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1954-07-01 第19回国会 衆議院 農林委員会 第60号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月一日(木曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 金子與重郎君 理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐々木盛雄君    田子 一民君       松岡 俊三君    吉川 久衛君       足鹿  覺君    中澤 茂一君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         農林事務官         (農業改良局         長)      塩見友之助君         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      藤村 重任君         農 林 技 官         (林野庁業務部         長)      石谷 憲男君         運 輸 技 官         (中央気象台予         報部長)    肥沼 寛一君         運 輸 技 官         (中央気象台予         報部予報課長) 伊藤  博君         運 輸 技 官         (中央気象台観         測部産業気象課         長)      大後 美保君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  蚕糸に関する小委員会参考人招致の件  農林公共事業に関する件  農業災害対策に関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。田子一民君。
  3. 田子一民

    田子委員 私は岩手災害地を視察しました四日間の感想を、ごく切り詰めて、委員長並びに委員各位のお許しを得て申し上げたいと思います。  この地帯、二戸、九戸、下閉伊、上閉伊並び岩手郡の一部、これは岩手県におきます旧南部領でございます。この地帯の霜の一番おそいのは、今までの記録では五月の十日でございます。しかるに今回の事例は一箇月遅れの六月九日及び十日であります。今まで晩霜は一回十日に来たことがあるそうでありますが、二回続いて参つたことはない。これが零下四度及び零下五度と続いてやられたので、先ほど県会議員より陳情がありました通り、もう満目秋でございます。木の葉はみな散つておるという、まことに異常な光景を呈しておるのであります。  それから申し上げました地域は、旧南部領でありまして、南部藩適地適食主義と申しますか、そこの土地に適したものをとつて、その土地の者はそのものしか食べられない。すなわちあわひえ主食としまして、米は多く用いません。今でも米は開墾などで畑をやつておりますけれども、きわめて少いものでありまして、あわひえ、大小豆とうもろこし、これがほとんど主食のおもなものであります。ところがひえあわも全部いけません。豆もいけません。とうもろこしもいけません。その他最近はやつて参りましたばれいしよとか、タバコとか、野菜とかいうものも全然いけないのです。この地帯生活状況は、春蚕を売りまして幾分の生活費を補い、麦を売りまして夏の初めの現金収入にしておる。ところが今回のは、春繭先ほど陳情がありましたように、三眠のところもありますし、四眠のところもありますが、桑が全部枯れたので、全部これを廃棄をいたしました。麦は開花中であつたために、百姓さんたちは、まだ幾らか望みをかけておりますが、日に日にもうその収穫の皆無なことははつきりしております。しかもこれは私どもの社会政策的な観点から見ますと、貧民、貧農で、現金というものは全部持たないのです。これをどういうふうに政府は考えるのか、県は考えるのか。突き詰めてもうぼう然たるようなありさまであります。おそらく生活保護法でありますとかいうようなことが行われなければならぬのではないかと思うくらいでありまして、農業範囲では、いろいろ営農資金とか何かがありますけれども、急場、この七、八月ごろには食べるものがないのではないかというような感じがいたすのであります。しかも大豆、小豆は御承知通りあわひえ主食とは申せ、救済制度の中に含まれておりませんから、これまた非常な痛手でございます。  私は、昭和九年の経験から申せば、救農土木といつても、町村費や県費を使うものではとうていやれない。営農資金と相まつて農林省補助率の多いものを何か興していただくとか、他のものを繰り合せて、この地帯に興していただくということもその一つであろうと思います。農林省関係はありませんが、昭和九年のときは、全部国費で負担するところの鉄道の繰上げ急施をやりまして、これなどは一つのいい例であろうと思うのであります。それからつぶれ米というものをこしらえまして、あるいはつぶしたのではないかと思いますが、つぶれ米を補給いたしまして生活を保護いたしたのでありました。要するにこの霜害というのは、世にいわゆる米作地帯の凶作とは全然趣を異にしております。現金を持たない人々が春の金の入らないという状況、これをどう解決して行くかということは、政府の全体の責任であり、農林委員会ひとりこれは負担すべきものではないと思うのですけれども、ただいま陳情等のことを参酌せられまして、農林委員会にでき得る範囲のことをやつていただき、御実行あらんことをお願いいたします。なお委員長並びに委員各位には、この短かい私の報告を許されたことをお礼申し上げます。
  4. 川俣清音

    川俣委員 関連して……。今田子委員からるる現状についての説明が行われ、昨日はまた吉川委員より、現物を示されて凍霜害説明が行われたのであります。私も先般岩手の一部、青森の一部を見て参りましたが、これは実際想像以上の被害でありまして、むしろ晩霜の害というよりも結氷の害と見るべきではないかと思うのであります。結局凍りついた被害ではないかと思うのでありまして、こういつたようなことに対して農林省一言苦言を呈さなければならぬと思いますが、官房長、よく聞いておいてもらいたい。これは農林省がもつと農作物について関心を持つていなければならない。農林省よりかもつと関心の薄い方面の省の方が熱心だという点です。といいますのは、タバコ被害については専売局が相当精密な調査行つております。これは一本々々の調査行つております。もちろんこれはタバコの収支の上から見たのでありますけれども、この被害の出し方と統計調査部の出し方との間に大きな差がある、こういう点について、もしも農林省の方に疎漏がありますと、農民から最も信頼の深い農林省が、この信頼を裏切るようなことのないように十分注意していただかなければならないと思いますので、これらについての官房長の所感をひとつお伺いしたい。
  5. 渡部伍良

    渡部説明員 お話の通りでありまして、農林省としましても、統計調査部あるいは改良局その他を督励して調べておりますので、変なことにならないように注意いたします。
  6. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 田子委員からるる災害説明があり、また岩手県会議員の方からも御陳情を受けましたが、まことに御同情にたえないのです。実は御承知のように、六月になりまして四日の日に茨城を襲つたひよう害でありますが、一瞬にして約三千町歩に二億五千四百万円という被害を与えたということであつたのであります。そこで私ほか二十二名提出の法律案として、十九国会最終日に凍霜害等被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法の一部改正法律案というものを提出いたしたのでありますが、時ちようど田子委員並びに岩手県会議員が仰せられた災害の問題が電報で入り、あるいはラジオで聞きまして、俄然運動が熾烈になりました。そこで私のところに御交渉があつて、実は四月、五月の凍霜害は入つておるが、六月の凍霜害というのは入つていないわけです。そこで一部正誤として、やはり岩手青森方面の凍霜害営農資金金融措置ができるようにということで、実は振鈴が鳴つた瞬間から、青森岩手災害関係議員諸君の談判を受けまして、私はその正誤を提示してあつたのです。そのために実は参議院に送り込んで、委員長御存じのように、私、委員長と伺いまして提案理由説明したのですが、参議院としては四億五千万円の金ではとうていまかなえない。それは北海道青森岩手の約四十億にわたる巨額なものの営農資金はどう見ても相当なものだ、十億近くいるのではないか。そこで資金措置ができていない法律案を通すのは困る、こういうので御承知のようにあれは継続審議になつておる。ところが最近に至つて、やはり参議院の方の諸君が、何らかの金融措置をしてくれということでおやりになつたということを新聞で拝見いたしました。あるいはまた最近建設大臣の小澤君が、土木災害における一億の臨時措置として閣議に提出したというようなことも聞き及んでおるわけです。そこでとにかくこの災害に対する営農資金、これは至急やらなくてはならぬ問題で、実は臨時国会が今月の半ばごろ開かれれば問題ないのですが、おそらく今の形勢ではこれは開けそうにありませんから、その間かなりのブランクができてしまう。これに対する措置として、やはり何らかこの農林委員会においては強い意思表示をしておく必要があるのではないかということも考えられますので、一面救済としては、今川俣委員が言われたように、タバコのようなものははつきりしております。われわれの方でも五億五千百万円、百七、八十町歩くらいの損害です。これははつきりしておりまして、専売局の方でも相当の手配をすることに話がついております。その他の共済金即時払いというような点について、これは今大分やつております。やつておりますがこの点につきましては、官房長もおられるから、この処置を講じていただきたいということを、この機会に申し上げておきたいと思います。
  7. 井出一太郎

    井出委員長 災害の問題に関しましては、各委員からも御発言がございましたが、本日午後の日程において、さらにつつ込んで審議をいたしたい、かように考えますので、午前はこの程度にいたして、農林公共事業の問題について調査を進めたいと思います。  政府は過般、本年度予算一般会計百九十九億円の節約を中心とした実行予算を決定したやに承知をいたしておるのでありますが、これがため農林関係といたしまして、なかんずく公共事業の面に相当な圧縮が予想され、食糧増産治山事業等の遂行にいささか危惧の念を感ずるのでありますが、この際まず農林省所管予算節約額について政府説明を求めたいと考えます。渡部官房長
  8. 渡部伍良

    渡部説明員 まず一般会計の方を申し上げますと、お手元に資料をお配りいたしましたはずですが、昭和二十九年度予算節約額調総括表というのと、それから昭和二十九年度節約額組織別一覧表というのと、昭和二十九年度公共事業予算節約額調総括表、この三つの書類をお配りしてございます。  最初に申し上げました予算節約額調総括表、これの最後を見ていただきますと、まず第一欄として昭和二十九年度予算額の合計が五百六十八億、この中から閣議決定の要綱によりまして、節約対象になつていない費目を計上しますと、四百五十七億になります。そうしますと差引——公共事業費を除くとありますが、それを除きまして節約対象額となるのは百十億になるのであります。これに対しまして試験研究機関物件費施設費等一割というものを、一々の費目につきまして、たとえば災害復旧費なり補充費なりは節約対象になりませんから、一般に計上されているものでも災害復旧費的なものは除外する、あるいは試験研究の直接の費用でないけれども試験研究的な費目というものは、試験研究機関費目と同じに扱うというようなことをやりまして、結局一般で五億九千万円の節約ということになつたのであります。そのほかに従来公共事業の中にありまして、今度は一般予算として入れております農地耕地整理事業、つまり小規模の対象事業となるものがあるのであります。これが約三億五千万円ありまして、今の五億九千万円にその分が加算されまして、合計といたしましては九億四千二百万円の節約になつたのであります。  次に昭和二十九年度節約額組織別一覧表というものを見ていただきますと、各局別場所別節約が出ておるのであります。これは節約要網に基きまして縦横に集計してみたわけであります。  次に公共事業関係であります。公共事業関係では二十九年度予算、内地、北海道農業、林業、水産業というふうにわかれまして、合計五百二十七億になつております。この中で節約除外額が百八十二億、すなわち災害復旧を主とするもの、それを差引きまして三百四十五億は節約対象額になるのであります。一応この表では一〇%の節約の計算になつております。これを何パーセントの節約にするかということにつきましては、自由党政調会方面では、あるいは治山治水対策協議会方面では、道路費節約はだめだ、あるいは治山治水節約はだめだ、あるいは農林省では食糧増産節約はだめだ、こういういろいろな議論をしておりましたけれども、結局それらの費目軽重の差はあり得ないということになりまして、農林省としましてもそれぞれの費目軽重をつけることは反対するということで、一律で節約をするというふうな方針にきまりまして、一応昨日の閣議では一〇%ということになつております。これにつきまして節約のもどしを——これも一律の問題以外では話になりませんが、今後大蔵省と折衝する余地が多少残つておるのでありますが、その節約もどしの額は、何パーセントになるかということは、そう大きい期待を持つことはできないのじやないか、こういうふうに考えております。  以上概略申し述べました。
  9. 川俣清音

    川俣委員 今の御説明のうちで疑問の点が少しありますので、さらに詳しい御説明を願いたいと思います。今までと違いまして、二十九年度公共事業費という見出しのほかに、二十九年度予算節約額調総括表というものがあつて、その中に、第十六項として補助金と出ております。この補助金の詳細は、小規模土地改良費だというふうにも聞えたのですが、そうすると組織別一覧表の中に出て来なければならないと思いますが、それがないのです。最後の計は合つておるのですが、説明が不十分であつたのか、または間違つた説明じやないかとも思うのですが、一体どれがほんとうか御説明願いたい。
  10. 渡部伍良

    渡部説明員 今の第十六項目で、小規模土地改良、いわゆる耕地整理事業関係が約三十六億ばかりあるのであります。そのほかは一般補助金ということになつております。それから組織別の方には、農地局の方に入つておるのであります。
  11. 川俣清音

    川俣委員 すると、この第十六項の補助金小規模土地改良件数はどのくらいですか。ただ平均の一〇%とか五%とかいうふうにわけておられるようですが、どういうのが一〇%でどういうのが五%というふうに内訳を見ておられますか、天引きでお考えになつておられますか。この内容と、並びに補助金対象になつている件数、これを明らかにしてください。それから不用見込額というのがありますが、これはどういう意味ですか。
  12. 渡部伍良

    渡部説明員 小規模土地改良関係では、全部一〇%になつております。五%というのは、そのほかの試験研究機関物件費施設費節約であります。  それから今の不用見込額にうたつておるのは、水産関係の融資の利子補給不用額であります。
  13. 川俣清音

    川俣委員 御説明によつてますますわからないが、この補助金というものは小規模土地改良の総額だ、こう言われながら、これには水産関係利子補給も入つているのだ。この補助金組織別表から見ると、農地局に入つているのだと言われながら、水産関係も入つているのだ、こういうことはおかしいのではないか。
  14. 渡部伍良

    渡部説明員 先ほど申し上げましたように、この補助金百六十八億のうち約三十四五億が小規模耕地整理事業のものであります。それを差引いた残りが一般補助金、ほかの局の補助金が入つているわけであります。従いまして農地のものでも小規模のほかの補助金がいろいろありますので、それとその他を合せて農地局に計上されているのは、公共事業を除きまして六十三億ということになつております。
  15. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの御説明を聞きまして、よけい理解しがたいのですが、節約除外額というものと節約対象額というものにわけてあつて、ただそれが区分として旅費であるとか庁費であるとか委託費であるとか、いろいろなものに一般会計の分はわかれているようであります。問題は、一々こまかいものでなくてもいいのですけれども、大体どういうものが除外されてどういうものが対象になつているか。同様に公共事業費の場合は特にその重点が聞きたいのです。そういうものを資料的にまとめていただきたいという希望を昨日述べておいたのですが、どうもこれだけではよくわかりません。たとえば従来中央事務費というものは比較的ふんだんにある。ところが地方事務費というようなものはもともと見てない。そこで結局事業費しわが寄つて来て、地方では捻出方法がないから、そういう手段に出でざるを得ない。たとえば今問題になつている小規模災害復旧についても、府県によつては、大蔵省が無謀な削減に出て来ているために、設計手数料というようなものまでつくつて、そうしてそれを末端から吸い上げて事務費のカバーをしたり経費の捻出を考えるというような実情にあることは御承知通りだろうと思う。そういうところへ持つて来て、またこの二重の削減ということになりますと、実際上この事業停頓状態になりはしないか。結局最終的には地方庁にもその負担の余力がないということになると、末端の方へ全部しわが寄つて来る、こういう結果になりはしないかと思う。その間の事情をもう少し説明していただかないとよくわからない。
  16. 渡部伍良

    渡部説明員 それでは申し上げます。今度の節約対象になつているのは災害復旧費それから補充費的な費用、つまり農林省で申しますと、一応農業共済の再保険金国庫負担額予算に計上してございますけれども、これは実際災害が起きてみればもつとふえるかもしれぬ、そういう補充的な費用と申し上げておきます。それから通信専用科、庁舎の借料、患者の食糧費、これは農林省関係ありませんが、そういうものを除く一切の費用節約対象にいたしておるのであります。その節約対象になつておるもののうち学校、病院、試験研究機関物件費施設費等につきましては五%の節約、そのほかのものの物件費施設費、これは補助費委託費、他会計への繰入れ等を全部含んでおりますが、そういうものは一率に一〇%の節約、そういう原則が立つておるのであります。その原則に基きまして農林省の中の一例の費用を分類いたしまして、そうして先ほど申し上げましたように、災害復旧費として計上されているのではないけれども災害復旧事業に関連するもの、あるいは災害復旧的なものは災害復旧費と同じように節約対象から除外する、あるいは試験研究機関物件費ではないけれども試験研究に類する費用として考えられるものは、試験研究機関物件費と同等の節約率に下げる、こういうふうな仕訳をして行つてまとめた表が、先ほど御説明申し上げました総括表で、庁費委託費施設費補助金交際費補償金、他会計繰入れその他の費目、そういうふうになつておるのであります。一つ一つ費目について、今のように一々討論を加えまして節約除外、何パーセントの節約対象というのを仕訳いたして集計したのがこれであります。
  17. 足鹿覺

    足鹿委員 今度の予算節約方針を見ますと、節約はしても事業量圧縮しないということが建前になつておるようであります。これはどういうことですか。事業量圧縮なしに公共事業費三十億の農林省関係削減節約があるわけですが、それで事業量圧縮しないということは、結局事業単価デフレ政策とマッチして下げて行くのだ、従つてそれでまかなえるのだ、こういう考え方なんですか。事業量圧縮しないで節約ができるという考え方自体が、私はどうも納得が行かない。節約をすれば、先ほど言うように事業量圧縮せざるを得ないのじやないか。事業量圧縮しないということはいわゆる物価が下つて予算節約をしても事業量だけはやれるという考え方なのか、その辺の考え方は一体どういうふうになつているのですか。私どもどうも合点が行かないのですが……。
  18. 渡部伍良

    渡部説明員 これは実施官庁大蔵省と多少見解が違うのでありまして、大蔵省の方では一〇%物件費節約しても、半分は今後のデフレ進行に伴う物価値下り、半分は役所の物件調達方法によつて吸収できるはずである。こういう見解で一〇%というのを出しておるのであります。これにつきましては、現在の物価値下り進行状況、それからまた官庁の物資の調達方法、つまり入札制度であるとか、あるいはいろいろな紙、調度品購入方法等について政善を加えるべき余地は相当あると思いまするけれども、はたしてそれだけの節約が可能であるかどうかというところで、必ずしも見解が一致していないのであります。農林省といたしましても、たとえば本省の一般会計の物品の購入等につきましては、今まで各局でばらばらに購入しておつたのを、官房会計課で一括いたすことによりまして、この二、三箇月の成績を見ますと、ちよつと意外のほどの節約ができて来ております。しかし切りかえたのに伴つて急に競争がはげしくなつたので、売り込みのためにある程度競争で共倒れ的にやつておるような傾向も見えますので、この調子でずつと一年間続くかどうかということは、まだ軽々に予断は許さぬのであります。  それから物価値下りもある程度予想できると思うのであります。しかし鉄鋼、石炭等は相当下つておるけれども、セメントについてはまだ下つていない、ここいうふうな状況がありますので、先ほど申し上げましたように、はたして一〇%でいいかどうかということは、うんと議論しておるのでありますが、現在までのところ、先ほど御説明申し上げましたように、公共事業費について多少のもどしは、理論闘争大蔵省としても一応一〇%で節約を予定しておるけれども、ある程度もどすこともやむを得ないのじやないかというころまでは来ております。いずれにしましても、予算節約によつて事業分量が減るということは、実施官庁としては困るのでありますから、実施官庁努力をすべきところは大いに努力をするし、できなければ節約のもどしを時間の経過につれて交渉して行つて、できるだけ二十九年度の予算の当初の計画が確保できるように努力したい、こういうふうに思つております。
  19. 足鹿覺

    足鹿委員 今回の節約で、一番大きいものは、公共事業費関係では農林省の三十億と、建設省の四十五億が一番目立つて多いのであります。一般事務費の一〇%は入札制度消耗品その他食糧費いろいろなものを合理化されることによつて成果が上つて行くだろうと思うのですが、さつき申しましたように、この前から問題にしておりますように、小規模災害については当然四、五十億を予定されたものを、大蔵省は四億程度でやるということは、この前柏木主計官言つておりました。それについて私ども納得が行かないということを言つてつたわけなのですが、さらにそれらも含めてまた今度一〇%の節約をする、この中には三%の留保分というものをつくつて、大災害などの発生に備えて留保しておくのだ、こういうようなことにも伝え聞いておるのでありますが、その三%留保するということは、ここでまず一〇%引いておいて、三%というようなものは予備費なら予備費に入れておいて、今度これを支出して行く、そういたしますと、それは既定分には出ないので、新たな事態に出て行くのであつて、やはり事業量というものにはきずがついて来る結果になりはしないか。その三%というものはやはりやむを得ざると認めた場合に、これを元のさやへ納めて行くということであればわかりますが、これは大災害等に備えて留保するのだ、こういうことになりますと、結局事業分量そのものに圧縮されて来るのではないかと思うのです。農地局長もおいでになつておりますが、実際担当しておいでになつて、そういうことにならないという保証がありますか。どうもりくつではあなた方の言うことはいいのですけれども、その通りにはなかなかならないと思う。従来が十分であつたならこれはわかります。小規模災害の場合には特にひどいのですから、それを私は心配をするわけなんです。
  20. 渡部伍良

    渡部説明員 ちよつと初めの方だけ……。今の節約もどしについて、足鹿委員から三%という話がありましたので、その点について申し上げますが、三%とか何%とかいう話は大蔵省からあります。節約もどしもまだはつきり三%にするか、二%にするか、五%にするか、交渉の余地を残しておるのであります。しかしそれを返す場合にはどうするかということは議論したのです。これは当然災害のときとは別にこの節約した事業にもどせ、こういうことで二九は最後に私と原君が、これを災害の方の予備金にまわして持つて行くということでは私どもは了承できない。もし節約もどしがあれば、今言つたように事業分量を減らさないという建前から行けば、今のところ君の方だつてかりに三%返したつて事業分量を確保できるかできないか確信が持てないだろう。それならば当然従来の事業にもどすべきである。但しその従来の事業にもどすときに多少はつきり各事業所別に三%もどすか二%もどすか、こういう調整はある程度あり得ると思いますけれども、このうちで節約もどしの方を災害の方に向ける、こういう話はいたしておりません。
  21. 平川守

    ○平川説明員 一〇%というような節約をいたしまして事業分量を減らさずに済むか、物価の下落とかいろいろ言いますけれども、非常にはつきりしない要素を持つているわけであります。われわれとしては、これは見当でありますけれども、一〇%の節約事業分量を減らさずにできるとは思つておりません。従つて官房長も申しましたように、この点については大蔵省となお折衝の余地を残しているわけであります。公共事業費の点については、特にそういう意味で事務的な折衝をまだ残して、大きなわくを確保するということを考えておるわけであります。
  22. 足鹿覺

    足鹿委員 そういう折衝の余地が残されておるということでありますから、私は意見を述べて質疑を打切りたいと思います。  いわゆる一般公共事業費以外の総務関係事務費関係というようなものを節約して、それを不足な公共事業費にまわすとかいう趣旨なら、私どもはやむを得ない場合もあり得ると思うのです。むしろ方針が根本的に誤つておるのじやないかと思うのです。要するに冗費を節約するということは、従来いろいろな面において今までむだがあつた。これを定員法も十分に行かなかつたから、そういう面で節約をして、そうして緊急欠くべからざる災害復旧であるとか、あるいは公共事業とかいうようなものにまわして行くのだ、こういう考え方であるならば、これは時と場合によつてはやむを得ない場合もあろうと思う。しかし何か公共事業費そのものを節約対象の重点に置いておるような印象で、非常に私どもは事の重大性を心配せざるを得ない、一般的な印象としては何か公共事業費そのものに不急不要のものを含んでおるのだ、そういう一つの既成概念の上に立つて公共事業費に手をつげて来る、こういう節約という考え方そのものは、時節柄別に悪いことではありませんが、この公共事業費と総務費とを並列して同じ取扱いにして行く、三%とか五%とかまだ話がつかない、こういうことでありますから、その点折衝されることは大いにけつこうであり、農林委員会としても、いろいろな形でそういうむちやなことが通らないためには努力すべきであろうと思うのですが、どうも公共事業費一般事務費とを並べて節約して行く、その考え方自体をあなた方がのまれることは、もうすでに一歩退却じやないか。そういうことになつて来ますと、公共事業費そのものの内容が、非常に何かずさんだというようなことを言外に肯定したような結果になつて来ると思う。過剰どころか、小規模災害の場合においてはまつたくなつていない。だがらむしろ節約したものをそこに持つて行くという考え方に基くべきものであつて、今のこの予算節約というものの考え方自体が、まつたくわけがわからぬ。しかも将来法律の修正を伴う所要財源に保留されるというようなことが節約方針の中に書いてあるということになりますと、国会においてきめた予算を、実行上において閣議できめさえすればもうどうでもなる。しかもその節約したものをさらにまた閣議で決定して、どのようにでも出して行けるということになりますると、議会の審議権も、決議権も何もない。とにかく一応そういうふうにきめておいて、あとで閣議節約も認めるし、また節約した分もかつてに使つていいということになれば、一種の独裁、フアツシヨ的なことになる。国会としては、ただ単に農林委員会のみでなく、重大な問題だと思う。そういう面からいつても、公共事業費節約の点については決意を新たにしてがんばるべきであるし、私どももそれに対応して強い態度を示さなければならぬ。こういうことをむやみやたらにやられたのでは、議会も役に立たないし、農林委員会も何の役にも立たない。その点農林関係においては三十億程度のものといつても、現状が現状だけに、この際農林委員会としては、基本的にこの問題を重視して何らかの対策を立てて出るべきである。かように思いますので、委員長においてもよろしくおとりはからいいただきたいと思います。
  23. 足立篤郎

    ○足立委員 関連して。ただいまの農地局長の御答弁でちよつと聞きとりにくい点があつたのであります。それが今私が伺つた通りの御答弁であるとするならば、ちよつと政府としておかしなことになるのではないかという気がいたしますので、一点だけ農地局長に対して質問をいたします。と申しますのは、当面一割の節約ということでただいま資料をいただきましたが、新聞の伝えるところによれば、大蔵省は特別な災害等がないという見通しがつけば、三%はリベートするということで、おそらく九月中には特別な災害のありやなしやの見通しがつくのではないかというふうに考えるわけであります。それでただいまの足鹿委員の質問に対する農地局長のお答えでございますが、私はこう聞いたのですが、間違いありませんか。とりあえず大蔵省からかような削減を受けて閣議で決定したものであるから、事業官庁としてやむを得ないから一割切るのだ、しかし一割切ることは自分にとつてはつらい仕事であるから、大蔵省とさらに折衝の余地があるのだというふうに聞えたのですが、それに間違いないかどうか、もしさような答弁であるとするならば、政府はこれを節約をいたしまして、諸物価の低落とにらみ合せて事業分量は減らさないのであるという公式な答弁を昨日もいたしているようでありますが、それとの食い違いの問題はどのようにお考えになつているかという点、さらにもう少しつつ込んで、農地局長の見当では、土地改良事業等いろいろの種類がございますが、平均して、アヴアリジで、何%くらいのものはほんとに節約できるとお考えになつておるか、またそのできるという御見当をおつけになる節約に対しては、いかなる手段をおとりになるつもりであるか、その心構え等についてもこの際伺つておきたいと思うのであります。私の私見を申し上げれば、かりに、請負に出します事業等を、厳格に競争入札制度にすることによつて相当な節約ができはしないか。私は大蔵省の肩を持つわけではありませんが、昨今の情勢は、私どもの耳に入る事実をもつてしますならば、どうも競争入札という形はとつておるが、実際は、落す人間は初めから話合いできまつておるようなふうにも見えます。これはかつて検察当局でも詐欺罪として起訴したこともありますが、なかなかその実体がつかまらない。それがために現在は、この点については、末端の役人までぐるになつておるとは申しませんけれども、そういう疑いを受けるケースが非常に多い。かような状態では、諸物価がかりに下つたといたしましても、それにつれて請負金額を引下げるというようなことは絶対にできないのでありますから、この際これに対して一大斧鉞を加え、国家がかかる危急存亡のときでもありますから、これに当るところの末端役人にまで戒告を与え、心を引締めて——いかなる対策をもつてこの実をあげようとされるか、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  24. 平川守

    ○平川説明員 どの程度まで事業分量を減らさずに節約が可能であるかということについて、先ほど官房長からも御答弁がありましたように、大蔵当局と実施当局と多数意見が食い違つておるわけであります。その点が両者まだ事務的には一致しておらないわけであります。そこで今の節約を何%かもどすという問題がありますので、われわれとしましては、できる限りの実質的な節約方法はとりますけれども事業分量を減らさないような程度までの節約もどしということについて今後大蔵省と折衝の余地があるということを申し上げたわけであります。  それから何%程度まで節約が可能であろうかということにつきましては、ただいまパーセンテージを数字的に申し上げることは困難と思います。その節約方法としまして、御指摘のような方法は、非常に有力な方法であると思いますので、従来なかなか実行上困難な問題ではありましたけれども、極力末端を督励いたしまして、そういう方法によつて実質的な事業量を減らすことなしに、節約することは極力進めなければならぬ。その実績の上り方によつてそのパーセンテージも非常に違つて来るんじやなかろうか。大蔵省の言うような、一般物価の問題だけではなかなか節約の具体策は出て来ないという意味を申し上げたわけであります。節約の具体的な方法として、競争入札を厳重に行つて参る、これはきわめて有力な方法であろうと思います。
  25. 足立篤郎

    ○足立委員 ただいまの御答弁ですと、次のように伺つておいてよいのですか、その点を確認していただきたいと思います。今大蔵省から一割というわくをはめられ、これは将来七%になる可能性がある。従つてかりに七%が実現するものといたしますれば、七%の節約ができる事業については、この際農林省として節約させて、事業量を減らさないように大蔵省とも話し合つて事務的に処理しよう、しかし七%の節約がどうしてもできない事業があるのではないか、できない事業については、ケース・バイ・ケースで大蔵省とぶつかつて解決をはかりたいというお気持であるかどうか、この点を確認したいと思います。
  26. 平川守

    ○平川説明員 御質問の趣旨と申しますか、ちよつとあるいははつきり了解できない点もありますけれども、要するにおつしやるように、この七%の節約、一〇%のわくが一応はめられておるけれども、これが事業分量を減らさずに実行できることであるならば、われわれとしてもできるだけ協力することは当然であります。しかしそれが七%まで行くのか、八%まで行くのか、あるいはそれだけできないのか、この辺が一方においては物価その他の全体の情勢もあると思いますけれども、一方においては御指摘のような方法のいろいろな努力の問題にも関係して来ると思います。そういうこととにらみ合せながら極力節約をいたし、しかしその節約によつて事業分量をどうしても減らさなければならぬというものについては、減らさないような範囲大蔵省との折衝で努力したい、こういうふうに考えます。
  27. 足立篤郎

    ○足立委員 さらに、災害復旧の問題につきましては削減はしないということでけつこうだと思いますが、しかし一般公共事業の面で強制されれば、事業官庁も本気になつてやれば、ある程度節約はできるのだとかりにいたしますれば、これはまたそうなるべきだと思いますが、そうなるとすれば、災害復旧については金額が減らなければ逆に事業量がある程度ふやせるのではないか。これは国家のためにもこの際ひとつ自粛自戒して、積極的に事業量をふやすように御善処願いたいと思いますが、その御決意と御用意がありますかどうか。
  28. 平川守

    ○平川説明員 これはもとより当然のことでございまして、ただいま御指摘のような入札その他の方法の問題というのは、当然これは災害復旧にも適用のできる問題でございますから、そういう方法によつて逆に事業分量を進め得る余地がありますれば、できる限りそういう努力をいたしたいと考えております。
  29. 川俣清音

    川俣委員 前に引続いてちよつとお尋ねいたします。この節約除外額という項目の中に入るかと思うのですが、どうもそうでなくしてやはり節約対象になつておるのじやないかと思いますが、法律上補助金の規定のあるものは、これは節約除外分に入つておりますか。その点明らかにしていただきたい。たとえば今度国会で明らかに意思表示をいたしました土地改良普及員の問題等については、今までにおいても法律をあえて犯しておるのではないかという批判が行われ、これに対し大蔵省は、今後はさようなことはいたしませんということを明言いたしております。従いまして当然節約除外分になつておると思いますが、この点はいかがか。  第二点では、これは農地局長と林野庁にお尋ねいたしておきますが、今足鹿委員から質問があり、それを幾らかでも是正されるような足立委員からの発言がありましたが、事業分量というものを節約してと申しますか、繰延べするというようなことがこの補助の節約によりまして行われるのではないか。そうなつて参りますと、土地改良の問題では、小規模の土地改良というものは、実際においては補助率が相当下つておるわけでありまして、この上に補助の節約等が行われますと、必ず事業分量の上に大きな影響を与えると思うのであります。国の事業のような大きな請負師がやるような事業でありますと、これは確かに請負金の競争入札等によつてある程度節約が可能な部分も出て来ると思いますが、これですらかなり競争入札にいたしました結果不正行為等がまた一面出て来ておる。この不正行為くらい不経済なものはない、こう見なければならない。結局予算の執行がいかに経済的に効果を現わすかということでありまして、予算削減することが経済効果を発揮することでは私は断じてないと思う。いかに完璧に事業を遂行して行くかということが最も経済効果の現われるものでありまして、ただ予算削減だけによつて経済効果が現われるという考え方は、これは事業官庁として十分警戒しなければならぬ点だと思う。確かに足立委員のようなことが言えないわけじやないと思いますけれども、その反面に不正工事等が行われまして、事業の効果が現われない。損害はだれが負うのだ。これは大蔵省が負つておるのじやありません。従いまして、こういう点については十分警戒をしなければならないと思うのです。特に林野関係で申しますと、これは山林事業費節約がありますが、これはどうしても事業分量を繰延べするとか、しなければあるいは切り捨てなければ事業が遂行できないのではないかと思うのですが、特に一方において林産物の価格が下つておるときに、そちらからの負担も相当加わつて来るであろうということが予想せられますので、事業分量に影響がないとは言い切れないであろうと思う。言い切れるだけの自信がおありでありますかどうか、なかつた場合にどのような処置をお講じになりますか。これは林野庁に伺います。
  30. 渡部伍良

    渡部説明員 法律の規定によつて補助率のきまつておるものをどうするかという問題にお答えいたします。厳密には法律できちつと何ぼ何ぼ、こういう規定になつておりませんので、たとえば最も法律の規定の厳密になつておるのは農業改良助長法の関係でありますが、これらにつきましては、もちろん人件費は節約対象になつておりませんから問題はありませんが、あとはたとえば施設費と申しますか、自転車を購入するとかあるいは旅費の節約の問題になつて来るのであります。これらはやはり節約をできるだけやるという建前で考えております。
  31. 平川守

    ○平川説明員 請負の関係等につきまして、まず事業が完全に実施されるという大前提がなければならぬ、これは当然のことと考えます。そういうことがありますために、従来たとえば入札にいたしましても指名入札というような方法をとつて、一定の資格を持つた者でなければこの範囲に入れないというようなことをやつておるわけでありまして、これは当然の大前提であります。その大前提の上に立つて、しかしなお自由競争の妙味によつて節約のできる面をやつて参りたいということでございます。お話の事業自体がそのために内容が不良になるというようなことは、当然大前提として排さなければならぬと考えております。なおこういうことを行いやすいのはやはります国営事業というような非常に大きな事業で、しかも農林省の直接手の届く、直接の管轄において行い得ます事業が行いやすいのであります。また金額も大きいのであります。末端のたとえば団体営というようなものは、金額自体も非常に多い場合は少いのであります。まず国営事業というようなところから始めまして、逐次県営というようなものに及ぼして行くということになるだろうと思います。
  32. 藤村重任

    ○藤村説明員 山林補助事業につきましては、今農地局長からお話のありましたことに共通したような点もありますけれども、多少内容的に違つた面もあるわけであります。それは事業の単位が非常に零細でございます。またその経費の主体は労力費、人夫賃が主体になつておりまして、七割あるいは八割というものが人夫賃であります。従いまして物件費あるいは施設費には影響は比較的少いのでございますので、節約に基いて実施するのが困難な面があると思います。従いまして、もし今出ておりますような節約事業の面で事業量関係なく実施するということにつきましては、いろいろ改善すべき点を改善し、あるいは督励監督を厳重にいたしまして実行いたしますが、ただ心配いたしますのは、特に山林の事業では治山治水等の関係も相当ございますので、ただ事業量をそのまま実施するということにあまりに重点を置きましたために、事業内容がずさんになつて、さらに災害を招くようなことがあつては非常に申訳がございませんので、特にこの辺を考慮いたしまして、もし場合によりましてできないときには、多少計画を変更せざるを得ない場合があるのではないかということを考えるわけであります。なお一応一〇%の節約ということが出て参りましたけれども、内容を研究いたしたいと思います。
  33. 川俣清音

    川俣委員 農地局にもう一点お尋ねしておきますが、東北のように降雪地帯におきましては、一部の事業量が繰越しになることは大きな損害になつて来るわけです。また経済効果が一面遅れることになつて参りますので、国家的な損害は非常に大きいと思うのですが、これらの影響を与えないような意味で事業分量を減らさない、おそらくこういうことであろうと思うのですが、この点を明らかにしていただきたいと思います。  それから林野庁にお尋ねしますが、この節約額は林野庁は相当大きな九億八千万円かに上るようでありますが、これらは今藤村説明員の御答弁のように、おもに人夫賃であろうと思います。またこれは木材が下つて来ておりながら実際は苗木などはむしろ高くなつて来ておるのです。この矛盾があるのです。従つて将来山林事業費というものを節約するといいましても、これはよほどむずかしいのではないかと私は思つておるのです。一面治山治水対策が講ぜられて造林計画が立てられる、この造林計画の機運に乗りまして植林事業が盛んになつて参りますと、苗木が比較的高くなつて来るような傾向がある。私は苗木が高くなることは必ずしも悪くないと思つておる。むしろ造林に熱がついて来たので、その悪い結果として苗木が高くなつておるというふうに見るべきものであつて、いたずらに悲観すべきものではないと私は思つております。従つて事業量がそういう面で減らされるのであるという考え方は、これは非常な危険な考え方であるということを大蔵当局にどの程度説明をせられておりますかどうか、この点をあわせて御答弁願いたいと思います。
  34. 平川守

    ○平川説明員 事業の性質にもよりますけれども一つのまとまつた工事を一部繰越しということによつていろいろ損害の起りますことは、これはひとり寒冷地帯に限らないと思いますけれども、特に季節的な制約を受けておる地帯においては、その点が著しいということは確かだと思います。そこで事業分量を減らさないようにということは、そういうことも関係をいたしておりますし、また東北地方に対しましては、従来からそういう意味において、たとえば同じ年総額を期別に配分いたします場合にも、できる限り季節に間に合うように早目に第一、第二・四半期等に余分に配賦いたしますような点も考えておるのであります。そういう点十分考慮いたしたいと思います。
  35. 藤村重任

    ○藤村説明員 ただいまこちらの山林公共事業の特性から、特に節約に対して非常に困難であるという面を財務当局とどういうように折衝されたかというようなお話でありましたが、これは組織的に農林省官房等を通じましてそれぞれ意見を申出て、折衝したわけでありますが、なおそのほかに特に山林公共事業につきましては、御承知のように治山治水協議会もございますので、特に公共事業予算節約につきましては、その財政小委員会におきまして数度検討を加えられたわけであります。その場合に大蔵大臣以下の大蔵省関係の方が御出席でございましたが、これは特に山林公共事業の内容がその治山治水の目的に沿うべく企画され、なおそれが現在の予算ではさらに非常に圧縮されておる実情もあり、先ほど申し上げましたように、物価値下り等の影響が非常に少い内容等もございますので、その影響、その努力をいかにいたしましても、非常に弾力性が少い。もしそれをあえてすればその成果に影響するということもあるので、非常に困難であるという面はるる説明をいたして参つたわけであります。
  36. 金子與重郎

    ○金子委員 一点だけお聞きしておきますが、この節約という言葉から行くと、ちよつとわけのわかつたようなわからぬようなことですが、ことに公共事業費といたしましても、国営でやりますものは別で、それ以外のものが相当多いのですが、そういうものは二十九年度予算については計画も終つておると思いますし、その計画は府県なり——府県は各末端事業を行います機関に対して割当というような形がとられておると思うのでありますが、そこで今の物価値下り一割なんということはあり得ませんし、そうすると事業量の変更なりあるいは負担区分をかえるとかしなければこの予算節約はできないと思いますが、それに対して農地局関係は、そのどこを削つて行くつもりなんです。その地区を削るというつもりなのですか、負担をふやすということで行くのですか、大体においてその事業分量だけ各府県なり、あるいは府県は各事業面に対してつないであると思うのですが、その点はどうなのですか。これはまだ全然自由自在になるものなのですか。
  37. 平川守

    ○平川説明員 各地方に対しまして、ある程度内示といいますか、そういうような意味で連絡しておるわけでございます。まだ未確定の分もありまして、新規のもの等につきましては留保しておるものもございます。いずれにいたしましても、かりにこの節約事業分量を減らさなければならぬというような場合に、いわゆる補助の率をかえるということはとうていできない。これは一定の規則によつてつておるわけでありますから、補助率というものはかえるわけに行かない、そこで極力事業分量を減らさないように、補助率は当然かえないという前提において予算節約いたそうというわけでありますので、かりに御指摘のような事業分量を減らさざるを得ぬというようなことが起つた場合にどうかという御質問、これは結局国営あるいは県営のような大きなものにつきてましては、具体的の工事の内容までずつとわかつておるわけであります。従つてその工事の種類の中で比較的影響の少いもの、たとえば水路が途中までできてる、それを一部分切るといつたようなこと、そういう比較的影響の少い部分をねらつてつて行くということになろうと思います。それから団体営等になりますると、ある程度各県でいろいろ心組みをいたしておりますので、これについてはある程度県にまかせて行くということにならざるを得ぬものと思います。
  38. 金子與重郎

    ○金子委員 基本的な物の考え方というものはあとで政府に聞かぬとわからぬのでありますが、これをかりに一割節約はやむを得ぬということであなた方が大蔵省から強引にのませられたというような場合にも、これはわれわれの希望ですが、ただいま農地局長が言われるように、国営の問題ですと、その事業の仕事の内容まではつきりつかんでおるわけでありますから、それを、たとい平均一割のものを一割五分なりあるいは二割になるか、その事業上比較的支障の少い面の節約に入れて、末端の小規模の諸施設に対して、国民全般に対して、おそらくあなた方は内示だというけれども、この予算というものは年々少くて、地方庁におきましては、年々たくさんの申込みの中から、あなたのは今度やるが、これは次年度にまわしてくれというようなことで、もうほとんど約束づけられておるのが地方の実情だと思います。そういうものが全国にあるのに、今度は大蔵省の御都合次第で、予算が減つたからあの地区はやめるとか、あるいに半分にするとかかつてにしますと、これは農民の生産意欲を減退させ、国に対する信頼性を失つて来る。こういうことは非常に政治的に悪影響を及ぼすと思いますので、その点は特にお願いしておきますが、もしのむということにするならば、国営のようなものを中心にして十分に検討してやる、そうして県に今まかせてありますところのこまかい事業に対しては、削減を一律にするというようなことはなさらないように特に御留意願いたいと思うのですが、その点はどうですか。
  39. 平川守

    ○平川説明員 その点はなおよく研究いたしますが、できるだけ御趣旨の点も含めてやつて行きたいと思います。
  40. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 節約額のことに関して林野庁の林道予算に対してお伺いしたいと思います。二十八年度は二十億、本年度におきましては十八億、しかもこの内容につきましては補助率は非常に下つておるのであります。こういう風に毎年節約というものはけつこうでございますが、その実体を洗いますと、国会予算審議権があたかも大蔵省に移つたような形になつて、これをケース・バイ・ケースにまで立ち入つて大蔵省が介入するということは、各事業官庁の内容というものが大蔵省にとられたようになる。これはわれわれから見ると非常に重要なる問題を内蔵しておる、こういうことを毎年やることは、国会はあつてなきとひとしいことになる。この点について一体農林当局の心構えはどうであるか。ことに公共事業費の林道予算というものは、今申し上げましたように、昨年度二十億、今年が十八億、しかも補助率の内容は非常にかわつておる、低められておる、こういう場合におきまして、これではたしてこの実行予算でもつて事業の内容というものが確保できるか、この点について御意見を承つておきたいと思います。一体こういうやり方をもつてこの予算構成と申しますか、実行予算に対処して行かれるか、お見込みをひとつ。それから砂防地、荒廃地等の治山治水事業に対する予算削減の及ぼす影響、造林関係予算に対して及ぼす影響等、一体どういう心構えで対処して行かれるか、大よその見当を承つておきたいと思います。
  41. 藤村重任

    ○藤村説明員 お答えいたします。お尋ねになりました第一点、特に林道予算のことにつきましては、山林公共事業並に一律に一割の削減を示して来たわけであります。それでこの事業量をこの予算削減によつてどうして確保するかということは、とても現在の単価、特に林道の事業もやはり相当の労働力を主体にして実行されますし、またこれをいたずらに単価のみにしわ寄せをしまして、そうして事業量を確保いたしますと、非常に悪い仕事と申しますか、ずさんな面が出ないとも限らないという心配もございますので、十分信用の置けるような事業を実施して、再び災害対象にならぬような道をつくつて行くというためには、現在では、やむを得ずある程度当初の計画を変更せざるを得ない点が出て来るのではないかと心配いたしております。なお補助額の削減が示されたばかりでありますので、内容についてはその影響がどのくらい出るか十分検討をいたしてみたいと考えます。なお治山事業につきましては、これは特に私どもは心配をいたしておる面もありますが、ほかの公共事業とは違いまして、山林の治山事業予算の構成といいますか内容は、過去の災害を受けました、いわば災害復旧対象になるものがその翌年の予算の中に基本計画として入つて来るというような組み方をしております。従いまして災害復旧費節約対象外とされておりますけれども、治山事業につきましてはその一部に災害復旧事業内容を含んでいるということになつておりますので、この面をある程度除外してもらつて、そうして予算節約対象外にしてもらいたい、こういう意見を十分主張して来たわけであります。なお治山の予算の特性といたしまして、当年度起るであろうという緊急当年分という一つ予算の組み方があるわけであります。これはいわば治山事業につきまして予備金的な内容を持つているわけでありますが、これも一率に一割の対象になつてつておりますので、これはまたもし災害でもあれば他から十分補填するというようなこともあるかとも思いますけれども、一応予算の一率的な一割の中にそれが含まれていることを御説明申し上げたいと思う一わけであります。
  42. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 毎年こういうふうな節約といいますか実行予算みたいなものを組まれますと、議会において毎年度予算審議する場合におきまして、その事業の内容というものが、あたかも国会に提出するものは仮審議みたいなことになつてしまつて実行予算の編成と申しますか、節約額が議題になつたときに初めて本格的な工費というものが審議に上つて来る、しかもこれについて大蔵省の発言が強化されて来るということは、林野庁の仕事が大蔵省に移つたのと同じことで、国会なんかまるで無視されたことになる、こういうことでは林野庁、農林省はあつてなきにひとしい。少くとも公共事業に関する限りは、われわれは林野庁にたよつておる、農林省にたよつておるのに、その事業というものに信を置きがたいということになつて来る。これは私は行政官庁としてゆゆしい問題だろうと思います。国会審議したものを忠実に実行するのが行政官庁の任務であると思うのに、こういうことが毎年毎年繰返されるということは、国の予算の立て方上、根本的に考えてもらわなければならぬ。こまかい点に行きますと、ただいま藤村部長さんの言われたように、災害復旧的な要素を含んだ治山事業もありましよう。けれどもこの問題は単に治山事業だけではない。これは造林部門にいたしましても林道部門にいたしましても、そういう要素は多分にあるわけであります。全国にして四百八十数万町歩未開発分を控えまして、しかも予算の補助額が削減されておる今日、災害の度合いは今後はげしくなるであろうと思います。日本の奥地林並びに平地林の開発について根本的に立てた計画が、大蔵省によつてくずされて行くということは、これはよほど慎重に御考慮を煩わしたいと思います。こういうことで補助率削減されて、しかも国会で確定した内容について大蔵省に一々こういう干渉を許すことは、これは大蔵省林野庁みたいなことになつて来てしまう。この点について私は根本的な御意見を承つておきたいと思います。
  43. 渡部伍良

    渡部説明員 非常にむずかしい問題でありまして、私どもも実は弱つて、相当抵抗したのでありますが、昨日の閣議で、多少あとに問題は残しておりますが、一応きまつたようなわけであります。これが年度相当進行しまして物価が下つて来るというのであれば、われわれの方もまあそう感じ悪くないのでありますが、新しい予算をやつと手がけかかつて、やつと地方に交付しかかつておるときにそういう問題があるので、非常に困つておるのであります。しかしこれは一農林省だけの問題ではなくして、政府全体の問題であると思うのであります。事務当局といたしましては、今後こういう問題が出ないように、あらかじめ本予算を組むときに、もつと根本的な討議を尽してからその年の予算をきめるように努力いたしたいと思います。
  44. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 聞くところによりますと、こういう事実があつたようであります。二十九年度の予算国会を通過した直後、大蔵省から各省の会計課長に、いずれこの予算節約ということが考えられるから、お前のところは何がしかの節約実行予算を立ててくれ、こういう内示があつたということであります。そういうことがはたしてあつたかどうか、もしあつたとしたならば、それに対して何らの抵抗を示さないということはおかしいと思います。一体そういうことは大蔵省として越権行為じやないでしようか、その点についての御意見を承りたい。
  45. 渡部伍良

    渡部説明員 御承知のように予算は毎四半期支払い計画を大蔵省と協議してつくつておりますが、その際に支払い計画の承認については、ただいまお話のようなことをやれという局内通達が大蔵省主計局の中でありまして、それが各省の関係官の方に通達されて来ておりました。それにつきましていろいろ議論しておつたのでありますが、それは結局、今度の予算節約の問題になつておりますいろいろな税法の改正等の見通しとからんで用意しておつたというわけでありまして、私の方の政務次官等から、相当強硬にどなり込んだりはしておりますが、こういうことになつておるというのが実情であります。
  46. 綱島正興

    ○綱島委員 私が尋ねようと思つたことに福田委員が触れられたから、私は二つだけに制約してお尋ねをしておきたいと思います。先ほど団体営のようなものについては県にまかして、県の方でやる、こういうお話ですが、どうも知事もこのごろは選挙目当のことがなかなか多いものだから、それを極端にやつておると、非常に実情は困ることがある。これは農地局のことではないけれども、塩見君が水産庁長官をしておられた時代、私どもが見ては実際早くやらなければならぬような港があつて、課長をちよつと呼んでもらいたいといつて課長にも来てもらつて、課長もそういうことを知つているかと言つたら、知つていると言う。この港は一体他の平均から見てもうやらなければならぬ港ですか、どうですかと言つたら、五、六年前にできておらなければならぬ港だと思いますと言う。どういうわけでそういうことをしないのかと言つたら、いや、いつも順番があとですからと言う。一ぺんも頭を出しませんかと言つたら、例年出しておると言う。それでは、かりに十出て来たら、今年三つか四つやれば、来年は五番目か六番目になる、再来年は頭になるということになりそうなものだが、五、六年も前から頭を出しておつて、毎年けつですと言う。それは困るというので、それではぼくが言えばかどが立つから、あなたの方から、事業費をこれだけは入れたらどうかと県に言つてみてください。それは県の負担があるから、多少の意向はくまなければならぬだろうけれども、そういうようなことだけでやられたら困るのだというお話をしたら、どういうような話をされたか、割にそれは線に乗つたのです。何事も知事にまかせておくということは、非常に公平にやつておるようにも見えるけれども、どうもりこうな官僚の隠れみののような気もするのです。やはりそのために役所の人もおるのだから、この点は、ただまかせておくから知らぬということではちよつと困るのですよ。この点は相当自主的に考えられて——官僚の考え方だけではいけない、地方にはこういう実情があるのだから、それではなるほどこういうことだと相談されればいいけれども、まかせておいて、順序次第では帳面についたきりだ。県会議員にも部課長にも一つも見せずに、自分が順番だけはつけるという知事もおるから、そういうものでは困るのです。そういう点については、どういうふうな考えでやつておられるか。その点具体的に、農政の実態が上るような、そういうことに対する処置を考えておられるか、されたことがあるか、今後もされるおつもりであるかという点を、ひとつお伺いしておきたい。
  47. 平川守

    ○平川説明員 知事にまかせると申しますけれども、もちろんこれは助成をいたすわけでありますから、団体営の計画等につきましては、農地事務局の方にその案が参るわけであります。(綱島委員「その手続は知つておるから、私の聞いたことだけをお答え願いたい。」と呼ぶ)もちろん従いましてその知事や県の持つて参りますプランが、食糧増産なり農政上から見て適切なものでない場合においてはこれを是正する、それに対する助成をしないとか、その案を認めないということはやつておるわけです。ただしかし団体営程度のものになりますと、県の意向を非常に尊重するということを申し上げたのです。県営とか国営ということになると、その程度がずつと県に重みがかかつておる。しかしもちろんそういう監督の手続はあるわけであります。その際にはなはだしいものについては是正をするということをいたしておるわけであります。
  48. 綱島正興

    ○綱島委員 ただいま大体そういうことではございましようが、極端なもの等は特に御注意を願わなければいけない。そういう原則をきめてもらうことは非常に困るのです。そういう点もぜひ御注意を願わないと、何のために中央役所があるやらわからないというようになつて来ることは困るのです。それからいま一つ、これは官房長にも伺いたい。人件費は減らさずに、事業費だけを減らすということになりますと、事業費削減が非常に大きくなりますので、それに対してどういうふうに処置をするか。給料を下げろというのではない。たとえば役所の人の計画に要する時間をもつと繰合せて、むだがないように組織をするとか、何かそういう処置をしておられるか。仕事はこれだけだから、人件費だけ減らさずにおいて、仕事なんかは大蔵省にまかしておけということではちよつと困るのですが、そのお考え方を承りたい。
  49. 渡部伍良

    渡部説明員 これは御承知のように物件費、旅費等が対象になるのでありますが、物件費購入等につきましては、先ほど申し上げましたように買い方とか、あるいは実際問題として、たとえば自転車など相当下つております。そういうものもありますから、問題になるのは旅費の問題だと思います。これは今まででも十分でなく、毎年旅費の節約が来まして弱つておるのであります。ことにこれは本省というよりも地方庁で問題が多いのでございます。この点につきてましては、お話のありますように人員の配置とか、事務の段取りをよくするというようなことをいろいろくふうしなければいけません。しかし昨年の災害等で、必要な場合は旅費等も相当増加してやつておりますので、今後必要に応じてはそういう点を補正して行くことも、中のやりくりでできるだけやるし、できなければ災害等が起つたときに手直しして行く、こういうような考えでおります。
  50. 中澤茂一

    ○中澤委員 一点だけ明らかにしてもらいたいのですが、事業量は減らぬというが、こんなものでは絶対に事業量が減つて来るのは当然なので、これだけの経費ではできつこない。そこで問題は、その減らされたものを一体どこにしわ寄せするかということが、私は一つの大きな問題になつて来ると思う。しかし平川さんが言つたように、国営はよくわかつておるから、そういうものを途中で切るとか、一部打切るとか、そういうことはもちろんけつこうです。私はむしろ国営に一切しわ寄せしろ、こういう考えを持つておる。それはなぜかというと、吉田総理はどうしても外資を導入して——、愛知用水、八郎潟干拓、その他を国営で外資を導入してやるということを言つておる。そこで一番問題になつて来るのは、国営に重点を置いた食糧増産政策をとつて来ると、要するに特殊立法をした特殊地帯の問題が大きくしわ寄せされて来るという危険を感じておる。たとえば一番困ると思うのは積寒法であります。非常に条件の悪い農民の小団体あるいはそういう小土地改良地区にしわ寄せされて来る危険がある。だからその点について、特に私は積寒地帯について申し上げるのですが、積寒地帯におけるところの事業量の減少なり、そういうものは極度に食いとめるか、食いとめないかの腹構えを明らかにしてもらいたい。
  51. 平川守

    ○平川説明員 国営事業だけに全部をしわ寄せするということを申し上げることも、ただいまのところちよつと困難かと思います。積寒地帯等の問題にいたしましても、やはりあの地帯の振興のために県営事業も国営事業も必要な面があるわけでありまして、一切国営にしわ寄せするということも困難かと思います。しかし逆に団体営とか、そういうものにしわ寄せをするということも考えておりません。むしろ先ほど金子委員からのお話もございますし、そういう団体営等の事業については、かりに事業費節約しなければならぬというような結果になつた場合を想定いたしましても、むしろできるだけそちらにしわの寄らぬような考え方で立案して参りたい、かように考えております。
  52. 井出一太郎

    井出委員長 午前中の会議はこの程度をもつて打切り、しばらく休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時二十九分開議
  53. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  午後は先般の東北地方の凍霜害を中心とする農業災害対策の問題について調査を進めます。  昨日松岡委員よりの御提案によりまして、本日は中央気象台から予報部長肥沼さん、予報課長の伊藤さん、産業気象課長の大後さん、その他お見えになつております。  昨年の冷害凶作に際しまして、やはり気象台よりおいでをいただいて専門的なお話を伺つたことがございます。当時凶作が二年続くというふうな点を、既往百何年間かにわたる統計をおもちになりましてお示しになつて、われわれとしても本年度の気象状況に対して、昨年の気象台の御警告があるいは当るというふうなことがありまする場合、あらかじめこれに備えるべきいかなる対策を持たなければならぬかというような問題に対しまして、常に関心を払つてつたつもりでございます。しかるところ、本年も各地に凍霜害が頻発いたす、ないしはひよう害、風害等によつで、本委員会もこれが対策のために忙殺されて今日に至つておるわけでございます。さような際でありまして、当面凍霜害の対策をいたさなければならない点と、なお昨今の異常気象というふうなものを考えまするときに、本年の稲作などにも何かしら憂慮せなくてはならぬような予感がいたすのでございます。幸いきようは御多忙なところを気象台からおいでをいただきましたので、これより順次専門のお立場からのお話を伺いまして、そのあとで一括、各位の方から御質問等があれば御開陳を願いたい、かように考えまして議事を進行して参りたいと思います。  それでは中央気象台予報部長肥沼寛一君からお願いいたします。
  54. 肥沼寛一

    肥沼説明員 ただいま委員長のお話によりまして、本年度の気象の状況並びに将来の予想について御説明いたします。本年は今までのところ、昨年に比べてむしろ六月から申しますと、農業については非常に悪いような状況になつておるようであります。ただいまお手元に配付いたしましたこの本年度の梅雨期の気象概況及び今後の予想について、これによつてつて行きたいと思いますので、これをごらんいただきたいと思います。  まず四月でありますが、とのときには冷たい高気圧などが出まして、ところどころ晩霜害どもつたのでありますが、その後はだんだん順調に経過いたしております。ところが五月九日には、これは御承知北海道で漁船などに非常な災害を起しました発達した低気圧が通つております。そういう状況でありまして、五月の下旬になりましてから満州、シベリアの高気圧が発達して来ております。それから日本の南の方には梅雨前線が現われて来ております。こういう状況で、六月の上旬の終りごろ、九日、十日ごろには東北地方の北に非常な低温が現われまして、たとえば岩手県の測候所の観測で申しますと、宮古の測候所では、観測を初めてから、六月といたしましては第三位の低い温度、第一位というのが大正十年でありまして、測候所で一度六という低い温度で、六月としては非常な低い温度であります。二番目が、明治三十九年に二度二というのが出ております。その次が今回でありまして、九日、十日に二度九というのが出ております。これは測候所でこういう温度を観測しましたものですから、少し高い土地ではおそらくマイナス何度という温度が出ていると思います。そういうことで、凍霜害が各地に起つたような状況であります。  もう少し概括的と申しますか、全般的に説明いたしますために、そのあとの方の図をごらんいただきたいと思います。織り込んでございます第一図というのが、これが五月の下旬の平均の気圧の状況でございます。二枚目が六月の上旬でありまして、三枚目が六月の中旬でございます。この六月の上旬のをごらんいただきますれば、オホーツク海のところに高気圧というしるしが書いてございます。このオホーツク海にあります高気圧というのが——高気圧といいますと、ここに空気がたくさん停滞して、そこから風が吹き出すのでありますが、冷たい海にこういう高気圧が出たということで、北の方から冷たい風を日本内地の方へ吹き送つて来るという状況であります。その同じ状況が六月中旬も続いております。そういう状況で、それなら温度はどうなつているかと申しますと、今のに対応いたしまして、第四図が五月下旬の温度であります。これは温度が平年より低かつたか高かつたかということでありまして、そこにまん中辺に太い線が書いてありますのが、ゼロと書いて、これが平年のところであります。それから北の方は大体どこもマイナスとなつております。つまり平年より温度が低かつたということを現わしております。特に北海道ではマイナス二度——マイナス二度と申しますと、一箇月の平均としてはかなり低い温度であります。第五図をごらんいただきます。同じ状況でゼロの線が南へ下つて、日本全般が平年よりも温度が低いという状況になつております。その中に高いという字が書いてありますが、それは比較的の話でありまして、高いと書いてもやはりマイナスが書いてあるのは、平年よりは低いわけであります。比較的に高いか低いかを示してある図でございます。中旬になりますと、北海道の北の方は少し高めになつておりますが、北海道の大部分から内地全般にかけてやはり低くなつておりまして、本州の中部ではマイナス三度も平年より低い。岩手県の北部ではやはりマイナス三度も低いという状況が続いております。その次に、第七図と書いてございますのは、これは六月の下旬の統計ができませんものでしたので、下旬の前半旬だけを書いてございます。これを見ますと、北の方と南の方は少し温度が上つておりますが、まん中辺は非常な低温でありまして、岩手県の東の海岸沿いのところでは、マイナス五度というような大きな低温が現われております。その裏の八図は、一番最近の六月二十五日から二十九日までの平均で、今のマイナスの状況が少し小さくはなりましたが、やはりマイナスで、そうして少し下つております。  その次に雨の降り方を申し上げますと、五月の下旬の状況は第九図に書いてございます。これは平年に比べて多かつたか少かつたかということでありまして、数字はミリメートルであります。そこに太い線が表日本の沿岸沿いに書いてございますが、ここは雨が少なかつたところ、九州から山陰、中部、北陸にかけては雨が多くなつております。同じ状況のものが、六月上旬のものが続いておりまして、これはごらんいただくとわかりますように、北海道の一部を除いては全部平年よりも雨が多くなつております。ことに紀伊半島から四国の南部あるいは九州の西の方では百六十ミリとか二百ミリ以上というように平年より雨が多くなつております。中旬になりますと天気が少し回復しまして、日本のまん中へんでは雨が少しでやんでおります。これは梅雨に少し早目に入つて、そのあとになつて雨が少しあがりましたためであります。  そういう状況でかわつておりますが、それならば農業関係します日照、日照と申しますと、日が出てから夕方日が入るまでの時間のうちで、雲が出ておりますと日が照らない。そういうのを差引きまして、日が照つた時間がどのくらいあつたかということであります。これも平年よりどれだけ多いか、少いかということを時間で書いてございます。平年が問題でありますが、大体これは緯度によつて違いますけれども、旬と申しますと、十日間で、約六十時間から七十時間というのがこれが平年であります。それに比べまして日本の南の海岸では四十時間も少なかつた。つまり日が照らず、雨ばかり降つていたという状況であります。奥羽地方の一部、それから北海道の大部分は平年より多くなつております。ところが六月の下旬になりますと、北海道のごく一部を除きましては平年よりも日が照る時間が非常に少なかつた。ことに裏日本の方では平年の六十時間か七十時間に対しまして、四十時間も照り方が少かつたという状況であります。中旬も場所によつての差はありますが、やはり少くなつております。西の方が少しふえておりますが、非常に少くなつております。こういう状況でございます。  それで今のものを総括いたしますと、昨年も凶作の年でありましたが、六月については、昨年は平年より悪かつたのでありますけれども、それほど悪くなかつた。むしろ七月になつて悪かつたのでありますが、今までの経過の六月についてみますと、本年の方が昨年よりずつと悪い状況に経過しております。  その次に最も大事な問題は今後の予想でございますが、予想については御承知のように季節の予想——一週間先の予報も非常な正確度をもつてやるというのはむずかしいので、一箇月、三箇月先のことはなかなか正確を期せられないので、今立てている予想について申し上げたいのでありますが、これはここにその方の仕事を実際担当しております予報課長が出席しておりますので、その方から詳しく説明させていただきたいと思います。
  55. 井出一太郎

    井出委員長 それでは続いて予報課長伊藤博君。
  56. 伊藤博

    ○伊藤説明員 ただいまお手元に差上げてございます刷りものの二ページの中ほどのところからあとに、大体の模様を書いてございます。きようは少しお天気がよくなつておりますが、まだこれですつかりつゆが明けたというわけでございません。早ければ七月の五日ごろ、二、三日延びますれば七月の七、八日になるかもわかりませんが、それくらいまでつゆの天候が続き、あとはまず西日本の方からつゆが明けまして、順次北の方もつゆが明けて行く予想でございます。ここにも書いてございますように、七月の中旬は大体夏型の天気になるであろうという見込みでありますが、ちよつと一時的に平年よりも温度が下る日があるかもしれない、そういう見込みでございます。それと同じような状況が七月の下旬の初めの方までは続きまして、つまり七月の下旬の初めのごろまでは大体夏型の天気が続く見込みでありますが、下旬の終りになつて参りましてシベリアの方で高気圧が発達する予想がございますので、その影響を受けまして北の方からだんだんと温度が下つて参りまして、日本の半分くらいまでは例年よりも温度が下る見込みでございます。その辺の模様は三ページの一番上のところに書いてございます。  それから八月の模様はその次のページの上から三分の一ぐらいのところに八月の概況というのがございますが、八月は上旬の終りごろから中旬の半ばごろに少し温度が低くなるという予想がございまして、ここで夏型の天気が一時くずれる予想が出ております。八月の十日ごろから二十日過ぎくらいまでは夏型の天気が続く見込みでございますが、八月の上旬の終りから中旬の中ごろまで温度が低いという予想もございますし、八月の終りから九月の初めにかけましては、また温度が低くなる模様がございますので、全体としましては、よく行つて平年とんとんくらいのところという見込みになるわけでございます。  それから九月の方は五ページの方にごく簡単に書いてございますように、八月の終りころから九月の初めにかけまして温度の低い時期が予想され、九月の後半にも温度が低くなる、こういう模様でございます。  それからこの中に台風についてのことが——これはあまり詳しくわかりませんので、ごく大ざつぱな書き方でございますが、七月の中旬ごろに一つ台風が東支那海を北上する可能性があるように予想されております。それから八月のところにもちよつ書いてございますが、八月には台風の出て参りますのが例年に比べて少し大そうな傾向がございます。それから九月の方は、九月後半変動が現われ、低温が起りやすくと書いてございますが、はつきりはわかりません。温度とか降水の状況から推しまして、あるいはその辺も台風によるものかもしれないと一応予想しておるのでございます。そういうところが大体今後の見込みでございますが、なおことしの三月の初め、それから三月の終りに一応夏の状況の予想をいたしまして、関係の向きに御連絡してあるわけでありますが、予想の結果を振りかえつてみますと、今までのところ温度が高くなる時期とか、あるいは低くなる時期というのは、定性的に大体よかつたように思います。ただどれくらい温度が高いかという大ざつぱな見積りをしているわけでありますが、たとえば五月の中旬は非常に温度が高いという予想をいたしましたが、これは高いことは高かつたけれども、非常にというほどではなかつた。それから六月の五日前後は温度が少し低くなるだろうという予想でございましたが、先ほど予報部長から説明のありましたように、ここは非常な低温が出て参りました。それから六月の下旬二十日過ぎぐらいでございますが、かなり強い低温が出るだろうという予想に対しまして、これはちようど予想した程度の低温が出ておるわけでございます。でございますから、大体いつごろ温度が高いとか、低いとかいう、傾向といたしましては、まあまあはずれてはおりませんが、その程度という点になりますと、まだ必ずしも十分とは思いません。  それから今の刷りものの終りの方にちよつと専門的な話で恐縮でございますが、十五、六、七図というのがつけてございますが、従来までは大体地上の付近で観測いたしました資料をもとにして予想をやつてつたわけでございますが、やはりこの気流の全般的な動き、あるいは非常に広い範囲の動きというものをつかみますためには、地上付近の観測の資料だけでは不十分でございますので、高いところ、たとえばここに示してあります図は地上から大体五千五百メートルくらいの高さのところのものでございますが、そういうところでどういう状況になつておるかということを書いた一例でございます。たとえば十五図は五月二十一日から六月四日まで十五日間の平均としてどういう状況であつたかというのを示しておるわけでございまして、ちようど図のまん中ごろに、一万八千という数字が書いてございまして、初めはシべリアの方からずつと東の方に出まして、途中斜線のところから急に南の方にまん中の線がございますが、こういうところは北の方の空気が非常に入りやすいという状態を示しておるわけでございまして、こういう状態に伴いまして、六月の十日前後非常な低温が起つたわけでございます。こういうかなり長い間、しかも高いところの状態をつくつております。この十六図はその次の半月分の状況でありますが、この斜線で示してあります部分が十五図に比べますと、よほど東の方にずれたわけでありまして、東の方にずれたということは、結局北の方から冷たい空気をおろして来るような気流が十五図に比べましてよほど東に寄つたということを示すわけであります。これはただいま試験的にちよつとやつてみておるわけでございますが、こういう高度の資料を使いまして、過去のデーターなどを当つて参りますと、現在よりは温度が高い、あるいは低いという程度が、もう少し精度がよくなるのじやないかと期待しているわけでございます。  それからなお予報にはちよつと関係がございませんが、一番最後に一表をつけてございます。これは温度には関係がございませんけれども、今年の梅雨の間に何回か各地で大雨がございましたので、その状況をごく大ざつはに一表に示したものでございます。これは何かの御参考にと思つてつけ加えたものでありまして、全部六月でございますが、一番左の欄に一日—二日と書いてございます。そうしてまん中ごろに近畿、内陸、紀伊半島とございまして、そこに五十ないし百ミリ、あるいは百五十ないし百八十ミリ雨が降つたというように、ある地域にわけまして、大雨があつたところを大ざつぱに示しておいたわけでございます。直接温度には関係がございませんが、こういうぐあいで各地に大雨が降つたということを御参考までにつけてあるわけであります。
  57. 井出一太郎

    井出委員長 次に産業気象課長大後美保君。
  58. 大後美保

    ○大後説明員 本日私突然お話を伺いましたものでございますから、資料その他用意ができませんので、十分なお話はできませんが、大体私の考えをお話申し上げたいと思います。  先ほど今までの天候の経過は予報部長の方からあり、また今後の予報については伊藤さんからありましたが、私の専門としては、それをさらに農作物と関係づけてのそういつた問題について現在考えていることを簡単にお話しようと思います。  これは東北地方から北の方の農作物の作柄とか、収穫高といつたものは、特に温度と非常に密接な関係があるので、温度の低いということは、どうしても作柄がよくならない一つの大きな原因になるのであります。それで私も、いろいろ前から農作物と気象の関係を調べてみましたけれども、それをよく調べて行きますと、時期によつて作柄に与える影響が非常に違つているのであつて、こまかく見ると、農作物の成育の時期といいましても、たとえば分蘖期であるか、開花期であるかという作物自体の成育期によつて違うのでありますが、大きく見て月別くらいに調べてみても、非常にはつきり出ております。大体八月の気温が低いようなときには収穫高が少い。七月も六月も関係するのですが、一番大きな関係を持つているのは何といつても八月です。それからその次が七月、六月というような順で、八月に非常に温度が低いときにはどうしても豊作は望めない。凶作になつてしまう。そういう関係を調べて行きますと、八月の気温とは非常に密接な関係が出て来るのです。これはどうしてかというと、もう少し意味合いを考えてみますと、大体六月から七月にかけての低温の農作物に対する影響というものは、成育を遅らせるという影響を与える。これに対して八月の温度が低いということは、大体八月に入りますと、稲ですと生殖、成長の時期、実をつけようという時期に入つて来るので、このごろに温度が低いと、その実がつくということに直接影響して来るものですから、致命的な障害を受けるということになるわけです。六月、七月ごろの温度の低いのは、ただ成長が遅延するのですから、あとで温度が回復すると取返すことができるわけです。ところが八月の温度が低いときには、あとでたとい温度が上つても、もう取返すことはできない。ですから八月の温度と非常に密接な関係が出て来るというのはそういう関係なんです。七月の温度が低くても八月の温度が高くなれば、ある程度取返せるものですから、七月の温度の場合にはそれが絶対的の要素になつて来ない。それは実際実例を見てもおわかりになると思いまするが、昨年は七月が非常に温度が低かつたのですが、一昨年それからその前の年も七月は温度が非常に低かつた。七月の二十日ごろまでは非常に温度が低くて、私も岩手県から山形県の方に見に行きましたけれども、草たけが非常に短かくて、この調子では冷害を受けるのじやないかと危ぶまれたのですが、その後七月の下旬から八月に入つて相当温度が高くなりました。そのために相当回復した。そういうふうな関係で六月、七月ころの温度が低いということは、八月の温度の低いことから見ると回復の余地がある、七月よりもさらに六月の方が回復の余地があるということになつて来るのであります。  ところが言うまでもなく、ことしは六月が非常に温度が低かつた。ことに六月の九日、十日が非常に低温で、それ以来ずつと温度が低いのです。そして日照も少いし雨も割合に多いという状態で、現在稲の状態が非常にぐあいがよくないわけですが、これから七月に入つて天候がぐつと回復すれば、まあある程度は回復できる。その回復できる程度は七月が悪くて回復する程度よりもまだよい。言いかえれば、去年は、去年の六月の状態というのは大体ならせば平年並程度なのです。ところが七月に入つてから温度が低くて非常に悪かつたものですから、稲のできが悪くなりましたけれども、この場合に六月が低くて七月がよくなつたとすれば、去年と比較すれば去年よりはよいのではないかという感じもするのです。それで結局結論としては、要するに今後の天候が物を言うので、今後の天候が悪ければ、この六月が近年にない非常に悪い天候なんですから、今後の天候が悪ければ、また去年よりもひどい凶作になる可能性もあるし、今後の天候がよければまあある程度回復できる、まあ品種といいますか、種類でいえば、向うの情報を聞きますと、わせなんかは大分影響を受けているので、回復の余地が少くなる、悪い影響があとまで残るかもしれませんけれども、あとのものは相当回復するのではないかという感じがするのです。  それで今後の天候が問題になるのですが、今後の天候に対しては、ただいま伊藤予報課長さんの方からの御説明がありましたように、大体七月は、このつゆは、まだきようは今お天気がよいのですが、またくずれて、くずれた後に上る。そこで大体つゆがいつもの年よりまあ早目に上つて来るだろう。というのは、実例を申し上げますと、去年は二十五、六日になつてつゆが明けたのです。非常におそかつた。それからおととしも、その前の年も、大体七月の二十日前後につゆは明けて行きます。それが今年は十日ごろに明けるとすれば、去年おととしなどよりは今年の方がよい。しかしこの予想によりますと、七月の下旬から八月の上旬にかけて少し低温がありそうだというのです。この低温というのは、今まで過去三年間はこの時期には温度が非常に高かつた。昨年などは八月の初めには記録破りの高温が見られたくらいで、非常に高かつた。ところが今年はそういうことが予想されているのですが、結局もしもその時期に低温となると、これは稲の成育について、時期の関係から見ると、去年よりもあまりよくない。よくないのですが、その起る低温の程度、下る温度の程度と、それから低温の続く日数、これが非常に物を言うので、それによつてその被害は違つて来ることになるので、これも一に予報がうまく行くか行かないか、今後の天候にかかつて来るので、はつきりしないのですが、現在の状態で、たといつゆが割に早く明けたとしても——明けると、今成育が非常に、大体十日以上も遅れていますけれども、それがある程度回復して来る。して来たところで、七月の末に相当な低温が来れば、これは非常にぐあいの悪いことになるし、その低温の程度が大したことがなければ、まあどうにか行くのではないか、というふうに見られます。  それから八月は、予想によると、大体のところはよさそうなのですが、ただここで心配になるのは、八月下旬から九月にかけて温度が下るというふうに予想されているのですが、これはちようど稲の成熟の時期に入つて来るので、このごろの温度が下るということは非常によくないことなので、昨年も七月は温度が低かつたのですが、八月が温度が高くなつてある程度取返したのですが、ああいうような大きな冷害になつたのは、一つにこの八月下旬の気温が非常にひどく低温になつた、これが大きな影響を持つているのだと思います。それでこれもやはり八月下旬以後の低温の程度がどの程度に来るかということによつてきまつて来るのではないかと思います。  それからもう一つ、現在稲がどうも東北の方では非常に悪いようなんですが、今後もまた七月の下旬から八月の上旬にかけて低温が起るとか、そういうような冷害的な天候になるかもわからないのですが、どうもことしは去年あたりから見ますと、非常に変動が大きなものですから、あるいはそういうふうなかなりの低温が来るかもわからないと思われるのですが、そういうときに、それではどうすればいいかという、それを防ぐ方法、対策の問題、それについてちよつと私の感じていることをお話ししようと思うのですが、大体その技術的な対策は農林省の所管であつて、私の申し上げるところではないので、ただ気象の面から感じていることだけを申したいと思うのです。大体大きくわけますと二つの問題があると思います。その一つ——対策といつてもいろいろの対策がありますが、時期が関係する問題が非常にある。これから温度が下ると、たとえば追肥のような問題、あるいはいもちなんかが出て来る。いもちに対する薬剤散布の問題、そういつた問題をいつやるかという時期が、今後の天候の推移と非常に関係があるのではないかと思われる。その時期を天候の動きとにらみ合せて、うまいところをつかまえて作業をやるということが非常に大事じやないかと思う。そういう点で気象の方と農業の方と非常に密接な連絡をとつてやることが必要である。  それからもう一つの防ぐ方法としては、ほんとうに完全に防ぐ方法はないわけですが、気象の方からの問題としては、いわゆる何とかして気象をかえようということなんですが、非常に大げさな気象のかえ方ということはできないので、結局栽培技術的なもので気象をかえるよりほかはないわけです。気象をかえるといつても、大体冷害の年には温度が低いのですから、温度を高くしてやればいいわけですが、温度を高くするというときに、空気の温度を高くする場合と水の温度を高くする場合と土の温度を高くする場合とがあるのですが、空気の温度を高くする方法は、冷害に対してはちよつとうまい方法はないわけです。そういう温度を上げる方法として現在いろいろ考えられているのは、水の温度を上げるのと土の温度を上げる方法以外にはないのではないかと思います。大体これは御存じだと思いますが、去年の冷害のときにも温水ため池のようなところで水温の高いところに植えつけたところは、私たちがちよつと調べてみたところで、そういうところの水温は三、四度高くなつていますが、そういうところで一割から二割くらい増収になつているようなところがかなり見られました。ですから水温が非常に関係するということは確かだと思うのですが、こういうふうないろいろな処置、たとえば迂回水路のようなものがいろいろ考えられていますが、地方では水温を上げる大きな熱源となるものは、大体日射なんです。今までの冷害を見ますと、これははつきりはわけられないのですが、割に乾燥性の冷害と湿潤型の冷害とがある。割に乾燥している冷害というのは、オホーツク海の高気圧がいつもの年よりも非常によく発達して、向うからつめたい空気を流して、空気そのものの温度が低い。ですから、雨は降りますけれども、ときどき晴れる日がある、こういうような冷害ですが、それに対して、非常に天気が悪くて雨がよく降るような冷害型の年があります。こういうような年には日射も非常に少くなりますから、日射を利用して温度を上げるという方法がうまく使えなくなつて来ます。こういうときにはいもち病のような病気が非常に発生する型なので、そういつたその年の冷害の型に応じて対策の選択をうまくするというような点も非常に大事なんじやないかということも考えております。非常に簡単ですが、以上であります。
  59. 田子一民

    田子委員 今の御説明に関連してちよつと申しておきたい。これは農林当局にもまた他の委員にもお聞き願いたいのですが、今のお話のは、凍霜害に関連して、おそらく水稲と気象の関係をお話になつたろうと思う。私たちきのうから申し上げていることは、ことに私の関係して御説明いたしました岩手の四郡並びに一郡の約半分、これはあわひえ、大豆、小豆とうもろこし、こういうものを食べておる地帯で、水稲は微々たるものです。この主食のものが、全部発芽とともに、凍つてしまつた従つていかに七月以後日照りになりましても、回復するとかいうようなことは全然ない。従つて霜害があつても七月以後に天気がよくなれば幾らかとれるじやないかというのは、水稲のお話だろうと思う。この点は今議題になつておりますようなこととやや縁遠い感もいたします。  もう一つは、桑も全部枯れましたので、繭がとれない。春に繭を売つて現金収入をなし、また麦を売つて現金収入をなしておる貧農は、どちらの現金収入もなくなつた。麦などは刈入れ時分に全部枯れてしまいまして、これもやはり天気が続いても結局は何もとれない。ですから凍霜害の対策を立てる場合に、今のお説のようなことが参考とされて、七月以降は照るのじやないか、八月に行つたならば気候がよいかもしれぬということで等閑に付せられては、はなはだ事情と合わぬのでありまして、この点を明瞭にしておきたいと思う。
  60. 大後美保

    ○大後説明員 今私の御説明申し上げましたのは、もちろん稲だけについてでございます。それから今お話の六月の低温、これは九日、十日にかけてだと思いますが、これは非常に低温でして、特に平年との差で見ますと、岩手県を中心にして、岩手県がいつもの年よりも九日は十度ぐらい低く、それから十日は六度ぐらい低い。そうしてこの低い範囲は大体岩手県、青森県が特にひどいのですが、北海道も相当低くなつております。そうしてそのときの実際の温度はどのくらいかというと、気温で四度から、低いところになると二度、気温で四度というのは測候所の温度が四度で、地面の近くでは大体零度ぐらい、だから霜もおりる。二度ぐらいになると地面付近ではマイナス二度ぐらいにもなつて来るので、場所によつては薄氷が張るというような状態で、これはまれに見る非常に低温なわけで、相当な被害があつたと思います。私の御説明は全部稲についての御説明ですから訂正いたします。
  61. 足鹿覺

    足鹿委員 どなたにお聞きしたら一番いいかわかりませんが、例の水素爆弾の実験がいろいろな方面に影響を及ぼしておる。それが気象等にもまた影響があり、従つて農作物等にもいろいろな意味で影響を与えておるのではないか、こういうことを聞いておるのでありますが、これについての御所見、また御研究になつておりますならば、その点について御開陳を願いたい。
  62. 肥沼寛一

    肥沼説明員 前に明治の初めだと思いますが、ジヤャワのクラカトア火山というのが爆発をいたしまして、そのときにふき上げられた灰が、あの辺の緯度で申しますと、東風が数千メートルのところを吹いておりますが、それで流されて地球を何回かまわつたということが、これはいろいろなことから推定されております。ところがそれは灰がたくさんちらばつたものでありまして、もつと小さな灰が風、あるいはその風による拡散によつて全面的に広がつたのではないかということなのでありますが、そのために太陽から来る日射がさえぎられて、そうして灰の粒に日射が吸収されたのでありますが、それで日射が少くなつた。そのためかそのあと凶作が起つたという前例がございます。今度の水素爆弾につきましては、灰が降つたということはあちこちからたくさんの報告がありますが、そういうことから考えまして、やはり灰が上空にちらばりますと日射をさえぎる、日射を吸収してしまう。そのために地上の気温が低くなるのではないか、そういうことから凶作が起るおそれがあるだろうということは言われております。しかし火山の爆発と水素爆弾、これは一回ではありませんで何回もやつておりますから、そういうものを合計したものがおそらく影響すると思いますが、それが凶作を起すだけの度合いかどうかということについては、私ども今申し上げるだけの資料がないのですが、影響はもちろんあるだろうと思います。それからその放射能などが農作物に直接どう被害があるかということについては、私専門外でお答えできないのが残念でございます。
  63. 中澤茂一

    ○中澤委員 北方の定点観測が、去年の十二月から大分あなたの方から委員会に申入れがあつたが、遂にできなかつた。はなはだ残念なことでしたが、それについても海流と気象の関係ですが、それに対して定点観測ができなくても、何らか海流の影響によるところの気象の変化というものが、去年の凶作においては若干あつたようにも承つておるのですが、今年はそういう潮流の関係が去年のような形になつているかどうかということは、おわかりになるのでしようか、ならないのでしようか、おわかりになつたらひとつ御説明願いたい。
  64. 肥沼寛一

    肥沼説明員 お答え申し上げます。海流が気候に影響があるということは間違いない事実でございます。太平洋の高気圧というものが夏出て参ります、その状況、あるいは冬のシベリアの高気圧が太平洋の方に張り出しますその形、これを見ますと、海流と非常に密接な関係があります。昨年は北の方の水が非常に冷たくて、冷たいところへ南の風が吹きましたために、霧が非常に多かつたという事実もございます。そういうことから、非常に関係が深いということは間違いないのでありますが、海洋の観測につきましては、気象の観測を測候所でやつておりますように簡単には参りませんで、船で観測してそれを持つて帰るというようなこと、あるいはせつかく海へ出ますので、表面の観測だけをして、すぐそれを電報で知らせるということも多少はしておりますが、深いところの観測をするには相当ひまもかかるということで、なかなか今年の状況をつかむだけの資料は得ておりません。  それで気象台の船が今出て観測しておりますが、三月に船が出て、その次には五月に出て、帰つて来るまでの期間がありますので、今年の状況をまだ詳しくは把握していないのであります。過去の資料から見ますと、海の状況を即刻つかむということは、かなり参考になることは間違いないと思います。
  65. 足鹿覺

    足鹿委員 今海流の話に飛んでしまつたのですが、水爆実験との問題をもう少しお聞きしたいのです。火山が爆発した際には確かに日射を吸収して行く、また放射能が農作物について影響があるということは認めておられるようでありますが、この点について現在御研究になつておる段階は、どういう段階でありますか。ただあるだろうとして、これに対して積極的に研究を進められていないのでありますか、もう少しその点について、もし気象台としてのお考えがありましたならば具体的に承りたい。  なお改良局長がおいでになつておりますが、ただいまの予報部長のお話によつても、放射能が農作物に影響のあるということはただいまお聞きの通りでありますか、農林省としていろいろな権威ある試験場等もお持ちになつておりますが、この点についてはまだ何ら調査なり御研究になつておらぬのでありますか、この点についてお尋ねをいたしたい。
  66. 肥沼寛一

    肥沼説明員 お答えいたします。先ほど影響があるだろうと申しましたのは、クラカトアの爆発のことも考えてそういうことも考えられるという意味でありまして、あの火山爆発のときにどれだけの灰がまき散らされたかということはわかつていないのでございます。ただ気象の観則からいたしまして、あのあとの気温の観測を平均してみますと、確かに低いという事実とそれから凶作が実際起つたという事実。今度も、その量はわかりませんけれども、灰がまき散らされたので、影響があるだろうということを推定しているだけでございます。おそらく火山と比べますと、それは量は少いと思いますので、ほんとうに農作物に影響があるだけの気温の低下を起すかどうかということはちよつと推定できません。非常に小さな影響はおそらくあるだろう、こういう意味でございます。
  67. 塩見友之助

    ○塩見説明員 ただいまの御質問にお答え申します。農林省の方としましては、原子灰あるいはそれを含んだ空気なり雨なりがどの程度農作に被害を及ぼすかというような点については、直接的な試験は行つておりませんが、ただいままでの見解としましては、まず特殊なものを除いては、農作物に直接的には大した問題はあるまい、こういう判定でございます。それは農作物は植物でして、動物に比べると、相当な放射能に当つても割合障害を起しにくいものでありまして、もし植物に影響するような程度を考えますならば——今までに各種の実験が外国にもございます、それを考えますと、付近の動物あるいは人間がただでは済まないという非常に量の多いものであります。こう考えられるわけであります。私どもの今一番心配しておりますのは、むしろ灰なり雨なりというふうなものが、食糧となる農産物あるいは飼料となる農産物にかかりまして、それが付着したまま、あるいはそれが水の中から吸収されましてそうして植物の体内に蓄積されて、それを人間が食う、あるいは家畜が食つた場合どういう影響があるか、ちようど水産におけるまぐろの影響と同じような意味のところへ問題が来る、こう考えるわけであります。それについて試験場等には今ガイガー計器等——今まで持つておりますのは東京の本所だけでありますが、予算の一部流用等をやつて、要点要点のところでは手配をさせまして、調査を進めております。しかしどの程度までが人体に対して許され得るかという許容限度につきましては、厚生省の方で決定してもらいませんときまらないわけであります。大体今年の農作物あるいは飼料作物等には、幾分放射能の入つたものがあるということは一般的に言えると思います。それが雨と同様に、どの程度人体に影響するかということについては、確たる調査は厚生省の許容限度を見ませんと申し上げられない状態であります。今まで出ております分では、分析したものについては、特にアメリカ等における標準局や原子力委員会等で別な標準を出しております、原子力委員会の方が甘い標準で、片方がかたい標準であります。そのいずれにつきましても、特に今押えなければ農作物がどうというふうなことは申し上げられない程度のわずかなものであります。これはなお厚生省とももつと緊密に許容限度というものは打ち合せてみないとわかりません。その委員会等は今つくられまして、逐次調査を進めてやつておる、こういう段階であります。
  68. 松岡俊三

    ○松岡委員 昨年私は当局に非常な期待を持つて、これでは不十分だ、こういう点はこうなさなければならぬけれども、やれないのだという御不満があるであろうということを私は予想しておつたのであります。あるいは私の質問が、何か詰問的にでも誤解されたのじやないかと思つてはなはだ残念に思つたのであります。ただいま伊藤課長さんの御答弁で、八月は決定的になるというきわめて大切なお話を承りますれば、私らのはなはだ貧弱なる考えですけれども、日本で冷害についてほんとうに真剣に考えたのは、ずつと前に観測船が初めてできたときがそうなんであります。私が申し上げるように、雪害問題が出て初めて日本が観測船をこしらえるようになつた。その前はないのです。その観測船が不幸にして対外的な関係からして、十分に北方を高いところから見るわけに行かない。どのくらい氷塊が高いのか、その氷塊が流れて来るのがどこまで流れて来るというので、氷塊の量が測定されているのかもしれませんけれども、八月までにどのようなぐあいに——氷塊の量の大小によつてただちに影響をするのが三陸沿岸なんであります。その氷塊の量の観測が、観測船が今のような程度でもつてできるのかどうか、たとえばお話のように、舟が三月に出て五月に帰つて来るというようなお話でございましたが、北方における氷塊の量が十分に御観測ができるようになつておるのですかどうですか。もしそうじやないとすれば、これは昨年の御当局の御説明では、本年はそれより少し軽く、明年はもつとひどくあるいは天命に近いものになりはせぬかというような罫線が出ておるというお話であつた、その上から私は昨年、予算、施設その他でもつて十分なのかどうか、まだ遅くないのですが、これで不足だとか赤裸々に申してくださつた方が、われわれ委員会としてもとるべき道があろうと思うのです。こういう意味で私は昨年御質問申し上げたのでしたが、何だか誤解されたようなぐあいに——私は問責したのでも何でもない。事実心配でたまらない。予算が不足でこれだけのことができない、対外的の関係からして北方の観測は不十分である、これを観測する方法があるかというようなことは、あなた方と私どもが一体となつて考えなければならぬことだと思う。それには当然予算が伴うことである。ですから、まだ決して遅くないんですから、ことに新予算の編成期にも直面するのですから、これらの点について忌憚のない、かくかくの不備な点がある、もつとこうやらねばならぬというふうに、積極的に御意見を承ることができれば、私どもたいへん喜ぶ次第であります。昨年の御質問と関連して申し上げる次第でありますから、御答弁願いたいと思います。
  69. 肥沼寛一

    肥沼説明員 お答え申し上げます。まず定点に関係したことを先に申し上げます。定点観測は、技術的に見ますと、先ほども申しましたように海の方の状況が長期の予報に非常に参考になるのでありますので、どうしてもほしい北太平洋の上の正確な観測というのは、あまり——あまりと申しましても、アメリカでは二点ばかりやつておりますが、そういう関係から申しまして、北点というのは非常に大事なものであります。気象台といたしましても、衆議院、参議院両方の決議をいただきましたので、予算の要求もしようということになりましたが、何にいたしましてもいろいろの関係などで、台長のほんとうのお考えは私よくわかりませんが、予算を要求するところまで至らなかつたのは非常に残念でございます。その点を考えまして、今年は何とかこれの解決をつけたいということを台長もお考えのように私は伺つております。それがどういうふうな形になつて現われるか知りませんが、今年は何とかそういうことを考えたいと台長もおつしやつておることをここで申し上げておきたいと思います。  それから今のに関連しまして申し上げたいことは、季節予報の精度と申しますか、これは実は船をつくれば非常によくなるということの推定のもとに、船を昭和九年の凶作のあとでつくりました。そうしていろいろの調査をやりまして、これなら行けそうだということで、気象台も季節予報の発表を手がけたのであります。ところが調査が不十分でありましたか、昭和十六年の凶作は実ははずしてしまつて、非常な御迷惑をかけたのであります。で、正式の発表というようなことをその後とりやめてしまつたのであります。まだこれは研究の段階だ。ところが終戦の年がちようど凶作に当りまして、また日本としても食糧問題の解決が非常に重要だ。それには気象台としては、季節予報でお手伝いしなくちやならぬということで、非常な努力をいたしまして、もちろん十分ではございませんけれども、二十年以後は多少とも傾向的には合うような予報が出せるような状態になつて参りました。そのやり方は、今のお話の船の観測ももちろん重要でありますが、高層気象の観測がかなり整備されて参りまして——これは日本だけではございません。シベリアからヨーロツパ、アメリカの方の北半球全般の高層の資料で空気の動きをつかまえるという方向に今向いつつありますが、それと海の方の資料を使うということが、今後残された季節予報の方向だと私考えております。そういうふうなことで、定点の観測も今後強力に進めて行きたい、高層の資料をつかまえる方法も進めて行きたい、そうして今後できるだけ精度をあげて行きたいと私ども考えております。
  70. 松岡俊三

    ○松岡委員 こういうことがありはせぬかと思う。毎年々々もう定期的に必ず来るというのならば何とかせなければならぬということにもなりますけれども、ずつと今までの経過を見ても、庭石を飛ぶようなぐあいに何年かおいてまた来る。冷害が週期的に来るというようなぐあいになつているから、ことしあつたからもうあと三年、四年は大丈夫だというようなこともあるものですから、それで予算を要求する上に観念が違つて来るようなことがありはせぬかという心配がある。貧乏な中からいろいろたくさんしたいことがあるのですから、その中で今のようなぐあいに、必ず毎年々々きまつて来るというならば、何とかしなければならぬ、絶対必要だというぐあいになるのですが、そうじやないものですから、つい要求する方も熱意が乏しく、また出す方でもちよつと油断するようなぐあいになるおそれがありやせんかと思う。これははなはだどうも農民にとつては迷惑千万のことで、この点について御当局の熱意を——冷害があつたからというようなことにならないように、何か昨年予算を少くされたように聞いておりますけれども、それは冷害の方を第一義に要求しておればそんなことはなかつたのじやないかと思うのです。私の考えはあるいは間違つておるかもしれませんけれども、世の中に多くそういうことがありがちでありますから、この点特に希望を申し上げておく次第であります。
  71. 中澤茂一

    ○中澤委員 昨年の凶作のとき、どなたですか気象台の方から黒点研究の点からお話を承つたのですが、どなただつたちよつと覚えないのですが、太陽黒点説というものから週期的凶作とかいうことが出て来るというお話を承つて、たいへんおもしろい研究だと思つたのです。もしその黒点説の方の御研究で、何かことしの予報というか、そういうものが考えられたら、御説明願いたいと思います。
  72. 肥沼寛一

    肥沼説明員 研究所の予報研究室長の荒川さんが、前からそういうことをお話になつておりますし、新聞などにも発表されたこともございます。それは過去のいろいろの凶作の時期を太陽黒点——太陽黒点と申しますと、御承知のように十一年何がしの週期でかわつておりますか、その多いとき少いときと比較しますと、ある種の関係が出て来る、そういうことからだと思います。ところが詳しく調べてみますと、黒点の多いときに現われる凶作、少いときの凶作、その中間のときの凶作、いろいろのがございます。そういうのを総合してみますと、これは非常に微妙な問題でございまして、それに没頭している人でないと、こまかいことはお答えできないと思うのでございます。私ここでこまかいことまでお答えできないのは残念でございます。ただ申し上げたいことは、先ほども申しましたように、季節予報はこれなら確実だというような方法が現在ないということは残念なんでございます。そういうことで比較的この方法がいいというのが人によつて多少違つておるということは申し添えておきたいと思います。
  73. 川俣清音

    川俣委員 いろいろ説明がありましたが、私どもは八月、九月あるいは十月、十一月という農業気候にとつては重大な時期についての予報について、まだ十分知り得ない点があるのであります。去年八月の気温が非常に下りましたために、農作物にいろいろな被害を与えたのでありますが、十月以後の天候の回復に基いて幾分回復をいたしましたり、あるいは結実をかなり良好ならしめたので、回復いたしております。そういう点から見まして、今年上半期の状態から見まして、八月以後、むしろ九月以後の状況がどのような変化をもたらすであろうかという点を杞憂いたしているのであります。毎年繰返される気象状況から見まして、一月から六月までの過去の気温、日照から推断いたされまして、九月以後の予想が、正確でないにいたしましても、立てられますならば、御説明願いたいと思います。
  74. 伊藤博

    ○伊藤説明員 九月のごく大ざつぱなところは、先ほどの資料にちよつと書いてございます。五ページの上のところでございます。非常に大ざつぱでございますが、九月の初めと九月の終りごろに低温になる予想が出ておりまして、九月全般といたしましては、温度は低いということでございます。それから十月はここに書いてございませんが、少し先の方でありますので、あるいは多少正確さが劣るかもしれませんが、十月は大体において今のところ温度は高いという見込みでございます。
  75. 川俣清音

    川俣委員 日照はどうですか。
  76. 伊藤博

    ○伊藤説明員 日照の方も、大体温度が高ければ日照も多いというのが常識的に成り立ちますので、まずまず十月の温度が高ければ十月の日照も多いと考えていただいてよろしいように思います。
  77. 足鹿覺

    足鹿委員 これは気象台ではないのですが、塩見さんにさつきの続きをちよつと。先ほど大後産業気象課長のお話にあつたのですが、栽培技術の面から冷害を未然に防止する対策がいろいろあると言つておられたわけです。昨年あのような災害を受けた。特に東北方面は冷害がはげしかつた。本年もまた非常に憂慮をされる状態だ。そこで去年と今年における早中晩稲の作付の変化はどういうふうに現われているのか。また昨年相当早生種の種の確保については、予算措置も講じて、それぞれ万全の種もみ確保の対策がとられ、本年の作付にいかんなきを期せられたと思うが、その実施状況はどういうふうであるのか。現に畑作のみならず水稲にも重大な影響が現われておることでありますので、この際状況等をお聞かせ願いたい。あわせて改良局としての、栽培技術的に見たただいまの気象状況からする指導対策はどのようなことが講ぜられているか、その点をお伺いしたい。
  78. 塩見友之助

    ○塩見説明員 現在までに講じましたものは、昨年の予算でいろいろご協力を願つてとれましたものとして、品種の転換でございますが、おそらく当時説明しましたときよりも、実行の場合には、九月の半ばの台風以後相当高温が続きましたので、農民ないしは県の方の要求は、今年に入りまして幾分減りまして、大体二割見当品種の転換が減つたと思います。当初は私らが見ましても、たとえば福島県なんかは全面積の半分を占めるというようなかなり危険と思つたような数字が出ておりましたが、大体おちつきまして、当初御説明した部分よりもいくらかあとの作柄がよかつたので、品種の転換は減つた、こういうことになつておりますが、全体といたしましては、わせがずつとふえて来ているということは言えると思います。どの程度にふえたかということは、統計調査部の方で大体現在調査をしてもらいつつありますが、これはもちろんまだ集計はできておらないと思います。  それからもう一つは、保温折衷苗しろでございます。これは予算を五百万坪ほどふやしていただきましたが、実際には五百万坪ふえただけではなくて、おそらくそれに倍近い数字ぐらい保温折衷苗しろは励行されておると考えます。これは予算を四月以降の予算でなくて、前年度に先取りをしていただいたので、予算節減とか暫定予算とかいう予算上のやりにくい条件が入らないので、県の方も思い切つて必要な地区に普及ができるという形でございまして、おそらく二千四百万坪以上行つておる、予算面よりは五百万坪以上大きくふえておる、こういう状態だと思います。  それから早まき、早植えの方を奨励いたしましたが、統計調査部で甘目に見てもらいました数字でも、大体において早まき、早植えが励行されつつあります。しかしながら北海道は五月における暴風でもつて、せつかく二日ないし一週間くらい早まきしましたものがやられまして、このために平年の程度にもどつてしまつたという地帯も相当ございます。東北の方では早まきは大体励行された、それから早植えも大体済んだ、こういう形でございます。しかし早植えをやりましたものが、五月二十日以降六月二十五日くらいに、一月余にわたりまして、ひどいときは四度、五度、ひどくないときでも一度、二度というような低温が平年に比べて続いておりますので、苗立ちが悪いために、実際は早植えをやつたにもかかわらず、苗の方から見ますと、現在の段階ではむしろ五日ないし一週間くらい成育遅延を来しておる、こういう状態にあるように大体感ぜられます。これらの数字等は、散発的に出て来ますいろいろな試験場の報告等から私の方は押えておるわけですけれども、おそらく統計調査部の方でも同じような見方だと考えられるわけです。  それからもう一つは客土でございます。これは私らが思つたよりもかなりの程度よけいやられているのじやないか。町村限りでもつて予算を組んでやつたような地帯も相当ございますので、そういう点もある程度進んだと考えられます。それで今問題になりますのは、やはり追肥の問題が一番決定的でございます。今のような苗の状態からいいますと、窒素肥料はどうしても押えぎみにやつた方がいい。各県の方でも押えぎみに指導をしておるようでございますが、これらについては、なかなか農民の方で指導通りにやらないような傾向もありますので、県々によつては、冷害対策本部をつくるとか、その他冷害の印象を農民に強く植えつけて、技術的に誤りない指導を受入れるような態勢をつくりつつあるような状態でございます。今は追肥の問題が一番大事な問題だと考えられます。その後はいもちの問題が一番大きいわけでありまして、農薬の準備等が必要だと考えられます。今までのところは、農機具の準備は昨年お取り願いました予算によつて、かなりの程度まで整備が進んでおりますので、農機具の方は昨年に比べますとずつと安心が持てる。それから農薬の関係になりますと、補助金が減りましたので、準備は十分とは言えない。県等における購入のごときも、資金的に見まして、大体螟虫の方の関係にかなり集中しておりまして、螟虫の方の農薬の手当は、大体において間違いのないところまで行つておると見られます。いもちについては、先般私が五月中ごろに推定してみたのですけれども、手当状況はまだ完全とは言えない。これは地帯々々によつて相当の差がありまするが、全体として見ますると、西日本は割合に手当がいいのでありますけれども、冷害で一番危険な東北、関東、北陸の方の手当が割合に遅れておる、こういう状態にありましたので、ただちに先月の中旬以降県を呼びまして、六回にわたりまして個別的に手当状況をもう少ししつかりしてもらう打合せを、大体先月一ぱいで終えております。それによつて各県の方ももうちよつと準備はすると思われます。  もう一つは、あとは除草を早く切り上げるとか、できるだけ暖かい水をかけるようにして、水のかけひきによつて温度の方をできるだけ稲作に有利にするというような点が残されておるわけですが、これらについては、その地帯地帯の土壌と、稲の成育状況等によつていろいろかげんがございますので、一概には言えないので、これは県々の実情に応じてしかるべく技術指導をやるようにということで、通牒を二回ばかり発しております。大体のところはそういうふうな状況であります。
  79. 足鹿覺

    足鹿委員 今改良局長から、気象状況とにらみ合せたいろいろな施策が講じられておるということを聞いたわけでありまして、大後課長の栽培技術的な対策については、基本的な御所見のみを承つて、私どもも一応納得がついたわけであります。先刻来の予報部長また両課長の御説を拝聴しておると、結論的にはどういうことになりますか、今年は要するに七月に気象状況が回復をして、八月上旬にまた一度下つて、また中旬からよくなつて、八月下旬ごろにまた下りはしないかということが、結局農作物への影響を決定するであろうということでありました。今これに対してある程度的確な判断を下して、これに対する措置がとられなければ、もうここ十日も二十日も過ぎてからでは、すでに時期はおそいということにもなろうと思います。結局気象台の結論としては、そう案ずるに及ばない、こういうお見通しでありますか。それとも今までお聞きしたのでは、しろうとから見た印象は、必ずしも楽観は許さないように私は聞いたわけです。その点も端的にひとつ結論的におつしやつていただいて、それに対して、昨年の二の舞を演じないための官民合同の冷害対策、異常天候対策というものが、輿論を喚起し、実際的な対策も伴つて興されるか、また興すべきかということについて、われわれの判断にもなろうと思います。今年北関東の凍霜害地帯を歩いてみますと農民は、県庁の対策によつても違つておりますが、自発的にほとんど不眠不休の対策を講じております。むしろ上の方の官庁の指導の方が手ぬるいくらいで、実際百姓は自分のことでありますから、懸命になつて霜害の伝達、報道等の措置にしてみてもやつておる。ある地方事務所の人が話しておつたところを聞くと、電話料だけでももう一年分を使つてしまつた、夜間いつでも不寝番をつけておいて末端まで流すために、電話料も何も地方事務所で使つてしまつた、一体今後どうしたらいいかわからない、しかもその予算はない、こういうような悲鳴を上げておることを私は現地で聞きました。現にそういうふうに、去年のことから受けて、現地では非常に熱心にやつておる。ここでひとつ見通しを立てて大きく対策を取上げ、農民の注意を喚起して行けば、ある程度未然に被害を防止することができるのではないかというふうにも思うのです。秋田県ですか、農林省が現地に入つて、去年の冷害の農家の経営上から見た調査をされたものがあるように聞いております。私どもは見せてもらつておりませんが。それによりますと、中農以上の連中は、三要素をうまく取入れて非常にりつぱな経営をやつて、冷害をきわめて少くてまぬがれておる。むしろ経済力に乏しい貧しい農民が非常に被害を受けておるということは、その結果にも現われておるそうでありますが、ことしの場合でも、昨年に比べて硫安が二十万トン程度たくさん出ておる。これは去年の被害をとりもどしたいというところから、来る農家の焦燥から、そういうように硫安のみが特にたくさん出ておるようになつておるとも考えられる。こういうことも言えると思うのです。そういう点から、要するに去年とは型は違つた形で出て来るから心配はいらない、あるいはこういう心配があるから、こういう態勢が必要ではなかろうかというようなことが、結論的に出されると、きようの委員会を通じて一般の方にも大きく警告を発し、また万全の措置を立てるための参考にもなるのじやないかと思うのです。そういつた点を総合的に、大後さんからひとつお聞かせ願いたい、それで私の質問を終りたいと思います。
  80. 大後美保

    ○大後説明員 どうも責任のあるお答えをしなければならないのでちよつと困るのですが、要するに先ほど伊藤さんがお話になりましたように、七月の下旬から八月の上旬にかけての温度が低い、それから八月下旬ごろから九月にかけては温度が低くなるということ、この二つはどちらも稲にとつては非常にぐあいの悪いことなので、これは程度が軽ければ大したことはないと思いますけれども程度がひどければ相当な被害を受けることになるので、その組合せ——ことしの組合せと去年の組合せと比べれば、程度のひどいときには去年よりもひどくなる、こう見なければならないわけであります。それから、もしも七月上旬の低温と八月下旬以後の低温が程度が軽いとすれば、去年よりは大したことはないかもわかりませんけれども、それにしてもこれはいい傾向ではないのですから、いずれにしても十分警戒して、手放しの楽観は許されないという結論になるのではないかと思います。ことにことしは、去年よりも六月は非常に悪かつたわけです。しかも七月下旬から八月上旬という稲に大事な時期、それから八月下旬から九月にかけて低温がある程度考えられるというならば、その低温の程度が非常に軽いときには影響はないと思いますけれども、そういうことが多少とも考えられるなら、やはり警戒はしておいた方がいいのではないかというふうに考えます。
  81. 綱島正興

    ○綱島委員 ちよつと教えていただきたいのですが、至つてしろうとの質問でおかしいほどかもしれませんが、この図面で第一から第三図までミリバールだろうと思いますが、第一図では低気圧一〇一〇、高気圧一〇一四というふうになつておりますが、大体高気圧と低気圧の境は学問的にどのくらいのものですか。
  82. 肥沼寛一

    肥沼説明員 これは境というのはございませんで、まわりよりも高いのが高気圧、まわりより低いのが低気圧でございます。たとえば箱根山の上に芦ノ湖という湖水がございますが、これは山の上にあるので海抜はかなり高いのでございますが、やはり湖水です。ああいうような考え方でございます。
  83. 綱島正興

    ○綱島委員 なるほどそれでわかりました。第三図を見ると一〇〇六で高、第一図を見ると一〇一二でも低となつておるのはどういうわけだろうと思いましたが、なるほどそれでわかりました。  それから低気圧が発生したとか何とかいうときは——その周囲と比べてでしようけれども、おのずから標準みたいな常識的なものはないのですか。
  84. 肥沼寛一

    肥沼説明員 気圧を平均いたしますと、大体一〇一〇ないし一三ミリバールぐらいになりますので、それより高いのを高気圧、低いのを低気圧と考えられがちなのであります。けれども実際の気象の現象を見ますと、まわりが空気が多くて空気がたくさんになつておればそこから風が流れ出します。そういう意味で、それよりももつと高いところでへこんだところがあつても、やはり高いということに意味がある。風が流れ出すということです。まわりよりも低ければ、それがかなり高い気圧でありましても、そこへ風が流れ込んで来るということで、そういう現象的に見ますと意味がある。風が流れ込んで来る、あるいは流れ出すということは、それが上昇気流などを起して雨が降るとか降らぬとかいうことに関係いたしますので、それでまわりとの関係が重大になつて来るわけで、標準はどうかということはあまり問題がないのであります。
  85. 綱島正興

    ○綱島委員 これもまことにしろうとの質問で恐縮ですが、梅雨というのはどういう現象で起るのか、これをしろうとわかりするようにひとつ簡単に教えていただきたいと思います。
  86. 肥沼寛一

    肥沼説明員 六月初めごろになりますと、大体冬と夏を比べますと、冬は陸地が冷えてそこへ空気がたまるのです。夏になりますと陸地が暖まりますから逆に海の方に空気がたまるわけです。そういうことから出発いたしまして、五月ごろになりますと、太平洋の上に空気が停滞して、よく新聞などに出ておりますが、小笠原の高気圧というのが発達して参ります。ところがこの時期にオホーツク海の方は、大体周囲が暖かくなるのに、あそこは氷がありますために冷えておりまして高気圧ができてて来る。北と南に高気圧がありますので、それの境目があるのです。この境目が梅雨前線と申します。北と南に違つた性質の空気がある。その境目が梅雨前線であります。そういう何といいますか、違つた性質のものの境目に起る境界現象というように申したらおわかりかと思います。とにかく性格の違つたものが境を接しおると、たとえば国境によく紛争が起るというように、空気の場合でも、違つた性質の空気が接触すると雨を降らせ風を起すというわけでございます。
  87. 井出一太郎

    井出委員長 それでは気象台の方の御質問はこの程第でよろしゆうございますか。——それではちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  88. 井出一太郎

    井出委員長 速記を始めてください。  暫時休憩いたします。     午後四時十一分休憩      ————◇—————     午後五時二十五分開議
  89. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  昨日並びに本日の委員会においては、当面重要なる農政問題について御審議を煩わしたのでありますが、掲示いたしました議題については、蚕糸価格安定法改正案は蚕糸の小委員会に、麦価その他食糧に関する件については食糧の小委員会において掘り下げて御検討願うことにいたしました。  さら東北に、北海道における凍霜害等に関しまして、政府に対し緊急施策をとるべく申し入れたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 井出一太郎

    井出委員長 それでは御異議なしと認め、委員長において用意いたしました文案を御披露いたします。    農業災害対策に関する件  過ぐる六月の東北、北海道等に起つた霜害による農業災害は頗る激甚を極め、相次ぐ災害により被災農家の不安は極めて深刻な様相を呈しつつある。  よつて政府は、時期を失することなく、共済金の概算払又は精算払、飯米の確保、営農資金の融通、肥料、農薬、防除機具等に対する助成、救農土木事業、国有林野事業等万般の措置を講じ、以つて農家経営の安定、食糧再生産の確保につきいかんなからしむべきである。  以上の通りでありますが、本案を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  92. 井出一太郎

    井出委員長 なおこの際お諮りいたします。次会の蚕糸に関する小委員会における繭糸価格安定法の一部を改正する法律案の審査に際しまして、関係業者、学識者を参考人として出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  なお参考人の人選につきましては、委員長並びに蚕糸小委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。  次会の日程は追つて御通知いたしますが、おおよそ七月二十二日、三日ごろを目途にお含みを願いたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十八分散会