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1954-10-12 第19回国会 衆議院 農林委員会 第73号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月十二日(火曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 吉川 久衛君 理事 芳賀  貢君    理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    田子 一民君       松岡 俊三君    松野 頼三君       松山 義雄君    伊東 岩男君       足鹿  覺君    井谷 正吉君       井手 以誠君    中澤 茂一君       中村 時雄君    久保田 豊君       安藤  覺君  委員外出席者         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         調査課長)   山本川忠嘉君         農林政務次官  羽田武嗣郎君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  野田哲五郎君         農林事務官         (畜産局経済課         長)      昌谷  孝君         農 林 技 官         (農林経済局統         計調査部作物統         計課長)    原  政司君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 十月十二日  委員並木芳雄君、本名武君及び井手以誠君辞任  につき、その補欠として伊東岩男君、吉川久衛  君及び神近市子君が議長の指名で委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  昭和二十九年九月十五日現在の稲の作況及び台  風による稲作等被害状況に関する件  酪農振興及び乳価問題に関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  本日の午前中は稲の作況に関する説明聴取を行います。本年産水陸稲の第五号、第十三号及び第十二号台風被害を含む九月十五日現在作況について政府の説明を求めたいと思います。野田統計調査部長
  3. 野田哲五郎

    野田説明員 九月十五日の作況について御説明申し上げます。この調査につきましては、本来九月の末または十月の一日ごろに発表いたす予定でありましたが、御承知のような台風の再発によりまして調査が非常に遅れましたので、十月の八日に発表するのやむなきに至つたことをまことに遺憾としております。大体の状態につきましては、新聞紙の報道がありましたので御存じかと思いますが、作況指数におきまして水稲が九八、陸稲が八三ということになつております。なお総収量を一応試算してみますと、六千四百六十三万石というような試算値が出るわけでございます。以下お手元に差上げました資料によりまして順を追つて説明をして参りたいと思います。  お手元昭和二十九年産水稲及び陸稲作付面積並びに九月十五日現在作柄概況台風五号、十三号及び十二号の被害を含む)という厚いとじを差上げてありますが、これによつて説明をさしていただきたいと思います。これの一ページの第一表をごらんいただきますと、ここで八月一日現在におきまして調査いたしました水稲作付面積を示しておるのでございます。すなわち水稲におきましては全国計で二百九十一万一千町歩ということに相なりまして、前年度の数値に比べますと二万一千九百五十町歩増加になるのでございます。その主たる増加地域北海道におきまして七千五百八十町歩九州におきまして六千五百九十町歩というような増加を示しております。  次の欄の陸稲の部におきまして、本年の作付面積は十六万四千町歩ということになりまして、前年に比較しまして一万五千町歩増加となるのでございます。  合計欄におきまして水陸稲作付面積は三百七万六千町歩、前年に比しまして三万七千町歩増加ということになるのでございます。これはあとに若干触れたいと思いますけれども、増加した面積から、壊廃によつてつぶれた面積を差引いて純増の面積がかようになるわけでございます。  次の第二表におきまして作柄指数を示しておりますが、左の方に九月十五日現在、右の方に先に発表いたしました八月十五日現在の作況指数を掲げておるのでございます。すなわち九月十五日現在におきまして水稲は九八、陸稲は八三ということになつております。これを八月十五日に比べますと、水稲におきましては持合いでございまして、陸稲におきましては若干低下ということになつております。水稲におきましてこの両者の調査を比較いたしますと、全体として保合でありますけれども、北海道の欄におきまして、前者の八一に対して後者が七〇と著しく作況が悪化しております。東北におきましては、前者の九三に対しまして、後者が九九と、作柄は非常な改善を示しておるわけであります。関東北陸東山等につきましても、作柄は著しく好転しておるということができるのであります。東海以下におきましては、十二号までの台風影響を受けまして作柄が若干減退する、ないしは相当の減退を示しておるという状況でございます。陸稲の部におきましては、先般も御説明申し上げましたように、主たる産地関東南九州、それに次ぎますものは東海でございます。このあたりをごらんいただきますと、関東におきましては前者が八二であるのに対して後者は八五で、若干の改善を示しております。それから東海におきましては、九五が前者でありまして、後者は九七ということになるのでございまして、これも改善いたしておるわけでございます。九州におきましては、前者の一〇〇に対しまして後者が七三ということで、著しく台風影響を受けたことがわかるのでございます。  次に第三表に参りまして、ここでは各県別面積を二十八年の面積と対比して示しておるのでございまして、全国のトータルが二万一千九百五十町歩の増になつておるわけでございます。  次が陸稲でございます。陸稲面積におきまして、全体で一万五千町歩増加しておりますが、これをパーセンテージにいたしますと一割の増加ということになります。五ページに水陸合計が書いてありますが、これによりまして、本年度面積増加が、水陸合せて三万七千町歩ということになります。六ページには水稲及び陸稲県別作況指数が書いてあります。これは県別でありますから、ごらんをいただきたいと思います。  次の七ページに移りまして、横書きで第五表に被害状況が示してあります。第七ページが被害面積延べでございまして、八ページが減収量を示しておるのでございます。なお九ページ、十ページはこれを各県別に示しておるのでございます。七ページにもどりまして、被害延べ面積は、昭和二十九年九月十五日現在におきまして、三百五十万町歩ということになりまして、二十四年から二十八年までの五箇年の平均によります平年値百三十八万町歩に対しまして、著しく被害面積増加を示しております。そのうち風水害関係でございますが、これは平年が三十四万五千町歩に対しまして、本年は百三万六千町歩ということになつております。  それからここで冷害関係を申し上げますと、受精障害並びに早いところにおきましては稔実障害という形で冷害あとを刻んだのでありますが、これに現われておるところによりますと、平年の十四万八千町歩に対しまして、本年は二十九万九千町歩ということになるのでございます。  それから病害の方で、まずいもちでありますが、平年の三十一万三千町歩に対しまして、二十九年は五十九万六千町歩というふうに面積は非常に大きくなつております。但し減収量関係は、あとで御説明申し上げますように減つておるのでございます。  二化螟虫につきましては、平年の二十五万町歩に対しまして、本年は七十五万町歩というように面積の非常な増加を示しておるのでございます。  次に減収量の方を八ページでごらんいただきたいと思います。すなわち総数におきまして、平年は四百三十万石の減でありますが、本年は五百二十五万石の減と相なつております。  風水害につきましては、百九十四万八千石ということになつておりますが、そのうち台風五号が十万六千石、十三号が十二万九千石、十二号が百四十七万九千石で、三つ合計いたしますと、百七十一万五千百三十石ということになります。それからこの表には載せておりませんけれども、別に陸稲被害が十一万五百二十石ございます。これを合計いたしますと、百八十二万五千六百五十石というものがこの三つ風台被害計算として出て来るわけでございます。  数字に誤りがあると困りますから、もう一回だけ言わせていただきたいと思います。この「うち」と書いてあります三つ台風部分合計いたしますと、百七十一万五千百三十石になります。そこで、この計数の食い違いは、ほかの風害によるものでございます。そのほかに陸稲が十一万五百二十石この三つ台風によつて被害を生じております。合せて百八十二万五千六百五十石になります。     〔発言する者あり〕
  4. 井出一太郎

    井出委員長 御静粛に願います。
  5. 野田哲五郎

    野田説明員 どうも説明がまずくて恐縮でございます。一応そういうふうな計算に間違いがないと思いますが、説明がまずかつたと思います。  それから冷害におきまして、本年は百四十六万五千石。それからいもち関係でございますが、これは本年は四十六万七千石、平年値が百十六万四千石ということになつておりますので、いもち被害はきわめて少くとまつたということができるのでございます。二化螟虫におきましては、本年が四十六万九千石、平年が四十五万五千石ということになつておりますので、本年は平年をわずかながら上まわつたということができるのでございます。(「その他の中にはどんなものが入つておるのですか」と呼ぶ者あり)備考欄に書いておりまして、九ベージの一番右の端にございます。  それで、県別被害状況は九ページ、十ページで一応終るわけでございまして、以下はこの調査につきましてのやり方、その他成育概況等を文字で示したのでございます。この中でちよつとごらんいただきたいと思いますのは、十二ページでございます。十二ページの作付面積のところにおきまして、水稲作付面積につきまして増加いたしました分として、災害復旧によるものが一万八千六百町歩、開田によりますものが一万一千七百六十六町歩、その他によりますものが七千六百七十二町歩合計いたしまして三万八千三十八町歩増加をいたしております。これに対しまして、減少の部分が、潰廃によりますのが八千六百七十八町歩、他作物への転換、不耕作の増加等によつて減じました分が七千四百十町歩合計一万六千八十八町歩というものが減少いたしまして、差引き二万二千町歩弱増加なつておるのでございます。なお、陸稲につきましては、これはいもその他の作物からの転換によるものでございます。あとずつと成育概況等を書いておりますが、最後に二十一ページをごらんいただきたいと思います。  二十一ページの参考といいます中に、平年反収の出し方について御説明をしておるわけでございますが、水稲につきまして、平年反収昭和元年から二十八年に至ります。二十八箇年の統計の中から、豊凶の特に著しくありました。昭和六年、八年、九年、十六年、二十年、二十八年の六箇年を除きました二十二年の間の統計を元としまして、これにその後の趨勢値を加え算出したものでございます。すなわち、次の数字によりまして、昭和二十八年におきましては二石二斗でありましたものが、本年の平年反収としましては二石二斗一升を予定したのでございます。従つて、本年の平年反収は六千四百四十三万二千石ということに水稲としては相なるわけでございます。それから陸稲につきましては、主産地でございます関東及び九州地方につきましては、水稲に準じた方式をとつておりますし、その他の府県におきましては、最近における作物統計を基礎としてきめたものでございます。二十二ページに移つていただきますと、そこに反収を書いておりますが、二十八年は一石五升に対して、本年は一石六升ということになります。従つて、本年の平年収穫高は百七十四万八千石ということに相なりまして、水産合計いたします本年の平年反収は六千六百十八万石ということになるのでございます。これに対しまして、先ほど試算いたしました数字を申し上げましたのは、水産合計で六千四百六十三万石でございます。  以上まことに尽しませんでしたけれども、一応私の説明をさせていただきました。
  6. 井出一太郎

    井出委員長 原さん、次いで補足説明ありますか。——原作物統計課長
  7. 原政司

    原説明員 それでは、私から、別に白い表紙をつけまして横書きにいたしました補足説明資料を四種類ほどお手元に御配付申し上げておりますから、それを簡単に御紹介申し上げておきたいと思います。  資料につきましては、表題気象関係が二つございまして、それから水稲作況調査圃における生育概況と、昭和二十九年水稲主要品種出穂期というのがございます。気象関係が二種類あると申し上げましたが、一つ昭和二十九年稲作期間主要地点測候所)における気象表というのでございまして、いま一つ気象関係は、先ほど部長からも御説明いたしましたように、台風十二号を主体といたしまして、その後参りました十四号の気象関係が一応気象台でまとまりましたので、それを私の方で編集したものを御参考までにつけたのでございます。なお、先ほど部長から申し上げました通り、九月十五日の作況に関しましては、十二号までが含まれておりまして、十四号は含まれておりません点を補足しておきます。気象関係につきましてはいろいろそこに書いてございますが、おひまの節にでもごらんいただきたく二、三の点こつきまして補足をしておきたいと存じます。  まず昭和二十九年稲作期間主要地点測候所)における気象表でございまするが、これをめくつていただきますと、そこへ目次がついております。第一番目は、旬別の本年の気象表でありまして、第二は、旬別気象の平年差、平年との差額関係、それから第三番目には、日別最高並びに最低気温の平年に対する偏差図ということになつております。それだけのものが、以下その中の資料として数字あるいはグラフが上つておりますがちよつとだけごらんおき願いたいと存じますのは、恐縮でございますが、六ページをお開き願いたいと思います。  六ページは、表題にございまするように、旬別にまとめました平均気温の平年に対する差でございます。つまりここにございまする赤と黒の関係は、赤が、平年に対しまして、つまり温度 でございまするから、それだけ低い。それから黒の方は、黒の分だけ高いということに相なつております。これでごらんいただきますと、八月以降を特に御着目願いますれば、青森測候所から上の方、つまり北海道並び青森測候所関係につきましては、それ以外の盛岡以下の測候所がほとんど八月以降は黒字を出しておる、つまり平年よりも気温高目に推移しておるにもかかわりませず、青森から北の北海道におきましては、依然として平年を下まわる低温が続いておつたということがお読み取り願えるかと存じます。  かように津軽海峡と申しますか、あるいは青森県の一部をかすめましたところを一つの境といたしまして、八月以降の気象状況に関しましても非常に大きな差がそこにあろうかと存じます。さような点が反映いたしまして、先ほどごらんいただきました県別もしくはブロツク別作況の動きにつきましても、北海道はますます悪化をたどつておるということがお読み取り願えるかと存じます。  なお八月あるいは七月以来非常に御心配になりました北日本における本年の異例な気象に基く稲作の、特に冷害関係でございますが、その点につきましては、今申し上げましたように、盛岡以降が八月以降非常に順調に経過いたしました点もございまするし、なかんづく九月の中旬、つまり一番右の行をごらんいただきますると、九月中旬の気温は、特に北海道をくるめまして北日本関東東山北陸以北におきましては、平年を三、四度上まわるような高温を示しておるのでございます。かような非常な高温が続きました関係から、出穂期が遅延いたしまして、出来遅れを示しておりました北日本稲作も、九月の上旬もしくは中旬にかけまして非常な取返しを示しておるような関係にございます。さような意味におきましてこの表をごらんおきいただきたいと存じます。  それから七ページは、日照時間の関係でございまして、赤い方は平年よりは日照りが少かつたということでございまするし、黒い方は平年よりも日照時間が多かつたということでございます。  なお次の八ページは降雨量降水量でございまして、赤いのは平年よりは少かつた、つまり雨が少かつた。先般も申し上げましたが、関東を主産地といたしまする陸稲は、本年は非常に不良の作柄を示しておりますが、これは、先ごろ八月十五日の折にもちよつと申し上げましたように、六、七月の非常な低温が続きましたあとで、八ページの降雨量の表でごらんいただきまするように、八月になりますると、非常に雨が少い、特に中旬並びに上旬におきましては、ほとんど晴天続きでございました関係上、非常にみじめな生育を見ました陸稲に、かてて加えて旱魃現象が加わつたのであります。かような旱魃気象が若干お見受け願えるかと存じます。そういう点をはつきりいたしておきます。  なお九ページ以下は、目次のところで申し上げましたように、北海道から九州に至る間の主要測候所につきまして日別の本年度最高気温並びに最低気温がどういうふうに変化しておるかということを平年との差額関係をもつて示したのでございます。たとえば十ページの札幌でございますれば、まん中に平年の棒がございまして、それから上下に平年を上まわること何度あるいは平年を下まわること何度という関係グラフをつくつておきました。ごらんのように、北海道におきましても、九月の中旬だけはかなりの高温を示しております。十一ページ以下函館あるいは盛岡とずつとございますが、先ほど申し上げましたような関係がこの表によりましてもごらんいただけるかと存じます。  以上が二十九年の稲作期間における気象表についての補足でございます。  次は、別の印刷物として台風第十二号並びに第十四号に関する気象関係資料をとりまとめておきましたので、これにつきまして補足しておきないと存じます。第十二号、第十四号の気象概要という印刷物のとびらをめくつていただきますと、第一ページには、本年本土に上陸いたしました台風について十三号、十二号、それから十五号といろいろそこに色わけをしておりますが、多少入れ過ぎましたので、くしくしやとしてごらん願うのにかえつて複雑になりましたが、そういうコースをたどつてそれぞれの台風が本年本土を襲つているのでございます。  次の二ページは、格別御説明を申し上げるほどのこともございませんので、飛ばしまして、三ページ、四ページにはおかしな日本地図が書いてあります。この三ページ、四ページに示しましたのは、表にもございまするように、三ページは、台風第十二号の襲来いたしました際の最低温度分布でございます。黒いのは日中で、赤いしるしは夜分にそういう最低温度を示したということをこの表が示しておるのでございます。なぜここで温度を書きましたかと申し上げますると、第十二号、第十四号の一つの特徴といたしまして、転移現象と称せられるのがございまして、稲の形、被害の形態から申し上げますと、白穂が出ております。そういう一つの非常に目立つた被害がございまするので、それの関係ごらんいただきまするための便宜として、最低温度分布がどのようになつておつたかということを表示いたしたのでございます。  四ページは、第十四号台風を主といたしたのでございます。第十二号におきましては、主として昼間最低温度が参つておりますが、十四号はむしろ赤いのが多いことからごらんになりますように、夜分に湿度低下を見ておるのでございます。  次の五ページ以下は非常に長い表がたくさんついておりますが、要は台風によりまする農作物、特に、稲の被害につきまして関係の深い風速あるいは温度あるいは湿度、さような点につきまして各時間別、各測候所別に表示したのでございます。たとえて申し上げますると、五ページの長い表をちよつと繰つていただきますと、そこでもまた赤と黒の使いわけがしてございます。第五ページは台風第十二号におきまする風速を示したのでございまして、五ページの上の方の一番左に十二分の九としてございますのは十二日の九時というわけでございます。十三分の一とございますのは十三日の一時という意味でございます。要するに日付とその日の時間を示しておるのでございまして中に現われておりますデータは、風速が十五メートル以上の場合を赤で書きまして、十五メートルに満たない風速の場合を黒で書いたのでございます。なお風速につきましては、今申し上げましたのは平均風速でございますが、風速を現わす一つの方法といたしまして瞬間最大風速というのがございます。さような瞬間最大風速を五ページの表の一番右の方に書いてございます。一番右が秒当りの瞬間最大風速、たとえば富山でございますると秒当り三〇・四メートルであつたということでございまして、その左の十四分の一〇・〇五とございますのは十四日の十時五分だということでございます。その瞬間最大風速になりました日付時刻を示しておるのでございます。それは風速でありまして、次の折込みも同じように風速でございますが、七ページの折込み降水量でございます。それから八ページは先ほども申し上げました湿度を示した表でございます。八ページの湿度の表の右の欄外のマルじるしは最低湿度としてございまして、最低湿度を示した時刻はどこかというふうに測候所別マルをつけてあります。  以上が十二号につきましての風速あるいは降雨量湿度関係でございますが、たとえて申しますと、八ページの下から三行目の大分の欄をごらんいただきますと、ずつと右の方にマルが幾つかついて五十九とか六十とか、まあ六十見当の湿度を示しております。そこいらが大分といたしましては湿度が一番低下した時間でございますが、それと七ページの下から三行目の大分の欄の右の方をごらんいただきますと、降雨量は全然ございません。要は大分におきましては、本年の十二号の被害として特に大きなものはフエーン現象による白穂の発生でございます。かように湿度関係降雨量関係を見ていただきますると、雨がなくて要するに湿度が非常に下つた関係からああいう特異の現象が広汎に現われたのであろうかと存じます。さような点をごらんいただきまする御便宜のために、以上のようなものをつくつたのでございます。なお以下は十四号についての資料でありまして、その印刷物につきましては、以上のような点だけを補足しておきたいと存じます。  次にお配りいたしました資料の中で、縦になつておりますが、水稲作況調査圃における生育概況というのがございます。これは九月十五日におきまする作況判定の基準となりました水稲作況調査圃におきまする生育概況のうちで、すでに御報告いたしました分は省きまして、特に本表に掲げましたのは、有効穂数と全体のもみ数につきまして北海道以下鹿児島までを表示いたしたのでございます。ここにございます有効穂数と申しますのは、百本穂が出ましても、先ほどの大分の例でございますと白穂が出まして、それが全部不稔粒だけの穂になりますと、私らの方では無効穂ということに約束いたしております。要するに稔実粒がつきまする穂を有効穂と考えて約束いたしておるのでございます。その有効穂を白い棒で表わし、右側の斜線が入りました棒は、さような有効穂についておりまする全体のもみ数を示しておるのでございます。以下北海道から鹿児島までずつとございますが、この生育の表をごらんいただきますのもたいへんお見づらいかと存じますから、私から要約して申し上げます。この表に掲げました推定坪当り有効穂数、つまり稔実粒をつけるであろう穂数につきましては、北海道青森あるいは岩手、かような県を除きましては、全国的な有効穂数は平年を上まわる状況でございます。但し先ほども申しましたような災害地等におきましては、若干平年を下まわるような所も見受けますが、北海道あるいは東北地方のごく一部を除きまして、全体では穂数増という生育を示しておるのでございます。なお全体のもみ数につきましては、穂数の増加の割合に比しまして若干穂が全国的に小さくなつておりますが、何さま穂数が多い関係からいたしまして、推定坪当り全もみ数といたしましては、北海道を除きますが、全国的に過去四箇年の平均値を上まわる状況を示しております。これも災害のひどかつた所につきましては、若干の減少が見られますが、総じて災害地あるいは北海道等を除きますと、全体のもみ数は多いということに相なつておるのでございます。しかしながら御承知のように全体のもみ数が今後どのような稔実をいたし、どのような充実をいたすかということによりまして収穫がきまつて参るのでありますが、その点につきましては、たとえば受精歩合を測定いたしてみますと、北海道につきましては、特に北見あるいは帯広におきましてはほとんど受精をいたしておりません。非常な極端な低温が続きました関係で受精そのものが行われておらないという現象が見受けられます。しかしながらさような特定な地域を除きましては、全体に受精は順調に行われておりまするし、また気温表で御説明いたしましたように、九月の上旬、中旬におきまする好天候が続きました等の関係によりまして、いわゆる稔実歩合というものはかなりの高さになるような傾向がございます。しかしこれも西日本につきましては、台風十二号によりまして、県によりましてはさような影響を受けて、平年を下まわるという県も出ておりますが、さような災害地並びに北海道を除きますると、稔実歩合も過去四箇年値を上まわる傾向を示しているのが全国的な傾向でございます。なお部長から申し上げましたように、例年大きな被害を与えまする稲熱病の被害等も非常に軽微に推移しておりまするので、さような点などをすベて総合的に検討いたしました結果、部長から御説明いたしましたような作柄の結果を判定いたしたのであります。  最後に、お配りいたしておりまする横表の昭和二十九年水稲主要品種出穂期、これは八月十五日の折にもお配りいたしましたが、あの際は出穂済みのものが比較的少くございましたが、今回は全部が確定いたしましたので、私の方の気象感応試験地の主要品種につきましてここにあらためて確定値を表示してお配り申し上げたのでございます。一ページ、二ページあるいは三ページにわたりまして、日本地図の中で各県におきまする主要品種につきまして、私の方の気象感応試験地の出穂期状況を表示いたしたのであります。八月の際にも御説明いたしましたように、赤の二重まるで示しておりますのが昨年に対しまして七日以上遅れておるのでございまして、一重まるは昨年に対しまして三日ないし六日遅延をいたしており、黒の四角あるいは二重の黒の四角につきましては昨年とほぼ同様かむしろ若干進んでおるということを示しておるのでございますが、要は北海道あるいは東北におきましてかなりの出穂遅延を見ておりますが、その程度は北陸へ参りますると非常に軽微になりまして、関東から九州へわたりまする全地域につきましては、昨年並かもしくは昨年よりは若干出穂期は促進されているというような状況を示しておるのでございます。それから四ページ以下につきましては、各県別におもなる品種の作付け割合と本年の出穂期の具体的な数値をつけまして、昨年との差額をお示ししておるのでございます。お時間でもございました際にごらんおきをいただければ非常に幸いだと存じます。  なお前回八月十五日の際御説明いたしました折に、芳賀先生から北海道の事務所別の作況指数の御質問がございましたので、ここにはございませんが、口頭で御説明させていただきますると、北海道の内訳といたしましては、札幌事務所は七五%、北見は五%、それから函館は七一%、帯広は三八%でございます。但し帯広事務所の管内はいわゆる十勝の平野と日高が入つておりまして、十勝の方は非常に悪うございますが、日高の方が若干よろしい関係で——悪い中ではよろしい関係で、帯広事務所全体といたしましてはただいま申し上げました三八%というような作柄指数なつております。北海道全体につきましては先ほど申し上げた通りでございます。  なお北海道につきましては一、二補足をいたしますと、私の方の気象感応試験地でこまかく受精後の変化を見ておりますが、北見にございます気象感応試験地におきましては、農林二十号が受精歩合がわずかに四・五%というような状況でございますし、農林三十三号は割合によく、五六・九%あるいは共和というようなおくて品種につきましては、一・九%。以上は冷床栽培でございますが、直播栽培につきましては農林二十号が三・二%、農林三十三号が三二%、それから共和が三・八%というような状況でございまして、受精そのものが行われていないというありさまで、北海道冷害は極端な冷害だということが申し上げられるではないかと思います。
  8. 井出一太郎

    井出委員長 質疑の通告があります。福田喜東君。
  9. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 私は少し急ぎますので、きわめて概括的な質問を今申し上げまして、午後の時間をまた委員長に留保さしていただきたいと思います。  そこでこの作況指数でございますが、九月十五日現在となつておりますが、九州等におきましては、十二号、十三号等の被害というものは九月十五日以後において調査の結果が判明することに相なるだろうと思つております。この指数はいかなる根拠のもとにとつたのか、それをもう少し詳細に承りたいのでございます。たとえば統計事務所長の中でも、今度の指数全国的に非常に高かつたのに驚いている者が実はおるのでございます。この事実にかんがみますと、各都道府県の統計事務所長から報告されましたこの指数というものに、本省では筆を入れているのではあるまいかという疑念が起るのであります。もしそうだとすれば、何に基いて本省が修正しているのか、この点を伺いたいのであります。
  10. 野田哲五郎

    野田説明員 お答えいたします。第一点の台風関係でございますが、御承知のように九月十五日の作況は、大体九月十日あたりから十二、三日ぎらいで実測調査を終るわけでございます。台風はその後に参つたわけであります。従つてわれわれといたしましては、台風襲来後の一週間目ないしは二週間目あたりの状況を追跡いたしまして、前に得ました台風前の数値からその被害を引いて指数を出す、そのような方法をとつております。そこで調査の時期といたしましては、九月十五日の線を越えておりますけれども、その被害が九月十五日前に起きたものでありますから、大体九月十五日の発表の中にそれを入れるというような方式をとつておるわけでございます。  それから第二点の問題でございますが、これは府県の事務所から上りましたデータは、私の方の作況審議会において十分検討いたしまして、修正することがあるわけでございます。これは根本のデータをどう読むかという問題でありまして、全国的同一の感覚からデータを読むことにいたしておりますので、事務所長から報告があつた数字がそのまま発表になるとは限らないのでございます。
  11. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 私は今の答弁に対してはなはだ不満でございまして、たとえば穂ずれ等に関しましては、十二号台風について見ましても、台風後十二、三日してやつと黒穂になるので、技術者でも被害状況のほんとうのものは、その当時はわからないのであります。かつまた今統計調査部長が審議会ということを言われました。これは官庁が用いる常套手段でございます。審議会とか何とか会というのは責任転嫁の機関でございます。そうしてこの責任転嫁によりまして自己の責任を他に転嫁する、それがこういう数字が出て来るもとでございます。審議会が被害の実況を示すのではない、被害が行われて現実の実態がその状態を示すのである。審議会が行われたから数字が正しいということは言えない。この点についてあなたの責任を私はもう一ぺん追究したいのであります。
  12. 野田哲五郎

    野田説明員 被害につきましては、被害発生直後に大体の概報を地方からもらうことになつておりまして、一週間目及び二週間目の調査というものを相次いでもらうことにしておるわけでございます。なおその後の状態につきましては、変化の著しいものについてさらに報告をもらうことにしておるのでございます。そこで被害の算定につきましては、作況調査圃及び作報調査圃でカバーできない場合におきましては、被害調査圃というものを新たにつくりまして、そこでその調査圃につきまして変色もの歩合い、損傷の程度、それから白変の程度というようなものを一筆々々こまかく調べておるわけでございます。それとそれから作報事務所の専門家が、被害地域をまわりまして得る被害調査というものを、両者勘案してつくつておるのでございます。作報事務所から出ます数値が、われわれが最終的に発表します数値と異なる場合が間々ありますが、たとえば白穂になりました場合、全もみ数白穂である場合に、それを全部減収で見るというようなことが報告になるのでありますけれども、平年におきましても、すべてのもみの中で稔実いたしますのは一定の歩合いに限られるのでありますから、さようなものは差引いて行くというような方式をとつておるのでございます。
  13. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 一筆々々調査されると今あなたは言われましたが、私は十二号台風のときに郷里におつたのです。実際においては一筆々々の調査状況上不可能でございます。この点においてもうそがあるということを私たちは確認しております。  それからあなたは、平年云々ということを申されましたが、大分県の例をとりますと、大分県の場合は作況によりますと九一の指数なつておりますが、これを平年作百十二万石にかけると百二万石となるわけであります。しかるに大分県の被害減収高は二十万石となつておる。そうすれば台風がなかつたならば百二十二万石の収獲があつたということになるが、こうした被害なかりせばという仮定に立つた作況は、いかなる方法で調査しておるのか、詳細に御回答を願いたい。
  14. 野田哲五郎

    野田説明員 ただいま一筆々々ということを申し上げたのでありますが、それは全被害地について一筆々々といつた意味ではなかつたのであります。私の説明が不十分であつて恐縮でございますが、それは作況調査圃とそれから特に設定いたします被害調査圃、これについて調べる、こういう意味でございます。
  15. 原政司

    原説明員 それでは私から後段の御質問につきまして御説明をさしていただきたいと存じます。先ほど野田部長から御説明いたしましたように、作況調査圃を主体といたしまして、九月十五日の作柄調査の場合につきましては、大体十日から十二、三日の間にわたりまして、全穂数あるいは有効穂数それからもみ数について実測をいたすわけであります。さような状況から見ますると、大分県におきましては、これは瀬戸内の関係も大体さような傾向でございますが、かなりの有効穂数増加がすでに実測されておつたのでございます。またさような関係から全体の作柄といたしましては、平年をある程度上まわるということが期待されたのでございます。しかし御指摘のような台風、特にフエーン現象による被害によりまして、有効穂数の減少というものが現実に実測として現われてございますので、さような点を補正いたしまして、九一という答えが出たのでございます。
  16. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 この点は非常に実態と相違しているところがございますので、質問を留保させていただいて、なお午後当局に質問を続けたいと思いますが、午前中はこれで打切らしてもらいます。
  17. 井出一太郎

    井出委員長 芳賀君。
  18. 芳賀貢

    ○芳賀委員 作況調査について若干お伺いします。まず最初に今年度面積関係でありますが、昨年度に比べて約二万二千町歩の増反ということになつております。この面積の増減は統計調査部における算出の方式というものは独得なものがあるというように考えるわけでありますが、たとえば災害復旧によるところの増反分というものは一万八千町歩あるわけであります。これは主として昨年度風水害のごとき災害を原因として、それが水田としての形態を失つたことによつて反別の減反とこれをみなし、本年度これが復旧したことによつて増反とするというような、そういう処理のもとにおいてこれを算出しておるものであるというふうに一応考えられるわけでありますが、この点をもう少し詳しく具体的に御説明願いたいと思うわけであります。     〔委員長退席、吉川委員長代理着席〕
  19. 原政司

    原説明員 それではただいま芳賀先生からの御指摘の点につきまして御説明いたします。ただいまもお話がございましたが、私らの方の作付面積調査の時点といたしましては八月一日現在ということに相なつておるのであります。その際におきましては地目のいかんは別に問わないのでございます。現状につきまして水田の形態をしておりますれば水田、現状主義が建前でございます。なお調査の方向といたしましては、ちよつと技術的になり過ぎますけれども、御承知のようなランダム抽出による標本調査が主体でございまして、それによりまして大体〇・四ないし〇・五%くらいの目標制度のもとに設計をいたし、またそれによつて出て来ました数値によりまして最終決定をいたす、こういうことになつております。  なお先生からお話がございました作付面積増加の点につきましては、内容といたしましては、昨年の災害によりましては作付を行われなかつた土地が、本年は農家の御努力によりまして作付が行われたというのが大部分でございますが、その以前の災害等のときもその調査の中に反映して参ることは当然かと存じます。言葉が足りませんけれどもさようなことでございます。
  20. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうも説明が足らぬようですが、結局一つの通念としては、最近の農地の増減の傾向というものは、毎年約二万町歩の耕地が壊廃等によつて減少しておるという趨勢をたどつておるわけです。ですから農業政策の基本的なものの上から考えた場合においても、たとえば水稲面積の基本的な把握というものは当然必要なことになつて来るわけです。ですから、そういう毎年二万町歩くらいずつ減少して行くというような趨勢の上に立つて、ひとり統計調査部の調査の方式だけは、二万二千町歩も本年はふえたというようなことは、一般の政策面等の基礎資料としても適応性が若干薄らいで来るのではないかというふうに考えられるわけでありますが、     〔吉川委員長代理退席、井出委員長着席〕 しかもこの反別等の数字というものは、特に水稲の場合においては、毎年の供出割当等の基本的な数字として採用されておるというようなことになるわけでありますが、この統計調査部における、たとえば基本反別のごときものは一体どのくらいの面積なつているわけですか。
  21. 原政司

    原説明員 先ほど言葉が足りませんでたいへん失礼を申し上げましたが、総じて申し上げますと、昨年から今年の関係は、昨年ちようど植付期、六月、七月の間に、主として西日本でございますが、例の大水害がございまして、農地の壊廃もございますが、農地は依然として水田ではございましても、作付が行われなかつた。せつかく植えたものがなくなつたというようなところもございますので、全体といたしましては、増加の主なる原因といたしましては、さようなところに本年は作付が行われたということによるのでございます。なおこまかく申し上げますと、東北地方等につきましては、保温折衷苗しろの普及等に関連いたしまして、非常に頑強に存続しておりました通し苗しろ等も、わずかではございますが、減少の傾向を示しておるのでございます。なお北海道あるいは東北等につきましては、農家の自主的な開田、あるいは政府その他の援助による開田等が、微々たるものではございまするが、効果を上げておるというような状況もございますので、結果といたしましてはごらんのような増加を示しておるのでございます。  なお基本反別ということでございますが、ちよつとどういうふうにお答えしていいかよくわからないのでございますが、この壊廃面積につきまして一つだけ補足さしていただきますと、申告によりましても——申告と申し上げますのは、個人の申告あるいは役場の申告等によりましても、なかなか正確な壊廃の実態がつかみがたいのでございまして、私らといたしましては、各部落に一名ずつお願いいたしておりまする作物調査員から壊廃の具体的な状況をお聞かせいただきまして、なおそれを現地において確認するというような方法によつて調査をやらしていただいているのでございます。なお調査の台帳といいますか、源という点につきましては、御承知のように、役場に参りますと、農地改革関係によりましてつくりました農地台帳と、それから明治以来ございまして、たえず補正をいたしております土地台帳とございますが、私らといたしましては、土地台帳を基準といたしまして、現状に即さないものは、それを一つ一つ現状に応じて補正をして参る。その台帳を一つの源といたしまして、——台帳には、御承知のように今申し上げた台帳上の記載漏れ、あるいは現況との違いがございますし、それから台帳には御承知のように内畦畔、外畦畔の問題がございますし、またなわ延び、なわ縮みというような関係がございますから、理想的なことを私たちとして申し上げさしていただきますれば、一筆ごとの実際の測量をすることが、一番私は理想であると思います。しかしながら、御承知のように、田畑を合せますと全国で約八千万から九千万の台帳筆がございまして、とうていさようなことはできかねるのでございますので、近代統計学を利用いたしまして、標本推計調査という方法でやらしていただいているというのが現況でございます。
  22. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど申し上げた基本的な面積というのは、ただ前年度に対してどれだけふえたとか、減つたとかいうことでは、これは明確に理解ができないのです。ですから言葉をかえれば、過去五箇年間にわたるところの面積がどうなつているとか、そういうような一つの趨勢を明確に提示することが可能であると思いますが、これは今発表が困難であれば、後刻資料としてお出し願いたい。基本的な面積というものは把握してあると思う。異例な災害等によつて水田が一部流失したというような場合においては、またそれを原形に復する意味における災害復旧というものは、これは基本的な反別の中には、やはり解釈によつては包含されていると見てもさしつかえないと思う。純然たる開田によるところの増反とか、あるいは純然たる壊廃等によつて減ずる場合においては別でありますが、そういうような明確な、理解できるような数字というものはお出しになることが可能であると思いますが、その点はいかがですか。
  23. 原政司

    原説明員 ただいま芳賀先生からの御指摘の点でございますが、基本的な反別は確定されているかどうかという御質問のようでございますが、基本的な反別が数年前に確定されているということでは実はないのでございましまて、調査自体といたしましては、毎年毎年新しくなる。しかし面積調査の場合でございますと、前の標本が集積して精度を高めて行くという一つの傾向がございますので、調査といたしましては毎年々々新しくなりますが、調査自体の精度といいますか、内容といたしましては、逐次厳密度を増して行くというような性質を持つているのが今日の調査でございます。
  24. 中澤茂一

    ○中澤委員 この問題は、前にも部長とさんざん議論をしたのですが、最後は部長は、これは絶対のものではない。絶対のものでないものを基礎にして供出割当という問題が出て来るから、基本的な作付面積の問題が問題になつて来るわけです。実態において土地台帳を修正するといいますが、土地台帳を修正するなら、まず八千万筆あれば、おそらく七千五百万筆は修正を要すると思うのです。実際役場に備えてある土地台帳と実態面積の食い違いはほとんどあります。最も卑近な例で言えば、東京のような、土一升金一升というような所で、十八坪の登記面積が、実測してみれば二十四坪あるとかいうような、全部の食い違いがある。これは前にも申したように、実際実態調査をやらなければいけない。しかしそれには昭和二十三年でしたか、三百億か四百億かかつて、事実上できない。そこで私がこの間申し上げたように、供出割当について、作報でなくして、村でやつている共済の調査、これを何とか作報と一本化する方法は考えられないかということを申し上げると、そういうことはなかなかむずかしくて困難だという答弁をなさつている。しかし事実実態調査が非常に厖大な金額がかかつてできないとするならば、実際の実態面積をつかむために、やはり共済の一筆調査を利用するのが一番簡単なんです。共済は、御承知のように村の百姓がみな集つて、一筆ごとに面積調査もやつているのだし、これは供米一俵違つてもみなたいへんな利害関係がからんでいるから、どうもあそこの田はなわ延びがあつたとか、あそこの田はつぶれがあつて、記帳通りなかつたとか、そういうものを共済は実際農民が立会いの上で一筆ごとに全部やつておるのです。だからこれを統計の中へ、何とかして共済と離して持込むことができないかということを言うと、そういうことは困難だとこう言う。結局作付面積の実態の確定のないものが、その上いかに近代統計学の粋をもつてつても、これはわれわれは信用はおけないのです。絶対のものとしては考えられないのです。だからそういうふうなある程度納得するものでなければ、——現在も知事会議で問題になつておるものは作付面積でしよう。作付面積が違う作報を出している。作付面積と各県が共済なり県自体の調査によつてつた作付面積が違うというのが今難行しておるのでしよう。作付面積自体が正しくつかまれていない上につくられた統計というものは、これは一体絶対なものであるかどうかといえば、だれが考えてもこれは絶対のものじやない。だからわれわれはこれは絶対のものとしてはいないのだ、ただこういう状況であるという参考にしているのだという答弁を、これはあなたじやない、たしか安田部長だと思つておるのですが、言つたことがある。ところがその参考にしておることを農林省は、これは事実だとして供米割当をやるから問題が紛糾して来る。だからそういう面に対して将来考えるならば、どうしても私は農業共済でやつておる一筆調査のあの面積調査を、何とか今のあなた方の統計の中へ持込むことができないか、そうすればある程度の実積面積というものは出て来るわけです。そういう点についての御答弁と、それとも近代統計学は非常に進んでおるから、もうそれは絶対間違いないという自信があるのですかどうですか、ひとつ御答弁を願いたい。
  25. 原政司

    原説明員 中澤先生から、どうもたいへん適切な御質問でございますが、近代統計学ということを申し上げましたので、はなはだ言葉が不適切であつたかとも思いますが、標本推計調査でございますと、私が技術屋として申し上げますと、確かに御説のように、絶対真値というものはつかめないというのは、これはもう当然だと思います。しかし一般の統計といたしましては、御承知のようにただいま私らがやらしていただいておりますような標本推計調査と申しますのと、いわゆる一筆ごとに実測して参ります悉皆調査という二つのカテゴリーがございますが、後者つきましては、私らといたしましても、できることなら一筆ごとに一定の測量器をもちまして測定いたしまするのが一番理想だとは存じます。これが先生も御指摘のように、ちよつとやそつとのことではできませんので、次善の策といたしまして、今やらしていただいておりまするような方法でやつております。さような点におしかりを受けましても、どうも私ら自身といたしましても、最大の理想は別にございますが、さような点がございまして……。ただ共済との関係でございますが、調査一般といたしましては、そういう私らの標本推計調査におきまする統計学的な一つの片寄りというもののほかに、調査として一番こわいと申しまするか、私らとして非常に注意をしなければならぬと思つておりまするのは、いわゆる測定誤差でございます。たとえば機械が非常にばらばらである、温度をはかりましても寒暖計に狂いがあるとか、あるいは——、寒暖計の場合はそういうこことでございますが、実際の面積調査あるいはその他におきましても、人による差あるいは機械による差、さような点が実は多数調査をいたします場合には非常に困難な問題としてつきまとつて参りますので、共済におかれましても年々非常に御努力にはなつておりますが、ただちにこれをもちまして、私らの方の調査の中に取込むという点につきましては、ただいまの段階で、さようにできるということは、そういう調査の技術的な面を受持つておりまする私らといたしましては、ちよつと申し上げかねるのでございます。はなはだ恐縮なんですが……。
  26. 川俣清音

    ○川俣委員 これは基本の問題でありますので、私はあとでお尋ねしようと思つておりましたが、幸いここで関連してお尋ねしようと思う。実は標本推計調査は、これは日本全土、全耕地を見る場合においては大した誤りはないということの推定はできないことはないと思う。ところが実際問題としては、今中澤委員からあるいは芳賀委員から指摘されましたように、ある定地を見る場合においては非常に大きな誤差が出て来ておるという欠点を持つておるわけです。また現在の統計調査部で持つております機械そのものも相当古くなりまして、悉皆調査の場合には機械や技能の差が出て来るから危険だということは言えますけれども、あなた方の持つておる機械自体が相当古物であつて、そう自信のあるものではないことは、私が指摘するまでもなく御承知の通りです。最近相当訓練されまして、測量士等の試験を通つた者も大分出て参りましたから、将来やはり相当な測量技術を持つ所員が出て参るとは信じまするけれども、今のはやはり人的な要素、質的な要素から見まして、標本調査といえどもそれ自体が必ずしも完璧じやないと思う。そういう点についてみずからこれは反省しなければならないと思うのですが、それを可能なものとしても、日本全国的に見て大した違いはいなということは言えると思うのですが、今申し上げたような部分的なことになりますと非常に誤差が大きい。そこで問題は、冷害であるとか、災害であるとかという部分の発生した場合に、これをどうして面積をつかむかということになると、これは標本推計調査は全体として持つておりますので、部分の問題になりますとどうしても部分的な面積というものをどうして扱うか、これとぶつかるのです。あなた方の標本推計調査というものは全体としては間違いないかもしれないけれども、部分ということにりなますと、部分をはつきりつかんでいないのが標本推計調査の基本でありますから、従つてその部分の発生した病虫害であるとか、あるいは災害であるとか、あるいは冷害というようなことになりますと、この把握が十分行かないという欠点が生れて来る、私はそう見ているのですが、これは間遣いでありますかどうか、それが一点です。それから平面上の悉皆調査ということは非常に困難でありますけれども、飛行機によつて調査をするということになると大体標本推計調査よりももつと的確なものをつかめると思うのですが、こういう日本の耕地面積すら把握できないということになりますと、非常に変動の多い生きておる作物調査なんというものは、なおできないということになると思うのです。動かざるところの日本の耕地すら正確に把握できないとなれば、動くところの実態はさらに把握できないということになると思うんだが、この二点について御答弁願いたい。
  27. 原政司

    原説明員 ただいま川俣先生から御指摘の点の測定器具につきましては、悉皆調査でございましても、標本調査でございましても、その点に留意をいたしますることはかわりはないのでありまして、いろいろ御指摘のような機械の不備もございますが、かような点につきましては、今後努めて改善をして参りたいと存じます。  なお飛行機によります調査につきましては、御指摘のようにあれが使えるならばと思いまて、若干の個所につきましては、関係の方面の御援助もいただきまして、ただいまテスト中でございます。それの結果を見ましてまたいろいろと御援助を仰ぎたいというふうな研究はいたしております。  なお小面積における調査はどうかという問題でございますが、確かに先生のお言葉の通り、標本推計調査といたしましては、その性格上推計区域が広くございますればございますほど、同じ数の標本によります結果は精度が高くなつて参るという性格を持つておるのでありまして、私らといたしましては、水稲あるいは麦につきましては、県あるいは郡だけは、実用的に御利用なさる各方面におさしつかえのないようにという設計をいたしておりますが、先ほど来中澤先生からも御指摘がございましたが、かんじんな町村統計、あるいは理想を申し上げれば、各個人のたんぼあるいは畑の問題ということになりますと、私らとしてはまだ至らないという点がございます。これは統計学的、統計技術的に申しまして率直に私は申し上げます。ただ災害等が起りました際の処置でございますが、この点につきましては、先ほど野田部長からも申し上げましたように、さような小地域につきましては、作況につきましても被害調査その他を補完いたしまして、そこなりに一つの推計が可能なようにという努力はいたしております。  なお流失埋没等という問題になりますれば、これは明らかに局所的な問題になるのが多くの場合でございますから、さような点につきましては、現実悉皆ということによりまして、その分を確認して参るという方法によつております。以上答弁になりましたかどうか、御説明申し上げます
  28. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 関連して……。今まで川俣さんその他から御質問が出ておつたのでありますが、それにつけても私は、この問題はほんとうに重大だと思つております。先ほどから申されておりましたように、土台が狂つている上で建築をいたしますと、その建築物も狂つて来ることは当然であります。私の一番心配しますのは、こんなふうにして冷害風水害等々いろいろ災害等が連続継起して参ります。同時にこれに対して収穫の狂いが出て来ます。このたび北海道へ参りまして、私どもが至るところの農民に聞かされたことは、あなた方への非常なうらみなのです。非常なうらみを述べているのです。統計局のあまりなるでたらめな、いいかげんな、わずかばかりの調査によつてこういう高い収穫率を表わして来る。これはほんとうにあなた方に対して私たちはお気の毒だと思う。あなた方はあなた方の許された最大の努力と、そして最高の技術と、そして先ほど来申し述べておられます近代的な最高の水準を行く統計学等をあわせられて、きわめて忠実に表を出しておられるのにかかわらず、農民側から見ると、皆様方がでたらめであるという形においてうらみを持つておる。私はある所長さんに申し上げた。あなたがたとえば農民に焼き殺されてもしかたがない。たたき殺されてもしかたがない。あなたのまじめに表わされる数字は、すなおにそのまま御報告ください、それにあなたがそういつた脅迫的な声におびえて数字を動かされることがあつてはなりません。それはそのまま出してくださいと言つたのでありますが、そう言うよりしかたがないのであります。しかしその出すもとが狂つてつたのでは、これまた農民のうらみ——たたき殺せとわれわれも一緒になつて扇動したくなる。だからここでひとつ部長さんも一奮発されて、五百億かかろうが、六百億かかろうが、三年がかりでも、五年がかりでも、七年がかりでもいいから、これは継続事業として、来年は北海道、再来年は東北地方、再来々年は関東地区と、せめてこんなふうにしてでも、あるいは県ごとにしてもいい、とにかく正確な基礎を持つて努力しておるという事実を、早急にお示しになることが必要であり、農民諸君をいくらかでも心を休ませることだと思う。現に今ここに配られた災害対策全国農民大会の要請書にもそのことがうたわれておる。こういつたでたらめな基盤に立つてわれわれに過大な供出割当をするということに絶対反対する。これが進んで行けばやがて供米ストになる。これはあなた方が悪いとか悪くないとかいうことを責めておるのではなくて、その根本の問題をひとつお考えくださつて調査予算をおとりになることに御努力ください。われわれもまた全力を注いで側面から御協力申し上げるにやぶさかでありません。このことを申し上げておきます。
  29. 野田哲五郎

    野田説明員 ただいま非常に御激励をいただいたのでありますが、これは私の記憶間違いかもしれませんけれども、明治の土地調査にあたりまして使いました金が、当時の金で三千万円ということを聞いております。それを今日の金に直しますと千五百億ということになりまして、非常に厖大な経費になるわけでございます。われわれ四十億の予算をようやつと獲得している状態でありまして、非常に懸隔がはなはだしいので、実は参つておる次第でございます。ただ一般的な趨勢といたしましては、悉皆調査を徹底的にやればやるほど非常な金を要しますので、それを経費を節約して、正確度があまり落ちない方式を考えようというようなことで、推計の方式が始まつたわけでございまして、現在の段階におきまして推計の方式を悉皆調査に切りかえますと、予算上非常に大きな困難に逢着することをおそれているわけであります。この推計方式につきましては、私も統計調査部に入りまして勉強しましたけれども、なかなか及ばずというようなかつこうで、一般に非常に理解しにくい問題かと思いますけれども、この点は広く承認されておる方式でございますので、特に有識の方々の御後援によりまして、この方式によつてだんだんと農家の方あるいはその他の方々が納得していただくようにお考いただければ、非常に幸いかと思うのであります。先ほどからいろいろ御指摘がありますように、この方式によりますと、小さい面積よりも広い面積に行けば行くほど精度が増して来るものでございますが、本質的に誤りがなくなるわけではないのでございます。私どもが現在やつております方式によりましても、やはり誤差というものは、面積において一%、作況においては二%程度のものが計算上誤差として出て来るわけでございます。かようなことを承知いたしております。その他の方法によりましては、非常に予算の制約がある。なお実測の誤差も、実測の回数が多くなればなるほど出て来るというようなことで、むしろこれの方が安上りで正確度が高いじやないか、かような気持で実はやつておるわけでございます。一般の方々にぴたりと納得いただくような状態にないことが非常に遺憾でありますが、特に有識の方々には御了解をいただきまして、この方式を育てていただければ、非常にありがたいと思うのでございます。
  30. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ただいまお答えいただいたのでありますが、まさにその推定方式ということについて、現状においては、できるだけその推定方式というものの誤りの小さいことを農民諸君に納得させねばなりませんし、われわれもその努力をいたしましよう。しかし推定方式は、あくまで推定なんであります。ちようどこの間堤議長さんが、国会の乱闘のときに、議場の中に入らずに、心眼をもつて認定しておられる。心眼と推定方式は大分開きがありますけれども、やはり推定の中には心眼的な傾向を含んでいる。そこで私はひとつ具体的な例を申し上げますと、昨日も御報告申し上げておいたのですが、これはあなたがお帰りになつてすぐ調査してください。岩手県九戸郡の大野村と山形村とそれからもう一箇村、そこにおいて、大麦小麦を農民は皆無だと言つている。ところが統計の方ではこれを何分作かに見ておる。そこでこの両方の意見が一致せずに、いまなお共済の問題を解決することができないというので非常な争いになつている。しかもそこの農民の憤懣は、爆発一歩前まで来ております。これは、言葉を過大にするのではないのです。ほんとうにそういう声を聞くのです。だから推定方式の推定という言葉それ自体が、すでに農民諸君に不安を与えている。統計は科学じやないか、科学はあくまでも一寸一分間違いないように出して来るのが科学じやないか、それなのに推定というのでは、人間の頭がぐらぐらすれば推定も狂うじやないかというのが、農民諸君の考えです。これは現状においては、あなた方のおつしやる通り、推定方式の誤りの少いほど最大の方式であると申せましようけれども、将来にわたつてはこれじやいけない。だから将来は、たとえば明治初年に一千万円であつたものが、今は一千五百億になるか幾らになるか知らぬが、明治初年のころの調査方式と現在の調査方式とは、機械も非常に発達した今日であるから、開きが来ておるであろうし、あのとき一千万円かかつたのが、今日一千五百億かかるかかからぬか知らぬが、たといかりにかかつたところで、これを五箇年間に割つて行けば、それで予算は非常に少くなつて来る。その努力をせられることをこの辺でお誓いになつておくことが、ぼくは農民諸君に対して忠実であり必要だと思うのです。
  31. 野田哲五郎

    野田説明員 ただいま御指摘の岩手県の村の麦の被害調査につきましては、私の方と現地との間の見解の相違があつたようでありまして、たしか私の方も再調しまして、苦干の修正はしたかと考えます。しかし大体私の方の数値が基本になつて、一応修正されたということは聞いております。そこで先ほどから申しますように、現在のわれわれの仕組みといたしましては、一般の収穫につきましては県単位、被害につきましては、その現場々々ということになつております。その現場々々ということになりますと、精度がずつと落ちて来ることは、十分承知しておるわけでありますが、現在それにかわる方式を持ちませんので、こういう方式によれば被害はこういうことになるというつもりで進んでおるわけでございます。安藤先生の御指摘の大規模な悉皆調査の問題につきましては、実は経済審議庁が国土調査等の一環としてこれをやることになつておるのでありまして、私どもはそれの実現を持つ、かようなつもりでおります。
  32. 川俣清音

    ○川俣委員 先ほどの私の質問の主要な点は、標本推計調査でありますと、全体の見きわめは必ずしも誤差が多いというわけには行かぬだろうけれども、その欠陥として部分的に発生しました病虫害であるとか、風水害であるとか、冷害であるとかいう面積の算定には非常に役立たないものであるということなのです。郡とか県とかいう大きい面積には確かに一定の標本推計調査というものはある程度誤差をなくすることができるであろうけれども、部分的なものについての調査ということになりますと、部分調査というものを十分把握していないのが現状であるから、そこで大きな相違が来るのではないか、これは明らかではないか、その点の指摘なんです。その点に対する答弁がないのです。
  33. 野田哲五郎

    野田説明員 ただいまの点につきましては、一般的に申しますれば、精度が非常に落ちるということは否定できないと思います。しかし私どもとしましては、年々面積調査によりまして集積しております図上に被害地域を落して参りまして、それを元に面積を推定する方式をとつておりますから、目で簡単に見たりあるいは足で簡単にまわつただけよりもはるかに精度が高い、かように思つております。従つて一般に絶対正確とまでは行かなくとも、非常な近似値を御要求になる気持からは差干離れると思いますけれども、今までの被害調査に比べますと、はるかに近似値に近づいておると思つております。
  34. 川俣清音

    ○川俣委員 それは答弁にならないのです。たとえばある品種が非常に冷害にあつたという場合には、どうしてその面積を調べるか。標本推計調査ではその村の推計面積が困難だということは統計学上出て来ておるわけです。困難で把握できない作付面積の中に発生した冷害あるいは風水害面積をどうしてはかるかという問題なんです。これは実側調査でやるのかあるいはこれもまた推計調査でやるのか。これは面積ですよ、被害率じやないのです。被害率はある程度サンプルをとれば推計できるということは言える。問題は面積です。
  35. 原政司

    原説明員 ざつくばらんに申し上げますと、私らの設計指導といたしましては、先生の御指摘のような一箇村あるいは、二、三箇村、あるいはもつと小さな区域になりました場合は、そこの中の被害の出方をさらにちようど県推計をやりますと同じような方法によりまして階層わけをいたしまして、その中から若干の筆を抽出いたしまして、そこでやるようなことをその段階におろす、もちろん流失埋没というようなものがどこかに一枚、ここに一枚というような数の少い場合でございますれば、それ自体をそこに押えるということをいたします。設計者としてはさような気持でございますが、御承知のように何分にも能力あるいは人員、経費等の制約もございまして、先生の御指摘になりますような点が設計と実際に必ずしも十分行つている段階ではないと率直に思います。至らざる点につきましては十分気をつけて参りますが、なかなかむずかしい問題でございます。
  36. 芳賀貢

    ○芳賀委員 面積の問題ですが、先ほど原課長から、作付の反別というものは必ずしも固定のものではないと言われたが、これはあなたの言うまでもないことなんです。確固不動のものだということはだれも考えておらぬ。それから地球の面積というものはそう毎年々々伸縮自在であるということもわれわれは考えておらぬのです。ただ統計というものは何かの大きな目的というものを持つておるはずです。それがただ単に米麦を中心としたるしかも政府の食糧行府の一環としての従属的彼割を果すような面だけに大きなウエートを置いてやつておるところに正確さを疑われるような原因がひそんでおるんじやないかということを私は指摘したいんです。しかし統計というものは、あくまでも純科学的の立場において行わるべきものである。われわれはこれを守らなければならぬという立場の上に立つておるから、そういうことはあえて言わないわけなんです。言わないけれども実際やつていることはそれと逆な方向をたどつておるから、たとえば水稲反別の把握の場合においても、どういうことを基本にしてやつておるか。その基本反別というものははたしてどうなつておるかということなんです。ですからただ単にわが国の耕地面積全体というものは、麦とか米にだけウエートを置くような考え方でなくて、その全体を正確に把握するということが、まず前提として必要になつて来るわけです。しかしながら米麦以外の農作物の反別の把握等はまつたく閑却しておるというのが実情であります。ですから、たとえばわが国の総体の耕地面積の趨勢がどうなつているか。毎年二万町歩の減少を来しておるというその具体的な理由というものは、統計調査の中からはさつぱり出て来ておらぬというような貧弱な状態なんです。ですからこの壊廃の場合においても、農地としての目的を喪失した場合の壊廃と、またあなた方の考えておるところのただ災害によつ流亡、流失したごときものもこれを壊廃と認めておるようなやり方の場合においては、分析が非常に散漫になるということを言わざるを得ないんです。ですから全体の耕地面積の把握の上に立つて、水田面積の基本的な反別というものはどの程度に押えておるか。ただ昭和二十八年度に対して二万二千町歩ふえたとか、あるいは何千町歩つたということでなくて、最近五箇年なら五箇年の動きというものはどういうふうになつておるかということを具体的に説明する必要があると思う。昨年との間に面積の大なき異変が来ておるわけです。しかもこの災害第によるところの壊廃とか復旧の反別の正確な把握というものは、さつきも言われたように、末端における部落に調査を依嘱して、その調査員の調査したものを検討して、いわゆる標本推計調査によつて、それはプラスしたり何かの手かげんをして、大体この程度減つたとかふえたというようなことでやつておられるわけでありますが、少くとも現在の統計というものは、わが国の一つの政策上の基本的な資料になるのだという建前の上に立つた場合において、もう少し権威のある、具体的な説明というものができ得ると思う。こういうものは、時の政府の鼻息をうかがつたり何かして勘案したものではだめだ。自由党の福田委員でさえ、すでに本年の九月十五日の指数というものは、多分に政治的な影響を受けておるのではないということを、与党からも指摘されておる。ですからもう少し厳然たる、権威のある説明がどうしても必要になつて来るので、私は冒頭に、面積の把握に対してどういうふうにやつておるかということをお聞きしたわけです。
  37. 原政司

    原説明員 権威ある説明をしろということでございますが、もしなんでございましたら、ほんとうの専門家に説明させてもよろしゆうございます。先生の御質問の点は、多分耕地面積をはつきり調べるようにしたらどうかというような御質問でなかろうかと推察しておりますが、確かに御指摘がございましたように、この統計調査部ができましてから日が浅うございますので、仕事の着手の順序といたしまして、米麦その他主要作物作付面積をできるだけ早く、毎年できるだけ正確に把握して参りたいという点に、限られた人員をつつ込んでおるのでございまして従いまして耕地面積全体ということを、ただいまの段階において確定するという、まだこれだけの蓄積が実は十分行われておらない点は、御指摘もございましたが、私らといたしましても非常に遺憾に思つております。さような点につきましては、いろいろと御鞭撻いただきまして、今後とも努力して参りたいと存じております。しかし耕地面積自身が確定されないといたしまして、しからば作付面積が技術的に見て非常に不完全なものであるかということになりますれば、私といたしましては、それはさようには必ずしもならないというふうに思つております。なぜかと申しますと、明治以来の蓄積されました土地台帳もございまするし、また農地改革等に関連いたしました筆ごとの台帳等も役場にございます。かようなものはすべて私の方で一枚々々カードに転記させていただいておりますし、また作物調査員ということで申し上げましたように、年々の動き等につきましては、私の方の少い人員で承知しかねる点もございまするから、作物調査員、あるいはその他の方々から実情をいろいろお聞きいたしまして、そのカード面積というものを整備いたしておるのでありまして、そのカードについてランダムに標本を抜きまして、そこについてカードにおきます面積、これは主として台帳基準面積でございますが、それと実測面積との関係から全体を推計してエスチメイトして参るという手続をとつてございます。さような方法でやらしていただいておりますことを御説明いたしまして、答弁になりますかどうか、とにかく実情はさようでございます。
  38. 井出一太郎

    井出委員長 午前中の会議はこの程度にいたしたいと思いますが、伊東委員より資料要求がありますのでこれを許します。伊東君。
  39. 伊東岩男

    伊東委員 ごく最近の作況指数の御提出を願いたいと思います。御提出の九月十五日現在のこの指数は問題になりません。こんなものを基礎にして災害対策もできませんし、あるいは供出割当の一つにもならないと思いますので、委員長を通じて要求いたします。
  40. 井出一太郎

    井出委員長 伊東委員に申し上げますが、九月十五日現在作況はただいまお示しした通りでありますが、この中に織り込まれておらない十四号、十五号台風被害については、明日発表相なりますので、その説明を十四日の委員会にさらに追加していただいてその上にいたしたい、こう考えます。     —————————————
  41. 井出一太郎

    井出委員長 この際理事の補欠選任についてお諮りいたします。金子委員が逝去いたされましたので、理事に欠員を生じましたが、その補欠を委員長において指名いたしたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、吉川久衛君を理事に指名いたします。  この際暫時休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後二時二十七分開議
  43. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。芳賀貢君。
  44. 芳賀貢

    ○芳賀委員 午前中に引続き御質問申し上げますが、面積関係は、十四日の委員会で、なお十四号、十五号台風被害の報告があると思いますので、きようは一応留保しておきます。  次に、先ほど安藤委員から、岩手県下における麦の作況調査の結果と共済関係の非常な食い違いがあるということで指摘がありました。これに対しては野田部長から御説明がありましたが、ただこの際お伺いしておきたい点は、作報の調査一つの態度として、凍霜害等の原因による減収の場合においては、最高五割以上の減収はあり得ないという不文律があるというふうに、われわれは現地で聞いて来たわけでありますが、かかる不文律というものが現存しているかどうかということを、参考までに聞いておきたいのであります。
  45. 原政司

    原説明員 ただいま御指摘の点でございますが、さような不文律と申しますか、そういうものはございませんので、はつきり申し上げておきます。
  46. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点が現地との食い違いの上において、大きな論争点になつたようにわれわれは聞いて来たわけです。原因がどうであつても、結果的に指数が五〇になる場合もあるだろうし、四五になる場合もあるだろうし、その収穫の結果に対しては、統計調査部といたしましても、すなおに実態を認める態度というものは、ぜひ必要であるというふうに考えるわけであります。もしも誤つて、現地の作報事務所等において、霜害等の被害が原因になつた場合において、五〇%以上は認めないというような誤つた解釈が末端において行われておる場合においては、今後の統計の科学的な権威の上から見ても、これは憂うべき事態になるのではないかというふうに考えますので、原因がこのような点に伏在しておつたとするならば、今後現地の再確認をする場合においては、かかる事態が再び全国的に起きないように、ぜひ処置をしておいていただきたいと思うわけであります。この点を野田部長からもう一度確認しておきたいと思います。
  47. 野田哲五郎

    野田説明員 私どもは誤りのないように精進いたす覚悟で進んでおりますが、もし誤つておりました場合には、改めるにやぶさかでないと思つておりますし、またみんなにもさようなことを申しておる次第でございます。先ほどお話の中に不文律という問題が出ましたが、これにつきまして、私どもの方で被害による減収尺度というものを持つております。これは、いろいろな地域で起りました過去の経験を整理いたしまして持つておるのでございます。これを単純に当てはめて被害数量を算定する場合もありますし、また現地の事情がその基準に合わない場合には、試験場その他と十分協議いたしまして基準を考えておる、かような方向でやつておる次第でございます。
  48. 芳賀貢

    ○芳賀委員 岩手県の九戸郡は、ことしの六月十日の凍霜害等によつて、相当深刻な被害を受けておるのです。この地帯に対しては、特に当委員会といたしましても、井出委員長を初め、私どもも現地の調査を行つておる。当時あの地帯は、樹木までも葉が全部ちようど紅葉したような形になつて、今まで例のないような凍霜害による被害現象が露呈されておつた。ですから致命的な被害を受けた作物は、あるいはその後そば等を再播して転作するような余地もあつたかと思います。しかし残つた作物をそのまま残して、何とか収穫しようという場合においては、凍霜害が原因でなくても、五分作以下の収穫の地域もあつたように、私たちは常識の上から見ても考えております。ですから、ああいう特に山間地帯の、畑作だけに依存しており、しかも農業の経営規模が非常に零細で、非近代的であるというような地域において、現在においてもひえがほとんど主食であるという地帯において、麦の災害が非常に大きかつたという事態は、今後の農家の経営の上においても、致命的な影響がある。さらにかかる地帯においては、開拓農民等もそこに入つて、営々として努力しておるというのが実情であります。ですから、ことさらにこれらの収穫の把握に政治的な意図を加える必要があるということではないのであります。ですから、そういう非常に条件の悪い地域におる統計調査部の職員等の努力とか困難というものは、察するに余りあるわけです。従つて被害の把握に対しては、その現地の実情に即したような人員の配置であるとか、そういうことも画一的でなくて、細心の配慮が必要でないかというふうに私たちは考えておるわけであります。次に申し上げたい点は、午前中に原課長からの説明もありましたが、北海道においては統計調査事務所が四箇所ほどあります。前回の報告の場合においても、四箇所の内容はしさいに表示されておらないのであります。北海道はあくまで一本にして行くという場合においては、しかも午前中私が指摘したように、米麦だけを中心にして統計調査部の農作の調査等が行われるとするならば、北海道の四箇所の調査事務所を設ける必要は、むしろなくなるのではないかというように考えるわけであります。必要があつて四箇所の統計調査事務所を置いて、その事務所ごとに一つの地域を与えておる、しかもその地域ごとに、現地においては、責任のある調査あるいは諸般の報告等をまとめて本庁の方にも出しておるような場合において、ことさらにそれぞれの事務所の提示した報告を表面にうたわないような形で処理されるのは、いかなる御意図によるものであるか。この点を明確にしていただきたいのであります。しかも昨年までは、この内容に四箇所の事務所の数字等は出してあつた。ことしになつてから、質問があれば報告するというようなことは、非常に奇異の感にたえないのであつて、これは行政整理の線に沿つて、明年から北海道を一本にする意図で、わざわざ出さないようなことにしておるのか。その点をこの際明確にしてもらいたいと思うわけです。
  49. 原政司

    原説明員 一応昨年との関でございますので私から申し上げますが、実は芳賀先生のお話のように、従来各事務所別のものを並べておりましたが、いろいろの面で御説明を申し上げておりますと、急いで発表いたします際になりますと、よけいなことを書くなという話が出たりいたしました。結局府県別の編成順に従つて書くというのが、御利用者側からその方がいいかなという点もございましたのでやつたわけでございます。先生の御指摘のような、北海道一本で仕事をやつて参るということは、決して適当だというふうには存じておりません。北海道は条件も各地で非常に違いますので、少くとも現在の四事務所別に仕事をやつて参るということが、私は調査上最小限度必要だというふうに思つております。なお御指摘がございましたので、今後とも発表につきましては、従来通り北海道は四事務所を掲載いたしたいと思います。
  50. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私が申し上げておるのは、必要ないということを前提として言つておるのではないのです。一つの必然的な理由があるから四箇所に事務所を置いておるのだと私は理解しておる。しかも北海道の場合は、地域の上からいつて面積からいつても、東北六県に新潟県を加えただけの広大な地積がある。しかも日本海あるいははオホーツク海、太平洋、それぞれに面しておる。海面もまた違うということになると、気象条件からいつても、統一化することはあるいは困難かもしれないと思う。ですからそういうような存在理由があつて、わざわざやらしておる。各事務所をまわつてみても、たとえば北見の報告事務所のごときは、非常に貴重な資料になるような研究調査等も行つておるわけです。ですからそういうところでつくつたデータが、やはりそのまま尊重されて用いられるという場合においては、現地においても今後精励するためにもなると思うわけです。ただ北海道を、めんどうくさいから一本の数字にまとめるのだというようなことは、今後とるべき手段ではないのではなかろうか。ただ問題は、米だけに重点を置くという場合においては、札幌事務所が十一万二千五百町歩、そのほか函館の場合は二万町歩、帯広事務所が七千六百町歩、北見が七千百町歩ということになつているので、米作の面積の比率は非常に格段の差異があるわけです。だからそういうところに軽重の差をつけるというなら別でありますが、統計の持つておる任務というものは、ひとり作物調査だけではないのであります。諸般の経済的な調査であるとか、あるいは農政の基本的な資料になるような一切の調査をやつておるというところに使命があるのです。ですから、常に政府当局がこの統計調査部に対して削減のなたを振おうとする場合においても、われわれはここに一つの存在価値を強調して、常に援護しているような側におるのです。それにもかかわらずこういう作況の報告をやるような場合においては、めんどうくさいからその四箇所一からげにしてやつておくというようなことであれば、これはむしろ逆なことにはなるけれども、もう少し統一してブロツクごとの事務所の所在でもさしつかえないのではないかということにもなるわけです。これは羽田農林次官も今出ておられるのですが、どういう考えを持つておられるか、一応いらなければ、これは切るなら切るということをはつきり御答弁願いたいと思う。
  51. 井出一太郎

    井出委員長 まず原課長から技術的に御答弁願います。
  52. 原政司

    原説明員 それでは委員長の御指名でございますので、私から補足をいたしますが、芳賀先生の御指摘の通り、北海道は先ほども私から申し上げましたように、最少限度四事務所にわけまして調査いたしますことが、私は技術的に言いまして絶対必要だと存じております。ただ今回のあるいは前回の発表につきまして、北海道の四事務所別の数字を記載いたしませんでしたことは、はなはだ私の不手ぎわでございまして、深くおわびを申し上げます。今後発表につきましては、先生の御指摘のようにやつて参るつもりでございます。
  53. 羽田武嗣郎

    ○羽田説明員 統計調査事務所は別に水稲だけが目標ではございませんし、特に北海道のごとく、はつかとか除虫菊とかあるいは菜豆類というような輸出作物を相当含んでおります地方におきましては、どうしてもそういうものの基礎調査をはつきりして、そして輸出振興対策をはかつて行くということが農林行政の一つのねらいでなければならないと考えるものであります。そういう意味において農林省としては、将来四つのものを整理して一つにするというような考え方はひとつも持つておりませんから、その点は御安心をいただき、また御協力をいただきたいと思います。
  54. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私はそういう点に不安を持つておるわけではないのですが、今農林次官の言われた点は、非常に期待に沿つた御答弁であるというふうに私は考えております。そこで統計調査部の任務が、あまりに供出を中心とした米麦等だけの問題に集約され過ぎておる。ですからことしの作況調査等に対して、たとえば北海道七十五万町歩のうち水稲が十五万町歩にいたしましても、なお六十万町歩の畑作がある。では六十万町歩の畑作物に対して現在どのような調査が行われておるか、これらは今年度冷害並びに台風災害等においても、その数字が一番信をおけるのは統計調査であります。ですから農林次官のような考えで行く場合においては、水稲とあわせて畑作の現在の作況というものも、たとえば九月十五日現在であるならばこれは当然提示さるべきものであるというふうに私は考えておるのです。本日はお示しになつておりませんが、これは十四日の十四号、十五号台風被害調査等とともにこの畑地帯の作況数字をお示しになることが可能であるかどうか、その点をお伺いします。
  55. 原政司

    原説明員 ただいまの御質問でございますが、北海道のみならずその他の地方につきましても、主要な雑穀につきましては、十月一日現在をもちまして作況調査をいたしているのでございまして、目下事務所からの報告を受けつつ逐次整理中でございます。発表の時期につきましては、ただいまどの段階まで整理が進んでおるか私もちよつと承知をいたしておりませんが、しかし近々発表申し上げるように努力いたしたいと思つております。
  56. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点に対しては、ごく短時日のうちにまとめ上げて報告を願いたいと思うのです。特にたとえば帯広事務所にしても水稲面積は七千六百町しかない。ですからここは作物調査をやる場合においては畑地帯が主体になるのです。これだけをやつておればひまでしようがないのです。ですからやはり同じような仕事の分量を与える場合においては、期待に沿つた時期にその報告をとることが可能であるというふうに考えるのです。資料を出せと言わなければ出して来ないかもしれませんが、米麦と同じような考えの上に立つて雑穀の調査もやつておるとするならば、これは責任のある報告をさつきゆうに委員会の方に出していただいて、特にことしの災害対策をやるような場合においては、畑地帯においてもどれだけの被害があるかということを認定するために、この調査が貴重なる資料になるという前提の上に立つた場合においては、ぜひ速急に進めてもらいたいと思うのです。  次にもう一点お尋ねしておきたい点は、これは今度の調査をやつた場合において、ある統計事務所の出張所の主任の見解をただしたのでありますが、今年度調査をやつた場合において、これは一例ですが、七二程度の指数が出ることになつたというので、自分たちも現地を見たときに、これは現地の作況と非常に食い違いがあるのじやないかというようなことで話合いをしたわけでありますが、これは決してわれわれが農林委員として圧力を加える意味においての話合いではなかつた。ところがあとで承知したところによると、当時の七二と言つた指数は、前年度に対して七二と申し上げたのだ、こういうような話があつたわけでありますが、これは実に不可解な話なんです。少くとも専門的な科学的な立場に立つておるということを誇称しておる統計調査部の職員が、去年に比べて七二の指数であるというような表現を使うということは、実に当を得ないわけであります。作況指数を出す場合においては、平年作に対して幾らの指数なつたということが用いられる表現でありますが、特に昨年の場合においても、冷害地帯の昨年に比べて七二であるというようなことがあとで解明するというようなことは非常に当を得ないのであります。そうなると、その地域の調査は非常に信を置くことのできないような調査であつたということをわれわれは考えざるを得ないわけです。ですから末端における個々の標本筆の数あるいは調査筆等も、非常に広い地域の中においては少な過ぎるような現状でありますが、これは人員の寡少等から見てこれ以上求めることはできないかもしれないけれども、そういうような自信のない、こちらから質問すれば明確に自信を持つて答えられぬような、その地域内における調査は信を置くことができないのじやないかというふうに考えるわけであります。この指数に対する一つの解釈、認識は、現地に対してどういうふうに指導、徹底させておるか、その点を一応聞かしてもらいたいと思います。
  57. 原政司

    原説明員 御質問の点でございますが、おそらく現地の方といたしましては、先生の御指摘のような非常にまずいお答えをいたしたかと思います。ただ私が察しますのは、御承知のように実測いたしました結果を平年の値——私がここで平年と申し上げますのは、作報ができましてから後の実測いたしました結果と比べてみたり、また一番記憶に新しい昨年と比べましてどのくらいかという、横縦のいろいろな面から検討いたしますので、おそらく不用意に対前年の比率を申し上げたのじやないかと思うのでありまして、そういう点で非常に不備であつたということは、私からおわびを申し上げます。ただ実情といたしましては、ただいま申し上げましたような対前年比というものを、それぞれの実測の項目につきまして検討いたしておりますので、それから勢い対前年の作況関係ということを当然事務所の末端において検討したのじやないかと思います。さようなことでございますので、至らない点はおわびを申し上げますが、そういう事情のあることも御了承をいただければ幸いかと思います。
  58. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は決してあなた方に対し陳謝がましいことを求めているのじやない。ただ非常に貴重な重要な調査であるから、現地の担当職員も、自分の調査に対しては自信を持つた態度でやつてもらいたいと思う。権力等に屈することなく、正しいものを正しいとして調査するという態度がなければならぬ。ですから、私たちがたまたま行つて、これは大分違うじやないかという場合において、昨年はたまたま冷害とか凶作のためにその指数もおそらく七〇とか八〇にしかなつておらぬわけですから、そういうことを指摘されてこれは実は昨年の対比ですということになると、去年は七〇で、今年はその七〇ですから平年作に対して五〇くらいの指数にしかならぬわけです。そうなれば今年の指数は大体五〇程度であるということを率直に言つてくれた方がいいのです。そういうことになれば、自分たちも現地の作況と対照して、なるほどこれは五分作程度であるかもしれぬということが判断できるわけです。そういうような心構えというか、調査に当る者の一つの態度というものに対して、何か非常にたよりないものがあるのじやないか。そうなると、結局現地の農民との間に何か相いれないものがそこに生ずる危険がある。しかしこれは別に生産農民と統計調査部の職員が仇敵の間柄というわけではないので、ただ任務が違うから、たまたまそこにこれは利益になるとかならぬとかいう打算の上に立つた場合には、そういう誤解が生ずるかもしれませんが、しかしあくまでもこれは、何もこそこそと秘密主義にやる必要はないわけです。公明な態度で、調査についてだれにでも納得のできるような説明というものがやはりできるはずです。しかし一定の調査が発表されるまでの間は、やはりある程度公表できない時期もあろうと思いますが、やり方とか、やつたことに対して、後日みんなに了承を与えるようなそれだけの力というものは、現地の職員にどうしても持たしてもらわなければならない、こう考えるわけでありますが、間々そういう現象が見受けられるわけであります。そういうものが累積してこの府県単位の作況指数がこうなつたという場合において、やはりこれに対しては、ある程度信が置けないというような批判も私は出て来ないとも限らぬと思うので、どうか現地に対する指導とか態度とかいうものに対しても、もう少し大らかにやれるような機運を醸成されたらいいのじやないかというふうに考えるわけでありますが、この点はいかがですか。  それからもう一点つけ加えてお伺いしたい点は、たまたま統計調査事務所の作況に対する態度、試験場に対する態度というものが、ある程度平年作である場合においては問題はありませんが、凶作のような場合においては対立的のものが出て来るわけです。試験場の場合においても、これはやはり科学的な根拠の上に立つて見ておりますし、統計調査部の場合においてもそのことを自認しておるわけです。ところがそれが非常に対立的になるという原因は、やはり解明しておかなければならぬというふうに考えるわけです。たとえば北海道等においても、出穂期が非常に遅延して、九月の初旬ごろまでに出穂した分があるのです。ところがたまたま現地へ行つて聞いてみると、出穂後積算温度八百度になれば、これは大体結実可能であるというような推定のもとに、この九月十五日の場合においても指数を出しておるわけです。しかしそういうような推定の上に立つた場合においても、八百度というと、一日二十度ずつの平均気温にしても四十日かからなければ結実しないことになる。しかもたとえば十月の十八日とか、二十日までに霜が降らない場合というような前提の上に立つて、九月十五日の作況指数というものができておるのです。台風等の災害の場合においては、その被害数字というものがあとから出て来て、それを訂正することができるわけですが、成育が遅延しておる場合の指数の把握というものは、そういうところに一つの危険性があるのじやないかというふうに考えるわけです。ですから、これらの誤謬の修正というものは、どういう機会にやるかということが一つの問題になつて来ると思うわけです。今年度の場合においては、特に政府は今月の十九、二十日に一括割当をやろうと考えておるわけです。割当をするまでの一つの基盤になるのは結局この指数なんです。それから十四、十五号台風被害の減収率というものが引かれると思いますが、そういうことになると、これだけの根拠で割当をやる場合においても、やはりこれは府県当局と相当いろいろな摩擦が出て来るのじやないかというふうに考えられるわけであります。昨年の場合においては、多分十月五日現在の臨時的な作況の把握を行つて、それらが中心になり、基礎数字なつたと記憶しておるわけでありますが、今年度は——これは統計調査部に聞くのは無理でありますから農林次官にお伺いしますが、あくまでも九月十五日現在の作況を基礎にして十九、二十日の割当に臨む御意思であるのか、あるいはその後十月一日とか適当な時期の現在によるところの作況指数を把握して、それによつて臨む考えであるのか、この二点に対してお答えを願いたいと思います。
  59. 羽田武嗣郎

    ○羽田説明員 お答えいたします。ただいまの第一点の問題でございますが、統計調査員はどうしても、いわゆる方程式に従つて数字を出して来るということは習性上やむを得ないことでございます。つまり一に一を足して二というふうに、どうしてもきちつと方程式に従いがちでございまして、その結果として実際と違うような印象が——豊年のときにはいいけれでも、冷害の場合にはかなり不満の数字が出る。私も昨年長野県において、作報は無用じやないかということを地方の人たちから聞いたくらいでございまして、そういう意味で芳賀さんが、今度のものをごらんになりまして御不満の点はわかるのでございますが、政治とかあらゆるものから独立して、正確な数字を出して来るという、つまり方程式通りに計算をして行くというのは、やはり統計調査の第一線としてはそういうふうに指導しないと、つまり政治性を加えたり、そのときの情勢をあまり織り込んでやつたのでは、基礎的な正確な全国的なものができないのじやないかという考えをわれわれは実は持つております。但しその数字を生かして使うか、殺して使うかというのは、これは政治であり、役所の首脳部として考えるべき問題でございますから、今回も農林大臣が本日朝七時に北海道に参りまして、現地の実情をつぶさに見まして、作報の数字と実際行つてみたらそうではないのだというそのしずみというものを、現地につきまして見た結果で大臣も判断をし、また地方の声も十分反映をいたしまして、そして割当の数字を出して来るということに相なつておりますので、それで大臣が参つたことを御了承をいただきたいと思うのであります。それから、この数字のほかにもちろん各府県のものも参考にいたしますし、それから農林省の直轄の機関としては食糧事務所もございますから、そういうものも総合しまして、そして割当を十九日には示そう、こういうような考え方で今食糧庁において案を練つておるような次第でございますので、この指数だけによつてするというような次第ではございませんから、その点も御了承をいただきたいと思うのであります。なお十五日の作況の報告については、十五日のものも加味をいたして、そしてさらに十月の十五日のものも出て参りますので、それも加味をいたす。そして十九日の日に府県の知事の方々に各県の割当を内示をいたそう、こういうような考え方で進んでおりますからその点御了承いただきたいと思います。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の次官の御答弁は、私の聞いておることと大分違うわけであります。私は政治的な意図を加えてこれを扱つてもらいたいとか、これが不満であるとかは言つておらぬのであります。一つの科学的な立場に立つて統計調査部も試験機関もやつておるのだという場合において、平年でない異常な作況の場合において、意見の対立を来すということは、これはちよつと了承できないわけであります。これは県当局とか作報当局の意見の食い違いということはあり得ると思う。しかし同じ国の試験機関の中において、試験場の見解とそれから統計調査事務所の見解というものに著しい考え方の違いが出て来るというようなことが、これがふしぎなんです。ですから、そういうことのないようにすることができないかというのが質問の要旨なんです。どつちも科学的な基礎によつてつておるという場合においては、そのことは不可能ではないと思うわけです。それからもう一つは、第一問の方に入りますが、推定してきめるわけですね。九月十五日に受精しておる。これはもう稔実可能であるという判断の上に立つてその推定の収穫量が出て来るわけです。ですからその場合において、台風のような災害の場合においては、これは別な調査をすぐやつて、減収率をそこから引くわけです。しかし生育がずつと遅延して来て冷害というような場合においては、そういう修正というものは、この次は通常から言うと十月十五日現在の収穫の調査というものはわからぬわけです。中間的に今度は割当をやるような場合においては、そういうような北海道においては、十月十八日まで霜が降らないことにして調べるというような場合においては、ことしのように十月七日に全国的に気温が零下までも下つたり、降雪があるような場合においては、十何日の食い違いがそこから出て来るわけであります。それを私は、科学的な立場においてそういう推定をやらせる場合においても、何月何日まで霜が降らぬという前提のもとに調査するというようなやり方というものは、これは場合によつては非科学的な結果が生れるのではないかということを指摘したわけなんです。ですからこういうような点に対して、統計調査部においてももう少し反省する余地というものは、今後の調査の上においても相当あるのじやないかというふうに考えるのですが、昨年はやはり全国的な冷害等がありまして、異例に十月一日現在の調査をやつておるわけです。ですからことしも、中間的な調査をやるという考えが当局においてあるかどうかということをお尋ねしたので、この問題に関する限り、農林次官においても政治的な意図を加えないで、勘を働かしてどうするということはあくまで避けた御答弁を願いたいと思います。
  61. 羽田武嗣郎

    ○羽田説明員 事技術の専門にわたりますので課長から申し上げます。
  62. 原政司

    原説明員 芳賀先生からの御質問でございますが、平年におきまする霜の時期を予定して調査をして参ることにぎこちないと申しますか、改善の余地はないかというような御指摘でございますが、ただいま私らといたしましても、向う一月なりあるいは向う三箇月の気象の——ただ天気がよかろう悪かろうじやなくて、具体的にどういう時期にはどの程度の温度が参るか、日照が参るかということを、気象台の関係の方におかれましても御提供いただければと存じておりますが、ただいまさようなことを期待することは困難でございます。さような点等がございますので、気象の推移につきましては、かねがね気象台の御意見も徴しておりますが、一応先ほど政務次官からもお話申し上げましたように、多少ぎこちない点はございますけれども、平年におきまする気象の、たとえば霜でございますれば、霜の時期がいつごろであるかということを主体といたしまして判断をして参る、かようなことで進んでおるのでございまして、この点は気象の見通しその他がさらに正確なものになりますれば、その段階においていま一度改善の余地があろうかと存じますが、ただいまの段階においては、今やつておりますような方法を継承して参ることが適当ではなかろうかと存じております。なお試験場の方々との見解の問題でございますが、これは昨年の異例の気象下におきまする状況におきましても、本年におきましても、試験場の方方のみならず、大学あるいはその他の機関におかれます研究者の方々につきましても、その門をたたきましていろいろの御意見を拝聴しておるのでございます。いろいろ困難な作柄判定になりますれば、学者の間にもいろいろの見解の相違というものがございますが、それらの多数の御意見を参照いたしましてわれわれといたしましては、できるだけ公明なと言いますか、適切な答えを出すように努力をしておるのでございます。見解の相違等がままあるように今御指摘でございますが、これは絶対これをなくするということは、私といたしましては不可能じやなかろうかと、かように思いますが、連絡につきましては、今後ともさらに一段と努力をして参りたいと存じております。  なお十月一日の調査をやる意図があるのかないのかということでございますが、現にこれはやつてございません。その理由といたしましては、十四号あるいは十五号というように相次いで災害が参りました等の関係がございまして、私らのただいまの人と経費をもちましては、それ以上にやることが現場の事情から見まして困難な事情にございますので、はなはだ申訳ない次第でございますが、十月一日のあるいは十月五日の作況調査というものはやつておらない次第でございます。あしからず御了承をいただければ幸いかと存じます。  なお次官から十月十五日の調査を云云ということがございましたが、十月十五日の調査は十月の末日もしくは十一月のごく初めに公表になるものでございますので、その点だけは私からこまかい技術的なことでございますので補足をしておく次第でございます。
  63. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間がないのであと一点にとどめておきますが、今原さんが言われた点、一応推定として、平年であれば十月十八日までに北海道に霜が降らぬという推測のもとに判断されるのはこれはよいのです。ことしの場合においては、二週間以上遅延しておるということは、十月十八日に霜が降つても稔実のぐあいが非常に悪いわけです。ですから問題は、その後に生れた事態によつて修正するような必要が出て来た場合において、どういうような処理をしておるかというと、それは十八日まで降らぬという仮定の上に立つて九月十五日の作況指数を出しておる。それが十月の七日に異例に気温が下つて、みぞれが降つたり降雪があつたということになると、十一日早くそれでもう成長がとまつたということなんです。そういうことになると、これは一つの科学的基礎の上からいつて、十日間早く生育が断絶された場合においては、それによつて収穫量の上においてどれだけの減少を来すかということ、そういう場合においてはどうなるかということは、あらかじめ予測されておられると思う。ですから、その誤謬の修正というものはいつどの段階にやるということも、ぜひ聞いておかなければなりません。こういう実例は非常に多いと思う。ですから今度の十五号台風の中にそういう冷害による分をも合せて出すのか、すでに修正しておるのか、今後十月十五日現在の将来における発表においてそれが確認されるか、そいう点は簡単にお答えができると思いますので、ぜひその点は具体的に御説明を願いたいと思います。
  64. 原政司

    原説明員 ただいまの御質問でございますが、十月十八日というのはどういうあれか私にはちよつとわかりませんが、私といたしましては、各気象台あるいは測候所、観測所におきます平年の初霜日あるいは最近の歴年の初霜日というものがございますので、それらの初霜日を一つの目安といたしまして出穂状況、その後の子房の発育状況、たとえば九月十五日の場合でございますれば九月十五日までの発育状況におきまして、大体これはこういう状況でゴール・インするというような判断をして参つておりまして、十月十八日ときめておるのは、どこかの地点かと思いますが、決して画一的には考えないように指導督励をしておるのでございます。なお御指摘の霜がおりてしまいましたような場合に、どういうふうに作況を判断するかという問題でございますが、実は霜が降りました際の作況に及ぼす影響と申します点は、ただいま私らだけではございませんが、いろいろ学界あるいは試験場等の過去あるいは今日の研究を調べましても、なかなか的確にこれをどうということは困難であるように存じております。私らといたしましては、学理はいかんといたしましても、現実にそれがどういう影響を与えるだろうかという点につきましては、気象感応試験によりまして、出穂後子房の発育過程を大体五日おきに調査をしておりまして、それからある気象の異変がございますれば、それがどういうふうに響いておるかという点だけは調査しておる次第でございます。しかし何分にもさような調査は非常に手数を要しますので、広範囲にわたつて継続調査をするということは非常に困難でございます。そういう点がございますので、途中で全体の作況指数がこういうふうにわかるのだということを、私ら統計部といたしまして御発表申し上げるということは、ただいまの段階では困難な事情にございます。さような事情でございますので、はなはだ恐縮なんでございますが、気象感応試験等の調査はしておりますが、全体の作柄調査を中間的に御発表申し上げる、あるいは御意見を言わしてもらえるというふうには、ただいまのところまだ整備が行き届いておりません。
  65. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは重大な点です。たとえば予定した降霜の時期を示して、それより一週間ないし二週間早く異常な降霜があつて、それで生育が中断されるというような程度の降霜あるいは降雪等があつた場合においては、生育したり結実するということは、しろうとが考えてもあり得ないのです。ですからその誤差の修正は絶対やらぬのだということにはならぬと思う。それは一箇月後においてはわかるということになるのですけれども、中間においてそういう予測されない事態から来た結果に対する修正というものは、これは何か一つの基礎になる算出の形式というものはあり得ると私は考える。ゴール・イン一週間前に霜が降つてだめになつたという場合においては、やはり順調に行つた場合と違つて来るのであつて、その場合にはおよそ何パーセントぐらいの狂いが出て来るかというようなことは、——これはいつも統計は推定だけでやつているでしよう、面積の把握でも推定だけでやつて、推定の神様のような機関が、そういうことができないことはないじやないか、はつきりどうなるということは言えぬとしても、そういう誤差の修正というものはやればできると思う。絶対不可能ということであればまた考え方は別でありますが、その点はどうなんですか。
  66. 原政司

    原説明員 先ほど申し上げましたように、霜が降りまして、それが何といいますか、凍死の結果になつてしまうかどうかという点につきましては、なかなかむずかしい問題のようでございます。私もその点をできるだけはつきりいたしたいと思いまして、年来学者その他にもお願いをいたしておりますし、また現場の調査結果につきましても、昨年あたりも注意をいたしましたが、昨年も北見では十月二日ですか霜が参つております。しかしその状況を見ておりますと、その後かなり粒は肥大をしております。そういう観点もございますので、ただいまの農学技術をもつていたしますと、単に気象におきます初霜という把握の仕方だけでは、それで成長が終止したかどうかという点の問題も非常に困難な状況でございます。  なお一面、先ほど申し上げましたように、粒の肥大、生育の問題につきましては、標本のとり方あるいはその乾燥、はかり方、器具機械等につきまして、相当正確といいいますか、精密を要しますので、試験地におきます調査は先ほど来のようなことをいたしておりますが、それをもちまして全体の作柄がどうかということを云々いたしまたすめには、御指摘のように、推言調査と申しますのは、当然ある目標精度のもとにある相当の数のサンプルを任意に抽出するということが前提になりますから、一、二箇所の試験のデータをもちまして全体の作用を云々いたしますことは、私らといたしましては、それは技術的に非常に冒険であると申しますか、できないむずかしい問題だと、ただいまでは考えております。なお、そういう点の将来にわたつての整備ということにつきましては、十分研究をいたしまして、そういう点を改善して参ることが大事な点ではなかろうかとは存じております。
  67. 芳賀貢

    ○芳賀委員 原さんは非常に慎重を期しておるようですが、私の言うのは、単なる水霜程度のものを言つておるのではないのです。今年の場合は、十月七日に北海道全体が非常に気温低下して、札幌管区気象台の発表によつても、函館等においてさえも零下一度何分になつて結氷しておるような状態です。そういう異例な状態というものは、その後に水稲生育する機能はもう失われておると私は考えておる。単なる抽象的な初霜程度のものとはこれは違うのです。こういうものはあなたの方でも資料はとれると思いますが、そういう場合においては生育はすでに中断されるということを予想できる。それからもう一つ水稲の場合においては——これは作物なんですから、適当な一定の時期が来れば収穫しなければならぬ。たとえば北海道のごときは、早い年には十月二十日ごろには一尺ぐらい雪が降る場合もあるわけです。ですから、降雪期から逆算して、完全に稔実しなくても、収穫に入る時期というものはおのずからきまつておるわけです。いつまでも放置しておけば稔実するだろうなどと考えていたらこれは全部雪の下になつてしまう。植物はかなわぬでおけば、雪の下になるまでにあるいは相当成長するかもしれませんけれども、作物として考えた場合に、全部を収穫しなければならぬ場合においては、収穫の時期というものはきまつておるわけです。生育が平年より二週間以上も遅延をしているという場合において、通常と同じような尺度をこれに当てはめるというところに危険がある。その危険というものは、結局先ほど言つたように、試験機関との間の見解の相違というものはそこから来ておる。この点にお気づきがない場合においては、いくら論議してもむだですからやめておきますが、そういう点はどうお考えになつておりますか。
  68. 野田哲五郎

    野田説明員 霜の来る予定につきましては、ただいま原作統課長から申し上げましたように、大体平年を前提としておるわけでございます。それに対して現在作柄が二十日程度遅れておりますので、このまま推移をした場合には、大体どのくらいゴール・インするかということは、十分計算に入れておるわけであります。ただ霜が予想外に早くやつて来た場合にどうなるか、こういう問題は当然作況影響する問題でありますけれども、現在の調査の体系といたしまして、九月十五日現在の次は十月十五日現在、その次は実収のときということになつておりまして、それぞれの段階におきまして、より正確な数字をつかんで行きたい、かように考えておるわけであります。いろいろの御要求といたしまして、霜が来た直後にどうなつたかという資料の御要望がありますけれども、ただいまの段階、並びに考え方といたしましては、大体定期調査のときにそれらの結果を振り返つて行くというふうに考えておるわけでございます。但し非常な強い霜で、これは重大な被害をおよぼすという場合には、被害調査の方法によりまして、被害発生以後ただちに及び一週間後、二週間後というような一般の調査方式によつて被害を出すことにしておるわけでございます。なお試験場及びわれわれの調査との食い違いの問題でありますが、これは一般的に申しますならば、ただいま作統課長から申し上げましたように、試験場の圃場だけの数値全体を推計するわけには参りませんので、そこに一つの食い違いがありますが、気分といたしましては、われわれとしては、できるだけ正確な数字を出すということになりますと、おのずから慎重にならざるを得ないのでありますが、試験場におかれましては、大体の趨勢をお示しになるというような点におきまして、苦干の表現上の違いがあり得るかと思います。しかし本質的には一致すべき問題でありますから、十分連絡はとつて参りたいと思います。
  69. 井出一太郎

    井出委員長 統計調査部に対する質疑は、本日はこの程度にいたしたいと存じます。と申しますのは、公正取引委員会に先般乳価問題についての調査等を依頼してありますので、すでに横田委員長以下お見えになつております。そこできようは日程もそのような次第で進めておりますので、これから後の時間を乳価問題に当てたいと考えております。それで福田委員並びに川俣委員はなお作報関係の質疑を残しておられますが、これは明日十四、十五号両台風についての被害調査を発表の予定でありますから、それに関する補足説明統計調査部では明後十四日午前当委員会にお願いいたしたいと考えます、十四日は正午時より始めて、きようの残余の質疑を続行いたします。     —————————————
  70. 井出一太郎

    井出委員長 引続き酪農振興及び乳価問題について調査を進めます。  先般当委員会において酪農ないしは乳価の問題を審議いたしました際に、最近全国一斉に乳価低落の現象が起つておりまして、これは乳業資本の側において何らかの協定と申しましようか、一種の独占禁止法に抵触するような事態がありはしないか、こういう委員側からの御提議がございまして、それについての調査公正取引委員会に依頼をいたしておつたはずでございます。われわれといたしましては、もう少し早目にこの調査結果が出て参ることを期待しておつたのでありますが、大分日がたつております。これはおそらく慎重な調査を期せられたからだろうと思いますが、まずその御説明を伺いました上で調査を進めて参りたいと思います。それでは横田公正取引委員会委員長
  71. 横田正俊

    ○横田説明員 乳価の問題につきまして独禁法上の違反の問題があるのではないかということで、先般当委員会におきましてその調査方の御要求がございました。かねがね公正取引委員会においてこの問題を調査いたそうとしておりましたときでもございますので、さつそく調査を進めたのでございますが、ただいま御指摘がございましたように、大分調査に手間をとつてしまいましたことはまことに申訳ないのでございますが、実はできるだけの事実を把握いたしたいと思いまして、つい延びた結果になりました。しかるにかかわらず、その結果が必ずしも皆様の御満足の行くような点にまだ実は達しておらぬのでございます。しかしただいまの段階におきまして、私どもが把握いたしました結果をとりあえず御報告申し上げる必要があると存じまして、本日その経過を申し上げることにいたしたわけであります。  独禁法上の問題といたしましてまず考えられますことは、明治、森永その他の原乳加工業者が最近数回にわたりまして、御承知のように購入原乳の値下げをいたしました。これについて何か加工業者側に話合い、いわゆる独禁法上の協定があつたのではないか、この点でございます。この点にきましてこの調査の結果、本年四月以降に現われましたデフレの影響その他による需要の停滞、他面本年に入りましてからの顕著な生産増加等によりまして、異常な在庫増が現われております。特に練乳製品を中心としまして販売価格の暴落を生じました結果、採算が非常に悪くなり、特に中小の加工業者の赤字経営というような状態が発生いたしました。従いまして、いわばこれの防衛手段といたしまして、内地業者はほぼ五月、七月、九月、北海道業者につきましては六月、七月、八月、それぞれ三回にわたりまして価格を引下げ、あるいは引下げようとする試みがあつたわけでございます。その経過を申し上げますと、詳しくは御質疑がございましたら表にいたしましてその数字的なものをお示しいたそうと存じますが、内地業者につきましては、まず第一回、つまり五月の分でございますが、これまず明治乳業が五月の二日ないし三日に値下げを決定いたしまして十一日から逐次実施に入つておるようでございます。その後もそれに追随いたしまして森永乳業が大体二十五日遅れまして五月の二十七日に値下げを決定いたしまして、五月の十六日からさかのぼりこれを実施しておるようでございます。  第二回の七月の分につきましては、やはり明治が七月の二日ないし三日に決定をいたしまして十日から実施いたしました。森永は四日遅れましてこれに追随しておるようでございます。  それから九月の最近の第三回は従前と異なりまして、今までは大体大業者が先に決定いたしまして、中小業者がこれに追随するという形をとつてつたのでございますが、第三回の場合には、今まで追随して値下げをやつておりました中小乳製品の製造業者のうちで、日本製酪業協同組合の関係の十五社が八月の十日に会合いたしまして、不況打開策として、採算価格を目標とする価格協定を八月の十日にいたしまして、九月一日より実施するよう企図いたしたのが最初でございまして、明治が十五日から決定し、森永はさらにそれから少し遅れまして、十七日から十八日の間に値下げを決定いたしまして発表いたしております。これは内地業者の動きでございます。  他方北海道業者につきましては、これは御承知のように、雪印、北海道バター、この二社が主たるものでございまして、この組織の特殊の性格からいたしまして、この二社が六月二十一日、七月二十一日、八月二十一日と値下げを三回にわたりまして実施しております。結局この実施はいわゆる独禁法上違法なる協定というふうに認められますかどうかという点が、われわれの調査いたしました主眼点でございますが、結論的に申しますと、その協定の事実のはつきりしていた証拠がまだつかめておらないわけでございます。まず業者の言い分から申し上げますと、いずれかが決定いたしまして、それに他が追随をするという関係が一応見えておるのであります。業者の言いますのには、いずれも個々に決定をして自発的に追随しておる。またこういうやり方は何も今回が初めてじやなくて、従来も大体そういうような形をとつておるというようなことを言つておりました。しかしさらにいろいろ調査いたしましたが、どうもあらかじめ業者間に値下げの相談、あるいは了解というようなことがあつたかどうかという点につきましては、これは会合のいろいろな場所、その他につきましても大いに調べたのでございますが、はつきりした証拠の裏づけをまだつかんでおらないわけでございます。この値下げの実情でございますが、これはこまかい数字を申し上げませんとあれでございますが、実際に行われております結果も、必ずしもはつきりした一本の価格にきまつておるということでなく、多少そこにいろいろ個々の業者との間の話合いの余地が残つておるような形にきまつておるものもございますし、ことに第一回、第二回の値下げ等の実情を個々的に調べまして、これもこまかに調べた数字がございますが、これを見ましても、本社の発表いたしました価格と、現地のいわゆる現実に実施しております価格が必ずしも一致をしておらぬというような実情も見られます。いわゆる一種の弾力性があるようにも見られます。こういうような状態でございまして、たいへん調査が遅れましたにかかわらず、われわれのただいまの段階におきましては、まだはつきりした確証を得るに至つておりませんので、はなはだ残念に存じまするが、なおこの点につきましては、後にも述べますようないろいろな客観的な情勢からいたしまして、何らか独禁法上問議すべき問題が介在しておるということは相当推測をいたされますので、なお今後鋭意調査を続けたいと考えております。以上は乳価の協定に関する問題でございます。  次に独禁法上の問題として考えられます点は、明治、森永、雪印、北海道バターというような四大業者が、全国の原乳の約五割近くを扱つておる。こういう大業者は、購入価格を有利に支配するようなことのできる地位にあるわけでございます。いわばカルテル独占の弊害が起りがちだということは十分に推察できますので、今度の場合につきましても、その買入れ価格等から見まして、それがきわめて不当なものであるかどうか。これは御承知のように昨年の九月に実施されました改正独禁法によりますと、業者が経済上優越した地位を濫用いたしまして、他の業者に対しまして不当な取引条件を押しつけて取引をするという場合につきましては、それは不公正な取引方法ということで、独禁法第十九条の問題となるわけでございます。この観点からも、今度の問題につきまして調査をいたしたのでございますが、ただいま申しましたように、協定の有無につきましては、残念ながらまだはつきりした証拠をつかんでおりません。この四つの業者のうちでも、明治のようにその原乳の取扱い量が非常に多いというような関係から行きまして、原乳価格の決定のいわゆる指導的な地位を占めておるというようなものがあります。単にこれに追随することによつてあたかも協定と同じような関係が出て来るというような関係は、これは確かにいなめないのでございます。またさらに地方に個別に分散しております牛乳生産業者に対しては、従来より指導、育成というようなことを行いまして、各自の独占的な集乳地盤を形成しております場合が多いわけでございます。資本力あるいは組織力等によつて強力な地位を持つておりますために、現在まで種々な交渉におきまして、とかく加工業者の一方的な行為によりまして価格その他の取引条件がきめられることが多い。これは先ほど申しましたような経済力の濫用による不公正な取引方法に陥りやすい状態が見られるわけでございます。従いまして今回の値下げにつきましても、そういうような状態がはたしてあるかどうかということにつきまして十分に検討いたしたのでございますが、何分この点は、ちようど下請代金の買いたたきの場合と同じように、いかなる点までたたけばそれが独禁法上にいわれる不当な条件ということになるかということにつきましては、非常にこれは判定の困難な問題でございまして、全国各地の生産業者の事業もいろいろ異なつておりますし、厳密な牛乳の生産費とか加工費とかあるいは販売費とかいうようなことについての詳細な調査あるいは計測というようなことは、なかなか困難でありまして、この点はなお続けて当委員会といたしましても検討いたしたいと考えますが、現在の状態におきましては、これらの個個の場合におきまする買入れ値段が、独禁法にいわれる不当な条件に当然に該当するかどうかということについては、なお検討の余地がございまして、ここでただちに違反であるというふうに断定するのが困難のように思われるわけでございます。但し、先ほど申しましたようにこの問題は、事態がそういうふうに持つて行かれるおそれが非常にございますし、なおこういう現在の状態が続きますれば、いわゆる中小の製造業者はだんだん脱落いたしまして、あとに残りますものが結局明治、森永その他、いわゆる大業者だけになつて行くということになりますれば、ますますその傾向が助長されますので、この辺でわれわれとしましても腰をすえて、もう少しはつきりした態度をとりたいというふうに考えております。調査が遅れました上に、結局まだはつきりした結論を得ておりませんことははなはだ残念に存じますが、一応、ただいまの調査の結局は、以上の通りでございます。その点を御報告申し上げる次第でございます。
  72. 井出一太郎

    井出委員長 質疑の通告がございますが、ちよつと私から一、二点お伺いしておきたいことがございます。それはただいま横田委員長の御発言の中に、農林委員会からの要請と同時といいますか、前後して公取の方でもこれをお調べになるという御意図をお持ちになつた、こういう意味に伺いましたが、かような問題は、具体的に何からの提訴を持つて皆さんの方が発動されるのか、そういうことがなくても、自発的に公取として動き出すことができるのか、その点を一点伺つておきたいと思います。それからさらに、公正取引委員会の現在の調査機能と申しますか、いわゆる手足となつ調査に当る末端の組織が、地方の方にまでプランチをお持ちになるかどうか、そういう点もあわせ伺つておきたいと思います。
  73. 横田正俊

    ○横田説明員 第一点の、提訴がなければ公取が調べられないのか、あるいは自発的に調べるのかという点につきましては、これは独禁法に書いてございます通り、提訴を待つてやる場合もございますが、大体刑事の検察の場合と同様に、提訴を待ちませんでも、職権で調べられることでございます。ただいろいろそのときの事情によりまして、あらゆる問題を同時に取上げることができませんので、おのずからそこに順序もできて参りますが、しかし法制といたしましては、職権でどんどん、疑いがあると思われる問題は取上げることができるわけであります。この乳価の問題につきましても、これはいろいろ問題のある業界でございますので、牛乳並びに乳製品に関しましては、公正取引委員会の経済部において常々研究をいたしておることでございます。たまたまこういう動きがございましたので、国会方面の御意向をもくみまして、急速に取調べをいたした次第でございます。  なお二点の、地方に手足があるかという御質問でございますが、これは公取の組織はまことに貧弱でございまして、東京に約二百人の職員を持つておりまして、地方の手足と申しましては、大阪、福岡、名古屋の三箇所にあるだけでございまして、しかもこの三つにおります職員は、合せましてわずかに三十人ぐらいのことでございます。従いまして、たとえば北海道、東北というような問題になりますと、そこに一々人を派遣をいたすというようなことになりますので、ただでさえ本庁の手不足のところへもつて参りまして、そういう外に人が出ますと、十分の調査もできない上に、本庁の方の仕事にもさしつかえるというのが実情でございます。
  74. 井出一太郎

    井出委員長 中澤茂一君。
  75. 中澤茂一

    ○中澤委員 どうも横田委員長の御報告を聞いていると、何だかぬるま湯に入つてへをひつているような調査報告で、私は非常に遺憾の意を表明するのであります。この問題は、当委員会において私が取上げて申入れする前に、全国的な酪農民の声として起つておることは、あなたももちろん御承知だつたと思う。当然あなたは職権調査を命ずべき筋合いのものであります。しかるに当委員会において私が取上げて行つて、初めて調査官を出しておる。しかもその調査官を出して、この前の委員会で中間報告でもいいからといつて求めると、まだ全然結論を得ない、その間約二十日間でございます。そういうようななさつていらつしやることが、誠意を持つてなさつていらつしやるのかどうかということが、私には大きな疑問なのであります。しかもきようの御報告は、委員長がおいでになつたのだから、明らかにこれは独禁法違反であるからという結論を得て御報告を願える、こう私は期待していたのであります。それを今の御報告を承ると、何だか全然わけがわからない。どうもやつているらしいけれども、そういう確証がない、こういうことをおつしやつておりますが、私がこの前資料として提出して、これは特別に調査をしていただきたいと申し入れた例の神奈川県の横浜酪農協に対して明治、森永が共同で申し入れをしているこの事実です。この事実を一体どうお考えになるか。先ほどあなたは、明治の方がやつて森永が追従したり、ある地区によつては森永がやつてそれに明治が追従しておるから、どうも協定の実態がつかめないのだ、こうおつしやいますが、何月何日どこでやつたという実態がつかまえられなくても、経済的な取引として、明らかに明治、森永が話合いの上でやらなければ、どうしてできますか。八月十八日に明治、森永が共同で横浜酪農協に申し入れているじやないか。この事実を一つつかんだだけで、私は明らかに独禁法違反であるという断定は下せると思う。神奈川県の問題は、私は特別な調査をこの前、委員長はおいでにならなかつたが要求した。八月十八日に神奈川県に対して明治、森永共同で九月一日から四十八円に値下げをする、こういう申入れをした実態はどうなつておるのでありましようか、御報告願いたい。
  76. 横田正俊

    ○横田説明員 その点の御報告を抜かしましてまことに申訳ございません。その点につきましては、前回特にお話がございましたそうでございまして、こちらでも取調べました結果を申し上げますと、横浜の場合におきまする値下げ要求は、当事者でございます横浜酪農業協同組合の話によりますれば、今年の八月十八日の午前十時に、森永の春日、明治の笠原、保証牛乳の小林の三氏が、三社の工場代表として同道して組合を訪れまして、春日氏が三社を代表いたしまして、牛乳の増産は昨年の同期より五割増しを示している。が販売は極力努力してみてもやつと二割増しの状況であるから、会社はこの難関を乗る切るため、やむなく九月一日から全国的に原乳価格の引下げを決定し、横浜酪農関係の場合は専業一升当り五十八円ないし五十七円、酪農者と一升当り四十八円まで引下げてもらいたい、こういう申入れを行つたのでございますが、同組合の参事の柏崎氏が回答を留保した、こういう事実がございまして、この点から見ますと、少くとも横浜所在の三社については、何らかの話合いがあつたのではないかということはほぼ推察されるのでございます。しかしさらにその事情をいろいろ調べました結果、この土地におきましては、従来昭和二十八年七月まで生産業者、加工業者、販売業者の三者が打つて一丸となりまして横浜八日会というものを組織しておりまして、この三者の協議によりまして、原乳価格、供出数量、販売数量等の決定をいたして参つております。ところが八日以降この会合はやめになりまして、結局ただいま申しましたように、販売業者は販売業者、加工業者は加工業者、生産業者は生産業者というふうに、お互いに話し合つているような形になつて参つておる実情のようでございますが、この横浜市内の原乳の供給につきましては、今申しました横済酪農は生産業者の団体でございますが、相当強い組織力を持つておりまして、各加工業者に対して供給地域の割当を行いましたり、その割当によつて加工業者は購入しなければならないというような実情から、自然に三者が組合に対して同一歩調をとるというような事情になつておるようでございます。従いまして生産業者のこういうような動きは、一方から申しますれば確かに独禁法違反の疑いが相当濃厚でございますが、しかし今申しましたような従前の関係もございますしいたしますので、この横浜関係は特殊の問題といたしまして、さらに過去の問題、現在の問題並びに将来の問題にわたりましてもう少し検討いたしましてから、はつきりした結論を出したいと考えております。
  77. 中澤茂一

    ○中澤委員 独占禁止法の立法趣旨は、御承知のように大資本家が、それらの協定によつてトラストあるいはカルテルによつて多くの大衆や多くの農民に迷惑をかけちやいかないということです。ところがこういう経済取引で迷惑をかけることが、事実九月一日からの値下げによつて、この前資料として差上げたように十何件もあるのです。この事実に対して確証がつかめないから、それはどうも独禁法遣反かどうかわからぬというようなお考えは、私はまつたくどうかと思う。それとももはや独禁法は、この次の議会に吉田は大改正をするということをこの前言明しているから、もし大改正するなら私の方はもうこのままやめようか、こういうお考えでおやりになつておるのでしようか、それともやはり消費大衆にも迷惑をかけちやいかぬ、生産者大衆にも迷惑をかけちやいかぬ、農民にも迷惑をかけちやいかぬ、そういう立法趣旨の上に立つた建前からおやりになつておるのですか、どちらなのでしようか。
  78. 横田正俊

    ○横田説明員 私どもといたしましては、申すまでもなく、独禁法の趣旨に従いましてできるだけの努力をいたしておるつもりでございます。しかし結果的に申しまして、ただいまの程度の事実の把握をいたしておるのでございまして、努力の足りません点は重々認めまするが、この基本的な考え方について、これを投げてかかつておるというようなことは全然ございません。
  79. 中澤茂一

    ○中澤委員 私はこうなれば独禁法はあつてもなくてもいいと思う。その審判官である公取は、一生懸命やつておるとあなたは言うけれども、農民の生産大衆は今度の値下げを痛憤してない者はないのです。これは全国的な輿論ですよ。しからば値下げしたのを片方において消費大衆の方へそれだけサービスをするならば、私はある程度はあなたのような見解も成り立つと思うのですよ。ところがまつたく事態は違うのです。生産者の方は御承知のように、大幅に一挙に二十円から値下げしておきながら、消費者は、あなた幾らの牛乳をお飲みですか、十五円の牛乳が、これは場所によると十六円ですが、これが一円五十銭東京都内では下つただけですよ。十五円のところが一円五十銭下つて、十三円五十銭であなた自体もお飲みになつているのでしよう。そういう事実——消費大衆と生産者に明らかに明治、森永の独占資本による迷惑をかけておるのだ。しかも私が言つたように、神奈川においては明治、森永が合体して申し入れておる。この事実がありながら、一体どういう理由で独禁法違反であるという断定を下せないのですか、その理由を聞きたい。
  80. 横田正俊

    ○横田説明員 独禁法違反でないと申しておるわけではないのでございまして、結局先ほども申し上げましたように、特殊の事情もございますので、もう少し検討いたしました上ではつきりした結論を出したい、こう申し上げておるわけです。
  81. 中澤茂一

    ○中澤委員 そうあなたはおつしやいますけれども、生産者は九月一日からの値下げの一方的通告を受け、しかも片方においては、もしこれでいやなら乳は買わないという脅迫的言辞を弄しておるのですよ。御承知のように牛乳は、農民が朝暗いうちに、四時ごろから起きてしぼつて、夏などは少くとも月の照らないうちに殺菌に持つて行かなければ腐つてしまうのですよ。そういう条件にあることを承知していながら、これでいやならもう乳なんか買つてやらないからというようなことで、脅迫して契約書に捺印を迫つておるのですよ。これは明らかに不当なやり方であるとあなたはお考えにならないでしようか。
  82. 横田正俊

    ○横田説明員 先ほどから申し上げておりますように、今回の値下げによりまして、いろいろ農民の方面においてはなはだしき苦境に陥つておるということは、私どもも今回の調査によりまして、その結果は十分に存じておるわけてございまして、これを独禁法の線におきましていかように是正するかということにつきましては、なおはつきりした結論は出ておりませんけれども、十分に努力をいたしておるつもりでございます。まだはつきりした結論が出ないということに対しては、非常な御不満がおありであろうとは存じますが、いま少し時をかしていただきたいというふうに考えております。
  83. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたはそういうお考えであるけれども、あなたの方の調査員の行動というものを御存じですか。あなたのところに千葉県へ調査に行つた安藤君という人がおるはずです。これは今いろいろ調査しておりますが、まず森永の会社へ行つて、一日中森永の自動車に乗つて、森永の人がついてまわつておるのです。夜どういうことが行われたか、今調査しておるのですが、そういうようなまるで業者の手先になつて、森永の人がついて森永のハイヤーに乗つて公正取引委員会調査するようで、一体正しい調査ができるのでしようか。安藤という人がいるかいないか、それからひとつ明らかにしてもらいたい。
  84. 横田正俊

    ○横田説明員 安藤という事務官がおりまして、この人がこの問題を扱つていることも私存じております。ただ、ただいまおつしやつたような事実があるかどうかにつきましては、全然存じませんし、またあり得べからざることだと思つております。実はこの問題ばかりでなく、調査をいたしまする際に、とかく業者からいろいろな便宜の提供を申し出るというようなことがございます。たとえば先般北海道へ参りまして、これは雪印乳業関係の問題を調査に行きました際も、いろいろ業者側から便宜の提供の申出がございましたが、そういうようなものにつきましては、厳重に注意をいたしまして、かりに自動車を借りましても代金を払うという、当然のことでございますが、そういうところまで気を使つております。よもや千葉でそういうことがあろうとは思いませんけれども、その点はいずれ帰りましてからよく調査をいたします。
  85. 中澤茂一

    ○中澤委員 これはもう公正取引委員会公正取引委員会をつくらなければ、私はだめだろうと思う。とにかく安藤君が銭を払つたか払わない、そんなことは第二の問題でいいのですが、少くとも公正取引委員会から出張して調べる以上、公正な立場で調べなければいかぬ。それが、私は自動車を借りること自体が問題だと思う。金を払うなら、何も森永や明治の自動車に払わなくとも、千葉県にはタクシーの一台や二台はあります。それを使つたらよろしいでしよう。夜どういう芝居がやられたか、いま夜の調査を私の方はしているのですが、そういうことをやつたのでは、まるで明治、森永の手先になつて何かして歩いているような感じを受ける。現に安藤君が森永の自動車で森永の人がついて調査に行つたということは、これは証人があるのです。その人は、いつでも出て私は証言すると言つているのです。そういうことをやつている。それからいま一つ、埼玉県へあなたの方で調査班を出している。この調査班は何をやつて来たかというと——これは名前はちよつとわからないのですが、京都帝大を出た人だそうです。私は京都帝大を出ましたという話をしたそうです。この人は一体何をやつて来たかというと、どつこへも寄らないで県庁へだけ寄つた。そしてすつと帰つてしまつた。なぜ生産者団体の意見を聞いて来ないのか。生産者団体には全然寄らないのですよ。明治、森永の方へは寄つたか知りませんが、とにかく県庁へはちよこつと寄つて、生産者団体の意見を全然聞かない。こんな調査で一体どういう効果があるのでしようか。これに対する御見解はいかがですか。
  86. 横田正俊

    ○横田説明員 外へ参りました者が、どういう調査振りをいたしましたか、実は私自身つまびらかにしておりませんので、何ともそれについての私の意見は申し上げるわけに行かないと思います。
  87. 中澤茂一

    ○中澤委員 それなら委員長調査をしてくれと私が要求した、その調査の結果さえまだ出ていないということですか。今言つたほかにも例はありますよ。しかしあまり申し上げると、これはどうしても公正取引委員会調査する公正取引委員会をつくらなければいかぬから、あまりこまかい例は申し上げません。この二例だけを特異な例として私は申し上げておきますが、こういう実態調査ができないもので、どうしてあなたは目下研究中であつて、まだ判定が下せないと言えるか。しかも私がこの問題を取上げたのは八月の委員会ですよ。以後二月を経過して、なおかつ実態調査ができていないというのら、吉田さんが、今度は独禁法の大改正をやるのだということを、この前新聞に出しているから、もうこの辺でやめようじやないかというお考えなのかという気持に私はなるのです。調査員は派遣はしているが、県庁たけ行つて話を聞いて、生産者団体に一言も話を聞かない調査報告があなたのところに出ても、そういうずさんなことをやつているのじや、あなたの方では目鼻がつかないと私は思うのですよ。そこで原則論にもどりますが、先ほど原則的に申したように、私が資料として出しただけでも十何件というものが、一斉に明治、森永が申入れをやつて、しかも九月一日から乳価差を払わないというこの現実は、不当な取引にならないかどうか。その点を御回答願いたい。
  88. 横田正俊

    ○横田説明員 先ほど申し上げ方が少し不十分だつたかと思いますが、独禁法は御承知のように、法律の規定で違法とすべきものについて、厳格にいろいろ条件等をきめております。常識的に不当と思われまするものも、独禁法の線に乗らなければそれを違法とすることはできないのでございまして、先ほど私がはつきりした証拠がないと申し上げておりますのは、独禁法の不当な独占あるいは不当な取引制限に該当すると認めるに足る、はつきりした証拠をまだつかんでおらないということを申し上げておるわけでございます。なるほどこちらの調査の仕方等につきましては、いろいろ御不満の点もあろうかとは存じますが、先ほどから申し上げておりますように、できるだけの努力をいたしまして、なお今後調査を続けるつもりでおります。
  89. 中澤茂一

    ○中澤委員 しからば一体、これだけの申入れをし、事実九月一日から乳価の支払いを申入れ価格しか払わないという、これだけの現実があつても、独禁法第二条の七の五によるところの、「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」という条文には当てはまらないのですか。
  90. 横田正俊

    ○横田説明員 それは先ほど第二の問題といたしまして申し上げましたように、今回の買入れ値段というものが、独禁法の不当に不利益な条件であるかどうかという点できまるわけでございます。それが不当であるかどうかは、先ほど申し上げましたように、生産原価その他一切の事情をもう少し検討いたしませんと、はつきり申し上げることはできないということを申し上げたのでございますが、その点にかかるわけでございます。単に価格が前より安くなつたということだけで——それは不利益になるとは思いますが、ただちにそれが不当な不利益かどうかということは、そう簡単にきめられないのではないかと思います。
  91. 中澤茂一

    ○中澤委員 しかし私は全然見解を異にするのです。自然の条件において上つてつた価格を、一、二の会社の協定なり話合いによつてがさつと一回に暴落せしめる——がさつとでなくても、三回にわたつて八月から急速に暴落せしめることは、不当の対象にならないでしようか。自然に下つて来た価格ならば、不当の対象にならないでしよう。八月から自然な価格で下つて来たものならば、私も不当の対象とは考えない。三十円に下つても、不当の対象とは考えません。しかし明治、森永が、故意に人為的に一合について二十円にわたる値下げをしたことは、不当にならないでしようか。その点はどうでしよう。
  92. 横田正俊

    ○横田説明員 それは下げ方の問題にも多少は関係がございます。と申しますよりも、むしろその値段の実際持ちます意味によつてきまるのでございまして、たとえば四十円が非常に不当であるかどうかという点は、先ほど申しましたような諸般の要素をよく考えてみませんと、そうにわかに決定できないと申しておるのでございまして、私は何もそれが不当にならない、不当な不利益をもたらすものでないというふうに申し上げておるわけではございません。なおその点の検討をもう少しいたしたいと申し上げておる次第でございます。
  93. 中澤茂一

    ○中澤委員 どうも横田委員長といくら何していてもわけがわからない。しからばどこが不当であるという見解は、一体どこから割出すつもりですか。それをお聞きしたい。不当であるかないかという原則は、公正取引委員長は一体どこから割出すか。
  94. 横田正俊

    ○横田説明員 これは先ほど申しましたが、要するに農民に赤字をしいるような価格が不当であることは、ほとんど言うまでもないかと存じます。これはあるいは赤字をしいておるかもしれない。その点は先ほど申しますように、にわかに申し上げることはできませんが、かりに赤字まで行かなくても、きわめてわずかなマージンに満足しなければならないような状態に押し下げるということになりますれば、これはやはり不当に不利益な条件ということが言えるかと存じます。これは一般的に申してそういうふうに言えるかと思いますが、それではどのくらいの程度に押し下げたらそれが不当になるかということになりますと、先ほど申し上げましたように、各場合々々によりまして違つて来るのではないか。そこにこの問題決定の非常に困難な点があるというように考えます。
  95. 中澤茂一

    ○中澤委員 しからば会社の不当性——独禁法というものは、先ほども原刻を申し上げたように、独占資本がカルテル、トラストによるところの迷惑を大衆にかけてはいかぬというのが基本的な考え方であろう。しからば会社の不当性に対しては、あなたはどう考えていますか。生産者に対する不当性の問題、生産原価を割るか割らないか、マージンが多いか少いか、その不当性の問題を今あなたは答弁なさつたが、会社の不当性の問題は一体独占禁止法という立法趣旨からどうお考えになつておりますか。
  96. 横田正俊

    ○横田説明員 会社の不当性というのはちよつとはつきりいたしませんが、片方から安く買つて販売業者に高く売るというような、そこに不当な利潤を得ているのじやないかということをおつしやるのでございましようか。それはもし片方が協定によりましてたたきまして、不当に安い価格で買いまして、一方またさらに協定によりまして一般消費者大衆あるいは販売業者等に対しましては、それをつり上げて高く、あるいはつり上げなくてもいいかと思いますが、比較的に高く売りまして利潤を得るということになりますれば、結局両面において独禁法上違反が成立し得るわけでございます。従いまして結局どちらの面に協定があるかどうかということが問題の中心でございます。この点は実はただいまは生産者価格の方が主でございまして、そちらの取調べに大体重点を置いて参りました。販売面の方につきましても、実はきようの御報告の中には申し上げておりませんが、なお十分検討すべき点がございまして、その生産者面の問題とあわせまして、販売面の方の問題も実は調査いたしておる次第でございます。しかしまだここで特に申し上げるほどのはつきりした結論は出ておりません。
  97. 中澤茂一

    ○中澤委員 横田委員長どうお考えですか。日本で生産した品物で原価の三倍以上に売れるものは、牛乳を除いてありますか。農民から四円二十銭で買い上げたものを、現在市販で十三円五十銭で売つておるのですよ。その中間の経費やいろいろなものは私ここに全部こまかく調査表がありますが、四円二十銭の物が三倍としても十二円六十銭ですよ。生産原価の三倍以上で売れておる品物が、日本に一体こういう利益というものは不当利潤であるというようにあなたは断定できないでしようか。
  98. 横田正俊

    ○横田説明員 他にそういう商品がございますかどうかただいま詳しく存じませんが、率直に申し上げましてそういう状態が出ますことは、結局明治、森永あるいはその他二、三ございましようが、そういう巨大な企業があるということがそもそもの根本の問題でございまして、ここで独占禁止法の弱みを申し上げてはおかしいのでございますが、独禁法は先ほども申しましたように、違法とするものをかなり厳格に規定しておりまして、先ほども申し上げましたように、いわゆるプライス・リーダーシツプというような問題につきましては、独禁法がただちに適用があるかどうかということについて非常な疑問もございまして、アメリカ等の判例におきましても、いわゆるプライス・リーダーシツプがただちに違反ではないというふうに大体判定されておるようでございます。この問題も、実はわずかの大きな企業がございまして、そのうちの一つが値をきめると他がそれに追随する、この問題は確かに何とかいたさなければならないのでございまして、これがはたして現行の独禁法で正確に処理できるかどうか、これが実は根本の問題でございます。あるいはその点の解釈につきましてある見解をとつて、問題を裁判所の方まで持つて行くということも一つの行き方かと存じますが、大体今までの反トラストの考え方、あるいは外国の判例等を見ましても、大体反トラストの線というものはそこまで行き得ないというようなことが、今までの大体の解釈になつておるようでございます。その点におそらく皆様方はなはだ御不満で、そんなものも取締れないかとおつしやる根本の原因があるように思うのでございます。結局先ほど申しました買入れ値段の問題にいたしましても、あるいは他に売ります値段にいたしましても、少数の代表者が支配しておる業界につきましては、そういう事態がありがちでありまして、これを独禁法でただちに取上げたい気持が私もございますが、やはりそれは法律の規定に従つてやる必要がございますので、その点であるいは事実の把握が足りない面とあわせまして、皆様の御不満の原因になつておるかと思います。そういう事情もございますことを一言申し上げておきたいと思います。     〔委員長退席、吉川(久)委員長代理着席〕
  99. 足鹿覺

    足鹿委員 質疑の通告はいたしておりますが、ちようどお尋ねをしようと思つた点が出ておりますので、この際お伺いをいたしたい。  公正取引委員長はいろいろまじめな御答弁になつておるようですが、この問題は、結局具体的には証拠があるかないかということのようです。いま一つは、やはり政府なり政権の性格が、こういう問題については結局あなた方の機能を十二分に発揮させるかさせないかというピリオドを打つのじやないかと思われる。その間にあつて横田さんは非常に苦悶しておられることは、まさに察するに余りあるようでございますが、それはそれといたしまして、独禁法に去年の第十六国会におきまして、自由党さんと改進党さんが協力をされて四条、五条を削除され、三条の規定をさらに緩和されたことからこの法律が弱体化した結果になり、従つて今問題になつておる乳価のような歴然たる事態についても、適用がなかなか困難な事態に至つておるのではないか、かように私は今までの御答弁を聞いておつて感じました。そこで委員長は、この乳価の問題について、第三条を適用して行こうとして今まで考えられたのであるか、それとも第九条で行こうとされたのであるか、その辺の適用条文をどこに求められ、どのような証拠物件を求めて今日まで対処されたのであるか。今まで聞いておりますと、独禁法に違反しておる、大体精神的には明らかに違反だ。こういうことは常識的に今までの中澤委員に対する御答弁で、大体私どももわかるのです。要は法律的にいつて適用の条文と、それを裏づける証拠が非常にむずかしい、こういうふうに伺つたのでありますが、その点について具体的に、どういう証拠が必要なのでありますか、またどういう条文を適用して、どういう罰則をもつてこれに臨もうとしておられるのであるか、もう少し具体的に伺いたい。
  100. 横田正俊

    ○横田説明員 先ほども申し上げましたが、今度の問題で独禁法上考えられます点は、第一は明治、森永あるいはその他の業者がいわゆる協定をいたしまして、共同して値下げをしておるのではないか、独禁法で申しますと、第二条第六項の、相互にその事業活動を拘束することによつて「公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」これに該当するかどうかというのが第一点でございまして、この点につきましては、いわゆる「相互にその事業活動を拘束」する、これは普通協定というような形をとるわけでございますが、必ずしもはつきりした協定でなくても、お互いに意思の連絡をいたしまして、共同歩調をとるということになれば、それでもいいわけでございます。この点につきましてはただいままでいろいろ調査したところによりますと、第一回の値下げ、第二回の値下げ、第三回の値下げ、いろいろ事情が異なつておりますが、そのいずれにつきましても、まだはつきりしたいわゆる協定の事実がつかめないので、現在なお検討を続けておるということを申し上げたのでございます。  次に第二点といたしましては、明治、森永その他の加工業者が、その事業上の優越した地位を利用いたしまして取引相手方でございます牛乳生産者に対して不当に不利益な条件をもつて取引しているかどうか、これが不公正な取引方法の一つとして指定されておりまして、独禁法の第十九条違反になるのではないか、この点でございます。これは先ほども申し上げましたように、必ずしも協定を必要といたしませんので、個々の業者が取引先に対しまして不当な条件を押しつければいいわけでございますが、今回の三段階にわかれました個々の値段が、はたして生産業者に対して独禁法にいわれる不当に不利益な条件であるかどうかということは、結局生産費とか加工費とか販売費とかいういろいろなものを調査いたしまして各地におきます生産者のいろいろな実情をも加味いたしまして判定しなければならないが、その調査がまだ実は十分に行つておらないわけであります。なおこれは違反でないと申しておるわけではございませんので、もう少し検討いたしたい、こういうふうに申し上げまして、大体独禁法的に申しますとこの二点になるように思います。
  101. 足鹿覺

    足鹿委員 大分わかつて来ましたが、先ほどの中澤委員の御質問の際に、生産者に著しい不利益を与えたかいなかということは、乳の生産費に関連がある、こういう意味の御答弁がございました。これはやはり法律を適用し、審査を開始して行かれる場合の材料として、生産費は意味のあるものとしてお考えになるのですか。また公取としては、牛乳の生産費についてお調べになつておりますか、いかがでありますか。それが農民の利益を非常に蹂躙しておるということの判断は、生産費というもので判断をしたいという意味でありますか。これは非常に重要な材料のように思われます。たとえば生産費調査ということになりますと、三十人やそこらの、あなた方の全国に散らばつた事務局で、はたして十分にやれますかどうか。これはだれかに委嘱してやつているのですか、どういうふうにしておりますか。この生産費は非常に重要な要素としてお取上げになつておるようでありますから、その間の事情をもう少しお聞きしたいと思います。
  102. 横田正俊

    ○横田説明員 これは実は率直に申しますと、牛乳の生産費を調査いたしますことは、ただいまの公取の事務能力といたしましては非常に困難でございます。これは何も牛乳だけではございません。先般硫安の問題等につきましてもそういう問題がいろいろ出たわけでございまして、非常に困難とは存じますが、しかし理論的に申しまして、この生産費というものが、当不当を決定いたします非常に重要なフアクターになるということだけは申し上げられます。これは御承知のように、公取の陣営だけではもちろん足りませんので、独禁法にもございますように、あらゆる機能——他の機関の機能等も十分に利用いたしまして、公取として判断をいたさなければなりません。もちろん農林省だけとは申し上げませんが、農林省等の考え方もきわめて重要なる一つ資料にはなろうと思います。
  103. 足鹿覺

    足鹿委員 生産費はこの当不当を判定する重大な要素であるということだけははつきりいたしましたが、肥料の場合を今例に引かれましたけれども、肥料の場合と違つてこの乳価の場合は、生産者並びに生産者団体はあなた方に喜んで協力するでしよう。肥料会社の場合とはこれは別だろうと思うのです。そういうことも、あなた方みずからで積極的に体制を整えることが困難とするならば、政府の統計調査資料あるいは権威ある機関なり、農業団体なり、農家なりに対して、生産費調査の具体的な手を一つ一つ打たれなければ、これは百年河清を待つようなことになりはしませんか。そんな手ぬるいことはいつまで待つても問題を解決することができない、むしろ困難になりはしないか、かように思うのであります。そこで私はこの新しい事実を一つ申し上げましよう。最近こそ値下げを非常にやりましたが、ことしの春ごろまでは、これはお調べになればわかりましようが、乳価を値上げしたのです。乳価を引上げて、他の中小乳業資本が追随できないようなところまで持つてつた。中小企業者を圧迫して、なかなかついて来れないというところまで一応ある程度意識的に引上げておいて、中小企業者を独占支配して、姉妹関係の会社にするとか、あるいは何らかの形で自分の傘下の会社に手なずけておいて、反旗を翻さないような態勢にしておいて、今度は第一次、第二次と乳価の極端な引下げを開始しておるわけなんです。これは非常に悪質なんです。これは実に計画的な態度であります。要するに生産者に対しましてもさることながら、公正な競争によつて公正な乳価の決定なり取引が行われること自体も、最近においては阻害した事実があるのです。ですから生産者を痛め、中小企業者を痛めて、これらが追随しなければならないような事態をつくつておいて、諸条件を整備しておいて、今度の挙に出ておる、これは一つの独占資本の形であります。協定というようななまぬるいものではない、一つの独占の形でありまして、独禁法違反はどのような方面からいつても明らかだろうと思うのです。そこで、そういう点から他の中小企業者関係や生産者関係に対して、審査に当られる前の事前調査をどういうふうに指示され、どういうふうに現在なさつておりますか、それを具体的に承りたい。先ほど中澤委員からお話の埼玉の事例や、どこかの事例についてはいろいろとお困りのようでありましたが、私は立場をかえて、その審査を開始されるにあたつて、いろいろな御調査も自発的になさつたようでありますから、どういう調査を現在行つておられますか。それをもう少し具体的に承りたい。
  104. 坂根哲夫

    ○坂根説明員 ただいまの御質問は、今までの調査の対象と解してよろしゆうございますか。
  105. 足鹿覺

    足鹿委員 そうです。
  106. 坂根哲夫

    ○坂根説明員 今までは、先ほど委員長が抽象的に申し上げたのでございますが、一応調査員を二名派遣いたしまして、酪農関係の組合——これは千葉県、神奈川県の組合を対象として調査をし、それから牛乳加工業者の方は一応本庁に明治、森永を呼んで調査をした、こういうことになつております。
  107. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、その調査の方法というものは、何をお調べになつたのでありますか。調査の対象は神奈川と千葉が一応対象になつたらしいが、私の今言つたのは、今日に至るまでの過程があるのです。相当中小メーカーに対して圧迫を加えている事実等についてもお調べになつたかどうか。それから千葉と神奈川をお調べになつたということは、生産者に対してどういうことを御調査になつたのですか。生産費をお調べになつたのでありますか。不公正取引について、その証拠資料とかいろいろな点について事前にお調べになつたのでありますか。これはあなた方が調べるのを、われわれが調べるような口調になつて恐縮ですが、もう少し御調査にならないと、こんな公正取引委員会ではまつたく看板倒れである。でもわれわれがこうやつてあなた方に来てもらつてのど筋を引張るということは、農民も期待をしているからなんです。公正な取引が行われることをあなた方に期待しておればこそわれわれは言つているのであつて、われわれももう文句を言わないようになれば、あなた方自体は自己否定になるわけでありますから、その点もう少し直剣な御答弁を願いたい。
  108. 坂根哲夫

    ○坂根説明員 ただいまの足鹿委員のつおしやいました問題が起つて来た事情については、もちろん私ども一応調べているわけでございますが、問題を今回はしぼりまして、この間九月一日の委員会でおつしやいました問題に集中して調べたわけでございます。そして問題の対象は、先ほどからおつしやいますように、業者の協定の問題と不公正取引の違法があつたかなかつたかということで、もちろん独禁法違反の疑いは十分にわれわれも考えておりまして調査を進めて参りました。ただその事実関係をどういうぐあいに固めて行くかということで、今日までのところ事実関係が十分に、すぐただちに独禁法違反として審査の方にまわして審判開始をする段階に至つていないというぐあいに私ども考えている次第でございます。
  109. 足鹿覺

    足鹿委員 まだほかにもお尋ねする方があろうかと思いますが、去年の改正前の独禁法の場合は、条文がそのまま生きているとすれば、この事態に対してただちに審判開始に至るものというふうに御解釈になりますか、どうですか。
  110. 横田正俊

    ○横田説明員 改正前の独禁法でこの問題に関係のございますものは、先ほど御指摘のございました第四条でございます。但し現行法ではその協定の影響が一定の取引分野における実質的制限というところまで行きませんと、これが違法にできないのでございますが、改正前の四条でありますと、協定の影響がどうであるかということを問わずに、一応その協定の事実そのものを違法とする、こういうような仕組みになつております。従つてかりに第四条でございましてもただいま私どもが考えておりまするように、協定の事実がはつきり把握できない、こういう事態に対しましては、やはり同じような問題が残るわけでございます。それから第二点の不公正取引の方法につきましては、これは先般の改正によりましてここまで広まりましたので、初めて今度問題になつて参つたわけでございまして、改正前の独禁法では、経済上の地位を濫用いたしまして、不当な取引条件を押しつけましても、そのこと自体をただちに不公正な取引方法とすることはできなかつたのでございますが、この点は先般の改正によりまして、むしろそれを一応取上げることのできることになつたのでございます。ただ残念ながらただいまの段階におきまして、まだ違法の認定をいたしますに多少不足いたすという関係にあるわけであります。
  111. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほどの点ですが、生産費の問題がはつきりしないと、酪農家に不当な損失を与えたかどうかという判定がなかなか困難なような御趣旨でありました。そこで現在この不当な乳価の一方的引下げ行為が、酪農家に不当な損失を与えたかどうかということの判定と同時に、先ほど中澤君が指摘されたように、生産費を割つているが、不当であるかないかは別個な問題として、とにかく非常に安く、当時よりも升当り二十数円も引下げてこれを農家から買い上げている。この買上げの方法は、一地方のみならず、全国的に軌を一にして行われている。でありますからこれは追随であろうか生産の協定であろうかということは、証拠中心で行きますならば、これはなかなか判定は困難でありましようが、追随であろうと協定であろうとそのいずれたるとを問わず、引下げのためにそこに何らかの行為が起きたということは間違いのない事実であろうと思う。その場合に一体証拠とは何でありますか。証拠としては、その会合における模様をテープレコーダーででもとつておいてやることが一番いいでしようが、とてもそういうことは今の場合できますまい。あるいはその会議の模様を何か文書につくつたものとか、あるいはその会議に参加しておつた者自体がその事情をはつきり述べる場合も証拠になるでありましようが、今あなた方が非常に躍起になつておられる証拠とは一体何であるか。その点どういうものが証拠であるかという御答弁が、本日ただちには御都合が悪いということであるならば、別な機会に私どもにお聞かせ願つてもけつこうであります。大いに協力して差上げましよう。おそらくあなた方が期待されるようなものが出るか出ぬかは別といたしまして、材料は相当あります。でありますから大いにあなた方が努力されるということでありますならば、私どもは十分にあなた方の活動にふさわしいような条件を提出することをここで申し上げておきたい。ただ今までの御答弁を聞いておりますと、事実上は鯉口をくつろげるところまで至つておらない。まつたく手をかけただけでだんだんあとへ引きもどすような構えのように、大体私どもうかがえるのです。ですから積極的に抜き上げるという決意があるのかないのか。そういう点の御決意がもしこの際承ることができますならば、私はそれを承つて、この程度で私はやめておれきます。
  112. 横田正俊

    ○横田説明員 ただいまの協定の事実につきましては、私どももはつきりした文書であるとかあるいは議事録であるとか、あるいははつきりした証人が確かに話し合つたというようなことまで必ずしも要求いたしません。諸般の事情からいたしましてそういう情勢がわかりますれば、それで足るものというふうに考えております。その点はなお十分諸般の情勢をもう少し調べたいと思います。なお刀に手をかけてそのままだんだんしり込みをしてしまうのじやないかという御心配でございますが、この点につきましては、結論はどうなりまするか。あるいははつきりした審判開始ということになりするか、あるいはそれまでの段階に行かないかもしれませんが、しかしこれだけの調査を開始いたしましてなお今後続けまする以上は、これに対して何らかの結論を出し、しかもそれがこの牛乳問題についてよい結果をもたらすような方向へ持つて行きたい、これは私のみならず事務当局の者もみな考えておることでございますので、その点につきましては、だんだん後退はいたさないつもりでございます。それだけははつきり申し上げておきたいと思います。     〔吉川(久)委員長代理退席、委員長退席〕
  113. 中村時雄

    ○中村(時)委員 横田さんとまた久しぶりにお目にかかつたのですが、この問題はこの前に経済安定委員会におきましても、あなたに何度となく、この公取委員会の性格の弱さに対して激励もし、いろいろ忠告もしたと思つているのです。ところがここでこの問題がかかりますと、再び同じような経過がまた出て来たわけです。この経過は、つい前に鉄の問題においても、砂糖の問題においても結論を得ずしてこういうような結果なつた。今度たまたまこの乳価の問題で同じようなことが現われて来た。このことは、あなた方自身のこの公取委員会の性格なんです。たとえば以前に独占禁止法の一部改正をする場合にも、私は本会議で極端なことまで言つて削除されましたけれども、そのような性格で常にあなた方が踏み切れない立場にある。たとえばこの乳価の問題にいたしましても、価格構成の問題を取上げるか、生産費の問題を取上げるか、あるいは牧野なんかに対するところの問題から総合されて一つの価格構成を取上げるか、いろいろな方式があると思いますが、今お聞きしておりますと、今のところは価格構成の問題だけを取上げているわけであります。価格構成の問題だけを取上げるということになりますと、第四条と第九条ですか、この二つにまたがつたところの問題がここに呈示されて来るわけであります。その中で不当なこういう一つの問題は、定義が独禁法の中には一つあるわけです。その不当なという定義は九条と四条にひつかかつて来るわけですが、その九条と四条に対して、今言つた生産者に対するどう言いますか、不当なという言葉を使つていいかどうかしりませんが、非常に低い利潤になる、ところが一方が非常に低い利潤であるならば、片一方はかなり高い利潤を上げているというこの現実ははつきりしている。先ほど中澤委員も価格の上においてはつきり打出しておる。それだけの実態がはつきりしておりながら、今おつしやつたように、法律そのものに対するあなた方の解釈の仕方が、これを実際取上げていいか悪いかという中途半端な考え方を持つていらつしやる。そこでこの問題をいつまでもやつて行くと、さつき言われたようにテープ・レコーダーという問題まで出て来るわけです。だから問題の可取げ方として、こういうような不当な利潤ということがはつきりしているということになれば、その実態に即応した一つのあれを逆算して打出して行つたらいいじやないか、こう思つているのですけれども、あなた方自身の心構えがまず第一です。たとえば一般の酪農家にいたしましても、今言つたような実情からいつてほかにたよれるところはないのです。たよれるのはあなた方自身です。そのあなた方自身がいつもふらふらしている。それは政治的な大きな圧力かなんかがあるかもしれません。たとえば独禁法の一部改正にいたしましても、一つの大きな圧力が加わつてつたことは間違いありません。そういうことを考えました場合に、あなた方の腹構えさえしつかりしておれば、これは的確に取上げることはできると思う。ところがあなた方の腹構えがいつも中途半端なんです。これがあなた方の実際の性格なんです。そういうことをやつておるから、公取委などは必要がないという諸論が出て来る。あなた方は認可、許可の問題でも、非常に腰の弱い態度を今までとつて来た。ですから、あなた方がほんとうにはつきり見通しをつけて、今言つた生産者に対しての味方になるというやり方をとれば、こういうことは取上げる方法は幾らでもあるはずです。ところがあなた方はいつもふらふらしておつて、どつちを向いておるかさつぱりわからない。だから、ひとつ思い切つてあなた方自身が、本心として実際にこの経済安定という立場の上に立つた場合、こういうような法律の取上げ方をしていいのか悪いのかということを、もう一度だけお尋ねしておきたいと思います。
  114. 横田正俊

    ○横田説明員 たいへんありがたい御忠告をいただきまして、この前の独禁法の改正のときも、いろいろ中村委員から御忠告をいただいたわけでありますが、残念ながらいまだにわれわれのやつておりますことに対して御忠告をいただかなければならないような状態になつておりますことを、はなはだ残念に存ずるわけでございます。私といたしましては、すでに先ほども申し上げましたように、独禁法のこの線はあくまでも守つて参りたいというふうに考えております。もちろん独禁法に対しましてはいろいろな批判もございますが、そういうようなことにとらわれずに、この道一筋で行きたいというふうに考えておるわけでございます。ただ先ほど来申しますように、あるいはわれわれの力が足りないと申しますか、あるいは勇気が欠けておると申しますか、ほかからごらんになりますと、はなはだ手ぬるいというふうにお考えになるかもしれませんが、われわれとしては、やはりできる限りの事実をつかみまして、その上に立つて仕事をやつて参りたいという考えがございますので、いろいろの点におきまして踏み切りの悪い点があるいはあるのではないかと思いますが、根本の考え方におきましては終始かわらないつもりでおります。もちろんこの牛乳の問題につきましても、日夜事務当局並びにわれわれ一同いろいろ考えておりますので、もう少しその点については時間をかしていただきたいというふうに考えております。
  115. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 ちよつと関連して横田委員長と、それから次官にお尋ねしてみたいと思います。  まず技術的な問題でございますが、これは横田さんにお尋ねするのでございますが、第三条の「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」の不当という意味は、本件の具体的な場合にどういうふうに御解釈になつておりますか、これが第一点。それから第十九条の「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」の不公正というのは、一体どういうふうに解釈しておられますか、不公正の条件をひとつお聞きしたいと思います。そこで、ただそういう法律解釈のことをここで申し上げてもはなはだ何ですから、本件具体的な場合について申し上げますと、酪農民が乳価のコストを割るような場合、これは不公正な取引方法と申しますと、生産者側、つまり売る方の側と買う方の側に立ちますと、結局買う方の側においては不当な利潤ということがただちにそれに対照して考えられることだろうと思います。そこで具体的な場合につきまして、一地方の酪農民が、当該具体的な事業者にしか売らないような場合、こういうふうな場合においてかつてに値を下げたときには、これはいわゆる不当、不公正ということになるのかならないのか、あなた方の御認定はどうか、それからまたさつき足鹿君も言われましたように、買う側におきまして公正な競争者があつた、その場合におきましていろいろ乳価をつり上げたり、あるいはいろいろな方法によつてもいろいろの群小の事業者と申しまするかその競争者を、自己の会社なり組合なりに限定してしまつて、たつた一人の相手方にしてしまつた、買う相手が一人になつてしまつた、その間においていろいろの手練手管を弄して、たつた一人の独占者になつてしまつた、こういうふうな仕組みになつてしまつて、たつた一人の独占形態をつくり上げてしまつて、そしてかつてに乳価を下げて来る、たたいて来る。こういう場合においてはそれが不当になるのかならぬのか。  さらに第三に、そういう酪農民の生産コストを割る場合において、つまり赤字になるような場合において初めて不当になるのかならぬのか。あるいはまたその他やり方において何か不当となるためには、そういう条件がそろわなければ不当にならぬのか、不公正にならぬのか。そういうようなことについての御見解を具体的にお伺いいたします。
  116. 横田正俊

    ○横田説明員 ただいまの不当な取引制限の不当というのはどういうことであるかというお話でございますが、実は不当な取引制限の不当を離してはいけないのでありまして、独禁法は不当な取引制限という熟語に対しまして、別に第二条の中に定義を上げております。それは要するに事業者が相互に事業活動を拘束し合いまして、一定の取引分野における競争を自主的に制限することがイコール不当な取引制限である、こういうように定義いたしておりますので、結局今申し上げましたことに当てはまるものは不当な取引制限、こういうことになるわけでございます。不公正な取引方法も不公正を離してはいけないのでありまして、やはり不公正な取引方法という一つの熟語がございまして、それを別なところで法律のわく内で公正取引委員会がそれに該当すると思われるものを指定する、その指定したものがすなわち不公正な取引方法、こういう仕組みになつております。  そこで今おつしやいました一人しかない業者から買つた場合はどうかということでございますが、これは結局買いまする協定等はないわけでございまするが、買いまする値段がいかにも農家に対してひどいという場合は、結局それが不公正な取引方法になり得るのでございます。それから先ほどの一方が一人しかない場合に、他方が協定しても、それはあるいは不当ではないのじやないかというような御趣旨の御質問がございましたが、それはそう一概に申せないのでございまして、なるほどそういう場合にはみなが一緒になるという自然の傾向はございまするが、そうだからといつてそれが必ずしも不当な取引制限にならないとも申されないのでありまして、先ほどの横浜の例が相当独禁法違反の疑いがあるということを申し上げたのもその意味でございます。要するにこの定義に当てはまりまするものは違法な行為でございまして、それは個々の具体的な場合にいろいろな事情をしんしやくいたしませんと、はつきり申されないと思います。
  117. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 横田さんの御答弁でございますが、私具体的な例を用いて御解釈を承つておるわけでございまして、今足鹿委員が言われたように、当該地方において酪農民の生産乳というものを、たつた一人の相手方、たとえば森永なら森永さんのほか売るところがない。こういう場合において、生産者の立場を考えずに、自己の採算のみを考えてかつてに値段を引下げてしまつた。こういう場合に、まず第一にあなたが言う字を離しても離さなくても私はいいのです。不公正な取引方法あるいは不当な云々なんという、それが字が熟しておりましてもかまわないのですが、そういう場合においてかつてなことをやる。今まで六十円だつたのを四十二円、四十三円とこれを下げて行つたら、それは不当になるのかならぬのか。またその場合において、その地方におきまして酪農民が生産しております生産乳を買つているのがABCいくらでもあつた。ところがそのABCをFならFが、あるいは値をつり上げ、あるいはその他の方法でもつて全部自己の傘下に統合して競争者がないようにしてしまつた。そうしてそういういわゆる独禁法上考えておかしいというようないろいろな手段方法を用いて市場を独占してしまつた後に、いわゆる乳価をたたいて来た場合、こういう場合は一体どうか、そういう場合にたたくだけならまだいいが、さらにコストを割つてしまつて採算にも何にもならぬようなコストにしてしまつた場合はどうか、こういう場合についての御答弁を伺いたい。御答弁によりましてさらに政務次官にお尋ねしたいと思います。
  118. 横田正俊

    ○横田説明員 それは先ほども申しましたが、下げ方の問題と申しますよりも、下げました結果、きわめて苛酷なものであるかどうかできまるように思います。たとえばコストを割つてしまうようなものは、これは不当に不利益な取引条件というふうに申し上げることができるかと思います。それからある地方の他の業者を、あらゆる手段でだんだんなくしまして、自己の傘下に収めましてここに独占力を集中あるいは独占的な地位を築く、このこと自体、やはりそこに持つて参ります手段に、おそらくそれまでにいろいろ独占禁止法の不公正な取引方法なりその他の手段が使われていると思いますが、結局その面におきまして、独占に至ります過程において、いろいろな独禁法上の違法な行為があることが多いと思います。その面で押えることができると思います。
  119. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 ただいまの委員長の御答弁で大体結論が出て来たわけでございまして、そういう具体的の例によると、大体の見解として委員長としては穏やかならぬ結——果違法行為、でなくてもそれに類することがほぼ見当がついているということになれば、これはまことにわれわれとしては今後研究すべき問題だろうと思うわけであります。そこでこれを包括いたしまして、この問題を公取委員会だけにおまかせして、そうしていわゆる公正の取引を念願するわれわれの立場をもちろん貫きたいのでございますが、おまかせすることだけでは、われわれとしては能事終れりとするわけには参らぬわけであります。この九月一日の乳価の引下げは、全国酪農民が非常な反対であるのはもう御承知の通りでありますがこれに対して私は、その生産者を代表しております農林当局、ことに畜産当局においても、必ずこれは何らかの手を考えておられるに違いないと思います。そこでこれに対して政務次官は、いかなる手段を講じてこれに対処して行かれるか。将来についての御抱負なりお考えを承つておきたいと思います。
  120. 羽田武嗣郎

    ○羽田説明員 去年からことしにかけまして、急激に畜産、酪農が非常に振興をいたしたときにあたつて、乳価が一方的にたたかれるというようなことは、畜産振興の上にまことに遺憾でございます。その意味において、何とかこれはひとつ公取の方にも積極的な活動を願わなければならぬし、同時に農林省自体としても手をこまねいているわけには参りません。従いまして農林省としては、幸いに皆様によつて先議会で議決されました酪農振興法がございますので、あの振興法に従いまして、メーカーと生産農家の間における乳価については、書類による契約をどんどんやつていただくように、府県知事を督励いたしましてその方向に進めておるような次第でございます。生産農家とメーカーとは車の両輪のごときものでありますから、お互いに十分なる納得ずくでもつて、公正な乳価が、決定するように指導をいたして行く、こういうような考え方でおるのでございます。  第二の問題は、結局先ほど横田公取委員長からもお話がございましたが、滞貨が多いというところに原因が多いようでございますので、この点につきましては消費を大いに宣伝をするというか、牛乳の消化をうんと大きくしようという点に着眼をいたしまして、農林省としては、近くこういうような点について、具体的に牛乳の消化を大いに国民に徹底させて、国民栄養をよくしかつ酪農業が健全な発展をいたすような方向に手を打とう、こういうような考え方でおる次第でございます。
  121. 中澤茂一

    ○中澤委員 時間もありませんから、いずれこの問題は、具体的な結論を公正取引委員長からお聞きする機会を近い委員会にまた持たなければいけないと思いますが、私はどうしても第二条の七の五によるところの「自己の取引上の地位を不当に利用して」という「取引上の地位を不当に利用して」というところに絶対当てはまると確信しておるのです。なぜならば、現実の情勢は御承知のように、長野県の場合で言えば、南、北信は明治がやる、それから東信、向うの方は森永がやる、こういう地区協定が全国的に成り立つておる。この北信なり南信の農民は、森永が値をよく買うから売ろうとしたつて売れないのです。その売れないのをいいことにして、かつてに乳価の一方的値下げを通告して来たということは、この第五の取引上の地位を不当に利用したということに絶対に該当すると私は確信しておる。これに該当するならば、当然十九条の問題がここで明らかに表われて来る。そこで、問題はまだたくさんありますが、いずれ他日の機会に残します。結局お願いするのは、私は横田さんは非常に人格者だと尊敬もしておるが、全酪農民はあなたに期待しておるのです。公正取引委員会が動いてくれなければ、ばらばらな農民はどうしても力がないのです。そこで公正取引委員会がどうして断固やつてくれないのだろうという期待を、日本中の全酪農民があなたに持つているのです。だから私はあなたに強硬に断を下してもらいたいということを要求するのです。これについて、あなたの方の調査よりが私の調査の方が一歩先走つておるようですが、あなたにひとつ確証をあげましようか。こういうものを森永の方で出しているのです。  「確認書住所氏名森永乳業株式会社埼玉工場工場長有村徹殿昭和二十九年八月十八日御申入れの左記牛乳取引価格については昭和二十九年八月に承諾せることを確認いたします。こういうものを出して判をつかせている。そうして九月分としては一日から三十日まで乳価一等乳脂肪率三・二%一升当り四十六円、二等乳同じく三十円、十月一日から三十日まで乳価一等乳一升当り四十三円、二等乳の方は三十円、但し脂肪差は〇・一%につき一円五十銭上下する。」こういうものを送つて強制的に調印をとつておる。これがまず一つ。私は二条の七の五と十九条にひつかかる一つの証拠としてあなたにあげます。それから明治の方はどういうことをやり出しておるかというと、「前略かねて九月より新乳価の申入れをいたしましたが、八月二十日付牛乳生産者団体連絡協議会書記長水戸外喜男氏御名義にて当社申出拒否の御通知に接しましたが、当社におきましてもその後種々検討をいたしましたところ、目下の業界の状態よりしてまた卸小売の値下げも九月一日よりすでに実施済みのことでもあり、遺憾ながら申出には応じかねます。従つて九月一日以降御出荷になつた牛乳は八月十八日に申入れいたしました新価格をもつて買い入れます。なお今後も新価格御承諾の上で御出荷ください。」こんなでたらめなものを出しておる。これに判をついてよこせといつて明治はこういうものを出しており、森永はこういうものを生産者団体に出して判をついてよこせといつておる。牛乳というものの性質は、御承知のようにすぐ腐敗するのです。さつき言つたように、明治と森永は区わけをしておるから、地域の関係で売れないのです。その地位を不当に利用したということは、私は間違いなくその地位の不当利用という二条の七の五に該当するものだと思う。これに該当するならば、明らかに十九条の問題がここに出て来るあなたの方では、調査しておるが目下結論が出ませんとかいろいろなことを申しておりますが、先ほど言つたように、横田さんは非常に人格者であるが、こういう部下がおるんですよ。森永の自動車に乗つて、そして二日間森永の人がついて案内して、一体何の調査ができるのですか。これは私は厳重に部下に訓戒を与える必要があると思う。われわれ国会議員は冷害やその他の視察に出ても、宴会は絶対お断りですよ。そのくらいわれわれは自粛してやつておるのに、独禁法の番人であるところの公正取引委員会の職員が、片方の業者の自動車に乗り、業者がついて毎日乗りまわしておる。自動車代を払つたとか払わぬとかいうことは第二の問題です。私は日本全体が自粛の段階だと思う。お互いに自分も自粛をしなければいかぬが、日本全体が自粛をしなければならぬ、もはやどうにもならないどろ沼に来ておるのです。だから、こういう点を考えるならば、あなたは部下に対して、もつと厳重に正しくやれということを訓辞する必要があると思う。それと同時に、実際の調査に行つた先ほどの埼玉県の場合などのように、生産者団体に話を聞かない調査というものはあり得ないのです。事実この申入れがあつたかどうかということを聞くことが調査だと思う。時間がありませんからこの次にいろいろ御質問申し上げるといたしまして、現実においては、農民の期待するものはただ公正取引委員会だけなんです。だからこの際ひとつ早急に、いま一度公正な立場において調査をいたして、至急地位の不当利用という面で審査会にかけてもらいたい。こういう要求をいたして質問を終つておきます。
  122. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がありませんので、せつかく中澤委員が大体をまとめられたので省略いたしまして、一点だけお尋ねと希望を述べておきます。農林当局ですでに御承知のように、森永及び明治というものが一定地域を協定いたしておりますことは、何人も否定できないと思うのです。これは協定であるか、または作為的な協定であるかいなかを一歩譲歩いたしましても、現実においては取引の地域がすでにきまつておることだけは否定できないと思うのです。こういう事情の中において行われる取引というものは、必ず不当な、あるいは不公正な取引が行われる状態に置かれておるということだけは否定できないと思う。さらにつつ込んで申しまするならば、乳価の生産費の問題でありますが、御承知のように生産費の最も多くの構成要素となつておりますえさであります。飼料は物価統計によつて明らかなごとく、漸次高騰いたしております。不足を告げております。また乳牛の値段も高くなつて来ております。従つて、生産費の構成要素である乳牛自体が高くなり、これを育成する主要な要素であるえさが高くなつて来るときに、乳価だけが安くなるということはあり得ないことであります。これは取引によると見なければならない。一方において、農林省が非常に奨励いたしました結果、確かに乳牛がふえ、飼料が不足して来ておるという生産費高騰の要素の中に、乳価が引下げられておるという矛盾にぶつかつておりますので、これを農民が解決することはもちろんでありまするけれども、公取といたしまして、公取の権威の上からもこれに断を下さなければならぬ時期に到達した。これは猶予を与えられない事態になつて来たと思うのです。これは現に経済統制をいたしております公正取引のこの段階は、経済秩序を遵奉させるという建前に立ちまして、わずかに残された経済秩序を維持できるかどうかという点にありますので、公取の特段な御勉励を願わなければならない段階でございます。この段階を逸して公取の権威を高める機会はないと思いまするので、また関係が非常に広いという点です。これほど関係の大きなものはないと思うのです。ほかの問題はもちろん関係がありましても、それから敷衍して来るところの関係が大きくなるのでありますが、取引自体において、これだけ広汎な取引はないのでありますから、十分これは検討の余地と最後の断を下す時期に到達したということを横田委員長御自覚願いまして、近く断を下されんことを希望して、今日の段階におきましては、希望を述べておくだけで質問を終りたいと思います。
  123. 綱島正興

    ○綱島委員 公取にぜひ御記憶を願わなければならぬことは、日本の農村が食糧問題いろいろな問題から畜産を相当奨励しなければやつては行かれない。これは食糧輸入の事情から見て、畜産を相当奨励するよりほかに日本は行かれない。そこでこの問題は非常な重大な問題で、こんなことでべらぼうな、二人か三人の商人のために日本の農村の畜産問題がかたなぐりに倒れて行つたりするようになりますと、これは食糧問題からも大問題ですから、単にわずかな問題とお考えにならずに、これは国策上も、民生から言つても非常に重大な問題であるということで、どうぞ御対処願いたいということを希望しておきます。
  124. 井出一太郎

    井出委員長 他に質疑はございませんか。——質疑はないようでありますので、本日はこの程度をもつてしまいたいと考えます。  横田公正取引委員長におかれましては、どうか当委員会のこの空気をよくおくみとりいただきまして、ただいま特に川俣委員、網島委員等より、私から申し上げたい点に触れて、最後の締めくくりをしていただきましたので、あえてつけ加えません。いずれ当委員会のただいまの質疑応答は速記録ができまするから、これをお手元へお届けをするつもりであります。何とぞすみやかにひとつ結論をお出しをいただきたい、こう考える次第でございます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十三分散会