運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-12-11 第19回国会 衆議院 農林委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月十一日(金曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 金子與重郎君    理事 佐竹 新市君 理事 安藤  覺君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐々木盛雄君    佐藤善一郎君       佐藤洋之助君    田子 一民君       福田 喜東君    松山 義雄君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       井谷 正吉君    芳賀  貢君       原   茂君    古屋 貞雄君       中澤 茂一君  出席政府委員         農林政務次官  平野 三郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    塩崎  潤君         農林事務官         (蚕糸局長)  寺内 祥一君         通商産業事務官         (繊維局長)  吉岡千代三君         参  考  人         (税制調査会会         長)      木暮武太夫君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 十二月十一日  委員佐々木盛雄君、足鹿覺君及び山本幸一君辞  任につき、その補欠として星島二郎原茂君及  び古屋貞雄君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  臨時硫安需給安定法案及び農地における電柱敷  地補償料に関して参考人招致の件  蚕糸に関する件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  蚕糸に関する問題について調査を進めます。  この際お諮りいたします。先般税制調査会において税制に関する答申がなされ、その中に新たに昭和二十九年度において二百億円程度の収入を上げることを目途として、毛糸、絹糸等消費税を課することがうたわれておりますが、この際税制調査会会長木暮武太夫君よりこれに、関する参考意見を承ることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めさようとりはからうことにいたします。木暮武太夫君。
  4. 木暮武太夫

    木暮参考人 ただいま委員長からのお諮りによつて皆さん方の御同意を得たことについて、概略私から税制調査会答申の内容につきまして御報告をいたしたいと思います。  御承知通り税制調査会が八月の初めに閣議決定で設けられましてから、十一月まで二十数回にわたりまして会議を重ねまして、今回答申の提出をいたしたわけでございますが、ただいま問題になつておりますることを説明申し上げる前に、少し筋道として、どういう大筋になつておるかということだけ簡単に申し上げます。  今回の税制調査会税制を改正いたしまする場合におきまして、いかにも所得税法人税並びに地方の商工業者に対する事業税というものが苛酷であるので、これらを減税いたしたい、こういうふうに考えまして、ただいま申し上げました所得税法人税事業税等減税によりまして千二百三十七億円の減税をいたすことを目途といたしたのでございます。そこでその財減といたしましては、経済審議庁の推測によりまする国民所得増加を勘案いたしますると、昭和二十九年度には少くも千三百億円の自然増収がある。災害の復旧、あるいは防衛の問題であるとか、賠償の問題であるとか、なかなか国家多事のときでございますので、自然増収というものを全部減税に振り向けることは、かたきを政府にしいるものであるようにも調査会としては考えました。しかしながら、自然増収千三百億円というものは、要するにインフレ経済はね返りでございますので、これをもしほんとうの意味自然増収千三百億ありとして、これを歳入の財源として財政膨脹をいたすようなことに昭和二十九年度の財政規模を決定いたしますると、昭和二十九年度を出発点として、今後自然増収財源とする財政膨脹がとどまるところを知らざるような雪だるま式になりまして、日本インフレ経済に拍車をかけまして、恐るべき状態に立ち至るということをわれわれはは考えましたので、少くもこの自然増収の、ある部分減税に振り向けることが、いわゆるインフレ経済はね返りであり、インフレ経済の所産である自然増収の使途として適当であると考えた次第でございます。そこでこれをある部分減税財源にいたしまするが、しかしまだ千二百三十七億には不足をいたしまするので、間接税におきまして五百二十七億円の増徴をいたそうということに相なつたわけであります。  間接税増徴することについては、調査会におきましても、これが大衆に及ぼします影響を勘案して幾多の非難がございました。間接税大衆課税になることをもつて、なるべくはこれを避けなくちやならぬという議論も少からず強かつたのでございまするが、減税いたそうとするところの所得税そのものが、今日は大衆課税の性質を帯びておるのでありまして、御承知のように終戦後におきましては、二千万人に近い所得税納税者が一時はございました。国会の適当なる措置によつてたびたび減税が行われました結果として、ようやく昭和二十八年度におきましては千七十五万人くらいの納税者の数に減りましたけれども、所得税戦争前においては百万人に足らざる九十五万人くらいの納税者を持つておりましたことを考えてみますると、所得税が千万人を越す納税者を持つてつて、非常な大衆課税になつておる。従いましてこれがために徴税吏との間の摩擦も非常に多いし、しかも戦前に比べますると、非常に税務官吏の数なども多くなつて参りまして、滞納も五百億に達せんとするような状態になつておることを考えてみますると、直接税を中心といたしまするシヤウプ税制のもとにおきましての直接税が大衆課税の様相をすでに帯びておりまする今日は、これを減税するために、一方大衆課税であるとは申しながら、間接税の方は消費者において選択の自由を持つているだけに、幾分か所得税よりもいいのではないかという意味で、減税財源として間接税を取上げることに相なつたわけでございます。従来の間接税、たとえば物品税の中で、ただいまの消費経済がきわめて旺盛であることを、何とかしてインフレ経済を阻止するために抑制するとか、あるいは奢侈に対しましても、規制、抑制の方針をとるというような意味で、高級の物品に対しましては増徴をこの際いたしたい、あるいは揮発油税ももう少し上げてみたい、砂糖消費税も上げてみたい、しばらく問題になつておりませんでした印紙税登録税等についても、この際適正なる改正を行つて増徴をやりたい、骨牌税をもう少し上げてみたい等々の、現行の間接税増徴するということをやつてみましたけれども、それだけをもつていたしましては、増徴税収額が思うように参りませんので、勢い間接税において新しい税を設けなければならぬということに相なつたわけであります。そこで問題になりましたのは、新しい税は一体何にするかということになりますると、まず売上税、いわゆる取引高税というものが問題になつたのでございまするが、これは相当の金額が税収として見込まれることは、皆さん承知通りでございまするが、つい最近これを廃止をいたしましたばかりの税でありまするのと、それからこれをかける場合に、小売段階または製造段階等にかけますその技術上に、なかなか困難な場合がございまして、大いに検討を要する問題であるものですから、この売上税による相当の新税税収増徴をはからんとする考えがずいぶん多かつたのでございまするが、これは捨てたのでございます。  そこでただいま問題になつておりまする繊維品に対する新しい税の問題が起つてつたのでございます。織物消費税と申しまして繊維品製品に、製造者段階においてかけまする問題につきましては、これもなかなか非常にむずかしい問題がたくさんあり、委員の中でも非常に反対が強かつたのでございます。綿織物とかスフ織物とか、人絹織物あるいは合成繊維織物等を除きまして、ただその他の織物工場だけを調べてみましても、工場の数が四万を越しておるのでございます。これはみなとは申しませんけれども、大体零細な中小企業が多いのでございまして、今日中小企業育成強化というような国家の大本をなす国策の点から考えてみましても、こういう業者に直接織物消費税をかけることは、非常にむずかしいじやないかというところの議論が非常に強かつたのでございます。ことに西陣のようなところでは、ある日本人でない外国の人が織物をやつておる。そうでありまして、もし織物消費税をかけるようなことになりますと、これらの人が脱税をして、正直な日本業者というものは消費者に転嫁することができずに、みずから負担することによつて経営が成り立たないような零細なものがたくさん出るのではないかというようないろいろの事実の調査がございましたので、織物消費税というものもなかなかむずかしい。そこで次は製品である織物の中の六〇%、七〇%を占めておりまするところの糸に課税してはどうかという意見が一方では出たのであります。これも非常にむずかしい問題でございまして、これにつきましては、一部では綿からスフあるいはその他一切の糸にかけてもよいではないかという意見もございましたけれども、国民大衆負担ということを考えてみますると、むしろそれよりは毛とか絹糸とか、あるいは麻糸のみにかけるべきだという意見もあつて、これを問題として検討を加えたのでございますが、しかしながらいわゆる間接税消費税というものは、最終段階消費者にそれが転嫁されることに意味があるのでありまして、原糸から消費者の手に渡るまでの間というものは、織物消費税に比べますと、いかにも遠過ぎる。そこでその間において弱いものがこの税を吸収負担するというような結果になつて負担の不適正を生ずるおそれがすこぶる多い。これは非常にむずかしい問題でありことに生糸のごときものに相なりますと、生糸に対する課税というものは、ただちに繭の値段を低下させるということに相なりまして、戦後農林省の努力によりましてせつかく養蚕業が立ち直りかけておつたものに対して、一大鉄槌を加えるようなことに相なるのであるからして、こういうことはなかなかむずかしい。また輸出する生糸に対しましては、当然もどし税をやるわけでありますけれども、これが技術的にすこぶるむずかしいという議論も盛んであつたのでございます。ただいま申し上げましたように、製品たる織物課税すべきものであるか、あるいは織物の六、七割を占めておるところの原糸課税すべきものであるかということにつきましては、検討の結果両方とも非常にその長短がたくさんありまして、原糸の場合にはただ織物の四万工場に比較いたしますと大体スフ人絹合成繊維等を除きますると、四千くらいの工場で座繰業者のごとき小さな工場もその中に少からずありますけれども、また大きな規模工場もあるから、徴税の上から見れば便利ではないかという意見がありましたけれども、これは徴税の上からのみ判断を下すということはなかなかむずかしい問題である。そういうような意味原糸課税すべきか、原糸を含んだ織物課税すべきかという問題につきましては、両方とも非常な議論が闘わされましたけれども、結論に到達するに至らないのでございます。そこでこういう問題は税制調査会としては非常に重大な問題で、事一国の産業国民の生活に影響する問題でございますので、二つ意見が強く主張されたなかなかむずかしい問題であるということを付して答申をいたしまして、政府当局の慎重なる検討と、民意を代表する国会の慎重なる御審議にまつべきことが適当であろう。こう考えまして税制調査会においては、あえて無理をして一つにまとめるということをいたしませんで、この二つ議論があるのだということの答申をいたしたような次第でございます。この段御報告説明申し上げまして、何か御質問がありましたらお答えをいたさせていただきます。
  5. 井出一太郎

    井出委員長 これより質疑に入ります。念のため申し添えますが、木暮参考人の御都合は午前中だけにされたいという御希望でありますので、お含みを願いたいと思います。佐藤洋之助君。
  6. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 私はこの際蚕糸問題並びにただいま木暮税制調査会長の御報告になりました生糸課税か、あるいは織物課税かの問題につきまして、数点の質疑を試みたいと存じます。ただ質疑をいたしますのに際して、実は農林大臣出席を求めたのでありますが、お見えにならぬようでありますから、農林大臣に対する質疑は一応保留いたしまして、蚕糸局長がお見えですから、主として蚕糸問題について局長さんからお伺いし、また木暮さんの時間もございますから、その辺を勘案して木暮さんにもお伺いしたいと存じますが、まず局長に数点お伺いしたいと思います。実は私は、蚕糸問題に関しまして、本委員会を開くように再三、委員長に申し上げたのですが、打続く冷害あるいは凍霜害というような問題で本委員会は奔走いたしましたので、実は今日までその機会がなかつたのですが、きよう蚕糸問題を取上げまして質疑に入ることに至りましたことは、まことに私としては喜びにたえないのであります。実は昨日本委員会に対しまして、農蚕連関係を代表されて石黒武重君が陳情せられた。石黒君は御承知のように、蚕糸関係についてはヴエテランでございます。長く蚕糸関係について奔走せられた人で、あの人から切実なる陳情をわれわれは承りまして、既応蚕糸情勢に対して私どもは感慨無量に及んだのであります。それは戦前の、ことに蚕糸問題のけんらんたる時代昭和四年、五年の時代と私は記憶いたしておりますが、その時代における蚕糸業は、産繭の数量でも一億数千万貫、あるいは桑園にいたしましても七十一万町歩以上だつたというような、非常に蚕糸業の盛んな情勢を呈しました。しかし戦争に入りました結果は、やはり平和産業として整理統合の余儀なき状態に入つてしまつた。あるいは転業し、あるいは重工業にこれを転用するというような情勢になりまして、きわめて疲弊のどん底に落ちて終戦を迎えた。戦後ようやく復興情勢を見て参りまして、昭和二十六年の五月でありましたか、あなたの方においては、いわゆる養蚕緊急五箇年対策というものを御発表になられた。そこで、今復興段階に参りましたわが日本蚕糸業が、世界情勢消費部面から対照いたしまして、ことにあなたは先ごろミラノ国際絹業大会出席せられたから、それらを勘案して、わが日本蚕糸業をどういうふうにするかというような対策方針について、この際、実はこれは、保利君に伺いたいのですが、蚕糸局長としての責任者のあなたから、当該責任者として一応伺いたいと思います。
  7. 寺内祥一

    寺内説明員 蚕糸業戦前及び戦後の状況につきましてはまことに御説明通りでございまして、われわれといたしましても、戦争が治まり、世界が平和になり、文化が進めば進むほど絹に対する需要が相当旺盛になるということは、従来聞いておつたのでありますが、私今回ミラノ会議に参りまして、世界業者の絹に対する需要がどんなものであるかということを実際見て参りまして、まことにわれわれの想像以上にヨーロツパ人の絹に対する需要があるということを痛感いたしたのであります。ことに、ミラノにおきます絹業会議の第三部会と申しますのが生糸取引に関する問題を主として取扱う部会でございまして、ここにおきまして、まず第一には、われわれは生糸を買いたいのだけれども現在の価格はあまりに高過ぎる。これはなるほど人絹に比べますると、人絹戦前と戦後とで大体同じなのでありますが、生糸人絹に対して戦前は約二倍、三倍程度価格であつたのでありますが、現在これが七、八倍になつておる、こんな状態ではいくらほしくてもとても買い切れない。そこで日本としては、これをもつと安定して、せめて二十万円程度、すなわち現在の価格から申しまして二割程度引下げてくれるならば、ヨーロツパにおける消費は五〇%ないしは一〇〇%増加するということを各国の代表が言つてつたのであります。ことに、その会議が済みましてからイギリスに参りまして、関係業者と数回の会談をいたしたのでありますが、イギリスにおける生糸に対する要望というものがきわめて強いことを、私は非常に意外に思つたくらいなのでありまして、ことに数回の会談において、日本はアメリカにさえ生糸を売つておればいいのか、イギリスにはなぜ売つてくれないのかというような皮肉も言われたくらいなのであります。そこで政府といたしましては、先ほどお話のありましたように、蚕糸業振興計画として、二十六年から五箇年計画を立てまして増産に邁進いたしておるのでありますが、戦争中及び戦後の食糧窮迫時代に、桑園を相当整理いたしまして、その後も依然として食糧増産ということが必要でありますので、桑園面積を急激にふやすということはこの際相当困難があります。そこでわれわれといたしましては、現在あります桑園は、戦争中、改植すべき相当な老齢に達している桑樹でありましても、これを改植いたしておりませんので早急にこの改植行つて桑樹の若返りをはかりまして、そうして桑園の反当収繭量増加するということにいたし、蚕糸業復興をはかることをまず第一段階と考えまして、二十六年から三十年までの間の五箇年計画といたし、一応の目標といたしましては、五年後の三十年に三千三百万貫、それから生糸にいたしまして約三十万俵を生産する計画を立てました。当初の予定といたしましては、この三十万俵のうち十五万俵を内需に使い、十五万俵を輸出という目標でやつてつたのであります。繭の生産方面につきましては、今年は特別でございますけれども、昨年までは大体計画通り、むしろ計画を一年上まわるくらいの成績を上げておつたのでありますが、本年は御承知通り、遺憾ながら春早々六十年来の凍霜害がありまして、その後の冷害によりまして、本年の計画は二千七百万貫でございましたが、一年早まつておりましたので、本年当初の予想といたしましては三千万貫の生産を上げる見込みであつたのであります。これはわれわれのただの希望数字ではございませんので、統計調査部の第一回収穫予想量を入れてそういう数字が出ておつたのであります。この調子で行きますれば、五箇年計画が一年早まり、またそれが終れば引続いて第二次の五箇年計画を立てるつもりであつたのでありますが、御承知通り情勢でありまして、ただいまの収穫予想は、まだ統計調査部で正式なものにはなつていないのでありますが、大体二千四百七、八十万貫というような、昨年をも下まわるような減産になるようで、これが引続いていろいろな問題を起していることははなはだ遺憾であります。しかし現在の情勢で参りますれば、来年度は計画通り完全なものになると思います。それで三十年に三千三百万貫という五箇年計画は一応達成されると思うのであります。ただ需要方面におきましては、われわれは内需十五万俵程度と考えておりましたが、これは当初の計画に狂いがありまして、その後の人口増加もこれに原因したのでありますが、以外に伸びまして、昨年の実績は十九万俵となつております。戦前におきましても、御承知通り大体――戦前も年によつて違いますが、平均して考えますと、生糸は七十万俵生産いたしまして、五十万俵海外輸出し、二十万俵を内需へ向けておりました。もつとも内需と申しましても、これが絹織物になつて輸出されます輸出絹織物は、一応われわれの統計上は内地の引渡しでありますので、内需に含まれておりました。要するに内地で使われるのが二十万俵であつたという情勢に対しまして、内需は大体その線に近くなつておると考えられるのであります。従いまして、五箇年計画の三十年の結果が三千三百万貫でありまして、生糸は三十万俵と見ますと、現在の情勢では、大体内需は依然として二十万俵消費される。残り十万俵を輸出しなければならないのでありますが、輸出は御承知通り多少計画を下まわりまして、われわれの希望通り輸出は出ておらないのでありまして、二十七年度、昨年度におきましては約七万俵の輸出ですが、本年はああいうような減産も手伝いまして、おそらく昨年よりはちよつと下まわり、六万俵前後ではなかろうかと考えております。そこで二十九年、三十年――少くとも三十年までには十万俵に達するという輸出目標を達しますためには、海外宣伝その他いろいろな輸出の諸策をとらなければならないと思いますけれども、海外需要方面では、それを出すだけの能力は、ただいま申しましたような関係であるわけであります。なお翻つて考えますと、三十年に三十万俵になりまして、二十万俵を内需に使いまして十万俵を出すということになりますと――先ほど申しました戦前状態の七十万俵を生産して五十万俵を輸出し、二十万俵を内需に使いました、この五十万俵の輸出のうちの四十万俵というものは、絹のくつ下つたのです。あと残りの十万俵が大体いろいろの織物に使われておつたわけであります。御承知通り、この絹のくつ下部面におきましては、絹がナイロンに浸蝕されまして、すでにナイロンの方が消費者に喜ばれる。これをもう一ぺん絹に置きかえるということはちよつと困難ではなかろうかと思います。従いまして、絹の消費部面でありますくつ下部面が一応戦後消滅したといたしますと、三十年における結果は、結局、絹がナイロンに浸蝕された部分が取除かれ、あと残りはやつと戦前状態にもどつたということになるわけであります。従いまして、私といたしましては、二十六年から始まつてただいまやつておる蚕糸振興計画は、これは振興ではなくして、やつと戦前復興したのだ、従つて真振興計画は三十年以後に立てるべきだと思うのであります。なお三十年と申しましてもあと二年しかございませんので、鋭意その五箇年計画を立てるために努力いたしておりますが、いろいろ業界その他の要望として、生糸をこの際五十万俵つくれ、あるいは四十万俵つくれという御希望もありますが、そういうことも勘案いたしますが、同時に、ただいま御承知通り繭糸価格安定法というものがありまして、最高価格最低価格をきめまして、生糸をあまり増産したがためにかえつて糸価が下落して、農家に不測の損害を及ぼすということもいけないのでありまして、農家の収支を償う程度価格であると同時に、海外に売れる価格というものを目安にした五箇年計画を立てなければならぬと考えておりますが、ただいまのところまだはつきり四十万俵であるとか、五十万俵であるとかいう数字は申し上げられませんが、大体その程度目標にいたしまして、第二次五箇年計画を目下立案中でございます。
  8. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 ただいま寺内局長からミラノにおける世界情勢について大体承つたところによると、大体絹は高い、それからことにイギリスあたり需要が旺盛なんだ、世界需要は非常に旺盛なんだというふうなお話であるのですね。そこでそれらのことを今お気づきであるが、蚕業の五箇年計画というものを拝見すると、今あなたとしても多少是正のお言葉があつたが、すでに昭和二十七年であなた方の計画を上まわつておるのです。すでに桑園においてもそうですが、ことに桑園の反当収穫の割合から行くと、十二貫八百七というものが十五貫六百五というふうに伸びておる。あるいは総収繭量においても、予定の二千五百九十三万貫が、二千七百五十四万五千貫に伸びておる。従つて生糸生産量も二十三万五千梱が二十五万六千六百八十七梱というふうに伸びておる。こういうふうな五箇年計画は、計画としてはまことにずさんなんです。もし今年春の凍霜害あるいは秋の冷害というものがなかつたら、あるいはこのあなた方の五箇年計画は、もうすでに最終段階の三十年くらいにまで数字上において伸びておると思うのです。今あなたはこれは振興五箇年計画じやないのだ、むしろほんとうの計画は三十年からやるのだというお話でありますが、そういうふうなことを今あなたが是認されるということは、私としてはきわめて遺憾に思う。あなた方が計画された蚕糸振興五箇年計画というものは、ことしみたいに天災がなければすでに三、四箇年においてその目標を達成するのであります。あなたが今ミラノに行かれて、絹が高いのだ、まず二十二万円程度ならよいのだ。あるいは需要が旺盛だというような朗報を聞かされた。この朗報に対して、あなた方が今後わが日本蚕糸業をどういうふうにやつて行くかということについては、よほど積極的な飛躍的な計画の改訂を要するのではないか。今あなたのお話の中にいろいろ触れられておりました桑園の問題も、ことに今年でありましたか、あなたの方としては、優良桑苗確保施設云々という一枚看板しかこの増産計画の中には出ていない。しかも主税局との交渉によりまして、桑苗一本二円に対して一円二十銭、さらに折り合つて四十銭増額して一円六十銭になつたという事実を見ても、あなた方としては海外並の優良桑苗増産計画という一本やりだけしか見られない。今お話を承つても、あなたの方では改植助成をやらなければだめなんだ、この改植助成をおやりになり、あるいは肥培管理の改善施設というものをおやりになれば、繭の収量がふえて来ることは火を見るよりも明らかなのであります。そこで今ことしの統計に現われた十五貫幾ら、あるいは戦前は十七貫幾らと出ておりますが、これを改植助成してどれくらい増収をするか、あなた方は反当収量についてどれくらいを目標にしておるか、従つてそれから起算して行つて、あなた方の計画である最終段階の二十二万町歩の桑園確保ということになつてどれくらいのものが出て来るかということについてのお見込みを、ひとつ承つてみたいと思います。
  9. 寺内祥一

    寺内説明員 ただいま実行いたしております五箇年計画は、ずさんではなかつたかということをまず指摘せられたのでありますが、これはずさんと申しますよりは、この計画を立てました昭和二十五、六年の情勢から判断いたしまして、それからもう一つは、やはり農産物でありますので、今年のような凍霜害等天候による支配ということを考慮いたしまして、慎重に確実に実行できるというような計画を立てましたので、ただいまから考えますと、あるいは見込みが少かつたかと思いますけれども、しかし本年の実例があります通り、天候によりましては意外の障害を受けますので、われわれといたしましては慎重なる計画を立てたということを御了承願いたいのであります。  それから今後の増産計画といたしましては、主として反当収量の増加ということを考えております。その見込みはどうかというお話でありますが、昨年の実積は十五貫ということになつておりますが、戦前の全国平均は十七貫であります。そこでわれわれといたしましては、ただいま申しましたような今後の第二次五箇年計画におきましては、できれば反当二十貫程度には持つて行きたい、こう考えておりますが、技術者に言わせますと、これはちよつと無理である、せいぜい十九貫だと申しております。けれども私どもといたしましては、極力努力いたしまして反当二十貫程度には上げて行きたいと考えております。そういたしますと現在の桑園面積が約十八万町歩でありますが、これだけによりましても三千六百万貫、それから業界の方でいろいろ計画を立てておられますところでは、面積の増加ということも考えておるようでありますがわれわれといたしましても、できればそういう方向に持つて行きたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、食糧増産計画というものは、現在の国家としては重要なことでありますので熟畑を桑園にかえて行くということはこの際遠慮いたしたいと思いますので、新規の開墾ということになるわけであります。ところが新規の開墾地をあまりたくさん入れますと、ただいま申しました全国平均の反当収量二十貫ということが困難になるという点もありますので、われわれといたしましては、反当収量の増加という面に主力を置きまして、開拓その他に関することは極力やりますが、これを何町歩ふやすかということにつきましては、ただいま数字を申し上げるまでの調査段階に至つておりません。そういう程度であります。
  10. 井出一太郎

    井出委員長 佐藤委員に申し上げますが、蚕糸局長は午後も引続き出席を求めておりますので、木暮参考人に対しての質疑を先に願いたいと思います。なおまた参考人に対しては、他の委員諸君もお聞きをしたい点があるようでありますので、お含み願います。
  11. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 それでは私の局長に対する質問は保留しておきまして、一応そのように了解いたしますが、しかし今のお話の中の、反当収量の増加目標二十貫というものは、私は必ずしも不可能ではないと思う。そこで今のわが日本の食糧政策の面も勘案しまして、いわゆる桑園増加をはかつて行く、あなた方の既定計画二十二万町歩で二十貫の反当収量では相当の量が上る。要するに問題はたくさんつくらなければ価格は安くならない。農家経済も潤わないということになつて来るのでありますから、こういう面についてなお私は品種の改良とか、あるいは原蚕種の問題とか、たくさんあるのですが、木暮さんのお時間もありますから、それは一応この程度にいたしまして、木暮さんにお伺いいたします。  先ほど織物消費税の問題につきまして、いろいろ調査会の御苦心のあつたところを承りました。答申案として織物消費税としてかけるか、あるいは生糸原糸にかけるかというような問題について、決定をしないままこれを答申せられたということでありまして、その御説明の中に、いわゆる徴税技術の上からいつて織物消費税をかけるということは、なかなか四万工場もあつて困難である。また中小企業の育成の上からも云々というお話がございましたが、私はその点については逆に考えておるのであります。すなわちこの消費税を糸にかけて来るということになりますと、これが逆に生産者に還元されて来るということは火を見るよりも明らかでありまして、今禁止価格が二十四万円、それに対して生産価格が五万三千三百二十五円であります。それに三千二百円の集荷指導費を入れると、繭の価格は十八万三千四百七十五円となり、原料繭価一貫千八百三十四円となります。生糸消費税が実施された場合、生糸価格二十四万円に対し、生糸生産費八万九千三百二十五円となり、内生糸課税一五%とした場合三万六千円の租税課金となり、繭の価格は十四万七千四百七十五円となり、一貫目千四百七十四円であつて、結局養蚕農家負担となつて来るのであります。こういう点についてはどのようにお考えになつておるかお伺いいたします。
  12. 木暮武太夫

    木暮参考人 お答えいたします。御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、そういう点につきましても、原糸に対する課税が、織物消費税の場合よりも、消費最終段階にいかにも遠過ぎるので、その中間において不公正に負担するものができるだろうということで非常な反対があつたわけであります。そういうことを御報告申し上げたわけであります。今私がどうこう考えておるということは申し上げる筋合いでないようですから、税制調査会長として税制調査会でこの繊維に対する間接税をいずれにすべきかということの決定を見るに至らなかつたのは、今お話のような点が原糸の場合にも非常にあるのだ。ことにようやく戦後立ち直つて来た養蚕業に対する非常なる打撃のことを考えてみると、軽軽に取上げることはむずかしいではないかという反対論がすこぶる強かつたわけであります。
  13. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 関連して木暮会長にお尋ね申し上げますが、先ほど来会長からるる委員会におけるところの審議経過を御報告いただきましてわれわれもその経過中織物消費税とするか、あるいはそれとも現在の答申に出ております原糸課税とするかというような点について御意見がかわされたこと、並びにその課税の消長等についてはよく理解することができたのでありますが、ただ一つここに会長の御報告こよつてわれわれがまだ明らかにすることのできない一点をお尋ねしてみたいと存ずるのであります。  それはほかでもありませんが、この原糸課税にするか、あるいは織物課税にするかというようなことはしばらくおくとして、ただいまの御説明では、いずれにもせよ蚕業関係から何か徴税せねばならないという基本の観念と申しますか、意識をもつてすでに臨んでおられたのではないかという疑いがあるのであります。他に税源を探し、その結果として他に方法がないからいやでも応でもここへ持つて来たというのであるか、あるいはまた何かこの蚕業関係の方が少し置き忘れられたように、うまいことをしておるからこれにひとつかけろというような観念があつたのか、あるいはまた全然こうした私たちの想像の外にある、何かここへかけなければならぬとするところの考え方というものがすでにつくり上げられておつたのではないかということが、私たちに非常に深く疑いを持たせるのであります。もちろん練達な木暮会長のことでございますから広い視野から、そして透徹した眼識をもつで、日本財政経済あるいは外国との貿易関係養蚕業の問題、あるいはこのことが必然的に呼んで来る農民への負担転化、そうして農民の生活の貧困化を考えられたと思いますが、こうしたことはやがて昭和四、五年ごろから始まつた日本農民のあの生活の窮乏化が五・一五を起し、二・二六を起し、十月事件を起し、錦旗革命を起し、遂に満州事変を起し、その満州事変が支那事変に発展し、大東亜戦争に行つた。そうした姿をわれわれは間近にながめており、いまなおその苦しみを負つておるのでありますが、こうしたことへ当然進んで行くべき段階――それでなくとも昨今の農村生活、農民生活というものが、急速に貧困化の足取りを持つておるというときにあたつて、このことがわざわざ考え出されたということについて、何らかそこに避けることのできないものがあつたのかどうかということについて、お尋ねいたしたいのであります。  もう一つ、この委員会の経過中、この課税が実施されたあかつきにおいて、全国七十九万余戸の養蚕農家の収入がどの程度にまで減収されて来るかということについて、相当精細なる御調査もあつたことかと存じますが、その辺のところについては、いかようなるお考えをお持ちになつておられるのか、この二点について御説明を願いたいと存じます。
  14. 木暮武太夫

    木暮参考人 前段御説明申し上げましたように、すでに大衆課税の様相を呈しておりまするところの所得税、言葉をかえて言えば、標準家族夫婦、子供三人で生活費は二万円であるのに、給与所得者において月一万五千円から、あるいは申告所得者において一万二千五百円くらいから国税の所得税がすでにかかつてつて、生活費に食い込んでいるのが現在の大衆課税の様相を呈した所得税の実相であります。またこのほか事業税その他の地方税、市町村民税等を入れますと、現在の日本国民負担というものは、かなりつらいものであるということは皆さん方もすでによく御了解のことと思います。まずこういう所得税を引こう。国税の所得税でも、所得月標準家族で二万円くらい、年二十四万円くらいのものは、国税の所得税がかからないようなことをなすべきではないかというような、幾多その他のことを勘案いたしまして、所得税法人税と、地方税におきましては、所得税の二重課税であるかのごとき印象を中小商工業の人に与えておりまする事業税にも、この際斧鉞を加えるべきではないかというような、減税の構想を先にいたしまして、その金額が合せますと千二百三十七億円というものに達したわけでございます。それと見合いますところの財源といたしまして、先ほど申し上げました自然増収が、経済審議庁の調べでは、国民所得増加が大体六%くらいだというようなことからはね返りを見ますると、大体千三百億円であります。しかし今御承知通り国家の緊迫せる実情におきまして、インフレ経済の所産なりとはいえ、自然増収のすべてを減税に振り向けるという理想論は、なかなかかたきを人にしいるもので、言うべくして行われないだろう。そこで減らす方の所得税大衆課税の様相を帯びております以上は、理論上間接税というものを上げるということは、大衆負担を増すやの非難が非常にありますけれども、これはやむを得ないじやないかというので、間接税財源を求めたわけであります。そこで現在の間接税増徴をいたすことにしましたけれども、たとえば消費の規正であるとか、奢侈品の抑制であるとかいうようなことでいろいろやつてみましたけれども、なかなか現在の間接税増徴をもつてしては、減税をカバーすることがなかなかできないようなわけでございます。それでは減税をやめるか、何かここに新しい税を起して、片方の所得税その他の、気の毒な人たちの税を減らすことに力を入れる元をこしらえなくてはならぬという話になつたわけでございます。それでその新税で、さつき申し上げたように、どなたがお考えになつても考えられるのは、売上税とか取引高税とかいうようなものでございますけれども、従来織物消費税というものがありましたものですから、それで繊維品課税をして見ることを目標にして検討してみてはどうだというので、これをまず取上げて検討してみようということでやつたわけであります。ですから特に今の農村の人たちの生活の根源である養蚕の収入に対して、これが多過ぎるから減らしたらどうだろうかという、そんな考えは毛頭あつたわけではありません。それから第二段の御質問でございますが、先ほど来私が繰返して申し上げております通り原糸課税の中でも生糸に対する課税は、繰返し申し上げますように、間接税消費税というものは、消費者段階でこれを課税することが、その実をあげるのには一番適当なのでありますが、原糸から織物製品となるまでの間にきわめて長い期間があるものですから、勢い中間の、しかも弱いところにその税が不公正に吸収されるおそれがある。そこでこの原糸課税に対しての強い反対があつたということを申し上げましたことは、第二段の御質問に対する私の答えでございます。
  15. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ただいまお答えいただいたのでありますが、一点私さらに疑問を強めておりますのは、所得税減税を行いたい。その減税を行う大衆、その大衆の中に、日本の十貫目あるいは十二、三貫目という程度産繭をいたしております農家が、相当量の分野を占めており、そしてこの人々は、あなたの言われるところの減税をしたいという大衆そのものであることを想起していただきたいのであります。この点農林当局の蚕糸関係から、こうした一戸当りの精細な産繭量がどういうふうになつているかということが、おわかりになるのでしたら、これを資料としていただきたいと思います。これをもちまして私の質問を終ります。
  16. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど木暮さんのお言葉の中に、シヤウプの税制以来所得税が非常に大衆化された形になつているという御指摘がありまして、それを減税という形で是正して行く場合において、税源が足りなくなるので、間接税でこれを補う。いずれにしてもこれは大衆課税というような段階まで来ているので、むしろ間接税の方が、消費者にとつては選択権が自由であるから、その方がいいだろうというようなお言葉であつたわけですが、この蚕糸関係課税の場合においては、これらはただ製品のコストの中にそれが加算されて、消費者負担するであろうということは、一応常識的な考えでありますけれども、これらの問題は、やはり国内におけるところの価格だけを考えて律することはできないのであります。多分に国際的な価格、国際的な市場から来るところの段階がどの辺であるかということは、考えるまでもなくすでにこれは国際的には、日本のあらゆる産業面におけるところの製品が非常にコスト高であつて、二重価格制のような形を採用し、あるいは出血輸出等を行わなければならぬということになつているわけであります。生糸の場合においても必然的にそういうことになると思いますし、そうなると結局消費者がこの税を負担するというよりも、むしろ原料を生産する者の上にそのしわ寄せが逆にもどつて来るということがいつも想像されるわけでございます。現在の段階における国内の農民が負担しておる所得税は、審議会長においても御承知と思いますけれども、二十八年は大体七十七億程度であります。農家戸数から見ると一七%くらいが課税の対象になるということであつて、これは国の所得税全体の収入から見るとそれほど大きなパーセンテージを占めておるのではないのであります。そういうことで今後この大衆に対する所得税が、今までは税法上の減税等は行われておつたということが言われておるけれども、実質的な所得が守られておるということはなかなかなかつたのであります。こういうような趨勢で行くと、農業者に対する所得税そのものだけの負担というものはそれほど重圧ではないというところまで徐々に来ておるわけですが、むしろこれは地方税におけるところの農家の固定資産税等は、非常に重過ぎるということは指摘できると思います。そういう場合において、一面においてまた大衆課税を設けてそれが生産農家の上に大きなしわ寄せが来るということになると、むしろ農業者あるいは中小企業者に対してかかる税制の改革を行うととは、増税を結果するようなことに必ずなると思うわけであります。それで税制改革をやる場合におけるシヤウプの日本経済界に与えた一つの大きな誤謬から出発したそのものの税制は、結局資本の蓄積にあまりに重点を置き過ぎて、大衆の生活を犠牲にするような、そういう点が露骨に出ておつたわけです。今後どこに税源を求めるかという問題が非常に御苦心のようでありますが、所得税の場合において累進の最高限度が六五%くらいで押えられておるわけであります。これは世界的に見て日本所得税累進の最高限度が非常に低過ぎるということは御承知通りであると思うわけであります。もちろんある考え方に立てば、この資本蓄積等は不可欠であるという意見が出るかもしれないけれども、そのことは決して大衆を犠牲にした上に立つて資本の蓄積を行わなければならぬということではないと思うわけであります。かかる方面にもう少し、高額所得者あるいは法人、しかも大法人、大企業、そこに大きな税源というものが隠されておるということをお気づきになつておるかどうかという点をお伺いしたいのと、先ほども安藤委員が述べられたように、すでに国際的に見ても非常にコスト高になつておる日本国内のあらゆる製品に対して、このような間接税を課するということは、これは逆に生産者に対する税の重圧という形にもどつて来るということのお気づきがあるかないかという、この二点に対して御意見を伺いたいのであります。
  17. 木暮武太夫

    木暮参考人 お答えを申し上げます。ただいま国際的に日本の物価が高くて非常に輸出が困難で、日本の国際貸借じりが特需等を生かしましても赤字になつて、累積した外貨が雪だるまのように溶けて行くおそれがあるということは、まことに私どもも感を同じゆうして心配しているものでございます。それですから今の税金の問題の場合にも、輸出を生かす場合におきましてはもどし税等の方法をとれますわけでございまして、これは問題はありませんでした。しかしそんな生糸絹織物輸出の場合にはこれはもどしてやるのだということ以外に、先ほど申し上げましたような原糸課税にしても非常な難点があるということで、これが一つの答申案に盛られなかつた遠因がここにあるのであります。それですから、今の税をかけると輸出は困難になるのじやないかという一点だけでございますならば、それは輸出の場合には製品にしても原糸にしてももどすということは、これは従来もやつているわけであります。ただそのやり方が非常に複雑多岐にわたつてめんどうで、徴税吏納税者との間にいろいろいざこざを生ずるおそれがあるというようなことが大いに問題点になるわけでありますが、調査会におきましては、そういう問題でなく、先ほど私が幾たびかお答えしたような点について、原糸課税に対しても非常なる反対があつたわけでございます。それから今のもつと高額所得者などに税率を重くしたらどうかという御意見でございまするが、シヤウプ勧告の一つのあらを探せば――あらと申しましようかそれは何であるかというと、終戦後におけるところの貨幣価値の変動、物価の暴騰というものに対して、税率が調整を行われておらないことが一つの税法から見ますると大きな欠点であるのでございます。なるほど最高六五%では外国に比べて税も低いじやないかという一応の御議論は拝承はいたすのでございますけれども、日本の経済の浅いことと日本国民所得というものが非常に近いことは、かりに日本で百万円の年に所得と申しましたところで、これを三百分の一にデイフレートいたしますと、戦前のわずかな金額に実はなるわけでございます。今はむしろ給与所得者の人たちから言わせますと、累進の程度が急激過ぎる、もう少し階段をゆるやかにして、累進の程度も緩慢にして行くことがガラス帳りで源泉課税をされる給与所得者を救う道ではないかという声が、おそらくは非常に澎湃としているような今日でございます。つまりこれはだれが悪いでもない、日本インフレ経済の底が浅くなりまして――ただよく世間では日本のお互いは国民所得に対しまして国税、地方税を合せて二〇%しか払つておらぬ、アメリカは三〇%であるではないか、イギリスは三九%ではないか、ドイツは国民所得に対して二五・八%の税を負担している。オースタリテイというか、いわゆる耐乏の生活をなすべきじやないかという御議論もあるようでありますけれども、一たび個人一人々々の所得をごらんいただきますると、二十八年度において日本は六万六千六百円のものが二割の税を払つている、アメリカは約十倍の、邦貨換算六十七万円のものが三割の税を払つている。イギリスにいたしましても一人頭二十三万円、ドイツにいたしましても日本よりは国民所得一人頭の所得が多いわけでございますから、こういうようないわゆるインフレ・マネーによつて所得が換算されておりまするわけで、貨幣価値の非常な低下によるところの物価暴騰というものに対して、税率等につきましてもこの際調整を行う必要があるんじやないかということで、今度の税制などにおきましても、累進のカーブをもう少しゆるくして、そうして大方の給与所得者に対してフエイバーを与えることが至当ではないかというのが、調査会の一致した意見でございます。意見を申し上げてお答えにならぬようでもございますけれども、御意見ににわかに御賛成申し上げることを得ませんことをまことに遺憾に存じまするが、そういうわけでございます。
  18. 井出一太郎

    井出委員長 金子君。
  19. 金子與重郎

    ○金子委員 木暮さんのお帰りになる時間がちよつと過ぎたようでありますので、簡単にお尋ねいたしたいと存じますが、先ほど税制調査会から生糸課税に対しましての答申案が、二つの考え方がそのまま答申されておるというお話つたのでありまするが、もしお手元にありましたら、その具体的なものをお読み願えれば非常にありがたいと思いますが、お持ちでございませんか。その部分だけでよろしゆうございます。
  20. 木暮武太夫

    木暮参考人 読みますからお聞きとりを願いたいと思います。繊維品に対する消費税についてということで、   間接税増徴については、前述のようにまず現行間接税増徴を行うことが適当であるが、それだけでは増収額に自ら限界があるので、或る程度の増収を図るためには、どうしても何等かの新税を設けることが不可避である。相当額の収入をあげ得る間接税の新税としては、売上税取引高税)及び織物に対する課税が討議の対象として採り上げられた。しかし、前者は、税収は相当多く期待されるけれども、最近廃止された税目をこの際復活することは必ずしも適当ではなく、また小売段階又は製造段階等の一段階のみの売上税については課税技術上の問題をなお検討する必要があり、この際としては採用しない方が適当であると認められる。   そこで、結局毛糸、絹糸、麻糸又はこれらを原料とする織物に対して或る程度課税を行い、昭和二十九年度において二百億円程度の収入をあげることが必要であるとの結論に到達した。   しかし乍ら、その課税方法については、織物消費税の方法によるべきか、これが変形としての原糸課税の方法によるべきかについては、次に述べるような理由によつて結論を得なかつた。すなわち、織物消費税については、原糸課税に比して消費に近い段階課税するという長所があるが、他面納税義務者が多数(綿織物スフ織物、人絹織物及び合成繊維織物を除いて、製造場数が約四万余場)で、しかも中小企業が多く、税の転嫁が果して充分になし得るかどうかについて疑問があり、また織物に対する課税を変形したものとして、織物価格のうち七〇%程度を占めると認められて原糸に対して課税することについては、納税義務者の数は少く(綿糸、スフ糸、人絹糸及び合成繊維を除いて、製造場数が約四千余場)そのうちには座繰業者等もあるけれども、概して大規模企業であるので、徴税は容易であると認められるけれども、他面消費段階には織物消費税の場合よりも遠く、負担の不適正となるおそれもあり、また、輸出免税の手続が煩鎖である等の短所も考えられたからである。結局この両者の課税方法のいずれをとるかについては、その長短を充分検討して政府において決定するのが適当であると認められた。 こういうわけです。あと繊維品について綿糸とかスフ糸を原料とするすべての織物に低率の税をかけてはどうだという議論も実はあつたわけであります、これはいかにも大衆負担を増すものであるから、これは避けた方がよかろうということでした。  それから最近帯が一本五万円だ、三万円だとかいう帯があるとか、着物が何万円のものがあるとかいうようなことで、消費経済がいかにも旺盛過ぎるような状態であるので、この消費の規正、抑制の意味から、織物の高級のものについて、小売段階物品税として課税するというような意見もあつたのででありますが、御承知通りそういう帯が一本二万円以上三万円とかいうようなものは、それはもちろんデパートのような小売業にはありますけれども、大体背中に背負つて呉服を売り歩くような人がその職業をやつておりまして、店舗のない小売業者がそういうものを方々売つて歩くものですから、そういうことに伴いまする税務執行上の困難等がございますし、またどこのところで高級織物とそうでない織物との線をひつぱつていいのだろうかというようなこともなかなか困難なものですから、いろいろ検討いたしましたが、これまた答申にまで至りませんような実情であります。
  21. 金子與重郎

    ○金子委員 大体了解しましたが、そこで麻、綿、毛、絹、こういつたような繊維を一応対象にしまして、概略二百億円程度税収入をはかるということであつたように承つておるのですが、これに対してただいま問題になつておりまするのは生糸の問題でありますが、かりに生糸原糸課税をいたしたといたしまして、ないしはこれを別な結論から製品課税にいたしたといたしましても調査会としましては、この生糸に対する課税をどのくらい見込めるかということも論議に出ましたのでしようか。また結論に出ましたのでしようか。その程度の経緯をお話願いたいと思います。
  22. 木暮武太夫

    木暮参考人 お答えを申し上げますが、ただいま私がるる申し上げましたように、いずれを取上げてやるかということの原則的のことがきまりませんものですから、こまかい数字でこれを取上げれば幾らになるかということの研究はございません。ただ原則論としていずれにするかということがすでにわかれまして、意見が一致いたしませんものですから、これがひとつにきまりましたなら、さらに進んで具体的の内容を盛ることの案を研究いたしたはずでございましたが、そこまで至りませんでした。
  23. 金子與重郎

    ○金子委員 そこで本日これからこの問題を審議いたします重要なポイントでございますので、次の二、三点をお伺いいたしたいと思うのでございますが原糸課税するかあるいは奢侈品という形において製品課税するかということにつきまして、ただいまの御説明を伺いますると、徴税上の技術的な問題が一番大きく取上げられて、いわゆる徴税対象になる人たちの数というもので、徴税技術の原糸の場合と製品の場合における一長一短が論ぜられたということが、ただいまの説明書をお読み願つたのでもはつきりいたしたのであります。このほかに、これは私どもがここで審議いたします重要な一つの問題でありますので、この審議の過程におきまして、徴税技術というだけの問題でなしに、たとえば原糸課税した場合に、逆にそれが生産者、製糸家、もつともどりまして養蚕家というふうに、生産者に逆なしわ寄せが来る例が多分にあるとか、あるいはその他それ以外のそういうふうな論議が、その過程においてもしなされておりましたならば、私どもも一応研究してみたいと思うのでありますが、そのときの論議のおもなる御記憶にありました点を、お伺いしたいと存じます。
  24. 木暮武太夫

    木暮参考人 お答えを申し上げます。これは税収の点から見ますると、徴税の技術というものをまず取上げて考えることは当然のことで、どんなりくつのいい税でも、それを捕捉することが困難である場合には、税としての価値がないと同じように、とりやすい税であるだろうとか、あるいはこれは非常に摩擦の多い税であるだろうというようなことが、議論になることは当然でございます。それともう一つは、先ほど来私がお答えを申し上げました通り、租税というものは、ただ国庫収入を目標とするばかりでなく、租税を徴収することによつて、国の産業経済、国民の生活というものにどういうような影響を及ぼすかという、いわゆる租税政策というものも、やはり勘案いたすべきものでありますので、原糸課税の場合は、織物消費税よりは消費段階から非常に離れて遠いので、それに遠い間に不公正な負担というようなものもあり得るじやないか、今読んだような議論もすこぶる多かつたわけでございます。繰返しては申し上げませんけれども、そういうような議論が相まちまして、いずれにすべきかということの決定を見ませんような結論に達したわけでございます。  そこで調査会として結論がきまらぬのはいかぬじやないかという御感想もあるかもしれませんけれども、これはよくある例で、私どもはそう考えませんでしたが、初めはこの税制調査会などは、二十九年度の予算のわくを調査いたしまして、その中でA案、B案、C案という三段くらいの減税案をつくつて答申をして、そうして政府並びに国会の御審議にまつのがいいのじやないかという議論も出たようなわけでございましたが、まあこの委員会でこの二つ意見のあつたことを答申いたしたということも、私は常識上さしつかえないと考えております。
  25. 井出一太郎

  26. 原茂

    ○原(茂)委員 二点お伺いしたいと存じます。一点は、この繊維品にかける課税の二百億というものは、もし何か今後審議する過程において、徴税上不可能であるとか、あるいはこの二百億の繊維品課税することをとりやめるとかいう事態が起きた場合に、――前提でありますが、そういう仮定のもとにおきまして、何か他にこの二百億を求める案が木暮さんに、あるいは税制審議会において、お考えになられたことがあるか、あるいは今お考えになりまして、そういう場合にはこれらに転嫁して行つたらよろしいというような腹案がございましたら、お伺いしたいと思います。
  27. 木暮武太夫

    木暮参考人 お答え申し上げます。答申案をつくりましたときには、あの答申案をそのまま出しましたわけでございます。しかし、これは仮定でございますけれども、かりにあの間接税の増税の中で、ある部分の増税ができないというようなことになりますと、一つは、減税の方がその金額だけ減ることが考えられることと、もう一つは、政府において自然増収千三百億の中をもう少しふんばつてつて減税減税としてやつて、その財源として自然増収をもう少しふやして行こうという考えに出ることと、もう一つ考えられることは、御承知通りに、昭和二十八年度において地方財政平衡交付金は千三百億円ですか、あれを除いた補助金とか、あるいは国庫負担というものが、二千数百億円にわたつております。補助金につきましては、私が申し上げるまでもなく、国会の皆様方の中でも、かなりこれを合理化、是正、縮減すべしという御議論があるやにも聞いておりますので、かりにこれを一割とか、あるいは七分とか削ることができましたならば、二百億ぐらいのものが出るのではないか。しかしこれは実際の政治の問題でございます。ただ私は今の御質問に対して、もしお前らがつくつたものの間接税が否認された場合には、何か予定しておつたかというお話ですが、答申案をつくるときはそういうことの考えはございませんが、今日かりにもし間接税の増税につきまして否定されるようなことがあれば、今の三つの、減税を減らすか、自然増収をその分だけ食い込むか、あるいは二十八年度に比較して、二十九年度の出発点において財政規模の縮減を行うか、この三つよりほかにわれわれしろうとには考えられないのでございます。何か御妙案がありましたならば、こいねがわくは減税だけはぜひともお通し願うようにお願いを申し上げます。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 しろうとどころか、りつぱな御構想でけつこうだと思います。  次にお伺いしたいのは、今の生糸全体を考えたときに、わが国の輸出における大宗であることは間違いないわけであります。先ほども局長説明にありましたように、それをふやすためには、やはり相当の値下げを必要とする。これはもう当然でございますが、そこで今問題になつております、課税対象を織物消費税にするか、あるいは原糸課税にするか、どちらにした方が、わが国の輸出増大の方面から行くとよろしい。お考えになりますか、経験上の御判断をお聞きしたい。
  29. 木暮武太夫

    木暮参考人 たいへんどうもむずかしい問題で、よく研究してありませんから、どうぞごかんべんを願いたいと思います。
  30. 井出一太郎

    井出委員長 中澤茂一君。
  31. 中澤茂一

    ○中澤委員 税制調査会答申する以上、おそらくその結果がどうなるかということは、これははつきりお考えの上に答申されたものと思いますが、最後的な決定はできていないようですが、先ほどから木暮会長のお言葉を聞いておると、もどし税をやるから、それはいいということを言われるところを見ると、生糸にはやはり課税しろという意見が強かつたのか、または木暮会長自体、徴税技術上からそれはいいだろうというお考えなのか。もどし税をやればいいだろうとおつしやることは、生糸課税の方がいいのだ、こういうふうに私は聞き取れるのですが、それは審議の途上そういう意見が強かつたのか、木暮会長自身がそうお考えになつておるのか、この一点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  32. 木暮武太夫

    木暮参考人 お答え申し上げます。私はしやべることはまことに下手なものですから、御迷惑をかけて申訳ございません。ただいまの、輸出する場合に税をもどすということは、織物の場合におきましても、原糸の場合におきましても、輸出振興意味からこれはやるべきでございます。私の意見でも何でもなく、過去におきまして織物消費税や何かの場合でも、やはり輸出の場合にはやつております。ただ国際的に日本の品物は税をかけるからいかぬじやないかといわれるとしても、その輸出の場合にはもどし税というものがある。しかし納税者徴税吏の間のいざこざのあることは大いに問題であるが、そういうことは実は問題ではなくて当然のことであります。ただ先ほど来私は、織物課税にする場合にはかくかくの非常な短所がある、また原糸課税についてもこんな短所があるではないかという点で議論が非常にあつた、こういうことを申し上げた。言葉が足りないために何か今輸出に対してもどし税のことを私の意見で特に申し上げたような誤解を受けて、まことに申訳ございませんでした。先ほど国際商品との比較のお話がありました場合に、勢い国際商品との比較については、輸出の場合は税はもどすものだということの従来のあり方を申し上げただけで、それによつて私の考えはいずれを重しとし、軽しとするかというようにおとりくださらぬことをお願い申し上げます。
  33. 中澤茂一

    ○中澤委員 当初申し上げた通り課税するには、結果はだれが背負うかということが税制調査会の基本的な考え方でなければならぬと思う。その点について安藤委員からも芳賀委員からも申されましたが、生糸においては糸価安定法による最高禁止価格二十四万という一線があるということは、少くとも税制調査会においでになるような方はみな御承知だと思う。そうすると、最高禁止価格二十四万という糸価安定法を政府が蹂躙しない限り、この最高価格に行つておる今の生糸価格から言つて、先ほど佐藤委員が三百五十円とおつしやいましたが、三百五十円になるか三百円になるか知りませんが、当然これは農民にはね返るのだということは自明の理であります。そういう点については、税制調査会としてどのような御議論がありましたか。これははね返らないという御議論が多かつたのですか、またははね返るという御意見が多かつたのですか、その点を伺いたいと思います。
  34. 木暮武太夫

    木暮参考人 お答え申し上げます。先ほど来申し上げました通り、決をとりませんからどつちが多いとか少いとかいうことは申し上げられない。そういうような原糸課税の場合に、最終段階消費者に転嫁されるまでいかにも遠過ぎるので、その中間において不公正な負担が行われるということの意見が強く叫ばれたために、やはり原糸課税はいかぬのではないかということで、原糸課税にもならなかつたわけであります。どうぞ御了承願います。
  35. 井出一太郎

    井出委員長 午前中の会議はこの程度をもつて打切り、午後は一時半より続行いたしたいと思います。  暫時休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時八分開議
  36. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  午前に引続き質疑を継続することにいたします。佐藤洋之助君。
  37. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 蚕糸問題の振興について、もう少し掘り下げて局長から伺いたいと思います。  わが国の生糸及び絹織物が外貨獲得に占める役割は、ただいまお配り願つた資科を拝見いたしましても、相当大きなものであることがわかるのであります。かつて輸出の王座を占めたのでありますから、そうするためには、やはりどうしても品種の改良と増産ということを考えなくちやならぬ。そこで振興増産についてもつと局長にお伺いしたいのですが、先ほど局長は、桑園改良が根本だと言われた。それはまさにその通りで、これに徹底的に改良を加えて、反当収繭量をあげるということが一番手近だと思うのです。それには、ただ単に優良桑苗の確保施設ということだけでなく――それもけつこうだが、一辺倒ではいかぬと思うのです。もうちよつと積極的に乗り出して、改植助成あるいは肥培管理の改善施設を徹底して行くと、今局長から二十貫くらいとれるだろうというお話ですが、実は山梨県のある村では、平均五十貫というところがある。従つて六、七十貫の反当収量を見ているところがある。私は親しく行つて視察したいと思つているのですが、そういう点から行くと――日本食糧増産はもちろん大切です。自給度向上という目標に立つて大切だから、農地をつぶすことは困難であるが、大体二十五万町歩くらいは確保できるのではないかという前提のもとに行くと、かりにあなたの仰せられる二十貫でも五百万貫はとれる。品種を改良すれば五十万俵は私は不可能じやないという気がするのです。そういう点からいつて、ひとつ大いに増産をはかる、こういう点から、まずさかのぼつて繭の品種の改良をしなければならぬと思うのですが、この点について施策を承りたいのです。私の県のことを申し上げては何ですが、茨城県は不良繭が多かつた。しかるにこの間の明治神宮における蚕種の共進会では、その不良である茨城が一等賞をとつたということは、品種の改良を奨励した結果が品種がよくなつた。こういうことで行けば、私は反当収繭収量の増産と品種の改良と相まつてひとつ行けるのじやないか、これらについて一応お考えを伺つておきたいと思います。
  38. 寺内祥一

    寺内説明員 将来の繭の増産につきまして、繭の品種の改良が重要でありますことはお説の通りであります。御承知通り蚕の品種につきましては、政府におきまして原々蚕種及び原蚕種を指定いたしまするし、またその交配形式等も慎重に一年間業界にもお願いいたしまするし、府県の試験場でも試験をしてもらい、また国の試験場でも試験をしてもらいまして、蚕品種審議会というものを開きまして、夏秋蚕向けの品種はこれ、秋蚕向けの品種はこれ、春蚕向けの品種はこれというような指定をいたしまして、優良の品種の普及に努めているような次第でありまして、その結果繭の品種が改良いたされまして、大体ただいま平均のところは十六程度にまで上つて参りました。これは戦前に比べますると相当の向上でございまして、今後もこの点について努力いたしたいと思いますけれども、蚕種の品種改良の点は、世界にも冠絶してわが国の研究が進んでおりまして、この間のミラノ会議でも、日本の蚕品種の新しい種をくれという要望が非常に強かつたのであります。たとえばイタリアのごときは、まだ養蚕をやつておりますけれども、イタリアの繭はいい繭でも糸歩が十匁くらいであります。日本は平均十六匁といつたら驚いているくらいであります。なおこの点につきましては今後とも研究を進めまして御趣旨のような品種の改良をいたしたい。  なおつけ加えて申しますが、繭の増産、ことに反当収量の増加の点につきましては、先ほどは桑園の改良の点だけしか申し上げませんでしたけれども、そのほかに、われわれは今でもやつておりますが、今後なお力を尽してやりたいと思いますことは、稚蚕共同飼育の奨励によつて、稚蚕期における損耗の防止を考慮する。それから従来の統計で見ますると、農業保険の方の統計でございますが、これが病虫害によりまして、約三〇%くらいの損害を来しておりますので、病虫害の防除という点に努力を尽しまして、この損耗率をもつと下げて行くということにも力を尽しまして、反当収繭量増加ということに努力をいたしたいと考えております。
  39. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 そこで原蚕種の取扱いですが、今は原蚕種の取扱いというものは無免許でもあるし、登録制もしいてないのです。ためにだれでも扱えるということになつておるのじやないかと思うのですが、これは今はどういうふうになつておりますか。
  40. 寺内祥一

    寺内説明員 原蚕種も普通の蚕種も製造業は許可制になつております。
  41. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 品種改良の根本問題は原蚕種から行かなければならぬことは論をまたないのでありまして、いわゆるラウジネスのようなものの予防から行きましても原蚕種に十分力を入れることは当然です。そこでこれらの増産をはかつて行くのには根本的になるのは技術指導です。この技術指導の問題でございますと、大蔵省と蚕糸局の方とかなり行違いがある。かつまた技術指導のことについては、つまり大蔵省の方で認識されていない点が多いのではないかというような感じがいたします。二十一年の技術指導員は約七千八百名くらいありましたが、それから漸次減つて来ている傾向で、最近二十七、八年は六千から五千五百九十くらいに落ちて来たことは、これはやはり蚕糸の消長を物語つておるものであるが、しかしこれはやはり技術指導の費用捻出という点から考えて、絶対絶命最低線まで来たのではないかと思う。これはほかの農業指導と違つて、私が申し上げるまでもなく、稚蚕から、あるいは原蚕種から、飼育状況から、桑園から立体的に指導するのでありますから、どうしてもこれは絶対数を確保して行かなければならぬ、こう思うのであつて、本年度の蚕糸局の予算を参酌してみると。ここに要求予算として本年度は少いのですが、二千六百名、一億一千二百万円ですが、来年度要求に一億四千七百万円でここに三千六百六名という割合で出ておりますが、私はこれでは足りないと思う。であるからあなた方の二十九年度に対する予算の要求は大体三分の一の負担、県の負担の二分の一に対して国が出すということで予算ができておるようです。すなわち八万一千円ですか、四万八百円という負担の割合で三千六百六名というのだから、これは非常に蚕糸業界にとりましては大きな問題です。従来この指導員の問題につきましては若い経験をなめておる。現在の指導員の費用の支出の状況というものを見ると、まことに不合理なんです。あるときには養蚕家が負担し、あるいは組合が負担して来たような幾多の変遷がありますが、現在においてはだれが出すのやらはつきりした点がないくらいに不合理なんです。この蚕糸技術員の現状から考えて、蚕糸局としてはもつと強力な手を打つて、要するに大蔵省に要求しなければならぬのでありまして、この点について蚕糸局としての見解を承つておきたいと思います。
  42. 寺内祥一

    寺内説明員 私が先ほどから申し上げておりまする通り、将来蚕糸業の技術を振興することによつて、すなわち担当収量を上げることによつて蚕糸業の発展をはかろうとしますためには、技術員というものが非常に重要であることは、ただいまの佐藤先生のお説の通りであります。そこでわれわれといたしましては、これをでき得る限り増加いたしたいと思つておるのでありますが、いろいろ大蔵省関係との折衝の経過等もございますので、従来の経過を一応お話いたしまして御参考にしていただきたいと思うのであります。まず第一にいろいろ問題になりますのは、人員の点で農業技術員との比較論をすぐやられるのであります。これはわれわれといたしましては、農業技術員と蚕業技術員とは指導の実質が違うということを常に主張いたしておるのでありますが、遺憾ながらこれを数で現わして行くということが非常に困難であります。現状を申し上げますとこういうようなことになつておるわけでありまして、普通の農業改良技術普及員の数は約一万人でございますが、これは一人当りの耕地面積にいたしますると四百八十八町歩、一人当りの反当農家戸数は五百六十五戸、こうなりますが、現在政府で補助しておりまする蚕業技術員の方は、二千七百六十三人でございますが、これも一人当りの桑園面積を見ますと六十三町歩、一人当りの養蚕農家戸数にいたしますと二百八十八戸、こういうような数字が出て参ります。これは統計上隠すわけに参りません算術を出せばすぐ出て来る勘定であります。従いましてこういう点から見て、蚕業技術員の方が農業技術員よりもすでに密度が濃く分布しておるのじやないかということを、ただちに反対理由としてあげられるわけであります。そこでわれわれといたしましては、実質の違いを主張いたすのでありますが、たびたび申しますが、指導の違いといいますか、質的違いを数字で表わすことができないことがわれわれの非常に苦慮しておるところであります。  それからもう一つは、ただいまは二千七百六十三人の助成をとつておるのでありますが、これをわれわれ増加いたそうと思いまして、昨年の予算要求のときには、四千四百幾名かの数字を要求いたしましたが、この出しました基礎が産繭額に基いて算出いたした数字でありまして、これが大蔵当局の意見といたしましては、産繭額を基礎にして数字を出されたのでは、あなたの方で五箇年計画をやつて産繭額はどんどんふえる。ふえるにつれて常に異動する数字では困る。何かある一定の数字があつて、ここまでならば大体がまんできるという不動の基礎に基いた数字を出してくださいという要求がありましたので、われわれといたしましては、産繭額ということで実員を出しますことも一つの方法ではありますけれども、もともとこの養蚕技術の普及指導ということは、養蚕農家戸数を単位にしてやるのであつて、大規模の養蚕農家であつても小規模の養蚕農家であつても、技術の指導という点においてはそれほどの違いがなかろう、こう思いまして、今度は農家戸数について算出方法をかえてみたわけであります。そういたしますと、百戸以下の市町村につきましては、三市町村について一人、百戸から二百戸の市町村につきましては、二町村に一人、二百戸から五百戸までの町村については、一町村一人、五百戸以上の町村については、一町村二人というような一応の基準をきめますると、三千六百六という数字が出ますので、この数字をとりまして、本年度はどういう要求を出すという計算の基礎がお手元に差上げました資料に載つておるような次第であります。
  43. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 実はさきに昭和二十五年に、八十万養蚕農家の署名運動として、国と県と養蚕村三者にて所要経費の各三分の一を負担することが妥当であるというて陳情したのですが、今の三千六百六名というものの四万八百円であるが、これはやはり現実には六千人使つておる。やはりあなたの方でもう一段と大蔵当局にこれを願つて、増額もしくは増員、いずれかの道をおとりを願いたいと思うのでありまして、養蚕技術家の身分安定ということが一番重大だと思う。今申し上げたように、大蔵省のいう四百万農家で指導者が一万人、八十万で六千人は多いから二千人だというようなことですが、これは仕事のヴオリユームが違うのですから、同一に考えることは無理だと思うのでありまして、この点あなたのもう少し政治力をもつて、強く要求せなければならぬのではないか、これが一般養蚕農家にこたえるゆえんではないかと思います。どうぞあなたとしても、今の二十九年度の予算に盛られておる一億四千七百何万円ではとても問題になりませんから、さらに一段と強力にお進め願いたいと思います。
  44. 寺内祥一

    寺内説明員 御趣旨は私もまつたく同感でありまして、御指摘の通り私の政治力が弱くて、十分とれないことはまことに遺憾であります。一挙に数をふやすことも金額を三分の一補助を二分の一補助にしろということも、ただいまの財政状況から困難かとも思いますが、極力努力することにいたしたいと存じます。
  45. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 大いに政治力を発揮せぬと、大蔵省の農林局になる、あるいは蚕糸局の存在が薄れて来まして、蚕糸局というものは廃合されるのじやないかといううわさもありますが、そういうことはかなり問題だと思うのです。それはやはりある意味において、桑苗の一本二円の負担も主税局の方から、この予算を一本四十銭引下げられ、腰くだけになつたということは、私はあなたに小言を言うのじやないが、そうなつては主体性喪失、自己喪失になりますから、しつかりしてもらわぬとこの点まずいと思います。これは全養蚕家の希望でもありますし、この蚕業技術員の費用負担というものは、結局繭に関連して来て、一貫目三十円くらいな割合で関連してしまう。いつも繭相場をきめるときに紛糾を来すのは、これがあるから非常にうるさい問題になつておるのでありまして、こういう点から考えても、この点は大いにあなたが働かなければ蚕糸局としての立場がないじやないかというふうに思いますから、強く要望しておきます。  それから次に製糸業の生産コスト引下げの問題、たとえばあなたがミラノにいらつしやつて、向うの業者からの希望を聞いてみると、コストが高い、二十一万、二十万くらいでなければとうてい日本生糸は買えぬということであります。そこで大分品種の改良をして品物はよくなつたのでありますが、今度はコストを引下げるためには能率を上げなければならぬということになつて来る。最近自動繰糸機というものが盛んに言われております。片倉、郡是などはすでにこれをやられておるようでありますが、これを何か秘密にしておられるようであります。もはやこれを公開して全製糸業者に開放して、自動繰糸機を使うならば、一定した品物でよい品物が出て来るということは論をまたないのですから、これらに対する融資、施設の改善ということについて、一段とあなた方の方で強力に支援していただきたい。なおまた乾繭の設備は非常によくなつております。私も昭和十年に産繭処理統制法案を政府が出して参りましたときに、私はこの法案に向つて猛撃をいたしまして、三日間連続質問をしたことが過去にあるのです。そうしてこの法案を審議未了に陥らしめた。乾繭は最近はかなり徹底してよくなつておりますが、なお一段と能率の上るように設備を合理化する、こういう面で特段に蚕糸局の御努力を願いたいと思う。これについてあなたのお考えを承つておきたい。
  46. 寺内祥一

    寺内説明員 まず蚕糸業の企業の合理化でございますが、これは先ほども申し上げました通り海外にもつと輸出を伸ばしますためには、生糸価格をもつと合理的に引下げて行かなければならない。その一つの方策といたしまして、反当収量の増加をはかることは、繭の生産費についても合理化するというような意味が含まれておるのでございますが、なおそればかりではいけない。製糸方面においても合理化の必要が大いにあるのでありまして、御指摘の通り、自動繰糸機もようやく研究の段階を離れまして工業化の時期に達しておるのであります。われわれといたしましてはこれを急速に普及して参りたいと考えております。大体ただいま約千八百台ばかり運転されておりますので、これをわれわれといたしましては、今後五箇年の計画で一万五千台程度にまでふやそうと思いまして、これにつきまして開発銀行の方から資金を融通することになつておりますが、来年度からはこの開発銀行の融資の利子補給の予算を要求いたしております。同時に自動繰糸機に振りかえますためには、現在稼働しております多条繰糸機をやめなければならぬ。従いましてこの償却費も多少見てやる必要があろうと思いますので、それらをひつくるめましてお手元に差上げてあります二十九年度の予算要求概算の十二のところに、一億四千六百万ばかりの要求を出しておるわけでございます。これによりまして自動繰糸機を至急普及して参りたいと考えております。  なお乾繭施設の点につきましても、これは補助金ではございませんが、農林金融公庫の方から融資をいたしておりますが、これは御承知のようにただいまの状況では、生繭で売りましても相当高価に売れますので、これを乾繭して将来危険を負担してまでこれをやるというような機運にございませんので、思うような普及はいたしておりませんけれども、われわれといたしましては、やはり将来の繭取引の合理化見地から、融資によりまして乾繭施設を拡充して参りたいと思います。
  47. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 大体今まで承つた問題として、桑園の改良、繭の品種改良、技術員の安定問題、それからひいて製糸の能率増進、コスト引下げという点を局長さんからお伺いしたのですが、要するに今までの話を総合いたしまして、どうしても蚕糸局で計画した五箇年計画というものは、一応ここで再検討をして、世界需要にも応ぜられるように、また国内需要にもマツチできるように、これは飛躍的な計画をし直す必要があるのではないか。しかもまた伸びるべき性格を持つておるし、実際伸びるのでありますから、この点をひとつ蚕糸局として十分に留意せられて、主体性を喪失しないようにお願いしたいと思うのです。  蚕糸に対する本質的な問題はこの程度にとどめますが、あなたがミラノに行かれたときの国際絹業大会の決議の中に、生糸課税について、課税反対ということを再確認したという決議があつたのでございますが、その通りでございますか。
  48. 寺内祥一

    寺内説明員 これはおつしやる通りでございまして、先ほど申しました生糸取引を取扱う第三部会におきまして、今後蚕糸業及びその生産物であります繭とか、生糸でありますとか、あるいは副蚕糸というものをすべて自由貿易の基礎において、全世界の絹業の発展をはかろうじやないかという決議がでございました。同時に、特に国内消費を抑制するというような見地から、生糸に対して消費税をかけるということにつきましては、この前の第三回の会議でも決議になつたのでありますが、今回の第四回のミラノ会議でも再確認いたしまして決議いたしました。
  49. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 そこで私は大蔵省の塩崎税制第二課長に伺いますが、日本生糸課税をするということになると、アメリカでもそういう場合は課税するというふうなことになるんじやないでしようか。その関係はどうですか。
  50. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 お答え申し上げます。私国際会議の決議の内容をよく存じませんが、関税と違いまして、おそらく内地消費税の問題は独自に決定される問題でございまして、わが国で消費税課税されましたことに対応しまして、アメリカで課税されるということは必ずしも考えられない、こういうふうに考えております。
  51. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 海外、ことにアメリカの法律では、日本生糸課税を実施すれば、ただちに輸入関税を課するようになつているというのですが、こういう点ははつきりしていませんか。
  52. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 その点私もはつきり調べておりません。
  53. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 昨日石黒君がここへ来て陳情された話の中に、昭和六、七年と記憶されたというのですが、ときの大統領ルーズヴエルトが、ひとつ日本生糸課税し、二千万ドル程度の税をとろう、そうしてその二千万ドルを綿業増産の方に振り向けようというので、みずから発案された。ところがその当時綿は日本がお客さんだつた。そこでそれは日本の感情を害する、いたちごつこになつてしまうからというので、さたやみになつたということも聞き及んでおる――私も聞いておりましたが、きのうまたあらためて石黒さんからその話を聞いた。こういう点から行きまして、まさに対外的に考えても、生糸課税ということはどうもおもしろくないと思うが、大蔵省としてあなた方の立場はどうか。
  54. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 この問題につきましては、午前中木暮会長から、税制調査会答申につきまして、そのよつて来るところをるる御説明があつた通りでございます。私どもといたしましては、何分税制というものは来年度の歳出とうらはらをなすものでございますので、現在この問題も含めまして総合的に検討中でございます。従いましてこの課税を起すか起さないか、あるいは起した場合にどういう方法でやるかにつきましては、まだ未定でございます。お答えといたしましてはなはだ不十分かもしれませんが、そんなふうに考えております。ただ今アメリカの問題につきまして、私どもこういうことだけは聞いておるのでありまして、こんな点は検討する必要があるのではなかろうかと考えている一点がございます。それは物品税にもあつた問題でございましたが、製造課税をいたしましたときに、内地製品価格も上つて参る。そういたしますと、アメリカが関税を課します場合には、インボイス・プライスあるいはまた輸出国の国内価格、このいずれか高い方をとることになつておりますが、内地消費税を課せられた場合においては、税込みで見るのか、税抜きで見るのか、これで税負担が相当違つて参ります。そのために輸出業者が相当の損害を受けるというので、物品税においてはこんな点ははつきりいたしまして、消費税というものは消費者負担であつて、製造の価格の中には入らないのだということを物品税には書いてございますが、昔織物消費税がありましたときにはこんな問題で苦労した、こんな話は私ども承つております。
  55. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 大体生糸及び絹織物は、これからひとつ大いに増産しようという復興途上にあるので、ほんとうは保護政策をもつて育成助長すべき立場にあるものを、今のところ芽をつむようなものである。だからこういうものについては、国策上からいつて大蔵当局は大いに考えてもらわなければならぬと思う。ことに農林省としては、これとか、お茶とかいうものは唯一の産物なんです。こういう点からいつても大いに保護育成しなければならぬのにかかわらず、こういうような問題が出て来たことに対しては遺憾である。実は今騒ぎ出すことはおそいのです。こんなものはぴしやつとやめさせたいのですが、こういうことについても、蚕糸局としてこれらに対して結論をどういうふうに考えておいでか、ひとつ承りたい。
  56. 寺内祥一

    寺内説明員 この課税の問題につきましては、ただいま大蔵省と折衝中でございますが、農林省の考えといたしましては、先ほどから皆様方の御指摘の通り、これは消費税であつて消費者負担してもらうつもりの税でありましても、ことに原糸等に課税されますと、これは当然養蚕家の方に負担が逆転して参りますので、お説の通り、ただいま実行いたしております蚕糸業五箇年計画なり今後の蚕糸業の進展に非常に障害があるから、原糸課税については賛成しかねるという主張でただいま折衝中でございます。
  57. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 そうあるべきであつて、これはあくまで蚕糸局の立場としては、原糸課税反対ということの線をはつきり打出してもらわなければならぬと思うのでありまして、とにかく原糸課税になると、しわ寄せは八十万養蚕農家に来るわけです。これを私どもは深く憂えまして、今日こうした質疑等も繰返しておるわけですから、こういう点を深く大蔵省で考えていただいて――考えるどころじやない、強くこの点を認識されて、十分処置するようにお願いしたいと思います。私ばかり質問しておつては何ですから、この辺で一応打切ります。あとは大臣が来たときに伺います。
  58. 中澤茂一

    ○中澤委員 まず蚕糸局長にお伺いしますが、御承知のように、あなたが今年度大蔵省へ要求された技術員の予算というものは、三千六百六人に対する三分の一助成として一億四千七百万の要求をされておるわけです。ところが実際において、しからば現在どれだけの実人員がおるかというと、御承知と思いますが、五千五百九十人の実人員が今前線で働いているわけです。もちろんあなたはどういう意味で三千六百六人を出されたのか私にはわかりませんから、その点も御説明願いたいのですが、前線に働いておる五千五百九十人に対するところの三分の一の予算要求をやるのが当然ではないのか、私はこう考えるのですが、その点について御見解をお聞かせ願いたい。
  59. 寺内祥一

    寺内説明員 この点につきましては、先ほどもちよつと触れたのでありますが、できれば五千五百九十人全部にそういう国家の助成を及ぼしたいと思うのでございますが、何しろ今まで認められたものが二千七百六十三人でありまして、これを一挙に五千幾らという数字にいたしますことも、従来の予算の折衝にかんがみまして、国家財政窮乏の折柄ということで削られておりますので、徐々に行くよりほかはなかろうと考えました点が一つであります。それで、先ほどの三千幾らという数字を持つてつたのでありますが、それは産繭額を基礎にしておりましたので、しよつちゆうこういう基礎の動く数字を持つて来られて、毎年々々ふえるというのでは困る、一定のめどをつけてもらいたいという話がありましたので、今回は農家戸数を基準にいたしまして、先ほど申し上げました通り、養蚕農家が百戸以下の町村につきましては三町村に一人、百戸から二百戸までの町村につきましては二町村について一人、二百戸から五百戸までの町村については一町村一人、五百戸以上のものは一町村について二人というような基準を設けますと、ちようど三千六百六人という数字が出ましたので、これを今回は要求いたしたのであります。
  60. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたは蚕糸に非常に御熱心で五箇年計画をお立てになりまして、なかなか成績が上つているが、鋭意努力中というのでますます成績が上ることと思いますが、私は少くとも現在の自由主義経済における計画というものは、責任を持つたものでなければいけないと考える。あなたのおつしやる計画で行くならば、いつも計画以上上まわつている、これは非常に成績が上つてけつこうなことですが、私に言わせれば計画そのものがなつていない。実情を把握してその実情の上に、来年度はこれだけの施設をやり、これだけの国家資金を投入して、これだけの計画を無理でも上げるのだというところに私は計画の妙味があると思う。ところがあなたがお立てになつ計画の一一〇%にもなつておるのです。おそらく来年度はこの計画の一三〇%、一四〇%まで上まわるかもしれない。そういう計画では実態を把握した計画とは言えないと私は思う。そういう方面から技術員の問題を考えてみても、五箇年計画を立てながら、毎年々々技術員が減つてつておる。ここに資料として出されたものがありますが、昭和二十一年には七千六百八十五名の実人員が前線に働いていた。それが二十二年になると七千四百人になり、二十三年になると六千人になり、二十四年には五千人になり、そして現在は一番下まわつて五千五百九十人という前線実人員がおるわけです。これに対しては国家が責任を持つて三分の一の援助をすべきが当然なんです。それが計画なんです。その計画を技術員もこれだけ配置する、そしてこれに対して三分の一国が助成して、無理でもこれだけのものは前線の技術員にやつてもらうのだ、ここに私は計画があると思う。だからあなたのお考えになつておる計画自体が、一体どういう計画か私にはわからないのですが、その点をひとつ御説明願いたい。
  61. 寺内祥一

    寺内説明員 五箇年計画と言いながら、今までは上まわつているからむしろ計画ではないというお説のようでありますが、あれは二十六年から実施いたしまして、幸い二十七年は天候に恵まれて計画以上になりましたが、御存じのように農業はとかく天候に支配せられますので、天候が悪いと計画通り行かないような場合があるのでありまして、われわれといたしましては、通常の天候というものを基礎に置いて一応計画を立てたのがあの数字でありまして、従いまして天候が順調に行けば上まわるし、悪ければ非常に下る。ことしのような例がそうでありますので、われわれといたしましては、ただいま実行しております五箇年計画というものは、そういう点も勘案いたしまして慎重に立てたということを申し上げたいと思うのであります。  それから技術員の問題でございますけれども、これはなるほど資料を見ますと、だんだん技術員の数が減つておりますけれども、これは先ほども申しましたように、やはり農業技術員との関連もございますし、それから質の向上という点も考えまして、私は数が減るということは必ずしも悲観すべきことではないと思います。むしろ技術員の素質の向上という点に努力しなければならぬと思いますが、仰せの通り、ただいまの二千七百六十三人は少いことは私も十分承知しておりますが、何しろ国家財政との関係もございまして、われわれの要求通り増員を認められておりませんことはまことに遺憾でありますので、今後十分皆様方の御指導によりまして努力いたしたいと考えております。
  62. 中澤茂一

    ○中澤委員 指導するほどこつちは予算のこともわかりませんし、あなたはそれを専門に御飯を食べていらつしやるのですからよくおわかりのことと思いますが、私はこの計画そのものが非常にずさんであるということを一応指摘したい。今回の生糸課税の問題について、先ほど木暮会長にもお尋ねしたのですが、御承知のように十八万円から二十四万円という糸価安定法による最高価格の禁止価格がある。そこで生糸原糸課税をするならば、先ほどの木暮会長の言葉を聞いても、はね返り消費の方へ行かずに養蚕農家へはね返つて来ることは当然なんですから、それに対してあなたはもつと強腰になつてもらいたいと私は思う。別にあなたの批判をするわけではないが、今までのあなた方のやり口を見ておると、どうもしかたがないじやないかというような態度がいろいろな問題でわれわれ考えられるのであります。そういうことじやなくして、ほんとうに八十万の養蚕農家のためにわれわれは前線に立つてつておるのだというような、腹をすえた考え方を私はあなたに持つてもらいたいと思う。そのはね返りがことしの凶作などにおいて見ても――実際息をついたのは養蚕で息をついたのです。これは収穫皆無の村が、長野県の実例ですが、長野県においても十七、八箇所の収穫皆無の村がある。これが、実際村へ冷害視察に行つて見ると、何で息をついているかといえば養蚕で息をついている。蚕がよかつたから冬何とか米が食えそうだ。それくらい農民の状態は悲惨な状態にあるのです。だから、それに対してこの原糸課税をやるならば、長野県の問題で恐れ入りますが、百八億の総額課税のうち、長野県の現在の生産量からいえば十八億農家へはね返つて来る。これは長野県の養蚕農家としては耐えられない負担なんです。そういうはね返りが来るのですから、これは農民の立場からすれば原糸課税絶対反対、また大衆消費に転嫁するところの織物課税も反対である。ほかに税源としては幾らでもあるのです。政府の廃止した富裕税のごときは徹底的に累進増加すべきである。富裕税を廃止するとか、大衆に犠牲を転嫁するような今の税制の行き方というものは、われわれは基本的に賛成できない。その禁止価格の二十四万というものがありながら、これに対して原糸課税をするということは、農民の立場から言えば絶対承服できない。それについてひとつ局長として、もつと腹のある、これは大蔵省と話してもう絶対譲歩できないのだという、もつと信念を持つた答弁をお願いしたい。
  63. 寺内祥一

    寺内説明員 今回の原糸課税の問題につきましては、実は中澤先生のおつしやる通りの考えで、ただいま私は大蔵省と折衝いたしておる次第でございます。
  64. 中澤茂一

    ○中澤委員 大蔵省はどなたがおいでですか。
  65. 井出一太郎

    井出委員長 税制第二課長。
  66. 中澤茂一

    ○中澤委員 局長さんは…。
  67. 井出一太郎

    井出委員長 今呼んでおります。通産省は繊維局長見えております。
  68. 中澤茂一

    ○中澤委員 では繊維局長さんにちよつとお伺いしておきますが、この税制調査会答申案によると、二つ織物消費税をかけるか、生糸原糸課税をするか、こういう問題について、答申案としては最終的な結論はまだ得ていないのです。ともすると原糸課税をされる可能性が多いとわれわれは見ておるのですが、通産省の繊維局としては、この原糸課税織物課税かの問題について、どういうお考えを持つておるか、具体的に御説明を願いたいと思います。
  69. 吉岡千代三

    ○吉岡説明員 ただいまお話の繊維の課税の問題については、御承知のように現在生糸、毛、麻、この三つが一応税制調査会としては対象として取上げられておるように承知しております。そこでこれにつきましては、この繊維一般に共通いたしました問題と、生糸、毛、麻それぞれの特有の問題とがあると思いますが、いずれにいたしましても私ども繊維局の立場といたしましては、御承知のように食糧に次ぐ消費財でございまして、これに課税するということは一般物価ないしはパリテイ計算、その他賃金の計算等を通じまして、物価に対するはね返りを相当懸念しておるような次第でございます。特に御承知のように、繊維製品価格につきましては非常に敏感な品物でございまして、ごく最近におきましても、綿並びに毛等につきましていろいろ先行きの原料事情等の上から、一時価格が高騰いたしまして、それに対しまして通産省としては乏しい外貨をさいて原料輸入の促進をはかるというような措置をいたしたのであります。しかしながら一般的に申しまして、外貨の事情も今後決して楽にはならないと思います。これにつきましては一方において、国民のこの戦争によつて被害を受けました衣料を充足しつつ、またその価格を上げない、さらに輸出製品としても最も重要なこの繊維製品輸出を促進いたしたい、こういういろいろむずかしい問題をいかに解決するかということに苦慮いたしておるような次第でございます。特にこの生糸につきましては、御承知のように他の繊維製品輸出額は相当に上つておりますが、やはり原料輸入の関係からは、繊維全体としては一昨年、昨年と約一億ドル前後の外貨面の赤字を出しております。本年は昨年ポンド過剰というような関係もありまして、一時原料を相当思い切つて入れた、また輸出がいろいろな関係で所期のように伸びません関係上、九月あたりまでにすでに二億ドル以上の赤字を出しておるわけであります。これはいろいろな関係がありまして、これが平常の姿であるとは思わないのでありますが、しかしそのうちで生糸につきましては、これは純粋の国産の原料で毎年数千万ドルの輸出額を稼いでおるのでありまして、特に今後そういう意味におきまして、他の繊維製品輸出の中におきましても、最も点の一つとして考えるべきものと考えております。ただ御承知のように、本年度天候の関係等で非常に不作でありまして、そういう関係から一種の凶作価格が出るということはやむを得ない。同時に国内の消費も相当旺盛でありまして、輸出の内容が所期のように伸びておらないということはまことに遺憾に存じておりますが、これはやはり根本的には、繭の増産を農林省におきまして既定の御方針によつてお努力を願う。その基盤の上にコスト低下をはかりまして、海外の事情は御承知のようにコストがある程度下り、安定すれば相当今後需要増加を期待できるという商品でございますのでこういう面から申しますと、原糸であると織物であるとを問わず、結果において国内価格の上昇を来すような繊維課税は、繊維局の立場としてはまことにこれは好ましくないと考えております。ただ御承知のように現在の国民の税負担力というものから申しましては、よい税と申しますか、そういうものもなかなかこれは見出すことが困難に思われますので、要するに問題は来年度の財政収支をいかにして合わせるか。その場合にどういう税源が最も適当であるかということの問題であると思いますので、まだ現在大蔵省におきましても、具体的には検討中であるということで、いずれ案ができればお話合いをしたいということでございます。現在のところ、まだこれに対して最終的な意見を申し上げる段階には至つておらない。ただ大臣も先般国会において答弁をいたしておりましたが、要するに大衆課税になるようなものについては、これは絶対に不賛成である。しかしいわゆるぜいたく品というような観念に属するものについては、これはその内容によつて考えたいというような答弁をされておるようでございますので、今後なお大蔵省と案の内容につきまして具体的にお打合せをいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  70. 中澤茂一

    ○中澤委員 生糸原糸課税した場合、これは輸出を見ても三番目くらいに位して、七千万ドルからのドルを働いておるのですが、これに現在の答申案によるところの課税をした場合の、海外に対する輸出の見通しというものについて一点お伺いしたいことと、それから織物に対する課税をした場合のはね返りというものを、どの程度お考えになつておるか、その二点を御説明いただきたいと思います。
  71. 吉岡千代三

    ○吉岡説明員 課税によつて一応国内消費を抑制と申しますか、規正しようというような考えもあるようでございますが、私は最近までの毛とかほかの品物の価格の推移等から見ましても、これは禁止的な課税をすれば別でございますけれども、少々の課税によつて国内消費を規正し得るかどうかいうことにつきましては疑問を持つております。その反面、要するに課税することによつて結果的に国内価格を上げることになりますので、そういう場合には必ずしも輸出に対してよい影響をもたらすということは考え得ないのではなかろうか。はね返りの問題でございますが、これは計算上出て来ます問題と、やはり一種の消費者に対する心理的な影響というようなものも軽視できない関係があると思います。従来のいろいろなこういう場合の結果を考えてみますと、場合によりましては計算以上のはね返りが出て来る、その間に課税されるということによる買いだめ、売惜しみというようなことも考えられるのであります。  それから糸と織物課税の比較でございますが、これは私どもの立場といたしましては、いずれにしてもどうもあまり好ましくない。消費者に対する物価その他に対する影響と、それから業界そのほかにおきましては、これは要するに、やはり関係業界のうちで最も力の弱いところにしわ寄せされる関係があるのではなかろうか、特に御承知のように、いわゆる機屋さん等は現在におきましても非常な窮境にあるわけでありまして、織物課税されるというようなことになりますと、直接そういう影響も考えられます。しかしながら糸に課税されることにいたしましても、やはりそういう最も弱い段階にしわが寄つて来る、こういう点も懸念されておるような次第でございます。
  72. 中澤茂一

    ○中澤委員 生糸課税した場合、海外市場の輸出の問題で、あなたとしてどう御推測できるか、海外市場に対し、輸出課税した場合、今の輸出にどういう増減が出て来るかという見通しについて、あなたの御見解をお聞きしたい。
  73. 吉岡千代三

    ○吉岡説明員 直接の影響ということよりも、私の考えます点は、先ほど申し上げましたように、結果において国内価格を引上げるということになりまして、もちろん輸出につきましてはもどし税等の措置をとられることになろうかと思いますが、これももどし税の時期手続等から考えますと、私はさつき申し上げました国内の消費抑制等によるプラスの面よりも、あるいはマイナスの面が多いのではなかろうか、こういう程度にただいま考えております。
  74. 中澤茂一

    ○中澤委員 局長の話を聞いても、これはどうも好ましくない、課税せぬ方がいい、こういうお考えのようだし、蚕糸局長としてもこれは困る、今の御答弁を聞くと、通産省としても農林省蚕糸局としてもこれは困る、こういう結論になるわけであります。それと同時に、先ほど申したように税制調査会答申そのものに私は大きな疑問を持つておる。大衆は苦しんでいる、片方には資本蓄積に名をかりて、各法人が千四百億に近い利益を上げながら、これがみな社用族、公用族で温泉や旅館の増築に全部まわつておる。庶民の住宅は一つも建たないのに、町を歩いてみると、建つのは会社のビル、保険会社のビル、銀行のビル、役所のビル、ビルと名のつくものは大体こんなものだ。しからば日本式の建物は何ができているかというと、町を歩いてみれば、まず温泉宿の増築と料理屋の増築なんだ。これは今の状態においては、日本経済は消費経済とよくいわれるが、まつた消費経済ももう病膏肓に入つて来ている。だからそういう場合に、苦しんでおる大衆課税をするよりも、その消費の根源がどこにあるかということを考えるのが税制改革の基本的な立場でなければねらぬと私は思う。そういう面から考えれば、今度の課税というものは養蚕農民を収奪するか、大衆消費課税に転嫁されて行くか、この二つの道以外ないんですよ。これはだれが考えたつて、明らかにそれ以外にないんですよ。だからそういうような税制改革の答申案そのものに不満を持つておる。今御答弁のように、両局長とも反対なのだ。大蔵省の局長は来ないですね。課長さんでもけつこうですから、一体そういう課税が妥当かどうかということについて、大蔵省はどういうお考えを持つているのか、今度の予算編成で徹夜にわたる会議も開いておると思うのです。それに対して大蔵省の中には一体どういう意見があるか、その意見をお知らせ願いたい。
  75. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 先ほど申し上げましたように、この問題につきましては大蔵省としまして検討中でございますので、その点につきましては明確なお答えができないのは残念でございます。税制改正の基本的な考えと申しますか、それにつきましては現在検討中でございます。しかし税制調査会答申の、直接税の最近の重課、ことに少額所得者の重課につきまして何らか軽減をしろというような要望自体は、一般的な声ではなかろうか、こういうふうに私どもは考えております。所得税納税者の八〇%は、大体平均総所得三十万円以下ぐらいな総所得者がとつておる。しかもインフレのなごりと申しますか、先ほど木暮会長が言われましたように、累進の刻み方が非常に急テンポであります。従いまして年末賞与なんかになりますと、私どもあるいは私どもより下の者につきましても、もらつた賞与の袋は半分くらいにしかなつておらない。こんなところを何とか打開したい、かように考えておるわけでございます。私どもといたしても消費景気の声も知つております。しかし消費景気の声も、会社の社用族と申しますか、社用族的消費というものもやはり税金の高い面から来ているのではなかろうか。ことに重役の賞与を出しますれば急激な所得税がかかつて参る。そのためにむしろ企業の経費として出した方が税金も法人税の損金とされる。こんな関係もございまして、前の国会には私ども交際費の制限の法案も出したのでございますが、国会解散のために通過いたさなかつたのでございます。こんな手も打つておりますが、根本は何と申しましても所得税が非常に高いということが一つあるわけでございます。それからもう一つは中小企業に対しましての事業税の問題、これは現在のところ所得に対しまして基礎控除が五万円でございますが、一二%というような高額の事業税を払つている。これも三十万円あたりの所得者を見ますと、むしろ国税よりも高いような事実上の負担となつておる。これも相当軽減しようという声が強いわけでございます。あれやこれやで直接税の軽減の声が非常に強いわけで、私どもといたしましては、歳出が削減できますればこれはむしろこのままで下げたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、なかなかさように歳出の状況が許しませんので苦労しておるのでございまして、税制調査会答申も、単純に減税だけでなく、何らか歳出を抑制しつつある程度ほかに増税の財源を求めてそれをカバーしようじやないか、減税の重点はむしろ少額所得者に置こう、こういう態度でございまして、私どもといたしましても、今後そういう方向で研究いたしたい。しかもこの繊維消費税というのは、最後の問題として考えて参りたいと思いますが、何といいましても現行間接税の方がいろいろな意見もございます。物品税のようなものは、ことに零細業者を相手にいたしておりますが、何といつても旧税の方がなれております関係上、比較的収入も安定いたしております。それから砂糖消費税にいたしましても、大衆課税の色彩が強いわけであります。このあたりにいたしましても、どう考えますか、たとえばタバコ、酒、これも考える、こんなことでこれやそれや考えておるわけでありまして、何も私どもはすき好んで繊維消費税課税するというわけではございません。むしろ私どもといたしましては、シヤウプ勧告以来引上げましたところの所得税、ことにインフレによつてゆがめられました累進税率、諸階級の区分、このあたりをぜひ改正いたしたい、こんな気持で改正を考えておるのが大蔵省の気持ではなかろうか。私は課長でございますので、全般の空気を代表しておるかどうか、おこがましい次第でありますがこんなふうに考えておるわけであります。  それから転嫁の問題がしばしば議論になるわけでありまして、私ども皆様委員の方々の御高説を拝聴いたしまして考えておるわけでございますが、なかなかむずかしい問題でございます。間接税というものは必ずしも前提になるかという単純な理論も私どもとつておらないわけであります。あるいは途中の段階で吸収されて償却されてしまう、あるいは原料段階に好転するというような場合もあるわけでございます。そんな関係は経済上によるのではなかろうか。あるいは需給の事情、それから既往の地位、それからそれに基くところの税率、ことに税率が高いとなると非常に混乱を来す、こんな関係でございます。たとえばビールに課税しますと、ビールのホツプの栽培業者に転嫁するかどうか、このあたりに経済的に分析いたしまして非常なむずかしい問題がございまして、私どもといたしましてもなかなか結論を出せないわけでございますが、そんな点あたりを考えて参りまして、来年度の税制改正を考えて参りたい、こんなふうな気持でおるわけでございます。はなはだ問題を変更したような答弁でございましたが、現在考えておりますところの私どもの考え方を申し上げたような次第でございます。
  76. 中澤茂一

    ○中澤委員 今まで大蔵省では、大分予算編成をやつているはずなんですよ。その中にこの問題が出て来ないと、いうことはないと思うのです。あなたが知らぬということはないのですよ。何も結論がどうとか、それがどうこうということではなくして、生糸にかけるべきか織物にかけるべきかという議論は相当やつていますよ。あなただつて確かにその会議に出ているはずなんだから、その大勢として、何かちつとは議論があつたと思うし、あなたも相当意見をはいたのだろうと私も推察するのです。だからその点で、やはりこれにかけなければほかに何らかの方法を考えなければならぬという意見が多いのか、そういう点ですね。何も責任云々なんていうことはないのですから、もう少しざつくばらんに経過を話してくれというのです、大蔵省の中の意見を。
  77. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 率直に申し上げまして、来年度の歳出の状況は、主計局といたしまして作業しておる、これは間違いございません。私どもといたしましても、来年度の歳出はどうなるか、これはもう確かに研究いたしております。税制調査会答申を私どもいただきまして、これを研究いたしております関係上、私は繊維課税につきましても研究しておることは事実でございます。また糸課税がいいか、あるいは織物消費税がいいか、あるいは物品税としての小売課税式のものがいいか、これはときどき議論いたしておりますが、これをやるかやらないか、あるいはやらない場合にはどうするかということにつきましては、まだ結論が出ていない、こういう表現を用いた方がいいかと存じますが、こういう結論になつております。
  78. 中澤茂一

    ○中澤委員 それで大蔵省の人は折檻主義でやつているので、この前も行つて柏木なる人と大分けんかして来たのですが、大蔵省はどうも農民というものがわからぬようですな。先ほどあなたが、わしらの袋ももらつてみれば半分ぐらいしか入つていないと言われたが、まつたくその通りなんだ。実際気の毒なのは労働者であり、農民であり、中小企業者であるのです。それは日本のこういう資本主義発展の犠牲にされているわけだ、それは明らかだ。それで、農民のことが大蔵省はわからないのだ。すなわち、柏木君は農林省担当主計官というお役目だそうでありますが、あまりわからないのでちよつと勘にさわつてどなつたのですが、今度生糸原糸課税すれば、――これは織物の方にやるといえば、一般大衆消費者の方に転嫁されて来る。生糸でやると、こつちの方のパイプが長いものだからこつちへもどつて来る、しかも、あなたも御承知のように糸価安定法というものがあるわけです。これは二十四万円という禁止価格を引いている。そうすると、いやでもおうでも二十四万円という禁止価格を引かれておるのだから、三千幾らという課税になつて来れば、全部はね返るかどうか疑問だが、全部はね返れば三百六十円一貫目ではね返る。全部はね返るかどうか、そのうちの若干は今禁止価格を突破した価格売買も行われているようでありますが、これは二万円くらいなものらしい、二十六万円くらいになる取引もあるらしいが、二十六万円といえば、たとえば二万円全部はき出してみても、一万六千円というものはやはり養蚕農家へはね返つて来るのです。これが問題なんです。そこで、今全国の養蚕農家から、陳情書のはがきが毎日実にたくさん来ますが、これは、自分のところへはね返つて来るのを農民は知つているのです。ここで原糸課税をされてもらつては、必ずわれわれの頭へはね返つて来るのだ。蚕糸も、ようやく局長の名五箇年計画が着々と推進されているときなんだから、そういうむちやなことをやられては農民自体が立たないのだ。そこへもつて来て、おそらく将来日本の特需経済がだんだんだめになつて――今月など、けさの新聞で見ると八百二十万ドルですか、とにかくがた落ちに落ちて来ている。そうなると、もう日本生糸というものはドルをかせぐ大きな財源になるわけなんですね。原糸課税というものは、これは重大な問題ですよ。織物課税をやれば大衆負担しなければならないが、原糸課税をやれば農民にはね返つて、なおかつ国際市場へどういう影響を与えるかということをわれわれは考えなければいけない。将来ドルをかせぐのに基本的な産業、これがここまでようやく芽をふき出して来たのを、それに課税するということは非常に問題なんです。そういうふうな農民の立場から、われわれはこの課税には絶対反対ですよ。絶対反対。念を押しておきますよ。これをもし決定するなら、われわれは覚悟して大蔵省へ行きますから、それは了承しておいてください。あなたに今、議論はどういう議論があつた言つても、議論はしよつちゆうやつているが結論は出ていないと言うごもつともなんだ、それは結論が出ないのです。出たとしても出たとは言えない。無理もないのですが、あなた方も御承知のように、ことしは米がとれないで、農民は今非常に苦しんでいるのですよ。先ほど申したように、養蚕のために大分助かつているのです。食いつなぎの米が養蚕をして何とか買えるというような悲惨な状況なんですよ。その農民というものを大蔵省はいつも無視しているのです。そうして、そこいらの業者や何かのわあわあ騒いで来るのは取上げるが、農民は、騒いで来たいのだけれども、東京へ来る汽車賃がないのです。だから黙つているのだが、黙つているのをいいことにして、農民の方へどんどんしわ寄せしている。すべての問題でそうなんですよ。われわれはこの生糸課税というものには絶対承服できませんから、あなたも今後そういう会議では、生糸にまで課税するのはいかぬ、農民に気の毒ではないかという議論で、徹底的に大蔵省の中で闘つてもらいたい。繊維局長蚕糸局長も、両局長が、これはだめだ、これは困ると言うのだから、なおかつ大蔵省の立場としても、これだけは、ほかに財源を見つけるとか、または予算上の何らかの措置を講じなければならぬ。二百億くらいの金は大したことはないのです。私らは社会党だから、そんなものは安全保障費を削ればいいじやないかという気持でおるのでありますが、またそれをいつも言うのですが、そう言うと自由党の皆さんに怒られるかもしれないが、とにかく二百億くらいのもので農民を苦しめたり、消費者を苦しめるという、そういう課税方式は今の日本には好ましくないですよ。だから、その点について御答弁は求めませんがどうぞあなたもわが党の味方として、ひとつ大いにがんばつてもらいたいということを最後に希望しておきます。
  79. 井出一太郎

    井出委員長 この際金子君から、生糸課税に関する農林委員会の結論的な意思表示をしたいという意味で動議の提出がございます。この発言を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 井出一太郎

    井出委員長 異議なしと認めます。金子與重郎君。
  81. 金子與重郎

    ○金子委員 けさほど来、各委員が非常に熱心にこの生糸原糸に対する消費税課税の問題につきまして、質疑応答があつたのでありますが、遺憾ながらこの問題に対して一番問題の、農林大臣また大蔵省にしますれば、責任でありまするところの主税局長をけさからお呼びしておるのでありますが、見えておらない。この点は非常に遺憾でありますけれども、これは今決定される問題ではありませんので、一応農林委員会としまして、各委員の御意思のあるところを、農林委員会として決議の形をとつたらどうかということで、動議を提出した次第であります。  案文を朗読いたします。    生糸課税に関する件   税制調査会答申中、生糸に対する消費税の新設は、課税の目的である消費者負担とはならず、むしろ繭価格に転嫁されて、養蚕農家負担増加となるために、生産意欲の減退を来すこととなる。なお最近における内地生糸価格の高騰は、凍霜害による減産その他特殊事情によるものであつて、これを恒久的租税対策の基礎となすべきでない。よつて生糸課税は不適当なるものと認める。   右決議する。    昭和二十八年十二月十一日         衆議院農林委員会  以上のような簡単な案文でありますが、先ほど来から、各委員から重ね重ね御意見がありましたように、もしも生糸原糸にかけるということになりますと、生糸は、御承知のように、今幾分問題になつておりますけれども、一応二十四万という最高価格をきめてありますので、きめてある以上はそれに課税がかかるならば、当然それは繭の取引のときにも、その課税というものを念頭に計算のうちに入れないわけには行かない。それからもう一つは、現に先ほど養蚕技術員の問題が出ましたけれども、養蚕技術員の問題ですら、今国の助成が三分の一である。結果として残りのものを農民負担ないしは農民の集まりであるところの養蚕組合が負担するとはいうけれども、その方法として、全国的に行われておる製糸家連にもこれに協力してもらうとはいうけれども、結局において製糸家はこれを掛目計算のときには、当然それは表面には引かないけれども、引かなければやつていけない。こういうようなわけで、どういう名目の支出でありましても、これを繭から糸にするまでの取引の過程における経費なり、そこにマイナスの穴費があるならば、それは当然繭の価格にしわ寄せされるという結果になるのでありまして、この点は今後大蔵省においても十分お考えおきを願いたいし、もう一つ特殊なことは、たとえば今輸出貿易には関係ないじやないかということがかりにあつても、輸出する価格内地消費価格よりも安いじやないかということが、一つの問題になると思いますけれども、これは日本経済の脆弱の状態がいわゆる――もつと、言うならば、すべての物価にこの現象が現われておるのであつて、ひとり生糸だけに出ておるのじやない、硫安を輸出するにいたしましても外国に輸出する方が安い、セメントを輸出するにしても外国へ売るものは安いのだ、これはひとり生糸内地の事情と、アメリカの輸出に対する生糸だけの特殊事情ではなくて、日本経済全体の国内消費輸出品とのアンバランスの問題でありまして、これがたまたま生糸にもこの関係があるからというて、税金をここに考えるという、ことにこの相場というものを基礎にして、奢侈品として云々というようなことに考えることは間違いだ、あるいは二十四万というのがもつと下まわつてしまうかもしれない、そのときに税金をまたすぐとるわけに行かない、こういうふうな感がありますので、こういうふうに生糸が今値段が高いからというて、そこに税金をまた組み入れるというような考えを基礎に考えることは違う、この二つの点だけをここに取上げて来た次第であります。どうぞ満場の委員諸君の御賛成をお願いする次第であります。
  82. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 ただいまの金子委員の御発議に賛成するものであります。さきに私が質問申し上げたように、今生糸はこれからようやく立ち直つて来るというような、きわめて大切な時代であります。戦争中たたかれたものが、戦後ぼつぼつ立直りの傾向にあるのでありまして、こういう意味においても、大きな保護の手を延べなくちやならぬ、こういうような時代において、ややもするとその生産をはばむようなこうした課税は、まことに今金子委員の言う通りであります。これは何と申しましても、生糸原糸にかければしわ寄せは農家に来る、ひとり農家が非常な負担を背負うことになるのでありますから、生産意欲を減退することもなきにしもあらず、私はこういう意味におきましても、この決議は妥当なものと認めまして賛成をいたします。
  83. 井出一太郎

    井出委員長 他に御発言はありませんか。――別に御発言もないようでございます。お諮りをいたします。ただいま金子君提出の動議、生糸課税に関する件につきましては、これを本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 井出一太郎

    井出委員長 全会一致をもつて決議になつたということにいたします。  なお本件の取扱いに関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めさようにとりはからいます。  この際平野農林政務次官から発言を求められております。これを許します。
  86. 平野三郎

    ○平野政府委員 本日は米価審議会に大臣が呼ばれておりますし、また水産委員会でお呼出しがございまして、大臣が出席できませんので、まことに申しわけない次第でございますが、本日本委員会におきまして御審議中の、今回の生糸に対する消費税課税の問題につきまして、ただいままで打合せをいたし、政府としての見解を、本委員会において表明いたすべく、ただいま参つた次第でございますが、ちようどただいま御決議があつたそうでございますが、政府といたしましては、今回税制調査会答申にかかる生糸に対する消費税の新設が、御指摘の通り養蚕農家に転嫁され、増産を阻害するというおそれがありますならば、もとより重大な問題でございますので、慎重に検討し、農林委員会の御決議を尊重いたしまして善処いたす所存でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  87. 井出一太郎

    井出委員長 この際さらに一つお諮りをいたしたいことがございます。それは本年の風水害に関しまして、特別立法がなされました。被災農家に融資をする経営資金の貸付限度額の算定にあたりまして、政令三百七十一号というものが出まして、その貸付限度は、米麦の特別売渡し価格をも差引くということになつております。ところがその後本委員会において作成いたしました冷害関係の経営資金の貸付限度額の算定にあたりましては、衆議院修正によりまして米麦の特別売渡し価格はこれを差引かないことになつておるのであります。簡単に申し上げますと、風水害の被災農家よりも、冷害の被災農家の方が営農資金を借り受けるには有利である、こういうことになつております。これは政令が二途に出ておるという感じでございまして、風水害の場合と冷害の場合との均衡が失しておりますから、これを統一してもらう必要があろうと思うのであります。従いまして政府は、すみやかに国会が法律第二百七十四号に修正をした趣に即応して、右の風水害に関する法律に基く政令を改正するように処理をされたい、このことを参議院の方とも諮りまして、衆参両院の農林委員長名をもつて農林大臣並びに内閣官房長官に申し入れたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定をいたしました。
  89. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいまの修正は、本委員会で各党一致して、しかもことさらにこの問題を取上げまして、過去の、ただいま委員長説明した春の凍霜害のときの実例にかんがみまして、特にその問題は、損害金の中から共済金の支払われる予想金額というものを差引いたものが、すなわちそれだということを、意識的に研究の結果、修正したものでありますので、参議院と打合せの上、ぜひともそういうふうに改正をされるように御努力願いたいと思います。
  90. 井出一太郎

    井出委員長 承知いたしました。     ―――――――――――――
  91. 井出一太郎

    井出委員長 この際お諮りいたします。昨日の理事会において御協議を願つたことでありますが、臨時硫安需給安定法案の審査に資するため、消費者としての農民代表、硫安製造業者、その他関係者を参考人として、本委員会出席を求めたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  なお参考人の選定、意見聴取の日時につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なおもう一つ、明日の委員会電柱敷地料金の問題を取扱いたいと思つております。つきましては高井東京電力社長またはその代理者を、参考人として招致いたしたいとの希望がございますが、さようにとりはからうことについて御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十三分散会