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1954-04-01 第19回国会 衆議院 農林委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月一日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 吉川 久衛君 理事 芳賀  貢君    理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    寺島隆太郎君       降旗 徳弥君    松岡 俊三君       松山 義雄君    神戸  眞君       松浦周太郎君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    井手 以誠君       中澤 茂一君    中村 時雄君       安藤  覺君  出席政府委員         農林政務次官  平野 三郎君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         林野庁長官   柴田  栄君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局移民課長         事務取扱)   石井  喬君         外務省参事官  石黒 四郎君         農林事務官         (農地局管理部         入植課長)   和栗  博君         農林事務官         (農地局建設部         災害復旧課長) 大塚 常治君         農林事務官         (林野庁林政部         林政課長)   臼井 俊郎君         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      藤村 重任君         検  査  官 東谷伝次郎君         会計検査院事務         官         (検査第三局         長)      小峰 保栄君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 四月一日  委員三浦寅之助君辞任につき、その補欠として  降旗徳弥君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  保安林整備臨時措置法案内閣提出第一一〇  号)  農地問題に関する件  農林業施設災害復旧事業に関する件  農業移民に関する件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  保安林整備臨時措置法案を議題といたします。昨日に引続き、質疑を行います。芳賀貢
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 最初に保安林整備臨時措置法案森林法との関係について、長官お尋ねしたいと思います。森林法昭和二十六年から施行されておるわけですが、この森林法の持つねらいというものは相当広汎であります。現在の国有林以外の林野は私有化されておるわけでありますが、これに対して森林法は、ある程度社会性を持つたような意味において全国森林を規正して、国家目的に即応したような方向にこれを指導、育成するというところに一つ目的があるというふうに考えておるわけであります。しかし私たちが観察するところによりますれば、法の持つ内容が具体的にどの程度その効果を現わしておるかという点に対して、いささか疑念を持つわけであります。たとえば森林法第四条によりますと、森林基本計画策定せられまして、この原則的な方針によりますと、「一 幼齢林を皆伐しないこと。二 幼齢林については、育林上必要な週期的間伐をすること。三 皆伐した伐採跡地には、伐採後二年以内に造林すること。四 急傾斜地における森林を皆伐しないこと。」等、今後の林野行政の上において当然確保せられなければならぬという基本的な原則がうたわれておるわけであります。これらの点が、法の施行後においてどの程度実際の効果をあげておるかという点について、まずお尋ねしたいわけであります。
  4. 柴田栄

    柴田政府委員 森林法におきまして、農林大臣基本計画策定いたまして、これによつて森林区ごとに都道府県知事森林計画を樹立し、あわせて実行案策定をそれぞれの所有者にさせることによつて一定方針経済性公益性をかねた計画的な作業をする建前になつております。当初におきましては、需給情勢等とあわせ、かつ法律の徹底不十分というような点から、御指摘のごとく、その効果を十分に発揮するところまでは参つておらなかつたことを率直に認めざるを得ないのでございますが、最近におきましては、相当趣旨も徹底いたしまして、森林法によります林業の特性を所有者自体相当認識していただきまして、順次目的を達しつつある、かように私考えております。その一つの実例と申しますか、実情を申し上げますると、昭和二十七年度におきましては、森林計画に対する違反事例が非常に多かつたのでございます。制限林につきましては二千七百七十八件も違反事例があつた普通林につきましては、六万一千四百六十三件という厖大違反事例があつたのでございます。それぞれに対しまして処理をとり、反省を求め、あるいは訂正を願つて参つたのであります。二十八年度におきましては、明確な数字の集計はまだできておりませんが、一応の推定から申し上げますと、前年度の三分の一程度違反がある見込みでありまして、森林計画が順次軌道に乗つて参つておりますことは、申し上げ得ると存ずるのでございます。森林法規定いたしておりまする森林計画が、一応森林法目的といたしております効果期待する方向に、かなり急速に進んでおる。かように申し上げ得ると考えております。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 森林の場合においては、民有林はその所有の限度の制限とか、売買等に対する制限等が、農地法に基くところの農地制限等と比べて、非常に緩慢な措置がとられておるわけでございますが、これらの点に対して、森林法を完全に実施して行く上において、何らかの欠陥がそこにあるやのごとく私は考えるわけであります。今度の保安林整備臨時措置法をつくる場合においても、この計画を具体的に促進するためには、民有林を、場合によつて強制買上げまでも行わなければならぬところにまで行くわけであります。そういうことを考えた場合に、最近において、特に民有林集中化が行われるような気配も感ぜられるわけでありますが、そういう点に対しては、長官はどのように判断されているか。
  6. 柴田栄

    柴田政府委員 お答えいたします。御指摘通り、現在森林所有に関しましては、全然制限ばございません。わが国の大きな特徴として、森林が非常に零細化されている、このことが国家的な見地から見まする林業経営、すなわち計画的な林業経営に対しまして、非常に困難な環境にあることは否定できないのでございます。ただしかし、この際所有形態を大規模経営に統一するためにどうこうする、あるいは適正規模を見出してそれに適正配分するようなことがはたして必要かどうかということで、いろいろ検討しているのでございますが、実情に照しますと、今日何といたしましても、この零細な所有者森林に統一的な計画を行うために、森林協同組合、すなわち森林組合の適正な発達を企図する以外には、実は有効な方法がちよつと見出し得ないと考えている次第でございますので、私どもとしましては、これも森林法規定に基く森林組合発達発展期待して、これが強化に努力することによつて森林所有形態森林計画施業に関する悩み――と申せば悩みでございますが、悩みの解決の方法を見出したい、かような考え方で努力いたしている次第でございます。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 これは単なる一例でありますが、たとえば王子製紙のごときは相当厖大なる社有林を持つているわけでありますが、これらの所有林野を、パルプ用材等にできるだけ現在伐採しないような形の中に置いて、一方において国有林特売する場合においては、その用途指定して、そのうち何割はパルプ用材等に提供せよというような条件が付加されているような場合もあるわけであります。そういうようなルートを経て、巨大な製紙資本のごときは、国有林特売等を通じて特定用材確保等行つて自己の占有している林野をそれほど伐採しておらぬ。一方においては相当積極的な造林行つて、国の造林に対する補助金相当多額のものを獲得しているというような傾向も見受けられるようであります。こういう点は単なる個人の林野所有とはまた異なつたケースであるというふうに考えるわけであります。このようにして、零細なる私有林のごときも一つ企業のもとに集中されて行くというようなことは、やはり国の方針としても、ある程度排除するということが必要でないかと考えるわけでありますが、これらの点に対してはどのように考えておりますか。
  8. 柴田栄

    柴田政府委員 パルプ業界手山造成してパルプ企業の安定をはかる場合に、一つ集中ということになり、かつ会社経営の恣意的な方向林業計画制を破壊しはしないだろうかというようなお尋ねだと存じます。私どもといたしましては、これを阻止することはできないと思いますし、またかような手山による造成計画的に行われるということも、森林計画の一環として、一つ所有形態においてなされるという場合に、これは必ずしも否定すべきことではないんじやないか。かように考えております。しかしながらこれを国が特に援助をいたして、手山特定用途のためにだけ多く持たせるということは、全体の森林計画の上から望ましくない方向も出て参ると考えられます。たとえばパルプ用材のためにパルプ備林というものが厖大実施されるということになりますれば、一般の建築用材に向けられるものの比率が非常に少くなつて、伐期の低い山が多くなる、こういうここは全体の森林計画の上からは必ずしも妥当でない。私ども考え方といたしましては、林業全体を通じて土地の生産力を最も高度に発揮できるような林業経営をし、その生産される用材をより適材適所に配分して御使用を願う、かような方向に国としては考えるのが妥当である。かような見解をとつておりますので、それぞれの業界、特に強力なのはパルプ業界パルプ備林造成計画でございますが、これを阻止するという考えもございませんが、特に国としてそれのために便宜を与える、あるいは計画を助長するということもどうかという考え方で、特別な措置はとつておりませんし、将来もとる考えはございません。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 私のただいま申し上げた点を、長官は十分御理解できなかつたのかもしれませんが、私の言うのは、国有林払下げの中で特売を行う場合に、用途指定して、大体五〇%くらいはパルプ用材として特売を受けたものの中からそつちに提供されるようなことになつていると思うわけであります。そうすると、パルプ業者は、その低廉な国有林払下げによつて原料確保して行く。一方においては自己の持山がだんだん育成されて行くことは、結局それだけ資本的に見ても、利潤的に見ても、それが増大されて行くという傾向が一方においては出て来るわけです。だから一方において国が特に廉価なる条件によつてその原料を提供してやるということと、そのことによつてその会社所有林がだんだん育成されて行くという相関関係の上に立つた場合において、これは一つの矛盾かあるんじやないかと思うわけであります。もちろん林野事業の中から年年――今年の計画を見ても、三十億以上の純益があるとしても、それらの純益と、国有林を払い下げて、その払下げを受けた一つ企業体の中において生れた利潤というものとの比較は、比較にならぬものがあると思うわけでありますが、そういう観点の上に立つた場合において、これは検討をする余地が十分あるのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  10. 柴田栄

    柴田政府委員 国有林立木処分の場合の条件として、適木を適当の用途に振りわけていただく、こういうことのために立木伐採業者特売をいたす場合には、ある程度用途指定をするということが、適材適所に利用していただくというために必要であると存ずるのでありますが、端的に申し上げれば、パルプ用材として非常に適当な山であるとすれば、パルプ会社特売するということが一番妥当であるかもしれませんが、ただいまのお話の場合のごときは、各種用途への適材が配合されておるという場合に、木材会社を通じてそれぞれの用途に配る。その際にパルプ用材幾ら、あるいは坑木へ幾ら製材用材としてどれくらいという指定をすることになると思いますが、そのことがパルプ業界利益させて、その利益によつて手山造成される、こういうように直接の相関関係があるかどうかということが、それだけできめられるかどうかということは、多少問題があると存じますが、結果から申しまして、あるいはそういうことによつてパルプ会社相当利益を得る、それが手山にまわるといたしましても、現在の情勢といたしましては、必ずしもそれを否定しなくてもいいじやないか、現在枯渇いたしております森林資源をあらゆる方法を講じて増強するという一つ方法になるのではないかと思つておりますが、もし手山の準備をいたさないとすれば、現在のパルプ工業界の趨勢からいたしますと、年々相当急激な需要の増大を来しまして、これが契機となりまして木材の不当な価格のつり上げ、変動等を来す原因になる。これを緩和しつつ需要合理化材価の安定をはかる手段としても、会社利益手山造成に使われるということは、つまりその一部に国有林材払下げ利益が充てられても、これは特に不当であるということで非難すべきことじやないのではないかというふうに、私は考えております。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 私の申し上げたい気持は、今度の法律を見ると、これは一つの進歩だと考えておるのであります。今のような保守党政権下において、結局国土保全というような大きな国家目的のもとに、これらの事業一つ発展を遂げようということに対して、今後の林野行政一つ社会性を帯びて来ておるということは、これは何としても否定できないと思うわけでありますが、そのような観点に立つた場合においては、ただいま長官も若干触れられましたが、これは国有林といわず、民有林といわず、一つ総合計画の必要が出て来ると思うわけであります。たとえば林野の育成の問題にしても、それから伐採等計画の場合においても、それらを全国需給関係あるいは用途別等に分類して、総合計画のもとにこの事業が行われるということが、効率的でもあるというふうに考えるわけでありますが、そういう場合におきましては、単に保安林整備という限られた見解だけでなくて、もう少し広汎なる意味における現行法検討等も加えて、この機会にこれをさらに前進できるような方向に持つて行く必要があるのではないかというふうに考えておりますので、それらの意味を含めて質問したわけでありますが、そういう点に対してどのようにお考えになつておりますか。
  12. 柴田栄

    柴田政府委員 その点に関しましては、私どももまつたくお説の通り考えておりまして、端的に申し上げれば、森林法に盛つております森林計画が、文字通り適正に厳守されて実施されるということになれば、実は今回の保安林整備というような、特別に抜き出しての方法をとる必要もないとさえ考えられるわけでありますが、実行にあたりまして、現在の森林法に盛つております程度計画性実施に対する国の力では、実際問題として十分というところまで、実施の面でなかなか確信が持てない。しかも保安林につきましても、森林計画には、大体普通林ただ指定条項を強化した程度において森林所有者にまかしてある。このままではまず国土保全のための公共性の強い部面だけでも非常に不安があるということで、今回は保安林経営実行内容まで触れて、これだけは少くも国家がもう少し強く計画もし、あるいは指導監督もできる方法をとりたいという、一つの前進とお考えいただく以外にはないわけでございます。これも端的に申し上げれば、経過的な問題ということになると思いますが、私ども所有者の御理解によりまして、森林計画がだんだん軌道に乗つて来るという期待を持つておりますが、これがどうしても期待方向に進み得ないということになれば、全般を通じて森林法の根本的な改正という問題も、将来考えなければならぬときもあるのではないかということは、当然想定されるのでございますが、一まず前進するという見通しをもつて、現在どうしても時期的に急がなければならない保安林整備を進めさしていただきたい、かような見解から進めておることを、御了承願いたいのであります。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 次に法案の具体的な点に対して若干触れて伺いたいと思います。今度の整備計画を進める場合において、流域別区域を決定することになつておりますが、これは昨年の災害等をもとにして、災害の非常に甚大である地帯をまず優先的に行うというような考え方で、この流域別区域指定を行う方針でありますか、その点をお伺いいたします。
  14. 柴田栄

    柴田政府委員 流域指定の問題は、ただいまお尋ねのごとく、昨年度あるいは最近における災害の激甚な地域だけという考え方ではないのでございまして、全国にわたります重要な水系全部を検討いたしまして、これの実情からいたしまして、これが社会性経済性あるいは民生等の問題を一定基準従つて評価――というと語弊がありますが、一つ基準従つて評価いたしまして、その重要度に応じて総合的に確保しなければならぬ地域を確定いたしまして、これを対象として整備をいたす。従いまして、国土全体をこの際林業経営特に保安材制度の活用という面から検討いたしまして、保安林整備する、こういう考え方に立つておる次第でございます。必ずしも災害があつたからそれを修復するための指定であるというばかりではなく、将来への国土保全確保のための計画を全部盛つた対象として考えさしていただく、こういう考え方でございます。
  15. 福田喜東

    福田(喜)委員 芳賀委員お許しを得まして、関連して一つだけお聞きしておきたいと思いますが、ただいま流域指定の問題がありましたけれども、この重要地域選定は、林野庁におかれましては、この保安林買上げと非常なる関連があるものだろうと私は思つておりますが、この保安林整備臨時措置法案に対する総合資料という観点からいたしまして、この重要地域選定はいかにして決定するか、たとえば流域全体を森林砂防、発電、河川、灌漑、防災等見地はもちろん、社会的、経済的、政治的の総合的観点に立ちまして、関係各官庁並びに関係各方面と御協議の上決定されたものと思われますが、この点に関して、私は過般の林業小委員会におきまして資料要求をいたしておりまするが、まだその御提出がありませんので、早急に御提出をいただきたいのでございます。抽象的なものでなくて、選定基準はどういうところに置いておるか、その具体的なる資料をいただきたいのでございます。  それからこの保安林整備臨時措置法案を作成するにあたりましては、この法案の根本的な考え方は、一体どういう点に重点を置いておるのか。ただいま芳賀委員の御質問の中にも、森林行政考え方に関する基本的な点にお触れになつたようでございますが、私もその点を非常に重視しておるわけでございまして、保安林は、将来におきましては国家買上げと申しまするか、国家管理建前としてこの法案を立案されたのかどうか。言うなれば、普通林つまり民有林とか公有林の状態に保安林を置いておつたならば、非常に国土保全上さしつかえがあるのかどうか。ものの考え方基準といたしまして、林野庁はこの点についてどういうお考えをとつておられるのが。従いまして保安林考え方といたしまして、民有保安林公有保安林の現在の状況がどうなつておるか、この点に関するいろいろな資料をいただきたいのであります。  さらに資料として申し上げますると、この保安林整備臨時措置法を作成するにあたりまして、その法案裏づけとなつておるところの各種資料の御提出が私はまだ十分でないと思われます。この法案は、条文の数は少うございますが、保安林につきまして非常な重要なる一つの転機をなすものと私は思いますので、この点に関しまして、いろいろの説明資料をもう少しいただいて、この基礎裏づけとする内容をわれわれは承知いたしたいのであります。今まで農林当局から、この法案裏づけをなすものにつきましていろいろ御説明がありましたが、現有保安林約二百二十万町歩、あるいは重要水源につきさらに七十万町歩の増強をなす、あるいはさしかえをいろいろやる、総面積三百万町歩目的とする保安林の現在の実効が上つたと言い、上らざると言い、いろいろな御説明がありましたが、各人各様その数字内容は食い違うのであります。この点につきまして、私はもう少し具体的なる資料を御提出いただきたいのでございます。この法案提出されるやに聞きましてから、国内において相当の反響を呼んでおるのは事実でございまして、これは過般農地改革が行われましたときの農地法と同じような考え方が、この森林についてもとられるのではあるまいか。こういう考え世間を風靡いたしまして、この法案提出従つてこの法律条項の具体的な内容世間に知られざる前に、この買上げ強制内容とするものであるか、これは農地法との関係はどういうふうになつておるか、私有林に対してどういう働きかけをするか、農林省、林野庁の根本的な考え方は一体どういう点にあるか、こういう問合せがひんぴんとして参りまして、相当の恐慌を来しておることも事実であります。こういう点につきまして、資料の御提出を煩わしたいのでございます。法案個々の点につきましては、逐次この審議が進むに従いまして、お許しを得て質問いたしたいと思うわけであります。たとえば森林審議会の使い方、この中には地方における森林審議会一つも出て来ないのでありますが、保安林買上げをいたします場合において、中央だけで事足りるか、あるいはまた担保権の問題、免税の問題、こういう税の軽減に関する問題等、なかなか個々について検討を要する問題も多いかと思いますが、いずれにいたしましても、この法案審議を進める際におきまして、その基礎資料となるものについて、今申し上げたような点につきまして、一応早急に資料の御提出を煩わしたいのでございます。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 資料について。今福田委員から資料要求がありましたが、私も一点だけお願いしたいと思います。あとで私の発言の際に意見は述べたいと思つておりますが、先ほど芳賀委員指摘されたように、基本法である森林法改正についてはこれを見合せ、保安林整備臨時措置法として臨時措置法を御提出なつ意味が、私どもあまりよくわからないのであります。元来は保安林整備法で行くよりも、森林法そのものを基本的に改正をして目的を達成して行く、それに関連して今回の法案が同時に提出されるならば意味がわかりますが、かんじんの森林法はそのままにしておいて、整備措置法を御提出なつたという点について、法案そのものには根本的な異論は持つておりませんが、何か納得の行かない、割切れない印象を受けます。すなわち森林法におきましては保安林施業制限規定があります。これに対して補償規定もあるのでありますが、この施業制限を発令した事例はいくらあるか。どういう範囲に及んで行つたか。またその補償についてはどういう補償を行つたか。こういうような森林法によつてとられた措置を、この際資料として御提示を願いたい。突如としてこの法案が出たのは、首相のお声がかりによつて、昨年の大風水害等からあわただしく、脚光を浴びたようでありますが、当局森林法そのものによる保安林対策を怠つてつたのではないか、こういう印象を受けるのであります。ただいま申しました森林法に示された保安林関係施業制限であるとか、その補償であるとか、あるいは補償要求があつたが、補償はこういう理由によつてしなかつたとか、そういつたような一連の資料を御提示願います。
  17. 中澤茂一

    中澤委員 資料について。買上げ対象になる保安林の各県別の面積、それから強制買上げする場合代替として国有林を払い下げする各県別の予定面積、この二つの資料要求します。
  18. 柴田栄

    柴田政府委員 福田委員のお話の点に関しましては、それぞれ資料整備いたしておりますが、なお不足の資料整備いたしまして、至急提出いたしたいと存じますが、ここで特にお断り申し上げておきたいのは、地域指定の問題を非常に御懸念になつておりますが、現在一応の試案はいたしてみましたが、地域指定はいたしておりませんし、将来も地域指定に関しましては、相当考慮いたして参らなければならぬと考えておりますので、現在いまだ地域指定はいたしておらないということを御了承願いたいのでございます。それと法案の根本的な考え方、この問題については、条文の御審議を願う場合にさらに詳細に申し上げたいと存じておりますが、森林法に盛つておりますこと自体も、相当国家管理考え方を入れて森林法は制定されておりますが、特に保安林に関しましては、いまだ十分でないというために、これを強化するということが大体の根本であるというふうに御了承願いたいのであります。なおこの法案保安林強制買上げという条項を含んでおるので、内容を十分御検討つていない面は、あるいは林野強制買上げというふうに簡単にお考えをいただいた誤解がありはしないかと思いますので、この際はつきり申し上げておきたいのでありますが、あくまでもこの買上げは、国が買い上げて国が経営をした方がより安全であるという意味で、御相談の上で売買できる方法で買い上げるというのが主体でございまして、強制で買い上げるという場合は、特に指定せられております施業要件を守つていただけない場合に、手を十分に尽しまして、しかもなお違法な行為を進められる場合に、しかも第三者的な中央森林審議会の御審議を経て妥当性を見出して強制買上げ方法をとるという、十分な手を尽して特に国家方向に御協力を願えないという場合だけという、きわめて制限された場合でございますので、決して国の目的のために何でも強制で買い上げる、いわゆる強制収用という根本的な考えは一切入つておらないということを、御了承願いたいのでございます。  それから足鹿先生のお話の点は、実は私どももまつたく同じ考えを持つておるわけでございまして、森林法改正によりまして、実はこれも買い上げする方法もあるというふうに考えておりますが、保安林整備とこれに伴います買上げの問題は、実は臨時的な問題である。保安林の制度の問題は恒久的な問題である。本来から申しますれば、整備法を臨時措置として実施いたしますと同時に、森林法改正を願つて、これを並行させるべきであるということで、同時に検討いたして参つたのでございますが、時間的に間に合わないために、一応整備法を進めさせていただいて、ただいま準備を進めております森林法改正についても、近く御審議を願つて並行させていただく、そうして森林法改正をお願いいたしまして、整備法の完了と同時に、基本法にそのまま移して行けるという形に進めたいという考えで進んでおることだけは御了承願つておきたい、かように考えております。そこで森林法保安林の、指定その他を実施しておるが、実際において管理監督を怠つてつた結果を補うのじやないかというお話、さようになりますと監督を怠つてつたということになりますのか。現在の森林法規定いたしております程度では、実際問題として十分なる監督ができないということになるのではないかと思いますので、それらの点は整備法とあわせまして、森林法改正の際にいろいろ御審議を願いたいと思つておりますが、整備法はきわめて臨時的な整備をいたす考えでございますが、今後の実行に関しましては、森林法改正において、従来の不足分は国家管理の強化という面において御改正を願うという方向にありますことを御了承願いたい、かように思つております。  それから中澤委員のお話の資料でございますが、各県別買上げ対象の面積と申しますのは、対象というのは相当広い範囲のうち、もし相談ができれば対象になるわけで、明確な数字にならないということを一点御了承願いたいと思います。それから強制買上げ対象というものは、ただいま申し上げました通り、行為の違反によつて初めて出て来るわけでございますから、現在強制買上げ対象は一切わかつておらないということでありますので、この資料は調整しかねるということを御了承願いたいと思います。
  19. 福田喜東

    福田(喜)委員 芳賀先生の御了承を願つて、もう少し関連質問をお許し願いたいと思います。  ただいま長官の御答弁によりまして明らかになつた部面もありますが、根本的に私ちよつと異議があるのであります。民有林としての保安林というものが目的達成できないという考え方自体どういうものだろう、国有にしなければどうも目的の達成ができないという考え方について、私は相当の疑問を第一点として持つのであります。従いまして保安林計画を定め、国土の保全に資することを本法は目的として掲げておるわけでございますが、その手段として、買入れまたは交換による国有保安林の設定があるにすぎないのでありまして、国有となるもの以外については従前と何ら違わないのであります。従いまして芳賀さん、足鹿さんあるいは中澤さんあたりから問題として提供されました補償の問題についても、何らの措置が講じられていない。つまり国有としては一応ずつと目的をコンパクトにしまして、焦点がはつきりしておりましたが、国有以外のものについては何らの措置を講じておらないし、従前とその点は少しも違わない。しかも補償問題につきまして、ただいま同僚委員から御指摘がありましても、補償問題については何らの措置が今まで講じられておらない。こういうことではたして保安林整備目的という大眼目が達成できるか、この点について私は今までのやり方についての資料を少しいただきたいのでございます。  さらに評価の点につきましては、地方において非常に不安を抱いておるわけでございますが、これが保安林指定されるということは、つまり制限林となるということであります。制限林となるとこれは不融通物みたいに価格が下るのはきまつております。そうすると評価というものは、これだけの法案を出される以上は、林野庁であらかじめ何らかの腹案があるに違いない。その腹案というものをわれわれ方になぜ資料として御提出つていないのか。買入れはその下つた価格でやるのか、制限林なつた場合の下つた価格で行くのか、どういう基準に基いてやるのか。中央審議会だけではこの目的は達成できないのでございます。地方においてみな実情が異なつておる。地方森林審議会というのは一体どういうお考えを持つておるのか。さらにまた全国におきまして、買上げ予定地域が約百九十八地域を持つておるということを、長官はこの前の委員会で御説明なさつたのでございまするが、これはいろいろの御都合もございましようが、二百箇所近くの個々内容はどういうふうになつているかということも、われわれにお聞かせ願いたいと思います。そういうものについての資料提出を、あらかじめ早い機会に提出つた方が、この法案審議を進めて行く上において、非常に重要ではないかと考えまして、御無理を願つたような次第でございます。
  20. 柴田栄

    柴田政府委員 お答えいたしたいと存じますが、民有保安林に関して、買上げ対象以外には、従前と一切異ならないということでは意味がないんじやないかというお話でございまするが、従前とは相当大きな施業実施に関しまして、内容が変革いたして参ることになるのでございますが、それはいずれ法案審議の際に、御質問によりまして詳細申し上げたいと存じますが、第二条に規定いたしておりまする保安林整備計画におきましては、民有の場合におきましても、従来とは相当内容をつつ込んで、詳細にわたつて、国なり県なりが施業の内容規定いたしまして、これを守つて行くという方向になりまするので、従来の所有者に一応実行計画をおまかせするという点からは、相当強くなるということにおきまして、大きな変革であるというふうに私ども考えておりますることを、御了承願いたいと存ずるのでございます。  なお農家の問題に関しましては、案を持つておりまするし、いずれ資料提出いたしたいと存じまするが、しかしこれを一方的に農林大臣のみにおいて決定するということは不十分であるということで、地方森林審議会において御審議を願いたい、こういうつもりでおるわけでございますが、これはあくまでも一つの明確な基準のもとに、分解評価という考え方でおるわけでございまして、現物評価、あくまでも制限の評価をいたさないという考えで、純取引の評価という考えを現在持つておるということを御了承願いたいと存じます。
  21. 福田喜東

    福田(喜)委員 昨日松岡委員が御発言になりました中に、例の三十二億円でございますが、ああいうものの使い方に関する御意見なり、林野庁の腹案というものも、これを資料として――各営林局あたりに指示されました資料がありましたら、それをいただけましたらば、いただきたいと思います。  それからきのう十億円の内容につきましては、大体予定されているのが五万六千町歩というお話でございまするが、しかもそれは東京以西の地に限られておる、こういう考え方でございましたが、一体どういう御腹案か、その点も明らかにしていただきたいと存じます。
  22. 柴田栄

    柴田政府委員 昨日も申し上げましたように、買上げ対象と申しまするのは買上げの目標でございまして、あくまでもこれは御相談によつて決定するということになりまするので、五万六千町歩という目標も、一応買上げが可能であろうという目標でございまするが、それとあわせて関東以西に限るということを昨日も申し上げた次第ではないのでございまして、大勢的には国有林野の少い、しかも重要水系の水源地域に荒廃した保安林が多いという建前から、関東以西が多くなるであろう、こういう見込みを申し上げた次第でありまするが、全国的にさようなところがそれぞれの地域に皆無ではないのでございまするので、関東以北あるいは東北等にも当然さような地域は出て参るということを御了承願いたいと思います。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 保安林整備計画森林法に基くところの森林基本計画との関係というものは、密接なものがあると思いますが、先ほどの長官の御答弁によつても、水系別の区域指定というものは、単に災害地域だけに限定するということではなくて、今後の林野の全体の運営の面からいつても、これを水系別に行う方が妥当であるというような御意見のように承知したわけでございます。もちろん地方における産業、経済、文化の発達も、結局一つの水系に沿つた協同体的な発展が行われておるということも事実でありますので、そのような考え方の上に立つて今後の国土保全林野行政等が運営されて行くということは非常に望ましい点でありますが、森林法の第五条におきましても、基本計画を定める場合においては、おおむね流域別にこれを行うというようなことになつているわけであります。そういたしますと、今度の保安林整備計画が水系別に行われるという点は、それほど著しく飛躍していることでもないと思うわけでありますが、そういう点について、今後の保安林整備計画等の決定は、主として中央森林審議会において建議が行われるというふうに考えられるわけであります。この森林基本計画によるところの計画区の方針が、五箇年ごとに策定されておるわけでございますが、当然保安林整備計画が持たれると同時に、これらの基本計画区の計画というものも相当影響を受け、あるいはこれに沿つた変更を行うような事態が出て来ると考えますが、これらをあわせて検討されることになるかどうか、その点であります。
  24. 柴田栄

    柴田政府委員 森林法におきまする基本計画区の選び方も、一つ流域という考え方を基本にいたしておりますることはお説の通りでございますが、今回考えておりまする水系流域別というのは、基本計画考えておりまする流域をさらに拡大いたしました、一水系を一つ流域としての整備計画を立てまして、これを移して基本計画区の基本計画に入れる、こういう考え方でおりまするので、基本計画の方は御承知の通り全国基本計画区三百七十七を五箇年でローテートするように進めておりまするが、それと今回の林野整備とは時期的にマツチしないところが出て参るわけであります。一致いたしまするところは、基本計画にこの整備計画方針を入れ、さらに森林区の施業計画にまでそれを指定して盛り込むということで、森林法の施行はできるわけでありますが、一旦確定いたしまして、次年度以降に基本計画の編成の入りますところについて、一部の修正をいたさなければならない。これを三条において規定いたしまして、一応整備計画を現在の基本計画に全部移してもらいたい。こういう考え方であるわけでありまして、これが一応整備が完了いたしますと、整備計画自体は将来多少の変更がございましても、それを移して基本計画計画的に盛り込んで参れる、こういうことになるわけでございまして、あくまでも現在の措置は臨時の措置ということになるというふうに御了承願いたいのでございます。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 計画の変更の場合あるいは林野整備計画の決定の場合等に、ただ単に買入れ等の対象になる地域ということでなくて、今後治山計画等の上から、相当広い意味保安林指定等が同時的に行われる必要も出て来ると思うわけでありますが、そういう点がいわゆる森林計画の変更等の中においてどの程度打出されるかという点を、あらかじめ承知しておきたいわけでありますが、その点はどういう方針なんですか。
  26. 柴田栄

    柴田政府委員 整備計画所有形態いかんにかかわらず、重要水系の水源地帯の国土保全対象といたしまして、現在の保安林を再検討いたしまして、一応の目標は立てておりますが、増加指定によつて整備する、これを今後三年間に一応目標の具体的な整備を完了いたしたい、かように考えておりますので、それらの完了のあかつきにおいて、森林区の基本計画にそれが施業を指定される、こういうことに相なるわけでございますが、そのうちで特に重要な水源地域に関しまして、一応の目標は五十万町歩を国で買い上げて、国で管理実行して行きたい、こういう目標を立てておりますが、その五十万町歩という目標は、重要水源地域というものを一応考慮いたしまする場合の整備された結果の保安林というものは、約百十一万町歩くらいを予想いたしております。これは具体的に整備計画が完了いたしまして、多少の移動はあるかと存じますが、ほぼその目標を立てておりますので、その半分くらいを確保できれば、大体保安林経営自体が、目的に対して不安なく実施できるであろう、こういう考え方実施いたしております。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 やや具体的に明白になつて来ておるわけでありますが、この改良区の場合においては、森林法の二十五条に規定された一、二、三号が主として該当すると思いますが、これは水源の涵養と土砂の流出の防備、土砂の崩壊の防備、この三つの要件に当てはまる場合においては、当然これは必要な場合においては買入れの対象にするということにならなければ、所期の目的を達成することは不可能だと思いますけれども、先ほど長官福田委員に対する御答弁を聞くと、それほど強い一つ国家的な意思によつてこれが達成されるというわけでもない、あくまでも話合いの上に立つて行くものであるということでありますが、これらの歴史的な仕事をやる場合においては、やはり国家的な立場の上に立つて、当然一貫した方針でこれを貫くということが必要と私は考えるわけでありますが、それらの決意がない場合においては、龍頭蛇尾に終るおそれが多いじやないかというように考えるのでありますが、当初に私が申した通り、現在の政府のやる仕事としては、これば相当敬意に値するような法律であります。これを出す以上は、相当の決意というものがあるべきであるというふうに期待を持つているわけでありますが、この点は長官よりも、むしろ平野次官にお伺いして、確認しておいた方がいいと思いますが、あくまでも所期の目的を達成するために、既定計画による地区の指定、それから買入れ等を、最後までやり得る見通しでおられるかどうかという点を、お伺いしておきます。
  28. 平野三郎

    ○平野政府委員 保安林整備につきましては、森林法によつて基本計画を立て、これの完成を意図して進んでいるわけでございますが、今回御審議を願う法律案は、それともちろん関連はいたしておりますけれども、一応臨時措置として、こうした計画の中において、約十万町歩程度の、特に荒廃に瀕するおそれのあるようなものを買い上げて参ろう、こう思つているわけであります。従つて基本計画の一環ではございますがこの臨時措置によつて、全般が解決し得るというふうには考えておらぬので、ただ全般の基本態勢の確立への一つ効果を発揮するものである、こういう意味でやつているわけでございまして、その点御了承いただきたいと思います。
  29. 柴田栄

    柴田政府委員 ちよつと補足してお答えいたしたいと存じますが、この法案は、相当画期的な制度として前進するのに、多少不明確であるというお話でありますが、私どもの見通しといたしましては、ほぼ計画実施可能であるという見通しを立てております。と申しますのは、問題は相談づくで売り買いをするのだと申しましても、評価の妥当性の問題が一つ大きく問題になると存じますが、一応これは了承願える評価を基準といたしたいということで、もうすでに具体的に、一応対象等に関して実地交渉を進めつつある分もあるのでありますが、この見通しからいたしますと、一応所期の目的は達成し得るという一つの目標を持つております。なおこれは相談いたしまする場合にも、主として経済性の低い、公益性の強い地域が買取りの対象になるということでございますので、買取りに対しまする客観的な社会の同調をも得るという見込みでおりまして、現在すでに約二十万町歩くらいは、一応の目標を立てつつあるということでございますので、今後十箇年間に、五十万町歩の目標は、現在の見通しでは、一応実施できるという目標を持つて、あわせて決意を持つて進めつつあるという点を、御了承願いたいのでございます。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 昨日川俣林業委員長からも、長野県における林野の視察等の報告もありましたけれども、私たちが視察した場合においても、保安林整備計画によつて指定地区が買入れ対象になる場合には、相当困難の問題が生じて来るであろうというような話も聞いて来ておるわけでございますが、これは結局、まつたく経済的に価値のない放置された民有林指定して買い入れるという救済的なものではなくて、長官が常に言われるような、国土保全の立場に立つた国家的に見て非常に公益性の強い重要地区を確保しなければならぬというところに、この法の重点があるというふうに考えられるのであつて、結局重要度というものが先決であつて経済性が高い低いということよりも、この森林法二十五条による一、二、三の当該地域として、その地域がいかに重要であるかという判断の上に立つて行われなければならぬと考えるので、そこに問題が出て来るのではないかと思うわけであります。それを所有しておつて、経済的な効率が低い、適当な納得のできる対価で処分してもさしつかえない地域だけを買入れした場合においては、当初の目的は決して達成できないと考えるわけであります。そこに問題があると思うわけであります。その点十分確認しておきたいと思います。
  31. 柴田栄

    柴田政府委員 私の答弁が不十分で、御了解願えなかつたかと存じますが、買上げ対象は、あくまでもただいま先生のお話の通り地域対象になるわけでございます。しかしさような地域は、現状におきましては比較経済性の低い山であつて公益性の強い山を私有いたしまして、これを管理される場合に、現状においては必ずしも経済対象として多くの希望を持てない地域であるという点から、比較的相談がしやすい、こういう見通しを申し上げた次第でございまして、買いやすい所を買うという考え方ではなく、あくまでも目標は国土保全のための保安林ということに限定して行うというように規定いたしておりまする内容も、御了承願いたいと思うのでございます。
  32. 芳賀貢

    芳賀委員 この点が一番重要だと思う。これは今後の法の成立等によつてのその後の推移によらなければ、的確な判断はできないと思いますけれども、今長官の言われたような、あくまでもその線に沿つてこのことを行うという明確な態度で進まれるべきであると、われわれは一つ期待を事前に寄せるわけであります。今年度の買入れ計画は、大体五万町歩で、これを予算の面から見ると十五億程度が計上されておるわけであります。そういたしますと、一町歩当り三万円くらいが平均の対価ということになるわけであります。現在の実情からいつて、それが大体妥当な基準として了承される線であるかどうか。これは全国的にいろんな差異はあろうと思いますが、その点のしさいな検討はすでに済んでおるわけでありますか。
  33. 柴田栄

    柴田政府委員 平均いたしまして、一町歩三万円という予算を盛りました点は、よりどころといたしましては、現在国有林整備臨時措置法によりまして、売渡し並びに買上げ、交換等をいたしておりますが、その実績が一町歩当り立木を合せて四万三千円になつております。これは主として普通の経済林を対象として実施いたしておりまするが、今後買い上げまする保安林等は、保安林として十分な整備ができておらないところの対象が主体になるという考え方からいたしますと、一町歩当り、現在取引いたしております平均土地価格を九千円としまして、平均蓄積二百石というのを標準といたしております。今度対象となるような奥地の保安林地帯の平均単価を、実績から想定いたしまして、一町当り三万円ならば実行においても不当ではない、こういう見解から一応単価を出しておるのでございます。しかし必ずしも三万円で買わなければならないということではなく、あるいはいま少し安くなるところもあり、あるいは必要によつては、評価いたしまして高くなつてもかまわない。こういうことは実際としては当然あり得るわけでございます。それらの点は、実行に当りまして適正に実施するという考え方でおる次第でございます。
  34. 足鹿覺

    足鹿委員 芳賀委員の質問に関連してお尋ねしたいのでありますが、先ほども芳賀委員から指摘されましたように、水源涵養あるいは土砂の流出の防止あるいは土砂崩壊防止等は、当然強制買上げ対象地に入れるべきであると私は思う。それを森林計画違反しているものだけに限定をして行くというところに、あきたらない微温的なものがあると思う。いやしくも首相のお声がかりで、十箇年計画厖大な看板をかけた治山治水対策要綱が、今示されるような微温的なもので、国土の完全な保存がはたしてできるかどうか。われわれはむしろ、当局考え方が非常に微温的であるという考え方を持つ。森林特別会計で剰余金が少しあつたものをこれにまわすというのが、今度のねらいのようですが、この仕事を進めて行つた場合に、特別会計に赤字ができた場合には、長官、これは一般会計から繰入れて、正々堂々とこの国策を遂行して行くという決意がありますか。これは平野さんにもあわせてお尋ねいたします。これが一点。  それから対価の評価基準の問題ですが、政令にすべてまかせておいでになるようでありますけれども、時価というのは一体どういうことでありますか。今度対象になるのは、ほとんど伐採も困難な林道のない奥地林がその対象になろうと思う。その場合に、奥地林の時価はどういう基準に基いて算出をされるのでありますか。非常に慎重にかまえて、政令において慎重にやりたいと提案理由には述べておいでになりますが、この点どういうふうな御構想でありますか。その点をお尋ねしたい。  それから、このほど電源を盛んに開発している。その関係上、全国にわたつて水没地がどんどんできて行く。この水没地の補償は、電源開発の関係から別途に定められておるように思いますが、それとの関係あたりはどういうふうになるのでありますか。今度の整備法の趣旨そのもには、われわれは別に異議はないのでありますが、何かおずおずと恐る恐る出しておられるような印象を受ける。治山治水の国策を遂行して行かれる場合には、もつと思い切つたものがなければ、国土の完全なる保全、災害の未然防止ということは看板倒れになりはしないか。この法案をつぶさに拝見し、いろいろな資料を私ども熟読してみますと、そういう印象を受けるのであります。先ほど申し上げましたように、水源涵養や土砂崩壊あるいは流出防止については、頭から強制買上げ対象にすべきではないか。またこの事業を推進して行く場合には、一般会計から当然相当額を年次ごとに繰入れなければ、ほんとうの目的は達成できない。特別会計法の余剰財源等を充てるというような、そういうみみつちい考え方では、なかなかできないと思うが、赤字が出た場合には一般会計から入れるのかどうか。それからこの評価基準についての三点をお尋ねいたします。
  35. 平野三郎

    ○平野政府委員 強制買上げの範囲を拡大してやつたらどうかということでございますが、私も感じからいたしますと、森林というものは公共的性格の非常に強いものでありますから、国家管理傾向に持つて行くということが妥当であると考えておるわけであります。そういう意味からこの法案提出をいたしておるのでございます。しかしながらすべて崩壊地であるとかそうした砂防指定というようなところをみな全部買い上げてしまうということもいかがか、まず当面のところはこの程度方向が妥当ではないか、こういう趣旨で提出いたした次第でございます。  なおまた評価の基準でございますが、これは時価によるということはどういうことかということでございますけれども、これは土地と立木にわけまして、土地につきましては賃貸価格に対するところの一定基準があるわけでございまして、それによつて行う。また立木につきましては、その立木伐採、搬出されて、市場の相場においてどのくらいになるかということを逆算をしてきめるわけでございまして、これは現在国有林整備法によつて売払いをいたしておる場合についての評価基準というものがあるわけであります。これとほぼ同じであるということは原則でございますが、しかしこれはただいま検討いたしておるというわけでありますが、原則はそういう方向で行くということになつておるわけであります。  それから電源開発につきましては、これは電源開発促進法の規定によつて、政府は公正な補償に努めなければならない、こういうことになつておりますので、それによつて補償基準というものができております。これはこの場合と違いまして、単に時価だけでなしに、水没して他へ移転するということに対する精神的な慰藉料というようなものも含めて計算をしなければならぬわけでありますから、これは別にそういう基準があるわけでございまして、従つて本法とは別段直接の関係はないわけでございます。  なおまた国有林特別会計が将来財源不足をした場合において、一般会計から繰入れるかというお話でございますが、もちろん不足をいたしました場合におきましては、繰入れをいたして参るつもりでございます。
  36. 福田喜東

    福田(喜)委員 関連して。今の政務次官の御答弁は私は非常に重大であると思いますので、ひとつお伺いいたします。というのは、この保安林整備臨時措置法というものは、森林国家管理の思想のもとに出されたものでありますかどうか。これは党としての考え方からいたしまして、非常に重要な点であろうと思いますが、この点次官の御答弁はそれで間違いありませんか。
  37. 平野三郎

    ○平野政府委員 森林の全般的な国家管理という意味ではないわけでありまして、ただ森林は特に公共的性格の強いものでありますから、従つて保安林等の特に公共的性格の強い部面の森林については、国が管理をするということが妥当であるという考え方でございます。
  38. 川俣清音

    ○川俣委員 これは質問よりも資料をひとつお出し願いたいと思つておりますが、今までの説明を聞いておるところによりますと、十分納得できない点がありますので、資料のお出しを願いたい。それは土壌の調査がどの程度進行いたしておりますか、これが一点です。これは粗悪林とか、あるいは保安林として適当な所でありましても、経営林として保安林から削除しなければならぬような地域もあるかと思いますので、そういう観点から土壌調査がどの程度進行いたしておりますか、その資料がございましたならばお出し願いたい。  もう一点は、あらためて保安林として指定される地域に鉱業法上あるいは採石法上指定されております鉱業権または採石権を持つておる面積がどのくらいあるか、この点であります。  もう一点は、下流農民は、一定の水量を目標にして耕地の耕作をいたしておりますが、これらの水源がだんだん減つて参りますと、農民の確保いたすべき一定水源が枯渇することによつて、あらためて水源にダムをつくりましたり、あるいは土砂の防止をすための方策を下流において行わなければならないのですが、電力会社に対しては水利権の補償方法をとつておりますが、下流の農民からいたしますと、これらの賠償を、山いわゆる水源涵養地において枯渇せしめた損害の請求を下流の農民がした場合がありますか。はたしてそういう例がたくさんあるかどうかという点。これは先般木曽へ参りまして、あすこの王滝川であるとか、あるいは木曽から出て参りまする水というものが常に不動でありまして、常に水が豊富であることをつぶさに拝見したのであります。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕 これが保安林として指定する必要の起つて来る大きな原因であろうと思いますが、山主が山だけを自分の所有だということで、水が枯れようが、土砂流出等が起きようが放任されておるということは、下流の農民の権益を非常に侵すことになるので、いろいろこれは問題を起したことがあるのでありますが、そういう損害賠償を要求したような事件がどのように片づいておるか、またどの程度補償をしたことがあるかどうかというようなことのお調べがありましたならば、お知らせ願いたい。
  39. 柴田栄

    柴田政府委員 ただいまの資料に関しましては、それぞれできるだけ早く調査をいたしまして提出いたしたいと存じますが、ただ土壌調査の資料は、林野につきましては、現在のところ国有林だけが実施いたしておりまして、民有林についてはまだ実施いたしておりません。二十九年度から初めて土壌調査によりまする適地適木基礎調査を実施することによりまして、三百五十万円の予算が一応ついたという現状にございますので、資料がございませんことを御了承を願いたいと存じます。
  40. 芳賀貢

    芳賀委員 買収の問題でありますが、今足鹿委員強制買収の問題に触れたわけでありますが、強制買収の場合には、森林法の第三十八条の規定による命令に従わない場合において強制買収をすることになつておるわけであります。これは知事の権限によるところの造林、復旧の命令に従わないというような場合が三十八条の規定であると思うわけでありますが、そういうような造林、復旧の命令に従わないところだけを強制買収の対象にする、それ以外のところは強制買収を行わないということになると思いますが、その点はどういうことになつておりますか。
  41. 柴田栄

    柴田政府委員 強制買収はお説の通り三十八条によりまする違反行為に対しまする原状復旧あるいは造林行為の催告に従わない場合だけというふうに考えておりますが、今回の保安林整備によりまして、整備計画には、一筆ごとの林分の施業方法に対しまする計画を国が立てる形になつておりますので、これを守つていただくということができれば、国有にしなければならないという理由にはならない、こう思つておりますので、必ずしも強制国土保安のための保安林、すなわち二十五条の一号ないし三号の保安林に関して国家強制買上げをしなければならないというふうには現在考えておらないのでございます。
  42. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの御答弁によると、必ずしもそれでは第四条によるところの買入れというものは、何ら違反行つておらない地域ということになるので、そういう地域は別に国が買入れをしなくとも、個人の善良なる意思によつて運営されるから必要がないのではないかという立論も出て来るわけでありますが、そういう点に何か矛盾があると思いますが、その点はどういうように解明されますか。
  43. 柴田栄

    柴田政府委員 御承知のことと存じますが、奥地の特に重要な地域における保安林で、経済性のきわめて低い、しかも自然条件の悪い所で、取扱いの誤りによりましては重大な将来国土保全への危惧を招来するような地域につきましては、国がみずから経営することが最も妥当であるという考えを持ちまして、その地域を国が買い取つて経営したいということでございますが、しかしそれをしていて施業内容指定せられたものを厳守していただいて、所有者経営していただくことができるとすれば、必ずしも強制的に買い上げなければならないというふうには考えないのでございますが、さような場合には、おそらく民間の経営としては、経営対象にならないような施業の指定を当然付加しなければならない。従つてこれは相談づくで買い上げが可能であるという考え方で、強制をいたさないというにすぎないのでありまして、さような地域は私どもは買い得るという見通しで、国が持つて経営するのが妥当であるという地域を四条で実施できるという考えを持つておるために、強制ということを特に規定しないという考えでおるわけでございますが、理論的にはさようなところを、個人が経済的な犠牲を払つてでも、国が指定する施業要件を犠牲的に満すということを実施していただければ、必ずしも国有にしなければならぬというふうには、私ども考えておりません。
  44. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は非常に了承に苦しむわけです。先ほど私が質問いたしたところですが、第四条の規定は、重要度というよりもむしろ経済性の非常に低い地域を何か救済的に国が買い上げてやるというような印象が強いのであります。  それから第六条の場合においては、何か罰則的な意味がこの中に盛られているというように考えるわけでありますが、このいずれの対象にしても、これは当然私有権の上に立つた林野であるのです。知事の命令に従わなかつたから、この分に対しては強制買上げをするということと、第四条の場合にはこれは本人が売らないという場合においては、そこは国土保全上最重要のところであつても、本人の意思に反する場合においては、買上げをしないという点においては、非常に何か一貫性が欠けているような点があるわけでありますが、これは最後まで問題になるであろうと思うので、やはり第四条においても、本人の意思に反してでもここはどうしても国が所有するべき地域であるという判断がなされた場合においては、やはり強制買上げ等の措置が講ぜられてしかるべきである、これを行わない場合においては、この法律の成果というものは大きく期待することができないのではないかと、私たちは考えるわけですが、この点を重ねてお伺いをしておきます。
  45. 柴田栄

    柴田政府委員 あくまでも国土保全という建前が原則でございますので、四条によりまして御相談によつて売買をするという場合に、この保安林はあくまでも整備計画におきまして、一筆ごとの施業計画指定して、これを守つていただくということが前提になるわけでございます。従つてそれを守るということで、しかも自分が犠牲を払つてでもそれを守るということで相談が成立たないという場合に、施業指定が完全に守られる場合には、国土保全目的は達し得ると思いますので、必ずしもそれだけで強制するというまでの必要はないじやないかということでございます。この相談が成立たない、しかも施業指定を守られないという場合には、六条の規定強制が適用されるということになるのでございますが、私どもといたしましては常識的に、さような私経済性の強い山を将来も指定実施するとすれば、多額の経費を要するような地域は、相談によつて適正評価で売買ができる、こういう見通しで四条を適用して、必要妥当な地域を買い上げてもらいたい、また大体買い上げて参れるという見込みを立てておるわけでございまして、目的を達成するためには私どもはさしつかえない、かように考えております。
  46. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうような長官の論法で行くと、これは結局森林法の一部をもう少し強いものにして行かなければならぬと考えられるわけですが、その点はいかがです。森林法においてこの保安林指定を行うときに、この国土保全上重要な地区に対しては、これは永久に伐採させないとか何とかいうような、そういう有権的な規定を設けて、それにそむいた場合においては、かくかくの罰則を適用するというような強力なる配慮が行われて行かなければ、この保安林整備だけのこれによつては、本人が売らない場合においてはやむを得ないというようなことでは、どうも変則的なものができるのではないかと考えるわけですが、そうして結局いつの時代にかそれをまた全部切つてしまう、それからまた、これが命令に従わないで復旧しないから、国が強制買上げをするというようなことではいけないと思うのですが、その点はどういうようにお考えになつておりますか。
  47. 柴田栄

    柴田政府委員 お説の通り、当然森林法規定に基きまする森林計画内容を強化しなければならぬということになりますので、整備計画に基きまする森林計画内の保安林の一筆ごとの取扱い指定をいたすということになつておりますので、それらを映しまして森林法の一部改正が当然並行して行われなければならない、このことは先ほど足鹿委員の御質問に対してお答えいたした通り、目下森林法改正の準備をも進めておりますので、ここで御心配の点は十分に改正いたすという考え方でおるわけでございます。
  48. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、今後適当の機会にこれらの欠点となるような点は、森林法の一部改正等によつてつて行くというようなお考えと受取られるわけでありますが、これは今国会に間に合うように、これと半ば並行するような形の中において、かかる改正を行う意図であるかどうか、その点を十分確認しておきたいと思います。
  49. 柴田栄

    柴田政府委員 私ども当初は、同時に並行して法案提出いたしまして、御審議をお願いするつもりでおりましたが、時間的に間に合わなくなつて、御指摘のように多少アンバランスな状況で御審議を願うようなことになりましたが、一応整備法を含めまして、現在の森林法におきましても、整備計画森林計画に盛り込んで修正することによつて、それらの不安は一応解決すると思いますが、なお不備な点がございますので、近い機会に、あるいは今国会中に間に合えばこれも御審議を願いたいと思いますが、できなければ、来国会には必ず提案いたしまして御審議を願う、こういう考え方でおるわけでございます。これは今国会に必ず間に合せるというところまでお約束できるかどうか、目下たいへん危惧いたしております。
  50. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は非常に大事であるので、特に農林大臣が来ておられれば、かかる点は政治的な観点においても十分確認しておきたいのであります。四月の三日ごろ、ほかの林野関係法案改正案が出て来るというように考えておるわけでありますが、その中にそれらのものとあわせてこれを提出されたらどうかと考えますが、この点平野さんは何かお考えがありませんか。
  51. 平野三郎

    ○平野政府委員 ただいま長官がお答え申し上げました通り森林法改正をもいたしたいということで準備を進めておつたわけでありますが、あるいは今国会には御審議願うことが間に合わないかもしれないという状況でございます。なお近く出しまするのは、国有林野法の一部改正また国有林整備臨時措置法の期限延長、そういうようなところを予定いたしておるわけでございます。
  52. 足鹿覺

    足鹿委員 関連して、今関連法案の点が問題になつておりますので伺つておきますが、経済林の解放の要求は、あなた方の政府与党の松岡さんが昨日るるとして述べられましたが、この保安林整備法が進んで行きますと、国有林というものの範囲は奥地へ奥地へとさらに伸びて行く。ところがきのうの松岡さんの主張にあつたように、軒続きにまで経済林が伸びて来ておるが、これを頑として解放しない。こういう矛盾がある。私はもつともだと思うわけですが、この経済林の解放については、当然林野整備法の延長が必要になつて来ると思う。この林野整備法の延長を内容とする一部改正法案は、そういつた意味において解釈できるような一部改正法案でありますか、その点をひとつお尋ねしておきたい。  それから第四条第三号の「前二号の規定により買い入れる森林等に隣接し、これとあわせて経営することを相当とする森林」というものは、一体どういうものですか。これを解釈して行けばいくらでも拡充ができると思うのですが、これはどういうものですか。そういうものが現在どの程度あるのですか。先ほど芳賀委員指摘されたように、四条と六条との関係でどうも非常にあいまいだと思う。今私が指摘した四条三号の点等についても、「相当とする森林」があつて、これをやろうとしてもうまく行かないという場合には、一体強制買入れは適用になるのかどうか。四条、六条の関係で私どもあまりよく理解がしにくい点がありますが、その点はどういうことになるのでありますか。以上二点。
  53. 柴田栄

    柴田政府委員 奥地の水源地帯の保安林買上げと合せて里山の経済林の解放の問題、これは当然国有林の性格というような問題から、今後検討されなければならない問題であると、私どももその原則については考えておるのでございますが、現在の国有林整備法の適用範囲では、とうてい根本的にこれの解決に不可能だと私は考えております。従いましてこれはさらに検討をいたしまして、国有林の本質を明確にいたしまして、これが経営方針をさらに明確にして、しかる後解放すべき林野は、原則を定めて解放するという方向に持つて行くべきであると存じておりますので、今回国有林整備臨時措置法改正をお願いいたしますのは、事務的な関係で期間を二十九年度一ぱい延ばしていただきたいということだけに一応限定して参りたい、かように考えております。  それから第四条の三号で「隣接」というのがあるのだから、際限なく隣接で適用できるのじやないかという御懸念もありますが、これはあくまでもこの四条一項の末尾にあります「国土保全上必要な」ということが絶対の原則でございまして、この隣接の附帯的なものは第二号の「保安施設地区」――保安施設地区というのは、ごく少部分の渓流の堰堤築設箇所、あるいはごくわずかの山腹の治山事業を施行するような地域指定いたしまして、これらが買上げ対象になるわけでございます。今後それを維持し、効果を発揮いたして参りますためには、これをめぐる諸地域森林をも含めて管理しなければ、将来の維持管理が万全を期し得ないという隣接地域考えておるのでございまして、あくまでも広い範囲に隣接ということで経済林まで含めるということは、国土保全上必要であるという観点から、そこまでは拡張できないというふうに私ども考えておるのでございます。
  54. 足鹿覺

    足鹿委員 関連していま一点。国有林整備法の一年延長の法案を近く出すということでありますが、現在当農林委員会でも問題にしております町村合併促進法との関係でありますが、同法十七条と思いますが、合併促進のために、国有林野の払下げあるいは国有財産の優先払下げ等の条項があり、それらが相当町村合併促進の効果を発揮したように思つておりますが、町村合併促進法に基く国有林野の払下げ等の現在申請の出ておるもの、あるいは払下げ済みのもの、そういつた市町村合併促進法にうたつておる国有林払下げとの関係に関する資料がありましたならば、この際ひとつ御提示を願いたい。
  55. 柴田栄

    柴田政府委員 承知いたしました。ただ現状から申しますと、合併促進のために林野整備による売払いを希望するというよりも、合併前に旧の町村が保安林整備による売払いを受けたいという希望の方が多いのでございまして、その点は促進という問題に関しましては、非常に逆の方向にあるということを実は心配するケースが多いのであります。現在持つておられます公有林野等も、合併によつて合併町村に持つて行くということをきらわれて、あるいは売り急がれるとか、まず妥当な場合でも財産区分の設定というようなことで、合併町村の基本財産に持ち込まれない例の方が非常に多いのでございまして、この点は私どもも将来の公有林野の育成あるいは基本財産の造成等に関しまして苦慮いたしておる点であることを御了承願いたいと思います。
  56. 芳賀貢

    芳賀委員 第四条の問題でありますが、指定地区の買入れ、売渡し等に関連して、一定地区の中において所有者が数人おるという場合において、甲は売渡しを行うし、乙は売渡しに応じないというような事例も出て来ると思いますが、そういうことになると非常に不同になつて、せつかく売渡ししようという意図のある所有者も、それに応じない者もあるというようなことによつて、また意思を変更したり何かするというような実例も出て来ると思いますけれども、これは同一地区、指定された地区内における対象者がほとんどそれに応ずるような気配の場合においては、当然それの若干は強制的にでもそれにならわせるというくらいのところまで行かなければならぬと考えるわけですが、どうもこの点が微温的に思えてならないわけですが、そういうようないろいろな事態が生じた場合においては、いかようにして処理されるか、この点であります。
  57. 柴田栄

    柴田政府委員 将来の買収というものをめぐりまして、管理に徹底を欠くという点は御指摘通りだと存じますが、今日善良に指定事項を守つて管理し、しかも売らないというものをぜひとも買わなければならぬという理由もなかなか立たない。ただこの問題は、実際問題といたしましては、周囲がほとんど全部統一されて買収に応じたというような場合には、いま少しこれを活用する下流全体の意向等もお聞きして、さらに強い要請をいたして、統一買収を進めるというような措置を尽したいとは存じておりますが、ぜひともこれを強制収用するという理由はなかなか見出しかねるという御指摘の点は、何とも実は解決できないのではないか。ただしかし国土保全目的ということのために、管理上の不便はありましても一応支障はない、こういうことは言わざるを得ないというので、御指摘の点はございますが、一応やむを得ないという考え方を持つております。
  58. 芳賀貢

    芳賀委員 次に第六条に関係いたしまして、第三十八条の規定の命令に従わないというような地区は、これは国土保全上の特に重要な地帯を除いても、面積の上からいうと相当広汎のものがあると思うわけなんです。こういう条件の土地がそのまま放置されておるようなことではならぬわけですが、こういうような点は、三十八条の規定に従わないということで、この法によつて強制買収をする、ということまで行う意思があるので、これに関連をもつて、まつた国家的にも公益的にも、林野所有してはおるけれども熱意を持つておらぬというような地区は、場合によつては国が買い上げるか何かして、もう少し公益的にこれを運営するという必要は必ず生じて来ると思いますけれども、この点に対するその拡大の限度というものはどの程度まで考えておられますか。
  59. 柴田栄

    柴田政府委員 国の買い上げます目標地域は、あくまでも重要な水源の上流地域保安林地帯ということに限りたいというふうに考えておりますが、主要地域に関しましては、これは今後森林法改正で御審議を願うつもりでおりますが、一応の方向といたしましては、二十五条の一号ないし三号の保安林の中でも特に国で責任をもつて管理運営をしなければならない地域と、地方長官にまかせてしまう地域とにわけたいという考えでおりまして、特に広域にわたる重要な水源地域保安林に限つて国が買い上げる、こういう考え方を持つておりますので、さような地域につきましては、保安林整備計画に基いて施業指定等の違反が今後は範囲が広くなつて参ると存じますが、これを守つていただけぬ場合は、相当その地域に対しては範囲を広げても買上げを進めて参らなければならぬ、かように考えております。
  60. 芳賀貢

    芳賀委員 この放置された地域相当広大であると思いますし、わが国のように国土が狭小な場合においては、農地にもならぬし、また林野にもならぬという地帯が相当多いわけでありますが、こういうのはできるだけ速急に、一定計画によつて明確な効率的利用というものが取上げられる必要があると考えられます。  次に本法律が施行される場合において、ほとんどが中央森林審議会の議を経てということになつておるわけでありますが、地方における水系別の地域指定であるとか、あるいは末端における買入れ等の問題等が出て来ますので、都道府県単位の審議会等は何ゆえにこの場合に活用する御意思がなかつたのか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  61. 柴田栄

    柴田政府委員 中央森林審議会に依存しましたのは、主として計画の点が一点と、評価の点でございますので、評価基準を定めるということは、一応全国を通ずる基準で時価の算出をしようという考え方でございますので、特に地方森林審議会を煩わす必要はないであろうという考え方と、計画につきましては基本計画を国で立てます場合に、中央森林審議会の議を経るということになつておりますので、これと重大な関連を持つております保安林整備計画を立てる場合には、やはりこれとの関連において中央森林審議会の議を経る、こういうふうに私ども考えております。強制買上げは、実は私どもといたしましては、あまり多くの件数は出ないであろうという考え方を持つておりますので、これを特に地方森林審議会にお願いしなければならないというほどの必要性はないであろうという見込みでおるわけであります。
  62. 芳賀貢

    芳賀委員 農地関係の場合においては、町村における農業委員会あるいは都道府県単位の農業委員会あるいは農林大臣というような末端からの段階を経て、農地の買取とか交換とかあるいは紛争の処理が行われておるわけでありますが、この場合においては、ただ単に中央における審議会だけに依存しておるようであります。これはやはり当然町村段階においても、個人の持ち山が一応対象地区になつて買上げが行われるというような場合においては、町村の当事者の意見とかあるいはそれらの関係した機関等の意見の聴取あるいは協力を求めるというようなことも必要になつて来ると思いますけれども、それらの機関との協力関係等はまつた考えなくともこれはやり得るというお考えですか。
  63. 柴田栄

    柴田政府委員 特に地方森林審議会の御審議を願うということではなくても、あるいは下流の関係の市町村長あるいはその地区の森林審議会委員その他関係者等と当然連絡のもとに、県、営林局、所有者等と協議をいたしまして進めるという形をとるつもりでおりますので、ただ形式的に森林審議会の議を経るという必要はないと考えております。ただ中央森林審議会審議を願うというのは、統一された国家計画のもとに進めたいという点から中央森林審議会の御審議を願う、こういう考え方であります。
  64. 芳賀貢

    芳賀委員 時間があまりありませんから、第四条並びに第六条等の問題に対しては、今後あらためて別の機会に質疑を行いたいと考えますので、本日はこれで終ります。
  65. 福田喜東

    福田委員長代理 午後は二時から再開いたしますから、時間厳守をお願いいたします。  午前はこれで休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十二分開議
  66. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  現行農地法における農地制度等の問題に関しまして調査を進めます。発言の要求がありますからこれを許します。降旗徳弥君。
  67. 降旗徳弥

    降旗委員 占領政策として行われた農地改革は、わが国農村における一大革命であつたのでありまして、従つてこの革命の裏には幾多の犠牲者を生じたことも周知の事実であります。独立回復後においては占領政策の行き過ぎは当然是正されなければならぬのでありますが、農地改革農地制度もその範疇に属するものと思うのであります。しかしながら農地制度並びに農地法の是正は、単に旧地主の失地回復という観念にとらわるべきものではないのでありまして、それはあくまでも食糧増産の立場から、社会正義確立の立場から論ぜられねばならぬと思うのであります。申すまでもなく食糧の増産はわが国政治の重大案件であり、今日の政治もまた社会正義の立場から強い批判を受けておることば申すまでもないところであります。従つて私は、かかる観点から今日の農村を見ますときに、幾多の困難を発見せざるを得ないのであります。  まず第一に申し述べたい点は、零細農が漸増するという憂うべき傾向が顕著であり、この傾向は農民の生活をいよいよ困窮化して行くということであります。終戦まではわが国は長子相続の制度によつて、父祖伝来の農地はおおむね長子の手に維持されて来たのでありますが、今日は均分相続制に切りかえられたのであります。しかも個人主義の傾向の強い時代におきましては、農地は現実に細分相続されるか、または農地自己においてまとめて維持しようとするには、他の均分相続さるべき農地を換金評価して買い取らねばならぬことになるのでありまして、これは営農、耕作、金融、家計の上に重大なる困難と危険を生ずることになると思うのであります。  第二は耕作地が固定化し、生産性が阻害せられるに至つたことであります。農地改革後すでに十年近くを経過いたしました今日におきましては、数多い農家のうちには、家庭の労力、人口の構成に大きな変化を生じたものが少くないのであります。従つて激減した家族人員では十分に耕し切れない田畑を所有しておる。しかるにこれを他人に貸与すれば、再びとりもどすことができぬばかりか、場合によつては他人に所有権を奪われてしまうのであります。これはかつて小作人として地主から借りていた田畑を、自作農として自分の所有に取得した新地主の人々にとりましては、その身に引き比べて痛切に感ずるところであるのであります。従つて一方には過剰に耕作労力があるにもかかわらず、この労力不足の土地が閉鎖されて解放利用されないことになるのでありまして、はなはだしきに至つては、他人に貸与するよりも、かやでも育ててこれを刈つてつた方がよいという者すら出て来るのであります。以上のごとき事態が生ぜざるを得ない理由につきましては、一つには小作権の問題、二つには小作料の問題が障害をなしておると思うのであります。申すまでもなく、地主と小作人が対立していた時代には、弱者である小作人を保護するという立場から、耕作権を特に重く見る必要があつたことは当然でありましよう。しかし農革以来、この小作人は自作農、すなわち地主になつたのでありまして今日は特に耕作権を偏重し、ことさらに所有権を軽視すべき理由がないと思います。現在の農地法によるきゆうくつな規定を緩和いたしまして、土地所有者が自作することを適当とする場合は、小作契約を容易に解約し得る道を開くことは、農地の利用を活発にするゆえんであると思うのであります。  次に小作料の問題は、法律の上では厳重なる規制が設けられておりますが、しかしこれは現実の農村には適しておらない。現に小作料がその農地の公租公課と大差なきものすら存在するのでありまして、従つて無謀なるやみの小作料を防止することはもちろん必要ではありますけれども、さらにかくのごとき経済事情を無視した過少なる小作料を是正しなくては、農地の経済的利用は、これを期待するわけに行かない、こう思うのであります。  次に終戦以来農産物物価のやみ相場が横行いたしました当時は、小作人にとりましては、金納制度の小作料が便利であつたでありましようけれども、やみ相場が公定価格より下まわるがごとき現象を生じております今日におきましては、地方によつてはかえつて物納の方が便利であるのでありまして、物納と金納の両建を認める。これをその地方によつてあるいはその場所によつて自由に選択する必要があるのではないかと思うのであります。すなわち以上申し述べました、諸点を改めることによつて農地を有能なる農民に解放し、その弾力性と生産性を回復して、増産の目的を達せなければならぬと思うのであります。  第三に、農革によつて取得された農地は、その本来の目的は、これを農地として利用するにあつたことはもちろんであります。でありますから、この農地が他の目的のために転用され、または宅地その他地目変換によりまして、他人に買却されるがごとき場合に対しましては、適当なる対策を講ずることが当然であると思うのであります。今日全国農地の事情についてこれを見ますと、かくのごとき実例が決して少くないのであります。わが国は現在毎年約三万町歩の田畑が消滅して行くのでありますが、このなくなつて行く田畑は、主として熟田、熟畑であるのでありまして、このうちおよそ半分は天災によつて荒地となり、他の半分は工場敷地、宅地、道路敷地その他に転用されていわゆるつぶれ地となつて行くものであります。従つてこの農地所有者の中には、かつて旧地主から小作地を引取り、新地主となつた人々も多いのでありまして、かくのごとき人々は、かつて一反歩数百円で買い取つた農地を、数年後の今日は農地としては十数万円、宅地としては数十万円に売却しておるのであります。かつての地主は、零落して生活にも困つておる。しかるに農地改革によつて小作人に僅少な価格で譲渡した田畑が、今や莫大な価格で転売され、その代金をふところにした新地主すなわちかつての小作人は、農業を放棄して、他の職業に転向して行く。こうした現象は農地改革の趣旨に反するものであり、社会の正義に適せざるものである。旧地主の断じて納得のできかねるものである。こうした事実は、毎年つぶれ地になる農地の莫大な面積によつても、その事例の少くないことを立証することができるのであります。かくのごどき矛盾と不合理をそのままに容認しておくならば、農村の純朴なる美風は、必ずや汚濁せられるであろうと思います。従つて農地の転売または農地以外のものに転用する件に関しましては、農地法規定する十年の拘束期限は、今日の実績について見ますると、不備の点が多いのであります。これが期限をさらに延長するとともに、この期間内において農地を処分する場合には、旧所有者、現所有者にもあわせて利益を均分せしめる必要があると思うのであります。  第四には、国家が買収した未開墾地の件であります。この未墾地を国が個人に売り渡した場合においては、売渡通知書に記載されている開墾を完了すべき時期までの中間のときにおいて、状況検査をするものとし、この場合成績が著しく不良であり、また開墾完了の見込みがないと認めたものにつきましては、国がこれを買収できるものとし、国が買収をしない場合は原所有者は国に対しこれを買収、売りもどすことを請求することのできるようにすることが必要と思うのであります。  さらに申し述べたい点は、国がすでに買収せる未開墾地であつて農地法施行後三年を経過するもなお売渡しを完了する見込みのないものにつきましては、これを上述同様の原所有者に返還すべきものと思うのであります。これは未開墾地を中途半端な状態に何どきまでも放任しておくことは、土地の利用を妨害する結果となると考えるためであり、また一面においては、買上げ当時の事情を今日是正することができると思うからであります。  以上は農地改革以後の農村に起りつつある注目すべき現象について申し上げたのでありまして、この事態はそのままに看過すべきものでないと思うのであります。当局におかれましては、いかなる所信があられるか、この点を承りたいと思います。
  68. 平野三郎

    ○平野政府委員 お話の通り農地改革のその後の政府の基本方針といたしましては、食糧増産という観点から進めて参りたいと存じておるわけでございます。お尋ねの第一点であります均分相続によるところの農地の零細化の問題は、政府としてもこのまま放置するわけに参らないという考えのもとに、過ぐる年この均分相続の場合における農地の特例に関する法律案を国会に提出し、御審議を願つたのでございます。当時この法案は衆議院を通過いたしましたが、参議院において審議未了となつて、そのまま今日に至つておるわけでございまして、政府としてはその後も何らかの方途を講じなければならぬということで、いろいろ研究しておりますが、憲法違反であるというようないろいろな議論等がございまして、立法的には今日そのままになつておるわけでございます。しかしながらこれは行政措置を通じまして、均分相続による農地の零細化を防止しなければならぬ。こういう立場から、日本の伝統的風習であります長男が農地を相続することを勧奨いたしまして、実際においては新民法による悪影響が農地に及ばないように努めておる次第でございます。  第二の農地改革後の家族構成の変化によつて労力不足の農家を生ずるという点もお話の通りでございます。従つてこういう点については、農業の機械化その他の方途を講じて、少数の家族で与えられた農地の高度の利用ができるように、これまた努めておるわけでございます。  小作料の点についてお話がございましたが、これも公租公課に及ばないという場合もあり得るわけでございます。しかしこれは少くとも固定資産税を下まわるようなことがあることは不合理でございますので、小作料のスライド制ということを考えておるのでございます。  第三に農地が他目的に使用される場合において、旧地主に対しても何らかの補償をすべきではないかというお話でございますが、政府といたしましては、いろいろの弊害等については、行政指導によつてこれを除去しなければならぬと思つております。しかし農地改革によつて所有権がすでに移転しました以上は、旧地主にも何らかの特典を認めるという考えは、現在のところは持つておらないわけでございます。ただお話の通り農地がつぶれて参ります傾向は、毎年三万五千町歩程度に達しておるわけであります。これは食糧増産上ゆゆしき問題であると存じますので、できる限り農地のつぶれるのを防ぐ方途を考えておるわけでございます。しかしこれは一面においてはある程度やむを得ないことでありますので、ただいま新たに農地の拡張、改良等の食糧増産政策を進めまして、この点の調整をはかつておる次第でございます。  第四に、国が未墾地の買収をしたものの中で不適当のものについては、これを元の目的に返還すべきである、この点につきましては、すでに数年来いろいろ問題がございまして、先般政府の買収いたしました未墾地の中で、開墾の不適地であるという認定のついたものは、元の所有者に返還するという立法措置をも講じまして、そういう趣旨で進めておる次第でございます。
  69. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいまのお話はしごく抽象的なことで、私はもう少し堀り下げて考えることが農村に忠実ではないかと思うのであります。なるほど均分相続制の根本に触れることは、いろいろと困難な事情もあると思います。しかし現実に考えてみて、私が一町歩の土地を持つ農民であると仮定し、子供が五人あるといたします。法律が人間の生活を規律するものなりといたしますと、五人の子供は二反歩ずつの相続をする権利があるわけであります。そうすると一町歩の農家は、今度は二反歩の農家五人になる。これがまた二代、三代と経過したならば、どうにもならないことになるのじやないか。しからばその便法として農地をまとめて自己所有として、経営単位だけの反別を保持して行こうとするならば、請求があればそれにつり合うところの対価を支払わなければならぬわけなのです。今日農地はその値段が野放しになつておりまして、しかも価は決して安いものではありません。これに対する政府の金融措置はまことに微々たるもので、むしろ二階から目薬の感を深くするものである。この金融をどうつけるか、第一これが大きな問題であります。しかもその金融をつけてみたところが、その農地経営して行くには重大なる負担となることは当然であります。でありますから、今日の農村の実情から申しますならば、均分相続制のこの法律が農村の人々の生活を規律するものとするならば、農地がますます零細化されることは当然なことです。しかし農民の生活が法の規律を無視してもよろしい、農村の経営が法の規律をないがしろにしてもよろしいということになるならば、この法の存在はまつたく空文とならざるを得ない。これはいやしくもむずかしい算術を知らぬでも、現実に加減乗除してみればわかるはつきりした問題なんです。私はこの問題を今日真剣に考えることが、農村の問題を処理する上からいつて重大なことだと思うのでありますが、ただいまは政務次官から御答弁がありましたから、この点については、平川局長が長い間の経験から、どうお考えになつておるか承りたいと思います。
  70. 平川守

    ○平川政府委員 ただいま政務次官からお答えいたしましたように、均分相続に関する特例の法律をつくるということが、一つ考え方としてあるわけであります。ただこれにつきましては、相続ということに関する憲法の定める均等の相続分を与えなければならぬ、こういう考え方も一概に筋の通らぬ考え方ではないわけでありますから、やはりでき得れば相続に関して金融措置を講ずるということが、お話にもありましたけれども一つの手段であろうかと思います。ただこの点につきましては、実はお話の通り非常に金融の金額が現在少い。そのために、実際問題としては、かりに多くの共同相続人から全面的に要求があつたという場合を想定いたしますと、今の政府の自作農創設特別会計による金融だけでは、これをまかなうことはとうてい困難であるという実情であります。この点については明らかに制度的には欠陥があると思います。従いましてわれわれといたしましても、この金融措置をもつと拡大するという方向をただいまいろいろ研究いたしておるわけあります。これがさしあたりわれわれとしても均分相続でありながら農地だけは一体として相続せしむる、そのかわりにできるだけ他の相続人に与えるべき金額の融資をはかる、こういうことについての一つ方向であります。ただ何分にもこれは予算にも非常に関係がございますので、現在のところお話の通り、非常に不十分な金額しか用意されないというところがこれの欠点であると思います。なおこれはもうすでにでき上りましたことでありますけれども、相続の場合に、一つにまとめて相続することによつて非常に多額の相続税がかかる。この問題はすでに解決をいたしまして、現在の相続税の制度では、大体普通の自作農でありますれば、ほとんど問題がない程度のことに緩和されております。今後の問題といたしましては、やはり今の金融の方向を強化して行くということが、一番実行可能な方向ではないか、かように考えております。
  71. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいま金融の問題についてお話があつたのでありますが、現在農地の取引されておる価格は野放しなんです。しかもそれはかつて農地改革を断行した当時の値段と比べれば格段の相違で、これを対象としていかに国が金融の処置をとろうと思つても、これはむしろ手に余ることなんです。それができるとは私ども考えられないのです。ですから現実に、均分相続制度と現在の農地の維持ということに大きなギヤツプがあるということが露呈されておることであつて、これは農村の問題として非常に大きな問題である。でありますから、こうしようと思う、ああしようと思うというお話はけつこうでありますけれども、いかにいろいろのことを希望し、計画しても、現実に処理されなかつたならば、この農地は細分化されることは当然なことであつて、その結果は農民の生活は困窮する。困窮すればその思想は悪化するということは必然の理だと思うのです。であるから、今までは農村は日本のバツク・ボーンであると言つたけれども、そのバツク・ボーンをどうしてわれわれが確立するか、寒心にたえない。今局長のお話の、金融をするということはけつこうだけれども、その金融の対象を、値段を野放しにしておいて金融すると言つても、私は容易なことでないと思う。これは今私が明確に答弁しろと追つても、なかなか大きい問題で、農林省だけでは処置できない問題であるかもしれません。しかしながら、これは今日の農村における重大な問題だ。このことを今日から考えて、いかに善処するかという対策を講ずることが、事態を混乱に導かせないことになる、こう強く信ぜざるを得ない。この点を特に御理解願つておきたいと思うのであります。それから特に申し上げたい点は、最近の農村の過剰人口と失業人口の問題なんです。経済審議庁の調査によりますと、今日農家経営にとつてつたく不必要な人口は、大体百万ないし百五十万人と推定されておる。潜在失業人口は二百七十万と言われておるのでありまして、農家の次三男は、その六十二、三パーセントというものは兼業をしなければ食つて行けない。さらにわが国の現在の状態は、将来デフレになるだろう、都市の失業者はあげて帰農せざるを得ない、こういうことを考えますと、農村の問題は戦前にも増してなかなか重大な問題だと私は思うのです。この問題について特に政府が意を用いられたいことを希望しておきます。次に小作料の問題について、政務次官から概括的なお話があつたのでありますが、一体この適正小作料あるいは最高小作料は、どういう基準によつて算出されておるかということを、具体的に承つておきたいと思います。
  72. 平川守

    ○平川政府委員 詳細は別に必要がありますれば資料等をもつて算出方法をお示ししてもけつこうだと思います。大体の考え方といたしましては、農地において農業を営む、その農業を営む者が適正なる所得を得て経営ができるところの生産費といいますか、そういう収支の関係を算出いたしまして、それになお若干の利潤があがる、その利潤のうちの耕作者がとるべき適正なるものを除きました残りを算出いたしまして、これを適正小作料とする、方式といたしましてはそういう方式で算出いたしておるわけであります。
  73. 降旗徳弥

    降旗委員 これはこまかくお聞きすると時間をとりますから、これ以上申し上げませんが、結論的に申しますと、私は現在の小作料は改訂する必要があると思う。政府はこれを改訂するというお考えですかどうですか、伺いたい。
  74. 平川守

    ○平川政府委員 小作料につきましては、現在のところそういう算出方法をとつておるのでありますが、その結果出ております小作料の制限額というものと固定資産税の制限額というものが非常に密着しつつあるわけであります。それで、小作料で固定資産税を払えということは少くとも無理ではないかと思うのでありまして、これらの点についてはなお研究をいたしておるわけでありますが、ただいまただちにこれを改訂する、あるいはどういう程度に改訂するというところまでの結論は出ておりませんので、明確にはお答えいたしかねます。そういう観点からいたしまして、研究はいたしております。
  75. 降旗徳弥

    降旗委員 研究はしているけれども、近いうちには、実現する見込みがないということなんですか。
  76. 平川守

    ○平川政府委員 ちよつと明快にお答えいたしかねるわけであります。
  77. 降旗徳弥

    降旗委員 それはまことに困つたことなんですか、また別の機会に承ることといたします。  それから先ほど政務次官から、農地改革の当時の地主の対価はもう支払つて所有権は移転しているのだから、いまさらそれが他に転売されて利潤があつてもそれはやむを得ない、こういうお話があつたのですが、しかしこれはあまりにもしやくし定規的な御答弁だと思う。そういう旧地主が犠牲を忍んで農地の解放に応じたということは、土地が農業のために使われて、不足なるところの食糧充実のために利用されるということならやむを得ないではないか、こういうつもりで農地を解放しているのです。でありますから、その解放した農地を譲り受けた人たちが、農地としてそれを利用しておるならば私は議論の余地は非常に少いと思う。しかしながらこれが農地としてでなしに、宅地その他の用途として使われる場合には、かつて譲り渡したよりもはるかに高額な売却値段をふところにする。こういうことになると、これは先ほど私が申し述べましたごとくに、農地解放の趣旨に反するものである。でありますから、この問題をただ単に所有権が他に移転してしまつたあとなんだから、あとのことは知らない、こういう一片のしやくし定規的な議論で済ますべきものではない、こう私は思うのであります。もしこれについて御異議があるならば承つてもよろしいと思うのであります。そこでこの解放された農地の中には、これは北海道の諸君からも聞いたのでありますが、都市計画区域内にあるところの農地またはこれに準ずる準宅地地帯にあるところの農地というものが買収されておる、こういうようなものがあるそうであります。これはもともとやがては宅地になるのだ、やがては道路になるのだ、こう予定されておるところの農地でありまして、こういうようなものについてはどういう処置をとられるか。これらの原所有者は、都市計画内の農地あるいはこれに準ずる準宅地地帯の農地というものはこれは原所有者に返してもらうべきだ、こういうことを要求して来ておるのでありますが、これについての政府当局のお考えを承りたい。
  78. 平川守

    ○平川政府委員 いわゆる五箇年保留地につきましては、本年のたしか七月でありますか、そのころまでを期限といたしまして、その間にいわゆる都市としての建築物その他が確実にできるかどうかということの見きわめをつけまして、その見きわめのはつきりしたものにつきましては、その所有者払下げをいたし、それからはつきりいたしませんものにつきましては現耕作者に売り渡すという処置をはつきりさせております。
  79. 井手以誠

    ○井手委員 議事進行。ただいま降旗委員から農地改革の大精神とはまつたく反するようなきわめて重要な質問がされておるのであります。こういう重大な質疑の場合には、当然私は大臣が出席しておらねばならぬと思う。そのことのよしあしは別としても、大臣が出席することが当然であると考えておる。最近の農政問題は食糧問題ばかりではなく、金融においてもあるいは災害その他についてもきわめて重要な問題がありまして、農林行政は転換期に来ておると私は考えております。そういう場合に大臣がほとんど出席しないということは、いかに大臣が考えておられるか、私は大臣の真意を非常に疑うのであります。なるほど予算委員会で、衆議院、参議院とまわつて忙しいとは考えておりますけれども、どうしてもここに来られないはずはないと私は考えております。私はほかの委員会にもまわつておりますが、塚田郵政大臣のごときは行政管理庁、自治庁、電通、郵政、この四つの部門を持つて、ほとんど要求に応じて出席をされております。なるほど予算委員会も重大ではありましようけれども、また特別現内閣では重要な人であるかもしれませんけれども、どうしても農林大臣として出席されなければならないとは絶対に私は考えません。私はこの国会からこの農林委員会に移つて参りまして、いろいろと御意見を聞き、また審議の模様も伺つて参りましたが、ほとんど大臣は出席されておらない。二回か三回か、私は数えておりませんけれども、ほとんど見えておりません。もう私は腹にすえかねました。私はよく大臣は知つておりますから言わないつもりでおりましたけれども、これ以上大臣が出席されぬままに審議を進行することはできないと考えております。おそらく委員長もそういうお考えであろうとは存じておりますけれども、この際私は委員長のお考えを聞きますとともに、強く大臣の出席を要望する次第であります。
  80. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  81. 井出一太郎

    井出委員長 それでは速記を始めて……。  この際委員長から降旗委員に申し上げますが、きようあなたの御発言を願うについては、理事会で協議をいたしました。その際の了解は、農地の問題について降旗委員の御見解を展開される、こういうことで発言の機会をつくつたわけでありますから、どうかその趣旨に沿つて、形式は質問という形式ではございましようが、その線に沿つて御意見の開陳を願いたいと思います。そうしてただいま他の委員諸君からも御発言がありましたように、事は非常に重大な問題でありますから、追つて日をあらためて大臣を招致して、農地問題について掘り下げる機会を別に持ちたい、かように考えますが、御了承願います。降旗徳弥君。
  82. 降旗徳弥

    降旗委員 次に申し述べたい点は、農地改革によつて国家に買い上げられた土地価格につきましては、世上いろいろと議論があることは御存じの通りであります。日本農村の一戸当りの耕地面積の狭小なることは、世界に類例を見ないのでありまして、地主といえどもその実は僅少なる耕地によつて多少ゆとりのある生活をしておるというにすぎないのでありまして、この唯一の財産をとられた地主の生活というものは、急激なる変化と困窮を受けざるを得なかつたのであります。従つて農革のために変死または病死した者、発狂または病気中の者、家資分散の者または生活困窮の者等は、その数が決して少くないといわれておるのであります。これらの犠牲者に対する詳細なる調査は、政府においても当然なされていなければならぬと思うのでありまして、この点について特に当局の意を煩わしたい、こう思うのであります。  第二には、農地買上げの評価基準昭和二十年に置かれていたものでありますが、代価の支払いは二十三年ないし二十五年になつておるのであります。勧銀調査による農地等売買価格表についてみますと、中品等のものにつきましては、田については昭和二十年に八百九十七円、二十三年は九千四百二十円、二十五年は二万八百二十一円、畑につきましては、昭和二十年は五百六十四円、二十三年が六千百六十三円、二十五年は一万三千三十二円、山林は昭和二十一年は三百二十四円、二十三年には九百三円、二十五年には千五百九十二円となつておるのでありまして、土地買上げの事情がいかに旧地主にとつて酷であつたかということが想像されるのであります。従つて二十五年以来も暴騰に暴騰を重ねた土地の価格を今日彼此相比べてみますと、天地霄壤の差を感ぜるを得ないのでありまして、しかも旧地主の生活は前述せるごとく悲惨な状態のものが少くない。買上げ農地に対する政府補償の問題は、しばしば国民の間に叫ばれて来たのでありますが、政府はかくのごとき叫びは考慮する必要がないと、一概にこれをしりぞけることはできないと思うのであります。この点につきましても御留意を願いたい。  第三には不在地主に対する農地買上げの善後措置の問題があります。これは特に出征軍人あるいは他町村勤務の公務員等にその類例を見るのであります。あとは引受けたという郷党の歓呼の声に送られた出征軍人が、敗戦のさびしい姿で郷里へ帰つて来てみると、自分の家の田畑はほとんど小作人の所有に帰しておる、耕地はすでに自分のものでない、明日の生計をどうして行くかというような問題が少くないのでありまして、これをこのままに打棄てて置くということはできないことであると思うのであります。さらにまた農革によつて取得した農地であつて、耕作不能になつたもの等に関しましては、原所有者に返還する原則に立脚いたしまして、これら切実なる犠牲者の救済と相関連して、適宜の処置が講ぜらるべきものと思うのでありまして、この点を指摘せざるを得ないのであります。  次に申し上げたいことは、農地の改革は農村の生産力の増加と、農民生活の向上のために断行されたものでありますが、今日わが国農村の現状は、さらに別個の考慮をあわせ行うのでなければ、農村の幸福と繁栄を求めることは困難だ、こう思うのであります。その理由は、第一にわが国人口の激増である。第二には過剰人口の圧力によつて農地が細分化されることである。第三は国民の生活水準の引下げが困難となる。第四には生活苦に伴い個人主義が普遍化することである。第五には純朴なる農村が漸次都会的風潮に汚染して来るからであります。国土の狭小と資源の貧弱なることは、ひとりわが国商工業の弱点のみではなくして、わが国農業の弱点とも思われるのであります。この弱点は国内問題として消極的に解決のできるものではないのでありまして、海外の諸情勢、すなわち国際的の立場に立つて、積極的に勇敢に努力してこそ、初めて解決の端緒を求め得ることと思わざるを得ないのであります。農業問題については、この意味において、第一に北海道移住民計画があり、第二には海外移民計画があります。この二つの農民移住の問題は、小さな耕地の上に相争い感情化せんとするわが国の農村問題に一つの大きな転機を与えるものでありまして、進退に苦しむ農村に新しい時代の理想と生気を与えるものであるとも言うことができるのであります。先般緒方副総理は、議会におきまして、北海道には約数百万の内地人の移住が可能であると答弁されておるのでありますが、農林当局は、この問題についてどういう研究と計画をされておるか、この点を承りたいと思うのであります。  次に海外移民の問題は、私どもがつとに努力して来た問題でありますが、最近海外協会連合会を設立いたしまして、国内態勢を確立し、今年度から計画的に移氏の送出をすることになつたのであります。申すまでもなく移民問題は、この受入れ国の事情によつて大きく影響を受けるものでありますが、今日の場合南米諸国の受入れ態勢は非常に好転して来ておるのでありまして、さらに賠償問題解決後の南洋諸島の事情にも望みを嘱すべき点が多いと思うのであります。わが国の人口問題は、人口学上の学説によりますと、今後十数箇年は毎年約百二十万人の生産年齢人口の増加がありますが、その後は人口は一応安定することとなつておるのであります。従つてこの十数箇年の間において実行せらるる政府の人口対策のいかんは、将来のわが国国運の隆替を決するものということが言えるのであります。この点につきまして、農村問題と関連して当局はいかなる所信を持つておるか、この点を承知いたしたいと思うのであります。  最後に申し述べたいことは、以上申し述べた点は、私一個の見解のみではない、現在日本政治の重大問題として考慮せらるべきものであることは、先ほど同僚委員からも申された通りであります。今日全国各府県、各市町村に農政連盟あるいは農村振興連盟等が続々と結成されて、すでにその会員数は十余万に及び、なお急速に拡大されておるのであります。この事実は現実の政治問題である上述の諸問題が、農村の人々に生々しく直結しておることを物語つておるものということができます。これらの会員は決して旧地主のみではないのでありまして、旧小作人から新らしく地主になつた人々も多いのでありまして、従つてこの事実は問題の重要性を率直に語つておるものということができると思います。すでに冒頭において申し述べました通り、この問題を未解決に捨てておくということは、食糧増産の立場から申しましても、社会正義確立の立場から申しましても、断じてとらないものであります。従つて百尺竿頭一歩を進めまして、民族の将来と国運の前途を策定する立場から申しましても、これらの問題について今から根本的な研究と対策を樹立するということを痛感せざるを得ないのでありまして、この点を強く主張したいと思うのであります。わが党におきましても、農地制度問題あるいは移民問題等につきまして特別なる委員会を設置いたしまして、これが研究と政策樹立に努力しておるのでありまして、これは各政党とも同一であろうと思うのであります。農林当局といたしましても、この問題についてどういうお考えを持つておられるか、これらのことにつきまして所信を承りたいと思うのであります。
  83. 平野三郎

    ○平野政府委員 農地改革は、お話のごとく非常に革命的な大事業でありまして、それをやつて参ります上におきましていろいろな派生的な問題があることは当然であります。これにつきましては、それぞれ適当なる方法をもつて調整をいたして参つておるわけでございますが、政府といたしましては、農地改革の基本精神を後退させるような意図はまつたくないわけであり、またそうでなくても、あるいはそうした誤解を受けるようなことは政府のとらざるところである、こういう基本方針を持つておるわけであります。各般の問題にわたりましていろいろご意見並びに御質疑がございましたので、詳細につきましては農地局長からお答え申し上げます。  なお人口対策について政府はどう考えるかという点につきましては、政府としては農村ばかりではなく、日本の人口問題全般にわたる大きな問題でありますので、対策を立てなければならぬということで鋭意努力をしておるわけでありますが、これはまず第一には、国内において農村の次三男対策をいかにやつて行くかということにつきましては、農地の拡張をはかるということで開拓者資金融通法あるいは自作農創設特別措置特別会計法というような法律を通じてやつておるわけでございます。なおまた海外移民ということはもちろん大きな問題でございますので、これにつきましては特段の処置を講ずべく努力をいたしておるわけでございます。これは農林省としましては、農村の次三男対策と関連いたしますと同時に、海外にこれから移民を送り出すにあたつては、その人物の選定ということが非常に大事でございますので、特に意を用いてただいまいろいろ準備を進めておるわけでございます。
  84. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいま他の委員諸君からのお話もありましたから、私は詳細にわたつて御質問申し上げることは後日に譲りたいと思います。ただ質問申し上げました要点について、ちようど農地局長もお見えでありますから、簡単に御答弁を願つておきたいと思います。先ほど申しました旧地主の犠牲というものは、これは相当評価してやらなければならぬと思うのでありまして、これらの犠牲者についての調査を当局においてはされておるかどうか、この点を一応承りたいと思います。
  85. 平川守

    ○平川政府委員 農地改革の途中におきまして、いろいろ法的に見ますと、従来の生活に比べて非常にお気の毒な人々がおるということは事実であると思います。ただ農地の買収そのものにつきましては、お話もございましたけれども、たとえば対価につきましても当時の一応の基礎の根拠をはつきりと持ちまして、買収のときに相当の対価を支払つておるということになつておるわけでありますから、実情において多くの小作料をとつてつた当時から比べれば非常にお気の毒な状態になつておる人もありますけれども、政府としては正しい対価を支払つておると考えておるわけでございます。従いまして、これに対して今特別の措置ということは考えておりません。それからなお、たとえば不在地主であつたけれども、終戦後帰還して来たというような例もおあげになりましたが、こういうものにつきましては、耕作者との間を調整いたしまして、耕作者の側においてその土地の耕作を帰還者に譲つても、その経営上あるいは生活上さしつかえがないというような条件があります場合には、帰還者に対する返還を認めるということが例外的措置としてあるような次第でありまして、これらは個々の具体的な実情に応じてそういう例外措置も認めておるわけであります。その程度のことはいたしておるわけでありますが、そのほかにおいて、旧地主に対して非常に特別なる措置ということはただいま考えておりません。
  86. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいまのお話は、私が質問いたしました点と違つておるようでございます。私はある地域の団体の諸君が、農地改革後の旧地主で、先ほど申し上げましたように一身上あるいは一家の上に非常な不幸をこうむつたような人がおるわけです。そういうことを調査しておる団体がある。従つてこれらの問題を糾明することは農政上重要な資料になるべきものだと思いますが、農林省でそういうような調査をしてあるならばそれを見せてもらいたいし、もしないといたしますならば、手段も方法もあると思いますから、これらの問題について資料を集めていただきたい、こういうことを質問したのです。
  87. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまの点につきましては、断片的な資料はございますけれども全国的に網羅したような調査はございません。
  88. 降旗徳弥

    降旗委員 先ほど御質問いたしました北海道の移住計画の問題について、農林当局としてはどういう考えを持つておられるか。もう一つは海外移民について、農業移民を送り出さなければならぬことはもちろん当然でありますが、農林省としてこの海外移民をどういう方法によつて送り出そうとしておるか、それらの具体的な問題についてお答え願いたい。
  89. 平川守

    ○平川政府委員 北海道の開発に関しましては、これは食糧増産政策、開拓政策の一還といたしまして、一応農林省といたしましても、五箇年計画のようなものを立案いたしまして実行いたしておるわけであります。予算の削減等で思うように参りませんけれども、大体われわれの調査によりますると、北海道において五十万町歩内外の開発可能地がまだあると考えております。これに対しておそらく十万戸近くの農家が入り得るのではないか、少くとも数万戸のものが入り得るのではないかと思う。これからなお個別的な調査を重ねたいと思いますが、概括的な調査といたしましては、五十万町歩程度は開発の可能性がある。これを十箇年程度でやつて参りたいというのが私どもの構想でございます。  それから海外移民につきましては、現在外務省の方ともいろいろ御相談をいたしておりますけれども、われわれといたしましても、先ほど政務次官のお話のありましたように、国内の開発と相並んで、次三男対策の重要なる一環と考えておりまするし、また内地の農村の再建、あるいは農村における農家の経営の改善ということとも結びつけて考えなければなりません。また海外に送るその人自身の選定、良質のものを選定するというような意味におきましても、農林省は非常になれておるわけでございます。そういう意味において、その移民事業に関する国内の事務については、十分われわれの方で措置をして参りたい。ただ先ほどちよつとお話がありましたように、団体等の関係もございますが、これは実務については民間団体等を使うということは十分考えております。
  90. 井出一太郎

    井出委員長 次は中澤君。簡潔に願います。
  91. 中澤茂一

    中澤委員 国営干拓地をあつちこつちでたくさん政府がやつておられるのですが、その配分の問題について今ここに具体的な一つの大きな問題が出ておる。あるいは農地法違反の問題もあれば、幾つかの疑義が出ておるのであります。それは御承知のように茨城県における猿島郡の森戸、中川、七重、長須、岩井、生子菅、これらの一町五箇村にまたがる鵠戸沼の国営干拓地でございます。この干拓地の配分の方式について、政府は一体どういう基本方式をもつて配分するのか。これはおそらく森戸ばかりじやない。全国の国営干拓地の配分の問題は、いろいろ問題を起しておるのであります。こういう具体的な事例が出ておりますから、政府は一体どういう基本方針で配分しておるか、これをまず第一番にお伺いしたい。
  92. 平川守

    ○平川政府委員 これは場合によつて、たとえば軍の接収を受けたところの人がおるとか、あるいは電源開発で水没地になつたような人がおるというような場合におきまして、面積が許します場合においては、そういう人を優先的に入植させるようなことを一つ考えておる。ただいまの具体的な場合は、それに当てはまるかどうかわかりませんが、そういう場所もある。それからそういうものがない場合、その地元の人が入ります場合におきましては、農地法考えておりますような、できる限り適正規模の農家を育成するという見地に立ちまして、過小農に対しては、それぞれ増反の若干の面積を割当てて参る。また次三男の多いようなところにつきましては、その者に入植を認める。その具体的の人選等につきましては、これは知事が審議会等の意見を聞きましてやるというようなことで、大体の考え方としては、要するに適正規模の農家を育成するという考え方が抽象的に申しますれば根幹でございます。それを具体的に当てはめて参ります場合に、一部既成農家の増反に充てる。あるいは一部次三男の入植に充てる、その具体的な割当につきましては知事にまかせることになつております。     〔委員長退席、吉川委員長代理着席〕
  93. 中澤茂一

    中澤委員 そうすると、その基本的な考え方はいいが、しからば増反以外の配分というものを政府は認めるか、要するに農家でない人への配分を政府は認めるかどうか。
  94. 平川守

    ○平川政府委員 農家でない者が配分を受けるということは、その農家がいわゆる自作農として精進する見込みがあるという判定を受ける非常に例外の場合でありまして、原則的にはそういうことはございません。その農地を取得することによつて、少くとも三反歩以上の農業経営を行い、自作農として確立し得る場合であります。実際問題としては、すでに現在農業をやつておらぬ者がそれに該当するということはほとんどないわけであります。
  95. 中澤茂一

    中澤委員 政府はそういう方針であるかもしれないが、事実上この森戸干拓においては、農家でない商人が相当な配分を受けておる事実がある。名前を申し上げればたくさんありますから申し上げませんが、大体材木屋であるとか、精米屋であるとか、菓子屋であるとか、とうふ屋であるとか、卵屋であるとか、農機具屋であるとか、鶏屋であるとか、船頭であるとか、こういう者が事実上の配分を受けておるのです。ここに配分を受けた名前から一切載つております。これはあとで向うを調査してもらわなければいかんのですが、そういうふうにして配分を受けたのが約九町何反かあるのです。それでこういう事実が出ておるのですが、この配分の監督権は一体農地局にあるのかないのか。
  96. 平川守

    ○平川政府委員 法制的には知事にまかせておるのでありますが、実際問題として、もしはなはだ不当なことがあれば、知事に処分を改めさせることもできないわけではございません。ただお話の地区については、私も詳細今存じませんけれども、先ごろ問題になりまして、県の方に照会をいたしております。県の方ではなおよく調査中であるが、そういうふうに言われる者は、いわゆる兼業農家であつたり、あるいは干拓されました地区内において現実に耕作をいたしておつた者にその面積を与えたとか、そういう例外的措置はいろいろいたしたので、中にはそういう者があるのではなかろうかということを申しておりました。しかしこの点につきましては、具体的な調査を今命じておりますから、それがはつきりいたしましたら、事例をもつてお答えしてけつこうであります。
  97. 中澤茂一

    中澤委員 あなたは若干の例外としてあつたらと言うが、たとえば石山三郎さんという人は全然耕地なしであります。それが一反五畝の配分を受けておる。家族人員三人でありますが、農業の稼働人員は全然ないのです。これは菓子小売商です。これが現に一反五畝の配給を受けておる。いま一つの例を申し上げておきますが、菊本福枝さん――これはおそらく女の人であろうと思いますが、これも全然耕地なしである。この人は家族人員は五人あるが、稼働人員として農業労働のできる者は一人もない。これは雑貨商であります。これが一反歩配分を受けておる。そのほかたとえば荒井勘治という人がある。これは三反四畝の土地を持つておる。しかしそのうちの一反の自分のうちのまわりの畑だけ耕作して、あとは全部人に貸しておる。ここには稼働人員が一人あります。こういうふうな稼働人員のないものや、雑貨商として自分の持つておる耕地さえも人に貸しておるというような人が、事実上配分を受けておる。それは一体どういうことで受けられたのか。
  98. 平川守

    ○平川政府委員 私も今詳細を存じませんので、その詳細につきましては調査をしてお答え申し上げたいと思いますが、先ほど申しましたように、県の調査の途中においての話では、旧干拓予定地の中に実際耕作をしておつたものが相当つた。それに対しては、それに相当する面積を与えることにいたしました。それからいわゆる兼業農家であるものについては、やはりそれぞれ若干の増反を認めることにいたしました。こういうことを申しておりました。ただいまかなり具体的の資料を持つてのお話でございますが、これと県の調査と、場合によりましてはつき合せまして、具体的なお答えを申し上げたいと思います。
  99. 中澤茂一

    中澤委員 これはあなたの方へ二月十一日に全農の永井君が行つて、いろいろ政務次官もおつて話をしておる。それをまだ調査できないというのはおかしいと思います。これはまさに私に言わせれば怠慢だ。しかしそれを責めることは第二といたしまして、これには配分を受けるために耕地面積と稼働人員について虚偽の申請をしておる人が相当ある。倉持作治という人の現在の実所有面積は一町四反八畝十二歩である。これを一町二反五畝二十歩しかやつていないと申請しておる。その差は二反二畝二十二歩ある。そこで虚偽の申請をしてどれだけの割当をしたかというと、三反五畝の割当をしておる。こういう例は一ぱいあります。こういう虚偽の申請をしたことは、まさしく農地法違反あるいはいろいろな犯罪に該当すると思うが、こういう問題についても厳密に調査する意思があるかどうか。
  100. 平川守

    ○平川政府委員 そのお話がありましたので、厳密な調査を命じておるわけであります。その厳密と申しますことについては非常に手がかかるわけでありまして、形式的な台帳面とか何とかいうだけでなしに、現実の姿を厳密に調査さしておるのであります。その調査の中間報告によりますと、先ほど申し上げたようないろいろ事情があるんだということを申しておりましたけれども、最終の詳細の報告がまだ参りませんので、その報告を督促いたしまして、具体的にお答えをいたしたい。
  101. 中澤茂一

    中澤委員 ではいずれ具体的に調査をして、その資料提出していただいて、そのときやるといたしまして、問題は今仮配分を受けておる。ところが仮配分だといつてつておるにもかかわらず、配分を受けた人は本配分にしてしまおうと登記を急いでおる事実がある。これが登記されてしまえば、政府の方では仮配分であると言つてつても、本配分になつてしまうんです。そういう事実が書簡ででも来ているのです。そこでこの干拓の問題に対して、前に干拓のまわりをやつてつた人の既耕地を原野として政府は買上げをしておる。その中の配分にもまた不正がある。今まで耕作した者よりか原野として買い上げて売り渡した者の方が減反しております。個人々々の事例がここに全部出ております。そういう不正が一ぱいあるのであります。中には村が紛糾して村長をやめた人もあれば、この配分をめぐつて森戸地区はごつたがえしになつておる。これは今まで書簡でもいろいろな材料が来ております。今仮配分ですから、そういう不正を正しく直して本登記をするように、本登記の登記申請を提出する意思がありますか。
  102. 平川守

    ○平川政府委員 仮配分であれば登記はできないと思いますが、いずれにいたしましても、調査が大体できておるという報告を受けておりますから、それを速急に取寄せまして詳細に御報告申し上げます。
  103. 中澤茂一

    中澤委員 そこでもし不正があり、その配分が非常に不均等な場合は、県のみにまかせないで、農地局長の方から係官を派遣して、厳密に現地調査をして配分のし直しをする意思がありますか。
  104. 平川守

    ○平川政府委員 明らかに不正であるとか、極端に不当である場合には、監督の命令を出してさしつかえないと思います。ただある程度裁量にまかされておるところもありますので、具体的な数字その他の資料を取寄せまして、詳細に御報告申し上げます。
  105. 中澤茂一

    中澤委員 この問題については、まだほかに材料は山のようにありますが、一応これでやめまして、農地局長の方から速急に調査をして資料提出していただくまで留保しておきます。     ―――――――――――――
  106. 吉川久衛

    ○吉川委員長代理 引続きこれより農林業施設災害復旧事業に関する問題、特に昨年の大水害による被害農地の復旧対策、並びにこれら災害復旧事業に対する国庫補助金の効率使用の問題等について調査を進めます。井手以誠君。
  107. 井手以誠

    ○井手委員 農林業施設災害復旧事業につきましては、昨年秋の大災害さらにそれ以前の過年度災害を加えますと、国庫の総負担は一千億を越える厖大な額がなお残つております。ところが最近の緊縮方針によつて、ほとんど予定通りに復旧工事が進まないのみか、査定が非常にきびしくて実際に工事ができないという大きな問題が起つております。その問題の中に新たに提起されたものは、会計検査院の検査でございます。最近検査院がいろいろと努力されて経理の適正を期せられつつあることについては敬意を表しておりますけれども、この会計検査院における努力が度を過ぎて、復旧事業の設計にまで口ばしを入れられて非常に困つておる事実がきわめて多いのであります。私具体的な事実をあげて、きようはまず最初に会計検査院にお尋ねしたいと思いますが、会計検査院は、いかなる権限によつて農林省がきめた査定済みの工事設計についてこれを変更せしむる権限があるのか、まずその点について法的にお尋ねいたしたいと思います。
  108. 東谷伝次郎

    ○東谷会計検査院検査官 ただいまの御質問でございますが、昨年の水害の復旧に関しましては、私が申し上げるまでもなく、工事が特別に適正な措置が講ぜられ、従つてそれにつれて予算もできておるわけでありますが、ただ予算ができたというだけでは私の方は検査はいたさないのでありますが、予算の執行段階に入りますと、常時検査の建前から検査をするということに相なるのでありますが、昨年の暮十二月までに、農林省の二十八年災予算が大体七十三億くらいだと思うのでありますが、そのうち六十億余りが予算の令達が去年の末までになつておるのであります。そういたしましてそのうちのある部分はやはり十二月まで支出ができておるのであります。そこでむろん支出負担行為もできておると思うのでありますが、支出もできておるというので、一応予算の執行の段階に入つておりますので、できればなるべく早く検査をしたいということを私どもつてつたのでありますが、昨年、一昨年あるいは一昨昨年あたりの検査の状況を見ますと、あるいは御案内だと思うのでありますが、昨年の検査報告にも書いてございますが、それを見ましても、昨年約三千八百箇所見たのでありますが、そのうち千七百箇所ばかりはやはり程度を越えておるとか、復旧工事をやるべきでないというようなものがございまして、実施の結果はあまりかんばしくないというふうに私どもは思つております。そこで常時検査、すなわち常時に実地検査をするという建前から、予算の令達もありますし、支出も幾らかできておりますので、これらを目途として検査をいたし、支出負担行為のない段階におきましての分は、その検査と同時に調査をいたしまして、次の検査に備えておるようなわけでありまして、一応その程度に御説明を申し上げておきます。
  109. 井手以誠

    ○井手委員 支払いが済んだので調査したというお答えでございますが、西日本災害関係については、この間その末端までには一銭も交付されておらないのであります。最近県庁から参りました資料においても未交付であるということがはつきりしるされております。そこで私は具体的に入りまして、最後に権限の問題をまとめてお尋ねいたしますが、北九州各県において行われました会計検査院の検査の状況をかいつまんで申し上げますと、工事費について従来認められておりました運搬費その他は、労力奉仕によつてやるべきであるということを強調されまして、農林省が設計した工事に対して、大体二割を天引きして決定されたということが、熊本、佐賀、福岡から報告されておるのであります。  第二点は、やむを得ない附帯工事の改良工事などは認められておりますけれども、これを会計検査院は認めなかつたということ。  第三は、農地に堆積しております土砂、これはすでに三箇年以上も経過いたしておりますので、一箇所にためております土砂は運搬し、あるいは流失して相当つておることは事実であります。七箇月、八箇月済んだあとになつて、これは四十センチであるとかいつて、ほとんど一メートルくらいのものを四十センチに削つた事実が非常に多いのであります。  第四番目には、農地災害復旧につきまして、石の控えは従来四十五センチであつたものを全部三十五センチに削つてしまつておられるのであります。面から奥行き四十五センチのものを三十五センチに削るということになると、非常に脆弱な工事になつて参りますことは申すまでもありません。そのことを考えて従来四十五センチにきめられておるのを、会計検査院は三十五センチに削つておる。このようにして労力奉仕において二割あるいは控えの切落しによつて二割、こういう方法によつて今おつしやいました六十何億かの災害復旧工事を切り落されておるということを、私どもは現地から報告を聞きますし、痛切な訴えを聞いております。どうしてこういうことが会計検査院でできるのか。おそらく災害復旧の責任者は農林大臣であると私は考えております。それを経理の適正を期する会計検査院が、設計まで変更させる、実際に用をなさないような工事を無理にしいる、そういうことがはたしてできるものかどうか。その点お尋ねいたしたいのであります。
  110. 東谷伝次郎

    ○東谷会計検査院検査官 ただいまの点でありますが、労力を提供しておるというようなものを会計検査院でそれを認めないというようなことはおそらく言つてないと思うのであります。これは具体的な御質問でありますので、局課長から説明させたいと思つておりまするが、今も仰せになりましたように、会計検査院は査定減をするとか査定増をするという権限を持たないのであります。検査をいたしまして、この分は法律に照らし予算に照らして、原形復旧の程度を越えていないか、あるいは二重査定ではないか、あるいは災害がなかつたのにそれを復旧するという形でこの設計なり工事が施行されておるのではないか、そうすればそれに相当するのは減額されてしかるべきではないか、そういうような意見を農林当局の方に示しまして、農林当局の方がそれに対する決定をされるのでありまして、会計検査院では、繰返して申しますが、査定をするという権限は持ちませんし、いたしておらないのであります。ただいま六十二億と仰せになりましたが、大分、佐賀、福岡、熊本、京都、和歌山、三重の七県の昨年の災害復旧の関係で百八十八億の総工事費に対しまして、会計検査院の方で、この点は二重ではないか、この点は行き過ぎではないかというので、意見をつけて、是正されたらどうだということで農林当局に御注意を申し上げ、農林当局の方で、そのうち六十二億くらいは会計検査院の言う通り減額したらという御意見がついておるのでありまして、     〔吉川委員長代理退席、委員長着席〕 これはまだ局長なり課長なりが検査をしておる段階でありまして、会計検査院として最終決定の金額ではないのであります。
  111. 井手以誠

    ○井手委員 労力奉仕については、熊本県から先般農民代表者会議に見えられた方が報告されたのであります。農地に堆積した土砂、大体一メートルのものを四十五センチに切つたということ、あるいは控えを四十五センチから三十五センチに切つたということは、佐賀県の方の関係者からの報告であります。そういう設計の内容にまで立ち入つてなさる権限がどこにあるかと私はお尋ねいたしておるのでございます。改良工事につきましては、ここでなかなか結論は出にくいだろうとは考えておりますけれども、ただいま申しました前二者につきましては、どういう権限でそういうことをなさるのか。もちろん査定ということではありますまい。検査院独自の立場において調査なさつたことでございましようけれども、これが地元においては強く――査定同様の、もつと強い響きをいたしておるのであります。県庁においても農林省においても、行政の実際から申しますと、いろいろとお世話にならねばならない立場から、会計検査院の進言と申しますか、意見は相当影響が多いのであります。今各地におきます査定は、財務局の調査、農林省原局の調査、会計検査院の調査と、一つ農地の復旧に何回となく調査官が参られて、関係者あるいは直接農民は、その応接に仕事ができないということを私どもは聞いておるのであります。査定が一旦きまつて設計が済んでおるものに、これを変更させるという権限がどこにあるかと、私は重ねてお尋ね申し上げる次第であります。
  112. 東谷伝次郎

    ○東谷会計検査院検査官 実は災害復旧に関します検査に参ります者は、まことに苦しい立場にあるのでありまして、特に昨年のような大災害を受けましたところに検査に参りましては、もう少し国からもらつたらどうだろうということが言いたいくらいの気持でおるのでありまして、参りましてこれも二重査定ではないか、この分は災害が小さかつたのじやないか、言葉でいえば吹つかけておるのじやないかということは言いたくないのであります。災害の復旧といいますけれども、実際は復旧よりも復興の方がよろしいと思うのであります。たとえば堤防にいたしましても、三メートルの堤防が切れたという場合において、五メートルあれば切れなかつたという場合には、三メートルに復旧するよりも五メートル、七メートル、八メートルと万全の堤防を築くべきであろうと思うのでありますが、予算なり法律なりがそうなつていないのであります。原形に復旧する、原形に復旧する予算はこれであるというふうに法律上及び予算上なつておるのであります。その通りに私どもは、忠実に予算の通りにできておるか。法律通りにやつておられるかということを見るのでありまして、従いまして設計にもタツチするようになるのであります。たとえば、今仰せになりましたが、そういつたような土砂の点、あるいはコンクリートの点におきましても、復旧の程度ならばここじやないか、ここから上は設計が行き過ぎておるのじやないか、復旧の程度を越えてはいないか、こういうのでありまして、自然に設計にタツチし、設計の批判をするというように相なろうかと思うのであります。
  113. 井手以誠

    ○井手委員 予算を誠実に執行しておるかどうかということについて検査されることはもちろん検査院の本来の使命でございます。それについて私は何も申し上げません。最近大蔵省方面で予算を圧縮するためかどうかしりませんけれども、盛んに災害復旧工事についての不正、不当工事を大々的に宣伝されておるようであります。ところがその誠実に執行されておることを検査されることについては何も申し上げません、当然のことだと考えております。またその労苦に対しましては感謝申し上げねばならぬのでありますが、先刻来申し上げますように、設計の内容について石の大きさまで会計検査院がタツチし、これを変更せしめるようなことができるかどうか。控えの石の太さが四十五センチでなくてはならないという従来の建前を、三十五センチの小さなもので足りるという変更をさせる権限がどこにあるか。佐賀県においては会計検査院の検査において四億円を削るべく厳重に示達されておるという。もしあなたの方でこれはおもしろくないということであれば、農林省に行かれて話合いでされるのがほんとうだと思う。一々現地に行つて調査される、これはあまりに私は行き過ぎではないかと思う。最近不正工事の摘発がはやりもののようになつておりますので、少し大きな数字を見つけ出したことが、鬼の首でもとつたようなお考えかどうかわかりませんけれども、少しひどすぎるように感じます。そこで私は、先刻来聞きますように、その権限を承りましよう。公的な、どういう理由で設計内容にまで立ち入らなければならないか、石を変更しなければならないか、その点をお尋ねいたします。
  114. 小峰保栄

    ○小峰会計検査院説明員 お答えいたします。具体的な内容に入る点が多いようでございますから、検査の責任者として私から申し上げます。  今の石の点でありますが、これは四十五センチという設計がぼつぼつ見えるのでありますが、大体は三十五センチの控えというのが普通であります。それで農地事務局あたりの当局者の意見も十分に徴しました上で、三十五センチということで、私どもの方は全部統一的に見ておるわけであります。従来の検査によりますと四十五センチというような設計がありましても、実際には四十五センチの石を使わないというものが非常に多かつたのであります。あとで参りますと小さい石を使つておるというような例も多うございますし、農地事務局の当局の意見も徴しまして、三十五センチ程度でよかろう、こういうことで全部統一的な目で見ておるのであります。それから設計の内容になぜタツチするか、こういうお話でありますが、これは設計の内容が、三十五センチと四十五センチで金額も相当かわつて参りますので、これが予算の執行の上に直接響いて来るわけであります。予算の執行、国費の支出というものを検査する場合には、どうしても設計の内容にまで入つて行かざるを得ない、こういう事実でありまして、各所とも設計内容ということは、私どもとしては十分に検査しておるわけであります。決して北九州の今度の災害についてだけそういうことをやつておるのではございません。そこまで行きませんと、国費の支出金額が正しいかどうかということが実はわからないわけであります。どうぞその点はひとつ御了承願いたいのであります。
  115. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して。今の検査官と局長の意見が食い違つておるのではないかと思いますが、その点をただしておきたい。会計検査院に設計内容の変更権がないことは明らかなんです。これは局長の仰せられた通りなんです。そこで問題は、ただ原状回復、いわゆる復旧でありますために、前よりもさらに強化することが望ましいと言いながら、それがなし得ない欠陥はあるといたしましても、前が四十五センチであつたものを、これを三十五センチの規格に統一するということは私は越権だと思うのです。統一ということを会計検査院としてやるならば、それは不当なる干渉になると思う。原状回復でありますからそれ以上望ましいけれども、そこまで進め得ない悩みはあるだろうと思いますが、原状復旧をするというのは、それも至らないということは、これは越権だと私は解釈いたします。この点についての御見解を承りたい。
  116. 小峰保栄

    ○小峰会計検査院説明員 検査官の言われましたことと私のと食い違うというお話でございますが、食い違つておりませんので御了承願いたいと思います。私たちは実は、設計の内容をどうして調べるか、こういう御質問で、それを調べない以上は国費の支出というものが妥当かどうかということがわかりかねる、こういう意味で申し上げたわけであります。かりに原形が四十五センチということがはつきりいたしました場合には、たとえば物が残つておる関係でわかりますような場合には、私どもとしてはこれを認めるのであります。しかしながら実際には四十五センチの石を使うということは少いように聞いておるのであります。大体は三十五センチというのが普通というふうに聞いております。個々のケースの具体例でありますから、場合によりましたら、お示しのような案件につきましてさらに詳細調査いたすことはあるかもしれませんが、大体において四十五センチの石を使う、――一尺五寸、相当大きなものであります。農業土木においてこういう大きな石を使うということは実際においてあまりないと承知いたしております。
  117. 川俣清音

    ○川俣委員 私はないかあるかという問題ではないのです。あなたの方では大体ないと認定して画一的に予算を見ておる、これが問題なのです。画一的に見てくれということを示す権限は何も持つておらないのです。それが予算の忠実な執行と考えることは越権だと思うのです。原状回復だから、それ以上望ましいことはわかつているけれども、原状のままでなければならないでしよう。そうすればその時代にたまたま四十五センチというものがあつたということが認められるならば、画一的に三十五センチでなければならないということで査定されるとしますならば、その査定は越権だ。大体査定の中に入るべきものではないのです。大きくすることはいけない、小さくすることがいいということはないはずなんです。そういう意味で、あなたが画一的にやることが予算の執行上正しいということは、これは正しくないのです。大きいものであつたら大きくしなければならない、小さいものを、これではあぶないじやないかということで、いくらか手心される、国費の十分な活用の上から幾分見のがされるということは、国費の濫費ではない。国費の用途を完全に満すためにいくらか寛大になる――寛大になるというのは工事の寛大でなくて、堤防の破壊を防ぐということのために少し寛大になるということはあり得てよいと思います。むしろそうではなくて、前よりも、これですらあぶなかつたのをさらにこれよりも縮小しなければならぬということは、完全な国費の活用ではない、こういう見解からお尋ねしたのです。何か画一的に見てやればいいのだ、こういう御見解はあやまちじやないか、この点をはつきりしていただきたいと思います。
  118. 小峰保栄

    ○小峰会計検査院説明員 御指摘通りでありまして、私どもといたしましても一々実は見ておるわけであります。それで四十五センチのものが原形にあるということになりますれば、四十五センチにするのも決して私ども文句を言わぬ――文句を言うと言うとおかしいのでありますが、実は査定の権限はないのでありまして、査定権を持つ農林省に対して、これは少し行き過ぎじやないだろうか。あるいはずいぶんひどいのもございますし、そういうものをもう一ぺん査定し直してはどうか、こういうような勧告をやつておるわけでありまして、おつしやることと私どもつておりますことと決して違つていないつもりでありまして、相当に原形超過というようなものも――私どもとしても再度災害を受けるというのはまことに困るわけであります。なるべくそういうことのないようにということの配慮はしつつ、従来から検査をやつておるつもりでありまして、あるいは一つ例外的に何かまずいのがございますかもしれませんが、方針としてはそういうふうにやつておるつもりはないのであります。
  119. 井手以誠

    ○井手委員 おつしやることと現地でなさつておることと大分違つておるようであります。勧告であるならば、農林省に対して基本的な考え方を申されるのが私は順序だろうと思う。ところが現地におきましては、検査官が査定官と同様の、あるいはそれ以上の厳格さかどうか知りませんけれども、同じような方法で一々査定される。四十五センチであつたものも、これを画一的に三十五センチでなければならぬということも言つておる。その結果四億円という減額になつておるのであります。それは一番下に敷くものは三十五センチのものがあつたでしようが、その上に四十五センチのものがあつたのであります。あつたものをよく見もしないで、一律に三十五センチにしてしまうということは、私は明らかに不当であると思う。また先刻も申しますように、堆積土砂は一箇所に集めておるが、それを見てこれは少いじやないか。なるほど半年以上も過ぎたもので、その間雨も降つておりましようから、減つておりましよう。それを現在においてこれは少いといつて査定し直せということは、これは不当だと思う。そういうような査定し直す権限がどこにあるかというのであります。私が今申しましたその土砂の測量と申しますか計算あるいは石の切りかえと申しますか、減すとか、あるいは動力費は、お前ら農民が勤労をすべきだということをおつしやる権限が、一体どの法律にあるかということを私はお尋ね申し上げておるのです。もしそういう権限がなかつたならば、今までの検査は御破算になさる御意思があるかどうか。現地では非常に恐慌を来しております。これでは工事がやれないということで、非常に困つております。私は佐賀県であります。災害地でありまして、私自身も災害を受けております。一番こわいのは会計検査院の検査でございますと、現地では言つております。県庁よりも農林省よりもこわいと考えておるのであります。もちろんいい点もございますよ。それはぜひそうしてもらわなくちやならぬ、私どもから勧めなければならぬこともございますが、この災害については、特に不正なものをという大蔵省の音頭からかどうか知りませんが、あまり行き過ぎておる傾向がありますので、私きよう特に質問申し上げておる次第でございます。従つて、くどいようでございますけれども、先刻来お尋ね申し上げております具体的な事実に対して、なぜそういうことをされたか、どういう根拠によつてされたか。もしそれが越権であり行き過ぎであるとお考えになりましたならば、今までの検査を取消すお考えかどうかということをお尋ねしたいと思います。
  120. 東谷伝次郎

    ○東谷会計検査院検査官 先ほどから申し上げますように、会計検査院といたしましては査定権は持つておりません。現地に参りまして、原状復旧の程度災害との関係をにらみ合せまして、これは少し行過ぎではないか、これは根本から建直すべきではないかというような意見を中央の農林当局の方に申し上げまして、そうして査定を仕直すということは農林当局の方でなさるわけであります。そういうような関係でございまして、一面においては、これはまだ主管課におきまして検査をいたしておる段階でございまして、もう一度検査に参らなくちやならぬかと思うのであります。その結果によりまして、この金額も、不動のものでありませんで、多少動くということには相なるかと思うのでありますが、調べましたものを御破算にするという気持は、ただいま持つてはおらないのであります。     〔「それは決算委員会だな」と呼ぶ者あり〕
  121. 井手以誠

    ○井手委員 決算委員会の話も出ておりますが、まだ工事をしていないのが大部分でございます。その工事もどうしても植付けまでにはしなくちやならない実情にございます。大事な時期にございます。金は相当支払われたような話もありましたが、まだ末端に行き渡つておりません。少い工事の費用でも行き渡つておりません。まだたくさん残つておる工事を査定官同様に検査されて――自分たちは勧告だとおつしやいますけれども、私は勧告ではないと思う。現地でそれだけ強くおつしやることは勧告の度を越しておる。同じことを繰返すようですから多くは申しませんが、私はそれはあまり行き過ぎだと思う。これをある程度是正される御用意があるか。一切御破算にとは申しましたが、三十五センチを四十五センチに復元する御意思があるかどうか、お尋ねいたします。
  122. 東谷伝次郎

    ○東谷会計検査院検査官 ただいまの四十五センチであつたものを三十五センチに統一するということは、先ほども局長から御説明申し上げましたように、そういう意思はないのでありまして、四十五センチであつたものであれば四十五センチで工事をなさることはそのまま認むべきであると私は考えております。もしも具体的な問題に入りまして、この分は四十五センチあつたのに認めてないじやないかということであれば、私どもはあやまちを改むるのにははばかりませんのでそういう注意を農林当局に発しておりますことを、私どもの方で取消すことは一向やぶさかではないのであります。  なお申し上げておきまするが、先ほど検査があまり行き過ぎじやないかというお話でありまするが、そういうふうに仰せになる方もございまするが、他面におきましては先ほど申しましたように、二十七年度で申しますると、六万箇所も現場がありますのに、私どもの方で参りましたのは、実地検査の関係、旅費の関係で、わずかに四千箇所しか参つておらぬのでありまするが、そういうようなことではしようがないじやないか、もう少し密度を高めて見てくれなくては困るという要望も、一面においてはあるわけでございます。ただそれにいたしましても、ああいう大きな災害のことでありまして、その復興につきましては、必ずしも前と一分一厘も違つてはいけないというふうな考えではないのでありまして、再び災害の起らないような配慮をもちながら、原形復旧ということを頭に置いて、検査をいたしておるような次第でございます。
  123. 井手以誠

    ○井手委員 おつしやるその言葉はわからぬでもありませんが、一律に査定と申しますか調査されて、現地で勧告されたことについて、ただいまも申されるように、誤りである、元四十五センチであつたなれば四十五センチがほんとうだ、そういうことになりますれば、やはりあなたの方で現地にもう一ぺん行つて、やり直すということが順序のように思うんです。あなたの方が間違つた三十五センチにしてしまつたということであれば、――これは現実にそうなさつておるんです。そんなものは四十五センチと認めぬ、一率に三十五センチにすべしということで四億円という金が出ている。従つてそういう間違つたことを知つたならば、あなた方の方は進んで再調査なさることが順序であると思う。向うからそういう異議が出ればもう一ぺんやりましようということではいけないのであります。そこであらためて再調査をなさる御用意があるか、これが一点。それから先刻申しましたように、もう半年以上も過ぎた土砂の量を今日はかるというその不当さ、またこれをやり直すお考えがおありになるかどうか。  さらに第三点は、運搬費などはお前たちの奉仕でやれと言われた二割天引のこと、これも全部やり直される御用意があるかどうか、ひとつはつきり御答弁をいただきたい。
  124. 東谷伝次郎

    ○東谷会計検査院検査官 やり直す意思があるかということでありまするが、そういう事例が非常にたくさんありますれば、やり直さなければならぬかと思うのでありまするが、私どもの報告を受けたところでは、あまりそういう例はないのでありまして、ただいま仰せのように四十五センチのものがたくさんあつたのだという説明が農林省あるいは県当局からありますれば、場合によれば再調査してもよろしいかと思うのでありまするが、ただいまのところそういう具体的な申出もありませんので、再調査するつもりではおりません。しかしながら先ほども申し上げましたように、これは非常に大きな工事でもありますし、今後続く工事でありまするので、まだ今年中に一度くらいはおじやまして、その後の実施の状況を見る機会があろうかと思うのでありまするが、そういう際にはただいまのような仰せのことは、詳細に、具体的なものにわたつて検査をさせたいと思つております。
  125. 福田喜東

    福田(喜)委員 ちよつとお許しを得て、一言関連して検査院の方にお聞きしたいと思います。これは私の郷里の大分県の宇佐郡に似たような事件があつたのですが、工事の件名は申し上げません。ただ抽象的に検査院の方にお尋ねいたしますが、災害復旧の工事の場合におきましては、災害復旧の工事の設計に書いてある工事量以上のことをなしたような場合におきまして、その工事というものが後日いろいろな含みを持つておる、たとえば本工事の場合における予算獲得の便宜のためにやつたのだとか、いろいろ不正とまで行かなくとも不当な意図をもつてやられておるものでない限りは、その超過工事と申しまするか、厳密なる意味の、技術的な意味だけの災害復旧、原状回復としてやつた工事というものは、認めていただいてしかるべきものではないかと思いますが、この点についての御意見と申しまするか、原則はいかがなものであるかということを、検査院の方にお尋ねいたしたいのであります。これは経済的、社会的に見まして、技術的に見て厳密な災害復旧の程度を少し越しておるけれども、これはやむを得ぬといつたような状況の場合におきましては、日本の国費全体の立場から見まして、お認めあつてしかるべきではないかと思いますが、どういう御見解でありまするか、原則論を承つておきたいと思います。
  126. 小峰保栄

    ○小峰会計検査院説明員 ただいまのお話でございますが、設計内の設計で原形を超過した工事というふうに伺つたのでありますが、設計で当初の原形のございますものについて超過した工事というものは、実際には相当程度認めておるのでございまして、農林省もいろいろ公共復旧というような観念でお認めになつておりますし、私どもといたしましても、法律には原形通りのものをつくるように書いてございますが、なかなか実際問題としては、それではまた災害を受けて、かえつて国費の濫費というようなことになりますので、相当程度のものは実際の運用として認めております。ただ原形のないものが実際問題にあたりますと相当多いのでありまして、まるきり原形のないものということになりますと、これはどうも現在の建前からいつて認めにくい、こういうことになるわけであります。
  127. 福田喜東

    福田(喜)委員 御趣旨まことにごもつともでございまして、原形のないものを復旧すると言つても、りくつに合わぬわけで、原形が少しでもあり、しかも会計検査院の立場というものは、私は法律上、国家の制度上きまつておるものだと思いますが、そういう場合におきましては、厳密なる意味のいわゆる災害復旧の範囲を少し逸脱しておりましても、原形がもともとあれば、社会的、経済的に国家目的上判断していただいて、多少お宅の方で技術的にどうかと思われる部面でも、これは認めていただきたい。当該事件が具体的にあるのでございますけれども、その原則だけについて検査院御当局の根本方針の宣言というものを得られれば、それで私は満足いたします。いずれ具体的の事件はあとで御相談いたします。
  128. 井手以誠

    ○井手委員 検査官の御答弁でございますが、どうしても納得が行きません。先刻来土砂の堆積量並びに勤労奉仕の点についても、再三承つておりますが、御答弁がございません。権限を越えて検査を行い、設計の内容まで立入り、そして四十五センチあつたものも一律に三十五センチにしてしまつたという検査院の調査方針でありまするならば、それは間違つておると思う。あなたの方でそういう間違いがあるならば、あなたの方で正すべきがほんとうではないかと思う。  もう一つこの際申し上げたいのは、なかなか下級官庁というものが上級官庁特に会計検査官に対していろいろと異議のようなことは言いかねるのであります。それをいいこととかなんとかいうことは申しませんけれども、言つて来たならば再調査しようということは、これははなはだ不親切なやり方であつて、あなた方が間違つたとお考えになりますならば、進んで再調査なさることが、その方針をかえられることが、また金額をきめられたものを是正することが、私は正しい行き方ではないかと思う。それをせずに、一旦きめたものである、間違つて異議があるものならば言つて来い、言つて来たならば再調査しよう、こういう行き方は許されないものである。どうも検査官のお答えは、腹はきめておるものだから、もし間違いがあればそのとき正して行こう、自分の方からはしようとは思わないというお言葉のようであります。この勤労奉仕の問題にしろ、石の大きさにしろ、あるいは堆積量にしろ、あなた方の行き過ぎであるならばやはり取消されるべきである。それを固執して、一旦きめたものであるというのでは納得が行きません。この三つの問題について、はつきりした御答弁を願いたいと思います。
  129. 東谷伝次郎

    ○東谷会計検査院検査官 労力の点は、これはわかるものはみな認めておるはずであります。もしもそれが漏れておるものがあれば、私どもの方の検査、調査の方では認めるということにいたしております。それからなお土砂の堆積の点でありますが、それがいざとなると、見たところ百立米しかない、こういつた場合に、百立米あるいは二百立米はどこどこへ持つてつた、あるいはその後の雨によつて流れたということがわかれば、それは具体的にちやんと見ておるのであります。  それから佐賀県のことでありますが、佐賀県などにつきましても、検査に参りましてその後いろいろとお話合いがございまして、実は佐賀県について申しますれば、検査あるいは調査をいたしましたものが十四億でありまするが、そのうち減額したらどうだと農林省に申し上げましたものが三億八千万円ばかりあるのでありますが、そのうち農林省で三億二千万円を大体検査院の指示によつて減額しようと思うという回答というか、御答弁を得ておるりでありますが、他の六千万円ばかりは会計検査院と違つた意見を持つておられるようであります。それからそれについては会計検査院もまだ全部は調べておりませんが、大体佐賀県からのお話もありますし、具体的なお話合いもだんだんありますので、大体は六千万円程度は認める方向に向うものと考えております。
  130. 井手以誠

    ○井手委員 認める方針とおつしやいますけれども、先刻申しましたように、現地で実際やられたこととここで御答弁なさつておることとは大分違いがある。一律になさつてしまつておる。いくら訴えても、哀訴歎願しても認めてもらえない。それでは君たちは労力奉仕でやるべきじやないか、自分たちのことじやないかという言葉、あるいはあの土砂はこれだけしかないじやないか、もしそのときあつたならば現にあるはずじやないか、こういう言い方で、びしびしと一律にやられておる。それを私は申し上げておるのであります。あまり申し上げると、またかえつて私に材料を提供した人が迷惑をする。私は恐れないけれども、現実の政治の行き方が、権力のあるものに対しましては泣く泣くがまんするのが今の行き方である。だから私はあえてここで申し上げておきます。あなたはこの国会では一応通るようなお言葉でありますけれども、地方に行つたらびしびしやられる。非常に冷血な態度であります。しかし私は非常に感謝しております。食事を一緒になさることは絶対ない。それはよく承つております。だから私はそのことについては非常に感謝いたしますが、検査の態度は決してここでおつしやるようなものではございません。私は何回申し上げても同じような答弁でございますので打切りますが、現地においてさびしく、冷酷な、査定同様なことをなさつておる。それでは私は検査院の態度としては行き過ぎであろうと考えております。この点については、それでは取消しますとはなかなか言いにくいでしよう。そういうことも私よく考えまして、農林省とこれはよく打合せを願いたい。私は農林省に対してはあとでよく質問したいと思います。検査院に対してはこれ以上申し上げませんが、検査院の検査なり調査について、非常に冷酷であるという批判が現地で充満しておることを申し上げておきます。あまり酷であるということ。これ以上私は申し上げません。
  131. 川俣清音

    ○川俣委員 この際検査院に御研究おき願いたいと思う点があるのです。それは食糧庁の関係でございますが、厳格に検査官がいろいろ検査されておるのでありますから、これも厳格に御調査を願いたいと思う件でありますが、それは法律上の要素を持たないで、日通に対して負担外の負担として一トン当り四十円、卸業者に対して手数料のほかに六十三円という負担以外の負担を政府が背負つておるようであります。これを何に使つておるかというと、財団法人検定協会というものの補助的な支出として支払つておるのであります。検定協会に直接払つておるんじやない。卸売業者の手数料のほかに、それらの補助金を別に見てトン当り六十三円、日通は運搬費以外に検定協会の負担分として日通を通じてトン当り四十円検定協会に支払つておるのでありまして、これらについて御検討なつたことがあるのかどうか、法律上根拠がない支払いでありますために不当なものじやないかと私は思いまするけれども、これは研究課題として提供しますから、御研究の上であらためて御答弁願いたいと思います。     ―――――――――――――
  132. 井出一太郎

    井出委員長 引続きこれより農業移民の問題について調査を進めます。質疑の通告があります。逐次これを許します。足立篤郎君。
  133. 足立篤郎

    ○足立委員 海外移民の問題に関しましてはわが国の独立以来関係諸国と外務省において、いろいろ外交交渉をなすつたのでありますが、その経過の概要と、その成果といいますか、最近における確実な見通しと申しますか、特に本年度における移民の具体的な計画につきまして、一通り御報告を願いたいと思います。
  134. 石黒四郎

    ○石黒説明員 お答えいたします。ただいままでのところ固まつた移民が出ましたのは大体ブラジルでございます。他に参りましたのは数が少くございます。ブラジルにおきましては、平和条約前に在外事務所が政府代表として設置されましたが、その以前から向うにおりました在留邦人の有志の人の運動によりまして、日本人の受入れが進捗いたしておりました。そこへ在外事務所ができ、次いで独立に伴いまして大使館ができ、大使が参りました。これの有志とともに、ブラジル政府当局並びにこれを受入れてくれます受入れ当局の方と外交折衝を重ねまして大きなものといたしましてはアマゾン地区に五千家族、アマゾンを除きます中南伯地区に四千家族というものを、一応原則的の承認を得てございます。なおその他にちよいちよい数十家族ないし数家族の申出がございまして、これも話合いがつき次第送り出しております。現在までのところ送り出しました合計は、約千五百人になつております。本年度におきましては、内地の希望者も多数あるのでありますが、それらを全部送り出すほどの予算がございません。本年度は三千五百人程度にとどまるかと思うのであります。簡単にお答え申し上げます。
  135. 足立篤郎

    ○足立委員 実は農林委員会としては、農業移民の問題について、重大な関心を持つておるわけでございますが、従来外務省から詳しい資料等をいただいたこともありません、お話を伺うのも初めてなのであります。今参事官からきわめて概括的な御報告があつたわけでありまして、私どもとしては、各国との折衝の経過並びに特に本年度の具体的な計画、それから将来どのようになるであろうかという見通し等につきまして、もう少し詳しい資料をぜひいただきたいと思います。今口頭でこれ以上詳しく伺いましても意を尽せないと思いますので、この点は資料要求しておきたいと思います。ただ言葉じりをとるようでありますが、今ブラジルあたりで四十、五十というような申込みがあるというふうなお話で、私ちよつとふに落ちないのでありますが、これは日本における人口問題の重要性から考えても、外務省が真剣になつて海外の移民地の獲得に、積極的な努力をされなければならないと思うのであります。今のお話だとまことに受身で、申込みがあればこれに応ずるが、予算がないので微々たる数しか出せないのだという印象を受けまして、私非常に心外に思うわけでございますが、こういう点につきましても、言葉じりをとるようでまことに恐縮でありますが、実際はそうじやないのだということを期待いたしますけれども、私の今申し上げたような積極的な施策を今後お考えになるという前提で、以下質問を進めてみたいと思います。  日本から農業移民を出します場合、この移民の募集及び選考については、どういう方法をお考えになつていらつしやるか。特に日本海外協会連合会というものができたようでありますが、これをどのような方法で活用されるのか、また連合会というものの組織とか性格とか、やるべき事業あるいは政府がこれを必要とする理由、活用する方法等につきまして、なるべく詳細にお答え願いたいのであります。
  136. 石黒四郎

    ○石黒説明員 ただいまあまりにお答えが簡単でございまして、まことに失礼いたしましたが、資料は詳細後ほど提出いたしたいと思います。また大きな数だけ申し上げまして、小さな数については、ほとんどは端折りましたが、実はブラジル以外アルゼンチン、パラグアイ、ボリヴイア、コロンビア等の諸国に、われわれの方から人を派遣いたしまして、できるだけ積極的に、移民の受入れ態勢をつくるように努力いたしているような次第でもありますので、お話の通り、われわれの方も積極的にいたしていることだけを一応申し上げて、御了承を得たいと思います。次にこの移民の送り出しにつきましては、お話のように海外協会連合会、この海外協会連合会は、各県の海外協会――名前は統一されておりませんが、大体海外協会とひつくるめて申し上げておきます。これを会員といたしますのが中央の海外協会連合会でございます。実は移民の歴史におきまして、戦前におきましては、国策的株式会社がやつたこともございます。また今回のような連合会がやつたこともございます。いろいろそれにつきましての批判もございましたので、われわれといたしましては会社組織でなく、各県の海外協会をメンバーといたします連合会をもつて、移民の選考、募集をいたしますことが、最善の策と現在考えております。この連合会の組織、定款の詳細につきましては、課長から申し上げることにいたしますが、大体現在は各県によつて比較的熱心な県、また希望者が多い県、そうでない県と差がございますが、われわれの理想といたしましては、各県に海外協会をつくりたい。現在のところは約二十県くらいにできております。その他の県はまだできておりません。もつとも戦前のことを考えましても、全部につくれといつても無理でありまして、つくらない県もあるかと存じますが、熱心な県は、実は戦前にございました海外協会の再興でございます。この各県の海外協会におきまして各市町村に連絡いたし、また県の方からも側面的に援助していただきまして、また農業関係団体等の援助も得まして、海外渡航移住の候補者を募ることにいたしております。これも熱心な県におきましては、すでに数百家族の候補者を持つている県もございます。まだそこまで行つていない県もございますが、われわれの理想といたしましては、各県ともにあらかじめ候補者を選んでおいていただきたいと思つております。もちろんその候補者を選びます際は、最近に出かけます相手国側の受入れの基礎的の条件を示しまして、それによつて大体候補者の選定をお願いしているのであります。受入れ国側と話がつきまして、どこへ何家族という具体的の計画ができ、かつそれに対する輸送手段、すなわち船舶の配船とにらみ合せまして、われわれの方といたしましては、その都度こういう条件の移民候補者を何家族、何日までに選定してもらいたいということを連合会に申し入れます。連合会は地方に連絡いたしまして、これを選んで参ります。そして船の出発期日の一週間なり十日前に神戸の移住あつせん所という施設がございまして、ここに船待ち兼ある程度の教養を与え、渡航の査証手続をいたすためにここに集まつておるのであります。そして船の出発期日にこれを乗せまして、監督官一名ないし二名をつけまして現場に送り届けるのであります。現場におきましてはもよりの大使館、領事館におきましてこれを受取りまして、所定の入植地まで送り届けるわけであります。
  137. 足立篤郎

    ○足立委員 ただいまの参事官のお話を伺つておりますと、私は非常な奇異な感じを抱くのですが、普通全国連合会といいますれば各府県にそのもとが自然発生的にできて、それがまとまつて全国の連合体を結成するのでありますが、今のお話だと、府県によつてはできない県があるかもしれない、頭の方だけ先にできて、逆にこれが発生して行くということに私ども奇異な感を受けるのであります。外務省がこの募集選考の手足を持つために、作為的に政治的にこういう中央の連合会をまずおつくりになつたというふうに解釈してよろしいのですか。
  138. 石黒四郎

    ○石黒説明員 それは中央におきましてもまた地方におきましても、移民の組織を何か持たねばならないという空気が双方にうん醸して参りまして、そこに海外協会及び海外協会の連合会というものが外務省の了解を得てでき上つたというように私は承知いたしておるのであります。先ほどまだ半分しかできてないのに連合会ができたのはおかしいというお話もございました。これは全部の県が同様の熱意を持つのでありませんもんですから、やむを得ない、全部そろわないかもしれないと申し上げました点は御了承願いたいと思うのであります。  もう一つつけ加えて申し上げておきたいと存じますのは、このような民間の機構が移民を取扱いますことにつきましては、先ほどいろいろ申し上げましたように、戦前戦後議論はございますが、われわれの経験によりましては、役人が直接このような仕事をいたしますのは不適当であると存ずるのであります。御承知のように内地から外地にわたりまして一生の世話をいたします仕事であります。役人はどうしても三年、四年でかわるのでありますが、現場においてはこの世話の仕事は、行きます移民にとりましてはもちろん一生の仕事でありますし、これに対しまして世話をする、ある程度指導をするというようなことは、やはり人情味を持つておりませんとうまくいかないのであります。役人がいくらやろうといたしましても、どうもしばしば転任になります。この仕事に生涯を打込んでいただく熱心な方々が今まであつたのでありますが、そのような人々がこの役人の転任のようなことなくして、終始一貫移民のめんどうを見ていただく、これで初めて移民で出て行かれる諸氏も納得し、またその指導にも服して行くのであります。民間機構としてかわらないところのものが必要だと私は感じております。
  139. 足立篤郎

    ○足立委員 今のつけ加えてと言われた参事官の御説明を伺うと、ますます奇々怪々になつて来るのですが、なるほど一般的に言えば、転任をする役人がめんどうを見るよりも一生これに打込んでやるような熱のこもつた人が世話をする方がいいのだ、なるほど表面的には一応もつとものように聞えますが、役人がやるといつても個人がやるのではない、これは役所という組織がやるのですから、転任をしても後任者がやる。私は役所が責任をもつてやることこそほんとうに安心をして移民ができるんじやないかという感じがするのでありまして、もちろん熱心な人の応援を頼むということはぜひ必要だと思いますが、少しお話がこんがらがつていやせんか。また海外協会なるものがブラジルまで出張つて、その先のブラジルの政府なりあるいは土着の先住者との交渉なり農業技術の指導なりをしてやるのですか。今のお話ですと、そういうところまで、かゆいところに手がとどくようにあたかもやるがごとき御説明なんですけれども、その点をはつきりしていただきたいと思います。
  140. 石黒四郎

    ○石黒説明員 申し上げることが抜けまして申訳ありませんでしたが、海外協会や連合会は、行く行くは現場にまで機関をもつて、やらせるようにいたしたいと存じております。それで実は先ほど私が申し上げましたように、内地から現場に対する一貫のめんとうも見られるのであります。その点申し上げるのを落しまして申訳ありませんでした。
  141. 中村時雄

    ○中村(時)委員 関連して申し上げておきたいと思いますが、さつきからお話を聞いておると、戦前においてはいかにも世話をしてくださつたように承るのです。私も実は移民で行きまして、六箇年の間サンパウロにおつたわけですが、第一に神戸の収容所においてとつた態度というものは、まるで奴隷です。第一にあなた方はその間においていろいろ教養をつける、あるいはポルトガル語を教えてやる、そういうふうに思つていらつしやるかもしれません。しかしそういうことは一時間もありません。ただ血液の検査だとかあるいはマラリヤの予防注射であるとか、そういうような形においての時間は認められましたけれども、意外にブラジルに関連性のある教育とかそういうものは何ひとつされた覚えはありません、また同時にこれらの会社の連中が――非常に利益関係にこの移民というものが結びつくわけです。たとえば一つの船会社を取上げましてもその当時千円ぐらいで渡航ができる、一人あたり一銭のピンをはねましても、株が四万ぐらいにはね上つておるというような実情なのであります。しかもその技術面におきまして、はたしてどれだけの協力があつたか。その当時のは、移民ではなく流民ですよ。日本の過乗人口をどうやつてはかるかということなんです。それ以上の何ものもない。しかもたとえば実際に長野県の海外移民協会がサンパウロ郊外のチエテにほうり込まれた。その当時向うにおるところの地主との契約においても、何一つ関連性を持つたものもないし、そういうような実情について考えながら、なおかつこういう強力なものをつくろうとすることは、おそらく今足立委員指摘されている一つの権力に対する問題と、もう一つはそれに対する利益関係と予算を掌握するということ以外の何ものでもないと私は思うわけです。これに対して戦前から非常にこうであるああであるというようなことをおつしやつておるけれども実情はそぐはない実情であつたということはよく認識してもらいたい。またそういうふうに世話をどんどんして行きたいとおつしやるならば、そういう永続的にできる者こそ役人にして正しい道を歩ませていつて、そういうものの指導をされることがより望ましいものだと思う。この問題に関していろいろ問題を含んでおりますが、いずれ後ほど御意見を承りたいと思つております。
  142. 井出一太郎

    井出委員長 中村君答弁はあとでいいですか。
  143. 中村時雄

    ○中村(時)委員 けつこうです。
  144. 足立篤郎

    ○足立委員 一両日中に成立するであろう予算を見ますと、農林省所管の農業移民関係として、移民募集選考費六十五万四千円、移民現地調査旅費二百六十万円、移民講習委託費三百六十九万円、合計六百九十四万四千円が計上されておる。外務省関係におきましては、貸付金等も含めまして、三億八千万余の予算が組まれておることは御承知の通りであります。そこで私過日農林省の関係官に来てもらいまして、一体移民募集選考費六十五万四千円というわずかな金で、何をやるのだという質問をいたしました。その関係官の説明するところを聞きますと、農林省においては農地局でやつております入植関係の仕事が、全国に職員を四千名かかえておる。従つてこの費用は別に出ておりますので、ここで移民募集選考を新たにやるにしても、別に経費の出ている人員を動員すれば簡単にできるのである、従つて予算はわずかに限られておるけれども、これでりつぱに仕事ができるつもりでありますという答弁でございました。私もこれはできるであろうと想像いたします。  なお移民講習委託費の方も、金額はわずかでございますが、こういうようにともかく閣議を通過し、政府で正式にきまり、国会でまさに確定せんとする予算に、農林省所管としてこの移民の募集選考及び講習等について、仕事が画然と認められておる。それにもかかわらず、今お話のように海外協会連合会なるものができて、それに全面的に事務を委託するという計画がお進みになりますと、この農林省が国家予算の面で認められておる、移民に関する仕事と、海外協会なるものの仕事との競合関係はどのようになりますか。これについての外務省並びに農林省の御見解を伺いたいと思います。
  145. 石黒四郎

    ○石黒説明員 今所管問題についてお尋ねがございました。まことにごもつともな御質問でございます。政府の仕事が各省にわかれておりまして、各省設置法においてその仕事の内容がきめられておるのでありますが、日本国民の海外への移住をあつせんいたしますことは、外務省の所管事項として、外務省設置法に規定されておるところでございます。もちろんわれわれとしても農林省勧め関係各省のよき御協力によりまして、できるだけりつぱな仕事をして行きたい考えでございますが、一応の所管といたしましては、設置法によりまして外務省において移民の仕事をやるというように考えております。
  146. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまの問題は、実は卒直に申し上げますと、外務省と農林省との間にまだ事務的に話がついておらない問題があるわけであります。外務省の方とされましては、今お話がありましたように、設置法によつて移民の事務をやつておることになつております。今後は海外協会に委託して募集等の事務をやりたい。そこで農林省の持つております予算については、これを外務省の方に移してもらいたい。ただ二十九年度の予算が成立いたしますと、移して行くことは具体的にできにくくなるかもしれませんが、考え方として、農林省でそういう募集選考の仕事に予算を組むことはやめてもらいたいという御意見であるわけでございます。ただこの点については、私どもは、そういう仕事については農林省はやはりタツチする方がよろしい、設置法の関係等は、農林省としては農家に関する事項を担当しておるわけでありまして、その設置法に基く政令によつて海外移民の募集、訓練等をあずかることになつております。従つてやはり農林省が予算を持つてこの仕事をやつて参りたいというので、実は話がすつかりきまりませんために、一応二十九年度の予算としては、従来の例によつて従来の型の予算をそのまま組んで、将来の問題は将来の話合いがきまつたところに従うということになつておるわけてあります。農林省としては、募集等の仕事については、やはり農林省が主としてこれにあずかりまして、しかし団体を使うことも非常にいいと思いますので、海外協会というような団体がありますれば、これにも委託をいたしまして、また府県庁の組織あるいは農業団体等の組織も活用いたしまして、それに当ることが最もいいのではないかというふうに考えておるわけであります。このやり方については、まだ実は事務的に話がつかないという状態にあることが実情であります。
  147. 足立篤郎

    ○足立委員 農地局長のつつ込んだ御答弁を伺つていきさつがよくわかつたのでありますが、先ほど指摘したように、六十五万四千円の予算でこの移民募集選考という大きな仕事ができるかと私は農地局の関係官に質問をしたところが先ほど申し上げたように、四千人の人間がおるのだ、これを動員すればこの仕事は易々たるものであるということで、私も納得できたのであります。しかしただいままでの石黒参事官のお話を伺つておりますと、これは全然ネグレクトして、別に連合会を活用して、府県にも慫慂して協会をつくらせて、これにあえて代行させようというお考えのように私は受取つておるのです。今また農地局長の御答弁によると、その間のいきさつがよくわかつたのでありますが、これは国家的にいつてずいぶんむだじやないかと思います。もちろん民間団体もいろいろ活用する面はありましよう。政府でやりにくい面も、こういうものを活用してやらせるというとふうな、機微に触れた点をこれにも活用して行くという点はありましよう。しかし今できかかつたものを全部つぶしてしまえというわけではありませんので少くとも政府としてこの取扱いを考えた場合には、外務省がいたずらにセクシヨナリズムでお考えにならずに、農林省の今まで築き上げて来たこういう機構を活用することによつて、府県の関係盲あるいは関係農業団体、各種団体の応援を得て、きわめてスムーズにこの仕事が進むのではないかという感じがいたします。従つて私は石黒参事官に伺いたいのは、この連合会なるものと農林省が予算上認められているこの事務との競合について、どのようにお考えになつていらつしやるかという点をポイントにして伺つたのでありますが、この点は石黒参事官からお答えがないので重ねてお伺いいたします。
  148. 石黒四郎

    ○石黒説明員 今平川局長からお話になりましたように、予算の問題については、まだ事務的に話合いがついていないところがありますが、その他大綱の点については、さほど食い違いはないと思います。事務的に予算の使い方については、われわれ両省間におきましてすみやかに意見を統一いたしまして、円滑にやつて参りたいというのがわれわれの考えでございます。
  149. 足立篤郎

    ○足立委員 先ほど中村委員の体験談がございまして、私は移民じやありませんが、満州に十二年おりましたので、何となくわかる気がするのであります。今の中村君の体験談に非常に教わるところがあるのでありますが、私も率直に申し上げて、今後の移民は、満州に拓務省がやつたような、廊下を渡つて行くような簡単な移民ではない。従つて設置法にもありますように、外務省が表面に立つて非常に奮闘されなければならないのであるということはよくわかります。それだけに外務省の責任は非常に重い。また仕事も大きい。これは主として外に向つて仕事が大きいのであります。で、外交交渉やあるいは外地における受入れ態勢、あるいは移民の保護政策等について、外務省がこれを専管として、もつぱらこれに当つていただかなければならぬということはよくわかるのであります。しかしながら、同じ政府の中で、国内で北海道あたりへ移民するのも海外移民も似たようなものでありまして、相当大がかりな移民をやつておる。その募集、選考、指導、訓練等の仕事に熟練した農地関係関係官が各府県におるわけであります。これを全然ネグレクトして、この海外移民を外務省一人の手でやろうとするところに、私は考え方の間違いがあるのじやないかと思うのであります。この点をもう少し太い腹で割切つて、政府部内でお互いに協力して、円滑に移民を遂行するというふうにお考えになるべきではないかと私は考えますが、いかがでしようか、参事官の率直な御意見を伺います。
  150. 石黒四郎

    ○石黒説明員 今のお話まつたく同意でございます。農林省が一番関係が深いのでありますが、その他の省とも一緒に力を合せまして、できるだけこの移民問題の推進をいたしたい、まつたく同意見でございます。
  151. 足立篤郎

    ○足立委員 特に私最近ブラジルへ行つた人の話を聞きますと、中部ブラジルの松原某氏のごときは、今お話のあの中部ブラジル四千戸の移民についての話合いを、せつかく私財を投じて努力されて、ブラジル政府との間に話をつけられた、今まで非常に熱心におやりになつて、すでに数千万円の赤字を出して、これではとてもたまらないというので投げ出しておるというような話も聞いております。この現地受入れの問題、あるいは外交交渉というような点につきまして、外務省がもつと本気になつてやらなければならない仕事はたくさんある。振り返つて国内では、なわ張り根性を起して、農林省が当然できる仕事まで外務省がとつて、そしてにわかづくりの連合会をつくつて、手足も十分にない、これに急に移民の事務一切を扱わせようというような、そして外務省が単独で扱おうというような考え方をぜひお捨て願いたい。私はこの点を強く要望して、ほかの委員もお待ちになつておりますので、私の質問を終ります。
  152. 井出一太郎

    井出委員長 松岡俊三君。
  153. 松岡俊三

    ○松岡委員 私は足立君との質問応答によつて、特に外務当局に承りたい。あるいはこれは参事官、移民課長両君に対してはどうかと思う。けれどもこれは最も重要なことです。世の中には侍が急に商売をやつて、やれるようなことが往々ある。しかし今日の場合においては、どうしてもむだを排して能率を上げ、そして国家のためになさなければならぬという必死のときなんです。持分を何とかしたいなんという片鱗でもあつてはならないと思う。この意味から、外務省はこの点についてどうだつたかということを私はお聞きする。私は四十年前にアメリカに行き、三十年前にも行き、今回また行きました。アメリカに行きます前に持つていた私の考えを、先方に行つて非常に是正せねばならぬように私は感じて来た。まるきり違つた、新アメリカのような感じを私は受けて来た。この機会にほんとうに日米親善をやろうというためには、アメリカは金があり、われわれ日本人は人間があり余つてしかたがない。金のあるものと人間のあるものを、両方が出し合いで行こうというふうなぐあいにして行く絶好のチヤンスでもありやせぬかと思われる。一方においては未開地を非常に広く持つておるイギリスがある。戦争によつて相当いたんでおる。アメリカの豊富な金と、日本のあり余つておる人口で、イギリスの持つておる未開地を開放させる。例をあげますればニユーギニアであります、こういうぐあいにして、日英米ほんとうの親善を策す。日本の人口問題がこのままでは行けないということは、アメリカが一番よくわかつておると思う。従前のジヤツプと言われたような、あの排日のさ中に私が行つた三十年前、四十年前を思いますと、今日日本人がどしどしアメリカに行くようになつたら、再びそういう考えを起させるような問題が起るに違いない。それを防ぐようなぐあいにすれば、未開地のジヤングル地帯であるニユーギニアを開発するには、日本人が一番適していやせぬかと私は思う。アメリカの資本をもち――アメリカの資本をもつてといつても何か奴隷になつているなんという感じを持たないで、きわめて朗らかな気持で、アメリカの金と日本のあり余る人口と、そして未開地を開発して行くというような、世界の平和の上から考えて推進して行つたならば、決してイギリスといえどもこれに応じないというようなことにはなりやせぬと思うのであります。これらの点について、どういう処置を移民政策の上に考えたか。先ほどから申しますように、あそこから何ぼでここから何ぼ、そして本年はちようど三千五百人だ、実に微々たるものであつて、話を聞いてもがつかりしちやうのです。このくらいのことでどうするかと言うのです。私は外務省が打つ手はここにありやせぬかと思うのです。イギリスをして、真に世界平和のために未開発の地点を解放せしめるように、アメリカの資力と日本の力をもつて科学的に、日米英ともにしつかりと手を握り合つてつたならば、世界の平和もりつぱに保つて行けるのじやないか。こういう点にも大だんぴらに外務省の進むべき道がありはしないか。それがあにはからんや、先ほどから聞いておりますと、もちはもち屋にまかすべきではないかと思うのに、侍が意地になつて商売でもやるようなふうに私は受取れて、実にその貧弱さに唖然たらざるを得ない。これは参事官にお尋ねするのは無理でして、きようは外務次官をお呼びしてと思つたが、どうしてもだめだというので、しかたがないから言うのですけれども、日本の人口政策、外交の帰趨から考えても、これをぜひ通してもらいたい。この点から行かなければ私はいかぬと思う。日本ではどこが一番人口が過剰であるか、外国ではどんな移民を一番必要としているか。ほんとうに農民だろうと私は思う。床屋でも洗濯屋でもない。私も若干朝鮮におつて移民のことは多少わかつているつもりである、そうした体験から言うのです。こういう打つべき点を打たずして、そうしてもちはもち屋にまかさないで、今まで訓練しているところのしかも次三男問題で一番困り切つておるところの農民と、最も常に親しくしておるところの農林省、農地局を閑却して、熱心な者にまかそうというのは、これはそもそも経費の点からですか、責任の点からですか。これでもつてほんとうに移民政策を国家の大局の上から考えねばならぬというところに行つているのかどうか。私は、少しスローモーシヨンですけれども、まず一番信頼することのできるのは役人だと思つている。その役人を信じて、そうして従来の経験から、農家の次三男のあり余つてしかたがないものを海外に送ることをやつてもらいたい。受入れるところの者は決して床屋とか商売屋でなく、みなジヤングル地帯を開墾して行くような者である。こういうことが外務省の方ではわからないらしい。さつきからお話を聞いていて、実にどうもこつけい千万な話だと思う。それですから、私の考えでは米国の金、日本の人口、そうしてイギリスのニユーギニアのジヤングル地帯を開発させるような努力をして、そうして日米英三国が共同して、世界の平和に貢献するべきだと考える。この点外務省では、日本のあり余つてはち切れているような人口問題に対処するため、どんな手を打たれたか、お聞きいたしたい。
  154. 石黒四郎

    ○石黒説明員 今の御意見ごもつともでございます。われわれといたしましては、できるだけ世界のどこでありましようとも、人口問題の解決のために手を打ちたいと考えているし、また打てる限りは打つておる。ただ今お話のニユーギニアの問題は、御承知の通りの英国ことに濠州方面の現在の日本人排斥の空気からいたしまして、これらの問題を解決するには、かすに時をもつてするという――相手のあることでありますから、われわれだけではすぐにあすこへ人を出すということができないのは遺憾でございます。  また連合会の問題につきましても、農林省の方でやらせたら経済的じやないかというお話がございました。これは御承知のように戦前から移民問題に熱心な人々が集まつて、海外協会というものが大きな移民県にはございました。現にこれらの人々の手元に大勢の希望者が集まつて来ておるのです。ただいまことし中に送り切れないぐらいの者が集まつて来ております。これのうちからいい者を選びますことはさしてむずかしいことではないので、農林省といたしましても、われわれの方といたしましても、結局県すなわち知事さんにごやつかいになるのであります。知事さんにもまた熱心に移民問題をやつていただくわけであります。私は別になわ張り争いをやるつもりではございませんし、十分他省と協力してやつて行くつもりでございます。ただ先ほど申し上げましたのは、政府の内部の各省の分担といたしまして、海外移住のことが外務省所管となつている。従つて外務省で連合会に委嘱してやるということを申し上げただけでございます。
  155. 松岡俊三

    ○松岡委員 さつき足立委員が御指摘されたように、外務省の打つべき手は他にある。ほんとうはもちはもち屋にまかして行く方がいいと私は思います。それで今のようにお尋ねしたのです。こういう点に全力を尽して、向うに送り出し、あるいは受入れさせるところのものをほんとうにこしらえて行く、あとはこつちの方にまかせるというようにして行くのがほんとうだと思うのです。それを外務省が全部やらなければならぬというように何か新聞で伝わつておりますが、農林次官と外務次官が何か夜を徹してどうだなんという話はおかしな話だと思いましたから、まさかそんなことはあるまいと思つた。けれども外務省は十分にやつておるかどうかと思つたから、私は今のことをお尋ねしたのです。こういう点にこそ外務省は全力を尽して行つてしかるべきだと私は思う。移民課長としては、そんな小さなブラジルだとかの三千五百とか五千そこそこのところで、日本のあり余つている人口問題をどう解決できるとお考えですか。その一番あり余つている農家の次三男の問題と常に接触をしておるところのものが、今の農林省の農地局の方の仕事じやないかと私は思うのでございます。これは特に考えをいただかなければならぬと同時に、今の国家の対策、日本の人口問題から言うと、これはほんとうに大切な問題ですから、そんなちつぽけな問題じやないのです。そういう点から今申し上げたように、全力を尽してやつて、片方はおまかせするようにしてはどうか。民間のなれた人にまかすという、そんなことでは私はいかぬと思う。これこそそういう小さな問題ではない。民間の者にやらせてもまかされるものではないという自信を持つておらなければならぬ。何かそこに因縁情実があつて、もうどうこうすることのできないようになつていることがあるとするとたいへんなことだと思いますそれらの人はだたでやるんじやない。政府の方から補助金は参りましても、その補助金ばかりではいけないだろうから、そこに若干利潤もつけなければならぬとか、すべての経費もかかるようなぐあいになるだろうと思う。そういうようなものよりも、もち屋にまかせて――農林省がああいうふうに入植方面などで十分活躍している。私も開拓をやつていますからよく知つています。そういうぐあいにやるべきだと思うからお尋ねするのですが、どうか外務省として、この辺をあなたから大臣、次官によくお話いただいて、日本の国策としての移民政策をいかにすべきかということを大きくとりはからうように、あなたの方からひとつ伝えていただきいものだと思う次第でございます。さつきの話を聞いて、これが参事官の話かと思うと、あまりになさけない。日本の国情を知らざることはなはだしいと言いたいような気持がします。私の言うことはこれだけでありますが、どうぞもち屋にまかして、自分の責任は十分に果すように御努力いただくように、早く考えをとりまとめていただきたいものだと切に希望して、私は終ります。
  156. 石黒四郎

    ○石黒説明員 ただいま何かのつぴきならないような事情があつて連合会をつくつたかのごときお言葉がございましたが、そういうことは決してございません。信頼をいただいいてる役人として一言弁明をさせていただきます。われわれの後にはこわい会計検査院もおりますから、決して国費を濫費するようなことはございません。またもちはもち屋にまかせよというお話でございますが、これは先ほど来申し上げますように、設置法に基きまして役所の分担がきまつております。もちろん農村問題、次三男坊対策問題等々の関連はわれわれも十分わかつておりますから、農林省と協議いたしまして選考いたしたいと思います。
  157. 松岡俊三

    ○松岡委員 協議いたしましてというと、今までの考え相当改めていただけると拝聴してよろしゆうございますか。
  158. 石黒四郎

    ○石黒説明員 今までと同じでございます。私は先ほど来協議して相談してやる――一人でやるように皆さんおつしやつておりますが、決してそのようなことはございません。     〔「政府が予算をかけないのはどういうわけだ」。「善処だけじやだめだ」。と呼ぶ者あり〕
  159. 松岡俊三

    ○松岡委員 足立君の言われるように単なる善処ではいかぬのです。農林省をみんなノツク・アウトしよう。予算もみな移せという話も聞いている。足立君もちやんと言つている。こういうことのないようにするというお考えがあると、ここではつきり承知してようございますか。
  160. 石黒四郎

    ○石黒説明員 私が申し上げることは、連合会に委託いたしますお金は、外務省で所管いたしたい。しかしながら農林省に十分協力していただいてやつて参りたい、かように存じております。農林省が協力いたしますために予算をお使いになることは当然だろうと思います。
  161. 松岡俊三

    ○松岡委員 外務省がやるべきことをやつていないで、農林省のところに出ばろうという考えがあるからこんなことになつてしまう。もちはもち屋というぐあいにしつかりして、国家のむだを廃し、能率をあげるようにしていただかなければならぬ。他の委員諸君の質問がありますから、私はこれで終ります。
  162. 井出一太郎

    井出委員長 吉川君。
  163. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私はきよう農業移民の問題について質疑が行われることになつておりましたので、先日の理事会において総括主管官庁である外務省の政務次官の出席をお願いしておいたのでございますが、総括主管官庁であることをお忘れになつたのか、今日はお見えにならない。むしろ農林省の方の政務次官がお見えになつております。私は非常に遺憾でございますが、まず最初に農林政務次官お尋ねをいたします。  平野政務次官は特に農村の関係は詳しくておいでになりますから、私が申し上げるまでもございませんけれども、今日の日本の農村の現状は、農地解放によりまして、五百五十万農家が六百十七万戸になりました。零細な日本の農業の特殊性とも言われていたものがいやが上にも零細化されまして、先ほど降旗さんからお話もございましたように、その上に均分相続の制度が打立てられましたために、農村はこの問題について非常に悩まされております。農村の民主化のために農地解放が行われたのでございますけれども、実際は簡易裁判所が非常な多忙をきわめている事実を見ただけでも、民主化とはおよそ逆行するような封建的な財産相続の問題についての措置がとられているのが事実でございます。こういう根本的な問題になりますと、先ほど足鹿委員からもお話があつたように、憲法問題に関連を持ちますので、これは大臣の出席のときにお尋ねすることにいたしますけれども、そういうわけで農村か非常に零細化されて、人口の包容力を失つております。そこへ朝鮮動乱が勃発をいたしまして、いわゆる朝鮮ブームということで、動乱ブームと申しますか、それで大分大都市へ人口が集中したかの観を呈したのでございますが、御案内の通り昨今経済情勢が逆調を呈しまして、中小企業の倒産が頻発をいたしております。そのためにその方面に従業している人々が失業をいたしまして、最近農村へどんどん帰つております。こういう帰村の状態を見ますと、農家経済の圧迫は日に日に激化すると見なければならないのでございます、先ほど降旗さんからも二百七十万の潜在失業者があると言われましたが、私は三百万くらいに聞いております。こういう農村の次三男の潜在失業者を擁しております。これは農政の根本の問題に触れるわけでありますが、この農村の人口問題について、平野政務次官はどういう具体的な御施策を持つておいでになるのか。予算面その他について今日まで私たちの納得の行く説明もなければ、また納得の行く施策も見ておりませんが、ただいまの政府の考え、平野政務次官のこれに対するお考え方をまず承つておきたいと思います。
  164. 平野三郎

    ○平野政府委員 吉川委員から、移民の問題が議題になつておりますので、その点を中心として申し上げますが、思い起しても慄然とします軍閥政治の犠牲として、誤れる戦いに敗れた今日、日本が四つの島に八千四百万の人口を擁し、この日本民族の運命を思いまするときに、移民ということが私は最大の国策でなければならぬと考えております。ことにお話のように、農村の次三男対策ということこそは、農政の基本的な一環として、特に農林省におきましては、非常な深い関心と決意とを持つておる次第でございます。しかるに今までの移民政策というものが非常に誤つてつた。この移民政策をこの際はほんとうに、最大の国策の基本から申しまするならば、まつたくその構想を一新いたしまして、ほんとうに明朗にして有効な積極的移民政策を樹立しなければならぬということを痛感いたしておるのでございます。ただ先ほど中村委員の血のにじむ体験談を伺いまして、まことに私おはずかしい次第でありますが、いかに今までの移民政策が誤つてつたかということに対する憤激のあまり、目がしらの熱くなる感を催したくらいでございまして、私は中村委員の御指摘のように、過去における移民政策が、営利機関である株式会社の手によつて行われたというようなことこそ、実にもつてのほかである。移民協会というものが先ほど議題になつておりましたが、これはもちろん過去におけるそうした株式会社とは全然性格の違うものとは存じますけれども、今後の移民政策が、いやしくも多少でもそういうような営利的な関係等に基くようなものがあつては断じてならないということを、深く感じた次第でございます。ただいまことしの緊縮予算の建前におきまして、移民に関しますところの経費はきわめてわずかでございます。ただ移民に対する貸付金等が三億数千万円というものはありますけれども、こういうものにもしこれらの協会がつながるということは断じてないと思いますが、そういうことはあつてはならないということを感を深くいたしたのでございます。実は先ほど来外務省と農林省との所管の問題なども議題になつておりましたけれども、私はこういうことは断じてあつてはならない、もし政府部内におきまして、所管争いをするというようなことのために、多少でもこの大切な移民政策に支障を来すというようなことがありましたならば、それこそ政府の罪万死に値することであつて、真に慚愧の至りでなければならぬと思うわけでございますので、断じてさようなことがあつてはならないと信じております。実は先般農地局長からちよつとそういうことを耳にいたしましたので、さつそく岡崎外務大臣に会いまして聞いてみました。ところが岡崎君はきわめてあつさりと、そんなことはもう外務省としては全然念頭にもない、外務省は国内事務に干渉するというようなことは毛頭考えておらぬということを言つておりましたので、これはもう外務大臣の真意は――もしなんでしたら本委員会にお呼びになればわかると思いますが、そういうことは考えておらぬはずでございます。従つて私は、これらの点は法律の定めるところによりまして、両省が相協力して、そうしてこの重要なる国策を進めて参らなければならぬというふうに考えるわけで、実は先般念のために各国の移民行政に対する所管の状況も調べてみましたけれども、いずれも大部分は国内省が全部移民を担当いたしております。ただわずかにイタリアが外務省と国内省との共管になつておるというのが一つの例外にすぎないのでありまして、しかしながら政府といたしましては、これはあくまでも農林外務両省がそれぞれ共管の形においてこの政策を進めて行くべきものであるというふうに、私は考えております。特にこの移民政策において考えなければならぬことは、向うへ移民いたします選考であると存じます。これはおそらく日本民族が今後どしどしと世界の各地に民族の移動をして行かなければならないというような、いわゆる選手のようなものでありますから、かつての流民政策というようなものではないのであつて、ほんとうに日本国民の真の代表的な人物を、海外へまつ先に出して行くという心構えで行かなければならないのではないかということを感じます。最初に行く人がりつぱな人であれば、日本国民全体がりつぱな人であるというふうに外国から思われて、そうしてスムーズに移民が進んで参りますが、万一選考を誤つたというような場合におきましては、一ぺんにフアーストインスピレーシヨンを悪くするという重大な悪影響を及ぼすことになる、そこで私は選考ということが非常に大切だと考えておるのであります。実は一昨年から農林省が、アメリカに対して日本の農村の青年を派遣いたしております。そのときにももし悪い青年が行きまして、そうして日本の印象を悪くするというようなことがありましたならば、今後の農村青年の派遣に重大影響を与えるという立場から、特に農林省におきましては、この入物については厳選をいたしておるわけでございます。各県庁に連絡をいたし、大体各県から一名ないし二名の人物を、よりによつてただいままでやつておるわけでありますが、この選考の結果、非常にアメリカの評判がよくて、第二次、第三次というふうにどんどん今やつておるのであります。従つてこれからも日本からあり余つている人を向うへやるというような観念でなしに、ほんとうに代表的な人物を出すように移民もやらなければならぬというふうに考えるわけで、この点におきましては、多年日本の農村を指導いたして参りました伝統的の農林省が、この選考という事務を担当いたしまして、そうしてしつかりと足を大地につけてやつて行く、またこれの海外に行つてからのいろいろ外交関係の業務につきましては、外務省においてやつていただくというようなふうに行くのが、最も適切ではないかというふうに考えておる次第であります。
  165. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 今平野政務次官の理想的構想を伺いました。それはあくまでも理想的な御構想であつて、二十九年度にどういうようにするのかということについての具体的な施策になつていないのです。こうあるべきだ、あらねばならぬということをあなたは強調しておいでになるだけなんです。何ら具体的にこうするんだとか、こうするようになつているんだという何ものもないのです。農林省の農地局長のごときは、長く開拓問題、移住問題をお取扱いになつた体験者であられるのですが、そういう専門家がいて、そうして満洲移民の問題についても、戦後の内地の開拓についても、失業救済みたようなことをやつて、都会の中の企業整備で、そこからあぶれた人々を北海道あたりへ入植させたり、それからあるいは災害をこうむつて仕事がないからという人を山の中へ入植さしたりして、その結果がことごとくまずくて、みな夜逃げをして来ているじやありませんか、そういうことを体験され、しかも移住問題についての専門の平川局長のような人がいて、なぜこういうような問題について、一体具体的な施策を立てられなかつたのですか、そうして農村の次三男対策が農政の基本問題であると平野次官はおつしやいます。私も申しておる、その通りなんです。その通りだけれども、それほど国策的な重要な問題について、何ら農林省がこの問題の具体的な施策を持たないということは、私は怠慢だと思うのです。そういうことで一体今後の農村問題を解決して行かれると思うのですか。私は農林省の奮起を要望してやまない。大体怠慢ですよ、もつと真剣にやつてもらわなければ困る。外務省も次官も来ないし局長も来ない。移民問題についてきわめて熱がない。こういう重要な問題について政府全体――これは吉田内閣の重大な手落ちだと思う。こんなことで私は日本の農村問題、人口問題は解決しないと思うのです。もう少し真剣に考えてもらいたい。外務省は移民に対して、その根本的な施策を持つておられるかどうか。この点に関する足立委員の質問に対してのお答えでは、私には納得が参りません。二十九年度の移民計画の全貌を、もう一ぺん詳しく、具体的に明らかにしていただきたい。
  166. 石黒四郎

    ○石黒説明員 二十九年度におきましては、先ほど申し上げましたように、三千五百人出したいと考えております。出します先は主として南米各国、数量的にはブラジルが大部分になるかと思うのであります。もつともそれ以外にも日本移民をよこしてくれというところはございます。また南米の要望を合せましても、三千五百人の数倍に上つておるのでありますが、二十九年度におきましては、いろいろの関係からその程度にとどめざるを得ないわけであります。三千五百人のうち大体二千ないし三千はブラジルに参る。あと五百ないし千はブラジル以外のところに参るものと存ずるのであります。そのうちではアルゼンチンが約三百くらいは確定したものと申し上げることができると思います。その他パラグアイ、ボリビア、コロンビア等につきましては、まだ正確な数字を申し上げる段階に参つておらないのであります。と申しますのは、要望はあるのでございますが、従つて向うの政府も入れることに反対はないのでありますが、この受入れ態勢が十分できておりませんことと、われわれも入つてからの移民の生活を考えまして、その点を十分調査いたさせまして、納得できるところでなければ送るわけには参らないものでありますから、それが逐次明らかになつて行くまで――現在はつきりと申し上げることができないというのは、その点にあるのでございます。予算に渡航費の貸付額三億三千万円余りございますが、これをできるだけ節約いたしまして、一部自己資金のあります者、あるいは呼び寄せ先からお金の調達ができます者につきましては、一部だけでも負担させて、なるべく人数をふやして行き、受入れ国側の要望に沿いたいと存じております。
  167. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 御説明にあります通りに、二十九年度に三千五百人を送るというのでございます。これは農林省もよく聞いていただきたいのですが、ただいま人口は毎月十一万近く増加をいたしております。そこを三千五百人ばかり送る、こういう程度ですから、なるほど外務省が局長も次官もお見えにならないはずでございます。外務省の仕事としては身の入らない仕事なんです。こういうことでは、とても農村の人口問題の解決の一助にもならないのです。これをひとつ五箇年計画とか何とかいう計画を立てられて、そうして諸外国との交渉をもつと猛烈にやつていただきたいと思います。私の聞いておりますところでは、外国の受入れ態勢がどうも芳ばしくないように聞いておるのです。現地の実情を、今日までの交渉の過程において、外務省はどんなふうにごらんになつておいでですか。
  168. 石黒四郎

    ○石黒説明員 現地の受入れ態勢を申し上げますと、必ずしも一様ではないのでございまして、行く先によりましてそれぞれ違つて参るわけでありまして、一口にこうだということを申し上げるわけに参らないのであります。われわれの原則といたしますところは、もちろん行つた移民は当初数年間は非常に苦労をいたします。これは苦労に耐えてもらわなければならないのでありますが、それにいたしましても、苦労のしがいがあつて、先には安定した生活をし得るという見当をつけつつやつておるわけでございます。行く先は大体二種類にわかれるのでありまして、一種類は先方の耕地におきまして移民を引受けてくれて、その契約は純粋の労務契約である場合もございますが、小作契約である場合もございます。とにかく引受けの耕地がありまして、そこに雇われて、いわば小作農として入るのが一つの形態でございます。この方は比較的契約もはつきりいたしますれば、心配はないのであります。ところがもう一つの方は、先ほどお話がありましたような、いきなりジヤングルにいどむ開拓移民であります。この方は先方の政府の経営いたします入植地に当初から入りまして、開拓に従事するのであります。これは先方の政府の好意によりましていろいろの便宜を与えてもらうのであります。もちろん自分の資金も若干用意いたさなければなりません。ただ同じ政府の入植地の場合におきましても、片方うまく行つておるが、片方はうまく行かないということも出て参るような実情なのであります。そういう点を現地におります大使館なり領事館の者に十分調べさせまして、また移民のお世話をいたします日本人にも十分調査をさせまして、入れておるのでありますが、今申し上げますように一概には言えない。従つて苦労の度合いは、入つた移民によつても違うかと思うのであります。そういうのが現在の入植地の実情でございます。
  169. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私の友人がブラジルに大正十年ごろから入りまして、一人で小学校を寄付をしたというような成功者でありますが、去年帰つて参りまして、あちらの事情を詳しく聞かしてくれたのでございます。その後その身内の者が参りましたので、いろいろ事情を聞いてみますと、現地の受入れ態勢が十分でないように聞いておりますので、外務省としては、こういう問題については、ひとつもつと積極的に御配慮を願いたいと思います。  それから石黒参事官のお答えの中に、外務省の渡航費は三億三千百万何がしあるということでございましたが、その渡航費の貸付なんかは、どんなふうな方法でおやりになりますか。これは私非常にむずかしい問題だと思うのでございますが、ごく零細な農家が、日本内地で農業をやめまして、それから海外へ移住するような場合に、その農地を処分いたしましたり、あるいはまた貸し付けた金をどういうように回収するかというような問題について、どういうような処置をおとりになりますか。その辺についてのお考え方を伺つておきたい。
  170. 石井喬

    ○石井説明員 今の貸付のやり方のお話を申し上げます。これは昨昭和二十八年度までは全部の移民につきまして、全額貸付をいたしました。ただしかし本年度におきましては、何しろトータルの予算が少いものでありますから、なるべくその予算の範囲内で多数の人を送り出したいと考えております。現地へ開拓民として入ります人間につきましては、これは行く人聞に対して全額を貸与する。それ以外に、先ほど石黒参事官からお話のありました契約労働者で参ります者がございます。開拓民で参ります場合には、現地である程度営農資金等を貸してくれるものでございますが、何しろ現地はブラジルでございます。ブラジルは非常にのんびりしているととろでございますので、なかなかこちらの思う通りにスムーズに事の運ばない場合が多いのでございます。それに対しましては、二十万程度自己資金を持つて行けということにしております。ところがコロノ移民におきましては向うに参りまして働けば、一週間目からは確実に賃金が入つて参ります。そのほか営農資金を持つて行く必要もありません。従いまして大体二十万円程度の営農資金を持つて行ける人間を選ぶということになりますれば、そういう場合には多少自己負担をさせてもいいではないかということを考えまして、年の若い者、あるいは非常に年をとつた者は、移民の現状から考えますと、実は貴重な日本の税金をもつて行かすのでございますから、なるべく働き手だけをやる方がいいと思いますが、なかなかそうも行きませんので、若い子供でありますとか、あるいは非常に年とつた人につきましては、渡航費の半分だけは自分で持つて、あとの半分は政府が貸すというようなことでやらしております。  回収につきましては、これはただいまのところは現地の、ブラジルで申し上げますと、アマゾニヤ拓殖協同組合という組合をつくりまして、これが受入れのあつせんをいたしております。現地に人を派遣いたしまして、数年の指導をすることになつております。中部におきましては、日本拓殖協同組合というものがございまして、それが同じように受入れをやつております。そこで、従来は渡航費の貸与は、政府が送出機関といたしまして、たとえば和歌山県海外協会でありますとか、あるいはアマゾニヤ産業研究所でありますとか、そういうところに貸したのでございますが、最近連合会ができましたので、一括して連合会に金を貸しまして、連合会が各移民と契約を結ぶ、また連合会は現地のそういつた組合と契約を結びまして、その組合がただいまのところは連合会にかわつて貸金の回収をやることになつております。将来につきましては多少また考え直さなければならぬ点もあるかと思いますが、現状は契約をして回収するということにいたしております。
  171. 井出一太郎

    井出委員長 吉川君に申し上げますが、まだ大分質問者がございますので、その辺を御考慮くださつてお進めを願います。
  172. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 そこでこの渡航費の貸付の回収等についてはなかなか私はむずかしいと思う。これは戦前にも例のあることでございまして、よほど慎重にお考えを願いませんと、国費を使つていろいろ非難されるような問題等も起り得る可能性がございますので、その点は十分ひとつ検討を願いたいと思います。私は、平素の主張であります農地金融公庫のような制度を設けまして、これが取扱いに当るということが最も適切であると考えて、私は同僚議員各位の協力を得て、近くそれについての措置を要請する段取りになつております。こういう私の構想については、前に農林漁業金融公庫法の一部改正の場合に私が所見の一端を申し述べておきましたが、この点について重ねて、その貸付の回収並びに移住者の農地の処分等についての機関として、非常に適切であると私が信じておることについて、局長としてはどういうようにごらんになつておりますか、その点お答えを願いたい。  それから早くという委員長の御注意等もございますので、最後に私は平野政務次官に要望をいたしておきます。私が当初に申し上げましたように、この移民の問題は、これからの日本の国策としてきわめて重要な事項であると考えます。従いましてこういつた問題を外務省だけでやるとか、農林省だけでやるとかいうような、なわ張り争いはおそらくないと思いますけれども、今まで伺つておるところによれば、予算も上ろうといたしておりますときに、事業内容等について農林省と外務省との間にまだ何らの話合いができていないというようなことでは、私はこの国策の推進は達成することができないと思う。そこで平野政務次官はよろしくこのことを農林大臣にも外務大臣にも強くお話をされて、国策としてやるからには、あまりセクト主義にとらわれないで、もつと総合的な協力態勢を確立してやつていただくように強く要望をいたしまして、私の質疑を終ることにいたします。ひとつ両方からお答えを願います。
  173. 平野三郎

    ○平野政府委員 先ほども申し上げましたように、政府として万一部内においてなわ張り争いがあつて、そのために移民政策に若干でも支障を来すというようなことがあつてはゆゆしき大事であると考えておるわけであります。しかし先般ちよつとそういうことを耳にいたしましたので、外務大臣に伺つてみましたが、岡崎さんも全然そういうことは念頭にもないという話であつたので安心しておつたところ、実は本日本委員会で外務、農林両事務当局の御答弁を伺つておりますと、若干そういうことがあるようにも思われ、私としても非常に怠慢で申訳ないと思います。ことに外務当局におかれては、当初の御説明では、全然農林省とお話がなかつた委員の御質疑があつてから農林省と協議するというような説明があつたわけで、この点私はまことに申訳ないと思つております。お話の通りでございますので、万遺憾なきように政府部内の意見を統一して、移民政策の積極的推進に努力いたしたいと存ずる次第でございます。
  174. 平川守

    ○平川政府委員 この移民に対する金融の問題につきましては、なかなかむずかしい問題であると思います。軽々に結論を出し得ない問題であると思いますが、ただ実際問題といたしまして、金持だけが行くわけではありませんので、必ず借材を持つておる者もあろうと思う。また農家であります以上は、若干の農地を持つておる者もあります。それらの財産の処分なり借材の整理なりということは、やはり農業協同組合等の機構を活用することが非常によいことだと思います。吉川委員の御構想もわかつておりますし、農地に関する何か特別の金融公庫でもできれば、そういうものと何らかの形において結びついた運用をすることが一番よいのではないかというように考えておる。ただ直接的にそれが扱うことがよいかどうかについては、なお検討を要するのではないか。しかしそういう機構を何らかの形において活用することが必要であり、望ましいことではなかろうかと考えております。
  175. 井出一太郎

    井出委員長 残余の質疑は次会に繰越し、本日はこれにて散会いたします。     午後六時四十五分散会