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1954-02-19 第19回国会 衆議院 農林委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月十九日(金曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 福田 喜東君 理事 川俣 清音君       小枝 一雄君    佐々木盛雄君       佐藤善一郎君    田子 一民君       松岡 俊三君    松山 義雄君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       足鹿  覺君    井手 以誠君       中澤 茂一君    久保田 豊君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         大蔵事務官         (主計局次長) 原  純夫君         農林政務次官  平野 三郎君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         農林事務官         (農業改良局         長)      塩見友之助君         林野庁長官   柴田  栄君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 二月十八日  委員足鹿覺君及び芳賀貢辞任につき、その補  欠として小川豊明君及び佐々木更三君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員小川豊明君及び佐々木更三君辞任につき、  その補欠として足鹿覺君及び芳賀貢君が議長の  指名委員選任された。 同月十九日  芳賀貢君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 二月十八日  水害地における農産種子助成金交付に関する請  願外十三件(大石ヨシエ紹介)(第一八七九  号)  食糧事務所機構縮小反対に関する請願外三件  (只野直三郎紹介)(第一八八〇号)  積雪寒冷単作地帯農業振興に関する請願大石  ヨシエ紹介)(第一八八一号)  草地農業地帯振興に関する請願中村時雄君紹  介)(第一八八八号)  北海道の冷害対策資金に関する請願館俊三君  紹介)(第一八八九号)  霞ケ浦高浜干拓実施に関する請願佐藤洋之  助君外一名紹介)(第一八九〇号)  農業委員会予算増額に関する請願只野直三郎  君紹介)(第一八九一号)  装蹄師法廃止反対に関する請願只野直三郎君  紹介)(第一八九二号)  田尻川沿岸かんがい排水総合改修事業促進に関  する請願只野直三郎紹介)(第一八九三  号)  公営競馬民営移管反対に関する請願只野直  三郎紹介)(第一八九四号)  農業共済組合費国庫補助に関する請願外五件  (只野直三郎紹介)(第一八九五号)  獣医師法の一部改正反対に関する請願飛鳥田  一雄紹介)(第一八九六号)  同(黒澤幸一紹介)(第一八九七号)  砂糖輸入のためのドル資金割当等に関する請願  (仲川房次郎紹介)(第一九〇一号)  区劃整理事業補助率確保に関する請願福井勇  君紹介)(第一九一七号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 同月十七日  食糧自給促進法早期制定に関する陳情書  (第八〇六号)  冷害対策に関する陳情書  (第八〇七号)  積寒関係予算大幅増額等に関する陳情書外二  件  (第八〇八号)  同(第八〇九  号)  農業協同組合資金充実等に関する陳情書  (第八一〇号)  茶業振興に関する陳情書  (第八一一号)  那須山ろく集約酪農地域設立指定に関する陳情  書  (第八一二号)  電力会社所管電柱敷地補償料引上げに関する陳  情書外四件  (第八一三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員及び小委員長補欠選任  小委員追加選任  蚕糸に関する小委員会設置の件  農業補助金問題に関する件  林業に関する件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  この際理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴いまして、理事が一名欠員になつております。つきましては、その補欠委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  3. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、芳賀貢君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 井出一太郎

    井出委員長 この際小委員会設置についてお諮りいたします。先日の理事会申合せによりまして、現下最も重大な問題となつております蚕糸問題につきまして、その実情を調査し、あわせてその振興方策を樹立するため、小委員十四名よりなる小委員会設置することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
  5. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。なおその小委員及び小委員長選任につきましては、委員長において指名いたすことにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  6. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  それでは蚕糸に関する小委員に       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    佐藤洋之助君       福田 喜東君    松岡 俊三君       松山 義雄君    金子與重郎君       吉川 久衛君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    中澤 茂一君       中村 時雄君    安藤  覺君 を、蚕糸に関する小委員長佐藤洋之助君を指名いたします。  次に小委員補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴いまして、ただいま肥料に関する小委員一名、それから農業災害補償制度に関する小委員一名、林業に関する小委員二名が欠員となつております。この際その補欠委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  それでは従前通り肥料小委員足鹿覺君、農業災害補償制度小委員足鹿覺君、林業小委員加藤高藏君、芳賀貢君をそれぞれ指名いたします。  なおこの際各小委員会の小委員の増員についお諮りいたします。  先般の理事会での申合せによつて、すでに設置されておりまする肥料に関する小委員会農業災害補償制度に関する小委員会林業に関する小委員会の小委員をそれぞれ六名あて増員して十四名にいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  8. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  それでは各小委員会の六名の追加選任につきましては、委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  9. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  よつて肥料に関する小委員に       足立 篤郎君    綱島 正興君       福田 喜東君    吉川 久衛君       芳賀  貢君    中澤 茂一君  農業災害補償制度に関する小委員に       佐藤善一郎君    佐藤洋之助君       松山 義雄君    金子與重郎君       芳賀  貢君    中村 時雄君  林業に関する小委員に       秋山 利恭君    足立 篤郎君       佐々木盛雄君    井出一太郎君       井手 以誠君    中澤 茂一君 を指名いたします。  次に小枝一雄君より肥料に関する小委員長辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  つきましては、その補欠委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  よつて従前通り綱島正興君を肥料に関する小委員長指名いたします。  なお足鹿覺君は農業災害補償制度に関する小委員長でありましたので、これも従前通り足鹿覺君を小委員長指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  12. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さように決しました。     —————————————
  13. 井出一太郎

    井出委員長 それではこれより農業補助金問題について調査を進めます。  農業関係各種補助金のあり方について、いろいろと論議がなされておりますが、わが国農林業の特殊な地位にかんがみて、これが整理には慎重なる考慮を必要とするものと考えます。しかしながら御承知の通り、すでに今国会提出せられております来年度予算には、各種補助金の大幅な整理が前提となつておりますし、さらに仄聞するところによりますと、近く政府補助金整理について法的措置をとるために、各省にわたる法律を一本の法律案にして改廃しようとしているやに承つております。従いまして本日はこれらの問題について質疑を行うことにいたします。通告順従つて質疑を許します。川俣清音君。
  14. 川俣清音

    川俣委員 この間に引続いて補助金等整理に関する法律について、その関連しております農林省関係農業改良助長法の一部改正漁業法の一部改正、あるいは家畜伝染病予防法の一部改正等改正法律政府から提案されようといたしておるようであります。これらに関連いたしまして、法制局に二、三お尋ねいたしておきたいと思います。  憲法七十三条によりますと、内閣の行うところの一般行政事務のほかに、内閣行為規定いたしておるようであります。これから関連して見ましても、また憲法の総体の趣旨から考えましても、現行法の存在する限りにおいて、その現行法否定するような予算編成するということは越権ではないかと考えられますが、法制局としてはいかなる見解をとつておられますか。
  15. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 一応ごもつともに拝承いたします。今のお考えをずつとつきつめて行きますと、法律制度改正を見越した予算をつくること自体も問題になるわけであります。その疑問を避けるためには、むしろ法律制度の方を予算編成の前にすつかりかえてしまう。たとえば補助金が三分の二とあるのを三分の一にして予算を組みたいと思うときには、現在三分の二となつておる法律をまず三分の一に改めていただいて、その法律が成立してから予算編成するというふうに行けば、ただいまの御疑問のような点は全然なくなつてしまうのであります。ところがこれは予算の技術の問題から申しましても実際上不可能なことでありますから、今までそういうことはずつとやつておりません。そこでわれわれとしてはどういう程度考えておるかということを申し上げますと、結局予算は次の年度の四月一日から施行されるわけであります。そこで少くともその予算の施行される四月一日までに法律が成立するようにお願いすべきである。そうしてなお望むべくは予算提案と同時にその法律改正案も一緒に御審議願えば、なおけつこうであろうということで考えておるわけであります。しかしその最善の理想とするところも、これは実際の手続の問題から申しまして、予算提案と同時に法律が御提案申し上げられるということは、これも従来の例から申しまして、実行上満足に行つておりません。これははなはだ遺憾でございますが、それにいたしましても予算の御審議中には間に合うようにぜひ出すということはやつておるわけであります。今度のお話になりました補助金整理法律案は、不日御提案申し上げて、予算と並行して御審議願いたいというふうに考えておるわけであります。
  16. 川俣清音

    川俣委員 それは憲法第四十一条にある国会国権最高機関である、唯一立法機関であるという建前から、予算編成権とどつちが高位にあるというふうにお考えになつておりますか。何か予算編成の便宜のためには、立法府を制約してもいいというようなお考えちよちよい出ているような感じがするのですが……。
  17. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 唯一立法機関はお示しの通りでありますけれども、もう一つその上に国権最高機関という言葉があるわけであります。われわれとしては、国権最高機関という面から見まして、予算というものはだれがつくるかというと、原案提案権政府にございますけれども制定権者はやはり国会である、それは法律と同じことだというふうに考えております。従いましてお話の問題は、予算制定権者国会であり、法律制定権者国会だ、ただ原案提出権が違うだけだというふうに考えますから、ちようど問題はこの法律相互問題——たとえば現在破壊活動防止法というものがある。ところが今度はそれを廃止する必要が出て来たという場合には、廃止のための法律案提案するということも政府としてやれることであります。廃止のための法律案提案することは、現在の破壊活動防止法を否認する意図をもつておるわけであります。これをつぶそうというわけですから、それは誠実な執行の問題ではなしに、国会の御判定を得てつぶしていただこうという趣旨で出すわけでありますが、その点の最終の判定権は、いずれにせよ国会が持つわけでありまして、従いまして、今法律の例で申し上げましたけれども予算法律関係にわたつておる判定権は、最終的には国会がお持ちになるのだから、その材料の出し方が多少前後しても、並行して御審議願える段階にそれがなつておれば、理想考えなければならぬだろうというような考えで申し上げたわけであります。
  18. 川俣清音

    川俣委員 国権最高機関ということになりますと何よりも優先していなければならぬ。ところが予算提出権があるということで、提出権を濫用して国権最高機関を制約するというふうな考え方がなければ、あとから法律案を出すというふうなことはないわけです。やはり最高権威のものにはかつてしかる後に予算提出されることが、憲法の正当な解釈だと私は理解しますけれども法制局はどういうふうに理解しておりますか。
  19. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもは、予算案にせよ、法律案にせよ、制定権者であられる国会に対して材料を御提供申し上げるという頭でやつておるのであります。最終的におきめになるのは国会だから、われわれが材料を提供して、これを成立さしていただきたいと思つても、国会がいかぬと言えば、泣いてもわめいても、それまでであります。ただその材料提供者として御審議の種を出すというふうに考えておりまして、その点は国権最高機関に対して何ら制約するものではないというふうに考えております。
  20. 綱島正興

    綱島委員 ただいまの御質疑に関連して伺いたいと思います。問題は提案権という一つの独立した権利については、国会にとつても非常に重要な問題で、特に大切なことは、予算編成権内閣に専属することも明らかであります。そこで問題になるのは、編成権と七十三条によつて制限されておる内閣が持つておるところの職能、いわゆる法律を誠実に執行しなければならぬという義務、この関係ですが、予算編成権内閣にある以上、しかも法律を誠実に執行しなければならぬと義務づけられてある以上は、どうしても法律に基いて予算編成しなければならぬ。予算提出はおおむね年末までにこれを提出する。そこで、それらの点から考えまして、たまたま議題に上るときに、同時に上るということで、予算を組みかえて別の基準に基く予算提出してもいいということには、七十三条の一号の、法律を誠実に執行しなくてはならないという規定の遠反だと思うのですが、その点はどうお考えになつておりましようか。
  21. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど川俣委員にお答えした点にも触れるのでありますが、これは予算編成そのものは、国会の御制定を願うためのものとして提出する作業であるわけであります。従いましてこの法律の誠実な執行云々という問題に関連する面は、ただいま御提案申し上げようとしておりますこの補助金整理関係法律案の方もまた御審議を仰ごうということで、これを並行して考えておるわけであります。そこで並行しておるのがどうもお気に召さない。整理をするならするで、法律の方を先に成立さしておいてから、予算編成にとりかかるべきではないかというお話はよくわかりますが、それで行きますと、すべて今までの予算というものが幅が非常に広うございますから、実行上できないのであります。それは昔からそういうことをやつたがむしろ不可能のこととしてあきらめて来ておるということでありまして、結局今の同時あるいは同じ御審議に並行できるような程度にお願いをして、法律案予算を四月一日からのスタートだけはそろえたいというわけであります。しかしこれを御審議なさるのは国会でありますから、その点は一向矛盾も何もないのではないかというふうに、むしろ安心をしておつたわけであります。
  22. 綱島正興

    綱島委員 実は審議をする過程のための準備というふうにごらんになることと、予算編成というものが重要な国務であるという見方と、これが非常にかわつて来ると思うのです、これは法律案についても非常な問題がある。旧憲法におきましては、立法権というものは天皇に専属しておつた国会には立法権はなく、単なる協賛をするだけの権能がある。旧憲法の五条には、明らかに天皇国会協賛をもつて立法権を行うとある。これは日本では立法権天皇にあつて国会にはなかつた。そこでそれを取違えて立法権というものは国会にあるので、審議すなわち立法というような、世界から見ればまことに変則な法律解釈をもつて欽定憲法世界憲法由来事情には沿わない事情でございました等のことから、この変則的なことを正常のように考えて、この立案提案というものは単なる手段である、あるいは国会の中でちよつとの審議をすることが立法行為である、こういうふうに即断してしまつた。そこで準備だというふうにしいて解釈をすれば、法律についても、立法権国会にあつたのだというようにちよつと見えるのですけれども、旧憲法には、はつきり天皇立法権を行う明文規定がございます。もしこれに反すれば憲法違反だ、そういう規定がございましたことから、何かそういうものが立法だというふうに即断をいたしまして、この誤解は国会内に非常に横行いたしました。実は新憲法ができた当初に政府から法律案が出て来たことをふしぎなことだ、妙なことをするものだ、憲法否定行為だ、こう考えて私は抗議をした。議長政府法律案を出して来たら却下しなくちやならない。また委員長議長から回付になつて来たら却下すべきだ。それを議長がのうのうと政府が出して来た法律案受取つて、そうして委員会にまわして委員諸君委員長のもとに審議をして行くということは、憲法無視行為である。だからこういうものはやめなければいかぬということを言つたのですよ。そうしたところが、憲法の七十二条に内閣総理大臣職能があつて、その規定の中に「内閣を代表して議案国会提出し、」と書いてある。ところが法律案議案だから提出権があるのだ、従つて立法権もあるのだ、こういうような暴論をやつて、多勢に無勢でぼく一人と四百六十五人との争いだからどうにもならずに、愚論といえども民主主義だから大きな愚論の方がいいだろうと思つて、観念しておつたのですが、これは明らかに憲法否定行為である。立法権行為というものは、立案提案審議より成り立つということは世界学説である。これは日本ばかり別の学説を立てて、日本法律は別だ、殴打ということを日本では殺人というのだというふうにやりかえればわかるのですが、世界に通ずる概念で法律解釈するということになれば、すなわち日本法律学世界に通ずる学問たらしめるためには、日本憲法の文字を世界に通ずる意味で解釈をするためには、私はこの点は非常に是正をしなければならぬと思う。今の予算案の問題と法律立法関係、それら民主主義提案権の問題、こういう問題について整理をしておかなければならぬ。これは一党一政府の問題ではない。実に民主主義の本質を決定する世界からいえば二百年にわたる大運動の集結の問題でありますから、時の都合あるいは時の内閣都合考えるというようなことは実に恐るべきことで、そのときにはあるいは大した弊害が起らぬにしても、いつかはとりかえしのつかない人類が血のあがないをもつてかち得たものを空に帰するようなおそれがありますので、この点についての御所見を願いたい。この立案権政府にあるというお考えであるか。七十三条の規定にある条約に関する議案、事前または事後において国会の承認を求めるものと、いま一つはこの予算案、この二つでなければ内閣には立法権なし、あるとすれば学問的な否定であり、まかふしぎなる議論であると思う。総理大臣内閣を代表する資格において議案提出するのだから、内閣自身にもない権能総理大臣が作為してこれを提出し、国会議員が相率いて世界に適用しない国会を運営して行くということは、日本民主主義なのか、それとも旧憲法時代協賛国なのか。ここにけじめがつかぬようでありますから、学問的御所見と今後のお考え方を伺つておきたいと思います。
  23. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 綱島委員のおつしやる通りでありまして、第一回国会において大いに論議になつて、私は速記録をちやんと切り抜いて今でもそれを持つております。これは重要な問題、当然論議せらるべき問題であると思つております。非常に御謙遜でございましたけれども、今でも学者の中には、佐々木惣一先生のような有力な学者で、綱島委員と同じ学説をとつておる方もおられるわけであります。これは御謙遜には及ばないと思います。但し当時から私も特に申し上げておりましたように、まず第一に七十二条の解釈問題になるわけであります。憲法制定しました当時の国会議員と同じメンバーの方々が内閣法を御制定になつておる。その内閣法の中に、内閣法律案予算案その他の議案というふうに、はつきりと内閣法できめていただいたわけであります。そういうわけですから、われわれとしてはそれなどをたてにとりまして、ずつと今日まで来ておる。それが内閣提案法律案が今までたくさん成立しておるというようなことから、憲法上の慣習法と申しますか、習律になつたというようなことで、もうその問題は一応安定したように考えておるわけでありますが、今申し上げましたように、佐々木先生のように、いまだにその学説を固持しておられる方もありますから、これはやはり一つ学説として立てて、また立ち得るものだと思います。ただ実行上から申して、われわれの解釈から申しますと、やはり内閣提案権はあるのだというふうに考えております。しかし綱島委員そういうお気持はちやんと知つておりますから、先ほど来ただ御審議のための種を差上げて御審議を願うのだというふうな非常に遠慮した言い方をしておるのは、そういうところを含めて申し上げておるわけであります。そこで昔の憲法時代と今の憲法時代立法権者というものが違うじやないかというお話、これはごもつともです。もちろん昔は天皇制定者でございますが、先ほど私が触れましたように、しからばその権能はどこに移つたかと申しますと、やはり唯一立法機関である、あるいは国権最高機関であるという国会にそれが移つたということでありまして、はつきりと制定権者天皇から国会移つたと申し上げてさしつかえない、それが正しいことだと思います。ただ問題は、この御制定になる材料なり種をだれが出すかという問題は、その制定権者がだれであるかという問題とは別の問題でございますから、私ども解釈から申しますと、御審議の種を内閣からお出ししても、これは憲法の禁ずるところではない。しかしそれを煮て食おうと焼いて食おうと、一切国会の御自由なんでありますから、政府が泣いてもわめいてもできないものはできない、できるものはできるという修正を加えられるというのが憲法建前だろうと思います。そこで予算といい、法律といい、最終的には国会がおきめになるのでございますから、従いまして予算に出て来たその補助金が削られるという片鱗がそこに出て来た。これが望ましいことかどうかこいうことは、やはり国会がおきめになる。またそれに伴う法律案につきましても、それと歩調を合せて、国会が同じ立場でお考えになるということで、国会というものは一つの機関でありますから、そこに矛盾が出るはずがない。りくつから言うとそういう筋道になるように考えております。
  24. 綱島正興

    綱島委員 学問上の論争はそこに始まるわけで、ただ審議という形さえ踏めば立案をだれがしようと結果が同じであるのか、そうでなくて、立案ということが立法の非常なる要素を持つということに実は重点があると思うのです。これは文化史的に見れば、この立案権というものを国会に収めるという考え方は、単なる都合上の考え方ではなくて、これは非常なウエートを持つた考え方で、それは歴史の上からいわゆる官僚組織というもので統治して行くか、いわゆる民主代表者によつて統治の基礎を定めるかという、これは実は本質的な争いであつて、たとえば、法制局というものがこのごろ大分国会に整備されて参りましたが、法制局というものは昔はほとんど行政府であつた。そうして法制局を持たない国会などというものは、まあ鳴かぬカナリヤの値段の安いようなもので、これは国会と名をつければつけてもいいが、そうじやないというても学問上はさしつかえない。こういう点から考えて、私は国会というものが、法律案のほんとうの実質的な基礎を持つかどうかということが、民主主義の本質を決定する相当なるウエートを持つ事柄に属するので、結局審議の間にどつちがやつてもいいという議論は、最後にはおまえさんもしまいにいいと言うたじやないかということで、世の中にもよく起ることですが、本家に何にも相談せずに嫁をきめやがつた、こういう。いやしまいにはおまえさんも来てごちそう食つて、高砂やを一緒に歌つたじやないかという議論と同じだが、これは実は非常に重いことです。これは法制局長官としてはやむを得ずそういうことをおつしやるのかもしれぬが、これは行く行く日本が、どうしてもほんとうの議員立法にならぬ限りは、民主主義は名あつて実なきものに終る、こう考えております。この立法行為を重大視するということは、腐敗選挙を取締るとかいうことよりもつと重いことです。実は今問題になつて、国をあげて騒いでおります、名前は忘れましたが何とかいう金貸し会社の問題であるとか、船会社のどうとかいうことより、この問題は大いに本質的な問題です。あれなんかはいわばどつか通りすがりにけがをしたというような、事のついでくらいのものとこの問題から見れば見られると思う。この問題は実はほんとうに骨を入れてやらなければならぬ問題で、農林委員会でたまたまこのことに触れるということは、実はあとから出て参ります補助金の率の引下げを否定した線で予算を組まれておるという線からでありますけれども、私は現憲法下における国会の始まつたときから、労働委員をしておりまして、加藤君に何のつもりで政府のつくつた法律案というものを審議しようとするのだとやかましく言うて、次には片山君に、施政方針に対する質問でこのことはやかましく言つておる。幸か不幸か、これはひま人がひまのことを言うたごとくに今はなつてしまつた日本民主主義というものがいかによく理解されていないか。選挙をするのでも何を選挙しておるのか、民主主義の代表者じやない、翼賛議員の代表を選んでおるようなつもりで投票したりなんかして、運営もしかる考え方からしておるように見える。その点は法制局長官国会に対するお方でありますから、よくこれはお考えを願いたい。これは有罪のものを全部無罪にしてしまえというような議論になることで、実際には骨が折れましよう。しかしこれは国会が近いうちに、立法は全部議員立法でなければならぬことになるまでに進まない限りは、民主主義は名あつて実なく、最高の国権の機関であるということは取除いて、第二次的国権の機関であるとでも書きかえなければ、憲法のおごそかなる立法といたしましては、また憲法のおごそかなる文句といたしましては、実に沿わないことに相なるので、この点はしまいが一緒だからいいんだというような、一つことをお考えにならずに、民主主義というものの本質はどこにあるのかということから出発をしなければならぬ。官僚陣営というものはいわゆる憲法七十三条の一項の規定の、誠実に法律執行するということに実は集中をされて、その道の練達堪能なる行為をして行かれる。憲法のごまかしのようなことに手助けをされたりすることは、そのときの内閣や、そのときの政党には利益であるように——それもほんとうの利益じやございません。表面だけの架空な利益のように見える。やがては将来国民に対して責任を負わねばならないかりそめの利益なんです。そういうことをいたすことはこれは厳に戒むべきことであつて、ただ日本は血を流してかち得た民主主義ではございませんので、値いを安く考えておる。しかしながら人類がその歴史を経てかち得たるものに私どもは浴したわけでございますから、学問上からこれを否定するか、あるいはこれは何と申し上げましようか、非常に遠慮しなければならぬ筋合いになると存じますので、この点は長官もほんとうに日本民主主義に御協力を願わなければならぬと考えるのであります。この上ここでそれに対する見解のお答えは求めませんけれども、その局に当つておられるお方であるから、特に今後はこのことに御注意を願つて、特にこの際かようなことを申し上げなければならぬことは、議員立法を非常にやつかい視しておるようでございますので、この点に対する日本国の迷夢を開かなくてはならない。憲法反逆的思想を是正しなくてはならない。さらに言うならば、世界民主主義に反逆する思想を是正いたさなければならぬ。こういう考えからかようなことを申し上げるのであります。  次にもう一つ重要な点で伺つておきたいことは、国会の持つております財政処理権であります。予算審議権でございます。これと政府が持つております提案権の問題、このことについて先ほどから川俣委員からもお話があつたようでございまして、まことに川俣委員のおつしやる通りの議論でございますけれども、長官からもその通りであるというお答えがございましたので、これは重ねて申し上げませんが、実はこのたび提出になつておりますものは、法制局でもこれは参加なすつたであらうと思えるのでありますが、ただいまの常任委員会制度と法律案編成に対する手続上の限界でありますが、このたび国家補助の率等に対する一つの新立法が一括されて、それが農林委員会に関することでも、水産委員会に関することでも、あるいはその他の委員会に付託さるべき筋合いのことでも、一括して大蔵委員会に付託されると聞いておりますが、私は何もかも一緒に立案をすれば、そのうちで一番関係の深かりそうな大蔵委員会に持つて行くということは、やむを得ざる仕儀になりはしないか。ここらに実は立案権というものと、審議というものの重大なる関係が出て参るのであります。立案がすでに多岐にわたり、おのおのの専門的知識によつて、専門的な常任委員会において審議さるべき事項が一括してあたかも行政整理の法案に似たような形で、本質の異なるものを法律案として出して参りますと、運営委員会でも、一括してこれを一つの何らかの常任委員会に持つて行く。そのことによつて本質が最も違う性質のものを、別な委員会でこれを審議しなくちやならぬ。ということに相なりますが、このことは法制局長官のお考え方、助言と、それこそ官吏としてのお務めによつて、この点は非常にかわつて来ると思う。これに対する御意見をひとつつておきたい。
  25. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これもきわめて適切なお尋ねだと思いますが、私どもといたしましては、国会の御審議の手続、その法案がどこの委員会にかかるかというようなことは、まつた国会御自身で、両院においておきめになることでございますから、これが大蔵委員会にかかるものと期待して出すとか、どこにかかるものと予期してお出しするというようなことは全然ございません。ただその点は純真に考えておることを御了解願いたいと思います。  今までたくさんの法律の手当というものを一本にまとめたということで、ことに参議院あたりではお話が出たこともございましたけれども、これはやはり全然縁もゆかりもない、関連のないものを組み合せるということではないのでございまして、少くとも今回の分につきましては、財政の緊縮という建前から、あらゆる補助金を再検討して、そこに整理を加えようという一本の政策から出ておる。その結果それがどう各法律に現われるかというところを、一括した形でお目にかけようということでございます。  それから先ほど川俣委員のお尋ねに改正するようなお話がございましたけれども、私の方としては、一々の法律改正するということでなしに、当分の間例外的に、たとえば三分の二とあるのを三分の一として、特例をつくるという形でやつておるわけでございますから、それをお含みの上でお聞き取り願いたいのですが、そういうものを一括してここでお目通し願うということが、御審議の上に最もいいのではないか。ただいま申しましたように純真な気持でお出ししたつもりであります。従いましてこれは国会の内部におきまして、特別委員会というものが設けられるか、あるいは常任委員会にしましても、われわれ国会法を見ますところでは、関係委員会の連合審査と申しますか、合同審査という道もあるようでございますから、それらの点について、どこで御審議願わなければならぬというようなことは一切考えておりません。
  26. 綱島正興

    綱島委員 実は問題になつて来るのは、その立案にあたつて、なるほどその通りのお考えでなすつたろうと存じますけれども立案にあたつて法律の内容がこのたびは特別法で、たとえば大震災があつた場合には、震災の特別措置をいたす、ああいうような特別な事態だけのことだとお考えくださつてなされれば、なるほど一応そうも受取れる。ところが、たとえば土地改良なら土地改良に対する一つの率をどうきめておるということは、改良工事というものの内容を構成する率なんです。これは改良工事というそのもの自身に至大なる関係を持つ率なんです。たとえば道路の率をどうきめるということは、これまた道路政策上の内容を持つ率なんです。率というだけのものだといつても、その率は実質的には、その行為をなす道路開発あるいは港湾改修あるいは農地の改良造成、それから関係するおのおのの実質的な部分を構成しておる率でありまして、財政上の単なる率を国家が幾ら出すかというだけのことではなく、そのことによつてこれは有機的に事業の上に反映して参る事柄でございますので、本質的な基礎法に基いての検討でなければ、率だけをただ五というのと十というのと字が違うだけじやないかというようなりくつには相ならない。これは実は国民生活の基本に触れることを規定する率でございますので、この点は便宜のためにこうするというわけには行きません。国会でございますから、どの委員会でも縁もゆかりもないことはございません、ことごとくございますが、おのずからつかさどつておる管掌が別でございます。その別であるという事実の中に本質を持つ率でございますので、こういう点について、自分の方ではどこでやろうとかまわないのだというようなお考えでは、少し立案者のお考えとしてはいかがかと考えられるのですが、それに対する御意見を重ねて伺いたい。
  27. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 どうでもかまわぬとは申し上げませんけれども、われわれとしては今申しましたような趣旨から、また先生が今お述べになりましたようなところから、もちろんその方その方の専門の常任委員会の方あるいは今後専門の議員の方がいずれ参画されることでありますから、御審議上遺漏はないと思い込んで御提案申し上げたということで御了承願いたいと思います。
  28. 川俣清音

    川俣委員 今の法制局長官の御答弁は、純真な意味において三分の二を三分の一としたというような単なる予算上の考え方だ、こういうことでこの法案を提出されようというお考えだとお述べになる。しかしながら私たちが見ますると、そうじやない。たまたま予算編成の上において必要だからかえろという部分だけでなくて、もつと広汎な意図をもつてこの改正案が出されようといたしておる。それとあなたのお考えと大分違うのじやないですか。それは今年度の予算ばかりじやない、将来に大きく影響するような、たとえば改良助長法を見ますると、予算の範囲内においてということを加えようといたしておる。前は交付するというふうに義務づけられているのですが、今度は予算の範囲内において、と将来を大きく制約する予算上の条項を入れておる純真な意味において三分の二を三分の一にしたのだという御答弁をお取消しになるならまた別でありますが、大分あなたのお考えと違うのじやないか。しかも改良助長法の十六条の三は根本的な修正です。単に予算上の修正ではありません。改良助長法の根本精神を変更しようとした大きな修正です。こういうようにお考えにならないのですか、根本修正だというふうにお考えにならないのですか。
  29. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お答え申し上げます。私の口まわしが下手でありますせいか——私の申しました純真にという趣旨は、綱島委員が今御指摘になりました、いろいろなものをだき合せてという立法技術上の問題について、純真な気持でそういう措置をとつたということを弁明申し上げたのでございまして、この三分の二を三分の一にするのがいいか悪いか、これは実は私ども財政の責任者でも何でもございませんから、立ち入つた御説明をする資格もありません。三分の二がどうなるか、これはこのままの方がいいではないかということは、一切こちらで御審議になることと思いますから、そういう点は全然触れて言つておりません。予算の範囲内云々の問題はおつしやる通りで、私の先ほどの純真云々の話とは別のことでございます。
  30. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、もう一度お聞きしておきますが、予算の範囲内においてと加えて修正しようとするのと、左の各号に定めるところによつて補助金または委託金を交付するというのとは、根本的に考え方が違うと思いますが、違わないのですかどうですか、これはただ率の問題ではありません。考え方としても根本的な考え方と思いますが、どうなんです。
  31. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは私どもとしては、字句をかえているのですから、違うと率直に申し上げた方がいいと思います。ただ一言申し添えておきたいのは、行政法学者等の中には、それは違わぬという説をとつておる者もありますけれども、私どもはそういう意味ではなしに、ただ率直に、字句がかわつた以上は違うと申し上げていいと思います。
  32. 川俣清音

    川俣委員 字句が違うというだけでなく、考え方として、交付するというのは義務づけられておる。この義務づけられたところによつてあとの条項が全部出て来ると私どもは理解している。そう解釈すべきだと思うのです。私はそうふうに解釈しますが、私の考えは誤りでありましようかどうか、大体似たものだというふうにお考えになつての修正かどうか、これは補助率の問題じやない。
  33. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これ予算の範囲内においてということが、今ないところにそれが加わつたということは、それは実際の結果において違うと思います。
  34. 川俣清音

    川俣委員 そうしますと、単に今年度だけの臨時的な財政上の処置としての考え方になつてつて、恒久的にかえようとする意思がここに加わつてないというふうに了解してよろしいのですか。
  35. 林修三

    ○林政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、先ほどお答えいたしました通りに、今度出ます法律案の形は、農業改良助長法改正という形はとりませんで、当分の間第二条なり、第十六条の三の特例をきめるという形で出て参ります。従つて恒久的に制度をかえるということではございません。これが第一点であります。  それから予算の範囲内という言葉は、実は今の農業改良助長法にはございませんが、これは補助金法律には方々にたくさん入つております。これの意味いかんでございますが、これにつきましてはいろいろ解釈の問題がありますし、先ほど長官から申しましたように、行政法学者の中には、こういうことがあつてもなくても、要するに予算の範囲内でやればいいのだということを言つている人もおりますけれども、私ども立案した考えから言えば、あるとないのともちろん違うのでありますが、それかといつて予算の範囲内においてということを入れたら、率が三分の二とあるのを、初めから六分の一で組んでもいいのだというような趣旨には考えないで、この新しい法案を書いているつもりでございます。何分の一とはつきり書いている以上は、少くとも当初予算においては、そういう率だけのものを組むという建前で、あとでいろいろ事情の変更があつた場合には予算の範囲内、こういう考え方立案の気持でございますが、法律解釈学者によつては違いますが、大体そういう気持で今度立案考えているわけでございます。
  36. 川俣清音

    川俣委員 どうも法制局は、予算の便宜のために曲げて解釈されるような考え方であります。そこで農林関係のことは別にいたしまして、この法案の中に、文部省関係では、昭和二十七年法律第三十二号を廃止するとあるが、これは臨時的に廃止するつもりなんですか。これはおかしいじやないですか。こういう臨時立法をもつて、基本法を廃止するという考え方をここに出しているが、こういうことが問題なんです。これと関連しているから私は聞いている。予算都合上各般の法律を、法律をもつて廃止するというようなことは、法制局はどうお考えですか。一体予算の便宜のために、あえて法律改正したり廃止するというようなことは、前から問題になつておりますが、それは憲法四十一条の問題に抵触して来はしないか、あるいは七十三粂の拡大解釈をする結果、そういう弊害が徐々に出て来ているのじやないかということを指摘しているのです。
  37. 林修三

    ○林政府委員 予算法律関係については、私あえてここで申しませんが、ただいま御指摘になりました昭和二十七年法律第三十二号、新たに入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律、これは今川俣委員のお持ちのものはいつできましたものか、ちよつと存じませんけれども政府が成案として出す予定になつております、閣議決定を経ましたものでは、これは廃止するという形になつておりません。その施行を当分の間停止するという形になつております。すつかり廃止するという形になつておりません。そのことだけ申し上げておきます。
  38. 綱島正興

    綱島委員 関連して。お答えを聞いておりますと、行政法学者の中には、たとい厳密な規定があつても、予算というものはその範囲でいくら組んでもいいのだという学説もあるというお答えであつたと聞きましたが、それはゆゆしい問題なので、そういう学者がもしあつたら、私はこれは博物館にその学説を保存して、時代錯誤の標本にしなければならないと思う。何となれば、財政に関する憲法八十三条の規定、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と規定してございます。それから四十一条の規定、「国会は、国権最高機関であつて、国の唯一立法機関である。」と規定してある。この憲法のいずれの条章を通じましても、国権の最高の機関であるという規定は別にはございません。そこで国会権能というものは、他のいずれの権能よりも優先する、上位にあると見ることが、この憲法か見てもあたりまえだし、民主主義から見てもあたりまえです。もしこれを取違える人があつたら、これは摩訶不思議な人であつて、もしそういう者が学者だという名がついていて、それをあなたが学者の中に入れて数えておいでになるなら、これはよほど時代錯誤で、三十年間くらい時計の針を前におまわしにならぬと通らぬ議論です。これは少くとも、日本においても十年は前にまわさなければならない。そこでそういう考え方をなさつては非常にいかぬので、これは民主主義の名において警告いたします。もしそういう考え方が、法制局や行政法学者と称する者の中にあるならば、これは十分誅責を加えなければならない。これはほんとうに世界の文化に対する反逆者だ。そういう考え方は絶対にいけません。そういうことを例にとつて来たりすることは、あなたはやめなければならない。それはあなたの将来のためにも、日本国の憲法のためにも、民主主義のためにも、そういうこざかしいことを言うのはやめなくてはいけません。
  39. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 法制局次長がしかられているようですが、実は私が申しましたので、私が犯人でございますから弁明いたします。よけいなことを申し上げてたいへん耳ざわりだと思いますが、何も言う必要のないことを、そういう説を紹介したのは、私の口がすべつただけで、私ども考え方は、先ほど来申しましたような考え方でございますから、御安心なすつていただきたいと思います。
  40. 井出一太郎

  41. 井手以誠

    井手委員 補助金削減に関する予算法律関係については、先刻来法制局の見解を聞いておりました。四月一日に両者が発足すればさしつかえないという御答弁に対して、私は多くの疑義を持つております。しかしここでは申し上げません。また今の内閣に申し上げても大した期待は持てませんので、申し上げません。  ただ一点承つておきたいことは、法律でははつきり何割を補助しなくちやならないという明文があるにかかわらず、その予算が全然ない、あるいは整理に関する法律に落ちた場合にはどういうことになるか、その点について承つておきたいと存じます。
  42. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私ども財政の当局者じやございませんから断定はいたしませんけれども、そういうことは全然ないつもりで考えております。万が一という仮定の場合を考えますと、これはやはり予算法律とは何か調整を加えてはずが合うようにしなければならない、すべきものだと考えております。
  43. 井手以誠

    井手委員 何とかはずを合さなければならぬというお答えでございますか、今出されておる案ではかなり抜けたものがあるようであります。ここで具体的には申し上げませんけれども、全然削除されたものもあるようであります。そういう場合にその責任はどういうふうになるか、法制局の見解を承つておきたい。法律でははつきりしなくてはならない。何割を補助しなくちやならない、三分の一を補助しなくちやならないという規定があるにかかわらず、全然予算から削除された場合にはどうゆうふうな責任があるか、その点を伺いたい。
  44. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはいろいろ法律の書き方がございますから、三分の二とそのままになつておりましても、三分の二の補助をすることができる、こうなつておれば、これはもちろん法律そのもので三分の二を最高限としてやれるという権能を書いておるわけでございますから、予算がそれに合わないような、そういう場合はございます。これは不一致じやないと考えておりますが、そういうものを除きますとないと考えております。
  45. 井手以誠

    井手委員 そういうことではなくて、何分の一を補助しなくてはならない、何割を補助しなくてはならないと規定された法律があるにかかわらず、予算の裏づけがない場合どうなるかということをお尋ね申し上げておるのであります。
  46. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それは私どもはないと確信しておりますが、これは万一のことで、かりに仮定的にそういう場合があつたらというお言葉でございますから、そのときはそのときとして善処しなければならぬと考えております。
  47. 井手以誠

    井手委員 法制局長官の見解をもう一回承つておきたい。それは法律にそう書いてあつて予算に計上しないということができるかできないか。できるとなれば、いつでも行政府は削除をすることができるわけでありますが、できるかできないか。できない場合にはどういうような責任が生ずるのであるか。これは一般論として長官の御見解を承つておきたいと存じます。
  48. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 法律予算との関係が絶対に食い違つてつて法律では出さなければならぬことにくぎづけされておるにもかかわらず、予算が絶対に出ない、どつちも絶対々々だという場合でありますれば、これはいずれかに調整を加えなければ動きませんから、当然必要な措置をとらなければならぬと考えております。
  49. 井手以誠

    井手委員 重ねてお尋ねいたしますが、調整を加えなければならないというのは、具体的にはどういうふうになりますか。ただちに国会を召集してそういう提案をなさるのであるか、あるいは予備金の方でまわすという措置でできるものであるか、その辺のところを具体的に承つておきたい。
  50. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは予備金を出す理由に当れば予備金でもちろんまかないますが、そういうことが全然できない場面ということになれば、もちろんいずれかに調整が加えられるべきものかと思います。
  51. 井手以誠

    井手委員 いずれかに調整を加えるということについて、もう少し明確にお尋ねしておきたいと思うのです。そういう場合はどうしなくちやならぬか。法律論としてはこうしなくちやならぬということをお尋ね申し上げております。
  52. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ですから、国会の御審議中にそれがわかれば、国会として御発見になれば、おそらくその矛盾を解決される措置をおとりになる——予算を修正なされるか、法律を修正されるか、この措置がとられると思いますが、その後に発見された場合、あるいは政府から御提案を申し上げるなり、特別な機会によつて予算を直す、あるいは法律の方を直す、どちらかの措置が必要になると考えております。
  53. 川俣清音

    川俣委員 それでは今の井手委員の質問に関連して、私一点だけお伺いして私の本論に入りたいと思います。  憲法の七十三条の「法律を誠実に執行し、」というのはどういう意味ですか。そういうふうに拡大してできるのですか。私どもは「法律を誠実に執行し、」という場合は、そんなふうに拡大解釈できないと思つておりますが、法制局はどこまでも拡大解釈できるというのですか。
  54. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それは法律があります間は、すなわち現行の効力を持つております間は、その法律の適用について誠実に励まなければならぬことはもう当然なことだと考えております。
  55. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、井手委員への答弁と私への答弁とは大分食い違つておりませんか。法律に明文があるものを予算化しない責任はだれが負うのだという説明を聞いておるのです。私はこれから解釈して行つて、当然政府が責任を負うべきだ、こういうふうに考えてしかるべきだと思うのです。その点はどうなんですか。
  56. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 法律では必ず出すべきことになつておるのを、予算の方ではその手当をしていないという場合には、結局先ほどのお話にもどりますが、国会でなさるとすれば、予算の修正権がありますからして修正をなさる、あるいはまた政府としては予算提案権を持つておりますから、予算提案によつて手当を申し上げる、この二つであると思います。
  57. 川俣清音

    川俣委員 予算の修正なりは国会でできないことはありませんが、現行法をそのまま認めて行く態度をとつたら、あとは政府の責任じやないですか。そう解釈することが憲法七十三条の法律を誠実に執行することではないかというふうに私は理解する。そうゆうふうに解釈していけないのですか。あなたは予算に手落ちがあればそちらで調整すればいいのだというような御答弁ですが、七十三条の解釈を大分拡大解釈するのじやないですか、こういうふうにお尋ねしておるのですよ。
  58. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ちよつとお尋ねの趣旨がよくのみ込めませんが、この現行法の将来の改正というものを考えずに、現行法がずつと——たとえば恩給法がそのままの形で来ておる、ところが恩給法に規定しておる恩給給与の義務が履行し得ないような形の予算が出ておるという場合が一番適例だと思いますが、その場合においては、金がないために法律を誠実に執行することができない。これは金がないためにと言うてのほほんとしておれるものではありません。それはやはり金の方の手当をしていただかなければ誠実な執行はできませんから、予算の方の手当をする義務があるということでございます。
  59. 井手以誠

    井手委員 もう一点重ねて明確にしておきたいと思うのです。あとで調整をする、提案をする、こういうことですが、絶対的なものだと考えますかどうですか。
  60. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そのために法律執行ができないようなことになれば、これは今の憲法上の義務に反しますから、何とかしなければならぬわけであります。
  61. 川俣清音

    川俣委員 そこで前にもどつて本論に入つてお尋ねしたいのですが、最初閣議で決定されたときは、補助金等整理に関する法律案といたしまして、さつき申し上げたように文部省関係法律第三十二号を廃止するというような決定をしておられるのです。ところがこれはどうも行き過ぎだということでかえられて提出するというようにかわつたと私は聞いております。問題はここにあるのですよ。かえたらいいのだということになると——出発が廃止するという考え方でこれができておることだけは明瞭なんですね。それがあなたの方から横やりが入つたか、あるいは学者から入つたかは別といたしまして、観念はそういう観念でできておるということと、憲法の根本精神とは違うのじやないかということが第一の論点なんです。いいようにかえて来たのだからそれでいいじやないかということではなく、考え方の出発が、法律でもつて法律廃止するというような考え方、あるいは改良助長法の根本精神をかえるというような考え方が出て来ておるのです。それじや行き過ぎだということでバツクされたということは認めますよ。それは一歩前進だから悪いというのじやない。そういう出発を是認されておつた法制局の態度を尋ねておる。これを是認されたことはないのですか。
  62. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはまだ政府案そのものが御提案申し上げてないわけですから、はつきり政府の責任の負い得る形というものは、活版刷りになりました議案について論議していただきたいということが切口上になるわけであります。従いまして、その過程についてのとやかくのこと申し上げませんが、だんだんとよくなる方向へ行くように研究した結果こういうものができた。できたものをお目にかけ得るだろうということははつきり申し上げ得ると思います。
  63. 川俣清音

    川俣委員 そこで問題になつて来るのです。私がさつきから申し上げておるように、国会国権最高機関だということです。一方予算提出権があるということで、こういうむちやなことをあえて考えられておるところに憲法遠反の疑いが出て来るのじやないか、綱島委員がさつきから指摘しておるのはその点です。その点はどうですか。だんだんよくなるのだからいい、一ぺん憲法を侵そうとした意思が途中でかえられたからいいということにはならないと思う。強姦しようと思つたけれども、やめたからそれは未遂でも何でもないのだ、こんなことにはならないと思います。そういう解釈をしてもよければ、ずいぶんいろいろな問題が起つて来ると思います。
  64. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 原案の段階からいいますと、それは知恵の足らぬわれわれがやつておることですから、一番最初から理想的なものができるはずはございません。但し憲法遠反になるとかならぬとか、そういう不逞な思想を持ちまして立案には決して当つておりません。その点ははつきり申し上げておきます。
  65. 川俣清音

    川俣委員 私はあなたの真意を疑つておるのじやない、行為を疑つておるのです。あなたがいかに立派な人であろうとも、行為があやまちであつた場合には当然処罰を受けなければならぬ。刑が軽くなるかどうかというだけのことであります。私はそんなことを論じておるのじやない。いやしくも法制局というものが、憲法の忠実なる解釈者といたしましたら、こういう点については、原案としてプリントで出る前に当然批判があつてしかるべきじやないか、こういう点を指摘しておるのです。
  66. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 われわれの行為を一貫しておながめいただけばわかるように、憲法に違反するような不逞の考え方のもとにそういう行為をした覚えはございません。
  67. 川俣清音

    川俣委員 それではもう一度お伺いいたしますが、こういう廃止するような法案が出ようとする内閣について、一度は行き過ぎがあつたというふうにお認めになつておられるか、こういうようなことを考えられたということは行き過ぎだというふうにお考えになつておりますか。行き過ぎだから是正したのだと思いますが、なお念のために伺つておきたい。
  68. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもはそういう政策的なと申しますか、政治的考慮は全然加えておりません。そういう僭越な立場でなしに、法律的、技術的の立場から携わつてつております。
  69. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先刻来法理論の点につきましては一応承つたのでありますが、私は法理論をしばらく去りまして、この際農林当局の事情を承つておきたいと思います。最近の傾向を見ておりますと、政府のあらゆる施策が大蔵省によつてほとんど支配されてしまつておる、こういう傾向が非常に強いようであります。あたかも今日、民間におきますあらゆる産業が金融によつて支配されていると同じに、政府というものがことごとく大蔵省の役人によつてあらゆる施策を牛耳られてしまつている、こういう傾向はいなめないところだと思います。そこで私は、法理論を去つてあなたに承つておくのですが、このたびの農業改良助長法改正は、従来三分の二であつた補助金を二分の一にしよう、こういう改正でありますが、これらの点につきましては、農林省と十分連絡の上で、そしてまた農林省当局としての相当な意思がこれに反映して、その結果三分の二であつたものが二分の一になつた——。私は率直に申すならば、農林当局はきわめて不満足ではあるが、やむを得ずこういうものを上から押しつけられて来ている、こういう状態にあるのじやないかと思う。このことは農林省についてだけではなくして、他のそれぞれの役所についても同じことが言い得ると私は思う。この補助金整理に関する法律案を一括して出そうという大きな政治的な力の関係を見ますと、法律論はしばらく別として、まつたくこれは大蔵当局の意向によつて、完全に各省が牛耳られてしまつている。そして手も足も出ない。やむを得ずこういうものがどんどん出て来るというような状態にあるのじやなかろうかと私は思う。まことに重大な政治の危機が今訪れようとしているわけなんです。私はその問の事情につきまして、農林当局を代表して政務次官から、ひとつ率直なお答えをお願いしたいと思います。
  70. 平野三郎

    ○平野政府委員 大蔵省が政府部内の支配権を持つているのではないかというような御趣旨のお尋ねでございますが、もちろんこれはすべて政府全体の責任においてやつていることでありまして、別段大蔵省に政府全体が押えられているというようなことはございません。しかしながら事務的に申し上げますと、そういうような傾向もないとは言えないのでありまして、率直に申し上げますならば、たとえば予算編成につきましても、当初大蔵省の原案が発表されまして、これが政府案であるかのごとく誤解を招いた点もありますが、最終的に政府国会提出しましたものは、大蔵省の原案とははなはだしく違つたものでありまして、従つてその間におきましては、農林省の考え方も十分に反映していると存じすす。この補助金整理に関する法律案も、内容につきましては大蔵省との折衝を十二分にいたしたわけであります。農林省的な考え方からすれば、これをもつてはなはだしく不満足とするものではございますが、しかしながら当初の大蔵省の原案から見ますならば著しく改善をされていると考えているわけでありまして、部内においては、閣議におきましても、あるいはここに農業改良局長も参つておりますが、事務的なあらゆる折衝をした結果の結論として出ているわけでございます。
  71. 川俣清音

    川俣委員 政務次官は別に大蔵省に抑えられていないと言うが、原案を見てごらんなさい。ひどい原案を出されておつて、それで押えられていなかつたなんというのは詭弁ですよ。自分の努力が足りないことを合理化しようとするだけなんです。一体農業改良助長法というものは、試験研究からそれを一般に普及しようとする農業上の根本的な問題です。ところが耕種の改善といい、農業上の試験研究というものは、一夜にしてできるものじやない。多年の労作が実つて、しかもそれを普及しなければならないというのが、この法律の根本なんです。従つてその時々の時の財政事情によつて左右されるのであつては、試験研究なんというものはできるもんじやありません。従つてこの法律において二分の一ということを規定しておりますのは、二分の一以下であつていいということじやないのです。また政令によるとかいうことじやなくて、現に明文をもつて政府に義務づけられておりますことは、この本質から来ているのだと私は思うのです。政務次官はそう思わないのですが。本質論をちやんと明文にしてあると私は思う。それを改正する——補助金の問題じやないのですよ。根本精神を蹂躙されて、なお農林省が単に不満だなんということでは、今後農林行政をやつて行けないじやないですか。改良局長どうですか。これは政務次官じやない、改良局長に聞きます。
  72. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 先般お答えいたしました通りに、私といたしましては、最後まで大蔵省とこの法律との関係について、法律が生きて動けるように予算を組んでもらうように折衝いたしましたけれども、最後的にはこういう結論になつたわけであります。その点については——、これはもとは政府提案法律でございます。その点について提案当時と今とわれわれの考え方がかわつているということはございません。法律通りにやつていただく方が、法律趣旨を生かして改良助長法の仕事を満足にやつて行くという意味において、よりよい効果があるということは、私の方ではやはり考えております。
  73. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 関連してもう少し伺つておきます。特に農業改良普及事業だけに限定して、局長もお見えになつておりますから聞いておきたいのですが、先ほどの平野君のお話によりますと、決して大蔵当局によつて政策を制約されているのではなくて、かなりその間に了解ができた上であるという御説明のようでございました。早い話が、普及員に対する給与が従来三分の二のものが二分の一になつたということで、数字上でどれほどの額が開いて来るかと申しますと、ここにこの間いただきました補助金の調べがありますが、人数は、昨年度一万一千四百八十三人が、二十九年度におきましては一万一千四百六十七名でありますから、わずか十名余りの差であります。従来三分の二であつた補助額の二分の一に切下げることによつてどれほど減つて来るかと申しますと、今までは十一億七千二百五十一万二千円というのが、九億五千八百三十四万三千円になつている。わずかにこれの開きは一億か二億のものであります。さらにこれを事務当局からいろいろ聞いてみますと、あと五千万円くらいあれば昨年度と同じような三分の二の補助率を持続して行くことができる、こういうふうな御説明でございますが、わずか五千万円、一億あるいは二億といつたやりくりで、今日全国各町村におります一万一千名以上の農業改良普及員の生活が脅かされ、従つてこれが食糧増産などにも非常な悪影響を及ぼすわけでありますが、もしも真に大蔵省によつて押えられていないというなれば、このくらいな操作は一兆億のわく内においても十分やり得ることじやなかろうかと私は思う。一体今度の改正法には農林当局は満足しているのか、こういうものを提出することに賛成するのか、反対をしているのか。おそらく真意を聞くならば、こんなことをしてもらうのは反対でしよう。反対で、押えられていないということは、はなはだ大きな矛盾があると思う。率直にお聞きいたしますが、それでは今度の提案を農林当局は進んでおやりになつているのか。ないしは今度の改正案につきましては、補助額の改訂については反対の意向を持つているのか。反対なら今度の提案にあなた方は反対なさるのがあたりまえである。その間の事情は一体どんなものでありましようか。
  74. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 私は農林当局全体を代表してというような意味では、地位の関係からお答えはちよつとできませんけれども、私への御質問としてお答えいたしますれば、事務当局といたしましては、法律を生かして法律の命ずるところに従つて予算を組むことを最後まで折衝はいたしました。しかしながら先ほど法制局長官からもお話がありましたような形で、政府の方で国会の意思を聞いて、最後的には予算法律との調整をやるというふうな形でこれを進めるということにきまつた政府でそういうふうにきまれば、それに異議をさしはさむ筋でもございませんので、そういう形のものはどうごらんになるか。賛成したと考えられるか、あるいは国会の御意思を待つているというような形で考えられるか、そこはどつちでも考えられるわけです。事務当局といたしましては、やはり法律の精神を生かして行く意味においては、できるだけ法律を生かして行くことが望ましい、こう考えております。
  75. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それで私は政務次官に承つておきますが、政務次官は政府の責任において、今度の改正案提案なさるのでありますから、提案するからには自分は原案通り通過することを希望してなされたと思う。そうすると、結論を申しますと、あなたは三分の二の補助率を二分の一に切り下げることに賛成なさつて、その上で今度の法案を提出なさつたのでありますか。私は先ほど来申しますように、わずか五千万か一億、二億もいらない数字のことで、日本の全国におります一万数千名の農業改良普及員の生活を脅かし、ひいては日本の農業指導に暗影を投ずるような重大な問題である。このくらいの操作ができないわけはないと私は思うのであります。今日新聞などに伝えられておりますところの造船の問題にいたしましても、全国の船舶関係に従事しておるところの労働組合を見ましても、その組合員の数は十万といないでしよう。それだけの人々を救済するために、あるいは同時に日本の海運業を救済するために、一夜にして数十億というような利子補給が決定され、また造船の割当に対するところの政府の融資などを見ますと、数百億というものが一日か二日の間にきまつておる。その一面、全日本国民の大多数を構成する農民の直接指導に当つておるところの農業改良普及員などの切実な問題が、わずか一億か一億足らずくらいな費用でもつてこの危機を救うことができ、従来通りの方針を堅持することができるわけであります。それをしもあなたは、決して大蔵省に牛耳られていないと一面言いながら、現実の問題ではこの通り、こんなささいな問題がどうにもならないという結果になつておるわけであります。従つて私が承つておきたいことは、あなたはこの法律案が通過することを希望して提案されておるのか。これが通過することを希望して提案なさつたならば、結論は三分の二の補助金を二分の一に切り下げることに農林省が進んで賛成しておる、こういうことになるわけであります。その間の事情を、政務次官は農林当局を代表して御答弁願いたいと思う。
  76. 平野三郎

    ○平野政府委員 農業改良普及事業が現行法に基いて運営されることはもちろん望んでおります。特に私は個人としてはそうあるべきことを極力主張し、その線に沿つて努力をいたしたわけでありますが、政府として各種の折衝の結果、政府全体の責任において最終態度が決定をして、予算に伴いますところのこの法案を国会に出さんとしております以上は、もちろんこの法律の成立を望むものでございます。ただ一面申し上げたいことは、今回補助金整理要綱によつて農業改良助長法の一部か改正されることになりましても、それによつて農業改良普及事業が著しく縮減されるということはないと存じます。他の土地改良などのように、予算が減つたがために仕事ができなくなるということはないのでありまして、これはただ政府と府県との負担歩合が若干かわるというだけでありまして、富裕府県などにおきましては、予算が若干減るということがあるかもしれませんけれども、おそらく実質的には農業改良普及員の活動に支障を来すということは絶対にないと存じております。特にまた、農業改良普及事業というものは、単に政府だけの責任ではないわけでありまして、各都道府県においてもこれに大いに理解をもつて協力してもらうことが必要であるわけでありますが、そういう都道府県の活動の範囲もできるだけ広げるという趣旨もあるわけでありますから、従つてこれによつて普及事業が著しく阻害されるということはない、むしろかえつて助長されるということもないとは言えないのでありまして、そういう点においてわわれも、最終的にやむを得ないこととして、これの成立することを希望するものでございます。
  77. 川俣清音

    川俣委員 農林省を相手にしたつてだめだから大蔵省にお尋ねしますが、農業改良助長法というのは、農業に関する試験、研究の助長と、農業に関する普及事業の助長が根本でありますことは、あらためて説明を要しないことであります。ところが今度は予算編成の上からこれらの法律の根本をかえようとするようなことが大蔵省で考えられておるようであります。これは予算編成に当つて、いかに国費を活用するかということについて苦慮せられることは、私は大い敬意を表してもいいと思うのです。しかしながら、これらの根本精神を蹂躙してまで予算編成しなければならないということが大蔵省の任務であるかどうかということになると、これは疑わしくなる。というのは、行政府は当然法律の目的を達成するために、その条項を達成するための行政府でなければならないはずです。だから、もしも法律をかえて行かなければならないとするならば、その原局に対して法術の改正を要望すべきだと思うのです。ところが改正を大蔵省で考えて、原案をつくられたようでありますが、これは越権だというふうにお考えにならなかつたかどうか、この点について大蔵当局にお伺いいたします。
  78. 原純夫

    ○原政府委員 御存じのような日本の非常に危機的な経済の実情、これは従来やつて参りました財政経済をうんと引締めて参らなければ、日本は国際競争場裡においてとても立つて行けない。そして米がとれないという場合でも、輸入すべき外貨がない。国民は路頭に迷うというようなことに相なるようなきざしが非常にはつきりと出て来ております。これはいかぬというので、今回予算を一兆円で押えるということにきめられまして、今回の予算はそういうような意味で、あらゆる点で緊縮をいたすという大前提が立つたわけであります。従いまして、補助金のみならず、財政投資あるいは行政整理、その他各般の項目におきまして、通常の際ではなかなか取上げられないような点も、この際全部考え直さなければいかぬのじやないかという考え方で、われわれ予算原案をつくり出したわけであります。その中の補助金整理という問題は、御承知の通り戦後補助金は、戦前の状態に比べまして格段の観のあるほどふえております。戦後の破壊され荒廃された国土、経済、貧しい国民所得という間に立つて、財政が補助というかつこうでいろいろと手当しなければならなかつたということは、まことに経過的に十分理由があつたし、今でもあるわけでありますけれども、ただいま申し上げましたような大きな前提の変化というような見地から考え直しますと、やはり補助金全般につきまして考えを新たにして、整理が必要になつて来たわけであります。二十八年度におきましては、補正を加えますと、補助金、交附金、委託費、いろいろな名前で国以外のところに金が渡る額が四千億を越えておりますので、いいろと分析いたしまして、各般の原則を立てて、これについての調整を考えたわけであります。それぞれの補助金が渡りまする方面から見ますと、それが滅らされるということは、非常に御迷惑だと思うのでありますが、そういうような意味でひとつ御了承をいただきたい。同時にまた、われわれがこれを一括して整理に関する法律としてお願いいたしておりますのも、そういうような建前からでありますので、御了承いただきたいと思う次第であります。
  79. 吉川久衛

    吉川(久)委員 主計局次長に今のお話に関連して伺いたいのでありますが、大蔵省は頭のいい方々の集まつておるところだと見ておるのでございますが、こういうように急角度に日本に経済危機が来るということを前々から予見できなかつたのでございますか。
  80. 原純夫

    ○原政府委員 確かに昭和二十四年に例のドツジ・プランで非常に超均衡の財政を組み、非常に引締めた金融政策をいたしましたが、その後昭和二十五年に——、御存じの通り、それで非常にデイス・インフレーシヨンだといわれたのが、どうもデフレだというような非宿に窮迫したことになり、これが二十五年の夏に朝鮮事変が勃発いたしまして、そのためにまさにインフレーシヨン的な様相になつた。あの時分の財政経済政策のかじのとり方は、非常にむずかしかつたわけであります。物価がすぐに——すぐにと申しましても、それから約半年か九箇月くらいの間でありますが、卸売物価は、五割、六割上つて参りました。当時われわれも、何とかこれを抑えたいという気持で努力いたしたのでありますけれども、いわば戦争気分がもう現地にはある。そして世界各国が戦争気構えで物をふやさぬというような形で、日本の小さい経済の力をもつてしては、遺憾ながら、国際的なブラツク・マーケツトと申しますか、グレー・マーケツトでは、こういう高い値をつけての注文を断りきれないということになつた。これは見ようで、吉川委員のような方からごらんになつていろいろ御批判があると思います。が、なかなか日本一国ではどうにもできにくかつたという点も御了承願いたい。しかしその後数年経過いたします間に、なおやはり財政金融を締めるべきであつたんじやないかという御批判は十分あると思いますし、私そういう点について、大蔵省を代表して申し上げるほどの地位にありませんが、個人的な考えといたしましては、もつと早くこういうような措置をとるべきであつた考えておりますので、御質問の御趣旨には深く感ずる次第であります。
  81. 吉川久衛

    吉川(久)委員 そういたしますと、次長はこういうふうにおつしやるわけですね。日本の今日の経済危機は、二十四年ごろに予見できた。しかしながらそれは国際情勢上わかりながらも、どうにもしようがなかつた。不可抗力であつた、こういうことでございますね。それはそれでよろしゆうございます。そこで今あなたのおやりになつておいでになる施策を見ますると、ちようど自動車や電車の運転手が、急ブレーキで停車するような、急激な措置をとつておられる、私どもは、そう見ておるのです。それで国民はけがをせずに安心していられるかどうか。もつと国民に納得できるような施策から、だんだんとなしくずしにして行くという配慮はできなかつたものかどうか。私どもはそれはできるのじやないかと思うし、またやらなければならないと思つているのです。それよりも、事ここに至つてそういう措置をとるということは、今までの政府の非常な責任だと思うのですが、そうお思いでございませんか。
  82. 原純夫

    ○原政府委員 非常に大きな問題でありまして、私が公の地位において申し上げる範囲外であると思いますので、ほかの方にお尋ねしていただきたいと思うのでありますけれども、私個人の気持で申し上げますれば、先ほど申しましたように、もつと早くいろいろ手を打ちたかつたという気持は持つております。この財政金融の政策が最後にきまりますためには、いろいろな条件と申しますか、勢力と申しますか、そういうものが働いてきまつて参るわけで、われわれもできだけの努力はしたつもりでありますけれども、さらに外国におきましては、先ほど申した朝鮮事変後のいわば狂乱的な経済情勢が、その後休戦が成立し、さらにソ連がいわゆる宥和政策といいますか、アピーズメントと称されるものをはかつて、そして外国の方が上つたままでなくて、実はだんだん下つて来ております。そういうような関係もありますので、単純に今までやつてつたことが全部間違いというようにも思われないわけで、これは非常にむずかしい点で、ちよつと私の力には及ばぬところであります。
  83. 井出一太郎

    井出委員長 川俣君、結論的に御質疑を願います。
  84. 川俣清音

    川俣委員 時間がございませんので、今緊縮財政の根本論をやろうとは思つておりません。また次長からそれを聞く時間もありません。しかしながら次長の言われる点について一言触れておきたい。これから保安隊がふえて行つて、演習地がだんだん拡大されて行くと、農業生産の減収の方には支出はするけれども、増産の方にはあまり考慮をいたさないということについては、一言注意をいたしておきたいと思いますが、これも論争はやめておきます。少くとも私の第一に質問したことについても、その答弁がなつていない。私は法律に基いて忠実に法律執行するのが行政官の任務じやないかと思う。その任務を逸脱して予算編成に当ることが任務だというふうにお考えになつておられることについての御質問を申し上げた。もしも農業改良助長法改正予算編成上必要でありますならば、原局の農林省に対してそれを求むべきであつて、大蔵省自身が考えて法案をつくるというがごときは行き過ぎじやないか。この点を指摘したのですがどうなんですか。
  85. 原純夫

    ○原政府委員 今回の予算編成の前提となりました経済的な条件、——財政をきちんといたすために、補助金整理、財政投資の大幅な削減、あるいは行政整理、あるいは地方財政との調整も非常に大きな問題で、一つ一つを取上げてもなかなかたいへんなのでございますが、それをやらざるを得なかつた、そういうような角度で取上げましたものでありますので、こういうような形の法律案にしてお願いいたしたい。もちろんこの法律案をお願いいたすにつきましては、政府部内におきましても十分意見を闘わしまして、——もちろん省によつてそれぞれ立場は違いますから、最後に、私どもも率直に申して、原案から相当お譲しておりますし、農林省もおそらくこうしたいというお気持からは、やはり御不満があろうと思うのであります。しかしそこは政府部内の各省の間の調整、しかもそれが予算という形で、最終的に形の上でも調整されておるということになつ来ておるのでありまして、そういう意味においては、非常に大きな日本の危機を乗り越えて行くためには、やむを得ないところではないかというふうに考えておるわけであります。
  86. 川俣清音

    川俣委員 そこでさつきから憲法論が出たのです。行政府がいかに熱意をもつてかえようといたしましても、憲法四十一条に国会国権最高機関だということになつておる。これを第一に考えないで、日本の国政の運用はないのです。また憲法七十三条に「法律を誠実に執行し、」ということが義務づけられておる。この誠実を欠くからには、行政官としての価値はないのです。いかにいいと思つても、民間人の意図と同じことです。そこで財政上改正を必要とするならば、なぜ原局に対して改正を求めなかつたかということをお聞きしておるのです。あなたの意図が悪いということをお聞きしておるのじやない。そういう意図を持つておられるならば、この法律執行者であります農林省からこの改正案を出さしむべきでなかつたか、そのことをお尋ねしておるのです。
  87. 原純夫

    ○原政府委員 憲法論は、政府法律提案権があるということを、御前提といいますか、お認めになつてお話のようでありますから、それはそれといたしまして、そういたしますれば、あとは政府が部内においていかなる調整をいたすかという問題であります。これは先ほど申しましたように、ずいぶんはげしい論争をいたしましたが、これは政府部内の問題で、部内においては、論争の結果はつきりと予算にまとめ上げたわけであります。そしてこれを先ほど申しましたような意味で、補助金整備に関する特例法という形でお願いいたしておるのであります。
  88. 川俣清音

    川俣委員 法律に基いて出された補助金なり助成金なりが十分適正に行われてないことについて、私どもは遺憾の意を表しております。これは大蔵省も大いに責任上注意を喚起されることは必要だと思うのです。しかしながらそういう助成金や補助金が、法律に基いた通り使用されていないということの欠陥が大蔵省にもあるということの責任も、お考えにならなければいかぬと思う。改良助成法に基いて三分の二の補助をするということになつておりますが、三分の二出しておらないじやありませんか。自分みずからが実行しないでおいて、出た先だけを監督する。もちろん監督は必要ですよ。相当濫費もされておりましようし、不正に使われておる箇所も会計検査院から指摘されておりますから、これに対して大きな目を見張ることは、当然行政府として、または予算当局としては必要です。しかしながらこの根拠になつております法律を大蔵省みずからが忠実に履行しないでおつて、人だけを責めるという態度が好ましくないということを指摘しておるのです。それだからして今度は三分の二を二分の一にかえるんだ、こういうわけでしよう。二分の一にかえたらまた減らして来る。大蔵省みずからが法律に対して忠実でないところが多くあるんです。二分の一以下ということもありましよう。三分の二以下ということもありますならば、これは財政上あるいは予算の組み方からいたしまして、以下になることはやむを得ないのです。なぜ農業改良助成法が予算の範囲内というような規定を設けないで、しかも法律に三分の二ということをうたつておるかということは、農業改良助成法の本質なんです。この試験研究なんということは、にわかにできるものではないのです。長年月を要するものなんです。一定の計画を要するものなんです。財政法の中に継続費をわざわざうたわれたときに、大蔵省の説明は何と言つておられたか。継続費が必要だと言つて法律改正されて、財攻法の中に継続費を認められたでしよう。これは大蔵省が強く要望された。十三国会の議事録を見ますと、なかなか大蔵省が強く要望されております。それには大きな事業であるとか、こういう試験研究というような長年月を要するようなものは、年度割りで行くよりも継続費を捻出する方が、より効果的であるし、不正も起きない、こういう意味において財政法を改正するという説明が二十六年になされておる。速記録をごらんなさい。従つてこの試験研究というものは、継続費をとるかどうかという議論は別にいたしましても、こういう義務づけでなければ試験研究ができないのだというところにこの法律の骨子があるのです。そうお考えにならないですか。農業というものは長年月を要する。今年のような冷害は、気象学的にいうともつと減収しなければならなかつたのに、日本の試験研究が相当進歩し、改良普及員の努力がこの自然的な条件を克服して増産に努めたということをお認めにならないのですか。試験研究はにわかにできたものじやないのです。従つてこの法律の根本は、農民のためではなくて公共の福祉を増進することを目的とするということを明文にうたつておるのです。私は予算がほしいというようなけちなことを言つておるのではない。試験研究はにわかにできるものではない。補助金の出し方についても、これはやはり相当な継続的なものとか、あるいは国庫の債務負担というような形において予算を組んで行かなければならない本質のものだと思う。だから臨時的にかえて行くのだ。一年、二年延ばしておいてごらんなさい。影響するところ十年にも及ぶ。保安隊など一年延ばしても大したことはありません。たんぼや何か荒されることは一年延ばしてけつこうだ。試験研究の方がいかに大切か、またその結果を農民に普及することがいかに大切であるかということは、今度の冷害によつて示されたではないか。この経費は決してむだではなかつた。三分の二を補助するといいながら補助していない。三分の二というと六割六分くらいですが、それを五割四、五分しか補助していない。それでもなお財政上やむを得ないこととして、地方の改良普及員は、試験所と密接な連絡をとつて、昨年の冷害を克服しておる。この点をお認めにならないか。
  89. 原純夫

    ○原政府委員 予算できめられた補助率を実際額においてしぶつているというようなお話が第一にございましたが、御承知のような苦しい財政で、その中に四割も交付金というものがありますために、しぶくなるということは御了承いただきたいと思います。われわれといたしましては、そういうような事情もあり、必要最小限の費用を元にして、法律を適用した金額を計上しておりますので、御了承いただきたいと思います。  それから次に試験研究についてでありますが、継続費についてのお話に関しては、後ほど拝見してからにいたします。継続費は、試験研究でありましても、たとえば試験研究所をつくるというような相当大きな一体の工事、これは数箇年の歳出権とあわせてお願いするというような制度でありますので、運営のために年々の経費を継続的に立てるということではなかろうと思います。それはとにかくといたしまして、試験研究が重要で、あるということは、われわれも非常に痛感しております。それで今回のこの緊縮予算の中におきましても、これは数字をもつて申し上げてもよいのでございますが、試験研究には非常な重点を置いて、旅費についても庁費につきましても、研究所の人たちが極力働けるようにという配意をして、一般は詰めるにもかかわらず、試験研究の方はむしろできる限りふくらましたいというような気持で出しておることを御了承いただきたい。これは別途に数字でも申し上げておきます。  なおこの際補助率三分の二を二分の一といたしましたことについて、われわれの真魚を申し上げて御了承を得たいと思いますのは、先ほど来申しております補助金等整理についての大きな原則の一つとして、負担力のあるところへの補助率は、その負担力に応じて調整するということなんです。それからいろいろあります。これに関係あることといたしましては、中央、地方の間において、この補助の対象となる事柄が、地方的な利益と申しますか、あるいは地方的な関心といいますか、そういうものと結びつきのあるものにつきましては、その結びつきの度合いを考えて地方に持つていただくという原則をとつております。率直に申しまして、先ほど申したように、戦後一般の貧困それから地方財政の困窮というようなことから、中央財政によけい負担が来るというふうにだんだんなつて来ております。経済がだんだん生産性を増し、そして国民所得のレベルも回復するに従いまして、やはり自力でやれるところはやるという方向に、また中央、地方の間におきましても、地方財政で持つべきものは持つというふうに参りたいというのが、ただいま申した第二の原則であります。もちろんその地方財政に対しましては、御承知の通り、今まででございますれば平衡交付金、新しくお願いしておる制度に関しては、交付税というような形で、地方財政形態のバランスというものは考える。つまり改良普及員の場合について言いますれば、中央で削られましたものも、他面地方財政の面で財源措置が償える。もちろん富裕府県のごときは御案内の通り参りませんが、それはそれで打切るというような考えでおりますので、その辺を御了解願えまするならば、大蔵省が改良普及事業を軽視しておる、これはよくできないというような危険を冒すという気持は毛頭ないことを御了解いただけるのじやないかと思います。やはり地方の側における関心も強いようでありまするし、改良普及事業は——こういうことはあまり軽々に言つてはいけませんが、農林関係の補助の中でももつともりつぱなものの一つだというように私どもは当初から感じておりました。そういう気持でやつておりますので、どうか大蔵省がそういうものに消極的だという目でごらんにならずに、全般の財政がこういうようなことになり、そしてまた一方で経済全般がだんだんレベルが上つて来ますれば、国の負担は減つて、自力でやる面をふやしていただくという全般の趨勢であるというふうにお考え願えるとたいへん幸甚なんであります。どうか御了承願いたいと思います。
  90. 川俣清音

    川俣委員 予算の効率利用といいますか、そういう点についての配慮は私は異議はないのです。だからでたらめに補助金だけたくさん出せばいいというような考え方で、今ここで議論をしているのではないのです。試験研究とか改良普及というのは非常に地味なことなんです。地味なことになりますと、世の中のバツクが比較的薄いのです。青森の藤坂五号の品種にいたしましても、ようやく試験研究ができて、それを普及しようとするときに予算が削除されたために、今度も福島、岩手あたりでも大分失敗しておるのです。その損害は莫大です。わずかな予算を削除したためにこうむる弊害は非常に多いのです。国家的な損失は非常に重大です。国の大きな損失を招くことは好ましくないから、私はこの議論をしておる。ところが試験研究というようなことになりますと、とかくこれは投げやりにされがちなんです。あなたは予算をつけたといいますけれども、そのくらいの熱意を持つておりますならば、法文まであえてかえなくてもいいのです。法文をかえて出されたという考え方の中には、これを軽視する考えがあるのではないかということを前に指摘した。そこでこの改良普及員が、昨年の冷害をいかに克服して行つたかということをお認め願わなければならぬ。もちろん改良普及員全部が優秀だとは私思つておりません。これは改良局長にもたびたび言う通り、改良普及員の質が全般的に向上しているとは思いませんが、なかなか熱心に今度の冷害対策についても努力された点を認めなければならぬと思う。もしも質的向上あるいは指導力というものが欠けておるものがありとすれば、それは研修に力を入れるべぎなんです。確かこ普及員の中には、十分な能力を発揮できない者もたくさんあります。そのかわり実に目まぐるしい努力を払つた者も現実に見て来ておる。確かに改良普及員の中にもおそまつな者もいるのです。これじやいかぬと思う。ところが改良普及員の研修費用というものを大蔵省は認めてくれていない。質的向上をはかつてその能率を上げさせるということについて、大蔵省はもつと勉強し努力すべきだ。従つて研修機関でも設けてその質的技術的向上をはかることについて努力されるのはよろしいんですよ。ところがどうも予算がないからということで、質的向上もはからなければ技術的向上もはからない。予算は出しつぱなしですよ。だから改良普及員の質的向上をもつとはかつて、その結果予算の効率的な利用をはかろうということであれば、私はわかる。予算予算で出しつぱなしだ。どんなに使われたかということを見ておらない。見ておつて、いかに有効に使われた部分があり、いかにむだに使われた部分があるかということを指摘されて、そして減額されるのならば私はそれで了承する。ただ上から見て予算が多い、全体から削減しなければならないというが、全体から見て削減しなければならない部分もありましよう。しかしもつと内容を検討することに十分ではないということを私は申し上げたい。それをお認めにならないんですか。昨年の冷害に対してどれだけ努力し、どれだけ増産に寄与したかということを御研究になつたことがあるか。その結果の削減であるかどうか。
  91. 原純夫

    ○原政府委員 重ねて申し上げますが、試験研究関係の経費は、この緊縮予算の中でも特に優遇いたしておるのでございます。今手元に数字の資料は持つておりませんけれども、ほぼ二割に近い程度増額しておるのではないかというような記憶でおります。それが農林関係におきましては、冷害あるいはその他各般の関係で、非常に顕著な結果を生んでおるということはもちろん承知いたしておりますし、非常にりつぱな業績をあげておられると思つております。なお講習関係予算に入つてないとおつしやいますが、入れてございます。削つておりませんが、とにかく何かわれわれが、改良普及員の制度をあまり値打ちがないとして削つておるというふうにおつしやられるのは、非常に心外でございます。予算を組んだ当初から、先ほど来申しましたような気持でやつておりますので、どうかその点はおわかりいただきたいと思います。
  92. 田子一民

    ○田子委員 関連して一言お尋ねしたい。今各法律規定しております補助率の改訂案が出るやに承りましたが、内容は知りませんが、予算を見ますと不満の点が非常に多いのであります。かりに当該委員会、本会議においてその法案が全部否決されるか、または政府の意図します補助率よりも高く決定した場合には、昭和二十九年度予算はいかようになるのでありましようか、政府のお見込みをただしたいと思う。
  93. 原純夫

    ○原政府委員 われわれのお願いしております法律案が通らないとか、ただいま組んでおります予算よりもよけいの補助が法律上どうしてもいるということになりますと、予算法律との不一致ということになつて、何らかの調整がいるということになろうと思います。
  94. 田子一民

    ○田子委員 そのときでも一兆の予算を越えない措置をして予算を組んでおられますか。
  95. 原純夫

    ○原政府委員 どこかを削つてそれにまわせるのかというようなお含みがあるのかしれませんが、そうだとすれば当然おわかりになるように、われわれ一兆に組みますときにどれだけ苦しみましたか、最後の四十億、五十億というものがなかなか入り込まないのです。そうしておりますので、非常にそれはむずかしい。とにかくただいまといたしましては、そういうような場合にどうするということは、私ども申し上げる時期でなかろうと考えます。これをお願いいたしました気持は、決して試みるというようなつもりではございません。日本経済全体からいつて非常に大事なことだと思つてお願いしておるので、ぜひこの法案を今後ともお通し願うようにお願いするばかりでございます。
  96. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これは事務当局にお聞きすることは少し無理かと思いますが、特に事務当局のお見通しなり、お考えなりを、政治的な立場を離れて二、三お伺いしておきたいと思うのであります。  ここで問題になるのは、御承知の通り改良助長法の問題ですが、さつき改良助長法の改正の出て来た根拠についてお話があつた。それは、要するに緊縮予算で、どうしても一兆に詰めなければならぬので、大体四割を占めておる補助金なり交付金を整理する、こういうお話つた。しかし世間一般の考え方に、これは緊縮予算の一兆円がはたして守られるか。これが改良助長法だけではなくして、農林予算全体に、あるいは米価その他全般的にわたつて非常な阻害になつていることは明らかだ。この点について、これは緊縮予算そのものが原因でないことは明確であります。緊縮予算が原因じやなくて、軍事費の増大が原因です。これは事務当局もお考えになればよくわかることであります。今年の予算編成の過程をごらんになつても、あるいは今年の予算の内容を分析されても、緊縮予算で一兆に詰めたというが、軍事費で農林関係の方を非常に圧迫して来たことは、どこを見たつて事実であります。私はここで皆さんと議論しようとは思はない。二点だけお伺いしたいと思うのは、今年はざつくばらんにいえば、MSA受入れによる再軍備の当初の年だと思います。ここでは三分の二のものを二分の一に切られるというように政府は出されておる。来年度、それ以後になりますならば、もつと再軍備費は大きくなる。これは何といわれても今のコースで行けばその通りになる。われわれは今年だけならばがまんしてやりますけれども、しかしながらこれから先どんどん軍事費がふえて来るという場合に、農林予算全体の、またその農林予算の上に立つ改良助長法なり、その他農業助成の対策なり予算というものはどうなるか。その結果が、皆さんの今のお話では、外国から食糧を入れる金も、だんだんとドル資金が少くなつたからというが、今年のような予算編成なり何なりでは、これは減産になることは明らかであります。だれが考えつてそうなる。百姓はみなそういつております。この予算でもつて前年度より増産になるということは絶対にあり得ない。これは自由党の皆さんであろうとだれであろうと、正直に日本の農業の実態というもの、農民の今日の生活の実態ということを考えてみれば、はつきりわかることだ。これは党派を越えてわかることです。  そこで私が二点だけお伺いしたいと思う一つは、第一に事務当局として、これはあな方が決定するのじやなくて、あるいは政府もつと別の力が決定しているわけでありますから、あなた方がこれによつてすぐにどうこうというわけに行くまいと思うが、少くとも良心のあるまじめな事務当局としてお考えなつた場合に、こういう傾向では、今年もこれでもつて大きな衝撃を与え、そうしてその一端として、ここにおけるような改良助長法、今同僚の川俣委員からるるお話がありました通り、改良普及員の活動というものが今日の日本の農業を貧弱ながら保つて行く。農民の技術の水準を保つて行く。また全体の国民経済の立場から、食糧増産にいかに大きな寄与をしておるか。その下で改良普及員がどれだけ苦労してやつているかということを私どもよく知つておる。私は六年も七年も現地の村長をしておつた男です。従いまして地方でどの程度苦労をしておるかということもよく知つておる。これをこういうふうに切られておる。これだけじやない。このバツクには農林予算全体の大きな削減ということがある。それであなた方は第一条件として、もつと軍事費が増すという前提のもとで、ことしの予算以上にこれがつまることは必然だと思う。それでもあなた方は、まだ日本の農業の増産ということは可能だと本気に考えておられるかどうか。政治的な答弁は抜きにして……。あなた方も国民の一人である以上、これ以上いわゆる日本の食糧増産、農家経済が破綻というところまで行つた場合に、はたしてあなた方の命ぜられておやりになつた、またあなた方の信念であつた外国から食糧を今よりもつと少く買うような情勢になるか、逆にドル資金は少くなるにもかかわらず、国内の減産がひどくなつて、いわゆる外国からよけいに食糧を入れなければたいへんな事態になるか、この認識は政党を離れて、また役人とか何とかを離れて、本気に検討すべきだと思う。私はそういう点から大蔵当局にお伺いしたいのは、次年度の見通しなくして本年度の予算を組むはずはない。
  97. 井出一太郎

    井出委員長 久保田君、なるべく簡潔に要点をお願いします。
  98. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 次年度の見通しその他についての一応の検討をされた上で、こういう基本的な点についての改正を求められて来たのか、来年は来年でまた出たとこ勝負で、またぐあいが悪くなつたから改良助長法の二分の一を切つて、また地方に渡そうというのか、ここらのはつきりした見通しを事務当局から、事務的な立場からお答えをいただきたい。  もう一点は、あなた方は全体として、この農林予算において国内の食糧が増産できて、外国から入れる食糧が少くなるとお見通しになつておるか、逆に国内はむしろ減産になつて、外国から入れる食糧がよけいになる、その場合にドルの調達ができる見通しがあるかどうか。これらの点についてきわめて漠然とした一般的なあれですが、こまかい点に入るよりは、一番根本的な点はこの問題だと思いますので、この二点を特にはつきり伺いたいと思います。
  99. 原純夫

    ○原政府委員 まず将来に対する見通しという非常に大きな御質問で、率直に申して、なかなか末確定の条件が多いのでありますけれども、自衛力と申しますか、そういうような関係の財政需要といものが、やはりだんだん増すであろうというようなことはわれわれも考えております。また一方食糧増産も重要であるということも考えております。それじやどこでそれを調和させるかということになるわけでありますが、われわれといたしましては、財政の総体のわくの中で、そこに合理化をするという線は、率直に申しまして、今回の一兆予算におきまする、先ほど来申し上げましたような各原則を立てての作業によりましても、その結論は、財政の中味を合理化しなければならぬものはやはりまだあると考えております。たとえて申しますれば、公共事業の関係でよく新聞紙等にも書かれております通り、経済的な速度を考えるならば、二年、三年でやるように集中的に工事をしなければならぬというものが、何と申しますか各地元のいろいろな政治的な何がありまして、ただいまでき上つております構図は、それが平均十年という長い日子を要しております。これはもう経済的にものを考える人でありますならば、十年間毎月千万円ずつ使つて、そして最後十年経つてやつとでき上つたというような金の使い方をするのは、ほんとうに経済的に二年、三年でやる場合と比べて、その間の金利を計算しましただけでも三割、四割の値打の違いがすぐ出て来るのであります。そういうような意味で、今回の予算におきましてはその点だけにつきましても、実は二十九年度は新規は全然とらぬというようなことを強く立案いたし、各省にもお願いして、それはそういうふうになつておりますが、こういうような点は、さらに従来の計画につきましても再編成しますならば、率直に申して何割かの節約ができると私は考えております。それらの財源と申しますか、財政上の合理化をして、財政の内容を、わくは大きいが中はコンパクトに詰まつておるという状態にするならば、食糧増産その他社会保障等々の経費もさらにまたコンパクトにできるのではないかというようなことを私は考えております。非常に大きな問題で、この答えは私個人的なものとして、またお尋ねも事務当局の率直な感じはどうかというお尋ねでございますから、率直に申し上げてそういう気持でございます。  それから輸入の問題でございますが、今回の予算で食糧増産は御希望のようには入らなかつたかもしれませんが、やはり非常に大きな重点として取上げておりますので、これによつて顕著な減産が来るというふうには行かないで済むのではないかというふうに、実は私は考えております。もちろん日本の全体の経済の将来というものにおいて、農業と工業というもののバランスはどうなつて行くかというふうに考えますれば、農林関係を扱われる当委員会でそういうことを申すのは何でありますが、率直に言えということでありますから率直に言いますが、私はやはり工業力を高めるということが、日本がゆたかになつて行く場合に、どうしても一番根幹になるのじやないかというふうに考えます。そのような関係で工場が立つ、そのために農地が埋められる、それを回復するためにいろいろ食糧増産の経費も組み、また農家の方方の御努力を待つておるわけでありますが、外貨がつらいということは、そういうふうに工業力がつき、だんだん国際競争力がつきますれば、米を買う金もできるということでございますので、絶対に日本の外貨状態は将来絶望というふうには考えない。やはり大きく発展して行ける将来を持つているとわれわれは考えております。
  100. 川俣清音

    川俣委員 先ほど私がお尋ねしたのは、農業改良助長法は、御承知のように試験研究と改良普及にあるわけです。試験研究の方は二割増額しておるからということで了解をしたのだ、こういう御答弁ですが、それでは答弁ならないのです。私は試験研究の方の予算が少いということを申し上げておるのではない。試験研究の方は、あなた方予算の範囲内で故意に今度修正されようとしますれば、今年二割ふえましても、試験研究のように継続的に試験研究をしなければならないような、耕種改善、品種の改良あるいは新品種をつくるということになりますと、これは長年月を要する。いろいろな新しい品種をつくるには四、五年くらいかかります。それを固定させるのにまた三、四年かかる。それがまた適正であるかどうかということを試験研究するのには三、四年かかる。今年度は予算が多いから試験研究自体が完備するというものではない。そこで二割多いということであなた方は満足しておられるけれども、そうじやない。これは年年続いて行かなければ効果がないものだ。予算の範囲内、予算の範囲内というようなことでやりますと、試験研究はできないんだということを第一に申し上げたのです。あなたは、二割ふえておるから試験研究に対して熱意があると言われるが、それは熱意じやないのですよ。試験研究のようなものは、今年十億つぎ込みましても来年何も出さなければ試験研究にはなりません。この点改良局長はどういうふうにお考えですか。
  101. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 試験研究についてはおつしやる通りでございます。
  102. 川俣清音

    川俣委員 そうすると改良局長が大蔵省に説明が足りないのです。大蔵省は、今年は二割つけたから試験研究は完備するんだという御答弁でありましたが、それを満足をもつて聞いておられるのですか。そんなだらしのないことではだめです。大いに折衝されたというのであるが、説明が足りなかつたように理解するがどうです。
  103. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 その試験研究については説明は十分いたしたつもりであります。しかしながら私は、増産の問題に関しては試験研究だけではだめなんで、試験研究を農民のところまでつなぐ普及事業もあわせて強化してもらいたいというふうな意味において説明いたしました。
  104. 川俣清音

    川俣委員 そこでどうですか、大蔵当局はそういう説明を聞いたのですか。試験研究は一時的の金では試験研究にならない。そうすると予算の範囲内というような不安定なことをつけることによつて試験研究をブレーキするというふうにお考えになりませんか。すでに二割つけた、これで大いに助長できるという御答弁ですが、それじや答弁にならないと申し上げておるのです。
  105. 原純夫

    ○原政府委員 手元に数字を持つておりませんから、この試験研究関係は後ほど川俣委員のお目にかけるようにいたします。試験研究関係はとにかく重点を置いております。そうしてもちろんこれが一年きりでちよん切られてはいかぬということはおつしやる通りあります。毎年度毎年度試験研究ついては非常にじみな経費でありますが、本日ここで農業改良普及関係の試験研究について、これだけ応援が出るということは、私非常にけつこうなことだと思います。普通の試験研究は要求が弱いのです。だからわれわれは予算編成する場合に、これは応援の少い経費だからわれわれが何としてもやらねばいかぬぞという気持で、これは改良普及問題だけではありません。各省に試験研究機関がありますが、そういう気持でやつておるわけであります。どうも先ほど来真意を御了解願えないので、はなはだ残念ですが……。
  106. 川俣清音

    川俣委員 私は予算の範囲内というようなことをあなたが今日持ち出されたことについて不安を感ずるので、こういうことを申し上げたのです。試験研究費がふえておることは私も認めておる。あなた方よりよく知つておるのです。あなた方は、あまり考えないでつけたから金額は忘れておられるかしれませんが、こつちはよく知つております。そうしたふえたことを問題にしておるんじやなく、これは継続的に出なければ意味をなさない。継続的にもらうには予算の範囲内というふうなことをあえてつけてもらうことは、非常に障害になつておる、こういうことを先ほど言つたのですよ。
  107. 井出一太郎

    井出委員長 大蔵当局はしつかりお聞きください。
  108. 原純夫

    ○原政府委員 予算の範囲内においてとありますのは、つまり試験研究に要する経費の全部または一部とありますが、その全部または一部の出て来る特定の試験研究はこれだというのにつきまして、やたらにこれだと言われては困るということでございます。
  109. 川俣清音

    川俣委員 私があえてこれを持ち出すというのは、試験研究にブレーキをかけることになるから、これはおやめになつたらどうかというのが私の結論なのです。予算の範囲内においてということは、実行上においてはそれはわかるのです。ところが今年ふやしたと言つても、来年から予算の範囲内ということをわざわざつけられたために不安が出て来ましたならば、品種の改善なんかできない。今年出した金がむだになる、こういうことを申し上げておるのです。金の効率的な利用を十分お考えになつておるところの大蔵省としては、この使つた予算が来年に有効になり、十年後に有効になるということをお考えにならなければならぬじやないか、それをあえて予算の範囲内ということをここに急に持ち出さなくてもいいのじやないか、それは試験研究に対する理解がないからじやないか、こういうことを申し上げておるのです。それをあなたはよく聞いておりませんから、とんちんかんな答弁をしておる。
  110. 原純夫

    ○原政府委員 ただいま来申し上げた通りで、特定の試験研究のわくを決定する裁量という場合に、予算というものを考えてほしいということであります。それから試験研究についての基準、それから将来も同じであるということはもう全然御同感であります。これはどうも先ほど来申し上げているので、私の顔付でもうそじやないということはおわかりだろうと思います。
  111. 川俣清音

    川俣委員 議論するつもりじやないのですよ。おそらくどんな議員といえども予算の範囲内でなければやれないということはよく承知しておるのです。そんなに急に試験をたくさんやるのだというような考え方は、おそらくしておらないですよ。ところが途中で予算が切られたのでは努力がむだになる、努力の果が出て来ない。そこで安心して試験研究のできるようにしてやらなければならぬじやないか。この心持をお持ちであるかこういうことなんです。(「顔つきはどうだ」と呼ぶ者あり)顔つきを見たつて非常に正直そうなんだ。私はそれは否定しない。あなたの人物も否定しない、有能であることは否定しませんけれども法律予算の範囲内ということをわざわざつけられると、制約を受けたような考え方が出て来て、試験研究に対する熱意が加わらないのじやないか。むしろブレーキになるのじやないか。だからこれはお削りになつたらどうか。こういうことを言つているのです。これが第一点、第二点は、それほど改良普及員の努力をお認めになりまするならば、今まで普及員に対して義理を欠いておつた、三分の二をやると言いながら三分の二をやらなかつたために、普及員が不足をして、余分に働いておる分についての考慮も当然ここへ加えられて、もうしばらく三分の二をつけてやるから、前の方は悪かつたから今度は間違いなく三分の二をつけてやるということになると、普及員の努力がさらに加わることによつて予算の効率的利用ができるであろう、こういうことを申し上げたのです。どうかこれを理解していただきたい。なお予算の修正案等については、各党でまとめて出すから、そのときにはいや応なしになるでしようけれども、前もつて御注意だけ申し上げて、午前中の質問はこれで終りたいと思います。
  112. 井出一太郎

    井出委員長 この際委員長から申し上げますが、大蔵当局はただいまの川俣委員の質問の真意はおわかりですね。従つて憂慮されているところは、試験研究が今後にわたつて非常に心配になりわせぬか、今後予算が削減されるかという点については、皆さんの方の理解が十分に行きわたつてつて、そういう心配はないのだ、こういう確言をあなたの方から得たいのですが、その点どうですか。
  113. 原純夫

    ○原政府委員 試験研究が重要であることはもう何度も繰返し申し上げた通りであります。そのゆえに、試験研究関係予算については、全般にわたつて尊重しておりますけれども、将来もそのようにして参りたい。ただただいま委員長の御発言になりました、削られないかというふうなぴつたりした表現においてお確めになる場合におきましては、これは財政と申しますものは、総体のわくにおきましても、また中の各費目の間のわけ方におきましても、いろいろな条件によつてかわつて参りますので、そこまでお確めいただくのは……。
  114. 井出一太郎

    井出委員長 午前中はこの程度をもつて打切り、暫時休憩いたします。     午後一時四十八分休憩      ————◇—————     午後三時二十九分開議
  115. 綱島正興

    綱島委員長代理 午前に引続き、これより会議を開きます。  これより林業についての審議を進めます。福田君。
  116. 福田喜東

    福田(喜)委員 長官に質問いたしまするが、今国会におきましていろいろ林業の根本政策に関することが討議されるだろうと思います。第一に提出の法案でございまするが、過般の林業小委員会におきまして、長官も御出席の上、例の臨時整備法のあの一年なり二年なり延期の問題のお話がありましたが、これは正式に早く御提出いただけるものと思つてよろしゆうございますか、どうですか。
  117. 柴田栄

    ○柴田政府委員 この問題に関しましては、実は主として事務的な問題から、一応整備法に定めておりまする対象を、実際に売払いあるいは交換をいたすという手続の上で、時間的に非常に困難さが出ておりまするので、それらを考えあわせまして、これが処理できる限りの比較的短かい期間を延長するという考え方で、一部修正をお願いいたしたいということで、目下準備をいたしておりまするので、でき得ればなるべくそういう方向で御審議を願いたい、かように考えております。
  118. 福田喜東

    福田(喜)委員 そうしますと、例の今問題となりました整備法は、内容問題はそのままといたして、期限を一年なり二年なり延期する、そうしてこれは今国会提出する、さように承知してよろしゆうございましようか。
  119. 柴田栄

    ○柴田政府委員 実は整備の進捗状況からいたしますと、整備法は御承知の通り本年の六月一ぱいということになつておりますが、新二十九年度にまたがります分で相当数量の事務的な処理をいたさなければならぬものがある。ところが地方によりましては、具体的な箇所その他の決定についてはほとんど全部間に合うと存じますが、事務的に非常に遅れる、あるいはこれを急速に進めるということが、相手方あるいはこちら側双方に非常に無理があるというような場合も出て来ることがございますので、それらの点を勘案いたしまして、期間を決定して修正の御審議をお願いしなければならぬのではないか、かように考えて今実情を調査しておりますが、これと関連いたします問題にもなりますが、治山治水の根本対策の一環といたしましての保安林の買上げ措置等との混乱を防ぐためにも、できればなるべく早く整備法は結着をつけて新しい方向へ進みたい。さらにこれとの組合せという考え方ではありませんが、国有林本来の地元に対する利用という問題に関しまして、さらに積極化することによつて地元の利用権益を確定いたすというような点とにらみ合せますと、私どもといたしましては、事務的な見通しが立てばなるべく早く一応整備法は打切るという方が、事務的に、あるいは実際問題として混乱を防ぎ得るというようなことも考えておりますので、それらの点をいま少し時間をおかし願つてはつきり見通しを立てて、御審議を願いたい、こんな考え方でおります。
  120. 福田喜東

    福田(喜)委員 長官から、整備法は一年なり二年なり延長して、ここに盛られておる内容の処理を急ぐ、こういう御答弁をいただきましたが、われわれの希望するところは、この問題とその内容をなす国有林野法とは不可分の関係にありますので、整備法を一年なり二年なり御延期を願うということになれば、国有林野法の内容を改正して、この内容の点と相並んで、ぜひとも今国会に御提出をいただきたいのであります。私は前者が臨時的の法律で臨時の措置である以上、この内容に立ち入つた改正を加えることは、法本来の趣旨からして目的に即応するものでないということを信じておりますし、また農林当局もおそらくそういうような考え方であろうかと思いますが、これとうらはらをなすところの国有林野法の内容につきまして、これと並行して、たとえば価格の問題であるとか、その他の問題を適当に御考慮いただいて、そして現在の経済実態、町村の実情、農村の実情に沿うようにしていただくように、御希望申し上げるのであります。また整備法自体の問題につきましても、こまかい技術的の問題に至りますと、あれは六月一ぱいということになつておりまして、私は法成立の由来から考えまして、これは会計年度と一致しないところがあると思う。この点のお取扱い等も、これはいよいよ御提出願うということになつておりますから、これを会計年度と一致させるということは、われわれの立場からいつても農林省の立場からいつても、お考えいただいた方がいいのじやないかと思いますが、いかがでございましようか。価格の問題等は前者とあとの国有林野法との関連もありますので、ぜひこの内容について御検討いただきまして、私は一緒に御提出をいただきたいと思うのでございます。
  121. 柴田栄

    ○柴田政府委員 一部修正をお願いいたすといたしますれば、終期その他の関係等を考えますと、やはりでき得べくんば会計年度と一致させる方がいろいろな取扱いにおいて便利であるということになりますので、それらの点も考慮して案を進めまして、御審議を願いたい、かように考えております。並行して国有林野法の一部改正をする気があるかどうかというお尋ねに対しましては、私どもも現在の実情から考えまして、ただ非常に一律に平板的に考えられております貸付料金、使用料金等の問題、あるいは非常事態に対応いたします国有林として、当然地元に対してとるべき臨時的な措置等において相当欠ける点があるということを考えております。あるいは地元施設の拡充というような点によりまして、地元の産業と有機的に密接不離の関連において進めていただくために、現行の国有林野法は多少ぎごちない点があるというふうに考えますので、それらの点を合せまして現在一部改正審議いたしておりますから、案が確定いたしますれば、同時ということにお願いできるかどうか、とにかく今国会には間に合せまして、並行して御審議を願うことにいたしたいというつもりで、準備を進めております。
  122. 福田喜東

    福田(喜)委員 これは時間的に、まつたく日にちを追えずに同時にというのではありませんが、今国会提出して、これは両者うらはらをなすものですから、あわせて御審議を願わなければ、国有林野法がねらう地元施設の問題、それから農村の経済実態に即応するようにやつて行くという目的が達成できないことになるので、あわせて同時に審議ができるように御提出を願いたいのでございます。  そこで逐次質問を展開して参りますが、国有林野法におきまして、現在の地元施設の問題は、林野当局においてはいかにお考えでございましようか、御意見を承りたいと思います。
  123. 柴田栄

    ○柴田政府委員 地元施設といたしましては、林野を対象として共用林の制度を持つておりまして、従来の委託林の制度をさらに拡張いたしまして、制度からいたしますと、地元の生業あるいは経済環境等にも関連させて安定した有機性を持たせる、こういう考え方で進めておりますが、従来までの実施は非常にきゆうくつにこれを解釈いたして参つたために、必ずしも実情に沿わぬ点があることも私ども感じておりますので、実は現在の地元施設の制度を実際にマツチさせて推進するために、二十八年の七月二十二日には推進要綱を制定いたしまして、これによりまして、実情に応ずるような具体的な措置を進めるということを指導いたしておる次第でございまするが、重ねて実行の推進をするために、今月の十七日に通牒を発しまして、措置に遺憾なきを期するということで進めておる次第でございまして、これによりまして実際に、地元と国有林というものが安定した権益を通じまして、有機性を持つていただくということを実現いたしたい、かような考え方を持つておる次第でございます。
  124. 松岡俊三

    松岡委員 関連してお尋ねをいたします。前に私が、東北の国有林について詳細なる数字をあげて御質問を申し上げてあります。これに対しては国土計画の上に関連して、そうしてお答えするというように私は大臣の答弁を拝承している。本年、たしか七月かと思うのですが、臨時措置法が期限が到来する、これに対しては東北各県知事、及び新潟県知事は、強力にこれが延期を要望しているという状態である。私の、前の国会で詳細なる質問をした点に対しこの対策は、ただいま承らぬでもよろしゆうございます。大臣ととくと御相談の上に、今議会において明確なる御答弁をなされるようにお願いしておきます。
  125. 川俣清音

    川俣委員 関連してお尋ねしておきたいと思います。林野整備法が施行されましてから約二年半くらいになるわけですが、この整備法によつて非常に効果の上つたところと、またこの整備法を濫用いたしまして、所期の目的を達成しなかつた部分とが出て来ておると思うのであります。整備法の目的に沿うて、経営計画が具体的に実情に即して払い下げられたものもありまするし、また村の一時的な財産としての処分が目的であつて、整備法を適用されたようなところもあつたようであります。この払い下げにつきましては、非常に乱雑であつたのではないかというようなそしりを受けるような点があるのじやないかと思います。これは要望がはげしかつたために、また要望する側が、簡易に払い下げ得るのだというような点があつて、ほんとうの経営計画を立てて、いわゆる整備法の目的を達成するために、あるいは日本の林野育成の上に寄与しようというようなところから払い下げを願つたのではなくして、まつたくの財産の一時的な取得というような考えで申請されたものもあると思う。この審査にあたつて、やや粗略にされた傾きがあつたのではないかというそしりを受けると思うのですが、山形のように、私の聞いておりますところによりますと、あの経営計画が、森林組合等の技術指導員等によつて、実際実情に即したほんとうの経営というものを考えて払い下げを願つたようなところもありまするし、いつ払い下げをされたか村民の知らない間に伐採されてしまつた。いつ払い下げられたかも知らぬ、また伐採も知らずにおつたというような向きの払い下げの仕方もあつたように聞くのですが、そういう非常に効果のあつた面と効果のなかつた面、林野全体の上から言えば、むしろいかがわしいようなやり方が——いかがわしいのではなくて、払い下げを受ける方が準備が足らないでやつたというようなところもあつたようです。これは例をあげろというならば二、三例をあげますけれども、そういうようなことでは単に整備法を延長いたしましても無意味だと思います。無意味な延長をやめた方がよいと思う。目的を達成するためにぜひとも必要だというならば、これは私は賛成ですけれども、申請が遅れているからというようなことで、無理にこれを延長するということは、十分考慮しなければならぬと思いますが、この点いかがですか。
  126. 柴田栄

    ○柴田政府委員 お尋ねの点は非常にごもつともな点がございまして、率直に申し上げますと、私どもは一応整備法の定めるところによりまして、整備対象の林分を調査確定いたしまして、地元の要望と合せるということで進め、かつこれは地元市町村を優先して取扱つておりますので、ただいまお話のごとく、市町村民が知らないでいる間に払い下げられ、あるいは伐採されるというような事実はいささかひどい例かとも存じますが、一応払い下げます場合にも、あくまで林野としての管理経営を条件として払い下げるということにいたしておりまするし、契約の条項には、これが年次計画による施業を計画化していただくことを条件として、実は払い下げをいたしておりますが、実際問題といたしまして、監督の目の届かぬ先に、いつの間にかそのような契約を無視して伐採を進められておるというような例も相当ございまして、極端な場合には、まつたく契約は空文であるというようなことで、具体的に払下げ処分をいたしました直後に、すでに売払いを公告しておられるというような実例に出つくわしまして、これは契約を解除するというようなことをいたした例もあるのであります。その点まことに遺憾に存じておりますが、中には非常に趣旨に沿いまして、計画的に将来に向つて増強をお願いしておるということも相当ございます。そこで私ども、今一部修正によつて多少期間の延長をお願いしたい、と申しまするのは、さような悪例を助長しようというような考え方ではありませんが、話合いはほとんどついておりまして、事務的処理が非常に時間的に困難になつておる。あるいはある町村等におきましては資金の関係で、特に東北地方のごとき、冷害のために資金の準備がただちには今困難であるということのために、少し延長はできないかというような事例も間々ございますので、これらを救済する範囲において、期間の延長をお願いしたい。かような考え方だけを持つておりますが、なお今後におきましても、趣旨に反するような取扱いに関しては、何らかの方法によつて監督を厳重にいたす、そうして契約期間内に、あまり極端なものに対しましては、契約解除の措置にも出なければならぬじやないかというようなことも考えております。
  127. 川俣清音

    川俣委員 関連して簡略に申し上げますが、そういう極端な例がないということでありますが、今度冷害で福島へ参りまして、六、三制の学校、新制中学校を建てるその費用のために、初から払い下げたというのがあるのです。従つてこれはもう払い下げて売る先を用意して、それで学校の敷地を決定してちやんと売る先ができておる。それから資金の融通を受けておる、こういう極端な例があるのです。それは林野整備に対する根本を理解しないからで、どうせ政府は六三制の費用も出さないのだから、こういうことでやつてやろうという計画であります。ところが、六三制としての補助は、当然そちらの方でやるべきものであり、また起債は起債として別個に受くべきなんです。同じ国の行政であるから、こつちとこつちを振りかえてもいいということは、厳に慎しまなければならないと思うのです。そういう理解なしに承諾を与えることも、これは林野の行政の上から、大いに慎しまなければならないであろうということを申し上げているのです。それからもう一つは、地元町村に払い下げるということですが、これは法律を見ますと、所在町村になつております。ところが所在町村と、これを今まで活用いたしておりました、あるいは入会権とも認むべきような慣習を持つておりましたところとつながるところがあるのです。ところが、今日の林野の育成の上から見ますると、所在町村よりも入会権を持つていると申しますか、慣習を持つておるところの方が、山林と密着をしておる。また局においても、署におきましても、出先の担当区におきましても、これらと非常に密接な関係を結んで、労務提供をしてもらつたところもあるのです。現在の予算の中からいつて、労務提供をしてもらわなければならぬ部分もあるのです。それは所在町村でなくて、無関係町村なんです。今までは陰に陽にいろいろと関係の深かつたものを度外視して、単に所在町村だというようなことで払い下げることは、本来の林野整備の上からいつて、妥当な方法でないと思うのですが、この点についての御答弁を願いたい。
  128. 柴田栄

    ○柴田政府委員 その点はお話通り、私どもも、法には所在町村を優先という順位で決定をいたしておりまするが、実際問題といたしまして、地籍は所在になつておりましても、全然流域が異つており、従来も利用あるいは管理、保護等の協力は、全然別な村がしておるということが間々ございまして、これが国有林野整備法の制定によつて、従来ほとんど無関心であつたものが、所在地町村であるからというので払下げの申請が出ておるという例もございまして、私どもといたしましては、法にはそう定めてありましても、従来の利用、縁故という関係から考えますと、縁故町村ということになりますので双方の話合いがつかなければ、これを手離すわけには参らぬという措置をとつておりますが、多少のトラブルはありましても、これは従来利用いたしておりました町村を全然無視して、売り払うということは、林野行政上から言いましても、まことに不都合な結果になりますし、かたがた付近町村の平和を撹乱するという問題もありますので、慎重に扱つておりまするし、かつこれは国有林としてどう管理するのが最も適当であるかという考え方で処理をいたしております。  なお、前段お話のありました、結果におきまして趣旨に反する不都合な取扱いを、事前に十分調査をいたさないで処理しておるという御指摘に対しましては、まことにごもつともな点でございまして、結果におきまして、私ども非常に相済まぬという考えで、その後は一層慎重に進めております。今後の問題もこれを急ぐということになりますると、かえつて事務的な処理に追われまして、実情を見落すというような危険も起りはしないかという点等も考えまして、少し時間をかける方がいいのではないか、こんな考え方も実は一部考えながら修正をお願いいたしたいと考えております。
  129. 福田喜東

    福田(喜)委員 ただいま川俣委員の関連質問が終りましたので、話を元にもどしますが、私は現在の林野整備というものが、満足に行われておるとは決し思わない。まだいろいろ残された問題があります。従いましてこの整備法もぜひ期限を延長して、理想に近くなくも、少くとも実情に即応する程度にまでやつていただきたいのです。ただいま長官からお話がありました、この臨時措置法と相並びまして国有林野法の一部改正を企図されておることは、おそらくわれわれの意向も、かつまた農林省の意向もかわらないと思いますが、結局その内容は、土地を国有にして、農村の社会施設を行うというところに重点があるのだろうと思いますが、国有林野法の一部改正の要点はそういうところにあると思つてよろしゆうございましようか、いかがでしようか。     〔綱島委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 柴田栄

    ○柴田政府委員 林野の管理に関しましては、すでに御承知の通り、所有のいかんにかかわらず第一番には計画的に扱うということが、林産物の需給の面ばかりでなく、国土保全というような観点から必要な要件になつて参ります。従いまして林野整備によつて売り払う場合に、いつも非常に無計画に扱われるということを申し上げる必要はないかと存じますが、ややもすればそういう例が相当出て参るということを考えますと、一応国有材の計画とつながつて、しかもなお地元が生活の上に、あるいはそれぞれの経営の上に有機的に結びついた処置が講ぜられるということになれば、そこで地元にも役立ち、かつ林政上の問題も解決できる。このためには極端に申せば、土地を国有にいたしましても、それを相当高度に御利用願える、その方が全体を通じて有利ではないか、こういう考え方を実は私は持つておる次第でございます。
  131. 福田喜東

    福田(喜)委員 御答弁がはなはだ抽象的で、どつちにでも解釈できるのですが、委員会でございますから、もう少しずばりと核心に触れた御答弁がいただきたいのでございます。この林野整備の問題と、今問題となつております保安林の買上げの問題とは直接に関係がありますか、どうですか。端的に御答弁いただきたい。
  132. 柴田栄

    ○柴田政府委員 林野整備の問題は、保安林、特に国土保全のための保安林は一切手離さないという考えでございますので、保安林の買上げの問題とは全然別個の立場にあるということを御了承願いたい。
  133. 福田喜東

    福田(喜)委員 保安林の買上げというものは、特別会計並びに一般会計を通じましていろいろ論議となつております。そこで保安林の買上げというのは、私の承るところによりますと、林野当局の意向よりもむしろ大蔵省の要望である。特別会計に移してああいう措置を講じたのは、大蔵省の要望であるということを聞きますが、その点について大蔵当局よりの意向なり圧迫なりがあつたかということについて、長官のお話を承りたい。
  134. 柴田栄

    ○柴田政府委員 これは政府の方針によりまして、治山、治水の根本対策要綱に示されておりまする保安林の整備強化という線によつて、当然私どもの任務として保安林の整備をいたさなければならぬということから出発をいたしておる次第でございまして、大蔵省が何がゆえに圧迫を講じなければならぬかという理由も、私どもには了解できないのでありますが、さような観点は全然ないと申し上げる次第でございます。
  135. 福田喜東

    福田(喜)委員 今まででもこういう措置は林野法でできたのでございますが、保安林の買上げをなぜ特別会計においてああいうふうな措置を講ずることになつたか、その間の事情を御説明いただきたいと思います。
  136. 柴田栄

    ○柴田政府委員 たまたま特別会計に余剰が生ずるということで、これを活用するというにすぎないのでありまして、これは当然保安林の整備強化に伴いまして、計画的にそのうちの相当程度を国有といたし、国の事業として保安林地区の整備強化をはかるという考え方から出発いたしておりますので、今後の整備強化に対しましては、余剰金を充ててこれを整備するという考えではないのでございます。これが財源に関しましては、必要によりましては一般会計の繰入れを当然前提として進めるという話合いのもとに、とりあえず二十九年度においては、余剰金を活用するということで出発いたしておりますので、根本はあくまでも国有林野の収入の余剰をもつてこれに充てるという考え方ではないということを御了承願いたいと思います。
  137. 福田喜東

    福田(喜)委員 今までの方針でどうしてもやれない事情があつたのかどうか。それから特別会計に繰入れなければならぬという事情が、それだけの説明ではどうもふに落ちないことがあるのでございますが、もう少しこの間の事情を御説明いただきたい。  さらに買上げの措置に関しましては、これが強制買上げというものを予定してのことかどうか、こういう点について、さらに御答弁をいただきたいと思います。
  138. 柴田栄

    ○柴田政府委員 説明の仕方がまずいので、御了承を願えないかも存じませんが、本来保安林の整備強化をはかり、特に重要な河川の水源地域の保安林で、今後治山事業を強力に施行しなければならぬ、いわゆる不経済林に対しまして、国家施設、公益施設といたしまして、所有者の負担をもつてするということは徹底を欠く。あくまでも国が全責任をもつて広い地域にわたり、多岐にわたつて公益性を確保するという考え方から、国営で実施するのが妥当であるという出発から出ておるのでございますので、この点は大蔵省との折衝におきましても、今後これを計画的に整備するということと、財源については、現在の特別会計の範囲内においてまかなうという前提は一切つけない。こういう前提をもつて、あくまでも保安林の整備強化という点から出発いたしておるということでございまするので、その点は御了承願いたいと思います。
  139. 福田喜東

    福田(喜)委員 そういたしますと長官の御答弁は、結局閣議決定を見ました治山治水対策要綱に基いてこういう措置を講じたということになりますか。それからただいま保安林の買上げ措置について、最後的段階におきまして強制買上げということを考えておるかどうか、この点の御答弁がなかつたようでございます。
  140. 柴田栄

    ○柴田政府委員 第一段は御質問の通りでありまして、治山治水の根本対策の一環として出発したいと思います。  なお強制買上げを実施するかどうかという点に関しましては、いまなおはつきりとした見通しを立て得ないでおりまするが、一部の特に多額の経費を投じて施設をしなければならないような林地に関しましては、当然強制をも考えて妥当ではないかという考え方をいたしまして、今論議検討を進めておるという程度でございますることを御了承願いたいと思います。
  141. 福田喜東

    福田(喜)委員 強制買上げの点は、私は必ずしも悪いというのではありません。最後的段階におきまして、こういう処置を講じなければならぬ場合も起つて来ると思いますが、なお慎重に御考慮いただきたいのでございます。というのは、保安林の買上げという問題となりますと、不経済林と、それからただいま長官が言われました重要河川の水源地域の不経済地域という点が問題となつて来ましようが、これを団地として買い上げるということになるといろいろ議題が起こつて来る。平たく申しますならば、地元で売りたい所は国において買いたくないし、また保安林としてこれを指定するということは、在来の手続もいささかその間においてありますけれども、目的のためならばかえて行かなければならぬと思いますが、この場合当事者の意思と国の意思との間に非常な齟齬が起つて来ることは必定でございます。この場合において、この不経済林地の取扱いとか、あるいは在来の保安林との地域との関係ということは、非常に困難な問題が必ず出て来ると思いますし、また地方におきましては、保安林の買上げ、そして五万町歩十五億円の予算の計上と同時に、われわれのところにもその方法いかんということの問合せが来ておりますし、これに対して地元民が希望する向きと動いておる向きが多く見えて参りまして、私は、この点につきまして長官がどう処理して行かれるか、もう少し詳しく承ることができれば、漏らしていただきたいと思います。
  142. 柴田栄

    ○柴田政府委員 先刻来申し上げております通り、この問題は保安林整備強化の一環として実施いたしまするので、現在構想いたしておりまする観点からいたしまして、経済的あるいは民生上重要な河川の上流水域を、客観的な条件によつて一応確定いたしまして、そのうち特に保安林として整備いたさなければならないものを決定し、この分については国が責任を負う。その地域以外の箇所の保安林に対しましても、同様必要の範囲におきまして整備をいたしまするが、これは受益の範囲の狭いものという考え方から地方長官の責任において実施をしていた。そこで買い上げまする対象はあくまでも公益にわたる、国土保全の効果を基調といたしまする地域の保安林の中で、一つには特に治山施設のために多額の経費を必要とするような地域、あるいは造林その他の措置に技術、経費の特に多額を要する不経済林地を主たる対象として買上げを計画いたす、こういうつもりでおります。
  143. 福田喜東

    福田(喜)委員 御趣旨ほぼわかつてつたのでございますが、この保安林買上げの問題につきまして、先ほど私は長官にお尋ねいたしましたが、この林野整備ことに臨時措置法との関係があるかないかという点も、現実問題として、長官の監督下にありまする営林署等におきましては、いろいろ問題が起つて来ておるわけであります。というのは町村合併促進法等に基きまして——十七条でございますか、団地の払い下げを地元町村に行つて行く。そうしますと具体的な問題で、私の郷里の九州等におきましては、大体国有林が五十四万町歩で、営林署の数が四十七、八だつたと思います。全国平均から見ますと、営林署の担当面積というものが平均以下の所が、非常にわれわれのところは多い。しかもこれは町村合併が促進するに従いまして、営林署は、平たくいうと自分の担当管轄区域の面積がだんだん減つて来る。そうすると、これは人間の通有性でございますが、自分の責任区域が減つて来ると、何とかしてこれをふやしたい、こういう気持があるわけでございます。そこでこれにからみましてちようど得たりや応というわけで、保安林の買上げ編入という問題とからみ合せまして、いろいろなことがわれわれのところに伝わつて参ります。これが現実の問題でございますが、私は決して長官にあれこれ言うわけではありませんが、こういう問題を切り離していただきたいという点を、特にお願い申し上げておくわけでございます。われわれの郷里の営林署あたりは、営林署の担当面積が他に比べて低いわけでございまして、こういう場合におきましては、一定の面積を割つてしまいますと、一営林署の存在というものは理由がなくなつて来る。そこでこの措置に便乗しようという気持が起つて来るのも、私は当然だろうと思います。私もかつて役人をしておつたので、その気持もよくわかりますけれども、こういうところから強制買上げの問題等々がからみ合いまして、町村合併促進法第十七条の規定というものがなかなか進捗しないことが多くあつて、あるいは非常に円滑なる運営が、営林署の介在、あるいは営林局の介在によつてかえつて阻害されることがなきにしもあらず。これは地元の杞憂であつたならば、私の質問はかえつて幸いであると思うのでございますが、そういううわさも実は飛んでおるようなわけでありまして、こういう点について、長官のしつかりした御意見も承つておきたいのでございます。  それから第二点といたしましては、指定地域制度でございますが、指定地域制度のことを申し上げますと、おそらく長官は、これは林野庁内部の事柄だ、また外部に公表すべき事柄でないからとおつしやるかもしれませんけれども、これはわれわれの立場からいうと、非常に重要な問題を包蔵しておるわけであります。この地域指定の問題につきましても、私は単にこれは河川の大小あるいは沿岸、末流におきまする都市の分布状態、人口の状態、あるいは経済上のいろいろな諸施設というものを中心として考うべきものではないと私は思うわけでございます。こういう点にもし重点をおいたならば、これは林野庁がすでに建設省となり、河川局となり、都市局となるということを意味するのでございまして、私はこの地域指定の問題というものは、どこまでも上流におきますところの保安林の制度と密接な関係を持つておるものであることを、長官とともに信ずるのでありますから、その点を、単に河川の大小とか、末流における都市の分布状況、経済上の問題だけを考慮に入れて御指摘にならないように、私はお願い申し上げたいのでございます。この点について特に御意見を承りたいと思います。
  144. 柴田栄

    ○柴田政府委員 町村合併促進法に伴います国有林野整備法の例にならつての国有林野の払下げが、営林署が所在するために抑制される、かような実情論を承りまして、まことに私も残念に思つておりまするが、全然それがないということを否定し切ることもなかなかむずかしい真理もあると存じますが、私どもといたしましては、あくまでも、妥当な林分に対しまして、かりにもこれを惜しむ、阻止するというようなことのないようには十分監督、あるいは指導を徹底させたい、かように考えております。ただ反面におきまして、町村合併促進法の趣旨を一方的に御解釈になりまして、この際町村合併をすれば、何でも国有林をもらえるのだというような考え方から、国有林としての管理経営、あるいはその目的を逸脱して御要求のあつた場合に、これに応じ得ないという問題を、一概に阻止するというような非難に振り向けられることのないように、これまた皆様方の公正な御批判と御指導をいただきたい、かように考えておる次第であります。  次に指定地域の問題でありまするが、指定地域を長大な河川であるとか、あるいは下流の人口、経済等の関係ばかりでなしに、これは一つの御議論かと存じまするが、指定地域外におきまして私どもは林野行政を放置するという考えでは全然ないのでございまするが、国土保全というものを主体的に考えて施設をするという場合には、国の担当すべき仕事あるいは地方の責任を持つていただくべき仕事というものをわける一つの基準は、これが影響いたしまする点の大小によつて、何らか区分する方が責任が明確になるというような考えにすぎないのでありまして、それを区分いたしまして、特に厚薄をつけるという考えでの地域指定というふうには考えておりませんので、特にこれを区分いたしましても、かりに指定地域外になる林野に対しまして、私どもは実際に施行するのは、通ずる手はかわりましても、同じような重さにおいて施行できるように考えさせていただきたい、かように考えておりますので、この点は御了承願いたいのであります。
  145. 福田喜東

    福田(喜)委員 長官の御要望になりました全般のこと、私たちも十分気をつけて、たとえば町村合併促進法十七条の趣旨、ただこれに便乗してあれをやるということは慎まなければならぬ、私たちは良識人として当然そう考えますが、しかし現実においてそういう問題が起つておるし、おそれられておるということも、長官において御認識をいただきたいのでございます。  それから指定地域の問題でありまするが、これは長官の言われることは理論上からいえばまことにさようであるかもしれません。国土保全という立場からして、指定地域というものを考えて来たといいますが、かつまた指定地域にはずれたからといつて林業施設、林野庁におけるもろもろの施設、端的に申し上げますならば、補助金に関する問題あるいはまた融資に関する問題、これは指定地域であるからといつて、指定地域外であるからといつて、この間に厚薄をつけるようなことはないという御議論であると存じまするが、これは理論でございまして、現実の問題といたしましてはなかなかさように参らない。指定地域に行つておるか行つていないかという場合に、ただちに選択の一つの標準としてするということは、長官御自身も心の中でお認めいただいておるだろうと思います。かつまた問題の基準を定める場合におきまして、これは河川の大小であるとか、川幅が大きいか小さいか、つまり建設省河川局がやつておるようなやり方というのが、どうもこの地域指定の場合においても相当程度に加味されておるのじやないかというのが、私どもの不満でございます。私は上流におけるところの荒廃地の状況でありますとか、水源涵養の状況であるとか、これらいろいろの点を考えまするならば、現在やつておるところのあの指定河川というものは、もう少し様相がかわつて来てしかるべきじやないか。国土保全ということをおつしやいましたが、国土保全であるからには、今の指定というものを、われわれの目に触れ、手に近いところから考えましても、もう少し私はかえてしかるべきではないかと思いますが、この点について私はもう少し御考慮いただきたいのでございます。
  146. 柴田栄

    ○柴田政府委員 ただいま私どもの重要河川水源地域というものを指定することを考えておるという点に関しまして、重要河川というものが建設省の指定河川と同じような考え方ではないかという御疑念でございますが、実は私どもといたしましては、建設省の指定河川とは、全然別の角度から検討いたしておりまして、たまたま一致いたしておるものも相当ございますが、建設省の場合には、災害が起つて、そこに特に大きな事業が施工されなければならないということになりますと、大小にかかわらずただちに指定されるというような点もございますが、私どもは、客観的な条件を基礎といたしましてこれを選定するという立場でおりますので、その点は建設省的な考えではないということだけは御了承願いたいと思います。
  147. 福田喜東

    福田(喜)委員 まことに御明快な答弁を伺つてどもきわめて満足でございますが、ぜひとも建設省的な考え、河川局的な考えを放棄していただきまして、上流における荒廃地の状況であるとか水源涵養の状況、あるいは末流における氾濫の状況等をお考えいただきまして、河川の河幅の大小でありますとか、末流における経済条件、都市の状況等はあまり考慮に入れないで、そうして真に国土保全の立場からしてこの必要とする河川というものを御考慮していただきたい。私はその点につきましてもお願い申し上げたいことを多々持つてはおりますが、そういう方針のもとに、ぜひともこの指定の問題をお考えいただきたい、こう重ねてお願い申し上げるのでございます。結局問題は、水源涵養の問題であり、土砂打止の問題であり、荒廃地の問題であるわけでありまして、これはまた農産物と密接なる関係を持つておるわけでございます。この点につきましてもくれぐれもお願い申し上げたいのは、河川の大小でありますとかあるいは末端における、ただ政治力と申しますか、都市の状況等は第二義的にどこまでもお考えをいただいて、もう一ぺんお考えいただきたいのでございます。  それから保安林につきまして、この買上げの問題とからみ合せて私のもう一つお尋ね申し上げたいのは、森林法の改正ということを御意図なさつておられましようか、この点もひとつ御意見を承つておきたいと思います。
  148. 柴田栄

    ○柴田政府委員 この点も、今実は私どもの方いろいろ論議をいたしておりますが、ただいまの考え方で参りますと、現在の森林法に規定いたしておる国土保全を対象といたします保安林のうち、地域を限りまして国の責任の対象となる保安林、地方庁の責任にまかすべき保安林とを区わけをいたしたいという点が一つ。いま一つは、たとえば航行目標の保安林であるとか魚つき保安林であるとか、あるいは風致保安林であるとかいうような、直接国土保全に関連を持ちませんものは、一応保安林という名称をはずしまして、保護林といたしまして、直接の受益者が主体となつてこれを管理する、これが監督指導あるいは編入解除等は、地方庁長官にまかすというような点を主体として、森林法の改正をいたすべきであるというふうに考えて、今審議を進めておるということを御了承願いたいと思います。
  149. 福田喜東

    福田(喜)委員 指定地域の問題は、くどく申し上げるようでありますが、これはぜひわれわれの要望を入れて御再考いただきたいのでございます。  それから私はまだいろいろお尋ねいたしたいこともありますが、川俣委員の関連質問があるそうでありますから、ちよつと中休みいたします。
  150. 川俣清音

    川俣委員 保安林の整備強化に関する考え方について二、三お尋ねしておきたい。確かに重要な水源地培養林としての保安林が必要でありますことは、私がここで今さら申し上げるまでもない。問題は、その保安林が単独に存在することによつて保安林の価値があるのじやなくて、やはり保安林を保護する森林がなければ保安林の価値というものがないと思うのです。しかしながら今直接どうしてもこの保安林の強化のために、第一次的にこれが必要だということでありまするならばわかりまするけれども、保安林はそんなに広面積でなくてもいいんじやないかという考え方がときどき出て来るのであります。これは私は非常な誤りだと思うのですが、この点についての見解を承りたい。
  151. 柴田栄

    ○柴田政府委員 私どももまつたく御説の通り考え方を持つております。保安林というものは元来、ただ単に治山施設をする、そうして狭い範囲において国土を守るという考え方では、保安林の効果は発揮しないと思います。保安林を経常経営いたしまして、林業を通じて水源を涵養し、国土を保全するというところまで行く場合に、初めて保安効果が発揮できる、かような考え方でおりまするので、当然水源地域を一応災害から守れる、あるいは国土の保全を期待できるという林業経営の対象を一応保安林として整備いたしたい、かような考え方であります。
  152. 川俣清音

    川俣委員 そうなつて参りますると、今日、日本の山林のあり方からいたしまして、国有林野整備臨時措置法というものはもう限度に来ているのではないかという見解を持つのです。国土の保全並びに高度利用ということから行きますると、単に所有権を民間あるいは地方公共団体に移すということよりも、むしろ部分林の制度があり、共有林の制度がありまするのを、これをもつと活用をして行くことが本来の趣旨に沿うのではないか、こう思うのでございますが、この点に対する御見解を承りたい。
  153. 柴田栄

    ○柴田政府委員 その点も実は私どもも同じ考え方を持つておるわけでありまするが、一応国有林野整備法に盛つておりまする例の孤立団地あるいは管理上非常に不便を感じまする錯綜しておりまする境界地等につきましては、双方の管理経営の便宜のためにということで考える次第でございまするが、ほんとうに御利用を願う場合に、土地までも御所有にならなければあるいは財産の造成をしていただけない、あるいはさらに平生の農家経営その他に御利用願い得ないかということを考えますと、実は御説の通り、部分林の拡充によりまして財産の造成は十分に、しかも安全に、さらに国の計画と一貫して、林業の本質でありまするところの計画的な経営の一環としてお願いできる、あるいは地元施設としまして、たとえば薪炭材の安定した供給ということまで施設を拡充いたしますれば、これを公有あるいは私有といたしますことによりまして、非常に所有権にまで移動のチヤンスが多くなり、従つて地元といたしましては非常に利用に厚薄を生ずるという危険を防ぎ得るというような点を考えますと、将来かりに国有林が直接経営から多少それましても、これらの施設によつて地元の協力を得れば、これによつて御活用願えるというのがほんとうの筋ではなかろうか、かように実は率直に考えておるということを申し上げておきたいと思います。
  154. 川俣清音

    川俣委員 そうなつて参りますとこの部分林なり共有林なりの制度が現に法律上はありまするけれども、この活用が足りなかつたために、むしろそれと逆コースでありまする林野整備の臨時措置法を希望するというようなことになつているのじやないかと思うのです。これは林野庁の指導よろしきを得なかつた結果じやないかと思うのです。これが一点。  もう一つは、林野整備法がありましても、先ほど申し上げましたように、森林組合の森林指導員、これをうまく活用しなければこの法律が生きて来ないんですよ。それでないと、誤解を受けるような、ただ財産処分のためのものとか、将来財産を確保するためのものとか、こういうことになりがちになつて来る。一つの森林経営というものは、経営計画というものがこの裏づけとなつて初めて明らかになつて来るのを、これを軽視する傾きが出ている。これは森林組合の活用が悪いからそういう結果になるのじやないかと思います。この二点です。
  155. 柴田栄

    ○柴田政府委員 第一点につきましては、まことに申訳ない次第でございまするが、制度がございましても、指導が徹底しないために、十分に制度の価値を活用していただけなかつたという点で、率直に私どもの足らなかつた点を認めざるを得ないのであります。そこで昨年来これが趣旨を徹底させまして、地元にも了解を願い、有機的な経営に持つて参りたいということで進めておる次第でございます。なおこれと並行いたしまして、国有林、民有林を通ずる森林計画を適正に実施するという場合に、特にわが国のごとく、民有林につきましては、零細所有者の森林を計画的に取扱うということのために、しかも計画的に取扱わなければ、林業の持ちまする半面の使命である国土保全の役割を果し得ないということを考えまする際に、森林組合の内容強化によりまして、実施の計画化ということがなければ、とうてい所期の目的は達し得ないということは、私どもも痛切に考えておる次第でございますが、実際問題といたしまして、実は森林組合の経済的な活動の裏づけというものが現在では非常に脆弱である。これをいかにして強化して行くか。さらにこれと関連いたしまして、技術的な運営をするための、これまた経済につながる問題ではございますが、人的整備というものをいかにすべきかということで、実は非常な悩みを持つておりまするが、これがなかなか思うように整備できないというのが現状でございまして、非常に遅々としてながら国家施設の増強を考えておるという、まことに言い訳的な措置しかとれないということを非常に残念に考えておることを、率直に申し上げざるを得ないのでございます。
  156. 川俣清音

    川俣委員 長官は率直に認められて、ただ返事だけされたのでは効果がないのです。現に山形の森林組合等は、先ほど申し上げましたように、この整備臨時措置法を非常によく活用せられて、おそらくこれは何人も敬服するような経営計画を立てておられる。これは先般の冷害でまわつてみまして、たまたま森林組合の人に会いましたときに、その詳細な経営計画案を示されまして、協力を求められたのであります。そういう点から見ましても、山形のような優秀な森林組合があるわけでございます。これは山形だけができ、ほかに比較的少いということは、決して山形が偶然に起つて来たのではないのです。また他でこれを例としてやれないこともないと思うんです。どこにもないならば、これはやれない限度だということが言えると思うのですけれども、優秀なのがありますから、こういうものを模範にいたしまして、もつと助成促進することは決して不可能なことじやないと思うんです。これを可能ならしめるような処置を将来おとりになるつもりかどうか。
  157. 柴田栄

    ○柴田政府委員 その点は仰せられるまでもなく、一日も早く力を持たせて、自主的な活動に入つていただくというように措置いたしたいと存じております。山形県の森連あるいは単位組合等は、一つのたいへんいい例だと思つておりますが、これも結局は人の問題から出発いたすと存じます。ちよつとくどくなりますが、経過を簡単に申し上げますると、戦争中に国の施設として採算林分の直営伐採という事業をやりましたときに、山形県の森連が全責任をもつて私有林の不採算林分の伐出を担当してくれました。非常にお骨折りを願つて、人的に経済的に整備を願つたということが今日の基礎をなしておるということでございまして、他の府県等においてなぜ実施がなされなかつたかという問題を解明いたしますと、結局は人の問題であつた。私かようなことを申し上げてはどうかと存じますが、当時秋田の方にも参りまして、秋田県にも同様のお勧めをいたしたのでありますが、秋田県は全然御相談を願えなかつた、それが今日まつたく力を発揮し得ない大きな原因をなしております。そこでこれはできない相談ではないというふうに考えますので、今後さような意味において力をつけて参りたいと思います。  そこで現在といたしましては、技術員の整備を目標といたしまして、森林計画におきまする計画実行案の樹立を森林組合に担当していただくとか、あるいは国有林の間伐事業を担当していただくとか、現在できまする施設を通じまして力をつけつつ、さらに国家施設の増強をいたそう、あるいは御協力をお願いする、こういうことで進めて参りたいと考えておりますが、どうもなかなかなか手取り早く参らないという力なさを、率直に白状せざるを得ないというふうに御了承願いたいと思います。
  158. 福田喜東

    福田(喜)委員 ただいま川俣委員お話もまことに興味深くお伺いしましたが、それに関連してお尋ねしたいのであります。結局五万町歩、従つてそれに要する予算として十億円を計上した、これはつまりその土地に治山事業を実施する箇所、端的にいえばこういうことになりますが、それは結果において、さつき私がくどく申し上げました指定地域の問題とからんで来る。長官は決して指定地域だけを買上げの対象にするという御意思はなかろうと思いますが、結局そこに重点が指向されて行くというのはやむを得ないことだろうと思う。そこで買上げする場合におきましては、不経済林地の問題がございますが、主として不経済林地というものを買上げの対象になされるのでございましようが、この場合に強制の問題とさらにからんで来て、この買上げ対象をどこにするかという問題になりまして、経済林地が不経済林地になり、その不経済林地がさらにいろいろな経済林地と結びつくというような問題がありますので、この点はよほど慎重にやつていただきたいのです。この点につきまして、保安林の面積のとり方とか、やり方とかいう点は、私たちが民間にありまして非常に危惧の念を抱くことでありまして、保安林指定の問題は経済林地、不経済林地の問題と切り離すべきものではなくて、ぜひともこの点を密接なる関連をつけていただきたいということを私は特にお願い申し上げておくわけでございます。  それから飛び飛びでありまするが、先ほどの国有林野法の問題であります。地元施設問題に関しまして、森林組合の施設というものは地元施設の中に御考慮いただけるものでございましようか。森林組合の施設というのは、現状におきましては町村それ自身といつてもさしつかえない問題でございまして、実はいなかに行きますと、町村の勧業主任と申しまするか、町村役場の吏員も離るべからざる関係を持つてつておるわけでございます。この点につきまして法律改正は、もちろん実際上の観点に立ちまして御考慮をいただきたいのであります。この点についてお伺いいたします。
  159. 柴田栄

    ○柴田政府委員 地元の方々の御利用を願う施設は、協同組合として御利用を願うという場合には、当然その対象として私どもはできる限り優先的に考えて参りたいという考えを持つておりますが、公共公益という場合には、自治団体ということが絶対基準になるということで御了承願います。
  160. 川俣清音

    川俣委員 そこで林野整備の方で申し上げておきます。この期限が処理期限になつておるようですが、もしも延長するというような場合においては、申請期限である方が処理しやすいと思うのです。その点についての見解を伺つておきたいと思います。私は必ずしも延期しなければならぬという見解ではありませんが、もしも延期しなければならないとすれば、処理期限で規定されておるようですが、申請期限にせられてはどうか、こういうふうに思うのですが、この点はいかがですか。  それからもう一つは、さつき森林組合に触れたのですが、こういうものの上に森林組合を活用することが一番高能率であるということを申し上げ、またその指導員の指導力にまつことを申し上げておりまするが、森林組合の強化のために何らかの方法を講じなければならないとお考えになつておられるようですが、私も一つの具体的なあれとしまして、森林を育成するあるいは造林する者の林野庁に対する発言権が比較的弱くて、むしろ伐採する方の業者、いわゆる製材業者、木材業者についてはいろいろと恩典を与えておられるのですが、これは逆だと思うのです。使う方に特売だとかいろいろなことで恩典を与えておりますが、造林する側についての強化策を考えておられると言いながら、具体的には考えておられない。こういうことについても、もう少し国有林野の払下げ、林材の払下げ、用材の払下げ等についても森林組合の意見を徴するなり、あるいは現実的に育成強化になるような方法を講ぜられる御意思がないかどうか。望ましいことであるから、その方向をとることが必要でないかと私は思いますが、これに対する御見解を伺いたい。
  161. 柴田栄

    ○柴田政府委員 国有林野整備法の改正に関して、申請期間としてはどうかというお話でございまするが、本来この整備法は国有林の立場において手放すものをきめて売るということになりますので、もう少し妥当に必要な方たちに御相談をして売り払うということは可能だと思いまするが、申請期間の延長ということは、実は法の建前から非常に困難になるということも御了承願いたいと存じます。  それから第二点の問題といたしまして、これは国有林の払下げの問題を主体としてのお話かと存じますが、森林組合というのは、主として自分の森林の経営ということが主体になりまするので、木材業、製材業を行うのが主体ではないという建前から、これを主体的な売払いの対象にするということは相当問題はあるかと存じますが、たとえば先ほども申し上げましたように、造林地の間伐を技術的に行うための資格者としては、技術を持つておりまする団体、森林組合が最も適当である、こういうような建前からいたしまして、できる限りこれらの御活用を願うという方向には、今後もさらにでき得る限り拡充をいたしまして、訓練とあわせて幾らかの経済的な裏づけにも御活用願うように措置をいたして参りたい、かような考え方を持つております。
  162. 川俣清音

    川俣委員 これは局長は非常に間違つた考えですよ。森林経営というものは、特に伐採することによつて利潤が生れて来ることを目標に民間経営はやつておる。従つて林野庁がかつてに自分の所有物だからということで森林組合にも諮ることなしに特売をせられて払い下げられるということは、やはり森林経営の上に大きな影響を来すのです。必ずしも恩典を与えようとは申しませんけれども、やはりその地方の森林組合等の意見を徴するということにならなければ強化されないと思うのです。そういう点において可分だというようなお考え方、木材業者は木材業者で、森林は経営とは別だと言うが、これは別じやないのです。それは確かに製材ということの技術は違いますよ、しかし価格については可分だというようなお考え方をされることは間違いだと思います。首を振つておられますけれどもどうですか。
  163. 柴田栄

    ○柴田政府委員 実ははつきり先生のお話がつかめないのですが、価格の調整等をとるという問題はもちろん当然でございますけれども、国有林材を払い下げまする場合には、時価を基準として売払いの予定をいたしておりますので、当然関連を持つて参る、かように考えております。なお需給の問題に関しましては、県の行政的な配分その他を相談の上で決定をいたしておりまするので、民有材と国有林材とを調整いたしまして、売払いの額、時期等を決定されるのでございまするから、民有林と無関係にいたしておるということでは全然ないと私ども実は考えておるのでございますが、これを森林組合に協議する、あるいは意見を徴するという形にするということが妥当かどうか、県を通じてそれらの御意見を徴するということの方が妥当ではないか、かように実は考えて進めておるのでございますが、その辺はまた御意見を承りたいと存じます。
  164. 福田喜東

    福田(喜)委員 私はただいまの川俣委員の御質問には全面的に賛成でございまして、私はこの点について柴田長官に特にお願いしたいことがあるわけであります。長官は日本における民有林、国有林を通じての総元締め、総親方であると私たちは思つて、そういう信念のもとに絶対に御信頼申し上げておりまするが、必ずしも林野庁はこの普遍妥当な精神が貫かれていないのでありまして、森林組合、従つて森林法制定の当時における長官の御熱意が、下僚によく伝わつておるかどうか疑わしいところが私たちにはあるわけであります。たとえば今同僚の川俣委員かり間伐のことについてお話がありましたが、私はついでにこういう実例を申し上げまして、長官に——おそらく長官の耳には入つておりますまいけれども、こういう事実があるというその事実を御指摘申し上げまして、よくお考えいただきたいのでございます。事は昨年の七月の水害の時でありました。九州において、ことに私たちの郷里の日田玖珠におきましては未曽有の水害があつて、木材価格が暴騰したわけであります。当時におきましては、日田玖珠に秋田材まで流れて来た。このときにおきまして、地元においてどういうことを言つてつたかというと、もし国有林というものが材の出し惜しみをしなかつたならば、かかる暴騰はなかつただろうということを言つておりますが、私は必ずしもその説に全面的に賛成をするものではございません。国有林は国有林としての立場がありましようし、木材価格が非常な暴騰をしたのは、国有林の責任であるということを言つておることには、私は決して賛成しておりませんが、しかし九州の日田玖珠におきましてはこういうことをやりました。地元の森林組合を通じまして間伐材の払下げをやつたわけでございます。そのときに木材業者が営林署に払下げのために蝟集して参つて、盛んにねらつたわけであります。私はその精神はまことにりつぱであつたと思います。国有林の強い力で民有林を育てる、従つて森林組合を育てるというその精神は、われわれはまことに感服したのでありますが、そのときにひもをつけてしまつたのです。この間伐をどこそこの森林組合にまかせる、そしてこれを伐採して搬出して造材する。そしてその出したものをどこてこの木材業者に、値段もわかつておりますが、千百五十円で売れということを言つて、価格の末端に至るまで指定をしたわけでございます。その結果はどうなつたかと申しますと、なるほどその用材というものは、公会堂の復旧用だとか、あるいは倒壊した学校の復旧用にこれを使われたわけでございますが、学校や地元の町村長さん方か、一体国有林から払下げを受けた材たということはわれわれは承知しておるが、国有林はこんなものをくれたのだろうかということを、私どものところに言うて来たのであります。われわれが地元に送り届けるときにおきましては、国有林からいただいたときはまことにりつぱでありました。それを木材業者に価格を指定したので、最後に渡すときにおきまして、木材業者は自分の土場に持つていたところの材とすりかえてしまつた。しかも価格を営林署が千百五十円で渡せと指定したわけですが、その結果はどうなつたかと申しますと、一切の非難というものが森林組合に集中する。地元の学校なり町村長方は、われわれのところに一切の非難を持ち込む。われわれはその過程におきまして、まことにマージンの少い森林組合の本来の仕事に立ち返つて、使命を重んじてやつたわけでございますが、まん中において営林署の御用の木材業者がそういうようなすりかえをやつて、一切の利益が木材業者に集中するし、非難は森林組合が受けるというかつこうになつた。森林組合を非常に可愛がつていただき、保護育成に国有林が熱を入れていただいたことは、私どもとしてはまことにありがたかつたのでございますが、そういう間伐の払下げについてそういうことをなさつたがために、結果はそういうことになつて来た。土場における自分のちやちな木材とすりかえてしまつた。こういうことは間々あるのでございますから、こういう点は、長官の志と意図こいうものが末端においてよく食い違つて来る。従いまして長官は、民有林、国有林を通じての総元締めでありますから、そういうところをよく御勘案の上、森林組合というものを、森林法の精神に基いて保護育成していただきたい。われわれの方の森林組合は、まことに他と比較にならぬほど弱体で、常陸山と子供といつても、それ以上の開きがあるのでありますから、この点も十分御勘案の上、民有林の組織体である森林組合をよく育てていただきたいということを、特に私は川俣委員の言に付随してお願い申し上げる次第でございます。  それからさらに、これは飛び飛びでございますが、もう少し時間がありますれば、あと二時間ぐらいいろいろお尋ねしたいことがあるのでございますが、予算を見ますと、奥地林道というものは、国有林に全部と言つていいくらい移つておりますが、国有林は自力をもつて相当なし得るのでありますから、奥地林道の予算の組み方というものは、もう少し民有林に重点を置いていただくように、実施の上において特に御勘案いただきたいということを申し上げておきます。
  165. 松岡俊三

    松岡委員 私は、ただいまから申し上げることについては、慎重なる御答弁を願いたいのでありますが、その前提として、二十八年度には三十二億円も一般会計に繰入れているが、今度の予算案では、それが水害のために計上されて、一般会計繰入れはないようになつておりますが、その通りでございましようか。
  166. 柴田栄

    ○柴田政府委員 二十八年度予算におきましては、補正予算を含めまして、三十二億を一般会計に繰入れいたしております。二十九年度の予算につきましては、先刻来申し上げております、治山治水の根本対策の一環としての保安林整備強化という一連におきまして、民有保安林の買上げと、この地域に対する施工の経費として約三十二億が、国有林野事業の経費として盛られておりますが、一般会計への繰入れは、実は全然ないというふうに予算案立案いたしております。
  167. 松岡俊三

    松岡委員 そうすると、やはりそれだけの利益が上り、一般会計に繰入れるようなつもりでおつたわけですが、それを今度治山治水に使うというために、二十九年度は計上されないというように解釈してよろしゆうございますか。
  168. 柴田栄

    ○柴田政府委員 繰入れるつもりではございませんでしたが、たまたま治山治水の根本対策というものを、政府でも非常に重要にお取上げになりまして、要綱を確立いたしまして、その整備する方法として、保安林整備と一部の民有保安林買上げという問題が決定いたしまして、そちらに支出するということで、国有林野事業といたしましては、本来の国有林自体に対しましても、今すぐ施設を必要とするということで要求はいたしましたが、予算審議経過におきまして、その面の節減と保安林整備に対する三十二億というものが、総合的に協議の上で案が決定いたした、こういう経過でございまして、必ずしも当初から三十二億を捻出して、本来の国有林野事業を節減してもこれを出すという考えで出発したのでは全然ございません。
  169. 松岡俊三

    松岡委員 国有林野経営の上において、いろいろな施設から三十二億円を捻出して出した、こういうことにはなつておりますが、その三十二億の出どころが、どういうあんばいでどこから一番多く出ているかということについては、はつきりした数字がわかつているわけなんですが、一方的に偏しているというようにお認めになつているかいないか。
  170. 柴田栄

    ○柴田政府委員 これはいつも先生から、いろいろ御指摘あるいは叱正をいただいておりますが、やはり主たる収入の基地は北海道、東北、関東以北あるいは九州、四国、こういうことになりまして、長野あたりもやはり相当大きな給源になりますが、これは山の実態からいたしまして、現状は私どもといたしましては当然のことではないか、かように考えております。
  171. 松岡俊三

    松岡委員 当然のことということを承りますると長くなりますから、私は時間の関係上次回に譲りますけれども、昨年の水害によつて治山、治水が本格的になつたということも、そもそも水害がいずれの地域に最もひどかつたかということは、国民全体が明瞭に認知しているものであつてもつとも全国の国有林の約四割九分六厘まで持つておる東北地区の方にはきわめてそれが少なかつた、こういうことだけはこれは事実否認することのできないことである。また従来長く十数年来この方、東北地区から年々収入から支出を引いて、そうしてその余分をほかの方に出しておつたということも、三十二億のうちの約八割はその東北にある。これは北海道を入れてはさらにそうです。ただいま林野庁長官は北海道、東北及び関東、九州といいますけれども、九州は単に熊本地区の宮崎及び鹿児島だけであつて、あとほとんどない。関東といえども地区はただ長野県を除いたらこれもない。こういうぐあいになつていて、長い間ほかの方にお手伝いしたところには水害がなくて、そうして今度水害が出たから治山治水のためにその金を使うということは、山を経営する上で当然だというようなことを承りますと、どうしても納得できない。それだからこの前の議会から申し上げていたように、根本的な問題について、どういうお考えを持つているかということをお聞きするのもここなんです。最近、明治御維新当時まことにけしからんことをやつた。賊軍に賛成したのだからして取上げるのだというようなはつきりした証拠書類が上つています。私の手元にはそういう書頃がはつきり出ていますが、これは林野庁長官は御存じのはずです。ちやんと取上げた書類が、今度はつきりした証文が出ましたから、こういうのをみんな私は出します。そうして長い間やつていて、今度昨年水害があつた方に使う金を水害のない方から出したということについては、これは政治の上からよほど考えていただかなければならぬわけですから、この次には、東北の国有林についての根本的な施策はどういうあんばいにするかということをはつきり御返事をいただいて、その上に数字をあげて、事実をあげて間違つたことを指摘しますから、その含みできようは質問をここにおいて、私は保留しておきます。
  172. 福田喜東

    福田(喜)委員 さつき川俣委員が言いました臨時措置法の延長の問題ですが、これは法律の内容をよく読んでみませんと、申請期限か処理期限か、私はどつちでもいいのですが、結局長官に特に御考慮いただきたいのは、林野の整備が今日に至るまでまだ満足に行われていない、そういう趣旨のもとにこれは延長さるべきものと私たちは思いますから、そういう御趣旨のもとに私は改正していただきたいと思います。
  173. 中澤茂一

    中澤委員 関連して伺いたいのですが、林業小委員会の方でずつとやつていて、林のことは暗くてわからないのですが、私は基本的にこの問題を考えねばいけないと思うのです。伐採の方は、伐調資金を出しましてなるたけ切るな、これはできていると思うのです。ところが実際の木材需要、足りない状況からいつて、長官も御承知のように切らねばないのですが、ところが薪炭林なんかは別として、すぎだとか松だとかいう用材林というものは相当金が入るのです。その用材林をうんと持つている人は、今地所持よりも農村では景気がいいのです。そこで私は、さつき川俣さんのお話なつたように、義務造林というものを法的に決定する必要があると思うのです。そこで川俣さんの問題と関連するのですが、実際もうけるのは確かに材木屋がもうけるのです。そこで伐採する材木屋に義務造林の一部を負担させる。これは買う価格の中に織り込まれるかもしれません。それから主体であるところの所有者に、半々でもいい、そこは将来の研究の問題ですが、どうしても一定の用材を切つたら、全部ということが無理だつたら半分でもよろしいから、これは法律で義務造林をさせるということが、私は先決だと思う。そういうようなものを強制的にやらなければ、いかに森林組合が林業計画を立てて、さか立ちして飛んで歩いたつてだめなんです。造林費用というものは、毎年ああいうふうに余つてしまつている。若干予算から余つて行くというふうなことで、林道だとかほかの資金ほど吸収が早くないという点ですね。これは私は義務造林を国家ばかりの負担じやなくて、受益者は、木材業者であり、それから実際の山の所有者なんですから、相当入つて来る金の一部で義務造林をさせるのは当然だと思うのです。そうすれば片方で伐採調整で押えておいて、片一方で切つたあとは義務造林だということになれば、切る方と植える方とのバランスが大体とれて行くと思う。この点は長官は将来の問題として法的に、——将来どころではない。できればこの国会かこの次の臨時国会でも開けば、そのあたりである程度義務造林の法的なものをつくる必要がある。そうしなければこれはだめだと思うのです。薪炭林なんかも私は考えるのですけれども、実際の自家薪炭林とか、近所の人にわけてやる薪炭林は別として、三町歩あるいは四町歩という一定の金が入る薪炭林というものは、これはやはり義務造林の対象にしていいと思うのです。相当にまとまつた金が入るのだからそういう形で民間みずからやらなければいかぬという態勢を法律の上でつくつて行かなければいかぬ、こう考えるのです。それに対して長官はどういうふうにお考えになつておられますか。
  174. 柴田栄

    ○柴田政府委員 実は森林法におきまして、現在伐採跡地の造林の義務は負荷されておるわけでございまして、森林計画の実施の調査をいたしまして、伐跡地に対しましては、所有者に造林をする義務を負つていただいておる。こういうことで実は法律的には整備いたしておるわけでございますが、それに対しまして、あるいは造林のための補助が不足であるとか資金が足らぬとかいろいろな問題がありまして、現実になかなか全部がうまく行つているということは申し上げられないかもしれませんが、現状におきましては、大体伐跡地は義務を果していただいておる、かように考えておりますが、さらに今後造林増強という面につきまして、ただいまお話のありました薪炭林として、あるいは粗悪な林相で放置されておるような面も計画に乗せまして、樹種転換をはかるための人工植栽をするという場所を森林計画の上に上げて参りまして、これにも義務造林をさせる、こういう方法をとることになりまして、二十九年度からその予算もついておりまするし、さらに調査の経費もついておりまするので、実行にあたりましても、今先生のお話のような方向に指導と監督を強化いたして参りたい、かように考えております。
  175. 井出一太郎

    井出委員長 本日はこの程度をもつて散会いたします。     午後五時十分散会