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1953-12-15 第19回国会 衆議院 農林委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月十五日(火曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 金子與重郎君 理事 足鹿  覺君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐々木盛雄君    佐藤善一郎君       田子 一民君    松岡 俊三君       松山 義雄君    加藤 高藏君       吉川 久衛君    井谷 正吉君       川俣 清音君    中澤 茂一君       安藤  覺君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局肥         料課長)    林田悠紀夫君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   柿手 操六君         参  考  人         (昭和電工株式         会社常務取締         役)      鈴木 治雄君         参  考  人         (宇部興産株式         会社常務取締         役)      水野 一夫君         参  考  人         (全国購買農業協         同組合連合会常務         理事)     島田日出夫君         参  考  人         (野村証券株式会         社専務取締役) 瀬川美能留君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 十二月十四日  委員川上貫一君辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長の指名委員に選任された。 同月十五日  理事平野三郎君及び安藤覺君の補欠として佐藤  洋之助君及び福田喜東君が理事に当選した。 同日  足鹿覺君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  臨時硫安需給安定法案内閣提出、第十六回国  会閣法第一六七号)  食糧増産に関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議開きます。  この際お諮りいたします。理事安藤覺君より理事を辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。なお委員の異動に伴いまして、ほかに理事が二名欠員となつております。この際これらの補欠委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め    佐藤洋之助君  福田 喜東君    足鹿  覺君 以上三名を理事指名いたします。     —————————————
  5. 井出一太郎

    井出委員長 臨時硫安需給安定法案を議題といたし、審査を進めます。  本日はここに御出席を煩わしました参考人各位より本案についての御意見を承ることに相なつておりますが、この際参考人各位にごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわらず御出席をいただき、厚く御礼申し上げます。御承知通りこの臨時硫安需給安定法案は、第十六国会政府より提出いたされ、爾来今日まで数次にわたつて審査を継続して参つたのでありますが、この法案が提出されました本年七月以来、相当期間も経過いたしておりまするし、客観情勢も幾分の変化が認められるようでもありますので、この際硫安生産消費の面に関係せられておる立場から、また第三者的な証券関係等から見た本案に対する御意見をも承りまして、この法案審査に万遺憾なきを期したいと思う次第であります。それぞれ各位のお立場からの忌憚のない御意見を期待いたす次第であります。  それではこれより順次御意見を承ることにいたしますが、時間の関係もありまするし、お一人二十分程度におまとめ願いたいと思います。まず鈴木治雄君にお願いいたします。
  6. 鈴木治雄

    鈴木参考人 ただいま委員長から御指名がありまして、硫安関係の二法案に関して意見を述べろというお話でございますが、私ども製造業者といたしましては、従来一番困りました点は、輸出に関しまして絶えず輸出価格が内地の価格と異なる。そういうときにいろいろ国内的にトラブルが起りますので、硫安工業は今後のあり方として、私どもはぜひとも輸出工業として発展させなければいかぬというふうに思つておりますので、この輸出国内内需との関係を合理的に割切りたいという考え方でございます。それをするのにはどうしても価格の問題が問題となりますので、私どもは円滑な輸出をするために、法律通つたあかつきには原価を調べられてもよい。経理の点につきまして、政府から調べられてもよろしい。そういう調査の上に立つて国内硫安価格を合理的にきめていただいて、そのかわりに生産いたしましたもののうち、余力のものはスムーズに輸出さしていただきたい。こういう考え方でございます。硫安のような基礎化学工業が、こういう自由経済の世の中に原価を調べられるということを決意いたしましたことは、われわれとしては相当な決意でございますが、そういう犠牲をあえて忍んでも輸出をスムーズにやつてこの硫安工業を、農村への肥料の安定を期すると同時に、輸出産業としてぜひ推進いたしたい、こういう考え方でこの法案に対しては、われわれとしては部分的にずいぶんシビヤーに感ぜられる点が多々ございますけれども、根本的にはわれわれとしては、困る点もいろいろありますけれども、こういう法案通つて輸出産業として推進し得るならば非常にけつこうじやないか、こういう考え方でおります。  大づかみの考え方はそういうことでございますので、何か御質問があればお答えいたしますが、私は製造業者の一人としてそういうふうに考えております。  非常に簡単でございましたが、また何か御質問があれば後ほど意見を申し述べたいと思います。
  7. 井出一太郎

    井出委員長 次に水野一夫君。
  8. 水野一夫

    水野参考人 ただいま鈴木参考人から大綱について申し上げましたが、それと重複いたすかもしれませんが、若干の意見を述べさせていただきます。  硫安は御承知のように、初めは外国から全部入つて来ておつたのでありますが、大正の初めごろぼつぼつ国内にも硫安ができ始めまして、数十年の歳月を経過いたしまして、ようやく戦前自給自足という程度まで伸びて参つたのであります。そうして終戦の当初におきましては、非常な設備の荒廃で、生産が激減いたしましたが、政府の御指導とわれわれ業界の努力とによりまして漸次復興いたしまして、ようやく昭和二十五年大体国内需要をまかなうことができる程度まで参つたのであります。その後なお生産は伸びて参りまして、二十六年、七年と参りますと、国内需要を満して輸出も相当量できるというところまで参つたのであります。これは国の重要な産業の発展という点からまことに喜ばしいことでございますが、しかしながら、硫安工業はここで大きな問題に逢着いたしたわけであります。硫安生産外国におきましても、やはり似たような経過をたどりまして、漸次生産が伸びて参りまして、われわれが輸出余力を持つころになりますと、欧州の硫安もまた相当な輸出力を持つて来たのであります。昨年国内に相当大きな滞貨ができまして、これをどうしても輸出しなければならない、輸出しようとすれば価格が非常に安い、いわゆる出血輸出をしなければならない。そうして出血がいやだから輸出をあきらめるということにいたしますれば、生産を落さなければならない。落せばコスト上つて、そのときよりも高い価格硫安を買つていただかなければならないという大きな困難に打当つたのであります。そこでこれをいかに解決するかということで、消費者生産者そうして国の貿易進展というような三つの大きな立場から、その利害を調整されて、政府御当局におかれてこの法案がつくられたのであります。  私どもこの法案を拝見いたしまして、この三者の利害現状においては最もよく調整されて、まずこの法案は妥当なものであると考えておるのであります。先ほど鈴木参考人から申し上げましたように、これは業者にとりましては非常に手きびしい点が盛られておるのでありますが、しかし消費者あるいは国の経済あるいは貿易というような立場からそれぞれ考えてみますれば、われわれは譲歩するところは譲歩しなければならぬという考えでありまして、この法案現状においては私どももこれを承認するのが妥当であるというふうに考えております。また御質問に答えることにいたしまして、一応この辺で……。
  9. 井出一太郎

    井出委員長 次に島田日出夫君にお願いいたします。
  10. 島田日出夫

    島田参考人 この法案に対する消費者考え方といたしましては、ことしの一月から数度にわたつて開かれました肥料需給対策委員会におきましても、また国会でも、衆議院の農林委員会、参議院の農林委員会でしばしば農民としての主張は申し上げておるのであります。要点価格低下需給の安定ということが一番大切なことでございまして、先ほど製造業者を代表されたお二人の方からお話がございましたが、何といたしましても、日本農民外国農民よりも高い肥料を買つているということは、これは非常に不合理なことである。但し硫安工業の実態をしさいに検討いたしますれば、日本石炭外国より非常に高い、あるいは金利が高いとか、その間に高い要素になるべきものが多々あるのであります。しからばそういうものは国の力によりまして、原料の値下げ確保努力する、あるいは豊富な資金を出して硫安工業設備を改善するなり、いずれにいたしましても自由に放任しておいては、今申し上げまするように、価格低下数量の安定ということが望みがたいのでありまするから、この際は国の力を導入いたしまして、価格低下需給の安定が焦眉の急務である、そういう点からこの法案の出現は歓迎すべきである。  法案の内容につきましては、今まで農民としての希望は、数度にわたりまして政府なり国会にも申し上げております。たとえば需給数量とんとんというようなことでは、非常に困る。一方において価格が公定されれば、その価格の公定され方なり、あるいはそれが年間を通じて一本であるか、あるいは月々の価格がきめられるか、これは今後の問題になりますが、数量とんとんでは、その上の方の、天井にくつついてしまう。従いまして、消費量の一割近い保留分国内にきちつと残しておいてもらいたい、というようなことも法案に出ておりまするし、また公定価格でありまするれば、売先につきましては、メーカーの自由な選択にゆだねられておりまするから、公定価格の場合に、農民の団体が買いたいというときに買えるように、譲渡の命令もできるようなふうにも相なつておるようであります。現在のところでは、大よそ考えられる点はこの法案に織り込まれておるようでございます。従いまして十二月三日の協同組合の大会におきましても、価格低下させるという方向で法的な措置をすみやかに講じてもらいたいという結論に相なりております。消費者法案に対する意向は大体以上のようなものに尽きると存じます。
  11. 井出一太郎

    井出委員長 最後に、瀬川美能留君にお願いします。
  12. 瀬川美能留

    瀬川参考人 私今御紹介にあずかりました瀬川であります。  メーカー消費者立場からいろいろ御意見の御開陳があつたわけでありますが、私は観点をかえまして、資本調達立場から、本法案に対しまして心から賛成申し上げる次第であります。と申しますのは、終戦来、この肥料工業、とりわけ硫安工業株式というものは、非常に日陰に置かれた株式であつて資本膨脹程度にいたしましても、利益率にいたしましても、あるいは配当率にいたしましても、他種産業と比較いたしまして非常に低位に置かれておつたわけであります。もつとも事業の性質上、国民生活に非常に関係の深い食糧増産に結びつくものでございますから、大きな利益を期待すべき事業でもありませんが、さりとて安定を必要とする事業でありまして、安定という意味におきまして、今までいろいろと時日を遷延いたしました本法案が今回提出されまして、そしてわれわれ第三者的な立場から見ましても、何となしに割切れない感じを持つておりました肥料政策の上に、はつきりとした方向がきめられたものという意味において、本法案に賛成するものであります。  御参考までに、肥料工業がほかの産業と比較いたしまして、その収益力あるいは配当率がどういう地位に置かれておるかということを申し上げたいと思いますが、その前に、最近多少証券市場肥料株というものが気を持つております。これは結論から申しますと、決して絶対的にこの事業がよくなつたという意味ではなしに、総体的に非常に収益力も安定して来たという点でありまして、春の決算当時に比べまして、九月の配当内需が案外伸びたということと、尿素その他の関連産業収益が非常によかつた、あるいはコストが下つたというような事情で、前期より業績が向上しているということは事実でございます。しかしながら、現在そういう状態であると申しますものの。その置かれておる地位数字の上で御説明申し上げますと、肥料工業十社の昭和二十八年上期の利益率は五〇・三%、五割三厘であります。配当率は一六・三%、一割六分三厘であります。それが下期に入りまして、利益率が五七・三%、配当率が一割八分という数字を示しておりますが、これを全業種の比較によつて見ますと、二十八年上期の四百七十社の平均利益率は六七・四%でありまして、平均配当率は一九・四%でありますが、それが二十八年の下期になりまして、利益率は六二・五%、配当率が一六・四%になつております。化学工業五十社をとつてみますと、二十八年上期の利益率が六八・三%、配当率が一七・四%、二十八年下期は利益率が七三・五%、配当率は一九・三%であります。製造工業は二十八年上期の二百九十六社の平均で、利益率が八一・二%、配当率が二一・六%、下期は利益率が八八・一%、配当率が二〇・二%であります。終戦後の資本膨脹率硫安九社で調べてみますと、昭和二十一年の資本金が十億七千三百万円、それが二十八年に至りまして八十三億四千万円、すなわち七・七倍になつております。これを東京証券市場上場会社全体について見ますと、二十一年は集団取引でありますが、全体の資本金が百四十七億であります。これが二十八年に入りまして三千六百五十八億、すなわち二四・九倍、約二十五倍に相なつております。肥料会社利益率配当率は、わずかに七・七倍になりました資本金に対する利益率配当率でございますから、現状において利益率配当率はなお見劣りしておるということが言われるわけであります。さらにこれを東京証券市場上場株式利回りを時価という観点から比較してみますと、肥料十八社の平均利回りが九・四九%でありまして、硫安会社だけにいたしますと、おそらく一割以上に相なります。中には一割三分くらいにまわつておるものもあります。電鉄十六社が三分七厘二毛、銀行信託が二十三社で四分七厘三毛、化学工業が七十二社で九分三毛、電気ガスが十三社で一割四厘一毛、全業種平均は五百八十六社で六・七七%、六分七厘七毛に相なつております。なお肥料関係株式利回りは高利回りに過ぎるということは言われるわけであります。今日なお資本構成の点から、非常に産業資本調達の必要に迫られつつある際でありますから、この際に安定する方向にいろいろ措置が講ぜられましたことは、われわれ資金調達の一端をつかさどる者といたしまして賛成する次第でございます。
  13. 井出一太郎

    井出委員長 参考人諸君の公述はただいまお聞き及びの通りでございます。質疑の通告がありますので、逐次これを許すことにいたします。佐藤洋之助君。
  14. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 委員長、今日は金融関係から興銀の川北さんと日銀の一万田さんをお呼びになるわけだつたのですが、御都合はつかなかつたのですか。
  15. 井出一太郎

    井出委員長 そうです。
  16. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 実は私は非常に遺憾に思うのです。設備近代化肥料会社能率の増進ということについては、資金が非常に大きな影響のあるものですから、ぜひ金融業者参考人としてお呼び願つて、いろいろ承りたいと思つたのでありますが、まことに残念でございました。     〔委員長退席足鹿委員長代理着席〕  それでは昭和電工鈴木さんにお尋ねいたしたいと思います。今、輸出本位というのでもないけれども輸出大分重点を置かれるようなお話がございました。さらに宇部の水野さんの御説明によりましても、お説の通り二十七年度あたり生産を見ると、全体の硫安生産が二百万トンくらいでございまして、一般の国内消費が百五十万トンくらいということであります。ところが、これは資料を要求したのですが、ただちに出て来ないのですけれども、台湾に対する引当てが二十五万トンということを聞いておりますし、最近朝鮮を含めた東南アジアで三十一万トンの引当があるということでありますから、これで五十六万トンになります。そうすると、国内需要が百五十万トンというと、国内需要に少し食い込むのですが、これはメーカー方面能率のいかんによつてはもちろんその不安はないでございましよう。そこで実は最近私も昭和電工を拝見いたしましたが、かなり合理化をおやりになつているようであります。たとえば、いらない酸素をガス会社にお売りになつて、窒素と交換するというような合理化をかなりやつておりますが、しかし昭和さんあたりでは生産能力がもつと伸びるのではないかと思うが、どういう点に隘路があるだろうか。すなわち最近東南アジア方面市場を脅やかしておるところのドイツの硫安のごときは、五十五ドルくらいで引合うということであるから、要するにコスト引下げだと思うのです。コスト引下げをするのにどういう点をにらみ合せなければならないか。本来日本国内物資の高い際における輸出というものが一番隘路ですから、この点を打開するのに、会社としてはどういうふうにこれを考えて行かれるかという点を、ひとつ鈴木さん腹を割つてお聞かせ願いたい。今お話のように、会社生産コストをあなた方の方で見せると言つても、われわれが見てもなかなかわからないし、いろいろ副業をおやりになつておるから、はたしてどういう点で原価高になつているかということは、法律できめてもなかなか算出がむずかしいと思う。われわれの方に出して来た生産原価というものはまつたく漠たるもので、各社ともあまり開きがない。われわれのしろうと目から見ても、非常に能率上つている会社と、あまり能率が上らぬ会社との開きは相当あるのじやないかと私は思う。たとえばかます一俵にしても、私のしろうと考えですが、百円程度開きがあるのじやないかと考えられるわけです。そこで今申し上げたような点におけるコスト低下をどういうふうにやつてつたらいいか、お伺いいたします。
  17. 鈴木治雄

    鈴木参考人 ただいまの佐藤さんからの御質問にお答えいたします。  佐藤さんのお話では、私が先ほど申し上げましたうちに、硫安工業を、大分輸出産業という面を強調しているが、そういう点はどうかというお話が第一にございました。実は私どもが考えておりますのは、もちろん硫安あり方は、日本農村へ安い硫安をよけいに、安定して供給するということが第一義だと思います。しかしそれを果すためには、どうしても増産をいたしまして、全体のコストを下げて行くということだと思います。増産する手段として、輸出をすることが増産を推進することになるという意味で、輸出を伸ばすことが即増産であり、即コスト低減であるという意味合いにおいて、輸出工業として推進することが、同時に日本の農家へ低廉な硫安供給するゆえんであるという意味合いにおきまして、輸出に大いに力こぶを入れたいというふうに思つております。  第二に、この間ごらんになりまして、昭和電工川崎工場能力が相当多いじやないか、それに対して、現実にはそれほど能力に呼応しただけの生産がないが、増産隘路は何か、同時にコストを下げるのには、会社は自主的にどういう手を打つておるのかということが御質問要点だと思いますが、現在私ども川崎工場は、能力年間大体三十五、六万トン程度ございます。しかしながらこの十一月の生産を見ますと、月に一万六千七百八トンという非常に少い数字になつております。これはもつぱら電力供給関係でございまして、その他の隘路はほとんどございません。従つて最初の、増産して、能力に呼応した生産を上げるのにどういう隘路があるかという御質問に対しては、私ども工場については、電力のより多くの供給ということがもつぱらの解決でございまして、その他の問題はほとんどございません。  従つて第三の、コスト低下自主的方法という点についてのお答えになりますが、第一には、やはり操業度を向上させるということが、何といたしましても、コストを下げる一番大きな項目でございます。現在私ども操業度は、年間大体五五%から六〇%ぐらいまでの間を上下しておりますが、これをぜひとも七五%ぐらいにはいたしたいというふうに思つております。御承知のように、電力供給が非常に十分でありませんので、その生産上つておりませんけれども、これは電源開発が進むにつれて電気供給も漸次楽になると思いますので、この二、三箇年のうちに何とか能力の七五%ないし八〇%程度のものを生産いたしたいというふうに思つております。  これはちつと横道になりますが、現在各電力会社が来年度割当制度の撤廃ということを言つておりますが、それは、今私が申しましたような増産に対して、相当心配の要素となりますので、これはお願いでございますが、この委員会の皆さんに、来年の硫安電力の面から減産にならないようなふうに、電力会社あたりにも十分御注意願いたいというふうに思います。  それから電力以外の項目コスト低減に対してどういう手を打つているかということについて二、三申し述べたいと思います。硫安企業自身としては、戦後努力を払つて参りまして相当合理化をやつておりますが、なお資金が不足のために十二分の合理化ができておりません。そこで私ども工場について見ますれば、最近流動焙焼法という新しい方法がございまして、そういうものを取入れることによつて硫酸の費用を安くするとか、あるいは関連的な合成樹脂をやるとか、あるいは多角的な肥料をやるというようなことで関連費を下げるというような問題、それから合成塔をもつて理想的に改造するとか、あるいは電解槽極板を改造するとか、そういうようないろいろな項目がございますが、そういう項目をいろいろ拾いまして、約二十億程度のものを川崎工場にさらに注入いたしまして、そういう資金をなるべく安い金利でお借りして、そして硫安トン当り約二千円くらいのコストを何とか引下げたい、こういうふうに思つております。  その他の点は、これはもつぱら石炭とかその他硫安企業以外の合理化にまつ部分が多いわけでございます。硫安自身合理化方法としましては、今申し上げましたように、二十億程度資金を入れて、トン当り二千円程度コストを引下げたいということと、電力供給の増加を期待することによつて操業度を引上げてコストを引下げたい。そしてできるだけ国際価格に近づける努力をいたしたい。しかし硫安企業内のみでの努力では、どうしても国際価格にぴつたり一致するというわけに行きませんので、やはり石炭とかコークスとかあるいは硫化鉱とか、硫安企業の周辺にある硫安コストに及ぼす合理化も、並行的にやはり必要じやないか、こういうふうに思つております。大体こういう方法コスト引下げ努力しつつあるのでございます。
  18. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 わかりました。水野さんどうですか。
  19. 水野一夫

    水野参考人 鈴木さんの方は電解法でございまして、私の工場はガス法でやつておりますので、共通の事柄が多いのでございますが、多少違つている点を申し上げてみたいと思います。ガス法におきましては、高い電力を今使つてはおりますけれども電力面から来る隘路というものは電解法ほどきついものではございません。現に私の方の工場では、操業度能力に対して八〇%くらい出しているのであります。これは御承知のように、ガス法は、電力が電解に対しまして約四分の一で済むわけであります。と申しますことは、一定の電力で、ガス法でありますと、電解で一トンできるところが四トンできるというようなことになつております。そのために、電力から来る生産低下ということはむろんでございますけれども電解法ほどではございません。しかしながらガス法の悩みは石炭が高いということであります。石炭が戦後他の物価に比べて相当割高になつておりまして、これが日本産業にとつての大きな問題であることは御承知通りであります。この影響を大きくこうむつておるものがガス法による硫安製造業であります。これを下げると申すことは、これは硫安工業自体の力の及ばないところであります。それではガス法においてはどういうことで今後コストを下げて行くつもりかという点を申し上げますと、何と申しましても日本硫安工業設備が古くて、多々改善の余地があるのであります。しかしながらこれをいたしまするのには、相当まとまつた大きな資金を要するのでありまして、この低利な安定したまとまつた資金を国家の力で融通していただければ、相当程度コスト引下げができるのでありまして、この点につきましては、本年の初めごろから審議されました硫安対策委員会で十分論議が尽されて、その結論も出ております。各社ともそれぞれの計画を持つておるのであります。ただ現実の問題といたしましては、その資金がなかなか手に入らない、思つた何分の一も入らない。そうしてまたその金利も期待したほど安くなりそうでないという点で、これが画餅に帰しやしないかということを心配しておるものであります。
  20. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 大体御両所のお話を承ると、コスト引下げ生産の増強というもののねらいどころは、要するに昭和さんの場合ならば、電力を安く豊富に供給してもらう。今一円幾らですか。
  21. 鈴木治雄

    鈴木参考人 一円ちよつと出ております。
  22. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 宇部さんの場合はコークスですね。一トン一万円くらいする。そういうような原料の高いためと、それから一面また今お話の御両所の共通面は、資金面のようであります。私も実は二、三の硫安製造会社を視察させていただきまして感じたことは、資金操作にかなりな苦しみがあるようです。これは会社の名前を一々言つては何ですが、ある一つの会社は、三十数億円の借入金を実に三十箇所の銀行から借りておる。しかも相当利息が高い。これの操作に日なお足らずという状況である。だからせつかく利益率上つて来ましても、五〇%そういうようなものにとられてしまうということであつて会社の業績が上らないというような状況をつぶさに私は視察をして来て痛感をしたのです。だからネツクである安い豊富な資材の入手と、それから資金を流してもらつて利息を安くする。これはわれわれも考えておる。きようは実は興銀の川北さんが見えたら、その問題について十分問いただして、将来のいろいろな援助をわれわれ側面的にやらせようと思つたが、あいにく資金関係の人が見えないので、野村さんから証券界として側面的な観察を今承つたのですが、これは肥料界としては漸次立ち直つて来たことは事実であります。配当も二割、一割七分五厘くらいでありますから、すでに立ち直つたことは事実であるけれども、しかし問題は今お話のように、生産を上げなければコストが下らぬ。もちろん国内需要だけじやないから、輸出をするんだということになつて来る。そうすると、これをわれわれが考えると、ことに消費者立場から考えると、六十一ドルあるいは六十二ドル、七百七十円、八百円くらいのところで輸出しておる。一方消費者に対しては九百円前後で売つておるということについては、どうしても普通の一般消費者は納得行かない。出血戦術だと言つても、出血に行つてない。これが政治のやつぱり一つのデマゴーグになつて資本主義はこんなことを言つておるが、輸出出血して国内の農家からしぼり上げるじやないかということを言われる。ここに非常なる問題点があると思う。しかし現在輸出の振興策としてはいろいろあるでしよう。原料割当制度の問題とか、あるいは報奨リンク制とか、特別振興外貨制などがある。これらの特別制度は輸出実績に応じて特定商品の輸入権を持つ。これに硫安が一役買つて来たわけだ。最近台湾から十六万トンに対するバナナの輸入の状況というものを聞いた。これを見てもバナナは三倍こつちへ来てもうかる。こういうような特定商品の輸入権を一つ持つというようなことで操作して行くことについては、これは不健全なことです。だから一律一〇%の外貨なども、特別な割当制によつて業者輸出意欲を刺戟することに実際使う、こういうことは考えられない。物価のじり高傾向にある日本においては、どうしても国内コストを引下げるということが一番重要な問題だと思うので、今の言われるところはわれわれは承知しておるのです。硫安界においては、現在大体二百万トンの生産であるが、二百七、八十万トンくらいは可能であると見るのですが、どうでございますか、鈴木さんからお答え願いたい。
  23. 鈴木治雄

    鈴木参考人 今の能力は、ここへ柿手部長もいらつしやるが、大体二百七十万トンくらいの能力かあると思いますが、稼働率の見方でありますけれども、二百七十万トンは困難だと思います。電力とかその他の条件が充足されれば、二百五十万トン程度生産し得ると思います。
  24. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 私はあまり深く掘り下げるのも何ですから、この程度にとどめておきますが、要するに消費者側としての島田さんがいらつしやるが、輸出をすでに五、六十万トンやつておるのです。台湾二十五万トン、東南アジア、朝鮮で三十一万トン、そうすると五十六万トン、これから見ても幾らか国内需要を脅かされる状況にあるのです。やつぱりこの法案のねらいどころである、ある程度数量は確保しておく、十五、六万程度のものは確保しておくということは、需給調整の面からいつて必要じやないか、これに対して政府がどういう施策を打たれるか、いわゆる金利とか倉敷というものの裏づけをするということについて、いわゆる需給調整の関係から、消費者側としてもつとつつ込んで島田さんからお話を願いたいと思うのです。
  25. 島田日出夫

    島田参考人 ただいまの佐藤さんのお話通りでございまして、われわれの立場からいえば、まず内需が優先でなければならぬ。従いまして、かりに生産が増加いたしまして輸出が行われたという場合でも、内需が脅かされないということが絶対条件になつております。法案におきましてもその点を深く考慮されまして、内需を約百七十万トンと見て、その一割を国内に保留させよう、こういう制度になつておりますが、その保留の仕方につきましては、ただいまお話のように、保留させたものは政府の命令によらなければそれを売り渡すとかあるいはそれを消化するとかいうことはできないのでございますから、保留しておるものにつきましては、その団体の金利、倉敷はもちろんのこと、品いたみその他につきましても、十分に政府の考慮が望ましいのでありまして、これはしばしば申し上げておるのであります。問題はそういう点と、一方において政府がそういうように損失その他につきまして十分に考慮された場合に、逆にその保留分の放出の仕方が非常にきゆうくつになつては、これは消費者にとつて、その損失を補つてもらつたという恩恵にもまさる損失が起り得ることも考えられるのでございます。しかし保留分の放出の仕方なり消費の対策は肥料対策委員会の議を経てということになつておるのでありますから、その肥料対策委員会で良識をもつて御判断があろうかという点に期待をかけておる次第であります。
  26. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 今の保留分ですね、これは価格の下落あるいは荷いたみというようなことがあるから、なかなか技術的に困難でございましよう。その点の事情はわかりますが、今申し上げたような一割程度のものを確保するということは、われわれはこういうように輸出の旺盛になつて来る場合には必要じやないかということも考えておりますから、この点は強く要望したいと思います。それから今鈴木さんも大いに原価を出すと言われましたが、しかし肥料会社原価計算というのはなかなかむずかしいと思う。底値なんというものはとてもわからぬ。非常に副業が多いので複雑であるし、各会社とも多岐にわたつているのですから、この原価計算をして行くということには非常な困難があると思います。この点についてはどの程度原価であるかということを探つてみたいと思いまして、ちよくちよく私は各会社を拝見して、だんだん見当もついて来ておりますが、これはなかなか重大な問題であります。  今出ておりますこの法案に対して、どういうふうな行き方で行くかということについての業者としての御両氏の話を承りまして、私も大体においてわかりましたので、私の質問はこの程度にしておきます。
  27. 足鹿覺

    足鹿委員長代理 川俣清音君。
  28. 川俣清音

    ○川俣委員 私は主として野村証券の瀬川さんに、証券業界から見た硫安業界の将来の見通しというようなものをお尋ねいたしたいと思います。  特に証券業界では、いわゆる資金集めをやつておられる手前かどうか、最近硫安業界の成績が向上して将来が明るいということが、大体証券業界の持つておられる見通しのようであります。これは資金のやりくり、あるいは株価維持のため、あるいは操作のための宣伝も含まれておるかもしれませんが、そう無責任な宣伝でもないと思いますけれども、将来が非常に明るいというのは、どういうことをもつてこう見ておられますか、この点をお聞かせ願えれば幸いだと思います。
  29. 瀬川美能留

    瀬川参考人 ちよつと私の先ほどの説明が不徹底だつたと思いますので、そういう質問が出たかと思うのでありますが、硫安工業が先が非常に明るい、非常にもうかるという見通しは持つていないのであります。これは現実の利回りにおいて、はつきり一割以上の会社もあるというわけで、ただ最悪期を通り越して安定の方向に向つたという程度の見通しを持つておるわけであります。たとえば電力事業あたり利回りを見ましても、一割五分配当いたしておりますのは額面すれすれ、しかも毎増資時期に二割ずつ無償交付をやりまして額面すれすれになるのと同じような意味だと思います。特に事業の性質上非常に公共性のある事業だけに、大きな収益は期待しないが、しかし安定の方向に向つている。しかも先ほど申し上げましたように、非常に資本調達が遅れているというところで、ほかの事業との利回りのパリテイの上で幾らかずつ明るい方向に向つている、そういう見通しを持つておるわけであります。
  30. 川俣清音

    ○川俣委員 実は会社の操業率等について証券業界の御意向を伺いたいのですが、そのことはあとにいたしまして、先にもう一つ重要な点でお尋ねしておきたいと思います。  最近西ドイツの硫安の品がすれから、世界的な硫安需要の増加が出て参りましたので、日本硫安に対する海外の需要は大分増加しておるようであります。こういうことを証券業界といたしまして相当大きく見ておられるのじやないかと思うのです。相当期待をかけられておる点が現われて来ておるのじやないかと思うのですが、こういう点から見まして私は、どうも一つふに落ちないと申しますか、私どもが重大に考えさせられておる点があるわけです。それは海外輸出が旺盛になつて来たから硫安界というものは将来見通しが明るいのだというような説を、確かに一部でとつておられるようです。どうも証券業者もこれを支持しておられるようですが、これは単なる貿易の奨励という観点から見ればそうとれないこともないと思うのですが、問題は、それ以上に二重価格の弊害があるということに対して無関心じやないか、こう思うのですが、この点についてもつと御見解を承りたいと思うのです。今ではもちろん輸出が必要でありましようけれども、二重価格制をとつた輸出というものが、日本の将来の金融の上に、貨幣価値の上にさだめし大きな影響が来るであろうということが想像されます。こうなるとこれは大きなインフレになりまして、貨幣の不安定が来ると証券業界としてこれ以上大きな打撃はないと思います。むしろ破綻がそこから来るのじやないかとも思われます。これは私ども国内価格輸出価格の間にあまりに開きが大きいということは、将来十分警戒しなければならぬじやないか。出血輸出の損害を過大にいたしまして輸出をにぶらせて来ておる一面、またこれによるところの影響が将来だんだん露骨になつて来るのじやないか、特に私どもから見ますと、きわめて狭い輸出奨励策を通産省はとつておられるように思うのです。これに対しては証券界が警戒心を持つておられるかどうかという点です。これはとかく当事者であります通産省の肥料部等は、輸出というと非常に国家的な価値のあるものだというように、何か単純にお考えになつておる向きがあるようなんです。     〔足鹿委員長代理退席、委員長着席〕 ところがこういう狭い奨励策がとられますと、先ほど申し上げましたように、将来インフレの大きな要因となりまして、平価の切下げが起つて来るのじやないかということを非常に憂えるのですが、そういう心配はないものでしようかどうか、私はあるという説なんですが、瀬川さんはないというふうに思われて大いに貿易を奨励されておるのかどうか、二重価格による奨励というものは危険じやないかと思うのですが、いかがでしようか。
  31. 瀬川美能留

    瀬川参考人 ごもつともな御意見でありまして、二重価格自体は、いわば対外的な平価を切り下げておることは事実であります。証券界といたしましても、先ほどメーカーさんあたりのいろいろ御説明のように、現在の設備が六〇%程度の操業しかやつてない、それは電力とかそのほかいろいろの制約面があるというわけであります。同時にまた設備近代化という点も将来考えなくてはいけない、証券界の評価というものが、安定した肥料工業の利まわりの上に、戦前と違いまして、ほかの産業と比べて非常に大きな開きを持ちつつ、総体的に幾らかずつそれを訂正しておるという点は、十分に御懸念の点を考えていることでありまして、ことに将来二重価格制度が続けられて、平価切下げを招くというようなことがありますことは、これは国民としても、われわれ証券界としても、そこに御承知のように非常に大きなきつかけが起るということであります。二重価格制度は暫定的な処置であります。やはりあくまでも、方向としては一本に行く努力であるというふうにわれわれとしても見ておるわけであります。
  32. 川俣清音

    ○川俣委員 そういたしますと、私らが心配しておる通り証券業界も御心配になつておる。まつたくこれは一致なんです。われわれ以上に証券業界なり金融業界はおそれられておると思う。そこでお尋ねしたいのですが、そういう点からコストを引下げて行かなければならない。ところが現在いろいろな会社の、日本経済新聞にいたしましても、あるいは山一証券あたりの株の見通しなどについても、何か輸出が非常に旺盛になつて来たからすぐ好転するんだというような、これは宣伝だろうと思うのですが、資金繰りの宣伝のためにこういうことをやるのですか。あなたのような御懸念があると、そこまで行きそうにないように思うのですが、これはどういうわけでしようか。  もう一つは、一体操業率といいますか、実績が上つておるのか上つていないのか、ほかの機械工場ですと非常に把握しやすいのです。今昭和電工さんも操業率が五五%ないし六〇%だと言つておられますけれども日本経済新聞社によると四九%、これはどこから来るかというと、結局設備能力をどこに見るか。実績はこれはどこも間違いないのです。今鈴木さんは年額三十五、六万トンと申されましたが、これは三十四万トンと計算して四九%になつておる。三十六万トンぐらいですと、もつと操業率が下つているかつこうになると思うのです。一体ほんとうの能力が三十万トンなのか、三十六万トンなのか、私はここに非常に疑問があると思う。操業率が悪い悪いと言うけれども、実際どんなにフルにやつても三十万トンより能力がないのかもしれない。ある部分は三十六万トンあるが、ある部分は三十万トンしかないのかもしれないと思う。そうでなければ、操業率が悪いという見方がどこから出て来るかということになつて来るのです。証券業界では、稼働率と申しますか、実績と申しますか、六〇%程度と見ておられるようですけれども、実際もつと上つているのではないでしようか。これは全体が部分的にそろつていないというところから、ある部分の資金やりくりのために、もつと露骨に言うと、はなはだ失礼ですが、どうも資金がなかなか困難であるから、この資金をかり集める。これだけの能力にするのだ、こういつて資金集めをされているけれども、それだけの能力を発揮するだけの方面にその資金を使われないで、従つて使われないからそれだけの設備能力が完全にできてないんじやないか。どうもそういう点も臭いように思うのですが、瀬川さんあたりどういうふうに見ておられるのですか。
  33. 鈴木治雄

    鈴木参考人 能力の点が非常にあいまいだ、昭和電工鈴木は、川崎工場能力が三十五、六万トンと言つたけれども、実際はもつと低いのではないかというような御質問のようであります。これは実は通産省で各工場能力の査定をやつておりますが、私ども工場について先ほど三十五、六万トンと申し上げましたのは、今年の豊水期の一番順調な時期に、川崎工場では一日千トン以上出た日が五、六日ございます。一日千トンということは、三百六十五日と見まして三十六万五千トン、しかしながら修理期間を若干見ても、一日確実に千トン出た日が数日ございますので、電力がフルにちようだいできれば、三十六万五千トンあるいは三十五万トン出るということは、架空の数字でありませんので、そういう受入れ態勢はあるという意味で、能力としては三十五、六万トンということを申し上げたわけであります。現実にそういう能力に呼応した生産量を上げた日が現存しておるという点から実証的に申し上げたわけであります。しからば年間にそれだけ出るかということになりますと、渇水期あたり電気が非常に少いわけで、出ないのですが、豊水期に順調に二十四時間中スムーズに電気供給されているような場合を想定いたしますと、能力としては三十五、六万トン、これは誇大なプロパガンダでもなければ何でもない、実証的にきわめて冷静な数字でございます。
  34. 瀬川美能留

    瀬川参考人 今おつしやつた通りと思いますが、私のお答えする分野といたしまして、たとえば輸出が出たから証券界が、さあこれからよくなるのだというふうな誇大宣伝があるんじやないかということについてお答えしたいと思いますが、われわれは輸出といえども輸出の内容について非常によく注意いたしております。たとえば一部の兵器産業出血受注が予想されました場合、株価はそれを敏感に反映いたします。今回の硫安輸出が出ましたこと、あるいは輸出奨励、そういう奨励とよくにらみ合せながら輸出というものをどの程度に考えるかということを評価して行くのがわれわれの立場でありまして、決して輸出が出たから会社がよくなると単純に考えているわけでないのであります。
  35. 川俣清音

    ○川俣委員 もちろん最初申し上げたように、二重価格による大きな弊害がありますので、あぐらをかいて楽観しておられるとは思いません。しかしながら、輸出が旺盛であるというと、結局国内価格が引上げられて行く、そこから何か肥料会社が安定するのだというような印象を持つ。いずれの会社年鑑あるいは経済雑誌等を見ましても、みなそういう方向をとつている。それは瀬川さんがとつているとは申しません。概して、そういう輸出による赤字は、国内によつて相当カバーされて行くのだという建前をどうもとつておられるようです。そこで私は問題にして今お尋ねしているのですが、この点は微妙な点もあると思いますから、これ以上つつ込んでお聞きすることは、いろいろ株を操作されております瀬川さんとしてはなかなか言い切れない点もあるだろうと思います。瀬川さんの一言によつて、きようあたり株の値段が上つたり下つたり——というようなことはないとは思いますけれども、そういうことが絡んで来ると思います。そこで別な角度からお尋ねしたいと思いますが、日東化学は、営業案内等を拝見いたしますと、九八%ないし九八・七%、本社は非常に将来性がある、非常に能率上つている、こういうようなことが書いてある。それから最近の電工さんのものを手元に持つておりませんけれども、おそらく資金のやりくりをするときには、七五%なり七六%の操業率を上げることができるのだというようなことで、証券業界あるいは金融業界あたりに申入れされて、そうして資金のやりくりに御奔走になるのではないかと思いますが、五五%とか四十何パーセントでも瀬川さんあたり資金のやりくりをしてやろうとお考えになるのですか。やはり七〇%くらいなければ不安だということになりはしませんか。どうですか。
  36. 瀬川美能留

    瀬川参考人 非常にデリケートな、つつ込んだ御質問で、御回答がむずかしいのでありますが、今のわれわれの証券市場だけの立場から判断申し上げますと、先ほど申し上げましたように、非常に株式市場資本金が過少だ。過少であつて、しかもそれが額面から二、三十円すれすれないしその程度の市価しか持つていない。ということは、やはり収益力の裏づけになつておる内容なり設備の稼働度を相当シリアスに考えた上で、われわれがたとえば増資の相談に応ずるというわけでありまして、しかしそこにおのずから四〇%なら不安で、六〇%なら安心だというふうな機械的なことも考えられない。四〇%でも、先行きの見通しとか、あるいは事業の性格あるいは国家の保護、いろいろ周囲の環境によつて非常に株式市場というものは現状だけでなく、かなり将来を見て行くものでありますから、そこに増資の可能とか、われわれが安心するとかいう感覧が生れて来るわけでありまして、一概にどの程度の操業率が適当だということは言えないと思います。一般にそういう判断の立て方でありまして、七五%がどうだ四〇%がどうだということは、ちよつと申し上げられないと思います。
  37. 川俣清音

    ○川俣委員 そこでひとつなおお尋ねしたいのですが、どうも自己資金が不足であつて、借金が過多で、これが収益率に非常に影響している、大体肥料業界はそうだというように御判断になつているようですが、やはりそのように御判断になつているでしようか。自己資金が不足であつて、借入れ資金——これは流動資金よりも固定資金でしようが、この額が過多だというふうに御判断なさつているようですが、この点はどうですか。
  38. 瀬川美能留

    瀬川参考人 むしろ自己資金に対する配当というものは、コストというものは、現状においては非常に高い。しかし株式の安定配当、利まわりというものがどの辺にあるべきかということは、現在の金利体系とか、不安定な経済のもとにおいては容易に求められないのでありますが、かりに戦前安定した時代に、銀行の短期借入れ金が一銭二厘くらいのときに、一流事業会社配当率は一割ないし一割二、三分であつたというふうなことを一つの基準として想定いたしますと、現在二銭四、五厘の借入れ金で、二割というところが現在の配当率でありますが、資本に対する配当が二割でありますれば、税金その他で、四割くらいの利益率を上げなければ二割配当ができないわけでありまして、コストという点から行きますと、むしろ自己資本の方が借入れ金より高いわけであります。しかしながら、自己資本と他人資本とのアンバランスというものは、行く行くは是正されて行かなければなりません。現在二割と見ております配当が非常に高いように見えますけれども、実は戦前の資本金からわずか七倍ふくれた資本金に対する配当でありますから、高率配当ではない。なおさらに二十倍なり二十五倍に資本膨脹して行かなければなりません過程でありますから、そこで膨脹するにつれて配当率というものは下つて来る。そうして資本の構成のバランスができて、そこに会社の経理的な安定ができる。資本の小さい会社が、いかに金利が安いからといつて、何十倍という借金ができるものではありません。そこでわれわれとしては、肥料業界が急によくなるということは考えてないのでありますが、いろいろの立場から漸次よくなつて行くだろう。それにつれて資本膨脹を招来する。資本膨脹には収益の裏づけを必要としますから、今回いろいろの立場からはつきりした政策を立てられて、安定の方向に進められたということを非常に好感している。そういうわけであります。
  39. 川俣清音

    ○川俣委員 瀬川さんはなかなか先まわりがよくて、私が次にお尋ねしたいことまで先にお答えになつてしまつたので驚くわけですけれども、私の尋ねたかつたのは、もちろん今のこともけつこうなんですが、そうでなくて私のお尋ねしたいのは、どうも自己資本の割に借入れ資金が多過ぎるのじやないか。そういう印象を持つておられないかどうか。
  40. 瀬川美能留

    瀬川参考人 多過ぎます。今非常にアブノーマルな状態でありまして、今はつきりした数字は知りませんが、戦前は六〇%が自己資金、四〇%が他人資本であつたのですが、今おそらく逆になつているだろうと思います。今の資本是正運動が一歩一歩そういう方向へ向つていることは事実です。
  41. 川俣清音

    ○川俣委員 佐藤委員から、資金のやりくりをしてやらないとコストが引下らぬじやないかというお尋ねがあつたのですが、私はどうも逆に、これほど自己資金の割合に他人資金が多いということになると、他人資金のやりくりそこにむしろ問題があるのじやないかというふうに思うのですが、これはお尋ねでなく、意見だけにとどめておきます。問題は、さらにこういうような資金のやりくりをしておりますと、コストの中に占める金利が相当大きなものを占めているんじやないかと思うのです。もちろん弱小肥料会社もたくさんあるでしようけれども、一流のところもありましよう。しかしながら、全体から見まして大体肥料業界というものは、自己資金の割に借入れ資金が多過ぎる、こう言われておりますから、それから判断いたしますというと、ただいまコストの中に金利の占める位置が相当大きい、そのために収益率が上らないのだとも言えるのではないかと思いますが、その点はどうですか。
  42. 瀬川美能留

    瀬川参考人 先ほど申し上げましたように、非常に増資が遅れているということは、やはり今まで事業そのものが非常に不安定であつた、いろいろ政策もすつきりしなかつた配当しておつてもはたして永続するかどうかわからないということで、自己資金の調達が遅れたために、非常に借入金が膨脹している。それが漸次安定するにつれて、借入金から自己資金に切りかえられて行かなければならないという過程でありまして、冒頭に申し上げましたように、非常に業界がどつちかというと公共的な業界であつたし、政治的な業界であつたために、非常に立直りが遅れた。これから是正の方向に向つて進んで行くであろう。しかしながら、先ほど申し上げましたように、自己資本配当金というものがかなり現在においてはコストが高い、借入金の方がむしろ安いということで、業績の安定とにらみ合せて徐々に配当の方も下つて行くというふうな行き方で、漸次借入金が自己資本に切りかえられて、資本のバランスの方向に向つて行くというふうに考えております。
  43. 川俣清音

    ○川俣委員 瀬川さんにもう一点だけお尋ねしてほかにかわつてお尋ねいたしたいと思います。コストの中の大きな部分を占める、原料になりますところの硫化鉱は非常に低落して、今が底ではないかと思う。従いまして原料産業であります鉱山界においては、非常な恐慌を来しているくらいに価格が低落しております。ことに単味硫化鉱などは非常に肥料会社から買いたたかれまして、大打撃を受けているようであります。これはよしあしを言うわけではありませんが、そういたしますと、原料が高いから製品であるところの硫安が高いのだということが今まで言われておつた。ことにガス法でいうと、石炭が相当価格が低落しております。ことに今石炭業界は——宇部さんは自己山ですから別ですが、相当ガス法の肥料会社に対して投売的な、市場価格を割りました取引が行われておるようです。非常な石炭業界の不況からして、肥料業界に期待をかけて投売をしておるようです。市場よりむしろ一割か一割二、三分低くなつておる。これは会社利益になつておりますか、重役のポケツトに入つておりますかは別問題ですが、とにかく相当投売的に取引されておるようです。こういうふうに石炭の値下りと、原料であります硫化鉱の値下りから、もう少し収益率も上つていいはずだと思うのですけれども、上らないのは経営が粗漏であるために上らないのかどうですか。この点瀬川さんはどういうふうに見ておられますか。
  44. 瀬川美能留

    瀬川参考人 なかなかお答えしにくいことで、漠然としたことしかお答えできませんが、私の感じておりますことは、労銀が非常に高い。労銀の占めておるパーセンテージが、戦前は御承知のように輸出品でございますと六%程度のものが、現在三割三分くらいになつている。これがなかなか下らない原因の一つです。もう一つは未稼働設備が非常に残つておる。これがコストに非常に大きく影響している。こういう点は、先ほどのお話のように、輸出振興によつて設備が動いて来るとともに——硫安工業あたりは、相当設備が遊んでいることがコスと高のパーセンテージの非常に大きな部分を占めるように承つておりますから、そういう面から下つて来るのではないか。金利もいろいろの考え方もございましようけれども、すでに船とか重要産業においては、かなり低金利の助成策が講ぜられておるわけでありますから、やはり行く行くは、大きな目で見れば、金利は下落の方向に行くだろうと思います。現在原料が下つておるのになぜ下らぬかという問題でありますが、そういう点から徐々にコストを下げるという方向に行くのではないかと、われわれは漠然と考えている程度であります。
  45. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一つお尋ねします。造船業界に対しては非常な低金利の施策をとつておるのです。もちろんこれも重要な産業でありますことは申すまでもない。ところが今では最も外貨を失うとこらの食糧の輸入、これは日本経済界に影響を与える一番大きな点ではないかと思う。造船界もそうでありますけれども、それに劣らぬ重要なものじやないかと思うのですが、この食糧の増産の中で一番大きな率を占めるのは肥料であります。硫安だけを使つて増産するということには議論はあるにいたしましても、何と言つて肥料として農業に占める率は硫安が一番大きい。この硫安の値下りが食糧増産の上に大きな寄与をすることは、これは私が申し上げるまでもない。従いましてそういう面から、やれるならば金利を造船と同じように引下げることが妥当だというふうな見解を持つているのですけれども瀬川さんはどうでしようか。これは瀬川さんの立場としてちよつとお答えずらいかもしれませんけれども、もしお答え願えるならば、お答え願いたいと思います。
  46. 瀬川美能留

    瀬川参考人 私がお答えする範囲ではないように思いますし、その立場でもないように思いますが、御意見ごもつともだと思います。
  47. 川俣清音

    ○川俣委員 瀬川さんに対する質問は一応これで打切りまして、全購連の島田参考人にお尋ねいたしたい。島田参考人は、先ごろ硫安協会と全購連の間において春肥の協定をされたようですが、どのくらいの価格で一体協定が成り立つたのか。全購は硫安協会と協定を結ぶのでありますが、これは慣例にもよるのでありましようが、個々の硫安業者と結んでおるかどうかお伺いします。並びに時間がないから、一緒にお答え願いたいのですが、先ほどお尋ねいたしましたように、最近硫化鉱の値下りが一割二、三分、土地によつては小さい山などは二割くらい落ちておるようです。これはもう少し正確なことを申せというのであれば、私は二、三の例を申し上げますが、相当原料の値下りを来しております。と同時に、さつき瀬川さんにお尋ねしたように、石炭も値下りしておるのです。こういう条件がいいときに、全購はもう少し努力を払つて、春肥の値下げに努力すべきであつたと思うのですが、一体どの程度努力されたかということです。一体全購がマンネリズムになりまして、農民の代表ではないというふうな批判も受けておるときですから、この点を明確にしていただきたいと思います。
  48. 島田日出夫

    島田参考人 ただいまの川俣委員のお尋ねにお答えいたします。全購連に関しましては、価格の折衝が一番大きな問題で、これには最近の世評は相当きびしいものがあるのでありますから、全力を尽して当つておるわけであります。この価格の折衝に入る前に、春肥につきましては、一方ではお話のように原料の価格がどういうふうに変化して来ておるかというような点、また一面では災害をこうむつた農民の購買力というようなものも考慮しなければなりませんし、また景気の変動あるいはその他、これは会の中で十分検討し、また専門の方々にもその見通しについていろいろお教えいただきまして、一つの腹案をつくつて折衝に当るわけであります。折衝は今お話のように硫安工業協会とやつておるのではなく、主要な会社をそれぞれ相手にしてやつておるわけであります。国会の方で公取の問題が起りまして、みんな一緒にやるとまたしかられるからというので、一つずつ出て来て、大体それにおちつくことになるのでありますから、結論は言わずしてわかるのでありますが、ひまは非常にかかるのであります。この価格につきましては、今申し上げましたような原料の推移、それから、今年の春肥、秋肥の価格の推移、それから先ほど申し上げましたような農民の購買力、あるいは八月以降の操業度というようなものを見て折衝に当りました結果、十二月、一月の価格が、全購連の買値が八百三十三円ということになりました。いろいろ御不満もございましようが、相当に長い間かかりましてとりきめた価格でありまして、安くさせるためには、私のそばに二人おすわりになつておりますメーカーの方を御説得願いたいと存じます。
  49. 川俣清音

    ○川俣委員 どれだけ努力をせられたかということに対して、ただ努力を払つた、こういうことだけではどうも十分じやないように思うのです。なぜ私がそういうことを申すかというと、個個のメーカーについて努力を払つたということになりますと、相当収益のいい会社もあります。またコストから見ましても、瀬川さんに島田さんがお尋ねになれば一番わかると思いますけれども、ここでお尋ねしたいという意味ではなく、相当コストの安い会社もないわけではないのです。従いまして、そういうところからは思い切つて安く買うというふうな御努力が払われたかどうかということを私はお尋ねしておるのであつて、総体全購としては安かつたもの、高かつたもの、合せてこれを農民供給されるのでありましようが、一方肥料会社は、先ほど申し上げたように、硫化鉱あたりは思い切り安くたたいておりますよ。人をたたいたのだからまたたたけというような、こういう意味の宣伝を言うのじやないのですけれども、それについてどれだけ努力を払われたか、努力の経過を聞きたい。もう一つは、メーカーの方から言うと、君の方は非常にたたくけれども、君の方の売り方が少しまずいのじやないか。おれの方はずいぶん安く売つてあるけれども農民の手に入るものが高くなつておるのは、全購のやり繰りが下手なんだ、こういう批判もあります。こういう批判に答える御答弁を願いたい。
  50. 島田日出夫

    島田参考人 第一の努力の点と、それから収益のいい会社収益の悪い会社、あるいは能率のいい会社能率の悪い会社と、購入価格に差がないのはおかしいじやないかというお話、まさにその通りでありまして、すべての会社価格が一定しておるということは、お話通りであります。折衝にあたりましては、やはり量が問題でありますし、比較的収益の多い会社と折衝を遂げるわけでありますが、その努力につきましては、何度も会つて、私の方の対案がこういう対案で、先方がこういう要求であつた、これと数度にわたつて折衝を遂げ、あるいは説得もし、農村の窮乏も訴え、あるいは本年のときは災害が著しいため購買力に非常に減少が来ているというようなことも申し上げたりしておるのですが、その経過を一々申し上げてもまた、数多くあつたから努力じやないというおしかりもあろうと思いますので、これでよします。  次の売値の問題であります。これは協同組合としては、やはり経費が非常に安く行かなければならぬのは当然であります。その点につきましては全購連、県購連、単協、相ともに努力はいたしております。たとえば全購連のごときは、硫安の手数料というものはほぼ四円なり五円なりをいただきたいと思つても、いただけないのが現状であります。その現状はまさにその通りで、これも将来は量をふやして、この単位当りの手数料は当然減らすようにしなければならぬと存じます。ただ残念なことは、単協におきまする価格がいろいろの調査の場合に多い場合があるのでありますが、それが御承知のように金利に該当すべきものが手数料に含まれていることが多いので、購売系統全般を通じまして非常に多くとつているということではございません。しかしお話のように、一方においてメーカーの売値を引下げることを強く要求するならば、われわれのこの系統におきましても一銭でもその経費は下げて行くように努力しなければならぬと存じ、また現に努力しておるのであります。たとえば共同計算制ということをやつて、個々の取引にかかる手数料なり、人件費なり、通信費を省くようにも努力いたしておるのであります。概要以上のような経過でございます。
  51. 川俣清音

    ○川俣委員 次に鈴木さんにたびたびおいで願つたので、実は私ども質問を省略したいと思つてつたのですが、せつかくおいで願つてお尋ねしないことは、鈴木さんとしても本意なかろうし、私としても本意ないので、ひとつお尋ねしたいと思います。大体肥料業界は、これは証券業界も同じような考え方を持つておられるようにも思うのですけれども、主としてメーカー側の持つておる見解だと思いますが、農林省あるいは農林委員会が、輸出を非常に阻むために収益率が悪いんだという見解が出ておるようです。これはどうも私はおかしいと思つておる。一方において出血出血だと言うのだから、損するようなことはおやめになつたらどうだと言うと、損するほどの方が収益率がいいんだ——こういうことは私はよくわかりますけれども、一般の人はどうもわかりにくいと思うのです。赤字を出すことが収益率がいいんだということは、どうもこれは株をやつておる人ならよくわかると思うのですが、一般の人は、損すればそれを埋め合せなければならぬのに、輸出した方が収益率がよいのだということは、結局国内価格が高くなつて、そこで収益率が上つて来るのだ、輸出の方は総体の数量からいえばわずかであるから、その方が収益率が上るのだ、こういうことだと思いますが、やはりその通りですか、その点をお伺いしたい。
  52. 鈴木治雄

    鈴木参考人 ただいまの御質問ですが、その出血輸出の問題の論議はこの席でも繰返された問題ですし、私も何度も御説明いたしたと思いますので、観点をかえまして、先ほど硫化鉱硫安を値切つておる、あるいは石炭が下つておるのに云々というようなお話もございましたが、ちよつと数字にわたると思いますが、肥料価格の変遷をここでもう一度回顧してみたいと思います。これは昨日調べてみたのでありますが、最近四箇年間硫安価格は二割ほど上つておるわけであります。この騰貴率というものは、ほかの生産財その他の物資がこの間におそらく六割程度上つておるのじやないかというふうに思いますし、最近の経緯を見ましても、秋肥の平均価格はおそらく八百五十円ちよつと出た程度だと思いますが、春肥は八百七十五円くらいだと思います。硫化鉱石炭の下つた分はすでに十分価格でサービスしておりまして、先ほどそういうものが下つたの収益力が上らないのは経営者の怠慢というようなお言葉もございましたが、われわれとしては原材料その他で下つたものは、なるべく自動的に価格の面で下げたいということでございますし、また島田さんらが非常にともかく頑強にそういう点をチエツクされまして、われわれ交渉のときにひどくいじめられて、決してそういうものがわれわれのふところに残るようなふうにきめていただけないのです。数字からごらんになつてもわかるように、毎肥料シーズンごとに一般の物価と反比例して硫安だけは下つております。そういう点で私どもこの委員会では、われわれとしては非常に困る面があるということは折に触れてこぼしておりますから、その点はあるいはお耳に入つておるかと思います。
  53. 川俣清音

    ○川俣委員 どうも私の質問に対する答弁としては、横で答弁されて逃げた——鈴木さんともあろう者が逃げられるわけではないと思いますが、結局出血輸出でも、国内価格を維持するための出血輸出、これは会社の経営の上から行けば一番やりよい方法だ、こういう見解をとつておるものと思います。そう思いまして片づけましよう。ところが今までの説明、今日の会ではない、前々会の説明によりますと、やはり何といつても原料の硫化鉱の値上り、あるいは不足、入手難が非常にたたつて操業率が上らない理由の一つに数えられておつたはずです。ところが一つが片づいたということによつて、もつともつと非常に重要なことだということで強調されたのであるから、その強調した点が一つ片づいたということよりも、相手がたたかれておるのであるから、相手をたたいただけの成績、業績が向上しなければならぬのじやないか。それがその以外に別なネツクがあつて、一つ片づいたことによつて全部上るということにはならないが、非常に強調された点が一つでも解決されたのであるから、業績は向上するのではないか、そういうことをお尋ねしておる。これ一つによつて全部解決したという、そこまではあなたをいじめようとは思つておりません。ただ、大体私どもの見るところでは、S分が十円くらい下つておるようです。硫化鉱の取引はS分一%について幾らということで……。もちろんこれはS分の多いほど価格が飛躍的に上りましようけれども、大体十円あたりつておるようです。花岡の例をとりますと、今までS分四五%が三千円であつたのが、四八%にして三千円くらいです。これは割合に下げられていないようなものですが、従いまして今硫黄山といたしまして松尾、別子、柵原くらいがようやく経営が成り立つているようなもので、ほかの鉱山はみなほとんどつぶれかかつておるような状態です。その上さらにたたかれるものでありますから、実際こういう大メーカーの鉱山よりも、むしろ小鉱山の方がもつとたたかれておるような状態です。大体私どもの見るところでは一割五分くらい大会社よりも小会社の方がたたかれておるようです。従いまして、これは大会社に影響しておるようですが、その点は別問題です。これは別子は御承知通り新居浜で自己消費がありますから利ですが、あとは松尾と柵原くらいのもんでしよう。そのように相当相手が打撃を受けておるのだから、相手が打撃を受けただけどこで埋合せをしてもらわないと、これは何のために打撃を与えたかということが意味をなさぬ。どこで打撃を与えて肥料が安くなつたというなら、もつて満足するに足るのですから、相手にいろいろ打撃を与えて、肥料会社がそれだけの成績を上げないというのでは、ちよと申訳ないように思うのですけれども、申訳ないとお考えにならないかどうか、気の毒だと思わないかどうか、この点を一つお尋ねします。
  54. 水野一夫

    水野参考人 川俣委員の御質問に対してお答えを申します。なるほどお説の通り硫化鉱のごときは、ある程度つておるのであります。しかしながらこれだけが原料でもなく、またコストの中に占めておる経費ではないのでありまして、これはコストの中の一部分でありまして、それは一部分は下つております。それを食つて行く他の要素があるわけです。原価の中で下るものもあるが、上るものもある。結局下つただけのものは他の修繕材料、機械材料、いろいろなものについて、あるいは労務費もありますが、そういうものが原価の中で食つて行く。ですからほかの原価要素がみんな停止しておれば、下つただけは下げられるはずなんです。しかるに御承知通り物価は月に年に上つてつておりますので、その影響は、こういう広汎な材料を使つておる工業でございますので、食われてしまうわけです。それで先ほど鈴木参考人も申し上げましたように、統制撤廃の四年前と比較いたしまして、わずかに二割しか上つておらないわけです。最近においては逆に、今年の春肥それから本年の秋肥、またこの十二月、一月の価格というものが逆に下つてつております。でございますから他の原価要素の値上りに食われながらも、若干は物価の騰勢に逆比例して下げて来ておるわけでありまして、そのままがちようど値下りになるはずという御観察は少し間違つてやしないかということでございます。  それから私立ちましたついでに一つ、意見を申し述べさしていただきたいのでありますが、先ほどどなたか、川俣さんの御質問つたと思いますが、二重価格というものが、非常に通貨の安定というものにも悪い作用をしておりやしないかというお話がございました。そのことに関連しまして私ども考えておりますのは、硫安は——これは硫安だけではありませんが、硫安は百パーセントの国産品でございまして、これを外国輸出いたしましてドルをかせいで参ります。外貨をかせいで参りまして、その外貨は三百六十円という日本の貨幣でわれわれはいただいておるわけです。三百六十円私どもはいただいておりますが、それは一ドルかせいでおるわけです。そのドルが輸入の面におきましては非常な威力を発揮いたしまして、日本の必要な食糧なり油なり、その他の不可欠の資材を外国から買つておるわけであります。御承知と思いますが、為替の実勢は三百六十円をはるかに越えまして、私は専門家でございませんからよくは存じませんが、巷間五百数十円だと言われているわけであります。この日本輸出貿易によりましてかせいで参りました外貨が輸入に役立つて、その輸入で日本産業あるいは国民生活が維持されていると思うのであります。この不当に悪いレートでわれわれはがまんをしておるのであります。これは日本の輸入もしくは輸入によつて動いている産業のために、縁の下の力持ちをずつと続けているわけであります。この点につきましては、ドイツは一昨年あたりまでは優先外貨の制度をとりまして、ドルとマルクとの実勢の差を利用さしておつたのであります。ところが現在わが国においては、若干の優先外貨は認められておりますが、それは輸出産業を助長するというほどの数字ではないのであります。ドイツではすでに輸出か死か、絶対輸出だということでいろいろな助成策をとりまして、今日においてはむしろ輸出の方が輸入をオーバーしている。従つてマルクがドルに対して対等の、いわゆる公定レートで堂々と実質的にも取引されているということであります。日本のように三百六十円と五百数十円の大きな開きはすでに完全に克服されているのであります。日本におきましてはそういう非常に大きな、公定レートと実勢との間に差があるのであります。硫安工業は相当にそのレートを維持するために縁の下の力持ちをやつているということを、ここで御認識を願いたいと思うのであります。
  55. 川俣清音

    ○川俣委員 せつかく水野さんの御意見だけれども、これはひとつまたあとで瀬川さんあたりと御勉強願つておきたいと思いますが、私どもは二重価格による輸出というものは、結局日本の貨幣価値の低落になる、円貨の引下げになることが恐ろしい、こういうことを申し上げておるので、普通のダンピング輸出でなければこれは輸出が上ることはけつこうなんです。今硫安業界では輸出量が少くてそれほど影響がないから楽観しておられるでしようけれども、これがほかの輸出品のように相当大きな何億あるいは十数億ということになりますと、非常に円貨に影響して来ることになります。ごくわずかなものですからそんなに響かないということであれば別問題ですけれども、そういうものが集まつて参りますと、これは円貨に非常に影響して来ることは、先ほど瀬川さん御指摘の通りなのでありまして、私は今ここでインフレ論をやつたり、あるいは平価の切下げの可否を論じようということは考えませんから、ひとつ水野さん、瀬川さんに教えを請われて、今の説についてみずから御反省願いたいと思うのです。議論はやめておきます。  私がただ申し上げているその他の問題で、石炭が下り、原鉱が下つた、こういうふうに一つ一つ下つてつてもなお合理化できないようでは、これから金利を引下げてやる、電力の割当をやる、全部やつてつても、それはごく一部なんだ、一部なんだということになると、われわれは努力しようがないじやないかということになる。先ほど何か金利も引下げたらどうかという議論をしておる。また佐藤委員電力をやつたらどうかと言つておる。二つの重要な原料をやつても、あまり硫安価格に影響がないということになると、今後農林委員会として努力したつて努力のしようがないじやないかという意味でお尋ねしておる。これ一つでもつて非常に業績が向上するとはもちろん考えておりませんけれども、これは大いに助かつた、ひとつ奮発してやるんだというお考えになつておるかどうかということをお尋ねしておる。一つ二つ片づいた、さらにもう一つ片づけてさらによくなるんだ、こういう見解なら別です。石炭が下つた、相当重要な要素を占めておる市場価格も下つておるのですから、相当重要な部分についてコストも下つて来るだろうと期待をかけておつたが、それが期待はずれだつた硫化鉱についても同様期待はずれだつた電力だけではだめだということになると、電力を特配しても無意味だということになる。そうなると、もう少し強制的な法律にかえて行くかどつちかだということになつて来る。自粛されておるならば、法律をもう少しやわらかにしておいて自粛を願う。自粛願えないで、日本の農業界に対する熱意が薄ければ、薄いように考えて行かなければならない。今のところ何とか電力なりあるいは金利なりをもつてひとつ会社の業績を上げて、そして硫安を引下げるようなことに努めたい、こういう考えでやつておるのですか。そうやつてもだめだということになると、こちらは努力が足りないのではないかと思いますがどうですか。
  56. 鈴木治雄

    鈴木参考人 川俣さんのお話を伺つていますと、硫安があたかもちつとも下つていないようなお話ですが、去年の春肥の硫安は、かますで九百七十円でした。今年の春肥は八百七十五円、秋肥が八百五十五円程度で十二月は八百三十三円というような値段を全購連と最近ネゴシエートしてきめております。こういう下り方は今川俣さん御指摘の石炭が下つた硫化鉱が下つたという下り方より、むしろ下り方においてきびしいのではないかと思います。これはひとつ数字をお調べになつてお互いに検討いたしたいと思いますが、決して硫安業界は原料が下つたのに対して、ぬくぬくと逆に上げているというようなことはありませんので、非常に大幅に下げておるわけであります。われわれとしては、たびたびこういうところにも呼ばれておりますし、全国の農村ができるだけ安い肥料をよこせという声は十分身にしみておりますので、誠心誠意下げているつもりでございます。それにもかかわらず今のようなお言葉があることは、非常に私なさけないと思います。硫安は一般の物価が上つておるのに、すべてがベース・アツプされておるのに、こういうふうに下つておるということは、おそらく日本の工業品にはほかに例がないのではないかということを断言してはばからないつもりでございます。これ以上申し上げません。
  57. 川俣清音

    ○川俣委員 鈴木さんの御答弁ごもつともだと思います。私は価格の下つたというのは鈴木さんの見解とは違うのです。というのは通産省の説明によりますと、三流、四流会社の成績が向上しまして、一番コストの高いところが安くなつたために、平均が下つたというのが大体今までの答弁なんです。私はそういうふうに理解しておつた。三流会社、四流がますます悪くなつて行くならば、これは整理しなければならないということになつて来る。整理でなくて、非常に向上して来て、三流メーカー、四流メーカーが一流メーカーに近づいて来て、相当の業績を上げて来たのだという説明なんです。そうすると、こつちの会社の成績が上つて来たというのは、石炭硫化鉱価格のことではないのですね。肥料十三社の中でそういう四流、五流の会社の成績が上つて来たことに対して、あなた方の協定しておられる平均値段が下つた、こういうことになつておる。むしろもつとそれ以上に合理化ができて、もつとコストの安い会社があるのではないか。いやそうじやなくて、いわゆる四流、五流会社コストが下つて平均に近づいて来たというのですか、それでもよいと私思いますが、一体どちらなんですか。
  58. 鈴木治雄

    鈴木参考人 今の川俣さんのお話ですが、私一々この委員会出席しておりませんので、通産省当局がどういう御説明をされておるか、伺つておりませんけれども、おしなべて各会社とも非常に合理化、この合理化というのは設備合理化ではなくて、技術その他経費の非も含めて相当合理化しております。そういつた意味で下つておる部分も私はあると思います。そのほかに先ほど御指摘の石炭硫化鉱が下つておる面もある。しかし同時に先ほど水野さんから御説明したように、従業員全体のベース・アツプ等コスト上つておる部分もございます。そういうものを相殺して、なおかつ下つておる部分は、われわれの利潤として留保せずに、できるだけ価格に反映させて、物価高騰の世の中に、硫安は逆を行つておるという誠意だけはぜひお認め願いたいということを申しておるので、思想統一をせよと言われても、実態はそういうことでございますので、よく御質問の点私にはわかりかねますが、なお水野さんから補足させていただけば……。
  59. 川俣清音

    ○川俣委員 私はもう質問しないつもりでありましたが、どうも質問意味がわからないということであれば、もう一度申さなければなりません。鈴木さんは原料の値下りによる分だけが、硫安としての価格の低落が来ておる、このような説明ですけれども、一般的に言われておりますことは、また通産省の説明によりますと、四流会社、五流会社の成績が上つて、一流会社、二流会社の方に接近したために、平均コストが下つたのだという説明なんです。あなたは去年の春肥と今年の春肥とでは、これだけ下つたではないか。その下り方の主要な原因は何であるかというと、石炭の下つたこと、あるいは硫化鉱の下つたことによつてつた。しかもそれらの下つた以上に価格は下つておるという御説明である。これが至当なのか、あるいは通産省の説明のように四流会社、五流会社の経営の合理化資金のやりくり、設備の改善によつて、徐々にここまで回復して行つたと見るのが至当か、こうお尋ねしたのであります。思想統一でも何でもない。あなたの見解はどうかということなんです。
  60. 鈴木治雄

    鈴木参考人 御質問の趣旨はよくわかりました。先ほど私が申しましたのは、今川俣先生がおつしやられた意味ではなしに、コストの下つた面としては、原材料の値下りの部分と業者の企業努力によつてつた部分と増産がなつて、操業率が上つた部分と、そういう要素が組み合さつたものがコストの値下りの合計です。それに対して上つた部分がべース・アツプその他でございます。そういうものを差引いて下つた部分は十分価格に反映させてありますということを申し上げておるのでありまして、私決して今御了解願つたような硫化鉱石炭だけが下つたということを申しておるのではございません。ただそういうものが下つておるのに硫安は何か上つておるようなふうな御批判でしたから、そうではなくて、そういうコストにおいて下つた部分は価格に対して十分反映させておりますということをお答えいたしたわけでありまして、通産省御当局の説明したことと私の申し上げたことは矛盾していない。つまり両方の面が下つてつて、それの合計に増加分のものを差引いて下つた分は誠意を持つて価格に反映さしておりますということで御了解願いたいと思います。
  61. 川俣清音

    ○川俣委員 通産省の説明と鈴木さんの説明と違つていない。ことに時間がないから一応了承しておきましよう。  もう一点だけお尋ねしておきたいと思います。同じ化学工業でありながら、戦前から遅れておりましたほかの化学工業が非常な進歩を遂げておるわけでありますが、その割合に肥料化学工業が他の化学工業と比べまして向上率が劣つておるように思うのです。劣つておるのは何かというと、戦後国家財政支出、あるいは財政投資というものが肥料工業に対しては割合優先的に行われたにかかわらず、あまり成績が芳ばしくないように思うのは非常に遺憾であります。これは遺憾の意を表してこれ以上議論をしないことにいたしておきます。ただ私は、化学工業というものは機械工業と違いまして、機械工業の場合は労働能率といいますか、労働賃金がコストの中に占める位置は非常に高いと思うのです。化学工業になりますと、それが一番労働のフアクターとして少いのが化学工業の特徴だと私は理解しております。従いまして労働賃金が上つたというと、ほかの機械工業の場合はすぐはね返りが来るのであります。化学工業はその点では比較的ファクターの占める点が少いと私どもはにらんでおり、またそれが本質だと思う。そういたしますと、むしろ設備の不完備と申しますか、原料の供給の不円滑ということが大きな要素でなければならぬ。今までお聞きするところによりますと、むしろ設備が老廃しておつて資金をやりくりしたけれども設備の改善に十分つぎ込まないでおつた点に非常に重要な欠陥が出て来ているんじやないか、こういうふうに今見解を持つのです。この点はひとつ反省してよろしいのではないかと思いますけれども、反省されて向上に資するようなお考えでありますかどうか、この点鈴木さんにお尋ねしておきたいと思います。
  62. 鈴木治雄

    鈴木参考人 今のお言葉非常にごもつともで、私どもコストを下げるためにはあらゆる努力をいたします。今のお話通り日本硫安設備が欧米の最も近代化された工場に比較しては、相当見劣りすると思います。従つてそういう設備を極力新しくして、原単位その他において国際的な水準に近ずき、追い抜きたいというつもりでおりますので、今のお言葉はひとつ拳々服膺して十分努力いたしたいと思つております。
  63. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がありませんから、参考人に対する質問はこれで終りたいと思いますが、私お呼びいたしておりました金融業界の方がお見えになつておりません。あらためて委員長お呼びになることを要求いたしまして、私の質問は終りたいと思います。
  64. 中澤茂一

    ○中澤(茂)委員 関連して私はどうしても納得が行かないことがあるので、それを明らかにしてもらいたいと思うのですが、今回の台湾向けのものは二十五万トン、御承知のように七百三十円ということで、さつき島田さんのお話を聞くと、十二月から一月は八百三十三円というふうにおつしやられる。そこでこの前通産省の方から出さした肥料原価表を見ると、Aグループの平均原価が八百九十一円、それからBグループが九百四十円、Cグループが九百八十円、そうしてこれらABCの三グループを集めた平均原価が九百三十四円六十二銭という資料を通産省から出してある。そうすると、現在内地向けのものを十二—一月で八百三十三円、あるいは鈴木さんがおつしやつた八百五十円とか、五十五円とかおつしやつた価格でやつたとしても、これは当然大きな会社自体赤字が出るはずなんです。それが先ほど瀬川さんのお話を聞くと、利益率が六七・四、配当率が一九・四、こういう数字が出ておるわけであります。九百三十四円六十二銭の原価のものが今回の全購連との協定による八百三十三円なり、八百四十円で、どうしてこういう利益率が出て来るのか納得が行かないのです。計理士に魔術師でもいるのか、どうしても私には納得が行かないので伺いたいと思います。
  65. 水野一夫

    水野参考人 ただいま御指摘になりました原価ABCクラス平均の九百三十四円六十二銭という数字は昨年の九、十、十一、その間の数字でございます。それからちようど一年経過しておりますが、硫化鉱あるいは若干の石炭、そういつた主要原料の値下り、それから電源開発が進みまして、きゆうくつながらも前よりは徐々によくなつて操業度が若干引上げられたというようなことで、以後若干下つております。そうしてその原価現状ではどれくらいするかということは、私ども自分の会社のは大体わかつておりますが、平均いたしましてそれに対応するような数字は持つておりません。主要な原材料の値下りというものは、大体その後現われたものでありまして、御不審の点はごもつともと思いますが、ちようど一年前の数字でございます。
  66. 中澤茂一

    ○中澤委員 この需給安定法と輸出会社法がどうしても通常国会の問題になつて来るのですが、現在までにおける傾斜生産なる名前において投資された硫安工業に対する総金額は、御承知のように六十八億あります。鈴木さんのところはそのうち二十億二千万、約三分の一使つているわけです。そこで今度は輸出会社法案が通れば、これに対して政府合理化の所要資金の融資あつせん、あるいは手当をしなければならぬという一文が輸出会社法案の中に入つている。その手当をした場合に、所要資金が一体どれだけかということを通産省から出したもので見ますと、硫安会社十四社で百六十億六千万いる。結局この輸出会社法案が通れば、当然——政府は総額をやるかどうかは第二として、これに対して融資あつせんあるいは手当をやらなければなりません。それに対して効果率は一体どれだけあるかということを七月二十七日に通産省から出した資料によると、鈴木さんのところでは十二億二千九百万いる。それに対してどれだけ一体合理化による値下げが行われるかというならば、トン当り千百二十五円、それから宇部さんのところでは、所要資金が九億八千万円、それによる値下りがトン当り二千四百円、こういうことになつております。そうすると、鈴木さんの方は十二億という宇部さんよりか三億くらい多い資金を使つて、なお値下り率がトン当り千百二十五円、宇部さんの方は倍以上の値下げが、政府のめんどうを見る所要資金によつてできる、こういうことになつておるのです。私はあまり工場も見学しませんし、またちよつと見てもわかるものでもないでしようから、ようわからぬのですが、なぜ一体宇部さんの方が二倍以上もトン当り下げられるのに、鈴木さんの方はトン当り千百二十五円しか下げられないのか、この点を御説明願いたい。
  67. 鈴木治雄

    鈴木参考人 今の御質問のその数字ですが、私承知いたしておりますのは、二十億程度かけて二千円くらい下げるというあれですが、それはどこの資料でございましようか。
  68. 中澤茂一

    ○中澤委員 通産省です。
  69. 鈴木治雄

    鈴木参考人 あるいは通産省で御査定になつたのかと思いますが、その開きがあるということは、昭和電工川崎工場の製法、それから設備のバランスの問題、それから改善される余地の問題が宇部さんの方の工場と違うというところから来ていると思います。私の方といたしましては、それだけかけてそれだけ下げ得るということでありまして、これは各硫安工場すべて製法も違いますし、工場設備のバランスの状況、それから今後の改善によつて下げ得る余地のある設備の具体的な明細がそれぞれ違うと思います。つまり私の方では、先ほど申しましたように、硫酸関係、それから電解槽関係合成塔関係、あるいは尿素その他の肥料もやるということで下るような資料を提出しておりますので、そういう点宇部さんと項目が違うんじやないかと思います。
  70. 井出一太郎

    井出委員長 中澤委員に申し上げますが、大分時間もおそいのですが、まだありますか。
  71. 中澤茂一

    ○中澤委員 もう少し。
  72. 水野一夫

    水野参考人 私も今その数字を初めて伺つたので、私の方のはわかつておりますが、昭和電工さんのは初めて承りました。私的確にはむろんわかりませんが、私の感じでは、ガス法の方に改善の余地が多くて、電解を主にされておるところは、ある程度のところまで比較的届いておるということじやないかと思うのでございます。ガス法の方が余地が多いんじやないかと思います。
  73. 中澤茂一

    ○中澤委員 また鈴木さんと水野さんにお伺いするのですが、これは昨年、ちようど一年前の資料であるというふうに水野さんはおつしやられましたが、御二人とも会社の常務さんですから、もう毎月毎月の原価計画のしりはごらんになつてよく御存じだと思うので、今一体原価がどのくらいおかかりになるのかお教え願いたい。
  74. 水野一夫

    水野参考人 現在原価がどの程度になつておるかというお尋ねでございましようか。
  75. 中澤茂一

    ○中澤委員 そうでございます。
  76. 水野一夫

    水野参考人 他の会社のことは知りませんが、私の方におきましても、昨年の調査のときの原価よりも下つておりますが、数学的に幾ら幾らということを申し上げることはお許し願いたいと思います。
  77. 中澤茂一

    ○中澤委員 われわれは、実は需給安定法案には反対じやないのです。需給安定法案はわれわれの要求した検査権の問題が入つているので、これは賛成なんです。ところが問題は、需給調整の関係輸出会社法にからんで来る。これは夫婦みたいな法律で、いやでも片方が通れば片方も通らざるを得ないので、肥料会社の重役さんが集まつてうまい策戦を練つたと思つて関心しておりますが、そのあとで資金投資、財政投資の問題が問題になつて来る。通産省が七月に出した資料によると、総額百六十億の財政投資に対して、金利七分として、償却を十二箇年と計算するならば、加重平均で千九百四十五円四十三銭の金利、すなわち五ドル四十セントの金利がかかる、こう言つているのです。効果の方では、十四社トン当り平均二千百二十五円八十四銭の値下りができる。そうすると、これは五ドル九十一セント。金利の方で五ドル四十セント食われてしまうならば、百六十億の財政投資をしても意味がない。それをわれわれは問題にするのです。きようは川北さんや一万田さんに出てもらつてこの問題を究明しようと思つていたのですが都合が悪いそうですが、結局百六十億投資して、五ドル九十一セント合理化によつて値下りができても、片方において金利で五ドル四十セント食い込まれるならば、農民はちつとも喜ばない。これが問題になる。われわれは外国に安く売つて、内地の農民の買うものが非常に高いということを問題にしておる、しかも反対に外国の米は一万二千八百円出して買つて来て、内地の農民の米は七千七百円で巻き上げている。脆弱な農民の収奪ばかりではなく、国家財政によらなければ再建できないという日本資本主義の矛盾がここにある。この矛盾はしかたがないとしても、少しでも農民に安いものをやるには——国家財政の投資をしたならばこれだけ間違いなく下げるのだという計画が出て来なければ——これは柿手部長とさんざん議論をやつたことですが、意味がないと思うのです。だからそういう面において、財政投資をやるなら財政投資をやるで、確実にこれだけいつまでに値が下げられるのだという結果が出なければ私は意味がないと思う。輸出会社法が通れば財政投資の問題はただちに起きて来るのです。だからこの点について通産省としても、柿手部長もきよう来ているが、各会社の三箇年なら三箇年の財政投資による計画はこうだというものをもつとはつきり出してくれなければ、われわれはこの法案には簡単に賛成するわけに行かない。ですからこの点について、二箇年なら二箇年後には間違いなくこれだけ下げるという財政投資の結果を、各会社からとつて出すかということを、柿手部長から一言はつきりさしておいていただきたい。
  78. 柿手操六

    柿手説明員 今度の硫安の二法案の中心は、何としても一日も早く硫安の製造コストを下げて、国内農民には安く、国際競争にも耐えるようにするということにあるのでありますから、今御指摘の問題は、われわれどもの仕事の中心でありまして、合理化計画につきましては、部をあげて鋭意努めております。御希望に沿うような資料も提出いたしたいと思つております。
  79. 中澤茂一

    ○中澤委員 瀬川さんがおられるのでお尋ねするのですが、たとえば肥料に一例をとつても、こういうふうに財政投資をしても、金利に五ドル四十セントを食われて、実際には五十セントくらいにしか農民合理化によるところのあれができない。こういう日本の高金利問題に対して、瀬川さんはどういうふうにお考えか、ちよつと伺いたい。
  80. 瀬川美能留

    瀬川参考人 高金利問題は、いろいろの面で大きな障害になつておるわけですが、何と申しましても、戦後の蓄積がなくなつ日本現状でありまして、財政投資で金利を低減いたすといたしましても、結局それは国民の生活にはね返つて来るわけであります。現在の金利を実勢のままで見ますならば、コストの下る余地というものは非常に少いのであります。しかしながらわれわれの経済産業活動の再建と国家の誘導と相まつて、徐々に下げて行く方向に持つて行かなければしかたがないと思うのであります。
  81. 中澤茂一

    ○中澤委員 鈴木さんのところでも水野さんのところでも、台湾向けの硫安は両方ともお出しになるようですが、バナナとのリンクはどういう話になつておるか、おわかりでしたらお聞かせ願いたい。
  82. 水野一夫

    水野参考人 私、政府のとられたあれがどういう規則に基いておるかはよく存じませんが、とにかく優先外貨というものが一割は与えられておるわけであります。その優先外貨によつてバナナを輸入いたしまして、そしてバナナ業者利益の中から若干を、輸出をした会社へ払つてもらつたという筋合いでございます。
  83. 中澤茂一

    ○中澤委員 水野さんにいま一点お聞きしておきますが、バナナのもうけがリベートされれば大体損はないですか。
  84. 水野一夫

    水野参考人 これは先ほど来論議がございましたように、各会社によつてコストというものは違うと思いますので、私の感じでは、おそらく大多数の会社が大なり小なりの赤字であろうと思うのでありますが、あるいは会社によればそれでとんとんくらいに行つておるところもあるかもしれないと存じます。私の方はその辺でまだ若干の赤字になつております。
  85. 柿手操六

    柿手説明員 先ほどの中澤さんの御質問のときに、私の出しました資料につきましてちよつと誤解があるのじやないかと思いますからよくごらんを願つておきたいと思いますが、私この前委員会へ提出した資料を今見たところによつてわかつたのでありますが「硫安工業合理化工事所要資金及効果」という資料を出しましたが、その効果は、これによつて百六十億の資金を投下してやりました金利及び減価償却等は当然マイナスとして考えて、なおコストが五ドル九十一セント下るということを御説明したのでありますが、これは償却を十二年、金利を七分にした場合に五ドル九十一セント下るという説明をしたのであります。しからば金利が現在一割でありますから、現在金利が下らぬとして、一割であればどのくらいな効果があるかということを備考に書いたのが五ドル四十セントでありまして、焼却はいずれも一二年、金利を七分に下げてもらえば五ドル九十一セントコストが下る。現在の一割であれば五ドル四十セントしか下らなかつたという備考をつけたのでありますから、もし私が理解いたしました通りの誤解がありますればそういうふうにお考え直しを願いたいと思います。
  86. 井出一太郎

    井出委員長 この際小枝一雄君より発言を求められております。参考人の皆さんには非常に御多忙のところを御出席をいただいてありがとうございました。あとの議事は委員会だけで進めますので、別席に御案内いたしますから一応お引取りを願います。小枝一雄君。     —————————————
  87. 小枝一雄

    ○小枝委員 私はこの議会におきまして食糧増産に関する決議案を本委員会において決定いたしたいと存ずるのでございます。  すなわち昭和二十九年度の予算案は、仄聞するところによると、今十二月中に政府においてもその大綱を決定するやに聞いておるのであります。ことに最近一般における食糧増産対策に関する印象は、ややもいたしますと退嬰的に流れておるのであります。ことに二十八年度において災害が各地に続出しておりまして、政府はややもすると災害に名をかつて一般的、基本的な食糧増産対策が軽視されんとしておることは事実であると思うのであります。これははなはだ遺憾なことでありまして、災害対策と基本的なるわが食糧確保に対するところの政策はこれを区分いたしまして、年々百四十万からの人口が増大いたしておりまする今日、日本の食糧確保に対する国策は一日もこれをゆるがせにすることにできないのであります。この意味におきまして、この機会に食糧増産に関する決議案を決定いたしまして、政府に対して強くこの食糧確保の政策を推進せしめたいと考えるのであります。なおこの決議案は適当なる機会においてこの衆議院の決議として、国会の意思としてこれを強く政府に要望いたさんとするものであります。今その食糧増産に関する決議案の案分を朗読いたします。    食糧増産に関する件  本年度における食糧生産は、四月の凍霜害に始まり、風水害、冷害ならびに病虫害に続く一連の農業災害により、稀有の凶作となつたが、幸いにして供出状況は順調に推移しつつあるも、食糧需給計画は国内生産量の絶対的減少により著しく悪化し、食糧輸入量の引上により当面を切抜けざるをえない情況であつて輸出の停滞と相俟ち、手持外貨は漸減し、ために国際収支は逆調に転じて国民経済の基礎を危胎に陥れつつあることは、まことに憂慮すべき事態である。  然るに最近食糧増産対策については一般に頗る退嬰的な風潮を示しつつあることはいかんにたえない。  よつて政府は明年度以降において、食生活改善施策に万全を期するとともに左記による等すみやかに国内食糧自給態勢の刷新確立について最善の方途を講ずべきである。      記 一、二十九年度食糧増産対策経費中、農地の拡張及び改良に要する経費(災害復旧を除く)並に耕種の改善に要する経費は、昭和三十年度においてすくなくも四百万石以上の増産を目途とすること。 二、経費不足のため完成のおくれている土地改良、開拓等既着工地区であつて、いますこしの資金投下により完成をみるものについては、このさい早期完成を期し、経費の増加工事の繰上実施により資本効率と増産速度の引上に努めること。 三、効率の高い主要事業については、特別会計及び継続費の制度を設け、事業計画ならびにその資金計画の完全実施を実現するよう措置すること。 四、食糧増産経費に関する指導監督を強化し、経費の無駄排除についていかんなく措置すること。 以上であります。満場の御賛成あらんことをお願いいたします。(拍手)
  88. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの小枝委員の提案にかかります食糧増産に関する決議に関しましてお諮りいたします。  本案を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  つきましては、本決議の政府に対する伝達、あるいは衆議院本会議への上程等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 井出一太郎

    井出委員長 さよう決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十一分散会