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1954-03-31 第19回国会 衆議院 農林委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月三十一日(水曜日)     午前十一時二十一分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 吉川 久衛君 理事 芳賀  貢君    理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    松岡 俊三君       神戸  眞君    松浦周太郎君       足鹿  覺君    井谷 正吉君       中澤 茂一君    河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  平野 三郎君         林野庁長官   柴田  榮君  委員外出席者         農 林 技 官         (畜産局競馬部         長)      井上 網雄君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 三月二十七日  委員田子一民辞任につき、その補欠として寺  島隆太郎君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員今井耕辞任につき、その補欠として松浦  周太郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月三十日  日本中央競馬会法案内閣提出第一二六号) 同月二十九日  購繭資金貸出に関する請願助川良平紹介)  (第四一〇一号)  積雪寒冷単作地帯関係予算増額等に関する請願  (八木一郎紹介)(第四一四八号)  木炭公営検査強化に関する請願助川良平君紹  介)(第四一四九号)  地方農地事務局事業所労働条件改善に関する  請願木村文男紹介)(第四一五六号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 同月二十六日  現行砂糖行政反対に関する陳情書  (第二四三七号)  もち米消費者価格に関する陳情書  (第二四三八号) 同月二十七日  農業改良普及事業に関する陳情書外二件  (第二五一〇  号)  同外四件  (第二五一  一号)  同外一件  (第二五一二号)  同  (第二五一三号)  本年度稲作病虫害防除用農薬購入費等に対する  国庫補助陳情書  (第二五一四号)  米価凶作加算金予算化等に関する陳情書  (第二五一五号)  現行砂糖行政反対に関する陳情書  (第二五一六号)  食糧増産対策費増額等に関する陳情書  (第二五五七号)  米価凶作加算金予算化等に関する陳情書  (第二五五八号)  同  (第二五五九号)  産米減収加算額追加払に関する陳情書  (第二五六〇号)  現行砂糖行政反対に関する陳情書  (第二五六一号)  公営競馬民営反対に関する陳情書  (第二五六二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  保安林整備臨時措置法案内閣提出第一一〇  号)  日本中央競馬会法案内閣提出第一二六号)     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  昨三十日本委員会に付託されました内閣提出日本中央競馬会法案議題といたし、審査に入ります。  まず本案の趣旨について政府説明を求めます。平野農林政務次官
  3. 平野三郎

    平野政府委員 ただいま上程せられました日本中央競馬会法案を提案いたすにあたりまして、その理由を御説明いたします。  わが国におきまして競馬が行われるようになりましたのは、相当古くからのことでありますが、いわゆる馬券の発売を公認した競馬は大正十二年に競馬法が制定されて以来のことでありまして、当初は、民法上の公益法人である競馬倶楽部全国に十一を限り認められまして、おのおの十一競馬場において競馬を施行しておつたのであります。その後昭和十一年に法律改正によりまして、全国一本の特別法人たる日本競馬会に統合いたしまして、競馬は一層の発展を見たのであります。戦争中は一時競馬を中止するのやむなきに至りましたが、戦後再開されるに及び、当時における政治情勢によりまして、日本競馬会は解散せざるを得ないこととなり、現在の競馬法が制定されまして、日本競馬会が行つてきた競馬事業を国に移すとともに、その一切の資産及び負債を国に引継ぎ、ここに国営競馬制度の誕生を見て今日に至つたのであります。  この国営競馬形態は、世界でもほとんど類例のない形態でありまして、競馬法附則にも、この制度が暫定的経過的なものであることを示す規定があるのであります。政府といたしましては、この制度改善方策につきまして、一昨年六月臨時に設置いたしました競馬制度審議委員会における委員各位の御意見をもとといたしまして、鋭意立案研究をして参つたのでありますが、政府におきます行政簡素化の線ともにらみ合せまして、今回その成案を得ましたので、ここに国会に提案して、その審議をお願いすることとなつた次第であります。  以下この法案の内容を簡単に御説明申し上げますと、第一に、この法案は、現在の国営競馬を引継いで施行する団体として設立さる日本中央競馬会の組織、運営等について定めることを趣旨としておりまして、必要な限度におきまして、その附則において競馬法を一部改正することといたしております。  第二に、この日本中央競馬会には公社に準ずる性格を付与することといたしまして、その役員の選任や欠格条項にいたしましても、収支予算事業計画等に対する国の関与の点、またこれに対して国が全額出資をするという点等につきましても、相当規定を設けたのであります。  第三に、この日本中央競馬会の行う事業でありますが、これは現在政府国営競馬特別会計をもつて経営しております国営競馬事業の一切を、一応そのままの形で引き継がせ行わしめることとしているのであります。  第四に、この団体会計経理の点でありますが、その収支予算及び事業計画につきましては、農林大臣がこれを認可することといたし、さらに借入金の借入、余裕金運用につきましても一定の制限を付する等その経理は、最も厳正公正を期し、世人の疑惑を招くことのないようにいたしたい所存であります。また競馬による収益につきましては、従来の実績等を勘案の上、勝馬投票券売得金に対しまして、百分の十の率による納付金国庫に納付させることといたし、なお事業年度末において決算上剰余が生じたる場合におきましては、その一部は国庫に納付させるほか、残余もすべてこれを積み立て、その任意なる処分を制限いたしまして、これにより一層公的な色彩を強化したのであります。  第五に、現在の国営競馬特別会計に所属しております競馬場等の財産の処理についてでありますが、これは、その大部分が昭和二十三年に国営競馬に切りかえられましたときに、日本競馬会から政府が契約によりまして無償で承継を受けた資産である等の経緯もございますので、政府といたしましては、競馬を施行させることのために、一部の例外的なものを除きまして、これを全部現物出資して日本中央競馬会に引き渡すこととし、競馬の健全な発展のための基盤といたしたい所存であります。  第六には、監督の点でありますが、すでに申し上げましたように、役員業務及び経理の全部面にわたりまして農林大臣が厳正なる監督を加えることとし、適正なる運営を確保することといたしましたるほか、政府出資のございます関係で、会計検査院がその会計経理を検査することとなるのであります。  第七に、この法律の施行により、農林省競馬部及び競馬事務所は廃止せられることになり、現在定員五百二十人の職員のうち、監督事務に存置される者五五人を除き、他は農林省定員から除かれるわけでありますが、これらの職員は、みないずれも競馬業務に関する専門家でありまして、事実上は、そのまま新団体に移行するものと思われるのであります。  最後に、今回の法案におきましては、地方競馬につきまして手を触れておらぬのでありますが、これは、先ほど申し述べました競馬制度審議委員会において、この点について種々議論がわかれておりますこと、全国地方にまたがる地方競馬地域的に種々事情も異なり、問題がきわめて複雑であること等によるのでありまして、今後は、適当なる方法によりまして、この点に関する関係方面の御意見も伺い、制度改善方策について研究して参りたいと考えておる次第であります。  以上の通りでありまして、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。     —————————————
  4. 井出一太郎

    井出委員長 引続きこれより保安林整備臨時措置法案議題といたし、本日より質疑に入りますが、この際林業に関する小委員長より発言を求められておりますので、これを許します。川俣清音君。
  5. 川俣清音

    川俣委員 先般当農林委員会といたしまして問題になつておりまする諸般の問題を解決するために、長野県の長野営林局管内の主要な林産地であります木曽林野を拝見して参つたのであります。これにつきまして二、三当局意見を申し上げまして、政府善拠方をお願いいたしたいと思うのであります。  このたび政府国有林野法の一部改正、また国有林野整備臨時措置法改正案を出されると同時に、保安林整備強化を必要といたしまするいわゆる保安林整備臨時措置法を提出されたのであります。これらの観点からいたしまして、現にございまする長野営林局は、十分その機能を発揮するような状態に置かれていないことを実地に拝見して来たのでございます。前の木曽御料林時代におきましては、いわゆる御料林行政監督の上から木曽福島に所在地を持つておりましたことは、適当な行政区域であつたと思うのでありますが、今後保安林整備強化して参るということになりますると、かつて御料林時代行政では、十分その機能を発揮することが困難であると思うのであります。もちろん一部には、木曽にありまする長野営林局隘小であるために、他に移転しなければならないという説をなす人もあるようでありますが、それも一部考えられないことはもちろんありませんけれども、単なる内部的な移転でなくして、将来やはり流域関係から見ましても日本における最も隘小所管面積でありますので、一般行政機構の改革から見ましても、もう少し広大な構想のもとに充実して参らなければならぬじやなかろうか、こういう視察の結論を得たわけでございます。もちろんおのおの人によりまして幾分意見を異にしている点もありますけれども、すみやかに保安林整備法と相まちまして、また国有林野法の一部改正に伴いまして、またこれらの行政相当広汎になつて参らなければならないのであります。日本森林保護育成の上から、民有林監督あるいは森林組合等の鞭撻の上からも拡充して参らなければならない情勢にありますので、その情勢に伴う当然な機構拡充、こういう意味福島にあります局を行政拡充意味でひとつ考慮願えないものであろうかどうかというのが、大体委員会結論でありましたので、これに対する政府の所見を伺い、すみやかな立法的な措置が望ましいという結論でありますので、これを申し加えまして、当局の御意見伺つておきたいと思います。
  6. 平野三郎

    平野政府委員 今回公務御多用中にかかわらず、川俣林業小委員長を初め御熱心なる委員各位が、国有林の実情を御視察賜わりましたことは、まことに感謝にたえない次第でございます。またただいま貴重なる御高見を拝聴いたしたわけでございますが、政府といたしましては、まさに御指摘通り、現在木曽福島町にございます長野営林局は、御料林との合併当時の経緯に基いて存置せられたものでございまして、その後国有林との合併によりまして、事業区域に変更を来しておりますので、これはぜひとも長野市に移転をいたしたいという考えのもとに、諸般行政上の準備を進めて参つたわけでございます。従いまして、今国会においてぜひとも御審議を願いたい、こういう建前のもとに、ただいま立法の準備をとり急いでおるような次第でございます。
  7. 井出一太郎

    井出委員長 質疑の通告があります。順次これを許します。松岡俊三君。
  8. 松岡俊三

    松岡委員 私は治山治水予算がどうあんばいして出されたかということをまず承りたいと思います。
  9. 平野三郎

    平野政府委員 最近におきまする日本の国土の現状災害の頻発によりまして、憂慮すべき事態にあるわけでございます。特に近年非常に災害が累次発生をいたしまして、どうしてもこの際抜本的なる対策を立てる必要があるということで、政府といたしましては、内閣治山治水協議会を設けまして、各専門家の御意見伺つてつたわけでございますが、一応その結論も出まして、政府に対するところの答申もあつたわけでございます。これらの情勢を勘案いたしまして、ただいま御審議を煩わしました二十九年度予算におきましては、第一に治山治水重点を置く、こういうことで予算を編成いたしたわけでございます。ただ何分にも緊縮財政を必要とする経済上の事由に基きまして、十分理想的な予算を組むというわけには参らなかつたわけでありますが、乏しい財政の中におきましては、最重点を置いて計上いたしたようなわけでございます。なおまた特にただいま御審議を願つておりまする保安林整備臨時措置法によりまして、特に荒廃をいたしておりまする保安林等は国が買い上げて、そうして国の施策において直轄でこれの整備をはかる、こういうこともあわせてやつておるようなわけでございまして、政府といたしましては、御指摘通りに最重点を置いてこの問題の解決にとり組んでおる次第でございます。
  10. 松岡俊三

    松岡委員 政府の提案の説明を承りますれば、昨年の水害の激甚なる情勢にかんがみて、治山治水計画を立てられた、こういうあんばいなつて、戦中戦後を通じての森林濫伐過伐がその発生または拡大の誘因の一つとなつているということがうたわれておるのでございます。こういう意味から考えて、国家ほんとう治山治水計画を立てようとするためには、国家としての——むろん国家の一部でありまするけれども、何も特別会計林野庁管内から金を捻出して、これに充てなければならぬとは思われない。三十二億の治山治水のこの予算がどこから出たのか、どこから出したのかというのが私の質問であります。特別会計である林野庁から特別に捻出しておる、林野庁はそれだけ捻出するだけの余裕があるのかどうか、十分なることをしておるのかどうかということが問われなければならない。昨年においては三十億を林野庁から一般会計に出しておるということはすでに間違いである。ほんとう治山治水の大切なることを考えたならば、この点だけでも林野庁などからは一般会計にこれを供出すべきものじやないのです。それを今回は、むろん緊縮予算関係もありましようけれども、この三十二億を林野庁特別会計の中から捻出して、全国治山治水計画に充てているということは、特に緊縮予算を標榜している今年に限つてやるのか、あるいは後年にわたつてこれをやるのか、これを私は聞きたいのであります。まずただいまの御説明は私はピントが少し離れていると思うのでございます。この予算はどこから出したか、ことし一年限りか、来年はそうじやなく、一般会計から出して、ほんとう治山治水をやつて行くんだということなのか、それをはつきり承りたいと思います。
  11. 平野三郎

    平野政府委員 本年は国有林野特別会計の黒字が相当増額をいたしたわけでございます。これは国有林経営の適正なる運用、あわせて近時の木材価格の高騰によりまするところの収益があつたわけでございまして、従つてこれらの収益をできるだけ林地に還元をして有効に使いたい、こういう趣旨でこのたびの御審議をお願いしておるわけでございますが、これは恒久的なものであるかどうかというお尋ねでございますが、これは本来は当然一般会計においてやるべきことでありまして、将来にわたつて一般会計の負担において一層充実して参りたい、こう思つておるのでございますが、本年度としては、さらに一般会計からもちろんやつておりますけれども、錦上花をそえるという意味においてこれをも特にやつたわけでありますが、将来におきましては、国有林特別会計のいろいろ事情もございますし、基本的方針といたしましては、一般会計をもつてつて参りたいと思つておる次第であります。
  12. 松岡俊三

    松岡委員 たいへん喜ばしいことであります。それならば、この三十二億を今年限りやむを得ないから特別会計から出した、その出した三十二億の治山治水計画は、各営林局別にどんなふうに配分しようと思つておるのであるか。
  13. 柴田榮

    柴田政府委員 いわゆる保安林整備臨時措置によりまして、国の買い上げまする保安林は、一応原則といたしましては所有者との協議によつて決定することになつておりますので、目標は立てましても協議がととのわない場合には、必ずしもその計画通りには参らないということになりますので、現在的確に地方別に、あるいは各局別にどれだけになるかというはつきりとした数字は申し上げかねるのでございますが、現在二十九年度として、ほぼ確定的に御相談のできると思われる数量は、約五万六千町歩程度と考えておりますが、今後さらに法案の御審議、御決定願つたあかつきにおいて具体的な出発に入ります際に、相当の移動も考えられますけれども、概念的にはやはり十分水源地帯の、しかも相当荒廃いたしておる地域、そうして現在国有林の比較的少い地方というものが、主たる対象になるということはやむを得ないと考えられますので、この原則から申しますると、関東以西が比較的多くなるのではないか、北海道はこれによつて買い上げまする保安林はほとんどないのではないかと考えておりますが、いずれ新年度に入りますれば、いよいよ具体的に現地の調査にも入りまして、だんだん確定いたす、こういうことになりますので、現在明確な数字を申し上げ得ない現状にあることを御了承願います。
  14. 松岡俊三

    松岡委員 いや、もうきまつているはずなんです。私の知り得た情報においては、青森営林局には一億円、秋田営林局には一億円、大阪営林局には十億円というように、これはもうはつきりあなたの方でわかつておるはずなんです。なぜここでそれをおつしやらないのですか。今の三十二億をどんなふうに配分するのだという計画がなければ、そんなものを出せないはずなんです。それははつきりしたものじやありませんでしようけれども、大体はわかつているはずなんです。どの方面に何億使おうかという、三十二億の金の使途はわかつているはずなんです。
  15. 柴田榮

    柴田政府委員 お尋ねでございますが、各局別幾らというのは、対象はつきりいたしませんと、決定はできないのでございまして、一応予算配分してみる際に、これくらいの目標はどうかということを、実に概算的に一応配分した案もございますが、その後さらに、この三月二十五日に各局に命じておりました一応の対象予定地を調査いたしました結果は、現在整理をいたしておりまするが、さき経費の見込みだけを概算いたしましたものとは、たいへんな相違を来しておりまして、さきの青森一億、秋田一億云々というようなものは、全然意味がないという結果になつておりますので、さような配分は現在一切できないという状況にあることを御了承願いたいと思います。
  16. 松岡俊三

    松岡委員 そうすると三十二億の治山治水計画の本年度配分額は、まだきまらない、わからない、こうおつしやるのですか。
  17. 柴田榮

    柴田政府委員 各局別にはまだ確定いたさないということなのであります。
  18. 松岡俊三

    松岡委員 そうするとただ漠然と三十二億いうだけですか。こうこうこういう所にはこうせねばならぬというものが出て来なければ、下からずつと積み上げて来なければ、上の方で三十二億いるのだという、そんな漠然たるものが言えるはずはないと思う。ここにはこういうあんばいに金を使わなければならぬ、こうせねばならぬ。近畿方面に非常な水害があつたから、こういう方面にはこういうあんばいにしなければならぬということはわかつておるはずである。それなればこそ初めて三十二億という総額が出るのです。はつきりしたことは言えませんでしよう、私も要求しません。けれども漠然としてただ三十二億一年間かかるというだけじやなかろうと思う。多少の基礎がそこにあるはずだ。各営林局管内においてそういうぐあいにわかつておるはずだと思う。私はついこの間調べて、三十二億ははつきり使うようにできておる表を持つておるのです。そして三月二十五日でなければわからないということも知つておる。だからもうわかつておるはずである。三十二億をどこにどれだけ使うか、それはわからないということは、ちよつと私はその言葉が納得できない。ごまかしだというようなことは私は言いませんが、もう少しはつきりするはずである。
  19. 柴田榮

    柴田政府委員 ただいまも申し上げました通り全国営林局で調査いたしまして、一応御相談のできる、しかも必要地域保安林という対象が、現在調査されて判明いたしておりますものが五万六千町歩程度という一応の概算ができておりまして、これを対象といたしまして買上げの御相談をいたして参ることになりますので、さきに一応経費各局別計画して見るということで経費だけを計画いたしましたものとはまつた違つた結果が出て参るという状況なつております。そのとりまとめには一両日を要して、まだ今各局別数字が確定いたしておらないということで、申し上げかねるというわけでございますが、一応五万町歩という目標に対しまして、御相談ができるとほぼ確定したものが五万六千町歩ある、こういうことを申し上げておる次第でございます。全然無計画ということではございませんが、御相談ずく決定しなければならないということで、一応現在各局別に、未確定のものに対しましてこれだけ配分するのだということは、はつきり申し上げかねる、かような次第でございますので御了承願います。
  20. 松岡俊三

    松岡委員 政府委員は私の質問するところを推測して、どうも御答弁がはつきりしないのじやないかと思う。私はなぜこれを質問するかといいますと、ただいま農林政務次官の御説明があつたようなぐあいに濫伐したのだ、そういう結果のところに水害が来たのだ、こうなつておる。何がゆえに濫伐するようになつたかということは、政府の方で持つておるものだと、なかなか売渡さないから濫伐されないが、民有林であるから、高くなればおのずからどんどん売つて所得しようというのは当然である。その民有林はどこにあるかということなんです。全国国有林状態を見ると、東北管区においては、全国国有林のうちの四割九分六厘を持つておることは御承知の通りです。東北六県とそれから群馬県と新潟県のわずかを入れて四割九分六厘だけが持つているのです、それだからこの方面には水害が起らないように、濫伐がされないようになつておるのです。明治御一新以来こういうぐあいになつているのです。片方は明治御一新以来ずうつと民有林なつておるのですから、幾らでも価格が高くなればこれを濫伐することもできるし、何でもできる。そこのところに持つて来て水害が出た、そこに金を使う。その金はどこから出るのだ、私はこう聞くのです。その金は今の国有林野庁特別会計の中から出るのです。その特別会計の金はどこから出て来るかというと、東北地区群馬新潟の一部を入れたところから、年々二十億近くというものを毎年残しておることはわかつておることなんです。治山治水の金三十二億の中の二十億とは私は言いませんけれども、林道もこしらえる、その他いろいろな経費を差引いて、毎年毎年過去八十年間二十億ずつ残して、ほかの方に使つているのです。北海道を入れたらもつとありますけれども、北海道は特別な開拓のことをやつて金はたくさん行つておりますから、あるいは差引きできるかもしれませんけれども、東北には何が行つているか。災害がなくて済んだということは国有林のおかげだとあなた方はおつしやるでしよう、いかにもその通りであります。けれどもこういうぐあいに金一般会計から出して、特別会計の中から出す。その特別会計の収入は多く今の国有林の中から出す金である。その国有林全国の四割九分六厘は東北管区にある、こういう状態にありますから、私はこの金はどう使うのでござんすかと聞くのです。私の調べたところによると、大阪営林局は、青森営林局管内の面積からいうとわずかに四分の一しかない。片方は九十万町歩にひとしい。青森、岩手、宮城の三県の管轄である青森営林局管内は約九十万町歩つている。大阪営林局管内は十九万町歩そこそこしかない。青森営林局管内の面積がなかなか広いことは、私も承知しております。そういう意味から、全国の四割九分六厘を持つておる東北管区から出ておる収入を使わなければならぬことはないはずなんです。そこで本年一箇年だけか、あるいはずつと出すつもりかどうかをさつき聞いたのはそれなんです。一般会計から出して治山治水を当然やつてしかるべきものを、何がゆえに特別会計たる林野庁の中から捻出しているか。しかもその捻出に十分仕事をし尽してやつているのならよろしいけれども、多々ますますなさなければならぬような東北管区の問題がたくさんある。それにもかかわらずやらないで、毎年二十億円ずつ残している、こういう状態であるから私は聞くのです。三十二億は本年限りだという政務次官の御説明ですし、ことしは緊縮予算ですから私はがまんしますけれども、明年は断じてがまんできない。これは一般会計から出して、林野庁の金は林野庁でもつて十分尽すようにする、そうして全国国有林のうちで四割九分六厘を持つておる東北方面に還元することは当然なんだ。北海道の方からもずいぶん特別会計の収入に行くのは多い。しかし北海道には北海道特別の事業をやる金を、ことしさらに一大計画もしておるのですからよろしいのですが、東北には何があるか。交通上についても、道路上についても、飛行機についても、何もありやしない。こういう何もないものずくしのところへ持つてつて、毎年々々二十億国有林からの収入を残しておる。それをほかの方に使われるということは、どうしても公平な政治ではない。しかもその公平な政治でない起源が、明治御一新時代に兵庫県知事伊藤博文が版籍奉還の建白書によつて東北は賊軍だといつて処分したものが、今もつて明治、大正、昭和に至るまでもなおわれわれを罪人扱いにするようにして、いつまでもこんなふうにしておくということは、公平な政治ではない。こんな不公平な政治はない。これだけは何としても聞かなければならぬのです。私が質問したことは林野庁長官はよくわかつておるものですから、あなたは返事をなさらない。三十二億をどう使いましたか。青森営林局には一億円、秋田営林局には一億円、大阪営林局には十億円というようにちやんと、使うようになつておる。東北は長い間ただ搾取だけで、実際搾取という言葉がほんとうに当ると思う。こんな搾取にいつまでも甘んずることはできない。東北にも少しは人間がおるようにこのごろはなりましたが、私はこれが搾取を断じて許すことができない。ことし一年はがまんしますけれども、政務次官が明年は一般会計にと言つたことを私は金科玉条として断じて見のがしませんから、そのおつもりでいただきたい。  まだまだ質問しなければならぬのですが、諸君の御迷惑にもなろうと思いますので……。(「大いにやれ」「今こそやらなければだめだ」と呼ぶ者あり)今言つたようにもう少しあなたは十分な御説明ができると私は思つていたわけです。もしできれば御返事を願いたい。
  21. 柴田榮

    柴田政府委員 先ほど政務次官からもお答えいたしました通り治山治水の根本対策として計画的に特に重要保安林を国で買い上げて経営するという方針が確定いたしておりますので、これは現在の国有林の収入をさいてこの整備を行うという趣旨では絶対にございません。ただたまたま現在国有林野経営上の余剰で、本来ならば一般会計に繰入れる筋合いのものをそのまま転用するという形で、二十九年度は三十二億というものがそれに振り向けられたということになつておりますが、将来これを計画的に実施するという点に関しましては、計画目標五十万町歩保安林の買入れ、この買入れ箇所に対しまする治山事業費の不足分に関しましては一般会計から繰入れるということで、国有林野特別会計法の改正をも提案することに閣議決定を見ておりまして、近く国会に御審議を煩わすということになつておりますので、その点はさように御了承を願いたいのであります。なお先生のお話は、もつと正直に言え、私が何か思わくを考えてごまかしておるのではないかというふうにお考えのようでありますが、さような考えは毛頭ございません。ただ確定いたさないというだけでありまして、概念的には、先生のお話の通り国有林野の比較的少い、しかも、まあそれがゆえにと簡単に申し上げることはなかなかできないかもしれませんが、それらも原因いたしまして、特に重要水源地帯の荒廃度の高い保安林を買上げの対象といたすという考えでおりますので関東以西、特に営林局で申しますれば、大阪管内等が結果において一番多くなるであろうということは間違いない方向だと思つておりますが、ただ青森一億、秋田一億、それに対して大阪十億というような実際の結果になるかどうかということは、はつきりと今申し上げかねる、かように申し上げておる次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  22. 松岡俊三

    松岡委員 ごまかしたというふうには思つておりません。もしお気にさわつたらおわびしてもいいのであります。ただいま長官は、一般会計に繰入れるということをおつしやつておる。これは許されない。一般会計に繰入れるだけにほんとうの仕事をやつているかということです。やつていますか。今の四割九分六厘持つておる東北管区国有林の所在地に向つて、十分の施設をやつておりますか。やつてつて剰余ができて一般会計にやるというならこれは了とします。やつておりますか、あなたの御信念をお伺いします。
  23. 柴田榮

    柴田政府委員 戦争中あるいは終戦直後等におきましては、非常に手遅れの事業がございまして、地元にも御迷惑をかけ、経営全体といたしましても相当手遅れあるいは不十分という点が多々ございましたが、その後経営内容、経理内容も改善されて参りました結果、経費等にも比較的余裕が出て参つておりまして、現状におきましては従来の手遅れを相当急速にとりもどしておりまして、ここ一両年経過いたしますれば、一応従来の手遅れはほぼ完全に取返し得る、かような見通しのもとに現在の事業をやつておりますので、特に資本を食い込みまして地方を搾取するというようなことにはなつておらないと申し上げ得ると考えております。
  24. 松岡俊三

    松岡委員 全国を通じていかに東北が遅れているということは、長官も御認識あると思うのです。東北の実態が、全国をよく通観して、遅れておると思つていらつしやるか、遅れておらないと思つていらつしやるか。
  25. 柴田榮

    柴田政府委員 先生の御質問は全般を通じての問題か、あるいは私どもの関係での問題かちよつとはつきりいたしませんが、東北がわが国における自然環境その他から言いまして、各種の施設が全般と比較して進んでおるとは絶対に私も考えておりません。あるいは民度、財力等から見まして相当遅れておるのではないか、かように存じております。その際に国有林東北の民生あるいは経済に寄与できてないかどうかということになりますと、私別な考えを持つておりますが、現状におきましては、東北国有林相当地元に御利用を願える状態にあつて、その点では遅れていないというふうに考えております。
  26. 松岡俊三

    松岡委員 私の質問はあなたには少し過重であつたということも、これは了承します。これは国務大臣にお尋ねする方がほんとうつたかもしれませんけれども、現在東北が交通上、道路その他万般において——これはもう何人も肯定せねばならぬ——あまりに片ちんばであるということはわかつておる。その片ちんばであつた原因はいずれにありやと私は言いたい。そこに行くとあなたと私は考えが少し違うかもしれませんけれども、国有林があつたがためにどのくらい利益になつたか損になつたかという問題です。関西の方は国有林がなくて民有林であつたがために、価格の高いときには適当に売つて、その町村は利得も受けておるのです。東北の方はそうじやない。なそうとしてなし得ない。すぐ裏山から国有林なんだ。長官によく東北の実情を御存じですから、わかつているはずだ。すぐ裏山まで国有林じやありませんか。いかに罪人をこのためにつくつたかというような統計をつくつたらば、驚くべきものがあると思うのです。そういう原因もみな明治維新当時の徳川の幕政に参加したために懲罰的にやられた結果がここに来ておる。これはちやんと一つの証拠が上つていますから、他日これを示しますが、こういうぐあいに遅れておる東北を何とかしなければならぬというときに、せめて所管の林野庁があたたかい気持でもつて、十分な施設をして手伝うのがあたりまえだと思う。そのあたりまえのが、毎年毎年二十億ずつ残しているのはどういうわけか。施設をしましたか。あなたはたいへんかわつていますと言つていますが、とんでもないことで、まるで要求しているところの何分の一どころじやない、何十分の一どころじやない。まだまだ国有林によつて初めて何とかしてもらわなければならぬ個所があると私は思うのであります。その点をあなたは十分したというのかどうか。私は、毎年々々二十億ぐらいずつ残してほかの方に手伝つておるところのそのものを、遅れておる東北のために還元する意思ありやいなやということを、最終に聞こうとしておるのです。この二十億で毎年々々東北管区全体に施設をしたならば、私は文化の遅れた東北相当追いついて行けるのではないかと思うのです。私はこれを国有林にばかり依存しようとは思いませんけれども、その大部分の原因をなしておるところの国有林を所管している林野庁としては当然考えて、しかるべき、あたたかい政治をほしいと言うのです。ですから今まで二十億も残しておいたようなことをせずに、十分にそれを使うという考えがありますかどうか。またそれを残して一般会計の方に繰入れようとするのかどうか、これをはつきり御返事いただきたい。
  27. 柴田榮

    柴田政府委員 東北の施設あるいは地元の施設に関しまして、今後といえども一層強化整備いたすという考えは、従来と一切かわりはない考えでございますが、特に先生の今のお話によりますと、毎年二十億程度を東北から残しておる、こういうお話でございますが、幸いに最近両三年はある程度の収入増加にもなつておりますが、それ以前には相当赤字を続けて参つておる。結局東北地方にだけ限つて申しますれば、東北地方へ国費をつぎ込んでいた時期も相当長いのでございまして、現在国が搾取してこれを他に転用しているという状況でないことだけは、御了承願いたいのでありますが、たださらに今後一層地層を整備し、あわせて地元施設を強化する、あるいは国有林の地元に対する利用権益の拡張というようなことによりまして、国有林の地元と有機的な一層強い関連を持つて参りたいという考え方は強く持つておるということだけは、はつきり申し上げておきたいと思います。
  28. 松岡俊三

    松岡委員 私はただいまの長官の御答弁を裏書きしてもらう意味において、政務次官に御答弁を願いたい。東北の方が遅れておることは前に申し上げた通りである。これを何とかして水準まで持つて行かせようとするがためには、幸いにもここに国有林の収入が——今長官の申されたように、今までは少しは資本を出したようなところもあるということを言いますけれども、明治以来八十年間の統計をとつてみますと、とてもとてもそんなことでは許されないものがあります。しかし過去のことは言いません。年々二十億近く残しておるところの剰余金を、明年以後において東北管区のために、十分にこれを還元する意味において使うというお考えありやいなや。これを農林大臣を代理するところの農林次官からお返事を承りたい。
  29. 平野三郎

    平野政府委員 東北がいろいろな点で遅れておるということにつきましては、私もよく認めるわけであります。しかしそれは決して行政上特に不公平な政治をやつておるとか、あるいは東北を冷遇しておるとかいうようなことではないと存じます。国政上から申しますならば、現在でも松岡先生のような大政治家を初め、たくさんなりつぱな政治家が東北から出ておられるわけでありますし、過去においても、民主政治確立以来りつぱな代表者が多数出ておられるのでありますから、そういう意味から申しましても、国政上は公平に行われておつたと思います。ただ東北がやや遅れておるということは、歴史的、地理的の事情に基くものであつて、私はそういう点に思いを至すべきではないかというふうに考える次第でございます。ただ国有林事業で剰余金を残すべきではないというお話でございますが、国有林は御存じのように、ことしも三百億以上の大きな会計を持つておるわけであります。この厖大な会計の中で、年に多少の剰余金が出るということはむしろ当然ではないかというふうに考えるわけでございます。むしろこれを木材業者的観念を持つて経営いたしますならば、厖大な利益が出るべきものであります。それを原木はほとんどただのような形になつておる事業でありますから、株代のただであるというような一つの大きな特別会計において、ほとんど収支とんとんであるということは、いかに国有林を保護するという方面に金が使われておるか、いわゆる治山でありますとか造林であるとかいうような生産的な方面に投資が非常に行われておるために、これだけ厖大な特別会計であつてもわずかしか利益が出て来ない。これは過去において赤字があつた時代もあつたわけであります。その場合には一般会計から補充しておつたのであります。それはすなわちいかに国が国有林全体の保護のために努力を払つておるかということの証左であると思うわけでありまして、最近木材の非常な値上りによつて三十億程度の剰余金が出るというような程度でございますから、この程度のことは、それをもつて国有林政府が土台にしてもうけておるというようなことはまつたく当らないのであつて、むしろ実際には国有林を保護しておると言つてさしつかえないのではないかと思います。従つて国有林東北に多いわけでありますが、それだけ東北方面国有林としての事業は現地に還元をしておるということは言えるわけでございまして、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  30. 松岡俊三

    松岡委員 まだ東北国有林によつてつた原因が、林野庁の調査課の発表したる印刷物にもあります通りに、まことにいかがわしい。いいくらいにできたような点がはつきりしている。しかもときの政府に、力のあつた薩長の藩閥政府ができますと、三十四年、四十二年に鹿児島県、宮崎県等には六百町歩なり九百町歩をちやんと返しておるようなあんばいなつておる。そうして東北にはそういうことをしておらない。この歴史を考えてみますると、私の主張は決して誤つておらない。へんぱな処置だ。維新当時のそのままのありきたりを是正するの誠意が政府になかつたということが言い得るのであります。これらのことはここで述べませんけれども、私は東北が遅れておるから、国有林ばかりによつて云々というわけじやないけれども、とにかく約二十億、約三百億の予算のうちの一割近いものを東北管区からあげておる。これを今の治山治水一般会計として当然やらなければならないところの計画の方に大部分を向けておる。私は、東北の方にまだ十分になさねばならぬ幾多の仕事があるにかかわらず、これを閑却しておると言いたいのです。また事実言い得ると思う。ですからして、東北方面からもう少し要求があつたならば、北海道計画のようなぐあいに東北管区に向つて、還元的な意味をもつてあたたかい政治をやり得るようになるものと私は思う。それを私は聞きたいのです。このままいつまでも東北はやられて行つたならば、いずれの日か関西の方面と同じ水準に達することができるかと、私は心配にたえない。ただいま平野次官の申されるようなぐあいに、地理その他のいろいろな関係でありますけれども、かの雪害の問題のごときは、八年かかつてようやくあれをやつて、遠く岡山、廣島、山口県にまでもこの積寒法の効果が均霑されるようなぐあいになつておる。けれどもこの東北国有林の問題に関する限り、出発点においてああいう関係があるのでありまするから、私はこの点を考慮する必要があると思う。これを私は痛切に申し上ぐるのです。東北人はいまやこの問題については一大蜂起の形になつています。敢然として維新当時の間違つた政治の是正に向つて東北こぞつて立つ清勢になつております。東北六県の知事、議長会、町村長会はもちろんのこと、東北全体一団となつて、この東北国有林の問題について蜂起しようとしておる次第でございます。これらの情勢を考えて政治は先行すべきものだと思うのであります。こういうことの起らないように、先立つて何とか処置を講じなければならぬ。東北を搾取しておつて、それでいつまでも東北が甘んじているものじやないということも、考えていただかなければならぬと思うのであります。それですから林野庁長官は、一般会計に繰入れるというお考えをやめて、林野庁管内において、十分にその金をもつて施設をしてくださるようなぐあいに私はお願いしたいのであります。またすべきものだと思う。それを平野次官に裏書きしてもらいたいと思うのであります。先ほど御答弁があんまり上手で、ポイントにどうも触れないように私は思うのですが、平野次官は、明年は林野庁長官一般会計に繰入れることのないようにしようという考えをお持ちになつているかどうか。もう一ぺんお聞きします。
  31. 平野三郎

    平野政府委員 一般会計に繰入れることが、利益の場合においては繰入れておりまするが、不足の場合もあるわけでありまして、その場合におきましては、また逆に一般会計から補填する、こういうことは今まででもやつてつておるわけでありますし、それが一番適切ではないかと考える。それで今後もそういうふうにいたしたいと思つておりますが、御意見の御趣旨につきましては十分拝承いたすわけでありまして、善処いたしたいと存じます。
  32. 松岡俊三

    松岡委員 ありがとうございました。最後に、私は林野庁長官治山治水方面で、どのくらい保安林民有林から買い上げてやるかという資料を要求しているのですが、まだお出しになつていないものですから、私はこの資料によつて詳細に論議をいたしたいと思つておりましたが、まだ資料が出て来ませんからやむを得ません。どうか今の三十二億を、ことし一年だけなりといえども、東北方面においても十分にこれらを考慮していただかないと、先ほど申し上げたように、あの鈍重な東北民が蜂起するようなぐあいになつてはたいへんですから、念のために御注意を申して私の質問を終ります。
  33. 井出一太郎

    井出委員長 この際佐藤洋之助君より発言を求められております。これを許します。佐藤君。
  34. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 私はこの際非公式ではありましたが、今回視察をいたしました長野営林局移転問題につきまして、現地視察のことにつきまして言及したいと思うのであります。  実は私遅れて参りまして、川俣同僚委員からの詳細なる御報告があつたろうと思うので、あるいは私が申し上げることが川俣委員と重複するかもしれませんが、その点はお許し願いたいと思います。平野政務次官及び林野庁長官がおりますから、この際一言申し上げておきます。  聞くところによりますと、この問題につきまして来月の三日に法案をお出しになるようでありますが、まだ法案が出て参りませんから、これにつきましての結論を今申し上げるわけに行きません。しかし私が拝見いたしました結果が、大体法案を提出すべき妥当性がある、こういうことを申し上げておきたいと思うのであります。そこでこれを結論から申し上げて、法案を出すにあたつて当局としてはやはり大蔵当局と十分折衝をいたしまして、大蔵当局の納得を行かして、ここに力強くすみやかな日に御提案になることがよろしいのではないかということを一言まず前提として申し上げておきます。  私はこの視察の前提にあたつて、実は長野県出身の自由党代議士諸君と懇談をいたしました。大体自由党諸君の考えておるところも私わかりましたので、そこで私は今回同僚諸君と三日間にわたる視察をいたしたのであります。視察をいたしました結果は、四十万町歩にわたる厖大な長野県営林行政として、やはり現在の位置がそのところを得ていないということは、まずこれは言えるのじやないかと思うのであります。昔のことわざに、しかを追う猟師山を見ずといいますが、やはり山の中に入つてつては大局的な林野行政というものが目につかないのじやないかということを、まず私は申し上げてもさしつかえないのではないかということが浮ぶのであります。そこでこの移転が、最初私の想像では、単に狭隘であるとかあるいは分化的土地に出て来たいのだというようなことのみに考えておりましたところが、そうではなくて、現在の林野局のあの位置のために、長野県庁との折衝が何でも延べ千数百日以上要するし、それに要する旅費が百数十万円かかる。電話のごときものも厖大なものに上るというのであります。そういう点から考えますと、あるいはまたすべての行政面から行きまして現状が不適当であるということは、私は認めざるを得ないのであります。しかも現地に参りましてつぶさにあの地形を見ましたときに、まず火災の場合における処置がとうていできない。土地は千二、三百坪あるが、建坪が四百坪である。しかもまことに狭隘なものであつて、あの場合における能率の点もあるし、万一の災害の場合における重要書類の搬出ということも困難を来すというようなことをつぶさに検討いたしまして、私はその感を深うしたのであります。私は長野県の林政ということについては、まだしろうとでございますから、その点についての見解はあまり述べないことにいたしますが、そこの後藤局長初め陣頭に立つてわれわれの案内をしてくれました。主として私どもが拝見したのは、神宮備林のうちの中立備林というのですが、神宮備林約八千町歩のうち、七千町歩があそこにあつて、一千町歩は名古屋地区だそうであります。そのうちの中立備林を、上松から約十六キロ森林鉄道に乗つて赤澤に行き、現地の小屋に宿泊をして、つぶさに現地を見たのでありまして、日本林業の宝庫であるということを、私は深く認識をいたしまして、心強く感じて来たのでありますが、かくのごとくりつぱな農林行政は、国家行政において初めて維持できるのであります。関東地区あたりから見ると伸びが非常に遅れておる。二、三十年たてば、関東地区では相当役に立つ樹木が、あそこにおいてはまだひよろひよろしたものであつて、今倒しておるものは二百数十年にわたる巨木であります。こういう点から見ましても、あの木曽における厖大な、しかもりつぱな林業というものを、いかにして行くかということにつきましての苦心は、私は相当当局に敬意を払うものであります。こういう点から参りまして、拝見した結論として、この法律案をお出しになることが妥当性を持つているということだけは、今日私は断言いたしますのみならず、わが自由党における長野県の議員諸君も、この点については深く認識をいたしておるようでありますし、会期もだんだん迫つておりますので、すみやかにこの法律案をお出しになつて、審議にかけられるように、この機会に視察報告にあわせて希望を申し上げておきたいと思うのであります。これにつきまして平野政務次官及び林野庁長官から何かお話があればけつこうだと思います。
  35. 平野三郎

    平野政府委員 先ほど川俣林業小委員長からも同様御趣旨の御発言がございまして、政府といたしましても見解を申し上げたのでございますが、ただいままた佐藤委員から、まことに懇切丁寧に御指示を賜わりまして、重ね重ね感謝にたえない次第でございます。今回御多用の中を委員各位が、山中深く御視察賜わりましたその結果、政府の意図しておりますところとほぼ同じような御感想をいただいたということは、政府といたしましてまことに意を強くする次第でございまして、さつそくにも御高見に従いますように諸般準備を進めたいと考える次第であります。
  36. 柴田榮

    柴田政府委員 ただいま次官からお礼をあわせてこちらの考え方を申し上げましたので、私もまつたく同様に考えておりますが、このたび非常に御多用の中を皆様お出かけいただきまして、現地の者の微力な努力に対しまして御視察をいただきましたことを、非常にありがたく、うれしく存じております。今後も重大な使命があるということを確信いたして、一層一般的に全般を通じまして努力をするつもりであります。それにつけましても、さらに一層有効な国有林事業行政の関連の効果発揮のために、ぜひとも営林局の位置の移転を実現いたしたいと存じまして、ごく近い機会に法案の提出をいたしまして御審議をお願いいたすことにいたしたいと存じておりますので、よろしくお願いいたします。
  37. 井出一太郎

    井出委員長 質疑を続行いたします。松浦周太郎君。
  38. 松浦周太郎

    松浦委員 私は保安林整備臨時措置法案審議するにあたりまして、現在の森林政策に対する状況はまつたく見るに忍びないものがありまして、十余年ぶりで久しぶりにこの場に立つたのでありますが、いくさに負けまして樺太、千島、朝鮮、満州、あるいは臺灣を失つた日本現状は、推定六十億くらいのものを目当てにいたしまして林産物の需給関係が行われておりますが、生産量と伐採量とのバランスがとれません。しかしながら、今日の日本の産業、経済並びに分化を養つて行くためには欠くべからざるものが林産物である。これはやはりいるだけのものはどうしても切らなければならない。そこに自然と林地のバランスが破れまして、国土の保全が保しがたいというような現状、さらに戦時中の過伐、濫伐も加えられて、今日の被害が続出しておる現状であります。そこでまず生産量と今日の国民大衆の燃料並びに用材というようなものの、需給関係におけるバランスは一体どうなつておるかという点であります。私はもう昔のようにこまかしいことでいろいろ政府いじめはやらぬつもりでありますが、これは国家経綸の一番重大なことでありますから、真剣に御答弁を願いたい。しかしながら、答弁が私の意に沿わなければ、お耳ざわりのことも申し上げなければならぬ。また国家経綸に関係することでありますから、本来ならば森林行政と他の行政との関連において、緒方副総理並びに農林大臣等にもお聞きしなければならぬ点が多々ありますが、平野君や長官の答弁範囲でできるものは御答弁を願いたいのであります。  そこで具体的に申し上げますならば、政府は薪炭、木材を通じての需給計画をどのように考えておるか、これと森林資源の保続の問題との関連において、どのような施策を講じておるか、特に薪炭及び用材の生産並びに需給計画はどうなつておるか、また用材間の需給調整については自信を持つておるかという点を、まず第一番にお伺いしたいのであります。
  39. 平野三郎

    平野政府委員 日本林業界の大立物であらせられる松浦先生が本委員会にお出ましにならまして、いろいろと御高見を伺いましたことは、政府といたしましても非常に感深いものがあるわけでございます。特に私は個人的に長い間松浦先生の御謦咳に接して参つたものでありまして、一層感にたえないものがあるわけでございます。ただいまお尋ねの木材の需給全体のことは、国家の運命に関する重大な問題でございまして、いずれ御要求のございます副総理あるいは農林大臣から申し上げることにいたしたいと存じますが、ただいま事務的な範囲におきまして、政府の考えておりますことについて申し上げてみたいと思います。  木材の需給のアンバランスでありますことは、後ほど長官から詳細数字的に申し上げるわけでありますが、まことに憂慮すべき状態にあるわけでございまして、政府としては、何としてもこの森林資源の基本的問題に解決を与えなければならぬということで、いろいろのことを考えておるわけでございます。そのためにはまず日本森林計画を基本的に樹立する必要がある。これは国有林においては大体やつておるわけでありますが、民有林が最も荒廃をいたしておりますので、この対策が必要であるという見地から、過般森林法の改正を行いまして、しこうして民有林に対します施業計画ただいま取進めておるわけでございます。これによりまして非常にバランスが破れておるということがわかつて参りました関係上、特に昨年度の異常な災害等にかんがみまして、一層この点に思いをいたす必要があるという観点から、本年は、御審議を願つております二十九年度予算におきましては、治山治水ということに最大の重点を置く、こういうことでございまして、これはもちろん砂防工事等の予算相当計上いたしておりますが、特に造林の関係につきましては、少い予算の中から昨年よりも増加をいたしまして、この造林を進めるということにしておるわけでございます。また造林につきましては、単に予算ばかりでなく、いろいろな緊急立法等もいたしておるわけでございます。またただいま御審議を願つております保安林整備につきましても、国有林特別会計から三十数億円を支出いたして、これをやつて行くというふうにいたしておるわけでございます。  これは生産の方でありますが、さらに消費の方におきましても、できるだけ消費の規制をする必要がある、これには木材の利用の合理化をはかるという必要がありますので、この木材利用合理化のためには、先般木材防腐特別措置法を御審議つたのであります。なおそのほか木材の利用合理化につきましては諸施策を進めておるのでございます。また木材の厖大な需給者でありますパルプとかあるいは坑木等につきましても、できるだけこれの工場の濫設を抑止するというような方法をとりますと同時に、これの利用の合理化についても研究をいたしておるわけであります。  一方また、何としても日本の資源を失いました国土といたしましては、外材の輸入をできるだけはかつて行く必要があるという立場から、特に木材の輸出は一切これを禁止いたしますとともに、外材の輸入につきましては、特に米材、南洋材等に重点を置いてこれの輸入に努めておるのでございます。また最近パルプにつきましては、特にアメリカのアラスカ方面の木材の利用をはかりたいということで、これも外交交渉を通じましてただいまアラスカ・パルプ会社というものをこしらえまして、その方面にも進出をするということもいたしております。またソ連材の輸入もぜとひもやりたいということで、これも外務省等を通じましてただいまソ連方面と連絡をとつて、これの実現を期したいというふうにやつておるわけでございまして、農林省としては、外材につきまして特に通産省と密接な連絡をとつて、遺憾なきを期するように努力いたしているわけでございます。詳細の数字につきましては林野庁長官から御説明申し上げます。
  40. 柴田榮

    柴田政府委員 ただいま松浦委員指摘通り、実は戦争以来無計画な林野の取扱いからいたしまして、一面におきましては国土保全の立場からいたしましても、非常な林野の荒廃を来しております。さらに復興あるいは生産増強等の意味からいたします最小需要の木材供給に対しましても、伐採が非常にアンバランスに進んで参つております結果、重大な状況に当面いたしているということを、率直に認めざるを得ないのでございます。 そこで現在の木材の需給の推算を一応申し上げたいと思うのでございます。これはあるいは見方によりまして多少の相違はあると存じますが、一応経済審議庁等とも、各種の産業あるいは需要方面計画等を基準といたしまして、二十八年度以降三十二年までの推算をしてみている次第でございますが、これにはいろいろ前提がございまして、一応現状をあまり大きく政治、経済情勢その他海外関係が変化しないということ、あるいは人口増加等も現在の傾向をそのまま続けるという前提のもとに推算いたしてみているわけでございます。さようにいたしますと、一応二十八年度用材、薪材を合せまして、約二億八千五百万石程度の最小需要量に対しまして、二十九年度は二億一千四百四十万石程度。これが三十二年度に参りますと、最小二億四千万石程度ぜひとも必要とする。かような推算に相なるのでございます。これに対しまして現在、林力あるいは開発の状況から見まして、はたして山の負担力と申しますか、伐採可能量との比較はどうなのかということを勘案いたしてみますと、現在の蓄積を一応全部利用できると考えましても、総量で一億七千万石程度以上を出ないのでございます。しかもその総蓄積の中には、現在林道が整備いたしておりません結果、利用対象にならないような蓄積も含まれている。そのために利用可能の林野に対しまして伐採が集中されるということで、一層林野の偏在的な荷重が強く加わつてつているということが言えるのでございます。この際私どもといたしましては、何と申しましても、この最小需要を何らかの方法において満さなければ、必要の需要はあらゆる方法を講じて必ず伐採が進められる。そこでこれをいかに法律をもつて取締りましても、実際問題としては不可能だということで、これに対応する方法としては、一つには林道の整備をはかりまして、未利用の開発可能の林分の計画的な開発を考えたい、こういうことで十箇年計画を進めまして、これによつて約四百八十二万町歩にわたる開発可能林分の蓄積約十五億九千万石を対象といたしまして、林道開発の計画を進めて参つているのでありますが、実際にこれが実現は、計画に比較いたしますと非常に遅々として進まない。従いまして結果から見ますと、絵に描いたもちを示しているのではないかという御批判あるいはおしかりを受けざるを得ないということを、率直に認めざるを得ないのでありますが、何といたしましても、私どもはこれを計画的に、しかも速急に実現をはかることによりまして、一面においては山の計画的な取扱いとあわせて、将来の成長促進をも考え、当面の需給の調整の対象に置かなければならぬということで、治山治水の基本対策要綱にも年次計画を上げまして、一応案を御審議つて確定を見ている次第でございます。しかもなお二十九年度予算におきましては、率直に申し上げますと、まことに不十分で、二十九年度からは技術的にはこの計画の出発ができないという現情にあるのでございます。これをまずぜひとも早期に実現をはからなければならない。かように考えております。その次には、伐採は最小需要に対しては、いかにこれを取締つても拒否するわけには参らないといたしますれば、れこを補うために成長の促進を期せなけれればならぬ。そのためには人工植栽林の増強を考えなければならぬ。こういうことで伐跡地の再造林はもちろん、全部を翌年度に実施する。従来非常に粗悪な林相を呈しております林分の林種転換をはかるということで、十箇年の目標を立てまして、百四十万町歩を新規に人工植栽林—適地、適木選定による人工植栽林の増強を考え、これらを合計いたしまして二十八年度末推計二千五百万町歩の林野に対しまして、人工植栽林五百二十八万町歩を三十六年度末に一応七百四十三万町歩までふやしたいという計画を進めておりますが、幸いに造林に対しましては、一般の輿論も非常に高まつてつておりますのと、予算面におきましても、この三十六年度までの八箇年計画の、当初二十九年度分に相応する実行量をほぼ認められておるということで、この問題は一応解決可能というふうに考えております。  さらに治山事業によります山の安定とあわせて、また従来の林地の生産化という問題もあわせて生長量の増強を考えて参りたい。その場合に多少伐期の低下を余儀なくせられるのでありますが、これを実行いたしますれば、現在の見通しで、この計画の実行が計画通りに進むといたしますれば、四十年後には一応蓄積が上昇するという推計をいたしております。しかしながら当面の問題といたしましては、何といたしましても一つには需給の補いのために外材輸入を促進しなければならないということで、外材輸入に関しましては、各方面と連絡をいたしまして、それぞれ促進をはかつてつて来ておりますが、最近の情勢でございますと、米材並びに南洋材が主体でございますが、暦年の二十七年の集計では二百二十五万四千余石の実績に対しまして、二十八年には五百七十六万六千余石と相当飛躍的に増加をいたしておりまして、これらが用材の国内需給の調整のためには相当大きな役割をいたしておる。そこで二十九年度につきましても、実はこの傾向をもつていま少し促進をはかりたいという考えでありましたが、最近の外貨減少の実情等からいたしまして、主体的に自動承認制が割当方式に切りかえられるということに相なりまして、特に多くを期待することは困難でございますが、一応了解を得ておりますのは、約五百五十万石程度というように考えておるのでございますが、今後もでき得る限り外材輸入を促進いたすように努力いたして参りたい、かように考えております。  なおこのほかに、二十九年度におきましては、非常に少量ではあるかと存じますが、まだアラスカ材も一部期待できるのではないか。そのほか最も大きく期待いたしておりますのは北洋材の関係でございますが、これは現在国交調整を見ておらないソ連圏の問題でございますので、実現確定までは何とも申し上げかねると存じておりますが、これが実現を期待できれば、これまたわが国の木材需給には相当寄与し、かつ山の休養が可能になるのではないか、かように考えております。  これとあわせまして薪炭の関係でございますが、実は薪炭林は用材以上に枯渇いたしておりまして、最小需要量に対しまして生産可能量は非常に低いのでございます。そこでこれが不足は年々目に見えて窮迫を告げて参つて来ておるのでありますが、にもかかわらずこれは生活必需という関係で、ぜひとも確保いたさなければならぬ。この対策といたしまして、直接私どもの担当いたしております面では、代替燃料としての豆炭、練炭の増産によりまして大体解決できる。さらにガス燃料の増強ということを強く取上げまして、この問題を、特に通産省関係において融資その他の面において御援助願つておりますが、これも年々計画以上に相当進捗いたしておりますので、この面の代替燃料切りかえによりまして急場をしのいで参らなければならぬじやないか、かような考え方を持つております。  その他木材につきましては、利用合理化の問題あるいは消費の節約の問題等が、各方面の関連において企画実現を見つつあるのでございますが、現在木材の窮迫度といたしまして、最も窮迫を告げておりますのは針葉樹の面でございまして、これを多少余裕のございます広葉樹面への切りかえで最も大きく現われておりますのは、木材産業として需要の大きなものの一つになつておりますパルプ工業界の広葉樹への転用、これらによりまして針葉樹の需給の逼迫を、最近では相当程度緩和できるようになつております。なお最近のパルプ製造方法の一つといたしまして、新しい傾向でありますセミ・ケミカル法によりますパルプは、おそらくわが国におきましても急速に進展をいたすということになりますと、広葉樹を原料として非常に良質の製紙パルプの供給が可能になるのではないかと存じまして、それらの面への切りかえを慫慂いたしておるような点、あるいけ坑木等の鉄柱カツペヘの切りかえであるとか、コンクリート・ポールの問題、さらに包装等におきます段ボール、あるいはワイヤー・バンド・ボツクス等の利用によります消費の節約という面も順次進捗しておりますので、何とか急場をしのぎつつ現在の林業施策が軌道に乗りますれば、御心配をかけないで進め得るのではないかと考えております。ただこの際各用途別の需給の調整によりまして、木材の円滑な需給の道をはかるべきではないか、それに対する考え方はどうかというお尋ねだと存じますが、実は率直に申し上げましで、現在の自由主義経済下におきましては、利用合理化がなかなか困難な情勢にありまして、一番出途の上で需要のはげしいパルプ、坑木等につきまして、それぞれ適材の融通という点で調整をお願いしたこともありまするが、率直に申しまして、期待するような効果を上げ得ないという現状にございます。これらの点は窮迫度に応じまして、さらに広範囲に御相談を申し上げて参らなければならぬと思います。それにいたしましても、それぞれの需要対象あるいは供給対象の個々についての調整は非常に困難でございまするので、それぞれの団体の横の連絡等を円滑にする方法を考えなければならぬではないかということも、いろいろ内容調査をいたしておりまするが、まだ手をつけるところまで参りかねておるということを申し上げざるを得えない、かように思います。
  41. 松浦周太郎

    松浦委員 お話を聞いておりますと、日本林業現状は、まさに薄氷を踏むような感じでありまして、いろいろ答弁にも努力しておられるようでありますが、しぼり出した答えが、二十八年度現状は二億八千五百万石の需要推定量に対して、伐採可能の生産推定量は、多く見て一億七千万石と言われるのでありますが、正直にその数字を受取つても、年々マイナスになるのは一億一千五百万石になります。それで今おつしやつたような施策をどんどんやつてつて、三十年には、これは外材の輸入であるとか、需要の合理化であるとか、消費節約であるとか、その他代用燃料の普及徹底であるとかいうようないろいろな施策を用いられてのあなた方の推定量が二億四千万石に縮めたいという予想である。そこで私はこの現在の林産物の状況を多少知つておるものですから、お答えになるのもなかなか困難なことであろうと思う。しかしながら今あなた方のやつておられます行政について、こういう数字を上げて来る基本的な統計の基礎がまず問題になりはしないかということなんです。それは何かというと、林産物の検査は戦争中やつてつたけれども、あとは地方に譲つてしまつて、その地方の方はほとんど真剣にやつていない。検査をしないところに正確な数字が出るはずがない。われわれの推定で見ると、九千五百万石ぐらいの用材で済むだろうという一応の統計ではあるけれども、実際には一億三千万石ぐらいは使わなければならない状況にあるのです。検査は地方によつてつておるところもありますが、地方によつてつていないところもあるから、正確な数字がつかめない。しかしいるだけはどんな法律があつても山から切つて来るというのが現状なんです。長官は十五億九千万石の未利用林だとおつしやるが、私どもは大体二十億くらいが未利用林で、利用経済林は四十億石くらいしかないと思う。そこが一億一千五百万石ずつ生産量よりも多くとつておるということになると、計数的には三十二年たつならば日本の山は坊主になつてしまう。それを補うための林政行政でなければならないが、輸入をし、合理化をやつてみても、なお三十年には七千万石足らないということになる。ところが農村の諸君が切取つて燃料にしておるものがあるから、正確な数字は出ておらない。そういうことを考えますと、日本の国土保安というものは、今までのようなおざなりにはどうしてもしておけない。年々水害や風害にやられて国土は荒廃の一途をたどるだけだ。ここに国家経綸によつてほんとうに国の政治をやろうとするならば、いろいろな問題に妨げられるでありましよう。諸種の国費の按分の上においていろいろなお考えがありましようが、基礎を失つてしまつて国家、民族が一体立つて行くかということです。これは最も大きな問題だと思います。私が十年ぶりにここに立つたのは、あまりにもはだえにあわを生ずるような林業行政現状でありますから、見るに忍びずここに立つたのであります。  そこで平野君の御答弁の中に、ちよつと矛盾する言葉があつた。何か言い違いかあるいは私の聞き違いかもしれませんが、木材の輸入を促進するとともに、木材の輸出を禁止すると仰せられたと思います。もし木材の輸出を禁止することになれば、それはどういうものを禁止するのか。今日国際収支の均衡の上において貿易を振興しなければならないのが国策でありますが、もし木材の輸出を禁止することが平野君個人のお考えであるならば、この際御訂正を願いたいと思います。  それから現在の森林法の改正の際の眼目は、資源の保存、生産の増強及び木材の需給確保の三大点に眼目が置かれておつた。当時生産計画は用材一億四千万石、しかもその三分の一は奥山においてこれを補給するということであります。でありますから、奥地の不経済林というか、未利用資源の開発が非常に大きな目当であつた。ところが現在一億三千万までも切つておるが、奥地の開発について、政府は、予算の面においても、実施の面においても、融資の面においても、奥山の二十億のものを利用するに足る積極的な施策をとつていない。そうすると森林法のときにお約束になつ計画は、言葉の約束だけであつて、実際には行つていない。これは自由党内閣の大きな誤りだと思う。あなた方の政調会においても、昨年治山治水の問題について、総動員をして協議され、計画は立てられたが、予算編成のときに、どれだけの熱意があつたか。私は平野君だけを責めるのではない。緒方、保利両君を責めたいけれども、御出席になりませんし、きようは一時から本会議が開かれるということでありますから、きようは一応これでとめておきますが、この次はぜひひとつ緒方、小笠原、保利各大臣の御出席を願つて、皆さんもおいでになつて、真剣にこの問題と取組んでもらいたい。まつたく今日の林政を見ると民族の将来が案ぜられるから、この点について御答弁を願いたいと思います。
  42. 平野三郎

    平野政府委員 木材の輸出を禁止すると申しましたのは、特に日本の林政上不足しておる針葉樹については、絶対にこれをいたさない方針でございます。そうあるべきものと思います。特に最近の朝鮮動乱等の関係から、朝鮮あるいは臺灣等においても相当要望がございます。一部やむを得ないものもありますけれども、原則としては針葉樹は一切出さないということで、通産大臣の貿易管理令による要求があつても、農林省としては同意をいたさないことになつております。ただ闊葉樹については、これを活用して外貨獲得の上に資する点もあるということで、これは別でありますが、針葉樹についてはそういう方針をとつておるわけであります。  また今お話の未利用資源の開発につきましては、奥地林等の開発が必要でありまして、これにつきましては、全力をあげておるわけでございます。ただ予算上きわめて不十分の事態にありますが、しかしながら特に農林漁業金融公庫等ができましてから、融資の面等においては格段の措置をとつて来ているわけでありまして、これは従来なかつた制度として、特に金融の面でもつて相当林道資金は貸し出しておるわけでございます。また本年度予算におきましては、奥地林道につきましては、補助率を引上げて来ておるわけでございまして、できるだけやつておるわけであります。何分にも緊縮財政の建前から、その内容は不十分でありますが、他の費目に比較いたしますればまあまあというところでありまして、政府としては非常に熱意を持つておる点を御了解いただきたいと思います。
  43. 井出一太郎

    井出委員長 残余の質疑は次会に繰越し、本日はこれにて散会いたします。     午後一時十一分散会