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1954-04-07 第19回国会 衆議院 農林委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月七日(水曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 福田 喜東君 理事 吉川 久衛君    理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    遠藤 三郎君       小枝 一雄君    佐藤善一郎君       寺島隆太郎君    降旗 徳弥君       松岡 俊三君    神戸  眞君       足鹿  覺君    井谷 正吉君       井手 以誠君    中澤 茂一君       中村 時雄君    安藤  覺君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         農林政務次官  平野 三郎君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局移民課         長事務取扱)  石井  喬君         外務省参事官  石黒 四郎君         農林事務官         (農地局管理部         入植課長)   和栗  博君         農林事務官         (農地局建設部         災害復旧課長) 大塚 常治君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 四月七日  委員佐々木盛雄辞任につき、その補欠として  降旗徳弥君が議長指名委員に選任された。 同日  委員降旗徳弥辞任につき、その補欠として遠  藤三郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月三日  木炭公営検査強化に関する請願松平忠久君紹  介)(第四一九三号)  同(小川平二紹介)(第四二七六号)  昭和二十九年度農林予算増額に関する請願(池  田清志紹介)(第四一九四号)  国営土地改良事業等就労職員の充実に関する請  願(坂田英一紹介)(第四二二四号)  災害復旧事業就労職員定員増加に関する請願  (坂田英一紹介)(第四二二五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  保安林整備臨時措置法案に関して参考人招致の  件  農業移民に関する件  農林業施設災害復旧事業に関する件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  まず農業移民に関する問題について、前会に引続き調査を進めます。質疑の通告があります。順次これを許します。足鹿覺君。
  3. 足鹿覺

    足鹿委員 私は四月一日の本委員会において取上げられました海外移民の問題につきまして、外務省並び農林省当局質疑をいたしたいと存ずるものであります。四月一日の委員会における各委員質疑との重複を避けまして、なるべく簡潔に行いたいと思いますが、本問題はきわめて重要な問題でありますので、委員長におかせられましても十分便宜をおはからいいただきたいことを、冒頭にお願いいたしておきたいと思います。  海外移民と申しましても、私どもが一番関心を持つております問題は、農業移民の問題であることは申すまでもございません。特に狭小な国土にとじ込められたわが国としましては、人口のはけ口の問題としまして非常に大きいのでありますが、われわれが特に重視いたしますのは、日本の過小農の実情、これに伴う農村の二、三男対策の解決の観点から、どうしても国内における農業経営共同化等の一連の農政対策を含めまして、さらに海外への移住の問題が大きく取上げられて行かなければならないのであります。問題は、ただ単なる移民という問題よりも、日本国内の農政問題に連なるきわめて重要な、根本的な問題である、こういうふうに私ども理解をし、その認識の上に立つてこの海外移民の問題を、過日も熱心に論議をいたしたものである、かように考えておるのでありますが、この間は石黒参事官おいでになりまして、外務省立場なり御意見をつぶさにお述ベになりました。聞くところによると、参事官の制度が私どもよくわかりませんでしたので、あとで聞いたのでありますが、必ずしも外務省を代表する意見とも受取れない面もありまするので、本日は政務次官にも御出席を願つたわけでありますが、外務省政務次官はこの海外移民の問題、なかんずく農業移民の問題について、ただいま私ども考えておりますような基本的な認識の上に立つて農業移民の問題を御検討になり、これに関連する対策を樹立されて行く御所存でありますかどうか、この点について一般的に外務省の基本的な考え方をお伺いいたしたいのであります。
  4. 小滝彬

    小滝政府委員 お説まことにごもつともでありまして、移民はもちろん農業移民のみならず技術移民いろいろございますけれども、現在においては農業移民というものが中心になる。ところで移民対外関係に非常に重要な関連を持つておりまするので、外務省がこの移民問題を主管しておりまするが、移民送出にあたりましては、国内農業との関係というものも十分に認識して、それに十分なる留意をいたしまして、りつぱな移民送出せられるようにしなければならないということは、外務省として常に考えておるところであります。
  5. 足鹿覺

    足鹿委員 農業移民の問題については、われわれと完全に意見が同じである、こういう御意見のようでありますから、さらにお尋ねを申し上げたいのでありますが、優良移民の選出は、ただ単にその移民が成功するかしないかということだけの問題には尽きない。特に初めて三千人余りの農業移民をやる、これは将来の日本農業移民の成否を決するかぎともなることは御存じだろうと思いますが、そういう優良なる農業移民行つて、将来ますますこの移民事業海外に受入れられるためには、問題は具体的になつて来ると思うのであります。すなわちその優良なる移民を選出し、訓練し、そして送出をして行くということについて、問題はきわめて具体的になり、かつ専門的になると思うのでありますが、この間の石黒参事官お話によりますと、海外協会なるものをおつくりになりまして、これに基いて外務省一元化をして行くことが移民に最もいいのだ、こういう方針であるように承りましたが、政務次官はこの点について、外務省を代表していかようなお考えを持つておいでになるか。なぜ一元化しなければならない基本的な理由なり、それについて御説明を煩したいと思います。
  6. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほどもちよつと言及いたしましたように、対外的に一本で行かないと、そたでごたごたしてはいけないというあれもございますので、外務省移民政策及び移民事務取扱つております。ところが実際今御指摘になりましたような仕事をいたしますのに、官庁が直接やるのも一つでありましようけれども、これは官庁事務簡素化関係もありますし、ことにこういう仕事海外においての活動と一体をなさなければならないような関係もあり、しかも海外において活動いたします際に、受入れ国関係においても、国家機関が直接とりはからつているというよりも、委託せられた機関がやる方が都合のいいことが少くないのでありまして、そういう意味でこの一月から海外協会連合会というものを組織して、そしてこれに委託してそうした仕事を行わせるということにいたしたのであります。がしかしそれは今御指摘のように、日本国内にとつても非常に重要な問題でありますから、当然海外協会農林省なり地方庁なりの自治団体援助を受けて、円満なる協力のもとにこれが遂行せられなければならないものと考えます。その協力方法については、協会とそしてそうした最も重大なる関心を持つておられる官庁との関係が円満に行きますように、現に具体的な話合いも行われておる次第でありますから、そうした面は必ず調整せられるものと私は確信いたしております。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 海外協会連合会をつくつて一元化して行く、海外協会をおつくりになることそれ自体意味があるでしよう。ただいまも次官は、円満に各省協力援助を求める、こういうお話でありますが、もちろん国策を遂行して行く場合には、各国家機関協力して行くということはいまさら言うまでもないことだと思います。問題は、具体的にこの海外協会なるものが、優秀なる移民を選考し、これを訓練し、さらに送出をして行く、こういう重大な任務を国家機関にかわつてやらせるために、なぜ海外協会なるものをおつくりにならなければいけないかということの理由が、きわめて薄弱だと私ども思うのです。先日の石黒参事官お話によれば、官庁がやると、役人はひんぴんと転勤あるいは退職等によつて異動をする、そうすると、こういうことについては継続的にやらなければならないから困る、従つて熱心なる者を海外協会に吸収するのだ、こういう意味の御答弁しかなかつたのでありますが、そういうことは海外協会連合会なるものをおつくりになる理由としてはきわめて薄弱だと思う。海外協会連合会ができても、やはり外務省外務省設置法によつて移民問題を一応所管しておられるという立場になれば、勢い外務省のお声がかりになる。送出事務については、農林省においてもこれに対していろいろと指導発言をするということになるのでありまして、その外務省なり農林省というものの所管役人さんは、いつまでもその職におるかというと必ずしもそうではない。特にこういう移民事業なるものをやる人々は、特定の専門技術なり専門仕事になるのであつて、そう一方的に役人異動がひんぴんと行われて、移民事業に支障を来すというような乱暴な人事というものは、私どもはちよつと想像ができない。そういつた面からいいましても、海外協会連合会なるものをつくり――しかもこれは何ら法律的な根拠のない社団法人の組織で出発しておられるように聞いておりますが、一体海外協会連合会をつくるということと外務省一元化するということとは、どういう関係にあるのでありますか。その間の連関性一体どういうふうにお考えになつておるのでありますか。私は必ずしも密接な関連はないと思う。一体この間におけるところの外務省方針はどういうところにあるのでありますか。さらに具体的に御所見を承りたい。
  8. 小滝彬

    小滝政府委員 海外協会つくりました意味については、過日の委員会でも外務省側から説明いたしたと思いますが、この仕事は宣伝とか連絡を多方面にしなければならない点もあり、また今御指摘のように、民間の熱意をも総合して、継続的に行わした方がさらにいいというような関係もありますので、役人仕事でなしに、委託機関においてこうした事務を遂行してもらつた方がより円滑に行くという考えで、またこれまでの過去の経験などを徴しまして、こういう機関を設けることに決定いたしたのであります。もちろん対外的には外務省が一元的に責任を負うけれども、事実上のそうした仕事海外協会にやつていただくことにいたしたのでありまして、今のお話移民選定などについては、もちろん国内農業関係の点も考慮しなければならないと同時に、それを受入れる国の実情ども勘案して考えなければならない点がありますからして、この機関も将来はでき得れば外国にも出張所を設けると申しますか、向うでも到着した後の世話もできるようにしようという考えも持つておるのであります。でありますから国内での選定などにつきましては、御指摘のように十分関係官庁協力する態勢をつくるようにいたしまして、そこで一体となつていろいろな事務が円滑に遂行されるようにいたしたいと考えております。
  9. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと足鹿委員に申し上げますが、今外務委員会で採決をする段階なので、政務次官に五分ほど席をはずして来てほしいといわれておりますから……。どうか政務次官もその点をお含みくださつて足鹿委員の御質問はあなたがいらつしやらないと進行しませんからすぐお帰りになつてください。
  10. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは待つております。
  11. 井出一太郎

    井出委員長 速記をやめて。     〔速記中止
  12. 井出一太郎

    井出委員長 速記を始めて。
  13. 足鹿覺

    足鹿委員 外務政務次官にお伺いいたしますが、移民の問題については、関係官庁が円満に連絡をとつて仕事を進めることが一番いいというお考えのようであります。そのこと自体はまことにけつこうでありますが、先日来の本委員会でいろいろと質疑をしておりますと、必ずしもそういつた点は十分な状態ではないと受取られるのでありますが、外務省設置法移民問題を所管するということがある。その趣旨は、あくまでも内地における第一歩から最終までを一つの省でやらなければ都合が悪い、こういう趣旨でありますか。それとも外務省対外関係なり現地の政府あるいは関係団体というものと、専門立場から円滑に仕事ができるようにするということであり、内地における送出関係のことについては、またその道の専門者がこれに当る。しかし政府全体としては、やはり国策として大きく打出して行くというふうに解釈し、そういう見地に立つて円満に仕事をして行く、こういう解釈でありますか。何か外務省一元化をし、海外協会というものをつくるということは、とにかく何から何まで外務省がやらなければ一元化でないのだというふうにもとれるのであります。関係各省が独自の立場からこれに予算を持ち、専門立場から移民問題に対して積極的に乗り出して行くということが、一元化に反するというようにもとれるのでありますが、政務次官はこの点についていかようにお考えになつておられますか。もし農林省送出関係仕事が、農林省所管をしておつて悪い、一元化趣旨に反するということになりますと、移民は船なしには行けません。船は運輸省所管であつて、現在移民船も十分にない。移民が十分に行かないことは、移民船がないということにも大きな原因があるやにわれわれは聞いておる。そうすると、これは運輸省ではあるが、これも外務省一元化しなければいけないことになる。一元化ということは、関係省自主性立場において国政を分担し、しかも最終的には統一した国政、統一した方針が貫かれるということにわれわれは理解をし、外務省設置法の中に移民事務所管するということは、その中にあつて対外関係が大きい関係上そういうことがうたわれておるのではないかというように理解するのでありますが、一元化ということは、仕事を何もかもみな外務省がやらなければ一元化趣旨に反するのでありますか。その点先刻政務次官は、円満に関係省話合いをして行くということをしばしば繰返され、四月一日の本委員会においても、石黒参事官も同様の御趣旨を言つておられました。しかし具体的な問題になつて来ると、必ずしも官庁のセクショナリズムだとは断定もいたしかねますけれども、何かその間にしつくりとしたものがないようにも受取れる。一元化ということは、今私が述べたような趣旨における一化元、そういう意味お互い連絡して、円満にこの大事業を進めて行くというふうに理解してよろしゆうございますか。円満を好まない者は何人といえどもないのでありまして、問題は、その内容をどういうふうにして円満に積み上げて行くか、その過程においていろいろな問題が起きて来ると思うのでありますが、政務次官いかがでありますか。
  14. 小滝彬

    小滝政府委員 ある省の主管事項であるからといつて、それだけでやらなければならないというようなことはありません。これは今までやつておるところでも、御存じのように調達庁中心になつて一つの問題をやつておりましても、大蔵省も外務省もこれに関係するということになつておるのと同じであります。ただ、今御質問中心である送出事務というようなものを、完全に農林省関係だけでするかといえば、その点には私ども疑いを持つものであります。県庁というようなものも関係があるし、農林省関係を持つておられると同時に、送り出したあとは結局外務省責任を持たなければならない、外国の事情に適したような人が選ばれなければならないという点もありますので、この移民政策及び移民に関する事務というものは、外務省中心になつてつて行くのだという意味で、私一元的にとりはからうということを申し上げたわけであります。円満という言葉でははつきりしない、それじや具体的にどういう方法をとるかということでありますが、これは事務的にいろいろの段階について話合いをすれば、解決できるのじやないか。たとえば一応の申合せをつくるのも一つ方法でありましよう、もつと具体的なことについてのとりきめをするのも一つ方法でありましようが、そういうやり方によりまして、この移民事務が、日本全体としてできるだけ有利に展開するように、私どもは最善を尽したいと考えております。
  15. 足鹿覺

    足鹿委員 次官の御答弁は非常に抽象的にお言いになるのですが、他省関連をして悪いとは思わないという御趣旨、その通りだろうと思うのです。ただ私の言つておりますのは、一元化方針に必ずしも反することではない、こういうふうに思うのです。外国事例ども、この間問題になりましたから申し上げることは省略いたしますが、要するに農林水産関係海外移民については、外務農林両省共管をして行く。そして対外関係のいろいろな事務外務省がやる。募集から送出までの問題については、対内関係事務として農林省がやつて行く。農林省がやるというと、私ども農林委員会が、何か一方的に農林省の肩を持つというふうに誤解があつては困りますが、そうではない。結局村で移民をやる場合において、こういう事態が現に起きておる。私どもの県は知事も先般南米を三箇月も歩いて来ましたが、非常に移民に熱心な県でありまして、関心を持つておるのであります。移民をやる場合に、その土地なり財産なり家屋敷を一応売つて行く農民がたくさんある。そういう決意のある農民でなければ役に立たない。旅費ももらえるし、行つたら便宜も払つてくれるから行こうといつたようなものではなくして、自分の伝来の土地も売り払い、家も捨てて、海外に骨を埋めるという気持で行く場合には、どうしてもそのあと財産管理、処分については、農業協同組合であるとかあるいはその他の農業団体が、結局においてはめんどうを見なければならぬ。そういつたことは、主管省である農林省中央機関として統括しておるわけでありますが、そうした面は、これから移民がだんだん盛んになれば必ず起きて来る。今でもそういう事例はあるのです。あれが南米に行くそうだということで、その財産をねらつておる連中がある。どうせ手放すならたたいてとつてやれというような事態も必ず起きて来る。また金融の問題にいたしましても、農業関係の点についてもいろいろと協力したい団体はあるでしよう。しかし今のように外務省が少し偏狭と思われるような気持を持つておられる限り、農業団体協力態勢がなかなかできにくいのではないかと思う。従つてただいま申し上げましたように、国内における募集から送り出して行くことについては農林省が当る、こういう趣旨において、ここに昭和二十九年度予算成立を見ました。その予算の中にも農林省所管において六百九十四万四千円、外務省所管において三億八千百八十六万円の予算がちやんときめてある。これの実施に当つて、これを海外協会に一本にして、外務省指導権を握つてつて行くということとは、この予算の性質は私は違うと思う。あなた方は閣議においていろいろと予算を編成され、閣議を経て国会予算が提出される。予算そのものに対してわれわれは大いに意見もあり、基本的に反対の部分もあつたわけでありますが、それは別として、とにかく予算成立をした。しかもその予算の中には、農林省所管のものと外務省所管のものが、政府意思として、また国会意思としてはつきりきまつておるわけであります。そのもの農林省から海外協会に持つて行くという理由はどこから来るのか、私はちよつとわからない。それでありますならば、国会予算審議権というものは非常に薄くなつて、いわゆる行政庁都合によつてはどのようにしてもいいのだ。それはいいと悪いとにかかわらず、非常に国会におけるところの予算審議権というもの、そしてそれによつてきめられた国会意思国家意思というものに必ずしも、私は合致しないと思うのであります。当初からおやりになる考えであるならば、外務省一本でやつて行くという、こういうことであつたはずなんです。ところがやはり当初におけるあなた方の一つ考え方というものは、農林外務両省がそれぞれ国内問題と対外問題とにわけてやることが適当だ、こういうことになつて国会もこの点については別に大きな異論もなくして、この予算成立したものだと、私どもはそういうふうに理解している。これをあえて海外協会なるものに一本に持つて行くということは、いわゆる政府意思に反し、国会意思を無視するという重大な結果を私は招来すると思いますが、この点について外務当局は、円満にやつて行くということは、それぞれの予算の執行についてその自主性を認めながら、総合してうまく移民という大事業をやつて行く、こういうふうに進めて行く意思であろうと私どもは思うのでありますが、この点について何か御異論があるのでありますか。その点をはつきりひとつ、重要な点でありますので、お伺いいたしておきたい。
  16. 小滝彬

    小滝政府委員 今御指摘になりました農林省予算外務省の方でちよだいしようとか、そういうことは全然考えておりません。先ほどから、私の説明はまずいかもしれませんが、募集というような面においての協力関係をつくるということはけつこうなことであつて、それを具体的に話合いをさせておるという状態でありまして、地方で募集するような場合には農林省の御協力を仰がなければならない、ことに農業団体等の御協力を得なければならないので、その意味農林省にも予算がついておることと考えます。でありますから、そうした面においての相互の連絡調整というものを考えましたら、御指摘のいろいろな困難というものは解消せられるのじやないかというふうに、私ども考えております。
  17. 足鹿覺

    足鹿委員 いや、具体的にひとつ御答弁願いたいです。円満にやるということと協力してやるということは、この間からもよく聞いておるのです。でありますからくどいようでありますが、農業関係移民については、対外関係外務省が当る、対内送出関係については農林省主管をして行く。その原則をお互いが認め合つた上に立つて、いわゆる重要国策としてお互いに円満に協力し合つて行く、こういう趣旨であるかどうかということを私は聞いておるのであります。問題を具体的にひとつ政務次官答弁を願いたい。
  18. 小滝彬

    小滝政府委員 私の答弁気持は、具体的な問題は両省で話合うというつもりで申し上げましたが、今もつと具体的に対外関係外務省がやる、対内的な問題は農林省がやるという、二つにわけてやるということについては、私は残念ながら、御意見は承りますが、それに対してそのようにとりはからいますということは申し上げられません。外との関係もございますので、その関係が最も重要でありますから。もちろん募集というような面において、今申しましたように具体的な話合いをして、具体的にどういうやり方をするかということは残つておりますが、そういう点で協力するということはけつこうでありますけれども、そういう問題を共管でやるという場合には、送り出したあとでの責任片一方が持つ、片一方は送り出す方だけの責任を持つということになりまして、この重要な問題が国際的におもしろく行かないようなことになつてはいけないのでありますから、そうした点をよく考えてみますと、外の方は外務省がやり、内の方は農林省がやれというようなやり方では、この移民問題を今後りつぱに遂行して行くことはむずかしいのじやなかろうかというふうに考える次第でございます。
  19. 井出一太郎

    井出委員長 足鹿委員にまた申し上げますが、今参議院の外務委員会提案説明をやるべく向うは待機しておるそうですから十分ばかり……。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 ちよつと今大事なところですから農林次官に――外務次官からただいま私の質問に対してかような御答弁がありました。いわゆる円満ということと協力ということの意味は、私が質問したようなことの趣旨ではちよつと違うように今外務次官が仰せられた。四月一日のこの前の農林委員会におきまして、平野政務次官お話を聞いたのでありますが、外務大臣と話したところが、国内事務に手を出すというようなことは、もう君、これは考えてはおらないというふうに、きわめてあつさり話はわかつた、こういう御答弁でありましたが、ただいまの小瀧外務政務次官の御答弁によりますと、これはまつたく相反する。一体そういうことでこの重大な移民政策の遂行が可能でありますかどうか。いやしくも委員会においてプライヴエートな話で平野さんが私どもに話されたことであるならば、私はあえてこれを取上げるようななやぼさを持つておりません。持つておりませんが、過日農林委員会を深更まで開いた際に、平野さんは数次にわたつてこの答弁をせられておる。今の小瀧さんの御答弁によれば、あなたは、外務次官お話とは全然違つたような御趣旨のことを御答弁になつておりますが、それでいいのでありますか。平野政務次官お話が間違つておるか、外務省の大臣なり政務次官なり当局との間の打合せが不十分なのか、どちらでありますか。両政務次官からいま一応さらに御答弁を願いたい。
  21. 小滝彬

    小滝政府委員 私は根本的に違つておると全然考えません。今あなたがそういうふうに全然二つにわけてばらばらにしてやれとおつしやるから、そういうことをするとおもしろくないので――前から申しました私の言葉がお気に召さないようでありまするけれどもお互い協力してやるということで行こうというので、今おつしやるように外の方だけは一方が持つ、内の方は一方が持つというのでは円満に行かないということを言つたので、根本的に何ら相違はないと思います。あなたの御質問がそういうふうな御質問でありましたので、そういう画然とわけたようなことはできないということを答弁したつもりでございます。
  22. 平野三郎

    ○平野政府委員 ただいま外務政務次官から申し上げました通り、根本的には何らこれは問題はないと存じます。先般岡崎外務大臣が申しましたことも、これは先ほど足鹿委員の御指摘になりました本年度の予算においても明瞭でありますように、国内募集等の経費については大蔵省自身が農林省予算をつけておるくらいでありますから、政府としては当然この国内事務については農林省でやることも認めておる。従つてまた外務省もそれを外務省でやらなければならぬということを言つておるのではないということで、この点は問題はないと存ずるわけでございます。ただごく末端の事務的な面において若干の微妙な感があるわけでございまして、この点をただいまいろいろ調整検討いたしておる、こういう趣旨でございます。
  23. 足鹿覺

    足鹿委員 どうもよくわからない。要するに主管事務についてはおのおの専門に当る、しかしそれを全然貫いて、お互いがセクシヨナリズムに立てこもつてやることがいい、そうしなさいと私は言つておるのではありません。そういつた一つお互い専門立場から、国策としては、全体としては円満にかつ協力して、あとうる限りこの海外移民の成果が上るようにはかられることは、これは言うまでもないことなんであります。ところが実際の問題としては、今私が言つたような、あるいは小瀧政務次官が述べられたような方向でないようにわれわれは仄聞をしておる。だからこのもんだいをわれわれは重視しておるわけでありまして、それでなければ別にこういう問題をくどくどと申し上げる筋はないと思う。問題は、おのおのの国家予算がきてまつておるわけでありますから、この予算を完全に執行して行く、その態勢そのものについては御異議はないわけですね、両政務次官とも……。その後において、いわゆる全体としてのチーム・ワークをとつて行く、こういうことに理解してよろしいということでありまするならば、あまりこの問題だけに時間を空費いたしましても恐縮でありますから、これ以上申し上げませんが、少くともこの送出事務送出関係のいろいろな選考、訓練等については内部の――農林省はもちろんでありますが、農業団体というものの協力態勢なしにはこれは将来できません。ことしはわずか三千五百人の送出計画だそうでありますが、これはどこがお調べになつたかしれませんけれども、この間の本委員会においては、きわめて微々たるものであつて、これで移民国策だなどということは少してれくさいではないか。これは与党の人たちもそういう御意見であつたのです。こういつたことは、少くとも大きな計画を立てるならば、やはり年次計画をつくり、その年次計画の第一着手としてこういう形で、こういうことであるならば、われわれとしてはある程度理解できますが、昭和二十九年度においてわずか三千五百人を送る、その経費として四億近い経費を見る、しかも官庁が直接やつても別にさしつかえなさそうなものを、海外協会なるものをつくり、しかも各府県にその協会をつくつてそうして行くといわれますが、それはただではできません。現にその経費としても、外務省関係におきましても、移民事務委託費として三千万円からの経費が組まれておる。この中で日本海外協会連合会に六百九十七万二千円という経費が組まれておる。しかも一方においては農林省において六百九十四万四千円というものがやはり移民関係国内問題で組まれておる。そうして政令二途に出るような、同じようなものがこういうふうに別途に組まれておる。どこに一体海外協会つくり、そして国内事務を委嘱する。また農林省農林省として、移民募集や現地の調査やあるいは移民の訓練、講習等の委託を受けてやつておる。一体そういう必要がどこにあるでありましよう。もしこういつたような内地に関するところの募集、調査、あるいは訓練というようなことは、それこそ今小瀧さんの言われるように、農林省におやらしになつて、そうして農業団体協力態勢を十分まとめ上げて行く、こういうことであつてこそ、私はりつぱに行くのではないかと思う。別に海外協会をおつくりなつつて、府県との関係ということをおつしやいますが、府県というものと府県の海外協会というものは、具体的に一本どうつながるのですか。結局従来のいろいろな協会の事情を見ますと、府県のその担当者がやはり協会の重要なポストにすわつておる。これは府県の役人ですよ。今度の海外協会の機構というものはどういうふうになつているかしれませんが、具体的には海外協会と府県の県庁というものとは、一体どういうふうにつながるのですか。これは別個に事務所を建てて、そうして別な機関をもつてつて行くものではおそらくありますまい。知事を会長にするとか、あるいは担当部課長等をその幹事にすえるとか、何らかそういう関係においてやつて行く、しかもそれは募集事務関係中心でありまするから、農林関係の役職にあるものがおそらくつくでありましよう。そういつた実情から見て、私どもどうも納得が行かない。なぜそうあらねばならぬか、従来の実績ということを小瀧さんはおつしやいますが、この間中村委員がかつての自分の体験を中心に述べられた、あとでまた述べられるでしようから私は触れませんが、従来の体験で海外移民の会社は失敗ですよ。移民ではなくして棄民なんです。日本人を海外に持つて行つて捨てるようなことをやつて、非難ごうごうたるものがあり、その被害を受けたものがずいぶんある。その愚をなぜ協会なるものをつくつてつて行くか、われわれはその点について了解することはできない、私は別に海外協会に対して何らの恩怨はないわけです。その従来の実績といわれるが、従来の日本移民政策というものはうまく行つておりません。それははつきりしておる、それをまた同じような、こういう民間団体をつくつておる、しかも法的な根拠は何もありません。しかも三億八千百八十六万円という大金を事実上においてはこれを使つて行く、しかも話に聞いてみると、現地の受入れ機関なんかのいろいろな組合の名称を使つているそうでありますけれども、その名称は名称として、内容は結局移民ボスというか、そういつたようなものが一つの組合の名称を使つたり、あるいは団体の名称を使つておるということが現地の声であります。私どももこの問題に対しては熱意を持つておりますから、いろいろ調べておりますが、そういう声があります。なぜそういつたものをつくらねばならないか、私どもは了解に苦しむ。まず国家国家責任においておやりになつたらよろしい、海外協会なるものを別につくつて、もし失敗したときには、海外協会がやつたことだからといつて政府は逃げるつもりかもしれませんが、そういうへつぴり腰で何ができるでありましよう。移民政策などというものは、もし失敗したら国家責任を負う、そうして次にはこういう対策をもつて完璧を期するという、いわゆる捨身の構えでもつてつて、初めてこの大国策ができるではありませんか、もし万一のときに、おもしろくないものができたときには、あれは海外協会でやつたことだ、だから国家は今後注意いたしますというような、従来の外務省的な考え方一体何ができるでありましよう。私どもはこういう点についてはもう少し反省をされ、もつ移民国策の具体的な構想からその仕事の遂行の体系等については、もつと基本的によく練り直される必要があると私は思う。こういつたことで、はたして所期の目的が達成できるかどうかということを、私ども疑いなきを得ないのであります。そういう点について、外務省はあくまでもこの方針を貫いて行かれる考えであるか、少くともこの点についてはもう少し冷静に反省をされ、過去の実績と言われますが、過去の実績は必ずしも成功ではない、一体どうしたならば新たなる移民国策を遂行して行き得るかということについて、もう少し御検討になつて、さらに大きな年次計画あるいはその他の関連のある対策を樹立して行かれる御意思があるかどうか、今のこの方式をどこまでも貫いて行くというお考えでありますか、これはきわめて重要でありますので、この際お伺いをいたしておきます。
  24. 小滝彬

    小滝政府委員 いろいろ検討いたしました結果、先ほど御指摘移民ボスのようなものがかりにあるとすれば、そういうものをなくすような意味においても、海外協会連合会を作ることが適当であると考えましてスタートいたしたのであります。しかしまだできたばかりでありますので、今御指摘のような点は十分に考慮に入れまして、あやまちないように、そうしてこれからこれがほんとうにりつぱに運営されて行くように、十分外務省としては責任をとつてこれを善導して行く考えであります。なお本年の計画はまことに微々たるもので、御指摘の通り私どもも決して満足している次第ではありません。そこで今後皆様の御協力を得まして、年々移民の数もふえ、そうしてりつぱな移民が出て行きまして、われわれの企図しておる目的を達成するように、外務省として最善の努力をいたしますことを答弁として申し上げておく次第であります。
  25. 足鹿覺

    足鹿委員 お急ぎのようでありますので、くどく申し上げるのは恐縮でありますが、この海外協会なるものの仕事を見ますと、結局政府資金を貸し付けてこれを回収するということに尽きるようです。一体貸付あるいは回収というようなことを言えば、国策会社――会社というと語弊がありますが、会社に近いものだ。そういうものを社団法人か財団法人か、とにかく民間機関をつくらして、これに独占的にやらせて行かなければうまく行かないという根拠は、一体どこにありますか。こういう重大な問題を行つて行く場合には、移民振興法であるとか、あるいは移民に対するところの国策をきめる立法措置があつてしかるべきものと私は思う。それをただ単に任意な外務省のお声がかり社団法人海外協会というものをつくる、それは法的には一体どういうことになるのでありますか。もしこの考えが失敗して政府資金の回収の問題がうまく行かなかつた場合は、一体だれがその責任をどういうふうにして負うのでありますか。考えてみますと問題はたくさん出て来ると思う。しかも現在においていろいろ調査してみたところによると、今までの渡航費は一人当り約十一万円内外のわずかな金でありますが、これを五年のすえ置きにして七箇年賦とし、しかも利子すらとつておる。こういうことではたして渡航がうまく行くでしようか。いやしくも自分の郷土を捨てて海外に骨を埋める、こういう大きな理想を持つて、しかも国内の人口問題の緩和なり、あるいは農村の次三男問題の解決を身をもつて行おうという人間に、五分五厘の利子をとつて行く、こういつたようなこと自体が私どもはどうかと思う。そういうことは事実をもつと検討して、国策で少くとも人口問題を解決するというような大きな考えであるならば、こういつた任意機関海外協会というものについて、それを全面的に委託するという思想自体が、私は少し薄弱だと思う。海外協会なるものは特に政府資金を貸し付けて、しかも競争者を認めないで、独占的にやらして行く法的根拠はどこにありますか。われわれにはこの海外協会なるものの構成、任務、いろいろな点についてはよくわかりません。外務省自体としても御検討になつておるでありましようし、関係庁にもいろいろ御相談になつておると思いますが、それぞれ農林外務両省からこの点について御所見を承りたい。
  26. 小滝彬

    小滝政府委員 この協会を設けましたのは、実際の必要から、この機関に委託してやらした方が一番好都合であるという考え方から出発をいたしたものであります。回収にいたしましても、個々に貸し付けるというのでなしに、この機関をして責任をとらしめて、しかも貸付の仕事もやらせようという考えでおるものでありまするが、この移民に対する取扱いというものは、何もこれで動かないものであるというのではなくして、もちろん移民法というようなものも目下検討中でございます。資金などについても他とのつり合いとか、あるいは大蔵省の関係もございまして、これでは不十分でございましようが、これから先だんだんそうしたお説のような点を具体化して行こうということを考えておるのでありまして、御趣旨の点は十分体してこれからの仕事をとりはからつて行きたいと考えております。
  27. 足鹿覺

    足鹿委員 政務次官がお帰りになるまで石黒さんに伺つておきますが、渡航費を海外協会に一手にやらせて行かなければならないと言うが、それではもし問題があつたときには法的に一体どうなりますか。そういつた重大な国策をやらせるのに、海外協会をつくらねばならない、その方が好都合だということを小瀧さんは言うのですが、好都合というだけでは納得が行かないんです。     〔委員長退席、足立委員長代理着席〕 好都合ということはいろいろ便宜だ、やるのにはよろしいということに相違ないでしようが、こうこうこういうことによつていいということにならなければならぬ。だからこの間のあなたの答弁のように、とにかく海外協会をつくつて役人はしよつちゆう転勤、異動がはげしいから、役人がやるよりも熱心な者がおつてやればよろしいのだ、こういうことならば、役人中心になり、知事が中心になつて海外移民振興対策協議会というものをつくつて、そこで中心を県庁なら県庁が持つ、あるいは国が持つて、これに対して協力態勢をして行く方法もあるんです。別に海外協会なるものをつくつて、これに独占的に資金の貸付から回収をやらせなければいけない、それが好都合だということは一体どういうことになるのでしようか。私にはよくわかりません。その点何かあなたに専門的な御研究があれば承りたい。
  28. 石黒四郎

    石黒説明員 お答えいたします。実は連合会ができます以前には各県の海外協会でありますとか、あるいは特に現地側と連絡のあります協会でありますとか、大体そういうものに渡航費の貸付、回収をやらすことにして出発いたしたのであります。やつてみますと、やはりこの貸付、回収の仕事は、ばらばらになつておりましては外務省責任としてもはなはだ不満足を感じておりましたが、同時に各県に海外協会つくります機運が向上して参りまして、自然と海外協会の連合会というものにまとまつて参りました。われわれといたしましても、それはけつこうであると思いまして、ここに海外協会連合会をつくることを許可し、渡航費の貸付、回収を、ばらばらの機関から連合会に集めまして、先ほど政務次官が言われましたように、行く行くはこの海外協会の支部を各所につくりまして、貸付の回収の事務をこれに当らせたい、かように考えておる次第であります。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 貸付関係の回収はうまく行つておりますか。
  30. 石黒四郎

    石黒説明員 まだ回収まで行つておりません。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 それではうまく行くとか行かぬと言う何らの実績がないじやないですか。うまく行くとか、好都合だということにならないじやありませんか。政府でやつて失敗をした、そこで海外協会なるものをつくつてやらせたならばこういうふうにうまく行つた、こういうのならば納得が行きます。しかし回収についてはまだ何ら具体的に報告をする段階でない、こういうことである。それだつたら一体何がいいのでありますか。少しも私にはわからない。私は言い過ぎかもしれませんが、心配のあまり申しましたように、政府自身でやると、外務省は出先におつて対外外交をやつておられますから、もし失敗したときには外務省が当面のやり玉にあげられる、それよりもこれは海外協会がやつたことだ、こういうふうにあるいはそういう場合も考えておられるかもしれません。第一、話を聞いてみると、あなた方の出先の領事館などでは、きたならしい服装をした海外移民なんかがその玄関に入つて来ることは迷惑する、こういつたような気分が現実にあるのですよ。この開拓なんかやる者は、内地でいろいろ困つて、借金をしてどうにもならないといつたような人々が行くのだから、向うでも苦労しております。そうした者がたまたま相談に行つても、どうもきたならしい者が飛び込んで来て困るというような雰囲気でいては、こういつた世話はおそらく現地ではできませんよ。海外協会なんかがあつても、移民ボスみたいな者が多いから、勢い国家の出先機関である領事館に飛び込んで行くでしよう。そうしたときには、これに応対して行くような親切な措置というものを講じなければならないと思うが、事実そういうふうに行つておらないような情報を私どもは聞いております。私どもは現地のいろいろな声を聞いておる。そういつた点から見まして、海外協会なんかをつくるよりも、国家みずからがやつて行かなければならぬ。今政務次官移民法について研究中である、こういうことを言われました。政務次官おいでになつてからこの点についてはさらにお尋ねをいたしますが、海外協会政府資金の貸出しをやらせ、回収もまだ実際にはいい悪いがわかつておらない、こういうことであるならば、海外協会をつくる趣旨は、こうやつたけれどもうまく行かなかつた、こうやればうまく行くということにはならないのじやないか。海外協会をつくらなければならない理論的な根拠、法的な根拠が、実際上これをやつた方がいいという答弁にはならないと思う。その点はどうですか。
  32. 石黒四郎

    石黒説明員 役所といたしましても、どこか一箇所でとりまとめまして貸付事務、回収事務をやつてもらいたい、その方がすべての仕事の手順として適当であると考えましたがゆえに、一箇所にまとめたのであります。ことに回収の仕事に至りましては、将来のことだというお話がございましたが、まことにその通りでありまして、大使館なり領事館なり大勢の人間を置きましてやりますことは、経費もかさむ次第であります。行きました移民は各地に散在いたしておりますので、現地の受入れ機関を使いまして回収事務に当らせなければならないことは、今からでもわかつておることでありますので、これを統一いたしたものをつくりたいというのがわれわれの考えでございます。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 統一したものをおつくりになる。外務省一元化するという考え方を基本的に持つておる。その一方また別に一つ機関をつくつて統一する。これはやはり一つの問題を二つで処理する結果になるのじやないですか。それであつたならば、もともと外務省なら外務省が、いわゆる渡航後における仕事をおやりになればいいじやないですか。別にその必要はないじやないですか。今までの回収はまだわからぬとおつしやいますが、どうも必ずしもうまく行つていない。利子を五分五厘おつけになつてつても、その利子は払えますまい。また払えないのはあたりまえですよ。内地で借金ができたり、子供がたくさんあつたり、いろいろ困つた事情の者たちの中からこの人間を出しても、なかなか現地の見ず知らずのところに、言語も通じないし、人情、風俗もわからない。しかも原始林の開拓にいどんで行く、そういつた困難な仕事をやつて行く者について、民間団体をつくることは必ずしも私は排撃いたしませんが、そういうこと自体国家が大きな援助の手を差延べてやつて行くのがあたりまえじやないですか。しかもこの海外協会をつくつてただでやれますか。大きな経費を食うじやありませんか。全部で四億足らずの金の中で、海外協会の経費は委託費となつておりますが、この委託経費は相当食うでしよう。この乏しい移民対策費のうちから何%かの経費を食わせて、しかも中心外務省一元化して行く。どうもあなた方の言うことには論理性、一貫性が少しもないじやないですか。この金融の問題については、私はさつきも申しましたが、昔は私ども村におりまして海外に送つた事例もあります。そこで今言つたように借金のかたをつけるというので、当時は産業組合でありますが、産業組合に相談して来ても、産業組合は何ら関係はありません。むしろそういつた場合に、村の農業団体であるとか、あるいはその他のいろいろな農業関係の人たちが、喜んでその人の家財の処理をやり、あるいは金融の道を講じた。そういうようなめんどうを見ようにも、現在海外協会の構成等では一体どういうことができますか。そういう点についてこそ農林省一つ方針を指示し、そうして関係農業団体にも金融あるいは財産の保管、処分といつたようなことに対して積極的に協力し、活用して行くような措置がとられない限り、あなた方が十年間に十万人、二十万人送るという大計画を立てましても、おそらくうまく行きませんよ。一体村から送り出して行くということは、お役人仕事では私はよく行かないと思う。そのお役人仕事関係機関がそれぞれ集つて、これがほんとうに緊密一体となつて、後顧の憂いなからしめて送り出して行くという態勢をつくらなければ、私はできないと思う。この点は外務省ではわからぬと思いますから、農林省に伺いますが、農林省はそういうことに対してどういう対策を持つておりますか。少くとも六百九十四万四千円の予算を持つておりますが、この予算の執行について、私が今申したような農林関係の金融機関を初め、あるいはその他の農業関係の全面的な協力態勢を、どういうふうにして盛り上げようという御所存でありますか、これは農林省に伺いたい。
  34. 平川守

    ○平川政府委員 農林省といたしましては、お話の通り村から送り出します場合には、村当局はもちろん、農業団体あるいは県のその方面の係等々が一致団結していたしませんとうまく行かない。そこで送出の機構として、そういう農業関係の係を中心とし、村当局及び農業団体を全面的に動かせるような農林省としての指令を出し、かつ地方地方においてそういう運用をいたして参りたい、かように考えておるわけであります。そのためには場合によつて農林中金その他の系統団体も全面的に動かさなければならぬ、かように考えております。ただしかしながら、この間の委員会でも申し上げましたように、今でも募集その他についての根本的な問題が、外務省との間において解決いたしておりませんので、私どもとしては、二十九年の予算成立を待つてその点をはつきりした上で行動をとりたい。現在のところは農林省募集には責任を持つてもらいたくないという外務省の御意向でありますから、その話がつくまで待機しておるわけであります。
  35. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して。足鹿委員質問に対して政府答弁が十分でないのですが、海外協会をなぜつくらなければならなかつたかという根拠をあいまいにしておられる。しかしながら国の予算が支出されるからには、支出というものは明確にしなければならぬ。なぜ必要であるかということが明確にならないで、国の費用を出すということは、越権行為であると思う。ところが外務省だげが、移民をやる上にどうも不都合だ、それで海外協会に代行させるのだ、こういうお考えのようですが、そういたしますれば外務省自体がやれないということを白状せられたと思うのですが、外務省だけではやれないから、官権をもつて移民をするということはとかく国際的にも誤解を招くし、そこで海外協会をつくらせるのだ、こういう意味にもとれる。戦前国威を肩に背負つて移民をしたというようなことはとかく弊害が出た。外務省政府の代表であるから、国の威力を移民に背負わせるというようなことは国際的におもしろくないという考え方で、海外協会が生れて来たのか。または外務省自体が手に負えないから海外協会に代行させるというのか。もしも外務省がやれないところを海外協会が背負うという意味であるならば、外務省の費用を一部出さなければならないという結果になつて来たとも考える。どの程度なんですか、明確にしていただきたい。
  36. 石黒四郎

    石黒説明員 実は移民仕事は人を扱います仕事でありまして、内地から送り、現場に参りまして一本立ちができますまで、何かと世話をやかなければならないのであります。戦前におきまする移民やり方については、いろいろの御批判もございましたし、われわれもそれを受けますことにやぶさかではありません。しかしながら組織の会社でありますか、あるいは財団法人でありますか、何らかの組織を持つて移民事業をやつておつたのであります。内地募集、選考にいたしましても、熱心に各県で費用を出して行くところもございます。海外協会というものをつくりましてこれを中心といたし――これが全部の仕事をいたすとは私は申し上げないのであります。先ほど来平川局長からもお話がありましたように、各団体――県及び市町村初め各農業団体等協力を得なければできないのでありますが、海外協会中心といたしまして選考をいたし、そして連合会において渡航費を貸し付けましてこれを出発させる。現場におきてましては、先ほどお話もありましたように、言葉もわからないし西も東もわからないから、これを世話してくれる人間がなければなりません。これまた役人では不適当でありまして、移民ボスではいけませんけれども、しかしながら移民に経験のある人、自分が移民で育つて来た人のうち適当な人を一時委嘱いたしまして、現場に参る通訳指導その他の仕事をさせなければならぬのであります。私が政府役人ではうまく行かないと申したのは、このような仕事、いわゆる実務でございますが、政府の手ではそれらの行き届いた実務まではなかなか参りません。そこでそのような経験のある人をお願いいたしまして、移民事業がうまく行くようにいたさなければならないのでありますが、それらの人々を別々に指揮監督いたしますことも非常に不便でありますので、ここに海外協会連合会なりあるいはその支部なりをつくるということを申し上げたのでございます。
  37. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点だけ……。今までの説明を聞きますと、別に外務省の外郭団体でなければならないという説明にはならない。結局農業移民でありますから、その地方の土質なり農業形態なりというものを把握することが最も望ましい。こういうような説明になるわけです。そうすると外務省の外郭団体でなければならないという説明にはならない。ただ外務省予算をとつて海外協会へ移行させるというだけのことで、何も外務省指導権をとらなければやれないという説明にはなつていない。だれがやつてもよろしいということなんですね。そうするとやはり農業移民に最も便宜方法をとるべきだ、こう結論してもいいんじやないか、そうじやないですか。どうも私には今までの説明ではそう聞える。それを総合監督するには出先機関を持つておる外務省便宜だ、こういうところまで最後におつしやるつもりであつたかもしれませんが、まあその説明はなかつたけれども、実務は海外協会がやる、役人がやるのでは不十分だ、外務省がやるのでは不十分だ、     〔足立委員長代理退席、井手委員長着席〕 それで実務団体をつくつた。そういたしますと別に外務省の外郭団体でなければならないという理由はない。また許可を与えたというが、一体外務省が許可を与えるというのがおかしい。法律的に根拠のないものに許可とか認可なんということはない。許可を与えたということでありますが、そういう言葉じりは別にいたしましても、外務省にあえて権限があるわけではない。全体の国の移民の本質からいつて、最も適切な農業指導をいたすことが最も効果があるということになりますと、別に私は共管について争うわけではありませんが、これは農林省にやらしてもよいではありませんか。土質のことや農業のことは外務省の人は知らない。しかも外交官というものは任期の短い人ですよ。長くいる人はありません。一年も二年もおらない。土質のこともわからない。雨のこともわからない。踊りはうまいかもしれません。そういうことを知らぬ人が一年、二年おつてようやく踊りを覚えて帰つて来るような、そういう人にやらせることは不適当だ、もつと地道な者にやらせよう、こういう考え海外協会ができたといたしますれば、これはもちろん地道に農業を営む農業関係者にやらせることが至当だというふうに私は解釈いたしますから、私の質問はこれで終つておきます。答弁はいりません。
  38. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点。私一人があまりやつても恐縮でありますから、第四点として、移住現地の受入れ態勢の問題について、簡潔に要旨だけ申し上げます。農業移民の入殖地につきましては、事前に入植適地であるかどうかということが、農業的なしかも技術的な立場から調査されなければならぬのでありますが、これは一体だれがやりますか。外務省がやりますか海外協会がやりますか。
  39. 石黒四郎

    石黒説明員 入植地の現場の選定お話かと存じますので、それについてお答えいたします。これは戦前の満州等と違いまして、日本の勢力範囲でもございませんので、その国の政府が指定いたすのであります。
  40. 足鹿覺

    足鹿委員 そんなことを聞いていない。だれがやるのか、外務省海外協会か……。
  41. 石黒四郎

    石黒説明員 受入れ国政府でございます。それと交渉いたしますのは外務省でございます。
  42. 足鹿覺

    足鹿委員 外務省は交渉するだけでありますか。そういつた現地の受入れ態勢の問題については、向う政府だけにまかしておくのでありますか。いわゆる日本拓殖協同組合、アマゾニア拓殖協同組合、アルゼンチン拓殖協同組合、。ハラグワイ及びブラジル拓殖協同組合あるいは雇傭移民組合というような名称のものに相当金を交付するようになつておりますが、これらの人々は何もやらないのでありますか。向う政府にはむろんその責任はありましよう。受入れてくれるのでありますから、いろいろと考えてくれるのでありましようが、やはり送り出す方は日本政府であり、日本の何かの機関がこれをやらなければほんとうにうまく行かないと思うのだが、その点はどうしますか、向うまかせですか。今の参事官答弁ではそのようにとれます。
  43. 石黒四郎

    石黒説明員 ただいまは入植地の選定についてお答え申し上げたのであります。選定は先方の政府と外交交渉いたしましてきめます。それから今お話のことはまつたくその通りでございまして、向う政府にまかせるわけでは決してございません。言葉その他慣れない都合もありますので、今お読み上げになりましたような現地の団体、それは主として日本人がつくつておる団体でございますが、その団体に通訳とか指導とか一般の世話をさせておる次第でございます。
  44. 足鹿覺

    足鹿委員 そういう団体に世話をさせるというお話。でありますが、これらの受入れ機関または受入れ人に対しまして、外務省はどういう監督方法をとつておりますか。いろいろ話に聞きますと、問題があるように聞いております。たとえば行けばまず住宅をつくらなければならぬ、あるいは収穫を得るまでの生活維持なり営農、開拓のための経費が必要になつて来る。そういつたもののめんどうも見るのでしようか。それがはるか離れたところであつて、なかなか監督が――あなた方はやるとおつしやいますが、これらをどういうふうにして厳正に、的確に指導しておられますか。いろいろ問題があることをわれわれは聞いておりますが、監督の点について遺憾の点があるかないか。あるとするならば今後どういうふうにしてこれらの監督をおやりになりますか。
  45. 石黒四郎

    石黒説明員 遺憾の点があるとおつしやいましたが、初期でありますので全然ないとは申し上げない。受入れ機関の弱体な箇所もございます。われわれといたしましては、それをできるだけ補うようにいたして、全体としてうまく行くように努力いたしております。政府といたしましては、これらに委託事務費だけを見ておりますが、向うに行きました移民の営農資金まで見る余裕がございません。それらの点以下は、移民の世話までこれらの団体に頼んでいるわけでございます。これらの団体の強化につきましても、われわれはそれぞれ計画を持ちまして、さらに今後ふえるであろう移民に善処したいと考えております。
  46. 足鹿覺

    足鹿委員 ふえるから善処するということはわかるのです。あなたの立場から当然そう言われるのであるが、どういうふうにして具体的に監督をされるかということを聞いておるのです。具体的な監督方法一体どうされるかということなんです。いろいろ遺憾の点はないとは言わないというお話でありますが、私は、御肯定になつたのでありますから、具体的な事例をここで申し上げることは差控えましよう。差控えましようが、どういうふうにしていろいろな問題の惹起することを防止し、そして適当に国として現地に入植した人たちに、あたたかい愛情の手が伸びて行くような対策をされるかということです。それをどうされますか。たとえば具体的な事例を申し上げますと、金の換算方法も行つた連中はわからないですよ。それがどういうふうに両がえされるかということもわからない連中ばかりなんです。西も東もまつたくわからない。その間にあつて、もし悪質な者が――あなた方はりつぱな協同組合だと思つておられるかもしれませんが、あるいは現地に行つてみれば、だれかボスがその協同組合の名前を使つておる場合もあるかもしれませんよ。それは保証できないでしよう。そういつたことについて、どうして今後監督をおやりになりますか、これは今後移民が盛んになつて来れば、私は非常に重要な問題だと思う。どうしてそれをおやりになるかということなんです。
  47. 石黒四郎

    石黒説明員 御指摘のように、なかなか複雑、困難な問題を含んでおります。と申しまするは、これらの現地機関は現地の邦人でございまして、現地の政府の監督を受けているものでございます。ただそう主要な構成分子は日本人でございます。またわれわれが委託事務費を与えます事実的の関係から、これらの団体を事実上監督するということになるのであります。現在のところ弱体の箇所がございますと申し上げましたが、悪いものを排除することは十分できますが、現在悪いものはおらないと私は考えております。
  48. 足鹿覺

    足鹿委員 時間がないようでありますから、最後に伺いますが、とにかく現在の機構ではうまく行つていない。内地から送出をしそして現地に定着し、それが営農の実績をあげて、生活が安定し永住をする、こういう最後の最後まで見届けて行くということについては、海外協会連合会をつくつてやるとかいうような、そういうことではなかなかうまく行かない。もつとこの問題については抜本的に、根本的に掘り下げて、ほんとうに日本の人口問題の調和をとり、日本の零細農の海外進出ということについて、本格的な対策がとられなければならないと私は思います。そうした場合に、やはり農業技術という問題について十分対策がとられなければならぬ。これは具体的な問題になるのでありますが、戦前は拓務省があつて、この拓務省が現地に指導の専門家を派遣しておつた、こういうふうにわれわれは聞いておる。そういつたところまで進んで行くには、これは相当な対策が立たないと、なかなか容易に解決つかない。現在外務省にも、海外協会連合会にもそういう対策一つも立つておらない。こういう遺憾な状態で、昭和二十九年度に三千五百人の移民を送つて、もしこれがうまく行けばいいが、うまく行かない場合は、行つた連中の不幸はもちろんのこと、将来の日本移民問題の運命を決する大きな問題になると私は思う。現在われわれが仄聞しておるような、いわゆる所管争いあるいは一元化に名をかりて、実情もわからない、農業技術もわからない、農業経営がどういうものであるか、そういつたことも全然知らない人々が、寄つてたかつてこの移民問題をやつて行こうというような意思が、いかに無謀なものであるか、いかに実情に沿わないものであるかということは、あなた方はそれで済むかもしれぬが、日本のわれわれの同胞に対してわれわれは済まぬと思う。そういうことによつてもし犠牲が起きたときには、われわれ同胞に対して責任は負えません。もつと真剣にやつてもらいたい。こういつたことは一役人あるいは一外務省農林省との共管の問題じやない。日本の血をわけたわれわれ同胞が、現地でどうなるかという運命のわかれ目になる。従つてこの問題については、もつと両政務次官は真剣に、抜本的な計画を立てられて、そうして現在遺憾の点があるならば、十分大臣同士でも御検討になり、話合いをされて、そうして今後の問題を十分善処していただきたい。先ほど外務政務次官は、移民法等について今後も考えたいということでありますが、伝え聞くところによれば、外務省移民局設置の構想があるように聞いてもおります。いずれにいたしましても、この移民問題が大きく取上げられ、国策として、しかも相当の財政措置を伴つて行われて行くということはまことにけつこうでありますが、その点については、あくまでも国内農業関係を担当している農林省また農林省以外の農業団体、そうしたものとほんとうに一体となつて、この大事業が遂行して行けるような、大きな国家としての責任態勢を樹立していただきたい。ただ単に海外協会連合会をつくつて、その出先を府県に置くというような、そうした問題じや片がつかない。もつと根本の問題をがつちりきめて、それを国内にも持ち海外にも持つて外務省の外交手腕によつて、うんとこの移民の受入れ態勢を拡充して行く、こういうふうにしていただきたいと思いますが、最後に両政務次官の、今までの私と関係当局との質疑の経過に照して、いかように今後この問題を処理されて行こうとされるか、基本的な御所見、御決意を承りまして、私の質問は、あまり長くなるようでありますから、これで打切りたいと思います。
  49. 小滝彬

    小滝政府委員 私ども決して安易な気持でやろうとするのではなくして、御指摘のように、初期でありますので、いろいろ不満足な点もありますから、十分そうした点を改善して行くように、最善を尽したいと考えます。
  50. 中村時雄

    ○中村(時)委員 これを午前中に締め切つてしまいたいという意向があるので、私の質問の内容というものが非常に制約されてしまうわけですが、今後そういう時間の配置は、よく委員長の方で考慮していただきたいということを御忠告申し上げておきてます。ずつと先ほどから足鹿委員質問、あるいは前の四月一日の委員会の経過を聞いておりますと、外務省農林省の管轄の問題が中心になつて、内容がまだほんとうの線が出ていないようである。そういうように、ただ権利の一つのあり方を、お互い官庁が取上げておる姿そのものの中に、移民という問題よりもはるかにかけ離れた問題の、権力争奪の方が強く出ているように思う。そういうあり方は、お互い官庁としては、十分考慮してもらいたい。これをまず御忠告までに申し上げておきます。そこで、まず外務省お話を聞いておりますと、要するに一元化をして行きたいということが第一点のようであります。その一元化の内容というものが、私にはどうしてもわからない。ただ単に、外務省一元化をして行つた場合の方がいいというお話です。そこでもう少し具体的に、法的にどういう理由一元化方法をとりたいというのか、あるいは政策的に、どういう理由一元化方法をとりたいというのか、その二点についての具体的な説明をお願いしたい。
  51. 小滝彬

    小滝政府委員 私は、法的にという意味はつきりわかりませんけれども政策的には、先ほどから申し上げている通りであります。対外的に外務省としては責任を負わなければならないので、外務省が主となつて関係各省の御協力を得てやつて行くということが一番都合よくこの問題を取運ぶことができることになる、こうした趣旨で申し上げて来たわけであります。法的にと無理に申しますれば、外務省設置法というものに移民関係外務省がやるようになつておりますので、その点から現在の外務省移民政策及び移民事務取扱うことになつておるということを申し上げておるわけであります。
  52. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、外務省の設置法がそういうふうになつているとおつしやるならば、もしそれがないと仮定すれば、農林省中心になつてつてもいいということになる。外務省の設置法にこういうものが出ているのだということになれば、農林省の設置法にでも、農家経済に関する問題は農林省取扱うことになつている。移民に関しては、政令の中にそれがちやんとうたわれておる。そうすると、当然それが協力という意味の限界の問題になる。その協力の問題が、お互いに共同でやつて行くという考え方なのか、あるいはまた、外務省が指示して行つて外務省の一化化のもとに、その指揮下においてやつて行こうとされているのか。その点お尋ねしたい。
  53. 小滝彬

    小滝政府委員 私は率直に申しまして、先ほども言及しましたように、政策面から見て、外務省が主としてやつた方がよろしいと思います。但しその募集につきましては、先ほども抽象的だといつておしかりを受けておりますけれども、これは農林省に非常に関係のあることであり、また農林省は出先機関もあることでありますし、農協とかいろいろな団体がありますから、そういうところと協力してやるというかつこうでいいんじやないか。但し送り出しの問題とか、向うに着いてからの問題などについては、外務省がやつておりますから、そこと十分連絡がなければいけない、そういう関係があります。具体的には今詳細な説明はいたしかねますけれども、双方で話し合つて、最も近い機会に解決に努めるということに努力いたしたいと考えております。
  54. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、こういうふうに了解していいですか。たとえば対外の受入れ折衝あるいはそういう計画に対しては外務省がやる。但し現地のたとえば肥沃度の問題であるとか、入植の問題であるとか、募集の問題であるとか、農業技術の問題であるとか、もちろんまだいろいろこまかくありますが、そういうものは概括して農林省の管轄に入る、こういうふうに了解していいのですか。
  55. 小滝彬

    小滝政府委員 入植の問題などは、向う政府の方の関係もありますので、そういうわけに行かないでしようが、募集などについては、十分農林省協力をお願いするという筋で行きたいのでございます。それじや全然別個に農林省の方でそういうことをとりはからわれるということになれば、実際問題としているいろいろ齟齬を来しますので、そういうやり方は今のところ考えておりません。それはかえつて弊害が多かろうというように考えるのであります。
  56. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、一元的という言葉の内容ですが、先ほどから聞いておると、一元的に外務省所管においてやりたいという話が、全然根底からかわつて来るのです。外務省所管という強い言葉ではなくて、農林省との共管という意味に解釈していいのですか。
  57. 小滝彬

    小滝政府委員 そういう共管という意味でなしに、条約の問題を例にとりますれば、条約は外務省所管しておる。但し、先ほどから説明して参りましたように、その内容については関係省にいろいろまたがつております。そういうやり方をしておるのが、政府のあらゆる問題に対するやり方だと思います。でありますから、どこかに最終の責任者がなければならぬ。そこでこの問題は外務省責任者としてやるという考え方であります。政府のほかの万般の問題と同様に、水産に関しては農林省がやる、しかしビキニ問題が起つたとかあるいは李承晩ラインの問題については外務省がそれに協力するというのと同じ関係だろうと思います。
  58. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうするとますます話がおかしいのです。特にブラジル移民と限定しますが、ブラジル移民中心はどちらかというと農業移民なのです。そうすると外務省は受入れの外交折衝を行われるのであつて、内部的の問題は農林省主管になるような感じがするのです。たとえば昔の移民の場合でも、契約移民と自作農移民と二つあつたわけです。その移民の主体はほとんど農業なのです。それが終戦後いろいろな観点から、今度は外交官的な要素を持つた移民として現われて来たわけです。そういうように考えますと、主として農林省主管になるように思いますので、農林省においても外交折衝をしてはならぬということはないと思うが、それに対してどういうようにお考えになるのですか。
  59. 小滝彬

    小滝政府委員 もちろん国内農業関係農林省主管してやつておられますので、それに関連したことに外務省がお手伝いをしなければならぬのですが、移民といえば日本国内農業と違うわけであります。それに対して、今のお説では、何か共管にした方がいいというお話でありますが、私どもはそうでなしに、向う政府との関係どもあるし、移民というものは、そもそも日本人の海外に出て行くところの問題である、それが主として農業をやるかあるいは技術的な工業面をやるかというような点でいろいろわかれるでありましよう、しかしそれの送出また向うに渡つてからどういうように援助するかという点は、出先機関も持つておる外務省がとりはからうべきであるというのが私どもの見解であり、またそうした方針で進みたいと考えております。
  60. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたはほかの方の移民も云々とおつしやるが、それはもちろんそうです。しかし現実にパーセンテージの上からいつて、ほかの方の移民というものは、ほとんどいはしない。ほとんど農業移民なのです。それに対してあなたは、ほかの方の云々とおつしやいますが、現実の問題から遊離して行つたら困ります。現実にはほとんど農業移民です。そういうような場合にはどうなのですか。
  61. 小滝彬

    小滝政府委員 お説の通りであります。しかし東南アジア方面に技術的な人が、移民といつてはおかしいかもしれませんが、同じような方が向うに出て相当長くおられる。その場合には通産省が主管になるとか、どこが主管になるということになれば切りはない。しかしそれは一貫した移民政策のもとに統合せられて、こうした仕事がとりはからわれるのが、一番適切であると考える次第でございます。
  62. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その問題は非常に問題がありますから、あとで最後の結論をつけることにします。次に、今度民間の協会に、外務省からその所管事項を一元的に移譲するという問題に関して、一、二お尋ねしたいと思います。御存じのように在来の移民制度には、海外興業株式会社というのがあつた。この海外興業株式会社というのが終戦後なくなつておる。ところがこの人的組織を見てみますと、ほとんど昔のそれに関連性のある人たちがやつておる。会長には村田氏、副会長に青木氏、坪上氏、上塚氏、降旗氏、理事に今村氏、吉川氏、勝間田氏、加藤氏、梶原氏、こういう人がなつている。私は加藤さんに、移民政策に対して一体どういう抱負経綸を持つておられるか聞いてみた。ところがさつぱりわからない。あるいはこの中には、全然関係のない大阪商船だとか、三菱銀行の連中が入つて来ておる。こういう人的組織はどこでだれがつくられたか。
  63. 小滝彬

    小滝政府委員 結局これらの方は経験も持たれ、非常に熱意を持つておられると考えます。外務省がどうしなければならぬというような指令をしたことはございません。今加藤さんのお話をなさいましたが、私も加藤さんとは相当親しいのですが、加藤さんは移民問題に非常に熱意を持つておられるのであります。今加藤さんは移民については何も知らぬ、まるで熱意がないようなお話でありましたけれども、私は加藤さんを尊敬しておるものでありまして、非常に熱意を持つておられるということを私は申し上げたいと思います。
  64. 中村時雄

    ○中村(時)委員 熱意の問題と内容の問題とを、あなたほど頭のいい人が使いわけができぬとは思わない。熱意はだれでも持つておる、ここにいらつしやる人はみんな熱意は持つておるわけであります。ところが内容の問題に関して、その組織とか行政形態はどうなつておるか。そういうものの識見と熱意とは別なんです。あなたほど頭のいい人が、そんなちやらんぽらんなことを言つてつては困ります。けれどもそれはそれといたしまして、そこでそういうふうな一元化されて行つた場合、再び昔の海興の連中がここに出て来るわけです。そうすると、昔こういう連中はどういうことをやつておつたか、こういうことをやつておる、たとえば当時移民を一人募集し、送りますと、政府から三十五円とる。また大阪商船からリベートとして三十五円もらつておる。地元におけるところのそれぞれの出張には、一人に対して十円とつておる。昭和何年でしたか、あの北海道で一万人くらい募集して、そうしてブラジルに出しましたとき、このときなんかは、そういたしますと十万円くらいもうかつているわけです。そうすると、これらの出張先の人たちは、何でも人を送ればいいというように職業化してしまつておる。この姿が今再びここに出ようとしておる。あなた方はこれに対して、そういう行き方がはたして正しいと思うかどうか。こういう手数料方式の一つの例をあげてみますと、たとえば船のチーフ・スチユアード、司厨長がどういうことをやつておるか。一万人の人から、移民一人を連れて行くのに一日一銭のぴんをはねても百円になる。ところがブラジルまで行くのに三十数日かかります。それだけのものをぴんはねすれば一躍して財産ができるでしよう。しかも当時は四、五万もあれば十分に食つて行けるという時代です。そこでこの司厨長の権利をとるために二十万円くらいの権利金を使う。それほど移民というものは内実においてはしいたげられておつた。私もそのうちの一人です。そういう点をあなた方はどう把握しておられるか。事実こういう会社にまかせておいて、依然としてこうした方式が出た場合に、責任をどうとるつもりか。私はそうなると思う。これに対しての御見解を聞きたい。
  65. 小滝彬

    小滝政府委員 今まで戦前に移民関係しておられた方の功績というものは認めなければならないと思いますが、同時に御指摘のような弊害もあるかと考えます。でありますからこそ今度は会社などということではなしに、この海外協会の方で一括して、そういう利益ということを全然抜きてにして、ほんとうにそれについていろいろ識見もあり、熱意を持つた人の団体において、公正にとりはからつてもらおうというのであります。スタートしたばかりでありますから、あるいは加藤さんも、その内容についてこれから相談して、いろいろしなければならないことがたくさんありますので、御承知なかつたかと思いますが、この趣旨で――戦前におけるいろいろの弊害があるとするならば、そういうことが起らないようにという趣旨で、今度の海外協会をつくつたという関係でありますから、これからはできるだけうまく、そういう弊害をかもさないように、委託事務を十分りつばに遂行できるように、私ども十二分の注意をいたしたいと考えております。
  66. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたのお言葉は、まことにもつともな抽象的なことを言つておられる。それだつたら、現実にこの協会が大阪商船から二百五十万円、三菱重工から二百五十万円寄付させておるのはどういうわけか。一体これと移民との間に何か関係があるのですか。船会社がこれでもうかるという一つのシステムです。もう一つは今度一万数千トンの船をつくるはずです。そういうことから一つの方向が出て来るわけですが、これと移民関係一体何かあるのですか。
  67. 小滝彬

    小滝政府委員 これは何も特定のところから寄付を仰ぐというのでなしに、資金が乏しいものでありますから、移民に対して非常に熱意を示されているところから、そういう寄付金というものもあるだろうと期待いたします。が、しかし何も大阪商船とかあるいは三菱重工を当てにして、そうした措置をとつておるものではないものと私は了解いたしております。
  68. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたの方でそういう熱意がある熱意があると言つておるから、中川の料亭の問題が起つたり、何でもかんでもかぶりついて、金さえもらえばいいというような事態が起つて来るのです。そういうことの識見なり、一つ関係なり、方法なりがはつきりした上において、こういう寄付金があるとか、いろいろな問題があるのなら納得が行きますが、これには関連があるでしよう。今言つたような裏面においては移民を送り出す、その移民を送り出す一人の金額を見てみますと、たとえば昔であつたら南米まで行くのが二百円です。ところがそれを三百倍にして幾らです、六万円でしよう。現在幾らで送つておりますか、一人の渡航費が十一万三千円です。これほど厖大な費用をかけておるのです。そこで大阪商船が一人移民を扱えば幾らということが割出せるでしよう。当然こういう利益関係がここに出て来る。また三菱重工なんかは、今度一万数千トンの船をつくりますが、そういう関連性もあるわけです。そういうところへかみついて行くのがこういう組織なんです。今まで海興みずからがこういうことをやつておつた。そういうことの肩がわりをしておるだけの話なんです、こういう実績を御承知なのかどうか、お聞きしたい。
  69. 小滝彬

    小滝政府委員 私は過去のことを詳細存じませんが、運賃の方を申しますれば、できるだけ安くさせて、この移民が円満に遂行できるように大阪商船の方も努力しておると考えます。オランダ船などでありますとずいぶん高いような関係がありまして、これに比べれば日本船は相当安くなつておると思いますが、御指摘のようなそういう弊害ができないように、私どもも十分注意しなければならないと考えております。
  70. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたの話ではどうもさつぱり結論が出て来ない。御指摘のように注意をいたしますと言うだけではだめです。御指摘のように注意すると言う前に、いかなる処置をとるかということが大事なんです。こういう事実をあなたは知つておるのですか。調査をしているいないにかかわらず、調査費というものをとつておる。一体それでそういうことが起つた場合に責任がとれますか。こういう調査もしていないのに調査費をとる、そうしてそういう事態が起らないように注意して行きたい、これではほんとうの答弁になりはしませんよ。そこでこういうことをあなた方はしつかり調査をして、結果においてまたこういうことを考えるならいいのですが、そういう調査もしないのに三億数千万円も貸し付けてみるとか、一元的なと称しながらそういう協会に旅費支給をやつてみるとか、こういうことを行つておる。そういうことではたして外務省のあり方というものが正しいかどうか、一体あなた方はそういう調査をしていないというなら何の調査をされるのか、それをまずお聞きします。
  71. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど申し上げましたのは、私が詳細のことを知らないというのでありまして、係の方ではそういう点も十分心得ておるはずであります。調査費というものは、本省の方はそうした面については持つていないというふうに私どもは聞いておりますが、どういう調査費でございますか。
  72. 中村時雄

    ○中村(時)委員 たとえばここに移民事務委託費だとかあるいはその他というようなものが出ておるのです。これは予算の中にちやんと出ていますよ。
  73. 小滝彬

    小滝政府委員 委託費は知つております。
  74. 中村時雄

    ○中村(時)委員 だからその移民事務委託費というのは、やはり移民事務でしよう。事務というのは調査も入るわけでしよう。あるいはその他の中へ入るわけでしよう。違うのですか。
  75. 小滝彬

    小滝政府委員 委託費というのはある事務をとらせるために委託する費用をいつておるのでありまして、外務省の調査費というものがその中に含んでおるというふうに私ども解しておりません。
  76. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今言つておるのは移民問題に限定して言つておるのです。外務省全体の調査費のことを言つておるのじやないのです。そうすると、ここに款項目がちやんと出ておるのです。あなたのおつしやるのは――頭があまりよ過ぎるのかもしれませんが、これは外務省全般の調査費のことを言つておるのではありません。移民に限定して言つておるのです、その中には、委託するのも名目的に言えば一つの調査になるだろうし、あるいはこういう実態を知ることも調査の一つになるでしよう。そういう調査費としての実態を言つたわけです。とりわけて私は外務省全体の調査がどうとかこうとか聞いておるのじやないのです。
  77. 小滝彬

    小滝政府委員 私も外務省全体の調査を言つたわけではございません。実はこの予算のときにも調査費というものを要求いたしましたけれども、大蔵省との折衝ではとれなくて委託費だけになつております。委託費というのは団体へ委託する費用でありまして、それには調査費は含まれておりません。しかしいずれにいたしましても、いろいろこれまでの経験あるいはまた今後どういうふうにやつて行くかということについては、外務省も十分研究し調査もいたしまして、同じ言い分だということでしかられるかもしれませんが、間違いのないようにいたしたいと思つております。
  78. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今予算の面が出ましたから予算の面で一言お尋ねしておきたい。今度の予算を見ますと、農業移民募集、選考、訓練、現地調査の経費が農林省予算に計上されております。まずこれを確認しておきたい。そういうふうな予算ができておると思うのですが、政務次官はどう考えますか。
  79. 小滝彬

    小滝政府委員 私も承知いたしております。
  80. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、それと先ほどの問題から関連いたしまして、予算がそういうふうにできておるなれば、担当実施すべきものがやはり農林省所管としても出て来るわけですが、これに対する所見はどうですか。
  81. 小滝彬

    小滝政府委員 ただ対外的に外へ出て、向うでいろいろ調査するとか訓練するとかという費用で、農林省の費用がついておるのじやなしに、国内での訓練と申しまするか、養成とかいうような費用が出ておるように了解しておるわけでありまして、外の関係につきましては、これは外務省中心になつてやらなければならないと考えます。ただお役人さんの出張費とか、いろいろな事務費というようなものはその中にあるかもしれませんが、全体としてやる場合には外務省の方が中心になつて、この設置法の趣旨によつて万事をとりはからつて行きたい、そうしてできるだけ御協力を仰ぐということにしたいと思います。
  82. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこの見解が、政党人としての政務次官と私の見解と大分違う。私は少くとも予算成立した場合には、やはり国会で認めた一つ国家意思表示なんです。あなた方政党人が政府を形成して、それによつて一つ予算を限定して、それをはつきり打出した以上は、官庁というものはその内容において事務的扱いをすることが中心なんです。あくまでもあなた方は政党人なんです。それはお互いの政党の立場として私たちも敬意を持つております。それがほんとうの姿だと思う。ところが今言つたように、あなた方がこういう事柄をきめられたのです。きめられておりながら今度は外務省へ帰つて来ると、外務省所管において云々ということです。ところが予算の上でははつきり出ておるのです。そうすれば当然それを履行するということよりほかに官庁としてはないはずです。にもかかわらず、外務省側からそういうことを政務次官なり大臣を通じて云々するということは、私はけしからぬと思うのです。これに対して、そういう見解に基いて農林省予算に云々されている以上、その実施の責任農林省にあるのじやないかと思うのです。そこで平野政務次官はどういうふうにお考えになつておりますか。
  83. 平野三郎

    ○平野政府委員 政府といたしましては予算の定まつておりまする通りに執行いたすわけでございます。
  84. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうするとその二人の政務次官の名答弁が出たのですが、どうも考え方が違うのです。この設置のあれを見てみますと、やはり募集、選考、訓練、現地調査の経費が農林省予算として出ている、農林政務次官はその通りやつて行くのだと言つておる、外務政務次官はそうではない外務省がやるのだという。一体どつちなんですか。
  85. 小滝彬

    小滝政府委員 そう言つたのではございません。訓練費や出張費はもちろん農林省についておる、これはもちろん農林省予算従つて実施されるわけであります。だからそれはもちろん農林省所管としてやられる、それに対してはわれわれは外務省として協力するというので、今平野次官がおつしやいましたのと何ら矛盾はないと思います。
  86. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうするとおかしくなります。農林省のこの予算は認める、その場合には農林省が主体になつて外務省協力するというのです。ところが実際の所管云々は外務省が一元的にして行つて農林省にはいろいろな相談はしてみようじやないかということなんです。そうすると食い違つて来るのです。
  87. 小滝彬

    小滝政府委員 私が申しましたのは、移民政策というようなものについては、外務省の設置法にもあるのだから、その通りにやります、農林省農林省立場からそこに盛られたところの予算を実施して行くということになるのでありまして、私が申し上げますのは、移民政策の全体というものはそういうふうに外務省の方でやつておる、それに関連したものでこの予算に盛られておるものは農林省がやるということを申したのであります。
  88. 中村時雄

    ○中村(時)委員 たとえばその移民の中で主として農業移民をやつておる、そのときには農林省が主体なんです。予算の上では農林省はつきり経費をとつて政府も認めておいてこれをやつておる、そうすると、ここに職務の分割ということが考えられる、たとえば受入れ態勢をとる外交折衝は外務省がやる、あるいは今言つた国内的な農業移民募集とか、選考とか、訓練とか、そういう問題は農林省がやる、そういうふうに考えられれば何も外務省がどうする、あるいは農林省がどうするという問題じやないと思う。あなたは外務省の設置法によつて法的根拠を認めるならば、農林省にだつて設置法にはちやんと農業経営に対する問題は打ち出されておる、しかも移民に対しては政令によつてはつきてりしておる、そういうことになつて来る。そうすると頭が二つあつて中でごたごたしているだけの話であつて一体それに対して政府に二つの見解があるのですが、どうしてもそこのところがわからないのです。
  89. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほどから申し上げている通りであります。その間の事務的な調整というものは目下熱心に行われておりますから、齟齬のないように行おうというので、現に努力をいたしておるのであります。
  90. 松岡俊三

    ○松岡委員 どうもこの間からの質問がきようの応答できまつたように思う。さつきの中村君の分割というものができるのではないかと言われたことは、今の答弁はつきり内容的にわかているように思いますが、いかがですか。
  91. 小滝彬

    小滝政府委員 農林省予算農林省において施行せられるのでありまして、そのことを申し上げたのであります。
  92. 松岡俊三

    ○松岡委員 まだ外務次官がこだわつているように思います。移民政策外務省が一元的に政府における責任を負うのだという点を主張されるのはけつこうですけれども、さつきの足鹿君の言われた、ことに中村君の言われたように、今日の日本移民は、農業移民ということでなければならぬことは、万人これを認めておる。何も床屋や洗濯屋その他のものはそれほどいらない、それですからもちはもち屋にまかしたらよいじやないか、ということをこの前私はよく質問した。そうして国際的の移民についても、外務省としての大きい点を考える必要がある、そのことを足鹿君がさつき質問したのです。何だか今の答弁をよく聞いていますと、あなたは承諾されたように私は思います。この点でもう今の質問はつきりしたようですから、もちはもち屋にまかして、農林省には農業移民の方の内地の方の関係は十分におまかせするのだという、ただいまの答弁で終つたように私は思いますから、これだけ申し上げます。
  93. 中村時雄

    ○中村(時)委員 次に今度渡航費の問題にちよつと触れましたから、渡航費の問題に対して一、二お尋ねをしたいと思うのです。たとえば現在皆様方が協会を通じてやつていらつしやるというその問題は、松原あるいはアマゾンの上塚さんですか、このお二人の方に委譲していると思うのですが、その通りですか。これをまずお伺いしたい。
  94. 石黒四郎

    石黒説明員 これは海外連合会に貸付いたしまして、連合会が現地にそれぞれ責任者を置いておりますが、上塚辻移民松原移民それぞれ別々の責任者がおるわけでございます。
  95. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうなりますと、日本国内におけるところの連合会と移民との貸付契約の外国における法律的根拠というものはあるんですか、ないんですか。
  96. 石黒四郎

    石黒説明員 国内的に契約をいたしておるのでありまして、外国において法律的効果はございません。
  97. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすれば金を借りておいて、向うで逃げ出してしまつたらどうなりますか。
  98. 石黒四郎

    石黒説明員 ちよつと私の答弁が誤つたようでありますが、事務官から注意がありましたので、もう一度申し上げますが、その契約を向うで登記さして、向うの法律上の効果も与えるようにいたしておるそうでございます。
  99. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういたしますと、たとえばブラジルの移民について三月二十五日の東京新聞に、「サンパウロ二十四日発サンパウロ新聞=共同」という松原計画の問題ですが、この松原計画においてあなたが今言つたように、これは足鹿委員ちよつと話しておりますのでダブリますけれども移民に対して貸付をやり、何年か先においてこれを回収する。その間において五分五厘の利子をとつておる。この五分五厘の利子に対して、向うでは法的根拠があつてちやんとしておると言いますが、それでは五分五厘に対する利子をちやんと回収しておるかどうか、これをひとつ聞きたい。
  100. 石黒四郎

    石黒説明員 利子の回収を督促いたしております。現在までに入りましたのは一部でございます。
  101. 中村時雄

    ○中村(時)委員 幾ら入りましたか、金額を言つてください。
  102. 石黒四郎

    石黒説明員 数字を持ち合せておりませんので、後ほどお答えいたしたいと思います。
  103. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは後ほど聞きましよう。そこでもしもそれが完全に入つているならばこういうことは起らない。これは御存じだろうと思う。「「松原計画」とよばれているブラジルのサンパウロ日本移民計画はいまや一時中止せざるを得ない状態にのぞんでいる、外務省の種谷清三事務官は三月初めブラジルを訪問、サンパウロ、パラナ両州などのよびよせ移民に船賃を貸与するとの日本政府方針を明らかにし移民受入態勢の具体化について各方面と折衝を行つたが、移民問題の大立物日本拓殖組合松原安太郎氏は君塚駐ブラジル大使をまじえて種谷事務官と会談したさい「組合は解散一歩手前にある、私としてはこれ以上私財を放出できない、移民の世話も適当な中心人物を探してもらいたい」」こういうことを言つておる。そうしてある意味で言つたらこれを投げ出しておる。どうしてこういうような結果になつたかと言いますと、昨年度行われた移民の百二十家族に二千六百コントス、四千六百八十万円になりますが、それだけの金額を松原氏が出している。ところが実際に日本から事務処理としてやつているのは三千万円という状態なんです。これではたして実際にバランスがとれますか。しかも本年度の移民は三千五百家族、そうすると、数億の金になるにもかかわらず、これをこれらの者におつかぶせておつて、利子もとれなければ返金もできない、そういう状態一体たれに犠牲を払わせるか。外務省という一元化からこういう結果がはつきり出て来ておる。あなた方は自分の手落ちの事実の上に立つて物事を判断してもらわなければならぬ。あなた方が協会に流して、向うで組合をつくらしてやつて行つたその実情が出て来ておるのである。これに対してどういうお考えを持つておるのですか。
  104. 石黒四郎

    石黒説明員 実は松原移民は御承知のように昨年から始りましたので、連合会ができます前からの関係でございまして、連合会ができましてからこれを引継いだのであります。今の記事につきましては全部真実であるとは思いません。われわれは松原氏が投げ出したというような報告は一つも現場から受取つておりません。また二千何百コントス使つたという記事が載つておりますが、少しもわれわれは承知いたしません。われわれの知つているところでは千四百コントスを松原氏が銀行から融通を受けまして使つたということを承知いたしております。先ほど申し上げましたように、松原氏を主体とする拓殖組合が弱体であることはわれわれも認めるのでありまして、これが補強につきまして現在準備をいたしておるのでございます。
  105. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その苦境にあつて準備をいたしておるということは、たとえばこの四千六百八十万円のうち三千二百四十万円は新しい内国移民の発足とともに日本政府が肩がわりする約束をしておるということを聞くのですが、こういうことがあるかどうか。
  106. 石黒四郎

    石黒説明員 そういうことはございません。
  107. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたはこういう数字には根拠がないと言うが、これは事実外務省の石井移民課長談として出ておる。「大使館に照会電報を打つた、事実であれば松原氏は戦後移民再開の功労者であつただけに影響は大きい、松原氏の代りにあつせんしてくれる人があつて事務引継などのため入植時期が遅れようから本年度三千五百家族の移民計画は立直しをしなければならない」事実こういうことを言つておるということは、こういう失態を裏づけしておるということが言えるのじやないですか。それともあなたはこういう失態はないのだ、こうおつしやるのですか。
  108. 石井喬

    ○石井説明員 私の談話が出ましたので、私からお答えいたします。照会電報を打つのだということを申したことはございません。そしてそういう事実はおそらくないだろう、しかしたびたび事務官が向う行つて立ち会つておるという話だから、帰つて来たらよく聞いてみる、仮定の問題として、もしそれが事実であれば、これは相当に考え直さなければならぬだろうということは申したのでありますが、それ以上のことは言つておりません。
  109. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、あなたのおつしやるのは、サンパウロ新聞に載つたという共同通信の記事は、新聞社の仮定的事実である、こういうふうに見ておるわけですね。
  110. 石井喬

    ○石井説明員 そうです。
  111. 中村時雄

    ○中村(時)委員 もう一つ最後に地域の選定ですが、現在連邦政府ができておつて、六箇所で地域を配分していますが、これは御存じの通りだと思います。そうすると、地域を選定された場合の配分の状況は、日本における農業経営とあちらにおける農業経営とはおのずから違うわけです。その農業経営の相違点――私たちが移民で行つたとき、一番困つたのはこれなんです。そのときに参事官はこういうことをおつしやつた。この間の四月一日ですが、神戸の収容所において、そういう技術なり、あるいは向うで使うポルトガル語などの語学なり、教養なりというものは十分に教えるとおつしやつた。ところが先般実際に収容所から行つた連中も、そういう農業移民で行くための農業過程におけるところの講習なり、向うの気候、風土あるいは農地、労働あるいは金融、そういうような面に関して何一つ概念的なものは持つていない。そういうことを知つているのはやはり農林省なんです。私たちが一番切望したのは、そういう技術指導をしてほしかつたということだつたのです。これはもう率直なことです。ところがまた再びここで外務省のそういう管轄下に置いた場合に、はたしてそういう実際の指導ができるかどうか。私たちが移民としての立場において一番切望しておつたところのそういう技術の指導であるとか、あるいはそういう内容であるとか、農業経済の問題であるとか、あるいはあちらのマーケツトの問題であるとか、そういう問題に関するところの指導を実際に知つている人たち、すなわち国内的な問題とは違いますが、農林省の管轄においてこういうことは行つて行かなくちやならぬのじやないか。こういうことをひとつ教育指導の上からお願いしておきてたい。それに対して政務次官はどういうふうにお考えになつておるか。
  112. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど御指摘になりました訓練費とか出張費というようなものは、結局そういう技術面についての農林省のとりはからいをした上での予算考えます。でありますから技術面において農林省協力を得るということは必要なことであり、ぜひその点はお願いしなければならぬ点であるというふうに考えております。
  113. 中村時雄

    ○中村(時)委員 結論だけ申しましよう。今まで話をずつとしておると、先ほど松岡さんも言つたように、農林省の主体性という問題ははつきり認めざるを得ない結論が私は出て来たと思います。それともう一つ予算の上からいつてはつきりとこれも認められたということ、そうすると今言つた外務省一元化という問題に関して、今までの外務当局の見解が、ここにおいてはつきりと出て来たと思う。ただ口先は一元化一元化といつているけれども、内容、実質、そういうような面においては、当然二元的の線になつて現われて来ている。しかも今言つた協会というものは昔の組織に返つて行こうとしているだけの話です。その実績は、この通りに移民の受入れからいつても、金の借入れなりあるいは利子の問題なり、貸し付けてやつた金の返金の問題なり、そういつた問題の何らの解決もない。何らのプラスもない。そういう結果が出て来た。ここでひとつの方向を切りかえなくちやならぬ時期に来ているのじやないか。そういう意味において今度農林委員会として一つ方法考えられているようですから、その問題をまず取上げて、委員長からお聞きを願いたい。
  114. 井出一太郎

    井出委員長 降旗君。簡潔に願います。
  115. 降旗徳弥

    降旗委員 実は私は先般来よりこの移民の問題について、各委員の熱心なる質問については傾聴しておりました。共通な考え方は、戦前の移民と、戦後の移民はその意味においても、質においても非常にかわつて来たのである、これは私も同意見であります。終戦直後ブラジル移民の諸君がわが国を訪問されるたびに、私は幾たびかこれらの人々の歓迎の昼餐会あるいは晩餐会を開き、またそれらの人々が母国を訪れることについての便宜をできるだけはかつてやつたつもりなんです。そのときに私が心を打たれた問題は、これらの諸君がその歓迎の席上において申しますことを聞きますと、率直に言つて、戦前移民立場と戦後移民立場というものが非常に違つて来ている。戦前はどなたからかお話のありましたように、棄民という状態のものもあつたでしよう。あるいは故郷においてどうにもならないから、海外行つて何とかしようという人々もあつたでしよう。あるいはそれ以外に、海外雄図の志を持つて行かれた人もあつたでしようが、その中には海外で一もうけをして、そうして錦を故郷へ飾るのだ、あるいはある部分については、旅の恥はかき捨てである、早く金をふところに入れて故郷に帰る。そうして郷党に自分の生活を誇示して余生を終りたい、そういう考えを持つておる者もあつた。しかし戦後に至つては、まつたくかくのごとき考えを持つ者はなくなつた。それは、われわれがブラジルに移民した以上は、ブラジルのりつぱな国民となつてブラジルの土と化そう、これが今日偽らざるわれわれの考えである、こういうことを異口同音に申し述べておられたのであります。私はこの言葉を聞いて非常に感激せざるを得なかつた。戦前の移民状態と戦後の移民状態というものはかくのごとくかわつて来たのだ。―――――――――――――――――この点は大いに考えなければならぬと思うのであります。そこでこの移民の問題は、わが国が戦争に勝つて占領地にわが国の移民を出すのとは違います。わが国は有史以来の大敗戦を喫して、そしてこの敗戦のどん底に陥つたものである。この中から移民を企てなければならぬということは、戦前の状態とは非常にかわつておる。しかもこの移民ということは、わが国がいかに移民しようといたしましても、受入れる国の受入れ態勢ができなければ、いかに移民をしようと思つたところでできるものじやない。先般海外移民の連合会のことにつきましていろいろと辛辣な御批評があつたのでありますけれども、この海外移民連合会というものは急にできたものじやないのです。これは終戦直後において、日本移民問題は御存じの通りに、連合国側の日本に対する感情というものは非常に悪化しておりまして、そしてこの悪化せる連合国の感情の中において、移民という言葉すらわれわれは口にすることができなかつたという状態なんです。しかしながら静かに考えてみますと、日本の政治の一番の弱点は、何と申しましても人口が多過ぎるということであり、物資が少な過ぎるということである。であるからこの意味からしても移民の問題を何とか考えなければならぬ。わが国の前途をどうしよう、そういう考えをもちまして昭和二十二年ごろだと思いますけれども国内におけるところの各種の移民団体の首脳者が集まりまして、この問題を協議して参つたのであります。しかしながらかくのごとき問題を新聞紙上に出し、あるいは世間のうわさに出すということは、われわれ自身としてその当時の国際的環境から、これを慎んで行かなければならぬという立場にあつたのであります。しかしこれらの会合が幾たびか重ねられるうちに、この種団体を統合するところの中央の機関ができ、そしてこの機関によつていろいろと移民の問題を具体的に研究もし、あるいは現地の人々ともしばしば会いまして、日本移民の将来をどうしたらいいか、こういう具体的な相談をして参つたのであります。ところが先ほども申しますように、この移民の問題というものは、政府みずからが前線に立つてやるべき問題じやない。現地の状態からこれを考えてみましても、この日本移民の問題というものは、民間団体にやらさなければその完全なるところの、その優秀なるところの結果を得ることができないのだ。であるから、民間の団体をつくつてこの移民の問題を推進して行かなければならないという結論に達したのであります。この点が外務当局の御答弁の中にはつきりしておらない。この移民の問題を一体外務省がやるのか、農林省がやるのか、あるいは両省共管してやるのかという問題は、われわれが今まで交渉して参りました事態から言うと違つておる。政府みずからが第一線に立つて、入植地までも政府がこれに干与してやるなどということは、もうすでに今日の時代から遅れたものである。であるから政府は陰におつて、表裏一体となつてこの民間の団体を助けて、そうして移民の全きてことを期するということはけつこうだけれども、前線に出てもらうということは日本移民仕事を達成せしむる道でない、こういう意味において連合会というものができてたわけなんです。この点につきましていささか今までの御答弁につきましては明瞭を欠く点がありますから、あらためて外務当局なり農林当局からこの点をはつきりと承つておきたいと思います。
  116. 小滝彬

    小滝政府委員 民間団体にやらした方が結果的によりよいという点、またその方がいいという結論に、いろいろ慎重研究の結果達して海外協会を設けることになつたということはこれまでの答弁でも申し上げたところでありますが、今降旗さんからこの点が明瞭でなかつたということでありますから、もう一度その点を申し上げておきます。外務省といたしましては、そうした団体によつてつてもらう方が、ことに出先の関係において、対外的に向う政府に対してより有利であるということを確信いたしますがゆえに、この協会の御協力を得、これに必要な事務を委託しておる次第であります。
  117. 平川守

    ○平川政府委員 団体そのものにつきましては、外務省の方で認可されておりますので、私の方としてそういう団体がやるがいいか、政府がやるがいいかということについては、直接今まで団体成立関連してタツチしておりません。しかし私ども考えでは、少くとも政府責任を持つてやらなければならぬ仕事である。その実際の実務について、団体というものがいろいろな実務を扱うということはもちろんけつこうでありますけれども、しかし政府責任を持つてやらなければいかぬ仕事である。これは出る移民に対しても当然そうであると思うのであります。そういう意味におきまして、私どもといたしましては、昨年、一昨年は外務省の方から依頼を受けまして、募集について農林省が依頼を受けてやつておりましたから、農林省責任を持つて移民募集いたします以上は、現地において農業が確立するということが、私どもの方で自信がなければ出せない。そこでわれわれの方で責任の持てる技術者を派遣いたしました。しかしこれは事外交の問題でありますから、外務省事務官が班長になつて参りまして、そうして向うのブラジル側の政府にいろいろ技術上の注文をつけました。これはもちろんその注文を聞くかいなかはブラジル側の政府の問題でありますけれども、しかし実際上現地を見ますると、いろいろむずかしい土地がたくさんあるわけであります。これをすみやかに判定をいたして、参りました移民がまごまごせずに農業経営を確立するということは、容易ならざる技術を要するわけであります。そういう意味において、私どもは少くとも農林省の有する一流の技術者を派遣いたしました。その結果はブラジル側からも非常に喜ばれております。大使も非常に喜んでおりますし、ブラジル政府の方も非常に喜んで、むしろこういう優秀な技術者をもつと長期によこしてくださいというような注文もあるくらいでありまして、少くとも技術の問題に関しましては、政府役人が行つたからといつてブラジル側で非常に感情を害するということはなかつたと私どもは確信いたしております。
  118. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいまの責任を持つてやるということは当然な話なんで、政府責任を持つてやられなかつたらたいへんなことなんです。そこでこれは議論ではありませんが、現実の問題として農林省責任を持つておやりになることはけつこうなことだが、しかしながら外務省は連合会という民間団体を育てて、民間団体にやらせることが受入れ国立場から言つても適当なものである、そういう考えでやつておるわけなんです。そうすると農林省は、この連合会についてどういうお考えを持つてやるのか、連合会がなくても農林省がやるのか、あるいは連合会とよく連絡をしてやるというお考えであるか、この点をはつきりしていただきたい。それからさらに外務省が、連合会を民間の唯一の団体としても認めておるわけなんです。そういう意味においておやりになるか、これを具体的にお話願いたい。
  119. 平川守

    ○平川政府委員 私どもといたしましても、実際問題として民間がいろいろ働くことがけつこうであると思つております。ただ政府責任を持たなければならぬということでありまして、従つてその政府責任が持てるような意味の指導なり監督なりを民間にやつて行かなければならない。しかしそういう意味において外務省の方でもただいまの連合会を育てて行く、こういうお考えでありまするならば、私どももその実際の扱いまする仕事については、指導なり何なりをいたさなければならぬと思いまするけれども、その民間団体を使つて行くということについては、それでけつこうであると思います。
  120. 降旗徳弥

    降旗委員 大分話ははつきりして参りましたが、それで再び確認しておきたいことは、外務省は、この移民仕事は、政府が前線に出てするということはよくない。だから民間の団体にせしむることが適当である、こういう考えでいるわけです。農林省はそういうお考えであるかどうかを重ねて承りたい。
  121. 平川守

    ○平川政府委員 その点については、外務省とまだよく相談をしたことはございませんが、ある団体が表に立つてやる、それでもけつこうかと思います。ただ実際問題として、先ほどからお話のありましたように、農業団体とか、村当局なりあるいは県のその方面の専門家とか、こういうものが全面的に協力する態勢ができなければならぬ、そういう意味において、それらの全体の農業機構というものが十分に動くような動き方をさせなければならぬと思うのであります。ただこの仕事についてそういう一つ中心団体ができておつて、その中心団体が表面に立つて仕事をやつておる、これに対していろいろなものが協力する態勢をとる、こういうことであればそれでもけつこうだと思います。
  122. 降旗徳弥

    降旗委員 大分問題がはつきりして来ました。そこで先ほどもいろいろ話が出ておりまするが、農林省はこの移民についての予算を獲得しておるというのでありまするが、その予算はどういう名目のもとに、どれだけの金額が計上されておるか、それを間違いなく御答弁願いたい。
  123. 平川守

    ○平川政府委員 移民募集選考費といたしまして六十五万四千円、移民の現地調査旅費といたしまして二百六十万円、これは先ほど申しましたような技術者を派遣する費用であります。それから移民講習委託費としまして三百六十九万円、合計六百九十四万四千円であります。この移民募集選考費と申しますのは、従来の建前をそのまま踏襲いたしましたので、一応官庁の方で県等を使つて直接に動くような建前にはなつております。
  124. 降旗徳弥

    降旗委員 そこで問題をもう一ぺん切り下げて考えてみますが、今まで各委員からいろいろ論議されたことは、よい移民を送らなければならぬ、そういう意味において移民募集選考ということは、もちはもち屋であるから農林省のすべきことである、こういう話があつたのであります。ところが、総額約七百万に及ぶところの農林省予算のうち、募集選考に計上されておるものはその十分の一に足りない。そこで私の言うことは、何もこういう国策の問題について農林省外務省となわ張り争いするなどということは、これは決して国のためにもなることでもなければ、移民事業を推進し行く上からいつて好ましいことでないということは明らかなことなのであります。でありまするから、私ども立場からいえば、外務省農林省、あるいはさらにこれに加うるに運輸省なりあるいは通産省なり、これらが打つて一丸となつてこの問題解決の衝に当らなければ、移民の問題は決してそうなまやさしいものでないのであります。でありまするから、私はそういう意味において協力されるということについては、各委員が御熱心に論議されたことと私は同一なのです。  そこでこの連合会というものは、何も唐突にできたものでないことは先ほど私が申し上げた通りでありまして、従つてこの連合会には、先ほど平川局長の言いましたごとくに、農林省方面の重要なる人が関与してもらいたいということはすでにしばしば申しているところなんです。現に石黒さんあたりにしましても、私どもが幾たびか訪問いたしまして、この団体に加わつていただくことを懇請しているわけなんであります。先ほど加藤勘十君のお話が出ましたけれども、加藤勘十君なり勝間田清一君に理事に御就任願つたということも、これはやはり超党派的にこの問題を推進して行かなければ移民の実績を上げるわけに行かない、そういう意味において私どもは各政党に対して、党を代表してどなたか一人理事に入つていただきたいというわけなのでありまして、決して個人個人の問題でないのです。でありますから、この連合会についていろいろの見方はあるかもしれませんけれども、連合会自体というものはそういう意味で発足しているわけなんです。従つて連合会が先にできて地方の支部ができたというような質疑応答が行われたようでありますけれども、これはそうじやないのです。今まで終戦以後数箇年の間、各移民団体及び各地方の海外協会というものがしばしば会合し、しばしば論議をし、相談をいたしまして、その結果連合会というものができたわけなのであります。頭ができてあとで手足ができたわけではないのであります。この点ひとつよく御了承願つておきたいと思うのでありまして、私の申しますことにもし違つておる点があるならば外務農林両当局からこの点について御指摘になつてけつこうでありますが、今かような事情において連合会ができたわけなんです。そこで今私どもが一番困つている問題は、連合会が移民募集、選考あるいは訓練、これも当然大きな問題なんです。さらにこの移民に貸し付けるところの渡航貸付金というものが今年度は約三億円でありますけれども、来年度は委員諸君の御協力によりまして、さらに金額は増加するでありましよう。そういう場合に連合会がこれで貸し付け、これを回収するという大きな責任を持たなければならぬわけなんです。そのときに、外務省農林省とが共管である、共管でないということで所管争いのために、今平川局長の言うがごとくに手が出せないでいるというようでは、民間の団体として発足した連合会もその活動の万全を求めることはできないわけなのであります。でありますから私は、この意味において一方的な解釈でなく、一方的な見方でなくて、もう少し問題を堀り下げて、今までの事情を御調査なさつて、いかにこの移民の問題をりつぱに推進して行くかということに協力にあずかりたい、かようなわけなのであります。そこでこの連合会の成立状態というものは今申し上げたようでありますが、結局連合会は中央にある。各府県には海外協会つくりまして、そしてその海外協会は知事の推薦によるものである。多くの海外協会におきましては、知事がその海外協会の会長になつているわけなんです。でありますから連合会の府県におけるところの支部は、その府県の海外協会は知事が先頭に立つて、市町村長の末端に至るまでこの移民募集、選考、訓練ということにつきてまして一応の手順ができておるわけなのであります。でありますから農林省と府県の海外協会との関係をどうおつけになるのか、こういう点を農林省がお考えくださることは非常にけつこうですが、どういうお考えのもとにこの府県を動かそうとしておられるのか、その点を承つておきたいと思います。
  125. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまお話の中に、農林省募集編成の費用が非常にわずかな金である。それはその通りであります。ただ御了解を得たいのは、先ほど申し上げましたように、役所でやる建前になつておりますので、実は私どもの方では、内地の開拓その他の関係で数千人の人員を擁しておるわけでありますが、わずかの移民募集について、その人件費はいらないじやないかというようなことから、そういうものは組んでおらぬのであります。要するにそれらの人々が、御承知のように募集編成のために若干の旅行をするという費用を組んでおりませんために少いわけであります。それから海外協会との関係、県との関係をどうするかというお話でありますけれども、私どもの方はかりに農林省募集編成について責任を持つといたしますれば、先ほどのお話のように、海外協会中心といたすとともに、地方庁の職員各外部団体その他の職員あるいは農民団体その他に主として指令を出しまして、そうして海外協会連絡をとつて、たとえば一緒に会議をやるとか、いろいろな方法をとりまして、連絡をとることに努めております。
  126. 井出一太郎

    井出委員長 降旗君、この一問限りに願います。
  127. 降旗徳弥

    降旗委員 平川局長からお話がありましたが、この市町村の選考というものは、農林関係団体だけでは私はないと思います。学校の関係もあれば、あるいは青年団の関係もあり、あるいは婦人団の関係もあり、いろいろあるのです。しかし連合会がこれらの諸君と了解を得ておるのは、これらの人々は移民の重大性を考慮し、この募集選考ということについては、ほとんど奉仕的に努力してくれる、こう言つておるわけです。でありますから、なるほど農業移民募集、選考に違いないのでありますけれども、これはただ募集、選考しただけで、莫大もない金を貸し付けるという意味から申しますと、それらのことについては、今申しますような農業関係以外の人々の力も借りなければならぬわけであります。ですから、府県の末端は全部農林省関係だけで処理できない問題があるわけです。でありますけれども、元来が農業移民である以上は、農林省の力強い協力を借りるということについては、連合会は全国的に賛成しているわけなんです。しかしながら連合会の立場といたしますと、連合会に来る政府連絡というものは外務省からも来る、農林省からも来る、場合によつたら違つたものも来るというような状態なつたときには、事務を円滑に進行することができない。こういう点が非常に困るというのが今日の連合会の立場です。でありますから、それらの問題について適当な手段、方法が講ぜられるならば、そのことについての希望はあつても、拒否するつもりはないのであります。
  128. 中村時雄

    ○中村(時)委員 ―――――――――――――――――
  129. 井出一太郎

    井出委員長 この際足立篤郎君に発言を許します。足立君。
  130. 足立篤郎

    ○足立委員 私はこの際各派共同提案といたしまして、海外移民の促進と農業移民事業に関する実施態勢の確立に関しまして決議案を動議として提出いたしたいと存じます。  まず決議案を朗読いたします。   海外移民は、我が国人口問題の解決上喫緊の重要課題であるのみならず、過小農及次三男対策に悩む我が国農村にとり最も重要な問題であり、我が国農政の基本施策と謂うべきである。而して今後の移民については単なる事務的処理に止まることなく、優秀な資質と技術とを有し、よく受入国側の産業開発に貢献し、且つ現地において自立自営をなしうる多数農民送出に万全をつくさなければならない。従つて事業推進上の根幹となる最重要点は、対外的には移住範囲の拡張及び現地の受入れ、定着に関する外交であり、対内的には優良な農民募集銓衡及び教育等これが裏付となるべき内政である。   よつて政府移民外交の刷新強化を図るとともに、農業移民については、外務農林両省緊密に協力し、特に国内における募集より送出に至る間の事務については、農林省が従来の経験並びに施設を十分活用して事務の効率を挙ぐるが如き体制を整え、もつて事業の推進に万遺憾なきを期すべきである。  右決議する。    昭和二十九年四月七日          衆議院農林委員会  以下きわめて簡単にこの決議案を提案いたしました趣旨を弁明いたしたいと存じます。  わが国独立後におきます平和外交の推進上、外務省におきましては非常に事務繁忙であり、またその仕事がいかに重要性を帯びておるかということにつきましては申し上げるまでもないのでありますが、その中でも日本の過剰人口に悩む人口問題を解決するための移民の問題は、重要中の最重要事項であると私は確信いたします、前回以来の委員会における外務省当局、なお本日の外務政務次官の御答弁を聞きましても、この点についての認識は相違がないように観察いたすのであります。ところが前回以来の委員会における質疑応答を伺つておりますと、最も重要な対外的な移民外交におきましてもまことに憂うべき点を残しておりますし、のみならず、国内における事務態勢がいまだ整理されていない。内に乱を残して外に当ることは不可能であります。外務政務次官の御答弁を伺いますと、農林省とあるいは関係各省と緊密なる連絡をとつて調整をはかつて行くのだ、なお現在事務当局において熱心に調整をはかつておるという、きわめて抽象的な政治的な御答弁でありますが、これだけで私どもは納得できないのであります。現に二十九年度の移民計画につきまして、具体的に詳細にわたつて関係各省外務省連絡をとり、協議をなさつた事実すら聞いておらないのであります。各委員からの御意見もそうでございましたが、今日の段階において、この大きな人口問題解決のための移民問題を推進いたしますためには、わが国の外交上かつて例を見ないほどの困難さを内包しておると私は存じますので、移民地の拡張、あるいは定着の対策、あるいは定着後の保護、こういつた問題につきましては外務当局の外交折衝に一段の飛躍と申しますか、充実をはかつていただかなければ、とうていその成果は期し得ないと思うのでありまして、そのやさきに国内事務においてすらもいまだに確立していないという状態では、まことに前途寒心にたえないのでございます。従いまして、この問題につきましては急速に両省間で協議をされまして、ただいま朗読いたしましたような決議案の趣旨を尊重されまして、すみやかに御決定あらんことを希望いたすのでございますが、特に念を押すために一言申し加えますならば、前回の委員会において私も発言いたしましたが、農林省におきましては各県の協力を得まして、あるいは各種農業団体協力も得まして、移民入植に関する事務はその施設が完備しておるのであります。二十九年度の予算の額はわずかでございますが、予算は僅少なりといえどもすでに充実した経験と施設を持つておる。これを活用せずして外務省一元化しようという御答弁に終始することに問題があるのでございます。この点をはつきりと割切つていただいて、事前に十分連絡をとり、たとえば二十九年度において三千五百人の移民をするというなら、このうち何百人はどこの地区へ、どういう形態のどういう性質の移民を出すのだということを外務省から農林省に諮り、農林省はそれを引受けて募集、選考をやり、送出事務その他につきてましては海外協会などを御利用なさることもけつこうでしよう、しかしいろいろな問題があることは各委員の発言で御承知の通りでありますから、こういつた今までの問題をこの際払拭して、明朗に、正しい、しかも移民のためにも温情を持つてこの事務が遂行されるように、外務省の特段の御配慮を願いたいと思うのであります。特に外務省のこの事務に対する刷新強化につきましては、単に機構いじりで局をつくればそれでいいのだというふうな簡単な考え方ではなくて、とかくの批判もある折柄でございますから、ほんとうに人的に強化をしていただいて、いわゆる外務省のメイン・カレントにある優秀な人材をここに配置いたしまして、省内においてもその発言が重きをなし、対外的にも最も重要な国策とも言うべき人口問題解決のための移民対策が強力に推進できますように、この際外務当局の特段の御配慮を願うべきものであると私は確信いたすのであります。  なお農林省におきましても、今までの外務省との折衝で円満に話合いがつかないがために、事務が停滞をいたしております。しかし予算はつきりと認められておるのでありますし、この点につきましてはさらに積極的に推進をいたしまして、万全を期していただきたいと希望いたします。特に昨年あたりILOを通じましてインド政府から、インドにおける農閑期余剰労力を利用する目的で、農村手工業の指導者の募集を申し込んで参つたのでありますが、語学と技術の両立をする適格者がいないために、条件は月給十五万円という好条件であるにかかわらず、一人も送り出すことができなかつたという事例にかんがみましても、この際農林省がこういつた人材を養成して、いつ何どきでもこういう問題につきてましても対処できるように準備をなさることこそ農林省の本務ではなかろうか、かように考えますので、この点をつけ加えて申し上げる次第でございます。  以上重要な点だけを拾つて、提案の理由として申し上げた次第でございます。何とぞ各位の御賛同を願いたいと思います。
  131. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの足立君の提案に関し、御意見があれば発言を許します。
  132. 降旗徳弥

    降旗委員 この提案の全体的な意味については私も賛成であります。そこで、今日連合会が現実に移民募集、選考している立場において一番困つている問題は、かつて農林次官だかの通牒が各府県に行つておりまして、この移民募集選考というものは農林省側がやるのだ、連合会側は違うのだという、そういう考えが、先般各府県の海外連合会が集まつたとき議論の中に出たわけです。そこでこの趣意は、移民事業という大きな仕事については、外務農林両省協力してあやまちなきことを期する、こういう意味なのでありまして、これは私も大賛成なのです。しかもその外務農林両省協力することによつて移民の問題はさらに進展するという意味でありますから、これには何ら異存があるわけではありません。ただたまたまそういう事情が各府県の海外協会にありますから、もし諸君の御賛成……。     〔「これに対して賛成か反対かを言えばいいのだ」、「これは各派共同提案だぞ」と呼び、その他発言する者多し〕
  133. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  134. 降旗徳弥

    降旗委員 そこで私の意見だけを申し上げます。もし諸君の御賛成を願えるならば、この一ページの終りから三行目の「特に国内における募集より送出に至る間の事務については、農林省が従来の経験並びに施設を十分活用して」、この文字を削つて、最後の方は、「よつて政府移民外交の刷新強化を図るとともに、農業移民については、外務農林両省緊密に協力し、事務の効率を挙ぐるが如き体制を整え、もつて事業の推進に万遺憾なきを期すべきである。」、こういうことに御修正願えれば、私は大賛成であります。     〔「反対々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  135. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま降旗君の御意見もありましたが、他に御意見はありませんか。――別に御意見もないようでありますから、ただいまの海外移民の促進と農業移民事業に関する実施態勢の確立に関する件を、足立篤郎君御提案の通り本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。なお本件の議長に対する報告並びに政府に対する参考送付方につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  この際政府答弁を求めます。
  138. 平野三郎

    ○平野政府委員 御決議の趣旨を体しまして努力する考えでございます。
  139. 小滝彬

    小滝政府委員 外務農林両省が緊密に協力することにつきましてはすでにしばしば申し上げた通りでありますので、協力関係は十分確立いたしたいと考えます。     ―――――――――――――
  140. 井出一太郎

    井出委員長 この際お諮りいたしたいことがあります。目下本委員会において審査中の保安林整備臨時措置法案に関しまして、利害関係者、学識者等を参考人として本委員会出席を求め、意見を聴取いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。なお参考人の選定意見聴取の日時につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。暫時休憩いたします。     午後二時四分休憩      ――――◇―――――     午後三時五十二分開議
  143. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  農林業施設災害復旧事業に関する問題につきまして、前会に引続き調査を進めます。川俣君。
  144. 川俣清音

    ○川俣委員 大臣の出席を求めて、法案の審議を初め、その他農林政策について伺いたいと思つておつたのでありますが、大臣がお見えになりませんことは、まことに遺憾であります。委員会といたしまして適当な決議をいたし、その決議に基いて、委員長から議長を通じて大臣の出席を求めて、将来の議事進行をはかりたいと思うのであります。ただ事務的な点について、二、三点お尋ねいたしたいと思います。  二十七年度以前の災害復旧その他工事について、会計検査院から指摘せられた点が非常に多いのでありますが、そのよつて来るところの原因がどこにあるか、お考えなつたことがありますかどうかという点なんです。農地局は一般会計並びに補助金等で、相当な事業を執行しておられるのでありますが、常々に定員を減ぜられますために、農地局としてなすべき人々が不足を来すための欠陥が、非常に多いのではないかという観察をしております。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕 どうも補助金でありますから、地方にまかせ切りだ、こういうことになつた結果、また農村のやむを得ない窮迫しておる事情ももちろん察せられますが、農地局でこれらを指導するばかりではなくして、監督をも兼ねた事務の執行をして参らなければならないのに、手不足が原因じやないか。また定員を減じられておるようでありますが、こういうことになりますと、せつかく国が計画したことを初めといたしまして、地方の補助金等も、所期の目的を達成することが困難な事情も生じて来ると思います。従つてこれらに対する御見解を承つて、私の質問はこれだけで打切りたいと思うのですが、御答弁願いたいと思います。
  145. 平川守

    ○平川政府委員 災害復旧に関する批難事項が非常にふえておりますのは、一つには会計検査院の方の態度が、ある程度重点主義でやつておるようでありまして、ここ一、二年間を農林省関係事業に重点を置いて調べておるということから、非常にたくさん出て来ておるということもあるようであります。しかしもともと災害というものは、非常に突発的に、一時に大量のケースが起つて参りまして、それに対する陣容をふだんからそろえておくわけにも参りません。昨年のごときは、災害が非常に大きいために、場所によりましては他府県から職員を一時応援させる、もとより農地事務局においては、他の事務局から九州方同等に応援させるということもやつております。しかし何分にも数万件の災害が一時に起つて参りますと、査定員は昼夜兼行のような式でやつておりますけれども、実際問題として現地の査定は十分にできない。そこであとから検査院が非常にこまかく調べますと、そこに欠陥が現われて参つておるという状態であろうかと思うのであります。もう一つには、率直に申しますと、地方の方でも長年のしきたりから、なるベく地元の負担のようなものは課さないで、軽くして済ませることが地元としての要望であるということが、実際問題としてあろうと思うのであります。そういうようないろいろな関係が重なりまして、最近二十六、七年度に災害関係の批難事項が非常に多く出ておる。  お話のごとく人員の関係もございますけれども、この点につきましては、たとえば二十九年度におきましても、一般の行政整理からみますと、ごく例外といたしまして、災害関係はほとんど減らしておらないのであります。ただ積極的増員を要求いたしましたけれども、これは整理の際でもあるからというので通りませんでしたが、減員の方はしないという扱いをいたしたのであります。しかしそれはいずれにいたしましても、九牛の一毛でありまして、ことに昨年のような大量の災害が起りますと、若干の人数をふやしただけではとうていまかない切れない。今私どもの方といたしましては、できてるだけ査定を正確にやらせる、そういう意味において、ある程度以上のものについては、必ず現場を見た査定をやらせるとか、県の職員に対するいろいろな訓練、講習というような指導をやるとか――会計検査院の目で見ました場合に、帳簿の関係が不十分であるというようなことが、ことに村の事業なんかになりますと、かなりあります。そういうような面につきてましても、一定の型のようなものを示しまして、できるだけそういう意味の間違いの起らないようなことをやるというふうにいたしまして、できるだけこういう事案の起らないようにいたしたい、かように考えております。
  146. 川俣清音

    ○川俣委員 私は、きようは大臣が見えていないので、つつ込んだ質問をしようとは思わないのですが、ただ農地局としてお考え願わなければならぬ点があると思いますので、もう一点質問を続けたいのです。それは国の補助金、交付金、負担金等で行われます事業につきましては、会計検査院と農地局とは別な立場でなければならぬと思うのです。農地局としては、設計の指導なりあるいは事業の指導なりをいたしまして目的を達成させるという、いわゆる指導の面におもなる力が入つて行かなければならぬと思うのです。それにはどうしても手不足ではないか。現在の定員の考え方は、災害がない場合の定員であつて、災害の起つた場合は、当然手不足になるということは明らかなるところであります。平常の年における定員なのであつて、それをさらに減員させておるというかつこうになりますと、災害が起きた場合には粗漏が生ずる。指導の面にいたしましても、設計指導にいたしましてもあるいは実行指導にいたしましても、これは必ず手落ちが出て来るのです。それでは責任は果せないのじやないか。少くとも日本の農業土木については、農地局は一大権威を持たなければならない。権威を持たなければならないし、府県の団体等の事業に対しても指導的役割を果さなければならないのでありますから、質的な向上はもちろんのこと、人的にも十分な陣容と組織を整えていなければならないのではないか。ことに、災害も、その起きた翌年あたりに復旧ができますならばまだ指導もしやすいと思うのですけれども、年数がたつて相当古くなると、原状回復といつて一体原状がどうだつたのかということはなかなかわかり得ないと思います。そこで、ここで指摘されて来るような問題が起きて来ると思うのです。それは、地方が非常に困窮しておるから、あるいは地方財政が逼迫しておるからということも一つありますけれども、やはりその前に、原状回復という事態があまりにも遅れておるために、一体原状はどの程度だつたのかということがなかなか想像がつかないということから、検査院の指摘したようなことが現われて来ると思うのです。従つてこの災害復旧については、やはりすみやかに復旧を整えるということが先決であると同時に、こういう災害についての予備定員を持つていないのであるから、これらの指摘されたことをもつて私は卑屈になる必要はないと思う。むしろもつと勇敢に、現在の定員ではこういう指摘されて来るような条件が起るから、もつと組織的な陣容が必要なのだということを強調されなければならないのではないか。私は、これは指導でできると思うのです。結局指導が不徹底だというところに問題が起ると思うのですが、局長はどういうふうにお考えになつておりますか。これは、決してあなたを糾弾する意味ではないのです。起きて来た問題を糾弾してもだめなんで、問題を今後よく指導しなければならない。設計指導にいたしましても実施の面においても、今後そういう批難が起らないように――、批難が起るというのは、会計検査院から批難されるのみでなく、真の農民立場から見ても非難されるような事項があるから、こういう結果になるのだろうと思うのですが、そういうことが起らないようにいたさなければならない。会計検査院があるから厳重にやるとか、あるいは厳重な設計をするとか実施をするとかいうことではなくて、農民立場から見てもみなが満足の行くようなふうに指導、監督して行かなければならない。それにはあまりにも手不足ではないか。手不足ばかりでなく、質的向上もやはりはからなければならないのではないかと思うのですが、これに対する御見解を承りたい。そしてまた大蔵省との折衝の場合に、これらの指摘されたものを卑屈に考えずに、もつと積極的に解決する態度が望ましいと思うのでありますが、これらに対する見解も承りたい。
  147. 平川守

    ○平川政府委員 その点につきましては、われわれもお話の通り考えておるわけであります。実は行政整理等につきてましても、農業土木技術者、特に災害関係の者につきてましては、非常な例外的な措置を主張しておるわけであります。また大蔵省に対しましても相当な増員を要求いたしておるわけでありますが、何分にも人間の増加ということが非常にむずかしい実情にありますので、われわれとしても、実は本年度においては減少を押えて防衛して行つたような状態であります。しかし今後なおこの問題については、人員増加の点は強く主張して参りたいと思います。なお実際の問題といたしますと、質の問題がまた案外非常に重要な問題のようであります。われわれの方は事業関係で数千名の職員を持つておりますけれども、その質の内容は非常に遺憾な点もあるわけであります。これに対しましては、できるだけ良質の者と入れかえて行くということも、退職等のチヤンスなどにも考えてはおりますが、現在おる職員に対する研修と申しますか、そういう面についても力を入れたい。これについては特に大蔵省からも、若干の予算でありますけれども、研修のための予算というものも組んでもらいまして、現在でもやつておるような状態であります。両々相まつてつて参りたいと思います。
  148. 川俣清音

    ○川俣委員 あとの分は大臣の出席がなければ続行できませんので、委員長においておとりはからい願いたいと思います。
  149. 井手以誠

    ○井手委員 私は、この際議事進行につきまして動議を提出したいと思います。  本日は、一昨日の理事会における協議の結果によりまして、農地問題あるいは災害問題等の重要案件について、大臣の出席を求めて審議する予定でございましたところ、今なお、四時に至るまで大臣の出席がないようであります。常任委員会が法律案を中心といたしまして重要な政策を審議検討する機関であることは、申し上げるまでもないのであります。いかに有能な堪能な政府委員説明員がおりましても、それはやはりあくまで大臣の補佐機関であります。政策を検討し、政府の所信を聞くのにはやはり大臣であります。特に最近食糧問題を初めといたしまして農政の転換期に、あるいは農政の危機に直面しておるような印象を私どもは受けるのであります。そういう意味からも特に大臣の出席を願つて、その所信を承る事項がきわめて多いのであります。私ども予算が衆議院を通過する以前に多くの事柄を大臣に聞きたいと考えておりましたが、大臣が予算委員会出席される等々の理由によりまして、遺憾ながら、その機会の来るのを待つておりましたが、今日まで大臣はほとんど見えておりません。大臣の出席要求については、本国会以来再三、正式な決議ではありませんけれども、本委員会から要求されたところであります。ところがただいま申しますようにほとんど出席されておらない。もちろん大臣が多忙であることは私どもも認めます。しかし緒方副総理やあるいは小笠原大蔵大臣以上に多忙であるとは、私どもがいかにその立場考えましても了解し得ないところであります。その副総理なり大蔵大臣は、各委員会の要求に対しましては努めて出席されておることを、私は各委員会出席して承知いたしておるのであります。ところがさほどでない農林大臣が、あるいは予算委員会出席に名をかりて、ほとんど出席されないということは、はなはだ遺憾しごくに存じます。私は今日まで長い間しんぼうして参りましたが、これ以上大臣の出席なくして重要な法律案あるいは農政上の諸問題を検討することができないというふうに感じました。おそらく他の委員の方も同様なお考えであろうと私は存じます。従つて私は、幾多の法律案をこの農林委員会も持つております。いろいろ聞きたいこともございますが、これ以上大臣の出席なくしては審議は進められません。従つて私はこの際、国会法に基いて大臣の出席を要求いたしたいと存じます。その大臣の出席要求について、できるならば全会一致をもつて決定し、要求されるように動議を提出し、委員長においてよろしくおとりはからいくださるようにお願い申し上げる次第であります。
  150. 福田喜東

    ○福田委員長代理 ただいまの井手君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 福田喜東

    ○福田委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたします。なおこの要求手続きに関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますから御了承ください。  これをもつて散会いたします。     午後四時十二分散会