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1954-06-02 第19回国会 衆議院 農林委員会 第56号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年六月二日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 福田 喜東君 理事 金子與重郎君    理事 芳賀  貢君 理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    松岡 俊三君       松山 義雄君    吉川 久衛君       齋藤 憲三君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    井手 以誠君       中澤 茂一君    安藤  覺君  出席政府委員         法制局参事官         (第一部長)  高辻 正己君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         食糧庁長官   前谷 重夫君  委員外出席者         保安庁課長         (経理局土木課         長)      大森 頼雄君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  安田善一郎君         農林事務官         (農地局管理部         入植課長)   和栗  博君         農 林 技 官 田中 良男君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 六月二日  委員加藤高藏君辞任につき、その補欠として齋  藤憲三君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  家畜衛生に関する件  食糧問題に関する件  農地の使用又は収用に関する件  土地改良事業特例措置に関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  まず家畜保健衛生に関する件、特に馬の伝染性貧血症の問題について調査を進めます。質疑の申出がありますので、これを許します。齋藤憲三君。
  3. 齋藤憲三

    齋藤委員 昨年の十一月にこの委員会で、馬の伝染性貧血症に対しまして当局に御質問申し上げたのでありますが、その結果、特に伝染性貧血症に対して効果的治療があると主張するものは、適当な合法的な手続をとつて実験してもよろしい、こういうお話がございましたので、本年の二月十四日にその手続を完了いたしまして、真性伝貧と決定した馬を秋田県象潟町に持つて参りまして、その伝貧実験をいたしたのでありますが、その実験の結果について、従来当局でお考えになつていることと、実験の結果から生れた私たちの考え方の間に相当食い違いがあるように考えられるので、主としてその点について御質問申し上げたいと思うのであります。  第一、従来の伝染性貧血症に対する治療根本的方針は、あくまでもこの伝貧ヴイールスによつて誘発されておるんだ、こういう建前のように承つておりますが、そのヴイールスに対して現在どの程度の確証をお握りになつておるか、それをひとつつておきたいと思います。
  4. 田中良男

    田中説明員 お答えいたします。ただいまの御質問は、馬の伝染性貧血がはたしてヴイールスであるかどうか、あるいはその確証があるかという御質問のようでございますので、その点お答え申し上げます。  馬の伝染性貧血ヴアイラス性疾患でありますことは、すでに明治四十二年から大正三年にかけまして、当時の内閣直属馬疫調査委員会というのがございましたが、その調査委員会の結果に始まりまして、今日に至りますまで各大学、あるいは軍のありました当時は陸軍獣医学校、あるいは農林省の当時の獣疫調査所、現在の家畜衛生試験場、あるいはその他の研究機関におきまして、ヴアイラスであるということについては、何ら疑問の余地のないまでに究明し尽されていると存じます。なお日本のみならず、諸外国におきましても、この問題についてはすでに定説になつておりまして、いまさらこの病原体ヴアイラスでないというようなことは、私どもといたしましては、現在御同意いたしかねております。しからばその証明ができておるかという問題であろうかと思いますが、すでに家畜衛生試験場はもちろんのこと、あるいはスイスの学者におきましてもそうでありまするし、アメリカ学者もそうでありまするが、あちこちでこの病原体らしきもの、私ども病原体と信じておりますが、それを電子顕微鏡下に証明いたしております。
  5. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の聞いておりますところでは、アメリカではこれを否定している、ヴイールスは見えないということになつておるんですが、人間再生不能型貧血症と、馬の伝染性貧血症と御比較なつたことがありますか。
  6. 田中良男

    田中説明員 アメリカで馬の伝染性貧血ヴアイラス性疾患でないというような説がある、こういうお話でございますが、それは何千人、何百人という学者の中には、あるいはそういう説の者もあるかもしれませんが、少くとも私どもが知つております限り、おそらく九分九厘までヴアイラス性疾患であるということを学者が信じております。もう一つ齋藤先生の御質問は、悪性貧血と馬の伝染性貧血比較検討をしたことがあるか、こういう御質問のようでありますが、私ども悪性貧血と申しましても、各種各様のものがあると思います。これにつきましても、諸外国の文献はもちろん、あるいはまた日本におきましても、いろいろの試験を現在まで繰返して来ております。ただ単なる悪性貧血でございますれば、これを接種いたしましても、次の時代にうつるとか、あるいはこれが注射によつて次時代に次から次へとうつつて行く、こういうようなことはないものと信じておりますが、馬の伝染性貧血につきましては、あまりいい例ではございませんけれども、開業している獣医師なり、あるいはその他の方方が不注意から、ほかの病気治療しようという目的注射をいたしましたときに、それがもとでうつつたというようなことも言われているような例がかなりあるのでございます。また実験的にも、きわめて微量なものを注射いたしましても、簡単に発病するというようなことから考えまして、いわゆる単純な非伝染性悪性貧血ではない。かように私ども信じております。
  7. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の申し上げましたのは、今学界で問題になつておる人間再生不能型貧血症というものがあるのです。これを昨日、一昨日にわたりまして、私専門医に問いましたところ、これはヴイールスじやない、いわゆる造血作用疾患であるという説なのであります。われわれが伝染性貧血症ヴイールスでないというふうに考えるのは、電子顕微鏡下において、いまだ確たるヴイールスの正体というものが把握されておらない、これは事実です。そうらしいものかというものはあるけれども……。ところがその伝染性貧血症白血球顕微鏡下で見ますると、明白にそこには白血球が何か酸化物によつて破壊されているところが見えます。ところが従来の造血作用というものは、これは骨髄細胞説なんです。しかし最新の造血説というものは腸のじゆう毛説すなわち消化管造血説なんです。そこで非常な疑問が起きて来るのでありますが、どういう疑問が起きて来るかと申しますと、太陽直射を受けたところの草をとつて、その草をデイゼロと同様な染色作用をやつて、そうして顕微鏡下で見ますと、白血球が侵されたときに呈する青い色と同じ色の細胞が無数に見えるということです。ところが太陽の光線の当らない草を同じ方法によつて染色して顕微鏡下で見ますと、その青い細胞は何もない。そこで腸のじゆう毛から造血作用が行われるのだということになりますと、胃腸疾患によつて太陽直射のされたところの草を多量に食つて、そうしてじゆう毛の作用が完全に行われないときに、そのまま血管に吸収されると、ここに青色のものが見える。私のは、いわゆる今まで言われているところのデイゼロ・チーテンというものが誤り見られているということじやないのです。とにかくわれわれも数回そういう実験に立ち会つてみましたけれども、第一顕微鏡下において血液の検査をするときには、血漿と赤血球白血球としか見えないという前提のもとにやるのでありますから、そこにもし白血球破壊された色と同じ他のものが入つて来ると、これはデイゼロ・チーテンだと判定するおそれがあると思うのであります。そういうことに対しまして、一体当局はそういう観点から御試験をなさつたことがあるかどうかということを一応承つておきたいと思います。
  8. 田中良男

    田中説明員 ただいまの太陽に当つた草と当らない草を食わせた場合に、私ども伝染性貧血の場合によく見られる現象として考えておりますデイゼロ・チーテンと同じような結果が起きるのではないか、こういうふうな先生の御説のようであります。私どもは遺憾ながらまだそういう試験をいたしたことはございませんが、デイゼロ・チーテンと言つておりますのは、伝貧いわゆる伝染性貧血と直接に関係のない細胞であります。これは先生よく御承知のはずでありまして、いわゆる悪性貧血というふうなものが起りましてそれがひどくなりますと、その貧血の起る過程におきまして赤血球破壊され、そしてそれが白血球に食われて、その血色素が特殊な染色液によりまして青く染まる、こういう形のものであります。私どもが現在日本で知つております限り、こういつたディゼロ・チーテンというような特殊な細胞の出るような病気はほとんど考えられておりません。私どももこのデイゼロ・チーテン伝貧特有であるかどうか、少くとも日本において特有であるかどうか、こういう問題につきまして再三再四吟味いたしましたが、現在のところそういつたデイゼロ・チーテンが現われるような病気は証明されておりません。
  9. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の申し上げたのは、デイゼロ・チーテンにはデイゼロ・チーテンという形があるのです、しかしデイゼロ・チーテンにも顕微鏡下で見るといろいろな形がある、白血球が全部デイゼロ・チーテンのように冒された形、それから半分冒された形がある。そういうふうに種々雑多なデイゼロ・チーテンの形があるので、同じ染色を受ける草のしるがいわゆる腸のじゆう毛疾患によつて血液の中に混入したときに、往々にして私は見誤つておるのじやないかという懸念があるのです。というのは、ここに御承知通り報告書が出ておりますが、馬がまさに倒れんとしているときの血液をとつてみますと、大体六・五の酸性である。それから治療して馬が元気になりますと大体六・八、七・〇、七・四と、大体七・四の弱アルカリになると健康体だ。七・四の弱いアルカリ血液の場合に、デイゼロ・チーテンというものは絶対に見えない。そういう点から追究して参りますと、これはあるいはあなたはヴイールス説をとつて世界学者ヴイールス説だと言つておるかもしれませんけれどもヴイールス説でもいいです。ヴイールスというものは結局六・五ないし七・〇、七・一くらいまでの間にヴイールス活動というものがあつて、七・四の弱アルカリになれば、たとえばヴイールスとしてもヴイールス活動がないということであれば、伝貧が直つたということになる。ただ問題は七・四の弱アルカリ血液を持たした馬がほんとうの健康馬であるかどうかということの決定いかんにあると私は思う。現にここに馬籍もありますが、この馬籍のある馬を獣医師会いの上においては、あしたまで持たない、だからすぐ治療しなければならぬといつて治療したものが、今じや、二人かかつても、三人かかつても制御しきれないくらいの元気がある。そうして血液を調べてみるとちやんと七・四である。そうすれば問題は七・四の血液コンスタントに持たし得る方法があるとするならば、伝貧は、恐るるに足らずという結論になるのじやないか、私はそう思つている。これはあらゆる人間のお医者さんに聞いてみても、いわゆる結核だ、癩病だ、それからがんだというても、不治の病いに冒されている人間はみんな酸性血液である。これが中性から弱アルカリ血液コンスタントに持つようになれば、病気は直つてしまうということになる。がんヴイールスであるかどうか私は知らぬ。ヴイールスでない、これは異常細胞だと言つておるので、——しかし細胞も生きておるのだからヴイールスの一種だと言えばこれは別です。馬を一日に二十頭も三十頭も伝貧によつてどんどん殺しているのですが、一体そういうことを御試験なつたことがあるのですかどうか。
  10. 田中良男

    田中説明員 ただいまの先生の御説の中で、獣医の方に関しましては私は全然存じません。存じませんが、P・H六・八から七・四、大体微アルカリというところが健康であるということは私ども存じております。でありまするが、七・四になつたから必ずしも伝貧が直つておるのかどうかということにつきましては、私はよく存じておりません。  それからもう一つは、ただいま先生お話の中の、例の伝貧試験馬でございますが、この馬が二人かかつても三人かかつてもなかなか制御しきれないくらいに体躯が回復しておる、こういうお話であります。これは私ども丹野さんからの報告秋田県知事を通じて拝見いたしております。拝見いたしておりますが、この伝貧という病気は、御承知通り間歇的に熱発いたしまして、もちろんその中には急性の経過をとるものもございまするし、あるいは慢性の経過をとるものもございますけれども栄養という問題と転帰というような問題はかなり重大な関係があるようでありまして、オーバーワークにいたさせますと経過は非常に悪い。それから栄養をつけるような食べ物をやつて、そうして体力を回復させると熱発も少くなることも事実であります。でありまするが、今秋田県下で試験をいたしておられます馬につきまして、実は私どもその後の様子をずつと拝見しておるわけですが、先般も防疫関係の主任をいたしております高村技官を派遣いたしまして、現地におきましてこの試験を担当しておられる丹野さんとそこでお会いをいたしまして、いろいろ実は話をして来ておるわけであります。その節の丹野獣医師お話によりますと、五つ六つのことを申しておられるようでありますが、その第一点は、現在の試験馬はまだ伝貧が回復というようなところまでは来ていないと思う、こういうことを言つておられます。第二点は、一般状況は非常によくなつた、これは私どもその通りだと思います。第三点は、獣医師といたしましてこの問題に取組むことは非常に重大な責任を実は感じておる、こういうことを言つておられます。第四点は、読売か何かに発表なつたそうでありますが、いずれかの機会に真相を明らかにしたい、こういうことを言つておられるそうであります。第五点は、今後相当期間試験を引続いてやりたい、こういう御希望のようであります。第六点は、設備がまだ非常に不備だから、これは改善して行きたい。それで町長にも交渉中であつて、適当な場所に移転をいたしたい、こういう御希望をお持ちのようであります。第七点は、まだ接種実験を実施してみる段階には来ていないと思う。第八点といたしまして、使用しておる薬物については本人は全然知らない。処方通り処方投薬しておるほか一般の対症療法に専念しているんだ、こういうことを実は申しておられます。そうしてこの高村技官が参りました前々日かに軽い熱発がございまして、そのあとでデイゼロ・チーテンが多少見えるようになつた、こういう事実があつたようであります。それで先生の御説と私ども考えと、これは違うわけなんで、何とも申し上げられないのでありますが、私どもはその経過から考えまして、まだ回復したというような段階が来ていないものと、かように実は考えております。
  11. 齋藤憲三

    齋藤委員 今の実験馬に対する担当獣医意見というのは、この間も私帰つて聞いて参りまして、それは多少の食い違いはあるようですが、私は今それを問題にしておるのではない。これは必ずヴイールスというものに決定したというならそれでいいのです。しかし今日の学説において、不治の病に対してヴイールス説でないところの説はたくさんある。伝貧ヴイールスというものであるということの認定のもとに、伝貧をなおせるならわれわれは文句を言わない。伝貧というものは絶対になおらざる病気として、これにかかつた馬をどんどん一年に八千頭も撲殺をするところに問題があるのです。これがなおるなら、ヴイールスであろうが何であろうが、われわれは問題にしない。こうしているうちでも馬はどんどん殺されて行く。それであるから、ヴイールスであると言つておきながら、ヴイールスであるものをなおせないから問題が起るのですが、ヴイールスでないという観点から一ぺん大がり研究治療をしてもらつたらいいのじやないか。それはどういうふうにしてやるかというと、先ほどから申し上げるように、血液の七・四の弱アルカリコンスタントに持つて行ける方法さえここに生れて来れば、それで万事オーケーです。この間もあなた方行かれるちよつと前に、どうして熱発が起きたかということを調査してみると、もうかんかん照らされた草を十貫目も食わしたと言うのです。どうしてやつたのだと言つたら、今までやつた濃厚飼料を一ぺんかえてみたら、どういう結果になるだろうかということでやつたところが、熱発して下痢をやつたと言う。そのときの顕微鏡を見ると、デイゼロデイゼロと言うけれども、これはそうじやない。これは必ず草のしるが入つているのだというので、太陽の照つているときの草をすつて染色して顕微鏡で見ると、それと同じものが入つていた、こう言うのです。われわれは実験の結果から言つておるのです。あなた方はそういう実験をやつておらぬのだ。はたして骨髄造血説を否定して腸のじゆう毛造血説を肯定しておつたら、こういう伝貧と見誤る現象は起きて来ない。ところが腸じゆう毛の造血説というものは、この間の新聞にも発表された通り、これは一切のものが胃腸疾患によつて病気が起るのだ。いわゆる原爆症胃腸疾患によつて腸じゆう毛の働きがとまるから、原爆症状が起るのだということさえ発表されておる。腸じゆう毛の造血機能がなくなると、初めて今度不健康な場合における骨髄造血が行われて、それでもなおかつ足りないときには、細胞が逆に血になつて行くということから、人間は衰弱して行くということなんでしよう。そういうはつきりした学説の裏づけをもつて、今新たになおらざる伝貧症状を、コンスタントに七・四のアルカリ血液に持つて行くようにすれば、馬はどんどんなおつて行く。事実なおつて行くのだからしかたがない。それをやつたことがないのです。あなたの方には酸性血液を七・四に常にコンスタントに持つて行くところの方法はないのでしよう。あるならそれをひとつ承りたい。     〔委員長退席川俣委員長代理着席
  12. 田中良男

    田中説明員 ただいまの齋藤先生お話を聞いておりますと、私どもヴイールスであるから全然治療を断念しているのだ、こういうような御説のようでありますが、これは誤解を解いていただきたいと思います。私どもは、とにかく伝貧にかかつた馬を殺すことは、これは実は最悪の手段だと考えております。やむを得ないからとつている方法でございまして、決してこの方法が最善の方法だとは考えておりません。従いまして、陸軍のありました当時から、とにかくこの伝貧治療試験につきましては、あらゆる努力を払つて来ております。何せ研究というものは幅の広いものでございますから、必ずしも今先生のおつしやつたような線まで入れた研究はしておりませんけれども、そのほか各種各様方法によりまして、あらゆる面から実は研究を進めて来ております。ところが現在までのところ、日本のみならず世界を通じまして、この病気がなおるのだという学説を立てている者は一人もございません。従いまして、私どもは今にわかに先生の御説に従つて、この病気がなおるんだというようなことは申し上げられないのであります。  それから、馬の伝染性貧血を何とかして治療したい、あるいは何とかして予防方法をはつきりつかみたい、こういうことで、ことに終戦後になりましてから一生懸命にやつているわけでありますが、不幸にして現在までのところ、そういう方法は見つかつておりません。今私どもが馬の伝染性貧血に関しまして知つている方法というのは、とにかく診断方法がやや確実になつているというだけでありまして、そのほかの治療方法予防方法も現在はない、こういう段階であります。幸い昨年ストツクホルムで国際会議がございましたが、その際にイタリアのある学者が、この診断方法の中でも、馬の伝染性貧血の病毒と直接関連のあるらしい業績を発表いたしております。それをさつそく私自身イタリアから持ち帰りまして、現在北海道大学、北里研究所、それから家畜衛生試験場で追試中でございますが、今のところ向うが言うようなりつぱな成績は出ておりませんが、しかしこの診断方法というのは、かなり実態に触れているように考えますので、あらゆる面からイタリアと連絡をとりながら、現在研究を続行中でございます。
  13. 齋藤憲三

    齋藤委員 ただいまの私の申し上げたのと大分焦点がずれているようですが、時間がございませんからそれはそれでよろしゆうございます。ただ私の申し上げたのは、いかに研究をしてもなおらなければ同じことです。なおる方法がまだ見つからないから問題があるのであつて、それを血を七・四の弱アルカリに持つて行く方法がないか、こういうことを聞いているのです。
  14. 田中良男

    田中説明員 私は不幸にしてそういうことをまだ存じておりませんが、私どもは今後といえどもあらゆる面から、とにかくなおすことが最終の目的であり、あるいはまたかからないように予防するのが目的でございますから、その面でとにかくあらゆる試験を続行して行きたいと思つております。幸い齋藤先生の貴重な御意見もございますので、そういうことも考えまして今後の試験研究を進めて行きたい、かように考えておりますので、何分の御協力をいただきたいと思います。
  15. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の説を固執するのじやないのですが、もうすでに実験の結果として発表されているのがあるのです。と申しますのは、約二月ほど前、私の関係しております電気通信委員会において、木村健二郎博士とそれから石炭綜合研究所浅井所長が見えまして、今までの医学において全治不能と刻印を押されている、再生不能型貧血症という病気が、ゲルマニウムコロイド注射によつて四人ともなおつている。それからゲルマニウムコロイドを、ある病院に行つて頼んで結核病人にこれを注射すると、ただちに結核の高進が停止するという発表をやつたのであります。そこでさつきから私は伺つているのでありますが、デイゼロ・チーテンによるところの白血球破壊というものも、これはやはり貧血です。真性伝貧といえば、御承知通り一CCにおけるところの赤血球は五百万であります。これが七・四の弱アルカリ健康馬になると七百五十万台というふうに、赤血球の数が違うのです。人間の場合も、医者の話を聞くと再生不能型貧血症は、造血機能の喪失だという、血をつくり得なくなつているという。それだからこれはなおらない貧血症だといつて医者がさじを投げている。それをゲルマニウムコロイド注射すると、その再生不能型貧血症が、今まで試験をした東大の医学物療科でもつて、四人やつて四人ともなおつておるという発表なんです。もしこれが事実だとすると、何も貧血症というものはヴイールスじやないと思う。というのはガス廃液からゲルマニウムを抽出する過程研究すれば、ゲルマニウムコロイド酸性血液注射すると、弱アルカリになるという結論です。そういうことを言つている。それを常にやることによつて血が七・四のコンスタントになれば、もうこれは七・四の弱アルカリになるときには、赤血球の数というものが七百万台を突破するということは確かなんです。そうすれば、ここで常に赤血球というものが七百万台以上あつて、それから白血球破壊が防止されて、馬が健康体でそれを持続し得るということになると、一体どこに伝貧として認め得ることができるかということなんです。私らはそういう理論を持つておる。これは私がただ考えたのではない。しかるにまだ、そういうふうに再生不能型貧血症というものはなおつておるということがわかつておるにかかわらず、いまだ馬の伝貧にそういう試験をすらしないで、そして毎日のように、伝貧がなおらないものだという断定のもとに、どんどん馬を殺しておるということは、私は畜産行政としてまことに悲しむべき行政ではないか、こう考えるのです。それでありますから、もし予算がなくて、そういう大きな徹底した試験ができないということであつたならば、よろしく農林委員会におきまして審議をしてもらつて伝貧実験を徹底的にやれるような予算の裏づけをしてもらつて、そうしてやるならば私はなおるのじやないかと思います。とにかくヴイールスヴイールスヴイールスと、ヴイールスだけでもつて攻めているのです。ところがヴイールスははつきりしないのだ。アメリカのことを申しますと、私の知つておるのは、五十万倍の原子顕微鏡でも、馬の伝貧ヴイールスはわからないと発表しておる。これは、私は競馬界の人に聞いたのです。ところが競馬界の人の話を聞いてみると、これはヴイールスと断定されたつて、二百万円も二百五十万円もする馬が、いきなりヴイールスだといつてぱつと殺されるということは、みな隠しているでしよう。そういう隠している事実を私はよく知つているのです。ですから厳密な意味から言うと、今日のごとく科学が発達した過程においては、これを検討いたしますと幾多の疑問があるのです。私が個人の力において、二月十四日から今日まで実験をして、その実験過程を調べてみても、幾多の疑問が生れて来るのです。しかも馬はちつとも弱らないのです。まさに倒れんとしている馬にそういうことをやつて、レアメタルの治療、——ゲルマニウムとかガリウムとかいうものをやつてみますと、そうすれば六・五の酸性血液が今七・四です。いつ抽出したつて七・四です。そんな簡単なことがあるのに、それを見のがして毎日のように馬を殺して、一年に累計すると七千頭も八千頭も殺している。しかもそれはわずか数県の強制検診でですよ。日本全国の馬を全部強制検診したら、何万頭殺さなければならぬのか、そんな畜産行政は私はないと思うのです。一体それに対して、一方ではヴイールスではない、なおるという。それに対して謙虚な気持をもつて追究して行つて、そういうことをやつて初めてヴイールスというものはなおらないんだ、こう言うのならば私はあきらめるけれども、一方ではゲルマニウムコロイド注射をやると再生不能型貧血症というものはなおつて行く。同じことですよ、人間再生不能型貧血症ヴイールスと一体どこに違いがあるか。私は、人体構造と、いわゆる今日の科学におけるところの最高の考えから行けば、同じだと思う。結局病源菌が棲息し得ざるところの血というものがなければならぬわけです。病源菌の棲息し得ざるところの血というものは、今までの試験によれば、結局人間でも馬でも七・四の弱アルカリですよ。肺結核つてがんつて、癩病だつて七・四の血を持つて、肺結核なつたり、癩病になつておるのはいやせぬ。みな酸性の血なんです。結局するところ、そういう酸性の血を弱アルカリコンスタントに持つて行く方法さえあれば、病気がなおるという理論が成り立つと思うのです。それを今の畜産局はやつていない。やつていなくて馬を殺しておる。だから、お願いしたいのは——われわれだつて、だてや酔狂でもつてなけなしの金をつぎ込んで実験をやつておるのじやないのです。昨年の十月、私が北海道の冷害を視察に行つたとき、北海道の農民諸君は、冷害の陳情よりも、涙を流して、なぜおれの馬がああいうふうに無残に殺されるのだろうか。きのうまであんなにぴんぴん働いておつた馬が、強制検診によつて真性伝貧ときまると、いきなり自分の家に帰さないで殺されてしまう。馬はおれたちの家族なんだ。人間は癩病だつて肺病だつてみな隔離して最後までめんどうを見て、いよいよなおらないというときにあきらめるんだ。それをいきなりひつぱつてつて、わけがわからない伝貧とかなんとかでぱつと殺してしまう。あの人間たちは馬肉のカン詰屋と組んでおるのだという悪口まで私は聞いて来たのであります。でありますから、私はこの馬がなおるかなおらないかということに重大関心を持つて、こんな畜産行政というものはとうてい見るに忍びないから、ひとつわれわれが伝貧というものを研究して行かなければならない。しかるに、幸いに、ゲルマニウムないしガリウムというものの徴量を悪性貧血にやればそれがなおるという研究者がおつたので、私はそのガリウムとかゲルマニウムというものを馬に与えて、そうしてこれを注射液にかえてやつて来たのであります。御承知通り世界実験によりますれば、ゲルマニウムとガリウムというものは、植物の中に含まれておる。もちろん鉱物の中にも含まれておりますが、植物の中に含んでおるわけであります。それでありますから、今石炭をたいて、人工ガスをとる。そのときにガスを洗う廃液の中にゲルマニウムとガリウムというものが含まれて来ておるのです。これをアイソトープにして植物に吸収させればただちに葉緑素に行く。ですからそのガス廃液からゲルマニウム、ガリウムを抽出するときの過程を調べてみると、一ぺんガンマー鉄になつて、ガンマー鉄からこれを抽出しておる。ですから結局するところ、植物は地中から鉄分を吸収して、その鉄分で、いわゆる太陽の光線の光合成によつて葉緑素をつくるときのキヤタライザーが、ゲルマニウムとガリウムです。これは人間つて同じことなんです。このゲルマニウムとガリウムのキヤタライザーを人間のからだの中に入れるには、葉緑素を食えばいい、しかし葉緑素は何も人間関係がない。葉緑素をつくるキヤタライザーのゲルマニウム、ガリウムをとるということなんです。ですからこういうレアメタルが馬や人間のからだに欠如すると、そこに初めて、いわゆる光合成によるところの作用というものが失われて来ると同じように、細胞にアンバランスができて、そこから白血球破壊作用というものが生れて来るのだ、私たちはそう考えておる。そういう観点からゲルマニウムとガリウムをやつて行けば、まさに倒れんとしている馬がどんどんなおつて行くでしよう。それを私はひとつつていただけないかと言つておる。そういう点を見のがしておる、こういうことは単なる一つの私たちの実験結果でございますけれども、そういう実験結果によつて伝貧はなおるのではないかというところまで持つて行ける。それをあなたはなおらないとおつしやるなら、私は一応なおらないとしてもいいです。われわれの方はなおると言つているのだから、いつでも接種をやりましよう、こう言つている。七・四の血液を持つておるところの血をとつてどんなに接種したつて、その血を接種した馬は伝貧にはならないと私は確信しておる。何ならできるから待つてつてもらえばいつでもやれる。それでなくても馬を提供するからやつてくれという人もおる。あなた方の方でなおせると言うなら、私らは貴重な時間を費してこういうことは申し上げません。しかしあなたの方はどうしてもなおせないと言うから、それじやわれわれの方は今まで実験をやつた結果なおせる、しかも学理は今申し上げた通り、われわれがやつておるのじやない、東大医学部の物療科でもやつておることですから、ひとつそういうふうなことを思い切つてつていただいて、もしそれでどうしても予算がないというならば、特に予算措置を講ぜられるように御努力くださいまして、やつてごらんになつていただきたいと思う。それで馬がほんとうになおるということになれば、私は日本の畜産行政のためにこれほど慶賀にたえないことはないと思うが、いかがでございますか。
  16. 田中良男

    田中説明員 私どもの馬の伝染性貧血についての研究態度をひとつ申し上げたいと思います。私どもは、狭い分野にとじこもつて独善主義には決して陥つていないつもりであります。私どもの少くとも終戦後やつたやり方を見ていただきますれば、ただいま先生から受けたようなおしかりは受けなくて済むのではないか、と申しますのは、すでに昭和二十二年からでございますが、獣医界はもちろんのこと、医学界、薬学界、あらゆる方面の方々のお知恵を拝借いたしまして、研究方法なりあるいは防疫の方法なりというものを考えまして、その当時としての最善の策を実はやつて来ております。それで私どもは、この馬の伝染性貧血が不治であるとは考えておりません。と申しますのは、現在においては不治であるかもしらぬけれども、将来永劫にこれが解決できないものだとは決して考えておりません。と申しますのは、先ほども申しましたように、今までこの病毒というものがはつきりわからなかつたのに、とにかく九分九厘まで病毒というものをつかまえておる、これが一つ。それからそのほかの新しい物理あるいは化学の機械が非常な進歩を遂げておりますので、そういう面から考えまして、従来はコンクリートの壁に腕押しをしているような感じしかございませんでした。ところがここ一両年の動きを見ておりますと、多少コンクリートでなしに板べいか何かに腕押しをしておる、こういう感じまで実は来ております。従つてどもは努力いかんによりましては、そう長い年月かからないでこの問題は解決し得るのじやないか、実はこういう明るい希望を持つて現在進んでおります。それでただいまの研究の問題でございますが、私どもは現在家畜衛生試験場を中心にしてこの問題を進めておりますが、家畜衛生試験場というのは、御承知通り各種の動物の疾病につきまして種々やつておりますので、予算があるとはいいながら、やはりほかにも早急に解決しなければならぬ問題が多々あるのでございまして、どうしてもそつちの方に手をさかれるというようなことで、馬の伝染性貧血を専門に研究する機関をつくりたい、そうして日本中のありとあらゆる知恵を拝借して、なるべく早くこのいやな病気を予防し、治療するようになりたい、こういうことで昭和二十四年から実は予算の獲得に努力をいたしておるのであります。ところが私どもの力が足りませんで、現在までその域に至つておらぬことは申訳ないのでありますが、今後といえどもどもはあらゆる機会をとらえましてその努力は続行するつもりでおります。どうかひとつそういうことで今後とも御指導御協力をいただきたいと思つております。
  17. 齋藤憲三

    齋藤委員 今どのくらいの予算をもつて伝貧の処置をしておられますか。
  18. 田中良男

    田中説明員 研究費といたしましては、はなはだ振わぬのでございまして、職員が十八名、そのうち技術者が七名、予算は約一千万円ということでございまして、これでは先生からおしかりを受けると思いますが、私どもといたしましてもはなはだ不満足なものでございます。と申しますのは、馬の伝染性貧血研究はなぜ進まないか、こういう問題でございますが、現在までわかつておりますところでは、南京ねずみでありますとか、モルモツトでありますとか、うさぎでありますとか、こういうものにこの病気はうつらぬのであります。実験にはどうしても馬を使わなければならぬ。そうしますと、一年飼えばえさ代が五、六万円かかる、馬代も十万円くらいかかる、管理費もかかる、これを二頭や三頭つなぎましても、今までの説をくつがえすような大きな仕事はなかなかできないのであります。やはり百頭とか二百頭とかかなりふんだんに材料を使わなければ、この実験が続行できない、こういうところで今申し上げました一千万円については、はなはだどうも私どもとしましても不満足なものであります。そしてまたそれがひいてはこの研究が思うように進まない唯一の原因になつております。私どもは今申しましたように、なるべく早い機会にある程度多額の金をいただきまして、専門の研究所をつくつて日本中のありとあらゆる方々のお知恵を拝借して、あらゆる方面から、あらゆる角度からこの問題をつつ込んで、なるべく早くこの問題を解決して、今やつておるような愚劣な防疫方法はやめたい、これが最終の願いでございます。どうかひとつ御協力をいただきます。     〔川俣委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 齋藤憲三

    齋藤委員 最後にひとつつておきますが、これは従来のヴイールス追究の伝貧研究という角度と、全然ヴイールスというものを考えない研究角度、これはもつと砕いて申し上げますと、物質構造の角度、いわゆる原子核と電子のアンバランスの研究、というのは、正常な細胞であるかどうかというと、りつぱな蛋白ができておるかどうかということ、これはヴイールスでなくして、消化機能が完全であれば伝貧はなおるという角度からの研究をやつていただきたい。私どもは、あくまでも今までの研究過程から、先ほど来申し上げました通りに、伝染性貧血症、いわゆる貧血というものは、一切おしなべてヴイールスじやないということです。造血機能の障害だということです。直れば血が正常になる健康体だということなんです。私の方はヴイールス説を否定しておるのです。そのヴイールス説を否定するために先ほど申し上げたようなレアメタル治療法をやつておるのです。それですから七・四の血がコンスタントに続いておるそのときに、私の方で接種試験をしたいという希望を持ちましたならば、当局はこれに対してどうお考えになりますか、その点を承りたいと思います。
  20. 田中良男

    田中説明員 私どもはただいま先生からいろいろお話いただきました説につきましては、今にわかに御同意はできません。但し先ほども申し上げますように、私どもはこの問題を解決するためにはあらゆる努力を惜しむつもりは決してございません。今後といえどもあらゆる角度からこれをつつついて行きたい、そういう考えには決してうそも何もございません。ただ、ただいま先生実験していらつしやる馬の血液のP・Hが七・四になつたから、これでなおつたんだ、こういうお説に対しては御同意いたしかねます。まだその段階に至つておらぬものと私どもは信じております。
  21. 齋藤憲三

    齋藤委員 なおつているとか、なおつていないとか言つたつて、それは水かけ論ですが、これはこの間も秋田の県庁に行つていろいろ話が出たのです。一体ヴイールスがなおつているかなおつていないかという判定はどうして下すかというと、これは接種するほかはない。ですから私どもは七・四の弱アルカリ血液コンスタントに保てる状態ならば、伝貧の症状じやないと、こう言うのです。そのときの血をとつて、こつちの馬に接種すれば、これは一番明確なんだ。ヴイールスであるか、ヴイールスでないかということもわかるし、馬がなおつているか、なおつていないかということもわかるし、一挙両得なんです。それをやつたらどうかと思うのですが、それはかつてにやれるのですか。許可を得なければやれないのですか。かつてにやれるというならたくさんの獣医さんをつれて行つて、ちやんとP・H七・四を毎日持続して少量ずつP・H試験をやつて、それでコンスタントの血ができた。しかもそれが七・四だ、そういうときに血をとつて健康馬として診断された馬に接種すれば、一週間か二週間で結論は出るのです。今ここでなおらないのだ。おれの方はなおつたと認めないとか、おれの方はなおつたと認めるとか水かけ論をやつてもしようがないので、一体その結論はどうしたらいいか、それは接種すればわかるというから、接種しようということになつているのですが、それは当局の許可を得るのですか。得ないでもよいのなら、かつてにそういうシステムでやつてよろしいか、これをひとつ伺いたい。
  22. 田中良男

    田中説明員 私どもは決して試験を阻止するとか、そういうつもりはございません。ただこの試験を始めます前に、齋藤先生あるいは県庁、私ども、いろいろ申合せの上で、実は発足しておる問題でございまして、にわかに一方的に見解が違うから、おれはかつてにやるんだぞというようなお考えではやつていただきたくない。ただ私どもは、あの試験経過を見ておりますと、今までの私どもの常識では、まだなおつたものとは考えられないということです。ただ先生の方で、どうしてもなおつたんだ、こうおつしやるならば、これは御相談の上で試験をしていただいてもけつこうであります。ただその場合私どもとしましては、その費用は持たないつもりでございます。それは秋田県知事がお持ちくださるとこういうお話合いになつておりますから、そういうような形で進んでいただきたい。  それからまた、この問題に関しまして、この試験ではございませんが、馬の伝染性貧血につきまして、私ども日本中のこれに多少の関係のあります学者連中ほとんど全部を網羅いたしまして、研究委員会を持つております。でき得るならば、その席上に先生にお越しいただきまして、その成績を全部御発表いただきまして、連中からも御批判をいただいて、その上でひとつ態度をきめていただければ、非常に幸いだと思います。
  23. 齋藤憲三

    齋藤委員 農林委員会の特別のおとりはからいによりまして、私の念願とする伝貧に関する質問も大体尽きたのでありますが、ただいま係官の仰せられるように、正式の手続をとつて、遠からず接種試験をやりたいと思うのです。もちろん私たちは、自分たちのやつていることが必ず成功するというような大それた思い上つた考えを持つておるのじやないのであります。しかし、発明、発見というものは、過去の学理からは生れて来ない。ある一つのすばらしい着想から生れて来るのです。もしそういう着想があつたとすれば、あるいはこれはなおるかもしれない。馬だけじやなく、人間も今そういうような方向に向つて進んでおる。ことに、これは念のために申し上げておきますが、ガリウムというしア・メタルでありますが、二九・七で解けるのです。しかもこれを蒸発せしむるときには、二千三百度の熱を加えなければ蒸発しないのであります。しかも古い文献を調べますと、ゲルマニウムもガリウムも医薬として特効ありとすでに出ておる。しかも新しい試験においては、これは葉緑素のキヤタライザーです。このガリウム、ゲルマニウムが出て来たので、電気通信界はまさに革命であります。人間の脳細胞がロボツトになつて現われて来ておる。このゲルマニウム半導体の応用によつて、トランジスターが電子の早さに電流の切りかえができるという時代になつて来ておる。過去の学説からは伝貧治療は生れないかもしれないけれども、新しい現代の科学的な着想からは伝貧は必ず私はなおると思う。それですから、当局においてもおおらかな気持でやつてもらいたい。私の方で万が一伝貧をなおす方法を発見したつて、これは何も当局の恥じやないと思う。そういうことにとらわれないで、おおらかな気持で、相協力して伝貧試験をやり、そしてもしなおる曙光が見えたならば、そういう方向に向つて急速に実験の手を差延べていただきたい。そして伝貧によつて年々八千頭ないしそれ以上も倒れる馬を救済して、ここにほんとうの意味の畜産行政を盛り立てて行くことをお願いいたしたいと思うのでありますが、もし局長にお会いくださいました節は、よくこの旨をお伝えくださいまして、私の方の条件が整いましたときに、正式に秋田県知事に申し出ますから、そのときには当局においても、伝貧接種を許可せられる方向に取運んでいただきたいと思うのであります。これで私は質問を終ります。
  24. 川俣清音

    川俣委員 今齋藤委員から、伝貧について専門的ないろいろの意見の開陳があつたのですが、私もちよつとお聞きしておきたいことは、今全国的に伝貧の強制検診をやつておられるかどうか。私の聞くところによると、これは全国的ではないようです。大体伝貧の被害は、七、八千頭と言われておりますが、厳密に検診をいたしますと、一万数千頭になるのではないかとも言われております。これは決して正確なデータを持つておるわけじやないのですけれども、そう言われておる。そこで農林委員会は非常な決意を持ちまして、今度の競馬法の改正にあたりまして、伝貧検査のために特に予算の捻出を考えたわけです。こういう点から見まして、私どもはこれに無関心ではおられない。はたして齋藤委員のように、なおるかなおらないかということは、にわかに判断できないとは思いますけれども、毎年一万数千頭も被害を受けておるといたしますれば、これは日本の畜産界といたしまして、非常に大きな問題で、この問題がまだ等閑に付されておるとも言えないことはないと思う。これは予算面ばかりでなくして、もつと重大関心が持たれなければならないであろうことは明らかであります。特に自分の家族のように愛して飼育いたしております農民にとりましては、重大問題でございます。また日本の畜産奨励の上から大きな問題でございます。これらの問題と真剣に取組むために、特に特別なはからいで予算化いたしたのでありますが、将来どういう規模でこれを研究されようといたしておりますか。まだ予算が決定したばかりでありますから、構想も少いと思いますけれども、せつかくのわれわれの意思でありますから、この際明らかにしていただきたい。
  25. 田中良男

    田中説明員 ただいまの伝貧の被害の問題からまずお話申し上げておきます。私どもが過去数回にわたりまして、全国抜取り式な調査を繰返しておりますが、その成績によりますと、おそらく日本の馬の五%かあるいは一〇%くらいがこれにかかつておるのじやあるまいかと思われる節があります。そこで私どもは、この馬の伝染性貧血というものが、農家にとりまして伝染性貧血という表へ現われた形と、陰に隠れていろいろな障害をしておりますので、なるべくこれを早く征伐しなければいけない。ところが今申しますように、かりに五%といたしますと、日本の馬が約百十万頭従来おつたわけなんです。そういたしますと五万五千頭というふうな形になります。こういうことになりますと、現在の国の力から申しまして、なかなかようやりきれない。また農家の受ける打撃というものも非常に大きいというようなことから、地域をわけまして、今先生お話になりましたように、全国的には私ども決してやつておりません。馬の導入と申しますか、消費地は二の次にしよう。まず生産地をきれいにしておけば、生産地というのはよそから馬が入らないのでございますから、そこをまずきれいにしようというようなことで、二十六年からこの仕事を開始いたしておりますが、二十六年におきましては北海道と青森県、二十七年度はさらに東北全部、それから二十八年度に九州のうちの鹿児島、熊本、宮崎の一部というよう形にだんだん計画を広げまして、生産地からこの馬の病気を少くして行きたい。大体五年計画で少くとも摘発率が〇・五%になるまでにしたいということで現在進んでおります。それで今までの結果を見ますと、大体私どもの所期の成績が上つておるように存じております。摘発率の上におきましてだけでなしに、この仕事をやりました地方におきましては、そのほかのいわゆる今まで陰に隠れていたようないろいろな病気の発生が激減をいたしておりまして、開業獣医さんがこれがために飯が食えなくなつたというような地方すら出ておりまして、なるほど防疫自体にはいやな仕事はたくさんつきまとつておりますけれども、効果としてはかなり上つておるのではないか、こういうように現在は考えております。  次は研究の問題でございますが、これは先ほど齋藤先生の御質問に私が再三お答え申しましたように、私どもは各方面から御協力を得まして、官といわず民といわず、あらゆる方々の知恵を拝借いたしまして、現在まで進んで参つております。それからまた研究のいたし方にいたしましても、いわゆるオーソドツクスなやり方と、一か八かのやり方の二つがある、こう私どもは存じております。齋藤先生の御説のごとく、大きな発明というものは、おそらく一か八かのうちに入るのではないか、こういうように考えております。現実に私どもが昭和二十三年と昭和二十二年に日本学者の方々にお願いして、委託研究をやつたことがございます。その際も、今まで伝貧を長く研究していらつしやつた方々の反対を押し切りまして、一か八かの研究も実はしていただいたこともあるのであります。しかし先ほども申しますように、最後に突き当る問題は、やはり馬というものが試験動物になるというようなことで、今までその試験がどうしても進まないでおつたような次第であります。私どもは、これでは困るというので、昭和二十四年から毎年馬の伝染性貧血の単独の研究所をつくつていただきたい、こういう努力をいたして来たのでありますが、先ほども申しますように、現在までのところ、私ども微力のためにその目的が達せられておりませんが、今も先生からお話になりましたように、先般の競馬法案が審議されました際に、非常に力強い一項を入れていただいておりますので、その線に沿いまして来年はしやにむにがんばりたいというようなことで、局長とも相談しているような状況でございます。私ども考えといたしましては、初年度は建物設備というようなものと、いわゆる経営費的なものを合せまして一億円から一億二、三千万円くらいのところでまず行きたい。そして次年度からは大体経営費四、五千万円のところで予算を組もうじやないかという話合いをいたしております。ただなかなか学者というものがそういませんので、むやみに大きなものをつくるだけが能じやない。優秀な方を最小限度集めまして経済的な試験をやりたい、こういう考えで現在進んでおります。それ以上のことはまだきまつておりませんので、御返答いたしかねます。     〔委員長退席、福田(喜)委員長代理着席〕
  26. 川俣清音

    川俣委員 もう一点。私、この前の補助金の整理に関する特別委員会で、競馬の納付金の中から伝貧の対策のために費用を使つておるかというような質問をいたしましたところ、これは畜産衛生上最も必要不可欠の問題であるから、そういう競馬の益金から流用して試験研究するよりも、国として当然予算を組むべきであるということを局長も言つておりましたし、また大蔵省もそういう説明であつた。しかしながら今の説明によりますと、なかなか予算ができない。努力が足りなかつたということを決して非難する意味ではなくて、畜産局で当然予算を計上して研究しなければならないにかかわらず、それを投げやりにされておつた傾きがありますので特に配慮をいたしたのでありますから、これらの予算が獲得できたということで、一般経費からの捻出を怠つてはならないという点だけは、ここで強調しておかなければならない点であるのであります。畜産上当然一般会計の中でまかなわなければならないものであるけれども、いまだ十分まかなわれておりませんので、その補助の意味でここで予算化いたしたのでありますから、これによつて一般経費からの予算上の措置を投げやりにすることがありますならば、農林委員会の最も貴重な意見というものを尊ばない結果に相なると思うのでありまして、十分この点は考慮さるべきだと思いますが、これに対する御意見を伺いたい。
  27. 田中良男

    田中説明員 私どももまつたく同感に考えております。従来あらゆる手を使いましてこの予算の獲得をやつたのでありますが、先ほど来申し上げますように、どうも御期待に沿うような結果が今出ておりません。けれども先般の競馬法の改正の際に、ただいまお話なつたような御意思の点が組み込まれたというようなことを私ども存じておりますので、その点をよく考えまして、ただこれを機会にいたしまして、一挙にこの問題を解決したいというふうなことを実は考えておるわけなんで、決してこれに頼つてどうこうというわけではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  28. 齋藤憲三

    齋藤委員 ただいま川俣委員お話を承りますと、今度特別の配慮によつて伝貧の予算が獲得できた。また係官のお話によりますと、研究にはオーソドツクスの研究とか八かの研究がある、発明は一か八か、こういうふうなお話でありましたが、私はそうじやないと思う。今渡仏されておる衛生課長ともこの間話をしたのですが、衛生課長の話では、ソビエトで発表した中に、ガンで倒れた人の血漿を健康の人に量を違えて接種して行くと、ガンになる者もあれば肺病になる者もあり、それから肝臓の悪くなる人もある。そこへ行くと、一切の病気についてのヴイールス説あるいは黴菌説は、今のソビエトの発表によるとあやしいのだ、もう私らから言わせればそういう通説なんです。私が先ほどから申し上げておるものは決してオーソドツクスをはずれた、一か八かの研究ということじやない。むしろ旧説にとらわれている方が、私は予算をめちやくちやに使つて行く危険性があると思う。従来のものではなおらなかつた、ここで新たに伝貧治療をやるということであれば、全然従来の学説から離れた、新しいもので実験をやつていただく以外に、私はこれをなおす方法がないと思う。農林委員会の特別のおとりはからいによつて伝貧に対する予算が獲得できた、こういうのでありますから、どうかひとつこれを十分有効に使うようにおとりはからいを願いたい。私は今のお説には反対なんです。
  29. 田中良男

    田中説明員 私の言葉に多少誤解があつたようでございますが、私が一か八かと申しておりますのは、でたらめという意味では決してありません。いわゆる従来長い間、伝貧なら伝貧結核なら結核というものにつきまして研究をいたしておりますと、なかなかほかの方に考えが及ばない、こういうことになりがちなんです。そこで私は、そういう人だけではこの難問題はなかなか解決できない、もう少しフランクな頭をもつて、思いがけないような点からこれをつつ込んでいただきたい、こういうようなことで、実は一か八かということを申し上げたのでありまして、でたらめという意味では決してございませんし、もちろん今までの、伝貧学者なら伝貧学者がやつておりましたこと以外なことをやられるについても、必ずその裏には学問的な裏づけがある、こういうことを申し上げておるのでありまして、それはひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。     —————————————
  30. 福田喜東

    ○福田(喜)委員長代理 引続きこれより食糧問題について調査を進めます。  まず食糧配給の問題について議事を進めます。中澤茂一君。
  31. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは第一部長に聞いた方が話は具体的にわかると思うのですが、あなたの方に報告が行つていると思うのです。長崎県の中央食糧株式会社というもの、この問題について何か聞いておりますか。
  32. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 県の食糧事務所からの報告を受けたところを申し上げますと、先般の政府の在庫の調査の場合におきまして、御指摘の長崎県の中央食糧配給会社ですか、そこにおきまして約百袋程度の在庫不足があつたということで、その原因を追究いたしますと、政府からの指示なくしてこれを配給にまわした、政府の保管米を無断出庫した形になつております。それに対しまして、賠償金をとる措置をとりますと同時に、検察庁の方とも連絡をいたしまして、その事実を検察庁の方に通知と申しますか告発の形をとつたわけでございます。その賠償金の方は、現在その金額が入金いたしておるようでございます。問題は、その事件につきまして検察当局の方の取扱いいかんという問題になるわけでありますが、その後の報告によりますと、一応その事実は認められましたけれども、不起訴というふうな形で検察庁の方の取扱いがきまつたというように聞いております。
  33. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは私のところに具体的な報告が来ているのですが、政治問題とからんで非常に複雑なんですね。これは一応食糧庁が厳重に調査しなければいかぬと思う。なぜかというと、これは知事とどういう関係にあるのか、具体的にわからないが、長崎県の出納長がこの中央食糧会社の取締役会長をやつておるんですな。こんなでたらめなことはないと思う。中央食糧株式会社ですから、これは営利会社です。その営利会社の取締役会長に長崎県の出納長がなつている。こういうばかな話はないと思いますが、この事実が一点。そういうことは事実上できないでしよう。だれが考えても……。どういうものですか。
  34. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 本来なら現職の公務員がこういう会社に関係することはできない建前になつております。ただその場合におきまして、直属長官つまり県知事の許可がある場合には例外的な措置がとられると思います。これの許可を与えることの当、不当ということになりますと、これは長崎県の出納長を監督いたしております直属長官の取扱いの問題であるわけでございますが、実はわれわれはそういう御指摘の点につきましては、報告をまだ受けておりません。
  35. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは非常に政治問題がからんで、検察庁自体は事実上告発しておるのです。あなたは今百袋と言われたが、百袋ではないのです。これを不起訴にしたということは実にけしからぬと思うのです。この告発状を見ますと——検事がやつているんですよ。検事の起訴状ですよ。その起訴状を見ますと、第一の起訴事実として、米穀合計二百七十一袋、合計金額百二十五万千七百三十九円を売り渡しておる。これは荒木徹志というのを中心に売り渡しておる。ほかの業者も入つておりますが、七十三回にわたつている。それからあなたの方に関係するもう一つの告訴事実は、米穀合計三百二十二袋、金額にして合計百八十二万三千八百五十四円で売り渡したという、この二つの起訴事実が出ているのです。そうしてこれは食管法の「第八条ノ四」と第二項、第三十一条、第三十七条の違反であるといつて起訴しておる。これは起訴状が出ているのだから、不起訴にするということはないのだが、あなたの答弁によると不起訴だという。この点はどうですか。
  36. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 私の方で報告を受けておりますのは、食糧事務所としてはその事実を認めまして、検事局に対して告発をいたしたわけでございます。その検事局の取扱いが不起訴になつたというふうにわれわれは報告を受けておるのでございます。検察庁の取扱いがどういうふうになつておるかということはさらに確めたいと思いますが、食糧事務所としては、この事実を発見いたしましたから、ただちに告発の手続をとつたわけであります。その告発の手続をとりましてあとの検察庁の取扱いの問題でございますが、われわれの報告には不起訴になつたようだという報告が来ておるわけでございますが、これはあるいは不起訴になる見込みだというのか、あるいは検察庁の方ではつきりそういう手続をして不起訴になつたのか。あるいは中澤さんのお話は告発ではございませんか。
  37. 中澤茂一

    ○中澤委員 起訴状があるのです。
  38. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 その点はさらに調べたいと思います。
  39. 中澤茂一

    ○中澤委員 それは長崎県地方検察庁検察官検事北村久が長崎地方裁判所に起訴している。それで、先ほど言つたように、出納長が一営利会社の取締役会長になつて、その社長は自由党の諌早支部長がなつている。これは知事の股肱の臣として自他ともに任じている男だそうです。これが中央食糧株式会社の構成の主要人材なんだ。そういうものがあるのですから、相当に政治的な圧力が動いてどうなるか。あるいは第十四条を発動してあんなふうに腰砕けになるかもしれませんが、しかしこういう不正事実があつたということが確実に上つてつても、どこまでも県知事の裁下権であつて、食糧庁というものは何ら営業取消しなり処分なりをすることはできないのかどうか。
  40. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 われわれといたしましては、この年度末の現在高調査によりましてこの事実をわれわれの方で発見いたしたのであります。従いましてそれに対しましては、ただちに弁償金を徴収いたしまして、この金は入金になつたわけであります。さらにそういう事実がありましたので、その事実を食糧事務所から検察当局の方に通じたわけでございます。従いましてそれ以後の問題は、検察当局の取調べにわれわれとしては移したわけでございます。食糧事務所といたしましては、その事実を確認すると同時に、弁償措置をとり、同時に検察当局に対する告発の手続をとつたり、こういう措置をとつたわけでございまして、その以後の問題、これをどういうふうに取扱うかという問題になりますと、検察当局の判断にまたなければいけないというふうに考えております。
  41. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたはそれは検察当局へまかしたんだからと言うが、一体こういうでたらめな、今読み上げた数字を見ても、第一の起訴事実は二百七十一袋、金額百三十五万ですよ。第二の起訴事実は三百二十二袋、合計五百九十袋にわたるものをやみ流しをしているのです。配給統制を続けて行く上に、こういうでたらめなものをあなたの方で処理する権限は何らないのかというのです。
  42. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 先ほど申し上げましたように、われわれも無断出庫いたしましたものにつきましてはもちろん処置をいたしました。それからその事実については摘発をいたしたわけでありまして、そのあとの問題としてこの取消しをするかどうかというふうな問題になろうかと思います。この点につきましては、配給上の問題もございまするし、具体的には実は県知事がやることになつております。もう少しその点についてはわれわれとしても事情を詳細に調査いたしたいと思います。
  43. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたは県知事がやる県知事がやると言われるが、これだけの違反事実があつて、食糧庁として何らかの手を打たなければ、食糧統制というものが、こんなでたらめをどこの配給所もみなやつたらできますか。それに対して何らか処断する権限と意思があるかないかということを聞いておるのです。
  44. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 その点については、実はわれわれの報告は、県との関係その他の点については触れておりませんで、事実としてこういう事実があつて、それに対しては弁償の措置をとつた、それから検察庁に対する告訴の措置をとつた、こういう報告が来ておるわけでありまして、それがただいま御指摘のように、今後配給を担当せしめる上において処置をするかどうかというふうな点については、もう少し事情を調査いたしたいというふうに考えております。
  45. 川俣清音

    川俣委員 関連して。今の答弁を聞いておりますと非常に遺憾な点が多い。あなたの末端行政機構であるところの食糧事務所が、積極的に告発の手続をとつた。これはよそがとられたならば別問題です。その真偽を確かめなきやならぬという余地もあると思うが、あなたの下部の行政機関がとつた処置に対してまだ不信なのですか、信用するに足らないのですか。もしもそういう事実がありますならば、食管法に基いて当然処置が中央で考えられなければならぬはずなんです。告発の手続をとつたことの真偽があいまいであるといわれるならば、あなたの監督の責任である。それを信用されるならば当然中央において適切な処置をとらなければならぬのがあなたの責務だと私は考えるけれども、あなたはそういう良心はお持ちにならないのか、その点を聞きたい。
  46. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 この処置といたしましては、先ほど申しました財政上の問題がございますが、ただいま御指摘の点は登録の問題に関係する問題だと思います。御承知のように登録の問題は、消費者の登録によつて、一定の資格登録数がありますればこれを登録するということで、こちらから免許なりあるいは許可という形を現在の制度ではとつておらないわけであります。従いまして登録しました配給業者につきましては、一定の条件のもとに地方長官において取消し得るという形になつておるのであります。その点につきましてはさらに事情を詳細に調査いたしたい、かように考えております。
  47. 川俣清音

    川俣委員 私の知る限りにおきましては、小売商等におきましても、食管法違反の場合において登録の取消しをしておるところがあるはずであります。ごくささいなことでありましても、相当厳重な取消し処分をいたしておる。取消し処分にあいますと罰金をとられた刑法上の、あるいは行政罰を受けた以上の大きな打撃であろうと思う。こういう取消し処分を相当手ひどく小売店に対して使われたことがある。食管法の違反を行つた者も多数をとれば登録できる。それはあり得るかもしれません。しかしながらあなたの方に取消しの権限がないとはどこに出ておりますか、そんなに食管法は不備ですか、私はそういうふうに理解しておらない。不備だということになりますれば、これは当然改正をしなければならぬと思いますが、あなたは不備だとお考えになつておりますか、取消しをするに十分な法理的根拠はない、そういうふうに解釈されておるわけですか。
  48. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 御承知のように末端におきまする配給の問題は、全国的の一つの基準その他につきましては中央でタツチいたしておりますが、ただいまの具体的な登録の問題等につきましては、基準を示して、地方においてこれを実施いたしておるわけでありまして、第一次の責任者は地方長官という形になつております。従いまして一応地方長官において監督その他の指導をしていただくという形に食管法としてはなつておるわけであります。
  49. 川俣清音

    川俣委員 地方の食糧事務所の権限はそういうことに及ばないのですか。私は、もしも及ばない地方の食糧事務所でありますならば、これは縮小ないし廃止して行つた方がいい。地方長官にそれだけ権限を委任しておつて、何ら介入することができないというならば、これは廃止する方がましじやないか、あれだけの国費を使つているのはむだだと思います。長官はどういうふうにお考えになりますか。
  50. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 これは御承知のように食管法に基きまして地方長官に配給計画を指示するわけでございまして、その配給計画に基きまして、県内における配給を地方長官がいたすわけであります。食糧事務所は、政府米の買入れのほか売却という形でやつておりますので、県内におきます配給の行政上の面は、県の地方長官に法律によつて委任をいたしておるわけであります。ただいまの川俣委員お話の、食糧事務所がそういうことまでタツチしなければいらないではないか、こういうお話でございますが、食糧事務所には買入れの場合、保管の場合、売却の場合、検査の場合等単なる配給上の問題ではなくて、いろいろほかに食糧管理上の仕事がございます。これはひとつ別にお考えを願つて御了解を願いたい。食糧事務所がそこまで地方行政の中にタツチしておらないから食糧事務所がいらぬではないかというふうな点は、食糧事務所の権限と使命というものを別個にお考えを願いたい。
  51. 川俣清音

    川俣委員 それはあなた非常な間違いですよ。地方長官に一任してあるというが、国の持つておるものを地方長官に一任してあるのではなくて、権限を委託してあるのであつて、地方長官の独自の考えに一任してあるとは思わない。もしも一任できるとするならば、食糧事務所は必要でないじやないか、全部地方庁でやつてもらつたつていいではないか、できないというところに地方の事務所を置いた理由があるのだと思うのです。ところがすべて一任できるというならば、管理から何から地方長官に一任してさしつかえないわけじやないですか。そういう問題なんです。今まで一任できないというのは、国がこれを管理しなければならないというところから国の管理官が派遣されておるものと私は理解しておるのです。すべてが地方長官に一任してよろしいという形であれば、それは廃止して地方庁に委譲してもいいのじやないか、それができないという建前を食糧庁が今とつておられたと私は考えておるのです。ところが一任してあるし、今後も一任できるということになるならば、全部地方に委譲されたらどうか、こういうことが起つて来るのじやないか。あなたが簡単に一任してあるというなら、それまであなたの説を固執する必要はない。どうして地方へ委譲さしたのだということに対して、食糧庁はまつこうからあげて反対をしておつたではないか。なぜそれでは反対しておつたのですか。この点があいまいになつて来るではないですか。地方長官を信頼して一任されるということになれば、すべて一任したつてちつともさしつかえないという問題が起きて来ると言つているのです。そうじやないですか。今まで食糧庁があげて地方に委譲すべしという問題を阻止して来た大きな問題は、一番国が管理しなければならない問題だということで、地方の事務所が置かれて、買入れから売渡しまで国として管理しなければならないのだ、こういうことで食糧事務所を政府はつくつておられるのじやないですか。検査から末端の配給まで国が管理するのだという建前ですよ。前の東畑君の時代から、これを一任するということは弊害が起るということで阻止せられておる。あなたが簡単に地方庁に委譲できるというお考え方で一任してあるのだというお言葉をお使いになるならば、私は一任じやないと思う。委託の形式だと思う。あるいは小売商人だつて委託形式だと思う。小売商人に一任しているのじやない。もちろん地方長官です。これは地方公務員ですから委託の形式だと私は思う。従つて処分については食糧庁の指示を得なければならないものと私は理解しておる。全部権限を一任してあるものだとは私は理解しない。
  52. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 その点はわれわれ食糧管理全般を地方庁に一任したということは申し上げておらないわけでありまして、食糧の買入れ、保管、運送、売却というものは、これはもちろん食糧庁がやつておるわけでございます。ただ今御指摘の点は、食糧庁が売却をいたしまして後に、御承知のように現在は卸、小売の形態は、民間形態でやることになつております。食糧庁が政府の所有米を売却いたしまして後に、その県内の配給をどうするかということについて、一次的監督を地方庁に委任しておるという形でございまして、食糧管理全体を委任するということではないわけでございます。
  53. 川俣清音

    川俣委員 あなたは売却した後ということを言うが、所有権が移つたという考え方と違うのですよ。あなたはこれは売却だというお考えであるが、所有権が移つたのと違うのです。委託売却なんです。一定の条件をつけた委託売却なんです。私はそう理解しておる。そうでなくて一任できるのだということになると、横流しか何かが出ても処分することができないでしよう。あなたが末端までの配給権を持つておられるのでしよう。卸売業者や小売業者が配給権を持つておるとは私は思わない。知事が配給権を持つておるのだとも思わない。あるいは供出させるのもやはり国の委託を受けた供出の形態だと思つている。そう理解しないで食糧管理ができますか。国が多くの経費を払つて末端まで管理するというところに管理制度の特徴があると思つているのですがこの点どうですか。     〔福田(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
  54. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 御趣旨の点、食糧管理全体としまして一つの管理形態といたしまして、末端消費者の価格なり流通統制という意味におきましては、食糧管理をいたしておるわけであります。ただ御承知のように管理のやり方といたしましては、全面的に消費者に対して政府がみずから直接配給いたします場合と、たとえば公団形式でやります場合と、現在におきましては、一応政府が卸に売りまして以後は、流通統制の形におきまして、流通統制をやつているわけであります。これはやはり食糧管理の形態だと思います。しかしながらそれは流通統制でございまして、そこに売買という関係は当然起つておるわけでございます。ただそれに公定価格なりあるいは一定の切符制度によりまして、その切符と引きかえでなければ売つてはいかぬというような流通上のいろいろな制限を設けて、流通統制を行つているわけでございます。あるいは精神的にどういうことかということになりますと、別でございますが、形といたしましては流通統制で売買という形で行われておるわけでございます。
  55. 川俣清音

    川俣委員 食糧庁は流通統制というが、私は流通統制だとは思わない、やつぱり管理統制だと思つております。委託である。委託でなければ横領とか横流ということが起つて来ないと思います。統制違反だとか横流しとかいう問題は出て来ない。横流しという問題が出て来たりすることは、流通統制から出て来るのではなくて、管理統制から出て来ると思うのです。少くともそう理解すべきだと私は思う。今までのあなた方の説明は、管理統制だという行き方になつている。今後改められるなら別問題です。そこで問題はもとへもどりますが、こういう問題について登録の取消しができないというのは、どういうところに根拠を置いているのか。そこまで管理権が及ばないために取消しができないというのですか。
  56. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 われわれといたしましては、卸小売制度をつくりました以後の考え方は、従来と何らかわつてないという考え方でいるつもりでございます。ただ御指摘の小売業者あるいは卸売業者に対する登録取消しの問題をどう取扱うかという問題につきましては、一応われわれといたしましては、地方長官に一定の省令でもちまして、こういう場合においては登録を取消すことができるという権限を委任いたしているわけでございます。もちろん地方庁との関係におきましては、地方長官に対する食糧管理上の監督権がわれわれにあることは当然でございますが、第一次的な関係においては、地方長官が第一次監督をし、地方長官をしてそういう措置をとらせるという形になつております。
  57. 川俣清音

    川俣委員 食糧事務所はあなた方の末端機関である。食糧事務所が摘発されて告発された。これはあなたは信用しなければならぬだろう。もし不当なものを告発したとすれば、あなたの監督上の問題が出て来る。おそらく私はそんな行き過ぎはないと信じていいと思う。食糧庁長官なら私以上にそう信じられてしかるべきだと思う。もしも信じないなら、これを呼び出すなり何なりして相当の処分をしなければならぬ事態だと思うのです。従つて信用していいと思う。あなたの末端機構が忠実に行われた食糧管理上の摘発を知事が無視したというようなことになりましたならば、当然あなたは監督権を発動しなければならぬじやないですか。それでなかつたら、何のために末端機関は告発したのですか。それを強力に支持してやることが末端に対するあなた方の責務だと思うが、どう思うか。
  58. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 この事実に対して、末端機構がそういう事実のあることを検察庁に告発することは当然だと思います。またその事実を否定もしませんし、末端事務所がそういう手続をとつたことは当然だと思います。ただその結果としての事実の問題なり、あるいは検察庁の取扱いの問題なり、またそれの行政上の問題といたしまして、さらにどういう処置をとるかということにつきましては、県内の食糧配給の問題もありますから、事情を調べ、また県当局意見も十分聞いてやるべきじやなかろうか。これは行政運用上の問題じやなかろうかと思います。
  59. 川俣清音

    川俣委員 それだけのことでありますならば、告発する前に、あなたは当然これに対する見解を示さなければならぬ。それを容認したからには、刑法罰を求めておりながら行政罰ができないということはないでしよう。行政罰よりもつと重い刑法罰をあなたの部下が行つたのに対して、行政罰もやれないということになつたらどうなんですか。その告発というものは行過ぎであつたということで行政罰が及ばないのなら、これはわかりますよ。社会常識では、刑法罰よりも行政罰が軽いのです。重いものをあえて行つたのに、軽いものをやつて悪いということがどこにあるか。何かあとで運動でもやつて行政罰がやれないというのなら別問題ですが、あなたの部下はあえて刑法罰を求めている。これは決してあなたの部下の単独の行為じやないと思う。食糧庁がやつたと見なければならぬ。そうすれば食糧庁がやつたことです。食糧庁があえて刑法罰を求めておりながら、行政罰ができないというばかなことがありますか。どうしてできないのか。行政罰はやつたけれども刑法罰までには及ばないだろうということは、政治的配慮が加わるかもしれません。まず行政的に措置し、あるいは勧告して、あるいは行政罰を加えて、それでも及ばないから刑法罰を加えることはあり得ます。大きな処罰を求めていながら、軽い処罰ができないというのはどういうわけです。普通の常識では理解できないことです。蚕糸局が行政罰をやらないで刑法罰を求めたことで問題になつています。軽いものをやつてどうしてもきき目がなかつたから、司法罰に至つたというなら、よくわかります。一体なぜ行政罰を先にやらなかつたか。おそらく行政罰を手ぬるいと考えて刑法罰の処分を求めたんだと思う。そうしたら当然行政罰が加わつて行かなければならぬ。懲役にしたけれども、賞与をやるとか今までの処分は認めるなんというばかなことはないでしよう。あなたの部下にもしも刑法罰を受けた人があつた場合に、あれは有能なんだから、刑法罰と行政罰は別だといつて、そのままに黙認されておきますか。おそらく刑法罰が加われば、退職を命ずるなり、あるいは転勤を命ずるなり、いろいろな行政処分がついて来るのが常識じやないですか。私は常識だと思いますが、私の考えは常識じやないですか。あなたの方が常識だという見解ですか。この点を明らかにしていただきたい。
  60. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 政府米の無断出庫ということは、事実でございます。この事実に対しまして、金銭上の政府の処置、及びそれを取締り当局に通達いたしたわけでございます。これの全貌なり——また現在の配給制度は、登録によつて卸小売となつております。これは食糧配給上のいろいろな問題もございます。われわれとしてもさらに詳細な事情を聞き、また県当局の配給上の事情も聞きまして、それをどうするかということを考えるべきじやなかろうか。現在の段階におきましては、まだ調査中でありますので、今ここにおいて行政罰として登録を取消すかどうかという点については、もう少し研究いたしたい、こういう趣旨で申し上げているのであります。
  61. 松山義雄

    ○松山委員 従来の例はどういうふうになつておりますか。ほかにもこういう例はございませんか。
  62. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 場合によると、小売が末端で横流しをするというふうな事例は絶無とは考えておりません。しかしそれについては、それぞれの取締りなりあるいは刑事的な事件として処理されている。われわれとして考えますことは、刑事事件によつて末端の消費者に対する配給に支障のないようにという面からして、行政上の取扱いを考えているわけであります。
  63. 松山義雄

    ○松山委員 取消したような例がございますか。
  64. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 今ちよつと詳細に記憶いたしておりませんが、取消した例はあまりないんじやなかろうかと考えております。私はどこにどういう事例があつたか、今記憶しておりません。
  65. 松山義雄

    ○松山委員 日本の現在の食糧事情が非常に悪くて、外国から輸入している状況でございます。従つて普通の生産者が横流しをしたよりも私は悪質であろうと思います。ただいま申します通りに、外国から輸入しなければ食糧が足りない、そこへ持つて来て、そういう配給をするところが横流しをするということになりますと、これは終局においては国家が損失をするということになります。それにまた一般の消費者が、配給をそれだけごまかされている。私はそこらは生産者が横流ししたよりも非常に悪質だというように考える次第でございまして、こういうような場合に、ただいま各委員質問のあります通り、刑事罰だけにゆだねておるということになりますと、こういうことがますます行われて来るようになりはしないか、こういうふうに考えるわけであります。また地方長官がやりますと、やはり地元におきましてやりにくい面もいろいろあることでございましようが、食糧庁としてはやはり断固として、こういう悪質なものには行政罰をやられることが必要ではないか、かように私は考える次第でございますが、いかがでございましようか。
  66. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまの松山委員お話、私もそういう点については十分に注意いたしておるわけであります。これは国損にならないように弁償金も十分とつておりますが、これの行政罰につきましては、ただいま申しましたように、配給における支障のないような範囲内でどうするか、この実態をよく調べまして研究いたしたいと思います。
  67. 井手以誠

    ○井手委員 議事進行。前谷長官は最近決算委員会の方によく来られて、非常にお疲れだろうと思つて、今まで遠慮しておりましたが、ただいままで聞いております答弁では、おそらく皆さん方が納得されないだろうと思います。行政運用の内容をお話なつたのではこの問題の解決はできないのであります。先刻流通統制とかいろいろありましたけれども、何と申しましても食糧管理の最高責任は食糧庁であります。しかもただいま松山委員から言われたように、非常に重要な配給の面においてそういう不正なことをされたことに対して、この委員会で摘発された以上は、やはり食糧統制に対して食糧庁としての毅然たる態度を表明すべきであると私は考えております。もちろん食糧庁が全国を一々調査し、どうするというわけには参りませんので、一応地方庁に委任されておる。しかし一旦国会が摘発した以上は、断固たる方針を示さなければ、今後の食糧統制が続けられないと私は考えております。私は別にこの会社ですか何ですか、そう遠慮なさる必要はないと思うし、また地方庁に対して遠慮なさる必要はないと思う。むしろこの際はつきり方針を示されることが、地方において、いかに処分すべきか、いかなる態度をとるべきかということの方針になる親切なやり方であると思う、そこで私は議事進行に名をかりて、食糧庁長官にひとつはつきりした態度を——うやむやでは困ります。非常に大事な問題で、新聞社もおりますので、この際調査の上、そういうものに対してはこういう方針で臨むという態度をお示しになるように、私は切に要望いたすのであります。
  68. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまの井出委員お話、われわれといたしましても、もちろん食糧管理の建前からこういう事実を黙過するつもりは毛頭ないのでございます。ただ現在のところ、われわれのところに来た報告によりますと、まだ詳細な事情がわかつておりませんし、また配給面からいたしまして、その県におきます配給の面などいろいろの問題がありますので、十分地方庁と連絡をとりまして、その実態を明らかにし、必要があれば必要な措置をとりたい、かように考えておりまして、地方庁の事情も十分聞きたいと思つております。
  69. 井手以誠

    ○井手委員 前谷長官は優秀な官僚だと聞いておりますし、もつと相手が納得するような答弁がなされ得る人だと私は信じております。必要があれば必要な措置を講ずるというようなことでは、あまりいい答弁じやございません。ここではつきりと、その会社に対しては営業停止をするというようなことは言えないかもしれませんけれども、すみやかに調査をして、もし事実ならば告訴する、こういうはつきりした答弁ができるはずだと思うのです。先刻来質疑応答が行われておりますように、あなたの方の末端の機関である食糧事務所が告発しておる事実から考えましても、もつとはつきりした答弁ができるはずだと思いますので、この際明確に御答弁を願いたいと思います。
  70. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 この具体的な事実につきましては、末端の事務所におきまして、無断出庫の事実を認めたわけでございます。この事実に対する食糧事務所の措置といたしまして弁償金その他の処置は十分いたしておるわけであります。あとの問題といたしましての、結局配給上の問題でございますが、この登録の取消しは、御承知のように消費者、小売業者それぞれの選挙のもとに行われておるわけでありまして、これの登録の取消しというふうな問題になりますと、これはまた配給上の面もございますので、われわれとしましては、もう少しその状態を調査いたしまして適当な措置をとりたい、こういうふうな考えを持つておりますので、もう少し調査をする時日の余裕を与えていただきたいと考えます。
  71. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ただいまのお答えと質問者の問うておるところとに、言葉の使い方でお互いに少し理解が行つていないのではないですか。あなたはもうしばらく、時日をかして調査さしてくれとおつしやつておられる。こちらは調査する必要はない、もう告発して検事が起訴しておるのだからその事実を認めろ、こういうことのようですが、あなたのおつしやる、もうしばらく時日をかしてくれ、調査をするということは、これから現在の配給所を取消したりして、次の配給所をつくつて、消費者に滞りなく配給ができるようにさせるための諸般の手続あるいはその地勢状況等を調査する、こうおつしやるのでありましよう。そこにこちらは、あなたが調査をするということは、事実であるかどうかを調査するかのごとく聞えるのですが、その点を補正された方がお互いの理解が行くのではないかと考えます。
  72. 井出一太郎

    ○井出委員長 前谷長官、今の質問の趣旨を体して御答弁を願います。
  73. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまの安藤委員お話のように、われわれとしましては、これは食糧配給上のいろいろな問題がございます。消費者に迷惑をかけないようにという意味でどういう措置が必要であるかという点につきまして、その県内の配給の責任のある県の意見も聞き、そうしてそういう状態につきまして実態を十分明らかにした上でその問題の措置を考えたい、こういう趣旨で申し上げたわけであります。
  74. 川俣清音

    川俣委員 あなたは非常な間違いなんですよ。食糧管理違反の場合に、被害者が配給を受ける者である場合と国である場合と二つありますよ。配給を受ける消費者が被害を受けた場合には消費者の意見を聞いてやらなければならぬことは当然だと思うのです。国が被害を受けたからあなたの末端機関であります食糧事務所が告発の手続をとつた。いわゆる消費者が被害者だつた場合には消費者が告発の手続をとる。あるいは陳情をするとかいうことが起つて来る。その場合には消費者の立場を考えて、十分調査をしなければならないという事態が起つて来るであろうことは想像できます。またしかるべきだと思う。大体国が被害者であるから、あなたの意思をくんで食糧事務所長が告発手続をしたと思う。もしもあなたの意思に沿わないで告発手続をしたならば、行政の末端機構として当然あなたの処分を受けなければならぬ立場だと思う。これは末端まで一心同体にあると思う。一心同体でなければ食糧管理などとてもできません。従つてあなた自身が告発をしたものと見てしかるべきなんだ。それを調査しなければわからぬというようなことであるならば、食糧管理なんておやめになつた方がよい。別に食糧庁の月給を払うために、食糧管理をやつておるわけじやない。忠実な法律の執行者として国が委任しておる。従つてその委任事務が行われないような食糧庁であるならば、おやめになつた方がよいと思う。国が被害者であつて、被害事実を知つておりながら、なお調査なければならないという理由がどこにあるか。われわれは国の立場からあなたに処置をとることを望んでおるのです。それをあなたは実行できないのだつたならばおやめなさい。なぜ実行できないのですか、御返事願います。
  75. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 国のものを無断で出庫いたしたわけでございますから、それに対してもちろん財政的な意味におきます損害については補填いたしたわけであります。ただ国の立場からいたしますと、食糧管理の面がございますから、その食糧管理の面からいたします損害をどうするか、これはそういう面におきましては消費者の方に対する配給の面が円滑に参るということも一つの国の建前でございますから、われわれとしてはそういう場合においてどういう実態になるかというふうな点を十分検討いたさなければならないということを申し上げておるわけでございまして、決して国の立場の被害を受けたものをおろそかにしておくというふうな考え方をいたしておるわけではないのでございます。
  76. 川俣清音

    川俣委員 あなたは国の被害を物的な被害ばかりだと思つておるが、食糧管理という法律上の被害を受けておる。法律を犯すものの被害について、あなたはそれを守れないというのだつたならばおやめなつたらどうです。そういうことではとても今後供出なんか不可能になりますよ。配給機構を守れないでおつて、食糧庁は何の存在があるか。供出に対する権限も持たないし、末端の配給機構についても責任を負えないような食糧庁であるならば、その必要がない。食糧庁を廃止して、食糧統制を解いたらよろしい。あなたの持つておる監督権が侵されるようなことについて、断固闘うだけの意思がなければならぬじやないかということを聞いておる。
  77. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 私ただいま申し上げたのは、物的被害のみならず食糧管理の建前上どうすべきかということを申し上げたのであります。食糧管理の建前としては、そういう批判に対して十分の措置をとることは当然であります。しかしながら同時にまた食糧管理の立場といたしまして、一般の消費者に対して円滑に配給することも食糧管理の建前でありますから、その間の事情も十分考えてみたい、こういう趣旨で申し上げておるわけであります。
  78. 川俣清音

    川俣委員 そうしますと、選挙で出て来た小売商人は、買収をやろうと、特に横流しで消費者から投票を得た場合には、認められなければならぬのですか。選挙されて来たのだからということになりますと、特別な消費者に恩典を与えて票を集めた、それは優秀だというふうにあなたは見られますか。当然あなたの管理上からいつて、好ましくないことは好ましくないと言わなければならぬ。ただどれだけの営業停止というか、取扱い停止を命ずるのか、期間であるとかあるいは将来選挙をやつて当選してもこれを認めないのだというようなところまで行くのかという内容について言つておるのではなくて、あなた自身が刑法罰を求めた以上、当然行政罰もこれに加わらなければならぬのではないか。そうでなければ管理上一貫しないのではないか。こういうことを聞いておる。
  79. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 もちろん私が今まで申し上げたことは、それを拒否するということを申し上げたわけではないのであります。ただ御承知のように、消費者に対しては毎日の配給をいたしておる。そういう意味での措置も必要であるし、またその影響もどうであろうかというような点を十分考えなければならないということを申し上げたのであります。われわれとしては、従来から登録取消しの場合におきましての省令の規定があるわけであります。知事に対してこういう条件に該当する場合には登録の取消しをするとか、いろいろな条件があるわけであります。その条件に従つてもちろん考えるわけであります。その度合いに応じて、それぞれ状態が違つたと思います。そういう現在定められました法規のもとにおける執行を拒否するわけではないのであります。ただそういう事情に該当するかどうか、また一般消費者に対する配給をどうするかというような諸般の事情も考慮しなければならぬ。こういう意味で申し上げたわけであります。
  80. 川俣清音

    川俣委員 あなたはどこまでも逃げておる。刑法処分を求めたことは一番重い処分を求めたことです。この重い処分が取消しの条件にならないということにはならない。最大の条件でなければならぬと思う。それ以上最高の処罰はない。これを認めておりながら、まだ調査しなければわからないというから問題になつておる。少し間違つてつたけれども戒告措置でよいのだということならば、あなたは部下を戒告する場合に、刑法罰を求めてから戒告するか。戒告は一番軽い処罰で、それから減俸とかいうものがある。そういう処分を求めないで最高の司法処分を求めたというのは、情状酌量の余地がなかつたからだと思う。万やむを得ない手続だと思う。万やむを得ない手続をとつておりながら調査しなければわからないということがわからない。食糧管理上最高の処分を求めたにかかわらず、前の供出の場合はどうですか。強権発動の場合は前に処罰を求めておいて、供出したからといつて告訴状を取下げていないじやないですか。そういうものはみせしめになるからといつて、なお処分を求めておる。食糧庁が出した法務省に対するあなたの前の東畑さんの依頼状があるじやないですか。供出ができても告訴を取下げていないのです。なおそれでもこういうことが起きて来てはいかぬということで、供出が完了してもなお処罰を求めておるじやないですか。かつてはそれを取下げて緩和なんかしていません。今後はもうやらないのだ、配給業者が少しくらいやつても、みな司法処分であとは行政処分をやるのだというようなことが言い切れるのですか。あなたの責任で言えるなら言つてごらんなさい。あらためて大臣を呼んでその責任を追究しますから……。
  81. 井出一太郎

    ○井出委員長 この問題で質問者の意図と大分ずれているような感じがしますから、明快に御答弁を願います。
  82. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 それでは申し上げますが、現在法律の建前からいたしまして、これに基きます登録制度につきましては、食糧管理法施行規則によりまして規定いたしておるわけであります。この場合におきます登録の取消しの条件といたしましては、食糧管理法、物価統制令その他割当及び配給に関する諸法令違反の行為により一年以上の懲役または一万円以上の罰金に処せられた者、それから米穀類の売渡しに通常必要と認められる固有設備を権原に基いて利用できることを証明できない者、当該申請者の自己の資金の額が、定められた最低保有数による業務の運営に必要な金額の三日分を越えないもの、こういう条件を規定いたしまして、その条件に基きまして措置をすることにいたしておるわけであります。ただいま私が調査をするということを申し上げましたのは、まだこの条件に該当する段階に至つておらないわけです。そういう意味におきまして十分調査をいたしたいということを申し上げたわけでございます。
  83. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたの言うのは実際おかしいのだ。登録変更でかつてなことをやつておる問題はまだこのほかにたくさんあるが、一応この問題は留保しておいて、場合によれば私は現地調査に行つて来ようと思う。とにかく農民には犠牲をしいて、あなたが強権発動をやつてつた米が、配給所に行つて六百袋にわたるものがやみに流され、その方は業務停止にならないで、百姓の方は強権発動でひつぱるというそんなでたらめなことをやつておるじやないか。これはあなた真剣に考えなさい。百姓は喜んで出しておるのじやないのです。その配給所がこういう不正をやつておる。あなたは食糧管理の総元締として断固としてやるというのでなければ、日本中の配給所は何をやるかわからぬじやないか。これは一つの例が出たから言うのだが、日本中の配給所は乱れておる、これは長野あたりでもそういう例を知つておるのだ。そういうでたらめなことを全国の配給所がやつておるから、この際この問題を取上げて、あなたは食糧管理の総元締として、断固としてこれをやるのだということを言えば、日本中の米屋は締まるのだ。それを言つておるのだ。それをあるいは法律を持ち出したり、あるいはこうでもない、ああでもないと言つておる。農民から犠牲をしいて出したものだから、不正があつたら断固としてやるのだという腹構えをあなたはなぜ示さないか。実情調査とか、消費者に迷惑をかけるとか、そんな言いのがれを聞いているのじやない。もう少しはつきりしなさい。そうでなければ農林大臣に徹底的に食い下りますよ。不正があつて起訴された者でも、さしさわりがあるから取消しができない。何日間かの業務停止でも何でもいいのです。何か行政処分がなければならぬ。こんな事件が黙認されれば、日本中の米屋は何をやつてもいいということになりますよ。その点をどう考えておるかということを聞いておる。
  84. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまの中澤委員の御説はわれわれももちろん同感でございます。この食糧管理の面におきます配給の面におきまして、現状が弛緩をいたしておるということはわれわれも痛感いたしておりまして、これは厳重にやらなければならぬということはもちろん考えております。またそういう方向で考えたのであります。ただ具体的な事例といたしまする場合にどうするかということは、いろいろ現在の制度の建前もございますので、それにのつとつてやりたいということを申し上げておるわけでありまして、御趣旨の点は何ら私異存がない、と申す以上にさらにそういう御趣旨の線に沿つて配給所の締め方をやつて行きたい。こういう気持には何らかわりないわけであります。
  85. 中澤茂一

    ○中澤委員 とにかくこれは非常に政治的な問題がからんでおる。ほかにいま一つ登録の問題がある。県庁の係主任の知らないうちに、農林部長がかつてに通牒を出して、この不正をやつた十人の登録業者を登録変換をやつておる。その事実があがつておる。これはあなたも調査しなければいかぬというなら調査しなさい。さつそく本庁からやりなさい。厳重に現地調査してあしたの夜までに正式に委員会報告してください。その結果によつて私は事態を究明します。どういう事態になつて、どこへ来て、これに対してどういうあれで処分するかということをはつきりしなさい。本庁がやらなければこれではだめですよ。こんなことを県知事にまかせておいたら何をやるかわからぬ。でたらめをやつている。主任が知らないのに部長がかつてに小売業者を十軒登録変換をやつておる。県庁の主任に聞いてみたら、主任は知らないと言う。そういうばかなことをやつておる。こんなことを黙認するのなら、百姓には米を出すなと言いますよ。出させませんよ。これは非常に政治的な動きがある。あなたの答弁を聞いておると、一つの政治的圧力があなたにかかつているとおれは見ている。出納長がこの会社の取締後会長をやつておる。でたらめきわまることをやつておる。こんなべらぼうなことをやるのに百姓はだれが米を出すか。血の出るような米を六百袋も横流ししておる。こんなでたらめをやつておるから、食糧庁に問題があるということは、しよつちゆう委員会の裏話に出て来る。だからひとつ断固としてやりなさい。それによつて日本の食糧配給全体が締まつて来る。それをやらないで、あなたは何のための食糧庁長官か、われわれにはわけがわからぬ。とにかくあすの会期の終りまでに正確な報告を求めますよ。
  86. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 税、中澤委員の気持とまつたく同感であります。さつそく現地の食糧事務所に電話いたしまして、詳細な調査をいたします。われわれとしてはできるだけすみやかに調査いたしたいと思いますが、長崎は非常に距離もありますので、明日中に報告が参りますかどうか。できるだけ早くやりたいという気持は御了承願いたいと思います。本日ただちに調査の指令を発したいと思います。
  87. 中澤茂一

    ○中澤委員 私に言わせればとにかく怠慢ですよ。北村久という検察官が四月十三日に起訴しておる。この事実に対して、今ごろまだ目下調査中という怠慢があるか。しかもこれだけの大きなやみをやつておるのじやないですか。しかも不正をやつた登録業者を長崎県の農林部長の一存で登録変換をやつている。あと農地の問題等が午後からたくさんあるというからやめますが、あすの夕方までに報告を求めます。これに対してあなたの態度をどうするか、はつきりしてください。それによつてはあすの夜農林大臣を呼んでやります。
  88. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいまの中澤委員からの調査要請に関しましては、食糧庁は最大のスピードと誠意とをもつてこれに当る、かように了承します。  午前中の会議はこの程度にいたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時五十九分開議
  89. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  食糧問題に関する件を議題といたし、川俣委員質問を許します。
  90. 川俣清音

    川俣委員 主として食糧問題の基本になりまする食糧統計について二、三点お尋ねしたいのですが、二十九年度麦価の問題が近く解決しなければならない問題として世上やかましくなつておる点であります。それにつきましては、麦作の状況を知りたいのでありますが、二十九年度産麦及び菜種類の作柄状況を、五月一日現在で手元に配付されておりまする資料を見ますと、統計が、非常に熱心におやりになつた割合に、平年作と比較いたしましてあまりにも開きがあり過ぎるのじやないかという感じを持つのであります。例年の麦類の作況は、地域別に見まして非常に高低があると私どもは見ておるのであります。また例年の統計を見ましても、相当県によりまして、いろいろな状況からして平年作を非常に上まわるところがあり、また非常に平年作より下まわるところがあるというのが大体の作柄の状況なんですが、今年はあまりその高低がないのは、どうしてこういう結果になつたかということなんです。凍霜害があり、病気の発生がありまして、部分的には相当いたんでおるやにも聞きまするし、また部分的には相当の豊作が予想されておると聞いておるのでありますが、それらの常識と比較いたしまして、あまりにも統計がきれいにできておると申しますか、高低がないのでありますが、これはどういうことが原因しておりますか、この点をお尋ねしたいと思います。
  91. 安田善一郎

    ○安田説明員 川俣委員の御質問にお答えを申し上げます。  御質問の趣旨は、五月一日現在の農林省の統計調査部の調査で作柄概況として出しましたものは、地域的に、過去の統計で差があるのが本年はさほどないじやないかということだと思います。本年は成育初期、特に四月一日以降比較的高温でありまして、麦の成育にはいかがかと思われる気温がございましたけれども、それほど成育に支障を来しませんで、かえつて成育度合いが各地区とも一週間前後、五日から十日くらい平年に比べまして早くなつておりました。凍霜害その他の被害もございますが、特に最近は赤かびなどが一部、特に西の地方などにおきまして長雨などもありまして見られますけれども、凍霜害が今回ありましたのは、前年とも違いまして、時期においても、温度においても違いましたので、桑には相当影響を及ぼしましたが、麦にはそれほどの影響を及ぼしていなかつたと私どもは見ております。しかし別に農林委員会で御審議にもなり、私どもも御報告申し上げて、御対策も御努力中の際に御了承願いました程度に、麦におきましてもある程度の被害はございます。しかしその成育が早いところは十日も早まる。普通で一週間くらい、こういうような状態におきましては、ただいままでのところにおきましては、総じまして病虫害も全国的に少くて、その他の被害もならされて、それほど大きくないという状況が大きいかと思われるのであります。ただ川俣委員は非常にお詳しくあられますように、特に麦の収穫量を見積つた調査いたします場合に変動を来しますのは、収穫期まぎわの登熟期であります。ちようど麦は刈取り期、稲は田植期、気象から言えば梅雨期にありまして、この間の被害がさび病とか穂発芽というものにおいて大きな差があります。あるいはまた天候がよくて稔実が非常によくありますと、麦の坪当りの粒の重さ、質ともに非常によくなります。その差が米に比較して非常にあるところに変動が出て来る。従いましてただいまは六月におきます調査をとりまとめ中でございますが、五月一日現在におきましては、川俣委員のおつしやる状況が特に大きく響く原因の以前のことだと思います。特に関東と九州、麦の大産地におきましては、病虫害その他の気象等の災害が大きく来ません場合に——当時まだ比較的来ませんでしたが、麦の力一ぱいほど成長の度合いが非常によく来ておつたことによると思つておる次第であります。
  92. 川俣清音

    川俣委員 今統計局長の説明にあつたように、登熟期から収穫期にかけての気象状況及び病虫害の発生が米以上に収穫を左右するものであることは明らかであります。しかしながら五月一日現在ということになりますと、すでに作況が現われて来ておるところでありまして、そう不正確なものでもないと思うのです。そこで例年五月一日現在をとつておられましたならば、例年と大差がないようですか、これは大つかみでけつこうですがどうですか。
  93. 安田善一郎

    ○安田説明員 ちようど御質問のデータを役所に置いて来ましたが、この三年ばかりは日本で初めてくらいに収穫がよかつたのであります。ただ惜しかつたことは、昨年収納直前、収納後の被害が水害等に伴つてつたのであります。それに次ぐくらいのものであると思つておりますが、五月一日現在では、まだ石数を見積ることは十分に可能な時期ではございませんが、従来の経験から試算をしてみますると、三麦で二千七百万石を越えるくらいじやないだろうかということでございます。ただ念のために申し上げますと、長期予報を気象台についてみますと、今年は梅雨期が早く来て、また水害も不連続線によるものがありそうだということもありまして、それらの時期が、麦の作柄が進んでいて収穫を早くするかどうかということなどにかかりまして、最終的な収穫高をかなり左右するんじやないかと思いまして、改良局にもその旨をよく伝えておる次第でございます。
  94. 川俣清音

    川俣委員 次に農業所得パリテイのことについて二、三お尋ねしたいのです。麦価決定を前にしてパリテイ指数がどんなふうに動いておりますか、私どもの知る範囲におきましては、政府がデフレ政策を強行いたしまして、物価を〇・六くらい引下げるんだ、こう言つておりますが、農民のつくつておりまする野菜等については、一部下りぎみのところもあるようですが、農民の消費する面あるいは生産用具として買い入れる面については、むしろ幾分上昇しておるようでありまして、従いまして農業パリテイは結局上昇するのではないか、ごく微量であろうが、徐徐に上つているのじやないかということが、大体常識的に出て来るのであります。従いまして、そこに米価のバツクペイの問題並びに麦価の決定に重要な要素でありますところのパリテイの上昇率について、概略御説明願いたいと思います。資料を幾分いただいておりますけれども、三月までしか来ておりませんが、四、五月の大勢を御説明願いたい。
  95. 安田善一郎

    ○安田説明員 お答え申し上げます。重要農産物の価格決定上、基準としてすでに採用されております農業パリテイにつきましては、先日、現在採用しておるパリテイが始まりましたときから本年三月までの月別に示しました数字を、資料の中に入れまして御配付申し上げた次第でございますが、昨年麦価がきまりましたときの農業パリテイの指数は、六月といたしますと一一三・六〇でございまして、その一一三・六〇というのは、経営用品と家計用品に二大別いたしますと、いずれも農家が購入するものでありますが、中に労賃を入れまして二大別いたしますと、経営用品の方で一二六・一一でございます。家計用品の方で一〇七・四四でございます。それから以降各月について見ますと、ちようど川俣委員の御指摘になりました通りに物価は動いておりまして、時々の経済情勢、経済政策の方向というものがありましたでしようが、また今もあるようでありますが、現在農家の手元で購入するものは、経営用品、家計用品の二大別にその内訳の品目をわけまして総合化いたしますと、逐月やはりじりじりと上昇をいたしております。これは表について三月まで見てくださいますならば、それが現われておるわけでありますが、従前よりは、すなわちこの一年近くの間の、それ以前の物価の上昇の度合いよりはにぶいと申しますか、鈍化して来ておりますけれども、農村における末端の小売物価ともいうべきものは、にぶりなからも上る状況にあるわけであります。個々の品目は一応別でありますが、総合化して二大別しますとそうなります。その二大別を総合化し総平均しましたのが農業パリテイであります。この両者について見ますと、やはり経営用品の飼料、肥料の方が、特に飼料の値上りが多いのですが、生産用の家畜飼料、農薬、保温折衷苗しろの諸材料、光熱費、農機具、雇用労賃、賃借料、こういうようなものを中心にしましたものが上り度合いが多くて、家計用品に当ります飲食物あるいは繊維製品とか保健衛生費とか、こういうような住居関係、それから教育費、こういうようなものの上り方の方が鈍くて、その両者が強く上るもの、それほど上らないもの——一時は、総合化すると下つていませんが、個々のものでは下つたものがあるかと思いますが、どちらかというと、経営用品の上りも家計用品の鈍い上りで相殺されて、その中間を総平均である農業パリテイ指数が動いているのであります。これを三月について見ますと、この計算はほぼ確定的なものではありますが、総指数で一二〇・五二、経営用品で一二九・五三、家計用品で一一六・〇八でございますが、四月には経営用品、家計用品いずれもほぼ同じくらいずつ上つておりまして、非常に複雑な計算でありますので、概略計算と最終計算といつも二度やつておりますが、概略計算で見ますと一二〇・七九、総平均は一二〇・八くらいになると思います。五月は、概数でございますが、さらに少し上るのじやないかと思つておりまして、一二〇のところがそのまま続くか、少くとも私のところでは、上る計算か出て来る過程にございます。簡単に申しますと、最近時のパリテイ指数は、一年前に比べまして七、八%、どつちかというと八%ぐらい上るのじやないか、こういうふうに思つております。これを他の同種の調査でも検証いたしておりますが、それは私の方の農村物価指数というものと別にやつておりまして、基準年次なども、農業パリテイとは、基準の一〇〇にする年をかえて出しております。なぜかというと、農家の売るものの方の総合指数と買うものの方の、経営用品というものと家計用品というものとの両者の総合指数——売るものと買うものを二種類にわけた両者を比較して、簡単に言いますと、従来のシエーレ関係を見るというふうに、大胆大ざつぱな指数で見るわけですけれども、そういう意味のものを別途扱つておりますが、同様の傾向が現われております。ほぼ同じくらいの指数であります。ただ農村物価指数の方は、この間御配付を申し上げましたが、ごく最近のある月には少し下つている。農家が購入するものの指数が下つている場合がありますが、これを研究しておりますけれども、農業パリテイ指数を出す際には、雇用労賃をかなり多く見ております。それを除いたものについての農村物価指数を、別途とつているものを先ほど申し上げたのであります。つまり農村物価指数の中から、労賃を除いて別個の調査をいたしております。要しまするに、この両者の傾向は、川俣先生のおつしやるように同様に現われておりますが、労賃の六月前後の値上りが多くて、これの響き方が両者の差になつてパリテイの方が上つている、こういうふうに思つております。
  96. 川俣清音

    川俣委員 これについてはまだ議論を残しておきます。私の方にちよつとふに落ちないところもあるのです。たとえば賃借料、これはおそらく地代だと思うのですが、これが固定資産税の上昇によつて大分上つて来ているように思うのでありますが、こういう点の議論は抜きまして、もう一点だけお尋ねしておきたいのです。  近来農業統計が一般農民から非常に信用を回復して来ておるわけです。これについて今度の凍霜害あるいは病害、虫害等によりまして統計調査事務の仕事が非常にふえて来ておるわけであります。これについては一般の今年度の予算編成の上において事務費、旅費等が相当削減を受け、結局定員の減を統計事務所も同様に受けておるわけです。ところがそういう定員減または旅費減あるいは事務費の減というものは、平年でありますればこれはやむを得ず右へならえしなければならないと思うのです。こういう凍霜害が起きたり、あるいは日本の気象状況からいたしましていろいろな災害が起きる。この災害を県の調査でされるかどうかということになりますと、ときどきこれは弊害がある。昨年の凍霜害についても水増しがあつたとかいう非難を受けておるわけです。こういうところから今年は、統計事務所において積極的にいろいろな調査を進められたようでありまして、その努力に対しては敬意を表するのでありますが、出先を見ますと、十分調査したいのだけれども、旅費または事務費等において相当な削減を受けておると思う。一体積極的に調査したらいいかどうかというようなことをときどき躊躇いたしておるような向きもあるようであります。せつかく信頼度が増して参りましたこの統計に、そういう旅費や事務費の削減の結果、もしもずさんなものができますと、またこれは別の面から非難が出て来ると思うのです。ここでこういう異常な災害が起きたような場合におきましては、最も信用度の高い国が調査をいたしております。統計事務所が積極的に調査をして農業統計というものを明らかにする必要があると思う。これが結局は国費の負担あるいは金融等において何らかの処置を講じなければならないのでありますから、最も信用の高い統計事務所がこれに当ることが最も妥当な、最も適正なやり方だと思うのです。ところがどうも旅費がない、事務費が削減されておる、または定員減だということで、相当な過重な負担が来ております。私どもは定員減にしても反対でありますけれども、強行されようといたしております。この問題は別にいたしまして、それだけ人不足であればあるほど、災害が起きたような場合においては臨時的な働きをしなければならないと思いますから、当然旅費や事務費の費用がかさまつて来なければならない。これに対してどのような処置を講じられんとしていますか。補正予算というような話もございますけれども、災害が起きた場合には予備費というものがあるわけですから、当然これは予備費から支出されなければならぬと思いますが、どうも統計部長は少し遠慮されておつたのじやないか。遠慮しておるというと、末端の統計事務所が、一体調査していいか悪いかと躊躇しましたり、あるいは簡略にしたり、粗末にするというようなことが起らないとも限らないので、この際明瞭にしていただきたいと思います。
  97. 安田善一郎

    ○安田説明員 農業、特に農作物調査に携わる私どもの機関の実情につきまして、特に末端の調査の実情につきまして、実情に即した御理解ある御質問をいただきまして、非常に感謝にたえない次第でございますが、災害調査費につきましては、特に作付面積に基き、収量に基きまた定期的な被害について調べます費用は、一応大蔵省と私どもと納得の上で、本年度に予算が計上されておりまして、凍霜害や病害や暴風雨などすでに本年もかなり来ておりますが、応急調査を定期調査外に加える場合の調査費については、計画的に一般年度の予算に組んでありませんのを、非常に残念に思つておるわけであります。これは定員との関係、災害がどこに起るかもわからないというようなことなどによりまして、一般の予備費以外に私どもの中に応急災害予備費を、去年の例にかんがみまして、少くとも最初の大調査がありそうなときの一回分は組んでもらいたいということを、大蔵省と折衝その他をいたしましたが、ちようど御指摘になりましたように、他の全般の災害予備費の中でまた考えるからということで、私ども個有の予算の中の災害調査予備費は、とれなかつた経過がございます。そこで実情は十分な旅費をもつておりません。御指摘のように、そのためから調査が不十分になることをも率直に申し上げましておそれておるのであります。特に職員が努力しましても報いられないという面が一部には確かにあることを承知いたしておりますが、対策の基礎資料をまとめ上げる意味で努力をしていてくれるのであります。これに対しまして気がついておりましたので、昨年度よりは、同様の時期においての凍霜害等が少なかつたのでありますが、結果としての被害が少くとも、調査はやはり同じくらいやらなければいけない。調査の結果、被害が多いか、少いか出て来るわけでございます。そこで省内全体としても諮りましたが、過般来の経過上、御承知通りに今年度の凍霜害等の対策は、農林省側からは去年よりは整理をして出そうという経過がございました。そこで衆議院農林委員会を中心にされました、あるいは予算委員会とともに御尽力になつております過程において、さらに対策が加わることをお願いをしておつたわけであります。それが実現する際に、調査旅費の不足があつて調査に支障を将来も来さないように、過去におきまして不足分があつたところは補うようにしたらどうかという経過をもちまして、目下私どもの手は離れておりますが、かなりの額を調査費に、また一部は十勝地方の被害の調査どもありまして、それを含めまして実現方に努力中でございます。
  98. 川俣清音

    川俣委員 これは本来でありますならば、日本の例年の常識から見て、統計に固有の臨時調査費というものを予備費として持つのが私は至当だと思うのです。日本のような特別な災害が起きやすい状況のところにおいては、いつもこれに対応できるような調査予備費を持つことが最も妥当な方法だと思うのです。しかしながら今年それが得られなかつたのはまことに残念であります。大蔵当局はかつてども質問に対しまして、そういう事態においては、十分な調査ができることがむしろ国費の節約になるのであるから、そういう場合においては将来に支障を来すようなことはしないということを言明せられておるのであります。従いまして国が持つておる予備費の中から当然私は出さなければならないと思うのです。今部長は、相当無理をかけておるけれども、まあ調査は十分行き渡つたというお説です。私はさもあらんとは思います。またもう一点強調しなければならない点は、部長も指摘されたように、調査面積あるいはデータが少く出たから調査が少いのだと言われるようなことのないようにしなければならないと思う。今年度成績が上つたのは、割合に正確を期し得られたのは、かなり広汎な地域を調査した結果、いわゆる類推したのではなくして、厳に調査した結果正確なものが出て来たと思うのです。この正確ということは、調査面積と申しますか、調査区域が拡大しておればこそ正確に出て来る。従いまして、出て来たデータと調査費とは必ずしも並行していない。被害が少いから調査費用が少いのだというようなことにはならないという点です。もう一つは、こういう場合には、ただ一回の凍霜害でありますれば、あなたの職員は、旅費が不足であつても、事務費が不足であつても、率先して相当な熱意で動くということもあり得る。こういうことの熱意というものは、そう長く続くものではない。やはりこれに対して手当をしてやることによつて、あとで何とか埋め合せがつくであろうという保障があれば、あるいはあとでこれを見てやるという努力が払われればこそ、私は成績が上つて来るのだと思うのです。確かに旅費の不足の中に、事務費の不足の中に、よくあれだけ調べ上げたと私は敬意を表するのですが、これはいつでもそうだというふうに部長が思つておられたら間違いです。確かに現在においては不足である、しかし一回はできるけれども、数度あつた場合においては、そうはできないということを認識しなければならないと思うのです。そこで、今私の手を離れたけれどもという言葉で濁されてはいけないと思うのです。私どもが心配しておるのは、旅費の増額をしなければならないという結果にはなるけれども、それ以上に期待をいたしておるのは、正確な農業統計を確立しなければならない、そのためには、国が相当な犠牲を払わなければならないという点からあなたに強調しておるのですが、もう一度御答弁を願いたい。
  99. 安田善一郎

    ○安田説明員 川俣委員の御意見と私どもに対する御要望については、私もまつたく同じ意見を持つておりまして、また同じ認識と熱意を持つております。本年度予算大綱が閣議できまりましたとき、旅費一律に二割減という憲法がきまりましたが、特に農業統計は気象などによる特殊性があることとか、重要なこととか、調査結果をまとめると、同じ季節の被害でも何回も来ることなどを例に、いろいろ話し合いまして、実はその原則を破つてまず予算を組んでくれました。そのことがありますが、先ほどから申しておりますように、応急調査費はとれませんでした。当面のことは、職員を意気沮喪させたり、不払いのままで熱意でやつてくれておるのを、今後その熱意が続かなくなる気持と、そういう旅費などの条件を続けさせるのは悪いと思いまして、調査費が足りなくて職員が困つておることをもちまして、第二・四半期の既定予算を配賦する分の繰上げで農林省に早くもらいたい、そうしてこれを地方の現場職員に渡すように手配中であります、それを第一段といたしまして、真に足らざる分をぜひ確保するよう当委員会もお助けを願いたいと思いますが、私どもも同じ気持をもちまして、よく認識しまして最大の努力をするつもりでございます。
  100. 川俣清音

    川俣委員 委員長今お聞き及びの通りでございますので、委員長を通じまして政府に、予備費からすみやかに旅費を補充するようなおとりはからいを願いたいと思います。
  101. 井出一太郎

    ○井出委員長 了承いたしました。
  102. 足鹿覺

    足鹿委員 関連して。簡単な問題であなたにお尋ねしておきたい。昭和二十八年まきつけの麦のうち小麦が三万七百三十六町歩の減を示し、大裸においては今二万六千七百五十二町歩の増をしておる。差引約四千町歩の麦類の作付減があなたの方の資料に出ておるのでありますが、この少麦の急激な減反について、統計調査部としてはいかような見解を持つておるか、その原因等について何か御調査になり、あるいは御検討になつた点があればこの際承りたい。  なおいつが適当かわかりませんが、戦前の昭和九、十、十一が対比の基準年次になつております関係上、それ以降の大麦、裸、小麦の作付面積を一覧表にして明日御提示をいただきたいと思いますが、いかがでしよう。
  103. 安田善一郎

    ○安田説明員 お答えを申し上げます。あわせてお許しを願いましたら、川俣委員に御説明を申し上げました五月一日現在の作柄概況の足鹿委員の御質問に関連することを申し述べさせていただきたいと思います。五月一日におきましての作付面積は概略面積でありまして、もう十数日たちますと本年度についての正確なる作物調査要綱に基く決定面積が出て参ります。府県別の作付面積がかわりますと、府県別の作柄の反収の状況に面積ウエートをかけて、全国の作柄の、たとえば反当収量と申しますか総収穫高と申しますか、そういうものを出しますので、ちようど五月と六月との公表はいつでもその差が出て参ります。そういう意味の五月一日の概略作付面積でありまして、御報告を兼ねて申し上げましたのは、まきつけ時期の関係もありまして北海道を除いておるのですが、北海道がかなりの面積をいつでも持ちまして、これはまた単作をするところでありますので、作付をする作物の変動の相当大きいところでございます。そこで北海道を含めて作付面積を調査し決定し、作柄を加えて、全国作付面積と、全国収穫量を出す場合にはこの二つの要素、言いかえて申しますと、北海道部分、それから概略面積がその年の正確なる決定面積になるので、この二点がかわつて来る点でございます。ちようど足鹿委員の御質問になりました点は、概略面積について私どもが御報告申し上げたことについてのことでございます。これは昨年の作付決定面積を基礎にいたしまして、——基礎と申しますのは、そのまま使いまして、それから試験的に約二千戸の農家をとりまして、前年に比してどのくらいの作付増減をなさいますかというのを、お聞取りをしましたものの割合をかけて出したものであります。従いまして、これが全農家を現わしておるか、全作付面積を現わしておるかどうかについて、まだそれだけの正確さを欠くものでございますことを御了承願いたいと思いますが、聞取りました点につきましては、何町歩をつくるということを聞いておりませんが、増減を何割ずつするかということを聞いておりますから、比較的正確で、動向把握としてはいい方法ではないかと思つております。その意味において、少麦は相当減少し、大麦、裸麦は相当増加しております。その差引は三麦に関します限りは減の方が大きいということが出ておるわけであります。ちようどただいま本年の作付そのものについて面積を集計計算中でございますが、小麦の減少はこの概略作付面積よりも少く、すなわち作付がもうちよつと多くて、大麦、裸麦の作付も多いように、大体の計算を進めております。全国終つておりませんが、しかしこの大勢というものは、数字が違いますが、ここに現われておるように出ております。そういう意味におきまして、今度は増減の原因を、自然的な原因と経済的な原因とおのずからありましようが、これをまたどう判読するかについてむずかしいことがございますが、私どもがそれを、概略面積をはじき出すために調べておる調査の中で、その増減の原因を聞いておるのであります。その原因はすでに印刷して、事務経費の関係で一部配付しておりますが、農林委員会にはお届けすべきものだと思いますので、それをそのまま明日でも御配付いたします。要点を申しますと、小麦の減少はおおむね経済的原因であります。いろいろ各地でみな理由がありまして、理由が反対の場合もあります。増減ともに反対の場合は各地でありますが、一番おもなる原因の分布をとりますと、やはり小麦は裏作などありまして、かなり全国的に小麦は上まわつておりますが、採算が悪い、また悪くなるおそれがある。それの事情は、小麦の国際価格などが反映しておるのじやないかと思います。従前の、去年までは菜種にかわる——湿田地帯は場合によりまして、菜種の価格いかんによりましては、小麦よりも菜種をつくつた方がいいという事情もあつたと思いますが、それによつて菜種が非常にふえました。その菜種の増加もほとんどとまりました。そこで小麦固有の増加が多くて、菜種との競合関係があまり多くなつていないように思われます。大麦、裸麦は、やはり農家の需給関係と政府買入値において、特別加算額をもつて従来よりも割高であるという関係で、価格影響には非常にひどく響いております。それと、大麦と裸麦は九州と関東に主産地がありまして、全国的でなしに片寄つております。それらの主産地の耕作条件はかなり違いますので、また特に関東の大麦などは、適地の関係もありまして、埼玉などは稲をつくるよりも有利なところもあるというようなことを言つておる人もあります。それらの主産地が片寄つておることなどと価格要因——収量がまた相当多い。それから米不足等の関係から飯米としても販売用としましても粒食の関係、特にまた供出制度がなくなりましてからは、農家の経済状況もありまして、米を売るために粒食の麦をつくる、こういうことの関係から現われておるようでありますが、その後の詳細な調査結果は別途お届けしたいと思います。  それから最後の九、十、十一年以後の統計も同様にあしたお届けしたいと思います。
  104. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点お尋ねしますが、先日いただきました本年麦価の研究資料として生産費の調査資料の素材をいただいたわけでありますが、これではどうもあまりはつきり実態がつかめないのです。ただ一応私ども参考になりました点は、農業パリテイ指数を、昭和二十六年以降のものをいただいたことでありますが、これによりますと、二十九年一月、二月、三月と漸次指数は上昇いたしております。聞くところによると、本年産麦価については、年間想定パリテイを出して、全体としてのパリテイを下げて、値上げ予想を中断しよう、こういう考えもあるように聞いております。そういう統計は厳正でなければならないにもかかわらず、政府の恣意性によつて今後のパリテイがいろいろに変化する、あるいは人為的にこれが変更歪曲されるというようなことは、私はあつてはならないと思う。特に去年三月後期において総平均パリテイ指数が一一二・九三が昭和二十九年において一二〇・五二というように相当開いておる。このパリテイの趨勢から見て、デフレ政策の影響を受けて、若干の物価が下降したといたしましても、そう急に五月パリテイというものに大きな変動はないものだと思つておりますが、いずれにいたしましても三月までのものはいただいたが、さて四月、五月のものを私どもは非常に重視しておるわけであります。もう六月もきようは二日にもなりました。しかし四月分もほとんどでき上つておると思う。なお五月の想定パリテイでもよし、またいつごろになつたら実際の指数がつかみ得るのか、それをこの際明らかにしていただきたい。現在の趨勢から行きますならば、昭和二十八年産米についても二百二十円程度のバツク・ペイを当然政府は支払わなければならない責任がありますし、また本年産の新麦価を近く決定を見なければならないのでありますが、世上政府の恣意性によつて指数の改変が企てられておるというようなことを私どもは聞いておるのでありますが、統計調査部長としては、そのような作業にはおそらく応ぜられないと思う。もしそういうことが行われるとするならば、これは今後統計の権威なんというものは失われる。元来政府機関でありますから、政府のおためになるようにできる傾向のあることは私ども否定いたしませんが、こういう厳粛な物価指数が、ただ麦価を押えたい、あるいはバツク・ペイがいやだ、こういうような意味から、経済の実態をことさらに歪曲するようなことがありますならば、これは捨ておきがたい重大な問題だと思うのであります。つきましては、この昭和二十八年産米価のバツク・ペイに至大な関係を持ち、また本年産の新麦価の決定の重大な要素となる四、五月パリテイについて、現在統計調査部が作業をしている段階、その結果はいつごろになつたらわかるか、またそれが延びるとするならば、想定パリテイはどういうふうになるか、この点を伺つておきたい。
  105. 安田善一郎

    ○安田説明員 数字的な結果はどうなつているとか、どうなるであろうとかいうようなことにつきましては、川俣委員に先ほどそのまま数字的に申し上げたつもりでありますが、お聞き漏らしでありましたら、繰返して申し上げます。四月は一二〇・七九ぐらい、八になるかもわかりません。五月は概数想定でありますが、一二一を示すだろうと思つております。点何ぼになるかはもつときちんとやらぬとわからぬものであります。いろいろ物価の問題、デフレ政策の問題が出ましたが、私ども農業観測で経済を分析いたしておりますところにおきましては、デフレ政策は明確にとられて、特に財政の緊縮、それ以上に金融の引締めが行われていると思つております。目下物価に反映しておりますところは、卸段階、問屋段階というところがまず先に金融引締めを中心に動いて来ておりまして、これが製造業者、メーカーの過程に移つております。違う業態もございますが、大勢を見ますと……。それから小売物価の段階に移るかもしれぬという段階であります。  物価は今までの状況で横ばいしているのか、上つているのか下るのかということにつきましては、デフレ政策がとられていることすなわち小売物価が下降していることではない。これは都市農村を通じてそういうふうになつていると思います。  次にパリテイをかえるかどうかということにつきましては、農林省の統計調査機関にたまたまもつて奉職しております私どもは、統計データ、統計そのものを仰せつかつているので、これは価格政策をも含めて、各種の行政や政策にデータとして使われるものであつて、価格のきめ方、その他の政策そのものに私はタツチしておりません。タツチしないのが統計官としてはいいと思つております。御指摘になりました問題の農業パリテイ指数は、簡単に申しますれば、農家購入品の価格の総合指数でありまして、これについて従来とつております統計をつくることにつきましては、何ら変更する気はありません。目下変更することについて協力をいたしていることは、私ども統計官として、また統計調査部としてはございません。またこういうものをどう使うかについても、関係をいたしておりません。そういうつもりでこれからもやろうと思つております。     —————————————
  106. 井出一太郎

    ○井出委員長 引続き農地問題について調査を進めます。本日は保安隊等による農地、開拓地等の使用に関する問題及び土地改良事業に関する問題を中心に質疑を行いますが、まず保安隊の農地使用の問題から取上げることにいたします。質疑の通告がありますから、これを許します。芳賀貢君。
  107. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最近保安隊の演習地あるいは弾薬庫等の用地の調達のために、農地の収用が全国的に各地に行われておりまして、ほとんど例外なくこれらは紛争等を惹起しているのでありますが、この機会に私は旭川市の近文台を保安隊が弾薬庫並びに油槽庫の用地として開拓農地を収用することに関する経過と今後の処理等に対して、農地局長並びに保安隊の本日御出席になつている係官にお尋ねしたいわけであります。私の知り得る範囲におきましては、昭和二十八年十一月二十日付に保安隊発経士第三〇二号をもつて保安庁の方から用地の調達方を農林当局に要請があつたわけであります。これに対して農林当局におかれては、昭和二十九年五月八日に保安庁次長に対して条件並びに要望事項を付してこの調達を了承する旨の回答を行つているわけでありますが、まず平川農地局長から、この保安庁の用地調達に対する要請並びにこれに対して回答を与えたその内容の大要を御説明願いたいのであります。
  108. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまお話のありましたように、保安隊の方からこの地区を弾薬庫等の用地として使いたいという申入れがございまして、農林省としては現地に対してその意向を照会いたしました。その結果現地の方としては、関係の開拓者及び町村長その他大体においてやむを得ないこととして了承するという意見でございました。農林省としては、もとより一般的に農地の壊廃は好ましくないのでありますけれども、保安隊の方の調査によりますと、ほかにかわるべき適地もないということでございますので、さような現地の意向を参酌いたしまして、これに対していろいろの条件を付して了承をいたしたわけであります。この条件としては、大体において、特に関係の農家に納得せしむるに必要な措置を講ずることを重点に置いて了承をしたのであります。
  109. 芳賀貢

    ○芳賀委員 非常に御説明が抽象的でありますが、ただいまの御答弁によると、地元の意見を徴したと言われておりますが、北海道新聞等の報ずるところによると、今日の措置の場合においては、農林省は道庁当局の意向というものは、まつたくこれを度外視した立場においてこの問題を処理しようとしておるということは、ちよつと異例のように考えるわけでありますが、ただいまの地元の意向というのは道庁当局をささない意味の地元の意向でございますか。
  110. 平川守

    ○平川政府委員 もとより知事に対して紹介をいたしておるのでありまして、道庁の意向はもちろん聞いております。道庁公文書といたしましては、旭川市及び市議会の方からむしろ希望意見が出ておりまして、道庁としても地元がそういう意向であるから、これによつて実施をしてもらいたいということを申出ておるわけであります。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の承知しておる範囲では、道庁は、農林省当局がこの調達を了承するということに最終段階の決定を行つたに対しては、全然その経緯を関知しておらぬ、そういうことになりますと、今局長の言われたように、道当局の意向を徴しておつたということにはならぬと思うわけであつて、ただあなたの言われるのは旭川市当局意見等は聞いた、そういうことでありますか。
  112. 平川守

    ○平川政府委員 これは道庁の方から正式の文書を得ておるわけでございませんけれども、道庁としてのいろいろの立場があることと存じます。こういう地元の意見であるので、農林省においてこの状況の判断によつて回答をしてもらいたいということを事実上申出て来ておりますので、私の方ではその申入れによりまして、道庁も同意しておるものというふうに判定いたしまして、さような決定をいたしましたわけでございます。
  113. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの局長のお話によりますと、道庁としてはいろいろな情勢がこれにからまつておるので、明確な態度の表明はできないから、一切の決定等は農地当局において判断してやつてもらいたい、その結論というものは一切了承する、そういうことで意思表示をしておつたというのですか。特に旭川市の場合においては、御承知通り旭川市はまず現在の保安隊を誘致する場合において、これは旭川市の繁栄策になるという一つの打算の上に立つて、保安隊の誘致を行つておる。だから旭川市当局が、これに付随する施設として弾薬庫とか油槽庫等を設置しなければならぬという保安庁の要請に対しては、協力せざるを得ないという態度をとることは一応推測ができるわけでありますが、少くとも今局長の言われたように、北海道庁当局が、いろいろな思惑を考えて明確な態度の表明ができないというようなことを、かりそめにも正式にそういうことを農地局の方へ言つて来ておるとすれば、これはゆゆしい問題であると思いますので、今後の事態にも関連があると思うので、道庁のとつた態度というものは、今局長の言われたような内容にいささかも狂いがないかどうか、その点をもう一度確認をさせてもらいたいと思います。
  114. 平川守

    ○平川政府委員 道庁といたしましては、入植者の実情も調べ、また旭川市当局その他の意向も尋ねた結果、これはただいま申したような事柄である、そこで農林省の判断により責任によつて収用してもらいたい、こういうことを申しておるのであります。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この近文台の開拓農地を弾薬庫並びに油槽庫の用地とするということは、これは局長も大よそ御想像がつくと思いますが、この用地は旭川市の住宅等がそこまで伸びて行つて、場合によつては保安上危険であるというような判断も非常に強いわけであります。でありますから旭川市の一般の市民は、かかる地点にこういう危険な営造物を置くということはまことに困惑するというような意思表示を常に行つているわけでありますが、ただ旭川市当局が、保安隊を誘致したような関係もあるので、このことに対してはできるだけ協力をしなければならぬ立場に置かれておるわけでありますが、一つは保安上の危険を伴つている、もう一つは、せつかく三十六戸の開拓農家が入植して、面積にいたしますと大よそ二百五十町歩程度でありますが、入植後非常にこれは条件としては劣悪な条件のところを、元第七師団時代にここを練兵場の一部として使用したりなんかしておつた関係もあるので、これを農地にするためには、相当の困難をしてようやく農耕地にしたというような、そういう苦労の経緯を持つておるわけであります。それを今回またさらに当局は妥当であるという名前のもとに、この調達に応ずるようになつたわけでありますが、この条件の中におきましても、第一点は農地を収用される当該開拓者の今後の生活の安定をまずはかるべきであるということと、今後近文台の開拓農地をこれ以上保安隊の用地として拡張してもらつては困るという点が第一項にあげられておると思いますし、その次にはこの施設をやる前に必ず区域内の土地所有者全員に土地の譲渡承諾書を徴するとともに、農地法に基く正式の手続をとつてもらいたいということを条件としてうたつてあるわけでありますが、この意味は全員の譲渡の承諾書を徴する必要があるという、その条件なるものは、たとえば三十六戸の開拓農家全員がこの調達に応ずるというような具体的な段階まで行かなければこれは用地としての収用をしてはならぬというような意味でありますか、その点はどうでしようか。
  116. 平川守

    ○平川政府委員 やはり農地を失う者につきましては、反対者があつてはならぬわけでありますから、全員ということは当然のことではありますけれども、注意してうたつたわけであります。
  117. 井手以誠

    ○井手委員 今局長の答弁でちよつと不審な点があるので、お尋ねいたしますが、旭川市から要望した、それでこれをいれたということですが、おそらく他人の土地をかつてに市当局が要望したことはなかろうと思われます。将来買収される人の土地を、よろしいということはあり得ないことだと思います。あなたの方に行きました書類には、全部関係者のよろしいという委任状か何かついておりましたか、その点お尋ねいたします。私はその点特に念を押して聞きますが、それぞれ所有権を持つておるはずであり、その全部の所有権なりあるいは小作権というものを持つておるのに、市当局が、地元の繁栄だから、多くの人の希望だからといつて、かつてにやれるということはないでしよう。それはどこかの機関あるいは希望した人ばかり集めたかもしれませんけれども、一応の形式は踏んであるかもしれませんけれども、少くとも私はよろしいという所有者の委任状がなくてはならぬと私は考えておる。それがあつたかどうか、局長にお尋ねいたします。
  118. 平川守

    ○平川政府委員 これはいわゆる正式にこの土地を買収するという段階までまだ至つていないわけであります。こういう話がありますと、事実上その地方の人がどういう気持でおるかというようなことを最初に調査いたします。先ほど申しましたのはその段階でございますから、厳密な委任状をつけて来ておるわけではございません。市の当局が責任をもつて調べた結果、現地の農民もそれを希望しておるのだということを市の報告として来ておるだけであります。
  119. 井手以誠

    ○井手委員 私は子供だましのような答弁は聞きたくありません。地元がよろしいということであれば話がどんどん進んで行く、そういうことに追い込まれることはわかり切つたことである。最初が一番大事でございます。地元からよろしいといつた、中央ではその地元の意向によつて話を進めた、いよいよ買収という段階になる、そうなつて来れば、有無を言わせず周囲の圧力によつて、あるいは権力の圧力によつて買収に応ぜざるを得ない事態になつて来ることは、局長よく御承知であろうと考えております。最初が大事であります。地元がよろしいということは、その所有者のよろしいという意思表示がなくして、市当局がかつてに言えるものではないと考える。またそういう委任状もない、所有者の承諾もないものを、地元は希望しておるとか、よろしいとか言えるはずのものでは絶対ないと私は考える。それは他人の所有権を侵害するものだと私は考える。おそらく局長はそういうことで簡単に地元の意向は判明したという気持ではなかろうかと考えておりますので、その点について、それでいいのか悪いのか、全国の農地をあずかつておる農地局長が、そういう甘いことで済ませるものかどうか、この点は将来にかかつて非常に重大でございますので、私は念を押してお尋ねをいたします。
  120. 平川守

    ○平川政府委員 お話のような場合について相当心配はございます。それでわれわれといたしましてもその点は注意をいたして、道庁あるいは県庁に調べさせます場合においては、もとより農地関係の職員がその点をよく調べるわけでございます。厳密な意味においての委任状というところまでは参りませんけれども、反対の者が非常におるのに一部の者が承諾をして誘致をしておるというような場合は、大体今までの経験からわかります。そういうことがわかりますれば、かりにそういう正式の手続をいたしませんで、また一方から、たとえば市町村等から逆に誘致の運動がありましても、そういう事態があります場合においては、こちらでも注意をしてそれをとめるようにいたしております。ただお話のような厳密の意味の委任状というものはこの際とつておらないのであります。
  121. 井手以誠

    ○井手委員 人の所有権を、あるいは小作人の耕作権を根本的にかえるような問題について、正式ではないけれども一応とつたということは私はあり得ないと思う。人の所有権がかわるという問題について、本人の意思表示、所有者の意思表示がなくして、ほかの者が意思を表示するとか誘致したいとか、あるいはお願いしたいとかいうことはあり得ないと思う。私はこの際、農林省としてはつきり方針を立てておいてもらいたいと思う。そうしなければどんどん個人の所有権が侵害されます。私はこの点において、この際法制局も呼んでいただきたいと思うのです。その点は厳重にはつきりしておかなければならぬと思う。委員長にお願いしますが、法制局も呼んでいただきたい。あなたの方も全国の農地をあずかつておる農地局長さんであるし、他人の所有する土地を、ほかの者がこの土地に誘致してよろしいと言つたものを、あなたの方で保安庁に取次ぐようなことはできないと思う。私はこれは法律上の問題として、この際解決をしていただきたいと思いますので、そういう意味において確固たる方針をこの際御明示を願いたいと思います。これは問題がきわめて重要でございますので、ただ地元の希望であるとか、大体当つたけれどもよろしいとかいうようなことでは済ませません。所有権という問題についての見解を、私はこの際はつきり明示を願いたいと存じます。
  122. 平川守

    ○平川政府委員 もとより法律的手続によりますれば一人々々のはつきりした承諾がいることになるわけであります。ただお話のごとく、事実上これが動いて参りますと、ある程度反対の者であつても押し切られるというような実情があるのではないか、これはお話通りであると思います。そこでわれわれもその点は非常に注意をいたしておるのでありまして、先ほど申しましたように、県の農地関係の係官といたしましては、極力こういう転用を拒む立場にあり、またその気分に応じて農民の立場を主張するわけであります。その点については、注意の上にも注意をいたしまして、一部の者が誘致運動をいたしておりましても、他の相当数の者が反対であるというようなものについては、それは農林省にすぐ伝わつて参りまして、私どももそういうことでお断りをしておるような例がかなりあるわけでございます。ただ大部分の人が賛成しておるというようなことでありますと、一方保安隊の関係の必要性というものもあるわけでありますので、農林省としてもその辺を判断いたしまして、一応具体的な買収の交渉に移ることを承認するという意味において、ただいまのような手続をとつておるわけでございます。その点不十分と申せば不十分かと思いますが、当初からはつきりと、全員が委任状なり承諾書なりを出して正式に承認した場合以外には全部断るというはつきりした態度までは、現在とつていないのであります。
  123. 井手以誠

    ○井手委員 注意するとか地元の実情をよく調査してとかいうことでは、所有権の問題については言えないと思います。そんな生やさしいことではできないと思います。人の土地が自分の意思に反して動かされて行くということについては、あくまでも自分の意思でなくてはならぬと思う。大多数の意見であるとか世論であるとかいうものはどうにでもつくり上げられて行くのであります。これは詳しく申し上げぬでも御存じだろうと思う。輿論であるとか、空気であるとか、希望であるとかいうものについては、その人の主観によつて相当違つて来る。私は人の所有権を動かす手続を進める——農林省が保安庁に回答するとか、あるいは申出るとかいうことについては、これは一つ手続でありますから、やはりその場合には、所有者の意思を表明する正式の書類がなくして農林省は進められるものではないと考える。ただ注意してやるとか、あるいはどうするとかいうことでは、この問題は私は済まされません。従つてはつきりと本人の意思が明瞭な書類が添付されたものに限つてやるという御方針を、この際御明示願いたいと思います。そうでなくては人の所有権を侵害する危険がきわめて多いのでございますから、明確に願いたいのであります。これはほかにも関係が深いのでありますから、今までのようにずるずるべつたりと権力に押されたり、周囲に押されて、やむを得ずしぶしぶ買収に応じなければならぬような事態にはこれ以上進みたくないのであります。この機会に農林省農地局長としての明確な方針を重ねて伺つておきたい。普通の、ただいままで申されましたような地元の希望であるとかいうようなことで、私は絶対に容認いたしません。
  124. 平川守

    ○平川政府委員 厳密に法律的に申しますと、農林省は一つ一つ農地の壊廃につきまして、その事情やむを得ざるものであるかどうかということを判定する農地法の建前が一方にございます。それから他方におきましては、かりに保安隊でありますれば、これを公用の必要のある土地といたしまして、土地収用法等によつて必要に応じて強制的に収用する道もあるわけでございます。そこで実際問題といたしまして、保安隊の方は保安隊の方でかつてに法律的手続をとつて、それを農林省はまた単に法律的手続によつていい悪いをきめるということになりますと、実際問題として事柄が円満に行きませんし、かえつて大きく農林省がこの地区はやめてもらいたいというようなことを、事実上そういう法律手続の前にチエツクするという作用が十分に行われぬのじやないか。ただいま問題になりましたような、保安隊に対する農林省の意見というようなものは、実は法律的の手続でございませんで、事前にこの土地は大体においてやむを得ざる土地であるか、この土地はぜひ断らなければならぬ土地であるか、そういうことを概略判定いたしまして、大体において断るべきものは、農林省の力でもつて、保安隊が具体的な法律手続に入る前にお断りする。そのかわりにはやむを得ざる土地については、大体において大部分の人が賛成であるというならば、法律的手続を進める段階に認めて行く。そこをある程度大まかでありますけれども、農林省としても全然保安隊に協力せぬというわけにも参りませんので、大きな意味において、大部分のほんとうに困る土地を事前に排除して行くという作用は、やはりこういう法律手続でない事前の方法等によつてつてつた方がいいのじやなかろうかという考えでおるわけでございます。そういう意味から申しますと、厳密に一人々々の賛成ということがあるまでは、農林省としては何らの意思表示をしないのだということになりますと、おそらく大部分の土地につきましては、やはり何十戸ありますと、どうしても一人、二人は絶対反対という人はあると思うのです。そういう場合には、農林省はただ法律的手続が来るまで手をこまねいておるということになるわけでございまして、私どもとしては、むしろ保安隊が事実上かつてに各地に参りまして、そして地元農民なり市町村と連絡をして、いよいよ法律的手続を進めるところまでタツチしないでおるよりは、むしろこういう形において、多少大部分の人の中に不満の人が一部ありましても、ここはまあある程度法律的手続まで入つてもいいところと、ここは絶対困るというしわけをして大きく交渉いたします方が、農地全体を保護する意味から行つて得策ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  125. 井手以誠

    ○井手委員 最後の段階農地全般から見て、必要なものについてだけは許して行こう、あまりひどいものは押えて行こうというあなたのお考えについてはわかります。しかし今現に問題になつている旭川の土地でも、ごく一部の百人のうち一人か二人反対があるというものについては考えなければならぬ点がありましよう。けれども現に旭川の問題なんかは、開拓者はほとんど反対である。もし反対でないならば、それを取次ぐ、法律行為ではなくしても、あなた方は一人々々の意思がわかる書類をもつて保安庁に申し出ることが、他人の所有権を守る道だと私は思う。憲法で保障されておる所有権は守つて行かなければならぬ。それを動かして行こうということは非常に重大な問題であります。ところが農林省が介在して押えて行こうという気持はわかりますけれども、現に今までの多くの土地が、地元の意思に反してどんどん買収されておる。それでも保安庁あたりでは地元が承知したということをおつしやいますけれども、それは大勢がそういうことに追い込んでしまつたということをはつきり私は申し上げたいのであります。そういうことを考えると、今問題になつている旭川の土地だつて、そういうふうに地元の意思を率直に反映することなく、よろしい、誘致したいということは、所有権の侵害であると私は考えるのであります。そういうことについては、やはりもつと慎重にやつてもらいたい。間もなく法制局から見えるでございましようから、法律的解釈につきましては法制局にお尋ねをいたしますけれども農地局としては、他人の所有権という問題、保安隊の公共用だといつて許さなければいかぬということは別問題といたしまして、まず所有権は守るべきだという、憲法を守る立場から、農地局長の確固たる方針を伺いたいのであります。
  126. 平川守

    ○平川政府委員 先ほど申しましたように、なるほど個々の人々が賛成であるか反対であるかということについての判断する材料といたしまして、私どもは一応県庁の意向というものを尊重し、また場合によりましては開拓者の連盟というものにも依頼いたしまして、その意向をたずねるというようなことをいたしておるのでありますが、しかしお話のように、ほんとうに地元農民の意向が正しく農林省に伝わらないという心配は、確かに今のやり方では不十分かと思います。この点につきましては、なお研究させていただきたいと思います。気持におきましては先ほど申しましたような次第でございます。できる限り実際の実情を把握して、真に大部分の農民が賛成でないというものについては、これを断つて行きたいという考えでおるわけでありますから、その真の意向を把握するための方法についても、なおこれを完全にするという意味においての方法につきまして、なお研究させていただきたいと思います。
  127. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、先ほどお尋ねした点は、具体的に農地局が保安庁に対して、第二項の中で所有者全員の土地の譲渡の承諾、かかるものは具備されなければならぬということを強調されておつた点に対しては、相当の配慮がこの中に含まされておると私は思うのです。しかも両当局の法律に基く手続以前の調整という形でかかる了解が成立しておるとすれば、この点は非常に重要な点であると思うのでありまして、それでお伺いしたのでございます。結局局長の方針は、三十六戸全体が収用に応ずる、調達に応ずるという段階まで行つて、初めて用地の処理というものは具体的な前進をすべきであるという考えで、保安庁当局に意思表示をされたというふうに私は考えたいのでありますが、その点は保安庁当局としても、きようはどの程度の責任の方が来ておられるかわかりませんが、この点は率直にそのように了解されて現在まで現地において作業を進めておるのであるかどうか、その点もあわせてお伺いしたいのであります。
  128. 大森頼雄

    ○大森説明員 所有者全員の土地譲渡承諾書を徴するとともに正式の話合いをやつて、それから正式の手続をとれ。これに対しましては、農林省と今話しておりますのは、三十六人のうち三十二人までは、国で買う場合には売ることに承諾するという連判をした書類が出先の第二管区の方に提出されておるという正式の書類が私の方に参つております。これをもとにして農林省にもお話を進めておつたのでありまして、あとの四人の方についてはその後なお了解を得るように話はしておるはずでありますが、了解が得られません場合には、私の方としましても、ちようど用地の区域からいきましてそこは一番端の方になつておる所で、そこだけは区域からはずしまして、そうして賛成をしていただいておる三十二名と思いますが、その方の土地だけで一応がまんしておくよりしかたがない、こういう考えで、出先の実際の調達する機関に今話を進めさしておるものであります。
  129. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう話は大分食い違いがあると思う。とにかく保安庁が二百五十町歩の当該用地を必要とする場合においては、これは最小限度の所要の面積であると思うのです。しかも弾薬であるとか油槽庫等をそこに貯蔵したり設置する場合においては、非常に危険が伴うことは必至であります。そういう場合において、爆薬の上に農地を所有し、それから建物を建て、そこで耕作を安んじてやれるかどうかということが、実際問題として問題になつて来るわけです。それはちよつと考えれば、そういう協力しないのはけしからぬからして、そこだけはずすというようなことでも足りるかもしれませんけれども、安住して農業にいそしむという場合においては、いつどんな事態、火薬が爆発するかわからぬような、そういう憤火口上において農業をやるというようなことは、現実の問題としては不可能であると私は考えるわけです。だからして、農地局では、三十六人全員がこの調達に応ずるという具体的な条件が具備されて、初めて交渉等に入るべきであるということを示されたと、今も局長は言つておるわけです。ところがあなたは、四人だけはまだ賛成しないから、最悪の場合においてはその土地だけははずしてかかる施設をする考えであると言う。これは本質的に食い違いであると私は考えるわけですが、どうですかそれは……。
  130. 大森頼雄

    ○大森説明員 お話の弾薬庫のことにつきまして危険の点でございますが、これはただいまお話ありましたように、農林省からの附帯条件としましても、火薬取締法等の法規に従つて十分安全のようにやれ、こういう条件をつけられております。これが危険であるか危険でないかについては、通産大臣の管轄になつておりまして、私の方は通産大臣に私どもの計画を出しまして、危険であるかないかを照会しております。ただいま通産省の方の担当者が現地を見られまして、私の方の施設、そうしてそれに貯蔵しようとしておるところの火薬の数量が適当であるかどうか、危険の度合いはどうか、法律に照らして私の方に回答をくれることになつております。そうしてそれに許された安全の範囲のことをやるのでありまして、今申しましたようなことは十分注意したことであります。それから先ほど最小限度の面積のはずであるのに、一人あるいは四人の土地をはずせるかという問題でありますが、先ほどからお話申し上げるように、大きな土地でありまして、その一番すみのような所、特定の箇所は、法律に照して、保安距離を十分にとつてつた場合には、そういう危険なことはないということで私の方は計画をしておるのでありまして、あぶないところで仕事をしてもらわなくてはならないというようなことには決してならないように考えております。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは今吉田総理や木村さんが国民を欺瞞して言つておるように、保安隊は軍隊でも何でもないというような形であれば、通産当局が火薬の取締法等に従つてやればいいかもしれぬが、現実はもうそれ以上に発展しておるのです。国民にしろ農民にしろ、保安隊というものは軍隊であるということを知つておる。知つておるからしてかかる設置をするということに対して大きな不安を持つておるのです。開拓農民は、それは話をうまく持ち込んで、相当の対価を払うからもつといい所へ引越して農業をやつたらいいだろうというような、いろいろな甘言をもつて持ち込めば、今まで苦労して農耕しておつた所よりも、経済的に当面は何か救われるのではないかというような安易な判断の上に立つた場合においては、あるいは応ずる者が多少あるかもしれぬ。しかし旭川市に住んでおる、あるいはその近在に住んでおる住民は、この設置に対しては多大なる不安と反対の見解を持つておる。これはほかの施設とはまつたく違うのです。それからもう一つは、まだ同意しないという四人だけが予定地の一番はずれの方におるということは、これはまことに了解に苦しむ点であります。偶然の符合ということがあり得ないということは私は言いませんけれども、あなたの言つたように、四人だけが一番端のすれすれの所におつて、これが敷地の中に入つても入らなくてもいいのだというほど偶然に事態が合致しておるかどうかということは、私は信ずるわけに行かぬのであります。農地当局の見解はそういうのでなくて、この問題は、全員が同意をする事態になつて初めて具体的に取扱つてもらわぬければ困ると言つておるわけであります。ただ現地の事態としては、さつき井手委員が言われたように、旭川市当局はとにかく前から保安隊誘致運動を坂東市長が中心になつてつておる。保安隊さえ連れて来れば旭川市は繁栄するということでやつておるが、これは市民全体がそれを支持しておるのではない。ところがどういう意味かわかりませんけれども、最近旭川市議会においては、弾薬庫並びに油槽庫を近文台に設置するために協力するというような決議をしたと報ぜられておるわけでありますが、こういうことを市議会等が決議することもまつたく了解に苦しむわけであります。これはあるいは保安庁の第二管区でありますが、おそらくそういう管区の出先と市当局の間において、何らかの共同作戦がとられて、そういう客観情勢をつくることによつて、三十六戸の開拓農民に陰に陽にいろいろな形において圧力を加えて、同意せざるを得ないような事態にまでこれを追い込んでおるというのが現在の段階であります。しかし、まだ四名程度の不同意があるにかかわらず、すでに測量にかかつておるという知らせを私は受けておるわけでありますが、そういう事態にまだ入れないはずであるにもかかわらず、その対価をどうするとかいういろいろな問題も全然話をしないで、測量に入つておるというのはいかなる理由であるか、その点も御説明願いたいと思います。
  132. 大森頼雄

    ○大森説明員 ただいまの対価、いわゆる土地その他の補償の話をきめないのになぜ測量をしておるかというお話でありますが、これは売つてもいいという承諾をとつている人たちとの話合いでありまして、どこの測量にしましても、実際耕作をしておる状況がわからなければ幾らになるかということが出ないのでございまして、それで一番初めに土地の測量、実際耕作しておる状況を数字的に調べることが根本なのでございますので、私どもほかでも土地の買収をやつておりますが、どこの問題でもみなそうでありまして、対価は大体坪当りどのくらいだというような話だけは並行的に話合つておりますけれども、対価は測量の終つたあとできめておるのが実情であります。
  133. 川俣清音

    川俣委員 関連して。今の芳賀委員と保安庁の間の質疑応答を聞きますと、保安庁の考え方が、保安庁というものは最高のもので法律の上に存在する、それ以上の力を持つておるというような印象を受けるのです。あなたは首を振りますが、三十六人中三十二人の承諾があればいいのだ、三十二人の承諾があるから三十二人分だけはやれるのだという話です。そうじやないのですか。そういう説明でしたよ。あとの四人は別にして、三十二人はやれるのだという話なんです。農地法の七十三条をどういうふうに解釈しますか。農地法の七十三条というのはどういう意味で規定されているかあなた御存じですか。大分土地を取扱つておられるから、少くとも農地法の七十三条はどういう趣旨でできているかということは御存じなければならぬはずです。そんな法律は知らぬというような顔つきで御説明になつている。それでよろしいか。保安庁のやることだつたら、何も七十三条があろうがなかろうが、どうでもいいのだというあなたの答弁です。そんなことは断じて許されない。あなたは七十三条はどういう趣旨でできているか御承知ですか。御説明願いたい。
  134. 大森頼雄

    ○大森説明員 今私が申しましたのは、正規な手続をとる前の準備として、測量なり賠償の話などをやる。そして話がまとまつてから、売るという人と買うという人が両方連名で農林省の承認をとるのでありますから、それなども連名で承認をとるまでにそういつた手続をふんでいないと、書類ができないのでやつておるのでありまして、法律を無視してかつてにやつておるというわけではございません。
  135. 川俣清音

    川俣委員 七十三条はそういう趣旨じやございませんよ。七十三条ができた根本の趣旨は御理解ですかと聞いておるんです。これは個人の承諾があろうとなかろうと、農地法というものは、国が多くの犠牲を払つて開拓を行い、あるいは自作農創設をしたものであるから、国の意思を尊重しなければならないという建前をとつておるんです。個人の意思じやありませんよ。だからあなたは七十三条を知つておられるかと聞いておる。個人の承諾があるとか、調べることができるとか言つておるけれども、七十三条は個人の問題じやありませんよ。なぜ農林大臣の許可を要するかというと、国の意思を問うているんですよ。国がこれだけ大きな犠牲を払つたものであるから、ここに初めて規定が生れて来ているんです。農地局長は七十三条をどういうふうに理解しておりますか。
  136. 平川守

    ○平川政府委員 これは申し上げるまでもなく、国としての農地の確保、開拓地の確保というような趣旨から来ておるわけでありますから、個人がいいと言つたから必ず許可があるものでないことは御承知通りであります。
  137. 川俣清音

    川俣委員 今農地局長の答弁の通りです。あなたはそれを理解していないからあなたのような答弁が出て来る。個人の承諾があつたとかなかつたとか、問題はそれ前の問題です。いかに保安庁といえども、国の根本策を曲げていいということはないんです。そういうことをするから問題なんです。何か保安庁というものは国の最高の機関だという考え方で、保安庁の要求であれば何でもできるのだというような考え方で、個人が承諾をすればいいんだとか、対価を払えばいいんだとか、それでは農地の保全ができないんです。食糧の確保ができないんです。保安庁の隊員だつて飯を食わないでやれるか。この食糧の基本を片づけなければならないという問題なんです。この基本を無視して何ができるか。この基本の上に立つて初めてすべての施策が執行されておるんです。個人が高く売りたいから売つていいんだなどと言つたら、日本農地はみな壊廃しますよ。それは犠牲を払つて安い食糧をつくるよりも、他に転用した方がどれくらいいいかわからないという農民がたくさんおりますよ。私は今農民の利害のために問題を論じているんじやないんです。いかにして日本の食糧を守るか、増産をするかということが、日本に課せられた最も大きな任務であるという点からあなたに尋ねているんです。日本の防衛だと言うけれども、食糧を守らなくて何で防衛ができるんです。わずかな土地をも高度に利用するという考え方を持たないで、兵舎をつくればいいんだ、請負師のために兵舎をつくるというようなやり方を、保安庁はやつているんじやありませんか。請負師の便宜のためにあえて土地をつぶすことさえある。行つて見てごらんなさい。保安庁の兵舎をつくる場合に、どんどん人の耕地の上にいろいろなものを持つてつて、食糧増産どころじやないですよ。荒らしているじやないですか。請負師の便宜のためにあらゆる努力を保安庁は払つておる。なぜ食糧確保のために努力を払うという気にならないのですか。この点御説明願いたい。
  138. 大森頼雄

    ○大森説明員 七十三条でおしかりを受けたのですが、そういうことで七十三条がありますために、先ほど私の説明が悪かつたかもしれませんが、個人の承諾を得て測量を始めるといつたその前に、農林省の方と連絡をとりまして、農林省の方から大体そういう話をしてもいいという了承の回答をいただきませんと、実際の取得というような事務には入ることができないことになつておるのでございます。従つてそういう先ほどから問題になつておる農林次官からの了承をいただいてから、ほんとうの折衝に入つて行くわけでございます。そういうことを今まで御趣旨の通りつて来ておつたつもりでございます。それから今の工事をします場合に、業者が農地をつぶすのを保安庁が援助してつぶしておるようにお話でございましたが、これは大きい工事をやります場合に、そういう事があるのかもしれませんが、それはなお調べまして、よく注意をいたしたいと思います。
  139. 川俣清音

    川俣委員 そういうことがあるかないか、そういうことを行う場合に、あなたはどこへでも行つてごらんなさい。必要以上に短期間に業者に請負わせて、能率を上げるために犠牲を払つていると思うんです。なるほど短期間に隊舎を建てることもそれは必要でしよう。しかし一年間に一回か二回しか作物がとれない土地を、重要な期間に荒らすということも、それ以上また大きな損害だということを考えなければならぬ。何でも保安庁のものは優先的に早く建てなければならぬのだ、そのためには農地や耕地が幾分荒されても、食糧増産が侵されても、隊舎だけ早くできればいいのだという考え方でやつておられることについての糾弾的な質問なんです。調査しなければわからないというようなことではありませんよ。あなたは一ぺん土地を買収して、そこへ隊舎を建てる場合に、あとをごらんにならないのですか。ごらんになつたら必ずわかるはずです。こんなことが調査しなければおわかりにならぬですか。私は何千何百町歩という正確なことを言つているのじやないんです。およそそういう場合が非常に多いということです。あなたは少いというお考えですか、多いというお考えですか。保安庁の施設以外にはこういう例は少いんです。この点についての御見解を……。
  140. 大森頼雄

    ○大森説明員 保安庁の工事の場合が特に多いという御質問でございますが、ただいままでの新しいキヤンプなどをつくつておりますのは、六割以上建設省に委託して全部やつてもらつておるのでありまして、建設省でやつておる場合に、保安隊の場合が特にそうだつたということは私もよくわからないのでございますが、相当辺鄙な所へ建てた施設などもございますので、そこへ行くまで急につくる道路とか、いろいろなことで御迷惑をかけておる点があるかと思いますが、ただいま御指摘のような点はよく調べてみなければわからないと申し上げたのであります。
  141. 川俣清音

    川俣委員 特にこの際あなたに御注意しておきます。それは仕事は建設省でやつておられる場合がたくさんあります。しかしながら期限をつけておるというのはあなたの方の責任です。問題は期限から来ていると思うんです。もう一つは、速度を早めるために相当重量機械を運んでおります。いなかの農道や村道にかかつてつて、十トン以上のものは通れない橋を、保安隊の旗を立てて通つておるじやないですか。あれは請負師が通るのじやない。保安隊用だということで通つておる。重量の制限があるはずの橋を平気で渡つておるのは保安隊だけです。ほかの営業トラツクでも通つてごらんなさい、たいへんなおしかりを受ける。そのために村道の小さな橋がどのくらいいたんでおるか。大体村道あたりは十トン以上の重量物を運ぶには不適当なんです。四、五トンのトラツクが通ればこれも危険なものです。食糧増産の上から、食糧確保の上から相当急いで四トン半くらいのトラツクを使いますけれども、それも食糧輸送のためにするトラツクの荷を軽くして通つているような状態です。そういうことを平気でやつておられるような考え方で、この農地問題を取扱われちやいかぬという点を私は指摘しているのです。脱法行為であろうと何であろうと許されるという考え方ですべてのものを処理してはいけません。この問題も同様な考え方のもとに立つているのではないかということを指摘したい。明らかに重量制限のあるところの橋をこわしておるのはたくさんあるじやないですか。私は今数点を指摘してもいいですよ。しかも通る前ににわかに支柱をやつてそのものが通ればいいだけの手当をして、あとはほうりつぱなし、こわれたままです。請負師に交渉すると、保安隊へ交渉してくれ。建設省に交渉すると、それは請負師がやつたことだと言う。請負師がやつたことであろうと何であろうと、それを通すことが計画の中に入つておる。そういう重量機械を運んで何日に仕上げるということがちやんと計画の中に入つておる。だから請負師がやつたことじやない。もちろん直接の責任者は請負師ですけれども、それらの重量機械を運んで行く計画ができておる。そうでなければそれだけの能率が上らぬということになる。だから責任はなしとはしないわけでありますが、そういう観点農地問題を取扱われたのではまことに迷惑しごくなんです。従つて農地局長も、単に保安隊だからということで、せつかく農地造成のためにあなた方が全部の機構をもつてどれだけ熱心に農地調整をはかつても、農地調整をはかつておられる一方においてどんどん壊滅されては困るじやないですか。従つて保安庁のわがままもあえてこれを制限されなければならないということは、私は局長の任務だと思う。どれだけの陣容をもつてつても、農地の造成というものはなかなか困難だ。また国がそれだけの犠牲を払つておるのです。従つて農林大臣にそれらの権限を与えておるのは、単に保利農林大臣に与えておるのじやないのです。国家的要務を負わせておるのが農林大臣という表現になつて来ておる。従つて農地局長もその意を受けて、農地造成と保全のために最大の努力を払わなければならぬ任務を負わせられておると思う。万遺漏ないとは思いますけれども、芳賀委員から切々なる希望でもありますので、十分これらの意を体せられるようにお願いいたしたいと思います。
  142. 足鹿覺

    足鹿委員 今までの経過から一点だけぼくは農地局長に伺つておきたい。今までの御答弁をずつと聞いておりますと、よほど前でありますが、農地局が次官通牒かあるいは局長通牒かしりませんが、地方の方へお流しになつた趣旨と御答弁が違つて来ておるんじやないか、相当農地局は軟化しておられるんじやないかという印象を私は持つ。それは、農林省当局は、駐留軍の演習地の問題、保安隊の演習地の問題については、どうも現地が保安隊の出先と話合いをしてしまつて困る。現地同士の話合いはなるべくやらさないで、事大きな農地の開発問題であるから、農林省が直接その衝に当つて判断をするように方針を立てておる、こういう御答弁をこの農林委員会でしばしばなさつた。私は確かにその方針はいいと思つて、今までその方針が貫かれておるものだと思つてつたのですが、今までの芳賀委員なりその他の委員との間の旭川弾薬庫の用地問題の質問応答を聞いておりますと、現地で話ができておる。それを農林省へ持つて来ておるから、現地がよろしいと言うのであるし、大部分の者が賛成しておれば、これはやむを得ないではないか、こういうふうにかわつて来ておるんじやないかと思う。農林省は新たな方針を立てて、農地の地目変換については厳重な制限を加えるという方針を先般来お立てになつておる。それが保安隊なるがゆえに、あるいは保安隊関係なるがゆえに、その地目変換については寛容に臨んで行く、市街地の近郊その他において地目の変換をすることについては厳重な制限を加えて行くという方針を一方において立てながら、事保安隊関係についてはきわめて寛容な態度で出るということは、農林省に一貫した基本方針が欠けておる、あるいはあつても方針が漸次くずれておるというふうに、遺憾ながら私は疑わざるを得なかつた。都市近郊地における地目の変更については厳重な制限を加えながら、一方においては、保安隊関係についてはそういう態度で臨まれるということになりますと、その目的によつては常に農地の地目変換についての農林省の毅然たる態度がない、こういうふうに私は今までの質疑応答で聞きましたが、この点はどうでありますか。最近長野県の有明地区の問題にしても、あるいは愛媛県温泉郡小野村の問題にしても、今回の旭川の弾薬庫の用地の問題にしても、りつぱな農地である。しかも開拓する前には、軍用施設であつたものを開拓して、ようやくそれが成果を収めた今日、また逆転して保安隊関係の用地にかわつて行く、こういう事態のようであります。農林省は農地を保護し、そうして農地法の精神を貫くために、一体どういうお考え方を持つておるのか、特に農地をことさらにつぶさなくても、保安隊関係の要請が——私どもは保安隊については絶対に容認するものではありませんが、別に農地をつぶさなくてもいいのに、適地を求める努力を一つもしないじやないか、常に安易な方向へのみ持つて行く。そういう方針が今後とられますならば、これは恐るべき事態を今後招来すると私どもは心配するのです。その点について、農林省は、出先を抜きにして、保安隊の出先あるいは保安庁との間において話合いをする、こういう精神は捨ててしまつたのですか。現地の折合いがつけばそれでよろしいのでありますか。これは私従来の経緯を見ておつて、非常に農地局の態度が軟弱になつておるのではないかという印象を受けるのです。その辺をもう少し、食糧の自給の問題、一方において外資の導入までして、大きな農地開発あるいは用水の改善というふうなことを一面においてやろうとしておる今日、一体こういうぐらぐらした農地行政の方針で、日本の農民が安んじて営農に従事することができるでしようか。防衛二法案が通過した今後のことを考えてみますならば、まだまだ恐るべき結果が全国にわたつて出て来ると思う。今あげました三つの、旭川あるいは長野の有明地区、愛媛県の温泉郡の小野村の問題にしても、ことごとくりつぱな農地じやないですか。そういう点について、これはもう少し農地保全の立場と同時に、農地法の精神というものを毅然たる態度で守る、こういう基本の上に立つならば、百歩を譲つて弾薬庫なりあるいは演習地の必要の場合があつても、他に適地を求めることができるのではないか。私はそういうふうに思いますが、もう少しこの点については、農地局長は真剣なる御反省と御検討を願いたいと思いますが、従来の方針をこの際おかえになつたのか、今後一体どう対処して行かれるのか、この点を伺つておきたい。
  143. 平川守

    ○平川政府委員 従来の、出先だけで交渉せずに中央で話をきめて行くという方針につきましては、かわりがありませんが、なお農地を守つて行くという問題につきましては、もとより各種の工場とかあるいは住宅地の場合、あるいは保安隊の場合、それぞれ目的が違いますけれども、国家的に見ての必要やむを得ざるものに限るということにつきましても、かわりはないつもりでおります。従いまして保安隊用地にいたしましても、この具体的の旭川の問題にいたしましても、極力他に適地がないかということを探したわけでございます。しかしいろいろの関係上他に適地がないということでありますので、その点はやむを得ないものと考えております。なおしかし、この地元の農民の考えとかその他につきましては、これは出先同士が直接交渉するということでなしに、農地局から道、あるいは道から市町村に対して、これをその立場において調べておるわけでございます。農地省としては、出先のそういう状況は、それらの機構を通じて報告を受け、判定をするということにいたしておるわけでございます。しかしそれはそういう立場から実情を調べるということでありまして、保安隊の方との交渉はあくまでも中央でやるという考え方でおるわけであります。ただ実際問題として、ひとり保安隊だけでありませんけれども農地の壊廃に対する要求が各方面から起つて参るということについては、われわれといたしましても非常に心配いたしておるところでありまして、これを極力最小限度にチエツクするということについては、なお新しい方法考えなければならぬじやないかということを考えておるのでございます。なお実際問題といたしまして、地元の話合いということよりも、積極的に地元の方で、こういうあるいは保安隊あるいは工場等の誘致運動というのがありまして、これが実際問題として私どもの方には非常に困つた問題でございます。先ほど川俣委員の御質問にもございましたように、もとより農地というものの公共性から判断いたしまして、その壊廃の判定をいたすのでありますけれども、実際問題として、そういう地元の希望が圧倒的に多い場合におきましては、農林省としても、これを押えるのに非常に骨を折る状態に、実情としてある場合が相当あるということでございます。しかしわれわれといたしましては、農地をつぶすということは、必要やむを得ざる最小限度にするということで、その方針はあくまでもとりまして、具体的の個々のケースにつきまして、先ほど申しましたように、他に適所がないかということについては、十分に調査をするという建前をとつておるわけであります。御質問のように、農林省が非常に軟化したのではないかというふうにお受取りになつたかもしれませんが、必ずしもそういうことではないと考えております。
  144. 足鹿覺

    足鹿委員 健全であられるようでありますが、どうも傾向が少しかわつておるのではないか。これは大勢とでもいいますか、一つの風潮がそういう方向をたどつておる。従つてこれはただ単に農地局長の責任を私どもが追究するということではなしに、基本的な問題だと思うのです。今の御答弁の中にも、何か新たなる基準といいますか、そういつた点についても考えなければならぬじやないかという趣旨の御答弁がありました。これはぜひこの際真剣に御考慮になるべき点であろうと思うのです。現地の誘致運動ということに抗し切れない、それは一応あなた方としては、現地の声がそうだ、こういうふうになれば、どうも地元が賛成しておるのにこれをとやかく言う筋合いはない、こういうふうになるのですが、得てして農民の場合は、金もないし、また何ら有力者を動かすすべもない。いよいよ問題がぎりぎりまで来たときに事の重大性に目ざめてびつくりする。あるいはまた長野県の有明地区のように、元軍人が百姓をするのがいやになつて、反当陸稲九俵もとれるようなりつぱな土地をみすみす保安隊に出すことの、積極的な運動をするような人たちが出て来る場合もありましよう。しかしこれは例外でありまして、やはり問題がいよいよぎりぎりになつて、初めて百姓はわかるのです。それをただ単に一部の要請を、地元の声だ、誘致運動だ、こういうふうに判断して全体を誤り——事ごとのケースによつて、あなた方が一々情勢判断をされるということは、今後こういうケースがたくさん出て来る場合に、非常に事実の判定を誤られ、また守り切れない場合もあろうと思う。そこで、これはどうしても基本的な問題として取上げて対策を立てなければならぬ。あるいは必要によつては、この問題を中心に具体的な対策をどう立てるかというようなことについて検討の機関をつくつて、あなた方がよく今の考え方を守つて行かれるような手段を講じて行くということも一つ方法でしよう。これはただ単に旭川で起きているからということじやなしに、今までは予備隊であり保安隊が今度は自衛隊、しかも今度は陸海空の三軍の均衡兵力を持つということになつて、急速に大きくなつて行きます。これを今までの予備隊、保安隊程度に関係したこととして、ただ単に放置することはできないと思うのです。基本的なものを立てなければ、もう守り切れない段階が来ている。これはきようは大臣がおいでになりませんから、これ以上は申し上げませんが、主管局長としては、これは重大な問題だという点に十分お気づきになつて、基本的な対策を確立してもらいたいと思います。  いま一つ保安庁の土木課長にお尋ねをいたしますが、今度の旭川地区の弾薬庫の用地は全部で何ぼになりますか。そして四戸除いたと言われますが、その四戸分除いた面積は何ぼになつておりますか。また今後こうした弾薬庫等の新設あるいは拡築というようなことについて、現在どういう計画を持つておるか。ただ保安庁は必要によつてやるのではないでしよう。一定の計画を持つて次々とこれを実施して行くでありましよう。それらに対するところの現在判明しておる資料をあわせてこの際御発表願いたい。
  145. 大森頼雄

    ○大森説明員 拡張の計画というお話でございますが、拡張の計画はございません。今この問題の用地は全部で二百十七町歩でございまして、この四戸の分を除くと、先ほど申し上げましたけれども、農林省の書類をいただきましてから現地で話合いがどのくらい進んだのか、詳しい報告がまだ来ておらないのでありますが、できるだけ了解を得られれば得て、全部やるということで、どうしても得られない場合には二戸になりますか、四戸になりますか、それだけはやむを得ないから除いてやるつもりでありまして、四戸分除いて幾らになるかという数字は、そういう御質問がきよう出ると思つておりませんでしたので、持つて来ておりません。  それから全国の弾薬庫の計画でございますが、全国のは、北海道の旭川に一箇所、それから札幌の方面管区に一箇所、第一管区としまして仙台に一箇所、第三管区では岡山の近くの元の陸軍の弾薬庫のあつた跡でございますけれども、それが一箇所、それだけしかきまつておりません。あとは九州の管区にも一箇所欲しいのでございますけれども、まだきまつておりません。
  146. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は努めて具体的な点だけをお尋ねしているのですが、先ほど大森土木課長のお話の中にもあつたように、最悪の場合においては不承諾の分だけを除外して弾薬庫をやるということですが、これに対しては平川局長はどういうお考えですか。たとえばまん中にあつてもそこだけ除外された場合においては、その農地は確保されているから安心だという考えで保安庁に協力する考えを捨てないつもりですか。
  147. 平川守

    ○平川政府委員 もとより一つの弾薬庫としてまとまつた地区が必要であり、それが安全に他に迷惑をかけないという一定の条件を要求しておるわけでございますから、そういう大切な条件は満すということでなければならぬわけであります。従いましてこの地区のまん中に四戸分があつて、それだけのけたからよいということにはならない。ただ全体の地区において、先ほど保安庁の方からお話がありましたような、非常に端の方の部分で、これについては除いても全体としてさしつかえのない、安全でありかつ目的を達するだけの弾薬庫が設置できるということであればこれはさしつかえない、こう思つております。
  148. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは具体的に申し上げて、たとえば二百五十町歩の総面積全部が弾薬庫になるのだとは私は考えておらぬのです。だから二百五十町歩という面積は、弾薬庫を設置した場合において、いわゆる保安危険地域というものではなくして、その地域内の既存農家は、やはりそこから立ちのかなければならぬという推察の上に立つて二百五十町歩は必要であるということになるのではないかと考えるのです。だからほんとうに弾薬庫だけを設置する地籍というものはそれほどは必要ないということは、最初から明確だと思います。しかしその弾薬庫を設置することによつてこの区域だけはどうしても危険でもあるし、保安上これは撤去させなければならぬという考え方の上に立つての二百五十町歩であると思うのです。そうすると今度は、不承諾の場合においてはそれだけ除外すればいいということになつても、その危険地域の中にその農家は残されておるということは、これは除去することのできない現象であると考えるわけでありますが、そういうような個人の住居に対する安全をさえも脅かすような形の中において保安庁まかり通るという、こういう思想的な考え方は私は容認することができないと考えるわけでありますし、そういう考え方でこれを進めんとするならば、せつかく農林当局が示された第二項の円満なる解決ということは至難であると判断するわけでありますが、この点はいかがでありますか。
  149. 大森頼雄

    ○大森説明員 今のお話通りでございまして、保安距離を考えましたために、非常に大きな面積になつたのでございますが、先ほどからお話に出ておりますように、この区域の中に弾薬庫とそれからもう一つ燃料の貯蔵をいたしますタンクをつくる、その施設を両方つくることになつております。それで全部の面積がこれだけ必要になつておるのでございますが、今お話のような保安距離から考えまして、危険区域の中に一軒でも入つておるということになれば、弾薬庫の施設はできないわけであります。私どもの方では今まで現地を実際に測量したものではありませんので、ただ目で見ただけの計画の大体からいつて、それは危険区域に入つておらない、こういう報告に基いて計画を進めておつたのであります。そういう危険なものを残すというようなことは考えておりません。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、必要でない土地を最初から予定されておつたのですか。そういう危険でもないし必要でもない、たとえば四戸分にしても何のためにそういうところを予定地に入れて、これだけはどうしても必要だという要請をされたのか。今になつて見れば必要でもないし、危険でもないという場合には、何もそれを接収する必要は最初から生じておらぬ事態であつた。ただ調達に応じないというからそれは除外してやるのだという先ほどの御答弁とただいまのお話は、相当ずれが出ておると考えますが、その点はどうなつておりますか。
  151. 大森頼雄

    ○大森説明員 大きい土地を買います場合には、私の方としてはやはり区域を図上で線を引いたりして計画するのでございますが、この点これだけあれば施設全体としてはまとまりがよくて計画上非常に都合がいい、しかしこれだけはなくても、不便はあつても施設としては目的は達し得られるという土地はままあるのでございます。従つて大きいものを計画する場合には、全体としてこれだけあると非常にまとまつて警備その他の面からいつても非常にぐあいがいいという土地はあつても、特殊な場合においては一部だけはどうしても除かなければいけないという場合には、不便を忍んでやるわけでありまして、全体の目的は達するわけであります。
  152. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合に、最初は予定しておつたけれども個人が了承しない場合には除外するというときには、今後残つた農家の将来の経営の安全、あるいは保安上の危険からこれを守つてやるという問題は、保安庁当局の責任においてやられるべきであると考えますが、その点はどうでございますか。お前たちはかつてに収用に応じなかつたのだから、保安上の危険や何かに対してはこちらは責任を負わない、経営上の問題等に対しても、便益は提供しないというような冷淡な態度でおそらく臨まれると思いますが、そうではありませんか。
  153. 大森頼雄

    ○大森説明員 そういう意味ではありません。区域は通産省の方で調査してもらいまして、危険区域に入りますと、通産省の方でもつて許可がおりませんで、ちやんとその条件に合つてから向うから承認が参りまして、それで施行するようになつておりますので、危険というようなことに対しては、私どもは十分注意しているわけであります。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 通産省の承諾というのは、農林省の、個人の農地を半ば権力的に収用するという形より、むしろ非常に微温的だと思うのです。個人が現存して所有しておる土地さえも、すでに農林省はそれを調達することに了承を与えておるというような場合においては、通産当局は、おそらくそれほど真剣に筋の通つた態度でそういう意思表示というものはやらないと私は考えるのです。だから問題は、こういうような半ば権力的に既存の農地を収用する場合においては、もちろん第二管区自体としては、なるべく近くの場所で、便利がよければいいという考え方から出発しておるかもしれませんけれども、でき得ればこういう農地の壊廃等を行わなくても、他に第二次的な適地というものが絶対にないということではないと思うのであります。それから地理的条件から見ても、近文台の背後地になつている所は国有林がありまして、たとえばそういう国有林等を使用することになれば、三十数戸の農家、あるいは二百五十町歩にわたるような既存の農地を壊廃しなくても済むという事態にもなるわけです。ただ問題は、距離的に少し遠いので、そういう所では不便であるというような理由で、強引に近文台をものにしようというような考えであると思いますけれども、こういう点は、やはり現地の実情等を十分考慮して善処されるべきであるし、農林当局の方においても、これにかわるような候補地等の選定等に対しては、もう少し具体的に、積極的な努力を払うべきであつたと私は考えるわけであります。そういう点に対する農林当局調査等は、行われておりますか。
  155. 平川守

    ○平川政府委員 もちろんこれにかわるべき土地につきましては、先ほど申し上げましたように、いろいろ調べておるわけでありまして、ほかにもいろいろあの付近を調べたわけであります。しかし保安隊の方で、輸送上あるいは管理上、どうしてもほかでは困るという御意見でありますので、その点は譲つたわけであります。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、農林省自体の判断としては、他にこれにかわるべき地域があつたということですか。
  157. 平川守

    ○平川政府委員 農林省といたしましては、こういう問題についてはしろうとであるわけでありますから、その付近の土地で、これはどうか、これはどうかというようなことを申すわけであります。しかし専門的に、それではどういう関係で困るとか、いろいろな技術的な問題が出て参りますと、こちらとしてはそれに反駁することもできないわけでございまして、それぞれの替地については保安隊の方も十分一緒に調べてくれるわけでございますが、しかしいろいろな技術的な条件からこれでは困る、こういうことでありましたので、ただいまのお話の国有林等も、保安隊としては困る、こういうことになりました。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま局長は、専門的な立場でないからというお話でありますが、現在政府が言つておる通り、これは軍隊でない、保安隊くらいであれば別に専門家が見なくても判断はできるはずです。これは軍隊であると明確に言われれば、軍事上の必要から考えるという専門的な叡知は必要になつて来るかもしれませんが、別に軍隊でも何でもない単なる保安隊、どれほど役に立つかわからぬ程度のそういう保安隊が、弾薬庫をどこかへ設置したいというような場合においては、単に設置できる場所であるということで事足りるのではないかとも考えます。とうとい二百五十町歩のせつかく開拓された農地を、本人が同意するということでなくて、そういうような情勢に追い込んで、そして本人の意思がそうであるから収用するのだという結果をつくろうとするだけであつて、今日においてもいまだこの四人の同意しない開拓農家に対しては、保安隊の管区あるいは関係当局が毎日のように説得に当つておるというような実情なんであります。そうしますと、どうしても同意しない地域は買収しなければならない必要性がある場所であると思うのであります。今大森課長が言われたように、除外しても何らさしつかえない地域である場合においては、今日執拗に買収しようという努力を払う必要はいささかもないと私は考えておるわけであります。特にこの文書の中においても、近文台の初代の開拓者は、調達問題惹起以来不安動揺のため、開墾営農の渋滞を来し、土地改良事業も一時中止のやむなきに至り、直接または間接に被害を受けているので、すみやかに安定農家確立のため、支庁においても開墾作業、農道の改修、暗渠排水等の土地改良事業に対する援助を供されたいということさえもあなたの方から保安庁に文書を送つておるわけです。このようにして、非常な不安と動揺の中において弾薬庫問題というものは取扱われておるわけであります。だからもう少し具体的に農地当局としても、農民の立場の上に立つた、しかも本人の土地の所有の尊厳を侵されないという立場の上に立つた努力というものが、どうしても必要であるというように考えるわけでありますが、かかる農民の当面しておるところの安定農家の確立、営農に不安と動揺のないような事態を確立してやるためには、どういうような措置を講ぜられようとしておるか、その点をお伺いします。
  159. 平川守

    ○平川政府委員 これは結局すみやかにただいまの懸案を解決いたしまして、立ちのく者につきましては、それに対する替地その他の問題を解決いたし、またただいまの反対の四戸については、安全なと確信のある設備をいたしてこれを除外するか、あるいは絶対に必要であるならばなおよく説得して買収をするとか、早くこれを解決いたしまして、そして残る者、また立ちのく者についてそれぞれの安定した策を講ずることがいいのではなかろうか、かように考えております。
  160. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ここで私が申し上げておきたいことは、当局にもお話いたしました通り、今度の問題に対しては、北海道庁当局が非常に消極的な態度であるということを私は指摘したいのであります。当然地方自治体の地域内におけるかかる重要な問題を処理する場合において、明確な意思表示ができないというような点は非常に遺憾であります。この問題をただ単に農林省当局だけにゆだねて、その結果から生ずる事態に対しては責任を回避する態度をとることは、非常に避けなければならぬ態度であると考えるわけでありますが、しかしながらまた道庁においてかかる態度をとらざるを得ない立場に至らしめておる諸般の情勢というものも、一応考慮に入れなければならぬと考えるわけでありますが、そういう場合に一番必要なことは、やはり農地法等に基く個人の農地の所有に対する明確な尊厳の維持ということは、あくまでも最後までくずさないようにしていただきたいと考えておりますし、特に北海道のこの地方における耕作の状態というものは、今まきつけ前の繁忙期になつておりますので、こういう事態から不安が生じて、せつかくの営農もできないということになると非常に遺憾であります。ことに旭川市の事態というものは、先ほど申し上げた通り、これは単なる市の繁栄というだけの考えで、非常に積極的な保安隊誘致運動を展開しております。ことにこの二百五十町歩というものは、私の判断では採草地等のそういう農地がある程度の面積を占めておつて、この土地の所有というものは旭川市における有力な人物の所有に帰しているような状態でございます。だからして弾薬庫の敷地にする場合において、ほんとうに専業農家でないような人たちは、自分の土地を最も高い価格で処理したいという、そういう打算の上から出発して、他のまじめな農家をひきずつて、売渡しに応ずるという事態まで問題を展開しておるやに想像できるわけであります。さらに最近における保安隊の動きというものは、昨年の秋アメリカのニクソン副大統領が来て、奈良県において農家の次三男対策については、これは保安隊に入隊させればいいじやないか、こういうけしからぬ発言さえしておるわけです。せつかく国が多大の経費を投じて、農地を造成した、それをまた収用して壊廃をして、農民を窮乏に陥れる結果が、保安隊に志願せざるを得ないような事態にまで追い込むということは、非常に悪循環がこういう形の中から出て来ると私は考えるわけでありますが、どうか局長におかれても、いま一段と現地の実情というものを十分検討されて、市当局であるとか、あるいは第二管区が無理な事態の中で、強引にこの問題を処理しようというようなけはいがある場合には、断固たる立場の上に立つて、農林当局の意のあるところをぜひ示していただきたい。そういうことを私は期待いたしまして、今後の処理に信頼して行きたいと思うのでありますが、これに対する御見解があればこの機会に御表明願いたい。
  161. 平川守

    ○平川政府委員 まことに御同感でありまして、私どもはそういう気持でやつておるつもりでございますが、たまたま本件につきましては、道庁の態度も明確でなかつたしということで、地元の意向なりを判定するについても必ずしも万全でなかつたかもしれませんが、なお道庁ともよく連絡いたしまして善処したいと思います。
  162. 中澤茂一

    ○中澤委員 ちよつとお尋ねをしておきます。さつき農地局長から土地収用法に関連してのお話がありましたが、保安隊の場合に公共の用途、特殊用途の適用ができるのですか、できないのですか。できるとすればその根拠は一体どこにあるのですか。
  163. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私法制局の者でございますが、ただいまの点、私ども考えを申し上げておきますと、御承知のように土地収用法第三条には、ここに列挙されておりますものは、国の事業のためにはこの法律によつて土地を収用し、使用することができるというふうに書いてございます。そこでその第三条に掲げられております各号列記の中のどれかに当らなければ、もちろんそのために収用するということはできないわけでございますが、第三十一号には、国が設置する「庁舎、工場、研究所、試験所その他直接その事務又は事業の用に供する施設」、ということを掲げておりますので、その中に入るのではなかろうかと一応考えております。
  164. 中澤茂一

    ○中澤委員 では保安庁はその三条の中に入るのですか。保安庁がやるのを百姓がいやだと言つたら、どかんどかんと強制収用ができるのですか。
  165. 高辻正己

    ○高辻政府委員 それは強制収用のことでございまして、他の場合におきましても、おそらく自由意思にまかせればいやであつたろうという場合につきましても、収用法の規定に従つて収用されるということがあり得るわけでございます。
  166. 中澤茂一

    ○中澤委員 それでは保安庁にお伺いいたしますが、いつそそんなめんどうくさいことをやらないで、ぱつと収用したらどうですか。話合いとかなんとかいうようなことはめんどうくさいから、百姓だつて何だつてアメリカのボロ鉄砲の練習にはよいからどかんどかんやつて収用したらどうですか。そういうような収用をする意思がありますか。
  167. 大森頼雄

    ○大森説明員 収用法はいわゆるやむを得ない場合でありましても、ちやんと手続を済まして収用法を発動してやつてもそれから片がつくまでに相当な時日を要するので、なおその間において、私の方では最後まで話合いをつけて、なるたけ発動はしたくない、今のところは最後まで話せということで、話合いで進んでおります。
  168. 中澤茂一

    ○中澤委員 収用するのは、時間がかかるから収用法の適用はしたくない、話合いで行きたい。時間さえかからなければ腹の中では収用法でもつてやつつけてしまえ、こういうようなお考えですか。
  169. 大森頼雄

    ○大森説明員 そうではございません。
  170. 中澤茂一

    ○中澤委員 いま一点ちよつと明らかにしてもらいたいのだが、有明の問題のその後の経過と、今日までの反対者と賛成者との交渉経過はどうなつておるのですか。
  171. 大森頼雄

    ○大森説明員 有明の問題は、賛成者は——数をちよつと今資料を持つて来ておりませんからわかりませんが……。     〔委員長退席、芳賀委員長代理着席〕 坪数でもつて覚えておりますが、約四十万坪ばかり所有しておる人たちだけには賛成をいただいておるように記憶しております。これはまだほんとうの下話でありまして、正式には進んでおりません。
  172. 中澤茂一

    ○中澤委員 あれはどこまでも強行しますか。
  173. 大森頼雄

    ○大森説明員 私の方の松本部隊の演習場は、ちようど一年ぐらいになりますから、県にもお願いし、松本市にもお話して、あの辺の四、五箇所、よさそうだというところをずつと探して歩いたのですけれども、なかなかどこもきまらなくて、最後にあそこに行つたという話でありまして、話がつけば何とかしてほしいというところでございますが、反対の方がございますので、やはり十分な面積でなくてもがまんして、小さいもので間に合わしてやつて行きたい。しかしこれは今お話がありましたように、非常にむずかしいようでございまして、出先の方で一生懸命にお願いしている途中であります。
  174. 中澤茂一

    ○中澤委員 さつき芳賀委員の言つたところは、偶然の一致か何かしらぬが、二百五十町歩のうち端の方に四軒ある。ところであそこはまん中が既耕地で開拓者じやないのです。そのまわりに松本連隊を除隊になつた将校連中が入つた。ところでそのまん中の既耕地にいる前からの純粋の農民は、絶対にこれは離さないと言つているのが十四軒あるわけです。まわりの将校は敗戦になつて土着した兵隊ですから、早く浅間温泉あたりでパチンコ屋でもやりたい。百二、三十万もらえるというので、運動を始めた。今絶対に売らないというのが計画のまん中にある。これをどうしますか。どうにもならないと思う。まん中に人々がいるんだから、鉄砲を撃つわけにも行かない。この場合やめるよりしようがないと思うが、どうしますか。
  175. 大森頼雄

    ○大森説明員 有明は、私の方で言う大きさで、大中小にわけますと小さい演習場——演習場というのも悪いかもしれませんが、あそこでは銃を撃つたりするような演習はさせないことになつております。そういう演習場はみな二十五万から三十万前後ということになつておりますので、小銃など撃つてはあぶないような小さい演習場では、訓練計画としては実弾は一切使用させないことになつているのでございます。  それで今お話の、中に一部入つているというのは私も聞いておりますが、そういう場合には買つても使えないのではだめですから、やめるよりしようがないのでありますが、あるいはいい土地と交換して、端の方とそういう話でもつけば使えるようになりはせぬかというようなことで、いろいろ話をしているわけであります。
  176. 中澤茂一

    ○中澤委員 非常にいいことを聞いた。鉄砲は絶対に撃たないんですね。
  177. 大森頼雄

    ○大森説明員 そうです。
  178. 中澤茂一

    ○中澤委員 ところが地元へ行つて聞いてみると、鉄砲を撃つと言つているのです。鉄砲は絶対撃たない。ピストルも撃たないということをいま一度はつきり言つてください。
  179. 大森頼雄

    ○大森説明員 私は演習場の説明をしておつたのでありますが、小さい演習場では実弾は撃たせません。今の有明演習場では、演習場の一番端の方に射撃湯を計画しているのであります。射撃場というのは、射場をつくつて土塁を築いた、昔からある標準の形になつている射撃場でございます。現在松本部隊は、松本市内にあります昔の陸軍が使いましたものを使つておりましたが、あれが学校の近くだということで、もう二年ぐらい前から非常な反対をせられておりまして、ぜひ移れということで、あの辺をずいぶん探したのでありますけれども、射撃場でございますから、みんな断られてしまい、地勢的にいつてもいい場所がないのであります。これは演習場もなし、射撃場もなしという二つの問題でありまして、今度の場合は、演習場としては一般的にあそこでは撃ちませんけれども、ちやんと土塁を築いて、たまの飛び出さないような施設をやりました射撃場では撃ちます。
  180. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたは三十万坪じや絶対鉄砲は撃たないと言うけれども、射撃場で撃つんでしよう。射撃場で撃てば危険は同じじやないですか。そのたまがそれだまになつて来る危険が今売らないという農家にあるんですよ。片方では元の将校さんで、終戦後も毎朝軍人勅諭を一日も欠かさず読んでいるという軍人魂の権化がいるのです。これが音頭をとつて、ぼつぼつおらの時代なつたから、百三十万円もらつて浅間温泉に行つてかかあにパチンコ屋をさせて、おれはひとつ将校で入ろうというようなのがいる。それがさつき芳賀委員の言つたようにいろいろな手で圧力を加えているんだ。結局最初は絶対反対が、二転、三転してぼつぼつ売り出すやつが出て来る。最後の段階に来て、このごろの話では、十四名が絶対に売らない、死んでも守るといつてがんつているわけです。そうすると、松本の部隊は、演習場もない、射撃場はあつても、そこもあぶなくて使えないということになれば、あれはどこかへ持つて行くよりしようがないと思うが、よそへ持つて行く計画はありませんか。
  181. 大森頼雄

    ○大森説明員 よそへ持つて行く計画は、私は存じません。
  182. 中澤茂一

    ○中澤委員 これに対して平川農地局長は、一体どういう見解を持つておりますか。この問題では村上君もあなたのところへ来ているはずだ。農民組合もあなたのところへ来ているはずだが、十四戸死んでも売らないというのはどうしますか。
  183. 平川守

    ○平川政府委員 これは今県に照会しておりますが、県からまだ何とも言つてつておりません。しかし今のお話のようなことでありますれば、おそらく保安庁の方でいろいろなくふうをして、局部的なものでもできれば別でありますけれども、大体においてむずかしくはないかと思います。
  184. 中澤茂一

    ○中澤委員 とにかくこれは絶対守つてもらいたいですよ。ほかに移つたのでも、代替地を見つけてかわつたのがいるのです。百姓以外に使い道にならないものがいるのです。元の兵隊さんじやない、実際に土着した人ですから、代替地が見つかつたら、初めてしかたがない、こうまで言われるんだから移ろうかということになつて来る。ところが今残つているのは代替地もないのですよ。御承知のように長野県はああいう山の中なものですから、なかなかよそへ行つて一町歩、一町五反歩の農地を見つけることはできない。あすこはあの付近でも一等地と言われるくらいのいい土なんです。そこでどうしても売らないと言うなら、農林省として最後まで守つてくれなければいかぬと思うのです。いかなる場合があつても、この人たちが売らないと言つているなら、この点だけは守つてもらわなければいかぬ。その点だけはあなたの方で確認してもらいたい。
  185. 平川守

    ○平川政府委員 とにかく私どもといたしましては、農地の保護及び農業者の立場を擁護する立場にいるわけであります。それらの売らないと言つている、また実際に困る農家に迷惑をかけるようなことは、絶対にいたさないつもりであります。
  186. 中澤茂一

    ○中澤委員 それは確認されてけつこうですが、問題は私がこの前あなたに当委員会質問した森戸干拓の問題です。これはあなたも入植課から聞いたと思いますが、現地から五人、ほんとうに荒くれ立つたお百姓さんがぼろを着て飛んで来た。入植課と私の部屋で対決さした結果、明らかに不正配分があるということは入植課でも認めている。私は現地調査に来月行くつもりです。そのときには、農地局からもだれか行つてもらうつもりです。事実菓子屋をやつて女手一人で子供が二人いるものに、地区内、地区外に一段五畝の配分をやつている。これは現地の部落の人が来て証明している。明らかに三点の不正配給の事実が出ている。ぼくがなぜこの問題をつつ込むかと申しますと、ヤンセンさんなんかも来て、厖大な国費をつぎ込んで、あるいは外資導入ができて、国営干拓というものができた場合、こういう不正配分が全国至るところで起られては困るのです。そこで何らか農地局としても、こういう場合それは権利関係などいろいろからまつていますよ、しかしこういう場合一つの配分基準というものを厳正にきめておかなければならない、これはつつ込んで行けば大きな農政問題にもなるのですけれども、きようは時間がないからやめますが、そこで森戸干拓の問題ですが、全国の開拓地の配分の一つの基準をあなたの方でつくらせるために、私も現地に行きますから、あなたの方から人を派遣してもらつて、そして現地で実態調査をやつてみて、これではいかぬとか、そして今後農林省はどういうふうに配分基準をきめるか、これは一つの国営干拓の基礎をつくらなければいかぬと思うのです。まるででたらめきわまる配分ですよ。現地から調査に人を呼んで、あそこで対決さしてみましよう、そういう意味でこれはあなたの方からも派遣してもらいたいから、いま一度あなたの方が基礎にしているあの調査を命じてください。
  187. 平川守

    ○平川政府委員 承知いたしました。
  188. 井手以誠

    ○井手委員 法制局からお見えになつておりますからちよつとお尋ねしたいと思いますが、先刻土地収用についてお答えがございましたが、戦前の土地収用には演習場とか何とかいうものは列挙されておりましたか、ひとつお尋ねいたします。
  189. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私ども戦前の土地収用法つまり旧土地収用法のことをしかと覚えておりませんので、演習場がそのままに載つてつたかどうかはつきりとお答えすることは、ただいまは確言することはいたしかねます。
  190. 井手以誠

    ○井手委員 そういたしますと、保安庁が強制収用する場合には、先刻は三十一号だとおつしやいましたが、さようでございますか。もしそうであるならば該当する字句を教えてください。
  191. 高辻正己

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。保安庁がその施設のために収用する場合にどれに当るかという問題については、先ほど申し上げました通りに三十一号を申し上げたわけです。それについての御疑問だろうと思いますが、三十一号と申し上げました。
  192. 井手以誠

    ○井手委員 その他の中に含まれるわけでございますか。おそらくこの法律が制定されるときには、大体予想されておるものは列挙して、なおごく小部分のものについてその他という含みがあつたと私は解釈いたしておりますし、また大体法律の解釈としては、それが普通だろうと思つております。ところが演習場とかいう大きなものになりますと、当然私は列挙すべきであつて、私はその他という中には含まるべきものではないと考えておりますが、いかがでございますか。
  193. 高辻正己

    ○高辻政府委員 仰せの点はごもつともだろうと思います。大体例示の場合に重要なものは掲げるということがあることは否定し得ないことでございますが、しかしそうであるからといつて、その他に入るか入らないかということはまた別個の問題として置き得ると考えます。お答えが前後いたしますが、この三十一号の場合の庁舎、工場、研究所、試験所、これには入りかねると思います。従つてその他の中でまかなえるかまかなえないかという問題になろうかと思います。そこで今の問題は先ほどお答えした通りです。
  194. 井手以誠

    ○井手委員 これ以上は議論になりますから申し上げませんが、そういたしますと、直接という文字がございますが、先刻来話があつたように、火薬庫とか危険区域ということになりますると、爆発した場合のことを予想しなければならないので、おそらく一郡二郡にわたるものがやはり危険区域だと私ども考えております。そういたしますと、その直接という場合、火薬庫なんかを設置する場合の直接という意味はどの程度に解釈してよろしゆうございますか、これは先刻の旭川の場合にも該当しますので、お答えを願います。
  195. 高辻正己

    ○高辻政府委員 先ほど来のお話が、実は私途中から入りましたためによく頭に入つておらないのでございますが、問題は直接というところがこの場合の問題になるんじやないかという点について、ほかの事実関係を抜きにしてお話申し上げたいと思いますが、確かに直接ということが問題になると思います。保安庁で保安隊の訓練のために設置する演習場が国が設置する施設であることは、これはもう疑いの余地がないと思います。そこで直接であるかどうかということが問題になるわけでありますが、これについては保安隊の訓練というものが保安庁の事務であることは、これは保安庁法の規定を見ればきわめて歴然としておることでございまして、従つて保安隊の訓練のために使う演習場、それが国が直接その事務の用に供する施設であるということも言えるのではなかろうかと思うわけでございます。
  196. 井手以誠

    ○井手委員 先刻来問題になつております旭川の点でございますが、これは二百五十町歩にわたると言われております。それは危険区域を含めたという答弁でございますが、それが直接の中に入るのかどうか、その点をお伺いいたしたい。おそらく危険区域になりますれば、爆発を考えましても、保安庁が注文を出した工場が爆発して悲惨な事件を起したことは数々ございますが、そういう危険なことは普通は起らないけれども、そういうことを予想しなくちや危険区域とは言われないわけでありますが、その場合は直接をどういうふうに解釈してよろしゆうございますか、ただ建物の建坪、建築物の敷地並びにその若干の周辺という程度が直接だと考えますが、いかがございましよう。
  197. 高辻正己

    ○高辻政府委員 なかなかむずかしい問題だと思いますが、仰せのように火薬庫の周辺の幾ばくかが直接になるだろうということは、ただいま御質問の中にも入つてつたことだと思います。それがどの程度が直接に入るか入らないか、それが何メートルであるからどうであるかということは、ちよつと私ども事実関係をはつきり承知しない者として、ぴたりとここでお答えすることはちよつと遺憾ながらできないわけでございます。
  198. 井手以誠

    ○井手委員 私は建物の用地は、直接建てている敷地よりも広いということは、常識的に考えられないと思います。周囲ということは直接の用途ということになりますと、私はその建坪よりも周辺が広いということは、普通の常識では言えないと思う。ひさしの下であるとかそういうところはもちろん入りますけれども、若干の余地はありますけれども、弾薬庫をつくるのに二百五十町歩も必要としないと思うのであります。そこに問題が起つておる、この直接ということから私はもし将来必要があつて強制収用するという場合があることを私は恐れまして、念を押しておきたいと思うのですが、直接という法の範疇がありますれば、私は二百五十町歩ということは考えられないと思いますので、重ねてお尋ねをいたします。
  199. 高辻正己

    ○高辻政府委員 直接というのはまさに文字通り直接でございますので、その直接が一体どの程度まで及ぶかという問題になるわけでございますが、これは私どもとしては、一体どの程度まで行けるんだということをちよつとはつきり申し上げられないのは御了承をいただきたいと思うのでございます。
  200. 井手以誠

    ○井手委員 私はあなたに政治的配慮のもとにお答えを願いたいとは思つておりません。この法律の解釈をなさる法治国の法制局部長として見解を承つておるわけでありますので、これが保安隊にいかなる影響を与えるかなんというようなことについては、私はお考えになる必要はないと思います。従つて直接ということは、かかる意味をさすものだということは、はつきりお答えができるはずだと考えております。
  201. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私はこのケースにつきまして実は何も聞いておりません。従つてどういうふうに答えると、それがぐあいが悪くなるのかいいのか、実はその点もよく承知しておりません。ただ私が申し上げたいのは、確かに直接でなければいけないということは法の文章に書いてございますから、それはまさにその通りである。しかしながら何か具体的に、どの程度のものが直接であるかというような御指摘につきましては、まさにこの程度が直接に入るのだというようなふうにはつきりと申し上げかねる、こういうわけでございます。
  202. 井手以誠

    ○井手委員 私は旭川の具体的な問題は聞きません。一般的な火薬庫の問題をお尋ねいたします。かりにこれが二百五十町歩とする場合に、どの程度のものか知りませんが、中に火薬庫が設置される。しかしこれは何十町歩にわたることはおそらくなかろうと考えております。その場合にどこまでを直接とさすものか。直接ということは土地収用の場合にはぎりぎりの用地であることは申すまでもございません。最小の範囲のものでなければならぬ。二百五十町歩も必要でないことは当然でございます。火薬庫の場合に直接というのは、周囲が幅何メートルという程度のものでなくては私は直接ということはあり得ないと思う。おそらく二百五十町歩のほとんどを占める大きな建物が火薬庫であるとは私は常識的に考えられません。あるいは保安庁は原子爆弾に向う火薬庫を必要とされるのかもしれませんけれども、私は今の保安庁法によつてはそういう大きなものは必要でないと考えるし、事実あり得ないことだと思う。その直接という意味をはつきり申してください。あなたに言えないはずはございません。
  203. 高辻正己

    ○高辻政府委員 ですから直接でなければならないということは、これは私も申し上げ、委員もおつしやつている通りでありまして、それでは具体的な場合に、その直接というのがその周辺の土地のどの程度を言うのか——たとえば具体的に百メートルだ、あるいは二百メートルだということをはつきりと申し上げられないというだけのことであります。もちろんそれが極度に広くなることは直接の域を脱しますからいけないということになりましよう。それが具体的に、一体どこまでだということを申し上げることができないというわけでございます。ただ直接でなければならぬことは、これはもちろんのことでありますが、何が具体的な場合において直接に入るかどうかということは、具体的な場合に即して申し上げるほかはない、こういうことでございます。
  204. 井手以誠

    ○井手委員 その直接ということは、管理とか維持とか作業上から、どうしても建物の周囲に必要である、ごく小部分が必要であるという場合が私は最大限度であると考えます。危険区域ということは考えられない問題だと思う。その建物をいわゆる管理維持して行く場合に、必要なごく小部分の、いわゆる周辺程度のものが私は直接だと考えます。当局の必要な建坪用地以上の土地が必要である、それが直接であるとは私はどうしても考えられません。直接ということの解釈は何かそこに基準があるはずです。法律的に、直接とはこういう場合を指すものである、こう解釈するものであるということははつきりしておるはずです。十町歩かそこらのものに二百五十町歩が直接になるということはとうてい考えられません。そのくらいの解釈ができない法制局ではなかろうと私は考えます。
  205. 高辻正己

    ○高辻政府委員 また元にもどりますが、第三十一号を見ますと、国が「直接その事務又は事業の用に供する」つまり用に供することが直接であるわけです。従つてこの直接というのが場合場合によつておのおの別々でございましようが、今御指摘になつたようなほんとうにその事務の用に供するものである、ところが普通には十のものであれば足るのにそれを二十のものにするということは、この範囲から逸脱することは当然だろうと思います。
  206. 井手以誠

    ○井手委員 保安庁にお尋ねいたしますが、火薬庫の場合には二百五十町歩というのは直接の用に供する施設だけでございますか。
  207. 大森頼雄

    ○大森説明員 火薬庫と先ほど申しました燃料庫と両方に使う土地であります。そうして私たちの計画しておるところでは、火薬庫は火薬類取締法によります施設があり、それから、それにその火薬庫の構造と中に貯蔵します火薬の量によりまして、取締法の何条かはちよつと忘れましたが、安全距離というものをとつておりまして——安全距離にもいろいろ種類がございますが、その建物から何メートルという距離がなければどれだけの火薬は貯蔵できないということになつております。従つて計画した火薬量を貯蔵しますのには、それだけの距離の中には民家なら民家を建てることはできない。しかし建てることができないということは、人の土地に対しては言えないから、そういう土地は建てられないように、国なら国で持つ、あるいは地上権でもいいわけですが、私どもは今まで買つておるのですけれども、それだけの距離がないとその弾薬庫は許可にならないわけです。それから安全距離というものがとつてあるのでありまして、一番小さな火薬庫でも——数字は忘れましたが、大体七十メートルぐらいから、あとは五百メートルくらいまでありまして、中の火薬の量によつてかわつて来るわけであります。
  208. 井手以誠

    ○井手委員 この解釈については多くの疑点がございますので、あらためてお尋ねしたいと思います。またあるいはどういうふうに問題が発展するかわかりませんが、別の機会に譲りたいと存じます。  そこで法制局に本題をお尋ねいたしますが、目下各地で、保安隊のよしあしとか、効果がどうこうという問題は別にいたしましても、人が集まることによつてもうかる、たとえば料理屋やその他の方面が多く中心になつて、保安庁施設の誘致運動が行われておるのであります。町村民全体の意思ではなくして、土地を持つておる農民の意思ではなくして、そうでない商業方面あるいは接客業者を中心とする人々が中心となつて、保安庁関係の施設の誘致運動が盛んに行われております。あるいは議会の決議を経、あるいは市当局の名前をもつて誘致運動が行われておる。ところが私ここで疑問に感じますことは、その施設が参りますのは、これは多く農民の持つておる農地でございます。他人の土地でございます。誘致運動をしておるものとは違う。他人の土地に対して誘致運動が行われておる。それが現実には市町村長の名前によつて、あるいは議会の名前によつて要望され、あるいはそうでなくても有志の名前で要望される。それを農林省がいろいろ検討されるし、あるいは農林省を通じて保安庁と交渉されて、その土地がいいの悪いのという交渉が現に行われておるのであります。先刻来問題になつておる旭川の土地もそういうケースでございますが、私はそこであなたにお尋ねしたいことは、かりに正式な手続ではなくしても、そういう経路を経て土地買収が行われておる。土地を持つておる農民はいやいやである、反対である、しかし農林省がよろしいと言つた、保安庁もそれではやりましようと言つた。いわゆる地元の圧力、権力の圧力によつて、しまいにはいやいやながら、それでは少しいい値段で売ろうか、また売らざるを得ないという事態に追い込んでいるのが、今日の保安庁関係におきます土地の買収だと私は考えております。これはほとんどそうだと思う。     〔芳賀委員長代理退席、委員長着席〕 ごく一部には、先刻話があつたように、元職業軍人あたりが、金もうけのためにそういう運動をやつておる場合もありますが、これは極端な例であつて、ほとんどの農民はこれは反対であります。その反対のあるものを、かつてに他人の土地を地元の要望であるとかいうことで話が進められておる。正式なものではないけれども話が進められて、そういう事態に追い込まれて行く。その土地の所有権に対して、他人がかつてに誘致したり、これでよろしいとか、お願いしますとか言えるかどうか、私は疑問だと思う。そういう場合には、やはり本人の意思を表明する書類その他の条件がそろわなくては、私は話は進められないと考えております。その点について今までの行き方は違反じやないか。財産権の侵害じやありはせぬか、所有権を侵害するものであると私は考えておりますが、そういうことができるかどうか。他人の土地を買収するという重大な問題について、第三者がかつてに話を進めて行くことができるかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  209. 高辻正己

    ○高辻政府委員 ただいまお話にありましたようなことが、道義的その他の社会的な通念から言つて適当であるかどうかということは、おのずから結論の出て来ることだと思います。法制局にお尋ねのことでございますから、問題はそれが法律的に見てどうかということだろうと思うわけでございます。法律的な問題としては、違法か適法かということになるわけですが、しかし法律というのは、社会事象についてすべての場合を律しておるわけではございませんので、かりに法律に該当する場合であれば、それが適法か違法かということになる。違法であるということになれば、その救済がどうなるかという問題になるわけでございます。場合によれば、その法律行為が無効になる。場合によれば損害賠償の請求ができるということになつて、いろいろの問題が出て来るだろうと思います。しかしながら、ただいま御指摘になつたような問題は、確かに社会的な通念から見て批判の対象とはなりましても、法律的にあるいはそうすることが無効であるとか、あるいはそのために損害賠償の請求をしてよろしいとかという意味合いにおける法律問題にはならないのじやないかと考える次第でございます。もちろん事の当否は別でございます。
  210. 井手以誠

    ○井手委員 そういう地元の誘致運動、また地元からそういう相談を受ける官庁側において、陳情した人が所有者でない場合、それについて官庁は、これは地元の要望であると認めるわけには行かないと私は思うのです。この場合は、所有者の条件についてはあらためて相談するけれども、話は進めてよろしゆうございますという意味の承諾書か何かがなくては、これが正しい書類であるということにはならないと私は考えるのです。何よりもかんじんなことは、土地所有者の意思がわかる書類を添付されなくては、私は地元の要望であるとは認めがたいのでございますが、その点はいかがでございますか。
  211. 高辻正己

    ○高辻政府委員 当該土地について、演習場なり何なりができる場合に、その土地について、土地の人がここに誘致してほしいとかいう問題について、他人がとやかく言つたつて、それはナンセンスであるということは、確かにその通りであります。そういう意味合いにおきましては、その土地の人が要望もしてないのに、他人が要望したところで、それを取上げることについては、もちろんいろいろな方面からの考慮が必要であろうと思います。
  212. 井手以誠

    ○井手委員 農地局長も今お聞きでございましようが、所有者の意思表示がなくして要望があつた場合、それはナンセンスだというわけですね。ただいままで、誘致運動があつたとか、いろいろお話があつたのですが、すべてこれはナンセンスになるわけです。そこでその書類に、土地所有者が連名で話を進めてよろしい、この書類は、われわれが承認したものだという場合であれば、それは進めてもいいけれども、そうではなくて、所有者でない市町村長名であるとか、そういつた第三者が、委任も受けなくて、お願いをいたします、ぜひここに設備をしてくれという書類を出しても、受付けるべきでないと私は考える。今法制局ではナンセンスだとおつしやる。どうなさいますか。
  213. 高辻正己

    ○高辻政府委員 まさに仰せの通りでございますが、私がナンセンスだと申し上げたのは——ナンセンスという意味を、人はいろいろにとるだろうと思いますが、私が先ほど申し上げたのは、その土地について一定の施設ができることについて、その土地の人に対しては、それが対抗し得ないという意味において、ナンセンスと申し上げたわけです。  それから、これはあるいは農林省の方からお答えするのがいいかと思いますが、その書類を受理するかどうかという問題については、受理というのは、まつたく事実上の行為でございますから、これは法律上の問題としては問題になることはない。これはついでながら、お答えいたします。
  214. 井手以誠

    ○井手委員 そこでお答えになる前に申し上げますが、今の法制局のお答えで大体おわかりだろうと思うのですが、やはりそういう相談なり、申請なり、あるいは陳情については、その土地の所有権利を持つておる者の意思を表明した書類がなくては受付けるべきものではないと先刻も申し上げましたが、私は重ねて申し上げる。そういうものに対してあなた方が受付けるということは、憲法に保障されている財産権を犯すおそれが非常に多いのであります。私は越権の取扱いであると考えるのであります。農林省はそういう法制局の考えない、あるいは社会通念から考えまして、本人がどうぞ私のものをしてくれというならばともかくも、委任を受けない人がそういう相談を持つて来た場合には、私はそれを受付けるべきでないと考えますので、今後の御方針を承りたいと存じます。
  215. 平川守

    ○平川政府委員 先ほども申し上げましたように、以前に保安隊から申込みを受け、この申込みに対して地方民がどういうふうに考えておるかということを農林省が調べますのは、いわゆる法律的の行為でありませんで、事前に実際の実情を調べて、それによつて法律的な行為に入る前に、これは不適当なものであると判断すれば、初めから保安隊の方にお断りをするという意味においてやつておる手続でございます。従つて法制局の言われますように、いわゆる陳情と申しますか、あるいは県庁からの報告とか、あるいは市長あたりの陳情書のようなものは法律的に何ら効果がない。私どもの方といたしましては、ただ従来の行政機構から申しまして、県庁あるいは市町村長というものを一応信用いたします。公の機構であるこれらの人々が、農林省から地方の各所有者の意向はどうであるかと尋ねられました場合においては、公正な立場において実情をよく調べて、農林省に報告して参るものと一応考えております。しかしながらお話のごとく、実際問題として市町村長あたりの誘致運動が必ずしもその所有者の意向を代表しておらない場合が相当あることは確かだろうと思います。そういう意味において、私どもこの件に関する限り、普通の行政組織としては一応信用すべき市町村長等でありましても、その報告に対しても必ずしも全面的に信用しません。一面相当根強い反対がある、これは一部の者の運動であるといつたような場合には、かなりそれを事前に発見いたしております。従つて、そういう陳情であるとか、あるいは報告であるとかいうことは、法制局の言われますように、厳密な法律的な効果としてはナンセンスでありまして、しかもそれが実情にそのまま合つておらぬということになれば、ますます意味をなさぬわけであります。私どもといたしましては、先ほど申しましたように、一応そういう機構を通して、地元民の意向というものを聞いておるのであつて、これが具体化する場合は、もちろん個々の所有者の法律的な承諾というものが必要なわけでございますけれども、その事前に大体どうであろうかということを判定する場合に、そういう従来の行政機構を通して聞いておるのでありますけれども、それについても今申しましたような、それが必ずしも実情と合つておらぬ場合があるわけでございますから、書類そのものは、陳情が参れば受理いたしますけれども、その書類の中身を信用しないということで運用すればいいわけじやないか、そういう意味におきまして、従来のように形式的に知事あるいは市町村長から報告を受けて、それだけで判断をして参ることは必ずしも実情に即さぬ点がございますので、法律的な行為ではありませんけれども、その面においても、なお何らかお話のような、ほんとうの所有者の意向が反映するような具体的な措置について研究をいたしたい、かように考えております。
  216. 井手以誠

    ○井手委員 財産権の侵害はきわめて重大な問題でございますので、十分その点は今後御注意なさつて、決して地元の陳情というものが、所有者の要望でほとんどないということをまず念頭に置いて処理くださるように、とくとお願いを申し上げる次第でございます。  そこでごく簡単でございますが、保安庁の方にお尋ねいたします。佐賀県の目達原を中心として神崎、三養基の一部に火薬庫をつくられるという話が起きております。かつてその話がありましたけれども、地元の反対で一応立ち消えになつておりましたところが、最近またふりもどされて非常な不安を地元に与えておりますので、この際そういう計画があるかないか、おそらく私はなかろうとは考えておりますけれども、念のためにお尋ねをいたします。
  217. 大森頼雄

    ○大森説明員 あの辺に大量な火薬を貯蔵するような、火薬庫の候補地になつていろいろ調査したことはありましたが、現在そういう計画はありません。     —————————————
  218. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際川俣清音君より発言を求められております。これを許します。
  219. 川俣清音

    川俣委員 委員長のお許しを得まして、決議案の動議を提出したいと思います。    土地改良事業特例措置に関する件   政府は予算上の措置として、昭和二十九年度における新規着手事業に対し補助、助成等を承認しない原則をとつているが、左記に該当する土地改良事業については、実情に即して特例措置を講じ、もつてこれら事業の促進を図るべきである。     記  一、国営事業と密接に関連する末端の県営乃至土地改良区等の工事であつて、国営事業の進捗と併行して工事を進捗せしめるのでなければ著しく効率を害し、又は不経済であつて、特にその着工を緊要と認められるもの。  二、河川改修等他の工事と密接な関連のある土地改良事業であつて、当該関連工事と併せて、早急に施行するのでなければ将来着工の際著しく困難を来たし、若しくは不経済となり、又は当該関連工事の計画変更を要する如きもので、特に緊要度の高いもの。  これにつきましては説明の要はないと思いますが、農地局におきましても、一項につきましては大蔵省と折衝いたしまして相当な配慮が加えられておるようであります。しかしながら政府は根本方針を一応立てたのでありますから、農林委員会といたしましては、これらの国営事業と関連する末端の県営なり土地改良事業が、国営事業の進捗と並行して参らなければ、まつたく経済効果はない場合が起きて来るのであります。国営事業というのは基本でありまして、それを具体的に増産に表わすには、受入れ態勢であるところの県営事業あるいは土地改良事業が行われて、初めて土地改良の目的が達成できるのであります。それをなしに、それは新規事業だということで国営事業だけを進めて参りましたならば、何らの増産価値の生れて来ないことは、私の説明するまでもないことであります。従いましてこれらについては重点的な予算の配置とはいいながら、これらを一貫して初めて重点的な予算の配置となると思うのであります。  なお二項の問題は、補正予算または予算を組む場合に必要であろうことを念頭に置いての二項であります。これは建設省関係の河川の改修が、農林省の土地改良よりも予算のわくが大きいために進捗度が高い。ところがあなたの所管の土地改良事業の方は、新規事業だということであとまわしにされる。川は上流から下流まで一本ですから継続事業ですが、これに関連して来るところの土地改良事業は新規だということであとまわしになりますと、河川改修あるいは堤防の築堤等がいかにできましても、取入口などの不便を来すのでありますから、これは建設省の河川改修と相まつて予算の獲得をしなければ意味をなさないことでありますので、決議をいたしたいと思います。
  220. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいまの川俣君提案にかかります決議案については、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認め、本委員会の決議とすることにいたします。  追つて本決議は議長に報告するとともに政府にも伝達いたしますが、この間の手続については委員長に御一任願います。  この際平川農地局長の発言を求めます。
  222. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまの御決議の趣旨は私どもつたく同感でございまして、その趣旨に沿つてただいま大蔵省と鋭意折衝中でございますが、できるだけすみやかに実現をはかりたいと思います。     —————————————
  223. 井出一太郎

    ○井出委員長 井谷正吉君。
  224. 井谷正吉

    ○井谷委員 時間もありませんから簡単にお尋ねしておきます。まず最初に保安庁の大森さんにお尋ねをいたします。愛媛県温泉郡小野村の演習地の問題でありますが、これは中村委員がきようお尋ねするように申していたのですけれども、来ておりませんから、私かわりまして概要を承つておきたいと思います。これはどういう構想でおやりになるのか、まずそれからひとつ承りたいと思います。
  225. 大森頼雄

    ○大森説明員 あそこは現在松山部隊がおりますが、あれが非常に建物等も古くなつておりますので、あの部隊を小野村の近くに移しまして、その部隊の演習場として小野村に約二十五万坪予定しております。これは演習場としては一番小さい演習場でありますが、それをあそこにつくりたい、こういうことであります。
  226. 井谷正吉

    ○井谷委員 一番小規模な演習場というお話でありますが、ここでは射撃をやらないのですか。
  227. 大森頼雄

    ○大森説明員 先ほどの有明の演習場と同じように、二十五万坪のうち、一番山寄りの谷間になつたところに射撃場を計画しております。その射撃場以外のところでは実弾は一切使用させません。
  228. 井谷正吉

    ○井谷委員 この演習地については、地元で数回にわたつて反対の運動が行われたように私は聞いておるわけでありますが、先刻のお話にもありましたように、地元で最初反対運動をしても、後には賛成するようになつてできたという形式になつておるらしいのです。聞くところによると、保安隊のどういう階級の人か存じませんが、君たちが反対しても、いずれは土地収用をやるのだというようなことから、農民は純情なものですから、最後にそれをやられてはしかたがない。そうすれば少し値ようでも買うてもらえば手放さなければいけないか、そういうような気持になるような、悪く言えば威嚇ですが、そういう手段が相当とられておることを私は耳にしておるわけです。こういうことについてはどうお考えになりますか。
  229. 大森頼雄

    ○大森説明員 あそこは、先ほどの有明と似たように、非常に私どもも心配しておる所でございますが、収用法なんというようなことを言つてやるのではなくして、どうしても話合いで話をまとめるようにというので、あそこは愛媛県知事にもお願いしまして、県の方でも非常にいろいろ御心配していただいて、話を円満にまとめるように努力していただいておるように聞いております。
  230. 井谷正吉

    ○井谷委員 今度は平川さんにお尋ねしたいのですが、この問題について先般来地方からも陳情に参つたと思うのですが、伺いましたか。保安庁の方に参つたのですか。
  231. 和栗博

    ○和栗説明員 私が陳情のお話は承りました。
  232. 井谷正吉

    ○井谷委員 そのときにどういうふうにお話になりましたか。
  233. 和栗博

    ○和栗説明員 地方の農家として、土地をとられると非常に困るというような陳情が主でございました。なお一部には、そのときに補償問題の額に触れられた方もございましたけれども、大部分の方は、地元は耕地が少いから演習場にされては困るというのがそのときの陳情のおもなる趣旨でございます。
  234. 井谷正吉

    ○井谷委員 これは保安庁の方に伺いたいのですが、どこか替地というようなものはあの付近にございませんか。海岸の方に相当あるように私は思うのだが。
  235. 大森頼雄

    ○大森説明員 小野村の方たちからも、昨年陳情をいただいたときにも、替地はあそこはどうだということを指定していただきまして、それから県に話をしてそこを調査したこともあります。そのほか図面で、ここはいいなと思つたような所は新居浜付近も歩きましたし、それから松山市の北の方も歩きましたし、何箇所も調査いたしましたが、適当な場所で賛成いただけるような場所は見当らなかつたのであります。
  236. 井谷正吉

    ○井谷委員 私は経過だけ聞いておけばよろしいのですから以上です。
  237. 中澤茂一

    ○中澤委員 平川さんに伺いますが、私はあなたに二度ばかり電話して、一体須坂の刑務所の農林省の所有地の問題はどうだということを聞いたのですが、あなたは熱意があるのか、ないのかわけがわからない。ぼくがこれを問題にするのは、ただ須坂の刑務所だけを問題にしておるのではなくて、国の根本政策の面から言つておるのです。農林省の所有地二町六反四畝を刑務所の敷地に法務省と賃貸契約をして貸しておる。それで法務省は、その一等地をどんどんたたきつぶして、去年まで作物をつくつてつたところに、今官舎をどんどん建てておるのだ。これは国の食糧増産計画で、非常な犠牲を払つて干拓をやつている農林省自体が、一体こういうばかなことをやつていいのか。この点をあなたに明らかにしていただきたい。
  238. 井出一太郎

    ○井出委員長 中澤委員に申し上げますが、保安庁はよろしゆうございますか。
  239. 中澤茂一

    ○中澤委員 もう一度来てもらいます。
  240. 平川守

    ○平川政府委員 官舎ということは非常に問題でございますけれども、刑務所もやはり国の施設でありますので、これについてももとより法務省との折衝においては、最小限度にとどめるということは建前でありますし、そういうことで事実折衝しておりますけれども、しかし刑務所としての必要地というものを絶対に許さない、認めないというわけにも参りませんので、刑務所としての必要なる最小限度については、やはり農地の壊廃もやむを得ない、かように考えております。
  241. 中澤茂一

    ○中澤委員 しからば民間の農地は、たとえば村で学校を建てようといつてもなかなか問題で、農地をつぶすというので農業委員会がなかなか強硬でできない。そういう半面がありながら、片方に農林省自体が自分の所有農地を、二町何反というあの一等地を砂利で埋め立てて、家をつくつてやるということは、基本的な問題として考えなければいかぬ。しかもあなたのところの所有地ですよ。これは前から二度も電話で言つておるが、これの法務省との契約条項はどうなつておるのですか。
  242. 平川守

    ○平川政府委員 ただいま詳細は記憶しておりませんが、貸しておるわけであります。法務省の方としては、一定の計画でこの刑務所をこの程度のものにしたい、それでぜひそれだけのものをつくりたいのだが、予算等の関係で延びておるようであります。そういう意味で延びておるので、その間貸しておいてもらいたいということで、私の方としましては、全体としての計画を極力圧縮いたしまして、なお地元の方ともいろいろ話合いをして、地元農民の方にもこれだけは刑務所の方としても明らかに地元に渡してもらつてということにきめる分をきめまして、そして刑務所の方の最小限度の面積だけは刑務所の方に確保しよう、それが予算等の関係で延びておるので、貸すという形式になつておるということを聞いております。
  243. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたの方の所有地を法務省に貸すということはいい。しからばその地目変換は一体どういう契約をやつたか。ここの千坪を砂利で埋め立てて家を建てるということを、あなたの方は断つておるが、どんどん刑務所の囚人が埋め立てている。あすこは一等地ですよ。それを二町何反も埋めて家を建ててしまう。それの地目変換は一体だれが許可するのですか。
  244. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまの埋め立てておる事実をよく私も存じなかつたわけでありますけれども、いずれ刑務所の所有地として法務省に譲り渡すということになれば、法務省の方で刑務所としての必要な施設に使うということになるわけであります。
  245. 中澤茂一

    ○中澤委員 だからそこが矛盾しておるんじやないですか。あなたの方の所有地を地目変換した、だれもかまわない、貸したんだから煮てでも焼いてでも食つてくれというようなことで、法務省はかつてにいい地所をどんどん埋め立てて家をつくつてしまう。片方においては、学校を建るてためにわずかな農地をつぶすのになかなか困難だ。農林省自体がそんなでたらめなかつてなことをやつておるのは話がおかしいじやないですか。
  246. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまの貸しておる土地をかつてにどんどん埋めておるということをよく存じませんが、ただいまその貸付条件を詳細記憶しておりませんが、法律的には国が施設をいたします場合には、壊廃の許可はいらないわけであります。従つて法務省の方にこの土地を刑務所用地として譲り渡しをいたしますれば、当然これは法務省の方で壊廃をいたしましても、そのための許可はいらないわけであります。それから貸付の場合にもそういう壊廃を前提にした貸付の仕方もあるということになつておりますが、須坂の場合がそれに該当しておるかどうかをただいまよく存じませんし、またどういうふうにかつてに埋め立てをしておるということも存じませんが、その点はよく調べまして、そういう壊廃をすることを前提にしておる貸付であるということであれば合法的なわけであります。
  247. 中澤茂一

    ○中澤委員 実際あの刑務所というものはあんな地所はいらないのです。そこで反対運動が猛烈に起つておる。全町をあげて反対運動をやつて、あの刑務所をどつかへ持つて行こうというのです。しかもあなたのところの二町六反というものは全然いらないのです。そこで地元が反対運動を起したからといつて、あわてて一等地をつぶして家を建てているのです。そういうばかなことをやつている。そういうものは、あなたのところでいま少し責任を持つてつてもらいたい。これではあなた方がやつている基本的な問題とは全然矛盾して来ている。そういうことは最小限度現地調査して、これだけは必要でしよう。これだけはお貸ししましよう。しかしこれから向うは、食糧増産の国の建前から絶対に貸せないということをやらなければいけない。ただいいかげんにすきにやろう、そんなべらぼうな話はないと思う。これはあなたに二度も電話で話したけれども、あなたはちつとも積極的にやつてくれない。委員会でこんな話はしたくないのだが、一応正式に言つておこうと思う。今後もこういう問題があつた場合には、法務省が何と言おうと、どこが何と言おうが、一応現地調査して、最小限度これだけは必要でしよう。しかもこれ以外のものは農地としてつぶすことはまかりならぬという強い線を出さなければいけないと思う。この問題はいま少し調査してください。     〔委員長退席、芳賀委員長代理着席〕
  248. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 関連して平川農地局長にひとつ伺いたい問題があります。Bの所有の開墾可耕地を政府が買い受けて、その土地をAという町に売り渡した。Aという町はこれを開墾しなければならないはずでありますが、それを開拓者の学校にしたわけです。小学校にしたわけです。そこでAという町から政府へ支払うべき代金を払い込んだ。ところがそのA町は開墾可耕地として買い受けた土地へ開拓学校を建てたのに対して、某県は、それは農地法八十条によつて目的以外に使用をしたので、これは元のBに返さなければならない、こういうことになりまして、Bに返すようにという指示が県からあつたわけでございます。ところがBは今の時価でなければならないということになります。そうするとAという町では、たいへんな予想以上の損害をこうむるのですが、開拓地の学校であるということで、その土地を利用している以上、これは開墾可耕地と同じ、あるいはそれに近いところの類似の性格である限り、これを認めてもよろしいのではないかと思いますが、その点についてどういう御見解をとつておいでになりますか。
  249. 平川守

    ○平川政府委員 八十条の解釈といたしましては、そういう公共の建物等を建てる土地については、一応売りもどしをするということになつております。しかしその場合に価額の問題につきましては、その売りもどしをする場合に、今のような場合には、またその町に学校を建てるかどうか、確保するために、元に売りもどすという条件を付しておる場合が多いのであります。その場合この八十条のきめておる価額がもとの価額でない、今度自由の価額になると思います。そこでこの価額に条件を付して、あらかじめ約束をとつて、そして元の所有者に売りもどすという場合が多いのであります。ただ、ただいまお話の場合には、それがよくできておらなかつたために、非常に町に不測の損害を与えたということのように思います。そういう約束さえ初めにあらかじめつけておけばその問題はなかつたと思います。なお開拓地の学校であるという意味において、開拓用地として別に目的をかえたのではないという解釈ができないか、これはやや拡張解釈になりまして、少し無理のようであります。しかしなおこれは純粋の法律の技術になりますので、もう少し研究させていただきたいと思います。ただいまのところは、やはりそういう拡張解釈は無理であると思います。一応売りもどしをいたしまして、そのかわり同じ条件でまた町が買いもどしをする、そして学校を建てる、こういうやり方をとつております。
  250. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 これは一般の場合にどういうことになるか非常にむずかしい問題だと思います。ただいま私の申しておる具体的な事例については、旧所有者Bは元村長をやつた人で、相当の地主であつた人なんです。それが非常に欲の深い人で、自由価額ということで大きな額を吹きかけて来ておるわけなんです。それでいくら人を介して話合いをつけようと思つても、八十条をたてに応じないのです。しかも今局長は初めから話合えばよかつたのじやないかとおつしやいますが、農地法の旧法時代の問題でありますので、それが今になつて取消されるということになつておりますから、話し合う余地は全然なかつた。しかもあまり欲の深い人であるために、今の段階では全然話合いの余地はない、こういうことになりますので、開拓者の子供を収容する学校の敷地になつている関係から、私は何らかの措置がとれるのじやないかというように思うのですが、今一応その点課長と御研究なつた結果をお答え願いたいと思います。
  251. 平川守

    ○平川政府委員 これは初めから公共用の目的に供するという目的をもつて売渡しをしておるのでありますから、ただいまお話のように、非常に高い値段でなければ町の方に売りもどさないといたしますと、実際上町として公共用の目的に供することができないということになりますから、従つて農林省としてもこれを旧所有者に売りもどすということができないということになりますので、その場合においては、町がそういう公共用の目的のために農林省の開拓財産を買い受けるということにいたしますれば、それで公共用施設を設ける目的は達することになる、かように思つております。
  252. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 わかりました。
  253. 芳賀貢

    ○芳賀委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後六時五十二分散会