○井上参考人 ただいま御
紹介にあずかりました現在日産化学の取締役技術部長をや
つております井上辰夫と申
します。今日こちらで
委員会がございますので、ヨーロツパ及びアメリカの主として硫安肥料につきまして、どういう
状況であるか見て来た
状況を話せという
お話がございましたので、今日参
つたわけでございます。
参りましたのは、一昨昨年の十月に出まして約三箇月ヨーロツパ及びアメリカをまわ
つて帰
つて参りましたが、それより大体十何年前の
昭和十四年から十五年にかけまして、約一箇年間ドイツのベルリンに行きまして、あそこに約一箇年ばかりとまりまして、主として肥料工業のことを研究してお
つた経験がございますので、そのときも方方の肥料工場を見ましたので、ずつと以前のヨーロツパ及びアメリカの肥料工業の状態と、今回参りました
状況を比較しながら
お話を申上げましたら、日本の
現状がどうであるかというようなことの御参考にもなるかと思います。そういう意味でかいつまんで
お話を申し上げたい、こう思
つております。
まずイタリアでございますが、イタリアは前に行きましたときは、主として電解法をや
つておりました。水の電気分解で水素をつく
つてアンモニアをつくり、それから硫安をつくるという
方式を非常に真剣に研究を
しまして、りつぱなものをつくり上げてや
つておりました。私
どもも非常にそれを高く評価いた
しまして、日本にも日産化学、宇部興産あるいは秋田肥料または日東化学等にこの電槽が入
つております。一番先に入れましたのが私
どもでございますが、非常に優秀であるためにそれを導入いた
しまして、日本でも盛んにや
つてお
つたのでありますが、今回行きましたら、ノバラというところの肥料工場ですつかり電解をとめております。どうしてとめたのだというので私もびつくりいた
しまして、いろいろ聞いてみますと、これはわれわれとしてはいかんともいたし方ないことであるけれ
ども、天然ガスの非常な量がイタリアの中部で噴出したというのであります。これは終戦後でございます。その
資金はいわゆるマーシヤル・プランの金を使
つたのだ、こういうことをイタリア人が言
つておりましたが、マーシヤル・プランの金を使いまして、
徹底的に地下資源を調査いた
しまして、ローマからちよつと北に寄りましたところに天然ガスの大きな脈があるということを発見いた
しまして、非常に大きく
政府が開発いた
しました。この天然ガスを約四十里の間をパイプでひつぱ
つて来まして、その工場で使
つておりました。そのために非常にアンモニアのコストが安くな
つて来た。
従つてこの安いアンモニアを使
つて尿素をつくり始めておりました。この尿素につきましても、私が十数年前に行きましたときは、小さなプラントでや
つておりましたのですが、今度は一本の反応管で日産四十トンというような大きなものになりました。さらにその横に、一日に一本で百トンできるような工場を建設中でございました。それはねらいはどこにあるかと申
しますと、尿素は国内需要を目的としないで――若干の国内需要があるようでございますが、大部分のものはアメリカに輸出することを大きな目標にして、現在大きな工場を建設中でございまして、全部木のたるに詰めてアメリカに行くような包装でございますので、これはうそのないところであろうと
考えております。そういうように天然ガスを原料にいた
しまして非常に安くできたために、一挙に輸出をねら
つた、そしてそれが非常な成績を上げて、イタリアの収入の大きな部分を占めるように
なつたということを聞きました。私
どもはこれは非常に参考に
なつたのでありますが、前に行きましたとき、小さなものでこつこつ研究していたものが、国の大きな収入をかち得るものに今日持
つて来ている。それからなお非常な金をかけて電解法を整備していて、しかもイタリア人としては非常に得意であ
つたものを、一方に安いものができたというので、一挙にそれをかなぐり捨てまして、天然ガスの方に入
つている。ただ、天然ガスが出たからそれでアンモニアができたというのではありませんので、天然ガスからさらにアンモニアをつくります主要原料である水素をつくるわけであります。この水素をつくる装置をまた研究いた
しまして、りつぱにつくり上げておりました。それからもう一つは、御多分に漏れずイタリアでも賃金はどんどん上
つております。また石炭などの原料も非常な値上りをしておるようであります。
従つてこういう方面でもいかにしてコストを安くするか、消費量を少くするかというので、いろいろな研究をやられております。私がここで一つ声を大にして申し上げたいと思いますのは、何分にもアンモニアをつくります装置は、三百気圧、五百度というような危険きわまりない装置を使
つておりまして、この装置にいろいろな手を加えることは、非常な危険をわれわれ技術屋として感ずるわけでございますが、イタリアの人は、これは天才的なところもありましようけれ
ども、その合成管の横つ腹に穴をあけまして、中にパイプを入れて、その中に水を通して蒸気を回収しようというので、アンモニア一トン合成いた
しますと、約七割の蒸気を回収するという装置を天才的にりつぱに仕上げておりました。私もびつくりいた
しまして、その装置をつぶさに見たのでありますが、これは大したものだ――そう大したものでもありませんが、硫安のコストで
相当ゆるがせにできないコストの部分を占めておりますのに燃料炭がございます。この燃料炭は蒸気をつくるために使
つておるのでありますが、このイタリアでやりました、方法で行きますと、アンモニア一トンつくるのに七割の蒸気ができることによ
つて、そういう燃料炭の大部分のものがいらなくな
つてしまつたということを聞いております。私もこれは非常に感心いた
しまして、つぶさに研究いた
しました。約一箇月イタリアにとどまりまして、発明者でありますハウザー博士、これは私
ども前からよく御
指導を受けている先生でありますが、この先生が発明されたので、その工場の副社長にな
つてお
つて、特許の数も三百幾つか持
つており、世界の五本の指に数えられる六十くらいの人で、この人に一箇月くらいついてつぶさに研究して、これこそ日本に持
つて行かなければならないという
考え方になりまして、技術仮調印をいた
しまして、日本に持
つて参りました。それで私
どもの方でも全部ロイヤリテイーを
払いまして、この四月ごろから日産化学に建設いた
しますが、その詳細を硫安界に発表いた
しまして、今数社でこれを採用しようというところへ行
つております。こういうものはどんどん採用していただきまして――何と言いましても肥料は安くなければだめなんでありまして、根本的な技術の改善によ
つてどこまで安くなるかということで、私も技術屋でありますので、これに真剣にとつくんでおりますが、こういうことが遺憾ながら日本ではできなか
つたのであります。
〔
委員長退席、綱島
委員長代理着席〕
これと似たアイデアは私
どもも持
つてお
つたのです。今から十数年前に、すでに計算をやり上げて持
つておりましたのですが、た
つた一つ思い切
つてできなか
つたのは、その合成管の横つ腹に穴をあけてパイプをつつ込むのでありますが、そのつつ込みますのに中に水を通しております。御
承知の
通り中の温度が五百度でありますので、一たびパイプが破れましたときには、いきなり水が五百度の温度になるので、蒸気が大爆発をやるおそれがあります。これはいろいろの点で防げるようにな
つておりますが、機械によることでありますので、非常な危険がある。これは材質が一番問題だというので、われわれもそれを放棄したのでありますが、その材料をイタリアでもいろいろ研究
しましたが、遂にスエーデン及びドイツでこの材料を完成して使
つたのに、このアイデアの成功のもとがあるわけであります。それではわれわれ日本でできないかというので、私はそのパイプの一片を持
つて来まして、日本の有数なメーカーに示
しまして、これは日本金属、日本ステンレスその他でございますが、それらに示
しまして、こういうものはできないか、これは硫安を安くする目の前の問題なんだ、この材料ができなければそれはできないのだ、何とかして日本でできないか、できなければ一々外国から買わなければならないじやないかというので、熱心にこれを
指導して参りましたが、遺憾ながらまだできておりません。しかし研究は、日本金属あたりで真剣にや
つておいでになるので、日ならずして、外国のものによらずして日本のものでできるようになると私は思
つております。それで、私の方で今度やります一基は、遺憾ながら全部ドイツから買いました。これを手本にいた
しまして、日本のメーカーでできるようにや
つて行きたい、各社もぜひこれをやりたいという希望が非常に強いので、早くこの材料からやり上げたい、こう思
つております。これによりますと、燃料炭が非常に大きくセーヴできる、こういうことでございます。
それからもう一つイタリアでびつくりいた
しましたのは、前に行きましたときには、現在日本で使
つておりますのと同じような遠心分離機という装置を使
つておりました。これは硫安の水分を振り切る、洗濯機の振切り装置のようなものでありますが、われわれが使
つていたと同じものを使
つておりました。私もやはりこんなものを使
つているのかというような気持でおりましたが、今度行きましたら、同じ能力のものでありますと、われわれの方では四十五馬力動力がいるものを、それよりも約二割くらい能力が上
つたものでありながら、三十五馬力で済むという遠心分離機を使
つておりました。それで私もこれを詳細に調べまして、そのメーカーがどこかということを調べ出
しますと、スイスのエツシヤー・ウイスという会社だということがわかりまして、間を見てスイスへ飛んで行きまして、エツシヤー・ウイスへ行
つてその製作
状況をつぶさに見て参りまして、これなら大丈夫だということがわかりましたので、これは私日本へ帰りましてすぐ、硫安協会でこれを詳細に発表いた
しました。そう
しましたら、これをお聞きに
なつた今までの遠心分離機のメーカーである月島機械が非常に感心されまして、ぜひこれは技術導入して日本でできるようにしたい。私もぜひ日本でつく
つてもらいたいということをお願いいた
しまして、両方の
意見がぴ
つたりいた
しまして、月島機械が技術導入されまして、これは日本で全部できるようになりました。遺憾ながらわれわれの方は、こういう点では全部イタリアに負けております。イタリアで気がつきましたのは大体こんなところでありますが、時間がございませんのでその次はドイツへ飛びたいと思います。
ドイツで私がびつくりいた
しましたのは、こういうことでございます。とにかくドイツ人の肥料業者に会いますと、当時まだ輸出なんということはあまりいた
しませんでした。東南アジア地区にもヨーロツパの硫安が来るということはありませんでしたが、会いましたうちの多くの人が、ドイツは硫安を輸出しなければいけない、それで外貨を獲得しなければだめなのだ。ドイツは日本と同じような
状況で、原料としては炭酸石灰と石炭の幾らかと、あとは水と空気だ、ドイツと日本はこの点で非常によく似ている、だからお前の国も硫安は輸出しなければいかぬぞ、おれの方も輸出をするのに今一生懸命だということを言
つておりました。戦争に負けたものでありますので、ドイツ人もわれわれも同様に負け国で行
つたものですから、どこへ行きましても、お前日本人かというのでじきに飛んで来まして、飯を食
つていましても、どこにいましても飛んで来て話してくれるという気安さは確かにありました。終戦後ヨーロツパへ技術屋として行
つたのは、私が最初のように記憶しております。
従つて化学工業を調べに行
つた私が非常に珍しくて、前に来たときと今度とどうだというようなことを盛んに聞いておりました。とにかく輸出をするのだということを言
つておりました。そこで私は日本へ帰
つて来まして、イタリアにしろドイツにしろ、東南地区に日本が距離的な
関係で安易に硫安が輸出できると思
つたら大きな間違いだ、ドイツ、イタリアは虎視たんたんとしているということを、盛んに私は方々で申したのですが、オランダがそうであります。ベルギーが同じくそうであります。フランスもそういう
考えを持
つておりまして、何とかして窒素肥料を輸出したいという気持を腹の底から熾烈に持
つております。それで日本がぼやぼやしていましたら必ずやられて
しまうということで盛んに言
つたものでありますが、ドイツ人は明らかにそういうことを口で言
つております。そこでドイツ人はどういうことをや
つているか、戦争前に私が行きましたときと今回行きましたときで、気持の点で根本的にで違
つた点があるのであります。御
承知だと思いますが、世界の五大化学工業会社の一つにな
つております、EG、インテレツセン・ゲゼルシヤフトというのがあります。戦争に負けまして東独と西独になりましたために、めちやくちやになりまして、ほとんどその六〇%くらいを東独にとられました。その一番主力工場でありますロイナーの工場もすつかり東独にとられております。
従つてEG、インテレツセン・ゲゼルシヤフトじやなくて、昔の小さな発生のときはバデイツシユ・ソーダ・フアブリークと言
つてお
つたのでありますが、今その名前にかわ
つております。そこでわずか六工場か七工場か持
つておりまして、それでや
つておるのでありますが、それではEGはたいへんなことだろう、利潤はどんなだ、どんなふうの会社の
状況なんだということを聞きましたら、あるドイツ人はこういうことを言
つておりました。何そんなことはないのだ、西独に属したEGは、バデイツシユ・ソーダ・フアブリークと言
つて昔のような小さなものにな
つているけれ
ども、その利潤は戦前を上まわ
つていやしないか、大体こういうことを言
つておりました。それで私は、これは全然
お話にならないと思
つて笑
つたのでありますが、さらに追究を
しまして、どこがEGをそうさしたのかということを研究してみる必要があると思いまして、方々に行きましていろいろな人にも会い、EGのバデイツシユの工場にも三つばかり行きまして、見て参りましたが、こういうことなんでございます。今まで化学工業で使えなか
つたと思われる低品位のものを、技術の改良くふうによ
つてりつぱに使えるようにして
しまつた。これをEGがや
つたということなのであります。それがはつきりわかります。その証拠がどこにあるかということをぜひ見る必要がある。ただ口で言うばかりでなく、具体的に実際にこの目で見ようと
考えまして、無理をしてがんばりまして、ドイツのルードイツヒ・ハーヘンという所にバデイツシユの工場があります。そこへ行きましていろいろ話しておりますと、硫酸をつくる原料のことでございますが、硫化鉱でございます。向うも硫化鉱を使
つております。ところが品位が硫黄の含有量が二二―三%のものを使
つております。私
どもは技術屋の常識といた
しまして、硫黄の含有量は三四―五%以上でなければ使えないというのが今までの
考え方でございました。二五%のものでどうして使えるのだ、それじやどれくらいの低品位のまで使えるのかということを聞きましたら、一四―五%くらいまでは使える装置をつく
つた、こういうことでございます。それではその装置を見せろということで見たのでありますが、その前に私
どももそういうことについて幾分文献も調べ、またわれわれの基礎研究もできておりますので、私の方の会社でも根本的な研究はすでにや
つております。しかし現実に向うでは大きな装置にしてや
つておりますので、いささか、われわれにもちよつと早か
つたなと思
つて見たのでありますが、使
つておりましたのは、二六%ぐらいのものを使
つておりました。御
承知だと思いますが、流動焙焼炉というものでございまして、一五―六%のものから使えます。しかもそれから出て来ますシンダーは、焼粉のことですが、これはあるいはパイライトでありましたかあるいはピロタイトでもいいのでありますが、非常に優秀な製鉄原料になるものができるのであります。この流動焙焼炉を使いますと、今までのヘレンシヨツプの炉だとかあるいはほかのウエンクの炉だとかございますが、そういうものを使
つて焙焼いた
しますよりも、そのシンダーがはるかにいいものができます。しかもここで一つ大きな特徴といた
しましては、こういうことが言えると思います。これは研究途上でございまして、はつきりした結論ではございませんが、非常な希望を持
つてわれわれ今研究を続行しておりますが、実は日本のパイライトの中には銅が大体〇・三あるいは〇・五くらいなものが入
つております、この銅をいかにして抜くか、そのシンダーから銅を抜いて行けばより優秀な製鉄原料になるわけでございます。新聞紙上で見ますと、今年は五百五十万トンの鉄鉱石を輸入しなければならない。そのために一千万ドルですかの外貨を使わなければならぬということが、新聞に出ておりましたが、これはわれわれ肥料屋として、どうしてもこのシンダーを有効な製鉄原料にして、五百五十万トンも買う製鉄原料を幾分でもセーヴするということで、われわれはこれに
努力しなければならぬというので、脱銅ということを今研究しております。浮遊焙焼炉を使いますと、脱銅が幾分楽に行くんじやないかという見込みを今持
つております。その覚悟で今研究をしておりますが、その脱銅をしてさらにそれを製鉄の原料に持
つて行くということで、研究してみたら非常にいいのではないか、こう
考えております。
それからもう一つは石炭でございますが、アンモニアをつくりますにはガス法と電解法とあ
つて、そのうちのガス法は石炭を使
つておりますが、日本は今非常に高い石炭を使
つておりまして、一トン六千円から九千円ぐらいのものを使
つております。ところが向うではいかにして安い粗悪炭を使うかということで、夢中にな
つて研究をしておりましたが、その後それに成功いた
しまして、コツパースというか、ダスト・コールのガス化装置を完成いた
しまして、非常に低品位なものを使
つてや
つております。日本でも、常磐炭などの非常に低品位のものでも、これでかかるようになるのでありまして、今度日本水素がこれを採用されるのではないかというような御計画を聞いておりますが、これは確かにそういう粗悪なものを使えるような装置でございます。これは私がドイツに行きましたときに、すでに研究をしておりまして、フインランドにその工場を建設中であるということを聞いたのですが、帰
つて来ますと、もうできましたので、昨年また私の方から人を出
しまして、つぶさにこれを研究させ、日本の粗悪炭を送
つて研究しております。そういうものは全部EGのバデイツシユの工場でつくり上げておりまして、そうしてコストを下げて、いかにして硫安を安くしようか、安くした硫安はどんどん輸出しよう、こういうことをねら
つております。それからこれは原料面から来る技術面のことでございますが、同時に量産をやろう、幾らで
もつくろう、コストを下げるのは技術の合理化と同時に量産が、化学工業に関する限り非常に大きなフアクターでございます。できるだけたくさんつく
つて、設備の稼働力を百パーセント近く持
つて行くということが一番大事なことで、コストを下げる大きなものでございます。ところが日本の
現状はどうかと申
しますと、日本の硫安の全設備能力の、電解法はわずか六割しか動いておりません。ガス法は大体九〇%、九〇から九二ぐらいしか動いておりません。こういう
状況で、増産の一途をたど
つておりますが、まだ向うには負けております。向うは、量産と技術の合理化でねら
つております。フランスも同様に、ダスト・コール、非常な粗悪炭を使
つたものを一生懸命に研究しておりまして、パニンデイコという会社で工業化しております。それからあとはベルギー、オランダでありますが、ベルギー、オランダも非常に熱心にや
つております。そういうことから
考えますと、日本も非常に負けておりますので、こういうような点で技術の合理化をや
つて、しかも稼働率を上げて、量産をはか
つて行けば、必ず向うに打ちかてるというかたい自信を、私は技術屋として持
つております。ただいま合理化
審議会というのがございまして、私も肥料小
委員会の
委員をや
つておりまして、こういうような点で一生懸命に研究をいたしております。大体のところでございますが、向うの硫安はどのくらいでできるのか、今十ドルかそこら違
つております。国際入札で、十ドルから十二、三ドル違
つておる。しかし、日本はそれよりも十ドル上まわ
つておるとすれば、合理化によ
つて、硫安一トン
当り三千六百円下げられるかどうかという可能性が一つございます。それは今真剣に取組んでや
つておりますが、私
どもの今までの
考え方で行きますと、各社が計画しておりますものを総合いた
しますと、大体可能じやないか――これはまだ結論まで行
つておりませんので、そうお聞取りを願いたいのですが、技術的に各社が出したものを総合いた
しますと、大体において可能じやなかろうかということが
考えられるのであります。しかしここで十分われわれが
考えなければなりませんのは、われわれが進むと同時に、諸外国も進んでおります。そういた
しますと、向うが五十ドルで国際入札して来たら、この次は四十八ドルで行こう、四十五ドルで行こうという余力を持
つて向うがや
つておるのかもしれません。敵に勝
つためには、まず敵をよく知り、味方もそのことによ
つてよく反省する必要がございますので、私
どもといた
しましては、この点十分に気をつけて今や
つております。あらゆる外国人にお会いする機会にこれをねら
つておりますが、今まで向うが国際入札をしたのを、月別に見ますと非常な変動があります。ドイツの硫安でも、非常な変動を持
つてや
つて来ておる。これらの点で、ちよつとくさい点がある、
相当なことをや
つておるぞ、外貨を獲得するために、何ものかや
つておるぞという感じがいた
します。私が向うに行
つたときと、帰
つてから向うがや
つて来ることから
考えて、またドイツ人あたりにも私はしよつちゆう会
つておりますが、そういう人たちの言うことから
考えまして、何かや
つておるぞというような気持がいた
します。しかしこれはや
つていないかもしれない。どこまでも想像であります。ここで十分にふんば
つて、硫安の輸出を大眼目にしてや
つて行くという旗じるしを立てて行くならば、十分にこれを覚悟して行かなければならない、その用意もまた万全の用意をして行かなければならないということを、私は深く深く
考えております。昨年の一月に、あるアメリカの貿易をしている方にお聞きしたのです。その人は、あなたの方から硫安を出してくれないかという話で
おいでに
なつた方ですが、値段の点でたいへん違うらしい、向うはどうなんだ、幾らぐらいで出せるのかということを聞きましたときに、これは自分の想像ではあるけれ
ども、いろいろなところで貿易をしているから、ちよつとそういうような気がする、ある貿易業者に硫安を売
つて、その貿易業者がその硫安を外に出す、出したら外貨がとれる、その外貨で、国で必要なものをその貿易業者に買い入れさせて輸入するのだ、それでその損、つまり硫安を安く指値した損を補填するのじやないか、そういう操作をや
つているのじやないかと思われるというようなことを言
つておりました。これはアメリカ人であります。スペインと貿易をや
つておりまして、さらにスペインで肥料がいるからというので、日本から出してくれないかという話で来られた方でございます。これはどこまでも想像のようでございますが、外国人の中でもそういうような
考え方を持
つている方もあるようでございます。私
どもは技術屋でありますので、貿易のことなどはわかりませんが、もしそういう操作があるとするならば、われわれとしては、操作を
考えてわれわれが技術的にこれを
検討して行く、合理化というようなことは必要なことでございます。どこまでもわれわれは技術屋として、技術
検討によ
つて合理化をして、コストはどこまで下がる可能性があるかということを十分に突き詰める。さらにそれよりも一歩も二歩も進めまして、向うの出よういかんによ
つては、いつでもこちらは伝家の宝刀が抜ける態勢を整えておくべきである、こういうふうに
考えております。
硫安に関
しましては大体そんな
情勢にございまして、われわれとしてもゆだんできないことでございまして、量産をや
つて行けばコストは安くなるし、合理化をや
つて行けばさらに安くなる。そこで日本の
農家の使う肥料も安くなるし、余力を外国に向けて外貨の獲得をするという、われわれとしてはそういう仕事に携わらしてもら
つております。われわれとしては非常に有意義な仕事であると思
つてや
つております。
遺憾ながら、非常にかいつまんで申し上げましたが、技術は外国に非常に遅れておる。十年どころではございません。非常に遅れました。しかし私通産省などに行くと始終申し上げ、方々の会社でも申し上げるのですが、日本人はばかじやないということなのです。
〔河野(一)
委員「
委員長、大体わか
つたのですが、質問させてくれませんか」と呼ぶ〕