり同様でありまして、今日教育委員会に立候補する場合に、政党に所属しておつては悪いという制限はないのであります。ただその政党がいずれにいたしましても、その地域民衆の直接な選挙によつて、その意図を代表して教育行政あるいは一般地方行政に当つておるのでありますから、初めから政党を非常にいけないと言つているのじやないのであります。ただ特定政党に片寄つて子供に仕込まれるのは困る、これだけの話であります。ですから、一般の地方行政にしろ知事がやつておるのである。それを政党に所属しておるから、非常にへんぱなことをするであろう、こういうことになれば、おのずからその知事さんは次の選挙には民衆の信頼を失することになるであろう。これが、まわりくどいかもしれないが、民主主義政治のやり方である以上は、これに依存せざるを得ないのであります。そういうわけでありますから、これが非常に困つた結果を起す、逆に学校のうちに非常に政党的な色彩を植えつけて行く、決してこういうことにはならぬと思つております。
  110. 辻寛一

    ○辻委員長 井堀君初め質疑の通告者の各位にちよつとお願いを申し上げておきたいと思います。ただいま両委員会理事の諸君にお打合せをいただきまして、本日の連合審査会は大体七時前後に終了いたしたいということになつております。そこで、まだ通告者五名残つておりますので、どうかその辺よくお考えの上お願いをいたしたいと思います。
  111. 井堀繁雄

    ○井堀委員 たいへん長時間かかつて申訳ないのですが、事柄は非常に重大だと私は思います。というのは、今まで文部大臣から明らかにされた範囲内においても、第一この法律それ自身の目的と、それからこの法律が施行されて行く姿との問の矛盾が、私はどうしても了解できないでいるわけです。これは私の頭の悪いせいであるかもしれません。勉強いたすつもりでありますが、次にお尋ねをいたしましたように、それでは百歩譲つて、この法律をお互いが善意を持つて目的のために遂行して行こうという立場でお尋ねをしたわけであります。そこでそういう立場からこの問題を取上げてみましても、今お答えがありましたように、一体小学校先生あるいは中学校先生が、かなり広い地域に分散して子供と直接接触しているわけです。この一番長い時間接触している教員の児童に対する影響力というか、感化力というものは、これは第三者の取締りや監督によつて左右できないものではないかという、私は事実問題に対する見解をとつているわけです。文部大臣としてこの点に対してもう少しはつきりした見解を伺つておきたい。
  112. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はいろいろな事情から考えて、今日学校先生方が外からの働きかけに対して自主的の態度をもつて終始しておられるとは思えないのであります。
  113. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこで実際問題としては、どなたがお考えになつても明らかなように、先生の思想から出て来るものについては、これは人為をもつてしては阻止することができないというのが、正しいものの見方だろうと思う。それをやろうとすれば、往年の警察犯処罰令や、治安警察法、治安維持法のごとく、その政治的な発言をする場所を規定し、もしくはその規定された以外の場所ではそういう行為がやれないようにしておく。その限られた場所には、きびしい服務規定と中央集権的な徹底した命令に基く警察官が、臨監と称する立場においてその言論を取締り、監視するということがあつても、思想は決して取締りができなかつたという苦い経験を持つているわけです。ある程度の緩和はできるかもしれない。だから捕捉するのに、これよりもつとむずかしいことだと思う。そうすると、こういう法律をつくつてやろうとすると、巧みに法網をくぐつて公然と世の中にそういう事実が跋巵して来たときには、今日と違いまして、輿論は責任をどこに問うかという問題になると思う。少くともこういう法案審議した者の責任は、きわめて重大だといわなければならぬわけであります。提案した政府それ自身はとにかくとして、こういう点について議員のこういう種類の質問に対しては、相当時間をかして納得するように努めてもらわなければならぬと思うわけであります。そういう意味で、実はたいへん頭の悪い質問をいたしましたけれども、どうしても納得ができないで残念に思つておりますが、委員長からの御意見もございまして、他の委員諸君の発言を妨げることになると思いますから、一、二のお尋ねで切ろうと思います。  そこで第一にお尋ねいたしましたことと関連してでありますが、労働者として団体行動あるいは団結権の自由の問題とこの法律関係の点について一番先に起つて来る問題は、多賀谷委員もちよつと触れましたが、今日御案内のように、教育が教員だけの団体でその目的を達することは不可能なことは常識であります。できるだけ広い意味で労働者が手をつなぎ合つて行くということが、民主主義としては許された最も賢明な、自己の権利と地位を追求する道であるということも、これはもう説明を要しないと思うのであります。そうする場合に、教員組合という団体が、——また今後できるかもしれませんが、その団体一般に言う横の連絡というか、共同斗争というか、こういう運動を起す場合に、御案内のように民主主義の法則に基いて、教員組合より数の多い他の労働者の組織している団体と、一堂に会して議決をするということも起り得るわけです。その場合は、民主主義の法則に基いて、この団体は多数の意見に従うわけであります。教員組合団体としての考え方は、こういう法律があるから、どうもこういう法律に抵触しやすい、疑いを持たれやすいということで、こういう関係したような決定の仕方に対して異議をとなえたところで、結果において多数に従うということになります。そうすると、きめた以上は、その団体としてそれぞれの責務を果すわけでありますから、ここで抵抗が起るわけです。その場合に政府としては、その決定が不都合であると言うことはできぬはずだと思う。そうすると、この法律と、憲法の言う基本権とは、摩擦を生ずるわけであります。その場合は私の見解からすれば、基本的なものは憲法にあると思いますから、憲法の権限がそういう行為を正当化すると思うのですが、その場合にはこの法律は死文化するか、その場合の摩擦はどういうことになつて現われて来るかについて、お尋ねをしたいと思います。
  114. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はただいまお話に抵触するような場合はちよつと考えられないと思う。どうしてそうなるか。
  115. 井堀繁雄

    ○井堀委員 文部大臣がお考えになるならぬは別なんです。事実を言つている。事実を否定することはできますまい。さつきのあなたの答弁の中で明らかにされたように、団体行動については何も牽制もしないし、別個だというから、自由に集まる。現にかかる共同会議とか、あるいは上級団体を持つことは、自由であります。その場合、上級団体に加わつて決議をした。その決議の内容が、たとえば何々政党はよくないという否定的な決議をするわけです。そういう意思が先生を強制して来ることは否定できないのです。その先生が教壇に立つたときに、二つの人格を持つておれば別であります。自分の意思を偽つて子供に接するというとができるなら別たし、またできたとするならば、これはゆゆしい問題だと思う。それはなぜかというと、先生は煩悶しております。憲法の基本権で団体行動の自由、民主主義のおきてをきびしく言うて、それで自分が教壇に立つたときには、自分の意思に反することを言わなければならぬような教育の仕方というものが、実際上やり得るものではないのであります。
  116. 大達茂雄

    大達国務大臣 この法律案は繰返して申し上げますように、子供にそういう教育をせよということを教唆扇動する、そういうケースに限るのです。だからそこでどの政党がいいとか悪いとかいうことを、かりに申合せかできたところで、この法律の条件はそれでは整わないのであります。従つてこの法律関係ない。またあなたは、教師はその教師自身の持つておる政治的な主張あるいは政治的な考えが、どうしても子供に映るのだ、こうおつしやるが、私はそういうものじやないと思う。しかしながらとにかく教師が政治的に深入りをすると、自然にそういうことが起り得る。それが今度の特例法の改正の要点であります。しかしあなたのおつしやるように、先生が自分が個人的に持つておる考え子供に教えるのは当然であつて、それを教えないとすればゆゆしい問題であるということは、一体どういう意味か知らぬが、それならば基本法第八条の二項の精神というものは、根本的に没却されるということになります。
  117. 井堀繁雄

    ○井堀委員 基本法の精神は申すまでもなく、これはやはり民主主義のおきてに基いて、それぞれやつて行くわけでありますから、今私の言つたことは、一方はあなたが言うように、別だとおつしやるから言うのだけれども、この法律があらゆるものに優先するというなら、私はこういう質問をしないのです。あなたが言うように、職員が自分の生活権を守るための行動は別個だ、こう言うのだから、別個でないという事実を私は今指摘したわけです。別個にすることができない事態が先生にとつて起る。あなたはそういうふうに割切れる。先生としてはそうは行かない。今言うように、団体の決定ということについては、その団体の決定が悪いとかいいとかいうことは別として、民主的な手続とその答えに従うわけでありますから、これは当然なわけなんです。これは教育基本法精神もそういうことを意味するのです。何でもかんでも中立だ、白紙だという意味ではないのであります。道徳規律というものは、おのずから民主的な要素の上に成長して来るものであることは言うまでもない。あらゆるものが国民の総意の上に醸成され、成長して行くわけであります。でありますから、そういう成長は、一方の民主的な団体という大きな行動の中において醸成されて来る。そういうものを教員が——あなたは機械的にものを考えますけれども、労働運動というものを狭い意味考えたいで、労働組合の健全な成長を願う、ここにこそ重要な問題が生れて来たと私は思うのであります。単に功利的な労働者の自己的な利益追求だけの労働団体ではありません。労働法その他にあるように、労働者の生活を安定し、同時に労働者の共同の利益を守りつつ、そうすることによつて、その産業もしくはその社会に、あるいは国民全体の福祉に貢献することのために、労働組合の運営がなされて行かなければならぬ。これは民主主義の常識です。そういう大きな目的を持つておる合法団体としての行動が一方に許される以上は、そこで決定したものを否定するような態度は、みずから民主主義の原理原則を踏みにじる行為になるわけです。このことがのみ込めないで、もしこういう法律で、それはそれだ、これは別にやるということになるならば、まるつきりそれは今日の民主主義の制度を理解しない、あるいは民主主義を無視した見解であれは別ですけれども、聰明大文部大臣でありますから、まさかそういうめちやな議論はよもするのじやないと思いますから、今の矛盾を御指摘してお尋ねしたわけです。でありますからはつきりここで言つていただきたいのは、労働団体がそういう決定をしたことは間違いであるというならば、これは別です。それは正しいということになつたら、その正しいことを自分の良心に問うて、教育者としての行動なり、その行動から出て来るところの思想というものが、教育に反映しないなどということは、——私はこれはまつたく不可欠なことだと思う。この事実はこの法律にとつて大事なところではないか。これをほうかむりして、通るか。明らかに解決して進むことが、法案審議の過程において大事だと思いますから、お尋ねしておる。
  118. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいま私はあなたと討論することは避けたいのであります。そこで先ほど具体的に設例をされた。その設例については、この法律案とは関係ないということを申し上げたのであります。  もう一つは、あなたは、その先生がかりに共産主義の思想を持つておれば、それを子供に教えるのが当然である、こういうふうな考え方で言つておられるようであります。これは日本教育を破壊する考え方であります。
  119. 辻寛一

    ○辻委員長 井堀君、先ほども申し上げましたが、大体七時ごろに終りたいという申合せでございますが、あなたお一人でもう一時間半ばかりおやりになりました。あとまだ五人ほど残つておりますから、どうかその程度でおやめいただきたいと思います。
  120. 井堀繁雄

    ○井堀委員 せつかくの御注意でございますから、もうやめますが、今一言、重大な発言がございましたので……。何か私が共産主義教育をという御発言のようにとれましたが、これは重大なあれで、むしろ私は逆なんであります。意図することがほのかにわかるからお尋ねをして来たのでありますが、時間の関係もございますので、この問題に触れることは困難だと思いますが、どうしてもこの問題はやはり明らかにしたいと思いますので、別な機会にお伺いすることにいたします。私は共産主義というものが日本の多数の意思によつて支持されるものに決してならないという前提をもつて質問をしておるつもりであります。でありますから、むしろそういう思想的な危険が教育に持ち込まれるのではないかという前提でお尋ねをしたけれども、その点は今明らかにされなかつた、ただいま初めて逆な発言においてさなれておりますが、この問題を究明したいというのが私の質問して来た大きな理由なんです。はなはだ残念でありますが、時間の関係で他日また労働委員会等の御出席の節ただしたいと思います。これをもつて私の質問を終ることにいたします。
  121. 辻寛一

    ○辻委員長 黒澤幸一君。
  122. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 あとにたくさん質問通告者がありますので、簡単に文部大臣にお伺いしたいと思います。  教育法案政府から提案されまして、そのためにこの法律案に対しまして反対の空気が今日全国的に巻き起つておるのであります。それはただ単に五十万の教職員の諸君ばかりではなくて、学者、文化人あるいは言論機関、全国の中央地方の新聞が数百あろうと思うのでありますが、この法律案に賛成しておる新聞は数紙にすぎないということもわれわれは聞いておるのであります。また先ごろの文部委員会における公聴会におきましても、公述人九名のうち七名は反対の意見が述べられたというようなことも聞いております。かように各方面に非常な反対の意見が強まつておるときに、何がゆえにかような法律を急速に提出しなければならないか。私はその点につきまして、文部大臣の文教政策に対する根本的なお考え、理念をお聞きしたいと思います。  なお今日急遽そういう法律をつくらなければならない具体的な事実があるのかどうか、そういう点を最初にお聞きしたいと思います。
  123. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは必ずしも急遽出したというわけではありませんが、しかしこれは決してものずきに出したわけではありませんで、私どもとしては慎重に検討してこの法律案提出する必要があると考えたからであります。
  124. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私がただいま御質問いたしました文部大臣教育行政に対する根本的なお考え方、その点に対するお答えがなかつたのでありますが、この点御答弁願いたいと思うのであります。
  125. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育行政に関する根本的な考え方というお尋ねは、非常に漠然として返事がいたしにくいのでありますが、この法律案に関する限り、日本教育基本法第八条の二項に示されているがごとく、厳重にその政治的中立性が確保せられなければならぬ、かように考えます。
  126. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私がただいま教育行政に対する文部大臣の根本的なお考えをお聞きいたしましたのは、最近における文部大臣のお考え方が、あるいは民主主義に逆行するような、かつての戦時中のようなお考え方が起つておるのではないかということを私は懸念するのであります。この点に対して申し上げると、文部大臣は非常にお怒りになるかもしれませんが、私は率直に申し上げるのでありますが、文部大臣は戦時中に満州国の総務長官あるいは昭南市の市長あるいは内務大臣、東京市長等をおやりになりまして、追放の身になつたのでありますが、幸か不幸か追放か解除されまして青天白日に大つたといいますか、それでおいでになつたのでありますが、このことは文部大臣がかつての軍国主義あるいは反動的なことを清算されて、新しい民主主義の立場に立つて追放の解除をされたと私は信じたいのであります。そのために文部大臣は吉田内閣の民主教育の府であります文部大臣に御就任になつたわけであります。ところが文部大臣に就任して以来の文部大臣の文部行政に対する足跡を顧みますると、民主主義に逆行するような言動が見受けられるのであります。たとえば過ぐる法務委員会におきまして、文部大臣は、非常に勇敢なとつぴな発言をされまして、戦争裁判は野蛮人のすることで、人食い人種の部落のけんかに勝つたか負けたか、それの裁判と同じようなものであるというようなことをお答えになつたのでありますが、私はこのことは文部大臣も下用意にされたのではないかと思うのでありますが、しかしながら議会におきましてかような発言をされたということは非常に重大だと考えます。こういう言葉はいわゆる一般の人、田夫野人といいますか、そういう方でも容易に品にできない言葉だと考えられるのでありますが、こういう文部大臣の発言は今日世界の各方面に非常な注目を引いておる。私は少くとも一国の文部大臣がかような発言をすることに対しては、非常に遺憾にたえないのであります。(「本論をやれ」と呼ぶ者あり)このことは私は文部大臣としての文教政策、教育に対する考え方に重大な関係があると信ずるゆえに質問するのでありますが、かような発言に対しまして文部大臣は現在どういうふうにお考えになつておるか、その点をこの機会にはつきりお聞きしておきたいと思うのであります。
  127. 大達茂雄

    大達国務大臣 私が非民主的な人間である、こういうことをいろいろ過去の経歴で御判断になつておるようでありますが、経歴だけで私の思想をきめつけられることは迷惑であります。思想調査としてはあまりおそまつ過ぎる。それから私の過日の発言でありますが、これは私個人として考えておることを率直に聞きたい、こういうお話でありますからさような答弁をしたのであります。今非常にこれはけしからぬことであるというお言葉でありましたが、それはその内容がけしからぬという意味か、あるいはものの言い方がもう少し当りさわりのないような言い方をしたらよかろう、こういう御親切な気持からおつしやるのか、その辺がはつきりしないと返事のしようがない。
  128. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま驚いた御答弁をいただいたのでありますが、その言葉の表現がまずいとか、内容とか——私は普通人の使う言葉ならばあえてここで問題にしようとはしないのであります。しかしながらあの発言は少くとも常識ある日本人の発言だとは私は考えられない。内容的に見ましても、少くとも文部大臣か——私があえて文部大臣の過失の経歴を申し上げたことは、そういう経歴を持つておりましても、文部大臣は今日、日本の民主教育の長として最も適任でなければならないにもかかわらず、一方においてはかような発言をいたし、一方においてはただいま議題になつておりますようないわゆる輿論の反対を押し切つてまでもその法律案を制定しようとする、この二つをあわせ考えますときに、私は大達文部大臣の心境を疑わざるを得ないのであります。私は、文部大臣のあの言葉は、不用意に出たのではなくて、あなたの心にあるものがあのような言葉となつて率直に現られたと考えておるのであります。そういう点から、文部大臣のあの発言は、文部大臣が常々考えておることが、意識するとしないとにかかわらず現われたのではないかと思う。もちろんこれはその表現においても許すべからざる表現だと考えておるのでありまして、私に対する反対質問をするのでなくて、文部大臣は、率直に、あの言葉の内容はこうなんだ、またその表現についてはどういうふうに考えておるということを、議員の質問に対してお答えになるのが当然だと私は考えます。
  129. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は別に田夫野人もあえて言わぬような下品な言葉を使つたとは思いません。どこが下品であるか御指摘をいただきたい、あれを言うたから私の思想がとうこうとおつしやるが、あれは何か軍国主義者でなければ言わぬことでもあると考えますか。
  130. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私は下品とか上品とか言うのでなくて、いわゆる、あのかつての戦争裁判が人食い人種のけんかであるというような簡単な考え方、そのものが問題なのである。文部大臣の経歴を見ましても相当の責任の立場にあつたわけであります。そういう人からあの戦争を是認するがごとき発言があつたのでありますが、私はあの発言に対しまして、文部大臣はあれでいいと思つておるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  131. 大達茂雄

    大達国務大臣 あの発言のどこに戦争を是認するという思想がありますか。
  132. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 それでは文部大臣はあの発言に対して何ら反省するところはない、あの発言はあれでよろしいのだというお考えでありますか。
  133. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は無我夢中で言つたのではありません。
  134. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 無我夢中で言つたのでないとすれば、慎重な考慮の上言つたと私は解釈するのでありますが、現在におきましても文部大臣はあの発言に対しては何ら反省はしない、また考える余地はない、あの発言は今日そのまま是認するというように解釈してよろしいかどうか。
  135. 大達茂雄

    大達国務大臣 戦争裁判については、見る人によつて考えが違いましよう。私は私の考えを、個人として考えておることを率直に言うたのであつて、それを他人から干渉される理由はありません。
  136. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 それではなお、最後に私は確認したいと思うのでありますが、文部大臣はあの発言に対して、そのままこの席上で再確認されますか、どうですか。
  137. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は、言つたことを取消す必要はないと思います。
  138. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 わかりました。たいへんに質問が遅れたのでありますが、次にこの教育法案について、憲法第十条から第四十条にわたりまして国民基本的の権利が規定されているのでありますが、これを見ますると、学問あるいは思想、表現、良心そういうことの自由が保障せられております。それで法の前には国民は平等であることも規定せられておりまして、政治的、経済的、社会関係において差別されないことを保障しているのでありますが、国家公務員あるいは地方公務員の諸君は、全体の国の奉仕者である、また公共の福祉の見地から、かつて国家公務員法及び地方公務員法が制定されまして、政治的な自由というものが大幅に制限されたのでありますが、なお今回の二法案によりまして、教職員の諸君は、より以上の政治的自由を剥奪される結果になるのであります。また教育基本法におきましては、その第八条に政治教育の一条を特に設けまして、政治的教養教育上に必要なりとして尊重さるべき点が規定されております。しかるにこの二つ教育関係法案によりまして、これが制定せられますならば、憲法におけるただいま申し上げましたところの権利が失われるのではないか。また教育基本法の今申し上げました第八条の条項が蹂躙されるのではないか、そういうふうに考えられるのでありますが、その点についての大臣の御所見を承りたいと思います。
  139. 大達茂雄

    大達国務大臣 憲法に規定してある自由というものが、一般の公共の福祉の見地からある程度の制限を受けるということは、これは当然であると私は考えます。ただいまお述べになりました公務員に関する政治行為の制限につきましても、同様の見地からこれが制限を受けるのであります。この問題は、現に、すべての公務員についてそういう観点から制限の規定があるのでありまして、いまさら憲法云々の問題ではなかろうかと思います。ことに、この教育の中立性を確保する法律は、あなたが今おつしやるのとはまつたく逆でありまして、八条の二項の精神にのつとつて、それを堅持したいという気持からできたものでありまして、これができたために八条の二項というものがまつたくくずれてしまうということは、私どもとしては何のことかわからぬのであります。
  140. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 申し上げるまでもなく、日本の憲法は民主憲法であり平和憲法であります。従いまして、教育もまた民主教育であり平和教育でなければならないのであります。それでありまするから、日本の教職員諸君は、憲法を守つて、平和的な教育、民主的な教育をすることはこれまた当然であります。それで、義務教育の課程において、将来の日本を担当いたしまする立場にありまする生徒、児童に対しまして、平和的な民主的な教育をすることで将来の日本の民主国家の完成が約衆されると思うのであります。具体的にこの点についての質問を申し上げまするならば、日本の平和的な憲法を守るために、憲法に規定してある戦争放棄や憲法に保障せられている国民の自由と権利を守る教育、そういう教育がこの二法律案に抵触するかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  141. 大達茂雄

    大達国務大臣 非常に大ざつぱなおつしやり方でありましたが、この教育政治的中立確保に関する法律は、一定の条件を整えて、そうして特定の内容の教育をすることを教唆扇動する者を処罰対象としておるのであります。あなたの今お話になつたことは、平和教育といいますか、再軍備反対ということが、このいわゆる特定政党を支持または反対させる教育という中に入るか入らないかという趣旨のお尋ねだと思いますが、それだけでは入りません。
  142. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 もう時間がないそうでありますから、あと一点だけお聞きしたいと思います。  吉田内閣は申し上げるまでもなく自由党内閣であります。従いまして、吉田内閣の文教政策はまた自由党の文教政策であると考えております。大達文部大臣は自由党員であり、吉田内閣文部大臣である限りにおきましては、当然自由党の文教政策を尊重してやつて行くことになると思いますが、そうしますると教育の中立性というものはどういうことになりますか。
  143. 大達茂雄

    大達国務大臣 現内閣において自由党の文教政策を行つておることはお話になるまでもないことであります。それは教育の中立性とは何の関係もないことであります。決して自由党を支持するような教育をする、さような政策はとつておりません。
  144. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 これはただいま議題になつておるのと違うのでありますが、この機会に文部大臣にお伺いしたいと思うのであります。今昭和二十八年度の年度末になりまして、地方教育委員会におきまして予算の関係等から教職員の整理がされているところがあるのであります。たとえば宮城県、福島県、栃木県等でやられておるのでありますが、その他でも非常に教員の間に問題になつております。私は栃木県の実例を申し上げて文部大臣のお考えを聞きたいのでありまするが、栃木県におきましては、昨年度より入学児童を入れまして全体の数で一万六千から一万八千ふえております。ところが、それに対して教員はどうしても最低四百人から増加しなければ通常教育ができないのでありますが、この児童がふえておるのに教員をふやさないはかりではなくて、四十歳以上の女子教員に対しまして退職の勧告を今やつております。そのことは半強制的でありまして、非常に問題になつておるのでありますが、そのように女子教員のみに限つて、しかも四十歳以上の者の整理を四十三名からしようとしておりますが、こういうやり方に対して文部大臣といたしましてはどういうふうにお考えになるか、また何かこれに対する御処置をされるお考えがあるかどうか、その点をお聞きしておきたいと思います。
  145. 大達茂雄

    大達国務大臣 今年は非常に小中学校の児童数が増します。その関係からいたしまして、国の予算といたしましては従来の実績から考えまして、約二万人程度の教職員の増加を大体予想して、それに対する予算措置をとつております。しかしこれは地方の財政の関係でありますし、また各地方々々においては、今年は何か学校の教員の大幅の首切りがあるというへんな宣伝が行われまして、それで県の予算を極度に締めるというようなことは、実は私ども聞いておるのであります。それに対しては自治庁の方と私の方とから実際の国が考えておる予算措置というものについて説明をした通牒を出しまして、誤解のないように措置を講じております。ただ人事の権限はもちろん地方の教育委員会にあることでありまして、従つて人事がどういうふうに行われておるか、これは私からは容喙すべきでもなく、また県の教育予算においてどの程度に教職員の給与の経費が計上されるか、これも私どもとしてはただいま申し上げたように、国の予算の実質を説明して誤解のないようにするという以上にこれをどうこうというさしずをするわけには行かない。こういうわけであります。
  146. 辻寛一

    ○辻委員長 大西正道君。
  147. 大西正道

    ○大西(正)委員 簡単に御質問申し上げます。この二法案が提案されてからかなり国会内においても論議され、また一般社会においてもいろいろな意見が出ておるわけなんであります。私が見ましたところでは、各新聞はいずれもその社説、主張において、いろいろ論議の紆余曲折はありましても、最終的にはこのような内容を持つところの二法案教育の場に適用されるということはこれは非常によくない、こういうふうな意見が非常に強いので、これはおそらく文部大臣も御承知のことだろうと思います。また教員組合はもとより、教員組合とその対鎌的な立場にあるようないろいろな教育者の団体もこの法案については反対の意向を表明しておるように私は思つております。     〔辻文部委員長退席、相川文部委員長代理着席〕 またこの間私どもは輿論がどのような方向にあるかということを最も端的に知ることのできる公聴会を持つことができたのでありますが、九名の公述人の中の七名までがこれについて反対の意向を表明されておるのであります。また私の知つておる範囲では、たとえば民主的な労働組合の世界的な組織体であるところの国際自由労連の書記長からも、かなり長文の電報が総理大臣並びに労働大臣文部大臣に対して寄せられておるのであります。これは大臣もお読みになつたと思います。このように見て参りますと、この法案に対しての反対批判がかなりきびしいということを率直に認めざるを得ないと私は思います。大臣はこのような輿論、一般の風潮に対して、立案を決意された当初といまなお少しもお考えをかえておられないかどうかということをまずお聞きしたいのであります。これは今までの文相の答弁から聞きますと、かえておりませんと言われるかもしれませんが、おそらく私はこれだけのいろいろな観点からいろいろな論が尽されておるのを文相はお聞きになりまして、従来の考え方に対して何か検討を加える、こういうところがないかどうか、率直にお考えを伺いたい。
  148. 大達茂雄

    大達国務大臣 この法律案に対して世間で非常に反対の意見の強いということも私承知しております。従つてその反対の意見につきましては、でき得る限り新聞に出ておりますものはよく新聞を読みますし、雑誌に出ておるものもよく読むということでその意見を傾聴しておるわけでありますが、それにもかかわらず、ただいま大西君の言われましたように、この法律案が必要だという私の所信をかえるというところには行つておりません。
  149. 大西正道

    ○大西(正)委員 基本的な考えをかえる段階には至つておらぬということでありますけれども、公聴会の公述の内容を見ましても、単なる全体にこれがいけないのだとかなんとかいうことではなしに、なるほど教職員の一部の偏向を認める者でも、こういうところは行き過ぎではないか、たとえば罰則に刑法を適用するというようなこと、あるいは非常に内容が抽象的でありまして、もしこの法が実施された場合には、この解釈をめぐつて非常に混乱が起きるであろうというようなことから、いろいろな修正意見と申しましようか、そういうものも出ておるのは事実であります。これも大臣はよくお読みになつており、お聞きになつておると思うのでありますが、もし今のように基本的な所信をかえないとおつしやいましても、文相の言われる、あくまでこの必要を痛感するとおつしやるなれば、そのような観点から、このような具体的な意見について取捨選択の考慮を払おうと思われるかどうかということ——これは全然そういうことは思わぬと言われるということは私は期待しないのでありますが、ひとつ良心的な御答弁をお願いいたしたいと思います。
  150. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは公聴会の意見も私大体聞きました。私はこの公聴会においても実は法律案の内容かよく理解されておらぬ。こういうことを言つては失礼でありますが、ほとんど内容は見ないで議論をされている向きも相当ある、こういうふうに私は感じたのです。それはともかくといたしまして、私は原案をかえなければならぬという心境には達しておりません。むろんこれでなければならぬと、これは私が一人で思つてみたところで、国会で御審議になつておることでありますから、それを絶対に承知せぬとかなんとかいう問題ではありませんが、しかし私の信ずるところでは、やはりこの法律案を撤回するとかやめるとかいうような考え方には私は気持はなつておりませんのみならず、ますます実はその必要を痛感しておるのであります。
  151. 大西正道

    ○大西(正)委員 今の所信のほどには私は別な意味で敬意を表しますが、いろいろな輿論というもの、特に公述人の公述内容が内容を知らぬというような意味の御発言は、これはいささか行き過ぎではなかろうかと私は思うのであります。これは後に述べますが、も参しあれだけの専門家もたくさんおります、あの人たちがかなり研究してもわからないような、文相の意図されるところと違つたような、すなわち誤解でありますね、そういう法案であるなれば、これまたそれ自体が大いに問題にされなければならぬと思うのでありまして、この点、内容を知らぬというようなことは、あげ足をとるのじやありませんが、これは少し考え直してもらわなくちやいかぬのじやないかと思うのであります。私は公述人をあそこに呼ぶという場合には、これは院内の多数党は必ずしもその多数だけで初めの考えを押し通すというのではなしに、やはりあそこで十分論議を尽して、とるべきところはとつて、修正すべきものは虚心坦懐に修正するという意味があの公聴会を持つゆえんであろうと思うのであります。そういう意味から考えますと、私はかなり傾聴すべき意見がこの疑問の多い法案に対して投げかけられたと思うのであります。これは審議の終了までにまだ時間がありますから、文部大臣、もう一ぺんあれをひとつ——文相はおらなかつたようでありますが(大達国務大臣「いや、おりました」と呼ぶ)おられなかつたときもありますが、ひとつ速記録をお調べになつてよく読んでいただきたい。  そこでもう一つお伺いいたしますが、非常に強い決意を持つておられるのでありますが、もしこの法案が——一例を申しますと、十六特別国会において成立を見ました外航船舶建造融資利子補給法、いわゆる造船疑獄の温床となつておりますあの法律でありますが、あの法律政府提案であります。ところが提案されましてからその後、いわゆる自由党、それからもう一つ小さい自由党と改進党との保守三党の修正案で、これがまた再び修正された、こういう前例もあるわけでありまして、今のこういうふうな前例を思いますと、なお保守党の間でこの法案に対して最終的な態度決定をしていないということも私は聞いておるのであります。こういう状況を勘案いたしまして、もし三党の間においてこの政府原案に対して修正案が出た場合には、文相といたしましてはますます所信を伺められたという建前からいかように対処せられるか、ひとつお聞きしたい。
  152. 大達茂雄

    大達国務大臣 修正についてはこれは国会の問題でありますから、私がどうこう言い張つてみてもしかたがないことであります。ことにこの修正案自体の内容を承知しなければ、あらかじめ賛成とか反対とかなんとかいうようなことは言えません。私が今申し上げましたのは、あの法律案を撤回するとかなんとかいう、そういう気持にはならない、こういうことを申し上げたのであります。
  153. 大西正道

    ○大西(正)委員 それではその問題はそれだけにいたしまして、次の中立性の問題でございますが、私は二法案のうちの一つ教育政治的中立確保に関する法律案というこの題目がどうもふに落ちない。私の考えを申しますと、今の政党政治のもとにおきまして、厳密な意味におきましての政治的中立ということは不可能ではないか、私はこういうふうに考えておるのであります。何となれ、ば政党内閣におきましては当然多数党が政権を担当いたします。現在は自由党内閣でございます。これは前発言意も触れましたように、現在の政府が行いますところの文教政策というものの少くとも基本的なものは、与党であるところの自由党の政策がそのまま実行されるということは、これはよいとか悪いとかいうことを通り越して、理の当然であると私は考える。ところが今の法律案教育政治的な中立を保つのである、政党政派、一党一派に左右されないところの教育を行わんとするものである。こういうことなのであります。こういうことは厳密な意味においては不可能なのではないか。これがもし社会党が政権をとれば、社会党の教育政策がそのまま文部省の教育政策として現われて来ることは理の当然であります。そういう一つのロジックの中で政治的な中立ということがはたして自信をもつて主張できましようかどうか。私は真に教育政治的中立をやろうとすれば、どうしても文部省の機構というものについて相当な変改を加えなければ不可能なのではないか、こういうふうに考えておる。私の考えるところの教育政治的中立というのは、この前何かの機会に申し上げましたが、決して右と左のまん中だ。一番こつちに自由党があつて一番向うに共産党があつて、その右側に改進党があつて、そのこつちに左派社会党があるということになれば、まあ右派社会党はまん中だということになるわけでありますが、こういうことは笑い話になりますけれども、そういうものではないのでありますから、当然政治権力から独立して、そういう政治権力の支配に煩わされないという一つ教育の理想に照らして教育の運営をやろうというのが、教育の中立性であろうと思う。そういうふうに考えますと、その思想はやはり教育委員会の制度に現われていると私は思うのであります。地方の一政治権力から独立して、一つの住民の意思を教育委員会に結集して、そこで教育の運営をやろうというのでありますから、これは文部省も双手をあげて賛成されるだろうと思います。ところが、この政治権力から独立した自主性のある教育行政の中枢であるところの中央の教育行政は、これは決して都道府県の知事とは別個の教育委員会が持たれ、市町村の市町村長とは別個の教育委員会があつて教育の運営をしているのではなくして、国の中央におきましては、これは大達文部大臣はいわゆる与党の方なんでありますが、こうい)政治権力から独立したものがもしあるとすれば、それは私は当然中央教育委員会とも名づけらるべきものであつて、これはやはり公選によつて、そして政党から自由の立場において教育の中枢が握られなければならぬと思うのであります。従つて私は教育政治的な中立ということを厳密に言うとすれば、今のこの政党内閣政治のもとにおいては教育政治的な中立ということは主張できないと思う。それは私はそういうことは考えませんと言われても、論理としてそういうことになるのでありますから、この点について、少くともこの法案の名前が教育政治的中立確保に関する法律という以上、これは厳密に検討を加えねばならぬと思うのでありまして、この問題が根底のように思いますので、文相の感想とかいうものじやなしに、あえて一つのりくつをこの際述べていただいて、そして今の政党政治のもとにおいても教育の中立性があり得るのだということを論証願いたい。
  154. 大達茂雄

    大達国務大臣 政党政治である限り、政局を担当する政党が、その信ずるところに文教政策を推進することは当然であります。大西君は、教育の中立性ということと、教育行政の中立、さらに進んでは文教政策の中立、こういう点を、実は失礼ですけれども、混同してはおられないかと思う。ここにいう教育の中立ということは、学校において先生子供教育を授ける教育内容の中立ということを言つているのであります。教育行政とか、文教政策とか、そういうことの中立性ということを言つているのではない。教育委員にいたしましても、これはなるほど直接選挙によつて出て来る人々でありますが、しかしこの場合、教育委員の立候補の資格条件として政党に所属しないという条件は付せられておらぬのであります。でありますから、教育委員会の場合でありましても、それは政治的な中立性が確保されているということにはならぬと私は思う。またそうなる必要もないと思うのであります。要するに、そこの地域民衆の総意に基いて教育の運営が行われなければならぬ、その点を法律は期待している。ただ他の何者の支配ににも服しない、その意味における教育委員会によつて運営せられる教育行政の自立性ということは言えましよう。しかし教育委員そのものが政党員であつてはならないという条件は何もないのであります。でありますから、教育委員会の場合でも、教育行政は、これは教育委員会法に書いてあるように、いかなる不当の政治力にも支配されずに、不当の支配に服せずに運営されるのだ、これは直接選挙から来る結果であります。文教政策の問題につきましては、これは当然議会政治であり、従つて政党政治である限り、それぞれ政局を担当する政党が、国家のため最も必要であると考える政策を推進することは当然でありまして、文教政策もまたその一環にすぎない。従つてこれか政局を担当する政党考え方によつて推進せられることは当然であつて、いわゆる教育の中立性ということば別個の問題であります。他日いずれかの政党が出て来て、教育基本法第八条の規定を改正をして、そして教育は自分のカの政党のためにする分にはさしつかえないといつてかえれば、これは別であります。自由党におきましては、この教育の中立という基本法第八条の精神を堅持したいという意味でこの法律案を出したのであります。この意味において、教育の中立性を堅持するという点は、何も理論上成り立たないものではない、かように考えております。
  155. 大西正道

    ○大西(正)委員 今の御答弁で私が確かめておきたいのは、今の文相のお考えは、それでは教育行政の中立性はないということは認められるわけでございますね。お前の言うのは、教育行政と教育の内容とをちやんぽんにしている、こういうお話であります。ですから、論理的に教育行政の中立性はない、それは認める、こういう御発言でありますか。
  156. 大達茂雄

    大達国務大臣 その通りであります。これは国民の意思によつて決定せらるべき国会が各政党にわかれているわけであります。すなわち、政治ないし行政の中立性というもの、つまりいずれの政党考えにも片寄らない行政あるいは政治というものが行われるということはないと思います。
  157. 大西正道

    ○大西(正)委員 文部大臣の御指摘でありますけれども、私は教育行政の政治的中立と、教育内容の政治的中立とちやんぽんにしてはおらないのであります。自分では厳密に区別をつけているのであります。  ここで、教育行政の政治的中立ということについては今申しましたが、教育内容の政治的中立ということは、結論を申しますれば、いわば是は是とし、非は非とする、また善は善とし、悪は悪とするところのいわゆる批判的な精神の堅持が教育内容における政治的な中立だと考えているのであります。これは私の主観ではない。表現は違いますけれども、かなりあつちこつちで論議された結論もこういうことを言つております。すなわち、教育一つの真理と正義に根ざして、いかなる政治権力にも迷わされずここに判断を下す、この自主的な立場、これが教育の内容における政治的中立だと考えるのであります。そこで私はこの教育の内容の政治的な中立、すなわちどの政党にも左担をしないところの批判的立場に立つというこの教育政治的中立は、やはり教育行政の政治的中立の裏打ちがなければ私は守れないと思うのです。そういう意味におきまして、私は教育の内容の面におきましても、この政治的の中立性ということが、今の政党政治内閣のもとにおきましては、厳密な意味においては困難である。繰返して申しますと、教育行政の面において政治的中立がないところに、その内容の面におきまして政治的な中立を守り得るということは、私は論理に多少無理があると考えるのです。従つて私の申し上げたいのは、この点につきまして、この政党政治内閣におきましては、やはり厳密な意味におけるところの教育政治的中立確保ということは言い得ないのではないかということを考えるのですが、この点もう一回つつ突んで所信を承りたい。
  158. 大達茂雄

    大達国務大臣 でありますからして、基本法八条にそのことをはつきりと書いてあるのであります。教育委員会であろうとも、あるいは文部省であろうとも、学校先生であろうとも、その精神は尊重しなければならぬのであります。これに違反する、あるいはそれをこわすような場合があり得る、これは私も認めます。あり得ればこそ、こういう法律を出さなければならぬ、こういうことになるのであります。
  159. 大西正道

    ○大西(正)委員 今の大臣の論は、教育基本法に基き、その他教育の既存の法律規則に基く、こういうことでありますけれども、私がここで憂えるのは、前からのいろいろの委員の発言にもありましたように、この法律の内容それ自体が非常に抽象的であつて、どのようにも解釈され、適用される、こういう内容のものであります。従つて今言つたような意味でむしろとの適用が問題なんです。やはりその適用の上に重大な影響を持つのは教育行政の実力を握つておるものであり、それは当然ひいては政党であるということに結論づけられましよう。     〔相川文部委員長代理退席、辻文部委員長着席〕 ここに私は懸念があるわけなんであります。時間の関係でこれ以上お尋ねすることはできませんので、もう一つだけお尋ねをしておきます。  公務員は憲法に規定されておるところの基本的な人権というものにある程度の制限、拘束が加えられておるのであります。これは公務員法制定の当時にも憲法違反ではないかという論議が繰返され、いまなおこの問題は解決を見ていないように思つております。しかしながら公務員にはこのような基本的な人権に対しての拘束を加える反面に、たとえば給与の問題等におきましては、いわゆる人事院の制度を設けまして、その勧告を出すことにおいて、いわゆる団結権その他の基本的な権利を行使して、そして政府との実力の争いの上においてものを解決するという方向でなくして、合理的な科学的な一つの建前の上にこの身分を保障しておるのであります。公共企業体の従業員の諸君に対しましても、公企労法の適用によりまして争議権は制限されておる。その反対給付といたしまして、この人たちに対してはいわゆる仲裁裁定の制度が与えられておるのです。このように基本的権利と拘束し、制限する反面に、当然その要求を満たすべきところの保護措置が講じられておるのであります。こういう建前から今回の教員の政治活動の制限は、従来の公務員の上にさらに厳重なる制限、拘束を加えておるのであります。これ自体が憲法に規定したところの基本的な人権を侵すものであるという論議は、私はここではもちろんいたしませんが、それにかわるべきものとしていかなる保護措置をして、そして教員のたとえば経済的な要求その他の希望を平和的に造成する保障をしようとしているのか、この点を私はお聞きしたいのであります。井堀委員は教師の団結権の問題から論じられたのでありますが、私はそういうこととは別個に、やはりこの基本的な人権を拘束された者に対してどのような保護措置を講じておるのか、これが並行しなければこれはまつたく教職員にとつては、お前たちは仕事が重大だから、こういうこともしてはいかぬとか、ああいうこともしてはいかぬとか、こういう危険があるからこういう法律を用意するのだということで、がんじからめに縛つて、しかも彼らには何らこれを守つてやるという法の根拠がないのであります。これは文部大臣としても十分お考えにならなければならぬことだと思うのでありまして、この問題についてどのように考えられておるか、考えるのじやなしに、こういうものを出すのなら、当然この教員を一般公務員以上に安んじて職務に従事せしめることのできる条件を確保してやらなければならぬと思う。この点についての構想をお聞きしたいと思います。
  160. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは教員には限りませんが、公務員について政治行為の制限をされるということは、その担当する公務の性質から来る問題であります。従つて制限をするから別に恩典を講じて保護をする、こういう筋合いのものではないと私は思います。そうして公務員がその経済的な利益を向上させるためにする各種の保護といいますか、そういう自由といいますか、それはこの特例法では別に制限を加えてはいないのであります。従つてこれを国家公務員並にするから、別にその方で何か埋め合せをしなければならぬのじやないか、こういう御論旨でありますが、私はさように思いません。
  161. 大西正道

    ○大西(正)委員 この前の答弁にもそれは関係はないとおつしやつた。しかし一つの義務を課せられる、権利義務は表裏関係である。これは別個な問題であるから、それは考える必要はないということは、まことにもつてこれは大達文相の従来のお考えからいえば、私はあまりにも冷たいと思う。そういう考えがないと言われるのに対して、私はこれを今ここで理論的に反駁するだけの資料を持ち合わせておりませんけれども、しかし一般の教員がこれだけがんじがらめにさせられて、そしてあれたけの低い労働条件というものを押しつけられると、これはこの法案が通りましてから、教員を志望する者はなくなるのじやないかと思います。それもかまわぬ、自由意思だ、こういうふうに言われるかもしれませんが、こういうことに考え及びますれば、私はこれは文教政策の最高責任者として十分にお考えにならないで、それとこれとは別だというお考えは、きよう今限り文相に反省を願いたいと思います。これは何かもう少し将来に見通しを持たせるようなあたたかい発言をされることを私は特に希望いたしまして、私の質問を終ります。
  162. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は筋道を申し上げたつもりであります。現に国家公務員というものもいわゆる官労という組合をつくつております。国家公務員並になつたからといつて、当然それと関連のない措置を別に講じなければならぬ、こういうことは私は理論上成り立たないと思う。そのことを申し上げたのであります。これは冷たいとかあたたかいとかいう問題ではありません。
  163. 辻寛一

    ○辻委員長 中原健次君。
  164. 中原健次

    ○中原委員 時間の制限がありますから、極力省略いたしまして、二、三の質問を申し上げます。  ちようどたまたま大西委員の御質疑に関連しまして、いわゆる経済的な利益を守ることの可否、要不要の問題について御議論がありましたが、この教育公務員特例法の一部改正の方を見て参りますと、三十一条のくだりであります。この二項の点に「前項の規定によりその例によるものとされる国家公務員法第百二条第一項に規定する政治行為の制限に違反した者は、同法第百十条第一順の例によるものとする。」こういう項目があるわけです。しかし人事院規則の規定に、国あるいは公の機関で決定した政策に対してその政策の実施を妨害すること、そのようなことはできない、こういう項目があると思います。それをこの中にはらんでおるように伺うのでありますが、この点に関してどういう御解釈であられるのか、まずこれを伺います。
  165. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま仰せになりました人事院規則の解釈でございますが、国の機関の決定した政策の実施を妨害というのは、政治目的として規定されております。先ほどもちよつと申し上げましたけれども、その目的をもつて次に規定されております政治行為をなすことができない。こういうことに相なつております。
  166. 中原健次

    ○中原委員 今私が指摘申し上げましたのは人事院規則の五項の第六号に記載されてある部分であります。これは国のあるいは公の機関の決定した方針、そうなりますと、たとえば労働政策が機関で決定される、その労働政策がたまたま給予問題に対して一定の低いわくがはめられるというようなことが起つた場合に、その低貸金の政策の、その機関決定のわくに対して不服を申し立てあるいはそれを解消せしめあるいはむしろこれを有利に改善させるというようなことを当然期待するわけであります。そういう動きをすることはもちろん許されないし、そういう行為を起すことはすべて許されない、こういうことになるのではないかと思うのですが、この点はどうか。
  167. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま申し上げましたように、この人事院規則の第五項でございますが、これをお読み願いますと、こういう政治目的を持つて次の第六項の政治行為をやつてはいけない、こういうことであります。それで今お話の国の機関の決定した政策の実施妨害というものの解釈でございますけれども、これは国の機関でございますから、国会、内閣その他の機関が正式に決定いたしました政策に対しまして、その実施の妨害をする。これはこの人事院規則の人事院の運用方針というものがございまして、それに基いて運用されておりまするが、その運用方針によりますると、実施の妨害というのは有形無形の威力を用いてその実施をじやまする、実現を妨げる、こういうことに相なつております。従いまして今お話のありましたようないろいろな要求をするというような目的でいろいろやりますことは、これは大体これに当らない、かように考えております。有形無形の威力をもつて実現を妨げる、そういう目的でいろいろな行為をすることが許されない、かように考えております。
  168. 中原健次

    ○中原委員 御解釈は一応拝聴いたしましたが、しかしその解釈というのは実は非常にむずかしいと思います。たまたまそういう国あるいは公の機関が方針として打出しました、それらの事項についてそれを快く受諾することはできないし、それに従うことは忍びかたい、こういう条件はことに給与問題等に関してはあるわけでございます。最近のいろいろな事例から考えましても、なるべくだけ安い給与でがまんをさせる、こういう方針は言うと言わずと別といたしまして、実態としてはあるわけでございます。従つて教職員の皆さんがそれにたえがたく、何らかの方法で、これを拒否するあるいはこれを改善させるということのためにしかるべき行為を起し、あるいはいろいろな言動が伴うて起つて参りました場合に、これが国の政策の実施を妨げる行為である、こういう解釈はしばしば起るおそれのある事柄だと私どもは思うのでございます。従つてこれをただいまの御解明のように明確に、そのような場合にただいま私が規定いたしましたようなそういう行為はこれに該当せないということをとりきめられたにいたしましても、これの実施の場面に直面いたしますると、そのような面からしばしは不当な混乱が起つて来る、こういうことが気づかわれるわけであります。瞬時にこのことはもつと大きい見地から考えますると、大臣が先ほどからしきりに生活権の問題あるいは従つて給与の問題等に関して触れておいでになりましたけれども、この二つの改正並びに立法は、直言的に申しますると、結局生活の改善維持等についてはいささかも触れておらないどころか、むしろそれを妨げるような一つ立法措置に不幸にしてこれがなつておる。こういうことにつながることをその面からたけでも見てとることができるわけであります。これに関して大臣もう一度この問題に対しての私の気づかいはまつたく無用であるかどうかお触れを願いたい。
  169. 大達茂雄

    大達国務大臣 先ほどさような問題には触れないはずであるということを申し上げましたのは、先ほどの質問が政治的中立確保に関する法律、これについてなされたので、この第二の法律案というものを中心として申し上げたのであります。従つていわゆる特例法の一部改正ということになりますと、ただいまお述べになりました国の機関また公の機関において決定した政策の実施を妨害するという目的をもつて、これは第五項でありますが、第六項の政治行為規定、第六項に掲げてある各般の行為をするということが禁止せられております。従つてこの待遇改善等の問題につきまして、これに該当する限りにおいて全然無関係とは私どもは思つておりません。先ほど申し上げましたのは質問が中立性確保という問題についての御質問でありましたから、これは全然関係ない。しかしこの政治行為の制限ということになれば、ただいま申し上げましたような場合に政府できまつた政策の実施を妨害するという形で行われる政治行為、それを目的として行われる政治行為のうちにはこれに抵触する場合が生ずる、こう思います。
  170. 中原健次

    ○中原委員 その点につきましてはまだ議論が尽きておりませんけれども、時間がございませんのでいずれきわめて近い機会にそういう場面をお与え願いたいと思つております。従つて話を先に進めまして、何はともあれこのようなきわめて不満足な、いやむしろはなはだ違憲的な内容を盛り込んだ二つ法律案について、私どもは一番鋭く感じますのは、主体は何と申しましても学校教職員諸君を対象とし、あるいは学校教職員諸君に働きかけをするであろうと予想されるいろいろな勢力を織り込むわけでありますが、この動きに対して刑罪的な威嚇が絶えずつきまとうておる。従つてこの法の規定するどの部分にももし抵触するならただちに刑の処分が発動するであろう、こういうことがいわば威嚇として控えておるわけです。こういう備えをもつてことに学校教職員諸君の身辺を絶えず重圧するというか、そういつた関係をこれに織り込んで行くということは、少くとも学問の自由あるいは基本的な人権を確認しておる現憲法下におきましては、憲法の主要なる部分に抵触する立法措置である、こういうことになるように思われるのであります。こういう点について大体大臣はどのようにお考えになられておるか承りたい。
  171. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はこれらの法律案が学問研究の自由あるいは思想の自由というものを束縛する、それに対して圧迫を加えるということはないと思つておるのであります。これは大体教育のことでありますから、教える教職員の諸君にいろいろの講演をしたり、話をしたりされる学者の人たちが、自分で学問の研究をし、またいかなる思想を持つておられても、これは自由であります。ただ相手のあることでありまして、こういう考え方を子供に教えるのだということになれば、これは無制限にそれを自由なりとして主張すべき筋合いのものではない。ただ自分が学問として研究し、また自分が思想としてこういう考え方を持つておる、この点について何ら触れるところはないのでありまして、またそれを他人に発表いたしましても、もちろんこれは自由であります。ただ教育の場において、義務教育学校の生徒、児童にこの考え方を教え込まなければいかぬ、こういうことかもし主張されるならば、その点においてこれは規制されます。規制されますけれども、これは、いわゆる思想、学術の自由という範疇に入るべき筋合のものではないというふうに考えております。
  172. 中原健次

    ○中原委員 最近しばしば新聞が伝え、かつ実清を耳にいたしておりますが、学園あるいは学校の教職員諸君のいわば思想調査、そういう動きがかなり頻繁に続出しておるというふうに見受けております。これはおそらく否定できない事実のようであります。こういうことから関連して参るのでありますが、従つて教職員諸君の政治的な行為、行動、学校子供に何かの政治的な一つの思想を注入するというような動きがあるという嫌疑を事といたしまして、そういう実態を調査しよう、こういう動きが起ることは当然予想されるわけです。従つてそういう動きが起つて参りますときに、その思想の調査あるい、は実情の捜査等を通しまして、警察権がいろいろな形で学園に、あるいは教職員の身辺に襲いかかるという実態が起りはしないか、こういう不安が当然予想されるわけであります。なおそれだけではなくて学校の児童の持つておりますノートの検査といいますか、ノートをたれかが調べたというようなことも最近伝えられておりますが、やはりこのような中立性確保法律が施行されて参りますと、そういうことも一層頻繁に繰り広げられるであろう、こういうことを気づかわざるを得ないように思われるのであります。これらのことにつきましては、どのような御見解をお持ちでありますか。
  173. 大達茂雄

    大達国務大臣 最近国警の方面におきまして、教員を対象としての思想調査をしておるということがしきりと言われております。これは少くとも文部省に関する限りはさようなことは絶対にありません。またわれわれさような調査をするような手段を持たぬのであります。先ほど申し上げたかと思いますが、文部省としては現在学校における教育の実情についてすらも、十分にその情報や報告を求めることも実はできないくらいのものであります。思想調査などはとうていできないし、またさようなことは必要も感じていないのであります。ただ警察権によつて思想調査を行つておるということがしきりに言われておりまして、この点は文部省といたしましても、もし教職員を対象としての思想調査が警察官によつて行われ、これが一般教職員を脅えさせるというか、警察が出るということから非常に不安を感じさせ威圧を感じさせるということでありましては、これはわれわれの方から見てもはなはだおもしろくないことでありますから、この点については国警の方にその事実をただし、もしさようなことが事実あるとすれば慎重にしてもらわないと困る、そういうことがあつては困るということを申し入れたのであります。そうして国警の責任者の言明するところによれば、決して教職員を対象として思想調査をしたというような事実はない。ただこれは必ずしも教職員を対象とするものではありませんが、共産党の動きに対しては相当に注意をしておる、こういう話でありました。そしていわゆる思想調査をしておる実例としていろいろ掲げられた事柄につきまして、私どもも国警に一々ただしたのであります。国警の説明によると、大部分は無理にこしらえた事実のように思われる。これは長くなつて恐縮でありますが、たとえば立川の地区において子供のノートを調べたといことが伝えられておるが、立川の警察について国警の方からさような事実があつたかということを問い合せて、いろいろ調べさせたところが、さような事実は警察官としてやつたことはない。但しだれか交番に来て、こういうカバンを拾いました、こう言つて遺失物として届け出た人があつた。それで預かつてつたところがすぐ間もなく別の人が子供を連れて来て、この子供がカバンを落しましたから返してくれと言つて来た。そこで警察官は遺失物を渡す場合の通例として、中に何が入つておりましたかということを聞いて、それが合うから返した。また立川地区においてはそのほか学校子供が、たれかわからぬがバッジをつけた二、三の人からカバンを見せろと言われたという事例があるが、警察の関知するところではない、こういうような説明がありました。これはいらぬことを申し上げましたが、私どもとしては責任者の言明を信ずるほかはないのでありまして、はたして警察官が末端において思想調査をしたかせぬかということは、これは私どもとしては断言はできませんけれども、少くとも国警本部あるいは国警隊長の方針として教職員を対象としての思想調査をしたという事実はないということは、これは責任者の言明を信ずるほかはない。文部省としてはさような事実は全然ありません。そこでこの法律施行の結果として、しばしばそういう事態が起るのではないかというふうなお尋ねでありますが、さような事態か絶無であるとは言われません。しかしこれは学校先生というものを直接対象としておる法律ではないのでありまして、いわゆる教唆扇動ということであります。そして、さような事実があつた場合には教育委員会が請求をしてそこで初めて司直の手が動く、こういう建前をとつておりますので、今世間で心配されておるような事態、これかために、学校の中を警察官がうろつくというような事態を生ずるとは私は思わぬのであります。
  174. 中原健次

    ○中原委員 時間がないそうでありますから、これで終ります。大体文部省の立場においての御解明としては、さもあるべきかと思いますが、しかし問題は、やはり過去の長い歴史の経験からも出て参りますように、こういう立法措置が講ぜられますと、これはまことに都合のよい、活動しやすい一つの材料ともなるわけであります。そういう関係から、警察権が、しばしばこういう問題を通して必要以上に動いて来るということは、想像にかたくないわけであります。なおこの処罰の請求の問題を通じて考えますと、この処罰を請求する機関、教育委員会その他の場が、きわめて公正な立場で構成されるとは限らぬのでありまして、こうなりますと、しばしば正常なる人間の思想的な成長というか、そういうものをむしろ忌みきらつて、言いかえれば、反動的な要素としてそういう機関が構成されて行くという危険は多分にあるわけでありますし、不幸にしてそういうような機関ができて参りますと、必要以上にこの機関が処罰請求のためにいろいろな行動を起すであろうということは、想像にかたくないわけであります。これらの諸点も十分考えなければならないことでありまするし、同時にこれらの諸条項を通して想像されまする点は、いまさらここであらたまつた論議も必要でないほどに、もはや国民の大多数の見解、あるいは進歩的な人人の見解から申しますと、政府のどのような弁解にもかかわらず、これはやはり憲法の精神を蹂躙し、従つて、あるいは基本的な人権、あるいは学問の自由を踏みにじりながら、教育の反動性を強化することに役立つ、こういう効用を持つに至るであろう。いや、すでにそういうものを内容としておる、これは否定すべからざる一つの事実として、すでに具体的にしばしば立証されておるところなのであります。従つて文部省当局とせられては、強引に教職員を対象とするものではないというような言葉や釈明を通してこれを合理化される努力をやめられるのがほんとうではないか。むしろ今日の憲法をどのように守るか、いわゆる不断の努力を払いながら、今日の憲法を生かして行こうとする、その方に御努力を集中されることが本来の使命ではないかというふうに考えるわけであります。従つてこの二つ法律案に関しましては、私どもといたしましては、またもちろん文部委員会の方におかれてもそうであろうと考えますが、今日の国民のいろいろな背景的なこれに対する反撃の声を通して考えましても、やはり法律を決定しようとする機関におるだけ、この問題はもつと慎重に論議し、深く検討してこの問題の結論を出すべきである、こういうふうに考えるわけであります。本日不幸にして時間がございませんので私の質問は終りますが、必ず近い機会に労働委員会へ御苦労願つて労働委員会としても、ことにこれは基本的な人権の問題でありますし、同時に関係教職員の生活権の問題に深い根を持つておりますだけに、この問題に関するわれわれの疑問点、あるいは見解を十分討議し、政府当局の御見解を一層ただしてみたい、こういうふうに考えるわけであります。時間がございませんので、質問を終ります。
  175. 辻寛一

  176. 島上善五郎

    ○島上委員 最初に今の中原委員の最後の質問に関連をして、少しばかり質問をいたしたいと思いますが、ただいま警察官の教員の思想調査に関して文部省はやつたことはない。国警に問い合して申入れしたところが、国警でも大部分は無理につくつたことである、いわばでつち上げである、こういうふうに言われたそうですが、これはそれこそその場しのぎの言いのがれであつて、事実は厳然として存在しております。私はここにたくさんの材料を持つておりますが、今時間がありませんので、それらの一々についてその真否を追究する時間はありませんが、現に私が行つて調べただけでもはつきりとしておる。静岡県下の三地区の警察署、学校の数で言えば十数校ございますが、この事実は静岡県の警察本部長が率直に認めて陳謝をしている。こういうような事実があるにもかかわらず、大部分は無理につくつたものであるというような言いのかれをそのまま文部省が認めておるとすれば、こういうような事件は今後跡を絶たないであろうということが心配されるわけであります。そこで私は、文部大臣にこのような一時しのぎの言いのがれ的な国警の答弁を信じないで、今後絶対にやらぬように、今までのところの追究はもちろんであるが、今後そういうことは絶対にしては困るということをさらに強く要請するお考えがあるかどうか、このことをまずお伺いしたいのであります。
  177. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、その意味のことは国警当局に申し入れてあります。
  178. 島上善五郎

    ○島上委員 申し入れてあることは答弁で伺つておりますが、しかし申し入れた際、国警は大部分は無理につくつたものである、そういう事実はないのだ、こういう言いのがれ的な答弁をしているわけです。先ほどの文部大臣の答弁によれば、さながら国警の言い分を文部大臣が信頼しているかに受取れるから、それでは困る、事実がこのようにたくさんあるのだから、そういう国警の言いのがれをそのまま信頼することなく、今までのことに対する責任の追究はもちろんのこと、今後絶対に再びこういうことをしては困るというような、強い要請の意思を持つておるかどうかということを、今まで申し入れたというのではなく、——申し入れた」とは、もう聞きましたから、今後もそういう強い申し入れをする御意思を持つておるかどうかということを伺いたいのであります。
  179. 大達茂雄

    大達国務大臣 先ほど申し上げたように、私としては責任のある当局の言明を信ずる以外にはないのであります。
  180. 島上善五郎

    ○島上委員 責任ある答弁を信ずる以外にないと言いますけれども、私も国会議員として責任あることを言つているわけです。こういうような一つの県だけでもすでに十数件の事実が現存しているのですから、国警の言い分というものは信頼を置けないということを言つているわけです。そこでこれは希望ですが、せひこの点については時間がたてばもつと事実についてその真否がわかるわけですから、事実について確かめた上、今後さらに厳重にかようなことをしてはならぬという要請をしていただきたいと思う。  そこで今度は文部省がこの二つ法律案審議するために、あるいは三つの法律案の正当性を裏づけるために出されたと思われる資料の中で、先ほど午前中の選挙法の委員会でも鈴木義男委員から指摘されましたが、文部省の出した資料の中で、まつたく事実がない——事実と多少相違するとか、あるいは針小棒大であるとかいう問題はざらにありますけれども、全然事実の存存しないものをあるかのごとき資料を出しておるという事実があるわけです。これは午前中の労働委員会で質問したことで、私個人としては再度質問する必要もないかとも思いますが、この連合審査会においてはつきりと御答弁を願つて記録に残しておきたいと思うのは、文部省がそういうようなまつたく誤つた資料を出して関係学校、学生並びに教員に多大の迷惑をかげておるということが明白になりましたならば、すみやかにこのような誤りを訂正するとともに、文部省はそういう間違つた資料を出した責任について、関係者及び世間に対して陳謝をするという措置をとられるかどうかということをお伺いしたいのであります。
  181. 大達茂雄

    大達国務大臣 私どもの方で事実無根であるということを確認いたしました場合には、それを訂正するということにやぶさかでありません。
  182. 島上善五郎

    ○島上委員 訂正するとともに、午前中の労働委員会では、明確にその場合には陳謝をする、こういうことを言つておられるわけです。その陳謝をする御意思があるかどうかということを再度承りたい。
  183. 大達茂雄

    大達国務大臣 その場合にさような必要があり、そうするのが相当であると思えば陳謝いたします。これはしかし文部省がでつち上げたものではありませんから、その場合に陳謝する者がだれであるかということが、その各個の場合に起りますが、とにかくそれが事実無根であつたという事実を私どもが確認をすれば、適当な措置をとります。
  184. 島上善五郎

    ○島上委員 午前中の労働委員会の答弁と大分建つておりますが、まあ労働委員会の記録に載つておりますから、私はこの問題はそれ以上追究しません。  そこで今度の三つの法律案は、私どもの見るところによりますれば、憲法二十八条の勤労者の団結権、地方公務員法五十二条の職員団体組織という権限の侵害と思われるのであります。もちろん教職員は、いわゆる労働組合法による労働組合ではございませんけれども、しかし憲法で保障され、あるいは地方公務員法で保障されている団結権を有し、賃金その他の問題に対して交渉する権限を有していることは言うまでもない。そこで私は、これは労働組合運動に関連する問題ですから、ここで文部大臣労働組合に対する基本的な考え方を伺つておきたいと思います。  労働組合に対する考え方というものは、日本では終戦を境として終戦前と終戦後とでは大きくかわつておる。これは労働者の考え方がかわつているとか、労働組合員の幹部の考え方がかわつているということではなくて、いわば国全体の考え方がかわつておる、こう言つてもよかろうと思う。戦争前は労働者が団結するということを、さながら犯罪的な行為であるかのように白眼視して、特に文部大臣がかつて東京都長官であつた当時あるいは内務大臣であつた当時のごときは、まつた労働組合の存在を否定しておつた。こういうふうに労働組合犯罪視し否定しておつた当時と今日とでは、まつた労働組合に対する考え方が違つておるわけです。私どもは、今日日本労働組合法の条章に照してもそうですが、日本の民主化を促進するために、あるいは労働者の地位を改善するために、労働組合の存在というものは必要なものである、またこれは労働者にとつて当然の権利であり、正しい権利の行使である、かように考えております。文部大臣考えはおそらく終戦を境として同様にまつたくかわつていると存じますが、この際念のためにもう一ぺん文部大臣の今日の労働組合に対する認識あるいは考え方というものを伺つておきたい。
  185. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいまお述べになつたように私も考えております。
  186. 島上善五郎

    ○島上委員 それではお伺いいたしますが、文部大臣日教組に対してしはしば政治団体である——実質的にはという言葉を附加してはおりますけれども、政治団体である、こういう答弁を公の席上でもしておられるはずです。先ほどもしたわけです。日教組政治団体である、こう断定しておりますが、私どもは労働組合法による労働組合ではありませんが、正常な労働組合である、労働団体である、かように解釈しているわけですが、政治団体であるという断定を下す根拠は一体どこにあるかということを伺いたい。
  187. 大達茂雄

    大達国務大臣 私も日教組が労働団体である、その面を持つておると存じます。但し同時にまたきわめて強い政治的偏向を示しておる、これも争うべからざる事実であつて、これは日教組の掲げておる主張、その持つているいろいろの資料によつて立証し得るところであると思います。
  188. 島上善五郎

    ○島上委員 今日日本労働組合で、政治的偏向とおつしやいましたが、政治的な色彩を持たない労働組合が一体あるかどうか。そのいわゆる政治的傾向というものについてはそれぞれの違いがあると思いますが、政治的な色彩を持たない労働組合というものはないと思うのです。労働組合政治的な色彩を持つかどうか、あるいはそれがより濃厚になるか、あるいは稀薄になるかということは、そのときの客観的な条件によつてきまることであつて、すき好んで、個人の主観でもつてそうなるものではないと思う。今日総評を初め、総評に加盟しない組合も、あるいは総同盟も、中立組合も、いかなる組合といえども政治的色彩を持たない組合はないと私は思う。日教組政治的色彩を持つているがゆえに、特に政治団体であると断定して非難される理由はないと思うのです。これは文部大臣日教組以外の労働組合に対する理解なり認識なりが足らない結果そうなつておるのではないかと思う。この点に関して、ここに労組省の中西労政局長がおりますから、労政局長に、今日日本に総評、総同盟等いわゆる代表的な団体、こういうもので政治的な傾向を帯びない労働組合があるかどうか——それが今日の条件のもとにおいては私どもは当然だと考えますが、これに対する御見解を承りたい。
  189. 中西実

    中西政府委員 仰せのごとく、上部団体におきましては、大体何らかの点においてそういつた傾向を認めます。ただ中立組合なり下部の単組に行つて個々に見ましたときに、はたして政治的な偏向を持つておるかど)かというと、大多数のものはやはり労働組合としての本来の動きを示している。それが結集されて企業組合になり、さらには総評、そういつた上部団体になりますれば、そういう偏向を持つておると考えております。
  190. 島上善五郎

    ○島上委員 そういう偏向という言葉を使つておりますが、私は偏向という言葉は妥当ではないと思うのです。そういう傾向です。これは大きな全国的な組織あるいは連合体組織になれば政治的傾向、政治的な主張を持たないで労働組合本来の目的を達することができない状況に今日あると思うのです。そういう点、その色彩が濃過ぎるとか、あるいはあなたが今言われる偏向という言葉に該当する団体が一、二あるということは言えるかもしれませんけれども、全体としては政治的な色彩を持つているということは、政治的偏向というふうに解釈すべきではないと私は思う。これは政治的な傾向とか政治的色彩ということは言えるかもしれませんか、その点に対してもう一ぺん御見解を承りたいと思います。
  191. 中西実

    中西政府委員 労働組合は主として労働者の経済的な地位の向上を目的とするものであります。労組法の二条に明確にそれがうたわれております。従として政治的なこともできることになつておるのであります。それが従か、従以上のものになるかによつて、傾向か偏向かということにもなろうかと思います。言葉の使いようでございますけれども、政治的なものを従として持つておるということは、上部団体においては認められます。
  192. 島上善五郎

    ○島上委員 そこで文部大臣にお伺いしたいのです。この二つ法律は、私どもの解するところによれば、教員組合が自分たちの労働条件賃金その他の改善のために活動するという地方公務員法五十二条の職員団体組織のところで保障されているその権限、並びに憲法二十八条の勤労者の団結の権限というものを封殺するものではないかという危険を感じているわけです。その点に対しては先ほどきわめて御都合のよい答弁をしておりましたが、もう一ぺんそのことに対するお考えを承りたいと思います。
  193. 大達茂雄

    大達国務大臣 決して自分の方に特別都合のいい答弁をしたわけではないので、この確保に関する法律案というものが何ゆえに経済団体としての日教組活動を押え、抑圧することになるか、こういうことは私は理解することができないのであります。これは法文の上からごらんになつていただきたいと思うのであります。  それから日教組政治的偏向を持つてつて非常にけしからぬと言つたというのですが、実質的に政治団体と選ぶとこるたき団体であると思う、こういうことを言つたのでありまして、いいとか悪いとかということを言つたのではありません。日教組は御存じのように任意の契約による団体であります。その団体がどういう行動をとろうとも、それがいいとか悪いとかいうことを申したのではない。ほとんど政治団体と同一に見るべき、場合によつて政党とまぎらわしい政治集団である、こういうことを言つたのであります。これは日教組資料について言つたのでありまして、試みにこの資料を申し上げますと、第十回の定期大会議案三十一ページ、三十二ページ、これは日教組教育情報から資料をとつたのであります。これに斗争の目標というものがある。平和と独立を守る斗い、この斗いは日教組のあらゆる斗争を貫く最高方針であり、日本の完全独立と平和獲得のために全力をあげて斗い、日本の平和勢力の中核となつて前進しようとするものである。あらゆる斗争を貫く最高方針であると言つている。そして一、再軍備、徴兵に反対する、二、平和憲法改正に反対する、三、全面講和をかちとる、講和条約の改正、安保条約、行政協定破棄の斗いを斗う、四、アジア貿易と国際友好関係の促進、五、平和運動等を積極的に展開する、そうしてこの平和運動といううちに、教師として平和教育を進め、父兄大衆のうちに平和運動のオルグとなる、こういうことがある。これは日教組自身の資料であります。そこで私どもは、日教組がこの斗争の目標としてあらゆる斗争を貫く最高方針であるということを言つておる、これをかれこれ言つておるのではない。私どもの一番問題にするのは、平和運動を積極的に展開するその平和運動の一翼として、その一環として、教師として平和教育を進め、父兄大衆の中に平和運動のオルグとなる、これを重視しておるのであります。その他これに類する資料は幾らでもあります。
  194. 島上善五郎

    ○島上委員 ただいま読み上げた日教組の方針のよしあしについては大いに議論のあるところであり、ここで議論をしておるひまはありませんが、私が指摘したいのは、教育公務員特例法の一部を改正する法律案で「地方公務員法第三十六条の規定にかかわらず、国立学校教育公務員の例による。」すなわち教職員は政治活動に関しては国家公務員法の百二条並びにこれに関連してつくられておる人事院規則によつて縛られることになろうと思うのです。この各項目は時間がありませんから特に指摘いたしませんが、これによつて縛られるということになりますれば、少くとも今までのような日教組活動ができなくなる、こういうことを私どもは心配せざるを得ないわけです。日教組の方針のよしあしの議論は別といたしまして、今までのような教員組合活動ができなくなるという私どもの心配に対して、そうであるかないかをはつきりと御答弁を願いたいと思います。
  195. 大達茂雄

    大達国務大臣 日教組は事実において——ただいまこれは一例として申し上げたのでありますが、さような政治斗争というものに没頭する場合において、今度の特例法の改正の結果、その日教組の内部で仕事をしておられる教職員の身分を持つた人々のうちに、人事院規則に抵触するものがあり得ると思います。
  196. 辻寛一

    ○辻委員長 島上君、もう一問だけにしてください。
  197. 島上善五郎

    ○島上委員 時間がだんだんしわ寄せになつて来ているのです。答弁いかんによつては、もう一問が二、三問になるかもしれません。
  198. 辻寛一

    ○辻委員長 私の方では積極的に御注意申し上げない。直接当主的に御調整いただいておるわけですから、どうかひとつその点をお含みください。
  199. 島上善五郎

    ○島上委員 教育基本法の第八条を正確に読み上げますと、「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」、こういう言葉があるわけです。そこで今度のこの政治的中立確保に関する法律の三条の二項にやはり同様の言葉がありまして、「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度をこえて、」云々ということがございますが、この「必要な限度」ということは一体具体的にはどういうことをさすのか。——これで一問と言われると困るから、もう少し私の質問をさらにつけ加えますが、たとえば私ども考えるには、この「良識ある公民たるに必要な政治的教養」の中には——現在憲法の九十九条にこういうことがございます。憲法尊重の義務、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」、こういうことがございます。この法文には公務員までを書いておりますが、私どもはこの精神からしますれば、この法文に列挙してある公務員ばかりでなく、国民もまたこの憲法を尊重し、擁護する義務、と言わぬまでもそういう必要があるのではないかと思うのです。この「良識ある公民たるに必要な政治的教養」の中に、現存厳として存在している憲法はこれを尊重し、擁護しなければならないものであるということを教えることが必要ではないか、こういうふうに考えるのです。それからたとえば、このたとえが適切であるかどうかは知りませんけれども、教員が、こういう政治的教養を与える公民教育の際に、今新聞をにぎわしておる汚職や疑獄の問題について質問をされるということになれば、少くとも汚職、疑獄の事実及びそのよつて来る原因等について率直に生徒に教えるということなども、私は「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与える」際に必要な事柄ではないかと思う。その限度を越えた事柄ではない、少くともこう私は解釈いたしますが、その点に対してどのようにお考えになつておられるか。
  200. 大達茂雄

    大達国務大臣 その通りです、
  201. 島上善五郎

    ○島上委員 その私が引例をいたしました第二条第一項に「特定政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆し、又はせん動してはならない。」こういうことがある。すると今言いましたような現在存在する憲法を守り、尊重しなければならぬ、あるいは疑獄問題でもその他の問題でも先生がその通り教えたために、その結果として、現在の憲法はアメリカからもらつた憲法だからやめちまえというようなことを主張する政党の勢力を減退させることになるという場合が、大いにあり得ると思うのです。疑獄問題でもそうだと思うのです、これに関連している責任ある政党の勢力が結果として減退するということがあり得ると思う。その場合には、一体この第三条の「特定政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆し、又はせん動してばならない。」という項目に護当するかどうか。「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度」でやつた教育が、そういうことになつたら、この前条に該当するかどうかこれを伺いたい。
  202. 大達茂雄

    大達国務大臣 それは教育の内容で、減退させるとか何とかいうのは教唆扇動する人の目的とするところでありまして、そういう減退する結果になつたから、あるいは伸長する結果になつたから、飜つてその教育はいわゆる偏向教育である、こういう意味ではありません。今お話になりましたようなことは、学校先生が教えてさしつかえありません。
  203. 辻寛一

    ○辻委員長 日野吉夫君。
  204. 日野吉夫

    ○日野委員 大分時間がたつておりますので、文部大臣に二、三点簡単に御質問申し上げます。  教育の中立性保持に対する二法案が出ておるのでありますが、教育の中立性を保持するために刑罰をもつて臨むこの法律に対しては、われわれは簡単に賛成をするわけには参らぬのでありますが、これはきわめて知能的でない。もつといい方法があるのじやないか。教育の特殊性、教育界という一つの世界から見ますと、この刑罰は死であり、致命傷であるはずであります。イソツプ物語に、池のはたで子供が石投げをして、おる池の中には無数のかえるが泳いでいるが、当ればこれは死であるか、致命傷である、そこでかえるが代表をあげてやめてくれという申入れをする話を思い出すのでありますが、まさにこういう法律をつくられることが教育者の諸君にとつては死であり、致命傷であろう。その審議が長時間談笑の間に進められておるのであります。この間仙台で福島事件の判決言渡しのとき陪席の判事が笑つたというので大分問題を起しておるのでありますが、笑い得ない一つの問題じやないか。この問題の審議にあたつて、まず文部大臣の心境を聞いておきたい。愉快な気持でやつておられるか、事ここに至つてこうしなければならぬ、憂欝な遺憾な気持でやつていられるのか、非常にたくましい意欲をもつてこの法案をどうしても通さなければならぬという、さつき言明がありましたけれども、いろいろあらゆる角度から審議を進めて参つておりますので、その過程に感ずるところがあつて、若干この法の緩和を考えておられるというのか、われわれは撤回してほしいと思う、せめて刑罰の削除あるいは軽減、こうした点も考えてほしいと思いますが、文部大臣のこれらに対する心境をまず承つて次の二、三の質問をしてみたい、こう思います。
  205. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は法律案提出するに至つたことにつきまして、決して愉快であるとは思つておりません。ただあなたの今おつしやつたように、池の中にかわずが一ぱいおるほど、日本学校教育というものは偏向教育が瀰漫しておるとは思いません。一石を投ずればどこかのかわずに当るというほどひどいことになつておるとは思わない、はたしてあなたの言われたような実情であるとすれば、これはたいへんなことでありまして、この規定を緩和するどころの騒ぎではありません。
  206. 日野吉夫

    ○日野委員 ただいまの答弁で、そういう事態でないと言われておりますけれども、この法律は必要な限度を越えたものを処罰する、こう言つていますが、必要な限度というものは、どこにも明確に、例示的にもあるいは成文的にもこうした具体的な事実を規定したものはない。従つて先刻も文部大臣が言われておるように、目的罪であつてこれは非常に立証困難だということはすでに認められておるようであります。そうなるとこの内容がきわめて不明確であるから、主観的な要素が加わつて来ることは必定であります。しかも先刻文部大臣は重大な言明をしておるわけです、教育行政の中立性がない、こう言つておられるが、もしこの言明をあくまで主張されるならば、この法律というものは非常に政治的な考慮を加えられる危険な法律になる。それは池の中のかえると同様な運命に置かれて、ひとり教員組合だけでなく、教員組合と共同斗争をやつた労働組合等も教唆扇動、こうしたものでひつかけられるおそれが出て来る。日教組のことについてはしばしば言明されておりますけれども、私は井堀君がさつき指摘されましたように、この法律が出ますと、例の暴力行為処罰令と同様に、組合が取締りの対象にされる危険性を十分に持つておる。われわれも何回か、こうした目にあつていることを考えるとぞつとするのでありますが、主観的な要素が加えられる可能性が十分にあることを大臣はどうお考えになつておられるか。教育行政の中立性がないという言明をさらに重ねてなさる勇気がおありかどうか、この二点をお伺いいたします。
  207. 大達茂雄

    大達国務大臣 非常にあいまいな字句を使つてあるからどうにでも解釈できるという意味の論旨でありましたが、良識ある公民たるに必要な政治的教養限度を越えたような教育をただちにどうするということではありません。これはその先に書いてあります「特定政党を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」これが教育の内容であります。前の方はその限度を越えてそうなつたと書いてあるだけで、限度を越えたらみんないけないのだ、こういう規定にはなつておりません。従つて教唆扇動対象になる行為は、できるだけはつきりとこの法律に書いてあるはずであります。ですからその辺をよく読んでいただきたいと思います。  なお政治的中立が侵されている事例があるということを断言するか。私はあると思います。ただあなたがおつしやるように、池の中にかわずが一ぱいいるほど瀰漫しているとは思いません。しかしある。私はさような認識に立つてこの法律案提出するに至つたのであります。
  208. 日野吉夫

    ○日野委員 今の教育行政の中立性の問題でありますが、さらにもう一度はつきりと承つておきます。この事案が今のような問題であるならば、おそらくぼくは罪になる者はきわめて少いと思う。大臣もそう言われている。そう考えるならば、今の刑法精神は疑わしき者は罰せずという建前をとつておりますから、起訴されても相当無罪者が出る。従つて国会が決定した有田許諾問題と同様に、国会、政府の意思に反して、裁判所から違つた解釈の判定が出て来る。もしこれに政治的考慮が加わらざる限りにおいてそういう事態になると思うのですが、そうなれば非常に多くの被疑者を出して、遂にきわめて少い有罪者になる。こういう結果になるのじやないかと思う。この法律が非常に盃曲されやすい、拡張されやすいということ、従つて多くの被疑者を出す法律になり、政治的に利用されるおそれがないかということを考えるのでありますが、こういう点について文部大臣の見解を承つておきたいと思います。
  209. 緒方信一

    緒方政府委員 これは教育の内容の問題でもございますので、その刑罰の内容につきましてはきわめて厳密に解釈しなければならないということは、私どもも十分考えている次第でございます。いやしくも質疑のようなことが起らぬようにという配慮からいたしまして、御承知のように第五条に請求権者をきめまして、その請求権者の請求をまつて初めて罪を論ずるという規定をここに入れてあります。この請求があつて初めて検察庁が取上げまして、これをさばいて行く。あとは検察庁あるいは裁判によつて決するわけであります。決してほかの者の恣意によつてこの犯罪がきまるということではないわけでございます。これはほかの犯罪も同様でありますが、同じような取扱いになつてこれがきまつて行く、かようなことになります。
  210. 日野吉夫

    ○日野委員 ただいまの答弁では政令で定めるということになつていまして、政令の内容がわかりません。いかなることを政令できめられるか、大体予定があろうと思いますので、それはあとで伺いたいと思います。  もう一つ心配されるのは、この法律では犯罪が拡張されて解釈され、被疑者を多く出すばかりじやなく、つくられるおそれがある。職員間の感情的な対立、あるいは校長とか教育委員が気に食わぬやつをやつつけろということになつて犯罪がつくられるおそれがある。こういうことに対してどういうお考えを持つておられるか。  それに関連してさつきから思想調査の問題等も起つておりますが、そういうことも起り得る。従つて学園に警察等の侵入の事実等も現われて来るおそれがある、こういうことについて何かこれを防止する等の規定を政令にでも盛られるつもりか。この法案自体にはそうした規定がないので、これに対する考えを承つておきたい。
  211. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま犯罪が拡張解釈され、またいろいろつくられるようなおそれがありはしないか、こういうお話でございますが、請求権者は請求するだけでございまして、この判断はまつたく検察庁なり裁判所がするわけであります。従いましてむしろほかの一般犯罪と違いまして、これは一種の親告罪でございますから、一段の段階がそこに設けられているわけであります。今お話のようなことは全然逆じやないか。なお政令でどういうことをきめるかというお話でございますが、これは御承知のように労働関係調整法において、例の抜打ち争議の場合にその罰則の罪を論じます場合に、労働委員会の請求をまつてやることになつております。あの場合にとられると同じような手続を政令できめたい、大体同じような趣旨のことをきめたいと考えております。
  212. 日野吉夫

    ○日野委員 時間が大分迫つておりますから、二点だけ伺いたいと思うのですが、こうした犯罪教唆扇動という問題が起つて参りますと、本人が無罪になつて教唆とか扇動をした者が有罪になるような危険もあると考えられるが、この点に対する見解はどうか。  もう一つ裁判中の被疑者の身分関係がどうなるか。普通は有罪になれば処分しなればならぬでしようが、学校教員のような場合、被疑者として取調べ中便々として教壇に立つているというようなことは、事実上教育界の特殊事情から考えられないのでありまして、こういう関係はどうなるのか。何かこれらの問題に対して考慮が払われているのかどうか、こうした点を伺いたい。
  213. 緒方信一

    緒方政府委員 本法におきましては、教唆扇動をする者を処罰するのでございまして、その教唆扇動を受けました教員は処罰対象になつておりません。つまり教唆扇動独立犯として立てているのでございます。従いまして今お尋ねのような教唆扇動だけが罪になると思います。  それからその被疑者の身分の関係でございますが、これは一般公務員法の原則によつて取扱うことになると思います。
  214. 日野吉夫

    ○日野委員 その点は私もそう考えるのでありますが、何か特別の規定を設けなければ有罪になる可能性が少い、たくさん出た被疑者がそれこそ嫌疑を受けただけで、さつきの池の中のかえるのように、そのまま失職であり、しかも転業の自由を持たないこれらの諸君が、ただちに路頭に迷うというような危険が十分にある、これらの救済をやはり一応考えておかなければならぬじやないか、こういう点、あと時間の関係もありますから、労働委員会等でなおさつきの残りもありますし、もつと検討してみたいと思うのでありますが、その点に何か考慮があれば承つて質問を終ります。
  215. 緒方信一

    緒方政府委員 繰返して申し上げますが、本法におきましては、片寄つた教育をやれということを、その法律にきめておりますような条件をもちまして、教員を外部から教唆扇動するものを取締りまして、そうして学校先生をその教唆扇動から守つて行こうというのがこの趣旨でございます。従いまして、今お話のように嫌疑を受けてどうこうということは、この法律関係から起つて参りません。先生そのものは処罰対象にならぬのでございますから、そういうように御了承願います。
  216. 辻寛一

    ○辻委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後七時四十二分散会