○福田(喜)
委員 ただいま
委員長より求められました北海道におきまする
暴風雪による農業災害の概況につきまして、一緒に北海道に参りました同僚
委員各位のお許しを得ましてその詳細を御報告申し上げたいと存じます。
われわれ調査班の一行、すなわち私、吉川
委員、
中村委員、芳賀
委員、安藤
委員並びに岩隈専門員の六名は、衆議院より正式派遣を命ぜられ、五月十四日午前七時半羽田飛行場より出発いたしまして、同日正午前北海道庁に到着いたし、ただちに田中知事以下
関係職員並びに農業団体の御参集を願
つて、被害の一般状況及び現地側の応急対策、並びに国に対する要望について
説明を聞いたのであります。それより昼夜兼行をもちまして被害の実情調査に努めたわけでありますが、その径路及び調査事項について申し上げますれば、十四日は、道庁での
会議終了後ただちに札幌より自動車に分乗いたしまして沿道被害の状況をつぶさに視察しつつ石狩町に至り、花畔の農業協同組合において、石狩支庁管内及び同町方面についての冷温床の被害状況を聞き、次いで当別町西当別において農家の圃場についてこれを実地に視察いたしまするとともに、当別町における被害の概況について地方の罹災者の側より
説明を受けたのであります。
翌十五日は、まず空知支庁管内に入り、岩見沢市において空知地方における状況の聴取を行いまするとともに、幌向地図において冷温床の被害状態を観察いたしまして、次いで上川管内に参りまして、富良野町、山部村において冷温床の被害、農家の倒壊、橋梁の破壊の状況を視察したのであります。
翌十六日は、狩勝峠を踏破して十勝に至り、災害救助法の発動されました新得町、清水町、御影村、芽室町を次々に訪れ、特に芽室町においては、十勝支庁管内被害二十四箇町村長より熱心な陳情を受けまするとともに、同町渋山地区の開拓農家八十八戸が突風によ
つて全滅に近い被害を受けておりまする状況を親しく視察いたしまして、その惨状に一驚を喫しまするとともに、災害の中から立ち上ろうとするその労苦を慰問し鼓舞激励いたしました。
今回の暴風雨は特に十勝山脈の東部山麓の沢を突き抜ける際に最も強烈な被害を残したのでありまして、被災民各位に対し深甚なる御同情の言葉を捧げたのであります。引続き黄金道路を経由して日高支庁管内に至り、同夜半浦河町に到着し、支庁長及び被害町村長より
説明を受けたのであります。
翌十七日浦河町を出発して、まず四月十八日の水害による様似川の決壊状況を視察し、ついで本桐村において温冷床の被害状況を調査し、ついで静内川の決壊並びに
農地及び農家の被災の状態を視察し、静内町において町当局より風水害の状況について
説明を受けました。さらに勇払郡鵡川町に至り、胆振支庁及び町当局より同管内の災害の状況
説明を受け、引続き白老村を調査いたしたのであります。
翌十八日、四日間の日程を終り、再び札幌に立ち帰りまして、知事以下農務、
農地開拓、林務の各部長より、十七日に開会された臨時道
議会に対しなされた報告を基礎とした災害報告を受け、あわせて国に対する現地側の要望事項を詳細聴取、
意見の交換をいたしました。打合会の後別室において、共済連、購連及び統計調査事務所より、それぞれの立場に立
つての状況
説明を受け、今回の調査について万全を期することとしたのであります。
以上をもちまして、現地における調査を終了いたしまして、同夜千歳発の飛行便をも
つて帰京いたした次第であります。
北海道における今回の暴風雨雪は、去る九日の夜半、日本海を横断して西海岸に上陸した九百七十ないし九百六十ミリバールの低気圧が原因でありまして、翌十日に及び、瞬間最大風速二十メートルないし三十五、六メートルに達する旋風をまじえた暴風雨雪により、石狩、空知、上川を初め、網走、釧路、十勝、日高等ほとんど全道にわた
つて公共施設、漁業、農林業に甚大なる被害を与えましたことは言うまでもなく、不幸にして六百数十名に達する人的損害をもたらし、特に石狩、空知、上川等本道の穀倉と称せられる地帯において、発芽数日後ないし旬日後の生育初期の最肝要期にあ
つた温冷床苗しろ並びに直播田について、大打撃をこうむ
つたのであります。道庁側が十六日現在で集計しました数字によりますと、総損害額は四十八億八千四百万円余に達するといわれておりますが、このうち特に損害の大きか
つたのは水産業でありまして、いまだ帰還せざる漁船数十隻、漁民三百数十名に上り、漁船、漁具等の被害十六億、次に家屋の倒壊、破損等による被害が同じく十六億に達し、公共施設におきましては、河川、海岸、道路、橋梁、港湾等に約三億一千万円の損害を与えております。しこうして、われわれの当面の調査目標でありました農林業方面の損害におきましては、農業約八億五千万円、林業約五億と称せられておりますが、これらの被害状況についてやや詳細に申し述べ、御参考に供したいと存ずる次第であります。
暴風雨雪による農業上の被害が、どういう形で現われておるかと申しますると、言うまでもなく至るところ温冷床の障子のわく及び障子紙が飛び散り、あるいは大破損をしたわけでありますが、そのために冷い烈風を受けて、温冷床内の気温が摂氏一度二分ないし七度八分に低下いたしまして、われわれの視察しました苗はほとんど凍傷し、葉先が黄変ないし白変いたしておるのであります。御承知のごとく北海道のような寒冷地帯におきましては苗七分と言われ、育苗過程における成否が収穫の大半を決すると言われ、今年は昨年の冷害の経験にかんがみまして、温冷床の奨励が特に行われまするとともに、播種の時期も平素より十日程繰上げられ、四月二十六、二十七、二十八日のころに種をまいておりまするが、せつかく順調に進んでおりました苗は、今次暴風雨雪によりまして、三、四日ないし十日の遅れは免れぬのでありまして、苗の生育は平均して二週間遅れとなり、これが五月末から六月にかけての挿秧期に悪影響を与え、本年の冷害気味の気象の推移と相ま
つて、今後における事態の推移が極度に危惧されるわけであります。
また畑作におきましては、今年は水田と同様、一般に農作物は例年より著しく進捗し、十勝、網走方面における亜麻、ビート、春まき麦類の播種はほとんど終了をみていたようでありますが、軽い火山性士の表土が飛散いたし、一方では低地の畑は埋没いたし、再播を要するものが相当面積に上るものとみられるのであります。
以上のように農業災害はすこぶる激甚なるものがあるのでありまするが当面の被害額としましては、まず水稲保護苗しろにおきましては、使用不能数量に換算した温床紙の被害坪数は百五十八万坪、同じく障子が約三十万坪、これを金額でみますと二億三千八百万円と相なります。但し、札幌統計調査事務所が十四日現在の数字として、われわれに報告したところによりますと、紙の被害において約六十万坪、障子わくにおいて約二十万坪でありまして、道庁側の数字と約百万坪の懸隔を示しておりますことは、今後すみやかに調整を要する点かと存ずるのであります。温床紙、油等の手当は、道当局の適切な指導と相まち、各単協、購連等の
活動によ
つて、大体各農家に行き渡り、被害坪数に対しておおむね九二、三%程度は修復を終
つているのでありますが、これらに対する資金手当並びに障子わくに対する原木手当に関する各種の問題が後に残
つているのであります。
次に農作物被害は、水稲において六百町歩、金額六百万円、畑作二万町歩、金額二億三千五百万円であります。農業用施設の被害もまた相当額に上
つておりまして、農業倉庫、事務所、工場、農業用電気施設等の共同利用施設において、件数で三百四十二件、金額で五千八百万円、畜舎、納屋、サイロ等個人施設で九千六百八十九件、三億一千万円の損害を与えております。
以上を合計しまして農業
関係被害総額は、八億五千万円でありますが、これに対しましていかなる対策が要望せられておるかにつきまして、簡単に御
説明申し上げたいと存じます。
まず大きくわけまして、国による助成の
措置と融資または融資あつせんの
措置とでありますが、助成の
措置においては、一、水稲保護苗しろ用資材の購入費に対する補助、二、種子及び肥料の購入費に対する補助、三、農業共同利用施設の復旧費に対する補助が挙げられており、金額としては二億三千万円とな
つており、融資の
措置においては、これらに対する復旧の必要経費から補助費を除いた額、並びに家畜購入資金及び個人の農業施設についての復旧資金を合計した額として三億八千四百万円、別にこれに対する利子補給額二千五百万円の助成をあげておるのであります。
次に、山林
関係の被害状況であります。われわれは各地を歩きまして、随所に風倒木を見受けたのでありますが、各営林局及び道において、一部推定を入れ集計したところによりますると、国有林において三百二十四万石、道有林において五万石、その他三千石、計三百二十九万三千石が風のために倒れ、その損害額十六億四千六百五十万円、実損額はこの三割と見て、約五億円と計算いたしているのであります。右のほか林業
関係施設災害として千四百万円、林産
関係として製材工場、製炭施設、木炭倉庫等の被害が約七百五十万程度あげられております。山林
関係の災害対策としましては、まず今次の災害に際して、耕地防風林、屋敷林等の偉力が遺憾なく発揮されておる事実にかんがみまして、被害施設の復旧を急ぎますことは言うまでもないのでありますが、さらに積極的にその造成に努むべきであります。しかしてその際、北海道の土壌の性質もありましようが、特に深根性の樹種を選定するよう研究の要があるものと感じた次第であります。次に林産
関係諸施設の被害について、これらの復旧資金に対する特別融資が要望せられております。次に風倒木の処理でありますが、道内における木材価格の高騰を抑止しまするために、特に国有林において、伐採計画を変更することなく、売払い等の
措置を講ずることが肝要かと存ずるのであります。
この際特に農林当局の注意を喚起しておきたいことは、倒壊家屋、温冷床苗しろ用の障子わく等の復旧資材として、国有林に対する払下げ並びに代金の延納
措置について、現地側より強い要望が述べられておるのであります。われわれといたしましても、帯広営林
局長に対して早急に善処方を促しておいたのでありますが、こういう非常時において民心及び民生を安定させるためには、きわめて敏速な
措置を必要とするものであり、特に代金延納
措置についてなお明確な結論を
出していないように思われたのでありますが、国有林当局の善処方を強く要望しておくものであります。
次に
農地開拓
関係の被害状況でありますが、さきにも述べましたごとく、開拓者に与えつつある影響は格別に深刻なものがあります。開拓住宅の全壊二百九十三戸、半壊二百八戸、大破二百五戸、その他農業施設及び学校の破壊四百五十件に上り、その被害額は二億数千万円と推定されておるのであります。また開拓地における水田及び畑の受けた被害も、一般農家と同様でありまして、これがために温冷床資材の購入資金、種子、肥料の購入資金に対する特に手厚い助成を必要とするものと存ずるのであります。一般
農地及び農業用施設については、二月二十七、八、四月十九日及び五月九、十日と三次にわたり災害を受け、その復旧事業費は一億一千万円と算定されておるのであります。特に北海道の河川は、大
部分が原始河川でありますために、災害にあた
つて被害は一段とはなはだしいようであります。特にわれわれの視察しました日高、胆振地区では、日高山脈に源を発しまする河川の流程が短いために、年々歳々災害を繰り返しておるのは、まことに遺憾にたえない次第であります。われわれが視察をいたしました静内川は、堤防の決壊により約百町歩の
農地がま
つたく砂礫地と化し、その復旧は容易ならぬものがあるように見受けましたが、すみやかに建設、農林両省において調査を完了し、復旧工事を進捗せしめねばならぬと存ずるのであります。
最後に、今回の災害調査にあた
つて特に痛感いたしました点について二、三申し上げてみたいのでありますが、第一は、昨年の冷害にあた
つても強く指摘されておりましたが、今回においても、気象の予報が非常に遅れております。現地で聞いてみますと、九日の夜十一時過ぎに知らせておるのでありまして、それより三時間後には猛烈な突風に見舞わて、手の施しようがなか
つたということであります。
第二点は、資材の備蓄がま
つたく行われていなか
つたために、資材調達に非常な苦労をしておるのみならず、その価格を暴騰せしめておるのであります。非常事態に備えて農協の連合会
段階で備蓄制度を研究してみる必要があると思うのであります。
第三点は、北海道における温冷床の必要は最も切実なるものでありますが、三十年度以降に対する政府の助成政策が確定いたしておりませんので、現地では非常な危惧の念を抱いております。この際明確な方針を打ち
出しておく必要があろうかと存ずるのであります。
第四点は、過年度災害に対する補助金の相当額が未交付のままであるということであります。この点は北海道に限
つた問題ではなく、各県共通の問題でありますが、政府はその方針をすみやかに明確化する必要があろうかと存じます。
第五点は、今回の災害にあた
つて、十二箇町村に対して災害救助法の発動を行
つているのでありますが、その後における国よりの補助が大幅に削減される傾向にあるということであります。
次に第六点としては、農家の建物の今回の災害につきまして、ほとんどま
つたく共済制度の恩恵を受け得ない状況に置かれておりますことははなはだ残念なことであります。任意共済問題を解決いたしまして、非常時に備える態勢を整備しますることは急務中の急務と存ずる次第であります。
以上を要しまするに、昨年の冷害に引続き今回の暴風雨雪災害が北海道農業に与えました影響は、まことに軽からざるものがある次第でありまして、政府としてもまた
国会といたしましても、現地の要望に応え、今会期中に適切な対策の樹立いたされますよう
委員長初め
委員各位にお願いいたしまして、私の報告を終ることといたします。