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1954-03-03 第19回国会 衆議院 文部委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月三日(水曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 相川 勝六君 理事 伊藤 郷一君    理事 坂田 道太君 理事 田中 久雄君    理事 野原  賢君 理事 松平 忠久君       岸田 正記君    熊谷 愚一君       世耕 弘一君    竹尾  弌君       長谷川 俊君    原田  憲君       山中 貞則君    亘  四郎君       喜多批一郎君    中嶋 太郎君       町村 金五君    高津 正道君       辻原 弘市君    山崎 始男君       小林  進君    前田榮之助君       松田竹千代君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         文部政務次官  福井  勇君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     内藤誉三朗君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         文部事務官         (調査局長)  小林 行雄君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君  委員外出席者         専  門  員 石井  勗君        専  門  員 横田重左衛門君     ――――――――――――― 三月三日  委員庄司一郎君辞任につき、その補欠として庄  亘四郎君が議長の指名で委員に選任された。 同日  松平忠久君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 三月二日  公立学校事務職員待遇改善に関する請願(池  田清志紹介)(第二六八〇号)  昭和二十九年度教育予算増額に関する請願(伊  東岩男紹介)(第二六八一号)  公立学校事務職員教育公務員特例法適用の請  願(大石ヨシエ紹介)(第二六八二号)  義務教育費全額国庫負担に関する請願大石ヨ  シエ君紹介)(第二六八三号)  同(大石ヨシエ紹介)(第二七八五号)  婦人教育振興費増額に関する請願  (堤ツルヨ紹介)(第二六八四号)  学校給食法制定等に関する請願大石ヨシエ君  紹介)(第二七五八号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  公聴会開会の件  教育委員会法の一部を改正する法律案野原覺  君外百三十二名提出衆法第四号)  教育委員会法の一部を改正する法律施行に伴  う関係法令整理等に関する法律案野原覺君  外百三十二名提出衆法第五月)  義務教育学校における教育政治的中立の確  保に関する法律案内閣提出第四〇号)  教育公務員特例法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四一号)     ―――――――――――――
  2. 辻寛一

    辻委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選挙を行います。理事松平忠久君が一時理事を辞任せられ、再び理事に選任せられました。この際先例により選手の手続を省略して、委員長より松平忠久君を理事に指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 辻寛一

    辻委員長 異議なしと認めます。よつてさように決しました。     ―――――――――――――
  4. 辻寛一

    辻委員長 次に、教育委員会法の一部を改正する法律案教育委員会法の一部を改正する法律施行に伴う関係法令整理等に関する法律案市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案学校教育法等の一部を改正する法律案教育公務員特例法の一部を改正する法律案の五案を一括して議題とし、質疑を行います。
  5. 坂田道太

    坂田(道)委員 今回野原覧君外百三十二名提出教育委員会法の一部を改正する法律案に対しまして、若干質疑をいたしたいと考えております。  まず第一に本法案をどうして出さなければならなかつたかという理由につきまして、提案理由伺つたのでありますが、できますならばもう少し詳しく御説明をいただきたい、あるいはそのよつて来るところを明らかにしていただきたいと思うのでございます。
  6. 辻原弘市

    辻原委員 なぜこの法案提出したかという理由についてのお尋ねでございます。提案理由説明をいたしました際に大体の概要をお話申し上げましたが、この法案提出いたしました最も問題の中心となつておる点につきましてさらにお話を申し上げますと、御承知のように地方教育委員会設置については、この法案提出する以前にすでにいろいろ論議がかわされておりました。それに尽きておると思うのでありますが、具体的な大きな問題といたしましては、地方教育委員会がはたして教育の実際にプラスになつているか、あるいはマイナスになつているかという総合的な判断を、われわれが検討いたしました際の理由を求める一番中心にいたしたのでありますが、この点を考えてみますと、まず人事行政の面におきましては、例をあげますと、すでに政府の方.でも、与党の方でもお認めになつておられるように、小さい範囲人事を行うために、最近の人事の実際を見てみますと、非常に膠着状態に陥つており、円滑に行かないために、特に恵まれない山間僻地における教員人事配置がだんだん悪くなって来る。それに反して、比較的便利な恵まれておる都市周辺においては、その人事配置が質的に見ましても、それらの山間僻地と比べて非常に有利な立場に至つておる。こういう点の理由をだんだん検討いたしますると、これはやはり地方教育委員会において小さい範囲における人事をやらされておることにある。もちろん教育委員会相互間ないしは教育委員会全体をそれぞれ調整する意味におきまして、都道府県教育委員会ないしはそれらの出張所がその人事のあつせんに努めておりますけれども、何といいましても決定発令権限というものが地方教育委員会に帰しております関係から、そのあつせん、調整といえどもなかなかもつて円滑に進んでおらない。こういう現状は、私たち行政上において最も憂慮いたした点であります。これはやはり地方住民の意思に沿つてやるというローカルシステムの理想をあまりにも追求し過ぎたために、これが現実に即さないで、かえつてそういつた不円滑な面を起しておる。あまりにも細分化した結果そうたつておるのだということに、結局結論としてはならざるを得なかつたのであります。その点から、われわれとしてはどうしても広域性教育行政というものが、少くともわが国の現状から見て最も適当であろうと考えられる。その場合その限度をどこに置くかということは、現行法あるいは従来のいろんな経験がありまするが、あらためてこれを検討いたしました結果、やはり都道府県範囲くらいの行政が最も適当ではなかろうかという点から、都道府県教育委員会にそれを移す。こういうことが、本改正案提出いたしました中心的な問題になつたのであります。  更に総合的に検討いたしました点としましては、これは地方皆さんもいろいろとお気づきになられ、またそうした意見をお持ちになつておられると思いますが、地方財政に及ぼす影響であります。この点は私たちの聞いておる範囲におきましても、市町村会――市会は一応切り離しましても、町村会における強い反対意見の大きなものがこの点にあるやにわれわれは判断をいたしております。もちろん平衡交付金その他で若干はカバーせられておりますけれども、何といいましても弱小町村においては、つくつた以上そういうものではとうてい済まされない。五人の教育委員を置いて実地にいろいろ仕事をいたしますると、現在目につきやすいのは教育の面におけるいろんな施設であるとか、あるいは内容の整備であるとかいつた比較的金のかかる面である。あるいはそれらを改善するについては、事務局職員であるとか、そういつた点についても不足を来すので、勢い町村が負担しなければならない。この委員会設置に関する経費というものが国からの援助以上にふくれ上つて来なければならないようなはめに陥る。これが現状でございまして、町村といたしましては、今日これを置いて厖大経費を負担して行くだけの地方教育委員会の価値を見出し得ない。こういうふうに町村自体考えておりますし、またわれわれもそういうふうに考えざるを得なかつたのであります。しかしながらところによりましては、町村財政の比較的ゆたかなところ、あるいはかりに多少の経費を支出いたしましても、教育委員会を置いたことによつて町村民、実施者等もこぞつてこの運営を非常に熱心にやつておられ、実績をあげておられて弊害が起らない、またそれらを克服する、こういつた面についても検討いたしました結果、もちろんそうした町村も皆無でございませんので、そこでわれわれとしては、この法案改正の骨子といたしておりますように、それらの町村が現在通りこれを存続して行くことも何ら否定をいたしておらないのであります。その他大多数は、今申し上げましたような財政的な問題が大きな理由でございます。  さらに次の問題といたしましては、あるいは抽象的な見かかもわかりませんけれども、直接選挙によつて教育委員が選ばれ、その教育委員教育に対してないしは教員に対して非常な権限を持つということは、一面教育委員を非常に尊重して、それだけの権限を与えて教育をこの教育委員会の手にゆだねて十全に運営して行く建前から行きますと、その点が非常にけつこうであるともいえるのでありますけれども、逆にそれらの権限を小さな範囲において、言いかえますと直接教員に接する面に、こうした厖大権限をあたえますことは、すでにわれわれもいろいろ聞くのでありますが、教育委員学校、校長、教員、こういつたものとの間にやはりスムーズに行かない点が見受けられる。かつて視学制度がとられた当時におきましても、この視学に対する教員考え方学校視学に対する扱い、こういつたものが教育上及ぼす影響は少しとしなかつたのでありまして、この点全部が全部ではありませんけれども、与えられた権限を不当にと申しますか、それを行使し過ぎるのあまり、教員に対して一つ圧迫感を感じさせるということは、われわれとしても見のがすことはできないのであります。一般的に申しまして、直接の権限行使者をこういう形に置いておくことが教育の推進になるかどうか。もちろん賛成される側から行けば、常にそういう点において監視、監督できる便宜があると申しますけれども、その点についてはやはり人間であります以上、この教育委員の貧が問題でありまして、中にそういう方々がおるために、教育を指導し推進して行く教育委員会が、場合によつて逆にその学校教育を、あるいは教員身分保障をかえつて不安定にしておる。そういうこともわれわれとして理由一つに数えておるのであります。  その他提案理由で申し上げましたように、全経過的に取扱つた方がいいと考えられるものが、地方教育委員会にすべての権限が譲られましたために持ち込まれておりますので、先ほど人平の面で御説明をいたしましたように、それらもこの際できる限り広域性を持つたところで全般を調整しつつこれを行つて行く、そういうやり方が適当であろう、かように考えました問題が、あるいは教科内容の、取扱い、教科用図再の採択、教職員の研修あるいは保健、福利、厚生、こういつた問題はできればいま少し高い視野、言葉は語弊がありますけれども、そういうところで取扱つた方義務教育の面ではいいのではないか、こういうふうに考えまして、この委員会法をぜひとも改正して行かなければならぬ、こういう結論に到達をいたしたのであります。  なお申し上げることは多々ありまするけれども、大体申し上げますると以上の点に大方の理由があると考えております。さらにこまかい質問がありましたならば、その際にお答えいたします。
  7. 坂田道太

    坂田(道)委員 ただいま提案者から御懇篤なる御説明を承りまして大体了解いたしたわけでございますが、今度の改正案を見てみますると、一体提案者地方教育委員会というものをどういうふうに考えておられるのか、戦後いろいろの改革がございましたが、教育行政の面におきましても教育委員会制度というものは、これは画期的な一つ制度であると考えております。もちろんわれわれといたしましても、占領行政の行き過ぎから来る立法、それが現状に沿わない部面につきましては積極的にこれを改めて行かなければならないというふうに考えておるのでございますが、ただ今度の改正案と、これを包んでいる雰囲気というものが、一体教育委員会制度というものを今後押し進めて行くのであるかどうか、一体地方教育委員会というものを育てる気なのか、あるいは殺してしまう気なのか、あるいは見殺しにする気なのか、どうも漠然としておるように児受けられます。これをずつと論理.的に押し進めて行きますならば、結論的には地方教育委員会はなくしてしまつて、そうして県教育委員会一本にした方がいいというような意図さえ見受けられるのでございます。これは、どうも私は時代逆行ではないかと思います。これは地方分権化に、反するものであると私は思う。民主化に逆行するものであると私は考えます。よく野党諸君中央集権化をやることはいけないじやないか、民主化に逆行することをやるのはいけないじやないかということをかねがねわれわれは承つておるのでありますが、今回野党諸君から提出されましたこの法案こそ、民主化に逆行しむしろ中央集権化をもたらすものではないか。せつかく終戦後、戦前の一つ中央集権的な画一教育を廃しまして、新たに民主主義精神に基いた地方分権及び民主化の方向への基盤を打立てようとしたその精神というものを、むしろ破壊する意図を持つておるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、あるいは別な何らかのお気持もあろうと思いますので、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  8. 辻原弘市

    辻原委員 質問は大体三つの点にわかれておると思います。第一の、この修正では将来地方教育委員会市町村教育委員会というものをどうするのか、はつきりしておらぬじやないかという御質問であります。その点についてはただいまこの法案についてはつきり私は申し上げておりまするが、やはり地方教育委員会というものはこれは将来われわれの考え方といたしましては廃止をいたしまして、そうして都道府県ないしはそれに準ずるたとえば五大市、こういつたところの教育行政に合致さすべきであるというような考え方を持つております。しかしながら現在の法案につきましては、先ほど私が理由を補説いたしましたように、やはり実情考え、伸びるべきは伸ばして行かなくちやならぬという観点から、その点については現状にマッチする改正案を出しておる次筋でございます。  さらにこの種の改正案を出すことは地方分権に反する、民主主義に反する、かようなお説でありますが、まつたくそれは考え方の根底が違うのであるとわれわれは考えるのであります。と申しますのは、ただいま町村合併促進法で、これは皆さんも御賛成になつておるが、少くとも日本における一万数百の町村については再検討しなくちやならぬということは、これは国民のべきな世論でありますので、議会またこれを決定した。少くともその観点からいつて、これはすでに全国的にどんどん促進されておる。とすれば、市町村教育委員会というものが当然現状規模において不適当であるということは、これは論をまたないと思う。町村規模を大きくして、これに財政能力を付与し、地方行政が完全に行えるようにしてやるということは、これはただいまの国家基本政策であります。従つてたちは、現状町村教育委員会をさらに大きな、適正な規模において教育行政をやらせるということは、それと軌を一にした同じ考え方であつて、決して地方分権それ自体を何ら否定するものではないと思うのであります。また私たちが絶えず考え地方集権という問題は、これは国家権力にすべてを集中して行こうとする考え方を排除するのであつて、一体日本におけるローカルシステムというものがどの程度において妥当かどうかということは、それらの中央権限が集中されたところのくさびを切つて、そうして現在都道府県なり市町村行政範囲においてやつていること、その中で同じ地方行政ではあるが、都道府県でやる方がいいのか、市町村でやる方がいいのか、その範囲の中で考えていることでありまして、これは何らわれわれとしては地方分権を否定するものではない。ただ地域が広くなつたからすぐさまそれが中央集権化であるというふうな考え方は、これはまつたく誤りである。もし徹底的に今坂田委員が御質問になられた趣旨坂田委員の御信念としてお持ちになるならば、これは他に例をあげますると、昨年ちようどだだいまの時期に義務教育学校職員法政府与党から提出せられましたが、この考え方寺ははたして今坂田委員が述べられました地方分権趣旨に合致しておるかどうかという点が、私は新しく一つの疑問として起つて来るのでありますが、さようなものとは根本的にこの改正案考え方を異にしているということを私ははつきり申し上げ、誤りのないようにお考えをいただきたいと思うのであります。  さらに蛇足ではありますが、これは私見にわたりまするけれども、地方分権というものについてかねがね私は、必ずしも細分化して行くことが地方分権ではない。その基本的考え方は、ただいまの自治法に規定されている一番末端である町村にゆだぬべきであるけれども、しかしながらそれは現状町村がいいということにおいて、そこでやることが地方分権の最良の策であるということは考えておらない。その地方分権という趣旨をまつたく生かすためには、やはり先ほども言われた民主主義ということをよく理解せしめる、また理解をするに足るそうした民度に引上げることが必要である、現状においてそこでやろうとするならば、はたしてそこの民度が完全にその制度を理解し得るに足る民度を持つておるかどうかということを十分考慮して行かなければ、逆にそうしたところに一つ民主主義という形式的な誤られた民主主義をあてがわれた場合には、形は民主主義であるけれども、場合によつてはその権限のみを行使されるような、いわば民主主義を否定され、端的に言えばボス化される、そういう危険もなしとしないのでありますから、従つてわれわれとしては、合理的に総合的にこの分権制度というものは考慮して行かなければならない。おそらく町村合併促進法なりあるいは道州制の問題が検討されておりますことも、そういう点に対する新たなる分権制度というものの基礎をつちかう意味において、この種の法案提出され、それが国の方策として推進せられておるものとわれわれは了解しております。私たち考え方も、再度申し上げれば、それと同じ考え方に立つておりますから、決して分権制度あるいは民主主義を何ら否定するものではございません。
  9. 坂田道太

    坂田(道)委員 ただいま辻原君から、地方分権ということに対する辻原君のお考えを承つたのでありますが、それならば一体現在行われておる市町村制度というものも、やはり民度が低いのであるから、これは規模を改めてやるべきものだというふうに考えておられるのであるかどうか、あるいは非常に小さい村においては、町村長なりあるいは成員なりというものはボス化するおそれがあるから、これはもう少し広くしなければならない、適正規模ではないのだ、こういうお考えであるかどうか、教育の面について、だけそういうふうにお考えにたつておるかどうか、これが第一点であります。  もう一つは、この教育委員会制度が成立いたしました歴史を考えてみますると、昭和二十三年七月十五日でございましたか、社会党内閣のときに数十回にもわたる文教刷新委員会の慎重なる審議の結果、たしか文部大臣は森戸さんであつたと記憶をいたしておりますが、その際制定をされておる。しかも当時の社会党諸君は、これは日本民族民主化のために、きわめて積極的にこの法案を実現すべきである、こういうふうに言われたのでございますが、今度この改正案を出されたということは、結局その当時の考え方を是正された、社会党根本政策をかえられた、こういうふうに了解してよろしゆうございますか。
  10. 辻原弘市

    辻原委員 最初のお尋ね市町村それ自体の問題についてでありますが、これはわれわれの考えといたしましては、先ほど述べましたように、町村合併促進をやらなければならない理由としては、申し上げるまでもなく、現在の町村規模が適正ならず、もちろん全部ではありませんけれども、私たちの知る範囲におきましては、日本町村のうち大体四千ぐらいの町村が比較的多数の人口を占めておる大きい町村であつて、六千以上の町村は比較的人口の少い、小さい町村であります。こういう点では単に民度の問題のみならず、財政規模あるいは適正な行政、その中はいろいろな理由がありましよう。行政の費用と、その行政が担当している区域の比率、そういつたことも考慮いたしました場合には、やはりもう少し大きな町村でもつて最も末端のと申しますか、地方行政の一番の根本をそこに置いて考えて行かなくてはならぬ、こういうことであります。  また教育行政だけがそういう小さいところでやればボス化するものであつて議会はどうなのかというお尋ねでありますが、私は教育委員会が持つておる権限というものと議会が持つておる権限というものと、それから教育一般行政というものは若干そこに現実には相違がある、そういう点で議会がそういう細分化したところであるからボス化するというふうには軽々しくは断定をいたしておりません。ただ教育委員会という相当な権限を打つて、そうして日常その権限をもつて教職員に対抗と申しまするか、教職員に当つて行く、その関係から生ずる問題が、これがわれわれとしは非常に懸念する問題であります。おのずからボス化という問題とは若干傾向が迷うのであります。この点は坂田委員も御了解いただけると思うのであります。  それから委員会法の成立ちが社会党内閣の当時にあるので、今その考え方を改めるのか、こういうお話でありますが、この点も申しあげるまでもなく、あるいは御了解が行つておるのではないかと思いますが、この市町村教育委員会に対する、取扱いについては、御承知のように二十三年の七月に法案ができて以来、二十五年までこの実施については法律延期をいたしておる。さらにそれを二十七年まで延期をしておる。それはなぜか。この委員会法が二十三年に審議されました場合、当時の速記録を見ても明らかでありますが、審議の期間が非常に短かかつた根本的な改訂でありながら、もちろんその基本政策についてはだれしも異論がなかつたのでありますけれども、制度を具体化するという面においてはいろいろな考え方をお持ちになりながら、議会においてもその点十分の審議を尽すことが、私は可能であつたか可能でなかつたかは今申し上げるべき言葉ではないと思いますけれども、事実上そういう幾多の問題を残したままこれが決定を見ておる。そういうきわめてあわただしい中における審議でありながら、この市町村教育委員会設置に関する限りは、法律でもつてなおかつこれを延期しておつたのであります。占領下のその当時においてすら、この間糖についてはいかにも日本実情にはどうかという点が考慮されたことが私はこの法律になつてつたと思います。従つて先般の十四国会でありましたか、いよいよ法律上の期限が参りまして、実施するかないしは実施しないように法律改正するかという点においては、それぞれの党においているくな御意見が出たことは、これまた皆さんの御承知通りだと思いますが、そういう面で、この法案をつくりました当時からの考え方においても、町村に必ず教育委員会を伊かなければならぬという前提に立つてつたものでは決して、ございません。それを延期いたしまして、その後の推移とさらに十分なる日子を費して、この問題についての最終結論を下さなければならぬ、かような趣旨でもつてこの法案ができておつたのである、かように私は了解をいたしておるのであります。
  11. 坂田道太

    坂田(道)委員 最初の問題でありますが、この教育委員会に与えられた権限ももちろん大きいと思います。またその与える影響も大きいと思いますが、同時に市町村行政に与えられた権限もそれ以上に大きいとも言えるかと思うのでございます。そういう重大な仕事というものがやはり山村における町村にも与えられておる。これがやはり中央集権化から地方分権化への一つの方向であり、日本の自治制度というものを打立てて行く場合においては、山村における住民の、つまり任命制等によらざる住民の投票によつてその長を選び、そうして議会を構成して行くということが日本の自治制度を打立てて行くことであつて、その民度がどうであるとかこうであるとか、大体国民大衆というものを信用せずして民主主義というものが成り立つであろうかどうかということを考えまするならば、私はむしろこういう山間僻地の小さい村においても、そういう投票によつて選ばれた者が長となり、議会を構成して、その地域社会における地方行政を行つて行く、同時にまた教育の問題についても、与えられた権限が大であれば大であるだけにその責任を重んじて、そうしてその地域に即した、あるいは生産機構に応じた教育を行つて行くということが、日本の自治制度を打立てて行く上におきましても、あるいは日本教育民主化を打立てて行く上においても、重大なポイントである。そういう小さい町村といつたものが一万有余集まつて、初めて日本民主化というものができるのであつて、これをただ中央集権的に民主化すべきであるというようなかけ声だけで、一体日本の自治制度というものが確立するかどうか、あるいは日本民主主義教育というものがほんとうに行われるかどうかということについては、はなはだ私は疑問に思つておるのでございます。その点につきましては、ただいまの辻原君のお答えで、私とは考えが別でございまするので、この点は追究いたしません。  さて第二の問題でございますが、当時の日教組におきましても、この法案の実現に非常なる熱意を示しまして、独自の案をつくつて強力にこの実現を政府に迫つておるのでございます。しかも現行法というものは、当時の日教組の意図というものが十分に取入れられておると私は思うのであります。しかも日教組執行部の内部におきまして、教育民主化という本来のあり方から言うならば、われわれとしては市町村教育委員会設置というものは賛成しなければならないが、現状においては市町村教育委員会設置された場合、保守勢力がその実権を握る可能性が濃厚であるのでわれわれは反対せざるを得ないということが、当時の執行部において問題になつた。この議論を分析して参りますならば、日教組自身が、市町村教育委員会教育民主化という立場から当然あるべき姿である――あなたのさつきおつしやつた理想的な一つの姿であるということを理論的に肯定しておきながら、設置に反対するという理由はどこにあるか。それはいろいろ財政上の問題もありましよう、あるいは人事権のいろいろの問題もありましよう。ところが教育というものはやはり理想というものを持たなければならぬ、その理想に一歩々々前進して行くべきだと私は思う。そういう一つの努力というものをしないで、一体日本民主化あるいは民主主義というものができるかどうか、現状をただ膏薬を張るようにこうやる、それで一体日本民主化が行われるかどうか。つまり社会党左派につながりましたこういう日教組の政治活動というものが困難になるために、しいてこれに反対したということは、これは非常におかしいのであつて社会党左派の勢力を伸張させんとするためには、民主化に逆行するようなことをあえて闘いとる、こう断定することができると私は思う。一体この点は、どうお考えであるか。ほんとうに日本民主化というものを考えておられるのかどうか。ただ自分たちの党利党略のために左派一辺倒を、左派勢力を伸張するために、こういう改正案を出されるのであるかどうか、この点をはつきりひとつ……。
  12. 辻原弘市

    辻原委員 御意見にわたります点がありますので、それらの点は省きますが、再三再四私が御説明をいたしましたように、教育の民生化を実際において推進して行くためにはどうあるべきかという考え方に立つて、本法案提出いたしたのであります。たといどんな食物であつても度を逃したならば、腹くだりを起したり、中毒をしたりいたします。むしろ単に病気にとどまらず、死に至らしめる場合もあります。私は市町村教育委員会を少くとも現状において放置することは、教育にプラスするものではない、かように考えてこの法案提出いたしておるのであります。しかしながら、先ほど申しましたように、理想と現実をマッチさせて行くためには、現状の段階におきましてはこの程度の改正にとどめまして、さらに将来にわたつて真に民主的な教育行政が行われ得るように、そういう段階に伸ばして行きたい、かように考えておるのであります。
  13. 坂田道太

    坂田(道)委員 目前に積み上げて行くための民主化の努力をせずして、一体民主化というものができるかどうか、私の質問に対してひとつもお答えがたいのでございますが、この改正法案というものは、これは何と申しましても民主化というものからはずれておる、むしろ先ほど申しましたように、日教組の組織を利用して党勢拡大のためにぜんとすると思われるのであります。教育というものは党勢拡大とか、あるいは自己の利益とか、あるいはそういう便宜的な考え方に左右されては絶対にならないと私は思う。大乗的な見地から正しい教育、中立を維持して行くということ、いかに教育民主化するかということを真剣に考えなければならないと私は思うのでございます。その点について再度ひとつ明快なる辻原君のお答えをお願いいたします。
  14. 辻原弘市

    辻原委員 民主化ではない、こう抽象的におつしやる、あるいは日教組云々ということを申されておりますけれども、私たちはこの改正案は各種団体の教育に対するいろんな意見も総合的に判断をいたしまして、さらに市町村行政を担当しておる人たち意見も十分聞いて参りまして、さらに町村教育委員会が現在どういうような実情にあるかということも検討いたしました結果の結論でありまして、さような点についての日教組が云々、日教組の意見がどうあるからというだけのことでおつしやるのは、多少ピントがはずれておるのではないか、その点申し上げておきたいと思うのであります。  さらに現在の町村の単位についてすべてが民主化できたという考え方は、これは賢明な坂田委員質問としてはいささか了解をいたしかねる。それはなぜかというと、坂田委員も先般の町村合併促進法には賛成をされた一人であります。かりに町村が現在のままの状態において民主化が促進されるというならば、何をもつて町村合併促進法に賛成されたか、この点については払いささか釈然といたしかねる。そういうわけでありますので、具体的にこの法案のどこが民主化に逆行する、そういうようにお話くだされば、私も詳細にわたつて説明をいたす材料を持つております。
  15. 坂田道太

    坂田(道)委員 そこでお尋ねをいたしますが、先ほど辻原委員から、結局われわれとしてはこの地方教育委員会を廃止して、そうして大体府県単位にする、五大都市にとどめる、こういうことを申されたのであります。社会党は、民主教育の確立という持論には、昔も今もかわつておらない、一貫しておると私は考える。(「当然だ」と呼ぶ者あり)当然だと思うのであります。(「その通り」)教育委員会制度の本質は、私はむしろ市町村にあるという考えを持つておるのでございます。これは辻原君と私の考えが違うのでありますから、どうもしようがないのでありますが、しかし自治の真の精神というものはどこにあるか、都道府県にあるのか、あるいは市町村にあるのか、これは私は都道府県というよりもやはり市町村にあるのではないか、こういうふうに考えるのでございます。(「市町村警察はどうする」と呼ぶ者あり)だから警察制度中央集権化に反対しておられるところの社会党が、この教育制度のいわゆる市町村任意設置をされるというのは一体どういう考えであるか、この点ひとつはつきり伺つておきたい。
  16. 辻原弘市

    辻原委員 先ほども申し上げましたように、坂田委員の御質問は、現状市町村規模がすべてそれでよろしいという前提でお話をされておりますけれども、私はさようなことを考えておらないのであります。現在の分権の末端はどこにあるかということは、これはいまさらお聞きにならなくとも、形式的には町村にあることは、これは当然でございましよう。しかしながら教育行政がそれで、発令に行き得るかどうかということは、これはおのずから別で、あります。教育行政というものは、これはたびたび坂田委員あたりも、義務教育というものはある一定のレベルを保たなければならぬということを申されおります。われわれもその点については否定をいたしておりません。従つてその義務教育の特典と教育行政民主化というものをどうしてマッチせしめるかという点に至れば、現在の市町村における教育行政は、形は民主主義の形をとりまして、分権の形をとつても、内容においてはそれが伴つて行くことができない。私は提案理由にも述べましたように、教育行政というものがあまりにも細分化された形によつて行われた場合には、これはその地方の小さな地域における教育は、ある面においては推進できるかもしれません。しかしながら全体を通じた義務教育のレベルというものが、それによつて維持できて行くかどうかという点に至れば、これは必ずしもそうではないのであります。それらを勘案いたしますると、従来の日本教育制度において見質しても、少くとも大きな弊害の見出されなかつた規模、やはりそれが最も適当であろう。しかもそれはいわゆる地方行政範囲の中に含まれる都道府県範囲内における教育行政というものが、将来にわたつては適当じやないか、かように考えたのであります。しかしながらこの法律は決して全般的に市町村教育行政というものを否定しておるのではございません。そういう欠陥を克服して行ける地域、それは地方住民判断にまかして、そこは存続してよろしいということを任意設置という形で書いているのでございまして、坂田委員の御質問趣旨にありましたようなことは否定をいたしておりません。
  17. 坂田道太

    坂田(道)委員 私が今辻原君から答弁をいただいたのには、この改正案にはそうなつておるけれども、われわれとしては県教育委員会一本にし、大体、五大都市に限るということを申されたから、私はそういう質問をしたのであります。そういうお考えであるならば、どうしてその法案を出さないのであるか。現状現状のままに抑えて、そうしてこれを任意設置のような形にするということはどうしてであるかということであります。日本民主化するためには私はいろいろな方法があるかと思うのでありますが、やはり組織としての労働組合運動の健全なる発達――行き過ぎはだめです。健全な発達と、制度といたしましては、やはりこういう民主的な教育委員会――特に県教育委員会というものは、投票したものと投票されたものとの関係においては、非常に感覚が遠いのであります。まためんどうも見きれないのであります。(「代議士はどうだ」と呼ぶ者あり)代議士の役側と地方教育委員会制度とは根本的に違います。地方教育委員会制度一つの目的は、その地域社会における教育を、農村なら農村、漁村なら漁村、都市なら都市というような一つの生産機構、並びにそこに数千年来養つて来たところの歴史、あるいは伝統、習慣、そういうようなものを生かしてやるというところに、地方教育委員会制度の意義があると思うのでありまして、どうして戦前の画一的な中央集権的な教育が悪かつたかということは、文部大臣なり、あるいは教育勅語なり、あるいは文部省の役人なりが、国定教科書というものをもつて、あるいは都市あたりで考え一つの頭の中-で、地方末端山間僻地の先生の、その土地、そのところに応じた教育とは全然遜うところの考えでこれを統一したところに、日本教育根本的な誤りがあつたと私は思う。(「そこはよろしい」と呼ぶ者あり)そこがいいから、戦後におきまして、この地方教育委員会制度というものを設けて、そうして山村においては山村らしい、農村においては農村らしい、漁村においては漁村らしい一つの地域的な教育というものを、その住民の意思によって運営して行こうというところに、地方教育委員会の眼目があると私は思う。それを県教育委員会一本にして五大都市に限るなんてことは、地方教育委員会制度そのものの根本を知らない者の議論であると私は思う。私はもつと強く言うならば、県教育委員会あるいは正大都市くらいにこの範囲をもしきめるといたしますならば、それはもう地方教育委員会制度根本理想あるいは精神というものを、蹂躪するものであるから、これはやめてしまつた方がよろしい、弊害あつて一利なし、こう私は思うのでございますが、この点に関する辻原君の御答弁をお願い申し上げたい。
  18. 辻原弘市

    辻原委員 私が将来にわたつて考え方はこうであるという点について参考に述べたことを取上げられて御質問でございましたが、ただいま提案いたしております法案については、先ほどお答えいたしましたように、現状制度、理想とマッチをして提案をしたということは再三申し上げておるところでありますので、あらためてお答えする必要はたいかと存じます。なお先ほどから私が申し上げておりますように、町村教育委員会を廃止して行くことは民主主義に反するという御質問でありまするが、私たち先ほど申しましたように、中央集権という考え方は、その行政範囲地方行政範囲内において拡大して行くことは、必ずしも中央集権ということには当らない。そういう観点から、その範囲内において教育行政が円滑に運ぶかどうかという点を検討いたしまして、その弊害を除去するための改正案でありまするから、何らこの点については、坂田委員が言われるごとく、民主主義を否定し、地方分権制度に反しておるものとは考えられないのであります。あるいは坂田委員は、都道府県範囲内あるいは五大市の範囲内においてやる教育制度はまつたくいけないという話でありますが、私たちは、過去の教育の実績に徴しましても、この点については、今坂田委員が述べられたようにまつたくいけないというふうな結論を持ち得ないのであります。人事行政、財政負担、あるいは義務教育のレベルの維持というような点を考え合せてみますと、むしろ現在よりもベターであるという考え方を確信いたしておるのでありますから、何らそういう点に対する欠陥をわれわれは指摘いたすことはできないのであります。
  19. 坂田道太

    坂田(道)委員 今の辻原委員提案者としてのお話はわかるのでありますが、私は了解できないのでございます。しかしこれはこのくらいにいたしまして、論点を次にかえて行きたいと思います。  教育委員会市町村に下されましてから、まだ一年そこそこでございます。われわれ教育問題、教育行政というものをやる場合には、やはりこれを早急に転換するようなことは考えなければならないと思うのでございます。従いまして、辻原君のお考えからいたしましてはそういうふうでございましようけれども、しかしやはりこれは三年なり四年なりこれを育ててみて、そうしていいのか悪いのかということをきめるべきではないか。これが筋の通つた考え方ではないか。それを、教育の成果というものがいいとも悪いともまだわからない現在の状態において、これを改正されるということは、私はどうかと考えるわけでございます。それから辻原君はどう考えておられるか知りませんけれども、これは総理府の国立世論調査所で教育に関する世論調査をいたした結果ですが、その結果は――辻原たちから言うと、あれほどの世論の反対がありながら、下して半年もたたないうちに、設置単位としては、市の教育行政は市の委員会でした方がよいというのが過半数六二%を占め、あなたのおつしやる県の委員にまかせた方がよいというのは一六%である。こういう数字が出ておる。同時にまた府県の議会において調査いたしましたのも、ほぼこれと同様な支持率になつておりますし、また父兄会を通じましてやりました調査も、六〇%は市町村に置いた方がよろしい、こういうことが出ておるのでございます。この数字は、数字の魔術もございますが、しかしわれわれは、一応こういつたものも判断の基礎にしなければならない、そういたしますと、やはり市町村教育委員会というものは、われわれが考えている以上に、半年もたたないにかかわらず、相当の業績をあげておるのじやないかというん気もいたすのでございます。そのときになつて、一体どうしてこれを改正しなければならないか、これがもし逆の場合だつたら、われわれといたしましてももう少し考えてみる必要があるのでありますが、少くとも県単位の教育委員会というものが一六%であつて市町村教育委員会が六二%であるということは、やはりこの市町村教育委員会というものが非常に親しまれて来た、そうして相当に教育民主化の上に役立つものでもるということから、こういうデータが出て来たのではないかと私は考えろのでありますが、この点についての辻原君の御見解を伺いたいのであります。
  20. 辻原弘市

    辻原委員 こういう制度実施してから一年少ししかたつておらないのであるから、もう少し長い目で見てはどうかという話でありますが、私たちも、いいと判断をいたしましたならば、もちろん多少の欠陥というものはいかなる制度にもつきものでありますから、いま少し長い期間を通じて、欠陥を克服するという方法に出たいのでありますけれども、しかしながら地方教育委員会に関する限りは、われわれはさように判断はいたしかねるのであります。いわゆる部分的欠陥というよりも、この制度の欠陥は、再三申し上げますように、教育に対してこれはプラスにはなつて行かない。従つてたちとしては、あやまちを改めるにはばかることなかれでありまして、かりに三日のあやまちならばそれを四日に繰り返さないように、一年半が二年にならないように、ここに早々のうちにこのあやまちを改めて改正をいたすことが至当である、こうういうように考えたのであります。  国立世論調査所の調査の件でありまするが、私もいかなる形における調査かは存じませんので、これについて的確にお話を申し上げることはできませんけれども、しかしながら私は在来の調査から見まして、これらの調査についてはもちろん否定をするわけではありませんが、その一つをもつてして、これが世論の全部であるというようには、坂田委員のように受取れないのであります。もしかりに六二%の委員会支持率が出るならば、何がゆえに市町村長ないしは市町村議会においてもこの制度に反対するか。坂田委員の言うように、行政末端市町村であるとするならば、その市町村を代表する議会、ないしは最も短い範囲において市町村の輿論というものを鋭敏につかんでおられる布町村長が、何がゆえにこの制度に反対するかということに私は疑問を持たざるを得ないのであります。従つてそういう立場々々において、あるいは多少数字の現われ方は異なるでありましようが、私たちは一部分をとらえないで、総合的にこれらを判定いたしまして、輿論は、この市町村教育委員会に対して全面的に過半数支持しているとは決して受取れないのであります。
  21. 坂田道太

    坂田(道)委員 私は、輿論がどうだこうだということを申し上げているのじやありませんが、世論調査所の一つの結果がこうなつている、これは辻原君としてもやはり一応は頭に入れて考えなければならないのじやないかということを申し上げたのでありまして、日本の世論というものがただちにそうであるということを断定したわけではございません。それから今回問題になりましたところの、自治庁関係のいわゆる市町村長あるいは市町村議会あたりで反対があるじやないかという御意見についてでありますが、それは私たちも承つております。ただ、しかしこの反対の理由が何であるかということはよく分析してみる必要があるのでございまして、私は、市町村長が反対をせられておる一番の理由は財政の問題であると思う。この財政の問題がもし地方平衡交付金の中に載り込まれておるならば、十分に来るのであるならば、われわれは賛成だというのが非常に圧倒的に多い。こういう実情でございます。私たちは、現在確かに地方平衡交付金の中に織り込まれておる教育費が少いということは認めておりますが、それだからといつて、金がないからといつて、それじやほんとうに理想的な制度というものをどうするかという場合に、やはりわれわれは理想に向かつて前進する必要がある。それならば金を獲得する方法に出るべきではないか、金がないからだめだということはいけないじやないかということ、これはしよつちゆう野党諸君が言つておられることであると私は思うので、ございますが、これのみについてどうしてそういうことを言われないのであるかということが一つ考えられます。それからもう一つ市町村長の反対の理由の中には、教育委員になつておられる方々というものは相当有識者が乞いのでございまして、中にはそうでない人もあられるようでございますけれども、その当時反対論の中に、この教育委員会をやつたらおそらく全国の一万町村ボス化が起るのじやない、だろうかということを非世用に心配されて、またそれを宣伝されたのであります。ところが実際選ばれました人たちを見てみると、必ずしもその当時反対されておるボスというものはそうたくさんは出ておりません。むしろいまさら市長でもあるまい、いまさら村長でもあるまい、いまさら議長でもあるまい議員でもあるまい、しかしながら教育のためならばひとつ自分も出てやろうということで、昔参議院議員をした人だとかあるいは知事をされたとかあるいは裁判官であるとかあるいは博士であるとか、そういつた有識者が国に帰つて、そうしてその村のためにやつてみよう、こういう考えの人で出ておられる人もあるのであります。あるいは前村長あるいは前議長、そういつた人もあり、一面において何といいますか、いわゆるそういう有能と称せられる人もありますが、一面においては、これはお百姓さんもあるし、あるいは商人の方もある。その人はあまり学問的なことはわからないけれども、しかしその地域におけるところの学校教育をどうやるかというその熱意、教育に対する非常な熱感、誠意というものを持つた、いわゆる隠れたところの教育委員というものが私は多数出ておられると思う。こういうような非常に常識を持つた一つの生産人、そういつた人が教育委員になつておられる例が非常に多い。そういう一つの生産人によつてその地域におけるところの教育をやるということが、私は地方教育制度の眼目であるし、これを育てて行かないで、どうして日本教育民主化があるかと私は思うのでございます。従いまして先ほど申しますように相当な人が出て来た、正しいまじめな人が全国の津々浦々の教育委員会に出て来られた、こういうことが逆に言うならば、その次の市長選挙なり、町村長選挙なり、あるいは議会選挙の場合において、あるいは自分にとつてかわるのじやないだろうか、こういう一つの恐怖心から反対せられておるのもあるわけでございます。内情を分析してみますると……。従いましてただいま辻原さんが申されました一つの反対理由というものは、ただいま私が申し上げました理由もあるということで、はたして正しいあれであるかどうか、やはりこれは父兄会なりあるいは国立輿論調査所によつて示された数字というものを一応われわれの頭の中に入れて考えるべきではないか、そういうものを基礎にして考えるならば、一応現行法というものには打来見込みがある。たつた一年、しかも私をして言わしめますならば、この一年の間に文部当局は一つも育成をしておらない。これを育成をし、相当の金をつぎ込むならば、相当の成果をあげ、この一万有余の市町村から日本民主化の花が咲く、私はこういう理想を持つておる、県会なりあるいは国会なりを浄化させる一つの強い力を持つておる、これこそ私は地方教育委員会制度根本方針だと思うのでありますが、この点につきまして辻原さんはいかがお考えでありますか。
  22. 辻原弘市

    辻原委員 私も国立輿論調査所の調査を全面的に否定するものではないということを申し上げます。そういうことも調べまして、もちろんわれわれがこの法案提出いたすに先だつていろいろの検討を加えたのであります。市町村教育委員会町村長が反対している理由を今坂田君がお述べになりましたが、もちろんそういう点もあるでありましよう。しかしながらまた先ほど私が説引いたしましたような本質的な問題によつて反対している点もあるのであります。いろいろな反対する理由を集約して、私は町村会が反対せられるものと思うのであるます。もちろん、財政の面についての町村会における反対は、何といつてもこれは地方行政をあずかる町村長としては深刻な問題でありますだけに、この点についての、反対意見というものは非常に大きくクローズ・アツプをいたしておりますし、私たちも財政については、一応制度が置かれている以上、何とかならぬものかとしていろいろ努力をいたして来ましたけれども、しかしながらすでに予算といたしましても二箇年の予算が細まれ、その間に補正予算も数度にわたつて組まれたけれども、何らこれらに対して町村長が要望するごとく、またはわれわれが希望しておるような、地方教育委員会の運営が全きを期せられるような財政措置がとられておらなかつたということにおいて、私は現自由党内閣の手によつては――財政を完全にやればいいではないかとおつしやるけれども、それについてたびたびそういう機会がありながらやられなかつたということにおいては、それをもつて全面的に残念ながら信用はできないのでございまして、従つてそれにかわつて、われわれとしてはそれらも克服できる一つ改正案こそが、最も早くそういう点の欠陥を克服する最良の策である、こう考えたのであります。  今、さらに坂田委員教育委員の中にはりつぱな方がおられるのではないかとおつしやいましたが、もちろん私もそれを否定するのではございません。しかしながら、制度考えます場合に、部分をとらえて論ずるわけには参りません。総体的に考えまして、その人たがどうあるということも考慮して行かなければなりません。しかし私たちが言つているのは、現在選ばれている教育委員さんがすべて悪いからというようなことを申し上げておるのではございません。かりによくつて制度の上に――どんなりつぱな船長がおりましても、船が難破しかけており、船に欠陥があれば、船長が腕を振うことはできないのであります。従つて問題は、この制度にわれわれは欠陥を見出さざるを得ない。さらに選ばれる人もこの制度と結びついてこの制度の上の権限がこの人々の手によつて運営されたところに、やはり一つの欠陥を現わして参るのであります。ゆえにそういう観点で私たちは残念ながら坂田委員の御説のようにここから花を咲かせるということには希望を持てないのでありまして、やはり根のない木には花は咲かないという考え方でございます。
  23. 坂田道太

    坂田(道)委員 どうも納得が行きかねるのでございまして、そういうようなお話であれば、もう少し私は教育委員会の本質論から質疑をいたさなければならないと思うであります。一体日本の過去におけるところの、特に戦前におけるところの一つ教育制度というものを、辻原君はどういうふうに認識をしておられるか、そうしてその後占領行政に行われたいろいろの民主化立法が、どういう意図でもつてやられたか、しかしながらそれは占領行政下の制度であるから、独立した日本といたしましてはどういうあるべき教育制度を打立てなければならないか、そのためには一体現実教育制度をどういうふうに把握しておられるか、さらにまた提案者教育観と申しますか、世界観と申しますか、そういつたものを掘り下げてみなければ私はこの改正案を徹底的に審議するわけには参らぬのでございまして、まず第一に過去の日本の渋れる教育というものをどういうふうに考えておられるかをつまびらかにしていた.だきたいと思うのであります。
  24. 辻原弘市

    辻原委員 過去から今日にかけての日本教育政策万般について、その批判について私の意見を言えというお尋ねでありますが、全部を申し上げますると相当時間を要すると思いまするので、概略について私の考え方を申し上げておきたいと思います。  非常に抽象的なものの言い方ですけれども、戦時中戦前を通じて行われた日本教育の最大の欠陥は、何といつても時代の支配権力に教育が屈してしまつたという点にあつた。このことは、私のみならず戦後日本に来朝いたしました第一次、第二次にわたる教育使節団が、客観的に克明に日本教育現状を検討分析いたしました結果の結論もそうでありましたし、当時の有識者、あるいは教育関係者、または国民のすべても、その点に欠点を発見いたしたと私は考えておるのであります。支配権力による教育の壟断ということが、国家主義から軍国教育への道を急テンポに歩ましめた。そうしてそのことがやはり敗戦という結果に導いた。これに負う教育なり教育者の責任というものはきわめて重大であつたし、その点に関する限りは非常に強い反省をいたさなければならぬ、こういうふうな考え方を持つておるのであります。  次に戦後の教育についてどう考えるかという点であります。もちろん占領治下でありましたので、その教育万般について、占領当事国が何らかの意図をもつてやられたことは、また当然でありましよう。しかしながら受取るわれわれの側といたしましては、今秋は戦前、戦時中における教育の反省をいたしましたが、まずもつていかなる意図があろうとも、時の支配権力に教育を壟断せしめられたことを除去することに全力をあげたこともこれは当然しごくであつたのではなかつたか。幸いこの点の占領軍による指導がこの大きな筋において合致をしたことが、戦後の教育教育者なり国民に大いなる共感を呼び起した点ではなかつたか。健つてその観点に立つた、いわゆる教育を完全に民主化する、国家権力からこれを中立化させるという点に対する方策を、国民こぞつて賛意を表して今日までとり来つた。その制度が六・二割であり、それが今日の日本のいわゆる新教育であるとりえておるのであります。従つて今日私の教育観を申してみよということでありまするが、この大きな筋だけはどうしてもはずすことができない。やはり一番の欠陥は、支配権力による教育の隷属化であると思う。だから少くともただいま政府与党から提案されておりまするような、いわゆる中央集権的な、教育行政を誤まらしめるようなこの教育のありがというものを是正して行くことが、今日の教育における収大の目的ではないか、こういうふうな教育観を持つておるのであります。
  25. 坂田道太

    坂田(道)委員 ただいま辻原君のお答えを得まして、私非常に満足をいたしたのでございます。実はわれわれ与党といたしましてもそういう考えを持つておるわけでございまして、過去の教育が天皇を中心として、そうして国家権力主義によつて行われた。あるいは教育勅語を中心として国定教科書というものが編纂をされて、これが文部官僚によつて行われて来た。画一教育が行われて来た。ここに非常な欠陥がある。しかもその背後には強い権力があつた。つまり人事権を掌握しておつた。生殺与奪の権を持つてつた。そういうところに欠陥があつたと思います。そういう権力主義からこれを除去するという意味において、辻原君も教育制度考えなければならないと言つておられる。それを承つて私も非常に満足でございます。そうするならば、このただいま御提案になつておる教育委員会制度というものを、私たちの欲するように現行法で行かれることが、これを時の支配権力から守るただ一つの道ではないかと私は考えるのでございます。これを辻原さんたち考えておるように、地方教育委員会というものをやめてしまつて県教育委員会一本にする、あるいは五大都市だけに限るということにした場合を予想した場合はどうなるかということでございます。しかも、現在のような日教組の非常に厖大な組織、貸金に物を言わせて、ああいう宣伝力を持つてつておる状態において、一体善良なる教職員というものは今日どうしておるか。人事権は確かに地方教育委員会、あるいは県教育委員会にあります。しかしながら実質上の人事権あるいは生殺与奪の権、左遷したり校長になしたりする力――最近あちこちをまわつて見ても、日教組の組織部長があちこちの教育委員会をまわつて、そうしてあなたの志望はどうとかこうとかいうことをやつておる。こういうような状態において人事権というものを県教育委員会のみに置くということになるならば、天皇を中心として教育勅語をやつた画一教育と同じように、日教組の掲げる、われわれからいうならば、政治的偏向を持つた一つのスローガンを五十万の組織を通じて教壇に流し込み、一方においてはそういう実質的な人当権というものを握つておるといたしますならば、これこそ戦前における権力主義であると私は思うのであります。そういう不当な支配というものが現在われておつて、日教組の指令によつて、やれ一斉賜暇をやるとかなんとか、私たちはやりたくないのだけれども、同教組の指令であるからやらなければならない、こういうようなまつたく戦前のフアッシヨあるいは戦前の、あなたが最もいかぬとおつしやつたそのあやまちを現在日教組がやつておるのじやないか、こういうふうにわれわれは考えておるのであります。そういう意味からも、教育の問題は、自由党からもまた社会党からも、特に時の権力者から中立でなければならない、その支配を排除しなければならない。同時に日教組が事実上の人専権を掌握し、善良な先生方の生殺与奪の権を打つてこれを行使しておるような現状、こういう不当な支配に甘んじておられる善良な教職員のために、これを排除するためには、やはり私はこの地方教育委員会というものを育てて行くことが、こういう不当な支配――あるいはこれは日教組だけではないかもしれない。各政党あるいは時の権力からも守るということを是認されたのであるならば、私どもの考えておる地方教育委員会というものを推進して行くことが、これを守るただ一つの道であると考えるのでございますが、どうでございますか。
  26. 辻原弘市

    辻原委員 坂田委員の御質問は、私の受取つた範囲では、若干倫理が飛躍をいたしておるのではないかと考えるのであります。従つて、あるいは私の申し上げることが、坂田委員の御質問に完全に答えることができるかどうかはわかりませけれども、私が申し上げましたのは、いわゆる支配権力による教育の壟断ということであります。戦前において、もしかりに教師の諸君がほんとうに教育に対する力強い考え方を持ち、支配権力の考え方を改めさせて行く力を打つたならば、私は今日の日本の悲劇は生れておらなかつたであろうと確信いたします。従つて教育者なり、国民が時の支配権力に対して批判を持ち、それに対して輿論を巻き起す行動こそが、日本民主化の第一歩でなければならぬと思います。坂田委員の御質問は、時の支配権力を国民各階層がそれぞれ合法的に一つの輿論を持ち、政策を批判する行為とチヤンポンにして、支配権力に鋭い批判をいたしましたから、従つてそういう点についても反対で上あるかというご質問は、ものの考え方根本が誤つておるのじやないか、私はかように思うのであります。もしかりに日教組が時の支配権力であるとするならば、これはゆゆしい問題でありまして、議会も何もあつたものじやない。しかし教育行政は少くとも与党により、内閣によつて運営をせられておるのでありますから、あるいは大学において、あるいは義務教育学校において、その他教育に関心を持つ人たちにおいて、PTAにおいて、いろいろ意見を持ち合わせてそれを発表することは、これは何ら支配権力と同一視して考えるべきものではないと私は確信をいたしております。その点については、あるいは坂田委員に対するお答えにはならぬかと思いますけれども、むしろわれわれは支配権力の側に立つべきでない、それからの民主的な考え方というもので、国民の名において、それぞれの立場において輿論を巻き起すことが、より民主主義のルールにマッチして行くものじやないか。しかしながらそれが非合法によつて起された、あるいは開進つた方向に行く場合においては、これはまた民主主義のルールに従つて是正をして行くべきである、かように確信をしておるのであります。支配権力の力によつてそのことを打ちくだく、あるいはそれに向つて力をもつてやるようなことは、やはり民主主議の原則に反するものである、私はかように考えております。
  27. 坂田道太

    坂田(道)委員 辻原さんのお話は実はわかつておるのでありますが、時の権力からも不当な支配を受けないというか、そういうような実性上の人事権を掌握しておる日教組というような団体、あるいはその他共産党なら共産党という団体の不当なる支配からも免れなければならない、そういうことを申し上げておるのでありまして、それを守るためには、地方教育委員会の現制度が私はよろしいと思うが、あなたの考えておられる県教育委員会あるいは五大市ということであるならば、あなたの一番心配しておられる時の権力から守るという上において、制度としては私たち現行法の方がよろしい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  28. 辻原弘市

    辻原委員 坂田委員の御質問は、先ほどから大体同じような前提に立つておられるのでありますが、私は支配権力という問題を考えました場合においても、このわれわれの改正案の方が適当であるという考え方を持つておるのであります。もちろんそれを直接的に理由として提案したものではありませんけれども、しかしながらしいて結びつけて私の見解を申し上げるならば、その方が適当である、こういうふうにえておるのであります。
  29. 坂田道太

    坂田(道)委員 ただいまの点は、辻原君の考え方はわかるのでありますけれども、私といたしましては承服できない点でございます。まだ私個々のいろいろの問題について質問が残つておりますけれども、私だけでずいぶん時間も経過いたしましたので、きようはこれで質問を打切ります。
  30. 小林進

    小林(進)委員 ただいまの坂田君の質問に対しまして、提案者のお答えになりましたこの権力支配の問題は非常に重大だと思いますので、これに関連いたしましてなお私が質問することをお許しを願いたいのであります。  先ほども、わが日本教育が権力支配のもとに一つの批判性と自主性を失つたことが、誤れる教育から戦争に突入した根本であるということが言われたのでありますが、この点私もまつたく同感であります。けれどもそれにつけ加えて、権力支配が特に教育に携わつておる者の自主性と独立性を失わしめたことが第二のわが日本を誤らしめた根本問題ではないかと思います。たとえて言えば、例の昭和八年当時でございましたか、当時の文部大臣の鳩山さんが大学教授であつた美濃部達吉氏を憲法問題でまず思想弾圧をして来た。これが教育弾圧の第一歩でございます。なおかつ蓑田胸喜とか、何とかいう当時右翼の貴族院のともがらが、これまた教授あるいは教職員一つの大きな弾圧を加えて来た。これが教員をして、自由の教育、自由の研究を失わしめて来たのであります。これは私は大きな間違いであつたと思います。当時中小学校においては、たしか小学校教育者の間にはつづり方の研究会等というものがあつて、自由の教育、あるいは子供の思想、もののすなおな見方、考え方というものをリベラリストの立場から教育しておつた。そのつづり方教育指導がいけないということから、当時の権力がとうとう小学校教職員にも加えられて来て、自由を奪われ、追い飛ばされて来た。そういうことによつて、小学校教職員諸君がほんとうに教育の天職に目ざめて、第二の国民、りつばな人権を備えた青少年の教育に邁進しようとすることの崇高な気持を遂に権力者が無つた。奪われてしまつたから彼らはもはや時の権力者の要求するまつたくの死んだ教育をすることになつたのであつて、これがとうとう国民を戦争にかり立つて、今日の敗戦を来した根本理由だと私は考えておるのであります。すなわち、いわば小学校……(「陸軍大尉」と呼ぶ者あり)やじが来ましたが、私はそうした誤れる戦争のために、よわい三十にして第二乙種、第一補充兵の私が赤紙一本で兵隊にとられて、三十のときから予備役、陸軍二等兵としてひつぱられた。これはみな誤れる教育の犠牲であると言わざるを得ないのであります。それからいやだというのに、お前は大学を卒業しておるから幹部候補生の資格があるというので、いやいやながら権力で幹部候補生を志願させられて、いやだいやだというのに陸軍大尉にまでさせられてしまつたことは、私は戦争の最大の犠牲者であるといわなければならぬのであります。    〔発言する者多し〕
  31. 辻寛一

    辻委員長 御静粛に願います。
  32. 小林進

    小林(進)委員 そういう戦争の犠牲のために、予備役、陸軍二等兵がいやいやだといあうのに、とうとう陸軍大尉まで持つていかれたのであります。そういう実情でございますが、まさに権力のために私は偉大なる犠牲を払わせれたのでありますが、これはみな教育に対する、教職員に対する弾圧がこういう結果をもたらしたものでありまして、従つてわれわれは過去の教育を反省してみる場合に、時の権力が教育の自主性と独立性を抑えたということが大きな原因じやないかと私は思うのであります。今日新たなる民主教育を論ずる場合には、われわえはこの教職員の自主性と独立性、いわば思想の自由というものは断じて奪つてはならないと思うのでありますが、今日存在いたしておりまする教育委員会が、また一つの町の権力と結んで、もう今だつて文部省は、御承知のように地方教育委員等に文部広報を送つたり、つまらない調査の依頼書を送つたりしてやつておりまするが、ああいうことからだんだん芽が芽ばえて参りまして、教職員教育の自由、思想の自由をまた此のように弾圧して押えるんじやないか、こういう心配があるのであります。特に今――これはこの問題ではございませんが、自由党の諸君は、ああいう悪法を定めて教職員の自由を奪わんとしておる。自主性を奪わんとしておる。ちようどあの戦争に突入する前の軍国のわが日本の官僚と軍閥諸君が、つづりかたの研究や、美濃部教授の、圧迫やらやつたと同じようなことを、今再び繰返さんとしておる。そういうことに便乗いたしまして、教育委員がわが日本教育を再びそこに突入させるようなおそれがあるんじやないかどうか。先ほど言われたように、権力の、圧迫が教職員の自由奪つて、これがために戦争に突入したのである。今またその懸念がある。地方教育委員会にその懸念がある、こう私は感ぜざるを得ないのでありますが、提案者の御意見を承りたいと思うのであります。
  33. 辻原弘市

    辻原委員 ただいま小林委員から、戦前の教育は、時の支配権力によつて教育者を弾圧し、教育を圧迫したことがいろいろな悲劇の根源になつたという点を指摘せられ、それと現行の地方教育委員会制度並びに地方教育委員会の実態、さらに今後の傾向としてそういうものと軌を一にする点がないかどうかという御質問でありましたが、第一段の、戦前戦後における教育が、確かに今小林委員が指摘されましたように、教員の持つておる自由なる考え方、学問研究、その行動、こういつた点が、時の支配権力が文部大臣を通じ、文部行政を通じ、あるいは官憲の手によつて弾圧拘束せられたことから、一朝国の安危に関するような状態に至つても、教育者がその教育に安んじて、正常な教育を行い得なかつたとい結果に相なつたものと私も考えてるのであります。従つて、われわれが委員会制度考えます場合においても、そういう傾向がないかどうかという点について慎重に検討を加えました。今日の教育委員会すべてにそういう傾向があるとは断定いたしません。しかしながら、そうした点についてわれわれが危惧をいたさなければならない点が若干存在しておるということはこれまた否定のできないところであります。たとえて申し上げますると、時間がございませんので詳しく申し上げませんけれども、先般地方教育委員会連絡協議会なるものの名でもつて、ただいま国会において審議しようとしている教育公務員特例法改正、あるいは義務教育学校における教育政治的中立の確保に関する法律案等について、これをあたかも賛成して通すための手段であるかのごとき、そういつた地方連絡をそれぞれの教育委員会に対して秘密裡にしておるという事実があるのであります。この一例を見証しても、地方教育委員会がそういつた時の支配権力と何ら関係なく民主的に運営せられておるものとは即断できないのであります。こういう傾向について私たちは非常に懸念をいたすのであります。さきにも私が強調いたしましたように、何といつても教師に対する直接の圧迫、教育に対する支配権力の圧迫、これが教育を麻痺状態に陥れることは、私は大地を打つつちにはずれることがありましても、絶対に供在りでないであろうと思うのであります。これは幾多教育学者あるいは日本の民主主議教育の根基をわが国にもたらしたアメリカの教育使節団等の報告書、少くともわれわれ日本より民主主義においては先近国であるアメリカ等の教育考え方について見表しても、まず教師を自由なる雰囲気に置いて、その職を安んじて行わしめなければ絶対教育民主化ということはあり得ない、いかに形式的に民主主義を与えても、教師がその雰囲気になければこれは民主主義とは申せないし、民主的な教育は根抵から破壊されるものであると結論を下しておることは、これは各委員もよく御承知通りであると思います。従つてただいまの小林委員へのお答えといたしまして、そうした具体的事実もあつて、この点についてもわれわれは慎重に考慮をいたしておるということを申し上げるのであります。
  34. 小林進

    小林(進)委員 まことに適宜な、けつこうな御答弁をいただきまして感謝にたえないのであります。(笑声)  なお一点お伺いいたしたい。先ほどから坂田代議士との応答を聞いておりますと、坂田君の提言は、地域社会において教育のためにほんとうに考えているのは地方教育委員だけであるというような、非常にドグマテイツクな論の上に立つていると思うのでありますが、地域社会において自分の子弟の教育のことを考えるもの、あに教育委員のみならんやでありまして、市町村長、市町村会議員並びにその住民一人々々がことごとく真剣に考えていることは多く言葉をまたぬのであります。ましてやその地域社会において教育を担当いたしております教職員が、何ものにもまさつてその社会の子弟教育と、その土地の事情に即応した教育の成果をあげるために大いに努力しいていることも言をまたないと思う。それをどうも聞いていると、その地域社会の教育のことを考えるのは教育委員だけである。市町村長や市町村会議員や教職員はことごととく地域社会に対して熱意がないというような考え方に立つているが、教育委員会制度の維持論者のこれは考え方の間違いであると思う、この点提案者の御意見を承りたい。  いま一つは、教職員は日教組という組織の支配を受けて、そのためにのみ動いているというような、こういうどうもばかげた極端なお話があつたようでございます。私も地域社会に住んで自分の子供をそこの学校にやつております、自分の子供が学校で一体どんな教育を受けているか、先生からいかなることを教えられるか常時子供を通じて監督いたしております。これはその地域における住民の共通する心理だと思う。だからこれは教師の立場から言えば、常日ごろその土地の住民あるいは市町村会議員あるいは市町村長その他一切の人々から監視せられた中で教育を担当していられるのであつて、その教師が自由党の坂田君の言うような日教組の支配のもとに、地域の住民や子弟の幸福や教育の本旨な忘れた誤つた教育をもししたとするならば、その教員はただちに父兄を通じ、その土地の住民を通じて、その土地に教育者として住んでいることはできないだろうと思う。こういう意味において教職員ほどその土地のガラス張りの中において正しい日常行動を要求せられておるものはないと思う。今日五十万の教職員諸君が全部その地域においてなお教育に従事することは、彼らがその地域社会の住民や一般の人々からりつぱに受入れられている何よりの証拠じやないかと思う。それを教育委員をして監視せしめなければ、教員はみんな地域社会の利益や住民の利益を逸脱して、日教組だかたんだか知らないけれども、そのものの支配下にのみ教育を担当しておるというがごときは、日本の五十万の教職員を冒涜する暴言もはなはだしいし、その地域々々における、子弟を学校へ通わして教育を受けさせている住民や父兄やPTAに対する重大なる暴言でもあると思う。もしそんな不当な教職員があれば、一日もその住民の、その土地の学校に置くことを許されないはずだ。それほど父兄は真剣だ。その父兄を無能化し、PTAを無能化して、教職員が日教組の支配下にあるというがごとき暴論は、実に聞き捨てならぬ頭の悪い質問であり、低能な質問である。これは愚論といわなければならぬのでありますけれども、これに対して提案者の率直なる御回答をお願いしたいと思います。
  35. 辻原弘市

    辻原委員 二つの質問がありましたが、一つ教育委員だけが教育を担当するものじやない、もちろんその通りでありまして、坂田委員が再三再四述べられておる基本的な考え方は、おそらく地方住民の意思によつて教育が行われなければならぬという考え方で、地方教育委員会現状のままでいいのだという、そういうお話だと私は受取つておりまするが、そうだとすれば、当然地方末端行政をあずかる町村長意見も、議会意見もまた学校教育に対して協力的立場に立つPTAの父兄の人たち意見、その他住民全体の意見も十分尊重して行かなければならぬし、私たちの見るところにおいては、これらの人々がその地域の教育に対して非常に熱心に協力し、教育の上に誤りがあればいち早くそれを指摘せられて、教育の上に実績を上げておられることを確信いたしております。従つて、それら全体がマッチしてここに教育が運営せられるのであつて、単に教育委員という、現在の町村教育委員だけが教育を云々し、教育についてやる資格があるなどということは毛頭考えないのであります。ただ法律的な権限を付与されておる行政岩の立場にあることは法通りでありますし、その立場を尊重して行かなければなりませんけれども、教育はこれら全部の協力態勢の上に成り立つのでありまするから、当然その人たち意見を尊重して行かなければならぬし、われわれが教育の問題を教育委員だけにたよるということは、本質的な教育をやる考え方ではないと思うのであります。もちろん教育委員にも、町村教育委員と同時に都道府県教育委員もやはり重大な責任を持つております、これらの人々の意見も十分尊重しなければなりません。  第二の御質問であります教員の組織団体の問題でありますが、先ほど申し上げましたように、教育者がその教育の立場において、あるいは教育者がその雇用される労働者という立場においてそれぞれの団体を結成して、民主的にこれを運営して行く限りにおいては、法に定められた範囲を逸脱しない行動は是認され、その民主的な行き方を教育の上にもプラスになるように推進して行くことが正しいのであつて、少くとも私は、現在各種の教育者の団体がありまするけれども、決して非民主的な運営をやつておるとは考えないのであります。またそれが許されるような現在の法律の建前でもないと思うのであります。すべて法律の建前に準拠いたしまして、あるいは組合員の直接選挙、あるいは組合員から選ばれた代議員選挙によつて、あたかも議会制度と何じような考え方で物事が決定され、役員が進任せられておる限り、私はこれらの行動が令部の教職員の意思に反するものであるということは、そのルールの建前においてこれを否定することができないのであります。従つてそうした点においてこの輿論が大きく反映して参るということは当然しごくのことである、かように考えるのであります。
  36. 小林進

    小林(進)委員 私の質問をいたしますことは、大体御答弁を得たのでありますが、さらにいま一点確認をしておきたいことは、確かにその地方々々において教育のことを考えておる者は父兄であり、住民でありあるいはもろもろの機関の人々であります。しかしその考えておる中でも、子弟の教育のことな考えている第一人者は、その土地の学校における教職員である、教職員が一番真剣に教育のことを考えておる、こう断定してよいのではないかと思います。それは教育委員考えよう、町村長考えよう、もちろん父兄、住民も考えておるが、その中で教育の専従者として父兄と日常接しておる教職員が一番教育を真剣に考えておる。もしそれ教育者が、坂田君の言うように、日教組云々というような指令に基づいて、その土地の実情に反して、教育の本義を誤つたような教育をやつた言葉を吐いたとすれば、その教職員は地元から排撃をせられてもはや一日としてその土地におることができないだろうと思う。そういう実情提案者は一体どうお考えにたつておるか。その土地において、ガラス張りの中に入つて住民のすべての監視を受けて、正しい教育をして、一番熱を上げておるのが教職員です。それでいささかでも誤つて土地の住民にいれられなければ、あすからでも身を飛ばされるという非常に厳重な日常生活と行動を要求せられておる。それをその上に監視機関を設けたり、つまらない法律をつくつたりして、教育の画一化と昔のような軍部の権力をもつて教職員を押えるようなばかなことを繰返す必要が一体どこにあるのかということを伺おうじやないか、これが第一点であります。  それから時間がございませんので、第二点へ参ります。これは文部当局にお伺いすれば、さらによろしゆうございますが、なぜ一体文部当局は地方教育委員などを育成強化せんとしておるのか、一体文部省の真意がどこにあるのか、もしうかがい知るところがあつたらこの点もも伺いいいたしたいと思うのであります。この二点であります。
  37. 辻原弘市

    辻原委員 第一点の御質問は、教育の当事者としてその地域における教育、これを最も真剣に考えているのはその地域の学校教職員であるのであります、まさに私はその通りであると思います。教師が自分の受持つている教育のことを考えないようた教師であるとすれば、今小林委員が指摘されましたように、その地方において少くとも父兄なり、まず直接担当している生徒児童の信頼を失うことは当然であります。昔から悪い言葉ではありますが、弱き者よ汝の名は教育者であるというようなことが俗にいわれて来た。あるいは先生と言われるほどのばかはない、まことに悪い譬喩でありますけれども、私はこれらの譬喩の持つている中に一面の教師に対する一般の教師観がうかがえるのであります。それは一方においては、その人事、身分というものをやはりそれぐの権力機関にゆだねている、その考え方によつて左右されるという点、ここだけはこれは一般の公務員その他雇用されるものはだれしも同じでありますが、それと同時に一面において日常やつている教育活動、自分の職務に対してはただちに生徒の批判に訴えなくちやならない。さらに生徒を通じて父兄の批判に訴えなくてはならない。日常常に批判の対象になり、その行動が一歩でも誤るならば、ただちにそれがその地域における輿論となつて、その身分までも脅かされているということが、これが過去において、また今日においても置かれている教師の私は立場であると思います。少くともわれわれは今日の父兄なり、地域の住民の人々の考え方というものは、戦時中、戦前に増してそういう批判力というものは鋭くなつていることを否定できないのであります。従つてそういう点から行きます場合に、その教師がかりに地域の人々の考え方とマツチしない独善的な誤つた、また教師たるの資格にふさわしくない教育を日常行つているとするならば、まずまつ先にそうした輿論がほうはいとして起つて来ると思うのであります。また私は現実に起つた例を知つております。たまたま誤つた、あるいは教師たるにふさわしくないようた人があり、それに対して排斥運動が起つたという幾つかの事例を承知いたしているのであります。従つてただいま仰せになりましたように、教師がはたして教育に忠実であるか、間違つた教育を行つていないかどうかについての一番よりよき審判者は、これらの地域住民と父兄であるということを考えているのでありまして、それが少数の権力者にすべてをゆだねるといたしましたならば、これこそ私は間違つた判定を教育者に押しつける危険性なしとしないのでありまして、今日われわれは地域住民のそうした教育者に対する熱意と、だんだんと民主的な考え方が進歩いたして来ておりますそれらの人々に、こうした教師のあり方というものの密判をゆだねることが、これが真にいわゆる地方教育の本質を活かすものであり、教育を民主的にまた国民全体の手に帰せしめる最も良策じやないか。現実にそれをおいてほんとうの正しい教育というものは行われないということを確信いたしているのであります。  それから御質問の第二番目の点は、文部当局の方に御質問なさるのが適切であろうと思いますが、私たちが仄聞をいたしております理由は、先ほど坂田委員質問の過程において述べられましたような、比較的抽象的な御意見がこの委員会制度を守るゆえんである、それにつけ加えて、いろいろなパンフレツトとかあるいは非公式に出ておつた会合で聞いたりした話によると、結局日教組がいけないから、やはりこの地方教育委員会を置いて監視、監督せしめなければならぬというふうな、そういう意図がうかがわれると私は判断をいたしておるのであります。
  38. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 きわめて簡単にひとつお尋ねいたします。先ほど坂田委員から地方教育委員会の本質論、ひいてはいわゆる地方教育委員会の一番大きな目的であるところの、不当の支配に屈したい教育をやる。これに関連しまして日教組が人事権にまで云々というお話があつたのでありますが、それに関連しまして私は少しばかりお尋ねをしたいと思うのでありますが、大体この地方教育委員会制度というものが昭和二十七年の十一月に初めて発足いたしました、それまでの経過というものは、これはまことに妙な経過をたどつていると思うのであります。すなわち昭和二十七年の五月でございましたか、その当時参議院では地方教育委員会制度というものを昭和二十七年十一月から実施するということに対して、一年延期しようという全員一致の決議をされたはずでございます。それが衆議院にまわつて来て、驚くなかれ参議院で自由党も含めた全員一致のその議決が、当時非常にてんやわんやの大騒ぎを起して、一体今の日本実情において、末端市町村にまで全部地方教育委員会を置くこと自体がはたして適当か適当でないか、こういう問題に関連いたしましてやはり当時の世論というものは、一年あるいはそれ以上でも延期して、いま少しゆつくり日本実情がはたして市町村末端まで地教委を置くことが適当かいたかということを研究しようじやないか、こういうのが大体当時の輿論だつたと思うのであります、それがたまたまその議会で、昭和二十七年の七月だつたと記憶しますが、衆議院においてはあにはからんやそれを通過させよう、こういうことがあつたずでございます。そのときに衆議院におきましても、自由党の中の約三分の一に近い人が、われわれは参議院と同じようにこの法律案に対してはもう一年見送るべきであるという智名捺印までされて、意思表示をしたと聞いているのであります。ところが昭和二十七年八月でございましたか、いわゆる抜打ち解散というものによつて、この地方教育委員会制圧というものがいわゆる法律の命ずるままに一般の国民大衆の輿論を裏切つて、そのままこれが解散によつて好むと好まざるにかかわらず効力を発生した。従つて今日の地方教育委員会ができた。こういう一つの経過をたどつていると私は記憶いたしているのでありますが、こういう経過の過程から見まして、今日の地方教育委員会制度というものは非常な変形的な、いわば畸型児、生れるまでに相当これは問題になつた子供だ。こういうことが言えると思います。それに対して、私は関連でございますから、この制度自体のよしあしをいろいろの観点から申し上げたいのでありますが、申し上げる時間がございませんので、簡単に申します。  私たち地方教育委育会制度、この地教委の制度そのものを非常に民主的ないい制度だと思つておることは、坂田委員と同様なのでありますが、われわれの申し上げたいことは、結局教育行政というものは、教育行政だけが独立して存在するものではないのであつて、いわゆる財政あるいはその他の一般行政との総合的な関連性の上において、一つの調和を保つたものでねければ、これはほんとうの教育行政ではない。理念においていかにりつぱな民主的な制度であつても、そういう地方財政の問題でおるとか、あるいは地方一般行政の問題であるとか、そういうものと足並のそろわないところの制度であつては、なかなかうまく現実に即するものではないと私たちは思うのであります。先ほどこの地方教育委員会制度本来の目的と逆に不当な外部からの支配に圧迫される、その例として日教組を出された。私はいろいろ申し上げたいのでありますが、その一点に集約しまして申し上げます。今日のあまりにも行政規模の小さい地方教育委員会制度というものが、外部からの不当な圧迫を受けておるということを、私はたくさん見聞をするのでございます。すなわち教育委員会そのものが外部からの圧迫を受けておる、書いかえたならば、教育委員会そのものが圧迫を受けるのでありますから、その圧迫はその地域の学校の先生にしわ寄せされて行つている。私は一つの実例を申し上げます。これは生きた実例でございますが、最近世界各国をまわつて帰られました衆議院の自由党の総務の方でございますが、ある地方教育委員会に行つて、政治の話はしないから、社会教育の二面としておれに講演をさせろ、こういう申出をされた。そうして聴衆が足りないからといつて、生徒を入れろ。そういう申出に対しては、さすがの地方教育委員会もちよつとどぎもを抜かれたのでありまするが、地域給云々とかいろいろないわゆる言葉の上の好餌をもつてとうとう開かせたのであります。しかもその講演会は、自由党の衆議院の方と自由党の参議院の方が二人お見えになりまして、中身はまつたくの政治演説でございます。おまけに聴衆が足りないから生徒を入れろといつて入れた生徒に向つて、世界各国どこをまわつてみても軍備のないところの国は一箇国もない――その講演の結論は、結局再軍備の大演説であつたのでございます。こういうように、これは一つの例でございまするが、不当な支配を排除する、そうして地域社会住民が自主的な教育行政をやるというこの教育委員会本来の目的というものは完全に破られてしまつている。私はこういう点は、この地方教育委員会の今日のあり方というものが、末端に行つて行政規模があまりに小さ過ぎる、従つて五人出ておるところの個々の人の中には、先ほど坂田委員が言うていらつしやつたように、りつぱな人もおられますが、相当程度首をかしけなければならないような、はたして教育委員会制度そのものを理解されていらつしやるのかいらつしやらないのか、いらつしやらないのじやないかと思えるような人が非常に多いのでございます。結局こういう点一つ見てみましても、世界で類がないこんな民主的な日本地方教育委員会制度人口規模行政規模の非常に小さいところまで一々置くというような、形の上では、また理念の上では実にりつぱな制度ではございますが、私はそこにちぐはぐなものか実は感ずるのでございます。そういう点について、日本においてはむしろ不当な支配に委員会自体が圧迫をされて、その委員会がその地域の教員に思わない一つの圧迫をかけておる、こういう面が相当あると思いますが、提案者の方ではそういうことな今までにお聞きになつたことがありますか、ありませんか。この一点をお尋ねしたいのでございます。なお私が先ほど申しましたような全体に対しての御所見でもひとつ述べていただけばけつこうだと思うのであります。
  39. 辻原弘市

    辻原委員 簡単に申し上げます。確かに今山崎委員が指摘されましたように、教育委員を選ぶ場合に、これが非常に小さい範囲で選ばれるのと、さらにそれよりも規模の大きいところで選ばれるのと、そこに人の構成が非常に異なつて来るということは、まつたく同感でございます。これはすでに文部当局でも認めておりますように、教育長の選任にあたつても、法に規定された人を選ぶことができないというような現実が現われて来ておるのも、このことを雄弁に物語つておると思うのでありますが、同時に教育委員についても、もちろんさきに申しましたように、個々については得がたい人材もありまするけれども、やはりそれに反して非常に人物難に陥つておる。平たく申し上げますると、あるいは村長選挙に落ちた人あるいは村会議員の選挙に育ちた人、こういつた人がたまたま、極端に申しますると、政治的野心の第一かとしてそれに加わられたという例も、これはなきにしもあらずでありまして、全体でありませんけれども、そういうことも構成上においては起つて来ることも、非常に地域の小さい範囲で選ばれる実情から生まれておるものと私は考えるのであります。  さらに不当な圧迫が委員会に加わる、そういうことを知つておるか知つておらないかという話でございますが、いろいろ事例を申し上げる時間もございませんけれども、これは単に地方教育委員会といわず都道府県教育委員会といわず、そのときの支配権力なりあるいはそれに類する強大な力が、この委員会等に加わつて来ておるということも聞いております。今例にあげたようた問題は、地方教育委員会の存廃の問題と申すよりも、地方教育委員会なり教育のあり方に対する大きなる御批判だと私は思うのであります。確かにそういう点においては、はたして地方教育委員会がそれらから完全に自主権を保ち得る制度であるかどうかについては、さきにも申しましたように、われわれはこれを疑問といたしておるのであります。従つてそういう事例が生まれて来ることも、今日の教育行政の国、地方を通ずるあり方、これらの面からながめました場合に、懸念されることは申すまでもないところであります。
  40. 辻寛一

    辻委員長 よろしうございますか。
  41. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 よろしゆうございます。
  42. 辻寛一

    辻委員長 暫時休憩をいたしまして、午後二時から再開いたします。    午後零時四十一分休憩     ―――――――――――――    午後二時二十二分開議
  43. 辻寛一

    辻委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  義務教育学校における教育政治的中立の確保に関する法律案教育公務員特例法の一部な改正する法律案学校教育法の一部を改正する決律案、国立学校設置法の一部を改正する法律案、公立学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案、以上五案々一括して議題とし、前会に引続き質疑を続行いたします。
  44. 伊藤郷一

    ○伊藤(郷)委員 私は、ただいま上程せられました教育法案につきまして、一昨日多少触れているかもしれませんけれども、まず文部大臣に二、三お尋ねいたしまして、その後武佐事件を通じて法案の各条につきまする質疑をいたしたいと思います。  まず第一にお伺いしたいことは学問の自由についてでございまして、その学問の尊い自由というものが、この法案の通過によつて脅かされるのかどうかということをお尋ねしたいと思います。今回の二法案は非常に重要法案といわれておりわしますが、私の手元へは反対とか賛成とかいうような投書が参つていないのでございます。このことは私という人間、また私の所属している政党の立場からいたしまして、いかに訴えようとも、投書しようとも、選ぶものではないという理解の上からこういう事情になつておるのかもしれませんが、そういうような事情でございます。ただしかしながら、今度の法案の適用範囲内である高等学校職員組合からは若干電報が来るのでございます。その電報によりますと、学問の自由な縛るものであるから反対であるというような簡単な電報だけでございます。一体この法案が通ると学問の自由が縛られるのか、もしそうならばこれはたいへんなことでございます。また二、三来ておりますものの一つといたしまして、神戸大学の教育学部の教授会からも声明書が参つておりますが、それにはこのようなことが書いてある。「大学のように学問研究の自由の伝統のない幼小中高校の教育においては、その影響するところ実に甚大であつて教育会の萎縮、教育界の沈滞を招来し、令国幾千万の児童生徒の自主独立の精神と、個性豊かな人格の育成を阻害するおそれの歴然たるものがある。」から反対であるというのでございます。われわれ若い往時を顧みまして、その時代の義務教育の諸学校の先生方は個人的にいろいろの違いはございましても、義務教育学校の先生総体を通じまして一つの思想的な偏向とか、政治的な偏向というようなものはなかつたように思う。あの教育の中立性が守られておつた当時、はたして義務教育の諸学校にこの教育内容あるいは現われる面において活気がなかつたかどうか、むしろ教育の中立性の上にこそほんとうの学問の自由の花が開くのではないかとわれわれは信ずるのであります。おのおの個人としていろいろの違いはございましても、総体といたしましてこの義務教育学校教育の傾向に中立性がなかつたならば、つまり片寄つた教育が行われたとしたならば、実にその一国の文化というものは、この声明書の中にあるようにまつたく萎縮した、干からびた、死んだものになると私は思うのでございます。ドイツにおきましてもヒトラーのナチスの時代になりまして哲学界も衰えてしまう、あるいはソ連におきましてもトルストイあるいはドストイエフスキーとか、いろいろの卓抜した芸術家が出たのでございますが、ソ連にも左翼独裁の政権ができまして、そうして左翼独裁の政治教育が行われましたから、私は芸術の面におきましてもソ連は萎縮して来たんではないかと考えておるのでございます。よく今度の法案に対しまして言論統制であるとか、思想統制であるとかいうことを申しておりますが、これはまつたく逆でありまして、言論統制とか、思想統制というものは一国の文化を崩壊に導く、そういう点からいたしまして、さればこそ学校教職員は政治的立場に立つてもらつてはならぬ、かように思つておるのでございますが、文部大臣の御意見はいかがでございましようか。義務教育と大学教育とは違うのでございまして、ある理論大系を探究の結果立てて、それを発表するとか、それを報告するということは、私は決して今度の法案によつて押えられるものではないと思う。この点もお尋ねいたしたいのでございます。東大の宗像誠也教授は、純粋な動機から出発した研究の結論がたまたまある政党の政策に近いようなものになつたとしても、それが政治的偏向ということにたるならば教育の研究は上つたりだ、こう言つておりますが、これはまつたくその通りであります。大学においてはそうでございましよう。学問というものは結論を予想して探究しては生れて来たいものでございますから、大学においてはそうでございましよう。そのことをただちにもつて義務教育の諸学校教育においても、こういうことであつては危険が生ずるからといつてこの法案の通過を不利にするような言論を飛躍して唱えているのは、まつたくわれわれといたしまして、学者の言論として合点の行かないところでございます。以上まことに簡単ではございましたが、先ほども申しました通り、この法案が通過すれば学問の自由はなくなる、日本の文化が萎縮してしまうのだ、教育者が萎靡沈滞してしまうのだ、こういうようなことがよく言われ、また相当信じている方々もあるようでございますが、先ほど申しましたように、学問の自由というものは、むしろそういう個人的の主義、思想を持つてつても、義務教育におけるところの教員の立場にあるものといたしましては、その子供が将来どういう傾向に向いて行くかもわからないということを考え、子供の魂の将来を尊重いたしまして、そういう中立性を守つて行くということがむしろわが国に絢爛たる文化の花を咲かすものである、かように考えまして文部大臣のご意見を承りたいのでございます。
  45. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 この法律案に対しましてあるいは学問の自由を圧迫するものであるとか、あるいは思想の自由を圧迫するものであるとか、あるいはまた個性のゆたかな人間をつくり上げる上の障害になるものであるというような理由のもとに、反対の議論が今盛んに行われておることは私もよく承知しております。私どもから申しますと、何ゆえにこの法律案が学問の、あるいは思想の自由を侵しあるいはまた個性のゆたかな人格をつくり上げる上において障害になるのか、教職員を萎縮させるものであるか、その何ゆえにという点については何も理論上の説明がされておらぬのであります。この法律案はすでにごらんになりまするように、非常に片寄つた教育義務教育学校において行われることを防止する意味において、さような教育をすべきことを外部から教唆、扇動する者を取締る、こういう趣旨であります。義務教育学校において学問の自由とか思想の自由とかいうことはまだいわれるほどのことではないかもしれない。しかしながら一方的な思想、一方的な考え方を子供に注入して、そうしてその子供がその方向にのみしかものを考えられないようた子供をつくるということは、これこそその個人にとつては学問の自由、思想の自由というものが初めから与えられない、こういう結果になるのでありまして、いわんや個性のゆたかな人問をつくり上げる――一方的なきわめて極端な片寄つた教育が純白の児童に対して施されるということ自体が、これこそ個性をゆがめて、その子供が大きくなつてからの思想あるいは政治的な方向を二方的に方向づけるものである、これこそ貴重な個性を子供から奪い、子供の大きくなつてからの思想の自由を奪うところの許すべからざる行為であると思うのであります。これは何もこの法律があらためてその点を明らかにしたのではないのでありまして、すでに教育基本法の第八条の第二項においてこの点は教育根本の問題として掲げられてあることであります。しかるに今日ややもすればこの基本法第八条の二項に抵触するがごとき教育が行われておる。これがとりもなおさずその子供の学問の自由あるいはまた個性をゆがめる、こういうことになると考えまするので、このまま放置しておくわけに行かないので、この法律案提出したわけでありまして、私どもから言えば、まつたく世間でこの法律案に対して言われておる非難は逆であると思うのであります。基本法第八条第二項に抵触するような教育を排除し、そして教育における中立性というものな維持することは、学問の自由を侵害し、思想の自由を破壊し、個性の伸長を阻害するというが、こういうことはまつたくりくつのないことであります。なぜ基本法第八条の第二項に対して攻撃を加えないか、この法律は基本法八条の二項を維持するための法律であります。論者は何ゆえに基本法第八条第一項の規定こそ思想の自由を侵害する、こういわないのであるか、私にはまつたくこれは不可解であります。その点については今日たくさんの反対論がありますが、理論上何らその点を明確にしての反対ではありません。ただりくつを言わずに、この法律は思想の自由を脅かすものである、学問の自由を侵害する、こう言つて、いわば悪声を放つておるにすぎぬ、こういうふうに私は考えております。  それから、この法律が出る結果として、大学における学問の研究が間接的ではあるけれども阻害される、こういうことな言う向きがあります。大学教授の方でそういうこと言う。現に今お述べになりました宗像君は、せつかく大学において研究したその成果というものを発表することができなくなる、こういう意味においてこれは大学における学問研究というものにまで悪影響を及ぼすものなり、こういうふうに言つておられるようであります。大学の教授の諸君が学者として学問を研究され、真理を探究せられて、そうしてその得たる思想を発表せられることは、これは一面において教育者たるのとうとい任務であります。私はこれを阻害するなんということは毛頭考えておりません。しかしながら大学の個々の先生方が、自分が考えて到達した思想をもつて、小学校教育においてその思想一辺到な教育をせよ、こういうことを言う場合であるとするならば、これは実に僣上の極であると思うのであります。その人としては自分の到達した結論こそ真理であるとお考えになるかもしれない。しかしながら、そうかといつて義務教育学校においてこのりくつだけを教える、ほかのりくつは間違っておる、このりくつだけを教えよということを自分が言わなければならぬ、それが言えなくなるからこの法律はけしからぬ、もしこういう意味であるとするならば、まことに僣上きわまる言い方である、かように存じます。
  46. 伊藤郷一

    ○伊藤(郷)委員 次に、一昨日から話題に上りました政治的中立性につきまして、私からもお尋ねしたいと思います。今日この法案が出ましたところの直接の動機は、わが国の教育が、あるいはまたまじめな教育者が極左の勢力の侵害にさらされておる、こういうところから出ているというような空気が非常に強かつたのでございますが、私はもちろんその面を認めることにやぶさかではございません。しかしながらお尋ねしたいのは、この法案にあるところの政治の中立性というものは、左からばかりでなく、右からの侵害にも日本教育というものが長きにわたつて厳存して行くための中立牲でなければならぬ。文部大臣はいかようにお考えになられるかということについてお伺いしたいのでございます。午前の文部委員会におきまして、同僚の小林委員が声高く戦争時代を回想せられまして、当時のあの画一的な片寄つた教育がなかつたならばということを、騒然たる中ではございましたが、言われたように思います。私も当時国体の明微ということが政界において呼ばれ、上は大学から下は小学校に至るまで、この八紘一宇の精神に倣した思想教育が行われたように思つているのでございます。当時、もしまたそれより以前において、今回提案されたような教育の中立性を守るという厳然たる法律があつたならば、日本は戦争の渦中にあのようにずるずると巻き込まれることもなかつたであろうし、またいたずらに敗北の中にかりたてられることもなかつたと思うのでありまして、まことに遺憾の情を禁じ得ないのでございます。社会党諸君にいたしましても、われわれがこういうふうにいずれの思想的偏向もしりぞけまして、日本教育を守つて行こう、そして教育者の栄誉を永遠に確保して行こうという熱望をくみとつてほしいと思う。われわれ今日政府与党ではございますが、今日の混乱した政局の中にありまして、いつ野に下るかわからぬのでございます。われわれの党による、あるいはわれわれの考え方によるところの権力教育を押しつけるために、一方的に中立性のわくをはめて押えて行くというような念は毛頭ないのである。自由党のためであるとか、再軍備をしていわゆる古い意味日本に後進を導く、そういう思想の浸透のためであるとかいうことでは決してない。われわれは真の日本の文化国家建設のために教育の中立性が今こそ必要である、かように考えているのでございますが、文部大臣の御所見を承りたいと思います。
  47. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 この法律案に対する耳やかましい反対論は、これがいわゆる反動教育をもつて国民に臨まんとするものであるとか、あるいは自由党の考え方を子供につぎ込もうとするものであるとか、さらにはなはだしきに至つてはMSA受入れ態勢のためであるとか、ロバートソンに言われたからこしらえたろうとか、これはまつたくあられもたい非難であります。この法律案をごらんになればよくわかる。どこに自由党に反対しまた社会党左派に賛成する教育と書いてありますか。(「党の名前は書いてないよ」と呼び、その他発言する者多し〕それをわざわざそういうふうにこじつけて、わけのわからぬ悪声な放つておるのであります。この法律案は右であろうが左であろうが、いずれにも片寄つてはならぬということを言つている。だれが左に片寄る場合のみを言つておりますか、   〔発言する者名し〕
  48. 辻寛一

    辻委員長 静粛に願います。
  49. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 右にも左にも片寄つてはたらぬということを言つている。これくらいはつきりしていることはない。
  50. 伊藤郷一

    ○伊藤(郷)委員 次はしばしば繰返された問題でありますが、私はふだん質問をいたしませんので、文部大臣にあらためて平和の理念内容について御質問したいと思います。平和の理念こそは人類三千年来から求めに求めて来たところの最も人類の高い理想でございまして、プラトンとかカントとか、例をあげるまでもなく、常に長くこれを求めて来て、今日まだ地上にこの平和は実現されない、まことに道は遠いのでございます。われわれは一つ一つお互いの真心を積み重ねて、そうして小さい秩序を大切にしてこれを守り、初めて地上に平和の日が近づく、かように信じておるのでございますが、みずから平和を叫んで、そして他人の立場を断固排撃して闘争を続けてやまないというような暗い陰鬱なことは、私は地上に平和をもたらす正しい行き方ではないと思う。しかしそれは今さらに論議をいたしませんが、この平和につきましては、望むものは平和でありますが、無装備、無防備の平和論もあるし、自由中立の平和論もあり、あるいは再軍備の平和論もあつたりいろいろいたすのであります。また野党の人におしかりを受けるが、私今まで見たことがございませんで、山口日記というのをつい二、三日前に拝見いたしまして、その論法が実に片寄つているのに驚嘆いたしたのでございます。こういうことが書いてございます。「今の日本の資本家や政治家の中には、この憲法を改正して戦争ができるようにしようと思う人もあるのです。」ということでございます。ここが重大だ。日本の資本家や政治家の中には、この憲法を改正しようという人はありますが、改正して戦争ができるようにしようと思つているというふうに、ただちに飛躍して子供に臨むことは私は行き過ぎであろうと思う。あるいは「人民は働く者の国がよいと考えていたのですが、南鮮の李承晩はこれに反対し、アメリカの助けを受けて何度も北鮮を攻めましたが、いつも破られていました。」これなども必ず南鮮が侵入したという自分かつて判断、きめ方の上に立論されているのでございまして、義務教育を受けている若き魂に対して臨む教育者の態度としては、私は公平を欠いていると思うのでございますが、文部大臣の所見はどうでございますか。またもつと痛憤にたえたいのは、工場を持つている資本家が、安いお金で労働者を使つて、自分のふところを肥やしたり、安い米の値段にして農民を苦しめたりしている資本主義とはソ連は反対だということが書いてある。資本主義だつていろいろ悪い面もございますが、労使協調とか、あるいは人間の努力を認めたり、いろいろいい面がある。そういうことを一切無視して、ただ単にこういうものであるとして掲げまして、そうしてこれらのことをすべて含めまして、これに反対する勢力は平和勢力である「このソ連こそ平和勢力である、こういうふうに児童の魂に浸透さして行こうということは、私はまことにおそるべきことであると思う。日ソ不可侵条約を破棄いたしまして、満洲に侵入したのはいずれの国であつたか、あるいはまたこの間毎日新聞の夕刊の記事だと思いましたが、軍人には罪がありましても、罪なきその家族、女、子供を加えまして四十数名、みな国に帰ることができなくて、恥をかくよりはということで自殺している、こういう記事を見まして、私は民族の一人といたしまして憤激を心から覚えたものでござ“ます。かくのごときことをしているところのソ連をたな上げいたしまして、これが平和勢力である、こういう行き方はどうか。私は義務教育の先生というものは説教をするものではない、知識を広く教えるものだと思う。宗教家は信念を説くはいい、あるいは大学の教授は真理を叫ぶもよいでありましよう。しかしいやしくも吸取紙のような純真な子供に対して片寄つた平和教育をするということは、私は許しがたいことだと思うのであります。子供と同じく自分もまたともに学びつつあるところの学徒であるという謙虚な態度で臨むことこそ、私は義務教育学校の先生のあり方ではないかと思いますが、文部大臣はいかようにお考えですか。
  51. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 初めのお尋ねでありますが、平和を愛し平和を喜ぶ、こういう気持が皷吹せられなければならぬ、これはもう当然きわまることであります。ただ平和という言葉に特定な意味をつけて、また平和を達成する手段として一定の方法を限つて、そうしてこれだけが平和であり、これだけを教え込むことが平和教育である、こういうことになると非常に片寄つた場合が生ずることは当然であります。従つて、ただ平和教育であるからいいではないか、平和教育をするのに何が悪いこういう議論は通らない議論であります。要するに平和というものがどういうものかということに特定の意味を持たせ、あるいは平和を達成するときにはかくのごとき政策によらなければならぬ、それだけに限定して片寄つた教え方をするということは、やはり基本法の精神から見て許されないことであると思うのであります。  それから山口県の日記でありますが、この日記の欄外記事はたくさん書かれておりますが、その一つくを見れば、必ずしもこれが片寄つておるということが言えないものもたくさんあると思います。またその一つだけでも、これははつきり片寄つたものであると言い得るものもあろうと思うのであります。ただこの山口県日記として編纂をされたその一連の記事というものは、明らかに一方に片寄つた方向を目ざす教育をその内容としておる、こういうふうに私どもは認定をいたします。この一つ一つをお読みになつた点は一つ一つ申し上げませんが、ソ連が不戦条約を蹂躙して満州に殺到して来た、これはついこの間の記憶に新しい事実であります。そういうものが平和を云々するのはおかしいじやないかというようなお気持のように思いましたが、どうもここでそういうことまで教育上申し上げる必要もないことであります。とにかく今までのソ連のやり方は、そこに抵抗力のない真空状態ができた場合には、すぐに殺到して侵略して来る、こういうことは近ごろのはつきりした実例であります。日本がすでに戦意を失つて、ソ連に対して何とか講和のあつせんを頼む――日本に戦意がなくなつたことがはつきりわかつたとたんに、不戦条約を破つて侵略して来た、また朝鮮においても、アメリカ軍が南鮮を撤退するや、北鮮軍はこれになぐり込みをかけた、同じ手口であります。この小学生日記においては、南鮮の方がしばしば攻め込んだ、こういうふうな記事になつております。私はそこに行つて見たわけじやありませんからわかりませんが、新聞等によつて当時承知した限りにおいては、これは逆であります。こういううそまで言うて子供に教える、これははなはだおもしろくないと私は思うのであります。南鮮がまず侵略をしたんだ、こういうことはソ連圏内における諸国においては、あるいはそれをほんとうだと言い張れば、そう思つているかもしれません。しかしわれわれはまつたくその逆であると思つておるのでありますから、ソ連側の感覚なり宣伝の線で子供に教育をされては、これは非常に困る。要するに、この一連の記事が非常に政治的に片寄つた方向をさしておるということは、これははつきり断定してさしつかえたいことであると思います。
  52. 伊藤郷一

    ○伊藤(郷)委員 一昨日の委員会におきまして、文部大臣は恐るべき思想的な侵害にさらされておるからこういう法案を出した、こういうことを申されましたところ、野党の方から、あまりそういう実例が爼上に載つておらぬ、そういう資料を出せということで本日午前にこの資料が配付されたと思うのでございます。思想には思想をもつてしたければならぬ、教員の自粛と反省によつてこういう法律案をつくらなくとも守れるのだという声が高いのでございますが、もちろん賢明な文部大臣はそれを知らないでこういう法律案を出されるものではないと思う。現実がもうすでにその段階を通り越している。もう黙つていられないということからこの法案を出したと思うのでございます。そこで昨日の理事会におきまして、北海道に参りますことは、日程の関係もございまして行けなくなつたのでございますが、北海道におきまして武佐事件というのがございます。この武佐事件がどうして有名であり、重大であるかと申しますと、昨年義務教育の全額国庫負担法が上程せられまして、朝野両党非常に争つた当時、同僚坂田道太代議士が、二月二十五日だつたと思いましたが、平塚の討論会の席上において、当時の日教組の岡委員長と討論いたしました。その討論会の折に、中共の中国人民救済総会から日教組に七十四万円送られたということを話に出したところが、岡委員長は、中共から金の来たことは事実だ、それをわけるように日教組と何とか相談してもらいたいということを言つて来た、しかし断つておいた、こういうことになつておりますが、この問題はあの総選挙のまつただ中におきまして問題となりまして、日教組の方からは坂田代議士並びに当時の岡野文相を訴えた、また坂田代議士は名誉毀損で、これを訴えるというふうに、天下の耳目を聳動させた、この中共から七十四万円来たとか来ないとかいうことの含まれている事件でございますから、申し上げたいと思うのです。私は今年の一月二十一日に中標津に参りまして、調査して参りましたので、責任を持つて申し上げたいと思います。少し時間がかかりますが、札幌から釧路までは急行列車で十一時間かかります。釧路で乗りかえまして中標津という町役場の所在地まで行くのに四時間かかります。ここは秀麗きわまりない斜里獄の下でございます。武佐というのは、役場所在地の中標津の次の上武佐駅でおりて、それからまた三十町ほどある所でございます。その武佐において起つた事件でございます。杉原春夫という人、これは現在三十二才でございますが、樺太の豊原中学を出まして、それから東北帝大の工学部を卒業し、文部省の学校教育局専門教育課にも嘱託としておりましたが、二十四年の九月にレツド・パージになりまして退職し、ちようど親がただいま申しました根室の武佐部落の中学校、三学級でございますが、そこの校長をしておりますので、そこへたよつて教官として就職したのが二十五年の三月三十一日でございます。それから警察の手入れを受けましたのが翌々年の二十七年の四月二十日の午前七時三十分でございます。標津警察署員清水警部以下六名が手入れをしたのでございます。これは政令三三五号違反容疑でございます。そのときにたくさんの共産党の文書が押収せられたことは時間の関係で略しますが、その手入れの当時も吉田内閣の犬であるということを警官に対して言つておるこのことはいいでしよう。しかし生徒を前に並べまして、この売国奴の顔を見よとか、あるいは暴漢に対してくわをもつて臨み右を投げろというようにして教唆しておる。こういう言動は私はまつた教員として行き過ぎだと思う。大体この杉原教官の学校内外における政治活動の実態はどうであつたかと申しますと――私の申し上げますのは公平委員会における速記あるいはテープ・レコーダーを通じて申しておるのでございます。たくさんの証人から聞いております。共産党でなければ国民の味方にならない。野坂氏や徳田氏でたければ日本を救うことはできない。そういうりつぱな人をなぜ追放しておるのか、あるいはお前の父親は共産党でりつぱなものだ。お前の父親は共産党であるが、お前は共産党に傾かないからお前はいけないと言つてなぐられた生徒があります。その生徒は今は青年になつております。あるいはまたもくせい号が三原山にぶつかつて墜落いたしましたときには、こういうこと々言つておる。桜木町事件には少額しか見舞金をくれなかつたのに百万円もやつておる。それは金持が乗つているからであるというように、片方は公共企業体であるというようなことは一切言わないで、そういう階級意識を植えつけておる。あるいはこういうことを言っている。朝鮮の休戦会議は、ソ連が会議のじやまをするのではなくて、米国が長びかせて日本に基地をつくるためだ。こういうことを数学や英語の時間に教室で話したということでございます。あるいは北海道の方でなければ御存じでないかもしれませんが、白鳥警部事件というのが札幌にございました。北大の手入れをした白鳥警部が自転車に乗つているとき、夜うしろから来て殺された。その白鳥警部の殺されるのはあたりまえだ。殺されても大して同情する人はないのだというようなことも生徒の前で、放課後でございますが言うております。つづり方指導などもまつたく行き過ぎであつた。たくさんの宣伝文を自分で印刷して生徒や部落にまいている。本人みずからアカハタを生徒に渡し、あるいはまた部落の人にも渡しておる。学芸会のごときも学芸会と言わずに、平和祭と申しまして、アカハタに掲載されておるとか申しますが、私はあまりアカハタは読んでおりませんが、山城物語というような劇を好んで演出をする。あるいは前進座が中標津に参りますと、午前中に授業を打切つて、三十町もある上武佐駅まで生徒を引率して、それから汽車に乗つて観劇をさせておる。映画でも「きけわだつみのこえ」というようなものでなければ絶対に見せに行かせない。こういうような徹底した政治教育でございます。さらにこの政治教育通り越しまして、私が義憤にたえないことは、有志や自分に対して反対しておる父兄の子供に対しては、心身ともに圧迫を加えた。ただ精神的でなく、体にまで圧迫を加えた。星喜八という生徒は十数回なぐられて、それまでは記憶がおるが、あとは意識不明で昏倒しておる。あるいはまた父兄会副会長満原の父はたぬきで、お前も子だぬきだ。前から見ればずるいからわからないが、うしろから見れば尾が見えるのだからわかるというように精神的な打撃を与えた。そのためにこの生徒は、とうとうこの武佐中学におるに耐えられなくなり親戚が岩見沢におりますので、その岩見沢の豊中中学に転校したような始末でございます。また修学旅行なども徹底しておりまして、百三十名かの生徒がおるのですが、そのうち九名だけ引率して札幌に行つておる。この年はこの先生の思想動向がおもしろくないために、この杉原教官をまじえまして、父兄はことしは修学旅行はやめようということの打合せをなし、杉原教官も了承しておつたにかかわらず、九名を連れて行つておる。その九名のうち九名は、六名が先生について行くというので上武佐駅まで見送りに来たのを、親の了解もなしにむりやりに札幌に連れて行つておるのであります。しかも九名の生徒に対しまして、伊藤信子という女教員と杉原教官ともう一人まだ発令にたつていないところの吉田清正という三人が行つておる。同時に北海道教育委員会事務局の規定する三泊四日までは届出なくてもいいが、四泊五日以上は届出なければならないという規定を無視して、修学旅行に連れて行つておる。そしてどうしたかというと、生徒を北大の会場に連れて行つて、そこではもうすでにこの武佐事件の真相というパンフレットが用意せられたり、生徒が武佐事件の真相ということについてむりに発言させられたりしておる。これはまつたくうそではないのでございまして、発令されないで引率に行つたところろの吉田清正という青年が証言をしておるのであります。なお七月十八日には杉原春夫は、さらに札幌に出かけまして、大山郁夫の歓迎会に行つて、武佐事件の真相を演説しておる。あるいはこの杉原教員影響を受けた伊藤信子という女教員は、五月十九日に根室の北映座に参りまして、前進座の幕合いを借りて、武佐事件の真相を発表したり、あるいは八月六日には伊藤信子が札幌に行きまして、平和反戦大演説会に出席して演説し、日本共産党員杉原も演説をしておるのであります。  これに対しまして関係機関の処置はどうであつたかと申しますと、こういう言辞に深き憂いをした地元民は、第一回は町長が根室に参りまして、道教育委員会の根室事務局長富岡忠義氏にこういう教員を処置してくれということを申しているのでございますが、簡単にそういう事実はないと言つてつております。第二回目に行つたところが、今度は調べると言つて約束している。第三回目に中標津町の佐藤甚平という町議会議長が行つたところが、そういうひどいことがあるなら、それじや調べようといつて調べたところが、まつたくそれと間違いない、今度は何とかする、こう言つているのでございます。しかしまことに奇怪なことは、そう言つた次の日に、北海道教育委員会の根室事務局長は網走の事務局長に転任している。自分が処置すると言つていながら、そうしてあしたもう出発することがわかつていたがら、それを秘匿して、ただ善処を促して出発をしたというようなわけで、まことに疑惑が中標津町において今日持たれておる。しかし結局杉原、伊藤の両教官は二十七年の八月十五日に退職処分せられたことは問違いがない。しかしながら退職したのではございますが、今日私が申し上げるのは、いまだにこの事件のあとがくすぶつておりまして、中標津町の平和を害し、町民に非常な迷惑をかけているということでございます。それは北海道教員組合――北教組と申しますが、北教組の黒島副執行委員長と大石組織部長が最初ば代理人として、その後代理人はかわりまして、山沢組織部長とかあるいは星野、小笠原書記次長とか、あとはしばしばかわるのでございますが、これらの人々が杉原の代理人となつて町の公平委員会に提訴して、すでにことしの一月に至るまでに五回開いておりますが、一々完全速記を要求せられまして、全部テープ・レコーダーに収めてありますので、非常な出費が重なつて町は因つております。また退職したとはいいたがら、杉原たちは今日なお学校の当直室に住まいしておりますので、新たに町は住宅なつくらなければならなかつた、こういうわけで迷惑を与えられております。これに対しまして北教組は、全国五十万の教員組合の総力をあげてあくまで闘うのだ、こういうことを絶叫しておるそうでごいます。  このようにこの事件が長引いた理由は一体どこから来ておるのであろうかということを町の人々に私が尋ねましたところ、それは北教組の圧力が道教育委員会にかかつているからである。あるいはまた根室の事務局長富岡忠義氏も、先ほど申しましたような事情によりまして、これらの考え方、これらの行動を幾らかでもかばいたいような動向にあつたと見られた、こういう点が遅れた原因だろうと思う。さらに大事なことは、中共からこの武佐事件の闘争資金として七十四万円送られて来たということが、杉原の証言中に出ているそうでございますが、非常に彼らを力づけたということでございます。うわさではございますが、この七十四万円はまだ全部使つておらないで、今日中標津の北海道拓殖銀行の支店に貯金してあるということが、町内のうわさになつてつたのでございます。  以上武佐事件の報告を私は終つたのでございますが、そこで文部大臣お尋ねいたしたいまず第一番目は、地教委をどうするかということでございます。午前の委員会におきまして、地教委の任意設置法案野党から提案せられて、非常な活気を呈したのでございますが、この任意設置ということは勢い地教委の廃止ということになり、また辻原委員たちは、結局は地方教官委員会の廃止ということが自分たち教育上の考え方だということを申されたのでございますが、この事件を通じて見ましても、もしこの中標津というところの実態をよく把握しておつたところの地教委が中標津に――当時は地教委のなかつたころでありますが、あつたとしたならば、約二年間にわたりまして、こんなわかり切つたことを長く引きずつて、町民に暗黒な気持を与えなくてもよかつたろうと思う。地方教育委員会があつて初めて目が届くから、こういう問題が片づけられると思うのでございますが、この地方教育委員会制度に対しまして、任意設置であるとか廃止であるとかいうようなことな折々聞くということは、非常に動揺を与えるのでございまして、この際文部大臣は地教委存続の声明なせられますかどうか、その強い声明があつて初めて今回上程せられているところの第一の法案が生きて来ると思うのであります。
  53. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 地方教育委員会制度につきましては、昨年の国会当時からしばしば文部省の意向について御質問をいただいております。文部省といたしましては終始一貫いたしておるのでありますが、地方教育委員会制度はこれを廃止しない、存続するのみならず、進んでその育成強化に努めたいということを終始申し上げておるのでありまして、その点は今日におきましても何ら変更いたしておりません。たまたま今国会におきまして地方教育委員会制度について御提案になつておるようでありますが、これは十分に御審議の上御決定いただきたいと思いますが、私としては終始一貫して廃止どころかこれを育成強化して、日本の新教育制度というものを育てて行きたい、かように思います。
  54. 伊藤郷一

    ○伊藤(郷)委員 第二の質問は、今大臣はもう終りにお答えになつてしまいましたが、地教委存続だけではなく、さらに育成強化されるということに尽きるのでございます。今回の第一の法律案が通過いたしましても、その地方教育委員会が無気力だつたり、またいろいろの変更があつたりいたしまして、目に余る言動を黙視しておる、こういうような場合におきまして、私は地教委はもう少し強化せられなければならないと思いますが、地方教育委員会を将来育成強化するために改正する意思がないかどうか。指導助言では手ぬるいと思うが、こういう点について簡単に御答弁願います。
  55. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 私が申し上げる育成強化というのは、地方教育委員会自体として十分にその機能を発揮せられるようにしたいというので、来年度の予算におきましてもその意味において種種予算の要求をしたのでありますが、これは残念ながら実現するに至りませんでした。ただ強化という意味でありますが、文部大臣あるいはその他の役所でこれを指揮監督するということは私は考えておらなかつたのでありまして、地方教育委員会制度自体の持つ性格から、具体的に申しますと、国民の直接選挙によつて選出せられて、教育の運営に当る、その特殊な地位から考えて、これは指揮監督に服すべき筋合いのものではないと考えております。独立して自分の見識を持つて活発に何ものもおそれるところなくその機能が発揮されることを希望するのでありますが、今日のごとく教育委員会が、ややもすれば他の不当な影響力のもとに支配されておるかのごとき観を呈しておることは、はたはだ遺憾でありますので、そういう意味においてこれを育成強化したい、かように考えておる次第であります。
  56. 伊藤郷一

    ○伊藤(郷)委員 次のお尋ねは、ちよつとこみ入つておるかと思いますが、この武佐事件に送られた金は、中共の国民救援会から日教組を通じ中標津の武佐中学に闘争資金として届いておるといたしますと、これと第二の法案についての関係お尋ねしたいと思うのでございます。この金は中共の国民救援会の金ではございますが、日教組が中標津へ送つてよこした。それは教唆扇動になると思うのでございますが、その着いたときは、一昨年の八月十五日に退職になつておるのでございますから、杉原は学校の先生ではない、学校の先生ではないが、今でも元の学校の住居に住んでいて、非常に教育的な影響を与えている。東北帝大の工学部を出た彼は、無線電信機を背中に背負つたり、あるいは速く走るバイクモーターに乗つて馳駆しておる。そこから三里行きますと海岸でありまして、国後島が見えるのでございます。まだ白皚々でございます。ソ連の監視艇がその近くまで参りまして、サーチライトを照しますと、その明りによつて海岸で新聞を読むこともできる。われわれが遊説に歩くと、自由党の代議士が来たといつてすぐヘツドライトをつけてどこまでも追いかける。こういうような状態で盛んに活動しておる。この件は第二の法律を適用できないものでございましようか。
  57. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 この杉原春夫という人は、教員というよりも悪党無頼漢であります。これは明瞭に共産党員でありますが、この人のしたことは教育というよりも共産党の党勢拡張、党員の獲得であるようであります。むろん教育の場を利用しておるのでありますが、実力に訴えて子供をなぐりつけたり、けつたり、それで罷免されても学校の建物をどかない、これは通常の人間のできることではありません。ただこの人が学校において共産教育をやつたということは、これはおおうべからざる事実でありましよう。ただ今度の法律がかりにその当時できておつたと仮定して考えてみる場合には、その杉原君がやつた教育が、どこかの教員団体を通じて教唆扇動されて、その働きかけに基いてやつたということであれば、これは明瞭にこの法律にひつかかるわけであります。しかしその点が明瞭でありません、その点が立証されていなければただ本人が乱暴なことをしてむちやをした、こういうことに当然たります。従つてこの法律ができましても、かりにそういう事件があれば、やはり最終にとられた、本人を懲戒処分の対象にした、こういうことしかできないと思うのであります。  それから金を送つたから云々ということでありますが、私は一体この北海道の武佐中学の事件を特に重大に考える――なるほどそれは大勢おる教員の中でありますから、共産党員もおろうし、また場合によつては気違いもおるかもしれません。これはやむを得ないことであります。ただ私が特に注意しなければならぬと考えることは、この与件についてただいま御指捕にたりましたように、北海道の道教組がこの訴訟に関係をして、道教組が訴訟の代理人として、役員の交迭のあるたびにまた入れかわり立ちかわり訴訟代理人としてこれに関係をしておる、要するに役員をしておつた個人というのではなしに、道教組の役員としてこの訴訟代理人となつておる、この点が一点。それからその本人なりあるいは伊東という女の先生が住居を立ちのかないのは、道教組の指令によつてどかないのだ、こういうことを判事の前で明言をしておるというような点、それから道教組が全国五十万の教職員の総力をあげて闘う、こういうようなことを、これは一片の豪語であるかもしれませんけれども、さようなことを言つておる、こういう点はきわめて注意すべきである。ただ日本のどこかにとんでもない考え違いの、狂人に近い先生が、たまたまおつたというだけでは済まされぬ問題であると思うのであります。  そこで救援資金の問題でありますが、これは私は実情をよく存じません。はたしてさようなことになつておるのかいないのか、そういうことはおそらくあり得る事実であろうと思います。日教組は中国共産党と非常に仲がいいのであります。従つてそういうことはあり得ると私は思いますがしかしこれは救援資金を贈つたから教唆扇動になるとかならぬとか、そういう問題は起らぬと思います。
  58. 伊藤郷一

    ○伊藤(郷)委員 最後に、杉原のようなのは教育界における無法者、悪党といわれてもいいと思いますが、そういうものが今回提案されました法律では、第一の法律によつて行政処置だけを受けるということは、どうもわれわれに不徹底に感ぜられて満足が行かない。どうしてこういう学校という聖たろ殿堂を利用して、縦横無尽の臆面もない共産党の破壊、扇動活動なした者を刑法に問うことができないか、この第二の法から漏らすようになるのか、これはどうも合点が行かない。われわれは何とかこれを修正でもしなければならぬと考えております。
  59. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 これは私はたまたまこういう人間が現われたと思うのであります。たまたまこれは杉原という人間の特殊の性格というか、一種の性格分裂の変な男じやないかと私は思うのですが、たまたまの事例であると私は判断をいたします。でありますからして、これがあつたからといつて、すぐ教員自身を処罰の対象にするような法律を出すべきものではない。もしかような――これは子供をなぐつたり、けつたりして、鼻血が出て人事不省に陥つた、こういうことなのでありますから、もし厳密に言うならば、これは暴行傷害の罪に問われてもしかたがない。またよく調べてみれば、この人のしたことは、これは普通の人間のすることではないのですから、この人のしたことを一々いわゆる法律の鏡に照して調べてみれば、いろいろな点でひつかかるかもしれません。ひつかかるかもしれぬが、これは私は山口県日記の場合と違つて、これはまつたく偶然というか特異な事例であると思います。従つてどこかの学校において教育の域を飛び越えて暴力までも振うというような教唆扇動が行われているということにたれば、これはまた別の問題になりますが、この武佐事件によつてこの法律を修正していただかぬようにお願いしたい。
  60. 伊藤郷一

    ○伊藤(郷)委員 それでは最後に次のことを強調して終りたいと思います。これを大臣はばかだと申したり、気違いだと申しますが、それは必ずしもわからないでしよう。しかしこのようなかくも強烈な徹底した臆面もない共産主義運動者をあるいはまた教育者としてばかりでたく、生徒を殴打したり、又不法引率したり、不法出張したりして教師として、人間として見ましても価値のない者、そうして平和なあの一帝に害毒を流している、かくのごとき人、これを知りつつ、あくまで総力をあげて闘うと言つて絶叫しているのですから、あくまで擁護するのだとしたら、日教組、その下部組織であるところの北教組というものは、一体いかなるものであるか、私は感慨を込めて、この痛憤と怒りを残して私の質問を終ろうと思います。
  61. 辻寛一

    辻委員長 竹尾弌君。
  62. 竹尾弌

    ○竹尾委員 斎藤国警長官のおいでを願いまして、私は大臣並びに国警長官に二、三のお尋ねをしたいと思うのであります。  第一番目は、たびたび大臣が御答弁なさつたように、この法案はある圧力に押されての教育の行き過ぎを是正するものである、こういうようなことに結論づけられると思いますが、そこで私どもは、今日教組の問題が問題になりましたけれども、これはたびたび申し上げるように、あの組合の絶対多数の教職員というものは決して左翼の色には染まつておらない、ごく小部分の人たちがこの厖大なる組織を悪用、利用していろいろの運動をしておる、こういうことにたろうかと思いますので、その線はこれは大臣といたしましても絶対に断ち切つていただかなくちやならぬ、こういうぐあいに私どもは切望しておるのであります。そこでお尋ね申し上げるのですけれども、こうしたいわゆる伸びておるところの線をどの程度でどういうぐあいに規制して行くかということをまず大臣にお尋ねすると同時に、国警長官に対しましては、ただいま私ども相当詳細な日教組内のグループ活動についてという資料をいただきましたが、この資料は今ここで精読する時間がございません。そこでごくかいつまみまして、この日教組に伸ばしておるところのグループ活動についてごく簡単に大筋だけを御説明つて、あとは質問をしたいと思いますが、どうぞその点はよろしくお願いいたします。
  63. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 日教組内における共産グループの活動が、日教組自身に影響を及ぼすか、それをどの程度で規制するかということでありますが、これは私どもとしては日教組がさような一部極端な連中に影響されるというようなことがなしに、慎重に、そういう扇動に乗ることなしにその本務に進んでもらいたい、こういうことをいつも熱望しておるのであります。ただしからば、何か行政的あるいは立法的手段によつてそれを規制して行こう、こういうことになると、これは教育に直接影響を及ぼす面におきましてはこのたびの措置をいたしたのであります。ただ教員の個人々々に対して共産党が働きかけをするということ自身は、それだけでは取締るとか規制するとかいう近はないと思うのであります。これは日教組の執行部といいますか、幹部の平君、それから組合員全体の良識と自重にまたなければならぬ、私はそう思います。しかし、日教組内における共産党のグループ活動をしている人は、これはまた教員の立場を持つておるのであります。でありますから、これらの人人が共産党の党勢を拡張しようという政治的な目的をもつて日教組に働きかける場合に、その方法のいかんによつては、これが国立学校職員である場合には、当然それによつて規制されるはずであります。それから公立学校職員であつても、このたびの法律案が成立すれば、その点はやはりこの教育公務員特例法の一部改正法律によりまして規制を受けるはずである、こう思います。
  64. 竹尾弌

    ○竹尾委員 長官に一緒にもとつ御答弁を願いたいのですが、ただいまの大臣の御答弁によりますと、具体的にこうだ、ああだというところまでは少しむずかしいような点もあろうかと思いますが、これは治安維持の立場から、警察としてやはり取締るべきものは取締らなければならぬと思うのです。先ほど新聞をにぎわしたところの思想調査のごときも、静岡県の隊長がわび状を入れたなんという新聞が出ておりますが、私の考えでは、あれはおそらく間違いであつて、やはり隊長としては隊長の治安維持等々の立場からあの行動に出たのだ、こう解釈いたしますが、その点につきまして国警長官にあわせて御答弁をお願いいたします。
  65. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 まずあとの方の御質問からお答えいたしたいと思いますが、現在日本共産党の活動は、終局において暴力によつて革命を達成するという方針に基いてあらゆる活動をしておるわけであります。しかし現在の段階で取締れますのは、これが破防法にひつかかつて団体規制を受けるとか、あるいは破防法によつて処罰をされるという場合以外は、ほとんど一般刑法によりまして、御承知のように、一昨年あたり盛んにやりました街頭火焔びんのような事件であるとか、そういつた騒擾、あるいは集団暴行とか、何らか刑法に触れるというものでないと取締れないのであります。従いましてわれわれといたしましては、とにかく暴力を否定をしない、むしろその暴力の組織と内容を強化をして行こうという段階に対しましては、常にその勢力の拡張の様相というものを治安の必要上知つておく必要がありまするので、そういう意味で内偵調査をいたしておりますが、これがただいま申し上げまするように現在の法律に触れたい以上は、警察としては取締りの方法がないので、ございます。  それから第一点の御質問の日教組内部における共産党のグループ活動の態様でございまするが、詳細はこの資料によつて承知をいただきたいと思うのでございます。共産党がその勢力を各職場あるいは地域にいかにして拡大させて行くかというその方途の一番典型的なものは、共産党の細胞をもとにいたしまして、そうしてその職場たりその地域なりのグループ活動によつて、あるいは党員の獲得あるいは党勢の拡張をはかつて行くというのが公式的なやり方であります。従いまして、日教組内におきましても、共産党がその勢力を伸ばして行こうという活動の場に、目標としておいてありますることは当然のことでございます。現在あるいは学校の中に共産党員であるところの細胞が中心になりまして、そこにグループ活動を強力に推し進めつつある状況でございます。このグループ活動を指導いたしまするものといたしましては、共産党の組織内に労働組合に対するグループの指導をする総合指導部というものがございまして、その中央の総合指導部の中に日教組の中央グループ指導部というものを設けているのでございます。そして先ほど申しました日教組内のグループは、各県あるいは数県をまとめた地方一つの団体組織をつくつているのでございますが、これに照応いたしまして、共産党の直接のグループ指導部に地方グループ指導部、あるいは府県グループ指導部というものを設けまして、各段階におけるグループの幹部を指導し、全体のグループを指導するというやり方をいたしておるのであります。そうして全国におきましては、このグループの全国会議を開き、あるいは地方においては各地方のグループ会議、府県のグループ会議というものを開きまして、このグループ指導部による指導によつて、当該地方の当該グループは、一体どういうような方針で日教組内において勢力を拡大し、あるいは共産教育を推し進めて行くか、どういう教育内容をどういう方法によつてつて行くことによつて、共産党の目的とする教育を普及させることができるかという研究をし、その方針をきめる、また各地において実験をしたその成果を持ち寄つて報告をし、検討して行くということをいたしております。これがグループ活動の大体の骨組みだと考えます。あと御質問によりましてお答えいたします。
  66. 竹尾弌

    ○竹尾委員 ただいまお聞きした点だけを考えても、非常に共産党の日教組内に根をおろしておる組織というものは恐るべきものである。このままに放縦しておいたならば、どういう事態が惹起されるか、非常に私どもはおそれをなしております。そこでお尋ねいたしますが、今グループ活動というそうした活動は、長官がおつしやられましたところの共産党の日教組に対する働きかけの様相、形である、こういうふうにとつていいと思いますけれども、そういう様相、形に対しては、現行法は取締る法規はない、こうおつしやるのでございましようか。
  67. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 さようでございます。ただいまのその様相のもとにおきましては取締る法規は何らございません。
  68. 竹尾弌

    ○竹尾委員 日教組内に存在する今のグループというのは大体どのくらいございますか。
  69. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この具体的の数の確認は非常にむずかしゆうございます。われわれ昨年の夏ごろまでに確認をしていると考えますのは、党員として数百人、それからこれに同調する強いシンパが二、三千名と考えておりますが、われわれの調査能力の及ばない点があります。また調査方法も非常に制限されておりますから、大体これで全体だろうという確信は持てません。全体の一部ではなかろうかと考えております。
  70. 竹尾弌

    ○竹尾委員 今長官のお答えになられた二、三千というのは日教組内におきます正式の共産党員を入れてということでございますか。それからこの二、三千は大体指導的役割を演じていると思いますが、おもだつた指導者の名前等々は調査が行き届いておりましようか。
  71. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 中核の党員、細胞と見なされる者が数百名、これに強く同調している者が二、三千名、かように申し上げました。
  72. 竹尾弌

    ○竹尾委員 その党員の身分の調査とか名前とか、いろいろのそういうものは調査されておりましようか。
  73. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 それはちよつと申し上げかねます。
  74. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それはよろしゆうございます。  そこで今度は大臣にお尋ねするのですが、ただいまこういうわれわれから見ればおそるべき共産主義運動が、子供を教える数十万の団体の中に食い込んでいる、食い込みつつある、しかもますますこれがはげしくなると考えなければなりません。それを取締る法律が警察関係としては何らないのだとこうおつしやられますが、今度のここで提案なつ法律は、この行き過ぎをため直すということでありますから、そういう運動の様相が現われて来た場合には、今度通過するであろうとの法律によつて取締りを受ける、こういうふうに解釈できましようか。これは大臣にひとつ御答弁願います。
  75. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 その日教組内における共産グループ活動そのものを規制するということは、この法律ではできません、ただその共産グループで結論を出して、そうして共産教育と申しますか、日本義務教育学校における教育をこういうふうに進めて行きたい、こういう結論を出してそれを進めようとしておるようであります。それが日教組なり県教組なり、そういう組織を通じて具体的に義務教育学校に向つて働きかけて来る場合、その一番最後のところだけを、この法律で押える、こういうわけであります。その途中までのところは今斎藤長官の言われましたように、取締りの道はなし、またこの法律ができましても、そこまでは手が届かぬわけであります。
  76. 竹尾弌

    ○竹尾委員 非常に心細いのですが、いろいろお尋ねもありますが、私はきようはこの程度で終ります。
  77. 野原覺

    野原委員 伊藤委員の御質問に関連いたしまして大臣に二、三お尋ねいたしたいと思います。いずれ二法案に関しましては、その本質なり、あるいはこの法律の持つておるねらい等について、私は十分な質問をいたしたいのでございますが、本日は伊藤委員質問に対する関連であります。  伊藤委員の御質問で、日教組が片寄つた教育をやつたということを、たとえば北海道における事例等をおあげになられて、いろいろ質問をされたのでございますが、昨日の文部委員会におきましても、私どもは大臣に対して偏向教育の事例を出してもらいたいと申し上げましたところ、ここにさつそくこういうプリントをいただいたわけであります。そこでお尋ねをいたしますが、偏向教育の事例として出されましたこのプリントにある事柄だけが、今日文部省が把握しておるところの、いわゆる教組と申しましようか、あるいは現場の教員と申しましようか、そういうものが教育をゆがめておることだ、これだけに尽きる、このように考えてよろしゆうございますか。
  78. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 そこに差上げましたのは二部ありますが、これが私どものところで、一応惰報としてとりまとめた比較的正確であろうと思われるものであります。もちろん各学校においてどういうことが行われておるかということは、これは実際わかりません。これは私どもの方で、大体正確と考えられるものをそこに出したのでありまして、これで全部であつてほかにはないということは、もちろん言えないのであります。ほかにもたくさんおるかもしれません。私の考えでは、ほかにも非常にあり得ると思つております。
  79. 野原覺

    野原委員 ほかにもあり得るとあなたはおつしやるのでございますけれども、今の段階で文部省としては、ここに集めておるこの事例がほぼ正確だ、こう考えて出したものである、これでよろしゆうございますね。このように受け取って、よろしいですね。
  80. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 大体その通りであります。ただほかにはないということは私は少しも断言しません。これはわからないのですから。おそらくはほかにもたくさんあるだろうと思う、こういうことを念のためにつけ加えておきます。
  81. 野原覺

    野原委員 ほかにあるとすれば、私どもは全体の偏向事例を要求したのでございますから、出してもらわなければ困るのですけれども、しかしながらプリントに出されたものが、今日の段階においては把握されたものである、このように了解いたしまして次のお尋ねを申し上げます。こういうような偏向教育の事例という、実に詳細な、綿密な調査は、今日文部省はどういう方法でこういう調査をおやりになられるものか、お伺いいたしたい。
  82. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 そこにはあまり詳細には出していません。概要だけをそれに書いておるのであります。これは、資料の提出を非常にお急ぎになつたようでありますから、実は一応とりまとめまして、昼夜兼行で原稿をつくつたのであります。この調査の方法と申しますが、これはいろいろであります。教育委員会の方に聞いたものもありますし、文部省から直接出向いて行つて、現地について実例を調べたものもあります。その端緒となつたものは、各地の新聞等に報ぜられた事例等に基いて、教育委員会その他の関係方面から調べていただいたものが多いのであります。もちろん確実で、どういう方法だということは、一律な方法ではありません。あるいはわれわれの方に、そういう情報を持つて来てくれた人もあります。これはいろいろでありまして、一概には申し上げられません。
  83. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、こういうような資料というものは、地方教育委員会と申しますか、都道府県教育委員会と申しますか、教育委員会の報告によつたことが一つ、もう一つは、文部省自体が現地に出向いて調査した、たとえば新聞等によつて疑わしい点があると御判断になられたときに、現地に行かれて調査した、これだけでございますか。
  84. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 それだけではございません。ただいま申し上げたように、情報を教えてくれたような場合もあります。
  85. 野原覺

    野原委員 私は最初大臣は二つ申されましたので、二つの点を繰返してお尋ねをしたのでございますがそれだけでございませんということは、もつと手取り早く言えば、つまり捜査その他について大きな権力を持っている国警あるいは自治警という警察の調査もこの中に入つていないかどうかということをお伺いしたいのであります。
  86. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 この調査にあたりまして、法律に違反して人権に関係するような方法はもちろんとつておりません。これはいろいろであります。これを一々ここで申し上げる必要はないと思うのであります。
  87. 野原覺

    野原委員 ただいまの大臣の御一言は、私は異な御答弁を承るものだと思う。はなはだ心外にたえません。実はあなたが教育関係した二つの法律を今日出されて、この法案をめぐつて、この文部委員会も、それから日本の国民も大きな関心と批判を寄せているのです。しかも今日まで大臣が私どもにあらゆる機会で御答弁なされたことは、日教組の偏向ということをおつしやつた、それからつまり日教組が赤がかつているというようなことも述べられているわけでありまして、私どもとしてはこの偏向教育の実態というものをはつきりつかまなかつたならば、実は二つの法案についての審議もできないわけであります。従つてここ数日来文部委員会理事会を開きまして、今日委員長から議運に対して実地調査の申請もいたしておるはずでございまして、私どもはその議運の許可、議長の許可さえあるならば、来週は実地調査に行くという方針をとつている。しかるにこういうことについては申し上げることができないといつたような内容の御答弁を承ることは、まことに心外たんです。そこで私は、これはひとつ大臣が腹を割つておつしやつていただきたいのです。あなたはただいま教育委員会の報告あるいは文部省みずから行つて調べられた、あるいはその他の方法と、このように申されたのでございますが、たとえば山口日記は教育委員会の報告なのか、あるいは北海道の武佐中学は文部省が向うに行つてお調べになられたのか、京都の大将軍小学校は、これは京都の自治警の報告に基いたものであるか、これをここでお示し願いたい、(「言う必要なし」と呼ぶ者あり)文部委員会ですから言つてもらわかければ困る。国民に対して申訳ない。
  88. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 これは内容についてごらんいただきたいという意味で資料を出したのでありまして、私どもは大体私どもの判断において確実であろうと思うものをここに出したのであります、何ゆえにその出所についてお尋ねになるか、その意味がわかりませんが、この出所を一々申し上げるつもりは初めからないのであります。この内容について調査をしてみていただきたい。この内容によつて、それは人によつて判断が進いますから、これをうそと判断する人もありましよう、またこれをほんとうと判断する人もありましよう。私は決してこのことを絶対確実な事実として主張するのではない。われわれの手に集まつた資料をあなた方に見ていただく、こういうことでありまして、ここで出所をお調べになるのはどういう意味でありますか。これは学校の先生が実際にこの偏向教育に耐えかねて、ひそかに東京へ出て来て、そして私どもに直接訴えられたものもあります。ただ名前を隠してほしい、名前を言えば非常に圧迫が来るから、とうてい見ておれぬというよう次ものもありますが、それをなぜ言わないか、それを言わなければこれは信ぜられるとか、信ぜられぬとかいう問題ではない。それだからこれがもし信ぜられないとおつしやるたらば、それはあなたの御判断で信ぜられないとお考えにになるならそれまで、私の方ではこれは純対確実で裁判所へ出ても間違いない、ここまで主張しておるものではないのであります。
  89. 野原覺

    野原委員 何ゆえその出所が言えないのか、私はいまだに納得できません。ということは、私どもが調査に行く場合に、山口日記はこれ々管轄しておるところの岩国の教育委員会の報告であるというならば、実はこの文部省の資料等を土台にして岩国に行つて調査をするわけなんです。文部委員会委員会の決議によつて調査に行く場合、私はその詞査の便宜上ここの場でひとつ言つてもらいたいということを言つておる。ところが今の大臣の御答弁を聞きますと、個人の基本的な人権に関するものもあるやに承るのであります、たとえばこれを報告するとどうしても困るというような人も出て来るような御答弁もあつたようでございまして、そこまで私は追究しようとはしない。だから、たとえば大将軍小学校は実はこれは言えない。これでもよろしいのです。しかしこれ全体について、あなたがどこから一体こういうものを調査したのかが言えないというならば、この偏向教育の事例というものは何ら価置のないものであると私が判断してもさしつかえないのでございましようか、これに対する御所見を承りたい。
  90. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 野原君がこれを信ぜられるとか、信ぜられないとか、これはあなたのかつてであります。決してこれをあなたがどうしても信用しなければならないということを申し上げておるのではない。ただ私の方は絶対捏造したものではありません。
  91. 野原覺

    野原委員 どういうものか、たつておつしやらないようでございますから、私はこの点については幾多の疑点を残しながら、関連質問でもありますから、次に進行いたしたいと思います。  その次にお尋ねいたしたいことは、伊藤委員が日教組は中国共産党から七十四万円の金をもらつたということを何回となく繰返されておるのであります。この点は、全国六十万の教職員が今ひ団体を作つておる日教組として、実は重大な問題でございましよう。従つてこの問題について大臣はこの点なお認めにたられておられるかどうか。日教組が七十四万円の金を中共からもらつたということを、実は前文部大臣岡野清豪氏のときに、自由党から出た情報であるかどうかは知りませんが、これが選挙の際大きく問題になつて、相当な波紋を描いたのでありますが、今日そのあとをお継ぎになられた大達文部大臣は、この事実をあなたもその通りであるとお認めであるかどうか承りたい。
  92. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 私は先ほど伊藤君のご質問に対して、さような事実があつたかどうかは私は知らない、こういうことをはつきり申し上げてあるのであります。日教組がいろいろ活動される、その資金がどこから出るかということまでも、私は調べる必要はないのであります。
  93. 野原覺

    野原委員 この問題は実は今日裁判所に告訴されて、未解決の状態にあるということを私は聞いております。この点について、この文部委員会で伊藤委員があのような御発言なさされたのでございますから、私はときをあらためて具体的な資料の提出を伊藤委員あるいはその他のものに要求いたします。もし具体的なものが出せない場合には、はつきりその責任を追求したいと思います。これは委員長においておとりはからいを願いたい。第三の御質問は、実は大臣にお尋ねしますが、特定の政党、自由党とか社会党とか、今日日本にたくさん党があるわけでございますが、その特定の政党がある特定の主義主張を宣伝して、しかも特定の団体を攻撃した文書を、学校の組織を通じて流した、そういうことが日本の憲政史上、政友会、憲政会の昔から今日までにあつたかどうか、御所見を伺いたい。
  94. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 そういうことがあつたかどうかは、私は調べておりませんから知りません。
  95. 野原覺

    野原委員 とんでもない御答弁です。実は、最近こういうものが、自由党報でございますが、自由党という特定の政党が教数職の政治活動をなぜ制限せねばならぬかというような表の見出し、裏には、あぶない、あなたの子供、日教組の無差別爆撃計画、こういうような新聞を印刷して、数百万枚学校の組織を通じて全国のPTAにまかれたという事実を、あなたは知らないとおつしやるのですか。
  96. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 憲政史上そういうことがあつたかなかつたかという質問だから、それは知らないと言つた。自由党の方でそのビラをまかれたことは、私も承知しております。あなたの質問が、昔からそういうことがあつたかなかつたか、こういう話だから知らないと言ったのであります。また近い実例をいいますと、日教組というものは、これは政党であるかないか、おのずから議論がありましよう。しかし日教組がやはり同様この法律に反する宣伝ビラあるいはパンフレツト様のものを盛んに学校の先生を通じて、PTA、全国にわたつて流しておる、こういうこともあります。昔からそういうことがあつたとか、なかつたとかいうから、それは知らないと言つたのであります。
  97. 野原覺

    野原委員 憲政史上ということを巧みに体をかわされたのでありますけれども、憲政史上という言葉日本教育史上と改めても一緒なのです。自由党という政党が、こういうようなビラを最近数百万枚実は流したのです。これは大臣も参議院その他においてご質問を受けておりますから、よくおわかりのことと思います。そこで私はお尋ねしたいのですけれども、ある特定の政党が、こういうようなビラを学校の組織を通じてPTAへ流すということは、教育基本法第八条第二項に抵触するとお考えにたりませんか。
  98. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 教育基本法には抵触するわけはありません。
  99. 野原覺

    野原委員 教育基本法には抵触しない、こうおつしやるわけですか。その点の事由は十分のみ込めませんけれども、それではお尋ねいたします。教育公務員特例法という法案を今この会議に出されておるのです。この特例法のあの改正案が成立した場合にはこれは抵触しないでしようか。
  100. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 抵触いたしません、これは教材として配つたのではないのです。PTAの方へ配つてくれと言つたのです。学校の教室へこれを持ち込んで、これに基いて教育をしろということはどこにもありません。それはまつたく見当逃いではありませんか。八条の二項、特にこの法律においては、特定の政党を支持し、または反対する、こういうことに限定してある。従づてそれがすぐにどこの政党を支持するというものではありません。そういうように私は思います。これは文章をお読みにたればすぐわかります。
  101. 野原覺

    野原委員 それでは私はあまりこまごましたことはお尋ねしたくなかつたのですけれども、しかし重要な点でございますから、ここでお尋ねいたします。大臣は教育公務員特例法改正法案が成立した場合にもにも抵触はしないと申されるのでございますが、教育公務員特例法のあの改正案文を読んでおりますと、国家公務員の例によると書かれておるのでございましよう。国家公務員の例によるということになれば、人事院規則が適用されると私は思うのでございますが、それでも抵触したいとおしやられますか。
  102. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 ちよつと私考え違いをしておりました。(「あやまれ」と呼ぶ者あり)あやまる必更はない。
  103. 辻寛一

    辻委員長 不規則な発言は御注意ください。
  104. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 教唆扇動というものにはかからない、こういうことを申し上げたのであります。あなたの御質問が、基本法の八条の二項に抵触するかどうか、ここから出発したのでありますから、私はそういうふうに思つた。それは続き合いから行けば、当然中立性を確保する法律、その方へ結びつかなければならぬりくつですから、そういう意味に私は考えて御答弁申し上げたわけであります。  そこで今の問題になりますが、これは人事院規則に、特定の政党を支持し、または反対する目的とか、それから選挙において特定の候補者を支持しし、または反対する目的というように目的が限定してあります。だからこれを一口に言うと、党勢拡張のため、あるいは選挙運動のため、特定の内閣を云々、つまり内閣の支持もしくは倒閣、それからあるいは決定した政策の実施妨害とか、こういういろいろ政治目的というものが並べてあります。そうしてその目的をもつて一定の行為をした場合にこれに該当する、こういうことになりますから、今のような場合はこれ該当するかしないかということになると、私は大体目的の点ですでに該当しないと思いますが、それは実際の各個の場合について、その実情を見なければ判定はなかなかむずかしいと考えます。
  105. 野原覺

    野原委員 実情を見なければわからないというのでございますから、あるいは抵触する場合もある、このような御答弁だと思うのでございます。この点は私はあらためて人事院規則その他についての幾多の疑問がございまするから究明いたしたいと思つております。人事院規則の第六項第七号を読み上げてみますと、「政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。」この場合は懲役三年、罰金十万円というものがひつかかるわけです。大臣はこの第五項に政治的目的というものがあるから、政治的目的がなかつたならいいじやないかと言われるが、自由党の広報が学校に流され、それが学校長に入る。学校長は職員の手を通じてこれがPTAに用付されたといたしましたならば、これは明らかに第六項の第七号に抵触するではありませんか。それでも人事院規則に抵触しないとおつしやるのですか、いかがですか、御答弁願いたい。
  106. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 人事院規則につきましては、私が有権的な解釈をする立場ではありませんけれども、しかし先生が人事院規則に書いてあるような目的をもつて編纂、配付あるいはこれらの行為な援助するということでおれば、これは入る場合があると思います。ただこれは私としてはそれぞれの実際の場合について、たとえばどういう方法で配布したか、あるいは中身も見たいで頼まれたから配つたというような、それぞれの場合がありますから、それぞれの実際の場合について判定しなければ、ただそれが配られたということだけでは判定ができない、こういうことを申し上げたのであります。人事院規則そのものについては、これは御承知通り人事院規則というものは……(発言る者あり、聴取不能)これは内閣理大臣がこれを……(発言する者あり、聴取不能)人事院がつくつたのでありまして、それについての有権的た解釈は、私としては差控えなければならない、こういうことです。   〔発言する者あり〕
  107. 辻寛一

    辻委員長 関連質問ならお許ししますが、不規則なf発言はお慎しみ願います。ちよつと委員皆さんにお願いいたしまするが、重要なる発言でございますから、速記の完全を期したいと思いますので、正規の質疑応答の際はどうかお静かに顧います。
  108. 野原覺

    野原委員 人事院規則は人事院がつくつたかどうかというようなことな私は聞いておるのではない。――よろしいですか。教育公務特例法の改正案によりますと、人事院規則を適用するということ々あなたは改正案として出しておる。「例による」という言葉で出しておる。しかもかくのごとき二十項目に近い疑惑のあるものをこの改正案では打ち出されたいで「例による」というように簡単に片づけられておるから、この点について私は問題があると思つて、ほんの一端だけ質問をしたのです。ところがあなたの今の御答弁では、今日の教育基本法の第八条第二項には自由党報のあの流し方はかからないけれども、しかしあなたが教育の中立を維持しなければならないというこの法案に抵触するということがはつきりわかつたのであります。教育の中立を維持するためにこの法案を自由党の諸君が出しておりながら、実はその教育の中立を維持する目的に抵触するようた流し方をやられて平然とされておる。その点について矛盾を感ずる。だから私はこの問題については、あらためて二つの法案の疑義のある点を徹底的に質問いたしますが、最後に一点、共産党がその機関紙を自由党報と同じ方法によつて学校の組織を送じて流しても、今日の教育基本法は何らとがめ立てはできないと解釈してよろしゆうございますね。
  109. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 教員のそれについての認識の問題ですが、りくつは同じでしよう。
  110. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 竹尾委員の御質問に対する国警長官の御答弁の中で、現在日教組の中に共産党の党籍のある者が数百名おる、二、三千名はいわゆるシンパがおる、こういうお話がございましたが、数百名というとあまりに漠然としておりますが、いま少しはつきりした数字は言えませんでしようか。
  111. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 数百名と申しますと五、六百名とか六、七百名とかいうのが常識じやないでしようか。
  112. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 文部大臣は、国警の方のその数字というものは確認なさつていらつしやるのでしようかどうでしようか。
  113. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 私は、日教組内の共産党の党員の数を確認しなければならぬ立場じやありません。ただこれは、国警の方からそう聞いて参考にはいたします。しかしながら、共産党員が何人おつて、改進党が何人おつて社会党左派が何人おつて、自由党が何人おるというようなことを調査しなければならぬ、また確認しなければならぬ立場じやありません。
  114. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 夫は、ただいま竹尾委員から、名前まであげて、国警長官に御説明願いたいと申されたのでありますが、私もまつたくそれは同感なんであります。国警長官はこういう公開の席だから名前は言えないと申されたのでありますが、また文部大臣のただいまの御答弁も、私は非常に遺憾に思うのであります。なぜ遺憾に思うかと申しますと、過日からきようにかけてのこの委員会における論点が、いつも日教組は赤だといわんばかりの表現をして、この法律案の正当性というものを理論づけようとしておられるのであります。ところが、過日も申し上げましたように、これからこういう重要な法律案審議する上には、あらゆる資料がたければ、本格的な審議には入れないのであります。従つていま少し親切な御答弁、親切な資料をいただきたい。日教組が赤だ赤だといわんばかりの表現をして、全国民に対してこの法律案の正当性を植えつけておられる。われわれから言うたら、日教組の問題は、この法律案審議いたしまする上のワン・ポイントにすぎないのであります。これはいずれ申し上げますが、すべてこんな不親切な法律案の出し方というものはありません。国民の基本的人権に属し、しかも今後の教育がどうなるかわからないようなかかる重要な法律案を出しておいて、単なる通り一ぺんの提案理由説明でもつて、ただ漠然とした中立性であるとか何であるとかというようなまことに不確定なものをもつて説明なさつておるのであります。われわれが今後審議いたします上にも、前会のときにも私は詳しい資料を要求いたしましたが、今の大臣の御答弁はまことに不都合千万である。外国においては、かかる法律案提出の仕方というものは絶対にございません。外国ではこういう法律案を出しますときには、詳しい資料をつけて、かくのごときだからみんな審議してくれ、国民みな納得してくれ、こういうのが法律案の出し方なんであります。文部大臣はこの点どうお考えになりますか私は知りませんが、こういう法律案の出し方はまことに非民主的な不都合千万な出し方なのであります。今私が党員は何人いるのか、シンパは何人いるのかと聞いたところが、国警長官は、数百名という言葉は五、六百名か六、七百名のことだという。こんな不都合な答弁はどこにあるか。竹尾委呉からも御請求がありましたように、この点は非常に重大な点です。私はそういう御答弁をされるのならば、あらためてこの会は秘密会にして、党員の名前を言うていただきたいのであります。委員長、ぜひこの点をとりはからつていただきたい。
  115. 辻寛一

    辻委員長 その件につきましては、理事会を開いて相談をいたしましよう。
  116. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 具体的に名前を言うことは個人的の人権をそこなうことはなはだしいと考えまするので、私の方といたしましては、現に被疑者として検挙されたという場合は別でありますけれども、そうでない場合に、だれは赤だだれは黒だと言うのは警察としては慎まなければならぬと考えております。
  117. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 自由党の方から名前を要求しておいて、名前を言うわけに行かないというのはおかしい。党員の名前を言うことは、国警長官として遠慮される必要はないと思うのです。そうでしよう。合法的な政党なんですからかまわないと思う。ぜひこれは秘密会でも開いてひとつ発表してください。
  118. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 私の答弁に対する御質問の部分について山崎委員にお答えいたします。   〔「答弁の要なし」と呼び、その他発言する者多し〕
  119. 辻寛一

    辻委員長 御静粛に願います。
  120. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 山崎君は、赤だといわんばかりのことを言うと言われるが、いわんばかりのことということはどういうことかわかりませんけれども、日教組の動向について私が今まで申し上げたことは、日教組自身の書類に基いて言つておるのでありまして、具体的にお聞きくださればいつでもお返事を申し上げます。赤だといわんばかりという意味はどういう意味か知らたいが、決してそういう意味の発言はしたつもりはございません。そういうふうにおとりになるならば、これはやむを得ません。  それから、こういう法案を出すには資料が足らぬと言われますが、私どもの方へ御要求があればできるだけの資料は出します。外国ではどうか私はよく知りませんが、外国の例に必ずしもならわねばならないなどというりくつはないと思います。  その次には、日教組に共産党員が何人あるかということを文部大臣が全然知らずにおるということはおかしいと言われまするが、先ほども申し上げたように、日教組の中に自由党が何人おつて、改進党が何人おつて、共産党が何人おつて、その中で社会党左派が圧倒的であるとか、さようなことは私どもは知る必要はないのであります。もし文部大臣がそれを知ろうとすれば、あなた方の一番きらいな思想調査をせざるを得ないのであります。   〔「関連質問」と呼ぶ者あり〕
  121. 辻寛一

    辻委員長 山崎君。山崎君にお許ししました。山崎君、もう一問にしてください。
  122. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 私が申し上げているのは、日教組内のグループ活動についてという資料が文部省から出ているのでありますが、これを見たつて具体的な事実はつかめない、しかるに、日教組内に何人共産党員がおるかというさつきの竹尾委員質問に対して、たまたま国警長官は数百名と言われたから、もう少し幅を狭くして、焦党をしぼつて、はつきりしたことを言うてほしい、そうしたければこういうようなものを出されても確実な判断はできないということを言つているのです。日教組を、ただ言葉の上で赤であるとかいうようなことをいつも言つて、国民大衆の目の前へ持つてつて、今度の二つの法律案の正当性を植えつけよう、植えつけようとするようなことではわれわれは満足できないので。従つて国警長官から、日教組内に党員が何人おるか、数字をもつとはつきり言つてくだされば、実際言つたらこういうものは判断する資料にもなるんです。それを言つているのです。(「五人あろうと十人あろうといいじやたいか」と呼ぶ者あり)五人や十人いいじやないか、そういうのではないのだ、そういう問題を究明しないのならば、何がゆえにきよう国警長官を呼んだんですか。従つて私ははつきりした党員の数、名前をはつきりしてください、こう言つているのです。
  123. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この日教組内のグループ活動についてという資料は、これはさきに参議院の文部委員会で私の方に資料要求がありました。それでまとめて出したわけであります。あれは参議院の高田なほ子委員から請求がありましたので、それで私の方はまとめてお出しいたしました。その資料でございます。
  124. 坂田道太

    坂田(道)委員 国警長官に対してせつかく……。   〔発言する者多く、議場騒然〕
  125. 辻寛一

    辻委員長 委員長は公平にやつております。必ずしも発言を求める順序ばかりではありません。公平にやつております。坂田君に発言を許しました。
  126. 坂田道太

    坂田(道)委員 日本共産党に中央グループ指導部の機関誌といたしまして教育戦線というものが出ておることを、この前の参議院の公安調査庁長官の答弁にも、また国警長官の答弁にもありましたが、あるいは教育労働者という機関誌があるという発言があつたのでありますが、この点は事実でございますか。
  127. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 教育戦線の点は私は衆議院の本会議でも申し上げたかと思つておりますが、これは日教組中央グループ指導部から出しておる秘密機関誌であります。われわれ入手するのに非常に困難をきわめる機関誌であります。また教育労働者は、これは日教組の全国教育労働者統一委員会、これも地下組織でありますが、それによつて発行されている秘密機関誌であります。
  128. 坂田道太

    坂田(道)委員 その第八号に「党の拡大と強化について」という項目がありまして、「われわれは同志徳田書記長に導かれる中央への限りない信頼の下に固く団結し思想的組織的な一切の欠陥を克服するため、1、党内教育方針に従つて学習運動をすすめ真に革命的な党風をうちたてる。2、党員を徹底的にふやし、各学校に細胞を確立する。3、細胞をきそに学級G指導部を確立する。4、G指導部はG機関誌を定期的に発行する。」ということが書いてあるようでございます。さらに第十二号におきましては、これは各都道府県G指道部に対するものであるようでございますが、「日の丸、君ヶ代」という項で「天皇制軍国主義のシンボル」であつてこれはいけない、」日の丸や君ヶ代を国旗国歌として扱うことにはあくまで抵抗し、米日反動が今日までおしつけてきた政治的意図をバクロし、此の旗と歌の歴史を教え「反米反吉田反再軍備の国民的統一行動」と「平和政府樹立」の必要性と重要性を教職員並びに学生、生徒、児童や父兄、国民大衆に明かにし、民族解放民生統一戦線の強化と拡大に役立てねばならない。」というようなことを書いて、非常に下部組織に対しまして、共産党の日教組内における一つの地位を確保せんとし、また彼らの考えておりまする学校の自生管理、それからただいま申しました反吉田、反再軍備、反米というようなことを生徒、児童に教えるべく教唆扇動しておると思うのでございます。またある材料によりますと、「民族の解放と平和を目指す学校の自主管理。」という中で、「学内、地域の統一戦線を強め、反戦、平和、反フアッシヨ、独立に向つて学内の授業、行事等の一切の運営を教師と学生、生徒、児童と父兄の手で自主的に管理する権力を作り上げてゆかねばならない。」あるいはまた「学生、生徒、児童の自由活動を最大限に発揮すること。軍国主義に反対し、民族の独立と平和を求める自主的活動(自治会活動、サークル活動、行動自衛隊)」こういうようなわれわれから考えますならば、非常に恐ろしい一つ考え方でもつて、あの日教組の、厖大な組織を通じてこれを教材とし、あるいはその子供の生活を通じて浸透させておるように思えるのでございますが、国警長宮はこういうことに対しまして日教組内に対して共産党の一つ考え方、国民戦線統一の一つ考え方、あるいは学校自主管理の考え方、あるいは君ヶ代なり国旗というものを廃止しなければならないというような考え方を植えつけようとしておるという事実はお認めになりますかどうか、はつきり御答弁していただきます、
  129. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいまお述べになりましたような事柄は先ほど申しました教育戦線とか、あるいは教育労働者という秘密機関紙たり、また先ほど申しました全国グループ会議とか、あるいは地方グループ会議、県教組グループ会議というところで論議をいたしております内容だと私は承知をいたしております。その点は聞違いがございません。私の方で教育戦線等のもので入手をいたしておりますものにつきまして、もし必要がございますならば資料として提供いたしましてもよろしゆうございます。
  130. 坂田道太

    坂田(道)委員 もう一点斎藤長官にお伺いしておきたいのは、日教組内のいわゆる統一委員会、統一派というものは、共産党と断定できるかどうかは存じませんけれども、少くともこういう共産党を受入れるところの一つの容共的な傾向を持つたたちであるというふうにわれわれの調査ではうかがわれるのでありますが、数が何人あるとかたんとかいう問題は別といたしまして、統一派というものは容共的な人たちのただいま申しました共産党のGグループ運動を受入れる一つのものであるというふうにお考えであるかどうか、その点をひとつお伺いしておきます。
  131. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この統一委員会方式は、御承知のように各労働組合の中に共産党がいかに自己の勢力を伸張させて行くか、そうしてその労働組合を自己の主張の通りに動かすように下から突き上げさして行くかという組織形態でありまして、この統一委員会中心は共産党の細胞グループが中心になりまして、そうしてこれに同調する人たちをもつて構成して行くというのがあらゆる場合におけるやり方であります。日教組の中においても同様でございます。
  132. 坂田道太

    坂田(道)委員 日本共産党の内部の機関紙に書いてあることで、昨年の三月と十二月を比べてグループの確立が急速に伸び、いわゆる共産党の勢力も伸びて、質が高まつて来た。あるいは学校の自主管理の方向が実践を通じて確認された。あるいは教員が労農同盟の結節点であることが、実践を通じてつかみ得るところまで来たというふうに反省いたしておるようでございまするが、いろいろ調べてみた結果、たとえば京都の旭丘中学校におきましては、資料にもありますように、ほとんど共産党の一つ実践が行われておるように思うわけでございます。そういたしますると、たとえば学校の自主管理という一つのことを共産党が指示し、そうしてそのグループ活動が学校に入つて行く、そしてまたその学校が自主管理を、たとえば旭丘中学みたいに行われる、そうしてたとえばその生徒たちは、この共産党が指示しておりますようた反吉田、反米、あるいは反再軍備、あるいはまた日の丸に対して反対である、あるいは国歌を歌うことに抵抗をする、それから皇太子あるいは天皇、そういつたものを侮辱する、こういつた一連の関係学校内に現われて来たという場合においては、これは明らかに私は教唆扇動ということに当てはまると思うのでありますが、この点につきまして文部大臣の御答弁を煩わしたいのでございます。
  133. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 旭丘中学校における教育実情は、私は明らかに共産党を支持させるに足る教育である、かように思います。ただそれが外部からの団体を通して、あるいは学校外の教員のグループ、そういうものの働きかけとして、これが教唆扇動されておるという事実があれば、私はこのいわゆる節二の法案に該当するものである、かように考えております。ただつけ加えて申し上げますのは、私は決して先ほどからお話がありました日教組そのものを赤だというような断定はしておらぬのであります。さような意味のことは、この席においても申した覚えはないのであります。ただ私が常に残念に思いますことは、だんだん別らかになつて参りましたように、とにかく共産党というものが相当隠微の問に日教組というものに影響を与えている。それで日教組の諸君がそれを知つてつてその方向へ動いておられるならば、これは何をか言わんやであります。しかし知らずに隠微の間に共産党の働きかけに乗ぜられて、自然にその線で動いておるということであれば、私は日本の全教職員諸君のためにも、また日本教員のためにも、まことに痛嘆にたえない。この点日教組自身が十分しさいにその点を検討せられて、そうして反省を加えられ、日本教育を守るために真に学校の先生の団体として、あるべき姿において健全なる発達を期せられる、こういうことを切に希望しております。
  134. 坂田道太

    坂田(道)委員 私は国警長官並びに公安調査庁長官に対する質問を留保いたしまして、このくらいにとどめます。
  135. 辻寛一

    辻委員長 辻原君。
  136. 辻原弘市

    辻原委員 簡単に国警長官に一、二点お伺いしておきたいのでありますが、最初に、この出された資料について、一応共産党のグループ活動についての資料だということで提示されておるのでありますが、先ほど山崎委員から指摘のありましたように、私もこの程度の資料はかえつて非常に漠として、われわれの判断するに足る資料であるというふうには受取りがたいのであります。と申しますのは、先ほどからだんだんの論議の中で、主たる論議の争点というものは、共産党の活動の実態がどうであるかということに主眼点が置かれておるようであります。あたかもこの共産党の活動と日教組の組織活動が軌を一にして、その間まつたく日教組が共産党の指導方針に基いて、その職員組合としての活動あるいは労働組合としての活動を行つておるかのごとき印象でもつて話をせられておる向きがあるのを、私は非常に遺憾とするところであります。  そこで私が申し上げたいのは、質問の要点の第一は、国警長官が把握せられておるところで、――私は共産党の活動は、今日の段階において、合法政党である以上、その活動のあることを否定することは本来間違いだと思う。あることが今日の段階においては一つの政党として当然である。それをどういうふうにわれわれが扱うかは、それぞれの政党は政党としてのそれぞれの立場においてこれをやるのであつて従つて日教組の中に、日教組の一つの組織活動としてそういうふうに活動が存在するというふうにも、国警長官のお話は受け取れのでありまするが、そういうふうにお考えになつておられるのかどうか、私は重要なる委員会において、国民に誤解を与えるようなやり方でもつて、いずれの場合を問わず、この種の論議を重ねて行くことは大いなる間違いであると思うので、国警長官は今日提示された資料並びに先ほどから説明のあつた点について、日教組との関連においては、あなたはどういうふうに把握されておるのか、その点なひとつ明確にしておいていただきたい。
  137. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 まずこの資料をお出しいたしましたのは、先ほども申しますように、参議院の文部委員会で高田委員からの御要求がありましたから、それでは私の方でさしつかえのない程度でお出しいたしましようというわけで、お出しいたしたわけでありまして、私はこの資料を出して、この法案を有利にならしめようということは考えておりません。その点は誤解のないようにお願いいたします。  そこで私どもといたしましては、この資料によつてどう判断をなされようと、これを皆さんに自由に御判断をいただきたい。もしこの資料が間違つておれば、ここは間違つておるということをお教えいただきたい、かように私は思います。  それからこの日教組内におけるグループ活動、あるいは統一委員会活動というものと、日教組そのものの活動についてどう思うかというお尋ねだと思います。私からこの日教組自身の活動、あるいは日教組自身できめられた活動方針、綱領というものが、この日教組のグループ指導部の指導方針というものとどれだけ近寄つて似ておるかということをあげることはどうかと思いまするから、これは差控えたいと存じまするが、先ほどから申しておりまするように、グループ治動なり統一委員会活動というものは、共産党の隠密活動、地下活動、秘密活動でございます。日教組自身がきめられた活動というものは日教組の活動でありまして、これは別個のものだと忠つております。しかしその両君の活動がどの程度近寄つておるか、これは日教組の行動方針とかいろいろなものをおきめになつておられまするから、それとあわせて御検討をいただきたいと考えます。
  138. 辻原弘市

    辻原委員 ではいま少し具体的にお聞きいたしましよう。共産党のグループ活動、これは共産党は党として活動をやつておるのでありましよう。従つてこれは単に日教組のみならず、先ほど国警長官の答弁の中にもありましたが、労働組合に対しては、あらゆる労働組合に対してそれぞれの党勢拡張の意味においてその働きかけは当然なされるでありましよう。あるいはその他の階層に対してもたされるでありましよう。しかしそのことといわゆる日教組が共産党の活動方針を支持して云々というような印象とは別個の問題であります。この点は私は明確にしておきます。  そこで私は重ねてお聞きしたいのでありますが、国警長官は現在少くともこの種の資料はお持ちになつていると私は思いますけれども、その点は、そういう外部からの働きかけは、自由党であつても、社会党であつても、共産党であつてもおやりなるでしよう。それぞれいろいろな立場においてこれはやられると私は思う。しかしそのことと、組織自体がその方針を支持し、その一つの指導原理によつてやるということとはこれは別個である。その点の分明は、私はいろいろな角度において判断できると思う。そこであなたにお聞きしたいのは、今ここに日教組のグループがたくさんあるというこのことだけを、この資料を、かりにこの種の問題について白紙である人が持つてつて判断したとするならば、おそらく日教組のそれぞれの機関、これを執行する立場にある者たちが、そのグループであるというふうな直接的な結びつけをすぐにいたすに相違ないと私は思うのです。そしてここで今お持ちにたつておられるあなたの資料によつて、まず第一にあなた方はよくそういうふうに――私は国警長官はさように申したとは言いませんけれども、ときたま聞くのでありますが、日教組の上層部は赤であるというふうなことをときたま言われる。そこで赤であるという限りにおいては、それは私はそれらの指導者が共産党員であるということを意味しているのだろうと思いますが、この執行部の中に共産党員があるのかないのか、その点をひとつ明確にお聞きしたい。同時に、各府県における指導階級というものには共産党員がほぼ何名あるか。あなたはその点について、おそらくこの種の調査を出される以上は、そのくらいの調査はやつておられると思うが、ひとつ日教組の執行部の中に何名党員があるか、その点について、明らかにしていただきたい。
  139. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 治安の必要上そういつた情勢を絶えず把握をしておるのでありまして、これを全部はだかで申し上げるということがはたして適当であるかどうかということを考えておるのであります。そこでたとえば中央執行部に何人と申し上げれば、大体この中央執行部の人数は非常に少い、そうすると、そこで特定されて参ります。従つて、そういう意味において、どこに何名、大体総体として何県がどのくらいということはわれわれはさしつかえないと思いますが、あまり狭いところで何名と、こう申し上げることはいかがであろうかと思いますので、差控えさしていただきたいと思います。
  140. 辻原弘市

    辻原委員 そういうことはおかしい。これが非合法の政党であり、非合法活動をしているなら、確かにそれは国警長官の言うこともよくわかる。かつての治安維持法下におけるところの場合の問題であれば、それはそういうことも答弁になるかもしれない。しかし今日共産党は合法政党である、これは共産党をきらいであるとか、すきであるとかいう問題は別にして、そのことはだれしも否定できないと思う。そうすると、かりに私があいつは社会党員だと言われたつて決して私の人権を無視するものでも何でもない。むしろ私はそれを誇りにいたします。それと同じであつて、その中にだれが共産党員であると言つたつて、何でそれが人権の蹂躙ですか。まして、このことは今日法規の上で届け出ておるじやないか。共産党員は、それぞれ所属する者は党籍を明らかに届け出ることになつておるじやないか。(「それじや日教組も届け出たらどうだ」と呼ぶ者あり)長官は責任があるから尋ねておるのだ。   〔「答弁の必要はない」と呼び、その他発言する者あり〕
  141. 辻寛一

    辻委員長 御静粛に願います。
  142. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 御承知のように現在は届出制度は私はなくなつておる、こう考えております。しかしながら共産党員の中で党員として登録されておる人、あるいは登録されておるけれども、秘密党員として所属されておる人、いろいろあることは御承知通り考えております。共産党の方で発表されておる党員と、あるいはそうではなく、共産党に所属されておるけれども、しかしこれはもう秘密党員としてやつておられるというのは、これはやはり党員だと考えておるのであります。そこでこの人は党員だろうということになりますと、これは秘密党員というようなこともありますから、これは党員であるとかないとかよけいな波紋を起しまして、私はよろしくない、かように考えております。
  143. 辻原弘市

    辻原委員 これはしつこいようでありますけれども、先ほど二、三百名であるとか二、三千名であるとか、いろいろな答弁の資料が出されて、とりよういかんによつてはそういう誤解を招くから、委員会審議を的確に進める意味において、その種のことは、当然やはり治安維持という建前に立つて、おそらくこういうものを――この中にはいろいろ書いてありますが、やられておるのだろうと思います。そうであれば、その点を明らかにすることが本日われわれが国警長官をここに呼んだ趣旨もそれで通ずるのであるし、このことが明らかにされたければ、私はおそらくあなた方を除いた一般の国民も、その点に対する的確な判断ができないと思うのであります。(「わかつていることを聞くな」と呼ぶ者あり)わかつておることを聞かないというのならば――君らは君らで調べて当然わかつておるだろうが、それをおれは聞いておるんだ。   〔「答える必要はない」「答弁を要求してるんだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  144. 辻寛一

    辻委員長 御静粛に願います。
  145. 辻原弘市

    辻原委員 登録党員があるかどうか、その点明らかにしていただきたい。
  146. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいま申し上げました通りでありまして、ここで党員が中央執行部に何人おられるかということは差控えさせていただきたいと思います。
  147. 辻寛一

    辻委員長 辻原委員、今の御質問ならば何度お聞きになつても同じだと思います。
  148. 辻原弘市

    辻原委員 私はこの際ちよつと角度をかえて国警長官にお伺いいたします。それはわれわれが委員会審議あるいは国会議員という立場において、この点について、いかなる立場において、またいかなる機会においてこれをお尋ねしても、それについては答えられないというのか、その点を国警長官から明確に承つておきたい。(「言う必要はない」と呼ぶ者あり)この席において言われないならば言われないでよろしい。しかしいかたる方法においても、また国会議員という立場においても、そのことについてどういう手段方法をとろうとも、まただれに対しても、そのことだけは言わぬ、こういうふうに仰せになるのか。その点をひとつ参考までに承つておきたい。本日言わなければ言わぬでよろしい。
  149. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私ただいまといたしましては申し上げない方がよろしかろう、かように考えております。
  150. 辻原弘市

    辻原委員 その点につきましては、本日は言われたいということでありますので、適当な手段方法をもつて国警長官からわれわれは調査をいたすでありましよう。(笑声)  続いて私のお伺いいたしたいことは、先般各地で起つている教職員に対する思想調査の問題について私が質問をいたしました際に、法務大臣は警官の思想調査は不適当であるという答弁をいたしております。これを前提に置きまして国警長官にお伺いいたしまするが、まず思想調査の事実をあなたは知つておられるのかどうか。ここであなたが逃げられないように、私は一本くぎを押しておきますが、思想調査というのは、警官がどういう応答態度でもつてしようとも、その教職員あるいは生徒をつかまえて、やつている教育内容あるいは教育研究等について追究したり、正式にその回答を求めたりしたことを意味しておる。従つてそういう事実について、あなたは先般そういうことは次いというふうな答弁を、たしか本会議でやられておつたように私はかすかに覚えておりまするが、その点についていまだにそういう事実はないというふうにお考えになつておられるのか、承知いたしておるのか、その点をまず承つておきたい。
  151. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は警察官が思想調査をやつておるという報告は受けておりません。またわれわれの方からも、さような思想調査をしてみたらというようなことを言うたこともございませんので、さような思想調査はしていない、かように信じております。
  152. 辻原弘市

    辻原委員 先ほども話が出ておりましたが、静岡において、これは大新聞が書いておりましたので明らかであろうと思いまするが、国警隊長が思想調査の事実を認めて、それに対して遺憾であつたという陳謝をしておりまするが、これが陳謝であつたかどうかということは知らないけれども、ともかくその事実があつたということを認めておる。このことについてあなたは知つておられるかどうか。また現地に行かれて、そういうことを国警自身としては調査をしたり、あるいはその後の報告を求められたり、そうした点について自主的に静岡の国警本部長から報告があつたかなかつたか、この点についてお伺いしておきます。
  153. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 静岡県の問題は新聞に出ましたので、さつそくこれはまた国会で、問題になると考えまして、どういう状況であつたかということを聞きました。ただいま仰せになりましたように、ある地区署において、この村から教研大会に何人出られましたかということを聞いた事実は、私は報告を受けております。しかしこれは別に思想調査という意味でやつたのではなくて、おそらくそこの地区署の警察官が最近法案が出るとかで、教研大会にどのくらい行かれたのであろうかという軽い気持で聞いたのであろう。大体駐在巡査とか、あるいは署の方にありましては管内においてどういうことが起つている、どういう状態だということを絶えず知つておりたいという考えから、何の考えもなしに聞いたことであろう、私はそう思うのであります。しかしながら最近警察官が教員とものを言うと、思想調査をした、こういう報告をされる。そういう状況であるから、特に教員とものを言うときには相当考えなければたらないということを十分徹底させています。私は悪い意味で申しているのではありません。警察官から何か聞かれたというようなことになると、何か妙な感じを第三者から教員の人が持たれるかもしれない。そういう迷惑を起してはいけないから、そういうことのないようにということは十分江意はいたしておるのであります。従いまして私は各地方では、学校の中でどういう教科内容が教授されているかというようなことを、根掘り葉掘り、ただいまおつしやいましたように、何か職権をもつて回答を迫つたり、あるいは正式に回答を示せというような態度で聞くというようなことは、これは考えられたいことだと考えております。
  154. 辻原弘市

    辻原委員 やり方がどうであつたかは別問題といたしまして、思想調査という概念の範疇に少くとも入る――警察官のやり方はいろいろあるでありましよう。最も巧妙な警察官は、あたかもその調査をしておらないがごとくよそおつてその事実を探知することが、警察官としては手腕力量があるというふうに一般も考え、私もそうだろうと思う。だから従つて強引にひつばつてつたり、あるいは無理な、尋問をしたりしてやること以外のものであつても、少くともその目的をもつてやる限りにおいて、これは思想調査と考えざるを得ないのであります。従つて静岡におけるその種の調査はあつたということを一応国警長官はお認めになるか。  さらにその他の問題については、これはあまり大きく新聞等にはとらえられておらないので、あるいはそれは知らないというふうにお答えになるかもわからないが、われわれは今後これらの問題をも含んで、七日から調査に出かけるのであります。そこで私たちははたしてそのことがわれわれの報告――いろいろあつちこつちで情報その他報告をもらつたことが、はたして信憑性を持つておるものか、あるいはその種のことはあまりやつておらない事実がないと言われるあなた方の主張が正しかつたかどうか、このことについて直接われわれが把握をして参りたいと考えておるが、そこでもし私たちが現在知つておると同じ事実が現地において起つておる。すなわち警察官が思想調査をやり、教員に対してその目的をもつて調査をやつて正式にその回答を求めた、あるいは学校にやつて来てその種のこと々特定の教員に対してやつたり、また特定の生徒に対してそういうような調査をやつたりした事実がもし現われたとするならば、先ほどつたように、先般法務大臣が警官の思想調査は不適当である、こういうふうに言つておるが、国警長官としては、その事実がありとするならば、あなたはどういうふうにこれらの問題について処理されるか。そういう場合は、これは駐在所の巡査がやつたことであつて、そこまで目が届かないから、われわれには責任がない、こういうふうに言われるか、その程度のものはさしつかえないとおつしやるのか、そこの点を私は後日の参考のために承つておきたい。
  155. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私も実際問題について十分真相を御調査をいただきたい、そうしてわれわれの今後の教養に資したいと考えております。もしあつた場合はどうするかというお尋ねで、ございまするが、これはわれわれのふだんの教養があるいは不徹底であつたということに起因するかもわかりませんので、その事能々々に応じまして、適当の処置をすると申し上げるしかないと考えるのであります。御承知のように、各地方におきましては、各府県の公安委員会あるいは市町村の警察においては市町村の公安委員会が、それぞれ責任を持つて運営しておられるわけであります。しかしながらわれわれ中央におきましても教養の責任がございます。その責任がどういうわけで不徹底であつたかというような事実関係を十分調べまして、そうしてそれに即応する措置をすると申し上げるしかないと思います。
  156. 辻原弘市

    辻原委員 最後に一点。事実に即応して善処されるということを承つたのでありまするが、そこで善処の方法にはいろくあろうと思います。ここで事実についてのことをお尋ねすることはやぼであると思いますので、どうやるかというようなことはお尋ねいたしませんけれども、しかしながら善処するという限り、その種のものは警察としては不適当であるということをお認めになつた上でのお話であろうと考えるが、その通りであるかどうか、最後に私は念を押しておきたいと思います。  いま一つは、善処される場合に、よく反省をいたしまして……さようなことでは私は人権に関する問題は済まされないと思います。従つて少くともその事実があつて不適当であるという前提を持ち善処されるという限りは、各管内の誓察官に対しては、その種の調査については不適当である旨、あるいは今後この種の取扱いに対しては、今私が申し上げましたように、不適当であるという前提に立つての通達を流されるとか、あるいはひどい場合においては、その警官に対して、警察官の分限としても、これは基本的な人権に関する問題であるから、当然何らかの行政的な措置があつてしかるべきだと私は思うが、そういう方法をも含んであなたは善処されるというふうにお答えになつたのかどうか、この点を重ねて承つておきたいと思います。
  157. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 善処と申します中にはいろいろございます。ピンからキリまでやり方がございますので、事態に適応した措置なとると申し上げるよりほかない、かように考えます。なおまた御承知のように、今の警察法では私らの力で善処のできる範囲、そうでない範囲といろいろございますから、そういう点もお含みおきをいただきたいと思います。
  158. 辻原弘市

    辻原委員 第一の点がはつきりしない。私が申し上げたのは、善処するという場合においては、当然思想調査は警察官としては今日やれないという建前に立つて、それは不適当であるということを前提にしてやられるものと私は考えます。その通りではないか、こう私は質問申し上げたのである。それを事態に即応してじやわからぬ。いいか悪いかの判断はこれは当然つくはずだ。もしあなたがいいか悪いかの判断も、その事態を見てということならば、それは思想調査というものがいい場合もあり悪い場合もあるということになるのである。さようなことは私はおかしいと思う。その点について、かりに共産党員であつても、警察官が今日思想調査をする権限は持つていないと思う。持っているならば、法的根拠を長官は示してもらいたい。
  159. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 思想調査はよくないということは、私もたびたび申し上げておりますし、そういうことはやるべきでないということをかねがね言つておるわけであります。いまさらここで申し上げる必要もないと思いましたから、申し上げませんでしたが、おつしやる通りの前提に立つて思想調査は警察官としてやるべきじやない、こういう前提に立つて物事を判断しておるのであります。     ―――――――――――――
  160. 辻寛一

    辻委員長 この際お諮りいたしたいことがございます。義務教育学校における教育政治的中立の確保に関する法律案教育公務員特例法の一部を改正する法律案の二案に関する本委員会の公聴会につきまして、先刻議長の承認がありました。理事各位の申合せに従い、公聴会の日時は三月十三日午前十時よりとし、意見を聞こうとする案件は、義務教育学校における教育政治的中立の確保に関する法律案教育公務員特例法の一部な改正する法律案についてとすることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 辻寛一

    辻委員長 御異議ないものと認めます。  それでは次の報告書を議長に提出することにいたします。    公聴会開会報告書  一、公聴会を開く議案   義務教育学校における教育政治的中立の確保に関する法律案内閣提出第四〇号)教育公務員特例法の一部を改正する法律案内閣提出第四一号)  一、意見を聞く問題   義務教育学校における教育政治的中立の確保に関する法律案及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案について  一、公聴会の日時   昭和二十九年三月十三日午前十時   右によつて公聴会を開くに決したから衆議院規則第七十九条により報告する。   昭和二十九年三月三日      文部委員長 辻  寛一    衆議院議長堤康次郎殿  次に公述人の選定についてお諮りいたします。昨日理事会において、ただいま申し上げる各位を選定いたしました。京都大学学長滝川幸辰、私立大学連盟常務理事板橋菊松、評論家小汀利得、お茶の水大学学長蝋山政道、大妻女子大学長河原春作、東京PTA会長塩沢常信、前東大学長南原繁、群馬県島村小学校長斎藤喜博、信濃教育会副会長松岡弘、ただいま朗読いたしました九名の方を本委員会公述人に選定するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 辻寛一

    辻委員長 御異議なしと認めさように決しました。  なお実地調査に委員派遣の件につきましては、本日の議運において保留となりました。明日決定する予定でございます。   〔「関連質問」と呼ぶ者あり〕
  163. 辻寛一

    辻委員長 私はきわめて公平に発言を許しております。必ずしも声の大きい順とか、あるいは手をあげた順では参りません。あらゆる角度から交互に御質疑をやつていただきたいと思いますから、さようひとつお含みをいただきます。なお小林進君は、本日通告順の御質問をお許しいたしますから、関連質問を含めて後ほどゆつくりやつていただきたいと思います。世耕弘一君。
  164. 世耕弘一

    世耕委員 他の委員から、国警長官と非常に重要な問答があつたように私は心得ている。それは思想調査の問題でありますが、大体思想調査なんというものができるのか、思想調査なんというような、そういうことをするとかしないとかいうこと自体がどうかしておりはしたいか、こういうことを話題にすることが間違つているのじやたいか、実情を知らぬ議論じやないかと私は思うので、この点はむしろ国警長宮としてもお考え願いたい、こう思うのであります。  それから、これは問題にならなかつたが、素行調査の問題であります。素行調査は、必要に応じてしなくちやなりません。相手が何人であろうと、治安を維持する意味において、当然しなくちやならぬ。たとえば夜おそく歩いておつたら不審尋問されるのは、これはあたりまえのことである。教員の中で、あるいは怪しい行動があれば、それに対して治安の建前から調査をするのは、これは当然のことです。それが職務じやないかと思うが、私は思想調査するというような問題を取上げることがすでにおかしい、かように考える。この点について、私はあえて国警長官の答弁を求めようとは思いませんが、かりに思想調査をするというなら、何を基本にして思想調査するか、そんなことは不可能であります。従つてそういうことを問題にすること自体が、すでに時代錯誤であるということを私は強く申し上げておきます。
  165. 辻寛一

    辻委員長 世耕君、どなたに御質問なさつたのですか。
  166. 世耕弘一

    世耕委員 いや答弁はよろしい。
  167. 辻寛一

    辻委員長 竹尾弌君。
  168. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私の先ほどの、国警長官に対する日教組内の共産党員の名前を出してもらいたいというお尋ねが、はしなくも波紋を描いたわけで、ある意味で大いに申訳たいと思つておりますが、私は日教組内の共産党員の名簿を、私個人の気持としては出していただきたいのです。しかしこういうものを出されると、われわれが迷惑をするのでなくて、日教組の内部の方々に相当迷惑がかかるのじやないか、そういう気持がありましたので、謙譲の美徳をもつてそれはよろしい、こう私は申し上げたのですが、そちらの席の方からどうしても名簿を出せ、こういう強い御要求があるようですから、きようできないにしても、他日、もし長官のお気持がかわつたたらば、私は大いに出していただいてけつこうだと思うのです。  次はお尋ねでありますが、これは辻原さんのお尋ねだと思いましたが、日教組と共産党とはどういう関係があるか、こういうお尋ねでありましたが、その御発言の中に、日教組の活動と共産党の活動は別個のものであるから、問違わないようにしていただきたい、こういうお言葉でありましたが、私どもの見るところではこの二つのものの関係がきわめて密接不可分になつているように思いますから、その点を非常に心配して私はお尋ねするのですけれども、日教組のいろいろの会合のスローガンであるとか、宣言書であるとか、方針書、こういうものはただ単におざなりで出されるものではないので、その団体の確固たる方針な明示しているものであると私は思います。新潟大会、宇治山田大会、甲府の会議、こういうものの宣言書を見ても、共産党のにおいの強いいろいろの文句がありますが、最後に吉田反動内閣打倒はまだよろしいにしても、民主政権樹立というような言葉が書かれておる。これが共産党のスローガンである民主人民政権の樹立とは誰いておりませんけれども、しかしこれは明らかに労働者独裁を主張するところのいわゆる民主人民政権樹立であると私どもは解釈いたします。さらにこの間私は引用したのですが、十二日某日の日教組のいわゆる実力行使行動方針書の中に、われわれの行動は合法的ではない、遵法的ではないとはつきり言つているのです。こういうことが共産党の方針と合致しておらないかどうか。暴力革命をこの方針書の中で明らかに肯定しておる。そういうことの関係を私は憂えるがために、もう一度国警長官にその両者の関係をお答え願いたいのでございます。
  169. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は共産党と日教組の指導方針というものは、これは別のものであると申し上げました。そして日教組自身の行動綱領というようなものが、共産党の方針とどの程度近寄って来ているかということは、私から申し上げることは差控える、こう先ほども申し上げたのでありますが、ただいまお尋ねになりましたように、きわめて近接しつつあるということは私は申し上げられる、かように考えます。私の方で提出いたしましたグループ活動についてというものには、グループの指導方針が大分出ておりますが、これとただいまおあげになられました日教組の活動方針というようなものとお照合せいただけば相当近接している、かようにお考えにたつていただいて間違いないのじやないか、さように考えます。
  170. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 先ほど私国警長官に党員の数百名の名前を知らせてほしい、こういうふうに申し上げましたが、国警長官は前からの委員会の因果関係を御存じないからかもしれませんが、これは今竹尾委員も言いましたように、非常に大切な点でありまして、竹尾委員はこの名前をあえて要求することは日教組の人に迷惑になるかもしれぬので遠慮したようなことを言うておられますが、これはわれわれがこの法律案審議いたします上において、日教組が迷惑するとかせぬとかいうことはこれは全然関係ないのでございます。私たちは今度できました二つの法律案の最も正当性にどこにあるかということを今後糾明して行かなければならない。ある人のごときはかほどまでに今日の教育が中立性を侵されておるのならば、しかもそれが共産主義によつてむしばまれておるのならば、思い切つて、こういう法律案でなしに、こういう善良な教員にまで迷惑を及ぼすような法律案でなしに、共産主義そのものは非介法だという法律案でも別に出したらばいいんじやたいかという説すらあるのです。それでありますから、今後審議を進めて行く上いおいて、日教組が迷惑をするとかしないとかいう問題ではない。どうぞぜひ数百名の党員の名前というものは、われわれが今後の判断をして行きます上において、ただ抽象的な水かけ論に終るのでたしに、これこれの人間、こういう人間が党員なんだ、これの合計がこれだけおるのだというはつきりした数字を出してもらえれば、われわれの頭でこの法律案審議いたす上において非常に参考になるのであります。判断の正鵠を期する一つの資料にたるのであります。こういう意味からしつこく要求をいたしておるのであります。たまたま竹尾委員から、あなたのお気持のいかんによつたらひとつ出していただきたいというようなお話がありましたが、私はぜひお出し願いたい、かように思うのでありますが、しつこいようでありますが、重ねて国警長官の意見をお聞かせ願いたいのであります。
  171. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいまの御意見はまことにごもつともだとは存じますが、しかしこれらの人たちは、すべて、何といいますか地下活動、隠密活動でやつておられるわけであります。ですから共産党員だと名乗って、おるいは自分は共産党の日教組内におけるグループだということを宣言してはやつておられない。しかしこれも活動の自由、思想の自由でありますから、その人と私は何の何がしということを申し上げることは、これは何らかの法規によるものならば格別、そうでなければ私はやはり人権を傷つけるんじやないか。ことに今日共産教育をやつたつていいじやたいかという方もありましよう、ありましようが、一般的にはそれは困るという人が多い。それであるからこそ私は隠密活動をされるのだと思います。このいろいろなグループ会議に集まつたり、いろいろなことをされるのも、きわめて秘密な方法で集まり、秘密な方法で会議を持たれるのでありますから、そういうものをばくろしてもいいんだ、そしてこれを発表していいのだと、いうような法律でもできれば別ですが、そうでない限り、やはり私らの警察の立場からはこれを申し上げることはいかがであろうか、かように考えておるのであります。
  172. 原田憲

    ○原田委員 ただいま国警長官から答弁がありましたが、私は竹尾さんの質問、山崎さんの質問に触れて、できたらその共産党員の氏名を、きようは出さないと言われるなら、社会党左派の方々が開きたいとおつしやるなら、何らかの形で教えてあげていただいたらいいんじやないか。このきよういただいた資料の中の三十九ページに「一九五三年の回顧」として「……このもり上りは四月選挙の闘いで更に大きく発展し、日政連=日教組三役の頑迷な左社一辺倒の議会主義はいたるところで組合員の批判をよび、いくつかの単組や支部でははつきりと打破られた。……統一をかちとつた京都では、自主管理につながる実力闘争によつて定員増をかちとつた上桂中学校、悪徳校長をおいだした七条第二校をはじめとする地域とむすびついた実力闘争がすすんだ。……」これが「一九五三年の回顧」として言われた。そして最後の四十三ページには、「中央委員会の成果と欠陥――とり組むべき問題点」として、「今度の第三十二回中央委員会で」、これはおそらく山梨県と思いますが、「統一委員会が統一と団結の政策を訴えた成果と欠陥は次のようにまとめられた。1、闘いに起つにあたり敵と味方の力の度合をよく見比べ長期の闘いをくまなければたらないこと。2、何よりも統一と団結が大切であるということ。  以上の二点についてはズバリ受け入れられた。  日教組の中央委員会で統一委員会の政策がこれほど大きな影響を与えたことはたかつた。ある中央委員は、「これほど気持のよい会議はかつてなかつた」と述懐し統一委員会の政策を前面にかかげて発言した京都代表に、見しらぬ他県の代表が握手をもとめてきた。山梨の中央委員に「あなた方と一しよに行動できてよかつたです」というと、「やあ、どうもあんた方に引きよせられた感じですよ」と答えたという。くりかえし一しよにやろうということなんですといつても、引きよせられた感じですと答えたという。従来の慣行だつた執行部案おしつけの形式的議事進行のワクは、危険を前にした統一と団結の要求を前になすことをしらなかつた。執行部自体もそれをさけてきた。  特徴的なのは組合の力のよわいおくれた県の代表が発言し、考えさせる問題を次々と日教組全体の問題として投げかけたことだ。  会議は、組合活動をすすめ味方の力をつよめてゆくために、大衆の自発的行動をもり上げてゆくために、真の障碍がどこにあるかを話し合う方向へと一歩をふみだした。  これは日教組にとつては画期的な成果である。組合がほんものの組合になろうとして脱皮しはじめたのである。」こういうぐあいに書いて出しております。これは今辻原君がうそばかりだと言われるけれども、共産党の統一委員会の方では、この成果をこういうぐあいに書いて出しておるのです。われわれが見ますと、これはグループ活動を通じて日教組の活動に溶け込んで行つて、何とかして日教組の組織を共産党でとつてしまおうという力が、今や日教組の中に一線を画したと言つているところの左派の諸鴛よりも、上まわろうとしておる事態であると考えておる。国警長官が先ほど竹尾さんに言われた答弁に間注いがないか。もう一度念を押して聞いておきたい。
  173. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 たびたび申し上げておりますように、あるいはここで御審議の便宜のため、わかつておる名前をみな申し上げる方が御便宜になるかもしれないと思います。しかし私どもといたしましては、治安の必要上こういう情勢な把握して、いざ革命とまで行かなくても、相当の擾乱が起るというようなときに備えるためにやつておるのでありまして、そういう資料を一々人の迷惑になつたりすることまでかまわたいで発表することは、方針として厳に慎しんでおるのであります。従いまして、治安機関の持つているそういう個人の氏名に関する問題は、法律等によつて定められるものでなければ言わないということを確立いたしたい。またその方針でおりますので、便宜主義で、その方がこの場合便宜であろうということで申し上げることは、将来の私どもの調査活動を不健全なものにするおそれがありますので、この原則はどこまでも守らしていただきたいと思います。
  174. 小林進

    小林(進)委員 関連して……。斎藤国警長官にお伺いいたしたいのであります。先ほどから共産党の問題に対して論争が行われているのでありますが、先ほどのお言葉の中に、日教組五十万組合員の中で、数百名の共産党員がいる。われわれは五十万名の教職員の中のわずか数百名の共産党員の問題を論じておるのでありますが、そのお話を承っておりますと、これはまさに千分の一にも及ばないわずかな数字だが、この数字が問題なんであります。この千分の一にも満たないわずかの数字を資料にして、自由党の反動政府と反動の文部大臣は、また日本教育を逆転せしめるような反動立法を今つくりつつあるのであります。従つてあなた方今ここで証言せられるその千分の一か二千分の一に満たない少数の共産党員ということが、まさにわが日本教育と文化を大きく逆転せしめるような重大な資料なのであります。こういう重大な資料を今あなたはここで証言提供しておるのでありますから、その発言はしごく慎重であり、しかも緻密でなければならぬと思う。にもかかわらず、先ほどもあなたは日教組五十万の組合員の中に、共産党員が何名おるか、数百名おるという。数百名などというのは、権威ある国警長官の立場としては、私は非常に不信きわまる粗雑な態度であると思う。再び数百名とは何ぞと聞き直したら数百名といえば人聞の常識で五百名から六百名、六百名から七百名の間だという。そんた失敬な話がありますか。そんな不誠意な答弁がありますか、今その数字が、日本教育がどうなるかという根底に横たわる重大な問題である。彼らはそのわずかな数字を、唯一の錦のみ旗を持つたがごとくにそれを掲げて日本教育を反動化し、自由党の政策の前に叩頭低身をして、また画一の教育に湛進するよつなあやまつた教育を行おうとする。今その数字を明確にお示しを願いたい。
  175. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 数百名と申しましたのは、われわれの方で確認しておるものが数百名でございます、かように申しました。従つて確認されたいものがどのくらいあるか、これはよくわかりません。そこで数百名という責任のない数字だとおつしやいましたが、私としましては大体の傾向を言つておりますので、時々刻々聞きまして、そうすると六、七百人程度だなとか、数百名だなというように覚えておりましたので、それで御答弁申し上げました。確実な数字をどうしても御必要であれば、数字はうちに帰ればすぐわかりますから、お出しいたします。ここで私は何百何十何名という数字な持つておりませんから、私の記憶として数百名、これに間違いないと考えておるのであります。
  176. 小林進

    小林(進)委員 その数字はわれわれが今二法案を論ずる基本になる重大問題でありますから、長官からその数字を即刻提出されるように、委員長においておとりはからいを願いたいと思います。
  177. 辻寛一

    辻委員長 承知いたしました。
  178. 小林進

    小林(進)委員 次に長官にお尋ねしたいのは、いやしくも日教組と称する五十万の教員は、各町村の地域社会において、PTAとその住民の監視の中で、いわゆるガラス張りの中において教育を行つておるのであります。その教育の仕方が悪ければ、長官あるいは警察が思想調査を行わない前に、住民の信頼を失い、父兄の信頼な失うのである。教員みずからがその土地で教育をなし得ない立場に追い込まれるのです。あなたも待合や料理屋でいろいろ話なされることがあるだろう。けれどもあの教職員の生活だけは、暮れても起きても全部が住民の監視の中にある。思想さえも云々されるという批判の中に投げ出されている。その五十万の教職員が、数再名の共産党員によつて一体どれだけの影響力を受けているか。一体どれだけ共産党に引きまわされているとあなたはお考えになるか。それをひとつお伺いしたい。
  179. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私どもといたしましては、学校の教授内容がどうであるとか、どういう授業をしておるかということには関心を持ちません。先ほど申しましたように、共産党の一環として地下活動をしておる人がどのくらいあるか、いざというときに共産党と何時に立つ人がどのくらいあるかということを調べておるわけであります。従いまして、ここにお出しいたしました資料も、先ほど申しました共産党の秘密機関紙というようなものとか、あるいはそういつた秘密会合に集まつた人とか、そういうものを中心にして調べておるのでありまして、具体的にその人ば自分の教壇へ帰つてどんな教育をしておるか、そんなことは関係がございません。そこで共産教育をしようと、あるいはここで右翼教育をしようと、私の方は現実にどうしておられるかということは関知いたしませんから、そういうものは調べておりません。
  180. 小林進

    小林(進)委員 それではお伺いしますが、これは先ほどから出ているように、自由党から共産党までは憲法で認められた合法政党だ。それに党員があるのはあたりまえだ、私は共産党には反対でございます。すきじやございません。私は特に反共を明確にしておりますけれども、日本の憲法の上に思想の自由は認められておる。共産党が正式の存在を許されるならば、彼らの政党の唯一の目的はフラク活動、組織活動であります。自由党だつて組織活動をやつております。われわれ社会党右派も組織活動をやつております。党員の主たる任務は、党勢の拡張をおいて以外にわれわれ党員の任務はないのであります。あなた方は特に共産党なるがゆえに特別に思想調査をされたのか、自由党やわれわれ社会党と同等の比重において調査されたのか、願くばこの日教組の中に自由党員が何名おるか、ひとつお知らせ願いたいと思います。
  181. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 たびたび申しておりますように、私どもは共産党活動で非常に関心を持つておりますのは、共産党が議会主義を否定をして、そして社会革命は暴力によつてやるより道がないのだということをはつきり宣言しております。少くともこれを否定されない。私は先日川上委員からも抗議を申し込まれました。そのときも私は申し上げはのです。もしあなたたちが、共産党としてはそういう暴力革命ということは自分たちは否定しておる、あるいは軍事組織、軍事活動というようなものについていろいろな秘密指令が出ている、秘密組織をつくつているというが、あれは自分たちの関知しないものである、だれかああいうものは共産党を撹乱するためにそういう指令を流しておるのだということを全国の党員にはつきりわかるようにされるならば、私としては非常に肩の荷が軽くなると申し上げたのでありますが、私はその観点からいたしておるのであります。共産党のやつております隠密活動、秘密活動というものはまことに至れり尽せりの方法でその組織を守り、そして活動しておられるのであります。自由党あるいは社会党もやはり暴力を肯定して、そして暴力のために準備しておられるということがはつきりするならば、もちろん国警としては治安上取締らなければならぬと思うのでありますが、ただいまのところではそういう何はございません。
  182. 小林進

    小林(進)委員 これは長官に率直にお尋ねをしたいのでありますが、先ほど言われたやはり警察官の思想調査の問題なんであります。そもそも昭和二十八年の十二月二十三日であります。あなたのそばにおられる緒方初等中等局長でありますか、何かシンガポールで文部大臣と一諸に植民地政策をやつておられた方でありますが、この方のお名前で教育の中立性が保持されていない事例の調査についてという、こういう調査を依頼する書類が全国の府県教育委員会に通達をせられた。通達をせられますと、それに前後しまして、各県はほとんど全国的にこの警察官のの思想調査類似の行為が行われた。それにまたマッチするがごとく、二月十日には地方教育委員会が日教組弾圧を企図するところの一つの秘密指令が飛ばされているのでありまして、まさに緒方通達を大出発点にいたしまして、十重二十重に教職員関係を弾圧する形が現われているのであります。あなたは今思想調査を国警長官として何も指令もしていなければ聞いていたいとおつしやつたが、何かこの三つの動きの中に関連があるのじやないか、教職員の思想調査時の内閣かあるいは文部大臣から依頼されたことがないかどうか、何かそういう調査をするような示唆な受けたことがないかどうか、これを私は率直にお伺いしたいのであります。
  183. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 はつきり申し上げます。私はさような依頼あるいは示唆を受けたことは一度もございません。十二月の二十三日の文部省の教育中立性に関する指令というものも私は全然知りませんでした。これは二月の幾日でしたか、日曜日にある新聞記者が私の家に来られて、そして茨城でこういうことが問題になつておる、これについてどう思うか、――警察はこれに協力しておるのじやたいかというお尋ねがありました。そのときに初めてそんなものが出ておるのかと知つたわけであります。二月の幾日かに初めて新聞記者から聞くまでは、全然そういうことは私は知つておりません。一昨日でしたか、ある新聞に、この法案をつくるについても、文部大臣と私と、そしてもう一人文部省の局長ですか、次官ですか、三人集まつて方針をきめたというようなことがでておりましたが、これもまつたく事実無根であります。私はこの法案作成につきましては何の御相談も受けておりませんし、また事前に何らそういつた打合せもいたしておりません。はつきり申し上げます。
  184. 小林進

    小林(進)委員 教員の思想調査の実情と称して、これは私が言うのじやなくて、新聞にもでておる。二十九年の二月二十三日朝日新聞にに、教員の友人関係や読書傾向や手紙まで調べた、こういうような大きな見出しで、ほとんど全国的に思想調査が行われておるということが新聞に出ておるのであります。この問題はまず別といたしましても、今数百名おる、五、六百名の共産党員がいるというその数字をお示しになりましたが、それを調査される具体的な方法は一体どういう形でおやりにたつたか、それをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  185. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは秘密機関紙であるとか、あるいは秘密の会合であるとか、いろいろそういつた共産党の地下活動を調査することによつて、私どもは知るのであります。教研大会にだれがでたとか、そんなことで調べるものではございません。
  186. 小林進

    小林(進)委員 私は具体的な例を一つ申し上げたいと思うのでありますが、共産党の事務所に出入りをする者を、当該の警察官が一々遠距離写真でもつてつておる。これは具体的な事実であります。この調査の方法は妥当であるか、思想調査でないかどうか、ひとつ御見解を承りたいと思うのであります。
  187. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 共産党の事務所に出入りする者を、そういうようなこと々しておるということは私は思いません。
  188. 辻寛一

    辻委員長 小林君、よろしゆうございますか。
  189. 小林進

    小林(進)委員 私は今こうした問題の具体的な例を幾つも持つておるのであります。持つておるのでありますが、長官は、今ないと思うと言われた。これは実に重大な発言で、これはこの問題がいわゆる本法案審議する上の重大なるポイントでありますから、私はいま一回長官にここへ来ていただいて長官より答弁をいただきたい。同じ具体的な資料を羅列いたしまして、いま一度これを徹底的に明らかにするという意味において、委員長、きようは長官に対する質問は留保いたしておきます。あらためて長官をいま一同呼ぶことをお考えいただきたいと思います。
  190. 辻寛一

    辻委員長 前田榮之助君。
  191. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 私は時間が相当長くなると思いますが、今斎藤長官は、写真をとるようなことはないとおつしやいましたが、実は、私は警察長官が私の友人の家でやつてつたのをこの目で見ておる。あなたがそんなことを言つても――これはあなたが知らずに、やつておる者が部下にあつたのであろうと思うが、そういうようなことがあるのです。私は共産党にはあらゆることをやつてもいいと実は腹の中ではそう思つておる。だがしかしそれをこういうような大事な法案審議するときに、あなたが何かこの法案審議に有利なような証言をしようという傾向が見えることであります。このことはたとえば数百名と言われる点でも、これははつきり発表してもらいたいと思う。これは共産党が日教組の中にどの程度食い込んでおるか、私らは実際は知らないのです。しかし大体の見当はわれわれでもついておりますが、あなた方の見当とはたいへん進うのです。私らは職務上そういうことはやらないのでありますが、いかにも日教組が共産党に非常に感染しているというか、共産党のフラクに乗ぜられておるがごとくに言い触らして、これを有利に国民層をひつぱつて行こうというような傾向にも見える点がある。これはあなた方の保守系の者は逆に言つておるし、それから反対党の方は、それを逆にとつて宣伝しようとしておる。勢いのおもむくところ当然そういう傾向な持つのは、保守、革新の対立の政治情勢から行きますと必然の結果であろうと思うのであります。しかしこれが明確にならないと因るのは、日教組の中には共産主義には反対しながらそれと闘つておる、あなた方らの言葉で言うたらば純良なというのだろうと思いますが、正論を堅持しておる人もある。それがどうも日教組々々々というようなことでたいへん迷惑をするということは、つまり正直者がばかを見るということにもなるのであつて、これは明確にする必要があると思う。だからそういう意味一つ斎藤長官にあらためて私からお願いいたしたいのは、二・一スト、これはおそらくあなた方の方には資料があると思うのですが、二・一スト当時の、これは日本の共産党員全体ではありません。これは学校職員だけに限つてもよろしい、共産党の動きでなしに、数でよろしいのでありますから、それをできれば月別に表わしてもらいたいと思う。これは日本のこういう労働運動の傾向をわれわれが知るために非常に参考になると思う。そういうことができるかできないか、そういう数字を出してもらいたい。できればこれをやつてもらいたい。もしできないとすれば最近の二十五年後の月別の共産党員の増減の傾向、これが示されれば示していただきたい。それがわからないと、日教組ばかりでなしに、日本の労働組.介では、比較的にあなた方らの目で穏健なといわれる民労連においても、今共産党の三人や五人おらない労働組合はほとんどないのじやないかと考えるのであります。ただ問題は多いか少いかの差でありますから、共産党が数百名おる、数百名おるということだけでは、もちろんわれわれは判断できないのであつて、それはどういう傾向を持つておるかということをわれわれは判断しなければならぬ。そのためにそういう資料を出してもらいたいと思うのでありますが、それが出せるか出せないか、ひとつお答えを願いたい。
  192. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 共産党全体の勢力といたしましては、月別というわけには参りませんけれども、大体年別ぐらいのものはお目にかけることができると考えます。
  193. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 それでは斎藤長官にお願い申し上げますが、共産党全体では、この法案審議の資料としてはちよつと十分ではないのです。日教組関係の共産党、それから日教組と教職員との関係、これがもし別だとすれば教職員関係、それから日教組の組織、ことにいわば幹部の関係とかたんとかいうことはあなた方の方でよく言われるのだろうと思いますが、そういう組織の関係教職員組合との関係、それもできれば年別を半年別ぐらいにしてもらえばなおさらいいのでありますが、できなければできる範囲でよろしゆうございますから、それをお願い申し上げます。
  194. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 各労働組合別の共産党の勢力というものは、以前にはそこまで手が伸びませんでした。従いまして、日教組内のものにつきましては、これの消長であるとか、数学的な資料については、今のところ見ていただくためのものは、私どもの方としてはすぐ資料はできないと思いますから、御了承を願いたいと思います。
  195. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 日教組に共産党が数百名おるとかなんとかいつて、いかにも幽霊がおるようなかつこうに見せつけられる点は、非常にわれわれの審議に支障があるわけなんですが、全国五十数万の教職員の中で五、六百だそうでありますが、そういう数字は日教組ばかりでなしに、日本の労働組合では似たり寄つたりじやないかと思うのです。だから日教組関係中心とした弾圧法とも言うべき今回め法律をわれわれが審議するのには、思想的な行動についてはよりどころがないと言わなければならぬのでありますが、ないとおつしやれば……。(「しかたがない」と呼ぶ者あり)まあできるだけ資料を出していただくことを希望しておきます。
  196. 高津正道

    ○高津委員 私は今晩帰つて全部この国警提供の資料を読むのでありますが今原田委員の読まれた部分は共産党の文書を読まれた。もちろん共産党は非常に誇張の癖があるのであります。(「よく知つているな」と呼ぶ者あり〕)三十年前の経験だ。警察の共産党に対する報告が、また非常に誇張に陥る傾向もっているのであります。誇張の傾向が二つ集まつてできたものが、「日教組内のグループ活動について」であると私は思うのです。私見をこの際さしはさむことは悪いかもしれませんが、特高があらゆる部面に勢力な張ろうとして力を尽しているのであつて、今は警察の世界にもそういうように手を伸ばしておりますが、その特高グループから見ると、斎藤国警長官はそのグループに属していないので、多少抵杭したい心理状態にあるかもしれぬと思うくらいであつて、私は個人的にはミスター斎藤に対しては好意的なのである。しかしおよそ警察は二、三月は予算の編成期であるから、昔でも今でも警視庁は犯罪の捜査をはでにこのときにやつて、予算がいるのだという宣伝をやつたりする。そのような誇張もある。共産党に対する誇張は言うまでもありません。共産党にどのような誇張があるかといえば、三十年前に日本の共産党はソ連に対して党員が三万人あるという報告を書いていたのであります。するとソ連は、三万人の党員があるならばこれだけのことをやれという指令を日本の共産党に対して持つて来ますが、それだけの使命を果すわけに行かない。しかしこういうようにたくさんの党員がいるのではないかといつて、強い大きな任務を持たせるのであります。それでしまいにはだんだんその数字が真実に近寄つて来て、三万を三千にし、三百にし、もつと実数に近寄らねばならないようになつた事情があるのです。歴史的な話は抜きにして、現在の共産党の文献を見る場合も、非常にその誇張癖があるのであつて……。(「よく知つているな」と呼び、その他発言する者あり)それならばはつきりした材料を提供すれば、国民投票に訴えてみて、三十五名を得ていた共産党が現在一人に減つている。こういう事実があるが、大いなる流れに対しては、この報告書は反対のことを言つている。そうして私のいくらか好意を持つている斎藤国警長官は、共産党と日教組とは次第に近接しつつある。この資料をごらんくださればわかると言つている。ところで人間には二つのタイプがありまして、第一のタイプは感情の非常に発達した人である。第二は理性的な傾向の人である。感情的な人は当面現われた現象を非常に大きく見る。われわれはその傾向がどういう状態にあるか、ずつとへだたつているから、急にカーブを描いていれば、感情的な人はこれに対して非常にとらわれてしまうけれども、理牲的な人間はその山がどう下るかという見通しを持つてながめるのである。このような資料を提供して、吉田さんの教育のブレーンだとか、好みによつて選んだ中教審のああいう顔触れの者にこれを見せるならば、驚いてしまう。彼らは感情的であるよりも、非常に保守的な傾向の強い人であるから、(「恐怖症」と呼ぶ者あり)恐怖症を持つているから、いろいろな答申書を出すだろうと思う。われわれはこういう全国五十万、六十万の人々の政治的活動の自由を奪い、選挙権まで(「選挙権は奪わぬぞ」と呼ぶ者あり)選挙は違うな。(「理性的じやないぞ」と呼ぶ者あり)そこだけは感情でちよつと……。(笑声)警視庁がそういう癖を持つており、共産党の文書がずいぶん載つているが、それにそういう癖があるということを心得た上で、委員各位が今晩これをさらに調査されることを望んで――まだ言いたいことは一ぱいあります。委員長を通じてあなたに何回も何回もこの席に出てもらわねばならぬと思います。
  197. 辻寛一

    辻委員長 御質問はありませんか。
  198. 高津正道

    ○高津委員 御質問は……(笑声)それで私も今言つたようなあなたの考え方よりは、だんだん共産党の勢力が弱くなつていると思う。後に共産党に入党して参議院議員になつた岩間正男君が、非常に尊敬されて指導的な地位にあつたことも、日教組の前の段階などにあつたのでありますが、二代の荒木正三郎氏が日教組の委員長となつてから三代も五代もやつたのであります。ところがその前に岩間正男などという人に勢力があつたが、今は岩間正男君は落選をしております。われわれはそういうように共産党が次第々々に伸びているなどと宣伝する必要を感じないのでおります。われわれは自信を持つている。それであなたの考え方は、大いなる流れの、急な坂ができて最後のちよつと上つたところを大さわぎをしているのじやないかどうか。ちやんと質問ですよ。(笑声)
  199. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいま高津委員のおつしやいましたような事柄を十分考慮に入れまして、私の方は情勢判断をいたしているのであります。それでこの資料も、私たち判断においてこういう法案を出されるのがよろしゆうございましようということで出しているのじやございません。先ほども申します通り、全然これは無関係で、この資料もたびたび申しておりますように、参議院の文部委員社会党の方から御要求がありまして、私の方であまり出したい資料じやございませんでしたけれども、たつての御要求がありましたから、まとまつている資料々そのままお出しいたしたのでございます。資料をつくるにつきましても、われわれの調査に基く情勢判断にいたしましても、ただいまのおつしやいますようなことは十分考慮して出しているつもりでございます。  共産党の表面勢力は、おつしやるようにただいま落ちております。しかし潜在勢力は決して減退していない。だんだん共産党の潜在勢力が減退して、このままであれば日本は将来心配がないだろう、そういうようには考えておりません。むしろ潜在勢力としては上昇しつつある、かように思つております。
  200. 坂田道太

    坂田(道)委員 この前の委員会のときに、日教組の昭和二十七年度、二十八年度の予算書並びに第十回の闘争方針書等の資料要求をしておりましたが、いかがになりましたか。
  201. 辻寛一

    辻委員長 文書をもつて提出方を求めましたが、まだ回答に接しておりません。
  202. 坂田道太

    坂田(道)委員 早くお願いたします。
  203. 辻寛一

    辻委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後六時十分散会