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足鹿委員 これは大きな問題でありますので、きようちよつとだけ触れてしまうというわけに行きません。ただ
一つだけはつきりさせておきたいことは、農地に担保権を設定されるというふうな
考え方は非常に簡単なようであります。
農村に質草がないから、
農林金融上の大きな対策として農地に担保権を設定したらいいではないか。そういうふうになりますと、農地改革の精神というものと
相当背馳する
法律上の大きな問題にな
つて来ると思うのです。そういう思想が認められることになりますれば、それでなくても現在、農地改革の成果は各地にだんだんくずれつつある。小作料は高騰して行きますし、農地の移動は頻発して行きます。また農地のやみ価格というものも
相当上る。だから担保しなければならぬ、こういう議論が出て来ます。だから担保制度を認めたならばどういうことになるか。土地の流動は激化して、土地の兼併に拍車をかけ、元の小作人対地主の姿が復活する以外の何ものでもない。農地改革の精神というものは、働く
農民に永久に耕作権を保障するという思想だと私は思う。地主から安くいけど
つて、これを財産にして
農民にわけ与えるというような
考え方で農地改革が行われたものではないと思う。当時土地のひんぴんたる取上げ、耕作権の不安動揺、それにつけ込む
農村の封建制、それが軍国主義に通ずる、こういつた点から日本の軍国主義を倒し、日本の民主化をはばんでおる
農村の封建制を民主化して行くためには、土地の私有制というものに対して抜本的な対策を入れなければならないというのが
農民解放令の大きな
一つのねらいであり、
一つはそういつた結果からして、働く
農民が常に農地の取上げなり、農地に対する耕作権に対して常に動揺しておる、これをほんとうに保障してやつたならば、隷属
関係に近いような
農村の封建制が打破できる、こういう二つの大きな思想があつたように私は思う。農地の担保権の金額のいかんは問いません。現在立案研究されつつあるのは金額はきわめてわずかなように聞いておりますが、金額のいかんではありません。農地の担保権を認める、
一つの財産権を認めるということになりますならば、これはたいへんなことになりますよ。それでこの問題が日本の農地改革に及ぼす影響というか、抜本的にこれをゆすぶる大きな将来えの発展性を持
つておるために、非常に注目しておるのでありますが、今平川さんもおつしやいましたが、農地担保の
金融ということに対して、すでに農地局は研究をしておると思うが、今日の段階でその結論を発表されない、できないとおつしやれば、あえてきよう発表していただきたくない、私も発表していただかなくてもよろしい。しかしこの問題は非常に重要な問題であろうと思う。われわれは観念的に、公式的に何でもそういうものに対しては反対のレツテルを打
つて行こうというのではありません。静かにほんとうに考えてみますと、そういう道が切れたら、せきを切つた水のようなものですよ。
農村の農地の移動なり、それに伴うところの昔えの復活は、音をたてて進行するでしよう。これは非常に大事な問題だと思いますが、そういうことについて十分御検討にな
つておりますかどうか。農地を担保にすることの是非、その法的なあるいは経済的な政治的ないろいろな要素を考えられて、この問題については軽々なる御
措置はやめてもらいたい、十分に御検討にな
つてしかるべきものだと私は思う。農地を
対象とする現在の
金融は、自作農維持
資金問題で道は開かれておる。問題はそこに何らかの隘路があるのではないか。現在の五千円
程度の
金融であるならば、農地のやみ価格に比べて何十分の一なんです。これでは百姓はとてもかなわないから、そこでこの
金融にはあまり魅力を感じない、それでやみの売買が行われる、こういうことになろうかと思うのであります。そこで問題は、これを五万円なら五万円時価の半額
程度に上げて行くと、小作料の問題にひつかか
つて来るということを聞いておりますが、その点についてももつと具体的に御検討にな
つて、現在の維持
資金ではどんなに
わくをお広げにな
つてみたところで、貨幣価値があまりにも動いております。
従つて事情によ
つては、若干小作料の問題についてはやむを得ない場合も出て来るかもしれぬ、こういうふうにときどき考えることもございますが、現在の反当五千円、八千円でかりに自作農維持
資金を受けてみたところで、それは何になりましよう。病院に入院してもわずか五日、六日、一週間で済んでしまう。そんなことだから、
農民が困
つて来ると農地をやみ売買をして行く。いいことではないが、所有権は持
つてお
つて耕作権だけを一時預けて
相当の金を借りる。生活に押し詰められればそういうことにな
つて来る。それは農地改革のくずれて行く
方向へだんだんと拍車をかけて行く結果になろうと思うのであります。自作農維持
資金の問題について、貨幣価値がうんとかわ
つて来た今日において、中途で一回の補正は行われましても、どこまでも従来の小作料というものを金科玉条にして考えて行かなければならないということもないのではないか。むしろこのごろは逆に、現物小作料の要求が復活しておる。先般も香川県の話を聞いたのでありますが、一俵、二俵のやみ小作料を要求する。これを払わなければ考えがあるというような、昔の地主と同じような手口にな
つて来つつある。これは現実に国
会議員から話を聞いたことであり、その人が現地でそれを調べたことでありますから、必要があればお示しいたしますが、そういつた傾向すら出て来ておる。小作料が貨幣価値に即応した適正なものであれば、そういうことも起きて来ないということも一面言えるでありましよう。公平に言
つて現在の自作農創設維持
資金の制度そのものには、何か時代のずれがありはしないか。その間隙にいろいろ耕地の移動や担保
金融論などが起きて来るのではないか、こういうふうに思う。私は意見のみ申し上げましたが、あえて御答弁がなからねばそれでも
けつこうでありますが、もし御検討にな
つておるとすれば、局長の御所見を承
つて、私はきようの
質疑はこれで終ります。