運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-03-16 第19回国会 衆議院 文部委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十六日(火曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 相川 勝六君 理事 竹尾  弌君    理事 長谷川 峻君 理事 町村 金五君    理事 野原  覺君 理事 松平 忠久君       伊藤 郷一君    尾崎 末吉君       岸田 正記君    熊谷 憲一君       坂田 道太君    原田  憲君       山中 貞則君    亘  四郎君       田中 久雄君    中嶋 太郎君       吉田  安君    高津 正道君       辻原 弘市君    山崎 始男君       小林  進君    前田榮之助君       山村新治郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         文部事務官         (調査局長)  小林 行雄君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衛門君     ――――――――――――― 三月十六日  委員世耕弘一君辞任につき、その補欠として尾  崎末吉君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十五日  町村教育委員会廃止に関する陳情書  (第一八四〇号)  義務教育費国庫負担法完全実施に関する陳情書  (第一八四一号)  文教施設整備に関する陳情書  (第八四二号)  同  (第一八四三号)  文教施設予算に関する陳情書  (第一八四四号)  学校給食法制定に関する陳情書  (第一八四六号)  へき地教育振興法制定に関する陳情書  (第一八四七号)  文教施設整備に関する陳情書  (第一九二四号)  町村教育委員会廃止に関する陳情書  (第一九二五号)  学校給食法制定促進並びに栄養教諭設置等に関  する陳情書  (第一九二八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  義務教育学校における教育政治的中立の確  保に関する法律案内閣提出第四〇号)  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四一号)  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案野原覺君外百三十二名提出衆法第六  号)  学校教育法等の一部を改正する法律案前田榮  之助君外百三十三名提出衆法第七月)  義務教育に関する国庫負担金問題に関する件     ―――――――――――――
  2. 辻寛一

    辻委員長 開会いたします。  教育委員会法の一部を改正する法律案教育委員会法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令整理等に関する法律案市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案学校教育法等の一部を改正する法律案教育公務員特例法の一部を改正する法律案、以上五案を一括して議題とし、質疑に入ります。竹尾君。
  3. 竹尾弌

    竹尾委員 市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案につきましてお尋ね申し上げます。  市町村立の幼稚園の教職員給与都道府県負担として、給与の改善をはかろうとするその趣旨は非常にいいことであつて、了といたしておりますが、このための財政的措置はどう準備されておりましようか、その点につきましてお尋ねしたいのです。由来地方公共団体負担関係ある事項を、国の中央がかつてに変更処理することにつきましては、地方自治体から非常に強い非難もあることは御承知通りでありまして、その点につきまして念のため御質問を申し上げます。
  4. 辻原弘市

    辻原委員 財政措置でありますが、これは法律通りましたならば当然補正予算で、国庫負担金増額修正しなくてはならない、こういう事態が生じますので、それは補正予算でその部分だけを修正いたしたい、かように考えております。と申しますのは、この改正にかかわらず国庫負担金は、私の見通しでありますが、先般大臣も言われましたように、一応既定の予算を持つておりますけれども、当然年度半ばもしくは年度末においては清算しなくてはならぬ義務を持つておるので、その際の予算追加になるか、あるいは予備金等で操作をするかは別といたしましても、何らかの方法を講じなければならない、かように考えておりますので、それらとも関連いたしまして、この点を増額補正をする、かように措置いたしたいと思うのであります。国庫負担金の問題はそれでいいのでありますが、同時に交付税関係、いわゆる残りの半額の市町村自己財源と考えられている部面に対して、これまた当然国庫負担金増額修正に見合う措置をとらなくてはなりませんので、この点も新たなる財源地方公共団体にその半額を与えるという措置を兼ねて行う必要がある、かように考えておるのであります。
  5. 竹尾弌

    竹尾委員 そこでこの額は全体でどのくらいになりますか。
  6. 辻原弘市

    辻原委員 両方合せての総額は私も今ちよつと見当がつきかねております。
  7. 竹尾弌

    竹尾委員 大体どのくらいでしようか。
  8. 辻原弘市

    辻原委員 ベース改訂をしたあとにどの程度所要額になるか、具体的な計算はまだいたしておりません。
  9. 竹尾弌

    竹尾委員 これはやはり補正に出されるとしても額があまり大きいと問題にもなりますし、結局そういう点で多少難点もあると思いますし、その点よくお調べ願つて——それは補正で出される以外に方法がないのじやないかと思いますが、もつとはつきりしたところをひとつ調べていただきたいと思います。
  10. 辻原弘市

    辻原委員 これは全然計算をしていないわけじやございませんが、ちよつと私手元に持つておりませんので、後刻でもお話いたしたいと思います。そう大きな数字にはならないと思います。大体全体の国庫負担金を七百億と踏みますると、その一割以下の数字になると思います。ただしかし全部を計算いたしますということになると、ベースアップをして、義務教育のそれと同じような形にしてもう一回計算をし直さなくてはなりませんので、その点の再計算が若干私の方でまだいたしておりませんので行いたいと思います。
  11. 辻寛一

    辻委員長 他に御質疑ありませんか。  要時休憩いたします。     午前十時三十六分休憩      ————◇—————     午前十時四十四分開議
  12. 辻寛一

    辻委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を許します。竹尾君。
  13. 竹尾弌

    竹尾委員 教育公務員特例法の一部を改正する法律案、これは議員立法の方でございますが、これについてお尋ね申し上げたいのですが、この法案のねらいといたしまするところは、教育公務員特例法の第二条にある教育公務員の中に事務職員も入れる、こういうことにあろうかと思いますが、同一の学校に勤務いたしまする事務職員だけが、この教育公務員になつておらないということは、いろいろの意味から均衡を失する、こういうふうに考えるので、この事務職員教育公務員にするということについては、私は異論がございません。これは賛成でございます。しかし今までこの特例法の中に事務職員を入れてなかつた理由につきまして、どういうわけでこれは入れてなかつたのか、その点についてお尋ねを申したいのですが、この点については文部当局にも関係のあることでありますから、あわせてお尋ねを申し上げたいと思います。
  14. 前田榮之助

    前田(榮)委員 なぜ事務職員一般教育職員と同じ取扱いを今までにしなかつたかということについては、それが不当であると思いまして修正案を出したわけなんでありまして、その点はひとつ文部当局から答弁していただくことにいたします。
  15. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいまの御質問は、学校事務職員をどうして教育公務員特例法の中に入れて、ほかの教員と同様に取扱つてないかという御質問でありましたが、事務職員につきましては、これは学校事務取扱う者でございまして、教授、教諭その他の教育事務に携わる者とは性質を異にする、これはほかの特例法に掲げてありまする職員と同様な取扱いをすることは適当でないと思いまして、ただいまのようにしたのであります。
  16. 辻原弘市

    辻原委員 関連して。文部省にお伺いいたしますが、事務職員一般教員との取扱いについて今抽象的にお述べになりましたが、教員公務員の中に包括することが、ただいまの学校教育の体系の中で特に問題があるということを何か暗示されたように私受取つたのですが、たとえば特例法の第二条を改正して、その中に包括するといつたようなことをやつた場合に、特別に大きな支障がこの問題の中に起つて来るのかどうか、この点をひとつ具体的に承つておきたいと思います。
  17. 緒方信一

    緒方政府委員 事務職員は、繰返して申し上げますように、学校事務に従事する者でございまして、ほかのたとえば教育委員会におきまする職員、あるいは極端に申しますと、文部省におきまする教育一般行政に携わりまする職員と、性質において私はかわりがないと思います。従いまして学校事務職員だけを取上げまして、教育公務員特例法の中に持つて来ることはどうかと思う、かように申し上げておるのであります。
  18. 竹尾弌

    竹尾委員 今教育関係でたくさん問題がある、問題があるからいろいろの重要法案が今提出されているということになりますが、この教職員給与の点とか、あるいは勤務条件とか、そういうものに対しては私はできるだけよくしてやりたい、よくするのが当然である、こういうぐあいに考えておるのです。この特例法の中に、これは理論的には事務職員一般教職員は違う、こういうお説ですが、お説は一応お説として拝聴いたしますけれども、同じ学校に勤務する者が、一方は(「ノーノー」)ノーノーじやない。(「建て方が違う」と呼ぶ者あり)そういうことをぼくは聞いておるのじやない。同じ学校に勤務しておる人たち待遇が違うということは、私はどうかと思うのです。待遇は経済的にできるだけ多くのものを与えてやる、私はそうしなくちやいかんと思う。しないから問題が起るのである。だから規則がどうのこうのという、そういうことを言うことは私はどうかと思う。そこでさらに質問いたしますが、これが同じ学校で同じ程度待遇されてるならいいんです。ところが事務職員至つては、はなはだしい地方は、これはお尋ねしなくちやわからぬけれども地域給あたりももらつていないところがあるというようなことすらも聞くんですけれども、そういう点はどうですか。教育公務員でなくとも、そういう給与の点では教職員と同じ条件待遇されておりますかどうか、それをちよつとお尋ねいたします。
  19. 緒方信一

    緒方政府委員 待遇の問題でございますが、これはお話のように、教員平均からいたしますと、予算の点から申しまして事務職員は低いのでございます。ただ御承知のように義務教育費国庫負担法の例の実績半額負担でございますが、この中には事務職員も入つております。それからなお地域給等につきましても、これは一般公務員と同じように取扱つておりますので、もちろんついております。
  20. 竹尾弌

    竹尾委員 そうなるともちろん家族手当等も全部ついておりますか。ついていないところもあるというふうに聞いておりますが、そういうことはございませんか。
  21. 緒方信一

    緒方政府委員 私どもそういうことは聞いておりません。もちろんついていると思います。
  22. 辻寛一

    辻委員長 辻原弘市君より義務教育費国庫負担金問題について緊急質問の申出があります。この際これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 辻寛一

    辻委員長 御異議なしと認めます。辻原弘市君。
  24. 辻原弘市

    辻原委員 私のお時間をいただきました問題は、本日国会に提案されておる第三次の補正予算に組まれた富裕府県にかかる国庫負掛金の補正等の問題に関連する国庫負担金の問題でありますが、御承知のごとく富裕府県の問題につきましては、政府から二回にわたつて富裕府県交付金の打切りを議会に提案されたのでありますが、これが当委員会においては、教育費を確保する必要上適当ならずということにおきまして、いろいろな論議の結果審議確定することができなかつた経緯から生れたものであると考えるのであります。私はこの富裕府県の問題に関連をいたしまして、特に富裕府県にあらざるその他の府県の問題もあわせて、非常に重要な問題である、かように考えておりますので、この際それらの問題について文部大臣あるいは大蔵省にお伺いしておきたいと思います。  最初事務的な面でありますが、二十八年度義務教育費国庫負担金算定基礎なつ総額数字はいかほどであつたか、そのうち国庫負担金はどれだけであるか、この点を最初にお伺いいたしておきます。  次に同じく事務的な数字の問題で、私まだ議会に提案されたこの内容を見ておりませんが、二十七億八千万円でありまするか、この負担金総額の中で、それぞれの富裕府県に対する交付金の額はどれだけになつておるか、おそらくこれは十二月から三月に措置した分だと思いますが、その内容を参考のためにお知らせを願つておきたい。最初にこれだけちよつと事務的なことをお伺いいたします。
  25. 緒方信一

    緒方政府委員 二十八年度義務教育費国庫負担金予算総額でございますが、これは五百四十億でございます。そのうち給与負担額が五百二十一億、教材費負担金が十九億、かように相なつております。  それから今のお尋ねの、第三次補正で出る二十七億八千万の内訳でございますが、東京が十五億六千五百万、大阪が十億三千九百万、神奈川が一億七千六百万、合計二十七億八千万、かように相なつております。
  26. 辻原弘市

    辻原委員 国庫負担金総額はわかりましたが、これは大体半額だと思いますけれども算定された場合のこれを含んでの総額は何ぼであつたか。
  27. 緒方信一

    緒方政府委員 含んでの総額は千百七十億余に相なります。
  28. 辻原弘市

    辻原委員 ただいまお聞きいたしました数字基礎にして質問をいたします。  国庫負担金の問題につきましては、法律制定されまして以来、われわれの見解政府見解とは、取扱い上若干異なつている点があつたのであります。ところが先日の当委員会において、大臣同僚議員質問に対しまして、今後国庫負担金不足が生じた場合は、いわゆる地方実績に対して半額交付するという法律建前によつて、必ずそれに対してはいずれかの時期に精算をするということを考えておる、こういう明言がありました。この点については、その際も私申し上げておいたのでありまするが、法律がわれわれの意図するごとく施行され、また文部省もそのように運用されるというはつきりした言明が初めて得られたものと考えまして、地方財政の面から大臣の御発言は大きくプラスになる発言だ、かように考えておるのでありますが、ただいまお聞きいたしますると、第三次の補正として富裕府県に対する不足分の二十七億八千万円を、それぞれ東京大阪神奈川の三都府県に対して交付するべく予算が提案されておりまするが、これは当然行われなければならぬ問題でありまするし、これによつて従来問題になつておりました点が最終的に解決を見たわけでありまするから、われわれはこの予算に対しては異議をさしはさむものではありません。けれどもこの富裕府県の問題は、富裕府県が当初から一応それぞれの都道府県予算に盛つておりましたものを、これで補填することができるという結果になつて、これによつて均衡が遂げられることになりましたので、まことにけつこうであると思うのでありますが、それに対して、さきに申しましたその他の府県の実情は一体どうなつておるかという問題であります。と申しまするのは、ただいま名都道府県におきましては、当初予算ないしは最終的な三十八年度追加予算を行うべき時期にあたつていると思いますが、その時期において、私の聞く範囲によりますと、各都道府県においては当初の見積りよりも義務教育費給与費支出が相当かさんでおるのでありますが、その点どういう状況になつておるか、まずお聞きしておきたいと思います。
  29. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま文部省におきまして各府県状況をよく精査している段階でありまして、その精査を十分にいたしませんと、ただいまの段階ではその状況についてはつきり申し上げることはできないのでございます。
  30. 辻原弘市

    辻原委員 あるいは最終的な数字がまとまつてないということを申されておるのかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、今度の富裕府県に対する措置によつて最高限度は押えられておりますけれども、大体一〇〇%に近いものが富裕府県に対しては見込まれて措置される。ところが富裕府県以外の府県におきましては、大体私の聞いている範囲によりますると、平均二千万円近い数字が三月の年度末に赤字になるような見込みである。こういうふうに聞くばかりではなく、昨今いろいろ地方からこの問題をどうしてくれるかということで、文部省にも相当の陳情が参つておるようであります。私どもの方へもその点が伝えられておるのであります。もちろん、最終的な数字はまだ発表できないとしても、大体どの程度不足が生ずる見込みであるか、その辺のところをざつくばらんにお話願いたい。
  31. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま申し上げましたように、特に一月以降における状況が私の方でも十分つかめておりませんので、幾らくらい不足するかといつたようなことはちよつとここで申し上げる段階にないと存じますので、この点は御了承願いたいと思います。
  32. 辻原弘市

    辻原委員 なぜ私がかようなことを申し上げるかと申しますと、これは国庫負担金建前上、でき得べくんば、富裕府県措置すると同時に、もし不足を生ずるならば、やはりその機会に当然その他の都道府県に対する不足額もあわせて処理しなければ、非常な片手落ちになる。その場合の数字としては、今お話のように、一月以降の、あるいは特にふくれ上つて来るような、たとえば退職金等の問題があつて算定は非常にむずかしいと思うけれども、一応の見込み数字は出ていなければならぬと思う。これはある程度把握されているのではないかと思いますが、その点は言えないとおつしやるならばやむを得ませんが、見込みけつこうでありますから、大体どのくらいの見通しではじかれておるか。この点は狂いが将来生じたとしても、見込みの問題でありますので、別段さしつかえないのでありますから、大よそどの程度不足を生ずるという見通しに立つて文部省は考えておるか。ひとつおつしやつていただきたい。
  33. 大達茂雄

    大達国務大臣 これはただいま局長からお答え申し上げましたように、大体の不足見込額文部省でわかつていて、それを今時に発表しない、こういう意味ではないのでありまして、その数字がまだわからないために申し上げないというだけであります。ただ御心配の点は、もしかりに平均二千万円程度赤字になるというような場合に、はたしてそれに対する半額負担交付せられるかどうかということについての御心配ではないかと思う。これは前々申し上げますように、実際支出額の二分の一は、当然国庫負担しなければならぬのでありますから、地方においていろいろな事情によつて追加予算等が計上せられて、その結果、この政府国庫負担金として予算に計上してある金額では、その半額負担するに足りないという結果が出ますれば、当然その足りないところは何らかの方法によつてこれを補充しなければならぬ。これは法律上当然なことであります。ただ政府予算は、支出額の二分の一という規定に対して、年度の初めあるいは中途において、一定の見積りを立て予想を立てておる数字にすぎないのでありますから、実際足りなくなれば、当然何らかの措置を講じてそれを補填しなければならぬ。その関係においてはちつともかわりはないのであります。従つて今日まで地方交付しておるのは、御承知通り決算補充でありますから、大体の見込みによつて概算払いをして来ておるわけであります。でありますから、概算払い決算と照し合せて見て、過不足を生じた場合には、交付し過ぎたものについては引揚げるとか、あるいはその逆の、交付金からこれを差引くとか、そういうことをしなければならない。また交付した金額では足りなかつた場合には、その不足額あとから追加して交付しなければならぬ。こういうことになつておるわけであります。御承知通り年度後五月末日で初めて出納閉鎖ということになつて決算が確定するのでありますから、いずれにしても五月の末にはその過不足関係はつきりするわけであります。従来の概算払いによる国庫負担金交付が実際支出額半額に足りない府県に対しては、それぞれその不足額交付する、この関係は全然かわらないのでありまして、今これを概算見積りとして予算に計上するかどうかということは、ただ技術上の問題であります。実際それぞれの地方交付される点においては何らかわりはないのでありますから、決して今予算の計上その他の関係計数がわかつてつて申し上げない、こういう関係ではないのでありますから、その点は御了承いただきたいと思います。
  34. 辻原弘市

    辻原委員 建前についての原則論は、大臣のただいまの言明で私も了承はいたしておりまするが、問題はいつそれを措置するかという点と、措置する場合の技術的問題であります、と申しますのは、今大臣出納閉鎖が五月末日であるから、それまでやればいいのだとおつしやいますけれども、国の方で措置しても、地方の方ではそれをさらに地方予算で組まなければならぬという二重の段階を経なければならぬ。そうしますと、それがいつどういう方法でやられるかということの確定的な見通しが立たなければ、実際問題として、地方としてはその財政措置が非常に困難なのであります。その点で私は申し上げておるのでありますが、ただいまどの程度不足しておるか、はつきりとした数字はつかめない、こうおつしやいましたが、大体私の推察いたしますところでは、今までの例から見まして、おそらくあるいは十億を突破するのではないかというふうにも考えられるのでありまして、そういたしますと、この金が三月末でもつて不足を生じて来たとする場合に、措置方法としては、これを再度の補正でやられるのか、あるいは予備金等方法でやられるのか。どちらの方法をおとりになるのか。これをまずひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  35. 大達茂雄

    大達国務大臣 十億くらい不足になるのではないかということは、私どももそういう声を聞いております。あるいはそうなるかもしれぬ。この場合には、ただいま申し上げましたように、各地方団体決算締切りが五月の末口、つまり三月までに年度支出をするのでありますが、その決算はつきりとした締切りは五月の末日になるのでありますから、その五月の末日はつきりした計数に基いて過不足を整理して、足らぬものはあらためて交付しなければならぬということになるのであります。これは清算補充でありますから、それまでの間はやはり今まで通り大体の概算払いをして参る、こういうわけであります。そこで五月といいますと、支出時期としては来年度に入るわけでありますから、これは当然来年度予算の中からその不足額は支払われてしかるべきものである。これは国庫負担金でありますから、その支出にはさしつかえない。ただその間非常に大きな赤字になれば、自然俸給支払い等について、各地方で資金繰りに困るという問題は、あるいは生ずるかもしれない。しかし、もうすでに三月でありますけれども、そういう問題が出れば、来年度概算払いに手加減を加えて、少しよけいにするとかいうように、できるだけ地方に迷惑というか、そういう資金の逼迫が起らないようにする措置は、どうにでも予算の執行としてできると思つております。決算を済まして、二十八年度予算面から見ると、結局十億なら十億程度不足なつたということになれば、その不足分は当然二十九年度国庫負担金から支出をするのであります。支出をしてそこは決済をはつきりさせるわけであります。その結果二十九年度の方にそれではまた穴が明く、こういうことは考えられる。これもただいま申し上げるように、二十九年度予算も、ただ従来の実績に基いての一応の見積りでありますから、これできつちりという性質のものではない。足りないかもしれぬし、余るかもしれぬ。こういうものでありますから、二十九年度において予算の上に欠陥を生じて、そうして概算払いにも困るというような事態が起れば、それは補正予算をするとかいうような方法で、調節ができると考えておるのであります。今すぐそれについて何らかの措置をしなければならぬということはないと思うのであります。措置をしなくてもその間は不自由なく調節ができるのであり、また法律上に定める三十八年度半額国庫負担についても支障なくその支弁ができる、かように考えております。
  36. 辻原弘市

    辻原委員 今大臣の御説明をお伺いいたしますると、これは定員定額当時の予算の立て方、そういつた場合の国庫負担金予算というものと、この負担金との観念というものは非常に異なつておる。いわば予算と称するものの、事実上これは予算ではなくして、また年度によつて区切られてはおるけれども、これも事実上は年度を区切つておるものではなく、ずるずるべつたりに、必要に応じて支払われて行くというそういう予算である、こういうように私は大臣お話意味を了解するのでありますが、そういたしますると、結局その穴の補填というものはずんずん繰越され、次年度々々々で行きますから、その補填は永久にいつになるかわかりませんけれども、最後のどん詰まりでなければ補正はおやりにならぬというのですね。
  37. 大達茂雄

    大達国務大臣 概算払い等の支払いに困るとか、あるいはきわめて明瞭に何十億の不足ができるかというような場合には、補正措置をとることはあり得ると思います。しかしこれは地方で非常に心配されるのは、従来いわゆる定員定額制で行つて、定員定額ということになれば、これはどうしても打切りであります。一定の基準で積算した金額が打切りで渡されるのでありますから、その打切りで渡された経費をかりに越えてみたところで、それに対しては国家の交付金はない。逆に打切りで渡されても地方で何らかの節約をすれば、あるいは地方で多少その残りができるかもしれない。そういう場合は実際はありませんけれども建前はそうである。今度の建前は実際支出額はつきりすればそれに伴うて半分を出す。こういう建前で全然違つております。ですから従来の定員定額制のときのように、予算にそれがなくても、もうあとはやらぬ、こういう立て方ではないのであります。従来定員定額という関係でずつと来ておるので、地方でその点を心配しておるのじやないか。しかしこれはただいま申し上げますように、建前が違いますから、その点は心配される必要はないと思うのでありますが、何分にも決算でありますから、りくつ通りに言いますと、一切の精算ができてしまつてから初めて交付せらるべき金額が確定されるわけであります。二十八年度について言えば、五月末日の精算が済んだときに、初めて確定する。それでは各地方で現実に俸給の支払いにもお困りになるから、およその概算払いをしておく。こういうので今まで月々概算払いをしておる。結局締切りは五月の末日決算を見て、その府県交付すべき金額がきまる。今までのように、予算がきまつておるから一定の基準で各府県予算をわけて、あとは足りても足らぬでももう交付しない、こういう建前とは全然違つております。その点が従来の考え方で地方で多少不安を感じておられるのではないかと思いますが、その点の不安はないわけであります。ただ大蔵省として、この前申し上げましたが、予算編成のとき定員定額にしたいという希望があつたわけであります。というのは、大蔵省は結局何ぼいるかわからぬようなものは困る。地方で実支出があればそれの半分は出さなければならぬので、それでは国庫支出の見当がつかぬから、基準をきめたらもうそれ以上出さぬ、こういうことにしたいと大蔵省としては考えたわけであります。これも無理はないと思うのでありますが、この前説明を申し上げましたように、その点はやはり現在の法律通り実際支出額の二分の一ということに大蔵省も了承せられまして、二十九年度においてもその方式をとつております。従いまして予算金額がかりに余りましても、あるいは不足しましても、結局地方交付せらるべき金額には変更は生じないという点は申し上げてさしつかえないのであります。その点で地方において不安を感ぜられる必要はない、かように考えております。
  38. 辻原弘市

    辻原委員 今の大臣お話で、五月の出納閉鎖の時期を精算の時期として、そこに出た過不足で調整をする。その場合にいわゆる地方実績ということで精算をするのだから、地方ではその交付の時期がいつになろうとも心配はいらないという話をなさつたわけでありますが、ただここで将来の問題として懸念されるのは、今大蔵省の定員定額の要望の話が出ましたが、これが大臣のようなお考えでずつと行きました場合には、ここしばらくの間は補正しなくても、ともかく金はどんどん払つて行けるということになるが、その当該年次に現行のような予算の組み方ではなくして、たとえば大蔵省の言うような形に改まつて来たようなときには、予算が確定され、あるいは場合によつては圧縮される、そうしたときに当然前年度の問題が非常に問題になつて来ると思うのですが、そういう場合には——これは私は現在のところ予想しておりません。そういうことは絶対すべきでないとわれわれは思いますので、懸念はいらぬのでありますけれども、しかしながらこれも考えておかなくちやならぬ、そういう場合には、その前年度は打切るというような問題の生じないように、大臣としては必ず実績通りの額を当然その当該年次に追加するかあるいは前年度補正として、予備金あるいは繰越金で何らかの操作をするか、いずれかの方法はとらなくてはならぬと思うのですが、はつきりそういうお考えはお持ちになつておりますか。
  39. 大達茂雄

    大達国務大臣 定員定額制にした方がいいのか、あるいはまた実際支出額という現在の建前の方がよろしいか、これについてはいろいろ議論の余地が私はあろうと思うのであります。しかしながらとにかく現行の法律で、実際文出額ということに規定しておりますから、この法律が改正せられない限りは、予算の執行の面において、かつてに定員定額制と同じようなことをするというわけにはどうしても参らない、国会の方で実支出額の実の字をとつて、定員定額のように法律が改正せられない限りは、予算の執行だけでかつてにそういう措置をとるわけに行かない、でありますから年度の途中等において、そういう予算の執行だけの見地からそういうやり方をするということは許されないことになるわけであります。法律が改正になれば、これは別途の方法になりますが、法律が改正になつた場合には、その改正法律の施行せられる以前において支出せられたるものについては、当然に実際支出額の二分の一を負担する、これは建前上当然でありしますから、この点はその通りに御了解いたたいてけつこうだと思います。
  40. 竹尾弌

    竹尾委員 関連して……。ただいま大臣の御答弁によりまして、非常に意を強ういたすのですが、私ども半額負担法を通した当時を考えてみても、これが実支出額の二分の一ということをはつきりうたつてある、これは大蔵省も最初は非常に反対したのだけれども、結局賛成した、その後ああいう特例法のようなものを——大蔵省が強く主張して、せつかくつくつた法律をそんなものでかえてしまうなんて、こういうようなことを言い出したから、これは野党の諸君も賛成したのだけれども、私はそういう建前から絶対いかぬと思つて、与党の委員として大臣にはまことに申訳なかつたけれども、この特例法には絶対反対した。そこできようの大臣の御答弁ではつきりいたしましたが、しかし大蔵省ではあとの幾らかかるかわからぬものに、金を出すわけに行かぬということは、実支出建前なんだ、それについて、今度はそんなことはやるまいと思うけれども、大蔵省にはつきり——こつちは賛成なんだ、こつちが大元なんたから、大蔵省で実際やるかやらぬか、それで了承したのか、それでよろしいか、もう一度はつきりした答弁を要求したいと思う。これは非常に大事だ。またこんなことをやられると苦労しなくちやならぬ。これをひとつお答え願います。
  41. 大村筆雄

    ○大村説明員 今御質問の点につきましては、ただいま文部大臣より御答弁ございましたその通りでございます。
  42. 辻原弘市

    辻原委員 なおこの問題は、運営のやり方によつては、非常に地方に迷惑をかける問題でございますので、若干老婆心に過ぎるかもわかりませんが、次の点についてひとつお伺いをいたしておきます。  大臣は、地方には御迷惑かけないのだ、こういうお話でありました。それで了承していいわけでございますけれども、と申す意味は、大体各府県の実支出にのつとつて、その半額の要求、昨今ではその不足額の要求が参つておると思うのでありますが、その各府県の要求通り支出をされる、それをいわゆる文部省なら文部省において適当に査定をしたり、あるいは減額をしたりして、地方の予想している額に比して低いようなものを当てがうというふうなことは絶対ない、必ず地方の要求通りにその点を織込んで、そうして支出をして行くんだというふうに、これはその通りだと思うのですが、そういうふうにはつきり事務的にもお運びになるおつもりがあるのかどうか、その点をひとつ。
  43. 大達茂雄

    大達国務大臣 要求通りということになりますか、とにかく法律に規定してある支出については、その実際支出額に対しては三分の一を負担しなければならぬ。これは地方からの請求書といいますか、結局決算というものが出て来るわけであります。しかしその場合に、その計算に間違いがあるとか、あるいは国庫負担の対象にならぬ経費がそのうちに入つておつたとか、そういう場合はもちろんそれは除かれる。でありますから、要求通りという意味がどういう意味でありますか、法律半額負担をなすべきものなりとされた支出については、その計算が違つておるとか、そういう点は別でありますが、それをさらに値切るとか何とかいうことはいたしません。
  44. 辻原弘市

    辻原委員 私の申し上げたのも、今大臣お話のような趣旨であります。この法律以外の対象となつておらないものとか間違いとか、そういう場合を除いて、それともう一つは、現在であれば政令で最高限度が押えられておる、それを突破した場合、これは一応法律なり政令の建前から除かれると思うのです。それ以外の、いわゆる地方が独自の方法でもつて支出をしたものをも含んで私は申し上げたのであります。その場合には当然これは私は支出すべきもの、こういうふうに考えておりますが、その通りだと大臣の御返答を承りました。  それから次の点は、先ほど金繰りの問題が出ましたが、補正をやらずにそういつた建前でもつて支出をされて行くとするならば、確かにこれは各府県では金繰りの問題で困つて来ると思うのであります。その場合に、交付の時期はこれをできるだけ早めてやらなければ、非常に支障が来る、そう考えまするので、かりにその精算の時期が五月であつても、一応はつきりした確定的な見通しが立てば、これは順次お支払いになるのか、あるいはその五月の出納閉鎖時期、ここでもつて精算をした直後、第一回のいわゆる本年度であれば三十九年度最初の概算時期において、その精算して出て来た不足額をプラスして概算されるというお考えであるのかどうか、この点をひとつ。
  45. 緒方信一

    緒方政府委員 資金繰りの問題でありますが、この地方における資金繰りの問題は、実は大臣からも御答弁がありましたように、二十九年度支出をなるべく早目に出すということにつきましては、ただいま大蔵省ともお話合いをいたしておる次第であります。ただ、今お話のように、今のいわゆる不足額に当る分をいつごろ出すかということにつきましては、さらに大蔵省と相談をいたしまして対処して行きたい、かように考えております。
  46. 辻寛一

    辻委員長 辻原君、大臣はどうですか、参議院から呼ばれておりますが……。
  47. 辻原弘市

    辻原委員 それじや、大臣けつこうです。
  48. 松平忠久

    ○松平委員 関連して——ただいまの大臣お話大体わかつたのですが、金の出し方です。今年の七百億の予算の中から三十八年度の分もお出しになる、こういうわけですか。
  49. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はさように承知をしております。
  50. 松平忠久

    ○松平委員 二十九年度の七百億の中から一部をさいて三十八年度分に補填する、こういう意味ですか。
  51. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは予算の経理の問題でありますから、あるいは私が間違つておるかもしれませんが、私の了解する限りでは、二十九年度予算というものは二十九年度つまり今年の四月一日から来年の三月末日まで、この二十九年度の間において交付せられる金額予算に見ておる。こういうふうに考えておるわけであります。これは決算の方でありますから、前年の分も当然翌年度にわたらなければ、これは精算してみなければ計算が実はわからないわけであります。ですから、これが二十九年度分とか二十八年度とかいうことは、大体そうでありますけれども、しかし予算としては二十八年度において、もしくは二十九年度において地方交付せらるべき、もしくは交付を必要とする見積金額、かように御承知つていいと思います。
  52. 辻原弘市

    辻原委員 その点大蔵省にお尋ねしたい。この金の出どころについては、大臣のお気持は了解したんです。これは、とにかく金が出れば地方は困らぬのですが、ただだんだん聞いておりますと、そうするとともかく会計法の問題それから会計年度の問題、こういうものと何ら関係なしに金が支出されるということは、これはちよつと疑問をさしはさむのです。と申すのは、ただいまの大臣の御趣旨で行かれるならば、今度の第三次の補正予算富裕府県の分についても、別段補正しなくてもいいという議論に通ずるかもわかりませんが、大蔵省はどう考えますか。
  53. 大達茂雄

    大達国務大臣 予算の経理とか何とかいうものを全然無視してというようなお話ですが、そういうことはひとつもないですよ。これは過年度支出ということになりましよう。つまり過年度ですから、二十九年度予算で、たとえば五月以降、決算を見た上で、六月なら六月に不足分を支払う、そういう場合にはその支払いの金の性質はこれは過年度支出、過年度に対する支出分、こういうことになると思いますが、それを三十九年度負担金の中から出して私は一向さしつかえないと思いますが、しかしこれは事務的のことですから、ここに大蔵省も来ておられるが、決して私は予算を経理とか何とかいうものを離れて、かつて放題に使つてもいいというようなむちやなことは言つておりません。これは事務的のことだから、もし間違つておれば訂正をしていただきますが、しかしそうすると、別々に過年度分という予算をもう一つこさえなければならないし……(「そういうことになる」と呼ぶ者あり)そういうことをする必要はないと思います。それができないというのは、私の古い事務的の頭では了解できません。
  54. 辻原弘市

    辻原委員 大蔵省にちよつと参考にお聞きしたいのは、これは決して大臣のあげ足をとる意味じやございませんが、はつきりしておかなければならないことは、これは事務的の問題ではありません。補正をすべきであるか、そういうふうないわゆる過年度の問題だけで処理すべきであるか、それはやはり大きな方針の問題でありますので、この点は重要であります。同時に大臣の議論をもつて全般を推しはかろうとするならば、私はあえて申し上げませんが、先ほど申しました富裕府県の問題でも、やはり三月末には明確になつていないはずです。三月末までは富裕府県といえども、その後新たに生じた支出すべき額というものは明確に幾らということははつきりしないはずです。その議論で行くならば、同じようにその他の都道府県もその通り。しかし富裕府県の分だけは、これは一応見通しの上において予算を組んで補正年度末までに措置しなければならぬとして、補正予算を出され、その他についてははつきりしないから、これは二十九年度のあれでもつて出して行くんだ、こういうふうに言われておるのです。その点については、そういうような操作がこれは会計法上、あるいは会計年度内の経理という面からみて、行えるのか行えないのか、それと今掛された第三次の補正との関連について大蔵省はどう考えておるか。これを一ぺんお伺いいたしたい。
  55. 大達茂雄

    大達国務大臣 大蔵省が答える前に私から申し上げます。あなたはどうも私の言うことを誤解をされておるように思うのです。予算を組むというのですよ。これは実際の支出額に対する見積り予算でありますから、むろんきちつとしたものが出るわけがない。しかしできるだけ実質に近い見積りを立てなければならぬ。今あなたが言われたように、五百万円でも三百万円でもあてがいでこしらえておいて、そうしていつでも順繰りに出して行けばいいのだ、こういう考え方を私は持つているわけではないのであります。むろんできるだけ正確に見積つて、そうして予算は編成するのであります。しかしその予算は、事柄の性質上それ以上は出さないとか、あるいはかりに余つてもそこまでは絶対に出さぬとか、そういう性質のものでないということは、法律から来る、つまり実際支出額と書いてあることから来る結果なのであります。そこで東京その他富裕府県に対する予算というものは、御承知通り初めから見積つていない。十二月以降の分については、全然初めから、見積りのうちから落されておつたのであります。ところが、いわゆる特例法が不成立ということになりましたから、当然その分だけは見積りとしても附加しなければならぬ性質のものである。それで今回補正予算で出た二十七億八千万円という金が、東京その他富裕府県大阪神奈川に対してこれがきちつとした正確な数字であるということは一つも保障はない。これはやはり東京でも追加予算を出したりなんかすれば、これは過不足が生じ得る金なんであります。しかし本来がそれは初めから交付しないものとして、予算の計上のときに見積りから落されておつた数字でありますから、これはどうしても補正をしなければならぬ。出入りが予想された場合にすぐ補正を出す、また場合によると、余りそうだというので、今度また減額する、そういうことをする必要はたいのであつて、どうも少し飛躍せられて、東京都の分も出さなくてもいいようになると言われるけれども、そういうものではない。予算はできるだけ精密に見積りを出す、こういう点はかわりはないわけであります。今のようにあてがいで五十百万でも六百万でも出しておけば、実際はどうにでもなる、これは何か会計法に違反するというお話でありますが、私はそうは思いませんから、その点あまり飛躍したことになるといけないから、くどいようだけれども、その意味に御了承願つて、大蔵省から経理上の措置を一ぺん聞いていただきたいと思います。
  56. 辻原弘市

    辻原委員 これはいろいろありますが、富裕府県の問題についても、もちろん私は確定的の数字じやないと思う。従つてこの補正予算が通つた後においてもり当然富裕府県も三月までの見通しに立つて不足が生じて来るような場合には、その他と同じようにこれを見積る、その点ははつきりいたされますね。
  57. 大達茂雄

    大達国務大臣 その通りです。
  58. 辻原弘市

    辻原委員 それでは先ほどのことについて大蔵省から伺います。
  59. 大村筆雄

    ○大村説明員 ただいまの問題は、財政技術上の、帳簿上の帳じりをどうするかという問題と、それから資金繰りの問題をどうするかという問題の二つにわかれると思います。  そこで、赤字が出た帳じりの問題をどうするかという問題につきましては、法律上の建前から、実質額の二分の一を交付することになるわけであります。従いまして、ここで決算をすることになります。そして決算が確定いたしますのは当然五月以降になるのでありますから、そのあとにおきまして、決算の結果による赤字金額、あるいはその当時の財政状況ともにらみ合せて、補正予算を組むなら早い機会に補正予算を組む、あるいは補正予算を組まぬのならば三十年度予算というように、早い機会に予算措置をされてしかるべきだと思います。  その間において地方財政の資金繰りをどうするかということにつきましては、先ほど大臣からも御答弁がありましたように、二十九年度の七百億の国庫負担金配分の際に、できるだけそういう点を早目に考慮してやるという措置でもつてよろしいものと考えております。
  60. 辻原弘市

    辻原委員 そこがはつきりしないのです。五月の決算期に精算をした、その精算にのつとつて金を出す処理は、一体何によつてやるのですか。あなたは何か補正とか、三十年度の金でもつてやるとかいうことを申されたように思うのですが、さつき大臣は、二十八年度不足の出たものは、出納閉鎖で締め切つてみて、二十九年度予算の中から金をとつて出すのだという説明をされたが、それは肯定されますか。
  61. 大村筆雄

    ○大村説明員 二十九年度国庫負担金七百億というのは、二十九年度の所要義務教育費半額分であります。従いまして、二十九年度義務教育費が七百億円で組んでありましたら、その余つた範囲内でやる、かりに二十八年度赤字が出て参りました場合には、その赤字を補填するということは、大蔵大臣の承認をもつてできるかと思います。もしそれが余らぬ場合は、これは当然補正とか、そのほかの予算措置でできるわけであります。
  62. 辻原弘市

    辻原委員 その余つた場合は承認を求めて支出するということはわかります。しかし二十九年度はおそらくあまり余るとは予想できません。そこで精算をするというのは、足らぬから精算をするのです。昭和二十四年までのあの精算の当時を見ましても、あまり余つたということは聞きません。おそらく今の状況から見て、二十九年度も、これは増加することはありましても、そう余裕が出て来るとは考えられない。そうした場合に、あなたは適当な方法補正するというが、その補正というのは、二十九年度補正ですか。
  63. 大村筆雄

    ○大村説明員 それは二十八年度赤字金額とか、あるいは二十九年度財源関係なんかもにらみまして、二十九年度補正をする機会があれば二十九年度補正しますが、機会がなければ、三十年度予算はつきり措置できると思つおります。
  64. 前田榮之助

    前田(榮)委員 緒方局長お尋ねいたしますが、今の金の出し方については、大蔵省からお話があつた通りであつて予算補正をやつて、もし二十八年度で足りない場合にも二十九年度の金で支出することはいけないということを大蔵省は言つているが、それはその通りであつて、二十九年度の金を早く支出して便宜をはかるというようなことは当然やつていいと思いますが、二十八年度分の不足額をこれこれへ出すということになると、二十九年度予算七百億円という金は、立法機関たる国会がこの予算議決において二十九年度の俸給額幾ら幾らの半額だということできめたのだから、それを二十八年度分として支払うことができないことは、これは子供でもわかつた話だ。それを今便宜のためにやるようなことを文部大臣が言つたのは、おそらく実際の事務取扱つている局長あたりがそういう感覚で文部大臣を使嗾したというと語弊があるが、そういう進言をしているじやないか。  私がここで明確にお尋ね申し上げておきたいのは、全国の都道府県教育委員会委員の協議会にお引いて調査されているので、これはおそらく文部省から出た数字であると思うが、大体これは予算決算が出ているわけではありませんから、今の予定する額が出ているのだと思いますが、給与額は、不足額が十八億一千二百五十三万六千円と出ている、そしてその半額であるところの九億六百二十六万八千円というものが不足することが予想される。こういう数字が出ておることは、相当根拠のある数字であろうと思う。おそらくこれは文部省でいろいろ調査したものを寄せ集めた数字だと思うのですが、この額はどうするのか、これを明確にしないと——何も私は文部省が金の使い方をでたらめにするとかなんとかいうことで聞いておるのではないのであつて、全国の府県における学校職員給与半額負担ということを全国の教育委員会等でこれを実際取扱つてみると非常に心配な点があると思うのです。いろいろなことで難くせをつけられる点が今までにも往々あるわけです。これは難くせをつけるといつても、不当なことがなければ難くせをつけられることはないのでありますから、そういう心配はせぬでもいいのでありますが、やはり法律に基いて教育職員給与を支払う点において半額はくれるものとしてやつておるものが、いろいろなことで、必要以上といいますか調査なんかでもしちめんどうなことを言われると、向うも下僚の職員たちは非常に実際的に困ることがあるというようなことから、いろいろ心配な点があるので、こういうことははつきり明確にしておかなければいかぬと思う。法律はすでに文部大臣も言われたはないはずでありますが、それならそういう場合の支出はこうだということを明確にしてもらいたい。緒方局長は、今大体九億余りの不足が見られるのは、そういうことになつておると考えておるか、考えておるとするならその処置について、金の支出については今大蔵省から言われたような方法でやると言われるのか、この点ひとつ明確にしておいてもらいたいと思います。
  65. 緒方信一

    緒方政府委員 大臣が答弁されましたのは、法律に基きまして実支出額負担をするのだと強調されて答弁されたのだと思います。大村主計官お話がありました方法についてと食い違いはないと思います。先ほどお話がありましたように、資金繰りをどうするかという問題と、実質的な赤字をどう補填して行くかという二つの問題があると思います。資金繰りの問題につきましては、二十九年度負担金を適当に操作をして、なるべく早目に、なるべく迷惑をかけないように支出して参るというのが一つであります。実質的な赤字の処理問題につきましては、今お話のありましたような方法がとられると思います。  それから九億幾らの負担不足額という金額の問題でございますが、これは先ほど大臣からも御説明がありましたように現在調査をいたしております。これは法律に基きまして支出する金でございますから、でたらめにやるとかやらぬという問題は起つて来ないのであります。そういう意味でわからぬと言つておるのではございませんので、事案今各県に出張して調査をいたしたりしております。それがまとまりました上で大蔵省とさらに折衝して行きたいと考えております。
  66. 前田榮之助

    前田(榮)委員 大体九億六百二十六万八千円という不足額教育委員会の協議会においてすでにいろいろ調査されておる。この額についてこれが正確なものであるかどうかということは、今もちろんこれの調査中なのでありますが、大体そういう見当が出るだろうと予想されておるかどうか。予想でよいのですから、それが少々違つて八億になつても、七億になつてもそれはわれわれ何とも言うのではありません。おそらくこれは文部省において調べられたいろいろな資料からこういうものが出ておるのだろうと思いますが、大体これくらいな見当になる可能性が多いとお考えになつておられるか、この点ひとつお聞かせを願いたい。
  67. 緒方信一

    緒方政府委員 金額の点につきましては、先ほどから繰返し申しますように、最終的には決算を見なければまたわかりませんし、これは金額の大事な問題でございますので、幾らということは申し上げることはできません。その点は御了承を願います。
  68. 辻原弘市

    辻原委員 赤字の問題と資金繰りの問題と一つにわけて答弁をされたのでありますが、もちろんやろうとすればできないことはないけれども、しかしそれは経理上の本則ではなかろうと思う。大蔵省の立場で、当然赤字が予想されておる、しかも資金繰りの面から行けば年度の当初にこれは支出しなければならぬということを、先ほど大臣言明された。すると支出したところで、しかもそれをかりに二十九年度のものを一時流用するというあまり好ましからざる方法をもつてやつたとしても、当然そこに、もうそのときにおいてこれを補正しなければならぬという問題が生れて来る。しかしながら補正をするということはこれは主計官の立場としては言明できない問題であるので、三十年度にはというふうなことを言われた。その胸の中はお察しするけれども、そういうことになれば、当然二十八年度のものを含んだ補正ということが二十九年度に起らなくちやならぬという問題が出て来ると思うのです。それは筋道として二十八年度不足分を二十九年度文部省としては要求しなければならぬと思うが、そういうつもりを持つておるのですか、文部省にこの点いま一度伺いたい。
  69. 緒方信一

    緒方政府委員 赤字の補填の方法につきましては、いろいろ予算技術上の問題があると思いますが、この見通しがつきました上は、大蔵省とよく協議いたしまして、折衝いたしたいと考えております。
  70. 辻原弘市

    辻原委員 大蔵大臣は、二十九年度予算については補正をいたしませんということを予算提案にあたつて説明された。しかしながら文部省は二十九年度に五月の出納閉鎖時の打切りをもつて明確になつ赤字の補填だけは補正予算をもつて要求するということを今言明されたわけで、私はそれによつて了承いたしますが、大蔵省は当然事務的にはそういう考慮をなさらなければならぬと思うが、主計官は今の局長のお言葉をどういうふうにお考えになりますか。
  71. 緒方信一

    緒方政府委員 ちよつと、今私が申し上げましたのは必ずしも補正予算をという限定した意味で申し上げたのではありません。いずれかの方法によりまして支出をするということを、大蔵省の予算編成の技術上の問題もあるかと思いますが、その点を折衝いたしたいというふうに申し上げたのであります。
  72. 辻原弘市

    辻原委員 そういう便利な方法があればそう願いたいのだが、出納を閉鎖して、前年度の繰越金もなく当該年度に入つたときに、前年度の金を予算経理上執行するような便利な方法があるならば、どういう方法があるかひとつお聞かせを願いたい。適当な方法でということであるが、それの補正をすること以外に方法があるならお聞かせ願いたい。
  73. 大村筆雄

    ○大村説明員 義務教育費国庫負担金というものは、先ほども申し上げましたように一種の精算する建前になつております。決算に対する取扱い決算の確定をまちまして、かりに赤字が出ました場合には、翌年度以降に予算措置をするのが従来のしきたりであります。ただ最近は毎年補正予算を組む機会がございますものですから、それまでに決算確定をいたしまして、赤字金額がきまつております場合にはその措置をやつております。しかしその場合に必ずしも補正でやる必要のないものは、さらに翌年度予算措置する、これが従来の財政上の取扱いでございます。その場合に何十億という赤字が出た、そのために非常に地方財政が圧迫されておるという場合には、これはまた補正予算を組まなければいかぬという場合が出て来ることも考えられますし、あるいはその場合に予備金が相当あれは、予備金で出すということも考えられます。そのほか七百億の中で多少余裕があれば、その中で操作するということも考えられます。
  74. 辻原弘市

    辻原委員 ただいまの主計官の説明は、私は予備金支出のことを言つているのではないかと思いますが、具体的にいつて二十八年度赤字は、私は十億を突破すると思つております。先ほど大臣が言われたように、富裕府県にしても、今度の二十七億八千万の補正のみならず、三月までにその他弱小県と同じように増加する要素を持つております。従つてその分を含めれば、先ほど前田さんが教育委員会の資料をもつて九億六百万何がしということを申されましたが、私はそれ以上に増加すると考えます。そうすると当然十億以上の金が赤字ということになれば、私は予備金でやり得れば、そういう方法でやつてもかまわないと思うのでありますけれども、しかしながら二十九年度の予備金の支出ということは、これは予備金ではあるけれども、その中には当然支出されるべき要素としてのものが織り込まれておる。そうすると、私の記憶では、その予備金の中に要素として入つてなかつたと思うんだが、これは当然支出されるような内容をもつてその予備金は組まれておるのか、あるいはその後に加わつた要素として、それをも含んで二十九年度の予備金が支出されるというお考えを大蔵省は持つておられるのか、しかも補正をやらぬということになれば、当然その方法によらざるを得ないと思うが、それはやれる御自信がありますか、これを主計官に伺いたいと思います。
  75. 大村筆雄

    ○大村説明員 予備費は政府原案においては御承知通り百二十億であります。三党修正の結果五十億減つたわけでありますが、なお八十億ほど残つております。義務教育国庫負担金は、赤字決算赤字補助の建前でございます以上は、当然過年度赤字決算を見た上で交付するわけであります。御承知通り予備費は当該年度におきましての緊急事態に備えるためのものでありまして、元来ならば赤字が出ましても問題は資金繰りで地方財政が圧迫されるかどうか、それだけ穴が明きますと、地方財政がやつて行けないかどうかということが一番問題でありまして、ただ赤字が出ただけですと、昭和二十八年度の帳簿いりを合せるために昭和三十年度国庫負担金の二十八年度赤字を計上すれば間に合う。しかし資金繰りの点で地方財政がやれないということになれば、別途資金繰りの点で考えなければならぬと思います。
  76. 辻原弘市

    辻原委員 どうも重要な点がぼけておりますのではつきりいたしませんが、大体のところはわかりました。私はこれ以上のことは申し上げません。申し上げませんが、問題がさように非常に苦しい状態になることは、当然操作上補正すべきものであつて、その補正の責任を怠るからかようなことになると思う。数字はつきりしないということを言われましたけれども、しかしながら予算を編成する場合これはある程度——今はもう三月であります、これから支出される金あるいは各都道府県において不足を生じておるものというのは、ほとんど確定的に近い見通し数字がすでに出ておると思う。具体的に申してみますと、たとえば退職金の支払いの問題にしても、今日の時期においては、これは大体どのくらいいるかということはほぼ確定的であります。従つてその数字をもつて、五月八日までは議会があるのでありますから、この時期に補正提出するならば、何らかの方法というようなことを言わずして、当然二十八年度予算ないしは二十九年度予算等でもつて完全に補填して、あとで資金繰りにおいてこれはせつかく御努力をいただきたいと思うけれども、しかしながら努力を願いましても、従来の例から見て、各府県が要処するごとく適切な時期にその金が交付されるということはちよつと期待しがたい、従つて、そういう時期にこれの補正をやられるということは、当然の責任でもあろうかと思います。それをおやりにならないから、その赤字の補填の制限をするし、金繰りの問題についても別途の方法でやらなければならぬというような、非常に今の時期としては適当でない方法をとられなければならない、かように私は考えるのであります。従つて資金繰りの点についても詳細お聞きしたいのでありますが、先ほど決算期が過ぎましたならばすぐさまその資金繰りについては考慮する、できるだけすみやかに地方に対して交付されるということを大蔵省も文部省言明せられましたので、了といたしますけれども、その問題上同時に、はつきりさせる意味において、ひとつ補正予算を、あなた方の方で事務的に取運ばれるような進言をそれぞれ当該大臣にやられて、後日その操作について困つた事態あるいは問題の起きないように、特になお一段の御努力を願いたい。幸い富裕府県の分の補正予算が出ておるのでありますから、これに加えてわずか十億程度補正をおやりになるとすれば、あながち大蔵省といえども金がないとは申されない、十億くらいの余裕金は二十八年度の会計年度の中においても生み出せないということは万々あるまいと私は信じております。こういう点についてもひとつ特別に考慮願いたい。同時に、これは大蔵省、文部省、両省に要望いたしておきますが、国の予算が確定いたしましても、地方においてそれが財政支出されるのはその後であります。従つて、その以前の国の方針が明確にならない限り、地方においては実際金を必要とする、また経理決算が行われなければならない時期にいろいろな困惑が生ずることは当然でありますので、どうか本日言明せられた趣旨は早く各地方庁にも徹底させていただいて、無用の陳情をしたり、あるいは各府県がこの予算編成にいらさる混乱を生じたりしないように、明白に地方実績通りに支給するのだ、今各都道府県において予算の編成上その数字をあげなければならないとするならば、現在持つている地方実績数字をもつて予算を編成すればそれで足りるんだということを徹底せしむるように御努力願いたい。最近この問題については、富裕府県を除いて四十二、三府県は、これについてどうしてくれるんだということでいろいろ臆測しておる、こういう段階でありますので、ひとつ文部、大蔵両省とも、ただいま本委員会において明確にせられて、ともかく必ず支給するんだという点については、これは何らかの機会に周知徹底せしめて、各府県に支障のないようにしていただきたいことを最後に要望いたしまして私の質問を終ります。
  77. 松平忠久

    ○松平委員 簡単にちよつと関連してお尋ねいたします。ただいまの二十八年度義務教育半額負担に関して、その補正をすべきだ、あるいは他の方法をもつて補正すべきだという議論があつたのでありますが、これに関連して心配になることが一つあるのであります。それは本二十九年度予算であります。お尋ねしたいのは、二十九年度の七百億の予算の中に見込んであるところの半額負担に関する富裕府県分は、一体何億くらい予想されておるかということをちよつとお尋ねしたいのであります。それと同時に昨年度、つまり二十八年度富裕府県分は合計幾らになつてつて、二十八年度と比べて二十九年度はどのくらいふえておるのかということであります。
  78. 緒方信一

    緒方政府委員 二十九年度富裕府県分というお話でございますが、二十九年度は御承知のように特例法を予想しておりませんので、富裕府県とわけて計算をいたしておりません。いやしくも政令府県一般府県との区別はいたしておりますけれども富裕府県というものを特定いたしておりませんので、ちよつとここで明らかにいたしておりません。それから資料につきましても、ちよつとここで持ち合せませんので、あとでお知らせいたします。
  79. 松平忠久

    ○松平委員 大体二十八年度においては十億程度赤字が見込まれておる。従つて二十九年度予算については、大体二十八年度を標準としてベース・アップを勘案して予算を組まれておる。こういうふうにわれわれは了解しておるわけですが、すでに二十八年度において約十億の、あるいはそれ以上の赤字が出るということであると、それをもとにしてやつた二十九年度予算というものも、当然相当の赤字が予想されると思うのです。言いかえれば二十九年度も二十八年度以上の不足が各府県に生ずるということは、これはもうこの予算を編成した当初から地方教育委員会の協議会においては心配しておつたところであつて、大体七百億のこの程度予算においては、二十八年度実績からいつて三十億程度赤字が当然予想されるということで、陳情があつたと思うのですが、文部省はそういう陳情を受けておるか、どうか。そういうことを承知しておられるかどうか。
  80. 緒方信一

    緒方政府委員 二十九年度予算を組むにあたりましては、この前からたびたび御説明申し上げておりますように、二十八年度実績を土台にいたしまして、それに対する児童増に伴う教員の増、それから給与単価につきましても、それぞれ二十八年度実績をもとにしまして、昇給財源等を見て組んでおります。従いましてただいまのところ初めからこれに赤字が出るということは予想いたしておりません。それから陳情の問題につきましては、私はちよつと承知いたしておりません。
  81. 松平忠久

    ○松平委員 今の説明によりますと、二十八度を基礎にして組まれたというわけであるから、二十八年度にすでに十億の赤字が出たというならば、二十九年度は出るのはあたりまえの話です。そこでお伺いいたしたいのは、先ほど辻原君が二十八年度不足分について、補正か何か適当な方法でこをやれと言われたが、二十九年度についても当然予想されるわけであつて、それらの点について二十八年度分とともに、一括してこれを考えるということをお考えになつておるかどうか。
  82. 緒方信一

    緒方政府委員 二十九年度予算はただいま予算編成をいたしたばかりでありまして、これに対しまする赤字が出るとか出ぬとかいう問題について、ただいまからこれを予想して措置を考えるということはないのであります。この点御了承願います。
  83. 松平忠久

    ○松平委員 それはちよつとおかしい。二十八年度基礎にしてやつたのであつて、そのときに二十八年度にはこれだけ不足が出ておる、二十九年度も出るということは当然予想されなければならぬことです。これはあなたはどうかしておる。だからあなたは、こういう点についてはもう少し慎重にお考えになつてもらいたいと思います。それでは二十八年度分の不足というものは一体いつころ最終的に、法的に手当されるということにお考えになつておるのか。場合によつては、二十九年度分はまた一括考えてやられるということが私は賢明ではないかと思つて申し上げたのでありますが、それについてあなた方はどういうことを考えておるかということをもう一度はつきりお聞きしたい。
  84. 緒方信一

    緒方政府委員 二十九年度分については、これは私はこの際いつごろにどうするということは申し上げられません。赤字が出るか出ぬかということについても、今予算を編成して執行するときでありますから、二十八年度分につきましてはなるべくすみやかに大蔵省と協議いたしたいと思います。
  85. 辻寛一

    辻委員長 暫時休憩いたします。午後一時から再開いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  86. 辻寛一

    辻委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  義務教育学校における教育政治的中立の確保に関する法律案、及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題となし、前会に引続き質疑を続行いたします。高津正道君。
  87. 高津正道

    ○高津委員 教育公務員特例法の一部を改正する法律案義務教育学校における教育政治的中立の確保に関する法律案について文部大臣質問をいたします。こまかい問題から聞いて参ります。  大臣、あなたは映画「原爆の子」を政治的目的を持つたものとお認めになりますか。
  88. 大達茂雄

    大達国務大臣 私「原爆の子」というのを見ておりませんから、わかりません。
  89. 高津正道

    ○高津委員 それでは他の政府委員の人は「原爆の子」を政治的目的を持つたものと認めておられるか、承りたい。
  90. 緒方信一

    緒方政府委員 私もその映画を見ておりませんので……。
  91. 高津正道

    ○高津委員 他の政府委員はどうですか。
  92. 辻寛一

    辻委員長 ただいまそのほかの方はおりません。
  93. 高津正道

    ○高津委員 それでは、大いに日教組を研究する必要があるということを他の委員会文部大臣は言つておるのでありますが、その日教組のつくつたところの映画「ひろしま」は政治的目的を有するものと認めますか。まず文部大臣にこれをお尋ねいたします。
  94. 大達茂雄

    大達国務大臣 「ひろしま」という映画は私は見ました。政治的目的を有するかどうか、これはこの映画からすぐそれを推定もしくは判断し得るかどうかは疑問であろうと思います。ただあれは文部省教育映画として認定を求められましたが、教育上有益な映画としてこれを認定することは拒絶した事実があります。
  95. 高津正道

    ○高津委員 あの平和を熱心に希求して、そうして戦争の弊害を多くの人たちに教える熱心な労作である映画「ひろしま」を、文部省は申請があつたにかかわらず、何ゆえ適当でないとお認めになつたのか、その理由を伺います。
  96. 大達茂雄

    大達国務大臣 映画「ひろしま」は製作者である日教組の話によると、平和の精神を鼓吹するためである。こういうふうであつたようであります。あるいは日教組としてはそのつもりでおつくりになつたかもしれませんが、私があの映画を見て感じたことは、平和を愛する精神を鼓吹するというのではなく、むしろ復讐戦を鼓吹しておるのではないか、私はさような印象を受けました。
  97. 高津正道

    ○高津委員 今文部大臣は、日教組の説明の平和の精神を鼓吹するためのものではなくして、むしろ戦争の復讐心を鼓吹するものである。こういうふうに言われましたが、私とはまつたく認識が違うのであります。それでもう一つ聞いてみましよう。前進座が全国の多くの学校で上演した有名な、農民よ蹶起せよ、圧政に抗して立ち上れという趣旨のものと人たちは多く認めておるようでありますが、あの佐倉宗五郎劇、あれは政治的目的を持つたものとお認めでありましようか。
  98. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は残念ながらその劇も見ておりません。
  99. 高津正道

    ○高津委員 他の政府委員のお考えを聞きたい。
  100. 緒方信一

    緒方政府委員 私もその劇を見ておりませんので、ちよつとわかりません。
  101. 高津正道

    ○高津委員 それではお尋ねを進めますが、もう一つ、今映画「ひろしま」が文部委員たる私の見るところと大津文部大臣の見るところと違うわけであります。(「それはあたりまえだ」と呼ぶ者あり)それはあたりまえだというような不規則発言がうしろの方から飛んでおりますけれども、なかなかこういうものに対しては、客観的な、たれもが認めて妥当な基準というものがないから、そういうことになるのであります。今度の中立性に関する法案の中には宣伝、扇動という字句が入つており、しかもそれが非常にまわりくどい表現になつておるのであります。教育は思想とか、学問とか、説明とか、そういうような思想にわたるものでありまして、それを一人の人間はこれはその域を越えたものであると言い、他の者はそれは越えてはいないと言うて、おのおの見るところを異にするのであつて、非常にむずかしい問題であると思うのであります。また昨日同僚小林委員は、政府提出した偏向教育の事例について、多くの委員が党派を超越して調査して来たが、これは事実無根であると言つておるものもあるし、あるいは少しばかり何かがあると言えないこともないかもしれないが、それを針小棒大に誇張したものであるというようなことを申しておりますが、この法案を通すために二十四の事例を宣伝材料として提出された。あの資料の見方に対して、それは主観の相違である、それは認識の相違であるということをもつて文部大臣は答えられたのであります。このように非常に教育の中立性を侵しておるか、侵しておらないか、きわめて明瞭を欠くことでありますから、私はこの法律が通るならば、法律の中に「何人も」という言葉も入つており、実に教育に携わる者はもちろんのこと、言論に携わる者、講演する者、執筆する者は非常なる圧迫を受けるということをおそれるものであります。文部大臣はそういうように教唆扇動といつて、精神的な、思想的なものを対象としてこういう法律をつくるということは、言論の自由に対して何ら幅を狭めるものではない、言論の自由、思想の自由に対して少しも圧迫する法律ではない、このように主張されるならば、その理由を十分説明をしていただきたいと思います。
  102. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは罰則を伴う法律でありますから、その罰則の対象となる規定の解釈といたしましては、もちろんきわめて厳格格に解釈されなければならぬ、これは申し上げるまでもないと思います。  それからこの法律の結果、いわゆる教唆扇動、これが思想の圧迫となり、あるいは言論の圧迫となるということが絶無であると思うかどうか、こういう御趣旨のようでありましたが、なるほどこの法律に書いてありますような目的をもつて、つまり政党の政治的勢力の伸張あるいは減退を目的として、教職員の団体の組織活動を利用して、そうして特定の政党を支持しまたは反対させる教育を行うように、学校の先生に向つて教唆扇動する、そういう言論はこれによつて押えられることはもちろんであります。これは法律に書いてあるのでありますから、さような言論はこの法律によつて少くとも罰則を受けろことを覚悟しなければ言えない言論であります。それ以外の言論が圧迫されるということはありません。
  103. 高津正道

    ○高津委員 全国の小学校の校長が東京に大会を持つて、たとえば千人集まつたといたします。その席に政党に籍を持つところのそのときの文部大臣が出て、一場の訓辞というか講演をした場合に、それが大多数の人によつて自由党色が出て、自由党の宣伝をした、こういうような場合には、これは演説をする以上は影響を与えようと思つて演説をするので、従つてそういう言葉使いが現われて来るから、人々もそう認めるのでありまして、その場合は、その文部大臣はこの法律に、文字通りに読めばかかると思うが、文部大臣はどのようにお考えでありますか。
  104. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは文部大臣であろうとなかろうと、その席において、この法律に定められたる条件を具備して発言をすれば、これは教唆扇動ということになります。条件は申し上げるまでもないのでありますが、政党の党勢を拡張する目的をもつて、そうしてその会合は教職員団体が主催した会合である。その会合の席に臨めば、これは教職員団体というものの組織なり活動を利用したということになりましよう。そうして児童、生徒に対して(高津委員「小学校の校長大会です」と呼ぶ)しかし教職員団体の活動を利用しなければいけない。これは一つの重要な条件であります。それからただ学校の先生にいわゆる演説をしたというだけではこれは入らぬのでありまして、子供にそういう教育をするように、たとえば子供に自由党を絶対に支持しなければいかぬ、自由党が一番いい政党だから自由党を支持しなければいけないということを教えなさい、こういうこはといけないわけであります。
  105. 高津正道

    ○高津委員 その席上に社会党の右でもあるいは左でも出て、現在の国際情勢を論じて、ソ連一辺倒の共産党は誤りであるし、アメリカ一辺党の保守政党の考え方は、最後には日本は血を全部吸い上げられて、だんだん衰弱して行くであろう。向米一辺倒も間違いだし、ソ連一辺倒も間違いだし、日本は工ジプトやイランやあるいはインドのように、独立の道を歩まなければならない。困難ではあるが、自主中立の外交方針を貫くことが正しいのであつて、諸君は多数の児童、生徒を預かつておられるのであるが、諸君は民族の将来を考えて、われわれの方針をよく理解してもらいたい、こういうかりに演説をするならば、それはテープレコーダーにむろんとつておけるし、速記ももちろんあるであろうし、そういうような演説を社会党がやつた場合に、それはこの法律にひつかかるのですか、どうですか。
  106. 大達茂雄

    大達国務大臣 それはひつかからぬでしよう。(「あいまいだ」と呼ぶ者あり)
  107. 高津正道

    ○高津委員 それは、ひつかからないだろうというのは、どういう理由に基いてそう言うのですか。
  108. 大達茂雄

    大達国務大臣 それだけのことであれば、ひつかからないと思います。
  109. 高津正道

    ○高津委員 それでは日教組の大会へ総評の高野事務局長あるいは総評の他の指導部の人、そういう人が出て、現在どこでもやつておるような演説を日教組の大会においてやつた場合、それらの演説はひつかかりますか、どうですか。
  110. 大達茂雄

    大達国務大臣 現在どこでもやつておるような演説というのでは、内容がわかりませんから、正確なことは申し上げられませんが、日教組の大会にだれが行つて演説したからといつて、この法律には関係ございません。
  111. 高津正道

    ○高津委員 それは、日教組の大会に行つて第一に叫ぶであろうことは、それは汚職内閣打倒ということを私は叫ぶであろうと思う。一党一派に猛烈に偏した意見を吐くであろうと思う。日教組の全国から集まつた、選ばれた代表の前で、魂に焼きつくような演説を与えて、そして彼らをそれぞれの郷里に帰すであろうと思いますが、どんなに感銘を与えても、高野事務局長も他の総評の指道者も、高津正道も含めて——どんな演説を今普通やつているかは常識でわかると思うのであります。汚職内閣打倒の演説を、いかに手に汗を握るようなはげしい言葉で演説をしても、それはかからないのですか。相手は教員です。日教組ですよ。
  112. 大達茂雄

    大達国務大臣 教員に対しての演説が、そのままこの法律に触れるというわけではございません。教員に対して、教室おいて児童生徒にこれこれの教育をせよ、こういうことを言う場合に、初めて問題になるのであります。
  113. 高津正道

    ○高津委員 そのような説明であれば、これこれのことを言つ生徒に教えよという言葉さえ、タブーで触れないようにし、それさえ避ければ、何を演説してもかまわないのですか。それは大事なところですよ。
  114. 大達茂雄

    大達国務大臣 その意味が入らなければ、少くともこの法律には入りません。但し法律の解釈は、明示である場合と、その演説全体から推定し得る場合とありましよう。明示の場合と黙示の場合がありますから、それぞれの場合において判断せらるべきものであります。ただその点が欠けておれば、この法律には触れない、こういうことは一応言えると思うのであります。これは法律に書いてあります。
  115. 高津正道

    ○高津委員 かりにその言葉が入つてなくても、明示されておれば、あるいは黙示まで話を広げて、やはりかかるという答弁がしまいには現われて来たのであります。私はこういう問題は速記録に残しておきたいから、もつとつつ込んで聞くべきでありますが、教育委員会法案に話を進めます。そしてまたここにもどります。学校の先生が小学校において、あるいは中学校において、中国貿易は非常に必要である。アメリカから今いろいろなものを日本は買わせられておるが、その運賃が非常に高いから、中国からとれば非常に安くなる。中国貿易というものは非常に必要である。中国を何か非常に野蛮国のようにまだ考えておる人があるかもしれないが、朝鮮においてソ連からジエツト戦闘機ぐらい借りたかもしれないが、まつたくソ連の多くの援助もなくて、堂々アメリカと四つに組んで引きわけの相撲をとるぐらいな力を持つておるのであつて、中国というものはそんなに軽蔑することはできない。日本では今度汚物清掃に関する法案などが原生委員会に今かかつておるのでありますが、中国においては、上海も北京も南京も、伝えられるごとく面目を一新して、非常に衛生的な都市になつておる、大体その程度の話を、学校の先生が教壇で日中貿易の必要性を説いた場合に、頭の古い教育委員会が子供からそれを聞き及ぶ場合に、共産国の中国との貿易をあの先生は主張する、これは危険だというので、古い頭同士が、どこかの奥の方の教育委員会が、決定は多数決でありますから、五人のうちの三人が、あれは危険だということになれば、その人々の主観で、その人々の認識で、いわゆる中立性の違反として裁判を請求するようになると私は思うのであります。非常に危険な問題がこの中に含まれておると思いますが、文部大臣はいかように考えますか。
  116. 大達茂雄

    大達国務大臣 初めにお答えした部分について、誤解があると悪いから、もう一度申し上げておきますが、法律上の意思表示が、明らかに明示の意思表示になる場合と、暗黙の意思表示によつてその意思を表示する場合がある。これは一般の通念であります。その点はそういう意味で申し上げたのですから、広げるとか狭めるとか、そういうことにはならぬのですから、その点念のために申し上げておきます。  それからその次の問題でありますが、これは学校の先生が教室で子供に教えること自身がこの法律の対象になる行為ではありません。これがどうも世間で非常に取違えられておるのでありますが、この法律の対象となる行為は、学校の先生外の外からの教唆扇動ということが対象になるのでありまして、学校の先生が今あなたがお話なつたようなことを子供に教えて聞かした、これはこの法律には何の関係もないのであります。
  117. 高津正道

    ○高津委員 現内閣はちまたでは汚職内閣と言われております。いわゆる中曽根発言には被疑者の供述という言葉が使われておりますが、中曽根君は警視庁のいいところを勤めた人でありますから、用語の使い方は間違つていないと、専門家の猪俣浩三代議士は断定を下しました。被疑者の供述という用語からすると、中曽根君は検事の調書そのものか、あるいはその写しを見たのだということになりますが、彼はそれゆえにこそ、予算委員会においてあのような強い自信の上に立つて、大野国務相、石井運輸相とが疑獄に関係ありと追究したのに違いないと思います。しかも多くの新聞も、委員各位の御承知通り、現閣僚の中から早晩汚職旋風のけが人が出るとしばしば書き立て、また初めに申しましたように、ちまたでは汚職内閣とかあるいは疑獄内閣とか呼んでおるのであります。きようの新聞を見ますと、…(「行政監察と違うぞ」と呼ぶ者あり)いや、重大な関係がある。名前は伏せておきますが、現内閣の閣僚の名前を大きな見出しで書いて、一千万円のねこばばか。それからもう一つ、同じようにきようの新聞には、この文部委員会に議席を持つておる人の名前が——有田二郎氏の次に十一議員に第二の逮捕許諾請求が来るとして、その中に出ておる。あるいは入れかえがあつたかも存じませんが……。     〔「うしろからのぞくな」「何を言うか」と呼ぶ者あり〕
  118. 辻寛一

    辻委員長 御静粛に願います。
  119. 高津正道

    ○高津委員 およそそのように汚職問題の発展はきびしいのであります。それでちまたにいうその汚職内閣が道義的責任をとらず、政治的責任をとらない態度を、国民の大多数は苦々しく思つておりますが、わけても五十数万の教育者は、上に立つ者のかような態度が、みずから預かる児童、生徒、学生に及ぼす影響の甚大なることを衷心より憂慮し、痛憤しておると思うのであります。大臣、私はそのような内閣が自己反省をするでもなく、しばらくでも謙虚な態度に出るでもなく、およそその反対に、他人に対し、第二の法案では一年以下三万月以下、第一の法案では三年以下十万円以下の罰金、こういう刑罰を課するという手段によつて教師に臨むということは、いかに考えても大臣の好きな教育勅語にいうところの恭儉おのれを持する徳目を政府みずから踏みにじつているものではないでしようか、これが一つの質問であります。そして人もあろうにこの法案の熱心な推進者たる大達文相がどのような思想、どのような意見の持主であるかと言えば、三月十日の法務委員会の速記録を読みますと、明らかにこう出ております。社会党の木下郁代議士が文部大臣に、戦争裁判の適法、戦争裁判が適当なりやいなやという点についてお考えを伺いたいと質問したのに対して、文部大臣答えていわく、「私はああいうことは野蛮人のすることである、食人部落がけんかをして、あとで首祭りをするのと同じことだと思つております。」と、私は一字も一句もつけ加えることなく読んだのであつて委員諸君のどなたでも来てひとつこの速記録をごらんください。東京において、あの戦争裁判を中心勢力として推進した者はアメリカ人であります。大達文相によれば、ああいうことは野蛮人のすることでありまして、野蛮人のすることをやつた者がアメリカ人であつたという発言であります。そこにはあの戦争に対する反省などはみじんも看取できません。私はまた近来これほど思い切つた反米的言辞を聞くのは初めてであります。しかも場所に申分なし、国会における大臣答弁に立つてこの意見を発表されたのであります。これは平素、心にそう思つていればこそ、すらすらと簡にして要を得た名せりふがあのように苦もなく発言できたのであろうと信じます。大達文相は、パージが解けて、今を盛りと活躍し始めた矢次一夫君を事務局長として組織されている国政研究会という団体、この国政研究が先月八日、日本倶楽部において開いた同会会員の集会に臨み、ただいま上程されている教育法案について講演をされ、その筆記が同会の機関紙「新政」第二巻、第六号に載つております。その席には下村海南、久冨達夫、安積得也、向井鹿松、高山岩男というような人々も見えたのでありますが、本来この団体は番町会の永野護、十条製紙の社長の西済、同常務金子佐一郎、富士製鉄社長永野重雄、野村証券社長奥村綱雄、元情報局次長奥村喜和男というような、そういう財界の人々やあるいは(「鍋山貞親もいるぞ」と呼ぶ者あり)貞親がいればどうもいよいよ悪いことである。大臣は盛んに共産党攻撃や日教組攻撃をその席でやり、しかも日教組が親ソ反米の教育をする点を指摘して攻撃していられるのであります。みずからは大臣として国会で大つぴらに反米的な発言をしながら、日教組の反米宣伝を取締ろうとする法律をつくることは自家撞着ではありますまいか。みずからはすぱりすぱり葉巻をふかしながら、他人に耐乏生活を説くのは筋の通らぬことである以上に、文相自身が今日力を入れて反米教育を抑圧しようとされることは、筋の通らぬことおびただしい話ではありますまいか。どんなに好意的に見てもこれは明らかに矛盾であります。私は人物評論も書きますが、大達茂雄という紳士の特徴の一つは、男性的、積極的、押しとがんばりの強さのような面であろうかと、ひそかに観察をしておるのであります。一旦言つたことには責任をとる。そうは言つてもこの人にも例外はあつて、何ゆえか戦争に対しては責任は一向に感じていられないようであります。文部大臣は一流の学者であること、これに越したことはありませんが、そのような学者でなくても、また福沢諭吉、新島襄、ペスタロッチなどという天与の教育者でなくとも、ただ一つの条件、それは私は言行一致という平凡な徳目であろうかと思いますが、文部大臣としてこの言行一致だけはぜひとも必要であると存じます。大臣、あなたは今から一週間前、法務委員会の席上において驚くべき反米宣伝をした。その名せりふはただちに電波に乗つて海外に、全世界に伝達されたのでありますから、あのとき文部大臣たるその資格を一分の間に失われたのであります。なぜそう言えるか。みずからはそのような反米的な大宣伝を行いながら、小学校、中学校義務教育に従事する教師の、大達発言に比べてその十分の一、百分の一、千分の一でもない、とりようによつては反米のにおいがする極度の範囲も限界も不明瞭な言葉の先まで問題にして、教師を刑務所にぶち込むような法律を、一つならず二つまでつくるということは、自家撞着であり、矛盾であるのみならず、古今東西を通じて異論のない言行一致(発言する者あり)言行一致に諸君は反対ですか。(「大賛成」「質問を継続しろ」と呼ぶ者あり)言行一致ということをあなたは台なしにし、めちやめちやにされたのであります。大臣、あなたはかつても言行一致の行動をとつておると御主張になりますか。いくら御心臓でもそうは言えなかろうと思う。言行一致の行動はとらなかつたと男らしく答弁をされますか、これが私の第二の質問点であります。これは根本ですよ。
  120. 大達茂雄

    大達国務大臣 初めのお尋ねにお答えいたしますが、中曽根君の発言とこの法律案とは何らの関係はありません。  その次の言行一致とかいうことでありますが、私がどういう考え方を持つておるか。これはただいまあなたが私にかわつて御説明をなさいました。私はあなたが言われるような思想を持つておるとは限りませんが、しかし私は、私がどういう思想を持つておるかということは別として、その思想を児童生徒に押しつける気持は毛頭ないのであります。従つて、これをあなたが言行不一致と言われれば、それまでだ。私は自分の考え方を子供に教え込むことによつて、言行一致の実をあげたいとは思つておりません。
  121. 高津正道

    ○高津委員 中曽根発言とこの法案とは関係がないと言われるが、世間だれも見ておるように、つまり次から次へと逮捕される者ができ、国会に対して逮捕請求が早晩来るということはみんな直感しておるのでありますが、そうしてそれが自由党に最も多いということも常識になつておるのであります。そのような内閣がこういう法案を出してインテリの大集団を圧迫する。そこには矛盾はない、関係はないと言われるけれども、中曽根康弘という個人と関係があるわけではない。中曽根君が指摘したように、検事の供述に基いて指摘したような問題が、疑惑の雲がずつと上までかかつておるようなこの内閣が、インテリの大集団に対してこういう圧迫の法案を出して臨むということは、時を得たものであるまい。どうも自家撞着のきらいがある。関係がこれでもないと言えますか。中曽根個人ではなくて——こういう内閣が、こういう汚職に包まれたまつ最中に、そうい法律案を出すということは、時を得ない。またこういう法案を製造する責任者に、その人を得ない。時を得ない、人を得ない、こういう意味で聞いておるのであります。関係は大ありでしよう。関係のあることを聞いておるのです。
  122. 大達茂雄

    大達国務大臣 時を得ない、人を得ないということはあなたの御意見でありますが、これはいくら考えてみても、中曽根君の発言とこの法律との関係を発見することはできません。
  123. 高津正道

    ○高津委員 中曽根君の発言は、ほんの話のアクセサリーとして出た程度のものであつて、現在の内閣が疑惑の暗雲に包まれておるという言葉の説明の文句なんです。こういう疑惑に包まれた内閣が、みずから謹慎しないで、そうしてそれを批判するような勢力を圧迫するというのは、あまりにも自己反省の態度が見えないではないか。関係が大いにあると思う。中曽根発言とは関係がございませんという答弁は、私は誠意を欠いた答弁だと認めます。いま一度答弁を要求します。
  124. 大達茂雄

    大達国務大臣 先ほど申し上げた通りであります。
  125. 高津正道

    ○高津委員 それではお尋ねをいたしますが、この法案の背景、バツクについてしばらく質問を続けてみたいと思います。  御記憶の方もおありかも存じませんが、昨年の十月二十五日の東京朝日は、池田・ロバートソン会談の草案要旨——このくらい広い角度から法案を研究しなければ、ほんとうの審議にはならないと思う。この法案にひもをつけているものは、それはアメリカですよ。私はここに証拠を出して質問をするのでありますが、この池田・ロバートソン会談の成果を要約した文章は、実に長文のものでありますが、この電報は、朝日新聞の篠原、木谷両特派員が、その前日二十四日に本社に打電して来たものであります。その中に「会談当事者は日本国民の防衛に対する責任感を増大させるような日本の空気を助長することが最も重要であることに同意した。日本政府教育及び広報によつて日本に受国心と自衛のための自発的精神が成長するような空気を助長することに第一の責任を持つものである。」こういうはつきりした文字が現われておるのであります。すなわち池田さんが吉田さんの特使として向うに行き、そしてアメリカはロバートソン国務次官補がそれを樽爼折衝を続けておつたのでありますが、その中に日本の教育をアメリカの担保に入れるような申合せがあつたのであります。表の舞台を見ておれば、いかにも人形というか、役者が動いているようであるが、うしろから糸を引く者がある。それは太平洋のかなたアメリカである。ここにその証拠が現われておるのであります。自主性を持つてつているような顔をしておるが、その背景をさぐつてみるとアメリカの手が動いておる。これを日本の文化のために、日本民族のために深く悲しむものであります。この外電、これに対する大達文部大臣の所見を伺います。
  126. 大達茂雄

    大達国務大臣 ロバートソンという人がどういうことを言つたか私は知りませんが、これは高津君だけではなしに、社会党左派の諸君からはしばしばこの問題の質問を受けるのであります。どうも非常に社会党左派ではアメリカのことが気にかかつて、私がこの間法務委員会発言したことも、すぐアメリカのきげんをそこないはしないかということでいろいろ御心配をいただきました。またロバートソンの発言についても非常に何か再三にわたつて質問がありますが、これは前に申し上げる通り何にも私ども関係はありません。ただロバートソンという人が日本の教育について何を言われようが、これはロバートソンのかつてであつて、それにかれこれ言うことは、これはおきらいな思想の圧迫であります。ロバートソンという人がそういうことを言つたからといつて、この法律案がそのロバートソンの教唆扇動によつてでき上つたのだ、こういうふうに即断されるということは実におかしいのであつて、そういうふうに教唆扇動と簡単にきめてしまう人がこういう法律の運用に当られたらば、この法律というものはまことに恐ろしい法律になる、私どもはそういうふうに教唆扇動を向うでやつたからといつて、簡単にすぐ教唆扇動になつておるのだ、そういうふうには考えておりません。
  127. 高津正道

    ○高津委員 沖繩には今アメリカがおそらくは原子爆弾を持つているかもしれないと思われますが、その沖縄はわれわれ年輩の者がよく言う要塞地帯、軍事基地でありますが、その沖繩は要塞地帯であるから、その沖繩に行われる教育もまた警察行政も、要塞の主要目的から規制されて参るのであります。私はかつて麻生久君のいまだ生きているところ、足尾銅山に争議の応援に参つたことがございますが、そのとき警察に行つてみると、時計の大きいのがかかつておるが、それには足尾銅山寄贈と書いてある。テーブルにも灰皿にもみんな足尾銅山の寄贈ということになつているのであります。あそこにおる警察官は足尾銅山の意のままに動かざるを得ないような立場にある。琉球、沖繩における警察もアメリカの軍司令官の意に反することはできない、そういう事情にあるのであります。だが沖繩は遠くの話ではなく、日本にはレーダ基地などを数えて、それらをみな入れてしまうと七百も八百もアメリカの軍事基地があるのでありまして、その軍事基地の中に日本が包まれておると言つてもいいほど、統計のすきな人はその軍事基地の広さを全部合せれば四国の大きさになると今は言つておりますが、そのように多くの軍事基地が日本にあるのでありますから、アメリカの政府を代表して、池田勇人君と話合いをする場合に、ロバートソンはロバートソン一人の思いつきでぱつと名ぜりふを吐くというそういうものではなしに、必ず下にはいろいろな作業班があり、分科会があり、そしてその上に立つて、それをスポークスマンとして池田使節との間に談判をしておるものでありまして、それらの会談成果を要約した草案の要旨という中にこれが現われておるということは、ロバートソンがかつてな言い分をしておるが、この法案とそれは関係がないという答弁をここでしてみたところで、今の沖繩における教育のあり方、警察行政のあり方、それが要塞地帯、軍事基地におけるそれであるから、アメリカの議会や意向に左右されるどころか支配されるという事情が当然であるのだから、二割引か三割引程度の濃さ薄さを言えば、沖繩ほどではあるまいが、日本もまた同じように警察行政も、教育行政も——アメリカは軍事基地に使えようと思えばこそ、池田さんとの会談の中にこのように現われておるのであります。私はこれはこの法案を議する場合に大事な点だと思うのであります。このくらい私が申し上げましても、なおロバートソンの言い分と、この法案との間には関連性はない、やはりこう言われますか、お伺いします。
  128. 大達茂雄

    大達国務大臣 関係ないから関係がないと申しておるのでありまして、あなたも関係があると言えば御満足かもしれませんが、うそを言うわけには行きません。
  129. 高津正道

    ○高津委員 文明人の頭でみなここに集まつておるわけでありますが、そうして普通の水準よりは上の頭をみな持つておるはずでありますが、私の述べた論理の帰趨は、論理から帰納されたところの結論は、アメリカが日本に重大な利害関係をもつて教育に対しても、むろん今の戦力なき軍隊に対しても、警察に対しても、アメリカはいろいろな希望を持つており、そうしてアメリカに経済援助を受けようとする再軍備が、日本の青年をアメリカに担保にしたように、このロバートソン会談に現われておる。この言葉は、この内容は日本の教育をアメリカに担保にするものだ、こういうようなことにちつとも気づかないで、援助ほしや、援助ほしやでこういう会話がとりかわされておるのでありますが、これは朝日新聞の篠原、木谷という両特派員がこの中にこういう文句をはめ込んだものではないですよ。なぜならばこれは一項一項検討してみますと、実に一国を代表する者の会話であつて、占い言葉で言えば、君名をはずかしめないように緊張してとりかわした重要な文献であります。その中にこれがある以上は、われわれがこの法案を審議する場合にアメリカさんが何と言おうとわれわれの知つたこつちやない、この法案関係するところがないと、こう言つてしまえば、言葉ではそう言つてしまつても、速記録をあとでわれわれが読めば、関係は大ありだということになるのですが、あなたは関係はないのだという、なぜないか、こうこうこういう理由で、あるはずがないではないかという論陣を張られれば、初めてあなたは関係がないということを言われたことになる。ないと思いますが、それではどうも通用しないでしよう。
  130. 大達茂雄

    大達国務大臣 関係がないからないと申し上げるので、関係があるとおつしやるなら、あるという証拠を見せていただきたい。ない証拠なんというものはありようがない。
  131. 高津正道

    ○高津委員 どこかに犯罪があつた場合、とつたとつたと言う方も論証せねばならぬが、とらなかつたと言う方も、アリバイを持つて来なければいかぬでしようが。私は関係があるというこれだけのものを持つて来ておるのだから、あなたからこそ、それは信憑性がないものであるとか、あるいはそういうことはあるとかないとか論証する義務がある。アリバイが立てば、無罪ですよ。この質問応答において、アリバイを示す義務があなたに私はあると思う。
  132. 大達茂雄

    大達国務大臣 あなたのお説を聞いておると、沖縄の警察官がどうとかこうとか、だからロバートソンとこの法律案関係がある、こういう論評のようでありますが、どうも私には何のことかわからぬ。
  133. 辻寛一

    辻委員長 高津君、別に御注意というほどではございませんが、法案に直接関連して御質問を願いたい。
  134. 高津正道

    ○高津委員 この両法案の背景を研究しなければ、表に現われた現象だけをなでてみたつてしようがない。われわれはものの根本をきわめるのが国会議員だと思う。今までの説明で尽きておると思いますが、沖繩はアメリカの軍事基地的な要求にまつたく適応した、言いかえるならば、アメリカから統制されておるところの沖縄教育であり、沖繩の警察行政である。アメリカは、これだけ軍事基地を持つ日本の教育がどつちへ向うがかまわぬというような野放しではない。アメリカは重大な関心を日本に対して示して来ておるのであります。それは池田・ロバートソン会談の文書となつて現われておる。沖繩と日本とどうして関係があるか。アメリカから見れば、沖繩を幾らか薄くした程度のものが日本なんですよ。沖繩ほど厳重にやればわれわれが承知しないから、この程度にやつておるのでありますが、こういう会談が行われるということは、日本の教育とアメリカ側が思いのままに動かそうとしておる証拠でありまして、関係はないという答弁一点張りでは通用しないでしよう。もつと答えてもらいたい。関係はないですか。
  135. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育の中立性の問題は、高津さん御存じのように、昨年の七、八月ころですか、山口県の日記の問題からやかましくなつた問題であります。ロバートソンの談というのは、いつでありますか、去年の暮れでしよう。これはずつと時間的に違うのです。何も関係はないのです。一種の言いがかりですな。つまり時間的に見れば、わかり切つたことを、何べんも何べんもしつこく社会党左派の諸君に聞かれるので、それでロバートソンがどう言うたかということがだんだんはつきりわかつたくらいのもので、私は初めは実はその新聞も読まないで、ロバートソンが何を言つたか、実はうかつで知らなかつた。これだけでも、この法律とは何も関係ないということがおわかりになつていただけると思います。
  136. 高津正道

    ○高津委員 今のは、私から言うと、アリバイになつていないと思う。鯨が水を吹けは、胴体はそこになくても、そういう水を吹くものは鯨であると推定される。そうであるから、アメリカが沖繩の実例から考えても、日本に対して何を考えておるかということ、教育に対し、警察に対し、あるいは日本の持つべき軍隊に対し、アメリカの希嘱が何であるかということは、われわれは百パーセントの確率をもつて推定することができる。だから現われたときは十月二十五日であろうとも、会談はそれより前に進行している。この法案をつくつたあとに出て来たのだから、先に考えておつた法案関係があるはずはない、一応表面的に見れば、そうであるけれども、現われて水を吹いたのはちようど十月二十五日である。鯨はその地点に向つてどんどん歩いておつたのであつて、われわれはその鯨がこの方向に向つて来ているということをちやんとした確かさをもつてつておるのであります。外国電報を——今持ち合もておりませんが、それに気をつけておれば、いかにアメリカが日本にそういうような執拗なる関心を持つておるか、アメリカの意図に従わせようとしているかわかる。この事実から言えば、関連はないというのは、町の関係で関連がないということにはならないと私は思います。このこまかい点について大臣の御答弁を要求いたします。
  137. 大達茂雄

    大達国務大臣 去年の七月ですか、山口県の日記について当時特別国会の文部委員会で、主としてあなたを中心として、文部大臣にいろいろ御質問があつた。その当時に私は、通達を出したということが問題になつておりますが、これでどうしても中立性が保てないということであれば、なお何らかの措置を講ずる必要があると思うということを申し上げたのであります。いわば公約をした。これはロバートソンとは何も関係はない。ロバートソンのことはそれから半年もたつてからのことであります。ロバートソンという人が池田君とどういう話をされるかということは、私は半年も前から予定をして——当時特別国会では私は文部大臣としてまだ自由党に入つたばかりのときだし、入閣早々のときでありますから、ロバートソンが半年先にきつとこう言うに違いないとは想像できないのであります。それは時間的に明瞭です。ですから失礼ですけれども、言いがかりはいいかげんにやめてもらいたい。
  138. 辻寛一

    辻委員長 この問題はこれ以上やりとりなさつても同じだと思いますから、どうか観点をかえて質問願いたい。
  139. 高津正道

    ○高津委員 それでは委員長のお勧めもあるので、観点をかえて申し上げます。大臣がこの法案の大筋のねらいを考えられて、それを省内において最初に委嘱された人はだれでありますか。
  140. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は、ほかの人に委嘱して立案してもらうようなことはいたしません。
  141. 高津正道

    ○高津委員 そうすると、自分一人で何もかもやつたと、おつしやるんですか。
  142. 大達茂雄

    大達国務大臣 文部省のしたことは、私の責任であります。
  143. 高津正道

    ○高津委員 だれとだれに作業させたか、それは答えられないと言うんですか。
  144. 大達茂雄

    大達国務大臣 どういうわけでそういうお尋ねをいただきますか。私は文部大臣として文部省の官僚を必要に応じて使うのであります。
  145. 高津正道

    ○高津委員 それでは名前をあげて聞きますが、田中事務次官やあるいは緒方初等中等教育局長地方課長には相談をしなかつたというのですか、したというのですか、後日のために聞いておきたい。
  146. 大達茂雄

    大達国務大臣 今おあげになつた次官、初中教育局長地方課長これらはこの法律案に直接関係する局課の担当者であります。これに命じたのであります。相談したわけではないのであります。
  147. 高津正道

    ○高津委員 言葉は相談でなくても、命じてやらせた人間三人だけは浮んで来たのでありますが、初等教育課長の大鳥文義君、中等教育課長の杉江清君、これはどうですか、後日のためにものをいいますから……。
  148. 大達茂雄

    大達国務大臣 それは担当課長じやないそうです。
  149. 高津正道

    ○高津委員 今はその二人の名前がありますが、それは参画しなかつた、命じなかつた、こういう意味ですか。
  150. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は初中局長に命じたのであります。初中局長がその部下の課長その他の者を使うのであります。私がずつと下の人までも頂接使つておるわけではない。役所の組織というものはそういうものであります。あなたは役人をなさつたかどうか知りませんが、あなたのおつしやるようなものではありません。
  151. 高津正道

    ○高津委員 ここまででけつこうです。それからほかへ移ります。課長なんというものはこの鼻息荒い大臣のもとには下の下の方にいるから、一々自分は顔も知らぬし、直接そんな者などに命じやしないなどというのは、民主主義のこの国会で初めて聞く言葉であります。  それはそれといたしまして、次に、今日の新教育を受けた生徒児童が、その昔の尋常科、高等科時代あるいはまた旧制の中学の初めごろに比べると、漢字を記憶している点では若干見劣りがするかもしれないが、これに反してつづる方、作文の点では非常にすぐれており、私は後世恐るべしとはまさにこのことだと感心をし、義務教育学校の先生方に感謝しておる一人であります。その文章が伸び伸びとしておるし、表現も自由自在である。それらは学校の壁に張られたり、あるいは駅のしかるべき場所に張られ、また雑誌、新聞に掲載され、単行本になつているものもございます。文部大臣は私が指摘するこの平凡な事実とその評価に対して、同感をしていただけますかどうか。
  152. 緒方信一

    緒方政府委員 今お話の点は学力の個々の点に関係して来るのでありますが、これはいろいろ調査をいたしておりますけれども、若干戦前よりも劣つておるのではないかという点が指摘されております。漸次これは向上しつつあるようでございますけれども、しかしいろいろ長所も短所もございまして、たとえば今お話のありましたような漢字の点などにつきましては若干劣つております。作文の点につきましては、これは前よりも若干すぐれた点があると思います。いろいろ長所、短所があるであります。
  153. 高津正道

    ○高津委員 緒方政府委員もお認めのようであります。それでは児童生徒が学校の先生方の教育活動以外からの影響が非常に多いという平凡な事実を考え、またこれら児童生徒が昔と違つて自由自在の表現力で書きつづるものが作文であるという事実を考えますときに、先生からの影響でない考え方や思想の作文や会話が現われて来るということは、雨の降る日は、天気が悪いというほどの平凡なことでありますから、このような場合のあることは緒方政府委員大臣も否定はされないと思いますが、念のためにこれも聞いておきます。
  154. 大達茂雄

    大達国務大臣 児童が先生の影響ばかり受けるのではなくて、その他の影響も受ける、これはそう思います。
  155. 高津正道

    ○高津委員 それではお尋ねいたしますが、そういう作文に親ソ反米的な色が現われたり、あるいは基地反対というような作文が現われた場合に、地方教育委員会はすぐにこれは先生の影響だと思うかもしれないが、私はもう一つ論拠を固めるために言つておきますが、近ごろの家庭では子供にはたくさんの参考書などを買つてやる家庭があるのであります。そうして菓子のようなものは食べればなくなるから、おみやげにもおとぎ話であるとかそういう読み物類をみやげに持つて来るという習慣も相当広がつております。そういうふうなあるいは近所の人々との交際、自分の家の来訪客、親戚の影響、それらをも子供は多分に受けておるのでありまして、そのような多くの影響を受けた作文であります。それを学位の先生の罪にしてしまつて、うちの子供がこういうようなことを書き出したといつて驚いて、学校の先生に見当をつけて、その話が警察に伝わつて、警察が被疑事実ありと思料すれば、現在の刑事訴訟法ではすぐにそれを大いに探ることができるのでありますから、乗り込んで家宅搾索まですることはできないにしても、教育委員会に刑罰権を発動させる、そういうような権利を与える結果は恐るべき影響が生ずるのであろう。そうして教育委員会委員の頭の程度によつてこの村では、今言うように、よく調べてみればいつも遊びに行く家が軍事基地反対に熱心な人であるから、その人の影響を受けておるというようなことはわからないで、ひとえに学校の先生のどれが一番新しいかというようなそこへだけ見当をつけて、学校の先生の新しい人々に嫌疑をかけて大騒ぎが持ち上るようなことが、この法律によつてたくさん起るであろうと思うのであります。杉並区ではほとんど問題にならないことが長野県に行くとそれが問題になる。長野県で問題にならないことも、さらに山梨県の山間部へ行けば、そこでは問題になるというように、地方教育委員会の判定というものがあつちこつちみな違うと思うのであります。このことは日本の教育界に大混乱を巻き起す。見解の相違だという答弁が現われるかも上れぬが、そういう一定の基準も何もなく、認識の相違だというのだから、あつちこつちみな各個ばらばらで、いい権利をもらつたといつて必ず騒ぐようになる。もしそれこの権利をぼうちようにたとえるならば——この問題は次の問題にしましよう。
  156. 大達茂雄

    大達国務大臣 子供が、親ソ反米というような子供に不似合いな論文のようなつづり方を書いた場合、その特定の場合にそれがだれの影響を受けているかということは、これはその場合についてよく調べねは断定はできないことだろうと思います。ただ一般的場そういう作文を書く子供が非常に多い。あつちにもこつちにもあるということになれば、これがだれの影響を受けたものであるかということは、常識によつても判断し得る。先生から教わつたのではないかと一応考えられるのはあたりまえであります。あるいはまた日教組の製作したひろしまという映画を全国至るところで盛んに子供に見せたようでありますから、あるいはまたそういう影響を受けたのではないかといろいろ常識的には考えられると思います。
  157. 高津正道

    ○高津委員 大臣の答弁は大部攻勢的であつて映画ひろしまの影響も多いであろうし、あちこちに現われるところを見ると、学校の先生の影響もある、そういう御答弁でありますが、私は基地が存在し、アメリカ人が日本の女性をかつてにもてあそぶあるいは大砲がどんどん演習に使われて学校のガラスがびりびり響く、あるいは農民の農地が政府から泣き寝入りをしいられて、飛行場の拡張に使われるとか、そういうふうに進行しておるのが日本の現実であります。児童や生徒から見れば、こういう社会的環境に置かれておるのでありますから、それらの環境から受けるものは相当多いと思うのであります。これを大部分は学校の先生の影響——日教組がつくつたひろしままで持ち出して、そうして大部分は教師の影響だというような判断をされるのを私はこの席で聞いていて、末恐しいという言葉がありますが、いよいよこの法案の恐しさを感ずる次第であります。どうでしようか、大臣と私との間にこのような見解の相違があるのでありますから、個々の教育委員会がどの町でもどの村でもそのように区々たる違いが現われて来るということはお認めになりますか。
  158. 緒方信一

    緒方政府委員 この法律の犯罪がありとして教育委員会が請求いたしますのは、教唆扇動の事実があると判断した場合に請求するわけでありまして、学校の中の教育の問題を直接に考えたわけではございません。教唆扇動がその地方にありということになれば、その地方教育委員会が判断することになりましようし、またほかの地方でもそういう判断をすれば、その教育委員会から請求があります。
  159. 高津正道

    ○高津委員 今大臣が席をお立ちでありますから、緒方政府委員お尋ねしますが、教唆扇動の事実がなければ問題にしない。それでは教壇の上で教唆扇動の事実があつたならば問題にするでしよう。
  160. 緒方信一

    緒方政府委員 三条をお読みいただきますと、こうこうこういう教育をやれという教唆扇動をした場合に、その教唆扇動者が違反になるわけであります。そういう違反の事実があるかないかということについて、教育委員会がありと判断した場合に請求するわけであります。
  161. 高津正道

    ○高津委員 あなたの言われる点を問題といたしましても、個々の教育委員会の判断が違つて来るであろう。この事実はお認めになりますか。ずいぶん違うでしよう。
  162. 緒方信一

    緒方政府委員 それはその教唆扇動というものの態様の問題になりますが、それがありと判断すれば請求するわけでございます。ところによつて判断に違いがある場合はもちろん出て来ると思います。しかしながら学校の運営管理につきまして直接に責任を持ちます主として教育委員会が、その判断をすることに法律はきめているわけであります。
  163. 高津正道

    ○高津委員 作文を一つ見ても、これは本人の知恵ではなかるまい。先生がそう教えたに違いない、先生の背後にも指導者があるだろう、こういうように拡張解釈をすることがありがちだと思うのでありますが、そういうことはないと言われますか。
  164. 緒方信一

    緒方政府委員 これは教育の問題でありますから、各教育委員会ではきわめて厳密に解釈をしてその判断をすることになると思います。私どももそういうふうに指導いたしたいと存じます。  それからもう一つ申し上げなければなりませんことは、これは請求をするだけでございます。請求があつたあとで、これは検察庁なりそのほかでさらに調べまして、それに基いて起訴するなりしないなり、罪を論ずることに相なるわけであります。そういう関係になつております。御承知願います。
  165. 高津正道

    ○高津委員 それは請求を待つて初めて裁判になり罪がきまる、そういうふうに書いてありますけれども、あの先生が悪い、あの先生がどうもあやつつているということになれば、県会であろうと県の教育委員会であろうと、あの先生がというように見られて尾行がつくようになれば、それがもうその地位を失わなければならないような実情になるわけなんです。なかなか社会はうるさくて、教育委員会の人がそれを見ると、あれはいわぬといつて、それを口実に首にもできるような危険性をわれわれは感ずるのであります。それに対する御見解はいかがでしようか。
  166. 緒方信一

    緒方政府委員 これは繰返して申し上げますように、教壇に立つ先生自身が犯罪になるのではございませんで、教唆扇動をする者が犯罪になるわけであります。従いまして今お話の点はその前提が少し違うのではないかと考えております。教唆扇動する者につきましては、教育委員会が請求をいたしまして、さらに検察庁で罪ありという場合には、起訴して処断するということになります。
  167. 高津正道

    ○高津委員 私は、教育内容が偏向した立場をとるようになつたというそういう事実と、それから任地以外にある自分の居住地において、政治的活動をする自由を持つておる市民権既得の権利そ、ういうことは別個だと思う。それで教育上中立性を侵したと見られるのは、何人あるのですか。千人のうちの一人かほんとうにそれは少いわけでありますが、それを何の罪もない一般の——この法律によれば教育地方公務員であるところの、この教育者の全部から、政治活動の自由というものを全部奪うという、血も涙もないそういう教育公務員特例法でありますが、因果関係も何もない、仏教には四句分別ということがあります。それは自分の地に住んでおる地域ですな、任地とは違う。住んでおる地域で大いに政治活動をやる。学校の中へも政治的な問題を持ち込んで、政治的に動く、中立性を侵す、こういう例が、一つです。もう一つは学校の中では政治的中立性を侵す行為がそるが、居住地に帰つたら政治運動はちつともしない。それからまたその二つの反対の場合があるわけであります。四つの場合があるのでありますけれども、両者の行為の間には因果関係はないと思う。それで中立性を擁護するということを口実にして——私は政治に対して、教育者というようなインテリは発言権を持ち、その権利はもつと多くてもいいくらいに思うのでありますが、その権利をこの法律はすつぽり奪つてしまつて教育者を政治的禁治産者のようなものにしてしまうのであります。論理の関連性はないですよ。なぜそういうむちやなことをやるのでしようか。これが一つの質問であります。
  168. 緒方信一

    緒方政府委員 現在の公務員法におきましても政治行為の制限をいたしておりますが、この趣旨はたびたび大臣から説明がありましたように、その公務員の政治的な中立の地位を保障いたしまして、よつてつてその職務といたします、公務の適正なる運営を期せんとするものでございまして、その趣旨に出でたる次第でございます。この点は教育公務員におきましても全然同じことであると考えます。教育公務員の政治的の中立性をもちまして、その職務といたします教育が、適正に公正に行われることを期待いたしておるわけでございます。今のような前提に基きまして、従来地方公務員でありました教育公務員と、国家公務員であります国立学校教員とが違う待遇を受けておつたのを、教育の特殊性からいたしまして、国立学校教育公務員と同じような制限をつけるということに相なつた次第でございます。改正法の趣旨はそういうふうな点でございます。
  169. 高津正道

    ○高津委員 両者の間には因果関係もなければ論理的な関係もないはずなのに、一方の中立性を擁護する必要から、片方、政治の権力で関係のない者の政治的活動の自由を全部奪つてしまうのは、これは乱暴だ。それで仏教の四句分別まで持ち出して、繰返してはなはだ恐縮でありますけれども、政治的活動を教育者が自分の住んでおるところではやらない、しかし自分の就任しておる任地、その学校においては中立性を侵す、そういう場合が一つ。それからこつちでは政治的活動をやる。学校でも政治的活動をやる。こういうのもある。要するに四つ考えられるでしよう。(「同じことを何べん繰返すんだ。」と呼ぶ者あり)何十ぺんも繰返すのではない。相手がわかつていないように思われるので二回繰返しかけておるところです。それは両者に因果関係がない。それから論理的関係がない。しかるにこつちをこうするためには、こつちの権利を全部とつてしまうというのでは…。しかもそれは三年以下、十万円以下というようなこと、だら三年まかでは持つて行けるし、十万円の罰金まではとれるというのが第一の法案であります。私はこれはずいぶんひどいものだと思いますが、論理的な関係あるいは因果的な関係、私は緒方政府委員を忌避する理由はひとつもございませんが、大臣の口からもつとわかりやすく明白にお答えを聞きたいと思います。
  170. 大達茂雄

    大達国務大臣 公務というものは適正公平に運用されなければならぬ、これは申し上げるまでもない。もし公務員というものが、自分かつてに公務を執行するということであれば、国の活動あるいは地方団体の活動というものは事実くずれてしまうのであります。そこで何としても公務が適正に運用されるということが保障されなければならぬ。その場合にこの要求に対して現在の法制がどういう方法をとつておるかといえば、その公務員が政治的に深入りをしないこと、これは人間のことでありますから、あまり個人的に非常な深入りをするということは、自然公務というものが不公平になる結果を尊く、であるからして、公務員にできるだけといいますか、なるべく深入りをしないようにしてもらつて、それによつて公務が適正に行われることを期待しておる。これが今日の法制の建前であると私は思う。従つて公務員であれば、ことごとく一定の政治的活動の制限を受けておるのが現在の法制であります。でありますから、今高津さんの言われる問題、直接関係がないじやないか、なるほどその通り、しかしそれによつて公務の適正を期するというのが現在の法制の立て方であります。でありますから、それが非常に妥当でないということであれば、現状の地方公務員法の三十六条ですか、そこにとにかく教育公務員も含めて、地方公務員というものが、政治活動の制限を受けてあるのであります。この制度が悪いかいいかという現行法制に対する批評になるかと思うのであります。この問題は現行法の上においては、そういうふうな意味においてすでに解決している問題であります。今日この法案において持ち出されておるものは、地方公務員たる教育公務員を、国家公務員たる教育公務員と同じ程度なものによるという問題でありまして、公務員という身分を持つておるものに対して、個人としての政治活動を制限することがいいか悪いかということは、少くとも現行法上はすでに既定の問題でありますから、今日この法案の審議によつて残されたる問題は、地方公務員である教育公務員を国家公務員並みにするがいいか悪いか、こういう問題に一応限定せられていいと私は思うのであります。これはしばしば申し上げますように、教育というものは国民全体に対して直接責任を持つ、いわゆる国民全部に対する奉仕として考えられる性質のものである。であるからその公務の内容が国家的性質を持つものであるがゆえに、教育公務員の場合においては、国家公務員地方公務員と区別する理由がない。かような見地に基いてこの法案提出されているのであります。
  171. 高津正道

    ○高津委員 前よりは幾らか、ほんの二割くらいは明らかになつたようでありますが、今のお話の中に、公務員が政治的活動を制限されるということは既定の事実である。何かもう動かないものであるかのように言われるが、国家公務員の現在の扱い方が酷に過ぎておる。それは人事院規則がとてもやかましくきめておるので、ああいうように国家公務員さえもそうすべきではあるまいという立場に私は立つのでありますから、それへ右へならえにして行くということは非常に乱暴だ。だから制限があるのは当然だということにして、当然なんだから国家公務員つて同じだという論理であなたの言葉を繰返すならば、教育は国民全体に対して行わるべきものであるから、国家公務員と同様に扱うべき論拠がそこにあるように言われるけれども、それでは論点をちよつとずらして、(「ずれ過ぎている」と呼ぶ者あり)あなたは少しずらぎないと停滞するからずれるということは進歩を意味する。(笑声)ここで少しずらしてお尋ねしますが、身分は地方公務員のまま、政治的行為の制限についてのみ国家公務員並みにするということは、法の体系上疑義はないものですか。
  172. 大達茂雄

    大達国務大臣 別に疑義はないものと思います。
  173. 高津正道

    ○高津委員 それではないという立場をおとりになりますことが明らかになりましたが、あなたは車中談において、しばしば地方教育委員会の育成を発表され、また国会の答弁においても、これを繰返し言つておられるのであります。繰返し言われるのは、質問が出るから何べんも繰返されるわけでしようが、(笑声)それで地方教育委員会を育成するという方針は、地方自治を尊重する、教育をその地域にまかせて、そこで大いにやれ、こういう立場であると思う。しかるに教育は国民全体に対して行わるべきものであるという一般論を持つて来て、それとは相反する国家公務員扱いに政治的制限をこれからするのだというのでは、そこに矛盾はないですか。
  174. 大達茂雄

    大達国務大臣 地方教育委員会を育成強化するということと、この法律との間には、何の矛盾はありません。
  175. 高津正道

    ○高津委員 それでは、大臣は他のところでも、あるいはこの委員会においても、国家公務員の例によつておそれることも何もない。大学の教授などは国家公務員であるが自由にやつておるではないかと何でもないように解釈をし、それを強調されておるようでありますけれども、何でもないように見えるけれども、公立学校の教師も自由であるというけれども、人事院規定の適用について、大学教授は特例が認められておるのであります。それで右のようなお話をなさることは、大学教授と同じように、ああやつていいかのような印象を与えて、この法案を通しやすくすることには役立つが、通つてみれば、どういたしまして、これはたいへんなものであります。大学教授とまつたく同等の政治的発言の自由があつて教職員組合の機関紙へでも何でもどんな意見を出してもいいのであるか。大学教授のようなああいう自由を認めるのですか、どうですか。
  176. 大達茂雄

    大達国務大臣 人事院規則は、御承知のように一定の限られたる政治行為について規定をしておるのであります。これが人事院規則が適用せられると、一切の政治的発言もしくはそれに関係する発言はできなくなるのである。こういうことをしきりと宣伝をしておるものがあるのであります。たとえば教育予算を増してもらいたいというとすぐいけないということになるというようなことをラジオあたりで言つておるやからがおるのであります。あるいはまたストーブが寒いからストーブにもう少し石炭をもらいたい、あるいは給食の費用が少いので、もう少し父兄の負担を軽くするようにしてほしい、こう言つても三年以下の懲役に行くのだというようなとんでもないことを言いふらす者があるのであります。ラジオもそういうことを言つておる。私は聞いた。それからまたビラを配つたり、パンフレットを出したりということを日教組がやつておる。この間どつかでそれに引用せられておることが、事実無根であるとか何とかいうことで問題があつたようでありますが、そんなことはどうでもいいけれども、小さいパンフレットに一切の政治的発言はできなくなるのだというようなケースが御丁寧に並べられておる。しかし、これはでたらめであります。だから私はそういう一切の政治的発言ができなくなるということはない、こういうことを言つておるのであります。大学の先生が現にこの問題について、きわめて活溌な意見を発表しておる。人事院規則において例外——大学の先生に限つて、そういうことはしてもいいとは書いてありません。大学の先生が学問の研究を発表し、学説としていろんなことを言う場合に、あるいはまた教壇において、いろいろ学問の研究として、学説として言う場合には、それは入らぬという解釈がありましよう。しかしながら、新聞に寄稿して、現前の政治問題について——これは何も新聞を通して一般に学問の講義をしているのではありません。明らかに表題を付して、この法律案に対する論説として書いてある。そういうものが、大学の先生に限つて何らさしつかえないということが、一体人事院規則のどこに書いてありますか。書いてありません。これは人事院規則がそこまできつくないということの証拠である。逆に言えば、あのパンフレットやビラに書いてあることはまるでうそを書いてあるということをはつきり申し上げるために、大学の先生が現にやつておるじやありませんか、こういうことを言つておるのであります。
  177. 高津正道

    ○高津委員 大臣は、日教組がこの法案を非常に歪曲し、あるいは厳格過ぎるもののように宣伝をした、こういうような事実もおあげになつたのでありますが、高等学校あるいは大学、あるいは私立の専門学校、大学、それらを除く理由として、大臣の答弁を見ると、義務教育学校の児童、生徒の頭は、いわば白紙であるから、そこに教えるものは大学の先生とは違うのだ、こういう区別をつけて説明をしておられる事実を私は記憶するのであります。今は大学と区別がないのだ、こう言われるが、そこはどういうようなものですか、もう少し明確に……。
  178. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育の中立性確保に関する法律、この法律の対象を義務教育学校に限つており、高等学校以上の学校はこの場合対象としていない、これは、義務教育の特殊性にかんがみ、また対象となる児童、生徒が、いわばまだ判断力に乏しい、年弱なものである、純白な人々である、こういう点からこれを義務教育学校に限つたのであるという説明はいたしました。特例法についてそんなことを言つたことはありません。特例法は、地方公務員たる教育公務員を国家公務員並みにするのである。あなたは二つの法律案の説明を混同しておられるのであります。
  179. 高津正道

    ○高津委員 いや、私が今尋ねておるのは特例法についてなんです。  それではまた論点を一歩進めて……。教師は他の公務員ように直接行政事務を執行しないものでありますから、反対により広い市民的自由を与えるべきであるという説があるのであります。法案提出理由に、教育公務員の職務と責任の特殊性という言葉がうたつておりますけれども、むしろこのように考えられるべきものではありますまいか。
  180. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは、むしろ制限を経るべきであるという考え方がありますが、それはそれぞれの人の意見により違います。
  181. 高津正道

    ○高津委員 それでは人事院規則についてお尋ねいたしますが。
  182. 辻寛一

    辻委員長 もう二時間たつぷりおやりになりましたが、いかがですか、まだありますか。質問通告者がたくさんありますので、ひとつその辺でいかがです。
  183. 高津正道

    ○高津委員 いやいや、待つて下さい。  この法律制定によつて——ここに人事院規則の抜粋がございますが、それを見ると、実に身の毛がよだつような乱暴なことが多いのであります。特定の政党その他の政治団体を支持しまたはこれに反対することという項があります。大臣の本会議及び委員会における御答弁、それらを読んでみますと、その他の政治団体は日教組であるということが言われておるのであります。私は一分くらいで出せますから、ちよつとこの速記録を……。     〔発言する者、離席する者あり、議場騒然〕
  184. 辻寛一

    辻委員長 御静粛に願います。ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  185. 辻寛一

    辻委員長 それでは始めて。
  186. 高津正道

    ○高津委員 大臣は、日教組は教育研究活動もやり、経済的待遇改善のこともやつているか、しかしながらこのスローガンを見れば、吉田内閣の打倒だとか、あるいは全面講和というような政治的なものがあり、候補者さえも選挙の場合には立てるのであるから、これは政治団体も同じことであるということを、さきに申しました国策研究会でも発言しておられるし、委員会においても発言しておられるのであります。ここにいわれてある「特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること」が人事院規則において禁止されることの一項目になつております。今後教員はこれに拘束されることになりますが、この「その他の政治的団体」という、法律案にもあり、この人事院規則にもある、これは日教組を含むのでありますか、日教組は含まれないのでありますか。
  187. 大達茂雄

    大達国務大臣 人事院規則に特定の政党等を支持しまたは反対する——等ですか、政治的団体ですか。
  188. 高津正道

    ○高津委員 政治的団体です。
  189. 大達茂雄

    大達国務大臣 同じ意味でありますが——「こと」と、こうあると言われますが、支持上または反対することを人事院規則は禁止してはいないのであります。これは人事院規則をよくごらんにならぬといかぬのです。この人事院規則において「政治的目的」というのはこういうことをいうのだ、その「目的」を説明する一つのケースとして、それを書いたわけであります。
  190. 高津正道

    ○高津委員 これは「政治的行為」の一つのケースになつております。
  191. 大達茂雄

    大達国務大臣 それをよくごらんをいただきたい。そういう目的をもつて、特に人事院規則に定められた一定の行為をする、それが人事院規則に反するということになつておるのであります。でありますから、あなたの言われるように、たとえば、国家公務員が社会党左派に入党をする、これは明らかに支持する行為でしよう。これは入党したつて一向さしつかえない。あるいは選挙の際に社会党左派に投票する、これも支持する行為である、これもむろんさしつかえない。そんなことを一一人事院規則がいわゆるがんじがらめに、政治行為として制限しておるのだということはありません。  それからその次に、日教組が政治団体というふうにお前は言つておつた。だからこの場合に、その人事院規則にいうところの政党または政治団体という中に日教組は含むものか含まぬのか、こういう意味お尋ねであります。私は日教組が政治団体と何ら選ぶところのない団体と考えるということは確かに申しました。これは本会議におきましても言つたと思いますし——質問があつたから言つたのですが、また委員会においてもその意味発言をしたと思います。また私は現にそう思つておるのであります。しかしながら法律的に、政治団体は何を政治団体に認めるかということになれば、これは私の方で、この政治団体と法律的に認定をする権限はないのであります。これはどこかほかの関係である。それで少くとも現在の法律の上においては、日政連というものは政治団体、これは明瞭であります。これは日政連自身が政治的団体として届出をしておるのでありますから、これは問題ないそれで日教組と日政連というものがどういう関係であるかというと、これまた、日政連は御承知のように日教組がかぶつている面であります。違つたものではない、それは面と同じものであります。中身は同じものである従つて実質的には日教組というものは政治的団体であると私は思います。今日法制上日教組を政治的団体として取扱うか取扱わぬかという問題になれば、これはおのずから別であろうと思います。日政連の異名同体といいますか、分身である。日政連は、日政連自身の認めるように、政治的団体であると、かように考えております。
  192. 高津正道

    ○高津委員 日教組の場合、実質的に同じものである、それが政治的団体だ、とそう言う。それから日政連は政治資金規正法の届出を受けておる政治結社ですから、これはまあわかりますが、日教組を今からあなたがこの法案を通そうと思われておるときに、政治的団体だ、実質上そうだということを、今から本人が言つておられるようだと、法制上の取扱いの場合に、私は裁判所が速記録などを見て、そんなにまで実質的に事実上政治的団体ならば……ということになる危険性があると私は思うのですが、いかがにお考えですか。
  193. 大達茂雄

    大達国務大臣 ちよつと私聞き漏らしましたが、裁判所がそう思うだろうとおつしやるのですか。日教組に関連して裁判所に係属するような事件の起つた場合に、日教組を政治的団体と認めるか認めぬか、これは認めるかもしれぬし、認めぬかもしれぬ。これは私は何とも言えません。ただ私が申し上げたのは、日教組というものは、これはその当時の御質問に応じて、事実上政治団体と選ぶところのない実質を持つた団体であると思う、むしろ一歩を進めて、ほとんど政党に近いところの政治集団であると思う、これは私の意見を述べたのであります。日教組を法律上政治団体として取扱うか取扱わぬかという問題になれば、おのずからこれは別途の問題であります。
  194. 高津正道

    ○高津委員 それでは問題を、一定の「政治的目的」をもつて、そうして今言つたような「行為」をやつた場合は、といえば、そういう規定であることはもちろんわかつておりますが、昨日の大臣の答弁の中に聞き捨てならないことが幾つもあつたと思うのであります。それはわが小林委員が……(「わがとうと言うが、小林は右派だよ」と呼ぶ者あり)革新政党としては同じですよ。(笑声)文部大臣から、教育環境が悪くても、教師はその悪い環境の中でも、吉田松蔭の教育の例もあることだし、大いに緊張してやれば、能率は上げられるものだというような御答弁を私は承つたのでありますが、およそ教育学校ばかりで行われるものでなく、PTAができたそもそも目的のが、教育の場を学校だけに考えないで、家庭にまで関連のあるものとする、父兄に学校教育に協力してもらうという意味もありますが、けさも私がモデルスクールといわれる永田町小学校へ電話して、ちよつと施設、設備のことを聞いてみたのであります、便所の数が幾つあるか、水道の蛇口が幾つあるか、そんなことを校長に聞いてみますと、あの学校では蛇口が七十五もある。しかし食事をする前にはみんな手を洗うんだと言つても、あの学校には九百何十人という生徒がおるのでありまして、一番上から、何階もあるのでありますから、一番下にあるのは二十四、五だそうであつて、それでは九百の者に短い時間に手を洗わせるには不便を感ずる。こわれるのもできるし……。施設や設備が悪くたつて学校の先生に本気にやつてもらえばやれるのだというような精神主義を、そういう場合もあるけれども、これを全国の教師に望むということは教育行政の担当者として無理なところがあるように私には考えられる。必ず手を洗いなさい、これはよい習慣だと言つても手が洗えないじやしようがない、短い時間と時間、授業と授業の間にはばかりへ行こうとしても、一ぱいいてどうもそれがやれない、こういうこともあるし、お掃除はきれいになさいと言つても、壁の土がどんどん落ちて来る、いくら掃除してもそこでは掃除を丁寧にやれよという先生の方に無理があるようである。それであるからこの教育の環境をよくするということは非常に大事なことでありまして、〇・七坪の基準で国家が補助をしておつたから、それでは廊下などがつくれないので、教室を学生、生徒、児童が移動する場合にも雨や雲にさらされて非常に困るような場合もあるのであつて、私は精神一本やりで、学校の施設やあるいは設備に対する問題にうんと力を入れないで、教員だけどんどん拘束して縛つて行くというやり方は間違いであろうと思う。教師に教育がよくできるような教育環境をつくつて与えなければならない、こういうようなわれわれ同僚議員の主張に対する文部大臣の答弁はわれわれには理解できないのであります。清潔にしましよう、掃除はいたしましよう、食事の前には手を洗いましよう、それをはばんでおるのはこういう事情であるこをわれわれは科学的に客観的に、主観を離れて、そういうようなことはあり得ることだということを認めるべきではあるまいかと思うのであります。文部大臣の所見をただす次第です。
  195. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育環境をようくするということが教育上大切なものであるということについては、昨日も私は決してこれをなおざりにしておるのではなくて、鋭意努力をしておる、こういうふうに申し上げたのであります。小林君は了承されたと思います。きのう私の答弁でほとんど小林さんは了承されなかつたのでありますが、その場合には特に了承したということを言うたのです。あなたの方は了承されておらぬということでありますが、きのうの話は、一体りつぱな教育とか、よい教育ということはいろいろの教え方がありましよう。精神的に見ていい教育、それからあらゆる点において完備した、いわゆる手を洗うしつけをしてもすぐ手を洗えるようにするような、そういう完全な教育という意味もありましよう。きのうの話の起りは、日本の学校の先生は文部大臣の考えられているように片寄つて教育する気持なんかないのだ、朝日新聞かどこかで調べてみるというと、みんな山びこ学校の先生のような教育をしたい、こう言つておるのだ、みんないい教育をしたいと思つておるのだ、こういうお話であつて、それから話が起つておつたのであります。それから私が何か返事をしたらば、教育環境がよくないというお話に急にかわつたのであります。初めの起りはそういう意味じやなかつたのであります。それを小林君がそこで急に急角度にかえて、そういうことを言われて、そのことを私から申し上げて、小林君はきのう了承されたのであります。それをまた同じことをおつしやると思いますが、現にきのうも言つたのです。山びこ学校の先生のような教育をしたい、りつぱな教育をしたい、こう言つておられる。山びこ学校に何も手洗いが完備しておるとか、便所が一ぱいある、そういうものではない。きのうの話の起りはそういう教育設備とか、教育施設の問題から起つた話ではないのです。私がそういう答弁をしたら、急にそれに、教育施設に対しては非常に不熱心、不まじめであつて不都合だというようなことを言われたから、あらためてその点について答弁をして、その点は了承した、こう言われたのです。いずれきのうの速記録がありましようから、それをよくごらんくだされば高津さんの方もおわかりになると思います。
  196. 辻寛一

    辻委員長 高澤君、まだよほどありますか。
  197. 高津正道

    ○高津委員 ありますね。     〔「引延ばしだ」と呼びその他発言する者あり〕
  198. 辻寛一

    辻委員長 よろしい、おやりください。
  199. 高津正道

    ○高津委員 教師は今教育の諸条件の改善に最も熱心に、日教組を組織してそれをやつて来たと思うのでありまする文部大臣は現在の日教組の活動は非常に偏向したものである、政治的である、このように言われるのでありますが、日教組は国家の予算教育の施設や設備の方に、あるいは待遇改善に金を持つて来ようと思えば、その場合に再軍備が大幅に金を食つておるという事情があれば、再軍備に対しては反対だというようなことを言い、それからまた国の予算が自分らに関係のあることでありますから、あそこを切り詰めて社会保障費の方へ、教育予算の方へ向けてくれればいいというように、どうしてもその内閣の政策に反対するようになつて来るのであります。それを文部大臣は、日教組の行き方は経済運動もやるが、むしろそれは政党のようなものだと言つて非常に組合が政党化することに対して反対をしておられるのでありますが、私はこの法案が出たならば日教組は手も足も出なくなるのではあるまいかと思う。文部大臣のこの間の国策研究会におけるお話の中にも、日教組をねらいとしておるのだということがはつきり、遠慮なく言われておるのであります。それゆえ、この法律が出たならば、日教組の運動が非常なる制限を受ける、それはすなわち設備や施設や待遇改善、そういうようなことが今までのようにつつぱつて行けない、非常にそれが低下するのた、こういう結果をもたらすということを私はかたく信じて疑わないのでありますが、文部大臣の御所見を伺います。
  200. 大達茂雄

    大達国務大臣 日教組方面において教育予算をもう少し増額を希望するとか、あるいは学校の施設を充実するとか、そういう考え方で努力をされ、またその意見を発表し、運動せられる、そのことについて私は何らいけないとか何とか言つたことはありません。しかしながらあなたのおつしやるように、教育予算を増額しようとすれば、おのずから再軍備はその見地から反対するのであるとか、あるいはそのためには反動内閣を打倒しなければいけないのであるとか、あるいはそのためには教育予算の増額のために安保条約を破棄するのであるとか、アメリカは追い返すのだとか、そういうところまで発展することが妥当であるかどうか、これは常識があればわかることであります。
  201. 高津正道

    ○高津委員 私は、普通の状態にある場合と違つて、日本のように外国の植民地まがいの状態にある場合には、非常に民族主義的な運動の傾向を帯びて来るのが当然だと思うのです。蒋介石の時代には、その教科書は抗日一辺倒というような色彩が現われて、政府の方針として抗日教育を推進するような、そういう事態をまでも生じておるのでありますから、政府が指導をしないでも、教師だつてだんだん民族主義的に多少動こうというものであります。それをすぐに政治的偏向だと言われるが、日本のような客観的条件がしからしむるのであつて、アメリカの手先になつてそれを押えて、そうして親米教育を織り込もうとするところに私は間違いがあろうかと思うのであります。この限りにおいては日本の民族の自然の歩みを日教組が代表しておるのだ、民族的な組合運動にはどうしてもそういう色がつく、それから経済的要求を掲げて進む場合には政府批判という色が必ず出る、出ないのがふしぎであつて、どうも出る、そういうようなことは一切おきらいなんだろうと思う。私はこの法律が出たら日教組は従来通りの活動が続けられようとは思えないから、従来通りで行けるのだというならば、それを文部大臣の言葉としてここにはつきり聞いておきたいのであります。
  202. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は先ほど日教組が学校施設の充実あるいは教育予算を増額することについての意見を述べ、あるいはそれに伴う運動をすることはさしつかえないということは申しました。しかし日教組は大体公務員をもつて組織せられておる団体でありますから、日教組が従前のごとく極端なはげしい政治的主張を掲げて政治的活動をやつておる、これは日教組を構成している教員の間に、いわゆる教育公務員特例法の違反を生じ得る場合が相当あろうかと思います。それから日教組は従来その決議なりあるいはその他の方法において、組合員たる教職員に呼びかけて、いわゆる片寄つた教育を教壇を通じて児童に浸透させるということを指令しておるのであります。そういうことはこの中立性確保に関する法律に抵触する場合を生ずることは当然であります。先ほども申し上げましたが、私は日教組は実質的には今日ではほとんど政党と選びところなき政治団体であると思つておる、これはしかし私の見解であります。現に日教組は選挙にあたつては公認候補者を立てておつて、そうして少くとも日教組の資料によつて見る限り、これら公認せられた人は、所嘱がどの政党であろうともいわゆる日政連議員団という名前のもとにこれが集約されておる。これも日教組の資料によつてきわめて明瞭であります。そうして日政連というものは政治団体として正式に規正法によつて居出せられておりますけれども、これも日教組の資料によれは、日政連というものは日教組とまつたく団体のものであります。これはきわめて明瞭なんです。私はかくのごとき一種の政党の手に日本の義務教育が事実上非常に強い影響を受けて、極端に言えばこの政党の手に日本の子供が壟断されておるという危険がもしあるとするならば、これはゆゆしきことであるので、私はこの教育の中立性確保に関する法律案というものは、さような事態を防止するために非常に役立つものである、かような意味を持つと者えておるのであります。決して日教組が今日まで取来つた行動がそのまま許さるべきものとは私は思つておりません。
  203. 高津正道

    ○高津委員 日教組が今日までとり来つた運動などがそのまま許されようとは思わない、さらにまた教壇を通じて平和教育などを学童に、そうしてその父兄にと持ち込むよりな事例などが出ておるが、それらは法案が通過した場合には抵触するかもしれない、そういう大臣の答弁があつたのでありますが、そうすればそれだけ日教組は弱められるわけでありまして、他にも日教組の活動に対して弱められる点があるとお考えでありましようか。
  204. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は毎々申し上げますように、日教組の実際の動向についてはつまびらかでありません。私が入手し得た日教組自身の資料によつて申し上げる以上、日教組は実際どういう行動をしておるか、それがどういう意図のもとになされておるか、そういう点についてはきわめて知識が少いのであります。日教組はお願いしても私どもに資料をくれない、でありますから日教組のすべての活動がどうであるかこうであるかということは、日教組によく実際の動きを聞いてみなければ、私では判断ができないのであります。
  205. 辻寛一

    辻委員長 高津君、あなたが御質問をお始めになりましてから三時間と四十分ほどになりまするが、御用意されました質問のうち何割くらい進みましてございます。まだ相当残つておりますか。
  206. 高津正道

    ○高津委員 それは詳しくやろうということになればここらが大体六割でしようか。
  207. 辻寛一

    辻委員長 実は相当たくさん質問の通告があることも御承知だと思いますが、それでは少くともきよう中に終るようにおやりくださいませ。
  208. 高津正道

    ○高津委員 日教組の今後を規制されて許されなくなるであろうという部分を大臣の答弁ではつきり聞くことができたのでありますが、ついでに、今度法律が出た場合に、教育公務員が入党することもできます、投票することもできます、こういう何か明るい面でもあるかのように数えられたのでありますが、なるほど教師は学校の校門を出れば何かの政党のバツジをつけることもできますが、ほかにほとんど自由はないと思うのであります。何か自由があればそれを緒方局長でも大臣自身でも数えてみなさいよ。これだけじやないですか、まだたくさんありますか、あれば言つてごらんなさい。
  209. 大達茂雄

    大達国務大臣 今お話のうちで、投票することも人事院規則できめております。入党することも人事院規則ももちろん禁じておるところではありません。政治活動で許されているものは何と何かとおつしやるが、政治活動というものは千様万態であります。そうしてそのうちで人事院規則は特定の政治活動についてこれを禁止しておるのであります。禁止しておる方は人事院規則をごらんになればよくわかる、あとは全部許されておることであります。許されている方を述べ立ててみると言われても、これは際限のない問題です。
  210. 高津正道

    ○高津委員 われわれは現在の法律が通つたならば極度に政治的自由は制限されるというのでありますから、政治活動の形式は千態万様であるということを主張される政府の側で、まだこの自由がある、まだこの自由があるといつて、今言つた投票権、入党しようとすれば入党の権利、校門を出てバッジはつけられる、ほかに何らか自由があればもつと言つてもらいたい、数えるのに困るくらい、がんじがらめに人事院規則は縛つておるのであります。まつたく政治活動は千姿万態であつて、万様でもいいですが、そういうように言われるけれど、もわれわれには、自由は、非常に乏しいと思つております。あげられるでしよう、緒方さんは。この法案を長く手がけたのだから……。
  211. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいま申し上げたように、政治活動は千態万様でありますから、これを一々ここで述べ立てるわけに参りません。要するに人事院規則において禁止されておる以外の政治活動は、全部自由であります。何も禁止されてはおらぬ、人事院規則で禁止せられたものだけが、禁止せられておる内容であります。あとの残りは全部自由であります。それが非常にきゆうくつだとおつしやるけれども、先ほど申し上げたように、今日国家公務員である大学の先生方が、きわめて活発なる政治的意見を現に述べられておる。これは人事院規則で許されている範囲であります。あなたが言われるように、別にきゆうくつなものでないことはきわめて明瞭であります。この前本会議質問があつたように思つておりまするが、今日まで国家公務員たる大学以下の教職員あるいは付属学校の先生、そういう方面から国家公務員の政治活動の制限が厳に失してまことに困る、手も足も出ないなどという苦情は一ぺんもありません。国家公務員の方にかわらしてもらいたいということはしよつちゆうあります。それから現に各地におきましては、地方の大学、県立大学等を、国立大学に移管してほしいということは、その管理者たる県あるいは地元の人がいうのみならず、その学校の先生が熱心に陳情に参られることも御承知通りであります。もしそれらの先生が、国立に移管せられる結果、国家公務員になつて、はたして手も足も出ない、日教組のいうように思もできないようなものになるならば、何がおもしろくて一生懸命に陳情に来て国立に移管してくれといいますか。これはそういうことのない明瞭な証拠であると私は思う。
  212. 高津正道

    ○高津委員 国立移管の陳情に来るのは、県の費用でやらず、国でまかなつてもらう方がいいから来るのであつて、国家公務員なつた方が政治的自由の幅が広がるからとか、狭くなるとかいうことは考慮に上つていないのであります。それで大学の教授たちが何らきゆうくつさを感じていないではないかという言葉がありましたが、国家公務員法に縛られ、ことに人事院規則があるのでありますから、やはり私は縛られておると思うのであります。それでそんなにきゆうくつな顔をしておらぬ、きゆうくつそうではない、それは思いやりのない言葉だと思う。それから大臣地方公務員たることをやめて、国立大学にしてくれ、国家公務員になろうなろうとしおるくらいだから、国家公務員の扱いを受けたところで何でもないのだ。つらければそれをやめたらよかろう、こういう乱暴なことも言つておられます。これは人間に対する、いわゆる教育労働者に対するたいへんな言葉であります。刑務所に行きたくなければ、それに抵触するようなことでなしに、やめたらよかろう。これはまあ首祭りほどの失言ではないが、われわれの立場から見ると、それは事ここに至るか、そういう言葉が——就職難でみんな困つておるときにそれをやめたらよかろう、そういうことは私は言えたものじやあるまいと思うが、これはまあ問題にしますまい。現在、国家公務員である大学の教授が、選挙の応援に立つておりますが、この法律の対象になつておる義務教育学校の先生が、選挙の応援にも立つていいのでしようか。あなたがおあげにならぬから……。
  213. 大達茂雄

    大達国務大臣 ちよつとその前に申し上げますが、先ほども申し上げましたように、この法律の対象になつておるものは、義務教育学校の先生だけではないのであります。先ほどもちよつとそれをいいましたが、すでに地方公務員たる教育公務員は、国家公務員たる教育公務員の例にならう、こういうことになつております。  それから国家公務員である大学の先生が、選挙のときに特定候補者のためにいわゆる選挙運動をしてもよろしいかというふうにおつしやいましたが、これは禁止されておる行為であります。  それから非常にきゆうくつであるということを強調されますが、これは学校の先生だけじやない、御承知のように国家公務員というものが全国に何十万いるか私存じませんが、これは非常な数です。この人々の中で、特に選挙の好きな人なんか不便を感ずるかもしれぬが、世間に伝えられるほどきゆうくつで動きがとれぬなんということは聞いたことはない、これは常識でお考えになればわかると思う。
  214. 高津正道

    ○高津委員 およそ法律というものは正しい解釈をして、それから将来拡張解釈が行われるか、行われないかというようなことできめなければならないので、人事院規則のどれかの項が仮睡というか、仮眠の状態になつて使われないでおるから、その文句はあつても、何でもないのだ、こう言われるが、いざという場合には、その刀は抜いて使えるわけでありますから、やはり国家公務員にして、三年以下十万円以下という、そこへ持つて行くということは、大きな問題だと思うのです。政治的活動の権利を自分の居住地において、あるいは他町村においてまで、自分の任地以外にあつたものを奪われてしまうのでありますから、どこへ行つてもやれなくなつてしまうのであります。これは大きな問題で、日本国にある政党の緑風会のごとき、一人一党のような観を呈し、たいがい多くの場合には与党側につくという、疑獄事件などが起ると、何だか検察庁に対して、与党になつておつた方が免れるのに便利であろうというような心理状態に左右されてか、疑獄事件などが起ると、野党が与党化するような傾向が現われて参るふかしぎな日本の国柄でありますが、緑風会のようなもの、あれを応援してもいけないでしようか、あれもやはり政治資金規正法に基いて……。
  215. 大達茂雄

    大達国務大臣 今のお言葉の中に、人事院規則というか、国家公務員に関する規定が仮睡状態にあるから、それだから大したことはないじやないか、こういうことを私が言つたようにおつしやいますが、そういうことは私は申しません。仮睡状態にあるかどうか私は知りませんが、しかしこんな規則はあつてもなくても同じだからさしつかえないじやないかなどということは、私としては絶対に申し上げたのじやないのであります。それならばこの特例法の改正は、行われない法律に合せるということは無意味であります。私はそういうことを言つたのではありません。きのう小林君などがそういうことを言われた、私はそんなことは言いませんから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。  それから選挙にあたつて特定政党、特定候補者のために選挙運動をする。これは禁止せられている行為と私は思います。それが緑風会であろうとも、ほかの政党であろうとも、その点は同じであります。別に党派のいかんによつて取扱いを二、三にさるべきものではないと考えます。
  216. 高津正道

    ○高津委員 教育の中立性に対して最も恐るべきもの、すなわち、いわゆる教育基本法にいうところの不当なる支配は、横からも来るであろうし、背後からも来るであろうし、上からも来るし、太平洋を越えて、かなたから来る場合もあるし、不当なる支配は中立性を侵そうとするのです。しかしその中で最も一番可能性の強い分が上からの分です。すなわち政府から来る分が一番強い。(「北からも来る」と呼ぶ者あり)北、いや、それも若干の影響を持とうとするでありましよう。(笑声)それでそのような外部から教育を目がけて迫つて来るいろいろな勢力、それらの中で最も大きなものが上からのものであり、すでにそれは戦前の教育において経験済みのものであります。それに抗して守るところのものは教員自身の組織であろうと思うのであります。これはおのれのことであるから、最も忠実に、熱心に、それに対しておのれを守ろうとする。その日教組というものを非常に弱める結果をもたらすに違いないと思います。すなわちその間隙に乗じてここぞとばかり文部の行政権や中央政権の権力が及んで行くものである、そういう論理が必然に生まれて来るのでありますが、これなしと言われるならば、その論拠を文部大臣から承りたいのであります
  217. 大達茂雄

    大達国務大臣 不当の支配という文句でありますが、私は不当の支配というものは、法律に基く正当な権限を離れて及ぼす影響もしくは支配、こういうふうに考えるものであります。従つて上から来る支配とか、横から来る支配とか、もし法律の規定を離れてそういう不当な影響力が及ぼされる場合には、不当の支配ということが言えるかもしれない。ただ上からも来る、横からも来るという簡単なものではないと私は思います。でありますから、その不当の支配を排除するがためにこそ、いわゆる教育委員会という国民の直接選挙によつて出て来た人々がその運営に当つておるのであります。いわゆる役人で、上の命令があれはどちらへでもなる、こういう制度を排して、面接選挙による制度になつておると私は解釈しておるのであります。でありますから教育委員会が健在であれば、さようなことは今日保障されておる。これは教育委員会法にも明らかにその趣旨のことが書いてあるのであります。今日政府が権力をもつて上から不断の支配を及ぼしておるというようなお話でありますが、具体的にどういう事例があるか、事例があつたら伺いたいと思う。何も不当の支配、法律を離れて政府教育を圧迫しておるような事例はないと私は確信しておるのであります。むしろ教職員団体というような勢力が教育委員会にいろいろの不当な支配を及ぼしておると思います。たとえば最近における振りかえ授業、これは教職員団体がくちばしを入れるべき筋合のものではありません。これは学校の運営に関することであつて、先生の問題ではない。学校自体の運営に関する問題であります。当然に教育委員会の仕事であります。これに対して教職員団体が指令を流す。かくのごときことを不当の支配というのであります。
  218. 高津正道

    ○高津委員 大臣は私に対するただいまの答弁の中で、振りかえ授業のごときは、学校の経営管理に対して、日教組が干渉するものであつて、不当なる支配のように言われたのでありますが、現在の日教組の組織は、下部から無記名で投票して、それが県に集まり、全国大会になり、そこで無記名の投票によつて中央部を選んでおるのであるから……(「よく知つておるな」と呼ぶ者あり)どの労働組合もそれなんでありますから、それの一つである日教組もそうなのである。だから校長も入つておれば、教頭も入つておれば、みんな入つておる。それが集まつて、そうして中央部が構成されておる。だからおのれの選んだ人々がそれを支配するというか、自分らの決定としてそこできめることは、不当な支配だとはいえないのではないでしようか。自主自立、何か丹頂づるが下を支配するような、そういう言葉もあつたけれども、民主的な労働組合の運営がやられておることに間違いはないから自主自立である。あなたはやはり不当なる支配というのですか。組合員はおのれ自体ですよ。
  219. 大達茂雄

    大達国務大臣 御承知通り学校の運営管理の責任は教育委員会にあるのであります。従つて日教組はこれに指令を出すなどということは、まつたく見当違いであると私は思います。そもそも日教組がいうところのごとく教職員、いわゆる教育労働者の勤務条件の改善を目的とする労働団体の一種であるとするならば、それが職場の管理に関係して指令を出す、これは許さるべきことではないと思う。
  220. 高津正道

    ○高津委員 教育委員会の権利だと言われるが、日曜を月曜と振りかえたりすることは、校長の権限であり、その校長を含んだ日教組がやつたので、教育委員会をやつつけたとか、教育委員会の権限を侵したとか、そういうものではあるまいと思うが、政府当付の見解を承りたい。
  221. 大達茂雄

    大達国務大臣 学校の運営というものは、教育委員会の責任であります。これがもし教育委員会の責任でないとすれば、教育委員会は一体何をするのか、よくわからないものになつてしまうのであります。但しそれぞれの地域において、教育委員会みずからの定むるところによつて、特定の場合に授業を休むとか、そういうことを校長にゆだねておるところがあります。これは教育委員会がゆだねるから、校長がそれに基いて、そういう職務を行つておるのであります。校長でも教職員団体の組合員になつておる人もあるし、なつておらない人もありましよう。いずれにせよ日教組が全国にわたつて学校の運営に関して、日曜日を利用して、月曜日に休めとか、そういう類のことの指令を出すというようなことは、これは僣越しごくであります。これを不当の支配でないというならば、不当の支配というものは何もほかにはないのであります。
  222. 高津正道

    ○高津委員 日教組は全国的な大きい組織を持つており、日教組がそういう指令を出すことは不当支配のテイピカルなものだ、あるいはサンプルだ、そういう意味に承つたのでありますが、すでに教育委員会から委譲を受けておる校長の職務内容であるならば、それならば何でもないでしよう。不当なことでもなんでもないでしよう。そういうような集まりがそういう輿論で中央で決し、しかもそういうものに従わないものを懲罰に付するわけでもないのでしようから……。
  223. 大達茂雄

    大達国務大臣 受けておるところが全部ではないのであります。受けておらぬところもある。また、こういう場合にはという一定の条件、そういう場合を指定して委任されておるところもありましよう。これは全国でそれぞれ違うのであります。根本的にその権限は教育委員会の権限であります。日教組がくちばしをさしはさむべき限りではないのであります。     〔委員長退席、相川委員長代理着席〕 何ゆえに勤務条件の向上を目的とする日教組が、その職場で、あたかも業務管理をするかのごとく、日本の学校の運営までも自分の手で指令によつて動かし得ると考えるか、その考え自身がはなはだもつて不都合きわまるものであります。
  224. 高津正道

    ○高津委員 火事の場合には、人間みんな別な勇気も出れば、別な考えも持つ。全国の教職員にとつてこれほど重大な法案はないわけでありまして、日教組の活動はこれでもう終りになる。ただ経済的要求だけ出して、いくら中央にそれを言つたつて、それは威力のないものになつてしまう。それでは待遇改善ということができないようになるわけです。そして学校の施設も、そしてまた学校の設備も、それらの推進の役員を勤めておつた日教組も弱まる。全部がそうではございませんが、ある村においては、ある町においては、教育委員会からどういう不当なる扱いを今後受けることがあるようになるかもしれない。これは恐るべきことであるというのだから、私がもし校長であれば私は一週間休んだかもしれない、明治維新のときに生れた者は、利害得失を離れて勤皇派に投じた方が正しかつたわけです。それたから、憲法が破壊されようというようなときには、破壊する方がいいと言う人もありますけれども、そういうような場合には異常なる勇気を振りしぼつて闘わねばならぬと私は思うのです。このようなときに、学童を思えばこそ、父兄の気持くめばこそ、日曜と月曜の振替でやつたのであります。(「それは法理論ではない、認識論だよ」と呼ぶ者あり)それは認識の相違であろうけれども、政治は単に法理論だけでは行かない。私は、よくぞあの限界を守つて抵抗したと、その苦心の存するところがよくわかるのであります。政治家はその先をくんでやるものでありたいと私は思う。この問題はやはり重大だけれども、時間がたつて気にかかりますから先を急がねばなりません。  政治的中立の確保に関する法案に入つて行きますが、政治的中立の確保に関する法律案であるのに、大事な眼目である政治的中立というものが何を意味するかということが、積極的に明確に規定してないということがこの法案の大きな欠点であります。長い間この法案をつつついて来た緒方局長でも、部下はみなつかんでおられる代表者大達文相でもいいから、こういう内容のものが中立性だということをはつきりとここで明言してもらいたい。法案にはそれが現われていないのですから、中立性とはかくのごときものであるということを明言してもらいたい。どうもこういう法律ができてはあぶなくてしようがない。
  225. 緒方信一

    緒方政府委員 これは法案の提案理由にもございまするし、それから委員会において私がいたしました補足説明の中にもうたわれておるのでございますが、この法律の中心をなす条文は第三条でございます。第三条をごらんいただきますと、教育を利用してとか、特定の目的をもつてとか、いろいろな条件がここにございますが、「義務教育学校に勤務する教育職員に対し、これらの者が、義務教育学校の児童文は生徒に対して、特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆し、又はせん動してはならない。」という規定がある。そこで、特定の政党を支持させ、またはこれに反対させる教育を行うことを教唆しまたは扇動することを禁止するのがこの三条の眼目であります。党派的勢力の不当な影響または支配から守ることがこの法律の目的でもございまするし、この第三条の第一項の、「特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を、あるいはまた、第二項の、「特定の政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」を教唆し扇動することを禁止しておるのであります。要するに、教育基本法第八条二項の禁止いたしまするところの、特定の政党を支持し、またはこれに反対するための教育の中で最も典型的な部分を押えまして、それを外部から教唆扇動することを禁止するのがこの法律案の趣旨でございます。教育の中立性ということは、その意味にこの法律では掲げておる次第でございます。
  226. 高津正道

    ○高津委員 政府お尋ねいたしますが、特定の政党を支持しあるいは反対するようなそういうことをやつてはいけないということは、ちよど、象をなでてみて、足の部分をとらえた人間が、やわらかい肉だがこれはおけのようなものだと印象を語るようなものであつて、中立性とは何ぞやということに対して、これをやつてはいけないというものを一つか二つあげただけでは中立性の定義にはならないですよ。積極的にという言葉をつけて私が質問したのはまさにその点にあるのであります。中立性ということは、それはむずかしいでしよう。今まで法律用語でこういうのはほとんど始めてなんでしようが、ともかく教育の中立性というような法律用語でここへ現れておりますけれども、その中立性ということを、積極的に、内容的に、具体的に、こうではない、ああではないということを、説明していただきたい。基本法にもこういうような言葉はありますが、これは、これに刑罰を伴うものとして現われたのですよ。
  227. 大達茂雄

    大達国務大臣 中立性という言葉は、大体は基本法八条の二項に掲げてあるような教育をしないことです。これを私どもは中立性という言葉で——これは簡単に扱う関係で、そういう言葉で表わしておるのであります。もちろん中立性という言葉は他に用例があります。決してここに初めて出た文句ではありません。それからただこの場合に、この中立性確保に関する法律、この場合にはそのいわゆる偏向教育の中で、特に典型的にはつきりと把握し得るもの、それに限つて、その教唆扇動を処罰の対象にしたのであります。従つて八条三項にいう範囲と、この法律に処罰の対象とせられる教唆扇動の対象となる行為と申しますか、教育、これとは、その間に違いがあるのであります。この法律は決してあなたがおつしやつたように、象の一部をなでて、ここが中立に反する、こちらが中立に反する、こういういうことで全貌を尽さない、こういう意味のものではないのでありまして、これはもちろん処罰をもつて臨む規定でありますから、もちろん拡張解釈を許さるべきものではありません。この三条の一項、及び二項に掲げてある「特定の政党等を支持させ、又は反対させる教育、」それからそれに至らしめる教育、これに限定をしてあるのでありまして、その以外の場合は、これは本法の処罰の対象にはならないのであります。八条の二項とはそこに多少の開きがあるのであります。この法律のねらいとするところは、かくのごときはつきりした場合に対して、処罰をもつてこれを規制して、もつて八条二項の精神が確保せられるようにいたしたい、かような考え方であります。
  228. 高津正道

    ○高津委員 第三条の二項に、「前項の特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育には、良識ある国民たるに必要な政治的教衣を与えるに必要な限度をこえて、」これがたいへんだ、「必要な限度をこえて、特定の政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育、」これはそこらの限界というものはいよいよ不明瞭をきわめたものであります。それだから中立性という言葉の積極的なる定義が現われておらないとともに、こういうあいまいな言葉で、拡張解釈の余地を十分に残しておるところのこういう文句が現われているところに、われわれはこの法案全体に反対であるが、ことにこの点が恐しいものである、こういうように考えるのであります。いわんや一方この法律の立案に当る、その通過のための宣伝に当る、そして審議の促進役であるところの大達文相は、ほんとうに失礼でありますが、ここだけは読ましてもらいたいと思うのです。三行ですよ。これは私は秘書をもつて調べさせましたが、こういう記事が四段抜き五段抜きですよ。けれども読むのは二行です。東京朝日、昭和十七年三月十三日、「日本人は直ぐに感傷的になつて、統治下の人民に必要以上の同情をしすぎて兎角甘やかし過ぎる、特に警察行政の点で、それを痛切に感じている、」これは昭南市長の言葉であります。そうしてもう一つ言わねばならぬのは、「大東亜戦争が終局の目的とするところは米英蘭等の搾取を排撃し東亜民族共和の八紘一宇の楽園を実現するにある……しかしこの終局目的を達成するまでにはいろいろな段階があると思ふ、場合によつては鉄血政治も断固やる、三年かかるか五年かかるか、一応の目鼻がつくまでは僕は断じて退陣せんよ……、」これは昭和十七年二月二十五日の東京日日新聞であります。私はただこういうパンフレットなどに書いてあるもので、万一誤植があつてはいかぬし、調べに祕書をやつたのでありますが、まさにこの通りであります。しかもでかでかと写真が出ておる。鉄血政治といい、あるいはみずからその言葉を選ぶ、そういう人のつくつたこの法律が、危い危いという予感で読むからではありますまいが、「必要な限度をこえて、特定の政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育を含むものとする、」とどこまでも広げられるような、危い危い網をここに張つてあるのでありまして、私はこの法案に賛成をして通した人は、もう抵抗力が全部なくなつたのだから、こういう場合には断食か、卑劣な人々であれば——卑劣という言葉はいかぬが、気の弱い人であれば、わら人形に五寸くぎという言葉がありますが、そんなのが、私は全国に立ち並びはしまいかということを恐れる。(「恐れてばつかし」と呼ぶ者あり、笑声)自由党こそ日教組を非常に恐れ過ぎておる。(「五寸くぎ……」と呼ぶ者あり)いやそれは弾圧を受ければ、孫子の代までたたろうという気持を起しますよ。それでこの法案教育界に与える影響はいろいろに考えられるでありましよう。第一の場合は、強い人間はどんどん下へもぐつて行くでありましよう。それから弱い人間は、多くの人々の指摘しておるように、政治に触れまい触れまいとし、文部大臣政府の顔色ばかり見るようになり、政治的教養を高めるというような、そういう今まで教育基本法にうたつてあるようなこととはほど遠い、まるで政治的禁治産者のような者が一方に生れ、一方は非常に急進化して来る。法律がこういうように縛つてあれば、私今古い歌の文句を一つ思い出すのでありますが、「世の中に人の来るほどうるさきはなし、とはいうもののあなたではなし、」その意味は、世の中に人の来るのはうるさいけれども、あなたがいらつしやるのはちつともうるさくないと、まあこういう、法律でとがめることはできないような文句でありますけれども、前の前提があまりに強くはつきりと、世の中に人の来るほどうるさきはなしと断定しておりますから、長く訪問しておろうと思つても、訪問しておれないのであります。それはそういうような表現をもつてする場合、あなたは例外だと言つておるのであるから、あなたが腹を立てるのはやぼですと言つたところで、どうも前の前提がきいておる。法律で縛るわけには行かないが、すべて学校の先生も、これではというので、一方はどんどんそういうような、法案の点を避けるような、しかし本心を曲げない方向に進むかもしれぬし一方は政治的無関心のようになつて来る、私はこういうような結果が現われると思うのでありますが、法案の結果を、どういう結果が現われるようにお考えになつておるか。それは全然見当つかずに、もうこれで押しまくつてみる、これじやあるまいと思うが、どういう結果が現われるとお思いになりますか。
  229. 大達茂雄

    大達国務大臣 すべて拡張解釈しないで、厳格に解釈をする、こういうことはこの法規の場合だけではありません、刑罰法令に関して、いかなる場合においても守らるべきことでありまして、これは私は常識であろうと思う。裁判官、検察官すべて刑罰をもつて臨む限り、拡張解釈をしたりいいかげんな解釈をしない、こういうことは昔から今日まで通じた原則だと思います。そこでこの場合について、特に非常な拡張的な解釈が行われるという、ふうにお考えになる必要はないと思う。ことにこの解釈を、いろいろ日教組で苦労して集めた新聞記事をお読上げになりましたが、私のようなものがやればどういう拡張解釈をするかわからぬ、こういう意見でありますが、この法律はごらんになる通り文部省に何らの権限を付与するものではありません。この法律従つてこれが運用されることは、教育委員会の請求があれば、ただちに司直の手において起訴する理由があれば起訴せられ、そして裁判官がこれを判断するのでありまして、文部大臣はこの場合にこの法律が成立することによつて、何らの権限を与えられるものではありません。私がどういう人間であか、さんざんな御批評でありましたが、かりにそうであつても、私はこの法律の運用について何らの権限を持つわけには行かないのでございますから、その点はひとつ御心配のないようにしていただきたい。
  230. 高津正道

    ○高津委員 この法案が通つたからといつて文部省に何らの権限を付与するものではないのだ、この法律の運用は、それ自体が裁判所のもとにあるのだ、こういうような説明であるけれども、山口県の日記問題が起るや、ただちに地教委に対して猛烈な指令を流されたわけであります。これは次官通牒という名前ですよ。それはなまけるような者があつたり、勤務を怠るような者があつたならば、とにかく厳重にそれを何せよ、中立性に違反する者があつたならば、厳重に目を光らせておれ、そういう調子のものであります。それで教育委員会文部大臣がつかんでしまつて予算を一生懸命とつて、君らに与えるのはこのおやじだぞ、なるほどなるほどというので、日教組の味方は社会党や改進党の良心派など、あるいは労農党もあるかもしれないが、地教委を育成してくれるのは、われわれの弁護士は大達文部大臣だというので、いよいよ親類関係が密になつて、そうして地教委を督励し、声援するならば、地教委は張り切つて、おかしな基準で、あつちの村、こつちの町でも、学校の問題をこれも裁判だ、これも裁判だと言つて請求するようになつて文部大臣にはあなたのあとにだれが来られようとも、文部省というものは地教委の応援団長だ、パトロンである、このような考えを持つに至り、地教委と教職員との摩擦はいよいよ深まつて来るであろう。それで私の質問の中には三つの質問が含まれております。第一の部分は、文部省の権限は加わる、この法律の運用に対しては拡張解釈するであろうということで、この法案成立後の運用に対して、文部省は各地に散らばる地教委の背後勢力として影響力を持つているから、権限は、そういう狭い意味でも、限定された意味でも、文部省は中央集権的な権利を振い得る。あなたの論理は、教組が弱まれば文部省は強まる、こういう論理でしよう。今や教育界を行政しているものは日教組であつて文部省ではないというような言葉も、政府委員のだれかから聞いた記憶もあるのであります。それで、文部大臣の権限が附加するものは何ものもないというのに、こんなに骨を折られるはずもなし、これは私の言うような意味において附加されていると思う。もう一つ終りの部分の質問内容は、かくのごとくして地教委を激励する応援団長がついて、パトロンがついておれば、地教委はわが意を得たりとして、そうして猛烈にその教員に——地教委の任務なるものは非常に数は多いのであるけれども、監督と、裁判の請求と、告発をやる。検事のような立場で臨むようになれば、そこには教師と地教委との間に結んで解けざる忌まわしい状態が各地に発生するに違いないと思います。これに対する文部大臣の明快なる御答弁を要求いたします。
  231. 大達茂雄

    大達国務大臣 山口県の場合に、文部省から非常に激越な通牒を出したというふうなお言葉でありましたが、あれはごらんくださればわかるように、何もそんなに激越な通牒でも何でもありません。当然なことを勧告したのであります。文部省教育委員会を、いわば手なづけて、文部省の中央集権的な方向を進めようとしていると言わんばかりのようなお言葉でありましたが、さような考え方は毛頭いたしておりません。この教育委員会に対しましては、ここにちよつとおもしろいことがありますから、読んでごらんに入れますが、第三十回の日教組の中央委員会の経過報告の中にこういうことがあります。「第十回定期大会では、平和と独立を守るために、平和教育の具体的推進を決定したが、その後この決定に基き各県教組及び職場では、地方の特色と行事を生かして、地方色ゆたかな平和教育、カリキュラムを編成し、平和教育の実践要領をつくつて、新聞や雑誌などの編集を通して、平和教育の徹底をはかつて来た。これに対して反動陳営は、平和運動弾圧の一環として、山口、青森などの小学生、中学生の日記を問題にし、赤い日記である、あるいは特定の政党の主張を支持する目的を意図的に騒ぎ立て」これで山口県の日記が、日教組の方針に基いてでき上つたものであることは、ほぼ明瞭であります。それからさらにおもしろいのは、こういうことが書いてある。「中央本部は各県にその真相と、これに対する日教組の見解を明確に把握させ、おのおのの職場に次官通牒の流布を阻止する方策を請じ」こういうようにせつかく出した通牒を日教組がじやまをしている。阻止する方策を講じた、こういうことが書いてある。こういうことは非常な得意なところでありまして、その結果は結局一冊の回収も行わせず平和教育を遂行して行つた、こういう報告があります。これでわかりますように、日教組がじやまをいたしますから、あなたが言われるように文部省の意向は容易に教育委員会には反映しないのであります。
  232. 高津正道

    ○高津委員 この法律のために地教委と教師との間に猛烈な紛争が今後起るようになるのは当然の帰結で、われわれの常識判断の一様に向うところでありますが、これに対する答弁がなかつたように思います。
  233. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は地教委と教員との対立などということはあつてはならぬ、また激化してはならぬと思つております。これを日教組が対立させるように下からいろいろな指令なんか流すから対立するのであります。
  234. 高津正道

    ○高津委員 大達文相はゾルレンをもつてザインの答えとされるように思うのです。夫婦は仲よくあるべきですよ。だがなかなかおもしろく行かないのが現実でありまして、地教委と学校は仲よくすべきものであると言つたところでなかなか仲よく行かないのが現実なんですよ。そこへ片一方の応援団やパトロンがついて激励するものがあると。これは波乱を起すことを私は予言しておきます。政府に対する質問の中にこの言葉が入つて、あまり科学的でないようですが、私はそういう非常な杞憂を持つておるものであります。何も起るはずがないとおつしやるのであるか、いま一応御意見を承りたいのであります。
  235. 大達茂雄

    大達国務大臣 あなたの言われるゾレンがザインになり得ないのは、先ほど申し上げたように日教組がまぜ返すからであります。
  236. 高津正道

    ○高津委員 四十万も五十万もの数多い教職員の中には、心の中での形ではありますけれども、わらに五寸くぎも現われるでしようし、一週間も賜暇休暇をとつて、これに反対の意思表示をしたいと思いながら、涙をのんで振りかえで子供には迷惑をかけなかつた、こう思つておる者があり、今度の選挙には、と選挙のことまで思つていろいろ考えておるだろうと私は思う。戦争の始まる前には、荒木大将が文部大臣になり、まあ戦争の始まるすぐ前というのはたいへんなものですよ、今またあなたのような強い強いことを言う人が文部大臣になつて教員を守るというあめのついたような言葉で、教員の自主制を守り、不当なる支配から守つて、やるのだと言つて教員自体の組織しておるものを弾圧して、そこはいかぬ、ここはいかぬと言つて骨抜きにしてしまつて、そして教員の自主性を尊重してやるのだ、不当なる外部支配を払いのけてやるのだ、そういう甘い甘い言葉で、教員の経済的待遇改善の道やその他の向上の運動、研究活動、教研大会まで制限を受けるような法律をおつかぶせるのは、荒木さんの文部大臣時代の業績を調べないけれども、あのようなたいへん罪なことをなさることだと私は良心に誓つてつておりますよ。私はあなたから良心的にこれに対して、そうじやないのだとか、これでいいんだとか、認識が違うとか何かごあいさつを聞きたいと思います。
  237. 大達茂雄

    大達国務大臣 この法律が成立した場合には日教組がいろいろと迷惑する、困るという点を先ほどからるるお述べになつておりますが、それはそういうことがあるかもしれません。日教組のそういう行き方をしようと考える人々には、私はお気の毒とは言いませんが、都合の悪いということは認めます。認めますが、これはやむを得ないというよりも、教育を守るために当然の事柄でありまして、私はこの点何も良心に恥ずるところはありません。
  238. 高津正道

    ○高津委員 それではこの法案について聞いておかなければならぬ重要点に、ついてお尋ねいたしますが、教育基本法にいうところの良識ある…。     〔発言する者多し〕
  239. 辻寛一

    辻委員長 御静粛に願います。
  240. 高津正道

    ○高津委員 良識ある公民たるに必要な政治的教養は教育基本法によつて奨励されてあるところでありますが、それが政治的紛争の争点、論争の争点に触れることなくしては、これは涵養し得ないものであろう、このことが非常に憂えられるのであります。そこらはみんな避けて通る。この教育基本法とこの法律とは相矛盾することになりはしないか、これに対する詳細なる御答弁をいただきたい。
  241. 大達茂雄

    大達国務大臣 良識ある公民たるに必要なる政治的教養、つまり公民として政治的な問題あるいは公事の問題についての判断を十分なし得るような批判力を備えた教養を与える、これが八条の第一項にある教育の目的であろうと思います。この場合にそういうゆたかな批判力、判断力を妨げるように、ただ一方的な片寄つた主張、片寄つた政治的な思想のみを児童に対して注入をするということは、良民たる政治的教養をこわすものだ、その意味において、一面において八条の一項がその良識ある公民たるに必要なる政治的教養ということを主とする反面、これを破壊するような一方的なへんぱな教育を排斥しておるのが八条の二項であります。そしてこの八条の二項の趣旨を貫くために、その精神を確保するためにこのたびの法律提出するに至つたのであります。さように御承知を願います。
  242. 高津正道

    ○高津委員 この際明らかにしておきたいことは、校長にもしこの請求権を移した場合はどういうことになるか。校長かそういう違反行為のあつた場合にはそれをみつける義務を背負うのでありまして、義務を怠つておるというのでやられる場合もあるし、一方また下からは今までよりも権力者のような形が現われて、校長のもとに日教組も弱まり、まるで萎縮して教員が使われるという現象が考えられることもあるのであります。それゆえ改進党の修正案に今盛られそうになつていると聞くのでありますが、修正案はまだここに現われておりません。論理として聞くのでありますが、校長が請求権を持つた場合と、教育委員会が請求権を持つた場合にどちらがよいか、おのおのの場合の欠点と長所とを、それぞれについて詳しく承りたいと思うのであります。
  243. 緒方信一

    緒方政府委員 この法律の目的といたしまするところは、先ほど申し上げましたけれども、第三条に規定しておりますような教育を行いますことを、何人かが外部から教唆扇動をしました場合、そういう事実があつたということを判断した場合に、一定の者が請求をする、こういうことでございます。従いまして、かりに校長がその請求権を持つといたしましても、ただいまお話がありましたように、校長と教員との間に摩擦が起るということはあり得ないかと思います。これは教員自身がその罪に問われるわけではございません。そのわきから教唆扇動された教員を守つて行くという立場でございますから、そういう場合に、校長があるいは請求権を持つとか、政府原案といたしましてただいま御審議願つておりまする案といたしましては、学校管理の責任を持ちまする教育委員会がこれを持つことが最も適当である、こういう観点から原案のようなことに相なつた次第であります。
  244. 高津正道

    ○高津委員 校長が裁判をするのではない、それは請求権にすぎないからというこういう説でありますけれども、請求権はすなわち裁判権の入口であるから、同じように恐ろしいサーベルをつつたことになりませんか。
  245. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま申しましたのは、外部から教員に対しまして働きかけて来る、そういう教唆扇動のあつたものが犯罪になるわけであります。従いまして、その請求をするということは、教育を守つて行く立場でありますから、その間に教育委員会が請求権を持てば、教育委員会教員との間に対立が生ずるということはあり得ないわけであります。  それから校長というものは、常に学校の中の状態を見ていなければならぬものでございますから、それでこれは教育委員会が請求権を持ちます場合に、あるいは積極的にその状況を申し述べるということも、これはあり得ると思います。すなわちただいま申したような意味合いにおきまして、学校教員を守つて行く立場から、そういうことに相なるのであります。
  246. 高津正道

    ○高津委員 私はこの法案がどういう動機から出発しておるかしれませんが、背後にアメリカのひもがついておるということを最初質問したのであります。そうしてアメリカは沖繩の教育や沖繩の警察に対して、要求するところのものを、ある程度日本に薄めて要求をして来ておる、前から日本の教育を気にし、ことに憲法改正をやろうとする場合に、電産よりも国鉄よりもおそろしいものは、村や町や離島に散つておるところの五十万の教職員の組織だと言つております。私は今日この教員組合を骨抜きにするということは、憲法改正運動との関連性があると考えておるのであります。そうして汚職は次から次へ広がつておりますから、どうしても解散は免れないでありましよう。あと保守連立で引受けるにしても、国民大衆はなかなか内閣の指令のもとに一致してその内閣を助けるような気持にはなれないでありましよう。どうせ選挙も近い、どうも日教組は強いからというので、選挙対策というもののにおいさえもわれわれには感ずるのであります。こういうような政治的ないろいろな欠陥を持つた、ひものついておる法案が日本の議会で多数によつてつて行くことを、私は非常に残念に思う者であります。この法案が通つたならば、必ず全国の地教委と教職員との間に猛烈な問題が起き、それから緒方局長の説明にもかかわらず、地教委はあちこちにこの問題を起して、私は教育界を大混乱に陥れるものがこの両法案であると思うのであります。これは野党であるから言うのではございません。これを非常に恐れるのであります。私は今やアイゼンハウアーがマッカーシーを押えるような政策をとらなければならぬようなときに、アメリカも一歩しりぞき、話合い運動にアメリカが負けて、ダレスがヨーロツパに出かけて行つてモロトフと会うような譲歩を示し、アジアの問題を扱うところの今度のジユネーヴの会議には、中国を大国の資格で認めろというほどに譲歩する、こういうようにアメリカはやや力で押される意味もありますけれども、反省の色も見えないではない、しかるに日本の末端においては、そのアメリカのそれらの傾向を看取することなく、いよいよマッカーシー流にこう言つておるのでありますが、私はいつからそのカーブはかわつて来るのであるか、このような法案が巻き起すところの非常な混乱に対して、あなた方は責任を負わなければならぬと私は思う。そんな混乱が起ることはないと言うのであるか、あるいは多少は混乱もあろうと言われるのであるか、いま一度大達国務大臣より御答弁をいただきたい。
  247. 大達茂雄

    大達国務大臣 高津先生でもこの教育の中立確保に関する法律案に規定してあるところの、義務教育学校において子供に対して非常な片寄つた教育を行うようにということを扇動教唆する行為を、まさかいい行為とはお考えにならぬと思うのであります。この法律案が成立いたしましても、かくのごとき邪悪な行動をとるという気持のない者は、少くともこの法律に関する限り困るようなことはないのであります。しかるに日教組がこの法律案に非常な反対をしておる、また今仰せられるように、日教組は非常にかわつて来るであろう、こういうことを言われる。これはこの法律に書いてあるようなことを日教組が現にやつておるということの裏書きになるかもしれぬと私は思うのであります。はたして日教組はこの法律案に規定してあるような極端に片寄つた教育を児童に与えるように教唆扇動しておるという事実があるならば、この点において日教組はこの法律成立の結果その方向をかえなければならぬ。またこれは当然のことであります。そのために日教組が混乱に陥ろうとも、これはやむを得ない。やむを得ないということよりは、むしろ当然のことであります。混乱を避けるために赤い教育、極端にはげしい偏向的な教育を行うことをどんどんかつてに教唆扇動するという事実を黙過するわけにはいかないのであります。
  248. 高津正道

    ○高津委員 各論の質問は残つておりますが……。
  249. 辻寛一

    辻委員長 いや、本日で御終了願うように申し上げましたら、先ほどあと四割ほど残つておるということでしたが、もう大分時間がたちましたからおそらくあと二割くらいだと思いますからどうぞ御質問をお続けください。一日にお一人の質問も終了することができぬことでは困りますから、どうぞ。(「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し)  ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  250. 辻寛一

    辻委員長 速記を始めて。  暫時休憩いたします。     午後五時二十三分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた〕