○塩見
政府委員 品種の改良につきましては、この品種の交配、及び選抜という点について問題がございます。ただいまお話のありました藤坂五号も、もとは国立の試験場において交配をやりました。選抜になりますと、耐冷性品種というような
関係から見ると、現在のやり方としては、ひや水をかけることによ
つて、品種間の差が非常に出るわけでございます。その条件は藤坂の試験地が非常に優秀な条件を持
つております。ひや水も豊富に持
つておる。そういうことで、選抜の方は藤坂の試験地でやらしたということにな
つております。藤坂の試験地の方は、人件費その他も全額国庫補助で、国の方で地域の試験場と十分打合せをした上で、そのやり方その他どういうねらいで行くかという点を決定してや
つているわけでございます。そういう形で、西南暖地の稲につきましても、今年度鹿児島の試験場を利用しまして、全額補助で新品種の育成を始めるわけでございますが、そういうような場合は、新品種育成のための適地々々がございまして、その場所すべて国の役人で国営でも
つてやることは、かなり不便な点もございますので、そういうようなものに対しましては、国が補助をしまして、それをやる人につきましても、国が全部県と打合せをした上で、十分その任に耐えるような人をそこに配置するという形でや
つているわけでございます。さしあたりは現在のやり方でや
つて行
つてもいいのではないか、全部を国立のものにして、人も何も全部国立でやるというような形でなくても、いいのではないかと考えているわけであります。最後に、選抜してできて来た品種等をごらんになりますと、国がほとんどタツチしてないようにお考えになるかしれませんが、事実は国の方で全部調整をしながらやるという形にな
つておりますので、その点は御
理解願いたい、こう考えます。
それから、ミチユーリン農法につきましては、このミチユーリンという人は、二十年も前に、ああいう論文を出しまして、その後ソビエトにおいてルイセンコという人が、そのあとを継いだわけでございます。当時世界的にそれが問題になると同時に、
日本の方においても、各国立の試験場、あるいは
北海道においては道の試験場等において、それぞれ相当の試験をや
つておりますが、麦につきまして問題に
なつたわけです。ルイセンコの問題は、秋まき性の麦を低温処理することによりまして、春まいても十分収穫ができる。寒さにあわないでも収穫ができるというような性格を付与することがねらいでありましたわけで、それにつきましては、試験の結果もその通りになります。しかしながら、
日本では大体秋まきの麦の
地帯が多いわけでございますので、それは必ずしもそのまま実用化はできない。そういう形で春まきに持
つて行くわけですから、当時としては、一応試験が済んだわけです。それから
北海道等につきましては、品種によりまして、必ずしも秋まき性の品種をそういう処理をして春まきにかえるという方法をとらないでも、春まき性の麦の品種改良によ
つて大体増収の効果はあげられる、こういう形で品種改良の方を進めて来た、こういう
経過にな
つておりまして、ロシアにおいては十分成果が上
つたし、
日本においても上
つた。
日本においても試験の結果は、秋まき性の麦が春まきにできるということははつきりいたしましたけれ
ども、それを利用する面については、
日本においてはその必要性は今のところ麦についてはない。品種改良において同じ目的を達成できる。こういう形で進んで来たような経緯にな
つております。最近のミチユーリン農法といわれておりますものは、いろいろ実行されておるようでございますが、その内容はルイセンコの学説のそのままではなくて、それを
日本に持
つて来て、
日本式に変形をして応用するという形で、幅がかなり広くな
つておるように見られるわけでございます。そのやり方等は、一概に申しますれば、種子を低温ないし高温で処理いたしまして、種子の熟期を早めるとか、あるいは登熟を早くするとか、あるいは対応性を付与できるなら付与するとかいうふうなねらいをも
つてや
つておられるようでありますが、農民の庭先でやりましたものは、そういうふうな成績を比較するという意味では、まだ利用できるような厳密な設計にな
つておらないようでございます。それで長野県の農事試験場においてや
つた成績もございますが、最近の麦につきましては、大体秋まき性のものをやはり秋にまく、ただ種子を処理することによ
つて、先ほど申しましたような効果もある程度出はしないか、こういうふうな形で検討をされておるようでございます。そういう点につきまして、低温ないし高温で処理をするわけですけれ
ども、その温度処理の前に芽出しをやるわけでございます。それで長野県の農事試験場でやりました成績では芽出しをやらなか
つた麦に対しては、いわゆるミチユーリン農法的な処理をや
つた種子の方が明らかに優良である、
生産力も高い、しかし芽出しをや
つた麦と、ミチユーリン的な処理をや
つた種子との差はほとんどないというふうな成績で、一応出ておるような状態でございますので、今のところの成績では、芽出しと大体同様な効果で、芽出しにプラスの効果というものが収量その他の方に出ているとは申せないわけでございます。しかしながらなおそういう点について研究をいたしますれば、あるいはその
地帯地帯によりまして、熟期の点でいくらか早まるとか、そういうふうな
関係から、あるいは
地帯においては品種改良だけでなくて、ある程度そういう栽培法を入れた方がプラスの面があるかどうかという研究の検討になりますと、まだ十分にできているという状態にはありませんが、そういう点について、来年度においては各府県等と打合せて、そういう試験について必要があれば、
連絡試験を行
つてみて、
地帯別に利用価値があるものならば利用させたい、利用価値があるかどうかという点について検討いたしてみたい、こう考えております。
それからばれいしよにつきましても光に当てるというふうな栽培法がとられておるようでございますが、これはすでに十数年前に、やはりミチユーリン農法が問題になりました当時に、前の
北海道の農事試験場で、
北海道大学の農学部長をや
つておりました島博士が十分検討いたしまして、それは浴光栽培というふうな形で、種いもを処理するというふうなことによ
つて相当増収が得られるという結果が出ておりますので、その点は成績にも出ておるという
関係から、浴光栽培法として十数年前から
北海道はもちろん、
関係県の方でそういう栽培法を奨励している、こういう段階にあります。それと同じものを、もちろん種の処理というところから来ておるわけですけれ
ども、新しくミチユーリン農法を唱道する
方々の方で取上げられておるわけですけれ
ども、それは試験場で
確認され、奨励にも移され、もちろんいいことでありますので、それがどういう名を冠せられるかによらず、いいことは奨励していいわけでありますから、それは勧めてもいいのじやないか、こういうふうに考えておるわけであります。
それから蔬菜等についても、各種のいろいろな試作試験というふうなものが行われておりますが、やはり利用すべき部分もありますし、またあまり増収の効果の出ないようなものも起るようでございまして、それらについては十分検討しながら、技術的にいいものは取入れるという形で進めてみたい、こう考えておるわけでございまして、国立の試験場でもや
つていないわけではなくて、すでにかなり前からや
つておる。しかしながら最近農民が取上げている部分は、利用面において幾らか違
つたケースにも利用しようというふうな形で取上げておるようでありまして、そういう点について全国的に問題にならないとしても、条件の悪い
地帯とか特殊な条件にある
地帯については、あるいは利用できる分も起り得るのではないかという点も考えられます。そういう点については、できるだけわれわれの方としても、
連絡試験等において十分試験して参りたい。それは地域の試験場あるいは県の試験場等の打合せにおいて、今技術的に検討しつつございます。