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1954-07-21 第19回国会 衆議院 農林委員会蚕糸に関する小委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月二十一日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席小委員    小委員長 佐藤洋之助君       秋山 利恭君    佐藤善一郎君       金子與重郎君    井谷 正吉君       芳賀  貢君    川俣 清音君       中澤 茂一君    安藤  覺君  小委員外出席者         農林委員長   井出一太郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  原田  伝君         農林事務官         (蚕糸局糸政課         長)      大戸 元長君         農林事務官         (蚕糸局繭糸課         長)      酒折 武弘君         参  考  人         (全国養蚕販売         農業協同組合連         合会常任理事) 森山善治郎君         参  考  人         (日本製糸協会         会長代理)   中島 覚衛君         参  考  人         (日本製糸協会         理事)     小山邦大郎君         参  考  人         (日本生糸販売         農業協同組合連         合会会長)   北原 金平君         参  考  人         (玉糸協会会         長)      大林 正志君         参  考  人         (中央蚕糸協会         会長)     吉田 清二君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案(内閣  提出第一八二号)     —————————————
  2. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。  本日はここに御出席をいただきました参考人の方より本案に対する御意見を承ることにいたします。  この際参考人の方にごあいさつを申し上げます。本日は御多忙にもかかわらずお繰合せ御出席をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。御承知通り本案は、生糸輸出増進蚕糸業経営安定確保に関するため、従来の措置に加えて繭価が異常に騰貴する等の場合には繭業者間に繭価等につき協定等を結ぶことができることとし、繭価が異常に低落する等の場合には農業協同組合連合会乾繭保管せしめ、これに要する経費につき国から補助金を交付する等の排置を講じ、繭価及び糸価の安定をはからんとするものでありますが、かかる措置に伴う諸問題について、各位のおのおののお立場から忌憚のない御意見を承り、本案審査に貴重な参考にいたしたいと考うる次第であります。  それではこれから御意見を承ることにいたしますが、多数お願いをいたしました関係上、お一人約二十分に御限定を願いまして、一通り御陳述を願いたいと存じます。これから順次お願いいたします。  まず全国養蚕販売機農業協同組合連合会常務理百事森山善治郎氏からお願いいたします。森山君。
  3. 森山善治郎

    森山参考人 それでは御指名によりまして、繭糸価格法の一部を改正する法律案に対します養蚕側といたしましての意見を率直に申し上げたいと思います。  この法律案が制定されました時期は、生糸価格最高価格を突破するというような異常な事態において考えられました法律案でございまして、その生糸価格が異常に高騰したというその原因を、繭価格が異常に高騰したということに前提を置きまして、本来ならば繭糸価格安定法において、行政的な力があり、なお市場価格においてこれを操作し得る政府手持ち生糸がありました場合は、改正法のこの趣旨によらないで、従来あります法律の内容においてこれを阻止することができたと考えられるのでございますが、不幸にいたしまして行政的な力の不足並びに手持ち生糸を持つておらなかつたというようなことから、先ほど申し上げました繭の異常な価格高騰ということを原因といたしまして、この生糸の異常なる騰貴ということができたという前提におきまして、まず繭価を抑制することによつて輸出増進をおもなる目的といたしましてこの立案がなされたものと思われるのでございまして、現況におきましては、むしろこういつた異常なる高騰という事態よりも、異常な低下ということが現在の蚕糸業が直面しておる事態でございますので、そういう現況からいたしまして、この法案を再検討する必要があるのではないかというふうに養蚕側としては考えておるのであります。  従来糸価安定帯価格による安定によつて輸出増進養蚕経営の安定とを企図したものでございますが、今回のこの改正法律案を見ますと、従来のごとき間接的に繭価の安定をはかることを改めまして、直接繭価の安定をはかる、いわゆる低落の場合に直接繭価の安定をはかろうとする考え方がこの法律案の一部に取入れられておりますが、このことは従来糸価維持によりまして間接的に繭価の安定をはからんといたしました考え方からいたしますと、一歩前進した考え方といわざるを得ないと思つております。この点につきましては、養蚕側といたしましては、この措置によりまして十分とは申し上げることはできないのでございますが、従来からいたしますと一歩前進というふうな考え方を持つておるのでございます。しかし繭価糸価安定帯価格に織り込むことによつて必ずその輸出増進という目的が達成されるかどうかということについては、ただいまの現況からいたしまして、一部危惧の念を持たざるを得ないというふうに申し上げたいのでございます。  それから繭の下値維持する方法につきましては、法案によりますと乾繭共同保管の場合の金利並びに倉敷料の補助をするということにとどまつておるのでございますが、繭の保官中におきます減耗ということは相当に考えられます上、この保管するという場合におきましては、相当価格が発生せざる場合相当長期保管するという事態も考え得るわけでございまして、そうなつて来ました場合、保管中の損耗等をもやはり補填するという措置を、この際金利、倉敷の補助ということに加えて御考慮を願いたいということなのでございます。  それからなお現在繭代金の支払いが農林金融を通じて行われておるのではございませんで、主として市中銀行を通じて製糸を通しまして養蚕家に支払われておるというような現況からいたしまして、共同保管ということを実質的な効果をあげるためには、やはり共同保管をした際の農家経営に必要な資金の供給というような見地から、必要な資金農林資金をもつて裏づけするというような立法的措置が伴いませんと、とかく繭を主体といたします農家経営現金収入の面に非常な大きな影響を及ぼしますので、やはりつけ加えて共同保管中におきます必要な資金の裏づけを、ぜひ農林金融において立法的に裏づけていただきたいということが養蚕側としての強いお願い趣旨でございます。  それからなお生糸高騰が、先ほど申し上げました繭値が著しく高まつたということにおきまして、生糸価格抑制には、何といたしましても繭価の上値を抑制しなければならないというような見解から、この法律案によりますと、製糸業者数量調整をも含めました独禁法の全面的除外をすることは必要以上に繭価を抑制する危険がある、必要以上に繭価を圧迫いたしましての繭糸価格の安定ということになりまして、繭糸価格の安定という美名のもとにおきまして、一切の負担農民にしわ寄せされるおそれがなきにしもあらずというふうに考えられるのでございます。このことは特に法律案の十条の二項にありますように、この条項を全面的に行いますことによつて購買カルテルの成立が予想されるのでございます。従来におきましても、力の弱い養蚕家がこのような力によつて圧力を加えられますことは、養蚕家としては危惧の念を抱かざるを得ないというようなことで、この点につきましては何らかの適当な予防的措置を講ぜられまして 一切の負担農民にしわ寄せされるというようなおそれのないように御考慮を願いたいということでございます。  それから最後に申し上げたいと思いますことは、この法律に直接の関係がないかもしれませんが、輸出増進並びに養蚕経営の安定ということを目的にされておる本法の精神を生かすためには、特に輸出増進ということにつきましては、生糸生産費の大部分を占めております繭代金低下する以外に、おそらく生糸価格低減ということは非常に困難なのじやないかというかうに考えられます。従つて従来とられております方針をさらに積極的に行うこと、すなわち繭の増産等を行いますことによつて繭生産費低減するということが基本的な考え方ではないかというふうに考えております。この基本的な要件が満たされないで、ただ価格操作のみによつて輸出増進をするというような事態につきましては、先ほど申し上げましたような負担のしわ寄せが農民に、全部とは申し上げかねても、相当部分養蚕にしわ寄せされるおそれがあると思うのでございます。農業経営においては、労力、資本、資材等農産物価格低減いたしました場合にはこれを他に転換できないという考え方から、価格低減は繭の増産には影響がないというふうにも一部考えられますけれども、他の農作物との価格上のつり合いから、やはりそういう理論に一応立つといたしましても、他の農産物が有利な場合は転作というような形において農業経営が転移するのではないかというふうに考えております。東北地帯におけるタバコ栽培の普及というようなことも、そういう一つの現われとして見られるのではないかというふうにおそれるのでございます。従つてこの際、この法案を真に農民負担という形において国の輸出増進を行うのではない、輸出増進を最終の目的といたしましても、一部の人たちの犠牲、負担においてこれをなすのでないという考え方に立つならば、その価格において少くも生産費を償う程度農作物生産がなされなければならないということが前提でないかと思つております。現在におきましては、たとえば養蚕経営の能率を非常に上げるといたしましても、二年ないし三年間桑園改善には時間的にも、経費的にも必要になつて来ます。こういつた場合につきましては、少くとも政府におきまして、そういう部面の生産費低減に必要な施策というものを積極的に打出すことでないと、最終的には先ほど申し上げましたような、輸出増進等養蚕家負担においてなされるというふうにいわざるを得ないというように考えますので、この問題は本法律案に直接の関係がないかもしれませんが、単なる市場価格操作のみによつて輸出振興をはかるのではなしに、生産費的にも考えて、農民がその負担をこうむることなしに正常な価格において国際商品としての生糸輸出がなされるようにおとりはからいを願いたいと思うのでございます。この点につきましては最後に特にお願いをいたしておきたいと思うのでございます。以上でございます。
  4. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 次いで中島覚衛さんに日本製糸協会会長代理としてお述べを願います。
  5. 中島覚衛

    中島参考人 製糸業者といううちの、主として輸出製糸立場からこの法案に対する意見を申し上げたいと思います。  生糸は、御承知のように新興繊維の発達も最近目ざましいものがありますし、さらに中共、朝鮮方面生糸輸出増強策というものは相当活発になつておりましてわが国の独占的産物として世界市場を把握するということはできないような状況にありますので、この生糸輸出増進には、官民あげて施策を練る重要なる段階にあると存ずる次第でございます。輸出増進施策につきましては、為替レートの矛盾を緩和するために現在五%の優先外貨という制度があります。なお本年やりましたところの砂糖とのリンク制実施というものもございますし、さらにまた糸価安定帯に置くというような方策があるのでございますけれども、この優先外貨の問題とかあるいはリンク制の問題というものは、他の産業との関連がありましてなかなか思うように効果をあげておらないのが現状であるわけでございます。さらに価格安定法実施につきましては、何といいましても政府手持ち生糸がないというような昨年われわれ苦い経験があるわけでありまして、価格が異常に騰貴しましても押える方途がないというような状況下にかんがみまして本法の補強の上の改正が必要となつて来たのでございます。糸価安定帯の中に安定させるためには、まず何といいましても繭価安定帯の中に安定しておることが前提であるということを考えるのでございまして、繭の価格安定帯の外に置きまして生糸価格だけを安定帯の中に置くということは、理論上から言いましてもかつ実際上から言いましても不可能なことと思います。さらにつけ加えて申し上げますれば、養蚕業者繭価の異常な高値を希望するというようなことがありましても、これは生糸消費輸出を阻害するのでございまして、その後に繭の増産があれば、それが異常な下落を来すというようなことからいいましても、蚕糸業者繭糸価安定帯の中において生産合理化に努めまして、原価の引下げと品質改善をはかりまして、生糸消費及び輸出増進をはかることによりまして、漸次繭糸増産に励むような形を希望すべきものと考えるものでございます。繭価糸価に比較いたしまして常に割高であることは御承知通りでありまして、糸価安定帯の上にあれば、繭価安定帯の外に出て、これが原因となつて糸価安定帯の外に出るという結果になるのでございます。従つて糸価安定帯の上にある場合には、繭価の割高を防ぐ方途を講ずる必要があるのでございまして、繭価が割高である原因は、製糸設備の過剰、製糸業者間の原料買入れ高がはなはだしく不均等であることと、また養蚕団体製糸業者との売買契約を侵害して、繭の現金買いが行われること等がおもな原因であるわけであります。  本案改正の第一は、製糸業者間の原料買入れ高の不均等をある程度是正するために、養蚕団体との売買契約をするにあたりまして、製糸業者が話合いをすることができるようにされておるのでありまして、製糸業者といたしましては、政府の統制を希望しておりますから、希望と本改正との間にはかなりの隔たりがあつて、十分ではありませんが、自由経済の現段階におきましては、この程度改正でやむを得ないものと存じております。すなわち政府責任をのがれて製糸業者の肩に重荷を負わせておるのでありますが、製糸業者はそれでも現状よりは何ほどかよいと思つておるような状況であります。このことは養蚕団体共販態勢維持の上にも大きな貢献をし、また繭検定制度実施上にも大きな役割を果し、ひいては蚕糸業合理化になると考えます。  本改正の第二の点は、養蚕団体製糸団体とが価格協定を行う際に、両者利害関係から紛糾して長期にわたり、また何らかの関係で不当の価格にならないとも限りませんので、適当な勧告を行うことになつております。これは製糸業者としては、むしろ第三者の政府蚕糸業の大局に立つて適正な価格を指示してもらい、それに両者ともに従うように改正されることを希望しておるのでありますが、右のように抽象的になつたことは、これまた政府責任のがれと思います。しかしこの程度でも、ないよりはあつた方がよいし、また政府指導者の力によつては、運用の際に大いに実効の上ることも考えられます。従つて改正実施前提は、政府指道者に有能な人材を得ることが必要であると考えます。  次に本改正の第三の問題でありますが、大部分製糸業者養蚕団体価格協定をした場合には、これ以上の繭価で繭が買えないような規制が設けられたことで、これは製糸業者希望が達成せられております。いかに慎重に価格協定が行われましても、これを害らないようでは価格協定の意義はございません。価格協定が守られないこと、価格協定が困難であるということ、並びに繭価が割高になること等の原因は、不当に割高な繭価現金買いが行われることにあるのでありますが、現金買いは何ゆえに割高であるかということを一言申し上げたいと思います。  まず売買契約をしておる養蚕業者は、割高と思える繭価であるために、契約を違反してまで売るのでありますから、割高な繭価でなくては現金買いはできないことになるのであります。割高に現金買いができるのは、現金買いの繭には養蚕団体との虎質契約に伴う繭入費集荷指導費  これはいろいろ計算方法がありますが、概算いたしまして一貫目当り八十円から百円くらいの金額になると思いますが、こういうような経費が不要であるということ、あるいは品質のよい繭を抜いて、実質は割安でも単価は高いこと、また繭糸相場思惑用に使用すること、割高な繭価で誘惑して養蚕地盤の争奪をはかること、その他いろいろの理由があるのでございます。  なお現金買い繭価実態がつかめなく、実態を上まわる風評が立つて市場を制するわけであります。従つて製糸業者団体協約によらず全国現金買い市場とすれば、おそらく現在よりも低い繭価で繭を買い入れることができるかとも思われるような状況でございます。しかしこのことは、繭の検定制度購繭金融スタンプ制度弱体化養蚕団体指導機能低下製糸経営計画性減退等よりいたしまして、蚕糸業合理化施策の放棄となるのでありまして、適策とは思つておりません。従つて改正によつて蚕糸業の危急を救済することを切望する次第でありまして、もしもこの改正実施されないといたしますならば、背に腹はかえられないということになつて、近い将来蚕糸業の無秩序と大混乱が起らないとは保証しがたく、はなはだしく憂慮するものであります。  改正の第四の問題は、糸価安定帯最低を下まわる際に繭価維持をはかるために、養蚕団体の繭の共同保管に対し政府保管経費補助することでありまして、製糸業者といたしましては別に異議はございません。むしろ生糸最低価格政府が無限に買い上げる方途を講ずるならば、繭価が不当に暴落する心配はなくなりますから、三十億の現在の資金をさらに増額し、蚕糸証券の発行によつて、絶対に最低糸価が守られるという線をさらに強く打出すことが必要と考える次第でございます。  なお、製糸設備の過剰の整理は、本改正には取上げられてはおりませんが、きわめて重安な問題でありますので、製糸業法の強化によつて目的を達する必要があると思う次第でございます。  以上でございます。
  6. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 次は小山邦太郎君にお願いいたします。
  7. 小山邦大郎

    小山参考人 今の養蚕側を代表しての御意見と、製糸側立場において述べられた御意見、二つとも必ずしも一致しておらない。しかもそれは、おのおの立場においてそれ  当然のことであつて、その主張一つずつ伺えばいずれにも共鳴するものでありますが、この蚕糸価格を安定せしめるという目的を達する上において、今日の現行法では足りないので、その足りないところを補う意味において、かりに不十分であつても、これはぜひ改正をしていただきたいと希望するものでございます。  その理由一つは、現在の法律では、生糸最高価格維持する能力がない。法律の上では明らかにその能力があるはずなのでありますが、運営上その能力を持つておらない。それは何であるかと言えば、高くなつた場合に政府持駒があれは、手持ち生糸があれば、それを売り出して最高価格維持できますけれども、持駒がない、手持ち生糸がないから売り出すことができない。これがために繭は自然暴騰して来る。その結果は、一時蚕糸業者が潤うことがありましても、究極するところ暴騰によつて需要減退となり、また、暴騰によつて一般需要減退するのに、養蚕家暴騰に魅せられて非常な増産になり、その増産の結果は非常な暴落を来すということは、過去の事実において明らかでございます。そこで生糸を持つておらない今日において、最高価格維持しようとするならば、どうしてもその原料である繭を最高価格適正価格内において売買取引ができるということが当然のことであります。もし原料が妥当な価格取引されるならば、それを基礎としてつくり上げました生糸は、あくまで強制してもそのわく内において販売せしめることができる、こういう観点から繭の最高価格生糸最高高価格に見合う価格取引できるように導かれるこの法律には賛成であるわけでございます。  その次に、しからば繭が著しく安くなつた場合にどうするか。これに対しては、共同の力をもつて乾繭保管をさせ、乾繭保管に対して融資の道を開き、そうしてそれに対する諸費用政府補助するのはまことに適当なことであつて、現法律におきましては、繭の極端なる価格下落に対しては適当なる方途を講ずるという条件が条文に見出されておるだけで、具体的なものがありませんが、幸いにしてこの法律改正目的を達するならば、繭が適正価格以下に下落した場合は、自主的にその格価維持する方途が具体化されることになるのでありまして、これはひとり養蚕家といわず、日本蚕糸業基礎を確立する上においてきわめて大切な処置である、こう考える次第でございます。その際、保管料その他利子補給ばかりでなく、保管中の損耗相当に多いのであるから、これに対しても補償しろという養蚕家主張も当然のことと思います。世間ややもすれば問題になつておりまする水引き問題のごときは何から起つているのかといえば、長期繭保管において損耗があるということは、どちらの立場においても認められておればこそ水引きの問題があるのであります。その水引きをどの程度にすることがよろしいかということについては、今具体的に調査をされておるのでありますから、それに従うことでけつこうであろうと思いますが、水引きの必要なる理由も、今養蚕家の御主張なつたように、保管中の損耗がある、その損耗を補償するという意味において、そういうことも取引上の慣行に加えられておることでございます。従つて養蚕家自身が申すように、養蚕家に補償してやることは当然のことではないか、こう思う次第でございます。  最後に、これによつて現行法をやや強化することに役立つのでございまするが、私はさらに一つお願いを申したい。それは現在はすでに糸価安定帯の中に入つておるけれども、需要がまだあまり起らないじやないか、それではこの法律は無意味ではないかという御意見もあろうかと思いますが、決してそうではない。今安定帯の中に入つたとしても、これが継続して初めてその効果を生ずる。幸いにして今安定帯の中にあるけれども、少し売れ出したならばすぐ繭価は騰貴して来る。さらに売れ出したならばまたわく内を逸脱しないとだれが保証することができるか。この点を考えますれば、私は現行法は非常に有効のもので、あくまでこのまま続けていただくことが必要であると思う。同時に一方この安定帯の中に入つた今日、どうしても他方においては、先ほど中島さんのお話の通り、他の競争繊維がたくさんに出て来ておる状況でありますから、生糸は特殊の味わいがあるからといつて、そのままにしておつては売れない。大いに宣伝する。とにかく海外に向つて大いにより多く売れる方法を積極的に講じていただくことが大切であろうと思うのであります。それがためには、私は現在閉鎖機関になつておるが、過去における蚕糸業会売買差金として保有したものを、そのまま特別会計に三十億寄付した残りがまだ残余財産として利息を含せて八億を突破しておるとのことでございます。これらの金をもつてもつと積極的に生糸の売れる方途を講ずることが必要である。いま一つは、あくまで価格維持をするためには、下値の場合に政府が三十億という金を限定とせずに、無限に買い入れるという実力を示すためには、さらに金融処置が必要であつて、そのために三十億を五十億、八十億にしていただくということが必要であろうと思いますが、今日の場合それがただちにできないようなときには、その八億になんなんとする金をもちまして金融処置共同保管のようなことをして、価格維持に当るということもその一つではないか。一面において政府に要望することのみ強くして、業者みずからの責めるところが不十分であるということははなはだ恥じ入る次第でありまして、この点は私どもも深く考えるのでございますが、たしかあの八億という金はわずか二十万円の出資をしておるという。その出資者だけで自由にわけ前すべき金ではないということに私どもは考えますので、これを蚕糸業全体の発展のために、より有効に使い得るようにすべきだとわれわれも考える。また全体の考えが必ずしも一致しない場合には、どうぞ大所高所からの公平なる御判断によつて、正しいその使い方について御協力を願いたい次第であります。
  8. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 次いで日本生糸販売農業協同組合連合会会長である北原さんにお願いいたします。
  9. 北原金平

    ○北原参考人 ただいま御指名を受けましたいわゆる糸連の会長という立場から、今継続御審議になつております糸価安定法の一部改正ということに対する意見を申し述べる次第でございます。  御承知のように組合製糸、これは農民みずからが自主的に団結いたしまして、農業協同組合法によつて繭増産、農産加工の場面から繭を糸にするということ、そして共同出資によりまして糸連が問屋事業を行つておるというのが今の姿であり、組合製糸ということが、農林省方面からも、あるいはまた一般業者からも、非常に一般製糸と同一視されているところがございますので、この機会にお願いすることは、かつて戦前にありましたような姿の、本質において農産加工をするのであつて生糸製造業者である。従つて製糸業者である。だから法治国である以上、製糸業法による免許をとつて、そうして糸にしておるんだ。農家自体の利益を目途とはしておりますが、一般製糸とは本質的に考え方において非常に違う。製糸業法の免許をとらなければ、農産加工ができないからとるというところにおいては、一般製糸と同一視される。ことに戦後において八千万同胞がともに生きて行くという姿、この乏しき繭をわかち合うという線から見れば、現在協調に協一調を重ねておる。その線がまた一般製糸立場と同一視されておるような姿もある。うちにまた過去の生産から見て、組合製糸は区域内の繭しか処理できないのが原則である。従つて繭が足らないという姿は一般製糸におけると同じでございまして一面一般製糸法の経営もやむを得ない過渡期の姿である。行政方面から見ましても、あるいは一般の方々もそこに認識を改めていただいて、今後行政面からのしかるべき御処置お願いしたい。私どもの未熟の点も十分お互いに反省し、努力もし、是正をすることは言うまでもないことでございますが、この機会に行政方面から見、一般製糸との差から見て、その行政差を是正していただきたいということをお願いいたしておきます。要約いたしますれば、組合製糸といいましても、養蚕団体の今行つておる仕事に一歩前進した姿でございますので、養蚕者代表という観点においては違いない。私は先ほど森山さんから申し上げたことにほぼ一致の意見を持つものでございます。従いまして今提案されております改正案につきましては、全幅の賛成ができておるかということになりますと、非常に疑義がある。ことに先ほど森山さんからお話がありましたように、糸が高過ぎて困るとき一応考えた案である。われわれの一番心配することは、この改正案に出ておる事実上の問題でございますが、下を保証して上を制限するという姿、輸出目的とする姿においては、これは当然の姿であるというふうに考えられますが、しかし下への最低価格で買いつけてなおかつ繭価が保持されない姿、このときのあり方が、かつてこの問題を論議研究いたします蚕糸局御当局から出されました三月六日の案でございます。それの行き方の方がはつきりしていて安心して生産にいそしめるのじやないか。今回出されておるのは、いろいろな関係があるだろうと思いますが、あまりにぼやけておつて物足らない。この点は森山さんと同じ意見を持つものであります。  それから十条の二の二は、独禁法を除外されるという精神を持つておりますが、上へあふれるという姿のときは、これは独禁法を除外されても、関係というか響きが少いと思いますので、もしかこれが下へ行つたときに同じ考え方で処理されるというなら、非常に環境が違うところにおいては、弱い農民というものが苦しい立場に立つのではないかということが考えられますので、独禁法に関連する法律を組むとするならば、糸の高いとき、糸の安いときという点を相当考慮つて、軌を一にしないように、できるならばしていただくことが妥当ではないか、こういうふうに考えられるわけであります。  それから過去においての足らざりしころの輸出振興という問題から考えまして、非常にお互い業者も蚕糸局御当局もともに苦しんでやつて来たそのときの養蚕者の受ける感じというものは、どうもそれはなるほど輸出は今の国の経済上非常に必要なものである。これはよくわかつておる。しかし繭値を押えるあるいは糸価を押えるというその押えた価格が、もしか国内の物価に比べてみて安いものであるとするならば、業者の犠牲において輸出するのであるから、政府はよろしくこれを裏づけすべきものではないかということを考え、もつと大きな手を打つて押えるといたしましても、国内の物価指数以下に押えることは、これは業者の犠牲においてやることであるから、政府はよろしく業者に補償すべきではないかという限度が一つ考えられるのではないか。特にあの二十四万が高い、こういうふうに言われましても、ただ単に農産物の均衡から見ましても、必ずしも繭は高くない数字が出ておるわけでございます。これは御承知通りでございます。輸出は大事であり、輸出は生命であつて蚕糸業の持つ生命はそこにありますので、業者も生きなければならぬし、特に基盤産業である農業、今の制度から見ては農民にしわ寄せされる姿が強いという観点から見るときに、今申し上げることをひとつ申し上げて御考慮を煩わしたい。かように存ずるわけでございます。  増産のことについてはちよつと話が違いますが、森山さんの方から非常にお話がございましたので、以下大体森山さんと話がかち合いますから、省きたいと思います。大体組合製糸という立場から見ますれば、私ども自分が先輩の跡を受けて現段階に生きておるという姿から見れば、農産加工という立場から、うぬぼれではないが、繭をおいてほかに何があるのかと言いたい。かつて産業組合時代に政府の力によつてつていただいたあの精神をいま少しく生かして、特に自由経済であり、戦後の経営のときでありますので、むずかしいことであるが、農家経済の安定の上から見ますれば、いま少しく組合製糸に手を差延べていただくことが、蚕糸業が円満に行くのじやないか。たとえば水引きの問題も片づき、掛日日協定の問題も片づいて問題がない。ただ単に今の掛目協定というものが配分の基礎になるけれども、組合員の決算の基礎になつておらない。従つて農家自身で経営しておるのでありますから、繭の価格の決算によつて掛目協定の摩擦も避け得る。あらゆるものが今蚕糸業界において、製糸過程までにおける問題すらも、非常に自然に処理されるという姿があり、スムーズに行く。農産加工から見ましても組合製糸の持つ尊さというものは御承知通りでございますので、特に組合製糸について私どもの足らざる点があつたのでございますが、蚕糸当局においても一応の御関心を持つて行政方面に御援助をお願いしたい。かように存ずるわけであります。  私の申し上げたいことはその程度でございます。
  10. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 次いで玉糸協会会長の大林正志さん。
  11. 大林正志

    ○大林参考人 私は玉糸協会長立場から、当面しておるさしあたつた問題について申し上げ、かつお願いしたいと存じます。  生糸繭糸価安定によりまして買上げの対象になつております。しかしながら玉糸はその最高値禁止価格だけをきめてありまして、最低は何らきめてない、野放しになつておるというような状態でありまして、これは輸出玉糸を没却しておるといつても過言ではないと存ずるのであります。でありますから生糸と同様にお買上げを願いたい、さように存ずるのであります。その理由といたしますのは、玉糸は過去昭和二十五年、六年、七年、八年、この四箇年を通じまして、平均して八〇%以上を輸出しておるのであります。そして二十七年度は三十三億五千万円を輸出しておるのであります。このうちで七〇%はアメリカへ輸出しております。こういうことから国策としてのドル獲得に協力しておるわけであります。それで玉糸は、御承知と存じますが、中小企業でありまして、むしろ小企業に属するというようなわけで、従つて経済状態が浅くありますから、何か事が起りますと、その波をえらくかぶるというわけになつておりますから、どうしても安定した額で仕事ができるというため、それからアメリカ方面におきましても価格の安定することを望んでおりますから、どうしてもこれはお買上げ願いたい、こういう次第であります。このお買上げの問題につきましては、過去三箇年引続き当局に向つて要望しておるのでありますが、不幸にしていまだその実施を見ぬのを私ども非常に遺憾に存ずるのであります。名前をあげるのはいかがかと存じますが、前局長さんはわれわれの要望に対しまして、玉糸は輸出産業として新興の事業である、昭和二十八年度の輸出実績が二十七年度に比べてたいへん減つておる、それから二二五中の糸は輸出の糸のみであつて、内需には使えないから、もし輸出がとまつた場合には危険である。それから昭和二十八年度以降の玉糸の価格は、生糸と同じように並行して値が安定しておる。こういうことを言われて、私どもの要望をいれておらぬのであります。つきましては、それに対して私の意見を述べさせていただきます。  昭和二十八年度において輸出実績の減少した理由は、昭和二十八年度においては、凍霜害によりまして繭の減産と生糸の内需が好況であつたために、その原料である繭の価格は常に生糸の内需価格が基準となりまして、玉糸の原料影響を受け、採算は無視された高い値を出したのであります。それで私ども玉糸は、採算が合いませんために、釜数を整備しまして、この損害を最小限度に防ぐために縮小した結果が一つ。それから昭和二十七年度の輸出玉糸の一部に好ましからざる品物がありました、これがいくらかさわつた点もあります。それからなお一つは、アメリカにコンサイメントとして糸をやりましたが、その後値段が順次上りましたために、向うのハイヤーが不利益だということになりまして、なかなかこちらの糸を買わぬ、そのかわりに中共並びにイタリアの糸を買いましてそれでこちらを押えたというような原因で、これが昨年は二十七年度あたりに比較しまして需要が減つた、従つて輸出が減つたというわけになつたのであります。その後業者も糸を親切にひきまして、昨今におきましては非常に評判がよろしく、イタリアの糸などよりもずつとこちらの糸の方がいいという状態になつておりまして、現在といいますと、この一月から六月までと、昨年の一月から六月までと比較しますと、目下二九%も多く輸出しておるというようなありさまでありまして、玉糸の輸出が少くなつたというのは、先ほど申した理由によつて少くなつたのでありまして、アメリカの需要が減つたというのでは決してないのであります。  それから二二五中の買上げの対象として、玉糸が内需で使われぬからいけないということを申されましたが、これはどこまでも二二〇まではならないというわけではありません、六〇中あるいは一一〇中というのもあります。が、しかし六〇中よりも、アメリカとしましては一一〇中を望んでおりまして、目下一一〇中の方は、昨年あたりの二二五中よりもずつと上まわつた注文が来ておるというようなわけでありますから、必ずしも二二五中でなくても、私ども業者といたしますれば、一一〇中でもさしつかえない、できれば二〇中あるいは二二五中の両方を買上げの対象にしていただければけつこうだと存ずるのであります。ですから、昭和二十八年度以降のAの価格差もをつて、玉糸の価格生糸価格に比例することを決定づけることはできないと思うのであります。昭和二十八年度におきまして、玉糸の価格が同年以前に比べまして生糸価格より大きく下まわつたのは、昭和二十八年度におきまするコンサイメントの関係から、米国の需要はイタリア及び中共の玉糸をもつて補充されて、常にそれによつて牽制を受けておつたのであります。でありますから、玉糸製糸業者は、先ほど申しました小企業が多いのでありますから、従つて安く売らなければならない。これを持ちこたえるだけの力がないというわけで、それで値が下つたというわけでありますから、昨年を対象として値段をきめるとかいうことは間違つている、納得できない、こういうわけになる次第であります。  それから玉糸は戦後の新興産業であるということを言われましたが、これは最も当つておらぬことでありまして、私豊橋で営業いたしておりますが、豊橋は明治十二年ごろから玉糸が起りまして、明治三十三年に玉糸組合を組織しまして、そのときが六十九工場だつたと思いますが、六十九工場でこの玉糸組合というものを組織したのであります。それで組織した翌年に、つまり明治三十四年にソビエトのモスクワにおいて玉糸の注文が来たのであります。それでその翌年の三十五年に米国から注文が来たのであります。これがおそらく玉糸の輸出の嚆矢であつたと存ずるのであります。その以後は多少にかかわらず、年々歳々注文が来ておつたのでありますが、しかし戦時中はこれが中絶した。これが今や昭和二十四年の暮あたりからまた多くなつて立て、先ほど申したような状態であります。現在はどうであるかと言いますと、これが順次アメリカあたりは王糸の需要が普遍して参りまして、まあ以前は婦人の春夏の服、それからカーテンとか敷物とかあるいは電気スタンドのかさとか、運動服とかいろいろなものに使われておりましたが、その後は男子の上服にも用いられ、それから腕今に至りますと、ネクタイ、ハンカチというふうになりまして、これは非常に普遍化して、前途の輸出は有望だ、こういうふうに考えるのであります。でありますから、これは生糸と同様に、玉糸を片手落ちせずお買上げを願いたい。それにつきまして御当局の御意見だと、大蔵省で予算を認めてくれぬというお話でありますが、これは御当局の御手腕にまつて、何としても予算をふやしていただきたい。私ども過去の四箇年の輸出のぐあいから行きまして、三億七千万円計上してくれれば二箇月分のお買上げはできる、こう確信しておりますから、どうかして大蔵省に御提唱なさって、この予算をとっていただいて、そしてお買上げの対象にしていただきたい。こういうことをこの際切に  お願いいたします次第であります。
  12. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 最後中央蚕糸協会会長の吉田清二さんにお願いいたします。
  13. 吉田清二

    ○吉田参考人 今まで各業界の代表の方々から、るる御意見がございましたので尽きていると思います、私その上蛇足を加える必要もないかと思いますが、お招きをいただきましたので簡単に一口述べさしていただきます。  最近の蚕糸業の動きから役所が勘づかれたことで、どうも繭の取引の最近の実情を見るというと、えらく製糸家が設備が過剰であるところに原料が足りないということから、ますます競争をやって、必ずしも養蚕家希望しておらないところまで値を上げてしまって、につちもさつちも動かぬところまで行って、蚕糸業の健全なる発展の上にかなり支障がある。また糸価対策の上においてそれが邪魔になる。こういったことが現に確かにあります。それに基いて立てられたのがこの改正案の第一点だろうと思うのであります。これは先ほど来いろいろお話があつた通りであります。養蚕方面からは、運用の仕方によっては今度は製糸の方がぐるになって、繭を高く売ることを押えられるからよほど注意しなければならぬということも私はあろうと思います。これはよほど運用の点において、当局においてかような点を十分如才なくおやりになることにして運営なさるならば、たいへんいい改正案だと思うのであります。その意味におきまして、この改正案の第一点についてはけっこうな改正案だと私は考えまして、賛成を表するのであります。  それから値下りの対策でありますが、糸に対しては買うということはさまつておりますが、これにあわせて繭に対して直接の施策が立てられておらぬので、この際具体的に繭の値下りの場合の対策を立てるようにということが、前々から業界で要望がありました。これに対して考えられたことが共同保管の問題でありまして、これまた適切なねらいであると思いまして、この改正の点につきましてもけっこうでありまして、むろん私ども賛成するのであります。ただ御承知通り糸価安定制度の根本というものは、生糸価格を一定の適当な価格のレベルに置いて、あまり著しい上げ下げをしないようにするというところにねらいがある。いわゆる安定帯と申しますか、上値と下値に線を引いてその線をがっちり固め、上にも下にも行かぬ、こういうようにすることによって一つ生産業者を安泰ならしめ、一つは海外のマーケットを維持確保することをねらっているのがこの法律趣旨だと思うのでありますが、もちろんそれでありますが、ただ心配されておりますことはこの二つの線がはたしてがっちり行っているかどうかということについて、かなり業界に懸念があることを私は申し上げたいのであります。第一下の線を維持するのには、政府生糸を買入れるという手段方法によって、これ以上は生糸の値下りをさせぬということでがんばっているのでありますが、一番大事な資金が御承知通り三十億ということになっている。これは法律の問題というよりも予算の問題でございますので、この法律改正案というところで言うべき問題ではないかもしれませんが、お互いに関連のあることでございますので、この三十億という金額ではとうてい、えらい勢いで値下りを生じて来たような場合には、食いとめることは不可能だろう、こういう疑念がマーケットにあります。かような心配ごとがありますと、御承知通り相場は心理作用で動くのでありますから、買入れのテコが弱いというようなことから、思わざる勢いでもって下って参りまして、全部の資金を使い果しても値がとまらないというようなことがありはしないかという心配がありますので、これはこの法律改正とは別ではあるかもしれませんが、ぜひとも将来においてその点についての十分な措置を講じられることが大事だろうと思います。資金をふやすことができないならば、あるいは手形で買うようなかっこうでもいいでしょう、何らか適当な方法をもつて、三十二億あるそうでありますが、この三十二億のてこをもう少し太くすることが、この法律改正に伴ってやっていただかなければならぬ問題であろうと思います。先ほど小山さんからは、民間の方でも適当に自分たちの自力で方法を立てることが必要だ、閉鎖機関の金もあることだから、これを何とか利用して、政府ばかりにたよらないで、業者みずからも自分でやるべきではないかという御意見もありましたが、私はごもっともの御意見とも思うのであります。とにもかくにも官民一致いたしまして、このてこを太くすることがきわめて大事じゃないか。この点について、政府御当局は申すに及ばず、国会議員の方々が十分御心配をいただきたいというふうに私は考えるのであります。  それから上値の対策でありますが、上り過ぎると、妙な話で、外国に売るのに値が上って、こんなものを押えるのは矛盾撞着のような感じもいたすのでありますが、先ほど申しますように、海外のマーケットあるいはお得意先を維持、確保して参りますのには、べらぼうな値を出すことは結局だめなんです。そして、一つは最近の現象でも御承知でありましようが、二十七万円に上ったかと思ったら、一箇月の間に七万円も一ペんに下って来るというようなことで、上れば、何らかのつまづきがあると、必ずさか落ちに落ちるのであります。これが次の海外の売込みに非常な妨害をなすのであります。今なお海外が買いついて来ないというのは、この間高値からさか落ちに落ちたことによってけがをしておるような業者が非常に多いので、安心が行きかねておるというのが相当大きな理由じゃないかと思うのであります。かような点から考えてみまして、むろんむやみに安くする必要は毛頭ないのでありますけれども、高くしない、ある程度でとめるということも、海外のお得意様を維持する、マーケットを確保する上においてをきわめて大事なことでありますから、高値対策も低値対策と同様に、がっちり固めておくことが大事じゃないかと思うのであります。ところが高値対策になりますと、先ほどもお話がありましたように、政府が手持ち糸を持っておる場合は、これを売って値を押える建前になっておりまするけれども、下値の場合は、資金さえ用意をすればよいことで、政府は財力無限といってもいいでありましようから、下値の対策はいかようにもできると思うのでありますが、上値の問題になりますと、政府といえども糸を持っておらない以上は、その手段で押えることができないのであります。従って高値を押える対策といたしましては、売って押えるということのほかに、別な方策をこれに加えて押えて行く必要があるというふうに私どもは考えます。従ってこの法律にも、必要なる場台においては禁止価格を設けて、それ以上の価格で売買することをやめろという命令を出すことができることになっておりますのはその意味でありますが、先般どういうことでありましたか、この制度が何ら運用がされなかった、はなはだ臆病な態度があったように思うのであります。従って、二十四万円以上売買禁止ということがあったにもかかわらず、相場が二十七万円も行ってしまったということで、その反動が今来ているということになっておりますので、ここらの点について、制度上何らか条文の上において不備な点がありますので、十分御検討を願って、せっかくの改正の機会でございますので、ここらの点についても国会の方において御審議いただきたいと思うのであります。この法案には、その部分についての改正がないようでありますけれども、そこらの点についてもひとつ御検討をいただくことが必要じゃないか、私はこういうふうに考えます。  それから、申し落しましたが、ここに下値の場合の対策として乾繭共同保管をするということがありますが、これはけつこうでありますけれども、ここに、養蚕団体共同保管をやった場合に、保管に要した経費補助するとあります。私は、かつて七・七禁令というものが出まして、ぜいたく品禁止というものが数年前出ました際の経験を、ちよつと御参考にしたいと思いますが、当時値が下つて来ました。それで春繭でつくった糸が千三百五十円と記憶していますが、それで政府が買いました。ところが夏秋蚕が出て来ましたが、そういう政府がどんどん糸を買っているような情勢でございましたので、養蚕家がむやみに安い値で投売りをする傾向が出て来ました。そうしますと、かように政府がせっかくてこ入れをして、どんどん糸を買っているにもかかわらず、養蚕家が投売りをする傾向にありましたので、今度は、政府で買っている糸で、製糸家の方が十分採算が合うという繭を手に入れることになってしまったので、いつまでたっても政府が糸を買わなければならぬというような現象を起す懸念があるのであります。その意味から申しまして、政府共同保管を無理にでもさせるということも、ある場合には必要じゃないかと思うのであります。従ってさような場合には、一定期間共同保管させた後において、養査家が繭を処分して、そしてその共同保管をさせた価格以下にしか処分ができなかった場合に、その値下り分は補償してやるというような道を、これにつけ加えて置く方が適当じゃないかと私は思うのであります。ここには、共同保管した場合養蚕家に対する経費の補償だけでありますが、そういう場合も予想されますので、御参考までに申し上げておきます。要するに、この土の線も下の線もがっちり行くように、この際全面的に御検討願いたいと思います。改正点は二点あるようでありますが、その他今私が申し上げましたような点についても、この際せっかくの改正の機会でありますので、国会におかれても御審議くださった方がいいじゃないかと思います。  くどく申しましたが、私が申し上げたいことは以上であります。
  14. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 これにて参考人各位の陳述を終りました。これにより順次参考人に対する質疑を許可いたします。
  15. 中澤茂一

    ○中澤委員 玉糸の問題で、大林さんにちよつと伺いますが、先ほどあなたは、二箇月分で三億七千万円あれば可能であるとおつしやいましたが、この二高力分という意味は、どういうことですか。安定帯価格維持するため、二箇月分三億七千万円あればという意味ですか、その点いま少し明確にしていただきたい。
  16. 大林正志

    ○大林参考人 私当っておらぬかもしれませんが、聞くところによりますと、生糸の三十二億円というのが二箇月分だということを聞まして、それで二箇月分の予算を立てたのでありますけれども、それではとうてい足りぬと思います。それでその足りぬ分は、磁府の方で金利の方を補償していただきまして、そしてこれを安定するところまでひとつお骨折をお願いしたい、こういう考えであります。その点も生糸の方でもそういうお考えだということを聞いておりますが、これは聞いただけではたしてどうであるか存じませんが、同じような意味お願いしたい、こういうわけであります。
  17. 中澤茂一

    ○中澤委員 それでその三億七千万という数字は、総生産量の何パーセントというふうな御計算をなさっておられますか。
  18. 大林正志

    ○大林参考人 ちよつと今数字がありませんが、約二箇月でありまするから、これに対しては工場では安いものもありますけれども、まあ十分の二というように御承知願いたいと思います。
  19. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたの方で、この前寺内さんが二二五中は内需が全然ないので、一一〇中の方に転換して来ているとおつしやいましたが、一一〇中なら一体内需との関係はどうなんですか。買い上げた糸が輸出にならないとき一一〇中なら内需で使えるのですか。
  20. 大林正志

    ○大林参考人 これは使っております。内需にも使っております。でありますから、一一〇ならば内外両方に使えるのでよろしいと思っております。
  21. 中澤茂一

    ○中澤委員 実はこの瀞正について玉糸を入れるか入れないかということは、当委員会の委員の中にもやはり問題になっておる。あなたのおっしゃる三億七千万でてこ入れができるとすれば、やはり中小企業擁護の立場もわれわれは考えたければならないのですが、問題は、政府は買上げをやつた、あと手持もが輸出にもならなければ内需にも向かないというようなことでは、せっかく製品にした貴重な糸をむだにすることであるので、できるだけ入れるとしても、内需あるいは輸出に確実に使えるというものでなければ、やはり国の立場からすれば非常に困ると思います。それについても今の二二五中あるいは一一〇中の輸出の将来の見通しというようなものは、一体どうなんでございましようか。よろしいのでしょうか、悪いのでしょうか。
  22. 大林正志

    ○大林参考人 これは今の状態から見ますと、決して心配はない存じております。確信しております。
  23. 中澤茂一

    ○中澤委員 次に吉田さんにお伺いいたしますが、今おっしゃった下値の問題は、これは確かにわれわれ養蚕農民立場から考えても大きな問題であるし、独禁法改正とからんで、一体必要以上に繭価を抑制しはせぬかという問題もわれわれ考えておるのでありますが、カルテル化されて来ればどうしてもそういう形が出て来るので、その場合経費の助成ばかりではたくして、強制保管の問題も考えた方がいいじゃないか。しかし強制保管以外に何らかのまだ操作措置による方法があるものでしょうか、ないものでしょうか。吉田さんのお考えをお伺いしたいと思います。
  24. 吉田清二

    ○吉田参考人 これは政府が買ってしまうということが繭を買うということができますればそれはよろしいと思いますが、これは金の問題よりも何よりも、非常な手数もかかってそれほどやれるかどうかと思いますので、買うということを別にいたしますと、とにかく一時売りどめをするということを考えざるを符ない。そうしますと、保管ということにもなると思います。ただその保管のときに、私先ほどちよつと申しましたように、一定期間政府がどんどん糸を買っておるような場合のごときは、むしろ繭を投げ売りされて困るような場合が、確かにこれは養蚕業者ためというよりは、政府みずからのために売ってもらっては因る場合が起きて来るのであります。そういう場合には、これは業者の方から自発的に政府の方へ、保管しますから経費をくれと、こういうことの道だけだと思いますが、私は政府が買っておる場合には、確かにそういうことが——現に私は苦しんだ経験を持っておりますので、さような場合には、政府は売りどめを命令する、保管せいと言って一定期間六箇月間だけは売らんでおいてくれ、そのかわり期間が解除された後において売った、そうしたところが案外糸値が回復しておらんで、依然として安く売らざるを得なかったというようなことになったら、それは政府が買収してやるべきものでありますので、それをやる。かような場合に、私は自分のかつてやったことを言うのですが、政府が府県知事と養蚕団体とに共同保管契約をさせるのであります。従ってもし六箇月の期間を十分に保管目的を達成した後において、繭を売って一定の値段以下にしか売れなかったら、それは県がこれを弁償してやる、こういう契約を知事とその県の養蚕団体との間でやらせます。その知事が契約した場合に、政府がこれを受継いで、知事がそれを買収したと申しますか、そうして金がいった場合には政府がそれを引受けてやる、こういう場合には、契約政府と知事とで再保険みたようなことをしてやったのでありますが、かつてはそれは実はうまく行きまして、一つ政府が払わぬでずっと値が上って来ましたので、養蚕家はどっちかというと、非常に高く売れて結局保管しておつたおかげで政府が金を出さんで済んだということになりましたが、これはうまく行つた例でありますが、そういうようなことが糸を買うことを確保する自分の自衛の手段としてでも、政府がやらなければならぬと私は思いますので、それでちよつと御参考に申したのですが、その手段としては、要するにたな上げをするということは繭の共同保管、乾燥をして貯蔵をして置く、こういうことより方法としては仕方がないと思いますが、その補償の仕方は、今申しましたようなことが適当じやないかと思います。
  25. 中澤茂一

    ○中澤委員 ほかの委員の方も御質問があるでしようが、先ほど小山先生がおつしやられた、例の残余財産の問題ですが、小山先生も御承知のように、この前実は立法までして、もうこれでよいというので、最後会議を議員会館で提案直前に開いたところが、製糸、種屋さん、養蚕団体——養蚕団体はある程度賛成したようですが、製糸さんの方と種屋さんの方に反対があつて、分け前をよこせ、二千万円出したその比率信じてわれわれは七億五千万円の分け前をとるんだということで、結局立法措置をして出す直前へ来て、団体間の決裂で不可能になつてしまつたといういきさつは小山先生も御承知通りですが、これは私は昨日蚕糸局長にも申し上げたのですが、何とかしてこれは有効に蚕糸業振興、輸出振興、養蚕振興のために使わなければいかぬという考えは今でも持つておるのでありますが、御承知のような政府の緊縮財政で、なかなかあの当時から見れば困難な情勢になつております。しかし団体側が、真にこれを何とかしてこの金を有効に使おうじやないかということでまとまるならば、今後われわれとしても考えてみなければならない問題だと思うのです。その点については、小山先生は今の団体間においてどういうような話合いが進んでおられますか、事実一致してこの金を使おうという態勢ができておるのですか、その点はいかがでしようか。
  26. 小山邦大郎

    小山参考人 はなはだ残念なことでございますが、まだそれぞれの業界において一致した意見にはなつておりません。しかしながらいずれの団体も、個人の利益のために使おうとは思つておりません。私が御相談をちようだいいたしております製糸協会においては、それが製糸協会へ別々にわけられるようになつた場合には、製糸協会においてそれを土台として輸出振興会社をつくりたいというような希望もあるのでございます。また養蚕団体養蚕団体で、それぞれ公的な意味においてこれを使いたいという御希望を持つておられることと察するのでございますが、私の願うところは、さような場合には、たくさんでもない八億の金のうち、その四割に相当するものが税金である。税金はもちろんけつこうです。けつこうであるが、その税金を出した残りのものをさらに分散することによつて、その分散された金の用途が、いずれも公的ではあろうけれども、今日のこの追い詰められたような蚕糸業界をいかにして立ち直させるかというには、ばらばらの力よりは、業界全体の一致した力で進む方がよりよいのではないか。もしそれ御質問のように一致の力がここに加わつたということになれば、これは税金として一般会計にお入れくださつて国家のためにお使いくだすつてもけつこうだが、それを国家の方でこの輸出産業である蚕糸業の復興のため、ひもつきでその方面に使わすということになればけつこうである。また一面出資者側から考えてみましても、わずか二千万の金を出して一しかし二千万と申しましても今日の二千万ではありません。往年の二千万でありますから、貨幣価値からいえば相当のものであるので、これがために過般も幾たびかいろいろの問題があつたとき、その当時の蚕糸局長は、一億だけをわける。つまり出資の五倍だけをわけて、あとの残りは公的意味に使つてはどうかということに御心配を願つたやに記憶いたしておるのでございます。従つて、残念なことには出資者と申しましても、今蚕糸業に携つておらない人がありますので、これを出資者の意思を無視して全部こうだということも、実際問題として困難ではないかと思うので、これらの点は十分妥協をして、二千万に対して一億、すなわち五倍。貨幣価値がかわつておるので少いかもしれんが、かつて蚕糸業関係のあつた人であり、またそのもうけた金は自分の努力でもうけたのでなし、資本の力だけでもうけたのではない、組織がもうけさせた、時代がもうけさせたのであるから、一億くらいにがまんしてもらつて、その他はあげて蚕糸のために使つてもらうということに御了承を願うことにしたらまとまるのではないか、こう考える次第でございます。
  27. 中澤茂一

    ○中澤委員 この問題は先ほど皆さんがおつしやるように、三十億ばかりのてこ入れで一体何ができる、こんなものは一月分も買えばしないということは異口同音におつしやつておるわけでありますが、政府自体も緊縮財政という大きな建前をとつておる以上、簡単に、何でもこれを増加して行くという方法は不可能だと思う。そこでこれはどうしても残余財産の問題を、自主的に業界が一致団結して取上げてもらつて、そしてこれを一つの基金制度にしてこの基金制度輸出振興に何。パーセント使う、養蚕振興に何パーセント使う、こういうふうな歩合をちやんと営めて、そして団体間が協調できるならば、何とかしてこれを基金制度にする。そしてある程度自主的なてこ入れということも——もちろん一つの基金制度ができれば、政府の余裕金の預託という方法があと考えられますから、七億なら七億の基金を持つて、そこへ五倍なら五倍、六倍なら六倍の政府預託をやる。そういう自主的てこ入れというものを、私は小山先生がおつしやつたように、どうしても業界で相談し、考えてもらいたい。ただ何でも政府にさえおぶさればいいということじやなくして、みずからひとつやつて、その足りないところは政府責任を持たせる、こういう態勢が必要だと思うのでありますが、まあその点については希望といたしまして、小山先生など大いに往年の政治力を御発揮願いまして、何とか業界をまとめて、これを使うような団体間の折衝をやつていただきたいといことを御希望申し上げておきます。  いま一点北原さんにお伺いしたいのですが、自動繰糸機が北原さんのところに入つたようですが、自動繰糸機によるところの生産原価は、一体どのくらいになるものでしようか。
  28. 北原金平

    ○北原参考人 自動繰糸機が私どもの工場へ入つておるかということでございますが、入つておりません。従いまして実感を申し上げることは避けたいと思います。
  29. 金子與重郎

    ○金子委員 一、二点お聞きしておきたいのですが、森山さんから、最後に、この法案と直接関係はないが、この法律の矛盾として、最低価格の決定に許して繭の生産費をはたして償つておるかということに対する考慮が、従前も今日も払われておらないという点、これに対して当然繭の生産費をいかにして安くして行くかという方策をあわせ考えるべきだというお話があつたように思つておりますが、繭の生産費低減の方策というものはいろいろありますが、今養蚕農民立場におきまして、団体立場からどうやつて具体策をとつてほしいという御意見がありましたら、お述べ願いたいと思います。
  30. 森山善治郎

    森山参考人 生産費低減に対する自体的な方策は何かという御質問でございますが、これは考え方といたしましていろいろな面から言われると思います。たとえば蚕品種の改良というようなことも生産費低減の大きな要素でございます。直接養蚕側といたしまして、養蚕施策と狭い意味に申し上げますと、まず手つとり早いところは桑園能率の増進と蚕作の安定、これがやはり中心問題であると思つております。その点につきましては、それを推進する力といたしまして、現在政府でとられております技術指導主事というような面の強化ももちろん必要でございますが、やはり現在ただちにということであれば、団体に所属しております技術員をさらに活用するような施設、いわゆるもつとはつきり申し上げますと、養蚕団体に所属しております養蚕技術員の身分安定というような面も、特に御考慮願いたいと思つております。
  31. 金子與重郎

    ○金子委員 そこで今の日本の桑園の状態から行きまして、ことに戦後荒れほうだいになつております桑園の反収をふやすという、いわゆる能率を増進して行くということ、これは私どもも納得できるのでありますが、ちようど機会でありますので、単なる質問からちよつと越えるのでありますが、養蚕団体の持つ技術指導者の身分安定なり充実というお話でありますが、身分安定ということに対してはわかりますが、現在の養蚕団体の持つ養蚕技術者という者が、ほんとうに養蚕技術者としてほかの団体のように働いておるかどうか、これは当委員会において常に問題になる問題でありますが、養蚕の技術者というものが製糸の下使い的な性格を持つてみたり、あるいは当然農村の経済団体がやるべき農業資材のあつせんに汗をかいて行つたり、そういうふうな、本質的な養蚕経営なり養蚕技術というものの上に、遺憾ながらほかの農業技術者、たとえば畜産関係やあるいは普通作物を中心としたエージェントに比べて落ちてはおらぬか。これは私の意見になりましてはなはだ失礼でありますが、この点をよほど養蚕団体は自覚していただきませんと、今の養蚕技術員というものの身分安定、今の形で技術員をふやすということに対しては、本委員会で常に問題になつておりますので、この点につきまして、なぜこういう問題が出て来るか。それでは末端の養蚕の飼育をやつておる人たちに対して、今の養蚕技術者によつて新しい技術がどこまで入つておるか、どれだけ啓蒙されておるか、むしろ繭の出荷であるとか、生産資材のあつせんであるとか、そういうふうな本質的なもの以外にそのエネルギーが多く費されておらぬか、そういうふうな行き方であれば、国費で本質的な指導の行き方をしようとしても、その点は比較の問題でありますが、ほかの、たとえば畜産の技術者というものは、去勢を一つやるにいたしましても、あるいは病気の治療をいたすにいたしましても、農家よりも少くとも上まわつておる。あるいは病虫害の防除等におきまして、次から次へ出て参ります新しい農薬あるいはそれらの使い方等について、それらの技術者というものは一般農家よりも水準を上に持つて新しい指導をしておる。しかしながら実際に群馬や長野のような養蚕の発達した地帯におきまして、共同飼育場の主任と養蚕の技術員というものと、技術的にどれだけの懸隔があるか、どれだけの指導するだけのあれを持つておるかということになりますと、遺憾ながら養蚕の面が一番落ちております。落ちておるだけならまだよろしいのでありますが、それに加えて繭の取引の問題あるいは養蚕資材のあつせんやら、そういうふうな別な面に力が入り撃ておらぬか、たまたまあなたが養蚕技術者の身分安定であるとかあるいは増強というふうなお含みがありましたので、私ども委員会としては、常にそういう問題が起るのでありますが、それに対して今それを御主張なさる森山さんの立場としては、どういうふうに器考えになつておるか、お伺いいたします。
  32. 森山善治郎

    森山参考人 ただいまの御指摘の点なんでございますが、これはちよつと私も私見が多分に入るかと思いますが、この点お許しを願いたいと思つております。私の考えております点につきましては、ただいま御指摘の、養蚕団体に所属しております養蚕技術員の技術指導の点が他の技術指導員よりも落ちるじやないかという御指摘、この点につきましては、そういう点が全然ないというふうには申し上げられません。多分に御指摘のような要素があるのじやないかというふうな懸念を持つております。それから次の資材なり販売なりに対して多分の労力をさいておるがというふうなお話なんでございますが、これは現在の養蚕団体のあり方といたしましては、養蚕団体といたしましては、その設立の目的が販売行為を主とした定款によつて設立されておる部面が多いのでございまして、技術指導並びに資材のあつせん、いわゆる購買事業というふうなものはその商品生産に対する附帯事業としての養蚕団体であるというふうに考えておるのでございます。この点につきましては、できております規模によりましてその仕事のウェートは違つて来ておりますが、県段階、郡段階をとつてみますと、販売というような事態に対してもウェートが非常に強くなつておると思つております。そういう関係からそれに所属しております技術員の一部の力がその方面にさかれるということは、団体の仕事を遂行するという意味におきましては当然というふうな考え方もまた可能なのではないかというふうに考えております。繭の販売に対しては、技術員というような技術を持たない者におきましても、販売というものはできるのだというふうなお考えも、これもごもつともとも思いますけれども、やはり相当な技術を有する者が、最初から最後の商品生産まで一貫してこれを指導して行くという方が最も能率的なものではないか、従つて養蚕団体におきます身分安定の問題にいたしまして、指導所並びにその他の技術の浸透に対する施設としてのものでございまして、それを全面的に現在の改良普及員のような形に置くことの是非につきましてはいろいろな見解があろうかと存じます。それで、技術員がこうであるということは、もちろん現在の養蚕団体がはたして真の農民的な団体であるか、あるいは販売等を通じまして製糸の出先というふうな考え方において現在の繭取引が行われているのではないかというような御指摘も、そういう点から起きて来るのではないかと思つておりますが、この点につきましては、残念ながら養蚕団体におきまして、先ほどちよつとお話がありましたように、やはり繭を買い得る、いわゆる買取り販売をし得る態勢にまず農林金融の裏づけをし、そしてその生産費最低政府において保証するというような制度まで、たとえばこれは現在かんしよ、ばれいしよ、澱粉、菜種というような面につきまして金版がとつておりますあのような立法措置をやりていただくことが、私は一等いいのではないか、そういう推進の面に現在の養蚕団体があるべきものではないかと思いますし、そういう施策をひとつお考え願いたいと思うのであります。
  33. 金子與重郎

    ○金子委員 時間がたくさんありませんから、いろいろ御意見を聞きたいことがあるのでありますが、簡単に要点だけをお聞きしておきたいのですが、ただいま金版と農産物価格安定法の関連のような形に養蚕組合がならぬかというふうなお話がちよつとありましみので気づいたのでありますが、先ほどのお話を申し上げますと、養蚕団体というものは繭の販売というものを中心にして考えておる。従つて販売事業に当然技術者というものが力を注ぐウェートが大きくなる気づかいがある。もう一つは、その生産をするための必要な資材購買事業に対しても云々というようなお話がありましたけれども、それはオンリー養蚕というふうな考え方で行くからそういうことになりますので、それはこの際私どもは是正してもらわなければならぬ。かりに米をつくるために肥料がいりますけれども、全販は農業団体として決して肥料のあつせんはいたしておりません。養蚕団体も一部だということで、ほかの農業団体全体と合さつて一つのものだというふうな考え方団体というものを運営しないで、団体のセクシヨンでものも持つて行こうというところに農業団体の問題があるのであります。その点において養蚕団体は遺憾ながら私どもは相当指摘する点が多いと思う。みずからの経済力を持たないで購買事業までやろうということ、それにはまだほかの農業団体があるのでありますので、ほかの農業団体と一緒になつて一つ目的を推進する、たとえば全販連が農産物価格安定法によつて——今度の農産物価格安定法では相当農業団体あるいはいわゆる販売団体を重視した法律になつておりますですからその当時一応、私どもは百パーセントとは言いませんが、ある種の成績を上げておる。だからというて全販の職員が末端に行つて肥料のあつせんをしたり、あるいはその資材のあつせんをするというようなことはいたしておりませんので、そういう点は今後の生産をどうするかということが根本でありまして、それに直接養蚕団体というものが携わることになれば、それらのものに対してこの際相当大きく反省をする時期であり、それに対して私どもも協力したい、こういうふうに考える次第でございます。  これはちよつと意見にわたりましたので失礼でありますが、なお先ほど北原さんの御意見にありましたように、製糸という事業がほかの化学工業や何かと非常に性格を異にしておつて、これはまつたく繭の一つの加工でしかない。きわめて簡単な加工であります。こんな簡単な加工がどうしてこういうふうにだんだん打進んで来たかというと、結局過去における相場の騰落が非常にはげしく、投機的であつたということ、従つて相当の資本力を持つてこたえる力がありませんと常につぶれたり立つたりするというようなことから、当然弱小製糸と組合製糸というものがだんだん——理想としては、私どもは理想として考え、またこれに対して北原さんの御趣旨通り今後組合製糸の特殊性というものを決して今のように忘れた——この法律を見ても一つもそんな考え方はどこにもありませんような感がありますので、また私どももよく勉強して、この点を考えたいと思つております。  そこでこれは北原さんに質問するよりも、むしろ中島さんにお尋ねしてみたいのでありますが、今の製糸家と養蚕家立場で行きますると、本来事業としますれば、ああいうふうな特殊な、加工というよりかむしろ繭から糸を引出すということだけなのでありますが、そういうふうな事業が、利害が一致して行くべきにもかかわらず、製糸家の立場養蚕家立場において団体協約の形で、問題は掛目をめぐつて毎年毎年非常な騒ぎをしている。これは掛目の協定というものが製糸家自体の収益にも、あるいは農民自体の収益にも非常な影響がありますので、あれだけしのぎを削つて協定するその心理はよくわかるのでありますが、一方そういう必要のない立場におけるところの組合製糸は、私どもの県のような全国先がけた組合製糸の先進県も、不幸にして一つも残らずつぶれてしまつた。そしてまた県内製糸もほとんどつぶれてしまつて、巨大製糸だけになつて来ているというような傾向を持つておる。こういう場合、これに対する中間の一つの方策がはたして生れないものかどうか。中間の方策として考えられるものは委託製糸のやり方であります。要するに今の企業家の手腕なりあるいは技術というものはそのまま活用いたすとして、掛目だけの一ぺん勝負でこれを勝負しないで、製糸家の立場においても一つの安定性と、農民もその製糸家をつぶしても自分が金をよけいとればいいのだという心理でなく、これは全部をするというのではなしに、たとい試験的であつても、一つ団体協約による委託製糸というものの方向がはたしてものになる可能性があるか、あるいは今の営業製糸立場からは全然ものにならぬという御見解か、それに対してひとつ中島さんから御意見を伺いたいと思います。
  34. 中島覚衛

    中島参考人 ただいまの御質問でございますが、製糸の製造機構もいろいろと考えれば方法はあるわけでございますが、私自身の経験から言いましても、かつて今井五介翁が共栄製糸というような機構を考えたこともございます。その一つの現われとして、宮城県におきまして宮城県の県是蚕糸というものをつくつたのでございます。当時のやり方は、私自身が直接その衝に当つた関係上自分の経験として申し上げるのでございますが、県内の製糸というものを統合いたしまして宮城県是共栄蚕糸株式会社というものを創設したのでございます。資本の構成は五割強ほどは地方の出資であり、そして五割弱が営業製糸といいますか、片倉工業の出資であつたわけであります。そうして運営にあたりましては県から監理官が入る。理事者といいますか重役の構成から言いましても、社長は片倉から出る、そして常務が出る、あとの常務取締役、監査役は全部地方から出る、あるいは株主から見ますと地方の養蚕家が大部分、それに東北振興会社が出資する、県も出資したという関係でもって、県の経済部長が監理官として監督しておつたというような機構を実際行つた経験があるわけであります。そうしてその結果からいたしますと、常に県の蚕糸業のあり方とその工場の経営のあり方というものが一致して、そういう点におきましては非常に見るべき効果があつたのでございます。また一方実際の経営というものは、営業製糸立場をとつてほんとうに自由闊達に運営されておつたのでございまして、相当の繭質の改善、ひいては養蚕家に対する繭代金の支払いも多くなるとかいうようなこともありまして これは機構の上から言いますれば相当特筆すべきものであると考えております。自分の経験から言いましても一つ効果があつたと考えるわけでありますが、その後日本蚕糸製造会社ができそれが統合され、その後、その間において県是蚕糸の本来の使命を達成したからというような関係でもって、片倉工業にさらに合併せられるというような経過があるのでございます。いずれにしましても製糸経営の機構と今お話の委託製糸、組合製糸、営業製糸とこうある、その今後の行き方につきましては幾多研究すべき問題はあると思いますが、さて具体的に委託製糸と言いましても、いろいろとあり方があるわけでありまして、今ここに即座に委託製糸がいいのだとか、あるいは組合製糸でなければならぬとか、営業製糸でなければいかぬというような問題につきまして、確信のある御回答は、今の私の立場から言いますればできないわけであります。大いに研究する必要はあると思いますけれども、何せこれは大きな問題でありまして、おそらくその実質にわたりましてもいろいろとむずかしい問題があり、そうしてそれを実行することの可否ということになりますれば、今ここでただちに御返事はいたしかねるような状態でございます。
  35. 金子與重郎

    ○金子委員 私の質問の要旨があまりはつきりしなかつたと思いますが、そういうふうな規模の上の一つの問題でなしに、具体的に申しますと、今の取引というものは養蚕家を中心にした農業団体とそれから製糸家の側において、お互いにこれは完全に独禁法に触れておるのでありますが、それをしいて除外しているわけでありますが、団体取引をやつておられる。その取引というものは、要するに掛目協定というものがきまつたときにもう勝負終りなのであります。それだけでこれをやつているのでありますが、そうでなしに、一つの村とすれば、半分が掛目協定で売買契約を結ぶ、しかしながら半分は価格については一箇年の浜の糸の平均で行くとか、あるいは何月から何月までで行くとかいうふうなことで、いわゆる掛目協定の中に問題になつております糸量の問題や解舒の問題、選除繭の問題、水引きの問題等、複雑な問題がある。それを現物そのものを生産してやるという組合製糸のやり方を今の営業製糸がやり得るかどうか。もちろんそれは全部やるとかなんとか竹はなくて、部分的です。今の取引の七法は、組合製糸によつてつた共同計算のやり方でやるか、ないしは営業製糸として掛目協定で団体取引で売つてしまうか、この両極端の二つきりないのであります。それをその中間において、営利経営をやつておる工場に対して、一つ団体契約として、ある期間をかけた清算取引、いわゆる委託製糸、清算取引というあり方が可能であるかどうか。であるとすれば今後の問題を大きくわけて、組合製糸の場合と、それから純然たる営業製糸として、掛目協定でやる場合と、ある分量を養蚕団体か、あるいは製糸家がそれを引受けた場合には、もう一歩紳士的な取引として委託製糸というか、清算取引というような方式が、今の営業製糸に可能性があるかどうか、その点に対する御意見はいかがですか。
  36. 中島覚衛

    中島参考人 非常にデリケートなことで、可能性がないとも、あるとも言えない。まことに漠然たる御返事になりますが、いずれにしましても、過去の経験からいいましても、今後の蚕糸業のあり方からいいましても、このままでよいか、さらに機構的に今のお話のような委託製糸といいますか、あるいは清算取引といいますか、そういうことは十分研究には値すると思いますけれども、さてこれは実際問題としますと、全面的の委託製糸ならともかくといたしまして、部分的の委託製糸ということになりますと、実際の上からいいまして、非常に問題が多くて、今ここですぐに可能性ありという御返事もできませんけれども、今後の蚕糸業発展の上からいいまして、十分研究するに値する問題だろうと思います。
  37. 金子與重郎

    ○金子委員 その問題は研究に値するということで何ですか、かつて私どもの群馬県における南三社というものが、政府からの指示で解体になりましたときに、受入れ母体がなくて、時間的に間に合わないので、やむを得ず群馬蚕糸という会社名義にしまして、今もやつておるのでありますが、始めた当時の資金の困難なときには、村の荷品を一つにして買い入れまして、そうして資金は協同組合自体がまかなつてやるという方式をとつたこともあるのであります。これはできないということではなくて、要するに製糸というものは養蚕家の延長という形に立つて、百姓からしぼろうとか、何とかして暴利をむさぼるということさえなければ、もつと虚心坦懐に経営するならば、製糸事業というものが、それに対する資本なり、あるいは経営費というものが正しくとれさえすればよいというところまで行けば、その考え方があながち夢でもない。そうして一つ取引方法として、その点がもつと大きく出てもよいのではないか。そうでありませんことには、あなたもやはり専売制に近いことをお望みになるようでありますけれども、こういうことになりますと、今の掛目というものの方式や、あるいはそれを一歩進めて専売制にいたしましたところで、製糸だけは工費をきちんととつて、それを基準にしてやるのだ、そうすると、製糸業者というものは、養蚕から輸出まで行つて外貨獲得をするその過程における製糸機構というものだけはがつちりとして損を絶対にしないという掛目の上に立つて行く、そこで農民にそのしわがみな寄つて来るというような機構が自然打立てられて来るということになると、非常に矛盾であります。これはたとえば同じような繭を団体取引で、甲の製糸に委託製糸をした場合には結果が九百掛になつた、乙の製糸家に委託した場合には九百五十掛になつた、そうすると九百五十掛に出す工場の方が能率がよい、それではその工場の方に委託しようじやないかというようなことで、今の掛目協定のようなうるさい取引でない、あるいは養蚕家製糸家も納得できるような一つ取引方法が生まれるのではないか。もちろん北原さんのおつしやるような、養蚕農業協同組合の製糸で、農民責任において高かれ安かれ全部総生産としてかぶつて行き、また利得を受けるということが一番理論的にすつきりした考え方だと思います。そこで本来の組合製糸を増大するにしても、現実にはなかなかそう急激には行きませんのですが、北原さんは今の私の考え方に対しては全然見込みがないと思いますか、どうお考えになりますか。
  38. 北原金平

    ○北原参考人 組合製糸関係ある立場から、実はとんだ御質問と申し上げたい苦しい問題であります。私どもは、組合製糸に行かない場合とすれば、養蚕業者立場として、それは当然考えられる線であり、またそこまでの協調がいるのではないかと考えますが、現在の養蚕農民の心理、また製糸家の考えている感じでは、非常に実現が困難じやないかと思います。かつての産業組合時代、団体的資本主義といわれた時代の協同運動者はすでに逸脱いたしまして現在は超越いたしまして、全部が生きるという線に持つてつておりますが、その線が国民全体の上から考えた線で協調ができるのでなければ、おそらくだめなんじやないか、私の感じではそういうふうに考えます。
  39. 小山邦大郎

    小山参考人 ただいまの御質問というよりは御意見を伺いまして、深く考えさせられるので、意見を申し上げたいと思います。先刻中島さんから申されましたように、われわれ蚕糸業界の大先輩の今井さんが、すでにそういう考えを持つて全国統一的にやろうと考えたのでありますが、遂になりませんでした。幸いに今伺えば、一県これを行つてしかも成績がよかつたということで、将来のためにもまことに参考になることだと思います。但し現在において、今日までなぜそれを行わなかつたかというと、統制会社ができて、しかもその土に統制的製造会社ができた、これではとても日本蚕糸業はやつて行けない、一方の統制会社は国策であり、製造会社は国策でないけれども、そういうものが大部分を占めてしまつた。それが戦後解体して、今度は一方のものが自由に独立の常業者として立ち上るようになつた。そのころから今日までの原料の需給関係を考えますと、これを消化するかま数の方が常にその原料生産より過剰になつております。従つてかりに願うところの委託製糸と申しますか、それを一方で計画いたしましても、養蚕家にとつてその必要が今日までなかつた、委託をしてやるよりは即座に売つた方が高く売れるというのが、一貫したものではありませんけれども、最近の実例でございます。ところがその後いろいろ皆さんの御心配で、まず糸価をある程度安定せしめようという法律ができた。これはそれを促進するに非常に大きな力であろうと私は思います。先ほどのように、非常に高かつたり非常に安かつたりすれば——委託して平均の値段を受けるよりは、上手な製糸家に高いときに売つ払えば、売つた方が養蚕家として利益のある場合がややもすれば多かつたのであるが、今後高値も安値もある狭い範囲に追い込めば、この差というものはだんだんなくなつて、平均売りで売つても、そうでなくても大した違いが過去よりもなくなるということになり、安心して委託ができるという一つの素地ができて来ると考えるのであります。いわんや今日のように金融やその他の関係糸価及び繭価の上に相当影響のあるという場合には、この際こそほんとうに抱き合つて腹を割つて経営に当りますれば、私は必ずしもできないことではない、むしろそれはできることであつて、できるようにお互いが心がけたい、こういうふうに考えるのであります。もしそれができればそれが一番理想であろう。なぜなれば、製造部門というものは、人の製造したものに責任を持てといつてもできないと思います。養蚕家は、繭を自分がつくるのだから、繭のよしあしに対しては責任を持てるが、糸のよしあしまで責任を持てといつたつて無理じやないか。糸にするときはだれがどういう技術でどういうふうにしてやつたか知りません。それまで技術上の責任を持てといつても困る。相場のことは平均で行くからよろしい。そうすると、生糸という事業は、簡単といえば簡単であるが、技術的に研究すればするほどまだまだそこに深いものがある、こう考えさえすれば、専門的に製糸をやつておる者は製糸そのもので掘り込んで責任を持つて研究して行きますから、よりよきものがより安い生産費でできる。そうすれば、その結びつきさえ公平に行けば、養蚕家養蚕製糸家は製糸おのおの専門で行つて、その分配を公平にするということであればこれが一番理想でないかと思うのです。幸いにしてわが長野県における組合製糸は非常な専門的な技術を持ち、長い経験と相当の経済力を持つておりまして、もはやこの点については理想の位置に行つておりますので、これはもう一番けつこうと思いますけれども、そこに行く前に現に実在しておる製糸、これをどうするかということを考えれば、その実在しておるものを利用しながら、その技術を生かしながら、こちらに実在しておるところの養蚕家との結びつきを合理化させるには、今の御主張が最もよいと思う。しかもこれを行うのに最もよい時期である。その理由は、糸価の安定によつて守られ、一方いろいろな関係でお互いに金融に悩んでいるときこそ話がしやすいからです。どうぞよろしく。
  40. 金子與重郎

    ○金子委員 時間がなくなりましたから、それではこの一点でやめますが、ただいまの小山参考人のお話を聞きますと——今まで堅実なほかの農産物生産資材の購買等におきましても、最近は共同計算というふうな形、投機的な考え方でなくして、正しい取引をする気風が農民の間に徹底しようとしている。投機的な養蚕も、そのとき勝負というような取引から、国全体の国策として、製糸ないしその原料をつくる農民の間において、どちらがうまくやつたかというような概念を除き得るような指導をして行かなければならない。にもかかわらず、今までの蚕糸行政の面から見ると、この点にまつたく手が入つていない。たとえば一つの掛目協定の内容を見ても、今の検定所というものを法制化して、そうして農民に対して強制している。統制は解除しているものの、あの法律によつて団体取引と今の形態をとらざるを得ないはめに追い込んでいる。そうしておいてあの検定というものは、わずかのサンプルだけによつてこれが取引の基準だということになる。もちろん私も、甲乙丙の階梯をきめる一つのテクニックとしては賛成できるが、今の検定所の選除繭のとり方あるいは処分、水引きのやり方等正しいものとは言えない。それらのものは一応の参考であつて最後には、時の需給関係製糸家が犠牲になつたり養蚕家が犠牲になつたり、どつちにでもなるような形に置かれており、しかも取引だけは一つ制度化されておる。制度化されているとは言わぬけれども、実質的には制度化されたものと同じことになつている。この矛盾を取去らなければならない。この点を私どもは一番注意深く考えているのであります。  最後に一点伺いますが、そういうときに、掛目協定でああやかましく言いながら、一方において製糸家の方では、指導費だとか何とかいつて大体貫代二十円とかいう莫大な金額を養査家に出しているのです。あれはどういう根拠でどこからそろばんを割出して出しているか、どこかにあれを出すようなもうけずくが製糸家にあるという見解でありますか、その点はなはだ皮肉なようでありますが、どうしてああいう金が出て来るか。厳正な掛目で、ぎりぎりの線であればああいうへんな金は出て来ないと思いますが、どういう立場でありますか。
  41. 中島覚衛

    中島参考人 製糸家がもうかつているかもうかつていないか、大体いろいろな面から検討しなければならぬことはおわかりの通りであります。ことに昨年の繭からつくり上げた生糸の売上げ、それから買入れ原価というものを引いた経営は、現在非常な痛手を負つておるのでありまして、経理的に見れば何ら余力があるわけではないのです。ただ製糸家側から言いますれば、ある程度原料を確保しておかなければ一年間の繰糸計画ができない。と同時に、販売上から見るも、たとえば一〇中なら一〇中のどの格をひくとか、二一中なら一二中のどの格をひくとかいうような関係から行きまして、どうしても素性のわかつた原料を自分自身でもつて転繭し、繰糸をするというような一貫した考えを持たざるを得ないわけでありまして、普通の商品のように、繭でありさえすればよいという、感じはどうしても持てないわけであります。その機械に向き、その技術に向き、さらにそれに即応するような原料を取入れることに経営の中心を置くのが現在のやり方であるし、またそれが最も必要であると考えるわけであります。そういう面から見て、雑多な原料とかあるいは素性のわからない原料でなくて、ほんとうに自分によくわかつた原料を取入れるというような面から見ますれば、やはりそこに原料関係の人も使い、かつまた指導面においてもある程度の連携を保つて行くというようなことが、現在の経営一つの方向になつているわけでありまして、必ずしも余裕があつてするわけではない。そうかといつてそういうような金を使わないということになると、ますます消極経営になつて、より以上ジリ貧になるという立場に置かれておるわけであります。
  42. 中澤茂一

    ○中澤委員 北原さんにお伺いします。さつき一般製糸と組合製糸が本質的に違うとおつしやいましたが、その違うことはもちろんわれわれも認める。本法に対して行政差の何らかの考慮が必要ではないかということをおつしやつておるのですが、本法に対しての行政差の考慮というのは、たとえばどういう面で考慮するか、本法案に対するところの一般製糸と組合製糸との行政差というものをどういう形で入れるか、それは具体的に何かお考えがあるのですか。
  43. 北原金平

    ○北原参考人 本質的に違う組合製糸に対して行政面にどれだけの具体案を持つておるか、こういうお話でございます。御承知のように組合製糸の建前は、自分の地区内の養企業者が集つて、その量に応じた消化能力を持つ工場を建設して来たというのが過程であります。従つて今の全国的にいう二十九組合、三十四工場という姿を静かに見るときには、過渡期における姿、この繭の足りないという姿、あるいは一般製糸との関係、あるいは国策の線というような点で、全面的に同一の姿をとらざるを得ない。力の足らない点もあつて、これは当然やむを得ず一般の方々と同じ姿で歩いておるのが大半だと申し上げていいと思います。ごく少い数字の工場は本質的に歩いております。しかし一般製糸と協調の意味において非常に繭を持ちながら不自由しておる。これも国情から見て忍んでおるわけでございますけれども、敗戦後すでに八年もたち、それからまた組合製糸の本質から考えましても、本質にかない得る運営のできるものはそのままで育てて行けるような姿を打出していただきたいということが、自分のものを自分で処理するという農産加工だという面から見ても、非常に経理上、運営上将来の組合製糸に暗影を投げかけておる場面もあるのでありますから、これは非常にむずかしい問題でありまして、おのずと打出していただく時期というものは相当考慮していただかなければならないことも万々承知しておるわけでございますが、ほんとうに一般製糸と同じ姿でなくて、本質的に歩けるものは歩かしてほしいという感じを持つわけであります。もう少し具体的に申し上げたいような気もするが、この席上ではその程度にしたいと思います。
  44. 中澤茂一

    ○中澤委員 この席上ではその程度でけつこうです一から、組合製糸としては、やはり本改正案のどこにどういうふうな方法をやつてくれることが、非常に今後の組合製糸の発展のためになるのだというようなことを、後日本法をよく御検討なさいまして御提出願いたいと思います。  それから玉糸の問題ですが、大林さんにお願いするのは、ただ漠然と三億七千万円くらいだから何とか出せというのじや話にならぬので、もつと具体的な数字を、たとえば玉糸の総生産量、内需量、それらに対してどれだけの買上げをやれば安定ができるのだ、それについての所百要資金量はどれだけであるという、もつと具体的な玉糸の問題が——各委員の間でどうしようかというようなところにあるのですから、もつと具体的な資料をひとつあなたから御提出願いたいと思うのであります。  それから糸価ばかりじやなくて、農産物価格安定法のときにもいつも問題になるのは、一体系価から割出した十九万、一十四万というものが公正な繭価であるかどうかということは、私は非常に大きな問題だと思う。われわれいつも農産物価格安定法のときも主張するのは、要するに生産費を償う生産原価を出せという根本的な要求を持っておるわけです。これに対していっか蚕糸局に、生産費原価は一体幾らか、その蚕糸局の調べた生産費原価を資料として要求したところが、一貫目千五百八十四円という資料を蚕糸局は出しておる。今年は大体千六百五十円くらいでやっているから、蚕糸局の生産原価からいえばこれは非常にいいように思える。ところがこの生産費原価をしさいに検討してみると問題になるのは、いつもこれは問題になるのですが、農業労働賃金をどう見るかということです。この農業労働賃金の見方で日本農産物価というものは一切決定されて来る。ところが千五百八十四円という蚕糸局の数字を検討しますと、これはまったくあの都市の労働者と同じニコヨンに見ているわけです。それに私は問題があると思う。だから農業労働賃金を正しく算定して生産費原価を出して、この生産費原価が底値であるから、その上に糸の掛目がどのくらいで幾らになる、これが最低原価であるという出し方をしていない。いつも逆に行っている。国際価格がこうであるから農民生産原価はここで押えなければならぬという抑制策に考えられているところに問題があると思う。それについて森山さんや北原さんは組合製糸で、利益は割りもどしをやって農民からは一銭も搾取していないわけなんですが、一体繭の生産費原価というものを森山さん、北原さんはどの程度が妥当か、たとえば去年の生産費原価はどれ、だけか、本年の春繭の生産費原価は——これはできなければよろしいが、おわかりでしたらどれだけかかっているかということを、ひとつ御回答願いたいと思います。
  45. 森山善治郎

    森山参考人 ただいま生産費原価は幾らかという御質問でございますが、実は本日はつきりした数字を持って参りませんので、はなはだ申訳ございませんが、農林省の発表しております生産原価は千九百五十三円だったと思っております。その点はちよつと最後に二けたの数字がはっきりいたしませんが、およそその程度だったと思っております。  それから先ほど糸価に比べて繭が割高であるというお話なんですが、過去四箇年の全国平均の生産費、これは農林省の発表であります。それから農業団体を通じまして販売いたしました積数平均をいたしました繭価格は、ある年においては生産費を割っております。生産費より安くなつております。これは多分二十四年だつたと思っておりますが、その他の年におきましては、年平均いたしますと繭の販売価格生産費に近づいておる程度でございます。生産費という部面からいたしますと、繭価が非常に高いのだということには私はちよつと同意できかねます。
  46. 北原金平

    ○北原参考人 ただいま数字的の御質問、また繭価協定のときの考え方についての御意見がございましたが、数字的のことは森山さんの方から今御報告した通りでございまして、大体いいと思います。それからいつも私どもは農民という立場から、ことに繭を受持つておるという考え方から見て、繭価の掛目価格をきめるという考え方、いわゆる浜の糸相場、それに生糸生産費、残りが繭という考え方は、長い間の伝統であり、長い間の習慣である。しかし今後のお互いの農民運動の観点から見ても、どうしても農民自体が価額を青めべきだという感じを持っておるわけでございまして、最近の役員会においてもいろいろとその点を研究いたしまして、一応どうしてもある機会に線を打出さなければいけないという確信を持ちまして、本年の掛目協定にあたりましては、一応繭生産費を基調として、そうして掛目協定に入ろう、現実は現実として、一応根本的に考え方を面して行くべきだ、さもなければ、繭だけでなく、すべてのものまでほかの使用者にきめてもらうということは、将来農家の経営を安固ならしめ得ないのじやないか。いま少し農民というものは確固たる方針で行かなければいけないんだ、というて、現実から非常にかけ離れておるのでありますが、考え方はその線から打出そうという決心を持っておるわけでございまして、何分そうした方向についても御援助をお願いいたしたい。お考えくだざる通りでございますが、慣例があり、実績があり、なかなか困難なことである、かように考えております。
  47. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 中澤委員の御発言に対しまして大林さんから発言を求められております。これを許可します。
  48. 大林正志

    ○大林参考人 ただいま御要求になった点は、なるべく早く委員会に提出いたします。さよう御了承願いたいと思います。  それから先ほど申し上げたことについて、ちよつと言葉の足らぬ点がありましたが、それは政府融資による利子補給という意味でございまして、利子補愼と申しましたが、さよう御承知願いたいと思います。
  49. 中澤茂一

    ○中澤委員 中島さんにお伺いいたしますが、農民立場から考えると、例の十条の四項の独禁法排除の問題は、これは確かに森山さんの言われたような低繭価に押しつける危険が多分に出て来ておる。しかも御承知のような金融資本の独占的な段階に入って来ると、よけいにこういう形がはっきりして来るのは経済の原則であると思う。これは農民から考えた場合は、間違いなく森山さんの考えるような危険性が多分にあると思う。それについては中島さんは十条の四項は非常にわれは賛成である、こうやってもらわなければだめだという御意見でございましたが、不当に繭価の圧迫されるような製糸カルテルのできる危険というものは、業者としてあるとお考えでしょうか、そういう危険は絶対にないという確信をお持ちでしようか。
  50. 中島覚衛

    中島参考人 お答えいたします。そういうような危険といいますか、御心配は、おそらく結果的に私はないと思います。と申しますのは、この法案の内容を見ますと、農林大臣、農林大臣というような字がたくさん出ておりまして、かなりそういう点ははっきりチェックできるようになっておると思いますし、かつまた農林省といたしましても、この運用については相当しつかりしたお考えを持っていらつしやると思いますから、そういうような御心配はおそらくないと思います。同時に製糸業者は、カルテルといいましても、ほかの大きな産業と違いまして、現在の製糸業の状況下におきましては、そう大きな強いカルテルという組織はむずかしいと思うのです。  なお立つたついでに、ちよつと問題をはずれて申し上げたいことがありますがよろしうございますか。先ほど中澤先生からお話がありました養蚕家生産費ということにつきましての御意見を伺いましたのですけれども、製糸家の生産費というものもなかなかバランスが重大問題であります。これは実際経営の中枢をなすものでありますが、問題はやはり養蚕生産原価プラス製糸業の生産原価でもつてはたして糸代が十分であるかどうか、かつまたその価格でもつて輸出できるかどうかという問題なんです。それで物価指数から見て、今の二十万内外という相場はおそらく安いと思います。しかしながら輸出するにはそこら辺に置かなければ輸出できないという矛盾があるのですが、おそらくこの問題をだんだん掘り下げて行きますれば、だれも気づくように、為替の矛盾だと思います。三百六十円の為替を維持するという……。しかもそれが国内で原料を確保する製糸業とか蚕糸業におきましては百パーセントにかぶって行くのです。おそらく今の輸出の商品として、百パーセント外貨というのは、ほとんどセメントと絹くらいのものでしよう。紡績なんかにすれば外貨所得なんというものは三〇%かそこらのものなんです。あらゆるものが何かの形において外貨を払っているのです。そういうような為替の矛盾を百パーセントに受けている蚕糸業というものは、やはりそこに非常な矛盾が出て来るのです。それを何とかアジャストしてもらいたいというのが、われわれの主張していまするいわくリンク制の問題であり、あるいは優先外貨の問題である。ところがこれが先ほど申し上げたようにIMFから故障が出るとか、あるいは他の産業の方から問題を起されて、なかなか思うように行かないという、蚕糸業として非常にむずかしい悩みが伏在しているということだけは御了承願つておきます。
  51. 中澤茂一

    ○中澤委員 最後にもう一点。これは皆さんのうちどなたでもけつこうでございますが、実はこの前どんどん下落して来たとき、もう三十億じや足らない、至てでこ入れを予備費からやれという要求が非常に強くあつたわけです。私は絶対十九万を割ることはないという一つの確信を委員会で申し上げたのです。こういう見方がはたして私の偏見かどうかわかりませんので、これは皆さんの専門家の御意見で御批判を願いたいと思うのですが、だんだんと下つて来た、もちろん海外市況とかいろいろな問題も考えられますが、私はしかし主たる要因はカルテルによるところの春繭取引の協定に当る段階における一つ市場操作ではないか、こういう一つの見方を持つていたのです。だからこれは十九万を割ることは絶対ないのだと、実はあやふやな確信でしたが、委員会で申し上げたのです、これは今後の推移はどうなるかわかりませんが……。ところが掛目協定がもうぼつぼつ終つてあれして来るようになると、ぐんぐん上つて来て、御承知のように一万円ばかり上つて、二十万四千円ばかりになつてしまつた。まだ上ると私は見ておる。これ、要するに掛目協定に対しての一つのカルテル的市場操作であると、私はそうにらんだ。そういう傾向はどうでしようか。御専門家の方々から見て、私の考えは偏見でしようか、偏見じやなかつたでしようか。もしその考えがそうだかもしれないというような現象が皆さんにおありでしたら、ひとつそのお話を願いたい。どなたでもけつこうでございます。
  52. 中島覚衛

    中島参考人 ただいま中澤先生のお話は、まことにわれわれとして黙つておられない問題です。極端な言葉を言えば、これ以上の偏見はないと私は思います。この横神の清算取引というものは、一製糸、あるいは数製糸くらいでもって、市場操作がそんなに簡単にできるような弱い清算取引ではないと思います。ただ市況の見通しにつきましては、中澤先生よりも私らはむしろ専門だから、しいて申し上げるのですけれども、実際一ころ二十万を割り、十九万五千を割り、そうして十九万近くになつたことがあるのです。これは確かにその当時の事情があるのです。というのは、デフレ傾向というものが非常に極度になつて参りまして、おそらくその当時の京都とか福井とか、生糸を最も使う地帯におきましては、機屋は全体あるいは半休、五割操短まで追い込まれておつた。ところがその後一つのシーズンで、いわゆる秋物の手当というものがあるのです。そういうことでもつて京都方面が活気を呈したういうことから市場を回復している。同時に海外のわれわれの当時の情報で言いますと、十九万というものがどうしてもそこまで引合わさなければならぬ。そうした場合に三十億の金でたとえば一万五千やそこらでもつて維持できるかどうかということが非常に心配なんだという情報がひんぴんと入つた。それではかえつて輸出増進にならないというわけで、いろいろ声を大きくしてお願い申し上げているわけなんです。さて今後の市況の見通しでありますけれども、依然としてわれわれ心配しております。一応ここでもつて秋物の手当を終つたところでありまして、ちよつと買気はにぶつております。同時にごとしの春繭というものは、天候のぐあいでもつて出荷が遅れております。同時に初口物が解舒が悪いためにさらに出荷が予定よりもふえておらない。ところが数日来本格的な出荷になつておりまして、かなり材料が多くなりました。ひところは二千五百俵というような在庫が四千俵をはるかにオーバーしております。またニューヨークの情報をもつてしますれば、リンク制か何かでもって、どつと出荷したというような関係でもって、現在ニューヨークの在庫はまさに八千俵近いというようなぐあいでもつてかなり市場が今後圧迫されやしないか。言いかえてみますと、十九万円というものが一ぺんは出やしないかというのがわれわれの心配の種なんでありますけれども、今申し上げるような事情でもつて時間的にずれているということでもって、まだまだ十九万というものが出ないという保証は私はむずかしいと思います。従つて今から御心配搬つて十九万円を絶対保持できるような資金の手当については、十分ひとつ御心配願いたいと思います。
  53. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 別に御発議もないようです。この際参考人各位にごあいさつ申し上げます。繭糸価格安定法の一部を改正する法律案の審議にあたりまして、参考人各位は、御多忙のところ遠路お繰り合せ願いまして、熱心なる御陳述を賜つてまことにありがとうございました。本委員会におきましては多大の参考になりました。この際御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十三分散会