○森田
説明員
文化財保護法の一部を
改正する
法律案について文部大臣の
提案理由を補足いたしまして
内容の大綱を御
説明申し上げます。
第一は、重要文化財に関するものであります。これに関する
改正のうち、まず、重要文化財について新たに
管理団体の
制度を設けたことであります。
管理団体は、重要文化財の所有者が判明しない場合または所有者による
管理が著しく困難もしくは不適当であると明らかに認められる場合に指定するのでありますが、その際、所有権を尊重して所有者の同意を要件としますとともに、指定しようとする
地方公共団体その他の法人の同意をも得ることとしまして、運営の円滑を期したのであります。この
管理団体は、所有者にかわ
つて重要文化財の保存のための
管理、修理及び公開の責任を負うものとし、これらに要する費用は、
管理団体の
負担といたしました。そこで、これらの費用の
国庫補助等が従来所有者に対してのみ行い得ることとな
つていたのを改めて
管理団体に対しても行い得るようにいたしました。また、
管理団体が公開を行う場合の観覧料は、
管理団体の収入とし、所有者が
管理団体の行う修理等により利益を得る場合には、
管理団体と所有者との協議により、費用の一部を所有者の
負担とすることができることとして、
管理団体の費用
負担の軽減を考慮した次第であります。次に、重要文化財について所有者が自費で修理を行う場合、所有者は善意ではあ
つても許可を要すべき現状変更が無断で行われたり、あるいは、修理がかえ
つて改悪となる場合もあり得ますので、これを事前届出制とし、
文化財保護委員会は、修理に関し技術的な
指導と助言を与えることができることとしました。さらに、重要文化財の所在の場所以外の場所で所有者が
一般に公開する場合に、ややもすれば、貴重な重要文化財に危険が伴いがちでありますので、その危険を防止するため、
文化財保護委員会は、その公開について必要な指示等をなし得ることとしました。
第二は、無形文化財について新たに指定
制度を設ける等その保護の
規定を
整備したことであります。まず、重要無形文化財の指定であります。無形文化財については、従来、無形文化財のうち価値の高いもので、国が保護しなければ衰亡するおそれのあるものについて国は助成の
措置を講じなければならないことにな
つていたのでありまして、助成の
措置を講ずべき無形文化財の選定には、その無形文化財の価値以外の判断が加わ
つていたのであります。ところが、無形文化財の保護の面から考えますと、有形文化財の場合と同様に、価値の見地から判断して重要無形文化財を指定し、必要のあるものについて適切な助成
措置を講ずることとする方が客観的であり、行政上の的確を期することができると考えますので、ここに重要無形文化財の指定
制度を設けたわけであります。ところで、無形文化財は、芸能、工芸技術等無形のわざそのものでありますので、指定にあた
つては、その存在を具体化するため、当該重要無形文化財を体現している人として、その保持者を認定することとしたのであります。これらの重要無形文化財の保護に関しましては、
文化財保護委員会みずからその記録の作成、伝承者の
養成等、その保存のための適当な
措置をとるとともに、国は、保持者、
地方公共団体その他その保存に当ることを適当と認める者に対してその保存に要する
経費の一部を補助し得ることとしました。また、
文化財保護委員会の勧告及び承認による公開の
制度を設け、これについても重要文化財と同様に、
文化財保護委員会が適当と認めたものについては、国は、その費用の一部を
負担し得ることとしました。さらに、無形文化財のうちには、重要無形文化財に指定して、そのままの形で存続のための
措置を講ずることは、社会情勢その他の関係でとうてい不可能と認められるものでも、資料的価値が高く、将来の無形文化財の
発展に寄与し得るものも相当数認められますので、特に一条を設けてこれらを選択して、記録の作成、保存等の
措置を講ずることができるようにしました。
第三に、民俗資料の保護に関する
制度を確立したことであります。民俗資料について有形文化財の体系から切り離して新たに一章を設けて
規定した
理由は、文部大臣の
提案理由の通りであります。この民俗資料の保護のための
措置としまして、まず有形の民俗資料については、特に重要なものを重要民俗資料として指定し、重要民俗資料の現状変更、輸出及び第三者による公開を届出制としましたほか、
管理、保護、公開等について重要文化財に準じた保護
規定を設けることとしたのであります。次に、無形の民俗資料につきましては、無形文化財の場合と同様の
趣旨で資料的価値のあるもの等特に必要のあるものを選択して記録の作成等の
措置を講ずることができるようにしました。
第四に、埋蔵文化財につきましては、まず濫掘防止のための
文化財保護委員会による
指導を十分にするため、埋蔵文化財の
調査のための発掘の事前届出期限を十日間延長して三十日としました。また、埋蔵文化財の
調査以外の目的で、貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地を発掘しようとする場合には、事前届出を要するものとし、
文化財保護委員会において必要な指示をすることができることとしたのであります。
第五に、史跡名勝天然記念物についてであります。史跡名勝天然記念物は、土地に関する権利等と関連する面が強いので、その指定及び現状変更等の制限にあた
つては、特に、財産権の尊重及び他の公益との調整に留意すべき旨の訓示
規定を設けたのであります。また、
都道府県の
教育委員会の行う史跡名勝天然記念物の仮指定については、その性質上有効期間を限定することが適当と考えられますので、これを二年といたしました。さらに、史跡名勝天然記念物の
管理団体の
制度につきましては、重要文化財の
管理団体の
制度を
規定したことに伴
つて、現在政令で
規定されている事項を
法律に
規定することとしました。以上のほか、他の立法例になら
つて、史跡名勝天然記念物の無断現状変更及び環境保全命令違反をした者に対しては原状回復命令をなしうることとして保護の確実を期することとするとともに、罰則についても重要文化財に関する罰則その他他の法令との均衡等を考慮して必要な
整備を行いました。
第六に、
異議申立の
制度につきましては、
文化財保護委員会の現状変更等に関する処分、環境保全のためにする処分及び史跡名勝天然記念物の
管理団体の指定に不服のある者に対して認めることとし、この場合には、公開による聴聞を行い、これらの処分の適正を期したわけであります。なお、
異議申立にかかる事案が鉱業または採石業との調整に関するものであるときは、土地調整
委員会に協議する等他の権利との調整に関して十分考慮し得るようにしたのであります。
以上のほか、
地方公共団体の文化財の保護に関する
任務を明らかにするとともに、国有財産である重要文化財、重要民俗資料及び史跡名勝天然記念物についても
管理団体の
制度について
規定を
整備する等本法全体にわた
つて規定の
整備を行つた次第であります。
以上が、本
改正法律案の
内容の大綱であります。
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