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1954-05-21 第19回国会 衆議院 農林委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十一日(金曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小枝 一雄君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 金子與重郎君 理事 芳賀  貢君    理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    足立 篤郎君       遠藤 三郎君    佐藤善一郎君       寺島隆太郎君    松岡 俊三君       松山 義雄君    吉川 久衛君       楠美 省吾君    足鹿  覺君       井手 以誠君    古屋 貞雄君       中村 時雄君    日野 吉夫君       安藤  覺君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         農林政務次官  平野 三郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部         長)      谷垣 專一君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 五月二十一日  委員加藤高藏君、井谷正吉君、中澤茂一君及び  河野一郎君辞任につき、その補欠として楠美省  吾君、古屋貞雄君、日野吉夫君及び松田竹千代  君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十日  中善寺開拓道路工事費国庫補助に関する請願(  牧野寛索紹介)(第四六七九号)  中津線開拓道路工事費国庫補助に関する請願(  牧野寛索紹介)(第四六八〇号)  豊津線開拓道路工事費国庫補助に関する請願(  牧野寛索紹介)(第四六八一号)  平出沢地区幹線道路工事費国庫補助に関する請  願(牧野寛索紹介)(第四六八二号)  中村地区幹線道路工事費国庫補助に関する請願  (牧野寛索紹介)(第四六八三号)  瀬之木沢地区幹線道路工事費国庫補助に関する  請願牧野寛索紹介)(第四六八四号)  西根開拓地区幹線道路工事費国庫補助に関する  請願牧野寛索紹介)(第四六八五号)  国有林野整備臨時措置法施行期間延長に関す  る請願只野直三郎紹介)(第四八八二号)  購繭資金貸出に関する請願武藤運十郎君紹  介)(第四八八三号)  酪農振興法制定に関する請願外四件(上林與市  郎君紹介)(第四八八四号)  同(岡良一紹介)(第四八八五号)  同(渡邊良夫紹介)(第四八九九号)  同(加藤精三君外一名紹介)(第四九〇〇号)  同(木村武雄紹介)(第四九〇一号)  同外一件(木村武雄君外二名紹介)(第四九〇  二号)  同(辻政信紹介)(第四九〇八号)  同(田子一民紹介)(第四九一五号)  同(坂田英一紹介)(第四九一六号)  同(柴田義男紹介)(第四九四〇号)  同(松崎朝治紹介)(第四九四一号)  同(永井勝次郎紹介)(第四九四二号)  同(長野長廣紹介)(第四九五三号)  凍霜害対策確立に関する請願武藤運十郎君紹  介)(第四八八六号)  未墾地買収対価算定基準引上げ等に関する請願  (佐藤善一郎紹介)(第四八八七号)  大崎村農道開設工事促進に関する請願長野長  廣君紹介)(第四九〇三号)  木炭公営検査強化に関する請願相川勝六君外  二名紹介)(第四九〇七号)  開拓営農対策確立に関する請願三池信君紹  介)(第四九四三号)  高須川上流ダム建設に関する請願永田良吉  君紹介)(第四九五四号)  鹿屋市に国立蚕業試験場設置請願永田良吉  君紹介)(第四九五五号)  桑樹凍霜害対策確立に関する請願増田甲子七  君紹介)(第四九六八号)  同(倉石忠雄紹介)(第四九六九号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第四九七〇号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  農民組合法案足鹿覺君外十二名提出衆法第  二五号)  農業委員会法の一部を改正する法律案小枝一  雄君外十六名提出衆法第二九号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案金子  與重郎 君外十六名提出衆法第三〇号)  暴風雪による北海道の農林被害に関する件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  農民組合法案農業委員会法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたし、審査を進めます。質疑を継続いたします。本日午前は主として農業委員会法に対して質疑を集中願いたいと考えます。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 委員長から、主として農業委員会法についてということでありますが、関連しておる部分が非常に多いので、必ずしも農業委員会法ばかりというわけに参らぬと思いますから、その点をあらかじめ、委員長において御了承願つておきたいと思うのであります。  第一にお尋ねいたしたいのは、これは小倉局長お尋ねいたしたいのですが、私初めてこの法案について、議員提出政府提出との相違を実は発見いたしたのであります。内容については相当農林省が関与せられておつたと思うのでありますが、議員提出法律案と、政府提案との間において、非常な相違点というものを初めて実は発見いたしたのであります。これはもちろん予算上の負担の問題は別にいたしまして、非常に大きな発見をいたしたのですが、局長はそういうことについてお気づきではないのじやないかと思うのです。というのは、農業委員会法農林省関係部分法律については、附則において全部適用をいたしておるようであります。改正に基く手続をいたしておるようであります。このほかに農業委員会の関連する法案がもう幾つかあると思うのですが、小倉局長はないとお考えでありますかどうか。これは政府提案でありますなら、当然省議にかかり、次官会議にかかり、閣議にかかるから、ほかの省に関係する部分が出て来ると思うのですが、議員提案でありますためにその点の疎漏がある。私はこれは疎漏であるか、各省との連絡議員提案ということによつて故意に落されておるのか、その点は理解できませんけれども、まだ関連する法案が他にありますのに落しておる理由お尋ねいたしたいと思います。
  4. 小倉武一

    小倉政府委員 農業委員会法が全面的に改正になります場合に、他の法令で農業委員会に触れているのはどうするかということは、これは農業委員会に限らず当然問題になることであります。一応気づいている法律につきましての問題は、大体この附則の方で処理いたしておるのでございますが、ちようど改正案議会提案されるのと前後して、他の法律農業委員会関係ある条項が新しく出たりするといつたような折には、時間的な関係で、必ずしも十分その法との関連を考慮した改正がなされない場合が多うございます。そういう場合には、国会で御採決いただく際に整理していただくということにこれまでもなつておるのでございますが、今回私ども気がついております点は、土地区画整理法という法案がありますが、この中にやはり市町村農業委員会が出て参つておるのでありますが、こういう点は適当な時期に補正をしていただく必要があるのではないか、かように存ずるのであります。
  5. 川俣清音

    川俣委員 今お気づきの点は土地区画整理法だけでございますか。私は別に気がつけということをあえてここで指摘するわけじやない。まだあるのですが、そういう意地悪いことを言つているのじやないのです。それは議員提案政府提案との相違点をここに発見しておるのです。なぜかというと、議員提案でありますと、各省のこういう条項の受入れの場合に、特に性格がかわつて来たという場合に、無条件で受入れるかどうかというと、他省のその所管法律におきまして、むしろ農業委員会府県農業委員会連合会等の干渉をできるだけ受けたくないという考え方があるわけです。これを農林省がどうしても農地保全上、あるいは土地保全上強硬な申入れによつて、いやいやながらこれら条項入れておる法律があるわけです。従つて議員提案の場合には、そこまでの折衝が及ばないということが、初めてここで私はわかつた。これが政府提案でありますれば、全部そういうものは各省間の意見を調整して出して来るというのが、確かに政府提案の長所だということが初めて発見できた。議員提案でありますれば、そういう各省事務局との折衝がうまく行かないというところから、あえて落されたというふうにも見える。私はこれはミスだとは思わない。むしろ折衝がつかなかつたために載せられておらないのじやないかというふうにも理解するんですが、この点はどうなんですか。
  6. 小倉武一

    小倉政府委員 政府提案議員提案におきまして、その間の関係が若干違うようなお説でございますが、確かにそれは実質問題としてそういうことがあり得ると思いますが、議員提案の場合におきましても、関係省はそれぞれ提案者のところに参りまして、自分の役所の担当している関係から意見があれば申し出まして、それぞれ御考慮願うということにいたしておりますので、大局から申しますれば、さほどの相違は出て来ないのじやないか、かように存じます。ただ政府提案でありますると、関係省責任者の印判がなければ提案できないということで、その辺が非常に厳重に行われますけれども、議員提案でございますれば、意見を申し出て来ても、採用されなくても法案はそのまま進行するということも、りくつを申せばあり得ることでございます。若干の差はございますが、大差はなかろうかと思います。
  7. 川俣清音

    川俣委員 小倉局長大差はないと言うのですが、私は大差があるかないか明瞭にしておく必要があると思うのです、今後の議員提案について非常に考えさせられる点が多いから、これは大差があるのかないのか。あなたは大差がないのだと言われるが、これは各省との連絡が不十分であつたために、ほんとう大差があるのだけれども事務的に及ばなかつたという意味なのか。公式に政府提案でありますと、ただいま説明のように、責任者の判を要する、同意を要する。こういうためにやはり相違が出て来るのか、この点ははつきりしてもらわなければならぬ。私はいい悪いを論じているのじやないのです。今後の取扱いの上に大きな問題を残すのでお尋ねしている。この点はやはり明瞭にしておいてほしい。議員提案でも、こういうものであつてもいいという考え方で、全責任を負われるのであつたならば、当然そういう点について各省との十分な、判をもらうのと同様な措置を義務づけられておるというならば、これは私はかわりがないと思う。議員提案だから義務づけられておらないというのと義務づけられておるのという考え方と、そこに相違があるのです。この点はどうなんです。
  8. 小倉武一

    小倉政府委員 それは形式と申しますか、法案提出手続から申しますと、関係省同意を要するのと要しないというのとでは非常に違いがあるのでありますが、議員提案の場合におきましても、おも立つた関係省閣議に、こういう法案提案になるということを報告し、また関係省が全部それに向つて意見がある向きは、閣議意見を出すとこういうになつております。そういう意見が出て参りますれば、それぞれの省が提案者に向つて意見を申し上げると同時に、また主たる関係役所が、妥当と思われるような意見提案者に随時申し出るということで、調整が実際上行われておりまして、手続の上から来る大きな違いが実質上大きな違いとなつて現われるということはあまりなかろうということを申し上げておるのであります。
  9. 川俣清音

    川俣委員 気がつかないで落しているということになりますと、委員会活動縮減になる。これは縮減されてもいいという方針でお出しになつたのか、縮減はすべきでないという考え方でお出しになつたのか、これはひとつ小枝さんに、はなはだ恐縮ですがお尋ねいたします。
  10. 小枝一雄

    小枝委員 川俣委員からお尋ねの問題は、われわれとしてはそういことのために縮減されてはならないと考えておるのであります。従いまして私の考えといたしましては、大した縮減を受けるようなことはないと考えておりますが、そういう点があるかも存じませんので、この法案が通過いたしましたあかつきには十分検討いたしまして、すみやかにその処置を講じなければならぬと考えております。
  11. 川俣清音

    川俣委員 縮減する意思はないということになると、他の法案に、法律または政令等農業委員会意見を徴しなければならないというような規定があるのを落しておきますと、意見を聞かなければならないということが必要でなくなつて来るわけです。あるいはその法案に訂正を加えておくか、あるいは所管官庁了解を得て、この法律に条文を載せて、そこまで範囲が及ぶように修正を加えておくかしなければならぬと思うのです。この法律通つてからあとでといいましても、これは来国会になつてしまうと思うのであります。ただ、あえて縮減をいとわないと、こういう意味でお出しなつたとすれば――もうそういうものはうるさいから、その方にまで手を延ばさぬでもいい、こういうことで縮減考えられているなら、私はそれでもいいと思う。だからほんとう縮減考えられているのか。私は決して無理な質問をしているのではない、縮減考えられているのか、あるいは、ミスによつて見落しになつているのか、どちらですか、こういうことをお尋ねしている。当然加えられているのだけれども、それはもうそこまで活動範囲縮減してもよろしいという意味なのか、その真意が私にはわからないのです。あらゆる点で従来通り活動をせしめたい、こういうことであれば落ちているし、そうでなくて、これ以外の関係法律については、そこまで農業委員会が関与しないでもいい、こういうことで落ちているのか、どつちの意味かわからないからお尋ねしているのです。
  12. 小枝一雄

    小枝委員 ただいまお尋ねの問題は今日の農業生産そのほかいろいろな問題から総合して考えまして、農業委員会活動制約をされ、縮減されてはならないと提案者としては考えております。従いまして、私といたしましては、大体今の委員会法大差がないと考えております。もしもそういう、ミスがあるといたしましたならば、この際各省了解を得まして、すみやかにそういう縮減のないようにとりはからいたいと考えております。
  13. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、提案者並びに経済局は、それは見落しである、こういう見解をとつてよろしいのですか。見落しであるから、もしも出て参りましたならばそれを追加する、こういうお考えのように提案者は申し述べておられますが、経済局長はどうなんです。
  14. 小倉武一

    小倉政府委員 もちろん、そういうふうに提案者の方からのお話でございますので、その通りだと思いますが、ただこのたびは市町村農業委員会農業委員会となり、県の農業委員会農業会議となりますにつきましては、性格が若干かわつて参つております。市町村農業委員会は、農業委員会となりましても、これは構成がかわるだけで性格はまつたく同一であるというふうに考えられまして、その関係から、権限なり仕事が増減するということはなかろうと思いますが、県の段階農業委員会農業会議になるにつきましては、性格上の相当の相違が出て参つておるのであります。以前の県の農業委員会は、行政機関的な性格を一方において持つてつたのでありますが、新しい農業会議行政機関としての性格形式上持つておりません。ただ従来農業委員会がやつておりました仕事のうちで、行政庁建議をするとかあるいは行政庁処分をいたします場合に、農業委員会意見を聞いてやらなければならぬといつたような、いわば必要的な諮問機関あるいは任意的な建議機関というものは、同じような性格が残つております。そういう同じような性格が残つておる範囲におきましては、これまでの県の農業委員会権限がほぼそのまま新しい農業会議権限として残つて参る、こういうつもりでおるのであります。そこでそういう範囲において漏れがあるかないかという問題になりますが、そういう範囲仕事においてなおかつ他の法律関係において漏れがあるとするならば、これはまつた提案者の御説明通り、できるだけいろいろ議会に補正して参るべきものである、かように存ずるのであります。
  15. 川俣清音

    川俣委員 補正して行こうということでありますから、気がつかれた点は、提案者において適宜是正さるべきだと私は思います。これは、むしろ経済局がこれを管理している以上、私たちが指摘するまでもなく当然発見できると思いますから、あえて法律を差出しません。そこで地方自治法の一部を次のように改正するということで、「執行機関として、法律の定めるところにより、市町村農業委員会を置かなければならない。」こう規定いたしております。私はこれはもちろんかくあるべきだと思います。農業委員会あり方いかんについては問題でありますけれども、置くというならばこういう形が出て来るだろうと思う。ところが県の農業委員会は明らかに性格をかえて参りましたために、所得税法法人税法印紙税法地方税法改正が行われておるのじやないか。もしも局長の言われるように、一部のものをもつて全体の活躍ができるというほどの一つ行政機関的なものという考え方をするとすれば、あえてこの所得税法法人税法印紙税法地方税法改正を要しなかつただろうと思います。やはりこの所得税法法人税法印紙税法地方税法改正をあえて求められておるところはどこにあるのですか。なぜこれの改正を必要とするのか、その点を伺いたい。
  16. 小倉武一

    小倉政府委員 この点は先ほどもちよつと申し上げたのでございますが、今回の改正案も、それからこの前の政府提案もほぼ同じだと思うのでありますが、従来の県の農業委員会は、県の付属機関でございまして、一種行政機関であつたのであります。従いまして課税の問題はなかつたのでありますが、今回の改正案によりますと、府県付属行政機関たることをやめるのでありまして、独立法人になるのであります。従つて税制関係から申しまして、他のいろいろな公共的ないし公益的な法人と同じような立場になるのであります。そこで税務署の関係からも、それらに準じた裏づけをするのが妥当ではなかろうか、かようなことで、これはまつた法人にしたということの結果であります。
  17. 川俣清音

    川俣委員 結局農業委員会と比べて、府県農業会議というものは性格を異にするために、所得税法法人税法印紙税法地方税法適用を全体が受けるということになると、明らかにあなたの御説明通り性格が異なつて来たところの、しかも行政付属機関ではない、一部持つておるものというよりも大体九割そういう機関を持つていないところに、この法の適用除外をあえて求めなければならぬものと思うのであります。付属行政機関とはあまり本質的に違わないのだということになりますれば、あえてこれらの税法除外規程を設ける必要はなかつたと思います。また独立的の地位を与える必要はなかつたと思います。これは公法人的の性格を持つておりますから、税法適用除外するということは当然であり、その点は私はあえて否定していない。それほど性格が違つて来たものとしての、公法人的の性格としての税法適用を受けようとするならば、そういう性格のものでありますならば、これに前と同じような権限を与えるということになるとおかしいのじやないか、こういう議論です、印紙税法所得税法では、まつた性格が違つておるということを打出しておる以上、前の県の農業委員会と同じような性格を持ち得るというところに矛盾がありはしないか、その点はどうですか。
  18. 小倉武一

    小倉政府委員 税法等の特例が示しますように、また農業委員会農業会議となり、法人になるということが示しますように、性格は非常にかわつて参つております。従いまして権限違つて参つております一番大きな点は、従来の農業委員会付属行政機関として担当しておつた訴願の裁決をするとか、そういうような行政上の処分に属するような権限は、新しい農業会議にはございません。ただ従来の仕事と似たような仕事あるいは実質的に同じような仕事はございます。それは農業委員会行政庁処分をいたします場合に、これに対して意見を述べる、また行政庁処分をいたします場合に、必ず農業委員会意見を聞かなくちやならぬ。こういつたことが従来の農業委員会権限であつたのでありますが、そういつたようなものは、その新しい農業会議に同じようにございます。それからまた従来の農業委員会が、行政上の一種処分的な権限を持つてつたのを、今後やめますかわりに、それは府県知事権限になるのでありますが、府県知事がそういう権限を行使する場合には、今度は農業会議意見を聞かなくちやならぬ、こういうことでそれを補つておるのでありまして、確かに一面は非常に性格がかわる、従つて権限もかわつているのでありますが、権限の点からいうと、似たような権限がある程度残つておるということであります。
  19. 川俣清音

    川俣委員 ここに問題が二つ出て来る。一つは確かに権限が縮小されたという問題、はたして縮小されていいのか悪いのかということについて、どういうわけで縮小しなければならぬか。何か県の農業委員会にやらしておくことは不都合があるというところから権限の縮小をやらしたのか、どういうわけで縮小しなければならぬか。この意味が十分尽されていないようです。提案者はできるだけ縮減を望みたくないということもるる述べられた。もちろんこの問題ではございません、全体的に縮減は望ましくないということで提案したのだと、こう言つております。これは決して言葉じりをとらえるわけでなく、ほんとうはそう思つておらぬのだろうと思う。ところがあなたの御説明通り、明らかにこれは縮減です。縮減の結果、税法適用も受けなければならない。適用を受けなければならないから除外規定を設けた、こうなつて来ておる。そこでそれでは何ゆえに縮減しなければならないのか、権利を剥奪しなければならないのか。現にこれは選挙で出ておるわけですね。出ておる者の権利縮減しなければならぬか。これはおそらくこの次の改選からこういうふうに適用になつて来るだろうと思いますが、何か非常に大きな必要があつて縮減しなければならぬのか、この点ひとつお伺いしたい。
  20. 小倉武一

    小倉政府委員 この点につきましては、今回の議員提案法案と、この前の政府提案法案と、根本的な趣旨はかわつておらないので、私が申し上げますが、理由は二つあろうかと思います。一つは県の農業委員会活動をもつと自主的な面をふやして参りたい。と申しますのは、行政機関ということでありますれば、おのずから行政機関としての制約を受ける。県庁の機関と別の独立の行動ができにくいということから、形式法律上の行政機関たることをやめる必要が生じて参つております。そういう意味で、そういう必要性に基いて、これまでの県の農業委員会農業会議という別の法人にするというふうになつたのであります。もう一点は、これは農地委員会の時代からの問題でございまするが、県の段階委員会行政上の処分的な行為をするということは、農地改革も済み、問題が非常に村々の農地の移動といつたようなことでございますので、むしろそれは市町村農業委員会だけで十分ではないか。県の農業委員会はむしろ県の農地政策なり、あるいはその他の農政全般について指導的な役割を果す、個々の具体的なケースについて処分をするということはむしろやめた方がよくはないか、こういう実質上の理由、この二つが今申し上げましたようになつ理由である、こういうふうに考えております。
  21. 川俣清音

    川俣委員 これはちよつとまた基本にもどりますが、先日、なぜ政府提案を行わなかつたかということについては、国会意思がはつきりしなかつたことが一つ、今度急いでこれらの法案議員提案をあえて望まれておる大きな原因は何なんでしようか。この法律の成立を急いで希望されておるとすれば、それは何に何が必要であるのかということなんです。もつとわかりやすい言葉でいえば、時間を非常に省略して申しますが、選挙が七月に行われる、その前に直しておかなければならないというようなことが、提案の有力な理由でもあるようなんです。これは小倉局長はどういうふうにお考えになつておるかわかりませんが、七月の選挙を前にして何らかの形をとつておかなければならぬのじやないか、こういうことが提案の大きな理由になつておると思うのです。小倉さんはそういうふうにお考えになつておりますか。
  22. 小倉武一

    小倉政府委員 提案者意見を私が忖度することはおこがましいことでございますが、こういうことが提案されました客観的な情勢と申しますか、そういうものの一つとしては、確かに選挙が間近に迫つて来た。従いまして選挙が終つてしまえば団体問題、あるいは農業委員会問題について、新しく選任された委員の在任中に根本的な改正をやるということは法制上なかなか至難でなかろうか、こういうことがやはり一つの大きな原因だつたろうと思います。なお、しかし今御指摘の間に私どもが考えられ得ることは、農業団体と申しますか、あるいは協同組合あるいは農業委員会に関します制度の根本改正ということは、もう一両年前からやかましく言われておつたところでございまして、関係の協同組合あるいは農業委員会等におきまして、いろいろ自主的な動きもございますし、かたがたその後の様子を見てみますと、両関係をも健全な発達をしておるとは見受けられないのであります。こういう状態を長く放置しておくということは農業全般のためにも好ましくない。従いまして現在が最適の時期であるかどうかはいろいろ問題もございますが、できるだけ早い機会にこういう制度についても目安をつけたい、こういう御趣旨だろうと推察しておるのであります。
  23. 川俣清音

    川俣委員 そういう理由が世間にかなり流布せられております。選挙を前にして何らかの形のものが必要だというところから出て来たのであろうということは、一般に認められております。ところが農業委員会はどうしても選挙前にやらなければならない。農業協同組合の方は今選挙をやつておる、今月中に終らなければならぬ。片方は選挙は終つてもいい、片方は選挙を終る前にやらなければならないということは、どうも同じ立場にある、両方を受持つておる農民からしますれば、一方は改選前に改正しなければならぬ、一方は選挙をやつてあとからでもいい。これは理由がはなはだわからないことになつて来る。一方は選挙前にやらなければならぬ、一方は選挙のあとでもいい、同じような農業団体ですよ。私は必ずしも農業団体とは思いませんけれども、一応農業団体だ。その問題のためにこの問題が起つておる。こういうふうに見れば、同じ団体が、一方は選挙前にどうしてもやらなければならぬ、一方は選挙のあとでもいい。これは受ける農民からいうと、何らかどうも矛盾だ、こういう点が指摘されております。この点はどのようにお考えになるか。率直な農民はどうも理解しがたい。一方は選挙前にやらなければならぬ、一方は選挙のあとでもいい。受ける農民からいえば同じようなものです。
  24. 小倉武一

    小倉政府委員 その点は非常に法制上の問題だと思うのでありますが、私は実は二つ違う点があると思います。一つは県の農業委員会、あるいは市町村農業委員会も同じでございますが、これは法律上の国民の権利義務、あるいは農民の権利になつておる選挙権あるいは被選挙権が法制上直接出て来る。ところが協同組合の方は、協同組合を自由につくつて、その上で組合の定款によつて、間接的には法律でございますが、国民の公民権という部類には属しない選挙権だと思うのです。ところが農業委員会の方は、いわば公民権に属する選挙権だと思うのでございます。従いましてその権限によつて選挙された委員の任期中に委員をやめさす、こういつたような制度をつくることは問題があろうかと思いまするが、農業協同組合の場合はそれほどではないのではないか、それが一点であります。もう一つは、農業委員会はある一定期間、今度の議員提案によりますると、三十年の三月三十一日までしか最大であつても存続しないのであります。当然に消滅してしまう。ところが地方関係の指導連は、これはいつまでに解散しなければならぬということは書いてございません。従いまして選任された役員は指導連の存続する限り、また自分の任期中には理事としてあるいは役員として存続在任ができるものでございまして、法律でもつて在任中直接にその役員たる職を奪うということにはなつておらないのが違いの第二点であろうかと思います。
  25. 川俣清音

    川俣委員 第一点はまことに明快な御答弁で、そのような答弁でしかるべきだと思います。二点については疑問がございますが、私はこの点には触れません。一点のいわゆる公職選挙法にのつとるような公民権的な色彩のもとに行われるところの選挙であるから、これは非常に明快だと思うのです。ただ地方の農民からいうと、同じような農業団体のどこに区別があるのだというような、こういう誤解を受けるから明快な答弁を望んだのです。実は私はそういう答弁があることを予想しておつたのですが、公民権的な選挙によつて行われるものといたしますれば、これは早々の改正は行うべきじやないということが出て来なければならぬ。これはただ団体の都合というような便宜主義的に法律を出すべきじやないということが出て来る。これは多くの公民権的色彩を持つておるものでありますれば、これは団体の意見によつて、団体の当事者の意見によつて自由に改正しようというがごときは、私はこれは法律の持つておる建前の越権行為であろうと思う、そういう考え方は……。あたかも自分の団体の内部の改正であるがごとき観点からの案は、これは大いに慎しまなければならぬ問題だと思うのです。問題の本質が公民的色彩を持つておるもの、これを一ぺん与えたものを取上げるのですから、権利義務に関して非常に大きな影響を与えるものでありますから、団体本位の考え方でこの改正を行うべきじやないと私は思いますけれども、局長はどうですか。
  26. 小倉武一

    小倉政府委員 これは団体の都合によつてどうこうすべきという問題ではもちろんございません。その点はまつたく御指摘の通りであります。こういう農村と申しますか、あるいは農民の公民権に属するような制度につきましてたびたび、あるいはしよつちゆう改正をすることは、望ましくないということは申すまでもないのでございまして、そういうために団体関係法律が慎重に国会で御審議になつておることだろうと、私も推察いたしておるのであります。
  27. 川俣清音

    川俣委員 この点明快にする必要がある。農業協同組合は農民の一つの自主的な機関である。団体員の意向あるいは団体の構成者の意向というようなものによつてある程度提案されることも妥当性を持つて来る。こういう公民権的色彩を持つておるものに対する制限や是正は、あたかも自分の農業団体であるかのごとき観念を持つて改正に当るということについては、十分慎まなければならぬ問題ではないか。従つて私は、必ずしも好ましい形ではないのでありまするけれども、議員提案にいたしましても、単にこれは農業委員会という立場というものから離れて、あるいは農林省という立場から離れて、一つのこれは行政機関を変更するものであるから、これは各関係官庁及びこの農林常任委員ばかりでなくして、他の意見をも聞いて、内閣委員会意見等も聞いて、あるいは地方行政委員会等の意見も聞いてこれは処理すべきが妥当ではないかと思いますけれども、小倉局長は自分の局内にある団体だから、こういうふうに安易な考え方でこの改正同意をされたかどうか、この点伺いたい。
  28. 小倉武一

    小倉政府委員 実は今回の議員提案の県の農業会議、これはこの前の政府提案と名前も多少かわつております。内容の構成も若干かわつておるところがございますが、基本的には、この前の政府提案と同じような原則の上に立つておるように見受けられるのであります。そうしてこの前の政府提案の場合には、御承知のような関係省の討議を十分経たものでございますので、その当時と現在と行政組織あるいは行政機関等の考え方が、根本的に政府においてかわつておるとすれば別でございますが、そういうこともないようでありまするので、その点について政府の部内におきましても、根本趣旨について異論はなかろう、かように存じております。
  29. 川俣清音

    川俣委員 県農業委員会を改組いたしまして、法人格のかかつた都道府県農業会議に改めたのでありますが、この府県農業会議というものは、かわつた面としておもにどのような活動を望んでおるか、もちろん法律にある程度明らかになつてはおりまするが、これを明快に――提案理由によりますると、農民の自主的な利益代表機関として大いに活躍せしめたい、こういうところから出て来ておるのですが、自主的な機関ということになりますと、行政機関としての補助を受けたものといわゆる自主的な活動機関というものとは実質的に異なつて来ることは、昨日申し上げた通りであります。そこで農業会議というものがどういう任務を持つかということは、これに明らかになつておりますように、おもに農政活動をするあるいは技術活動までいたそう、こういうのでありますが、農民の生活改善や技術指導の面については、必ずしも私は足鹿君と同一ではありませんけれども、現に改良普及員が政府の地方公務員的な色彩を持つて活動いたしております。これはかなり行政面の仕事をいたしております。これの予算を大蔵省が削減いたしましたのを今度復活いたしております。しかも生活普及員につきましては増員を行つておる。そうして増員を行つた上に、補助を二分の一に減らすというのをさらに参議院ではもとの三分の二にいたしておる。これは農政活動の面というよりも、技術指導いわゆる農民の生活改善の指導その他の技術指導を受持つところの体系をもつていたしております。これはりつぱに体系づけ、予算がついておるのであります。従つて政府としてはこれを助長しようといたしておるのであろうし、また国会意思もそこにあつたと思うのです。その面とだぶつて、局が違うごとに変質までしてこういうものを置かなければならないという理由がはつきりしない。前の農業委員会の持つておりまするものがなぜ統合されたかというと、御承知の通り一部をさいて普及員に持つてつた。技術普及の仕事を普及員に振りかえられた。残つておりますのは食糧関係仕事農地関係仕事が残されております。普及活動の面は普及員の方へ統合されて、農業委員会というものができた。いわゆる農業関係の三委員会が統合されて農業委員会ができたが、出発したときからいつて残されておるのは、農地委員的な色彩のものと、食糧調整員的色彩のものが残されておる。今度はそれをまた編成がえをして、もう一ぺん農業普及員の方へやつたものと同じようなことをするということになると、今の行政簡素化という線から非常に逸脱した方向へあえて持つて行くのではないか、そういう誤解を非常に受けやすいと思われるが、これに対するあなたの御見解を伺いたい。
  30. 小倉武一

    小倉政府委員 この農業委員会の現在あるいは将来の性格を論じた場合にいろいろのことはもちろん考えられますが、これまでの法律ないし今回提案されております法律によりまして、農業委員会というものはどういうことをするのかということになりますと、また若干趣がかわつて来るのではないかと思います。私どもといたしましては、法律の定めるところによつて仕事をして参ります関係上、どうしても法文の書き方に問題があろうかと思うのでありますが、従来の農業委員会と今回の農業委員会と、その点においてはかわつていないのではないかと私は思います。県の農業委員会は県の農業会議になつて非常にかわりますけれども、市町村農業委員会におきましては、今度農業委員会になることによりましてまつたく機能あるいは活動分野がかわつたといつた部面はなかろうかと思うのであります。農業委員会の成立のときには、御指摘のように、食糧調整の関係、あるいは農地関係、あるいは農業改良の関係がむしろ一緒に統合されておりました。その場合の統合と申しまする仕事は、直接みずから事業をやるということでなくて、そういう三つの仕事に関する行政事務に参与しているということであります。従いまして農業改良、技術指導といつたようなことに関しましても、これまでの農業委員会も、直接みずからが技術員を持つて、あるいは職員を持つて技術指導をするということはまつたくございませんけれども、普及員その他の府県の技術指導につきまして、あるいはもつと広く申しますと、農業改良の事業につきましていろいろ委員会として意見を述べるということは一つの大きな使命であつたのであります。その点は今後もかわらないのであります。ただいろいろ立案の途上におきまして問題がありましたことは、農業委員会に技術員を置いてどうこうするということがあつたのでありますが、そうなりますと農業委員会性格として非常にかわつて来るということが考えられますけれども、今回提案になりました農業委員会を見ますというと、そういう点についての相違はございませんので、そういう点はなかろう、かように考えるのであります。
  31. 川俣清音

    川俣委員 私がお尋ねしているのは二点あつたのです。一つ小倉局長が、自分たちが提案したものと、技術関係を除いては大したかわりはないのだ、こういう説明を先ほどからるるされている。そうだとすれば一体政府提案であつてもよかつたのではないか、国会が三年もこれを論議したというには、同じものでないということが期待されて、討論され審議されておつた。同じようなものであれば、今まで通さなかつたことが非常におかしい。国会が怠けたことになる。これは怠けておつて通さなかつたのか。小倉局長の言うことを聞いていると、国会が怠けておつて、結局はおれの言う通りなつたじやないか、こうも聞えないことはない。そうけんかしているとは私は思いませんけれども、悪くとればそう言われても仕方がないともいえる。     〔井出委員長退席、佐藤(洋)委員長代理着席〕 同じものを出すのであつたら、なぜこの前通さなかつたのか、技術員の問題を除いた以外はおれの言つた通りじやないか、それを通さないでおいて今度通すのはどういうわけだ、逆に聞きたいところだと、こういうことだと思う。どうも御答弁がそう出て来る。これはもつともだと思う。同じだからいいんだ、こういう御答弁は私は成り立たないと思う。同じであつたならば国会はもつと早く通すべきであつた。むしろ問題は、農業委員会のあり方等についてもつと真剣に討議し、もつと将来性あるように具体化してやることが私は最も親切なやり方ではないかと思う。だんだん権限が縮小されて行つて、どこかに行かなければならないから、この辺で立てこもろうというようなことで満足させることは、私は決して親切な指導の仕方でないと思う。本質的にどうしてもこれを生かして行かなければならないとすれば、やはり本質的に生きて行けるような、その職能の十分発揮できるように、その本質が十分発揮できるように持つて行くことが必要であろうと思う。農業協同組合と普及員の間をまわつて歩いて、ようやく生きて行かなければならないというようなこと、これは強く希望しても予算の面からだんだん削減を受けて来るということになつては、自滅せざるを得ない。だから自主的な活動を主体としてやつて行くならば、あるいは農民の利益代表としてやつて行くならば、予算の裏づけなしにもそういう面が必要だからやつてつたらいいじやないかということです。あるいは前のように、まだ食糧調整の事務が残されている。あるいは土地委員会的な、農地委員会的なものがまだまだ残されている。小倉局長農地委員会的な色彩が今後弱まつて来るといいますけれども、私は決してそうじやないと思う。町村合併に伴いまして、多くの農地問題が発生して参ります。これは農地問題について局長はあまり無理解だから、簡単にお考えになつておりますけれども、隣村地主というものが、今度は隣村というものが非常に広大になつて参る。そうするとその中間にあるところの両村にまたがるところの牧野とか山林、ああいは開墾地というような農地問題が、さらに発生して来る余地が多くなつて来ております。これらの問題に対する処理も今よりも以上にふえて行く傾向が出て来ております。また新しい市でもないような市が多く出て来ております。一郡一市とか、十箇町村一市というような、厖大な市ができている。市ができて参りますと、市の都市計画が行われて、農地が宅地になつて行く、市街地になつて行こうというような場合に、土地の紛争が起つて来ることは明瞭であります。そのために建設委員会に農林委員会から合同審査を申し込んで、これらに対する処理の遺漏なきを希望いたしておるのであります。そういう弊害がだんだん縮小されて行くのなら、何もわざわざ農林委員会から建設委員会に出向いて行つて農地問題の解決を迫らぬでもよかつた。そうでなく、さらに問題が紛糾し、問題が起りそうでありますために、あえて農林委員会が建設委員会に合同審査を申し込んだのです。どうも所管が経済局農地関係がないからというようなことで、農地仕事が少くなるだろうというような見解は、私は非常な誤りだと思う。農地の紛争はますます頻発をきわめておる。本来の仕事行政面の当然受持たなければならぬ仕事がふえて来ておるときに、その方はやめるんだ、自主的活動だけやるんだというならば、これは性格がまつたくかわつて来るのであります。今までは、農地問題の紛争は治安に影響し、農民生活に非常な影響を与えるから、行政事務として当然これにかわるに行政付属機関として、農業委員会をしてこれに当らしめて、治安の維持並びに農村の紛争を解決した。これは自主的にまかしておけるとするならば、あえて二十数億に及ぶような多大の予算をもつて当る必要はないのです。自主的な農民の利益代表機関であるところに、二十数億などという、三十億に近い補助をしなければならぬ理由一つもない。あるとすれば、他の農業団体についても、水産団体についても、商工団体についても、同様な予算的措置を講じてやらなければならないだろう、こういうことになる。そうでなくて、別個に特別な取扱いをいたしたというのは、その職能を認めて、その必要を強調して、そこで予算化されておるものと私は信ずる。もう活動の余地がなくなつたとすれば、従来通りの予算の必要がないということになるではありませんか。小倉局長、この点について御答弁を願いたい。
  32. 小倉武一

    小倉政府委員 まず市町村農業委員会との関係でございますが、これは性格がどのようにかわつたか、あるいはかえたらいいかという問題になりますと、なかなかむずかしい問題でございます。理行法と、この前の政府原案、さらに今回の議員提案と比べまして違つておる点は、御指摘のように、今の段階で申しますと、技術員関係が大きな点であります。この技術員に関連いたしまして、農業委員会性格が非常にかわつた、こういうふうに判断いたしますと、そこにいろいろ問題が出て参るのであります。性格がかわつたという解釈もできますし、あるいはそうでないという解釈もできようと思います。ただ今回の議員提案は、技術員の問題に触れておりません。また技術員による農業委員会活動には触れておりません。従いまして現行法と今回の議員提案とを比べますと、そこに性格上の相違はなかろう、こういうふうに申し上げたのであります。政府提案と比べれば、そこに性格上の相違があるなしの問題が、やはり出て参ろうかと思います。  それから農地関係でございますが、御指摘のように、最近の農地の移動あるいは町村合併に伴う在村、不在村の問題等、いろいろやつかいな問題が出ておることは御指摘の通りであります。この農地関係の基本的な問題につきましては、現在農地法によつて農業委員会権限が定められておりますが、それを今回の改正によつて大きくかえようというつもりはございませんし、またそういう規定もないのでございますので、その点については現在の権限を大きくいじることにはならぬと考えております。なお最近の地主の問題の処理ということについて、実際問題として農業委員会あるいは農業会議が大いに活躍しなければならぬということは、御説の通りであります。
  33. 川俣清音

    川俣委員 まことにお答えが抽象的で、私の質問をそらしておられるのでありますが、よほど苦しいことと思つております。経済局において農地調整のことをやらせる、あるいは食糧調整のことをやらせるという任務に、なかなか力が入りがたいということも考えられます。どうしても農政活動のようなことをやらせて、これを育成して行こう、こういうのだろうと思いますけれども、だんだん財政状態が困難になつて参りますと、経済局考えたような、農政活動だけでこの団体が存続して行くという考え方は、非常に困難になつて来るのじやないかと思います。むしろ私は、もう少し総合的な形をとつて経済局から離れて、むしろ官房につける、総合的な色彩を持つておられるところの官房へつけて、そうしてやつて行くということまで考えて行くなら別だと思います。どうもそこに役所的な、セクトのにおいが残り過ぎておつて経済局の手でこの農業委員会法改正をはかることがやや無理ではないかというふうに思うのでありますが、小倉局長は無理でないと考えておられますか。
  34. 小倉武一

    小倉政府委員 農業委員会の所管についてのお尋ねつたのでございますが、御指摘のように、食糧、供出、割当の関係、あるいは農業改良の関係、あるいは農地関係等がございまして、それぞれ各局に非常に関係がございます。むしろ農業委員会仕事の実態は経済局仕事というよりも、そういつた関係の局の仕事が多うございます。そういう意味におきましてはお説の通りであります。ちようど協同組合は経済局の所管になつておりますけれども、仕事の内容を見ますと、たとえば米の販売ということになりますれば、むしろ食糧庁、協同組合の指導ということになればむしろ改良局というようなこととほぼ似たようなことになつておりまして、全体を通ずる問題といたしまして私どもが所管しておる、かようなことであります。
  35. 川俣清音

    川俣委員 小倉局長、それは間違いであり、曲解ですよ。農業協同組合というものは、農家経営を主体にしたものである。その農家経営の主体の上から食糧、農地というものを考えておるのであります。ところがこの農地委員会というものはそうでなく、最初の出発は行政の末端として、いわゆる農地調整、食糧調整という意味から出発したものであります。ただこれを食糧庁に置くか、あるいは農地局に置くかということであつたのを、前の農政局の変形を経済局に置いた。本質の問題は違うのであります。農業委員会を協同組合と同じような感覚であなたが案を立てられるから、同じような性格のものを二つつくつたようになつて、紛争が起つて来る。紛争の種は経済局がまいた。技術員の問題などは、わざわざ触れようとは思いませんけれども、同じような感覚で二つつくろうとするところに問題が起つて来ておる。その問題が解決しない。同じような団体を二つつくろうとするところに問題があつたのです。これは逆に言うのです。今まで三年もかかつて国会は何しておるのだということが、あなたの口吻の中に出て来た。腹の中はそうだろうと思いますけれども、そうではないと思う。経済局が自分の中で同じようなものを二つつくるというところに、割切れぬものを割切ろうとするところに、紛争の原因をまいておる。国会を紛争の中にたたき込んだのは、これは経済局だといわなければならぬ。同じような性格のだんだん似て来たようなものをつくろうとするところに問題があつた。だから二法案を一緒にしなければなかなか提案ができないということになる。本質の違うものでありますなら紛争のあるはずがない。別の性格のものを出される場合に、紛争を起すわけはないじやありませんか。あえてこの問題が起きたのはここに原因があつたと思いますが、局長はどうお考えですか。
  36. 小倉武一

    小倉政府委員 協同組合の例をあげましたのははなはだ悪い例でございまして、申訳がなかつたと思います。しかし問題はやはりございますので、協同組合の一分野とこのたび提案されているような農業委員会制度の一分野とは非常に同じような部分がございまして、また制度として若干同じようでないかと思われる部分があるばかりでなく、そういうふうに持つて行こうとする考え方はもちろんあるのであります。経済局がそういう考え方を持つておるというよりも、そういう御主張をなさつている向きがある、こういうことであります。私どもは、そうではなくて農業委員会はあくまで行政機関であり農業会議はそれの延長としての自主的な機関ということで考えておりまして、かえて考えておるのでございますけれども、農業委員会の系統団体ということに考えますと、まさにいろいろな分野が重複して参る。そこになお技術員という問題が出て参りますと、よけい問題が複雑になる、こういうことでありますけれども、私どもはこの前の政府提案でもそういう考え方は実はいたしておらなかつたのであります。ただ法案の解釈の仕方、あるいは今後それをどう発展させるかといつたいろいろの主観な見方がございますので、そういうようなことがいろいろな混線を起した原因であろうというふうに私は考えております。
  37. 川俣清音

    川俣委員 私は、このままで行くとだんだん紛争して来ると思うのです。それを憂慮しているのです。もちろん農業委員会のあり方については、先般足鹿委員が技術員の問題を除いては明確にいたしておりますが、こういう考え方で行きますと、また技術員の問題に入らざるを得なくなつて来ましたが、私は深く入ろうとは思いません。さらに紛糾を続けると思うから、今入らないのです。今入らないでおいて、将来問題が起きないかというと、これは問題を起して参ります。それはなぜかというと、農業会議というようなことで上で結んでおる。本質の違つたものを違つたように成立さして、そのおのおのの特長を生かそうとしないで、だんだん似たようなものに、農政活動というような点で結んで行こうとするから、そこに農政活動の部面としての分野の争奪戦が行われて来る、あるいは補助金の争奪戦が行われて来るというところに問題を将来に残しておるのです。決して私はこれで割切つていないと思う。農林委員会も、おそらくこの法案が執行されますと紛争が起つて参ります。経済局長考え方とあるいは農協法を提案した人の考え方とは、今法案を通すということでは確かに妥協しておられますけれども、本質的な解決をいたしていないのですよ。それは法案を急ぐから、その必要もありましよう。しかしながら、紛争は今よりもさらに拡大されるということだけは十分お考えだと思いますけれども、安心してよろしいのですか。
  38. 小倉武一

    小倉政府委員 その問題はこの法案いかんには関係がない。実際の団体の運営当事者、あるいは農民の要望がどちらに行くかということでございまして、これは法案でもつて一応割切つたようなかつこうにいたしましても、決してやはり問題は解決しておらないと思います。と申しますのは、まだ輿論と申しますか、国会の御議論を通じて考えましても、こうだというよい意見もございませんし、またいろいろ農業団体あるいは村の人々の話を聞きましても、こうすればよいというふうな割切り方の議論はないように思います。いろいろ議論はございますが、大勢を支配するような議論はないように思いますので、その点はやはり今後とも残ろうかと思います。ここで割切るよりも、むしろ長い問題として今後の動向を見きわめた上で処置すべきであろうと思います。
  39. 川俣清音

    川俣委員 私は、今から大体割切れる方向をとつておかないと、これが農村の紛糾のもとになり、農林委員会の紛糾のもとになる。これを私は憂慮しておるのです。意見のよしあしは別にして、紛争の種をまくようにことはどうであろうかということなんです。私は、これは解決つかないと申しますけれども、解決つかないことはないと思うのです。これは経済局が何だか農政活動というような面でまとめて行こうとするから問題が紛糾して来ると思うのです。技術指導というものはやはり行政面が受持つのだというような考え方をいたして参りますると、この問題はかえつて割切られる。早く言えば、技術員というものは行政的な方向になるべく近づかしめるのだといつて割切れば、これは町村に置くとかいうようなことになつて来る。あるいは別個の公務員的な色彩を濃厚に持たせる、こういうふりになるというと割切つて来るのです。自主的な農業団体の中に技術員を持ち込むということになると、これは紛争の種をまいているのだ。だから、紛争を解決しようとすれば、まん中に置くよりも外わくに持つて来なければ、何だか予算のついたごちそうみたいなものを目の前に置いて、どつちをとるかといつたら紛争になる。両方から取上げて行つて別のところに置くのならば紛争しません。そうしてとれということになつたら、共同団結してとるということになるかもしれませんけれども、紛争の種にはならない。共同提携をいたしまして、共同闘争というようなことでよそから持つて来るということになるかもしれないけれども、紛争の種にはならない。これは常識だと思う。それを、まん中に予算のつくようなものをぶら下げておいて、どつちがやつてもいいような、どつちも農政活動だというようなものを中に置くから、おれの方が本家だ、おれの方が前から持つているのだという紛争が起つて来ているのです。そこがはつきり割切つておらないというのです。これは大勢のおもむくところに処するのだというけれども、大勢なんかはきまるものではありません。紛争の渦中に物を役げておいて、解決がつくなんてできるわけのものではないのです。ますます火は拡大するだけです。この点は、何か紛争を誘導するようでありますから、実際は触れたくなかつたのですけれども、ただ問題を解決する意図を持たなければならないということだけを申し上げておきたかつたのです。  そこで次に移りますが、一方普及員というものの活動分野というものを認めて行くのか、あるいは農業委員会の分野を普及活動の面と結びつけるのか、あるいは自主的な農業協同組合の方へ持つて行くのかということが、将来大きなわかれ道になる。農業協同組合の方へ持つて行くのか、あるいは普及活動の方へ行くのか、これは大きな将来のわかれ道なんです。私は、むしろこの問題を解決しておかなければならないのではないかと思う。この問題を解決することが一番親切な、忠実なやり方じやないかと私は思う。雨が降つて来る、貧乏だから何とかしてその辺の雨だれを防ぐということも一つの方法でしようがそれならだんだん縮減されて行つて――非常にものを拡大したように農政活動ができるのだから、拡大したと見えないこともないけれども、人の分野入つてつて拡大したと思うのは、思うだけでありまして、なかなかできるものではないと思う。むしろそれよりも、本来持つている職員なら、あるいはそれらの持つている人の特質がどこにあるのか、どういうところから農業委員会の書記が生れて来たか、そういう部面まで親切に入つて行くこと――これは全体の団体の問題ではないけれども、おのおのの生れて来たところの本質にできるだけ近づけさして行くということが、職員に対しましても最も親切なやり方であると思います。それを何とか生かさなければならないということで、無理なところへ片づけようとしたつて、それは決して親切ではないという考え方を私を持つているのです。職員の問題を考えてみた場合でもそうです。団体ではなく職員の場合を考えてみた場合でも、もつと本質的なところにそれらの人を有効に使うことが、最も正しい、最も妥当な効率的な予算の使い方であろうと思う。このだんだん予算が縮減されて来るときに、非能率的な、非効率的なところへ持つてつて予算をとるということは、これは小倉さんの腕をもつてしてもなかなか容易じやないと思うのです。自由党の人が提案されておりますけれども、事予算の問題になりますと、自由党が一番弱いのです。予算獲得については野党が一番強い。それをあえてこの法案を出されたからには、よほどの決心をせられておると思いますけれども、無理なことは長続きしないと思うのであります。これに対する小倉局長並びに小枝さんの御見解をお伺いしたい。
  40. 小倉武一

    小倉政府委員 いろいろ重要な問題についてお触れになつたのでございますが、今回の法案におきまして、重要な点についての考え方がはつきりしておらないのではないか、こういう御意見であります。私どもの農林省関係から申しますと、技術指導というものは国、府県市町村といつたような公共的な機関でもつて担当して参るのが本筋であるという考え方をいたしておるのであります。その点については、この前の政府提案におきましてもそういう考え方を実はいたしておりまして、団体に技術指導をまかせる、あるいはそれでもつてすりかえるという考え方はいたしておらなかつたのであります。  それから今後の農協方面に対しての助成の問題でありますが、これについてはもちろん仕事の内容、重要性ということがどの程度の予算的措置を必要とするか、また予算の確保ができるかということと非常に関連のあることは、御説の通りであります。私どもといたしましては、今回提案されました農業委員会法改正法案の趣旨に立つて予算の獲得に十分努力して参るつもりでございまして、これまでの考え方と比べまして、この法案による場合には予算の獲得が特別にむずかしくなる、こういうようなことはないように存じます。
  41. 川俣清音

    川俣委員 時間が参りましたから、あと農協法並びに農業委員会法案についての質問は午後に譲ります。
  42. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員長代理 午後一時半より再開することにして、暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後三時十七分開議
  43. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  先般議長の承認を得て暴風雪による北海道の農林被害実情調査のため委員を派遣いたしましたが、この際その報告を求めることにいたします。福田喜東君。
  44. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 ただいま委員長より求められました北海道におきまする暴風雪による農業災害の概況につきまして、一緒に北海道に参りました同僚委員各位のお許しを得ましてその詳細を御報告申し上げたいと存じます。  われわれ調査班の一行、すなわち私、吉川委員中村委員、芳賀委員、安藤委員並びに岩隈専門員の六名は、衆議院より正式派遣を命ぜられ、五月十四日午前七時半羽田飛行場より出発いたしまして、同日正午前北海道庁に到着いたし、ただちに田中知事以下関係職員並びに農業団体の御参集を願つて、被害の一般状況及び現地側の応急対策、並びに国に対する要望について説明を聞いたのであります。それより昼夜兼行をもちまして被害の実情調査に努めたわけでありますが、その径路及び調査事項について申し上げますれば、十四日は、道庁での会議終了後ただちに札幌より自動車に分乗いたしまして沿道被害の状況をつぶさに視察しつつ石狩町に至り、花畔の農業協同組合において、石狩支庁管内及び同町方面についての冷温床の被害状況を聞き、次いで当別町西当別において農家の圃場についてこれを実地に視察いたしまするとともに、当別町における被害の概況について地方の罹災者の側より説明を受けたのであります。  翌十五日は、まず空知支庁管内に入り、岩見沢市において空知地方における状況の聴取を行いまするとともに、幌向地図において冷温床の被害状態を観察いたしまして、次いで上川管内に参りまして、富良野町、山部村において冷温床の被害、農家の倒壊、橋梁の破壊の状況を視察したのであります。  翌十六日は、狩勝峠を踏破して十勝に至り、災害救助法の発動されました新得町、清水町、御影村、芽室町を次々に訪れ、特に芽室町においては、十勝支庁管内被害二十四箇町村長より熱心な陳情を受けまするとともに、同町渋山地区の開拓農家八十八戸が突風によつて全滅に近い被害を受けておりまする状況を親しく視察いたしまして、その惨状に一驚を喫しまするとともに、災害の中から立ち上ろうとするその労苦を慰問し鼓舞激励いたしました。  今回の暴風雨は特に十勝山脈の東部山麓の沢を突き抜ける際に最も強烈な被害を残したのでありまして、被災民各位に対し深甚なる御同情の言葉を捧げたのであります。引続き黄金道路を経由して日高支庁管内に至り、同夜半浦河町に到着し、支庁長及び被害町村長より説明を受けたのであります。  翌十七日浦河町を出発して、まず四月十八日の水害による様似川の決壊状況を視察し、ついで本桐村において温冷床の被害状況を調査し、ついで静内川の決壊並びに農地及び農家の被災の状態を視察し、静内町において町当局より風水害の状況について説明を受けました。さらに勇払郡鵡川町に至り、胆振支庁及び町当局より同管内の災害の状況説明を受け、引続き白老村を調査いたしたのであります。  翌十八日、四日間の日程を終り、再び札幌に立ち帰りまして、知事以下農務、農地開拓、林務の各部長より、十七日に開会された臨時道議会に対しなされた報告を基礎とした災害報告を受け、あわせて国に対する現地側の要望事項を詳細聴取、意見の交換をいたしました。打合会の後別室において、共済連、購連及び統計調査事務所より、それぞれの立場に立つての状況説明を受け、今回の調査について万全を期することとしたのであります。  以上をもちまして、現地における調査を終了いたしまして、同夜千歳発の飛行便をもつて帰京いたした次第であります。  北海道における今回の暴風雨雪は、去る九日の夜半、日本海を横断して西海岸に上陸した九百七十ないし九百六十ミリバールの低気圧が原因でありまして、翌十日に及び、瞬間最大風速二十メートルないし三十五、六メートルに達する旋風をまじえた暴風雨雪により、石狩、空知、上川を初め、網走、釧路、十勝、日高等ほとんど全道にわたつて公共施設、漁業、農林業に甚大なる被害を与えましたことは言うまでもなく、不幸にして六百数十名に達する人的損害をもたらし、特に石狩、空知、上川等本道の穀倉と称せられる地帯において、発芽数日後ないし旬日後の生育初期の最肝要期にあつた温冷床苗しろ並びに直播田について、大打撃をこうむつたのであります。道庁側が十六日現在で集計しました数字によりますと、総損害額は四十八億八千四百万円余に達するといわれておりますが、このうち特に損害の大きかつたのは水産業でありまして、いまだ帰還せざる漁船数十隻、漁民三百数十名に上り、漁船、漁具等の被害十六億、次に家屋の倒壊、破損等による被害が同じく十六億に達し、公共施設におきましては、河川、海岸、道路、橋梁、港湾等に約三億一千万円の損害を与えております。しこうして、われわれの当面の調査目標でありました農林業方面の損害におきましては、農業約八億五千万円、林業約五億と称せられておりますが、これらの被害状況についてやや詳細に申し述べ、御参考に供したいと存ずる次第であります。  暴風雨雪による農業上の被害が、どういう形で現われておるかと申しますると、言うまでもなく至るところ温冷床の障子のわく及び障子紙が飛び散り、あるいは大破損をしたわけでありますが、そのために冷い烈風を受けて、温冷床内の気温が摂氏一度二分ないし七度八分に低下いたしまして、われわれの視察しました苗はほとんど凍傷し、葉先が黄変ないし白変いたしておるのであります。御承知のごとく北海道のような寒冷地帯におきましては苗七分と言われ、育苗過程における成否が収穫の大半を決すると言われ、今年は昨年の冷害の経験にかんがみまして、温冷床の奨励が特に行われまするとともに、播種の時期も平素より十日程繰上げられ、四月二十六、二十七、二十八日のころに種をまいておりまするが、せつかく順調に進んでおりました苗は、今次暴風雨雪によりまして、三、四日ないし十日の遅れは免れぬのでありまして、苗の生育は平均して二週間遅れとなり、これが五月末から六月にかけての挿秧期に悪影響を与え、本年の冷害気味の気象の推移と相まつて、今後における事態の推移が極度に危惧されるわけであります。  また畑作におきましては、今年は水田と同様、一般に農作物は例年より著しく進捗し、十勝、網走方面における亜麻、ビート、春まき麦類の播種はほとんど終了をみていたようでありますが、軽い火山性士の表土が飛散いたし、一方では低地の畑は埋没いたし、再播を要するものが相当面積に上るものとみられるのであります。  以上のように農業災害はすこぶる激甚なるものがあるのでありまするが当面の被害額としましては、まず水稲保護苗しろにおきましては、使用不能数量に換算した温床紙の被害坪数は百五十八万坪、同じく障子が約三十万坪、これを金額でみますと二億三千八百万円と相なります。但し、札幌統計調査事務所が十四日現在の数字として、われわれに報告したところによりますと、紙の被害において約六十万坪、障子わくにおいて約二十万坪でありまして、道庁側の数字と約百万坪の懸隔を示しておりますことは、今後すみやかに調整を要する点かと存ずるのであります。温床紙、油等の手当は、道当局の適切な指導と相まち、各単協、購連等の活動によつて、大体各農家に行き渡り、被害坪数に対しておおむね九二、三%程度は修復を終つているのでありますが、これらに対する資金手当並びに障子わくに対する原木手当に関する各種の問題が後に残つているのであります。  次に農作物被害は、水稲において六百町歩、金額六百万円、畑作二万町歩、金額二億三千五百万円であります。農業用施設の被害もまた相当額に上つておりまして、農業倉庫、事務所、工場、農業用電気施設等の共同利用施設において、件数で三百四十二件、金額で五千八百万円、畜舎、納屋、サイロ等個人施設で九千六百八十九件、三億一千万円の損害を与えております。  以上を合計しまして農業関係被害総額は、八億五千万円でありますが、これに対しましていかなる対策が要望せられておるかにつきまして、簡単に御説明申し上げたいと存じます。  まず大きくわけまして、国による助成の措置と融資または融資あつせんの措置とでありますが、助成の措置においては、一、水稲保護苗しろ用資材の購入費に対する補助、二、種子及び肥料の購入費に対する補助、三、農業共同利用施設の復旧費に対する補助が挙げられており、金額としては二億三千万円となつており、融資の措置においては、これらに対する復旧の必要経費から補助費を除いた額、並びに家畜購入資金及び個人の農業施設についての復旧資金を合計した額として三億八千四百万円、別にこれに対する利子補給額二千五百万円の助成をあげておるのであります。  次に、山林関係の被害状況であります。われわれは各地を歩きまして、随所に風倒木を見受けたのでありますが、各営林局及び道において、一部推定を入れ集計したところによりますると、国有林において三百二十四万石、道有林において五万石、その他三千石、計三百二十九万三千石が風のために倒れ、その損害額十六億四千六百五十万円、実損額はこの三割と見て、約五億円と計算いたしているのであります。右のほか林業関係施設災害として千四百万円、林産関係として製材工場、製炭施設、木炭倉庫等の被害が約七百五十万程度あげられております。山林関係の災害対策としましては、まず今次の災害に際して、耕地防風林、屋敷林等の偉力が遺憾なく発揮されておる事実にかんがみまして、被害施設の復旧を急ぎますことは言うまでもないのでありますが、さらに積極的にその造成に努むべきであります。しかしてその際、北海道の土壌の性質もありましようが、特に深根性の樹種を選定するよう研究の要があるものと感じた次第であります。次に林産関係諸施設の被害について、これらの復旧資金に対する特別融資が要望せられております。次に風倒木の処理でありますが、道内における木材価格の高騰を抑止しまするために、特に国有林において、伐採計画を変更することなく、売払い等の措置を講ずることが肝要かと存ずるのであります。  この際特に農林当局の注意を喚起しておきたいことは、倒壊家屋、温冷床苗しろ用の障子わく等の復旧資材として、国有林に対する払下げ並びに代金の延納措置について、現地側より強い要望が述べられておるのであります。われわれといたしましても、帯広営林局長に対して早急に善処方を促しておいたのでありますが、こういう非常時において民心及び民生を安定させるためには、きわめて敏速な措置を必要とするものであり、特に代金延納措置についてなお明確な結論を出していないように思われたのでありますが、国有林当局の善処方を強く要望しておくものであります。  次に農地開拓関係の被害状況でありますが、さきにも述べましたごとく、開拓者に与えつつある影響は格別に深刻なものがあります。開拓住宅の全壊二百九十三戸、半壊二百八戸、大破二百五戸、その他農業施設及び学校の破壊四百五十件に上り、その被害額は二億数千万円と推定されておるのであります。また開拓地における水田及び畑の受けた被害も、一般農家と同様でありまして、これがために温冷床資材の購入資金、種子、肥料の購入資金に対する特に手厚い助成を必要とするものと存ずるのであります。一般農地及び農業用施設については、二月二十七、八、四月十九日及び五月九、十日と三次にわたり災害を受け、その復旧事業費は一億一千万円と算定されておるのであります。特に北海道の河川は、大部分が原始河川でありますために、災害にあたつて被害は一段とはなはだしいようであります。特にわれわれの視察しました日高、胆振地区では、日高山脈に源を発しまする河川の流程が短いために、年々歳々災害を繰り返しておるのは、まことに遺憾にたえない次第であります。われわれが視察をいたしました静内川は、堤防の決壊により約百町歩の農地がまつたく砂礫地と化し、その復旧は容易ならぬものがあるように見受けましたが、すみやかに建設、農林両省において調査を完了し、復旧工事を進捗せしめねばならぬと存ずるのであります。  最後に、今回の災害調査にあたつて特に痛感いたしました点について二、三申し上げてみたいのでありますが、第一は、昨年の冷害にあたつても強く指摘されておりましたが、今回においても、気象の予報が非常に遅れております。現地で聞いてみますと、九日の夜十一時過ぎに知らせておるのでありまして、それより三時間後には猛烈な突風に見舞わて、手の施しようがなかつたということであります。  第二点は、資材の備蓄がまつたく行われていなかつたために、資材調達に非常な苦労をしておるのみならず、その価格を暴騰せしめておるのであります。非常事態に備えて農協の連合会段階で備蓄制度を研究してみる必要があると思うのであります。  第三点は、北海道における温冷床の必要は最も切実なるものでありますが、三十年度以降に対する政府の助成政策が確定いたしておりませんので、現地では非常な危惧の念を抱いております。この際明確な方針を打ち出しておく必要があろうかと存ずるのであります。  第四点は、過年度災害に対する補助金の相当額が未交付のままであるということであります。この点は北海道に限つた問題ではなく、各県共通の問題でありますが、政府はその方針をすみやかに明確化する必要があろうかと存じます。  第五点は、今回の災害にあたつて、十二箇町村に対して災害救助法の発動を行つているのでありますが、その後における国よりの補助が大幅に削減される傾向にあるということであります。  次に第六点としては、農家の建物の今回の災害につきまして、ほとんどまつたく共済制度の恩恵を受け得ない状況に置かれておりますことははなはだ残念なことであります。任意共済問題を解決いたしまして、非常時に備える態勢を整備しますることは急務中の急務と存ずる次第であります。  以上を要しまするに、昨年の冷害に引続き今回の暴風雨雪災害が北海道農業に与えました影響は、まことに軽からざるものがある次第でありまして、政府としてもまた国会といたしましても、現地の要望に応え、今会期中に適切な対策の樹立いたされますよう委員長初め委員各位にお願いいたしまして、私の報告を終ることといたします。
  45. 井出一太郎

    井出委員長 この際芳賀委員より、被害に関して簡単なる質疑を行いたいとの申出があります。これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 井出一太郎

    井出委員長 それでは芳賀貢君。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま自由党福田委員より詳細にわたりまして北海道の暴風雨雪災害の調査報告が行われたわけでありますが、これに関連いたしまして私は保利農林大臣に対しまして、ただいまの調査報告を基礎にして農林大臣はいかようなる対策をこの事態に対して持つておられるかという主要なる点を御表明願いたいと思うのであります。特に今国会は会期は明日をもつて終るのであります。さらに政府が意図されておるところの会期の再延長が行われは場合におきましても、今月中をもつて会期は終るということになるわけでございますが、この災害復旧対策等に対しましては、当然予算的の措置あるいは立法上の措置等も必要になつて来ると思うわけでありますが、それらの措置を講ずる場合におきましては、当然国会の承認等を求める必要のある事態も生じて来ると思うわけでありまして、かかる緊急なる事態の上に立つて、農林大臣は現段階においていかなる御所信をもつてこの災害を処理されようとしておるか、その点に対してお尋ねいたしたいのであります。
  48. 保利茂

    ○保利国務大臣 今回の北海道の暴風雨雪の被害については、ただいま福田委員から詳細御報告がございました。また政府といたしましても大野国務大臣が北海道に参りまして、親しく現地視察をいたし、一昨夜帰つて、今日の閣議でもつぶさに報告を受けました。農林省といたしましても、主として農業の面と水産関係の面とに災害の焦点をしぼりますと、漁業上の損害と、温冷床苗しろの災害ということになるのではないかと感ぜられますので、農業改良局及び水産庁の專門係官を派遣いたしまして、現地の視察をいたし、調査をいたしておるわけであります。同時にまた作報事務所におきましても、この災害調査に全力をあげておりまして、中間的な報告も参つております。作報調査は完全にとりまとまりますのは、非常に急いで督励をいたしておりますけれども、おそらく今月の末ごろになるのじやないかと考えております。今日の大野国務大臣の報告によりましても、今回の災害の特徴は、むろん全部がそうだというわけではございませんけれども、公共的施設の災害が比較的薄く、漁業の面におきましても農業の面におきましても、しぼり上げてみれば個人災害に重点がかかつて来ておるということであります。被災農家――特に根室で操業中に遭難をせられて、今日なおおびただしい消息不明の漁船があるのであります。まことに胸の痛む思いがするわけでございます。  さてこれらに対しましてどういう措置をとるか。ただいま福田委員のごらんになり、御指摘になりましたようなことは、これはもうだれしも考えざるを得ない点であるわけであります。たとえば温冷床苗しろの更新、修復に要したる被覆紙等に対する措置をどうするか、あるいは漁業の関係におきましては、漁船の代船建造につきましては、むろん漁船保険だけでこれが十分と言えるわけでありませんし、そこに持つて来て、今日全体的に金融が非常に苦しい最中ではあるけれども、資金のめんどうが必要ではないか、ただめんどうを見るだけできるかという点につきまして、ただいま私の方としましては、具体的にこの対策、措置を講じて、研究をいたしておるところでございます。至急成案を得るようにいたしたい、そうして対策を誤らないようにいたしたいというのが私のいつわらざるところでございますけれども、全体から申しまして――むろんやることはやらなければならぬのですけれども、一面今日の財政金融の状況からいたしまして、相当困難も予想される。これは率直に申します。しかし私はできるだけ努力をいたしたい決心ております。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に一点お尋ねしますが、ただいまの御答弁によつて農林大臣の御意思のほども察知できるわけであります。ただ問題の処理については、今国会が終るまでに、明確に、具体的に処理されるという見通しを持つておられるかどうか。その点だけお伺いしておきたいと思います。
  50. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは私どもとしましても、行政措置でできるだけのことは、むろん政府の責任においてやらなければならぬと思いますけれども、国会の御協力を得なければできないもの一につきましては、できるだけそういうふうにしなければならぬ、かように考えております。
  51. 井出一太郎

    井出委員長 暫時休憩いたします。     午後三時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後八時二十九分開議
  52. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  引続き、三案を一括して議題といたしますが、まず農協法の改正案について質疑を願いたいと思います。古屋貞雄君。
  53. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 第一にお尋ねいたしたいのは、現在の改正の目的を承りたい。
  54. 金子與重郎

    金子委員 今度の農業協同組合法改正の目的がどこにあるかというただいまのお尋ねでありますが、これはお手元にあるかどうかわかりませんが、私が説明いたしました提案理由説明書にありますので、こまかいことはそれをお読み願うことといたしまして、簡単に重点的に御説明申し上げます。  協同組合法全般にただいま問題になつております農業協同組合共済の監督規定がまつたくないために、この保険類似行為に対して、大蔵省からのいろいろな問題が起きて来ておりますので、この保険類似の問題について結論をつけることは別といたしまして、少くとも現にやりつつある協同組合共済が手放しの状態でなく、一つの監督規定のもとに行われて行くという体系をどうしてもとらなければならない。そうでありませんと北海道、長野県等において相当実質的に事業が進んでおりますこの共済が、また路頭に迷うような過去の歴史に見たような状態になることは困るので、この際どうしてもこれを緊急に入れなくちやならぬということが一つ。これは緊急性の問題であります。  それからなお全般的な問題といたしましては役員選挙の問題、役員の責任規定を強化している問題、それから若干監督規定を強化しております。それらが主なる点であります。  最後に一昨年来問題になつております協同組合の現段階の、各県にあります指導連合会、それから全国段階における指導連合会が非常に弱体化いたしまして、のみならず相当赤字も背負つており、指導力も貧困になつておりますので、これを強化するための一つの方式として中央会の設立が問題になつております。これはかつて二回ほど廃案になつておるのでありますが、現段階において全体の協同組合の状態を見ますと、終戦後の協同組合が放任主義の形をとつておりましたために、相当経理上おもしろからぬ問題もできております。いわゆる経営上の指導監査というものが緊要の問題でありますので、その点を重点的に働かせるために現段階の指導連を中央会の形にして、かつての産業組合中央会と監査連合会の合体したような姿のものをここで打立てる、これが大体主であります。なお中央会について付言しておきますが、この中央会が、純然たる協同組合法の中で中央会を立てることがいいか、あるいは現在の農業協同組合法の外で中央会という性格を出すべきじやないかというような私個人の意見もあるのでありますが、しかしそういうふうな抜本的な法律案を出すためには、時間的にも研究的にも間に合いませんので、一応政府がかつて考えておりましたところの、協同組合法の中で中央会を立てて行くということは、少し割切れない問題があるのでありますけれども、諸種の事情から一応それを中心にして考えたわけであります。以上が大体今度の法律出したゆえんでありまして、これは私が今さら申し上げなくても、大体提案理由説明書の中に書いてあると存じておりますので、詳しくはそれをごらん願いたいと思います。
  55. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 よくわかりました。  そこで今度御提案になりました中央会の性格権限、これを承りたいと思います。
  56. 金子與重郎

    金子委員 農業協同組合中央会の目的、事業、そういつたようなことは、はなはだ恐れ入りますが、要綱の四ページ、五ページにございまして、たとえば事業につきましては、組合の組織、事業及び経営の指導、二、組合の監査、三、組合に関する教育及び情報の提供、四、組合の連絡及び組合に関する紛争の調停、五、組合に関する調査及び研究、六、前各号の事業の外、中央会の目的を達成するために必要な事業、以上の事業を行いまして、そうして組合の健全な発達をはかるように働くことがこの中央会設立の目的でございます。
  57. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで承りたいのですが、御提案を拝見いたしますと、中央会においては、全国中央会は地域的に強制的に行われておりますが、いわゆる加入、脱退につきましては、全国中央会におきましては強制的に全部が当然に加入すべきものである。しかし都道府県の中央会につきましては、加入脱退は自由である。この区別はどういう目的において区別されておるのか、この区別した理由を承りたい。
  58. 金子與重郎

    金子委員 はなはだ恐れ入りますが、今のはちよつと私にはよくわからないのでございますが、そういうふうに法文ができていないように思つておるのでございます。
  59. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それではどういうふうにできておるのですか。
  60. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、法案は県の中央会に加入するといなとは協同組合の自由になつております。その自由な意思決定に基いて加入すれば、今度は全国中央会には当然加入することになる、こういうことでございます。従いまして全然別建にしておいて、県の中央会は自由であり、全国中央会は強制であるということではございません。
  61. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいまの御説明でよくわかりましたが、都道府県の中央会は加入、脱退が自由であつて、そこに入りますと当然に今度は中央会になるのだ、こういうことなんですね、従いまして結局地方の都道府県に対する加入、脱退が自由であれば、さらにその脱退、加入は全国中央会にも加入、脱退をいたすことは自由だということにならぬと、いわゆる任意組合であり、農民の自主的な組合だという性格に非常に齟齬を来す、食い違いが出る、かように思いますが、その点はいかがですか。
  62. 金子與重郎

    金子委員 この問題は、ゆうべ相当数回繰返して論議された問題でありますけれども、ゆうべ先生はいらつしやいませんので、また繰返して御説明申し上げます。この問題につきましては、当初に申し上げた通り、この中央会のあり方というものがかつての産業組合中央会、それから産業組合監査連合会、こういうような性格をそこに盛り込もうとしている結果、現段階の協同組合からは少しく性格がかわつているような点があるということを御説明申し上げたのであります。そこで加入、脱退の自由と申しますけれども、どうして府県の中央会に加入したときに、全国へ当然加入をするという形をとつたかと申しますと、もともとこの法律が出発するときには、全国中央会、各県の支会、各部には部会こういうふうな形になつて指導機関があつたのであります。従つてそういうふうな構想で最初に生れつつあつたのでありますが、その中途において全国中央会の下部組織としての県の組織でなしに、県自体も一つ独立性を持つべきだという意見が出たために、これが二重加入であり、県の段階に加入すると当然加入をするというような変態になつたのでありますが、もし支会という形であれば当然支会に入ればそれは全国団体の会員になるということは当然のことなんです。それならば県が独立してもなぜそれを二重に加入せねばならぬかというと、大体においてこの単位組合におきまして、組合の経営、監査、指導というようなことは、単なる県だけで済む場合と、あるいは全国中央会というものと県と協力の形で単位組合の監査、指導なり、仕事に当らなくてはならぬ場合がたくさんあるのであります。そういうときに、全国の中央会というものが単位組合というものの会員でない者に協力してこの仕事をやるということは、そこに理不尽な問題が出て参ります。そういう関係から、県の連合会に入つた場合には、全国の中央会には当然に加入になると、こういうのでありまして、別にそれが入るのがいやであれば県の連合会に入らなければ全国の中には入らない、これは全国と県と別々な団体という性格になる関係上、二重加入というものの強制という形に当然加入というものが出ておりますけれども、仕事の上におきましては、県の段階におきましては、かつての全国中央会に対する県支会と同じ性格仕事をやる計画でございます。そういう関係から当然こういうものが出て来るわけであります。もしそれに対して私の説明が足らないで御理解ができないとすれば、あなたがかつての産業組合時代における中央会、支会と単位組合に対するその事業の働きの関係を振りかえつて考えになりますと、その問題がぴつたりと理解がおつきになるんじやないか、こういうふうに考えるのであります。
  63. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま御答弁いただきましたが、かつての産報、さようなものは半強制的な関係で組織されたものでございまして、今回の農業協同組合の根本的な本質と異なるということになると私は思うのです。だからそれを想像して考えろということは、それならば現在の農業協同組合の本質というものを棄てろという御答弁だと私は思う。  そこで私は伺いたい。繰返して申し上げたいのは、かつての産業組合法に基く組織と、今回の農業協同組合は、私は根本から違つておると思うのです。純然たる自主性を持つた協同組合であつて、やはり何らの制約を受けない、しかも強制的に統一をするということはなくして、自由意思のために考えられた一つ農業協同組合法だと考えております。私どもは農業協同組合の本質は、少くとも自主性が中心になり、農民の経済的発展と地位の向上を考え、しかも一方においては民主主義的な自主制を尊重されたものである。かように考えておりますので、ただいまの御答弁は、かつての産業組合法を考えていただけばよいと、こういうお話でありますけれども、さようになると多少の制約が行われる、私どもは、農業協同組合は制約を受けない、自主的なものだと思います。これを権力やあるいは統制をされるということになると、本質をなくするのだということになると思う。ことに私承りたいのは、根本的に農業協同組合の本質というものは農民自身のものであり、農民の経済を向上するものであり、増進するものであるというふうに承つておるのですが、それはやはりかつての産業組合法と同じものでございましようか。
  64. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと古屋委員に申し上げますが、委員長ただいま伺つておりまして、先ほど来の御議論は、この委員会で反復繰返されたようにも思います。そこで提案者の方から答弁がございますが、爾余の御質問をなるべく簡潔にお願いしたいと思います。
  65. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その点を簡潔に伺つてから入りたいと思います。
  66. 金子與重郎

    金子委員 私の知る範囲におきましては、過去における産業組合法も決して強制の点はなかつたと思つております。農業会になりましてから初めて加入脱退の自由を禁止するとか、購販事業の自由を禁止するということがありましたが、私どもが十数年やつて参りました産業組合には、そういう束縛、強制というものはなかつたように考えております。それから当時におきます中央会というものは、産業組合法の中におきます中央会ではなくて、中央会という別な組織のもとに行われておりました。その後監査連合会というものが協同組合にできましたが、監査連合会も強制ではなかつたのであります。それで中央会に対しましてあくまで加入脱退の自由の原則の上に立つべきだ、自主制を持つべきだということは、今の協同組合法の本則はその通りであります。そうでありますからして、この中に中央会というものを置くにつきましは、特に中央会というものの部門だけ別な取上げ方をしなければならないというので、法律をごらんになりますとわかりますが、別立てにここで取上げたわけでございます。
  67. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 従来の指導連の指導が非常に不十分であつて、それを強化するためにおつくりになるということの御説明を承つたのでありますが、しかし私ども考えますのに、農林省農林省行政的な他の面において指導をしており、それからただいま御提案になりました改正案によりますと、それに似通つたようなものになつて来るので、従来の二本建を一本建にするようにお考えになつておるのか、それともやはり従来の通り二本建の指導はそのままに行われておるのか、自主的に指導するのと、行政庁の指導するのと二本建を、一本のものにまとめるお考えのもとにかような改正案が出されたのか、その点どうですか。
  68. 金子與重郎

    金子委員 中央会がどういう目的でやるかということにつきましては、さいぜん御説明申し上げた通りでありますが、その目的を遂行する中で、ことに私どもが最も重点を置きますことは、現段階におきますところろの全国の協同組合の実態を見ますのに、一番欠けておる問題は経理と経営能力である。言いかえれば、率直に申し上げますと、協同組合の経営者自体に計数的な経営能力が欠けておる、これはただ選挙によつて出て来るのでありまして無理からない。たとえば村の有力者にいたしたところで、一年数十万の経理の中に立つていた方が、一躍数千万というふうな、しかも数十にわたる勘定科目の資算表をもとにして経理をやつて行くということに相当無理がある。そこでこの面をまず指導機関が強力に推進して行かなければいけない、こういう点から私どものこの中央会の一番大きく取上げなければならないことは、経営指導する、経理の指導をする、同時に監査を行う、従つてこれは見方によりますと、地方庁なり、あるいは国なりそれ自体がやつてもいい仕事であるとも言えるのであります。しかしながら、実際の問題といたしまして、あるいはこれを一切国の管理にまかせるということになりますと、それこそあなたのおつしやるように自主性をまつたく喪失してしまう。そして角をためて牛を殺すような結果が出て来るかもしれない。そこで一方にはその間の指導監督の仕事の補助的な仕事をすると同時に、一方には、それを運営する上には、組合を組織した一つの自主性をそこに持たして行く、こういうふうな考え方でおりますので、この協同組合法の中で、協同組合の基本はさわつておりませんけれども、この中で置く中央会法におきましては、一般の購販事業組合、一般の協同組合と少しく別な性格を持たせてある、こういうことは再三申し上げた通りであります。
  69. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私が申し上げたいのは、県の中央会には加盟したいけれども、中央の全国中央会には加盟したくないという点がある場合は、制約を受ける点があります場合が一つと、ただいま御説明のように、自主性に対して相当障害を与えられて来ましたら、農業協同組合法の根本的な本質を、統制されてしまうのだから破壊してしまうのだという点をおそれて、私は今の質問を申し上げたのです。そこでただ経営面の指導啓発をすれば農業協同組合はよくなるんだというようなお考えでございましようか。それとも農業協同組合の現在の組織、本質の場合に非常な欠陥があつて、そうしてこの中央会なり全国中央会という指導機関を改めれば、一体これで農業協同組合の仕事の上において、今のような不手ぎわな赤字の出るようなことのない、目的を達し得ることができるかどうか、この点はどうでしよう。これは農林省お尋ねしてもけつこうです。
  70. 金子與重郎

    金子委員 提案者もこの問題につきまして、今の経理監査なり経営の指導をすれば、組合の赤字が消えてりつぱになる、そういうふうに端的には考えておりません。しかしながら協同組合の経営の上には、組合員の教育の問題もありましようし、あるいは経営者の手腕の問題もありましよう。あるいは土地の環境の問題もありましよう。自然的の立地条件の問題もありましよう。しかしながら私ども現段階の協同組合を見ましたときに、一番大切な、経済機関でありながら経理が十分的確に行われていないきらいがあることは事実であります。従つて何といたしましても、経済団体はその経理と経営システムをはつきり、しかもその運営を間違わないようにやらせるということが基本的な問題でありまするからして、私はこれは協同組合の将来の発展の上に大きな役割を果す。しかしながらこれができたから協同組合は赤字が消えるんだ、そういうふうに中央会の設立で全部が間に合うんだというふうには考えておらない次第であります。
  71. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私はこの指導に対する強化をいたしまするよりも、今の農業協同組合の赤字が出たり、あるいは農業協同組合が発展いたしません一つの根本的な問題は、やはり経営能力の問題であるとか、あるいは責任制の問題であるとか、あるいは特に現在のような関係において資金の面であるとか、それから一つの企業体としては、資本主義経済組織のもとにおいては最も弱体化された一つの企業体ということに私は考えられるのであります。従いまして指導だけを強化いたしましても、この問題は解決がつかないと思う。従いまして根本的な問題に手をつけていただくことが非常にいいんじやないか、この点につきましては、やはり資金の面などは非常な重要性を持つて来る。それから経営能力の面も非常に問題を持つて来る。ということは、この中央会というものが生れることによつて、経営面の問題も指導面がはつきり出て来ないと思うのです。それよりも別の面において経営面の問題、資金面の問題、こういう問題が非常に農業協同組合の現状から行きまして大切な問題であると思うのですが、この点については、今回の改正の御提案の中には、それの資金の面、経営面についての関係がないようでございますが、この点はどうお考えになつておりますか。
  72. 金子與重郎

    金子委員 この法律は、一番最初の御質問にお答え申し上げた通りの目的と、どの点を改正するかと申しましたから、こういう点とこういう点を改正しました、こういうことなのでありまして、組合経営の運用や資金のことはこの法律に書くべき性格のものではありませんので、それは書いてはありません。しかしながら組合の経営能力というお話が今ありましたけれども、組合の経理に対して自信を持つた経営をするということは、組合経営能力の一番大きな要素であります。従つてその要素が経営上欠けておる。それはなぜ欠けておるかと申しますと、さいぜん一つの例をもつて申し上げましたが、農村の仲間の中から選挙されまして、組合長なり専務理事になりましても、今日少しく大きい村になりますれば、一つの単位組合ですら、その貯金は億に近い数字になつておる。しかもその事業は信用事業、購買事業、販売事業、利用事業という、世の中の非常な広汎な事業を一手にまとめております。従つてあなたが、あなたの県のあるいはあなたの村の協同組合の資産表をごらんになつても、おそらく協同組合の資産表くらい勘定科目の煩瑣な資産表は、三井、三菱みたいな会社でもあれだけ複雑な資産表を持つているものはないのであります。そういうような複雑な経理をしなければならぬ。しかも今日複式簿記を使つております。そういう経理を、組合長になつたからというて、それをすぐできるわけじやありません。現実に私どもが協同組合の欠損をした組合、諸払いの停止をした組合を見ましても、その組合長、専務がどこでどういう損をしたかということが的確にわかり得ない、そして諸払い停止をしている大きな組合も相当見えるのであります。でありますからして、この中央会の一番大きな仕事として、監査連のような仕事をやるということを申し上げましたけれども、これによつて組合が起死回生の道があるというのではなしに、まず組合の経理、経営というものを、かつては支会あるいは部会というようなことで、産業組合時代に相当強化して参りましたものが、終戦後におきまして組合に対しては官あるいは上から経営そのものに対してあまり口ばしを出すべきでないという方向になりましたために、今はそういうふうな組織でない。そして今の指導連というものは、その仕事よりかむしろ農政活動その他の教育等にカを入れている関係上、その組合の経理、経営に対する指導能力が非常に低くなつております。これはあなたの県に行つてもその通りであります。そのようにしまして全国的にこの傾向があるということは事実なんであります。だからして、これを今の指導連がもうこれ以上あの程度の仕事をしておりますと、単位組合からの負担金が大体において納まらないためにたくさんの赤字を生みつつあるのであります。従つてこの指導連のあり方に対しては、この辺で終止符を打つべきものだという見解を私どもは持つております。
  73. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それでただいま私が心配していろいろと御質問申し上げている関係は、この法案が通過いたしました結果、かつての農業会というようなものになりはしないか。その農業会の弊害を農民はしみじみ今日まで味わつて来ましたので、その点が一つ。  それからもう一つは、ただいまの御答弁によりますと、指導啓発するとおつしやつていますけれども、各地方自治体において、非常にこういう経理面の何と申しましようか、訓練指導の講習会を開いてしきりにやつておりますが、これでは不十分であるから別にやらなければならぬということなんでしようか。それとも地方自治体が現在やつておりますが、それをそのまま強化して行けば、改正をしなくても目的を達し得るのではないかと思いますが、その点どうなんでしようか。
  74. 金子與重郎

    金子委員 今の質問に対して率直に申し上げます。今の中央地方の機関では、今の協同組合が現実にやつております経理に対して、その指導なりあるいは監査なり、そういうふうな面だけを取上げてみましても、不十分であります。不十分でありますからこういう機関をどうしてもつくる必要がある、こう信じております。それからこの法律によつて、かつての農業会のような形になつてしまうのではないか、こういうような御意見でありましたが、これは協同組合全般に対する強制加入をやるとか何とかいうことをきめてあるのではありませんので、今までの協同組合法の基本法に対しては、さいぜん申し上げた三種の点について改正を加えまして、特にその協同組合法の中に中央会という制度を置いたがゆえに、そういうふうな御疑問が出ると思いますが、この中央会は、あくまでも協同組合法の中の一つの部門として中央会の制度をここに設けたのであります。従つてただいまあなたの御疑念のような、協同組合法の中央会というものをここでさしはさんだがゆえに、今後中央会が農業会のようなことになつてしまうのではないかということは、私はないとこれは、はつきり申し上げられるわけであります。
  75. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 この改正法案を拝見いたしますと、予算の範囲内において国でその費用の一部を負担するというような規定があるようですが、現在各地方自治体においてやつておりますところの農業協同組合に対する経理の技術の面、それから指導の面、この方面に対して予算を流して参りますならば、これと同じ目的を私は達し得られると思うのでございます。そうしてあえて農業協同組合の本質でありますところの自主性というものに制約を加えなくても、その方面において私は目的を達し得られると思う。ことに経理に対する技術の問題につきましては、何も特別に指導いたさなくても、そういうような技術者が農業協同組合に採用されますならば、単なる帳簿上の技術というものは、そのほかの面で十分補えると私は思います。ことにただいま私が申し上げました、地方自治体が各地方の実情に即して、特殊性に即して指導啓発をいたしておりますところのこの方面に、この国家の予算を流していただきますならば、あえてこういうような御苦心をなさらなくても、私は十分に目的を達し得られると思うのでございますが、その点はいかがでございますか。
  76. 金子與重郎

    金子委員 どのくらいの予算を一体使うかということによつて、非常に多額の金を国家が支出いたしまして、そうして地方庁に配付して、地方庁が地方自治体に対して協同組合の指導監査その他のことをやれということになりますれば、これはおのずから別問題でありますけれども、私どもの構想している現実的な面といたしましては、かりに全国に対して五千万や八千万の金を各県にわけたと仮定いたした程度では、とうてい各県の職員だけで十分なあれができるとは考えられないのでありまして、またもう一つには、官の立場にある人たちが経理なり監査なりに専門に携わりますと、ややもすると経営指導の立場からの監査というよりも、むしろ摘発的な監査というような性格が強く出やすい傾向を持つております。これは過去の経験においても明らかでございます、産業組合時代に。でありますからして、その監査というものは官の方もやるけれども、同時に半官半民ということになると、少し言葉が適切でないのでありますけれども、ある程度まで強力な、自主的ではあるが指示権もあり監査権を持たしたものがこれをやるということになれば、一番結果として適切なものが出るであろう。これは過去の経験においてそういうことがありましたので、そういう形をとることが私は妥当だと考えております。
  77. 松岡俊三

    ○松岡委員 議事進行に関して……。提案者説明は先般詳細をきわめております。またこれに対して足鹿君からは実に綿密なる御質問がいたされております。同一党内において、提案者説明も聞かずして、そうして同一党内においての質問がほとんど同じのような状態になつておるということは、時間を節約する上からいうても、いかように考えられておるか、委員長のお考えを伺いたい。
  78. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの松岡委員の御発言につきましては、私も一部さようなふうに認織をしましたので、先ほど古屋委員に御注意を申し上げたわけでございます。どうか古屋さんにおかれては、その点も御了承いただいて、なるべく重複を避けてお願いしたいと思います。
  79. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私は今の松岡委員の発言は非常に不服なんでございます。それはやはり同じことを質疑いたしましても、その観点が違つて参りますれば、同じことであつても、やはりそこににじみ出る感じは違うと思うのです。どうしても私の質問が悪い、こうおつしやるなら、おつしやるように私も考えなければならぬと思いますが、委員長からそういう御注意の点でありますから、御注意の点は重々私尊重いたしまして質問をいたしておるのであります。  そこで私は、この農業協同組合の今回の改正は、根本的な大きな問題でございまして、明日で会期が切れるというならばこんな質問を私は申し上げません。けれども、あと十日ございます。私はなるべく意を尽し、十分に審議をされて、そうして制定されることによつて、農民が納得するということに私は問題は帰着すると思うのであります。もともと農業協同組合の本質から考えましても、現在の経済組織のもとにおいては、相当根本において欠陥があるのですから、その欠陥があるものをどう持つて行けばほんとうの今の実情に沿うかという御苦心が、御提案者にもあつたと私は思うのです。従いまして私が質問いたしまするところも、あるいは重複するかもしれませんけれども、その観点は、やはり承ります私どもの感じから申せば、やはりおのずから人考え方が違つて、次の質問が生れて来るということの意味で、私は質問を申し上げておるのですが、さような委員長の御注意に対する関係につきましては、了承いたします。しかし私は前に承つておらぬから、お前は知らないのに来て、やたらそういうことをやるのはけしからぬじやないか、こういう御議論もむげな御議論ではないと思いますけれども、私どもの発言に対しましては、相当尊重していただかなければならぬと思うのです。そこでただいまの御答弁の中に、予算の面についてわずかの金だとおつしやつておりますけれども、そういう予算は、これが通過しますと、はつきりきまつておるのでしようか。
  80. 金子與重郎

    金子委員 私はきまつておるとかきまつておらぬとかいうことを申し上げたのではなしに、かりにこの予算が当初に出されるときに、約七、八千万円のものが組まれておることを覚えておりますので、その予算に対して、私は予算がとれるとかとれないとかいうことを言うたのではなくて、かつてこの法律が最初にかかつたときに、そういうものが裏づいていたことがありますから、かりにということをさつきもくれぐれも申し上げておるわけであります。かりにその程度のものがあつたとしてもと、こういうことを申し上げておるわけであります。それからもう一つは、前に国家が莫大な予算を出して行つたとすれば、これは別でありますが、こういうことも申し添えておるわけでありまして、この法案に対して、その金がとれるかということにつきましては、決して私は申し上げてありませんので、どうぞその点は御了解願いたいと思います。
  81. 中村時雄

    中村(時)委員 事務当局にお尋ねするのですけれども、きよう政務次官が、大体これに対する予算の裏づけは考えておると、こういうふうにおつしやつておる。これはみなお聞きの通りである。大体その予算の裏づけに対する考え方というものは幾らぐらいなんですか。大体前と同じくらいですか。
  82. 小倉武一

    小倉政府委員 その点は昨日でございましたか、本委員会で政務次官、それから大蔵省の主計局次長からいろいろお答えがございました通りでございまして、もちろん二十九年度予算といたしましては、すでに時機を失しておりますので、金額を計上しておりませんけれども、ただいま提案者からその点に触れましたように、二十八年度予算で計上した例がございますので、そういう例等も参照して、しかるべく予算の措置を講ずるというつもりでおります。
  83. 中村時雄

    中村(時)委員 講ずるじやなくて、金額は大体幾らぐらいですか、前と同じですか。
  84. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいま申し上げました通り、二十八年度に計上したときの例に準じて考えたい、かように思います。
  85. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その点で私も承りたいのですが、そうすると七、八千万円というのですが、それはこの法案が通過いたしましても、本年度の予算にはないはずですね。それから政府では補正予算は組まないと答弁をいたしておりますのに、一体この金はどこから持つて来るのでしようか。
  86. 小倉武一

    小倉政府委員 その点につきましても、きのうも詳細にいろいろ質疑応答がございましたので、ごく簡単にお答えいたしますと、仰せの通り補正予算は組まないという政府の方針であります。従いまして補正予算で組むということをここで申し上げるわけには参らぬのでございますが、これまでの例がございましたので、法案が成立いたしますれば、政府といたしましても予算の計上方について努力する、考慮する、こういうことであつたのであります。
  87. 井出一太郎

    井出委員長 この際委員長よりお諮りいたしますが、提案者代表の金子委員は、このほど来病苦を押されて出席をされておりますので、夜中たいへん疲労されておるように委員長は見受けるのであります。この際吉川委員提案者代表としてかわりたいと言うておられますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 中村時雄

    中村(時)委員 病気だそうですから私一回も聞いたこともないのですが、それでは二、三だけ聞きたいのですが、いかがですか。
  89. 井出一太郎

    井出委員長 中村君の質問を許します。
  90. 中村時雄

    中村(時)委員 お疲れのようですから、私個々の問題に関しては、いろいろ聞きたいのですけれども、総合的に一、二点だけお尋ねをしておきたいことがある。ということは、この法案を読みます前に、今の農村というものを考えた場合に、協同組合というものは、その協同組合自身がみずからの手によつてつて行くのが基礎なんです。それにかかわらず、結局こういうふうに赤字が非常に出て来たということは、今の政策が悪いのか、あるいは協同組合自身の経営が悪いのか、どちらかなんです。今のような資本主義の形態でやつて行けば、大きな資本に追い込まれて、結局赤字が出て来るのは当然です。赤字が出て来るものを、ただ単に政府は助成するだけだという意味には行かぬと思うのです。そこでこの問題を解決する段階として、指導連のこういう段階をつくつておいて、次に結局結果において農村で一番大事なのは生産です。その生産に伴う技術の問題もある。そういうふうなあり方というものが将来必要になつて来るだろうと私は思う。そういう問題に関して、提案者としてはこれをつくつて、その後にどういう考え方をもつてそういう処理をされようとされておるか、その点が非常に大事だと思いますから、お聞きいたします。
  91. 金子與重郎

    金子委員 基本的な問題でありますので、これは提案者の私見になると思いますが、私見でよければ申し上げたいと思います。今回の協同組合法の改正、その中で中央会方式を一つ打ち立てたということは、さいぜん申し上げたように、現段階における各単協を初め、連合会等の経理の能力を欠いておるための紊乱というものが、非常に大きく出ておる、こういう点からこの点をまず解決しようというのでありますけれども、さいぜん申し上げたように、経理が明らかになつたからといつて、それで必ずしも赤字が消えるとは思わない、これには今の農民自体の経済力が標準生産の企業の価値を持たない、こういうものの寄り集まりであり、いわゆる資本主義下における非常に弱いものの立場であります。従つて一つの団結を見ましても、やはりこれが小さいものの同士の団結でありますから、おのずから資本主義カルテルのようなものにあえば、一たまりもなくこれは搾取の状態に置かれる。こういう点を考えましたときに――あくまでこれは比較的の問題なのであるが、しかしながらそういうふうな協同組合の立場と現段階の状況と、もう一つにはこの法律が一昨年来出されており、団体再編成というような言葉を使われておりますが、これは団体再編成ではないと私は考えております。ただその団体の再編成の問題をなぜ私がここで申し上げるかというと、今農村のすべての団体のあり方というものを一応俎上に乗せて、そうして経済的な面あるいは技術指導の面いろいろの面を取上げて、農村が真に強力な生産協同体の形をどうしてとれるかということを、一ぺん根本的に考え直す時期が来ているのではないだろうか。今の協同組合法等も、これはアメさんにこしらえてもらつたようなと言うとはなはだ失礼でありますけれども、向うの気分が非常に強く入つている協同組合でありまして、この方式が、日本のこの自然発生的な農民、庶民、経済的の単位の非常に低い農民の地域協同体に当てはめるのに適当であるかどうかということも、相当疑問があるのであります。従つてこれは御承知の通り、農業協同組合の中で共済事業が行い得るという点の一つの問題が今出ております。そういうことやら、あるいは当面の問題の二、三について、政府がやりかけた仕事でありますので、それに一部を補足いたしまして今回これを提案いたしておりますが、根本的な農村の問題に対して掘り下げて行くことを、どうしても最も近き将来にことにもう占領軍もおりませんし、占領下でもありませんので、こういう際に同志の皆様方とほんとうに研究して、そうして日本の農村の再建の根本問題に対して掘り下げ、同時に建設的な農村の団体の再編成なり、協同組合の抜本改正をやらなくちやならぬ段階にすでに来ておる。そうして私どもも、この法案はこれで行くが、将来皆様方とわれわれお互い力を合せましてその域に達したいということを、私個人の希望として考えておるわけであります。
  92. 中村時雄

    中村(時)委員 この問題に関しましては、根本的な問題で私もいろいろ考え方を申し上げて、事務当局に御答弁願いたいと思うのですけれども、時間がありませんから一応打切ることにします。  次にもう一点、たとえばこの中央会ができた場合に、その指導、監査を中央会がやるということになつておる。そうすると、たとえば今言つたような補助金をもらうような機関が、そういう監査、指導をするというようなことが、はたして正しく農民から理解され、農民の一つのプラスになるかどうか、それが一つ。少くとも補助金をもらい、そういうような傾向にあるときには、在来からのものを見ても大体行政機関がやつておる。そうすると官庁において農業協同組合部というものがある。その農業協同組合部とこの問題との関連性、またひいてはこの執行機関であるところのこうなればこれは一種執行機関ですね。それに対して協同組合部とこの中央会の関連性がいかなる形になつて現われて来るか、この点をひとつお聞きしたい。
  93. 金子與重郎

    金子委員 きのうから何回も繰返し御答弁申し上げておるのでありますが、本来ならばこの中央会のあり方というものは――お前、提案しておいてなぜそういうことを言うかというおしかりを受けるなら別でありますけれども、これは現実の問題でありまして、私は隠しなくお話しますが、私個人の考え方は、この協同組合の外へ中央会方式というものを出しまして、そうしてむしろ幅をもつと広げて、農林漁業くらい、農村関係のものを一くるめにした中央会法というようなものを出しまして、これをやつて行くということの方がいいのじやないかとさえ考えるものなのであります。ただこの際この問題がこういうふうな形で出て参りましたから、基本的な問題を、先ほど申し上げたように、それまでは一応これでやるほかはない。やることが正しいだろう。従つて監督官庁との問題は、これは主として指導的な立場における監査をする。それで官の方ではこれは指導というか、むしろもつと強い意味の監査に当る。官僚的な監査をやりますと、私ども過去においてもわかるのですが、どうしても萎縮してしまうのでございます。それで仕事の苦しみを知らない人たちが中心になるといけない。もう一つ、助成金の問題が苦になるようでありますからあくまで御説明申し上げますが、これは助成金は中央会という団体あるいは協同組合に対する漫然とした助成金でない。そういう助成金は私は提案者としてもらいたくない、むしろ官の責任として協同組合の指導監督に当るべきことが適当だと思うのに、官自体が当るとそれだけの経費がなかなかとり得ないといことと、もう一つは自主性をもつて代表者を出しておかぬと、今の角をためて牛を殺すような監査をやつてはいけない、こういう面からこの中央会がやるのであります。従つて中央会の中のその仕事に対して、それだけが中央会の仕事でありませんから、その官がやるような仕事を中央会がやる、その面に対する金を責任的に政府は出すのだというような考え方で、経営が赤字になるから金をもらいたいのだというような形式では、私個人としてはこの金をもらいたくないという考えであります。
  94. 中村時雄

    中村(時)委員 今のお答えの中には、非常に重大な問題を大分含んでいるので、いろいろお話しなければならぬと思いますが、一応これはあとに譲りまして、最後に一問、今たとえば足鹿委員にしても芳賀委員にしても古賀委員にしても、一番おつしやつている問題は、この中央会が農会のようなかつこうになつて、たとえば昔の中央ギルドという線が出て来やせぬかというおそれがあるわけです。その一つの現われとして、この法案に目を通した中からは、これは一党一派に偏しないというような規定もなければ、一つの方向に裏づけられやしないかというおそれが多分にある。ちようど皆さんが、農民組合がそういうものになりはしないかという御質問を足立委員がおつしやつたが、それと同じ結果が危惧されている、そういう意味においてどういうふうなお考えを持つているか、この点をひとつ伺いたい。
  95. 金子與重郎

    金子委員 これは一党一派に偏するかとかなんとかいうことになりますと、私どもは政治的な経験が非常に浅いために、そういう感じを実は持たないのであります。たとえばかつての中央会が、政治的に一党一派に偏したということもなかつたと思います。それから農会と同じような傾向を持つじやないかということについては、これは私はそういう点はないとはつきり自信を持つております。なぜならば、かつての農会というものは、協同組合とまた別な立場におきまして、そして協同組合と別の負担金、資金構成によつてつております。でありますからこれはむしろかつての中央会というものを想像していただくことと、監査連を想像していただくことによつて、私はその程度のものでないかと思つております。
  96. 中村時雄

    中村(時)委員 私はまだいろいろ質問したいことがありますが、またあとの機会に譲りたいと思います。
  97. 川俣清音

    川俣委員 ちよつと金子さんの意見だけを聞いて、あとは経済局長に聞きたいと思うのです。議論しようとは思わないのですから、そのつもりで御説明願いたい。  現行法によると二章、新しいので二節、事業のところでありますが、二節の八号、九号、十号ですけれども、現行法によりますと八号は「農業上の災害又はその他の災害の共済に関する施設」とありますが、今度は改められて「共済に関する施設」とされております。これに対するあなたのお考えを伺いたい。第九は「農村の生活及び文化の改善又は医療に関する施設」となつておりますが、これを「医療に関する施設」とかえられております。第十は「農業技術及び組合事業に関する組合員の知識の向上を図るための教育並びに組合員に対する一般的情報の提供に関する施設」、これを「組合員の農業に関する技術及び経営の向上を図り、文は農村の生活及び文化の改善を図るための教育に関する施設」と直つております。これについて直されたお考えを、この際私が聞きたいというよりも、これをかえられたニユアンスを知りたいという気持が非常に多いだろうと思いますので、これに対する見解を承りたい。
  98. 金子與重郎

    金子委員 ただいまの川俣委員の御質問は非常に急所でありまして、これは農林委員会以外のところでちよつと問題になるようなかんじんなところであります。というのは、以前の書き方は、農業共済に対する幅が狭いのであります。それを今度、組合員の家族の生命までやるということになると、あれよりももつとこの方が漫然としておりますけれども、意味を広く解釈ができる。これはただいまのあなたの質問は非常に急所なんでありますけれども、これは内緒々々というような考え方で、少し問題になるかとも思いますけれども、そういう意味が含まれておるのでございます。
  99. 川俣清音

    川俣委員 私に説明するのじやなくて、これは一般に問題が起きるだろうと思うので、速記録にとどめておきたいためにお聞きしているのです。
  100. 金子與重郎

    金子委員 そういうことでありますから、これは間口をあまりしぼらないで、もう少し広く行けるというのが――実際現実には今広く行つているものですから、それを当はめるためには広くしなければならぬ、こういうことであります。それから第九の医療の方は従来のようで、かわりませんけれども、十の問題を書き直しましたのは、中央会ができますと、情報事業というものは中央会がやることになりますので、一般事業の方では、その事業に直接関連した情報以外はやらないという結果が出て参りますので、こういうふうに書き直したわけであります。
  101. 川俣清音

    川俣委員 もう一つ、これは決して議論するのでありません、理由を明らかにしておいていただきたいためにお尋ねするのですが、「施設」としている点、政府案も「施設」となつておりまして、金子さんの案も「施設」となつております。これを本章は「事業」となつているのに、「事業」としないで「施設」とされ、しかもあとの十二号でこれに「附帯する事業」となつております。どうも逆に「施設」でなく「事業」として、あとにこれに「附帯する施設」というのが普通の常識のように思うのだが、なぜ先に「施設」とし、あとに「事業」というふうにされたか、このお考えをひとつ承りたい。
  102. 金子與重郎

    金子委員 これは特に私の意思でございませんで、法文技術上の問題です。
  103. 川俣清音

    川俣委員 それではけつこうです。
  104. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 一点だけ伺つておきたい。農業協同組合の目的の中で一番大事なのは、生産の増強の点なんですが、農業生産の増産をすることについての点が、今度の御提案の中にはないのです。今までは農業協同組合が流通面だけを扱つてつたので、共同生産、共同作業の点についての指導というものはあまり盛られていない。私は今回の御提案の中にはどうしても共同生産、共同作業等、生産の増強に対する指導面が盛られるべきだと思いますが、大分いろいろ技術面とか何とかありますけれども、特に具体的に共同作業に関する関係であるとか、あるいは共同生産に関する関係であるとかいうことが、ここにちよつと拝見ができないのでありますが、そういう点に対するところの御考慮はどういう関係になつておりますか。
  105. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 それは元通りでございます。今まで通りでございますから、さように御了承願います。
  106. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私どもの考えておりますのは、一番大事なことは、共同作業、共同生産の点が農業協同組合では欠けている。そうしてただいま改正されました中央会の中に最も重点として、これは指導啓発の面に非常に必要だと思うのですが。中央会の事業の中にこれが現われていないので、その点について、これはどういう理由でここへ中央会の事業としての大事な点を加えなかつたか、この点を承りたい。
  107. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 協同組合で今日までやつて参りました事業、また今回のこの改正された関連の事業は一切中央会でやることになつております。
  108. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 中央会でやつておりますが、中央会で従来も共同作業、共同生産等、生産を増強する点について、ほとんど農業協同組合はやらぬといつてもいいぐあいに考えられる。と申しますのは、流通過程だけに非常に重きを置いて、そうして流通過程の共同事業としては非常に力を入れておりますけれども、生産の面においては非常に欠けている。これが農業協同組合の一番重点だと思つているわけであります。この点に対する一つの施策は、中央会がおやりになるというが、この事業の中に「組合の組織、事業及び経営の指導」とありますけれども、この「事業」の中にあるのが、「経営の指導」という面にあるのか、この点がよくわからないのです。ただいまの御答弁ではこの中に入つているというが、私どもは入つていないと考えるので、入つているとすればどこに入つているのか、承りたい。
  109. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 御指摘の第七十三条の九の一号に「組合の組織、事業及び経営の指導」とございますのは、組合の組織指導、事業の指導、経営の指導というのでありまして、その事業というのは第十条に掲示されておる通りでございます。
  110. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで今の農業生産を増加する点について、従来の農業協同組合におきましては、共同作業、事業の共同化という点が欠けている。この点につきましてはさらに強化を必要とすると私どもは思うのですが、特に強化するという点に御考慮なかつたのでしようか。それとも従来通りでいいというようにお考えになつたのでしようか。
  111. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 それは第十条にございますが、「農作業の共同化その他農業労働の効率の増進に関する施設」それから「農業の目的に供される土地の造成、改良若しくは管理又は農業水利施設の設置若しくは管理」とございまして、これは従来通りでございます。従来これが十分に行われていなかつたとするならば、今回の中央会の規定されておりますところの第七十三条の九の第一でこれを指導いたしまして、あなたの御指摘のような問題を考慮している次第でございます。
  112. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうすると具体的にはないけれども、共同作業の点については従来の規定にはつきりあるわけであります。しかし共同生産の面については、共同生産の具体的な施策がどうなつているか、この点は従来欠けておつたと思うのです。たとえば農民が個々の土地を個々に経営して、個々に生産する過程においてこれを共同生産の過程に置いておく、こういう関係については、私は今回の農業協同組合法改正される上においては一番大切な面だと考えておるわけであります。ただいまの御説明では従来のままに置かれておるということでございますので、私どもはさらに特段なる御配慮をいただいて、個々に特別に共同生産に対する施策、指導、こういうことが非常に必要だと思つておるので承つたのですが、そうすると、従来の関係で事足りるとお考えになつておるのでしようか。それともただ指導だけをして足りると思つたのでしようか、その点はどうなんでしようか。たとえば具体的に申し上げますれば、農民が個々の経営をやつている。これを共同経営をやつて土地経営についてもやりたい、あるいはもちろんこれは政府の施策でありましようが、従来のような土地改良の問題などにつきましても、これをもう少し広範囲において土地の改良をする場合には、農民が共同して土地改良をする、こういう点に対する施策、御考慮を特段にいただきたいと思つたのですが、この点も中央会の七十三条九の第一で行われ得るとお考えなつたでしようか。
  113. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 古屋先生は法律のことは非常に御専門でおいでになりますから、私が申し上げるまでもございませんが、現定は規定でございまして、ただその運用の問題でございます。その運用については、これが行政的な方面からそういう問題を具体的に強化して行くという問題もありましようけれども、協同組合自体といたしましては、この中央会の事業の指導の面、運用の面でそういう問題を取上げ、強化して行くということを考慮に入れているわけであることを御了承願います。
  114. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 今の点で私の承りたいのは、生産面において共同生産の形をとる、協同組合の中にはつきりとこれをもつと強化することが必要だと思いますので、これを承つているのですが、大体今の御説明でそれ以外にお考えがないというなら、これはやむを得ませんけれども、私どもはやはり共同生産の面においての強い一つの施策が必要だと思いますので、その点を特に今回の改正の中にお入れを願わなかつた点は、考慮されてこれで十分だとお考えになつたのかどうか、その点どうなんですか。
  115. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 表現としては十分だと思つておりますが、ただ今後中央会の事業として、その運用の面においては、古屋さんのおつしやる通りに、もつと積極的に、今までよりは強い指導をして行く必要がある、そういうように考えております。
  116. 井出一太郎

    井出委員長 井手以誠君。
  117. 井手以誠

    ○井手委員 私もう時間もおそうございますので、ごく簡単に二、三点についてお尋ねいたしたいと存じます。  第七十二条の十に、全国中央会は、都道府県中央会の指導及び連絡を行うために事業計画の設定もしくは変更その他業務もしくは会計に関する重要事項について都道府県中央会に指示する、こういう文字があります。先般来本委員会でよく言われている指示権のことであると私は考えておりますし、同時に補助金と関連いたしまして、この指示権はきわめて重要なる問題であると考えますので、この事業計画の設定あるいは業務、会計などに関する指示とは、いかなるものをいかに指示する内容のものであるか、この点を具体的に私は御説明をいただきたいと存ずる次第であります。事業計画や業務、会計などについて変更や停止あるいは支払いの停止というようなことも場合によつて考えられるような、きわめて抽象的な文字でございますので、この点は具体的に御説明をいただきたい。この点はきわめて重要でありますので、特にお願いを申し上げたい。
  118. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 井手委員は農協を直接御担当になつた御体験を持つておいでになるので、私が御説明申し上げるまでもなく十分御存じであろうと思いますが、ただいまの農協の実態は、全体とは申しませんが、相当問題になるものがございます。そういうものを、中央会のこの性質からいたしまして指導――計画に一つの基準を与え、あるいはその計画が適当でない場合には、その内容等について適当な指示をするということは、これは中央会の事業の指導を行うあるいは経営の指導を行う本質から当然出て来る問題でございます。しかしこれはただいまの農協がだんだんと育成されて、内容が充実して参りますれば、かような必要はなくなると思いますけれども、現段階においてはこの程度のことをすることは、おそらくただいまの農協の運営状況ではやむを得なかろうというように考えております。
  119. 井手以誠

    ○井手委員 指導監督が必要であることは、私も十分認めておるわけでありますが、問題は指示権の発動ということでございます。場合によりますと、せつかく連合会が計画をしておつたものを停止させ、あるいは契約をしておつたものの金銭の支出を停止させるというような指示権も、これには含まれていることを私どもは考えなければならぬし、いろいろと拡大解釈と申しますか、現在予想しなかつたこともやれる内容を持つもりであると私は考えておるのであります。だから私は、この点は具体的に御指示をいただかぬと簡単に了承できないわけであります。それが今後補助金と関連いたしまして、この点がかんじんかなめのところであろうと私は思います。そこで指示とはこの範囲のものである、これ以上のことはしないというような一つの線がなくてはならぬ。吉川委員はよく御存じのように、農協についてはその自主権を尊重するという原則がありますので、それに対してむやみにせつかく計画したものを変更させる、いわゆる上級機関の指示によつて変更させ、停止させるということは、簡単にできない問題である。従つてそれは考えなくてはならぬと思う。その点については具体的に御指示を願わなければならぬ。この点は今後の運営の上にきわめて重要な点でありますので、懇切に御答弁願いたい。同時にこの点は経済局長に対しても、農林省が計画された、前の法律案についてどのように考えておられるか、またこの法律案についても緊密に連絡しておつたということも聞いておりますので、実際の運営についてはどんなふうにお考えになつておるか、この点を詳細に明確に御答弁を願いたいと存じます。
  120. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 一応ごもつともなお考え方でございますけれども、これは行政庁の指示権とは違います。これは自主性を持つた組合員の、積み上げられて来た中央会の指示権、と申しますと言い過ぎでございますが、指示でございますので、私はその点は心配はないと思います。しかもそれは定款でもつて定められているということと、それからその指示に対して違背をした場合に、その罰則を規定してはおりません。従つてそれにあくまでも従わなければならないというような心配はないと思います。なおこれは指導の内容の連絡事項に属するのでございますから、指導の上にその内容がどういうふうになつておるか、こうした方がいいのじやないか、ああした方がいいのじやないかというような程度の指示でありますから、井手委員の御懸念になるほどの問題ではなかろうと考えております。
  121. 井手以誠

    ○井手委員 ただいまそう御心配にならぬでもいいというお言葉ではございましたが、御答弁の中に、指示されたものについても従わなくてもいいという御答弁がただいまありました。そうしますると、ただ注意したのだ、従わなくてもいいということでは指示ではないと私は考える。指導ということが適切な言葉ではないかと考える。指示ということは強制力を持つた場合の用語であり、私は多くの法律の用語からいたしましても、強制力があるものと解釈いたしておりまするし、先刻来の提案者の答弁によるところの、単に従わなくてもいいようなものではないと私は考える。また定款に定めるのであるから心配いらないという意味の御答弁もありましたけれども、それでは中央会の定款はどのように想定なさつておるか、これは自主的にきめられるというものではありましようけれども、やはり提案者としては、定款に定めるところによるということでありますれば、大体の構想がなくてはならぬと私は考えるものであります。その定款には大体どの辺の基準によつて指示をするものか、支出の停止、変更――一旦契約したものの支出の停止、物品売買とかその他の契約についての変更、こういうものはさせないとか、あるいは事業計画として民主的に決定したものについては変更させないとか。こういうことは私はあり得ないことだと思う。いまさら私が農協法の――昭和二十一年でございますか、二十二年でございますか、できましたときの提案理由を申すまでもないのでありますが、そのときは決してそんなような、今のような理由は申してなかつたのであります。あくまでも自主性を尊重する、法規に従つて手続をしてあれば、すべてこれを許可するとか承認するとかいうようなことになつてつたのであります。それが農協法の建前であると考えておるのであります。その点についてもう少し詳しく……、それだけでは私は承認できません。それと同時に経済局長にもお尋ねを申し上げたい。
  122. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 ただいま井手委員が、指示は強制力を持つているという御意見でございましたが、先ほどある点を指示してくれとおつしやつた、その私に指示を求められた指示は、決して強制力は持つておりません。その程度の指示の内容でございますが、具体的な内容の要領については事務当局から答えていただきます。
  123. 小倉武一

    小倉政府委員 この指示の内容でございますが、これは先ほど提案者から御説明通りに、指導連絡について具体的に第二項でもつてその内容を若干明らかにした、こういうことに私も了解いたしております。定款でどういうように定めて、具体的にどういう指示をするのかということになりますと、たとえば事業計画を設定した場合には、その計画の内容を全国の中央会に報告をしてもらう、こういうことによりまして、中央会が、地方中央を通じて統一ある調和のとれた活動ができるようにする、こういうことが一つあろうかと思います。また会計に関することにつきましても、具体的な物品の購入について指示をするとかどうということではございませんので、やはり全体の年間の予算をどういうように組むかということについて、計画ができればそれを報告してもらう、これも事業執行上重要なことでございますので、やはり全国統一的な活動に便利なように必要な勧告をしたり何かするために提示を願う、こういつたようなことがおもなものだと思います。
  124. 井手以誠

    ○井手委員 それではこの指示権、指示と申しますることは、指導の意味の指示である。従わなくてもいいという、まあ極端な言葉かもしれませんが、提案者はそうおつしやいましたから申し上げまするけれども、かりにそういう注意があつても、指示があつても、従わなくてもいい場合もある、従わなくてもいいということに解釈していいかどうか、その点を念を押しておきたい、その点が第一点。それから事業計画――都道府県の中央会がきめた成規の手続によつてきまつた事業計画並びに業務並びに会計については、変更または停止をさせないという御意思であるか、この点を念のために承つておきたいと思います。おそらく私はその点は農協法の立法の精神から申しまして、そうであろうとは信じておりますけれども、念のために私はお伺いをしておきたいと思います。
  125. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 先ほど私が指示には従わなくてもよいと言つたことは、そういう強い意味ではございません。従わなくとも罰則はない、だからそんなに恐れなくてもよろしい、けれどもそれは自主的につくられておりますところの中央会の指示は、まあたとえて言いますならば、親が子供に、こうした方がいい、ああした方がいい、そういう点はどうなつておるかという程度のことでございまして、親が子を思つてつてくれるその指導的な指示に対して子供が不安を持たないと同じ程度に了解していただきたいと思います。
  126. 井手以誠

    ○井手委員 親子の愛情については、私も同様な感を持つておりますが、今日はやはり親といえども、子供がどこでも、婦人まで選挙権を持つておりますと同様に、子供の立場も尊重しなければならぬと私は考えておるのであります。これは大事な点でありますので、事務当局に重ねて今私が申しました二点を念を押しておきたい。
  127. 小倉武一

    小倉政府委員 提案者から御説明通りでございまして、この指示の法律上の効果と申しますと、指示の違反が直接に法律の違反になるのでございません。従いまして法律上の特別の効果はないわけでございます。私法上もまた刑法上もございません。ただ定款で定めるのでございますので、場合によつては定款によつて過怠金といつたようなものがあるかもしれません。これは定款のきめ方によるのでございまするが、そういう内部関係による多少の拘束ということは考えられまするけれども、それ以上はなかろうかと思います。  それから次の点でございまするが、すでに府県の中央会として正式にきまつた計画、たとえば総会を開きまして――ここでは総会ではございません、代議員会でございますが、そういう正式の機関できまりましたものを、全部中央会が一方的に変更を命ずるというようなことはなかろうかと、かように存じます。
  128. 井手以誠

    ○井手委員 私はこれ以上追究はいたしません。ただ申し上げたいことは、きわめて重要な点である、「定款の定めるところにより」と逃げられてはおりまするけれども、やはりその基準というものは持つてここに提案されることが絶対必要であると考える。申し上げまして追究しても、おそらくこれ以上の言葉づかいはなかろう、あとは親子の愛情くらいのものだろうと思うのであります。詳しくは申し上げませんが、やはりこの重要な指示権についてはこれ以上はしない、これくらいについては、こういうことがあり得るというくらいの基準は私は示すべきであると思う。こういう点について私は遺憾の意を表したいと思う。それと同時に、おそらく内規によつて規定によつて、従わない者については、親が子供の従わない者には小づかい銭をやらぬのと同じように補助金について締めて行くことが予想されるのであります。  そこで私が最後に申し上げたいことは、あくまでも農協法の立法精神にのつとつて、必要以上の指示をなさらないように、特に私は御注意を申し上げたい。提案者においても今後これの運用にあたつて、当局に十分御注意いただきたいことを、この指示権についてお願い申し上げたいと思います。  次にこの中央会の設置によりまして、監査指導が行われるということになりますれば、従来都道府県がやつておりました指導監査との関係において、相当の影響が私は出て来るであろうと考える。提案者並びに当局はどのようにお考えになつておるか、その点をお尋ねいたします。
  129. 小倉武一

    小倉政府委員 その点につきましては、先ほど金子議員からもお答えがあつたところであります。役所の検査は主として、いわば不法のようなことがないようにということが主眼でございますが、中央会の監査は主として指導的な、どちらかと申しますれば……。
  130. 井手以誠

    ○井手委員 ちよつと途中ですが、人間の問題とかそんな問題です。理論ではなくて……。
  131. 小倉武一

    小倉政府委員 従いまして人の関係は、従来農林省それから府県でやつておりました検査は、そういつた面でやりますので、これまで通り考えております。これまで役所がやりました検査では不十分であつたところ、特にいわゆる総合単協でない協同組合につきましては、これは役所の検査の計画の上から対象になつておりません。人員の上からも予算の上からも対象になつておりませんので、そういう点は特に今度の中央会に期待をいたしておるのであります。
  132. 井手以誠

    ○井手委員 補助金の問題で、本年度分については、昨日の質疑応答で大体の見当をつかむことができましたが、現在の答弁によりますと、無力な指導連を強力な中央会によつて指導する、という御趣旨のようでございますれば、その経費も相当厖大になるかと思うのであります。またその経費については相当補助金を期待されておのじやないかと思う。わずか何千万円かの金でできるとは考えておりません。相当気負つて提案者提案なさつておられるようでありますが、明年度からは何億くらいを予定されておるか、またそのうちのどのくらいを中央にとり、その何割くらいを都道府県に配分されるという御構想があるか。この点が第一。  次にお尋ねいたしたいのはそれほど――それほどというよりも、御答弁によりますと、国でやるべき仕事を中央会がやるのである、当然国家がこれを持つべきであるという趣旨の答弁がありましたが、そうであるならばむしろ官僚に自由裁量されるような、予算の範囲内において毎年度これを定めるというような消極的な意味ではなくして、積極的に、幾ら負担すべきであるという義務、規定を設けることがいいのではないか。その二点について承りたいと思います。
  133. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 これは事務当局から答えていただいた方が適当かと思いますが、私の考え方を申し上げますと、二十九年度に幾ら、三十年度に幾らということをはつきり明定することはできないと思います。この会員がどのくらいになるか、従つて事業計画がどうなるかというようなことと関連を持ちまして、そこにおのずから予算がきまつて来るわけでございます。その事業計画がどの程度になるかということについては、ただいまのところはわかりませんが、二十八年度においては八千万円が予定されておる。しかし二十九年度あるいは三十年度以降になりますと、井手委員のおつしやるように、あるいは何億という問題も出て来るかとも思いますが、ここで幾らときめることによつて、時の農協の育成のために非常に重要な問題が出て来た場合には、そこに弾力性を持たせることにしまして、むしろ幾らと今ここではつきりきめておかない方が、私は希望が将来に持てるように思いますので、その点についてはあなたのおつしやるようにはつきり幾らときめない方がいいのじやないか。もつぱら事業計画に基いてそこにどれだけを見るかということは、新しい年度の事業計画に対応してきめられるべきではないか、こういうふうに考えております。
  134. 井手以誠

    ○井手委員 私は若干意見を異にいたしております。やはりそれほど必要なものであるならば、もつと積極的に規定すべきである。おそらく補助金というものがこの法律において相当の重要性を持つておると私は考えておりますが、それならば必要経費の半分であるとか、あるいはこれだけのものを出さなくちやならぬとかいうものを積極的にきめなくては、私はせつかくの提案者意思が将来にわたつて徹底しないという心配を持つておるのでございます。また議員立法であれば、そこまで書いていいと私は思う。八千万円や九千万円の金でいろいろと一部では憂慮される事態が――おそらくないかもしれませんけれども、せつかくのこういう重要な事業であるならば、もつと積極的に規定を設けて、何億ぐらいは必要であるということを私はお示し願いたかつたのであります。それができなければいたし方ございません。  最後にもう一点伺いたい。百一条の三によりますと、秘密を漏らした者には罰則の規定が設けられておるようであります。農協にこういうことはどうかと考えておりますが。その理由と、どういうふうな秘密であつて、どういう場合に適用されるのか、こういう点を明らかにしておいてもらいたいと思う。
  135. 小倉武一

    小倉政府委員 この規定理由といたしましては、この規定に明らかでございますように、監査に関連してのことでございます。中央会が協同組合を監査いたしました結果、当然に組合の機密に入るということもございますのでそういう場合の規定でございまして、それ以外のものには適用はないのであります。
  136. 井手以誠

    ○井手委員 まだいろいろとお尋ねしたいのでございますが、大分時間もおそくなつて委員も疲れておるようでありますので、私は不満ですけれども、これで質問を打切ります。
  137. 井出一太郎

  138. 川俣清音

    川俣委員 私は簡潔にお尋ねいたしますから、答弁もできるだけ簡潔にお願いいたしたいと思います。  第一点は、中央会は独占法の除外規定を設けるような行為がないのかどうかという点です。もしも除外規定を設けなければ、これらの行為が非常に縮減されて十分な機能を果すことができないのじやないかと思うし、また必要だとすれば除外規定を設けなければならぬのじやないかと思うのです。ここに共済のことが入つて参りましたり、いろいろな事業――事業と申しますか、監督が強化されて参りますと、指令とか指導とかいうことが行われます。そういたしますと、協定を必要とするような問題が起つて来るのじやないかと思うのです、そこでそういう点が実はあるのかもしれませんが、私には見当らない。あればお示しを願いたい。なければ、一体中央会というものは、そういう独占法の除外規定を設けるような行為がないと考えておられるのかという点です。
  139. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 一般の場合には第七条に独占禁止の適用規定はございますが、中央会に関しましては事業の性質上、その必要を考えなかつたわけであります。
  140. 川俣清音

    川俣委員 もちろん経済団体の行為に対しては除外規定を設けていることは明らかなんです。ところがこういう監査のようなことを行われますと、それに附帯して、協定のようなものについての批判が当然起つて来るのではないか。監査する場合に、行政機関つたら命令ができ、指示ができますよ。ところがこれは行政機関じやない、法人ですからやはり除外規定を設けなければ不便じやないかと思われる点があるかないか、どうお考えであるかという点が一点。また除外規定を設けなくても行為を縮減して、触れないようにさせるのか。どちらかということなんです。
  141. 小倉武一

    小倉政府委員 独占禁止法に触れないようにするわけであります。
  142. 川俣清音

    川俣委員 そういしたすと、実は行為が非常に縮減されることになつて、十分な機能を果せるかどうかということが疑問になる。これは議論になるから私はいたしません。  次に共済に関する施設、医療に関する施設とはどういうものをさすか。これをお示し願いたい。
  143. 小倉武一

    小倉政府委員 医療に関する施設と申しますのは病院であります。もつとも病院以外にも、やかましく言えば薬を備えるということだけでも医療を担当する施設ということになるかもしれません。  それから共済に関する施設ということに関連して、施設の意味でございます。これは先ほどもいろいろ議論がございましたが、法案のできたときのいきさつから申しまして、日本語の普通の意味で、言われる物的な施設という意味ではございませんで、字義的にはむしろ事業とほぼ同じように私どもは聞いております。
  144. 川俣清音

    川俣委員 普通の通念から言いますと施設と事業とは異なる。この法文の中にも施設と事業とを異にして出ております。これは明らかです。十条の第十二号には「前各号の事業に附帯する事業」といたしております。従つて施設と事業とは区別いたしておるのであります。本法の提案者はあえて区別をしておるのであります。そこで施設とはどういうものをさすのかということが一点。それから二点は、十二号に「事業に附帯する事業」とある。この事業ですが、そうすると病院の中の行為を行うことだけが事業という意味なのか。ところが普通の観念では医療は事業とは申さないのであります。そこで医療に附帯する施設、その施設に附帯する事業、こういうけれどもどうも意味がわからない。私は専門家でないからわからないのかもしれぬが、その点を明瞭にしていただきたい。
  145. 小倉武一

    小倉政府委員 施設の意味でございますが、施設は人的、物的施設、この総合、そのいずれをも意味するわけです。人間だけを備えるのも施設でございます。たとえば理髪屋をやる場合に理髪師を雇うのは施設であります。病院をつくるのに医者を雇い、建物をつくる、両方あわせて施設、この施設を運用して行くのが事業でございます。
  146. 川俣清音

    川俣委員 施設を運用する事業だけに限られておるのですか。ここには事業となつておるわけで、どうも事業が本体のようにも見える、だから普通から言えば医療に関する事業または共済に関する事業、もしくはそれに附帯する設備というのが普通の書き方だと思う。故意にかどういうわけか、こういうふうに書いておられるのがわからぬからお尋ねするのが一つ、それから共済に関する施設というのは――医療に関する施設はまだ意味はわかりますが、共済に関する施設ということになると、いよいよもつてわからなくなるので、もしも言葉が足りなければ直さなければならぬのではないか、こう考えるわけです。決して議論をする意味で申し上げておるのではないのであります。妥当ではないような体裁ではないかということをお聞きしたいのです。
  147. 小倉武一

    小倉政府委員 確かに普通の日本語から申しますと、御疑念のようなことがあると思います。ただ事業の表現の仕方を、事業の活動に即して表現するか、あるいは事業に伴つて必要とする人的物的施設を中心として表現するかという違いであると思うのであります。従いまして十条をごらんになつていただきましても、各号に施設といつたことがたくさんありますけれども、それをひつくるめて第一項に左の事業と書いてあります。先ほど申しましたように、この事業というのは、その施設を運用するのが普通の意味だろうと思うのであります。共済を施設と言つたことはそぐわないことだというお尋ねでございます。これはごもつともでございますが、この場合も共済に関するいろいろの制度――共済事業をやる場合には、組合として共済事業の計画を立てて規定をつくる。それにはやはり小さいながら一つの制度になつて参りますので、それを施設というふうにつかまえたものだというふうに理解しておるのであります。
  148. 川俣清音

    川俣委員 議論しようとは思いませんけれども、普通の日本語の解釈とは違う解釈を法律の上に書くことはどうであろうか。施設とはこういうものを言うというふうにやはり解釈をそれに加えて、それで本法の施設とはかかるものを言う、それならこれは明瞭になるのです。普通の解釈とは違う解釈をしたということになると通らない。これはここに有力な綱島憲法学者もおられますし、松山弁護士もおられますけれども、普通の概念でない意味を書いておいても、一般にはわからない。あなたがやめられると解釈がかわつて来るというなことになつてはいけないのではないかと思うのです。あなたがかわるかもしれないですから、個人解釈では意味をなさぬ、法律法律としての適切な用語を用いるのが最も妥当だと思うのです。また親切な法律だと思うのです。非常にあいまいな言葉を使つてつて、これでいいんだというようなことは、私はやはり体裁上から言つてどうかと思う。ただいまのあなたの言われるようなお考えでありますならば、本法の施設とはかかるものを言うということになれば、これはまた解釈できると思う。私はしろうとでわからぬですが、綱島さんがうんうんと言つているからわかるのだろうと思うのですが、これは常識上そうなるのではないか。私は弁護士でないからへりくつを決していうつもりじやありません。そこでこれはもし事業ということだつたら、事業とお書きになつたらどうか。ただ共済に関する事業と書けば非常に大きく解釈されて、摩擦が起きるから、施設とした、こういう意味なのか、ここが問題なんです。事業と書けばいろいろな方に影響するところが多いから施設とした、もしもこういう考え方だとすれば、やはり本法の施設とはかかるものを言うということで書かれなければいけないのではないかという点が一点。もう一点ついでにお伺いします。金子案によりますと、組合員の農業に関する技術の範囲を限定いたしております。ところが小倉さんが出された前の案は、農業技術といつて、農村全体の農業技術のことをさしております。金子案は限定しております。そこでこういうふうに農業技術というふうに大きな範囲であなたがお考えになつてつたとしますれば、これは農業委員会法との関係で、前には農業委員会と同様に農業技術をやはり農協に行わしめるという意味では、広汎な農業技術というふうに表現されておつたのかどうかという点が一点。そこへ行くと金子氏の方は技術の面は非常に遠慮されて、組合員の農業に関する技術と範囲を限定いたしております。小倉さんの案は農村全体にわたる農業技術と、拡大いたしておりますと、今度は農業委員会の方の農業技術の問題と当然衝突して来ることになるのです。それで金子案はむしろそういう点を避けておるのだと思いますが、あなたは前の案がよろしいと思つておるか、あとの案がよろしいと思つておられるか、この点。  それから今度は次の文化、教育の面になりますと、あなたの案は組合員の教育というふうに範囲を限定しておられる。今度の案は農村全体の教育並びに農村の生活及び分化の改善といつて、組合員以外のことにまで及ぶ事業ができる、そういうふうになつておりますが、この点についての御見解を承りたい。
  149. 小倉武一

    小倉政府委員 第一点の字句の解釈につきましては、施設という言葉が日本語として適切でないと私も存じます。ただこれは今度の改正案に表われておるものではございませんで、協同組合法の制定当時から表われておる言葉であります。そこで協同組合法が最初できますときに、やはり私は担当課長をいたしておりまして今日に至つておりまして、解釈につきましてその間全然かわつておりませんので、御心配のようなことはないと思います。ただ字句が不適当であるということでありますれば、適当な機会に修正することも考えられると思います。  それから第二点の組合員の入つておる点でございますが、これはまつた関係のないことでございます。入つておろうと入つていまいと、協同組合の解釈としては全然相違がない。と申しますのは相互組織でございますので、書いてない場合でも、これはあくまで組合員に関する仕事でございます。従いまして、この点は項によりまして入つておるものと入つていないのとございますが、これは入つていても入つていなくても同じだというふうに理解いたします。  それから教育の点についても、従つて同様に理解をするのであります。
  150. 川俣清音

    川俣委員 あなたの前の提案は、組合員に対するとわざわざ限定しておられるのですよ。農業技術の方は限定していないけれども、その他のことはわざわざ組合員に対する段的情報の提供に関する施設として、と制限しておられたり何かしているのです。制限するも制限しないも同じだということになりますと、組合員に対する一般的という言葉は必要がなくなる。また金子さんの方も組合員の農業なんということが必要でなくなるので、これは削減してもよいかというのです。あなたの方は組合員に対する一般的情報の提供といつてわざわざ制限しておられるのであるから、そこで整理の必要があるのじやないか、こういうふうに申し上げておるのです。私は時間を節約したいから議論をしているのではないのです。
  151. 小倉武一

    小倉政府委員 現行法と改正案の表現の違いでございますが、この表現の違いは、ただいま申し上げました通り、語呂の違いくらいの相違でありまして、実質上の違いではございません。協同組合が組合員以外の者に情報を提供するという仕事はできません。従いまして組合のためと書いてなくても、やはり組合員のために情報を提供するということに理解せざるを得ないのであります。
  152. 井手以誠

    ○井手委員 関連して一分間だけ……。
  153. 井出一太郎

    井出委員長 井手以誠君、一問に限つて質疑を許します。
  154. 井手以誠

    ○井手委員 先刻お尋ねするのを落しておりましたが、都道府県中央会の事業の中に、現行法の表現においては明示をされておりませんけれども、連合会は指導、連絡という文字があつたのでありますが、この改正案によりますと、都道府県中央会の事業には指導、連絡という文字がないのであります。おそらくこの点は従来の指導、連絡というのは、農政活動をさすものだと私は考えておりますが、改正案によりますと、その事業ができなくなる、こういうふうになるように私は考えられるのであります。この点をひとつはつきりしておいていただきたい。もしそうであるならば、せつかくの農協の強化ということが、むしろこの点においては弱化する、後退するということを私は非常に心配するものでありますので、念のために伺つておきたいと思います。
  155. 小倉武一

    小倉政府委員 指導、連絡につきまして、私ちよつと聞き漏らしたのかもしれませんが、今度の中央会におきましても、組合の指導、連絡をいたすことはもちろんできるのであります。
  156. 井手以誠

    ○井手委員 どこにありますか。法文によると全国中央会は都道府県中央会をして指導、連絡することができるとしてありますけれども、都道府県中央会の事業には全然触れられていないのであります。そうしますと、それ以外の事業は建前としてできないということになりますね。私は農政活動ができなくなるのではないかという心配を持つております。この点はひとつ明確にしていただきたい。
  157. 小倉武一

    小倉政府委員 中央会について書いてございますのは、御説の通りこれはメンバーたる県の中央会との指導連絡ということで一項に入つております。県の中央会のメンバーである組合との指導、連絡につきましては、七十三条の九に、指導につきましては一号の組合の組織、指導、事業の経営、少しこまかく書いてありますが、これは組合の指導であります。四号におきましては組合の連絡というふうに出ておりますので、指導、連絡ということはこれで十分読めるのじやないかというふうに思います。
  158. 井手以誠

    ○井手委員 従来ありました連合会に関する指導、連絡、これが農政活動の基本をなす法的根拠であると私は考えております。ところがただいま指摘された第七十三条の九によりますると、いわゆる農政の問題ではなくて組合の指導事業及び経営の指導でありますので、非常に範囲が限定されております。そういうことになりますと、ただいまおつしやる第一号では農政に関する活動漏れておることになります。そういたしますと、目的を明示されておりますのでできないという結論になるように考えられますので、その点をはつきりさせていただきたい。
  159. 小倉武一

    小倉政府委員 この点は現在の法律におきましても、組合の指導、連絡ということで、協同組合の農政活動ということを表わしておるのであります。組合というふうに書いてございますが、これはもちろん協同組合全般を意味しておるのでありまして、組合の指導、連絡ということで、協同組合に関する全般的な農政活動が行い得るものと理解いたします。
  160. 井手以誠

    ○井手委員 念を押しますが、七十三条の九の第一項の第一号のこの指導の文字で、今後も都道府県中央会は農政活動ができると解釈してよろしゆうございますか。
  161. 小倉武一

    小倉政府委員 その通りでございます。
  162. 井出一太郎

    井出委員長 この際お諮りいたします。農業協同組合法の一部を改正する法律案に対する質疑は、この程度において終局いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、本案に対する質疑は終局いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後十時三十一分散会