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1954-04-27 第19回国会 衆議院 農林委員会 第36号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十九年四月二十七日(火曜日) 午前十一時三十九分
開議
出席委員
委員長
井出一太郎
君
理事
小枝
一雄君
理事
佐藤洋之助
君
理事
綱島
正興君
理事
福田
喜東
君
理事
金子與重郎
君
理事
芳賀
貢君
理事
川俣 清音君
足立
篤郎君 遠藤
三郎
君
佐藤善一郎
君
寺島隆太郎
君 松岡 俊三君 松山 義雄君
足鹿
覺君 井谷 正吉君
井手
以誠君
中澤
茂一君 安藤 覺君
出席政府委員
農林政務次官
平野
三郎
君
農林事務官
(
農林経済局
長)
小倉
武一君
農林事務官
(
畜産局長
) 大坪 藤市君
委員外
の
出席者
農林事務官
(
農林経済局肥
料課長
)
林田悠紀夫君
農林事務官
(
農業保険課
長) 久宗 高君
農林事務官
(
畜産局畜政課
長) 鵜川 益男君
農林事務官
(
畜産局経済課
長)
昌谷
孝君 農 林 技 官 (
畜産局有畜営
農課長
)
山本兵三郎
君
通商産業事務官
(
軽工業局化学
肥料部長
)
柿手
操六君 専 門 員 難波 理平君 専 門 員 岩隈 博君 専 門 員 藤井 信君
—————————————
四月二十七日
委員井手以誠君辞任
につき、その補欠として齋
木重一
君が議長の指名で
委員
に選任された。
—————————————
四月二十七日
農民組合法案
(
足鹿覺
君外九名
提出
、
衆法
第二 五号) の
審査
を本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した事件
酪農振興法案
(
内閣提出
第一五四号)
臨時硫安需給安定法案
(
内閣提出
、第十六回国
会閣法第
一六七号)
自給肥料増産特別措置法案
(
杉山元治郎
君外十
二名提出
、
衆法
第二三号)
商品取引所法
の一部を
改正
する
法律案
に関して、
通商産業委員会
に対し
意見
の申入れに関する件
農業災害補償制度改正
問題に関する件
—————————————
井出一太郎
1
○
井出委員長
これより
会議
を開きます。 去る四月二十三
日本委員会
に付託になりました
杉山元治郎
君外十
二名提出
、
自給肥料増産特別措置法案
を
議題
といたし
審査
に入ります。 まず
本案
の
趣旨
について
提出者
の
説明
を求めます。
杉山元治郎
君。
—————————————
杉山元治郎
2
○
杉山元治郎
君 ただいま
議題
となりました
自給肥料増産特別措置法案
につきまして、
提案
の
理由
を御
説明
申し上げます。 御
説明
申し上げます前に一言つけ加えておきたい点は、各党派の御
賛成
を得て
提出
することにな
つて
おりましたが、
自由党
の
綱島
さんあるいは
佐藤
さんあたりの御
了解
も得ておりましたが、
自由党
の方では、
提案
の場合は党三役の捺印がなければならない、こういうことに相な
つて
おりましたので、
提出
をお願いいたしておきましたが、いろいろ党の
事情
がございまして時間がた
つて
おりますので、遷延しては相ならないというので、残念ながら
提案者
の中からはぶいてありますが、しかし大体の御
了解
を得ておつたということを申し沿えておきたいと思うのであります。これから御
説明
を申し上げます。
主要食糧等農産物
の
増産
をはかるには、
自給肥料
を基幹とした
化学肥料
の
合理的施用
がきわめて重要であることは言うまでもありません。しかるに最近
自給肥料
の
増産
は頭打ちとなり、
地方
の減退は憂慮されているのであります。
自給肥料
の中
堆肥
及び
肥飼料作物
の
増産
は、
肥料費
及び
飼料費
を節約し、
農家経済
に好影響を及ぼすばかりでなく、
地方
の
維持増進上
きわめて重要なことであります。又
人糞尿
ことに
都市
の
人糞尿
を
農地
に還元して合理的に
利用
することは、貴重な
肥料資源
の活用となり、これまた
農家経済
に及ぼすところ少くないのであります。これら
自給肥料
の
増産
と高度の
利用
によ
つて
、
農地
の
生産力
を維持しさらにこれを増強することができ、同時に
農家経済
の安定が期せられるものであると考えられるのであります。
従つて
、
食糧農産物
の
増産
が
急務
であるとき、また
農村
の窮乏がようやく顕著ならんとするとき、これら
自給肥料
の
増産利用
は刻下の
急務
となるのでありまして、ここに一貫した
計画
のもとに、
自給肥料改良増産
の諸
施策
を強力に推進しようとするのが、本
法案
を
提出
するに至りました
理由
であります。以下この
法律案
の内容について御
説明
申上げます。 第一は、この
法律案
で
自給肥料
とは、
堆肥
、(厩肥を含む)と
肥飼料作物
)
緑肥作物
及び
人糞尿
を指すのでありますが、
人糞尿
については、特に
都市
より排泄される
屎尿
であ
つて
非衛生的に処理されているものを指すのであります。 第二に、
堆肥
の
増産利用
については
諸種
の
対策
が必要でありますが、とりあえずそのうち最も重要である
堆肥舎
の
計画的設置
を推進せんとするものであります。 第三に、
肥飼料作物
の
増産利用
については、これまた
諸種
の
施策
が必要でありますが、わが国の
肥飼料作物
中最も重要であると考えられる紫雲英、
青刈大豆
、
青刈そら豆
について、原々
種圃
、
原種圃並びに採種圃
を
設置
し、
優良品種
及び
優良種子
の確保に努めんとするのであります。 第四に、
人糞尿
につきましては、
都市等
の集密な
地域
の排泄される
屎尿
を対象とするものでありまして、現在各
都市
の
人口増加
は著しいのでありますが、一方
屎尿
の
処理施設
が不完全なため、ややともすると非
衛生的処理
が行われがちであるのでありまして、これらの
尿屎
を
近郊農村
に合理的に
利用
するため、
計画
的に
共同利用貯溜槽
の
設置
を推進せんとするものであります。 第五に、これらの
自給肥料
についてはなお幾多の
調査
並びに
試験研究
を必要とする部面がありまして、これらについては今後国及び
都道府県等
の
試験研究機関
において
調査試験研究
を重点的に推進せしめんとするものであります。 第六は、これら
自給肥料
の
増産利用
の諸
対策
に対して資金の融通のあつせん及び
補助金
の交付についてでありまして、
堆肥舎
の
設置
並びに
屎尿貯溜槽
の
設置
については大いに融資のあつせんを、また
肥飼料作物
の原
採種圃設置
については
補助金
を交附する等諸般の
助成措置
を講ぜんとするものであります。 以上が本
法律案
の大要であります。何とぞ慎重御
審議
の上すみやかに御
賛成
を得られます様切望する次第であります。
井出一太郎
3
○
井出委員長
本案
に対する質疑は次の機会に譲ることにいたします。
—————————————
井出一太郎
4
○
井出委員長
続いて去る四月二十一日、
農業災害補償制度
に関する
小委員会
より、
現行農業災害補償制度
の
改正方針
に関して
小委員会
における
調査
の結果をとりまとめた
報告書
が
提出
されております。この際本件に関して小
委員長
より発言を求められておりますのでこれを許します。
足鹿小委員長
。
—————————————
足鹿覺
5
○
足鹿
委員
私は
昭和
二十八年十二月八日、
農業災害補償制度
に関する小
委員長
として、本
委員会
に対しまして、小
委員会設置
前後より当日までの本
制度改正
に関する
審議
の
経過
並びに各
委員
の要請によりとりまとめました
改正試案
について、その
検討
の結果を中間的に御
報告
申し上げておいたのであります。右の
改正試案
につきましては、二、三の点に関しまして
委員各位
の御
意見
が完全に一致を見るまでに至らなかつた
事情
もありましたので、爾来今日まで各
委員
のさらに一段の御
研究
を煩わして参つたのであります。その後
農林省
におきましても、この
改正試案
を中心に種々御
検討
の結果、二月二十五日、
衆議院農林委員会共済小委員会中間報告
にかかわる、
農業災害補償制度改正
に関する件の
問題点
としてとりまとめられ、
小倉農林経済局長
より、
小委員会
に対しまして
意見
の開陳があつたわけであります。この
問題点
は
改正試案
に対する賛否の
意見
の
報告
ということではなく、
試案
において不明確な点あるいは
審議
に特に触れることを避けた点、あるいは
試案
を
法案
化して参る際に著しく困難を感ずる
点等
について、率直な見解を正式に表明されたものであります。この際そのおもなる
部分
を御
報告
いたしますと、 まず第一に
保険
と
補償
とを分離する点でありますが、
国家補償
の
根拠
をいかに理論づけるかということを特に問題としておるのであります。その際国の
補償
と
団体
の
保険
とを
損害
の
程度
できるか、原因によ
つて
きめるかという問題も提起されております。さらに
団体
の営む
保険
の
掛金
について、
国庫
の
負担
があるのかどうかという点が不明確であると指摘しております。 第二点は、
補償
と
保険
を通じて実
損額
の七割までを補填する
方式
をとる場合、
引受け
が一筆
単位
であるとすると、
国家財政
に
相当
の
負担
を与えるであろうということであります。 第二点は、
蚕繭共済
を
桑葉共済
に引直して行く点につきましては、売
桑農家
に対する
救済措置
、あるいは
養蚕技術
の発達に
伴つて違蚕
が減少しておる事実との関連において
検討
するというのであります。 第四、
団体
の
保険収支
の
短期的均衡
をはかるという点につきまして、この
短期
という言葉の概念は何を
意味
するかという点、特に
安全割増
による
農家負担
の
増加
との
関係
において、疑問があるというのであります。 第五、
菜種
、
大豆等
の
任意共済
についての再
保険措置
は、これを取入れるとうい
方向
で資料を収集し
研究
を進めるということ、また
家畜保険
については、
試案
で考えております点以外に
長期共済
あるいは中
家畜
の
集団引受け
を進んで
検討
するということであります。 第六、
中央
に再
保険団体
を
設置
する件については、その
設置
の意義が明らかでないということであります。 第七、
事業
と
指導監督
との
関係
を厳正、明確化ならしめる点については、分離の仕方について
監督
だけを分離することも考えられるということ。 第八は、
建物共済
の農協一元化問題に関しましては、
風水害共済
をとり上げた場合の
財政措置
その他に関連して
慎重検討
を要するということ。 第九は、
組合
の
事業
に対する種々の
改善事項
でありますが、まず当然加入の建前を継続するとしても、もつとこれを緩和する
方法
はないかどうかということ。 次に一筆
単位
の
引受け
を続けるという点については、現に実験中の
農家単位引受け
との
比較検討
をもつと行いたいということ。 次に、
現行
の三割以下の
損害
を切りすてている点について今後どうするかということ。 以上の諸点をどう考えたらよいかということについて
技術
的にもはなはだ困難な問題を含んでおるということであります。 第十、
料率
上の
調整措置
に関しましては、
料率
の
個別化
をどの
程度
行い得るかという問題に関連して、無事もどし、あるいは
備荒貯蓄制度
の
可能性
を考究する必要があるということ。 第十一、
損害評価
について、
統計調査機構
をもつと高度に取入れるという点については、
作物統計
と
共済側
の
評価機構
の双方について一層整備を要すること。 第十二、
防災事業
の一元化問題については、防除の
計画
と実施の
責任
の所在をどこに置くかを慎重に
検討
して決定しなければならないということ。 次に
債権債務
の相殺の禁止については、
共済金
が確実に
農家
に渡るという
趣旨
で、公正な手段を考究してみたいということ。 以上、
小倉農林経済局長
の
説明
の要旨をごく大ざつぱにお伝え申し上げたのでありますが、お聞き及びの
通り
、小
委員長
の
改正試案
に対しましては、もろもろの
要素
を考慮に入れながら慎重に
検討
を続けたいという
趣旨
であります。われわれの
意見
もこの
改正試案
は
財政
上の
問題等
ともからみ、実際に
法案
を立案するにあた
つて
は、その
基本的方向
を大綱的にさし示す
意味
のものでありまして、
技術
的に、あるいは計数的に個々の問題を処理するに際しての
細目的部分
については、ある
程度
弾力性あるものと考えておるのでありまするので、
農林省
より提示されたこの
問題点
は、今後十分考慮して参りたいと思うのであります。 なお
参議院
におきましては、衆議院同様、
農業災害補償制度改正小委員会
におきまして、本
制度
に関する
改正案
の
成案
に努力せられておりますることは、御
承知
のごとくでありますが、私は去る二月二十一日、
同小委員会
の
要求
により
試案
に関して詳細御
説明
いたし、また質問に応じてわれわれの
考え方
について答弁をいたしておいたのであります。
参議院
におきまするその後の
審議状況
を伺いまするに、小
委員
五名より
改正試案
が個別に提示され、ただいまそれらの各案について逐条的な
検討
を行い、
意見
の
調整
を行いつつある
段階
であるとのことであります。 以上申し述べました
経過
をたどり、わが
小委員会
としましては、
慎重審議
、
調査
に当
つて
参りましたが、いよいよ会期も切迫して参りましたので、この際
小委員会
としての結論を得たいと存じ、去る四月二十一日
小委員会
を開き、本議案についてお諮り申し上げましたるところ、改進
党吉川委員
、
社会党芳賀委員
、及び
社会党中澤委員
より、それぞれ小
委員長試案
について
賛成
する旨が述べられ、また
自由党小枝委員
よりは、第一項中の
国家補償
の限度に関する点、第三項第一号の
中央
再
保険団体
の
設置
に関する点、並びに第五項の
建物等任意共済一元化
に関する点について、同
党足立委員
より
反対意見
の申出がある旨を小
委員長
の
報告
中において明らかにすべきことを
条件
として、爾余の七
項目
とともに
賛成
する旨を述べられたのであります。 かくして
試案
は小
委員各位
の満場一致の御賛同を得ることができましたので、ここにこれをわが
小委員会
の
成案
として、本
委員会
に対して御
報告
をいたすこととした次第であります。 右の
小委員会
案はお手元に配付いたさせましたので、ごらんを願いたいのでありますが、以下、
本案
に関しまして、若干の註釈を加えつつ
説明
申し上げておくことといたします。
農業災害補償制度改正
に関する件 まず前書といたしまして、
農業災害補償制度
に関しては、おおむね次の
基本的構想
のもとに
改正
を
検討
するものとするとうた
つて
おります。 私どもは以下の諸
項目
が、おおむね
改正原案
の土台となることを期し、かような表現をいたしておるのであります。 次に第一項は、
農作物
、
桑葉
の
災害
について、
保険
により対処する面と、
補償
により対処する面とを、
保険数理的設計
のもとに次のごとく分離するものとする。 (一)
団体
はおおむね
通常
の
被害
に
相当
する
部分
を
保険
する。 (二)
通常
の
被害
を越える
災害
については、
国庫
の
負担
において、
政府
の
基金特別会計
から
団体
を通じ、
農作物
の
減収
による実
損額
の七割まで填補することを目途として
補償
する。 前二号間の限界については、近年における
災害
の
多発的傾向
、
不足額累増等
の
事情
と関連し、
団体
の
保険収支
が
短期
的にも
均衡
を維持し得る
合理的線
を新たに計測して決定するものとし、かつ両者を通ずる
災害補償制度
全体の
規模
については、少くも現在の
財政支出額
を下まわらないということを
条件
としてこれを画定するということであります。 この点につきましては本
委員会
におきましてはしばしば
議論
の行われたところであり、また
参議院
の
委員会
におきましても、かような主張のあつたことを聞いておるのであります。また
公聴会等
におきまして、学者の方々の
意見
が発表されたのでありまして、
国家補償
の面と、
保険
の面とを明瞭に区分したらどうかというのであります。また
保険
的なものは全廃して、むしろ
国家
の
補償
一本で行くべしというような極論もございました。しかしわれわれとしましては
保険
でやる
部分
と
補償
でやる
部分
とを一応分離すれば、合理的な線が打出せるし、また、
農家
の要望にも沿えるのではないかという
考え方
に基きまして、この
条項
を起したのであります。 しかし、ここで最も問題となりましたのは、「
農作物
の
減収
による実
損額
の七〇%までを
補償
する。」という点でありました。
農林省
に
要求
して、
計算
いたさせましたところ、次のような
数字
が呈示されておるのであります。すなわち
農家負担額
を不変とすれば、
国庫負担額
において、二十八年度
水稲共済掛金総額
五十八億円に対しまして、約二・八倍の二百三十一億円を要するというのであります。しかしこの
計算
には、なお若干の
問題点
があります。これらの
問題点
は、この
数字
をさらに
引上げ
る
要素
ともなりますし、また逆に引下げる
要素
もあり得るのであります。すなわち
引上げ
る
要素
は、
減収率
、
安全割増部分
にあるようであります。 引下げまする
要素
としては、
本案
の第六項の二号に関連して、
共済金額
の
農家選択制
をできるだけ、取入れますことによりまして、当然
国庫
の
負担額
は減少して参らざるを得ないのであります。 また現在は、三割以下の
損害
につきましては、これを補填しないこととな
つて
おりますが、この
計算
におきましては、さ少の
損害
の発生に対しても、補填することを前提としております。今日これを三割としておりますことについては、大した
理論的根拠
もないように思われますが、そのまま三割の線を維持するか、二割にするか、一割に引下げるか等につきましては、
本案
中に明記することを避けておるのであります。従いまして、この問題は、よほど計数的な
検討
を経なければ、容易に明らかにすることは困難であると思いますが、
農業共済制度
の抜本的な
強化拡充案
といたしましては、この
程度
の
財政的要求
はむしろ当然ではないかと考える次第であります。 また
本案
によりますれば、おおむね
通常
の
被害
に
相当
する
部分
と、それ以上の
被害
の
部分
とを截然分離いたしまして、前者は
団体
の
保険
する
領域
とし、後者は国の
補償
する
領域
とすることといたしおりますが、
国庫
の
掛金
の
負担関係
より見ました場合、
団体
の行う
保険事業
に対しましても、国は
掛金
を分担するかどうかという問題が出て参ると思いますが、この点に関しましては、
農家
の
掛金負担額
を現状よりも
増加
せしめないという
趣旨
よりいたしまして、われわれは、おおむね現在
程度
の国の
負担
はあるべきものと解しておるのであります。 なお
蚕繭共済
についてでありますが、われわれは、
技術
の進歩ととともに次第に蚕の
病害等
も減少して参
つて
いる
状態等
を考慮しまして、むしろこれを索莫の
共済
に切りかえて行く方がよいのではないかと思いまして、さような
趣旨
で表現しておるのであります。 最後にこの
条項
での最大の
問題点
と申しますか、重要な点は、現在では国が
超過
再
保険
をし、
損害
の実情に応じまして、国は
県ごと
の
超過損害額
に対し
財政支出
をすることにな
つて
おりますが、
保険
と
補償
とに分離して参つた場合に国の予算上の
制約等
によりまして、国の
補償義務
の履行にゆるみが出て来るのではなかろうかという
危惧
のあることであります。従いまして、かような
危惧
を解消し得る
立法
上の慎重な
研究
がもちろん必要であろうと思われます。 それと同時に、現在
通常
の
状態下
において国が
財政支出
しておる額は、
本案
による
改正
の結果、下まわるようになることは万あり得ないことでありますが、末尾において予防的にその旨をうた
つて
おるのであります。 二、
菜種
、
大豆等
の
農作物
に対する
任意共済
については再
保険措置
を考慮するとともに、
家畜
については、
畜産行政
との協調に遺憾なきを期したる上、おおむね従来の
方式
を踏襲するものとする。
菜種
、その他
特殊農作物
に対しましては、若干の
地域
で
都道府県連合会
限りの
任意共済
を行
つて
いることは、御
承知
の
通り
でありますが、
九州等
の
菜種共済
が、過般の
風水害
により非常な痛手をこうむりましたことも、
各位
の
御存じ
のごとくであります。この
損害
に対しまして、
災害立法
により
利子補給等
の
措置
を講じたのでありますが、法的には
制度
上の欠陥とな
つて
おりまますことは明白であります。
立法技術
上
相当
の困難のありますことは想像できますが、特殊の
地域
におきまして
菜種
、
大豆
に限らず、
農作物
に対しまして、
任意共済
を行つた際には、再
保険
のできる
措置
を考慮することが必要ではないか、かように考えまして、その点を取上げておるわであります。
家畜共済
に関しましては、一応順調に推移しておるのでありますが、なお
獣医畜産行政
との間に若干の問題が残されているようでありますので、その点に関する注意を喚起いたすことにとどめまして、おおむね現
方式
を踏襲することにいたしたのであります。 三、
団体
の
事業機構等
の
改善
は左による。 (一)
中央
に全国を
区域
とする再
保険団体
を新設し、
共済基金
はこれに吸収する。 (二)
都道府県段階
以上における常勤の
理事者
は
原則
として
業務
に専従し得るよう
内部機構
を整備するとともに、各
級団体
の
役職員
の
身分
、
責任等
に
公的色彩
を強化する。 (三)
末端組合
の
事業区域
は、必ずしも
行政単位
にかかわらず、経費の節約、
事務能率
の向上及び
職員等
の
待遇改善
、
身分
、
安定等
を目的とし、経営安定の見地から定める。 第三項は、
団体
の
事業機構等
の
改善方法
を述べております。 このうちの第一号につきましては、
小委員会
で
議論
のわかれたところでありますが、その
趣旨
は、大体三つの
意味
を含んでおると思います。 その一は、現在
都道府県
の
共済連合会
は、国の再
保険特別会計
との間に個別に
超過
再
保険関係
を結んでおるのでありますが、冒頭において述べましたように、この再
保険特別会計
を
基金特別会計
に切りかえますと同時に、県と国とのかような再
保険関係
はこれを廃し、
中央
再
保険団体
を新たに
設置
して、
保険部分
につきましては、
団体内部
で解決をつけて参ろうというのであります。 その二は、
菜種
、
大豆等
の
農作物
の
任意保険
について再
保険事業
を営む任務を持つものであります。 その三は、
団体
の
事業機構
の
簡素化
と申しますか、すつきりした
団体機構
をつくり上げようとのねらいをも
つて
掲げておるのであります。 現在、
御存じ
のごとく、町村に
組合
あり、郡に支部あり、県に
連合会
、しかして
中央
には、法的には何ら
根拠
のない
全国共済協会
という
団体
があり、また
共済基金
があり、
農林省
に
特別会計
が設けられておるというありさまでありまして、
保険機構
はきわめて複雑な構成と相な
つて
おります。
共済協会
についても、
諸種
の問題が伏在するやに伺
つて
おるのでありますが、これを
法律
上の公共的な
団体
とし、あわせて
基金業務
をも行わしめまして、その職責、
活動分野
を明確にしたいという気持を持
つて
おるのであります。 しかし、
中央
町
保険団体
の
性格
、
構成等
につきましては、今後とも
十分検討
の余地を残しておるのであります。 二号の点は、
県段階
以上の
常勤理事者
は、
原則
として兼職を禁止し、また各
級役職員
に公務員に準ずる
性格
を付与しまして、公正にかつ
一意専心保険業務
に従事せしめたいという
意味
から掲げております。 第三号の
末端組合
の
事業区域
の点に関しましては、
組合
の
経営規模
のみならず、
地方公共団体
の
行政区域
が狭小に過ぎ、非
能率
であ
つて
、
規模拡大
の要のあることは、何人もこれを認める点であります。
共済組合
は
現行法
によれば、市町村の
区域
に設立されることとな
つて
おりする
関係
上、百
町歩余り
の耕地しかない村にも、また北海道のように数十町歩の
耕地面積
を持つ村にも一
組合
という不合理が生ずるのであります。
従つて弱小組合
においては
賦課金
が増嵩し、
農民負担
が過重となり、
事業
に対して反感を抱くという結果とな
つて
おりますことは、
公聴会等
においてしばしば指摘されておるのであります。最近における
町村合併促進
の動向ともあわせ考えまして、少くとも
行政単位
に拘泥することなく、
適正規模
を策定することによりまして
事務能率
は向上し
職員
もおのおの
専門的立場
に立
つて
指導
を行い得るようになる長所があろうかと考えます。そして
組合
の
適正規模
の上に、
職員
の
特遇改善
、
身分安定等
をはか
つて
参りたい、かように考える次第であります。 四、
事業
とこれに対する
指導監督
との
関係
を厳正かつ明確化するよう
措置
するものとする。 この点については、詳しくは申し述べませんが、特に、
農林省
の
事業機構
と
指導監督
機構とは、この際明確に分離し、特に監査
業務
については、独自の立場をも
つて
執行しなければ、
農業災害補償制度
の実施面における最近の忌まわしい風評を根絶することは困難であらうかと存ずるのであります。 五、
共済
農業協同
組合
連合会
の行う
共済
事業
と競合する建物等の
任意共済
は、一定期間後、農協に一元化し、
事業
内容に法的基礎を与えるものとする。 現在、建物等の
任意共済
に関しましては、
御存じ
のごとく、
共済
組会と農協とがおのおの
根拠
法をも
つて
議しておるのであります。そう
なつ
た次第については、いろいろ歴史的な
理由
もあることでありますが、ともかく対象は一つ農民であり、いたずらなる競合を起しておることは、はなはだ遺憾とするところであります。
従つて
、この際、
防災事業
との関連において、防災は
共済
に一元化、建物等
任意共済
は農協に一元化という構想を立てた次第であります。しかしこれを断行するにあたりましては、
掛金
料率
の点、
風水害
等による赤字
組合
引継ぎ
問題等
、
相当
重大な問題が残されております。これらの諸問題に関連しては自由
党足立委員
より
反対意見
の陳述のありましたことは、前述の
通り
であります。しかし
本案
が実現いたし、大きく統合して参りまするならば、将来
都市
の営業
保険
に対抗して、
掛金
も下り、農林金融の面等におきまして一つの進歩をもたらすものと信じておるのであります。 六、
組合
の
事業
面等については、少くも次の諸点を取入れて
改善
をはかるものとする。 (一)加入については当然加入ないしは義務加入の建前をくずさない。 (二)
引受け
は一筆ごとの俵建とし、また
共済金額
等に関しては
地方
等級に応じて四
段階
を設け、これに対する
農家
の自由選択制を織り込むよう
検討
する。 (三)
農家
の
負担
する
掛金
額は一の(一)に対応してこれを低減するものとし、かつ危険の大小に応じ個々の耕地に対する
料率
上の
調整措置
(無事もどしを含む)を講ずる。なお
政府
はその適切な取扱い方針を決定するため、すみやかに常習
災害
地に関する全国的
調査
を行うこと。 (四)
掛金
の徴収を町村に委任し、もしくは物納を認める等その容易確実化をはかる。 一号は、これを任意加入にすれば、
制度
はたちまち崩壊するであろうという見通しのもとに、引続き強制の
原則
をとつたのであります。 二号に関しましては、現在
引受け
は一筆ごとで、
共済金額
等は村一率とな
つて
おります。これの
引受け
については、現在実験中の
農家
単位
という説もありますが、この点は
農村
の実情に即して、一応一筆
単位
として、俵建または石建といたしたい所存であります。しかして
共済金額
、
掛金
率などにつきましては、
農家
個々の自由選択制を高度に取入れて参りたいと考えておるのであります。 次に三号の、
農家
の
負担
する
掛金
額は一の(一)に対応して低減するということは、現在異常
部分
について、半額を
農家負担
いたしておりますものを、
国庫
の
補償
により全額
負担
とする構想でありますので、当然それだけ引下
つて
来るものと思うのであります。 また無事もどしをも含め、危険の度合いに応じて
料率
の
調整
をはかるシステムを考えてみたいと考え、その旨を掲げておるのであります。 なお
制度
を運用する面におきまして、低
被害
地と、高
被害
地の問題が常につきまとうわけでありますが、
農林省
におきましても、常習
災害
地の
調査
がまつたくできていない実情であります。これを促進する
意味
で三号後段をつけ加えております。 四号の、
掛金
の面におきましては、物納を認める等その容易化をはかりますとともに、
掛金
と
保険
金との相殺行為を予防しますために、町村委任等のことを考えたいのであります。 七、本
制度
による
保険事業
を補充するため、農業協同
組合
との連繋のもとに行う備荒貯蓄の
制度
を新設して、
団体
の
事業
に金融的
要素
を加味するものとする。これがため
掛金
率の算定等にあたり特例を設け、かつ
国庫
助成等の奨励
措置
を講ずる。 この点に関しましては、第六項の第二号に関連して、若干の
説明
を申し上げますと、第六項のごとく、
共済金額
を
地方
等級に応じまして、四つの階級を設け、さらにこの階級のそれぞれに応じ、
農家
が選択し得るところの四
段階
程度
の逓減された金額を対置いたし、もし
農家
が最低額の
共済金額
を選びました場合には、その上位の
共済金額
との差額に
相当
する金額
程度
のものを、備荒貯蓄といたしまして農協に積金するような仕組みを考えたいのであります。近年
農家
の備荒貯蓄的な観念が著しくすたれておる
事情
とも関連いたしまして、この
制度
を奨励し、
災害
対策
の一環としまして、国よりの助成をも得せしめたいと存ずるのであります。 八、町村
段階
以上における
損害評価
の基礎として、農林
統計調査機構
の作業により、
作物統計
から作成する一定の幅を持つた
減収率
を使用できるよう、同機構を急速に整備するとともに、
末端組合
においては同
調査
との有機的関連を保持し得るよう、
現行
被
保険
者評価に伴う運営上の難点を改めるものとする。 公聴会において参考人の述べる
制度
上の最大難点は、
損害評価
の正確を期するためのきめ手がないということであります。またきわめて正確無比の評価であ
つて
も、郡、県、
中央
の
段階
でおのおの査定を受け、削減を受けるという点に関連して、初めから
相当
の水増しを行うという事実は否定しがたいと存じます。従いまして、この難点を解決しまするために、町村
段階
から、農林統計
調査
組織を
利用
して、いわゆる第三者評価を行うことを規定しました。 この場合、村以上の評価の最終
責任
は統計
調査
にあり、
農家
についての
責任
は
組合
が持つものとしたいと思います。しかし本件に伴
つて
、統計機構の整備のための経費を必要としますので、目下その作業を急がしておる状況であります。 九、
防災事業
は
原則
として
団体
をして実施せしめ、
政府
はこれにつき積極的な奨励
措置
を講ずるものとする。ただし薬剤、防除機具等に関する経済行為は農協の
事業
とする。
防災事業
は、農協、
共済組合
、市町村、農業
委員会
というように実施主体が各個ばらばらでありますので、これを
共済
に一元化する。ただし経済行為については、農協がもつぱらこれに当るという
考え方
であります。この
条項
は、第五項の建物等の
任意共済
の一元化の問題とからんでありますことは、さきに述べたごとくであります。 十、
連合会
の不足金累積額は、この際全国を総合した整理
計画
を樹立実行せしめ、必要に応じ国はこれを援助するものとする。
組合
と
組合
員との間の債権権務の相殺
関係
等についても、この機会に徹底的に清算し得るよう
措置
するものとする。
連合会
の不足金は、二十二年以降二八年までを累計いたしまして、四十億円の巨額に達しておるのであります。本
制度
の改廃により、今後はできるだけかような赤字の発生を防止いたしますとともに、従来のものについては、その原因を
調査
いたしまして整理して参らねば、
制度
そのものが半身不随に陥るおそれを有するものであります。
組合
におきましても、
掛金
と
共済金
等を相殺するような便宜的な
方法
で運営して参りました事実は、隠すべくもないところでありますので、二十八年度の大
災害
により、
組合
員の
組合
に対する債務が大幅に減少しました機会に、この弊害を根絶するようにいたしたいのであります。
政府
は、右の諸点を体系づけ、その細目を定めるため、
農林省
に
農業災害補償制度
審議
会(仮称)を
設置
し、速急に
関係
法令の整備をはかるべく最善の方途を講ずるものとする。 最後のあとがきとして、かように述べておるのであります。この
改正案
は、
農業災害補償制度
の今後のあるべき姿について、その骨格を示しておるにすぎませんので、体系づけを行い、細目を決定するには、今後容易ならぬ努力を要するものと信じますが、そのために、すみやかに
農林省
に、
審議
機構の
設置
を行い、衆参両院の
関係
議員も参加し、また斯界の権威者、学者、経験者の参画を煩わし、
原則
の具体化、法令整備を進捗せしめたい所存であります。 以上をもちまして
報告
を終ることといたします。
井出一太郎
6
○
井出委員長
この際
足立
委員
より発言を求められておりますので、これを許します。
足立
篤郎君。
足立篤郎
7
○
足立
委員
ただいま
足鹿小委員長
から御
報告
になりました
農業災害補償制度
の
改正
に関する
小委員会
における案につきまして、この際お許しを得ましてごく簡単に私の
意見
を申し述べさしていただきたいと思います。
小委員会
が昨年来非常に熱心に論議を続けられましたことにつきましては、深く敬意を表する次第でございます。何分この
制度
は広汎にわたり、しかも掘り下げれば掘り下げるほどむずかしい問題を多数含んでおります。ここに小
委員長
の御
報告
になられました案ができ上つたのでございますが、いかんせんこの
程度
のものでは、全般にわた
つて
根本的な
改正
を行うべき案といたしましては、不十分のそしりを免れないと考えるわけでございます。この案全般につきまして——
部分
々々についても
相当
な
意見
を持
つて
おりますが、せつかく各派で一応のとりまとめをされたものでございますので、こまかい点につきまして一々私が
意見
を申し上げることは、この際差控えまして、特に問題になりました一点について、私の見解を明らかにさしていただきたいと思うわけでございます。それは小
委員長
の御
報告
の中にも触れておりましたが、第五項の
共済
農業協同
組合
連合会
の行う
共済
事業
と競合する建物等の
任意共済
に関する問題でございますが、この問題につきましては、過日の
参議院
の農林
委員会
に
提出
されました
団体
側からの資料に基いて見ましても、現在
共済
農業協同
組合
連合会
が行
つて
おります
建物共済
の実態は、農業協同
組合
の建物について
共済
事業
を行
つて
おります
都道府県
の
連合会
の数は三十七でございます。それに対して
農家
の
建物共済
を農業協同
組合
がはつきりと基礎をも
つて
全般的に行
つて
おりますものはひとり北海道だけでございまして、他につきましては目下
計画
中あるいは一部更進
共済
等を行
つて
おる県もございますが、今申し上げた
通り
、実質的に全般的に
農家
の
建物共済
を農業協同
組合
が行
つて
おるのはひとり北海道にすぎないのでございます。それに反して
共済組合
連合会
が行
つて
おります
建物共済
の実情は、
農家
の建物につきましては、北海道を除きまして全府県行
つて
おるのでございます。農業協同
組合
の建物につきましては、秋田、茨城、長野、大阪、福岡の五府県を除きましては他は全部取扱
つて
おるのでございます。ただいま申し上げた五府県は、おおむね農業協同
組合
側との話合いによりまして、たとえば長野県のごときは典型的な県でございますが、農業協同
組合
の建物については農業協同
組合
側で取扱う、
農家
の建物については
共済組合
連合今会がこれを取扱うという協定に基いて、円満に
業務
の分野をわけて、何らそこに競争することなく、きわめて円滑に仕事が行われておるというふうに聞いておるのであります。残余の県につきましては、農業協同
組合
の建物については、ただいま小
委員長
の
報告
がありました
通り
、両
団体
が競争をする形にな
つて
おるところも
相当
あるのでございます。中にはまつたく
共済組合
連合会
が一手に行いまして、ほとんど農業協同
組合
自体としては取扱
つて
いないという県も
相当
数に上
つて
おるのでございます。かような実態でございますので、この実態に基いて判断をいたします場合には、ただいま小
委員長
の
報告
にありました
通り
、これをすべて農協に一元化するということが、かりに観念的な理論がここに成り立つといたしましても、実態論から、具体的にこの仕事を円滑に遂行するという立場から考えますと、この
議論
は成り立たないと私は確信いたします。のみならず昨年のあの台風の大
災害
を受けまして、この
建物共済
は、いまだ過渡期にあるこの試錬の時代に、非常な打撃を受けまして、たとえば和歌山県を初め北九州各県におきましても、任意
事業
である
政府
補償
のないこの
事業
が大きな赤字を出しまして、支払い資金に困り、
政府
に融資を依頼いたしまして、一部貸付を受け、どうやら乗り切
つて
参
つて
おるのでございますが、この
事業
は非常に大きな危機に際会をいたしておるのでございます。かようないきさつ等もからみ合
つて
参りまして、今ただちにここにこういう方針が確立されたからとい
つて
、この
事業
をあげて農業協同
組合
に移すということは、事実問題として不可能なことに属すると私は信ずるのでございます。 さらに掘り下げて考えますと、私どもの理想は、
農家
の建物に対する
共済
事業
も、近き将来においては
政府
の
補償
の手が差伸べられなければならないという強い信念と理想に燃えておるのでございまして、この
国家補償
の手段なくしては、ほんとうにこの
制度
が安定をし、
農家
が安心をして低率な
掛金
で、しかも
災害
があつた場合には——火災といい、
風水害
といい、あるいはさらに地震までこれに取入れまして、
農家
の経営を安定させるというその理想は達せられないと私は考えるわけでございまして、そういう点から判断いたしましても、これを軽々に農業協同
組合
に移してしまうということは、将来の方策から考えていかがであろうかという疑問を持つわけでございます。それはどういうわけかと申し上げると、この
共済組合
の行
つて
おります他の
共済
事業
につきましては、多かれ少かれ
国家補償
の手が差伸べられてその
制度
が確立されております。ひとり
任意共済
である
建物共済
だけが、いまだ
国家補償
の
制度
が設けられないという状態にあるのでございまして、この
国家補償
の
制度
を設けることこそ、この
制度
を確立し安定せしめる先決要件であ
つて
、この際組織をいじるとかあるいは農協に移すとかいうことが根本問題ではないかと私は考えるわけでございます。
国家補償
の
制度
をもうけるとかりに考えました場合に、いかなる方策で行くのが最も適当かということになりますと、今私が申し上げた
通り
、他の
事業
についてすべて
国家補償
の
制度
が設けられておる
共済組合
の
事業
の一環として、この
建物共済
を行うのが最も近道ではないかという
方法
論も当然に割出されて来るのでございます。かように現在の実情並びに将来の
方向
等いろいろ勘案いたしまして、結論として生み出されて来る問題は、少くとも
農家
の
建物共済
事業
については断じて他に移すべきものではなくて、現在の
共済
制度
の一環として
共済組合
が取扱
つて
行くのが最も理想であると私は確信をいたすのでございます。農業協同
組合
の建物につきましては現実も競合いたしております。また
足鹿小委員長
の
報告
にもありました
通り
、いたずらに農業
団体
が同じ仕事で相抗争することは避けなければならないということも考えますので、漸次合理的に農協が自主的にこれを行
つて
行くのだという線で話合いが
調整
されるならば、これは一元化なさるのもけつこうだろうと私は考えておるのでございまして、かような観点からいたしまして、ただいま小
委員長
が御
報告
になりました
小委員会
案、この結論は私が申し上げた
建物共済
に関する限りにおきましては、にわかにこれを確定した方針なりとして進むことは非常な危険もあるし、かえ
つて
農家
のためにもならない不安定なものになりはしないかという大きな
危惧
の念を持
つて
おります。なお
掛金
率の
問題等
を考えます場合には、これは申すまでもないことでございまして、
職員
の給料や事務費まで
国庫
で
負担
をしております
共済組合
が取扱うことが、最も低廉なる
料率
で行けるということは
計算
上明白でございますから、これはあえてくどくどしく申し上げませんけれども、かような点をお考えあわせられまして、この取扱いにつきましてはいずれ
参議院
の結論が出され、さらに
政府
でつくる
審議
会にまわされることと思いますが、慎重に実情を御
検討
になり、将来の方策をお考えになり、大局的な見地から最も合理的に、最も円滑に運営のできるように善処されんことを私の
意見
として申し述べておく次第でございます。
井出一太郎
8
○
井出委員長
ただいまの
農業災害補償制度
に関する
小委員会
の決議についての
足鹿小委員長
の
報告
を了承することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
井出一太郎
9
○
井出委員長
御異議なしと認め、本
委員会
において承認することに決しました。 ついては本件に関し、
政府
に対する申入れあるいは
参議院
への参考送付等につきましては、
委員長
に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
井出一太郎
10
○
井出委員長
御異議なしと認め、さよう決定いたします。
—————————————
井出一太郎
11
○
井出委員長
次に
足鹿覺
君より
商品取引所法
の一部を
改正
する
法律案
に関し、
通商産業委員会
に対し
意見
申入れの件について発言を求められております。これを許します。
足鹿覺
君。
足鹿覺
12
○
足鹿
委員
過
日本委員会
におきまして、通産
委員会
に連合
審査
を申し入れました
商品取引所法
改正
法案
につきまして、本
委員会
として通産
委員会
に対し附帯決議をすることの申入れをいたしたいと存じますので、おはからいを願いたいと存じます。すなわち私は本
委員会
の御意向を体しまして、先日通産
委員会
に出席をいたし、
政府
当局に
商品取引所法
の
改正
法案
について質疑を行つたのでありますが、当農林
委員会
といたしましても、きわめて重大な問題がたくさんあることを発見いたしましたが、この際通産
委員会
の
審議
の都合等もありますので、修正
意見
等は一応これを差控え、次の四
項目
について附帯決議をすることを申し入れたいと存ずる次第であります。朗読をいたします。
商品取引所法
の一部を
改正
する
法律案
に関する申入れ事項 一、商品取引所は、当業者の自主的な運営に委されてるとはいえその日常の
業務
運営に当
つて
は、公共的にして且つ公正な立場に立
つて
運営されるべきである。
従つて
、取引所役員中少くとも日常の
業務
運営の掌に当る
理事
については、公益代表的
性格
をもつ員外
理事
をも
つて
これに当てるようにすること。 二、
政府
は、
昭和
二十九年二月頭初の砂糖の異常騰貴に際して、拱手傍観したため、過当投機が行はれ、消費大衆にも多大の迷惑をかけたのであつたが、将来外資
事情
の推移についても、不安なしとしない現在、砂糖等輸入依存度の高い商品については、外資
事情
の推移に即応し、第一二四条(定款、
業務
規定等の変更命令)、第一二一条(一定期間の
業務
停止)の発動について遺憾なきを期するとともに、需給遍迫の影響が表面化するおそれがあるときは、価格安定及び需給
調整
等の基本問題について、早期に適宜な
措置
を考慮すること。 三、麦及びフスマの上場をしないこと。 四、帯広に穀物取引所の
措置
について許可をしないこと。 以上であります。この
理由
については
各位
御存じ
の
通り
でありますから、省略をいたします。
井出一太郎
13
○
井出委員長
ただいまの
足鹿
君の
提案
に対し、御
意見
があれば発言を許します。——別に御発言もなければ、お諮りいたします。ただいまの
足鹿
君
提案
に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
井出一太郎
14
○
井出委員長
御異議なしと認め、さよう決しました。
—————————————
井出一太郎
15
○
井出委員長
次に
臨時硫安需給安定法案
を
議題
といたします。この際肥料に関する小
委員長
より、
小委員会
における
審査
の中間
報告
をいたしたいとの申出があります。これを許します。
綱島
小
委員長
。
綱島正興
16
○
綱島
委員
ただいま
議題
となりました
臨時硫安需給安定法案
に対する
小委員会
の
経過
を御
報告
申し上げます。この
法案
は、実にわが国の農政にと
つて
は重大な問題でございますので、従来継続
審議
と相な
つて
おりましたものを、
委員会
においては、昨年十二月十日
小委員会
に付託せられることに相なりまして、次いで十二日小
委員
が選任いたされまして、その後一面本
委員会
において疑質応答等を重ねると同時に、並行的に
小委員会
において
審議
をいたして参つたのであります。その間本
委員会
において
審議
されましたことは、十二月十五日、二月十五日、四月十四日、同十日に実に四回にわたり、
小委員会
において
審議
をいたしましたことは、十二月十七日、同十九日、二月十三日、二十三日、三月二日、四日とこう
小委員会
で
審議
をいたして参り、なお懇談会を、これは非常に長時間をかけたりいたしまして、三月十一日、十九日、四月八日、十三日、二十四日、二十五日とたびを重ねて参つたのであります。その間
本案
の最もねらいといたしております需給の
調整
と価格の安定という点につきまして、あらゆる角度から原案を
検討
いたしまして、およそ
意見
が出そろつたではないかと思われるころ、従いまして本年三月二日に二月十六日付の小
委員長試案
というものを
提出
いたしました。この小
委員長試案
につきましては、他の野党においてもいろいろ
意見
がござまして、野党からの御
意見
として三月十一日、三月八日付の修正要項が出て参つたのであります。この二つを見比べまして、いろいろ懇談を重ねました結果、大体において
成案
に近いものを得ようといたしたのでありますが、十分なところまでは参
つて
おりませんけれども、大体において主要な問題となりましたことは、
本案
において規制いたしますところの肥料は一体どういう点で限定すべきであるかという点でございます。最初硫安等を目的といたしてお
つて
、いわゆる硫酸アンモニア、及びアンモニア系窒素肥料の二つを大体目的としてこの
法案
がつくられることにな
つて
おりましたのを、その適用範囲を拡大するという
意見
がございまして、この範囲は、この
法案
で成立いたします
審議
会にまかせて、政令によ
つて
、その
審議
会の
審議
を経て追加すべきものは指定をして行く、こういうようなことが妥当であろうというような——各派の間に多少の異論はございますが、大体において
成案
を得たわけであります。 次にこの
審議
会の
構成
であります。これについていろいろ御
意見
がございまして、主要なる点は国
会議
員をこの
審議
会に加えるか加えないか。加えるということに積極的規定をするかあるいは学識経験者という中において、ちようど米価
審議
会が学識経験者の名において国
会議
員を加えておるような形式をとる方が妥当ではないかというようないろいろな
意見
が出たのでありますが、結局は大体
審議
も尽されまして、そう大した開きがないということになりましたので、ここらで本
委員会
にお返しをして、本
委員会
において御
審議
を賜わる方が妥当であると思いますし、大体御
趣旨
を尽しておる修正
意見
も出るようでありますから、それらをもととして、本
委員会
で御
審議
を願うことがもはや妥当であると考えます。ということは、この
法案
を再び継続
審議
にかけることが農民のために利益でないということ、それから会期が切迫いたして来たということ、それらの箇条を考えまして、特にかような処置をとることにいたしたわけであります。各党一致の
成案
を得ることができなかつたことは非常に申訳ないと存じておりますが、但し大体はもはや進むのではなかろうかという見通しをつけましたので
報告
をいたすわけであります。
井出一太郎
17
○
井出委員長
次にただいま
金子與重郎
君より
本案
に対する修正案が
提出
されております。その内容は
各位
のお手元に配付いたしました
通り
であります。この際本修正案の
趣旨
について
提出者
の
説明
を求めます。
金子與重郎
君。
—————————————
金子與重郎
18
○金子
委員
ただいま肥料
小委員会
の小
委員長
から
経過
が
説明
されたのでありますが、長い間の
審議
の結果、この際その大体の線の最大公約数をとりまとめたような
意味
におきまする修正案を
提出
いたした次第であります。その案文はお手元に配付した
通り
でありますが、簡単にこの際その修正の要旨を御
説明
申し上げたいと存ずる次第であります。 まず第一に、臨時硫安需給安定法が
提出
されて以来、
相当
長い期間
審議
に時間をと
つて
おりますので、当時は硫安が輸出価格と国内価格との間に大きな開きがある、すなわち出血輸出の犠牲を内地農民にかぶせるということが主たる硫安価格問題であつたのでありますが、その後経済情勢の変化等におきましてまた今後を予測いたしましたときにおきましても、肥料工業というものがまつたく手放しの形で、自由資本主義の形において企業化されております
関係
上、また一面には為替
関係
等を考えたときに、輸入にま
つて
おりますところのカリ肥料あるいは燐酸肥料におきましても、今後価格の面において、生産面において、いろいろの思いはかられない事態が来るやもしれない。そういうことから言うならば、まずこの際この法の適用対象というものを、硫酸アンモニア及び政令で定めるその他の重要肥料という見解にとり、
従つて
法律
の題名も重要肥料という形にし、同時に
審議
会も肥料全体を含めての
審議
会に改める、これがこの
法案
の修正の大きな一点であります。 それから次に硫安肥料の合理化をするために、今後
政府
は
相当
多額の資金を貸し付けするという
計画
でありますが、しかしながら肥料製造会社も営利会社でありますから、
国家
から窒素工業の合理化のために、
相当
多額の有利な
条件
におきまして資金を仰ぎましても、その経営のためには有利な肥料あるいは商品に製造を転換して行くということであるならば、安い実質的に低廉であるところの農民の
要求
するところの肥料が生産されなければ、その目的を達成されないから、それに対しては
審議
会の
意見
を聞いて、通産大臣はそれに対して肥料の種類あるいは数量、品質というものを指示することができるということを新しく加えたのであります。 その次に保管
団体
の指定についてでありますが、この保管
団体
の指定はややするといろいろの
理由
をつけて保管
団体
に対して競争をするというようなことが出て、不明朗な形をとることをおそれまして、肥料そのものが配給のための商品ではもちろんございませんので、農民自体が消費するための一つの商品でありまするからして、当然その保管
団体
というものは、消費者であるところの農業者を直接または間接に
構成
員とする
団体
に限るということを新しく加えたのであります。 次には、農林大臣が保管
団体
に対して肥料の買取りをするということがこの
法律
にあるのでありまするが、この買取りは
政府
の
説明
によりますと、年間需要の約一割というのでありますが、この一割は
調整
保留分として
計画
の上には立てるのでありますが、実際そのときどきにあたりまして、不必要なものを、一割という
計画
を立てたがゆえに、必ず買わなければならないということは、金利その他におきましても不経済であり、不必要な問題がありますので、その一割の範囲内において必要な買入れ数量を指示することができるということに改めたのであります。 次に農林大臣が保管
団体
に対して保管肥料の譲渡その他を指示する場合におきましては、肥料
審議
会の
意見
を聞いてすることが建前にな
つて
おるのでありますが、しかしながら
災害
ないしは
災害
でない場合でも、
全国
こういうふうに地区が非常に長いところにまたが
つて
おり、しかもその肥料の生産というものが、肥料別に考えましても、
全国
均等の形において肥料工場が建
つて
おるわけではありませんので、
従つて
地理的にある種の肥料が一時的に非常に不足をするとか、あるいは流通性を持たせなければならぬ場合が出て来ると思うのであります。そういう場合には農林大臣は
調整
保留分の処理をして後に、
審議
会になるべく早い機会にこれを
報告
するということができる、この点を新しく加えたのであります。 その次は、
政府
は必要があると認めるときには、保管
団体
が農林大臣の指示に基いてする肥料の買取り及び保管に必要な資金についてあつせんをするということ、これも新しく加えたものであります。 七番目には肥料の販売価格の最高を定めるときのしんしやくする事項がありますが、そのしんしやく事項の中へ肥料の国際価格という問題も、そのしんしやく要綱に入れるということであります。 その次に、肥料
審議
会は日本硫安輸出株式会社の
業務
に関する重要事項についても
調査
、
審議
することができ得るということであります。御
承知
のように、日本硫安輸出株式会社は商法によりますところの会社にな
つて
おりまするけれども、その
性格
上、ほとんど価格
調整
のための一つの国策会社的な
性格
も一面持
つて
おるのでありまして、そういう点から行くならば、その
審議
会はその会社の運営内容等につきましても、必要のある
調査
なり
審議
をすることができるのが正しいと存じまして、この一項を加えたのであります。 最後に、ただいま肥料小
委員長
からも御
報告
がありましたが、この肥料
審議
会の
委員
を何人にし、しかもその
構成
をどうするかという問題につきましては、非常に
議論
の多かつたところでありまするが、この修正案によりますると、硫安という立場からこれを肥料全体に入れております。そうして今後その推移によ
つて
、あるいは次の機会に修正されるようなことが、肥料
事情
というものがかわ
つて
参りますと、当然そういうことも予測されるのでありますが、この際出発といたしましては、国
会議
員というものはこの代表者の中へ必ず議員の資格として入るということを、ここに法の上に書き現わしておりませんけれども、学識経験者としてならば入り得る。すなわち米価
審議
会のような形におきまして、その員数をふやしまして、そうして定員九人であつたものを十五人以内という形に改めまして、そうしてただいま申し上げた学識経験者という形のものを七人以内というふうに増員し、この中で
調整
して行きたいと存ずるのであります。 最後に、この
法律
の有効期間を一年延長いたしまして、
昭和
三十四年七月三十一日までとする。これは
法律
の
審議
がずれて参りましたので、当然この点を差加えた次第であります。 どうぞ慎重御
審議
の上、御
賛成
あらんことをお願いする次第であります。
井出一太郎
19
○
井出委員長
ただいまの修正案に対する質疑はこれを延期し、暫時休憩いたします。 午後零時五十六分休憩
—————————————
午後二時三十六分
開議
井出一太郎
20
○
井出委員長
休憩前に引続き
会議
を開きます。
酪農振興法案
を
議題
といたし、前回に引続き質疑を行います。
芳賀
貢君。
芳賀貢
21
○
芳賀
委員
私は昨日農林大臣に対して概論的な質疑を行つたわけでありますが、本日は
法案
の内容に対していささか疑点をただしたいと考えるわけであります。 まず第一にこの
酪農振興法案
と、有畜
農家
創設特別
措置
法との
関係
でありますが、有蓄
農家
創設の特別
措置
法によりますると、有畜
農家
の創設に対する規定が規定されておるわけであります。たとえば『「有畜
農家
創設
事業
」とは、農林大臣の定める有畜
農家
創設基準に従い
都道府県
が定めた有畜
農家
創設
計画
に基き、農業協同
組合
その他農業者の組織する政令で定める
団体
」』云々ということを規定しておるわけでありますが、この二つの
法律
を対照して考える場合において、最も基盤をなすものはこの有畜
農家
創設ということは、いわゆる無畜
農家
の解消がまず第一義的に取上げられて行かなければならぬと考えるわけであります。この点に対しましては、先日農林大臣に質問をしたわけでありますが、具体的な解明に非常に欠けた点がありますので、さらに
畜産局長
からこの点に対して具体的な所見をお伺いしたいのであります。
大坪藤市
22
○大坪
政府
委員
ただいま有畜
農家
創設特別
措置
法と今回御
提出
いたしました
酪農振興法案
との関連につきまして御発言があつたのでありまするが、御
承知
のように、わが国の
農家
を安定せしめ、かつ農業
生産力
を発展させまするためには、無畜
農家
の解消が最も必要な
事業
であるのでありまして、その
意味
合いにおきまして、先国会において有蓄
農家
創設特別
措置
法の御
審議
を煩わし、その成立を見たのであります。今回は
酪農振興法案
を御
提出
いたしたのでありますが、元来酪農振興と申しますもののほんとうのねらいは、先日も申し上げました
通り
、乳牛の飼育密度を濃化いたしまして、各
農家
の経済安定に資しますのはもちろんといたしまして、できるだけコストを引下げたい、こういうような観念に立
つて
おるのであります。従いまして、この二つの
法律
は一応形式的には関連がないというような御
意見
もあるいはあるかと思いまするが、実は酪農振興法のねら
つて
おりますのも、できるだ無畜
農家
に優先させたい、かように考えておるのであります。ただその場合に絶対に、あるいは和牛でありますとか、あるいは馬でありますとか、そういうような大
家畜
を持てる
農家
には導入しないというようなことは考えていないのであります。ダブることは場合によ
つて
はあるかと思いますが、これはその当該
地域
につきましては、同じ
条件
でありますれば、できるだけ無畜
農家
を優先させたい。しかしながら酪農振興法の最終のねらいは、その当該
地方
におきます飼料
条件
あるいは営農
条件
、あるいは労働
条件
等を勘案いたしまして、そういう有資格的な
農家
には必ず一頭以上の乳牛を飼育させまして、その当該
地方
におきます乳牛の飼育密度を上げたい、こういう観点に立
つて
おりますので、有畜
農家
には絶対的に排除するというような観点には立
つて
いないのであります。ただ同じ
条件
下にあります場合には、無畜
農家
の方を優先させたい、かように考えたわけであります。
芳賀貢
23
○
芳賀
委員
ただいまの局長の御答弁によりますと、前提としては、わが国の農業の経営を合理化かつ健全化するという意図のもとに、有畜
農家
を育成するという建前の上に立
つて
いるということは理解されておるようでありますが、そういたしますと
町村
において、あるいは
都道府県
団体
において、いわゆる有畜
農家
の創設
計画
というものが持たれるわけです。この振興
計画
によると、酪農振興
計画
というものがまた策定されるわけでありますが、その二つの
計画
の関連というものをどういうように考えるかということがやはり問題にな
つて
来ると思うのですが、その点はどのように処理して行くお考えでありますか。
大坪藤市
24
○大坪
政府
委員
有畜
農家
創設特別
措置
法におきましては、乳牛のみならず御
承知
のように馬、和牛、めん羊、こういうものを
農家
の希望するところに従いまして、資金わくを府県を通しまて各
農家
に導入していただくわけであるのでありますが、本法におきましては、乳牛につきましての特別
措置
法であるのでありまして、もちろん有畜
農家
創設特別
措置
法の
施策
と本法の
施策
は唇歯輔車の
関係
におきまして、関連性のあるものとして運用して参らなければならぬと思うのでありますが、本法の指定を受けます
地域
につきましては、特に酪農の適地というか、飼料
条件
その他の
条件
におきまして、最も乳牛を飼育することが経済的にも効果があり、また当該
地方
の振興という点から見ましても、最も好結果な地帯でありますので、乳牛の導入というものを先決問題として考える、かように考えて策定しておるのであります。
芳賀貢
25
○
芳賀
委員
有畜
農家
創設
計画
というものは非常に普遍的なものにな
つて
おるわけです。さらに農業
委員会
等において策定するところのいわゆる農業振興
計画
、これらのものは各
町村
団体
から現地に即応した意欲によ
つて
、だんだん盛り上
つて
来ることになるわけでありますが、もちろん局長の言われたように、有畜
農家
創設
事業
というものは、単に乳牛だけではないわけでありますが、しかしウエートはやはり乳牛の増殖ということに置かれておるというふうに考えておるわけです。そういたしますと、この普遍的な
地域
の中において、特定な
地域
が集約地区の指定も受けるということになると、それは有畜
農家
創設
事業
の中において、そういう一つの特殊
地域
が持たれておるというふうに一応考えてさしつかえないかどうかという点であります。
大坪藤市
26
○大坪
政府
委員
有畜
農家
創設特別
措置
法の
関係
におきましては、ただいま御指摘の
通り
、当該府県におきまする全
地域
を対象といたしまして有畜
農家
創設特別
計画
を樹立いたすのでありまするが、本法におきましては、その府県内の一定の
地域
を区切りまして酪農振興
計画
を樹立する次第であるのであります。
従つて
本法によ
つて
指定された
地域
につきましては、もちろん酪農振興
計画
は本法に基く
計画
として樹立されるわけでありますが、その
地域
につきましても和牛なり馬なりめん羊なりにつきましての
計画
は、当然酪農振興
計画
と別途に、しかしながらこれは全然無
関係
ではなしに、これをひつくるめて考えますときには、総合されたものとしての
計画
は府県としてはある、こういうことに相なると思います。
芳賀貢
27
○
芳賀
委員
そういたしますと、有畜
農家
創設
事業
の総合的な面の一環としてこの酪農振興法による振興
計画
が持たれる、そうしてこの二つの
法律
は決して不可分のものではないというふうに局長の御答弁から判断して行きたいと考えておるわけであります。次にこの
法律
でありますが、これは酪農振興ということが中心にな
つて
おりますが、結局有畜農業の振興というようなことは、この
法律
の中でそういう積極的な意図というものは持
つて
おるかおらぬかという点であります。
大坪藤市
28
○大坪
政府
委員
酪農振興法は有畜
農家
創設という
意味
を持
つて
おるかどうかというお尋ねでありますが、もちろん本法におきましても農業の経営を安定させます立場から、あるいは総合的な食糧を
増産
いたしまする立場から、その当該
地方
におきましては、有畜化しまする場合に酪農という形式をとつた方が一番効率的であるという地帯をまず指定するという考えでありますので、本法におきましては、
地域
につきましての指定の場合に、乳牛を導入します場合にも当然有畜
農家
創設特別
措置
法の精神のもとに、できるだけ無畜
農家
から乳牛を導入して参る、こういう
考え方
で参りたい、かように考えております。
芳賀貢
29
○
芳賀
委員
私のお尋ねしたのは、無畜
農家
解消という形でなくて、有畜農業の振興ということがもう一段進んだ
段階
における
計画
ですね。ただ単に
家畜
を持たない
農家
を有畜
農家
にするということだけでなくて、農業の形において有畜化された農業というものを具体的に振興する
計画
、ねらいというようなものは、この
法案
のどういう点に織り込まれておるかという点です。
大坪藤市
30
○大坪
政府
委員
本法におきましては、できるだけ当該
地方
におきまする乳牛の飼育密度を
増加
さしまして、当該
地方
における酪農基盤を確固たるものにいたしたい、かように考えておりまするので、無畜
農家
の解消のみならず、当該
地方
におきまする有畜
農家
におきましても、一頭を飼育しておるところはさらに二頭あるいは三頭、馬を飼育しておるところは乳牛をさらに一頭あるいは、二頭、こういうふうに各飼育
農家
の労働
条件
あるいは経営
条件
にマツチいたしまして、その乳牛の頭数の
増加
ということをはか
つて
参りたい、かように考えております。従いまして当該
地域
におきまする酪農振興
計画
には、当然各
農家
個々の乳牛の飼育頭数の
増加
ということが
計画
の内容の一つをなして来る、かように考えておるわけであります。
芳賀貢
31
○
芳賀
委員
次に地区指定の問題でありますが、
法律
によりますと、
都道府県
知事が一応
地域
の設定を行
つて
、農林大臣の指定を受けるというようなことにな
つて
おります。この地区の設定の場合において、もちろんその
区域
の管轄の知事が選定することは必要にな
つて
来ると思いますが、
地方
における同一
条件
の
町村
等において、一つの必然性を持つた地区の設定というようなことが盛り上
つて
来ることになると思いますが、それらの場合、つまり特定の、一定の基準等によるところの
条件
が具備されたというような場合においては、末端のそういう意欲を尊重するという建前に立
つて
、
地域
の指定に対する決定等というものは、弾力性を持
つて
行われる必要があると思いますけれども、この点に対してはどのようにお考えにな
つて
おりますか。
大坪藤市
32
○大坪
政府
委員
本法に掲げまする集約酪農
地域
指定の問題につきましての御
意見
と思いますが、本法に基きまして指定を受けます場合には、
法律
の規定に基きまして一応基準を設けておるわけであります。その詳細の点につきましては政令等に譲ることに相な
つて
おりますが、その基準に合致いたしました
地域
につきましては、私どもといたしましては、当該
地方
が酪農振興ということをほんとうに農業生産のためにやりたいという希望があります場合には、その
条件
に合致するところはできるだけ多く指定して参りたい、かように考えておるのでございます。ただ予算の
関係
上、あるいは乳牛の自然的な
増加
趨勢、こういうような
関係
がありますので、全面的に一時に指定するということははなはだ困難ではないか、と申しますのは、一応指定いたしましても、何らそこに
補助金
的な
措置
もできないか、あるいは乳牛の自然的な
増加
趨勢にマツチしないような指定をいたしますと、そこに乳牛の取合いが起る、あるいは非常な高価な乳牛が導入せられるというような
事情
にも相なりますので、その点につきましては、できるだけ乳業経済の実態に沿うようなやり方で指定して参りたい。せつかく指定いたしましても、数年間ほつたらかすというようなことになりますと、せつかく熱が上りました当該
地方
の農民に、かえ
つて
非常な迷惑をかけるということになりますので、その辺の取捨選択と申しますか、緩急の順序が非常に問題じやないか、かように考えておるのであります。しかしながらそういうような
事情
が許します限りにおきましてはできるだけ多く指定いたしまして御希望に沿いたい、かように考えておる次第であります。
芳賀貢
33
○
芳賀
委員
地区指定という問題は、
地方
としては非常に重要関心を寄せているわけでありますが、ただいま局長の話によると、予算との
関係
があるので、そういうものに制約を受けるということでありますけれども、今の
政府
の予算の編成との
関係
あるいは農業政策等の
方向
を見ても、予算がこうだからということだけでそれの制約を受けるということになると、結局積極的に酪農振興
計画
というものの発展性を認めることができないと考えるわけです。だからしてこの
法律
の持
つて
おる精神というものは、政令等によるところの基準に適合した場合においては、集約地区としての資格
条件
が具備された場合においては、当然指定を受けるべきであるというふうに考えるわけでありますが、そういうような積極的意図を持つた含みということは全然ないのでありますか。
大坪藤市
34
○大坪
政府
委員
本法のねらいといたしておりますのは、そういうような
条件
にか
なつ
たところに酪農振興
計画
を樹立いたさせまして、そうして酪農振興をはか
つて
行くという
趣旨
でありますので、できるだけそういうような適格
条件
のところにつきましては全部指定をいたしまして、その要望にこたえたいと考えておるのであります。ただ一つの
条件
といたしまして、乳牛の自然
増加
率というようなことが問題になるのでありまして、この点のやり方を誤りますと、そこに非常な大きな問題が起きて来る。と申しますのは、乳牛の取合いと申しますか、非常な高価格なものになるわけで、またそれを勘案いたしまして、指定いたしましたところに対しまして薄く補助をするというようなことになりますと、せつかくの熱意がそこにさめて来るというような問題があるのであります。その辺のやり方が非常に問題じやなかろうか、かように考えておるわけであります。しかしながら私どもといたしましては、できるだけの予算を用意し、かつ取引につきましてできるだけ
計画
的な導入をやりまして、それらの点の問題のないようにいたしたいと考えておるわけであります。
芳賀貢
35
○
芳賀
委員
ただいまのお話によりますと、
条件
を具体的に具備しておる
地域
に対しては積極的に指定を行う。もちろん軽々にあらゆる地区を指定することは危険が伴いますし、将来における乳牛の
増加
の趨勢等も大体把握されることが必要であると考えますが、あまりにこれが消極的に
なつ
た場合においては、たとえば今年度は三十地区とか四十地区とか指定を受ける、次の年にもそのくらいの指定が行われるというように、この指定が長期にわたる場合においては、乳牛のたらいまわし的な現象が生じないとは必ずしも限らぬのであります。一度指定を受けた
地域
は——この指定は取消すこともできるわけでありますが、そういうことは実際問題としては非常にできがたいと思うのであります。でありますからして、十分将来性を
検討
して、この
地域
においては、諸般の農業の
条件
の中においても有畜農業が必要である、それによ
つて
伸びるんだという確認がついた場合においては
地域
の指定を行
つて
、そうして客観的な
条件
あるいは附帯的の
条件
が現地の熱意の中からうん醸されることを慫慂するというようなことも、政治の面においては非常に必要でないかと考えるわけであります。でありますから、ただ単に補助等の
関係
だけを重点的に考えて、この指定が消極的になるということは、むしろ弊害あるいは危険が伴うのではないかというふうに私は
危惧
するわけでありますが、その点に対する局長の明快なる御答弁を承りたいと思います。
大坪藤市
36
○大坪
政府
委員
ただいま、盛り上つた農民の力と申しますか、期待に沿うように指定をせいという御
意見
と思いますが、まことにその
通り
と思うのであります。特に相手が動物でありますので、これにはまつたく農民の非常な努力と申しますか、愛育精神と申しますか、そういうような要件が備わらなければ、すなわち一時的な
考え方
では永遠の酪農振興は望めないのであります。
従つて
ほんとうに盛り上つた当該
地域
の個々の
農家
が、全部そういうような気持にな
つて
いただきまして、初めてほんとうの集約酪農
地域
としての最終の効果を上げ得る、かように考えるのであります。従いましてそういうような
地域
をまず優先させて行きまして、そういうような
地域
には必ずその期待に応ずるように私どもといたしましても
措置
をいたしたい、かように考えておるわけであります。
芳賀貢
37
○
芳賀
委員
さらに
地域
指定の具体的な問題と関連するわけでありますが、ジヤージの導入
計画
はことしは一千八百十一頭というように記憶しております。それは二十九年度の
計画
でありますが、たとえば三十年度、三十一年度というような三箇年、五箇年等の
計画
というものは当然策定されるべきであると思いますが、外国牛の買付による貸付の
計画
、さらに残余の地区はほとんどホルスタイン地区というようなことでこれは充実して行くことになると思いますけれども、この面は多分に有畜
農家
創設資金等によ
つて
これを推進するということになるわけでありますが、この外牛の導入によるところの
地域
の拡大、それからホルスタイン地区等に対する融資による充実、そういうものは、たとえばここ三箇年くらいの将来においては、どの
程度
にこれを充実して行くというような
計画
であるか、その点が明確にな
つて
おればお聞かせ願いたいと思います。もう一つは、ジヤージー地区の四地区はすでにもう決定されておるわけでありますが、残余の地区に対しましては、先日の局長の御答弁によりましても、
全国
的な希望は大体百三十地区あるというようなお話でありましたけれども、畜産当局としては、二十九年度において具体的に何地区くらいをおおよそ考えておられるか、その点がこの席で御表明できるとすれば、お聞かせ願いたいと思います。
大坪藤市
38
○大坪
政府
委員
地区指定の具体的な問題でありますが、本法によりまして指定いたします場合に、ジヤージーを主として導入いたしまする
地域
と、ホルスタインによる導入
地域
と大体二つにわけられると思
つて
おるのであります。もちろん当該
地域
につきまして全然ほかの種類の違つたものは入れないというようなことではないのでありますが、
政府
としての
施策
の中心は、一応二つにわけて考えたいと思うのであります。ジヤージー種につきましては、ただいまの御
意見
の
通り
、二十八年度で二箇所、二十九年度で四箇所、合計六箇所を指定しておるのであります。これは二年
計画
をもちまして一年間に三百頭ずつ導入するということにな
つて
おりまして、昨年指定いたしました八ケ嶽山麓の山梨、長野地区と岩手山麓の地区につきましては、昨年の残りの分といたしまして、合計六百頭を二十九年度内に導入し終りたいと考えておるのであります。新しく指定いたしました地区につきましては、三百頭ずつ二十九年度に導入いたしまして、三十年度になりまして残りの三百頭を導入いたしたい、かように考えておるのであります。三十年度以降の
計画
につきましては、ジヤージー種につきましては現在のところ具体的な
計画
は持
つて
おりません。と申しますのは、予算とも直接
関係
がありますし、特に外貨との問題があるのでありまして、これを今どうするというような具体的な
計画
を立てることがきわめて困難であるのであります。ただ私どもの希望といたしまして、三十年度におきましては、二十九年度に四箇地区指定いたしました分の残りの分は、当然三十年度予算に計上しなければならぬという理論的な結論にな
つて
参ると思うのであります。つまり二箇年
計画
で三百頭ずつ二年間やる、こういうことにな
つて
おりますので、二十九年度は初年度の三百頭でありますので、三十年度に残り三百頭を計上しなければなりませんから、三十年度につきましては、四地区につきましては三百頭導入するということになると思いますが、新しい地区につきましてはどういうふうにするか、現在のところ具体的な
計画
を持
つて
いないのでありまするが、私どもの希望といたしましては、
相当
地区新しく指定して参りたい、かように考えておるのであります。はつきりとした具体的な、何箇年
計画
で最終目標としてどのくらいの地区をジヤージー地区として指定するかということになると思いますが、一応私どもの内部の
計画
といたしましては、大体二十箇所くらいはジヤージー地区として指定したらばどうかというふうに一応考えておるのであります。もちろん現在のところ、しからばどの地区にどうというような具体的な
計画
はありません。現在六地区指定いたしておりますので、二十箇地区といたしますると、あと十四箇地区が新規
計画
ということになりまするが、これにつきましては、どの県のどの
地方
についてどうこうするという具体的な
計画
ではありませんが、私どもの一応の希望といたしましては、三十年度以降に新しく十四箇地区くらいを指定いたしたい、かように考えておるわけであります。 ホルスタイン地区につきましては、現在各県からお申出があ
つて
おりまして、現在のところ百二十地区を
相当
上まわ
つて
おります。もちろんこの中にはジヤージー地区に適した地区と思われる地区も含まれておりまして、その割振りをどうするかという点については、具体的な
計画
はありませんが、県からのお申出につきましては百二十箇所を越しておるわけであります。全部が全部適格
条件
に該当するかどうかということは今後
検討
を要する問題と思いますが、大
部分
のものはあるいは適格
条件
としての資格を持
つて
おるんじやないか、かように一応考えておるのであります。これにつきましては、できるだけ現地の
事情
を
調査
いたしまして御期待に沿いたい、かように考えておるわけであります。
芳賀貢
39
○
芳賀
委員
およそ判明して来たわけであります。ホルスタイン地区の場合、二十九年度におよその指定しようとする地区の数は、まつたく構想がないということもないと思いますので、そういう点をさらに聞かしておいてもらいたいと思います。
大坪藤市
40
○大坪
政府
委員
まず初年度といたしましての二十九年度に、ホルスタイン地区を何箇所指定するか、こういうような問題でありますが、これは実は初年度でありまするので、しかも現在ありまする予算の面と同時に有畜
農家
創設資金といたしまして私どもが一応考えておりまする資金のわく、両方の面を考えまして、少くとも初年度に指定をいたすのでありまするから、農民の期待に反するようなことでは非常に農民に迷惑をかけることになりまするので、そこいらの
事情
を勘案して指定地区の数を決定いたしたい、かように考えておるのでありまするが、できるだけ私どもも努力いたしまして、御期待に沿うようにいたしたいと思うのでありまするが、現在のところ、はつきり何箇所くらい考えておるかという点につきましては、まだまとまつた
考え方
を持
つて
いない次第であります。
芳賀貢
41
○
芳賀
委員
具体的な
数字
の発表は困難のようでありますが、ただ現在希望のある地区が百二十箇所くらいあるといたしますと、これはおよそ二箇年ないし三箇年くらいにおいて少くとも指定が完了されるというふうにも考えられますが、それは年次的に見て何箇年くらいに一応指定を終る考えであるか、こういう地区指定の問題は、現在の申込み以上にそう急激に
増加
するようなことはなかなかない思いますが、
計画
として二箇年あるいは三箇年、そのいずれの
計画
によ
つて
指定を行うか、その
程度
のことは御答弁が可能であろうと思います。
大坪藤市
42
○大坪
政府
委員
集約酪
農地
区としての適格
条件
につきましては、どの辺が適格であるかということぐらいは、その
地方
の実情を概括的にながめてみます場合に、おおむね見当はつくのであります。現在百箇所以上出ておりますので、これは
審査
するにいたしましても、長い時間はかからないと思うのであります。同時にまた、今後も
相当
教出参ると思いますが、そうだらだらと長く出て来るということも考えられませんので、少くとも二年くらいの間には、一応総体の数についての締めくくりはつくのではなかろうか、かように考えておるのであります。
芳賀貢
43
○
芳賀
委員
次に第二節の集約酪農
地域
における草地の
利用
の問題であまりすが、ここで言われておる草地というものは、たとえば
農地
法に基く採草地というものは
農地
でありますが、こういう点との関連はどのように解釈をし、区分されておるのか。さらにまた、
家畜
の飼料に必要とする土地面積というものは、内地府県等においては
相当
制約を受けておるのでありますが、そういう場合においては、たとえば国有林等の場合も採草適地のような場所は非常に多いわけであります。たとえば国有林野法等によ
つて
も、現地の住民がそれを高度に
利用
する道も開けておりますが、そうした広い
意味
における草地の
利用
というようなことは、どの
程度
に限界を広げて、これを一つの草地改良
計画
の中に入れて進めて行くか。そういう点に対する具体的な見解をお聞きしたいと思います。
大坪藤市
44
○大坪
政府
委員
草地の定義の問題でありますが、第九条に「集約酪農
地域
の
区域
内にある草地」といたしまして、括弧をいたしまして、「
農地
以外の土地で主として養畜の
事業
のための採草又は
家畜
の放牧の目的に供されるものをいう。」というふうに定義をいたしておるのであります。従いまして、
農地
でありますれば別問題でありますが、
農地
以外の土地でありまして、その目的が主として放牧、採草の用に供される土地があれば、それがたとい牧野であろうと、畦畔であろうと、堤防であろうと、たといそれが国有林でありましても、その場合における土地はいわゆる草地という観念になると思うのであります。これは
従つて
所有権には
関係
ない、こういうかつこうになるわけであります。どういう目的で具体的にその土地が
利用
されておるかという観点に立
つて
おりますので、養畜のために放牧、採草の用に供される土地であれば、その場合には一応草地としての適用を受けるということに相な
つて
おると思うのであります。もちろん所有権
関係
は、この場合の草地については、だれが持
つて
おるかということについては別問題であります。
芳賀貢
45
○
芳賀
委員
地区指定を受けた場合に、中農以上の
農家
は保有面積等も
相当
ありますし、採草地等も具備されておるわけでありますが、零細
農家
が有畜
農家
にな
つて
、その地区内における乳牛の飼育を行うという場合において、採草地等を求める場合にはなかなか困難が生じて来るわけであります。しかも今の局長の御
説明
によると、それは一つの協同体的な草地の
利用
というところまでは発展しておらないというふうに考えるわけでありますが、そういう共同の
利用
というような
性格
があるとすれば、問題は別でありますけれども、そういうことでなくて、どの場所においてもそういうような草地とみなされるものがあれば、それを一つの適用にして行くというだけの抽象的な
考え方
にも聞えるわけであります。その
地域
内における酪
農家
の機会均等的な草地の
利用
は、どういうふうに考えておるかという点でありますが、この点に関連して御答弁がありませんでしたけれども、国有林野等の
地域
内において、こういう草地としての適格
条件
を持
つて
おるような箇所がある場合においては、それを高度に
利用
することは非常に重要な点であるとも考えます。それらの点に対しては、どのような配慮を行
つて
おるかという点であります。
大坪藤市
46
○大坪
政府
委員
草地の
利用
形態でありまするが、これは
地方
によりまして所有の
関係
あるいは
利用
の
関係
あるいは入会の
関係
等、いろいろ複雑にわかれているように考えられます。特に草地につきましては、いわゆる牧野を中心といたしまして、共同的な
利用
形態がきわめて多いのであります。
従つて
都道府県
あるいは市
町村
の持
つて
おりまする管理牧野等につきましては、所有者と
利用
者が完全に分離しておるという形態がきわめて多いわけであります。この
計画
においても、草地については、そういうふうに集団的に
利用
されるという形態が非常に多い。
従つて
それがまた草地の開発と申しますか、高度的な
利用
に欠ける原因にも相な
つて
おるかと思うのであります。つまり共同的に
利用
される
関係
で、そこの開発がなかなか思うように行かない、こういう
事情
もあるかと思うのであります。
従つて
本
法案
におきましては、その草地について特例を設けまして、市
町村
が主とな
つて
その草地の
利用
をはか
つて
行く。
利用
の
関係
につきましては、もちろん個々の
農家
が
利用
するのでありますが、これらの面について市
町村
が具体的な
計画
を立てまして、総合的に当該
地方
の草地の高度化をはかりまして、個々の
農家
に
利用
形態を具体的にきめまして、それによ
つて
当該
地方
の酪農に貢献し得るような草地の改良をはか
つて
行く。この
計画
の樹立と実行が本法の一つの大きなねらいをなしておる、かように御了承願いたいと思うのであります。
芳賀貢
47
○
芳賀
委員
草地の
利用
は具体的に酪農を推進して行くためには不可欠の要件になるわけであります。先ほどお伺いした国有林野等の
利用
というような点に対してはあまり触れておらぬようでありますが、そういう点はどういうふうに有効適切にこれを活用するお考えですか。
大坪藤市
48
○大坪
政府
委員
国有林につきまして、本法との
関係
でございますが、これはただ単に本法ばかりでなしに、国有林の中におきまして、国有林として森林を開発するよりも、あるいは経済的にあるいは国土保全というような面から見て、牧野あるいは採草地として
利用
した方がより効果が上るようなところについては、国全体の土地の合理的な
利用
という面からいたしまして、当然牧野として開放していただくのが適当じやないかと思うのであります。この点につきましては、当該
地方
におきまする国有林の実情あるいは当該地における農業生産の状況あるいは畜産の実情を十分に勘案いたしまして、牧野としてあるいは草地として開放してもらつた方が、当該
地方
の農民のためにもなり、あるいは畜産の振興のためにもなるという場合におきましては、その
関係
方面に強く要望いたしまして、ぜひ開放していただくような
措置
をと
つて
参りたい、かように存じておるわけであります。
芳賀貢
49
○
芳賀
委員
国有林の
関係
は国有林を開放するという考えもありますし、国有林野法等によ
つて
それを
利用
するというような道もあると思いますので、それらの点は具体的に
都道府県等
の
計画
の中に挿入せらるべきものと考えるわけであります。 その次に第三節の集約酪農
地域
における集乳
事業
及び乳業等の
事業
でありますが、この
法律
によりますと、酪農
事業
等の施設を行う場合においては、必ず
都道府県
の承認を受けるということが必要
条件
にな
つて
来るわけであります。この承認制の問題のねらいというものを十分承
つて
おきたいと思いますが、ややもするとこの承認制というのは、指定
地域
内における既存の乳業施設等を優先的に保護するというような
考え方
が非常に強いように見受けられるわけであります。そういうことになりますと、既成事実だけを優先的に認めて、今後あるいは有畜
農家
創設あるいは酪農振興等によ
つて
、生産者のみずからの意思によ
つて
かかる乳業施設等を行おうとする場合においては、むしろそれを抑制するようなきらいも出て来ないとは限らぬわけでありますが、このようなことは非常に避けなければならぬことであると思います。そういうような問題に対しては、この法のねらいというものはどこにあるかという点を、十分御
説明
願いたいと思います。
大坪藤市
50
○大坪
政府
委員
ただいま御指摘の点はきわめて重要なことでありますが、また実際問題として非常にむずかしい問題であるのであります。私どものねらいといたしましては、集約酪農
地域
を設定いたしまして、そこに
相当
の
財政
的投資と申しますか、乳牛の導入とそれに伴います各種の作業でありますとか、あるいは草地の改良でありますとか厩舎の低利資金の融通と申しますか、そういような各般の施設を総合的にや
つて
参りたい。そのためには
相当
の
国家
的な投融資を行いますので、その当該
地方
におきます目的は、先ほど来申し上げました
通り
、当該
地方
におきます乳牛の飼育密度を濃化いたしまして、できるだけ生産費を低減し、かつ農民の営農
条件
なり
農家
経営の安定なりをはか
つて
参りたい。従いまして最終の目的といたしましては、国民に豊富低廉な牛乳並びに乳製品を供給いたしたい、こういうような目的であるのであります。従いまして当該
地方
にそういうような特別の
施策
をいたしましても、いわゆる非
能率
的な工場が濫立するというようなことになりますれば、せつかく投資いたしましたところの投融資の効果というものがマイナスにな
つて
参りまして、そういうようなマイナスの面がないように、その乳牛の飼養密度と即応いたしました合理的な工場というものをそこに打立てまして、確固不動なる酪
農地
帯として参りたいというのが最終の目標であるのであります。
従つて
本法の最大のねらいは、いわゆる工場の濫立防止ということを最終かつ唯一のねらいといたしておるのでありますが、その場合におきましては、結局工場があります場合には既存工場を結果的には保護するというようなことにもなりますし、またない場合には、新しく工場をつくります場合には、このつくつた工場につきまして特権を付与するというような反射的な効果も出て参る、こういうようなかつこうに相な
つて
参るのであります。しかし私どもが真のねらいといたしておりますのは、先ほど来申し上げましたような工場の濫立を防止する、こういうような面でありますが、遺憾ながらそういうようなねらいでやりました場合にも、結果的にはそういうようなことが派生して参るというようなことにも相なると思うのであります。そこらのやり方と申しますか、具体的な場合に非常に困難な問題が出て来ると思うのでありますが、これらにつきましては、既存の工場なりまた新しく工場をつくりました当該工場につきまして、そういうような
政府
の
財政
的な、あるいは
指導
的な援助によりまして、その
地域
におきまする酪農
事業
が繁栄いたしました経済的な効果を、独占的なものによ
つて
これが利益を受けるというようなかつこうになりますと、それが非常に問題になるのでありまして、これらの点につきましては、十分に当該工場なり何なりを、当局といたしましては
監督
すると申しますか、不当な独占的な利益を享有することのないような
措置
を、当然と
つて
参らなくちやならぬと思うのであります。
従つて
それらの取引等につきましても十分に注意をいたしまして、独占的な弊害に陥ることのないような
措置
をいたしたいと考えておるわけであります。
芳賀貢
51
○
芳賀
委員
この問題は局長みずからが重要な点であるということを言われておるわけでありますが、結局一番心配になることは、既成権益を守
つて
やるということが前提になるところに大きな危険がどこまでも伴うわけであります。特にわが国の酪農の発展の歴史的な過程は、一面において乳業資本が酪農を育成するような形をとりながら、他面において独占的な収奪を行
つて
来たというのが一つの経緯であります。だからして、この乳業資本と酪農というものは、今までは非常に不可分の
関係
に置かれておつたのです。今後もまたこの
地域
指定を行う場合においては、かかる乳業
事業
等の施設のあるところがおそらく中心にな
つて
地域
というものが設定される場合が、現実の問題としては非常に多いのではないか。そういうことになりますと、新たにこの酪農振興
計画
あるいは有畜
農家
創設
事業
等によ
つて
、その
地方
における酪農がだんだん発展して行くということになると同時に、酪
農家
の経済的な力も高ま
つて
来まして、むしろ生産者自身の資本あるいは組織等によ
つて
この原料乳を生産するという形だけでなくて、さらに乳業の
事業
をもみずからが行うというところまで発展して来ると思うのです。その発展もまた国としても期待しなければならぬと思うわけなんですが、そういうような一つの成長が期待される中において、競合濫立を阻止するというような建前のもとに、既存の乳業資本の地盤をあくまでも守
つて
やるというような
考え方
がこの
法律
の中にあるとすれば、これはむしろ逆なことでないかというふうに考えられるわけでありますが、この点は今後起きる事態としては、軽視することができない問題であると思いますので、この一つの利潤追求の資本形態において
設置
されるところの乳業——そこに生産者自身の組織等によ
つて
今後高ま
つて
来るところの乳業施設への
要求
というものが出て来た場合においては、それに対しては必然的に公益性のあるものを優先的に認めてやらなければならぬということにな
つて
来ると思いますが、この
法律
の中においては、それらの点に対する差別的な取扱いというものはまつたく考えられておらないのであります。むしろ既成権益だけを守るというようなごとが強く打出されておるので、この点に対しては非常に誤解も出て来ますし、法の運用の上においても手落ちが生ずる場合が多いので、さらにこの点に対して御見解を承
つて
おきたいと思います。
大坪藤市
52
○大坪
政府
委員
ただいま酪農振興
計画
に関連いたしまして、集約酪農
地域
における乳業施設の問題についての御
意見
でありまするが、当該
地方
を指定いたしまする場合に、まず手初めに酪農振興
計画
というものを樹立いたすのでございまするが、その
計画
の中には乳牛の
増加
に関する事項あるいは草種の改良に関する事項いろいろありまするが、その中に当然いわゆる乳業施設についての事項が含まれるわけであるのであります。その
計画
を立てます場合に、どういうような構想のもとに加工過程をやるかという
計画
が当然含まれるわけでありまして、その場合に本問題は、現地々々におきまして
相当
大きな問題にな
つて
来ると思うのであります。御
承知
のように工場とそれに関連いたしまする牛乳生産の問題は、これはまつたく唇歯輔車の
関係
にあるのでありまして、工場だけ大きなものをつくりましても、生産が間に合わない場合には、長い間赤字経営を続けなければならぬという問題が出て参りまするし、工場がある
地方
にまた非
能率
的な工場をつくりますと、一時的な競争というような問題が起きて参りまして、結局は乳牛を飼育している農民の最終的には非常な迷惑にな
つて
来る、こういうような結果にな
つて
来ることに相なるのであります。これはまつたく当該
地方
におきまする
地方
の実情によりまして、具体的な
計画
の場合に、それが各般の
事情
を勘案して決定して参る以外には
方法
がないではないかと思うのでありまするが、その場合におきましても、決して集約酪農
地域
として指定されました
財政
的な効果が、特定の既成の工場にのみ帰するというようなことがないような
方法
をぜひと
つて
参らなくちやならぬ、かように考えておるわけであります。
福田喜東
53
○福田(喜)
委員
ただいまの局長の御答弁に対して一つお伺いいたしまするが、既存工場との
関係
におきまして、酪農
事業
施設を新たに
設置
する場合におきまして、
審査
基準というものをどの辺に置くかということについて、本法を施行する場合に、おそらく畜産局としては一定の基準をお考えにな
つて
おることだろうと思いますが、どういう基準でありますか、実情を参酌してとい
つて
も、一応の基準がおありになることと思いますが、その点をお伺いしておきたいと思います。
大坪藤市
54
○大坪
政府
委員
都道府県
知事が集約酪農
地域
内におきまする集乳
事業
あるいは乳業の施設の許可基準につきましては、第十二条の二項に規定いたしております。その中に一号、二号、三号、四号、こういう四つの基準を示しておるのでありまするが、この四号に「当該酪農
事業
施設の
設置
が当該集約酪農
地域
についての酪農振興
計画
に適合するものであること。」という
条件
がその四号として末尾に規定されておるのであります。つまり当該集約酪農
地域
につきまして、知事が新しく酪農施設を許可いたします場合には、当該集約酪農
地域
に、そういうような工場を新しく
設置
することが当該集約酪農
地域
の酪農振興
計画
上適当でありかつ必要である、こういうような場合に、知事が許可をする、こういうことに相なると思うのであります。施設の具体的なものにつきましては一号、二号、三号、そのほかに規定いたしてありますが、少くとも当該
地方
としての酪農振興
計画
上必要であり、ぜひそういうことをやつた方が適当であるという場合に、知事が許可するということに相な
つて
おるのであります。
福田喜東
55
○福田(喜)
委員
その
地域
を許可する場合において、
地方
の実情上必要と認めるについての具体的、
数字
的の基準というものは、一応畜産局でお考えにな
つて
おる
数字
は何かないものでしようか。
大坪藤市
56
○大坪
政府
委員
私どもといたしまして、集約酪農
地域
におきまする酪農工場の理想的な形態といたしましては、一応一口の処理能力百五十石
程度
を処理し得るような連鎖式と申しますか、
能率
的な工場の
設置
というものを頭の中に描いておるのであります。ただこれは現実の状態を考えてみまする場合に、非常に高級的と申しますか、
程度
の進んだ施設でありますので、実際の場合にほんとうを言えば、最終目標としてはそういうような工場に、少くとも集約酪農
地域
はぜひな
つて
もらいたいという希望を持
つて
おりまするが、一足飛びにそういうようになかなか参らない、かように考えておるのであります。その中間過程におきましては、そういうようなことじやなくても、これは許可せざるを得ない、こういうように思うのであります。
福田喜東
57
○福田(喜)
委員
大体それはただいま局長がおつしやつた一日百五十石というのは理想である、中間過程においては、実情において必要性は認定すると、さよう了承してよろしゆうございますね。 次にこれに関連いたしまして、生乳過剰の場合の買上げ
対策
と、それからこれに関連する酪農
事業
施設に対する融資の問題を、具体的にはどういうお考えで畜産局は進んでおられますか、具体的なことを何かあつたならば御
説明
願いたい。
大坪藤市
58
○大坪
政府
委員
御
承知
のように、工場と生産者とは毎日々々牛乳を供給する、つまり継続契約の形式をと
つて
おりますので、当然生産されたところの全量というものは当該工場が引取るべき問題と思うのであります。その場合にいろいろ紛争等を生ずるおそがありまするが、そういうこともありますので、紛争処理に関しましての特別の規定を挿入いたしておるのでありまするが、当然工場は余乳と申しますか、少くとも生産者の全量を引取るべきものである、かように考えておるのであります。 次に工場のいわゆる滞貨処理の問題でありますが、これはきわめて重要な問題でありまするが、はたしてしからばどの
程度
を滞貨と称すべきであるか、あるいはまたその滞貨の具体的の数量をどういうふうにして把握するかということが、実際問題としてきわめて困難な問題であるのであります。しかしながら今後集約酪農の設定を中心といたしまして、酪農が非常に進行して参りました場合に、この問題は
相当
大きな問題にな
つて
来ると思うのであります。大きな点につきましては、もちろん外国製品の輸入の問題とも関連し、あるいは日本の酪農製品に対する需要の問題とも関連して参るのでありまするが、そのときどきにおきまする滞貨の問題につきまして、季節的な変動その他に対応する
措置
をと
つて
参らなければならぬと思うのでありますが、これの数量あるいは価格の把握の仕方と、これに対するやり方、特に対象が協同
組合
である場合には、これはやり方が非常にすつきりもし、また
方法
も簡単であるのでありまするが、工場等の場合におきましては、実際問題としてなかなかこれが困難であるという点もありますので、今後大いに
検討
を要し、そのときどきの情勢に応じまして、具体的な
措置
として
研究
を要すべき問題であると考えておるのでございます。
福田喜東
59
○福田(喜)
委員
在庫の把握はどういうふうにおやりにな
つて
、それに対する処置は、どういうふうにお考えにな
つて
おるか伺いたい。
大坪藤市
60
○大坪
政府
委員
現在一応毎月の在庫の数量につきましては、統計
調査
部の方で
調査
した
数字
がございます。それ以外には、現在のところ具体的にはつきりした
数字
を持ち合せておりません。しかしこういう問題も今後は
相当
大きな問題とな
つて
参ると思いますので、適当な
調査
方法
によりまして
調査
をし、そういう事態に備えることはぜひ必要ではないかと考えております。
福田喜東
61
○福田(喜)
委員
その場合には
政府
においてあつせん融資とか、何か融資に対する
措置
をお考えでございましようか。
大坪藤市
62
○大坪
政府
委員
農業協同
組合
に対しまする場合におきましては、系統金融機関の問題もありますので、系統金融機関によく実情を話しまして、——これを実際やることにつきましては簡単ではないかもしれませんが、そういうような
方法
が割合楽と思うのでありまするが、大、中の、いわゆる資本家と申しまするか、そういうような対象につきましての問題といたしましては、具体的な場合に、はなはだ国難でなかろうか。と申しますのは、数量の把握と申しますか、どのくらいの数量が、いわゆる在貨、滞貨と認定するものであるか、そこの認定と、こちらがあつせんするといたしましても、結局におきましては
政府
保証と申しますか、そういう特別の
措置
がない限りは、金融機関が独自の
計算
においてやるということにもなりますので、実際の場合におきましては、具体的にはなかなか困難ではなかろうかと思います。そういうような事態が起きまして、酪農業界全般にと
つて
非常にマイナスに作用する場合におきましては、
政府
といたしましてもできるだけ努力いたしまして、あつせんいたすべきでないか、こういうふうに考えます。
川俣清音
63
○川俣
委員
芳賀
委員
の質問に関連しての
部分
だけ一つお尋ねいたします。局長の
説明
で、しかもこの
法律
の一番の矛盾点を解決しておられないので、この点お尋ねしておきます。局長の
説明
によりますと、乳業施設の競争濫立のおそれがあるから、工場濫立を防止するのだということでありますが、今の
国家財政
あるいは経済界の情勢、今考えられておる投融資の中において、はたして一体濫立のおそれなどがあると考えられるかどうか。私はおそらく濫立などということは考えられないのじやないかと思います。もう一つは、この
法案
を逆に見て、自然発生的にしておきますれば、乳業施設があるところに集団酪農
地域
ができるという
考え方
がどうしてもこの
法案
の中にあります。あなたの
説明
の中にも、乳業施設の存在する付近に集団酪
農地
ができるという
考え方
があるのです。そしてその付近を指定しようという
考え方
も確かにあるのです。一方では自然に放置しておけばそういう形態ができるのだと言いながら、一方においては濫立のおそれがあるのだと言う。そういう工場ができれば——たとい濫立であろうともできますれば、そこに集団酪
農地
ができるという
考え方
が一方にありながら、一方において防止するということになりますと、これは結果的には発展を押えるという
考え方
にな
つて
参るのではないか。一体あなたは工場の濫立のおそれがあるという大それた
考え方
をお出しになるのですか。今の
国家財政
の投融資の状態から言
つて
、濫立のおそれなんかは出て参りません。また今日の経済界の情勢から見て、そんな危険なことを考える人も——たまにはあるかもしれませんが、多くないと思います。もしそういう冒険をしてもやる人があれば、そこには集団酪
農地
ができるという
考え方
なんですから、そういう犠牲を払わしてもいいじやありませんか。何もおそれる必要はないではありませんか。そういう工場ができればそこに集団酪
農地
ができるという
考え方
であれば、何もあえて防止する必要はないではありませんか。この大きな矛盾を解決しないで、一方において濫立防止などと言うあなたは、
芳賀
委員
から質問が出たように、既成権益を守るのだというそしりを免れないと思うのでありますが、いかがですか。
大坪藤市
64
○大坪
政府
委員
ただいまの御
意見
通り
です。現在までの
事情
におきましては、ある地帯に工場ができまして、そこが煙を出した場合に、初めてその
地方
の農民が安心して乳牛を飼い出すというような現象は、まさに御
意見
の
通り
であります。ただ私どものねら
つて
おりますのは、そこに五千頭なり六千頭なりが集団的に飼育されまして、ほんとうの酪
農地
帯としての
要素
を
相当
整えて参りました場合に、あそこに工場を持
つて
行つたならば必ずもうかるというような、あるいは乳業者同士、あるいは乳業者同士でなしに他の資本家的な
考え方
から、せつかくでき上つた大きな模範的な地帯に新たに仕掛をすると申しますか、そういうような現象が起きまして、せつかくでき上
つて
理想的な経営にな
つて
いるところを、いわゆる利益をも
つて
一時的な混乱を誘致いたしまして、結局には酪農民が損をするという混乱した事態ができないように、私どもとして考えておるのであります。もちろん建設の当初におきましては、そういうところに新しく工場をつくるようなことは、実際問題として当然ないと思うのであります。でき上つた状態の場合にそういう問題が起きることは、当然予想されるのでありまして、これらの点につきまして、私ども非常に心配いたしまして、こういうような規定を設けた、かように御了承願いたいと思うのであります。
川俣清音
65
○川俣
委員
関連質問ですから簡単にしたいと思いますが、問題はそこなんです。今の
財政
投融資では濫立するような状態は生れて来ないですよ。むしろ進んで濫立するような状態の方が、今の酪農振興の状態においては好ましいという
考え方
をしなければならない。これは十年とか二十年た
つて
相当
に発展して行くならば、あるいは規制するような
制度
が考えられなければならないということも考えられますけれども、今のところ自然的にや
つて
おいて、単なる
国家
投融資の割合少い現状においては、乳業施設を中心にして酪農施設ができるのなら、むしろ濫立さして、集団酪
農地
がだんだん確立して来る方が望ましいという
考え方
であるべきじやないか。そう考えないで、できることは好ましくないという
考え方
をいたしますと、集約酪
農地
を拡大して来ることよりも、むしろ既設の乳業施設を守ろうということになりまして、これは発展を押えることになる。今は発展を押えるというときよりも、少しぐらい無謀であ
つて
も、拡大して行くという
方向
に行かなければならないのじやないか。押えて行くのがほんとうなのか、酪農振興がほんとうなのか、どつちがほんとうなのか。酪農制限法なら別ですよ。これは振興法で制限法じやない。もう少し二十年なり三十年なり進んで、酪農制限法をつくるときは濫立防止というものは大いに考えていいと思うけれども、今は振興法だから、少しくらい犠牲を払
つて
つぶれるところがあ
つて
も、むしろそのことは一つの発展の
段階
だというふうに考えて行くべきじやないか。そう考えないで、ただ押えて行くということになると、先ほどから
芳賀
委員
の指摘しておるように、既設の権益を守るという消極的な面から発展を阻害することになるのではないか。これだけにしておきます。
大坪藤市
66
○大坪
政府
委員
現
段階
と申しますか、新しく酪農業が進展をいたすというような場合におきましては、そういうような不当競争というか、これは現在におきましてもある
程度
酪農業が発展をいたしております。北海道その他の
地方
におきましては、
相当
そういうような弊害が現実の問題として表われておるのであります。また北海道に限らず、その他の
地方
におきましても、一時的な乳価の状態によりまして
相当
混乱をしているような
地方
があるのであります。そういう場合におきまして、御
承知
のように牛乳の取引は、継続的な毎日々々の取引でありますので、経済上の
事情
がいい場合には濫立が起き、非常な取合いになるのでありますが、一転いたしまして不況の時代にな
つて
参ります場合には、そういう割込みというか、新しく入
つて
来ました非
能率
的な工場は、すぐ手のひらをかえすように当該
地方
をないがしろにする、こういうようなことになりまして、結果的には生産者の非常な迷惑になるということが今までの実例であるのであります。なおまた一時的な効果というか、そういうような
考え方
をいたしますと、ある
程度
濫立と申しますか、工場が複数の場合にはいいようにも考えられますが、実はこの点が日本の酪農全体につきますコスト高の非常な大きな原因にな
つて
おります。もちろん諸外国の中の一部のように、協同
組合
システムで下からずつと最終まで参
つて
いるような、理想的な形態が最も望ましいのでありますが、現実の問題として、日本の今までの酪農業の発展の経緯その他からいたしまして、理想的な問題はなかなか日本には、そういうようなことをすつきり割切
つて
参るわけに参らぬのでありますが、それはともかくといたしまして、その辺が非常にむずかしい
事情
にあるのであります。この点につきましては、終局といたしましては、いわゆる酪農農民の自覚といいますが、その経済力と申しますか、当該
地方
の酪農に対します行政
指導
とマツチいたしました農民の自発にま
つて
行くべきものであると、私はかように考えるのであります。ともかくわが国の酪農の最大の欠陥であります飼養密度の薄いことと、工場の一工場当りの操業度と申しますか、これは非常に少くて労賃だけ多いというような現象、これはぜひとも是正して参らなければならない。特に集約酪農
地域
につきましては、これらの点については、卒先して実行して参らなければならないというような
考え方
から、行政
指導
という
意味
合におきまして、
地方
長官の承認を受ける、こういうような
措置
をと
つて
参りたい、かように考えておるのであります。
芳賀貢
67
○
芳賀
委員
ただいま川俣
委員
の関連質問に対します局長の御答弁はどうも割切つたような答弁まで行
つて
おらぬわけです。私のお伺いしたいことは、同一地区内において、たとえば既存の乳業資本の投下した企業が現存しておる。しかしその
地域
の中において、生産者によるたとえば協同
組合
等の形態から、新しい施設をそこに
設置
できるような
条件
が出て来た、そういうことはあり得ると思う。そういう場合においてもなおかつ既存の施設というものを認めて、これは競合するからあるいは濫立するから、この集約地区の中においては認めがたいというようなことでは、一つの抑圧になるのではないかというように考えるわけなんです。問題はわが国の酪農及びこれに付随したところの乳業が伸びるかどうかということは、いわゆる一つの企業の形と生産者というものが、完全に結びついて行くところまで来ておらなかつた幼稚の
段階
においてそういうことが指摘されるのであ
つて
、今後は高度に酪農が振興された場合においては、当然、生産者の一つの経済組織の中からそういう施設を持たなければならぬということが、必然的に
要求
されて来るわけなんです。そういう場合においては、これは利潤追求の
団体
ではないし、生産者自体の持つ施設であるから、これも同列に考えて承認制にするということに対しては、やはり
問題点
があるのじやないかと思いますが、そういう場合においては、特に協同
組合
等の形態によ
つて
、その
地域
の中において施設が行われようとする場合においては、やはり承認制でや
つて
行くか、既存の施設というものを優先的に取扱
つて
、これを抑止するというような
方法
をとらなければならぬか、その点をさらにお伺いしたいのであります。
大坪藤市
68
○大坪
政府
委員
集約酪農
地域
につきましての農業協同
組合
に関連する問題でありますが、元来私が申し上げるまでもなく、農業協同
組合
は農民の生産いたしましたものを共同的に販売し、また場合によ
つて
はそれに加工処理をして販売することは当然の使命でありますし、このことは当該
地方
における農民の福祉のためにぜひ進展しなければならぬ
事情
と思うのであります。
従つて
そういうような協同
組合
の
事情
につきましては、できるだけ農民の自発的な意思によ
つて
そういうことができますように、制限を加えないというか、これが本来の姿であると思うのであります。
従つて
当該
地方
におきましてそういうような意欲が盛り上り、また能力が十分にあるという場合におきましては、そういうような農業協同
組合
の持てる本来の能力というか、力につきましては、
地方
長官としては当然これは承認すべきものである、かように考えるのであります。ただしかしながら、集約酪農
地域
といたしまして、一応酪農振興
計画
と工場との関連におきまして総合的に
計画
をいたすのでありますから、
計画
の中にはこれは入
つて
もらわなければならない。もちろん
計画
を立てます場合に当該
地方
の
町村
なり、あるいは農業協同
組合
なりあるいは農業
委員会
なりその他部落の有力者、
関係
者の
意見
を十分に聞いて、当該
地方
におきまする酪農振興
計画
を設定するのでありますから、その
計画
の場合に、どういう工場をつくるか、どういう工場を
利用
するかということは当然
計画
の中に織り込まれての
計画
でありますから、そのときに大きな論議になると思いますが、協同
組合
が仕事をやりたいといいます場合には、当然これは大きな一つの
要素
といたしまして、その
意見
は
地方
長官としても十分に尊重すべきではなかろうか、かように思うのであります。当該
地方
の総合
計画
を立てまする
関係
で、協同
組合
も一応承認を受けるということは、これは
計画
の性質上必要であると思うのでありますが、その場合に、協同
組合
の本来の使命をそこなわないような
措置
は、当然
地方
長官としてはまつ先に考慮すべき問題じやないか、かように存ずるのであります。
芳賀貢
69
○
芳賀
委員
その問題は、たとえば酪農振興を策定する場合においても、当然協同
組合
等は、正体的な役割を果すべきであるというふうに考えるわけです。特に今局長もちよつと触れられましたけれども、協同
組合
が協同
組合
法に基くところの
利用
事業
あるいは加工
事業
等を行うことは、何ら制約を受けておらないのです。協同
組合
自身が、法の保護のもとにおいて、その
地域
の中においてかかる乳業の施設を行うという場合において、この
法律
はむしろそれを押えようとするようなことになるわけです。だからして、協同
組合
等の施設に対しては、当然十三条に基くところの新設であ
つて
も、届出
程度
で事足りると思うのでありますが、この点が問題なのであります。一般の商工資本等によるところの施設の場合においては、当然新設は承認制が必要であるかもしれませんけれども、これには一つの
理由
があるはずです。先ほど局長も言われましたけれども、北海道のケースは内地県とは違うということはその
通り
であります。たとえば密度がだんだん高ま
つて
来る地帯の中において、明治であるとか森永というような乳業資本が、その密度の高い所をねらい打ちにして、そこに工場
設置
を行おうとするような傾向は確かにあるわけです。だからそれだけを例にと
つて
協同
組合
が、今度新しい地区の中に生産者の力によ
つて
施設を行おうとする場合において、それと同列にこれを規制しようという考えは間違
つて
おると思うのです。だから協同
組合
が協同
組合
法等の指定によ
つて
その施設を行う場合においても、
組合
自身の経済力の問題であるとか、それらの点は十分
都道府県
知事等においても、その組織自体の運営の健全化に対する
指導
というものは行うべきであると思うけれども、それを認可するとかしないとかいう問題は、これは逸脱であるというふうに考えておるわけでありますが、この点は局長の御答弁によると、十分勘案しなければならぬという
程度
のものでありますが、具体的に協同
組合
等の資本によ
つて
新設する場合においては、承認はいらぬとか届出でで足りるというような、もう少しはつきり割切つた解釈をここで打出してもらわぬと、この問題はいつまで論議しても十分に了承ができないと思いますが、その点について伺います。
大坪藤市
70
○大坪
政府
委員
集約酪農
地域
につきまして、酪農振興
計画
を樹立いたすのでありますから、これは言葉が悪いかと思いますが、当該
地方
におきます酪農につきましての一種の
計画
経済であるのであります。
従つて
その
計画
は最も合理的と申しますか、理想的に組み立てらるべき性質のものであると考えるのでありますので、一応その
計画
を立てます場合に、どういうふうにや
つて
行つたら一番当該
地方
の酪農振興になるかということが、最終の目標として
計画
が立てられるわけでありますから、その中には協同
組合
あるいは各般の
意見
を総合して、そういうような
計画
を立てるということに相なると思うのであります。従いまして現にあるような
地域
につきましても、漸次乳牛の飼養頭数が
増加
し、既存の工場等においては間に合わぬ、あるいは間に合うにいたしましてもそれが非
能率
的であるというような場合におきましては、しかも他方農業協同
組合
の資力と申しますか
技術
と申しますか、そういうものも十分に支障ないというような場合におきましては、当然農業協同
組合
が新しい工場をつくります場合には、
計画
の変更と申しますか、そういうような点におきまして、
地方
長官としては協同
組合
のやる
事業
につきまして承認を与えるべきものである、かように考えるわけであります。
中澤茂一
71
○
中澤
委員
関連して……。この
法律
の重点はやはりここなんです。さつき
芳賀
委員
の言つたように、こんな承認制はいらぬと思う。これは両刃の剣であ
つて
、この条文の使い方いかんによ
つて
、農民にと
つて
非常な圧迫になる。たとえばあなたがそこでそういう答弁をしても、乳業資本の代弁をする県知事だつたら、これを逆用して来るのです。だからここが一番問題なんです。われわれもいろいろ党でも
検討
してみた、この承認制というものは必要じやない、届出でたくさんだ、こういう
意見
が圧倒的に多かつた、これに対してあなたはどう思う。
地方
長官が逆用した場合に、たとえば明治、森永等の乳業資本が裏についていて、知事に、あそこは協同
組合
でやるそうだ、だから許可にしちやいかぬ。よしよしオーケーということでやつたら、あなたがいかに答弁しようともだめなんです。だからこれが問題なんだ、これについてどうだ、承認制なんかいらぬと思う、届出制ぐらいでどうです。
大坪藤市
72
○大坪
政府
委員
第十二条の規定の形式といたしましては、各号の要件を満しておる場合には、
地方
長官としては一応承認をするという建前にな
つて
おりますが、これは実際問題といたしまして、当該
地方
におきます実情に即して、最も合理的な
計画
のもとに、承認、不承認ということを決定いたして参ることになるのでありますが、その場合におきまして、結局農業協同
組合
の本来の使命というものは、協同
組合
法の精神に強くうたわれておるのでありまして、これをいやしくも阻害するようなことであ
つて
はならぬ、私はかように考えておるのであります。ただ実情に沿わないような工場の
設置
というようなことになりますと、結局困るのは農民ということにもなりますので、そこいらの点につきましては、当該
地方
の実情をよく
検討
されまして、総合的な
計画
のもとに工場の承認、不承認ということを決定して行くべきものじやなかろうか、農業協同
組合
だけを届出ではずすという点につきましては、当該
地方
を総合的な
計画
として、
計画
経済的なことをや
つて
参りますので、その
意味
合いにおきまして、そういうわけには参らぬじやないか、かように考えたわけであります。
川俣清音
73
○川俣
委員
これは局長が
十分検討
されて、この
条項
ができたと思われないのです。なぜかというと、簡単なことでお話しますが、問題の衝突はどこにあるかいうと、おそらく乳業資本と生産者の資本との衝突だと思うのです。もしも資本家同士の間の衝突ということに相なりますれば、融資するところの開銀において衝突させるような融資はしないでしよう。競争で倒れるようなところには融資は必ず行われないのです。だから乳業資本の統制は融資銀行において当然
計画
されるべきものなんだ、
法律
以外の最も強い融資という面から、当然これは統制せられて行くのです。また融資のあつせんをしておる畜産局の
意見
というものが必ず入
つて
いなければならぬはずなんです。単に、民間企業だということで——これは自己資本でありますれば別ですが、明治に対して一千五百万、あるいは雪印については五千万、北海道バターについて二千万というような融資をいたしておる、その融資を受けた乳業資本家が工場をつくるのでありますから、
従つて
十分そこで濫立の防止はできるはずなんだ、一方において濫立を防止するというのだけれども、一体濫立するようなところに融資のあつせんをするつもりですか。おそらくこれはしないつもりでしよう、そうして来ると乳業資本家の間の濫立じやなくて、生産者との対立だということになると思う。ところが一方、それじやあ生産者は生産者同士で濫立するかというと、農林漁業金融公庫あるいは中金において、これまた融資の面から濫立を防止せられておるのですよ。自己資本でなんか今工場をつくる人なんかありませんよ。おそらくは融資を受けなければならぬ、融資の窓というと必ず
農林省
のあつせんを経なければならない。その場所を通じなければ融資を受けられない。必ず金利の面からい
つて
も、民間銀行からは融資を受けられないんですよ。そうするとやはりあなたの所管の門をくぐらなければできない。どつちにした
つて
あなたの門をくぐらなければできないのに、濫立だなんて言うことはどこから出て来るのですか。門をぐぐるときに濫立させればこれは出て来ますけれども、どうせあなたの門をくぐらなければ融資ができない。それなのに濫立々々と言われる。あなたは濫立するように融資されるのかといえば、おそらくされないでしよう。だから十三条なんかおかしいじやないか、どうも勉強が足りないのじやないかという結論が出て来るのです。どうですか。
大坪藤市
74
○大坪
政府
委員
農業協同
組合
につきましては、御
承知
の
通り
農業協同
組合
それ自体か、あるいは協同
組合
系統が九〇%投資いたしております会社につきましては、酪農施設、乳業施設につきましての金融公庫の融資資金があるのであります。いわゆる民間会社の資金につきましては、二十六年度に開発銀行から
相当
額の融資をいたしたのでありますが、二十七年度以降は特殊金融機関によります融資は現在のところ全然ないのであります。
従つて
ただいまの問題でありますが、これは民間の資本によりますか、あるいはいわゆる普通銀行等の借入金による問題であるのでありますけれども、
政府
が介入いたしました民間会社に対します資金は現在のところ流れていない、こういうような
事情
にな
つて
おるのであります。協同
組合
につきましては、
地方
の
事情
によりまして、金融公庫の資金をできるだけまわして参りたい、かように考えております。
川俣清音
75
○川俣
委員
そういたしますれば
芳賀
委員
の言う
通り
です。民間資本であるからこれに対しては関与できないといえば、関与できない結果起
つて
来る濫立については、知事が采配を振い、承認をする、これはけつこうですよ。一方の同じ窓をくぐるという、九〇%あるいは一〇〇%金融公庫の門あるいは中金の門をくぐるのですから、これは統制下における金融ですから濫立のおそれはないでしよう。そうするとそつちの方は金融で許可した以上は知事の許可を要しない、届出だけでいいとい
つて
もちつとも弊害はない。一方弊害があるのは何かといえば、特金融資からと特金融資からでない面があるといたしますれば、これは濫立のおそれがある。そうするとそつちの方をぎゆうつと押える
法律
でたくさんだ。そういうふうに
法律
をかえればいいというように
了解
いたします。
中澤茂一
76
○
中澤
委員
この場合しかも殺し文句が入
つて
おる。十二条の2の二を読んでごらん。「当該酪農
事業
施設が効率的であり、」これが一番殺し文句です。知事が乳業資本に足をひつぱられていて、君はそういう設計書を出したけれども、これは非常に効率的でないといえばおしまいにな
つて
しまう。あなたはどう答弁された
つて
、これは知事がやる仕事でしよう。それともう一つは「著しく過剰とならないこと。」こういうことがある。これは大局的にい
つて
、あなたはそう悪意にこれをわざわざ乳業資本のために書いたのじやないと思うけれども、今後集約酪農をどんどんや
つて
行きますと、農民資本と乳業資本の一大対決が起
つて
来る。その場合に「著しく過剰とならない」というのは、ある
段階
においては必ずその設備は過剰になる。片方は五十石集める森永があれば、こつちは七箇村で七箇村の地帯に百石の工場をつくる。そうして森永と対決しようというようなことにな
つて
、著しく過剰設備ができる。この二つの殺し文句があれば、乳業資本に知事が足をひつぱられている限り、この二つで完全に農民のみずから守らんとする力を削除できる。どう考えてもこの条文はいらないのだ。これは大体届出制くらいならいいけれども、承認制なんていらないと思う。私はそう考えています。
大坪藤市
77
○大坪
政府
委員
先ほど来申し上げました
通り
、集約酪農
地域
におきまする酪農施設が濫立いたしまして、各工場おのおの不当競争をし、非常な零細的な経営になるというようなことは防止いたしたい、こういうような
趣旨
によりまして一応
地方
長官の承認を受ける、こういうことにな
つて
おりますが、承認の基準につきましては、第二項以下要件を規定いたしまして、こういう要件に該当する場合には承認をする、承認を、逆にしなければならないというふうに裏から規定いたしておるのであります。その場合の運用の問題でありまするが、
地方
長官といたしましては、まず当該
地方
におきまする酪農の振興が、終局的にどうやれば一番効果的であるかというようなことから承認不承認の基準をきめるということに相なると思うのでありまして、同条の場合に、盛り上ろうとする農民の力によ
つて
、ぜひ工場をつくりたいというような場合には、当然
地方
長官としては現実に乳牛を飼育しておる農民の
意見
をまつ先に尊重すべきものじやないか、これは当然の条理であると思うのであります。
足鹿覺
78
○
足鹿
委員
今十二条が問題にな
つて
おるのですが、私は一つだけ関連して承りたい。今長官の話を聞いておると、あなたはそれでよろしいが、
地方
の知事は別な人格ですから、その
通り
動くか動かないかなかなかわからない。そうしてそれにいろいろな政治的な、あるいは経済的な背景がこれにつきまと
つて
おる。力
関係
があるのです。そこで結局あなたが今言われたように、正当にまつすぐに、あなたの
指導
方針に
従つて
この
法律
を正しくする知事もありましようし、またそうでない知事も出て来るでありましよう。これはあなた方が一々目を届かせるわけにいかないと思うのです。そこで問題になることは、かりにこれは当然承認を与えなければならない、衆目の見るところさようであつたにもかかわらず、許可をしないというような場合があり得るかもしれませんよ。そうした場合はどういうふうにしてこれを処置されるのですか。これに対しては、二十三条その他で罰則規定を設けておられますが、この罰則は、「第十二条第一項の規定による承認を受けないで酪農
事業
施設を新たに
設置
した者」第十四条一項も、これはみな施設を行わんとする者に対する十万円以下の過料であ
つて
、その
地方
長官の不法越権の行為に対しては何ら
措置
が講じてない。これは少し片手落ちじやないかと思う。これは一体どういうふうに処理をされますか。
大坪藤市
79
○大坪
政府
委員
地方
長官によ
つて
見方が違う、こういう場合に、いやしくも法のねら
つて
いるようなことをしない知事があつた場合にどういうふうなことになるか、こういうような御
意見
でありまするが、その件につきましては、御
承知
の
通り
、本法によりまして
計画
につきましては農林大臣がこれを認可する、また変更の場合にも農林大臣が認可をするということに相な
つて
おるのであります。
従つて
当然酪農施設につきましても、その
計画
の一環として農林大臣の認可に相な
つて
来ると思うのであります。同時にそういうような点も考慮いたしまして、一応
都道府県
知事の承認を受けるということに酪農
事業
施設はいたしておりまするが、承認の基準といたしまして、あるいは当該
地方
におきます立地
条件
あるいは牛乳の供給数量、あるいは施設の状態、こういうような
条件
が、新しく酪農工場を
設置
するのにマイナスの
条件
でない場合には、
地方
長官として一応承認を与えねばならないというふうに規定いたしておるのであります。
従つて
そういうような
条件
を満しておりながらなお承認しない場合には、当然これは農林大臣に向
つて
監督
権と申しますか、
地方
長官に対する一般的な
指導監督
という点で申出がありましようし、
従つて
それに基きます全体的な酪農振興
計画
の変更の命令と申しますか、
計画
の変更ということにな
つて
来ると思うのであります。その点につきましての一応の押えといいますか、大体の体形は全体的に整えておるつもりであります。つまり
計画
全体につきましては農林大臣が認可をし、あるいはこの変更をやる。同時に酪農施設の承認につきましては一応承認をする。承認する場合の
条件
に合致しておる場合には、逆に
地方
長官は承認を与えるという
法律
上の義務を負わしておりまして、その場合でもなおそういうような濫立ではなしに、合理的な場合に承認をしないような場合には、これは
計画
の変更に関する農林大臣の
監督
権が当然に発動し得る、こういうような規定の書き方をや
つて
おるわけであります。
足鹿覺
80
○
足鹿
委員
農林大臣の
監督
権の発動というお話でありますが、農林大臣の
監督
権の発動をかりにやつたとしても、知事がそれに従わない場合はどういたしますか。これは経済行為でありまして普通の行政とは違うと思うのです。ある一つの企業者なりあるいは生産者の
団体
が、あるいは個人が行わんとする場合において、知事が阻止し、あるいはその設立に同意を与えないという場合に、
地方
長官の良識をも
つて
なおそれはや
つて
おる。ところが農林大臣はそれに対してどのような基準でも
つて
監督
権の発動をされるのでありますか。局長はそう簡単におつしやいますが、実際問題としてはなかなかそう簡単に収まらないのではないか。
監督
権の発動は何の
条項
に基いてどういうふうにしておやりになるのでありますか。そういうことをしておる間に商機というものはどんどん移りかわ
つて
参りましよう。それは
設置
していい場合を逸する場合もあるし、またその逆の場合も出て来ると思います。そこでこの十二条の別紙参考資料をいただいておりますが、別紙二号「第十二条第一項の政令で定める施設一、左の各号の一の設備を有する集乳所」として(イ)(ロ)(ハ)とありまして、続いて二、三、四、五、六、七とありますが、「左の各号の一の設備を有する集乳所」というものに冷却機械、クリーム分離機、濃縮機というようなものがありますが、これは政令委任事項が非常に多い割に、この
説明
がきわめて簡単で、どういうふうに理解していいのかさつぱりわかりません。一として「左の各号」とありますから(イ)なら(イ)の冷却機械一つをさすのでありますか、あるいは次の二から七までのうちのいずれかの一つをさすのでありますか。資料の出しつぱなしではなしに、これは大事な点であろうと思いますから、もう少し親切に御解明を願いたい。この二点を伺います。
大坪藤市
81
○大坪
政府
委員
ただいま農林大臣の
監督
権の問題につきまして御
意見
かあつたのでありますが、具体的の場合には、これはなかなか一々そう目が届かないという問題がもちろん御指摘の
通り
あると思うのでありますが、集約酪農
地域
につきましての
計画
の樹立あるいはその変更あるいは
地域
の変更等につきましては、第六条、第七条でありますか、それらの点に一応の規定をいたしておるのであります。そういうような規定が一応ありますが、いずれにいたしましても、当該
地域
におきます乳業資本と農民というものが対立するというような事態に到達いたしました場合には、当然当該
地域
にあります真の酪農振興というものは、実際問題としてできかねるような事態に立ち至
つて
いるというような場合が多いのではないかと思うのであります。もちろん理想的な形態といたしましては、集約酪農
地域
につきましては、新しく農民の資本と
技術
による共同組織を設立して、それによ
つて
酪農振興を進めて参るということが、これはまつたく見本的、標準的な形ではないかと思うのでありますが、現実の場合におきましては、各地区々々について、そういうような模範的な形態が推し進められるということは、実際問題として困難じやなかろうかと思いますので、実際問題としては、ただいまのような場合が生じて来るかと思うのでありますが、こういう場合には、現実の問題としては、当該
地方
の酪農振興
計画
というものが地につかないというような
事情
にな
つて
来るのではなかろうか、かように考えるのであります。これは
地方
長官としては、法の精神と申しますか、その
地方
に即したところの行政的な
指導
を強力に推し進あて参るべきかなめのところではなかろうか、かように私は考えるのであります。 第二点の政令の問題でありますが、これは御指摘のように、最初に配布を申し上げております資料がきわめて不十分であるのであります。これは一刻も早く訂正して
提出
いたしたいと思いますが、ただいまの御指摘の点につきましては、いわゆる「第十二条第一項の政令で定める施設」といたしましては、集乳所といたしましては、冷却機械とクリーム分離機と濃縮機の三つをおのおの備えているものを集乳所として許可をする、こういうかつこうに相な
つて
参るのであります。二、三、四、五、六、七につきましては、おのおの独立しての書き方であろうと思います。
足鹿覺
82
○
足鹿
委員
関連でありますから私はしつこくは申し上げませんが、どうも
監督
権の問題でよくわかりませんが、目の届かないということはお認めになる。そこで農林大臣がこの集約酪農
地域
指定の際における総合
計画
というものに基いて不適当だと思う、知事の方針が適当でない、すなわちその
計画
にマツチした酪農
事業
施設だと認めがたい、あるいはそれに不十分である、こういうふうに考えたときに農林大臣が
監督
権の発動をする、こういうふうに私は聞いたのでありますが、そういたしますと、農林大臣がいたずらに集約酪
農地
帯の設定に名を借りて、一つの経済行為に対して、不当な干渉をする、こういうことも一面言い得るのではないか。何らその法的な
根拠
なくして
監督
権の発動をする。その
監督
権発動の
根拠
というものは集約酪農
地域
指定の際の基本
計画
に照して行うという漠然たることで、そういう経済行為に対して制約を与える、あるいはその逆の場合の
対策
を講ずるというようなことがかりにあつたとしまして、それに対して不服の場合は一体どういうふうになるのでありますか。大臣の
監督
権というものはあくまでも行政
措置
だろうと思います。
法律
的には何ら抑制の
根拠
はない。もしそれに対して不服の場合には、一体だれがこれをどう処置して行くのでありますか。第十二条は非常に欠陥が多いと思います。あなた方のお考えにな
つて
いることは、中津君が今指摘されたように双刃の剣のように、使い方によ
つて
はどちらでも切れる、こういうことになろうと思いますが、私が今申しますように、もしその
監督
権に対して不服であつた場合には、どこにその処置を申し出るのですか。いやしくも一つの企業を思いつく——個人の場合あるいは生産者の
団体
の場合、いずれの場合でもありますが、長官の
指導
あるいは指示に対して不服を持
つて
おる、そうした場合には、農林大臣の
監督
権の発動まで待
つて
おるわけには行かない。そうすると、その者は知事の裁定に対して不満を持
つて
おれば、農林大臣に対して何らかの
措置
に出て行かなければならない。そうした場合に、農林大臣にそういう訴えというか、要請というか、
要求
というか、そういうものを出した場合に、農林大臣はこれに対して、何を
根拠
にして裁定を下すのですか。その場合は
監督
権ではないでしよう。どうもこの十二条というものは、われわれはよくわかりませんが、何を目的にしているのですか。考えようによ
つて
は、行政官庁がただ酪
農地
帯を指定したということだけでも
つて
、何ら法的
根拠
なしに民間企業を不当に抑制したり、これに対して過大な
指導
権を掌握したり、その結果は既定の独立乳業資本の擁護に
なつ
たりならなかつたりというような、非常に広汎な、締めくくりのない、しかも行政力によ
つて
自由自在にこれを使いわけて行く。これは邪推ではありません、心配でありますが、そういうことも考えられると思うのです。この点いかがでしようか。どうも今の局長の御答弁では、私は納得が参らないのです。
大坪藤市
83
○大坪
政府
委員
あるいは
監督
権と申し上げますのは言葉が強過ぎたかと思うのでありますが、その
意味
におきまして、行政
指導
と申し上げた方が実際問題としていいかと思うのであります。もちろん
計画
自体につきましても承認あるいは変更というような場合におきましては、これは
法律
の規定に基きますので、
監督
権と申しますか、そういう言葉を使
つて
もいいと思います。しかしこういう場合におきまする
地方
長官の
措置
に対しましては、行政
指導
として、こういう
条件
に該当しておるような場合には、
法律
の規定といたしましてもこれはできるだけ承認をするということにな
つて
おりますので、特に協同
組合
なんかの申請の場合には、当然これは承認すべきものじやなかろうか、かように思うのであります。私どものねらいといたしておりますのは、先ほども申し上げました
通り
、中小と申しますか、能力のない工場なり施設なりが濫立するということを防止いたしたい、反射的に一企業に集中して独占的な利益になるというような事態を規制するということも考えるのであります。そのこと自体は、逆の反面から申しますと、全体の問題といたしましては、
単位
当りの経営費を切り下げる、
従つて
できました製品についても、総体的には安くして、豊富なものを供給し得る、こういう経済的な状態を現出いたしたい、かような精神であります。
芳賀貢
84
○
芳賀
委員
私が先ほどから指摘している点は、たとえば協同
組合
が、あるいは協同
組合
連合会
が、この
地域
の中において施設を行う場合、これは局長も御
承知
の
通り
、農協法の第十条の一項の六号、七号には明確にうたわれておる。六号におきましては、「
組合
員の生産する物質の運搬、加工、貯蔵又は販売」、七号では「
農村
工業に関する施設」、これらは農協法に基く協同
組合
の
事業
として許されておるわけです。そういうものを協同
組合
が、合法的にその
地域
の中に施設するということを、酪農振興法の場合においては承認を受けなければやれないということで押えることは、農協法に対する不当の抑圧だと考えるわけでありますが、この農協法の規定と、振興法の一つの制約を行うこの関連というものは、
法律
的にどのように解明して、この
法律
をつくつたのでありますか。
大坪藤市
85
○大坪
政府
委員
農業協同
組合
が
法律
の規定に基きまして、あるいは
法律
の規定に基かないといたしましても、協同
組合
の本来の性質と申しますか、農民の生産いたしたものにつきまして、共同して販売し、あるいはそれに処理、加工をいたしまして販売するということは、当然の使命だと思うのであります。
従つて
本法におきましては、それを制限するというような
考え方
は全然ないのでありますが、一応当該
地方
におきます全体的な関連といたしまして、当該
地方
の酪農振興法を
計画
経済的に組み立てて参ります。
従つて
、自然人にある行為能力があります場合に、当然の自然人の行為を制限すると申しますか、規制をいたしますと同様に、法人本来の持
つて
おる能力につきましても、別の観点から同じ経営と申しては語弊があると思いますが、一応
計画
済のわくの中で仕事をしてもらう、こういうような観点に立
つて
おるわけであります。
芳賀貢
86
○
芳賀
委員
非常に社会主義的な言葉を局長が言い出したわけでありますが、指定
地域
の中における協同
組合
の組織だけが振興法による制約を受ける、
地域
外の所は何らの制約を受けないということにも問題があると思うのです。だからこれらの点は、当然農業の
事業
として行われる場合においては、この十二条の適用を受けないということが明確にされれば、問題は何も出て来ないのです。無理にこれで押えつけようとするとろに、結局既存の乳業資本の利益を温存させて行かなければならぬということが先行しておる。これは局長自身も矛盾を感じておると思うのです。感じておりながらこういう
法律
をつくらざるを得なかつた諸般の
事情
はわかりますけれども、しかし厳然としてそういう協同
組合
法があり、その協同
組合
法に基いて加工
事業
あるいは
農村
工業がやれることにな
つて
おるにもかかわらず、承認を得なければやれない、承認をとらないでやつた場合には、罰則を適用するというようなことは、農協法に対する不当の抑圧になるということは、どこまでも譲ることのできない点であるというふうに考えます。ただ局長の主張は、一つの
地域
内において二ないし三の施設ができた場合には、コストに影響する——もちろんこの
法律
によりますと、豊富、低廉なる牛乳あるいは乳製品を提供するということをうた
つて
おるので、コストの問題ももちろん大事でありますが、局長は乳業施設に対する企業についての十分なる分析を怠
つて
おる点もあるのじやないかと思う。たとえば、必ずしも一工場百五十石の集乳が行われなければ採算がとれないということでなくて、その企業に対する生産量の問題よりも、一つの企業の中における操業度の問題がむしろ大きいと思うのです。特にわが国においては、夏季あるいは冬季における乳の生産量は、非常に季節的に違うのです。だから季節によ
つて
一つの企業体の中においても操業度が異な
つて
来るというところに問題が出て来るのであ
つて
、これらの問題は酪農の密度が集約化されることによ
つて
相当
調整
されます。
農家
においても、今までは一頭しか牛を飼
つて
おらなかつたという場合には、乳量が低下すると、わざわざ集乳所までそれを持
つて
行くことの煩瑣のために、それを持
つて
行かない場合もありますが、集約地区の場合には、二頭、三頭という牛を飼うこと自体が、農業経営の中において経済的な効果をてきめんに持
つて
来るという
段階
においては、あるいは季節的な変化は
相当
緩和されると思います。問題はむしろ、この酪農の密度が非常に足りない、疎散しておる場合における工場に持
つて
来る集乳に要する経費が、今まではコストに大きな影響を持
つて
おつたわけです。だから企業の一つの形態の中における生産量だけにこだわ
つて
、一地区の中に必ずしも一工場でなければこれはだめなんだというような
考え方
だけでなくて、あるいは一地区の中においても、五十石ずつ完全に処理できる施設がたとい二箇所ないし三箇所あ
つて
も、完全に経営が成り立つということが立証されるわけなんです。この乳製
事業
というものはそれほど精密的なものではない。硫安製造などと違
つて
、むしろ原始的な加工
事業
だということも言えるわけです。だから一地区一工場というような
原則
とか、あるいは既存の施設を守
つて
やらなければ混乱が起るというようなことだけにあまり固執しないで、ほんとうに乳を出す
農家
の力によ
つて
かかる施設が持たれようとする場合においては、これを助長するということがなければならぬと考えるわけでありますが、新しく芽が伸びようとするのを押えようとだけしておるところに矛盾があるわけです。そういうことでは、いくらこういう
法律
をつく
つて
も何もなりません。むしろ結果において既存の乳業資本に対してそこに集約地区を設けてや
つて
、ますます利潤を追求するということにしかならぬわけです。だからこの点は十分反省されて、特に協同
組合
が農協法の規定に基いてこの
地域
内に施設を持つた場合においては、知事の承認を得なければやれぬというようなことは間違いであるということを、認識してもらいたいと思いますが、その点はあくまでもこれを固執する考えですかどうですか。
大坪藤市
87
○大坪
政府
委員
私どもといたしましては、協同
組合
の本来の能力といいますか、それにつきましては、当然農民自身が乳牛を飼育いたしますので、生産者に最も合理的な、生産者の経済的な利益になるようなシステムのもとに酪農が振興して行くということを理想的な形態としておるのであります。ただ現実の問題といたしまして、
相当
地区を指定して参りました場合に、既存の工場等がありまして、私どもの企図しております最終のねらいのような形態が全部の
地域
に行き渡るということはなかなか実際問題としてはできないと思うのでありまして、ただいまのような場合があるいは起きて来るかと思うのでありますが、協同
組合
の既存の工場等の
関係
ばかりでなしに、新しく設定するような地点におきましては、ただいまのような農業協同
組合
の本来の使命が十分達成し得るような方途を講じたい、かように考えておるのであります。なお本法でねら
つて
おりますのは、
相当
理想的な形態と申しますか、乳牛を最終の目標といたしまして五千頭、一日の牛乳処理量といたしまして百五十石、百五十石と申しますのは、私
技術
者でありませんので詳しいことはわかりませんが、機械設備といたしまして、今の世界的な水準におきまして、百五十石くらいが一応最も効率的な、妥当なる施設であるというふうに言われておるのであります。そういう理想的なことを考えておりますので、あるいは
法律
全体といたしまして、そういうような点につきまして多少行き過ぎがあるのじやなかろうか、かようには私ども考えておるのであります。その点につきましては十分に御
意見
を拝聴いたしたい、かように存じておるのであります。
芳賀貢
88
○
芳賀
委員
さらにたとえば、こういうような不明朗な
法律
が通つた場合において、もしその
地域
内において協同
組合
とかあるいは
連合会
が承認も何も得ないで施設を持つたという場合においてはどうします。協同
組合
に対してこの二十三条の罰則を適用しますか。そういうこともあらかじめお考えにな
つて
おると思いますが、そういう点はどうですか。それともまたそういう現象が出たことによ
つて
その
地域
は取消して、協同
組合
は別に罰則は適用しないという形で行くか、その点であります。
大坪藤市
89
○大坪
政府
委員
具体的の場合に罰則を適用するかどうかという問題につきましては、これは実は司法権の問題ではなかろうかと思うのであります。一応
法律
として規定いたしておりますので、他の要件が満たされておるという場合にはそういう罰則の適用があるという帰結になるのは当然かと思いますが、具体的の場合は当然司法権の問題である、かように考えます。
芳賀貢
90
○
芳賀
委員
これは具体的の場合、第二十三条の「左の各号の一に該当する者は、十万円以下の過料に処する。」その一は「第十二条第一項の規定による承認を受けないで酪農
事業
施設を新たに
設置
した者」こうなれば、これは司法権の問題でなくて、やれば必ず当然罰則の適用を受けなければならぬということにな
つて
おるわけです。そういう場合、協同
組合
とかあるいは農協
連合会
がその
地域
の中において、知事の承認を求めないで農協法で当然やれる
事業
として
設置
した場合において、この罰則を適用することになるかならぬかということです。
大坪藤市
91
○大坪
政府
委員
具体的の場合におきましてはこれは司法権の問題になると思うのであります。(「そうじやない、行政罪ですよ」と呼ぶ者あり)ただ実際は罰則の問題と申しますか、この運用の問題になりますと、いわゆる追認というような行政的な
措置
の問題もありましようし、あるいは
計画
の変更というような問題もありましようし、ただ許可を受けないでやつたということ自体によりまして、ただちに罰則の適用を受けるかどうかという場合におきましては、普通の犯罪の場合のように、そのときどきの
事情
というような点で異な
つて
来ると思うのであります。他のどんな要件を充足いたしましてもどうにもならなかつたというような、いよいよという場合には結局罰則の適用があると思うのでありますが、そのときどきの場合は、普通の一般の犯罪と同じように、同じことをやりましてもそのときの
事情
によ
つて
いろいろ異な
つて
参るということは当然ではなかろうか、かように思うのであります。
芳賀貢
92
○
芳賀
委員
こういう罰則規定は三歳の童子でもはつきりわかるようにしておかぬと、非常に混乱が起きて来ると思います。ほんとうに適用しないのだけれどもすることにしてあるという
考え方
は、特に協同
組合
の場合においては、この罰則の適用をする
方法
で行くのか、そういう施設ができた場合においては
地域
を取消すとか変更するとかいう
方法
で行くのか、そういう場合においてはどつちで行くつもりなんですか。
大坪藤市
93
○大坪
政府
委員
具体的の場合におきましては、罰則を適用するというようなことはよくよくのことでありますので、
計画
の変更なりその他適当な
方法
で、罰則の具体的な適用があるようなことはなるべく阻止して参りたい、こういうふうに考えております。
芳賀貢
94
○
芳賀
委員
そうなるとまた非常に問題が発展するわけですが、この
地域
に協同
組合
が新しい施設をした場合においては、せつかく
地域
指定してもそれを取消すぞという一つの恫喝になる。これは非常に危険だと思うのです。そういうことにまでして既存の乳業資本の権益を守らなければならぬかどうかということなんですが、これは非常に重大な問題だと思います。この
法律
は、生産者自身の力によ
つて
乳業施設を持とうとする意欲に対して、非常に大きな重石をかけるようなものでしかない。取消すなら取消すということをはつきりここでもう一度言
つて
もらいたいわけですが、そういう暴挙まであえてや
つて
、既存の権益を守ろうとするかどうか、その点であります。
大坪藤市
95
○大坪
政府
委員
罰則を適用いたしましたり、あるいは具体的に取消しをいたしましたりするということは、行政上の問題といたしましてはまことに避くべき事柄であると思うのでありまして、そういうようなことのないように振興
計画
を立てました特別の
地域
でありますので、現実の問題としては、そういうことが発生しないように常時
指導監督
を加えて行くというふうにや
つて
参りたい、かように存じているのであります。
川俣清音
96
○川俣
委員
今局長の答弁の中に非常に不穏当な言葉があつた。これは司法罰ということでありますが、私は行政罰だと思う。司法罰ということでありますと非常に問題でありまして、おそらくこれは間違いであろうと思いますが、これ以上私は追究いたしませんけれども、御訂正を願いたいと思います。 これと関連して、私はこの際根本的な問題として、この
法律
はいわゆる有畜
農家
、酪
農家
のための振興法ではないと思うのです。これは牛乳処理
法案
だと思うのです。牛乳をどうして処理するかという
法律
としてはややできていると思うが、有畜
農家
のための酪農振興法ではないと思う。いやしくも酪農
農家
から見て牛乳をどうすべきかというのでなく、牛乳というものをできたものとして、これをどうするかという処理
法案
なのです。酪
農家
のためにはこれ以外にまだまだ必要なものがたくさんあります。たとえば酪
農家
にと
つて
当然起
つて
来る問題として、廃乳をどうするか、子牛をどうするかという問題については、一言も触れていない。これを見ると生牛乳の取引とか乳業業者がどうのとかいうことで、いわゆる牛乳処理
法案
なのです。酪
農家
にとりましては、廃乳をどうするかという問題が当然入
つて
来なければならない。しかしこれはそういう建前ではない。これはあなたの方でなく、厚生省あたりが牛乳処理
法案
ということで書いて来るなら別ですが、酪
農家
のためというのはどこにもない。あればつけ加えてあるというにすぎないだけです。そういう感じがいたしますので、われわれはこれを真剣に
検討
しなければなりませんけれども、ただいまは私の
意見
だけを申し上げておくにとどめまして、これについての御答弁はいりません。
遠藤三郎
97
○遠藤
委員
関連して。この十二条の問題が今非常に問題にな
つて
おりますが、社会党の諸君のおつしやることもよくわかるのであります。それと同時にこの十二条は乳業資本の方から言うと、こういうめんどうくさい規定があることは非常に迷惑だという反対が一方においてある。つまり両面からの反対があるわけです。そこで乳業資本の方ではどういう
意味
で反対するかというと、こういう承認
制度
によ
つて
協同
組合
だけにやらせて、乳業の方はそこに進出できないようなそういう事実がつくられて行くのではないかという
意味
から、非常に強い反対があるわけです。けれどもこの問題は、
議論
を聞いてみると一応もつともでありますけれども、私は問題はどこにあるかといえば、問題は生産費を下げるということにある。日本の酪農の一番の弱みはどこにあるかといえば、製酪過程における生産費が非常に高くつく。アメリカなどに比べても、生乳の値段はアメリカより安いのですけれども、その製品の価格はアメリカよりはるかに高くな
つて
いる。そこに問題があるのであ
つて
、この集約酪農の指定の問題も、その生産費をぐつと下げて行くところにあると思う。これは今の酪
農家
にと
つて
最も大きな問題だと思います。その一番大事な点をねら
つて
いるのだということをもつと大胆にはつきり言つたらいいと思う。そういう
意味
では、今の
畜産局長
の答弁を聞いていて、まことに不安である。もつとざつくばらんにそれをずつと出して行つたらいいと思います。そうしてこの
委員会
を進めていただくことを私は希望する次第であります。
綱島正興
98
○
綱島
委員
資料の
提出
を願います。大体一日平均百五十石ぐらいになる牛乳の集約酪農
地域
をつくるというこの
計画
において、どれくらいの牛でどれくらいの乳が出て、また大
部分
ジヤージーらしいのですが、これはどのくらいの時間においてやるのかという判断の資料と、それだけのものにどのくらいの飼料が必要と言えるか、それからジヤージー種がどういうところが他の牛とは違うのかということを、簡単な表解をしていただきたいと思います。
井出一太郎
99
○
井出委員長
残余の質疑は後日にこれを繰越し、本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十五分散会