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1954-04-28 第19回国会 衆議院 農林委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十八日(水曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小枝 一雄君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 金子與重郎君 理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    足立 篤郎君       遠藤 三郎君    佐藤善一郎君       寺島隆太郎君    松岡 俊三君       松山 義雄君    吉川 久衛君       足鹿  覺君    井谷 正吉君       井手 以誠君    中澤 茂一君       中村 時雄君    安藤  覺君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         農林政務次官  平野 三郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         農林事務官         (蚕糸局長)  寺内 祥一君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   柏木 雄介君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 四月二十八日  委員齋木重一君辞任につき、その補欠として井  手以誠君が議長の指名で委員選任された。     ————————————— 四月二十八日  農業委員会法の一部を改正する法律案(小枝一  雄君外十六名提出衆法第二九号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案金子  與重郎君外十六名提出衆法第三〇号)  農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定  措置に関する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出第一六七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  臨時硫安需給安定法案内閣提出、第十六回国  会閣法第一六七号)  農民組合法案足鹿覺君外十二名提出衆法第  二五号)  農業委員会法の一部を改正する法律案(小枝一  雄君外十六名提出衆法第二九号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案金子  與重郎君外十六名提出衆法第三〇号)  農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定  措置に関する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出第一六七号)  土地区画整理法案に関し、建設委員会修正意  見申入れの件  蚕糸に関する件  昨年の風水害による農林業施設災害復旧事業  に関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  臨時硫安需給安定法案を議題といたします。昨日趣旨弁明を聴取いたしました金子與重郎提出修正案に対しまして、質疑があれば発言を許します。
  3. 井手以誠

    井手委員 昨日修正案の説明がありました臨時硫安需給安定法案に関しまして、肥料小委員長並び修正案提出者に対して質問いたしたいと思います。  まず小委員長にお伺いいたしたいことは、本案は通産委員会に付託されております日本硫安輸出株式会社に関する法律案不可分関係にあると存じます。不可分というよりもむしろこれは硫安輸出株式会社を親とし、需給安定法案の方を子とするような関係にあると私は感じておるのであります。ところが当農林委員会に付託されて審議されております需給安定法案は、すでに小委員会において審議が尽され、本委員会において本日検討されるわけでありますけれども、私の考えたところでは、日本硫安輸出株式会社に関する法律案がまずいずれかに決定されなくしては、この需給安定法案審議を進めることは困難かと私は存ずるのであります。なるほど別々の委員会にはかかつておりますけれども不可分関係である。もしこちらの方がいずれかの案に決定をして成立するといたしましても、一方の硫安輸出株式会社に関する法案が、あるいは審議未了になるというような事態になりますれば、これは片ちんばのものになるのではないかと私は考えるのであります。どうしても硫安輸出株式会社法案が先議されなくてはならぬという建前から、小委員長はいかにお考えになつておるか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  4. 綱島正興

    綱島委員 ただいまの井手委員お尋ねは、密接な関係があるので、臨時硫安需給安定に関する法案は、輸出株式会社に関する法案決定後にしなければならないというお考えでございますけれども、これは当然こちらが本格的な主導性を持たなければならぬ。御説のようなむしろこちらが従属的なものであつて輸出会社が本格的なものだということには、われわれは賛成をいたさない考えを持つておりますし、法案そのものも従属的の立場ではなくて、日本内地農業生産に資するためにこの法案が出されておるのであるということを基礎に置いて、委員会においても小委員会においても審議されたものであるし、またそうでなければならぬと考えておりますので、勢い通産委員会における審議は、こちらの本格的な審議に順応して向うは出て参るものと考えておるわけであります。
  5. 井手以誠

    井手委員 通産委員会にかかつておりまする硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案と当委員会にかかつております原案臨時硫安需給安定法案、この両法案性格を検討いたしますならば、まず硫安製造会社合理化をやる、近代化をして行こう、そこで生産がどんどんふえて行く。それに伴つて輸出をしなくてはならぬ。その場合に国内の需給をはかつて行こう、こういう性格のものであると私は考えておるのであります。これは見方にもよりましよう。なるほどこの安定法案だけを見ますと、今小委員長がおつしやつたようにも見えるのでありますが、不可分関係にあることは間違いないのであります。従つて少くともこれは同時に並行して審議を進めなければならぬ。私は先刻まず硫安輸出調整臨時措置法案が先議さるべきだと申しましたけれども、少くとも同時に並行して審議を進めなければ、片ちんばなものができるという考えを持つております。今一応お伺いしましたけれども、重ねて小委員長意見を承りますとともに提案者お尋ねをいたしたいのであります。要綱によりますると、第八に、業務に関する重要事項についても調査審議するということがあります。もし通産委員会にかかつております臨時措置法案審議未了になるという場合にはどういうお考えであるか。その点の見通し並びに措置について見解を承りたいと思うのであります。
  6. 金子與重郎

    金子委員 この臨時硫安需給安定法案輸出会社法文がある。もともとこれは肥料行政農林行政通産行政二つにわかれておる。そうして生産過程におきましては通産行政の範囲に入つておる。こういう問題が当然この肥料需給調整法の上にも現われておりますので、これが一本の法律として出ておれば別として、肥料需給調整をとるために、一方に通産行政の面で硫安生産の振興と二重価格、いわゆる出血輸出と当時やかましく言われた問題を内地農民に負わせない一つのテクニツクとして、硫安会社方式とつた。将来硫安輸出会社は、商法による会社でこそあるけれども一つの国策的な動きをしなければならぬ性格を持つておりますので、肥料審議会がある程度調査なり審議なりをするという権限をここに持たせたのであります。その場合に、今御指摘になりました通産委員会における肥料会社案が通らなかつたらどうするかということでありますが、委員長を通じて、その間の連絡は相当活発に行われておることを私は承知しておりますから、万々そういうことはないと思いますけれども、かりにあつたといたしましたときには、この条項を削除することによつてそれは何ら響くことはないと思います。この修正によりまして、単に硫安だけでなく、今後の肥料全体の問題に対しても、肥料需給あるいは価格の面に対して法的な権限自由産業であつたところの肥料に対して与えて行くことは、今後の財界の見通しから行きましても、農村問題から行きましても、大切なことだと信ずるがゆえに、こういうふうな修正をいたしたわけであります。従つて重ねて申し上げておきますが、そのようなことは万々ないと思うが、もしそういうことがあつたときには、法律を削除する手続をこの委員会においてとるならば問題はないと考えております。
  7. 井手以誠

    井手委員 私は、通産委員会で簡単に採決に行くとは聞いていないのであります。相当強い反対の意見もあるようであります。私はこの修正事項を入れたことについては了解いたしますけれども、これは不可分関係であるので、同時に審議成立さすべきものではないかという観点から特に申し上げておるような次第であります。  続いてお尋ねいたします。この肥料審議会国会議員を入れるべしという意見がきわめて強かつたと考えております。ところがこの修正案によりますと、その文字が全然ない。学識経験者が七名にふえておりますが、その辺のいきさつ並びに国会議員はどういうふうになつておるか、その点を伺いたいと思います。
  8. 金子與重郎

    金子委員 たくさんの審議会法律によつてできておるのでありますけれども、そのうちで特に国会議員という字句をはつきり掲げまして何人というふうに書いたものと、そうでないものと二色あることは御存じの通りであります。たとえば急傾斜地に対する法律だとか、畑地灌漑法律だとかいう特殊法律は、ほとんど国会議員を何人ということにしておりますが、米価審議会のような場合には、国会議員を何人ということを特に明記しないで、学識経験者という形をとつております。従つてこの法律審議過程におきまして、国会議員人数をきめて入れるべきだという御意見と、入れるべきでないという御意見二つにわかれておつたのでありますが、修正者考えといたしましては、この学識経験者というものを増員いたしまして、そして合計九人以内とあつたものを十五人以内とする。その増加した人員は、学識経験のある者という第四の条項の中へ七人以内というふうに含めまして、これはもちろん内閣総理大臣がきめることになると思うのでありまして、提案者がこれはだれを幾人、どういう人を何人入れるのだということを明言することはできないのでありまするが、もし国会議員を入れるという場合に、国会議員——衆参両院を通しても、この程度人員によつて、もし入れようとするならば入り得るという見通しから、七人という数に増員したのであります。
  9. 井手以誠

    井手委員 審議会委員中、学識経験者を七人以内にふやしておけば、国会議員も入る見込みもある、こういう御答弁でございましたが、それではこの中に国会議員が何名入る約束だということではないように考えます。国会議員をぜひ入れろという主張は、いろいろな審議会国会議員の入ることのよしあしについては、基本的にはいろいろの意見はございますけれども、今の政治情勢経済界の状況から行きますると、国会議員が入ることの妙味があることは、皆さん御承知の通りであります。それゆえにこそ多くの人からぜひ国会議員を入れろということが強調されたわけであります。私はこの肥料審議会には、肥料界の現状からいたしまして、特に国会議員を入れなければならぬという強い主張を持つているのであります。私が聞いたところでは、学識経験者の中に入つておるというお話でございましたが、ただいまの御答弁では、そういうほのか希望もあるという程度では、私どもなかなか納得しがたいのであります。どの程度お話がなつておるか、その点を承りたいのでありまするが、どうも最近特に農林省関係では、国会議員の入ることを好まないような話も承つておりまするし、さらにかりに法律があつても予算を計上しない、憲法を無視して行く、あるいは法律を無視して行くという現在の吉田内閣のやり方から考えますると、どうもこの学識経験者の中には国会議員が入れるという見込みはほとんどないように私は感ずるのであります。私はぜひ入れてもらいたいので、その点について重ねて見込みお尋ねいたしますとともに、当局との折衝のいきさつについてもお話を願いたいと思います。
  10. 金子與重郎

    金子委員 さいぜん申し上げた通り、またただいま井手委員お話通り国会議員が入らないところの委員会審議が低調であつて、なきにひとしいような場合もあることを私どももよく承知しておりますし、また国会議員があまりに強くそこで発言するために、むしろ農林委員会における意見というものがそちらへ移つたというほど、論議がはなやかになる場合もあり得るのでありますが、それはとにかくといたしまして、私ども提案者考え方といたしましては、国会議員がある程度入ることがよろしい、こういう考え方を持つておるのであります。しかしながらこれに対して国会議員を何人入れて、どういうふうにするんだということに対しては、一応提案者といたしましては、これは政府権限でありまするから、そのゆとりだけをとつておきまして、そうしてゆとりをとつて法律は一応きめる。あとは各委員の諸君の御意見によつて政府に強く要望し、そうして政府はその意図をくんで最善に処する、こういうことが道だと思いますので、提案者がきめる要綱でありませんで、提案者としてはそれが入り得るということを置き、同時に提案者としても要望するということで行くことが限界だと、私は考えております。
  11. 足鹿覺

    足鹿委員 関連して……。今の審議会構成についてでありますが、井手委員からただいま指摘になりました、学識経験のある者七人以内の中に国会議員をどの程度予定しておるかということについては、非常に重要であろうと思うのであります。今までのこの修正案が生れるまでの経緯等から考えまして、これはぜひ方針を明らかにしていただきたい。そこで修正案を御提示になりました金子委員はこの点について政府とどのようにお打合せになりましたか。そのお打合せになりました経過がありまするならば、この際お知らせを願いたい。もしないといたしますならば、この点についてはあらためて平野政務次官にお伺いをいたしたいと思います。米価審議会委員任期は、去る二月一ぱいで任期満了になつておるにもかかわらず、現在までその選任政府は行つておりません。過日農業団体の方からも、麦価の問題あるいはバツク・ペイの問題等を目睫に控えて、何ゆえにこの委員選任を渋滞しておるのか、すみやかに選任をすべきであるという申入れをいたしたと思いますが、思うに今国会もすでに会期が終らんとしております。もし会期予定通りに終りまするならば、祭日、日曜続きで、ほとんど国会の承認を得る時間もないのではないかというような点から考えてみますと、政府米価審議会国会議員を送ることをいやがつておる、でき得べくんばこれもやめたいのだ、そういうふうにも伝えられておるのであります。一体これは肥料審議会同様双輪の車のような関係でありまして、きわめて重要な審議会であろうと思います。米価審議会の従来の経緯から、国会議員を敬遠しようというふうな動きも一部にあるように聞いておりますが、ただいまも金子委員がみずから言われたように、国会議員の入らない政府のお手盛りの審議会が、いかに低調なものであり、政府のかじのとりようで、どちらへでも向いて行くというものがかなり多いようでありまして、この点は米価審議会の今までの経緯から見て、審議会一つの機能を発揮して行く上において、若干政府には気に入らなくても、やはり国会議員を入れておくということが、その審議会を非常に活発に進めさせ、かつまたそのことがひいては国会との関係においても、結果から見ると、いい結果を招来しておると私どもは見ておるのであります。議論はしても、常に建設的に、最後には納まるところに納めておるのであつて、その審議過程に波瀾があり、政府が追究をされる、それをいやがるから逃げる、こういうような考え方で、どうも審議会にも一部国会議員除外論が出ているやにも聞いておりますので、あわせてこの肥料審議会が、今修正案によつて生れようとしておるこの際明らかにされることが、内外の誤解を解いて、すみやかにこの法案が成立することに役立つと私は思う。この問題を言を左右にされますならば、私どもはこの修正案についても審議を先に進めません。これははつきり申し上げます。具体的に公式に発表がない限り、私どもとしては審議に応ずることはできません。その点をはつきり申し上げまして、平野さんから御所信のほどを承つておきたいのであります。
  12. 平野三郎

    平野政府委員 農林省がこの種審議会国会議員を敬遠するというようなことは、かつて私は考えたこともございませんし、そういうことを聞いたこともございません。現に米価審議会国会議員を入れるという法律になつてはおらぬわけでございまして、学識経験者という資格で国会議員の方々に御審議をお願いいたしておるわけでございます。特に足鹿委員も御迷惑ながらお願いいたしておるわけでございまして、しかもきわめて熱心に御審議をいただいておりますので、政府といたしましては非常に資するところがあり、感謝いたしておるところでございます。従いまして、米価審議会の方につきましても、ただいま麦価の問題が目前に控えておりますので、すみやかにまた労を煩わすべく、ただいま準備を進めておるわけでございます。この点につきましてはまつたくさような誤解は御一掃願いたいと存ずるわけであります。  今回肥料審議会につきましても、学識経験者の数を増加せられるような御修正案が出ておるわけでございますが、この意図は、私は必ず国会議員を入れるべきであるという御意見が含まれておるものと考えるわけでございまして、この中にはもちろん国会議員を除くというような規定は何らないわけでございますので、政府といたしましては、これまた御迷惑と存じますが、いろいろ御審議に御参加を願うということがあるものと考えておるわけでございます。
  13. 足鹿覺

    足鹿委員 大体今までこの修正案については、いろいろとお互いに研究もし、また十分意見の交換もやつて来ておるのであります。これをいまさらこの公式の席上でしつこくくどく申し上げるように受取られるかもしれませんが、これは硫安を全肥料に適用するということと、審議会構成をかえるということが本修正案の二本の柱であろうと思う。従つて私は、第一の修正点については後刻申し上げますが、あと審議会構成について、今の平野政務次官のような漠然とした御答弁では、私どもは満足できません。原案によりますと、学識経験のある者二人以上となつておる、これが七人になつておるわけでありますから、結局五人が修正によつてふえ、そのふえた五人は国会議員であると大体了承してよろしいのでありますか、御異議があるのでありますか、その点はいかがでありますか。
  14. 平野三郎

    平野政府委員 政府といたしましては、当初の原案におきましても決して国会議員を排除するような意図はないのでございますが、ただこれは国会でおきめになることでございまして、仄聞いたしまするに、国会議員を入れる、こういう御意図のあるように伺つておるわけでございますので、これは修正案の御提案者の御意図によることでありますが、政府といたしましてはこういうふうに御修正になる以上は、そういう御意図があるものと考えるわけでございまして、その線に従いまして善処いたしたいと存ずるわけであります。
  15. 井手以誠

    井手委員 ただいま平野政務次官法律案修正案国会でおきめになるのだ、なるほどその通りであります。そこで私は修正案提案者にお伺いいたしたいと思いますが、私は先刻申しますように、強く国会議員参加を要求いたしておりまして、今の資本主義下日本硫安製造界から見ますれば、いろんな精細の調査権であるとかなんとかいうことも、現在の情勢では国会議員参加が一番必要であると私は考えております。従つてそういうような主張もいたしておりますし、また小委員会の模様を聞きますと、学識経験者の中には国会議員が五名入るのであるということを承つて、私はいろいろと意見はありましたけれども、それではその点については賛成しようというところまで行つたわけであります。ところがただいまの御答弁ではほのか期待程度である。私はこの点についてさらにお尋ねいたしたいのでありますが、肥料小委員長をなさつておる綱島正興氏は、どこの委員会においても、本会議においても、国会唯一立法機関であることを強調されておる第一人者であります。国会のみが法律案提出する権限があるとさえ極論されておる人であります。その肥料小委員長ならば、国会議員参加するということについては十分了解が行くはずであるという確信を私は持つておるのであります。今平野政務次官がおつしやるように、法律案はわれわれが審議決定するものである、従つて国会議員を何名とするものであるとか、あるいは政府にこうするものであると言うことは、私ども自身がきめてさしつかえないことであります。そうすることが私はかねて主張されておる綱島委員長意思にも沿うことであると存じますので、どの程度まで話合いがあつたのか、また修正案提案者としてこれをさらに明確にする御意思があるかどうか、その点を重ねてお尋ねいたしたいと思います。
  16. 金子與重郎

    金子委員 先ほどと同じような意味の御質問だと思いますが、この審議過程において、国会議員としてはつきり何人と法律に明記すべきだという御意見と、そういうことではやり得ないという御意見と、二つの御意見があつたことは、その過程にあつて御同様存じておるところであります。そこで厳正に申しますと、肥料審議会委員は、将来肥料指定銘柄がふえましたときにも、ほかの者が入らなくちやならない問題が出て参りますから、当然変化が出て来るのであります。そこでさしあたり今度学識経験者として国会議員を何人入れるかということが一番問題なのであります。これは私がはつきりこの中へ何人入れるのだということをかりに申しましても、こういう法文の書き方である限りは、これは内閣総理大臣がきめるということになると思いますから、それは私の権限の外であります。ただ提案者としての考え方は、二人を七人にしたということと、一面審議過程において国会議員を入れるという熱望が非常にあつた、それをくんで七人としたので、当然私の方の要望としては、国会議員を五人入れるべきだという意図からこれを七人にふやした。これ以上提案者は幾人入れると言つたつて——提案者がここのところで何人入れるということをきめるのであるならば国会議員何人とすべきなのでありますが、そうでなく、そこに一つ妥協点を見た。私個人の考え方としてはそう考えておりますけれども、私自身がそうするんだということを今井手委員に申上げることは、権限外だと考えております。
  17. 井手以誠

    井手委員 提案者の御意思としては、国会議員を入れるべしという考え方から増員をした。しかしそれは大臣がきめることであつて、これを制限するわけには行かない。こういうお話でございますが、せつかく国会議員を入れろという御希望であるならば、われわれは唯一立法機関でありますので、私どもがきめて一向差支えないものと思う。明確にすることがこの際絶対に必要だと存じております。もしその人数その他を政府にまかせてしまうということであれば、あるいは全然採用されないという事態も予想しなくちやならぬと思うのであります。平野政務次官は尊重するとおつしやつておりますけれども、現在の動きから見ますれば、私はほとんど期待が持てないような感じがいたします。私たちは国会議員として、そういう権限を持つておりますから、一向遠慮することはいらないのであります。あなたは妥協とかおつしやいますけれども妥協ということであれば、一方は入れたくないという意見があることは当然でございます。そういうことでは私は済まぬと思う。それで重ねて明確になさる御意思があるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  18. 金子與重郎

    金子委員 お答えします。この問題は、委員の中にも明確にすべきだという御意見と、それは困る、そうはつきりしばるべきでないという意見とありまして、そこで全部の人たちがかりに国会議員を明記すベきだということになつておれば、こういう不明確な線を持たなくても、最初からはつきりできるのであります。しかしながらそういうことのために審議がいたずらに解決を見ないで行くことは、それならば法律をこれ以上遷延させるとか、あるいは流すべきだとかいうことと比べて、どちらが農民のためになるかということを考えたときに、これを明確化することによつて賛成が得られるなら問題がないのであります。しかし全部の賛成が得られないという今の肥料委員会並びに本委員会情勢であるとするならば、一つ妥協ではあるけれども、こういう線を出す程度が最大の線ではないか、これが私の考え方であります。
  19. 井手以誠

    井手委員 今農民のため云々というお話がありましたが、私はきようこの安定法案性格その他についていろいろ意見は持つておりますけれども、ここまで審議が進んでおりますので、これ以上申し上げたくはないと考えております。基本的に私は意見は持つておりますが、申し上げません。ただ私どもは、学識経験者の中に国会議員が五名入るものだということで、この修正案について了解いたしておつたので、これについて国会議員が何名ということは、国会自身としてきめられないということであれば、私どもまた態度について研究しなくちやならぬ。このまま簡単に審議を進めるわけには参らないのであります。今幸いに農林大臣がいらつしやいましたので、大臣のお考えを承つておきたいと思います。今論議の焦点になつておりますのは、肥料審議会国会議員を入れろという意見が非常に強かつたのであります。私ども学識経験者を七名に増員されておりますので、五名は国会議員が入るものだという話を承つて、大体この案に了承いたしておりました。ところがただいま聞きますと、その点については明確になつていないようであります。先刻平野政務次官から尊重するという御答弁がありましたけれども、やはりこういう重大な問題については、大臣に直接御言明を願うことが必要であると考えます。修正案提案者は、五名は国会議員を入れてもらいたいという希望を持つている。そういう趣旨であるということを繰返しおつしやつているのであります。そこで国会意思を尊重しようという平野政務次官の言葉から行きますならば、当然この五名は国会議員から選ばれるということに解釈されるのでございますが、大臣はいかようにお考えでございますか、この点を承りたいと存じます。
  20. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは数国会にまたがつて慎重な御審議を経て修正した御意見が出ているわけでございます。従つてこの修正意見の存するところにつきましては、政府として尊重して行かなければならぬことは申すまでもないわけであります。私の聞き及んでおりますところでは、そういう趣意のもとに、議員の兼任と申しますか、をはばまないという趣意でできているということでありますから、学識経験上適当なお方であれば、議員であられようとあられまいと、その選任をすることにやぶさかであつてはならない。そういうふうに私は伺つているわけでございまして、さらにまた修正意見の真意を十分伺いまして、遺憾なきを期したいと考えている次第であります。
  21. 井手以誠

    井手委員 この修正案については、今おつしやつたように、長い期間いろいろと検討された結果が、ここにまとまつていると私は承知いたしております。そこで結論的には、学識経験者の中に国会議員を幾ら入れるかということに帰着するようになつておりますので、お尋ねしているわけであります。各党のまとまつた意見としてこの修正案が出された場合に、その修正提案者である金子さんは、増員される五名は国会議員から選んでもらいたいという希望を持つている、そういうふうに考えている、こういうことでございますれば、唯一立法機関である国会議員意思を尊重しなくちやならぬという建前から、その五名は当然国会議員の中から選ばなければならぬと考えているのであります。ただ尊重するとか、よく考えるとかいうことでなく、その国会意思を尊重して、五名を必ず選ぶというお考えがあるかどうか。その点だけでけつこうでございます。何名選ぶというお考えがあるかどうか、その点だけを御言明願いたいと存じます。
  22. 保利茂

    ○保利国務大臣 そういう御意見もおありだということはただいま承つたわけでありますが、要するに学識経験者に議員である方の就任をはばまない、学識経験者として適当な方である場合には、三人が五人でも議員の方をお願いするという趣意の修正であるということでありますから、そういう趣意は尊重して参らなければならぬ、かように考えているわけであります。
  23. 足鹿覺

    足鹿委員 関連して。この審議会委員の点についてでありますが、原案では二名のものを七人に修正をするという提案であります。従つて五名というものは、かねていろいろと修正案について慎重意見の交換なり研究を加えた経過から見て、われわれは当然五名の国会議員が出るものと考えている。これについてあいまいな御答弁をされることは、あるいはその員数に変化があることをわれわれは感ずるのであります。それでは困るのです。今までの経過から見まして、五人ということは、大体において了解をお互いがしている、数次の打合せの結果そういうふうになつている。大体の考え方は、国会でありますから、衆参両院と解釈をする。そして政党の所属議員の多寡によつて、あまり等差をつけない。ほんとうにこの問題について真摯な立場から研究を重ねられた各党各会派の有能な士を送る。それについては自由、改進、社会党両派、緑風会を大体国会の代表勢力と見て——あるいはこれについては自由党あたりには御意見があろうと思いますが、これは採決をして政府を痛めるものでありませんから、数にはこだわらないで、自由、改進、社会党両派、緑風会各一名と大体考えても考えられぬことはない。もともとわれわれ野党側としては、衆議院四人、参議院三人、計七人を国会議員と明記して入れることを強く主張して参つたのであります。しかしいろいろと話を進めて行く過程において、私ども金子君提案の五名増員ということについては、今言つたような意味をも含めて五人を大体了解した、こういう経緯なのであります。決して私は無理を言つておるとは思いません。これについては先ほど平野政務次官は、そのような御意向のあることをよく存じておるし、その御意向を尊重して参りたい、こういう意味の御答弁がありました。それで一応は御意向のほども察知できるのでありますが、これは大事な点であります。この問題については、少くとも当初において野党の各派は完全に意見が一致しておつた。それをいろいろと折衝の過程において、われわれもそう自分たちの意見にとらわれても進行しない、そういう意味から互譲の精神でここに落着いたものであります。この点について確約ができないということは、今までの経過から見て、最後の場面になつて政府は勇気がないのではないか、こういうふうにも受取れるのであります。従いまして農林大臣もおいでになりましたので、金子委員と十分この際お打合せになりまして御答弁を承りたいと思います。これは七人以内というふうに以内となつておりますから、その点も疑義をさしはさめばさしはさめないこともないのでありますが、そこまでわれわれは疑惑は持つておりません。七人以内とあつても七人あるものだ、そういう点においてはおおらかな気持でおるのであります。でありますから、この点については金子委員にも私は申し上げますが、農林大臣とこの際お打合せになりまして、少くともこの修正案の内容について、ぜひはつきりさせていただくことを、特に私は強く要望をし、御所見をあわせて伺いたいと思います。
  24. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほど井手委員にお答え申し上げましたように長い間慎重に御検討をいただいて出されました修正意見でございますから、この修正意見は修正の直意の存するところに従いまして、政府としては遺憾なきを期して参りたい。その意味は、学識経験者七人以内をこの審議会に得る。その学識経験者は議員であるということでこれを排除しない、こういう意味に伺つておるわけでございますから、できるだけそういう趣意で修正意見を尊重して参るようにいたしたいと思います。
  25. 井出一太郎

    ○井出委員長 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  26. 井出一太郎

    ○井出委員長 速記を始めて。ただいままでの委員各位の御質疑を集約いたしまして、この際委員長より修正案提案者並びに農林大臣にただしておきたい点がございます。本法案は第十六国会に提案せられまして以来幾多の紆余曲折を経て今日に至つており、その間委員各位の非常な互譲の精神のもとにこの修正案ができ上りましたことも、各位御承知の通りでございます。ただいま特に論点となつております審議会委員構成に関しまして、学識経験者を、原案において二名を七名に増員いたしましたゆえんのものも、国会議員委員のメンバ一に加えたいという強い御意見をも参酌いたしまして、わくを七名に増員をしたというふうに考えられるのでございます。明確に国会議員とはうたいませんが、学識経験者の中には国会議員が入ることを妨げるものでない。そうして二名を七名に増員をしたというところに、この委員会意思が存しておるものだ、かように考えるわけでございまして、先ほど来の御答弁もございましたが、この際この従来のいきさつにかんがみ、また委員会希望にかんがみまして、この間の事情を明確にしておいていただく意味で、提案者、並びに農林大臣からもう一度御答弁を煩わしておきたいと考えます。
  27. 金子與重郎

    金子委員 この審議会委員の問題は、この修正案の中の大きな一つの問題でありますが、不幸にしまして小委員会等を数回重ねても、この点においてはつきりした一致点が見出せなかつたのであります。しかしながらその審議過程におきまして、はつきり国会議員を入れるということを明記すベきだという御主張と、明記することは困るという主張とあつたのであります。しかしながらその中に流れておる、口で言わないというか、全体の空気というものを見ましたときに、大体において国会議員を入れるべきだというお考えの方が多数あつたということが一つと、もう一つには、この学識経験者という中に、二人を七人にするということ、すなわち五人をふやすことによつて国会議員を入れるベきだという要望を政府がまともに忠実に行つた場合には、要望は満たされるという見解で、七人に提案者としてはいたしたのであります。従つて政府におきまして、十分その意図が達せられるようにはかつていただきたいということを、この際大臣にもお願いするものであります。
  28. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいま修正意見につきまして、金子委員から御説明がございました趣意につきましては、政府といたしましても十分その御趣意を尊重して善処いたすようにいたしたいと考えます。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 私は小委員会の経過等で、もう少し疑点のあるところを、ごく簡単にお尋ねをしておきたいと思います。提案者に伺いますが、重要肥料とは何を意味しますか。その点はやはり明確に記録の上に残しておくべきものだと思います。この点を最初にお尋ねしたい。
  30. 金子與重郎

    金子委員 この重要肥料というものは、政令で定めるその他の重要肥料ということでありまして、この政令で定めるときは、当然肥料審議会がその指定肥料を名指すのでありまして、それから政令がその肥料をきめるという段階になりますので、それまでは、漠然とした言い方でありますが、重要肥料ということにして、その肥料の名前というものは、当然審議会と政令にゆだねることになるので、こういうふうな現わし方をしたわけです。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 次に保管団体についてでありますが、保管団体は複数制を認めますかどうですか。
  32. 金子與重郎

    金子委員 原案でありますというと、将来においていろいろ問題を起す余地が相当残されておる。そこで問題を起す余地なしに、はつきり農業者を直接または間接に構成する肥料の消費実需団体に限るということを明確にしたいというのがこの修正であります。なぜそれならば消費者というものを推したかと申しますと、肥料需給調整ということ自体は、この法律の目的というものは農民のいわゆる肥料を消費する人のための法律でありますから、それが消費する団体、いわゆる消費者の側になる者がこれを代行することが理論的に正しい、こういう考え方から明確にいたした次第であります。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 要するに複数は認めない、これははつきりしてますね。
  34. 金子與重郎

    金子委員 そういうことであります。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 了承いたしました。次に生産費の調査機構について平野政務次官お尋ねいたしますが、私は過般機構改革に伴う農林省の定員について、内閣委員会との連合審査の際に伺いました。すなわち本法案の第三点の大きい柱になつておりますコストの調査の問題であります。これについて、本法案が成立をかりに見た場合におきましては、法の示すところによつてコストの調査が行われることになるのは当然でありますが、これに関連して私は、過般の連合審査の際にその機構あるいは職員等の構成員数等についてお尋ねをいたしましたところが、現在十六人おる、これに四人を加えて二十人で出発するのである、こういう御答弁でありました。そのときは私あまり農林省の機構等についても具体的な員数等をよく存じませんので、そのまま受取つたのでありますが、あとで研究してみますと、十六人は現在の肥料課の職員なんです。肥料課の職員はコストに専念するものではなくして、肥料行政全般にわたつて多忙な事務を担当しておる者であります。中には若干コストの事務を担当しておる者もあろうかと思いますが、そのような十六人は、全体としてはこれはコスト関係ではない。これは肥料行政全般なんだ。新たに四人程度の人間を入れて、この十七つにわたる、なかなか箸にも棒にもかからぬ硫安メーカーのコストの調査ができるとお考えになつておりますか。こういう点については、もう少し責任のある御答弁を願いたい。四人の増員等のことではたして何ができるでしよう。一つ会社を調べるので一年間済んでしまいます。一年間かかつてもおそらく調査できないこともあるだろうと思う。こういうことでこの法案の第三点の重大な柱となるコストの調査の具体的実施について、きわめて不十分だと私は思う。これについて先般の連合審査会のときの御答弁と関連して、この際農林省の御意向をはつきりしていただきたい。
  36. 平野三郎

    平野政府委員 本法案が成立いたしますならば、肥料のコスト調査を責任を持つてやるわけでありまして、当然その機構の整備が必要なわけでございます。これにつきまして現在十六人おります担当官を、今回肥料コスト調査専門の係官として四人を増加いたしまして、二十人の人員をもつてこれに全力をあげて当る、こういう方針でございまして、大体これをもつて目的が達成し得ると考えますが、しかしながらもしこれで不足をいたします場合におきましては、他の部局からの流用等によりまして、繁忙な時期には補助をしてもらうということも考えております。またさらにこれがどうしても不足いたします場合におきましては、別途また機構の整備を考えたい、かように考えておるわけでございます。必ずしも人員さえ多ければ目的を達成し得るわけのものではないのでございまして、行政簡素化の中におきまして、少数精鋭主義をもつて目的達成に全力をあげて努力をいたし、この法案の趣旨の達成に進みたいと存じておるわけであります。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 今の御答弁で前回の内閣委員会と本農林委員会との連合審査の際の御答弁を御訂正になつたようでありますから、それはそれといたしまして了承いたしますが、ああいう御答弁は私は少し不親切だと思う。現在おる十六人の肥料行政全般を取扱う者に四人を加えて、二十人でやるというような御答弁は、この実情に通じておられなかつたせいもあろうと思いますけれども、私は非常に遺憾に思います。今の御答弁で四人の者を置き、少数精鋭でやるのだ、こういうお話でありますが、これは私は非常に不十分であると思います。これでは仕事にならない。ただ一応形をおつけになるという程度に終りはしないかと思うのです。忙しいときには他から動員をする、こういうことをおつしやいますが、この点は委員会としてももう少し従来の審議の経過について、この点については審議が十分に届いておらなかつたことを私は反省するのでありますが、この重大なコストの調査の問題について、四人の人がいかに少数精鋭であつても、これはとても困難な仕事だと思います。このコストの問題については、おそらく従来も非常に御努力になつたでありましようが、なかなかこれがうまく行かない。これを今度の法律に基いて、法の権限においてやつて行く場合に、ただ名目だけで実態を把握できないというようなことでは、ひいてはこの法案に対する農民なりあるいは一般の期待に沿わざる点が出て来るのではないかと私は思います。これは委員長にもお願いいたしたいのでありますが、今の四人程度考えておるということでありますので、これは昼食の休憩中にでも、ひとつ打合せ願いまして、強い附帯決議等を付して、この法の第三点の重要な点が完全に実施できるように、強く本委員会意見を打出すべきだと私は考えますので、ぜひさようにおとりはからいを煩わしたいと思います。  次の審議会の点で、員数問題は先ほどの応答で尽きましたから、私は具体的な運営について伺いますが、この審議会は会長を置くということになつております。米価審議会の場合は議長を置いて、審議会規則を定めております。問題は審議会を運営して行く場合における運営議事規則とか、あるいは運営の要領というようなものについては、どういうふうにお考えになつておりますか。これは米価審議会以上に相手が非常に大きな独占資本でありますし、困難な委員会の任務であろうと思います。しかしこの委員会の運営がよろしきを得るならば、ある程度の成果を期待することができるのであります。問題はこの委員会の運営にあると存ずるのであります。従いまして審議会の運営の基本的構想については、当局としてはどういうふうにお考えになつておりますか。たとえば米価審議会の運営に準ずるような御所見でございますか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  38. 平野三郎

    平野政府委員 肥料審議会の会長は、法律の定めるところによりまして、互選によつて決定することになつておるわけでございます。なおまたこの運営につきましては、すべて肥料審議会におきまして独自で御審議をいただきまして、それに基いて行う、こういうことでございます。
  39. 足鹿覺

    足鹿委員 肥料審議会独自で議事規則、運営規則等をつくるのですか。
  40. 平野三郎

    平野政府委員 これは法律で定まつておりますように、肥料審議会の運営につきましては、肥料審議会ができましたならば、その審議会においておきめいただく、こういうことでございます。肥料審議会の組織及び運営につきましては、本法によりまして「審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。」、こうなつておりますので、農林省といたしましては政令の案ももちろん用意いたしておるわけでございます。これは委員任期並びに専門調査員それから庶務、こういうふうにわけておるわけでございますが、要するにこれらにつきましては、肥料審議会提出いたしまして肥料審議会の御意見によつてすべて決定をしていただいて、運営の円滑を期する、こういうことでございます。
  41. 井出一太郎

    ○井出委員長 他に御質疑もなければこれにて質疑を打切りたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認め、これより原案並びに修正案を一括して討論に付します。討論者の通告があります。逐次これを許します。佐藤洋之助君。
  43. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 私はこの際自由党を代表いたしまして、少しく所信を明らかにしておきたいと思うのであります。この法案に対する金子委員修正に対しましては賛成をいたすものであります。御承知のように本法案は、第十六国会以来の懸案でございます。委員諸君も非常な苦心をいたしまして、かなりの紆余曲折を経ました問題でございます。われわれはできるならば春肥に間に合うようにいたしたいのでありますが、いろいろ審議過程におきまして今日になつたのであります。そこで大体問題とするところは、集約いたしまして五点あるようでございます。問題の第一は、硫安というものを肥料というふうに、総括的に、概念的に解したことと、第二点は保有肥料に対する扱い者団体の問題、第三点は価格の問題、第四点は審議会構成の問題、これらが非常に問題になつたことと思うのであります。なかんずく私どもが取上げて考えなければならない問題は、金子修正案の第七条にもありますように、硫安価格の問題でございます。すなわち第七条の末尾にある国際価格さや寄せという問題がありますように、われわれがこの硫安問題を取り上げまして苦心をいたしております問題は、一にかかつて、はたして価格が、妥当でありやいなやというような問題にあつたわけでございます。すなわち輸出がはたして出血輸出であるか、通産省の出しまする輸出価格とにらみ合せましてこの法律案をわれわれは取り扱つておいたのでありますが、この問題につきまして、過日当局よりわれわれの前に大体六社の原価計算表を提出して参つたのでありますが、それは開発銀行に対する融資のために、開発銀行に出したその資料をわれわれは拝見いたしたのであります。実はわれわれは法律によつて本来の原価計算をよく調べて行きたい。そうしてやはり一面において対外関係における肥料の競争場裡に立ちましても輸出が可能になりますように、国際物価ともにらみ合せて行きたいというのが、われわれの価格調整に対する考えであつたのであります。最終段階において当局が出して参りましたこの肥料の六社に対する価格の点は、われわれはまだ実はこれは納得が行かない。しかしこの問題を掘り下げてやることはなかなか容易な問題でございませんが、今後この価格の点につきましては、私は十分に審議会といたしましてもこの機能を発揮いたしまして、国際価格にさや寄せになるか、あるいはどの程度が原価であるかということについては、掘り下げて研究を願つておきたいと思うのでございます。  なお審議会構成問題につきまして、ただいま左派社会党の諸君からるる切実な質問がありました。実はわれわれもこの問題につきましては大きな関心を持つておるわけてございます。これにつきましては、ただいま委員長から農林大臣に対しまして総合的な質問がありましたから、これで私も了承いたしました。ただ問題は、大いに今われわれの考えておりますこと、委員長の質問を尊重せられまして、当局はこの構成分子の結成に意を用いていただきたいと思うのであります。こういう点を申し上げまして、私ども金子君の修正案に対しまして賛意を表しまして、残余の問題は原案通り賛成をいたすものでございます。
  44. 井出一太郎

    ○井出委員長 吉川久衛君。
  45. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私は改進党を代表いたしまして、本案について討論を試みます。わが党の金子君から修正案等も出ておりますので、私はきわめて簡単に申し上げます。今日まで長期にわたつた審議の経過に徴して内閣提出原案には相当の議論のあつたところでございまして、従つて修正案のごとく修正されることは、現状においては妥当であると信じます。しかし今後日本の経済状態の動向等に従いまして、あるいはなお改正を要する場合が生ずることもあり得ると思いますが、現状においてはこの程度で賛意を表する次第であります。  なお内容等につきましては詳しく触れることを省略いたしますが、本法の適用対象に弾力性を持たせたことは非常にけつこうなことでございます。しかしながらこの全般を通じまして相当論議のあつた通り、なかなか肥料価格を引下げるということ、非常に困難な問題等もございますので、先ほど来左社の諸君から非常に御熱心なる、この肥料審議会に対する法制についての御意見等が出ているのもこれは当然でございます。しかしながらわが党といたしましては、国会は国の最高の機関でございまして、審議会その他の小委員会等に国会議員参加するということは私は好ましいこととは考えません。国会議員はもつと高所大所から政府の施策の運営を監視するという立場をとるべきであると考えるのでございます。しかしながら今日まで米価審議会を初めとして各種の委員会審議会等に参加しておりますところの国会議員のとられている態度は、その審議会あるいは委員会等に非常な私は有意義なる立場をとられている実情をまのあたりにしているのでございます。ことにこの審議の経過から見まして、肥料価格を下げるということが非常に困難である、内需優先等の問題を解決するためにも、これはどうしてもこの審議会に私は非常な大きな期待がかけられるわけでございまして、今の段階においては学識経験者の中に国会議員のうちから、最もこの方面に有能なる諸氏を送つて、そうしてこの審議会の運営に当つていただくということが、私は過渡的にやむを得ざることであり、むしろそれでなくてはならないというように考えますので、この際政府においては、ただいままで論議されたこの学識経験者の中に、国会議員の中から学識経験を持たれる人々を特に加えることには十分御留意を要望いたしておきます。  肥料生産合理化を積極的に推進するためには、肥料工場の合理化等もございますが、電力、石炭等の合理化等、各般にわたつて政府は十分なる努力が払われなければならないと思います。かくして肥料価格の値下げをはかりまして、かつ本法運営に当つては内需優先によつて食糧の生産コストを引下げて、消費者の生活の安定を考慮すべきであると思います。そうでないと肥料の輸出のみに急にして、他の輸出品のコストに悪影響を及ぼし、輸出全体の不振を招くことになることをおそれるので、この点特に政府に留意をされんことを要望いたしまして、本案に賛成するものでございます。最後に、長きにわたつてここまで持つて参りましたところの肥料小委員長としての綱島正興氏の御努力に、私は深い敬意と感謝をささげたいと思います。(拍手)
  46. 井出一太郎

    ○井出委員長 足鹿覺君。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本修正案中「第十六条見出し及び第一項序「硫安審議会」を「肥料審議会」に、同条第二項及び第三項中「硫安」を「肥料」に改め、「価格の安定」の下に「並びに日本硫安輸出株式会社に対し通商産業大臣がする処分その他の行為」」というのがありまして、これに関連して各条項日本硫安輸出株式会社の業務に関する重要事項についても調査審議することという要綱に関連した関係条文につきましては、そのこと自体につきまして異論を言うのではないのでありますが、わが党といたしましては、御承知のように通商産業委員会に付託されておりまする関連法案すなわち合理化促進についての法案につきましては、反対の態度を堅持して参つておるのでありまして、その立場からただいま述べました修正条項につきましては反対をいたす者であります。その部分を除く修正案並びに修正部分を除く原案につきましては賛成をいたすものであります。  簡単に私どもの立場をこの際表明いたしたいのでありますが、われわれがこの肥料法案につきまして、長い間慎重なる審議を続けて参りましたゆえんのものは、まず内需優先の原則を貫いて行くということ、国内価格を現実に引下げをし、これを実現するということ、第三点は国内価格引下げを可能ならしめる施策を具体的に講ずること、そうして第四点には、日本肥料工業が国際競争に堪え得る近代化あるいは合理化を促進して行くこと、この四点にあつたと申し上げてさしつかえないのであります。こういう四点を基本として、両法案審議参加いたしたのでありますが、必ずしも現在の両法案が、たとい今回修正を見ましても完璧のものであるとは私ども考えておりません。先ほども述べましたように、通産委員会に付託になつておりまする法案自体につきまして、われわれは基本的な立場から意見を異にいたしておるのでありまして、そういつた面からこの法案一つ分離して出ておりますが、実際は紙の表裏のようなものであり、原則として両法案を一本にし、そうしてでき得べくんば肥料行政については農林省にこれを一元化して、もつて私は先ほど述べました四つの基本的な問題を解決するために邁進して行かなければならないと元来考え続け、これを主張し続けて参つたことは御承知の通りであります。しかしながら現在の段階においては、このような姿においてわれわれは農林委員会に与えられた法案審議を続けて参つたのでありますが、私どもといたしましては、必ずしもこの法案が成立後においていかような成果を収めるかについては、今後の運営いかんにあると存ずるのであります。すなわち内需優先の原則をどこまでも貫くことについては、従来この問題が脚光を浴びて出て来たその根源は、いわゆる海外市場開拓の美名に名をかりてダンピングを行い、そのしわを内地の農民に寄せたいわゆる硫安輸出関係の出血問題から大きな政治問題となつたのでありまして、そういう面から、この法案運営の重点としては、あくまでも内需を優先にし、国内価格の引下げを現実に具体的に実現して行くことが、少くとも私どものこの法案に対する期待であり、全国の農民がこれを首を長くして待つておるゆえんであろうと存ずるのであります。もちろん私どもは内需優先、国内価格の引下げを言いますからと言つて、国際競争場裡において、日本肥料工業が非常に立遅れをしておる。そのためにコストの面で、競争に耐え得ない。これをいかにするかという点については、内需をも含めた肥料工業の近代化なり合理化なりが強化されなければならぬ。しかるに従来十八万トン内外の生産能力しかなかつた硫安が、戦後政府の手厚い庇護のもとに、現在においては、二百数十万トンの生産力を回復して来た。これは肥料メーカーの努力もさることながら、一にかかつて国家の庇護のもとに、今日の隆盛を来したことは言をまちません。しかるにこの独占企業的な傾向を持つ硫安工業者は、この国家の庇護において戦後急速な発展をしたことをややもすれば忘却し、輸出促進の美名のもとに、内地の農民に大きなしわを寄せるような営業政策がとられておつたことは否定することができないのであります。そういう点から、私どもといたしましては、今回提案をされました臨時硫安需給安定法が、肥料全般にわたつて適用せられ、そしてさらにこれが近代化合理化の促進、実現によつて、国際競争に耐え、対外収支の改善に寄与すると同時に、国内における食糧増産の基本をになう安い肥料を、適期に農家に配給するという大精神が実現することを深く希求してやまない次第であります。  そういう点におきまして、私どもはこの法案については、野党各派において長い間検討を加え、相当厖大な修正意見も、完全なる意見の一致を見たのでありますが、これを成立せしめ、あるいは重要事項修正を加えんとする場合におきまして、政府与党との折衝の過程において、ただいま金子君から御提案になりましたような修正案に最大公約数的な結論が出たのであります。そういう点におきまして、審議の経過並びに今日までの農林委員会において、他の各会派の諸君とでき得る限り提携をし、一歩でも二歩でも日本の農林政策が前進することをこいねがつた私どもとしましては、幾多の不満あるいは不十分な点のあることは承知をいたしておりまするが、これは今後政府がこの法案の運営によつてその成果を見定め、不十分な点については同僚委員ともよく御相談を申し上げて、さらにこれを完璧に近いものに仕上げて行くという建設的な態度に立ちまして、本法案並びに先ほど述べました点を除く修正案に対し、賛意を表する次第であります。  さらに私、先ほど質問の際に申し上げましたが、この際お許しをいただきまして、附帯決議を付することの動議をもあわせて提案をいたしたいと思います。すなわち    臨時硫安需給安定法案に対する附帯決議   政府が本法に基き、権限をもつて硫安等の生産費を調査するに当つては、その機構及び人員を整備充実し、目的の貫徹にいかんなき措置を講ずること。  この附帯決議を付することをどうか満場の皆様にも御賛同をいただきますようお願いを申し上げまして、私の社会党を代表する討論にかえる次第であります。
  48. 井出一太郎

    ○井出委員長 川俣清音君。
  49. 川俣清音

    ○川俣委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本法案に対して討論を行いたいと存じます。  この法案が十六国会提出されまして以来、内需優先を原則といたしまして、格安な肥料を農村に導入することによつて国内の食糧増産に何ほど寄与し得られるかという観点から、慎重審議をいたして参つたのであります。本法案に盛られておりますもの並びに金子委員より修正案が出ました点を勘案いたしてみまするに、これらの所期の目的を貫徹する上に決して十分な法案とはみなしがたい点が多々ありますけれども、今日の情勢下における諸般の事情を集約いたしまして賛成せざるを得ないのでありますが、なぜ賛成し、どういう点について疑問を持つておるかという点を、この際明らかにいたしたいと思うのであります。  御承知のように昭和十年に肥料事業統制法が出ました際、国内の硫安価格を安定せしめたいという念願から当時法案が出たのであります。従いましてその法案は国営に移行するであろうという大きな期待のうちに出たのでありますけれども、今日はたして国営が妥当であるかどうか、今急速に国営に移すことができるであろうかどうかということについて、まだ研究が十分に至つておりませんところが多々ありますので、私どもは一歩引下らざるを得ない点もございます。その点は今日の硫安工業が単味生産でなく、将来だんだんと多角的な生産に向いて来るときに、また合理化の可能性が十分存するときに、はたしてこのまま移つていいかどうかという点について私どもはいまだ疑問がありますので、これらの問題を解決しなければ、国営への移管が不十分であるという観点なのでございます。  次に私どもが最も検討いたしました硫安価格の問題でございます。第一に、昭和十年に肥料事業統制法に基いて価格統制をいたしたのでありますが、このたびまた価格統制をいたそうとするのであります。その場合に、一体価格統制というものが、厳密な意味においてはたして硫安工業あるいは他の肥料工業においてできる可能性があるかどうかという点について、幾多の疑問が存するのでございます。それは一つ価格統制がいたされました場合、会社の収益をいかにして上げるかということになりますと、これは原価を低下させるか、または生産量を増加させるという方法よりないのでありますが、この場合における原価の低下は単に単味硫安の原価低下ということは望み得ない状態でありますので、将来多角経営に移つて行く、あるいは合理化して他の副業が本業になつて行くというような形における合理化より方法がないのではないか、こう考えて参りますると、このコストの基本となりまする理論原価または理想原価が、はたしてこの硫安工業の場合に基礎として取入れられるかどうか。他の普通の工業の場合には、一応原価計算をする場合のものさしとして、理論原価あるいは理想原価というものを基準に置いて、この基準からコストを判断して参ることが一番はかりやすい原価計算のもとになるのでありますけれども、このような複数的な計算をする場合の理論原価というものがなかなか出しにくいというところから、原価計算はなかなか判断しにくいものであると思うのであります。しかしながら硫安の原価は、客観的にわからないものでは決してありません。会社当局は常に発表を避けておりますし、また通産省もことさらこの発表を控えさしておるような状態がございます。これらのことは利潤が相当ある、これを隠蔽する手段からだと見ることもできるのであります。また同じ会社でありましても、工場ごとに相当原価を異にいたしておりますことも明らかであります。昭和十二年ごろの生産費を見ますと、A会社は七十三円九十銭、Bは七十四円、Cは八十一円四十銭、Dは八十四円七十銭、Eは八十五円六十銭、この直接生産費は、Aは六十四円六十五銭、Bは六十四円、Cは七十円四十銭、Dは七十五円八十五銭、Eは七十八円となつております。これらの生産は単味生産でありましたがために、比較的把握しやすかつた点もありますけれども、そのように一応把握できたことも今日把握しがたいという点においては、今日私ども価格を引下げて行く場合において大きな障害となるであろうと思うのであります。はたしてこの法律が出たあとにおきまして、これらのものが把握できるかどうかということについては賛同の存する点であります。ところが一面合理化資金というものを出しまして、これによつて将来の合理化をはかつて行こうというのでありますから、会社の最も痛手でありまする、最も希望でありまする合理化資金を貸し出す場合において、最も正確に原価計算を把握できるというのが、この裏づけとなるのであります。この法律からしてなかなか原価計算をつかみ得ないのではなかろうかと思うのでありますけれども、この裏づけとなります合理化資金、これを最も熱望いたしております、弱点である融資の面から会社の経営内容を把握して参ることが可能となると思うのであります。従いましてこの合理化資金の融資に対しましては、特にこの原価計算を精密に把握する義務が、この法律のうらはらであります他の法律から出て来ると思いますので、これらの点を十分把握して参らなければならないと思うのであります。  もう一つは、この政府が出しました法律について金子委員から修正案が出ておりますが、これは硫安肥料にかえた点であります。従いましてこのうらはらの法律も、当然肥料の統制になつて参ると思うのでありますが、こういうふうに見て参りました場合に、他の法律は単に硫安合理化だけしか考えておられないという点であります。肥料全体という点になつて参りますと、これは硫安ばかりでなくて、他の硫酸工業またはソーダ工業と密接なる関係を持つのでありますが、ソーダ工業のあり方、または硫酸工業のあり方についていまだ触れておらないのでありまして、本来から言いますならば、これらの法律修正すると同時に、硫安工業のあり方と同様に、硫酸工業のあり方、またはソーダ工業のあり方、または弗素工業の将来の見通し等も十分検討して参らなければならないと思うのであります。今日ほんとうは弗素工業の将来についてどのような見解を持つておるかということをお尋ねいたしたかつたのでありますけれども、時間の制約上省略いたします。これらと関連のある化学工業等の合理化をどのように進めて行くかということが、この原価計算に非常な影響をもたらすものであることは説明を要しない点であります。法案の説明と同時にそれらの問題を検討して参らなければならぬのでありますけれども、十六国会から十分審議をいたし議論をいたして、小委員長が非常に苦心の結果、金子委員をして修正せしめたという経過にかんがみまして、私はやむを得ざる事情を十分のみ込んで本案に賛成はいたしておりますものの、これらの多くの欠陥があることを今日反省せざるを得ないであろうと思うのであります。こういう立場から、日本硫安工業のおい立ちを考えて参りますと、輸入硫安をいかにして国内から駆逐するかということが目的であつたのであります。同時に日本硫安工業は、大体百三十万トンが内需であつて、それ以上は輸出しなければならないということが予想せられておつたのでありますけれども、国内の農民の購買力が増大いたしまして、今では窒素肥料といたしまして百七十万トンから百八十万トンあるいは二百万トンに近い消費を持つようになつて参りましたのは、国内の食糧増産にいかに必要な肥料であるかということを半面物語つておるものと思うのであります。現在の硫安工業は、国の手厚い庇護、すなわち戦後物資の不足なときにおける鉄材その他の特配、融資、それらと相関連して農民の購買力の増大という援護のもとに発展して来たのであります。将来の見通しとしては、おそらくこの硫安を減産して、他の尿素とか硫燐安という方面に力が入つて行くものと想像されますが、期待をいたしております硫安がそういうことによつて減産して参ることになりますと、硫安価格が高騰するようなことが起きて来ると思うのであります。大体肥料事業法ができた場合におきましても、昭和十二年七月渡しの硫安建値は、組合の希望に反しまして三円四十銭と決定したのであります。この決定も、政府は公定価格発表後市中の相場が上まわるようなことがあつてはならないと懸念して慎重に決定したものでありましたけれども、その後実際を見ますと、三円四十銭が三円八十銭という高騰を来しております。当時まつたく公定価格が失敗をいたした歴史を持つております。これは会社がいわゆる操短をいたすということになりますと、いかに公定価格をきめたりあるいは最高価格をきめましても、それを上まわるような値段が市場に出て参るのであります。また先般から議論になつております石灰窒素にいたしましても同様であります。当時農林省も通産省も、石灰窒素の保有は十二万トンあるから、六万トンくらい朝鮮に輸出しても何ら不安がないと発表いたし、それに応じておつた。特に六万トンでも危険ではないかという農林省の説に対して、通産省は、六万トンどころではない、八万トン、十万トンの輸出能力があるとさえ主張されておつたのが、わずか十二万トンの保有に対して六万トン輸出しただけで、価格に大きな変動を与えております。これらのものはほんとうに在庫があつたかどうか疑問であります。もう一つは、こういう値下りを防止するために相当の減産をいたしております。化学工業は御承知のように、自由に減産をすることが可能であります。もちろん製造能力の限度から申しまして、ある程度より減産もできないことも明らかでありますけれども、また常に機械工業のように不動でなくても経営のできるものであります。また御承知のように大体春肥は値上りであつて、七、八月からできます秋肥にかけましては、国内の需要から見まして過剰を来す、現在の能力から見ましてそういう判断ができます。これらの場合における輸出というようなことも問題になり得る点はありますけれども、常に春肥を目ざして、国際的な一番需要度の高い春肥を、国内春肥と国際上の春肥とを競争させるというような輸出については、厳に戒めて参らなければならないと思うのであります。特に日本の気候状態から見まして、春肥の生産であります十二月から一月、二月にかけましては、電力事情あるいは石炭の生産の最も減ずるときであります。こういう条件の悪いときに、なお春肥の必要のある生産をしなければならないというのが今日の肥料工業に負わされた任務であることを十分知悉しなければならないと思うのであります。これらのときにおいてあえて輸出を迫るということは、国内価格を上げる大きな原因になつておるのであります。また現在の生産能力からいいまして、七、八月ごろにできます硫安をどうして処分するかということも、もちろん考慮に入れなければ、日本肥料工業は成り立たぬことも明瞭でありまして、こういう点から見まして、これらの保管団体が一体いつごろ硫安を買い入れるかということが、市場にも非常に大きな影響を来すと思うのであります。もしも春肥を競争して保管肥料を持つということになりますならば、さらに公定価格を上まわるような結果をみずから招くところの失敗もあえて出現させるのではないかと思われる。これらの点を十分勘案して参らなければなりません。ただ硫酸工業あるいはソーダ工業との関連も、今度いわゆる硫安需給安定でなくて、肥料需給安定ということになると、さらに硫酸工業あるいはソーダ工業との関係が密接になつて参ります。これらのものを十分勘案して参らなければ、所期の目的は達成できないと考えますので、今まで審議において現われましたこれらの意見を十分尊重せられなければならないと思うのであります。  さらにまた肥料審議会の問題につきまして、足鹿委員から執拗果敢に主張された点であります。もちろんこれらの肥料審議会国会議員を排斥するというような考え方は、他の委員会の場合と違いまして、特に大きなメーカーであります。また日本の化学工業の将来に大きな影響を持つておりますこれらの肥料審議会については、やはり国会意見をも直接反映させるの道を十分講じ、消費団体である農民の組織ばかりでなく、あるいは生産団体である硫安協会のためばかりでなく、日本の総合的な観点から国会議員を関与せしめ、方向を決定することが最も妥当なものと私ども考えるのであります。これらの点について金子委員が苦心をせられて修正されましたので、その点は了といたしますけれども、十分勘案せられなければならないと思います。  なお肥料というふうに法案は直しましたけれども、これらに附帯する条項の整理が十分行われておりません。けれども前のよりも一歩前進しておることを私どもは認めまして、これらの観点から考えまして一歩前進である。将来さらにこれに対する肉づけ及び装飾が必要になつて来るということをつけ加えまして、不十分ではありますけれども、今日まで小委員長並びに金子委員が苦心されましたその点を十分了といたしまして、私どもこの案に賛成し並びに修正案に賛成するゆえんでございます。(拍手)
  50. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて討論は終局いたしました。引続きこれより採決に入ります。  先ず先ほど足鹿委員の討論中発言せられました金子提出修正案中、日本硫安輸出株式会社に関する部分すなわち新第十二条第一項中の修正部分及び新第十六条第二項及び第三項中、「「価格の安定」の下に「並びに日本硫安輸出株式会社に対し通商産業大臣がする処分その他の行為」を加える。」この部分について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  51. 井出一太郎

    ○井出委員長 起立多数。よつてこの部分は可決せられました。  次に金子與重郎提出臨時硫安需給安定法案に対する修正案中、ただいまの部分を除く修正部分について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  52. 井出一太郎

    ○井出委員長 起立総員。よつて修正案は可決せられました。  次にただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  53. 井出一太郎

    ○井出委員長 起立総員。よつて臨時硫安需給安定法案修正案のごとく修正すベきものと決しました。  次に先ほどの足鹿提出の附帯決議についてお諮りいたします。この附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なおお諮りいたします。本案に関する衆議院規則第八十六条の規定による報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  56. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際川俣君より建設委員会に対し土地区画整理法案に対する修正意見を申し入れたいとの提案がなされております。発言を許します。川俣清音君。
  57. 川俣清音

    ○川俣委員 建設委員会に付託されております土地区画整理法案に対して修正意見の申入れをいたしたいと思います。本委員会において議決の上、建設委員会へ送付願いたいと思うのであります。詳細は印刷にいたしておりますので説明を省略いたしまして、委員長の手元においておまとめの上御提出を願いたいと思います。     —————————————
  58. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいま川俣君発言の通り土地区画整理法案に対する修正案はお手元に配付済みに相なつております。そこでただいまの川俣君の御発言に対して御意見があれば発言を許します——別に発言もなければお諮りいたします。ただいまの川俣君の提案の通り建設委員会修正意見を申し入れることに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めさよう決しました。     —————————————
  60. 井出一太郎

    ○井出委員長 次に蚕糸問題について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。佐藤洋之助君。
  61. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 私はこの際蚕糸問題等に関しまして、緊急質問いたしたいと思います。それは、実は小委員会を開いているいとまがございませんものですから、緊急に本委員会蚕糸局長の出席を求めまして質問するのですが、これは実は各派全部の要望なんです。それをあらかじめお含みの上でお願しておきます。それはほかでもないのですが、蚕糸局として突如機械座繰、普通座繰及び玉糸がま整備に関する臨時措置要項といものをお出しになつたために、業者は愕然として驚いた。非常なセンセーシヨンを起した問題なのであります。これは申すまでもなく、戦時中から戦後にかけて引続いた懸案の問題でありまして、中小企業の非常な貧窮のどん底にあります現情におきまして、これをあなたの方で実施いたしますと、すなわち強行されますと、この座繰機械製糸、玉糸製糸の方々は非常な不況に陥りますことは火を見るより明らかであります。そこでこの問題について蚕糸局長の所見をお伺いいたしまして、私どものこれに対する意見を申し上げたいと思うのですが、実はこの処置は政府の命令事項でございますから、あなたの方の命令事項として可能わけでございます。われわれはあえて行政の面に容喙をするという意味ではないのでございますが、やはり農林委員としては蚕糸委員を設けてありますし、この間も小委員会におきまして購繭資金問題や何かについて論議いたしましたことは御承知の通りであります。従つてこうした重大な影響を及ぼす問題につきましては、やはり事前にわれわれ委員にお諮り願うとかいうことにして、御協力を求められた方が問題は案外に解決するのではないか、こういうふうなこともありますので、私どもはあえてあなた方の行政面にタツチするという意味じやないのです。その点は御了承願つて、今回こういうような処置をお出しになりましたお考えを一応お伺いいたしたいと思うのでございます。これについてひとつ答弁を願います。
  62. 寺内祥一

    ○寺内政府委員 ただいまお話のありました機械座繰、普通座繰、玉糸製糸につきまして、少し整備をするという方針をきめまして通牒を出しましたことはお説の通りでありますが、この趣旨は御承知の通り、製糸業というものは、製糸業法によりましてただいま免許制になつておるのでございます。このうち機械座繰につきましては、免許いたしておるかま数が約八千でございます。そのほかに無免許で運転しておりますかま数が総計いたしまして四千三百三十一かまあるわけでございます。われわれはこういうふうにでましたことは実情やむを得ない点がありますので、何とかしてこの免許の範囲に入れて行きたいという努力をいたしておりましたが、最近におきましててたまたま玉糸の方が輸出が不振でございますし、多少やめてもいいというものがありましたので、玉糸あるいは普通座繰の方でやめるかま数をこちらへ振りかえまして、無免許でありますかま数を何とかして免許の方に持つて行きたい、こう考えておつたのでございます。それはかま数をそのままふやせばいいのでありますが、御承知の通り繭がただいま産額が少うございまして、製糸とのアンバランスがありますので、それと見合いながら免許いたして行きたい、こう考えまして通牒をいたしたのでありますが、ただこれをやりますにつきまして、各団体と話合いをいたしたのでありますけれども、県あるいは団体におきましても、末端までこの趣旨が徹底しない点があり、あるいはわれわれが考えておりましたこととは多少実情が違いまして、その団体に入つておらないアウトサイダーの方もあるというような情勢でございまして、この趣旨が徹底しなかつたことが一つと、それからもう一つは、認可に入れますにつきましても、数量を制限しておりましたところが、この数量の制限が多少実情に沿わないというような点もございますので、先ほど申しましたような、できるだけ無免許のかまを免許に入れるという根本方針を決定いたしますためには、この通牒に多少不備の点もありますこともわかりましたので、さしあたり出しました通牒につきましては、この実施をしばらく延期いたしまして、もう少し検討し直しまして、別の方針でやるようにいたしたいと考えておりますし、ただいまその手続の点等について、せつかく皆様方の方に小委員会もあるのであるから、その方面と打合わせるというお話もありましたので、これを書きました点はまことにわれわれが粗漏であつたと思いますので、それらの方々とも御相談いたしまして、方針を改めまして皆様方の御意見も伺いまして、できるだけ——やみと申しますと悪い言葉でありますが、無免許で運営いたしております機械座繰のかまを、免許のわくの方に入れて行くという方針にしてやつて行きたい、こう考えております。
  63. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 寺内局長からこの問題につきまして、大体緩和して行こうというような御意思のあつたことであればまことにけつこうです。実はあなた方の方で、製糸業法の規則の第二条、第三条ですか、あるいは玉糸座繰、生糸製造業許可の規則というようなものが、昭和十六年四月二十一日にあるのです。今日この規則を適用して、これを無免許のものであるといつて取上げるということは、私は事情から言つてまことに無理だと思うんです。御承知のように戦争中に整理を受けまして、父祖伝来の業者であつたものが、泣く泣くこれを整理したいような事情があつて、そして戦後さあこれならばできるというので、昔覚えた一つ覚えの商売を始めた。それには相当な犠牲を払つておる。それは無免許であつても、今日ずつと継続してやつて来ておる。この状態において、しかも社会情勢がこういうふうになつて非常な不況に追い込まれたときに、これをあなたの方で整理をされるということは、まことに時を得ていないと私は思うのであります。御承知のように、今大製糸のかまは全部合せまして四万くらいございます。それは今の日本生産された繭から行きますると、かまが多いんです。従つて製糸家はフルにかまを使つてはおりません。そこで二十七年は大体順調に繭の生産があがりまして、二千七、八百万貫あがりましたが、二十八年は御承知のように凍霜害をこうむつて、非常に減産いたしました。そうなつて来ると、設備のある製糸家は買いあさるというようなことになつて、繭の争奪戦が起ることは無理がないんです。しかしこれは平常でなかつた。だからしかたがありませんが、しかしやはり玉糸座繰というものの立場、玉糸座繰の従来やつて参りました仕事というものについては、これはやはり没却することができないと思うんです。御承知のように十七、八万梱できました生糸は、輸出はわずか七万梱、それも絹織物を入れましても、僅々十万の輸出消費しかないのでありまして、残余のものはみな国内消費なんです。そこで生産費から参りますると、有力な製糸であれば、御承知のように一梱五万三千二百万円も生産費がかかるが、座繰であるならば、はるかに安い価格で一梱の生産ができるのであります。こういうふうな意味で行けば、内需においては非常な役割をしておるわけです。こういうふうな意味からも行きまして、これを保護するということが当然な行き方ではないだろうか。私は毎々蚕糸委員会においてあなたにも申し上げたのでありますが、日本の繭というものは、ほんとうに神代時代からの歴史があつて、これを取扱うのには、原始的な産業からあるいは高度に発達した自動繰糸機まであるのであつて、その間非常に大幅なのである。この大幅な繭を扱う業者というものは、やはり日本の政治性をもつてこれを保護、育成して行かなければならないとわれわれは考えておる。もちろん輸出には自動繰糸機を大いに奨励して、輸出向きにおやりになることはけつこうである。しかしやはりわが日本でつくつた繭をわが日本人がこれを糸にして、着物にして着ることは当然なことでありまして、そういう意味から行きましても、小製糸が座繰、玉糸が今までいたしました役割というものは、相当大きな役割を果しておるのでございまして「こういう意味から言つても、急激にあなた方が一片の通牒によつて、やや強制的にこれを整理されるということについては、ここに非常なトラブルが起きるのであつて、現状から考えまして、これはひとつ大いに反省をしていただきたいと思う。無免許でやつた歴史、なぜこういうふうになつたかということを申しますると、これは戦時中の企業整備を行う際に、終戦後復元せしめるという当局の言明によつて納得させたのであつて、終戦後これらの業者が幾度も復元の申請を行つたが、正式の許可は与えられずに、黙認という形で今日に至つた。今日に至つて、この業者が従業員もあり、すベて関連しておりまして、おそらく一かま七万円くらいかかつたのじやないでしようか。そういうふうな点からも考えまして、この黙認したということを何らかの形において、当局はこれを認めてやつたらいいじやないか。そして一面においては繭の争奪を緩和するような方法も講じ、一面においては繭の増産も考えて、これら業者の生存して行けるような方法こそ今日の政治じやないか。私はこう考えまするので、突如として出されたこの措置要綱に関しまして非常なトラブルが起きたということについて、あなた方の方でそれを再検討するということになりますならば、私どもはさらにこれ以上あなたに対して追究をいたしませんけれども、この点を実施するときにおいては、十分農林委員にもお諮り願いまして、そしてなるべくトラブルのないようにいたして行きたいということを、この際に特に申し上げておきたいのでございます。  それから過日の小委員会のときに、購繭資金の問題について各委員から質問いたしました。この購繭資金が最近日本銀行などで大体見当がついたようですが、これについての概要を御報告願いますることと、昨今の冷害が、どれくらいな影響を及ぼすか、これらについて調査がございますならば、この際にあわせて御報告を願いたいと思うのでございます。
  64. 寺内祥一

    ○寺内政府委員 機械座繰の無免許がまの整理につきましては、先ほど申しました通りでございまするが、突如として出して、業界に不測の影響を起したということについては、まことにわれわれの不注意のいたすところでございまして、先ほど申し上げましたような方針に変更いたしまして、無免許をできるだけ正当の免許を得た営業にするように努力いたしたいと考えております。  次に購繭資金の問題でございまするが、これは昨日日本銀行におきまして方針がきまつたようでございます。それが昨年の方針と違う点を申し上げますと、昨年は購繭資金のうち八五%をスタンプ手形にするとなつておりましたのが、本年は六〇%になるという点と、スタンプ手形の期間が昨年は七箇月でございましたのが、本年は六箇月になる、こういう二つの点がかわりましただけで、あとは昨年と同様に取扱われることになつておりますが、このかわりました点につきましての交渉の経過なり、われわれの考え方をちよつと申し上げておきますと、まず第一にスタンプ手形の限度が八五%から六〇%になりましたいきさつは、当初は日銀におきまして、このスタンプ手形という制度は輸出振興の制度であるから、生糸についても輸出した実績にだけしかスタンプをやらぬという議論があつたわけであります。そういたしますと、先ほどもお話がありました通り、ただいまは輸出があまり伸びておりません。しかも全然輸出をしない業者もあるわけでございまするが、それらのものに全然スタンプ手形をやらない、従つて購繭資金がきゆうくつになると申しますことは、これはひいては養蚕農家に非常に打撃のあることでありまするから、われわれの方といたしましては、そういう輸出実績によつてスタンプ手形を適用するというような制度は困るということを申し込みましたところが、しかしスタンプ手形の本来の精神にのつとつて、輸出と何らかの関係をつけなければならない。そこで次には八五%でありましたものを四〇%に下げるという議論が出て来たわけでございます。これは昨年の輸出実績が御承知の通り、二十五万俵ばかりの生産のうちで六万俵しか出ておりません。それから絹織物として出ましたものが約三万俵ばかり、合計いたしましても、生糸生産量の四〇%という線が出て来るわけであります。そこで購繭資金のうち四〇%だけをスタンプ手形に認めるという議論が出たのであります。これでも私は困ると思いまして、昨年は不幸にして輸出の不振な年であつた、その輸出実績によつてやられたのでは困るということを申しましたらば、それでは昨年の購繭資金と、そのうちスタンプ手形になつた部分の比率で行きましようという議論が出ました。こうなりますると、昨年は四百四十億の購繭資金が出まして、そのうちスタンプ手形になりましたものが二百四十億、その比率がちようど五五%、一昨年はやはりその率が六〇%、そこで六〇%という線を向うで出して来たのであります。これにつきましてわれわれといたしましては、今申しましたような昨年、一昨年の実績がありますから、六〇%でも昨年の実績と同じである。また一面におきましては、一兆円予算及びこれに伴うデフレ政策等との関係もありまして、これに協力する面もございまして、六〇%であるならば昨年の実績に比べれば五%多いし、一昨年と大体同じであるから、昨年、一昨年の購繭資金と同じで支障なかろうかと考えまして、一応六〇%でのんだわけであります。  次に期間の点につきましては、当初は日銀では、昨年七箇月でありましたものを五箇月にせよという議論が出たのであります。この論拠といたしましては、日銀で調べましたスタンプ手形の昨年の実績は大体四箇月であつたということと、製糸業者における繭の在庫期間が大体四箇月ないし五箇月である。そこで五箇月でいいではないかという説を出すと同時に、生糸になりましてからの横浜におきます輸出の方面の生糸については、輸出前貸し手形というものが三箇月間認められておるから、生糸になつてから後はこれに振りかえて繭の面で五箇月、輸出前貸し手形で三箇月、八箇月あればいいではないかという議論をしておつたのでありますけれども、この点につきましては、われわれといたしましては、輸出前貸し手形とのつながりというものは、製糸業者で直接輸出をしておりますところは手形の利用ができるのでありますけれども、大部分の業者は輸出商に糸を売つて、その輸出商が輸出するのでありまして、前貸し手形は輸出商でなければ借りられない。従つて輸出商と製糸業者の間のつながりがうまく行かない。従いまして輸出前貸し手形に乗りかえればいいじやないかという議論は、実際問題といたしまして実行不可能でありますので、その後われわれの方として調ベてみますと、繭の在庫期間は大体五箇月半くらいでありますから大体六箇月、それに一箇月くらいが生糸になつてからの在庫期間になりますれば、六箇月でいいと思いまして、六箇月の交渉をいたしましたところが、これはわれわれの主張をのんでくれまして、六箇月ということになつたのであります。大体こういうようにきまりますれば、昨年、一昨年と比べてそれほど支障はなかろうと思いますけれども、もし万一資金が足りないような場合には、われわれといたしましても農業協同組合系統の資金を運用することについてただいま研究中でございますから、購繭資金については万全の策を講じたい、こう考えております。  それから霜害のことでございますが、資料は後ほどお届けいたしますから大体のことを申し上げますと、大体統計事務所なり、県からの電報あるいは電話の報告でありますから、まだはつきりしたことはわからないのでございますけれども、茨城県におきましては、被害面積が二十五町歩、被害程度二〇%、それから群馬県におきましては被害面積が四千四百十三町歩、被害程度二〇%ないし三〇%、あとは埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、山梨等に被害があつたが、これは大体軽微であるとの報告であります。長野県におきましては被害面積一万二千三百町歩、程度は軽微であるとありますが、そのほか岐阜県におきまして被害面積二千三百二十二町歩、一〇%ないし二〇%の被害、あとは三重、愛知、広島、愛媛、福岡等におきまして被害があつたが目下調査中という報告でございます。それから九州に参りまして福岡にもありますが、佐賀は被害面積五十町歩で一〇%ないし二〇%の被害、熊本が六百七十一町歩の被害面積で一〇%ないし三〇%、大分が一千町歩で二〇%ないし三〇%、宮崎が千四百町歩の被害面積で、大体三〇%ないし四〇%、鹿児島は、被害面積は目下調査中でおるが、被害程度は三〇%ないし六〇%の被害があつた、こういう報告が来ております。なお詳しいことは調査中であります。
  65. 金子與重郎

    金子委員 局長は自分の方の係のことについて、この前と同じようなことを言つておるけれども、大体そういうことを調べて、あと農林省としてどういう対策を講じようとして積極的な計画を立てておりますか、それをまず聞きたい。ただ報告がまだ集まりませんとかいうことでなく、確実な報告がわからなくても、これくらいの被害ならば農業政策として何とか対策を講じなきやならぬ、こういう目安があると思います。あなたがそう考えても、蚕糸局だけではどうにもならぬ。官房長なら官房長、農林大臣なら農林大臣を中心にして、これに対する対策をどう講ずるかということに対して、どんなような仕事を今やつておりますか。
  66. 寺内祥一

    ○寺内政府委員 霜の被害は、桑ばかりでなく農業改良局関係の農産物もありますので、被害をとりまとめましていずれ官房等と相談いたしましてこの対策を立てたいと考えておりますが、今ご質問の趣旨は、われわれだけでどうこうという……。
  67. 金子與重郎

    金子委員 それだけの霜害があれば、その莫大な損害がある。それならそれに対してどういう対策を講ずるかという腹案を持たなきやならぬ時期であります。そんな十日も十五日も何の対策もしないで、報告が集まらぬから、報告が集まらぬからということじやならない。応急処置をどういうことをやるか、この対策は講じなくてよろしい程度であるか、講じなきやならぬ程度であるか、そういうことをあなたばかりでなく農林省全体の問題として、官房長なら官房長を中心として対策を講ずるということに対して、あなたはどういうふうな手段を講じておるかということを聞いておるのであります。
  68. 寺内祥一

    ○寺内政府委員 もちろん官房なりあるいは改良局とも相談をいたしておるわけでございまして、ただこの被害の程度によりましてその対策が違うのでありまして、ただいまのところ大体軽微というようなところでは、技術指導によつて今後の被害を軽微にし得る点もありまするし、あるいは予算措置を講じなければならぬ点もありまするが、これはもう少し被害の程度その他のことがわかつて参りませんと、はつきりしたこういう対策をとるということはここで申し上げられませんが、ただいままでの報告によりますれば、技術指導によつてもある程度できると考えております。
  69. 中澤茂一

    ○中澤委員 蚕糸局長に突如と出した要綱についてお尋ねいたします。蚕糸局長はいつも突如として物事を出す人で、この前も蚕糸価格を突如として蚕糸局長が発表して問題を起しておる。今度の場合もまた突如として出しておる。どうも何か裏に突如と出させる糸がついているんじやないかと思われるのですが、一体この要綱を出して整理しようというのは、結局整理の対象になるかま数が、四千がまのうち千百二十か三十、そんなところなんでしよう。それは一体どういう目的をもつて突如としてこの要綱を出して、整理しなければならなかつたか、それについてひとつあなたの御答弁をいただきたい。
  70. 寺内祥一

    ○寺内政府委員 突如と申されますけれども、なるほど皆様方の方に対しては連絡をとらなかつたことは不十分でございますけれども、われわれといたしましては、関係県とも十分連絡をとり、あるいは業界の代表者とも一応話をいたしましてやつたわけでございますが、この趣旨は先ほども申しました通り、製糸業におきましては、機械製糸、機械座繰、普通座繰、あるいは玉糸、いろいろありますが、そのうち機械座繰につきましては無免許の業者が相当あるわけでございまして、この数字は先ほど申しましたが、四千ばかりあるわけでありますが、これは終戦後できた業態でありまして、これは二十三年に一応八千がまに免許いたしたのであります。これは当時でも約一万ありましたものを八千に切つたわけでございますが、やはりこれは実情に沿わない点があつた点もございましよう、ただいま四千がまも無免許のかまがあるわけでございます。われわれといたしましてはこれを無免許であるからといつて強硬に取締るわけにも行きませんので、何とかこれを免許のわくへ入れて行きたいということは、常々考えておつたわけでございますが、たまたま最近になりまして玉糸なり普通座繰りの方で廃業したいという希望がございますので、それならばその免許のかまを機械座繰にふりかえてみよう、そうしてやめたい方はやめていただくし、無免許でやつているものを正式の免許に入れようという考えでこういうことを考え出したわけでございますが、先ほども申しました通り、数量、数字その他について調査が少し不十分な点もございまして、皆様方に御迷惑をかけた点がありましたことを恐縮に存じますが、そういう精神によりましてもう少しこの方針を検討して行きたいと考えております。
  71. 中澤茂一

    ○中澤委員 そういう無免許のものを免許に入れてやるという気持はわかります。けつこうなことです。しかし佐藤委員もさつき言つたように、これは戦時中の強制的な企業整備によつてやめさせられた人が、戦後になつても飯が食えないもんだから、じやまたひとつやろう、こういうことで始めたのです。今ここで突如としてこんなことをやらないで、もしこれはいかぬということであつたならば、行政府としてあなた方が忠実に法律を守つていたならば、今までにこういうことをやらせなければよかつた。やらせておいて今突如としてこういうことをやる。そしてあなたはそれに対しては業者と話し合つたと言うが、その話し合つたという業者は、おそらく一部の大製糸業者の発言が強かつたと思う。実際今中小企業の問題というものは、政府の施策の貧困からまつたくこれは——けさの新聞を見ても、綿糸関係あたりで一日に一億ずつ倒産して行くというような悲惨な中小企業の状態なんです。そういうときにこういうものを出すということは、大製糸資本家の擁護にはなるかもしれませんが、中小企業はまつたく困つてしまう。しかしあなたが反省をなされて、これはちよつと行き過ぎがあつた、だからこれはあらためて考え直すということであるからあまり私は追究しませんが、しかもあなたはこの問題に対して、三月三十一日付でもつて刑事局長に対して厳重な取締りを願いたいという申入れをしておる。蚕糸局長が刑事局長に依頼してまで一体中小企業をいじめなければならない原因というものが私にはわからない。そういうことで昨年の凍霜害や何かで繭が減産になつた。そしてそれは座繰製糸が繭を確保せんがために値段をつり上げたということも私は否定しない。確かに一部にあつたのだ。あつたけれども、それが一部にあつたからただちにこれを出して、そういうものを一挙に押えつけてしまわなければならぬということは、まことにこれは中小企業に対して思いやりのない方策である。あなたがこれを訂正して考え直しましようということであるからこれ以上追究しませんが、少くとも千二百かまくらいなものを今整理したつて日本蚕糸業に影響がどうこうじやないですよ。それよりか私はいつも言つているように、一体繭の増産をどう考えるか。繭さえ増産されれば座繰の方がかえつて——御承知のように一俵の生産原価だつて二万五六千から二万七、八千で上る。機械よりか半値でもつて上るのですよ。だからそういうことをあれやこれや考慮してみるとこういうものを突如出して整理してみても、日本蚕糸業全体の影響というものは大したことはない。それならばこの際——中小企業というものを育成強化しようということを政府は政策としてはうたつておるが、実際は育成強化じやない。中小企業が塗炭の苦しみに追い込められているその段階において、こういうものを突然お出しになるというようなことはやめまして、じつくりといま一度考え直して、あなたの言つたように、今までの現有設備をどういうふうな形にして免許制にして行くかということに力を注いでもらいたい。そういう点についてあなたがさつきからおつしやつておりますからそれ以上追究しませんが、ひとつはつきりとこれはだめなんだ、だからこれは一応刑事局長などへこういうものを出して、今急に取締れ、などということは実にひどい。もう少し蚕糸の問題についてあなたは、小委員会や何かで、私などいつも文句ばかり言つておるので非常に敬遠しておるけれども、佐藤小委員長も話の非常によくわかる方なんだし、われわれだつてむちやくちやに言つておるのじやないのです。結局あなたのやり方自体がどうも変なことばかり言うもんで、こつちが文句ばかり言うようになるのです。一応佐藤さんあたりに連絡して、今度はこういうような方式でやろうということになれば、小委員長の方から小委員会に御相談になれば、これはこうやつたらいいだろうという結論を出してあなたの方へ答申してやる。こういうふうにあなたの方で、もう少し小委員会を敬遠しないで活用しなさい。あなたの方の蚕糸局自体としては、大蔵省としては廃止しようというようなことで力がないのです。もつとみんなの力を活用するように考えられたらいいと思う。この点についてもう一度そういうふうにするということをはつきり答弁しておいてください。
  72. 寺内祥一

    ○寺内政府委員 先ほど業界とも相談したと申しましたのは、大製糸と相談したのではないのでありまして、やはり機械座繰の方に国用生糸協会という団体がございますので、そこと相談したのでありますが、一部にアウト・サイダーがあつた。従つて末端までわれわれの趣旨が徹底しなかつたという点が一つあるのでありますし、先ほどからたびたび申しますように、いろいろの御趣旨もありますので、実態をよく調査いたしまして、先日出しました通牒は、さしあたり施行停止いたすように、あらためて通知を出しまして再検討いたしまして、先ほどから申し上げますように、できるだけ無免許を免許のかまの中に入れて参りまして、正式に業界の方々に安心してやつていただけるように持つて行きたいと思つております。なお小委員長の方との連絡が不十分でありましたことについては、今後十分に連絡をとるようにいたしたいと思います。
  73. 川俣清音

    ○川俣委員 これは重大なことだと思う。農林省蚕糸局長の名前で、自分が当然行政上行わなければならない点を、刑事責任を負わせるというようなことは、みずからその責任を負わなければならぬじやないか。自分が末端行政までやらなければならぬ責任を司法処分を求めるというようなことが、行政の長としてやり得ることですか。これはあなたの局ばかりではない。これは大臣つて同じだと思います。あるいは他の農地局だつて、同じだと思う。自分の行政が末端までうまく行かないために、それですぐ司法上の処分を求めるというがごときは、自分みずからの至らざるところをたなに上げて、それで司法処分を求めるなどということは、——企業整備といい、こういう整備は行政官が当然やらなければならぬ任務じやないですか。いよいよもつて、どうしてもできないときに、やむを得ず司法処分を求めるというようなことも、みずから進んでやるべきではない。それは本省がやらなければならぬでしようが、当然行政官の長がみずから司法処分を求めるというがごときは、私は行政官としてやるべきではないと思う、おそらく大臣としても、こんなことはおやりにならぬと思う。自分がやつても、末端機構がうまく行かないから、司法処分をやらなければならないというならば、行政官の必要はないじやないですか、むしろ司法処分があるという場合においても、われわれの方が至らざるために起きたんだから、今後はいたさないようにいたしますからということで、陳弁しなければならないのが行政官の任務だと思います。この点は大臣どうお考えですか。
  74. 保利茂

    ○保利国務大臣 原則的にはお説の通りだと思います。今回の蚕糸局長の通牒が何か問題を起しておるようでございますが、これは私自身もよく調べまして、どうも常識的にも欠けるところがあるのではないかというような、——これは私率直に申し上げますが、そういう感じをいたしておりますので、よく事情をきわめます。但し自分の行政範囲内のことを、行政の行届かざるところをもつて、ただちに司法処分、司法活動をお願いするというようなことも慎むべきことだろうと私は思います。     —————————————
  75. 井出一太郎

    ○井出委員長 引続き昨年度の風水害に基く農地等の災害復旧事業について調査を進めます。井手以誠君
  76. 井手以誠

    井手委員 昨年のあの風水害で、あれだけ大きな問題になりましたが、最近ではどうも忘れがちのような傾向もありますので、この機会に災害復旧について農林大臣お尋ねいたしたいと存じます。実は二十九年度予算審議当時にお伺いしたがつたのでございますが、大臣の都合で遂に今日まで延びたのであります。二十九年度の農林関係の予算説明におきまして、大臣は災害のことについては全然触れられていないのであります。あれだけの大災害でございますので、復旧については当然触れられておることかと思つておりましたが、全然触れていない。私は非常に不満に思つております。さらに予算概要の説明におきましても、二十八年度末における未復旧事業はなお巨額に上る見込でありますが、今後再査定などの方法により極力事業費の圧縮をはかりたいという説明がされておるのでありまして、復旧が主なのか圧縮が主なのか、はなはだ了解に苦しむのであります。この点について私十分大臣にお聞きしたいとは考えておりますが、本日は時間の都合もありますし、またこの根本問題につきましてはいろいろの関係もありましようから、私は基本問題については答弁は求めません。ただ現在非常に現地が困つております災害復旧の切実な問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。一昨日九州、山口各県から知事あるいは県会代表が見えて、雨期を控えての切実な訴えがなされておるのでありますが、それとも関連をいたしまして、次の各項について大臣から、また詳細の点については事務当局から承つておきたいと思うのであります。政府は常に災害復旧は三・五・二であるという公約をなすつておるのでありますし、二十九年度の予算説明におきましては、二十八年度の復旧費と二十九年度の復旧費を加えると大体六割の復旧ができるという説明が出ておるのであります。ところが実際はそういう説明があるにもかかわらず、その半ばにも達していない実情でございます。そこが問題として考えておる点であります。当初農林省関係における二十八年度災害の復旧に要する国庫負担の要求は八百八十一億だと承つておりました。それがどういう都合かその後七百三十四億に減つておるようであります。かりにどういう都合か知りませんが、七百三十四億が正しい数字といたしましても、二十八年度の復旧費は八十九億、二十九年度の復旧費は百十九億になつておりまして、合計二百八億、これを七百三十億円の総国庫負担額に対比いたしますれば、二十八年、二十九年の復旧費はわずかに二割八分にしかすぎないのであります。私各地を調査して参りますと、二十八年の復旧費は大体一割二分、二十九年度の予定は一割六分、これは各府県を通じてそのようでございます。ところが三割にも満たないこの復旧の現状に対して、政府では六割近くを復旧し得るという答弁をしておる。ここに私は根本的な食い違いがあると思うのであります。大蔵省はこれを三百七十四億に査定をしておるようでありますが、私はこの災害復旧の責任者はあくまでも農林大臣であると考えております。そこで農林省では災害復旧に幾らいるか、すでに農林省では災害直後から調査に参られて、査定はほとんど済んでおると考えておりますが、金額は七百三十四億でおそらく間違いはないだろうと存じますけれども、幾らになつておりますか。この点をまず承つておきたいと存じます。
  77. 保利茂

    ○保利国務大臣 災害復旧につきましては、予算御審議の際にその概要につきまして御説明を申し上げておいたと存ずるわけであります。ただいまお話の、具体的な数字になりますが、一応農林省が昨年度起りました災害について、現地あるいは紙上査定をいたしまして、国庫負担を要する額といたしました分は結論的には五百数十億になつたと存じておりますが、御承知のように災害件数がおびただしくございますので、農林省の少い陣容をもつてしては、個々についての現地査定をすることが事実不可能であるわけであります。そこでこれに対しまして、あるいはそれに関係のある大蔵省であるとか、会計検査院であるとか、あるいは行政管理庁であるとかが、一部の災害復旧に要する国費の濫用ということが非常に問題になつて、それらの関係機関において調査をやられて農林省が現実に査定をしておるところにつきましては、これはむろん確信を持つておるわけでありますけれども、紙上査定をいたしております分につきましては、これは現実に調査をしたところと食い違いを生じて来ることもやむを得ないわけであります。私は相当の時日がたつて災害地を見に行つて冷やかなる調査をするものと、災害直後のなまなましい惨状の上に立つて査定をするもの、との間には相当の開きが来ることは当然だけれども、しかしながら多くの場合、災害直後の状態と相当期間がたつて——特にまた農地のごときは、個々の農家にとつてみればきわめて大事な財産であります。国の補助とか、県の補助とかいうことを待たずして、相当自己労力をもつて手直しするものはある程度手直しをしておる。そういうところをあとからのこのこ見に行つて、これはどうも農林省の査定が甘過ぎるのじやないかと言われるようなことは、実際私としてはとらざるところであるわけであります。そういう点が査定上の実際問題として私としても非常に悩んでおる点でありますが、これにつきましては、私として関係当局に右申しましたような意見を強く訴えておるわけであります。そこでたとえば会計検査院の報告にしましても、調査にいたしましても、わずか大分、佐賀、福岡、熊本、あるいは京都、和歌山、三重といつたような七県だけを取上げてみても、農林省が査定しておりました百八十八億の中には六十五億も余分なものを持つておるのじやないかというような調査もあるようでございます。いずれにいたしましても、全国民の負担において復旧をいたす。すなわち貴重な国費をもつてやらなければならぬ仕事でございますから、いかに農民諸君がわが田に水を引くというようなことをいいましても、国費の扱い方は厳正でなければならない。そういう上からいたしまして、特に会計検査院や大蔵省あたりでそういうふうに査定をいたしております箇所につきましては、それらはそれらの調査資料として、あらためて農林省として再調査いたしているわけであります。一体どの程度に達するかということは、五月の半ば過ぎには最終的にまとめ得るものと存じております。そういう点で、私どももこの災害復旧問題については、決しておろそかにいたしているわけでございません。十分注意を払い、まさに植付前にさしかかつている際でございますから、何とか可能な限り、この年の植付が一反歩でもよけいに行われるようにということを配慮いたしているわけでございます。こまかい数字につきましては、農地局長から申し上げることにいたしたいと思います。
  78. 井手以誠

    井手委員 予算執行が厳正であるべき点については、申すまでもないことであります。その点について、私はむしろそういうことを希望するわけであります。しかし現在進んでいる査定は、厳正を通り越して苛酷な査定を行われている事実があります。この点についてはあとでさらに申し上げますけれども、問題は査定の金額でございます。事務当局では幾らになつているか。ただいま大臣は五百何十億と仰せになりましたが、国会に昨年出されました資料では八百八十一億、これは国庫負担額であります。また最近十九国会国会資料として出されました国庫負担の総額は七百三十四億、私はこれがでたらめな数字とは考えません。信用あるものと考えておりますが、現在幾らになつているか、お尋ねをいたします。
  79. 平川守

    ○平川政府委員 農地分につきましては、その後いろいろ再査定等をいたしまして約五百億になつております。
  80. 井手以誠

    井手委員 農林省関係全部では。
  81. 保利茂

    ○保利国務大臣 林野と水産の関係を含めないと全部というわけに行かぬのですが、それはあとでまたひとつ
  82. 井手以誠

    井手委員 今お話の五百何十億というのは、かりにそれが確実な数字としても、農地だけでございますか。
  83. 保利茂

    ○保利国務大臣 農地、農業用施設だけですね。
  84. 井手以誠

    井手委員 私の方にもらつている資料では、総計七百三十四億であります。おそらく農林省は確信を持つて査定され、いいかげんなことはなさつておらぬと思います。再査定の必要もないと思いますが、念には念を入れるということを考えますならばその点は了承いたしますが、七百三十四億で一応出された数字に対して、現在二十八年度予算を加えても二百八億、これは二割八分にしか該当しない。本会議や予算委員会の説明では六割近くとおつしやつていますが、そういう答弁は間違いであつて、二割八分が正しい。その点念を押しておきたいと思います。
  85. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は六割というようなことは申していない。もし大蔵省が言つているとすれば、大蔵省は今の五百数十億に見合う三百七十億とかなんとかいう数字を持つて来て、それで六割とかなんとか言つていると思いますが、そういうわけには参らないと私は考えております。
  86. 井手以誠

    井手委員 それを大臣から聞いてやや安心しました。建設大臣も、同様にあれは大蔵省から査定を受けているが、責任者はあくまでも農林大臣であり、あるいは建設大臣である。だから大蔵省の査定は、大蔵省のかつて希望的な数字であるとおつしやつておりました。また農林大臣も今おつしやいましたので、その点はやや安心いたしたのであります。従つて大蔵大臣が言うように、二十九年度までに六割近く復旧するということは、これはかつてなでたらめの数字であると私は了解いたすのであります。  そこでお尋ねいたしますが、責任者である農林省の査定に対して、大蔵省の財務局であるとか、あるいは会計検査院であるとか、あるいは行政監察の方であるとか、かつてに行つてびしびし査定をされている。この点については、領土侵害の意味において、もつと払は農林省が強く出るべきであると思う。会計検査院その他を先日ここに呼んで私は聞いたのでありますが、現地で受けた印象では、農林省の査定以上に強い、また暗い印象を被害地は受けているのであります。どちらがほんとうの査定であるか、非常に困つている。農林省ばかりでなくて、各方面から来る。次々に接待しなければならぬ。実に困つているのでありますが、その査定たるや、昨日の陳情団も申しておりましたが、私ども調査したところでは、控えが四十五センチであつたものを一率に三十五センチに査定してしまつた。これは会計検査院であります。石の奥行きが四十五センチあつたものを三十五センチに一率に切つてしまう。それで二割を浮かす。あるいは当然復旧費に入るべき運搬費について、これはお前たちの利益になることであるから、受益者負担として奉仕しろ、こういう行き方で運搬費を削つてしまつている。あるいは堆積土砂を半箇年も八箇月も過ぎた今日行つて、もう雨やその他で少くなつている堆積土砂を、これでは幾らしかないじやないかということで、一メートルあつたものを四十センチにするという行き方で天引している。こういうことをびしびしと現地で査定され、大蔵省で要求されていることは、明かに行き過ぎであると思うのであります。おそらくそういうことを農林省は受けられるはずはないと思うのでございますが、農林省ではどういうお考えであるか。会計検査院はそういうやり方をやつております。間違いございません。熊本県においては労力費を全部二割天引して、佐賀県においては控えを四十五センチであつたものを全部三十五センチに切つている。(「神奈川県においてしかり」と呼ぶ者あり)各県においてその通りであります。むちやな査定をされている。また財務局は、非常に忙しいのでやむを得ない点もあるかもしれませんけれども、夜中懐中電燈で現地を査定される。もうすでに麦はまいてあるから復旧したのだというので、やつと復旧したものの災害を認めない。こういういろいろな査定を各方面から農林省に要求されている。昨日首相官邸においていろいろ査定の内容を聞いたのでありますが、農林省においては一率に二〇%切つたということも言明されております。そのようなことで、大蔵省では先ほど申し上、げましたように、七百億円以上に上る国庫負担を三百七十四億円台に査定されているのであります。こういうことでは絶対に災害の復旧はできません。農林のことは農林出身の保利農林大臣はよく御存じのことであると思いますので、私が多く申し上げるまでもありませんが、災害地としては涙を流して災害復旧のできないことを訴えております。このむちやな査定に対して、農林省はどういうふうにお考えになつているか。そういう会計検査院の要求に対して、あるいは財務局の要求に対して、どういう態度でお考えになつているか、お伺いいたしたいと思います。
  87. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は先ほども申し上げますように、会計検査院の調査やあるいは大蔵省の調査に反擬するような意図でもつて見てはおらないのでございますけれども、しかし農地災害の実態というものについての認識が、いささかお話のように欠けておるのじやないか、と申しますのは、農家個々といたしますれば、御承知のように零細な耕地の上に立つわが国の農家としましては、たとい一坪の農地といえども、国の補助が来ても来なくても何とか直さなければならぬということで、まつたく涙ぐましい復旧をやつておられる、それをもうお前のところは片づいておるからいいじやないかというのでは、その災害復旧という国の処置を約束しておることが無視されるというような結果に陥りやすい、そこでそれも災害直後に会計検査院なりあるいは大蔵省が見に行つて、それでこれはこの程度だというのならばまだわかる、けれども、月日がたつて相当手直しというか、ある程度手を加えた跡を見て、その上にこれは行き過ぎだというようなことは、これは深く反省をしてもらわなければならぬ。そこでなるほど大蔵省の調査にしても、会計検査院の調査にしても、よりどころは十分あるのでございましようから、私ども主管者といたしましては、さらにそういう箇所につきましては、もう一度農林省として見る必要がある、そうしなければ、こちらも全部が全部見ておるわけではなし、見ておるのはほんの一部しか見ていないわけですから、いやお前の方は過酷だという根拠がはなはだ薄いわけですから、そういう点についてはもう一度農林省で係りの方が現実に事情を見まして、そうして再査定をいたす、それを最終的なものにいたして参りたい、こういうふうに私は考えております。
  88. 井手以誠

    井手委員 先刻御答弁にもありましたように、百八十億かのうちに六十億再査定によつて捻出したというお話、私も聞いておりますが、それはただいま私が申しましたように、二割を天引したとか、あるいは控えを四十五センチを三十五センチほどに切つたとか、そういうものを含めてだと私は考えております。そういうものを農林省が受入れられるはずはないと思うのでありますが、どういういきさつでございますか、その点は局長からお答えを願います。
  89. 平川守

    ○平川政府委員 建前といたしまして、原形復旧が建前でありますから、元の状態において用いておりました程度のものを用いるということについては、これを査定することは原則に反すると思うのであります。ただ検査院の方では、いろいろ現地においては元の状態以上にこの復旧に際して改良を含んだ要素を非常に含んでおる。これについてはもちろん一定の原則によつてやむを得ざる場合には認められておるのでありますけれども、それが過度のものについて査定をする、こういうことを申しておるわけであります。これはもちろんこちらとしても異議のないところでありまして、お話のような場合は、原則から申しまして査定すべきものではなかろうというふうに考えられるのであります。従つて個々のケースをこちらの方でも再査定いたしまして、検査院の言つておるうちに若干あるいはもつともなものがあるかもしれない、しかしただいまも申されましたような、元これだけのものを使つておつた、それに対して今度は一律に査定をするとか、あるいは労力等について、これは自分でやれとか、そういうことは法律の原則に反するわけであります。これに対しては私の方もそれをそのまま承諾しようとは考えておりません。
  90. 井手以誠

    井手委員 会計検査院あたりは現地におもむいて、一件々々について査定金額を示されておる、そうすると農林省が査定したものと違う。現地ではあとで会計検査院が調べたものが正しいというふうな認識を持つておる、従来の会計検査院の行き方をいろいろ考えますると、どうもそういう印象を被害者が受けるのはこれはもつともなことと思うのでありますが、やはり責任者は農林省である、農林大臣であるということを明確にして、責任を持つてつてもらいたいことを私は特に強く要望申し上げたいのであります。六十億というものの中には、先刻申しましたような不当なものがある、これに対してどういうふうに、農林省としての独自の確固たる対策を立てようとなさるのか、今のままではずるずると財務局や会計検査院の査定されたものになつてしまう、これでは私はどちらが査定の中心であるか、責任者だかわからなくなると思う。この点はひとつはつきりしておいてもらいたい、そうせぬと非常に誤解を受ける。
  91. 保利茂

    ○保利国務大臣 ごもつともでございまして、その点はやはり農林大臣が最終の責任者でございますから、むろん会計検査院や大蔵省の調査を参考にして、そうして処置を誤らないようにいたさなければならぬことは当然でございますけれども、これに拘束をせられて、たださようでございますかというようなことは、私としては断じていたしません。
  92. 井手以誠

    井手委員 大臣のただいまの御答弁ごもつともでございます。そうでなくてはならぬと考えております。ところが今日までずつとやられて来たことを考えますと、農林省がどんどん片一方の大蔵省から押えられたままで、押されつぱなしになつておる。自分のかわいい家族が他人からいろいろな暴行を受けておる、それをほつたらかして見ておる、しようがないというふうな私ども印象を受けております。ただいま農林大臣が確固たる所信を示されましたので、おそらくそういう確固たる方針でお進みになるだろうということを期待して、これ以上私は申し上げませんが、ただここで念を押しておきたいことは、大蔵大臣が二十九年度はあの予算で六割近くを復旧するということは、あれは根拠のない数字である、五月ごろ再査定が済んだものが正しい数字である、かように了解してよろしゆうございますか、その点を念を押しておきます。
  93. 保利茂

    ○保利国務大臣 その点は大蔵大臣も予算委員会井手さんが御了解をされたように訂正をいたしておりましたのを私は聞いておりましたから、そういうふうに御了解いただいてけつこうだと思つております。
  94. 井手以誠

    井手委員 次にお尋ねいたしますが、小災害については御承知のようにいろいろな経緯がありまして、三万円以上の小災害についても九割の国庫負担をするようにきまつております。これは法律はつきり示されておるのであります。ところが二十九年度の予算によりますと、大体五%程度かというふうに承つておりますが、相当三万以上十万円以内の小災害があるにかかわらず、二十九年度の予算には一銭も計上されておらない、これはどういう事情であるか、現にあるものに対して予算を計上されていないという点については、明らかにに法律違反であると私は考えるわけです。それをまた農林省は黙つて受けられたのかどうか、これは重大な問題だと思う。たくさんの小災、害が、査定しきれないから府県にまかせたという事情になつているほどにたくさんの災害があるにかかわらず、一銭も計上されておりません。これは、どういう事情であるか、あるものを大蔵省は計上しなかつたからやむを得ないということでは、おそらくあるまいと思うのであります。少し言葉が過ぎるかと思うのでありますが、私は非常にこの農地災害復旧については重要に考えておりますので、どうか明確な御答弁を、局長からでもけつこうでありますから承つておきたいと思います。
  95. 平川守

    ○平川政府委員 小災害につきましては、一般以上に査定が困難なわけでありまして、一応われわれのところでは荒つぽく数字を出しまして、大蔵省の方に総額で要求いたしておるわけであります。ただ小災害というのをしわけしておりませんので、全体の災害復旧費の中からその小災害に当るものについて同様の助成をするということで交渉をいたしておるのであります。まだその総額について大蔵省の方と話合いがつきませんために具体化いたしておりませんが、われわれの方といたしましては、現在の災害費の中から四億円程度をその小災害に充てたいということを考えておるのであります。
  96. 井手以誠

    井手委員 考えておるという御答弁ではございますが、農林省から地方庁に発した通知なりあるいは情報によりますと、ほとんど見込みがないということのように承つておるのであります。もうすでに小災害については、予算編成当時に幾ら見込んでおるということはわかつておらなければならぬはずだと思う。ところが国会に出された資料によりますと、ゼロになつておる。そういうことはあり得ないと思う。この点は私ははつきりした御答弁がほしい。いつの場合でも農林省では五%に当るということを言われておるのであれば、その金額をどうしても出さなければならぬはずである。ところが地方庁からの情報によりますと、小災害については計上されていない。これはどのくらい計上されておるか、この点については農地局長と大蔵省の主計官から承りたいと思います。
  97. 平川守

    ○平川政府委員 予算編成の当時におきまして、この種の小災害の査定が的確にできませんために、一応形式上ゼロになつておりますが、ただいま大蔵省の方と折衝いたしまして、全体の災害費の中から四億円程度をこちらの方に充てるようにしてもらいたいということを交渉いたしておるわけであります。地方庁の方におきましても、いろいろ強く要望がございます。目下そのことで大蔵省と話をしておるから、遠からず決定をして通知をするということで、地方庁の方には了解を求めておるわけであります。
  98. 柏木雄介

    ○柏木説明員 小災害につきましては、予算編成当時農林省の方の御査定も済んでおりませんので、五%、一割という数字を聞いたことがございますが、そういう数字ではなくて、査定に基く数字が全然ございませんために、一応その他の十万円を越える数字につきまして査定をいたしました。ただその後農林省の方のいろいろの御調査の結果、小災害の数字もだんだん判明いたしまして、二十九年度の予算の範囲におきまして、ただいまのところ大体四億円程度のものを出すように目下話を進めておるところであります。
  99. 井手以誠

    井手委員 総わくがきまつておりますので、金額についてそう詳しく追究しようと思いませんが、四億円という数字は少な過ぎる。今まで農林当局がしばしば申された五%とか一割とかいう数字から少しかけ離れておると思う。この点については十分今後の折衝においてお考えいただきたいと思います。  続いてお尋ねいたします。地すべり等の防止について、二十九年度は特別措置法を適用されていないと聞いておりますが、その点についてはどうなつておりますか。
  100. 平川守

    ○平川政府委員 これにつきましては、二十八年度と同様三千万円ほど計上されております。
  101. 井手以誠

    井手委員 補助率はどうなつておりますか。
  102. 平川守

    ○平川政府委員 それは昨年の災害に対しましては九割であります。
  103. 井手以誠

    井手委員 二十九年度もあの特別措置法によつて九割補助でございますか。
  104. 平川守

    ○平川政府委員 その通りであります。
  105. 井手以誠

    井手委員 間違いありませんね。
  106. 平川守

    ○平川政府委員 その通りであります。
  107. 井手以誠

    井手委員 いろいろお伺いしたいこともありますが、時間の関係もありますから、この程度でとどめておきたいと思います。要は災害復旧が、のど元を過ぎれば、もうあらしのあとのようなかつこうで忘れがちな傾向になつておる。しかも最近予算の濫用であるとか、水増しだとかいうことを言つて、声を大きくして予算圧縮の材料にする。また査定官は、金額を減らすことを仕事のように考えておる。先般ある県に行つた建設省の査定官は、あまり査定が少いために本省に帰つてしかられて、また調査に行つたということでありますが、こういうことは私どもの常識では考え得られないことであつて、このような現在の事態は遺憾に存じております。農林大臣はよく災害については御承知でありますので、今後ひとつ法律の趣旨にのつとつて、早期に復旧ができるようにやつてもらいたい。緊縮予算で予算を計上されないというならば、その通りやはり出してもらいたい。二割なら二割ことさらに片一方の復旧費を減らして、復旧率を高めようというようなことはやめていただきたい。緊縮予算だから二割しかできない、一割しかできないということは承知できないが、そういうような裸の姿で国民に示してもらいたいと思う。百姓は水増しをしてうそを言つておるから、三度も四度も査定をやるのだといつてどんどん圧縮することが災害復旧の道かのような印象を与えておることは、遺憾に存じます。農林省は、今後災害復旧について最善の努力をされますように切にお願いを申し上げると同時に、大蔵省においても、主計局の立場はありましようけれども、予算額というものと査定は別に考えてもらいたい。予算のことについては、意見の根本的な違いはあつても、国家全般とにらみ合せなければならぬことはわかつております。しかし査定については、法規に従つて正しくやつてもらいたいことを特に希望いたしまして、災害復旧についての質問を終りたいと存じます。
  108. 井出一太郎

    ○井出委員長 暫時休憩いたします。     午後二時二十八分休憩      ————◇—————     午後三時四十八分開議
  109. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  理事会の申合せに基いて昨四月二十七日本委員会に付託になりました足鹿覺君外十二名提出農民組合法案及び本日付託になりました小枝一雄君外十六名提出農業委員会法の一部を改正する法律案並びに金子與重郎君外十六名提出農業協同組合法の一部を改正する法律案を逐次議題といたし審査を進めます。  まず農民組合法案の趣旨について提出者の説明を求めます。足鹿覺君。
  110. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま上程せられました農民組合法案の提案の理由を御説明いたします。  日本農村の民主化なくしてとうてい日本の民主化はあり得ないのでありますが、周知のごとく日本の農業はきわめて零細な経営によつてささえられ、個々の経済力もきわめて弱く、従つて民主化の基礎的条件としての生活の確保と人格の独立を確保するためには、まず農民自己を組織化することが絶対に必要であります。  社会的にも経済的にも、農民と同様弱い立場の労働者は、資本の不当な圧迫を排して、自己の基本的人権を確立するための、自己組織化に関しては労働組合法等によつて保護されていますが、農民に対してもその団体行動の自由、団体交渉権等の確立を内容とする農民組合法の即時制定こそは、単に農民自体の利益からのみでなく、社会全般の健全な民主的発展のために絶対な要請であります。われわれはこの要請にこたえるべく、この法案提出した次第であります。  次に本法案の内容の概略を御説明いたします。まず第一にこの法律において農民組合とは、みずから農業を営む農民が主体となつて自主的に生活条件並びに農業経営の維持改善その他農民の経済的、社会的地位の向上をはかるための一致共同の運動を確保するため、健全にして民主的な農民組織の設立を育成し、農民の団体権の擁護、及び団体交渉権の保護助長をはからんとするのであります。  次に、農民組合がその設立の目的にかなう一致共同の運動を遂行するための団体行動は法的に保証されることとし、農民組合の代表者又は農民組合の委任を受けたものの交渉を本法に定められた団体交渉義務者はこれを拒否することはできないものとするとともに、地主または雇い主は農民が農民組合を結成しようとしたこと、もしくは農民組合の正当な行為をしたことのゆえをもつて小作条件、もしくは労働条件について不利益な取扱いをし、小作契約を解除しまたは農業労働に従事する者を解雇しもしくは不利益を与えてはならないこととしたのであります。  第三に、農民組合法による農民組合の組織形態は、全国的単一組織または連合組織その他いずれの組織形態によるも当該設立農民組合の自由な選択によるものとし、また農民組合として設立されたものの取扱いは行政庁に証拠を提出して、規定に適合することを立証しその証明を受けなければ、この法律の保護を受けられないこととしたのであります。  第四に、この法律に農民という規定に該当する者は、人種、宗教、性別等にかかわらず、すべて農民組合に加入することができることを原則とし、農民組合の役員は、組合員たる農民でなければならないが、農民以外の者でも総会において承認されたものは役員総数の四分の一以内を限度としてこれを認めることとしたのであります。以上この法案提出の理由並びに内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに可決されることをお願いする次第であります。     —————————————
  111. 井出一太郎

    ○井出委員長 次に農業協同組合法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。金子與重郎君。
  112. 金子與重郎

    金子委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  農業協同組合法が制定されましてから今日まで五年有余を経過いたしましたが、この間、農業協同組合は、諸種の悪条件と闘いながら、農業生産力の増進と農民の経済的社会的地位の向上をはかり、あわせて国民経済の発展に寄与するために努力して参つたのであります。  しかしながら、はげしい経済的社会的変動とその間に処する主体的条件の不十分のために経営不振の状態に陥つた組合も少くなく、そのままに放置しがたい事態に遭遇いたしましたものにつきましては、適宜農業協同組合法の一部改正、農林漁業組合再建整備法、農林漁業組合連合会整備促進法の制定等を行いまして、組合発展のための監督、援助等を行うことができる措置を講じてきたのであります。それにもかかわらず、組合の組織、事業及び経営の現況を見まするとき、なお整備強化を必要とする部面は少くありませんので、特に、組合の指導体制を確立いたしますとともに、現行の組合制度に若干の修正を加え、今後国民経済の推移に即応して組合の一層の発展をはかる必要があると考えるのであります。これが、この法律案提出いたします理由でありますが、以下その主要な内容につきまして、その概略を御説明申し上げます。  第一は、組合の総合指導組織の確立であります。今回新たに、組合の総合指導組織として、農業協同組合中央会を全国及び都道府県の区域に設置することにいたしました。現在、組合の指導組織といたしましては、全国及び都道府県の区域に指導農業協同組合連合会等がありまして、主として会員たる組合のために指導教育事業を行つているのでありますが、その法制上の性格、組織、事業及び財務の状況からみまして、指導機関として十分なものでなく、このため、農業協同組合系統組織の全国的な組織活動に必要な統一性と機動性を確保し、十分に組合事業の振興と経営の刷新及び安定をはかり得るような指導教育を行うことが困難な状況にあるのであります。  このような指導機関の弱点を克服し、会員たる組合のみならず広く全組合に対する指導教育を全国的規模において、統一的かつ効果的に行い、もつて組合の健全な発達をはかるため、農業協同組合中央会を設置いたすことにした次第であります。  都道府県中央会につきましては、会員の加入脱退を自由といたしましたが、統一ある全国的組織を確立するため、全国中央会につきましては、都道府県中央会及びその正会員たる農業協同組合及び連合会は、これに当然に加入させますとともに、全国中央会は、都道府県中央会に対して指導連絡を行い、またそのために必要がある場合には、必要な指示等をすることができることといたしまして、その全国的統一活動を可能ならしめているのであります。しかして、政府は、このような中央会の活動をより活発かつ効果的にするため、全国中央会及び都道府県中央会の事業に要する経費の一部を、毎年度予算の範囲内において補助することができることといたしたのであります。  なお、中央会の設置に関連いたしまして、指導農業協同組合連合会の処置についてでありますが、現にあるものの存続は当分の間これを認めることといたしましたが、今後におきましては、中央会設置の目的にかんがみまして、中央会の事業と同種の事業を行おうとする農業協同組合連合会につきましては、これを認めないことができることといたしたのであります。  第二は組合に関する規定を整備したことであります。その一は新たに農業協同組合及び農民の組織する団体が農業協同組合に加入することができることとし、農村の実情に即応して農民及び組合の発展をはかろうといたしたのであります。その二は組合の事業に関してでありますが、信用事業を行う組合につきましては、新たに定期積金の受入れをも行うことができることとするほか、一部特定の利用者につきましては、員外利用の制限を適用しないこととして、農村の実情に即応するとともに、組合の事業分量の拡大をはかろうといたしたのであります。このほか、共済事業を行う組合につきましては、その事業の性質からその連合会におきましては他の事業をあわせ行うことができないこととするとともに、その事業が健全に行われることを期するため、所定の手続を経て、行政庁の承認を受けなければならないことといたしたのであります。その三は組合の管理に関してでありますが、そのおもなものは、役員の責任の明確化であります。従来役員の責任に関する規定が不明確でありましたので、役員の組合に対する忠実義務を明文化し、かつ、組合に対する任務を怠つた場合における組合及び第三者に対する連帯損害賠償責任に関する規定を設け、その責任の所在を明瞭にしたのであります。また、役員を選出する場合には、新たに選任によることかできることといたしたのであります。  以上の事項のほか、組合の運営等に関する諸規定のうち必要なものについて部分的修正を加え、その合理化と簡略化をはかつた次第であります。  第三は行政庁の監督権を強化したことであります。行政庁の監督権は、本来でき得る限り小範囲にとどめることが望ましいのでありますが、組合の実状は、いたずらに形式的な自主性のみを尊重することを許さないものがありますので、必要な監督規定を整備強化いたしまして、組合の健全化に資しようとしたのであります。その一は、組合の設立及び事業の適正をはかり、組合員の利益を保護するため、その設立、解散等の場合における行政庁の認可に関する規定を整備いたしたのであります。その二は、組合が法令等に違反した場合において、行政庁が必要な措置をとるべき旨の命令をしたにもかかわらず、これに従わなかつたときは、行政庁はその組合の業務の停止または役員の改選を命じ、共済事業を行う組合については、事業の承認を取消すことができることといたしますとともに、組合が事業外事業を行つたとき等の特定の場合には、行政庁がその解散を命ずることができることといたしたのであります。  以上がこの法律案の主要な内容でありまして、すべて組合の現状から真にやむを得ないものでありますので、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御協賛あらんことを切に希望する次第であります。  なお終りにおわびしなければならないことでありますが、取急いで提案いたしました関係もあつて、ただいま配付いたしましたガリ刷りの法律案の中に若干正誤を要する箇所がまだ残つておると思いますので、その点何とぞ御了承を得たいと存ずる次第であります。     —————————————
  113. 井出一太郎

    ○井出委員長 次に農業委員会法の一部を改正する法律案の趣旨について説明を求めます。小枝一雄君。
  114. 小枝一雄

    ○小枝委員 ただいま議題に供せられました小枝一雄外十六名提出にかかる農業委員会法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  農業委員会法が制定せられましてから満三年、市町村農業委員会及び都道府県農業委員会が発足しましてから二年有半になりますが、この間農業委員会は、農地調整、自作農の創設維持、農業総合計画の樹立推進等、農民の代表機関としてその使命の完遂に努めて参つたのであります。この間の経験にかんがみ、さらにその後の情勢の推移に即応してその使命を達成いたしますためには、その事務の完遂に最も適した構成をとることが肝要であると考えられるのであります。このような意味におきまして、都道府県農業委員会を法人としての都道府県農業会議とし、これによつてただちに農業、農民の代表機関として自主的にも活動し得ることを期待しまた農業及び農民のための全国的組織を結成し得る道を開くとともに、末端の農業委員会構成等につきましても所要の改正を加えるべく、本法律案を提案した次第であります。以下本法律案の主要内容について概略御説明申し上げます。  第一は市町村農業委員会についての改正であります。改正の第一点は、選挙による委員の定数につき、現行の十五人を十人から十五人までの間で市町村条例で定めることといたしますと同時に、選挙方法を簡素化したことであります。第二点は、選任による委員を必置の委員といたしまして、農業協同組合もしくは農業共済組合の推薦した理事または市町村議会の推薦した学識経験者を五人を限り、市町村長が委員として選任しなければならないことといたしたのであります。また委員任期を現行の二年から三年に改めることといたしたのであります。  第二は都道府県農業会議についての規定の追加であります。現在都道府県にはその付属機関として都道府県農業委員会が置かれていますが、農業及び農民の一般的利益の代表機能を果すには行政機関とは別個の人格を持たせる必要がありますので、これにかわり、法人たる都道府県農業会議を設立することにいたしたのであります。都道府県農業会議は、郡市単位の代表者会議において農業委員会委員及び農業協同組合の理事のうちから互選された者、農業協同組合中央会、農業共済組合連合会及び農業協同組合連合会その他農業団体の代表者並びに学識経験者等をもつて構成するものとし、その業務は、従来都道府県農業委員会が所掌していた事務のほか、農業及び農民に関し、意見を公表し、行政庁に建議し、その諮問に答申すること、及び農業及び農民に関する啓蒙、宣伝、調査研究を行うこと等であります。国が毎年度予算の範囲内において都道府県農業会議に要する一定の経費を負担ないし補助することといたし、なお法人税、所得税、事業税等各種の税の免除を考え、その健全な発展、公正な活動を期待しておる次第であります。  第三は全国農業会議所に関する規定の追加であります。  全国農業会議所は、都道府県農業会議、全国農業協同組合中央会、全国農業協同組合連合会その他農業の改良発達をはかることを目的とする法人、学識経験者等をもつて構成される社団法人でありまして、農業及び農民に関し、意見を公表し、行政庁に建議し、その諮問に答申し、また啓蒙、宣伝及び調査研究並びにこれらの業務についての都道府県農業会議の指導連絡を行うことを主たる目的としているのであります。  全国農業会議所は、設立、解散、加入、脱退の自由な法人でありまして、全国を通じて一個とし、これに対しましては免税措置のほかに、国庫補助をなし得ることといたしまして、全農業、全農民の一般的利益の代表団体たるにふさわしい公正にして活発な運営を期待しておる次第であります。  以上が本法律案の概略でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同を得られますよう切望する次第であります。  なお取急ぎまして提案したために、ただいま御配付いたしましたガリ刷りの法案中に二、三の正誤をする箇所がありますので、御了承を得ておきたいと存じます。
  115. 井出一太郎

    ○井出委員長 引続きこれより本日付託になりました内閣提出農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。本案の趣旨について政府の説明を求めます。平野農林政務次官
  116. 平野三郎

    平野政府委員 ただいま議題となりました農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  農林水産業の基本的施設である農地、農業用施設、林業用施設及び漁港施設の災害について、本法は個々の災害復旧事業を行う者に対して国が直接に補助することといたしておるのであります。しかしながら、年々累増する災害の事業費、件数等からいたしまして、そのすべてに対し国が直接補助金を交付して、末端の事務に至るまで直接の責任を負うことは事実上不可能であり、現に補助指令は国が行つているにかかわらず、その支払いは都道府県に委任するという複雑な制度をとつておるのでありまして、この権限の不明確な制度が不正、不当事項発生の一大原因ともなつているのであります。よつてこの際制度を改め、事の大小に応じて国と地方とに権限を分配し、大規模のものは直接国が全責任をもつて復旧に当り、小規模のものは都道府県が責任を持ち、国はこれに対する補助と監督に当ることといたしたいと考え、本改正案を提出した次第であります。  以上提案の理由を御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切にお願いする次第であります。     —————————————
  117. 井出一太郎

    ○井出委員長 なおこの際農業災害補賞制度に関し、昨日本委員会より政府申入れを行いました件に関し、平野農林政務次官から政府を代表しての所見の開陳がございます。平野農林政務次官
  118. 平野三郎

    平野政府委員 農業災害補償制度につきましては、本委員会におかせられましては小委員会をおつくりになりまして、長期にわたりましてきわめて御熱心な御審議をわずらわしましたことは、まことに感謝にたえないところでございます。足鹿委員長初め小委員各位の御努力に対しましては、深甚なる敬意と謝意を表する次第でございます。昨日その結果につきまして、ただいま委員長から御報告のありましたような申入れをいただいたわけでございまするが、その御申入れによりますれば、政府農林省に農業災害補償制度審議会(仮称)を設置し、早急に関係法令の整備をはかるべく、最善の方途を講ずるものとするとございまするので、この御趣旨を体しまして、政府といたしましては、この点に関しましてすみやかに善処いたしたいと存ずる次第でございます。
  119. 井出一太郎

    ○井出委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時十四分散会