○足立
委員 私はこの際各派共同提案といたしまして、
海外移民の促進と
農業移民事業に関する実施
態勢の確立に関しまして決議案を動議として提出いたしたいと存じます。
まず決議案を朗読いたします。
海外移民は、我が国人口問題の解決上喫緊の重要課題であるのみならず、過小農及次
三男対策に悩む我が国農村にとり最も重要な問題であり、我が国農政の基本施策と謂うべきである。而して今後の
移民については単なる
事務的処理に止まることなく、優秀な資質と
技術とを有し、よく受入国側の産業開発に貢献し、且つ現地において自立自営をなしうる多数
農民の
送出に万全をつくさなければならない。
従つて本
事業推進上の根幹となる最重要点は、
対外的には移住範囲の拡張及び現地の受入れ、定着に関する外交であり、
対内的には優良な
農民の
募集銓衡及び教育等これが裏付となるべき内政である。
よ
つて政府は
移民外交の刷新強化を図るとともに、
農業移民については、
外務、
農林両省緊密に
協力し、特に
国内における
募集より
送出に至る間の
事務については、
農林省が従来の経験並びに施設を十分活用して
事務の効率を挙ぐるが如き体制を整え、も
つて本
事業の推進に万遺憾なきを期すべきである。
右決議する。
昭和二十九年四月七日
衆議院
農林委員会
以下きわめて簡単にこの決議案を提案いたしました
趣旨を弁明いたしたいと存じます。
わが国独立後におきます平和外交の推進上、
外務省におきましては非常に
事務繁忙であり、またその
仕事がいかに重要性を帯びておるかということにつきましては申し上げるまでもないのでありますが、その中でも
日本の過剰人口に悩む人口問題を解決するための
移民の問題は、重要中の最重要事項であると私は確信いたします、前回以来の
委員会における
外務省当局、なお本日の
外務政務次官の御
答弁を聞きましても、この点についての
認識は相違がないように観察いたすのであります。ところが前回以来の
委員会における
質疑応答を伺
つておりますと、最も重要な
対外的な
移民外交におきましてもまことに憂うべき点を残しておりますし、のみならず、
国内における
事務的
態勢がいまだ整理されていない。内に乱を残して外に当ることは不可能であります。
外務政務次官の御
答弁を伺いますと、
農林省とあるいは
関係各省と緊密なる
連絡をと
つて調整をはか
つて行くのだ、なお現在
事務当局において熱心に調整をはか
つておるという、きわめて抽象的な政治的な御
答弁でありますが、これだけで私
どもは納得できないのであります。現に二十九年度の
移民計画につきまして、具体的に詳細にわた
つて関係各省に
外務省が
連絡をとり、協議をなさつた事実すら聞いておらないのであります。各
委員からの御
意見もそうでございましたが、今日の
段階において、この大きな人口問題解決のための
移民問題を推進いたしますためには、わが国の外交上か
つて例を見ないほどの困難さを内包しておると私は存じますので、
移民地の拡張、あるいは定着の
対策、あるいは定着後の保護、こういつた問題につきましては
外務当局の外交折衝に一段の飛躍と申しますか、充実をはか
つていただかなければ、とうていその成果は期し得ないと思うのでありまして、そのやさきに
国内の
事務においてすらもいまだに確立していないという
状態では、まことに前途寒心にたえないのでございます。従いまして、この問題につきましては急速に
両省間で協議をされまして、ただいま朗読いたしましたような決議案の
趣旨を尊重されまして、すみやかに御決定あらんことを希望いたすのでございますが、特に念を押すために一言申し加えますならば、前回の
委員会において私も発言いたしましたが、
農林省におきましては各県の
協力を得まして、あるいは各種
農業団体の
協力も得まして、
移民入植に関する
事務はその施設が完備しておるのであります。二十九年度の
予算の額はわずかでございますが、
予算は僅少なりといえ
どもすでに充実した経験と施設を持
つておる。これを活用せずして
外務省が
一元化しようという御
答弁に終始することに問題があるのでございます。この点を
はつきりと割切
つていただいて、事前に十分
連絡をとり、たとえば二十九年度において三千五百人の
移民をするというなら、このうち何百人はどこの地区へ、どういう形態のどういう性質の
移民を出すのだということを
外務省から
農林省に諮り、
農林省はそれを引受けて
募集、選考をやり、
送出事務その他につきてましては
海外協会などを御利用なさることも
けつこうでしよう、しかしいろいろな問題があることは各
委員の発言で御承知の通りでありますから、こういつた今までの問題をこの際払拭して、明朗に、正しい、しかも
移民のためにも温情を持
つてこの
事務が遂行されるように、
外務省の特段の御配慮を願いたいと思うのであります。特に
外務省のこの
事務に対する刷新強化につきましては、単に機構いじりで局をつくればそれでいいのだというふうな簡単な
考え方ではなくて、とかくの批判もある折柄でございますから、ほんとうに人的に強化をしていただいて、いわゆる
外務省のメイン・カレントにある優秀な人材をここに配置いたしまして、省内においてもその発言が重きをなし、
対外的にも最も重要な
国策とも言うべき人口問題解決のための
移民対策が強力に推進できますように、この際
外務当局の特段の御配慮を願うべきものであると私は確信いたすのであります。
なお
農林省におきましても、今までの
外務省との折衝で円満に
話合いがつかないがために、
事務が停滞をいたしております。しかし
予算上
はつきりと認められておるのでありますし、この点につきましてはさらに積極的に推進をいたしまして、万全を期していただきたいと希望いたします。特に昨年あたりILOを通じましてインド
政府から、インドにおける農閑期余剰労力を利用する目的で、農村手工業の指導者の
募集を申し込んで参つたのでありますが、語学と
技術の両立をする適格者がいないために、条件は月給十五万円という好条件であるにかかわらず、一人も送り出すことができなかつたという
事例にかんがみましても、この際
農林省がこういつた人材を養成して、いつ何どきでもこういう問題につきてましても対処できるように準備をなさることこそ
農林省の本務ではなかろうか、かように
考えますので、この点をつけ加えて申し上げる次第でございます。
以上重要な点だけを拾
つて、提案の
理由として申し上げた次第でございます。何とぞ各位の御賛同を願いたいと思います。