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1954-02-09 第19回国会 衆議院 農林委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月九日(火曜日)     午後零時五分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 福田 喜東君 理事 金子與重郎君    理事 芳賀  貢君 理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐々木盛雄君    佐藤善一郎君       松岡 俊三君    松山 義雄君       足鹿  覺君    井谷 正吉君       中澤 茂一君    中村 時雄君       安藤  覺君    河野 一郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (大臣官房会計         課長)     増田  盛君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         農林事務官         (農業改良局         長)      塩見友之助君         農林事務官         (畜産局長)  大坪 藤市君         食糧庁長官   前谷 重夫君         林野庁長官   柴田  栄君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 二月八日  肥料及び農機具の価格引下げに関する請願(關  内正一紹介)(第八五八号)  福島県内国有林野払下げに関する請願關内正  一君紹介)(第八五九号)  積雪寒冷単作地帯農業振興に関する請願(關内  正一紹介)(第八六〇号)  繭質向上施策に関する請願吉川久衛紹介)  (第八六二号)  同(倉石忠雄紹介)(第一〇一三号)  同(小川平二紹介)(第一〇一四号)  同(松平忠久紹介)(第一〇一五号)  消費者米価引上げ反対に関する請願吉川久衛  君紹介)(第八六三号)  同(倉石忠雄紹介)(第一〇一六号)  同(小川平二紹介)(第一〇一七号)  同(松平忠久紹介)(第一〇一八号)  農地改革による犠牲者救済等に関する請願(岸  田正記紹介)(第八六四号)  同(坊秀男紹介)(第一〇〇八号)  過年度分災害復旧農業土木事業に対する国庫補  助金交付に関する請願關内正一君紹介)(第  八七四号)  農業改良普及事業費国庫補助に関する請願(金  子與重郎紹介)(第一〇〇九号)  国有林野整備臨時措置法施行期間延長に関す  る請願倉石忠雄紹介)(第一〇一〇号)  同(小川平二紹介)(第一〇一一号)  同(松平忠久紹介)(第一〇一二号) の審査を本委員会に付託された。 同月六日  自作農創設維持資金のわくの拡大並びに資金融  通法の制定に関する陳情書  (第四一三号)  農林金融公庫貸出資金増額に関する陳情書  (第四一四号)  農林漁業長期融資予算増額陳情書  (第四一五号)  農業災害補償制度改正に関する陳情書  (第四一六号)  同  (第四一七号)  同  (第四一八号)  北陸地方有畜農業推進に関する陳情書  (第  四一九号)  公共用地獲得に関する農地法改正陳情書  (第四二〇号)  耕作農地所有権に関する陳情書  (第四二一号)  甘しよ買上げに関する陳情書  (第四二二号)  米穀供出農家に対する報償制度立法化陳情書  (第四二三号)  指定有害動植物防除計画拡充強化に関する陳  情書(第四二四  号)  いのししの被害に対する国庫助成に関する陳情  書(第四二五号)  農薬「パラチオン剤」による被害補償に関する  陳情書(第四二六  号)  治山事業拡充強化等に関する陳情書  (第四二七号)  木炭公営検査費の一部国庫負担陳情書  (第四二八号)  温水路施設国庫補助に関する陳情書  (第四二九号)  国有林野整備臨時措置法の実施に伴う財政措置  に関する陳情書  (第四三〇号)  改正森林法による森林行政補助額増額並び  に助成確立に関する陳情書  (第四三一号)  積寒法による林業振興に関する事業予算化の  陳情書(第四三  二号)  林業改良普及事業拡充に関する陳情書  (第四三三号)  同  (第四三四号)  同(第四三  五号)  同  (第四三六号)  同外一件(第四  三七号)  同  (第四三八号)  同(第四三九  号)  特殊地帯土地改良事業臨時措置法による補助  率の引上げ並びに補助範囲拡大に関する陳情  書(第四四〇  号)  国営による大規模干拓事業促進に関する陳情  書(第四四一  号)  早期入植開拓者に対する営農資金償還期限  延長陳情書  (第四四二号)  冷害凶作対策確立に関する陳情書  (第四四三号)  開拓地畑地農業改良促進法適用に関する陳情  書(第四四四  号)  浮島沼干拓事業促進に関する陳情書  (第四四五号)  長野県南原山、原村字払沢間開拓道路の全通に  関する陳情書  (第四四六号)  北海道の泥炭地開発促進に関する陳情書  (第四六一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  農政基本施策に関する件  農林関係予算に関する説明聴取     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  農政基本施策並びに来年度農林関係予算について、前会に引続き質疑を行います。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 私は農林大臣に対して、農業政策に対する基本的な問題について質疑を行わんとするものであります。先般農林大臣の基本的な農林行政に対する方針の御説明があつたわけでありますが、今年度予算編成並びに農業政策の策定に対しましても、大前提となるものは、国際収支逆調から脱却しなければならぬという、これが前提となりまして、日本自立経済がこれによつて基礎づけられるということに主点を置いておるように考えられるわけでありますが、その現われがいわゆる一兆億予算といいますか、財政の緊縮と金融の引締めというような二つの柱によつて編成されておるというのが政府説明であります。そういうような前提の上に立つて年度農業政策を検討した場合において、大臣の示された方針は、第一は総合的な食糧自給度向上と、第二は農家経済の安定と農村振興という、ここに重点を置かれるようにわれわれは了解しておるわけでありますが、大臣の御説明を聞いて端的に感ずることは、従来の農業政策に比較して、今年度政策というものは非常に消極的である、むしろ後退しておるんではないかという感じが強いのであります。このことは結局、保利農政に対するわれわれの期待がまつたく裏切られたという、失望感に尽きるのであります。なぜかと申しますと、今年度のこの総合的食糧自給度向上ということは、昨年度施策の中におきましては、その分析を、まず日本経済自立を達成するためにおいては、どうしても国内において食糧自給度促進しなければならぬということをうたい、特に、毎年増加するところの百三十万人にも及ぶ人口の自然増加による国内食糧消費の増大、それから農地の減少、あるいは農業施設老朽化によつて生ずる収穫の減退、こういうものをあくまでも防止した上に立つて、しかも国内におけるところの食糧自給度を高めなければならぬという積極的な意欲の上に立つて、しかも食糧増産第一期五箇年計画を策定いたしまして、少くとも五箇年計画の将来においては、一千七百五十万石の食糧増産を行うという、一応の基本的態度を明確にしておつたわけであります。今年度政策の中においては、これらの積極的な意図というものは、ごうまつも現われておらないということを指摘したいのであります。ただ単にこれを弥縫するために食生活改善、いわゆる米食中心の問題を麦食にかえるというようなことで食生活改善行つて国内総合的食糧自給度向上させるというようなことを表明しておられるわけでありますが、ただ単に食生活米食中心より麦食にかえるというような考え方だけで、国内における食糧の総合的な自給度が高まるというようなお考えを、ほんとうに持つておられるかどうかということを、まずお伺いしたいのであります。
  4. 保利茂

    保利国務大臣 昨年の暮れに衆議院で議決せられました食糧増産並びに国民食生活改善に関する決議、すなわち衆議院一致のこれが意思でございましたから、従つて私といたしましては、この決議趣旨に対して、ぜひとも決議趣旨を実現いたさなければならないという観点から、予算編成に対しましても、私としては最善の努力払つたのでございますが、予算は、提出いたしておりまするような結果に相なつておりますことは、これは私の力の至らざるところとして遺憾に存じております。食糧増産が、単に農家経済向上、安定せしめて行くのみならず、自立経済を達成するという上から行きまして、その意義のきわめて大きいことは、芳賀さんのお話の通りでございます。私どもといたしましても、これに全力をあげなければならぬ。まず第一には、これは申すまでもございませんけれども農地条件改善して行く、あるいは干拓開墾等によつて新しい農地をつくり出すとともに、既耕地三百万町歩条件改善して行く。すなわち地力の回復と申しますか、地力改善ということが第一である。そこでその前提——これはむろん短日月にできるとも思いませんけれども全力をあげて農地条件改善して行くと同時に、この農地を、勤労において世界的な範と言われる日本農民の力によつて改善し、せつかく日夜耕作にいそしんでおられる農家の力が、十二分に増産目的を達して来るような農業技術改善がこれに伴うことが必要であると思います。私は開墾干拓等増産に対する力をむろん否定するものではございませんけれども、緊急に食糧増産を要請せられるその目的に沿うためには、既耕地三百万町歩生産力を高めることが必要で、それは土地条件をよくする、営農技術向上するということによつて増産をはかつて行くというねらいが、そのかぎではないかと私は考えておるわけでございます。これは、たとえば昨日表彰式等がございました米作日本一のあの事業等に見ましても、とにかく現在総平均は反収二石か二石一斗台でございましよう。戦前からしますと、よほどそれも向上して来ておりますが、かりにそれが二石五斗台に達すれば、一応米だけにしましても、七千万石というものをもたらして来るわけでございますから、この方向にもつと力を注いで行かなければならぬじやないかということで、予算上にも私どものそういう考え方の一端を出しておるわけでございます。しかしいずれにいたしましても、予算総額は御承知通りのものでございます。これによつて批判を仰ぐほかは、来年度といたしましては私どもとしては処置ができないことになつておるわけであります。御批判は十分いただかなければならぬと思いますけれども方向としてはそういうことに考えておるわけであります。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 私のお伺いしているのは、保利農政に対して、非常に性格的なものがない——ということは、無性格であるということを端的に指摘したいのでございます。無性格ということは、どこかに安易なものがあるのではないか、依存できる何ものかがあるのではないかということなのであります。結局麦食に依存するということを言われましたけれども昭和二十九年度麦類買上げ等の面において、どれだけ前年度に比較して大きな期待を持つておられるかということを、まず具体的にお伺いしたいのであります。昭和二十八年度においては、麦類を合せて約八百五万石の買上げをやつておるわでありますが、本年度政府買上げは、前年度と同様に八百万石の国内の麦の買上げをやるという計画しか持つておらぬのであります。そういうことにすると、食生活改善する場合においても、これは断じて国内におけるところの麦食に大きな依存をするということではないのであります。結局これは外麦に依存して、日本食糧需給状態を何とか持続しようということでお考えのように、私は考えるのであります。そのことは、何か今までの既定の計画として持つて来られた農政上における食糧増産であるとか、あるいは食糧自給度促進ということに対する意欲がずつと後退したように考えられるわけであります。ほんとうのお考えは、結局外麦に依存しなければならぬということで進まれると思うのでありますが、大臣の偽らないお考えがそこにあるかどうかということを、重ねてお伺いしたいのであります。
  6. 保利茂

    保利国務大臣 昨年の引続きます風水害、冷害等災害におきまして、両国会を通じて、食糧の問題を国会においても非常に御心配されました。そういう上から言つて、麦の増産——折から麦のまきつけ時期を前にしておりました時期的な関係もございまして、麦の増産に国は全力を注げという強い御要望、御意見のあつたことは御承知通りでございます。ただ結果におきましては、麦のまきつけ反別は増加をしておりません。昨年よりも増加をしていないで、多少減じておる非常に遺憾な状態になつておるわけであります。そこで、しやにむに——食糧増産はしばらくおいて、今日、外麦に安易に依存して行こうとしておるのは、無性格な現政府方針じやないかという御質問だと思いますが、今日外貨の最も大きい圧迫を来しております食糧を、何にせよ不必要に輸入するということは、決して許されもいたしませんし、できもしないことでございます。ただ麦食奨励食生活改善は、国会——衆議院の議決の趣意もその通りだと了解しております。ただ多量の外米輸入しておりますが、一体外米と麦との食糧価値はどうかといえば、これは人によつてむろん違いますけれどもほんとう価値認識をするならば、むしろ麦の方に価値があるのではないか、それに割の悪い、高い外米を買つて来ておるのを、同じ入れるならば、麦の方に転換をして行くことがいいのではないかというのが、私は趣意つたと思うのでございます。そういう上からいたしますと、まつたくその通りでございますけれども、しかし物の価値ということと同時に、お互いの長い食生活の習慣ということもまた見のがすことはできないだろう。麦の方がよいから、外米の方はやめますといつて、米の消費量をがたつと、手のひらを返すように落せるかというと、私はそうは行かないと思う。それにはまず麦食を奨励して、食生活改善して行く基礎条件を整えるということが、今日ではまず最大の急務じやないかと思う。そういう上から言いますれば、どうしても脂肪蛋白供給力をふやさなければならぬ。それを私は基礎条件と申す次第であります。従つてこの脂肪蛋白供給力をふやして行けば、これはおのずから麦に転換して行き得る。またそういうことは東北地方の実例を見ましても、そういう脂肪蛋白供給力の強いところには麦食が非常に普及して行つている状況からいたしましても、このきゆうくつな予算でございますけれども食生活の偏重を是正して行く基礎的な施策といたしまして、畜産振興に対しましては特段の力を入れて参つておる次第でございます。決して今日国際供給力の非常に豊富になつておる外麦に安易に依存しさえすれば何とかなつて行くというような考えは、私には毛頭ございません。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣はそのような否定的な態度を持つておられますけれども、これは本年度農林関係予算内容をつぶさに検討した場合においては、そうでないということが明確になつて来るわけであります。ただ問題は、日本農業は、その構造が世界的な農業の水準の上からだけ律しては割切ることができないのであります。日本零細農の現状からいたしますと、農産物の世界的な市場において競争するというような立場に立つた場合においては、これと対抗して闘えるだけの基礎的な条件を持つておらない。そこに日本農政一つ特異性としての保護的な政策が、どこまでも持続されなければならぬのでありますが、そういう点がことしは非常に放置されておる。たとえば食糧増産費内容について見ましても、原則としては新規事業は全然やらない。継続事業に対しましても、これを再検討して経済効率の低いものは中止する。それから小規模土地改良補助率を大幅に削減するというような、三つの原則の上に立つて行われるわけでございますがこういうことになると、日本におけるところの零細農というものは、ますますその力を失わなければならないということになるのであります。ここに問題がある。もう一つは、現在の政府がなぜ外麦に依存しなければならぬかということは、これはいわゆるMSAの問題とも重大なる関連があると思います。一九五四年のアメリカ小麦収穫予想は、大体十一億ブツシエルというふうにわれわれは聞いておるわけでありますが、そのうちアメリカ国内におけるところの需要は七億ブツシエルくらいであるし、さらにこれを世界市場に輸出する場合においても、二億五千万ブツシエルくらいを輸出し得るところの市場しかないのであります。そういうことになると、大体一億五千万ブツシエル程度は完全に過剰である。何とも処分のできない小麦アメリカには現に残つておるのであります。これが前年度からずつと繰越されたのを入れて、本年度はおそらく七億ブツシエルくらいの小麦処置に困る。大洋に捨てるか、火をつけて燃すかするよりしようがないものが、アメリカ農産物一つ過剰生産の形で、綿花もそうでありますが、現われて来ておるのであります。こういうところに問題があるのであつて、結局アメリカ過剰農産物一つ市場として、日本国内におけるところの食糧の絶対不足というものがそこに登場して来るわけでありますが、かかる関連の上に立つて今後の吉田内閣考えておるところの農業政策が進められるとすると、これは非常に重大なる危険がその中に包蔵されておるということを指摘しなければならぬのであります。もちろん輸入食糧補給金にいたしましても、前年度は三百億でありますが、ことしは九十億、結局二百十億補給金がいらぬというようなことになつておるわけであります。これを今年度国内米並びに麦の買上量並び輸入米麦等を達観して見た場合に、政府は二十九年度の米の買上げを一応二千七百二十二万石、麦類を八百万石、米の輸入が百十四万五千トン、麦類を百十四万一千トンというふうに見ておるわけでありますが、このほかにMSA協定によるところの五十万トンの小麦需給計画の中においては載つておらないように考えるのでありますが、この五十万トンの小麦というものは、決してアメリカがただでくれるのではなくて、これは当然円貨で払わなければならぬ運命になると思うのであります。MSAの五百五十条による場合においては、国際小麦協定価格よりも当然高く買わなければならぬということになつて来るわけでありますが、MSA協定の五百五十条によるところの小麦の値段は九十五ドル六十セントでありますけれども、現在の国際協定による麦価は八十ドルそこそこであります。こういうことになると、輸入補給金の面では二百十億去年よりも少いというような数字は出ておるけれどもMSAによるところの五十万トンの小麦を入れた場合においては、やはり百六十億以上の金がいるということになるのである。そういうことになると、輸入補給金の面においてもそれほど大きなプラスにはなつておらぬということが言い得るわけであります。このようにしてだんだんと日本国内に外国の食糧、しかもアメリカ余剰小麦がどんどん入つて来るということは、結局日本における農業を大きく圧迫するということにしかならぬのであります。そういうことが理由となつて、たとえば農林大臣は、麦の増産に対して非常に拍車をかけるというようなことを言つておられましたけれども、今年度予算の中においては、病虫害の防除費の中においても、麦類に対する分はおそらく計上されておらぬというふうにわれわれは承知しておるのであります。こういうような状態の中において、どうして食糧増産をはかつて国内における農産物自給度を高めることが可能な線に発展できるかどうかということを、われわれは危惧するわけであります。農林大臣は、食糧対策協議会を設けて、その協議会において今後の農政を検討してもらつて、その結論によつて今後具体的な政策を立てるということを申しておられましたけれども、二十六名のメンバーが出ておりますが、これらの食糧対策協議会にどれだけの期待を寄せていいか、その点に対してもお答えを願いたいのであります。
  8. 保利茂

    保利国務大臣 大体は芳賀さんのおつしやる通りですけれども、少し誤解があるのではないかと思う点は、来年度百九十六万トンの小麦輸入計画を立てております。来年の輸入食糧の大体の予算計画としましては、米が百十四万トン、小麦が百九十六万トン、大麦が百三万トンという計画でございますが、これはMSA協定がどうなろうと、とにかく食糧供給を確保しなければならないという見地から計画を立てておるものでございますから、もしMSA協定が成立をしまして小麦が入つて来るということになりますれば、これはこの百九十六万トンの中で考うべきものでありまして、百九十六万トンの外でMSA小麦を買い入れるというものではない、私はそういうふうに了解をしておるわけでございますから、そういうふうに御了解を願いたいと思います。  それから補給金が、なるほど前年度三百億、前々年度を埋める分として十三億か幾らある。来年度は九十億になつておりますが、二十億か二十五億くらいのずれは、この九十億円に加わるわけでございます。全体から申しますと、今日すでに小麦に現われておりますように、アメリカ余剰小麦日本農業を非常に大きく圧迫するような外観を呈して来ております。これは見のがしがたいところであると存じますが、米につきましても、日本以外の産地の生産力が高まつて来る、需要国においてもあるいは生産国においても、相対的に生産力が高くなる、すでに外米におきましても売手市場から買手市場転換をしつつあるという現象が、やがて米についても現われて来るという傾向は、はつきり見えておる。これが日本農業に大きくおおいかぶさつて来る。従つてこういうふうな国際的な農産物過剰時代に、日本農業をどう守つて行くかということは、今後の農政上のは非常に大きな問題であろうと私は存じます。国内農産物のコストを引下げて行くということは、むろん官民を通じて努力を払わねばならぬと存じますけれども、それだけで守り得るか、それは日本農業の実態からいたしましてとうてい守り得ない、そこに制度上の施策がどうしても必要である。そういう意味におきまして、昨年当委員会で非常な努力をいただいて成立させていただきました重要農産物価格安定法というものは、私は非常に大きな意義があると存じておるわけでございます。これはむろん今後の情勢によつて手直しもしなければならぬ場合もあろうと存じますけれども方向としては、やはり昨年の当委員会でやつていただきましたあの法の制度上におきましても考えて行かなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。なおこの食糧対策協議会は何をやるのだということですが、食糧管理をどうするかということはむろん政府責任でございます。そしてこれは責任がれで何か委員会協議会でも置いて、そつちが結論が出たらということで、責任がれで置いているというようなものでは全然ございません。どこまでもこれは政府責任においていたさなければならないことでございますけれども、しかし何せ食糧問題というものは、それぞれ一家言があるわけでございます。全国民一人として関係しない者はない問題でございますから、まずもつて国会における御議論に対して深く傾聴して行きますと同時に、政府部内におきましても、できるだけ広い方面からいろいろの意見を聞き取りまして、私といたしましては食糧管理の現状をどう改善して行くかということについて、まつたくこれは現状認識の上に立ちまして、何とか妥当な改善案を持ちたいということで対策協議会を内閣に置いていただいたようなことでございます。これを政府施策を進める方便として置くというような無責任考えは、私は毛頭持つておらぬのであります。その点は御了承願いたいと存じます。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの大臣のお話の中に、MSA小麦の額がきまつた場合においては、既定計画の百九十六万トンのわく内において処理されるものであるということがありましたが、そういうことになると、百九十六万トンの小麦というものは、八十ドル程度の安い価格小麦で予定しておるわけですが、MSAの方とすりかえるということになると、九十六ドルという高い小麦になるが、何を苦しんで、そういうひもつきになつアメリカの高い小麦とすりかえるのか、しかもMSA小麦を売つた代金は別に積立てをしておいて、その金は結局日本における兵器生産とか、そういう方面にしか使えないという条件のもとに置かれている、そういうへんな小麦を入れるために百九十六万トンのわく内ですりかえるというお考えはどうもふに落ちないわけであります。それらの考え方は、農政を担当する農林大臣としては、ちよつと正常なお考えとは受取れないわけでありますが、もう一回この点を確認したいのであります。  それから食糧対策協議会は、大臣の今のお話によると、それほどこれにたよつてつて行くわけではないというお考えでもありますけれども、先般の御発言の中にも、この食糧対策協議会の中において食管法を今後どういうふうに改正するかということも、これに期待を持つておるというような言葉もあつたわけであります。特に二月の六日かと思いますが、予算委員会において、——そこには農林大臣も出席しておられましたけれども、小笠原大蔵大臣が河野一郎委員の質問だと思いましたが、食管法というものはもともと生産者のためにできた法律ではないのであるけれども、最近はどうも生産者本位のような運用がされておるので、これは十分検討して改めなければならないということを答弁しておるわけであります。これは実に聞き捨てならぬ問題であつて、食管法というものは農民のために基礎を持つておらぬ法律であつたというようなことはわれわれには毛頭考えられないわけであります。大臣もその場に出席されておつたわけでありますが、あのような大蔵大臣の発言を聞いて、大臣はどのようにお考えになつておるか。最近の趨勢を見ると、日本農政というものは農林大臣が主管しておるようにわれわれは考えておつたが、どうも最近は大蔵大臣あたりが食管法はけしからぬとか、二十幾つかの農業関係の議員立法は全部改廃しなければならぬとか、農政の基本的なものは全部大蔵大臣あたりから発しておるというふうにしか考えられぬわけであります。これに対してわれわれは、党派を越えて農林大臣のために義憤を感じておるわけでありますが、こういう点に対して大臣はいかなるお考えを持たれたか、お伺いしたいのであります。
  10. 保利茂

    保利国務大臣 MSA協定が成立した場合に入つて参ります小麦の取扱い方は、先ほど申し上げた通りそれ以外に私は考えていないのであります。価格の問題はむろん協定が成立してみないとわかりません。具体的にこうだという責任を持つたことは、私は実際にタツチしておりませぬから、今日責任を持つて申し上げることはできませんけれども、ただ五百五十条の規定を見ますと、お話のような結果になる。そこでMSAの問題が起きましたときに、そういう形でもつてつて来れば、新たなる補給金もここに必要になつて来るわけでありますから、農林省としましては、そういう価格で入つて来ることは食管では取扱いかねるということを強く申し出まして、大体この点は両国折衝でかなりもんだところだと存じますが、今日私の了解しておりますのは、少くとも販売価格はこれはCCCから買い取るものだそうでございますが、CCCの販売価格は、国際小麦協定の値段と大体同じように取扱われるようになるであろうと期待をいたし、またそうなるだろうと存じておるわけでございます。そういうわけでございますから、その点は今日はそれ以上申し上げ得る材料を私は持ちませんが、ただ御懸念のような問題が起きますことを非常に心配しまして申し上げたわけであります。  大蔵省が農政にあまりに干与し過ぎるということは、これは財政をあずかる当局者として、大蔵省に予算編成を持たれております現制度のもとにおいて、いろいろ私どもの要求に対して、財政当局が全体の配分、按分からして文句を言うのはどうもいかぬというわけには無論参らぬ。これは当然のことといえば当然のことでありますが、ために農政の根幹が乱れて行くことはいけない。無論内閣としては、一体どういうふうな政策をとつて行くべきかということに総合的に来るわけであります。もちろん今日は政党内閣でありますから、内閣の背景をなす与党の意見というものが全体の政策の調整をやるわけで、これは御承知通りであります。大蔵省が何もかも一人でやつておるというようなことはあり得べきことではない。当然政府、与党の共同の責任においてこの予算を出して来ておるわけであります。
  11. 川俣清音

    ○川俣委員 ちよつと関連して。大臣に今のMSAの問題について一つお尋ねしたい。私どもは買入れ価格は大体二本よりないと思つておるのです。国際小麦協定価格で買い入れるのか、あるいは国際市場価格で入れるのか、これは二本よりないと思うのです。MSAによる強制的な三本建というようなことは、私は考えられないのですが、大臣はやはり三本建となつてもよろしいというようなお考えですか、どうもその点があいまいです。私はこの小麦は、いわゆる国際小麦価格協定によつて入れるのか、あるいは国際市場価格によつて入れるのか、どつちかでなければならぬと思う。ところがこのMSA協約に基いて、もう一本立てられるというお考えなのであるかどうか、立てられるとすれば、これは価格政策ですから非常に大きな問題だと思うのです。この点もう一度明瞭にお答え願いたい。
  12. 保利茂

    保利国務大臣 このMSAの問題は、ありのまま申し上げますけれども、私の方はMSAで入つて来ようと国際小麦協定価格で入つて来ようと、とにかく国民の必要とする食糧を確保するということだけが目的でございますから、できるだけ安い値段で買つて来るということを建前としていたしておるわけでございます。ただ価格の三本建とかおつしやいますけれども、これは今日でもアルゼンチンから買つている価格、あるいはカナダから買つている価格アメリカから買つている価格、みんな違うことは御承知通りであるわけですが、このMSAの問題は、先ほど申し上げたところまでくらいが、私の承知している精一ぱいのことでございますし、お話の点はむしろ食糧庁長官から申し上げた方がよかろうと思います。
  13. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。大体アメリカ市場価格は、現在ポートランド相場で立つておるわけでありまして、ポートランド相場のブツシエル当りの現在の市価から申し上げますと、ただいま芳賀委員がお話になりましたように、FOB価格で大体八十五、六ドルということになろうと思います。昨年度におきまするアメリカ政策は、従来IWAについて、カナダとの競争関係補助金を出しておつたわけでありますが、さらに一般的にCCCの払下げ価格につきましては、カナダとの競争関係からいたしまして、それに見合う払下げ価格を決定いたしておるわけでございます。従いましてMSAの場合におきましてそのCCCの払下げ価格といいますものは、毎日これは発表されておりまするが、カナダとの競争関係でIWA価格と同等の価格で輸出できるという形におきまして払下げ価格を決定いたしておるような次第でございまして、CCCから買いまする段階におきましては、われわれの了解といたしましてはIWAと同じ小売価格で取得できるというふうに、現在の段階においては了解いたしておる次第であります。
  14. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほど大臣の川俣委員に対する御答弁の中で、どういうふうなものであつて日本の国で必要な場合には買つてもかまわないというお話ですが、これは非常に大きな間違いではないかと思います。国内における絶対量が少い場合においても、なるべくひもつきのないすつきりしたものを、しかも低廉な価格で求めるというのが原則であつてMSAであろうと何であろうと、売つてくれるというなら喜んで買うというようなことであると、大臣の御発言には大きな誤謬があると私は考えておるわけでありますが、これは御訂正になられると私は信じております。MSAの問題は、わが党としては絶対受入れ反対ですから論議の外でありますが、余剰農産物を入れる場合においても、大臣が当初言われたように、粉食等に切りかえるという場合においての一つの要素は、やはり酪農の振興等によつて食生活の様式をだんだんかえて行かなければならない。ただ米を食わないで麦さえ食えばいいのだということであれば、これは今のような貧困な政治の中で放置しておけば、貧乏人は全部麦を食うようになるから指導しなくても改悪されるわけである。結局食生活改善するということは、経済的な面からいうと、米食をするよりもある程度割高になるかもしれない。こういうところに非常に問題があるわけですが、だから政府がもしMSA小麦を入れるような計画を立てる場合においても、そういうものよりもむしろ現物の牛を持つて来るとか、生きものを入れて、それが日本農業生産の力を高めるようなことをお考えになるならば、同じやるにしてもまだ点数は上だと考えられるけれども、余つて始末に困つておるものだけどんどん押しつけられて、それで感謝感激しなければならぬというようなことでは、今後の日本農政というものはなかなか進展して行かないのではないかというふうに考えるわけであります。  時間の関係もあるので問題を移しますが、ことしの食糧増産関係だけの費用を見ますると三百六十三億で、昨年の三百五十七億と大体同じでありますが、この仕事をやる場合において、先ほども申しました通り新規事業は行わない、継続事業に対しても経済効率の高いものだけを継続してやつて行く、そして小規模土地改良に対しては補助率を大幅に削減するという前提の上に立つておられるように考えておるわけでありますが、ここで一点お伺いしたい点は、昨年来問題になつておる内灘の軍事基地の問題であります。政府はこれを強制収用したわけでありますが、その代償として内灘の村民に対して、その背後にあるところの河北潟の干拓をやるという問題と、船だまりを設置してやるということを一つの交換条件にして、内灘村民こぞつての反対を無理に押し切つて強制収用をしたわけでありますが、これらの問題は政府が内灘の住民に与えたところの政治的な約束であります。おそらく政府は、その約束というものを履行せられるお考えであるというふうに考えるわけでありますが、ただ問題は、新規事業等をやらないという場合と、経済効率の低い事業は行わないという原則の上に立つて、内灘の干拓百三十町歩をやる場合においては、これは一反歩大体三十五万円ぐらいの経費がかかるわけであります。干拓事業は大体十五万円ぐらいを平均の限度として押えておるようでありますが、この約束を履行するために河北潟の干拓をやる場合においては、三十五万円ぐらいの経費がかかるということになるわけであります。こういうような厖大な費用のかかる干拓事業を、政府原則を破つて、あえてこれは約束であるからしてやむを得ぬというような形でおやりになる考えであるかどうか。しかもこの乏しい農林予算食糧増産費の中でこれをやるとすれば、これは問題が非常に重要性を持つて来るというふうに考えるわけでありますが、この河北潟の干拓に対して、大臣はどのようなお考えを持つておるか、また総理大臣じきじきの命令があつて、これはどうしてもやらなければならぬというような方針であるかどうかもお伺いしたいと思います。
  15. 保利茂

    保利国務大臣 MSAの問題は、いずれMSA協定が成立しましたあかつきには、国会で御審議を願うことになりますから、そのときにまたやつていただくと思いますけれども、とにかく必要でないものを買うのでなしに、今経済上の非常に大きな問題となつております外貨の関係からいたしましても、三十万トンにしろ、五十万トンにしろ、とにかくこの協定によつて、外貨を使わずして、円で買えるということは——しかしむろん価格が高くては問題が残りますけれども、大体妥当な価格であれば、円で買えるというところに非常に有利なところがあるのじやないか、その点私ども国民経済全体からいたしまして、反対すべき理由はないと存じておるわけでございますが、これはいずれ協定成立のあかつきにおいて論議されると存じますが、私どもはそういうふうに思つております。それから食糧増産、公共事業等は来年度新規事業を一切やらぬということは、この予算を編成いたしました節の政府の基本方針になつております。従いまして新規事業を着手するということは大体ないというふうに御承知置きを願いたいと思います。例の内灘の河北潟の問題につきましては、どうしてもやらなければならぬと考えておりますけれども、現地の調査はかなり綿密にする必要があり、いろいろの要素があるようでございます。従つて年度は今年度と同様に慎重に調査を継続いたす考えでおるわけであります。事業着手には至らないと存じております。
  16. 芳賀貢

    芳賀委員 河北潟の問題でさらにお伺いをしたいのでありますが、これは大臣も御承知通り、埋め立てによる干拓が三百五十町歩、それから地上げをする分が大体千三百三十町歩で、これは反当四万七千円ぐらいかかるわけです。これらの事業をやると、約十六億四千五百万円という金がかかるわけであります。これは日本においてもおそらく最大の経済効率の低い事業になるというふうに考えられますし、特に今年の農林予算というものは、バターが大砲に食われたというようなことを国民言つておるように、徹底的に削限されておるのであります。そういうような中において、この農林予算食糧増産費、公共事業費の形の中で、かかる異例な事業を行うとすると、これはまつたく筋の通らないことになるわけです。問題は、食糧増産の形の農林予算の中でこういうような無謀なことをあえてやるお考えであるか、あるいはまた行政協定等の別途の費用でやるとすれば、これは別でありますが、この問題は今後も非常に注目される問題になつて来ると思うわけであります。強引にあそこを接収したというその犠牲の償いというものは、当然内灘の農民に対して与えてやる必要はあるわけでありますが、このような矛盾がここへ露呈して来るわけであつて、今年は大体八千万円くらいの調査費等をつけておるようでありますが、しかし将来やらないとすれば、そういう予算は計上する必要はないのであります。たとえば今まで継続事業干拓の中でも、千葉県の印旛沼の場合においても、すでに十数億の経費を投入して、何らまだ実際の効果は上つておらぬのであります。今年は単に保全工事くらいの予算が存続しておるわけであつて、あの印旛沼の干拓の場合においても、将来あれがものになるかどうかということも全然わからぬのであります。そういう次々に変なものをこしらえては、また途中で放置するというようなことになるわけでありますが、これはもう少し良心的に解明する必要があると思うのであります。内灘の村民かあれほどこぞつて反対した土地を、強引に接収して、こうして可能性のないような約束を与えて、これは実現不用能になるような運命にあるわけでありますが、こういう点に対しても、これはMSAの問題と同じように、農林大臣一存のお考えには行かぬかもわかりませんけれども農林大臣の立場においてどういうような解釈をされておるか、重ねてお伺いしたいのでありすす。
  17. 保利茂

    保利国務大臣 河北潟の問題は、先ほど申しますように、食糧増産目的事業をやるといたす場合に、どういう事業施工をいたすべきか、技術上非常に困難な点があるようでございます。相当綿密なボーリング調査等もやらなければならぬ、そういうための調査は継続いたします。しかし来年度干拓予算の中に、事業費としては河北潟は考えていないわけであります。このことは重ねて申し上げます、
  18. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大臣に参考までに申しておきますが、こういうものはものにならぬということを専門当局は言つておるわけです。それをなぜやらなければならぬかというところに問題があるわけですね。だからこれは当然農林省の立場に立つて分析した場合においては、やるべきでないという答えしかできないのであります。問題は、内灘の住民に対して、河北潟の干拓をして、その代償地をやるからがまんしろということを強引に押しつけてあるわけです。だからそれを無理にやる場合においては、当然これは食糧増産関係の仕事ではなくしてすでに問題は行政協定の範疇に入つて行くような問題である、そういう明快なる判断を持たれるかどうかということを、私は農林大臣にお伺いしておるのであります。
  19. 保利茂

    保利国務大臣 それでございますから申し上げておりますが、食糧増産対策の事業としてこれを事業着手するためには、もつと綿密な調査をしてからでなければ着手はできない、こう申し上げております。ただしかし専門的にそういう対象にはならぬという結論が出ておるじやないかと言われますけれども、専門家はいろいろあるのでございまして、安くできるのだということを強く進言されている者もあるから、こういうものが出て来ておるわけです。決してしろうとが考えて取上げたわけでも何でもないわけで、これは御承知通りであります。
  20. 芳賀貢

    芳賀委員 これは吉田総理大臣の、いわゆるインスピレーシヨンによつて日本食糧増産干拓で行かなければならぬということで、去年あたりもオランダその他へだれか視察に行つたわけでありますが、ただ総理大臣の夢まくらに立つたような、神の啓示だけで日本農政を律することはできないと思うのであります。しかも八千万円の金がむだになるということがわかつてつて、なおこれをもう一回やらなければならぬ。そうしてそういう巨額な金を使つて、総理大臣にこれはだめでありましたというような答えをするということは、大いなるむだであるというふうに私は大臣に御忠告したいのであります。それで反当十二万円の工事費がかかるという印旛沼の干拓さえも、実質的に中止と同じような状態になつているので、それらもあわせて御考慮されるべきであるというふうに考えるのであります。  それから次に、小規模土地改良関係補助率を徹底的に削減されたわけでありますが、食糧増産の効率を上げるためには、何としても経済効率の一番高いのは小規模の土地改良、いわゆる既存の劣悪な条件の中にあるところの農地の生産性を高めるということが、非常に現実の問題としては経済効率が高いというふうにわれわれは承知しておるわけでありますが、これを削減しなければならなかつた理由をまずお伺いしたいのであります。これに重大なる関連を持つておるいわゆる積寒法を初め特殊立法が、このことによつて非非に大きな影響を受けておるということは、農林大臣も御承知通りと思うのであります。ほんとう経済効率を上げる、そういう増産効果の上がるところの仕事を促進さして、日本零細農の規模の中で苦悩しておるところの農民の生産性を高めると同時に、経済的な条件を緩和さしてやるということは、いわゆる二大眼目の上の農家経済の安定をはかるということにも帰納すると思うわけでありますが、どういうわけでこの小規模土地改良補助率を削減したかということをお伺いしたいのであります。
  21. 保利茂

    保利国務大臣 この小規模土地改良の必要性並びにその効果につきましては、私も前の委員会で申し上げておりますように、まつたく同様に考えておるわけでございます。来年度補助率につきましては、御指摘のようなふうにも見えるわけでありますが、これをこういうふうにいたしておりますのは、多少考え方が違つているというところにもあろうかと思われますので、補助率の問題は、ただいま大蔵省と交渉を続けておるところでございまして、まだ最終的に決定に至つていないのであります。
  22. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題は、まだ最終的なものでないというお話でありますので、そういうことになると、今後にある程度の期待を持てると判断していいかどうかということを確認したいわけでありますが、この問題は大臣も確認されている通り、非常に今後の食糧増産の上においても重大な影響を持つ問題であるので、最悪の場合においても、既存の補助率の程度はどうしても復活さすということに、最大の努力を払つていただきたいのと、そういう点に対しては、われわれも全面的に御支援を惜しまぬ考えでいるわけであります。  次に農家経済安定の問題でありますが、これはわが国の経済自立方向から見ましても、ただ問題を、農産物価格だけ高くすれば、それで諸般の問題が解決できるというふうには、われわれは考えておらぬのであります。価格の問題も重要でありますが、それと同時に農業災害等による社会的な保障の問題、それからまた農民に対する社会的ないろいろの保護政策というものが、両々相まつて進んで行くところに、日本特異性のある農業を保護することができると考えるわけでありますが、今年度価格問題等に対しましては、米価は早場米の奨励金を除いて、一本価格にするというようなお考えであるというふうに私は承知しているわけでありますが、その他麦価の問題であるとか、農産物価格安定法によるところの買上げ価格の問題等も、それぞれ農産物一つ価格政策の中に現われて来るわけでありますが、この場合において考えなければならぬ問題は、何としても農家の再生産を保障することのできるその線を、一応最低の農産物価格としての水準に置くというような、基本的な線をぜひこの際打出す必要があるのじやないかと考えるわけでありますが、こういう点に対する大臣の御構想をお伺いしたいのであります。
  23. 保利茂

    保利国務大臣 来年度の米の価格につきましては、予算上は、早場奨励金を除きましたものを、一応基本価格に織り込むという計画のもとに、予算は編成いたしているわけでございます。しかしこの実施が、はたして最善の方途になるかどうかということについては、さらに私どもも当局者として検討を続けて行く考えであります。農産物価格の問題につきましては、ただいま芳賀さんのお話のような線において、私ども努力を払つているつもりでございますし、また今後もその方向努力をいたして行く考えでございます。
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 次に行政機構改革の問題について、若干触れて行きたいと思いますが、今の行革の進行状態を見ますと、一番大きなしわ寄せは、何といつても農林省関係に来ていると思うのであります。第一段階の機構改革の問題で、たとえば統計調査部と食糧庁の合併の問題などは、一応現状すえ置きというようなことで、これは中止になつたように考えているわけでありますが、現在の農林機構等の姿の中においては、再検討を加えるような点も決してないわけではないと思うわけでありますが、今の政府考えている行政機構改革の進行状態というものは、ただ何でもかでも人員を削減すればいいとか、機構を縮小すればいいというような、画一的な方針でやつているように考えるわけであります。しかも一番抵抗の弱い農林関係の方へ、そういうようなしわ寄せが来ているということは、人員整理の頭数の配分の上から見ても、そのことははつきりわかるわけでありますが、たとえば一例を統計調査部等の問題にとつても、現在のわが国の政治を進める場合において一番基礎的な要素になるものは、どうしても合理的な、科学性のある数字であるというようにわれわれは考えるわけであります。特に農業政策を進めて行く場合において、その農林関係の生産、経済全般にわたるところの、的確性のある数字の問題とか、あるいはまた世界的な農業関係、あるいは経済関係等がどういうふうな状態になつているかということを判断する場合においても、統計という仕事は重要度がますます高まつて来るというふうに考えるわけであります。ただ問題は、強権供出をするような場合において、たまたま統計調査部等の機構を時の政府が悪用するようなことがあるので、これに対する国民の反感も非常に高いわけでありますが、これらの機構というものは、ますますこれを確立して、その値いのある仕事のできるような状態に持つて行く必要が大いにあるというふうに考えるわけでありますし、あるいはまた食糧庁の問題等についても、現在の自由党がかつてつたように、一切の農産物を野放しにするような状態日本の政治の形において現われて来るということは考えられないのであります。現在の政府の機構の中においても、やはり一つ計画性のあるところの、統制がされた食糧行政というものが存続さるべきものであるというふうに判断するわけでありますが、こういうような機構をみだりに圧縮するというようなことに対しては、十分具体的な根拠の上に立つて検討を加える必要があるというふうに考えるわけでありまして、農林大臣のお考えもまつたくそれと同一であるというふうに考えるわけであります。人員整理の問題等に対しても、余剰の人員を整理するということは、これは異論はないわけでありますが、末端におけるところの職員の作業の状態であるとか、あるいはこれが影響をもたらすところの生産農民との関連等の上に立つて、十分確心のあるところの態度をもつて臨まれるように希望してやまぬわけであります。それで、そういうような行政機構の改革問題に対する農林大臣の御決意のほどを承りたい。  もう一つは、農業指導事業、たとえば農業改良普及事業等の問題を取上げてみましても、本年度補助率等を三分の二から二分の一に削減して、それも地方平衡交付金の中に入れるとか入れないとかいうような、実に曖昧模糊たる形で農業改良指導事業等が行われるようなことに変貌しておるわけでありますが、こういうことは先ほど農林大臣が言われたような、農業面に対して集中的な積極的な技術指導、生産指導を行うという方針とはまつたく背反するのではないかと考えられるわけでありますが、これらの問題についていかなるお考えを持つておられるか、お伺いしたいのであります。
  25. 保利茂

    保利国務大臣 農産物を全部野放しにすることを自由党は考えたということですけれども、これは野放しという言葉の問題でいろいろ出て参りましようが、私はそういう考えはないというように思つております。行政機構の問題は、まだ行政改革本部でありますか、行政管理庁でありますか、起案をせられておるところでございますから、私どもはこれについてまだ何にも承知をしておりませんけれども、農林省の関係でよく問題にせられます食糧事務所と統計事務所と合せる、統合して能率を上げるようにという考え方は、私はこれは絶対に反対でございます。と申しますのは、これは私限りの考えでございますけれども、農林統計がとかく何か農林行政を推進して行くために、政治的に、作為的に用いられておるんじやないか、たとえば昨年の作況にいたしましても、いわゆる政治凶作というような批判を受けるということは、やはりそういう誤つた印象が、誤解のもとに出ているんじやないかと私は思います。統計はあくまで現状を正確に把握するという純粋の業務でなければならぬ。ところが一方において作況を調査し、その上において作況を捕捉して、その調査したものがこれを買い上げるというような、調査と実際の実務をやるところが一緒になつて農林省でやつておるためにそういう批判を受けるわけで、これは私は統計事務に当つておられる人たちから言えば、非常に心外なことだと思うわけであります。むしろこれを改善するならどうするかということが、機構上考えるべき問題であると思います。もし食糧事務所と統計事務所を合せるということになれば、これはまつたくその調査をする第一線と、買上げをする第一線とが同じものになつてしまうということになつて、現状から言えば逆の方向行つてしまうのではないか、(「その通り」「ヒヤヒヤ」私はむしろ必要とする各省の資料を集める、あるいは全体の国の現状を統計的に捕捉する事務は、これは各官署でやるよりも、まとまつた一つの統計機構がそこにできて、そうして各省が行政実務を能率的にとつて行く便宜を、この統計機構から受けるようにすることが、むしろ機構改革としては筋が通るのではないかということを、これは私限りでございますけれども、(「私限りじや困る」と呼ぶ者あり)強くそのことを考えております。そういう態度を私はとつておるわけでございます。そういう方向でやりたいと思います。機構の点についてはいろいろ問題があろうかと思いますけれども、これは改革案が出ることになりますれば、またそのときに御議論があろうかと思います。人員の整理につきましては、これまた人員整理というものは、いろいろりくつをつけましても、結局全体のバランスをどうとつて行くかという以外にはやりようがないのではないかということで、今日の整理案は一応できておるわけであります。  改良普及事業は、初めはああいうふうに大蔵省が乱暴な査定をいたしておりましたけれども、とにかく政府農業施策を末端まで滲透せしめる。特に先ほど食糧増産関係で申し上げましたように、とにかく農家の技術向上ということが、食糧増産から行きましても不可欠の要件だと存じますので、これはどこまでもやはり国が強くめんどうを見るという形でなければいかぬのじやないか。ただ今回の緊縮予算の編成にあたりまして、国の補助率原則として最高五割、二分の一を最高の補助率にする。あとは平衡交付金の中において、既往のものはめんどうを見て行くという上からこういうことになつておるわけでございまして、この点は政府全体の施策から私もやむを得ないかと存じておるわけであります。
  26. 足鹿覺

    足鹿委員 私関連しまして、大臣一つだけお尋ねしたいのですが、先ほど同僚の芳賀委員から、内灘の農民に政府が約束した干拓の問題に関連をしまして、一つ伺いたいと思います。それは大規模の干拓についてあるいはその他の農地の大規模な造成について、政府の間には農地開発公団の構想があるやに伝えられるのでありますが、事実そのようなことをお考えになつておりますか。
  27. 保利茂

    保利国務大臣 河北潟の問題は、着工をしてあとで設計変更をやらなきやならぬというようなことが起きないように、綿密な調査を来年度は続けるという方針をとつておるわけであります。  それから開発営団的構想を持つておるのか、それは大体こういうことに考えておるわけでございます。土地造成、農地の大規模改良、これはわが国の食糧増産計画いたしまするときに、第一に現在よりももつとふやして行く余力はないのか、農地をつくり出す余力はないのか、これを見るのは当然である。その余力はあるけれども、これに投ずる財政力がない。財政力の及ぶ限り農地の造成、土地改良等に財政力を用いて行く。しかし非常に大きい、とにかく何百億というような大きな金を要するものは、今日の財政事情では手取り早く着手できない。かりに増産計画だといつて着手をしても、これははなはだ恐縮ですけれども、有明の一千町歩干拓は、もう十数年の長きにわたつてつて、まだ今日も完成をしていない。こういうことで計画はいかようにも立ちますけれども、これを実際実現するということに非常に困難がある。それは結局財政力が足りないということになるわけであります。しかしながらもし外資を持つて来てそういうところを開発できる方途はないか、もしありとすれば、そういう外資の導入によつてそういうふうに日本財政力では手の届かないところ、また手は届いても、長年月を要しなくては開発できぬところは開発したらどうかということを、今日政府部内で真剣に考えておるわけであります。まだ具体的にはどうこうというところまで至つておりません。
  28. 足鹿覺

    足鹿委員 その問題ですが、外資を導入して大規模な土地改良あるいは土地の造成等をお考えになつておるようでありますが、その際一番問題となりますことは、先般の火力発電の借款の際にもよほど問題があつた。たとえば日銀を担保に入れるとかいうようなこと、また外資を入れた後においては、電力会社の事業計画や電力料金にまでその資本が干渉して来るというような、幾多の問題が火力発電借款の際にはあつた。いわんや今度直接日本の国土に外資を入れて大規模な開発をやり、あるいは農地の造成をやるというような場合は、電力の場合よりも、私は日本国民として非常に重大な問題が起きて来ると思う。従つて、外資導入をして大規模な農地を造成して行つたり、改良をして行く、そのこと自体には間違いはないでしよう。しかし経済原則からいつて日本政府がまかない切れないような、また日本経済力ではとうていなし得ないような大きな資本が、この農地造成なり、改良に投入された場合には、必ずそこに投資者の意思が一つの国土の開発にまで及んで来る。外資導入の場合に考ななければならぬことは、この屈辱的ないろいろな要素が必ずついて来るということで、ここにわれわれは非常に大きな問題があると思うのであります。その点について現在御研究になつておるということでありますが、大体の対象としてお考えになつておるのは、どういう事業なり、またどういう箇所が外資を導入してでも農地開発あるいは造成をやらなければならぬというのか、その目標、また農地開発公団というか、何かの一つの機構がそこにできると思うが、その機構の大体の見当、また外資を導入するならば、その相手はどこの国であるか、またその基本的な話はある程度進んでおるのかどうか、この点について大臣の御構想なり、今お考えになつておる点がありましたら、この際お聞きしておきたいと思います。
  29. 保利茂

    保利国務大臣 御意見につきましては、私も十分気をつけるようにいたしますが、さしあたりはこういうところが外資によつて開発せられるならばと考えますのは、たとえば問題になつております愛知用水でありますとか、八郎潟の干拓でありますとか、そういうようなところを早く手をつけたいというので、大規模な工事になるという点からそういうところを考えてはおりますけれども、しからばどういうことでどういうふうに開発して行くかという具体的なことは、まだ何もまとまつたものはございません。ただ特定の国から外資を入れて、それが国土の開発についてまでも大きな発言力を持たれて来るということは非常に危険なことであり、これは非常に傾聴しなければならぬところであると思いますが、現在考えられます一つの例は、たとえば世界銀行であります。御承知のように世界銀行は日本も出資をしておる銀行で、それが今日各国への投資銀行になつておるわけでございます。従つて、火力発電が融資を受けました世界銀行の例に徴しまして—これはだれが出資者になつておるにしろ、とにかくアメリカ一国だけの銀行ではなく、いわゆる世界銀行で、世界各国がこれに参加をして、共同出資によつて成立をしておる銀行でございます。しかし、その銀行の業務をいたしますのに、資金の回収ということはもう当然考えられるわけでございまして、その条件に合致しない限り、いくらこつちで希望してもできもしないことでございます。それらについて、まだほかにも方途があるのではないかということで研究はいたしておりますけれども、今この問題について御納得を得るようなまとまつた内容が、実はまだございません。大体考え方としては、早くこういうところを開発いたしたいと考えておつても、財政力の関係でなかなか手がつかぬというところを、何とかそういう世界銀行等の外資を導入することによつて開発ができたらという、希望の線を出ていないわけでございます。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 最後にお伺いいたしますが、最近の国会では、行政監察とか決算委員会等が中心になつて、汚職事件等が中心課題になつておるような状態でありますが、農林関係においても不明朗な問題が絶対ないとは言えません。たとえば黄変米の問題等につきましても、一石一万四百円くらいで輸入したものが四千六百円で払下げが行われておる。さらにそれが一万二千円ぐらいで処理されたというような実情も承知しておりますが、こういうような問題の今後の明確なる処理方針を伺いたい。あるいはまた麻袋の問題ですが、輸入米は当然麻袋へ入つて来るにもかかわらず、八百万枚もの麻袋をつくつてその処分にまつたく困つておる、こういう問題も決して明朗なやり方であつたと何人も言うことはできぬわけであります。麻袋の問題等も大臣は三月中には処分ができると言われたそうでありますけれども、この御処分に対しても相当御苦労が多いというふうに考えておるわけであります。  次に硫安の出血輸出等にからんで、その見返りとしてのあるいはバナナの輸入等による外貨の不当割当とか、これによつて生ずる不当利潤の問題、あるいはまた砂糖の輸入等の問題もそうでありますが、砂糖の輸入の場合においては、原料糖を輸入するということになつております。この粗糖を大臣実際にごらんになつたかどうか知りませんが、いわゆるざらめというものが粗糖なんであります。これはあえて精製糖にしなくても、一般家庭等において使用できないというのではないと思うのであります。しかも砂糖の輸入の場合においては、原料糖は一トン八十七ドル七十一セントくらいで入つて来るわけであります。これに二〇%の関税がかかつて、それに消費税が一斤二十三円五十銭でありますから、原料糖の場合においては、大体一斤が消費税を入れても四十六円二十八銭くらいで上るのであります。これは一般家庭等において危険だから使えないというものでは決してないと思うのであります。しかしこれを国内十九の糖業会社に配給して、ここで精製糖として製品化された場合における市販の値段は、大体一斤が九十円くらいになつておるわけであります。ここに厖大なる利潤の追求が行われておるわけであります。しかも現在の十九社の日産能力は六千四百三十トンくらいでありますが、最近稼働能力をまた増設する動きが出まして、二千三百七十トンくらいの増設が行われた関係上、八千八百トンの日産能力を持つわけであります。しかも昭和二十八年度輸入量は年間百万トン、今年度は大体七十五万トンくらいに押えるというような構想であります。そういたしますと、操業度は五〇%以下であるというふうに考えるわけでありまして、なぜ砂糖会社がこのように増設を行うか、その陰には砂糖に対する外貨の割当の問題等がからんで来ると思うのであります。十万トンの砂糖を入れた場合において、約二十七億の不当利潤が上る。百万トンの場合においては、二百七十億のもうけが砂糖を輸入して精製糖にすることによつて出て来るのであります。決してこれを不正であるというふうに断ずるわけではありませんけれども、こういうところにいわゆる国際収支逆調という要素が横たわつているということを、大臣も御承知願いたいと思うのであります。特にこの増設の場合においても、自由党の政調会長であるところの池田勇人氏が社長をやつている名古屋精糖のごときは、千八十五トンの増設をやつている。そういうことにして割当を少しでもよけいもらうようなことになつているわけでありますが、こういうような国民の目の届かないところに行われている、輸入砂糖をめぐるところのあくなき利潤追求の姿というような問題に対しても、砂糖を輸入食糧の一環として認められている場合においては、主管の農林省においても、当然これらの点に対して十分なる再検討が必要であるというふうに考えるのでありますし、もう一つは、このようにことごとくを精製糖にして家庭に流すというよりも、粉食に切りかえるというような場合においては、当然乳製品とか砂糖というようなものは、食生活の中においてその供給度がふえて行くというように考えられるわけでありますが、これらの点を総合して、農林大臣はどのようなお考えを持つておられるか。また聞くところによると、昨年の九月ごろ政府外米を台湾政府に対して五千トン貸してあるというようなことを承知しているわけでありますが、昨年度の水害、凶作により非常に国内食糧が不足しておつて、そしてやみの米価等が高いという場合において、何のためにビルマから買つた米を台湾政府に貸さなければならなかつたか、いまだにそれは返済されていないというようなことでありますが、それほどわが国においては食糧が余つて、蒋介石政権に米を貸さなければ保管に困るような状態であるかどうかということも、一応承知しておきたいのであります。  さらにまた黄変米の一部が南鮮に渡つたというような話も一部には流布されているわけであります。このことに対しては確認がなかなか至難でありますけれども、こういうような問題を国民が知つた場合においてどういう考え方を持つかということは、おのずからわかるのであります。農林大臣においては、これらの問題に対するお考えは一応きまつていると思うのでありますが、この点について率直なる御意見をお伺いしておきたいと思うのであります。
  31. 保利茂

    保利国務大臣 いずれも国民食糧に関する問題でございまして、特に麻袋、黄変米等につきましては、決算委員会におきましてかなり慎重な御審議をいただいて来ているわけでございます。何さま厖大な内地食糧、内地米麦、外地食糧を一手に扱つている食糧当局でございます。これを国民の利益のために扱つている中で、そういう疑いを持たれるような運営をしているということは絶対に許されぬわけでございますので、注意をいたしております。私が一番ここで心配をしているのは、黄変米の問題でございます。これはずいぶん食糧庁でも心配もし、批判も受けているわけでございますから、注意をいたしておりますけれども、たとえばこれはアルコール用だ、これは菓子ぐらいには使えるということで処分をいたしましたものが、やはり主食の用途に横流しをされる。本来主食にはできないからということで処分をしたものが、そういうところに流れて行く。これは処分先が悪いからだと言われれば、結果においてはその通りになるわけですけれども、黄変米の扱い方自体に私は割切れぬものがあるのではないかと思つておりますのは、それではあの世上非常にやかましくなります前に黄変米というものはなかつたのかと言えば、やはりあつて、そのまま事なしに配給されて消費をされた。ところが食品衛生法とかが発動されてこれは有毒だという烙印を押され、配給できなくなつておる。そして黄変の度の高いものはアルコール用とか、低いものはお菓子くらいにはできるだろうというようなところで処分をしておるわけですけれども、これは外米を南方から輸入しております状態が続きます限りは、度合いは問題と思いますけれども、ある程度入つて来ることは、やはり避けられないことじやないか。実際問題として、それじや人体に有害であるかどうかということは、まだほんとうに研究過程にあるのではないかと私は思う。たとえば京都大学の医学部で、人体実験までして、何ら人体に影響はないという報告も受けておるし、あるいはまた東京大学の医学部等では、動物実験をした結果、影響があるというような、実験過程にあるのですけれども外米輸入しておるところで、問題にしている国は日本だけになつているというわけで、これはまだ研究の過程にある問題である。しかし、ともあれ食品衛生法の現状のもとにおきましては、そういう状態であります。払下げをいたします分につきまして、黄変米で御批判をいただいておるのは、中間機関を通したのがいけないということですから、できるだけ実需者に処分をして——この実需者も、信用のできる実需者を選んで一応処分をするほかないわけです。しかし、そこから先のことは刑法上の犯罪になるわけでございますから、刑法上の犯罪を犯しても悪いことをするということ、これを絶滅することができるかというと、ここでとにかく注意を厳にして行く以外に道はない。そこに食糧庁が非常な苦心をしておることを、御了解願いたいと思うわけでございます。  それから砂糖の問題は、今日の為替の現状からいたしましても、問題が非常にあるようでございます。お話の点につきましては、食糧庁長官からひとつ御説明をお聞き取り願いたいと思います。
  32. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 台湾の問題につきまして、経過を申し上げたいと思います。昨年の六月に台湾に端境期がございまして、集荷の状況がよくなかつたために、外務省を通じまして日本側に、タイ米あるいはビルマ米の貸与方を申し出たわけでございます。御承知通りその当時は二十八米穀年度でございまして、集荷も二千八百万石程度でございました。われわれの方も向う側の言い分を聞きますと、二箇月か三箇月の間に等量のよりいい台湾米を返還する、こういうことでございましたので、一時五千トンを貸しました。これは五月から六月でございますが、八月に至りまして台湾米を等量返還してもらつたわけでございます。もちろん引取りの費用、輸送費用は、全部台湾政府が持つたわけでございまして、むしろわれわれといたしましては、費用をかけないでビルマ米と台湾米とが交換できたというふうに考えておるわけでございますので御了承願います。
  33. 井出一太郎

    井出委員長 本日はこの程度をもつて散会いたします。     午後一時四十五分散会