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1954-11-19 第19回国会 衆議院 農林委員会 第82号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月十九日(金曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 佐藤洋之助君 理事 芳賀  貢君    理事 川俣 清音君       小枝 一雄君    田子 一民君       松野 頼三君    松山 義雄君       淡谷 悠藏君    井谷 正吉君       片島  港君    伊東 岩男君       本名  武君    中澤 茂一君       久保田 豊君    安藤  覺君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  委員外出席者         検     事         (内閣法制局第         二部長)    野木 新一君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  小川清四郎君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         調査課長)   岸川 忠嘉君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部乳肉衛         生課長)    阿曽村千春君         農林事務官         (農地局総務課         長)      正井 保之君         農林事務官         (畜産局長)  大坪 藤市君         農林事務官         (食糧庁総務部         監査課長)   岡村 昇三君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      中島 征帆君         運輸事務官         (港湾局港政課         長)      中野  大君         建 設 技 官         (河川局長)  米田 正文君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十九年農林災害対策に関する件  輸入食糧の港湾荷揚げ問題に関する件  酪農振興及び乳価問題に関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  午前中はまず酪農振興及び乳価問題について調査を進めます。質疑を通告順にお願いすることにいたします。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 先般当委員会におきまして、厚生省省令五十二号の改正要綱について質問いたしておつたわけであります。今日手元に一応改正要綱案なるものが示されましたが、この程度でよろしいという見解並びにこの要綱に基いて当局から御説明があれば、この際承つておきたいと思います。
  4. 楠本正康

    楠本説明員 お答え申し上げたいと存じます。結論的に申し上げまして、ただいまお手元に差上げました程度省令改正によつて、十分従来若干の欠陥のありました点を改善し得られるものと考えている次第であります。つまり一口に申し上げますと、農村部においては低温高温殺菌方法を並列いたすことといたしますが、但し市部におきましては、高温殺菌をかりに実施いたしましても、その製造工程から見ましても、あるいは製品の規模から申しましても、とうてい市部において大量に高温殺菌が出まわるということは考えられません。のみならず、市部高温殺菌を普及するということは事実上できないばかりでなく、その結果は必ずしも消費者価格低下意味いたしませんし、さらに得るところといたしましてはいらざる混乱を起す程度にとどまる、かように考えまして、私どもといたしましては市部においては従前通り低温殺菌様式をとつて行く、こういうことでございます。なお最近学校給食等集団給食に生乳を使いますことはきわめて適切な措置と考えておりますが、この場合、集団給食に一合びんに小わけするとか、あるいは小売りするというようなことは、これはむだなことでありますから、かような点は省略をし、さらに集団給食施設において直接処理をするというような場合には、従来営業を目的としておつた処理施設とは異なつた基準を設けることもまた当然なこと、かように考えておる次第でございます。
  5. 川俣清音

    川俣委員 厚生省行政区分からいたしまして、おそらく食品衛生法からこれらの牛乳取締られておると思うのであります。従いまして市販の牛乳の中に大腸菌などがあつてはいかぬという規定を設けられることは、これは当然な行政行為だと思うのですが、今まで酸度などを入れておられましたのはどういう理由であつたのでしようか。
  6. 楠本正康

    楠本説明員 成分規格の中に酸度を設けておりました点は、これが細菌の発育ときわめて密接な関係があるから、酸度成分規格中に規定いたしたわけでありますが、しかしお手元に差上げました資料にも書いてありますように、今後はこの酸度基準を削除する考えでおるわけでございます。しかし私どもといたしましては、酸度細菌発生等ときわめて密接な関係がありますので、当然厚生省としても重大な関心を持つていい事項だと考えております。
  7. 川俣清音

    川俣委員 そこでお尋ねいたします。農村部には高温殺菌方法を用いてもよろしいということに今度は改正せられるようでありますが、食品衛生という立場からすると、あなた方の従来の御主張からしますると、農村部ではさしつかえない、都市ではさしつかえあるということは、これは言えないんじやないかと思う。衛生上悪いというならば、農村であつてもどこでも同じことじやないですか。農村の人間は衛生上どうでもいい、都市だけが衛生上必要だ、こういう解釈なんですか。
  8. 楠本正康

    楠本説明員 これは殺菌方法施設基準が問題なんでありますが、この場合殺菌方法として、都市におきましては大量を扱う関係低温殺菌がより合理的である。しかしながら農村のように比較的殺菌処理量の少い地域等におきましては、これはもちろん少い地域低温殺菌をやつてもさしつかえございませんが、しかしかような地域におきましては、高温殺菌がむしろ合理的な場合もあります。従いまして施設基準をかように考えておるわけでございます。しかしながら御指摘のように、農村高温殺菌した牛乳をたとえば市都の者が飲んではならないというような流通機構の点は考えておらないわけであります。
  9. 川俣清音

    川俣委員 この点は厚生省食品衛生法の本来の建前並びに本法提案理由によりますると、決してこれは拡大解釈すべきものではなくて、取締り規則であるから消極的な解釈をすべきものだという理解が生れて来るようであります。また公衆衛生上のことでありまするから、積極的な面は指導いたすのでありますが、指導だけでは十分でないので、やむを得ず取締るのであるというのが大体公衆衛生取締り基本だと私どもは理解しておる。ところが事牛乳になりますると、いや脂肪がどうでなければならないとか、いやこれは分解するとかいうようなお話なんです。これはたとえば果実でありましても、りんごを焼きりんごにするのと生で食うのとは大分違うのは明瞭ですけれども、こういうことには何にも触れないのであるが、今ではくだもの生産高は相当大きい。従つてそういう領域はこれは生産指導であろうと思うのです。ジヤージを入れるかホルスタインがいいかということは、これは私は先般の委員会でも問題にしておきましたが、もしそこまで行かれるならば、厚生省の中に畜産局を持つて行つた方がよろしい。ああいう牛舎でよろしいかどうか。一体殺菌を非常に問題にするならば、牛舎そのものからあなた方の方で規定をつくつて行かなければならないはずだと思うが、一向そういうことには触れないで、できたものの酸度がどうだとか、あるいは脂肪分がどうだとか、こういうことまで行かれるということは、食品衛生法のできた本来の建前から行きまして行き過ぎだとお考えになりませんかどうか。どうもあなたの説明によりますると、公衆衛生の面から行かれるとすれば、高温でも低温でもよろしいという解釈のようですが、これは農村ではよろしい、都会では悪いということではなく、衛生という面から行けばこれは日本画一でなければならぬはずだと思う。それを事牛乳限つてそこまで積極的に進まれるというならば、すべてのものについてそこまで行き得るならばこれは別問題ですが、行き得ないでこの点だけつつ込んで行くということは、一体それだけの能力厚生省全体がお持ちになつているという見解に立つのでありますかどうか。またこの法律生産の面にまで関与するということになりますると、私ども重大な関心を持たなければならない。
  10. 楠本正康

    楠本説明員 まず最初衛生行政基本的な考え方の問題でございまするが、ただいま先生の御指摘のように、私ども衛生上の取締りというものはあくまで最低限の基準で押えまして、あとさらに理想的な姿に発展して行くということは指導によつて解決をして行く問題であるというふうに考えております。この点はまつたく御指摘通りだと存じます。しかしながら牛乳の問題に関しましてはかねて古い歴史もございますし、またこれを乳幼児主食同様にきわめて完全な食事としてとつている関係もございまして、以前より慣例上成分規格等につきましても、単に衛生上の危害最小限度に防止するという点を逸脱——という言葉使つてはちよつと語弊もあるかと存じますが、発展をいたしておつたとは存じます。しかしながらこれは各国の例でも同様でございまして、やはり牛乳という特殊食品一つの当然な帰結から生れて来た結果ではないか、かように考えております。しかしながら、もちろんそうかといつて実情を無視してかような点を一方的に規制するというようなことは許されようはずもございませんので、従来も農林省等ともよく相談をいたしまして、かような点を考えて参つた次第であります。ただ問題になりますのは、ただいま御指摘のように、農村部においては高温殺菌でよろしい、都市はいけない、かような点に問題は触れて来ると存じますが、これらはやはり地方の実情から申しまして、現在せつかくこれがよかれあしかれ省令五十二号ないしそれ以前の行政指導によりまして、りくつは別といたしまして、現在都市においては少くとも低温殺菌というものが普及した今日、あえてこれをまた高温にもどす必要もなかろう。またこれを高温に二本建にしたところで何ら得るところはない。しかしながら農村におきましては、りくつは別として確かに現在の状況におきましては、むしろ高温を積極的に指導することが得策でなかろうか、こういう現状に即した一つ考え方で進んでおるわけでございまして、行政考え方基本的な問題になつて来ると、私はむしろ先生の御意見にある程度の賛成をいたさざるを得ない立場でございます。
  11. 川俣清音

    川俣委員 基本的な考え方においては本法提案理由の中にもそれが明らかでありますので、私の解釈に同意せられたのだと思うのですが、結局畜産酪農振興程度伴つてこれらの処理考えられて行かなければならないと思うのです。初め北海道方面乳牛が入つたころと現在とでは、畜舎設備から異なつて来ております。これらも最初から畜舎設備等について関与して参りますならば、りつぱなものをつくろうと思いながら実際はできないことになつてしまいはしないか。そこで最近農林省におきましても、日本食糧態勢からみまして、急速に酪農発展を期そうということで、法律も出、これに対する裏づけの財政的な処置も講ぜられつつあるし、補助等も講ぜられつつあるわけです。これらのことは今日遅れております酪農を急激に発展せしめたいというところにあるわけでありますけれども、その意図は急激であろうといたしましても、なおこれに対する裏づけ等が十分でないわけです。従いまして乳牛を飼う人の努力とその精励にまたなければならないわけでありますが、僻地酪農ができますと、これを処理場に運ぶことが交通の面から言いましてもなかなか不便なんです。最近ようやく開拓道路補助、助成の対象になりましたけれども、今までは開拓地はできましたけれども、そこにある道路なんというものは国の援助も何もなかつた。そこでこの開拓地あたり、ことに現在においては飼料が不足でありますから、採草地を求めた酪農というものが考えられて来ております。生産費コストの引下げの上から言つても、濃厚飼料のみにたよれない実情でありますので、だんだんと奥地、僻地へ散布しなければならない状態であります。これをこういう状態において、将来発展さして行かなければならないのに、過重な取締りが行われますと、せつかく発展しようとするものに対して大きなブレーキになるばかりでなくして、日本全体の発展をむしろ阻害するようなことになりましたならば、小さい取締りの結果、全体の破綻になるというようなことをお考えにならなければならぬじやないかと思うのです。そういう意味で一部発展したところに基準程度を高めるというようなお考えも出て来ると思いますが、こういう基準の定め方というものは、衛生面から来るわけでなくて、畜産局指導の面から行かなければならないのであろうと思うのです。これは決して厚生省領域ではないと私は思う。それで日本全体の程度が高度に達しましたならば、この高度に即応いたしました処理加工というものが考えられて行くのが進歩の当然の過程だと思います。私どもとしても、退歩さしてよろしいとは思わない。しかしながら取締ることによつて牛乳の減産になつて現われたり、あるいはこれが発展を阻害いたしまして、結局は生産量低下ということになりますと、わずかな衛生上の取締りから、生産量低下ということになりましたならば、国家的な損害はまことに大きいと思います。生産影響を与えるようなところまで厚生省が関与するということは越権ではないか、行き過ぎではないか、こういうことなんです。行き過ぎでないと言われるならば、私はお尋ねしたいけれども黄変米などについて、大臣みずから米を食つてこれでいいなんということをやるのならば、牛乳を一ぺん飲んでみなさい。高温殺菌をしたつてちつともさしつかえないから、これを飲んだからといつて、おれは試験してみたけれどもどうだ、みんな飲まないかと言うことすら世間ではばかばかしいと言われるに違いない。高温殺菌したものは害はありませんでしたと言つたとすればばかばかしいと言われる、このばかばかしいことを厚生省みずからやつているということになりやしませんか、そういう意味でお尋ねしているのです。
  12. 楠本正康

    楠本説明員 私ども食生活改善立場から、酪農等をもつともつと振興していただくことはきわめて望ましいことであると思つております。従つて農村等におきまして、あまり取締りを厳格にする、あるいはあまりにも技術的に理想を追うというような結果、かえつて農村酪農振興等支障を来すようなことはしてはならぬことは当然でございまして、従つて今回もむしろ農村地帯におきましては、きわめて簡易な殺菌方法を積極的に普及する考え方を持つております。(「ヒヤヒヤ」)ただしかしながら、(「しかしながらはいらぬよ、それがいかぬ」と呼ぶ者あり)ただ生産衛生取締りとの調和というものはきわめてむずかしい点でございまして、そうかといつてあまり簡易な方法をとりますと、逆にそれがまた衛生支障ありというようなことにもなる場合もありますので、どこに調和をとるかということが行政としてきわめてむずかしいということは、おわかりいただけると存じます。  次に、なるほどすでに都市においては、相当施設発展し、あるいは衛生状態も進んでおります。そこで理想的な低温殺菌が進んでおるのだから、さらにまた高温殺菌にする必要もなかろうと考えておるわけでございます。しかしその場合、ただいま御指摘のように、別に高温殺菌が有害であるとか、さようなことは毛頭ないわけでございます。にもかかわらず、厚生省として都市はこれでよろしい、農村はこうだというふうに区別することはおかしいじやないかというお話もございます。これはごもつともでございますが、ただ牛乳所管と申しますか、行政につきましては、従来長い歴史もございまして、かようなしきたりをいたしております。従つて今後も、さような従来のいろいろな経過から見まして、都市におきましては従来通りかような方針をとつて行こうというだけでございまして、別にこれは農林省厚生省所管その他に触れるものではなく、ただしいて言えば、牛乳という問題が、何ゆえか今まで非常にむずかしい所管範囲をとつてつたというだけでございます。しかしこの点は農林省ともよく相談をいたしまして、行政支障のないような方法を講じて進んで参りたいと存じておる次第でございます。
  13. 川俣清音

    川俣委員 もう一点だけお尋ねしておきます。あとは法制局が参りましてからお尋ねします。厚生大臣農林大臣出席を求めて、所管の問題についてはいずれお尋ねしたいと思います。  高温処理をするか低温処理をするかということは、食品衛生の面から言いますと、積極的な危害国民に与えるかどうかという点にあるのです。これは食品衛生法の第一条に明瞭であります。積極的な衛生指導の面については指導をせらるべきものでありまして、取締り対象になるべきものではない。そこで牛乳乳幼児の非常に重要な主食ということになりますが、一般八千万国民主食の約九割を占めておるのは、おそらく米であろうと思うのです。この米の処理なんかにつきましては、あなたは研究されたかどうかわかりませんけれども、夏などでありますと、冬とはもちろん異なりますけれども、精米いたしましてから何日たつと酸性度が非常に強くなるということは、すでにおわかりのはずなんです。こういう主食については無関心でおられて、八千万のうちの九割が対象になる、多くの食生活の上に一番重要な米の酸度などについては、今まであまり問題にされなかつたのはどういうわけなんですか。しかも精米いたしましてからいろいろ米分解作用を行うことも、学説で明らかであります。こういう米は食つてはいけないとか、精米してから何日間のうちに販売しなければならないとか、牛乳以上に重要なものについて無関心であつて牛乳だけに非常に関心が深いのはどういうわけですか。
  14. 楠本正康

    楠本説明員 米と牛乳とを比較いたしますれば、牛乳というものは米よりもはるかに腐敗、変敗しやすいものであります。これははなはだお言葉を返すようでありますが、米と牛乳とは比較にはならぬ、かように考えます。
  15. 川俣清音

    川俣委員 非常に参考になりました。米と牛乳とでは腐敗程度が非常に違うということで米よりも牛乳を重要に取扱つておる。牛乳よりももつと腐敗のはげしいような魚についてはどうですか。腐敗程度基本にするということになりますと、牛乳よりももつと腐りやすいものはおそらく魚類だと思います。これは別ですか。あなたは前に重要な主食だということになるから私は米を問題にしたのです。米は非常に違うのですよ。精米した当時と何日かたつてからでは異なることは明瞭なんです。非常に成分影響があるのです。危害を与えるかどうかということになるとこれは別問題です。だから成分の異なるようなことについては、これは農林省所管だと思つてあなた方がこれは見ておられたのではないか、こういうような考え方なんです。牛乳も同じじやないか、こういうことなんです。わかりやすく言えば、これはおそらく米は農林省生産指導して精米指導もしておられるのであるから、従つてこれは対象にしておらなかつたと私は思うのです。しかし成分まで論じるということになると、触れていなければならなかつたはずではないか、こう指摘したい。腐敗程度が違うという、いわゆるほんとうの危害程度からいいますると、牛乳よりも魚の方がもつと危害程度が大きいじやないですか。この魚のために現に起つておるところの被害というものは、牛乳以上大きな被害を及ぼしておるわけです。こつちは取締りが非常にしにくいものだ、おのおの個人がこれを料理して食うのであるから、個人衛生観念にまつ、おそらく魚の方はそう言われるだろうと思う、牛乳もまた個人衛生観念にまつ、どうしてこれはできないのです。魚の方は個人衛生観念にまつ、牛乳衛生観念でまてない、主食であるからまてないとなつたら米はどうですか、こういうことになる、この一貫したことについて御答弁を願いたい。
  16. 楠本正康

    楠本説明員 これも御指摘のように、同じく取締りをいたします場合に、その対象によつて若干のアンバランスのあることはこれは率直に認めざるを得ません。つまり魚等は特に練製品等についてはきわめて危険なものでありまして、また事故が多いのでありますが、これらはなかなか基準等を設けて徹底的な指導取締りができませんし、はなはだ遺憾に思つておる次第であります。しかしそうかといつて、他のできるものまでも今のできないものに準じてしまえということはこれはどうかと考えますが、かような点につきましては、行政全般に通ずる問題でございます。従つて今後かような点はよく研究をいたしまして、できるだけ行政の不調和あるいは不均衡ということを是正するに努めたいと存じます。  さらに私ども牛乳所管といたしております範囲は、先ほど来同じことを繰返しておりますが、これは他の行政と少しく立場が異なりまして、これは食品衛生という狭い面から多少前進して所管をしておるというのが従来の例でございます。また同じく食肉の問題にも若干これと似た関係がございますが、いずれにいたしましても、この点は世界各国の例から見ましても、同じことを繰返すようでありますが、多少狭く解釈した食品衛生という面から前進して仕事を所管しておる。これはすでに農林省の方もよく御了解をいただいておる、かような点でございます。さらにつけ加えたいと思いますのは、環境衛生という問題がそういう性格を持つておりまして、たとえば入浴料金というようなものは私ども統制事務をしております。あるいは水道問題等につきましては、これは一つの企業法的な性格すら持つておるのでありまして、さような点をあまり狭く解釈すると、国民生活に直結いたしております環境衛生行政というものはできないことになりますので、そこは行政官庁同士の話合いでうまく調和をとる必要がある、こう考えております。
  17. 川俣清音

    川俣委員 今重大な関心を持たざるを得ないような御答弁があつた環境衛生につきましてはお説の通りと思います。異議はございません。食品衛生法は魚とか牛乳とかそういうものを対象にしてはおらない、すべてのものに対して平等であるのが法律根本建前だと思う。従つて法律の前に平等であるべきものを、これに差をつけるということ自体が行政官として行き過ぎだ。与えられた法律を忠実に執行するのが行政官根本的任務なんです。これは取締りにくいからこの法律は簡略に解釈するのだ、これはやりやすいからやるというようなことは、法律建前からいうと許されるべきものではないのです。この法律を執行する能力がなければ、これは行政官として資格はないのであるからおやめになる方がよろしい、自分がやりやすい分だけはやるが、やりにくい分はやらないというのだつた法律の必要はない。行政法でよろしいのです。食品衛生法というものは、いわゆる飲食物といいますか、この全般にわたるものであります。甲乙はないと私は思う。本法の一条に規定しておりますいわゆる危害を及ぼすようなものは、魚であろうと牛乳であろうと何であろうと全部対象になるのだ、こう解釈する。こいつはやりにくいから、危害を与えるけれども取締対象を寛大にするということは許されないと思うのです。もしもこの法律を忠実に執行する能力がないというならば、厚生省の諸君がみずから責任を負つてやめになればよろしい。厚生省取締りの便宜のために法律ができておるのじやないのです。法律ができてそれを命じておるのが最近の立法の建前だと思います。憲法の建前からいたしますと、法律の前に行政官は忠実にこれを執行する義務がある。それを過ぎるということは許されないはずだと思う。これは指導という面になれば別ですよ。取締りという面からいつて処罰を与える、制限を加えるということになりますと、この規定に従わねばならぬはずだ。あなたは今環境衛生のことを申しました。環境衛生は、それらのことの権限を積極的に与えておるのでありますから、この範囲に拡大しておやりになることは環境衛生の面からいつてちつともさしつかえない。環境衛生というものは指導の面まで権限を与えておるような建前をとつておるのでありますから、これは問題はない。食品衛生の方は、消極的な、ひどい危害を与えてはならないという建前でできておる法律であるから、その範囲内において行政官は執行すべきである、こういう考え方なんです。非常に取締りにくい魚のごときは、やりたいけれどもやりにくいからというのだつた法律をかえたらよろしい。魚は取締りから除く、厚生省はやれないとはつきりおつしやるならば、別なところにやらせればいい。やれないならやれないと正直に言つてください。それならば法律を改正して、この点は厚生省所管から除くようにすればいいのです。
  18. 楠本正康

    楠本説明員 ちよつと失礼でございますが、私がお答え申し上げましたのは、ただいま御指摘の中に行政に不均衡があるのじやないかというような御指摘があつたかと存じました。従つてかような点は私ども反省をいたしまして、その点も率直に認めざるを得ないということを申し上げて、むしろ善意をもつてお答えしたつもりでございます。しかしながら今先生の御指摘のように、それならば食品衛生法に基く取締り基準が、魚の基準の場合、あるいは牛乳基準の場合、米の基準の場合非常に違うじやないか、おそらくこういう御指摘かと存じます。法的のお話かと存じますが、かような点になりますと、それはおのずから食品の性質によりまして基準に差のあることは当然でございまして、みな一律に一つ基準というものは考えられません。場合によりましては牛乳のように若干成分の内容にまでも入らざるを得ないものもありましようし、また一方ではその必要のないもともある、これだけのことでございます。ただ私がお答えいたしましたのは、先生の御指摘に若干反省をいたしまして、行政に不均衡があつてはならぬという反省をいたしたにすぎないわけでございます。
  19. 川俣清音

    川俣委員 私も質問をこの程度で終りたいと思つたけれども、どうも終るわけに行かない。本法の一条が法律の目的を明示いたしておりますね。この一条に基いて三条、四条という一定の基準ができ、三条、四条に基いて七条というものができておると解釈すべきだと思うのです。七条が独立しておるのだというような解釈を先般課長がなされましたけれども、そういう解釈をすべきものじやないと私は思う。どんな法律でも一条なり二条なりで目的を明示いたしましたならば、この目的を遂行するために次下の条文ができておることは多くの法律の例でありまして、七条だけが一条に基かないということはあり得ないのでありまして、立法の建前からいたしまして、それならば七条を別個な独立法としなければならないと思うのでありますから、そういう意味で一条を受けて三条、四条があり、七条がある、こう考えて参りますと、すべては国民衛生の上に危害を及ぼすようなことを積極的に取締る。従つて取締対象になるものはすべてのものが同様でなければならない。但しその基準省令等に譲つておられますから、その基準が、今あなたのお話になつたように、行政官としては省令をつくつたり、あるいは通牒を出す場合においては割合にやりやすいものとやりにくいものがあると思うので、基準についてはあるいは相違があるかもしれませんけれども、すべてのものに対して同様でなければならないというのが法律建前であると思う。省令とか政令とか、あるいは通牒ではおのおの異なるところがありましよう。しかしながらそれらの政令も省令も一条から逸脱してはならないのだという点を私は指摘しておるのです。その基準なり、そんなものは法律から出て来るのだという考え方をあなた方がしておるのか、ただ取締りがやりいいからこういう基準をつくつたというのでは相ならないという点を指摘しているわけです。官庁の便宜のために政令や省令を出してはならない。あくまでも食品衛生法何条に基く政令、何条に基く省令ということになつておる。ところがときどき法律の規制しました行為を逸脱するような政令や省令が各省とも往々にしてあり得るのです。これは厚生省ばかりじやない。農林省でも多くそういう他の例を見ますけれども、ここに今度は七条から拡大解釈してもいいというような政令を出されるから私はあえて問題にしておる。あくまでもやはり一条にさかのぼつて反省をしてみなければならぬのだ。一体三条、四条に基いてこれらの政令、省令が出し得るかどうかということの検討が必要であろう、こういうことなんです。この点どうですか。
  20. 楠本正康

    楠本説明員 まず第七条は、もちろん御指摘のように第一条の目的から反省しなければならぬことは申すまでもございません。ただ第一条におきましては、危害という言葉のうちにはもちろん直接的な危害も含まれておりますが、しかしながら同時に間接的な危害あるいは慢性的な危害も当然含まれるわけでございます。たとえば牛乳かと思つて飲んだものがあにはからんや米のとぎ水であつたというような場合には、これはもちろん直接衛生上の危害がなくても、やはり栄養疾患その他を起して、間接的には重大な危害を生ずる結果になると存じます。従いまして私どもといたしましては、さような考え方から第七条を解釈をいたしておる次第でございます。一方、第四条と第七条とは全然関係がございませんので、第四条は第四条として具体的にものを示した一つの法目的だろうと思います。第七条におきましてはこれまたまつたく第四条とは無関係に、一つの規格、規準というような点から法目的を示しておるものとかように考えております。しかしそのいずれも第一条の目的を逸脱してならぬことは申すまでもございません。
  21. 川俣清音

    川俣委員 どうもこれは厚生省見解ばかりでなくして法制局見解も承りたいのですが、三条、四条は一条を受けたやはり重要な規定でありまして、七条は必ずしも三条、四条を受けていない、こう強弁されますけれども、私どもは必ずしもそういう見解をとることは至当とは思つておりません。なぜかというと、一方は販売禁止をいたしておるものです。従つてこの禁止条項に当らない範囲基準というものが生れて来てよろしい。これは独立しているとおつしやるが、四条で禁止していることを七条でまた規格をきめて、禁止条項以外のことが規定できるかというとそうじやありません。そういう意味で、やはり四条の範囲を逸脱してはならないという考え方をしておるのです。あなたは独立しているのだ、四条で禁止していることも七条では拡大してもよろしいというような考え方があるから、私は問題にしておるのです。そうじやないのです。やはり三条、四条で規定をいたしておる範囲内における基準だと私は思う。私のこの解釈は私は誤りないと思うので、これはあなたと討論しますよりも法制局と討論しますから、その解釈に従われることがおそらく適当だろうと思います。  そこで楠本君は、積極的な危害ばかりでなくして、牛乳の中に大豆油を入れたりあるいは水を割つたりするようなことを取締る。これは私は決して異議を言つておるのではない。当然な取締り対象になると思うのです。但し出て来た生乳に大腸菌があつてもいけない、これも私は対象になると思う。それを煮沸しなければならないか、低温でなければならないかというようなことは、これは人に危害を及ぼすか及ぼさないかという問題ではない。衛生上の害がなければよろしい。害があつてはならないということは、確かにこの食品衛生法から考えなければならない。従つて牛乳に水を割つてはならぬとかあるいは器具が不潔であつてはならない、これは当然なことです。これはむしろ進んでおやりにならなければいかぬ。どういうふうに殺菌すればいいか悪いかということは、これは今後の指導にまつべきものである。それは低温処理の方がより高度的な処理方法である、あるいは高温処理の方がかなり原始的な殺菌方法である、こう説明されて指導されることについては、私はあえて異議は言わない。同じ殺菌方法であつても、いろいろ現在殺菌方法がありますよ。どの殺菌方法でなければ売つてはならないのだというようなことが一体ほかにありますかというとないのですよ。はえの入らないように設備をしなければならないというようなことはありましよう。こういう方法をとらなければならないというようなことはありましても、それは衛生上の危害を及ぼすようなことがあつてはならないという一つの観点から出ているのでありまして、脂肪分がどの程度でなければならないとかいうことになりますと、もう厚生省領域を離れる、私はこういう考え方なんです。現にそれは米の場合の変化にいたしましても同様なんです。この点どうですか。     〔委員長退席、芳賀委員長代理着席〕
  22. 楠本正康

    楠本説明員 第一点の御指摘の、殺菌方法までも規制するということはおかしいじやないかという御意見でございますが、これも一つの御意見かと存じます。なるほど見方によりますれば、低温高温何でもかまわぬ、もし厚生省低温がいいというなら、指導をしてこれを普及することがあるいは正しいかとも存じます。しかしながらすでに現実の五十二号あるいはそれ以前の省令によりまして、たまたま都市部におきましては幸か不幸か、すでに低温殺菌支障ないところまでも至つております。また現実に、これは法律とは関係ございませんが、実際問題といたしまして、大量に扱う市部においては当然低温殺菌が合理的でいいんだという事実もございますので、それならば私どもといたしましては、これは従来通り立場をとつて行く方がいいんじやないか、今ここで筋を通して二本建にしたところで、都市においては少しも得るところがない。混乱があつても得るところのないようなことは、私どもとしては国民のために何もあえてする必要はないじやないか、かように考えておる次第でございます。筋の問題をちよつと離れておるかと存じますが、さような考えで進んでおります。  それから第二点の御指摘の、脂肪その他の成分、規格の点は厚生省所管ではないという点でございますが、これらの点に関しましては、これは行政考え方の問題にも入つて参りますが、私どもといたしましては先ほども申し上げましたように、あえて衛生上の危険さえなければ、直接の危険さえなければ何でもいいんだというような解釈は実はとつておらぬのでありまして、できるだけ食品として正しいもの、しかも食品としてかなり長い目で見ても安全なものを供給したいというふうに考えておるわけでございますが、しかしこの一番端的な例が牛乳に現われておるわけでございます。一方、くどいようでありますが、牛乳には昔からかような所管の限界をもつて今日進んで参つておりますので、既成事実と申しましようか、かような点もかなり強く響いているんじやないかとかように考えます。
  23. 川俣清音

    川俣委員 これは既成事実ということでありますが、法律によらない区分というものは今日できないんですよ。慣習ではできない。行政区分というものは明らかに、内閣法ありその他の法律に基いて区分ができておる。その区分を逸脱するならば、これは農林省処理で、兼務されたらいいんです。それならそれでもいいと思う。ただ脂肪分とかいうことになりますと、これは——あなた方は飼料まで手配できるのですか。えさによつて脂肪分の変化があることは明らかでしよう。そういうところまであなた方は及び得ないはずなんです。出て来たものだけのはずです。原乳を変更することは、加工して危険にさらすのはいけない、あるいは搾乳してから一定の期間はこういう保存をしなければならない——保存をしなければならないのではないのです、変化を与えてはならないというのがこちらの考え方。こういうふうにすると腐敗しやすいから、腐敗さしてはならないということなんです。その保存の方法としては低温方法もあるだろうし、高温によつてやる場合もあるでしよう。高温は殺菌でしよう。とにかく低温は殺菌もあるでしようけれども、あとの腐敗をある程度防ぎ得る方法として低温というようなことが考えられておると思う。これを、いや低温にすることが牛乳の本質の保存方法であるというようなことを言うのは、これは厚生省指導として言われるならば別ですが、あたかもこれらが対象となるがごとき宣伝をせられるから問題になる。それほど重大な関心を持たれるならば、米等に対してももつと重大な関心を持たなければならぬ。ああいう倉庫に置くというと保存が悪いから、衛生上害がある。魚ならば、雪づけにしておくことは衛生上害がある。あるいは普通の氷でも害がある。どうしても電気冷蔵庫をもつて保存しないといけない。これはおそらく指導でしよう。腐敗しない処置をあなた方が求めておる。腐敗しない処置として一体電気冷蔵庫を使うのか、あるいは普通の氷による冷蔵庫を使うのか、あるいは雪の倉庫かということになるのであります。私はそう考えるのであります。それをあたかもこうしなければならないというような考え方法律をきめられることは、この法律の権限を逸脱したものではないか、こういうことを指摘しておる。もう法制局から見えておりますから、楠本さんに対する質問をこの程度に終つて、あと中澤君に譲ります。
  24. 中澤茂一

    ○中澤委員 きよう配られた資料に、食品衛生法解釈上の疑義というものがありますが、一応これはもつともにとれるのです。一応もつともにとれるんだが、私は現実の問題を考えてみると、これは非常に楠本部長までこのごろ軟化して来たという感じを受けるのです。これはあの大きな業界の圧力、もつと端的に言うならばいま一点は面子に非常にこだわつておる。かつて低温高温かで大分問題になつたときに、結局どつちともつかないで、サムスというある司令部の人の指示によつて低温をやつた。しかも厚生省が今まで低温指導をやつて、相当な資金が低温殺菌のために使われて、低温殺菌施設が設けられた。この低温殺菌施設が設けられたその方の圧力が相当あなたのところにかぶつて来ている。それが食品衛生法に疑義があるとか、またはいろいろな、しかしながらというさつきのあなたのあの文句に出て来るのです。そういう面子なぞは、時々刻々と事態がかわつて行く以上、そうこだわる必要はないと思う。だから問題はいよいよ大詰めまで来ている。ここまでわれわれはやらなくとも、もつと大局的に経済の実態、もつと安い牛乳を飲ませるのは議会がやらなくとも、これは何とかしなければならないとあなた方が積極的に考うべきではないか。ただ何でもかんでも食品衛生法というものはおれの所管だから、これさえ守つていればいいという考え方は、私は非常に狭量なセクト主義だと思うのです。そこで大詰めに来ているのですが、一体あなたのところの課長は、まだ二十日くらいこれを改正するまでにかかるというが、一体いつごろまでにこの省令の改正をやる予定か、それをお伺いしたい。
  25. 楠本正康

    楠本説明員 最初、いろいろ圧力あるいはその他面子等によりまして、行政がすつきりしないんじやないかというお話がございますが、これらは絶対にさような観点ではございません。私ども都市実情から見まして、都市においていまさら高温殺菌をやつても少しも得るところがない、国民のためにならない、かように考えておる次第であります。なお省令の改正につきましては、ただいまお手元に差上げました案は、これは一応私ども事務局の案でございます。ただしこれら牛乳の殺菌問題につきましては、当委員会初め、いろいろの委員会等でも目下御調査になつておりますので、従つてもちろん私どもといたしましては、国会の御意思を総合的に十分尊重いたしまして、これを改正いたす予定でございます。しかし事務当局といたしましては、かような案を目下考えておりますので、これでいいということになりますならば、これはきわめてすみやかに省令の改正はできる段取りになるわけでございます。
  26. 中澤茂一

    ○中澤委員 ここに、長期的に国民衛生の上から考えなければならぬとある。その点については賛成です。しかしそういうことは——これはもう子供の主食になつておるのだから、長期的な栄養の問題を考えなければならぬ。その点までは了承します。しかしこれは消費者の選択の自由じやないですか。消費者の実態が、低温殺菌で今の乳価ではとうてい子供に乳をやりたいがやれないという消費階級もあるのです。むしろ今の酪農問題を考えますれば、一般飲用牛乳の消費量をもつともつとふやさなければならない消費階級がたくさんある。そういうものは飲ませないのか。ここで高温殺菌をやつて生産地からどんどん送れば、飲ませないより子供に飲ました方が子供のためにいい、そういうふうに考えれば何も食品衛生法の疑義の、母乳にかわるべきものだからこれは考えなければならぬというりくつは私は成り立たないと思う。消費者の選択の自由というものを許して、お金のある人は、低温は金がかかるから十五円しようが、二十円しようが、うんと飲ましたらいいでしよう。お金のない人は、そういう高いものを飲ませられない人は、高温殺菌で、もし高温の方が安くてどんどん市販に出るならば、子供に飲ませた方が飲ませないよりか私はよいと思う。だからあなたのきよう出しているこういうものは全然理由にならない。こういう食品衛生上の疑義についてということは、国民衛生上もつとあなたが視野を広げて考えるならば、こういうことは全然理由にならぬ。この理由にならぬものを強いて理由づけるところに、さつきいうように、あなたは絶対そういう圧力はないというのですが、あらゆる力があなたのところにかかつてつていることは、私は具体的な事例まで知つておるのです。しかしあまりあなたのような人格者にそういう事例まで申し上げて責めつけるのはお気の毒だから言わないだけなんです。だからそういう事実はあなたはないと言うが、事実上、現在これだけわれわれ当委員会が問題にして、これはけりがつくまで、まだまだ当分問題にするかもしれません。しかしそういうふうなものにこだわらず、この際もつと大乗的見地から酪農全体の振興考え食生活全体を考えるならば、これは今こそ議会が言わぬ前に、あなたが考える問題なんです。だからなるべくすみやかにという御答弁でございましたが、いつごろまでにやる予定ですか、いま一度、いつごろというのをはつきりしてもらいたい。
  27. 楠本正康

    楠本説明員 くどいようでありますが、ただいま私どもが決定いたしております改正の趣旨は、これはあくまで事務的のものでございます。しかし目下当委員会初め、厚生委員会その他におきましてもいろいろ御審議をいただいておりますので、私どもといたしましては、できれば国会の総合的な御意思を尊重して改正をいたしたい所存でございます。しかしいずれにいたしましても、その結果、現在事務当局が考えておるような線で支障ないということになりますれば、これはきわめてすみやかにいたしますが、そう決定いたしてからは、おそらく一週間もあれば、省令の改正は楽にできるものと考えております。なお、ただいま御指摘の中に、都市においてもちろんもつと牛乳を消費したいというのが、私ども食生活改善立場からいたしましても、忘れておる問題ではございません。ただ現在牛乳の消費価格の高いことは、都市において高温殺菌を認めることによつて解決するものではないのではないか、かように考えておるのであります。特に現在都市牛乳の高いことは、必ずしも低温殺菌様式が原因ではないのであります。むしろこの点に一つどもとしては納得のしかねる点があるわけでございます。
  28. 中澤茂一

    ○中澤委員 それはもつと一般飲用牛乳をふやすという方法は、価格の問題にかかわつているのです。これはもちろんえさの問題とか、要するに導入牛の値段が非常に高いものを買わされた。一番高いのは、私どもの長野県でも二十三万くらいで牛を買わされておる。平均して十八万くらいな牛を、去年買わされておる。それが借金して買つて、しかも市乳を、独禁法違反をやりながら、明治、森永の二大乳業資本の強硬な値下げによつて、今農家は牛を売ろうか、売らなければやつて行けないという農家が一ぱい出て来ておる。これは消費がもつとどんどんと進むならば、問題はないのです。だからそういう面から考えれば、高温殺菌つても、都市の消費者の選択の自由にまかせればよい。あながち高温殺菌だから、低温殺菌だからといつて、さつき川俣委員の言われたように、別に毒になるわけじやない。むしろ値段が下れば、飲ませられない労働階級でも、みな自分も飲み、子供にも飲ませる。その方が国民衛生全体からいつて国民の体位向上全体からいつて有利だと思う。そういう大局的見地から考えていただかねばならぬ。悪く解釈すれば、これは乳業者の、厚生省食品衛生法をたてにした一つの防波堤だと私は言いたいのです。そういうふうなことにこだわらずに、食生活改善という、もつと大きな立場から、あなたのところは食品衛生の問題も大事だが、いかにして日本食生活改善をやるかという重大な問題をかかえておるのです。それには今の受乳量削減という問題は、もう牛乳の値段を安くして、消費をたくさんさせるという以外に方法はないのです。農民だつて去年の凶作を契機にして、私が村々を歩いてみると、パン焼きかまどをつくつて、私らが行つてもパンを食わせるのです。ただそこに牛乳がつかないということが、非常になれ始めたパンをまたやめる傾向が出て来ておる。そこに牛乳さえ安くなつて、一合五円か六円で飲めるならば、農民だつてパン食をやります。そこまで来ておるのを、今この問題がひつかかつておるから、結局村の牛乳を、低温殺菌でなければだめだというようなことで、町まで出して、町で低温殺菌して持つて来れば、十三円、十三円五十銭というばかなことを言うから、農民は飲めない、こういうのが現実なんです。だから、そういう現実を考えれば、この際、低温高温の二本建というものは認めた方が私はいいと思う。ただそれでは相当な資金をかけて、低温殺菌施設をした人に対して悪いというお考えならば、それも認めたくないのですが、今の状況でしかたがないとすれば、一応認めるとしても、一日も早くこれはやつてもらわなければ、現に受乳拒否を始めた問題からこれは火がついておるのです。明治、森永がもう四十二円の乳価でなければ、もはや乳を受取らないと言つて、乳を受取らない所がある。これはあなたはこの前の委員会に来なかつて、御存じないだろうが、公取で、今審査官を任命して調査しておるのですが、そういう事態が起つた。乳を腐らせるわけにはいかない。ただちにそこで高温殺菌処理して、村中で飲めば、おそらくまき代はいるが、まきは山の中へ入ればいくらもあるから、五円か五円五十銭で農民が飲めるのです。また学校給食、工場、病院、そういうところへどんどん高温殺菌で送れる。そうすれば非常に中間不当利潤が削除されるわけです。そうなれば、牛乳の消費量というものがふえるわけです。おそらく二本建に完全に踏み切つたら、私は市販乳の量が、来年は倍とまでは行かなくとも、ものすごくふえるという自信を持つておる。できるならば、そうやつて日本食生活改善の基礎を築くのは、ことしから来年にかかつておると思う。そういう意味において、どうしてもこれはただちに二本建の改正をやらなければいけないと思う。一歩あなたの方の立場考えて譲るとしても、ここにあるように、特に指定した地域というのは、一体どういう地域をだれが一体指定するのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  29. 楠本正康

    楠本説明員 農村都市とをわけて私ども考えたいと先ほど来お答えをいたしておりますが、その場合、具体的にどうわけるかという問題でありますが、私どもといたしましては、これはまず一つ基準のようなものを設けて、それに沿つて都市農村の区別をする必要があると存じます。その場合に一体どういうことが問題になるかと申しますと、やはり農家の戸数当りに対しまする乳牛数というものが、一つの重要な基準になるのではないかと存じます。従つてさような最も実情に即した一つ基準考え方で、都市農村をわければ、ただいま御指摘のような点は、十分に解決されるもの、かように考えております。
  30. 芳賀貢

    ○芳賀委員長代理 中澤君に申し上げますが、公取の小川事務局長と岸川調査課長出席しておりますから、その点もお含みの上御発言を願います。
  31. 中澤茂一

    ○中澤委員 では楠本さんへの質問を中断して、公正取引委員会に今までの審査経過、調査官を派遣して、今週中には帰るだろうというこの前の御答弁でしたが、今まで審査官が各県へ出て、審査をした具体的な証拠資料と、もし委員会で言われなければ、どの程度まで審査が進捗したか、その御説明だけを聞けばけつこうです。
  32. 小川清四郎

    ○小川説明員 前回に御答弁いたしましたように、鋭意審査官を現地に派遣いたしまして、困難なる調査を進めて参りました。はつきりと具体的に申し上げませんと、御了解がいただけないかとも思いまするが、審査の性質上御賢察を願いたいと思うのでありますが、目下のところ、一応ある線をつかみまして、その線を推し進めて参りまして、最後の結論を出したい、そこいらまでは達しておりますので、御了承をお願いしたいと思います。
  33. 中澤茂一

    ○中澤委員 いま一つ御質問しておきますが、そうすると、必ずその審査結果ができれば、終結が出るということだけは、今の段階では、はつきりして来たのですね。
  34. 小川清四郎

    ○小川説明員 その最後の核心をつかみましたならば、どういう処置をとるかという点を委員会にかけまして、早急にきめたい、こういうふうに存じでおります。
  35. 中澤茂一

    ○中澤委員 とにかく公取の方は、当初からお願いしているように、実際こういうでたらめなことをやられて、農民は泣寝入りで、期待しているのは公取だけなのです。お宅の方もいろいろな問題が出て来ておる。新聞を見ても、たいへんだと思う。たいへんだが、この審査を一日も早く進めてもらいたいということを特に希望しておぎます。ほかの問題もあるでしようが、この審査を一日も早く進めてもらいたい。さもなければ、あらゆる問題が紛糾して来て、これは処理がつかなくなつて来ると思う。その点を特にお願いしておきます。  続けて楠本さんに質問しますが、戸数当りによるところの乳牛数という御答弁でありましたが、これは非常にまた問題が出て来ると思います。私は楠本さんに知つておいてもらいたいということは、それは各県の畜産課というものは、ほとんど現実に乳牛資本の手先になつております。これが問題なんです。この点を——強引に私は省令の改正を徹底化しなければいかぬといつてねばるのは、もしこれを県や何かに一任すれば、また同士打ちになるかどうかわからない。ちようどこの前のあなたのところの通牒が何ら効果を発してないと同じことなんです。そこに省令改正という基本的な問題でやつて行かなければいかぬという問題があるのです。それはどこの県でも、畜産課というものはほとんど乳業資本の私に言わせれば手先です。そういうような現状であるから、ただこれを通牒によつて省令はある程度ごまかしておいて、これを実施せしめるんだということは、末端に行つて、今度はまた前の流した通牒と同じことで何の役にも立たない。その点を特に考慮してもらわなければいかぬ。特に戸数当りに対する乳牛数というのは、どの程度基準考えておるのか、まだいわゆる最終結論が出なければ、今までの事務的な話合いの結果でいいのですが、もちろん農林省の意見も聞いておるのでしようが、その結果どの程度までにあなたが考えておるか。
  36. 楠本正康

    楠本説明員 この都市農村をわけるという話は、いまだ農林省との事務的な話が進んでおりませんために、具体的な内容には達しておりませんが、私といたしましては、このわけ方に少くとも問題があるんであるから、ぜひひとつこの方針を農林省に出しまして、御協力いただいて、そうしてお互いにどのようなわけ方にしようか、どういうところに基準の原則を置こうかというようなことを、実はこちらから早く具体的に農林省相談をしたいというような気持でおるわけでございます。従つていまだ事務的に折衝も進んでおりませんし、こまかい具体的な問題に至つておらないのは、はなはだ遺憾でございます。
  37. 中澤茂一

    ○中澤委員 戸数当りに対する乳牛数という、そういうあなたのお考え基本的な根拠、理論的な根拠というものは一体どこにあるのですか。高温低温を戸数当りによつて乳牛数によつてわけなければならぬという理論的根拠をひとつ説明願いたい。
  38. 楠本正康

    楠本説明員 これは先ほど御指摘のありましたように、農村地域においても、今後大いにその牛乳の消費を促進したい。それをはばんでおるのは、さしあたりその一つがもし低温殺菌にあるならば、さような地域においては今後大いに高温殺菌を普及して行きたい。私どもがかねて主張しておりますように、酪農地帯等におきましては、これは高温殺菌を認めて行きたい。かような一つ基本的な考え方でございます。
  39. 中澤茂一

    ○中澤委員 どうもその理論ははつきりしません。私にはどうもわからぬ。なぜ一体戸数当りに対する乳牛数によつてそれを考えなければならぬかという、その理論的根拠は、そういう御説明では全然わかりません。何か一つの理論的根拠があるのか、それともいろいろな圧力が加わつて困るから、政治的な妥結で、こんなところでごまかして行こうというのか、どつちかだと思うんですよ。政治的な妥結でごまかそうというならば、それはそういう御答弁でもけつこうです。それからもつと理論的根拠に立つて、こういう基準をきめるならば、もつとわれわれが納得の行く理論的な根拠を説明してもらいたい。こうしなければ、牛の数が少いのに高温殺菌すれば、これは毒物に乳が変化して、人体の生命に影響があるという何か根拠があるのか、私にはちつともそういうことは納得がいかぬ。それはそうじやないんだ。非常に業者の圧力もあつてなかなかこれは問題なんだ。そこで私の立場上、やむを得ず政治的にこんなことも考えているのだ、そういうお考えか、どつちかだと思う。もつと理論的な納得の行く説明を求めたい。
  40. 楠本正康

    楠本説明員 御指摘の点はまつたく逆でございまして、私ども乳牛のきわめて少いような所ならば、山の中の乳牛のいないような所になら高温殺菌はよろしいといつても、実際は意味をなしません。そこでむしろ実際に高温殺菌施設が生きるような所に、逆に高温殺菌施設をつくりたい。かように考えておりますから、乳牛というものの数が頭にある。もし御指摘のような政治的な圧力なんかならば、山の中のあまり牛のいないような所だけ高温殺菌すれば一番私どもとしては話は簡単なんです。御指摘の点はまつたく逆です。
  41. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ちよつと関連して……。ただいま楠本さんの御説明を聞きまして、まことに今まで中にないいい御答弁を承つたと思います。大いに喜ぶものでございます。そこであなた様の言われるように、あまり消費のない所で高温殺菌をやつても、販売上、大した影響ないという御趣旨はまことにけつこうなんです。その御理論で参りますと、もう一歩進めて、人口と乳牛数と区別をなさることなしに、都市と郡部、農村というわけ方をなさることなしに、一般にどこでも、都市でも農村地帯でもかまわず、両立てで行つていいということにお進めになるわけには参りませんのですか。
  42. 楠本正康

    楠本説明員 同じことを繰返すようで失礼でございますが、私どもといたしましては、都市高温殺菌を実施することはこれは合理的でない、かように考えております。その結果牛乳の消費は都市で促進しないし、もちろん値段も下らぬし、逆に混乱を来して、かえつて国民に迷惑をかけるぐらいが得るところだ、こういうふうな感じがいたしております。従つて私は、都市においては、せつかくここまで低温殺菌が伸びて来たこの現状を維持して行つた方が合理的でなかろうか、かように考えております。
  43. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ただいまの御説明は私まことに勉強が足りませんのでわかりませんが、高温殺菌が入つて来ることによつて非常に混乱して、国民が迷惑を受けるというその順序をひとつ説明願いたい。
  44. 楠本正康

    楠本説明員 先ほど御答弁いたしましたのは、食品衛生あるいは牛乳奨励の建前は、流通機構をとやかくしようとするものではございません。要は殺菌施設を問題にしておるわけでございます。従つてかりに、あるところで線が引かれました結果、隣の村から隣の町へ高温殺菌乳が流れて行くというようなことを、私どもはこれを取締るという意思は毛頭ございません。
  45. 中澤茂一

    ○中澤委員 この問題はいずれまだやらなければならぬ問題であります。戸数当りに対する乳牛基準というものは、これは農林省畜産局の意向もあると思うのです。畜産局はこういう基本的な考え方に対して、畜産局長はこういう考え方がいいと考えるか、または農林省として、ほかに何らかこれ以外にこういう方法がいいんじやないかということを考えられるか、畜産局長からひとつ答弁願いたい。
  46. 大坪藤市

    ○大坪説明員 この問題につきましては、ただいまの御覧の通りいろいろと考え方もあるのであります。私どもといたしましては、牛乳が現在の段階になりました状態におきましては、原則として、都市と言わず農村と言わず、どこにおきましても高温低温の両立てがよろしいのじやないか。ただしかしながらそうなつて参りますと、都市等におきましてはいろいろ環境衛生部長が申し上げられましたように、必ずしも十分な成果を来さないというような点も考えられます。しかしながら他方生産者がどうしても資本家と申しますか、現在ある工場にやむなく持つて行かなくちやならないというような事情にも相なりますので、生産者の協同組合であれば少くとも両建て、どこでもよろしい、こういうような線が現在の段階で一番妥当じやないかと考えているわけであります。
  47. 中澤茂一

    ○中澤委員 今畜産局長答弁したことについてはまつたく同感です。これに対して厚生省は、飲んでも別に死にもしないのに、なぜそこまでがんばらなければならないのか、私にはどうしても今の厚生省の態度が納得できないのです。今畜産局長言つたように、生産者団体であり、しかも利益機関でない協同組合が、どんどん高温殺菌で安い物を市販に出して飲ませられることになれば、牛乳の消費はどんどんふえて、食生活の改善もできれば国民の体位の向上もできる。主食にしている子供に対しては消費者の選択の自由によつて低温がいいと思つた低温を飲ませればいいのであつて、そういうことを厚生省ひとりがこの省令改正に対して渋つているということは、私にはどうしても納得が行かない。しかもこの前の委員会の直後羽田政務次官に言つたところが、厚生大臣の草葉さんも政務次官もあなたも、いやそれはいいんだと言つたというようなことを翌朝話しているのです。それがだんだん時期がたてばたつほど、ますますその改正を渋つて来るという原因がわからない。これは単に国民全体の将来の何とかいうことのみを口にしているようであるが、一体何の理由だかわからない。もちろんあなたの言うことも一通りわかるけれども、何も低温殺菌施設をしているのをみんな高温にしろというのではない。低温にしているところは、今の設備を使つてどんどん出せばいいんです。それから新しくつくるところは、低温施設は相当の資金もかかるし、相当の資材も食う。その場合高温にしてやれば、簡単な装置で、資金もそうかからずにやれるのです。そうすれば勢い牛乳は償却費が少いから、乳を集めたところにまき代か手間賃ぐらい出して高温殺菌をやらせれば、消費地への輸送賃を除いて、大体七円ないし七円五十銭で飲ませられると思う。村などで計算をしてみて、もし四円二十銭で売つたと仮定すれば、五円五十銭で飲ませられると生産者が言つている。大きなかまをつくつて、その中へ五ガロンカンへ詰めてぶちこんで煮沸する。そのかまからそれを引上げて持つて行けばいいんですから、五円五十銭に若干のゆとりを見ても、六円で飲ませられるということを言つているのですよ。そうすれば、農村で若干いろいろなものを見ても、七円といえば大いばりで飲ませられる。七円で飲ませてごらんなさい。今学校給食費を若干増額してやれば、農村でできる牛乳の三分の一ぐらいは、学校給食だけで消化してしまうのですよ。ここで厚生委員会にいろいろ探りを入れて聞いてみると、業界の手が動いているようで、厚生委員会は秘密会きりを開いて一般にこれを聞かせない。ただ秘密会で反対だというような態度の方へ持つて行きつつあるということを聞いている。あなたはさつき厚生委員会の方でやつているからと言われたが、そういうことにこだわつていれば、いつまでたつても結論が出ないと思うのですよ。だからあなたはもつと大局的に目を開いてやる必要があると思う。一体理由がわからないんだが、何回聞いても納得する理由にならない。これが始まつてから厚生省で省議というまでじやないそうですが、この前課長答弁によると、やつている。それにまた大分日がかかつている。その前に約一月近い日がかかつている。何のためにそう渋らなければならぬか、私には了解できない。どうなんですか。もつとざつくばらんに言つてくださいよ。こういう業界の圧力がある。明治がこう言つて来たから、森永がこう言つて来たからと、もつとざつくばらんに言つてください。奥歯にもののはさまつたようなことを言わないで。
  48. 楠本正康

    楠本説明員 何かしら私ども省令改正を渋るような御意見でありますが、先ほど来申し上げておりますように、私の方といたしましては、農村地域においては、今後積極的に高温殺菌施設で、牛乳をきわめて安く安全に消費を促進するように改正の準備をいたしております。またそのつもりでおります。ただ問題は都市の点に触れて来るだけのことであります。この点は私は逆に、なぜ一体都市高温殺菌をやらせなければならないかということが納得できないことになるわけであります。
  49. 中澤茂一

    ○中澤委員 どうしてもその辺があなたは納得が行かぬと言うが、あなたの言うことはこつちが納得行かぬ。さつきも言うように、消費者の選択の自由じやないですか。もし長野県で高温殺菌を許して、大して金をかけずに生産者団体から東京に送るならば、八円くらいの牛乳を飲ませられます。トラツクで送つて、輸送費を二円と見ればいいのです。もし運輸省と話がついて、牛乳輸送ローリーがつくられるならば、これより単価が下つて、今の市販牛乳の大体半値で飲ませられます。そうすれば、たれもジュースなんか飲む気はしませんよ。そうして東京に無人スタンドでも許して、十円玉をぶち込んで牛乳をきゆーつと一ぱい飲んで行けわば、とても調子がいいんです。そうすればジュースやサイダー、ラムネなんか飲むやつはありません。(「それは困る。」と呼ぶ者あり)それが困ると言うが、私は困る原因がわからぬ。飲んで毒でなければ、何も困る理由はないでしよう。あなたのところはその干渉する必要はないでしよう。そういうことをやられては明治、森永が困るから、あなたの方は困る、こう言うのでしよう。私は、そう言わざるを得ない。だからもつと大乗的な立場に立つて考えてくださいよ。あなたがどこまでもこだわつているのは、私にはわからない。あなたは私の言うことがわからないと言うし、私はあなたの言つていることがわからない。都市では低温殺菌施設を全部しているんだからといつても、別にその施設はむだになるわけではない。これは高温にしたつて何でもないじやないか。現在は六十五度なり七十五度なり温度を上げたやつを、一旦冷却槽を通して低温にしてやつているのでしよう。あの冷却槽をとつてしまえば、今の施設は全然むだになるわけじやないでしよう。何億という投資をしている全国の低温施設がむだになつてしまうとかなんとかいうならば、これはまた考えなければならぬ。そういう業界の立場に立つて考えてやらなければならぬが、何も施設はむだになるわけではない、ただその場合ビン詰の問題があるわけです。要するに高温のものをそのままビン詰にすると、ビンの破損率が多いとかいろいろそういう問題はあるけれども、コストの面については今の施設をそのまま利用できるのですから何もこだわる必要が業界にないと私は思うのです。ただ業界がこだわるのは、高温殺菌を許して生産者団体たる農協がどんどん高温殺菌をやつて都市なり何なりへ直結して売られれば、自分らが今までうんとぼろもうけをやつていた、そのもうけがなくなると業者はこう言う、その代弁をしているのが厚生省だという形になつている。だからそういうように何もこだわる必要はないと思うのです。それで二本建がどうしてもいかぬというか、今のあなた方厚生省の面子の立場、今までサムス大佐の最後の決裁によつて低温施設にうんと金をかけさせた、そういうものも考えてみなければいかぬというならば農村部だけでもよいが、戸数と乳牛数でしぼる必要は全然ない。農村部へ全部許せばいい、ただその場合に農村部都市部と一体どうわけるか、具体的に畜産局長はどう考えているか、あなたはどう考えているか。
  50. 芳賀貢

    ○芳賀委員長代理 楠本さんに申し上げますが、問題点はおよそ明らかになつており、当委員会の意思も大よそ察知願えると思うのです。ですから問題点に対して、厚生省当局としても御意思のほどをできるだけ明確に具体的にお述べ願つたらどうかと思うのです。
  51. 楠本正康

    楠本説明員 私ども決してこだわるという意味でなくて、たとえばただいまミルク・スタンドのお話が出ましたが、これも大いにけつこうでございます。かような場合にはやはり低温でなければできないのです。高温殺菌のミルク・スタンドというものは成り立つものでもないのです。それからまた高温殺菌のいいところは、一日千本とか五百石とか、そういうものを簡単に処理して近所隣りに配るというところに一番安く行く理由もある。ところが都市のような消費地において高温殺菌をやつたところで、これは業界が混乱こそすれ、あるいは取締りに手をやくようなことがあつても少しも得るところがないのです。ミルク・スタンドなどはけつこうです。これこそ低温殺菌でなければできない設備なんです。さようなことをかれこれ勘案いたしますと、都市において今さら高温殺菌をやつても少しも得るところがないということをたびたび申し上げているわけでございます。従つて農協がおやりいただくのもけつこうです。どうか東京においては農協が一般のりつぱな低温殺菌施設をつくつて、それによつて大量の牛乳を扱つてただきたいと思うのです。さような考えで申し上げておるのでございまして、少しもこだわつているという意味ではないと存じます。
  52. 中澤茂一

    ○中澤委員 では川俣さんがあと大分質問があるというからぼつぼつやめますが、結局きよう出してあるところの改正要綱の問題については、学校給食法とそれから栄養改善法の省令改正という問題が出て来るわけでありますが、これに対して栄養改善法の第十条に規定してある集団給食施設、こういうふうなわくはどこまでもはめる意思ですか。
  53. 楠本正康

    楠本説明員 この学校及び栄養改善法に示す集団給食を一応考えておる次第であります。
  54. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは問題があるのです。もしこの集団給食施設というものでしぼれば効果が半減してしまうです。たとえばいつも長野の例を申し上げますが、長野の前田鉄工所には約六百人ばかりおりまして、ここは飲みたいといつておるのです。そうやつて安くしてくれるならば、いくらでも飲みたいといつておるのです。ところがここは集団給食をやつていないのです。現実に集団給食をやつておるのは、紡績工場とか製糸工場であるとか、こういうところは集団給食をやつておるが、一般の町工場は集団給食をやつていないのです。その場合にもししいてわれわれが前田鉄工所なら前田鉄工所にやつた場合に一体どうなりますか。このわくをはめられればやれないということになります。
  55. 楠本正康

    楠本説明員 ある工場がやることはけつこうなことでございまして、ただその場合には、栄養改善法に示されました最小限の設備、最小限の扱い方、かようなものが規定してあるわけであります。従つてその範囲内においておやりいただく、かようなことになると存じます。
  56. 中澤茂一

    ○中澤委員 最小限のということをあなたは言われておりますが、その最小限という意味は一体どういうことなんですか。
  57. 楠本正康

    楠本説明員 集団給食をやります場合には、牛乳に限らずすべて多少の規制が必要でございますので、最小限という意味を言いました。しかしもちろんこれは職員を新たに置かなければならぬとか、いろいろむずかしいことを言うとまた普及を損ないますので、さような意味で、普通の工場ならば、ちよつとした注意でだれでもできるという程度のことを私ども期待いたしておるわけでございます。従いまして最小限ということを言つたわけでございます。
  58. 中澤茂一

    ○中澤委員 そういう最小限ということを、ここで言われるのは簡単だが、実際末端へ行くと違つて来てしまう。その最小限を防波堤として、業者は圧力を加える、それは事実なんです。国会できめたことが、末端へ行つてそのまま動くことは。ない途中であなた方が適当にみんなひん曲げてしまう。法律はうまく行つておるが、省令でしぼつてしまうとか、省令はうまくできているが、通牒で県がみんなしぼつてしまうこかしておる。現にあなたたちが出した通牒は全然実施されていない、こういう結果になるのです。最小限でなくて、飲んでいいのだ、飲むのに五ガロン持つて来て、みんなそこでタンクの中にぶち込んで、口をつけて一ぱい飲む。こうなれば最小限もはちの頭もない。そういうことにこだわる必要はない。これを至急にやつてただきたい。  川俣委員やほかの委員も質問があるそうですから、私はあまり時間をとつては悪いからやめますが、最後に課長に聞いておきます。省令の終りの方に、自記温度計を用いなければならないということが書いてありますが、なぜ低温殺菌の場合はこの自記温度計を使わなければいけないのですか。
  59. 阿曽村千春

    ○阿曽村説明員 殺菌の温度をはかる場合におきましては、何度で何分殺菌したかということを知るためには、自記温度計以外にはそれを知る最も正確な方法は見出されないのでありまして、そのために自記寒暖計をつけるというようなことを設けてあるのでございます。     〔芳賀委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 中澤茂一

    ○中澤委員 自記寒暖計でなければ温度ははかれないのですか。
  61. 阿曽村千春

    ○阿曽村説明員 温度と時間を最も正確にはかるのが自記寒暖計の方法であるということであります。
  62. 中澤茂一

    ○中澤委員 牛乳協会というものがありますが、これはあなたよく知つておられるようですが、何をやつておるのですか。
  63. 阿曽村千春

    ○阿曽村説明員 全国飲用牛乳協会ということでございますか。これは純然たる民間団体でございまして、飲用牛乳、いわゆる市乳の処理をする人たちの団体でございます。
  64. 中澤茂一

    ○中澤委員 この自記温度計というものはどこかで一手につくつておるようですが、どこの会社でつくつておるのですか。
  65. 阿曽村千春

    ○阿曽村説明員 これは私ははつきりどこどこというように会社の名前はここでわかつておりませんけれども、後刻調べましてお手元に差上げることにいたします。
  66. 中澤茂一

    ○中澤委員 東京精器株式会社というものをあなたは御存じですか。
  67. 阿曽村千春

    ○阿曽村説明員 東京精器というのは私存じておりません。
  68. 中澤茂一

    ○中澤委員 ではあなたがそう言うなら、私も調査しておりますから、もつとよく調査してください。東京精器株式会社と牛乳協会の関係調査してください。それだけ言つておきます。
  69. 川俣清音

    川俣委員 法制局にお尋ねしたいのですが、食品衛生法の二条の七に「農業及び水産業における食品の採取業は、これを含まない。」こういうようになつておりますが、この法律対象になるのは営業者が対象になる、こういうことになつておるのじやないかと思います。従つてこの罰則の適用を受けるものは営業者だ、そこで「農業及び水産業における食品の採取業は、これを含まない。」と規定しているのではないかと思うのですが、この点はどのように解釈するのが正解な解釈であるか、お伺いしたい。
  70. 野木新一

    ○野木説明員 実は食品衛生法の立案制定に関しては、私は当時全然関与しておりませんけれどもただ条文に現われた面からの解釈だけを申し上げたいと思います。  第二条はこの法律で使つておる一連の用語の定義を掲げた規定であるように存ぜられます。それで御指摘の点は、営業とは云々ということで営業の定義を下してあるのだと思います。従つてこの法律で何々営業とか、あるいは営業として何々するというようにしてあるのは、御指摘の項の営業の点によりまして農業、水産業における食品採取業はこれを含まない、そういうような解釈になると思いますが、これがどの程度までそう行くかということは、やはり各条文ごとに洗つてみる必要があると思います。たとえば第八条に「営業上使用する」云々とあるが、これは営業という文字が使つてありますし、またたとえば四条あたりは「左に掲げる食品又は添加物は、これを販売してはならない」としまして、罰則の関係の第三十条では「第四条の規定に違反した者は、これを三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」ということになつておりまして、これは必ずしも食品営業者のみを罰するかどうか、実際の場合営業者が多いと思いますが、それのみに限るかどうか、多少はつきりしない点があると存じます。
  71. 川俣清音

    川俣委員 常識上販売する者を法律は営業者というのですね。そこで別に営業者と書かなければ営業者でない、こういうわけではない。おそらく販売する者ということになると営業者とみなすのが通例ではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  72. 野木新一

    ○野木説明員 通常の場合は利益を得て有償で売り渡すというような点になりまして、営業者をさすものと存じます。
  73. 川俣清音

    川俣委員 この法律で営業者というのは、従つてこういう四条にも触れないという解釈になるのですか。たとえば具体的に言うと果樹であるとかあるいはトマト、なすのようなものは、ボルドー液その他かなり劇物をもつて消毒しております。これが付着して堂々と販売されておりますが、こういうのは対象になるかならぬ。今までは農産品だということで直接対象になつていなかつたようです。また取締つた例もないようです。これは劇物であることは間違いないのです。
  74. 野木新一

    ○野木説明員 農業及び水産業における食品の採取業というのでございますから、採取するという限りでは採取業で、この営業には入らないと思いますが、その採取業者がこれを他に利益を得る目的で反覆継続して売るというような場合には、同時にそれが営業者という資格をも兼ね備えるという面が出て来まして、その販売という面においてはこの法律対象になる、そういう場合も出て来るのではないかと存じます。
  75. 川俣清音

    川俣委員 今まで取締られてないのはどのような見解ですか。取締り対象になり得るものであつたらされてもよさそうなものだが、今まで取締りをされてない。これは法律解釈から来るものか、それとも等閑視されたものだと思われますか、法制局はどういう御見解ですか。
  76. 野木新一

    ○野木説明員 はなはだ恐縮ですが、いま一度具体的の場合をお聞かせ願いたいと思います。
  77. 川俣清音

    川俣委員 たとえばりんごのボルドー液その他有毒の消毒薬をもつて消毒いたしますね、これは必ず付着いたしております。トマト、なす等にもボルドー液の付着したものを往々見受けます。これは店頭に来てから洗い流したり、あるいは新鮮なものとしてわざわざついたものを売つておる場合もあります。特に最近りんごなどは無袋栽培が多くなりまして消毒薬がついております。消毒薬は御承知の通り有害物であります。有害物が付着したものが販売されております。おそらく果樹蔬菜をやつておる者は、こういう有害物をとつては売つていない。さらに販売する者が、付着物をとつて販売するということはありますけれども、大体大量生産をしておる農民は、付着したまま販売しているわけですが、これは対象になるかならないか、こういう点です。——今答弁できなければ研究せられてあとでもけつこうです。
  78. 野木新一

    ○野木説明員 具体的の関係になりまして、食品衛生法をふだんから詳しく勉強しているわけじやありませんから、なお研究の上お答えいたしたいと思います。
  79. 川俣清音

    川俣委員 次にこの法律の用語の定義の中で、食品衛生とは飲食に関する衛生をいう、とありますが、衛生という用語はどういうことをさすのですか。
  80. 野木新一

    ○野木説明員 これは衛生という文字について別に定義がございませんので、常識的に言う衛生という点を中心とした概念ではないかと存じます。
  81. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、「清潔で衛生的に行われなければならない。」というのが三条にありますね。また四条では衛生という見地からこういうものを売つてはならないと規定しておりますから、これらが総合されて衛生という観念が出て来る、こう理解してよろしいかどうか。
  82. 野木新一

    ○野木説明員 二条の、先ほど御指摘食品衛生の定義は、一応「食品、添加物、器具及び容器包装を対象とする飲食に関する衛生をいう。」ということで、衛生という言葉は、通常使われている常識の概念を中心として考えているものと存じますが、さらに四条以下等において具体的にこの法律を働かして行くという場合に、どの程度取上げるかというときにおきましては、それをさらに具体的にして、この法律で具体的に取締つて行かなければならないという点を取上げて規定しておるので、大体衛生ということは各条に具体化されておる、そういうようにも考えられると存じます。
  83. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、三条で清潔で衛生的に行われなければならないという販売の取扱基準がきめられていますね。ここで本法の販売に関する基準ができておるわけです。四条ではこういうものが非衛生的だということで、販売を禁止せられておるものと見てよろしいと思うのです。さらに四条で不足している部分を五条で規定をして、七条は第三条の取扱い基準、規格に合わない食品というわけで、この基準に合わない食品というのは、厚生大臣公衆衛生の面から規定をする、こういうことになつて、一応基準は三条で出ておる、こう解釈すべきじやないかと思うが、法制局はどういう見解を持つておるか。この基準というのはどこの基準かというと、三条の取扱基準だと思うのです。従つて基準、規格に合わないというのは、三条を受けてなければならぬと思いますが……。
  84. 野木新一

    ○野木説明員 この三条以下にいろいろの食品及び添加物についての制限規定がございますが、第三条はその冒頭におきまして、一種の制限的と申しましようか、販売の用に供する食品等は清潔、衛生的に行われなければならないといつているのは、一つの大きな法律の意思を宣言した規定だろうと思います。そうして四条以下にさらにそれを具体化しておる、そういう関係になるのではないかと存じます。従いまして、三条違反には罰則が直接にはついておりませんのは、おそらくそのためだろうと存じます。
  85. 川俣清音

    川俣委員 ですから三条、四条を受けて七条があると解釈すべきじやないか、こういうのです。前に取扱基準というものがあるでしよう。それで基準を示し、この基準、規格に合わない食品というので七条ができておりますが、この基準というのは三条をさすものじやないですか。ですから三条を受けて七条があり、三条、四条で十分尽されないのを五条、六条がそれらをさらに具体化しているという説明でよろしいのです。それで私は反対じやないのです。しかし今まで厚生省は、七条は三条、四条と独立しているのだ、こういう解釈だから、そこであなたにお聞きしたのです。基準に合わないというのだから、どうしても前に基準というものがなければ、合わないということが出て来ないはずです。
  86. 野木新一

    ○野木説明員 三条は、先ほど申しましたように、一つの宣言的、訓示的と申しましようか、一つの方針を示した規定でありまして、従つてこれに違反した云々というような、罰則というような強行規定はございません。四条及び御指摘の七条などには罰則がありまして、これは具体的に、これに反した者は罰則で強行しよう、そういう立場になつているものと存ぜられます。そして四条と七条との関係考えてみますと、四条では腐敗したものは売つてはならないといつており、これは絶対的にいけないもの、おそらくそういうものを押えていると考えられるのであります。七条を見ますと、四条に触れないものでありましても、厚生大臣公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品の製造方法について、基準を定めることができるというような形になつておりまして、従つて四条と七条とは規定の角度が違うものでありまして、七条では物そのものが今ただちに腐敗しているから危険だという観点ではなくして、むしろその製造方法などが悪い。できた瞬間には腐敗しているというものじやなくても、将来すみやかに腐敗する危険があるとかなんとか、そういうような公衆衛生の見地から見て、やはりその製造方法は危険であるとか、ぐあいが悪いとか、そういうような観点から見て七条では押えているのであると思います。(「そんなばかな解釈があるか」と呼ぶ者あり)それは条文の位置から、きわめて自然にそうなつているのじやないかと存ぜられます。
  87. 川俣清音

    川俣委員 あなたはそんな解釈をしているが、では四条の二号をどういう解釈をしているか、「人の健康を害う虞がない場合として厚生大臣が定める場合においては、この限りではない。」とあつて、これを受けて七条があるのじやないですか。厚生大臣が定める場合においてはこの限りじやないということは、これはあとの条項に受けなければならぬでしよう。公衆衛生の見地というものはどつから来るかというと、こういう三条、四条が公衆衛生の見地の基本であることを示しているのじやないですか。それで規格に合わないものはいけない、こう受けているのでしよう。基準、規格に合わない食品というのは、こういう基準を受けて、これに合わないような具体的なものを、類例をあげて規定いたしている、こう見なければならぬ。その例外規定として四条の二号にも、厚生大臣が定める場合においてはこの限りじやないとあるので、もし七条と四条とが独立しているということになつたら、この厚生大臣が定める場合においてはこの限りではないというのは、おかしいじやないですか。そこで第一条の、「この法律は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、」これがまず前段になつている。普通ならば、もつて公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とするというのが、大体普通の法律建前になつているのですよ。これを防止し、もつて云々というのが普通ですが、これはもつてが入つていないので、いろいろ解釈ができるとは思いますが、しかしながら公衆衛生という食品衛生建前は、この法律にあるように、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。」ということであろうと思うのです。公衆衛生の向上及び増進に寄与することも並列しておるならば、もつと第二章の第三条なり第四条において、積極的な表示がなければならぬはずだと思うのです。かすかにそれを満たすようなものが、第四章、第五章に、表示を行うとか、検査を行うというようなことで出ておりますけれども、これもやはり主として飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止するということが本来の建前だと解釈すべきじやないですか。そういう解釈をしないと、先ほど私が指摘したように、くだものや蔬菜類に有害な毒物が付着しておるのを放任されておるわけがないじやないですか。あるいは蔬菜等に寄生虫が現にありますことも、一般に認められておるところです。これらが対象にならなければならぬはずじやないですか。ああいう寄生虫がついたり、あるいはくだものに消毒薬がついておつて取締対象にならないのですか。
  88. 野木新一

    ○野木説明員 先ほどの留保しておきました答弁でございますが、先ほどからここで私考えておりましたが、やはりこの食品衛生法建前から行きますと、りんごに毒がついておるということがはつきりしておるようなものは、今おつしやいました四条二項の「有毒な、又は有害な物質が含まれ、又は附着しているもの。」であり、従つてこれを売つてはいかぬ、こういうことになるのではないかと存じます。
  89. 川俣清音

    川俣委員 そうすると今無袋栽培ということが盛んに行われております。これは最近二割からおそらく二割五分くらい無袋栽培をやつておると思います。この無袋栽培をやつておるのは明らかに消毒薬がついております。これは有害なものであることは、もちろん御存じの通りです。それは堂々と販売用に輸送されておりますよ。一度でもあれを警告なり何かされたことがあるのですか。怠慢でやらないのですか、対象にならないためにやらないのですか、どつちなんですか。
  90. 楠本正康

    楠本説明員 これはその定義のところで営業者以外は除いてございます。この趣旨は、たとえば農家においてりんごあるいは蔬菜を栽培する等の場合に一々さようなことを規制しても、これは実際問題として成り立ちもしませんし、またそれは行き過ぎのようなことでいたしておりませんので、この場合には営業だけを考えているわけでございます。従いまして、たとえば農家が消毒液のかかつたりんごを採取して出荷することは、この問題の対象外になると考えておる次第であります。
  91. 川俣清音

    川俣委員 特にデパートあたりでは、りんごや蔬菜の新鮮というようなものはふかないで売つている。トマトなどみても、消毒液がついたものをわざわざ手をつけないで新鮮なものとして割合高く売つているではないですか。ふけば安くなる。ふかないから高くなる。これは農産物として対象にならない、そこまで指導はできないという見解だと思うが、そうするとここで問題になつている牛乳もまた同様なものです。加工されて乳製品になれば別です。りんごや蔬菜の方は、寄生菌がおつて取締り対象にならないし、トマトのようなものは、消毒薬や有毒物が付着しておつてもあなたの方の所管ではないということになつて来ると、牛乳もまたあなたの所管ではないし、対象にならないと見るべきではないかと思う。それを牛乳ならおれの方だが、りんごはおれの方ではないということでは困る。法律の前にはすべて平等に解釈しなければならないのに、それを別々にしていることは、あなた方の勉強が足りないというか、あまりにも業者の運動がはげしいというか、深入りし過ぎておるのではないか。人間に危害を与えるようなことについては断固取締るべきであると思うが、危害のないような処置を講ぜさせることも必要だと思います。その範囲を逸脱して牛の生死に関係のある飼料脂肪分がどうであろうとか、あるいは鮮度がどうであろうとかいうことまで入ることは行政の逸脱ではないか。これは明らかに畜産局所管に属する。その奨励方法として、ジヤージー種を入れて脂肪分を高くするとか、濃厚飼料を入れて脂肪分を高くするとかいうようなことは、畜産局がやらなければならぬ仕事だと思います。これは指導奨励して行かなければならぬことだと思う。公衆衛生の面から取締り対象になるべきものではないという見解を持ちますから、法制局並びに畜産局は十分検討されて、午後御返事願いたい。これで午前中の質問を終ります。
  92. 井出一太郎

    ○井出委員長 午前中の審議はこの程度にいたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時十八分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  93. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  輸入食糧の港湾荷役の問題について調査を進めます。質疑の申出がありますのでこれを許します。久保田豊君。
  94. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 あまり時間がないので詳しくは聞けないと思いますが、要点だけをお聞きいたしたいと思います。  第一に、これは申すまでもないことで、すでに農林省当局においてもよく御承知のことと思いますが、今全港湾が中心になつて、食糧の港内作業料全般の問題についてストライキをやろう、荷役拒否をやろう、こういう態勢になつておることは御承知の通りであります。その原因は、いわゆる港湾運送事業法による公示価格が守られておらないというところにある。もつとはつきり言えば、輸入商社が農林省から出ております指定単価を割つてつまりピンはねをして港湾業者に払つている。そのしわ寄せが要するに港湾労働者の低賃金になつておるというこの事実は、農林省としてもはつきり御確認になつておることと思うのですが、この点についてはいかがですか。まず第一にこの点をお伺いしておきます。
  95. 岡村昇三

    ○岡村説明員 ただいまのお話でございますが、従来この運送につきましてはいきさつがあるわけでございますけれどもただいままで私ども聞いて参りましたのは、従来にはお話のような点が若干あつたように承つておりますので、今後の対策を今立てておるような次第でございます。
  96. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 はなはだぼんやりしておるが、従来あつたが、これから云々ということですが、はつきり確認しておいていただきたいのは、ことしの十月二十八日に全港湾の名古屋支部の執行委員長から、農林省の食糧庁の愛知食糧事務所の所長に対しまして公開質問状が出ておる。すでにこれは御承知のことと思う。それに対する回答が十一月の二日に出ておる。これによりますと、はつきりその回答書の当初においてもこう書いてある。輸入食糧の港湾作業料金の支払いについて食糧庁よりの支払額を商社が相当割引いている事実は好ましくないものと考えている云々。その後にずつとあります。なお同じように名古屋の全港湾労組の執行委員長から名古屋の東海海運局長に出した公開質問状の返事が十一月二日に出ております。これについてもはつきりそういう事実があるということを確認しておる。だから従来あつたが現在はないと思う。あるいは現在善処中だというのでは不十分だと思うが、この点をなお一応確認しておきたいと思います。これは決して責任追求というような意味で申し上げておるわけではないので、この点を明確に地方の食糧事務所なり海運局あるいは運輸省から食糧庁当局にははつきり連絡なり何なりがあつたはずであります。それがあつたかないか、こういう点もあわせてお答えいただきたいと思います。
  97. 岡村昇三

    ○岡村説明員 ただいまお話の公示料金通りに輸入商社が支払わなかつたという事実につきましては、私の方も商社自体につきまして調査しております。従いまして、私の方の調査によりますと、二割程度のものを切つて支払つておるという事実が最近の調査でわかつて参りましたので、先ほど申し上げましたように、これが対策といたしまして、ただいま運輸省と協議しておるような状態でございます。
  98. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大体輸入商社が農林省から出ております指定単価を二割くらいピンはねをしておるという事実は御確認だということでございますが、この事実の認定の上に立つて二、三重要な点についてお伺いいたしたい。その第一点は、食糧庁は輸入商社との間に御承知のように契約を二つ結んでおる。一つは買付契約、それと一つ輸入食糧の委託運送契約と両方をお結びになつておる。買付契約が一般にできれば、ほとんど自動的に輸入食糧の委託運送契約というものが結ばれなければならないような仕組みになつております。そこでつまり言葉をかえて言えば、第一次の契約が締結せられれば当然第二次の契約が結ばれるようになる。港湾運送事業法からいいますと、まず第一に契約自体が私は法律違反だと思うのです。なぜかといいますと、第一次の買付契約の中には、これは言うまでもないことでありますが、契約の荷の渡し場所が輸入港における本船船側渡しということになつておる。これは異例の取扱いです。ほかのものはこういうことはないはずです。にもかかわらず食糧、庁の食糧については、本船の船側渡しということになつておる。船側渡しということは、いわゆる港湾運送事業法の運送料の一部であるところの船内作業料はこの中に含まつた契約になつておる。第二次の輸入食糧委託運送契約書、これははしけ作業料あるいは沿岸作業料、さらにそれに付随したいろいろなものが大体料金の中には含まつておりますが、いずれにしましてもその大部分が港内作業料で、作業料がその主体であります。この二つが自動的に結びつくということになつておる。そうしますと、これは要するに食糧庁と輸入商社との間では、運送契約は港内の運送事業の契約であります。輸入食糧として委託運送契約は言うまでもなくこれが主体であります。第一次の買入れ契約についても、そのうちに港内運送分が含まつておる。これは港湾運送事業法の第四条によると、こういう運送事業をやるものははつきり登録をとつていなければならぬということになつておる。しかもこの登録規定というものは単なる例示規定でも何でもない。これは強行規定です。罰則がついておる。こういう規定であります。従つてこれは港内の運送事業をやる業者である限り、当然登録をとつていなければならない。登録をとつた業者でなければやれぬはずです。従つて契約もできぬはずです。ところがこの輸入業者は四十社ばかりであるが、一つも登録はとつておらない。こういう事実関係になつておるようです。そうすると農林省自体は港湾運送事業法の規定するところの強行規定に初めから違反した契約を結んでおる。従つて輸入商社との契約は初めから契約そのものが法律違反だということになると思うのですが、これに対する農林省見解はどうですか。
  99. 岡村昇三

    ○岡村説明員 買付契約とあと輸入商社に義務づけております委託運送の関係でございますが、買付契約は御承知のように輸入港本船船側渡しということにいたしておりますのは、輸入港は御承知の通りメイン・ポートだけでも八港、その他小さいものを加えますと相当数ございます。その場合に私の方の食糧を買いますのは入札、見積り合せによります随意契約で買つております建前上、あらかじめどの港に入れるということを決定して入札に付すということが困難でございます関係上、横浜から南は鹿児島の港までどこに入れてもさしつかえないということが最初から予定できませんために、その間のどこの港につけてもさしつかえないというところは結局本船船側渡しの仕切りで入札させるという方法をとつております関係上、本船船側渡しという一応の買付契約をいたしておるわけでございます。その後の委託運送につきましては、私ども根本的の考え方といたしましては、やはり輸入食糧も倉庫で買うというのがもともと会計法その他の法令上妥当な措置なのでございますが、ただいま申しましたようにどこに入れて買うのだということが最初から決定して入札に付し得られません関係上、今のように一応本船船側渡しということとして買いまして、以後は当然輸入商社の責任において食糧庁の指定しますところまで持つてつてもらう、そこで政府は引渡しを受けるという考え方のもとにこの買付契約に当然あとの輸送業務と申しますか、品物を持つて来る義務を義務づけた契約を結んでおるわけでございます。そういつた関係から、私の方は倉庫までの荷主という考え方で輸入商社を考えております関係で、ただいま四条違反というお言葉もございましたが、私どもは輸入商社が荷主という考え方でおるわけであります。と申しますのは、ただいま申し上げましたように、私の方といたしましては、全部倉庫まで持つて来てもらつて品物の引渡しを受けるというのが根本的な考え方でございますが、ただ食糧を入札で買うという考え方から、一応本船船側渡しということを定めましたために、あとの運送——これは言葉も妥当ではないのでございますが、また運送という言葉につきましては、前の貿易庁時代からの輸入運送の取扱いもございますために、食糧庁が全面的に輸入食糧の管理を引受けました際におきましても、こういう字句をそのまま残して現在に至つておるわけでございます。この点もやや不明確でございますので、直すということも考えておりますが、ただいまのお話の四条違反という点につきましては、私ども荷主という考え方でおるわけであります。さよう御了承願います。
  100. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 農林省としてはいわゆる輸入商社が荷主という考えで逃げると思うのです。麦のごときは民貿が相当多いが、しかし米のごときは政府買付が大部分です。大体において七割はそうでしよう。そういう場合に輸入業者が荷主というのがちよつとおかしい。この点はどうしたつて国民の食糧であり、これは政府の管理する一段階に委託買付ということをやつておるわけで、荷主の一番主体はどうしたつて農林省であり国家でなければならぬ。一応荷を運んで来る、あるいは買付とかいろいろやりますが、これは完全なる自由貿易じやない、はつきり政府の委託を受けてやつておる。しかも米のごときははつきり政府間貿易でやつてつて、それのいろいろ実務をやつておるのが実態であります。そういう場合に、都合が悪いから輸入商社が荷主だという解釈はちよつとおかしいと思う。この点についてのさらにつつ込んだ御意見をお伺いしたいのと、それから本船船側渡しという今の制度、これは歴史的にいろいろの経過があるということもよく承知いたしております。しかし今もお話つたように、本来ならばこれは倉庫渡しということがほんとうであろうと思う。そうでなければ輸入港の本船船側渡しでなくて、船底渡しといいますか、船内渡しが一般の取引の習慣ではないかと思う。それを特に船側渡しというような従来の習慣からやつたというところにも今度の問題を起した一つの原因があろうと思う。この点についてもさらに見解をお伺いしたいと思う。
  101. 岡村昇三

    ○岡村説明員 政府間貿易の話がございましたが、これはもちろん相手方、タイ、ビルマ等、普通政府間と申しておりますのは、一応政府間同士で売買の基本的な線を協定書によつて定めることは御承知の通りでございます。それ以後の実務につきましては全部輸入商社にまかしておるというのが実情でございます。その際に全部、ただいまの状態ではFOBでそのまま持つて来ていただくということになつておるのでございますが、政府間の貿易という点におきましてはお話通りでございますが、ただいま申しましたFOB以降のものにつきましては、民貿と大体かわらない状態において輸入商社を使つておるわけでございまして、いわゆる委託運送と申しましても、先ほど申しますように言葉の使い方が非常に悪いという点は私どもも認めておるのでございまして、そういつた点からやはり私ども荷主という考え方でと申しましようか、まつたくの請負というような考え方で参つて来ておるわけでございます。  なお今の船内引渡しの御意見でございますが、この点は、私実は専門家でございませんのでよくわからぬのでございますが、本船船側で一応物が特定する。これはFOBでございましても、私ども食糧庁が向うの土地へ参りまして検査をしたものを買うということでございますれば、種類別の確定ができるわけでございますが、やはり不特定のものを持つて来ていただきます関係上、食糧庁で買います場合には倉庫で種類を確定して買う。不特定物の売買でございますので、特定して買うという建前からも、私ども請負的な考え方を持つておるわけでございます。さよう御承知願いたいと思います。
  102. 川俣清音

    川俣委員 関連して。今の表現では荷主である、あるいは委託をしておるという表現ですが、一体輸入米の所有権はどこにあるのですか、これをはつきり説明してもらいたい。これによつて権利義務の関係が非常に違つて参ります。
  103. 岡村昇三

    ○岡村説明員 率直に申し上げますと、ただいまの買付契約によりますと、本船船側渡しという言葉を使つております以上は、一応本船船側で所有権が食糧庁に移転するというふうに考えられるのでございますが、ただいまのお話がございますように、本船船側渡しという言葉を実際には私ども考え方と違つて使つております関係上、この点は不明確でございますが、やはり倉庫に入れてもらつてから所有権が移転するということに考えておるわけでございます。
  104. 川俣清音

    川俣委員 そうするとあの輸送中の所有権は政府にないとこう言うのですか。そういたしますと、これは政府の管理する米ではないということになりますと、これを横流しをした場合の民事上の損害はあつても、政府所有米としての責任は起つて来ない、こういうことになりますか。横流しをしてもさしつかえないことになりますね。これは重大なことですよ、所有権がどこにあるかということは……。
  105. 岡村昇三

    ○岡村説明員 ただいまも申し上げましたように、政府は政府の指定倉庫に入りましたときに買うという建前をとつております関係上、引渡すまでは商社に責任があるわけでございます。従いましてただいまのお話のように、もし万一航海中横流しというようなことがございますれば、もちろん政府としては責任を追求はいたしますが、所有権の問題といたしましては、私ども特定したときに所有権が移転するというふうに考えております。
  106. 川俣清音

    川俣委員 この問題は、今の課長答弁では重大な結果を及ぼしますので、私の質問はこれで控えておきます。
  107. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その問題は今非常に重要な問題を含んでおると思います。単に横流しの場合だけじやない。やはり輸入商社の責任に帰すべからざる事項によつて消滅した場合においての責任はどこにあるかという問題も含んでおると思います。これは相当重大な問題でありますが、いずれにいたしましても今の御答弁では、一応引渡すまでは商社がいわゆる荷主である、倉庫で引渡すまでは荷主であるという解釈ですが、どうもその解釈はおかしいと思う。これは本船船側引渡しであつても、はつきり引渡された以降においては、政府が当然荷主です。当然そうだろうと思う。引渡しは一応済んでいる、こういうことになると思いますが、この点は単なる法理論ですから、あまり追究しません。これはむずかしい問題ですから、あとでやります。  当面に問題になるのはその次の問題ですが、指定単価というのが大体ずつときめてあります。これは何を基準にしてつくられたか。おそらく公示価格を基準にして、それを積み上げて、それ以外の諸要素をこれに加えてつくつたものだと理解をするが、この点はどうなんですか。
  108. 岡村昇三

    ○岡村説明員 お話通り、運送事業法によります、運輸省から指定、公示されております公示料金をもととしてつくつております。ただ先ほども申し上げましたように、どの港に着けるということがあらかじめ決定いたしませんために、若干これにプール的な要素を含んで、私の方で指定単価というものを決定しているわけであります。もとはもちろん公示料金によつて計算の基礎ができております。
  109. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうすると公示料金というものはやはり運送事業法によつて——これはやはり強行規定です。高く払つても低く払つてもいけないし、割もどしをしてもいけない。これの違反をした場合においては、罰則規定があるわけです。それを基礎にして積み上げた指定単価、これを業者がピンはねした場合においては、当然これは運送事業法の罰則の適用を受けるわけです。この罰則の適用を受ける方は、今の港湾運送事業法の欠陥で、港湾業者の方が受けるのであつて、荷主の方は罰則の規定の適用がないという非常な欠陥があります。これはその通りでありますが、しかし食糧庁は、さつきもいろいろ問題がありましたけれども、実質上どうしたつて荷主であります。しかも国家機関である。国家の銭を出しているわけであります。こういう国家の金が、指定単価として、公示価格がその中へ含まれておつた場合に、これをいわば国家の代行機関である輸入商社がピンはねをしたという場合には、法律規定を土台にすれば、当然法律違反の行為である。その処罰がどつちにかかるかということは別にして、はつきりそういうことになると思う。この点については、特に実質上の荷主として農林省はどうお考えになつているかという点をお聞きしたい。
  110. 岡村昇三

    ○岡村説明員 ただいまのお話のように、私の方の調査によりましても、私どもの決定いたしました指定単価をその通り下に払つていないという事実がございますので、この点につきましては運輸省とも相談いたしまして、今後の分につきましては、厳重にこれを取締るという方法ただいま考えまして、第一番にはそういうことのないようにして行く方法を講じたいということで、せつかく運輸省と協議いたしている次第でございます。ただいまのところでは、私の方で支払いました単価が、そのまま一応中央の港湾協会というようなものに一括渡されまして、港湾協会で確実に下の業者に払つてもらうというふうな措置を実は講じているような次第でございます。
  111. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今の答弁はぼんやりしていると思う。要するに農林省といえども、これははつきり政府機関です。政府のきめた指定価格を、農林省の実質上の代理人がピンはねをしていた。これは港湾運送事業法にはつきり違反をしている。こういう事実は今年出たわけじやない。今までもずつと出ている。今までは、労働者の方から行きますと、中間の港湾輸送業者に対して待遇改善という形で何回かぶつかつたけれども、解決がつかない。つつ込んでみると、輸出入の港湾業務の中の非常に重要な部分をなしている食糧について、政府自体は国家の金をその代理業者に払つている。それを業者がピンはねをしていた。こういう違反事実について罰則の適用を受けるのは、今の法律の欠陥で港湾業者である。しかし政府自体が自分で金を払つて、自分が違反をして、知らぬ顔をしている。今年の四月以降については、この改善方について努力されていることは私もよく承知をしておりますが、しかしこういう事実を何年かほうつてつたというところに、どうしたつて責任があると思うが、これについてはどういうふうにお考えになりますか。
  112. 岡村昇三

    ○岡村説明員 お話の点ごもつともと思うのでございますが、多量の輸入食糧を買いますために、いろいろ競争が行われます関係上、こういつたことがあるのではなかろうかと考えるのでありますが、これについては、今後厳重な措置を講ずるように考えているわけでございまして、せつかく運輸省と協議中でございますので、今年の四月一日からただいまお話のように非常に改善いたして、下払いも相当厳格に支払われているという状況でございますので、なおこれにもつと確実性を持たせる意味におきまして、ただいま申しました中央払いといつたような線を考えて、確実な実施方法を考究しているわけでございます。
  113. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今の答弁はおかしい。競争が行われたのは、港湾業者の方です。非常に弱い千八百人もあるという港湾の小さな業者が、苦しまぎれにやつたことである。政府は自分で正規の金を出しておつて、自分の代行機関が、下の連中の競争が行われているからピンはねしておつたんだ。それを黙つてつたなんというばかなことはないはずです。しかも公示価格を公定して、高くとつてもいけない、低くとつてもいけない、払いもどしをしてもいけないということは、こういう公示価格を守ることが、港湾における労働条件なり業務を保障する条件だということを港湾運送事業法が認めての話であります。これを保障するための政府である。それを政府機関が、小さな業者が競争したからそれに便乗して、政府は正当な国庫の金を払つておりながら、中間の業者——実際には政府の代理機関がピンはねをするのを黙つておりました、こういうばかなことはないと私は思うが、この点について、もう一応はつきりした御見解をお聞かせいただきたい。
  114. 岡村昇三

    ○岡村説明員 ごもつともでございまして、この点につきましては、そういう事実がはつきりいたしました現在におきましては、厳重に取締るという方向に参つているわけでございますので、この点御了承をお願いいたしたいと思います。
  115. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今の答弁でもはつきりいたしません。まだ了承しかねる。なぜかと言いますと、公示価格と農林省のきめております指定単価とは相当開きがある。ざつくばらんに言いますと、指定単価の方が公示価格よりずつと甘いと言える。つまり商社の方に有利にきめてあるようであります。はつきりしたことはわかりませんが、たとえば横浜のばらものの沖取りの指定単価は五百二十一円六十銭になつておる。ところが公示価格で行きますと、これが五百四円になつております。これを計算してみますと、ここでも相当な開きがある。なお本船の船内作業料がこれには加わつておりません。これも相当に落されておることは事実。これに対しまして労働者の方はどうかというと、本船のいわゆる荷役が一トン当りにして三十五円くらいしかもらつておりません。それから水揚げが四十円、はしけ回送料ははつきりした数字が出ておりませんけれども、いずれにしても非常に安い価格でやつておるという事実がある。だから相当ここではピンはねをしておるという事実が当然ある。業者はもちろん労働賃金以外に二割なり三割のいわゆる諸掛なりその他をとつております。大体こういう港内作業料の七割から八割は、条件によつて、ところによつて違いますが、労賃であります。その事実からみると相当ピンはねをしておるということははつきりしている。  もう一つ、これはずつと見るといろいろの要素が入つておるにしても、指定単価というものは非常に公示価格の積み上げよりは有利になつております。たとえばもう一つ例をとつてみますと、名古屋港の小麦の袋の沖取りの場合、この場合にはA類の方が五百八円七十銭、B類の方が六百六十七円二十銭になつております。この場合の公示価格は四百二十三円であります。これはAでありますが、五百八円七十銭に対して四百二十三円になつておる。この場合の労働者の手取りは、これははしけがよくわかりませんが、水揚賃と船内作業料を入れまして、大体において九十円から七十五円、これは労賃体系が非常に複雑ですからどうもはつきり出ておりませんが、大体こういうふうになつております。それでもう一つ、特にこれは言うまでもないことで、われわれにもわからぬことが一つある。それは何かというと、この輸入食糧の委託運送契約の中には港内作業についての特別手数料として、一般手数料としてトン当り四十四円三十銭というものが輸入商社にはつきり払われておる。これがある限り、要するに私は業者の港内作業についてのいろいろの事務費、あるいはいろいろの弾力的なもの、この二つから見て非常に甘く、要するに公示価格よりも甘く、指定単価の方がきめてあるということ、そのほかに四十四円三十銭というものが特別手数料としてきめられてある。この特別手数料の四十四円三十銭というもの、そうしてこの公示価格のそのほかの、いわゆる港内作業料以外のものも、その中にある程度含まつておる。これは四十四円三十銭の中ではなくて、指定単価の中に入つていると思う。そうすると私どもはこう解釈する。この指定単価というものは、これは言うまでもなく国家の金であります。そしてこれを扱うための、はつきりした手数料の四十四円三十銭が入つておる。そしてそのほかのいろいろなものも、諸掛というものは当然必要なものは少し甘く見て、これは指定単価の中に入つている。こういうことになれば、これはこの指定単価の中に入つている公示価格は、当然国家が正当に業者に払わなければならぬ。これを保証するために、こういうふうにいろいろなものがくつついているので、これを代行業者として商社がピンはねをしたという場合には、これは明らかに公金を横領したことになると思う。業務上の横領じやないか、これははつきりそうだ。片方においてはちやんとそういうものを見て、契約面にはありません。契約面にはないけれども、片方において法律でもつて、公示価格というものは強行規定として規定されておる。その公示価格というものを土台にして指定単価というものをきめておる。そうしてこういうものを作業するために、その指定単価に当然公示価格以外に必要なものが含まれておると見なければならぬ。その上にさらに四十四円三十銭の特別手数料というものを出しておる。そうすればこれはこの指定単価の間に含まれた公示価格は、いわば業者は自分の私すべきものではないと思う。当然これは国家からお預かりした金で、港湾運送事業法に基いて払わなければならぬもの。それを二割も三割もピンはねしてるということは、明らかにこれは政府からの委任の趣旨に反したものであつて、しかも公金を横領したものと思う。こういう事実がずつとあるのを今まで農林省が——それは口先で、いろいろお聞きすれば、そんなことをしないようにできるだけ公示価格だけは業者に払うようにと口の先では言つたという。しかしいまだかつて実効が上つておらない。労働者その他からやかましく言われて、初めてこのこの四月から部分的に皆さんは一応の改善策を考えられた、実行し始めたという程度です。それもまだ軌道に乗らないから、今度のような労働者側の闘争が巻き起らざるを得ないような事態に追い込んだ、こう考えられるので、そこでこれは、はつきり私は、公示価格と指定単価、この指定単価以外に特別に四十四円三十銭という手数料を加え、そうして指定単価には公示価格以外に、港内作業料以外のいろいろな諸要素を加えておつて、なおかつ業者がいわゆるピンはねをしたということは、明らかに業務上の横領である、こう考える。この業務上の横領を黙認して来た農林省というものは、はつきりこれは行政上の責任をとらなければならぬものだと思うが、この点についての御意見はどうですか。
  116. 岡村昇三

    ○岡村説明員 ただいま単価につきまして甘いという点でございますが、これは先ほどちよつと御説明申し上げましたように、各港によりましてプールしておる点がございます。従いまして若干港によりまして今お話のように甘いと見られる点があろうかと思いまするし、また港によりましては——港と申しますか、ある作業につきましては非常にきついという点もあろうかと存じます。従いまして、このプールした点は先ほど申し上げましたように、どの港にいつ船が入るかということを決定いたしかねます関係上、まずもつてこうした公示料金を基礎としたプールの指定単価をきめておるわけでございまして、この点が甘いという点につきましては、われわれさらに反省をいたしまして、この点は十分直すようにいたしたいと考えます。  なお今の横領という点につきましては、先ほど申し上げましたように、倉庫までの請負という考え方根本にとつております関係上、またこれがプールされております関係上、あるいは業者によつては足りないものもあり、あるいは余る点もあろうかと存じますが、運輸省で定めました公示料金自体は当然下に払つてただくという考え方であつたわけでございまして、政府の定めましたものが下に行つていないということがはつきりいたしました今日におきましては、十分これを取締るということに考えざるを得ないというふうに考えております。
  117. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今のお話はおかしい。さつきあなたは一番最初に、はつきり事実を調べて二割くらいはピンはねしておりますということを認めておる。そういう事実がありましたらこれから気をつけますじや私は済まない。特にあなたは監査課長でしよう。こういうふうな四十四円三十銭の特別手数料を加えて、そうしてそれを業者に特別に払つて、そうして公示価格にプラスして、それにある程度の余裕を見て業者に払つておる。そうしてその契約の内容というものは明らかに国の仕事の委託であります。そうして国は当然公示価格は厳守しなければならぬとして、どの機関も責任を持つておる。あなたの方は金を出しておる。そういう建前から国の金が指定単価の中に公示価格が十分織込んである。その金が、あなたが最初言つた通り、数年にわたつて二割くらいずつあるいは三割ピンはねをされておるという事実を認めておりながら、あなたは監査課長として今までどういう監査をされたか、農林省全体としてどういう監査をしたか。私どもが運輸省当局から聞いたところでは、そういううわさが今まで始終あつたから、業者に対してなるべくそういうことをしないようにした、やつたけれどもなかなか実際には行かなかつたということを事務当局は言つておる。監査課長はそういう事実がありましたとあなた自身が認めておつて、しかもこういうはつきり払わなければならぬような性格になつておるものを払つておらないという事実を認めておつて、数年間もこれをほおつておいたというばかなことはないと思う。今まであなたは監査課長として、これに対して現実にどういう措置をとられたか。そうしてどういう具体的な措置を輸入業者に対してやられたか。この点をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  118. 岡村昇三

    ○岡村説明員 私の方の調査の結果二割程度引いておるという事実が判明いたしましたのは今年になつてでございまして、今まで気がつかなかつたのはまことに申訳ないのでありますが、それがために対策といたしまして、四月一日以降ただいまお話のように、改善策を講じますと同時に、今回またさらにこれを強化した支払い方法を講ずるというふうにして参つたわけでございまするが、その間輸入商社に対しましては、たびたび輸入業務方面からも、実務担当の方面からも警告はしていただきますし、私どももまたさように実現されるようたびたび警告を発したような次第でございます。
  119. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今のはまだわれわれに納得できない。非常につらく言うようですが、ことしの四月わかつたから、これから先のことは骨を折る、こういうわけでしよう。とろがこれから先のやつだつて軌道に乗つていない。十一月の二日に、はつきりこういう事実がありますということをあなたの方の下部機関が認めておる。あなた方が今までやつたということは、また効果をあげておらない、しかもそれから過去のものはやつたということが明らかになつたらどういう措置をとりますか。公金を輸入商社が詐取しておる、詐取しておるものについてあなた方は、これは公示料金は詐取してはならぬということは規定にちやんと出ておる。罰則がついておる。それをなるほど罰則の適用をするのは運輸当局でしよう。あなた方じやないでしよう。しかし過去について公金を詐取したということは、あるいは横領したということははつきりしておる今日、まだその事実が解消できない。こういう厳然たるはつきりした事実について、あなたはただ、これから今後の改善策を今講じつつある、そんなことでこの公金の行方がわからなくなつて、しかもそのしわ寄せを末端の労働者がえらくおつつけられる、こういうばかなことは認めるわけに行かない。これに対してあなたはどういう措置を今までとつたか。これからうまくやりますだけじや——そういうことをしないように一生懸命やつておりますだけで事は済まない。これを明確に御答弁をいただきたい。
  120. 岡村昇三

    ○岡村説明員 これまでの分につきましては、ただいま御説明申し上げましたように、私ども考え方が請負い的な考え方を持つておりました関係上、若干私どもの対策が遅れたという点はあるのでございまして、この点はまことに申訳ないのでございますが、たびたび申し上げましたように、今後の分につきましては、こういつたことは防ぐという方針でやつておるわけであります。
  121. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これまで請負い的な考えを持つてつたというが、請負にならぬですよ。はつきり港湾運送事業法において、港湾事業はこれこれだということが規定してある。この事実をあなた方は知らないはずがない。これは請負いの対象にならぬものであります。請負いの対象にならぬものとしてはつきり保障されておるものなんです。金は運送法の規定から言つて、それがどつちにどうなつてもいいというものじやない。しかもこれは民間の人が出しておるのじやない、あなた方が公金を出しておるのじやないですか。それを請負いと思いましたから今までは申訳ありませんが、これから気をつけます、これではあまりひど過ぎる。そういう御答弁があつたり、そういう措置をとられておるからここにいろいろの疑惑が出て来る。世間ではいろいろ言つております。これは私は事実であるとか事実でないとかいうことは言わないけれども、こういうところからリベートとか汚職の種が出ておるということをいろいろ各方面から言われておるのは、ここに原因がある。私は今のような御答弁では不十分だと思う。農林当局としては、特に管理課長としては、少くとも公金であつて、しかもそれははつきり法律によつていわゆる支払いを保障されておる金であります。その金がうやむやに途中で消えてしまつたという事実に対しては、これから先の改善策を講ぜられるだけではなくて、過去においてもそういうことを、あなたが調査して二割ぐらいピンはねをしていることがわかつたというその瞬間だけの問題ではない、その以前にずつとさかのぼつている問題であります。また今日まで引続いておる問題なんです。こういう事実についてはつきりした措置をとることが必要だ、これは特に管理課長として責任上絶対に私は必要だと思う。当然管理課長の責任においてやるべきことだと思うのですが、これに対して明確な具体的な措置を今後とる気かあるいはとる気はないのか、今のお話のように、これから何とか改善策を講じて気をつけます。そういうことのないようにいたしますという程度では、私どもは引下がるわけには行かない。以上の点を明確にひとつ答弁をいただきたい。
  122. 岡村昇三

    ○岡村説明員 お話ごもつともと存じますが、基本的な考え方が請負という考え方で参つておりました関係で、事実そういう下払いを厳格にしなかつたという商社に対しましては、相当登録取消しとか、あるいはいろいろな行政措置があり得ると思いますので、この点については関係課長とも相談して決定いたしたいというふうに考えております。  なおたびたび申し上げますように、今後の分につきましては、厳重な措置を講ずる規定考え、契約に織込むという線も考えられておりますので、今後はこうしたことはないと存じますが、これまでの分につきましては、そういつた商社に対しまして何らかの行政措置をとるということにつきましては、関係課長相談して決定いたしたいというふうに考えます。
  123. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今のお答えも不十分ですが、ぜひひとつ言つたように、はつきりと過去のものについても、行政措置をとるということを今御言明になつたのですから、これも実行してもらいたい。なお将来のものについてもはつきりした措置をとることを、今言明になつた通りつてただきたいと思います。それらの結果については委員会に御報告をいただきたい。どういう措置をとつたという措置と内容については、はつきり委員会に御報告をいただきたいと思う。  その次の問題に移ります。支払いの方法について、これもどうもわれわれには納得が行かない。第一に港湾運送事業法による、つまり港湾作業料あるいは指定単価については、これは共栄商会というものに一括して払つておるということだが、共栄商会というのは定款によりますと輸入業者がみんなして出資したところの百万円の株式会社であります。これは営利団体であります。普通の営利会社です。それに対していわば公金であります。この指定単価に相当するものは年間五十億であります。少くとも五十億以上になる、百万円の会社に対して五十億の支払いをされておる、これは輸入商社の金銭授受の代理業務をやつておるということになつておる。それはなるほど法律的にはそれでよいでしよう、しかしながらこの百万円の会社に五十億の金を——これは払い方もいろいろ問題ですが、払つておる。もしこれが間違いがあつて、この会社の職員なりあるいは理事者なりが、これをほかに流用したというふうな場合、これは百万円の会社が損害賠償ができますか。その場合においては輸入商社がそれのけつを全部ぬぐつてくれるということになつておるのかどうか。普通の常識では考えられない。たつた百万円の会社に年間五十数億の金を要するに流しておるということは——伝え聞くところによると、ここには農林省の古手の役人がたくさん入つておるという話だ。こういうことをやつてつていいかどうか。どうもわれわれには疑問に思われる。この問題に連関する一つの疑問としてどうしても浮んで来ざるを得ない。そこでこの共栄商会というのは、法律上の性格はここにちやんと定款も来ておるし、これでわかつております。そういうことでなくて、常識を離れた、たつた百万円の形式的な会社に対して、年間五十数億の金を農林省が一括して——一括ではないにしても払つておるというが、こういう点についてこれを適当と思われるかどうか。これはいろいろ便宜上の理由はあるでしようが、どうもこれは疑問の持たれる点です。しかもこれは一トンについて一円五十銭の手数料を業者からとつておるということ、それでもつて今の状況というものは、それだけのものではないように世間ではうわさされておる。事実あるかないかは、私ども調べておりますから、事実が出て来ればなお追究するつもりですが、今のところ事実を私どもはまだ的確につかんでおりませんけれども、うわさは非常に出ております。これをあなたは監査課長として、こういう機構でもつてこの五十億の港内作業料を払うことが適当であるかどうか。この会社がもし間違いがあつたとき、十分耐えるだけのものであるかどうかという点についての御見解を聞きたいと思います。
  124. 岡村昇三

    ○岡村説明員 ただいまの共栄商会はただいまお話通りでございますが、これは食糧庁からの代金を引受けるにつきましては、各輸入商社から委任を受けてとるということに相なつて来たと思うのでございますが、年間支払い額の大きい割合に資本金が少いという点につきましては、委任を受けております建前上、食糧庁からの支払い金額を横領するとかどうとかいうことについては私ども考えられぬのでございますが、ただ事務的には非常に便利でございまするし、委任状も出ておりますので、そういう措置を講じておるようなわけであります。
  125. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それはおかしい。ただ輸入商社から委任状が出ておるからというのですが、現実にはあなたの方から五十億の金を百万円の会社に払つておるではありませんか。そういう事実が間違いが起る可能性が非常にある。これに対して適当かどうかということをお伺いしておるわけです。  時間がありませんから先へ急ぎますが、この支払い方法も私どもには非常に解せない。大体港湾運送料についてどういう支払い方法を現実にとつておられるか。規定によりますと概算払いもしくは一部の分割払いができるようになつておるようです。この契約によりますと、これは概算払いができるようになつておる。なお分割払いもできるようになつておる。非常に口数の多いものをどういうふうな形でこれに払つておるか。概算払いが相当多いのじやないかというふうにとられる。われわれの聞いたところでは、非常に件数が多くてめんどうだから、一括してこの商会に払つておるということ、一括してここでとりまとめるというところに、どうもわれわれには解せない点がある。  それからもう一つの点は、この契約によりますと、これはいわゆる買付契約の方では船積み書類と検定証書が提示されれば、三十日以内に政府は払うことになつております。おそらく船積み書類と検定書類が農林省に提示されるのは、現地で物を積んでから、つまり輸出港で物を積んでからおそらく一週間はたたないと思う。だからおそらく物を積んで一週間目ぐらいには船積み書類と検定証書が農林省に提示されておると思う。これは三十日以内に払うことになつておる。三十日以上過ぎれば農林省の方は、業者に対して日歩二銭七厘の延滞利子を払うことになつております。私どもの想像では、おそらく三十日たつて支払うというものはなかろうと思う。これは当然もつと早く払われておると思います。その金は業者に直接行くでしよう。その中で本船作業料はどうなつておるか。共栄商会を通じて払うのか、それとも共栄商会を通じないで、いわゆる四十数軒の輸入商社に払うのか、払うとすれば共栄商会一本にすれば船積み料あるいは港内作業料の支払いが非常に便利に行くということはうそであります。片方において、その少くとも三分の一くらいに相当するものは輸入商社に直接払つておるということになる。その間の消息はどうなつておるかということが一つ。  それから、これに反して今度は港湾運送業者に対する支払いはどうかというと、今のところでは農林省は一応全部——今の本船作業料を除いて、それ以外のものは全部共栄商会に払う。共栄商会は今度は地方の輸入食糧共栄会に提示をし、運送業者はこの連中から裏書といいますか、検定をもらつてそうしてもらうことになつておる。その実際の支払い期間はどうなつておるかというと、少くとも支払い期間が最短二箇月、長いものは三箇月以上になつておる。そうすると政府の方は非常に早く金を払つておる。特に、もう一つ言い落しましたが、本船作業料を除いた港内作業料はどうなつておるかというと、こういうように政府の方の支払いは非常に早く支払つておるが、業者に対する支払いは非常におそくなつておる。作業を完結してから二箇月ぐらいが最短期間のものである。この間相当金が遊ぶわけです。この支払いのずれというものはどういうふうになつておるか、ここにもいろいろの疑問が特たれる土台があると思う。この点についてはどんなふうになつておるかという点を御説明願いたい。
  126. 岡村昇三

    ○岡村説明員 今までの方式でございますと六〇%が概算払いとして輸入商社に支払われております。ただいまのお話の港湾作業の料金につきましては、やはりこれの六〇%を概算払いをいたしておるわけであります。ただいま二箇月ぐらいというお話がございましたが、実際に作業が終りましてあとの精算として上つて参りますのは、私の方は大体四十日ぐらいはかかるものであろうというふうに見積つておるわけでございまして、そうした料金にはやはり若干の金利を計算の基礎において見込んで料金をきめておりまして、大体四十日くらいで精算が出て参りまして、そうしてその金を支払つておるはずでございます。支払い方法といたしましてはさようにいたしておるわけでございます。ただ共栄商会に港湾料金のみが取扱われるという点につきましては、ただいま先生からお話がございましたように、港湾作業がいろいろわかれております関係上、こういつたものが終つた後でないとはつきりしないというものでございます。そういつた資料、作業の請書、いろいろな書類の作成などもございますので、そういつたものを一括して共栄商会が扱つて請求することの方が便利であるということで、おそらく輸入商社からそういうふうに決定されたのだと承知いたしております。
  127. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうもその点も大きな疑問が持たれます。共栄商会なり輸入商社にはすぐ概算払いで六〇%は払つておる。ところがそれが業者の方へ来るのは、われわれの聞いた範囲においては、作業完了後最低限二箇月あるいは三箇月というふうになつておるのが実態のようです。その間においていろいろの金利を考えつて、金が大きいのですから相当のものになる。ですから輸入業者なりあるいは共栄商会なり、これを取巻く諸多の勢力との間にいろいろのうわさが絶えない。これはきようの問題の焦点でありませんし、当委員会のあれじやないからあまり詳しく言いませんけれども、きようの問題としては、こういう点共栄商会その他に対する資料をはつきり出してもらいたい、こういうことをお願いしておきます、  それから、今までいろいろ御答弁をいただきましたけれども、少くとも輸入商社が法律規定を無視して、そうして当然払わなければならぬ国家の金を中間でねこばばしているということは事実である。しかも農林当局は、今までこれに対して何ら明確な措置をとらずに、要するに輸入業者が荷主であつたりあるいは請負契約等を持つてつたから、ろくなことはできませんでしたというようなことで、こういういろいろな不正の点あるいは不正をかもし出す危険のあるやり方について、手ぬるい処置をとつて来たということは事実であると認めざるを得ない。これに対してさつき御言明のあつたように、すみやかに過去についても明確な措置をとり、今後についても明確な措置をとつてただきたいと思う。そこで港湾運送事業法の改正の問題あるいは食糧の輸入方式全般をどうして行くかというような問題等、いろいろ基本的な問題があります。しかしこれは今すぐここで簡単に解決のつく問題ではないから、いずれまた機会を改めていろいろと御意見を承りたいし、われわれの意見も述べたいと思いますが、しかしながら当面の問題は、今起つている事態について、農林省としてはどういうふうに解決して行くつもりか。つまり、機構なりやり方を根本的にかえる道はどういうふうに考えて行くか。もう一つ、あなた方は四月から改善策をやつているが、軌道に乗らない。今港湾労働者は、この問題を解決すべく荷役拒否をやろうとしている。この荷役拒否がもしそのまま実現するとすれば、これは全体の食糧行政の上にも大きな影響をもたらすことは明らかだ。しかもそれは今までの御答弁でも明らかになつたように、少くともその大半の責任は農林当局にあると見ていい。輸入業者に対して何ら強腰に出ていなく、具体的な措置をとつていませんその結果が、こういうことになつて来た。従つてこの段階において、当面の港湾労働者の荷役拒否の闘争に対して、これをいわゆるその方へ持つて行かないための措置をどうするか、緊急の措置としてどうするかということを、ひとつ明確に言つてただきたい。同時に今後の基本的なこれらの問題の解決策については、今どのように考えているか。今せつかくあつちこつちの官庁と相談中でございますから、いましばらく待つてくれというふうないいかげんな答弁は困る。この二点を最後に明確にお尋ねしておきます。
  128. 岡村昇三

    ○岡村説明員 このたび輸入食糧の買付方法を若干変更いたすことにしております関係上、ただいままでの下払いの問題についての私ども調査結果に基きまして、第一点として考えておりますのは、確実に下に行くという方法は、必ず指定単価通りに行くということにいたしますために、港湾協会あるいは倉庫業界等の中央の団体が団体をつくつてただきまして、その中央団体に一括支払いする。そこから確実に各業者に払つてただくという点を、ただいま考えているわけでございます。この点につきましてはすでに港湾協会その他とも協議いたしまして、その方法で進んで間違いなく行くということになつている次第でございます。なおこの時期につきましては、指定料金の問題が若干でございますので、時期につきましては、あるいは十二月ごろから実施できるかとも存じますが、運輸省の関係もございまして協議いたしておりますので、公示料金の点が解決いたしますれば、即刻この点で共栄商会を通じて相手の団体に直接払うという方法考えております。そういたしますれば、おそらく時期的にも若干早くなりましようし、なお確実に下に渡つて行くというふうに考えております。  なお、その指定単価を守らない業者に対しましては、食糧庁といたしまして若干の罰則を考えておりますが、ただいまの方法をとりました場合には、全部港湾協会に金が渡りますので、港湾協会から直接払つてただきます関係上、そういつたことは起り得ないというふうに考えているわけであります。
  129. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一点、今のは不十分ですが、大体お考えはわかつたのですけれども、港湾協会がそういう業務をやれるような態勢に今なつておりますかどうか。港湾協会をそういう態勢にするためには、どのような具体的な措置をとられるかという点が第一点。それからもう一点は、確実に公示料金なりあるいは指定単価の中における公示料金が、いわゆる港湾業者に行くようにするには、今のお話では、やはり共栄商会を通じてというようなことですが、しかし共栄商会なりあるいはその団体であるところの輸入商者を、あなた方は今までにも一つも押えていない。何年間か黙つてつた。ちつとは言つたかもしれないが、それは何も効果はなかつた。そういうところへ払つて、そして弱体な港湾協会にそのまま行けなんと言つても、なかなかうまく行くものじやない。それに対する具体的な措置をどうしてやるかということが問題である。その場合は、今もお話にあつた通り、食糧の輸入方式そのものを契約の面である程度かえるということが、ぜひ必要だと私どもは思う。第一本船の船側渡しという形からかえて来なければだめです。そこで買付契約なりあるいは輸入食糧の委託運送契約の中の公示料金に規制を設けて、これは業者に払うけれども、これは業者の所有に属するものではない。これは当然そのままそつくり港湾業者に払うべきだという、特別の条件をはつきり入れるということが、私は当面必要だと思う。それがない限り、今まで数年間、当然法律規定されて守らなければならぬ公示料金をピンばねされているのに、あなた方は今まで黙つてつた個人的にはいろいろ言つているでしようが、しかしそれはぬかにくぎで、向うは平気でやつて来た。そして四月以来多少の改善策を考えられたが、これまた軌道に乗つていない。そういう際に、今のお話程度ではだめだと思う。そこで第一の問題は、即刻この輸入契約なら輸入契約をかえる場合に、その両方の第一、第二の契約高に明確にこういうものを入れるか、この点を含んだ輸入方式を根本的にかえてやるかということが問題になると思う。この二点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  130. 岡村昇三

    ○岡村説明員 ただいまの港湾協会につきましては、港湾協会の方と運輸省と三者において協議いたしました結果、これは十分できるという話でございますので、さようにいたす考えでおるわけでございます。なおその際に共栄商会から港湾協会に参り、港湾協会から下に参ります点については、今後の措置といたしましては、十分私どもの支払いました指定単価通りに下に支払われておるかどうかという点を最後まで見届けるという措置を私ども考えておるわけでございまして、食糧庁みずからこういつた調査と申しまするか、末端までの支払い実務につきまして監視するということに考えておりまするし、なお運輸省側においても一段と監視していただくということになろうと存じておりますので、この点は十分守られて行くというふうに考えております。
  131. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 最後にもう一つ。これできようはやめておきますが、今度の港湾労働者の横取り拒否の闘争というのは、いわゆる最近でいう賃上げじやない。当然政府が国の金を払つておる。その払つておる金を輸入業者が農林省となれ合いになつたとは私は極言はしませんが、要するにこれと何かそこに不明朗なものがあつて、そうして今日まで解決がつかなかつた。当然もらうべきものをよこせというのであります。法律でもつて保障されておる、当然払わなければならぬものをよこせという運動であります。これを実行できないなどというばかなことはないはずである。輸入業者はたつた四十人ですよ。一人々々にだつてわかるはずです。それを放置して、そういうことを実行していない輸入業者はどしどし委託取消しをやつたらどうですか。そのくらいの腹がなければ、この問題は片づきませんよ。輸入業者との間にもいろいろのうわさが立つておる。これはきようの問題に関係ありませんから申し上げませんけれども、そのくらいの措置をとつてよい。少くとも国家の何千億という大きな金を扱つておる。そうしてその間いろいろの大きなもうけをしておる。しかもこれは全部が国家の金であり、同時にこれは直接国民の消費につながる問題です。農林当局は何年も何年も国家の食糧と国家の金を扱いながら、いいかげんなことをしておつたというところに、問題の焦点があると思う。当面の措置としては、すぐ一人々々の業者を呼んで追究してごらんなさい。あなたのところですでに払つたか払わないかということくらいはわかつておるはずだ。輸入商社の方から、おれの方はこれだけピンはねしておつたから、これだけは吐き出すといつた業者は一人もない。そういうところをつつ込まないから、こんなだらしのないことになつて、われわれがこういうところで言いたくもないことを言わなければならぬことになる。しこうして農林省は業者の肩ばかり持つておらぬで、ほんとうに国の官吏として腹をきめてやつてもらいたいと思う。この点を申し上げて私は質問を終ります。
  132. 川俣清音

    川俣委員 最後に締めくくりたいと思います。今いろいろな質問が出ましたけれども、文書をもつて答弁を求めたいと思うのです。それは外米輸入に関する今までの経過並びにその荷受け等の措置について経過を説明し、どこに欠陥があつたかということ、今久保田委員等から欠陥を指摘されましたから、ここに欠陥があると思うならそれを指摘し、その上でそれを将来どう改正して行くかということを文書をもつて一週間以内に回答を求めたいと思います。
  133. 岡村昇三

    ○岡村説明員 承知いたしました。
  134. 中澤茂一

    ○中澤委員 その監査課は一体どういうことをしておるのですか。
  135. 岡村昇三

    ○岡村説明員 私の所管しておりますのは、事務所の会計経理につきましての監査並びに諸契約につきましての監査をいたしておるわけであります。
  136. 中澤茂一

    ○中澤委員 それでは資料として要求いたします。あなたが監査課長就任以来、食糧管理についてどういうところに欠陥があるという監査報告は、上司に出しておるか、会計検査院に出しておるか知らぬが、出しておるはずだから、それを全部出してもらいたい。川俣委員の言われた麻袋の問題等についても全部出してもらいたい。さもなければ監査課は必要でないと思う。今の役人腐敗の原因は、監査が十分でないというところから来ておる。あらゆる業者の手先になつておる。そういうものを全部出してもらいたい。
  137. 岡村昇三

    ○岡村説明員 監査報告は、食糧事務所の監査報告を出しておりますので、その点はいつでもお出しできると考えております。
  138. 中澤茂一

    ○中澤委員 今あなたは川俣委員の質問に対して経理その他一切監査しておると言つたでしよう。そうすると年間七千億の経理を監査しておるのでしよう。こういうところに欠陥がある、ああいうところに欠陥があるということで、その収支の欠陥とかいろいろなものの調査報告をつくるでしよう。それをつくつて上司なり何なりに出して、それ参考にしていろいろ改善して行くのでしよう。それを監査課長として出してもらいたい。食糧事務所の話ではないのです。
  139. 岡村昇三

    ○岡村説明員 先ほど申し上げましたのは、食糧事務所の会計経理に関する監査を役目としておりますということを申し上げたのであります。従いまして、食糧事務所の監査報告はつくつておるわけでありますから、その面でございましたらお出しできると申し上げたのであります。食糧本庁の監査につきましては私できないことになるのでありまして、共同責任という建前になります。     —————————————
  140. 井出一太郎

    ○井出委員長 引続き農林災害対策について調査を進めます。農林大臣及び加藤国務大臣に対する質疑は後にいたしまして、河川局長公益事業局長が見えておりますので、これに対する質疑を願うことにいたします。伊東岩男君。
  141. 伊東岩男

    ○伊東委員 本年の災害の原因として河川や堤防の崩壊による損害の多かつたことは大体御承知の通りでありますが、特に宮崎県のごときはかつてない非常なる大災害でございました。そこで一体今までの河川堤防の方針で、今後多々ますますかような大洪水が出ると思いまするが、これを防止し得るとお考えになるのでありまするか、あるいは今後の災害防止についてのお考えについてまずお聞きしたいと思います。
  142. 米田正文

    ○米田説明員 大淀川の上流になります霧島盆地の本年度の災害は、従前に見られない多量の降雨のために、ほとんど全地区にわたつて大災害を起したのは御承知の通りであります。われわれといたしましては、従前の計画で今度の災害が防げるかどうかという問題については、非常な疑問を持つております。従いまして今後新たなる事態に対処いたすつもりでおります。
  143. 伊東岩男

    ○伊東委員 今の御答弁は大淀川の上流の分でございます。その他の各河川とも具体的にお尋ねしなければならぬ問題もありまするが、これは他の委員からも質問があると思いまするので、まず今お話のあつた大淀川の上流の河川改修であります。これはただいま国がやつておるのでありますが、総額約十五億の経費を要しまして、今一部分でき上つておりまするが、もしこれが完全にでき上つたあかつきには本年のごときは農作物の被害だけでも三億万円、全部を通じて九億万円の損害だと言つておりまするが、もし完成したならばこれだけで災害防止ができ得るというお考えがありますかどうか、この点お聞きしたいと思います。
  144. 米田正文

    ○米田説明員 先ほど申し上げましたように、現在の計画では今度の雨に対処することは疑問が生じて参りました。そこで新たなる計画について研究を進めたい。現在の計画では、まだはつきり数字的に御説明できる段階にまで来ておりませんけれども、今日までにわかりました雨量及びそれによつて生じた洪水の量によりますと、現在の計画では不十分であるという考えであります。
  145. 伊東岩男

    ○伊東委員 大体あの河川堤防をこしらえる目的が、農地保護であり、食糧増産であり、あるいは災害防止である、こう思われる。それを約十五億で、一年に五千万円くらいの計画のようでありまするが、そうすると三十年かかりまするので、こんなことをやつてみたところでとても役に立たぬのじやないか。むしろ堤防自体が災害を受けて、五千万円入れても堤防自体が毎年流れて行つてしまつて、農地保護のごときは断じてできないのではないかと思うのでありまするが、そこを御認識になつた上でさらに計画を立て直す、こういうことでありまするからけつこうでありまするが、どういうふうな方針でどういうふうに計画をかえるというお考えでありましようか。
  146. 米田正文

    ○米田説明員 計画の改訂につきましては現在調査をいたしておる段階でございます。まだ新しい計画ができたわけではございません。詳しい計画については、調査の済み次第、計画成立の上でまた御説明をいたす機会があろうかと思います。ただ今こういう方針で進んでおるということを申し上げておきたいのは、現在まで洪水の量を三千立方メートルと計画をいたしておりますが、今度の水はとうてい三千立方メートルではない、四千以上の洪水量が出ておるという見込みでありますので、それが確実に幾ら出たかというのを今研究いたしております。それらが出て参りますると、それに対処する計画というものが出て参ります、なお全体といたしましては、御承知のように大淀川は下流は宮崎の市外を経て海に注いでおる川でございまするので、今度の計画については、上流の計画のみならず水系全体としての改訂を行うつもりでございます。
  147. 伊東岩男

    ○伊東委員 大方針だけはよくわかりましたが、ただいまの計画は、洪水量三千立方メートルであつたのが本年は四千立方メートルであるから、これに耐え得ないというお話でありますが、これはこの前委員会で問題にいたしました大淀川上流にある九州水電の轟ダムが災いしておるのだと私どもは信じておるのであります。そこで地方では非常な問題を起しまして、毎日々々農民大会を開いて県庁に押しかけるといつたようなことで、大暴動化するところまで行つておるのであります。地方から言うと、あのダムさえ撤去するならば堤防をつくつてもらわぬでもいいのだ、十五億なんていう大きな堤防をつくらぬでも、小さい堤防で間に合うのだ、大体あのダムがあるためにかように洪水のために毎年々々たいへんな損害を受けるのだ、こう言つておるのであります。われわれも実地を見てみてそう思われる。それはあの盆地は大体七千町歩あるのでありますが、まん中を大淀川が流れて、ちようど小さいくびを絞めたようなところであります。そこの水が流れて行くところをダムでぴつちり締め切つてしまいましたから、その約七千町歩の盆地に水がたまらざるを得ないのでありますから、いかに堤防をこしらえましてもこれはだめじやないのか。そこで根本的な問題は、堤防をつくるということよりもダムを撤去するということが必要じやないかと、しろうととして考えるのでありますが、河川局長はどうお考えになりますか。
  148. 米田正文

    ○米田説明員 お説の通り今回の水害におきましても、轟の堰堤が相当の影響があつたことは事実であるとわれわれも認めております。但しその被害を及ぼした程度は幾らであるかということについては現在調査いたしておりますので、まだどの程度あるかとの結論には達しておりません。ただただいまお話がありましたように、あのダムを撤去しさえすれば水害が全部片づくのだというのは、私は少し行き過ぎだと思います。その撤去の問題も研究の問題としてもちろん私どもも取上げるつもりでおりますが、しかし全体の治水計画という観点から申しますと、そのダムの影響以外のものについては、当然全体の河川の水系としての堤防計画あるいはその他の工作物の計画等が必要になつて参ると思つております。
  149. 伊東岩男

    ○伊東委員 なるほどお話のように、これは自然現象がその原因の一部を占めるとも考えられますけれども、私どもの常識から考えた点から参りますると、やはりあれを撤去させることが一番いいと考えておるのであります。この前即時実地を調査してもらいたいということを建設省及び通産省に要求しておいたのでありまするが、御調査があつたのでありまするか、また調査の結果はどういうふうな報告があつたのでありまするか、この点お伺いいたします。
  150. 米田正文

    ○米田説明員 建設省の分について申し上げますと、建設省は現地に現地機関を持つておりますので、その現地機関に命じまして現在調査中でございます。この河川の調査水害の調査というものは、われわれのところでやつております方法は非常に詳細なところまで調査をいたしますので、まだ調査の段階でございます。逐次資料が整いつつある段階でございます。また一面先ほど申しましたように、われわれの出先機関を動員して調査をやつておると同時に、現在の河川法に基く河川管理を担当いたしております知事に対しても調査方を指示いたしておる次第でございます。
  151. 伊東岩男

    ○伊東委員 建設省はあの損害その他を見て、責任者である九州電力に対して——これは契約があるのでありますが、契約を守るようにあるいはこの損害に対して善処するようにとかいつた警告でも発せられましたか。
  152. 米田正文

    ○米田説明員 九州電力に対して直接警告を出したことがあるかというお尋ねのように思いますが、まだ私の方として直接九州電力に対してそういう監督的な命令を出したことはございません。現在の段階においては河川管理者である知事の処分にまつております。
  153. 伊東岩男

    ○伊東委員 かような大災害が起つたということは局長の答弁だと、その損害はひとりダムのみに原因しておるのではない、こうおつしやるのでありますけれども、だれが考えてもこれはダムが原因だという。ほとんど九割通り責任を負わなければならぬという今日において、これだけ社会問題化し、国会の問題にまでなつた今日、九州電力は実に横暴にも、まだ今日まで地方に見舞い一つ行かないという実情でありますが、一体この実情を局長あたりはどういうぐあいに御観察になりますか。実に残酷な会社です。あれは自由党の麻生代議士が実権を持つておる会社でありますが、実にひどい会社である、どう思われるか。
  154. 米田正文

    ○米田説明員 九州電力に対して直接まだ私の方からは事情聴取はいたしておりません。直接の監督の権限を発動しておるわけではございませんので、何とも申し上げかねますが、現在私どもは現地の知事を通じてそういう情勢を聞いて善処をいたしたいと思います。
  155. 伊東岩男

    ○伊東委員 大体あそこの現状を局長は御承知になつておるかどうかわかりませんが、明治十八年、これは日本稀有の大水害が、われわれは知りませんがあつたようであります。この轟ダムができない前でさえも、上流地帯七千町歩のうち少くとも三、四千町歩が非常な大水害を受けたので、二十三年に県営でダムではき切らぬから新川をつくつたのであります。そうして疏水をやつたところが、その後減水の程度が非常に早くて洪水などを受けなかつた。その後新川をつくつた地点までもあれはちようどせき切つたのであります。すでにこの事態が間違つておりまして、その当時から地方から、許可すべからずという非常な厳重な反対運動があつたにもかかわらず押し切つてあれは許可したところであるようであります。その後はそう大した被害も受けていなかつたのでありますが、だんだん河床が上つて来ました。結果としては、年々歳々ひどくなつたのであります。河床の上るということはこれは自然現象でも上りますけれども、特にあそこは勾配が少い所でありますから、河床の上り方が非常に多かつたのであります。それでだんだん戦後ひどい災害を受けるようになつたのであります。そこで地方としては、やはり河川法二十条を適用して、あれを撤去させるという、河川管理をする監督権を知事は持つておるのでありますから、これを発動することが一番いいのじやないかということで、以前からそういう問題はあつたのでありますけれども、一番日本としても水力資源の必要性もわれわれも承知いたしておりますし、そういう無謀なことはできないと考えておりましたけれども、今回の水害を見て、その方法をとる以外にはしようがないと考えておるのであります。河川法を適用してもいいのでありますが、当時の知事がこれを要望するための命令書を会社に出しておるのであります。その命令書を出したことを河川局では御承知でありますか、どうでありますか。
  156. 米田正文

    ○米田説明員 もう少し詳細に承りたいのですが……。
  157. 伊東岩男

    ○伊東委員 昭和十五年の五月十三日、時の長船知事が、これは以前の日本発送電であつたのでありますが、大淀川第一発電所に対して十九条からなる命令書を発しておるのであります。その発しておるということを御承知でありますかどうでありますか。
  158. 米田正文

    ○米田説明員 今ここにちよつと資料を持つておりませんが、私帰つてすぐに調べればわかると思うのであります。その上でお答えいたします。
  159. 伊東岩男

    ○伊東委員 多分御承知であるはずであります。必ず書類はあると考えております。あるとすればこれは非常な河川局の責任だと私は考えるのであります。十九条から命令書はなつておりますが、そのおもなるものを申し上げますと、十九条のうちの第五条、「許可または認可を与えたる事項といえども県知事において公益上その他必要ありと認むるときはこれが変更を命ずることあるべし」。第六条には、「本事業のため河川、道路、橋梁、悪水路その他公共の既設工作物の変更を要するときは許可を受けたる者は関係者と協議し、そのてん末を具し、県知事の許可を受くべし」。とあり、第十一条には、「県知事において公益上必要ありと認むるときは期限を指定し、引水を停止もしくは引水量を制限することあるべし。」第十三条に、「左の場合においては県知事は許可の全部もしくは一部を取消しまたは工作物施設の変更を命ずることあるべし。1公益上必要ありと認むるとき2許可を受けたる者において法律命令または本命令書もしくは本命令書に基きてなしたる処分に違背したるとき3河川の状況の変更その他許可の後に起りたる事実により必要ありと認むるとき」とあります。  こういう命令書を知事は出して最善の注意をしておることが最近これは発見されたのであります。こういう点から申しますと、やはり累代の知事あたりは、この問題には非常に大きな関心を持つてつたことだけは相違ありません。この命令書から申しますと、現在の知事がこれをたてにとつてでも撤去命令を出すのが当然であると思つております。これは当然あなたたちと協議しなければならぬことになりましようが、私は協議すると思います。ただいま県会を開いておりますが、県会では満場一致で撤去を通過させました。とすると、知事は今までは弱腰でありましたけれども、今度はもう断じて動かざるを得ないわけであります。そこでどうしても河川局長あるいは建設大臣相談することと思いますが、かような場合はどういうふうにお考えでありますか。
  160. 米田正文

    ○米田説明員 そういう場合には当然知事から稟申があることになつております。われわれとしてはその稟申の内容を検討いたした上で善処するつもりでおります。
  161. 伊東岩男

    ○伊東委員 その善処というのはどの範囲の善処であるか。今までさえもほつておかれたのでありますが、いかがでありますか。
  162. 米田正文

    ○米田説明員 善処という意味は、稟申して来ます内容を検討いたして、そのダムの変更、撤去、そういうような問題を、この影響の内容、影響程度を測定した上できめるという意味であります。
  163. 伊東岩男

    ○伊東委員 この撤去問題は、今の吉田内閣のある間はできないと考えております。それは麻生の所有しておる発電所でありますから、そう思いますが、今の内閣は長いことはないと思いますので、ひとつ局長もこの点は公平な立場で御考慮を願いたいと思うのであります。この問題の解決はもう簡単なんです。ダムを撤去すればよろしい。撤去すれば一万五千の発電力を持つておるものをなくすから国家の損じやないかということになりますけれども、これは第二ダムというものがあるのであります。だからそれを撤去しても第二ダムを少し活用すればより以上の発電力の出ることは、あなたたちは調査済みで御承知だと思います。調査しておりますね。——それならば第一ダムを撤去してもよいのではないか。金はかかるでしよう。金はかかるけれども、こういうぐあいに関係災害民が三千五百町歩も災害を受けるということをやるならば、これくらい公益上の支障はないのでありますから、当然なことであります。またそれをやるならば、ただいまお話のあつたような十五億かける堤防というものを、今何でも五千万円ぐらいしか使つていないようでありますから、半分ぐらいにしてしまえば半分ぐらいは余つて来るのであります。でありますからこの立場から言いましても、これは国の金を使わぬでもいいということになりまして、これは一石二鳥の方法だと考えるわけであります。この善処ということは、あなたの善処と私の善処とは多少見解の違いがありますけれども河川局長を信頼して善処されるように——これは当然ダムの撤去命令を知事に出させるように県会で決議したのでありますから、そういうぐあいに発動して来ると考えます。そのときにはぜひ御考慮を願いたい。善処じやありません。断行してもらいたいと思います。  それからもう一つお聞きしたいことは、今後この災害というものは、これは大臣でなければちよつと無理かもしれませんが、今後災害がだんだん出て来るのでありまして、災害ごとにこういうぐあいに争うておつてはどうにもならぬのであります。災害復旧というものは、本来から言うならば、今のような三年計画で三・五・二という割合のごときものでなくて、即時その年に完成するというのが災害復旧の建前でなければならない。今のところは財源の関係でそういうことになつておるようであります。だから今問題になつておる特別立法をつくるべしという議論は、牢固とした委員会考え方でありますから、それと同時にそういうことを毎年々々繰返しておるということはよくないことであります。けさの新聞によりますと、災害による公共土木施設復旧国庫負担法というものを来年度出すということになつておるようでありますが、これはまだ局長御発表できないと思いますけれども、すでに新聞に出たのでありますから、これは非常にいいことだと思いますので、どういうところまで話が進んでおりますか承りたい。
  164. 米田正文

    ○米田説明員 その内容を私はまだよくわかりませんが、現在われわれが災害復旧に補助をいたしております根拠法規は、公共土木施設災害復旧国庫負担法という法律に基いてやつております。だから今おつしやられた名前の法律はすでにあるのであります。
  165. 伊東岩男

    ○伊東委員 局長には他の委員から質問があるはずでありますが、私ももう少し聞きたいと思います。それは公益事業局長にお尋ねいたしますが、局長とはこの前にだんだん質問応答いたしましてよくわかりました。その際こういうような災害が起つたときに、たとえ轟ダムの場合は、われわれは撤去すべしということ一本でやつておりましたけれども、これに類似したダムの被害とか、鉱毒の被害とか、農作物の被害を受けるいろいろな関係があると思うのでありますから、こういう場合に役立つように一つの調停機関として、ダムもしくは鉱毒等による農作物被害補償法といつたような法律を出すことが必要だと思いますが、この点はどうか。  もう一つ、この前の答弁に、これらの災害に対しては第三者の公平な判断をしてもらつて、補償額をきめるために委員会をつくるというようなお話もあつたのでありますが、この二つに対する構想をお聞きします。
  166. 中島征帆

    ○中島説明員 こういつた場合に、その損害がどの関係者に帰すべきかという範囲あるいは程度に関しまして、公正な結論を出すということが一番必要だと思つております。それが出れば賠償問題も円滑に片づくわけでありますので、そういう趣旨からいいまして、公平な第三者と申しますか、十分科学的な判断を下し得る人を構成員とします調査委員会をつくりまして、そこで損害の実情調査してもらう、これが補償問題の解決の一番いい方法であろうと思います。で、最初お話にありましたような法制化するというような段階を経る前に、まずやはり各地々々でいろいろ実情も違いますから、問題の起きましたときに適当な方を御委嘱いたしまして、調査をして結論を出していただくことにするのが、さしあたつて一番手取り早い方法であろうかと思つております。そういうことをやりながら、大体こういう問題に対しますいろいろな資料も整備いたしましようし、また考え方も整頓されて参りますので、その上で必要があればこれを制度化するなり、あるいは立法化するなりということも考えられると思いますが、現在の段階におきましてさしあたりの問題を早期に解決するためには、少くともその問題の起つております地区に関係します調査委員会等を公正な見地に立ち得る人々によつて構成するということが一番必要でありまして、この委員会ただ単に事実を認定する委員会でありますから、対立する利害関係者がそこに参加して行つて、お互いに議論を闘わせて表決するというものではなくて、公正に科学的な判断を出し得るようなものにするのが一番いいのじやないか、こういうふうに考えております。
  167. 伊東岩男

    ○伊東委員 今お話のあるような委員会でもできると非常にけつこうなことでありまするけれども、これを法制化しなければならぬわけですからこれはまたさしあたり間に合いません。今申し上げるような農作物被害に対する補償法といつたような法律ができますると、その中に委員会ができるということになり非常にけつこうだと思いまするが、これらのことについて御研究になつたことはありますか。
  168. 中島征帆

    ○中島説明員 災害に基きますいろいろな損害賠償あるいは補償という問題は単に通産省関係のみならず建設、農林、いろいろなところに関係いたしますから、私どもの方で統一的にそういうことを考えたことはございません。ただ発電関係に関連しましてときどきこういう問題が起きますので、その都度やはりそういつたような公正な委員会が必要であるということは痛感いたしております。ただそれを法制的に構成するまではまだわれわれの手元ではいたしておりません。
  169. 伊東岩男

    ○伊東委員 轟ダムの大損害に対して、会社に交渉しても何ら応じることはむろんない。見舞さえ来ないのでありますから、まつたく応じません。今のところでは約九億の損害を受けて、とりつく島はないのであります。相手が資本会社でありまするから弱い農民の立場からどうすることもできないので、こういうことのごときはまつたく政治上の欠陥というのか何というのか、どうも実際に突き当つてみて非常に心配をいたしておるのでありまするが、何としてもこれは相手が応じないのでありまするから、やはりここまで国会の問題にもなりましたけれども、国会で結論を出すについては、どうしても九電の責任者を呼んでもらうか、あるいは適当な委員会でもこしらえてもらうかということであります。これは一地方の問題でありまするけれども、これに類似した被害が起つておるのは全国に非常に多いのでありまするから、これは何とかこの機会に全国の農民を救うという立場からやらなければならぬと私ども考えておる次第であります。  そこで先方がいわゆる被害調査をやるわけでもないし、またしたつてしようがありませんし、今おつしやるように、河川局としてもまだ結論は出ないというようなことだし、農林省被害高だけはわかつておるが、しかしその被害ではたしてダムの被害が幾らあるかということについては非常にむずかしい議論であるのでありまするから、容易じやないと思うのであります。そこでこの際この解決は非常に急迫しておるのであります。このままでおくとこれは社会問題化します。すでに百五十戸くらい水没する農家があるのであります。これはどうしても移転しなければならない。移転しようといつたつて移転費を出すすべも今のところはないのでありまするので、どうにもこうにもならぬのであります。そこで問題が非常に紛糾化しておるのであります。これはすでに一時間くらいの映画になつております。近いうちに局長は必ずごらんくださることと思うのでありますが、非常にりつぱな映画にまでなつたのです。悲劇を中心とした映画でありまするが、近く公表されると思うのであります。何とかこれはけりをつけてもらわなければならぬと苦心して、農林委員会でもこれを取上げてもらつて、非常に各委員から心配をしてもらつているのであります。しかしダムの撤去ということになると、これは建設委員会、局長あたりの仕事でありまするので、都合によつてはわれわれも建設委員にがんばつてもらつて行きたいと思つているような次第でありまするので、この点についてはこの委員会でけりがつかぬとするならば、何かいいくふうを御考慮願いたいと思いまするので、きようは公益事業局長及び河川局長に特にこの点をお願いしつつ、正しい判断ができるように進めたいものだと思うのでありますが、この点どういうぐあいにお考えになりまするか、河川局長及び公益事業局長の御確答を得て私の質問は大体終りたいと思つているのであります。
  170. 米田正文

    ○米田説明員 結論的に申し上げますると、先ほどから御質問の点については、われわれ現在直接にも調査をし、かつ間接的には県を通じて調査をいたしておりますので、その結論を早く得ることだと思います。極力早くそういう結論を出すようにいたしたいと思います。その上で対策については、先ほどから申し上げましておしかりを受けましたが、善処いたしたいと思います。
  171. 片島港

    ○片島委員 河川局長おいででありますから一点だけお尋ねいたしたいと思うのであります。ただいま轟ダムの問題がありましたが、宮崎県は非常に発電所の多い県でありまして、特に耳川というところは今度完成いたしますれば六つの発電所になるのでありますが、このうちことし特にひどかつたのは山須原発電所の上の鳥ノ巣堰堤というところが氾濫したのでありますが、やはりその被害ただいま言われたように、ダムの氾濫によつて非常に大きな被害を受けている。農耕地はございませんが、この公共施設に対する災害というのが、大淀川と違いましてこれは急流でありますから、当然普通のダムがなかつたとした場合には、全部昔は川底が掘れてしまつてつたのであります。どんどん川底が掘れておつたのが、最近では二メートルか三メートルは上りました。今申し上げました山須原堰堤の上流は諸塚村という発電所があるところでありまして、この諸塚村の中心が今年ばかりでなく、昨年も一昨年も水が出ますと道路が二、三メートル浸水してしまうのであります。川床が完全に三、四メートルずつ上流まで上つて来ているのであります。これは完全にだれが見ても発電所のお蔭である。特にダムが非常に広い所につくつてある堰堤はそういうことはありませんが、狭い所につくつてある堰堤はこういうような被害が非常に多いのであります。長くせずして、五六年たつたら諸塚村が中心部になり、今の発電所のある所でも、川底がどんどん上つて崩壊するおそれのあるような状態にある。九電にただしても、これを調査した九電の結果は、いつでも自分のところに都合のいいような御報告であります。これはダムがあるだけではないという報告が轟ダムでもほかのところでも、どこでも説明されているのであります。建設省だけでなく、学識経験者というような方たちによつて徹底的にこれが原因を調査をしてもらう方法はないかどうかということが第一点であります。それからこれを撤去するということになりますと、私たちは撤去を要求いたしますが、しかしいろいろと困難もありましよう。しかしぜひともこの浚渫とかあるいは護岸工事ということについては当然これはやらなければならぬ。これをやるに、国家財政上の立場からとうてい完全にはできないということになるでありましようが、そういう場合には当然この電力会社の方に幾ら幾らの分担をさせるというような協定が成り立つのじやないか。全然全部が国家で補償をされなくても、当然自分のところで発電所をつくつておるのだから、そのうちの何割はやろう、現在のように、ただ電力会社に自主的に涙金を出させるということではなくて、当然政府と九電との間において話をつけて、その補償の割合も、工事についての割合もきめるべきではないか、これはやらないでおくといつかはたいへんなことになりまして、その村が全然移動しなければならないという結果にもなつておるのでありますが、これに対して河川局長考えをお伺いしておきたいと思います。  それから今の第一の問題については公益事業局長の方からも御答弁願いたい。
  172. 米田正文

    ○米田説明員 今年の水害で耳川の水系が被害を受けたことは、私たちの方の調査でも承知をいたしております。ただ具体的にそれぞれのダムの位置でどれだけ被害があつたかというところまではまだわれわれ聞いておりません。けれども今のお話を承りますと、ダムができたために河床が上つて、そのために被害を生ずる、特に道路等があつた場合には、道路に浸水をし、交通をとめるということは考えられる事例でございます。そういう事象についての問題は、われわれ調査をいたすことにします。ただこれは県を通じてそういう事情を調査いたしてみたい。それによつて必要があれば、今おつしやられるように、企業者が負担すべき分があれば、これは企業者が負担すべきものだと思います。また企業者の責に帰すべき補償の問題があれば、企業者の責だと思います。これらの原因については、県にも照会をいたした上で調べることにいたします。
  173. 中島征帆

    ○中島説明員 ダムがありましたために起きました損害であれば、かりに会社の方で見舞金と言おうと何と言おうとこれはやはり補償金でありまして、賠償であります。従つてダムに起因する損害の限度におきましては、当然会社側としましても賠償の義務があると思います。その処置につきましては、たとえばただいまお話のありましたように、ダムのために浚渫を要する、あるいは堰堤をさらに強化する必要があるという場合におきましては、それがダムに起因する部分につきましては、やはり会社に負担させてさしつかえないと思います。ただこの場合に問題になりますのは、どこまでがダムに原因するか、その認定が問題でありますので、そこさえはつきりすれば、責任関係が明らかである以上は、当然負担させるべきだ。ただしこの場合に、無過失損害賠償問題であるということにつきまして法律上の問題になることだけは申し上げておきます。
  174. 片島港

    ○片島委員 涙金であろうと河であろうと補償金だというのでありますが、その補償金は両者の団体交渉によつてきめるとか何とかいうような何らの法的な根拠もないのであります。また政府がこれに介入して、その調査の結果、この程度が適当だということも示さない。労働争議における調停委員会みたいなものもない。一方的に会社が出すのでありますから、これはできるだけ少く出すのが当然であつて、こういうのは補償とはやつぱり言いがたいと思う。やはりあくまで見舞金である。補償金ということになれば、その実害を十分に調査した上で、ダムに起因する部分がどうだということを科学的にちやんと計算した上で、それに対して当然この程度はやるべきだという何らかの法的な根拠がなければ、補償金ではありません。そういう第三者による調査機関というようなものを設けて、それによつて最も合理的な補償の方法を講ずるというお考えがあなたにはないかどうか、この点を私はお聞きしておるわけです。
  175. 中島征帆

    ○中島説明員 全然同感でございまして先般の轟の問題におきましても、これを公正に解決するために、今のような学者等も含めました調査委員会をつくつて、そこで判断をしてもらうというふうに進めております。これは現実には現地の通産局にそういうことを勧奨いたしまして、通産局の方から地方の建設局なり県の方にも相談をしておるわけであります。ただなかなか人選等の関係で具体化しないようでありますが、私の希望としては、法律を待つては間に合いませんから、できるだけ早くこういう委員会をつくつて、この問題を解決づけるようにしたいと思います。
  176. 片島港

    ○片島委員 そうしますと、その調査の結果がわかれば、補償問題などについて法的な措置を講ずるというお考えでありますか。
  177. 中島征帆

    ○中島説明員 今申し上げておりますのは、轟の賠償問題の解決のための委員会でございまして、それをすぐ法制化するかどうかということは今後の問題でございます。
  178. 片島港

    ○片島委員 轟のダムだけでなく、そういうところはたくさん出て来るわけであります。今私が申し上げましたような耳川水系においても出て来ているわけでありますから、そういうものの総合的な調査機関をつくつて、その調査に基いて、これは会社が負担すべきであるというのなら、これを自主的にまかせるのでなく、法律的措置を講ずる、こういう考えはありませんか。
  179. 中島征帆

    ○中島説明員 そういうことをやるということをはつきり申し上げるまでまだ至つておりませんけれども、そういうことも考えつつあるのではないかと思つております。
  180. 片島港

    ○片島委員 ぜひともお考えください。  それから浚渫とか護岸工事をやる場合に、その分担をさせるということは、法的措置がなければ当然できないのであります。建設省は非常に貧乏な財政をやり繰つているから、これをやることは困難と思いますが、建設省ではそういうことはお考えになつておりませんか。
  181. 米田正文

    ○米田説明員 今のお話の中で、それがダムの責に帰すべきものであれば、これは建設省の乏しい財政の中から支出すべきものではないと思います。当然そのダムの負うべき責任だと思います。
  182. 片島港

    ○片島委員 ただダムが責任を負うべきだと言つて逃げないで、やはり法的措置を講じて、そのうちの幾らかは分担させる、こういうことをやらなければ向うは出さぬのであります。そういう点についてお考えはないかどうか。
  183. 米田正文

    ○米田説明員 これは今公益事業局長からお答えいたしましたように、ダムの経営者の責の問題でございますので、その経営者の監督官庁である公益事業局で御研究になれば、われわれも極力いたしたいと思う次第でございます。
  184. 片島港

    ○片島委員 どうかひとつつてください。
  185. 川俣清音

    川俣委員 この際中島局長にお尋ねしたい。今片島委員から御質問がありました答弁として、無過失責任の補償追求は非常に困難だ。これは抽象論としてはその通りだと思う。ところで今の発電所が計画しておりますもの、また過去に貯水ダムとして計画したものの効果と申しますか、効率が妥当であるかどうかということについて検討せられたことがあるんですか。ダムの効果というものは年々低下しております。はなはだしいことには、二十三年までに六十六箇所ありますが、その中の三十一箇所は二十三年の四月にすでに堆積量が五〇%をオーバーしております。ここにもつと詳細なものを持つておりますが、これは黒部の第二発電所です。最初の計画のときはこれですが、現在九五%も堆積しております。こんな計画はおよそないと私は思う。おそらく世界のダムの建設計画は七十年、八十年で償却するという状態なのに、日本では十年くらいでだめになつておる。ここにまだあります。富山の庄川の小原というのは十八年に着工しておりますが、二十三年で五〇%以上の堆積です。十年たたないうちに役に立たないような発電所をつくつて何になりますか。こんな役に立たないようなものをつくつて、この建設費から資本の償却まで一般の需用者に負担させるというようなコスト計算をやるということはいかがなものかと思う。そういうことが大体許されるのか。もつと詳細に言うならば、黒部の第二発電所のごときは、十二年から発電いたしておるようでありますが、十九年では九二%になつておる。ところが二十一年の洪水のときに三割以上下流に堆積を流しておるのです。これは無過失だとは言えないのです。計画がずさんなんです。上流がどういうふうに荒れているか荒れてないかということを全然見ておらない、渇水期なんというけれども、天然の渇水期じやないのですよ。ダムの無効による渇水なんです。渇水期に発電所を使うなんて、そうじやないのですよ。ダムの能力がなくなつているから渇水期はあたりまえです。発電のための有効貯水量の九五%も使えないことになつて、これで発電所でございますと言つて、何のために発電所をつくるのですか。何のために貯水池をつくるのですか。無効な貯水池に使つた分まで国民が負わなければならぬ、それに政府が金を融資しなければならぬ、そんなばかなことはない。十年たつて無効になるような経済効果の現われないものに対して融資をしたり、補助をしたり、それから来るところのはね返りの点を一般の電力需用者が負わねばならぬ。このために農業電力なんかみな値上げをするというのです。無効の発電所をつくつた分まで負担しなければならぬということは、一体どこから出て来るのでしようか。私はよくわからないから、局長、御説明願いたい。
  186. 中島征帆

    ○中島説明員 私どもの方でもダムの埋没の状況は調査いたしております。全国のケースはまだ出ておりませんけれども、一部の統計によりますと、非常にこれはまちまちでありまして、お話のように黒部のごとくたちまちにして埋まつてしまうところもございますし、それから埋没の程度が非常に遅いところもございます。これは地質あるいはその山の状況によつて違いますので、これは詳細に調査することによりまして、今後の計画に大いに役に立つと思いますが、従来のものはそのときの大よその調査の結果つくつた設計だろうと思います。たとえば黒部のごときは、これは当然あの地方の地質からして相当早く埋没するということは予想されますが、かりにあの上のダムをつくりませんと、それだけの土砂が下へどんどん流れて来て、下のダムに影響するということもありまして、砂防堰堤の意味も含めてつくつてあるのじやないかと思います。個々のものはいろいろ実情もありますが。先ほどの無過失賠償の問題でございますけれども、気持としては初め申し上げましたように、責任がダムにある場合には賠償すべきだと思います。ただそういつたような法律問題が立法のときには起り得るということをちよつと申し上げたわけであります。
  187. 川俣清音

    川俣委員 これは上流の山の荒れ方や、山がどのように表土におおわれているか、あるいは将来荒れるおそれがあるかないかということを調べて貯水池をつくつてはいないのですよ。私は六十六箇所持つておりますが、二十三年の日発の調べす。これはあなた方にも見せないし、ただ内部でひそかに秘しておつたものです。今これと同じ材料を出してください言つてもないのです。これを愛知通産大臣に聞いたら、そんなに効力のない発電所なんてあるわけがない、もしあつた場合にはこれは償却に見るごときは不当だという説明をしておられます。ところがあなたのコスト計算の中にはこれは明らかにコストに入つておるじやないですか。こんな十年か五年でだめになるものの責任を国や消費者が負わなければならぬということはどういうところから出て来るのですか。十年くらいでだめになるものは経済効果の上らないものです。今大蔵省は経済効果の上らないものは一切だめだと言つて、気の毒な被害民の救済すら、あるいは土地改良ですらどんどん切つているじやないですか。なぜ発電所だけは経済効果が上らなくともこれを許したり、あるいは補助したり、これに融資をするのはどういう理由ですか。
  188. 中島征帆

    ○中島説明員 経済効果の上らぬものに対して融資をしたり補助したりすることはやるべきものでないと思いますし、またそういうことはやつていないと思います。今のような例はこれは当初の設計のときの実情をよく調べぬと私もわかりませんけれども、一応土砂が相当堆積して来るということを予想しながら、将来の下流に対しまする影響考えて、ある程度埋没してもつくつた方がいいということでスタートしておるのではないかと思います。現在においても大分埋まつておりますけれども、調節的の程度のものは残つております。従つてあの発電所が発電所として動いておる。ピークにこれを使う程度のいわゆるダムの効果は上つておりませんけれども、発電所としての効果は一応上つておるということであります。
  189. 川俣清音

    川俣委員 それは詭弁というものです。北海道の野花南、これは五百八十九万立方メートルの貯水量を持つておる、今では五百八十六万土砂が埋まつておる。これでは貯水ダムの意味をなさないじやないですか。普通の堰堤と同じことです。従つて渇水期という問題も起つて来る。それから山形の梵字川、これは百二十万三千六百立方メートルですが、それに対して現在は百十八万、九八%の土砂堆積ですよ。あの山は民間の山であつて国有林でないために、どんどん切り出されて行つたために山がはげて来た。あれを飛行機で見るとよくわかります。こんなところに貯水池ができた、ちよつと水がかれるともう川でありません。ダムというものは雨が降つたときにためておいて、常時定量にしておいてそれを間断なく流すということでダムの効果があるのです。金をかけるためのダムじやないのですよ。むだな経費をかけるためのダムじやないのです。洪水量を一定のわくに押えて、それを徐々に流そうとするところにダムの効果があるのである。その効率のなようなダムをつくつたつて意味をなさないじやないですかと聞いておる。それでも効果があると言うなら、それは別の土砂堰堤というものですよ。貯水ダムじやありません。土砂流出防止のための堰堤でありますれば発電所はやらぬでもよろしい。これは河川局でやるべきだ。またはもつと上の土砂どめの砂防工事でありましたならば林野庁がやる。山が荒れて来るのを防ぐのは林野庁がやるべきものです。下流の水がほしいために、治山治水を考えないで、下にむだな金をかける。山の上の方に金をかけることを大蔵省は考えないで、日本では電力が不足だから、産業の基本だからということで発電所に融資はしておるけれども、経済効果のないものに金をかけるだけの余裕は今ない。もしもその余裕があれば、そんな無効な発電所をつくることよりも、治山治水に金をかけるべきだとあなたはお考えにならないかどうか、この点を伺いたい。
  190. 中島征帆

    ○中島説明員 もちろん有効でないところに金を注ぎ込むことは、これは非常な損害であります。ただ発電所のダムをつくります場合にもいろいろございまして、いわゆる大きな堰堤として夏場水をためて冬それを使う、これは一応おつしやるような理想的なものでございますけれども、そういう大規模なものではなく中規模なもので、ダムの性質によつては、単に一時それによつてためてピーク時に使う、短期の調整に使うものもある。それによつて発電コストというものを計算いたしますので、必ずしもダムと称する全部のものが渇水をそれで食いとめるというものでないことは御承知おきを願いたい。
  191. 川俣清音

    川俣委員 私の言つておるのは、最初の設計にあるあなた方が許可したときの貯水量というものを問題にしておる。あなた方が設計を許可して融資をする場合のことを問題にしておる。初めから土砂堰堤をつくつたということを問題にしていやしませんよ。これはほんとうの土砂堰堤でありまするならば国でやる、あるいは県がやるのに対して補助するという形で行われているでしよう。あなた方がこういう厖大な何千立方キロというようなものを許可する場合においては、おそらく貯水ダムとしての必要上許可されておるのだろうし、融資もされておるのだろうと思う。土砂堰堤ならば公業局がやるべきじやない。河川局がやつたりすべきだと思うのです。土砂堰堤は建設省じやないですか、通産省ですか。私は今まで土砂堰堤は河川局の所管だと思つていましたが、河川局長どうですか。
  192. 米田正文

    ○米田説明員 河川工事上つくります土砂をためる堰堤は私どもの方で実施をいたしております。
  193. 川俣清音

    川俣委員 これはほんとうは途中でやめられない問題だけれども、この程度にしておきましよう。ここに資料があるけれども、こんな計画はみんなだめになつておるのですよ。これは農林大臣もよく知つておいてもらいたい。こんなことで農業電力料を上げられたり、こういうことで土砂どめだなんて言つて、ほんとうの土砂どめなら流すことはないけれども、それを流しているじやないですか。中島さんが言うように、土砂どめの役目をしているのなら流すことはないのに流している。二割も三割も洪水があつた場合にわざわざ流しているのはどういうわけですか。これは貯水量がほしいために流したのだろうと思う。現に日発の調査にあるじやないですか。これは農林大臣も大いに関心を持つてお聞きになつたことと思いますから、閣議において十分お取上げ願いたいと思います。     —————————————
  194. 井出一太郎

    ○井出委員長 農林大臣も見えましたので、先ほど来の農林災害対策について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  195. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣にお尋ねします。実は当委員会におきましては、昨日災害対策の問題を中心といたしまして、小笠原大蔵大臣出席を求めて、災害対策に対する財政当局の所信をただしたわけであります。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 その結果農林当局と財政当局の災害対策に対する見解が、いまだに基本的に大きな食い違いがあるということを発見したわけでありますが、昨日の委員会を通じまして、小笠原大蔵大臣も、農林当局と十分熟議して善処するであろうということを言明されたわけであります。本日は担当の保利農林大臣を通じまして、現段階における政府の台風並びに冷害対策に対する確立された諸般の内容というものを具体的に御説明願いたいと思います。
  196. 保利茂

    ○保利国務大臣 大蔵大臣から財政当局の考え方を申し上げられたと思いますが、農林省考えの満たない点がかなり大きくあります。ただいませつかく補正予算の編成途中でございますから、現在も災害対策本部で会合も開かれて、調整に努めておるわけでありますが、まだきようあすというわけにはちよつと参らぬのじやないかというようにも思つております。ただきよう、むろん閣議で決定したわけでもなんでもありませんけれども、大蔵大臣から本年の財政規模を、やはり現状からいたして一兆円をはみ出さないようにという強い要請があり、でき得ればその範囲内において補正措置を講ずるといたしましても、結局各省合せて災害と申しますか——まあやれるものはやつて来ておりますけれども、補正で大よその輪郭としては、生活保護であるとか失業対策であるとか、あるいは地方交付金であるとか地方分与税とかいうような、相当大口の支出を要するものがあるわけであります。二百七十七億の補正予算の規模で、それと当初の予備費の残額とを合せて百億前後の災害対策を講ずるというほかには、この一兆予算のもとにおいてはむずかしいということで、ただいま各目等について当初から内閣としては災害対策の万全を期するために、加藤国務大臣が責任者となつて本部を持つておりますから、そこの本部でただいまも会議をやつておるのであります。むろん農林省としては直接大蔵省に対して強く従来申し上げております線について主張を続けておるわけでありますが、まだそういう段階であります。
  197. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま農林大臣お話では、政府の方針としてはあくまでも一兆億予算を堅持して、そのわく内において災害対策等の補正を行うというお話でありますが、その場合において農林大臣のお考えは、一兆億のわく内において災害対策というものはどうやらこの程度であれば形が整うというような、やや確信の持てるところまで行くというようなお考えであるかどうか。その点農林大臣としての考えですね。これで可能であるかどうかということ、この点が非常に重大であると思いますから、これに関する御意見をまずお伺いしたいと思います。
  198. 保利茂

    ○保利国務大臣 現状から申しまして、いわゆる災害予算を組むというその事態からいたしまして、私どもが満足し得るような十分の予算ができるとは実は思つておりません。一兆予算のわく内ということになりますれば、自然そういう結果に至ろうということは、大きくはそれは申し上げられるだろうと思います。
  199. 芳賀貢

    ○芳賀委員 当初予算を編成される場合においては、当然ある程度の災害等の事態に備える予備金等はあるわけであります。しかし予期しない災害等が発生した場合においては、当然これらの災害措置というものは、あくまで既定予算のわく内において処理しなければならぬというような財政上の原則は、その例をいまだ見ないわけであります。ただ問題は、そういうふうにして一兆億のわく内でどうしてもやるといような場合において、ややもすると農業政策の上において非常にゆがめられて来る面が生ずる場合もあると思うわけでありますが、この点に対しましては、昨日の大蔵大臣の発言等を聞いても、現在の政府の掲げておる農業政策等に対して歪曲されるおそれが非常にあるように考えた点も二、三あるわけであります。その点に対して農林大臣としては、やはり農政のバツク・ボーンだけは、自由党の政府であれば政府なりの農政のバツク・ボーンというものは当然あると思うわけでありますが、それに狂いのあるようなことであつた場合には、あくまでも一兆円のわくに追随しなければならぬということにはならぬと思いますが、その点はいかがでしようか。
  200. 保利茂

    ○保利国務大臣 バツク・ボーンがどういうものをさされるか、それは考え方によると思いますが、いずれにいたしましても政府としては、現在の実情からいたしまして最善と信ずる案を具して御批判を仰ぎ、御審議を願うということで努力をいたしておるわけでございます。案を具しました上で、もつとも今日まで当委員会で非常な御心配をいただきましたことは、先ほどもお話のように大蔵大臣等におきましても非常な認識を深くいたしておるわけでございますから、できるだけの措置は講じたいということはもう何人も異論はないわけでございます。しかし同時に国家運営という大きな何から一兆円を守つて行きたいという熾烈な方針をとつておる政府としては、どうしてもその中でやりくりをつけなければならぬ。これはひとり農政当局者だけでなしに、むろん国全体が非常にきゆうくつにおるときに、農林省だけが満足するようなものができ上ろうはずは私はないと思つております。それは実施官庁いずれもが強い悩みを持つておるところであります。しかしそれは公平な国会の御審議を願うほかは私はなかろうと思う。しかし政府としては最善の案をもつて御審議を願うようにいたしたいというような気持を持つておるわけであります。
  201. 芳賀貢

    ○芳賀委員 現在の政府が一兆円という数字を、一つの信仰に近い気持で堅持しておるという大臣のお考えというものは、一応その立場において了承するとしても、今のお話の中で、問題は三十日からの臨時国会において政府は災害対策等の政府案を出すから、そこで批判してもらえばいいというようなお言葉でありますが、しからば農林省当局の二十九年災害対策の要綱が十七の項目にわたつて掲げられておるわけでありますが、それと同時に予算面においては約百四十億の要求をしておるわけです。たとえば農林省の掲げておる十七項目のうち、この点は可能である、この点はどうしてもだめだというような問題は、今の段階においてもやや明確になつておるのじやないかと考えるわけです。それでわれわれの聞きたい点は、今の段階において、この災害対策の内容というものが、農林省の掲げた考え方というものが、財政当局等との折衝の経過からどこまで来ておるかということを、大臣を通じて具体的な説明を願いたいのです。
  202. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほど申し上げますように、そういう大体の事情ではございますが、今災害対策本部で協議を続けておるところでございます。これは方針として、内閣において各省の希望を調整して万全の措置を講ずるという建前で来ておるわけでございますから、むろん事務当局間において話合いのついておるものもあります。ありますが、全体といたしましてはただいま折衝の途上でありますから、これはこう、これはこうということは、私よりもむしろ事務当局の方が詳しいと思いますから、その方がいいだろうと思います。しかしきよう官房長があいにく出張しておるものでありますから出て来ておりませんし、事情もそういうわけでございますから、そういう程度で御了解願いたい。
  203. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣答弁は非常に抽象的で、雲をつかむようなことであります。きのう大蔵大臣出席された場合には、大蔵大臣なりに虚心に、この点はこうなつておるとか、この点は考慮する必要があるとか、この点はどうしても今の段階では同意できないというよううなことを端的に表明されておるのです。むしろ大蔵大臣の方が災害対策の内容等に対しては相当熟知しているんじやないかということが、今のあなたの御答弁から比較すると考えられるわけです。もちろん今の政局が非常に混迷しておるということで、農林大臣も政府の権力の安定のためにいろいろ骨を折つてもらつておるということはわかつておるわけですが、しかし当面の災害対策も大事だと思うのであります。ですからこの十七項目の大筋だけは頭の中に入つておられると思うのです。しかも災害地も調査して来られて、災害の度合いというものも認識されておるわけです。それで昨日も問題になつた、たとえば種子に対する助成等の問題、これらの点に対しましては、たとえば北海道の畑地帯の大豆、小豆等の災害地帯においては、その地域において種子の確保がほとんどできないというような状態になつておるわけです。ですからまずこの種子をどうして確保して来年の再生産に備えるかという問題と、農業共済の制度の保護もそこへ届かない被害農家等に対しては、種子の助成等に対しては昨年も行つておる、農林当局の要綱の中にもこれは出ておるという場合において、これはあくまでも強力に財政当局と折衝して、こういう点に対しては最低のものでも獲得して、一つの実をあげるということが必要になつて来ると思うわけでありますが、こういう点に対しては、農林大臣は財政当局と農林当局の折衝の段階がどうなつておるかということは御承知ですか。
  204. 保利茂

    ○保利国務大臣 承知いたしております。何とかしなければならぬということで努力いたしております。
  205. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その次に健苗育成の問題、それから耕土培養等の問題も冷害防止の一つの対策として、今年度の場合においては、その規模を圧縮して災害地域のみに限つて冷害対策としてこれを取上げておるわけでありますが、これに対しましては、財政当局は、経営面に対する助成というものは今後やらない方針である。しかも大蔵当局の考えは、今後において農林関係補助金というものは次々に整理して、こういうものは大削減しなければいかぬということを一応言つておるわけです。そういうことになると、わが国の農業政策の上からいつて、農林関係の面にたとえば助成等の形で保護育成しなくても、完全に自立できるかどうかということが問題になつて来ると思うわけでありますが、これらの点はただ単に予算的な数字が多いとか少いとかいう問題でなくて、やはり農政上の問題としては非常に重大な点でないかというふうに考えるわけであります。この点に対しては農林大臣として今後どのようにしてこれを実現するために努力されるつもりですか。
  206. 保利茂

    ○保利国務大臣 健苗育成の保温苗しろであるとか、温冷床萌しろであるとか、保温折衷苗しろでありますとかいうことが寒冷地帯の農業に非常に大きな経済利益をもたらすものであるということは、今や農家の方々も実際経験をもつて知得せられておる。これはほんとうを言いまして、今やつておる補助金がどれだけのものが、実際これをやればこれだけの経済効果がある、これだけの農家に経済的な利益をもたらし得るということが普及されれば、わずかばかりの補助金もやらなければやらぬというようなことは私はあり得ないことだと思う。いかにすればそういうことが普及できるようになるかということで、これは補助の必要も出て来るわけでございますけれども、相当の奨励期間がここに経過した。そういう上から行きますと、何人もやればやつた方がいいんだということがよくわかつた、あとは、これはひとつ農家でやつてただくようになるのが私はほんとうだと思う。それをどうして普及し、徹底して行くかというところに改良普及事業の仕事があると私は思う。そこに私は中心が行かなければならぬと思う。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕 しかし今の健苗育成の措置につきましては、手を放していい段階であるかどうかということは、これは多くの疑問があると思うのであります。私はまだ必要である、こういうふうに考えておるわけであります。根本としてはそういうふうな問題の考え方であります。
  207. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの問題でありますが、これはわずかな補助だから、それをやつてもやらぬでも同じだ。それから政府がこの施設に助成を行わない場合においてこれが全面的に後退するということがないということは、これはもちろん明白であります。しかし問題は、こういう特殊地域において保温折衷であるとかあるいは温冷床苗しろの施設をしておるという、そういう特別の施設をしなければならぬという事態は、たとえば米作の場合は、その生産された米の生産費の中にはこれは当然コストとして出て来るわけですね。特別なそういう施設をしなければよくない、生産が上らぬということになるわけです。ですからことしのような災害の甚大な年においては、そのような特別の配慮や努力をしたにもかかわらず、まつたく収穫がなかつたというような被害農家に対しましては、これはやはりそれらの特別な努力とか損失に対して国が一半の責任をとつて、この復旧に対して支援をするというようなことは当然なことになつて来ると思うわけです。だが予算が多いからいいとか、少いからやる必要がないとかということでなくて、これはわが国の水稲栽培上においても、やはり国がある程度の保護育成をすることが、それ以上の大きな増産効果を期待し得るということが指摘できるのであります。ですからこの点に対しては、やはりあくまでも昨年と同じように、これらの施設に対しては、恒久的に国がある程度の支出を行うというところに進めて行く必要が当然あるというふうに考えております。けさの新聞にも、農林省の内部において会計検査院等の指摘が行われておる。ですからそういうような点から、今度の災害対策に対しては、農林当局は非常に弱気になつておるように私は考えておる。もちろん昨年の災害対策等に対して反省する点は多々あると思いますけれども、そのために非常に意気消沈して、それに対して大蔵当局がいろいろ問題を指摘して、だからこういうような施設とか助成とかいうものはやつてもしようがないというようなことに威圧されて、非常に消極的になるということは厳に戒めてもらわなければならぬというふうに考えるわけでありますが、最近の農林大臣の動きというものは、非常に意気消沈しているわけでもないかもしれませんけれども、災害対策等に対しては、今までの気力とか熱意が減退しておるのでないかということを判断しておるわけでありますが、その点はどうです。
  208. 保利茂

    ○保利国務大臣 そういうふうにごらんになるなら、まあそうごらんいただくよりほかございません。一兆円のわくを私の微力をもつてしては破り得ないという諦観からして、気力がない、失つていると言われれば、あるいはそれは当つておるかもしれません。それはもうあえて肯定も否定もいたしません。ただ、少し脱線——脱線の御質問だつたから脱線せざるを得ないのでありますが、農林省の予算がどうとかこうとかという新聞の話であります。これは私は萎縮するよりも、痛憤を覚えております。予算の編成の直前になりますと、ああいうふうなプレス・キヤンペインが行われる。しかも、予算当面の補正は私は災害予算に中心があると思う。その災害予算に対して何か横合いから言われるということは、まあこれはむろん私ども非常に反省しなければならぬ、反省をいたしておるわけでございますけれども、何さま対象が非常に多いわけでございますから、そう線をひつぱつたようなぐあいに全部が行つておるとは、私は決して強弁するものではございませんけれども、しかし今日までの屡次の災害にあたつて農林省所管の予算が災害対策にどれだけの効果をあげて来ておるかということに対する評価があまりに少いじやないかということからして、私はむしろ痛憤を覚えておる。決して萎縮をいたしません。
  209. 芳賀貢

    ○芳賀委員 痛憤されておるというのであれば大分期待が持てるわけですがね。そういう場合において、これは一例でありますが、たとえば大蔵当局の救農土木工事に対する考え方でありますが、数字上においては、一応北海道分として十六億八千七百万円を組んでおるわけです。この内容は、御承知と思いますが、節約解除分三%で三億四千二百万、道路節約の解除七%で二億四千五百万、それから国有林の関係で八億、予備費の三億ということが内容でありますが、この国有林関係の八億ですね、これを大蔵当局は一応の財源にしておるわけであります。この点は昨日も大蔵大臣にも申したわけでありますが、この八億のうち二億五千万というものは、ことしの五月の暴風関係の災害対策にすでにもう使用済みになつておるわけであります。ですからこの内容は、数字上においては昨年と同じように北海道分として十六億八千万は見ておりますけれども、実質的にはどの程度救農土木工事にこれを用いて、ほんとうに被害農家に対して現金収入の道を開き得るかというその歩どまりの問題に対して、昨日大蔵当局は、大体その半分程度の八億ないし十億ぐらいしか被害農家の手には渡らないということを言つておるわけであります。ですからこういう点は、——これは痛憤までしなくてもいいです。これは内容面に対して、こういう欺瞞性のある大蔵当局の数字に対しては、これを駁論して、真実はこうであるということを指摘して是正させるということは、これは大臣みずからがおやりにならぬでも可能な問題でありますが、こういうものを押しつけられて、痛憤だけしておつてもだめじやないですか。この点はどうでありますか。
  210. 保利茂

    ○保利国務大臣 あなたは今押しつけられて、それで何もやつておらぬというような話でありますけれども、それじや困る、もつとふやせといつて努力しておるわけであります。
  211. 芳賀貢

    ○芳賀委員 このような調子で大臣といくら質疑をしても、大して実のあるものは受取ることができぬと思いますけれども、きよう対策本部の会議があると聞いている。加藤本部長出席を求めておるので、おそらく六時ごろには出席になると思いますが、三十日には臨時国会ですから、当然臨時国会においてまみえることになると思いますが、結局政府の最終的な災害対策の案がもう固まつたと思うのです。それで大臣としてもいつまでも痛憤しておるという事態でなくて、災害対策の最終的な締めくくりに対して、全国の罹災地域被害を受けた人たちに、農林大臣は一兆のわくの中においてもあれだけの努力をしてくれたという実績をあげなければいかぬ。ですからその点に対してわれわれは半ば期待と半ば危惧の念を持つておるわけであります。それで最終的にはおおよそどの程度に歩どまりが出て来るかというような、いわゆる政治的な見通しを持つておられると思いますが、その点をひとつ率直に御開陳願いたいと思います。
  212. 保利茂

    ○保利国務大臣 政府としましては、できれば二十二日ごろの閣議できめたいという目算のもとに今努力しておるわけでありますが、そうなりますかどうですか。しかしながらどのくらいまで行けそうかという見通しを申さなければならぬでしようけれども、どつちみち三十日にこれは出るわけですから、大体以上のようなところで、——私があてずつぽに申してみましたところで無責任なことでございますから、事情は私の方もよく承知をいたし、また二、三やる点におきましても不満だらけで努力を願つているという状態でございますから、どうも大したものでないという御推定にあるいはなろうかと思いますけれども、最善を尽して努力いたしたいと思います。
  213. 井出一太郎

    ○井出委員長 川俣清音君。
  214. 川俣清音

    川俣委員 私質問中にちよつと席をはずしておつたので、あるいは聞き違いをしておるかもしれませんが、健苗育成についてお尋ねしようと思うのです。大臣及び農林省は、農業政策から健苗育成というものについて予算上関心を持たなければならないと私は思うのです。そこでなぜ持たなければならないかという点を指摘しながら質問いたしたいと思います。  米価が限界生産費で決定されますならば、このような特殊地帯に対する補助は必要ない、あるいは農薬に対しても必要ない。今日の米価の決定は一定の標準のところで押えておるわけなんです。そこで低コストのところと高コストのところがありますが、コスト高になつているのは結局生産量が低い、あるいは災害に見舞われるからというので、通算いたしまして割高な生産費をかけて割安な米価がきまつておるのである。米価を全国的に大体のところにそろえて行くには、こういう低い生産量を持つておるところに補助を与えないで行きますと、米価の決定が非常に困難になつて来る。そこで特殊地帯に災害が発生したあるいは病虫害が発生した場合に、——全国に一様に発生した場合は、これは物量の投下量として当然米価に加算されますけれども、部分的に発生した場合の投資というものは米価で見るわけには行かない建前になつておる。ことに低位生産地でありまして、しかも冷害等に襲われるような所では、これによる生産の減退がありますので、コストを大体全国並に引上げて行かなければならないという農業政策上の要望が、健苗育成対策費というものを必要としておるゆえんだと私は理解するわけであります。これらの育成をすることによつて、初めてほかの地方と同じようなコストがかけられて行くのだ。しかしこれだけの生産量を出すにはこれだけの低位生産地、冷害地帯では、これだけの補助をやらなければここまで上つて来ないのである、そこでこれらに補助してやる。そこで一様に米価に右へならえせよということになつておると私は思うのであります。大臣見解はいかがでありますか。
  215. 保利茂

    ○保利国務大臣 生産条件が悪いから健苗育成で米価のコストの一部分を見るというようなものではないと私は思つております。これは生産条件をことにするごとに、実際はコストはみな違うと思います。極端に言えば一筆々々みな違う。いわんや単作地帯の東北、北海道方面と二毛作地帯においては、コストにおいてたいへんな違いだろうと思うわけであります。そういう生産条件の悪い自然条件を克服しつつ、いかにして生産力を高めて行くかということに保温折衷苗しろとか、温冷床苗しろの意義があると思います。それを一一やらなければ米の値段にこれが来るのだ、米の値段に来ないのは補助金があるからだというものではないであろうと私は思つております。御高説はしばしば承つておりますから、よくわかつておりますけれども、やはり自然の悪条件をいかにして克服して、より高く生産力をあげて行くことができるかというところがねらいであると思つております。
  216. 川俣清音

    川俣委員 その通りなんです。従つてその生産量が上ればコスト安になつて来るわけであります。そこでいわゆる災害に襲われるような所は、ある既定の年間を通じて行きますと、割合コスト高になつておるわけであります。そこでそれだけの生産量は一方の需要の面からしても必要であるし、また農業政策の面からもそこまで達成させるまでに助成をすることが必要だ、こういうことなんです。それでは開拓地あたりは、単に気の毒だから金をやるというようなものではなくして、やはり日本全体の生産量を高めると同時にその生産量が高まつたことによつてコストが引下げられて行くということになるのだと思つておる。だからそのレベルに達せしめるまでにおいては、助成が必要であろう、こういうことで健苗育成の費用も講ぜられておると思うのです。そこで一面において米価を決定する場合に、それらのものをある程度見ればよろしいのですが、現在の価格構成の上から限界生産説をとれないわけですから、そこでそれらの段階に達するまでの助成措置というものが講ぜられる。これは農薬代でも同じだと思う。健苗育成も同様だと思います。別だという考え方は出て参りません。異常な地域における一つの災害防止としての予防対策、健苗育成は予防対策、それから農薬は病気の場合は予防であり、虫害の場合においても予防と対策とをかねてできているものでありまして、私は農業政策上性質は同じだと思う。そこでその程度の理解はこれは農林省が持たれて、理解できない大蔵省を説得することが必要であろう、こういうことなんです。どうもその説明が十分でないために爆撃されて帰つて来るのじやないか、こういう考えがするのです。そこで大臣みずからが先頭に立つてこれを理解させるならば、この打開策は決して困難ではないという絶大な期待を私は持つておるのです。この期待がおそらく裏切られることはないと信じますけれども、この点はどうですか。
  217. 保利茂

    ○保利国務大臣 今の健苗育成の補助費と農薬の補助費は御承知のように大蔵、農林両省の激突しておる問題で、さつぱり原則論的に解決がつかぬでおるわけでございます。ただこれは決して川俣さんに皮肉を申し上げるわけでもなんでもございませんが、私が痛切に感じましたのは、農薬の問題とあの温冷床、保温折衷の問題とは、非常に本質的には違うような感じが私にはします。と申しますのは、お国元の秋田県へ昨年の冷害のときに、余談ではなはだ恐縮でございますけれども、参りましたときに、目につくのは、あの保温折衷苗しろをあれだけ、とにかくあれだけといつてもささいといえばささいですけれども、国も国会もあげて奨励普及に努めておるにかかわらず、しかも相当の年月がかかつておるにもかかわらず、相当の地帯に今のところ通し苗しろというものがほとんど沿道に目につく、その通し苗しろというのは苗しろだけをつくることであつて、米をつくらない。そうすると、あれがもし通し苗しろが解消されて、八分作になるか七分作になるか、むろん十分作とは行かぬにしても、少くとも八分作くらいはこれは苗しろでとれることは間違いないわけです。それがなぜやられないのか、それは補助金の問題であろう。それをやつた方がいいという農家にほんとうの認識がない、知識がない、徹底しないというところからああいう状態ではないか、むろんそれは金もやるからやれということが一番それは奨励しやすいにきまつておりますから、相当長い期間金を使つてこれをやりなさいと言つて奨励をして来ておる。しかも一ぺんやつていいということになつても、そこへまた奨励金が行くというようなことで、これは一体どうなるのだ。私はむしろほんとうに通し苗しろを解消することによつて、七分でも八分でもとれば、農家にどれだけの収入がふえて来るかということを採算的にも徹底をしていただいて、そうしてそれを普及していただく、冷害克服の措置を講じて行く。改良普及事業の必要なゆえんがそこに初めて出て、最も痛切に感じられるのではないかというように実は私は考えているわけですけれども、しかしとにかくそれは考え方であつて、現状はこれはまだ打切れぬというところにあるということは、そういう気持でおるわけでございます。農薬の問題はこれはしばしば申し上げておりますように、どこまでが平常発生だ、どこからが異常発生だということも、なかなかこれも定規ではかるようなぐあいには行かぬと思いますけれども、とにかく異常発生と伝染病が猖獗をきわめる、個々の農家ではどうにも処置がつかぬというようなときには、これはどうしても国が特別の補助の措置を講じてやらなければならぬ。それは原則とか何とか論でなしに、とにかく全市をあげて伝染病が猖獗するという場合に手をつかねておるわけには行かぬのと同じように、全村あげて病虫害が発生してどうにも手がつかぬというようなときに、いやそれは生産補助だからといつて国が指をくわえておるというわけには参らぬのじやないか、そういう考えは大蔵省にぜひ徹底してもらわなければならぬということを考えております。
  218. 川俣清音

    川俣委員 後段の生産補助だからいかぬということについて大蔵省の考慮を求めるというその一点は、まつたく同感なのです。それなんです。このいわゆる健苗育成も同様なんです。何も秋田へ行かれて通し苗しろが多いというのは、大臣より私の方がよく知つているくらい……。なぜ一体あの通し苗しろをやめないかという問題、それは大臣補助してやらないからやめないのだと言いますけれども、それは必ずしもそうではないのです。それはどうして一体東北のような、秋田のようなところで通し苗しろを使うかという問題、これは水利と非常に関係が深いのです。これは水利関係が完璧になつて参りまするならば、私はこの点は自力でもあるいは健苗育成の温床苗しろなどをやる機会が多いのじやないかと思います。それともう一つは、何といいましても窮迫して参りますと、通し苗しろにしておいた方が一番肥料も少くて済むし、あれは冬水を流しておいて、流れて来る水の中で肥料をとろうという考え方が通し苗しろの一つ考え方です。そういういわゆる眼前の小さな利益に追われて大局を忘れておるということもありますけれども、それだけやはり貧弱な農家であるという点も考えなければならぬ。それと用水関係と、二つだと思うのです。一方ばかりでない場合もあります。用水関係がよくてもやらないというのは、おそらく貧弱な農家であつて、労力を他に使つて収入を上げるというようなところから、健苗育成で総体の収量を上げることよりも、その労力を他に用いた方が収入になるというようなところから農業に専心しないという点もありましよう。それと一方は、いかに篤農家であつても、水利関係が十分でないために、今のうちに冬を通じて水を通しておく方が、来年の苗しろのときにおいて便利だという観念と、二つあると思います。だから補助の問題とはこれは違うと思う。大臣はずいぶん地方をまわつて、かなり透徹したような観察もして来ておられますけれども、通し苗しろについての見解は少し是正を願つて、大蔵省に大いに折衝してもらわなければならぬと思いますから、この点は、ただ一回見て来ただけで百姓の気持全部を御存じになるということになるとわれわれは必要なくなつて来まするので、そういう意味からも大いにこれは鞭韃してもらわなければならぬと思います。
  219. 井出一太郎

    ○井出委員長 伊東岩男君。
  220. 伊東岩男

    ○伊東委員 私は簡単に農林大臣にお尋ねをいたしておきます。  まず災害対策については、だんだん今質問がありましたけれども、私は農林大臣の政治力を信頼し、かつ期待いたします。本委員会で決議した事項も、二十二日には大体実現すると信頼をいたしております。そこで、もし実現しないときには、これはやはり高率補助というものが一番関連があるのでありますから、政府の方でやらなければ議員立法をやる、こういう腹構えておりますことを申し上げておきます。  もう一点お尋ねしておきたいことで同時に必要なことは、救農土木事業によつて現金収入化をはかるということでありまして、北海道の分ははつきりいたしたのでありまするが、内地にはやらない、こういう御方針のようでありまするが、この点いいがでありますか。
  221. 保利茂

    ○保利国務大臣 一人々々の大臣の方針は、たとえば大蔵大臣の方針はやらぬ、私はそういうわけには行かぬ、こう言つておりますが、一概に北海道だけに限るというわけには実際問題として参らぬ。従つてある条件のもとに内地に及ぼさなければならぬという考えで努力いたしております。
  222. 伊東岩男

    ○伊東委員 その点は御信頼申し上げまするから、ぜひ実現をはかつてただきたい、かように思います。  そこで災害対策と関連して、次の国会においてぜひ実現さしていただきたい問題が一、二あるのであります。それは台風襲来地帯の災害防除法といつたような恒久法をつくつてもらいたいということが一点、それからもう一つは、防災研究所というようなものをつくつてただいて、防災問題の研究を絶えずやつてただく、同時に気象観測施設を完備してもらいたいということであります。さらにもう一つの問題は、けさの新聞にもありましたように、公共土木施設災害復旧に関する国庫負担法といつたような法律をつくろうということでありますが、これはきわめていいことでありますから、ぜひ実現をはかつてただきたいと思います。  最後にお願いをし、かつ希望を申し上げることは、先ほども意見を陳述しておきましたが、発電用ダムあるいは鉱毒害によつて農作物が非常に損害を受けるのであります。そこでそれらの損害に対してこれを調整する、あるいは調停するような機関もないのでありまするから、農作物の被害補償法といつたような恒久法をつくつてただきたいと思うのであります。これは農作物ばかりでなくて、発電ダムをこしらえた上流地点の水田は、従来乾田であつたものがだんだん湿田化して、麦作などはできないようになるのであります。その一例をとりますると、大淀川上流の轟ダムのために、ダムができて以来湿田化して、麦作ができないようになつたのがすでに三百町歩以上に達しておるのであります。これは至るところにこういう事例があると思いまするので、やはり損害補償をすべきものだ、こう思いますから、この点を御考慮願つておきたいと思いますし、できるならば御意見を承つておきたいと思います。
  223. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいまの数項についての御所見につきましては私も大体同様に考えております。ただ広汎な農業災害の補償問題につきましては、当委員会及び参議院の農林委員会におかれても、かなり長い期間にわたつて研究を願い、今日農林省で農業補償法のこの問題の委員会をつくつてただき、各党の御協力をいただいて根本的に検討をいたしておるわけであります。これはほんとうを申しますと、もつとスピードをつけて早く成案を得なければならぬのですけれども、何せ問題がむずかしい問題をたくさんはらんでおるものでございますから、慎重に御検討を願つておりますが、早く成案を得て、それによりましてただいまお話のような各項は、大体解決せられて行くような形にならなければならぬじやないかと思います。  なお、絶えず防災研究を怠らないようにという御趣旨はごもつもだと思います。結論はやはり台風等から来る全然避け得られないことは別といたしましても、人為的に避け得る処置としましては、むろんこれは台風被害を軽減するという意味から行きましても、やはり根本は治山治水にかかつて来る、これは研究の余地も何もない、とにかく治山治水がもう根本の要諦であり、そこに十分の力が——あれだけ内閣でもたいこをたたくような形でやつてみても、大して多くの経費が投ぜられないというような実情で悩んでおるわけであります。しかし一面また人為的に避け得る、あるいは軽減し得る方途を研究するという御趣意はまつたく同感であります。
  224. 伊東岩男

    ○伊東委員 ただいま提唱した問題は非常に大きな問題でありまして、議論いたしますならば時間を要しますから、善処されんことを希望いたしましてその点には触れません。  最後にぜひ農林大臣の御奮起によつて善処してもらいたい一点があるのであります。それは先ほども大分議論しだのでありますが、轟ダムによる今年の農村の損害の分が三億円前後あるのであります。この処置をどうするかという問題でありますが、これは公共施設と合せて九億くらいになるのであります。これは今年の損害でありますが、地方としてはもうほとんど収穫皆無といつたような農家がたくさんあるのでありますから、さしあたりの補償、これはもう当然どこか損害を与えたものが補償すべきものだと思いますが、これは確かにいろいろ弁明はありますけれども、轟ダムの結果であるということはもうはつきりいたしております。これは九州電力とは大臣は特殊な関係がありますからよく御承知のことと思うのであります。これはダムを撤去する以外には、もうこれを根本的に救済することはできぬのであります。しかしこれは大きな問題でありますから、さしあたりの問題、さしあたりのほんとうの災害救済をどうしていただくかという大臣考えでありますが、これはもう当然善処さるべき責任があると考えておるのでありますが、私はもうここではつきり善処するという意味合いにおいて、さらにあわせてできるならば轟ダムを撤去させるというところまで御答弁を願えればけつこうだ、こう考えるのであります。
  225. 保利茂

    ○保利国務大臣 宮崎県で轟ダムの問題が非常に大きな問題になつておるということも承知いたしております。私の方の局長も参つて見て来ております。何か私が九州電力と特殊な関係がある、どういうことをおさしでございますか、どうも私には耳にこたえるような感じがしますから申し上げますが、特殊な関係は私は持つておりません。私の知つている者がおるというならば、これはこういう人は知つておるということは申し上げますが、九州電力とは私は何らの関係は持たないということをはつきり申し上げておきます。ただ私の所管において善処いたすべきことは必ず善処いたします。
  226. 伊東岩男

    ○伊東委員 それではどうぞ農林大臣ほんとうに善処されんことを希望いたしまして、私はもう追究いたしません。
  227. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 すでに同僚議員からもいろいろ詳しく要求なり質疑、希望がございましたので、簡単に二、三要点をお伺いを兼ねお願いしたいと思うのでございます。私から申し上げるまでもなくすでに御承知の通り、凶作の救済につきましては予算の額はもちろん大事でございますけれども、もう一つ重大なのは時期的な問題についてでございます。時期を失つた救済というのは、その効果を少しも上げません。特に本年の凶作は北の方に片寄つた被害がたいへんに多いのでございまして、北海道と東北の北部がひどくやられております。洞爺丸の事件等で、農産物に対する被害は案外世間の耳目をそばだてなかつた。しかし現実の北海道並びに東北の農民の実情というのは、もはや一日も猶予することができないような、せつば詰まつた状態になつていますことをこの際大臣にもう一段と深く御認識を願いたい。特に昨年の凶作にうち続きました本年の農村の実態というものは、たとい去年のいろいろな借金を待つてもらいましても、目の前の食糧さえ失つておる形なのであります。この間も実際見て参りましたが、ほとんど穂をなしていないような稲を刈りとつている。刈りとつたその晩からこれを突きくだいて、しいな餅にして食べておるというような、悲惨な状態も見て参つたのであります。もちろん、大蔵省の関係や、その他全般の国政と関連いたしまして、さまざまな御苦心はございましようけれども、何と言いましても時期に適した救済ということを、この際ぜひともお願いしたいと思うのであります。特に一般の既成農家と申しましようか、従来の農家の災害もはなはだしいのでありますが、特に食糧増産に挺身して参りました開拓地の惨状であります。畑なども、春以来の霜害のために、全然収穫を見ることができません。特にあのバラツクとも言えないようなわら屋根などが、片つぱしから飛んでしまいまして、住宅がほとんどない。もう雪が降つております。その雪が降つている中で、食糧を失い、家を失つた開拓農民が、どのような悲惨な生活をしているかこいうこの実感を、大臣もどうかひとつはつきりと御認識を願いたいと思うのでございます。種苗の助成につきましてもさまざまなお話がございました。ただ開拓地の種苗を考えました場合に、従来の作物でよろしいか。何としてもこの際寒冷に耐えるような作物の転換が必要だと思うのでございまするが、そういう点で、この凶作に際しまして、何かばれいしよその他に対する御施策でもございましたらお伺いしておきたいのでございます。
  228. 保利茂

    ○保利国務大臣 今年の凶作の中心が北海道にありますことは、もう再々申し上げるまでもありません。従つてたとえば大蔵省で救農事業も北海道に限つてもらいたいというのに、私ども反駁いたしておりますのは、北海道の昨年の冷害と同様に、私の脳裡に、青森東部、岩手北部のあの地帯のことが絶えずしみ込んでありますために、あえてどうしても、内地にもある条件のもとにやらなければならないと言つて突つぱつておるわけであります。それでお話の高冷開拓地でございますが、ここはどうしても、国が金がないとか何とか言つても、ほつておけないという認識を持つて、努力をいたしておるわけであります。お話の種子対策等で、あるいは何らかの作物転換をはかる必要があるということは、非常に大きな深い示唆があると思うのでございます。ありていに申しますと、この寒冷地農業と申しますか、開拓地を含めた北海道全道の農業のあり方等についての寒地農業というものに対する国の系統的な研究と施策が、はなはだ不十分ではないかという感じを非常に強くいたしております。そういう上から今まで大豆をやつてつたから大豆だというようなことで、事が足りるかどうかという点は、これは問題だと思つております。また地方によりましてはそれがいいというところもあるわけですから、一概には行かぬと思いますけれども、寒冷地の系統的な農業研究というものに、もう少し力が入つて行かなければならぬ。そういう上から十分善処して行かなければならぬ、こう考えます。
  229. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大臣はあまり具体的な問題には触れないのでございますが、これはいろいろな折衝上われわれの要求を十分に通していただく含みでもあると思いますので、あえて追究いたしません。いろいろ開拓地の方からもばれいしよの種に対する自発的な要望もありますし、いろいろ農林省の方でもお考えになつていることと思いますので、あえて追究いたしませんが、できるだけ現実の農民の希望に沿うような方法でおはかりを願いたいと思うのであります。  もう一つぜひお願いいたしたいのは住宅の問題であります。これは入植五年の住宅の全壊は補償するとか、あるいは七年はいかぬとかいうようなことを言つておりますが、これは旧い家ほど悲惨度がかなり強いし、特に終戦直後の開拓住宅というものは、住宅と言えないほどひどいものなのであります。この際御心配になつております高冷地の農業の革新的な前進のためにも多少の御負担、困難はありましても、ぜひとも台風による被害住宅などには全面的な御考慮を願いたいと思うのでありますが、その点はいかがでございましようか。
  230. 正井保之

    ○正井説明員 開拓地の住宅につきましては、従来災害がございました際に全壊のみを対象にされ、しかも入植後五箇年以上たつたものにつきましては、大体収支計算等もある程度できておる、こういうような理由のもとに認められないで参つたわけであります。今回は被害も非常に広汎に及んでおりますし、半壊等についても助成の措置をとる、こういうことでただいま折衝中でございます。大蔵省といたしましては、やはり従来の線で、全壊、それも入植後四年以内のものについて考えたい、こういうふうでございますが、少くとも半壊等に対しましても、それからお話もございましたが、七年くらいまでは、開墾作業等が、与えられた土地を開くことに七年かかるわけですから、少くともその範囲は絶対に見てやるべきではないか、こういうことでただいま折衝中であります。なお半壊等につきましては、これは非常に範囲等が広くありまして、それぞれ被害程度等が把握しにくいというような事情があるかと思いますが、できるだけ何らか助成の措置を考えたいということで、折衝中でございますが、まだ結論が出ておりません。そういう状況であります。
  231. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは私から、くどく申し上げるまでもなく、もうすでに専門家のあなた方は、開拓の竣功がいつできるのか、開拓民がほんとうにその営農を完成するのに何年くらいかかるかということはおわかりであろうと思うのでありますので、さまざまの折衝の御苦心は十分考えますが、昨日も大蔵大臣農林省の意向も十分取入れて善処したいということをはつきり言つておりますし、この際農林省としてはぜひとも一大勇気を振い起して、とことんまで農民のために御奮闘を願いたい。特に私がお願い申し上げたいのは、農民の負債の関係でありますが、助成をやめまして、いろいろな営農資金に切りかえるというような方法もいろいろ考えられておるようでありますが、へたに借金を持たせますと、二、三年後における痛みが非常に多いだろうと思うのであります。これはやはりことしの異常なる災害の影響というものが、生活を救つてやるというよりも、むしろ生命を救つてやるというところまで行くように来ておりますが、その点なども場所によつては十分に御考慮くださいまして、特別に助成などの手段も御講じになつてただきたいと思うのであります。特に農林省のさまざまな調査の発表でございますが、十月十五日の発表に間に合わなかつたような災害がかなりひどいのであります。十月十日以後における大きな霜の影響、これなどはことし特別な例でございます。こういつた点なども考えくださいまして、必ずしも作物報告所などの統計にこだわらずに、もう一ぺん実態をおつかみ願いたい。特に早く方針が確定いたしませんと、さまざまな無理をして陳情に参つておる例がたくさんございます。この陳情費を出すにも相当苦しんでおるのであります。一日も早く時期的な救済のために根本方針をはつきり立てていただきたい。そして安心してこの冬を越し、来年の営農にいそしめるような態勢に早く置いていただきたい。繰返し申し上げますが、時期的な救済ということを十分に考慮願いたいと思つております。さつき大臣は国家全般に対する関心をお示しくださいまして、いろいろ財政上の御心配もあるようでありますが、局地に起つた災害と申しましても、ことしの局地災害は非常に深刻なのでありまして、局地災害であつても、有機的な社会国家に対しては大きな病気の形がはつきりしておりますので、この処置を誤つたならば全体を殺す結果にもなるだろうと思います。一兆円予算のわくを破るか破らないかはいろいろな問題もございましようが、どうぞ農林大臣としてはあくまでも農民の立場に立つて、現実に目の前に雪の中に苦しんでおる農民を救つてただきたいということを特にお願い申し上げまして、私の要望を終ります。
  232. 井出一太郎

    ○井出委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後六時二分散会