○平野
政府委員 ただいま
委員長から御報告になりました
酪農振興法案の提案理由を御説明申し上げます。
食糧の増産をはかり、その自給度の向上をはかることがわが国
経済自立のための
基本的な要件でありますが、このため、食生活を
合理化して米食偏重から脱却するとともに現在の農業
経営方式を養畜特に乳牛を取り入れたいわゆる有畜農業
経営に改善することが、きわめて有効適切な方策でありますことはいまさら多言を要しないところであります。
幸いここ数年間における酪農の発達は顕著なものがあり、乳牛頭数において三十数万頭、牛乳生産高において三百五十万石を越えるに至
つているのでありまして、牛乳、乳製品に対する需要も旺盛をきわめ、昨年度におきましては、増産にもかかわらず品不足という現象すら随所に生じたのであります。このような
傾向は、酪農
発展のためかつは
日本農業
発展のため大いに慶賀すべきことと存ずるのでありますが、わが国の酪農の現状は、その
内容に立ち入
つて考察いたしますると、必ずしも楽観し得ない多くの悪
条件を備えているのであります。わが国の酪農の持つ
基本的な弱点といたしまして、乳牛飼養農家の飼料
基盤が弱く、購入飼料により多く依存いたしているため牛乳生産費が高いこと、乳牛の飼養密度が非常に稀薄でありますため集乳費がたいへん高いものにつくこと、
従つてまたこれを
処理加工いたしまする工場も小規模な非能率なものになり、しかもこうい
つた工場が濫立しているために中間経費がよけいにかかること等があげられるのでありますが、こうい
つた傾向は、最近の高乳価によりましてかえ
つて強まりつつあるように見受けられるのであります。このような悪
条件が積み重な
つておりますため、わが国の現在の乳製品の価格は諸外国と比較いたしまして著しく割高にならざるを得ないのでありますが、このことは、国民に高価な牛乳、乳製品を供給することになり、ようやく普及して参りました牛乳、乳製品に対する消費を抑制し、食生活の
合理化に支障をすら与えることになろうと思うのであります。しかもこのような悪
条件のもとにおいて営まれる酪農
経営は、一般的に乳価、飼料価格その他の
経済事情の変動に影響されるところが大きく、きわめて安定性のない
経営にな
つているのであります。従いまして今後の酪農振興の目標は、これら酪農を取巻く悪
条件を急速に除去し、国際競争に耐え得、しかも少々の
経済事情の変動にも動じない酪農を建設することであろうと
考えるのでありますが、幸い酪農に対する認識の高ま
つておりまする現在、酪農振興の
方向を明示し、豊富低廉なる牛乳、乳製品を供給し得る
基盤を
整備いたしますることは、
日本農業
発展のための大計であろうと信ずるものであります。以上が本法案提案の趣旨でありますが、以下簡単にその
内容を御説明申し上げます。
第一に
集約酪農
地域の建設であります。自然的
経済的
条件等が酪農に適する
地域を選定し、飲用牛乳又は乳製品原料乳の供給
地域といたしまして、乳牛の飼養密度が濃厚であり、合理的な酪農
経営が得られる
地域に育成しようとすることであります。御承知のように昨年以来、
政府におきましてはジヤージー種の乳牛を輸入いたし、乳製品原料乳地帯としての
集約酪農
地域の建設を行
つて参
つたのでありますが、今後はさらにホルスタイン種の乳牛につきましても、乳製品原料乳地帯としてのみならず飲用牛乳地帯として本法により
集約酪農
地域に選定して、有畜農家創設特別
措置法に基いて集団的に導入しようとするものであります。さらにまた
集約酪農
地域におきましては、従来開発が十分行われていなか
つた草地につきまして
地方公共団体がみずから積極的に改良を行い、合理的な乳牛飼養の
基盤たらしめるとともに、牛乳の集荷
処理加工施設につきましても、その設立または変更につき都道府県知事の承認を要するものとし、非能率的な施設の濫立を防止し、牛乳の生産と均衡を保持させようといたしているのであります。
第二に牛乳の取引につきましてその公正化をはか
つたことであります。今後酪農の
発展に伴い、牛乳、乳製品の豊富低廉な供給が期待されるわけでありますが、その結果ややもすれば、価格変動に伴う負担が農家側により多く、しわ寄せされる可能性もありますので、これを防止し、公正な牛乳の取引が行われて酪農
経営の安定に資するよう
契約の文書化を
促進するとともに、取引についての紛争について簡易かつ公正なあつせんの制度を設けたのであります。
以上が本法の主要な
内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願いする次第であります。
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