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1954-10-27 第19回国会 衆議院 農林委員会農林災害対策に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月二十七日(水曜日)     午後二時三十六分開議  出席小委員    小委員長 佐藤洋之助君       小枝 一雄君    田子 一民君       松岡 俊三君    井谷 正吉君       芳賀  貢君    伊東 岩男君       吉川 久衛君    川俣 清音君       中澤 茂一君    安藤  覺君  小委員外出席者         農林委員長   井出一太郎君         大蔵事務官         (主計官)   鈴木 喜治君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    松岡  亮君         農林事務官         (農地局総務課         長)      正井 保之君         農林事務官         (農業改良局総         務課長)    庄野五一郎君         農 林 技 官         (農業改良局特         産課長)   徳安健太郎君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 十月二十七日  伊東岩男君十月二十五日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十九年農林災害対策に関する件     —————————————
  2. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 これより農林災害問題についての小委員会を開会いたします。  この小委員会は去る十月二十一日の農林委員会において、本年の台風冷害等による農林被害について対策の大綱を策定し、これが実現を期するために設置せられたものでありますが、去る二十三日に第一回の会議開きまして、小委員会運営方針並びに本委員会の決議の要点について各種の検討をいたし、また本日の午前中農林当局とこれが対策に関する農林省考え方について懇談をいたしたのでありますが、午後は正規の委員会といたしまして議事を進めることにいたします。川俣君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 改良局考えておられます種もみ処置ですか、昨年の種もみ処置は、必ずしもよかつたとは自信を持つてここで表現できないだろうと思うのです。特に広汎な地域に冷害が襲い、あるいは台風等被害が出て参りますと、希望品種が得られない。従いまして希望品種を要求いたしております農民の立場というものは、この品種についての特徴になれておるもの、あるいはこれに初めて取りつこうということで非常な熱意を入れるものと、割当てられてこれを植えつける場合とでは、農民の執意が非常に違つて来る、その結果いわゆる気候状態その他の環境が平年並なものでありましても、非常な損害を受けなければならないということになりますので、種もみ値段のいかんではなくて、優良な、しかも耕作しやすい品種というものを待望いたしておるわけであります。一例をもつて申し上げますならば、自分希望する品種を求めるために二、三日かかつても、旅費をかけても、あるいは宿泊費をかけてもなお一升、二升のもみを求めるというような農民種子に対する熱望を、改良局はどのように見て種子対策考えられておりますか、この点についての研究並びに方針をお伺いいたします。
  4. 庄野五一郎

    庄野説明員 昨年の冷害経験等にかんがみまして、採種圃等における通常対策でございますけれども、そういう面を通して農民に対する配付種子品種転換、こういうものは、昨年の経験等から試験場で新しい品種ができまして、奨励品棟としてやつているもの、そういうものについて通常的にはやつているわけであります。昨年の冷害につきましても、陸羽百三十二号あるいは藤坂五号、そういう面の希望が非常に多く出ております。また本年の作物統計事務所で調べました品種別数量を見ましても、相当程度品種転換ができております。そういう面で農民要望に応ずるには十分とは行きませんけれども、対策は立てておるわけであります。今御質問になりましたように、全然種のない農民に対する種子対策といたしましては、午前中に申し上げましたような、道または県において実際購入計画配付計画——これはもちろん農民希望するところをとりまとめまして、それによつて地元でまかなえるものは地元で、それから県内でまかなえないものは県外から、こういつた計画を道または県が直接立てまして、それを農林省で協議して、それに基いて本年の種子対策はきめたい、こういう考えでございます。それで県といたしましては、大体農民要望によつてまた県の奨励品種というものを考え対策を立て、こちらの方に要望して来ると思いますが、先生が御心配になるような点は、十分県にも申し伝えて、その計画を立てるときに、農民要望するものをできるだけやりたい、こういうふうに考えております。
  5. 川俣清音

    川俣委員 改良局に対してもう一点だけお尋ねいたします。これは相当普遍化して、どこでも村に一箇所か二箇所採種圃なんというものかできて参りますと、その中から相当優良な選別された種もみを採種され、これがだんだん普遍化して行くものでありますが、まだ奨励の端緒にあるようなものは、たとえば藤坂五号でありましてもたびたび失敗した例もあるのでありまして、こういう点から見ますと、今までの食糧庁改良局考えておられるような安い単価種もみを集めるということは、悪い品種をあえて渡さなければならないという結果になりはせぬか。藤坂五号でも、昨年あたり相当農村において値を呼んだものでありまして、これは御存じだろうと思う。こういうふうにみんなが相当熱意をもつて、今度は藤坂五号にしようという空気が非常に出て参りますと、選別された優良な品種相当な相場を持つものです。北海道のように大きな冷害にあいますと、おそらくこんな値段では取引ができないのじやないか。もしもできるとすれば、種もみとしては下等なものと申しますか、極もみとしての価値のないものになりやしないか。そこで、単価についてもつと考慮する必要があるのではないかと思うのです。しかもこれが個人に渡るということになりますと、昨年の例によりますごとく、買つたか買わないかわからないというような非難も受けて参りますが、道庁なり県けが一掃して現物でこれを配給するということになりますならば、一升や二升の種もみをあえて食うわけはない。現物でありますならば、貴重な種もみでありますからこれを食糧に供するようなことはないと思う。金で渡すとあるいはこれが種もみなつたのか、あるいはその他の生活費なつたのかという疑問が出て参りますが、今後の対策として、県庁なり道庁なりを通じて現物で配給するということになりますると、そういう弊害がないのでありまするから、道庁県庁を信頼して単価を高める必要があるのではないか。単価を高めるということは、優良な責任を持つた品種を配給するということがこの際必要ではないかと思いますが、この点についての所懐をお伺いいたします。
  6. 庄野五一郎

    庄野説明員 御指摘の点ごもつともな点もあるかと存じます。昨年の実例に徴しますると、まだ藤坂号等は昨年の冷害で初めて農民にその優秀性が認識されたような点等もございまして、非常に農民要望が強かった。そういう点で御指摘のような価格の暴騰というものもあったかと存じますが、やはり種の事業は原々種圃原種圃採種圃、こういうふうに一貫してやっておりまして、急激にふやされないような点もございまして、そういう問題か起つたかと存じます。ことしの点につきましては、いろいろ御指摘の点は十分注意いたしまして、特に道庁あるいは県庁、そういうところに種子のあつせん、購入等を一手に責任を持ってもらう、そういうことで品種の点も十分いいものを選択するようにしたい、こういうように考えております。なお採種圃につきましては、御承知のように前から現地圃場審査をやって、そして優良品種という種子優良性確保する措置事前にとっておるわけであります。今回の採種圃につきましては特にそういう点に注意しております。それから採種圃で間に合わないような場合は一般飯用米から種子転用する、こういう転用もみにつきましても、早期に通牒を出したのでありますが、圃場審査等できる範囲において、できるだけ現地指導をやっていい種子確保するように指導いたしております。価格の点については、採種圃種子値段も以前からきまっておるわけでございますが、災害用種子として転用種子をそれ以上に買うということは、やはり公平の観念からも困難かと存じまして、採種圃程度という考え方で、昨年と同じ加算額種子確保をやりたい。特にこれは災害対策でございますので、農民あるいは県、あるいは地元災害県あたり農民の十分な協力を得なくちやならぬと思いますが、県として十分責任をとって、この優良種子確保ということに努力すればやれるのではないか、こういうような考えで進んでおります。
  7. 川俣清音

    川俣委員 私の尋ねておるのは、こういう非常な災害を受けて参りますると、採種圃種もみでは足りない、そこで採種圃種もみにもプレミアムがつくのです。同じ採種圃でありましてもプレミアムのつく率が違うくらいだし、採種圃だから全部そろっているというわけではない。大体そろうということが採極圏特徴でなければならないのでありますけれども、それでも上中下ができる。その高いのすらあえて買おうとする農民熱意というものが、今日の稲作の発展の上に非常な寄与をいたしておる。これに価格を下げて、どういう種もみでもかまわないというような予算面からもしも縛って行くということになりますならば、農民稲作に対する向上心に対して、むしろその向上心を押えるような結果になりはせぬか。そこでこういう災害が起きた場合におきましては、採種圃といえどもまた被害を受けておるわけです。採種圃だけが被害を免れておるわけではない、採種圃自体が非常な被害を受けておるわけでありますから、収穫が減っておるわけです。少くともこういうところに減収加算という考え方を持てと私は必ずしも言うわけではありませんけれども、相当投資労力投資資材投資をして確保したものでありまするから、相当の金で買ってやるという考え方——もちろんやっておりますけれども、なお高く買つてやつて奨励すると同時に、またこの種もみは、信頼するに足る単価であるべきだと思うのです。おそらく、悪い種もみ補助をもらうよりも、むしろいい種もみであるならば身銭を切ってもほしいというのか、農民の偽らざる心情だと思うんです。補助するのであるから悪い種もみでもかまわないというような集め方については、私は大いに反省しなければならないと思いますが、こういう点についてひとつあなたの御答弁を願いたい。
  8. 庄野五一郎

    庄野説明員 ごもっともなことと思います。安くていいから悪い種子、そういう考えでは毛頭ございません。いいものを安くという考えで努力いたしております。御指摘のように、採種圃ももちろん災害を受けておりまして、北海道あたりでは道内の需要に満たないのでありますが、内地採種圃から持って行くわけにも参りませんので、おそらく道といたしましては、すでに、被害の軽微な地帯等に準採種圃的なものを指定して——指定といいますか、先般の通牒で予定して、そこで種子確保をはかる、こういう通牒なり指導なり、あるいは対策をとっております。いいものをできるだけ安く、そういう考えで進んでおります。
  9. 川俣清音

    川俣委員 いいものをできるだけ安くというのは、考え方としては私は決して反対でないけれども、予算わくに縛られて、結果的に悪くなることについては十分反省しなければならぬ、十分責任をとらなければならぬじゃないか。これは一年の労苦をむだにする結果になる。これは私が説明するまでもないのです。従つて来年の労苦を、あるいは資料、肥料その他の労力、家計をあげての全努力を無にするような結果にならないように、予算わくで縛られたというようなことで他責任のそしりを受けないように配慮を願わなければならないというのであります。  次にこれは雑穀等種子対策ですが、岩手県の北部の方は北海道と非常によく似ております。気候的に似ておるばかりでなく、植付状態を初めすべての耕作状態畑作専業農家でございまして、この比率については別問題でありますが、この種子対策についてはやはり北海道と同様な考え方をしなければならないのではないかと思いますけれども、この点についての見解を承りたい。特に私がこの問題を指摘いたしまするのは、岩手県の北部常習寒冷地帯は、やはり常習寒冷地帯雑穀種子でなければなりませんが、これもまた付近から容易に集め得られないものでありまして、種子値段相当高くなっておるようであります。この種子値段の高くなったこと自体は、種子を集めにくいという客観的情勢があるからだと思いますので、これに何らかの手を打たなければならない。ところが大蔵省に要求せられております予算面を見ますると、雑穀種子にいたしましても、また種もみ額にいたしましても、どうも不足のような感じを持つのです。不足のような感じを持つのではなくて、これでは対策にならないのではないか、こういう感じを持つのです。もちろん昨年の冷害対策から考えまして、これは重点的に配慮しなければならないのでありまして、変な公平ぶりをやりますと、かえって指摘されますような弊害事項が多くなりますので、私は必ずしも日本全国一様に公平ぶりを発揮せよとは言わない。むしろ重点的に考えなければなりませんけれども、この重点をどう置くにいたしましても、これらの単価では十分な種子対策ができないのではないか。この点、どうですか。
  10. 庄野五一郎

    庄野説明員 御質問の点は、北海道補助率の点かとも存じますが、雑穀については、補助率は、大体一般種子用以外の雑穀種子用としての雑穀差額の二分の一、それから内地は三分の一、こういうふうにいたしております。内地の三分の一は昨年と同じ補助率でありますが、北海道につきましては、雑穀地帯冷害が特に激甚だ、こういうふうに作報等の調査からも報告されておりますので、二分の一にいたした次第であります。なお岩手等北部につきましては、十分調査いたしたいと思っておりますが、単価の点は、そういった点で時価種子用としての時価との差額、こういうことにしております。それから穂もみについては、御承知通り一般米価種子用米価差額、こういうふうにいたしております。
  11. 川俣清音

    川俣委員 昨年失敗したのは、差額の二分の一とか三分の一とかあるいは全部とかいうことで失敗しておるのです。さっきから議論しておるのはここなんです。一体一般のものと種もみとの差額という観念改良局から出て来るわけはないのです。これは食糧庁考えると思いますけれども、改良局から差額という観念が出て来るわけはないのです。全然別なものなんです。どうしてその差額というのがでて来るのですか。本質的に違うのだということを私はさっきから指摘しておるのです。あなた方は農林省で原々種園のばれいしよなどをやっておるでしょう。これなどは差額が出て来ますか。差額ができるような原々種園をあなたはつくつておるのですか。そういうことを度外視してつくっておられるのじやないですか。私はそう理解しておる。大蔵省のいうように、これだけの金をつければこれだけの試験成績が出るのだというよりな頭では、試験場試験にはならない。幾つかの試験をした結果初めて生れて来るものである。たとえば藤坂五号でありましても、何十種類かの試験をした結果生れて来ることもありましよう、あるいは数種類の試験で生れて来ることもありましよう。これくらいのもので出て来るのだという考え方で新しい品種が生れて来るものではないのです。試験場を主管しておられる改良局は、この辺は十分理解しておられるはずです。差額だなんという観念はどこから出て来るのですか。
  12. 庄野五一郎

    庄野説明員 差額の点でおしかりをこうむりましたが、改良局といたしましては、いい種子をつくるということで種子事業をやっております。それで差額という観念は、こういう災害のときに、一般飯用の米を転用するという点から出て来るわけでありまして、種子としてよいものを買い上げる、そのために一般の米よりは加算しなければいい米がとれない、そういうような考え方差額がでて来るわけであります。その差額を、いい種子確保するという意味において加算した、高く買った差額補助する、こういうわけでありますので、御了承願いたいと思います。
  13. 川俣清音

    川俣委員 まあ常識的に考えて、普通の食糧にするもみ種もみとの間には開きがある。特に希望するような品種の場合でありますとまた開きが出て来る、あるいは新品種ということになりますと、また旧品種との間に同じ種もみでも開きがあるのです。これは十分御存じでしょう。原々種圃種もみ原種圃種もみ採種圃種もみ、これも値段が違うでしょう。だからあなたは差額々々とおっしゃるけれども、何の差額なんです。種もみになればいいという値段の差なんですか。食糧に供するものと種もみとは最初かがら、植付状態から違って来ておる。片方食糧に供するもの、片方種もみとして育成する、目的が違って植えられておる。たまたま何らの災害もなかった場合には市場性というものがあって価格ができるでしょうけれども、災害が起きた場合とか冷害が起きた場合は市場性というものは飛んでしまうのです。ないのですよ。あれば災害でない、冷害ではないのです。市場性のない価格が生まれる、生まれるというよりも不明なんですよ。そのつかめないものとの差額というものがありますか。あなたは差額というけれどもどうなんです。つかめないものとつかめるものとの差額というものはどこから出すのです。
  14. 庄野五一郎

    庄野説明員 採種圃からとります種については差額という観念はない、初めから予定しております。今年の災害対策に対しましては、採種圃の種では足らないので一般の飲用の米を種子転用しなければならぬ、これは初めから予定したものではございません。緊急にそういう転用措置を講じなければならぬわけでありますが、一般農家から供でしていただく、こういうことになります。そしていい種もみなりいい品種のものを出す、こういうことになりますので、一般の米よりは特に加算いたしまして供出していただく、その点が差額になるわけでありますので、御了承を願います。
  15. 川俣清音

    川俣委員 結局は加算した分の価格種もみを買うというよりほかはないのではないですか。
  16. 庄野五一郎

    庄野説明員 そういうことでございます。
  17. 川俣清音

    川俣委員 そういうことでしょう。だから種もみを集めるのではなくして、あなた方の予算上の金の範囲種もみを集めるというので、種もみを集めるのではないのですよ。何か食うものにプラスしたもので集めて、それがたまたま種もみということで渡すだけでしよう。あるいは買わせるだけでしょう。そこに問題があるのです。種もみ値打ちがないものを、値打ちがないからある価格ができて来る、こういうことになるでしよう。実は価格がないのですよ。これこれで買うけれども種もみを出さぬか、こういうことで集めるだけだ。それは原々種圃あるいは原種圃あるいは先ほど言っておる通り採取圃もみならこれは別です。そこで私は単価の問題を問題にしているのです。食糧に供するものプラスこれで種もみとして集荷できないかといって歩くだけですよ。それで売ろうとする者があれば買って来る、それが種もみでございます、こういうだけの話ですよ。そうでない種子対策を、これを食糧庁考えるなら別だけれども、改良局がそんなだらしのない考え方種子対策をやっておると私は思わないからあなたに聞いておるのです。
  18. 庄野五一郎

    庄野説明員 転用もみにつきましては、供出農家普及員あるいは道庁の係員といったものが、村なりあるいは部落なりを通じて優良なものを出していただく、そういうように歩いて現物を見ながらいいものを出している、そういう仕組みにしております。
  19. 川俣清音

    川俣委員 これは議論しても改良局はまったく改良に関して熱意がないですよ。食糧庁供出でもさせるようなつもりで、原価はこれくらいである、政府の買入れ価格はこの程度だ、これで出せ、こういう強権で集める場合は消費者に対する食糧確保の上からやられることです。種もみというものはそういう性質のものではないのです。あなたはよく御存じでしょう、だから私はこれ以上議論しません。さっきから言っている通り種もみというものはまったく価値無限大になるのです。官房長は笑っているけれども、種もみが少かったときはこれは無限大価値を生ずる、さっきあなたが見えないときに言ったけれども、こういう作況でないときでありましても、新品種が生れたというときでも、わざわざ山形県から青森県まで一晩どまりで買いに行くのです。三升か四升、五升のものを何千円かけて買いに行くのです。一升幾らにつくのです。種もみだから一俵も買って来るのじやない、自分のところの近所から頼まれて行くこともあるけれども、おそらく極もみだけで行くのですよ。せいぜい買つて一斗か、それに何千円のひまと実際の現金支出をかけて行くのです、これが今日の農業の進歩したあとなのです。だからこれに水をかげるような、これを冷却させるようなことは、改良局として考えるべきじゃないと私は指摘しているのです。こういう冷害なり災害にあって来ると、どのくらい金をかけても得られないという状態なのです、だから無限大なのです、差額というものは出て来ない、けれども予算上は、差額が出て来ないのだからというわけで予算を組まないわけに行かぬから、ある額は想定しなければならぬだろう、しかしそういう価値の高いものだという考え方を持たないで単価をきめるということは、農民希望しない種子を押しつける結果になって来て、まことに遺憾な状態が生れて来るということを恐れるから私はこの点を指摘しているのです。どうですか。
  20. 庄野五一郎

    庄野説明員 御指摘の点は十分注意して、農民希望しない種を押しつけるというようなことのないように、希望する金でそうして北海道なら北海道としての道の奨励品種といったものの確保をいたしたい。それについては事前道庁にも連絡いたしまして、そういった種子のある村なり部落なり、そういう点を十分調査して、そこにあらかじめ依頼するようにそういう指導はいたしておりますので、御承知願いたいと思います。なお差額の点は、これは予算技術の点でそういった言葉を使ったのでありますので、これは差額をつければいい種子が集まるといつたような考えではないのであります。御了承願いたいと思います。
  21. 佐藤洋之助

  22. 芳賀貢

    芳賀委員 種子問題に関連してお尋ねいたします。種もみの場合は、これは供出わく内において転用種子という形で、もみで出荷させるということは一応形はとれるわけですが、ただ雑穀の場合、これは食糧種子用判別というものはおそらくつかないのじやないかと思います。豆類の場合においても、製品として出荷されたものがどの程度発芽性を持つているかというようなことは、食糧検査事務所においてもその判断というのはまた非常に至難であるわけです。ですから、これは食糧に向くあるいは種子に向くという判別は容易につかないのじやないかというように考えられますが、そういう場合においてもあえて食糧価格種子価格の差をそこからどういう形で発見するかということになると思う。これは雑穀もみ種の場合は非常に違うと思います。午前の御説明によると、一切の責任道庁にまかして、そうして助成金等道庁に交付して善処させるということであるけれども、雑穀の場合における食糧価格種子価格の差を求めるということは、現実の問題として至難でないかと思う。ですから当委員会の意向としては、極子の対価に対して幾ばくかの助成金を出すなら出すというようなことにした方がむしろすつきりするのではないかと思いますが、好んで困難な道を選んで食糧種子差額を求める方法はどこにあるのですか。
  23. 渡部伍良

    ○渡部説明員 私初めから議論を聞いていないのでよくわかりませんか、食糧価格種子用価格との差を出すとういう趣旨じやないのであります。すなわち今年は食糧も全体として減産になつているのだから全般的な価格が上つている。その中から種子用のものは種子に適するようなものを選ばなければいかぬ。ですからなおさら上る、こういうことになります。そこで私どもの考えは、災害なかりせばこのくらいの価格であつたろうということを推定するのであります。それは結局一応去年の価格が基準になります。それと現存種子用にいいものを集めるとすれはどのくらいになるだろうということを推定して、その差額補助の対象にしよう、こういう考えであります。もとよりとにかく少いのでありますから、補助を出すといえばどんどん上るかもしれません。それから先ほど川俣委員が言つておつたように、いい種なら千里も遠しとせずして行つておるのも私どもよく承知しております。非常に狂信的に種に対して熱意を持つておる。これはいろいろな種の市場の例、あるいは種の交換、とんでもない種がとんでもないところへ出て来ている。その跡を調べれば、そういう例がいくらでもあるのをよく承知しております。しかし今年は特例でありますから、普通でほつておいたらそういうこともできなくなるおそれがある。従つて種もみの場合は、幸いに米の供出というのがあるから、この制度を使つて、極としていい値で買えば相当程度集め得るだろう、こういう考えであります。雑穀の分は、これは全然手がかりがないのであるから農業団体、それから道、そういうものを全部動員して、その気になつてたまたまいい種に適するような収量があつた農家が無制限に利益をむさぼらないように、団体であつせんするなり徳義心に訴える、こういう以外ないのではないかと思います。それにしてもどうしたつて一般の市場価格も上つているし、種ならば先ほど申し上げましたようによりよく出さなければ種としての用をなさない、ごまかしが入つて来るおそれもある。そういうのでありますから、普通の手段では雑穀についてはとうてい補助金を出してもその効果は確保することはできない。従つて最も監視といいますか、注意ができるようにするのには、道なり、その当該府県で団体を督励して、いい種子ができるだけ安く入るようにしたい、こういうのが私どものねらいでございます。通常あるべき価格、すなわち大体昨年の価格に物価その他を参酌することもあるいは考えなければいかぬかもしれませんが、それをもつて通常あるべき価格というものを推定して、現在ある相場、あるいは半年でどのくらいになるだろうという相場を推定してその差額を出す、こういう考えであります。
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 官房長説明を集約して確認する場合、基本価格は昨年の市場価格を一応とる。市場の平均価格でしよう、豆類の場合によると……。そうじやないですか。
  25. 渡部伍良

    ○渡部説明員 私が言つたのはそうです。
  26. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一つは、今年の種子用に向ける場合の推定価格ですね。それは変動があるかもしれませんけれども、おおよそ妥当な推定価格を求めてその差、去年の市場価格と今年の推定価格の差というものが一応出て来る。それを対象にするというようなお考えですね。いわゆる補助の対象になる差額というものは……。
  27. 渡部伍良

    ○渡部説明員 そうです。
  28. 芳賀貢

    芳賀委員 それから集荷確保の具体的な対策としては、たとえば北海道に一例をとれば、北販連が集荷団体になつていますから、そういう集荷団体が集荷した中から分類して、これは種子に向くというような判断がついたものを選択して、それを災害地の方へ、協同組合なら協同組合へ向けて、そうしてそこで被害農家に配分するというような方法を集荷団体、農業団体が行つて、それらを道庁指導監督するような形をとるというような解釈でいいわけですか。
  29. 渡部伍良

    ○渡部説明員 わかりやすく昨年の市場価格と申し上げましたが、その後の物価変動等はある程度考慮しなければいけないだろうと思います。それから集荷の方法は、結局これは農業団体が協同の精神でできている以上は、それをこういう際に働かせてもらわなければ、いくらさか立ちしてうまくやれといつてもできつこないわけです。農業団体であらかじめ種用のものは、北海道あるいはその他の地方で約束しておるから、それは特別精選して出せという啓蒙宣伝をいたしまして、それを指導方針によつて必要なところに出して行く。そして助成金の行方を確保するためには、末端の農家に金を渡さないで、道で一括購入して、それだけ割引されたものか農家のところに行く、こういうふうにしなければいけないと考えております。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでつけ加えておきたい点は、畑作の被害農家の場合は、救済措置いうものはなかなかとりずらいのです。共済の対象にもなつておらないし、土地改良等をやる場合においても畑地はなかなかやりずらい。具体的な問題としては、やはり種子対策等を通じてできるだけ配慮してやるということ以外は、融資は別ですが、あまりいい方法がないわけですから、いわゆる差額に対して二分の一や三分の一という程度のものでは、バランスの上からいつても畑作地帯の被害農家に対する配慮というものは、どうも軽くなるようなおそれがあるわけなんです。ですからそういう場合においては、むしろ種子の対価に対してどれだけ助成するという措置を講じられた方が非常に効果的ではないか、これは委員会の趣旨もそこにあるわけですが、そういう点は前回から研究課題になつておつたわけです。これによるとやはり去年と同じような考え方でやるというような御意思のようですが、その点に対してもう一考する余地はないですか。
  31. 渡部伍良

    ○渡部説明員 芳賀委員の御説のように、反当種子代というものは、これは農経費に占める割合というものは非常に少いわけでありますから、これをもつてどうこうということはできないと思うのです。やはり営農資金なら営農資金、あるいは救農土木に重点を置かなければ畑作地帯はやはり救えないのじやないかと思います。従いまして、先ほどからいろいろ議論の出ているように、貧困農家に徹底した救助の手を差述べろというのでありますが、それは、ある施設についてそのものだけ特別に金額をやるような考え方は無理じやないかと思います。その貧困農家にやるものはやはりもう少し根本的に考えなければ、同じ種子といつても、貧困農家のみならず畑作地帯といえどもりつぱな農家があるのですから、それと同じになつたのでは施策としてうまくないのじやないかと思います。やはりそれぞれの種目について妥当な限界というものを、われわれ事務の方としては置かざるを得ぬ、こういうふうに思つております。
  32. 川俣清音

    川俣委員 今芳賀委員指摘したような対価で支払うということが一体どうしてできないのですか。金額がたとい同じになつても、一番明瞭なのはむしろ対価で支払うという方法だと思うのです。県庁なり道庁を信頼すれば、差額の二分の一とか三分の二とか言わないでも、買つた値段の二割を補助するとか、都道府県が三分の一を補助して、国が三分の一を補助する、あとの三分の一を個人が出せという方が、すつきりしていいのじやないですか。
  33. 渡部伍良

    ○渡部説明員 これは計算の仕方でありまして、要するに何ぼになるであろうかということを一応どうしても推定しなければいかぬわけですから、それの何割補助といつてもいいのじやないかと思います。ただ従来そういうふうなやり方をやつておつたから、差額をもとにして計算をしているので、結論は同じことだと思います。わかりやすくするためには、どうせこれは同じものだから予定単価というものをきめて、その何割補助というふうにやるのも一つの方法かと思います。
  34. 川俣清音

    川俣委員 同じ方法だとすれば最もわかりやすい方法がいいと思うのです。私は、国の補助が多い方がいいとかなんとかいうことを抜きにして、個人が三分の一、県が三分の一、国が三分の一でもいいと思うし、あるいは国が半分持つて、県と個人があとの半分を四分の一ずつ持つということでもいいと思うのです。従つてそういう場合には個人も負担をするのであるから、あまりけちけちした集め方はなく、やはり相当いろいろなものを集めるという責任を持つべきだと思うのです。前はどうも個人に金が行つたような形になつたものですから非常に非難されたが、今度は現物ですからそういう非難も起らないと思うのです。だから勇気を出してやり得るのじやないかと思います。
  35. 渡部伍良

    ○渡部説明員 ただ考えの過程として、通常の場合であれば通常の価格で行く。異常の災害なつたので、異常に高騰しているから、その高騰しておる部分を補助する。こういう考え方でございますので、その考え通りに正確に準拠して計算して、その差額補助の対象にする、こういうふうになつておるのでありますから、結論としてはどつちから計算しても同じだが、考えのプロセスが、分析するとそういうことになつておる、こういうことであります。
  36. 川俣清音

    川俣委員 今農林省がやつておられるのは災害対策なので、普通対策じやないのです。災害が起きたことを無視して対策を立てておるわけじやない。初めから災害対策なんですから異常な処置なんです。異常でなければ別にこういう対策はいらない。だから異常にあたつた場合には異常な対策を講ぜらるべきである。いろいろな予算わくがあるというなら別でありますが、やはり異常な場合においては異常な対策を立てる、あとで非難の起らないような方法をとるべきだと私は思うのです。そういう意味で、おそらく都道府県が責任を持ちましても、かなりばらばらな買い方をしなければならないと思います。政府がきめたような価格で必ずしも一様に買えるとは言えないと思います。そこでばらばらに買ったから、この値段は同様なものであつても、高いからといつて高く売るわけには行かないと思う。これは都道府県がは、高く買つたものも平均してこれを売らなければならぬ。品質の相違があればこれは別ですが、そういうことになる。そういたしますと、これは県が責任を持つて買うということになりますならば、その受取りもありましよう。これは公平なものですからごまかす余地はないと思うのです。そこでその対価の何分の一をやるという方が大体妥当な結果が出て来るのじやないかと思います。
  37. 渡部伍良

    ○渡部説明員 前段のお話のばらの値段が出て来るだろうということは、私どもは予想しないのであります。それは先ほど来申し上げるように、とにかくほつておけば当然ばらばらになる、買手と売手とで強い者がよけいとる、こういうことになるのです。そこでこういう非常時の際であるから、そのゆえにこそ農業団体あるいは道府県に中へ入つてもらつて、一定の種子について、こういう品質のものはこういう価格でというようにきめて、一つの道義的な運動としてやつてもらわなければならぬというところが、私どもの道あるいは府県に相当指導権をとつてもらいたいと言うゆえんであります。それがばらくになつ買つて来るということになる、いよいよ処置ができないということになつて来ます。  それからさらに受取りがあるから、受取りに応じて同割を補助したらいいのじやないかということですが、これは予算技術上インポシブルであります。だから今申し上げるように、差額を推定してその補助を三分の二なら三分の二を見るというならば、単価はなんぼで買おうと補助するということ以外には——昔の予算制度には、いわゆる補充費途というような、一定の項目に入れて足らなければあとから予備金が出るという方法がありましたが、今はそれがありませんから、これは結局最初計算の基礎で、どのくらい差額を払わなければいかぬだろうか、その差額の十割なり五割をきめれば、それで等級等について差をつけるかどうかという点はあるかもしれませんが、一定の単価で支払つて行くということにならざるを得ぬ。従つて場合によれば予想したよりも安く買えれば、予想した手取りよりも安く農家に渡し得るし、もし予想したより高く買わざるを得ぬということになれば、予想したより高く農家は支払わなければならない、こういうことも私どもは予想しております。
  38. 川俣清音

    川俣委員 どうもそれは農林省の机上論ですよ。それなら米はどうです。米だつてみなばらばらで買つているじやありませんか。現地では同じく買つたつて、消費者に渡るときは、輸送費のかかつたものでも、かからないものでもみな同じに売つているじやありませんか。ばらばらに買つているじやありませんか。(渡部委員「ばらばらでもかまいません」と呼ぶ)じようだんじやありませんよ。秋田から来た米の輸送費と、この辺でできた米の輸送費もみな同じに見ているじやありませんか。実際ばらばらに買つているのです。輸送費を見てごらんなさい。買入れ価格を見てごらんなさい。(渡部説明員「それは違うですよ」と呼ぶ)違わないですよ。それでは輸送費を見ないのですか。(渡部説明員「輸送費は輸送費です。買入れ価格はみな同じです。」と呼ぶ)ところが……。(渡部説明員「輸送費は別ですよ。買入れ価格と一緒にしたら議論になりませんよ。」と呼ぶ)じようだんじやありませんよ。県が責任を持つて買うということになりますれば、そういう高いところの輸送費は輸送費で別に生産者からとるのですか。買入れ価格は幾ら、輸送費は幾ら、こういつて売り渡すつもりですか。
  39. 渡部伍良

    ○渡部説明員 米の場合は、(川俣委員「米だけでなく雑穀でも同じです」と呼ぶ)——米の場合は庭先相場で買つて政府が輸送しておる。その輸送費もコストになりますが、種の場合はどういう条件できめますか、駅渡しできめるか、庭先渡しできめるか……。
  40. 川俣清音

    川俣委員 それはだれが負担するのですか。
  41. 渡部伍良

    ○渡部説明員 県が負担するのです。これはそうせざるを得ぬですよ。そういうふうにしなければ計算ができませんよ。
  42. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、集荷の手数料とか輸送費は都道府県が負担する、こういう考え方ですか。
  43. 渡部伍良

    ○渡部説明員 結局そういうことです。
  44. 川俣清音

    川俣委員 それを単価に織り込まない、こういう意味なら話はわかります。輸送費は種もみなり雑穀を種として使う人に負担させない、それで都道府県がこれを負担する、こういう考え方ならわかるのですよ。去年はそうじやないんです。そこで私は問題にしているんです。
  45. 渡部伍良

    ○渡部説明員 去年は個々ばらばらに農家が買つたやつに補助しているわけです。従つて個々ばらばらの輸送費がかかつていると思います。都道府県で買う以上は、結局輸送費は都道府県でもつてプールした価格をもとにして、補助金を何ぼもらつたから何ぼ農家に渡す、こういう計算にならざるを得ぬと思います。
  46. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、昨年でも都道府県が責任を持つて青森あたり雑穀は去年県が集めたのですね。そのときはやはり全体の輸送費を加算して渡したんですね。
  47. 渡部伍良

    ○渡部説明員 もちろん加算して渡すと思います。
  48. 川俣清音

    川俣委員 買入れ価格より高い。そこで問題が起きた。遠くで求められる人が割合に安くて、近くで求められる人は割高になつたというような非難が起きた。そこでことしからこの点は改めるというのなら別ですが、従来もやつているんだから差額金で行くという話だから、従来通りだとばらばらになつて来る。去年は実一際ばらばらだつた。
  49. 渡部伍良

    ○渡部説明員 計算の基礎は差額を対象にして出すというので、考え方は去年と同じです。しかし今度は集荷の方法も補助金の交付の方法もかえておりますから、その点において去年とは考え方をかえているのです。
  50. 川俣清音

    川俣委員 それじや種もみあるいは種子についてはその程度にして……。
  51. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 川俣さんにちよつと申し上げます。ただいま大蔵省の鈴木主計官が見えられたのですが、鈴木主計官は時間的に非常にきゆうくつなところを特に呼びましたし、連日徹夜でおやりになつて憔悴されていますので、そのつもりで御質問願いたいと思います。
  52. 川俣清音

    川俣委員 それでは農林省のあとまわしにしまして大蔵省にお尋ねいたしたいのですが、こういう災害とか冷害には、大蔵省は一体どのような見解を持つておられるかというのが第一点。というのは、日本に災害とか冷害は起らないという考え方をしているのか。時には起るという考え方をしているのか。予算編成の上から言えば、何年に一回起るというようなことについて初めから配慮していなければならぬものだと思うのです。どんな会社でありましても、大蔵省が銀行や会社の経営を監督する場合に、火災あるいはその他の災害が何年に一回起るかということで、火災保険料等については税金の対象にしないとか、あるいはとつた場合においてはその何割は所得で見るとかいうことで、一般企業の場合には、災害について常にこれらのものが入つて経営することが健全な会社の経営だと称しております。民間がやる場合においては、そういう災害対策を掌に考えることは健全な経営だと考えておられるようですが、国の経営をやつておられる大蔵省としては、常にこういうことを考慮することが健全財政の建前から言つて至当だと思うけれども、大蔵省当局はいかにお考えなつておられますか。
  53. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 大蔵省予算を編成いたしますときに、一応毎年最小限度と申しますか、ある程度災害はあるだろうということを前提にして予備費を組むわけであります。今年の当初予算の政府原案では、大体災害対策関係の予備費を百億、一般の予備費を三十億、その間に今年の予備費の編成の仕方は色わけをしないで合せて百三十億を予備費というかつこうでつくつたわけでありますが、国会の修正によつて八十億に減少して、現在八十億の予備費が組んであるわけであります。従つてある程度災害は前提にして予算ができていることになります。
  54. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、大蔵省としては、災害その他として百三十億は至当だと考えたけれども、国会で減らされた。しかし大蔵省としてはあくまで百三十億の予定を立てるべきであつたと理解してよろしゆうございますか。
  55. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 大体そのあとで節約を実行いたしまして、その中から五十億程度は予備費にまわるように用意してあるわけであります。従つて大体において百三十億の一般の予備費を含めての予備費は、将来補正予算の機会があれば確保されることになつております。
  56. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、で八十億に減らしたということは、必ずしも予備費を減らしたということではなくして、そういう災害が起きた場合においては補正予算等においてこれを見るという建前でやつたと私どもは理解しているわけです。この点の国会側の理解と大蔵省とでは食い違つておりますか。
  57. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 国会で修正を受けましたときに、時間的のゆとりがないために、物件費その他を当然節約して財源を捻出すべきところを、一応予備費で財源を出したというふうに私は了解しております。
  58. 川俣清音

    川俣委員 いずれにしても、災害冷害については予備費がなかりせば、これに対して補正予算等を組んで国の財政をまかなうということが通常の観念だと見なければならぬ。社等において災害が起つた場合は、消費者全部が負担をして会社が負担をしないような仕組みになつている。それを政府が今のところ認容しているようであります。そういう点から見まして、災害が起きた場合は国民全体が救助をし合おうというのが、社会生活を営むものの当然な義務だと考えられる。そこでお互いが災害冷害が起きた不幸なものを救済する。この救済をもくろんでわれわれ喜んで税金を醸出していると思つているのですから、こういう国民の感情があるときに、大蔵省だけがさも自分の金のごとく、災害には出せないんだ、冷害はどうなるんだといつてけちをつけられる理由はないと思いますけれども、あなたはどのようにお考えですか。
  59. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 必要なものについては、別にけちをつける考えは毛頭ありません。
  60. 川俣清音

    川俣委員 それであればりつぱなものでありますから、次に移ります。今度の北海道冷害並びに台風十号以下十五号までの被害について、昨年は非常に甘かつたから、今年は辛くしなければならない、こういうお考えがあると聞いておりますが、これはうそでしような。
  61. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 昨年総体として甘いとかなんとかいう問題は別にしまして、昨年出したいろいろな補助金には非常に問題があることは、検査院の指摘その他でわれわれは痛感しておる次第でございます。
  62. 川俣清音

    川俣委員 私はその通りだと思う。これは大蔵省がほんとうに予算の執行にあたつて責任を持つたやり方をしないで、あまりけちをするものであるからこういう結果になつたのです。みずからこれは反省しなければならぬ。なぜああいう小さい予算が行つたか、なぜああいう不始末ができたかというと、これはものを重点的にやるとか、あるいは思い切つた施策をやらないで、どこかで切つたらよかろうといつて、変なところで切るものですから、思うような施策が行けなかつた。最初の計画通りやればあんな失敗はしないのです。それを変なところで机上的にこれを剃るものですから、机上で削られたことが現実とは相反することが起きて来たと思うのです。あなた方はよく徹夜で働いておられるようですが、そこまで働いたならば、末端にこれがどんな結果に行くかということはわかつていなければならぬ。わからないでやるなら、むだ働きです。それだけ精密に、疲労困憊するほど働いたならば、これは末端にどんな結果になるかということがわからなければならないわけである。わからなかつたとすれば、それはそろばん屋のそろばんだけでありまして、むだな労力だということになる。これはいかがですか。
  63. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 仰せのような事実があれば当然のことだと思いますが、私は率直に申し上げまして、十分な検討の機会を与えられないで予算がつくられるという点に多少問題があるのじやないかと思います。
  64. 川俣清音

    川俣委員 それは大蔵省の検討の余地があるいはなかつたかもしれません。しかしながら金の出しつぷりが悪いのですよ。これか一つあると思う。なぜかというと、これは今度の災害を見ましても、今あなたのおいでになる前にいろいろ指摘されておつたのですが、種もみ対策についても、差額金を出すというのです。大蔵省は今まで出したのと、今度種もみを集荷する、その差額金を出す、こういう考えだ、こういうのです。そうですか。差額金に対して何割かの補助をする、こういうお考えですか。
  65. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 大蔵省では農林省からの要求を受けておりまして検討中でございますが、台風十五号を含めました水稲の作況その他の最終的な結果がわかつておりませんので、まだ最終的な結論は出ておりません。
  66. 川俣清音

    川俣委員 一つの例をとつたのですよ。従来はこうやつておつた、それよりもふえた分だけの何割を補助する、こういうことでやつておると、去年と同じような問題が起きて来る。同じ金を出すにしても、明瞭な——さつき議論しておつたのですが、差額金というようなものは一体どこから出て来るのか。私は別によしあしを議論しているのじやない。一例を言えば、従来はこうであつたから、これに基かなければならないのだというような考え方を出して行くと、結果的にはいろいろなトラブルが起るようなことになり、指摘事項が起きるようなことになる。というのは、一般差額金ということになつて出て参りますと、自分が買つたものと去年の差額金なのか、作柄が平常であつた場合のものと今高く買つたものとの差額金なのか、あるいは二定単価があつたものと何とかの差額金なのか、こういう点にいろいろな疑義が出て来るために、末端に徹底を欠くものなんです。そこでその使用方法にいろいろな見解の相違が出て来るものですから、会計検査院から指摘されるのはあたりまえのことなんです。わからないやり方をしておいて、間違つたことをあえてやつてもいいようなことをやらしておいて、これじやいけないというのです。それはあなた方の考え方か、現実にそぐわないような支出の仕方をするからなんです。問題はそこにあると思う。たとえば去年の桑の樹勢回復の肥料などもそうです。これは現金で渡したりすると、十本を二十本の人にも行かなければならぬ。金でやるなんと言うと、とりに行くだけむだたということが起つて来る。労力費がない。それだから、受取らない人があつた、この金はどこへ行つたかというようなことで問題を起して来る。これは農協が集めて全体の肥料を買つて、肥料で渡すというようなことになつて来ると、肥料ということになると農民はとりに行く。もしとらないにいたしましても、肥料として買つてほかの人が使つても、そう大した批難に当らない。これは現金だということから、渡らないという文句が出て来る。わずかの金なら、手間賃がないということでとりに行かない人が出て来る。従つてそういう一畝歩とか二畝歩とかまでのものにはやらないならやらない、そういう小さな農家には別な方法で救済するなら救済する、社会政策的な救済をするのだ。それからそういう補助金が来ても、経費をかけてとりに行つても成り立つようなところには成り立つようにして行くというようなことをやればよい。ところが、小さいものには渡さない、社会政策は別だというようなことで、この冷害なり災害に対してはみな除いてしまうから、それじや気の毒じやないか、幾らかでも渡るようなことをしようじやないかということが起つて来て、三十円とか四十円というような補助が出て来る結果になる。小さいものにはこういう補助はやらない、そのかわり別個に社会政策的な見地から出すのた、こういうふうにはつきりして来ると、ああいう会計検査院からの指摘事項は起つて来ませんよ。それを今度出たものでみんなをやろうなんと考えるから、無理がある。これはこの段階までより出ないのだ、そのほかは別な方法で救済するということになると、すつきりする。あなたはそう思いませんか。
  67. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 大体の方向は川俣委員の仰せになる通りだと思います。ただ大蔵省としては、さらに経営費の補助にたるような部分は原則としてやりたくないというふうに考えております。
  68. 川俣清音

    川俣委員 経営費の補助になるのでやりたくない。それならば、こういう災害が起つた場合においてどうして救済して行くか。これはやはり別個に考えて行かなければならぬ。それを考えないで、経営費は出したくないというのでありますから、どこかに無理が生じて、指摘されるような事項が起つて来ると私は指摘している。お互いの企業であるから、あるいは経営であるから補助できない。それならそれではつきりしてよろしい。そのかわり、日本の国民である以上、これを救済しなければならない。あるいは官束であれは、恩給をやつてその将来を見る。これも一つの救済は救済なんです。それ以下のものについては救済するのだというのなら別です。ところが農業をやつている以上は、一反歩、二反歩やつておると、これは救済の対象にならない。そつちではやらない、こつちではやらない、そういう気の毒なものに何とか流そうということになると、十円とか、二十円、三十円あるいは五十円以下、百円以下のものもやらざるを得ないということになつて来るのではないですか。但し、別なら別だ、こういう災害が起きたときには社会政策的にそちらはそちらで救済するのだ、これはこれでやるのだということがすつきりしていれはいい。半分支給して半分支給しないから私は問題が起ると思う。そう思いませんか。
  69. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 経営資金の不足のところについては、経営資金をなるべく低利で融資するということは当然考えねばいけないと思います。なおそれでやつても毎日の生活の収入のない面においては、ある程度の賃金収入の機会を与えるような方策はどうしても必要だと思います。
  70. 川俣清音

    川俣委員 それは賃金収入を考えることも一つ、それから賃金をとり得られないような地理的条件または環境、家族構成である場合もあり得るわけです。たとえば農業であり養蚕である場合においては、家族の労働力を十分使つて収入に充てることができるわけです。ところが土木工事ということになれば、家族全員が必ずしもこれに参加できない。ある家族構成においては一人よりできないということになつて来ることは認められる。農業自体というものは御承知通り、家族の大体総員をあげて農業に従事しているという結果になつている。これは税法上からもあなた方お認めになつている点です。従つて単に賃金収入を考えたから救済かできるのだということにはならない。そこで別個の方法で社会政策的にそれは見るのだ、これは賃金で見るのだ、これは融資で見るのだという段階がはつきりすれば、こういう問題は起きて来ないと思う。それをどこまでも抽象論で行つて、そこのところにはつきりした予算の出資がないのです。だからどうしてもその予算をむりに机上で考えられた穴をねらつてと申しますか、裏をくぐつてと申しますか、そういうことをやらざるを得ないような窮地に陥れておいて、指摘されるということになる。結局は全体としての予算の立て方が悪いということになるのではないか。そう思いませんか。
  71. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 特に現在の予算の立て方がひどく悪いというふうには考えておりませんですが、もちろん予算の立て方自体において検討しなければならぬ点も多々あると思います。なおこまかい面になつて来ますと、それを運用しておられる各省の問題になつて来るのではないかと思います。
  72. 川俣清音

    川俣委員 私は全体の予算の立て方を今問題にしているのではなくて、それもありますけれどもこういう冷害災害が部分的に発生をし、あるいは一般国民生活の上から極度に被害を受けたものに対しては、国民があげてこれを救済しようとする熱意を実は持つているわけです。たとえば洞爺丸でなくなつた人に対する救済あるいは岩内での大火に伴う救済などは、総額にすれば洞爺丸は別として岩内のごときは国の援助以上に一般民間人の協力の方が融資は別にして大きいかもしれぬと思われるくらいです。こういう状態にありますことは、国の予算をこういう方面に使つて悪いという意味ではないと私どもは少くとも理解しておる。こういう災害冷害に伴いまして、これだけは社会政策的な出資にする、これは労賃を与えた収入でまかなわせる、これ以上は営農資金で行く、こういうふうにはつきりわかれて来れば別なんです。営農資金といいながらわずか五万とか十万あるいは十五万とか二十万で削ろうとする。ところが青森の果樹園芸とか、北海道の果樹園芸をやつておる人は、あなた方どのくらいの税金を一戸当り払つておるかお調べになつたことがありますか。その税金額にも満たないような営農資金を出して、これで営農資金をやつたのだと言つておる。もしそういう村があり、そういう町がありまして、そういう村なり町全体の収入が枯渇をいたしまして、税の対象になるものが枯渇をするということになりますと、自治団体の財政がやれない。社会政策にはこれこれやる、救農土木事業でこれだけの賃金収入を与える、これから上のところは営農資金を百万なら百万出す、こういうようになるのなら話はわかります。ところが営農資金は出すのだと言いながら五万とか十万とかで、こつちの方はどこまで行つていいかわからない。これは予算全体がふえるという考え方かもしれませんが、どうも災害等に対して徹底を欠くうらみがある。私はいたずらに公平に国の費用を分配して細分化せよと言つておるのではない。もう少しずつきりと対策を講ずる必要があると思うのです。去年の災害の例から反省しまして、もつと支給する必要があると思うのですが、あなたどうですか。
  73. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 政府の方でも災害対策連絡本部を設けまして、そこで十分調整なり検討なりをやつておりますので、その結果を待つて予算の面においてもこの意見を十分に反映して参りたいと思つております。
  74. 川俣清音

    川俣委員 そうすると対策本部できめられましたことについては、大蔵省はあまりかれこれけちなことは言わない、こう理解してよろしうございますか。
  75. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 十分に尊重して参りたいという意味でございます。
  76. 川俣清音

    川俣委員 尊重するのは行政官として当然なことで、私はあえてこんなことをお聞きする必要はない。国会できめられたことを行政官は忠実に履行すればいいのであります。むしろそれを逸脱することが服務規程違反であつて、私はあえてあなたの言つているようなことをお聞きする必要はない。とかく大蔵省はそういう批判を受けますために、私はあなたの心境を承つてみたいと思つたのです。尊重いたしますということより、忠実に行いますということの方が正確な答弁だと思うのであります。大体大蔵省が、そういう意見を尊重するということはけしからんことです。自分の金ではないのです。責任大蔵省は一つも負わない。常に批判を受けるものは国会である。われわれは四年に一回の選挙で常に批判を受けておる。大蔵省なんか、一ペんだつて職をやめて、再試験をするというようなことをやつたことがありますか。今の公務員を全部やめさせて、一年に一回づつ試験をさせて採用をやり直すというようなことをしたことかありますか。ところが国会は常に国民の前に一年一回の批判を受けておる。いいことも悪いことも批判を受けておる。従つて最も国民の意思を代表しておるのが国会だということは、法制上ばかりでなく、現実の意味からいつてそうなんです。大蔵省は尊重しますというのではなく、忠実に履行しますという態度をとらなければならないと思うのですが、今までの慣例で各省がみんな頭を下げるものですから、自分は偉くなつたものだと思つておられるかしれないが、それでは相ならぬ。こういう災害の起きた場合には、特に頭を冷静にして、自分の身を振り返つて国民に対して報ゆることを考えなければならないと思いまするけれども、これについておそらく異論はないと思いますけれども、いかがですか。
  77. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 今の川俣委員のお話十分わからない点がございましたので、こういうふうに了解してよろしいかお伺いいたします。災害対策連絡本部できめたことに対しては忠実に守れという御質問だつたのでございますか。
  78. 川俣清音

    川俣委員 その通りであります。
  79. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 十分に尊重いたします。
  80. 川俣清音

    川俣委員 言葉はどうでもいいですが、国会とか対策本部できめられたことは尊重するというようなことは、大蔵省の方のよく言う表現なんです。別に私どもは言葉じりをとらえるわけではありませんが、忠実に履行してほしい、こういうことなんです。一歩引下つて忠実に履行してほしい、こういう考え方です。私だけ時間をとるわけに行きませんので、今度冷害及び災害につきまして、農林委員会が真剣に北海道冷害及び災害並びに九州地方の台風災害等について熱心に調べて参りました、この調べにつきまして農林省と必ずしもまだ一致いたしておりません。農林省大蔵省の鼻息といいますか、顔色を見ながら予算を組み、実際に即応するよりもむしろ大蔵省の意向を尊重しながら、それこそ十分尊重しながら予算を組むようなだらしのない予算を今練つておりますが、農林委員会は少くとも近く行われる選挙を前にして責任を持つた要求をいたしております。この要求が正しいか正しくないかということは大蔵省に聞くのではなくて、国民の審判がこれを下すと私は思つておりますので、農林委員会の意見を十分尊重さるべきだと思う。私どもはもしもこの意見が悪ければ再び国会に出て来れないだろうし、われわれの意見がよければ出て来るということになりますので、その場合におきましては大蔵省責任を問わなければならぬ結果になると思いますが、農林委員会の真剣な取組み方について、あなたはどのような御見解を持つておられますか。まだ資料が出ておりませんければ今日お渡しいたしますから、これに対する御意見を伺いたい。これで私は大蔵省に対する質問は一応打切つておきます。
  81. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 決議はまだいただいておりませんですが、その決議の内容は十分尊重いたしまして、ただ予算上の全体としての制約がございますから、その範囲内では十分に尊重したいと思います。
  82. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 芳賀貢君。
  83. 芳賀貢

    芳賀委員 鈴木主計官にお尋ねいたします。私はあなたの力の限界以外のことを求めようとしてはおらぬわけですが、今次の台風あるいは冷害対策の一環として、主計官のさつき言われた言葉の中に、経営面に対する補助というものは大蔵省考えておらぬというような表現がありましたが、この対策の一環として本年度の救農土木工事が実施されるような段取りになつておるわけですが、この場合、一年間苦労した農家が、場合によつてはまつたく収穫が皆無であつたというような状態の中において、それに仕事を与えて、しかもその土木工事の内容というものは、ことごとくが国の食糧増産等の面を確保する意味における、そういうような事業の実態であります。かかる国家的な意図にも寄与する事業を行う場合において、しかもそれが賃金収入の道を与えるのだということを呼号しておる場合において、あまりにもあの賃金単価の算出が現在まで過少であるということです。たとえば今年度の計画を聞きましても、内地府県においては一日二百八十円、北海道においては地域的な面も勘案して三行五十円であるということでありますが、かかる賃金単価において、どうしてこの冬分半年の間の生活を賃金収入の面から維持して行くことが可能であるかどうかという分析は、大蔵省当局においても常に行われておると思うわけでありますが、大蔵省の見解としては、あくまでもこの二百八十円ないし三百五十円の線を堅持する、農民の生活レベルはこの水準でけつこうであるというような、そういう判断のもとに立つてこれを堅持せられるお考えであるかどうか、その点をまず明確にしていただきたいと思います。
  84. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 農民の生活レベルがその程度でけつこうであるかどうかということは別の問題といたしまして、土木の賃金単価にはおのずからバランスがあると存じております。従つて従来やつおりますいろいろな土木関係賃金単価とバランスをとつて行かなければいかぬのじやないか、そういうふうに考えております。
  85. 芳賀貢

    芳賀委員 今のバランスの点は何を基準としてのバランスですか。今言われたのは労務賃金のバランスの上に立つてということでありましたが、通念的にいうところのこういう土木工事の賃金基準は、かかる低廉なものであるかどうかということです。二百八十円の場合には、一箇月二十五日稼働した場合においても、わずかに七、八千円にしかならぬじやないですか。その程度の労働による報酬でどうして生活が維持できるかということです。おそらくあなたのいうのはニコヨンの単価を救農土木工事にも適用するというような、そういう思想の上に立つて言われる場合は別ですが、今言われた基準単価は何を採用して言つておられるのですか。
  86. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 公共事業食糧増産の単価につきましては、労働省の分析で出ておりますPWを基準としてつくつていると承知しております。
  87. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことはこちらで承知しておることですが、その賃金ベースというものは、現実の情勢の中において適応できるかどうかということなのです。その中に矛盾を感じておるかどうかということを端的に表明してもらいたいわけです。一例をあげると、生活保護法の適用の場合においても、農村においては、級地は三級地と思いますが、その場合においては、最高七人家族の場合において一人が千五百円で一万五百円生活保護法適用による給付があるわけです。ところが一年中働いて全然収穫がなかつたというような被害農家が、この救農土木事業に出て来た場合において、一箇月まるまる働いても、生活保護法の適用を受けて働かぬでこたつの中にのんびりしておる人たちよりも収入が少いというような点に対しては、どう考えておるのですか。ですから、この単価の中にあなたは矛盾を感じておるのかおらないのか、そういう点にいろいろな問題が派生するのではないかと私は考えておるのですが、これはどうですか。
  88. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 はなはだ不勉強で申訳ございませんが、生活保護法の内容とこちらと比較したことがございませんで私は承知しておりません。
  89. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう把握が足りない場合は、たとえばあなたの一箇月の給料から比べて、被害農家が一年の努力をまつたく犠牲にしておるという場合において、しかも賃金収入を与えるという場合において、一箇月働いても七千円が八千円しか収入がないというようなことを体して考えた場合において、これでは救農土木事業と銘打つ場合において、あまりにもその賃金単価が低過ぎるというようなことは考える余地はないですか。やはり農民はこれくらいがあたりまえであつて、大蔵官僚は優位性の上に立つておるのが当然だというような、そういう階級的な意識の上に立つてものを考えておるかどうか、参考までにその点をお聞かせいただきたいと思います。
  90. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 大蔵省の官吏がどうだというようなお話のようですが、われわれもたとえばこういう委員会におきまして失言をいたしまして、首になれば同じような単価で働かざるを得ないと思います。
  91. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことに甘んじられるかどうかということなんです。しかも災害地の農民の場合には、一年中働いたんですよ。働いた労働報酬というものは災害によつてゼロになつておるわけです。その場合に、しかも生活保護法の適用等を受けることなくして、そうして救農土木事業というような道を開いて、ここから賃金収入を求めるという場合においては、この労働に携わることによつて、やはりその一家の生活がどうやら維持できるという形でなければならぬと考えるのですが、その点はどうなんですか。この範囲内でやれると考えておられるわけですか。
  92. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 政府で補助金を出してやるようないろいろな土木工事、それだけが全部の賃金収入といいますか、生活資金の全部になるとは私は考えておりません。むしろそのほかに経営資金その他ほかの機会が必ず若干はあるのではないか、そういうふうに存じております。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 今経営資金の問題が出ましたが、それでは主計官の判断によると、経営資金というのは生活資金に充当していいという解釈ですか。それならば問題は別ですよ。
  94. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 今の説明が不十分であつた点は訂正いたしますが、経営資金はもちろん営農資金でありまして、直接な消費資金ではないと思います。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 ですからこの救農土木事業以外にどういう賃金収入の道を与えようとしておるのですか。そういう道があればこの際あわせてお伺いしておきたいと思います。
  96. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 いろいろなこういう関係の土木工事の量を全体の検討のときに十分検討して決定して行きたいと思いますが、目下検討中でありますので結論的なことは申し上げられません。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 ではただいまの説明に対する理解は、この土木工事の分量を現地被害農民に賃金収入の道を与えるという目的が達成できるという限度に、たとえば農林当局等から要求のあつた場合においては、それを適正に判断してそれに沿い得るような努力をするという御意思ですか。
  98. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 農林省の方から要求があつて、しかもそれが必要であれば十分にその意見を取入れなければならぬと思います。
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 この機会にもう一点所見をただしておきたいと思いますが、災害に対する予算の要求等の中において、今後の災害防止の対策というような画が多々あるわけです。たとえば健苗育成の面において保温折衷苗しろであるとか、あるいは温冷床苗しろの設置に対する助成の問題、あるいは試験機関の充実の問題、こういうものは今後の災害に対してこれを保護防止するような大きな役割を果すわけでありますが、かかる面に対しましてはできるだけ積極的に拡張して行く必要があると考えますが、たまたま大蔵当局の考えをもつてすれば、たとえば保温折衷苗しろであるとか、温床値しろであるとかいうような場合においても、一定の奨励期間が過ぎたのだからこういうものを助成の形で出す必要がないというようなことで、予算編成の場合においても簡単に削減しておるのが今までの通例であります。ですからこういうような費目は、たとえばわが国の農業の中における寒冷地域の農業を健全化して行く場合においては、どうしても国がこの面に保護的な手を加える必要が恒常的にあるわけなんですですから、こういう部面に対しましては、やはり一つの農業政策というような大局的な面に思いをいたして、あなた方も十分これに対する努力をなされる必要があると思いますが、今度の冷害対策の場合においては、農林当局はただ単に災害地だけに局限してこういうような健苗に対する一つの手を打とうとしておるわけでありますが、これは単に限られた地域だけにおける対策ではなくて、おそらくわが国における冷害をこうむるような地域全体に対しては、冷害に対する一つの抵抗の手段としても、かかる設置に対して国が当然保護助長て行く必要があるとわれわれは判断しておるわけでありますが、鈴木さんの場合にはどういう考えを持つておりますか。
  100. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 原則論になると思いますが、水稲健苗育成施設が非常に効果がありまして、重要な役割を果すことはわれわれも十分認識しおります。しかしながら補助金全般の検討に際しまして、こういう四年ないし五年も奨励金の補助を続けて来たものを、なおかつ続けるということになりますれば、これは一般の経営費を常時恒久的に保持しなければならぬことになりまして、その点で非常にまずいことになるのじやないかと思います。従つて今のところ、これに入れるというところまで決心がついておりません。
  101. 芳賀貢

    芳賀委員 私があえてあなたにお聞きするのは、開くところによると、温床苗しろ等の補助を出す必要がないと言う、張本人があなただというからです。米価問題に対しても、非常に不当に安い値段で国が米価の決定を行っておる場合においては、そのわく内において再生産が可能であるという状態を国の責任においてつくらなければならぬ。かかる見地の上に立って、わが国の農業は地勢的に見ても非常に条件が違うわけですから、劣悪な条件の中において水稲の栽培をやるような地域に対しては、やはり国の責任においてこれを保護助長する必要が生じて来るわけです。ですからこういうような点に対しては、今までの誤った考え方を反省するという意味においても、今後新しい分野の上に立って農業問題等を検討する必要が大蔵当局の中にも台頭して来なければならぬと私は考えておるわけでありますが、もう二度この点に対しての見解を明らかにしてもらいたいと思います。
  102. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 申すとまでもないことでありますが、予算大蔵省だけでつくるものでもありませんし、いわんや私がつくるわけでもありません。政府部内で十分に検討した結果まとまった鷲見というのは、何も大蔵省だけの意見でありませんし、片方において削った場合がありますれば、それは政府全体の意見ということになると思います。入って以来四、五年続いておりまして、十分に奨励の意味は果したと考えております。
  103. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたは温冷床の一応の的を果したから削ったと言うが、あなたが削ったあとで災害が頻発して、実質的にこれを復活しなければならぬような状態が出て来ておる。むしろ削らないでずっと継続しておけば、あるいはこの災害はもう少し少い範囲で治まったかもわからぬわけなんです。ここにやはり政策上の問題はあると思いますが、今あなたの言われた政策というものは、単に大蔵省当局だけで決定したりなんかする問題ではなくて、現在の政府全体の責任において予算の編成等も行われておるのであるからして、その一つの主管部門を担当している大蔵省だけの偏狭な判断の上に立って、これはいいとか悪いとかいうような単純なる結論をつけるということには往々にして危険がある。そういう点に対しては相当考えもあるようでありますから、今後は、今言われたように、政府全体の共通の責任において諸般の政策は立てられて行くというような一つの原則の上に立って問題を取扱つていただきたいというふうに、私はあえて希望を申し上げておくわけですが、その見解に相違はないですか。
  104. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ございません。
  105. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 古川君。
  106. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 きようは私の教え子が結婚をいたしまして、それが近親結婚をやるというので私のワイフが反対をした。牛でも豚でもそうですが、新しい優秀な種畜を導入しないことによつて、近親結婚をやるうちにだんとその種畜が退化をして来て、畜産の生産に重大な影響を及ぼしている。こういうことで、私は家畜について十分研究をいたしておりましたのを私の家内が聞いておりまして、鳩山さんではないが、近親結婚に反対した。その関係からお世話をしなければならなくなって、この重大な農林委員会を中座して仲人をして来たわけです。そこで先ほどからその種子確保対策について、同僚議員からいろいろ御討論がありました。これに対して渡部官房長は、種子対策については狂信的であるとおっしゃったが、狂信的ではなくて科学的なんです。これは科学的に幾らでも説明がつくのです。しかも病気になってから、あとでその病をいやすということについてはたいへんな困難がございます。渡部官房長のごときは、戦時中に滅私奉公で農林官僚としては最も優秀な、有能な技能を発揮された。そのためにあなたは健康を犠牲にされた。そういう今から見ればとうとい体験を持っておいでになるあなたから、私はその種子の問題について、百姓は狂信的に熱心になるという言葉を聞こうとは思わなかった。そういう問題は私はあとにいたしますが、とにかく日本の稲の品種改良については、英国のバラの品種改良とともに世界うであるからといって、渡部さんの狂信的な御議論にはどうしても組みすることはできないので、あなたの御反省をまず要請をいたして、あなたに対する質疑はあとでゆっくりやります。  鈴木主計官にお伺いをいたします。本年度の凶作の見通しについてでありますが、私の尊敬するお天気博士と言われた藤原咲平博士が、四年前におたくなりになるときの遺言に、昭和二十八年、九年は凶作の年であるということを申された。これは私の郷里の諏訪湖水の御神渡しの氷の張り方を六十年もの長い間研究して来た結果を、藤原博士の跡を荒川理学博士が継いでおりまして、ある程度は世間に公表されておるのでありますけれども、それによりましても、凶作は大体二年ないし三年続くと昔の方は言われておりましたか、これは荒川博士によってはっきりさせられた。私は昨年の予算委員会において、凶作は二年続くから次の対策考えなければならぬ。水稲の健苗育成の施設についての助成の問題をどうしてもやらなければならぬということで、五億あまりの助成について大分大蔵省には反対があったが、私がるるこれの効果を説明いたしましたら、主計局でも了承して、あなたの前任者もこれを認めたのです。ところが今回は三十年度の予算にもどうも盛りたくないらしいし、今回の凶作に対してもこれを認めたくないらしいことが、ただいまの芳賀委員に対しての御答弁で明らかになったと私は思います。私は、少し鈴木さんの御勉強が足らなかったのではないかと思う。そこで第一にお伺いいたしたいことは、昭和二十九年度の農作物の豊凶の見通しでありますか、これは全般において非常に凶作の様相が現われ、その後に天候が非常に持ち直したが、天候が持ち直しただけでこれだけの作柄がよくなったとお認めになりますか、その点をまず伺いたい。
  107. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 専門的なので十分なお答えはできませんのですが、天候の問題もちろん重要な要素だと思います。そのほかに、われわれが六月ないし七月病虫害の問題が出ましたときに、いろいろ農林省の方から承つたところによりますと、いろいろな面で十分な指導をやった点が非常に効果があったのではないか。もちろん農民の努力がその先にあったと思いますが、そういう点が一致して、冷害は二年続くとかなんとかいうときに、全体としては比較的よかったのではないかと考えます。
  108. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 昨年の凶作は、天明の凶作にまさるとも劣らないものであつたと思います。それはいろいろなデータがございます。それがあの程度で防げた、また本年の二年続くべかりし凶作がこの程度で防ぎ得たということは、農民の努力と天候の回復とにはよりますけれども、それだけではないのです。もちろん農林省の諸君もそうでしょうが、大蔵省の諸君がこの農業技術に対して非常に理解があったということです。それがとにかく天候や農民の努力を越えてこれだけ国内の食糧確保に力があったということをあなたはお認めですか。
  109. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 十分に了承しております。
  110. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私は鈴木さんのお言葉を聞いて非常に満足をいたします。専門的なことを知らないで、農作物の豊凶に関係のあるところの農業技術の予算の問題を査定するということは越権です。そういう問題は私は専門家以上に自信を持っております。そういう立場でこの農業の技術に対して査定をやつておりますというならば、われわれ国民は納得をいたします。了承をいたします。しかし専門的なことは私たちは知らないという態度で、立場でこういう問題を御査定なさるということは、国民はどうしても了承できない。けれども、あなたの先輩等がこういう問題に非常に熱心で、そうして努力された結果、今日これだけ国内の食糧確保に貢献をしたということをあなたは素直にお認めになつておる。私は大蔵官僚としては、しかも農業関係の主計宜としては、まことに近来まれな優れた主計官であると申し上げなければならないと思うのです。そういうお考え方でひとつ今後の農政問題を御検討願いたいと思います。  そこで私は伺いたいのでございますが、ここに冷害及び災害対策費要求額というのが二十九年十月二十六日現在で農林省から主計局に出ていると思いますが、これを御検討になりましたですか。
  111. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ただいま検討している最中でございます。
  112. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 検討の最中だとおつしやいますから私はそれ以上追究はいたしません。ここに水稲健苗育成に二億一千六百五十一万三千円とございます。これは農林省に関係ございますが、私がこの前の本委員会において伺いましたときには、一億一千万であつたと思います。しかもそれは北海道と青森と岩手であつたと思いますが、この二億一千六百余万円というのはどういう内容を持つているか、これはむしろ渡部官房長に伺つた方がよいかと思います、かお答え願います。
  113. 渡部伍良

    ○渡部説明員 これはお話の通り北海道は先ほど説明したのですが約一億、それから青森、岩手で一億一千五百二十余万円ですか、そういう計算になつております。合計二億一千六百五十一万三千円であります。
  114. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 これはむしろ渡部官房長に伺つた方が適当かと思いますが、災害を本年こうむつたところを見て、その他のところを見ないという御見解は一体何でありますか。
  115. 渡部伍良

    ○渡部説明員 私どもはそういう区別した気持は——現在は災害をこうむつた直接の地帯に対する対策を補正予算なり予備金に要求したい、こういう考えでございます。従つてその対象地域を一応対象にして計算をしている次第であります。
  116. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 それならばお伺いをいたしますが、二十九年度の苗しろの健苗育成施設に対しては、すでに前年度の予算をもつてまかなつているはずであります。それを今ここに計上するとは一体何事ですか。
  117. 渡部伍良

    ○渡部説明員 二十九年度の植付の稲については、二十八年度の補正予算で見たのであります。この分は三十年度の植付のものを対象にしているわけであります。
  118. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 それでは伺いますが、二十九年度の予算を三十年度に使うということは、それは会計法の違反になりませんか。
  119. 渡部伍良

    ○渡部説明員 これはこの前二十八年度に補正予算に組むとき議論したのです。できるだけ早く寒冷地に対しては苗しろの準備をする必要がある。従つてできるだけ早い機会にこういつた健苗育成の資材を手当できるように、できるだけ早い機会に補助金を交付したい、こういう気持からであります。従つてその他の地方も二十九年度の予算で三十年度の分をやりたいという希望があつて、二十九年度の予算を編成するときに交渉したのでありますが、不幸にして二十九年度の予算では計上することができなかつたのであります。
  120. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 では鈴木主計官にお伺いいたします。渡部農林省官房長のお話では、二十九年度内に予算確保して、三十年の苗しろに間に合うようにしたいということで要請したが、思うように行かなかつた。あなたの先輩はこの問題について非常な矛盾を御認識になつたのです。それはなぜかと申しますと、今までは予算のきまるのは大体四月の末なんです。少くとも四月一ぱいなんです。その予算がきまる四月の初めごろから苗しろをつくらなければなりません。ところが仕事すべからず、ただ過ちなきを期せよというのが大体今の役所なんです。あまり仕事をしてはいけないのです。能率を上げてはみんな首になつてしまう。行政整理になつてしまう。だからほどくに要領よくやつているのです。だから判こばかり押していて、マンマンデーで能率が上らないのです。助成金補助金が交付されるのは一体いつだと思います。これは鈴木主計官はよく御存じだと思います。とんでもないころに補助金が行くのです。会計年度の始まる四月初めに始めなければならないところの帯しろの補助金が秋の取入れごろに行くのです。種をまくにも苗を植えつけるにも適期があるのです。肥料を施すにも適期があるのです。それと同じことに金を出すにも適期があるのです。なければならないのだ。その適期がいつもはずれるのです。そのためにせつかく出した金が生きないのです。生きなかつたのです。そういうことを認識されて去年の救農国会において、ここでひとつ金を出したならば、年度はあるけれども、勇断をもつて出そうというのが五億余りのこの健苗育成の施設の金ではなかつたかと私は思うのです。それが効果を表わして今回の災害はきわめてわずかで済んだんです。それは鈴木さんのお認めのあなたの先輩のお骨折りの結果であつたと思うのです。そういうように見て参りますと、今年災害をこうむつたところだけでなしに、大体積寒法の適用を受ける地域だけでもこの健苗育成施設の金をなぜこの際見ないのか。農林省官房長はこれを要求したが、大蔵省がこれを認めないと言われる。一体どういうわけなんですか。鈴木さんは先ほど、もう数年やつたから、効果のあるものならほつておいてもいいじやないか、こうおつしやつた。あなたは農民心理をまだ御存じない。農業技術がわからないとおつしやつたけれども、農民心理がおわかりになつていないのです。私は全国をこれから御案内しましよう。臨時国会が開かれるまでに御案内しますよ。費用は私が出してもいいですよ。そうして農民心理をもつとよく勉強しなさい。今日まで普及をしたところの健苗育成施設がどういう人によつて実施されているか。それは富農ですよ。いかに今の政府が資本主義的な政策を行うからといつて、あなたは富農を支持して中小農の転落を認めるのですか。今までの農地開放をまつたくむだにして、民族のエネルギーをまつたくむだにして、それで日本の国をよくしよう、再建に協力しようという、そういう政府の善良な宮山としての職責は全うできるのですか。一体どういうふうにこの健苗育成施設に対してお考えなんですか。あなたはもう十分行き渡つていると言うが、認識不足もはなはだしい。そんなものは一部分ですよ。富農の連中に徹底しているだけであつて、零細農に対してはまだだめなんですよ。ちよつとした呼び水でだまされるほど、彼らはばか正直な農民であるという農民心理を勉強したことがありますか。御所見を伺いたい。
  121. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 水稲健苗育成施設に対する私の基本的な考えは——私と申しては申訳ありませんか、現存のところ大蔵省の基本的な考え方は、先ほど芳賀委員にお答えした通りであります。
  122. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 鈴木さん、私は言葉かないですよ。あなたは、先ほど芳賀委員に答えた通りだと言われるが、それは徹底しているのだからもう必要ないのだ、こういう考え方ですね。あなたは農家の生れですか。財閥の御子息ですか。まずあなたの御身分を伺いましよう。ここでは答えられないとは言わせませんよ。
  123. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 必要であれはお答えいたしますが、私は一国民の子供であります。
  124. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 国民の子供だけではわかりません。もつと具体的にお答え願いたい。
  125. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 農村で生れた一商人の子供であります。
  126. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 農業御存じですか。
  127. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 十分に知つていると言つたら間違いだと思います。
  128. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 あなたとそういうことでやり合つていてもしようがないのですよ。今までお答えいただいたところで大体見当はつきますから私は私なりの判定を下しますが、あなたは認識がないのですよ。それは農業関係の主計官を承つて日が浅いだから無理はないが、農民の心理、農業技術、日本の現実の農政というものをもう少し勉強してください。それでなければあなたは査定をする資格はないと思うのです。私はこれ以上は言いません。十分の御研鑽をお願い申し上げます。  私は官房長には機会を改めて申し上げますが、問題は、なぜあなたは災害をこうむつたところだけに限るかということです。この前のいきさつを考えれば、前年度に予算確保しておいて、前年度にその予算を配賦して、あるいはこれだけのものを約束するということを指示して、そうして四月初めの苗しろの段取りにとりかからせるということが効果があるということを認めたのですよ。あなたも認めたのです。また鈴木主計官の先輩も認めたのですよ。そうして五億何がしを確保して、それが今回の凶作をこれだけに食いとめたというこの現実をはつきり認識してこの問題をやらない限り——私の言うことは、一農林委員の吉川の言うことではないのですよ、農林委員会はいつも超党派なんですよ、これは十分ひとつお考えおきを願いたいと思います。  次に私は簡単に二、三の点を伺つておきたい。農林省で発表になりましたかどうか知りませんか、われわれにお示しくださいました冷害及び災害対策費の要求額の調書を見ますと、米麦の安売りの問題については全然触れていないのですが、これはどうなつておりますか。
  129. 渡部伍良

    ○渡部説明員 ただいま検討中であります。
  130. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 この問題についてはいろいろ関心を持つておりますので、すみやかに検討の結果をお知らせを願いたい。  それから前年度の借り入れた米麦の償還の問題でございますが、本年もまた災害をこうむつた地域において、十一月十五日を期限として返済をしなければならないということになつておりますが、払いたくても払えないという再被災者に対しての対策がこれでは全然拝見できないのでございますが、一体これはどういうふうになつておりますか。県に伺いますと、それは一応返してもらわなければ困るのだ、返さなければ平衡交付金を抑えるのだ、あるいはまた日歩四銭で利息をとるのだと言う。利息をとられてもけつこうでございますが、まるで高利貸みたいな脅迫的な態度で臨んでいる都道府県の態度は、農林省あるいは政府からそういう御指導をなさつておるのかどうか、その辺を伺いたい。
  131. 渡部伍良

    ○渡部説明員 御承知のように去年のものは、農林省は県に渡して、県の責任で町村を通じて農家に渡しておるのであります。農林省の関係は県との関係になつておるのであります。そして県の方からそういう要求が出て来ております。しかしこれは県によつて事情も異なりますし、食糧庁の方でただいま県と協議をしておりまして、もし必要があれば、これは延ばすとなると法律が必要のようでありますから、そういうことをはつきりきめて、どうしても県の方で必要であれば、法律を制定するということにしなければならないと思います。それはまだ最後的にきめておりません。
  132. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 都道府県の都道府県民に対する態度というものは、憲法改正論者はいざ知らず、私は今の憲法は改正に値しない、それからまた擁護に値しない憲法だと思つておりますが、そういうことは別といたしましても、ああいう憲法のある限り、国民の公僕であるべき都道府県の吏員どもが、都道府県民に臨む態度はまつく高踏的なんですよ。私は中央政府から指示がなければあんな態度はできないんじやないかということを、方々の府県へ行つて聞くのです。あなたのところからそういう指示がないというなら幸いたが、その点はひとつすみやかに御勘考を願いたい。  最後に一点伺いたい。畑作に対する共済制度を何かお考えでございますか。
  133. 渡部伍良

    ○渡部説明員 畑作全般について、現在実施しております農業共済制度をそのまま適用することについては、まだそういう考えは出ておりません。ただ菜種については共済の対象に入れたらどうかということは相当進んで、現在農業共済の審議会で検討されておるように承知しております。そのほか開拓地につきまして特別の災害共助制度を考えようということで、これは三十年度の予算で要求することにきめております。
  134. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会