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金子與重郎君 先ほど私の党の
神戸委員からも
お話がございましたが、
スタンプ手形の貸付の全量に対する何割まで貸すかという問題と、
期間の問題でありますが、これはまだお認めにな
つておらないようでありますが、特に私
ども委員会といたしまして、この
スタンプ手形と貸付
期間の問題に対して、この率を下げる、条件を悪くすることのないようにお願いしたい。ということは、単にこれはどの金を借りる
立場の人がいいましても当然でありますけれ
ども、この
委員会として、私
どもの
立場からお願いする理由は、繭から製糸に至るその事業の特殊性であります。と申しますのは、製糸は工業の部面に入
つておりますけれ
ども、工業の価値はないのでございます。御
承知のように繭を加工いたしまして糸にする、こんなに製品に対する材料費の
パーセンテージの多いものはおそらく工業価値はないのでありまして、一つの簡易加工のような
程度のものであります。
従つてその原料費というものに対する
金融というものが、もし百の価格の原料費がかかるものとすれば、それが二百なり三百の価格になるものでありますと、その原料に対する
金融というものはそれほど工業の上には響かないのでありますけれ
ども、とにかくその原料というものが大
部分を占めており、しかも加工賃の方が原料費よりはるかに多いのであります。それほどこの
生糸工業に対する
金融というものが、ほかの
金融よりも原料代に対して大きな響きが来るということであります。この産業がもし倍にも三倍にもなるような化学工業のようなものでありますれば、この
金融の条件が少しは悪くな
つても、原料生産者に対する支払い
代金等に及ぼす影響というものは比較的少いのであります。それが大事なのであります。
第二点は、先ほど
小野理事が言いましたけれ
ども、現在でも去年の
繭代金がとれないで、
協同組合長は相当ひどい
立場にな
つて、責任をどうとるかというようなものがあるのであります。これは
製糸業者か正当な掛目以上に競争して買うという欠点がありまするけれ
ども、しかしながらこの労働攻勢のやかましい中で、自分の設備を遊ばせているということになりますると、少々掛目をよけい買
つても、工員を遊ばせるよりもましだ、こういうような企業珠算からい
つてつい無理をして、買手市場にありますところの繭というものを、正当な繭の掛目以上に競争して買
つておるというのが
実情であります。そういう結果からして当然未払いというものが出て来るのであります。そうして今年はなお条件を悪くするということになりますると、当然製糸は日本の巨大製糸の二、三のものに大体集中されて来るということであります。巨大製糸の二、三のものに売り先がきま
つて参りますると、今度は地方の、相当歴史がありましても、経済的に弱い
立場にあるところの
製糸業者というものは立
つて行かない。全部現金で買えないで、八掛なら八掛で支払おうと言
つても、
協同組合は責任がありまするから、
共同出荷する場合には、特定の日本における二、三の巨大製糸というもの、資本家の方が安全率が高いだろうという
立場から、どうしても巨大製糸のところへ繭が集中する。そういうふうな結果になりますると、今度は小さい製糸はつぶれる。つぶれてしま
つて、その後に二、三の資本主義的な強力な製糸たけが残
つて参りますと、その人たちのカルテル強化によ
つて今度は繭をたたく。そして農民はどうにもならぬ。
組合製糸では太刀打ちできぬのです。それで地方の弱小製糸はもうつぶれてしま
つているから、これは繭を買う
対象にはならぬということになりますると、今度は農民は逆に正当な価格以下でいつもたたかれて行かなければならぬ。こういうような
関係がありますので、今の製糸に対する
金融条件というものが、そういうふうな
政策に響いて参りますことを第二にお
考え願わなくちやならぬのであります。
もう一つ
考えたいことは、唯一のたよりにしている
スタンプ手形の条件が落ちるということになりますと、その条件が落ちたことは、それならば今度は資本力のある巨大製糸によけい痛手であるか、資本力のない弱小製糸によけい痛手であるかといこと、やはりこれも資本力のない製糸の方が、同じ率を下げられたのでは、
経営上よけい痛手になるのであります。そういうようなことから、
購繭資金という
資金の特殊性から見て、条件を悪くしていただきたくない。こういうふうな
金融の逼迫の時代でありまするから、当然どれも一律にお
考えになりやすいのでありますが、繭、糸というものに対する産業の特殊性を、以上大きな
三つの点だけを
考えましても、特に御考慮願いたい。こういうことを私は、
日銀の
政策委員等にも十分あなたからお伝え願いたいのであります。
もう一つは、こういうような形で行きましたときに、一番恐れるのは、ここに
協同組合を基盤にする
中金の理事もおられるのでありますが、これは蛇足のようなものでありまするけれ
ども、ことにこれは
蚕糸局にもお聞き取り願いたいのですが、今日の趨勢がこのままで行けば、数年足らずで日本の製糸は相当資本力の大きい製糸に八割以上独占されますよ。独占されるときに、繭の購買だけを独占するなら、工業的にそれが能率がよろしいから独占したということなら、私はそれほど問題にしないのでありますが、その資本力によ
つて養蚕農民を奴隷的に隷属化させますよ。と申しますのは、その製糸が特約をいたしまして、そうして過去のように養蚕農民の経済が悪くなりまするから、今度は養蚕に対する資材、肥料等まで事前に供給いたしまして、そうして供給した資材で利益をあげる。その供給したということは繭を必ず売るということを条件にしてやるのでありまするから、抜き差しで利潤をとる。そうして農民はたくさんの資材を収繭前に借りておるのであるから、当然そこへ繭を出さざるを得ない。こういうような形で、私はそれを非常に恐れるのであります。
そういうふうな場合にどうすれば防げるかということになりますと、これは今までやりつつある
購繭資金というものを別な
考え方にいたしまして、
購繭資金を
製糸家に出すということでなくて、繭の
販売代金を掛売りするだけの余力を持たせるために、農民自体に掛売りした繭の
代金を貸す。繭の
代金を貸して行きますと、一つの組合になりますると、その二割、三割というものは預金として
歩どまりするものがある。そうすると今度はその
農家自体が、その会社の
乾繭設備を使いまして、
銀行が
製糸家の繭の管理をすると同じように、生産者自体が
製糸家の倉庫にある繭の管理をして行く。こういう方法も私は実際にや
つた経験もあるのであります。こういうようなことも今後の
資金の動かし方の一つの参者
資料になると思うのであります。
ただいままでの問題は
金融機関に対するお願いでありますが、最後に
蚕糸局といたしましては、この
購繭資金の問題は一年、二年に終る問題ではありません。でありますから、今のような形だけで行けるか、製糸と農民と一体の形において、
金融をどういう形にとることが一番安全でスムーズに行けるか。たとえば私は製糸にも
関係したことがあるのでありますが、ある
協同組合のごときは、一歳の金もとらずに全部
製糸家へ繭を供給する。そのかわり
製糸家はそれを乾燥いたしまして、稚んだ繭というものは、手をつけるまではそのかぎは
協同組合が預かるということにいたしますと、有力な村の
協同組合でありますと、大体半分くらいを払い出せば済むことになります。そういうことになりますと、国家
資金も内輪で済ますし、金利の面からい
つてみも、
協同組合の
経営も、また
製糸家自体も、
銀行さんから金を借りるよりもはるかに安い。また
協同組合も
銀行や
系統機関に預けておくよりも有利である。こういうふうないろいろなふうがありますので、今後の
購繭資金のあり方につきましては、この
製糸家と
養蚕家の
立場、ことに
協同組合を中心にしての
考え方を、もう一歩あなた方
蚕糸局でも研究してみたらどうか。
もう一つお願いしますが、あなたは先ほどの答弁で、もうこの国会ではどうにもならぬということをはつきり
お話にな
つたのであります。そんな
段階になりましたのに、いまさらぐちぐち言
つたつてしかたがありませんから、あえて申し上げませんが、あなたの方の
蚕糸局の一番の欠点は、あなたの局があまり力がないのに、ひとりで何とかしよう、何とかしようというところに問題がある。その点
農林委員会に相談して――こうしたらどうだろう、しかしながら役所のセクシヨンなり一つの
立場でできないが、国会としてこれを何とか
考える余地はないか。こういうふうな動き方がほかの局に比べて一番少いと思う。それがあなたの方の欠点であり、そうして今日の
段階にな
つては、もうもぐらが岩につかえたようなもので、どうにもならぬということを言わざるを得ないような
立場に追い込まれておる、一つの大きな理由だと私は思います。それはなぜならば、政府がいやがる
法律であ
つても、国会自体の力によ
つて強引にや
つた例も幾つもあるのであります。そういう点から、私は最後に今後
蚕糸局にお願いしたいことは、問題があ
つたならば、もう少しこの
農林委員会に率直に出して、そうしてともに相談したらどうか、協力したらどうか、こういうことを私はあなたに御注意申し上げます。