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1954-04-17 第19回国会 衆議院 農林委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十七日(土曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 佐藤洋之助君 理事 綱島 正興君    理事 福田 喜東君 理事 金子與重郎君    理事 芳賀  貢君 理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    遠藤 三郎君       小枝 一雄君    佐藤善一郎君       寺島隆太郎君    松岡 俊三君       神戸  眞君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    永井勝次郎君       稲富 稜人君    中村 時雄君  出席政府委員         農林政務次官  平野 三郎君         農林事務官         (畜産局長)  大坪 藤市君         林野庁長官   柴田  栄君  委員外出席者         農林事務官         (林野庁林政部         林政課長)   臼井 俊郎君         農 林 技 官         (畜産局競馬部         長)      井上 綱雄君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 四月十七日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として永  井勝次郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月十七日  酪農振興法案内閣提出第一五四号) 同月十六日  購繭資金貸出に関する請願助川良平紹介)  (第四四〇四号)  木炭公営検査強化に関する請願鈴木善幸君紹  介)(第四四〇五号)  同(黒金泰美紹介)(第四四六二号)  同(尾関義一君外一名紹介)(第四四六三号)  国有林野払下げに関する請願鈴木善幸君紹  介)(第四四〇六号)  上吉田町及び鳥木町地内国有林野払下げに関す  る請願大橋武夫紹介)(第四四二四号)  北潟湖国営干拓事業実施に関する請願(齋木重  一君紹介)(第四四二五号)  中央競馬による益金の一部を共同募金会に交付  に関する請願田子一民紹介)(第四四八七  号)  保温折衷苗代設置に要する温床紙購入費国庫補  助に関する請願小川平二紹介)(第四四九  八号)  同(松平忠久紹介)(第四四九九号)  同(萩元たけ子君紹介)(第四五二六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  保安林整備臨時措置法案内閣提出第一一〇  号)  国有林野法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一四四号)  酪農振興法案内閣提出第一五四号)  土地区画整理法案及び土地区画整理法施行法案  について、建設委員会連合審査会開会申入れ  の件     —————————————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  保安林整備臨時措置法案及び国有林野法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたし、前会に引続き質疑を行います。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井委員 この場合長官にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、国有林野整備臨時措置法が一年延期になることに提案されておるわけでありますが、この一年延期性格はつきりと伺いたいのであります。それは過去における整備処理が未整備の分について、すなわち事務的処理が遅れておるために一年延期をして、そこでこれを処理しようという性格の一年延期であるのか、あるいはもつと広汎な角度から整備をする必要があるというための一年延期であるのか。その一年延期内容性格について正確にお伺いをいたしたい。
  4. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 今回改正をお願いいたしておりまする期間延長は、私どもといたしましては、一応国有林野整備臨時措置法に規定いたしております範囲において、地方別なニユアンスを入れまして、相当範囲考えました対象事務的に処理するという処理が、調査にあるいは関係地元との連絡に、相当予期以上の時間を費したというために、法律規定範囲内において非常に無理があるということと、特に昨年の東北北海道地方主体といたします冷害、凶作等のために、地元経済的にも非常に不況に立つている。従つて計画等事務的な遅滞を来したという実情がありますので、それを適正に行うために相当の余裕を持ちまして、会計年度とあわせて二十九年度一ぱい御延期を願いたい、こういう考え方修正をお願いいたしておる次第でございます。従いましてここでさらに角度をかえて林野整備拡充するという考えは、現在持つておりません。と申しますのは、この問題は従来も、私どもといたしましては国有林性格をいま少し明確にして再検討いたすべきであるという考え方を持つてつたのでございますが、今回治山治水基本対策を押し進める上におきまして、この一環といたしまして、最も重要な地域保安林の買上げ、国有林事業実行という問題とあわせまして国有林というものの性格相当明確な面が打出されて参るということになつて参りましたので、この際これらをあわせまして国有林性格を再検討いたし、近い将来に国有林民有林を通じます所有区分根本を打立てて、さらに整備の問題を進展させるべきである、かように考えておりますので、一応ただいまの国有林野整備臨時措置法内容をこの程度で打切らしていただきたい、かような考え方で進めておる次第であります。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 国有林野整備にしろ、あるいは保安林のいろいろな問題にしろ、やはりそれの基盤となるものは、林政性格を明確にし、国土計画という地盤の上にこういう問題を打立てて行くことでなければ、正しい方向というものは打出せない、こう考えるのであります。そういうような意味からわれわれは考えまして、今回の林野庁がとつて参りました国有林野整備考え方、あるいはこれの処理の仕方という面については、われわれは必ずしも賛成することのできない部面が非常に多いのであります。今までの国有林野整備の仕方というものは、単に地勢的な条件、あるいは所有権いろいろ入りまじつたというような条件、そういうような形態的な条件からだけであつて、これの基盤となり、前提条件となる土地利用区分調査というようなものが正確になされていない。そうして地勢的な条件だけでこういうような整備を進めて行くということについては、われわれは相当危険を感じて来たのでありますが、さらにこれが一年延期されたということについては、もともとこの林野整備のできましたときのいろいろな条件、必ずしも林野庁はこれに賛成したものじやなくて、そのときのいろいろな政治的な諸条件から押されてこういうところになつて来た、こう考えるのでありますが、さらにこれが一年延長されたというところには、われわれはここに区切りをはつきりとつけておきませんと、一年間、さらに一年間という小きざみな延長になるかもしれないと考えるのであります。そこで伺うのでありますが、長官のお説によりますと、今まで林野整備対象になつたのは十五万八千町歩内外、そして二十九年度における未整理の予定されておるものが、七万町歩内外、そのうちの大部分事務的な処理が遅れていて、処分が二十九年度に持ち越されておるというだけであつて、まだ手のついていない対象となる地積というのが三万七千町歩である、こういうふうに了解していいのか。この三万七千町歩という対象処分をこの一年間に大体処置して行くのだ、それ以上には面積拡大も縮小もしない、こういうような考え方に立つておるのかどうか、これを伺いたい。
  6. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 大体の目標は、適地調査を完了いたしまして、整備法整備売払い、あるいは交換を可能とするものを、一応地元事情等を勘案せずに適地調査をいたしまして、その後地元の意向を入れて調整いたした数字でございますので、ただいまお話通り、二十九年度に売払いを実行いたしますものは七万町歩程度になるのでございますが、これらはすでに売払い評価調書も済んでおるものが大分ありまして、ほんとうの事務的なものが多く、二十九年度に売払い評価調査を完了して売払うものが三万七千余町歩、これは現在の本法の規定いたしておりますところで、一応私どもとしては、最大に売払い得る対象面積である、かように考えておるのであります。特にこれを今後増大して、新規に売り払う対象として考えるものはあまり多くはないであろう。かりに多少修正がありましても、根本はこの程度を完了することが主目的であるというふうに御了解を願いたいと思つております。
  7. 永井勝次郎

    永井委員 国有林野臨時措置条件のあとに出て来たいろいろな問題がありますが、町村合併等による自治体財政的な補正というような意味における対象となる林野というものは、大体現在のところどういう状況になつており、今後どのような見通しにあるか、これをお伺いいたします。
  8. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 町村合併促進のための、合併町村に対しまする国有林の売払いも、一応私どもといたしましては、国有林野整備臨時措置法に規定いたしております基準を、あくまでも基準として御相談を申し上げて行く、こういう考え方でおるのでありますが、町村合併は国の大きな要請でもありますので、私どもといたしましても、極力促進に役立つような方向で御相談をいたして参るつもりでおります。従つて合併予定町村に対しましては、合併後に売払い等もいたしたいという考えをもつて相談をいたして参りましたが、結果から申し上げますと非常に逆になつておりまして、合併予定町村からの申出というものは、現在までは非常に少いのであります。かえつて合併前に旧町村払下げを完了いたしたい、そしてある場合においては財産区を設定して、旧町村でこれを利用する、あるいはこれを他の方法で経営するということの考えの方が多いのでございまして、現在出て参つておりますのは、まあこれも一応私どもの予定いたしております面積に対しての要求でございますが、全体といたしまして四千町歩足らず、件数にいたしまして十三地程度しか現在までは出て参つておりません。これらは国有林野整備臨時措置法で予定いたしております部面において、大体御相談できる範囲である、かように考えております。
  9. 永井勝次郎

    永井委員 今まで林野庁対象としておる整備地域と、町村合併地域とは必ずしも一致するものではない。そういうような場合、町村の方でぜひそういう地帯をということが起つて来た場合には、この対象面積から拡大して行く傾向が生れて来るのではないか、こういうことを心配されるのでありますが、大体町村財政確立であるとか、町村合併によつて国有林野払い下げるとかいうようなことは、林政の上から言えば邪道であるとわれわれは考えます。町村財政町村財政として、その立場から検討すべきものであつて、その中に国有林野対象として財政確立を期するというような考え方は間違つておると考えますし、こういうやり方で参りますと、林政の正しい発展というものは確保できないのではないか、こう思うのでありますが、まだ日本林政をどういうふうにするかという性格も未確定であり、土地利用区分も不十分であり、また国全体の国民の自立経済という基盤確立しておらないし、その中における今後林野の担当すべき位置というものもまだ明確化されていない、不明確な段階において、恒久的ないろいろな処置をするということは妥当ではないと考えますので、この点は十分に林野当局において御注意を願いたいと存ずるのであります。  次にお尋ねいたしますことは、今までの林野整備は、大体国有林野所有権を移譲するという形でやつて来ておるのでありますが、所有権の移譲ではなくして、利用権をいろいろな角度からもつと拡大して行く。地方の農村の実情及びそれぞれの地域のいろいろな産業形態等にマツチさせるための利用権拡大というようなことについて、林野庁ではどういうふうにこれをお考えになつておるか。それは林野整備と並行してお考えになるのか、また別途にこれを考えて行こうとされておるのか、その考え方、また行政的な措置考えて行く分野を、ひとつ明確にお示しを願いたいと思います。
  10. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 国有林野整備は、一応国有林野整備臨時措置法に規定いたしておりますところは、国有林経営合理化というものを主体考えられておるのでございますが、ただいまお話のありました国有林地元に対します利用権益の拡張ということは、国有林野経営地元との有機的な依存関係ということを考えます際に、当然私どもは十分なる有機性をもつて、相ともに繁栄いたすべきものである、かような考え方をいたしておりますので、地元施設整備拡充につきましては、常に積極的な施策を講じておるつもりでございます。必ずしも林野整備に振りかえるためにこれらの制度を拡充するなんということは考えておりません。これはあくまでも地元国有林とが経営の上で有機的な、密接な依存関係があるという点からいたしまして、双方が協力して発展させるべきであるということから考えておる次第でございます。従いまして、たとえば部分林設定等につきましては、造林事業協力をいたし、さらにこれが地元経済に将来大きな役割を果すという考え方から、目下積極的にこれが拡充を慫慂いたしまして、それぞれの地元で御相談をいたしておるような次第でございますが、その他自家用あるいは生業資材であります薪炭材等計画的な供給、その他副産物の採取等をめぐりまして、共用林計画的な整備拡充考えまして、これらも御相談を進めておるのでございます。さらに地元産業特に広い意味におきます農業としての土地産業経営国有林利用等々をめぐりまして、従来の不足分整備いたしたいということで、今回国有林野法の一部改正をお願いいたしておる次第でございまして、これらの点に関しましては、必ずしも国有林野整備臨時措置法の代替としての考え方ではなく、別途に国有林性格からいたします経営一環として強化をはかつて参るという考え方で、進めておるのでございます。
  11. 永井勝次郎

    永井委員 森林に関しては、私は国有である姿が一番健康であり、効率的であると考えておるのでありますが、過般の林野整備におきましては、これは地勢的ないろいろの条件からとはいえ、市町村あるいは地方自治体にこれが移譲され、その町村の方では林地対象として求めておるのではなくて、林地の上に立つておる森林対象にして整備払い下げを要求しておる。またその考え方は、国に所有さしておくよりは、地元自治体森林の造成の上に十分適正な管理をして行くことが林業の上に効果をもたらすのだという角度ではなくて、町村財政一助にするというような考え方払い下げをしておる。われわれは、国有林野整備法が適正な形において、林政の健康な発展を助長する上に前進することを願つていたのでありますが、結果はそれと逆であります。払い下げた途端にこれがどんどん町村財政一助にというような立場で切られて行くという状態でありますが、これの管理について林野庁ではどういうふうにお考えになつておるか。来年は各市町村長選挙がありますが、この選挙の場合には、何十年先の林野の健全な育成ということよりも、当面の選挙に有利にこれらの問題を利用することの方が急であろうというように思われるのでありますが、そういうような条件から、どんどん木を切つて学校を建てるとか、いろいろな公営物を建てるというようなことで、町村払い下げたことによつて林野は急激な荒廃の道をたどつておるというような状況でありますが、これに対して林野庁は、今後どのような管理及び指導をなされる考えであるか、また現在どのような実情になつておるかという、現状に対する把握をどういうふうにしておられるか、これを伺いたい。
  12. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 私どもの当初のねらいといたしましては、国有林一緒経営するよりも、町村におまかせしてさらに集約経営をお願いできるというような見込みを持つて林野整備を進めることにいたした次第でありますが、ただいま先生お話のように、これが契約にあたつてはまことに合理的な、計画的な経営をするというお約束をいたしましても、結果から見ましてただちに一度に伐採するというような事態も起りまして、非常に私どもも所期に反する結果を危惧いたした次第でございます。これは当初においてさような傾向が非常に強かつたのでございます。従いまして、何としてもこのことはひとり林野行政として困るばかりではなく、地元のためにも長い将来に非常に大きなマイナスを生ずるという危険があると思われますので、その後売り払いました結果に対しまする施業の計画性につきまして、厳重に契約においてお約束をいたしまして、これが実行を監視するという方向をとつておりまして、非常に極端なものにつきましては、契約を解除いたしました例も二、三はあつたのでございますが、最近は契約をいたす前に十分お約束をいたし、その見通しをつけて進めておるのでございますので、当初のようなはなはだしい不都合もないと存じますが、今後も十分に、長い将来これを合理的に経営していただきまして、林野行政一環としての御協力とあわせて地元の長い経済に寄与するような方向に、一層強力な指導もいたして参るということにいたしたい、かように考えております。現在といたしましては、当初ほどさような不都合が頻発するという情勢は大分緩和されたというふうに、私ども考えております。
  13. 永井勝次郎

    永井委員 この林野整備法が進むことによつて払下げの手続が完了したことによつて町村代金を納入する場合に、その代金をどういうふうにするかということを一番心配していたのでありますが、貧弱な町村ほど伺うところによると代金即納が多い。北海道は非常に延納が多いのでありますが、東北地方代金即納しておる。しかもその即納資金銀行融資にまつておるという話を聞くのでありますが、銀行融資は、現在市中銀行短期融資でありますから、このような林野払下げにあたつて短期金融銀行融資によつて代金即納するということは、これはとりもなおさずさつそく山を切るということにほかならないことでありますが、そういうような形において現在整備を取進める事務を運ぶことによつて——林野の希望するところは、払い下げ林野集約利用ということであります。しかし代金の面において短期金融銀行融資によつて代金即納しておる、こういうことになれば、もうこれは切れということと一緒でありますが、そういう関係はどうなつておりますか。しかも中にはこれらの代金即納については、パルプの資本であるとか、あるいは業者資本であるとか、こういうものが裏づけになつて、これらの林野担保として、延納するというようなことでいろいろな制約を受けるよりは、早く町村所有にして、町村でこれらの財産処分が自由にできるような取運びをすることがよろしい、こういうようなことで、もう払い下げるときから切るということが前提になつておるように考えられるのであります。そういう傾向が特に東北地方に多いように考えられるのでありますが、この点は長官はどういうふうにお考えになつておりますか。
  14. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 林野整備臨時措置におきましては、十箇年間の延納措置も認められておりまして、私どもも極力これが資金の無理をさせないようにということで、相当強力に指導はいたして参つたのでございまするが、ただいまお話通り、実は二十七年度実施分につきまして、東北地方予期に反して現金即納が非常に多かつたのでございます。これらの内容をしさいに検討いたしてみますると、お話通りうしろ業者がバツクいたしておりまして、それによつてすでに売払いを約束して資金を確保するというような点がありまして、結果から見まして非常に不都合を生ずる危険がございました。中にはややもすると、国有林側現金即納を慫慂したというようなことを言われまして、現金即納が多かつた事態もあるのでございますが、さような指導は当初から一切いたしてはおりませんが、さような事態もあつたのでございます。二十八年度につきましては趣旨を徹底させまして、延納措置利用相当程度お進めをいただいておりますので、最初に不都合らしきものの現われた事態は、その後相当大幅に緩和されつつあると思つておりまするし、残余の分につきましても、極力この延納措置利用していただくということによりて資金の手当の無理を除去いたして、安定した姿において経営をしていただくということに進めたい、かように考えております。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 払い下げ林野政府担保にとつてあるところでは、ある程度監督指導が可能でありますが、代金即納によつて所有権を全然譲渡してしまつた分についての監督指導は、十分できないと思うのでありますが、そういう関係はどういうふうにお考えになつておりますか。払い下げは今後においても起る問題と思いますが、そういう関係には、町村財政の実力その他を考え資金出所等も十分に検討して、山を食い荒す一部のボスの食い物になるというようなことを、みすみす見のがすことは妥当ではないと考えますが、そういう点の取扱いについて、どういうふうにお考えですか。
  16. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 契約にあたりまして計画的な植伐計画をいたしておりますが、監督あるいは指導につきましては、その契約に基いて国有林側といたしましても指導をいたすことは可能なのでございますが、実際問題といたしまして、完全に所有権の行使のできる山につきましては、森林計画制約以外には法的な制約はなくなるということでございまするので、ただいま先生の申されました御不安のような点は、われわれも実は多少の不安を持たざるを得ないのでございますが、全体を通じますると、特に無理をして即納いたしたというのは当初の問題でございまして、最近は延納契約の分が大部分でございますのと、さらに私どもは、それを今後処理いたす者にも徹底してお勧めいたして行くという考えでおりまするので、全体を通じて特に不都合な危険はそれほどないのではないかと思つておりますが、極端な場合に、全然契約を無視して、一時に大面積の伐採を行われようとするような事実が事前に発見できた場合には、契約の解除をも契約従つて実施いたしたいとまで実は覚悟をいたしておる次第でございまして、この点は売り払いました際にも、事前十分徹底をいたしておる次第でございます。
  17. 永井勝次郎

    永井委員 林政は今一つの転換期に来ておる、こう思います。どういうふうな方向にどういうふうに転換するかということについては、これはその計画の基礎である国土計画というものと日本経済自立という、そういう基盤の中で林政の問題を考えて行かなければならない。林政自体の中においても、たとえば林野面積において、あるいはその蓄積において、あるいはこれらの施業案において、あるいは需給の計画において、あるいは国際的、国内的いろいろな今後の経済諸政策の一環の中において、これらの問題は科学的に検討され、積み上げられなければならない問題であつて、そういういろいろな条件というものが不整備な現在において、林野庁がどのようにしやつちよこばつ計画を立ててみても、それは客観的な諸情勢の中からくずされて来ることは必至であると考えます。従つてまずそういう国全体の経済的な基盤というものを確立して、その中で林野行政の合理的な計画というものを立て、それが新しい事態に即応して行く態勢へ順応させて行かなければならない、かように考えるのであります。従つて現在では、現政府のやつておることは何かというと、現象面だけおつかけて、その基本の問題を投げておるということで、非常にさか立ちした経済になつておるわけでありますが、そういうような段階におきましては、たとえば林野整備であるとか、保安林であるとか、こういういろいろな問題については、少くとも林野林地を失うという問題については、きわめて消極的、最小限度に食いとどめて、将来の林政の正しい発展の上の障害になるような条件をできるだけつくらないようにして行く、こういう態度で臨むことが、現在の段階においてとらなければならない態度ではないか、かように考えるのであります。従つてこの林野整備について一年間延期されたということは、その一年の期間にさらに対象になる地域拡大して行くとか、あるいは整備性格がかわつて行くような方向においてこれらの問題が取扱われるとか、そういう間隙を与えないように、先ほど来長官の答弁のありました線に沿うて、これらの問題を最小限度事務処理にとどめておく、やむを得なければ、残余の三万七千町歩内外のこの未処分関係についての限度にとどめるという態度で臨んでいただきたいということを、希望を付しまして私の質問を終ります。
  18. 井出一太郎

    ○井出委員長 芳賀貢君。
  19. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は前の本委員会において、保安林整備臨時措置法の中で第四条と第六条の関連において、第四条の規定というものは非常に弱いのではないかということを指摘して、長官との質疑応答を行つたわけでありますが、その場合長官の御答弁によりますと、この点は将来森林法の一部を改正することによつて補強するというような御意思の表明があつたわけでありますが、この機会に森林法の改正等に対して、いかなる意図を持つておられるかという、一応の構想をお伺いしておきたいと思います。
  20. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 森林法施行以来、いろいろ小さな問題も起つておりますが、主として森林法を改正して参りたいと思つておりますのは、保安林整備と関連いたす問題でございますが、二十五条に規定いたしております保安林につきましては、一応農林大臣の責任において指定解除をいたすということになつておりますが、全保安林に関しまして、実質的にこれを行います場合には、この姿で置きますれば、実際には都道府県知事に委任して実査等をいたし、これによつて形式的に農林大臣が責任を負う場合の方が多いということが考えられますので、特に広範囲において保安効果を必要とするような地域はつきり限定いたしまして、国土保全のための保安林についても、農林大臣の責任範囲と実施を明確にいたすという点が一つ。その他のものについては、実情に応じて受益者が主体となつて、この保安林を盛り立てて整備するという考え方から、地方長官に権限を移す分を明確にいたしたい。さらに保安林と申しますよりも別途の特殊の目的、国土保全以外の目的を持つ、たとえば風致、衛生、魚つき等々の目的を持ちますものについては、保安林という名称を一応はずしまして、現在仮称で保護林という名前を使つて整理をいたしてみておりますが、さようなことにいたしまして、これはほんとうに特殊の受益者の負担において整備するという考えに徹したいという考えを持つておりまして、これもでき得れば整理いたしたい、かように考えております。と同時に国家が大きく投資しなければならない、たとえば保安施設地区の保安施設実施と、その後の維持管理効果の発揮等をめぐりましては、国家投資の将来への公平な受益という立場から、今後におきましてはこれらを含めて、でき得れば相当強度に国が所有して、これを管理経営するというような点をも、森林法においては恒久的に明確にいたしたいという考えを持つているのでございます。これと関連いたします問題では、一応保安林整備臨時措置法が恒久法に切りかえられるという場合を想定いたしまして、整備が合理的に行われるというところまで、森林法をやや強度に整備いたしたい、こういう考え方でおります。
  21. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま長官の申された点は、私もしごく同感に考えているわけであります。この森林法の持つ目的というものが、十分の成果をあげ得る場合においては、現在のような緊急した国土保全等の問題ということは、それほど生じなかつたと思いますけれども、実質的な面を大部分知事に委譲してあるというような形が、末端に対する具体的な指導性とか、そういう点が欠如した点が非常に多かつたと思いますが、これらの点に対しましては、可及的すみやかに法の整備等行われてしかるべきであると考えているわけであります。  なおこの第四条の場合でありますが、これはあくまでも所有者の任意の上に立つての買入れという基本的な原則の上に立つているわけでございますが、こういうような事態が生じた場合においては、どのような取扱いをされるかという点でありますが、国が地区指定を行つて、相互間において買収の実があがらなかつた場合は、これはやむを得ぬとしても、その場合において、所有者が国に対しては売渡しに応じなかつたけれども、爾後においてまた第三者にその地区を売り渡すというような事態も生じないとは限らぬのであります。そういう場合においては、この法律の規定の中においても、もしこの地区指定を受けた山が第三者に移譲されるような場合、譲渡の意思が生じた場合においては、国が優位性を持つておるということを確認して国に売り渡すことにする、そういうようなことはこの法律の中において処理できるかどうかという点でございます。
  22. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 あくまでも合意の上で進めたいという考えでおりますが、特に今回買い上げたいと思われる保安林は、特に地域的に申し上げれば比較的奥地、しかも経済性の低い山を時価で、実際には利用困難である、換価も困難であるというような地域について買上げを進めますので、全体的には割合にスムーズに行くという見通しを持つております。しかしながら、ただいまお話のような事態が起ることは十分あり得る、こう考えております。ただその際にかりに所有が移りましても、その所有者が国の指定いたします保安林の制限事項を十分に盛り入れました森林計画を厳守するという場合には、必ずしもただちにこれを買い上げなければならぬという理由にはならないと思うのでございますが、十年間の経過におきまして所有者がかわつたために不都合が生ずるというようなことになりますれば、これによつてども処理する。さらにその後に不都合の起る問題につきましては、これを恒久法に移します際に、十分にそれによつてのがれるような措置のないように森林法において整備いたしておくべきである、かように考えておりますので、大体実行において不都合なく経過できるという見込みでおるのでございます。
  23. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に買収地に対する税の減免の問題でありますが、第六条の規定による強制買収を受けた地域に対しては税の免除を行うことは当然であると思います。ただ問題は、第四条の場合、あくまでも任意による売渡しであるという場合においては、これは何も国が有権的に買い入れたということにはおそらくならぬと思います。そういう建前に立つて、この法律の中においては、四条による買入れに対しては税の減免の措置を講じておらぬということが出ておるわけでありますが、問題は、国の意思に従つて国に売り渡した者に対しては、税に対する配慮が行われておらぬという問題を常識的に考えた場合において、国に協力した者に対しては普通の税の取立てを行う、今まで六条による保安林整備等に対する施設などの処理を行わなかつた者に対しては、これを有権的に買収して、これに対しては税の免除を行つてやるということは、何か一つの欠陥があるようにも考えられるわけでありますが、これらの点に対する配慮は、この法律の中においてはどこで講じようとしておりますか。
  24. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 その点に関しましてはまことに御指摘の通り、この法律案におきましては、いかにも国の指示に従わないで違反した者が免税の措置によつて保護される、合意によつて協力的に国の施策に順応した方が恩典がないというような結果になるということがありはしないか、私どももその点は相当危惧していろいろ折衝いたしたのでございますが、具体的には強制買収をしなければならないような対象に対しまして話が円滑に進みましたものにつきましても、それらはその対象の事実に応じて、運用によつて不公平のないような措置をとるということで、大蔵省と話合いが進んでおりますので、実質的に不都合はないという考え方から実はかような進め方をいたしておるわけでございます。御指摘の通り多少の不安はあるのでありますが、これは十分協議をいたしまして、正直に、しかも国策に順応していただきます方たちの不公正のないように、十分処理できる一応の見込みを立てております。
  25. 芳賀貢

    ○芳賀委員 かかる観点からいつても、私はこの第四条の弱さというものは、いろいろな意味において期待に沿わない点が出て来るように危惧するものでありますが、時間の関係もありますので、次に国有林野法改正の問題について若干触れたいと思います。この中において、林野整備の期限は今年の六月が三箇年間の終期であると思いますが、それをさらに九箇月延長することが規定されております。当初の計画によりますと、十五万八千二百町歩くらいが整備の一応の対象になつてつたと思いますが、それが結局二十九年度に七万町歩くらい整備せられない地積が残つておるというように、この資料等によつても解釈していいのでありますか。そういうことになりますと、国が林野整備に名をかりて地方公共団体等に売払いを行うというような場合において、なぜこの業績が進んでおらぬかということには、何らかの理由が伏在しておると思いますが、それらの点について簡潔にお答え願いたいと思います。
  26. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 数字の上で見ますと、二十九年度に実施する分がたいへん多いような結果になつておりますが、実際の事務的な処理といたしましては、売払い評価の調査、従いまして地積の確定とこれが評価が一番時間を要するのでございますが、すでにそれらは大部分終了いたしておりまして、あとは真に事務的な処理のみが残つておる分が、七万町歩のうちで三万二、三千町歩、これはもうすでに五月一ぱいもたてば完了するというところまで進んで参つております。さらに三万七千町歩評価調書作成の分につきましても、昨年度内に相当進捗はいたしておりますが、完了いたしてないという筋のものでございますので、これはおそらく六月一ぱいで全部完了いたすという一応の見通しを立てております。従いまして、数学的に終期末に差迫つたようなかつこうにはなつておりますが、実行にあたりましては、でき得べくんば年内に一応これらの対象は完了いたしたいという見込みで、一応の完了の目標を立てております。さらに多少のゆとりをもつて会計年度に合せるということで、九箇月の延長をお願いいたしておる、こういう次第でございますので、数字と事務内容からいたしますと、——数字ばかりではなく、実行といたしましては仕事の分量が、相当程度進んでおるというふうに御了解願つてけつこうだと考えます。
  27. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、これは当初の整備計画を完全に終了させるために、あと若干の余裕が必要であるという考え延長されるのであつて、これにまた計画を追加して整備拡大するという御意思ではないように考えてさしつかえありませんか。
  28. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 さように考えております。
  29. 松岡俊三

    ○松岡委員 今の芳賀委員のお尋ねに関連してのことでありますが、御答弁によつては私どもとして別個に考えなければならぬ問題がありますので、そのおつもりで御答弁を願いたいと思います。今の国有林野整備臨時措置法の期限が九箇月延長になつて、来年度の三月三十一日まででありますけれども北海道東北六県、新潟県の知事の現地における要望の最も主たる点は、国有林野整備の具体的な実施が遅れたこと、第二番目には市町村と部落との競願を調整して円満な進捗をはかる必要があること、第三番目には市町村の要望があまりにも満たされていないこと、この三つの点が延期の要望の重要な主張であります。過去においてどうしても二年間延期してもらいたいということを数回農林当局、林野庁に向つて要望している次第でございます。それがわずかに九箇月になつている。当局の方から申しますならば、これを促進する意味において、いいかげんな、だらだらべつたりになるようなことのないように、かように申さるることも一応私どもとしてうなずかれるのでありますけれども、現地の知事諸公がこういう要望を過去数回にわたつてしているということは、相当な実績を握つてのことであります。これは相当に敬意を払つて、親心をもつて仕事のやりいいようにして、やらなければならない。御答弁次第によつては何らかの処置を講じて、知事諸公の要望にこたえるようにわれわれ委員としては考えなければならぬ。ですからそのおつもりで、現地の第一線にいる知事諸公が一生懸命やつてもなおかつできなかつたときには、これで終りだというようなことのないように、含みを持つておやりになるお考えがあるかどうか。一生懸命やつてもなおやれなかつた市町村の要望があまりにも満たされていないという点について、見解の相違だなどということのないように、第一線にある知事が一生懸命やつてもできなかつたということを認め、三月三十一日一で断然終りだというようなことのないという含みのあるお返事をいただければ、私どもは別個の考えを持つ必要はないので、さようにお考えの上にお返事をいただきたい。その答弁によつてどもは別個の考えを持たなければならぬ。
  30. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 ただいまの東北七県知事協議会の御要望に関しましては、私どもへも代表県の知事さんから直接御要望を承つております。ただそこに事務があまりにも遅滞しているということで数字をおあげいただいておりますのは、昨日も申し上げましたが、十月現在の数字をもつてお示し願つております。その後相当急速に進展いたしておりますので、その点はお話合いをいたしました結果、現在進捗いたしている数字によつて御了承いただいております。さらに部落と地元との競合によつて事務が非常に遅れている、かような事態は青森県において特に多かつたのでございますが、これらの事態関係の皆様方あるいは第三者等の御仲裁等もありまして、順次片づきつつありますし、すでに一応落着した町村も二、三はございますし、ただいま進行しております分も、大体お話がつくという見通しはついております。これらの問題が十分御納得の行く点において処理される期間も、私どもは年度一ぱいを経過すれば可能であるという見通しを立てております。なお地元町村等の御希望に対しまして、きわめて満たされないものであるということ、これは当初においてはさような実情もあつたのでございますが、最近実施しております面につきましては、順次御了解願つております。東北地方あるいは北海道等につきましては、何度も申し上げております通り国有林の実在の姿から行きまして、相当のニユアンスをもつてこの問題を処理するということで、その後さらに現地に趣旨を徹底させまして御相談しておりますので、決して満足をお与えするところまで必ずしも御相談がこの法案においてはできない面もあるかとは存じますが、一応納得の行く線まではこの法案の結了までには十分御相談をいたし得る確信を持つております。なお根本の問題につきましては、先般申し上げました通り、さらに根本問題として総合的に近い将来において押し進めるということを、ぜひとも相談をいたさなければならぬ、かような考えを持つておりますので、近く各知事の協議会等も行われるというお話を承りましたので、直接出向いて皆様方のいろいろな御意見も拝聴して、スムーズに当面の問題の処理とあわせて今後の問題を処理する資料に活用させていただきたいということでお約束をいたしておりますので、御心配をかける点はまずなかろうと一応見通しを立てております。
  31. 松岡俊三

    ○松岡委員 当局としてのお考えはわかります。昨日も東北六県の知事と私は会つて話しているのであります。ただいまの長官の御説明では、それぞれもう了解を得ている、確信があるとおつしやるのであるが、むろん確信がなければできないことでもありましようけれども、昨日知事が非常な要望をしている。岩手県、青森県は特にはなはだしい。山形県はやや実績を示しておりますけれども、そのように非常に要望しているのですから、今後一生懸命にやつてもできなかつたときは、と私は言つている。あなたの方では必ずできますと言いますが、できなかつたときにはそれで打切りとするというのではないことをもう一ぺん承らないと——あなたの方は確信がある、確信があるとおつしやる。それはこの間からよくわかつております。確信がなければならないことですけれども、それでもきのうまで東北六県、新潟県の長官連中がかように御熱心に要望しているのですから、私どもとしては、この一線にある知事の要望も考えてやらなければならぬ。その間をとつてただいまのような御質問を申し上げている。確信があることはよくわかりますけれども、どうしても現地でできなかつた——相手があることで、一人相撲じやないですから、そのときは、ということを私は言つている。ですからその含みの御返事をいただきたい。
  32. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 御趣旨はよく了解いたしておりますが、国有林野整備臨時措置法の規定いたしております範囲内においてでき得る範囲のことでは、御相談をいたして一応御了解を願う自信を持つている、こう申し上げている次第であります。さらにその範囲を出ずるような問題が東北にはあることは先生も御承知の通りでございますが、この問題はいかに林野整備臨時措置法の期間を延長いたしましても、解決できない問題が残されているのでございますから、これは近い将来において別途に新しい方法をもつて相談をしなければ、とうてい完全に——これはなかなかむずかしい問題でありますが、御相談できると申し上げ、おるいはできないとお話になりましても、そこにはこの整備法改正だけでは完全にできない問題があると、私は率直に思つております。この問題は別個に、しかもなるべく早い機会に御相談をいたさなければならない。そこで、この法律の施行期間において、できるだけ御了解を願うという確信は持つておりますが、いま一段進んだ問題に関しましては、さらに御意見も聞き、いろいろ御審議を願つて、なるべく早い機会に解決をいたしたい、こう申し上げざるを得ないのでございます。
  33. 松岡俊三

    ○松岡委員 私はこれ以上にというのではない、ただいまきめていることでもうまく行かなくて残るような問題が必ずあり得ると思うのです。そのときにただいま長官のお示しのようなぐあいで、その範囲内においてできなかつた場合には、それを打切りにするようなことのないようにということを私はお尋ねしておるのです。別個の問題は、長官のお説のように私は了承します。その範囲内で終らなかつたときには、それは打切りにするのではないということをお示しを願いたい。
  34. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 どうも見解の相違になるかもしれませんけれども、私は、十分な時間がありますし、現在の進捗状況から言えば、必ずやり得ると思つておりますが、もし万一残るようなことがありましたら、これは必ず完了いたすという措置は当然お考えをいただかなければならぬし、その措置はとらざるを得ぬ、かように考えております。
  35. 松岡俊三

    ○松岡委員 ただいまの御答弁で私は了承しました。
  36. 芳賀貢

    ○芳賀委員 国有林野整備臨時措置法関係に対しましては、来年三月一ぱいに整備計画を完了させるという自信は持つておられると思いますので、その点は期待いたしておきますが、またこれが長期化して不定期的にばらばらにやるというようなことでは、これは非常にマイナスになると考えますので、この点は能率的に、また松岡さんの心配されたような点も促進さるべきであると考えます。この国有林野法の今度の改正点は、ただ単に第三章関係の貸付とか使用、売払い等の減免措置を主としてうたつているように見られるわけでありますが、この減免という意味は、結局勘案するということになると思われます。これらの減免を講ずという行為の陰には、多分に勘案する場合の情実等も加味される危険が出て来ないとは限らないわけでありますが、これらの勘案というものは、いかなる尺度で減免等の措置を講ぜられるのか、それらの点を一応お伺いしておきたいと思います。
  37. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 これはさように個々の個人的な審議をして判断されるというような基準ではなく、減免されます対象が明確になりますので、それらは例外なく取扱い、かつ減免いたします対象をも個々に明確にいたしまして、それらは全部について公平に減免をいたす、こういうことになりますので、さような心配は私どもないと考えております。
  38. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合には、たとえば災害とかいろいろ減免すべき事象が生じた場合には、農林大臣において一定の対価の基準というようなものを算定してやられると考えますが、そのような処置を講ぜられるつもりですか。
  39. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 災害の程度あるいは範囲等に関しましては、当然一定の基準に基きまして、公平な基礎を出して指示いたすということに相なる、かように考えております。
  40. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この国有林野法は、もともと国の所有しておる林野を、地元の公共団体とか住民に対して、これをできるだけ効率的に利用させる、しかもこれが林野の育成の上においても貢献するというような、地元国有林との相関関係に立つての、お互いに利益が享受できるというような形が法のねらいであると考えますが、これらの、たとえば部分林の制度であるとか共用林野の制度というようなものは、今の段階では、地方によつては十分浸透しておらないような点もあるやに考えられるわけでありますが、わが国におけるところの農業の形態と林業との関係を検討する場合において、山間地等における農業の非常に零細化された形というものは、山に依存しなければ経済が成り立たぬというような現象が非常に多いわけであります。こういう点に立脚して、林野所有形態をいかにしたらいいかというような点は、なかなか軽々に論ずるわけにいかぬと思いますけれども、幸いにして林野を私有して、農業経営一環として総合的な経営ができる農家は仕合せでありますけれども、それらのものを全然所有することができない零細農等に対しては、近接の国有林等を大幅に利用させるということがどうしても必要になつて来ると思うのであります。そういう形態がとられた場合におきましては、結局森林法の中にうたつておるところの民有林に対する一つの社会性を付与するという問題と、国有林に対しても地元住民等に対してできるだけ高度の利用をさせるということと、両々相まつて成果が出て来ると考えるわけでありますが、こういうような部分林の制度、共用林野の制度等に対して、これを今の時代に適合するような形で、もう少し積極的に具現化させる方法をお考えになつておりますか。
  41. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 お説の通り土地所有形態がどういう形態であることが、最も林業の性格からしていいかというような問題につきましては、いろいろ議論もあるかと存じますが、私どもは端的に申しますれば、国営によつて一定の計画のもとに行うということがいいのではないかと考えておりますが、これはいろいろ複雑な問題があると思われますが、少くも現在経営しております国有林を、また別の角度から地元産業と十分密接に関連を持たせて、社会性、公共性あるいは公益性等も加味して経営をして参るということは、当然のことであると考えます。しかしその際に、現在あります利用権益といたしましての部分林の制度の活用、あるいは私有林と総合いたしまして、地元産業あるいは生活等の基盤を確保するための共用林の制度を整備することは、これまた当然のことであると私ども考えております。しかしながら、当然のことが今日までやや趣旨の徹底を欠いて、十分に運営されなかつたということも、これまた私どもは率直に認めざるを得ないのであります。従いまして、昨年の七月に地元制度推進要綱を確立いたしまして、各営林局署を通じてこれが趣旨の徹底と具体的な相談を進めております。従いまして部分林の増強強化あるいは共用林の妥当な整備強化等に関しましては、目下具体的に積極的な推進をいたしておりますが、これはいかに私どもが一方的にこれを推進いたしましても、御了解を願う面においてこれを受入れていただけないと、なかなか実効を発揮し得ない、双方のためにプラスにならないと考えますので、それらの点に関しましては、私ども十分な努力をいたすつもりでございますが、地元方面にも、また外部からも、ひとつ促進方を特にお願い申し上げて、ぜひともこの制度を十分に生かすという方向に進めたいと考えております。
  42. 芳賀貢

    ○芳賀委員 さらにこの地元施設に対しまして、地元市町村に対する交付金の制度がとられておるように考えておりますが、これらの制度は今後も恒久的に、しかもこれが地方公共団体の財政面についても、国有林に対して危険防止とかいろいろな意味において考慮しているという建前の上から見て、これをあくまでも持続し、かつ形式的に流れることのないような、実質的に地方公共団体等の一つの財源としても、これが喜ばれるというふうなことは、どうしても必要であると考えますが、たまたまこういうような点に対ても、大蔵当局などはこれを一般の交付金のようなことに考えて、何らこれが全体の面においてはプラスにならないような結果を招来するような危惧も感ぜられますので、こういう点に対しては、林野当局としてはどのようにお考えになつておりますか。
  43. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 国有林地元交付金は、私どもは今のところ決して税金と見合うものではないと考えております。国有林経営のために有形、無形に地元が御協力願うということに対しまする協力費であるというふうに考えておりまするので、当然私たちは恒久的に地元経済的なある程度の寄与をいたさなければならぬと考えております。あるいはこれを明確に法の上に規定いたして実施するということが妥当であるというような考え方も出て参るのでございまするが、現在におきましては、税との関係等で相当複雑な事情があるのでございまするから、私どもは現在実施いたしておりまするものは、国有林経営立場からぜひとも継続しなければならないという考えでおりまするので、いま少しこれを法規の上で明確化するという手段は考究させていただきたい。実質的にはぜひとも継続、かつでき得れば強化いたして参るように努力いたしたいと考えておりますが、その点をひとつ御了承願いたいと思つております。
  44. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、これとは直接関係はありませんが、戦後の緊急開拓等のために、林野を農耕適地というような判断で開拓したようなことになつておりますが、実際には立木だけ伐採してしまつて、あとはとうてい開墾地にならぬというようなことが生じまして、放置されておるような状態も出て来るのであります。これらは将来を考えましても、全然農耕地としては経済効果は上らぬという地帯があるわけであります。こういう点をただ漫然として放置しておくことは、国家的に見ても非常に不経済なことでありますので、これは将来考究さるべき問題であると思います。たとえば国あるいは地方公共団体等において、これをさらに回収して、買入れ等を行つて、これをまた林野として撫育するような方法をとることが必要なことではないかと考えておりますが、こういう点に対する御研究はなさつておりますか。
  45. 柴田栄

    柴田(栄)政府委員 緊急開拓の場合に、早々の間に計画が推し進められたということで、必ずしも開拓適地でないものが緊急開拓の対象として買収され、伐採だけ行われて放置されておるものがないとは申されないのでございます。この問題は、もし開拓利用できない場合には、すみやかに林地に回復して、経済的にあるいは公益的に活用しなければならぬことは当然のことでありますので、農地法におきましても、さらに適地として買収されたものも、不適地という問題については、適地審査委員会にかけまして再審査いたして、不適地は旧所有者にもどすという措置をとることになつております。ただ開拓関係等のお話を聞きますと、これまた一応開拓計画には入つておりましても、なかなか予算その他の関係計画通りに参らないために遅れて参つておるところもある。現在放置されてはおるが、しかしながら将来使われないと一概に一方的にきめることができない部面もあるようでありますが、農地局とも相談いたしておりまして、長い間、少くとも二、三年放置されているような土地に関しましては、適地審査委員会に再審査を申し出るように、そうして申し出た場合には、ただちに審査をしていただくようにお願いいたしておりますので、それらの問題は速急にこれが解決をはからなければならないということで、具体的に進めておる次第であります。ただ現実の問題として、まださようなところが相当各地に残つておることは承知いたしておりますが、具体的な問題として順次私どもは解決して行きたいと考えております。
  46. 井出一太郎

    ○井出委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  47. 井出一太郎

    ○井出委員長 速記を始めて…。他に御質疑はありませんか。——別に御質疑もなければ、この際福田喜東君より、保安林整備臨時措置法案に対する修正案が提出いたされております。その内容はすでに各位のお手元に配付いたしておる通りであります。この際本修正案の趣旨弁明を求めます。福田喜東君。
  48. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 保安林整備臨時措置法案に対する修正案を提出いたします。その案文を読みます。  保安林整備臨時措置法案の一部を次のように修正する。  (1) 附則第三項中第十四条第五項の改正規定中「第十四条第五項」を『第十四条第二項中「精算金を取得するとき」の下に「または基準日において個人の有する立木及び立木の存する土地保安林整備臨時措置法第四条に掲げる森林等に該当するものについて国有林野との交換があつた場合において、当該交換に因り精算金を取得するとき」を加え、同条第三項中「または土地の上に存する権利」を「、土地の上に存する権利または立木」に、同条第五項』に、「第六条の規定により買い取られた場合」を「の規定に基き買い入れられ若しくは買い取られた場合」に、「買収若しくは」を「買収、買い入れ若しくは」に、「買収され、又は」を「買収され、買い入れられ又は」に改める。(2) 附則第三項第十五条の改正規定中「第六項の規定に基き買い取られ」を「の規定に基き買い入れられ若しくは買い取られ」に、「当該買収」を「当該買い入れ若しくは買収」に、『「又は当該土地の買収により取得する対価の額」を加える。』を『「当該土地の買入若しくは買収により取得する対価の額」を加え、同条第三項及び第四項中「又は土地の上に存する権利」を「、土地の上に存する権利または立木」に改める。』に改める。 (3) 附則第三項中第十五条の改正規定の次に次のように加える。  第十六条第一項中「又は特別都市計画法」を「、特別都市計画法」に、「交換があつた場合において、当該土地又は土地の上に存する権利に換えて土地又は土地の上に存する権利を取得するとき(補償金又は清算金とともに土地又は土地の上に存する権利を取得するときを含む。)は、所得税法第九条又は資産再評価法第九条の規定の適用については、当該収用、換地処分又は交換にかかる従前の土地又は土地の上に存する権利のうち当該補償金の額又は清算金の額に対応する部分を除き、当該土地又は土地の上に存する権利については」を「交換があつた場合又は個人の有する立木及び立木の存する土地保安林整備臨時措置法第四条に掲げる森林等に該当するものについて国有林野との交換があつた場合において、当該土地土地の上に存する権利又は立木に換えて土地土地の上に存する権利又は立木を取得するとき(補償金又は清算金とともに土地土地の上に存する権利又はを又は立木を取得するときを含む。)は、所得税法第九条又は資産再評価法第九条の規定の適用については、当該収用、換地処分又は交換にかかる従前の土地土地の上に存する権利または立木のうち当該補償金の額又は清算金の額に対応する部分を除き、当該土地土地の上に存する権利又は立木については」に、同条第二項中「又は土地の上に存する権利」を「、土地の上に存する権利または立木」に改める。 (4) 附則第三項中第二十条の二の改正規定を削る。  この修正案の提出の理由は、強制買収の場合並びに相対売買に基く任意買取、交換等の場合の税のアンバランスを矯正するの目的をもつてこの修正案を提出する次第でございます。
  49. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいまの修正案に関し御質疑があれば発言を許します。——別に御発言もなければ、これより討論を省略して採決いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めます。  それでは保安林整備臨時措置法案について採決いたします。まず福田喜東君提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  51. 井出一太郎

    ○井出委員長 起立総員。よつて修正案は可決いたしました。  次にただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  52. 井出一太郎

    ○井出委員長 起立総員。よつて保安林整備臨時措置法案は、修正案のごとく修正すべきものと決しました。  引続き国有林野法等の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  53. 井出一太郎

    ○井出委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  この際保安林整備臨時措置法案に対しまして附帯決議を付したいとの提案が足鹿君よりなされております。足鹿君の発言を許します。
  54. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま議決せられました保安林整備臨時措置法案に対する附帯決議を付すの動議を提出いたしたいと存じます。  まず附帯決議案文を朗読いたします。    保安林整備臨時措置法案に対する附帯決議   政府は本法の目的を速成するため、左記の措置を講ずべきである。     記  一、本法施行後における運用の実績を徴し、第四条の規定による買入れ措置強化について検討すること。  二、保安林の保安機能を高度に発揮せしめるため、現行森林法につき再検討を加え、もつて恒久的保安林制度の確立を期すること。  三、国土保全、災害防除の徹底を期するため、治山施設、造林、林道事業並びに海岸その他の防災造林事業強化拡充を行うこと。  四、国土綜合利用の見地から、林道の利用開発を一段と積極化して本来の機能を充分発揮せしむると共に、併せて開拓事業との関係をも考慮して、これが強化促進に寄与し得るよう更に一層の考慮を払うこと。  五、民有保安林を買取る場合、不必要にその個所を拡張する事なく、評価については公正慎重を期し、所有者に不安の念を抱かしめざるよう留意すること。  六、森林資源の過伐を防止し、併せて森林の保安的機能の確保に資するため、パルプ用材、抗木、電柱等につき、利用合理化、未利用資源活用の徹底的強化を期すると共に、止むを得ざる不足分については外材の輸入をし、貿易方式についても検討すること。  以上であります。  過日来長い間の森林三法の審議の経過にかんがみまして、あえてこの附帯決議を付さんといたすのでありますが、必ずしも保安林整備臨時措置法案に付することは当を得ておらない点もあろうと思いますが、趣旨は、森林三法審議にあたつて林野行政全般にも及ぶ趣旨で十分これらの趣旨を今後の運営あるいは施策に織り込まれたいという点であります。満場の御賛成をいただきたいと思います。
  55. 井出一太郎

    ○井出委員長 なお次に国有林野法の一部改正案に対して附帯決議を付したいとの申出永井勝次郎君よりございます。永井勝次郎君。
  56. 永井勝次郎

    永井委員 国有林野法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案を朗読いたします。    国有林野法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議  国有林野整備臨時措置法の実施に当つて政府は左記の事項に注意して運用すべきである。    記  一部の地方公共団体においては、国より売払いを受けた林野の対価を、市中銀行より短期融資を受け、又は業者よりの出資を受けて国に納入し、その結果当該林野の立木を早期に伐採して売払う等の弊害が見受けられるので、いやしくも地元民の福祉の増進に寄与しないような用途にあてられることのないよう、政府は厳に注意すること。  以上であります。何とぞ皆さんの御賛成をお願いいたします。
  57. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいまの両案に対する附帯決議に関し御意見があれば発言を許します。——別に御発言もなければお諮りいたします。保安林整備臨時措置法案について足鹿君の提案の通り、また国有林野法の一部改正法案については永井君提案の通りそれぞれ附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めさよう決しました。  なおお諮りいたします。ただいま議決いたしました両案に関する衆議院規則第八十六条の規定に基く報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めさよう決しました。     —————————————
  60. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際お知らせいたします。先ほど内閣提出酪農振興法案が本委員会に付託になりました。この際本案を議題といたし、その趣旨説明を求めたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めます。それでは本案の趣旨について政府の説明を求めます。平野農林政務次官。     —————————————     —————————————
  62. 平野三郎

    ○平野政府委員 ただいま委員長から御報告になりました酪農振興法案の提案理由を御説明申し上げます。  食糧の増産をはかり、その自給度の向上をはかることがわが国経済自立のための基本的な要件でありますが、このため、食生活を合理化して米食偏重から脱却するとともに現在の農業経営方式を養畜特に乳牛を取り入れたいわゆる有畜農業経営に改善することが、きわめて有効適切な方策でありますことはいまさら多言を要しないところであります。  幸いここ数年間における酪農の発達は顕著なものがあり、乳牛頭数において三十数万頭、牛乳生産高において三百五十万石を越えるに至つているのでありまして、牛乳、乳製品に対する需要も旺盛をきわめ、昨年度におきましては、増産にもかかわらず品不足という現象すら随所に生じたのであります。このような傾向は、酪農発展のためかつは日本農業発展のため大いに慶賀すべきことと存ずるのでありますが、わが国の酪農の現状は、その内容に立ち入つて考察いたしますると、必ずしも楽観し得ない多くの悪条件を備えているのであります。わが国の酪農の持つ基本的な弱点といたしまして、乳牛飼養農家の飼料基盤が弱く、購入飼料により多く依存いたしているため牛乳生産費が高いこと、乳牛の飼養密度が非常に稀薄でありますため集乳費がたいへん高いものにつくこと、従つてまたこれを処理加工いたしまする工場も小規模な非能率なものになり、しかもこういつた工場が濫立しているために中間経費がよけいにかかること等があげられるのでありますが、こういつた傾向は、最近の高乳価によりましてかえつて強まりつつあるように見受けられるのであります。このような悪条件が積み重なつておりますため、わが国の現在の乳製品の価格は諸外国と比較いたしまして著しく割高にならざるを得ないのでありますが、このことは、国民に高価な牛乳、乳製品を供給することになり、ようやく普及して参りました牛乳、乳製品に対する消費を抑制し、食生活の合理化に支障をすら与えることになろうと思うのであります。しかもこのような悪条件のもとにおいて営まれる酪農経営は、一般的に乳価、飼料価格その他の経済事情の変動に影響されるところが大きく、きわめて安定性のない経営になつているのであります。従いまして今後の酪農振興の目標は、これら酪農を取巻く悪条件を急速に除去し、国際競争に耐え得、しかも少々の経済事情の変動にも動じない酪農を建設することであろうと考えるのでありますが、幸い酪農に対する認識の高まつておりまする現在、酪農振興の方向を明示し、豊富低廉なる牛乳、乳製品を供給し得る基盤整備いたしますることは、日本農業発展のための大計であろうと信ずるものであります。以上が本法案提案の趣旨でありますが、以下簡単にその内容を御説明申し上げます。  第一に集約酪農地域の建設であります。自然的経済条件等が酪農に適する地域を選定し、飲用牛乳又は乳製品原料乳の供給地域といたしまして、乳牛の飼養密度が濃厚であり、合理的な酪農経営が得られる地域に育成しようとすることであります。御承知のように昨年以来、政府におきましてはジヤージー種の乳牛を輸入いたし、乳製品原料乳地帯としての集約酪農地域の建設を行つてつたのでありますが、今後はさらにホルスタイン種の乳牛につきましても、乳製品原料乳地帯としてのみならず飲用牛乳地帯として本法により集約酪農地域に選定して、有畜農家創設特別措置法に基いて集団的に導入しようとするものであります。さらにまた集約酪農地域におきましては、従来開発が十分行われていなかつた草地につきまして地方公共団体がみずから積極的に改良を行い、合理的な乳牛飼養の基盤たらしめるとともに、牛乳の集荷処理加工施設につきましても、その設立または変更につき都道府県知事の承認を要するものとし、非能率的な施設の濫立を防止し、牛乳の生産と均衡を保持させようといたしているのであります。  第二に牛乳の取引につきましてその公正化をはかつたことであります。今後酪農の発展に伴い、牛乳、乳製品の豊富低廉な供給が期待されるわけでありますが、その結果ややもすれば、価格変動に伴う負担が農家側により多く、しわ寄せされる可能性もありますので、これを防止し、公正な牛乳の取引が行われて酪農経営の安定に資するよう契約の文書化を促進するとともに、取引についての紛争について簡易かつ公正なあつせんの制度を設けたのであります。  以上が本法の主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願いする次第であります。     —————————————
  63. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際連合審査会開会申入れの件についてお諮りいたします。目下建設委員会におきまして土地区画整理法案、同土地区画整理法施行法案審査中でありますが、御承知の通り現在の土地区画整理事業は、都市計画法及び特別都市計画法に基いて運用され、その施行法案に関する重要事項は、これらの法律において準用する旧耕地整理法の規定によつているのであります。この旧耕地整理法は、明治四十二年に制定され、昭和二十四年に廃止されたものでありまして、その規定は、その後における社会情勢の変化に即応しない部分もあり、また市街地に適合しない部分も多々ありますので、今回の両案によつて、単独法を制定し、関係事項の整理調整を行おうとするものであります。従つて現在の都市拡張の傾向その他の事情から見て、本委員会といたしましても重大な関心を有するところでありますので、この際建設委員会に対し連合審査を求めたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めます。  なお連合審査会の日時等は主管の委員長とも協議の上決定いたしたいと思いますので、委員長に御一任願いたいと思います。 本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十三分散会